約 2,220,486 件
https://w.atwiki.jp/gensouiri/pages/2294.html
天から落ちて現代入り 動画リンク コメント・レビュー 天から落ちて現代入り 1255人目の幻想入り (第3部まであるので下までスクロールしてください) 天落ちの名前で知られる現代入りの作品シリーズ。 非常に2828かつパルパルしてしまう。 作者 製作 Ren 毎週月曜日(夜から深夜にかけて)に必ずうpする人。 完結させることに定評があるらしい。 協力 KARASU 主に裏方としてうp主をサポートしている。 OPなどのムービーの制作に定評があるらしい。 概要 ADV形式 現代入りシリーズ 2009/9/16開始、2009/12/15完結 主人公 風間誠人(かざませいと) 化学系の大学に通う大学生 内容 比那名居天子が現代入りするお話 天界での生活に飽き飽きした天子が帰宅途中の誠人の上に降ってくる そして現代の様々なモノや習慣を経験していくことに マイリスト http //www.nicovideo.jp/mylist/14734591 動画リンク 特別編 最終回 一話 天落ち外伝~もうひとりの研究者 天落ちシリーズの第二弾。今度は幻想入りのお話。 作者 製作 Ren 協力 KARASU 概要 ADV形式 幻想入りシリーズ 2010/3/1開始、2010/5/24完結 主人公 新山幸太(にいやまこうた) 化学系の大学を出ている男性。前作の誠人よりはじけた性格? 内容 河に流れ着いてた幸太を助けた(拾った?)にとりと共に研究所を運営する 物を作ったりいろいろな所に出かけたりするお話 マイリスト http //www.nicovideo.jp/mylist/14734591 動画リンク 外伝最新 外伝一話 天落ち2~比那名居天子の現代生活 天落ちシリーズの第三弾。28パル動画まさかの復活。 天から落ちて現代入りの流れを汲む最新作。 あの二人はいつも通りのいちゃいちゃ生活中。 作者 製作 Ren 協力 KARASU 2010/10/4(天子の日)開始、2011/1/03完結 概要 ADV形式 現代入りシリーズ 主人公 風間誠人(かざませいと) 天から落ちて現代入りの主人公 内容 天子のお目付け役として、現代にやってきた天子とともに生活する誠人のお話。 あいかわらずの28パルぶりで、逆に見ていて安心する作品。 マイリスト http //www.nicovideo.jp/mylist/14734591 動画リンク 2部最新 2部一話 お試し版 コメント・レビュー ヤダ、ちょっと主人公に嫉妬しちゃうわね……。 と思わせつつもやりすぎ感はなく心地よく2828しながら楽しめる作品だと想います。 今後も応援してまっす -- (名無しさん) 2009-11-12 06 28 09 天子好きなら、お薦めな作品ですね ただ、嫉妬の炎で世界が焼き尽くされかねないですがw -- (名無しさん) 2009-12-21 17 41 21 完結おめでと~ そして乙! -- (名無しさん) 2011-01-06 17 07 24 現代入りでは最高傑作だと思います 是非見てもらいたい作品ですね -- (名無しさん) 2014-04-09 22 51 03 これ非公開にされちゃったんですよね。 もう見られないのかな。 一時代を作った作品だけにさみしいですね。 -- (名無しさん) 2023-12-05 07 23 55 もう見られないだろうし、語る人も居なさそうですが記録として。 天子が一緒にファミレスに行ってオムライスを頼んだんだけど、あまりおいしくないと苦言を言うシーンがあった。 大量生産だからそんなもんだよ、という主人公。 いくらでもあるシーン設定なんだけど、なぜか覚えてる。 あと、主人公と天子が釣り堀に行くエピソードもあったな。 あまりにつれすぎるから餌なしでやったらてんで釣れなくなって、 でもこれが釣りってもんだよね、と語り合う。 この場面めっちゃ覚えてる。 こういう動画って大事な文化の一部だけど、消えると二度と再生できない。 投稿者の意向だってことはわかるんだけど、なんか惜しい気がする。 -- (名無しさん) 2023-12-05 08 04 47 大量生産のオムライスって… -- (名無しさん) 2024-03-11 23 35 50 懐かしいねえ 今でもたまに見返したくなって「ああもう見れないんだった」ってなる 五衰とかこれで初めて知ったし、これ以外では聞いたことない -- (名無しさん) 2024-08-22 00 54 00 名前 コメント すべてのコメントを見る ※この作品のレビューを募集しています。レビューについては、こちらをご覧下さい。
https://w.atwiki.jp/viptoho/pages/37.html
I have a dream. One day I hope my little child who has purple hair will be able to sit down at the table and have a good time with me and my wife. And I hope the wife is Patchouli Knowledge. Patchouli Knowledge, how sweet the sound. She taught me to love for things. She taught me mind of jealousy and reflection too. I like her who has beautiful purple hair and purple eyes which makes all living things soothing. So I can't help making a pass at her for the rest of my life. I want to go with UNMOVING GREAT LIBRARY right away. 小学生の頃はチック症を患っており、精神に異常をきたしていた。 周囲から死んだ魚の目をしていると形容され、誰かを思いやる気持ちなんて微塵もなかった。 そして遂には小学6年生になって大罪を犯してしまった。 子供だからなんてものではなく、精神的に幼稚園児レベルだったんだと思う。 今になって、本当に後悔している。 ごめんなさい。 大阪在住の中学3年生。ホモガキ。キャラスレ、混沌板民。元th民であり、中1からthにいたらしい。 ネットでははしゃいでいるがシマりが弱い。リアルでは暗い。 知識少女とか言う糞みたいなコテを名乗っていたが、今は名無し。偽パチュリー厨が繁殖した事があり。どうやらVIPの淫夢スレを荒らしていたらしく、そこの住民の精がケツに流れ込んできたとか。 ネットではホモネタをよく発言しているが、ただの馴れ合い目的である。 スカイプではホモネタはネタでしかないと発言している。誘い受けホモ。 学校ではDQNに蹴られたりズボンを脱がされたり掘られたりしているようだ。 はじめてだったらしく、色んな意味で痛々しい。さすが中学生と言ったところか。 ―――――― 最近では「中学生」の呼び方が定着してきている。 SSやイラストにも興味を示しているようで、いくつかそうした主旨のスレを建てている。継続する意志があるのかは不明。 何度か混沌板を引退しているが、その度、すぐに舞い戻っている。 独占欲から他のパチュリー厨を一様に嫌悪し、掲示板にも敵意を剥き出しにした発言をたびたび残している。特に、同じパチュリー厨であるゴクリンとは仇敵同士で、時を変え場所を変え幾度となく対峙その都度多くのギャラリーを巻き込んでは、罵り合い、煽り合いを行っている。なかでも、9月2日のVIP東方キャラスレ「おやすみ東方キャラ」上で行われた口論は彼らを代表する諍いでその後も続く中学生vsゴクリンの長きにわたる対立の口火を切った出来事といえる(後述)。 中学生が抱える嫌悪の感情はたいへん苛烈で、他のパチュリー厨の書き込みを見るだけで火が点き激しく燃え上がる。一時は、それが元で己が焼かれ、体調を崩してしまうことすらあった。心配した東方厨たちは、中学生にNG機能の使用や東方自体との接触を減らすよう勧めたが中学生の「無視しきれない」という性分ゆえに、結局は元の木阿弥と相成る。この事は本人としても真剣に悩んでいたようで、これを示唆する発言は、先述の「おやすみ東方キャラ」スレやその関連スレ「駄目だ俺は他人の発言に影響を受けすぎる」をはじめ、随所で見受けられる。 また、自身の個性についても悩んでいたようで、彼なりの工夫も、数人にではあるが「嫌悪対象である他人の二番煎じに収まっている」と揶揄され固着には至らなかった。例えば、喧嘩腰キャラを演じた際には、選んだ口調も相まって、博麗霊太との類似を指摘されている。この閉塞を抜け出すべく、彼がひねり出したのが「パチュリーちゃんきゃわわ///」という定型句であった。これは、数ある東方厨の発言の中から彼を識別する手立てとして、まもなくVIP東方厨たちの間にも広まり「“きゃわわ///”と言えばパ厨」と受け止められるようにもなっていった。しかし、それも中学生が抱える鬱屈を掃うに足るものではなかったようだ。 そうした状況の中、9月2日の夜、中学生は一念発起し、混沌板でスレを建て、他のパチュリー厨に対するNG指定と徹底無視を宣言。要は「自慰会場であるキャラスレで自分は自慰をしたいが、同キャラ厨の自慰を見るのは嫌なのでそれらを排斥する、という旨を他のパチュリー厨に知ってもらいたい」ということである。他の東方厨を巻き込む必要があるのか、との疑問が呈される中、キャラスレ専のパチュリー厨たちにも伝えるため中学生は、一部の名無しと協力しあう形でVIP東方キャラスレへと進出、件の喧伝を行う。しかし、実際に応答したパチュリー厨はゴクリンのみで、他のパチュリー厨は総じてスレを離れていたか、もしくはスルーという姿勢。中学生の目的はいきなり躓いてしまった。 その後は、中学生の宣言をゴクリンが己の主張で飲み込む形となって会話が加速、発端である嫌悪の行方を置き去りにしたまま内容がどんどん脇道へと逸れていき、結局、2人のパチュリー厨の確執が深まっただけでこの口論は終わる。中学生は、キャラスレに迷惑をかけたこと、事態が進展しなかったことなどを理由に混沌板他からの引退を宣言。しかし間もなく復帰し、混沌板をメインの活動場所に据えつつも、たびたび内外へ嫌悪や自身の主張、娯楽を発信し続けた。 現在は完全に名無しで活動。主に霊太や他のパチュリー厨など、嫌いな東方厨への悪意をスレを建てるなどして発散している様子。特に、先の言い争いで嫌悪がより深くなったゴクリンに対しては「こんなに他人を嫌いになったのははじめてだ」などと発言し復帰以降も変わらず並々ならぬ敵意と偏執をみせている。 また、最近は、パチュリー厨(魔理沙口調)にも探りを入れているようだ。マリサ気取りのキモイ野郎だと悪態を吐きつつ、「絵が描ける」という共通項についてたびたび詮索をかける様子がみられる。ただ、相手取る気はないのかキャラスレに乗り込むのは自重しているのか、いまだ直接の関わりをもってはいない。 成りすました個体かもしれないが、ケソサソ系からはたびたび擁護とも取れる発言をされており幼子を見守る親の視点なのか貞操を狙うホモの視点なのかは不明だが、引退撤回後も存在を許容されているようである。 混沌板には、中学生から「ゲロカスちゃん」と呼ばれる自称パチュリー厨がおり、たびたびスレ内で中学生と喧嘩をしている。本当にパチュリー厨なのか、そうだとしてどのパチュリー厨がそれなのかは確認が取れていない。
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/603.html
パチュリー6 5スレ目 108.111 今日も不健康だタバコがうまい。 などと考えつつ赤と白の庭でただボーっとしていた。もち、右手にタバコ、左手は携帯灰皿で。 「しっかし」 すう、と煙を肺に入れる。 「なんで彼女に惚れたんだろ……」 煙交じりのため息と共に呟いた。 彼女、とは俺の勤める地下図書館の主のこと。 詳しい話は省くとして、こういう経緯を経て俺は彼女を好きになった。 ・館内周り→地下図書館 ↓ ・紫色の少女を見てズキュウゥゥゥゥン(否キス) ↓ ・としょかんきんむ にしろ!おれは あいつの そばにいるんだ! 三番目でメイド長さんにどつきまわされたのはぜんぜんよくない思い出だが。 そして図書館勤務について少し経った頃、驚愕の事実が言い渡された。 「紫もやしは……喘息だったんだよ!」 「な、なんだってー!?」 よりによって喘息だなんて……ヘビーではないが愛煙家の俺にとってはかなりのショックだった。 そんな感じで一応司書のこぁさんにのみ喫煙者だと教え、たまに休憩を取らせてもらってる。 「……って う お っ あ ち っ !!!」 思考にふけったせいでタバコに火がついたままだということを忘れ、火傷しかけた。 「……何やってるの、貴方」 指をふーふーしていると後ろから声をかけられた。 て言うか今の声ってただの聞きまちが いだよね幻聴だそうだよでもこれって 犯罪者の言い訳っぽいな「幻聴なんで す!誰かがこうしろっていったんです!」って 「パパパパチェ萌え、じゃないパチュリー様ぁ!?」 「まったく……いつもいつもどこかに消えると思ったら……」 「いや、それはその……たまには外の空気が吸いたくて」 「それが『外の空気』?」 タバコを指差され、しまった!とすぐに後ろに隠したがもう遅い。 魔物に見つかった後にコインをくわえる様なものだ。 「小悪魔から聞いたわ。喫煙者なんですってね」 「……はい」 ああ、もう駄目だ。よく考えればこぁさんは彼女に召喚された身。強制的にでも喋らせる事はできる。 「だったら、館の喫煙所を使いなさい。灰皿も完備されてるわ」 ……へ? 「言っておくけどここは勤務が過酷なせいかタバコを吸うメイドも少なくないわ。 だから館内には喫煙所もあるしタバコの売店もある」 ああ、なるほど。……って 「じゃあいつもいつも庭に来てこっそりタバコ吸ってた俺の気遣いは……」 「無駄」 き、きっぱり言われた…… 「無駄とか言わないでくださいよぉ……パチュリー様のためだったってのに……」 思わず小さく呟いてしまう。 「私のためって……」 「えあいやパチュリー様喘息だからというか絶対に本に臭いが付くだろうしそれに個人的な感情がほとんどですけど」 「……要約して話す」 ジト目が薄くなる。まずい。 「つまりっ、要はあなたが好きだから迷惑かけたくなかっただけです!」 全てを言うしかないだろう。後はなるようになれ、だ。 「……ふうん」 吉が出るか害が出るか……間違えた。凶が出るか、だ。 「タバコ、やめられる?」 「……無理っぽいです」 よし、振られフラグ確定。……だって、いまさらやめろったって…… 「……なら、私の前では絶対に吸わないこと。それと……」 いったん言葉を切り、唇を重ねた。 「……こういうときに苦いから吸った後は口の中を洗っておくこと」 そんな俺はセブンレボパチュリーメンソール。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 5スレ目 201-202 パチェなのにパチェじゃないと悩まされる。 つまり彼女は残留思念。 流行には乗り遅れてますよ。 「ごほっ、ごほっ!!」 紅魔館のある場所に響く苦しそうな咳。 「はぁ……」 その後に聞こえたなんとも物憂げな声。 彼は苦し紛れに漏らした。 「なんで俺が―――」 紅魔館の図書館、の途中の廊下。 俺は頭を抱えながら歩いていた。 「はぁ……」 何回ため息をついたかな。 ん? 頭を抱えている理由? 風邪引いたんだよ。 パチュリーが。 一応自他ともに認める病弱っ子だし、喘息持ちで引きこもりである。 しかし! しかしだ。 病弱っ子であるはずの奴は喘息以外の病気なんて滅多におこさないのだ。 しかも逆に調子がいいわーなんて言って俺にストレスというものを押しつけてくる。 そんなパチュリーが風邪を引いたんだ。1ミクロンほどだが驚いてやった。 ま、それだけだったのなら別になんともないし、俺は嬉々としてパチュリーが居ない平和なライフを過ごしていただろう。 看病なんて小悪魔がやってくれるだろうし、うるさい奴がいないからぐだぐだ言われないし。 数日間だけだとは思うがストレスが無い日が続くだろうなー。 なんて思っていた時期もありました。 何を思ったのかパチュリーは看病を俺に任せるなんて言いやがった。 勿論抗議したさ。 だがそんな声もパチュリーには火に油を注ぐ結果になってしまったようで、 「私が決めたの。あなたは黙って従いなさい」 って言われたら逆らえないし、これ以上言ったらなんかやられそうなので黙った。 そういうことで俺はパチュリーの看病をする羽目になってしまったのだ。 ……なんで? とりあえず現在、パチュリーの昼食となる粥を持って寝室へと向かっている。 寝室に入るのは初めてじゃないので緊張も何もせずに入る、のだが。 「遅かったわね」 「何言ってるんだ、昼食取りに行ってから一刻もたってないぞ」 上半身を起こして微熱気味な紅い頬をしているパチュリーは若干、いやかなり不機嫌そうだ。 ……どうせ本が読めないとかそんな理由だろうと思うが。 足元の本を避けてベッドについた俺はパチュリーの膝へと粥を乗せた御盆を乗せた。 「食べ終わったら端に置いておいてくれ、後で取りに来るから」 そう言い残し寝室を出ようとした――のだが、パチュリーはとんでもないことを言ってきた。 「一人で食べろって言うの?」 「……へ?」 一人で食べないならどう食べろと。 「食べさせて」 「……な、なんだって?」 「食、べ、さ、せ、て」 何を言い出すんだコイツは。 自分で食べられるだろうに……俺に食べさせろだって? うーん、これはもしや……。 「なにしてるの?」 「いや、パチュリーの頭のネジをな、探してるんだ」 ゴスッ! 「馬鹿言ってないでさっさと食べさせなさい」 むぅ……こうなったら覚悟を決めるしか無い様だ。 痛む後頭部を我慢しながら粥をパチュリーの所に持っていく。 それを食べるパチュリー。 スプーンを取ろうとして中々取れなかったり早すぎかったり。 そのたびになんかぐだぐだ言われた。 そんなこんなで長々とした時間が過ぎていく。 途中小悪魔と思われる人物が扉を開けてすぐ閉めたような気配がしたがキニシナイことにした。 よーやく食べ終わらせた俺は空っぽになったなべやかんを持って寝室を脱出した。 出る前、 「退屈だとは思うがちゃんと寝てろよ」 全力を出してパチュリーの様態を心配した言葉を投げかけたが、パチュリーは何も答えなかったのが凄まじく怪しかった。 まぁ、そんなことを言うのは結局俺の安泰のためなんだけど。 こんなのが三日四日なんて続いたら死ぬ。色んな意味で。 そんなことを思いつつ、なべやかんを食堂に返し変わりにリンゴなどが乗っかった皿を貰ってもう一度向かう。 病人の世話がこんなに面倒だったとはねー。 ……いや、パチュリーだからかな。 寝室に帰還した俺だが、今度は寝ている可能性もあるので音も立てずに部屋に入り、 そして部屋に入って俺は呆れた。 パチュリーが無理してますよオーラ全開で本をうつ伏せになって読んでるじゃありませんか。 その状況に、流石に温厚な俺も頭の上あたりに十字交差点が浮かび上がるってもんだね。 いやいや、俺のせいじゃないさ。無理をしている紫もやしのせいなんだ。 俺は皿をゆっくりと置き、変わりにHARISENを持った。 そしてうつ伏せ状態でこちらに気付いていないパチュリーの背後に近づき……。 スパーン!! いい音がしたので内心ガッツポーズ。 で、叩かれた本人はと言うと、 「なっ、にすんのよ!」 「これはお前が原因だ!」 「病人にHARISEN振り下ろしておいて何を言っているのよ!」 「やかましい! 口から咳垂れる前にむきゅーと言え!」 この後色々両者共々罵詈雑言を言い合ったが、パチュリーの身体的ギブアップにより終わった。 「覚えておきなさいよ……」 「……そんなに元気があるならもう看病しなくていいだろ」 「ああ……頭が……」 「嘘つけ」 まったくこの魔女は何をしたいんだろうか。 ってか元気じゃないのか? ……まあいいか。追求しても殺されるだけだろうし。 それよりもさっさと仕事を終わらせて平穏な時間を手に入れなければ。 そう思い、俺は置きっぱなしだった皿をパチュリーのところまで持っていき、 「後は自分で食べろよ! それか小悪魔に頼め!」 パチュリーに何も言わせずそれだけを言い残して扉を閉めた。 一応ああ言ってしまったので、小悪魔に手伝ってもらう事にする件を話すと、 「いいですよ」 と快く承諾してくれた。 「それにしても……」 「ん?」 「大変ですね、○○さんも」 こちらの心配もしてくれた小悪魔。 いい子だ。 「まったくだ……パチュリーもなんで俺を指名したんだ……」 「あれ? 分からないんですか?」 「へ?」 「ああいや、何でもありません」 そう言って小悪魔はそれじゃあと言って飛んで行った。 最後のほうの言葉はなんか引っかかるけど、何か考えことでもしてたのだろうか。 その後も色々な事があったのだが、翌日になるとパチュリーはケロリと治ってしまったそうだ。 で、俺はと言うと……。 風邪を移されてしまった。 そして小悪魔に看病されているわけだが。 「なんで俺がこんな目に……はぁ……」 仕事は休めると言っても、この状況じゃ休んだうちに入りません。 でも、パチュリーの呪縛からは一時的に解き放たれるけど。 「あ、私やる事があるので」 「ん? そうか、悪かったな。風邪なんか引いちまって」 「一応代わりを呼んでおきますね」 「頼むよ」 パチュリーとは大違いだ。泣けてくるね。 小悪魔が出て行くと、途端に部屋は静かになった。 久々の平穏にまったりとしていたら、突然部屋の空気が変わった気がした。 どちらかと言うと、危機の方に。 嫌な予感がした俺は、恐る恐る入り口のほうを見てみると……。 「パ、パチュリー……」 しかもなんか手に自然界では表現できない色の液体が! まさか、それを飲ませる気か!? 「勿論」 とかいいながら近づいてくるパチュリー。なんか怖い。 「頑張って作ったのよ」 努力があってもその色の液体は飲みたく無いぞ。 