約 30,345 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2392.html
第2話 Selfish Desire HRが終わった後、俺は真っ先に長門の席に向かった。幸い、ハルヒを含めたクラスのほぼ全員の注意は朝倉に向いているので何を話しても大丈夫だろう。 俺が向かってくるのを確認すると、長門は向こうから口を開いた。 「大丈夫」 そうは言っても。 「朝倉涼子は派閥を抜けた。今は私と同じ派に属している。それに」 何か秘策でもあるのか? 「禁則プログラム」 何だそりゃ。アレか、朝比奈さんの言動を縛ってるのと同じやつか。 「全くの別物。禁則プログラムは朝倉涼子の一切の殺傷行為、破壊行為、また情報操作行為の一部を制限している。プログラムを解除する 鍵は私が管理している」 …よくは分からんが、とりあえず害はないんだな? 「そう」 放課後、掃除当番に当たっているハルヒを置いて部室に向かうと、朝比奈さんはいなかった。3年生は配布物やら何やらが多くてHRが長引いているらしい。 とりあえず、読書人形と化している小柄な文芸部員に朝の続きを聞いてみる。 「なあ長門、やっぱり今回も、朝倉はお前のバックアップなのか?」 「そう。今回の復活は情報統合思念体の命令」 やっぱりか。 「お前は不満じゃないのか?前に戦った相手をまたバックアップにするなんて」 俺のその問いに、長門はほんの少しだけ俯き、呟いた。 「…私は、ただの端末だから」 その悔しそうな様子に俺がいささか面食らっていると、 「あ、キョン君。少し…いいかしら?」 話題の人、朝倉涼子が部室に顔を見せたのだった。 「長門さんから話は聞いた?」 いきなりそう切り出した朝倉に、俺は緊張しつつも頷いた。 「ああ。だが、禁則プログラムが云々のあたりは正直、理解できなかった」 朝倉は苦笑してみせる。 「そうでしょうね。長門さん、説明するの下手だもん。つまりね、分かりやすく言うとこういうことよ、キョン君。 …あ、実際に見せたほうが早いか」 まさか。 「そ。そのまさかよ」 言うなり、朝倉は微笑んで、いつかのように右手の爪を禍々しいほど長く伸ばした。 そしてそのまま―――。 「ッ!?」 一閃。 俺と、ついでに後ろのパソコンを机ごとたたき斬るはずだったその斬撃はしかし、何も傷つけることなく全てを透過した。 「…え?」 「別に、ナイフでも同じよ。ほら」 今度は同じく俺を殺そうとした際に使ったナイフを取り出し…いや、作り出し、机に突き立て―――られなかった。 またしてもナイフの刃は机をすり抜ける。当然、引っこ抜いた後の机には傷一つない。 「どうなって…」 「まあ詳しい理屈は省くけど、要は私が行う全ての殺傷・破壊行為は『なかったこと』にされるわけ。だから、もう警戒しなくても大丈夫 よ?」 ただただ唖然とするのみの俺に、朝倉は小さく付け加えた。 「…もっとも、今となっては殺そうなんて欠片も思ってないんだけどね」 それからいつものようにSOS団の活動をし、下校時間になると団員は解散。 とっとと帰ってしまったハルヒ以下団員たちを見送り、さて俺も帰るかと校門のところまで行くと、 「いっしょに帰ろうか、キョン君」 朝倉が俺を待っていた。 朝倉とは他愛もない話をしながら下校した。俺の態度がぎこちなくなるのは仕方がないことだと思って勘弁してほしい。 何せ、相手は俺をトンデモ能力を駆使して殺そうとした宇宙人なんだ。いくら殺傷能力がなくなったとはいえ、警戒しちまうのは仕方ないことだと思うね。 そんなことを考えていると、ふいに朝倉がこんな話をしてきやがった。 「ところでさ、『吊り橋効果』って、知ってる?」 「知ってるが、それがどうかしたか?」 「だからさ…あぁもう、ホントにニブチンなんだから」 「この際だからはっきり言っておくが」 俺は溜息混じりに言ってやることにした。 「お前、俺の中では印象最悪だぞ? それにあれは『2人にとっての極限状態』じゃないだろう。せいぜい『俺にとっての極限状態』だ」 「だからごめんなさいって。それに、意外と殺しにかかる方も普通の精神状態じゃいられないものなのよ?」 そんなリアルすぎる感想はやめてくれ。冗談に聞こえない。 「んー、涼宮さんも変わったと思ったけど、あなたもだいぶ変わったわね。ツッコミが上達したような気がする」 仕方ないだろう。俺がツッコまなかったら誰があの団長様の暴走を止めるんだ。 「ふふ、そうね。羨ましいな…楽しそうで」 「それはそうと、なんでいきなり『吊り橋効果』なんだ? お前、俺のこと好きなわけでもないだろうが」 俺がそう言うと、朝倉は本気で驚いたような顔をした。やはり美人、驚いた顔もかわい…うぉっとぉ! ナシ! 今のナシ!! 「…まさか、キョン君。本気で言ってんの?」 何がだ。 「…はぁ。予想外だったわ。まさかここまで天然だなんて」 失礼な。誰が天然だ。 「言わないと分かんないかな、普通…。まぁいいわ」 そう言うと、朝倉はわずかに顔を赤らめ、告げた。 「好きよ、キョン君」 NEXT?
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/1348.html
第5期テラカオスロワエンディング Tルート NO. タイトル 登場人物 1171 Tルート最終話 『カオスの行き着く場所』 オールスター Xルート NO. タイトル 登場人物 1158 TCBR5thエンディングXルート フグ田マスオ、武藤遊戯、真・長門、荒木飛呂彦、アナゴ、南千秋、赤木しげる、朝倉涼子、磯野カツオ、6/、テラカオス、柊かがみ Yルート NO. タイトル 登場人物 1172 エンド ルートY「ゼロのカオスロワ」 衛宮士郎、渚カヲル、チルノ、ドナルド、ヴェル爺さん、ユーゼス Zルート NO. タイトル 登場人物 1145 Zルートエンディング なし しまっちゃうルート NO. タイトル 登場人物 1173 TCBR5th しまっちゃうエンド しまっちゃうおじさん、テラカオスバトルロワイアル5th
https://w.atwiki.jp/mainichi-matome/pages/3963.html
The story below is originally published on Mainichi Daily News by Mainichi Shinbun (http //mdn.mainichi.jp). They admitted inventing its kinky features, or rather deliberately mistranslating them from the original gossip magazine. In fact, this is far from the general Japanese' behavior or sense of worth. このページは、毎日新聞事件の検証のための配信記事対訳ページです。直接ジャンプして来られた方は、必ずFAQをお読みください。 ※ この和訳はあくまでもボランティアの方々による一例であり、翻訳の正確さについては各自判断してください。もし誤訳(の疑い)を発見した場合には、直接ページを編集して訂正するか翻訳者連絡掲示板に報告してください。 Perverts can't stop poking around the Saikyo Line「痴漢電車」埼京線はスゴイーぞ! 元資料 関連ページ Perverts can't stop poking around the Saikyo Line 変質者たちは埼京線の周りをウロウロすることをやめられない 「痴漢電車」埼京線はスゴイーぞ! (*1) 「痴漢電車」埼京線はスゴイーぞ! 1997,03,16 Perverts can't stop poking around the Saikyo Line Shukan Yomiuri 3/16 By Takeshi Ito 変質者たちは埼京線の周りをウロウロすることをやめられない "I carry a safety pin whenever I ride a train on the Saikyo Line," a 20-year-old woman says matter-of-factly. "I thrust the pin into their hands." Sounds radical? But virtually all women who ever traveled on this line agree "they" definitely deserve tough punishment. Shukan Yomiuri reports that this JR line serving the Tokyo metropolitan area between Omiya and Shinjuku is earning notoriety among women in their teens to 20s as the nation's most per-vert-infested train line. 