約 30,346 件
https://w.atwiki.jp/occulttarou/pages/80.html
716 :本当にあった怖い名無し :2007/03/13(火) 21 29 37 ID 7ydkJ6Az0 他板で読んだこの事件が後味悪い。 http //enzai.xrea.jp/ 電車の中でジロジロ見られて駅を出た後もついてこられて 痴漢行為をされた女子高生がが警察に被害届を出す。 しかし逮捕された人間は電車にも乗ってないし、髪型も服装も違うしアリバイまである。 彼を犯人だと示すのは被害者の発言のみ。 それでも捕まった人の記録。 717 :本当にあった怖い名無し :2007/03/13(火) 21 34 59 ID QBJ4qdw30 痴漢で思い出したが、 上京して初めての夏に自宅マンションのエレベータ乗ったら 男性が駆け込んできたのでわざわざ「開」押して待ってて乗せて ドア閉まったらそいつ「2階」押したあと振り向いて痴漢行為し始めた(お股とか触られた)。 で2階に着いたら目の前の階段を駆け下りて逃げて行った。あれちょっとショックだった。
https://w.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/33.html
No. タイトル 登場人物 000 プロローグ No. タイトル 登場人物 001 絡み付く糸 横島忠夫、エミリー・オブライアン 002 「見」 安岡、ゾフィス、三千院ナギ 003 冷めた人 二階堂、円谷光彦、キノ 004 反旗 赤木しげる、碇シンジ 005 魅惑の歌姫 アヤ・エイジア、糸色望 006 未知との遭遇 キョン、ケルベロス 007 帰ってきた朝倉涼子 朝倉涼子、小森霧 008 闇に舞い降りた天才医師 ブラック・ジャック 009 聖徳太子の楽しいバトルロワイヤル 平山幸雄、鷲巣巌、聖徳太子、梨々・ハミルトン
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/1192.html
朝倉と暗黒長門は交戦していた。両方とも同じ宇宙人であるものの、 スペックは暗黒長門の方が高く、朝倉は劣勢を強いられていた。 そして暗黒長門の情報操作で強化された渾身の蹴りが朝倉にヒットする。 朝倉はぶっ飛び、倒れる。朝倉は立ち上がろうとするが力が入らない。 その時 「朝倉さん!!」 消失長門が倒れている朝倉に走り寄った。 「朝倉さん…!!」 消失長門は涙を流しながら朝倉に呼びかける…朝倉は小さな声で囁いた。 「な…長門さん…キスして。」 「え…?」 「長門さんの唇を私の口に…重ねて。」 朝倉の頼みに消失長門は驚く、アカギに振り向くがアカギは「自分は関係ない」でも言いたげに冷や汗を流してそっぽを向いた。 消失長門は頭がパニックになるが、このままでは状況はよくならないので何を考えず自分の唇を 朝倉の口に重ねた 「何をやってるんだ…?」 暗黒長門は変なものを見るような目でその光景を見ていた。 すると…倒れていた朝倉涼子が立ち上がる。 「やった…ついにやったわ…長門さんのファーストキスはついに奪っちゃったわ♪」 朝倉は歓喜しながら立ち上がり、 「私は倒れないわ…長門さんへの愛がある限りねぇ!!」 「何なんだ…このヤバイ感じは…!!」 「うわぁ…」 朝倉に対し、暗黒長門は戦慄を覚え、アカギはドン引きした 【二日目・9時00分/幕張メッセ近く】 【暗黒長門@ニコニコ動画】 [状態]対有機生命体コンタクト用インターフェース 、戦慄 [装備]不明 [道具]不明 [思考]基本:優勝してキョンを生き返らせる。機を見て過激派を殲滅する。 1:消失長門と長門を殺し、自分が長門有希になる 2:異端組を殺す。朝倉と長門を優先 3:アーマゲモンにやや好意。南春香は彼に任せる 4:朝倉涼子に対し戦慄を覚える 【朝倉涼子@ハルヒシリーズ】 [状態]最高にハイ!!、対有機生命体コンタクト用インターフェース [装備]不明 [道具]支給品一式 [思考]基本:カオスロワを潰す 1:消失長門のファーストキスを奪えて歓喜 2:消失長門のことを赤木に任せて暗黒長門に対処 【消失長門@涼宮ハルヒの消失】 [状態]多少の疲労、呆然 [装備]不明 [道具]不明 [思考]基本:朝倉についていく。殺し合いには乗らない。 1 …恥ずかしい 【赤木しげる@アカギ】 [状態]強運、神域、悪漢、多少の疲労、ドン引き [装備]刀、拳銃 [道具]支給品一式 [思考]基本:ゲーム転覆。 1:同じく対主催の仲間を探し、準備が整ったら主催本拠に突撃 2:暗黒長門の攻撃から消失長門を護衛。アーマゲモンは海馬たちに任せる 3:戦闘後はとりあえず幕張メッセ前で様子を見る予定 4:朝倉涼子にドン引き
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5291.html
☆注意!「どちらでもいい」出来心で書いたとんでもない電波です。 ☆立場(二字)短編とのつながりはあります。 彼女はいつも『超能力』に明け暮れていた。 とはいえ、学校に間に合わないほどには仕事を押しつけられていたわけではなかった。 それに加えて彼女は普段から、必ず自分の帰宅を待ち、食事をとるようにと、友人に言い聞かせていた。 なにしろ、彼女は友人を、とりわけ長門有希を愛していたのだ。 その長門有希と共にとる食事だが、情報爆発が起こると食事の最中でさえ駆け出し、仕事をしなければならなかった。 彼女らはほとんど食事が進まなかったが、宇宙人である彼女たちは泣き言を言わない。 彼女は、自分が疲れたなと感じたときは休むように長門有希に頼んだ。バックアップとして、メイン端末の動作停止だけは避けなければならない。 情報の精度を上げるため、さまざまな場所に配置されたインターフェースとともに観測をしながら、彼女は待っている。 それでいて、元気の残っている日には、彼女は友人に、共にショッピングやカラオケもしくは喫茶店などにいこう、と言って友人達を誘った。 彼女は普通の高校生として過ごしたかった。なぜならそのように作られていたからだ。 長門有希は、あなたも一緒しない?とせっかく声をかけても、たいてい断って黙々と本を読んでいた。 朝倉涼子はずっと前から、長門有希に関してはさじを投げていた。 だから、友人の絆を強くすることにつながる、このような普通の女子高生がするようなことに長門有希が参加しなくても、特に何も言わなかった。 どうせ彼女には、人間というものが分かっていないし、感情のなんたるかも分かっていまい……。 しかし、長門有希はなんといってもそのように作られていたので、朝倉涼子は彼女の欠点に目をつむっていた。 少々のわだかまりと苦々しい気分が残るのは打ち消しがたかったが。それでも、彼女は待っている。 最近、朝倉涼子の仕事がだんだん減ってきている。これには理由がある。大事な、大事な情報フレアがほとんど無くなってしまったのである。 ところが、彼女は情報フレアを入力とするインタープリタなのである。そして、出力を出せないインタープリタの存在価値は皆無そのものだ。 情報フレアを起こさなければならない。何が何でも。 まじめな彼女は、情報フレアを起こすために全力を尽くす。 不都合なのは、必要とされるためのこの日々の闘いが、できれば友人たちのために割きたいと思っている時間をどんどん浸食してしまっていることだ。 彼女は次第に家に帰らなくなり、友人達とは久しく会う事はなくなった。長門有希は観測業務以外、本を読んでいて、顔を上げもしない。 たまに帰ることができる時があれば、長門有希が用意したのであろうレトルトカレーを食べる。そして寝室のある自分の階へ戻る。疲労困憊した身体を引きずって。 追い打ちをかけるように、情報フレアの発生回数はゼロに近似した。彼女の超人的な努力にもかかわらず。 彼女の端末コンソールに絶えて久しい命令が打ち込まれた。 観測の必要性が薄れたため、3日後に動作停止。コメントラインに、動作停止によって節約できるエネルギー量が書かれていた。 /* 死なせる。必要がないから。 */ 彼女は思う。 私にはほとんど希望が残っていない。以前、私は探し求めた。片時も同じ所にはいなかった。 何かを期待していた。何かとは?それはよくは分からなかった。 私は、けれども人生がこんなもの、つまり無同然のものでしかないなどということは、あり得ないと思っていた。 人生は何かであるはずだった。そして、私はその何かを探し求めていた。 私は今、期待するべきものなど何もない。 それでも、彼女は待っている。 最後の時は誰も知らずにやってくる。 彼女の友人のように、この先を生きたかった。 彼女のように、だれかを好きになりたかった。 この時限爆弾のような自分の能力で、自分を殺すならば、 ならば、最期はせめて最愛の友人に終わらせてほしかった。 嫉妬の心を抱かざるを得ない彼女に。 朝倉涼子は帰宅し、最期の望みに賭けてみることにした。彼女は必要とされたかったのだ。 窓から空を見上げ、雲が流れゆくのを眺める。至る所にほこりがたまっていた部屋を掃除する。流しの中で汚れた食器を洗い流す。 それで、自分の部屋から外へ出ず、椅子に腰を下している。ただ単に座っている。居心地がよいというわけではない。 私がここに座っているのは、そんなもののためでない。 私は立たなければならない。私が無同然のものでしかないなんて認められないから。そんなみじめなものだなんて認められないから。 それでも朝倉涼子は待っている。私がここで暮らすのが、明日であったら良いな、と思いながら。 時で加速度を二回積分すると道のりとなる。そして、彼女に許された積分の定義域は1日。 彼女は力を加え、動くはずのない運命の運動方程式に加速度を与えた。 朝倉涼子は消滅した。満身の笑みとともに。 本来、朝倉涼子が帰ってくるべき場所に、長門有希が立つ。その表情に幽かに嫌悪の表情が見えた。 朝倉良子が窓から空を見上げ、雲が流れゆくのを眺めるために使った椅子が処分された。 仕事のため、久しく掃除をしていなかった、そして昨日掃除をし終わった部屋のカーペットが処分された。 汚れていて、最期に洗った食器が処分された。 そして、まるで大量の腐敗物がそこに存在しているかのような目で、すべてを片づけた。 彼女は部屋に戻り、数少ない彼女の記憶の証拠をすべて処分するだろう。 そう、朝倉涼子は待っていた。彼女が感情という命題を理解することを。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5068.html
