約 30,345 件
https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/962.html
590 名前: NPCさん 2005/03/24(木) 22 54 28 ID ??? 困ったチャンというか、劇的に瞬間的に困ったネタを一つ そいつは普段からいいやつでな、特に困ったチャン要素は無い奴だった。 んで、付き合いの中でエロDVD貸してくれといわれたので、濃いのを貸した。 まぁぶっちゃけ痴漢物何本かなんだが。 であるとき、女性プレイヤーを招いて、ゲームをやるということになった。 場所はそいつのうち、普段から小奇麗で、エロ本なんか無い奴の部屋だからな、 エロゲなんかも興味ない、まったく余計な心配は無かったのだよ。 で、ゲーム中にふと本棚に目を向けると… あるじゃねーーーーーかよーーーー痴漢物がーーーーーー!!! 全然隠れてねぇ!これっぽちも隠れてねぇよ!!もう全開でドーーーンと置かれてるのよ。 プレイ中に女性プレイヤーに見つかるかと思うとひやひやものだったよ。 女性プレイヤーの頭の後ろに痴漢物DVDが並んでるんだよ、漏れのだけど。 アレは心臓に痛かった、ものごっつ痛かった… 592 名前: NPCさん 2005/03/24(木) 22 57 10 ID ??? 590 貸してくれたお礼に痴漢ばりのドキドキ感を与えてくれたのか、狡猾な嫌がらせなのか、 それとも単にうっかりしてたのかよくわからないな。 594 名前: ビッグマグナムマスラオ先生 2005/03/24(木) 22 59 12 ID ??? 590 女性プレイヤーがお花摘みに行った隙に指摘しろよw あるいはそいつだけ連れ出して言え。 596 名前: 590 2005/03/24(木) 23 02 19 ID ??? 592 重度のうっかり者(-10CP)位の奴だということが判明 特に女性が絡むときに。 いや、わざとなのか… 590 指摘した、指摘したとも。だってお花畑から戻って席につこうとすると、 確 実 に 見えるような状態だったし。 つうか多分、最初の着席で気付いたかも…orz 597 名前: 590 2005/03/24(木) 23 03 24 ID ??? アンカーミスした、 590→ 594 スレ59
https://w.atwiki.jp/animechikan/pages/30.html
アニメキャラ痴漢スレとは、2ちゃんねる内ニュー速VIPにて不定期に行われるスレッドのことで、 「俺」がアニメキャラに痴漢することを目的としている。 スレタイが ○○「 」 方式であり、セリフに「痴漢」が入っていることが特徴である。 スレッドを立てる一週間前までに、俺は連絡所で日時を報告することにしている。 また、一連のスレッドは犯罪行為を助長するものではないことを付言しておく。 正直言って、俺は痴漢というシチュエーションに興奮を覚えるものである。 同時に、だからこそ、痴漢という犯罪を憎んでいる。 その自分勝手な動機を、さもしい根性を、卑劣な人間性を、強く強く軽蔑する。 「痴漢の厳罰化」を強く望み、その裏返しとして「悪質な冤罪」をも強く憎む。 痴漢というのは、妄想であればこそ楽しいと思えるもの。 一線を越えた先にあるのは泥沼。地獄につながる底なし沼であるはずだ。 社会における幸福の総和の減少であり、任意の人の幸福の減少であるはずだ。 あまりにも非生産的・反社会的行為であり、同情の余地は全くないと考える。 痴漢を憎む心。それが俺の心の根底にあることを理解してほしい。 できることなら読者の皆様とも共有していたい。 その前提の上で、心の奥の変態を解き放ち、妄想を楽しみましょう。 なお、元祖まとめサイト http //s2.whss.biz/~kanasimi/station/ では、初期の作品を閲覧することもできる。
https://w.atwiki.jp/unkmrtskg/pages/67.html
743 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/13(月) 07 34 11.05 ID e9u+0gL8 通勤バスからつさく 前に立ってる女子高生の尻がマグナムに押しつけられてておっきしそう( ∀*`;;) 記号があったら痴漢扱いされる 748 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/13(月) 07 51 18.77 ID e9u+0gL8 ちょ( A`;) 意識してたら完全覚醒した 娘さん、耳が真っ赤だし絶対気付かれてる( A`;)ヤベェ 785 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/13(月) 09 39 36.06 ID e9u+0gL8 終わって見ればいい役得でした 今日も仕事頑張るぜ( ∀`) 789 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/13(月) 09 53 15.84 ID e9u+0gL8 787 最後は半手コキ状態だったから、もう乗ってこないかもしれんね( A`;) 796 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/13(月) 10 13 48.52 ID j3YiuY16 ケツに当たるのを阻止するために手でカバーしたんだろ 798 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/13(月) 10 20 56.56 ID e9u+0gL8 794-795 796の通り 手のひらがこっちむきで亀にフィットしてたから痴漢扱いされてもしょうがない状態だった( A`) 817 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/13(月) 11 02 45.09 ID e9u+0gL8 ショタエロで普通に抜ける俺はgthm? 789 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 07 35 03.15 ID pcqfjYpC 通勤バスからidc 昨日tntn押し付けちゃった娘さんが、また密着してきてる 今度は現行犯で捕まえようってつもりか(`A ;)ソウハイカンゾ 796 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 07 48 28.12 ID pcqfjYpC 体横にして押し付け防止したらこっちに向き直ってきた( A`;)コエー でも結構かわいいな( ∀`) 802 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 08 00 48.92 ID pcqfjYpC 795 そんな簡単にフラグ立つならとっくに童貞ちゃうわ(`A ) 798 ああ、俺も男にパニーニされた事が多々あるぜ 839 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 09 38 48.15 ID pcqfjYpC 背広のポケットにメアド書いた紙が入ってたんだが、何の罠だ 851 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 10 10 17.27 ID pcqfjYpC ここで喜んでメールすると、悪戯に使われるんだよな ちぃ知ってる 859 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 10 23 32.99 ID pcqfjYpC 顧客ともこのアドレスでやりとりしてるから変えられないし、バス時間も変えようがないんだよな( A`) でも本当に本当のフラグだったらとか考える俺マジヘタレ 860 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 10 24 48.27 ID c8y7mOTL 859 hotmailだ!(`A )knunkyru! 866 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 10 28 45.71 ID pcqfjYpC 860 ウンコヤロウだとテメェこの野郎その通りですすいません ホットメールだと相手がPCメール拒否にしてたらダメじゃね? 873 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 10 34 57.03 ID pcqfjYpC つか、ファーストアプローチが尻にマッシブマグナム押し付けという痴漢紛いの行為なのに、フラグ立つのおかしくね? しかも俺みたいな純正培養ドクヲに( A`) 857 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 10 16 17.96 ID kz+1Cxiq 851 俺も昔そういうことから大人の関係になったんだぜ 「紙が入ってたからメールしてみたんですが、どなたですか?」とか 最初は知らない振りをして探ってみればいいじゃない 883 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 10 39 35.19 ID pcqfjYpC まぁでもとりあえず帰ってから 857で送ってみる ゴルゴも才能とか運とか言ってたし 983 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 12 57 22.58 ID ivMfG1im 979 よくわからないけど痴漢は現行犯逮捕だということを 覚えておくといい気がするよ 992 名前:07041050720832_md ◆oBxTcihlz2 [sage] 投稿日:2006/11/14(火) 13 10 38.25 ID pcqfjYpC 983 それは聞いた事あるんだけど、心配なのは 携帯メール送る→娘っ子が友達に「コイツバスで大砲擦り付けて来たんだぜ、悪戯メールしてやろうぜ」ってなる→俺( A`)v- こうなるかもしれないじゃない 尚且つ明日の通勤時にクスクスキモーイとかされたら胃に穴が開くよ( A`) とりあえず節穴つきトリップつけとくから夜まで待って 213 名前: ◆oBxTcihlz2 [sage] 投稿日:2006/11/14(火) 18 13 50.06 ID JUwgWlGp tdim- さて、メール送るわけだが注意事項とかあるかしら? 215 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 18 14 29.33 ID OfWoAUff 213 早まらないこと 218 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 18 18 52.18 ID c8y7mOTL 213 早まること 219 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 18 20 25.41 ID JUwgWlGp 213 218 どっちだよ だよ 送る文章が思いつかないぜ 221 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 18 20 42.82 ID JUwgWlGp 215だった 243 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 18 41 16.76 ID JUwgWlGp とりあえずHotmailから前 857の文面で送ってみる 相手は携帯なんだけど、拒否設定されてたら明日の通勤時まで進展はないな 297 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 19 58 20.40 ID JUwgWlGp 294-295 Thx,悩むな( A`;) そしてメールが返って来ないってことはやっぱ拒否か 303 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 20 10 13.29 ID FJ3D8Kt4 297 結局相手のメールアドレスは携帯なのか? PCだったら1日は見とけばいいんじゃないかな むしろ明日にでも直接コンタクトがあるかもしれんが 305 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 20 10 42.94 ID Ee6BeJA2 朝の痴漢逆毛はどうなったんだ( ?`)マダオクッテナイノ? idc 先頭英字以外で1週間オナ禁 307 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 20 13 35.99 ID JUwgWlGp 303 携帯であります 305 PCから送ったけど返事なし PC拒否にしてるかキモーイフラグか 308 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 20 13 46.65 ID tNUEeunk 297 さっさと紙うp 314 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 20 21 29.31 ID JUwgWlGp 308 ttp //roup.jp/loader/img/nup1574.jpg これでよろしいか 拒否されてる人に送ったことないからわからんのだが、拒否されてるぜpgy-って返って来るもんなのか? 