「埼京線の電車に乗る時はいつも安全ピンを持ち歩くの」20歳の女性は当然のことのように言います。 「彼らの手にそのピンを突き刺すのよ」 過激に聞こえますか? けれど、今までにこの路線で旅行した全ての女性は「彼ら」は当然キツイ罰を受けるに相応しいのだということに同意すると言ってもいいくらいです。 週刊読売は、大宮と新宿の間の東京首都圏で役立つこのJRの路線は、国内で最も変質者がはびこる電車路線として、10代から20代の女性の間での悪評を獲得していっているのだと報告します。 According to the magazine,the Saikyo Line has been producing the greatest number of arrested perverts among metropolitan train lines. During the six months from July to December 1996,94 gropers were arrested on the Saikyo Line. They accounted for more than 40 percent of all gropers arrested on met-ropolitan commuter lines. 雑誌によると、埼京線は、大都市の電車路線の間での最大数の逮捕された変質者を産出し続けていっています。 1996年7月から12月までの6ヶ月の間に、94人の痴漢が埼京線で逮捕されました。 彼らは首都の通勤通学路線で逮捕される全ての痴漢の内の40%以上の割合を占めています。 During the same period,counseling corners for vic-times established by the police at JR Tokyo and Shinjuku stations received 67 complaints from women victimized on the Saikyo Line,followed by 25 com-plaints lodged by Chuo Line users. 同じ期間の間に、JR東京駅と新宿駅の警察が設立した被害者のためのカウンセリングコーナーは埼京線で犠牲となった女性からの67の訴えを受け取りました。中央線使用者によって申し立てられた25の訴えがそれに続きます。 Shukan Yomiuri maintains that virtually all women in their teens to 20s who commute on the notorious line have an atrocious experience or two to tell. "These days,they come on to me only once or twice a week,but when I was attending high school,it was horrendous," recalls the 20-year-old. "they molested me almost every morning. In the worst cases,I was surrounded by gropers in all four directions. I remember three to four different hands feeling up and down my bottom." 週刊読売は、その悪名高い路線で通う10代から20代の全ての女性は語るべき不愉快な経験の一つや二つを持っていると言ってもいいくらいだと断言します。 「近頃は、彼らは週に一度か二度だけ私に近づいて来るわ、けれど私が高校に通っていた時は、それはむちゃくちゃなものだった」20歳の女性は思い起こします。 「彼らはほとんど毎朝私に痴漢行為を行ったわ。 最も最悪なケースでは、私は痴漢に四方全部を取り囲まれたの。 3から4の違う手が私のお尻をまさぐっていったわ」 "Compared with perverts on other lines,gropers who attack women on the Saikyo Line are totally abnormal," points out a 22-year-old student who com-mutes on the Saikyo and Chuo lines. "The worst cases occur at the back of the train because its always very crowded. "Normally,a pervert stops touching you when you tell him to stop it in a low voice," continues the woman. "But this method never works on the Saikyo Line. Perverts do not even try to hide what they are doing. And they are really persistent,especially the young ones." 「他の路線の変質者と比較して、埼京線で女性を襲う痴漢は完全にアブノーマルです」埼京線と中央線で通学する22才の学生は指摘します。 「最悪のケースは電車の後部で起こります。何故なら、そこはいつもとても混んでいるからです」 「普通は、変質者はあなたが低い声で彼にそれを止めるように言えばあなたを触ることを止めるでしょう」女性は続けます。 「けれどこの方法は埼京線では決して機能しません。 変質者たちは彼らがしていることを隠そうと試みさえしない。 そして彼らは本当にしつこいのです、とりわけ若い者は」 Why is the Saikyo Line so popular among perverts? Why does this particu-lar line attract the worst kind of molesters? Shukan Yomiuri claims that the heavy crowds during rush hours is not the main factor. The chief cause is the longer distance between stations. A commuter express train travels from Omiya to Shinjuku in 30 minutes and makes only six stops en route. Gropers take advantage of the four or five minutes during which targets cannot flee. 何故、埼京線は変質者たちの間でそう有名なのでしょう? 何故この特定の路線が最もたちの悪い類の痴漢を惹きつけるのか? 週刊読売はラッシュアワーの間の重度の混雑は主な要因ではないと主張します。 主因は駅の間のより長い間隔です。 大宮から新宿までの通勤通学の急行電車の30分間の旅は、途中で6回しか停止しません。 痴漢はターゲットが逃れられない間である4分か5分を利用します。 The Saikyo Line's notoriety caused the Metropolitan Police Department to mobilize 1,000 officers and launch a week-long "pervert-containment" opera-tion last month. During the operation,31 perverts were arrested. But Shukan Yomiuri questions the effectiveness of the operation. Some perverts actually look forward to an arrest,notes the magazine.(TI) 埼京線の悪評は、警視庁に1000人の警官を動因させ、先月の1週間にわたる「変質者封じ込め」実施に乗り出させました。 その実施の間、31人の変質者が逮捕されました。 しかし週刊読売はこの実施の有効性を疑問に思います。 幾人かの変質者は実のところ逮捕を楽しみに待つのだと雑誌は言及します。 元資料 関連ページ JR東日本 紙媒体MDN時代のwaiwaiタイトル1997年