そもそも飲んで治るのか、それ。 「大丈夫、成功したらすぐ治るから」 成功したらってなんだ、失敗するのか? 「八割くらいで失敗するわね」 高っ! 失敗する確立高っ! 俺はそんなのに賭けんぞ! 「うるさいわねぇ」 そう言いながら近づいてきてもうパチュリーとの距離があと少しになってきて、 「くそっ、これじゃあ前と変わらないじゃないか! 誰だ呼んだの、出てこいコノヤロー!」 呪縛からはやっぱり解き放たれてないみたいだった。 そして同日某所。 「輝け!第十八回パチュリー様と○○さんをくっつけよう大作戦会議 in レミリア様の部屋!」 『いえー!!』ドンドンパフパフ! 「司会進行は私、小悪魔が勤めさせていただきます!」 『いえー!!』 「さて、今回は私達○○さんの食事に風邪になる薬を入れる程度しかしてませんが」 「それでも少し進展したんじゃないかしら?(咲夜さん)」 「でもですね、○○さんは全然分かってないみたいです」 「それじゃあ意味ないわね……(レミリア様)」 「それで、次どうします?」 「そろそろ夏が終わりそうだし、今のうちに湖で泳ぐとかどうでしょう?(中国さん)」 「それでいいんじゃないかしら。私は無理そうだけど(レミリア様)」 「じゃあ決定で宜しいでしょうか?」 『いえー!!』 「じゃあ次はどうするか考えましょうか」 これを、彼女と彼は知らない。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 5スレ目 490 ハートZUN軍曹のお言葉に、 誰からともなく住人へ とありますが、こういうのはいいのでしょうか。 先日、東方ストライク入手したときに、 隣に積んであった本から伝言を頼まれたので、こちらに書いておきます。 パチュリーが可哀想なので。 ====== Dear 貴方様 ご無沙汰しております。 卒爾ながら、今日はお願いがあって参上いたしました。 え、誰てめぇ、ですか? これは申し遅れました。 私は、先日まで貴方様がヴワル魔法図書館で読んでいた本でございます。 何の用だ、ですか? これはこれは、単刀直入ですね。 では、私も単刀直入に。 お願いします。ヴワル魔法図書館にもう一度来ていただけませんでしょうか? 単なる本の身で、このようなお願いをする無礼は百も承知です。 ですが、パチュリー様のために筋違いながらお願いする次第です。 先日、貴方様が私を読み終わられて、図書館に来なくなってから、 パチュリー様はすっかり沈んでしまわれました。 知ってらっしゃいましたか? パチュリー様は、貴方様といると本当に笑顔が絶えないのです。 本を読みながらも、貴方様をちらちら見ていたのです。 最近写された魔道書には、全部の本のページの右隅に、貴方様の似顔絵があるのですよ。 感じてらっしゃいましたか? パチュリー様は、貴方様がいらっしゃる日には、朝からずっとそわそわしているのです。 朝早く起き、まず3時の紅茶の茶葉を確かめ、 スコーンを味見して、それに合うブレンドを作るのです。 アッサム、ダージリン、アールグレイをベースに、 少し胡椒を効かせたスコーンにはアップルティーを多めに、 甘いスコーンにはタイムなどのハーブを入れたブレンドで。 気づいてらっしゃいましたか? 貴方様がいらっしゃるときには、パチュリー様、うっすらとお化粧をしていたのですよ。 そして、貴方様が来る予定のぎりぎりの時間まで、 クローゼットの服を鏡の前で体に当てて、その日の勝負服を決めていたのです。 水色のリボンの時には、ピンク系を中心にまとめ、 赤いリボンには、エメラルドグリーンの服にイエローのアクセントをつけて。 そして、貴方様がいらっしゃるとイの一番に入り口へ行っていたのです。 覚えてらっしゃいますか? いつもパチュリー様が、自ら貴方様を書架まで案内していたことを。 しかも、しっかりと手を繋いで、頬を染めながら。 貴方様がいらっしゃる日には、パチュリー様はいつも小悪魔様に用事を言いつけておりました。 貴方様と2人きりになりたいという、乙女心だったのですよ。 その時には、貴方様が不快に感じられないように、でも意識してくれるようにと、 柑橘系の香水を軽く、振りかけていらしたのです。 顔を赤くして貴方様を待つパチュリー様は、本当に恋する乙女でした。 しかし、貴方様がいらっしゃらなくなって、パチュリー様の至福の時間も終わってしまいました。 しばらくの間は、私を抱きしめながら、 「何で、いるうちに告白しなかったのかしら」 と、ふさぎこんでいました。 最近は、私を読むとも無くめくりながら、壁を眺めているばかりです。 昨日届いた、パチュリー様が貴方様のためにと買われた可愛い服も、 小包から出さないままになっています。 図書館のドアが開くたびに、入ってくる人物を凝視しては、 小悪魔様だと知って嘆息をする、そんなパチュリー様は見るに耐えません。 わが友人の『パチュリーの日記』氏によれば、 パチュリー様の日記には、いつも貴方様のことが書いてあるそうです。 いらっしゃった日はいわずもがな、いらっしゃらなかった日も、 「今日は来なかった」で始まるとのことです。 貴方様が図書館に用事が無いのは知っています。 でも、もし一片の慈悲があるならば、 図書館に来て、パチュリー様に会ってあげてくださいませんか。 よろしくお願いします。 おっと、もうこんな時間ですか。 私がいないと、パチュリー様が大騒ぎしますので、帰らねばなりません。 「この本は、私とあの人を繋ぐたった一つの絆だから……」 とのことですが。 どうか、早く来てください。 僭越ながら、お願い申し上げます。 From ヴワル魔法図書館の一書籍 ─────────────────────────────────────────────────────────── 5スレ目 729 その日も図書館で本を読んでいた。 絨毯は厚く埃も多く、喘息持ちでなくても咳き込んでしまいそうになる。 「…… 一冊読み終わり、無言で首を回す。ここの管理人はとかく煩くするのを嫌う。 次の本を持ってこようと席を立つと、対面に座っていたその管理人が、 つ、と少し顔を上げ、右側に積んであった本の山を少し差し出すとまた顔を下ろした。 (この量を戻してきてくれってのか… げんなりする程の量が積まれていたが、覚悟を決めて山に手をかける。 何冊かを束にして持ち上げようとすると、ぺしぺしと机を叩く音が聞こえた。 (私の分も追加の本を持ってきてくれ、か 彼女は基本的に乱読するので、どの本を持っていこうかと悩まないですむのはありがたい。 とはいえ、一応今読んでいる本の題名を確認し、同じような系統の本を選ぼうと考える。 (どれ、なんて本かねえ としゃがむと、ついと本を伏せられた。 なんだろうかと思うが、まあいろいろな種類の本を読みたい気分なんだろうと気にしないことにする。 いや、単なる悪戯か? いくらか本を抱え、のたのたと机に向かう。厚い本は重いし持ちにくくて困る。 上に乗っけた2冊を自分の座っていた場所に置き、残りを向かいの席に運ぶ。 音を立てないように慎重に彼女の左側に置き、ぐしゃぐしゃと頭を撫でる。 驚いたのか本から目を離し、す、と頭を上げこちらを見る。 これは好機とここぞとばかりに頬を撫でると、気持ちよさそうに目を細める。 満足したので自分の椅子に戻ろうとすると、袖を捉まれ、くいくいと引っ張られる。 されるがままに腰をかがめると、胸に顔を押し付けてくる。 愛い奴めと思っていると、さらにぐしぐしと顔を横に振る。 顔を拭きたかっただけかい。それとも眠いのか? 眠いなら寝かせよう。しかし彼女はなかなかベッドに行かない。 体が弱いくせに本を読みながら机に突っ伏して寝る、ので、風邪をひいては大変と毛布を持ってこようとすると、 腕を腰に回され、グイグイと引っ張られる。 どうしたものかと顔を上げて、なんとなく辺りを見回してみる。 よく見ると椅子の後ろが少し空いて、人が入れるようになっている。 ああそういうことか、と合点してスペースに体を滑り込ませようとするとあっさり腕がほどける。 後ろに回り彼女を膝の上に乗せて腕を腹に回し、そのまま顔を肩に乗せた。 5分後、痺れたので足を開いて落としてみた。喜ばれた。 いくつかSSとか書いててわかったんだが、俺文章固いな ─────────────────────────────────────────────────────────── 5スレ目 898 私がこの幻想郷に来てしまってから長い時間がたった。 今では体も昔のように思い道理には動かなくなってしまった。 若い頃は、危ないと分かってても物珍しさから随分とムチャをしたものなんだが… 氷精をからかって怒らせたり、魔法の森を探索しに行って迷ったり、花畑に突貫しに行ったり… いつもボロボロになってヒーヒー言っていたな。ハハッ 本当に懐かしい、あの頃は珍しいことを聞けばすぐに行動していた。 その度に、館の人達には迷惑を掛け、メイド長には長い説教を聞かされ …ナイフが飛んでくる事もあったな。 それでも、めげずに何回もムチャをやって、何度も怒鳴られて、最後には呆れられて、それが日常となって 笑いながらバカな土産話をするようになって。 だが、そんなバカばかりやっていた頃でも出来ないことが唯一つだけあった。 いや、ちがうな… 出来なかったんじゃない、やろうとしなかったんだ。 ただ、怖かった。 この気持ちを貴女に伝える事が、この日常が変わってしまう事が 『断られたらもうこんなバカな毎日が続けられなくなる…』 そんな本当に愚かで馬鹿なことを本気で考えて、いつもは強気なくせに どうしようもなく憶病で でも、こんな馬鹿な私ですが、この思いだけは誇りたいと思う。 貴方を思ったあの日から、人として長い今までの時間、決して色あせる事の無かったこの思いだけは… 老い先短い私がこの思いを貴女に伝えることはもう無いでしょう 文にしたためる事ももう無いでしょう。 この思いは誰にも伝えず、誰にも悟らせず、私が墓場まで持って行きましょう。 貴女が私のことをどう思っているかはわかりません。 しかし、だからといって怖いわけではありません。 貴女の人生はまだ長い、そこにもう命の短い人間の思いなど背負わせたくはないのです。 貴女は その冷静な考えからよく冷たく見られます。 けれども、私は良く知っています。 貴女が感情表現が苦手なだけで、本当はとても優しい事を 貴女が本を見ているときは、とても表情豊かになることを 貴女は無関心なように見えても誰よりも周りをよく見ていることを だからこそ、貴女がどんな答えを持っていても、貴女は必ず迷うでしょう そして私が死んでしまった後、必ず後悔し悲しんでしまうでしょう。 これは私の我が侭です。 馬鹿で愚かな人間の身勝手な我が侭なんです。 だから、私は誰にも言わずただ一人思います。 あの時からこれまでの時間、そして 死が近いこれからの時間 ただ貴女一人だけに、伝えぬ 弱く、されど 強い思いを 『パチュリー、貴女を 愛しています』 ─────────────────────────────────────────────────────────── 6スレ目 338 紅魔館でクリスマスパーティーをする予定だからとメイド長に 強制的に連れ去られ馬車馬のごとく扱き使われた24時間・・・ よく考えれば、まだまだ時間があるんじゃないかと抗議したいが ・・・した瞬間、間違いなくナイフが飛んでくるんだろうな。 まあ、ひとまず一区切り付いたのでヴワル図書館なら静かかつ比較的安全に休めるだろうと 思い来てみたんだが・・・ 「寒っ!メチャクチャ寒っ!?」 扉の向こうは雪国だった・・・ 「てっ違うだろ!しかも、それはトンネルの向こうだ!!」 「うるさいわよ、いきなり何を叫んでいるの」 図書館の管理者が現れた。 「てっそれも違うな。・・・いや、意味は合ってるか」 「だから何なのよ・・・」 「いや、すまない。何か変な思考が少し」 「クリスマスの準備疲れかしら?」 「ああ・・・それは否定できないな・・・マジで」 「そっそう。・・・・・・薬でも飲む?」 「いや、遠慮しとく 永眠しそうだし」 「魔理沙じゃあるまいし、そんな危険なもの作らないわ」 「うっすまん」 いつものジト目がさらに細くなっている。 「フゥ、まあいいわ。それで何しに来たの」 「少しの間、休ませてもらおうと思って来たんだけど・・・」 「騒がなければ好きなだけ居ていいわよ」 「いや、メチャクチャ寒いんですけどココ」 「ああ、日の光が入らないから室温が上がらないのよ」 「いや、上がらないのよって、寒くないのか?」 「・・・・・・私が何か忘れたのかしら?」 さっき戻ったジト目が また細くなっていく 心なしか部屋の温度が下がった気さえする 「何かって?パチュリーだろ」 「そうじゃなくって」 目を伏せ小さくため息を吐く 「? ああ、魔女だってことか!」 「・・・どうして忘れられるのかとても疑問に思うわ」 「いや~俺にとってパチュリーはパチュリーだし」 「っ///」 パチュリーの顔が一気に赤くなる。帽子で見えないが耳まで赤いことだろう どうやら、不意打ちに弱いようだ・・・ 「どうしたんだ?」 「なっなんでもないわ!」 どうやら彼は、鈍感のようだ・・・ 「しかし、魔女か・・・なるほど魔法か」 「ええ、自分の周りを常温にしているのよ」 「へー 便利だな~」 「・・・何で近づいてくるのかしら?」 「気にしない、気にしない。」 「気になるわよ」 「そうか?ところでちょっとだけ椅子から立ってもらえないか?」 「 ? べつにいいけど」 言われたとおりにその場に立つパチュリー すかさず俺は椅子とパチュリーの間に体を入れ、パチュリーの体の前に手を回し そのまま椅子に座る 「キャッ///」 「あっ本当だ。あったけ~」 「ち、ちょっと何しているのよ!」 「後ろからパチュリーを抱きしめています♪」 「・・・・・・可愛くないわよ」 「・・・・・・自分もやって後悔した」 「それで何で私を・・・その・・・抱きしめているのかしら?///」 「ん~暖を取るため?」 「そう#」 「いやいや、ウソですウソ!」 「まあ、率直に言えば・・・抱き締めたかったからかな」 「・・・まあ、許しとくわ」 「間が気になるけど、ありがとうございます」 それからしばらく経ち、本をめくる音だけが図書館に響いていた 「・・・静かだな」 「・・・そうね」 「でも・・・暖かいな」 「ええ・・・そうね」 「・・・パチュリー」 「・・・なに」 「大好きだ」 「・・・・・・」 私も、大好き・・・よ (省略されました・・・。続きは明日発売の文々。新聞「幻想郷の甘~い!特集」をお買い上げ下さい) ─────────────────────────────────────────────────────────── 6スレ目 365 図書館の屋根の上で夜空を見ながら煙草を一服。 それが俺のここでの数少ない楽しみの1つだ。 思えば俺がこの幻想郷に迷い込み、紅魔館に拾われて 人手の足りないという図書館で働くようになってから結構経つ。 元々本が好きなせいもあってか、仕事は大して苦にならない。 それに図書館には彼女がいる・・・ と、物思いに耽っていると 「こんな所にいたの」 「ん?」 振り返ると俺にとっての幻想郷での最大の楽しみ パチュリー・ノーレッジが俺を見下ろしていた。 俺は慌てて携帯灰皿に煙草を放り込む。 喘息もちの彼女には煙草の煙は猛毒も同じだろう。 「どうした?外に出てくるなんて珍しいじゃないか。」 「ただ何となく、貴方と話がしたかったから・・・」 そう言うと彼女は俺の隣に腰を下ろした。 何故だろう?いつも持っているはずの物を今は持っていない。 「本は?」 そう尋ねると彼女は 「今は必要ないと思ったから。」 と、これまた珍しい事を言った。 俺はあまり深くは訊かない事にした。 それにしてもこの時期に外でその服装は・・・見ているこっちが寒くなる。 まあ魔女だから魔法でも使って暖はとれるのだろうが 「夜は冷えるぞ」 そう言って、コートを脱いでかけてやる。 「大丈夫よ」 「いいから、見てるこっちが寒い」 そういうと彼女は素直に従った。 何故だか少し微笑んでいるように見える。 それから――2人で他愛もない話をした。 本当にどうでも良いような話。 彼女が時折浮かべる笑顔に俺はドキドキした。 話のネタも尽きてきて、沈黙が流れる・・・ その沈黙の中で彼女の横顔を見ながら思った。 今言わないと2度と言えない気がする。 俺は厄介事は嫌いだ。 だが、今俺は自分からとんでもない厄介事に飛び込もうとしている。 迷いはない。 「パチュリー、俺は君の事が――」 「止めて・・・」 彼女は俺の告白を途中で遮り、俯いた。 「貴方が言おうとしている事は分かってる。 だけど、言わないで・・・ 私と貴方じゃ種族が違う、寿命も・・・私はこれからも数百年生きるけど、貴方は数十年で死ぬ 私は、貴方がさっき言おうとした言葉を聞いたら、たぶん貴方が死ぬ時に耐えられない・・・だから言わないで」 彼女はそう言って悲しそうに笑った それでも俺は―― 「パチュリー、君の事が好きだ!!種族の違いなんか関係ない!!俺は残りの人生を君と過ごしたい!!」 彼女は驚きの表情を浮かべたあと 「勝手な人ね・・・」 そう言って涙を流した 俺は彼女を抱き寄せて、そっと唇を重ねた 唇を放すと彼女は微笑を浮かべて 俺の肩に頭を預けてきた 満月が2人を照らした ─────────────────────────────────────────────────────────── 6スレ目 408 今さ、布団の脇にノート置いて書き込んでるんだけど 毎晩パッチュリが布団に潜り込んで来て困っちゃうよね さすがにあんなにくっつかれたら冬でもあっついよね あっ こら、また勝手に入ってきてー そんなくっつくなって え、いや、まあ、迷惑って事でもないっつーか、うん うん……うん、 俺も、大好きだよ じゃ、おやすみ…… ──────────────────────────────────────────────── 6スレ目 577 図書館の一画。 目当ての本を見つけた俺はパチュリーの隣に座り、本を開いた。 「仕事をサボって何を読んでるのかしら?」 言われて顔を上げると、パチュリーが本を少し下げてジトリと俺を睨んでいる。 「アガサ・クリスティーのクリスマス・プディングの冒険、 しかし本当にこの図書館は何でも揃ってるな~・・・。 少しくらい良いだろ? 本の整理は終わったし、もう特にする事も無い 大体クリスマスイヴだってのに、休みもくれないお前が悪い 今日に限って図書館に来るような物好きなんてそんなに居やしないよ。 あとの雑務は小悪魔にでもやってもらえば良い」 そう長々と答えるとまた睨まれた。 「私と過ごせるなら何処だって良い。 なんて言ったのは誰だったかしら?」 「それを言われると ぐうの音も出ない・・・」 一拍、間を置いて2人で苦笑。 お互いに視線を本に戻す。 静かに時間だけが流れる・・・。 華やかではないがこんなイヴも良いかもしれない・・・。 「なあパチュリー、部屋に戻ったら今夜はワインでも開けようか?」 俺がそういうと彼女はクスリと笑って、 「そうね」 と、一言だけ言った。 ──────────────────────────────────────────────── 6スレ目 620 パッチェさんが風邪を引いた。と言うわけで見舞いに行く。 見舞いと言うからには何か持っていったほうがいいだろうから、 とりあえず紅魔館の食堂から適当にりんごでも持って行くことにした。 ちなみに食堂の食べ物がなくなると門番の食事が減らされると言う噂がある。 明らかに内部犯だろうに外にいる者の食事が減らされるというのはどうかと思うが、まあどうでもいい。 一応勝手に持っていくわけで、カウンターに身を隠しながら、置いてあるりんごに近づきすろすろと手を伸ばす。 丸い形と重さを確かめ、2,3個抱え込むように持っていく。 と、不意に声をかけられる。 「りんご持っていくんなら、ナイフはいりませんか?」 「手持ちがあるからいいや。それよりすりおろすやつおくれ」 「はいどうぞ」 「はい、ありがとう」 計 画 通 り。 パチュリー私室は、毎度黴臭い図書館内の閲覧個室の改装されたものとなっている。いや図書館自体が私室といえばそうか。 ノックをしても返事はない。いつもない。声が届かないらしい。風邪を引いているなら尚更か。 返事が無いので勝手に入る。待っていたらいつまでも入室できんぞなもし。 入って見渡すと、ベッドの上がもぞもぞと動いている。どうやら寝ているらしい。 ……と思ったら寝そべりながら本を読んでいた。 予 想 通 り。 いや、予想が当たったからと喜んでいる場合じゃない。どうにかせにゃならん。 いくら本読み魔女と言ってもゲロ吐きながら読むものじゃない。 なので、横から本を取り上げる。 なーなー言っていたが、何を言おうとしていたのか分らないので無視していすに座り、 本を体と椅子の背もたれの間に挟みこんで取れないようにする。ついでにりんごを机に置く。 「なに……するのよ」 咳き込みながら文句を吐く。 「風邪引いてるときに本を読むものじゃないだろ」 「魔女が本を読まないでどうするのよ」 「病人が寝ていないでどうするんだよ」 「む、じゃあ代わりにその本読んで頂戴」 「風邪引いてるのにこんな難しい本読むもんじゃないよ」 言いながら本を抱えてドアに向かう。 「その本がいいのよ」 無視してドアを出る。ラテン語なんか読めるか。 難しい本を戻し代わりの易しい本を持って部屋に戻ると、パチュリーはうつ伏せのまま寝入っていた。 息がし辛そうなので横向きに直してしばし寝顔を観察する。 しかし、ずっと観ているわけにもいかないので、本を持って退室する。 が、司書連中に運悪しくつかまり書庫整理の手伝いなどをやらされる。 盗難本のリストアップらしいが、照会に時間がかかり正直暇だ。というか俺いらんだろ。 捉まってから1時間ばかりたった。 仕事を10分ぐらい、後は皆で駄弁っていた。どうせまた盗られるんだし、リスト作っても無駄よね、と言うことだ。 駄弁った結論として、女って怖いなあ、と言うことが再確認された。 不意に子供の泣き声が響く。何かの魔道書かと思い音のする方へ駆けると、パッチェさんの自室だった。 訝みながらドアを開けると、パチュリーが突っ伏して泣いていた。 