約 30,346 件
https://w.atwiki.jp/ln_alter2/pages/131.html
ART OF FIGHTING――(作法) ◆EchanS1zhg 【0】 ――オレたちゃこれで飯食ってんだ! 負けたら明日はねえんだよ! 【1】 星をちりばめた深い藍色の空。その中央に薄い雲をショールのようにまとった白い月が浮かんでいた。 そこから視点を地上へと下ろすと、月光を受け蒼く染まった風景の中を横切ってゆく一台のバイクの姿が見える。 サイドカーを持ったそれは、夜の市街へと高いエンジンの音を響かせ、デコボコの道の上をガタゴトと揺れながら走っている。 大きくて頑丈そうなバイクにまたがるのは水色の襟が目立つセーラー服を着た綺麗な顔の少女で、 サイドカーの中には黒いスーツを着こなす妙齢の、そしてこちらも美しい女性が身を収めていた。 少女と女性の二人は、ともにその艶やかな黒髪を後ろで一つにまとめ、それを流れる風にそのままにしている。 東から西へ。しんと静まり返る夜の中を一台のバイクはただ走って行く。 【2】 目の前に現れ、そして流れ消えゆく風景を朝倉涼子は見る。 罅割れたアスファルトの道路。頑丈そうなコンクリートの塀。漆喰が塗られた白い壁。粘土を焼いて作られた固い瓦。 金属とプラスチックで組上げられた街灯。立ち並び、緑の葉を揺らす街路樹達。その足元に見える赤い土。風に流される黄色い砂。 窒素を主成分とし人が生命活動を行うに必要な酸素を含む空気。その中に漂う微粒子。嗅覚でのみ感知しうる、匂い。 照らし跳ね返り視覚に情報を送る光。そしてその視覚では捉えられない、電波や電磁波といった波。 有機物も無機物も、光も波も、解析され最終的には情報というものに置き換えられ、彼女には理解される。 大宇宙の彼方に存在する実態を持たない情報生命群である、情報統合思念体。 その中より切り出され、地球へと送り込まれた朝倉涼子は人の形をして人として振舞うが、実態はそこから大きく異なる。 見えている世界も、感じ方も、解釈の仕方も、考え方も、何もかもが人間とは違う。 彼女は、宇宙人なのだ。 「復元能力に関しては、概ね問題なしか……」 びゅうと耳を叩く風切り音の中で朝倉涼子は鼻の頭をこすり小さく呟いた。 その高く通った鼻に先程受けた手痛い一撃の痕跡はなく、綺麗に最初の状態へと元通りに直されている。 これは、情報の改竄、再構成を活動の基本とする彼女達宇宙人にとっては通常の振る舞いだ。 身体の物理的な損傷は”治す”ではなく、”直す”ものなのである。 「けど……」 感知の仕方が違うゆえにそうすること自体に意味はないが、人間らしい振る舞いとして彼女は目を凝らすように細める。 そのジェスチャーは、視界が悪いということを表している。宇宙人の感覚に合わせれば、情報が読み取りづらいという意味だ。 「有機生命体の近眼って状態はこういった感覚のことを言うのかしら?」 有機体の眼によって受け取り、脳で知覚する光学的な意味での目の前の風景になんら違和感は覚えない。 しかし情報生命体としての感知能力で見るそこには大きな変化があり、随分と”ぼやけた”ものとしか感じられない。 開けた場所に出て初めて気付いたが、どうにも10メートルほど離れるとそこにあるモノの構成情報が読み取れなくなってしまう。 「私も長門さんみたいに眼鏡をかけていればよかったかも」 と、朝倉涼子は軽口を叩き、少しだけ自嘲気味な笑みを浮かべた。 もっとも、わざわざ眼鏡を構成してかけるぐらいなら、直接有機体の情報を書き換えたほうが早いし効率的だ。 そしてそのフィジカルサポートは現在十分に機能している。運動能力は人類の範疇を超え、負傷の回復にも特に問題はない。 問題があると言えるのは、近眼と例えた情報感知能力の範囲が大きく狭まっていること。 そして、この世界に来てより早々に確認した情報改変能力が手の届くより少しの範囲でしか発揮できないということ。 以上の2つの問題と、体内やその表面上で行われる事柄に関しては特に問題がないこと合わせて考えると―― 「(全ては”距離”なのね)」 ――彼女の能力を制限しているのは、外圧でも内部干渉でもなく、距離ということになる。 推測するならば、この世界の端という空間とやらがそもそも彼女達が扱う種類の波を伝えづらいのかもしれない。 水の中では空気中より運動エネルギーが伝わりにくい。そういう風に解釈すれば解りやすいだろう。 「(”電波”が届かない……かぁ。原始生命になった気分)」 能力を制限されている状況ではあるが、それ自体は単体のユニットとして行動している分にはさして問題はない。 問題となるのは、彼女の帰属する情報統合思念体との通信が全く行えないということだ。 技術や技能などの新しい情報のダウンロードが行えないのはともかくとして、こちらから報告を送ることすらできないのは大きな問題だ。 果たして最終的に涼宮ハルヒを確保したとして、この事件そのものを解決する能力が自分に存在するのか? 「(長門さんはどうしているかしら?)」 朝倉涼子は大元を同じとする宇宙人の仲間である長門有希のことについて考える。 互いに、本来の目的は涼宮ハルヒとその周辺事情の観測。そして、そこから未知の進化の可能性を発見、抽出することであった。 となればこの場において本来の仕事仲間として彼女とはうまく連携できるだろうと朝倉涼子は考える。 以前は些細な方法論の食い違いから衝突することとなったが、今回においてはそれも考えられないだろう。 加えて、朝倉涼子は他のSOS団団員。つまりは、涼宮ハルヒの周辺人物についても考えてみる。 まずはキョンと呼ばれるある意味において最も重要な、鍵と呼ばれる人物。 彼が死ぬと涼宮ハルヒがいかなる反応を見せるのかというのは依然として興味深くはあるが、今はそんな場合ではないだろう。 あずかり知らぬところで死ぬのはかまわないとしても積極的に狙う理由はない。 そも、彼は長門有希のお気に入りでもあるのだ。ここでわざわざ彼女と敵対する理由を作ることもない。 そして、涼宮ハルヒを沈静する為の存在である超能力者と、別時間平面――平たく言えば未来より来た使者。 古泉一樹。朝比奈みくる。と名乗る彼と彼女に関してはどう扱うべきか? SOS団という特別な枠組みの中にいる人間ではあるが、超能力者としても未来人としても他に代替が利く為その価値は低い。 また、その枠が空くというならば新しく情報統合思念体の側から新しい人員を滑り込ませられる可能性もあるだろう。 「(となれば、あの2人はここで消えてもらうのがいいかもしれないわね)」 朝倉涼子は再び笑みを浮かべる。 元々、柔和で人当たりのよい表情をデフォルトとするが、しかしこの場で気付いてからは妙に興奮している節があった。 その有機体で構成された身体自体は通常の人間と大体において同じだ。 しかし彼女は宇宙人である。自らをそれと見せかける為に人間らしくは振舞うが、本来は0と1の羅列でしか思考しない存在のはず。 「(”運”が向いてきた……か。それは、つまり……あぁ、なるほど)」 運とは、知覚範囲と予測能力に著しく劣る原始的なレベルの知性体が持つ、知覚範囲外の事象を自身の因果より切り離し その境界面上で受け取る結果を指して表現する、あまりにも大雑把で正確さを期待できない概念のことである。 とすれば、何故計算の権化とも呼べる彼女がその概念を自身の中で使用したかというと、つまりそれは―― 「(私は今、”人間”に近い状態に陥っている)」 ――そういうことに他ならない。 元々、ヒューマノイドインターフェースとして人間としての思考形態のサンプルは持ち合わせている。 そして現在、彼女を宇宙人足らしめている超知覚能力は大幅にその範囲を減じている。未だ人間以上ではあるが、以前とは比べくもない。 つまり、彼女の中で感覚による部分の比率が大きく”人間”の側に寄っているということであった。 「(どうりで”興奮”しているわけだわ。 知覚範囲が狭まったことによって”不安”が生じ、その反射として有機体の脳が興奮を強いている)」 朝倉涼子はまた、そして今までより強く笑みを浮かべる。 人間のコミニティの中に紛れ込み、応対すること情報を更新し彼女は僅かながら生み出された時よりもその個性を強くしている。 