約 30,346 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1214.html
Report.11 涼宮ハルヒの遭遇 SOS団集団下校。それは何も変わらない、いつもの光景だった。 「あれっ!?」 涼宮ハルヒは驚き、声を上げた。 「どないしたんや、ハルヒ。」 【どうしたんだ、ハルヒ。】 『彼』が問い掛ける。 「ほら、あそこ、踏み切りの向こう。あそこにおるの、朝倉違(ちゃ)う!?」 【ほら、あそこ、踏み切りの向こう。あそこにいるの、朝倉じゃない!?】 「何(なん)やと!?」 【何(なん)だと!?】 『彼』は驚愕した表情で彼女の指す方向を見た。しかし、その視線はちょうど走ってきた電車に阻まれる。電車が通り過ぎると、そこには誰もいなかった。 「見間違いか、他人の空似と違(ちゃ)うか?」 【見間違いか、他人の空似じゃないか?】 「いや、あれは間違いない!」 こうして、翌日の不思議探索ツアーは、『朝倉涼子の捜索』に決定した。ここでも彼女の力は遺憾なく発揮され、捜索開始から二時間後、わたし達は求める者に遭遇した。 ……朝倉涼子が、そこにいた。 「朝倉っ!」 ハルヒが声を掛けた。『朝倉』と呼ばれた少女は、びくりと身体を震わせて、声の元に身体を向けた。 「あんた、朝倉涼子と違う?」 【あんた、朝倉涼子じゃない?】 「え、は、はい、そうですけど……」 「やっぱりー! 久しぶりやな~、元気してた?」 【やっぱりー! 久しぶりね~、元気にしてた?】 「え? え?」 『朝倉』と呼ばれた少女は、目を丸くして戸惑っている。 「あ、あの……話が見えへんのですけど……」 【あ、あの……話が見えないんですけど……】 「ひどいな~元クラスメイトにそれはないん違(ちゃ)う?」 【ひどいな~元クラスメイトにそれはないんじゃない?】 「えっと……あの、あなた達は誰……ですか……?」 今度はハルヒが困惑する番だった。 「誰……って。あたしは元、北高の1年5組、涼宮ハルヒ。で、こっちが同じく元、北高1年5組のキョン。覚えてへんの?」 【誰……って。あたしは元、北高の1年5組、涼宮ハルヒ。で、こっちが同じく元、北高1年5組のキョン。覚えてないの?】 「覚えてへんって言うか……そもそも『北高』って一体……?」 【覚えてないって言うか……そもそも『北高』って一体……?】 『彼』の紹介があだ名であることについては、本人から以外には誰からも指摘の声は上がらなかった。 「あんた、『朝倉涼子』やんな?」 【あんた、『朝倉涼子』よね?】 「え? ええ、『朝倉涼子』ですけど……」 「涼子ー! 何してんのー?」 【涼子ー! 何してるのー?】 その時、『朝倉涼子』に声が掛けられた。声の主を見て、SOS団一同は固まった。 「あ……有希……」 『朝倉涼子』は、声の主を見て、安堵した声を漏らした。 ……長門有希が、そこにいた。 「どしたん? なんかいっぱい人がおるけど。涼子の知り合い?」 【どしたの? なんかいっぱい人がいるけど。涼子の知り合い?】 『涼子』と呼ばれた彼女は、ふるふると、首を横に振った。 「えっと……全然知らん人達……」 【えっと……全然知らない人達……】 それを聞くと、『有希』と呼ばれた彼女はハルヒに向かって言った。 「えーと、どちらさんか知らへんけど、あんまりこの娘を怖がらさんとってくれる? ナンパやカツアゲにしちゃ男女比率おかしいけど、本人はあんたらのこと知らへん言(ゆ)うてるし。」 【えーと、どちらさんか知らないけど、あんまりこの娘を怖がらさないでくれる? ナンパやカツアゲにしちゃ男女比率おかしいけど、本人はあんたらのこと知らないって言ってるし。】 『有希』は『涼子』をかばうように一歩前へ出ると、続けた。 「もしご不満やったら、わたしが相手になるし。」 【もしご不満なら、わたしが相手になるわ。】 彼女は意志の強そうな眼で、涼宮ハルヒを見据えていた。 「あ、あの……有希。」 「なに?」 『有希』は軽く振り向いて『涼子』の声に答えた。 「わたしは知らへんねんけど、その人、わたしの名前知ってるみたいやねん。それに……」 【わたしは知らないんだけど、その人、わたしの名前知ってるみたいなの。それに……】 そう言って視線をあるところに向ける。 「あんたが知らんのに、相手が名前知ってるなんて、ますます怪し……」 【あんたが知らないのに、相手が名前知ってるなんて、ますます怪し……】 答えつつ、『涼子』の視線を辿った『有希』は、途中で声を失った。視線の先にいるのは、わたし。すなわち『長門有希』。 ……彼女にそっくりな少女が、そこにいた。 『…………』 全世界が停止したかと思われた。沈黙がその場を支配する。 「……つかぬことを伺うけど。」 最初に口を開いたのは、ハルヒだった。『有希』と呼ばれた少女に問い掛ける。 「……なに?」 「あんたは……『長門有希』?」 「そうやけど……何(なん)であんたがわたしの名前知ってんの? それに……」 【そうだけど……何(なん)であんたがわたしの名前知ってるの? それに……】 「ああ、皆まで言わんといて。何が言いたいか、大体分かるから。それにしても奇遇やねぇ。この娘は……」 【ああ、皆まで言わないで。何が言いたいか、大体分かるから。それにしても奇遇よねぇ。この娘は……】 ハルヒはぎこちなく、顔ごとわたしに視線を向けた。 「長門有希。」 わたしはいつも通りの平坦な声で答えた。再びその場を沈黙が支配した。 「これはこれは、えらい光景ですなー……」 【これはこれは、すごい光景ですね……】 古泉一樹が、引き攣った笑顔で言葉を漏らす。わたし達は、再び真っ先に沈黙の状態異常から回復したハルヒの提案により、近くの喫茶店に入っていた。 わたしと『長門有希』、『彼』と古泉一樹と朝比奈みくる、ハルヒと『朝倉涼子』に分かれ、卓の三辺に座っている。 そう。卓の一辺には、まったく同じ外見を持った二人が並んで座っている。そしてその二人は、赤の他人。 「世の中には似てる人が三人いるって言うけど……」 ハルヒは、まじまじと、わたし達を見比べている。 「うーん、不思議な気分やわ。自分の顔が近くにあるって。」 【うーん、不思議な気分だわ。自分の顔が近くにあるって。】 『有希』は、鏡片手に、わたしと自分の顔を見比べている。 「……名前まで同じなんて、すごい偶然ですね……」 『涼子』は、おずおずと感想を述べた。 「今この場におらへんけど、あたしの知ってる人も、あんたとよぉ似とぉし、名前も同じやねんで。最初に声掛けたときは、絶対本人やと思(おも)たもん。」 【今この場にいないけど、あたしの知ってる人も、あんたとよく似てるし、名前も同じなのよ。最初に声掛けたときは、絶対本人だと思ったもん。】 と、ハルヒは『涼子』に言った。 「それで、あんた達はどういう関係なん?」 【それで、あんた達はどういう関係なの?】 「わたし達は、従姉妹。」 ハルヒの問いに『有希』が答える。 「今日はちょっと親戚の集まりがあって、この辺りに来てたんやけど。まさかこんな出会いがあるとは思わんかったわ。」 【今日はちょっと親戚の集まりがあって、この辺りに来てたんだけど。まさかこんな出会いがあるとは思わなかったわ。】 ふに。 ふにふにふに。 『有希』は、わたしの胸を一掴みし、それから自分の胸を掴みながら言った。 「胸の大きさまで同じって……」 「ちょ、ちょっと!? あんた女のくせに、なに女の子の胸揉んどぉ!?」 (あたしの有希に、なに手ぇ出しとぉ!!) 【ちょ、ちょっと!? あんた女のくせに、なに女の子の胸揉んでんの!?】 《あたしの有希に、なに手出してんのよ!!》 あなたがそれを言うのですか、ハルヒさん。 もしわたしが『彼』だったら、そんなツッコミをしていただろう。なお、括弧書き内はわたしが補足した。 「ええやん、女同士なんやし。気にしたらあかん。それにしてもあんたは無表情やなー。」 【良いじゃない、女同士なんだし。気にしちゃだめよ。それにしてもあんたは無表情ねー。】 『有希』は、わたしの口に指をつっこんで横に広げたり、眉尻を下げさせたりして遊んでいる。 (あの娘は長門にそっくりやけど、怖いもの知らず……ある意味ハルヒっぽいな……) 《あの娘は長門にそっくりだけど、怖いもの知らず……ある意味ハルヒっぽいな……》 (ええ、そのようで。) 『彼』と古泉一樹は、小声で会話している。 「それにしても、こんな近所に、そっくりな娘がおるとは思わんかった。引越ししてへんかったら、もっと早(はよ)会えたんかな?」 【それにしても、こんな近所に、そっくりな娘がいるとは思わなかった。引越ししてなかったら、もっと早く会えたのかな?】 「前は近くに住んでたん?」 【前は近くに住んでたの?】 「今は大阪に住んでるけど、四年前までは、宝塚におってん。ほんで涼子が西宮やったから、時々遊びに行っとってんわ。同い年やし。」 【今は大阪に住んでるけど、四年前までは、宝塚にいたの。それで涼子が西宮だったから、時々遊びに行ってたのよ。同い年だし。】 「ふーん。で、涼子ちゃんは、どこ住んどぉ?」 【ふーん。で、涼子ちゃんは、どこ住んでるの?】 「あ、わたしも、今は大阪に住んでます。有希の近所。四年前に引越しました。」 「あー、あと一年ほど早(は)よ会(お)うてれば、もっとおもろい光景が見られたのになー……さっきも言(ゆ)うたけど、あんたにそっくりの同姓同名の娘が、同級生におってん。急に外国……カナダへ転校してしもてんけど。」 【あー、あと一年ほど早く会ってれば、もっと面白い光景が見られたのになー……さっきも言ったけど、あんたにそっくりの同姓同名の娘が、同級生にいたのよ。急に外国……カナダへ転校してしまったんだけど。】 「そんなによぉ似てるんですか?」 【そんなによく似てるんですか?】 「もう似てるなんてレベル違(ちゃ)うで! 同じ人間のコピーかと思うくらいそっくりやねん! 雰囲気とか……ああ、あと声も一緒やわ。」 