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◇ 渋谷駅を発ってから間もなくして、久美子と麗奈の二人の視界に飛び込んできたのは、一本の大太刀だった。 古の伝承に綴られる聖剣の如く、地面に深々と刺さり、荘厳に佇んでいるそれは、素人の二人から見ても並大抵の業物ではないことが分かる。 しかし、二人が注目したのは、大太刀そのもののではない。 「――こ、これ、参加者の誰かの腕だよね……?」 「……多分、そうだと思うけど……」 月光に照らされる大太刀のその柄は、何者かの千切れた腕にがっちりと握られている。 筋骨隆々として、未だ並々ならぬ生命力を帯びたその腕の本来の主は、シグレ・ランゲツ――。 魔王ベルセリアとの激闘の果てに、その命を散らした特等対魔士の残滓は、今尚もその闘志を、至高の刀剣「クロガネ征嵐」に宿らせていた。 「んしょ――ってあれ?この手剥がれないや……」 久美子も麗奈も刀なんてものは、生まれてこの方触れたくこともなかったが、それでも、素人目からただの刀剣でないことを察した二人は、久美子の支給品袋に二人掛かりで納めようとした。 幸いにも、久美子には『ビルダー』としてものづくりの能力を使いこなせつつある。 仮に武器として扱えなくても、素材として見れば何か活用する術はあるかもしれないのだが、生前これを得物として奮っていた武人の剛腕は、久美子がいくら力を込めても、頑なに柄を握り続け、引き剥がされることをよしとしない。まるで、腕そのものにシグレの魂が取り憑いて、闘争の続きに臨まんとしているように。 「剥がれないなら、腕ごと入れちゃえば?」 「えっ? あ、ちょっと、麗奈!?」 柄から手を引き離そうと悪戦苦闘している久美子に業を煮やした麗奈は、彼女を押し退けると、そそくさと腕とクロガネ征嵐を、袋の中に放り込んでしまう。 「いやいやいや、知らない人の腕とか何の使い道があるの!?」 「普通にあるけど?」 目を丸くする久美子に、麗奈は淡々とした調子で向き合い、前髪をかきあげる。 「えっ? ――えっと…何に使うつもり?」 「……私のおやつ――小腹が空いたとき用に……」 「げぇ――」 とんでもない事を言ってのけた麗奈に、久美子はドン引きの声を上げそうになるも、慌てて「んんっ!!」と自身の口を両の手で塞いだ。 そんな久美子に対して、麗奈は前屈みになると、額と額がくっつきそうになるところまで顔を近づける。 そして、彼女の頬に片手で触れると、微笑みを浮かべた。 「くすっ…冗談よ。さっきも言ったでしょ? もう私の中からは、人を食べたいなんていう衝動は消えてる」 「もぉ〜…冗談にしては全然笑えないよぉ」 「ごめんごめん。でも、久美子らしい反応で何か安心した…」 「あはは、何それ。ちょっと酷くない?」 咄嗟に失言を漏らしてしまう久美子の悪癖--麗奈にとっては、何度も見慣れたはずのその反応が、今はどうしようもなく愛おしかった。 額をくっつけて、久美子の体温を直に感じ取った後、麗奈は彼女から離れた。 「それと、あの腕のことなんだけど、もしかしたら、人体の一部も、久美子のものづくりの素材になるんじゃないかと思ったの」 「えー、流石に人を材料になんて使いたくないんだけど――」 そんな会話を交わしながら、二人の少女は先を行く。 互いの手をぎゅっと握りしめて、互いの存在を感じながら。 「独り」だった二人の少女はもういない。 これから先の未来に何が待ち受けているのかは、分からない。 しかし、二人一緒ならどんな苦難にも立ち向かえる――そのように、少女達は思っていた。 互いの存在が、一歩踏み出す勇気を奮い立たせてくれるのだから。 ◇ 岩永琴子は、聡明な少女だ。 普段は可憐な見た目とは相反するほどの欲望を曝け出し、品の無い発言を口に出すこきらいがあり、九郎をはじめとした周囲の人間を困惑させることも多々ある。 しかし、その実、卓越した頭脳と知識を元に、当事者達が納得のいくロジックを綿密に組み立て、様々な事件を調停させる『知恵の神』として、妖怪変化達から畏れ敬えられている。 「……。」 しかし、そんな頭脳明晰な彼女とて、決して万能ではない。 (――友人達の脱落に続いて、慕っていた先輩の死……。 やはり、そうそう立ち直れるものではないですね……) 地面に座り込み、顔を沈めて、啜り泣くあかり。 そんな彼女の様子を見守りながら、琴子はそっと息を吐いた。 優れた頭脳を持ち合わせる琴子だからこそ、この場面では、ロジックを構築しそれを突き付けるよりも、ただ感情の赴くままに発散させてあげるのが最も合理的であると判断した。 『知恵の神』にとっては、他者の理性を手玉に取る事はいとも容易い。しかし、傷心しきった少女の心を慰める術は持ち合わせていない。 幾ら魑魅魍魎を使役し、諜報に長けていたとしても、他者の心の内は不可侵の領域――その真意は論理を以って推測するしかないのだから。 (――私の方も、今のうちに情報をまとめておきましょうか……) 琴子としても、あかりが落ち着くまで、ただひたすら見守り続けるのも非合理的だ。 支給品のタブレットを取り出しては、あかりの様子を窺いながらも、そこに文字を打ち込んでいく。 このタブレットは、琴子に支給された第三の支給品。 一般的にタブレットというものは、様々なアプリケーションを利用できて然るべきものであるが、このタブレットについては、メモ帳機能しかインストールされていない。 利便性としては低いのだが、琴子は時折この電子機器に、自身が得た情報や考察をインプットするようにしている。口頭での会話を挟む必要なく、他者に情報展開できる点で、知恵の神はこの支給品に価値を見出していた。 ザッザッザッザッ――。 (……っ!?) 草根を分ける音が、耳に届くと、琴子はタブレットに打ち込む指を止めた。 あかりにもその音が聞こえたようで、ビクリと反応。涙に装飾された顔をバッと上げる。 「……岩永さん……。この音って――」 「ええ…誰かがこちらに接近しています」 岩陰に隠れて様子を窺う、琴子とあかり。 二人の視線の先には、森の暗闇からこちらへと闊歩してくる、一つの影。 「――やけにギラついた殺気だな……。 いるのは分かっている、出てきたらどうだ?」 その影の主――侍風の装束を身に纏った隻腕の漢は、琴子達が隠れる大岩の20メートルほど先の場所で立ち止まると、剣呑な雰囲気を放ちつつ、周囲を見渡しながら、そう呼び掛けた。 「生憎と俺は今、気が立っている。 そちらから来ないのであれば、俺から行くことになる…」 剣を構え、既に臨戦態勢に入る漢。 その眼光は紅く光り、まるで獲物を前にした獣のように殺気立っていた。 「――岩永さん……」 極力声を抑えて話しかけるあかりに、コクリと頷く琴子。 一刻の猶予も許されそうもない剣客の様子に、二人はやむなしと岩陰からその姿を顕にしようとするが―― 「分かった、こちらとしては、貴方と敵対するつもりはない。 まずは、その物騒なものを下ろしてほしいんだけど――ロクロウ・ランゲツさん」 琴子達の対角線上の木陰から、別の二人の少女達が姿を現した。 二人の少女は、手を繋いでおり、黒髪のロングストレートの少女が、相方のショートボブの少女を庇うように一歩踏み出した。 特筆すべきは、少女達が身に纏う装束だろう。片やお伽話から飛び出てきたような瑠璃色を基調としたメイド服のようや衣装、片やバージンロードを歩む花嫁を想起させる純白のドレス――双方とも、この殺し合いの場に似つかわしくない異質さを醸し出していた。 「……お前、久美子か……随分と雰囲気が変わったな……」 「――どうも……」 少女の片割れが、第二回放送後に出会った非力な少女とわかるや否や、その侍風の漢――ロクロウは構えていた剣を下ろした。 おおよそ半日ぶりの再会となるが、ぎこちない挨拶の後、何とも気まずい沈黙が場を支配する。 「ロクロウさん、少しお話しできませんか? 協力してほしいことがあります」 「――っ!? ちょっと、麗奈!!」 その沈黙を打破すべく、花嫁衣装の麗奈がロクロウに話を持ちかけると、久美子が声を荒げた。 久美子としては、セルティの件もあり、ロクロウに対する心象は良くない。 呼び掛けに応じなければ、面倒事になると思って、二人揃ってロクロウの前に姿を晒しただけであって、彼に協力を仰ぐことは目算していなかった。 「久美子――。私達の目的を達成するためには、戦力が必要なの。 ロクロウさんの実力は、久美子も知っているでしょ?」 麗奈はそんな久美子の白い肩に手を置いて、彼女を宥める。 ロクロウにとっては知る由もないことだが、麗奈もまたロクロウの戦闘を直近で目撃している。 麗奈にとっては恐怖の対象でしかなかったあの月彦相手に、獰猛な笑みを張りつけ奮戦していたあの姿はまだ記憶に新しい。 「……けど、この人は――」 久美子は更に抗議の声を上げようとするも、ここでロクロウが口を挟む。 「二人で盛り上がっているところすまんが、生憎と俺には時間が残されちゃいない。 早々にケジメをつけないといけない連中がいるんでな……。 お前達が何を企んでるかは分からんが、他を当たってくれ」 「……この殺し合いで起こった出来事全てを『最初から無かった』ことにできる――と言っても?」 「――何?」 麗奈の口から飛び出た、凡そ無視できない内容に、ロクロウはピクリと片眉を動かす。 「どういう意味だ、それは?」 「それも含めて、一度お互いの知っている情報を交換しませんか。 どちらにしろ、そんなに時間は取らせません」 怪訝な表情を浮かべるロクロウに、麗奈は真っ直ぐに彼を見据えた。 妖しく光る彼女のオッドアイをジッと見返すロクロウは、しかめ面のまま表情を崩すことはない。 「――なるほど、なにやら興味深い話をされているようですね……」 「「「――っ!?」」」 頃合いを見計らって岩陰から姿を現したのは、琴子とあかり。 ロクロウと麗奈、そして久美子は、咄嗟に話を中断し、二人の方へと振り返る。 視線の的となっている琴子は、車椅子に身を委ねており、あかりがそれを押して、ゆっくりと三人の前に進んでいく。 「また、妙なのが出てきたな……」 「初対面の淑女に対して、その言い草は如何なものかと思いますよ、ロクロウ・ランゲツさん――」 「貴方、誰?」 話の腰を折られた形となった麗奈は不満そうに琴子を睨みつけるが、琴子は物怖じすることもなく、悠々と言葉を紡いでいく。 「私は岩永琴子と申します。後ろにいるのは、間宮あかりさんです」 琴子はロクロウ、久美子、麗奈の順に視線を巡らせると、ペコリと頭を下げた。 「……人形みたい……」 そんな琴子の愛らしい容姿と、丁寧にお辞儀する姿勢を見て、久美子は、率直な感想を漏らしてしまう。よもや眼前の少女が、自分よりも年上で、既に成人済みとは露知らず。 「さて早速で申し訳ないのですが、皆様のお話に、私たちも加えていただけませんでしょうか? こちらが掴んでいる情報は、惜しみなく提供いたします」 「私達は構わないけど……」 琴子からの提案に、麗奈はチラリとロクロウを一瞥する。 「――手短に頼む……」 首肯するロクロウ。 無惨の毒によって現在進行形で命を削られている現状、悠長に会話を長引かせる余裕はない。 しかし、二グループとの情報交換によって無惨やベルベットの足跡を得られる可能性あらば、決して無碍にはできない。 