323 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 20 28 40.43 ID JUwgWlGp 321 >携帯メール送る→娘っ子が友達に「コイツバスで大砲擦り付けて来たんだぜ、悪戯メールしてやろうぜ」ってなる→俺( A`)v- >こうなるかもしれないじゃない >尚且つ明日の通勤時にクスクスキモーイとかされたら胃に穴が開くよ( A`) こうなるのが怖いんで携帯からは送りたくない( A`) 330 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/14(火) 20 32 50.83 ID JUwgWlGp ですよね uz-gdgdってなりそうなんでNGに突っ込んどいてください( A`) 414 名前: ◆oBxTcihlz2 [sage] 投稿日:2006/11/14(火) 21 42 00.23 ID JUwgWlGp まぁ明日の通勤時なんかアクションあるだろうし待ちますよ( A`) flgならなんかまたあるだろうし 639 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/15(水) 01 01 54.18 ID t2qYPMW/ 寝る前のidc 先頭記号なら友達からスタート 末尾記号なら現行犯逮捕 それ以外ならgdgd 646 名前: ◆oBxTcihlz2 [sage] 投稿日:2006/11/15(水) 01 04 58.07 ID t2qYPMW/ \(^o^)/ツカマタ idの神様はホント厳しいですね( A`) 786 名前: ◆oBxTcihlz2 [sage] 投稿日:2006/11/15(水) 07 39 22.02 ID t2qYPMW/ バスに揺られておっはよー 今日の娘っ子は間に一人挟んだ位置からこっちチラチラ見てます 挟んでるのもまた女子高生なので油断するとおっきしそうだ( A`;) 796 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/15(水) 07 47 57.44 ID t2qYPMW/ なんか二人でボソボソ喋ったかと思ったら立ち位置入れ替えて来た んで背広の裾摘まれてるんだけど確保シマスタってことか( A`;;;;) 807 名前: ◆oBxTcihlz2 [sage] 投稿日:2006/11/15(水) 08 00 41.21 ID t2qYPMW/ 793 ごめんね でも痴漢紛いの事しといてフラグなんて立たないだろうし、やっぱこれはキモーイフラグのほうか って打ってたら「メール下さい」って言い残して降りていった 胃が痛い 815 名前: ◆oBxTcihlz2 [sage] 投稿日:2006/11/15(水) 08 19 40.94 ID t2qYPMW/ 昨日送ったホットメールはやっぱ届いてなかったのかな 携帯からか…悪戯が不安だけど送ってみるか…( A`;) でもこれ以上本ヌレでやるとuz-gdgdになりそうだし、VIP行こうかな( A`)スレ立て夜になるだろうけど 825 名前: ◆oBxTcihlz2 [sage] 投稿日:2006/11/15(水) 08 36 34.12 ID t2qYPMW/ 818 823 じゃあとりあえずそれで 女子高生とメールなんて初めてだから、よくわからんのだが、「バスの者ですが、どうしました?」とかで良いだろうか 827 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2006/11/15(水) 08 40 06.59 ID Uh64HjS0 825 とりあえず謝っといた方がいいんじゃね? そうすりゃ相手の出方もうかがえるし 830 名前: ◆oBxTcihlz2 [sage] 投稿日:2006/11/15(水) 08 44 36.46 ID t2qYPMW/ 826 痴漢男自体よく知らんのだけど、なんかあったの? 827 そう言われればそうだ 「バスの者です、先日は不快な思いさせてすあませんでした」って送るわ 863 名前: ◆oBxTcihlz2 [sage] 投稿日:2006/11/15(水) 10 10 25.80 ID t2qYPMW/ 返事こないんだぜ( A`) やっぱこれは悪戯フラグだったか 875 名前: ◆oBxTcihlz2 [sage] 投稿日:2006/11/15(水) 10 40 39.99 ID t2qYPMW/ 今後の展開予想 1、「実は前から貴方の事が…」 2、「今後は気をつけてください」で終わる 3、悪戯、業者からのスパムメールいらっしゃい 885 名前: ◆oBxTcihlz2 [sage] 投稿日:2006/11/15(水) 10 55 48.48 ID t2qYPMW/ 返事きた 「おとといのってわざとだったんですか?痴漢さんなんですか?」 やっべやっべ 899 名前: ◆oBxTcihlz2 [sage] 投稿日:2006/11/15(水) 11 16 35.66 ID t2qYPMW/ 連投規制unkunk ワザとじゃないって即弁明メールした俺マジduti 893 そう見えるのは俺の表現力がヘチョいからだろうし、トリをNGにしたほうがいいよ( A`)ミテテオモシロクナイダロウシ 383 名前: ◆oBxTcihlz2 [sage] 投稿日:2006/11/15(水) 19 05 37.61 ID t2qYPMW/ NGにしてるはずの人が的確にレスしてくるのはなんでなんだぜ? みえてないはずなのにネ( ∀`) 526 名前: ◆oBxTcihlz2 [sage] 投稿日:2006/11/17(金) 11 13 33.40 ID IzN9nSod NGIDめんどくさいからトリつけろ→つけた→一々トリつけるな こうですか分かりません ■とユーザーのやりとり見てるみたいだな( ∀`) *************************************************************************** 138 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2007/05/21(月) 22 55 47.21 ID 6MBFBaaA そういえばバス痴漢逆毛ってどうなったんだ? 419 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2007/05/22(火) 07 59 37.55 ID AwufnHAB 遅レスにもほどがあるけど 138 とっくに振られました( A`) 423 名前:ヽ(`Д´)ノ ウワァァァン[sage] 投稿日:2007/05/22(火) 08 09 19.11 ID NRlvahnP 419 尻毛!尻毛じゃないか! 振られたが掘られたに見えちゃった( ∀`)
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1473.html
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2475.html
第五話「教会のクラスメイト」 ぞくぞく。 また、この感覚が来たと俺は布団の中で溜息を吐く。 いつの間にかあの状態に慣れてしまったこの体は連日連夜気配を察知する。 それは大抵窓の外に居る。こんな雨の日でさえも。 黒い鴉が。 カーテンを開ければただじっとこっちを見ているだけで何もしない。 必ず目が合って気持ち悪いだけだ。あとは殺意が芽生えるだけ。 インターフェースに向けていた時と比べて理性が残るようになっているが。 しかし、理性があっても止められない。異常なまでの、常軌を逸した殺意を。 「・・・・・」 それを堪えるように起き上がってカーテンに近づき、締める。 このまま開けっ放しで寝てると何故か鴉に殺されそうな気がしたからだ。 ―――キャンキャン!! 遠くで犬が鳴いているのが聞こえた。 鴉の次は犬。ここら辺は動物が多いな。俺はそんなのんきな事を考えて、 ―――ブチュッ。 その音と共にそれを払拭した。 「なんだ・・・今の音は」 まるで水の入った袋を突き破って、それが飛び散ったかのようだ。 あたかも血袋、即ち人間の中から血が飛び散るかのように。 気付いたら、俺は窓から外に飛び出ていた。きちんと、ナイフを持って。 鴉は何処かに飛んで行ったらしく居ない。 もう体がおかしいとか細かい事は気にしないようにした。 窓を開けとけば一階から自分の部屋に戻る事も今の俺には一足す一の足し算並だ。 「・・・凄い血の匂いだ・・・」 体が疼く。血を欲している。飲みたいと叫んでいる。 それを失いかけの理性で抑えながら冷静にその場へと向かう。 途中で外国人風の女の子と擦れ違った以外は人と出会わなかった。 やがて正体を見た。 「あれは吸血鬼か・・・」 やや茶色いツインテールの髪が揺れている。 横たわっている男性はもう恐らく生きては居ない。血を啜っている最中だろう。 血を流し込んで自分の人形にするかしないか。 そんな事はどうでも良いか。やれやれ。 「・・・誰?」 ふと、吸血鬼が振り向いた。それは、顔の可愛い女子高校生ぐらいの吸血鬼だ。 「意思を持っている・・・。リビングデッド・・・いや、死徒か」 知りえない情報を頭に流し込んでいく俺の体の知らない何か。 そこから推察する。これは、死徒だと。 何の事かは解らないが死徒だと解る。何の事かは解らないが死徒が何か解る。 今まで生きてきて聞いた事の無いような言葉が頭にあふれていく。 「貴方誰?何のようでここに居るの?」 死徒の少女は俺に首を傾げて聞いてきた。 「キョンって呼ばれてる。ただ、犬がうるさかったから様子を見ようとしたら途中で君が吸血をしていたんだ」 「も、もしかして教会の人?」 何か怯えるように尋ねてくる。俺はなるべく安心させてやろうと思って 「何の事かは解らんから違うだろうな」 となるべく優しく言った。それを聞いた少女はほっと胸をなでおろしていた。 「じゃあ、普通の人?」 「いや、普通じゃないだろうな。この前、出来損ないの吸血鬼を殺したからな」 「ふぅん・・・」 「ま、そういう事で俺は立ち去るのでさよなら」 「・・・待って!!」 「なんだ?しかも・・・いきなり殴りかかってきて」 俺はそう口では言うが冷静に右手で少女のパンチを防いでいた。 「驚いた・・・。結構半分以上の力で飛び掛ったのに片手で防がれるなんて。本当に普通の人じゃないのね」 どうやら試し撃ちらしい。普通の人かどうかを調べる為の。 恐らく普通の人間が食らったら骨は砕けるだろう威力だ。 普通の人間だったらどうするつもりだ、と言いたくなるがとりあえず堪える。 そして、リビングデッドと死徒ではこんなに差があるのかと俺は心の中で舌を巻いた。 「試してごめんね。私、弓塚さつき。れっきとした死徒だよ」 「そりゃ解るよ。なってどれぐらいなんだ?」 「血吸われた直後だから、半年ぐらいかな」 「半年でこの実力か。希代のポテンシャルだな」 「でしょ~?」 頭は理解していない。何を言っているのか。何を言われているのか。 だが、体が理解して言葉を紡ぐ。そんな状況にも俺はどうでも良くなっていた。 っていうかハルヒ達と関わってる時点で人外と関わってるんだから今更か。 自分自身がこんな風になるとは思わなかったが。 「こうやって人と話すの久しぶりだからなんだか嬉しいな。昼間は人多いけど、夜は少ないし」 「日に当たれないのか?」 「うん。ある程度力が付けば、大丈夫かもしれないけど、だとしてもまだまだ」 「そうか。真祖なら歩けるんだろうにな」 「ね」 俺の視界にふと自動販売機が映る。 「コーヒー飲むか?」 「ん~・・・ココアが欲しいかな」 「あいよ」 俺は自販機にお金を入れて森永森のココアを投げ渡す。 弓塚は見事に片手でパシッと掴む。 「ありがとう」 「どう致しまして」 俺はと言えば炭酸飲料定番中の定番、コカ・オーラを購入する。 少しだけリアル・コールドと悩んだのは内緒だよ。 適当な場所に座りフタをあける。 ゴクッ。 うん。この喉を突き抜ける炭酸と糖尿病患者には危険だろう甘味。 この醍醐味を堪能しよう。そうしよう。 そして、俺がコカ・オーラの二口目に口付けるのと同時だった。 弓塚と俺は咄嗟にその場から離れるのは。さっきまで俺達が居た場所になにやら物々しい物が刺さっていたのは。 「避けられたか・・・だが!!」 黒い装束に身を包んだ何かが遅い掛かってくる。 手に持っているのは、聖典か。無闇に接近出来ないな。 まぁ、いきなりぶっ殺そうとはせずに話し合いで済むようなら話し合いで解決しよう。 あの程度の動きなら、どうって事はない。・・・いや、 「後ろだ!!」 俺の叫びに弓塚の気配が動いたのを感じた。やれやれ。どうって事あるな、これは。 「恐ろしいな・・・。下手とは言え、消した気配を動じずに察知するとは」 相手は女性らしい。しかも若い。後ろも歩く音を聞く限りは女性か。 これ以上は居ないらしい。敵は二人。恐らく俺の前に居る方が強い。 弓塚の戦闘能力はさほど強くないだろう。追いかけていった奴も同様。ならば、俺が前に居る奴を相手するしかない。 「私と戦うつもりか?」 「戦いたくはない。なるべくなら平穏に過ごしたいから、そっちが仕掛けてきたら防御するだけだ。手を出さないなら何もしない」 「言う事が甘いね」 後ろから聞こえた。こいつは、動きが良い。なかなか遊べそうだ。 インターフェースなんかと比べ物にならない動きだ。 一秒間にパンチ二十発か。力を抜いた俺が振り向きざまに防げたという事は、手を抜いているな。 「全て防がれるとは。なかなか良い腕をしている」 「本気で来ないと、痛い目に合うぞ」 「ほう・・・ならば、本気で殺らせて貰うぞ」 「殺されるのは、ごめんだ」 体の中にある全ての部品のチェックを行う。チェックするまでも無いが。 腕、異常無し。脚、極めて良好。内臓、ダメージ無し。骨、極めて良好。筋肉、極めて良好。 逃げられる。弓塚はだいぶ遠くに行ったみたいだし。 ・・・まぁ、弓塚を追ってる奴が戻ってきたら別だな。 「すいません、逃がしました」 こんな風にな。 「仕方ない・・・。今はこっちを片付けるぞ」 「はい」 やれやれ。どうしたら良い物か。相手は二人か。 インターフェースみたいに空間を想像してそこに逃げられれば良いのにな。 あぁ、それは不可か。全くもって面倒臭いもんだな。 でも、殺したくは無いな。殺人衝動になるべく囚われない努力をしないと。 