【もう似てるなんてレベルじゃないわ! 同じ人間のコピーかと思うくらいそっくりなの! 雰囲気とか……ああ、あと声も一緒だわ。】 「……わたしも、よく似ているの。」 『有希』は、平坦な声で話した。 「!? すご! 喋り方を合わしたら同じ声や!!」 【!? すご! 喋り方を合わせたら同じ声だ!!】 「……そう。でもわたしは、彼女の声をほとんど聞いていない。」 『有希』はわたしのモノマネをしている。そっくり。 「わたしの声は、もっと高いと思われる……くくく、ははは、あーっはっはっは!」 『有希』は声を上げて笑い出した。 「あかん、おもろすぎる! ツボにハマってしもた! わたしが無表情やったら、こんな顔なんやな。そんな顔で、わたしのいつもの声で喋るとこ想像したら……ぶはははは! あかん、止まらへん!」 【だめ、面白過ぎる! ツボにハマっちゃった! わたしが無表情だったら、こんな顔なのね。そんな顔で、わたしのいつもの声で喋るとこ想像したら……ぶはははは! だめ、止まらない!】 「くくく……た、確かに、あんたのさっきの声で有希が喋るとこなんて、想像つかへんわ!」 【くくく……た、確かに、あんたのさっきの声で有希が喋るとこなんて、想像つかないわ!】 ハルヒと『有希』は、腹を抱えて大笑いしている。 朝比奈みくる、古泉一樹、そして『彼』は、三人とも明後日の方向を向いている。 しかしわたしには分かる。三人とも肩が震えている。どう見ても笑いを堪えている。三人とも、わたしが『有希』の声色を使うところを想像しているらしい。 ……朝比奈みくるは、先日の実験で、そんなわたしの声も知っているはず。それでも笑えるのだろうか。よく分からない。 そしてわたしの記憶領域にある試論が展開された。ハルヒが言うように、今目の前にいる『長門有希』の声で話すこと。 これは、元々このインターフェイスが持っている声色でもあるので、何の難しいこともない。そして、涼宮ハルヒの退屈を紛らわせるのにちょうど良いと判断した。 「それはこんな感じ?」 わたしは、ある程度抑揚をつけて『長門有希』の声色で話した。表情はそのままで。 『!?』 わたし以外の全員が絶句した。 「ゆ、有希……」 ハルヒが恐る恐る言った。 「あんた……無表情でその声は……ユニーク……」 わたしの台詞を取られた。 よく知る人物によく似た姿かたちで、かつ同姓同名である人物との遭遇は、ハルヒの好奇心を大いに満足させた。特に『長門有希』については、同じ姿の人物が二人並んでいることもあって、しきりに二人を見比べては目を輝かせる姿が見られた。 その後も他愛もない話に花を咲かせ、主にわたしが『有希』とハルヒに玩具にされながら、にぎやかな時間を過ごすうち、彼女達が帰る時間となった。 「今日はすごくおもろい日やった!」 【今日はすごく面白い日だった!】 『有希』はやや興奮気味に、今日の感想を述べた。 「あんまり長いこと家(うち)を空けてると、みんなが心配するし、もうそろそろ帰るわ。」 【余り長い間家(うち)を空けてると、みんなが心配するし、もうそろそろ帰るわ。】 「名残惜しいけど、しゃーないな。」 【名残惜しいけど、仕方ないわね。】 ハルヒと彼女達は、連絡先を交換していた。 「そんなに遠く離れてるわけでもないし、また今度会えたらええですね。」 【そんなに遠く離れてるわけでもないし、また今度会えたら良いですね。】 『涼子』が言った。彼女もとても楽しそうに見えた。 「そやね。有希! って、やっぱり自分と同じ名前呼ぶんは変な気分やな……また今度、遊ぼな!」 【そうね。有希! って、やっぱり自分と同じ名前呼ぶのは変な気分ね……また今度、遊ぼうね!】 「……また、今度。」 わたしは平坦な声で答える。 「ふふふ。今度はカラオケで『有希』ちゃんと有希のデュエットとかしたら面白そうやね。ダブルヘッダーならぬ、ダブルユッキーで。」 【ふふふ。今度はカラオケで『有希』ちゃんと有希のデュエットとかしたら面白そうよね。ダブルヘッダーならぬ、ダブルユッキーで。】 『涼子』はそう言って微笑んだ。 「わたしに似てるっていう、もう一人の『朝倉涼子』さんにも、会(お)うてみたかったなあ。」 【わたしに似てるっていう、もう一人の『朝倉涼子』さんにも、会ってみたかったなあ。】 「そういえばあいつ、急に転校したあと、手紙の一つも遣さへんねんで? たまにはひょっこり一時帰国でもして、顔出したらええのに。」 【そういえばあいつ、急に転校したあと、手紙の一つも遣さないのよ? たまにはひょっこり一時帰国でもして、顔出したら良いのに。】 ハルヒは『涼子』を抱きかかえ、頭を撫でながら言った。 「何(なん)かね、ほんま漠然としてるんやけど、何となく、あいつとはまた会えるような気がすんねん。」 【何(なん)かね、ほんと漠然としてるんだけど、何となく、あいつとはまた会えるような気がするのよ。】 ハルヒに頭を撫でられている間、『涼子』は頬を朱に染め、目を細めていた。 「ほな、また今度! ……ほな、行こか、涼子。」 【じゃあ、また今度! ……じゃ、行こうか、涼子。】 「うん。皆さんもお元気で。もう一人の『朝倉涼子』さんにもよろしく……って言(ゆ)うても、おらへんのか。」 【うん。皆さんもお元気で。もう一人の『朝倉涼子』さんにもよろしく……って言っても、いないのか。】 こうして、彼女達は去って行った。 わたしたちの出自を整理する。 わたし達、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイスは、身体を構成する際、外見は実在する人間を基にしている。端末により若干の改変を行う場合もあるが、基本的には基の人間の姿かたちをそのまま使用している。 もちろん、涼宮ハルヒの身辺に配置されるに当たって支障とならないよう、涼宮ハルヒとは物理的又は時間的に遠くに存在する人間の情報を利用する。 実は端末の開発初期段階では、それまでの基本的な観察結果を基に、全く新規に端末の外見を構成する予定だった。 しかし、計画は頓挫した。いざ実際に作成し、現場に投入してみると、様々な問題が発生した。その時の騒動は情報操作によって、人間の歴史からは完全に消え去っているが、それは凄まじいものだった。人間の世界に存在するもので例えると、『3DCGによって製作されたヴァーチャルアイドル』。そのようなものが実際に肉体を持って街を歩けばどうなるか。街は恐慌状態に陥った。 なお、端末の稼動が軌道に乗った時点で行われた追跡調査で、その時に投入された端末の出来は、『ヴァーチャルアイドル』と呼べるほどの品質ですらなかったことが判明した。情報統合思念体の一部では、人間の言葉になぞらえてその時の試作端末を『モッコス』又は『邪神セイバー』と呼称して揶揄している。言葉の由来は、『フィギュア』と呼ばれる人形の一種で、非常に出来が悪いことで有名になった個体名から。 情報空間においては、仮想も現実も大した区別を必要としない。だから、情報空間に生きる情報生命体である情報統合思念体には、仮想と現実の差が大きな意味を持つ有機生命体の思考に、仮想と現実を踏み越えた外見が大きな影響を及ぼすことは、本質的に理解できなかった。 プロジェクトは暗礁に乗り上げた。どうすればこの状況を打開できるのか。情報統合思念体は、決定的な回答を持ち合わせていなかった。 「人間をそのまま写し取れば良い。」 その時、どこかの派閥が閃いた。 「我々と有機生命体とでは、違いが大き過ぎる。観測初期においては、既存の人間の外見を流用するのが効率的ではないか。」 情報統合思念体の目的は、有機生命体である涼宮ハルヒの観測。これは未知の領域への進出。分からないから理解するために、対象と良く似た構造のインターフェイスを派遣する。しかし、分からないものを作ることはできない。ならば、その最初の一歩はやはり既存のものの流用から始めるしかない。 こうして端末の外見の仕様が固まった。次に問題となったのは、どのような外見を流用するのか。それまでの観測結果によると、対象となる『人間』には、外見的特徴に、いくつかの共通する類型があることが分かっていた。 まず『性別』。これは人間に限らず、多くの有機生命体に見受けられる特徴で、外見だけではなく生命体の増殖にとって重大な意味を持つ特徴。 次に『人種』。これは主に皮膚の色調に代表される大まかな分類。 そして『民族』。同じ人種でも、民族が違うと外見的特徴が変化する。 観測の結果、涼宮ハルヒが生息する地域では、ある人種が圧倒的多数を占める普遍的存在として認識されていた。 そこで端末の外見は、当該対象の生息する地域で圧倒的多数を占める、『日本人』という集合の中から選定されることとなった。 そして涼宮ハルヒの基礎的な観測データを基に、彼女が望む人物像に合致した人間の外見を検索していった。性格は別個に検索し、組み合わせる。こうして彼女が望む性格と外見を持った端末を製作していった。 しかし、最後に難関が待っていた。 彼女に最も近い場所に配置する端末の外見が、見付からなかった。 『見付からない』と表現すると語弊がある。正確には、存在は確認していた。 しかし、彼女の近くに配置するという重要な意味を持つ端末に与えるには余りに彼女に『近い』位置に、その外見を持つ人物は存在した。端末と、端末と同じ姿をした『オリジナル』とが出会ってしまう確率が飛躍的に高くなる。 プロジェクトは再び暗礁に乗り上げた。 「当該対象の移動を確認。『引越し』と呼ばれる現象で間違いない。」 朗報だった。 外見のモデルとするのに最も適した人物が、引越しによって涼宮ハルヒから遠い位置に移動した。それでも隣の『府』と呼ばれる地域に移動しただけなので、若干の不確定要素は残るが、涼宮ハルヒの求める人物像に最も合致する外見を使用することを優先させた。 ――長門有希、承認―― ――朝倉涼子、承認―― こうして、涼宮ハルヒに最も近い位置に配置される端末が生み出された。 長門有希は、隣のクラス、そして文芸部に、朝倉涼子は同じクラス、そして学級委員にそれぞれ配置されることが決定した。SOS団結成の三年前のことだった。 以来、端末と『オリジナル』は、全く接点を持たずに過ごしていった。プロジェクトは順調だった。途中で朝倉涼子が異常動作を起こし、結果、情報統合思念体の許可を受けた長門有希が、朝倉涼子の有機情報連結を解除するというアクシデントもあったが、プロジェクトは概ね目的を達成しつつあった。 しかし、意外な形でわたし達は接点を持った。それが今回の遭遇。これは情報統合思念体にとっても想定外の出来事だった。 情報生命体である情報統合思念体にとっては、『同期』のように未来の出来事を知ることはたやすいはずだが、それでもこの現象は『想定外』だった。その理由は、一端末に過ぎないわたしにはよく分からない。 もしかしたら、情報統合思念体もわたしと同じように、あえて未来と同期しないようにしているのかもしれない。情報統合思念体も、未来に起こる出来事をあらかじめ知りたくはない、と思うことがあるのだろうか。 ←Report.10|目次|Report.12→