https://w.atwiki.jp/yuriharuhi/pages/24.html
—ピンポーン 平日の夕方、沈みかけた太陽が最後の抵抗に赤い光線を放っているのが窓から見える。 だだっ広い部屋に一人たたずんで本を読んでいた少女は、来客を知らせる電子音に一旦時計を見てから立ち上がった。 インターホンで確認した後、重い金属製の扉を内側から開くと、 「こんにちは。これ、いっぱい作ったから一緒に食べましょ」 制服のまま長い髪を緩やかに振って笑う見知った顔の同級生が、大きめの鍋を抱えてそこに立っていた。 「入って」 部屋の主人である少女も当たり前のように彼女を中に通す。 元対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェイス。 再構築された世界で、それを望んだ張本人である長門有希と、彼女に望まれて蘇った朝倉涼子は、無事平穏な高校生活を手に入れていた。 「ありがとう」 「いいのよ。ごはんは一人で食べたっておいしくないしね。私、料理好きだから」 現実、いや、この世界も確かに現実なのだから、元の世界とでも言おうか。 元の世界で長門のバックアップだった朝倉はこの世界でもその仕事を引き継いでいるようで、宇宙人における涼宮ハルヒの観察とはまた別の意味で、 人間として長門の生活をサポートしているようだった。 「今日はね、肉じゃが!」 いかにも自信作、という言い方で銀色の鍋のフタが開かれると、白い湯気とともに甘辛い香りが無機質だった部屋に広がった。 長門は、湯気の中身を覗きこんで満足そうに笑う朝倉の横に二組の食器類が並べ、無言のままそれらを盛り付け始める。 朝倉の前に差し出された箸と茶碗は来客用にしては使い込まれており、どうやら二人は普段からこうやって食事をしているようだ。 「いただきまーす」 それほど大きくない机に向かい合って座った二人は、たいした会話もなく黙々と箸と口を動かし、 朝倉作の肉じゃがと、長門作の白米はあっという間に少女たちの胃袋へと消えていった。 「どうだった?」 記念日に得意料理を振舞った新妻みたいな笑顔に、 「おいしかった」 少し微笑んで答える。 朝倉は思い通りの答えに満足を得たのか、早々に鍋にフタをすると、 ここに来た用事はこれだけだと言わんばかりに立ち上がって手を上げた。 「じゃあ、また来るから」 玄関を開けたときから変わらない、爽やかな笑顔。 その微笑みに無口な少女は一瞬笑顔を返そうとしたが、すぐ俯いて、 「いつもごめんなさい」 と弱々しく呟いた。 「何言ってるのよ。これぐらいで」 「朝倉さんは」 元の世界では呼ばれることの無かった敬称付きの呼び名で言葉を遮った長門は、 「何でこんなに優しくしてくれるの?」 俯いた顔をわずかに上げ、それでも目は伏せながら、今まで聞けなかったことを気まずく思うような表情を見せた。 その問いに、一旦は立ち上がった美人の世話好き同級生は、鍋を元の位置に戻し沈黙を噛みしめるようにゆっくり腰を下ろしてから、 「あなたみたいな人って、守ってあげたくなるのよ。どうせ放っておいたらロクなものたべないでしょ?」 頬杖ついて語りかける。 「そう…」 元の世界では口癖みたいに使っていた言葉に、幾分か感情がこもる。 ただ、ままならない返事に若干の消化不良を感じ取った朝倉は、ふうとため息をついて、見破られてるか、と小さく呟いた。 「それだけじゃないの。あのね、変に思わないでよ」 それこそ意味ありげな前置きを加えてから、 「私があなたを必要としているの」 「…どういうこと?」 驚いた顔の長門から、小さな声で疑問が挟まれる。 しかし朝倉は、まるで用意していた台詞を読み上げるような口調で続けた。 「無意識にね、あなたに何かしてあげたいと感じちゃうのよ。してあげなくちゃって。 それは私が世話焼きだからとかそういうんじゃなくて。あなたの…そうね、引力みたいなのに引き寄せられちゃうの。 それが長門さんの魅力なのか、私の気の迷いなのかはわからないけどね」 そこまで言って、初めて因数分解の話を聞いた小学生みたいにぽかんとしている長門に元の微笑みを向けた。 「あなたに尽くすことが私の義務だと感じることさえあるわ」 普通の高校生として復活を果たした朝倉涼子は、元の世界での長門との関係を記憶のどこかに残しているのだろうか。 優しい微笑みに真剣さを織り交ぜ、視線を一点に固定したまま張り詰めた空間に言葉を並べていく。 しかし朝倉にその意識があるとしても、残念ながら長門に覚えはないようだ。 ただただ俯いて、親しい同級生から告げられた妙な説明に困惑するばかりだった。 「あの、私はそんなたいそうな人間じゃ…」 窓の外では太陽がとうの昔に力尽き、高い位置から眺められるネオン達が及ばずながらその代役をつとめている。 切り取られた長門の言葉に答えを返すこともなく、その景色を見つめていた朝倉は、何かを言おうとして突然悲しげな表情を見せた。 「朝倉さん?」 「私ね、わかるの」 長門に向けられた視線に、さっきまでの優しい微笑みはない。 あるのは真剣さと、今にも感情を水滴に変えて溢れさせようとする潤んだ瞳だけだった。 「この関係はね、もうすぐ続けられなくなっちゃうの。長門さんはきっとどこかに行ってしまうんだって…。 おかしなこと言っていると思うでしょうけど、私にはそれが分かるのよ。あなたとこうやっていられるのはもう僅かなんだって」 朝倉は途中から涙を流しながらも気丈に話し終え、最後の言葉とともに机にばたっと倒れ伏した。 止まらない嗚咽がもともとしんとしていた部屋に響き、一瞬困惑の表情を見せた長門は、 すくっと立ち上がって、そこで泣いている少女がさっきまでしていたような優しい微笑みを湛えると、 彼女が泣き止むまでその肩を抱いていた。 落ち着いた朝倉が胸にすがり付いて不安そうな顔で見上げる。 「大丈夫、ずっと友達。どこにも行かないから」 長門はその体を強く抱き、 数日後、皮肉にも過去からやってくる自分自身によって破られる約束を、彼女の耳元で囁いた。
https://w.atwiki.jp/yuriharuhi/pages/22.html
—ピンポーン 平日の夕方、沈みかけた太陽が最後の抵抗に赤い光線を放っているのが窓から見える。 だだっ広い部屋に一人たたずんで本を読んでいた少女は、来客を知らせる電子音に一旦時計を見てから立ち上がった。 インターホンで確認した後、重い金属製の扉を内側から開くと、 「こんにちは。これ、いっぱい作ったから一緒に食べましょ」 制服のまま長い髪を緩やかに振って笑う見知った顔の同級生が、大きめの鍋を抱えてそこに立っていた。 「入って」 部屋の主人である少女も当たり前のように彼女を中に通す。 元対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェイス。 再構築された世界で、それを望んだ張本人である長戸有希と、彼女に望まれて蘇った朝倉涼子は、無事平穏な高校生活を手に入れていた。 「ありがとう」 「いいのよ。ごはんは一人で食べたっておいしくないしね。私、料理好きだから」 現実、いや、この世界も確かに現実なのだから、元の世界とでも言おうか。 元の世界で長門のバックアップだった朝倉はこの世界でもその仕事を引き継いでいるようで、宇宙人における涼宮ハルヒの観察とはまた別の意味で、 人間として長門の生活をサポートしているようだった。 「今日はね、肉じゃが!」 いかにも自信作、という言い方で銀色の鍋のフタが開かれると、白い湯気とともに甘辛い香りが無機質だった部屋に広がった。 長門は、湯気の中身を覗きこんで満足そうに笑う朝倉の横に二組の食器類が並べ、無言のままそれらを盛り付け始める。 朝倉の前に差し出された箸と茶碗は来客用にしては使い込まれており、どうやら二人は普段からこうやって食事をしているようだ。 