これはアレか、病気のときに誰もいないで不安で泣くというやつか、愛い奴め、と思いながら近づくと、 ほんーほんーわたしのほんー、と言って泣いていた。 本かよ。俺じゃないのかよ。 がっくりしながら話しかける。 「起きたかね。じゃあ、作るからすりおろしりんごでも食べなさい」 「それよりも本はどこ?」 「とりあえずりんご食え。あと水飲んで寝れ」 「寝かしつけないで頂戴。で、本はどこ」 「りんご食べたら持って来るからりんご食え」 「わかったわよ……」 同意を得たところで皮を剥き、種を取り、すりおろして器に盛る。 多少血が入った気がするが問題ないだろう。 器と匙を渡すともそもそと食べ始める。 少し寝たからなのか心なしかさっきより血色も声色も良いように思える。 食べている間に見繕っておいた本を取ってくる。 「食べ終わったわよ。で、本は?」 「ん、あるよ」 「妙に薄いわね…というかそれ絵本じゃない」 「うん? 風邪引きにはちょうどいいだろう」 「読んでくれるなら向こうの棚に入ってる本がいいんだけど」 「だから難しい本はだめだって」 アラビア語も読めんがな。 枕元の椅子に腰掛けて絵本のページをめくる。 ゆっくりとしたペースで読んでいると、パチェさんが端ににじり寄ってくる。 「うん? 遅い?」 「絵が見えない。絵本なんだから絵も見せて頂戴」 どうやら絵本が存外に気に入ったらしい。 ベッドに深く腰掛けて、腿に頭を載させるようにして読もうとするが、 「見辛い。あと首いたい」 仕方がないので、寝かせて顔の上に本を持ってくるが、今度は自分が読めない。しかも、 「いたいいたい。紙が当たってるわ」 ページをめくる時に顔に当たったり手から抜けたりするようになった。どうにも目測がつけ難い。 どうしようかねえ、と考えていると、パチュリーが枕元をぱんぱんと叩いている。 こっち来いって…ああ、そういうことか。 結局枕を退けて自分が枕代わり、と言うか座椅子になった。 背中がベッドの宮に当たっるので、邪魔な枕と布団を背中に置く。 それでも痛いのと布団の重みで体が少し丸まる。 パチュリーは頭を首筋にもたれかけ、毛布を巻いている。 なので各々が肩に頭を持っていくような格好になる。 「読むのは結構上手いわね。でも少し早いかしら」 「そうかねえ? まあもう寝て早く治してしまいなさいな」 「そうね」 そういってごそごそと動くが、 「なんで胸の上で寝ようとするの?」 「おやすみ」 「それじゃ寝にくいでしょうに」 「うーん」 不満げな声を上げる。これは動きそうにも無い。 しょうがなしに少しずつ体をずらしてベッドに横になる。 肩にかぶっていた布団を掛け、枕を頭の下に敷いてやってから抜け出そうとする。 「あら」 思わず声が出る。 服の端がしっかと握られていた。これでは出るに出られない。 無理してはずす事もできるだろうが、そうすれば起きてしまうかもしれない。 「まあ……役得かねえ」 そういって横顔を見ながら自分もゆっくり目を閉じた。 ──────────────────────────────────────────────── 6スレ目 721 いつも通り本の整理をしていると急に視界がぐらついた。 疲れてるのかな? そう思った矢先 図書館の床が目の前に迫り、意識が消失した。 気がつくと俺はベッドに横になっていた。 どうやら気を失っていたらしい。 上半身だけ起こすと濡れタオルが額から落ちてきた。 「あっ!!」 声のした方を見ると椅子に座っていたらしい小悪魔が立ち上がり 「今パチュリー様を呼んできます」 と言うと駆け出していった。 しばらくするとまた走る足音が聞こえてパチュリーが部屋に入ってきた。 彼女はホッとした様子で 「良かった」と言った。 「心配させちゃったみたいだな・・・すまん」 「いいわよ、別に。 薬作ってきたから飲んで安静にしてて。 一応試しに飲んでみたけど副作用もないし、安心して飲んで」 そう言うと半透明の液体が入ったグラスを渡してきた。 色は悪くないが・・・一応覚悟して一息に飲み干す。 味も思ったほど悪くない、というかむしろ良い方だ・・・が。 このグラスの底に残ってる虫の足みたいなのは何だ? 「な、なあパチュリー。 この薬って原材料はなんだ?」 「どうしてもって言うなら教えてあげるけど、聞かない方が良いと思うわよ」 彼女がそういうなら本当に俺が知らない方が良い材料で構成されているんだろう。 知らぬが仏、俺は訊かない事にした。 「なんか、普段と立場が完全に逆だな。 いつもなら俺が看病する方なのに・・・面目ない」 「気にしなくていいわよ、とにかく大事じゃなくて良かった」 微かに賑やかな音が聞こえる 「今夜もレミリアさんの気紛れパーティーか」 「皆大騒ぎしてる、まったく人の気も知らないで」 本当に心配かけちまったな・・・ 「今後はもう少し健康管理に気をつけるよ。 そんな顔するなって、美人が台無しだぞ?」 そういって笑いかけると彼女も笑みを浮かべた。 「それよりお前は大騒ぎに参加しなくて良いのか?」 「今日はいいわよ、毎回参加してたら身がもたないし、貴方の看病もあるし、何処でもやる事は変わらないしね」 そう言うと脇に抱えていた分厚い本を見せた。 「そうか、じゃあ俺は大人しく横になってるから心配しないで読書してくれ。」 「必要な物があったら言って、すぐに用意するから」 そういうとベッドのそばの椅子に座って本を読み始めた。 しかし読み始めてすぐ「あ」と思い出したように声を上げると本から顔を上げて 少し迷うようにしてから 「添い寝、してあげましょうか?」などと言ってきた。 「おいおい、風邪だったらどうするんだよ」 「たぶんただの疲労だと思うから大丈夫」 「確かに咳も喉の痛みも無いが、本読むんじゃなかったのか?」 「寝ながらでも本は読めるし、問題ないわ」 そう言うと彼女はベッドに潜り込んできてうつ伏せになって本を読み始めた。 思わず抱き寄せる。 「ちょっと、 本が読めないんだけど」 「いや、つい。 もう少しこのままでいさせてくれないか?」 「別に・・・良いけど・・・」 遠く聞こえる喧騒の中で、ささやかな幸せを抱き締める ────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/tamakagura_battle/pages/181.html
Aパチュリー タイプ: 炎/水 スキル1.動かない大図書館:相手のスペルが急所に当りません スキル2.魔法を使う程度の能力:特殊スペルでダメージを受けると、ダメージの1/8だけ自分のVPが回復します。 重複弱点(3倍): なし 弱点(2倍): 雷地岩 抵抗(1/2倍): なし 重複抵抗(1/3倍): 炎氷鋼 無効:なし 種族値・同タイプ比較 炎/水 HP 攻撃 防御 特攻 特防 速度 合計 Aパチュリー 80 30 65 150 140 80 545 Dキスメ 110 85 135 30 125 30 515 Tキスメ 95 110 100 30 110 70 515 Aにとり 110 50 90 135 80 80 545 スペル スペル名 属性 分類 威力 命中 消費 詳細 アグニシャイン 炎 特殊 70 100 5 20%の確率で、相手を火傷させます。 プリンセスウンディネ 水 特殊 70 100 5 30%の確率で、相手の命中を1段階下げます。 シルフィホルン 樹 特殊 70 100 5 30%の確率で、相手の特攻を1段階下げます。 レイジィトリリトン 地 特殊 70 100 5 30%の確率で、相手の特防を1段階下げます。 メタルファティーグ 雷 特殊 70 100 5 30%の確率で、相手の速度を1段階下げます。 アグニレイディアンス 炎 特殊 100 100 20 20%の確率で、相手を火傷させます。 ベリーインレイク 水 特殊 100 100 20 30%の確率で、相手の命中を1段階下げます。 フロギスティックピラー 炎 特殊 120 100 40 20%の確率で、相手を火傷させます。 考察 基本評価 紅魔館の図書館に居る喘息持ちの魔法使い 可愛い 喘息持ちという事からかHPが低く防御も低いなので等倍で落ちることもしばしば その代わり高い特攻と特防を備え対特殊ではかなり強い 運用方法 Nパチュリーと同じくやられる前にやるタイプ 特にパチュリー系統最高の火力と速度を持つ Nパチュリーと違う点は一致スキルが無い代わりに特殊スペルに対するVP回復スキルを持ち 低消費なサブでVPを回復させながら確実にとどめを刺すこともできる さらに二倍抜群サブより等倍禁呪の方が火力が出るのでとりあえずで禁呪ぶっぱも可 (過去に等倍禁呪で相手を一撃で屠った事も) ただHPが低いのでVP回復スキルに頼りすぎる訳にいかず、ナイヘも高い特防を生かせないので注意 (H無振りだとる〜ことのナイヘ二発、それ以外でも3発で落ちる) BP振り 基本的にCS極 Nパチュリーと同じく高い対特殊性能を生かしDやHに振るのもあり そしてやっぱりAへのBPは無駄になる 装備候補 火力upC・併用性を持たせるならパチュリーcなどの特殊upCがオススメ 一気に禁呪で焼き払うなら空cも良い 低消費のサブメインで行くならフランcもアリ 先制C・高速に対峙する時が多いなら必須 麻痺によって速度が落ちても何とかなる時がある Aパチュリーの弱点のうち地岩はメイン水が弱点なので運によっては返り討ちにできる 速度上昇C・運命力が低くて先制Cが発動しない場合はこれもあり 抜ける相手が増える 消費軽減C・火力の高い禁呪を連発したい脳筋向け 逆にサブメインで行くなら不要だが ダメージ軽減C・対特殊での受け出し性能を上げることができる 相手が物理の場合意味が無い時があるため注意 復活C・対物理だと一撃で落ちる事も多いので神子cを持たせ特攻させたり 対特殊で妹紅cを持たせて長期戦も狙える というか紙装甲の必須装備 執筆者 二足の草鞋の雷伍(14849)
https://w.atwiki.jp/cozmixtouhouss/pages/17.html
パチュリー・ノーレッジ。 紅魔館の地下にあるヴワル大図書館で日々を過ごしている、喘息持ちの魔法使い。 毎日のように魔理沙に蔵書を持ち帰られてているが、まんざらでもない様子。
https://w.atwiki.jp/orz1414/pages/251.html
薄暗い図書館で、今宵も魔女が泣いている。 恐らく彼女は後悔しているのだろう。 「何故、私は彼を愛してしまったのだろう」と。 恐らく彼女は誰にともなく問うているのだろう。 「何故、人間はこんなに脆いのだろう?」と。 一冊の本が声にならない叫び声を上げる。 泣かなくていい!! 俺はここにいる!! だが、魔女に言葉は届かない。 そもそも、本は喋らない。 今宵も魔女は悲しみに暮れる・・・ どれだけの時が過ぎたのだろう? 肉体を失った今となっては時間の流れも曖昧だ。 ある日を境に、魔女は泣くのを止めた。 涙の枯れた眼で、何処か遠くを見ている。 疲れきった顔で。 吹っ切れたのならそれで良い。 俺はここにいるから。 ずっと一緒だから。 悲しむ必要も、悩む必要も無いんだ。 だがやはり、その言葉は届かない・・・ 今日は何かが違っていた。 魔女は酷く空虚な眼をしている。 死人のような顔で。 笑っていた。 俺がこの姿に変わってから初めて見せてくれた笑顔。 晴れやかであって欲しい笑顔は、酷く陰惨だった。 それから魔女は、勘違いしたまま俺に向かって話しかける。 「待ってて」 止めろ!! 「私もこれから逝くから」 俺はそこには居ない!! 「これからもずっと一緒よ」 そう言って一振りのナイフを取り出す。 俺はここに居る、ここに居るんだ!! 魂を本と同化させてまでお前の傍に残ったんだ!! だから―― 次の瞬間、図書館に紅い花が咲いた。 その光景は余りにも美しかった。 いや、美し過ぎた。 俺の意識はその光景に呑み込まれた・・・ 主を失った図書館。 今日も何処かの本棚で、一冊の本が夢を見続ける。 紅い紅い夢を。 半ば永遠に続くであろう悪夢を。 鋭いナイフの切っ先と、零れ落ちる紅い命の流れ。 そして、倒れ込む魔女の姿を・・・ ふと、その光景が揺らいだ。 「○○」 誰かの呼び声が聞こえる。 懐かしい声が。 俺の名を呼ぶ声がする。 「こんな所に居たの?」 「ああ」 「随分探したのよ? 死神に訊いたらまだ来てないっていうから」 「悪かったな、謝るよ」 「ずっと傍に居てくれたのに・・・ごめんなさい」 「いいって。 それより、そろそろいこうか。 パチュリー」 これも、夢の続きなのだろうか? もしそうだったとしても・・・覚めないで欲しいと願った。 うpろだ203 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「なあパチュ、図書館から出ようとしてもどうしても入り口に戻っちまうんだけど」 「入り口の空間を少し細工したのスペルカードも魔法も使えずなんの能力もない○○じゃ絶対出れないわ」 「ふーん、なんでこんなことしたんだ?」 「……○○が好きだからに決まってるじゃない 誰にも渡したくない、レミィにも咲夜にもメイリンにも」 「魔女って怖いな」 「ええ、古来より魔女は人々に恐れられてきたわ、だから魔女狩りが行われたのよ」 「……でもさ、涙を流しながら言われても説得力ないよ」 「っ!?だって、だって○○に嫌われたと思うだけで勝手に出てくるのよ」 「嫌そんなことないって」 「嘘よ、こんなことした女に愛想が尽きたんでしょ?」 「だからそんなことないって、むしろそこまで俺のことを思ってるパチュに感激してるぐらいだ」 「……本当?本当に私のこと嫌いじゃないの?」 「本当だよ、だから涙を拭いて かわいい顔が台無しだぞ」 「……馬鹿 大好き」 「ああ、俺もだ」 7スレ目 564 ─────────────────────────────────────────────────────────── 日の光から隠れるように、魔女の図書館は存在していた。 己よりも本を優先させた魔女の住処は暗く、埃に塗れている。 図書館はまるで人気を嫌うように、他人には極めて居心地の悪い場と成っていた。 しかし、そんな魔法図書館には今、主以外にも二つの人影が見えた。 一つは古くから住み込んでいる悪魔、名も無いそれは小悪魔と呼ばれ、親しまれている。 もう一つは、ここに存在していることが不思議なくらいに平凡な、人間の青年だった。 二人は向かい合い、時折笑いを木霊させながら、談笑を繰り返しているようだった。 「……○○、ちょっと来て」 「おう、どうした?」 そこへ、魔法図書館の主である魔女、パチュリーの声がかかる。 青年は小悪魔との会話を切り上げて、パチュリーの元へと向かう。 「……紅茶」 「わかった、少し待ってろ」 本から目を離さないパチュリー背を向けて、小悪魔に苦笑を見せながら、青年は一人厨房へと向かった。 青年が消えただけで、図書館には不思議な静寂が訪れる。 それはこの図書館にとって、本来在るべき静寂だったのだが、何故かパチュリーは違和感を感じてしまっていた。 青年の姿を追って本から目を上げると、小悪魔と目が合う。 微笑む彼女を無視するように、正常を装ってパチュリーは本へと視線を戻す。 らしくないと、パチュリー自身が気づいていた。 「お待たせした」 「……ん」 暫くして、青年の姿が図書館へ戻ってくる。 手には盆を、その上には温かなポットとティーカップが並んでいた。 静かに注がれるそれを、パチュリーは本の端から盗み見ている。 「……」 「何だ?」 「……貴方の分が、無いわ」 並べられたカップは一つ、それはいつもと変わらないことだった。 しかし、パチュリーは心の中で、引っかかるものを感じている。 「俺? いや、邪魔したら悪いしさ」 青年の返答はいつもと同じ、気遣うような言葉だった。 それっきり、青年はまた小悪魔と何かを話している。 何も言えるはずもなく、パチュリーは再び、本に目線を落とすことしか出来なかった。 「……茶菓子は?」 「すぐに持ってくる」 「……片付けておいて」 「はいよ」 「……この本を仕舞ってきて」 「わかった、次は何の本を持ってくればいい?」 青年が小悪魔と話す度に、パチュリーは用事を伝えていった。 その意味を、パチュリーは嫌でも気づいてしまっている。 つまりは――。 「一緒に居たいですか?」 本から目を逸らさずとも、それが小悪魔の声だと気づけた。 パチュリーに驚く様子は無い、平然とした態度で、小悪魔の言葉を聞き流している。 そういう風に演じているのだから、それは当然のことだった。 「パチュリー様、誤魔化しても駄目ですよー?」 「……何」 「――好きなんですよね」 今度こそ耐え切れなくなって、パチュリーは視線を小悪魔へ向ける。 本の先には、悪魔のような微笑を浮かべた小悪魔がいた。 「パチュリー様は、○○さんの事になると子供のように単純になります」 「そんなこと――」 無いと言えば、パチュリーは嘘をつくことになる。 現に、小悪魔がにやにや笑いを浮かべるほどに、パチュリーは挙動不審だったのだ。 「一緒に話したいんですよね」 「……別に」 「無駄ですってば。あの人のことになると、パチュリー様は嘘をつけません」 いつになく絡む小悪魔に、パチュリーは視線を逸らしながら、本で顔を隠すことしか出来ない。 そして、微笑が与える無言の重圧に、パチュリーは言葉を漏らしてしまった。 「嫌われたかしら……」 「何故、そう思うんですか?」 「嫉妬ほど、醜い感情はないもの……飽きれるわ」 自嘲気味に笑みを溢すパチュリーとは対照的に、小悪魔の微笑みは深くなっていく。 まるで愛玩動物を見るような表情に、パチュリーは訝しみながら目を細める。 威圧するようなそれに、小悪魔は何も感じていないようだった。 「知っていますか?」 「何よ」 「○○さん、パチュリー様に呼ばれるたびに笑顔になって、何とか平気な顔を作ってから振り返るんです」 「……何を言っているの?」 「パチュリー様のことを話すときだけ、嬉しそうなんですよ」 「……」 「頼りにされていることを、得意になってるんです」 唐突に、青年のことを語り始めた小悪魔を、パチュリーは止めようとしなかった。 眼前で微笑みながら、瞳の端に僅かに涙を浮かべる姿を、止める事など出来なかった。 「ちゃんと、一緒にお話しましょうって言わなきゃ……」 「小悪魔……」 「素直にならなきゃ……駄目ですよ?」 パチュリーは僅かに、頷いてみせる。 小悪魔は満足したように微笑んで、顔を下げてしまった。 青年の居ない図書館は、やはり妙な違和感を感じさせる。 それはきっと、ここの住人が彼を必要としているからなのだった。 7スレ目 654-655 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「えっ? 肌が白くなってる。ハハッ そうですね、日に当たってませんから …大丈夫ですよ、この位の事 貴方と一緒にいられるなら苦でも何でもありません」 7スレ目 669 ─────────────────────────────────────────────────────────── パ「○○、○○は居ないの!? まったく、どこに行ったのかしら・・・・」 小悪魔「あ、あのパチェリー様○○さんはもう・・・」 パ「・・・・・・・そう、そうよねもういないのよね 駄目だわいつまで経ってもなれないわね」 小悪魔「パチェリー様・・・」 パ「ごめんなさい小悪魔、少し・・・一人にさせてもらえる?」 小悪魔「・・・・はい」 7スレ目 676 ─────────────────────────────────────────────────────────── 耳鳴りがするほどの静寂、透き通った重圧に埃さえも舞うことは許されない。 そんな、暗い図書館で、一人の魔女が本に目を落としていた。 何かが足りない、その漠然とした想いを本の知識で埋め立てていく。 パチュリーは変わらず、本と共に在った。 「……紅茶」 静寂の中でさえ消え入るような呟きと同時に、ティーカップが音を立てる。 当然のように差し出されたそれを片手に、パチュリーは本の隅から湯気の向こう側を盗み見る。 「いかがいたしました?」 そこには変わりなく、当然のように小悪魔が立っている。 暫しの間放心していただけで、違和感など覚えてはいない。 パチュリーは、ずっと前からそうであったのだから。 「――何でも、ない」 「……はい」 小悪魔が背を向ける、パチュリーの視界から外れていく。 その先には勿論、誰の姿も見つけられない。 図書館は変わりなく、パチュリーと小悪魔の二人きりなのだから。 「……美味しい」 温かな香りを昇らせる紅茶は、極上の味を与えてくれた。 ティーカップが、小刻みに音を立てている。 「いつか飲んだ、あの不味い紅茶とは大違いだわ……」 紅い水面に波紋が広がって、小さく水音をたてた。 断続的に続くそれが、暗い図書館に嫌というほどに響き渡っていく。 「……不味い紅茶」 砂糖と塩を入れ間違えたのだろうか。 再び口をつけた紅茶は僅かな塩気を感じさせて、パチュリーの声が震える。 「○○の紅茶の方が、まだマシだわ……」 図書館で生きた平凡な青年はもう、居ない 7スレ目 677 ─────────────────────────────────────────────────────────── もう息が出来なかった。 我慢して、自分を叱咤して上げていた顔も、もう上がらない。 力なく垂れてしまった。 どれほど時間が経ったろう。 私の笛のような呼吸音に足音が混ざる。 レミィのものとは違う、重いそれ。 床を踏みしめて、近づく足音。 気持ちが溢れる。 ――嬉しい。 また、涙がこみ上げてきた。 さっきまでの物とは違う。 ぽん。と、私の頭に手が載せられた。 大きな、暖かな、優しい手だった。 「…………○○…っ……!」 「……貴方は……それでいいのね」 レミィが語りかける。 私に向けてではなく、○○に向けて。 彼女にしては、厳しい感情を込めたその言葉。 疑問を持たないでもない。 だけど、今はこの手のぬくもりを確かにしておきたかった。 私は疑問を頭の隅に追いやる。 それはすぐに幸せという名の霧に飲まれて、見えなくなった。 「…………そう。なら、いいわ。好きになさい」 そう言ってレミィは部屋を出て行った。 私は、知らない。 彼女が○○の何を知っているのか。 ○○は彼女に何を言われたのか。 私は知らない。 ただ。 