そして何より、先程の麗奈の口から飛び出した『この殺し合いを最初から無かったことにする』というフレーズ――こちらの真意も確かめてみたいと考えたのであった。 ◇ 「――μは、楽器で……願望機……」 情報交換が一通り終わった後、あかりは、最後に久美子達が齎してきたμに関する推測を、ボソリと反芻した。 それより前にロクロウより、アリアを殺害したのはウィキッドという少女だという情報を掴んでいたのだが、久美子達より告げられた内容は、アリア殺害犯に関する情報の咀嚼を停止させるほど衝撃的なものであった。 「そう、彼女は願望機。私達はその力を奪って、こんな殺し合いをなかったことにするの……。 だけど、これを実現するためには、協力者が必要――だから、力を貸してくれたら嬉しい。 あかりちゃんだって、佐々木さん達との日常を取り戻したいんでしょ?」 情報交換の際に、あかりの親友だった少女の顛末を語り聞かせた久美子は、その親友の名前を持ち出して、彼女に畳みかける。 「――黄前さん……わ、私は……」 あかりの車椅子を握る手に、力が籠る。 親しかった友人達に、憧れていた先輩――。 悪意渦巻くこの殺し合いで、かけがえのない人達を失い、身体だけはなく、心までも『おんぼろ』となってしまった少女が、久美子達が提唱した『この殺し合い自体をなかったことにして、全てを戻す』という計画を聞いて、心揺らいでしまうのは無理からぬことであった。 「コホン、少し宜しいでしょうか、久美子さんに麗奈さん」 そんな中、久美子達とあかりの間にいた琴子が、咳払いと共に会話に割り込んできた。 「あ…えっと、はい…。どうしました、岩永さん?」 一応年上の女性ということもあり、敬語で応対する久美子。 琴子は、そんな久美子の態度を視界に収めつつ、淡々と言葉を紡ぐ。 「お二方の叶えたい構想については、理解できました。 成程、確かに『殺し合い自体になかったこと』にできれば、死んだ皆さんも生き返り、この殺し合いで負った外傷も精神的苦痛も、麗奈さんのように望まぬ力を得たことによる苦悩も、全てなかったことにできますね――」 顎に手を当て、ふむふむと頷く琴子。 その反応を見て、久美子は、『岩永さんも賛同してくれているんだ』と胸を撫で下ろす。 一方で、麗奈はジーッと観察するかのように、琴子を眺めている。 「ですが、それが可能である裏付けはあるのでしょうか? お二人のお話では、麗奈さんの演奏は、μの歌に類する力を有していることが前提となります。 しかし私たちは麗奈さんの演奏の効果を目の当たりにしたわけでもなければ、その事象を記録したという主催者の『レポート』とやらに目を通したわけでもありません」 琴子の指摘を受けて、麗奈はロクロウに視線を向けるが、彼は肩を竦めた。 主催者側が残した『レポート』には、間違いなく麗奈の演奏をきっかけに、無惨がデジヘッド化したことを示す記述があった。 『レポート』の存在そのものについては、麗奈もロクロウも情報交換の際に、言及はしていたので、ロクロウが麗奈の供述を正とする証言をすれば、事足りる。 しかし、彼としては内容全てに目を通したわけでもなく、オシュトルより、シグレがベルベットに殺害された旨の報告と、それに該当する記載のみを見せられたのみで、麗奈に助け舟を出すことは出来ない。 「――だから、私達の考えには乗れない……。そう言いたい訳ですか?」 ビキビキビキ――。 瞬間、麗奈の隻腕に血管が浮き上がり、小刻みに蠢き始めた。 しかし、琴子は、そんな麗奈の様子を冷めた目で見つめながら、「いえ」と続ける。 「誤解なきように言っておくと、なにも反対しているわけではありません。 先程も申し上げた通り、まずは確証が欲しいのです、お二人の目論見が成り立つか否かを……。それまでは、立場を保留とさせて頂けますと幸いです」 「……分かりました……」 琴子の話に、麗奈は少しだけ間を置くと、腕を鎮めて、了承の意を示した。 確かに琴子が今話したことは、至極真っ当な言い分だ。 一方的に話を突きつけただけで、十全な計画であると示す証拠を提示できない現状、賛同するか否かは相手側に選択権がある。 まずは、麗奈達の言い分を立証できる根拠を提示し、理解を得た上で、協力を取り付ける必要があると認識したのである。 「……さてと、話は纏まったようだし、俺は行くとするわ」 琴子と麗奈の間の緊張が解けたのを確認するや否や、ロクロウは、もう此処には用はないと言わんばかりに、踵を返し、早々に立ち去ろうとする。 「待ってください、ロクロウさん」 「――まだ、何かあるのか?」 呼び止める麗奈に、ロクロウは不満げな表情を浮かべ、振り返る。 ロクロウからしてみれば、ベルベットが既に魔王へと成り代わり、シグレを殺害したという裏付けを得たのが唯一の収穫であり、第一目標である無惨や、解毒剤を持つ垣根の足跡を得ることは叶わなかった現状、此処に長居する理由など皆無であった。 「麗奈、もういいよ、この人は――」 「久美子、ちょっと黙って…。 ――ロクロウさんは、私達が話した件については、賛同いただけないんでしょうか? 上手くいけば、貴方自身の手でシグレさんを倒す機会を再び得られるかもしれないんですよ?」 久美子が間に入ろうとするも、麗奈はぴしゃりとそれを跳ね除け、ロクロウに尋ねる。 まるで、返答次第では実力行使も辞さない――と、暗に告げているような口調だった。 「さぁてな……。正直、俺にはよく分からん話だ。 仮にここで起きたことをなかったことにして、またあいつと死合いをするようお膳立てされても、興が湧くことはないな……」 麗奈の圧を冷ややかに受け流し、ロクロウはそう言ってのけた。 ロクロウの長年掲げていた宿願は、己自身でシグレに辿り着き、全力の立ち合いで打ち負かすこと。 そして、それを成就すること叶わなかった――。それで終いだ。 故に、ロクロウにとっては、琴子が問題視していた計画の実現性などはどうでも良い。 己が宿願を果たせなかったのが気に入らないので、「じゃあやり直そう」と言ってリセットするような不躾な真似は、自身の流儀に著しく反していた。 「ただ、お前らにも、お前らの事情があるんだろ? お前らがそれを目指すのであれば、俺は止めはしない――好きにすればいい……。 だが、さっきも言った通り、俺には時間が残されていない。無惨の毒をどうにかしないからな。先を急がせてもらう……」 瞬間、ゴホッと咳払いをして、よろめくロクロウ。 どうにか踏みとどまると口元から滴る血を拭ってみせる。 夜叉の業魔に残された猶予が後僅かであることは、誰が見ても明らかであった。 「つまりは、否定もしないし、賛同もしないってことですよね?」 「まぁ、端的に言えばそうだな」 「それでは、ロクロウさん、私たちと取引をしませんか?」 「――取引だと?」 ロクロウは、麗奈の申し出に眉を潜める。 どっち付かずのスタンスであれば、交渉の余地はあり――麗奈は、そう判断したのである。 「はい、今ロクロウさんを蝕んでいる月彦さん――無惨の毒を何とかしたら、私たちに力を貸していただけますか?」 「――っ!? そんな事が出来るのか?」 思いもよらぬ提案に、ロクロウは目を見開いた。 ロクロウだけではない…あかりや久美子も、驚愕に染まった表情を浮かべており、琴子はというと目を細めて、事の成り行きを見守った。 「……私は、無惨の血に適応して、鬼になりました。 なので、私の身体は、毒に対する免疫を少なからず持っているはずです。 免疫を含んでいる私の血液を素材にすれば、毒を抑えられる薬を作れると思うんです――どう、久美子?」 「……えっ?……」 一同の視線が、一斉に久美子に集まる。 唐突に話を振られた形となった久美子は、思わず言葉を詰まらせた。 しかし、すぐに自身が発現させた『ものづくり』の能力に関することであると理解すると、言葉を紡いでいく。 「……正直、薬とかは作ったことないけど……。 多分、素材さえあればどうにかできるんじゃないかな……と思う……」 目を伏せ、ボソリと久美子は告げる。 それは消極的な肯定であった。 彼女が薬のビルドに消極的なのは、自信の無さだけではなく、ロクロウを治療することに対する迷いがあるからだった。 だけど、嘘を言って、麗奈を裏切ることは出来ない。 だから、久美子は、胸の内で燻る感情を抑え付けながら、己が見解をありのままに伝えた。 「――だそうですけど、どうしますか、ロクロウさん……? 力を貸してと言いましたけど、何も私達の考えに乗ってもらってほしいということではありません。 私達と行動を共にして、お互いにとって共通の脅威が現れるのであれば、その時に共に戦ってほしいんです……」 複雑な表情を浮かべる久美子を他所に、麗奈はロクロウに答えを促す。 それに対して、ロクロウは険しい表情を浮かべ、麗奈……そして、久美子の順に視線を巡らせた。 「俺は―――」 そして、暫しの逡巡を経て、彼は己が答えを紡いだ。 ◇ 「――すまん、久美子。 まさか、お前に助けられることになるとはな……」 遺跡へと向かう道中、ロクロウは、久美子へと話しかける。 結果として、ロクロウは彼女に救われたことになったのだ。 ロクロウが麗奈の提案を受け入れた後の、麗奈と久美子の作業は迅速であった。 まず二人は、予め回収していた建材の欠片などを利用して、作業台を創成する。 これらの建材は、先の魔王ベルセリアによる戦闘によって、付近に散らばっていたもので、使えそうなのをピックアップしたものであった。 ここで麗奈は、前回と同じ要領でカタルシスエフェクトを発現――そこから手際良く、心のカケラを回収する。 後はそれを基に、作業台の上で、久美子の支給品である『点滴セット』に、麗奈の血液を混ぜ合わせ、調整(ビルド)――。一般的に抗毒血清を創る際は、抗体を含む血液を純化及び濃縮を繰り返すことで完成へと至る訳だが、精霊ルビスが齎した『ものづくり』の力は、この過程を大幅に短縮し、短時間での完成に漕ぎつけた。 無惨の毒は強力すぎるが故、完全な解毒には至らなかったが、それでも生成された抗毒剤の効果は明白で、ロクロウは苦痛を感じなくなり、顔色は生気を取り戻し、乱れていた呼吸は鎮まることとなった。 「あなたのために、やったのではありません。 あくまでも、私達のために、あなたを生かしただけですから……」 「……だとしても、お前が俺の恩人であることには変わらない。 この借りは、必ず返す……」 「……。」 ロクロウからの謝意の言葉に、久美子はぷいと顔を背ける。 「言っときますけど、私は今でも、あなたのことが許せないですから」 「……そうか……」 以降は、沈黙――。 何とも気まずい空気だけを残して、両者はただ同じ場所を目指して歩を進めていく。 (――まずは一人……。戦力は確保できた……) そんな久美子とロクロウのやり取りを眺めながら、麗奈は心中で、そのように独りごちる。 ロクロウは自分たちの計画に完全に賛同しているわけではない。 しかし、今回の抗毒剤の一件で、彼が久美子に恩義を感じているのは事実であり、その感情を枷として利用はできるはず――。 彼が付け狙う無惨や魔王ベルセリアに関しては、此方としても大きな脅威になりうるので、共通の敵の排除という点を鑑みても、「共闘」という形で、こちらの戦力として見込んで差し支えないだろう。 (……問題は――) チラリと後ろを振り返ると、琴子と彼女が腰掛ける車椅子を押すあかりの姿が目に入る。 (あの二人か……) 麗奈たちの計画に対する彼女たちの姿勢は、形式上は「保留」となっている。 