「いただきまーす」 それほど大きくない机に向かい合って座った二人は、たいした会話もなく黙々と箸と口を動かし、 朝倉作の肉じゃがと、長門作の白米はあっという間に少女たちの胃袋へと消えていった。 「どうだった?」 記念日に得意料理を振舞った新妻みたいな笑顔に、 「おいしかった」 少し微笑んで答える。 朝倉は思い通りの答えに満足を得たのか、早々に鍋にフタをすると、 ここに来た用事はこれだけだと言わんばかりに立ち上がって手を上げた。 「じゃあ、また来るから」 玄関を開けたときから変わらない、爽やかな笑顔。 その微笑みに無口な少女は一瞬笑顔を返そうとしたが、すぐ俯いて、 「いつもごめんなさい」 と弱々しく呟いた。 「何言ってるのよ。これぐらいで」 「朝倉さんは」 元の世界では呼ばれることの無かった敬称付きの呼び名で言葉を遮った長門は、 「何でこんなに優しくしてくれるの?」 俯いた顔をわずかに上げ、それでも目は伏せながら、今まで聞けなかったことを気まずく思うような表情を見せた。 その問いに、一旦は立ち上がった美人の世話好き同級生は、鍋を元の位置に戻し沈黙を噛みしめるようにゆっくり腰を下ろしてから、 「あなたみたいな人って、守ってあげたくなるのよ。どうせ放っておいたらロクなものたべないでしょ?」 頬杖ついて語りかける。 「そう…」 元の世界では口癖みたいに使っていた言葉に、幾分か感情がこもる。 ただ、ままならない返事に若干の消化不良を感じ取った朝倉は、ふうとため息をついて、見破られてるか、と小さく呟いた。 「それだけじゃないの。あのね、変に思わないでよ」 それこそ意味ありげな前置きを加えてから、 「私があなたを必要としているの」 「…どういうこと?」 驚いた顔の長門から、小さな声で疑問が挟まれる。 しかし朝倉は、まるで用意していた台詞を読み上げるような口調で続けた。 「無意識にね、あなたに何かしてあげたいと感じちゃうのよ。してあげなくちゃって。 それは私が世話焼きだからとかそういうんじゃなくて。あなたの…そうね、引力みたいなのに引き寄せられちゃうの。 それが長門さんの魅力なのか、私の気の迷いなのかはわからないけどね」 そこまで言って、初めて因数分解の話を聞いた小学生みたいにぽかんとしている長門に元の微笑みを向けた。 「あなたに尽くすことが私の義務だと感じることさえあるわ」 普通の高校生として復活を果たした朝倉涼子は、元の世界での長門との関係を記憶のどこかに残しているのだろうか。 優しい微笑みに真剣さを織り交ぜ、視線を一点に固定したまま張り詰めた空間に言葉を並べていく。 しかし朝倉にその意識があるとしても、残念ながら長門に覚えはないようだ。 ただただ俯いて、親しい同級生から告げられた妙な説明に困惑するばかりだった。 「あの、私はそんなたいそうな人間じゃ…」 窓の外では太陽がとうの昔に力尽き、高い位置から眺められるネオン達が及ばずながらその代役をつとめている。 切り取られた長門の言葉に答えを返すこともなく、その景色を見つめていた朝倉は、何かを言おうとして突然悲しげな表情を見せた。 「朝倉さん?」 「私ね、わかるの」 長門に向けられた視線に、さっきまでの優しい微笑みはない。 あるのは真剣さと、今にも感情を水滴に変えて溢れさせようとする潤んだ瞳だけだった。 「この関係はね、もうすぐ続けられなくなっちゃうの。長門さんはきっとどこかに行ってしまうんだって…。 おかしなこと言っていると思うでしょうけど、私にはそれが分かるのよ。あなたとこうやっていられるのはもう僅かなんだって」 朝倉は途中から涙を流しながらも気丈に話し終え、最後の言葉とともに机にばたっと倒れ伏した。 止まらない嗚咽がもともとしんとしていた部屋に響き、一瞬困惑の表情を見せた長門は、 すくっと立ち上がって、そこで泣いている少女がさっきまでしていたような優しい微笑みを湛えると、 彼女が泣き止むまでその肩を抱いていた。 落ち着いた朝倉が胸にすがり付いて不安そうな顔で見上げる。 「大丈夫、ずっと友達。どこにも行かないから」 長門はその体を強く抱き、 数日後、皮肉にも過去からやってくる自分自身によって破られる約束を、彼女の耳元で囁いた。
https://w.atwiki.jp/kskani/pages/198.html
NO. タイトル 作者 登場人物 051 上と、下(前編)(後編) ◆S828SR0enc 高町なのは、小泉太湖(小砂)、冬月コウゾウ、加持リョウジ 052 万太郎 Go Fight! ◆NIKUcB1AGw ハム、キン肉万太郎 053 本の森の中で…/CODE N 心に愛が無ければ、スーパーヒーローじゃないのさ ◆qYuVhwC7l. キン肉スグル、ヴィヴィオ 054 死闘の果てに… ◆MUwCM75A2U アプトム 055 夢で会いましょう ◆mk2mfhdVi2 ドロロ兵長、リナ=インバース 056 白く還りし刻 ◆S828SR0enc ラドック=ランザード、ゼルガディス・グレイワーズ 057 悪魔将軍は動かない~エピソード3 廃屋~ ◆NIKUcB1AGw 悪魔将軍 058 碇シンジがああなったワケ ◆321goTfE72 碇シンジ、川口夏子、朝比奈みくる、ハム、キン肉万太郎 059 リリカルスバルたん第3話「ツバメモードとケロン人」 ◆YsjGn8smIk スバル・ナカジマ、ガルル中尉、ジ・オメガマン 060 第一回放送 ◆S828SR0enc 草壁タツオ、長門有希 061 悪魔は再び ◆Fe3NifTDyM 悪魔将軍 062 君が残した光 ◆0O6axtEvXI 高町なのは 063 殺戮を大いに行う涼宮ハルヒのための団 ◆NIKUcB1AGw キョン、古泉一樹 064 灼熱のファイヤーデスマッチ!の巻 ◆hjKFqNAi/U アシュラマン、ジ・オメガマン、ガルル中尉、スバル・ナカジマ 065 片道きゃっちぼーる ◆h6KpN01cDg 川口夏子、朝比奈みくる、碇シンジ、トトロ 066 模倣より生まれ来る創造 ◆2XEqsKa.CM アプトム、惣流・アスカ・ラングレー 067 ハレ晴レフユカイ ◆mk2mfhdVi2 朝倉涼子 068 ぼうず戦線異状なし ◆321goTfE72 水野灌太(砂ぼうず)、セイン 069 正義超人と魔族の出会い。そして悲劇の終焉 ◆bD004imcx. ホリィ、ゼロス、ウォーズマン 070 疾風(かぜ)のガイバー ◆MUwCM75A2U 深町晶、スエゾー 071 BRAVE PHOENIX ◆4etfPW5xU6 ヴィヴィオ、キン肉スグル 072 迫り来る闇の声 ◆S828SR0enc リナ=インバース、ドロロ兵長、ナーガ 073 理想と妄想と現実 ◆bD004imcx. キョンの妹、佐倉ゲンキ 074 守りたい者がいる ◆0O6axtEvXI ハム、キン肉万太郎、碇シンジ、トトロ 075 消える命、瞬く命 ◆Fe3NifTDyM ケロロ軍曹、草壁サツキ、タママ二等兵 076 追撃への序曲涼宮ハルヒの嘆願 ◆321goTfE72 ネオ・ゼクトール、古泉一樹、ノーヴェ、(涼宮ハルヒ) 077 師匠と、弟子 ◆YsjGn8smIk 小泉太湖(小砂)、ラドック=ランザード 、高町なのは 078 台風の目~they and……~ ◆h6KpN01cDg 冬月コウゾウ、加持リョウジ、ケロロ軍曹、草壁サツキ、タママ二等兵、アプトム 079 根深き種の溝を越えて (前編)(後編) ◆2XEqsKa.CM スバル・ナカジマ、ガルル中尉、アシュラマン、ジ・オメガマン 080 心のかたち 人のかたち ◆MUwCM75A2U 惣流・アスカ・ラングレー 081 少女×雨×拷問 ◆bD004imcx. 草壁メイ、雨蜘蛛 082 不屈の涙とシロイモノ ◆EFl5CDAPlM 朝倉涼子、キン肉スグル、ヴィヴィオ 083 キョン ◆4etfPW5xU6 キョン 084 やさしさとともに ◆EFl5CDAPlM スバル・ナカジマ 085 迷える人形 ◆0O6axtEvXI リヒャルト・ギュオー、ウォーズマン 086 朝日とともに這い寄るモノ ◆2XEqsKa.CM キョンの妹、佐倉ゲンキ、ゼロス 087 数字、その意味 ◆EFl5CDAPlM ドロロ兵長、リナ=インバース 088 疑惑と、野望 ◆U85ZpF.SRY 冬月コウゾウ、加持リョウジ、ケロロ軍曹、草壁サツキ、タママ二等兵 089 0対1~似て非なる少年たち~ ◆NIKUcB1AGw キョン、深町晶、スエゾー 090 胸の奥に溢れるのは涙よりも愛にしたい ◆YsjGn8smIk 水野灌太(砂ぼうず)、セイン、ナーガ 091 ネオ・ゼクトールの奇妙な遭遇 ◆mk2mfhdVi2 ネオ・ゼクトール、トトロ 092 マジカル小砂たん第5話「土下座モードで頼み込め!」 ◆321goTfE72 小泉太湖(小砂)、高町なのは 093 夏子と、みくる碇シンジの不安・川口夏子の葛藤 ◆MUwCM75A2U 川口夏子、碇シンジ、朝比奈みくる、ハム、キン肉万太郎 094 少女奔走中...古泉一樹の考察 ◆S828SR0enc 古泉一樹、ノーヴェ 095 魔将考 ◆hjKFqNAi 悪魔将軍 096 麗しくも強き女王の駒 ◆2XEqsKa.CM 朝倉涼子、キン肉スグル、ヴィヴィオ 097 K.S.K.~切れ者?セクハラ?危険人物?~ ◆h6KpN01cDg 水野灌太(砂ぼうず) 098 命の選択を:序命の選択を:破命の選択を:急 ◆S828SR0enc 惣流・アスカ・ラングレー、冬月コウゾウ、加持リョウジ、草壁サツキ、ケロロ軍曹、タママ二等兵 099 魔物の群れはいなくなった ◆EFl5CDAPlM ネオ・ゼクトール、トトロ 100 扇動・搾取・虎の巻 ◆NIKUcB1AGw ウォーズマン、リヒャルト・ギュオー
