約 30,359 件
https://w.atwiki.jp/yaruopokenaru/pages/605.html
,-、ィ ,、 , -、 > 、 / ヽ / .∨ V \_ ,イ / ', ∨ i、 / _ ', \ i_ / / .ヽイ ハ ヽ ヘ /// / / ./ ./``v'´゙-! .i ハ / ./i // .i 7 7 { i | i j | .| ', i ', ∨ //j { ' ! i .! .| ィテ}ヽ j /--j、; | | i | .| イ ヘ! V! | i、 i,,zミ、 / / / / 、ヾ j / i i ./ム ヾレヽV〈 {゚ l` ムイ=Zミ、 / ` / i j / /i .ハ l j | 乂7 {゚ j.i!./イ //j イ / i | .l j | i 廴ン ´.′ イ' /// ,' ! .i l j i从 ′ / / / ' .| .| | i ', i ヽ ` -- ' / / .i | .i ! i |', | \ . イ イ / Vi .i 7 ヾV ! 汀 ´ / イ ' i ',!i,′ /,イ\ /-ノ- / .イ // i', ', ',j /イ く '′ 厶イ /∠ | | ', ', ', / /ィ=、 -‐‐/ / / \ j | .', i l ,′ ./-‐ニヽ .ヽ./ /イ >-‐ニヘ i ', l | ,′ ./ ヽ∨ /. イ > ' ´ _ _ヘ ', | ! j i j 7 // ./>'´ >'´ ヘ i | | /.|,イ i i // 〃 ,イ_,. } i | / i| V | !、_,、 i/! /,イ / i' , i | | 7 |i .V |リj./7i / ij.| /,// ./ 、 i / | | | { |i i V// i y' /∨ .i,/ 、V' ,ィ.7 | | ', !V | /イ .イ // r' / //! .| | 122スレ目(156日目)に登場。泉こなたが運営する「ボックス通信情報センター」に勤務している女性。 社員と言うよりは保護者のように接しており、モモがいなくなった後こなたがだらけ気味なことに頭を痛めている。 主な仕事はボックスに送られるポケモン達のボールの運行状況の管理・監視と、新しく置かれるボックス候補地の視察と書類作成。 ボールに入ってるポケモン達のボールを保管するだけでなく、精神衛生のためにボールから出して運動や外での食事が出来る環境を選定している。 基本的にこの地方ではホーエンハイム博士の所で行われているが、最近は美府出やらない子にもボックスとサーバーを設置してもらっている。 他にも信用できる人間の所に打診している最中。 136.5スレ目(197日目)、無常矜侍の元手持ちのスリーパーを尋問中、催眠の被害に遭っていることが明らかになった。 通常の業務をさせながらボックスからポケモンのデータ改竄や、横流しをさせられている。 元々彼女が持っているポリゴンをダーク化と共に進化させられており、「ポリゴンF」という人型になっている。名前はウオルシンガム。 洗脳が発覚後、こなたとやる夫達によって施設を物理的・電子的に隔離されたことで、裏で手を引いていた真希波・マリ・イラストリアスと共に襲い掛かってきたが、敗北。 洗脳は解けたが己の罪を償う目的で黒の騎士団に出向し、奉仕活動を行うことになった。ただしこなたの仕事が忙しくなるため一ヶ月という期間を切られている。 137スレ目(198日目)、ウオルシンガムのリライブに協力し、ダーク化が解除されたウオルシンガムを返還してもらった。 リライブのシステムに興味を示していたが、その中で発生する負荷の行き先がどうなっているのかを考察している。 141スレ目(210日目)、彼女に依頼することでも枠解放が可能になった。 やる夫から真珠のネックレスをプレゼントされている。 143スレ目(213日目)、やる夫が告白し、恋人同士になった。 150スレ目(226日目)、カンナギタウンでデート中にエンジェルモートへ寄ったところ、店員の新条アカネと面識があると判明。 アカネが昔ハッキング能力で何かやらかしていたところを、上回る腕の涼子がこらしめたことがあるらしい。 古手神社では、パルキアぬいぐるみ小をプレゼントしてもらった。 デート終了間際、やる夫から騎士団への残留を請われたことを切っ掛けに、騎士団にボックスセンターの業務を委託してもらうことを発案。 外での作業や書類整理のために電子系ポケモンだけでなく、「パソコンに強いトレーナー」を増員することになった。ポケモンというだけで下に見る人間がいるため、人間の人員が必須になるらしい。
https://w.atwiki.jp/rowacross/pages/200.html
/ , - ' ¨ \ ` -、 / / , ' , ' |‐'´ ヽ /ヽ / / / //ヽ,.'ヽヽ ヽ \ 〉 / ! 〈 { | |゛゛"''''|│ 〉 ! 〈 ヾ| i ヽ_lyz七リ | | / | l /`ハレレ|,,r==ミ ム,Lハ / ! ! //,' r | l |`V ソ ~∨ / / // | ヽ|│!.  ̄ , r=z、 /∨l/ // │ ヽ! | rーy / 〃 // ! `、! 、 r、`´ ,ィ / | // !! ! `ノノ )7 </ル' ! rヾ  ̄ || lr‐ 'フ, '/ |ヾ| ! | ! ,',ヘ ヾヽ|| / ∠- ァ! \| !__ヽ /! ヽ | |||/ r--'ヽヽ `ー、ヽ ¨ァ ,' 〉 ヽ !_/ ,、┬、二ゝニ \ ヽ!/│ ! / / | ィ´ ! ! | \_ |_ ! | ! ,,.イヾ \ 」〉 |│ ! /| / ハ| ! | / ヽヾ ´/ | ! ,、,、 |〈 ヽイ//ヽ カオス朝倉「長門さんハァハァ」 ksk朝倉「うん、それ無理♪」 長門と同類の宇宙人にして、彼女のバックアップ。 キョンを殺害しようとした前科から危険人物のイメージが強く、実際ロワではマーダーになることも少なくない。 しかしクロススレで登場回数が多いのは、長門萌えで割と駄目人間なカオス朝倉と、熱血対主催だがネタも多いksk朝倉である。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1472.html
「お待たせ。今日は買い物に行けなかったから残り物の材料だけどシチューにしてみたわ」 皿に盛られたシチューにはじゃがいも、ブロッコリー 小さくもみじ型に切り取られたかわいいにんじんなどが入っており、 いかにもうまそうな匂いに彩られながら暖かい湯気がふわふわと顔の周りにまとわりついてきた。 「あ、ブロッコリーとかあまり好きじゃなかった?」 「いや……そんなことは」 俺は彼女が作ったシチューを食べている。 「キョンくん、おいしい?」 俺は何も答えず首を縦に振って反応してみせる。 まずいはずがない。 彼女は元々なんでもこなす万能タイプだ。 クラスでは人気者だし誰からも頼られ、誰からも愛される存在だ。 学校には彼女のファンクラブがいくつも存在し、 その一つにうちのクラスの山根も入っている。 俺の好みだって一度聞いたら忘れやしないだろう。 机の上の写真立てには遊園地で撮った俺と彼女のツーショットが入っていた。 二人とも嫉妬したくなるくらいに幸せそうな表情をしている。 「なあ朝倉、やっぱり俺たちって本当に付き合ってるのか?」 「ねえ、せっかく二人っきりなんだから少しくらい涼子って呼んでよ」 ──勘弁してくれ その日俺は朝倉涼子の部屋にいた。 しかも二人きりで──。 ───『朝倉涼子の観測』─── 話は2日ほど遡って桜咲き乱れるいつもの通学路。 何をとち狂ったのか去年の秋に花を満開にしていたこの並木道の桜も、 今年は無事に正しい季節の到来を告げることが出来たらしい。 そして俺も紆余曲折のあったあげく無事二年生になることができた。 この一年は本当にいろいろなことがありすぎて、 思い返すのもうんざりするほどであったが、 しかしこの一年がいつも以上にとても短く感じるのは、 それだけ俺が今この時間を楽しく感じながら過ごしているから他ならない。 いまさらこれは否定しないし、どうすればよかったなんて『たられば』を語ろうとも思わない。 過去に起きた出来事なんてものは過ぎ去ってみれば全部いい思い出にしか見えないわけで、 過去の俺からしたらこんな悠長なことを言っている今のこの俺のことなんてぶっとばしてやりたくもなるはずなんだが、 俺は俺としてここにいる現実を厳格に受け止め、 これからハルヒが起こす出来事も全て受け入れる覚悟が出来ていた。 自分の決めた未来に対して絶対後悔しないこと。 俺はこの一年で新たな方向へと成長を遂げていたのだ。 俺は新しいクラス割りを見ながら やっぱりというべきか。運命とはついて回るものなのだろうか。 「また同じクラスね! キョン!」 特上の笑顔を作ったハルヒがVサインしているのを横目でみながら、 俺はクラス割からもう一人の無言のSOS団員の名前を探していた。 ───いた。 なんと俺たちと同じ割り振りの中にいた。 なんてこった。偶然だと思いたい。 「でもまさか有希まで同じクラスになるなんてねぇ~。 今年は去年よりももっと面白い一年間になるに違いないわ!」 ハルヒはこれからの一年間に誓いを立てるかのごとく得意げに腕を振り上げて空のかなた遠くを見あげていた。 このわざとらしいまでのクラス編成はハルヒのしわざなのだろうか。 だとしたら国木田と谷口までもが同じクラスになったことだけはハルヒに感謝しておく。 よく知る友人と別々のクラスになることはあまりうれしいことではないからな。 新クラスになっての自己紹介。 自己紹介ってえやつは新しく出会ったクラスメイトに対して第一印象を与えるという、 ある意味とても大事な重要イベントともいえる。 この第一印象で失敗したやつがその後の学生生活にどのような影響を及ぼすかは俺が言うまでもないだろう。 しかし俺はその場で作った適当な言葉で茶を濁す程度のことしかしなかった。 どうせこのあと、後ろの席のヤツの自己紹介のおかげで俺の名前なんてだーれも覚えちゃくれないんだからな。 「SOS団団長涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。宇宙人、未来人、超能力者……」 やはりというべきかハルヒの恒例の挨拶はどんな教師の説教よりも教室に静寂を訪れさせる。 静まり返った教室は数秒間、時間の流れを忘れたかのごとく全ての機能が停止していたが、 やがて次の谷口が自己紹介を始めたときに再び動き出した。 ハルヒはこの一年で学校全体に知れ渡る存在になっていたが 現物を生で見る人たちにとってそれはやはり衝撃的なものだったに違いない。 ハルヒはこの一発でこれからも触らぬ神に認定されるとともに その取り巻きどもも要注意人物として敬遠されることだろう。 ハルヒはやっぱりいつものハルヒだし、 長門の自己紹介は誰の記憶にも残らないほどのそっけなさであったし、 クラス替えがあったにも関わらず去年となんら変わらない一日が過ぎていこうとしていた。 思い起こせば一年前の今日、 ハルヒの自己紹介のときから俺の運命の列車は本来のレールを外れ、 スイッチバック方式を経て遠く銀河の彼方まで連れ去られていった。 あれからちょうど一年経つのか。 あのとき俺がハルヒに声をかけなかったらどんな世界が広がっていたかなどと、 もはや取り返しのつかない過去に思いを耽てみたりもした。 そんなことを考えたのがいけなかったのだろうか。 俺はついさっき封印した後悔の念を再び何度も呼び起こすことになる。 ハルヒの引き起こした出来事を我慢するとは言ったが、 まさか別のハルヒがこんなことを引き起こすとは考えもしなかった。 次の日の朝、 俺は布団の中で目を覚ますと体がいやに重いということに気づいた。 頭がふらふらするのは決して目覚めが悪いからというものではなく、 目の前の物がダブって見えるくらいの眩暈がしていた。 幻覚まで見えそうなくらい世界がゆがんで見えた。 額に手を当てるとかなり熱もあるらく熱い。 試しに体温計を脇に差し込むと、目盛りがゆうに38℃を超えて39℃に迫ろうとしていた。 どうやら俺は風邪でも引いてしまったらしい。 昨日まではなんともなかったのに突然の高熱とはなんともひどい風邪ではあるが、 とにかくこんな状態では学校に行くわけにはいかない。 どうせまだ新学期は始まったばかりであるし、 いきなり授業についていけなくなるようなこともあるまい。 親に事情を話し、学校に連絡をしておくように告げてから俺は再び暖かい布団の中へと舞い戻った。 たとえ病気の最中であっても今日は学校に行かなくてもいいという気持ちは快感だ。 しかし、その快感を邪魔するがごとくさっきからピロピロと携帯が鳴っているような気がするが 俺の眠りを妨げるものはいったい誰だ。 いや、どうせハルヒだろうが、俺は病気のときほどハルヒの声を聞きたくないと思うことは無い。 あいつの甲高くどこまでも元気に満ち溢れた声は病人には毒である。 布団を頭からかぶり、完全に無視する。 明日何を言ってきたとしてもそのときはそのときだ。 「キョーンくーん、お姉ちゃんがお見舞いが来たよ~」 さっき学校から帰ってきた妹がカン高い声で俺の眠りを妨げてきた。 時計を見るともう4時を過ぎている。 さっき計ったときに熱は幾分引いて楽になっていたとはいえ、小学生の声は頭に響く。 「誰が見舞いに来たって?」 「えへへぇ、キョンくんの大好きな人だよ~」 はぁ? 誰が大好きな人だよ。 ん? もしかして……朝比奈さんのことか!? 長門がお見舞いに来るという可能性はあまり考えられないし、 それともまさかハルヒのことだったりしないよな? パジャマのままでは失礼かと思ったがどうせ今日は風邪で休むと伝えてある。 