まずは、麗奈たちが語った話の信憑性を確かめるという意味でも、麗奈の能力発現について言及のある『レポート』を確認したいとのことだ。もしくは、他に『レポート』の内容を把握している人間と接触して、証言を得るのも良いとのこと。 麗奈自身もヴァイオレットと再会したい手前、こうして遺跡に赴くのは好都合ではあるが、仮に彼女達が確証を得たとしても、本当に協力してくれるかは些か疑問が残る。 この殺し合いで、友人を立て続けに失ったというあかりは、『殺し合いをなかったことにする計画』に惹かれていたようにも見えた。 自分達と同じ年頃の女の子で、自分達と同じように身近な人達を失ったのだ。 その気持ちは手に取るように分かる。 しかし、もう一人の少女――岩永琴子については、底が知れない……。 あかりのように動じる様子もなく、麗奈からの圧を掛けた問答に対しても、あくまでも冷静に理詰めをして、話の主導権を握られてしまった。 すんなり味方になってくれるということであれば問題ないが、どうにも腹に一物あるように思えて仕方がない。 最悪、彼女が自分達を否定してくることも想定しなければならない。 そして、もしもそのような事態に陥った場合は―――。 (申し訳ないけど、殺すしかないか……) ビキビキビキ――。 無意識のうちに片腕に力が入り、青白い筋が浮かび上がる。 麗奈は、既に自身の手を血に染め上げている。トランペットを吹くために、技術と情熱を宿してきたその手を……。 しかし、それは鬼化による食人衝動に因るものであったり、自己の存在を守る為の防衛本能から来るものであったりと、明確な害意を以って他者を殺めようとしたことはなかった。 しかし、今の彼女は、その一線を越えることに一切の躊躇いはない。 それを為した時、麗奈は真の意味で人間を辞めることになるだろう。 人間に戻るために、人間を辞めるという矛盾――。 そんな矛盾の道を前にしても、麗奈の覚悟に揺るぎはなかった。 今の麗奈には、彼女を受け入れ支えてくれる親友が傍にいてくれるのだから。 (――志乃ちゃん……、高千穂さん……、アリア先輩……) 覚悟を決めている麗奈とは対照的に、その後方で車椅子を押すあかりは、葛藤の最中にあった。 悲しみ癒えぬうちに、提示された一つの可能性――。 もしも、久美子が言うように、殺し合いをなかったことにして、皆を取り戻すことができるのであれば……と、その可能性に縋りたいと思う反面、どこか違和感―――引っかかるものを覚えてしまう。 仮に全てを無かったことにできたとしても、それでハッピーエンドとならないような気がしてならない。 何よりも、アリアに、志乃に、高千穂と――。 この殺し合いで出会ったアンジュ、ミカヅチ、カタリナ――。 それぞれの信念を貫いて散っていった者達の意思を否定するようにも思えてしまうのだ。 (……ねぇ、皆――。私どうすれば良いかな……) 身も心もおんぼろとなった少女は、傷心と苦悩に苛まれながら、手に持つグリップを強く握り、ただひたすらに車椅子を進ませる。 その脳裏に、亡くなった皆の姿を思い浮かべながら……。 (……状況は芳しくありませんね……) そんなあかりが押す車椅子に身を預けている琴子は、あかりの動揺を傍らから感じ取りつつ、思案に暮れていた。 知恵の神は思考する-――久美子達が提示した計画を如何にして切り崩していくべきかを。 琴子は、この殺し合いにおいて、「出来得る限り、敵を作らない」という方針の元、行動をしてきた。 明らかに危険思考を孕んでいた夾竹桃達との取引を応じたように――。 殺し合いに乗った側のメアリ・ハントと停戦協定を結んだように――。 『ブローノ・ブチャラティ』を騙る青年を警戒しつつも、内包していたように――。 あの場では事を荒げないよう、久美子達の計画にも同調の姿勢を垣間見せつつも、最終的には立場保留という形に落ち着けた。 しかし、秩序を守る存在として、彼女らが提唱する計画を認めるつもりはない。 そもそも、μに久美子達が主張するような、全てを都合よくリセットできる力を保有しているのかについても懐疑的である。 かつてアリアから聞かされた話を鑑みるに、μの願望機たる絶大的な力は、メビウスの中でのみ影響を及ぼす。 現実への干渉については、せいぜいその魂を仮想世界に引き込む程度であり、虚構の鳥籠の中で死滅した『現実』の魂を蘇らせることは出来ない。 精々、『現実』の魂に似せたものを創造するのが関の山である。 仮に、以前に琴子が提唱したように、この殺し合いのフィールドに立つ自分達の存在が、そもそも女神によって創造されたものということであれば、復元は可能かもしれない。 しかし、そんな歪な方法での願望の成就は、果たして久美子達が望んだものとなるのだろうか。 故に、琴子は彼女たちの考えを真正面から否定するつもりでいる。 しかし、今はその時ではない。 現状はロクロウを取り込んでいる久美子達の勢力は3名で、あかりもまた、動揺している状況だ。 ここで対立しても旗色が悪い。 であれば、遺跡にいるであろう参加者集団などと合流し、オーディエンスを増やした上で、頃合いを見て、皆が納得するように否定するのが良いだろう。 その場合、逆上した麗奈達が襲い掛かってくる可能性もある。 彼女たちの思考に則れば、「どうせ後で蘇生させるから」という免罪符を掲げて、邪魔する他者の排除も厭わない、と十分に考えられる。 (だとしても、やり切るしかありませんね) 琴子とて、出来るうる限り、争いごとは増やしたくはないが、それでも彼女たちの計画を認めるわけにはいかないのだ。 間もなくやって来るであろう、次の死線――。 それに一抹の不安を覚えながら、琴子はまたしても、この会場のどこかにいるであろう九郎に会いたいと思うのであった。 【E-4/夜中/一日目】 【黄前久美子@響け!ユーフォニアム】 [状態]:全身に火傷(冷却治療済み)、右耳裂傷(小)、右肩に吸血痕、確固たる想い [役職]:ビルダー [服装]:特製衣装・響鳴の巫女(共同制作) [装備]:契りの指輪(共同制作) [道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1、デモンズバッシュ@テイルズオブベルセリア、セルティ・ストゥルルソンの遺体、シグレ・ランゲツの片腕、クロガネ征嵐@テイルズオブベルセリア、点滴セット複数@現実 [思考] 基本:歌姫(μ)に勝って、その力を利用して殺し合いの全てを無かったことにする。……そうすれば、麗奈は人間に戻れるから。 0 一旦は、皆と一緒に遺跡に向かう 1:もう、麗奈の事は裏切らない、――絶対に。 2:麗奈の為なら、この命だって捧げても良い。ただ今はまだ死ねない、麗奈を悲しませるから。 3 ロクロウさんは好きじゃないけど、利用はするつもり。 4:例え隼人さん達を敵に回したって、もう私は迷わない。望みを叶えるまで逃げ切ってやる。 5:岩永さんとあかりちゃんも、仲間になってほしい 6:魔王ベルセリアという存在には最大限の警戒 ※少なくとも自分がユーフォニアムを好きだと自覚した後からの参戦 ※ロクロウと情報交換を行いました ※ビルドの『ものづくり』の力が継承されました。現状は麗奈と一緒に衣装やら簡単なアイテムを作れる程度に収まっています。 ※麗奈がビエンフーから読み取った記憶を共有し、ビエンフー視点からのロワの記録を入手しました。 ※μの事を「楽器」で「願望器」だと独自の予想しました 【高坂麗奈@響け!ユーフォニアム】 [状態]:鬼化(無惨の呪い無し)、新月の花嫁、確固たる思い、左腕の肘から先が消失 [服装]:特製衣装・新月の花嫁(共同制作) [装備]: [道具]:高坂麗奈のトランペット@響け!ユーフォニアム、危険人物名簿@オリジナル [思考] 基本:久美子の願いを手伝う。……人間に戻れたら、私は滝先生にもう一度―― 0 一旦は、皆と一緒に遺跡に向かう 1:最後まで、久美子と一緒に。 2:なるべく久美子には無茶はしてほしくはない。 3:ヴァイオレットさんと話をしたい。……出来れば、仲間になって欲しいかな。 4:岩永さん……敵に回るのであれば容赦はしないから 5:無茶にもほどがあるけど、音楽勝負なら負けてやらないから。 6:水口さんや月彦さんとはいずれ決着を付けないといけない。 7:まずは、力の使い方に慣れたい。 8:魔王ベルセリアという存在には最大限の警戒 ※『ビルダー』黄前久美子の血肉を喰らい、精霊ルビスの情報を取得した結果、無惨の呪いから解放されました。 これ以上無惨の影響を受けることは有りませんが、無惨の血による鬼化自体は治っておりません。 ※首輪の分解・解析により首輪の中身を知りました。 ※首輪の説明文を読み、「自分たちが作られた存在」という可能性を認識しました。 ※『覚醒者』について纏められたレポートを読み、覚醒者『006』が麗奈、『007』が無惨であることを認識しました。 ※ 精神の安定に伴い、カタルシスエフェクトの発動が可能となりました。形状は後続の書き手にお任せします。 ※己の『奏者』としての特別(ちから)を自覚しました。それがどう作用するか後続の書き手におまかせします。 ※ビエンフーから記憶情報を読み取り、ビエンフー視点からのロワの記録を入手しました。 ※鬼化した身体の扱い方にある程度慣れました。現状では鬼舞辻無惨の『管』等や、対象によって可能不可能の差異はありますか血を介しての情報の読み取り等が可能です ※久美子の血を飲むことで一時的に『夜の女王』形態になります。この場合左腕が一時的に再生し、通常時を遥かに超える出力が可能です。 【ロクロウ・ランゲツ@テイルズオブベルセリア】 [状態]:全身に裂傷及び刺傷(止血及び回復済み)、疲労(極大)、全身ダメージ(極大)、反省、感傷、無惨の血混入、右腕欠損、言いようのない喪失感 [服装]:いつもの服装 [装備]: オボロの双剣@うたわれるもの 二人の白皇、ロクロウの號嵐(影打ち)@テイルズ オブ ベルセリア [道具]:基本支給品一色、不明支給品0~2 [思考] 基本:主催者の打倒 0: 一旦は、皆と一緒に遺跡に向かう 1: 久美子達の計画に賛同するつもりはないが、久美子には借りがあるので、暫くは共闘するつもり 2: 無惨を探しだして斬る。 3: シグレを殺したという魔王ベルセリア(ベルベット)は斬る。 4: 號嵐を譲ってくれた早苗には、必ず恩を返すつもりだが…… 5: 殺し合いに乗るつもりはない。強い参加者と出会えば斬り合いたいが… 6: マギルゥ、まぁ、会えば仇くらい討ってはやるさ。 7: アヴ・カムゥに搭乗していた者(新羅)については……。 [備考] ※ 参戦時期は少なくともキララウス火山での決戦前からとなります。 ※ 早苗からロクロウの號嵐(影打ち)を譲り受けました。 ※ オシュトルからうたわれ世界の成り立ちについて、聞かされました。 ※ 垣根によってマギルゥの死を知りました。 ※ 無惨との戦闘での負傷により、無惨の血が体内に混入されました。解毒を行わない限り、数時間以内に絶命します。 ※ 更新されたレポートの内容により、ベルベットがシグレを殺害したことを知りました。 ※ 久美子が作った抗毒剤によって、毒は緩和されており、延命に成功しました。 ※ 殺し合いの全てを無かったことにしようとする久美子達の計画を知りました。 