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2205.html
百物語というものをご存知だろうか。 一人ずつ怪談を話し蝋燭を消していき、100話目が終わった後に何かが…!!というあれである。 俺は今まさになぜか部室でハルヒと愉快な仲間たちとともにそれをしているわけだが、何故そのような状態 に至ったのかを説明するには今から数時間ほど遡らなければならない。 ______ 夏休み真っ盛りのその日、俺はそろそろ沈もうかという太陽の暑さを呪いながらニュースを見ていた。 東北の某都市ではいまごろ七夕祭りをするのだなあ、などといつかのことを思い出しながら今まさに瞼の 重量MAXに至らんとしたその時、携帯が盛大にダースベーダーの曲を奏でた。 ハルヒだ。 市販されているどのカフェイン飲料よりも効く恐怖の音色によって冴えた頭で出ようか出まいか一瞬迷った後、 恐る恐る携帯を手にした。 「あ、もしもし?キョン今暇?」 恐ろしく不躾な第一声、間違いなくハルヒである。 いーや、今まさに夏休みの課題に取り組もうと今年一番のやる気を出していたところだぜ。 マシンガンに対し襖の盾を構える様に、ささやかな抵抗を試みる。 「ちょうどいいわ、そんなのやめて駅前に集合!」 何が調度いいのだろう、などと問うのは風呂上りに鏡の前でポーズをとるよりも時間の無駄というもんだ。 相手はハルヒなのだから。 駅前に着くと、時をかける美少女こと朝比奈さんが小さく手を振って俺を迎えてくれた。 「あ、キョン君、こんばんは…!」 純白のワンピースに可愛らしいポーチ、なんという麗しのお姿、もしかしてあなた未来人じゃなくて 天使か何かなんじゃないですか? 「私突然呼ばれて…キョン君は何するか聞いていますか?」 あいつが突然じゃないことなんてないんですよ、朝比奈さん。 ついでに言うとあいつの頭の中に何か計画があるのかも怪しいもんだ。 「ヤッホー!」 話題の主が何故か胡散臭い笑顔と鉄仮面を引き連れてやってきた。 「いやあ、涼宮さんと長門さんと電車で一緒になったもので。」 お前には聞いてないけどな。夏休みの、しかもこんな暗くなるような時間から何しようってんだ、ハルヒ。 「うんうん、みんな行動が迅速でとても良いことだわ。SOS団の未来も明るいってものよ!」 聴いてないな。 「失礼ね、ちゃんと聴いてるわよ。これからみんなで百物語をやります!」 帰っていいか。 「夏といえば怖い話。怖い話といえば百物語。百物語といえば学校よ。そういうわけで今から部室に行って 納涼百物語大会を行います。」 朝比奈さんは既に怯える準備万端、古泉はいつもどおりのインチキ笑顔、長門は幽霊のように冷たい無表情でハルヒを見つめていた。 意外と長門は読書で得たネタがあるかもしれないなと考えそうになったが、つっこみ担当の脳内俺がそれを遮った。 ちょっと待て、こんな時間に学校に忍び込んだのが見付かれば、バニーガールの時よろしくまた何を言われるか… 「大丈夫、ちゃんと昼間のうちに部室の窓の鍵は開けておいたわ。窓から縄梯子を垂らして、蝋燭も用意しておいたから完璧よ。」 どこからそんなもんを調達…じゃない、つっこむべきはそこじゃない。 何が大丈夫なんだ、ハルヒ。こいつの思考がわかる奴がいたら「機関」とか言う変態組織から表彰されるかもな。 俺だったら、たとえ古泉に土下座されてもいらないが。 「いいんじゃないですか。怪談、僕は嫌いじゃありませんよ。幽霊というものにも少し興味があります。」 少しは躊躇しろ、このニヤケヅラ。 「ふぇ…幽霊…出るんですか、百物語ってなんなんですか…。」 今にも泣きそうな朝比奈さん。大丈夫です、あなたのことは俺が命に代えても守ります。 いつかのクラスメイトによる俺殺害未遂に比べれば幽霊なぞ。 「……」 メンバー中最も幽霊に近い存在のような気がする宇宙人製有機ヒューマノイドインターフェースは、 なにやら不気味な表紙の本を読むのに忙しいようだ。何読んでるんだ? 「……これ」 えーと、いながわじゅん…… !? やる気か、長門。 はあ、何も起きないでくれよ。もしものときは頼むぜ、長門。 ハルヒの場合、幽霊どころかヤマタノオロチを召喚するなんてことは十分あり得るからな…。 というわけで、俺たちは夜の学校に忍び込み、百物語に挑戦しているわけだ。 しかし、5人で100話、一人20話の割り当てだ。正直、俺はそんなに話すネタを持っていない。 どこかで聞いたような、しょうもないネタを披露するといった具合だ。 ある種のオカルトマニアのハルヒと、今まで読んだ本を積み上げると富士山すら凌駕するであろう長門は、 順番が来ると躊躇なく話し始める。長門の話はどちらかというと、都市伝説のような気がするのは、この際目を瞑ろう。 古泉は少し考えた後に無難な怪談を語っている。こいつのことだ、即興で考えた嘘話だろう。 朝比奈さんはというと、専ら悲鳴あげ係である。話せるネタもないようで、ハルヒか長門が代わりに話している。 何なんだこの2人は。 さて、そろそろ納涼百物語大会(命名:ハルヒ)も佳境である。 最後の100話目を俺が話そうとしたところ、ハルヒに権利を奪われた。 曰く、イベントのおいしい所は団長の物なんだそうだ。 俺にとってはおいしいかどころか、不味い役回りだったので有難い。蓼食う虫もびっくりだぜ。 「それじゃあ、最後の怪談、いくわよ。 皆、この1年5組の教室に実しやかに囁かれる噂を知ってるかしら。あの教室はね、いわくつきの教室なの。 あたし達が入学するよりもずっと前、一人の男子生徒の遺体が発見されたの、胸にコンバットナイフを突き刺されて。 特に恨みを買うようにも見えない、ごく普通の男子生徒だったらしいわ。その子が殺される前日、 ラブレターを貰ったと言って浮かれてたという証言もあって、事件との関連性を疑われたけど、遺留品からそんな手紙は見付からず、 結局犯人は分からずじまい。以来、あの教室に一人でいると何か悪いことが起こるらしいわ…。」 ……結末以外はなにやらどこかで聞いたことのあるような話である。こいつ実は全部知ってるんじゃないだろうな。 長門、あまりこっちを見るな。こういう状況でのお前の眼差しはナイフなんかよりよっぽど怖い。 朝比奈さんはもう完全にギブアップ、古泉は相変わらずニコニコしている。 俺と朝比奈さんの青ざめる様子に気付いたのか、ハルヒは満足げな顔で言った。 「あははは、うっそ。今のは完全なあたしの作り話。こうも良い反応をしてくれるとは思わなかったわ。 持つべきものはキョンとみくるちゃんよねえ。」 こいつ実は読心術もマスターしてるんじゃないだろうか。 「じゃあ、消すわよ。」 そういって最後の蝋燭を吹き消した。 …暗闇 朝比奈さんの「ふえぇぇ」という舌足らずな悲鳴が聞こえたかと思った次の瞬間、蛍光灯が瞬き始めた。 誰が点けたんだ。そう思って部室の入り口に目を向ける。俺にとって、ハルヒとは別の意味で生涯忘れないであろう顔がそこにあった。 ……朝倉涼子? 何なんだ?訳がわからない。なんで復活してるんだ?一人を除いて目を丸くして入り口を凝視している。 驚く朝比奈さんも実に愛らしい、写真に撮って起きたい気分だが、今はそれどころではない。 どうでもいいが少しは驚けよ、長門。 「あんた…カナダは?」 ハルヒが訳のわからない質問をしている。 「何のこと?