ずる休みをしているわけではないんだからこのままでいいだろ。 朝比奈さんか長門かハルヒか。 はたまた大穴を狙ってそれ以外の美女か。 病気になって一日中布団の中にいなくてはいけなかった日であるからこそ、 どんな人でもお見舞いに来てくれたということ自体が嬉しい。 玄関を開けてそこに立っていた人物を見て俺は驚愕した。 見てはいけないものを見た。 それ以外の美女が正解ってなんだよ。 俺はすぐにその扉を閉めた。 心臓が口から出てきそうな勢いで鼓動している。 「ちょっとー、急に何の冗談? これがせっかくお見舞いに来てあげた人に対する仕打ちなわけ?」 「なんでお前がここにいる……」 「なんでってお見舞いでしょ?」 「お前は転校したことになっていたんじゃないのか?」 ──朝倉涼子。 なんでお前がここにいる。 「わたしが転校?」 「カナダだ。お前はカナダへ転校したことになってる」 本当はそんなもん嘘っぱちだ。 朝倉はこの世に存在しない。消滅した。 じゃあ、こいつは誰なんだ? 朝倉の亡霊か? 宇宙人のアンドロイドとやらの幽霊なんて出るのか? 「ふふっ、変な冗談言わないでよ。 わたしが転校する夢でも見たの? そうだとしてもわたしはカナダからの一時帰国中とは考えられないわけ?」 「もういい。そんなことは。それで何をしに来た」 また俺を殺しにきたのか。 「だからお見舞いって言ってるじゃない……。 ねえ、せっかくお見舞いに来てあげてる人に対してそれは失礼なんじゃない?」 「やめてくれ……やめてくれ……またあの世界の繰り返しか? 今度は何だ? また長門か? それともハルヒか?」 「本当に大丈夫? 病院行ったほうがいいんじゃ……」 「帰ってくれ!!」 「んもう! ホントに知らないんだからね!」 本当に怒ったのかどうかは知らないが、 朝倉の足音が遠くなっていく。 それでもしばらく俺は玄関前でじっとしていた。 朝倉が本気を出したらこんな玄関扉なんて空気よりも頼りない存在だ。 一時間くらい経過したであろうか。 妹が「キョンくん何してるのー?」としつこく聞いてきてようやくわれに返った。 お前ふざけんなよ。 さっきなんであいつを俺の大好きな人なんて言ったんだよ。 あいつとは一度も会ったことが無いはずだろうが。 こっそりと玄関を開けた。 玄関前にはもう朝倉はいなくなっていた。 ドアの横のところに新鮮な苺がワンパック置いてあった。 朝倉が置いていったのだろうか。 お見舞いに来たのは本当だったのか。 妹にそれを与えると大喜びでリビングに持っていった。 長門に電話だ! 急いで階段を駆け上がり携帯を取り出した。 だがそこで目にしたのはまたもあのときと同じような恐怖であった。 携帯の電話帳を見てもハルヒの名前もなければ長門も古泉も朝比奈さんの名前もない。 国木田や谷口などの名前はあるのにSOS団のメンバーの名前や電話番号は履歴にも残っていなかったのだ。 俺はつい昨日だって古泉やハルヒに電話をかけたというのに、 昨日の通話履歴にはまったく別の人間の名前しかなかった。 そして数日にわたる着信履歴や通話履歴に びっしりと連なる名前がほとんど同じ人物の名前だったのだ。 俺はほとんどこいつにしか電話してないというのだろうか。 今日の朝の携帯を鳴らした人物もこいつであった。 『着信01 AM 8 40 朝倉涼子』 この世界には朝倉涼子がいる。 それだけで俺はあまりの恐怖に身震いがした。 一瞬長門のマンションに行こうかとも考えたが、 あのマンションには朝倉涼子も住んでいる。 どう考えてもそっちのほうが怖かった。 そして何より朝倉がいるというだけではない。 あの朝倉を妹が知っている。 携帯のデータも狂っている。 おそらくこの世界全体が確実に狂っているということだ。 長門が俺の知る長門である保障はどこにもない。 またかよ長門……いや、今回はハルヒかもしれないが、 長門がいれば世界改変などという超常現象はもう起きないものだと思っていた。 今度も俺の知る長門がうまく元に戻してくれればいいが果たしてうまくいくのだろうか。 ハルヒや古泉や朝比奈さんにも電話をかけようと思ったが、 携帯の番号は今の混乱した俺の記憶ではかすかに最初の4桁くらいを残して全て紛失している。 もうこのまま布団の中でずっと隠れていたい。 学校へ行ったら朝倉がいてやあおはようなんて生活は絶対にいやだ。 結局次の日、やはり俺は学校に行かなければならなくなった。 昨日の熱は嘘のように下がり、頭の痛さもまるでなかったかのごとく快調である。 学校を休みたいなどといっても俺の母親はそんなことをおかまいなしに俺を家から追い出した。 一昨日俺が編成されたはずのクラスはここだ。 ここのはずだ。 何度教室の入り口ところにあるプレートを確認してもこの二年のクラスであってるはずだ。 じゃあなぜハルヒがいない? いくら昨日病気で頭が痛かったからって、 一昨日の自己紹介のことまで忘れちゃいないぜ。 長門もいない。 谷口も国木田もいない。 知っているのは去年同じクラスだった山根くらいか。 そしてまたこのパターンか。 「おはよう」 朝倉がクラスメイトとして登場した。 彼女がクラスに現れると同時にクラス全体の空気が変わったような気がする。 女子が朝倉の元に集まり朝の挨拶を交わしている。 しかし、ひとしきり挨拶を終えると自分の席にかばんを掛けてまっすぐに俺の元へと歩み寄ってくる。 「おはよう、キョンくん。風邪はもう大丈夫?」 キョンくんだって? なんだこいつ異常に馴れ馴れしい。 俺はじっと朝倉の方を睨みつけたが朝倉は不思議そうな顔でこちらを見ていた。 やっとわかる。 そう、これはやはり改変された世界なのだと。 この朝倉も世界の改変によって再構築された存在なのだろう。 「なんだよ、キョン。 さっきから自分の彼女が挨拶してるのにずっと無視かよ~」 山根が拗ねたように口を尖らせながら言った。 お前って俺のことをあだ名で呼ぶほど親しい仲だったか? ほとんど話をしたことも無かったと思うが。 それよりなんだって? 彼女? はぁ? 誰が誰の彼女だって!? 「え……? お前ら去年からずっと付き合ってたじゃん。 ……もしかして別れちゃったのか?」 山根の表情が一瞬だけ嬉しそうな顔になったのを俺は見逃さなかった。 クラス中がシーンと静まり返った。 みんなが俺たちのことをずっと見ていた。 朝倉は少し困ったような表情をしている。 なんだかケンカ中のカップルがクラスの空気をぶち壊しているような雰囲気だ。 俺は大事なことを思い出し、ようやく朝倉に話しかける。 「朝倉……長門有希は知っているよな? たぶんお前と同じマンションに住んでると思うんだが。 眼鏡かけた読書好きの女の子だ。あいつはいまどこにいるか知ってるか?」 「なんで急にそんな話になるわけ?」 「いいからそれだけ教えてくれ」 「長門さんを知らないわけ無いでしょ。 あなたも何度も会ってるじゃない。 あの子ならもう隣のクラスに来てるでしょ」 俺は急いで時計を確認した。 まだ朝のホームルームまではまだ少し時間がある。 隣のクラスが右か左か、どちらを差しているのかはわからなかったが、 一発目で正解の方を引いたらしい。 朝倉の言ったことは嘘ではなかった。 隣のクラスに長門がいた。 だがこの世界の長門はやはりというべきか眼鏡を掛けていた。 なぜ眼鏡をかけているかといえばあの朝倉がいるからなのだろう。 俺の知る長門は朝倉を倒したときに眼鏡を失い、それ以来眼鏡を再生させていなかったからだ。 こいつにあのいつもの通りの宇宙人的パワーが宿っていれば話は早いんだが、 いつかのあのときみたいに普通の一少女になっていたらどうすればいいんだ。 また俺は団員集めをしなければならないのか? 「長門。俺のことを知っているか?」 「……知っている」 長門の目が眼鏡越しにこちらを見つめてくる。 「世界がまたおかしくなっちまった。 世界改変とでもいうんだろうか。 あの朝倉がいるんだよ。 俺の言ってることの意味はわかるか? 前のときみたいにお前の仕業か? いや、もしそうだとしたら自覚はないのかもしれんが」 長門は何も答えずじっとうつむいて考え事をしているような表情をしている。 「コラーー!!」 突然俺は首根っこを掴んで体ごと後ろに引っ張られた。 後ろの壁に激突した俺は少しの間だけあるはずのない星を見た。 「あんた有希に何してるわけ?」 ハルヒだ。 肩までおろした髪をカチューシャで止めた、 あのいつのもの姿のままのハルヒがそこにいた。 おお、この世界はハルヒがきちんとここにいるではないか。 隣のクラスにハルヒと長門がまるまる移っただけか? 俺はもう別の学校まで捜しに行くことまで覚悟していたんだぜ。 「……ってキョンじゃない。 わたしのSOS団の団員を脅すとはいい度胸してるじゃないの」 ここにはSOS団はあるのか。 それに俺はハルヒときちんと知り合っている。 前ほどヤバイ状況ではないのかもしれんな。 でも俺はSOS団の団員ではないのか? ハルヒはそんな口ぶりである。 まあ、いい。 こいつにあのことを話せば早いはずだ。 いきなりだが本題行くぜ。 「お前はあの七夕の日を覚えているか?」 「何よ急に。もしかして4年前のこと? ふん、東中のヤツに聞いたの? 谷口かしら。まったく!」 じろっと睨んだ先に谷口がマヌケ面で座っていた。 「あのとき忍び込んだのはお前だけじゃないはずだ。 眠った少女を抱えた男が一緒にいて……」 「はぁ?なにそれ」 へ? 「あれはあたしがあの日一人でやったのよ」 「え……? え? あ、いや、でも書くときに『ここにいるぞ!』って意思を込めて……」 「え……。 その話もしかして……古泉くんに聞いたの? ねえ、ちょっと古泉くん! なんでキョンにこの話をするわけ? あなたにしか話してないのにどうしてキョンにこの話が伝わっているのよ! 絶対に人に話さないって言ってたのに! 恥ずかしいからやめてよね!」 おお、古泉。なんだお前ハルヒの前の席にいたのか。気づかなかったぜ。 ってことはなんだ? このクラスには長門とハルヒと古泉までいるのか。 あれ? お前特進クラスじゃなかったっけ? ここでは違うのか? でもお前のことも忘れてたわけじゃないぜ。 俺はすごく嬉しいんだ。 前にあんなに苦労した鍵集めがこんなに簡単に出来たからだ。 この調子なら朝比奈さんだってすぐに見つかるだろう。 古泉が俺の肩をポンポンと叩いて話しかけてくる。 「ちょっとお話が……」 待て。まだ俺はハルヒへの話が終わっていない。 「ジョン・スミス! ジョン・スミスだよ! わかんねえか!? あの七夕のときにあったジョン・スミスだって!」 ハルヒは何の興味も無さそうに俺を冷たい視線で睨んだ。 「誰よそれ。ばっかみたい。」 ジョン・スミスを知らない? 忘れているだけじゃないのか? それとも遠くから声を掛けたからちゃんと聞こえなかったのか。 さっきから俺の肩に置いた古泉の手がどんどん握力を込めているのがわかる。 「ああ、わかったぜ。ハルヒ。 放課後また詳しく部室で話す」 古泉の手がミシミシと俺の肩を破壊しそうになっていた。 このハルヒは俺のハルヒと少し違うようだ。予想はしていたが仕方ない。 でも古泉。お前にもいっぱい聞きたいことがある。 俺は古泉に連れられてクラスを出た。 何も言ってもいないのに長門も後から一緒についてきていた。 階段の踊り場で誰もいないことを確認してから古泉が話し出した。 「どうしてその七夕の話を知ってるんですか? おかしいですね。 僕は誰にもその話はしていないはずだったんですが、 朝倉さんですか? その事を言い出したのは」 ここではこいつの情報も少しおかしくなっているようだ。 「なあ、古泉。お前超能力を持っていたりしないか? ハルヒのイライラが頂点になったとき限定ではあるだろうが」 古泉の表情が一瞬曇った。 何かヤバイことでも知られたかのような表情だ。 別に俺が知っていて何がおかしいというのだ。 すぐにいつもの古泉スマイルに立ち戻りまた芝居じみた笑いをする。 「僕が超能力者? ふふ、あーっはっはっはっは。 やめてくださいよそんなおかしな話は」 「いや、待て。隠さないでいい。 本当にないのか確認したかったんだ。 前にもこんなことがあったんだ。 頼む。本当の話が聞きたいだけなんだ。 お前はその超能力者の集まりの『機関』とか呼ばれる組織にも入ってないのか?」 また古泉の目が曇った。 今度はもう芝居じみた表情をしていない。 「もしも。もしも仮にですよ? 僕が超能力者だとしてその『機関』とやらも存在していたとしましょう。 そのことを知られたら僕は困るんじゃないですか? 『機関』とやらがどのような組織か知りませんが、超能力者を抱えているような集団であれば、 秘密を知ったものには何をしてくるかわかったものではないと思いませんか? あいにく僕は超能力者でもなければその『機関』とやらの人間でもありません。 だからあなたは無事でしょう。 でも今度ハルヒに近づいたら……どうなるかは保障しませんよ」 古泉は肩を怒らせながら帰っていった。 古泉ぃ……顔がマジだったぜ? 初めて見る表情だった。正直言ってかなりびびった。 その上、ハルヒとか呼び捨てかよ。 ひでえ世界の狂い方だな。 でもその反応ではお前が超能力者であることを認めてるようなもんだぜ? 本当に超能力者ではない普通人のお前は『キカン』とはどんな字ですか。と聞いてきたからな。 長門がその横で眼鏡ごしにじいっと俺たちの様子を見ていた。 「長門、お前の力を貸して欲しい。 世界がまたおかしくなっているんだ。 お前は宇宙人の長門だろ? そうじゃない長門も知っているが今度は違うんだろ?」 「知らない。 わたしは宇宙人などではない。 あなたは何か勘違いしている。 昨日病気になったときに変な夢でも見たのでは」 長門まで否定しやがった。 でもしゃべり方は俺の知っている長門だ。 それに普通の人間は宇宙人とか言われて、宇宙人ではないなんて答え方はしないぜ。 普通ならそんなことを言う人間にまともな返答をしようとするもんか。 