それは、今現在のこの状況の中で大きく加速していくだろうと彼女自身は予感した。 そう。それは予感。 宇宙人としての知覚を減じられ、情報統合思念体よりのキャリプレーションを受けられない今、彼女は一切の正解を得られない。 与えられた、人間としての感覚と思考形態を基準とし、今までより遥かに不明瞭な時間を過ごして行かねばならないのだ。 「(こういう時って、人間は”おもしろくなってきた”って言うのかしら?)」 その胸の中に湧き上がる興奮が、期待なのか不安なのかそれともまた別のものなのか、それを今の彼女は断言できない。 しかしその衝動に今の彼女は面白さを感じていた。自身が唯一無二のユニークな存在となるのもまた新しい価値の発見なのだから。 彼女は、人間になるのかもしれない。 【3】 ガタゴトと揺れるサイドカーの中で、師匠と人に名乗る彼女は考える。 「(これは、今まで見てきた銃の中でもかなりのものですね)」 先程、動く標的を相手に”試射”を終えたばかりの短機関銃を抱え、彼女は感心したと小さく息を吐いた。 フレームや機構、弾薬などは予め確かめていたので、どの程度の性能があるのかというのは予測していたが、結果はそれ以上であった。 放浪の旅人である彼女は基本的に同じ銃を使い続け、性能のいかんに関わらずそれを交換したりはしない。 何故ならば、己の命を守る為に備えてある銃に最も必要とされるのは信頼性だからだ。故に、旅人は皆、自分に馴染んだ愛銃を持っている。 しかしそれでなお、この初めて手にする短機関銃は信頼がおけると彼女は判断した。それだけの性能がその銃にはあったのだ。 「(もっとも、元よりの銃がなければあるものを使うのが当たり前ですが)」 元々所持していた武器の類は気付いたら手元にはなかった。 その理由はある程度察することができるが、ともかくとして彼女の元には配りなおされた新しい武器が届いた。 狐面の男はその武器の内容に関して運試しだと言ってたが、今回に関しては幸運があったと断ずることができるだろう。 脇に置いたデイパックの中には弾丸の詰まった弾倉も十分に用意されており、たかだか60人程度を殺すにあたっては十分以上であった。 「(こちらも随分とよいものですね。あまり趣味というわけではありませんが)」 短機関銃を脇に置き、彼女は一本のナイフを目の前にかざし、また感心する。 細身ではあるが、繰り出された刀と打ち合わせたにも関わらず全く歪みが生じている様子もなく、随分と頑丈なのだとわかる。 本来の持ち主であるらしい”両儀式”というのが鍛冶師なのかどうかは知らないが、その世界ではさぞや有名なのであろう。 「(さて、これとこれは問題ないとして……)」 ナイフをケースに仕舞い、彼女は先程手に入れた3つ目の武器の方へと視線を傾ける。 なにが楽しいのかにやにやとした笑みを浮かべながらバイクを運転している少女。つまり、朝倉涼子と名乗った彼女のことである。 見た目は年若い少女にすぎないが、実際には常識の範疇を超えた運動能力と不可思議な力を振るう怪物である。 「(パワーに関しては文句はありませんが、いささか単細胞のきらいがありますね)」 あえて自分を発見させてから撃ったにせよ、それを感知し実際に銃弾を避けてみせたのはまさに動物並の反射速度であった。 次の掃射を避けた際の運動能力も、また見事だと感心せざるを得ない。 この時点では逆襲による敗退も頭をよぎったのだが、しかしそれは彼女の次の行動を見て幻と消えてしまう。 「(戦闘の経験はないと見るべきでしょうか)」 力任せに振り回す刀。そこにはいかなる術も見られず、子供が棒を振り回しているのと大差ない。となれば回避も容易かった。 続けざまの蹴りや防御にしてもその場しのぎで、次に繋がる姿勢や、展開を考慮してるとは見て取れなかった。 そして最終的に拳の一撃をもらうことになったが、そこでこちらがその威力を殺していたことにも気付く様子がなかった。 となれば、所謂喧嘩や格闘といったものに関してはド素人だと判断を下さざるを得ない。 「(椅子を槍へと変形させた……超能力ですか)」 そして、推測するに、途中で見せたあの槍を撃ち込む攻撃こそが彼女本来のスタイルなのであろう。 おそらく今まではあの力でもって相手を一方的に撃破してきたに違いない。そしてあれだけの力があるなら他の力は不要だとも言える。 だとすれば彼女の見せた戦闘の組み立て方の拙さにも納得がいくというものだ。 もっとも、あれにしても最初から使ってこなかったことと、立て続けに使ってこなかったことを見るに、連続した使用は難しいらしいが。 「(……まぁ、及第点をあげておきましょうか。なにとなにやらは使いよう、です)」 戦闘そのものだけでなく、交渉やその他の判断にもやや不安はあるものの、しかし”自分の武器”だと考えればそれも問題ない。 考える力に乏しいのなら考えさせなければいい。武器は、その使い手が最大の力を発揮させるのものなのだから。 狭いサイドカーの中でそんな結論を出すと、師匠と呼ばれる彼女は己の武器に声をかけバイクを停車させた。 【4】 「どうしたのかしら? まだ目指している診療所までには距離があると思うのだけど」 停車させ、そしてバイクから降りた師匠にむかい、朝倉涼子は浮かび上がった疑問をぶつける。 その周囲には夜の中に沈む町並みがあり、道路沿いに立ち並ぶ街灯の光が来た道から行く道へと点々と明かりを灯していた。 「私達が向かうと考えた以上。 そこに同様の目的でやって来る、またはすでに到達している人間がいると考えるべきです。 更には、あなたが水族館の中で気付いたように、診療所の中で気付きその中で潜んでいるものがいる可能性もあるでしょう」 街灯が作り出す即席のステージの中を避け、師匠は暗闇の中から朝倉涼子へと丁寧な説明をする。 この状況において、自分以外の人間は原則的に敵性である。故に、接触の可能性がある場合はそこに細心の注意を払わなければならない。 今現在の場合。仮に診療所の中かその付近に人間がいた場合、バイクのエンジン音をたてて近づけば先制を許す可能性があるのだ。 「なるほどね。でも、それじゃあこのバイクはどうするのかしら? ここに放置? それともまさか押してゆくの?」 朝倉涼子は問い。そしてそれを聞いた師匠は彼女の前でわかりやすい溜息をついた。 そして冷ややかな目で彼女を見つめ、その肩にかかったデイパックを指差す。 「入っていたのならば戻せない道理はないでしょう。このバイクは元通りあなたの鞄の中に仕舞っておきなさい」 やれやれと首を振ると、師匠は自身のデイパックを片手に持ちバイクと悪戦苦闘している朝倉涼子を尻目に道を西へと歩き出した。 【5】 「……まったく人使いが荒いんだから」 目視で診療所を確認できる位置まで来て朝倉涼子は一人ごちる。 その近くに師匠の姿はない。二手に別れて進入することを提案すると、返事を聞く間もなく裏手側の方へと行ってしまったのだ。 ともかくとして、朝倉涼子は一人正面玄関より診療所への侵入を試みる。 「西東診療所……」 診療所の前に掲げられた看板を見て朝倉涼子はその名前を口にした。 何の変哲もない。特に大きな意味もなさそうなただそれだけの名前ではあるが、しかし一つだけ大きく不自然な点があった。 それは、その看板は随分と年季が入っているらしく擦れて文字が全く読めないということだ。 「やっぱり、いつの間にかに知識が増えている。それも、ここで使う為のようなものばかり……」 彼女の地球に来てからの行動範囲というのは大きく限られており、実質的には学校と家との間ぐらいでしかない。 故にこんな世界の端などという場所に来たこともなければ、目の前の診療所に見覚えなんかあるはずもない。 なのに知っている。奇妙なことにその名前だけをはっきりと知っていた。それが間違いでないという確信がある。 そして、師匠が持っていたFN P90という名前の短機関銃。また、バイクの運転技術。 通常の生活に必要な情報を最低限持った状態で生まれ、日々の活動の中で知識を得たり、必要に応じて情報都合思念体より 新しい知識や技術をダウンロードしてそれなりの知識と経験を持ち合わせてはいたが、どちらの知識も以前は知らなかったものだ。 これまでの活動中にそれを必要としたり、ダウンロードの申請を情報統合思念体へと送った記憶はない。 「新しい知識を注入された。