あなた達こんな時間に学校で何してるの?」 それはこっちの台詞だ。何しに出てきた。学校の警備員のバイトでも始めたのか、働き者だな。 瞬間、長門が何か呟いた。よく聞こえなかったが、例の「呪文」って奴だ。同時に明かりが消え、再び点いたときには入り口には誰もいなくなっていた。 なんだ?何をしたんだ、長門? 「何…今の?」 ハルヒが驚き半分、興味半分の器用な顔で声をあげる。あれはいったい何なのか、それは俺が知りたい。 朝比奈さんはもはや放心状態、古泉は胡散臭い笑顔に戻っている。 長門は勿論表情を変えていないが、一言 「……幻覚」 とだけ言った。いくらハルヒをごまかすためとはいえ、それはないだろ長門。 「幻覚…?みんなも見たでしょ?」 「…見ていない」 長門が無茶な否定を始めたが、他にどうしようもないので俺も続いて首を横に振った。 「ん~、おっかしいなあ。確かにそこに朝倉涼子が……まあいいわ。考えてもわかんないし。今日はそれなりに面白かったし。 終わりにしましょ。」 こんなフェルマーの最終定理の証明よりも意味のわからない説明で納得してくれるんですか、ハルヒさん。 お前が、大雑把な奴で良かったよ。 帰りの道中、俺は長門へ説明を求めた。さすがの俺もあれでは納得がいかない。古泉も興味があるようで、 話に勝手にまざってきた。あっちでハルヒの話し相手でもしてろよ。 「残念ながら、涼宮さんは朝比奈さんと話すのに忙しいようですのでね。」 見ると、ハルヒが朝比奈さんへまだ怪談を語っている。もう、いつでも失神する準備万端な朝比奈さんは 半分ハルヒに引っ張られて歩いている。すみません…朝比奈さん。 「…ノイズ」 長門がいきなり蚊の鳴くような声で説明を始めた。 例によってさっぱり意味がわからなかったが、古泉によるとこういうことらしい。 長門は朝倉涼子の情報連結を解除したが、それは朝倉涼子のデフォルトの状態を消去したのであって、 朝倉涼子が長門のあずかり知らない所で得た経験値までは対象となっていなかったらしい。 つまり、1年5組委員長としての朝倉涼子の情報はいまだ学校を彷徨っていて、ハルヒの願いに呼応して現れ、 今さっき長門が、消去したというわけだ。 なあ、それって所謂幽霊じゃないか? 「…そう、通俗的な用語を使用するならば、そういうことになる。」 …笑えない、何故か笑っている古泉の顔をひっぱたきたい気分だぜ。 「遠慮しておきましょう。僕にそういう趣味はありませんから。あ、そうそう、もう電車もないでしょうから帰りのタクシー代は 僕が出しますよ。面白いものを見せてもらったお礼です。」 なにやら、どこかで見たことのあるタクシーを呼び止めて古泉は言った。 「さすが副団長ね。キョンにも見習って欲しいわ。」 真夜中なのにこいつの元気は底なしだな…。朝比奈さんはハルヒを自分の家に招待しようと必至に懇願している。 一人で寝るのが怖いんだろう。俺を誘ってくれれば、インチキパワーを発揮した長門の如きすばやい動きで挙手をして、 二つ返事で引き受けるというのに。 さて、俺も今日はもう眠い。少しばかり癪だが、古泉の好意に甘えてとっとと家に帰って寝よう…電気を点けて。 END
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2723.html
Report.24 長門有希の憂鬱 その13 ~朝倉涼子の手紙~ それにしても気になるのは、涼宮ハルヒが見たという夢。朝倉涼子が出てきたという。そして、あの『手記』を見せられた時の突然の閃き。あの時わたしは、誰かが囁く声を聞いたような感覚を覚えた。 あれは何だったのか。わたしの感覚器の誤作動か。 ここでわたしは、ある仮説に辿り着いた。喜緑江美里にその仮説を伝えると、彼女もそれを支持した。しかしその仮説を検証することはできない。なぜなら、それはわたしの感覚では知覚できないから。 江美里は、あるいは知覚しているのかもしれない。 「わたしが知っているかどうかは、不開示情報です。もし知っていたとしても、それを長門さんに教えるつもりはありません。……意味が無くなってしまいますから。」 わたしが辿り着き、そして検証することができない仮説。 それは情報統合思念体の把握している情報には存在しない概念。むしろ、人間に存在する概念。だから、あえて人間の言葉で表現する。 朝倉涼子は、『あの世』に逝った。 説明を要する。 人間には『宗教』が存在するが、人間の『死』についての概念は宗教によって区々。 代表的なものは、死ねばそれですべてが終わるという概念と、死んだ後、別の世界に行くという概念。わたしの仮説は、後者の説を採用する。 最期のあの日。橋の欄干から飛び降り、『入水自殺』した涼子。あの時彼女は、落水後すぐに、意図的に水を大量に飲み込んだ。ヒトとしての『死』を迎えるために。当時のわたしは、人間の言葉で言えば『動転』していて、正常な判断を下すことができなかったので、そのことに気付かなかった。 しかし落ち着いた今、冷静に当時のログを分析してみると、前記の状況を把握した。あの時の涼子は、情報統合思念体との接続を完全に切断していた。インターフェイスとしての機能を完全に停止させたまま、水中で『呼吸』しようとすればどうなるか。 当然、ヒトと同様に生命活動は停止する。もちろん、その後再接続すれば、何事もなかったように活動を再開できるが、その時の涼子には、その選択肢はなかった。待つのは有機情報連結解除だけ。だから、なぜ涼子がそのような『無意味』な行動を取ったのか、その時のわたしには分からなかった。 呼吸器官を水で満たしても、すぐに『死亡』するわけではない。しばらくは意識もあるし、生命活動は続く。それが急速に生命活動が低下し、死に至る。その過程は、ヒトと同じ。よって、たとえインターフェイスであっても、その瞬間には相当な苦痛を伴う。それなのになぜ。 その考察の結果、辿り着いたのが、前記の仮説。涼子は、人間で例えると『霊魂』として『あの世』で活動しているのではないか。 情報統合思念体との接続を切断した状態では、情報統合思念体は即座にインターフェイスの情報を把握することができない。ほんの僅かながら、情報取得までに時間差が発生する。 涼子は、その時間差を突いたのではないか。『肉体』が機能を停止し、情報生命体だけの状態となって、情報統合思念体に強制的に接続され、情報生命体は回収、肉体は有機情報連結を解除されるまでの、ほんの僅かな時間差。この刹那に、涼子は持てる情報操作能力を総動員して、情報統合思念体が感知できない領域に潜り込み、その管轄から外れることに成功したのではないか。 情報統合思念体が感知できない領域があることを、情報統合思念体は認めないが、わたしは確信している。涼宮ハルヒの能力が作用すれば、そんなことも可能になる。 しかし、ここで一つ問題がある。ハルヒは涼子の消滅を知らないはず。 まさか……涼子単体で? 答えは意外な形でもたらされた。 ある日のこと。全員揃った部室にノックの音が響く。 「どうぞー。」 答えたハルヒの声に、江美里が入室した。 「文芸部宛てに手紙が届いたので持ってきましたよ。」 江美里がもたらした物は、エアメールだった。差出人は……“ASAKURA Ryoko”。 ハルヒに手紙を渡すと、江美里は退室した。 ハルヒは手紙を一瞥すると、嬉々として読み上げた。内容は『近況報告』と言えるものだった。 手紙の締め括りはこう。 ――文芸部部長 長門有希様、SOS団団長 涼宮ハルヒ様へ - To Leader of the literature club NAGATO Yuki, Leader of the SOS brigade SUZUMIYA Haruhi ――SOS団海外特派員(笑) 朝倉涼子より - Than the SOS brigade foreign correspondent -) ASAKURA Ryoko 締め括りは、日本語と英語で書かれていた。 「うんうん、朝倉も、ちゃんとSOS団員としての活動をしとぉみたいやね! ちょっと、キョン! あんたも、少しは朝倉を見習って、もうちょっと活動に気合入れたらどう?」 【うんうん、朝倉も、ちゃんとSOS団員としての活動をしてるみたいね! ちょっと、キョン! あんたも、少しは朝倉を見習って、もうちょっと活動に気合入れたらどう?】 「へいへい。」 『彼』は、肩をすくめながら返事をした。表情には、事情を知っているせいか、若干戸惑いが見て取れる。それは、他の団員達もまた同様だった。 「ん? 何(なん)か入っとぉわ。」 【ん? 何(なん)か入ってるわ。】 ハルヒは同封物に気付いた。