「私には正しさが必要なのよ」 朝倉涼子は、たびたびその言葉を口にしていた。 「それはあやふやであり、感情的であり、我々には不要なもの」 そのたびに長門有希はそう返答した。朝倉は長門の顔を恨めしそうに見つめたあとで 「長門さんには分からないことなのよ」 そう、恨み言のように呟く。 それは彼女たちの間で幾度となく繰り返された、儀式のようなやりとりだった。 その短いやり取りを繰り返すことが、二人が二人であることを忘れずに有り続けるために 絶対に欠かしてはならない、おまじないのようなものだったのだ。 朝倉涼子は、毎日決まった時間に買い物に行き、毎日決まった時間に台所に立ち 毎日決まった時間に、長門有希を食卓に呼んだ。 それは世界が二人を必要とした 「私にはこれが必要なことなのよ」 長門には朝倉の言う『必要』であるということが、どういったものなのか、長い間理解することが出来なかった。 「そうね、あなたには必要のないものかもしれないわね」 「何故?」 「あなたと私には、与えられたものが違うからよ」 はるか情報統合思念体が長門に与えなかった何かを、朝倉涼子は所持している。 「そうよ。だから私は、こんな無駄なことをしてしまうの」 「あなたはそれを必要なことだと言ったはず」 「でも、それはあなたにとっては無駄なことなのでしょう?」 「無駄であるとも、必要であるとも言っていない」 「そうね」 長門は用事もなく部屋を出ることはなかった。閉ざされた部屋の中で、長門はただ時間が過ぎるのを眺めていた。 朝倉は決まった時間に食事の用意をし、時間が来ると、自分の部屋へと戻って行った。 二人はただただ、その決まりきった日常を繰り返し続けた。 あるいは、それが二人にとって、朝倉の示すところの『正しさ』だったのかもしれない。 ◆ 「あの扉の向こうには、きっと、長門さんにとっての正しさがあるのね」 朝倉は時折、閉ざされたままの引き戸に視線を送り、そんな事を呟くことがあった。 長門は、その扉の向こうに誰が居るのかを知っている。 朝倉涼子がこの世に生まれるより前。長門の住むこの部屋をたずねてきた少年と少女が 止まった時間の塊とともに、眠り続けているのだ。 「私が彼らを起こしたら」 朝倉は言った。 「長門さんは怒るかしら?」 「望ましいことではない。それに、あなたでは不可能」 「そうね」 朝倉は無感情の現れであるかのような、冷め切った声色で、呟いた。 「私は劣っているもの。長門さんよりもずっと」 劣る。それが単純な機能面においてのみの意味合いでないことが、長門にはなんとなくわかった。 朝倉涼子は、長門にはかけているものを持っている。 それだというのに、朝倉涼子は長門よりも劣る存在である。 それが長門にとっては不思議なことだった。 ◆ 朝倉は『正しさ』を手にできるはずがなかったのだ。と、長門は思った。 それを感じたのがいつであったかは分からない。長門にとって、時間とは、そこにあるようでないものなのだ。 長門と朝倉は、この世界が犯してしまったのかもしれない『過ち』に干渉するために生まれた。 二人が『正しさ』にたどり着く事があるとしたら、それは同時に 二人の存在が、一切の価値を失うということなのだ。 「長門さん。私、たまに思うのよ。世界にとっての過ちとは、私たちのほうなのかもしれないわ」 「理解できない」 「だって、世界は私たちのものじゃあないもの」 時々、朝倉は涙を流した。 朝倉や長門こそが、この世の過ち。 それが正しいのか、間違いなのか。長門には分からなかった。 ◆ 「長門さん、私をしっかりと見ていてね」 朝倉涼子が長門有希によって、情報連結を解除される前の晩。朝倉は長門にそう告げた。 「私はもう、私ではなくなってしまったの。いうなれば、私はあなたと同じになってしまったの。 私は正しさを求めることさえ出来なくなってしまったわ」 朝倉は涙を流すことはなかった。 けれど、朝倉が言葉を放つたび、声を上げるたびに 長門は朝倉の全身から滲み出てくる『過ち』を感じていた。 それは長門には与えられず、かつて朝倉が持っていたもの。 「長門さん。あなたが私のことを、好きだと思ってくれた事が、一度でもあってくれたのなら、きっと私はとても喜んだと思うわ」 「そう」 翌日の夕暮れ、朝倉は長門の手によって、情報連結を解除された。 「キョン君のこと好きなんでしょ? 分かってるって」 今わの際に、朝倉は長門にそう告げた。 そうかもしれない。 長門は、それを否定するだけの材料も持っていなかった。 長門はその夜、朝倉と出会ってから初めての、夕食を摂らずに過ごす夜を迎えた。 ◆ 「何を歌ってるんだ?」 「古い歌」 「それは分かるさ」 「貴方も歌って」 「少ししか歌詞を知らん」 「一言だけが分かればいい。あとは、私が歌うから」 ◆ もしも朝倉涼子が、長門有希とまったく同じものしか所持していなかったとしたら。 朝倉は、長門の前から消えずに済んだのだろうか 「それは意味がないわよ」 長門の中で、朝倉が笑う。 「そんな私じゃあ、長門さんと一緒にいたいと思わなかったもの」 長門は朝倉とともにありながら、朝倉が食事を用意してはくれない日常を思い浮かべてみた しかし、長門の胸に芽生えたその不思議な空白が、一体何であるのか。長門には分からなかった。 長門には欠けているものが多すぎたのだ。 ◆ 「夢がある」 「どんな夢だ?」 「涙を流してみたい」 「そうすると、どうなるんだ?」 「私にも、理解できるかもしれない」 「何をだ?」 「彼女が私とともに居てくれた理由を。」 「そうか」 ◆ 長門には求めるものがあった。 それが一体何なのか、長門には分からなかった。 けれど、だからこそ長門は ◆ 「あなたは私に、好きといわれたい?」 「当たり前よ」 朝倉は言った。 「私は長門さんが好きなの。必要としてるの」 「私が存在しない場合、あなたが存在する意味はない」 「そうね」 朝倉はすこしさびしそうに眉を顰め 「たったそれだけのことなのかもね」 そういって、笑ったあとで、長門に触れられながら、わずかに涙を流した。 「あなたに会えてよかったわ」 「それは、あなたが存在する理由以上の理由で?」 「わからないわ。でも、うれしいの」 朝倉は笑った。 長門には、朝倉涼子が、過ちで生まれたものであるようには、どうしても思えなかった。 ◆ 長門はこれから先、自分が引き起こすであろう過ちのことを思った。 それは果たして、過ちなのだろうか。 「私には、正しさが必要なのよ」 長門は正しさを求めているのだろうか。 ◆ 「長門さん、好きよ」 「あなたに会えて、よかった」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4750.html
「私には正しさが必要なのよ」 朝倉涼子は、たびたびその言葉を口にしていた。 「それはあやふやであり、感情的であり、我々には不要なもの」 そのたびに長門有希はそう返答した。朝倉は長門の顔を恨めしそうに見つめたあとで 「長門さんには分からないことなのよ」 そう、恨み言のように呟く。 それは彼女たちの間で幾度となく繰り返された、儀式のようなやりとりだった。 その短いやり取りを繰り返すことが、二人が二人であることを忘れずに有り続けるために 絶対に欠かしてはならない、おまじないのようなものだったのだ。 朝倉涼子は、毎日決まった時間に買い物に行き、毎日決まった時間に台所に立ち 毎日決まった時間に、長門有希を食卓に呼んだ。 それは世界が二人を必要とした 「私にはこれが必要なことなのよ」 長門には朝倉の言う『必要』であるということが、どういったものなのか、長い間理解することが出来なかった。 「そうね、あなたには必要のないものかもしれないわね」 「何故?」 「あなたと私には、与えられたものが違うからよ」 はるか情報統合思念体が長門に与えなかった何かを、朝倉涼子は所持している。 「そうよ。だから私は、こんな無駄なことをしてしまうの」 「あなたはそれを必要なことだと言ったはず」 「でも、それはあなたにとっては無駄なことなのでしょう?」 「無駄であるとも、必要であるとも言っていない」 「そうね」 長門は用事もなく部屋を出ることはなかった。閉ざされた部屋の中で、長門はただ時間が過ぎるのを眺めていた。 朝倉は決まった時間に食事の用意をし、時間が来ると、自分の部屋へと戻って行った。 二人はただただ、その決まりきった日常を繰り返し続けた。 あるいは、それが二人にとって、朝倉の示すところの『正しさ』だったのかもしれない。 ◆ 「あの扉の向こうには、きっと、長門さんにとっての正しさがあるのね」 朝倉は時折、閉ざされたままの引き戸に視線を送り、そんな事を呟くことがあった。 長門は、その扉の向こうに誰が居るのかを知っている。 朝倉涼子がこの世に生まれるより前。長門の住むこの部屋をたずねてきた少年と少女が 止まった時間の塊とともに、眠り続けているのだ。 「私が彼らを起こしたら」 朝倉は言った。 「長門さんは怒るかしら?」 「望ましいことではない。それに、あなたでは不可能」 「そうね」 朝倉は無感情の現れであるかのような、冷め切った声色で、呟いた。 「私は劣っているもの。長門さんよりもずっと」 劣る。それが単純な機能面においてのみの意味合いでないことが、長門にはなんとなくわかった。 朝倉涼子は、長門にはかけているものを持っている。 それだというのに、朝倉涼子は長門よりも劣る存在である。 それが長門にとっては不思議なことだった。 ◆ 朝倉は『正しさ』を手にできるはずがなかったのだ。と、長門は思った。 それを感じたのがいつであったかは分からない。長門にとって、時間とは、そこにあるようでないものなのだ。 長門と朝倉は、この世界が犯してしまったのかもしれない『過ち』に干渉するために生まれた。 二人が『正しさ』にたどり着く事があるとしたら、それは同時に 二人の存在が、一切の価値を失うということなのだ。 「長門さん。私、たまに思うのよ。世界にとっての過ちとは、私たちのほうなのかもしれないわ」 「理解できない」 「だって、世界は私たちのものじゃあないもの」 時々、朝倉は涙を流した。 朝倉や長門こそが、この世の過ち。 それが正しいのか、間違いなのか。長門には分からなかった。 ◆ 「長門さん、私をしっかりと見ていてね」 朝倉涼子が長門有希によって、情報連結を解除される前の晩。朝倉は長門にそう告げた。 「私はもう、私ではなくなってしまったの。いうなれば、私はあなたと同じになってしまったの。 私は正しさを求めることさえ出来なくなってしまったわ」 朝倉は涙を流すことはなかった。 けれど、朝倉が言葉を放つたび、声を上げるたびに 長門は朝倉の全身から滲み出てくる『過ち』を感じていた。 それは長門には与えられず、かつて朝倉が持っていたもの。 「長門さん。あなたが私のことを、好きだと思ってくれた事が、一度でもあってくれたのなら、きっと私はとても喜んだと思うわ」 「そう」 翌日の夕暮れ、朝倉は長門の手によって、情報連結を解除された。 「キョン君のこと好きなんでしょ? 分かってるって」 今わの際に、朝倉は長門にそう告げた。 そうかもしれない。 長門は、それを否定するだけの材料も持っていなかった。 長門はその夜、朝倉と出会ってから初めての、夕食を摂らずに過ごす夜を迎えた。 ◆ 「何を歌ってるんだ?」 「古い歌」 「それは分かるさ」 「貴方も歌って」 「少ししか歌詞を知らん」 「一言だけが分かればいい。あとは、私が歌うから」 ◆ もしも朝倉涼子が、長門有希とまったく同じものしか所持していなかったとしたら。 朝倉は、長門の前から消えずに済んだのだろうか 「それは意味がないわよ」 長門の中で、朝倉が笑う。 「そんな私じゃあ、長門さんと一緒にいたいと思わなかったもの」 長門は朝倉とともにありながら、朝倉が食事を用意してはくれない日常を思い浮かべてみた しかし、長門の胸に芽生えたその不思議な空白が、一体何であるのか。長門には分からなかった。 長門には欠けているものが多すぎたのだ。 ◆ 「夢がある」 「どんな夢だ?」 「涙を流してみたい」 「そうすると、どうなるんだ?」 「私にも、理解できるかもしれない」 「何をだ?」 「彼女が私とともに居てくれた理由を。」 「そうか」 ◆ 長門には求めるものがあった。 それが一体何なのか、長門には分からなかった。 けれど、だからこそ長門は ◆ 「あなたは私に、好きといわれたい?」 「当たり前よ」 朝倉は言った。 「私は長門さんが好きなの。必要としてるの」 「私が存在しない場合、あなたが存在する意味はない」 「そうね」 朝倉はすこしさびしそうに眉を顰め 「たったそれだけのことなのかもね」 そういって、笑ったあとで、長門に触れられながら、わずかに涙を流した。 「あなたに会えてよかったわ」 「それは、あなたが存在する理由以上の理由で?」 「わからないわ。でも、うれしいの」 朝倉は笑った。 長門には、朝倉涼子が、過ちで生まれたものであるようには、どうしても思えなかった。 ◆ 長門はこれから先、自分が引き起こすであろう過ちのことを思った。 それは果たして、過ちなのだろうか。 「私には、正しさが必要なのよ」 長門は正しさを求めているのだろうか。 ◆ 「長門さん、好きよ」 「あなたに会えて、よかった」