じゃあ・・・逃げるしかないな。二人とも突破出来ない壁じゃない。 ・・・ん?空気中の魔力が、薄れていく? 「な、なんだこれは・・・!?」 俺の前に立ちふさがる女性がうろたえる。 「これは、チャンス・・・!!」 俺は女性に背を向けると一気に跳ねた。逃げるためだ。背を向けるのは一番危険な行為だが、一番早く逃げられるからな。 「っ!しまった・・・逃がすな―――大野木!!」 「・・・大野木?」 女性の叫びに反応した少女の顔を、俺は見る。 大野木。 あぁ、聞いた事ある苗字だと思ったよ。クラスメートがまさか教会の人間だったとはね。 「キョンくん。逃がさないよ」 「悪いけど、お前じゃ俺の相手にならない」 空間を立体的に動く術を持たないお前じゃな。 俺は近くの木を蹴り上げて一気に近くの地面へと頭から突っ込む。 そして、激突する手前で手を使って飛び跳ねる。 「じゃあな、大野木。また学校で会おうぜ」 「学校でって・・・って事は死徒じゃない?なのにその運動能力。キョンくん、貴方は・・・」 「俺もよく解ってないんだ。悪い。お前らなら俺の素性ぐらい簡単に調べられるんだろ?勝手に調べて教えてくれ」 後はその場から去る。それだけだった。気配を消して、いや、気配を殺して。 あいつらにも探知されないほど。 ・・・・・・・・・。 「・・・教会、か」 家に帰って今日体内から湧き上がった知識を脳内で整理する。 何かと関わる度に溢れて記憶に帰っていく知識。 あの人外の集団を俺は知っている。死徒が何か、理解できなかった物を理解出来ている。 まるで記憶に被っていた蓋が取れたかのように理解していく。 自分が何なのかという最近持った疑問も解せないままなのに。 「・・・長門に、相談してみるか?」 ・・・いや、やめておこう。 アイツ等が何も言わないのならハルヒに関して何も起こってないという事だ。 無駄な心配を掛けさせる訳には行かないし、無駄な事態を起こさせる訳にはいかない。 「キョンくん・・・」 ふと部屋の入り口から声がした。そっちを見ると、朝倉が立っていた。 「朝倉・・・」 「何処行って・・・キョンくん。ちょっとだけ動かないでね」 「ん?あぁ・・・」 朝倉は俺の頭をそっと触って、 「・・・情報連結、解除」 と、呟いた。一瞬だけそんなアホなと思ったがどうやら解除されるのは俺じゃないらしい。 何かが、頭から消えていくのを感じる。それは深く食い込んでいるが、感じない程度の細い何か。 「何を情報連結したんだ?」 「頭の中で神経と融合しかけてた何か。私にも解らないけど・・・」 絶句した。そりゃ何と恐ろしいことだか。 「少なくともインターフェースにはこんな技術無いし非科学的だわ。だから情報連結も不十分にしか出来ないけど、多少はマシな筈よ」 一体誰がそんな物を頭に埋め込んだのか。 今日出会った人間を思い出す。とは言っても休日なので人が限られる。 公園で出会った死徒。確か、弓塚か。あいつはそんな事を俺に隠さず出来るような動きではない。頭では何も理解できない、体で判断して、ではあるが。 あとは襲ってきた人間。誰かとあと一人―――大野木。 二人、特に俺が相手した方はインターフェースなんかと比べ物にならないぐらいの動きだったが残念ながら何かを隠すような行動が出来るような動きではない。 と、なると第三者があの場に居たという事か。 しかし、気配もなかったのに誰が。まさか、遠くから投げ込んできたという事か。ありえない。 ・・・いや、一人居た。弓塚と会う前に擦れ違った通行人が。 よくよく考えれば妙なものだった。 何処かコスプレみたいな服を着て、なおかつ俺より年下のような顔立ちだった気がする。 そんな人間がこんな時間に出歩いているとは到底思えない。 「あいつか・・・」 危害は与えられてないあたり、恐らく殺意がある訳ではないだろう。 脳に埋め込む。細い何か。 ・・・明日あたり大野木にでも聞いてみるか。 「・・・キョンくん」 「ん?」 ふと俺は朝倉に名を呼ばれた。 「危ない事、してないよね?」 「あぁ、大丈夫だ」 ・・・いや、嘘だな。かなり危ないんじゃないかと俺自身気付いてる。 危なすぎる、と言った方が正しいか。 「・・・なら良いけど」 そうは言いつつまだ不安そうな表情で朝倉は俺を見てくる。 「大丈夫だ。俺は、厄介事はごめんだからな」 「そうだよね。うん、キョンくんは面倒臭がり屋さんだから」 「それは腹立つな、おい」 「ごめんごめん」 しばらく睨み合って、俺達は堪えきれずに笑った。 翌日。大野木に会おうと思って少しばかり早めに学校へ出た。 少しばかり?否、凄く早い。 「さて、これから何分待てば良いのやら」 と、呟きながらポケットの中のナイフを確認する。いざという時の為だ。 俺は教室の扉を開ける。そして、 「・・・こっちの意図を読んでたみたいな早さだな、大野木」 ぽつんと教室にたった一人で座っていたそいつに話しかける。 「おはよう、キョンくん。何か聞きたい事があるんじゃないかな?」 「ある。頭の中に埋め込む神経と融合する細い何か知らないか?」 「・・・え?」 想像していた質問と大きくかけ離れていたのだろう。思いっきり目を大きく見開いていた。 そりゃもう作ってない完全な驚愕の表情だ。 「だから、頭の中に埋め込む神経と融合する細い何か知らないか?」 我ながら何て稚拙なヒントだ。これだけの情報で解るのだろうか。 はっきり言って白くてうにゅ~よりも解り難いのではないだろうか。 あぁ、そうだな。これで解るわけが無い。諦め・・・ 「・・・ん~・・・もしかして、エーテライト、かな・・・」 ・・・るのはまだ早いようだ。 「詳しく」 とりあえず詳細を求める事にした。 「私自身、よく解らないけど・・・アトラスの錬金術師が使ってる、エーテル製のモノフィラメントよ」 ・・・ん? 「待て。さっぱり解らない。アトラスって何だ?エーテルって何だ?」 俺の質問に対し、大野木は顔を微妙に顰めた。 そして、苦々しく笑う。 「驚いた・・・そんな初歩も知らない乏しい知識で私達に刃向かって来たなんて」 「刃向かう?アホ言え。正当防衛だろうが」 「まぁ、良いわ。アトラスってのは・・・まぁ、錬金術師の集まる所だと思えば良いかな」 「ん。ならOKだ」 これに関しては体の中に知識が入っていたっぽいな。 微妙に体内から引きずり出されて脳内へと知識として吸収されていくのが解る。 「エーテルっていうのは全ての物質の素と言われてる第五架空元素の事。魔術に必要不可欠な物ね」 「ん~・・・いまいちさっぱり理解出来ないが、まぁ、OKだ」 「で、肝心なエーテライトは脳内へのハッキング。まぁ、相手の記憶を複製する事が出来るとでも言えばいいかな」 「そんな物が埋め込まれてたのか」 「ん?でも、そうなると・・・エルトナム家の誰かが居るのね・・・まさか、ワラキアも・・・・・」 「はい?」 「ううん。こっちの話。ねぇ、昨日一緒に居た弓塚さつきについて聞きたいんだけど、良い?」 いきなり話を変えてきた。エルトナムとワラキアというのはどうもあまり触れて欲しくないお話のようだ。 まぁ、良い。面倒事に自分から関わっているから難だが、面倒事は嫌いだしな。 「う~ん。あんまりよく解らないんだが・・・。まぁ、そんな悪い奴には見えなかった」 大野木は俺の返答にさも当然という表情で 「そりゃ人間だった頃はクラスのアイドルだったらしいからね。人を殺すのも吸血鬼であるが故の嫌々というべきね」 と答えてきた。どうやら俺以前にもこんな回答した奴が居たような雰囲気だ。 違う情報を知りたがっているのかもしれない。 「何が知りたい?」 「いえ・・・もう良いわ」 どうやら重要なのは印象のようだ。一体、何が何やら。 「あと、キョンくんの素性についてなんだけど・・・解らないのよ」 「解らない?」 教会ってのはFBIとかCIAの数百倍以上の情報収集能力がある筈なのに。 まぁ、これも俺の体内にあった変な記憶曰くだけどな。 「えぇ。途中から全くの暗黒。どこそこの病院でいつ生まれたという記述が残っていても、それが事実であるという実証が無いの」 「どういう事だ?」 「つまり途中途中の経緯に関して、記述だけで証拠が無いの。そこに居たという証拠も何もかも。小学校中学年から前に関して」 「・・・はぁ?」 「例えば、貴方が小学校一年生の時に担任だった先生に貴方を知ってるかと聞くの。そうしたら知ってると答えてくる」 「当然だろ」 「担任だったか、という質問に関しても同じ。だけど、貴方について尋ねると何も知らないの。そして、貴方に関する資料も無い」 「・・・え?」 「空白過ぎるの。何もかもが。土台が無いのに家が建ってる。そして、それが浮いているみたいに」 そこまで言われて初めて気付いた。子供の頃の記憶。それが、非常に曖昧な事に。 いきなり曖昧になるのだ。幼い頃から今の家に住んでいると記憶に刻まれているのにどんな過ごし方だったのかぼやけて解らない。 それは、ある時を境に。 大野木の言う小学校中学年あたりから過去に関して。 「どういう事だ・・・?」 「解らない。誰かが改竄したのかもしれない。凄く大掛かりな改竄を」 俺は自分自身に恐怖した。 一体何者なのか。俺はキョンだ。しかし、しかし・・・解らない。 そう考えると今の家も一体どうだったのやら。 今にも頭がショートしてパンクしてぶっ壊れるんじゃないかと思うぐらい俺は頭を抱えた。 解らない。一体何だというのか。 そんな俺を脱力させたのは、 「WAWAWA忘れ物~♪」 という普段より数倍早く来た友人の歌だった。 「・・・谷口。今更忘れ物取りに来てどうするんだ?家に帰るのか?」 「いや、何となく今日は早く学校に来ようと思って早く来たのは良いんだが、家に通学カバンを忘れたんだ」 ・・・こいつ、真性のバカか? 第六話へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5600.html
蹴破った引き戸が板張りの床に直撃し、付属のガラスが網目状に割れた。 夕日が教室で佇む女の黒髪を照らし、不覚にも絵になると思ってしまった。 俺の物語も最終ステージだ。 「こんにちわ。西野君」 朝倉涼子はマネキンみたく不気味に頬を歪ませる。 そして、その手に握られているのは夕日色に煌く刀身を持つサバイバルナイフ。 それを見て思わずほくそ笑んでしまったのはなぜだ?いや、そんなことは分かっている。 俺が笑っちまったのは虚勢でも発狂でもない。純粋に、目の前の女へ拳を叩き込める覚悟決まったからだ。 朝倉涼子は俺の命を奪う気に満ちている。俺を殺さなけれキョン殺害の障壁となる。 もちろんさせてたまるか。例え宇宙人が許しても、俺の魂が許さない。 朝倉涼子の物語は、ここで潰える。 「来いよ朝倉。それがお前の役割だろ」 「あなたの役割でもあるわよ?」 ああ、その通りだよ。 上履きの踏み込みと共に、朝倉涼子のナイフが喉を掠める。 「へっ。いきなり急所かよ。心無い人形野郎にしかできない芸当だな!」 しゃがみこみ、彼女の脇腹に右フックを叩く。だが朝倉涼子は苦痛に身をよじることなく、握り締めたグリップをこめかみにぶつけてきやがった。 脳みそが揺れ、世界が揺れた。 突発的な目眩で硬直した顔面に、上履きの底が吸い込まれる。 背中にイスと机が二・三個程直撃し、呼吸が止まる。なんつー脚力だ。痛ってえーな! 「じゃあ、死んで」 心臓を抉るのが約束されていると錯覚できそうなくらいに、躊躇いの無い速度でナイフが迫る。 そうおめおめと命を取られてはたまらない。背中に回っていたイスの足を取り、切っ先を眼前で押さえた。 「そうやって俺の母親も殺したのか?」 イスとナイフの奥で、朝倉涼子の瞳が鈍く煌く。 「さぁ、どうだったかしら。あなたを殺せば思い出すかもよ?」 歪んでやがる。そう思ったが、殺人者に真っ向勝負挑んでいる俺も充分歪んでいる気がする。 さてどうしたもんか。いい加減腕も疲れてきたわけで、このまま押し合いではこちらの分が悪くなりそうだ。 「押してだめなら、引いてみな!」 いきなりイスから手を離したことで、朝倉涼子は勢いを削がれ、前につんのめる。 予想以上に思惑が当たり、朝倉涼子をはめるまたとない機会が到来した。 「うきゅう!」 突然に出来事に気が抜けそうな悲鳴が聞こえてきた。キレイな足払いが決まり、朝倉涼子は床に額をぶつける。 「おっと。そいつを離しな」 瞬間、ナイフを握る腕を踏みつけ、初めて悲鳴らしい悲鳴が朝倉涼子の口から漏れた。 踏みつけた足に女では考えられない異常な力を感じるが、いかんせんうつ伏せでは引き剥がせそうも無い。 だが朝倉涼子はそれくらいで降参するタマじゃないこともわかっている。 「うおっ!?」 空いていた手に握られていた小振りの投げナイフが空を飛ぶ。 切っ先が顔面を掠める。 狙いこそはやけくそ気味だろうが、驚き、一瞬だけ力を抜いたのは失敗だった。ナイフを握る朝倉涼子の手が俺の支配を逃れた瞬間、胃を歪ませる強烈な蹴りを繰り出す。 「おふぅ!」 その蹴りは口から嘔吐物が漏れそうなほどで、俺の腹を踏み台に、朝倉涼子は前転をして立ち上がった。 すると俺の喉を貫くように、背を向けたまま背面回し蹴りを繰り出した。 迫る靴底。 「うるぁぁぁ!」 息を吐き、朝倉涼子の回し蹴りに交差する前蹴りを放つ。 蹴りのリーチなら、身長差により男性である俺の方に軍配が上がる。 朝倉涼子の頬が歪む。 続けて、首を刈るように足の甲で喉を叩き、もう一度、朝倉涼子の背中に床埃を付ける。 「おっしゃぁ!行くぜ行くぜ行くぜぇ!」 床に投げ出された両足を脇で挟み、 「あぁぁぁぁぁぁぁ!」 足を踏ん張り、ぶん回す!ジャイアントスイングだ! 「なぁっ!?」 そのまま黒板に叩きつけられるはずだった。だが朝倉涼子は空中で体勢を立て直し、黒板を足場に跳ね返った。 人外のカウンターにより、尋常じゃない重さの左ストレートが、俺の顔に叩きこまれる。 「たぁっ!」 着地した瞬間、今度はローリングソバットが鼻っ柱に直撃し、俺の身体は無様なトリプルアクセルを踊った。 床に倒れ、その上クリティカルヒットにより鼻から血がドバドバと流れる。くっそ。ダセェな。 間髪入れずにローファーの尖った爪先が腹に突き刺さる。 胃液混じりの血が口から漏れ、激しい嘔吐感がこみ上がる。 吐いた血とゲロで、床から異臭が発生し、思わず鼻に手を覆う。 「ガハッ!」 覆った手ごと、朝倉涼子の爪先が突き刺さる。 さらにもう一発と、腹めがけて足を振り絞る。 