長門はぷいっと振り返りそのまま古泉を追うように自分のクラスへ帰っていった。 まあ、たしかに俺の状況を説明してなかったのが悪い。 この世界の長門には長門なりの事情があるのだろう。 授業中、俺はずっと考えていた。 以前にも同じようなことがあっただけに今回はあのときほどまでには絶望していなかったが、 今回もかなりヤバイ状況であることには変わり無い。 休み時間中何度も俺の席に来て話しかけてくる朝倉を全て完全に無視し、 放課後の時間が訪れるのをただひたすらに待ち続けた。 もし世界が改変されていてこの朝倉が安全無害なものへと変貌していたとしても、 朝倉とはあまり付き合いたいとは思えない。 こいつに刺された腹の痛みは一生忘れることができないからだ。 放課後、いつものように部室棟に行く。 ハルヒにまた会いに行くためだ。 まだ絶望するのは早い。 長門と古泉はどうやら俺の知る宇宙人製アンドロイドと超能力者だと思われる。 ハルヒもいるし、SOS団もきちんと存在する。 ということはハルヒにもあの妙な能力もきっと健在なはずだ。 そうじゃなきゃあいつらが集まる理由は無いわけだからな。 もうこの際体面など繕っている場合ではない。 場合によってはハルヒに今までのことを全部吐いてあいつの能力を自覚させるのだ。 世界がこのままおかしくなってるより絶対にそのほうがいい。 俺は中庭を駆け抜け、部室棟の階段を駆け上がった。 部室の扉を見て俺は涙が出てきたね。 『SOS団本日はお休み!』 と書かれているのかね? この紙は。おいおい。 いや、泣いてる場合じゃないぞ。涙を拭け。 ハルヒのクラスもさっき授業が終わったばっかりだ。 今から追いかければまだ間に合う。 あいつの家はどこにあるかは詳しい場所は知らないが、 途中の道のりまでなら知っているからな。 走ればきっと間に合うはずだ。 急いで下駄箱へと靴を取りに向かう。 だが、俺の下駄箱の前でたたずむ少女を見て俺は思わず息を飲み込んだ。 「キョンくん。 今までどこ行ってたの? 探したんだからね」 「……朝倉」 「一緒に帰りましょ」 朝倉がいつも周りの女子たちと話しているときよりも何倍も明るい笑顔で微笑んだ。 微かに無理をしているような気配が伺える。 「勘弁してくれ……俺に付きまわないでくれ」 「ねえ、キョンくん。おかしいよ…… 昨日からなんか様子がずっと変だよ」 「そんな芝居はいいんだ…… 俺は今からハルヒに会いに行かなきゃいけないんだ」 長門が宇宙人だとすれば、こいつも宇宙人だ。 前にハルヒたちがいなくなったあの世界の朝倉とは全く違う。 世界の改変者は何を考えてやがるんだ。 しかもこいつに俺の彼女の役なんか与えやがって。 「なんで……? どうして急にわたしをそんなに避けるの? もうわたしのこと嫌いになっちゃったの? それとも他に好きな子が出来たの?」 「やめてくれ朝倉。これ以上近づいたら俺は大声を出すぞ」 「ねえ、おかしいよ……。一昨日まで涼子って呼んでたのに」 ぐすっという鼻の鳴る音と同時に朝倉の目からは大粒の涙が零れ落ちていた。 朝倉はその場に座り込むような姿勢で動かなくなっていた。 下校中の周りの生徒達がこちらを見て同情のようなものを寄せている。 しかし、朝倉がそこをどいてくれないと俺は下履きをとることが出来ない。 「泣き真似しても無駄だ。 俺の知っている朝倉はそんな感情というものを持っていないはずだ。 ハルヒを観察するために情報統合思念体に造られた存在。 対有機生命体ヒューマノイドなんとか。それが長門やお前の正体だからな」 「……!!!」 朝倉の表情が一変する。 さっきまでの泣き顔が嘘のようだ。 いや、実際完全な嘘泣きだった。 朝倉の顔からは涙の跡すら完全に消え去っていた。 そこにはいつかのあの殺意を持った表情の朝倉の姿があった。 「ねえ、なぜあなたがそれを知っているの?」 ───しまった。 そう思ったときは遅かった。 見る見るうちに周りの空間が暗いねずみ色の世界になっていき、 下駄箱は宙に浮きながら形をグネグネと形を変え、俺の周りを取り囲んでいった。 やっぱりこの世界でも朝倉はこんなヤツだった。 朝倉と一対一で対面している状況は俺にとって一番危険な状況だったはずだ。 それなのに俺というヤツはペラペラと朝倉とおしゃべりをしていたのだ。 なんという失態。 またしてもあの朝倉に俺は消されようとしていた。 二度あることは三度ある。 どうやら今回は三度目の正直とはいかなかったようだ。 ことわざってのは都合よく出来てるもんだね。 後ずさりしながら距離を保とうとするがさっきまで何もなかったはずの空間が 分厚いコンクリートの塊でぬり固められていた。 周りにいたはずの下校中の生徒たちの姿もどこにもない。 そこはただの四角い壁に囲まれた立方体空間になっていた。 ああ、わかっていたよ。 ここまでは前と完全に同じだからな。 「この空間は、わたしの情報制御下にある。脱出路は全て封鎖した。 簡単なこと。ちょっと分子の結合情報を操作してやればすぐに改変できる。 この空間は完全に密室。出ることも入ることも出来ない」 わかってる。俺の力で逃げ出すことは不可能だ。 だが俺の体はその理解とは反対に少しでも逃げようと必死にもがいていた。 「ねえ、どうしてそんなに怯えるの? わたしが宇宙人製のアンドロイドだとなんで怖いの?」 朝倉はニッコリと微笑む。 「それはお前に二度も殺されそうに……」この言葉は出なかった。 もうすぐ三度目になりそうだからだ。 「な、長門! は、早く来てくれ! 助けてくれ! 頼む!」 なんとも情けないことに俺はこの状況の打開を一人の少女に託すしかなかった。 来るんだろ? 長門。 そろそろ右上の方の空間を破ってさ。 「長門さんが来る? なぜあなたを助けに来なきゃいけないわけ? わたしが怖いのに長門さんは怖くないんだ。 どういう理屈かしら。 まさか長門さんがあなたの記憶をいじったとかそういうこと?」 俺の体はいつのまにか重力を感じなくなっていた。 指の先までぴくりとも動かない。 朝倉がゆっくりとこちらに詰め寄ってくる足音が聞こえた。 前は死ぬ前に目を閉じて置けばよかったと思ったが、今回は動けるうちに目を閉じていた。 あんな恐ろしい映像は二度と見たくはないからだ。 この一年間での成長とはこれのことだったのだろうか。 ああ、俺はとことん無力だ。 朝倉の詰め寄る足音が近づいてくる。 あと二歩……あと一歩! 長門! 長門! 朝倉はもう完全に目の前にいるというのに上空から天の助けが来るような音は何もしない。 「ねえ、誰から聞いたの? 教えてよ。 ううん。あなたは誰からもこのことを聞いていないはずだわ。 わたしは涼宮さんの周囲の人間のことも常に観察していたし、絶対にありえないもの。 どうやってこのことを知りえたのか教えてくれないかな」 怖い。声が出ないのは朝倉の仕業なのかそれとも恐怖で筋肉が萎縮しているのか。 目を瞑らない方がよかったかもしれない。 何も見えないことの恐怖が俺をさらに怯えさせていた。 やがてゆっくりと自分の喉元に冷たいものが当たるのを感じた。 その冷たいものが何であるのかすぐにはわからなかったが、 金属類ではないらしい。 俺の顔を伝ってゆっくりと動いていた。 わかった。朝倉の手だ。 なんて冷たい手なんだ。 その手は俺の顔を撫でて頬に止まるとゆっくりと両手で俺の顔を持ち上げた。 唇に柔らかい何かが当たる感触が一瞬だけあってそこからいきなり体に重力が戻ってきた。 なんだ? 体が動くぞ。 「不思議ね。あなたは昨日までのキョンくんとは別人? 記憶の改竄された跡もなければ、精神波形に異常もきたしていない。 この状態のわたしをみてもまるで前にもこういう状況にあったかのような振る舞いだわ」 この朝倉は前にもこういうことがあったことを知らないのか。 「どこまで知ってるの? それだけでも教えて」 答えようがない。具体的に何を聞いてるのかがわからない。 「答えてくれたらこの空間から出してあげる」 ニッコリと天使のような微笑み見せる朝倉。 怖い。コイツは昨日もあんなふうにしながらやっぱりいつでも俺を殺せたんだ。 「長門さんやわたしが宇宙人製のアンドロイドだってどうしてわかったの?」 「それは長門が俺に直接教えた……そして実際に長門の能力は過去に何度も見ている。 朝倉もそうだ。お前の能力はずっと前から知っている。俺が知らないとでも思ったのか?」 「あなたはわたしのこといつもみたいに涼子って呼んでくれないのね……」 誰が呼ぶかっ! 気色悪い。 「じゃあ、涼宮さんがどういう人かも知っているのね?」 「ハルヒはお前たちにとって進化の可能性なんだろ。 朝比奈さんにとっては時空の歪み。 古泉にとっては神だそうだ。 こんなこと俺に聞かなくてもわかっているんだろ」 「あなたが知っているということがおかしいの。 本当のあなたはこんなことを知らないはずだわ。 わたしのことだけでなく、SOS団のみんなの秘密も知らないはず。 だいいちあなたのような何も無い普通の人間がSOS団の機密を知るなんてことはありえないと思うの」 朝倉はじいっと俺の目を見つめて何かを読み取るような素振りをしてから首をかしげた。 「どうやらあなたは違う世界から来た人間みたいね。 新たに全てを予見できる超能力が芽生えた形跡もないし、 涼宮さんがあなたの記憶を改竄した形跡も無いわ。 信じられないけどそうとしか考えられないわ」 朝倉の出した結論は俺が異世界人だということだった。 それならこの世界は元々正しい。 俺は別の世界から来ただけだという。 「いったいどうしてこんなことに……」 「考えられる原因の1つは一昨日の自己紹介のときね。 涼宮さんが異世界人はここに来なさいって言ってきたからだと思うの。 これは長門さんの定期報告でわかったことなんだけどね」 なんだって? それは去年も言ったはずだぞ? 「ううん、去年は宇宙人、未来人、超能力者までだったわ。 同じクラスだったから聞いてたもの。 やっぱりあなたとはどこか世界軸がずれているみたいね。 それに加えて今年涼宮さんは異世界人を加えてきた。 もしかしたら何かあるかもしれないと思っていた矢先にあなたがこうしてやってきた」 ハルヒに関わっているうちに俺はとうとう異世界人になっちまったのか。 いや、まだわからない。 この朝倉が嘘をついているのかもしれないじゃないか。 朝倉が世界改変を行った世界であれば考えられなくは無い。 ただ……俺の知る世界では朝倉はもう存在していないのだ。 じゃあ、誰がこんなに朝倉の都合にあわせた世界を構成するというのだ。 「どうしようっかな……ここまでやっちゃったらほんとは記憶を消去しないといけないんだけど」 周りを見回しながら朝倉は困ったような表情をしている。 ぬりかべが四方を埋め尽くしているような光景が広がっていた。 通常では起こりえない超常現象はまだ続いたままだ。 「あなたの記憶を消去するより、 このままにしておいて涼宮ハルヒの出方を見たほうがいいと思う。 ねえ、この案はどう思う? 結構いい案だと思わない?」 また朝倉がニッコリと微笑んだ。 俺は助かったのか? 気づくとあたりは普通の景色に戻っていた。 放課後の学校。 自分の下駄箱の前で俺はへたりこんでいた。 「今日は一人で帰るわ。 キョンくんも気をつけて帰ってね」 そういい残すと朝倉はスタスタとこの場を去っていった。 やっと俺は恐怖から開放された。 気がつくとかなりの時間が経過していたらしく、 周りにいたはずの下校中の生徒達は誰もいなくなっていた。 朝倉がその場から完全にいなくなったのを確認してから俺はようやく下駄箱を開けた。 そこには意外なことに小さな封筒が入っていた。 俺は急いでそれに飛びついた。 朝比奈さん(大)からの助け舟か!? この世界がおかしくなった地点まで時間を遡れというのだろうか。 その場封筒を開けて俺は少しガッカリした。 字が明らかに朝比奈さんのそれとは違っていたのだ。 その字は俺のよく知る人物の字で、 「放課後4時、教室にて待つ」 とだけ書かれていた。 時計の針はすでに4時はとっくに過ぎて5時に近い。 朝倉のせいだ。これでは今からハルヒを追っかけていっても到底間に合わないだろう。 俺は仕方なしにきびすを返し、教室に向かった。 今までの経験から言って待っているのは女の子だ。 そしてこれから受ける告白は愛の告白なんぞではないのだ。 むしろ俺の命が危険にさらされる可能性すらあった。 だが、俺はこの手紙をくれた人物を信頼していた。 「……遅い」 誰もいなくなった教室に立っていたのはやっぱり予想されたとおりの人物だった。 唯一俺の認識と違うのは眼鏡をかけているってことだ。 「長門……いったい何の用だ? さっき朝倉に襲われていたときは助けてくれなかったのにさ」 「結論から言う。 これから情報の改変を行う」 またしても女の子からの告白なんぞではなかった。 期待してたわけではないが。 でも情報の改変ってことは世界を元に戻すっていうことか? 長門はさっきは自分が宇宙人だということを否定していたのに、 なんの説明も無くそのことはすでに俺との共通認識だと肯定していた。 「これから説明することはなるべくあなたにわかる様な言葉を選ぶが、 完全に正しくは言語化できない。 あなたの言語能力ではほぼ確実に情報の伝達に齟齬が発生する。 それでもわたしがこのことを説明するのは、 わたしがこれから改変を行うための義務。 あなたには少しでも理解してもらわなくてはならないから。 だから最後まで怒らないで聞いて」 なぜだか今回は長門に説教されるようだ。 「まず、今回世界改変が一度も行われていないことを述べておく。 全ての観測データに基づき、改変の事実は認められなかった。 世界の改変を行ったときには情報が歪められたデータの異常を検出する。 どのような方法を用いたとしても確実に痕跡を残す。 改変そのものが痕跡と同じようなものであるから。 それは宇宙法則の1つである。 