https://w.atwiki.jp/kskani/pages/143.html
◆mk2mfhdVi2 氏 氏が手がけた作品 話数 タイトル 登場人物 020 対有機生命体コンタクト用インターフェースは電気娘の夢を見るか? ウォーズマン、朝倉涼子、草壁メイ 049 Here we go! go! 佐倉ゲンキ、キョンの妹 055 夢で会いましょう ドロロ兵長、リナ=インバース 067 ハレ晴レフユカイ 朝倉涼子 091 ネオ・ゼクトールの奇妙な遭遇 ネオ・ゼクトール、トトロ 106 第一印象がいい奴にロクな奴はいない リヒャルト・ギュオー、ウォーズマン 134 晴れてハレルヤ ケロロ軍曹、冬月コウゾウ、草壁サツキ 148 誰がために 高町なのは、ケロロ軍曹、ネオ・ゼクトール、草壁タツオ 登場させたキャラ 2回 朝倉涼子、ウォーズマン 1回 草壁メイ、佐倉ゲンキ、キョンの妹、ドロロ兵長、リナ=インバース、ネオ・ゼクトール、トトロ、 リヒャルト・ギュオー、ケロロ軍曹、冬月コウゾウ、草壁サツキ、高町なのは、ケロロ軍曹、ネオ・ゼクトール、草壁タツオ 作品に寄せられた感想 まさかの「朝倉だっちゃ」を生み出した人。 -- 名無しさん (2008-09-15 19 25 01) 「ハレ晴れフユカイ」ではロワ史上初となる完全対主催の朝倉を生み出した。「バックアップを舐めるな」のかっこよさは異常! -- 名無しさん (2008-10-16 16 59 43) 朝倉さんが、朝倉さんが輝いてるwだっちゃを作り尚且つ格好良い朝倉さんを作りそして「バックアップをなめるな」格好良すぎるよー -- 名無しさん (2008-10-31 22 48 08) 朝倉さん好き。たとえ貧乳になっても朝倉さん大好き。 -- 名無しさん (2009-06-06 19 15 00) 朝倉さん大好きな人www -- 名無しさん (2009-06-06 19 57 43) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/animerowa/pages/389.html
「聖少女領域」(後編) ◆LXe12sNRSs 薄暗いブティック内を、少女の甲高い悲鳴が支配していく。 ジュンは、その声に確かに聞き覚えがあった。 あの時の彼女はこのような奇声を上げることなどなかったが、それでも声質はまったく同じ。 服装、髪型、何かに怯える弱々しい表情など……ところどころ変わってはいたものの、今の声を聞いて確信した。 目の前の少女は、長門有希(朝倉涼子)。防波堤でジュンを襲い、遊園地で劉鳳に牙をむいた殺戮者である。 少女の正体に気づいたジュンはまず警戒し、すぐに何か武器になるような物がないか辺りを捜し回る。 しかしここはブティック。見渡す範囲であるものはマネキン、洋服、バッグ等。武器になるようなものなど何もない。 あの時は騙まし討ちが効いたからいいものを、同じ手は二度と通用しないだろう。もしここで襲われたら、ジュンは確実に負ける。 なら外に出て、劉鳳に助けを求めるか――いや、彼とて戦闘中だ。助けを求めてもすぐに応じてくれるかは怪しい。 突然の事態ゆえに混乱と思考を同時に展開しつつ、ジュンは長門有希――彼女の真の名前が朝倉涼子であるという事実を、彼はまだ知らない――の方を見る。 そして、気づいた。彼女がマネキンの影に隠れたまま、一向に姿を現さないことに。 ……様子がおかしい。怪訝に思いながらも、ジュンはゆっくりと朝倉涼子に歩み寄っていった。 先ほどの恐怖に落とされた表情もそうだが、今の朝倉涼子の姿からは、防波堤で感じた時のような嫌な感覚がしない。 「いや……いや……いやぁぁ……」 よく見ると、彼女の顔は暗く青ざめ、目尻には涙のようなものさえ確認できた。 怯えている。先ほどの赤いコートの男ならともかく、何の力も持たない丸腰のジュンに。 受け入れがたい現実に直面し、ジュンは首を捻った。 目の前の少女は、間違いなく長門有希(朝倉涼子)だ。もうそこは疑わない。 だが、いったいこの変貌振りはなんなのか。考えるが、答えは出ない。 「お、おい……」 「…………ヒィッ!?」 ジュンは見かねて声をかけたが、朝倉涼子はやはり怯えた声しか返さない。 まったく意味不明。これほどまでの恐怖を駆り立てる要因とは、いったいなんなのか。 死、そして恐怖という概念を学習した対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイスに、ジュンは答えの出ない疑問を抱き続けた。 ◇ ◇ ◇ 警告。警告。警告。危険が迫っている。 対象、野原ひろし。今から約七時間前、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイス朝倉涼子から意識を奪った要注意人物。 警告。警告。警告。再度の接触の可能性有り。 危険。危険。危険。 死亡確率上昇。死亡確率上昇。 警告。警告。警告。 ――朝倉涼子の脳内では、ノイズを通り越して、もはや意味不明となった警告音声が延々と鳴り続けていた。 それはまるで壊れたラジオのようで。脳内データベースの中からは野原ひろし(桜田ジュン)との戦闘記録が強引に呼び起こされ、恐怖を駆り立てる。 ハンマー投げ選手のように回転するジュンと、それに打ち払われる朝倉涼子。その後、意識が遮断されたのはまやかしではない。絶対的な事実。 故に、恐怖が全身を蝕む。死への予感が、脳神経を麻痺させる。 身体は自然と震え、眼からは涙も流れた。 対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイスが、人間でなければ成し得ない行動を、極自然に行っていたのだ。 本来なら、これは情報統合思念体にとっても喜ばしいケースである。が、本人にとってはたまったものではない。 有機生命体の死に対する概念、あんなものは知るべきではなかった。知らなければ、こんな事態には陥らなかったのに。 行動――特に戦闘を行う上では、恐怖という概念は邪魔にしかならない。今、朝倉涼子はそれを身をもって知った。 目の前の少年が怖い。今度もまた、あの時のように意識を奪われてしまうのではないだろうか。 それだけでは飽き足らず、今回は殺害にまで及んでしまうのではないのだろうか。 末には、死が訪れるのではないだろうか。 朝倉涼子は怯え、必死に生存確率を上げる方法を模索した。 一度敗れた相手に絶対的な恐怖心を抱く。放送によれば相手は死んだ人間のはず、その不可解さも恐怖の要因の一つ。 人間でいうところのトラウマ症状に陥った彼女は、それでも生きることを諦めなかったのだ。 理由は単純。『死にたくないから』。 ただこの一念に縛られ、あるべきはずのない動物的本能が朝倉を駆り立てる。 「いや……こっちに、こないでええエェェェェェェェェェェェ!!!」 静かに歩み寄ってきたジュンに対し、朝倉は現在発揮できる精一杯の勇気を持って立ち向かった。 身を隠す盾にしていたマネキン、その二の腕を掴み、力任せに放り投げる。 その行動は、正に死を迫られた動物の本能が成せる業といえた。 朝倉が普通の少女であれば近くにある小物をポイポイ投げるだけで済むだろうが、能力面で秀でてしまっている彼女は、投擲の道具に一番有り得ないものを選択したのだ。 もちろん、ジュンにとってこれは予測外。 まさかマネキンが投げ込まれるとは思ってもみなく、回避もままならないまま、腹からその衝撃を受け止める。 胃が圧迫され、一瞬呼吸が止まった。悶絶するようにその場に崩れ落ち、盛大に咳き込む。 「ごっ、ゴホッ、な、なんだってんだよ……いった――――い!?」 呼吸を整えつつ腹部の痛みに耐える。その間も、朝倉涼子を支配する恐怖という闇は、増長の勢いを衰えない。 何を狂乱したか、朝倉はそこら中にあるマネキンをポイポイ投げ捨て、全てジュンの下に放った。 そのスピード、形容するならメジャーリーガーの豪速球並みである。 連続で当たればそれこそ洒落にならない。ジュンは背筋を凍らせ、無我夢中でマネキンの散弾を避けた。 走り、しゃがみ、飛び、転がり、いくら動き回っても、攻撃の雨は止みそうにない。 人間でいうところの錯乱状態に陥った朝倉は、とにかく目に付いた武器と成り得る物体を投げることに専念し、恐怖から逃れようと必死だった。 錯乱しているため、正確な狙いがつけられていなかったことは不幸中の幸いといえただろうか。 ジュンは死に物狂いでマネキンを回避し続け、視界だけで朝倉涼子の姿を追う。 怯えてはいるものの、どうやらここから逃走するという考えは頭に入っていないらしい。 ブティック内を無造作に動き続け、ジュンへの攻撃を一向にやめようとしない。 (む、むちゃくちゃだ――ッ!) 防波堤の時のように、相手の先の行動を予測することがまったくできない。 何をしでかすか分からない危うさを感じつつも、ジュンはこの状況を打破するため攻めに転じる決心をした。 朝倉に倣い、周囲に残骸として散らばったマネキン――その片足を拝借し、鈍器代わりとして装備する。 「うらああああああああああああ!!」 ジュンは腹の底から声を出し、朝倉を威嚇しながら突進した。 突然攻防の関係が変化したことにより、朝倉は怯み――というよりも怯え――動きを止める。 不恰好な武器を振り翳してくるジュンに対し、朝倉は怯えた表情にさらなる淀みを見せた。 が、ジュンにとってはそんなことは知ったこっちゃない。 相手が自分を怖がっていようがなんだろうが、マネキンを豪速球並みの威力で放り込まれて黙っていられるだろうか。 過去に襲われた前例もある。今さら言葉で説得しようなんて気はおきない。 ならば逃走はどうか。いいや、ここはそんなことが出来る場面じゃない。諦める方向には進めない。そう、ここは抗う場面だ! ジュンは意を決し、渾身の力でマネキンの足を振り被る。 狙うのは頭。一撃必殺の急所であり、相手を死に至らしめる可能性も秘めた、危うい箇所。 だが躊躇っている暇はない。ここは多少強引な手段を用いてでも、朝倉を無力化させなければ。 「――なッ!?」 ――決意の一撃は、朝倉の腕によっていとも容易く防がれた。 頭に直撃しようとした寸前、朝倉はマネキンの足を握っていたジュンの手首を掴み、それ以上の動きを不可能にさせた。 驚異的な握力の下に腕が硬直し、次第に手元からマネキンの足がポロッと零れる。 その間朝倉はというと、フー、フー、とやたら荒い息遣いをさせながら、涙ぐんだ瞳でジュンの顔を睨みつけていた。 ジュンは察する。この顔は、まだ何かを狙っている眼だ。 次は何が来る――このまま殴るか、それとも投げ飛ばされるか――どちらにせよ腕を掴まれたままではろくな抵抗ができない――それでも諦めるわけには――! 思考を続ける最中、朝倉はまたしてもジュンにとって予想外な行動を取って見せた。 なんと、ジュンの身体に思い切り抱きついてきたのだ。 「な!? お、おいちょ……ぐぅッ!」 しかしそこからバトル以外の展開に突入することなどはなく。 朝倉はジュンの身体を全身で包み込み、背中に爪を立ててきたのだ。 「フッ、フッ、フッ……」 「ぐ……くっ、そ……!」 ゴリラかと思うほどのパワーに、ジュンは抗うことができなかった。 背中に突き立てられた鋭い爪は、ジュンの服ごと肉を裂き、その半透明な輝きを赤く染める。 ジュンは何とか逃げようと身体を捻るが、荒い息遣いのまま力を込める朝倉には、まったくと言っていいほど通用しない。 朝倉の世間体を全て投げ捨てたかのような荒々しい攻撃は続き、爪の次は己の歯を――ジュンの左首筋に思い切り突き立てた。 別に、実は朝倉が吸血鬼で、唐突に吸血衝動に駆られたというわけではない。 理論は、至って原始的に。