もう一度まともにくらったら、今度は内蔵が破れ、痛いで済まない事態になるのは明白だ。 鼻を覆っていた手を、目の前にあるゲロにつっこむ。 顔を狙ってゲロを払いのけた。すると朝倉涼子は顔をしかめて攻撃を中断し、それを回避した。 その間に痛む体を鞭打って立ち上がることができた。 口から漏れる呼吸が荒く、肩が小刻みに上下している。 だが、俺に対して朝倉涼子は呼吸こそ上がっている物の、相変わらず歪んだ微笑みを俺に向ける余裕が残っているようだ。 「なめんなぁ!」 側にある机を蹴り飛ばす。 「やけくそはかっこ悪いわよ」 朝倉涼子は容易に足で弾く。 だが、弾いた足とは反対側に踏み込み、ガラ空きの腹部にスネをぶつける。 「バカじゃないの?私がそんな幼稚な作戦に引っかかる訳ないでしょ」 俺の蹴りが飛んでくることを呼んでいたのか、朝倉涼子は足を脇で挟む。 「アハハハハ!これで終わりね!」 右手にある鈍く光るナイフが迫る。 「つーかまえたー」 ナイフの切っ先は俺の心臓をえぐることはなかった。 切っ先は左手の平を犠牲に防ぐことができ、貫かれた箇所から血が飛び散るだけだった。 ナイフから手を離して逃げられる前に、握っている柄ごと手を握り締める。 無傷な手の甲で朝倉涼子の顔面を払う。 うまい具合に指が目に当たり、彼女から苦痛の声が漏れた。 思わず離された足を、もう一度叩き込む。 「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 気合と共に筋肉が脈動する。 手放すな。 すがりつけ。 叩き込め。 ブチかませ。 屠れ。 抉れ。 一秒だって余分な空気を吸わせない。ここで決めなければ終わる。 気合と共に吐き出される一撃一撃が、憎き殺人犯の気力を削っていく。 貫かれた左手を刀身から引き抜き、自由になった瞬間、小さく跳躍する。 「うるぁぁぁぁぁぁ!」 こめかみに直撃したかかとが、朝倉涼子を踊らせた。 着地と同時に態勢を崩し、前につんのめるようにこけかけたが、全力で打ち込んだローリングソバットだ。これで立ち上がれられた本物の化物である。 だが、朝倉涼子は身体を揺さぶり、苦しげに立ち上がった。 「もうやめとけ」 朝倉涼子をナイフを構えて襲いかかろうとするが、それはかなわず、泥酔しているOLのように床へ膝をつく。 「脳みそが揺れるように蹴りを入れたんだ。まともに立つことすら辛いはずだ」 朝倉涼子が化物クラスの耐久力があることぐらいわかっていたからこそ、前後不覚になるような攻撃をした。 これでは彼女に殺す気があっても身体がついて行くわけが無い。 「ま……まだよ!まだ終わらせない!」 泥酔中の子鹿が残る力を振り絞って立ち上がるように、朝倉涼子は声を上げて吠える。 その手に握られているのは鈍く煌くナイフ。 「私は防衛プログラム朝倉涼子……あなたを破壊し、この世界を防衛することが任務。たとえここで倒れようとも、あなたを破壊してみせる!」 混濁する意識を振り切り、朝倉涼子は閃光の切っ先を構え、俺に最後の突進をかます。 「お前、死のうとしたな?」 刀身は俺の脇を掠め、虚しく空気を裂く。 「教えてやるよ。死ぬ気で闘う奴は」 ナイフを抑え、間合いを詰め、眼前に迫っている朝倉涼子の額に狙いを定める。 「死ぬだけだっ!」 骨を伝って脳内に鈍い音が再生される。 朝倉涼子の額にコンクリートもブチ破れる自慢の頭突きがクリティカルヒットした。 そして彼女は床に膝を着き、朝倉涼子は物言わぬ人形のように機能を停止させた。 「ハァ……ハァ……ちくしょうバカやろう!痛ってぇよこんちくしょう!」 汚く品の無い罵声を吐き出し、俺も我慢の限界から床に大の字で寝転ぶ。 「もう嫌だ!もう疲れた!もう二度とケンカなんかしねー!絶対だかんな!本当に本当だかんな!」 無意味にツンデレ口調でまくしたてる限り、頭の方はおかしくなってなさそうだが、体力は限界に近い。もう立ち上がらない。このまま朝までグッスリだ。このやろー。 胸ポケットからタバコを取り出し、天井を仰ぎながら火を灯す。 「これでいいんだろ?後はお前の役目だ、キョン」 紫煙を吐き、顔も定かではない地味な級友の姿を思い浮かべる。 敵討ち。 自身の心に触れる。 プログラムの破壊。 俺がすべきことは全て終った。 もう俺が出る幕は無い。演目を終えた役者は舞台から退場するだけである。だからとっとと引きずりおろしてくれ。今の俺は鼻くそをほじる力も残ってねーんだよ。 「……まだ仕事がある」 一年五組の扉が静かに開かれる。 現れた長門有希は陶器のように冷たい声を発して、寝転ぶ俺に歩みを進めた。 「勘弁してくれ。今の俺は小学生とかけっこしたって負ける自信があるくらいに使い物にならんぜ?」 ほらな。こうやって立ち上がるだけでも億劫なんだからさ。 「私は考えていた」 すると、いきなり始まった一人語りを急に止めた。 どうやらそれで終わりらしい。 「……何を考えていたんだよ」 とりあえず続きを聞いてみた。 「人間の心について。あなたは「こんな事、心無い人形なんかには分からないだろうが」と発言した。だから私は心について思考していた」 そんなこと言った気もするが、激昂のすぐ後だったから、あまり覚えていない。 「それで、わかったのか?」 首を振り、否定の仕草をとる。 「私には分からなかった。まず理解が出来ない。なぜなら私は……あなたたち人類とは規格その物が異なるヒューマノイドインターフェース。 思考しようにも、数字でしか答えを算出出来ない。あなたの言う心や魂と言った不確定因子の計算には対応していない」 当然である。自分の尻拭いのために他人の母親を利用するような合理主義者な長門有希に、人間の感情が理解できるわけがない。もしもできたら、四十ん億年の地球の歴史に失礼である。 だから俺はこう言った。 「だろうな。そうやって自分を異物としか見れない奴なら、何億年生きようが理解できるかよ」 自分が他人とは違うなんて思ってる内は、相手を異物としてでしか見れない。相手を知りたきゃ、まずは相手の目線に立つようにならないとな。 「……不可能。私は人間ではない。あなたの発言はただの」 「願望だってか?そいつはどうかな」 長門有希はMなんとか星雲の遠い星々から進化の可能性を探しに来た宇宙人だ。だけど、 「お前は宇宙人である以上に、SOS団っつー、宇宙一はっちゃけた軍団の一員だろ?あの団長の相手をしてりゃ、嫌でも人間らしく生活することになるぜ?」 俺はSOS団の涼宮ハルヒを知らないが、この世界での涼宮ハルヒなら、とても良く知っている。こっちとあっちが全くの別物なら話は違うが、そうとは思えない。 「確かに今のお前は人形だ。だが、あいつと連んでりゃ、いつかは人間になれそうだ」 何てったってあいつは宇宙一人間らしい女だからな。 「……そう」 短い肯定だった。 「話を戻す。これを見て」 長門有希の小さな手に握られていたのは、拳銃に良く似た注射器であった。 「なんだこれ?風邪薬か?」 どうせなら過労に効く強壮剤かなんかの方が良かった。 「違う。これが私の答え」 「答え?」 「もうすぐ彼が改変世界の文芸部室に到達する。選択は彼に一存しているが、おそらく彼は脱出プログラムを起動する。それはこの改変世界を破棄し、全てを無かった事にすることと同義。それはあなたと私も例外ではない」 全てをぶっ壊すことになれば、せっかく向き合った俺の心も無かった事になるわけか。 「ふざけんな」 無くした魂をやっと見つけたのに。 「私はあなたを見て、結論を決定した。それがこれ。これはあなたの記憶を保護するバックアッププログラム。これをあなたに注射することで、あなたは改変世界で得た記録の全てを元の世界へと持ち越すことができる」 便利な道具だ。何でも有りだな。 「私はこれから先の時空で情報統合思念体に、どのような処罰を下されるか不明。情報の削除も有り得る。ならば、この世界の記録を残すにはあなたにしか頼めない」 すると長門有希は床に突っ伏している朝倉涼子へと目を向けた。 「……彼女は私のエゴによって強引に創造された。彼女まで削除するのは…………」 「忍びない?」 首を縦に振る。 長門有希の瞳が、じっとこちらを見る。俺の答えを待っているのだろう。 「さっきも言ったはずだ。ふざけんなってな」 答えならとっくに決まっている。 「全てを無かった事にして元の世界に戻るなんてできるか。何回も死にかけたような苦い記録ばっかだが、忘れて幕を降ろさせるわけにはいかない」 現在を生きる俺に、未来なんか知ったこっちゃない。この世界が崩壊して俺の物語が潰えようと、残さなければならない物語だってある。 「俺のド頭は俺の物だ。誰にも壊させやしない」 その言葉を終えた瞬間、長門有希の握る短針銃が胸に突き刺さる。 「んぐっ!」 風船から空気が漏れるような小さな音が聞こえた。やれやれ、いくつになっても注射だけは好きになれない。 「処置完了。後は彼が脱出プログラムを起動させれば全てが終わる」 「じゃあ、こいつが人生最後の喫煙になるかもな。じっくり堪能させてもらうよ」 深く息を吸い、肺に濁った煙を送って脳みそをリフレッシュさせる。 「未成年者の喫煙は身体の成長を阻害させる」 「喫煙してなくても身体の成長が芳しくない奴が言ってもなぁ……」 長門有希の薄い胸に眼をやる。ふむ、Bぐらいか。 「……これは行動を阻害させないために脂肪を減らしただけ。朝比奈みくるのような乳房は邪魔。だから不必要。現に彼女の身体能力は著しく低い。巨大な乳房など百害あって一利なしの忌むべき物。羨望など全く感じていない。ステータス。希少価値」 どうやら巨乳に対しては並々ならぬ羨望を感じていらっしゃるようだ。 「涼宮ハルヒ」 「……あなたなんか嫌い」 プイッと拗ねた子供ように眼を背ける長門有希に、初めて人間臭さを感じた。 自分では気付いてないだろうが、どうやら彼女は少しづつ人間に近付きつつあるように思えた。 だが、そんなことは口にしてはいけない。それは彼女自身が自分で気付くことであり、他者の、それこそ殆ど部外者である俺が言っていいことではない。 だから笑い噛み殺すことぐらいはさせてくれ。長門有希かわいいよ長門有希。 「そうやってあなたは私をバカにする」 「悪いな。性格が悪くて皮肉屋なのは生まれつきだ」 この性格のせいで何人の友達と距離を広げたか。治す気ないけど。つーか今さら不可能だ。 「西野太陽!」 マジで怒らせたかと思い、長門有希に謝罪するべく怒声をあげた彼女の方角を見た。 迫る閃光。 煌く刃。 美麗な黒髪を流し、朝倉涼子が鈍い光を灯したナイフを振り下ろす。 「な……」 鮮血が顔にかかる。 「長門ぉぉぉぉぉ!」 凶刃に倒れたのは長門有希だった。 「……な、長門さん?どうして?」 刺した本人である朝倉涼子ですら、放心して何も理解できていないようだ。 顔にかかる赤い血液だけが、異様に熱く感じる。それは朝倉涼子の手に滴る血液とて例外ではないはずだ。 「バカやろう!」 朝倉涼子の肩を握り締め、背中の壁に叩きつける。 「ふざけんじゃねぇよ!もう決着はついただろうが!?それをテメェは!」 あの一撃は本来なら俺が喰らうはずだった。それをさせなかったのは、長門有希が咄嗟に判断し、俺を救ったからだ。 「朝倉ぁ!これがお前の望んだ物語か!?お前はこんなエンディングを見たかったのか!?」 「違う……私は……私はこんな結末を望んだわけじゃ……」 壊れたからくり人形のように、朝倉涼子はうわ言を呟くのみだ。 「あぁそうだろうな!そうじゃなきゃ殺人鬼になってまで長門のために闘ったりしねぇよ!だけど……結果はどうだ!?お前の暴力が、長門を……長門を殺したんだ!」 だから言ったんだ。犠牲の上に成り立つ世界なんか間違ってると。 「俺もお前も長門も、誰も彼もが真っ直ぐだった。だからこうなったんだ。望む望まぬは別にしてな!」 創造主である自分自身が物語を幕を引くには、元凶である自分の死が必要と感じたのかもしれない。 「……こ……これでいい」 呼吸は既に止まりかけている。だが、それでも長門有希は血塗れた床から立ち上がる。 「……あなたも……朝倉涼子も傷ついた……」 血の滴る不気味な音が、異様に大きく聞こえる。 「私だ……けが……傷つか……ずに……終わるのは……間違ってい……る……」 血溜まりが歩いてくる。 「私……が……元凶……その責任……を取……る……」 そう、力なく呟き、彼女の筋肉の脈動が停止した。 「違う!」 このままお寝んねして甘い夢でも見る気か?冗談じゃねぇ! 「腹切って詫びるなんて、ちょんまげ結った武士にでもさせりゃいいんだよ!」 地に伏すアンドロイドを抱きかかえ、彼女の耳に声を飛ばす。 「死んでスッキリ清算ってか!?ふざけんじゃねぇ!そりゃお前はスッキリできるよ!俺達はどうなる!?勝手に責任押しつけんじゃねぇよ!バカ野郎!」 こんなエンドクレジット、俺が期待していたとでも思うか? 「物語の落ちは「笑顔でハッピーエンド」って決まってんだよ!それをお前は!俺の物語を汚しやがったな!?」 冗談じゃねえバカ野郎。こんな後味の悪さゴメンだ。バッドエンドなんてクソ喰らえ。 「生きろよ!本当に責任取りたきゃ、生きて、「本当に謝りたい」奴に会いに行けよ!」 俺みたいなポッと出の主演に責任を取るなんておかしい。本当に謝るべきなのは、SOS団のメンバーじゃないのか? 「だから起きろ!串刺しにされようが、寝てるときに心臓に銀の杭ブチこまなきゃ死なないんだろ!?」 だが上昇する血圧に反比例し俺の腕に抱きかかえられている長門有希は、少しずつ冷たくなっていく。 長門有希には今、絶対的な死が近付いている。 宇宙人であるが、彼女もやはり人間なのだ。 それは喉が枯れ、俺の檄に力が無くなった頃だった。 「ぐ……がぁぁぁぁぁぁぁ!」 潰れかけた喉に追い討ちをかける絶叫が漏れる。 「ハぁ……ハぁ……なんだこれ……」 全身にハンマー投げのハンマーを巻きつけたような重力が襲いかかった。 気持ち悪い。タチの悪かった先輩に初めて酒を飲まされた時を思い出す。 頭がぐらんぐらんと揺れ、平衡感覚がまともに作動せず、長門有希を抱えていた手を、自然に額へと添えてしまった。 「こ、これは時空震だわ!きっと、キョン君が脱出プログラムを起動したのよ!」 じ、時空震?なんだその猫型ロボット世界に飛び交ってそうなSF単語は? 