それなのにあなたは自分がもう一つの世界から来たと考えている。 だがそれはありえない。 世界は常にたった1つだけ。 時間遡行をして世界を書き換えてもそれは世界の分岐にはならない。 世界はその情報に上書きされていくだけ」 長門は眼鏡をくいっと持ち上げて、こちらを見上げながらゆっくりと話しを続けた。 平坦で小さな声が誰もいない教室に響く。 「世界がある地点から多重に分岐すると仮定したとき、 その分岐の可能性には制限を設けることが出来ない。 なぜなら宇宙には最小の単位というものは存在せず、 また分岐の規定は観測者の規定のほかならず、 一つ分岐を認めると時間の最小単位にも影響されずに世界が無限に増殖を繰り返してしまう。 この場合の無限とは限りなく無限に近い数字ではなく本来の意味での無限。 再現なく世界は分裂のみを繰り返し機能を果たさない。 最初から世界は複数存在し、互いの世界は絶対に干渉をしないことを条件にしたとき、 複数の世界は存在する可能性を持つと仮定することもできる。 だがもし、互いの世界が干渉をわずかでも許した場合、 無数に存在する世界からの無限の情報介入によりその世界は崩壊してしまう。 この法則は宇宙法則よりも原則的な世界法則とも呼ぶべきものであり、 涼宮ハルヒの能力を使って、もしこのような事が行われたと仮定した場合にも、 影響を与えられた世界はその綻びから確実に崩壊へと導かれる。 この場合影響を与えられた世界とはあなたが呼び寄せられたと思っているこの世界。 この世界が崩壊していないということが、あなたが異世界間移行をしていない証拠に他ならない。 よって世界が複数存在していようといまいとあなたが異世界から来たということはありえない。 涼宮ハルヒはそのような能力を使用していないと推測される」 長門は単調なリズムで一気にまくしたててきた。 普段まったく口もきかないやつが、よくもまあこんなことばかり一度も噛まずに言えたもんだ。 下校時間も過ぎ、教室の外の音も一切聞こえなくなってくる。 窓に当たる風の音だけが教室の中に届いていた。 俺が異世界から来たのではないのならいったいどこから来たというのだ。 「今までの涼宮ハルヒの観測データによれば、 彼女の願望の実現には最も無理の無い方法が取られている ゆえに、世界は最初からこのように巡航していた。 だがあなただけがこの世界を正しく認識できずにいる。 だからあなたの記憶こそが間違い。 あなたの記憶を改竄し、異世界人として行動させる。 それが涼宮ハルヒの考えた最も自然なシナリオ」 そんなバカな…… 俺の考えや記憶が全て間違っていたというのか。 俺の知っているハルヒも長門も朝比奈さんも古泉だって、 そもそも存在していなかったというのか。 全てはハルヒの書いた小説のようなものだったというのか。 古泉の言う5分前に世界が作られた説よりもさらに信じがたいことだ。 今まで俺が一年間過ごしてきたあのSOS団での出来事や、 出会ってきた人物達の物語までも、 あれも何もかも全部俺の妄想だったっていうのか? そんなはずはない。 断じて言う。 俺の頭は至って正常なんだ。 「じゃあ、ハルヒが生み出している閉鎖空間はどうなるんだ。 あれが膨張して行ったら別の世界になるんだろ? ならもう一つの世界は存在するじゃないか。 それに現に一度そうなりそうになったんだろ? 宇宙だって新しく誕生したり消滅したりするらしいじゃないか。 同時にいくつかの世界が誕生しているとも考えられなくはないか? その中に偶然この世界と同じような進化を遂げた世界があってもおかしくはないんじゃないのか?」 「違う。 あなたはこの場合で言う異世界というものを正しく認識していない。 それに涼宮ハルヒが新しい世界を生み出したときにはこちらの世界はその新世界に上書きされる。 世界は二つ同時に存在できないから。 あなたの認識している異世界は異なる宇宙と考えられるもの。 それならば確かに理論上存在しなくはない。 だが、その異宇宙にしても同じこと。 互いに干渉はできないからこそ互いの宇宙は存在を維持できる。 だからこの宇宙から異宇宙を観測することは出来ない。 たしかに宇宙には誕生と死が存在するため互いの宇宙が干渉する可能性はありうる。 だが干渉したその瞬間にその宇宙は互いに死滅もしくは大きく変質する。 宇宙は矛盾を起こしても存在し続けるが世界は矛盾と共存できない。 そして世界には誕生も死も過去も未来も存在しない。 最初からただ存在するだけのもの 崩壊できないのに崩壊の法則を持ち込むことはできない」 難しい。わけがわからないよ長門。 こんな話は古泉に聞かせてやってくれ。 きっとものすごい勢いで食いついてくるから。 どうやらこの長門は俺を認めたくはないらしい。 異世界は存在しないとか言われても俺が存在するんだから存在するんだ。 それで何が悪い。 「だけど、ハルヒの能力はお前たちの親玉にもわからないものがあるんだろ? ハルヒの能力なら異世界超えしたっておかしくはないじゃないか。 あいつが望めばそれは叶うんだし」 「そう。 たしかにその可能性だけは否定できない。 涼宮ハルヒのもたらす情報は常にこの宇宙に新たな宇宙法則を生み出してきた。 それはもはや涼宮ハルヒ理論と呼ぶべき彼女のみに適用される法則。 彼女の理論を用いれば異世界の干渉や観測までもをいつの日にか可能にしてしまうかもしれない。 なぜなら涼宮ハルヒを伴った未来が常に不明な状態だから。 そして異世界観測の法則を生み出すことが出来れば無限の情報を得ることが出来る。 もし、それが可能になるのであれば我々の進化の可能性も大きく飛躍するであろう。 そのとき世界が消滅していなければが前提になる。 だがその可能性はきわめて低い。 なぜならその涼宮ハルヒ理論も最初から存在した宇宙理論の一つだと考えられるから。 宇宙の法則とはそもそも内包するその宇宙内での出来事に限られており、 涼宮ハルヒによって生み出された新たな法則も全てその宇宙内に限定された法則であリ続けるからだ。 ──結論は出た。 世界の改変が行われたわけでも無いのに、 あなたの認識が異世界を観測しているように感じるのは、 涼宮ハルヒが我々にも認識されない方法であなたの記憶を改竄したから。 それを再度改竄し、元のあなたへと戻す」 「ちょ、ちょっと待ってくれ。 それは俺の記憶を消すということか」 長門はこちらを見たまま何も答えない。 それは肯定と捕らえるべきだろう。 記憶を消す。 それは同時に俺という個性が消滅するということになる。 俺の記憶がなくなればそこから先俺の体だけがあってもそれは俺ではない。 朝倉も言っていた。 あなたはこちらの世界のあなたとは別人だと。 俺が明日から別人の人格で生きるのであれば、 それはまるで他人の脳を移植されているようなもの。 俺はそこにはいない。 死ぬことと同じことだ。 ゆっくりと長門の足がこちらへ向かってくる。 俺はというと……とっくに動けなくなっていた。周りの空間も閉じられていた。 またかよ! いったい何度この展開を繰り返せば気が済むのかね俺は。 バカだ……この世界の長門は俺の知る長門とは違う歴史を辿っていたのだ。 同じような信頼を寄せることなどできるはずがない。 もう残す希望は長門の良心だけだ。 そういうものがこの世界の長門に芽生えていればのことだが。 「やめてくれ長門……俺はまだ消えたくない。 それは俺を殺すことと同じことだ。 俺は死にたくない……」 「わたしには有機生命体の死の概念が理解できない」 ちがう! それは朝倉のセリフだろ! 勝手に奪うな! 「気に病むことは無い。この記憶も完全に無くなる。 全てが元に戻るだけのこと。 あの朝倉涼子と一緒の生活にあなたは幸福を感じていたはず」 長門は眼鏡を外し、投げ捨てるように上空に放り投げた。 何か呪文のようなものを唱えると眼鏡だったはずのものが、 空中で形を変え、長門の手に落ちたときには小さな注射器のような形になっていた。 その注射器を手に取り、俺の腕に突き刺そうとした、 その瞬間──。 突然空に亀裂が入り卵が割れるように大きなヒビを作ったと思った瞬間、 空間を塞いでいた壁が粉々に砕け散った。 あの閉鎖空間の終わる瞬間のスペクタクルの再現を思わせた。 この世界での俺の彼女、 朝倉涼子が現れた。 「待ってくれないかな。長門さん」 朝倉は長門の手にある注射器を素手で掴み取り、 反対の手で長門に巨大なナイフを突きつけていた。 長門はまさかここに朝倉が現れることなど予想もしていなかった様子である。 「なぜ? 彼を元に戻すことにはあなたも賛成のはず。 それにこの状態の彼は涼宮ハルヒに何をもたらすかわからない。 彼は涼宮ハルヒに自分の能力を自覚させようとまで企んでいた。 これを統合思念体は深く危惧した」 俺の考えまでバレバレ愉快か。 やっぱり長門は仮にも宇宙人なんだな。 「でもね、そのことが逆に進化の可能性を見出すことにも繋がるんじゃないかな? わたしはあまりに変化しない観測対象にそろそろ飽き飽きしてきたところなんだけど」 「統合思念体は現状の維持を望んでいる。 彼の行動が涼宮ハルヒにどんな影響を及ぼすのか予測できない」 「わかったわ。 だけどちょっとだけ待って。 彼を説得して涼宮ハルヒに何もしないようにすればいいんでしょ? 彼が涼宮ハルヒの能力に何らかの影響を受けているのであれば、 彼自身も重要な観測対象に他ならないわ。 もしこのままの状態で観測を続けられるならわたしは彼の記憶操作は無いほうがいいと思うの」 なんだ? この状態は。 俺は長門に消されようとしているところを朝倉に助けられているのか? 俺の知っていた世界の歴史とまるで反対だ。 しばらくのあいだ長門が何も無いじっと空間を見つめていたが、 やがて小さくうなずき、 「朝倉涼子が彼を常時監視の下、共に行動することを条件に、 彼を説得する許可が統合思念体より与えられた。 24時間だけ猶予を与える。 ただしそのときまでに彼の言動に変化が見られなかったり、 彼があなたの元から離れて単独行動を取ろうとした場合は強制的に記憶の改竄を行う」 ようするに明日までに腹を決めろというのか。 俺が元の世界に戻るのを諦めるようにと。 ……………。 ………。 ……。 …。 どっちにしても俺は元の世界に戻れないではないか。 「やっぱり今日はずっとお前と一緒にいないと駄目なのか」 「嫌ならいいけどそれじゃあすぐに長門さんに記憶を消されちゃうよ? さっきは長門さんが油断してたから情報閉鎖が甘かったけど、 次はかばってあげられる保障はないよ」 嫌がる俺の態度に対し、怒ったような表情を見せる朝倉。 だがその表情はなぜか少し嬉しそうだった。 一緒に連れてこられたのは朝倉のマンション。 つまりは長門と同じあのマンションについた。 初めて案内されて見る505号室の中は、 やはり朝倉のイメージ通り綺麗に片付けられていた。 だが長門の部屋と違い、その部屋にはきちんと生活感のあるものがいくつも並べられていた。 リビングにはテレビもあるし、食器棚、タンス、洋服ダンスなどどこの家庭にでもある普通の物であり、 それらは毎日使用されている形跡もある。 ベランダには洗濯物が干してあるし、 台所にある調理器具なども今朝使ってそれを乾かした状態で置かれている。 「じゃあ、その辺に座ってて。すぐ晩御飯のしたくするから」 朝倉はエプロンを取り出し、髪を後ろで束ねた。 朝倉のポニーテールは始めて見たな。 結構似合っている。 「あれ、キョンくんってポニー好きだったっけ? じゃあ、次からそうしようかな」 いや、そういう気遣いは結構ですから。 そうしてようやく話は冒頭のシーンに戻るのだった。 後編
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/993.html
レズに目覚めており、長門と結婚したがっている。 序盤でアカギと遭遇しお互いの目的のために一緒に行動する。 長門の中の人を感知する能力がある。 カオスロワ5thでの朝倉さんは「ボケ」な面が強調されており、 原作や他のパロロワでの雰囲気がぶち壊しになっている。俗に言う「ダメな朝倉さん」 情報操作のほかに朝倉のキャラソンの空耳に関連した必殺技がある。 「俺…この戦いが終わったら結婚するんだ…」というのは有名な死亡フラグ。 だが、それなら戦いの中結婚してしまおうということで、殺し合いの中消失長門と結婚式を挙げる。 長門と恋愛フラグを立てつつ何とか生き延び、パロロワのジンクスをぶち壊した。 くされ外道のかがみと同じくレズなのに道を踏み外しておらず自重している。 これがクズとの格の違い。
https://w.atwiki.jp/animeiku/pages/127.html
長門、確かに黄緑の水着似合ってなかった。ソフエレもいけそう。 ハルヒとみくるがキューフレは納得。 朝倉→ソフエレ 鶴屋さん→キューフレorトロヘル 妹→キューフレ かなあ。元気系アニメキャラはやっぱイエベ春多いね。 朝倉メイク ベースはセミマット。チークは入れないか、白ピンク。 アイラインは黒いペンシルで引き、しっかりぼかす。長く、ダマのない簾睫毛。 ポイントはやはり眉毛。気合い入れる。 リップはイチゴミルクのようなピンク(のイメージ) あとはいい匂いをさせること。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1473.html