【間宮あかり@緋弾のアリアAA】 [状態]:覚醒、白髪化、痛覚が鈍くなっている、体温低下、情報の乖離撹拌(進行度31%)、全身のダメージ(大)、精神疲労(中)、疲労(絶大)、左中指負傷(縦に切断、包帯が巻かれている)、深すぎる悲しみ、久美子たちの計画に対する迷い [服装]:いつもの武偵校制服(破損・中) [装備]:スターム・ルガー・スーパーレッドホーク@緋弾のアリアAA [道具]:基本支給品一色、不明支給品2つ [思考] 基本:テミスは許してはおけない。 0:一旦は、皆と一緒に遺跡に向かう 1:黄前さん達の計画については……。 2:ヴライ、琵琶坂、魔王ベルセリア、夾竹桃を警戒。もう誰も死んでほしくない 3:『オスティナートの楽士』を警戒。 4:もし会えたらカナメさんに、シュカさんの言葉を伝えないと 5:メアリさんと敵対することになったら……。 [備考] ※アニメ第10話、ののかが倒れた直後からの参戦です ※覚醒したことによりシアリーズを大本とする炎の聖隷力及び「風を操る程度の能力」及びシュカの異能『荊棘の女王(クイーンオブソーン)』、そして土属性の魔術を習得しました。 ※情報の乖離撹拌が始まっており。このまま行けば彼女は確実に命を落とします。 ※ 殺し合いの全てを無かったことにしようとする久美子達の計画を知りました。 【岩永琴子@虚構推理】 [状態]:健康、新たなる決意、無意識下での九郎との死別への恐れ、義足損壊、車椅子搭乗中 [服装]:いつもの服、義眼 [装備]:赤林海月の杖@デュラララ!! [道具]:基本支給品、文房具(消費:小)@ドラゴンクエストビルダーズ2、ポルナレフの車椅子(ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風)、電子タブレット@現実 [思考] 基本:このゲームの解決を目指す。 0:一旦は、皆と一緒に遺跡に向かう 1:麗奈と久美子を警戒。彼女たちの計画を認めるわけにはいかない。 2:『ブチャラティ』を騙る青年(ドッピオ)を警戒。 3:魔王と琵琶坂永至、あの二人をどうにかする方法は…… 4:あかりさん、貴方は…… 5:九郎先輩との合流は…… 6:紗季さん…… 7:首輪の解析も必要です、可能ならサンプルが欲しいですが…… 8:オスティナートの楽士から話を聞きたいですね [備考] ※参戦時期は鋼人七瀬事件解決以降です。 ※アリアから彼女が呼ばれた時点までのカリギュラ世界の話を聞きました。 ※この殺し合いに桜川六花が関与している可能性を疑っています。 ただし、現状その可能性は少ないと思っています。 ※リュージからダーウィンズゲームのことを知っている範囲で聞きました。 ※夾竹桃・ビルド・隼人・リュージ・アリアと共に【鬼滅の刃、虚構推理、緋弾のアリア、ドラゴンクエストビルダーズ2、新ゲッターロボ、ダーウィンズゲーム、東方Project、とある魔術の禁書目録、スタンド能力、うたわれるもの、Caligula】の世界観について大まかな情報を共有しました。 ※今の自分を【本物ではない可能性】、また、【被検体とされた人間は自ら望んだ者たちである】と考えています。 ※カタリナとあかりのこれまでの経緯を聞きました。 ※琴子、あかり、ドッピオ、メアリ、竜馬の五人でこれまでの経緯と、生存者についての情報を交換しました。 ※ 殺し合いの全てを無かったことにしようとする久美子達の計画を知りました。 ※電子タブレットにはこれまでの彼女の経緯、このゲームに関する考察が記されています。 前話 次話 追跡セヨ -夜宵のNext Order- 投下順 暴走特急 前話 キャラクター 次話 よるのないくに ~さよならビエンフー~ 高坂麗奈 戦々凶々(前編) よるのないくに ~さよならビエンフー~ 黄前久美子 戦々凶々(前編) Dread Answer 岩永琴子 戦々凶々(前編) Dread Answer 間宮あかり 戦々凶々(前編) 一虚一実 ロクロウ・ランゲツ 戦々凶々(前編)
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本文より 魚屋では仁子さんが、店の中に溜った水を外へ掻き出しているところだった。二人を見るなり手に持っていたバケツを放った。沈まずに、ゆっくりと漂った。魚が一匹も入っていない硝子ケースの上に、虎猫が居座っている。 仁子さんは、血と腫れの引かない千種の顔を正面から見、遠馬を見て、 「さっきあの男、来たんよ。琴子さんおらんことなった言いよった。また、あの目になっちょった。あんたは、なんしよったんかね。」 「俺が、社に行っちょきゃよかった。」 「社でかね。社で、社であいつがこうしたんか。」とまた千種を見、「うちが最初に、なんとかしとくべきじゃったわ。」 作品解説 舞台は昭和63年の夏、地方都市の「川辺」と呼ばれる地域です。「川辺」とは、上流の方は住宅地の下になり、下流の方は国道の下になるため、表面に露出しているのが二百メートルほどにすぎない川の沿岸にできた集落です。他の地域と比べて開発が遅れており、下水がそのまま川へ流れ込むような不潔で陰鬱な地域なのですが、しばしば近代文学で描かれるような、差別/排除という日本の村社会のドロドロした因習ではなく、汚れた川の自然描写と、村社会に還元されない個人の情念のドロドロが本作品の読みどころになります。 主人公の遠馬は高校2年生で、父親の円(まどか)と、その愛人の琴子と3人で「川辺」に住んでいます。遠馬の実母の仁子は川を挟んで遠馬たちのすぐ近くの魚屋に住んでいます。本作品においては遠馬、円、仁子の3人の描写に特に力が入っているのですが、遠馬、円が非常に分かりやすい行動原理を持っているのに対し、仁子の行動原理は少し不可解なものになっています。仁子は遠馬を産んで1年ほどで家を出たのですが、それは円がセックスの際に暴力を振るうためでした。円の行動原理はこの性欲=暴力というシンプルなものであり、仁子に限らず、セックスの最中であれば誰であろうと(もちろん愛人の琴子にも)暴力を振るいますが、それ以外では暴力を振るうことはありません。円は自身のこの性癖について自省することなく、平然と生きているのですが、どうやらその性癖を受け継いでしまったらしい息子の遠馬は、ひどく苦悩します。遠馬は一つ年上の千種という女性と交際しており、何度もセックスを重ねているのですが、しばしば暴力への衝動に駆られ、ついには彼女の首を絞めてしまいます。彼は自分に流れる父の血を恐れるのですが、その父に対する嫌悪を醸成したのが他ならぬ実母の仁子なのです。 仁子はたびたび円への憎悪を遠馬に語ります。もちろんセックス中の暴力についても生々しく語り、その円の血を遠馬が引き継いでいること、そして遠馬が確実に円と同じ道をたどることを不気味に予言します。仁子は戦争で右手を失った障害者なのですが、千種が決して美しい顔立ちとはいえないことと重ね合わせて、性欲さえ満たされれば、外見上の容姿などまったく問題としないところも円と遠馬の相似をみたのでしょう。そして仁子は遠馬が千種に対して暴力を振るったことも素早く察知し、自分が円に暴力を振るわれた際、本気で殺そうと思ったこと、やがて千種から復讐されることを覚悟するようにと遠馬に語ります。物語はここから急展開を迎え、愛人の琴子が妊娠したまま家出し、逆上した円が千種を強姦するという事件が起こります。そして円に復讐を決行したのは遠馬ではなく仁子でした。仁子は事件の報告を聞くや、すぐに家を飛び出して円を刺し殺します。ここにおいて、仁子が円に対して抱いていた憎悪・殺意が本物であったことが示されるわけです。 この小説は遠馬が主人公であり、その仮想敵として円が描かれているのですが、そもそも両者の関係性を生成・助長したのが仁子であり、その終止符を打ったのも仁子ということになります。一見すると分かりやすい、父と子の相克のドラマを演出しておきながら、約20年越しの復讐によって一気に物語を支配してしまう仁子の圧倒的な存在感。物語の構図が分かりやすいようで分かりにくく、古いようで新しい、刺激的な作品です。 主な登場人物 ■篠垣 遠馬(しのがき とおま) 高校2年生で17歳。千種と交際している。円と琴子と3人暮らし。 ■篠垣 円(まどか) 遠馬の父。50歳近い。職業不詳。セックスの最中に相手に暴力を振るう性癖がある。 ■仁子(じんこ) 遠馬の母。60歳近い。戦争中、空襲により右手を失い、義手をつけている。円と別れてすぐ近くの魚屋に一人で住み、経営もしている。 ■会田 千種(あいだ ちぐさ) 高校3年生で、遠馬たちのすぐ近所に住んでいる。遠馬と交際している。 ■琴子 円の愛人で一緒に住んでいる。35歳。飲み屋街の店で働いている。 ■アパートの女 遠馬たちの家のすぐ近所に住んでいる売春婦。40歳くらい。
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小粋などてら 雅致的和式棉袍【寒冬腊月,桌炉,睡大觉】 「不过是件和式棉袍,为何竟如此有品位!」 『2』和『4』中出现的道具之一。在『4』有装备后提升容姿的功效。 简介 「どてら」写作汉字是「褞袍」,是袖子很宽大的长款居家用防寒和服,衣服夹层里是保暖用的棉,也可做睡衣。 『2』是水无月琴子于第3年圣诞舞会上准备的圣诞礼物。 和琴子一贯爱用的和式棉袍款式相似,图案是星星。 『4』里是道具店440售卖的服装之一。 通关6人的GOOD ENDING后,下一周目会上架。 穿着后容姿上升5点。 会买的人一定是对琴子爱得深沉的老心跳玩家了。 相关页面 道具
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「殺し合い、ですか」 ベレー帽を被った、ふんわりとした雰囲気のお嬢様が小さく呟いた。 中学生のように見える風貌ながらも、どこか神々しい雰囲気を併せ持つ彼女の名前は岩永琴子。神々しいというのもその通りであり、彼女は”妖怪”、”あやかし”、”怪異”、”魔”そういったもの達の秩序を守る知恵の神となった少女である。 本来であれば、そういったもの達は何処にでもいる。普段は物陰や樹木の梢に潜み、人々をひそひそと窺っているものである。だけど見渡せど見渡せどその姿が見当たらない。 時刻は深夜、そして『こういった場』というものは怪異を活気づかせるものだ、しかし、どこからも彼女の見知るもの達からの声が帰ってくることは無かった。 「ふむ……」 岩永琴子に殺し合いに乗るという選択肢はない。 彼女は秩序を守るものである。ならばやるべきことは秩序から反するこの状況の解決である。 現状の把握を済ませ、自分の手札を確認する。 支給品を確認しようとデイパックを開いて、 小人が飛び出した。 「あーーやっと出れたーーーー!ってYOU誰ーーーー!?」 〇〇〇 「少年ドールとは敵だったけどさ!あんなことされていいわけない!」 デイパックより飛び出たのはボーカルソフト、アリア。μと同様に作られたバーチャドールの一人である。 彼女もまた先ほどの会場でルール説明を受けていた。しかし、彼女は参加者とは異なり支給品としての扱いで参加している。その証拠に送られたのは会場ではなくデイパックの中。そして首には参加者にあるはずの首輪が存在しない。 「それにμだって殺し合いなんてしたく無いはず!