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5481.html
「おはようございます。こちらが昨日の夕方、凄惨な殺人事件が起きた現場です。一体、被害者に何が起きたのでしょうか」 TVカメラの前で、女性レポーターが機械的な代名詞で我が家を報道している。 その周囲には、朝だというのにかなりの人だかりができており、「お前ら他にやることないのか?」という気分になるのはなぜなんだろうね。 学校なり会社なり行けよ。もしくは自宅でTVでも見てろ。 本来なら人ゴミはそれほど苦手ではないが、今回ばかりはここの奴らへムカっ腹が立ってしょうがない。 本日の明け方、古泉一樹のクローゼットから剥ぎ取ったジャケットを羽織り、彼の家を出て行った。何て言ったって俺はプチ逃亡者だからな。これ以上長居はできない。 それに古泉一樹の家に入り浸ったとしても、母親を殺したクソ野朗を捕まえられるわけがない。自分の手で決着をつけないと気が済まねーんだよ。 殺人鬼の手がかりが見つかるかもしれず、虎穴にいらずんばな精神で自宅の様子を見に来た。危険は承知だ。 そしてこの人ゴミだ。 「勘弁してくれ」 そりゃ家に入れるとは思ってなかった。もう一度言おう。お前ら他にやることないのか? 「なお、被害者の一人息子である少年は現在も行方不明です。警察は少年を事件の重要参考人として、現在捜索中の様です。以上、現場からでした。スタジオにお返しします」 灯台下暗しって言葉を知ってるか?ま、知らないようだから助かっているんだが。 「……っち。まるっきりゼロから探すしかねーみたいだな」 小気味の良い舌打ちが放たれ、溜息が漏れた。 これ以上はまずいな。リポーターが俺の事を行方不明と言った以上、世間は俺の存在に注意を向ける。そうなったら色々めんどくさいことになるだろう。 踵を返し、ヒマな野次馬集団から離れようとした時だった。 「……あの女……なんでここにいるんだ?」 野次馬の端で、昨日俺が轢き殺しかけた美人女子高生が静かに佇んでいた。 妙だな。北高の始業時間なんか知らないが、光陽園とそんなに大差は無いはずだ。 ウチの始業時間ならあと一時間以上もある。早起きにしては少々苦しくないか? 彼女の長い髪の毛で表情の細部までは伺いしれないが、何だろう。すごく楽しそうにしている気がする。 気にいらねぇ。何が面白いんだよ。 彼女の後を追ってみるか。多分あいつは、この事件の関係者だ。 着かず離れず、彼女を見失わない程度に歩を進めている。だが、間違いなく俺の尾行には気づいているだろう。 少しずつだが、確実に人気がない場所に誘導されている。 住宅街を離れ、今や、郊外にある空きビルがひしめく様に乱立しているエセ心霊スポットにまで足を踏み入れてしまった。 「ねぇ。ちょっと良いかな?」 彼女が背後を振り返らずに語りかけてきた。ちょうど廃材だらけの広い空き地に出たあたりだ。 「なんだよ」 気づかれてることに確信を持てた以上、姿形を隠すのもバカバカしい。身を隠していた廃材から身を乗り出す。 「あなた、自分が何者かわかってて私を追ってるの?」 自分が何者かだって?さあな。母親を惨殺され、その上犯人にされかかってる悲劇の少年Aじゃねーの。 「なぁにそれ」 そこで初めて彼女がこちらを向いた。 その表情は微笑みに歪んでいた。それは今までに見たことないほどの不気味な微笑である。ショーウィンドウのマネキンが無理矢理笑わせられているみたいだ。 「私は自分の役割を実行するだけ」 鈍い煌めきが彼女の手の平で踊る。 「あなたを殺して改変世界を防衛する。じゃあ死んで!」 煌めきが閃光となって襲いかかる。 反射神経だけを頼りに斬撃をバックステップで回避することができた。日頃の行いに感謝しておこう。 「どういうつもりだ」 叫び声を無視するかわりに、返した刃がこめかみに振り下ろされた。 ナイフの軌跡を手の甲で受け止め、 「ちっ!勘弁しろよ!」 利き腕である左腕で、彼女の細い腹にフックを叩き込む。 苦痛に身をよじる彼女の姿に多少の罪悪感を感じたが、ナイフ持って襲いかかる女に同情できるか。 「はぁっ!」 頬に裏拳を繰り出し、何とか距離を取れた。が、 「……いってぇな」 吹っ飛ぶ寸前、彼女は俺の腕に小振りのナイフを突き刺した。古泉一樹には心の中で謝罪しておくとして、この血はどうやって止めておこうか。 「有機生命体の体って本当に脆いなぁ。このくらいで損傷するなんて」 親指で唇の血をぬぐいながら捨てゼリフを吐く彼女に、不覚にも笑いをこぼしかけてしまった。まるで人間じゃないみたいな口振りだな。 現在進行ing形で殺されかけているのに、頭だけは異様に冴え渡っている。何となくだが、こうやって襲われるのが当たり前な気がする。デジャヴって奴か? 「俺の母親を殺したのはお前だろ?どういうつもりだ」 俺の母は、こんな女子高生に恨みを買うようなことをしたとでも言うのか? 「そんなことどうだっていいじゃない。この世界のために死んで」 わけがわからない。なんだこの電波女。 「世界のために死ね?そこまでするほど好きな世界じゃねーよ!」 捨てゼリフと共に、腕に突き刺さったナイフを彼女に投げつける。 彼女はいとも簡単に、それを右手のゴツいサバイバル叩き落とした。だが、 「殺人鬼がぁ!くたばれ!」 ナイフはただの布石。本命は突進と共に繰り出された飛び蹴りだ。うるぁぁぁぁぁぁぁぁ! 靴底が喉元を貫き、彼女のセーラー服が泥まみれとなる。 背中を撃ち、苦痛に顔を歪めている殺人鬼の手に握られたナイフを蹴り飛ばし、エロさの欠片も無い馬乗りポジションを取る。 左腕を振り上げ、一撃。頬を捉える。 母親を殺されたことによる恨みを一撃一撃にブチコミ続ける。 こいつだけは許さない。 女だろうと容赦しない。 自分の行いを、死ぬほど後悔させてやるよ! 「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 確かな殺意が芽生えているのは分かっていた。だけど拳は止められない。 「それが殺意っていうの?いい顔ね」 殺意に我を忘れ、殴ることに夢中になりすぎて重心を前に傾けてしまったのは失敗だった。 顔面を闇に覆われる。その細い腕からは想像もできないほどの握力で、俺の顔の皮膚がめり込んでいく。 強烈なアイアンクローにより、全身から力が抜け、ついには彼女の上から引き剥がされてしまった。 「でも残念。素敵な顔だけど、もう見れないんだもの」 無様に倒れた俺のへその上に、彼女の尻が覆いかぶさる。この形の良く柔らかい感触は、神様の最後の慈悲だろうか。 「防衛プログラム朝倉涼子。当該既定に基き、プログラムを実行する。じゃあ死んで!」 スカートの裾から取り出されたサバイバルナイフの切っ先が、心臓めがけて振り下ろされる。 「がっ!」 間一髪で間に合った。剣閃を手の平で防いだ弊害で、鮮血が顔にかかり、激痛が全身を駆け巡ったが、何とか生きている。 痛みを堪え、無傷な利き手で土を握りしめる。土でも喰ってろ! 「きゃ!もう!なにするのよ!」 口腔内の土を吐き出そうとしている間にマウントを解くことに成功した。っち!ここは退くべきか。 止まらない出血に気を取られながらも、俺の頭では、この町の地図が開かれており、間違いなく北高を指し示していた。 朝倉涼子とか名乗った殺人鬼から辛くも逃げおおせ、ようやく繁華街付近まで戻ってこれた。 「くっそ、いてぇな」 コンビニで買った包帯で右手の平を縛りつけ、出血だけは抑えたが、鈍い痛みだけは先ほどから一向に引かない。破傷風にならなきゃいいんだが。 「……街が騒がしいな」 大通りまで歩いたあたりで、ある違和感を覚えた。そう、街が騒がしいのだ。 普通だろ。西宮市は地下で探鉱火災が続くゴーストタウンでもなければ、灰が舞い散る古びたリゾート地ってわけでもないんだ。昼前のこの時間帯で、静かなわけが無い。 だがな、この騒がしさは異質なんだ。例えるなら、中世ヨーロッパで行なわれた魔女裁判による魔女容疑者の公開処刑を見物するような……ん?なんだありゃ? 「こちらは、昨夜から続いている連続殺人事件の事件現場です。見て下さい、もの凄い人だかりです。あ、たった今、救急車が被害者の遺体らしき物を搬送を開始したようです」 ここでも殺人事件だって?おいおい。あの女、一体何人殺したんだ? テレビリポーターと撮影クルーと思われるグループは、そのまま警察官の群れまで突撃していくのを見ながら、俺はあることを考えていた。 あの女……朝倉涼子の目的はなんだ? 人なんか殺したこともないから分からんが、殺人がマズイってことぐらい俺だってわかるさ。 それに殺人なんて物は冷静に考えれば分かる通り、リスクがでかい上にデメリットしかない。 一番の理由として死体の処理だ。あんなかさばる物は、どうやったって隠せるわけが無い。