正直にいうと朝倉のシチューはかなりうまかった。 長門とは違い、こいつは自炊がかなり慣れている様子だった。 シチューを食べた終えた後、俺が皿を運ぼうとすると朝倉が必死になってそれを制止した。 俺が洗うといっても「いいから座ってて」といって朝倉は無理やり俺をテーブルの前に座らせた。 テレビをつけると俺がいつも見ている番組がいつもと同じようにくだらない内容を映し出していた。 世界が変わっても大きく変化しているのはハルヒの周辺だけなのだろうか。 朝倉が洗い物を終えて向かいの席についた。 俺がこれから何かを話しはじめるということを知っているかのようなそぶりである。 俺はテレビを消して朝倉に自分の世界での出来事を説明した。 ハルヒとの出会いから、SOS団のこと。 ハルヒの起こしたさまざまな事件のこと。 長門のことや、朝比奈さんのこと、古泉のことや、鶴屋さんやその他大勢に至るまで、 全ての関係者の行動や特徴まで事細かに説明した。 朝倉に殺されそうになった話だけは少しボカして突然異常動作を起こして、 長門のお叱りを受け、カナダに転校したとだけ伝えた。 当の本人を目の前真実をいうのは恐ろしすぎて口が止まったのだ。 またここであの異常動作を実現されても困るからな。 よく考えるとその嘘は誰にでもわかる変な話であり、 朝倉ならとっくに見抜けると思えるものであったが、朝倉は何も聞いてはこなかった。 俺の話はずいぶんと長い話になったが朝倉はその話を黙って全てを聞いていた。 その上で俺はこの世界でどうしても聞きたかったことを朝倉に聞いた。 「俺は本当に異世界人で合ってるのか?」 「そうよ。長門さんには否定されちゃってるみたいだけど、 わたしはそう考えるわ」 「どういう根拠だ?」 「あなたがその世界を強く信じているから。 あなたがあると思った瞬間からその世界は存在するの。 そして信じるあなたが存在するからその世界は存在できる。 デカルトも言ったでしょ? 自分がいると考えているから自分がいるって。 想像にはその存在を証明する力があるの」 ずいぶん前似たような話を古泉から聞かされたな。 宇宙は観測する者のためにあると。 誰にも知られることのない宇宙は存在しないことも同義だと。 「それからわたしの理論は正しい一つの意見だけど 長門さんの理論も間違ってはいないわ」 「でもそれじゃあ矛盾しないか? お前の意見と長門の意見は全く正反対の理論だ」 「ううん。それでいいの。 そもそも長門さんの意見にも大きな矛盾は含まれているもの。 あなたの記憶が改竄されているとしたら どんなに微小な改竄でもその改変の痕跡が残る。 それなのにわたしたちがそれを発見することが出来ない。 あなたがわたしたちに認識できない方法で改変されたのでは、 やはりわたしたち自身の記憶も改竄されてしまったことになる。 全ての情報を統括するための存在なのに、 知らない情報が無数に存在することになってしまうから。 長門さんの意見にも矛盾があって、わたしの意見にも矛盾がある。 だからお互いの理論は相反するものでありながら互いに正しい。 パラドックスね。 まあ、長門さんにとってそのほうが複数の世界を認めるよりも小さい矛盾ですむと考えたのね」 もしかしたら長門たちの情報統括の親玉はそんな矛盾を抱えた存在が許せなかったのではないか。 だから俺の記憶の改変を急ごうとする。 そんなに全てのことを知りたくて仕方が無い生命体なのか? 情報統合思念体ってやつは。 「世界はそもそも大きな1つの矛盾を抱えているの。 それは存在するということの矛盾。 世界はそもそも存在しないという理論の方が矛盾が少なくてすむの」 存在しない方が矛盾が少ないだって? 意味がわからん。 「あなたにはちょっと難しすぎたかもね。 宇宙の存在の証明だって1つではないの。 いくつもの証明方法があるわ。 そしてそれは全て正しいものなの。 あらゆる方向から世界は観測できる。 涼宮さんの理論を使えば現象の後からだってそれに対する理論が成り立つはずなのよ。 新世界の成り立ちも理論さえ確立すればその瞬間に世界はすでに成立していたことになる。 長門さんとは違う結論だけどわたしはそう考えるの」 なんかこの朝倉が頼もしくなってきた。 長門の説明よりはいくらか理解できたし、 この世界に来て初めて人に信じてもらえたような気がする。 そろそろこの朝倉を信頼してもいいような気になってきた。 少なくとも俺がこの朝倉のいる世界のことを信じなければ 俺は誰にも俺の世界のことも信じてもらえないからだ。 「この世界での出来事で何か聞きたいこととかある?」 この世界のことはわからないことだらけだ。 聞きたいことは山ほどあった。 「この世界の俺はこれらのことを何にも知らなかったというんだな。 朝倉の正体が宇宙人だったり、ハルヒに変な力があったりすることも」 「ええ、そうよ。 この世界のあなたはSOS団のメンバーが本当はどんな人間かはほとんど知らないし、 涼宮さんに関する事件にも直接は関係していないの」 「じゃあ俺がハルヒと二人きりで閉鎖空間に閉じ込められたとき、 どうやってあの世界から脱出できたというんだ。ハルヒ一人で戻ってきたのか?」 あんまり思い出したくない光景だ。 まるで夢のような世界だったが、長門はあの現象を知っている。 だから夢ではないはずだ。 朝倉だって同じ現象を観測できるはずだ。 「そんなことは起こらなかったわ」 「そんなはずがあるか! ハルヒは去年の5月ごろずっと憂鬱でついには閉鎖空間を作って世界を再構築しようとしたんだ!」 「たぶん……あのときのことね。 古泉くんと涼宮さんが一緒に閉鎖空間に取り残された。 あのときは古泉くんが彼女をこの世界に取り戻してくれたわ。 そのすぐ後から今まで涼宮さんと古泉くんの交際が続いているの」 ハルヒと古泉が付き合ってるだって? そんなおかしな世界があるか。 あのハルヒがまともに男と付き合っていっぱしの高校生らしく振舞うなんてあってはならないことだ。 いや……俺もハルヒに会ったばかりの頃、ハルヒに言ったことがあった。 どこかでかっこいい男でも捕まえで一緒に映画見たり遊園地で遊んだりお茶を飲んだりしてみてはどうかと。 でもその相手にあのニヤケ面古泉だと? ハルヒの趣味がおかしくなったとしか思えん。 ハンサム以外に他に何のとりえがあるってんだ。 ちょっとくらい俺よりも頭がよくて、運動が出来て女にモテるくらいじゃねえか。 …………あと超能力が使えるってことくらいだっけ。 たいしたことねえよ! まあ、ある意味超能力者と付き合ってるんだからハルヒの望みは叶ってるといえるが……。 ある意味お似合いか? うーん……美男美女の組み合わせと周りは見るのかもしれんが……。 「でも古泉はハルヒには自分の能力を隠したままだろ? それじゃあ、ハルヒを裏切ってるようなことにはならないのか?」 「うーん、それはそうね。 これはわたしにも言えた事だから全く言い訳できないわね」 朝倉はごめんね。と小さく舌を出した。 騙されるなよこんなかわいい笑顔に。 この世界の俺はアホか。 「いや、まだおかしい…… その後七夕のとき、俺は三年前に遡ってハルヒが白線を引くのを手伝ったんだ。 昼間のハルヒは知らないって言ってたが、絶対そんなはずはないんだ。 あれだっていわゆる規定事項のはずだ。」 「それはないはずだわ。あなたが過去に遡った形跡は一度も無いもの」 「じゃあ、長門のエラーはどうなってる? 12月18日のあの日、世界は完全に入れ替えられてお前らの親玉だって消滅したはずだ。 あのとき記憶を残された人間は俺だけ……。 三年前……いや、今からだと四年前になる七夕のときの記憶を頼りにハルヒを動かしたんだ。 世界を元に戻すのには俺の介入が必要だったはずだ」 「長門さんの異常動作はこの世界でも起きたわ。 そっちと全く同じ12月18日にね。 長門さんによって時空改変が行われ、世界が塗り替えられたの。 なぜかあなた以外の全ての世界がね」 ほらみろ! やっぱり俺が関わっている。 あのとき俺がいなければ世界はあのまま長門の作った世界に変貌したはずなんだ。 この世界はやっぱり少しどこかおかしいだろ。 「あのとき長門さんは蓄積された膨大なエラーが引き金となってバグを引き起こしたの。 でもそういうときのためにわたしがいるから。 長門さんは自分がそうなることに気づいていたからわたしというバックアップを作ったのよ。 長門さんから送られてくるデータの異常から事前にエラーに気づいたわたしは 長門さんの異常動作を完全に予測できた。 世界改変の行われた2秒後に長門さんへ修正プログラムを打ち込んだわ。 もちろん、世界改変に巻き込まれないように対情報操作用遮蔽スクリーンと防護フィールドを使ったけど」 そんなあっさりと……たったの2秒ですか? ああなるほど、俺の世界には朝倉がいないからあんなことになったのか……。 あんなに苦労した俺の努力もこの世界では朝倉がいたことでいとも簡単に解決していたというのか……。 「ハルヒの提案で野球大会に出たことはあったか?」 「ええ、だいぶ前になるけどあなたもわたしも一緒に出たわ」 「じゃあ、あのとき4番に座っていたのは俺か?」 「いいえ、あれは古泉くんね。ちょっとずるしちゃったけど試合にはなんとか勝てたわ」 「夏休みの無限ループはどうやって乗り越えたんだ?」 「そんな現象は過去に一度も観測されて無いわ」 「そんなはずは……長門にも観測できたんだからお前が観測できないはずはないと思うんだが…… じゃあ、俺の夏休みの宿題はいつやったんだ……? 終わらせることができたとは思えないんだが」 「んもう……本当に何も知らないのね。呆れちゃうわ。 わたしがあなたに勉強を教えながら過ごした夏休みまでなかったことにされちゃってるのね」 「映画は……撮ったよな? 文化祭のときのヤツだ。 あのときの主演は誰と誰だ?」 くすっと笑って朝倉はそっぽを向いた。 「やだもう……あんなこと思い出させないでよ」 「ふざけないで教えろ」 「ちょ、ちょっと……そんなに怖い顔しないでよ。 ……これはあなたにとってあまりいい思い出じゃないって言ってたのになあ……」 「そんなことは表向きだけだ。 今となってはきっといい思い出だ。だからどんな内容だったか教えてくれ」 「主演はわたしとあなたよ。 涼宮さんは監督で、自分や古泉くんが出演するのは嫌だったみたい。 学園恋愛SFバトル映画って言ってもわかるかしら? 詳しい内容が見たければあとで涼宮さんに見せてもらえばいいわ。 朝倉リョウコの冒険エピソード00ってタイトル。 ……今年も続編撮るとか言われたらちょっとやだなぁ」 困った顔で少し頬を赤く染めた美少女の姿は完全に乙女の恥じらいを演出していた。 ハルヒいわく、いわゆる一つの萌え要素なんだろうが俺はちっとも萌えなかった。 もしかしたらこの宇宙人製のアンドロイドにも本気で恥ずかしいという感情が芽生えているのかもしれないが、 朝倉はあの冷酷な態度が本来の姿のはずだ。 俺の脳裏にはあの姿がこびり付いて離れない。 「雪山で遭難したことは……」 「遭難なんてしてないわ。 雪山にはスキーしに行ったけど。あなたと二人で。 別に何もおかしなことは起きなかったわ。 あ……ほんとよ! 何もおかしなことはしてないんだからね!」 なぜか朝倉が顔を真っ赤に染めていた。 いや、いまさらそんな演技は見たくないんだが。 「ハルヒは雪山に行かなかったのか?」 「涼宮さんは古泉くんと二人で行ったわ。 でも遭難なんてしてないわ。危険なことが起きないように一応わたしたちも外から監視していたしね」 そうか、あのとき俺たちが巻き込まれた雪山は長門も一緒にいたから逆に脱出できなかったんだ。 もし長門が外から監視していればすぐに異常に気づいて助け出すことができたはず。 そこまで読みあった末に長門たちの敵性宇宙人どもは雪山では遭難させないという選択肢にたどり着いたわけか。 「でも未来の改変のために朝比奈さんに連れまわされた人物はいないのか? 亀を川に放り込んだり、空き缶を地面に固定したりした人物がいないとおかしいだろ。 それがないと朝比奈さんのいるはずの未来がないことになってしまうはずなんだが」 「朝比奈さんの時間移行に関することは全部古泉くんが一緒にやってたわ。 わたしには比較的どうでもいいことだからそれ以上のことはあまり観察していないわ」 「じゃあ鶴屋さんの庭から出てきた地図で宝探しするのも……」 「それも最初に古泉くんと朝比奈さんで掘ってからまた掘ったわ。 あなたも一緒に6人で行ったわ。 予定通り何も出なかったけどあなたもそれなりに楽しんでたわよ」 そうかその宝探しは結果を知らずにやったのか。 それならそんなにつまらなくはなかったのかもしれない。 「ハルヒ主導で会誌を作ったり……」 「ええ、作ったわ。あなたも涼宮さんに小説を書かされていたわよ」 「どんな内容だった?」 「恋愛小説を書いてたわ」 「どんな内容だった? 恋愛小説とは呼べないようなものではなかったんじゃないか?」 「えーっと……これすごく言いにくいんだけど……言ってもいいのかな?」 「言ってくれ。どうせ書いたのはこの俺じゃない」 「わたしたちの実話ラブコメディー」 勘弁してくれ。 もし目の前にどこでもドアがあったらインドで飢えたオオカミの親子に体を捧げて死にたい。 「もしかしてその中で語られていた内容って俺たちが付き合い始めたきっかけが書いてあったりとか?」 「うふふ、だんだんわかってきたじゃない。 放課後の教室にわたしが呼び出して告白したわ。 下駄箱に手紙を入れるなんてベタな手法だったけどね。 あなたは結構こういう風に告白されるのが好きそうだったから……」 ああ……あのとき本当に告白される可能性もあったのか。 俺も告白されてたらどうしてただろう。 やっぱりオッケーしてたんだろうな。 この世界の俺のように。 孤島ミステリーツアーや、カマドウマとの対決やら、クリスマスパーティーやら、 コンピ研との勝負やら、阪中のペットの病気など、 他にもいろいろなエピソードはありそうだがそれらはあまり世界の進行に影響は無いだろう。 結局俺の関係ないところでうまく話が進んでいるに違いない。 「もういい。わかった。十分すぎた。ああもう聞くんじゃなかったよホントに。 最後の質問だ。 これが否定されたらこの世界のには俺の居場所が無いということだ。 ハルヒがSOS団を作ろうと思ったきっかけはなんだ。 あいつは一人では部活を作るということは思いつかなかったはずだ」 「わたしは4月からずっと涼宮さんに話しかけていたの。 