爪の歯も、人型を成す自分のパーツの中で、最も鋭さを持った部分を攻撃に使用したに過ぎない。 動物が持つ歯は素晴らしい。さすがに普段の日常から食事という形で鍛えぬかれているだけのことはあり、武器として使うには申し分ないほどの威力を保持していた。 その証拠に、ジュンの左首筋の肉が、朝倉の歯によって容易く食い千切られる。 「痛ッ――イテェェェッ!!」 たまらず叫んだジュンは、痛みから来る底力を駆使してなんとか朝倉を引き剥がすことに成功した。 距離を取り、改めて朝倉の姿を見る。そして、再度認識するのだった。 ――この女は、異常だ。 恐怖に駆られながらも、自己の存在を守るため本能的に戦いの道を選択している。 その戦い方から見ても、人間というよりは野生の動物に近い――ある意味では、生まれたての、感情を持ち始めたばかりの生物らしい仕草であった。 「いてぇ……くそ、クソッ! クソッ! チクショウッ!」 傷を負った箇所を摩り、ジュンは改めて現在の危機的状況を受け入れる。 目の前の少女は、もはや防波堤で戦ったあの長門有希(朝倉涼子)とは別人と言ってしまって過言ではない。 生きることに精一杯なあまり、自己の防衛本能が動物的な野生を帯びてきたのだ。 これを進化と呼ぶか退化と呼ぶかは、人によって変わってくるだろう。 どちらにせよ、ジュンにとっては厄介極まりないことだ。なにせ、ここで負ければ間違いなく自分は死ぬ。 ……ダメだ。そんなわけにはいかない。 このゲーム会場にはまだ真紅や翠星石、蒼星石たちドールがいる。 いつも自室の窓を突き破り、事あるごとに紅茶とスコーンを要求し、キッチンを魔境に変える。 騒がしいことこの上ない、実に厄介な連中だった。思い出しただけでも頭を抱えたくなるような、それくらいに騒がしい奴等だった。 なのに、不思議と嫌悪感は湧かない。ジュンにとっては、いつの間にかあのドールたちとの日常が当たり前になっていたから。 そうだ。みんな、真紅も翠星石も蒼星石も、あの水銀燈までもが無事でいる。 家に帰れば雛苺が待っているだろうし、騒がしい金糸雀だってやって来るだろう。 それに、それに、家にはまだ、家族が―― 「僕は……あいつらを連れて、家に帰るんだ……こんなところで、死ねるかよ……」 マネキンの足をもう一度拾い、朝倉の前に躍り出る。 戦意は失っていない。これは、二度目の賭けだ。 再度の勝負。今度も絶対、モノにする。モノにしてみせる。 「――姉ちゃん一人残して、こんなところで死ねるかよッ!!」 叫んで、ジュンが特攻した。 先ほどまでとは比較にならない、決意に満ちた突撃。 それを前に朝倉涼子は―― 「うん、それ無理」 久方ぶりの笑顔を見せ、ジュンにその言葉を送った―― ◇ ◇ ◇ 次の瞬間、ブティック内の様子は急変を遂げた。 薄暗かった室内は一変して虹色の光を照らし出し、壁という存在は風景と一体化して消失していた。 マネキンの残骸や散り散りになった衣服の群れはまだ転がっていたが、ドアや窓などの出口になるような箇所は全て見当たらない。 ジュンはまるで入り口も出口もない、永遠の迷宮に彷徨い込んでしまったような、そんな感覚に襲われる。 「これは……nのフィールド? 違う……何かが違う……なんなんだよ、この嫌な感じ……」 nのフィールドとは、現実世界と表裏一体をなす異次元空間のこと。 だがあれは、ドールたちや彼女等に付き従う人工精霊の力なしでは入れない領域。 まさか近くに真紅たちがいるのでは、と辺りを探してみたが、姿はない。 代わりに見つけたのは、異次元世界の中心に悠然と立つ、朝倉涼子の姿。 その表情は怯えではなく、不気味な微笑みへと変わっていた。 「人間はさあ、よく『追い込まれることで限界以上の力を発揮する』って言うよね。これ、どう思う?」 朝倉はこれまでの態度を一変させ、何の悪気もないような笑顔を振りまいてジュンに質問をする。 「以前までの私はね、そんなこと絶対にないと思ってた。 だって限界は超えられないからこその限界であって、超えちゃったらそれはもう限界とは呼べないと思うの。 猫に追い詰められた鼠は相手の尻尾に噛み付くくらいのことはしてみせるだろうけど、感情の起伏が激しい人間にはそれは無理な行為。 さっきの私みたいに恐怖に蝕まれたらそこから脱出することなんて不可能だと思うし、危機を認識したところでそれを乗り越えるほどのパワーは出せないはずなの。だって人間には限界があるから」 質問の返答を待たず、朝倉は急に饒舌になり出した。 この唐突な変貌振りにジュンは疑念を抱き、同時に得体の知れぬ危機感を覚えだす。 今の朝倉涼子は見からに大人しい、無害そうな一般女子高生という印象。そのはずなのに。 「でもね、人間は本当に恐ろしくて恐ろしくしょうがなくなると、案外簡単にその恐怖を乗り越えられるものなの。 こういうの、『開き直り』っていうのかな。私はついさっき、それを実感して気づいた。 恐怖なんていう感情は、結局のところ上辺だけのものでしかないのよね。 あなたにだって、過去に敗北したという経験があるからこそ恐怖を抱いたわけで、よく考えてみればそれはまったく無意味なものだったの。 だって、あなたは所詮人間だけど、私は人間じゃあないんだもの。これって、結構大きな差だと思わない?」 訳が分からない。朝倉の会話は急に危ない電波を受信したかのように狂いだし、ジュンの理解を超えた。 それでも、朝倉は喋ることをやめない。これまでの自分を反省するかのごとく、怒涛の勢いで舌を回す。 「普通にやれば、私はあなたなんかには絶対負けない。もちろん、殺されることもない。私はそんな当たり前の事実を、ついさっき学習したのよ。 無我夢中で戦って、恐怖に抗った上で勝ち取った戦果。人間でいうところの、悟りを開いたって感じかな? 長門有希のバックアップにしか過ぎなかった私が、今はこんなにも有機生命体の感情を理解している。これって素晴らしいことだと思わない?」 「しらねぇよ!」 朝倉の言葉攻めに飽き飽きしてきたジュンは、痺れを切らして彼女に突っ込んだ。 が、その脚は二歩ほど駆けたところで止められる。 突如として、気流のように形作られた透明な槍が、ジュンの両足を貫いたのだ。 「グっ……あぁ!」 「無駄。この建物内は既に、私の情報制御下にある。攻撃に必要な物質を創り出すことも容易だし、脱出経路も完全に封鎖したわ。 この世界では能力が制限されているらしくて、分子の構成情報をいじるのにちょっと時間が掛かったけど、なんと私、ここに入った時から既に改変を進めていたみたいなのよね。 たぶん無我夢中だったんだと思う。これも死を逃れたいっていう恐怖心から来る、限界以上の力の発揮ってやつかな? 今の私なら、きっと長門さんでも付け入る隙はないと思う。死にたくないっていう必死な思いが、私に限界以上の力を引き出してくれたんだよ!」 両腕を大きく広げ、今にも羽ばたきそうなポーズを取って歓喜する。 これまでにない満面の笑顔――有機生命体の死の概念を理解し、恐怖を覚え、それを打開する方法も学習した。 今の朝倉涼子なら、間違いなく長門有希と対等――いや、それ以上といって過言ではない。 対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイス。その存在を超越した一つのパターンが、今ここに。 「こんなところで……こんなところで……死ぬわけには! いかないんだよっ!!」 それでも、ジュンは諦めなかった。 ジュンに対しての恐怖を一切なくした朝倉涼子は、自身の情報制御下に置かれた空間に立つ朝倉涼子は、ただの人間の手に負える代物ではない。 言うなれば――かつてキョンが長門たちを一片にそう称した――『宇宙人』。 侵略をするわけではないとしても、未知の地球外生命体に敵う要素は、何一つとして持ち合わせていなかったのだ。 この、桜田ジュンという有機生命体。 「もう一度言うよ。それ無理♪」 朝倉の微笑む眼前で、ジュンは身体の中心に風穴を開けた。 ◇ ◇ ◇ 『ジュンくーん、今日のご飯はみんな大好き花丸ハンバーグですよー』 『やったー! ヒナのりの花丸ハンバーグ大好きなのー!』 『こぉら雛苺! その一番でっかいのは翠星石の分なのです! チビチビの雛苺には、こっちの残りっカスで十分なのですぅ』 『まったく……大人気ないよ、翠星石』 『やれやれ……本当に騒がしい姉妹たちだわ。あらジュン、手が付いていないようだけれど、どうかしたのかしら? ジュン?……ジュ…………ン…………ジ…………ュ…………ン』 一瞬、ほんの一瞬だけ。 みんなが食卓に並び、のりの作った花丸ハンバーグをつついている光景が見えて、すぐに霧散した。 (ヤバッ……走馬灯じゃんこれ……あ……でも……悪く、ない) ほんの一瞬の幸福。 これもまた、朝倉涼子には知りえない人間の神秘だった。 それはこれから先もずっと、解明されることはないのだろう。 情報制御が施された室内が、静かに崩壊していく。 残ったのは、マネキンの残骸ばかりが乱雑するブティック一軒。 中には、桜田ジュンという名前だった有機生命体の死骸が一体。 外へは、朝倉涼子ただ一人が帰還した。 ◇ ◇ ◇ 改めて、思う。 人間は素晴らしい。負の感情すらも己の力に変え、無限の進化パターンを持っている。 そして、今まで死という概念すら知らなかった自分が、その人間に近づけたという成果はさらに素晴らしい。 もう長門有希なんて目じゃない。たとえ彼女の邪魔が入ろうとも、今の自分なら容易く彼女を凌駕できる。 不安要素なんて、もうないに等しかった。朝倉涼子は、恐怖の先に自分の新たな可能性を切り開けたから。 「はぁ~、もうこれはいよいよ、キョンくんに会うのが楽しみになってきたなぁ。 彼を殺したら、涼宮ハルヒはいったいどんな変化を見せるのか……やっと、それが分かりそう。 硬直状態を解くなら早いに越したことはないし、やっぱり善は急げ、だよね」 らんらんという鼻歌が聞こえそうなほどに浮かれ、朝倉涼子は廃墟と化した街をスキップで渡り歩く。 その道中、そう遠くはないところから何かの激突音が聞こえてきた。 そちらの方角を見ると、空中で何かがぶつかり合っている。あれは……人、だろうか。 「あれは……あの時の高次元存在アクセス能力者――劉鳳」 朝倉涼子が死の概念を理解する少し前、アルターという興味深い能力を持った男性と遭遇したことを思い出す。 あの能力には、まだ未知的な部分が多様に詰まっている。逃すのは惜しい、と常々思っていたところだ。 ちょうどいい。いい機会だから、あの情報もここでもらっておこう。 朝倉は戦地へと赴くことを決め、方向を変えた。 そこに、かつてのような恐れはない。 恐れの先には、可能性があることに気づいたから。 その可能性を信じれば、怖くなどない。 ――朝倉涼子はまだ気づいていない。その考えが、過信であることを。 ――その証拠に、彼女は死という概念を忘れてなどはいない。だから。 「HAHAHAHAHAHAHA!」 「――――!?」 進む朝倉涼子の背後、積もり山となった残骸の中から、赤いコートの男が顔を出した。 「――この私に、引っ込んでいろとは! つくづく……つくづく楽しませてくれるなぁヒューマン! だが、私を蔑ろにするとはあまりにも愚かではないか? カズマに劉鳳……恐れ知らずというのもまた、面白い」 ――この男、この赤いコートの怪人には、見覚えがある。 そうだ、あの時。数時間前に、自分を攻め立てたあの――怪物。 「あっ……あ……あ」 朝倉の身体に、変化が表れた。 迷いなく進んでいたはずの脚は急にストップし、徐々に震えを帯びていく。 声は掠れ、搾り出すこともかなわない。視線は赤いコートの男に釘付けとなり、目を逸らすことができなくなっていた。 ――おかしい。これは、この感情はいったいなに? 脳が危険信号を発し、本能が逃げろと訴えている。 かつてこの男に追い詰められた時とまるで同じ――そう、これは恐怖という感情に他ならない。 「なん、で……私は……恐怖を克服したはずなのに……」 違う。