それはいい。問題は、”何者”がそうしたのかよね」 根本的な問題として、彼女にはここで気付いた段階より持っている大きな疑問が存在していた。 それは、”何者が朝倉涼子を再生したのか?”ということである。 彼女は以前、涼宮ハルヒに関する事態を独断で大きく進めようとし、長門有希より問題のある固体としてその存在を抹消されているのだ。 では一体何者がというと、この状況を作り上げたものがそうしたのであろうというのがほぼ間違いのないところであろう。 それが涼宮ハルヒであれ、情報統合思念体であれ、または狐面の男か全く未知の存在であれ、その点に関しては変わらないはずだ。 この状況に関する何らかの要請により、消失したはずの朝倉涼子はいくらかの知識を付与され再生された。 「まぁ、いいか」 疑問をそのままに置いておき、朝倉涼子は看板の前を離れて診療所の正門へと歩いてゆく。 ここで状況が開始されてよりすぐに同じことを考えたが、どの可能性を論じても辿り着く解答は、”自分自身が知る術はない”だ。 記憶そのもの、引いては自分そのものに対し完全な信頼がおけない以上、確定的な答えを出すことはできない。 そういうことならば、結局は自分自身が自分自身として疑いをもたずに事を進めてゆくべきだと彼女はそう結論を出した。 「(……人がいる気配は感じられないけれども)」 正門を潜り、朝倉涼子は二階建てで大きめの一軒家である診療所の中を窺ってみた。 目の前の玄関扉や一階二階にある窓など、どこからも光は漏れておらず、また物音もせずしんと静まり返っている。 右側を見れば車5台分ほどのスペースの駐車場があり、いくらかの車やバイクが止められていたが、しかしその物陰にも気配はない。 足音を立てないよう慎重に玄関扉の前にまで移動すると、そこに鍵がかかっていないことを確認し彼女はその扉を横に引いた。 【6】 「(さて、あまり時間をかけている暇はありませんね)」 朝倉涼子が玄関より診療所の中へと進入した頃、別行動をとっていた師匠はすでに診療所内へと進入していた。 別れる際には、狭い屋内で固まっていれば敵がいた場合一網打尽にされる可能性があるなどと彼女は理由をつけたが、それは真実ではない。 ただ彼女は単に、一人先んじて金目のものがあれば頂いてしまおうと考えただけであり、それはそうする為の方便であったのだ。 「(とはいえ……)」 ミシ、ミシ……と、足をのせる度に軋んだ音を慣らす廊下を進みながら、ここは期待薄と師匠は判断する。 医者という肩書きを持つ人間は大金持ちかもしくは逆に赤貧かと相場は決まっているものだが、ここは少なくとも前者ではないらしい。 そもそもそれは診療所という規模から押して知るべしといったところだったが……。 「(まぁしかし、何があるとも限りません)」 適当な扉を潜り、師匠は懐中電灯を片手に物色を始める。 どうやらそこは書斎の様な部屋らしく、彼女は事務机の引き出しを片端から開け、本棚へと光を走らせ、衣装棚へと手を伸ばす。 成果はあまり芳しくはない。特別に価値が高そうなものは見当たらず、得られるのは部屋の持ち主が几帳面であるという情報ぐらい。 しかしそれでも彼女は捜索の手を緩めようとはしない。業突く張りだからというのもあるが、彼女には一つの確信があったからだ。 それは、朝倉涼子のデイパックに入っていた金の延べ棒という名の”武器”により発想を得たものであった。 金というのは重たい金属でありそれで叩けば武器となるかもしれないが、しかしこの場合は武器とはそういう意味ではないだろう。 彼女と朝倉涼子がそれを媒介に契約を結んだように、その”価値”こそが武器となるのだ。 そして、その価値が有効であるとこの状況を作り出したものが認めているのだとすれば、それはあることを意味すると考えられる。 まず、この3日後には消える世界の端で行われているのはルール無用のバトルロワイアルで、その中では価値そのものに意味はない。 外の――元いた世界に通じた時に初めて価値は価値として認められるのだ。 だとするならば、金の延べ棒がブラフやハズレでないという限り、それは”持って帰れる”ものだと考えるべきだろう。 「(持ち帰りが可能ならば、いただける物は遠慮なくいただいてゆかなければ――)」 勿体無い。と、師匠は薄闇の中でまだ見ぬお宝を求め、屋内を徘徊しその手を伸ばす。 【7】 診療所に到着してより一時間ほどの頃、屋内で合流した二人は和室にて卓袱台を挟んでお茶を飲んでいた。 「残念ながら、この建物の中では労に見合った収穫は得られませんでした。次に期待したいところです」 「ここには医療品を探しにきたんじゃなかったっけ?」 「ああ、それだったら十分に確保しました。しかしこんなものは子供のお小遣いにもなりません」 「……私にはまだ有機生命体の考えることがうまく理解できないみたいだわ」 そんなことはさておき。と、湯飲みを卓袱台の上に戻して師匠は朝倉涼子へと本題を切り出した。 特別、当ても急ぐ理由もないわけだが、別にただゆっくりする為にわざわざお茶を淹れさせたわけでもないのだ。 「私とあなたとの契約ですが、一つ失念していたことがありました」 「それは一体、何かしら?」 「この先、運良くあなたが保護すべき涼宮ハルヒさんとやらを発見し、そして無事に合流できたとします」 「ええ。そうなってほしいものであるわ」 「しかし、私達3人以外の者達が存命していれば、彼女は依然として危険にさらされ続けることは変わりませんね?」 「そのとおりよ。だから、私達は私達以外誰もいなくなるまで彼女を守り続けなければならないの」 「はい。でしたら――」 ――涼宮ハルヒを終わりの時まで健やかでいさせる為の料金。”SOS料”を払いなさい。 「ちょ、ちょっと待って、それはすでに契約の内に入っているんじゃないかしら?」 「物事を都合よく解釈しないでください。先程の契約の際にはあなたはそんなことを言ってませんよ」 「……えーと、じゃあ、金の延べ棒をもう1本先渡しするから」 「詐欺をするつもりですか? こうなれば即刻契約はなかったことにしたいと思います」 「そ、そんな……それは待ってよ!」 「でしたら、何か他に料金に見合った物を探すことですね」 「今から……?」 「涼宮ハルヒさんと合流するまでの間に、ですね。でないと彼女が流れ弾で死にかねません」 「こういう時、人間は血も涙もないやつだなって言うと思うのだけど」 「何を言ってるんですか。人間は血も涙も流しますよ」 「理不尽だわぁ……」 「シビアなんです」 【8】 そして、淹れたお茶が冷め切っている頃。二人は家屋より出て、場所を駐車場へと移していた。 「とりあえずは予定通りに温泉へ向かおうかと思います。その後は天守閣へと向かいましょう」 「お城に?」 「ええ。あそこらへんは最終的に残るエリアですし、早めに拠点となる場所などを確保できれば都合がよいでしょうから」 「私は、お城だからって金銀財宝があるとは思わないんだけどな」 「夢は大きいほうがいいとどこかの国の偉人も言っていました」 「………………」 そんなやり取りで今後の行き先を定めると、師匠は駐車場に並んだ車の中で一番小さなものの前に立ちその扉を開いた。 そしてきょとんとしている朝倉涼子に構うことなくその中へと乗り込む。 「えっと、今度はそれに乗ってゆくわけ?」 「襲撃を受けてしまう場合。生身を曝すバイクよりかはこちらの方が安全です」 あなたも早く乗りなさい。と言う師匠は、当たり前のように助手席へと座っている。 なので、釈然としないところがあったものの朝倉涼子は仕方なく運転席の方へと腰を下ろし、その手にハンドルを握った。 幸か不幸か、自動車の運転に関しても何時の前にやらに身についているというのが何故か彼女には悲しく思える。 「では、速やかに発進してください」 「……はい。師匠」 ほどなくして、ブルル……と音をたててフィアット500という名の黄色い車が駐車場を抜け出し、夜の市街の中へと滑り込んでいった。 「ところで、この車の鍵ってどうしたの?」 「二階の寝室にかけられていた上着のポケットの中から見つけましたが、それが何か?」 南から北へ。しんと静まり返る夜の中を一台の小さな車はただ走って行く。 