クラスに溶け込めないといじめられちゃうかもしれないって思ったから。 それである日涼宮さんが何かいい部活がないかなって言うわけ。 そんなにいい部活に無いんだったら作ってみればいいんじゃない? ってわたしが提案したの。 涼宮さんったらすぐにそれに飛びついてきたわ。 でもそれでわたしも強制的にSOS団に入れられて……大変だったんだからね。 だからあなたはSOS団には入っていないわ。 あなたは涼宮さんに関わりたがらなかったし、 涼宮さんもあなたを団員にしたいと思う気持ちはなかったみたい」 お前がSOS団員その1かよ…… 世界は俺がいなくても大丈夫でした。 結局世界はなるようにしかならないのか、SOS団も無事に成立していたというわけか。 俺はせいぜいSOS団の準団員程度の扱いか。 俺がガックリとうなだれているのを見て何か同情のようなものを感じたか、 しばらくの沈黙の後、朝倉は俺の隣に寄り添って座りながら話しかけてきた。 「どうやらあなたのいた世界とこの世界とは最初の涼宮さんの行動付近から分岐した世界のようね」 「最初のというと?」 そういいながら俺は朝倉とまた少し距離を置く。 「この世界の涼宮さんは一年の自己紹介のとき異世界人を望まなかった。 おそらくここが一番最初の相違点だもの。 少なくともその少し前くらいまでね。 この世界のあなたはその涼宮さんに話しかけることはなかったわ。 少し彼女を意識しているような様子はあったけど、あの自己紹介を聞いて引いちゃったのね。 結局最後まで涼宮さんに自分から話しかけることはなかったわ。 あなたはわたしに涼宮さんのことを苦手にしているって漏らしていたもの」 「分岐した時点が入学式の日だって? それではおかしくないか? 俺はその三年前の七夕の日に二回も戻ったりしてるんだぞ? この世界の歴史ではそれはなかったことになってるじゃないか」 「だけどそれはあなたが涼宮さんに会った後に塗り替えた世界だから。 それ以前のあなたの世界の歴史は今のこの世界の通り進んでいたはずよ。 時間を遡って改変されたとしても、 最初は改変されていない世界を通らないといけないからね。 まあ、分岐した地点はこの際あまり重要では無いわ。 分岐してしまったものを元に戻すことは出来ないから」 想像もしていなかった。 あのときハルヒに声をかけなければと少しは考えた事もあったが、 まさかこのような形で実現するとは思いもよらなかった。 これが正しい世界の歴史だとでもいうのだろうか。 「俺がこの世界に来ているとすれば、元々この世界にいた俺は今どうなっているんだ?」 「……それは正しくはわからないわね。 あなたのいた世界に行っているのか、それともまた別の世界にいるのか。 とにかくこの世界にはいなくなっているみたいだから、 異世界に行っているか一時的に消失しているかと考えるのが普通ね。 だから今は彼を観測することは出来ないの」 今の状況がだいたい読めてきた。 今頼れるのはこいつしかないらしい。 イチかバチかだがこいつに掛けるしかない。 朝倉の方に向き直って真剣に話しかけた。 「なあ、朝倉。やっぱり元の世界に戻る方法はないのか? どんな難しい方法でもやってみる。 実をいうと俺はまだ元の世界が諦めきれないんだ」 「うーん、全く無くはないんだけどね……」 「本当か!?」 あるならなぜそれをさせてくれないんだ? 長門だって気づいていたはずだ。なぜ教えてくれないんだ。 「でも涼宮さんを使うしかないわ。 彼女の能力なくして異世界間移行は起こりえないもの。 でもあなたは今日涼宮さんに変な干渉をしようとした。 そのおかげで長門さんに目をつけられているから明日は下手なことは言えないわ」 そうか……もっと早くこの朝倉を信じていればこんなことにはならなかったのかもな。 「具体的にどんな方法なんだそれは」 「この世界の涼宮さんが異世界人を望んだからあなたが来た。 彼女が異世界人を望まなくなればきっとあなたは元の世界に戻れるはず。 だから彼女に異世界人を諦めてもらうように説得するの。わたしと一緒にが条件だけど」 「そ、そんな単純なことでいいのか?」 「ええ、きっと。涼宮さんの気持ちを変えるのは簡単だとは思えないけどね。 あなたが元に戻ればこちらの世界のあなたもおそらく元に戻る。 これも全宇宙の情報量保存の法則。 こちらの世界のから見るとあなたが急に記憶を取り戻したようにしか見えないけど」 「でもどうして元の世界に戻れるとわかるんだ? 別の世界に飛ばされることは無いのか?」 「あなたはきっと元の世界の涼宮さんに望まれた存在だから。 あなたがいなければその世界の涼宮さんはとても困るはず」 朝倉は俺とハルヒの間に何かを感じ取っていた。 この世界では俺とハルヒはほとんど話もしたことがないはずなのに。 「じゃあ、望まれた存在のはずの俺がなぜ今すぐ元に戻れないんだ?」 「こっちの世界の涼宮さんもそれだけ凄まじい能力を持っているからよ。 もしかしたらこっちの世界の涼宮さんの方が少しだけ強く願望を持っているのかもしれないわね。 あなたの世界には異世界人ってまだ来てないんじゃないの?」 そういえばそうだった。 俺の知ってるハルヒは宇宙人や未来人や超能力者やらを見事に集めていたが、 それで満足したのか結局異世界人の希望はなかったかのようにうやむやにされている。 「それとも、あなたは元の世界でも、こっちの世界でも異世界人なのかな? そうだとしてもわたしたちには区別できないけどね」 頼むからややこしい話をこれ以上増やさないでくれ。 「わたしはこっちの世界の方がずっと正しい姿に思えるんだけどなぁ…… あなたの世界の話を聞いてると呆れちゃうもの。 だって世界が何度も崩壊の危機に面してる。 あなたのような普通の人間に全てを託している世界なんて変よ。 こっちの世界の方がずっとうまくやってるわ」 そうなのだ。 俺はこっちの世界のような生き方しか出来ないはずの人間だったのだ。 それにこの朝倉まで彼女にしてしまっているのだから 俺の人生にしてはめちゃくちゃうまくいってるといわざるを得ない。 たしかにSOS団の中で俺だけが普通の人間というのはおかしすぎる。 朝倉が団員の方がまだ不思議じゃない。 「もうそろそろ12時だけどもう今夜は寝る?」 そうだな……俺はもう疲れた。 「その前にお風呂入って汗を流さないとね。 一人で入る? それとも……」 一人で入るに決まってるだろ! そんなことまでしてたんかこいつらは! 「じゃあ、あなたがお風呂に入ってる間にお布団しいて置くわね。 で、お布団は……やっぱり二つ敷いたほうがいいよね?」 当たり前だろ! それと別の部屋に敷いてくれよ。 なんだったら俺は玄関で寝てもいいから。 「うふふっ。やっぱりあなたの反応って面白いわ」 俺は洋室の方に、朝倉はリビングを挟んだ和室の方に寝た。 この朝倉は意外なほどいいやつだった。 少しもったいないことをしたような気がする 次の日、俺は朝倉と一緒に登校した。 クラスのみんなは俺たちが仲直りしたと認識したのか、 平和な空気そのものであった。 朝倉は一日中俺と行動を共にしてきた。 トイレに行くときも一緒についてきた。 さすがにトイレの中まではこなかったが。 昼休みももちろん同じであった。 「はい、あーん」 もぐもぐごくん。 「おいしい?」 うまい。さすがだ。 「なあ、朝倉。俺たちは本当に普段からこんなことをしていたのか?」 「ええ、そうよ。長門さんの監視を油断させるためにも今だけは普段どおりのあなたを演出して。 ほら、今度はわたしの番よ」 ほら、あーん。 ……それにしてもかなり周りからジロジロ見られてるのが気になる。 いまどき高校生でこんなべたべたなカップルがいるか普通? そして放課後──。 誰もいなくなった教室で俺は朝倉と二人取り残されていた。 俺はガックリとうなだれて、言葉を発することも出来なかった。 「どれも駄目ったわね。 涼宮さんももう帰っちゃったし」 俺はこの世界に完全に絶望していた。 ハルヒには休み時間のたびに異世界人を望まないように説得を試みたが、 ハルヒは聞く耳を持たなかった。 隣にいた朝倉も『物理法則的に異世界なんてありえないわよ』なんてフォローを入れてくれたが、 逆にハルヒは意固地になり、 「何よ! 絶対見つけてやるんだから! 今度の日曜は9時に駅前に集合よ! 久々に不思議探索するわよ! 異世界人探しよ! いいわね、涼子!」 と鼻息を荒げていた。 火に油だったようだ。 これでは何も意味を成さない。 ハルヒの彼氏古泉も完全にハルヒ贔屓だった。 俺が古泉の正体を知っていると聞かせると、 隣にいる朝倉の方に疑いの目をかけていたようで、 「ふう、ついにバラしてしまったようですね。 そうです。僕は超能力者ですよ。 その宇宙人の朝倉さんに聞いたとおりでしょうとも」 などと言って鼻にかけない。 異世界の存在については「それは面白そうな話ですね」と言って興味を示したが、 俺のことを異世界人だとは最後まで信じてくれなかった。 いや、理解はしていたのかもしれないが、 異世界をハルヒが望むならそれはそのままのほうがいいと古泉は主張を貫き通した。 この世界の古泉はついに俺とは友人関係を結ぶことはなかったらしい。 朝比奈さんはこの世界でもハルヒにとってはただのコスプレ要員だった。 この世界でも重力法則に反するほどの立派なお乳を持っておられた。 それだけだ。 「ねえ、この世界で今の記憶を持ったまま生きていくのと、 新しい記憶で、もしかしたらちょっぴり嫌なことがあるかもしれないけど普通の生活を続けていくの。 どっちがいい?」 朝倉が心配そうな表情で俺の顔を覗いている。 その姿は本当に恋人のことを思う健気な美少女の姿であった。 『ちょっぴり嫌なこと』というのはどういう意味かはわからないが、 朝倉は人間ではない。 そのことを知らないで生きていくのは最後になにか恐ろしいことが待っているような気がする。 「わたしは別にどっちでもいいわ。 あなたが望むならわたしを嫌いなままのあなたでもいい。 わたしは努力するけど……どうしても好きになれないなら別れてもいいわ。 でもどちらかを選ばなくてはいけないの。 記憶を消されるか。その世界の記憶を引きずって生きるか」 「俺は……」 俺はどうなんだ? どっちを選びたいんだ? 記憶を消してなんだかんだいって結構可愛い彼女を持った幸せ者の人生を歩むのか? さらに朝倉は記憶を消さなくてもいいとまで言ってる。 この世界の朝倉は俺の知る朝倉とは別人で俺に危害を加える可能性は全く無いと言ってもいい。 朝倉と付き合ってみてどうしても好きになれなかったら別れてもいいとまで言ってくれている。 でも選択肢は2つしかないのかよ。 いや、違う。 2つなんかじゃない。 俺はあのとき世界に一人だけ取り残され、 ハルヒも長門も朝比奈さんも古泉も普通に人間に戻っちまった世界で、 元に戻りたいと願ったじゃねえか。 俺はあの世界に取り残されたとき、 脱出プログラムのエンターキーを押したじゃねえか。 それも何の迷いもなくよ。 あれはいったいなんだった。 俺はあのときから誓ったんだ。 何があってもSOS団の一員としてあの世界に居続けると! 俺は朝倉に向かって深く頭を下げた。 「これからハルヒを探して全てを話してくる。 残された時間の限りハルヒに掛けてみたい。 俺はもう、こういうときは絶対に迷わないって前から決めていたんだ」 朝倉の顔が暗くなった。 「うん、それ無理」 急に外から入る太陽の日差しがなくなり、 蛍光灯だけのついたボンヤリとした景色になる。 教室の扉はコンクリートで塗り固められたようなただの壁になっていた。 「この世界を変えることだけは絶対に許されないの」 朝倉にこの手を使われることはなんとなく予想できていた。 「この部屋の物質情報を変化させたわ。 この空間は完全にわたしの情報制御下に入った。 いかなる力もわたしの許可なくして干渉を許さない」 「朝倉、頼む。ハルヒに会わせてくれ。 お前ならここからハルヒの元へ俺を転送することも可能だろ。 お前の彼氏でもなんでもない俺がこんなことを言うのはふざけてると思うかもしれない。 でも俺は本気なんだ。 たとえお前に殺されるとしても俺は向こうの世界で殺されなくてはいけないんだ」 だが、朝倉の答えは意外なものであった。 「……涼宮さんには会えるわ。 元の世界の涼宮さんにね」 朝倉がニッコリと満面の笑みで俺に微笑み返すと、 両手をあげ空中で何か手を揉むような仕草を始めた。 「涼宮ハルヒの意識と記憶を改竄し、 新学期の最初の日に彼女が異世界人を望まなかったようにする。 そうすればこの世界はまた新学期の日から通常の軌跡に戻り、 あなたも元の世界に戻る」 おい、本当かよ。 朝倉さん。あんたすげーよ。 初めてお前に心が奪われそうになったぜ。 「わたしも記憶を改竄されたあなたではなく、 元に戻った本当のキョンくんに会いたいもの」 突然バリッとコンクリートにヒビが入るような音がして、空中に青い光の筋が見えた。 ベリベリと青い光の亀裂が広がり、大きな爆発音とともに空間が切り開かれた。 「あーあ、やっぱり見つかっちゃったかぁ」 眼鏡をかけた長門が空中から飛び込んできた。 「朝倉涼子。あなたはここでいったい何をしようとしている」 「見てわからない? 涼宮ハルヒの意識を少し情報操作するだけ。 この世界を元の姿に戻すのよ。 現状維持の原則に従っているわ」 「あなたにそのような行動は許可されていない。 涼宮ハルヒの能力の解析はいまだ不完全なまま。 彼女の意識の改竄は全宇宙の物理法則に大きな異常をきたす危険がある。 ただちにやめるべき」 眼鏡の奥にある長門の目線が朝倉を強く非難している。 朝倉は両手を下ろし、俺の方をちらりと見た。 「彼を元の世界に戻すにはこの方法しかないの」 「それならば彼の記憶を改竄すればいいだけのこと。 どちらの方法を取っても彼にとっては全く同じ結果を生むことになる。 ならば危険を犯してまでも涼宮ハルヒを操作する必要は無い。 