きっとテミスって奴に利用されてるに決まってる!」 本来であればμは人々の幸せを何より大切にするアイドルだ。いくら命じられたからといって多くの人々を不幸にする人殺しに手を貸すわけない。 それは彼女と共にメビウスを作ったアリアは何よりも知っている。 「……なるほど、話はわかりました」 自我を得たボーカルソフトに話しかけられるという現実離れした状況にも、岩永琴子は平然と受け入れる。怪異と共に現実を生きる彼女にとって、このような相手とは慣れたものだ。 人の想像力は時に怪異を生み出す。 彼女と共にいる怪異達も元を正せば人の想像力に還元されるといわれている。 だが、本来であればμやアリアのようなフィクション上のキャラクターが実態化することはありえない。 それは受け手側が「作り物」であると受け止め、「作り物」として広まるためである。 人の想像力が「本当にいそう」と感じない限り、虚構は血肉を得ることはない。 逆にいえば、「本当にいそう」と人に信じさせれば、虚構は実態を得るのである。 (ボーカルソフト、なるほど歌か) 歌。 それは古来より情報伝達として使われていた媒体である。 人の歴史を紐解けば、歌と信仰には切り離せない関係にあることは明白だ。 時には民謡として祭事を伝え。またある時には賛美歌として神を称えることもある。 理想世界の女神を生み出すのにこれほど相応しいものはないだろう。 歌を通じて、集合意識が作り上げた現代の怪異(アイドル)、それがμとアリアなのだろうと岩永琴子は察する。 誰でも作曲できるボーカルソフトという形式。インターネットを通じて世界中どこでも聞かせることができる歌という媒体。鋼人七瀬まとめサイトのように短期的に不特定多数の人間の頭の中にイメージを根付かせ、信仰を集めることができるかもしれない。 想像力の怪物。多くの人々が救いを求めて彼女の存在を望んだのならば、自我と実態を得ることはおかしなことではないだろう。あくまでメビウスという限られた空間内での話ではあるが。 (μ……ギリシャ神話のMuse由来でしょうか、歌の神様には相応しい名前ですね) 〇〇〇 互いの情報交換を終わらせ、岩永琴子は話を切り出す。 「おそらく、この世界はメビウス、あるいはそれに近い性質を持っているのは間違いないでしょう」 先ほどの会場にて、テミスが言った言葉を今一度思い出す。 『それと、もう一人紹介するわ。私の隣にいるこの子は、μ。 彼女には、今回の戦場となるゲーム会場を用意して貰ったわ』 「この世界には”妖怪”、”あやかし”、”怪異”、”魔”そうした者達の姿がありません。まるで作られたばかりのセットのようです」 テミスはμにゲーム会場を用意して貰ったと明言している。ならばメビウスのようにμの力でこの世界を作ったことは想像に難くない。 「しかし、本来メビウスの中では自分の望んだ姿になるのでしょう?だとしたら私が普段の姿ままというのは妙ですね」 「ええと、琴子は今何歳?もしや中学生だったり?」 「出来れば名前ではなく名字で呼んでください、それに私は活きのいい大学生ですよ、これでも」 「大学生!?マジかー、見えないわ」 それを受けて岩永琴子はどこかムッとした顔になり、矢継ぎ早口に言葉を紡ぐ。 「だいたい本当にどんな姿にでも慣れるなら、私だって紗季さんみたいな高身長黒髪ストレートな大人な身体になりますよ、そして九郎先輩を誘惑してですね、スイートルームで素敵な夜を」 「あーストップストップ、アタシが悪かった」 アリアが品の無い妄言を止めさせ、岩永琴子は小さく咳払いをする。 再び空気はシリアスモードへと戻り、話は次の議題へ切り替わる。 「ひとつ、お聞きしたいことがあります」 議題内容は、この殺し合いにおいて彼女が最も不可解に思うこと。 「メビウス内で死亡した人はどうなりますか?」 それは桜川九郎を参加させるという点だ。 不死者である彼を参加させては殺し合いなんて成立するはずが無い。 だが、逆に言えばそれを成立するのであれば、不死者を殺す手段があるということである。 アリアはその言葉を受け、悲痛な表情で呟くようにして答えた。 「……メビウスでの死は、魂の消失と同じ……現実でも同じように……」 アリアの脳裏に浮かぶのは、ランドマークタワーで事故死した少年の姿。メビウス内での死によりその命を失った人物である。 「……辛いことをお聞きしました」 本来μに招かれた者は魂だけ抜かれた状態でメビウスへと招かれる。その間現実世界にある身体は言わば植物人間のような状態になっている。 メビウス内で死亡したものは魂を失うのと同じだ。魂のないものはメビウスに居ることすらできずに消失し、死に至る。 (いくら九郎先輩が不死の肉体を持っているといえど、魂そのものを失ってはどうなるか……この世界での死では復活できない可能性がありますね……それに……) 「アリア、念の為に確認しておきます」 「え、何?」 「『桜川六花』という名前に聞き覚えはありませんか?」 「さくらがわ、りっか…うーん聞き覚えは無いけど、その人がどうかしたの?」 「まあ、ちょっとした仲ですよ、一時期同棲してたぐらいの」 「どういう関係よそれ……」 桜川六花。彼女は恋人である桜川九郎の従姉にあたる人物である。 そして、かの鋼人七瀬事件の黒幕である。 この会場における桜川九郎の不死性がどう扱われているか、岩永琴子はまだ把握していない。 仮にμが桜川九郎の不死性を失わせた状態で参加させていると仮定した場合、それはμが桜川六花の目的である、普通の人間に戻るという願いを実現できることを証明する。 (だが、仮に不死性を打ち消すことが出来るとしても、それはメビウス内での話だ……しかし、もし現実にその力を及ぼすことが出来るとすれば……) 人の想像は、あらゆる可能性を秘めている。 『神様だって作れるかも』それはかつて、他でもない岩永琴子自身が言った言葉だ。 かつての鋼人七瀬のように、μを想像力の怪物として現実に召喚することができれば、その実現も理論上可能となる。目的の為なら手段を選ばない彼女ならば、それを行おうとしている可能性は否定できない。 (しかし仮に六花さんが裏に居るとしても、殺し合いを行わせる事との関連性を見いだせません……なんにせよまだ情報不足ですね) 〇〇〇 「これからの方針を決めましょう、すべきことは3つです」 とん、と杖で床を叩き、これまで得られた情報より方向を見定める。 1. 「優先して対処すべきなのは首輪でしょう」 自身の首を指差して、岩永琴子はそう話す。 「命を握られているという現状は、ゲームの打破を目指すにおいてもっとも不都合なものですから、当然といえば当然です」 それに、と一言付け加えて 「殺し合いをさせるのに、わざわざ首輪なんて使うのは些か不思議ですね」 「どうゆうこと?」 「μはわざわざ首輪なんて使わなくでも、いつでも我々を殺せる力を持っています、先程の会場で少年ドールさんにやったように……それにメビウスの中でも首輪を付けて管理していた訳では無いでしょう?」 事実、μはメビウス内で少なくとも500名以上の人間を招き、その者達の幸せを一人で管理していた。それより少ない72名の管理するのに、首輪という道具を用意したテミスは確かに不思議だとアリアは頷く。 「脱出を防ぐにせよ、この世界がメビウスのような箱庭なら逃げる手段はありません、禁止エリアを設けるのは参加者同士を出会いやすくするためでしょうけど、μの力があれば会場を作り変えるなりで工夫も出来るでしょう」 「じゃあ首輪を付ける理由って?」 「もしかしたら、首輪に命を握る以外の意味があるかもしれませんね」 「意味?」 アリアは思いつかないと言いたげな様子で首を傾げる。 「例えばアリア、あなたの首には首輪は付いていません、これは何故だと思いますか?」 「えーと、参加者じゃないからかな?」 「そう、参加者には首輪を付けているのに、アリアのように自由に動ける者もいるというのは違和感があります、完全なゲームの成立を目指すなら万全を期しておくべきです」 ならば、と一呼吸おいて 「『首輪を参加者に付ける必要があった』からかもしれません」 「それはえーっと……なんで?」 「まだわかりません、考えられるのは首輪に爆破以外の機能がある可能性ですが……あれこれ考えるより解析したほうが手っ取り早いですね」 「解析かぁ……アタシの力が戻ったら管理者権限で調べられるかもしれないけど……」 「それに、私たちがこうして殺し合いの打破について話しているに関わらず、テミスは首輪を爆破するそぶりも見せません、おかしいとは思いませんか?」 「あ、そういえば確かに」 「まあ『ゲーム会場から脱出や我々運営に危害を及ぼすような行動をしたら、爆発するように設定してある』という言葉通りに受け取れば、行動に移さずにこうして話すだけなら問題ないのでしょう、詳しい爆破条件は調べる必要がありそうですが」 テミスの目的を探るのにも、この殺し合いの打破を目指すにも、なんにせよ首輪の解析は必要になることだ。 出来ることならサンプルが欲しい。そう呟いて次の話題に移る。 2. 「次にテミスについての情報収集です」 主催者であるテミスについては両者ともに存じない人物である。故に彼女がどのような人物で、どのような能力を持っているのかは当然把握していない。 「先ほどのテミスの言葉を思い出してみてください」 『一部の方を除き、ほとんどの方とは初対面かと存じますので、まずは自己紹介を…。 私、今回のゲームの支配人を務めさせていただきます、テミスと申します。 どうぞ、お見知りおきを』 「『ほとんどの方とは初対面』、『今回のゲーム』まるでこのような催し物を何度も開いたような言い方ですね」 「じゃ、じゃあテミスって何度もこんなゲームを開いてるの!?」 「だとした場合、参加者の中には過去のゲームから生き残った者がいることになります」 「え!それってマズイんじゃないの?」 マズイ、というのはこんな殺し合いゲームに何度も生き残るような危険人物が居ることに対してだ。 元の世界で楽士達と戦っていたとはいえ、アリア自身に人を守れるような戦闘能力は無い。岩永琴子もカタルシスエフェクトのような能力を持ってない。殺人に抵抗のない危険人物に襲われては彼女が殺される危険が大きい、それを危惧した発言だ。 「ですが、そうした方々……まあ仮に『リピーター』としましょうか、テミスの目的や『ゲーム』について情報を得るにはリピーターとの接触を図る必要があります」 岩永琴子もその危険性は承知している。しかし、この事件の解決を目指すうえで、いつかはしなければいけないことである。 「まず考えられるテミスの目的として、単にこの殺し合いゲームが見たいだけという説ですが……」 有名なスリラー小説に、首輪により命を握られた中学生達が殺し合いをさせられるという話がある。一時期ミステリー界隈でも話題になったその本の内容を、かつてミステリー研究会に所属していた彼女は知識として知っている。彼女がその模倣犯であるという説だ。 「この可能性は低いです、過去に何度も開催しているわけですからね、むしろこのゲームを通じてなんらかの目的を果たそうしていると考えたほうがしっくりきます、それにμの力を借りているように、他に協力者が存在し、テミスとは別の目的を抱えている線も否定できません」 その場合、背後にいる可能性として考えられるのは桜川六花だ。 しかし、彼女の目的と殺し合いを行わせる事との関連はまだ結びつけていない。