【F-3/診療所付近/一日目・黎明】 【師匠@キノの旅】 [状態]:健康、ポニーテール [装備]:FN P90(30/50発)@現実、FN P90の予備弾倉(50/50x19)@現実、両儀式のナイフ@空の境界 [道具]:デイパック、基本支給品、金の延棒x5本@現実、医療品、フィアット・500@現実 [思考・状況] 基本:金目の物をありったけ集め、他の人間達を皆殺しにして生還する。 1:朝倉涼子を利用する。 2:まずは温泉へと向かい、その後天守閣の方へと向かう。 【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】 [状態]:健康、ポニーテール [装備]:シズの刀@キノの旅 [道具]:デイパック、基本支給品、金の延棒x5本@現実、軍用サイドカー@現実 [思考・状況] 基本:涼宮ハルヒを生還させるべく行動する。 1:師匠を利用する。 2:まずは温泉へと向かい、その後天守閣の方へと向かう。 3:SOS料に見合った何かを探す。 [備考] 登場時期は「涼宮ハルヒの憂鬱」内で長門有希により消滅させられた後。 銃器の知識や乗り物の運転スキル。施設の名前など消滅させられる以前に持っていなかった知識をもっているようです。 【FN P90@現実】 突撃銃の威力と拳銃の取り回しのよさを両立する為に開発されたコンパクトな短機関銃。 全長:500mm 重量:3.0kg 口径:5.7mmx28 装弾数:50 使用されている弾丸も専用に開発された特殊なもので、ライフル並の貫通性と強力なマンストップ力を併せ持っている。 【フィアット・500@現実】 まんまるいフォルムが特徴の小型自動車。色は黄色。 正確にはシリーズの2代目にあたる「NUOVA 500」で、フィアットというとこれが連想されることが多い。 窮屈ながらも一応は5人乗りの仕様で、エンジンタンクがフロント部分にあるのが特徴。 ちなみに、500は”チンクェチェント”と読む。決して”ごひゃく”とは読んでいけない。絶対に。 投下順に読む 前:COGITO_ERGO_SUM 次:天より他に知るものもなし 時系列順に読む 前:COGITO_ERGO_SUM 次:天より他に知るものもなし 前:龍虎の拳 朝倉涼子 次:ユケムリトラベル 人類五名温泉宿の旅 前:龍虎の拳 師匠 次:ユケムリトラベル 人類五名温泉宿の旅
https://w.atwiki.jp/818hr/pages/176.html
おねえさん中出し痴漢列車 おねえさん中出し痴漢列車 MBS Truth 04/12/10 満員電車の中で痴漢の濡れ衣を着せられた主人公。しかし、彼は 変態駅員「首木野塊治」から、痴漢の手ほどきを受けることになる。 首木野から数々の変態テクを伝授された彼は、やがて1流の変態痴漢野郎として 見事に成長していく。 ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) http //www.teck.co.jp/truth/sinsaku.html 剛田によると、姉オレと同じく中出し反応セレクトがある模様。って、 またかなりライトなんだろうが。まあ無いよりあった方がイイ ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) もう騙されないこともない ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) 痴漢されてんのに中田氏反応も糞もねぇだろとか思った。あと妊婦と満員電車は 相性最悪なので痴漢モノはちょっとどうかと。 ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) 望月氏はこれから妊婦Hがデフォになるんだろか。 ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) (・∀・)イイ! ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) http //www.teck.co.jp/truth/tikan/titop. html#sanple 中出し反応セレクトシステムが、Vre2になってるよw ----------------------------------------------------------------- (通りすがり) 「おねえさん中出し痴漢列車」分類未確認なので報告です。中出し反応セレクトで 全キャラ標準/拒絶を選択できます。標準設定にしても「妊娠してもいいから このまま~」程度で好意的というほどではないです。拒絶のウエイトが大きいので どちらかというとB2だと思います。 ----------------------------------------------------------------- (通りすがり) 妊娠描写、ボテ腹はなかったです。母乳が出るエンドがあったので妊娠したのでは ないかと想像してますが。 ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) お姉さん中出し痴漢列車って、ほとんど話題に上がらなかったみたいだけど内容は どうなの? 危険日に電車内で中出しして妊娠させるとかいうゲームなら買い決定 なんだけど。 ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) 妊娠描写、ボテ腹はなし 「中出し反応セレクトシステム」とかいう うんこちゃんシステムがあるだけで妊娠とか無関係 ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) 反応セレクトも反応薄すぎでどうでも良い感じなんだよな ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) 中出し痴漢列車はそもそもゲームシステム的にもヤバめ。シーン回想は めんどい痴漢モードの頭から。そんなん回想じゃねーよ。 同じメイビーで「中出し反応セレクトシステム」なら、姉オレ妹のがまだHR的に マシだった気がする。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4766.html
『もしもし、涼子さん?』 「……」 『聞いていらっしゃいますか?」 さて、どうしたものか。 電話の向こうから、どこかしら鼻につくカンジの、若い男性の声が聞こえてくる。 りょーこさん? その呼び方をされたのは、初めてかもしれない。 「……聞いてます」 しばらく沈黙した後で、あまり長く沈黙しているのもおかしいだろうと 私はとりあえず、できるだけニュートラルな語調で声を返した。 『あ、そうですか。安心しました』 電話口の声は、依然として事務的な、落ち着いた口調で話している。 古泉一樹。 一体何者なのだろうか。 私が本名でナンバーを登録するくらいだから、同じ北高の生徒か、少なくとも同年代の人物なのだろうか? 『それでですね、えーと……もしかしてと思いますが、僕は約束を取り違えているのでしょうか?』 「へ?」 思わず、のどから奇妙な声が漏れる。 『もう小一時間ほど、お待ちしているのですが……もしかして、約束の日取りを間違えてしまったのでしょうか?』 「え、ええと、ちょっと、待ってもらっても」 私はあわてて鞄から手帳を取り出し、予定表の欄を開く。 十二月十八日。空白部分には、小さなペン文字で、こう記されている <放課後・一樹くんとオノデーで約束 ※アレを貰う> ……しまった。まず一番最初に、スケジュール表を確認するべきだったのだ。 『もしもし、涼子さん?』 「あ、あの、はい、えーと」 私はあわてて、携帯電話を取り落としてしまいそうになる。 落ちつきなさい、涼子。違和感なく振舞うの。 「ご、ごめんなさい、一樹君。ちょっとクラス委員の仕事が長引いてしまって。電話もできなかったの」 手帳に『一樹くん』などと記してあったくらいなのだから、おそらく、私とこの『一樹くん』は、それなりに親密な友人か何かなのだろう。 となれば、年代も同年代。敬語を使うのもおかしな話だ。 すると、電話の向こうの声は、すこし驚いたように沈黙したあとで 『いえ、かまいません。