「これで世界が変わる……長門さんが殺されない世界に……」 自分でやっといてどこか他人事めいた事を言ってる気がするが、それよりも朦朧とする意識に気を取られ、長門有希を抱きかかえる朝倉涼子を眺めることしかできなかった。 「……本当は私、破壊プログラムとか防衛プログラムとか、そんなのどうでも良かった。だけどあなたがキョン君を望んだから、私はあなたの手足になったのよ?」 その時、俺は見逃さなかった。 朝倉涼子は美しく微笑んでいた。 「三日間だけだったけど、またあなたに会えて、本当に嬉しかったわ……」 そこまで呟いて、俺の耳はイカレて何も音を拾うことができなくなった。 「ハ……ハハハ……」 乾いた笑いが口から吐き出る。 朝倉涼子も俺も何も変わらない。お互いがお互い、大切な物を守るためにぶつかっていただけだった。 俺達は歪んでいたから殺しあったのではない。ただ単に真っ直ぐ過ぎたのだ。 俺の意識はそこで途絶えた。 体が激流にのみこまれた小枝のようにクルクルと回るような感覚に陥った。 ここはどこだ?俺はどこに立っている? 重い瞼を開き、一番最初に目に映る光景は白い天井だった。……うわ、あそこシミ着いてやがる。 「……ここは、病院?」 身体を起こし周囲を見回そうとするが、腕につながれている細い点滴の管に気付き、仕方なくベッドにもぐりこむ。……個人病室か。 しかしどうなってやがる?まさか全部俺の夢だったなんて言うなよ。確かに現実から脱線しすぎて、夢と言い切れば絶対に妄想でまかり通る。 「ならば、なんで俺はピンピンしているんだ?」 交通事故で重態だったはずだろ?こんなストローみたいなしょぼい点滴一本じゃなく、ミイラ男とタメ張れる包帯と、ごついおしゃぶりみたいな呼吸器が付いていたはずだ。 「太陽。元気にしてる?」 混乱中の俺に、仕切りカーテンの裏から声がかかる。 「……お母さん」 「はい。これ換えのパンツと小銭ね。無駄遣いしないでね」 とりあえず差し出された小銭入れとデイバックを受け取りながらも、思わず、母の腹部に目をやる。 「……なに?」 「いや……少し痩せたんじゃないかな……と」 「そりゃ痩せるに決まってるでしょ?息子が事故で一ヶ月も入院してたらさ」 どうやら交通事故を起こしたことには間違いないようだ。だけどあのケガが一ヶ月で治るとは思えない。つーかあれは明らかに即死か半身不随だろ。 「もうあんた、しばらくバイク乗っちゃだめよ。雨の日にこけて両足骨折なんて……どんだけ心配したか……バカが」 「あー……そうだよな。ごめん」 ……どういうことだ?あの事故が無かったことになってる? 「じゃあ私はもう帰るけど、来週には退院だから、学校行きなさい。いい?ちゃんとよ?」 「口すっぱく言わなくてもわかってる。ちゃんと「北高」に行ってくるよ。「北高」に」 とりあえず進学校である光陽園学院ではなく、県立の北高に行くんだよな?言っていいんだよな?確認確認。 「よし。それじゃあまた明日来るから」 何も喰いつかなかったので、どうやら北高に行っていいようだ。 「あ、そうだ。明日、少年エース買って来て」 「小銭渡したんだから自分で買いなさい」 っち。小銭を使いたくないから頼んだのに。 「……あれは一体なんだったんだ?」 散歩がてら病室から抜け出て、廊下の窓からキリスト生誕直前くらいの寒空を見ながら思い返してみた。 交通事故も何もかも、全部俺の夢だったのか? 「んなわけねーだろ」 俺の中には、確かにあの世界での記憶がある。妄想や空想なんかじゃない。あの三日間は確かに存在していたんだ。 だったら信じりゃいいだろ。証拠なんか無くても、俺は自分の魂と向き合えたんだからな。 無駄な思考を止め、エレベータホール内にあるベンチに腰かけた時だった。 「……よう。なんだかスペースシャトルが惑星に不時着したと思ったら、そこは猿が生態系の頂点だったって顔してんな。そこからおかえり」 「……は?」 俺より頭半分高い同級生が、コーヒー片手に呆けてやがる。 「まぁなんでもない。忘れてくれキョン」 「お前までそう呼ぶか。西野」 だってクラスメイトでフルネーム覚えてるのは涼宮ハルヒくらいだからな。ちなみに姓は鈴木で、名は清孝だったか?……ダメだ。やっぱり覚えていない。 「そう言えばお前入院してたんだってな。事故って。の割りには元気そうだな」 「大した事故……ではあったけど、この通り元気さ」 折れたはずの無い足を撫で元気であることを証明する俺は、どこか滑稽だ。 「キョン、お前の方はどうしてまた?肺炎にでもかかったか?」 「階段で……こけた?」 なんで疑問系なんだよ。 「……よく覚えてないんだよ。ほっとけ」 腹を探られるのは誰だって気分が良い物ではないから、ここらでカマかけは止めておこう。 「西野太陽……だったよな。お前の名前」 「うわ、お前は覚えててくれたのに、俺は忘れちまってたのか。マジヒドイな。すまんすまん」 だったら覚え直せと言われそうだが……正直な所、キョンと言う愛称が浸透してるのに、今更名前で呼んでもな。聞き直すのも何かプライドが許せないし。 「当然だ。あんたは目立つ。その金髪は一目見たら忘れられそうにない」 うん、まぁ脱色してるが、手入れにゃ気ぃ使ってるしな。結構手入れめんどくさいんだ。 「じゃあ戻したらいいだろ」 キョンの指摘はもっともだが、それとこれとは別問題だ。 「いいじゃん。こんな頭してるバカなガキ、誰も付き合いたいと思わんだろ?」 こいつは俺の壁みたいなもんで、言うなら威嚇用だな。 いつ頃かは忘れた。多分父親が死んだ時くらいかな。そんくらいの時から人間関係に嫌気がさして、悪ガキぶっていた。 悪ガキぶっていれば、「なんかあいつ怖いよ」と思われ、誰も俺に近寄らなくなる。全て狙っておこなっていたさ。 だけど本当は……構ってほしかった。 この金髪とピアスも、その他非行行為も、全部が全部「俺はここにいる」と主張したかっただけだった。 今までの俺なら気づかないフリをしていただろうが、今は違う。あの改変された世界で自分と向き合い、俺は俺の弱さを知った。 弱さを恥じることはない。 強さに憧れることはない。 自分の魂に正直になれば良い。それが…… 「と思ったが、もう悪ぶるのも飽きた。そろそろ元の黒に戻そうかな」 んな素晴らしく説教くさい話をこいつにしてやる必要はない。だって俺は、キョンじゃないからな。 俺には俺の魂が宿り、キョンにはキョンの魂が宿ってる。ド頭の作りはみんな違うんだし、考えを押しつけてはならないのさ。 「へぇ。教室では無口で不気味な奴としか思ってなかったけど……意外だな。お前、そんなに軽い奴だったのか」 「母親の又からじゃなく口から生まれてきたみたいでね。それこそ、口数が多くて、よく友達を無くすくらいだ」 だって俺だったら俺みたいな奴とは友達になりたくねーもん。 「く……ははははは」 キョンの頬が吊り上がり、普段より一オクターブ高そうな笑い声が漏れた。 「悪いな。言い回しがおかしすぎで笑っちまった。どうやらお前の認識を改める必要があるみたいだ」 「そうかい。無口キャラも飽きたから、そうしといてくれ」 あーあ、学校行きてーな。なんだか今は無性にそう思う。……うーん。多分、本当の俺をクラスの奴らに見せてやりたいのかもな。 ところで、キョンを見ていて思いついたのだが、空想の中で生きる存在は、空想を現実と呼ぶのか? キョンは今まで空想を生きていた。それが三日間とは言え、現実の夢を見たことで、二つの世界を天秤にかけることになった。 どっちも忘られる物じゃない。でもどちらかを否定しなければならなかった。 空想な現実。 現実の夢。 こんな選択、キョンに任すべきじゃなかった。いや、誰にだってさせるわけにはいかない。 答えの無い問いをさせるほど、つらい問題は無い。もちろん俺だってゴメンだ。 誰も彼も、正解なんて選べるわけがない。 こいつの選んだ要因だって、突き詰めればキョンにはこっちの現実の方が性に合っていたってだけだ。世界のため……違うね。 面白いと思ったから帰ってきたのさ。 それに関しちゃ感謝している。つーか、俺がどうこう言えることじゃないしな。俺には選ぶ権利なんか無かったわけであり、望んだ選択が、たまたまキョンと同じだっただけだ。 ifの物語なんて考える必要はないが、俺だったら……どうしたのだろうか? 「バカくせーな」 思わず漏れた単語に、キョンがしかめっ面をさらに険しく歪める。 「いや、なんでもない。ちょっと考え事をしてた……そう、お前の後ろで 「あたしとはほとんど話さなかったくせに」と、睨んでいる涼宮の気持ちをアフレコしていただけだな。脳内で」 キレイな瞳だが、明らかに攻撃的な敵意をぶつけている涼宮ハルヒを見ていると思う……あれだ、可愛いね。 「はぁ?なに人の考えを勝手に妄想してるのよ。あたしは団員をカツアゲ行為から守ろうとしただけだから」 入院患者カツアゲしたってしょうがないだろ。小銭くらいしか持ってないはずだしな。 「つーか何?いちいち馴れ馴れしいのよ。話かけんじゃないわ!この金ザル!」 一体こいつは何をしに来たんだ?キョンのお見舞いとは言え、他の患者には優しくしてあげましょう。これお見舞い客の鉄則。いらない波風立てんなよ。 「「キョンはあたしの嫁!」って言いたいのはわかるが、入院患者どうし仲良くしちゃいけないのか?」 「仲良く?見てみなさい。キョン、明らかに電車で携帯開いただけなのに、知らないじいさんから目の敵ってくらいに難癖つけられて面倒って顔してるじゃない」 教育ママの屁理屈に聞こえるのは俺だけか?「スネちゃま。あそこのお子さんの家はアレな家だから、近付くんじゃないザマスよ。悪影響ザマス」 な気分だ。 「つーかハルヒ!今のこいつの発言を思い出せ!一つ訂正しなきゃならんところがあっただろ!」 はて?なんのことだか。 「キョンは男だから嫁になれるわけないじゃない!バカにしてんじゃないわよ!」 「ズレてる!お前の発想はズレてる!せっかくのストライクがスペアになった!」 「キョキョキョンくん!ズズズズズズレてるってどこだね!?」 「はあっ!?その金髪はヅラだったのか!?」 「ババババババカいっちゃいけないですよ。な、な、なんの事だか」 「そうだよな。まさかその若さでハゲるわけが……って、何、頭皮をマッサージしてるんだ!」 「まだ大丈夫まだ大丈夫。元気になーれ元気になーれ。石よ!殺生石よ!私に毛を!これ以上、毛を、抜けるなぁぁぁぁぁぁ!」 「諌山冥!?」 どうやらキョンとは趣味が合いそうだ。二期はまだか。 「だからあたしの団員と仲良くするなー!」 悪ふざけが過ぎるのもあれなので、そろそろ病室に戻るとしよう。 「まったく、少しは気にして帰ってみたら……やっぱりまだまだ教育は必要ね」 「お前のは教育じゃなくて調教だろうが」 あまり嫁を独占してはかわいそうだしな。 「そいじゃな。良いヒマ潰しになったよ」 キョンの飲んだコーヒーの空缶を手に取り、ゴミ箱へシュート。よっしゃ、3ポイントゲッート。 華麗なるスリーポイントシュートも決まった事だし、部屋で先月のエースでも読むとするか。 「あ、そうだ太陽」 「なんだハル」 「…………馴れ馴れしく呼ぶんじゃないわよ。なによその気持ち悪い呼び名わ」 「お前こそ俺の名前を呼んでんじゃねーか。改めろよ」 作り物とは言え、あの世界の記憶は中々切れる物じゃないようだ。いや、切ってはならない。ただのハリボテな縁かもしれないが、一度繋げちまった以上、簡単に手放すな。紡いだりしたら、あの世界の俺たちに申し訳ない。 「ちょっと太陽!聞いてんの!?」 その時、一瞬だけ、涼宮ハルヒの姿が「あいつ」とダブって見え、思わず笑いが込み上げた。 長門有希は世界を上書きしたと言った。 だがそんな事はない。あの世界はちゃんと残っている。こいつはその証明だ。 消す必要なんかない。 忘れる事もない。 ここに存在しているのだから。 「……い、今のは違うんだからね!太陽が呼んで欲しそうにしてたから……あ」 お、今度はキョンが俺を睨みつけてやがるな。携帯電話が無い事が非常に悔やまれる。写メして見せてやりたい。 「んな物はどうだっていいんだよ。これからもよろしくなハル……だっはっはっはっはっ!」 そう、たまにアルバムをめくるように思い返すのも大事だが、これからを大いに楽しむのが一番大切だ。忘れんなよ。俺。 今の俺のように、中途半端に元気な入院患者にとっちゃ、病院で過ごす深夜は拷問である。身体が元気であるために、まぶたを閉じても眠れないのだ。 朝方まであと三時間程ある。この時間じゃナースステーションに行って、睡眠導入剤の服用を頼んだとしても処方してくれそうもない。クソ、昼寝なんかするんじゃなかった。 毒づいてみたものの、そんなんで睡魔が家庭訪問してくれるわけもなく、長い夜に対し、ただただ嘆息するのみである。 その時、暗闇の病室に碧く光り輝く蝶が舞い降りた。 綺麗な色をしているが、それ故にとても不気味な気がして、頭から掛け布団をかぶり、見なかったことにする。ヘタレでビビりのチキンな俺は何も知らない。知らないったら知らないんだからね! 「あら?起きている気がしたと思いますが……狸寝入りは止めてください。西野太陽君」 布団の中であるため判別は難しいが、聞き覚えのない声である。一体誰だ?いや、一体なにだ? 「こんばんわ、そして初めまして。私は喜緑江美里と申します」 碧い蝶を周囲に舞い散らせながら、彼女、喜緑江美里は深々と頭を下げた。 「初めまして。そしてどちら様ですか?」 穏やかで浴衣や振袖が大変似合いそうな美人だが、はっきり言って俺の記憶の中にある人物録には存在していない。しかし直感で理解できた。彼女は人間ではない。 「そんな風に身構えないでください。思念体からのお達しがある以上、あなたに危害を加えるつもりは毛頭ございません」 思念体……情報統合思念体のことだよな。つまり長門有希と朝倉涼子の仲間か。 「信用できるか」 「あら?私たちが嘘をついているとでも?」 嘘を……つくわけがないか。長門有希も朝倉涼子も、俺に嘘を吐いたことはなかった。もっとも、襲いかかったり高見の見物を気取っていやがったが。 言葉だけなら、こいつらが語ったこと以上に信用が置ける存在など無い。危害を加えないと言ったら、俺が死ぬ心配はない。 「何の用ですか。夜這いならビンビンな時に、文書にまとめて再度申し込んでください」 もちろん、そんなはしたない理由のわけがない。 「改変世界からの帰還、おめでとうございます。今回、私は長門さんに代わり、あなたに事の顛末を伝えに参りました」 反応ぐらいして欲しかったが、頭のネジが閉まりすぎてマトモな返答しか返せない宇宙人には期待しても無駄か。 