彼女の改竄と彼の改竄ではあまりにその価値が違いすぎる」 「それでは彼は元の世界に戻れなくなるわ。 それに記憶の改竄を行ってもそれは本当の彼ではないの。 あなただって一度涼宮ハルヒの力を使ってたじゃない。 それに比べれば越権行為とは言いがたいんじゃないかな」 「彼の異常が涼宮ハルヒが異世界人の存在を望んだことに発する可能性は認める。 だがわたしの結論は変わらない。 もう一つの世界などというものは存在しない。 彼は病気により精神を錯乱し記憶に障害が発生している。 偶然変質した記憶がこの世界の機密情報と酷似し、 別の世界から来た様に感じているだけに過ぎない。 わたしの指示に従え。さもなくば情報連結を解除する」 「いやだと言ったら?」 朝倉がニッコリと微笑むと同時に、 凄まじいまでの爆音とともに壮絶な雷と爆風が二人の間で巻き上がった。 二人の口元が高速で振動している。 言葉とも音とも取れない何か呪文のようなものが唱えられると、 教室にあった机や椅子や黒板までもが変形し、槍のような形になって 二人の間の空中で衝突しあう。 俺はその場で座り込んでただじっと二人の戦いの行方を見守るしかなかった。 動きたくても腰が抜けたようになって動けるわけがなかったのだ。 どうやら展開は朝倉に有利に進んでいるらしい。 長門の攻撃は何度か朝倉に当たってはいたものの、 その何十倍もの攻撃が長門に命中していた。 「ふふ、長門さん。あなたの力もこの空間ではわたしには勝てないわ。 でもあなたはこの世界に置いてはわたしと同じく涼宮ハルヒの鍵となる存在。 大丈夫。わたしはあなたを殺したりしないわ。 だから今は黙ってこの改変を見逃して。ね?」 殺さないと言いつつ、次々に教室の机や椅子が形を変えて暴れ続け長門を右に左に吹き飛ばしていた。 普通の人間ならとっくに死んでいるような攻撃だ。 長門の眼鏡が床に叩きつけられてレンズが飛び散る。 あの長門がいたぶられている姿は見ていてあまり気分のいいものではない。 長門はそれでも抵抗をやめようとはしない。 すぐに立ち上がり槍のような物質を生み出すと朝倉に向かって投げつけた。 朝倉の前に青い稲妻が光り、長門の投げつけた槍は全て床にはじき落とされる。 「それだけのダメージを受けたら他の情報に干渉する余裕はないでしょ? 無駄なの。ねえ諦めてよ。結果はどうせ同じことになるんだしさあ」 朝倉は余裕の表情だ。 だが、この場面は前に見たときとよく似ている。 二人はあのときとほとんど同じ動きだったのだ。 なぜか俺は朝倉に味方しなければいけないような気になった。 本当になぜかはわからない。 単純に俺が助かりたかっただけなのかもしれないが。 「朝倉! 長門はきっとこの空間に入る前にお前を消すための仕込みをしているはずだ! よくわからないが崩壊因子がどうたらというもので……このままではお前は負ける!」 「なぜそれを……」 長門の目がこちらを驚いたように見ている。 長門が瞬時に体を捻りこちらを向いた。 「攻勢情報の変更を申請する。ただちに彼の記憶情報の改竄を行う」 長門の腕が弾性のある棒のようなものに変化して幾多にも枝分かれし始めた。 その先端に小さな針のようなものが無数に飛び出している。 それはまるで注射器のついた巨大なところてんのようであった。 それが全部俺の元へと向かって放たれた。 駄目だ。 これは避けられるとかのレベルではない。 音よりも早くこちらに向かってくるそれがなぜか肉眼で見えていることの方が不思議であった。 目の前の映像が全てスローモーションになっていた。 死ぬ。いや、死ぬわけじゃないんだろうが俺という個性はここで消滅するんだろう。 それは死と同じ意味だ。 壮絶な爆音とともに何かが飛び散るような音が聞こえる。 音よりも早いそれが衝突したはずなのになぜか音がする。 目を開けると…… ──朝倉が俺の目の前にいた。 長門の攻撃を全部受け止めて。 朝倉の背中に突き刺さった長門の腕は朝倉の腹を突き破り俺の目の前で止まっていた。 朝倉の足元には巨大な赤い水溜りができていたが、 なぜか朝倉はこの状況でニッコリと無邪気に微笑んだ。 「終わった」「終わったわ」 長門と朝倉がほぼ同時につぶやいた。 二人はもう攻撃の手を止め、その場に立ち尽くしていた。 長門の長く延びた腕も元に戻り、 朝倉の怪我も最初からなかったかのように足元の血の池ごと消えていた。 二人はしばらくその場に立ち尽くしたまま何の言葉も発しなかった。 どちらの勝利かはわからない。 だが、長門の口元が1ミリくらい動き少しだけ悔しそうな表情を見せていた。 「長門さん、ごめんね。 でもあなたもわたしもきっとこれで元に戻るだけ。 たぶん大丈夫よ。涼宮さんの変化も微小なもので済むわ」 「朝倉涼子。あなたの行動についてはこれから情報統合思念体の中で処分を検討していく」 「無事に三日前のわたしたちに戻れたら何でも好きなもの作ってあげるから。ね?」 「あ」 「どうしたの?」 「眼鏡の再構成を忘れた」 その後しばらくその場にいる全員の動きが止まっていたが一瞬長門が何かを考えるようにうつむいてから、 「戻ったら──」 「なに?」 「カレーを」 と答えた。 ──キンッ 静けさに包まれた教室に突然金属の折れるような音が空間に響き渡ったと思ったら、 さっきまでコンクリートの壁だったものが輝く白い粉となって崩れ始めていた。 朝倉の体からもゆっくりとキラキラとした粉のようなものが流れるように落ちていった。 「あっちの世界の朝倉涼子にあったらよろしく伝えておいてね。 向こうではわたしたちは付き合っていないみたいだけど、 あっちでも……」 一気に辺りの景色が全てモノトーンになった。 「朝倉!!」 ものすごいスピードで灰色の部分が白く染まっていき、 周りの物体との臨界線が黒く細い線で映し出される。 光の渦が目の前の一点から放出されている。 いや、吸収されているのかもしれない。 白と黒の世界は次第に白さを増していき、周りの音をどんどんと吸収していく。 「涼子って……」 全ての音が消え、最後の瞬間かすかに朝倉の声だけが聞こえたように感じた。 世界が完全に白く染まり境目の消えたと同時に目の前の世界が漆黒に包まれた。 気づいたらいつのまにか目を瞑っていた。 そして目を開けると─── そこは自分の部屋のベッドの上だった。 窓から明るい日差しが差し込んでいる。 今日は新学期が始まって二日目…… 俺はあっちの世界での二日目とは違い病気でも何でもなく、熱も無かった。 世界は俺の知る歴史のままで存在していた。 俺のクラスにはハルヒや長門がきちんといて、 まるで当然のように朝倉の席はどこにもなかった。 放課後一人教室に残ってもらった長門にその世界のことを話した。 だがやはりというべきか、長門が言うには俺がその世界に行っていたという事実はどこにも観測されてはいないという。 世界改変はこの間一度も行われておらず、 朝倉の存在も、時空間の歪み、ハルヒに対する情報操作も検出されていないそうだ。 「わたしはその話を肯定することは出来ない。 なぜならもう一つの世界というものは存在しないと考えられるから」 やっぱりこっちの長門の結論も同じだった。 「人間は本人の深層意識にある考えを夢に見ることがある。 あなたは現実に近い夢を見ていたと考えるのが自然。 それは偶然にもこの世界のもう一つの可能性に限りなく酷似していた」 俺の見たあの世界が夢だと言いやがる。 あっちの世界の長門とご対面させてやりたいくらいだぜ。 お互いに相手の存在を否定しあうことだろうぜ。 それにあんなにはっきりと覚えている夢はあるだろうか。 俺はあの時ありとあらゆる感触までをはっきりと感じていた。 「そもそも人間の脳内の電気信号などあてにならない。 人間は現実を己の脳内信号をもってのみ現実と判断しているにすぎない。 つまり人間は現実と夢とを完全に区別することは出来ない」 長門の意見はどこまでも冷静だった。 俺はあのやたらとうまかった朝倉のシチューの味は忘れることはできない。 夢で味わえるようなものならもう一度食べてみたい気もする。 でも長門の言ってることが正しいとすれば、 俺はどうやって戻ってきたというのだ。 あんなに都合よく夢を終わらせてからじゃなきゃ帰れなかったのはなんでだ。 「それはもちろん涼宮ハルヒの力」 矛盾している。 お前は俺には改変は起こっていないだとか言ってたじゃないか。 それにこんな膨大なストーリーを考える脳みそは俺には確実にないぞ。 「あなたのいう世界の長門有希はあなたに対する理解が不足している。 だから説明が不十分になる。 あなたに対する理解はその世界の朝倉涼子の方が上だった。 それゆえに朝倉涼子は自分の理論をあなたに十分に伝えることが出来、 あなたはそれを信じた」 長門の言葉になぜか嫉妬のようなものが感じられる。 お前の主張では存在しない世界のことだろ? お前もだいぶ矛盾してるな。 「世界はそもそも根底に大きな矛盾を孕んでいる。 それは存在しているというそのものの矛盾。 世界は最初から存在していないことの方が説明に矛盾を生じない。 崩壊する理論の存在により最初から消滅しているとすればいい。 しかも世界は崩壊を許さない状態で存在している。 崩壊できないにも関わらず崩壊の理論も存在しているという矛盾。 崩壊できないのであればその存在は無限に続くのに関わらず 無限な現象というものは世界には存在しない矛盾。 なぜなら世界は有限な存在だから。 数字の桁をいくら増やしていっても無限という数字にはならないように、 存在するということは有限であるということ。 世界には本当の意味での無限は存在しない。 世界の可能性は常に有限な選択肢の中から選ばれたただ1つのもの。 そして世界は矛盾を抱えることができない。 だが世界そのものは存在している。 そのことの矛盾」 朝倉の言っていた矛盾の理論についての続きなのだろうか。 長門の目には自分の主張に対する自信のようなものが感じられた。 こちらを向いてこれでもかと言わんばかりだ。 「なあすまん、こっちのお前の説明もさーっぱりよくわからないんだが……」 「あなたならいずれわかる」 長門はわずかに眉間にしわをよせ、まだ納得のいかないような表情を見せた。 「涼宮ハルヒが存在するこの宇宙では絶対にありえないとはいえないが、 現在の宇宙法則では複数の世界というものは存在しない。 宇宙の第一法則は世界がたった一つのものであるという前提において成り立っているから。 過去に遡行し、その世界と全く同じ歴史を辿り、 同じような状況の世界を作り出すことに成功したとしてもそれは変質した元の世界。 別の世界ではない。 ゆえにあらゆる物理法則を用いてもあなたの見た世界のことを検知することは不可能。 わたしにとってもその世界は何も意味を成さない。 それは妄想の世界と同義であり、 存在しない世界ともまた同じこと。 あなたがこうして自分の見た夢を話しているようなもの。 議論上だけなら虚数世界と同じく存在について定義することはできなくはない。 ただし、たとえあると仮定して有効な結論を得たとしても わたしが観測も干渉も出来ない以上、わたしの力ではどうすることも出来ない」 つまりだ。 あの世界は俺にとってだけ存在しているというわけだ。 「そう。 あなたの観測がある以上、その世界の存在は完全には否定することは出来ない。 あなたが死ぬかその記憶を消失するか、 あるいは涼宮ハルヒの能力がなくなるまでの間だけは、 この世界においてももう一つの世界の観測の可能性はわずかながらに残されている。 つまり、あなたが異なる世界を観測したという現象に対し、 後からそれを正しいとする理論が発生する可能性は残されている。 涼宮ハルヒの力にはそれだけ無限の可能性が秘められている」 無限の可能性。 それはさっき長門が世界には存在しないといったもの。 それこそが情報統合思念体の望む進化の可能性なのだろう。 「我々が涼宮ハルヒを観測しなくてはならない理由の1つはそこにある。 彼女の能力が存在している限り我々の持つ情報がいつ誤った物になるかわからないから」 あちらの世界と比べると、 こちらの世界の長門は朝倉というバックアップを失ったせいでずいぶんと苦労している。 それに朝倉がいれば俺がやらなくて済んでいたこともいっぱいあった。 朝倉がいない世界が正しいのか、それともいる世界のほうが正しいのかはわからない。 答えはこれから先もおそらく永久に謎だろう。 「その世界が存在していたと仮定してもいくつか不可解なことがある」 部室棟へ向かう廊下を一緒に歩きながら隣にいた長門がつぶやいた。 「なぜあの朝倉涼子があなたをパートナーに選んだのか。 朝倉涼子はとても優秀。彼女があなたを選んで特別に得るものがあるとは思えない」 おいおい。 目の前の人間に対してホントに失礼なヤツだな。 たぶんあっちの世界の俺はこっちの俺よりいいやつだったんだろ。 「もう一つ、なぜその朝倉涼子が最後までわたしと同じ結論に至らなかったかということ。 彼女も本当はとっくに気づいていたはず。 世界は多重に存在しえないということに。 そしてたとえあなたを元の世界に戻せたとしてもそのことを確認する術もないのに、 いったいなぜそのような無謀なことを企んだのか」 長門にはまだわからないだろうな。 それはあの世界の朝倉には純真な心が芽生えていたからだったんだ。 そう、それは人間なら誰にでもわかる簡単なことだ。 相手の事を思うと目の前が見えなくなる病のようなもの。 朝倉の気持ちは漢字一字で書くそれだったんだ。 恥ずかしいから言わないけどな。 「涼子……」 ある日の放課後、俺は誰もいない教室でそっとつぶやいた。 いつかハルヒの力によってこの言葉が遠い異世界に観測されることを信じて。 ─── 完 ───
https://w.atwiki.jp/haruhi-suzumiya/pages/37.html
ハレ晴レユカイ(朝倉ver) COOL EDITION 小指でぎゅっ!