そうでしたか、安心しました。僕が間違えていたわけではなかったのですね』 と、心なしか声のトーンを上げて返答してきた。 『どうでしょう、僕としては、今からでもかまいませんので。そちらの都合がよければ、お会いしませんか』 「え、ええ、そうね。ごめんなさい、待たせてしまって」 『かまいませんよ。今日はどうせ、何の予定もありませんでしたから。場所はいかがいたしますか? どこか、そちらから近い場所を指定していただければ、こちらから伺いますよ?」 「えーっと……大丈夫、約束どおり、待っていてくれれば、十分ほどで行くわ」 『そうですか。では、お待ちしております』 通話はそこで終わった。 さて。どうやらこれから、私はその『一樹くん』と対面することになるらしい。 よくわからないけど、放課後に会う約束をするって……もしかして、いわゆる、恋人か何かなのかしら。 私に、長門さん以外の恋愛の相手が? ないと思うけどな。 凄いのが来たらどうしよう。 ああ、めんどくさい。わけわかんない。 助けて、長門さん。 ◆ 北高に一番近い駅から、電車で二駅ほど西に向かい、あまり大きくない駅舎から出て、西口の街に下りる。ロータリーをまっすぐ横切ると、古い雑居ビルがあり、その地下に喫茶店『Oh Not Die』が有る。 うわさには聞いたこと有るものの、あまり学生たちが同性の仲間内で訪れるような店ではないし、この店を実際に訪れるのは、此れが初めてだった……少なくとも、私の記憶の限りでは。どちらかというとこの店は、社会人のカップルや、夫婦が昼下がりに訪れるような店なのだ。 ……こんなところで待ち合わせるような間柄なのかしら、私と『一樹くん』は。 「いらっしゃいませ」 薄暗い店内に足を踏み入れると、カウンターの奥で、初老の男性がそう言った。店内に客の姿は少なく、全員で五人ほど。カウンターに二人ほど中年の男性が座っており、二人席で向かい合って会話をしている初老の夫婦一組で、四人。 そして、最後の一人……壁際の二人席の片方に腰を掛けた、若い男性が、いかにも上品そうな微笑を私に向けていた。おそらく、彼が一樹くんなのだろう。 「待たせて、ごめんね」 私が歩み寄ると、『一樹くん』は椅子から腰を上げ、向かいの椅子を引き、私に座るように促してくれた。 「いいえ、お気になさらず。お疲れ様です」 「ありがとう」 その奇妙なほどに上品な振る舞いを前に、私はいささか面を食らいながら、木製の椅子に腰を下ろし、鞄を壁際に置いた。 「お久しぶりですね。お変わりない様で、安心しましたよ」 『一樹くん』は、目に掛かるくらいの長さの前髪をさっと横に分けながら、私の機嫌を伺うように言った。 一見すると社会人のように見えたが、彼が詰襟の学生服に身を包んでいることから、やはり彼は私の読みどおり、私と同年代か、あるいは、年齢差があったとしても、一つか二つ程度なのだろうということが分かる。 ……それにしては、キミが悪いほど落ち着いているけど。 「……正直、名残惜しいのですが、あまり遅くまでつき合わせても悪いでしょう。本題に入ってもよろしいですか?」 本題。私は私の手帳に記されていた、短い記述を思い出す。 <放課後・一樹くんとオノデーで約束※アレを貰う> アレを貰う。どうやら私は、彼とデートをするために、この喫茶店で落ち合う約束をしたわけではないようだ。 「ええ、お願い」 私が言うと、彼は微笑を崩さないまま、傍らの学生鞄の中から、何かを取り出した。 「え、これ……」 差し出された数十センチほどの長さの物体を前にした私は、きっと、今日の昼休みのキョン君のような表情を浮かべていたことだろう。 「……お分かりですか。すみません、実を言うと、ご注文の型番は手に入らなかったんですよ」 『一樹くん』は申し訳なさそうに眉を潜め、細長い指で、皮のケースを取り外し、『それ』を取り出した。 「これでもなかなか頑張ったのですよ。しかし、僕では力不足でした。申し訳ありません。代わりになるか分かりませんが……こちらをご用意いたしました」 代わりになるもならないも……まさに『これ』じゃないの。 私はざらついた柄を受け取りながら、見覚えの有る銀色の光沢に、頭の中を焼かれてしまいそうだった。 あの日、夕日の教室で、あの少年を前にした瞬間の記憶が、目の前に蘇る。 あのとき、私の右手が握り締めていたもの。 それは、あの時のものとまったく同じナイフだった。 「……すみません、本当に尽力したのですが、ご注文の通りのものは……」 「……い、いえ、いいのよ。ありがとう」 「本当ですか?」 「ええ。……何ていうか。とても、気に入ったわ」 私がそう言うと、『一樹くん』は、これまでの微笑とはすこし毛色の違う、安心したような微笑を浮かべ 「喜んでいただけて、とてもうれしいですよ」 と、心なしか浮ついた声色で言った。 「……では。僕はこれで、失礼いたします」 『一樹くん』はそういうと、手の中の革製の鞘をテーブルの上に置き、傍らの鞄を手に取った。 「え、あの……一樹くん?」 「…………いいんですよ。それは、僕からの気持ちですから、気になさらず受け取ってください」 そう言った後、『一樹くん』は、ほんのすこし。ためらうように口を閉ざした後 「涼子さん」 胃を決するように私の名前を呼び、すこしだけ真剣な表情で、私を見つめた。 そして、言った。 「あなたにそう呼んでいただけて……これで、迷いはなくなりました。どうか、お元気で」 「え?」 私が何かを問い掛けるよりも早く、『一樹くん』は私に背を向け、足早に去っていってしまった。 残されたのは、手の中のナイフと、テーブルの上の革のケース。 「……これって」 私は改めて、彼に手渡されたナイフを、よく観察してみる。 それはあの日、私が情報操作で作り出したナイフと、まったく同じものだった。……唯一つの点を除いて。 「あれ……これ」 ナイフの刃の根元。グリップに一番近い部分に、小さな彫り文字で、こう記されていた。 <fromI.K forR.A> それの一方は私のイニシャルであるようだった。けれど……この場合、本来なら、彼のイニシャルが記されているべき部分に記されているそのイニシャルが、一体何を意味しているのか、私には最後まで分からなかった。 ◆ ……さて、いくつか細かい不審な点は残っているものの。 とりあえず、私は、おそらくこの不審だらけの世界を解明する鍵となるであろうアイテムを手に入れたのだ。 自宅へと帰り着いた私は、羽毛布団の上に制服のまま寝っころがりながら、そのキーアイテムを眺め回していた。 刃渡りは20cmには満たない程度だろうか。適当に構築したものなので、細かく設定を決めてあったわけではない。それは以前手にしたときとなんら変わりなく、重くもなく、軽くもない、微妙な手ごたえと共に、私の手の中で、電灯の逆光を浴びて、浅黒く輝いていた。 「……これって」 私は考える。 どう考えても、このナイフがこの世界に存在しているのは、誰かの意図によるものだろう。 それは一体、誰? ……すこし考えれば、分かることだった。 このナイフを知っている人物は、ごくごく限られている。 あの日、あの教室を訪れた人物。 私ではないし、キョンでもない。 あと一人は―――― つづく
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4116.html