それに自分の知らぬ人物が関わっている可能性もある。 「岩永、冴えてるねぇ」 ここまでの岩永琴子の考察を聞き、アリアは、ほうほうと頷く。 最初に出会ったのが頭脳明晰な彼女で良かったと心の底から思った。 3. 「続いて、オスティナートの楽士の捜索です」 「ほうほう、なるほどなるほど~ってちょっと待てい!なんで楽士!?」 「当然、理由はあります」 理由としてはこうだ、メビウスはオスティナートの楽士がμに楽曲を提供することでを維持されている世界である。 しかし、最初の会場でテミスは楽士の一人である少年ドールを殺害している。 この会場がメビウスに近い性質で維持されているならば、μの信望者を殺すこの行為は世界の寿命を削ることに繋がる不可解な行為である。 μの存在を信じるものがいること自体が、μが存在できる理由であると岩永琴子は考えている。 故に彼女の信者を生み出す楽士を殺すことは彼女自身の存在の否定、そしてメビウスの崩壊へと繋がる危険性を含んでいる。 「おそらくこの会場もμの力で維持されているでしょう、彼女に力を与える楽士達が居なくなったとき、この世界がどれほど保つのか見当も付きません」 鋼人七瀬は彼女を信じるものが多数居たことであれほどの力を得ている。いわばその逆だ。μの信者を生み出す楽士という柱を失えば、μは弱体化する可能性があると岩永琴子は予想する。 現にアリアが本来の力を失ってこのような姿になっているのも、メビウス内に居る者達の多くが、μ以外のアイドルの存在を認めていないせいである。 μは自分自身の命を削っていることに気づいていない。 「あるいは3名の楽士が全滅しても、運営に支障の無いようにしている可能性もありますね」 それは即ち、参加者として呼ばれていない6名の楽士がテミスの協力者にさせられている可能性。帰宅部側へ裏切ったカギPを除いた、スイートP、ミレイ、イケP、シャドウナイフ、ソーン、そしてアリアも詳細を知らないLucidなる謎の楽士。 「これは極論ですが、そのLucidさんの正体がテミスである可能性も無いとは言えません」 「ホントに!?」 「もし、そうであった場合、楽士の皆さんはテミスについて何か存じているかもしれませんね」 「どうだろう?楽士連中ってあんまり仲良く無さそうだけど……」 「まぁあくまで可能性ですからね、違うならこの仮説は棄却されるだけです」 そう、これらは仮説、実証はまだされていない。しかし、どちらにせよμに近い人物である楽士達はこのゲームでは重要な立ち位置となりうるだろう。 そう予想を立てて、方針決めは幕を閉じた。 「私の最終目標はこの状況の解決です、このゲームを即刻中止させ、テミスや黒幕の目的を実現不可能にすれば良いわけですが……」 真剣な表情でアリアの方に向き合い、淡々とした口調で続ける。 「最悪の場合、μを消すことになるかもしれません」 琴子の目的は秩序に背いた、この殺し合いというゲームの中止だ。 μがこの世界を作ったのならば、彼女を破壊すれば殺し合いの継続は当然不可能になる。 怪異達から慕われる知恵の神といえど全ての怪異の味方をするわけでない。調和を乱す怪異に対しては虚構へと返すこともある。以前鋼人七瀬を虚構の存在に戻して事件に対処したように、μを破壊することになるかもしれない。 μはテミスに操られている被害者である可能性もあるが、正気に戻す方法が見つからなければその選択肢を選ぶ可能性はある。 「それは……」 彼女の言葉にアリアは口をつぐみ、答えられなかった。 この殺し合いに招かれる直前も、μは招いた人間たちの偏った思いを皆の願いだと信じ、自分を見失っていた。その矢先にこの殺し合いである。μの親友であるアリアといえどその心境は複雑なものであろう。 「もっとも、他の解決方法が見つかるなら、私としてもそれに越したことはありません」 そうして知恵の神と歌姫の戦いが始まる。 知恵の神が目指すは秩序の維持。 歌姫が目指すは帰宅部の仲間と大切な友達を救うこと。 〇〇〇 桜川六花は想像力の怪物から神のような存在を作らんとした。 神とは何か。 幾多の世界で世界で共通する概念。 世界によって呼び名も変わり。言葉の意味合いもまた変化する。 この殺し合いに招かれた者たちの多くはそれらと関わっている。 天族、あるいは聖隷。 ウィツァルネミテア。 神々が恋した幻想郷。 神話級シギル「火神槌」。 ヒノカミ。 恋心と闘争心に見入られた緋緋神。 黄金の精神と悪の救世主の始まりを作った究極生命体。 ゲッターに立ち向かった四天王。 天国へと誘う戦女神、またの名を妖精デュラハン。 死へと導く破壊の神 花の女神の名を与えられた自動手記人形。 そして知恵の神。ひとつ目いっぽん足のおひいさま。 虚構も怪異も神様も存在する、その存在を強く信じるものが居る限り。 nowhere(存在しない)ではなくnow here(ここにある)。 そこに無い虚構「 」をあると信じたとき、その意味は変わる。 幾多の信仰の顕在するこの世界で、知恵の神の向かう先は偶像殺し。 あるいはまた別の結末か。 未来はまだ決定していない、まだ虚構のまま存在しない。 【???/???/黎明/一日目】 ※現在地は後続の方にお任せします。 【岩永琴子@虚構推理】 [状態]:健康 [服装]:いつもの服、義眼と義足 [装備]:赤林海月の杖@デュラララ!! [道具]:基本支給品、ランダム支給品1(岩永琴子確認済み) [思考] 基本:このゲームの解決を目指す 1:九郎先輩との合流を急ぎましょう 2:紗季さんも探しますよ、流石に見殺しにはしませんて 3:首輪の解析も必要です、可能ならサンプルが欲しいですが…… 4:テミスや「ゲーム」についての情報が欲しいです 5:オスティナートの楽士から話を聞きたいですね [備考] ※参戦時期は鋼人七瀬事件解決以降です。 ※アリアから彼女が呼ばれた時点までのカリギュラ世界の話を聞きました。 ※この殺し合いに桜川六花が関与している可能性を疑っています。 【アリア@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-】 [状態]:健康 [思考] 基本:μを止める、だけど…… 1:帰宅部の仲間との合流 [備考] ※参戦時期は少なくてもシャドウナイフ編以降。琵琶坂の生死状況や詳しい時期はお任せします。 【支給品紹介】 【アリア@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-】 岩永琴子に支給。 いわゆる意志持ち支給品。緋弾のアリアとは関係ない。 μと同時期に作られたバーチャドール。 純粋無垢で可憐なμに対して、陽気で明るく親しみやすい性格をしている。 カタルシスエフェクトの発現及び、リミットを解除して大幅強化するカタルシスエフェクト・オーバードーズは彼女の協力無くしては行えない。 本来は成人女性並みの大きさだが、メビウス内ではμの力の方が大きいため、小人のような姿となっている。このロワでも同様にその姿での参戦となる。 逆に言えば力さえ与えれば元の姿に戻ることも可能ではある。 【赤林海月の杖@デュラララ!!】 岩永琴子に支給。 粟楠会の幹部の一人、赤林海月が使っている杖。極道幹部愛用の杖のため結構高そう。 赤林は罪歌の支配から逃れるため片目を失ったため、その歩行補助に使っていると思われる。 前話 次話 新(ひびけ!!)ユーフォニアム 変えたい未来、変わらない世界 投下順 「あなたが、その気持ちを伝えられますように」 前話 キャラクター 次話 GAME START 岩永琴子 ライズ・イン・ザ・フィクション
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Tea Stall 茶店【水信玄饼为什么那么难吃】 『2』里第1年和第2年文化祭上,茶道部的公开项目。 简介 不管主人公是作为负责布展的社员,还是身为来参观的客人,对此都只有用「偷工减料」来形容。 内容嘛,无非就是提供茶以及茶点,然后让客人自行看着办…… 有够随便的。 即便如此这里是个消磨时间的好地方,基本上女孩子们还挺吃这一套的。 如果和水无月琴子第3年同班,且她的心动度很高的时候,会在班级展出项目上提案开茶点。 之后开是开了,但和她的想法大相径庭:开的是让她敬谢不敏的,卖咖喱与咖啡的西式咖啡馆。 在追加约会能去的地方里也有茶店,能来这里的只有琴子、赤井焰和伊集院梅三人。 和风至上的琴子与追加约会中先走一步的赤井姑且不论,连梅的追加约会都在这里,有点出乎意料。 虽然还是按照惯例口口声声称主人公为庶民,但她对抹茶和团子也相当中意。 相关页面 文化祭 茶道部
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◆Oamxnad08k(◆s5tC4j7VZY)氏 氏が執筆した作品 019 これでいい 021 運命は、英語で言うとデスティニー 022 魔王、A-6に立つ 024 牝豹と竜 026 理想と現実はちがうけどできるだけ理想に近付きたい 028 現実・幻想・虚構 030 魔法少女の時間 031 温泉は殺し合いでは戦場。油断すると死ぬ 034 本当の気持ちと向き合えますか? 037 この両手でつかめるもの 039 バトロワ「青春!火吹き娘!」 042 岩永琴子の華麗なる推理 合計12話 氏が執筆したキャラ 登場数 キャラクター 二回 三千院ナギ、西沢歩、初柴ヒスイ、モルガナ、坂本竜司、高巻杏、真奥貞夫、上井エルマ、鋼人七瀬 一回 マリア、桂ヒナギク、雨宮蓮(主人公)、刈り取るもの、滝谷真、大山猛(ファフニール)、鹿目まどか、美樹さやか、佐倉杏子、赤羽業、桜川九朗、弓原紗季、綾崎ハヤテ、岩永琴子、新島真
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柚 人物 本作のヒロインにして主人公の幼馴染。 陸上部所属で体力はあるが、本人曰く頭はあまり良くないらしい。 両親との3人家族だが、父は外交官、母は警察官であるため、家では一人の時が多い。 そのため、隣の七枷家にはよく世話になっており、柚にとっては第二の家族とも言える。 琴子が亡くなってからの3年間、七枷家全員の様子を見ていた唯一の人物。 柚の役割 『世界』での彼女に与えられた役割は、「観測結果に影響を与える変数」である。 要するに家族が昔の姿になったり、猫が人間になったりした分を相殺する存在。 琴子曰く、恣意的に彼女を排除しようとすると、より大きな別の変数が現れるとのこと。 つまり彼女が行っていた探偵活動?も、『世界』を安定させるために必要だったようだ。 (参照「一日目、電卓登場」)