燃やそうが埋めようがすり潰そうが、痕跡をゼロにするなんて不可能だ。実際隠してないしな。 だが朝倉涼子は、何の躊躇いもなく殺人を行なっているようだ。何故だ?切り裂きジャックにでもなったつもりか? 殺人鬼が殺人をする理由など知りたくないが、知らなければならないような気がする。あーあ、気持ち悪い。 「動くな」 研ぎ澄まされた日本刀のように鋭い声。肩に置かれた熱原。それらが俺の逃亡を阻止させようとしている。 「私から逃げるとはいい度胸だな。ええ?少年A」 できれば二度と聞きたくなかった声ベスト5には入る人物が、俺の息の根を笑顔で止めるかのように睨みつけている。 「これでわかったでしょう?俺は連続殺人なんか知らない。だから母を殺したのも俺じゃない」 相手が顔見知りなら動機なんかいくらでもこじつけられるだろう。 だが相手を知らないなら殺す動機などあるか。だから手を離してください。母の殺害と、そこの某さんの殺害が繋がっているなら俺は無実だ。 「疑われる行動をした君にも問題があると思うけど?取調べ中の逃走とか」 まだ根に持っていやがる。 「俺は俺の手で決着をつけたいだけです」 そこまで言うと、若い女刑事は俺の肩から手を離してくれた。 「なら改めて捜査協力を要請する。少し時間をよろしいかしら?」 「何なりと。森警視」 森園生に連行された場所は、客足のピークが徐々に始まりそうになっている小さなカフェであった。あ、すいません。アイスコーヒーと、このベーコンレタスサンドイッチお願いします。 ウェイトレスのお姉さんに遅めの朝食を頼み、煙草に火を点ける。 「おいこら」 「え?ここって禁煙席でしたっけ?」 「そうじゃなくて。君はまだ……いや、その件に関しては後にしよう」 一体なんだ?森園生も喫煙者なのだろうか?そうなら意外だ。あまりイメージがわかない。 「それでは話に入ろう。昨夜から起きている一連の連続殺人事件について、君はどこまで知っているんだ?」 どこまで知っていると言われてもな。ついさっき容疑者に殺されかけたが、殺人動機も殺害方法も、何にも知らないんだが。 「……これを見てください」 くわえていた煙草を灰皿に戻し、包帯を巻き巻きである右手の平を彼女に見せた。 包帯を解いて新品同様の傷口を見せた。しかし慣れているためか、眉を一瞬潜めただけで、動揺することなく注視している。 「ついさっき、街外れの廃材置き場で襲われました。加害者の名前は朝倉涼子。北高のセーラー服を着た女子高生です」 適切な処置を行えたおかげで破傷風にはならないだろうが、痛みだけはどうにもならない。平静を装っているが、痛い物は痛いんだよ。 「北高か。あんな何の変哲もない県立高校に、そんな暴漢……と言っても女性だが、居るとわね」 森園生の放った「暴漢」と言う言葉に、少しだが後ろめたさを感じた。尾行して襲ったなんて、良く考えた俺のほうが暴漢じゃねえか。 しかも返り討ちだし。本当に情けない男だな。何やってんだか。 すると森園生はジャケットの胸ポケットから携帯電話を取り出した。 「こちら森園生だ。新川、今すく調べてほしい人物がいる。名前は朝倉涼子。歳は16歳から18歳。北高の女生徒だ」 要件だけを伝え、あっさりと電源を落とした。仕事の要件を伝えるだけなら良いだろうが、これでは新川警部さんが少しだけかわいそうになってくる。 「俺を解放してくれるのですか?」 期待なんかしてないさ。 当然、彼女は否定の動作を示した。ほらね。 なぜなら今まで俺が森園生に証言したことは、全て俺の一方的な言葉だ。優秀な刑事である森園生が、それを鵜呑みにするわけが無い。警官としてできないのだ。 かと言って俺が加害者では無い可能性が出ている以上、それを真っ向から否定するわけにもいかない。証人としてなら「生き残った被害者」と言う最高の証拠なのだからだ。 さあ、サイコロの目はどう出る?今ならルーレットの前に居座るギャンブラーの気持ちがよくわかる。相手の挙動に全神経を預けている気分だ。 「今すぐ朝倉涼子の住所を割り出すから、君も着いて来なさい。このまま現場を荒らされるくらいなら、私の目が届く場所にいてもらう」 この提案には乗っておくべきだろうか?こうは言ってるが、一応は任意同行である。断ろうと思えば断れるはずだ。 だが、理由はどうあれ、朝倉涼子を見失ったのも事実である。 一匹狼気取りで北高に張り込んでもいいが、それでは襲われた時にどうなるかわからない。 次は手の傷だけで済まないかもしれないしな。それなら国家暴力もとい国家権力に守ってもらった方が良い。警官なら目の前で起きた障害事件を見逃すなんてことはしないはずだ。 他人の力を当てにするとは男として情けないが、殺されるくらいなら地べたを舐めようが生き延びてやる。 ウェィトレスが運んで来たサンドイッチをコーヒーで流し込み、席を立つ。 会計時、森園生の手に渡されたレシート代わりの領収書には、『兵庫県警様』と書かれていた。 黒塗りスモークなタクシーでたどり着いたのは、正午過ぎの高級分譲マンションだった。 「このマンションの七階に朝倉涼子が住んでいるらしいわ」 付近の土地勘が薄い俺でも知っている程の高級マンションだが、にわかには信じがたい。こんな場所に殺人鬼が住んでいるのか? 戦争をギリギリ知っていそうなじいさん管理人にロビーを開けてもらい、エレベーターに乗り込む。 「君はどう思う?」 多分、捜査中の退屈しのぎだ。じゃなきゃ、一般人である俺なんかに意見を求めるわけない。 「殺人事件にタダもクソも無いでしょうが、普通の事件じゃないでしょう 」 この事件で最も不可解なのが「被害者の関連性」である。 森園生が言うには俺の母親は第一の被害者だったようだ。その後、日が変わるまでに二人、深夜未明に五人、明け方に二人、合計で十人が凶刃によって殺害された。 その被害者についてだが、これまた無差別に近いらしく、主婦、サラリーマン、高校生、ショップ定員などバラバラ。 最初の数人ならば逃亡中に止むなく……なんて考えられなくもないが、ここまで来ると、狂ってるとしか思えない。 『あなた、自分が何者かわかってて私を追ってるの?』 ならあの言葉……あれはなんだ?朝倉涼子は俺のことをわかってるのか? じゃあ、俺は一体なんなんだ? 「もしかしたら、殺害が目的では無いのか?」 自問自答に終止符を打ったのは、森園生だった。 「一連の事件は全て脈絡が無い。その上関連性も無い。いや、正確にはわからないと言った方が正しいか。ならば、「殺人を主観において考える」のではなく、「殺人は副産物」ととらえたら……」 それは盲点だった。つまり殺すことが目的ではなく、目的を達成するために、殺人を行なっていたというわけか。 殺人事件はあくまでオプション。本当の目的はもっと別に、 「到着したようだわ。着いてきなさい」 まぁいい。それは時期にわかることだ。あんまり気乗りはしないがな。 七階というわけで、結構な眺めの良さである。この眺めも高級分譲マンションたらしめる所以だろうか。 「鍵は……かかっているわね。えーとカードキーカードキー」 森園生は豊満な胸を覆っているジャケットの内ポケットに手を滑らした。だが、 「鍵なんか必要ないですよ」 一撃。スニーカーの裏が分厚い扉へ叩き込まれる。おー、かってぇなー。 「器物破損は確か何年の懲役だったかしら」 殺人鬼に礼儀なんかいるか。 ちょうつがいとキーロックが跳ね飛んだドアを跨ぐ。 すると意外なほどキレイに片付けられた普通のリビングが顔を見せた。うちの居間より畳二枚くらい広いかな。 「新川の報告によると、朝倉涼子は北高に通うために親元を離れて一人暮らしをしているらしい」 「一人暮らしですか?北高に?」 妙な話だ。親元を離れて高校に進学するのは別段珍しくないだろう。光陽園にも一学年に一人くらいの割合でいるしな。 だが北高だぞ?どこにでもある普通の県立校に、わざわざ親元を離れて通学なんかするか? 「……ちょっとストップ。あそこの部屋から、なにか聞こえないか」 彼女の指が隣の和室を指し示す。 俺も片手を耳元に添え、より多くの音を拾えるように構えた。 「これは……電子音ですかね」 耳を澄ますと、微かに電子と電子が共鳴するような耳につく音が流れてきている。ゲーム機か、もしくはパソコンか? タイトスカート裏にエロくくくりつけられた拳銃を握り締め、森園生は一歩一歩静かに和室に進んでいく。 勢い良く襖がスライドされ、和室が開け放たれた。 「パソコンか。電源点けっぱなしなんてだらしないわね」 質素な和室には、最新機種より三世代くらい型遅れのノートパソコンが開いたままテーブルに置かれていた。 おかしい。パソコンに繋がっている電源アダプターは冷たい。 「……これ、起動したのは数分前ですよ。アダプターに熱がたまって無いです」 これがもしも朝から点けっぱなしだったら、アダプターは熱いはずだ。 それなのに俺が握っているそれは、プラスチックの常温のままである。つまり、 「つまり、誰かが使おうとした」 「もしくは、俺たちが来ることがわかっていたのかもしれません」 考えられるのは二つ。一つは森園生が言うように、誰かが直前までここにいた。 その場合、立ち上げた直後に俺たちが来たので、一目散に逃げた場合が考えられる。 ならどこに逃げた?ここは七階だぜ?俺でさえ三階のが限界なんだ。いくら身体能力が高くても、倍以上ある高さから逃げるなんて無理だろう。人間には。 かと言って隠れているとは思えない。気配がまったくしない上、玄関以外に逃げ場の無いマンションの一室の、どこに隠れると言うんだ。すぐに見つかる。 もう一つは、俺たちの登場にあわせてタイマーが作動したことだ。しかしそれは俺たちがここに来ることを正確な時間で予測してなければできない芸当だ。 「どっちにしろ、こいつに手がかりがあることには変わりないでしょう」 パスワードによるロックがかかっているわけでもなければ、特殊な仕掛けで爆発する気配もない。 「調べてみましょう。