「……長門の代わりねぇ」 「長門さんの方がよろしかったですか?あいにくですが、今現在、長門さんはキーマスターの元にいますので。フラれましたね」 多少はネジの閉まりが緩く、それなりに冗談には対応できるようだ。 つーか長門有希がキョンをほっぽいて俺の下に来るわけがないか。 「それに、あなたも色々問いただしたい事があるはずですよ」 当然である。これだけは聞いとかないとならない。 「一ついいですか?」 「一つですか。一つだけですよ?」 ち、やり辛い。 「なんで俺が死んでいない?いや、死ぬまではいかないまでも、なんでこんな軽傷で済んでいるのですか?」 ありえないよな。どこぞの武道家猫が違法栽培している怪しい豆を飲まない限り、こんなに元気なわけがない。もちろん両手を上げて喜んだが、不自然をほっといて置くかよ。 「それは私のおかげですよ」 「……あなたの?」 「あなたは普通の人間。この惑星に存在する人類と、何ら違いはございません。ですが、そんな常人であるあなたが、事前情報皆無の状況で全てを理解し、世界の崩壊まで防ぎました。 ……はっきり言って予想外です。そんなあなたを失うのは、とても惜しいと思念体は結論付けをしました。よって、私が過去の自分と同期し、あなたの事故を書き換えました。感謝してくださいね」 長い会話の終わりにニコリと微笑む喜緑江美里だが、それに対し、俺は大きな恐れを覚えた。 情報統合思念体は、俺を生かした。その事に関しちゃ、感謝してもしきれない。 ありがとう。だけどな、こいつらは俺を手軽く「救った」と言うことは、その逆、つまり手軽く「見捨てる」こともできるのではないか? 可能だろうな。現に、朝倉涼子は当たり前のように俺に凶刃を向けて来た。 俺だけじゃない。あの世界では、十人が殺されている。 情報統合思念体が存在しない改変世界で十人だ。こいつらはやろうと思えば、手軽く大量虐殺だって行える。 今回の事件は、ただ単に、情報統合思念体の危険性がわかっただけだ。 「ならキャトルミートレーションでもしますか?」 「それは大変おもしろそうですが、またの機会にさせていただきますね」 自分で振っといてあれだが、勘弁してくれ。そんな内臓がないぞ~なんてバカすぎるギャグ、実践してたまるか。 「それでは私はこの辺で失礼します。また新学期に会いましょう。それでは」 碧い蝶の舞いが喜緑江美里を包みこみ、彼女は暗闇に溶けた。 結局、俺がここにいるのは、俺一人の力ではなかった。 だが、様々な思惑があっても、俺は終えたはずの物語を引き伸ばすことができた。 俺はもう、自分に、世界に、絶望なんかしない。 無様だろうが醜くかろうが、棺桶に押し込まれるその時まで、俺は俺の物語を見限りない。 エピローグへ続く
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/6030.html
蹴破った引き戸が板張りの床に直撃し、付属のガラスが網目状に割れた。 夕日が教室で佇む女の黒髪を照らし、不覚にも絵になると思ってしまった。 俺の物語も最終ステージだ。 「こんにちわ。西野君」 朝倉涼子はマネキンみたく不気味に頬を歪ませる。 そして、その手に握られているのは夕日色に煌く刀身を持つサバイバルナイフ。 それを見て思わずほくそ笑んでしまったのはなぜだ?いや、そんなことは分かっている。 俺が笑っちまったのは虚勢でも発狂でもない。純粋に、目の前の女へ拳を叩き込める覚悟決まったからだ。 朝倉涼子は俺の命を奪う気に満ちている。俺を殺さなけれキョン殺害の障壁となる。 もちろんさせてたまるか。例え宇宙人が許しても、俺の魂が許さない。 朝倉涼子の物語は、ここで潰える。 「来いよ朝倉。それがお前の役割だろ」 「あなたの役割でもあるわよ?」 ああ、その通りだよ。 上履きの踏み込みと共に、朝倉涼子のナイフが喉を掠める。 「へっ。いきなり急所かよ。心無い人形野郎にしかできない芸当だな!」 しゃがみこみ、彼女の脇腹に右フックを叩く。だが朝倉涼子は苦痛に身をよじることなく、握り締めたグリップをこめかみにぶつけてきやがった。 脳みそが揺れ、世界が揺れた。 突発的な目眩で硬直した顔面に、上履きの底が吸い込まれる。 背中にイスと机が二・三個程直撃し、呼吸が止まる。なんつー脚力だ。痛ってえーな! 「じゃあ、死んで」 心臓を抉るのが約束されていると錯覚できそうなくらいに、躊躇いの無い速度でナイフが迫る。 そうおめおめと命を取られてはたまらない。背中に回っていたイスの足を取り、切っ先を眼前で押さえた。 「そうやって俺の母親も殺したのか?」 イスとナイフの奥で、朝倉涼子の瞳が鈍く煌く。 「さぁ、どうだったかしら。あなたを殺せば思い出すかもよ?」 歪んでやがる。そう思ったが、殺人者に真っ向勝負挑んでいる俺も充分歪んでいる気がする。 さてどうしたもんか。いい加減腕も疲れてきたわけで、このまま押し合いではこちらの分が悪くなりそうだ。 「押してだめなら、引いてみな!」 いきなりイスから手を離したことで、朝倉涼子は勢いを削がれ、前につんのめる。 予想以上に思惑が当たり、朝倉涼子をはめるまたとない機会が到来した。 「うきゅう!」 突然に出来事に気が抜けそうな悲鳴が聞こえてきた。キレイな足払いが決まり、朝倉涼子は床に額をぶつける。 「おっと。そいつを離しな」 瞬間、ナイフを握る腕を踏みつけ、初めて悲鳴らしい悲鳴が朝倉涼子の口から漏れた。 踏みつけた足に女では考えられない異常な力を感じるが、いかんせんうつ伏せでは引き剥がせそうも無い。 だが朝倉涼子はそれくらいで降参するタマじゃないこともわかっている。 「うおっ!?」 空いていた手に握られていた小振りの投げナイフが空を飛ぶ。 切っ先が顔面を掠める。 狙いこそはやけくそ気味だろうが、驚き、一瞬だけ力を抜いたのは失敗だった。ナイフを握る朝倉涼子の手が俺の支配を逃れた瞬間、胃を歪ませる強烈な蹴りを繰り出す。 「おふぅ!」 その蹴りは口から嘔吐物が漏れそうなほどで、俺の腹を踏み台に、朝倉涼子は前転をして立ち上がった。 すると俺の喉を貫くように、背を向けたまま背面回し蹴りを繰り出した。 迫る靴底。 「うるぁぁぁ!」 息を吐き、朝倉涼子の回し蹴りに交差する前蹴りを放つ。 蹴りのリーチなら、身長差により男性である俺の方に軍配が上がる。 朝倉涼子の頬が歪む。 続けて、首を刈るように足の甲で喉を叩き、もう一度、朝倉涼子の背中に床埃を付ける。 「おっしゃぁ!行くぜ行くぜ行くぜぇ!」 床に投げ出された両足を脇で挟み、 「あぁぁぁぁぁぁぁ!」 足を踏ん張り、ぶん回す!ジャイアントスイングだ! 「なぁっ!?」 そのまま黒板に叩きつけられるはずだった。だが朝倉涼子は空中で体勢を立て直し、黒板を足場に跳ね返った。 人外のカウンターにより、尋常じゃない重さの左ストレートが、俺の顔に叩きこまれる。 「たぁっ!」 着地した瞬間、今度はローリングソバットが鼻っ柱に直撃し、俺の身体は無様なトリプルアクセルを踊った。 床に倒れ、その上クリティカルヒットにより鼻から血がドバドバと流れる。くっそ。ダセェな。 間髪入れずにローファーの尖った爪先が腹に突き刺さる。 胃液混じりの血が口から漏れ、激しい嘔吐感がこみ上がる。 吐いた血とゲロで、床から異臭が発生し、思わず鼻に手を覆う。 「ガハッ!」 覆った手ごと、朝倉涼子の爪先が突き刺さる。 さらにもう一発と、腹めがけて足を振り絞る。 もう一度まともにくらったら、今度は内蔵が破れ、痛いで済まない事態になるのは明白だ。 鼻を覆っていた手を、目の前にあるゲロにつっこむ。 顔を狙ってゲロを払いのけた。すると朝倉涼子は顔をしかめて攻撃を中断し、それを回避した。 その間に痛む体を鞭打って立ち上がることができた。 口から漏れる呼吸が荒く、肩が小刻みに上下している。 だが、俺に対して朝倉涼子は呼吸こそ上がっている物の、相変わらず歪んだ微笑みを俺に向ける余裕が残っているようだ。 「なめんなぁ!」 側にある机を蹴り飛ばす。 「やけくそはかっこ悪いわよ」 朝倉涼子は容易に足で弾く。 だが、弾いた足とは反対側に踏み込み、ガラ空きの腹部にスネをぶつける。 「バカじゃないの?私がそんな幼稚な作戦に引っかかる訳ないでしょ」 俺の蹴りが飛んでくることを呼んでいたのか、朝倉涼子は足を脇で挟む。 「アハハハハ!これで終わりね!」 右手にある鈍く光るナイフが迫る。 「つーかまえたー」 ナイフの切っ先は俺の心臓をえぐることはなかった。 切っ先は左手の平を犠牲に防ぐことができ、貫かれた箇所から血が飛び散るだけだった。 ナイフから手を離して逃げられる前に、握っている柄ごと手を握り締める。 無傷な手の甲で朝倉涼子の顔面を払う。 うまい具合に指が目に当たり、彼女から苦痛の声が漏れた。 思わず離された足を、もう一度叩き込む。 「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 気合と共に筋肉が脈動する。 手放すな。 すがりつけ。 叩き込め。 ブチかませ。 屠れ。 抉れ。 一秒だって余分な空気を吸わせない。ここで決めなければ終わる。 気合と共に吐き出される一撃一撃が、憎き殺人犯の気力を削っていく。 貫かれた左手を刀身から引き抜き、自由になった瞬間、小さく跳躍する。 「うるぁぁぁぁぁぁ!」 こめかみに直撃したかかとが、朝倉涼子を踊らせた。 着地と同時に態勢を崩し、前につんのめるようにこけかけたが、全力で打ち込んだローリングソバットだ。これで立ち上がれられた本物の化物である。 だが、朝倉涼子は身体を揺さぶり、苦しげに立ち上がった。 「もうやめとけ」 朝倉涼子をナイフを構えて襲いかかろうとするが、それはかなわず、泥酔しているOLのように床へ膝をつく。 「脳みそが揺れるように蹴りを入れたんだ。まともに立つことすら辛いはずだ」 朝倉涼子が化物クラスの耐久力があることぐらいわかっていたからこそ、前後不覚になるような攻撃をした。 これでは彼女に殺す気があっても身体がついて行くわけが無い。 「ま……まだよ!まだ終わらせない!」 泥酔中の子鹿が残る力を振り絞って立ち上がるように、朝倉涼子は声を上げて吠える。 その手に握られているのは鈍く煌くナイフ。 「私は防衛プログラム朝倉涼子……あなたを破壊し、この世界を防衛することが任務。たとえここで倒れようとも、あなたを破壊してみせる!」 混濁する意識を振り切り、朝倉涼子は閃光の切っ先を構え、俺に最後の突進をかます。 「お前、死のうとしたな?」 刀身は俺の脇を掠め、虚しく空気を裂く。 「教えてやるよ。死ぬ気で闘う奴は」 ナイフを抑え、間合いを詰め、眼前に迫っている朝倉涼子の額に狙いを定める。 「死ぬだけだっ!」 骨を伝って脳内に鈍い音が再生される。 朝倉涼子の額にコンクリートもブチ破れる自慢の頭突きがクリティカルヒットした。 そして彼女は床に膝を着き、朝倉涼子は物言わぬ人形のように機能を停止させた。 「ハァ……ハァ……ちくしょうバカやろう!痛ってぇよこんちくしょう!」 汚く品の無い罵声を吐き出し、俺も我慢の限界から床に大の字で寝転ぶ。 「もう嫌だ!もう疲れた!もう二度とケンカなんかしねー!絶対だかんな!本当に本当だかんな!」 無意味にツンデレ口調でまくしたてる限り、頭の方はおかしくなってなさそうだが、体力は限界に近い。もう立ち上がらない。このまま朝までグッスリだ。このやろー。 胸ポケットからタバコを取り出し、天井を仰ぎながら火を灯す。 「これでいいんだろ?後はお前の役目だ、キョン」 紫煙を吐き、顔も定かではない地味な級友の姿を思い浮かべる。 敵討ち。 自身の心に触れる。 プログラムの破壊。 俺がすべきことは全て終った。 もう俺が出る幕は無い。演目を終えた役者は舞台から退場するだけである。だからとっとと引きずりおろしてくれ。今の俺は鼻くそをほじる力も残ってねーんだよ。 「……まだ仕事がある」 一年五組の扉が静かに開かれる。 現れた長門有希は陶器のように冷たい声を発して、寝転ぶ俺に歩みを進めた。 「勘弁してくれ。今の俺は小学生とかけっこしたって負ける自信があるくらいに使い物にならんぜ?」 ほらな。こうやって立ち上がるだけでも億劫なんだからさ。 「私は考えていた」 すると、いきなり始まった一人語りを急に止めた。 どうやらそれで終わりらしい。 「……何を考えていたんだよ」 とりあえず続きを聞いてみた。 「人間の心について。あなたは「こんな事、心無い人形なんかには分からないだろうが」と発言した。だから私は心について思考していた」 そんなこと言った気もするが、激昂のすぐ後だったから、あまり覚えていない。 「それで、わかったのか?」 首を振り、否定の仕草をとる。 「私には分からなかった。まず理解が出来ない。なぜなら私は……あなたたち人類とは規格その物が異なるヒューマノイドインターフェース。 思考しようにも、数字でしか答えを算出出来ない。あなたの言う心や魂と言った不確定因子の計算には対応していない」 当然である。自分の尻拭いのために他人の母親を利用するような合理主義者な長門有希に、人間の感情が理解できるわけがない。もしもできたら、四十ん億年の地球の歴史に失礼である。 だから俺はこう言った。 「だろうな。そうやって自分を異物としか見れない奴なら、何億年生きようが理解できるかよ」 自分が他人とは違うなんて思ってる内は、相手を異物としてでしか見れない。相手を知りたきゃ、まずは相手の目線に立つようにならないとな。 「……不可能。私は人間ではない。あなたの発言はただの」 「願望だってか?そいつはどうかな」 長門有希はMなんとか星雲の遠い星々から進化の可能性を探しに来た宇宙人だ。だけど、 「お前は宇宙人である以上に、SOS団っつー、宇宙一はっちゃけた軍団の一員だろ?あの団長の相手をしてりゃ、嫌でも人間らしく生活することになるぜ?」 俺はSOS団の涼宮ハルヒを知らないが、この世界での涼宮ハルヒなら、とても良く知っている。こっちとあっちが全くの別物なら話は違うが、そうとは思えない。 「確かに今のお前は人形だ。だが、あいつと連んでりゃ、いつかは人間になれそうだ」 何てったってあいつは宇宙一人間らしい女だからな。 「……そう」 短い肯定だった。 「話を戻す。これを見て」 長門有希の小さな手に握られていたのは、拳銃に良く似た注射器であった。 