自由惑星同盟軍統合艦隊は、銀河帝国首星トランター近傍宙域へのハイパースペースジャンプを完了した。 旗艦「ナデシコ」戦闘中枢指揮所では、司令長官朝倉涼子がゆったりと椅子に座っていた。 艦載メインコンピューター「オモイカネ」が、周辺情報を空中に映し出した文字で示す。 『前方に敵性艦隊を確認。銀河帝国親衛艦隊と判定。総数534隻』 「帝国最後の艦隊ね。さぁ、どんな戦いを見せてくれるかしら」 親衛艦隊534隻に対して、こちらは1543隻。優位は揺るがないが、油断はできない。 『楽しそうですね』 「戦争は私の仕事だもの。仕事は楽しんでやるに限るわ」 トランター、皇帝宮殿。 帝国宰相長門有希は、敵艦隊を確認すると、淡々とした声で命令した。 「玉璽台、応答せよ」 玉璽台は古典的な電子音声で応答した。 「音声認識、帝国宰相長門有希。御命令をどうぞ」 玉璽台には、帝国の全権力を象徴する立方体、すなわち玉璽が載っている。 「帝国親衛艦隊全艦の制御キーを帝国宰相に変更せよ。私が直接指揮をとる」 「了解。制御キー、変更しました」 長門有希は、制御キーの変更を確認すると、手元のパネルを猛烈な勢いで叩き始めた。音声命令よりもこちらの方が早いと判断してのことだった。 猛烈な勢いでパネルを叩く彼女を、後ろの席で座っている皇帝は目を見開きながら見ていた。 しかし、おそらく帝国最後の皇帝になるであろう彼女は、特に口をさしはさむようなことはしなかった。 『敵艦隊、ハイパースペースジャンプを開始』 朝倉涼子が「どこへ?」と問う暇すらなく、敵艦隊はハイパースペースジャンプを完了していた。 オモイカネが、敵艦隊と自艦隊の位置関係を空中に三次元映像として示した。 敵艦隊は、球形陣を形成する自艦隊の内部に現れていた。 長門有希は、親衛艦隊の全艦に対して、「全兵器使用自由(オールウェポンズフリー)、最寄の敵艦を攻撃せよ」を下令。 朝倉涼子は、自艦隊全艦の制御キーを自分に移すと同時に、手元のパネルを猛烈な勢いで叩き始めた。 10分後。 その宙域には、1隻を除いてすべての宇宙戦闘艦艇が消滅していた。 かつて艦艇であったものは、無数の破片となって、宇宙を漂っている。 残った艦は、ナデシコであった。 そんな状況でも、朝倉涼子はゆったりとした態度を崩さなかった。 「さすがは、親衛艦隊。帝国の誉れといったところかしらね」 『第三区画に損傷。戦闘航行に支障なし』 「第三区画を閉鎖しなさい」 『閉鎖完了。これからどうするのですか?』 「ノヴァヤ・ロージナ星系で待機している予備艦隊にこちらに来るように命じなさい」 『了解』 予備艦隊は、星系同士を連結するハイゲートを光速の10%という猛烈なスピードで続々と通過していった。 そして、ハイパースペースジャンプで、次々とナデシコの周囲に集結していく。 「新たな敵艦隊。総数1432隻」 玉璽台が告げてきたその事実は、その場にいる者のほとんどを絶望の底につき落とすのに充分なものであった。 帝国にはもはやこれに対抗すべき戦力がない。 朝倉涼子は、指揮下の全艦に命じた 「全艦に命令。搭載全兵器を使用してトランター軍事施設を攻撃。ただし、皇帝宮殿区画は攻撃不可」 『なぜです?』 「帝国政府に降伏を認めさせなければならないもの」 『なるほど』 自由惑星同盟軍統合艦隊の全艦は、ありとあらゆる兵器をトランターに降り注がせた。 艦首ガンマ線レーザー砲、陽電子ビーム砲、電磁レールガン、反物質弾頭魚雷、マイクロブラックホール爆弾……ありとあらゆる兵器が地上に降り注いだ。 帝国側もありったけの地対宙兵器で応戦したが、しょせんは焼け石に水であった。 攻撃目標は軍事施設であったが、周囲の民間人を巻き込まないわけにはいかない。 地上の阿鼻叫喚の様子は、ナデシコ戦闘中枢指揮所のメインスクリーンにも映し出されていた。 「まるで、人間がゴミのようね」 朝倉涼子は、凄絶な笑みを浮かべながらそうつぶやいた。 オモイカネは、何も言わずに沈黙を守っていた。 「トランターの戦闘能力の99.9999325%を喪失」 玉璽台が淡々とそう報告する。 長門有希は、体を反転させ、皇帝に要請した。 「私に皇帝権限の委譲を」 「有希、何する気?」 「あなたには、安全な場所に移動してもらう。でも、私は後始末をつけなければならない」 「ちょっと、有希。あんた死ぬ気なの!?」 「違う。後始末を終えたら、私もあなたのところに行く」 「本当に?」 「私があなたとの約束を破ったことがある?」 長門有希は、じっと皇帝を見つめた。 「……分かったわ」 皇帝は、凛とした声で、おそらく皇帝としては最後となる命令を下した。 「玉璽台、応答しなさい!」 「音声認識、皇帝陛下。御命令をどうぞ」 「帝室典範第123条に基づき、皇帝権限を一時的に帝国宰相に委譲するわ」 「委譲範囲を指定してください」 「全部よ!」 それは、皇帝の帝国宰相に対する絶大なる信頼を示すものであった。 「了解。設定を完了いたしました」 長門有希は、手元のパネルを叩いた。 天井から等身大のカプセルが下りてきた。自動的に開く。 「入って」 長門有希に促され、皇帝はカプセルの中に入った。自動的に閉じる。 皇帝が何かを叫んでいたが、もはや聞こえない。 「皇帝陛下を緊急避難指定惑星に転移せよ」 「了解」 玉璽台の応答と同時に、カプセルは忽然と消え去った。 「転移を完了しました」 「帝室典範第143条に基づき、玉璽台より機密情報を消去せよ」 「了解。消去完了」 「敵艦隊司令長官宛に通信。『銀河帝国は貴艦隊に降伏を申し入れる』」 「了解。送信完了」 「皇帝宮殿に白旗を掲揚せよ」 「了解。白旗を掲揚します」 『帝国政府より、降伏の申し入れがありました』 「受諾すると返答しなさい。艦隊の各艦は、トランター低軌道で待機。陸戦隊は地上降下の準備をしなさい。私も降りるわ」 『お気をつけて』 1時間後。 低軌道から無数の揚陸艇がトランターの大地に降下していった。 朝倉涼子は、陸戦隊の兵士の護衛のもと、皇帝宮殿に乗り込んだ。 陸戦隊の兵士たちは、M89A5重機動装甲服に身を包んでいる。 兵士たちは、朝倉涼子の命令のもと、宮殿内にいる帝国政府の者たちを次々と屋外に連行していった。 宮殿内に残ったのは、帝国宰相長門有希ただ一人。 朝倉涼子は、その部屋に入り、兵士に長門有希の身体検査をさせて危険がないことを確認すると、護衛の兵士に廊下で待機しているよう命じた。 扉が閉じられる。 と同時に、長門有希は、遮音フィールドを部屋に展開した。 「お久しぶりね。長門さん」 朝倉涼子の挨拶に、長門有希は淡々と応じた。 「久しぶり。状況を知らせてもらいたい」 「予定どおり、陸戦隊は全部トランターに降ろしたわよ。艦隊も低軌道に待機。自由惑星同盟軍の全兵力の99%がここに集中してるわ」 長門有希は黙ってうなずいた。 そこに、忽然ともう一人の人物が現れた。 「トランター在住の涼宮ハルヒの子孫はすべて転移させましたよ。皇帝を除いて」 現れたのは、あの喜緑江美里であった。 「皇帝は私が転移させた。自由惑星同盟軍は?」 「ここにいる兵士たちの中に涼宮ハルヒの子孫がいないことは確認済みよ」 「了解した。では、最終工程に移るが、その前にこの後のことについて確認する。私は北方星域群と西方星域群、朝倉涼子は南方星域群、喜緑江美里は東方星域群において、涼宮ハルヒの子孫の観測及び保全の任務を継続する。それが情報統合思念体からの命令。よろしいか?」 「了解です、プレジデント」 「了解よ。でも、もったいないわね。あのナデシコは結構気に入ってたんだけどなぁ」 「やむをえない。銀河帝国滅亡後のパワーバランスを考慮すれば、強大な自由惑星同盟軍の存在は銀河規模の政情不安要素となる。政情不安は、涼宮ハルヒの子孫の保全にも悪影響を及ぼす」 「分かってるわよ。さっさとやっちゃって」 長門有希は、うなずくと、玉璽台に命じた。 「玉璽台、応答せよ」 「音声認識、皇帝代理長門有希。御命令をどうぞ」 「帝室典範第157条に基づき、特別非常措置をとる」 「了解。トランター惑星自爆装置起動します」 とある星系、とある惑星、とある避暑地、とある別荘。 かつて銀河帝国皇帝であった彼女は泣いていた。 Vネットで飛び交うのは、ここ数時間、ひたすら同じニュースだった。 惑星トランターの大爆発、1万2000年にもわたる歴史を有する銀河帝国の滅亡、自由惑星同盟軍の壊滅。ひたすらそのニュースが繰り返されている。 「有希……なんで……」 彼女は、泣きながら、つぶやき続けていた。 「なんで……。約束したじゃない……。なんで……死んじゃったのよ……」 「ひとを勝手に殺さないで」 彼女はあわてて振り向いた。 そこには、長門有希が立っていた。 「有希!」 彼女は、ものすごい勢いで長門有希に抱きついた。 「有希! 本当に有希なのね!?」 「私の偽者など存在しない」 長門有希は、ひたすら淡々と応じる。 「死んじゃったかと思ったじゃないの!」 「私は約束を守るといったはず」 長門有希は、自分の胸でひたすら泣きじゃくる涼宮ハルヒの子孫を優しく抱きしめた。
https://w.atwiki.jp/niko2/pages/110.html