きっと、なにかわかるはずです」 森園生はピストルを股の裏に返し、パソコンの前で女の子座りをした。 俺、あんまりパソコン詳しくないからな。お願いします。 「別に変わったデータはなさそうね。変にいじくっているわけでもなく……あら?」 デフォルトの壁紙の上に表示されているアイコン達。その中で、マウスのカーソルが「ワードパッド」に合わせられた。 「それがどうかしたのですか?」 「いや、単なる個人的趣味だ。こう見えて私は生粋の活字屋でね。どんな文章が書いてあるか読んでみたい」 そう断りを入れてからアイコンをダブルクリックする。あなた結構楽しんでるでしょう。 「なんだつまらん。保存データは一つだけか」 やっぱり。絶対楽しんでる。とは言えなかった。 「……なっ!」 保存されていたデータの名前を読んだ瞬間、心臓が大きく脈打った。なんだこれ。どうなってやがる。 『涼宮ハルヒの憂鬱』 涼宮ハルヒ。俺の数少ない友人の一人の名前が何故?涼宮ハルヒと朝倉涼子は知り合いなのか? 「森さん。それ、読ませてください」 俺の空気を察したのか、森園生はあっさりとタイトルをクリックしてくれた。 「涼宮ハルヒの憂鬱」の内容は、主人公である男子高校生が、新学期にたまたま後ろの席に座っていたヒロインである涼宮ハルヒに目をつけられたのが始まりだ。 その後、彼は涼宮ハルヒが発足した同好会に無理矢理入会させられ、面倒だと悪態をつきながらも生活をしていく平凡な話だ。 分類的には青春ラブストーリーになるのか?いや、この手のラブストーリーはそんなに読んだことないからよくわからんが、どこにでもありえる話だと思う。 だが、この物語の登場人物に注目してみよう。俺が知ってる奴らが何人もいるのは何故だ? 涼宮ハルヒは物語のヒロインだし、古泉一樹は主人公の親友であり恋敵で、朝倉涼子にいたってはヤンデレ要素を持ち、主人公に襲いかかってくる。 「執筆者は長門有希と言う名前らしいわね」 その筆者である長門有希も、この作品には登場してくる。役柄は主人公に恋をしている無口な文芸少女だ。 それにしてもこの主人公はモテモテである。この他にも、同じ同好会員である朝比奈みくるにも惚れられ、なんと中学時代にも恋人がいたらしい。 どんだけやりチンなんだよ。実在してたら絶対ボコッてやる。この女の敵が。 「……ん?なんだこの不自然な改行は?」 物語終盤、主人公と涼宮ハルヒが学校に閉じ込められたあたりで、真っ白い行が数十個も続いている。 ここから先はまだ執筆途中かと思ったが、下にスクロールしていけば続きが読める。 この学校に閉じ込められる展開だけが、ポッカリと抜け落ちているのだ。思いつかなかったのだろうか? 「あぁ、これは反転文字ね」 「反転文字?」 「ゲームの攻略サイトとかでネタバレを防ぐためによくやる方法よ。こうやって文字の色を背景と同じ色にすることで、文字を読めなくするのよ」 よくもまぁ面倒なことを思いつくもんだ。どうやって読むのですか? 「こうやってマウスで文全体をドラッグすれば……あら?」 白抜きの文章に青い色が塗られていくと、ある物が浮んだ。 「……何ですか?コレ」 それは文字と記号だけで表現された謎のマークだった。顔文字の高度な奴と言えばわかるだろうか?これ一個つくるのに、何時間かかるんだ? 「これはアスキーアートよ。君も見たことくらいはあるでしょ?インターネットとかでよく見かける記号の羅列によるイラストよ」 あのgj!とかって奴ですか? 「……まぁそれでいいわ」 しかし、こういうのを作るのって、どんだけ時間がかかるんだ?すごいとは思うけど。 ところでこれはなんて書いてあるんだ?キレイなうずまきの中に、SOSと書かれているようだが、救難信号のつもりか? 「クソ……何だか目眩が……」 頭の中で、うずまきがぐねぐねと襲いかかってくる。気持ち悪い……いつから俺の目はトンボの目になったんだ。 「大丈夫?」 「……早くここを出ましょう。少し気分が悪くなってきました」 クソ。気持ち悪い。 「あーあ、誰かさんがドアを蹴破ったせいで玄関が歩きにくいんですけど」 文句言わないでもらいたい。フラストレーションがたまってたのでガス抜きしただけです。森さんだってたまっているでしょうが。さっきから顔怖いですよ? だがその質問は森園生の鼓膜が通過を拒否したようで、何も答えなかった。 あの後、一通り部屋を調べたものの、事件が好転するような証拠品及び手がかりは何もでなかった。つまり無駄足。機嫌が悪くなっても無理は無い。 「……あれ?」 壊れた玄関を踏み分け、敷居から一歩抜け出た瞬間に違和感を感じた。 「変ね。誰もいないのかしら?」 静寂。静かすぎるのだ。 高級分譲マンションとは言え、今は昼だぞ?もう少し喧騒と言うかざわめき見たいな物があってもいいはずなのだが。静かすぎることで耳が痛くなるなんて初めて知ったぞ。俺は。 「森さん。何だか嫌な予感が……森さん?!」 隣を歩いていた森園生が、一歩前に出た。いや、出たのではなく…… 「森さん!?しっかりしてください!森さん!」 彼女の背中に突き立てられていたのは、銀のサバイバルナイフ。それが森園生の血を吸って、赤黒く輝いていた。 「酷いなー。私の家を壊さないでよ」 「朝倉ぁっ!」 意識するよりも早く、拳が朝倉涼子の頬を歪ませた。 「ん、はぁっ!」 カウンター気味に繰り出されたナイフが、かろうじで空を切る。 まずい。さっきこそ何とかかわすことができたが、こんな狭い廊下じゃ、じきに直撃する。そしてそれが心臓の可能性だってあるんだ。 斬撃の檻に囲まれている中、汗だけが妙に冷たい。チクショウ! 「あぁぁぁぁぁぁ!」 意を決して、右手でナイフを掴んだ。くそ!いってぇな! 「痛くないの?そんなわけないわね。呼吸が荒いわよ」 包帯を伝い、ジャケットの袖口にこぼれた血が熱い。 「黙れ!」 激昂し、爪先を端正な顔面に叩きつける。 「残念。外れぇ~」 朝倉涼子が愉快に微笑んだ瞬間、俺の足がコンクリートにナイフで貼り付けられた。 「ぐがぁぁ!」 「いい声で鳴いて」 足の甲に突き刺さったナイフの柄をグリグリと踏みつけられた。このクソ女ぁ! だが、罵声を絞り出そうとも、悲鳴が勝手に放たれてしまう口がもどかしい。 「ほ~ら、うずくまった。さよなら!」 切っ先が頭上に振り下ろされる。 クソ!なんで俺がこんな目に合わなならん!俺の物語は、ここで終わるのか!? ちくしょう……俺はなんて無力なんだ。親の敵が目の前にいるって言うのに、何にもできないなんて…… 「さよならは、あんたよ!」 銃声が、静かすぎるマンションの時を動かした。 「武器を捨てなさい!朝倉涼子!」 森園生は生きていた。そして片手で銃を構えるその姿は、一流映画スターにも引けを取らないほどに決まっている。 「そのまま死んでれば良かったのにな」 弾は朝倉涼子のナイフを持っていた肩に着弾したので、俺に突き刺さることなく吹っ飛んでくれた。しかしなんでこいつはこんなに平然としていられるんだ? 「今のは威嚇射撃だ。次は外さない!」 「やってみれば」 警告を無視し、朝倉涼子は剣閃を煌かせた。 さらにもう一発、銃声がリピートされる。 「なっ!?」 だが、弾丸は朝倉涼子には当たらなかった。なぜなら、 「無駄よ。そんなおもちゃ」 着弾の直前、ナイフの腹が弾丸を受け止めているからだ。って!どこのハリウッド映画だよ! 「くそ!くそ!くそ!くそ!」 森園生の悪態と共に放たれる弾丸だが、それらは全て、ナイフの腹で阻まれ、コンクリートに落とされていく。ちっ!こうなったら! 足の甲に刺さったナイフを引き抜く。途端、全身に激痛が走り、勢い良く血しぶきが舞ったが、痛みは生きてる証拠だ。 「うるぁぁぁぁぁぁ!」 コンクリートの廊下と平行して飛翔するナイフが、朝倉涼子に向かっていく。 「邪魔よ」 当然、俺の投げたナイフは朝倉涼子によって、いとも容易く叩き落された。だが、 「でかした!」 歓喜の声が放たれ、同時に、弾丸が朝倉涼子に着弾した。 朝倉涼子の身体能力がどんなに優れていようと、彼女はナイフを一本しか握っていなかった。 ならば、一瞬でもナイフさえ使えなくしてしまえば、絶対に当たるはずだ。 「ここは逃げましょう!」 森園生の手を引き、背後のエレベーターまで一気に駆け出す。あのバケモノが、こんな楽にくたばるとは思えない。 残り五歩。 残り四歩。 三歩。 二歩。 一歩。 「このポンコツ!早く来いよ!」 パネルをどんなに乱打しても、エレベーターが到達するスピードは変わらないが、この数秒の間がもどかしい。 早く来い早く来い早く来い!バケモノがすぐそこにいるんだよ! 「来た!森さんも早く乗ってください!」 転がり込むように七階に到達してくれたエレベーターに乗り込み、握っている手を中に引き摺りこんだ。 「くはぁぁぁぁ!」 森園生の端正な唇から悲鳴が漏れた。 「だーめ。だってあなたはここで死ぬんだからね」 視界の奥で、朝倉涼子は野球部のエースピッチャーみたいな投球モーションをしていた。 森園生の上着の背中には赤色が滲みすぎて、もはや何色だったのか判別すらできない。 彼女が乗り込めば閉るはずだったドアが、無情にもぽっかりと口を開いている。 「……大丈夫よ……私が絶対に……助けてあげるからね……」 息も絶え絶えに、彼女は力なく呟いたが、瞳だけは強い光を放っていた。 なんでここまでしてくれるんだよ。そう思ったが、彼女は警官だ。警官である以上、正義の味方でなければならない。彼女にとって、これは当たり前の事なのだ。 「だからって!そんなに傷だらけになってまで身体張ることなのかよ!?逃げ出せばいいじゃないか!俺なんかほっといて命乞いしろよ!自分が一番可愛いと思えばいいだろ!?死んだって何も残らない!違うか!?」 だが俺の叫びは、森園生の繰り出した強力な張り手が胸を強打し、背中壁に打ち付けて阻まれた。 傷の痛みと咄嗟に起きた出来事のため、立ち上がるのに時間がかかった。待ってくれ!まだ乗って無い客がいるんだ! 「じゃあね。悪ガキ君」 目の前で閉ざされた鉄ドアは、穏やかで暖かい微笑みと対比され、異様に冷たかった。 「森さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」 狭いエレベーターの中で響く情けない男の声が、無性に腹が立った。 第三章へ続く