それは錯覚。 朝倉涼子という存在には、まだ『死』という概念が刻まれている。 無論、死と密接に関係している『恐怖』という概念もまた同様。 それは簡単な話だった。朝倉は自身の力に絶対的な自信を持っており、恐怖を超えた先に力の向上があるということも学んだ。 しかし、それは相手がジュン――自分よりも絶対に弱いという確証があったからこその話。 だがこの男は――吸血鬼であるアーカードは、朝倉の能力を持ってしてもその確証が得られる相手ではない。 故に、恐怖する。確証がない故に、乗り越えた先に勝利が待っているとも断言できない。 故に、恐怖を乗り越えることが出来ない。単純な理屈。 「ほう、まだ生きていたか」 朝倉の存在に気づいたアーカードは、声をかける。 が、そこに彼女を見直したような印象の変化はなく。 道端の小石を見るようなどうでもいい視線を浴びせ、朝倉の恐怖を駆り立てた。 そして同じく、道端の小石を跳ね除けるような他愛もない動作で、朝倉を死に追いやろうと腕を伸ばす。 ――その恐怖が再び、朝倉涼子に臨界点を突破させた。 「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 言葉にならない発狂を起こし、途端に朝倉の足場が崩落する。 崩れ落ちる残骸の山を跳び越えながら、アーカードは地下に落ちていく朝倉を見た。 その姿は、失望を通り越して哀れにも思えるほど。 カズマと劉鳳に出会えた高揚感を萎えさせるくらいに、アーカードは気を落とす。 しかし次の瞬間、朝倉涼子が意地を見せた。 「……なに? この臭いは――――」 異変を感じた直後、朝倉と――その周囲一体数百メートルで、閃光が迸った。 一瞬の後、爆発。 「ガス爆発だと!? なかなか知恵の働くヒューマンだ! ――だが!」 ほぼ無意識の内に、朝倉は地下に通っていたガス管を破裂させ、爆発を引き起こしたのだ。 その規模は大きく、いとも簡単にエリア全体を覆っていく。 爆心地に身を置く者はただでは済まない――そう思われたが、逸早く爆発の予兆を察知したアーカードは、常人離れした跳躍をもってこれを空に回避。 爆風は全身を天高く持ち上げ、アーカードの姿を青空に消した。 ◇ ◇ ◇ 『おーい、カッズマくーん』 ――なんだよ、早いじゃねぇかよ君島ぁ。こっちはさっき起きたばっかだぜ。 『ったくしょうがねぇーなお前は。ほら、さっさと行こうぜ』 ――ああ、そうだな……。 『カズくん、どっか行っちゃうの? 今日は牧場で働いてくれるって言ってたのに』 ――あ、悪いなかなみ。ちょっとした野暮用だ。 『そんなこと言って、いっつも帰ってこないくせに。もう米も野菜も残り少ないんだよ? どうするの?』 ――あぁ、いや、だから! なんとかしようと思ってさぁ……。 『甲斐性なしのろくでなしだぁ』 ――あぅ……スンマセン。 『仕方ないよかなみちゃん。だってカズマはクズなんだからさっ』 ――お、お前に言われたくねぇよ! 『ははっ、ほら早く行こうぜカズマ』 『カズくん牧場ぉ』 ――ああもう、分かったつうの! 分かったから二人とも………… …………目覚めると、身体はひび割れた大地の上に倒れていた。 「…………ああ、夢か。そっか」 泡沫の中で、懐かしい光景を目の当たりにしたような気がする。 それはとても心地が良くて、怒りなんていう感情とは無縁の平和な環境だった。 思い出しても、もう二度と手に入らない。そんな、夢想に消えた思い出。 辺りを見渡すと、そこら中に崩れ散った建物の跡が見えた。 覚えがある。これらは、カズマもしくは劉鳳が破壊した建造物の残骸。 いや、それだけではない。確か劉鳳との戦いの最中――謎の紅い閃光とガス臭い悪臭を感じ、直後に何かが爆発したのだ。 劉鳳の姿はない。戦いの最中に乱入してきた赤いコートの男も。周囲には誰も見当たらなかった。 カズマ一人、闘争の濁りとは無縁の、晴れた青空を見上げる。 手を伸ばせば掴めそうな、そんな気さえして、右腕を上げた。 眩しく照らす太陽を右手の中心に捉え、掴む。 そうして、瞼は自然と閉じていった。 「死んだからムカついて、ムカついたからブン殴って、なんか、もう疲れちまったよ……かなみ、君島……」 眩しすぎる晴天にやられ、カズマはゆっくりと堕ちていった。 夢に。 ◇ ◇ ◇ 崩壊した大地に、劉鳳が立つ。 「クッ……」 その場に、宿敵であるカズマの姿はない。 因縁の対決に終止符がうたれる。そう確信し始めた間際に起こった、爆発。 恐らく市街全域に通っていたパイプラインを誘爆させ、あのエリア諸共吹き飛ばそうと算段したのだろう。 実行者は、あの赤いコートの男だろうか。何の力もない少女を襲う辺りから見ても、相当な下衆であることが窺えた。 「まさかカズマがあれしきのことで死ぬとは思えんが……桜田は、無事だろうか」 気にかかるのは、苦労を重ねて信頼を築いた、たった一人の仲間。 少女の保護を頼んだものの、本心で言えば、彼はどうにも頼りない。 うまく爆発の範囲外に逃げてくれていればいいのだが……その願いも、すぐに崩れ落ちることになる。 「桜田……ッ!?」 廃墟を歩む、その進路方向に。 まるで障害物の如く、一人の少年の死体が転がっていた。 接近して確認してみると、その少年はまず間違いなく桜田ジュンその人だった。 爆発による衝撃で倒れているだけとも思ったが、腹に空いた風穴を見る限り、どうやら死因は別にあるらしい。 槍――いや、大きさから見るに、柱や鉄骨か何かで腹部を貫かれている。 その傷口があまりにも綺麗な円形を描いていることに疑問を抱いたが、それはすぐに解消されることになった。 「……これは」 劉鳳はジュンの死体の下からはみ出した、一つの物体を発見する。 煤で汚れてはいたが、それはどうやら布でできた何からしい。 形状は輪っか。そしてその中心には、堂々とした筆跡によってこう書かれていた――『団長』と。 「まさか……長門有希が!?」 この腕章には覚えがある。あの時遊園地で遭遇した少女――長門有希(朝倉涼子)が腕に着けていたものだ。 同時に彼女が使っていた不可解な力、意味深な行動理念を思い出し、一つの結論を弾き出す。 (桜田ジュンを殺害し、あのガス爆発を引き起こしたのは……長門有希。 まさか、あの赤いコートの男やカズマと戦闘している最中も……いや、ひょっとしたら桜田と出会った頃から……俺は監視されていたのか?) 影からずっと機を窺っていたのだとしたら。彼女ならやりかねない。 劉鳳は込み上げてきた怒りを手の平に集中させ、朝倉の腕章を力の限り握りつぶした。 「桜田、お前の仇はこの俺が必ず討つ。長門有希、あの赤いコートの男、そして、カズマ! 俺は俺の中にあるルールで、奴等を悪と断定するッ!」 痛みを押して、劉鳳は突き進んだ。 正義は立ち止まれない。決して。 それが間違った見解だったとしても。 ◇ ◇ ◇ 屈辱を通り越して、これはもはや笑い話の領域に入ることだろう。 ひび割れたビルを根城に、アーカードは薄暗い内部で息を吐く。 カズマに劉鳳――実に面白い人間達だった。 吸血鬼を前に恐れを抱くこともなく、ただ誇りと信念を振り翳して行動する。 そしてもちろん、それに見合った実力を持っていることも評価したい。 「この私を、吸血鬼という存在をあそこまで愚弄したことには、敬意を評すべきだろうな」 クククッ、と笑みを零し、静かに時を待つ。 外は晴天、吸血鬼が行動するのに適した天候ではない。 身体の傷を治癒するのに使う時間は、この日中の間に当てよう。 アーカードは決して浅くはないダメージを負いながらも、未だに余裕の佇まいでそこに存在していた。 ◇ ◇ ◇ ――します――――に――――。 チカチカと、赤い光が蛍火のように灯っては消え、灯っては消え。 喧しい機械音すら奏で始め、眠りについていた者はたまらず意識を取り戻した。 「……う、……ん」 寝ぼけ眼で身体を動かし、自身を覆っていた瓦礫の数々を払いのける。 何時間ぶりかの日の光。容赦なく照らされる熱線は、少女の瞳を自然に細めていく。 彼女、朝倉涼子は生きていた。 アーカードから逃げ延びるためにとった咄嗟の行動は、自分の身をも危険に晒してしまう非効率的なものだった。 それでも結果的には生を得て、ここに存在している。一か八かの賭けに、彼女は勝利したのだ。 「わたし……生きてる」 高鳴る鼓動、万全の四肢、煤汚れてはいるものの柔らかな皮膚、正常に働いている脳。 生きている。朝倉涼子はまだ、生きている。 誰もいない廃墟に一人立ち、その生をじっくりと噛み締めた。 これはもはや、奇跡と呼んでいいかもしれない。 ――思えば、わたしはもうこれで、四度も死を乗り越えたことになる。 一回目は先ほど殺害に成功した少年、野原ひろしに襲われた時。 わたしはあの時、確かに彼に敗北した。でも相手に命を奪うまでの覚悟がなかったのか、わたしは気絶しただけでその場を済ませている。 二回目は、劉鳳に襲い掛かった時。 わたしには、彼に勝てるだけの力があった。今思えば、それを過信しすぎていたのかもしれない。 わたしはまたもや有機生命体に敗北を喫し、死の概念を学習した。ここが、運命の転機だったんだ。 三回目。死を理解し恐れたわたしは、あの赤いコートの男と対峙して――崩壊した。 自己を保つことが出来ない、人間でいうところの精神錯乱に陥ったわたし。 でも結果的にわたしはその恐怖を乗り越え、自己を保つ術を身につけた。 彼、野原ひろしには感謝しなくてはならない。 彼のおかげで、わたしは極めて単純明快な、恐怖の克服方法を学習したのだ。 それはとても簡単なこと。 怖いのは、敵がわたしの命を狙っているから。 ならば、殺されるより先にその敵を殺してしまえばいい。 そうするだけで、わたしは死を免れる。わたしにはそれを実行できるだけの力がある。 四回目は、恐怖の感情こそ消えはしなかったものの、見事に死を克服することに成功した。 どうやらわたしは、窮地に立たされると強くなるタイプらしい。 ようは人間でいうところの、火事場のクソ力というやつだ。 「わたしは……わたしは、『死』の概念を克服したんだ! スゴイ、すごいよわたし! こんなこと、長門有希にだってできないよ!」 もう、もう何も怖くない! 死も、恐怖も、長門有希も、劉鳳も赤いコートの男も! 今のわたしは無敵、無敵の朝倉涼子なんだ! 有機生命体の概念を記録した対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイス……前代未聞! わたしは、長門有希でも到達できなかった領域に足を踏み入れたんだわ! こんなに……こんなに素晴らしいことはない! ――します――きに――――あと――― これは、情報統合思念体にとっても喜ぶべきこと! わたしはこのゲームで必ず生きて帰り、この記録を持ち帰らなければならない! そうと決まったら、グズグズなんてしていられないじゃない! 早く他のみんなを、わたしを殺すかもしれない奴らを先に皆殺しにしなきゃ! ――します――いきに――――あと―――いない―― ……なにやら、さっきから外野が騒がしい。 うるさいなぁ……せっかくいい気分だったのに。 ビィービィーいってるアラームみたいな音は、わたしの首筋から聞こえている。 チカチカ赤く光っているのは、これに付いているランプが点滅しているのだろう。 あ、でもこの音って、わたしを目覚めさせてくれた音なんだよね? だったら、これは目覚まし時計かな? でも首に目覚まし時計が付いているっていうのも変な話だし……情報、照合。 分かった。これは、『首輪』。それも、『爆弾』の付いてるとびっきりな危険なやつ。 …………え? 『警告します。禁止区域に抵触しています。あと5秒以内に爆破します』 ……えっと、ちょっと待って。これって嘘だよね? 何かの間違いだよね? 『あと4秒――』 違うよね? これ、警告音なんかじゃないよね? ここが禁止エリアに指定されてて、現在時刻が15時0分26秒だからって、爆発したりしないよね? 