暗黒長門 【元ネタ】 涼宮ハルヒの憂鬱シリーズ 【参考動画】 愛しの彼が振り向かない ~暗黒長門~ 歌入りFullver http //www.nicovideo.jp/watch/sm657560 【関連人物への呼称】 一人称→「わたし」 二人称基本→「あなた」 キョン→あなた(一度も名前を呼んだことがない) 涼宮ハルヒ→涼宮ハルヒ 古泉一樹→ キョンの妹→不明 朝倉涼子→朝倉涼子 【キャラ紹介】 TFEI端末、一言で言い直せば宇宙人。 基本的な設定は本家に準じるが、暗黒長門は本家と違い腹黒ヤンデレキャラである。 自分の幼児体型に強いコンプレックスを持っているのも本家との相違点の一つ。 【能力】 早口でプログラムのようなことを詠唱すると物理法則を無視したり、著しく身体能力を向上をさせたり、 記憶やプログラムを改ざんしたり…といった超常現象を起こせる「情報改変能力」を持つ。 以下、本ロワでの動向(ネタバレ) + 開示する 初登場話 20 ぺったんぺったんつるぺったん ~五十歩百歩~ スタンス 奉仕(キョン) 現在状況 1日目・午前の時点で死亡 現データ 77 蝕時点 愛しの彼(キョン)の捜索を最優先。 しかし、最初に出会った伊吹萃香とは喧嘩別れ。 次は自殺を図った双海亜美に出くわした所をオメガモンに見咎められて、怪我を負う羽目に。 何もかもが思い通りにいかずにイライラしていた所でキョンの死を知り、優勝してキョンの蘇生を目指すことにする。 手始めに歌を歌っていた福山芳樹を狙撃し殺害するが、その報復に来たYOKODUNAによって致命傷を負わされる。 このまま息絶えるかと思われたが、自分の最期を見届けに来た朝倉涼子の体を乗っ取ろうとして相討ちとなる。 その後遺体は埋葬されるが、クラモンAによって喰われて4つの人格の一つとなる。 主に情報改変を使っての戦闘のサポートや怪我の治療を担当する。 吸収後はキョン絡みの事象以外では特に取り乱す事も無く冷静沈着。且つ甘言でロールちゃんを唆すなど更に腹黒くなった。 キャラとの関係 名前 関係 解説 初遭遇話 キョン 仲間 愛しの彼。 未遭遇 涼宮ハルヒ 仲間 愛しの彼を誑かす腐れ女。 未遭遇 古泉一樹 仲間 ガチホモ。 未遭遇 朝倉涼子 敵対 体を乗っ取ろうとするも、相打ちに 77 蝕 伊吹萃香 敵対 邪魔すんな、つるぺた幼女。 20 ぺったんぺったんつるぺったん ~五十歩百歩~ 双海亜美 その他 自殺した所に出くわす。 38 不完全自殺マニュアル―思い出をありがとう― オメガモン 敵対 誤解から戦闘になる。 38 不完全自殺マニュアル―思い出をありがとう― 福山芳樹 敵対 狙撃して殺害する。 66 十一色の誓い YOKODUNA 敵対 狙撃の報復として致命傷を負わされる。 66 十一色の誓い
https://w.atwiki.jp/yuriharuhi/pages/29.html
110 名無しさん@秘密の花園 2006/06/23(金) 22 51 19 ID YMGUBB7I 谷口→国木田 ↓ キョン⇔古泉←執事 ↑ 生徒会長 きみどり ↓ 長門←朝倉涼子 ↑ ハルヒ→みっくるんるん←メイド ↑ ↑ ENOZ 鶴屋さん 111 名無しさん@秘密の花園 2006/06/24(土) 01 52 16 ID 6GUHph/H メイド×みくるか その発想はなかったわ 112 名無しさん@秘密の花園 2006/06/24(土) 17 39 18 ID yAz46E8x 110 阪中さんと誘拐犯の少女も足しといてくれ。 あと上のはイラネ。 113 名無しさん@秘密の花園 2006/06/25(日) 12 48 53 ID HndEAAO1 こうだろ きみどり ↓ 朝倉涼子→長門―─┐ 誘拐犯の少女─┐ ↑ ↓ ↓ ↓ 阪中さん→ハルヒ→みっくるんるん←森さん ↑ ↑ ENOZ 鶴屋さん 114 名無しさん@秘密の花園 2006/06/25(日) 12 50 19 ID HndEAAO1 やべw 115 名無しさん@秘密の花園 2006/06/25(日) 18 06 50 ID jJc1a469 ┌―――→ きみどり ↓ ↓ 朝倉涼子→長門←─キョン妹┌―─―誘拐犯の少女 ↑ │└─┐ │ │ ↑ ↑ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ │ │ 阪中さん→ハルヒ→みっくるんるん←森さん │ ↓ ↑ ↑ │ 樋口さん ENOZ 鶴屋さん←大みくる―─┘ よし、とりあえず乱交パーティーだ。 116 名無しさん@秘密の花園 2006/06/25(日) 23 55 15 ID WyRl0MYk 最終的に矢印がほとんどみくるにいってるな。 117 名無しさん@秘密の花園 2006/06/26(月) 02 40 39 ID ZSKK7e// なんで阪中さんと朝倉が両思いなんだよw 118 名無しさん@秘密の花園 2006/06/26(月) 04 40 33 ID 7ZHYab5L 矢印って「受け攻め」の意味じゃないのか?
https://w.atwiki.jp/akadama/pages/38.html
帰りの電車はいつものように混みあっている。 クラブでくたくたになった体を吊り革にぶら下げながら、俺はこの混雑に耐えていた。 夏の満員電車というのはまったく苦痛だ。 冷房がついているとはいえ、見も知らぬ他人と、汗でベタつく体で押しあいへしあいしているので、 快適とは程遠い。だがまあ、これも家に着くまでの辛抱である。 帰ったら真っ先にシャワーを浴びて、さっさと寝よう。宿題は明日学校で誰かに 見せてもらえばいいや。俺はそんなことをぼんやり考えながら、疲れた顔した会社員や その他の学生の中に混じって大人しく立っていた。 ふいに、電車が強く揺れて、隣に立っていた背の高い学生がバランスを崩し、 俺の方に倒れかかってきた。同時に足を踏まれたので、俺は小さく苦痛の声をあげた。 「すみません」と、学生が振り返った。その顔を見て俺は少し驚いた。 そこには、モデルみたいに整った華やかな顔があった。 光の透った茶色い目をしてこちらを覗きこんでいる。 「大丈夫ですか」と言うその唇は薄く色づいて――って、ちょっと待て、 なんでこんなに顔を近づけてくるんだこの人は。 なんだかいい匂いまでしてくるような気がして、不覚にもドギマギしてしまう。 俺は慌てて、心を落ち着かせるのに十分な距離を取ってから、大丈夫だと返事した。 それを聞いたその人は、にっこり笑って、静かに俺から視線を外した。 絵に描いたようなキレイな男っているんだなあ、と俺は物珍しがって、 しばらくその横顔を見ていた。 電車が振動する度、その人の制服の袖が右腕に当たるのを意識した。 異変に気づいたのはS駅を過ぎてしばらく経った頃だった。 それまで隣でずっと静かに立っていたその人の体が、ふと、不自然に震えたのを感じた。 ちらっと横目でうかがうと、頬がなにやら赤くなっている。 せわしなく瞬きをしたかと思うと、ぎゅっと目をつむり、そして、またわずかに肩を震わせた。 どうしたんだろう、と訝しく思ったその時、再び電車が軋んだ音をたてて横に揺れた。 人に押されて、今度は俺がその人の方に倒れこんだ。 腰に、妙な感触のものが、当たった。 俺はハッと息をのんだ。 おそるおそる下に視線を向けると、その人のズボンの膨らんだ部分が目に入った。 あ、という声がして、すぐにカバンで隠されたが、もう遅かった。 信じられない気持ちで、俺は目の前の赤くなった顔を見た。 それからその時はじめて、その人の背後にぴったりくっついている男がいるのに気づいた。 帽子を深くかぶって俯いているために容貌は知れなかったが、 そいつが腕を下にのばして動かす度に、その人が唇を噛んで、身じろぎするのが分かった。 一瞬だが、制服の裾を割る手も見えたのに至って、ようやく状況が理解できた。 間違いない。痴漢だ。 頭にカッと血が上る。俺はとっさに口を開いた。 だが、声をあげる前に、その人が俺の腕を掴んだ。 耳元に顔を寄せられたかと思うと、かろうじて聞き取れるほどの小さな声で 「どうか、何も、言わないでください」と言われた。 騒ぎを、起こしたくないんです。うわずった声でそう囁かれる。 