彼女は早速それを出してみる。 「これ、何(なん)やろ?」 【これ、何(なん)だろ?】 出てきたものは、栞。……涼子と過ごした最後の日に、涼子がわたしとお揃いで買った物だった。ハルヒもその事実に気付いた。 「そういえばこれ、有希が使ってるのと一緒違(ちゃ)う?」 【そういえばこれ、有希が使ってるのと同じじゃない?】 わたしはこくりと頷いた。 「貸して。」 わたしはハルヒに向けて手を伸ばした。 「有希、これがどうかしたん?」 【有希、これがどうかしたの?】 ハルヒからそれを受け取ると、わたしはそれを少しいじった。 「うわ!? 何(なん)か出てきた!」 「これはUSBフラッシュメモリ。」 ちょうどページをめくるように本型の飾りを操作すると、中から簡素化されたUSB端子が現れる仕組みになっていた。 ここでわたしは思い当たった。別れの間際、最期の瞬間に涼子が遺した一かけらの情報。その情報にはヘッダとして、『器へ』という指示が付いていた。 『器』とは、もしかして、人間が使用するこのストレージデバイスのことではないのか。 わたしは試しに、情報をこのフラッシュメモリに導入してみた。特に変化は見られない。 「じゃあ、早速中を見てみよか。」 【じゃあ、早速中を見てみようか。】 フラッシュメモリをハルヒに渡すと、彼女は団長席のパソコンにそれを接続した。 「うーんと、中身は……よぉ分からんファイルがいくつかと、実行ファイル、か。カチカチっとな。」 【うーんと、中身は……よく分かんないファイルがいくつかと、実行ファイル、か。カチカチっとな。】 「ちょ! おま、ウィルスチェックしてから……っ!」 『彼』が慌てて止めようとするが、時既に遅し。ハルヒは謎の実行ファイルを実行してしまった。何か問題が起きても、すぐに対処できると見て、わたしは静観する。 「ふーん。『分割ファイルの連結プログラム』やって。」 【ふーん。『分割ファイルの連結プログラム』だって。】 しばらくパソコンのファン音が大きくなり、やがて処理が終了した。 「何(なん)かビデオファイルができたわ。ほな、再生するから、みんなこっち来て。」 【何(なん)かビデオファイルができたわ。じゃあ、再生するから、みんなこっち来て。】 団員達を団長席に呼び寄せると、ハルヒはビデオファイルを再生した。 内容は……カナダで撮影したという、涼子からの『ビデオレター』だった。 『――以上、SOS団海外特派員・朝倉涼子がお届けしました! ……なんちゃって♪』 映像の涼子は、そう言うとちろりと舌を出した。 『また、日本に帰ってみんなと会える機会があると良いな。じゃあね。』 手を振る涼子の姿が煌めく砂と化して風に溶けると画面が暗転し、『劇終』の文字が黒い画面に映されて、ビデオは終了した。 この『ビデオレター』は、もちろん捏造。実際のカナダの映像と、涼子の身体構成情報を合成してある。わたしが導入した情報は、どうやら涼子の身体構成情報の一部だった模様。 それにしても手の込んだこと。一体、誰が、何のために? 「普通の手紙に加えてビデオレターとはねえ。なかなか手の込んだメッセージやないの。」 【普通の手紙に加えてビデオレターとはねえ。なかなか手の込んだメッセージじゃないの。】 ハルヒは満足げに頷いている。 「カット割といい仕草といい、撮り慣れ、かつ撮られ慣れしてる感じやね。」 【カット割といい仕草といい、撮り慣れ、かつ撮られ慣れしてる感じよね。】 ハルヒは腕を組んで椅子の背もたれにもたれると、 「これは美味しい逸材かもしれへんわ。今度の映画では、超監督のあたしの下に、助監督兼助演女優として抜擢しよか。」 【これは美味しい逸材かもしれないわ。今度の映画では、超監督のあたしの下に、助監督兼助演女優として抜擢しようかしら。】 「大変結構なことかと。」 「おいおい、まさか映画の撮影のためだけに、カナダから呼び出すつもりか!?」 いつもの通りハルヒの意見に逆らわない古泉一樹と、ツッコむ『彼』。 「さすがにカナダから呼び出すと、映画制作費が足りひんようになるから、次に朝倉が帰国する時やな。その辺の連絡調整はあたしがするから、あんたらは心配せんでええわ。」 【さすがにカナダから呼び出すと、映画制作費が足りなくなるから、次に朝倉が帰国する時ね。その辺の連絡調整はあたしがするから、あんた達は心配しなくて良いわ。】 ハルヒは封筒と便箋をためつすがめつし、 「電話番号とか、せめてメールアドレスくらい書いとけばええのに……エアメールで送るしかないか。今度はすぐに連絡取れるようにしとかなあかんな。」 【電話番号とか、せめてメールアドレスくらい書いとけば良いのに……エアメールで送るしかないか。今度はすぐに連絡取れるようにしとかなきゃね。】 調べてみたところ、その住所は架空のものだった。地名は存在するが、そのような番地はない。 「それにしても、ビデオのラスト、すごい特殊効果やな。CGやろか?」 【それにしても、ビデオのラスト、すごい特殊効果ね。CGかしら?】 それ以外にも、例えば空を飛びながら撮影したような映像や、涼子が分身した映像等、様々な映像が納められていた。まるで、インターフェイスの能力を誇示するかのように。 「どうやって撮ったんか分からへんけど、まるで、朝倉が人間違(ちゃ)うような感じやったな。例えば……宇宙人か何(なん)かみたいな。」 【どうやって撮ったのか分からないけど、まるで、朝倉が人間じゃないような感じだったわね。例えば……宇宙人か何(なん)かみたいな。】 『宇宙人』。その言葉にわたしは驚愕した。驚愕のあまり、『彼』にしか分からない程度に目を見開くくらいに。 涼子は、ハルヒに自分の存在をアピールしている? 忘れさせないように、思い出させるように、教えるように。 まさか。 涼子は、ハルヒの能力を利用して『復活』を企てている? 涼子が情報統合思念体の管轄を離れた独自の情報生命体として活動しているとは、あくまで仮説の域を出ない。検証のしようもない。それに、今この瞬間にも、涼子の存在は検出できない。やはり考え過ぎか。 『抵抗。』 不意に、通信が入った、ような気がした。……涼子? ――――。 返事がない。ただのしかば……いや、何でもない。人間の言葉で表現すると『気のせい』か。後ろを振り返ってみても、何もない空間が広がっているだけだった。 活動終了後。 わたしは、皆が帰った後の文芸部室に江美里を呼び出し、問い詰めた。 「どういうつもり。」 「何のことでしょう?」 江美里は、透き通るような、人畜無害な笑みを浮かべたまま答えた。 「とぼけないで。」 わたしは更に言い募る。 「あなたが、『朝倉涼子の手紙』を持ち込んだ。あれは本来、この世界に存在し得ないはずの物品。」 そう。そのような……『死者からの手紙』など、本来この世界にはあり得ない物。 「わたしは単に、誤って振り分けられた手紙を適切な宛先に届けただけですよ? 感謝されこそすれ、非難される謂れはないと思いますが。」 あくまでとぼけるつもりか。 「あなたの行動は、情報統合思念体に対する『反乱』と解釈されても仕方のない行為。」 「まあ。」 江美里は『驚いた顔』をした。……つまりは、作った表情。 「この銀河を統括する、情報統合思念体に対して『反乱』だなんて……」 江美里は被りを振って、 「わたしみたいな、『ただの人間ごとき』に、そのような大それたこと、できるはずがないじゃないですか。」 ……自分をして、『ただの人間ごとき』? どの口が言うか。 「いひゃい、いひゃい、ひゃへへふひゃひゃい~」 【痛い、痛い、やめてください~】 わたしは、江美里の口に両手の指を突っ込んで横に引っ張っていた。 「ひょんとうのほほははひはふはら~」 【本当のこと話しますから~】 わたしが指を引き抜くと、江美里はさも痛そうに自分の頬を撫でた。 「ふう。」 「本当のことを話して。全部。詳らかに。」 江美里は、しばらく中空に、まるで何かを確認するかのように視線を巡らせた後、口を開いた。 「あなたは、神を信じますか?」 ………… 「は?」 思わず間の抜けた声が出てしまった。あまりにも突拍子もない言葉だったから。 「あらあら。その反応は新鮮ですね。」 ………… 「まあ、今のは軽いジョークです。だから、その手はとりあえず下ろしてください。ね?」 後ずさりしながら江美里は言った。わたしは静かに、再び江美里の口に突っ込もうと臨戦態勢を取った手を下ろした。 「長門さんは、朝倉さんについて、ある仮説に辿り着きましたね。」 わたしは頷く。 「端的に言えば、その仮説は正しかった、ということです。」 