「…パチュリー…………ごめんな…………」 ○○の言葉が。 酷く胸に痛かった。 ↓↓↓ 数年の時が経ち、私と○○の距離は縮まっていた。 有り体に言えば両思いということになる。 それでよかった。 私が望んだこと、それが叶っているのだから。 幸せだ、幸せだ。 「パチュリー? どうした、体調でも悪いか?」 いつしか○○は私を気遣うようになっていた。 それは優しさからきているのだと、思う。 ○○の持つ優しさ。 それが私に、私だけに向いている。 なんて嬉しいことだろう。 なんて誇らしいんだろう。 今でもまだ、彼の優しさに触れるたび、頬がほころぶ。 「ん、大丈夫よ。心配性ね」 「ほっとけ。……ゴホッ」 「ほらほら、私より○○の方が不健康そうじゃない。今日はもう休みなさいよ」 「ああ、もうちょっとだけな」 「ほんとに? 無理してないわよね?」 「大丈夫だって。パチュリーじゃないんだから」 「もう! また人を馬鹿にして!」 「ははは。すぐに終わるから、待ってな。少し散歩しよう」 そう言って、笑いながら去っていく。 その背中に、「うん」と返事をして、私は本に向かった。 最近、本に触っている時間が減ってきている。 本に触るよりは、○○と話している。 本を見るよりは、○○の姿を追っている。 こんなにも、こんなにも私が彼を。 愛すと。 そんなこと思わなかった。 でも、でも。 もっと、もっと。 彼と触れ合いたい。 彼を知りたい。 彼の全てを、私の全てを。 知りたい。 「おーい、パチュリー? 行こうぜ」 「うん」 ドアから○○が顔を覗かせる。 軽く返事をしてから、私は本を閉じた。 さよなら、私はもう貴方達とは別の世界にいるの。 閉じこもって、一人枕を濡らしていた頃とは違うの。 さよなら、私はもっと幸せな世界に行くの。 ○○と一緒に。 ↓↓↓ 「なあ、パチュリー。愛は永遠の物だって信じるか?」 「突然何よ……。まあ、その意見には賛成だけど」 「聞いてみたかっただけさ。気にするな」 紅魔館の庭を一緒に歩く。 大きくて、暖かくて、優しい○○の手を握って。 彼のもう一方の手には、一冊の本があった。 手の平からほんの少しはみ出す位の大きさ。 ○○のいた世界では単行本というらしい。 図書館にも、いくつかそんな形の本を見たことがある。 手にとって、読んだことは無いが。 ○○が読んだことがある、それでいて面白いという本を彼は持っている。 題名は『Lie』 「うそ? 騙したわね……」 「おいおい、何を騙すってんだ。とにかく、読んでみろよ。面白いぜ」 「……真っ白とか、そういうのじゃないわよね」 恐る恐る表紙に手をかける。 軽いタッチの、女子と男子の絵が目に入る。 色のついた絵が4ページほど続き、やっと題名が現れた。 そこで私は単行本を閉じる。 「…ライトノベルって言うんだ」 「ふうん、面白くなさそうね。いかにも陳腐だわ」 「そ、そうか……? で、でもさ、読んでみたら面白いってのもあかるかもしれないぜ?」 「ないわね。つまらない物はどこまでいってもつまらないもの」 目に見えて○○が肩を落とす。 相当気に入っていたらしい。 それを切り捨てられて落ち込んでる――? 少し、罪悪感を感じた私は 「まあ、時間があったら読んであげてもいいわよ」 と、言っておく。 「ま、まじか。サンキュ、パチュリー」 「ちょ、ちょっと、だからって抱き付かないでよ! 恥ずかしい…」 「あはは、パチュリーのほっぺたはぷにぷにしてるなぁ」 「もう! ふざけないで!」 ぱしゃり。 シャッターの音と、閃光がじゃれ合う私たちを包んだ。 光の方を向けば、カメラを構えた鴉天狗。 ニヤニヤと笑っている。 恥ずかしさにたまらず私は弾幕を張る。 それに巻き込まれた○○が悲鳴を上げて逃げ回る。 鴉天狗がそれをまた写真に収める。 きっと、明日の朝刊を飾るに違いない。 「そろそろ弾幕消してくれよ、パチュリー!」 「面白いからもうちょっとだけ、ね」 「こんな所だけかわいこぶるな!」 「失礼だこと。もうちょっと増やそうかしら」 「うわああ、許してくれパチュリー!」 今晩は腕枕でもしてもらおう。 私はそう一人きめて、逃げ惑う○○を眺めた。 ↓↓↓ 夜、私の部屋。 枕元に陣取る本の山を片付けて、○○の入るスペースを確保した。 意外と多いことに私は驚く。いやはや、本の虫とはよく言ったものだ。 私は本を食べて生きているわけではない。 きっと、幸せを食べて生きている。 生きている幸せ。 発作が起きない幸せ。 ――○○がいる幸せ。 きっと、それが幸せ。 「パチュリー、俺風呂入ってくるな」 「え、まだ入ってなかったの?」 「ああ、時間取れなくてな。パチュリーはもう入っただろ?」 「ええ、はいっ――――入ってない!」 「ええ? 俺はともかく何でパチュリーが」 「入ってないの!」 自分でもよくわからなかった。 なんでこんなことを叫んだのか。 勢いに乗った口は、私の意思に反して言葉を発し続ける。 ああもう、恥ずかしい。 なのに止まらない。 「――だから、一緒に入ろう!」 「……………………………………………は!?」 「ああもう! 何回も言わせないで! その……、一緒にお風呂に入ろうって言ってるの!!」 「…………えーと、パチュリーさん? 自分の言ってる意味がお分かりで?」 もうこうなるとやけだ。 私は衣装棚に飛びつくや否や、着替えを手早く纏める。 もちろん、下着も何もかも全て含めて。 魂を抜かれたかのように――本当に抜かれているのかもしれない。さっきから反応が全く無い――突っ立っている○○の手をとり、 冷たい廊下へと駆け出した。 ↓↓↓ 人のいなくなった脱衣所はとても寂しいものだ。 ただ広いだけ。 ただあるだけ。 冷え切った空気はただ肌に突き刺さるだけ。 包み込むような暖かさなど持たない。 「……パチュリー」 それでも、人が入浴という行為に焦がれるのは何故だろう。 それはやはり、入浴という行為は、母親の胎内に似た感覚をもたらすからだと私は思う。 どうしようもない郷愁に駆られるのだ。 だから人は肌を湯に浸す。 入浴とは、二度と戻れない、桃源郷への帰り道なのだ。 「パチュリー」 ただ、その道は何処へも通じていない。 繋がっている所を強いてあげるならば、そのは黄泉の国だ。 二度と戻れない、とは二重の意味を持つことになる。 一方は二度とは戻れない理想郷を。 一方は二度とは戻れない現実世界を指す。 どちらを選ぶかは、入浴をするものが選べるものではない。 「パチュリー!」 一度入ってしまえば、行くか戻るか二者択一。 どちらの道を行くかは決められない。 完全に運任せのロシアンルーレット。 当たるか外れるか。 そんな危険極まりない橋の上を、人は渡るのだ。 「パチュリー!!」 「…………なによ」 「何で俺はお前と一緒に風呂入ってるんだ!?」 「いいじゃない、たまには」 「だからって――」 「はいはい、黙って後ろ向く」 ああ――、私も実は恥ずかしい。 必死に無意味なことを考えて、気持ちを逸らしてきたというのに。 この○○は、それこそ無意味なことをしてくれる。 ああ、本当に! 恥ずかしい! 何で私は○○の背中に触れているのだろう!? タオル越しとはいえ、ひしひしと伝わってくるその肌の温もり。 硬い筋肉の感触。こんなに彼は強い体つきだった。 そして、脈打つ心臓。私の心臓と同じ。 早く、熱く。 一緒に刻むビート。 「……パチュリー」 「なによっ!」 「……………………近づきすぎ。当たってる」 「――――っ!」 脳があわ立つ。 言われてみれば、私の体は○○の背中に当たっている。 密着、というほどではないが、確かに当たっている。 密かに思う。○○に襲われやしないか、と。 まあ、それはそれでいいか。 開き直った私は、そのままの姿勢で○○の背中をタオルでこする。 そういえば、彼の背中を洗っていたのだった。すっかり忘れていた。 そして気付く。 「ねえ、○○? 痩せた?」 「――――どうしてそう思うんだ?」 「何となく……骨ばった感じがするわ。うん、絶対痩せてる」 「…………そうか」 シン。 無言の世界が訪れる。 もうもうと立ち上る湯気さえ、温度を失ってしまったかのようだ。 思わず、手が止まる。 縮こまってしまった○○の背に、問いかけても返事は無い。 ぺたぺたと、何かが這い寄る音が聞こえる。 私と、丸々の世界を壊す何か。 怖い怖い。 怖い! 「○○! ねえ、どうしたの!? ○○!!」 「――ああ、ごめんな」 困ったような声音。 とても、とてもとても、胸に突き刺さる。 その声は消え入るようなか細い声で、彼がどこか遠くに行ってしまったかのような。 そんな感じがした。 怖い。どこかに行ってしまいそうだ。 彼は、何処へ向かおうとしているのだろうか。 少なくとも、理想郷ではない。 なら――。 「――いやっ!!」 悲鳴を上げた。誰が? 私だ。 狂ったように、○○の背中に抱きついていた。 自分がなにをしているのか、分からなかった。 だけど、こうしていないと彼がどこかへ行ってしまいそうで。 それがとてつもなく怖くて。 彼がどこかへ行ってしまったら、私はどうやって生きればいいのだろうか。 一人は嫌だ。一人は怖い。 だから、今腕の中にあるこの温もりを失くしたくない。 「……パチュリー。大丈夫だから、俺はどこにも行かない、大丈夫」 優しく○○が私に声をかける。 それでも、それは。 今にも消えそうな、小さな声だった。 その声が腕をすり抜ける感触がする気がして、私はさらに言葉を紡ぐ。 「○○……怖いよ。どこにも行かないわよね? ずっと私の傍にいてくれるのよね!?」 「ああ、どこにも行かない。ずっとパチュリーの傍にいる」 ゆっくりと○○の身体が私のほうを向く。 見あげた瞳は優しく光っていて、暖かだった。 自分の立場も忘れて、○○に抱きつく。 大きな、暖かで、優しい手が私の頭を撫でる。 あの日のように。 「…………○○…さん? パチュリー様?」 「「~~~~っ!!」」 不意に、声がした。 私と、○○以外の、誰か。 固まりかけた視線を向ければ、タオルで体を覆った門番の姿。 怪訝な視線を私たちに向けている。 再び、頭があわ立つ。 大変な所を見られた。 どうしよう、どうしよう。 どうしようどうしようどうしようどうしよう。 「――――ロイヤルフレアああああああああああ!!」 「待てパチュリー俺が巻き込まれるっ!!」 ↓↓↓ 「ふぅ…………」 肩が重い。 魔道書を自身の手で書き写すことは、持ち主自身の魔力を増幅させる。それを書いた魔術師を理解することにつながるからだ。 それゆえ、多くの魔道書には手写しによるコピーが存在する。 そして今、私はそのコピーを作り出している真っ最中だった。 最近、魔力が落ちてきているような気がしてならない。 何気ない、ふとした瞬間、力がないような錯覚を覚える。 試しにスペルカードを発動させると、きちんと精霊を使役できるのだが……どうしても不安感が拭えない。 まさか、魔法が使えなくなる? そんな不安を掻き消すため、私は魔道書を必死に書き写していた。 「――と、インクが切れちゃったわね…。○○、そこのインク瓶取ってくれない?」 藁半紙を走るペンが、色をなくした。ただ、インクが切れただけ、ただそれだけだ。 インク瓶のそばに居た○○に、声をかける。 「おう」と返事をし、○○はインク瓶を握り締めた。 ――ゴドン。 そしてインク瓶が、机の上に転がる。黒い染みが津波のように机の上を這う。 ○○は驚いたように自分の手の平を見つめている。 その表情は、何かを酷く怖れているように見えた。 かたかたと○○の肩が小さく震えている。なぜ……? 私の視線に気づいた○○が、弱々しく笑みを浮かべる。 「は…はは…………手が滑っちまった…。はは、ははは…」 「ど、どうかしたの? 真っ青よ…?」 「いや、何でもない。ああ、ほら手洗ってくるよ」 そう言って足早に部屋を出ようとする。 真っ青な、人がするような顔色でない、死人のような顔色…………。 ――死人!? 自分の言葉に背筋が凍る。嫌な予感がする、途轍もない嫌な予感が。 机を叩いて立ち上がる。思わず叫んでいた。 「私も付いていく」と。 「来るな」 「だってそんな死にそうな顔して……」 「来るなと言ったっ!!」 叫んで○○が部屋を出て行った。 まさか、○○があんな声を出すなんて、正直怖かった。 力なく椅子に腰を下ろす。天井を見上げて目を閉じる。 わからない、彼の考えていることが。私だってもう、分かってるのに。 その身に何かを患っていること、もう彼が長くないこと。 なのに……。 「そばに居させてくれないのね…………」 そっと、古い引き出しを開けるように、思い出す。 彼がこの紅魔館に居つくようになった時のこと。 この図書館に彼が居つくようになったときのこと。 私が――彼を好きになった瞬間。 『じゃあ――ここにいる?』 『え? 俺……何も出来ないから…』 『話し相手にでもなってくれればいいわ』 ↓↓↓ 本棚の影からまろび出てきたのは、一人の男だった。 その姿は、知っている。レミィが食料だと言って、何処からか仕入れてきたものだ。 それが何故ここに、とは思った。けれど、憔悴しきった彼の様子には、小動物のような可愛さがあった。 哀れみを感じた、と言えば、それはそれで間違ってはいないのだけれど。 「あ…あんたは……人間か…………?」 「魔女が含まれるならね。……どう、紅茶でも飲んでいかない?」 「……………………」 「焼き菓子もあるわよ。と、言うより、貴方は淑女のティータイムを邪魔して詫びの一つも入れないのかしら」 おずおずと、男は椅子に腰を下ろした。 私は手を叩いて、リトルを呼ぶ。本棚の向こうから間の抜けた声が返ると、間も無くリトルが姿を見せた。 その姿に、男が驚く。そして、リトルがくすくすと笑った。 何せ悪魔なのだ、人間の怖がる姿を見て喜ぶのも仕方あるまい。 「彼に紅茶を。あと、何かお菓子を持ってきて」 「承知しました」 恭しくリトルが飛び去る。普段はそんな事しないくせに、この色魔が。 男のほうに目をやると、椅子の上で小さく縮こまったままになっていた。 「そんなに怖がらなくてもいいのに。彼女はそんなに悪い子じゃないわ」 「…………だって、」 「種族が違うのだもの、怖いのは仕方がないと思うわ。でも、だからって、無下に拒絶することは無いと思うのだけど」 「――…………」 また、本棚の向こうからリトルが現れた。手には、香り立つ紅茶。 男の前にコトリとおいて、一歩下がる。 「どうぞ、召し上がれ」 男がリトルの方を窺いながら、ティーカップに口をつける。 その目が、驚くように少し開かれる。 「美味しい……」 「…恐悦至極に存じ上げます」 「そういえば、名前聞いてなかったわね。貴方、名前は?」 「……○○…です。貴女は…?」 「パチュリー、パチュリー・ノーレッジ。パチェって呼んでも構わないわよ。あと、この子はリトル」 リトルが腰を折る。今まで、見たことも無いような丁寧さだ。この色魔め。 男――○○がそれに応じて、頭を下げた。 ああ――。 私は思う。 この人間は羨ましい。私にないものをきっと持っている。 私がなくしたものを、きっとまだ持っている。 コクコクと、紅い茶を飲み下す様を見て思う。 ああ――、なんて人間は愛おしい存在なのだろう。 だから、私は彼を近くに欲しがった。 もしかすると、私は彼が欲しかったのではなく、彼の持つ何かが欲しかったのかもしれない。 何れにせよ、途中から彼を本当に欲しがっていたことは間違いないのだけれど。 「○○、無理させてたのかしら。私が、貴方に甘えて、貴方に無理をさせてたのかしら」 きっと、彼なら「そんなことはないさ」って言ってくれるだろう。 彼は、優しいのだ。本当に、本当の意味で、優しい。 それ故に、きっと、いろいろと背負い込みすぎた。 レミィはこのことを分かっていたのだろうか。彼の命に限りがあること。 いや、それ自体は誰でも分かるだろう。私でも、リトルにも、レミィでさえ、いつかその命の灯が消える。 そんなこと分かっている。分かっているけれど……。 流れる涙を止めることはできない。 「今まで助けてもらった分、甘えさせてくれた分、返すわ」 貴方の命は私が助ける。 そう心に決めて、ベッドに眠る○○の唇にキスをした。 ↓↓↓ 「パチェ」 「…○○? 何やってるの、身体が冷えるわ。ほら、早く入って」 自室にいると、時折○○が訊ねてくることがある。 私と彼は、もう一緒の場所で寝起きしていない。 図書館は彼の身体に悪い。そう言って、出て行くように仕向けたのは私自身だ。 寂しくは無い、いつ何時でも彼を感じていられるからだ。 こうやって、彼のために薬の研究をしている時だって。 「○○、調子はどう?」 「こうやってここにいることが答えにならないか?」 「…………そうね」 彼がこうやって私のところに来たのはもう半年ぶり、いやそれ以上だ。 段々と、彼が床にいる時間は長くなっている。 初めの頃は一日おきに私のところに来ていた。 それが一週間ごとになり、一月ごとになり、二ヶ月ごとになり……。 次は何時来れるのだろうか、それが気になる。それとも――。 「まさか、ね」頭を振って、嫌な考えを振り払う。 「パチェ、今日の薬はあるのか?」 「ええ……ちょっと待って」 紫色の液体を、ベッドに座る○○に差し出す。 ○○はそれを「パチェ色だな」といって飲み下した。 頬が赤くなるのが分かる。○○を振り向くと、確信犯的な笑みを浮かべてこちらを見ていた。おのれ、○○。 それにしても、私は何て無力なのだろう。 図書館の主だ、大賢者だと言われても、こうして目の前にいる愛しい人さえ救えないのだから笑ってしまう。 苦笑する私の頭に、手が置かれた。誰の、とも言う必要などない。 こんなに大きな、暖かな、優しい手は○○以外の誰が持っているというのか。 「パチェ、俺を気遣ってくれるのは嬉しいけどな。お前が身体壊してちゃ笑い話にもならないぜ?」 「○○は…………私に何か要求しようとか思わないの?」 「こうやって薬貰ってるじゃないか」 「そうじゃなくて。もっと、こうして欲しいとか、ないの? 私、貴方に甘えてばかりで…………」 「よしよし、そんなに悲しそうな声出すな」 ○○が私の頭を撫でる。 手の平から伝わる暖かさが、心に染み入って、これから先を思わせて。 涙が出る。 ○○の手を胸に抱いた。泣いてはいけないと、頭では分かっているのに、どうしても涙が止まらなかった。 出来ることなら「死なないで」と叫びたかった。 大きな声でそう言えたら、そう泣けたら、どれだけ楽になるのだろう。 でも、それは許されない。○○が泣かないのだから。 助けると、言った私が泣いてどうする。そう自分を叱咤した。 「なあ、パチェ? やっぱり、俺もお前に甘えていいか?」 「う…うん! うんうん!」 「じゃあさ、今日一緒にねないか?」 …………はいい!? ねるって、ねるって……! ○○を見あげると、照れくさそうに笑って、後ろ頭をかいている。 「○○……ねるって…。そのベッドで?」 「ああ、一々図書館まで戻るのか?」 「二人きりで?」 「もちろん。それとも、大人数の方が趣味なのか?」 「え……あ……う……うう…………むきゅうぅ……………………」 「あ、おい、パチェ!?」 視界の端で○○が手を伸ばしている。 けれど、それよりの早く私の身体は床に倒れこんでいた。 これからきっと私と○○は、一時の甘い夢を見る。 ――つかの間の。そして、最後の。 うpろだ259 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ふぅ…………」 肩が重い。 魔道書を自身の手で書き写すことは、持ち主自身の魔力を増幅させる。それを書いた魔術師を理解することにつながるからだ。 それゆえ、多くの魔道書には手写しによるコピーが存在する。 そして今、私はそのコピーを作り出している真っ最中だった。 最近、魔力が落ちてきているような気がしてならない。 何気ない、ふとした瞬間、力がないような錯覚を覚える。 試しにスペルカードを発動させると、きちんと精霊を使役できるのだが……どうしても不安感が拭えない。 まさか、魔法が使えなくなる? そんな不安を掻き消すため、私は魔道書を必死に書き写していた。 「――と、インクが切れちゃったわね…。○○、そこのインク瓶取ってくれない?」 藁半紙を走るペンが、色をなくした。ただ、インクが切れただけ、ただそれだけだ。 インク瓶のそばに居た○○に、声をかける。 「おう」と返事をし、○○はインク瓶を握り締めた。 ――ゴドン。 そしてインク瓶が、机の上に転がる。黒い染みが津波のように机の上を這う。 ○○は驚いたように自分の手の平を見つめている。 その表情は、何かを酷く怖れているように見えた。 かたかたと○○の肩が小さく震えている。なぜ……? 私の視線に気づいた○○が、弱々しく笑みを浮かべる。 「は…はは…………手が滑っちまった…。はは、ははは…」 「ど、どうかしたの? 真っ青よ…?」 「いや、何でもない。ああ、ほら手洗ってくるよ」 そう言って足早に部屋を出ようとする。 真っ青な、人がするような顔色でない、死人のような顔色…………。 ――死人!? 自分の言葉に背筋が凍る。嫌な予感がする、途轍もない嫌な予感が。 机を叩いて立ち上がる。思わず叫んでいた。 「私も付いていく」と。 「来るな」 「だってそんな死にそうな顔して……」 「来るなと言ったっ!!」 叫んで○○が部屋を出て行った。 まさか、○○があんな声を出すなんて、正直怖かった。 力なく椅子に腰を下ろす。天井を見上げて目を閉じる。 わからない、彼の考えていることが。私だってもう、分かってるのに。 その身に何かを患っていること、もう彼が長くないこと。 なのに……。 「そばに居させてくれないのね…………」 そっと、古い引き出しを開けるように、思い出す。 彼がこの紅魔館に居つくようになった時のこと。 この図書館に彼が居つくようになったときのこと。 私が――彼を好きになった瞬間。 『じゃあ――ここにいる?』 『え? 俺……何も出来ないから…』 『話し相手にでもなってくれればいいわ』 ↓↓↓ 本棚の影からまろび出てきたのは、一人の男だった。 その姿は、知っている。レミィが食料だと言って、何処からか仕入れてきたものだ。 それが何故ここに、とは思った。けれど、憔悴しきった彼の様子には、小動物のような可愛さがあった。 哀れみを感じた、と言えば、それはそれで間違ってはいないのだけれど。 「あ…あんたは……人間か…………?」 「魔女が含まれるならね。……どう、紅茶でも飲んでいかない?」 