https://w.atwiki.jp/animerowa/pages/65.html
【うたわれるもの】からの出典 ハクオロの鉄扇 本編ではアルルゥに支給。 いくつもの鉄片を組み合わせた戦闘用の扇。 仕込み刃が出るようになっており、毒を流し込む溝もついている。 弓矢 本編では朝倉涼子に支給。 双子の兄弟であるドリィとグラァの持ち物。 トウカの日本刀 本編では朝倉涼子に支給。 正式名称は「疾風」と言うらしい。 エルルゥの薬箱 本編では朝比奈みくるに支給。 治療系の薬はなく、入っているのは筋力低下剤、嘔吐感をもたらす香、 揮発性幻覚剤、揮発性麻酔薬、興奮剤、覚醒剤などアブナイものばかり エルルゥの傷薬 本編では北条沙都子に支給。 治療用の薬草セット。 オボロの刀 本編ではアーチャーに支給。 二刀流のオボロが用いていた刀であるため、2本セットで支給された。 カルラの剣 本編ではキャスカに支給。 彼女曰く、「それは剣と言うにはあまりにも大きすぎた 大きくぶ厚く重く そして大雑把すぎた それはまさに鉄塊だった」とのこと。 「絶対に折れず、曲がらず、刃こぼれしない剣」という注文の元に作られた剣で、見た目はなまくら。 斬るというよりも、叩き割るというような使われ方をする。 元々の持ち主であるカルラは、これを軽々と振り回すことができる。
https://w.atwiki.jp/ln_alter2/pages/107.html
第一回放送までの死者 時刻 名前 殺害者 死亡作品 死因 深夜 長門有希 紫木一姫 015 栞――(死因) 斬殺 深夜 甲賀弦之介 浅上藤乃 018 バロール 扼殺 黎明 吉田一美 白純里緒 039 勝者なき舞台 爪による斬殺 黎明 高須竜児 紫木一姫 042 ドラゴンズ・ウィル 斬殺 早朝 筑摩小四郎 朝倉涼子 059 ユケムリトラベル 人類五名温泉宿の旅 刺殺 早朝 北村祐作 師匠 059 ユケムリトラベル 人類五名温泉宿の旅 刺殺 早朝 榎本 伊里野加奈 062 南の島 射殺 早朝 黒桐幹也 姫路瑞希 070 ラスト・エスコート 斬殺 早朝 アリソン・ウィッティングトン・シュルツ シズ 071 いつか、届く、あの空に。 刺殺 早朝 メリッサ・マオ シズ 078 銃と刀 斬殺 【残り50人】 殺害数 順位 該当者 人数 このキャラに殺された人 生存状況 スタンス 1位 紫木一姫 2人 長門有希、高須竜児 生存 マーダー(奉仕) シズ 2人 アリソン・ウィッティングトン・シュルツ、メリッサ・マオ 生存 マーダー 3位 浅上藤乃 1人 甲賀弦之介 生存 マーダー(無差別?) 白純里緒 1人 吉田一美 生存 マーダー(他の目的優先) 朝倉涼子 1人 筑摩小四郎 生存 マーダー(奉仕) 師匠 1人 北村祐作 生存 マーダー 伊里野加奈 1人 榎本 生存 マーダー(奉仕) 姫路瑞希 1人 黒桐幹也 生存 対主催
https://w.atwiki.jp/haruhi-2ch/pages/31.html
カラオケの情報 カラオケでの配信情報等 プレミアムDAM 恋のミクル伝説 冒険でしょでしょ? ハレ晴レユカイ God knows...以上4曲はアニメ映像配信。 なお、ネットに接続していないプレミアムDAMや『CyberDAM』は映像配信されません。 以下他配信曲 風読みリボン うぇるかむUNKNOWN パラレルDays SOSならだいじょーぶ 雪、無音、窓辺にて SELECT? 見つけて Happy Life 時のパズル 青春いいじゃないかっ! めがっさ好奇心 小指でぎゅっ! COOLEDITION fix mind 妹を忘れちゃおしおきよ まっがーれ↓スペクタクル 倦怠ライフリターンズ 最終未来をみせて! 運命的未来の幸福 First Good bye ハレ晴レユカイ鶴屋さんver. ハレ晴レユカイ朝倉涼子ver. ハレ晴レユカイ喜緑江美里ver. ハレ晴レユカイキョンの妹ver. ハレ晴レユカイ古泉一樹ver. ハレ晴レユカイキョンver. 空前未満は見せないで Greed s accident みらくるアンコール BE BE BEAT!! だって地球が回るから Wonder trip ソノママJET JUMPER アイム・フリーダム JOY STATION 恋のミクル伝説 冒険でしょでしょ? ハレ晴レユカイ God knows...以上4曲はアニメ映像配信。 以下他配信曲 風読みリボン うぇるかむUNKNOWN パラレルDays SOSならだいじょーぶ 雪、無音、窓辺にて SELECT? 見つけて Happy Life 時のパズル 青春いいじゃないかっ! めがっさ好奇心 小指でぎゅっ! COOLEDITION fix mind 妹を忘れちゃおしおきよ まっがーれ↓スペクタクル 倦怠ライフリターンズ 最終未来をみせて! 運命的未来の幸福 First Good bye ハレ晴レユカイ鶴屋さんver. ハレ晴レユカイ朝倉涼子ver. ハレ晴レユカイ喜緑江美里ver. ハレ晴レユカイキョンの妹ver. ハレ晴レユカイ古泉一樹ver. ハレ晴レユカイキョンver. 空前未満は見せないで 涼宮ハルヒの憂鬱メドレー(/冒険でしょでしょ?/パラレルDays/雪、無音、窓辺にて。/見つけてHappy Life/恋のミクル伝説/God knows.../Lost my music/ハレ晴レユカイ) UGA 風読みリボン うぇるかむUNKNOWN パラレルDays SOSならだいじょーぶ 雪、無音、窓辺にて SELECT? 見つけて Happy Life 時のパズル 青春いいじゃないかっ! めがっさ好奇心 小指でぎゅっ! COOLEDITION fix mind 妹を忘れちゃおしおきよ まっがーれ↓スペクタクル 倦怠ライフリターンズ 最終未来をみせて! 運命的未来の幸福 First Good bye ハレ晴レユカイ鶴屋さんver. ハレ晴レユカイ朝倉涼子ver. ハレ晴レユカイ喜緑江美里ver. ハレ晴レユカイキョンの妹ver. ハレ晴レユカイ古泉一樹ver. ハレ晴レユカイキョンver. 空前未満は見せないで
https://w.atwiki.jp/niko2/pages/111.html
キョン 【元ネタ】 涼宮ハルヒシリーズ 【参考動画】 涼宮ハルヒの憂鬱 アニメ本編他 【キャラ紹介】 北高の普通の男子高校生、本名不明。 涼宮ハルヒに選ばれた人間なのでもしかしたら特別な力を持っているかもしれない。 【関連人物への呼称】 一人称→俺 二人称→お前、あなた等 涼宮ハルヒ→ハルヒ 谷口、古泉一樹、長門有希→名字をそのまま呼び捨て 朝倉涼子→朝倉さん 以下、本ロワでの動向(ネタバレ) + 開示する 初登場話 00 本日は──動画にごアクセス頂き スタンス 対主催 現在状況 1日目・深夜の時点で死亡 現データ 49 俺のターンはまだ終了してないっぜ!時点 阿部高和に薔薇を散らされたショックで死亡、哀れ。 キャラとの関係 名前 関係 解説 初遭遇話 涼宮ハルヒ 仲間 SOS団の仲間。 未遭遇 古泉一樹 仲間 SOS団の仲間。但し別世界の人間。 未遭遇 暗黒長門 仲間 SOS団の仲間。但し別世界の人間。 未遭遇 朝倉涼子 敵対 クラスメートにして敵。 未遭遇 谷口 友人 クラスメート。見捨てられる。 06 阿部高和はキョン君の大切なものを盗んでいきました キョンの妹 兄妹 実の妹。 06 阿部高和はキョン君の大切なものを盗んでいきました 阿部高和 敵対 アッー!される。 06 阿部高和はキョン君の大切なものを盗んでいきました
https://w.atwiki.jp/ln_alter2/pages/49.html
◆MjBTB/MO3I氏 投下した作品 No. タイトル 登場人物 011 龍虎の拳 師匠、朝倉涼子 025 零~zero~ 朝比奈みくる、土屋康太 030 鬼畜眼鏡 水前寺邦博、島田美波 031 星をみるひと 伊里野加奈 040 CHALLENGER キョン、メリッサ・マオ 044 NINJA GAIDEN 薬師寺天膳 054 奇々怪界 シャナ、櫛枝実乃梨、木下秀吉 060 はじまりの森 キノ、吉井明久 065 SIDE BY SIDE 水前寺邦博、島田美波 070 ラスト・エスコート (前編)ラスト・エスコート (後編) 姫路瑞希、黒桐幹也 079 ルドラの秘宝 坂井悠二 086 FRAGILE ~さよなら月の廃墟~ シャナ、櫛枝実乃梨、木下秀吉 094 喧嘩番長 朝倉涼子、師匠、浅上藤乃 110 BREAK IN (前編)BREAK IN (後編) フリアグネ、トラヴァス、両儀式 112 何処へ行くの、あの日 伊里野加奈 134 ラスト・エスコート2 (前編)ラスト・エスコート2 (後編) 上条当麻、姫路瑞希 139 提督の決断 ヴィルヘルミナ・カルメル、キノ 147 Quinty 黒桐鮮花、白井黒子 155 【Hg】ハイドリウム フリアグネ、トラヴァス、両儀式 159 Memories Off (上)Memories Off (中)Memories Off (下) 坂井悠二、水前寺邦博、白井黒子、ティー浅羽直之、伊里野加奈、シャナ、島田美波 登場キャラ 3回 伊里野加奈、島田美波、シャナ、水前寺邦博 2回 朝倉涼子、キノ、木下秀吉、櫛枝実乃梨、坂井悠二、師匠、白井黒子、トラヴァス、姫路瑞希、フリアグネ、両儀式 1回 浅上藤乃、浅羽直之、朝比奈みくる、ヴィルヘルミナ・カルメル、上条当麻、キョン 黒桐鮮花、黒桐幹也、土屋康太、ティー、メリッサ・マオ、薬師寺天膳、吉井明久 コメント欄 ムッツリーニが実にムッツリーニらしいwww殺し合いの舞台でもらしさを失わないムッツリーニは凄い…というか支給品のチョイスがGJ!!!! -- 名無しさん (2009-06-01 23 39 28) どのキャラも生き生きと、自らの持ち味を最大限に発揮。高い描写力と、過剰になり過ぎないほんのりコメディ色が読んでて心地いい -- 名無しさん (2009-06-17 03 13 22) 凄惨なロワにおける清涼剤。くすりと笑える、そんな展開が上手な方。 -- 名無しさん (2009-06-26 16 50 18) キャラが頑張ってる姿がとても上手いお方。バカテス勢を書くのが上手くまた最新の上条さんも凄くらしかった -- 名無しさん (2010-01-29 04 56 06) 上条さんが非常にらしくて、熱かった。GJです。 -- 名無しさん (2010-01-29 06 58 53) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1479.html