『あと3秒――』 じゃあ何? このカウントダウンは、いったい何を数えているの? あと3秒――あと3秒経過したら、いったい何が起こるっていうの? 『あと2秒――』 分からない。ううん、分かるけど分かりたくない。怖い。それを認めるのは怖い――こわいこわいこわいこわいこわい。 駄目。絶対。あり得ない。冗談。よして。だって。だってだってだってだってだって。おかしいよこれ、おかしいよこれ。 『あと1秒――』 怖い、恐ろしい、死ぬ! 死ぬのはイヤ、イヤ、イヤ! イヤァ! 死にたくない、死にたくない! ダメ! 助けて! ひどい! こんなのってない! それ無理! それ無理だから、誰か、誰か助け―― ビィィ――――――――――――――――――――――――――――パァン。 ××××年×月×日。 この日、地球に派遣した対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイス――パーソナルネーム『朝倉涼子』が謎の復帰を果たした。 しかし、その消息はすぐに途絶え、後に確認を取ってみたところ、その信号を感知することはできなかった。 情報伝達の不具合と判断。 以前どおり『朝倉涼子』は××××年×月×日、急進派の意に同調したところを『長門有希』に粛清され、消去されたものとする。 変更、特になし。 【E-3・東端の廃墟化した市街地/1日目/日中】 【カズマ@スクライド】 [状態]:睡眠中、疲労大、全身中程度の負傷(打ち身と裂傷が主) [装備]:なし [道具]:高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)、かなみのリボン@スクライド、支給品一式 鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)ボディブレード@クレヨンしんちゃん [思考・状況] 1:劉鳳をぶっ飛ばす。 2:かなみ・鶴屋を殺害した人物を突き止め、ブチ殺す(ナイフを持っているやつと断定、かなみと鶴屋を殺した犯人は同じだと思っている)。 3:ギガゾンビを完膚無きまでにボコる。邪魔する奴はぶっ飛ばす。 4:なのはが心配。 【E-5・西端の廃墟化した市街地/1日目/日中】 【劉鳳@スクライド】 [状態]:疲労大、全身に中程度の負傷(打ち身と裂傷が主) [装備]:なし [道具]:支給品一式、斬鉄剣@ルパン三世、SOS団腕章『団長』@涼宮ハルヒの憂鬱 真紅似のビスクドール(目撃証言調達のため、遊園地内のファンシーショップで入手) [思考・状況] 1:長門有希(朝倉涼子)を見つけ出し、断罪する。 2:カズマと決着をつける。 3:ゲームに乗っていない人たちを保護し、この殺し合いから脱出させる。 4:そのためになるべく彼らと信頼を築く。 5:主催者、マーダーなどといった『悪』をこの手で断罪する。 6:赤いコートの男(アーカード)を見つけ出し、断罪する。 7:老人(ウォルター)を殺した犯人を見つけ出し、断罪する。 8:真紅を捜し、誤解を解く。 9:余裕が出来次第ホテルに向かう。 10:必ず自分の正義を貫く。 [備考] ※朝倉涼子のことを『長門有希』と認識しています。 ※ジュンを殺害し、E-4で爆発を起こした犯人を朝倉涼子と思っています。 ※例え相手が無害そうに見える相手でも、多少手荒くなっても油断無く応対します。 【D-4・南端に位置するビル内/1日目/日中】 【アーカード@HELLSING】 [状態]:全身に裂傷、中程度の火傷 [装備]:鎖鎌(ある程度、強化済み)、対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(残弾無しのため、鈍器として使用予定)@HELLSING [道具]:無し [思考]: 1:夜まで回復に努める。 2:カズマ、劉鳳とはぜひ再戦したい。 【桜田ジュン@ローゼンメイデンシリーズ 死亡】 【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱 死亡】 [残り47人] ※日中の時間帯、E-4ほぼ全域の市街地が、カズマと劉鳳とアーカードの戦闘及び朝倉涼子の引き起こしたガス爆発によって崩壊しました。現在は廃墟と化しています。 ※朝倉涼子が死亡したのは15時0分30秒ジャスト(禁止エリア侵入により首輪が爆発)。それまでは瓦礫の山に埋もれ、誰にも発見されていません。 時系列順で読む Back 「聖少女領域」(前編) Next 契約しよう 投下順で読む Back 「聖少女領域」(前編) Next 契約しよう 171 「聖少女領域」(前編) カズマ 182 白地図に赤を入れ 171 「聖少女領域」(前編) 劉鳳 184 ヒステリックサイン 171 「聖少女領域」(前編) アーカード 195 【黒禍】 171 「聖少女領域」(前編) 桜田ジュン 171 「聖少女領域」(前編) 朝倉涼子
https://w.atwiki.jp/niko2/pages/195.html
第二回放送までの死者 お前ら 何故殺たし 時間 名前 殺害者 死亡作品 死因 朝 高町なのは 伊吹萃香 68 「薔薇大戦 ~ 混世魔王 VS 白い魔王」(前編)68 「薔薇大戦 ~ 混世魔王 VS 白い魔王」(後編) 刺殺 朝 鈴仙・優曇華院・イナバ 阿部高和 68 「薔薇大戦 ~ 混世魔王 VS 白い魔王」(前編)68 「薔薇大戦 ~ 混世魔王 VS 白い魔王」(後編) 首骨折 朝 琴姫 エアーマン 70 Cry for me, cry for you 失血 朝 福山芳樹 暗黒長門 71 それぞれの誓い~英雄の条件~ 射殺 朝 削除番長 高槻やよい 72 蒼い鳥 刺殺 朝 永井けいこ 削除番長 72 蒼い鳥 刺殺 朝 イチロー TASさん 74 イチローのレーザービームでバトロワ会場滅亡 刺殺 午前 暗黒長門 朝倉涼子 77 蝕 惨殺 午前 朝倉涼子 暗黒長門 77 蝕 内部破壊 昼 ピカチュウ TASさん 89 friend 焼殺 昼 オメガモン フシギダネ 93 VS.動かない大森林(EASY) 焼殺 昼 柊かがみ ゴマモン 97 Traumatize 刺殺 昼 永井浩二 サトシ 100 奇跡の価値は(前編)100 奇跡の価値は(後編) 斬殺 昼 サトシ 外山恒一 100 奇跡の価値は(前編)100 奇跡の価値は(後編) 射殺 以上14名 おまけ 名前 最後の言葉 高町なのは 「がはっ……!?」 鈴仙・優曇華院・イナバ 「あqwせdrty!」 琴姫 ほぉおむぅ~れぇ~やぁぁぁ! 福山芳樹 「じゃあ、な。スパイダー、マ、……みん、な、……を、ひとり、でも、……多く、の、人、……を…………」 削除番長 「ぬおおおおおっ!!」 永井けいこ 「……元気でなぁ、やよい、ちゃん」 イチロー 「内野安打……また、打ちたかった……盗塁……また、したかった……レーザービームも……地球を壊さない範囲で……お覇王くん…………きみとも…………きゃっちぼおる、くらい、は…………」 暗黒長門 「死ねッ! そのカラダは私が彼のために余すところなく使ってやるッ!」 朝倉涼子 「あーあ、残念」 ピカチュウ どうか、皆が無事に生きて帰れますように。 オメガモン (避けき──) 柊かがみ 誰か答えてよ……。みゆき、こなた、つかさ…………。 永井浩二 「俺……じじゅう、しろよな」 サトシ なあに、お楽しみは、これからだ。 殺害数ランキング 順位 加害者 殺害人数 被害者 スタンス 生死 1位 サトシ 3人 如月千早、越前リョーマ、永井浩二 無差別 ● 2位T 阿部高和 2人 キョン、鈴仙・優曇華院・イナバ 男限定? ○ 2位T 暗黒長門 2人 福山芳樹、朝倉涼子 奉仕(キョン) ● 2位T TASさん 2人 イチロー、ピカチュウ 無差別 ○ 2位T フシギダネ 2人 道下正樹、オメガモン 無差別 ○ 6位T 天海春香 1人 白石みのる 勘違い→対主催 ○ 6位T 八意永琳 1人 インセクター羽蛾 無差別 ○ 6位T 日吉若 1人 ドラえもん 対主催 ○ 6位T ムスカ 1人 ワドルドゥ 無差別 ○ 6位T キョンの妹 1人 小笠原祥子 奉仕(キョン) ○ 6位T 園崎詩音 1人 園崎詩音 無差別 ● 6位T 伊吹萃香 1人 高町なのは 巨乳限定? ○ 6位T エアーマン 1人 琴姫 無差別 ○ 6位T 高槻やよい 1人 削除番長 対主催 ○ 6位T 削除番長 1人 永井けいこ 無差別 ● 6位T 朝倉涼子 1人 暗黒長門 ステルス ● 6位T ゴマモン 1人 柊かがみ 対主催→無差別 ○ 6位T 外山恒一 1人 サトシ 対主催 ○
https://w.atwiki.jp/ln_alter2/pages/192.html
「曲がった話」― Analyzing Device ― ◆02i16H59NY 空も明るみ始めた早朝の街中の道を、一台の車が走っていました。 小さい車の中には、ポニーテール姿の女性が2人、並んで座っていました。 彼女たちはほぼ同時に「それ」に気がつきました。 運転席でハンドルを握っていたセーラー服姿の女――朝倉涼子が、口を開きました。 「ねえ、師匠」 「なんでしょう」 「どうする?」 「決まってるでしょう」 師匠と呼ばれた、上品ながらも動きやすそうな服装の女性は、助手席で溜息をつきました。 彼女たちの視線の先には、大きなT字路のあたり、道の真ん中をフラフラと歩く、黒い服の少女の姿がありました。 それは修道服のようにも見え、どこかの学校の制服のようにも見えます。 そしてポニーテールにこそしていませんが、車の中の2人と同じくらいの長い髪でした。 そんな少女の姿を遠くに眺め、女性は言いました。 「さっきのように時間をかけるのは御免です。見たところ武器も荷物も持っていない様子。 私がやります。通り過ぎざまに片付けてしまいましょう」 「うーん、いいのかなぁ……まあいいや。 さっきはこっちの提案に乗って貰ったし、ここは師匠の顔を立てましょ」 朝倉涼子は、アクセルを踏みました。 ◇ 浅上藤乃もまた、ほぼ同時に「それ」に気づいていた。 無人の街をこちらに向かってくる、小さな車。そして、その中に2つ並んだ、女性らしきシルエット。 女性――であれば、湊啓太の知り合いであるとは思えない。 あの不良たちに、マトモな女性の知り合いがいるとは考えにくい。 だから復讐として殺す必要はないのだが、しかし、この地に来てから誰かと出会い、何かを知ってるかもしれない。 会話を試みる価値は、ある。浅上藤乃はそう考える。 ……もし何も知らなかったなら、殺さなければいけないのだけども。 想像しただけで身も震える罪悪感に責め苛まされながら、それでも車に止まってもらおうと手を挙げかけて、 「…………!」 藤乃は、気がついた。いや、気づかされた 向こうも藤乃が見えているだろうに、全く減速しない、それどころか、加速する車。 そして今更ながらに点灯するヘッドライト。 空はだいぶ明るくなってきていたが、それでもハイビームを唐突に浴びせられれば目も眩む。 そのまま車は、藤乃目掛けて突っ込んでくる。それこそ、藤乃を跳ね飛ばさんほどの勢いで。 そして、助手席の窓が開いて、そこから、覗いて見えたのは、 明らかに自分に向けられた敵意。 知ってる、知らないどころではなく、語り合うことすら拒絶する意思の表出。 問答無用の、殺意。 それらを前に、藤乃は、 「ああ――では仕方ありませんね」 眩いヘッドライトを真正面から見る格好になった今、車の中の人影はよく見えない。 となると……このサイズ、果たして出来るだろうか。……うん、きっと出来る。 彼女は呟く。 「――凶(まが)れ」 瞬間、小さな車が丸ごと――歪んだ。 ◇ 助手席側の窓を開け、銃を撃とうとしていた女性は、咄嗟にそのまま走っている車から飛び出しました。 