「……………………」 「焼き菓子もあるわよ。と、言うより、貴方は淑女のティータイムを邪魔して詫びの一つも入れないのかしら」 おずおずと、男は椅子に腰を下ろした。 私は手を叩いて、リトルを呼ぶ。本棚の向こうから間の抜けた声が返ると、間も無くリトルが姿を見せた。 その姿に、男が驚く。そして、リトルがくすくすと笑った。 何せ悪魔なのだ、人間の怖がる姿を見て喜ぶのも仕方あるまい。 「彼に紅茶を。あと、何かお菓子を持ってきて」 「承知しました」 恭しくリトルが飛び去る。普段はそんな事しないくせに、この色魔が。 男のほうに目をやると、椅子の上で小さく縮こまったままになっていた。 「そんなに怖がらなくてもいいのに。彼女はそんなに悪い子じゃないわ」 「…………だって、」 「種族が違うのだもの、怖いのは仕方がないと思うわ。でも、だからって、無下に拒絶することは無いと思うのだけど」 「――…………」 また、本棚の向こうからリトルが現れた。手には、香り立つ紅茶。 男の前にコトリとおいて、一歩下がる。 「どうぞ、召し上がれ」 男がリトルの方を窺いながら、ティーカップに口をつける。 その目が、驚くように少し開かれる。 「美味しい……」 「…恐悦至極に存じ上げます」 「そういえば、名前聞いてなかったわね。貴方、名前は?」 「……○○…です。貴女は…?」 「パチュリー、パチュリー・ノーレッジ。パチェって呼んでも構わないわよ。あと、この子はリトル」 リトルが腰を折る。今まで、見たことも無いような丁寧さだ。この色魔め。 男――○○がそれに応じて、頭を下げた。 ああ――。 私は思う。 この人間は羨ましい。私にないものをきっと持っている。 私がなくしたものを、きっとまだ持っている。 コクコクと、紅い茶を飲み下す様を見て思う。 ああ――、なんて人間は愛おしい存在なのだろう。 だから、私は彼を近くに欲しがった。 もしかすると、私は彼が欲しかったのではなく、彼の持つ何かが欲しかったのかもしれない。 何れにせよ、途中から彼を本当に欲しがっていたことは間違いないのだけれど。 「○○、無理させてたのかしら。私が、貴方に甘えて、貴方に無理をさせてたのかしら」 きっと、彼なら「そんなことはないさ」って言ってくれるだろう。 彼は、優しいのだ。本当に、本当の意味で、優しい。 それ故に、きっと、いろいろと背負い込みすぎた。 レミィはこのことを分かっていたのだろうか。彼の命に限りがあること。 いや、それ自体は誰でも分かるだろう。私でも、リトルにも、レミィでさえ、いつかその命の灯が消える。 そんなこと分かっている。分かっているけれど……。 流れる涙を止めることはできない。 「今まで助けてもらった分、甘えさせてくれた分、返すわ」 貴方の命は私が助ける。 そう心に決めて、ベッドに眠る○○の唇にキスをした。 ↓↓↓ 「パチェ」 「…○○? 何やってるの、身体が冷えるわ。ほら、早く入って」 自室にいると、時折○○が訊ねてくることがある。 私と彼は、もう一緒の場所で寝起きしていない。 図書館は彼の身体に悪い。そう言って、出て行くように仕向けたのは私自身だ。 寂しくは無い、いつ何時でも彼を感じていられるからだ。 こうやって、彼のために薬の研究をしている時だって。 「○○、調子はどう?」 「こうやってここにいることが答えにならないか?」 「…………そうね」 彼がこうやって私のところに来たのはもう半年ぶり、いやそれ以上だ。 段々と、彼が床にいる時間は長くなっている。 初めの頃は一日おきに私のところに来ていた。 それが一週間ごとになり、一月ごとになり、二ヶ月ごとになり……。 次は何時来れるのだろうか、それが気になる。それとも――。 「まさか、ね」頭を振って、嫌な考えを振り払う。 「パチェ、今日の薬はあるのか?」 「ええ……ちょっと待って」 紫色の液体を、ベッドに座る○○に差し出す。 ○○はそれを「パチェ色だな」といって飲み下した。 頬が赤くなるのが分かる。○○を振り向くと、確信犯的な笑みを浮かべてこちらを見ていた。おのれ、○○。 それにしても、私は何て無力なのだろう。 図書館の主だ、大賢者だと言われても、こうして目の前にいる愛しい人さえ救えないのだから笑ってしまう。 苦笑する私の頭に、手が置かれた。誰の、とも言う必要などない。 こんなに大きな、暖かな、優しい手は○○以外の誰が持っているというのか。 「パチェ、俺を気遣ってくれるのは嬉しいけどな。お前が身体壊してちゃ笑い話にもならないぜ?」 「○○は…………私に何か要求しようとか思わないの?」 「こうやって薬貰ってるじゃないか」 「そうじゃなくて。もっと、こうして欲しいとか、ないの? 私、貴方に甘えてばかりで…………」 「よしよし、そんなに悲しそうな声出すな」 ○○が私の頭を撫でる。 手の平から伝わる暖かさが、心に染み入って、これから先を思わせて。 涙が出る。 ○○の手を胸に抱いた。泣いてはいけないと、頭では分かっているのに、どうしても涙が止まらなかった。 出来ることなら「死なないで」と叫びたかった。 大きな声でそう言えたら、そう泣けたら、どれだけ楽になるのだろう。 でも、それは許されない。○○が泣かないのだから。 助けると、言った私が泣いてどうする。そう自分を叱咤した。 「なあ、パチェ? やっぱり、俺もお前に甘えていいか?」 「う…うん! うんうん!」 「じゃあさ、今日一緒にねないか?」 …………はいい!? ねるって、ねるって……! ○○を見あげると、照れくさそうに笑って、後ろ頭をかいている。 「○○……ねるって…。そのベッドで?」 「ああ、一々図書館まで戻るのか?」 「二人きりで?」 「もちろん。それとも、大人数の方が趣味なのか?」 「え……あ……う……うう…………むきゅうぅ……………………」 「あ、おい、パチェ!?」 視界の端で○○が手を伸ばしている。 けれど、それよりの早く私の身体は床に倒れこんでいた。 これからきっと私と○○は、一時の甘い夢を見る。 ――つかの間の。そして、最後の。 ↓↓↓ 「……ねえ、どうやったらそんなになるのかしら」 「そんなって……生きてきた年月が違いますから…」 「私と対して違わないくせに……!」 恥ずかしげに頬をかく、リトルを睨みつける。 その肢体が羨ましい、タオルの向こうの膨らみが羨ましい! 何で私はこんなにも……ここがないのか。断崖絶壁だ、日本海か!? …………よし、今ぺったんことか幼児体形とか言った奴、前に出なさい。賢者の石で灰にしてくれる。 「まあ、あまりに強い魔力は成長を阻害するって言いますね」 「そうなの? そんなの聞いたことないんだけど」 「ええ、図書館の蔵書の中にありました。確か…… 『身に余る魔力はいずれ術者に死をもたらす。 それは魔力とはそもそもが人の持てるものではないこと、 そして人にとって毒であることに他ならないからだ。 まして、魔力を持つ人間が成長することはまず考えられない。 魔力を行使するには若き意志、瑞々しい肉体が必要となるからだ。 つまり、魔力を持つものはヒトとしての輪廻をはずれ、長き世を傍観するものとなる。 しかし、例えばの話だ。ここに強大な魔力、しかしヒトの世に干渉できるものがいたとしよう。 それはもう、ヒトではなく正真正銘の化物であるといえよう。 何故か、それは私が書き記せるものではない。 何故なら、私はこの身に魔力を持つものであるが、化物では無いからだ』 だったと思います」 「よくそんな長い文章暗誦出来るわね…」 得意げなリトルを半ば呆れるような視線でねめつける。 要するに、彼女が言いたいことは、 『魔法使いなら成長しなくて当然』 だろう。 ……慰めになるわけない。 「まあまあ、セックスアピールは人それぞれですから」 「ちょっと待って。私そんなことするって言ってないわ」 「じゃあ何でこんな時間にお風呂入ってるんですか?」 「それは――……薬品臭い身体で○○と寝るわけにはいかないし……」 やっとのことで、言葉を紡ぎだす。 リトルの胸から視線を離せば、湯気に満ち満ちた浴場が見える。 私とリトル以外の姿はなく、閑散としている。 この状況、○○と混浴したあの夜を思い出す。また門番は来るのだろうか。 先刻、不覚にも、あまりの興奮に気を失ってしまった私は、気がつけば○○の腕の中にいた。 薬品臭い身体のままことに及ぶのはあまりに恥ずかしい、そう言って私はリトルと共に逃げ出した訳だ。 ……何か勘違いをしているような気がしないでもない。 「んー、でも何で○○さんはそんな際どいことを言い出したんでしょうね?」 「私に聞かないでよ……」 「そうですね、どうせすぐ忘れちゃいますし」 「え……忘れる…?」 「ええ、きれいさっぱり。やっぱり、○○さんとパチュリー様じゃ寿命が全然違いますもの。 ○○さんと過ごした時間なんて、一瞬ですよ。長いスパンで見れば」 「私は……忘れない、○○のこと絶対忘れない」 「無理無理、無理ですって。大体パチュリー様、どうやって私を使い魔にしたか覚えていませんよね?」 「……………………」 「ほらぁ! 絶対忘れますって、間違いなく。ま、そのほうが楽なんですけどね」 「私、先に上がりますね」 そう言ってリトルは軽い足取りで浴場を後にした。 残された私は裸で突っ立ったまま、足元を見つめ続ける。 いつか……○○を、○○と過ごした日々を忘れる……? そんなこと、そんな恐ろしいこと、絶対ありえない。 だって私は、彼と出会った日のことを、彼の笑顔を、彼の仕草を、癖をいくらでも思い出せる。 でも、だからってこれから先、百年経ってもオボエテル? 私の中、猜疑心が語りかけてくる。 お前は、そんな事を言って、絶対に忘れてしまうだろう。 いつもいつも、自分を過信して失敗するくせに。 そうだ、今だってそうだ。自分には永淋には無い技術がある。 そう過信して、○○を診察させなかったのは誰だ? 永淋に診せさえすれば、天才の彼女だ、○○を治してくれたに違いない。 そういったレミリアを無視したのはだれだ? レミィは、私を、私と○○を思って言ってくれたのに! 「やめて……!」 ああ、なんて嫌な奴なんだ、私は。 友を思う友を、無下に、傲慢に下した。 そのせいで○○は……死ぬ! ああ、なんて可哀想なやつだ、私は! 「違う違う違うっ!」 耳を塞いだ。頭を抱えた。 冷たい床に倒れ臥した。もういっそ、このまま喘息の発作でも起こればいいのに……。 耳なんて聞こえなければいい、言葉なんて発せなくていい。 何も考えたくない。 ソウスレバワスレラレル。 「パチェ?」 ○○が死ぬなんて真実。 ↓↓↓ 「落ち着いたか?」 「うん……ありがとう、○○」 本当、この男は何て都合よく現れるのだろう。 私が寂しい時、都合よく現れては抱きしめてくれた。 私がイラついている時、焦ることは無い、ゆっくりやろうぜと、励ましてくれた。 本を持って行かれた時、一緒に取り返しに行こうと、肩を叩いてくれた。 いつも優しく、時には辛く。影のように私の傍にいて、ほのかに微笑んで。 彼を――忘れたくない。 「○○…………お願いがあるの」 「ん、いきなりどうした?」 「…抱いて」 「あ? いきなりどうしたよ」 ○○は驚いた声を上げる。それは仕方ないと思う、私だってそんな事言われたら驚くほかない。 でも、私は何かに突き動かされるように○○に言っていた。 抱く。それ即ち彼氏と彼女、そんなものを飛び越えて、男と女の関係で、ということだ。 その行為は、死ぬまで私の身体に疵として残る。 それでいい、私はそれが欲しい。彼を忘れないために、欲しい。 「ねえ、抱いて」 「パチェ、冗談にしてもつまらないぜ?」 「冗談なんかじゃないわ。…お願い」 ○○の言葉を無視して、パジャマのボタンを外してゆく。 少しずつ肌蹴てゆく服と、露出していく肌。冷たい空気が素肌に触れる。 かじかんだように動かない指で、一つ一つボタンを外していく。 その手に、大きな手が重ねられた。大きな、暖かな、優しい手。 「パチェ、俺はそんなつもりで……」 「違う、違うの、○○は悪くない。私は、あなたを忘れたくなくて、こうするの」 「パチェ……」 「……○○…どうして?」 どうしてそんな目で見るの!? 私は何も悪いことしてないじゃない、何が悪いっていうの!? 彼氏と彼女なら当然でしょ!? 男と女なら当然でしょ!? 何で、止めるのよ! 何で邪魔するの! 私は貴方がほしいの、全部知りたいの! なのになんで貴方は私に知らせてくれないの!? 「パチェ!」 「っ!」 首が曲がるかと思った。 あまりにも強い、あまりにも優しい衝撃だった。 気がつけば私の頬は真っ赤に腫れていた。呆然とそこに手をやる。 口の中は血の味がする。生理的反射で、涙が頬を伝った。 ○○に頬を張られたと気付くまで、時間がかかった。 「ごめん、パチュリー。俺、やっぱ一人で寝るな。 あと、もう薬はいらないから。俺ももう長くないし。 だから、きちんと睡眠は取れよ。……じゃあな」 「待っ……!」 ○○が去ってゆく。ドアの向こうへ、私の手の届かない所。 その先にあるのは暗い闇だけなのに。そんな暗夜航路を行くと、一人で行くと○○は言う。 こうも言った。『私は必要ない』そう言った。 それ見たことか! もう一人の私がせせら笑う。 お前は必要ないと、笑う。さあ、寝てしまえ、忘れてしまえと、囁く。 私は貴方の身体が欲しかったわけじゃない。 貴方の心が欲しかったのに、どうしてこんなことになってしまうのだろう。 「おやすみ、パチュリー」 ドアは閉じる、閉じる。きっと、二度と開かないだろう。 私はただ、それを見つめるだけだった、何も出来ず、ただ見つめるだけだった。 何も考えられない、考えがまとまらない。 呆けたように、ドアを見つめ続けた。それが開くことを願って。 だけどそんな都合のいいことはもうない、あるはずもない。 ――彼は死ぬのだから。 うpろだ268 ─────────────────────────────────────────────────────────── 私は小悪魔です。名前はまだパチュリー様がつけて下さいません。 ある日突然パチュリー様の魔法で呼び出され、それ以来従者としてこの図書館の司書をしております。 パチュリー様は本を読む、書く、喘息で寝込む、の三パターンの生活と、時たまやってくる侵入者の撃退、あるいは敗退を繰り返すというような、 平穏な日常を過ごしておりました。 蔵書の数はパチュリー様が飽きもせずに執筆されますので、一時期は本棚が足りなくなりそうで図書館の増築を具申しようと思っておりましたが、 ある日から突然本の数が減るようになりまして、本棚のこと”だけ”は心配をせずに済むようになりました。 ただ生傷の発生する可能性が今までより150%増えました。つまり侵入者が来て負傷してさらに負傷する確率が50%ということです。 ですのでパチュリー様に新たに魔法を教えてもらおうと貴重な時間を割いて頂ける様考えておりました矢先のことでした。 「あらパチェ? 今日は踊り食い? 貴方にしては珍しくアクティブね。それとも生贄かしら?」 紅魔館の主人であるレミリア様です。ちなみに一言も冗談をおっしゃられてません。 「いいえレミィ、残念だけど命の恩人って奴だから、しばらくココで住まわせてもらってもいいかしら?」 「……珍しいこともあったものね、明日は紅魔館に槍が降るんじゃない?」 「槍で済めばいいけどね」 どうやらパチュリー様が何の間違いか人間に助けられ、その人間をここに連れてきて、しばらく紅魔館に住ませたい、とおっしゃっている様です。 ……レミリア様は特に反対という訳では無さそうでしたが、あまりいいと言う風でもありませんでした。 メイド長の咲夜様は何もおっしゃられません。フラン様はまだこの人間のことをご存知ありません。 話を立ち聞きしていたのですが、どうやらパチュリー様と件の人間がこちらに向かって来そうでしたので、慌てて仕事に勤しんでいるフリをしました。 連れてきた人間はたまに見る幻想郷の人間よりもひ弱そうで、しいて言えば肉が柔らかそう、といった印象でした。 「そう、そこの椅子に下ろして頂戴、後は大丈夫だから」 パチュリー様はどうやらひどい喘息の発作に襲われたらしく、息も絶え絶えなご様子でした。 人間の方も先ほどのレミリア様のおっしゃっていたことが堪えたようで、こちらも青ざめていました。 「ほ、本当に大丈夫かい? さっきは……」 「それ以上口にしたら本当に食べるわよ」 パチュリー様の一言が効いたようでそれから人間は黙ったままでした。 喘息の発作がひどいようでしたので、いつも通り私は薬茶を、そして客人には普通の紅茶を出しました。 パチュリー様はいつも通りに飲まれていましたが、人間の方は紅茶をじっと見つめ、手を出せない様子でした。 ……毒は入れていませんよ、あと血も……。ちなみに紅茶はベノアです。どこかのフランス語教諭みたいな名前ですが関係ないそうです。 あと電車とかの単語をイメージされた方は私と弾幕ごっこをしましょう、ね。今日はたまたまそれがあったから使ったということです。 「大丈夫、毒とかは入ってないわ」 パチュリー様も私と同じことを考えられたようで、微笑みながら紅茶を勧めます。 というかホストに対して失礼極まり無い男ですね、この人間。パチュリー様がいらっしゃらなければマルカジリにしてたところです。 「そ、そうかい、じゃぁ……」 紅茶を口にした途端、男の表情が緩みました。どうやら紅茶の味は分かるようです。少し印象が良くなりました。 「お、おいしいねこれ」 「そう言ってもらえると嬉しいわ」 何か妖しい微笑みです。ああいった顔をされた時は十中十九は良いことを考えておられません。悪い目に合うのが九割ということですよ。 それから二人は取りとめもなくお話をされていました。パチュリー様の喘息も調子が良くなったみたいです。 小耳に挟んだ限りでは男は○○という名前で、車(馬車のことでしょうか?)に乗ってトンネルの中を歩いてみていたらいつの間にか 館近くの湖に来ていたらしいのです。そこで行き倒れておられたパチュリー様をお助けになったようです。 非常に気になる点がありますが、何はともあれ、パチュリー様がご無事でよかったと思います。 夜が明けてきましたので、私はパチュリー様の寝台と、最近とみに使われることの多くなった来客用の寝台の準備をしました。 パチュリー様は普段はお眠りにならなくても平気なのですが、喘息の発作がひどい日には眠られることもございますので、 念のため今日は準備をしておきました。 ……準備をしておいて良かったと思います。パチュリー様は予想通り今日はお眠りになられるようでした。 日がそろそろ上がりそうでしたので、私は○○を来客用の部屋に案内しました。 何か包丁とかヤマンバとかブツブツ言ってましたが、特に気にすることなくお通ししました。 今日はそれ以外は特筆すべきこともなく、私も自分の寝床に入って休みました。 日が傾きかけた頃、私の生傷のおおよそ90%を生成する黒白魔法使いがやってきました。 私はいつもの通りにスペルカードを用意し、そしていつものようにまた生傷を作りながら負けるのでした。 やはりパチュリー様に魔法を教えてもらった方が賢明だ、と考えております。昨日あの○○が来なければ多少はマシだったのかもしれません。 「パチュリー、今日も本を借りにきたぜ!!」 「図書館の貸し出し期限は2週間って学校で教わらなかったのかしらね」 「生憎学校にゃ行ってないぜ」 「じゃ私が直々に教えてあげるわ!! 延滞分も含めてね!!」 そしていつも通りに弾幕……、と思いましたが、今日は違いました。 何とあの○○が二人の間に入って止めようとしていたのです。 ……最近の人間は魔法使いを恐れないのが仕様なのでしょうか、弾幕ごっことはいえ、間に入れば確実に消滅するというのに。 その気迫、あるいは無謀に驚いたのか二人ともスペルカードを展開することはありませんでした。 そしてその後……、 「じゃぁ君は人の本を勝手に拝借して、しかも返さないのか」 「死ぬまで借りてるだけだぜ」 な、なんと黒白に説教を始めたようです。信じられません。私の短い人生の間でもこれは間違いなく珍しいことです。 「君はそれでいいだろうが、本を勝手に借りられた挙句あらされる身にもなってみなさい」 「……」 しかも黒白は説教を受け入れている……。あぁ私は今何という光景を目にしているのでしょうか、神々しくさえ見えます。 あ、今の悪魔の言うことじゃないですね、とにかく、その冗談のような風景に私も、パチュリー様でさえ目を白黒させるだけでした。 「……ぜ」 黒白が観念したかのように何かを言っています。まさか……。 「すまなかったぜ……」 あぁ私は今ななな何を言っているのか理解でききました。あああああの黒白がああああああ謝っています。 パチュリー様も今にも倒れそうな顔をされています。今の光景は間違いなく二度とありえないことでしょう……。 「じゃぁ、今日は本を読ませてもらうだけだぜ」 黒白は観念して、いくつかの本を選び出し、それをもって私たちからは見えない席へと持って行きました。 私はまた何か悪いことをたくらんでいると思い、こっそり気配を消して黒白のいるところへ向かいました……。 「全く、何で香霖みたいな奴がこんなとこにいるんだよ……」 何かブツブツ言っています。が私はそんなことよりも私は黒白のやっていることがあまりに意外で驚いたのです。 「香霖、というよりはおや……、いや違う違う。ありえないぜ……」 ブツブツ言いながら黒白は何と……、筆写を行っていたのでした、しかもかなり真剣に。 いつもなら本を抱えて壁を壊して逃げるところでしたでしょうが、今日は何故か本当に大人しいのです。まるで借りてきた式の式です。 私は急いでパチュリー様の元へこのことを報告に参りました。 私の報告を聞いてパチュリー様は卒倒しました。○○が慌ててパチュリー様の体を支えます。 私はパチュリー様の寝室へ○○を案内しました。その間○○はパチュリー様を抱えて来ました。 ひ弱そうだったのに案外力があるものだ、と思いながら中へと通し、寝台を指しました。 ○○はパチュリー様を寝台へと寝かし、何とそのまま寝台の横へと椅子を持ってきて座りました。 横に座っているだけで何もできないのに変わったことをすると思いましたが、言っても無駄そうでしたのでそのままにして私は仕事に戻りました。 夜が更けたころ、疲れきった様子で黒白は帰りました。ちなみに一冊も本は持っていません。 「邪魔したぜ……、いずれ返しに来る」 私はその内容に驚きましたが、黒白はいたって普通の顔つきでした。 