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2653.html
962 名前:わたしだけの痴漢さん ◆yepl2GEIow[sage] 投稿日:2013/09/10(火) 22 32 13 ID Vlr2axdQ [2/7] その日まで、三崎狗矢(みさきこうや)は痴漢犯罪の犯人では無く、ごくごく普通の会社員だった。 より正確に言うならば、『ごくごく普通』、の頭に『少しダメな』、が付くのかもしれないが。 その日も、銀也は課長特製の栄養ドリンクを飲みつつ、彼にとっては大量の仕事を仕上げるべく、遅くまで残業していた。 「なに、気にすることは無いさ」 と、狗矢の残業が終わるまで1人待ってくれていた九石(さざらし)課長は言った。 「間に合わないのは困るが、焦り過ぎてミスがあるのはもっと困る。その点、キミは良くやってくれている」 そんな、尊敬する課長の温かい慰めを受けて帰路に着いた銀也だったが、それでも自己嫌悪を感じないわけにはいかなかった。 (課のみんなが、もうとっくに仕事を仕上げて呑みに行ってるような時間まで課長を待たせちゃったんだものなぁ) 溜息をつく狗矢。 (もっと仕事を早く出来るようになって、皆の足を引っ張らないようにしないと) そうしたら、九石課長も慰めるのではなく褒めてくれるだろう。 九石のような人間には、褒めて欲しいと言うのが狗矢の本音だった。 九石は頭脳明晰、冷静沈着、才色兼備、そして何より大人の余裕を持った、理想の人物だった。 狗矢にとって九石は目標であり、憧れであり、そしてそれ以上の存在だった。 (そうだ。もっと頑張って、俺は九石課長の部下なんだって胸を張れるような男になりたい) 帰りの電車の中で、狗矢は思った。 やや遅い時間の電車だと言うのに、思いのほか人が多い。 自分のような残業組か、あるいは遅くまではしゃいでいた社会人や大学生か。 こう車内に人の多いと、仕事中の疲れや緊張を落ちつけるどころでは無い。 栄養ドリンクを相棒にして激務に追われた日にはなおさらである。 狗矢は、自然と仕事中の緊張感を持続しながら電車に乗ることになった。 電車の振動に呼応するように、狗也の心臓が鼓動を刻む。 電車が強く揺れる。 人も揺れる。 「……ん」 今の揺れで、スーツ姿の女性が狗矢の前にずれてきた。 髪を肩ほどまで伸ばした女性で、顔は見えないがそれでも不美人には思えなかった。 「ぁ……」 表情の見えない女性の声が聞こえる。 同時に、柔らかな感触。 狗矢は自分の手が女性の太腿に触れていたことに気がついた。 一瞬、息が止まりそうになる。 幸い、女性からのリアクションは無い。 (気付いてない……のか?) そう思った瞬間、狗矢の鼓動が別の種類のものに変わった。 仕事中の緊張感から、男の性欲に。 (気付いていないなら、このままでも良い……よな) もちろん、銀也の理性とモラルは警告を発し続けていたが、狗矢の本能は女体の魅力に呑まれていた。 それほどまでに、美しいポロポーションの持ち主だった。 理性を圧倒し、モラルを押しのけるほどに。 電車の振動を追い越し、心臓の鼓動は高まっていく。 太腿を触るだけではなく撫で、いつしか手の位置はもっと上の方に移動していく。 まるで、自分の手だけが別の生き物になってしまったかのようだった。 しかし、間違い無く狗矢に快感は伝わってくる。 対する女性は、「ぅン……」、「……ぁ」と小さな声を上げるものの、それ以外は何もしてこない。 女性の吐息がとても甘いものに聞こえて、銀也の興奮は加速する。 時間を忘れるほどに、それこそ電車を降りるのを忘れるほどに狗矢は女性の身体(具体的には太腿と尻)を撫でまわしていた。 963 名前:わたしだけの痴漢さん ◆yepl2GEIow[sage] 投稿日:2013/09/10(火) 22 33 12 ID Vlr2axdQ [3/7] そして、電車が1つの駅に着く。 扉が開き、外気が入って来る。 と、同時に銀也はグイッと手を引かれた。 狗矢の手を掴んでいるのは、眼前の女性。 表情は見えないが、 (これは、まずいんじゃなかろうか) と、狗矢に思わせるには十分だった。 (って言うかなんっっっってまずいことやっちまったんだ、おれは!!) 狗矢、今更ながら大後悔。 (どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう!?) 女性にグイグイと手を引かれていくうちに、狗矢の中で後悔と自己嫌悪が加速していく。 彼女に手を引かれるがまま、車外に出て、ホームを抜けていき、駅を出る。 人波から逃れたところで、女性はクルリと振り返った。 何を言っていいのか分からない銀也より先に、女性の形の良い唇が動く。 「まずは、2つの幸運を喜ぼうか」 その美しい女性―――狗矢にとってとても見なれたその女性はそう言った。 「一つ目の幸運は、キミが警察に突き出されなかったこと。もう一つの幸運は―――キミが触れた相手がわたしだったこと」 肩ほどまでに切りそろえた黒い髪。 知性を感じさせる大きな瞳。 形の良い眉。 いたずらっぽい笑みを浮かべる、形の良い唇。 可愛いと言うよりも綺麗と言った方が適当な美貌。 「課長!?九石課長!?」 知的に笑うその女性に向かって、狗矢は思わず彼女の名前を呼んでいた。 964 名前:わたしだけの痴漢さん ◆yepl2GEIow[sage] 投稿日:2013/09/10(火) 22 34 22 ID Vlr2axdQ [4/7] こうして狗矢が連行されてきたのは、警察では無く九石更紗課長の自室だった。 キャリアウーマン然とした九石らしく、整然とした部屋で、ついでに言えば狗矢の安アパートに比べるといくらか高級そうな借家だった。 もっとも、狗矢としては自室と引き比べて嫉妬するでもなく、卑下するでもなく、ただ単純に「すごいなー」と思うだけだったのだが。 金銭欲や出世欲とは縁遠い狗矢だった。 それよりも、 「ぐぉめんなさぁぁぁぁい!」 部屋に通され、更紗に座るように勧められた瞬間、狗矢は全力で土下座していた。 「抵抗できない女性に痴漢行為を働くなどと男の風上にも置けない罪を犯した上に、しかも、しかも知らぬこととはいえ尊敬する上司に……!」 「顔をあげたまえ、三崎くん」 平身低頭謝っていた狗矢の頭上に、温かい言葉がかけられた。 「何も、キミを叱責したくて自宅に連行した訳じゃぁないんだ?」 「連行?」 「ああ、違った。捕縛?誘拐?監禁?軟禁?ああ、違った。招待だ」 ポン、と手を打つ更紗。 会社での颯爽とした姿しか知らない狗矢にとっては、意外とコミカルな仕草だった。 「すまんな、つい本音が」 「このたびは本当に申し訳ありません!」 「それはもう良い。……と、言うより、本当に気付かなかったのか、相手がわたしだと?」 「あ、ハイ。全然気づきませんでした」 「そうか……」 心なしか残念そうな更紗。 「と、言うより、顔が見えませんでしたし、頭の中も盛りのついた犬並みになってて、相手が誰かなんてまったく……。アレ、課長は俺の仕業だって気付いていたんですか?」 「当たり前だ。通勤時は電車の窓、手摺の反射、そうしたものも使って、周りはマメに確認するようにしているからな。相手がキミでなければ、足を思い切り踏み抜いていたところだ」 確かに、ヒールの靴で踏みつけられれば、足に穴があきそうなほど痛いことだろう。 その痛みは、罪の痛みだ。 狗矢は、自分のしでかしたことの大きさを改めて思い知った。 「それよりも、おれは取り返しのつかないことを……!」 「まぁ、そうだな。相手がわたしでなければ、警察に突き出されて、数か月の懲役か罰金。会社もクビ。キミの一生は軽くメチャメチャになっていただろう」 「クビにしてください!むしろ!おれみたいな性犯罪者!人間のクズ!」 土下座の姿勢に戻る狗矢。 「いや。キミが我が社からいなくなるのは、我が社にとっても、わたしにとっても大きな損失となる。それに分かっている。今回は出来心だったのだろう?」 更紗の優しい言葉に、狗矢は涙しそうになった。 曲がりになりも信頼(多分)していた部下から、下賤な仕打ちを受けたと言うのに、課長は何て寛大なのだろうか! 「ですが、それでは俺の気が収まりません!この罪を償うためなら、いえ、課長に罪滅ぼしをするためなら何でもします!させてください!」 「キミがそこまで言うのなら……」 ズイ、と迫る狗矢に、更紗の口元がニヤリと邪悪に歪んだのが見えたような気がした。 「少し待っていたまえ」 そう言うと更紗は部屋の机に向かい、白紙に万年筆で何事かサラサラと書き始めた。 待つことしばし。 「よし、できた」 そう言って更紗の示した2枚の紙には、こんなことが書いてあった。 契約書 三崎更紗(以下甲)は三崎狗矢(以下乙)との関係で、以下の契約を締結する。 甲は乙から受けた公然わいせつ罪を生涯告発しないこと。 