横目に、今まで乗っていた車が、見えない巨人の手で雑巾絞りにされるかのように、捻れていくのが見えました。 女性は前回り受身で着地の衝撃をやわらげ、しかし勢いは殺すことなく手近な街路樹の陰に飛びこみました。 飛び出す時に引っ掛けたのか、ポニーテールがばさりとほどけて、長い髪が彼女の背に被さります。 一瞬だけ、彼女は車の残骸の方を見ました。 あの瞬間、運転席側の窓は開けていませんでしたし、他には動くものの姿も見えません。 捻って曲げられた車だったモノには、もう人間がまともな形で乗っていられるスペースは残されていないようでした。 同行者は逃げる間もなく車ごと潰されてしまった、と考えるしかありませんでした。 「それにしても、何をされたのでしょうね。おおかた、朝倉涼子の『槍』と同じような非常識の類だと思いますが」 つぶやきながらも、女性は自分の武器である小型連射式パースエイダー、FN P90を手に取りました。 街路樹の陰からチラリと覗くと、黒い服の少女はゆっくりとこちらに歩いてくるようでした。 やはり手には何も持っておらず、さきほどの『攻撃』をどうやって繰り出したものか見当もつきませんでした。 「こんな時に『とりあえず突っ込ませる』ための朝倉涼子だったのですが。まったく使えないものです……おっと」 ぼやく女性の眼前で、隠れていた街路樹が捻れて、折れました。 車が潰された時と同様、何が起きたのか全く分かりませんでした。 それでも、こんな威力の『攻撃』を生身で受けたら命に関わることだけは、正確に理解しました。 ひとまず女性は、倒れゆく街路樹越しに、無闇やたらに手に持ったサブマシンガンを乱射しました。 相手が怯んだ気配だけ察知して飛び出し、無茶な姿勢で後方に乱射を続けながら全速力。 次の街路樹まで駆け通して、その陰に飛び込み、隠れました。 そこで素早く空になった弾倉を交換し、女性は珍しく、少しだけ悩むような素振りをしました。 ◇ 「――――ああ、びっくりしました」 バットやナイフを向けられたことはあっても、銃を向けられたのは初めてだった。 藤乃はそれがもたらすであろう圧倒的破壊より、むしろ連続した大きな音の方に驚いてしまっていた。 それを怯んだと言うのなら、それは爆竹の音に怯んだ程度のこと。 迂闊に動こうとしなかったのが、かえって良かったのか。 それとも、師匠が当てることより逃げることを優先したためか。 P90からばら撒かれた数十発の弾丸は、いずれも藤乃の身体を捉えてはいなかった。 それがどれほどの僥倖であるのか気付きもせず、藤乃はゆっくりと歩を進める。 隠れる師匠との距離を、悠々と詰める。 いや、今の藤乃には、ゆったりとしか動けない。 腹部の疼きが、藤乃に戦意を与えると同時に、彼女を縛ってもいる。 しかし反撃はない。藤乃のことを恐れているのか。それとも弾数に不安でもあるのか。 物陰から銃口を突き出してきたりしたら、その腕をまずねじ切ってやろうかと思っていたのだが―― 藤乃はチラリと一瞬だけ、視線を横に向ける。 そこにあったのは、歪にねじれた小さな車、だったもの。今まさにその横を通り過ぎようとしていたもの。 確か車にはもう1人乗っていたはずだ。 だけど、飛び出した人影は1つきり。 もう1人は――たぶん、まだこの中だろう。 少し想像しただけで、藤乃は罪悪感に押し潰されそうになる。 車ごとねじ曲げられ捻られて、「もう1人」は、きっともう、たぶん―― 「ああ――わたし、人殺しなんてしたくないのに――」 「なら、しなくていいわ」 「!?」 藤乃の呟きに、聞きなれぬ声が被る。 そして同時に、車の残骸から突き出される長い棒状の物体。 藤乃は反射的にそれを『視て』、捻じ曲げる。 自身を串刺しにしようとしていた凶器を『曲げて』、間一髪、制服の肩口を切り裂かれるだけで直撃を免れる。 驚く間もないままに、さらに2本、3本、4本。 続けざまに突き出される『槍』。 そのことごとくを『曲げて』逸らしながら、藤乃は慌ててバックステップを取ろうとする。 速い。 突き出される速度が速すぎて、到達する前に『ねじ切る』だけの時間がない。僅かに穂先を逸らすだけで精一杯だ。 それは、『槍』とでも表現するしかない『攻撃』だった。 車を構成していた鉄板が溶けるように変形し、ウニの棘のように、あるいは水晶の結晶のように突き出している。 藤乃は混乱する。 目の前の光景と状況に、混乱する。 誰が? どうやって? いや、誰が、というのは見当つくが、いったいあの状況をどうやって生き延びて―― 視界の隅に、『槍』と同様に、しかし『槍』とはまた異質な質感の、『触手』のようなものが高速で伸びるのが見えた。 それも2本。白い。早い。どことなく生物的だ。1本は素早く『曲げて』進路を逸らして、もう1本も、 ……手? 「凶――っ!?」 視界いっぱいに広がったのは、広げられた手の平と、5本の指。 うねる『触手』の先端についていたその『手』は、藤乃が『曲げる』よりも早く、彼女の顔面を鷲掴みにした。 覆い隠されて、何も見えない。藤乃のこめかみに、『手』の『親指』と『小指』が食い込む。 引き剥がそうと『触手』を握って抵抗してみるも、ビクともしない。 過去に藤乃を陵辱した男たちと同じような――いや、それは、彼女の知る彼ら以上の怪力だった。 そのまま藤乃は強引に引き寄せられ、吊るし上げられる。 頭が割れそうに痛い。首が痛い。 『痛み』という感覚を得てまだ間もない藤乃の思考が、慣れない痛みに、しばし停止した。 ◇ 「ふぅん。やっぱり光学的観測によってターゲットを捉えてるわけね。 だから動体視力の限界を超えた速度の対象には攻撃が甘くなるし、目を塞がれたら途端に困ってしまう」 右手1本で黒い服の少女を吊るし上げながら、朝倉涼子はつぶやきました。 普段の2倍どころでは済まない長さに伸びてのたくっていたその腕も、今はごく普通の女の子の腕に戻っていました。 伸ばしたところを一度は軽く『曲げられた』左手も、見たところ何の後遺症も残っていないようでした。 何の弾みによるものか、師匠とおそろいのポニーテールにしていた髪も、師匠と同じようにほどけて広がっていました。 ちょうどプロレス技のアイアンクローの要領で相手の抵抗を封じた彼女は、捕らえた相手を面白そうに見回しました。 「ま、有機生命体の身体構造上、そこは無理もないか。目という光学受容器に頼るしかないもんね。 それにしても『歪曲』かぁ……ただの有機生命体がこんな情報改竄の類似現象を引き起こせるなんて。 ある種の突然変異体のようだけど、構造体に妙な化学的・物理的操作も加わってるようだし……興味深いわね」 「どういうことです? 私にも分かるように説明しなさい」 車の陰から出てきた朝倉涼子が相手を制圧したのを確認し、師匠と呼ばれていた女性も戻ってきました。 油断なくP90の狙いを少女に定めたまま、問いかけます。 「ん~、人間の言語って限界あるのよねぇ。上手く言語化できないかも。 そうね、情報の伝達に齟齬が発生するかもしれないけど、平たく言っちゃうと、この子……」 「平たく言うと?」 「どうも、ただ『見るだけ』で対象をねじ曲げることができるみたい。それこそねじ切るまで」 「…………」 「先天的な変異体らしいんだけど。驚きよねぇ、有機生命体がこんな能力を持ってるなんて。しかも2種類も」 「2種類? 曲げる以外にも何かできることが?」 「ううん、右回転と左回転。ほら、あわせて2つ」 「…………」 「……そんな顔しないでよ、師匠。こっちだって上手く伝える言葉が見つからなくて困ってるのに。」 呑気そうな説明をしている間も、顔面を捕らえられた少女は、必死の抵抗を続けていました。 しかし、爪を立てようが蹴りを入れようが、朝倉涼子の身体はびくともしません。少女の顔を掴んだままです。 「驚いたと言えば、さっきあなたの腕が伸びたこともそうです」 「しっかり見られてたかしら。できれば師匠の前じゃ使わずに済ませたかったんだけどなぁ」 「やはり隠し札ですか。それよりあなた、私を囮に使いましたね? あの『槍』と『伸びる腕』の射程圏内に、その標的が踏み込むまで」 「それはお互い様でしょ? あたしを見捨てて1人だけ逃げたのは誰よ?」 「ちなみに、どうやって助かったのです? 捻られた車に人の入っていられる隙間なんてなかったように見えましたが」 「ちょっと分子の結合情報弄って、床に穴開けてそこからスルッと下へ、ね。 あとは歪んだ車自体が、隠れるのにちょうどいい障害物になってくれたわ」 「そうですか。しかし車は勿体無かったですね。直せませんか?」 「うん、流石にこの規模の物体の再構成はできないみたい。次の車見つけるまでは、諦めてサイドカー使いましょ」 そうやって話している間も、師匠はいつでも撃てる姿勢のままです。 師匠は言いました。 「ま、話は後です。その『能力』とやらは使えないにしても、さっさととどめを刺してしまいましょう。 あなたが捕らえてからもずっと、殺気だけは衰えていませんから」 ◇ 車に乗っていた女たちが、何かを喋っている。 こんな状態で撃ったらこっちまで巻き込まれるわよ、とか、それが嫌ならあなたが刀を使いなさい、とか。 どうやら自分の殺し方で軽く揉めているようだ。 視界を奪われたままの浅上藤乃も、ぼんやりとそれを理解する。 殺されるのだろうか。こんな所で。 単に顔を手で覆われただけ、とはいえ、対象物が視えなければ浅上藤乃の『力』は揮えない。 超・至近距離にある掌にはかえって焦点を合わせることができず、だから軸が作れない。凶げられない。 相手もそれを理解しているのだろう。 詳しい原理も何も分からぬまま、ただ、少なくとも「視えない相手は曲げられない」と。 今の藤乃は、まるで――抵抗する術も持たず男たちに辱められていた頃と、おんなじだ。 ――それは嫌だ、と思った。 一度そう思ったら、想いが止まらなくなった。 手で目を塞がれたまま、相手が視えないまま、それでも藤乃は、爛、と睨みつける。 暗闇さえも見通さん、とばかりに、2人の女がいるあたりに視線を向け、両目に力を込める。 相手が視えさえすればいいのだ――視ることさえ出来れば、ねじ切れる。 こんな状態からでも、逆転できる。 脳が蕩けるような灼熱。 果たしてそれは妄想か現実か、2人の女の姿がうっすら脳裏に浮かんだ気がして―― 「――あ?」 「――え?」 「――!?」 行使されようとした『力』は、しかし、唐突に薄れ、消えていった。 ◇ 「急に殺気も失せましたが……なんだったのでしょう、今のは」 「抵抗もしなくなっちゃったしねぇ。ちょっと待ってね……」 相変わらず少女を片手で吊るし上げた格好の朝倉涼子と、銃を構えたままの師匠は顔を見合わせました。 一際強く暴れ、強烈な殺気を発したかと思うと、いきなり気の抜けたように動きを止めた少女。 朝倉涼子は改めて脱力しきった少女の身体に顔を近づけ、嗅ぎ回るように頭を動かし、そして、無造作に言いました。 「ははぁ、アレがああなって、こうなって、こう、か……なるほど、この子、『使えなく』なっちゃったみたいね」 「どういうことです?」 「こういうこと」 おもむろに彼女は、少女の顔から手を離しました。 解放された少女――と言っても、よく見れば朝倉涼子の外見とほぼ同年代――は、ぺたん、と尻餅をつきました。 少女は呆然とした様子で、朝倉涼子、続いて師匠を見比べました。 2人とも、見えない力でねじ曲げらてしまうようなことはありませんでした。 「えーっと、あたしは朝倉涼子。こっちは師匠。あなたは?」 「浅上……藤乃。いや、そうじゃなくて……」 「藤乃。いい名前ね。 ああこれは社交辞令よ、有機生命体のパーソナルネームのセンスなんて、正直分からないし」 人当たりのいい笑顔を浮かべたまま、朝倉涼子はどこか世間ズレした言葉を吐きました。 3人の今置かれた状況を忘れさせるような、見事な笑顔でした。 「出会いは最悪だったけど、あたしたち、協力しあえるかもしれないわね。