そして空へと消えました。 魔女がまっとうになる……、私は何やら不吉なことを感じつつも、悩んでも仕方ないのでまた仕事に戻りました。 パチュリー様はあれからお目覚めになられまして、またいつもの通りに本を読んでいます。 ○○は、というとまた彼も本を読んでいます。ちらっと見たところ外から来た魔法書でした。 私でもあれは読めないのに……、と思っておりましたが、もしかすると彼は外の世界の魔法使いなのかもしれません。 魔法使い、となると相当厄介なことになりました。しかも今日のこともありましたので倍率ドン!さらに倍といったところです。 パチュリー様もそれをご理解しているようで本を読まれてはいましたが、どうやら気が気でないようです。 当の○○はというと至って普通な様子でした。それが却って私には恐ろしく感じられました。 フラン様と対峙する時も似たような感じです。全てを握られているというのは心地よいものではありません。 何 故 な ら、 パ チ ュ リ ー 様 は ま だ 対 価 を 支 払 っ て い ま せ ん、 命 を 救 わ れ た 対 価 を ……。 「あ、貴方は私に一体何を望むのです……?」 「……?」 とうとう堪えきれなくなったパチュリー様が○○に問いただします。 ○○はというと、何を言っているのか理解できないようでした、どうやら外の魔法使い達の間では契約というものも廃れている、 と思いたいところでした……。 「そうだなぁ……、じゃあこれを機にお付き合い、というのはどうだろう?」 私は目の前が真っ暗になりました、パチュリー様がに、人間なぞとおお付き合いをせねばならないなんて……!! 「……」 事態を理解したパチュリー様は顔面蒼白でした。 「あ、ごめんごめん本気に……」 「りょ、了解しました」 契約成立です。あはははは……。 「え、あ……」 「……」 人間、貴様何をしたか分かっているのだろうな……。 最 早 パ チ ュ リ ー 様 は 貴 様 を 全 身 全 霊 で 愛 す る し か で き な い の で す ……!! そう、私がパチュリー様に仕えるように……。 過去のことを嘆いていては仕方有りません。 そう、パチュリー様が契約に縛られていようが、私の主であることに変わりはありません。 パチュリー様も同じお考えのようで、結ばれてしまった契約に従い、○○に対して最大限好意的に振舞います。 どうやら○○は魔法に対して強く興味を持ったようで、パチュリー様に手ほどきを受けています。 救いは彼の理解が早かったということでしょうか、やはり彼は外の世界の魔法使いのようです。 (やはり紅茶に毒を入れておけばよかった……) 私の痛恨のミスでした。人間なぞ生かしておいてもロクなことがありません。 ですが今となってはもうあまりにも遅すぎるのでした。 契約に縛られたパチュリー様はもし○○を殺せば間違いなく私を殺すでしょう。 それだけではありません、私はパチュリー様に仕えなければならないという契約を反故にしてしまうことになります。 契約を守らなかった悪魔は……、この先は想像もしたくありません。 パチュリー様の方は……、契約に縛られているせいか彼を愛するのが当然といった感じです。 最早契約のことなども忘れ、彼を本気で愛しているのでしょう。魔法の手ほどきが本当に楽しそうです。 私にできることはと言えば……。 翌日、パチュリー様と○○はどこかへおでかけになりました。 帰ってくると何故か大量の本を持って帰ってきました。おそらくは黒白の家から取り返してきたのでしょう。 何故か黒白は○○のことが苦手のようです。何故かは分かりませんが。 翌々日、パチュリー様と○○はまたどこかへおでかけになりました。 パチュリー様はとても楽しそうです。○○もまんざらでもないという様子でした。 私めができることは少ないですが、それでもパチュリー様の幸せに協力することはできます。 私はそれをするだけのことです。 例えばおいしい紅茶をお入れするとか、○○にも理解できるような魔道書を見繕うとか。 後は万が一フラン様に出会ってしまった場合の対策をお伝えする、といったことでしょうか。 主が一人増えただけ、と考えれば今までとそう変わりはしない生活です。 そういえば一つ変化がありました、何とパチュリー様が私めに名前を下さるとのことです。 何でも○○が呼びにくいから、という理由だそうですが……。 名前がつく理由は引っかかりますが、パチュリ-様から名前をいただくという名誉の前にはそのようなことも小さなことです。 私の新たな生活がこれから始まろうとしています。 その生活を生み出すきっかけを作ってくれた○○には少しは感謝してもいいかもしれません。 ですので、不本意ながら私めも、一つだけ願わせて頂きます。 パ チ ュ リ ー 様、 ○ ○ 様、 ど う か 、 お 幸 せ に ……。 私の語りはこれで終了です、この先は○○、つまり貴方の妄想次第。 どうぞパチュリー様を死ぬほど愛してください。私もそれに一生付いていく所存です。 やあ (´・ω・`) ようこそ、ヤンデレルートへ。 このルートはサービスで可能性の一つだから、まず落ち着いて欲しい。 うん、済まない。これが大分抑えてるけど本来の作風なんだ。元々グROスレでヤンデレなんて言葉が生まれた頃から書いてたから。 仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。 でも、このキーワードを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない 「おぞましさ」みたいなものを感じてくれたと思う。 春度に満ちたこのスレで、こういう愛の形もあるということを忘れないで欲しい そう思って、このルートを作ったんだ。 じゃあ、引き返すなら今のうちだよ。 十六夜咲夜の日記 ○月○日 今日、パチュリーが人間の男を連れてきた。 何でも喘息の発作を起こして動けなくなったところを救われたらしい。 それならば何故外に出たか気になるところだったが、魔法使いなりの理由があるのだろう。 それにしても喘息で動けなくなるなどどこかの革命家じゃあるまいし、と思ったものだ。 それでふと思いついて「み~らい~♪ ボ~リ~ビ~ア~♪」と口ずさんでいたらお嬢様に見られた。 お嬢様は心底ニヤニヤしていた。あぁ憎らしい可愛らしい……。 ○月X日 今日は魔理沙がやってきたらしい。 らしい、というのはいつも通りの弾幕ごっこが行われた様子がなかったからだ。ただ小悪魔は負傷していたが。 そして驚いたことに魔理沙は一冊も本を持ち逃げしなかったと小悪魔から聞いた。 明日は槍が降ってくるかもしれない。もしかすると幻想郷も明日を無事迎えられるか分からない。 ○月△日 どうやら無事に今日を迎えることができた。 このまま何事も起こらなければよいが……。 ○月◇日 なんと昨日パチュリーが魔理沙の所から本を持ち帰ってきたらしい。 それでも今日は何も起こることなく存在している。 ……、今度神社に行ったら異変が起こってないか霊夢に問いただしてみよう。 それにしても……。気になるのは○○のことだ、 何故か○○にパチュリーがやたらと懐いている。彼も霊夢と似たような人間なのだろうか。 お嬢様が誑かされなければいいが……。 ○月☆日 今日も魔理沙がやってきた。 少々躊躇われたが、魔理沙に急に本を返すようになった理由を問いただしてみた。 「う、うるさいんだぜ!!」 と言うと顔を赤くしながら星弾を撃ってきた。全くうるさいのはどちらなのだろうか。 いつも通りに大人しくさせ、話を聞いてみると、 「こ、香霖……」 みたいなことをつぶやいていた。あの店の主人のことか。 魔理沙はよく出入りしているが彼が一体どう関係があるのだろうか。 そういえばたまにあの店に行く時に魔理沙がいることがあるが時々不自然な感じになるのは関係があるのだろうか? 気にしても仕方のないことだが……、何はともあれ魔理沙の悪いクセが無くなるのはいいことだ。 後小悪魔がこぁという名前になったそうだ。命名はパチュリーらしい。 お嬢様に並ぶネーミングセンスだ。だが小悪魔の方は喜んでいた。何も言うまい。 ○月$日 今日はアリスと魔理沙がやってきた。 アリスはどうやら新しく来た○○を見に来たようだ。 たまたま通りかかった小悪魔、いやこぁに話を聞いてみると○○は魔法に興味があるようでそれで魔法使い三人の教えを受けているらしい。 パチュリーが人に物を教える姿は想像が付かない、魔理沙辺りは何だかんだ言いながら教えてくれそうだが。 アリスは……、気が向けば教えてくれるだろう。少なくとも私の知るパチュリーよりは確率が高いと思う。 ○月¥日 パチュリーが図書館の増築に関してお嬢様と話合っていた。 魔理沙から取り返した本を収納する場所が無いらしい。後香霖堂からもいくつか買ったという話だ。 ○○は外の世界の魔法使いらしいが……。 いいや何も書くまい。 ○月#日 今日はパチュリーに妙なことを聞かれた。 「人間の時を止めることってできるの?」 はて…、そういったことはてっきり100年以上生きている彼女の専門ではなかったのだろうか? 私ができない、ということを伝えると残念そうにしていた。一体何だったのだろう。 ○月★日 最近パチュリーの様子がおかしいらしい。 「我慢できない我慢できない我慢できない…………」 と呟いているとメイド達が恐れていた。 こぁに話を聞こうと思ったが、生憎今日は買出しがあったので聞く暇が無かった。 今度会った時にでも聞いてみようか。 ○月д日 今日も生憎用事があったのでこぁに様子を聞くことができなかった。 お嬢様もご心配の様子だったが、妹様が暴れそうだったので私と抑えていたのだ。 その日もパチュリーの姿を見ることは無かった。 ○月℃日 今日ようやくこぁに話を聞くことができた、と言いたいところだったが、 こぁの方が大分参っているらしく、ろくに話を聞くこともできなかった。 断片的な情報をまとめると、パチュリーは不眠不休で魔法書を読み漁っているらしい。 いつもと何が違うのか、と思ったがこぁの様子を察するにいつもと何かが違うということだろうか。 明日本人に聞いてみることにしよう。 ○月◎日 今日は久々にスペルカード以外の攻撃を受けた。 何のことは無い、最近様子が変だというパチュリーに話を聞こうと思ったらいきなり襲い掛かられたのだ。 しかもスペルカードルールなど無視した本気の攻撃だ。 私も久しくこのような攻撃を受けていないので驚いた。 何とかお嬢様に気付かれる前に取り押さえ、寝室へと押し込んだ。 眠れば多少は落ち着くだろう、という希望的観測を抱いてだ。 戦闘中ずっと彼女は 「邪魔するな邪魔するな邪魔するな邪魔するな邪魔するな邪魔するな邪魔するな邪魔するな……」 と呻いていた。一体何だというのだ。 ○月⑨日 今日はお嬢様がお冠だった。 勿論理由はパチュリーのことである。 最近全く相手にしてもらえないことにご立腹の様子なのだ。 何とか今日は誤魔化し通したが、明日になればまた同じことを問われるだろう。 一体どうしたものだろうか。 ○月●日 生憎今日は新月だった。 お嬢様も力の落ちる厄介な日だったが、それでもパチュリーのことが心配らしい。 せめて満月まで待っていただけないか、と申し上げたが無駄だった。 パチュリーを呼び出すが、使いに出したこぁが戻ってこない。 何が起こったか図書館に見に行けばこぁはまるでボロ雑巾のように焼け焦げて転がっていた。 そしてパチュリーはというと、落ち窪んだ瞳に底光りした恐ろしい、だが焦点の全く合っていない、瞳孔の開ききった死人のような目をしていた。 顔は頬がこけ、肌も土気色でまさに歩く屍といった塩梅だ。何やらブツブツ言っているがいつもに増して小声で早口のため何を言っているか 全く聞き取れない。妹様も少々おかしいのだがその比ではない。 そのただならぬ様子にお嬢様もたじろいでいた。 パチュリーはというとそんな私たちに目もくれずに本を読み、破り捨ててはまた本を読んでいた。 掃除をしていた妖精メイドが運悪くパチュリーの進路を妨げた、と思った瞬間妖精メイドは消し飛んでいた。 理由を尋ねようとするお嬢様を何とか押さえ込み、気の済まない様子だったのを必死になだめすかし、 明日あの宇宙人どもの所に相談に行く、と決めた。 ○月▲日 宇宙人というものは何を考えているか全く分からない存在だと思っていたが、少なくとも情けというものはあるらしい。 あの永琳とかいう薬師がわざわざ往診に来てくれた。 そして図書館で彷徨うパチュリーを無理矢理に(それにしてもタガの外れたパチュリーを見事に取り押さえた力量は大したものだと思う) 取り押さえ、彼女の寝室のベッドに縛り上げた。 彼女の寝室自体は特に変わった様子はなかった。が永琳が嫌な気配がすると言ったので、隣の客間に行ってみた。 そこには……、 止めておこう。書いても無駄だ。今できるのはパチュリーが元通りに戻ることを祈るしかない。 八意永琳カルテ 患者名:パチュリー・ノーレッジ 疾患名:不明(悪魔憑き? 犬神憑き? 恋の病?)、喘息、栄養失調、失血性貧血、 病状:せん妄、錯乱、極度の鬱状態・被害妄想、極端な攻撃性、が見られる。 意思疎通を図るも言語を理解しているかどうかも疑わしい。 患者の様子から何らかの降霊術を行った模様。ただし何を契約したかは全く不明。 患者が直前に書いたであろう手記には(……は判読不能) 「……他人の吸った空気を吸うのも許せない、食べても排泄されるし霊魂は閻魔に取られる、時間は止められない、 止める止められない止める止められない止める止める止める止める止める止める止める止める止める止める止める止める止める……」 といったようなことが羅列されていた。彼女が何かを行っていたらしい部屋には血文字で 「……アイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテルアイシテル……」 「……ワタシノモノワタシノモノワタシノモノワタシノモノダレニモワタサナイダレニモワタサナイダレトモハナサセナイダレニモフレサセナイ……」 などと部屋中書きなぐられていた。その部屋で患者○○を発見するも重度の精神的外傷のため廃人状態である。 現在両名とも治療のため隔離しているが治療の目処は立っていない。 うpろだ321 ─────────────────────────────────────────────────────────── ○○の隣で私は本を開き、活字の中で過去を振り返る 奇妙な浅い眠りの中で、俺は過去の夢を見る 2人の始まりを…… 記憶のページをめくり始める―― 薄暗くてカビと埃の臭いが漂う図書館。 小悪魔は奥に本を取りに行っているから、今は2人きりだった。 その静かな空間に、○○の声はよく響いた。 「今何て言ったの?」 彼の言葉に耳を疑い、聞こえていたのに問い返してしまう。 内心動揺しているせいか、ただでさえ小さな声が余計に小さくなった。 でも、彼は決して聞き逃す事は無いだろう。 今までそうだったから……。 失敗した。 無視すれば良かった。 そう思った瞬間 「私はパチュリーさんが好きだと言ったんです」 ○○が告白を繰り返した。 無駄な飾りは無しに、はっきりと想いをぶつけてくる。 そんな○○に私が返した言葉は 「そんな戯言を言われても困るんだけど」 自分でも驚くほど辛辣だった。 彼を傷つけたくない筈なのに、無心で言い続けた。 「今の○○は一時の感情に流されているだけ。 私への好意は恐らく友人としての物、あるいは一種の憧れを勘違いしているだけよ。 そんな勘違いで告白されても困るわ……。 いい? 現実はロマンチシズムに富んだ小説の世界じゃないの。 貴方のちょっとした気の迷いが恋愛に発展するわけないでしょ? それに私は妖怪で、○○は人間。 その辺の事をよく考えてから物を言いなさい」 適当な事を言って誤魔化そうとした。 種族の違いなんて、彼はどうでも良いと思っているだろう。 今まで一緒に過ごしてきて、それなりに○○の事は理解できているつもりだ。 だから、本気で好きだと言ってくれているのも解っている……。 妖怪だとか、人間だとか、そんな事は関係なく私が好きだと。 でも、○○の想いを受け入れる事も、拒む事も出来ない。 私も○○が好きなのに……。 自分が何をしているのか解っている。 これは逃避だ。 ここには沢山の本があって、小悪魔がいて。 そして、少し前から○○が……私にはそれだけで充分だった。 彼の想いを受け入れても、拒んでも、その日常が遠くへ行ってしまうような気がした。 だから○○の告白に、はっきりした返事を返したく無かった。 私も好きだったって言えば良いのに。 ただの部下だって、○○の事なんか好きじゃないって言えば良いだけなのに、それで済むのに……。 苦悩する私に、○○が決断を迫る。 「私はちゃんと考えた上で言っています。 だから、誤魔化さないで返事を聞かせて下さい」 ○○の声が、黙示の日に吹かれる角笛の音のように、何か怖ろしい物のように心を揺さぶる。 私は何でもない風を装いながら、内心では相当焦った。 いっそのこと返事は先送りにさせてもらおうかとも思った。 だけど、どこまでも真剣な○○を見て、私も自分の想いに正直になっても良いのかな? と、そう思えた。 だから、最後の悪あがきで彼に幾つかの問い掛けをする。 「私、本ばっかり読んでて○○の相手なんてほとんどしないと思うけど?」 「それは知ってますし、本は私も好きですから大丈夫です。 読書や魔法研究の邪魔はしません」 「体も弱いし喘息持ちよ?」 「それも分かってます。 体調が悪い時は付きっ切りで看病します」 「○○よりもずっと年上だけど……」 「私は年上好きなんです」 「私も一応妖怪だから、ひょっとしたら人間だって食べるかも知れないわよ?」 「それは人が動物を食べるのと同じ事でしょう? そうだったとしても気にしませんし、パチュリーさんに食べられるなら本望です」 私はもう、逃げるのを止めた。 「分かったわ……実を言うと私も○○の事好きになってたの。 私達、付き合ってみましょうか?」 「本当ですか!?」 安堵と喜びの入り混じった笑みを浮かべる○○を見て、私はこれから、もっと○○を好きになれる、そう思った。 「これからは敬語は止めてちょうだい。 恋人なんだから」 あの頃の私は、自分がこんな事をするなんて思ってもいなかった あれから共に過ごして、俺はパチュリーの事を解ったつもりで何も解っていなかった 大きくなり過ぎた○○への愛情はやがて、その大きさ故に歪み、ねじれ、私の心を蝕み……それは狂気へと形を変えていった―― これは罰だ、彼女が俺の行動をどう思っているかも考えずに、パチュリーを苦しめた俺への、砂糖漬けのように甘い拷問―― 紅い悪魔は楽しそうに囁く 「さあ、次の手は? 夜は長いのよ? もっと足掻いて見せて? もっと楽しませて? もっと面白い物を見せて?」 まるでチェスでも指しているように、遊んでいるように繰り返し囁く だが、自己満足と罪悪感で彩られた2人だけの世界に、その言葉は届かない 悪魔は、全く進展しない退屈なゲームにチェック・メイトをかけようとしていた 私は 俺は そんな事は知りもしない 狂った2人は間違いだらけの悦びに恍惚としていた―――― あれから更に一週間が過ぎた。 ○○さんがいなくなって丁度二週間。 どう考えてもおかしい。 本当にパチュリー様が仕事を任せるとしても、こんなに時間のかかる仕事の筈がない。 パチュリー様は○○さんの事が本当に好きだ。 常に一緒にいたいと思っている筈だ。 それなのに、今日も1人で平然と本を読んでいる。 何度かさり気なく○○さんの事を訊いてみたけれど、返事はいつも 「大丈夫」 「心配ない」 と、適当で奇妙な自信に満ちた物だった。 初めは何とも思わなかったが、私は徐々に違和感を感じていった。 そう、パチュリー様は○○さんの事を全く心配していないのだ。 それが余りにも異様で不気味だった。 二週間もの間、恋人から連絡すら無いというのに……。 どうしてそんなに平気な顔でいられるのだろう? 疑念は日増しに大きくなり、とうとう主への不信に至った。 パチュリー様の目を盗んでこっそり図書館を抜け出し、目的の人物を探す。 こういう事を相談出来るのはパチュリー様と対等の御方。 お嬢様ぐらいしかいない。 しかし、パチュリー様の使い魔に過ぎない私が、直接お嬢様に相談に行くのは気が引けた。 だから……。 「こんな所で何をしてるの?」 広間に差し掛かった時、急に背後から呼び止められた。 鋭い声に振り返ると、そこには目的の人物、十六夜咲夜が立っている。 「メイド長……」 「ど、どうしたのよいったい? そんな捨て犬みたいな顔で」 余程情けない顔をしていたんだろう。 咲夜さんは随分と驚いたようだった。 だが、そんな咲夜さんは関係無しに、私の口は急ぎ動いた。 「こんな事相談出来るのはメイド長しかいないんです。 何とか出来るのはたぶんお嬢様だけなんです。 だから、だから――」 「分かったから少し落ち着きなさい。 何言ってるのか分からないわ」 窘められて我に返り、数回深呼吸を繰り返す。 少し、冷静さが戻ってきた。 様子を見て咲夜さんが口を開く。 「落ち着いた? それで、そろそろ仕事をサボって、図書館を抜け出してまで私に会いに来た理由が知りたいのだけど?」 「実は……」 ○○さんが行方不明な事、パチュリー様の様子がおかしい事、 私はこの二週間で積もりに積もった疑念を吐き出していった。 話を聞いて、咲夜さんは少し難しい顔をした後、 「分かった。 お嬢様には私から話しておくから」 そう言って、私を安心させる為か柔和な笑みを浮かべた。 その笑顔に少し救われたような気がした。 「それじゃ、パチュリー様にばれるといけないので私は図書館に戻ります」 「ええ。 その方が良いわね」 咲夜さんに頭を下げてから、私は図書館へ急いだ。 ○○とパチュリー様がそんな事になっているなんて気付かなかった。 毎日ティータイムには必ず、パチュリー様にお茶をお持ちしていたというのに……。 確かにこのところ○○の姿を見ていなかったが、蔵書の整理が忙しくてお茶の時間にも仕事をしているのだとばかり思っていた。 パチュリー様の様子にも特に不審な点は見られなかったし、その程度の事を、いちいち気にもとめていなかった。 だが、小悪魔の話を聞いて、○○とパチュリー様が付き合いだしてからの図書館の様子を思い返してみて初めて気付く。 