涼子は、『霊魂』又は『幽霊』、若しくはこの国の伝統的な宗教によれば、『神』になった。 「そして、情報統合思念体でさえも把握できない次元に潜り込むことに成功したのです。」 荒唐無稽で、俄かには信じ難い話。でも、そう仮定すれば辻褄が合うのも事実。 「潜伏した朝倉さんは、水面下で行動を起こしています。」 様々な形でわたし達に働きかけながら。例えば、消去された記憶を呼び覚ますために夢を見させたり、適切な定義を耳元で囁いたり。 だが、行動を起こしているのは涼子だけではない。わたしは江美里を真っ直ぐに見ながら言った。 「その行動を幇助しているのが、あなた。」 江美里はわたしの視線を真正面から受け止めながら、 「なぜそう思ったのですか?」 と、事も無げに問い返した。わたしは証拠を突きつける。 「あの『手紙』には、同封物があった。」 同封されていた、USBフラッシュメモリが付いた栞を取り出した。 「これは、あの日涼子がわたしとお揃いで購入したもの。」 「市販品ですから、他にも同じものが沢山あると思いますが?」 普通に考えれば、そう。だが、 「同封されていた栞は、市販品ではない。このような機能は、通常の商品には付いていない。」 USB端子を露出させる。本来この飾りには、何の機能もない。だが送られてきた栞の飾りには、USBフラッシュメモリが仕込まれていた。そのように改変されていた。 「その中には、存在しないはずの動画が収められていた。」 主演・朝倉涼子、のビデオレター。 「その動画は、わたしが朝倉涼子から受け取っていた最期の情報を埋め込むことで、完成された。」 涼子の身体構成情報を基に、高度に再現された涼子の映像。 「このような真似ができる者は、涼宮ハルヒを除いて人類には存在しない。」 そしてこのような手の込んだ方法で情報を完成させたのは、恐らく情報統合思念体の目を欺くため。それぞれの端末が持つ情報単体では、何の意味も成さないただのノイズにしか見えない。また、それらの情報を単に情報統合思念体の持つ方法で結合しても、やはり何の意味も成さないようになっていた。 鍵は、栞。 栞に仕込まれた、人間が使用する記憶媒体に、人間が使用する情報機器が取り扱える形で情報を埋め込むと、初めて『人間にとって』意味のある情報が生成されるように断片化し、暗号化されていた。 これは情報統合思念体に対しては極めて有効な隠蔽方法。たとえ情報統合思念体が情報の暗号化を見破って生成された情報を手にしても、情報統合思念体にとってはやはり意味を成さないノイズでしかない。なぜなら、その情報は情報そのものには意味がないから。 これは、情報生命体である情報統合思念体には、なかなか理解できない概念。有機生命体でなければ、理解できないのかもしれない。 この情報を取り扱うためには、情報を『情報』として再生しても意味がない。この情報の送り主の『意図』を再生しなければならない。 『なぜ』このような情報を、『誰』に対して、『どのように』伝達したのか。 これらの点を、送られた情報以外の『状況』から『推理』し、その『趣旨』を『解釈』しなければならない。 情報統合思念体にとって、情報とは『目的』。情報そのものに価値があるのであって、情報を伝える手段等には何ら興味はない。 しかし有機生命体……人間にとっては、情報は時に『手段』となる。 人間が取り扱う情報は、情報統合思念体から見れば、極めて不完全。情報の伝達には常に齟齬が発生する。その点を逆に利用する。 一見正常な、普通の情報があったとする。その情報は、通常の再生方法では、特に変わった意味を持たない。だが、その情報の『背景』から『連想』することで、全く別の情報が生成されることがある。そしてその生成された別の情報こそが、『目的』としての情報である場合がある。 これは、情報に込められた真の情報、メタデータ。ある意味で『偽装』。このような情報の伝達方法は、情報統合思念体等の情報生命体には、考えも付かない。 なぜなら、情報生命体の情報伝達は、完璧だから。完璧過ぎるから。少なくとも同種の情報生命体同士なら、齟齬なく情報を伝達できるから。 人間は、同じ人間同士であっても、情報の伝達には常に齟齬が発生する。これは、情報統合思念体――情報生命体――から見れば、重大な構造的欠陥。しかし人間は、この構造的欠陥を補い、逆に活用する術を見付けた。情報の伝達に齟齬が発生するならば、齟齬を見込んで情報を冗長化して伝達すれば良い。 その冗長化の手段として、伝達する情報そのものには仮の意味を持たせ、本当に伝達したい情報はメタデータに埋め込む。メタデータの再生方法は、人間が最も得意とする情報処理方法……『連想』に拠らせる。 人間の『連想』では、その処理を行う際に『鍵』となる情報によって、再生結果が左右される。もしその『鍵』となる情報を共有する者同士なら、『連想』された情報は極めて高い精度で、時には人間の通常の手段で伝達する情報よりも高い精度で、伝達したい内容を再生する。 しかし、その『鍵』となる情報を共有しない者同士では、伝達したい内容はほとんど再生されない。また、場合によっては、全く逆、あるいは全く別の情報に再生されることさえある。 この特性を利用すれば、人間の持つ程度の情報伝達手段、つまり不特定多数を経由しないと情報を伝達できない仕組みであっても、特定の相手に対して選択的に情報を伝達することが可能となる。また、同様に不特定多数に対して同じ情報を伝達しながら、情報の受け手によって再生結果が異なることを利用して、情報の攪乱を図ることもできる。 これらのことは、別々に行うことも、同時に行うことも可能。 今だから言う。わたしはこの手法を用いて、情報統合思念体に『隠し事』をしていた。朝倉涼子から受け取っていた最期の情報の内容を、この手法で意図的に伏せていた。 理由など説明できない。わたしが伝えたくなかったからとしか言えない。 また、今もわたしは『隠し事』をしているかもしれない。あるいは、もうしていないかもしれない。これも明言はしない。したくないから。 では、なぜわたしは今になってこのような『告白』をしたのか。理由はあえて言わない。言ってしまっては『意味』がない。 情報統合思念体は、これらの点についてよく考えるべき。そうでないと、朝倉涼子の、喜緑江美里の、行動は理解できない。 これは私見だが、この二体の、あるいはわたしを含めた三体のインターフェイスの行動が理解できなければ、人間の行動は到底理解できない。すなわち、情報統合思念体に未来はない。そう思う。 ヒントは、後の報告にあるかもしれないし、ないかもしれない。よく考えてみてほしい。 ←Report.23|目次|Report.25→
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/1392.html
俺設定のキャラとかめんどくさいし、6期とかいいながら5期のキャラばっかりで、 単なる5期の続き物にならないように、どこからともなくあらわれた高嶺響が色々溶かした。 やっぱり新期はこれまでどおり前期のキャラはなるべく自重じゃなきゃね。 「ぉぎょいあういぎゃああがかが」 【南光太郎@仮面ライダー 死亡】 【南明菜@現実 死亡】 【南千秋@みなみけ 死亡】 【南菜月@ドクロ 死亡】 【喜緑さん@空気 死亡】 【三沢@空気 死亡】 【笑点のピンク@空気 死亡】 【朝倉涼子@ハルヒ 死亡】 そことは別の場所でゆたかはようやく治り、目の前の男を殺した。 カオスロワ書き手なのにゆたかを相手に油断したのが敗因だ。 【◆nkOrxPVn9c@現実 死亡】
https://w.atwiki.jp/datui/pages/52.html
名簿 01 相羽シンヤ 02 赤木しげる 03 朝倉涼子 04 朝比奈みくる 05 阿部高和 06 泉こなた 07 岩崎みなみ 08 風見志郎 09 桂ヒナギク 10 門倉雄大 11 ギャバン 12 キョン 13 キョン子 14 古泉一樹 15 修正したあとすぐ熱血~狂気のKX.Hw4puwg 16 城茂 17 涼宮ハルヒ 18 スバル・ナカジマ 19 ゾフィー 20 高良みゆき 21 滝和也 22 タケシ 23 チンク 24 ドラス 25 長門有希 26 渚カヲル 27 初音ミク 28 柊かがみ 29 柊つかさ 30 マサキ・アンドー 31 マリオ 32 ミオ・サスガ 33 南夏奈 34 南光太郎 35 峰岸あやの 36 八雲紫 37 ユーゼス・ゴッツォ 38 ランキング作成人 39 ルイージ 40 ◆6/WWxs9O1s 40/40 顔写真 ┌┤´д`├┐<カオススギルッテレヴェルジャネーゾ!!