でも、とりあえず――」 何か言おうとした師匠を片手で制しつつ、朝倉涼子は1歩少女に歩み寄って、 「どう考えても師匠に説明するのにジャマだから、ちょっとだけ寝ててね。 もし次にあなたが起きることがあったなら、その時に改めてお話しましょ?」 とん、と何気ない仕草で、藤乃の首筋に手刀を叩き込みました。 ◇ ――また、何も感じなくなってしまった。 浅上藤乃は、ぼんやりと考えていた。 残留していたカラダの痛みは嘘のように消え去って、何も感じなくなって、生きている実感すらも消えうせて。 首筋へ加えられた打撃も、衝撃としてではなく、視覚と聴覚でその存在を知る。 苦痛を感じることなく、ただ意識だけがストン、と闇に落ちていく。 痛覚のない身体でも適切な場所に適切な衝撃が加われば、脳震盪などで意識は失いうるのだ。 闇の中に落ちていきながら、藤乃は最後に、朝倉涼子の言葉を反芻する。 ――協力しあえるかもしれない? それなら――湊啓太を探す手伝いを、してくれるというのだろうか? あの2人が? 人殺しの匂いのするあの2人が? ほんとうに? 答えは返ってくることなく、彼女の意識は一時この舞台から遠ざかる。 ◇ 「――つまりあなたの話をまとめるとこうですか。 この浅上藤乃という少女は、本来、痛みを感じることのできない無痛症。 でも現在、その症状は間欠的に出たり消えたりしている。 無痛症が治って痛みを感じることができる時だけ、例の『歪曲』が使える。 でも無痛症が前面に出ている時にはそれは使えない、と――」 「そ。まあ、その無痛症の方が後天的っぽいんだけどね。 あと、たぶん本人、現時点じゃそこまで理解してないわ。無痛症が治って能力が消えた時、驚いてたでしょ? ちょっと眠ってもらったのも、この話を彼女自身に聞かれちゃうのは後々マズイかなー、って思って」 「そこまでは分かりましたが」 朝倉涼子による長い説明をざっくばらんにまとめた師匠は、その場に倒れこんだ浅上藤乃を見下ろしました。 気絶しているようですが、放置すればやがて目を覚ますであろう状態でした。 「なぜ、その話を? さっさと殺しなさいと言ったはずです。まさか情が移ったなどと言い出すのではないでしょうね」 「まさか。ただこの子、うまくいけば戦力として『使える』かな、って。 ちょうど今なら無害だし、会話する余地はあるようだし」 「使えません。仮に首尾よく説得できたとしても、戦力として期待するにはあまりに不安定すぎます。殺しなさい」 「でも、『歪曲』を『使える』時の射程と威力は相当なものよ? 師匠も見たでしょ?」 「この小型連射式パースエーダーの射程と威力があれば十分です。殺しなさい」 「銃声もしないし」 「確かにサイレンサーがあるなら欲しいところですが、ないならないでやりようがあります。殺しなさい」 「弾切れもないし」 「確かに予備の弾は欲しいですが、現状でも十分余裕があります。殺しなさい」 「動作不良もないし」 「確かにできれば予備のパースエイダーも欲しいところですが、このP90は十分信頼に足るようです。 というより、『能力』が使えない今のその子の状態がまさに動作不良でしょう。殺しなさい」 「ってか、師匠もやっぱりその短機関銃だけって状況には不安があるのね。 誰かを倒して武器を奪おうにも、ここまで空振りばっかりだったし。棒は1本あったけど、銃なんてなかったもんねぇ」 「そんなことはありません。殺しなさい」 「何か、もっと有効な『武器』が手に入るまででもいいのよ? 大体、師匠も迷ってるんでしょ? でなきゃ『殺しなさい』って言う前に師匠自身が殺してるわよね? 北村君の時のように」 朝倉涼子は微笑みました。師匠は少しだけ黙り込みました。 「……その少女を連れて行くとして、最後にはどうするつもりです? 我々の利害と対立するのでは? 面倒は御免ですよ」 「ああ、それは大丈夫」 朝倉涼子は、そして不恰好に倒れていた浅上藤乃を抱き起こしました。 抱き起こして、その腹部に軽く手を当てて、そして、 「何もしなくてもこの子、どうせもうすぐ死ぬから」 朝倉涼子は、少し微笑んで、 「この子、どうせもうすぐ死ぬから」 もう1回言いました。 ◇ 対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェースの真の強みは、その解析能力だ。 涼宮ハルヒを観察して、その情報を情報統合思念体に送る。そのために造られた存在。 情報を操作して非現実的な現象を起こす能力も、高い肉体的能力も、ある意味でおまけに過ぎない。 その本分は、情報を集めることにこそある。 そこで起こったことを、解析することにある。 もちろん、人間とは意識のありようの異なる情報統合思念体に造られただけあって、不得手はある。 人間社会における常識には欠ける部分があるし、人間心理にはいまいち疎い。 長門有希よりも遥かに上手く人間のコミュニティに溶け込んでいた朝倉涼子も、それは変わらない。 表層的には感情表現豊かで人当たりもいいが、時折、ぎこちなさが滲んでしまう。 しかし現象面の解析ならば、通常の人類より遥かに高い能力を持っている。 「そこで何が起きたのか」「何が原因なのか」、それを看破する能力は極めて高い。 時にそれは、現在の人類の言語では表現が困難な概念で、それゆえ意思の疎通に齟齬を生じることはあるけれど。 それにまた、情報統合思念体との接続がなければ、分からないことも多いのだけど。 それでも、ただの人間が普通に知りえることより遥かに多くのことを、瞬時に見抜くことができる。 「あの集団」の中において、何か不可解なことがあった時、いつも「答え」を出すのはいったい誰だったろう? 朝倉涼子は、そんな「彼女」の同類なのである。 そして、この舞台においては、その能力こそが制限されている。 朝倉涼子が『近視』に例えた、距離的な制限がかかっている。 逆に言えば――近づけば、分かる。 浅上藤乃の、『歪曲』の能力のことも。 それが、右回転と左回転、2種類のチャンネルを持っていることも。 その能力が、彼女の後天的な無痛症と、背中に負った負傷とに連動していることも。 そして――浅上藤乃自身がまだ気付いていない、重症化しつつある虫垂炎のことも。 穿孔し腹膜炎を起こしつつあるその病状は、放置すればそれだけで十分に死に至る。 今後どういう風に行動するかによっても進行は異なるだろうし、ゆえに断定は難しいのだが…… 適切な医療処理を受けられなければ、大雑把に見て、あと1日ほど。 持ち堪えたとしても、最大で2日。 どう贔屓目に見ても、3日間持つことはあり得ない。 この会場に許された時間制限めいいっぱい生き抜くことは、絶対にできない。 それが、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェース・朝倉涼子の見立てだった。 ◇ 「……浅上藤乃の面倒はあなたが見なさい。 また上手く説得できなかったり、病気が進行し過ぎて使い物にならなくなったら、責任をもって『処分』するように」 「はいはい」 「もし万が一、あなたが浅上藤乃から攻撃を受けても、私は助けません。1人で逃げて、浅上藤乃の自滅を待ちます」 「分かってるわ。そこは覚悟の上よ。……それで、このままお城の方に行けばいいのね?」 言いながら、朝倉涼子はデイパックの中からサイドカーつきのバイクを引っ張り出しました。 依然気絶したままの浅上藤乃をヒョイとサイドカー側の座席に座らせて、彼女はハンドルを握りました。 その後ろに、普通のバイクで2人乗りするような要領で、師匠が座ります。 「そのことですが、一度その前に警察署に寄りましょう」 「警察署?」 「警察官の使っている武器や、犯罪者から押収した品々があるかもしれません。パトカーなどもあるでしょう。 少し寄り道になりますが、ここからも近いですしね」 「なるほど」 「もしもそこで使い勝手のいいパースエイダーが手に入ったら、浅上藤乃を早々に処分してもいいかもしれません」 「やめて」 言い争う2人を乗せたまま、サイドカーは発進しました。 ポニーテールのほどけた長い髪が、2人の背後にたなびきます。 師匠も朝倉の髪の中に顔を突っ込むような真似はせず、首をずらしてそれを避けます。 「それにしても邪魔な髪ですね。切ってしまいましょうか」 「あ、髪留めの再構成忘れてたかしら。って師匠それはやめて今はやめてちょっと運転中だからほんと待って」 浅上藤乃は、未だ気絶したまま。 3人を乗せたサイドカーは、浅上藤乃が辿った道を逆になぞるように、走り去っていきました。 あたりはすっかり明るくなっています。 もうすぐ、日が昇ります。 【D-3/警察署付近/一日目・早朝】 【師匠@キノの旅】 [状態]:健康。サイドカー後部座席 [装備]:FN P90(50/50発)@現実、FN P90の予備弾倉(50/50x18)@現実、両儀式のナイフ@空の境界 [道具]:デイパック、基本支給品、金の延棒x5本@現実、医療品、 [思考・状況] 基本:金目の物をありったけ集め、他の人間達を皆殺しにして生還する。 1:朝倉涼子を利用する。 2:一旦、警察署に向かい武器などを物色する。その後、天守閣の方へと向かう。 3:浅上藤乃を同行させることを一応承認。ただし、必要なら処分も考える。よりよい武器が手に入ったら殺す? 【朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱】 [状態]:健康。サイドカー運転中 [装備]:シズの刀@キノの旅 [道具]:デイパック×4、基本支給品×4、金の延棒x5本@現実、軍用サイドカー@現実、蓑念鬼の棒@甲賀忍法帖、 フライパン@現実、人別帖@甲賀忍法帖、ウエディングドレス、アキちゃんの隠し撮り写真@バカとテストと召喚獣 [思考・状況] 基本:涼宮ハルヒを生還させるべく行動する。 1:師匠を利用する。 2:警察署に向かう。その後、天守閣の方へと向かう。 3:SOS料に見合った何かを探す。 4:浅上藤乃を篭絡し、活用する。無理なようなら殺す。 [備考] 登場時期は「涼宮ハルヒの憂鬱」内で長門有希により消滅させられた後。 銃器の知識や乗り物の運転スキル。施設の名前など消滅させられる以前に持っていなかった知識をもっているようです。 【浅上藤乃@空の境界】 [状態]:気絶。無痛症状態。腹部の痛み消失。サイドカーの横座席。 [装備]:なし [道具]:なし [思考・状況] 基本:湊啓太への復讐を。 0:(気絶中) 1:朝倉涼子と師匠への対処? 朝倉涼子の「協力」の申し出を検討する? 2:他の参加者から湊啓太の行方を聞き出す。 3:後のことは復讐を終えたそのときに。 [備考] 腹部の痛みは刺されたものによるのではなく病気(盲腸炎)のせいです。朝倉涼子の見立てでは、3日間は持ちません。 「歪曲」の力は痛みのある間しか使えず、不定期に無痛症の状態に戻ってしまいます。 「痛覚残留」の途中、喫茶店で鮮花と別れたあたりからの参戦です。(最後の対決のほぼ2日前) 湊啓太がこの会場内にいると確信しました。 そもそも参加者名簿を見ていないために他の参加者が誰なのか知りません。 警察署内で会場の地図を確認しました。ある程度の施設の配置を知りました。 [備考] D-3とE-3の境界付近、地図上のT字路になってる辺りに、 フィアット・500@現実が大きく捻じ曲がった状態で放置されています。 とても動かせる状態ではありません。街路樹も折れ、弾痕や空薬莢も残されています。 投下順に読む 前:罪人のペル・エム・フル 次:第一回放送――(1日目午前6時) 時系列順に読む 前:罪人のペル・エム・フル 次:第一回放送――(1日目午前6時) 前:ユケムリトラベル 人類五名温泉宿の旅 師匠 次:喧嘩番長 前:ユケムリトラベル 人類五名温泉宿の旅 朝倉涼子 次:喧嘩番長 前:天より他に知るものもなし 浅上藤乃 次:喧嘩番長