2人が付き合い始めた頃から、○○はあの時間には必ずパチュリー様の傍にいた。 それがこの二週間、○○はティータイムに1度も姿を現していない。 この変化にもっと早く気付くべきだったのに……。 ○○とパチュリー様が恋仲になる以前の、 ○○が紅魔館に来る以前の日常が余りに長過ぎて、むしろ2人が一緒にいる事の方が、私の中で非日常のようになってしまっていた。 慣れたつもりでも、心の何処かで新たな日常が不自然な物に感じられていた。 だから、こんな事にも気付かなかったんだろう……。 私はちょっとした自責を感じつつ、お嬢様へお持ちするお茶の用意を始める。 何気なく見た時計の針は、不吉にも13を指した。 時を刻んだ瞬間の音が呪いの慟哭の様に聞こえ、私の耳に不気味に残った。 軋んだ針の音はまるで、空想上の髑髏の死神が、大鎌を振り上げた音のように感じられた。 上質な紅茶の味と香りを楽しみながら、咲夜から、小悪魔に受けた相談についての話を聞く。 一通り話を聞いて、最初に口をついて出た言葉は、 「つまらない」 その一言だった。 「申し訳ありません。 小悪魔にはお嬢様に伝えると言ってしまいましたし、一応報告した方が宜しいかと思いましたので」 見当違いな咲夜の謝罪に何ともなしに答える。 「そういう意味で言ったんじゃないわよ。 とうとう使い魔に感付かれたか……パチェもツメが甘いわね」 がっかり、という風に呟き、チョコレートを1つ口に放り込む。 とても甘い筈なのに、気分のせいかやけに苦々しく感じる。 口の中に残る泥のように粘ついた感触が嫌になって紅茶で流し込んだ。 「要するに、お嬢様は初めから全てご存知だったと、そういうわけですか?」 「私はここの主なんだから知っていても不思議はないでしょ? パチェが○○に何をしたのか、これからあの2人がどうなるのかも見当は付いてるよ」 そう、バッドエンドだ。 ○○は自我の崩壊を起こして肉人形と化し、それもいずれは腐って骨になる。 パチェは狂人にでもなって、それで終わりだ。 何のひねりもない悲劇的な結末。 あの2人は、これからずっと、そんなつまらない道化を演じるつもりなのだろう。 「もっと面白い展開を期待してたんだけどね……」 「いかが致しますか?」 咲夜の問いに少し考え込む。 ○○が幻想郷に迷い込んだのも 最初にこの屋敷に辿り着いたのも その流れ者に過ぎない○○を屋敷に置いたのも 本好きだというだけで図書館で仕事をさせたのも そこでパチェと○○が出会い恋仲になったのも 全ては偶然と私の気紛れ。 そして、それは運命。 だとしたら、2人が今向かっている結末に行き着くのも…… そうとは思えなかった。 第一、そんな結末は私が望まない。 カップに残った紅茶を飲み干すと、私は立ち上がった。 「お嬢様?」 「こんな事する柄じゃないけど、パチェの所に行ってくるわ」 「行ってらっしゃいませ」 送り出す咲夜を背にして扉を開け、友人のもとへゆっくりと歩を進めた。 重い扉を開けて図書館の中に入ると、蔵書の余りの多さに改めて驚嘆した。 立ち並ぶ無数の本棚はまるで、主を守護する防壁のようだ。 ここは私の屋敷にあって私の物ではない場所。 パチェの、唯一無二の閉ざされたテリトリー……。 「あら、レミィがここにくるなんて珍しいわね。 何か用?」 私に気付いたパチェが声をかけてくる。 その態度には何ら不審な点は見られない。 だが、その目には確かに、魔女の釜の底のような暗く陰鬱な影があった。 「パチェ、単刀直入に言うわ。 ○○を解放しなさい」 「何のことかしら?」 そう言って微笑むパチェを見て、背中をひんやりとしたものが駆け巡る。 不味い。 精神を相当やられている。 「とぼけても無駄よ。 私に気付かれないとでも思ったの?」 「だったらどうだっていうの」 作り笑いが消え、暗く、冷たく私を睨む。 「○○は私の男よ。 レミリアには関係ないわ」 愛称ではなく、名前で私を呼ぶ。 それは明らかな敵意の表れだった。 「邪魔するなら力尽くでそれを解らせてあげるけど?」 スペルカードを出さない。 なのにパチェの殺気はより強く、魔力がより大きくなっていくのが分かる。 彼女は本気だ。 「私に勝てるとでも思ってるの?」 「やってみなきゃ分からないわ」 そのまま暫く睨み合いが続いた。 さながら龍と虎だ。 待っていれば引いてくれるかと思ったが、今のパチェは冷静な思考を完全に失っていた。 実力の差なんて分かっているでしょうに……。 ふと視線を逸らすと、小悪魔が訳も分からずおどおどとしていた。 それを見て、私はすっかり興がそがれてしまった。 少し考えて、試しにこちらから引いてみる。 「止めましょう……馬鹿馬鹿しい」 「えっ?」 パチェが呆気にとられた顔で私を見る。 「私は別に喧嘩しに来たわけじゃない。 少しだけ、私の話を聞く気はない?」 私の提案に彼女が視線で先を促す。 策にかかった。 疑似餌に食らいついた魚は、あとは釣り上げるだけだ。 「貴女が○○にどれだけ強力な魔法を使ったかまでは知らないけど、○○はこのままだと物言わぬ肉人形のまま死んで、腐敗して、骨になるだけ」 「生命維持はできてるわ」 「忘れたの? ○○は人間。 それも数十年で終わりよ」 ○○の死を口に出しても、パチェの表情には何の変化も無かった。 まだ気付かないのか……。 「でもね、その前にもっと重要な事が起きるわ。 自我の崩壊よ」 「それは……」 パチェの態度に明らかな変化があった。 傷口を抉る様にその先を続ける。 「今のような状況に置かれて、ただの人間に過ぎない○○の精神はどれだけもつのかしら?」 「それでも……私は……」 揺れるパチェの心を、鋭い言葉の切っ先で更に切りつける。 「心が消えるっていう事は、彼の貴女に対する想いも消えるっていう事よ。 パチェはそれで良いの? ○○が本当の意味で死んでも。 それともパチェは外見だけ残ってればそれで良いの?」 この言葉が決定打となった。 「そんな事……無い……」 自らの過ちに気付いて泣き始めたパチェには、それ以上言葉は必要なかった。 「貴女の創った自分勝手な楽園は、今終わったのよ。 後は自分で考えなさい」 それだけ言ってパチェに背を向ける。 「どうして……?」 背後から投げかけられた問いに、悪魔的な笑みで答えた。 「友人の幸せの為、あとは……そうね。 退屈だったからかな?」 最後にそう言って図書館を後にした。 結局、第三者の私に出来るのはここまでだ。 パチェの言う通り、これは2人の問題なのだ。 こと、恋愛事に関しては。 強過ぎる愛情がその大きさ故に歪み、ねじれた。 それだけのこと。 やれる事はやった。 これから2人が、パチェがどんな道を選ぼうが知った事ではない。 だけど、願わくば 「幸せになって欲しいかな……」 そう呟き、咲夜が待つ自室へ向かう。 今、私が見たいのはハッピーエンドだった。 途中、少ない窓の1つへ目を向けると、赤みのかかった月が昇っていた。 部屋に戻ったらまず咲夜に紅茶を淹れてもらおう。 血を多めに入れてもらって、あの月の様に赤い紅茶を。 なんだか妙に疲れてしまった。 本当に、こういう事する柄じゃない……。 レミィが去った後も、私の心は揺れ続けていた。 ○○を独占したい、○○に愛されていたい。 矛盾した2つの感情の狭間を、私の心は狂った時計の針の様に行き来した。 「パチュリー様? パチュリー様?」 心配そうに私を呼ぶ小悪魔の声も、何処か遠い木霊のようだった。 「悪いけど、本の片付けをお願い」 それだけ言って○○のもとへ急いだ。 怖かった。 ○○がいなくなってしまいそうで。 今まで長い時を生きてきてこんな感情は初めてだった。 本だけが愛情を注ぐ対称だったから。 本は決していなくなったりしないから。 だから私は、○○を失うのが怖くて堪らなかった。 何も見えない世界で、彼女だけが心の拠り所だった。 何も聞こえない世界で、彼女の声だけが心に訴えかけてきた。 だけど、今はその姿も薄く、蜃気楼のようで その声も遠く、幻聴のように通り過ぎていった。 ただ、泣いている事だけは分かった。 子供のように、俺を前にして泣きじゃくる。 「どうした?」 俺の声は届かなかった。 「何で泣いてるんだ?」 俺の口は言葉を紡いではくれなかった。 それでも、俺は……パチュリーを愛していた。 愛する人を泣き止ませたかった。 笑顔を見たかった。 だから……諦めずに呼び続けた―― ○○の為の部屋、特にお気に入りの本と○○だけの部屋で、 彼を前にしても、涙は止め処なく流れた。 「ねえ○○。 私はどうしたら良いの?」 問いかけても彼は何も答えてはくれず、ただ微笑むだけだった。 「怖いの……○○を失うのが、怖くて堪らないのよ……」 心の中の時計の針は、より激しく、矛盾した感情の間で揺れた。 「○○」 彼に抱きつき、その胸に顔を埋めてただただ泣き続けた。 ○○はそんな私に、何も言わず微笑んでくれる。 でも、これは違った。 偽りの笑顔。 今の○○は私が好きな○○じゃなかった。 だから余計に涙が溢れた。 ○○をこんな風にしたのは私なのに……。 再び彼の胸に顔を埋めた時、頬に何か硬い物が当たった。 「?」 胸のポケットを弄る。 「指環……」 安物の宝石がついたちゃちな指環。 だけど、私はその指環に目を奪われた。 もしかして? ひょっとしたら? 「○○? 何なのこれは! どういうことなの!?」 疑念と期待に駆られ本棚へ急ぐ。 目的の本を見つけると無我夢中でページをめくった。 お気に入りの本がどうなろうと知った事ではない。 ページが折れ、ぐしゃぐしゃになっても気にも留めなかった。 もっと深く知りたかった。 彼の想いを。 もう一度聞きたかった。 彼の言葉を。 目的のページを開いた私は、そこに記された言葉を急ぎ読み上げた。 あれほど激しく動いていたのに、心の揺れが止まっていた。 壊れた時計の様に、2つの感情を行き来していた針が、正しい時間を刻み始める。 『やっと面白くなった』 そんな声が何処かで聞こえたような気がした―― 閉じた楽園に声が響き渡る。 それは、ある種の荘厳な宗教音楽のように聞こえた。 これは愛する人の歌声。 俺を現実へと引き戻す声。 「パチュリー……」 その祝福の賛美歌の中で、2人の歪んだ楽園は終わりを告げた―― 「ぐっ……うぅ……」 久しく聞いた○○の声。 その声に、自分でも驚くほど安堵していた。 「どうかしたか?」 寝ぼけ交じりでとぼけて訊ねる彼に、私は泣きながら抱きついた。 それしかできなかった。 深く、強く、抱きつくことしか……。 いきなり抱きつかれて、少し面食らった気分だった。 「おいおい、どうしたんだよ?」 優しく訊ねる俺に、パチュリーが涙混じりに答える。 「ごめっ……なさ……ごめんっ……なさいっ……」 泣きじゃくる彼女の、顔にかかった髪を優しく掻きあげる。 「なんか俺、凄く悪い夢を見てた気がする」 「それは本当にあったこと。 全部私のせい……私……○○に酷い事した……」 「気にしなくて良いから。 悪いのは俺の方だ……ごめん。 もっとパチュリーの事、考えてあげてたら……」 「違う! ○○は悪くない! 私が勝手に――」 全て自分のせいだと言い張る。 痛々しく、かすれた声で謝り続ける。 俺はそんな彼女を見ていられなかった。 だから……。 泣きながら言い続ける彼女に、そんな事はどうでも良いのだと分からせる為に、キスをした。 優しく、深く。 口内に舌を侵入させ、貪欲に愛する人を求める。 「んっ……ふぁ……ぁ……」 「もう良いかな? 今ここに俺がいる、それが答えなんだろ?」 そう問うた俺に、パチュリーが頷き、熱を持った目で問い返してくる。 「あの指環は?」 「パチュリーにいつか渡そうと思って持ち歩いてたんだけど、見付かっちゃったか……」 悪戯を見付かった子供のように言う俺を、パチュリーはじっとりと睨んだ。 「あれが無かったらたぶん、○○はまだ戻ってきてないわよ?」 「そうか……こんな時でなんだけど、結婚しよう。 愛してる。 永遠なんてこの世に存在しないかも知れない、でも、それでも君と、可能な限り一緒にいたい。」 「喜んで」 その答えを合図に、俺達はどちらからともなく、再び深い口付けを交わす。 唇を離した時に余韻を引く銀の糸すら、欲望を増徴させる道具に過ぎなかった。 その長く保たれた唾液は蜘蛛の糸。 そこに巣食う魔物は2人の理性を捕らえ、食らい尽くし、情欲の世界へと誘う。 お互いがお互いを求め、2人の舌が互いの口内を蹂躙していく。 さながらアダムとイヴを楽園の外へ導く蛇のように、舌は暴れ、踊っていた。 「あっ……んちゅ……うむぅ……ふぅ……」 「パチュリー……」 「もっと」 「?」 「まだ……足りないから……もっとして……」 椅子が倒れ、本は軽い音をたてて床に落ちた。 それでもパチュリーの手のひらには、しっかりと婚約指環が握られていた。 結婚式は紅魔館で執り行われる事となった。 この屋敷に教会なんてある訳はないが、俺達にはそんな場所よりも余程お誂え向きな式場だ。 「さすがに緊張するな」 誰にともなく呟く。 窓の外を見ると、日が沈み、丁度月が顔を出す頃合。 式の始まりは月が昇った時、という何ともアバウトなものだった。 神父役と参列者達に少し不安を抱きながら、鏡で最終チェックを済ませて控え室を出た。 純白のドレスは妙に気恥ずかしかったけれど、今日○○と結ばれる。 そう思うだけで私の心は喜びで満たされ、恥ずかしさなんてどうでも良くなった。 「お綺麗ですよ、パチュリー様」 小悪魔が微笑みかけてくる。 「ありがとう」 誤った道を選びそうにもなったけど、こうしてこの日を迎えられた事が嬉しかった。 「この世のあらゆる書物も、おまえに幸福をもたらしはしない、か……」 誰にともなく呟く。 「何ですかそれ?」 不思議そうに訊ねる小悪魔に、皮肉交じりに話す。 「ヘルマン・ヘッセとかいう外の文学者の詩の一文よ。 前に○○がこの人の詩集を読んでたから 気になって私も読んでみたんだけど、その中の書物って題の詩の書き出しがそれだったわ」 「なるほど」 そう言って名前通り小悪魔的な笑みを浮かべる小悪魔に少し腹が立ったが、その反応には納得できた。 昔の私なら……○○と出会う前の私だったらこんな言葉は一笑に伏しただろう。 でも今は、そうなのかも知れないと思えた。 確かに私は、本以外で幸福を見つけたのだから。 「これからも○○さんにいっぱい幸せにしてもらって下さい」 「言われなくてもそのつもりよ」 「あっ!! パチュリー様、そろそろ時間です」 席を立ち、小悪魔と共に部屋を後にして、式場へ向かう。 渋々ながら神父役を引き受けてくれた友人のもとへ。 将来を誓い合う○○のもとへ。 楽しみはその時までとっておこう。 そう思い、パチュリーのドレス姿を事前に見なかった事を少し後悔する。 フラワーガールに任命されたフランドールお嬢様の花をまく可愛らしさも何のその。 小悪魔にエスコートされた新婦の入場と共に、 俺は純白の衣装に身を包まれたパチュリーに目を奪われ、大分惚けた顔をしていた。 「○○? しっかりしなさい!」 「あ?……はっ、はい!」 レミリアお嬢様に小声で窘められ我に返る。 不規則に花びらの並ぶ中央通路を歩き終え、パチュリーが隣に来ると余計に、俺の心臓は早鐘のように鳴った。 当然の如く賛美歌斉唱や聖書の朗読は省略され、主役が揃ったところでお嬢様がいきなり宣誓を尋ね始める。 尤も、それはお嬢様が適当にアレンジを加えた物で、吸血鬼らしさのある神への誓いとはとても呼べないような代物だったが……。 俺とパチュリーは誓い合い。 式はついに、メインイベントを迎えた。 「それでは、誓いのキスを」 緊張し、震える手でパチュリーのヴェールを上げる。 だが、その下のパチュリーの幸せそうな表情を見て、俺の緊張は何処かへ消えてしまった。 「○○……」 「パチュリー」 互いの名を呼び合い、俺達は誓いの口付けを交わす。 それと同時に上がる参列者達の歓声、幽霊楽団の奏でる風変わりな結婚行進曲。 大きな祝福の音の嵐の中で、必要最低限の短過ぎる挙式は幕を下ろし始める。 私と○○の2人きりになった式場で少し休憩。 他の皆は既に外に出て、私達を待ち構えている。 「あとはブーケ・トスだけだな」 そう言ってホッとした様子の○○に釘を刺す。 「だけってなに? それも結婚式の内よ」 そう聞いた途端彼は再び緊張し始め、少し顔が強張ったようだった。 「そんな顔しない。 私たちの結婚式なんだから」 「そう、だな」 緊張しながらの不器用な笑顔と共に差し出された○○の手に、自分の手を乗せる。 「じゃあ行こうか」 「ええ」 私達は参列者達のもとへ歩を進める。 それだけじゃない。 私達はこれからずっと、2人で歩んで行くのだ。 表に出るとそこは、ブーケを狙う参列者達の殺気によってまるで戦場のようだった。 主役の私達なんてお構い無しだ。 それでも、 レミィは フランは 咲夜は 小悪魔は 美鈴は 紅魔館の皆は私達を見ていた……前言撤回。 フランは私達よりブーケの方に関心があるみたいだ。 興味津津で私の手元を見ている。 でも、それで充分だった。 幸福の絶頂の中で、この挙式の終わりを天へと投げ打つ。 我先にと手を伸ばす人々の上で、紅い月光の下で、ブーケは踊った。 ちなみに……披露宴、というより式後の宴会で…… 「○○、パチュリーの事泣かせたりしちゃ駄目だぜ」 「魔理沙には言われたくない。 いつも勝手に本持って行きやがって。 むしろパチュリーを泣かせてるのはお前だ。 というかそこの霊夢!! お前さっきから遠慮無しに飲み食いしてるがあのご祝儀は何だよ!? 綺麗な石って……貝殻って……」 「ここにくる途中、湖に落ちてたから拾ったの。 あんたに払うお金なんかないわよ! 結婚式は普通に考えれば家の神社でやるべきものなのにそれを…… 出席しただけありがたく思いなさい。 だいたいご祝儀持ってきたのなんて数えるぐらいしかいないじゃない」 「あんなのなら持って来ない方がましだ!! だいたいお前の神社で結婚式なんてやったらとんでもない額請求するだろ?」 「花婿さぁーん。 ちゃんと飲んでる?」 「ちょっ!? す、萃香ちゃん!? いきなり抱きつかないでよ! 痛いって! 角当たってるから!!」 「良いのがあるから一緒に飲もうよ」 「テキーラの有名銘柄? 何でこんな物が……」 「私が持ってきたのよ」 「紫さん!! 何てことしてくれるんですか!!」 「あら、お気に召さなかった? ○○は外から来た人間だから外のお酒のが好きだと思ったんだけど……やっぱりスピリタスの方が良かったかしら」 「それを持って来なかった事には感謝します……」 「さあ飲もー!」 「や、止めて萃香ちゃん。 お願いだからさ。 ラッパ飲みは無理だよ」 「大丈夫だって」 「駄目だこの人たち……パ、パチュリ~助けて」 「……知らない」 という感じに、○○は皆と随分楽しそうにしていたから放っておいた。 新婚旅行は無かった。 私達にそれは、必要なかったから。 特に旅行に向いている場所があるわけでもなかったし、行きたい所も無かった。 この図書館が2人の居場所で、本の傍こそが最も居心地の良い場所なのだ。 のんびりと本を読んで過ごすのが1番良い。 一緒にいられるだけで、他には何も要らない。 「私は○○のものよ。 ねえ、○○は?」 悲劇の前と同じ問いかけに、彼もあの時と変わらず、同じ答えをくれる。 その返事に嬉しくなって、私は隣に座る○○の肩に、頭を預けた。 彼に出会うまで、独りが寂しいなんて思わなかった。 でも、今は…… ○○がいつも傍にいてくれる。 ○○がずっと一緒でいてくれる。 自己満足のための、偽りの人形なんかじゃなくて、本当の○○が。 私の好きな、私を好きでいてくれる○○が。 私は1人じゃない。 それはとても……幸せだった。 だから私は、彼を失わない為に、考えていた計画を実行に移す事にした。 パチュリーの問いは、あの時のように涙に濡れたものではなく、問いというよりは確認に近いものだった。 その言葉はまるで、質の良い柔らかなベルベットのように俺の耳を撫でた。 彼女への気持ちは変わらない。 むしろ、その想いは以前よりも強かった。 だから、 「俺もパチュリーの物だ」 迷う事無くそう答えた。 俺の答えを聞いて、嬉しそうに頭を預けてきたパチュリーの髪を優しく撫でる。 それを彼女はくすぐったそうにしていた。 まさかあの時、パチュリーがあんな事を考えていたなんて、夢にも思わなかった……。 結婚式からもう一ヶ月か。 新婚生活は順風満帆その物だ。 今日はパチュリーと小悪魔は何か重要な魔導書を取りに行くとかで図書館の奥に消えてしまった。 俺は手伝いを断固拒否された事を不審に思いつつも、仕方ないので 適当な本を読みながら、2人が戻ってくるのを待っている。 「なんだ、○○だけか? 奥さんはどうしたんだ?」 唐突な声に顔を上げると、目の前に白黒の少女が立っていた。 「魔理沙……またうちの本を盗みに来たのか?」 「盗むなんて人聞きの悪い事を言うな!! 借りるだけだ!!」 屁理屈で弁解する魔理沙に、事前に作っておいた物を差し出す。 「何だこれ?」 「お前専用の貸し出しカードだ。 俺もパチュリーも寛容だから期限は一年にしてやる」 カードを受け取りながら、魔理沙は酷く気まずそうに苦笑した。 「わざわざ作ってもらって悪いんだが……たぶん意味無いぜ? 期限なんて守る気ないし」 「折角作ったのにそんな正直に言うなよ……」 そんなやりとりをしていると、奥から重なる足音と話し声が聞こえてきた。 「さすがにこれだけあると重いわね」 「パチュリー様大丈夫ですか? やっぱり旦那様にも手伝ってもらった方が……」 「これぐらい平気よ。 ○○に頼んでもし感付かれて逃げられでもしたらどうするつもり?」 「それはそうですけど」 感付かれるとか逃げられるとか……どういう意味だ? 「ふう、ただいま○○。 あら魔理沙、来てたの?」 思索に耽る俺を余所に、大量の本を抱えて戻ってきたパチュリーは魔理沙と話し始めた。 「どうしたんだパチュリー? そんなに本抱えて」 「初歩的な魔導書をあるだけ持ってきたの。 使う事なんて滅多になくて奥に押し込めてたから探すのに苦労したわ」 そんな物何に使うんだ? パチュリーには必要ないんじゃ――。 俺の頭に疑問が浮かんだのと同時、 「何に使うんだ?」 と、魔理沙が尋ねた。 「○○に魔法を教えようと思って」 「ええ!?」 「……」 パチュリーの言葉に魔理沙が驚きの声を上げ、余りの衝撃に思考が停止した俺は言葉を失う。 我に返ると、俺は訳も分からずに抗議した。 「ちょっと待て!! いきなり何言い出すんだよ!? 