「なんだこれ?風邪薬か?」 どうせなら過労に効く強壮剤かなんかの方が良かった。 「違う。これが私の答え」 「答え?」 「もうすぐ彼が改変世界の文芸部室に到達する。選択は彼に一存しているが、おそらく彼は脱出プログラムを起動する。それはこの改変世界を破棄し、全てを無かった事にすることと同義。それはあなたと私も例外ではない」 全てをぶっ壊すことになれば、せっかく向き合った俺の心も無かった事になるわけか。 「ふざけんな」 無くした魂をやっと見つけたのに。 「私はあなたを見て、結論を決定した。それがこれ。これはあなたの記憶を保護するバックアッププログラム。これをあなたに注射することで、あなたは改変世界で得た記録の全てを元の世界へと持ち越すことができる」 便利な道具だ。何でも有りだな。 「私はこれから先の時空で情報統合思念体に、どのような処罰を下されるか不明。情報の削除も有り得る。ならば、この世界の記録を残すにはあなたにしか頼めない」 すると長門有希は床に突っ伏している朝倉涼子へと目を向けた。 「……彼女は私のエゴによって強引に創造された。彼女まで削除するのは…………」 「忍びない?」 首を縦に振る。 長門有希の瞳が、じっとこちらを見る。俺の答えを待っているのだろう。 「さっきも言ったはずだ。ふざけんなってな」 答えならとっくに決まっている。 「全てを無かった事にして元の世界に戻るなんてできるか。何回も死にかけたような苦い記録ばっかだが、忘れて幕を降ろさせるわけにはいかない」 現在を生きる俺に、未来なんか知ったこっちゃない。この世界が崩壊して俺の物語が潰えようと、残さなければならない物語だってある。 「俺のド頭は俺の物だ。誰にも壊させやしない」 その言葉を終えた瞬間、長門有希の握る短針銃が胸に突き刺さる。 「んぐっ!」 風船から空気が漏れるような小さな音が聞こえた。やれやれ、いくつになっても注射だけは好きになれない。 「処置完了。後は彼が脱出プログラムを起動させれば全てが終わる」 「じゃあ、こいつが人生最後の喫煙になるかもな。じっくり堪能させてもらうよ」 深く息を吸い、肺に濁った煙を送って脳みそをリフレッシュさせる。 「未成年者の喫煙は身体の成長を阻害させる」 「喫煙してなくても身体の成長が芳しくない奴が言ってもなぁ……」 長門有希の薄い胸に眼をやる。ふむ、Bぐらいか。 「……これは行動を阻害させないために脂肪を減らしただけ。朝比奈みくるのような乳房は邪魔。だから不必要。現に彼女の身体能力は著しく低い。巨大な乳房など百害あって一利なしの忌むべき物。羨望など全く感じていない。ステータス。希少価値」 どうやら巨乳に対しては並々ならぬ羨望を感じていらっしゃるようだ。 「涼宮ハルヒ」 「……あなたなんか嫌い」 プイッと拗ねた子供ように眼を背ける長門有希に、初めて人間臭さを感じた。 自分では気付いてないだろうが、どうやら彼女は少しづつ人間に近付きつつあるように思えた。 だが、そんなことは口にしてはいけない。それは彼女自身が自分で気付くことであり、他者の、それこそ殆ど部外者である俺が言っていいことではない。 だから笑い噛み殺すことぐらいはさせてくれ。長門有希かわいいよ長門有希。 「そうやってあなたは私をバカにする」 「悪いな。性格が悪くて皮肉屋なのは生まれつきだ」 この性格のせいで何人の友達と距離を広げたか。治す気ないけど。つーか今さら不可能だ。 「西野太陽!」 マジで怒らせたかと思い、長門有希に謝罪するべく怒声をあげた彼女の方角を見た。 迫る閃光。 煌く刃。 美麗な黒髪を流し、朝倉涼子が鈍い光を灯したナイフを振り下ろす。 「な……」 鮮血が顔にかかる。 「長門ぉぉぉぉぉ!」 凶刃に倒れたのは長門有希だった。 「……な、長門さん?どうして?」 刺した本人である朝倉涼子ですら、放心して何も理解できていないようだ。 顔にかかる赤い血液だけが、異様に熱く感じる。それは朝倉涼子の手に滴る血液とて例外ではないはずだ。 「バカやろう!」 朝倉涼子の肩を握り締め、背中の壁に叩きつける。 「ふざけんじゃねぇよ!もう決着はついただろうが!?それをテメェは!」 あの一撃は本来なら俺が喰らうはずだった。それをさせなかったのは、長門有希が咄嗟に判断し、俺を救ったからだ。 「朝倉ぁ!これがお前の望んだ物語か!?お前はこんなエンディングを見たかったのか!?」 「違う……私は……私はこんな結末を望んだわけじゃ……」 壊れたからくり人形のように、朝倉涼子はうわ言を呟くのみだ。 「あぁそうだろうな!そうじゃなきゃ殺人鬼になってまで長門のために闘ったりしねぇよ!だけど……結果はどうだ!?お前の暴力が、長門を……長門を殺したんだ!」 だから言ったんだ。犠牲の上に成り立つ世界なんか間違ってると。 「俺もお前も長門も、誰も彼もが真っ直ぐだった。だからこうなったんだ。望む望まぬは別にしてな!」 創造主である自分自身が物語を幕を引くには、元凶である自分の死が必要と感じたのかもしれない。 「……こ……これでいい」 呼吸は既に止まりかけている。だが、それでも長門有希は血塗れた床から立ち上がる。 「……あなたも……朝倉涼子も傷ついた……」 血の滴る不気味な音が、異様に大きく聞こえる。 「私だ……けが……傷つか……ずに……終わるのは……間違ってい……る……」 血溜まりが歩いてくる。 「私……が……元凶……その責任……を取……る……」 そう、力なく呟き、彼女の筋肉の脈動が停止した。 「違う!」 このままお寝んねして甘い夢でも見る気か?冗談じゃねぇ! 「腹切って詫びるなんて、ちょんまげ結った武士にでもさせりゃいいんだよ!」 地に伏すアンドロイドを抱きかかえ、彼女の耳に声を飛ばす。 「死んでスッキリ清算ってか!?ふざけんじゃねぇ!そりゃお前はスッキリできるよ!俺達はどうなる!?勝手に責任押しつけんじゃねぇよ!バカ野郎!」 こんなエンドクレジット、俺が期待していたとでも思うか? 「物語の落ちは「笑顔でハッピーエンド」って決まってんだよ!それをお前は!俺の物語を汚しやがったな!?」 冗談じゃねえバカ野郎。こんな後味の悪さゴメンだ。バッドエンドなんてクソ喰らえ。 「生きろよ!本当に責任取りたきゃ、生きて、「本当に謝りたい」奴に会いに行けよ!」 俺みたいなポッと出の主演に責任を取るなんておかしい。本当に謝るべきなのは、SOS団のメンバーじゃないのか? 「だから起きろ!串刺しにされようが、寝てるときに心臓に銀の杭ブチこまなきゃ死なないんだろ!?」 だが上昇する血圧に反比例し俺の腕に抱きかかえられている長門有希は、少しずつ冷たくなっていく。 長門有希には今、絶対的な死が近付いている。 宇宙人であるが、彼女もやはり人間なのだ。 それは喉が枯れ、俺の檄に力が無くなった頃だった。 「ぐ……がぁぁぁぁぁぁぁ!」 潰れかけた喉に追い討ちをかける絶叫が漏れる。 「ハぁ……ハぁ……なんだこれ……」 全身にハンマー投げのハンマーを巻きつけたような重力が襲いかかった。 気持ち悪い。タチの悪かった先輩に初めて酒を飲まされた時を思い出す。 頭がぐらんぐらんと揺れ、平衡感覚がまともに作動せず、長門有希を抱えていた手を、自然に額へと添えてしまった。 「こ、これは時空震だわ!きっと、キョン君が脱出プログラムを起動したのよ!」 じ、時空震?なんだその猫型ロボット世界に飛び交ってそうなSF単語は? 「これで世界が変わる……長門さんが殺されない世界に……」 自分でやっといてどこか他人事めいた事を言ってる気がするが、それよりも朦朧とする意識に気を取られ、長門有希を抱きかかえる朝倉涼子を眺めることしかできなかった。 「……本当は私、破壊プログラムとか防衛プログラムとか、そんなのどうでも良かった。だけどあなたがキョン君を望んだから、私はあなたの手足になったのよ?」 その時、俺は見逃さなかった。 朝倉涼子は美しく微笑んでいた。 「三日間だけだったけど、またあなたに会えて、本当に嬉しかったわ……」 そこまで呟いて、俺の耳はイカレて何も音を拾うことができなくなった。 「ハ……ハハハ……」 乾いた笑いが口から吐き出る。 朝倉涼子も俺も何も変わらない。お互いがお互い、大切な物を守るためにぶつかっていただけだった。 俺達は歪んでいたから殺しあったのではない。ただ単に真っ直ぐ過ぎたのだ。 俺の意識はそこで途絶えた。 体が激流にのみこまれた小枝のようにクルクルと回るような感覚に陥った。 ここはどこだ?俺はどこに立っている? 重い瞼を開き、一番最初に目に映る光景は白い天井だった。……うわ、あそこシミ着いてやがる。 「……ここは、病院?」 身体を起こし周囲を見回そうとするが、腕につながれている細い点滴の管に気付き、仕方なくベッドにもぐりこむ。……個人病室か。 しかしどうなってやがる?まさか全部俺の夢だったなんて言うなよ。確かに現実から脱線しすぎて、夢と言い切れば絶対に妄想でまかり通る。 「ならば、なんで俺はピンピンしているんだ?」 交通事故で重態だったはずだろ?こんなストローみたいなしょぼい点滴一本じゃなく、ミイラ男とタメ張れる包帯と、ごついおしゃぶりみたいな呼吸器が付いていたはずだ。 「太陽。元気にしてる?」 混乱中の俺に、仕切りカーテンの裏から声がかかる。 「……お母さん」 「はい。これ換えのパンツと小銭ね。無駄遣いしないでね」 とりあえず差し出された小銭入れとデイバックを受け取りながらも、思わず、母の腹部に目をやる。 「……なに?」 「いや……少し痩せたんじゃないかな……と」 「そりゃ痩せるに決まってるでしょ?息子が事故で一ヶ月も入院してたらさ」 どうやら交通事故を起こしたことには間違いないようだ。だけどあのケガが一ヶ月で治るとは思えない。つーかあれは明らかに即死か半身不随だろ。 「もうあんた、しばらくバイク乗っちゃだめよ。雨の日にこけて両足骨折なんて……どんだけ心配したか……バカが」 「あー……そうだよな。ごめん」 ……どういうことだ?あの事故が無かったことになってる? 「じゃあ私はもう帰るけど、来週には退院だから、学校行きなさい。いい?ちゃんとよ?」 「口すっぱく言わなくてもわかってる。ちゃんと「北高」に行ってくるよ。「北高」に」 とりあえず進学校である光陽園学院ではなく、県立の北高に行くんだよな?言っていいんだよな?確認確認。 「よし。それじゃあまた明日来るから」 何も喰いつかなかったので、どうやら北高に行っていいようだ。 「あ、そうだ。明日、少年エース買って来て」 「小銭渡したんだから自分で買いなさい」 っち。小銭を使いたくないから頼んだのに。 「……あれは一体なんだったんだ?」 散歩がてら病室から抜け出て、廊下の窓からキリスト生誕直前くらいの寒空を見ながら思い返してみた。 交通事故も何もかも、全部俺の夢だったのか? 「んなわけねーだろ」 俺の中には、確かにあの世界での記憶がある。妄想や空想なんかじゃない。あの三日間は確かに存在していたんだ。 だったら信じりゃいいだろ。証拠なんか無くても、俺は自分の魂と向き合えたんだからな。 無駄な思考を止め、エレベータホール内にあるベンチに腰かけた時だった。 「……よう。なんだかスペースシャトルが惑星に不時着したと思ったら、そこは猿が生態系の頂点だったって顔してんな。そこからおかえり」 「……は?」 俺より頭半分高い同級生が、コーヒー片手に呆けてやがる。 「まぁなんでもない。忘れてくれキョン」 「お前までそう呼ぶか。西野」 だってクラスメイトでフルネーム覚えてるのは涼宮ハルヒくらいだからな。ちなみに姓は鈴木で、名は清孝だったか?……ダメだ。やっぱり覚えていない。 「そう言えばお前入院してたんだってな。事故って。の割りには元気そうだな」 「大した事故……ではあったけど、この通り元気さ」 折れたはずの無い足を撫で元気であることを証明する俺は、どこか滑稽だ。 「キョン、お前の方はどうしてまた?肺炎にでもかかったか?」 「階段で……こけた?」 なんで疑問系なんだよ。 「……よく覚えてないんだよ。ほっとけ」 腹を探られるのは誰だって気分が良い物ではないから、ここらでカマかけは止めておこう。 「西野太陽……だったよな。お前の名前」 「うわ、お前は覚えててくれたのに、俺は忘れちまってたのか。マジヒドイな。すまんすまん」 だったら覚え直せと言われそうだが……正直な所、キョンと言う愛称が浸透してるのに、今更名前で呼んでもな。聞き直すのも何かプライドが許せないし。 「当然だ。あんたは目立つ。その金髪は一目見たら忘れられそうにない」 うん、まぁ脱色してるが、手入れにゃ気ぃ使ってるしな。結構手入れめんどくさいんだ。 「じゃあ戻したらいいだろ」 キョンの指摘はもっともだが、それとこれとは別問題だ。 「いいじゃん。こんな頭してるバカなガキ、誰も付き合いたいと思わんだろ?」 こいつは俺の壁みたいなもんで、言うなら威嚇用だな。 いつ頃かは忘れた。多分父親が死んだ時くらいかな。そんくらいの時から人間関係に嫌気がさして、悪ガキぶっていた。 悪ガキぶっていれば、「なんかあいつ怖いよ」と思われ、誰も俺に近寄らなくなる。全て狙っておこなっていたさ。 だけど本当は……構ってほしかった。 この金髪とピアスも、その他非行行為も、全部が全部「俺はここにいる」と主張したかっただけだった。 今までの俺なら気づかないフリをしていただろうが、今は違う。あの改変された世界で自分と向き合い、俺は俺の弱さを知った。 弱さを恥じることはない。 強さに憧れることはない。 自分の魂に正直になれば良い。それが…… 「と思ったが、もう悪ぶるのも飽きた。そろそろ元の黒に戻そうかな」 んな素晴らしく説教くさい話をこいつにしてやる必要はない。だって俺は、キョンじゃないからな。 俺には俺の魂が宿り、キョンにはキョンの魂が宿ってる。ド頭の作りはみんな違うんだし、考えを押しつけてはならないのさ。 「へぇ。教室では無口で不気味な奴としか思ってなかったけど……意外だな。お前、そんなに軽い奴だったのか」 「母親の又からじゃなく口から生まれてきたみたいでね。それこそ、口数が多くて、よく友達を無くすくらいだ」 だって俺だったら俺みたいな奴とは友達になりたくねーもん。 「く……ははははは」 キョンの頬が吊り上がり、普段より一オクターブ高そうな笑い声が漏れた。 「悪いな。言い回しがおかしすぎで笑っちまった。どうやらお前の認識を改める必要があるみたいだ」 「そうかい。