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―――声にならない、苦難を覚えている ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 薄暗い場所に、"少女"は居た。 曰く、此岸と彼岸の狭間、向こう岸のような場所であり。 曰く、永劫に続く境界線が垣間見える水面の上であり。 曰く、全てが電子に溶け合ったディラックの海のような世界であり。 篝火程の、その程度の薄明るい月がただ唯一世界を照らす。 その中央、恐竜の化石、その大きな体躯や骨格から凡そティラノ――Tレックスとカテゴライズされる肉食獣の化石が番人のごとく"少女"を見下ろし佇んでいる。 ここに時間の流れはなく、全てが停止した世界だ。最も、その停止したという表現は比喩ではあるが、正しく少女の時間が止まっているという例えでもある。 現実ではない、夢幻の如き世界、"少女"はそんな場所にいた。 そう、"少女"以外、誰もいない、静寂と停止に満ちた蒼と黒の世界の中で。 「初めまして、ですね。」 低いボイスの方へ振り返れば、見えたのは燃ゆる蝶々のような女性。 黒い仮面に隠れた表情は深く、そして儚く揺らめいて。 ポニーテールに纏めた赤い髪はそれこそ正しく輝く篝火のようで。 「……あな、たは?」 「私はあなたと同じく、この静寂に堕ちてきた。いいえ、私はここに棄てられたようです。」 「じゃあ、ここはどこ?」 「ここは魂が揺蕩う境界の大海原。……私にとっては知らない単語で説明するなら、壊れた情報が流れ着く先、でしょうか?」 「……壊れた、情報。じゃあ、ここは走馬灯ですか?」 「……そうとも、言えるでしょう。ここは終端です。」 告げられたのは、残酷な真実。 夢であり、終わりに沈む者が流れ着く終着駅、生と死の境界線。 「陛下~? へ~い~か~?」 そして、微睡む電子の廃棄孔に、甲高い声を響かせ降り立った新たな来訪者。 赤いドレスに、長いブロンドヘアーを赤いリボンでツインテールに結ばせた少女。 "少女"に、来訪者の姿の覚えはない、その名前すら知らない。 だが、もう一人の、彼女にとっては別である。 「……どうして? ……いえ、どうやらあなたも流れ着いたようですね。」 「いや、流れ着いたってどういうこと!? ……ねぇ、まさかだと思うけれど。」 「?」 「この世界の"私"、死んでる?」 「……ええ。」 「うっそでしょぉぉぉぉぉ~~~~~~~!?」 来訪者が頭を抱えて叫ぶ。 察するに、何かしらのアクシデントの結果、ここに巻き込まれた事。 現状、傍観者の立ち位置である"少女"には、それぐらいしか分からない。 「だったらさっさとここから出ないと! こんな所で時間潰してる暇はないんだから!」 「……その心配はありません。ここは時間が止まった世界、この世界に居る限り、ここ以外の世界の時間は静止したものとなります。あなたの目的にも何ら問題はないでしょう。どうやって此処に来たかは知りませんが、魂となって流れ着いたあなたには。」 「それで、ここから出る方法は?」 「時が経てば、じきに『外』から来たあなたの魂は排出されるでしょう。」 淡々と答える仮面の女性の言葉に、来訪者は多少気に入らないながらも納得するように小さく頷いた。 だが、これで"少女"は理解した、理解してしまったのだ。 ここは電子の内の黄泉比良坂、もしくは蒼のニライカナイ。そこに居るということは、つまり。 「……死んじゃったんですね、私は。」 「ええ。そのようです。」 既にこの物語の結末は決まっている。 死者は"3名"、その結末は覆されることはない。 これは、少女が"終わり"を迎えるまでの物語。 □□□□□□□□ 殺し合いの舞台、電子で構築された籠の中。 再現された現実であろうと、太陽は正しく輝きを以て地上を照らしている。 だが、だというので、そうだというのに、ただ一点。真夜中よりも深き闇の具現が在る。 それは、黒き太陽。世界の調和を乱す災禍そのものであり。 謂わば悪魔。秩序の反逆者。世界を、人心を弄ぶ悪鬼であり、大いなる業を抱いて変貌した怪物である。 少なくとも、武偵にして人間である間宮あかりにはそう見えた。 人の形を保っているだけのバケモノ。ヒトガタなだけの獣。凡そあれを同じ人間とは思いたくなどなかった。 この世の人間が凡そ頭で想像し思い描く、人智を超えた怪物の、その具現がカタチを為して立っていた。 だが、1つ目一つ足、知恵の神たる岩永琴子が見る景色は、間宮あかりが目の当たりとした姿とは全く違う。 曰く、古来より巫女となる者は片目を潰して、現世と常世の双方を観えるように、としたという。 つまりだ、岩永琴子の何も映さぬはずの義眼には、決して違う何かが映っている。 それは正しく瘴気だった。電子と粒子と霊子、そして悪性因子で構築された"殻"であった。 毛細血管程の細さの赤と黒の禍糸が織模様を紬いで、それが人の形として構築された何かだ。 膜の中、心臓に位置する部分にて赤黒い点滅を放つ何かは、それこそ彼女が既に人のカタチを捨てたと結論付けられる、異形の根本でもあった。 ただし、今まで多種多様の妖怪と関わり、怪異の調停を積み重ねてきた岩永琴子は、魔王が誰であるかを瞬時に理解し、こう告げる。 「一体どういう理由(わけ)なのでしょうか、ベルベット・クラウ。」 ベルベット・クラウ。あの時夾竹桃の同行者である二人のうちの一人。得た情報曰く、復讐鬼。 初対面時では冨岡義勇と戦っている姿が印象に浮かぶが、今の彼女はその時とはあまりにも隔絶している。 義眼で垣間見た、殻のような何か。それが彼女の変質を表す要因なのだろうかと。 「……それはもう"私"じゃない。」 だが、魔王はその"名"を否定する。その含みの籠もった発言に、僅かな嫌悪と、それに似合わぬ憎悪が込めて。その名で呼ばれるのが、不愉快だと言わんばかりに、紅の眼光が知恵の神を睥睨する。 「……コホン。失礼しました、ベルセリアさん。では改めて、私を連れて行く理由を教えてほしいのですが。」 咳払いの後、訂正。ともかく、未だ分からぬ魔王の思惑。背後に係わる夾竹桃の意図を見定めようと、岩永琴子が問い掛ける。 「事態はあんたが思っているよりも深刻ってことよ。――虚構と現実がひっくり返る。」 「虚構と現実が、ひっくり返る……。」 その言葉だけで、岩永琴子は内訳は分からずとも理解した。 この世界が偽りだというのは岩永琴子自信も考察したことだ、当たり外れはともかく、彼女たちも同じ考察を共通している、それをもとに結論付けたのだろうと 「異なる世界法則の交わりを得て、全く未知の『異能』に目覚める現象がある。今のあたしもそういう類になってるけれど。おそらく、私以外も。」 「……目覚めている。目覚めさせる、というのが主催の目的だと。」 「少なくとも此方側はそう思ってるわね。」 「……両面宿儺の真似事とは、笑えないですね。どこを呪いたいのやら。」 その言葉と発想から、知恵の神が至ったのは両面宿儺の器だ。 或るカルト教祖が、見世物小屋で奇形の人間を数名購入、地下の密室に押し込めて、蠱毒を行い最後に生き残った人間を餓死させミイラとし、それを仏として祀ったという。それが元来言い伝え得られる両面宿儺の逸話。 ただし、両面宿儺の逸話というのは地方によって異なるらしく、飛騨地方においては英雄的に扱われる一面を持っている。 「……呪い、ねぇ。確かに現実世界からしたら呪い以上の厄ネタね。でも、あいつらがやろうとしてるかもしれないことは、そういう事よ。現実と虚構をひっくり返して、楽園という天獄で現実を侵食する。」 現実と虚構の逆転。理想郷の侵食。秩序の番人たる立場である岩永琴子にとっては、余りにも見過ごせない考察でもある。 虚構の反転、異能者の養殖。それこそ両面宿儺の二番煎じではないかと。現実を呪い侵し覆す。その結果引き起こされる厄災は、自然災害や妖怪変化が引き起こすそれとは間違いなく規模も被害も違いすぎる。 「……現実という地獄を、虚構の理想郷が破壊するのよ。文字通り。」 「私を連れ去りたい理由は、それですか。……私が『覚醒者』になる前に。」 「そう。だからあんたの身柄をさっさと捕まえたいわけ、岩永琴子。」 異界法則の交わりによるこの世界独自で生まれた異能の誕生。それが主催の目的にかかわるというのなら。 それを生まれる根を抜き取るか、異能者そのものを刈り取るか。 だが、岩永琴子の頭脳は夾竹桃側からしても優秀ゆえ、できれば無傷で確保したいのが本音ではある。故の、この強行とも言うべき手段を取った。 最も、夾竹桃の意図とは裏腹に、この魔王は返答次第で『喰う』ことも検討しているのであるが。 「断ればどうなるか、その賢い頭で考えれば自ずと分かることよね?」 「………ッ。」 故に、選択肢は2つ。大人しく付いていくか、殺されるか。 そう、知恵の神はここで確保する。手に入らないのなら殺す■■■■■■■■■。 恐らくこの選択は今後に関わるであろう、岩永琴子だけでなく、恋人である桜川九郎にとっても。 両陣営とも無自覚とも、魔王ベルセリアの憎悪対象たるブチャラティのグループ、そこの一員に桜川九郎がいる。 岩永琴子はこの事実を知らない。知らずとしても、彼女にとっては首根っこを掴まれたような感覚である。 本来ならば、大人しく連行される方が正しいのかもしれない。しかし、それは夾竹桃陣営相手での場合。 この魔王は違う、明らかに何かがおかしい彼女の言に従うのは危険だと、警鐘を鳴らしている。 断れば、始まるのは問答無用の虐殺だ。 「……逃げさえしなければ、答えは何時までも待ってあげる。……それに。」 迷う岩永琴子から一旦目線を逸し、次にその紅眼が据えるのは間宮あかり。 蛇に睨まれた蛙、という慣用句が存在するが、今の間宮あかりはまさにそうだ。 動けなかった。正しくは、動きたくても、体が動かなかった。 もし動こうものなら、即座に殺されていただろうから。 「……あんたが、間宮あかりで良いのよね?」 「……。」 黙って、頷いた。その選択しか、許されないような錯覚に襲われていた。 「……あんたにはまどろっこしいのは無し。夾竹桃からの要望であんたも来てもらうわ。鷹捲の在処を教えてもらう」 「………!」 間宮あかりにとって、最悪の一言だった。里を壊滅に追い込んだイ・ウーの一人、妹に毒を仕込んだ元凶たる彼女が、よりにもよってこの魔王と手を組んでいた、だなんて。 魔王本人にとっては小手暇の頼み事をあしらう感覚ではあった。それだけでもあかりにとって絶望の二文字を叩きつけるに等しいことで。 「……あいつが言うには貴重な毒、らしいわね。あたしにはどうでもいい……と言いたいところだけれど。」 が、魔王にとって、窮極たる異能の捕食者にとって、未知の毒物というのは多少興味を引くのに十分であり。だからこそ、念のために魔王は訪ねることにする。 『……鷹捲の在り処を話せ。』 「……ッッッ!?」 ただ一言、たったそれだけで、再び間宮あかりの前進を凄まじき重圧がのしかかった。 返答以外の、すべての行動を制限される。文字通りの言葉の重み。重力が何倍にも増えた感覚。手も足も動かせない、気を抜けばすぐにでも地面とキスしてしまいそうになる。 『……そもそも、鷹捲は、毒なの?』 交じる魔王の疑問。どう答えれば良い? どう返せば良い? あかりの思考が文字通り重圧に押しつぶされていく。このまま素直に従えば皆は助かるのか、自分だけ犠牲になれば助かるのか? ネガティブな考えた脳内を埋め尽くしていく。絶望という黒い蔦に絡まり深く深く落ちていく。 諦めてしまえばいいのか、それでみんなが助かるのならそれが最良の選択肢なのか。 ―――違う、そんな訳がない。そんなはずがない。 「鷹捲は、毒なんかじゃない。」 「……へぇ。」 意を決して、間宮あかりが己を見下ろす魔王に断言する。 魔王の瞳が変化する。見下すのではなく、自分に言い返した誰かとして認識する。 「私は、あなたの言う事に乗らないし、夾竹桃の思惑に乗るつもりもない。」 