https://w.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/54.html
ふふ、なるほどね。 一度消滅させられた私をわざわざ再構築したということは、頭のお堅い主流派がようやく急進派に賛同したってことだよね。 つまり、殺し合いという題目の下、情報統合思念体自らが涼宮ハルヒに直接的なアプローチをかけたってわけか。 特に命令が下されないところを考えると、私の好きにしろっていうことかしら? 長門有希も同様? 上の方とのコンタクトが取れないからまだ何とも言えないけど、なんだか面白そうね。 ――さて、涼宮ハルヒはこれにどう対処するのかな。 多分、彼女のことだからこの状況を楽しんでいるかもしれないわね。 だけどキョンくんや朝比奈みくるの存在が彼女の理性に枷を掛けている可能性の方が高いかな? なら、そうよね。観測の邪魔になるような連中はやっぱり殺すしかないよね。 上の趣向はよく理解できないけど、こういう楽しそうなゲームって、一度やってみたかったのよ。 ……思いっきり羽を伸ばせる機会なんて、長門有希のバックアップにしかすぎない私にはなかったからね。 観覧車の小さな格子窓から展望できる、みやびで芳しい遊園地の情景をのんびりと眺めながら、私は手元のデイパックを漁る。 一見して、とても凄惨な殺し合いなど起こりそうにもない、長閑な風景の狭間で、血で血を洗う駆け引きが行われていると考えると、何とも滑稽よね。 ――あ、あったあった。 えーと、一つ目の支給品は「斬鉄剣」。 同参加者、石川五ェ門の愛刀。こんにゃく以外の全ての物質を技量次第で斬り伏せられる、か……有機生命体の生み出す武器って凄いのか凄くないのかよくわからないよね。 二つ目はなんの変哲もない「携帯電話」。 これも参加者の一人、カール・P・アッチョの所持品だったものらしいけど、私には宝の持ち腐れね。電波は通っているけど、かける相手なんていないもの。 そして最後は「通り抜けフープ」。 これは素晴らしいわね。どんなに厚い壁でも、空間をねじ曲げて貫通させるなんて。持ち主の有機生命体――ドラえもんとやらには要注意ね。 ――それにしても、ずいぶんと有用な支給品が当たったね。素手なら兎も角、この刀さえあればキョンくんたちに致命的な損傷を与えることもできるし。 「ふふふ……ん?」 私が一人ほくそ笑みながらゴンドラを降りると、観覧車乗り場の前でうつ伏せになって倒れている一人の少女を見つけた。 小さな体躯に、まるでホラー映画に出てくる幽霊のように長い黒髪……校章のプリントされたジャージを着ているところを見ると、おそらく小中学生あたりなのだろう。 表情は窺えないが、彼女から2mほど離れた場所からでも聞き取れるほど呼吸が荒い――激しい動悸に見舞われていることがよくわかる。 「う……あ……」 「……あなた、大丈夫? しっかりして」 私は警戒しつつ少女の身体を抱き起こす。 ――とりあえず、今のところは優等生を演じてようかな。 涼宮ハルヒの反応を窺うためにも、キョンくんと朝比奈みくるは確実に仕留めなければならない。 それなのに、ただでさえ驚異のオーバーテクノロジーを有した未知の存在が殺し合いに参加している中で、無闇に殺して回って余計な私怨を買ったんじゃ、ミイラ取りがミイラにされかねないもの。 最初は他者の信頼を勝ち取り、優等生として振る舞いつつ、キョンくんたちをゆっくりと捜す――これなら、安全かつ効率的に任務を遂行できるわ。 まあ、この娘が情報爆発の鍵として使えるようなら殺しちゃうけどね。 「あ……」 「どうしたの? どこか具合でも悪い?」 「……引き籠もりたい」 「え?」 「どこか……建物の中に……」 「よくわかんないけど、観覧車の中でもいい?」 「うん……」 変わった要求をするなぁと、有機生命体の不可思議さに感嘆しながら、私は彼女を胸元に抱えて元居たゴンドラに引き返す。 ――あーあ、30分、無駄になっちゃうな。 「どう、落ち着いた?」 「うん……大分楽になった。ありがとう」座席にちょこんと正座しながら、少女は仰々しく私に向けて頭を下げる。その姿や、まるで可愛らしい日本人形のよう。 「どういたしまして。ところであなた、どうしてあんな所に倒れてたの?」 私が尋ねると、 「……私、全然外に出ないから、引き籠もってないと辛いの。 けど、この辺りってどこも屋外アトラクションばかりで……公衆トイレとかレストランは遠くにあるし、どうしようもなくて」 と、紅葉を散りばめたかのように顔を真っ赤に染め、はにかみながら言った。 ――おかしな有機生命体もいたものね。 とりあえず「大変だったね」と愛想笑いを振りまき、私は自己紹介と並行して彼女の素性を聞き出すことにした。 彼女の名前は小森霧。 意外なことに涼宮ハルヒやキョンくんより一歳年上らしい。 何故自分が殺し合いに参加させられているのかわからないとのこと。ちなみに彼女のクラスメートも参加しているそうだ。 それと、彼女の支給品も、頼んだら気兼ねなく見せてもらえた。「THE LOCK」という奇妙なカードと、照射される光を浴びることによってどのような環境にも身体を順応させる「テキオー灯」の二つ。 しかし、ここでもドラえもんの名前が出てくるなんてね。ますます警戒しないと。 「――みんな、大丈夫かな」 「元気だして。きっと無事だよ」 「ううん。誰か殺してないか、心配なの」 心配そうに俯く小森ちゃんに私は微笑みかけるけど、予想だにしない答えにこっちが固まっちゃった。 ――ふふ、なかなか刺激的なのね、昨今の有機生命体は。 「ユニークなんだね、あなたの友達って」 「うん……みんなおかしいんだよ。先生なんていつも自殺しようとするし」 「へえ」 「可符香ちゃんはメンヘラでしょ、千里ちゃんは猟奇趣味があるし、まといちゃんはストーカーで……奈美ちゃんは普通。他にも沢山いるんだよ?」 「ふうん……奇遇だね。私の周りにも、変な人が沢山いるんだ」 「そうなんだ。どんな人たちなの?」 「宇宙人に未来人に超能力者。それに神さまかな」 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」 「……ぷっ……あはは! ほんとに変わった人たちだね?」 「ふふ、そうだね。でも真実だよ?」 「そうなんだ……それじゃあ可符香ちゃん、喜ぶだろうなぁ。ポロロッカ星人じゃないけど、宇宙人の知り合いがいるって知ったら」 「ポロロッカ星人って?」 「ああ、ポロロッカ星人っていうのはね――」 【遊園地/1日目/06 52】 【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】 [状態]:健康 [装備]:デイパック [道具]:斬鉄剣@ルパン三世/携帯電話@うえきの法則/通り抜けフープ@ドラえもん [思考] 第一行動方針:キョンくんと朝比奈みくるを殺さないとね 第二行動方針:長門有希と合流したいわね 基本行動方針:情報爆発を観測しましょ 【小森霧@さよなら絶望先生】 [状態]:精神的に辛い [装備]:デイパック [道具]:THE LOCK@カードキャプターさくら/テキオー灯@ドラえもん [思考] 第一行動方針:涼子さんについていこうかな 第二行動方針:先生に会いたいな 第三行動方針:みんなを捜さないと 基本行動方針:みんなと一緒に学校に帰る Back 「見」 時系列順で読む Next 魅惑の歌姫 Back 未知との遭遇 投下順で読む Next 闇に舞い降りた天才医師 GAME START 朝倉涼子 GAME START 小森霧
https://w.atwiki.jp/yaranaioheroine/pages/61.html
[あさくら りょうこ] 登場作品:谷川流「涼宮ハルヒシリーズ」 ◎ 炎上娘初音ミク ◎ 彼らはDQ2でロトと賢者の末裔のようです(完) ◎ Sa・Ga2やる夫の秘宝伝説(完) ◎ 新世紀オナニー覇王伝やる夫(完) ◎ 新桃太郎伝説 やる夫が伐折羅王をこらしめに行くようです(完) ◎ 童貞救世主!やらない夫のオナニーSTORY!(完) ◎ ニューソク・デ・やらない夫の憂鬱(完) ◎ ニューソク・デ・やる夫にエロゲーを(完) ◎ やらない夫が仕事人になるようです(完) ◎ やらない夫はCOOLに決めるようです ◎ やらない夫は弱虫のようです ◎ やる夫は「The World」にログインするようですG.U.+ (完) ◎ やる夫たちがトロイア戦争に参加するようです(完) ┗◎ やらない夫は帰郷に苦労するようです(完) ◎ やる夫イフェが聖戦を戦い抜くようです(完) ◎ やる夫がエースになるようです ◎ やる夫がお隣のお姉さんを孕ませたようです(完) ◎ やる夫が仕置人になるようです(完) ◎ やる夫が時空の旅人になるようです ◎ やる夫が料理を始めるようです ◎ やる夫の家業は悪の組織のようです(完) ◎ やる夫のエロゲー的ライフ ◎ やる夫は水銀燈を射止めたようです ◎ やる夫はマイホームパパのようです ◎ 勇者とやる夫は復讐の悪魔になるようです ○ 俺の屍を越えてゆけ ~新速出一族の歴史譚~(完) ○ キャプテンヤラナイオ(完) ○ やらない夫がドラゴンクエスト8で決めるようです(完) ○ やらない夫がパン作っている話(短) ○ やらない夫は世界で一番NG(ダメ)な恋をする(エ) ○ やらない夫は弓を引き絞るようです ○ モンハン自衛隊 ○ やる夫がゼノギアスに関わるようです(エ) ○ やる夫がドラゴンクエスト3で遊び人になるようです・やる夫がドラゴンクエスト3で賢者になったようです(完) ○ やる夫がドラゴンクエスト5の主人公のようです(完) ○ やる夫がファルガイアを救うようです ○ やる夫がフラグを回収したいようです ○ やる夫達どうしようもないようです。 ○ やる夫とヴァナディール(エ) ○ やる夫の戦国立志伝(エ) ○ やる夫は幸せになりたかったようです・やる夫は幸せになれなかったようです(完) △ 【真・女神転生】やる夫は悪魔と添い遂げるようです(完) △ やらない夫と3人の妹 △ やらない夫とやる夫が怒りの日の奏者になるようです(エ) △ やらない夫は運命に弄ばれているようです(エ) △ やらない夫はFF7の主人公のようです(エ) △ やる夫が悪の変人たちと大騒ぎするようです(完) △ やる夫が巨大都市の影を疾走するようです(完) △ やる夫でいきなりトルネコ3(完) △ やる夫とその他色んな方たち △ やる夫は剣を抜いたようです(完) △ やる夫はフラグクラッシャーのようです(エ) △ やるやらエクササイズ(完) ◇ 【TES】 狼の女王 【スカイリム】 ◇ 【安価・あんこ】彼らは善行を重ね願望を叶えるようです。【ファンタジー】(完) ◇ やらない夫がVaultを出るようです(完) ◇ やらない夫と金糸雀の怪しいエピソード!!(エ) ←朝倉透 アに戻る 朝比奈みくる→
https://w.atwiki.jp/fllaykunan/pages/35.html
_ _...-一' ` ≦ュ、 / ヘ \ _/ ヘ | ヽ // _........_ / | ヘ. // _ ;rヘ  ̄ ヽ! ヘ、 |;ム.z ´ \ / ハ ヘ l\_ | ヘ| | l | | | | | | \-ゝ-、 | | | | | j 」 | | | | | | ヾ ヘー-.、_ | | | | | ̄ 」_」」...A-‐z ! ;へ ヘ | ノ__`) | | | ト ;V } | 「| 「| | / / `ヽ |__/‐ ´ ヾハ !V _」彡 〈 ¨´ (⌒)'| //´ ∧} { i^ ヽ弋ヽ (⌒) __ , ;r ´ ̄`ヽ / ヾー--{ヽヽ `‐、----≦-‐7 /-、|__,、__.ノ `゙ ` ゙゙̄''' '´ 出典 涼宮ハルヒの憂鬱 魔法少女リリカルなのはシリーズ テンプレート・特徴・性格 ヤンデレの伝道師、ヤンデレを愛しヤンデレと共に生きる。 しかし当人は意外と純情派。 色々紆余曲折あった後、フェイト・テスタロッサの使い魔アルフとしてのウェイトが 大きくなり報われなくてもフェイトラブを貫く現状。 長門有希とは仕事仲間としての認識で意外と和気藹々で世話焼きをする。 関係者 フェイト・テスタロッサ? 長門有希? 伏線 名前 コメント