無口キャラも飽きたから、そうしといてくれ」 あーあ、学校行きてーな。なんだか今は無性にそう思う。……うーん。多分、本当の俺をクラスの奴らに見せてやりたいのかもな。 ところで、キョンを見ていて思いついたのだが、空想の中で生きる存在は、空想を現実と呼ぶのか? キョンは今まで空想を生きていた。それが三日間とは言え、現実の夢を見たことで、二つの世界を天秤にかけることになった。 どっちも忘られる物じゃない。でもどちらかを否定しなければならなかった。 空想な現実。 現実の夢。 こんな選択、キョンに任すべきじゃなかった。いや、誰にだってさせるわけにはいかない。 答えの無い問いをさせるほど、つらい問題は無い。もちろん俺だってゴメンだ。 誰も彼も、正解なんて選べるわけがない。 こいつの選んだ要因だって、突き詰めればキョンにはこっちの現実の方が性に合っていたってだけだ。世界のため……違うね。 面白いと思ったから帰ってきたのさ。 それに関しちゃ感謝している。つーか、俺がどうこう言えることじゃないしな。俺には選ぶ権利なんか無かったわけであり、望んだ選択が、たまたまキョンと同じだっただけだ。 ifの物語なんて考える必要はないが、俺だったら……どうしたのだろうか? 「バカくせーな」 思わず漏れた単語に、キョンがしかめっ面をさらに険しく歪める。 「いや、なんでもない。ちょっと考え事をしてた……そう、お前の後ろで 「あたしとはほとんど話さなかったくせに」と、睨んでいる涼宮の気持ちをアフレコしていただけだな。脳内で」 キレイな瞳だが、明らかに攻撃的な敵意をぶつけている涼宮ハルヒを見ていると思う……あれだ、可愛いね。 「はぁ?なに人の考えを勝手に妄想してるのよ。あたしは団員をカツアゲ行為から守ろうとしただけだから」 入院患者カツアゲしたってしょうがないだろ。小銭くらいしか持ってないはずだしな。 「つーか何?いちいち馴れ馴れしいのよ。話かけんじゃないわ!この金ザル!」 一体こいつは何をしに来たんだ?キョンのお見舞いとは言え、他の患者には優しくしてあげましょう。これお見舞い客の鉄則。いらない波風立てんなよ。 「「キョンはあたしの嫁!」って言いたいのはわかるが、入院患者どうし仲良くしちゃいけないのか?」 「仲良く?見てみなさい。キョン、明らかに電車で携帯開いただけなのに、知らないじいさんから目の敵ってくらいに難癖つけられて面倒って顔してるじゃない」 教育ママの屁理屈に聞こえるのは俺だけか?「スネちゃま。あそこのお子さんの家はアレな家だから、近付くんじゃないザマスよ。悪影響ザマス」 な気分だ。 「つーかハルヒ!今のこいつの発言を思い出せ!一つ訂正しなきゃならんところがあっただろ!」 はて?なんのことだか。 「キョンは男だから嫁になれるわけないじゃない!バカにしてんじゃないわよ!」 「ズレてる!お前の発想はズレてる!せっかくのストライクがスペアになった!」 「キョキョキョンくん!ズズズズズズレてるってどこだね!?」 「はあっ!?その金髪はヅラだったのか!?」 「ババババババカいっちゃいけないですよ。な、な、なんの事だか」 「そうだよな。まさかその若さでハゲるわけが……って、何、頭皮をマッサージしてるんだ!」 「まだ大丈夫まだ大丈夫。元気になーれ元気になーれ。石よ!殺生石よ!私に毛を!これ以上、毛を、抜けるなぁぁぁぁぁぁ!」 「諌山冥!?」 どうやらキョンとは趣味が合いそうだ。二期はまだか。 「だからあたしの団員と仲良くするなー!」 悪ふざけが過ぎるのもあれなので、そろそろ病室に戻るとしよう。 「まったく、少しは気にして帰ってみたら……やっぱりまだまだ教育は必要ね」 「お前のは教育じゃなくて調教だろうが」 あまり嫁を独占してはかわいそうだしな。 「そいじゃな。良いヒマ潰しになったよ」 キョンの飲んだコーヒーの空缶を手に取り、ゴミ箱へシュート。よっしゃ、3ポイントゲッート。 華麗なるスリーポイントシュートも決まった事だし、部屋で先月のエースでも読むとするか。 「あ、そうだ太陽」 「なんだハル」 「…………馴れ馴れしく呼ぶんじゃないわよ。なによその気持ち悪い呼び名わ」 「お前こそ俺の名前を呼んでんじゃねーか。改めろよ」 作り物とは言え、あの世界の記憶は中々切れる物じゃないようだ。いや、切ってはならない。ただのハリボテな縁かもしれないが、一度繋げちまった以上、簡単に手放すな。紡いだりしたら、あの世界の俺たちに申し訳ない。 「ちょっと太陽!聞いてんの!?」 その時、一瞬だけ、涼宮ハルヒの姿が「あいつ」とダブって見え、思わず笑いが込み上げた。 長門有希は世界を上書きしたと言った。 だがそんな事はない。あの世界はちゃんと残っている。こいつはその証明だ。 消す必要なんかない。 忘れる事もない。 ここに存在しているのだから。 「……い、今のは違うんだからね!太陽が呼んで欲しそうにしてたから……あ」 お、今度はキョンが俺を睨みつけてやがるな。携帯電話が無い事が非常に悔やまれる。写メして見せてやりたい。 「んな物はどうだっていいんだよ。これからもよろしくなハル……だっはっはっはっはっ!」 そう、たまにアルバムをめくるように思い返すのも大事だが、これからを大いに楽しむのが一番大切だ。忘れんなよ。俺。 今の俺のように、中途半端に元気な入院患者にとっちゃ、病院で過ごす深夜は拷問である。身体が元気であるために、まぶたを閉じても眠れないのだ。 朝方まであと三時間程ある。この時間じゃナースステーションに行って、睡眠導入剤の服用を頼んだとしても処方してくれそうもない。クソ、昼寝なんかするんじゃなかった。 毒づいてみたものの、そんなんで睡魔が家庭訪問してくれるわけもなく、長い夜に対し、ただただ嘆息するのみである。 その時、暗闇の病室に碧く光り輝く蝶が舞い降りた。 綺麗な色をしているが、それ故にとても不気味な気がして、頭から掛け布団をかぶり、見なかったことにする。ヘタレでビビりのチキンな俺は何も知らない。知らないったら知らないんだからね! 「あら?起きている気がしたと思いますが……狸寝入りは止めてください。西野太陽君」 布団の中であるため判別は難しいが、聞き覚えのない声である。一体誰だ?いや、一体なにだ? 「こんばんわ、そして初めまして。私は喜緑江美里と申します」 碧い蝶を周囲に舞い散らせながら、彼女、喜緑江美里は深々と頭を下げた。 「初めまして。そしてどちら様ですか?」 穏やかで浴衣や振袖が大変似合いそうな美人だが、はっきり言って俺の記憶の中にある人物録には存在していない。しかし直感で理解できた。彼女は人間ではない。 「そんな風に身構えないでください。思念体からのお達しがある以上、あなたに危害を加えるつもりは毛頭ございません」 思念体……情報統合思念体のことだよな。つまり長門有希と朝倉涼子の仲間か。 「信用できるか」 「あら?私たちが嘘をついているとでも?」 嘘を……つくわけがないか。長門有希も朝倉涼子も、俺に嘘を吐いたことはなかった。もっとも、襲いかかったり高見の見物を気取っていやがったが。 言葉だけなら、こいつらが語ったこと以上に信用が置ける存在など無い。危害を加えないと言ったら、俺が死ぬ心配はない。 「何の用ですか。夜這いならビンビンな時に、文書にまとめて再度申し込んでください」 もちろん、そんなはしたない理由のわけがない。 「改変世界からの帰還、おめでとうございます。今回、私は長門さんに代わり、あなたに事の顛末を伝えに参りました」 反応ぐらいして欲しかったが、頭のネジが閉まりすぎてマトモな返答しか返せない宇宙人には期待しても無駄か。 「……長門の代わりねぇ」 「長門さんの方がよろしかったですか?あいにくですが、今現在、長門さんはキーマスターの元にいますので。フラれましたね」 多少はネジの閉まりが緩く、それなりに冗談には対応できるようだ。 つーか長門有希がキョンをほっぽいて俺の下に来るわけがないか。 「それに、あなたも色々問いただしたい事があるはずですよ」 当然である。これだけは聞いとかないとならない。 「一ついいですか?」 「一つですか。一つだけですよ?」 ち、やり辛い。 「なんで俺が死んでいない?いや、死ぬまではいかないまでも、なんでこんな軽傷で済んでいるのですか?」 ありえないよな。どこぞの武道家猫が違法栽培している怪しい豆を飲まない限り、こんなに元気なわけがない。もちろん両手を上げて喜んだが、不自然をほっといて置くかよ。 「それは私のおかげですよ」 「……あなたの?」 「あなたは普通の人間。この惑星に存在する人類と、何ら違いはございません。ですが、そんな常人であるあなたが、事前情報皆無の状況で全てを理解し、世界の崩壊まで防ぎました。 ……はっきり言って予想外です。そんなあなたを失うのは、とても惜しいと思念体は結論付けをしました。よって、私が過去の自分と同期し、あなたの事故を書き換えました。感謝してくださいね」 長い会話の終わりにニコリと微笑む喜緑江美里だが、それに対し、俺は大きな恐れを覚えた。 情報統合思念体は、俺を生かした。その事に関しちゃ、感謝してもしきれない。 ありがとう。だけどな、こいつらは俺を手軽く「救った」と言うことは、その逆、つまり手軽く「見捨てる」こともできるのではないか? 可能だろうな。現に、朝倉涼子は当たり前のように俺に凶刃を向けて来た。 俺だけじゃない。あの世界では、十人が殺されている。 情報統合思念体が存在しない改変世界で十人だ。こいつらはやろうと思えば、手軽く大量虐殺だって行える。 今回の事件は、ただ単に、情報統合思念体の危険性がわかっただけだ。 「ならキャトルミートレーションでもしますか?」 「それは大変おもしろそうですが、またの機会にさせていただきますね」 自分で振っといてあれだが、勘弁してくれ。そんな内臓がないぞ~なんてバカすぎるギャグ、実践してたまるか。 「それでは私はこの辺で失礼します。また新学期に会いましょう。それでは」 碧い蝶の舞いが喜緑江美里を包みこみ、彼女は暗闇に溶けた。 結局、俺がここにいるのは、俺一人の力ではなかった。 だが、様々な思惑があっても、俺は終えたはずの物語を引き伸ばすことができた。 俺はもう、自分に、世界に、絶望なんかしない。 無様だろうが醜くかろうが、棺桶に押し込まれるその時まで、俺は俺の物語を見限りない。 エピローグへ続く
https://w.atwiki.jp/thereis/pages/8.html
痴漢多発電車で検索してね ↓↓↓↓痴漢多発電車 痴漢多発電車あらすじ 「前はどんなふうに触られたんだ?」以前電車で痴漢にあった女子校生みつき。その時たまたま乗り合わせていたおじさんが、こっそりと現場を撮影していた。その写真で脅されたみつきは、再び電車で痴漢をされる事に… 「痴漢多発電車」で検索してね ↓↓↓↓痴漢多発電車 痴漢多発電車以外のおすすめコミック ムラまん[フルカラー版] 結婚して田舎にムコ養子に来たマサオさ。 べっぴんの奥さん・カオルさんと毎晩ウッハウハ出来ると思いきや、邪魔が入って欲求不満気味なんです!そこに未亡人の誘惑があって、その女のテクニックは抜群、ガマン出来ません!これからのマサオさんの田舎生活はどうなってしまうのやら!? 「ムラまん[フルカラー版]」で検索してね ↓↓↓↓ムラまん[フルカラー版] 転乳せんせい~男子校の嫌われ教師が女体化したら~ 男子校の体育教師(生徒指導、水泳部顧問)が、ある日トツゼン女の子に!?いつも鉄拳指導している不良生徒に逆に掴まってしまい、男子トイレで公開肉処理係に…。 担任しているクラスの生徒や、職員室の教師たちをも巻き込んで、学園内は乱れに乱れる。 欲求不満の男たちからの強引な責めの連続で、初体験なのに思わず「イっちゃうぅぅうう!!」 「転乳せんせい~男子校の嫌われ教師が女体化したら~」で検索してね ↓↓↓↓転乳せんせい~男子校の嫌われ教師が女体化したら~ 発情センパイ 快楽の虜と化した美女たちを圧倒的精力でねじ伏せる強淫短編集です。 当代随一と呼び声高いマゾっ娘調教はもちろん、愛妻悶絶のネトラレ姦や発情JDが仕掛ける公羞恥プレイほか、上下のヨダレが止まらないメス汁ラインナップ。 底なしの肉穴に引きずり込まれる1作です。 「発情センパイ」で検索してね ↓↓↓↓発情センパイ 女子刑務所極秘白書 女囚姉妹 近未来の世界、女囚のみを収監する関東女子刑務所では、女囚たちが看守たちに好き放題にいたぶられていた。 全裸にされ、刑務医に肉体を弄ばれ…! 「 女子刑務所極秘白書 女囚姉妹」で検索してね ↓↓↓↓ 女子刑務所極秘白書 女囚姉妹 初めてを奪って☆お嬢様のおねだり プロカメラマンを目指す俺は風景写真を撮りに山中へ。 そこで出会った美少女は別荘で猛練習中のテニス選手。 せっかくだから練習風景の撮影を……って、なんでノーパンで練習!? バッチリ撮っちゃったぞ。 ドキドキする俺に彼女の告白。 テニスで勝つために「処女」をもらって、だって? そんなウレシイ話--だけど、それって俺じゃなくてもいいんだよね……。 「初めてを奪って☆お嬢様のおねだり」で検索してね ↓↓↓↓初めてを奪って☆お嬢様のおねだり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4778.html
空と君とのあいだには 言葉にできない 短編 空と君とのあいだには/朝倉涼子の発現 第一話 第二話 第三話 第四話 第五話 第六話(完結) 空と君とのあいだには/朝倉涼子の消失 プロローグ 第一話 第二話 第三話 第四話 第五話 第六話 第七話 エピローグ - 春よ、来い 空と君とのあいだには/空と君のあいだに プロローグ 前編 後編 エピローグ - 空も飛べるはず
https://w.atwiki.jp/kskani/pages/109.html
◆LQxnEUL7WA 氏 氏が手がけた作品 話数 タイトル 登場人物 008 Contacting ファイティング・コンピューターVS対コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイス ウォーズマン、朝倉涼子、草壁メイ 登場させたキャラ 1回 ウォーズマン、朝倉涼子、草壁メイ 作品に寄せられた感想 「まっくろくろすけでておいでー!」 →「コーホー」は大爆笑w -- 名無しさん (2008-09-10 19 07 57) 名前 コメント