乙は、甲以外の女性の身体を生涯二度と触らないこと。 ただし、この契約が破られた場合にはその限りではない。 上記契約の証として、双方ともに署名捺印の上、各自一通ずつ保持するものとする。 甲:住所 ××都××市××区×-×-×-×× 氏名 三崎更紗 印 乙:住所 氏名 印 965 名前:わたしだけの痴漢さん ◆yepl2GEIow[sage] 投稿日:2013/09/10(火) 22 35 07 ID Vlr2axdQ [5/7] 「課長、コレって……?」 「見ての通り、契約書だ。キミとわたしの分のな。この後スキャナーでパソコンに取り込んで、20のバックアップを取る予定だ」 ニッコリと笑って答える更紗。 白紙に手書きの書面で、文章も明らかに即興だったが、更紗の達筆だとそれらしく見えるから不思議だ。 「こんなんで良いんですか、課長?」 「こんなんで良いんだ」 会社では見たことのないほど嬉しそうな笑顔の更紗に対して、どこか割り切れないものを覚える狗矢。 「さぁさぁ、サインしたまえ。ああ、印鑑は持っているか?」 「まぁ、二度と痴漢しないって言うのはお似合いと言うか当たり前と言うか……。あ、印鑑はカバンの中です」 「分かった、取って来る」 そうこうしている内に、2枚の契約書に署名が終わり、印鑑が押される。 「ああ、念のために言っておくが、文面は『痴漢しない』ではなく『女性の身体を触らない』だからな」 パソコンを起動し、契約書をスキャナーにかけながら更紗は言葉を投げかけた。 「はい?」 「だから、キミは二度と女性の身体を触ってはいけないんだ」 「何か違いがあるんですか?」 「大有りだろう!」 勢いよく狗矢の方に振りかえる更紗。 「それってつまり、その……女の人を抱くこと、とか?」 「それは当たり前だ!!ほかには!?」 こんなに声を荒げる更紗を、狗矢は初めて見た。 「ええっと、あれ、もしかして、肩が当たったり、指先が触れたりとか、そう言うのもアウト……とか?」 「そうだ!!」 「うっわ、思ってたよりキツいハンデだった!当たり前だけど!」 「当たり前に決まっているだろうが!わたしが何度、エレベーターでキミと肩に当たった女子社員や、書類を受け取る時に指先の触れた女子社員に嫉妬したか分かるか!?分かるか!?」 「ぐぉめんなさぁぁぁぁい!」 更紗の言葉の勢いに、全力土下座再び。 「分かればよろしい。しかし、アレだな……」 パソコンへの取り込みを終えた更紗は、頬を赤らめた。 「ほかの男なら兎も角、キミからあんな風に激しくされるのは……その……悪い気はしないな」 最後の言葉は、狗矢にようやく聞き取れるくらいの小声だった。 その、普段のキャリアウーマン然とした姿とはギャップのある乙女チックな仕草に、(課長、もしかして俺のことを……?)などと思いたくなる誘惑を、狗矢は振り払った。 自分たちはわいせつ罪の加害者と被害者で、自分は今、被害者である課長からお情けを受けているところなのだ、と思い直す。 心得違いをしてはいけないのだと。いくら尊敬し、敬愛し、憧れる上司だからと言って、更紗を女性として見ることなどあってはならないのだと。 だから、 「それは、何と言いますか。課長の寛大さに、俺としては、何と言うか……」 「続きをしても、良いんだぞ?」 更紗の言葉に、狗矢の思考は本日何度目かのフリーズを経験した。 「課長、今何ト仰イマシタカ?」 「だ、だから……」 茹でダコのように真っ赤になる更紗。 「も、もっとわたしの身体を触ったり、撫でまわしたり、揉んだり、だ、だ、だ、抱いてくれたりしても良いって言ってるんだ!!」 更紗の言葉を理解するのに、いくらかの時間を要した。 触っても良い? 更紗を? 尊敬する上司サマを? この美人を? さわさわしたり? ぷにぷにしたり? その上…… 「抱く、と言うのは、ハグの方で?」 「……………………………………もう一つの意味の方で、頼む」 狗矢の思考がフリーズすること、さらに数秒。 「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」 天地がひっくり返る勢いで狗矢は叫んだ。 「いやか!?そんなにいやなのか!?」 「いやいやいやいや。だって契約書が」 「ちゃんと書いただろう!?『私を除いて』って。良く読め!」 「本当だ!」 差し出された契約書には、確かに『乙(更紗)を除いて』、と書かれていた。 「で、でも、俺は、課長にひどいことしたんですよ!?」 「もう、許した」 「俺、性犯罪者ですよ!?」 「わたしだけのな」 「いや、でも……」 言葉を探すのに、狗矢は随分と手間取った。 「良いんですか、俺なんかで」 「キミ『が』、いいんだ」 そう言って抱きついてきた更紗の柔らかな感触に、そして髪の匂いに、狗矢の理性は完全に切れた。 本能の赴くまま、更紗の唇を、狗矢は衝動的に奪っていた。 更紗もまた、狗矢の唇に、むさぼるようなキスをする。 そして、2人は互いを激しく求めあっていった。 夜はふけていく……。 966 名前:わたしだけの痴漢さん ◆yepl2GEIow[sage] 投稿日:2013/09/10(火) 22 35 51 ID Vlr2axdQ [6/7] こんなに上手くいくとは思わなかった。 薄暗い部屋の中、行為の痛みと余韻が抜けない身体をベッドに横たえ、九石更紗は思った。 競争社会の縮図である企業の中で、更紗は常にギラギラとした視線にさらされ続けていた。 自分を蹴落とそうとする者たちや、自分を従えようする者たちの欲望に満ちた視線に。 そんな中で、「課長、課長」と、欲望も下心もなく素直に着いて来てくれる、否、ずっと着いて来『続けてくれる』狗矢の存在は、更紗にとって大きかった。 会社の悪い部分に染まることなく働き続ける狗矢の姿は更紗にとって魅力的であり、救いだった。 いつしか、彼を愛してしまうほどに。 だから、なるべく彼には社内で女性を近づけないようにしていたし、仕事をちょっとだけ多く割り振って2人きりになれる時間を増やしたり、同じ電車に乗って帰ったり―――スッポンの生き血やニンニクのたっぷり入った手作り『栄養ドリンク』を毎日のように振る舞ったりした。 ……きちんと精力以外に栄養の摂れるものも入れてあるので、嘘は言っていない。 唯一の誤算があるとすれば、興奮した彼が直接自分に襲いかかるのではなく、相手が自分と知らずに痴漢行為に走ったことだろうか。 (その相手が他の女で無くて、本当に良かった) それが最大の幸運だと、更紗は思った。 そうでなければ、狗矢の手とその女性は、この世にお別れを言わなければならなかっただろう。 そんなことを考えていると、シャワールームからバスローブを着た狗矢が戻って来る。 「課長、シャワーありがとうございます。課長もどうぞ」 「『課長』は止せ、こういうことをした後に。シャワーはもう少し後にさせてもらうよ。まだ、痛みが引かなくてな」 体を少しだけ起こして、更紗は答えた。 「申し訳ありません……九石さん」 「良いさ。会社では人を扱う立場にあるわたしだ。激しく扱われるのも、悪くない」 激しくも愛おしい行為を思い出して、自然と嬉しくなる。 お互い経験が無いので(狗矢に女性との交際経験が無いのは事前に調査済みだ)、勝手が分からないところもあったが、激しく愛し合えたのは確かだった。 「ああ、そうだ」 恥ずかしさをこらえ、何でも無い風を装おうとしながら、更紗は言った。 「何ですか、か……九石さん」 銀也の素直な瞳に背中を押されたような気がして、更紗は続ける。 「言うのが遅れたが、三崎くん。いや、狗矢くん。わたしはキミを愛している。結婚を前提に、交際してくれないか?」 「ええ!?」 狗矢の驚きに、更紗の心臓は一瞬止まりそうになった。 「良いんですか、俺なんかで!?」 「キミ『が』良いんだ……って二度も言わせるな、恥ずかしい!」 半ばパニックになりながらも、更紗は応じる。 「それで、どう、なんだ?キミは……」 「ええっと」 と、言葉を探す狗矢。 そんな姿さえ愛おしい。 「まだまだ至らぬ点もありますが、末永くよろしくお願いします」 狗矢がペコリと頭を下げると、更紗の周囲が(薄暗い室内だというのに)輝きだしたような気がしてくる。 「こちらこそ、不束者だが、よろしくお願いします」 こちらも頭を下げ、そして唇を狗矢の方によせる。 その意味に気がついた狗矢が、更紗と唇を重ねる。 「ああ、そうそう。恋人になっても先の契約書の内容は生きているからな」 「マジですか」 「ああ。これからもよろしく」 わたしだけの痴漢さん
https://w.atwiki.jp/nagasuyo/pages/18.html
朝倉涼子☆キラッ 1.COOL EDITION 2.小指でぎゅっ! 3.ハレハレユカイ(朝倉涼子ver) / / 〃/ イ f``ヾー "´´ | | l | │ !ヽ| l | | !| | | | | l | │ ! !ヽ| l | | !| | | | | l | │ ! |ヽ| l | | ! | |_ 、__| | j ! | | |i| |!∧ l l _jzム≦た!ニf'" ヾにj≧kムj、| j リ| |li '、 ! ヽ'" | j \ l { / / /丁7 / / | || ハ ヽ__ト、ィ''チ示アミー フイ''テ圷、/ / ,' / j/| { l`、_,,ム {イ f `イ { f `イハ ┬='_/ノl ヽl ! V^tzc' V^tzc' /!¨´ 「| l l l ゝ=='- ゝ=='´ / i | こんな感じでお願い(はぁと)| | | |! / / / / ! / / / / / ! || | | i ハ、 ' / i. || | | i !ゝ、 ー ‐ ,. イ i || | | l ', i 、 , ィ<1/ / i|| | | ∧. ∨ i|. > 、 __,. < l // / i|| |i ヽ ヽ Vi| | {/ / 八