男にケツをまさぐられておいて、何をのんきなこと言ってんだこの人は。眉を下げて、今にも泣き出しそうなくせに。俺は呆れてその顔を見返した。 潤んだ目と視線が合って、ふいに、押しつけられた身体の熱さが今更ながら気になった。 まだ俺の腕を掴んだままの手は湿っており、そこからじりじりと緊張が伝わる。 後ろの男の腕はしつこく動きを繰り返し、そのうちに、その人の身体を断続的に揺さぶってくるようになった。 俺に密着している胸がそれに合わせてせわしなく動く。白くなるほど噛みしめられている唇が、 時折開いては熱い息を漏らし、俺の頬を熱くした。 調子に乗るんじゃねーぞ、と腹が立った俺は再び抗議しようとしたが、またもその人に腕を引かれて止められた。なんなんだ、もう。始終ひっつかれている俺の身にもなってほしい。こっちまで妙な気分になりはじめているから困ってるんだ。 今やその人の顔は真っ赤になっていた。鼻筋にうっすらと汗が浮かんでいるのが近くで見える。 舐めてみたい、というよこしまな考えが頭をよぎった途端、自分の下半身まで不穏な動きをしそうになって俺は大いに焦った。くそ、なんで俺までこんな目に。 忌々しく男の方を睨むと、そいつの腕が動きを早めたのが見えた。と思うやいなや、俺の足下にどさっと何かが落ちた。 それはあの人のカバンだった。もう持っている余裕もなくなったのだろう。そしてそれが落ちたことによって、今まで隠されていたズボン部分が再び露見した。 そこは気のせいか、さっき見たときよりも膨らみを増し、さらには濡れたようなシミまでついていた。 痴漢に触られてその人が興奮したのかと思うと、もう、たまらなかった。 俺は衝動のまま、手を伸ばし、そこに触れてぐっと力を込めた。 呼吸が乱れる音がした。腰が小刻みに震える。しばらくしないうちに自分の掌がじっとりと濡れるのを感じた。 すでに限界が迫っていたところに、俺が触ったのがとどめとなったらしかった。 顔を上げると、その人は口で荒い息をつきながら俺をじっと見ていた。 怒るでもなく、泣くでもなく、ただぼんやりした感情のない顔で黙って俺を見ていた。 熱に捕らわれた俺は、まだしばらくその人から手が離せないでいた。 誰も居ないトイレの奥の個室に彼を引きずり居れる。 途端ずるずると薄汚い床に座り込んだ彼は、ゆっくりと薄茶の瞳で俺を見上げた。 まだ潤んで少し赤い目尻。噛み締めたせいでぷっくらとした唇。じわりと濡れている股間に、添えられた両手が酷く卑猥な感じで。 頭の中でがらがらと何かが崩れる音がした。 理性とか、常識とか。そういうのが崩れ墜ちたんだろう。 「あっ…やぁ……んぐぅっ」 「奥まで、咥えろよ」 「ん、んぐ…んぅ…っ」 「はっ…」 喉の奥まで押し込めると、ヌルリと暖かくて気持ちが良い。 初めはゆっくりと、次第に動きを早くして、夢中になって中を蹂躙した。 彼の目尻に溜まった涙が頬を滑り落ちた。 それが綺麗で、もっと流して欲しくていっそう腰を動かした。 と、彼が震える指を伸ばして俺の制服の裾を掴んだ。頭を掴んでいたが、どうもぐらぐらと揺れて安定しないらしい。 そのどこか拙い動作に煽られてしまい、ぐ、と奥まで押し込んで俺は果てた。 「っ…はぁ…」 萎えた自身をずるり、と口から半分まで出してはたと気付いた。 このまま全部抜き出すと、彼の制服にかかってしまう。 ここまでしておいて何だが、それはさすがに…と迷っていると、こくこくと彼の喉が鳴った。 「ええっ…!」 まさか、飲んだのか。驚いてずるりと抜き出すと、途端勢いよく咳込み始めた。 つう、と首へと伝う白いものは、全部は飲み切れなかった俺のもののようで… 「けほっ…っはぁ…っく…ううっ…」 肩で息をしながら、ポロポロと涙を零し始めた彼に、俺はもう何もいえなかった。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4777.html
「なあ」 「何?」 「長門は?」 「さあ」 何かを呟けば、誰かが言葉を返してくれる。昔の誰かが言っていた事だ。 俺が先人たちの格言の類のなかで、一番初めにああ、そうかもな。と納得をさせられたものでもある。残念なことに、それが著書の一説であったか、はたまた和歌川柳俳句その他であったか、そしてその言葉を世に知らしめた人物が一体誰であったか。などという、細かい情報はすべて失念してしまったが。 「お前、クラス委員の仕事とか無いのか」 「ないのよね、それが」 窓際の席に腰をかけ、パソコンの画面を見つめたまま頬杖をついている女は、俺の問いかけに対し、なんとも言い表せない脱力感を孕んだ声で、平然と否定の旨を示してくださった。 しかし。今は一体何月だ。 答えは一月。先日、冬休みが明けたばかりである。 何しろ俺は、クラス委員などという大それたポジションとは、今も昔も到底縁のない男ではあるが、そんな俺の浅い知識で考える限り、学期が明けたばかりの数週間ほどというのは、クラス委員という役職にとって、一年のうちでもっとも忙しい時期に入ると思うのだが。 「別にそうでもないのよ、生徒会じゃあるまいし」 クラス委員様は暢気な口調でのたまいながら、傍らで冷め始めていたティーカップを取り上げ、半分ほどになっていたその中身を呑みほし、小さく息をついた。 俺がこの部室を訪れた瞬間から、この女の体重を受け止め続けていたパイプ椅子が、わずかに軋みを上げる。 窓から差し込む冷たい光が、朝倉印のティーカップの淵を、ほんの少しだけ輝かせていた。 冬である。 つづく
https://w.atwiki.jp/notbs/pages/18.html
この事件は、岡田之夫(仮名)報道制作局長が痴漢で逮捕された事件。 詳細 http //opendoors.asahi.com/data/detail/5067.shtml にて「TBS局長逮捕 痴漢突き出す女性の増加」の見出しを確認。 TBSの局長が痴漢を行ったのは事実のようであるが、誰が行ったかなどは公表しなかったようである。 まとめ TBSの局長が痴漢を行った TBSの社員は下関係の不祥事が多いにもかかわらず、それらの対策はない。 a
https://w.atwiki.jp/rakirowa/pages/98.html
◆OGtDqHizUM No. タイトル 登場人物 007 アンドロイドvsホムンクルス パピヨン、朝倉涼子 020 魔王アナゴに死ぬほど騒がれて眠れないCD アナゴ、6/氏(神) 036 パラレルワールドって怖くね? スバル・ナカジマ、アルフォンス・エルリック、シグナム、アナゴ、でっていう 042 純白サンクチュアリィ 岩崎みなみ、Dボゥイ、真・長門有希 052 隠し砦の三狂人 赤木しげる(13歳)、ロアルド・アムンゼン(その3) 058 男の戦い 南千秋、ピッピ、川田章吾 065 彼 ら の 行 方 小早川ゆたか、パピヨン、三村信史 079 バトルロワイヤルは鬼ばかり 桂言葉、真・長門有希、南千秋、赤木しげる(13歳)、武藤遊戯、ロアルド・アムンゼン(その3) 087 ETERNAL DRAGON 相羽シンヤ、竜 094 ピエロのままで ランキング作成人 100 MURDER×MURDER(前編)MURDER×MURDER(後編) スバル・ナカジマ、アルフォンス・エルリック、シグナム、アナゴ、衝撃のアルベルト 106 赤い空の窓に消えていくあの子を呼ぶ 朝倉涼子、岩崎みなみ、Dボゥイ、6/氏(神) 116 知ってるか?緑はかえるの象徴なんだぜ かえる 117 第2回放送 ピエモン、ジェネラルシャドウ 登場させたキャラ 3回 アナゴ 2回 パピヨン、真・長門有希、赤木しげる(13歳)、ロアルド・アムンゼン(その3)、南千秋、スバル・ナカジマ、アルフォンス・エルリック、シグナム 朝倉涼子、6/氏(神)、岩崎みなみ、Dボゥイ 1回 でっていう、ピッピ、川田章吾、小早川ゆたか、三村信史、桂言葉、武藤遊戯、相羽シンヤ、竜、ランキング作成人、かえる、ピエモン、ジェネラルシャドウ nk氏と同じくつなぎ多め。熱血バトルをしたかと思えば全員満身創痍で次に回したり、youちゃんのブレ具合や三村のKOOL度をさらに加速させたり、年少鬼畜組のアレコレなどをやらかした。 (2009-03-12 17 54 34) コメント