「……少なくともあなたの身柄の無事は約束できるけれど、それでも?」 「それでも、です。」 今の間宮あかりの瞳に、恐怖は無い。 魔王という暴威にして脅威を前にして、心は震えど意思は揺るがず。 「それがもし、一番代償が少なくて、皆が生きて帰れる唯一の手段に繋がることだとしても。」 間宮の技は戦国より言い伝えられてきた必殺の技。故に、暴力が非日常へと変遷した現代において、その技はただ受け継がれるだけと成り果てた。 だからこそ、間宮あかりの母親は、いつか起こる戦乱の兆しに備え、この技を「誰かを守る」為に娘たちに教えたのだ。 間宮あかりの、その実力を参加者内で評してしまえば中の下程度だ。勿論、間宮の殺人技術を駆使すれば話は別だろうが、武偵である以上その技は事実上封じられている。 無能の長物だと嗤うものもいるだろう。だが、それでも、そんな不器用な彼女でも。 託された思いと、変わらぬ憧れと、誰かを惹き寄せるその優しさが、間宮あかりという少女の強さだ。 「そんな理由(よわみ)で、みんなの思いを無下にすることなんて、したくない。託されたから、応えないといけないから。」 かの武人の言葉が、今でも反芻できる。託されたのだから、応えなければならない。 炎のごとく、雷(せんこう)の如く、眩いた輝きの意思を、彼女は憶えている。 積み重なった思いの上に、間宮あかりはいるのだ。 「……託されたもの。……シア、リーズ。」 "私の心にもあるのです。あなたと同じ、消したくても消えない炎が" ベルセリアの脳裏、今や枯れた樹木の中身が如く残骸と化した過去の記憶。それでも今だ消えぬ炎の記憶。 ■■■■■の言葉が、記憶が、ただ、一瞬だけ。 『……煩わしい。何故、消えない。』 「……え?」 魔王が、苛立ち呟く。それは、誰に向けて、何に向けての言葉であるのか、間宮あかりは未だ理解は出来ないだろう。 それでも、魔王の表情が歪んだことに、間宮あかりが気付かぬ道理はない。 「――生憎、こちらもあなた達からの誘いは断らせてもらいます。」 そして、岩永琴子の方も同じくして拒否と言う意見の表明。 「……賢い選択をしてくれると思ったのだけれど。」 「それも一つの選択肢だったでしょう。少なくとも、そちら側の得た真実を共有できれば、この殺し合いの打開に繋がる手掛かりと為り得るでしょう。それは否定しません。」 本来なら、夾竹桃陣営とは不戦協定を結んでいるという前提、悪い扱いはしないというのはわかっている。魔王もまた、彼女たちが大人しく従うのであれば手を出さないつもりではいたのだから。 「ですが、あなた自身は、どうなのでしょうか?」 「………。」 岩永琴子の追求に、魔王は沈黙という形で返答を返す。 眉を顰め、表情の読めぬ顔で岩永琴子の顔を見つめ返す。 「……そもそも、あなたは本来ベルベット・クラウという人物。なのに今のあなたは魔王を名乗っています。まるで最初からそうであったかのように。」 魔王ベルセリア。いや、元々ベルベット・クラウという存在であったのに。まるで自分が最初から魔王であったように振る舞い、言葉を紡ぎ、交渉の場に立ち、威圧している。 「私の眼からみて、あなたは歪そのものです。あなたを構成するそれは、現実の其れではありません。まるで妄想です。……私は似たような怪異を知っています。」 物怖じなどせず、何時も通りなれた説明口調で続ける。 「鋼人七瀬。ネットの海のいち噂を発端とし、不特定多数の群衆の妄想・考察から生まれた、想像力の怪物。」 七瀬かりんというアイドルの死を発端として生まれた怪異の噂。 桜川六花が作り上げた、世界の理を歪ませる現象の実験体。 想像力の怪物、合理的虚構。 ベルベット・クラウ。魔王ベルセリアの場合はそれと似通ったものだ。ただし、それは数多の民たちの想像力でなく、ベルベット・クラウという個人のみで構築された、妄執による虚構。 ……個による妄執、否定の概念の顕現。それを為したベルベットの到達点が魔王ベルセリアという存在である。 「……ですがあなたは、大多数のそれによって為される現象を。たった一人で行使してしまった。鋼人七瀬の時点ですでに秩序を歪ませる行為でしたが、今のあなたの存在そのものが秩序を破壊しかねません。」 そう、魔王ベルセリアという存在は今や歪みそのもの。ただ存在するだけで秩序を崩壊させる怪物と化した。さすれば、知恵の神たる岩永琴子が、魔王の誘いに乗る道理は全くもって存在しない。 秩序を歪ませようとするならば、知恵の神は容赦はしない。 「ですので―――」 『もう、いい。』 岩永琴子が言い終わるのを待たずに、ベルベットの沈黙が破られた。 その一言だけで、岩永琴子を黙らせるには十分であった。 波濤が、世界を震わせる。焼け焦げた残骸は吹き飛び、黒いオーラが魔王の周りに収束する。 左腕は既に異形の業魔腕、魔王の腕へと変化している。 殺意を感じ取った間宮あかりは岩永琴子を庇うような形で、既に交戦の準備をいつでも取れるようには身構えている。一触即発、いや。既に戦端は切られている。魔王の要求に否を叩き付けた時点で。 『死ね。』 「―――!」 刹那だった。魔王が間宮あかりに肉薄し、その凶爪を振り下ろそうとしたのを、一本の刀がとめたのは。 ガキィン!と刃物同士がぶつかり合う甲高い音が鳴り響き、魔王は己の攻撃を止めた元凶に振り向いた。 「……間に合ったようだな。」 「ええと、確か……。」 「ちょうどいいタイミングでのお目覚めですね、冨岡さん。」 鬼殺隊水柱、冨岡義勇。今まで眠り続けてきた鬼滅の剣士が、ようやく目を覚ましたのだ。 魔王の放つ殺意の凶兆が、目覚まし代わりとしてかの剣士の意識を覚まし、既の所で防いだ。 「……あんたは、確か。」 勿論、魔王もまた冨岡義勇の事は一応は憶えている。ベルベットだった頃に一度交戦した。確か自分が殺した錆兎の関係者だとか。 「……お前に何が起きたか存じないが、ますます鬼染みた格好になったな。」 『お世辞として受け取っておくわ。』 冨岡義勇から見た今の『ベルベット』は、正しく鬼にも似た人外の類。その脅威は恐らく、かの鬼舞辻無惨に匹敵するか、もしくはそれ以上か。 『……それに。』 「どうやら祭りにゃ間に合ったようだなぁ!」 「あかりちゃん! 大丈夫!?」 「カタリナさん! それに琵琶坂さんに……知らない人いるけれど大丈夫です!」 冨岡の乱入に続くように、シグレ達もまた魔王の元へ到着。 『………邪魔なのが、また増えるか。まあ、構わないわ。』 呆れるかの如き魔王の呟き。役者はすべて揃い、これから始まる大戦の始まりの刻を、ただ魔王は待つのみであった。 ■ ■ ■ ■ ■ カランッ、と骰子が投げる音。 軽快に音を鳴らし、廻り廻って骰子が静止する。 賽の目が指した数値は1だった。 ■ ■ ■ ■ ■ 前話 次話 過去が今、私の人生を収穫に来た 投下順 明日之方舟(ArkNights)-苦難揺籃- 前話 キャラクター 次話 赤は愛より出でて愛より赤し カタリナ・クラエス 明日之方舟(ArkNights)-苦難揺籃- 赤は愛より出でて愛より赤し 間宮あかり 明日之方舟(ArkNights)-苦難揺籃- 赤は愛より出でて愛より赤し 富岡義勇 明日之方舟(ArkNights)-苦難揺籃- 赤は愛より出でて愛より赤し リュージ 明日之方舟(ArkNights)-苦難揺籃- 赤は愛より出でて愛より赤し 岩永琴子 明日之方舟(ArkNights)-苦難揺籃- 赤は愛より出でて愛より赤し 琵琶坂永至 明日之方舟(ArkNights)-苦難揺籃- 赤は愛より出でて愛より赤し メアリ・ハント 明日之方舟(ArkNights)-苦難揺籃- 赤は愛より出でて愛より赤し シグレ・ランゲツ 明日之方舟(ArkNights)-苦難揺籃- 赤は愛より出でて愛より赤し ベルベット・クラウ 明日之方舟(ArkNights)-苦難揺籃- 龍は吼え、影は潜む 流竜馬 明日之方舟(ArkNights)-苦難揺籃- 龍は吼え、影は潜む ディアボロ 明日之方舟(ArkNights)-苦難揺籃-
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大正鬼譚 ~言ノ葉櫻~ の攻略対象。 他の攻略対象全員のベストEDを見るとルートが解放される。 星稜院の養護教諭をしている土鬼で六月一日とは学生時代からの親友。 人間の妻がいたが、かなり昔に死別している。 フランクな性格で気取ったところがないため、生徒から慕われている。 保健室の常連だった琴子を気にかけてくれるが 琴子が百年櫻に願いたい事を知ってからは、暗い表情を見せるようになる。 名前 栗原 千秋 (くりはら ちあき) 年齢 身長 体重 誕生日 血液型 声優 森川智之 該当属性 大人、温厚、優しい、フレンドリー、明るい、ムードメーカー既婚歴、別キャラに恋心、年上、校医、茶髪オールバック、ヒゲ、白衣、着物、人外、嬢ちゃん呼び喫煙者、酒好き、長寿 該当属性2(ネタバレ) 『抑制系』
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No. タイトル 登場人物 作者 位置 126 よるのないくに ~新月の花嫁~よるのないくに ~さよならビエンフー~ 高坂麗奈、黄前久美子 ◆2dNHP51a3Y 127 魔獣戦線 ー黙示録の始まりー魔獣戦線 ー 人妖乱舞 ー魔獣戦線 ー進化の光ー魔獣戦線 ー愛されしものー魔獣戦線 ーDeep Redー魔獣戦線 ー生命の輝きー 垣根帝督、夾竹桃、麦野沈利、ムネチカ、十六夜咲夜、リュージ、魔王ベルセリア(ベルベット・クラウ)、琵琶坂英至、流竜馬、メアリ・ハント ◆ZbV3TMNKJw 128 天翔けるもの ―偽りの仮面― ヴライ、レイン、平和島静雄、鬼舞辻無惨 ◆qvpO8h8YTg 129 閉じ込められた方舟の中で 神隼人、クオン、東風谷早苗、梔子、ライフィセット、梔子、ブローノ・ブチャラティ ◆qvpO8h8YTg 130 Dread Answer ディアボロ、間宮あかり、岩永琴子 ◆ZbV3TMNKJw 131 導火線に火をくべろ ウィキッド、クオン、早苗、カナメ ◆ZbV3TMNKJw 132 その座標に黒を打て(前編)その座標に黒を打て(後編) リュージ、垣根提督、ムネチカ、十六夜咲夜、平和島静雄、レイン ◆ZbV3TMNKJw 133 偽りの枷 神隼人、桜川九郎、アリア ◆ZbV3TMNKJw 134 一虚一実 オシュトル、ロクロウ・ランゲツ、折原臨也、ヴァイオレット・エヴァーガーデン ◆qvpO8h8YTg 135 追跡セヨ -夜宵のNext Order- ブローノ・ブチャラティ、梔子、ライフィセット、ディアボロ ◆qvpO8h8YTg 136 Cold War 黄前久美子、高坂麗奈、ロクロウ・ランゲツ、間宮あかり、岩永琴子 ◆qvpO8h8YTg 137 暴走特急 鬼舞辻無惨、流竜馬 ◆ZbV3TMNKJw 138 1/3の純情な感情 ベルベット・クラウ、琵琶坂永至 ◆ZbV3TMNKJw 139 戦々凶々(前編)戦々凶々(後編) 岩永琴子、黄前久美子、高坂麗奈、ロクロウ・ランゲツ、間宮あかり、オシュトル、ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン、折原臨也、クオン、東風谷早苗、カナメ、ウィキッド、ヴライ ◆qvpO8h8YTg