無茶だって!!」 「私はたかだか数十年で○○に死んでほしくないの! 私のために魔法使いになってちょうだい!」 それっきり黙り込む俺たち。 夫婦喧嘩は犬も食わないと言うが、本来の意味ではなく言葉通りに 「邪魔なようだから私はこの辺で失礼するぜ。 じ、じゃあな」 などと言って、魔理沙は盗る物はしっかり盗ってそそくさと帰ってしまった。 途端にパチュリーが沈黙を破る。 「ねえ、○○は私を置いて先に逝くつもりなの? 一緒にいてくれるって……傍にいてくれるって言ったじゃない! あれは嘘なの!?」 問い質すパチュリーに、俺は何も言い返せなくなってしまった。 その言葉と気持ちに、嘘偽りは無いのだから。 仕方ない、無謀な挑戦だが頑張ってみるか。 これも愛する妻の為……そう心の中で自分に言い聞かせ、覚悟を決める。 「嘘じゃない。 分かったよ……で、何から始めればいいんだ?」 俺がそう言うと、パチュリーが笑顔で本の山から一冊を取り出す。 「まずはこれから始めましょう。 いずれは得意なのを重点的に鍛えていきたいんだけど、どうせならあんまり見た事の無い類いの物が良いわね。 召喚魔法とか身体能力強化とか――」 パチュリーは熱心に語りながら、新しいオモチャを買ってもらった子供のように、嬉しそうに本の山をごそごそと漁りだした。 何か不安だ。 「落ち着いて下さいパチュリー様! 旦那様は逃げないみたいですから!」 とりあえず今日のパチュリーの体調は絶好調のようだった。 徐々に熱を上げていくパチュリーは手近な本棚からも本を取り出し始める。 「最終的にはこの辺りが良いかしら」 そういって差し出された古めかしい本に、俺は首を傾げた。 「何だこれ?」 「レメゲトンだけど」 題を聞いた瞬間、勝てる見込みの無いゲームに全財産をBETしたような気分になった。 パチュリーは今、俺が1から始めるド素人だという事を忘れてるんじゃないだろうか? 「いきなりそんな有名所を出されても困るんだが……。 最終目標はいいから基礎的な事から教えてくれ」 「ごめんなさい、熱くなり過ぎたわ。 それじゃあさっきも言ったように最初はこれから始めましょう。 割と簡単だから安心して。 まず――」 パチュリーは魔導書の内容だとか、どういった言語で書いてあるとか、鍵がどうのなど説明してくれているが、 それで俺に解った事は、読めるようになるまで相当苦労するという事だけだった。 とりあえず外の魔導書を選択してくれた事にだけ感謝する。 元々は外の世界にあった物だと思うと、少しはなんとかなりそうな気がした。 あくまで少しだし、鍵やら何やらで大変そうだが……。 しかし、本当に前途多難で、先行き不安だ……。 「ちょっと○○聞いてるの? ○○?」 ~エピローグ~ 過去の物語は○○の目覚めの兆候と共に薄れて行く。 「あれからも色んな事があったね」 そう呟くと、彼が小さな呻き声を上げた。 聞こえたのだろうか? 私は本を閉じ、もうすぐ居眠りから起きるであろう○○の寝顔を眺めた―― まどろみの中の追憶から、覚醒と共に、意識は現在へと引き戻される。 どうやら座ったまま寝ていたようだ。 目が覚めるのと同時に、図書館に充満する独特な匂いが鼻を突いた。 でも、この匂いは嫌いじゃない。 これは、この図書館と本たちが歩んできた年月の香り。 それは、俺達が歩んできた年月でもあった。 「○○? 起きたの?」 「ああ……」 顔を横に向けると、椅子に座ったパチュリーが本を膝に置いてこっちを見ている。 優しい表情だった。 「昔の夢を見てたよ」 「奇遇ね。 私も○○が寝てる間、昔の事を思い出してたの。 告白された時から今までの事」 「不思議だな……2人共、同じ時に昔を振り返るなんて、やっぱり夫婦だから気が合うのかな?」 俺がそう言うとパチュリーは可笑しそうに笑った。 「そうかもね」 「何だよ。 笑う事無いだろ?」 文句を言いつつ、俺も自然と笑みが浮かんだ。 2人で、過去と現在を思い、笑い合う。 「愛してるよ、パチュリー」 「私も」 どちらからともなく、唇が触れるだけの軽いキスをする。 「はぁ……。 御2人とも、いったいいつまで新婚気分でいるおつもりですか?」 唇が離れるのとほぼ同時、溜息交じりの小悪魔の声が聞こえてきた。 「たぶん死ぬまで」 俺の返答に、小悪魔はうんざりした顔で抗議する。 「勘弁して下さい……少しは見せつけられる方の身にもなって下さいよ!! 毎日毎日イチャイチャし過ぎです!!」 「実害は無いんだから良いでしょ? それとも貴女は私達に夫婦喧嘩でもして図書館に不穏な空気を流せって言うのかしら」 「そこまでは言いませんが私の心に実害はありまくりです」 「それぐらい我慢してちょうだい」 言い合うパチュリーと小悪魔に、俺は苦笑を浮かべた。 そこにあるのはいつも通りの日常だ。 パチュリーと小悪魔と3人で過ごす、掛け値なしに幸福で、当たり前の日常。 今日は少し、この2人は虫の居所が悪いみたいだが。 それでも、幸せな事に変わりは無い。 「○○?」 1人感慨に浸っている俺に、棘のある感じでパチュリーが呼びかける。 「何だ? 結婚記念日のプレゼントに欲しい物でもあるのか? 分かってると思うが高いのは買ってやれないぞ」 冗談交じりで言った俺に、パチュリーはちょっと怖い顔をした。 「違うわよ。 ○○も小悪魔に何か言ってやってちょうだい! でもそうね……記念日は3人でのんびり過ごしたいかな。 ワインなんか開けて、本を読みながら」 「パチュリー様……」 「当然でしょ?」 「あの、その……先程はすみません」 小悪魔は申し訳なさそうに、ちょっと照れながら謝罪した。 微笑ましい光景を見て、物の入手を心配しつつ俺も口を開く。 「じゃあそれで決まりだな。 ワインが問題だが」 「レミィに言えば何本か用意してくれると思うわ」 とりあえずワインはなんとかなりそうだが、同時に別の心配事が浮上した。 あの享楽的なお嬢様の事だ……。 「本当に大丈夫かな……お嬢様の事だから、記念日を理由にパーティーとか開いたりしないか?」 「それは心配しなくて良いんじゃない? もしパーティーを開いたとしても、私達がいなくたって向こうは向こうで勝手に盛り上がるだろうし」 「それもそうか」 「記念日、楽しみですねー」 3人で談笑しながら、俺は居眠りする前に読み終えた、テーブルの上の本を閉じる。 それは同時に、物語の終わりを意味していた。 「○○。 これから先もずっと……一緒に記念日を祝おうね」 先に死なないで欲しい、という意味が込められているであろうパチュリーの言葉に 「時の許す限り」 そう答えた。 時の流れは止められない。 いつ死ぬかなんて……分からない。 俺の返答に、パチュリーは複雑な表情をした後、 「私達は例え死んだとしても一緒なんだから」 そう言って背筋の凍るような微笑みを浮かべた。 どうやら俺は、先に死んでもあの手この手でパチュリーに三途の川を渡らせてもらえなさそうだ。 そう思った瞬間、蜜のように甘い誘惑が俺の心を弄る。 そこまで想われてるなら、もう世の理なんてどうでもいいや。 どんな手を使ってでも、死んでも一緒にいよう。 どんなものにもいずれ終わりは訪れる。 でも、彼女はそんな前触れなんか消してくれる。 「まあ、それもありかな」 苦笑混じりに呟いた俺に、パチュリーが抱きついてくる。 「大好き」 小悪魔は抱き合う俺達を見て、微笑んでいた。 こうして追憶の物語が終わり、読み終えられた本は長い眠りにつく。 いつかまた、俺が いつかまた、私が 過去を思い返すその日まで……。 「乾杯」 「乾杯」 「乾杯」 全ては三つのグラスの赤に吸い込まれていった―――― The End 10スレ目 286 ─────────────────────────────────────────────────────────── ***幽香「桜花之恋塚」と↑のコラボです 「結婚おめでとうございます」 「大変なのはこれからだがな――ありがとう」 図書館の外れ、物置同然の部屋で、カップを鳴らす音が響く。 部屋には、乱雑に置かれた雑誌類、古ぼけたテーブルと草臥れた椅子、 そしてそこに座り、カップの中身を消費する二人の人影がある。 あたりに漂う香りは珈琲。 昼間から酒を飲む趣味は、この二人には無いらしい。 「しかし――お前が自分からご足労とはね――『留年皇』」 人影の片方――作業着と思しき革のツナギ姿の小柄な青年が、黒い霧を吹いた。 もう一方、着崩した司書服の男は「ぅわ汚な」と、トレーでそれを回避。自分と周囲の本を守った。 「その名で呼ばんといてくださいorz」 「はっはっは」 お互いの存在を知ったのは、互いの伴侶の邂逅と時を同じくする。 とはいえ、何か大事があったわけではない。 『留年皇』の伴侶は、この館の庭の花園と、上質の紅茶を目当てに、時折ここを訪れる。 その折に、館の主は勿論、七曜の魔女と会うこともある。 ならば、その傍らに連れ添う者同士に縁があるのも無理は無い、というだけの事。 ごほごほと咽ていた青年が、それは置いといて、と話題を変える。 「まあ、困った事があったら、何でも言ってください。 人外付き合いも、結婚生活も、こちらの方が先達なので」 「あー、その事なんだが、な」 早速、相談がある――。 そんな色がありありと現れた表情で、司書の男はしかし、言い淀んでしまう。 作業着姿の、まるで用務員のような青年は、それを茶化す事も急かす事もせず、ただカップの中身を継ぎ足し、言葉を待つ。 ややあって、言葉を選びながら、重々しく沈黙が解かれた。 「うちの奥さんさあ――嫉妬深いんだよ」 「まあ良くある話です。でもどんな風に?」 努めて軽く、しかし真剣に。 聞き上手の手本のような仕草で、意見を聞き出して行く。 「特にきついのが、視線の置き方でな? ほら、黒いのとか人形師とか、色々客が来るだろ?」 成る程、と思案げに目線を天井へ向ける用務員。 「あの人たちも可愛いですからね」 「ああ。パチュリーが一番愛らしいがな」 「でも、パチュリーさんは、その気持ちを汲んでくれない、と」 話が早い。と諸手を上げ、司書は「降参」のジェスチャーを示した。 「元を辿れば、騒動の一因だからな。 そこが可愛い所でもあるんだが――あんま頻繁だと、お互いに宜しくない。 ――単刀直入に言うが、良い知恵は無いか?」 上手く、場の空気を和らげられれば良い。 とは言っても、普段が比翼連理を地で行く間柄である。 どちらかが折れる、譲るというのは、互いの性分に合わない。 「――ふむ」 ひとつ、思い付きました、と。 作業着のポケットの一つから、何かを差し出す用務員。 「……グラサン?」 「ミラーシェイド、っていうとお洒落ですよ?」 縁が無く、蔓は鍵型ではなく棒状で、ただ骨格に適度な弾力でフィットし、保持されるタイプの色眼鏡。 職業柄、日向の苛烈な日差しから目を守る目的で、掛けているのだという。 司書は訝しげながらも手に取り、それで、と先を促す。 「目線を隠せます」 「あー?そりゃ尚の事失礼だと思うんだが」 だからですね、と。 用務員は、ある台詞を呟いた。 「……そりゃ、用法が違わないか?」 「いえ、だから、ちょっと捻った使い方を」 そうやって、青年のレクチャーは続いた。 最初は不審げだった司書の顔も、徐々に合点が言ったのか、頷きが深くなっていった。 「いやー、あのフラワーマスターを口説き落としただけはある」 「雑学が多いだけですよ」 「まあ確かにそんなに趣味人じゃあ、留年もするわな」 「……一言余計ですorz」 ――そして、実践編と相成る。 先制から、司書の奇行は極まっていた。 「あ、あのー○○さん?」 「何だ?」 「し、室内でサングラスを何故?」 「ミラーシェイドだ――格好良いだろう?」 薄暗い室内で、必要も無いのに色眼鏡を掛ける男。 幸か不幸か、精悍な顔立ちに、その鋭角なワンポイントは、意外なほど似合っていた。 だが、そんな彼の姿に、終始不機嫌な者が一名。 「目悪くなるぜー?」 「お気遣い有難う、魔理沙――おや、リボンの色を変えたのかい?お洒落だね」 「……お前、やっぱそれ外せよ」 黒白に楽しそうに世辞を吐き。 「アリスこんにちは。えーっと、今日連れているのは――上海?」 「違うわ」 「じゃあ蓬莱」 「オルレアンなんだけど」 アリスと漫才をしてみたりするが。 「……」 「ぱ、パチェ、目が怖いわ」 「あらレミィ、大丈夫よ?私は絶好調。 ――今なら、ロイヤルフレア詠唱破棄出来そうな程度には」 よりにもよって、今日一日。 パチュリーの方は、一度も向いていないのだ。 魔女の機嫌は、見る見るうちに悪くなり―― べきり、と。 鈍い音を立てて、魔道書の鉄と革の装丁に、その細い指が突き立ち。 それを見たレミリアが、全速力で図書館から逃げ出した。 「どういうつもりよ!?」 「何を?」 「な――それを私に言わせる気!?」 「まあ怒鳴るなパチュリー、目が血走っているぞ」 「貴方のサングラスが赤いのよ!?」 「ミラーシェイドだ」 「どっちでも良いわよッ!!」 案の定、その日の暮れに、とうとう爆発。 夫婦喧嘩の時間と相成った。 ただこの光景もまた、いつもとは違っていた。 一方的に捲くし立てるパチュリーに対し、彼は反論するでもなく、ただ曖昧に応答するのみ。 口論というよりは、一方的な小言であった。 「……聞いているの?」 その態度に、息を整えて、しかし声のトーンを落として睨み付けるパチュリー。 もはや険悪な空気が渦巻いて見えるような状況で―― 「聞いてない」 「――え?」 男が、意外な一言を放った。 男は漸くミラーシェイドを外し、目頭を揉みながら、あのな、と続ける。 「――『眼鏡の下は、別の女性を物色中』って台詞、知ってるか」 「……ええ、身分を偽る影武者の女王に対して、側近の男が吐いた台詞ね」 『眼鏡の上からは、仕えるべき人として。眼鏡の下では、愛しき女として』。 そんな意味の込められた、この上なく芝居がかった台詞。 「って説明に――」 「違う。俺の場合は、そんなに捻った使い方はしてない」 訝しがるパチュリーの目の前で、「あー目が痛え」と呟いた彼の瞼が、漸く開き、 真剣そのものの視線が、パチュリーの瞳を射抜く。 それまでの態度から一転した彼の様子に、先程までの剣幕は何処へやら、 パチュリーの瞳は、戸惑いと、一抹の不安さえ見せていた。 それを、静かに見つめて、さて、と一息。 「じゃ、パチュリーはずーっと俺を見ていたわけだ?」 「……ええ、見ていたわ」 「なら答えられるな――問題です」 その一言と共に。 「!?」 彼が一息に踏み込み、パチュリーに詰め寄る。 背後の本棚に両手を置き、彼女の左右を塞ぐ様に詰め寄った。 互いの吐息を、鼻先に感じるほどの、至近距離。 あまりの強引且つ脈絡無いその展開に、魔女はとうとう怯えの色さえ見せ始めた。 しかし、彼はその強引な態度と裏腹に―― 「今日一日、俺がパチュリーの顔を、どんだけ向いていたっけ?」 努めて、優しい声で、呟いた。 「……」 何を言われたのか、解らない。 そんなパチュリーの表情が、数秒ほど続き―― 「!!」 一転。 普段血色の悪いその容貌が、紅一色に染め上げられる。 そう。 彼は一度も、パチュリーを見ていないのだ――眼鏡の上からは。 「……以上、説明終わり」 その姿に、してやったりな笑みを浮かべる。 あんだすたんど?と回答を求める彼に、蕩けた表情のまま、彼女は辛うじて頷いて見せた。 「さて、じゃ――埋め合わせだ」 その彼女との距離が、零になる。 「ん――!?」 あまりに唐突で、強引なキス。 パチュリーの目が一瞬、驚きに見開く。 「――」 だが、彼は止めない。 優しく、だが硬く彼女の身を抱き寄せ、その唇を音を立てて味わう。 「――ん――む――」 彼女もまた、身体の力を徐々に抜き、彼の背に手を置き、身を預けていった。 「――は」 彼女の無呼吸記録を軽く塗り替える時間を置いて、二人の唇が離れる。 恍惚に震える彼女は、残滓を取り払うのももどかしく、 「……○○……○○……」 熱に浮かされた声で、愛しい人の名前を呼ぶ。 「……二人っきりの時は」 その声に答えるように、彼は、想いの丈を言葉に乗せた。 ――ずっと、君だけを見ているから。 彼女は、涙さえ流して、彼の瞳を見つめ返し―― 「見るだけじゃ……嫌」 自分より背の高い彼を、抱き寄せる。 彼の身体は、軽いはずの彼女の重みに負けて、次第に下がり―― 「――確かめて。確かめさせて」 かしゃん、と。 彼が手に持っていた色眼鏡の落ちる音がして。 ランプに照らされた、二人の影が、重なった――。 「おう留年皇!やったぞ!」 「それはそれは――って留年皇言うな!?」 「しっかし、よく思いつくな!?あんな臭い言い回し」 「あー、あのですね」 「ん?」 「実は、試したんですよ」 「あの、花のお嬢さんにか」 「結果、どうなったと思います?」 「さあ?」 ――色眼鏡で私を見るたあ良い度胸ね!! ――え?いや、これは色々と事情gあー O)))) _/L 「見事に首が飛びましたよ。 問答無用、前座の仕込みも出来ませんでした。 いやー、見事に残機、減りましたねぇ」 ←※現在、蓬莱人 「そ ん な も ん を 俺 に 勧 め た の か ッ !!?」 「まあ貴方ですから。 ほら、本読んでいるから、語彙とハッタリでどうにでも――あ、待ってください、椅子はヤバイd」 「そ の 首 貰 い 受 け る ッ」 (豪快に何かが飛び散る音がしました) 10スレ目 300 ─────────────────────────────────────────────────────────── 〇〇「いきなりだが魔法を教えてほしい」 パチュ「本当にいきなりね」 〇〇「頼む!」 パチュ「却下」 〇〇「うう。……いいよ、アリスに頼むから」 パチュ「―― 待ちなさい」 〇〇「なに?」 パチュ「魔法は明日から教えてあげる。だから、アリスの所には行かないで」 〇〇「ん、わかった。今日はパチェで遊んでる」 パチェ「……好きなだけ遊びなさい」 どうやって遊ぶのかは内緒 というか思い付かぬ 7スレ目865 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「…で、パチェで遊ぶと決めたわけだが! ……何しようか」 「その前に、『で』じゃなくて『と』でしょ」 「んにゃ、『で』が正しい」 「妖しい響きね……。それで、具体的には?」 「とりあえず乳繰り合おうか」(ワキワキ) 「え……何その手!? ちょっ、待って、心の準備が……」(後ずさり) 「問答無用っ!」(こちょこちょ) 「ぁ……ダメっ・・・…そんなとこ…触られたらっ…!」(頬を染め) 「へっへっへ、可愛い声出すじゃねぇか嬢ちゃんよ」(興奮してきたお) 「んっ! だめ……だって、ふぁ……」(口が半開きになって) 「へっへっへ、観念しなっ」(やめられないお) 「ふぁ…………ふぁ……………………ふああああああっくしょん!」 「……………………パチェ」 「ななななに!? ○○が悪いのよ! あんなとこ触るから!」 「だからってくしゃみは無いと思うぞ」 「うるさいわね! とにかく、謝りなさい!」 「何で俺が…………」 「うるさいうるさいうるさい! あやまれ~~~~!」(じたばた) 「はいはい、すみませんでした」 「むきゅ~~!! 誠意が感じられないっ、もう一回!」(じたばた!) 「…………(なんでツンデレ仕様なんだ)」 7スレ目868 ─────────────────────────────────────────────────────────── 〇〇「……仕方ないなぁ」 ぎゅっ パチェ「ひゃっ!いきなりなによ」 〇〇「ごめんね、パチェ。ちょっと調子に乗りすぎたよ」 パチェ「わ、分かればいいのよ」 〇〇「ありがとう」 パチェ「何で礼を言うの」 〇〇「? パチェが許してくれたからだよ」 パチェ「そう」 〇〇「さて、改めてパチェで遊ぼ「却下」えー」 パチェ「『と』ならいいけど『で』はダメ」 〇〇「そっか。……たまには無理矢理もいいよね?」 パチェ「無理矢理って―― ちょっと、本を取らないで」 〇〇「駄目。今日はパチェには抱き枕になってもらうから」 小悪魔(熱いなぁ) 7スレ目871 ─────────────────────────────────────────────────────────── ○「パチュリー」 パ「…………」 ○「ぱっちゅさーん」 パ「…………」 ○「パチェー」 パ「…………」 ○「紫もやしー」 パ「…………」 ○「……反応無しですか」 スゥーーーーーー ○「パチュリーーーーーーーーー!!!」 パ「不下うwさmさえふぃh&7dふぇえw8!!??」 ○「ああ、やっと気づいたか」 パ「ま、○○?なによいきなり大声出して」 ○「何って何度呼んでもパチュリーが返事をしないから大声出して呼んだだけだ」 パ「……悪かったわよ」 ○「で、なに読んでるんだ?」 パ「○○には関係ないことよ」 ○「ふ、お前のことで俺に関係ないことなんて一つもないんだよ」 パ「…………馬鹿」 ○「と、言うわけでパチュリーが読んでる本GET」 パ「あ……」 ○「結婚雑誌?」 パ「な、なによ悪い?」 ○「いや悪いなんてことはないけど……パチュリーって結構結婚願望あるんだなーって思ってさ」 パ「べ、別に結婚願望があるわけじゃないわ、ただ……」 ○「ただ?」 パ「ま、○○と結婚したいと思っただけよ////」 ○「うおぉーーーーーー!!パチェーーー!!好きだーーー!結婚しよーーー!!」 だきっ! パ「むきゅー!?」 7スレ目962 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「……ふぅ」 手が届かない。どうしたものか。 目当ての書籍を前にして、悩んでいると 影が私を覆った。 「はい、どうぞ。パチュリー様」 「あ、ありがとう、○○」 (いつのまに後ろに……?) 「そこの本棚に用事があったのですよ。苦戦しているパチュリー様が見えましたので、そのついでです」 尋ねてもいないのに答えが返ってくる。 (顔に出ていたのかしら……それよりも) "苦戦している"、ということはとどのつまり。 ジャンプやら背伸びまでして取ろうとしていた姿を (見られてた――!?) 最初から見ていたのならすぐに手伝いなさい、と叫ぼうと後ろを振り向いた時には既に遅く。 彼は遠い本棚の隙間へと消えていた。 彼が、どうして此処へ来たのか、私は知らない。 この館の主である吸血鬼のレミリアにどういうわけかいたく気に入られ、 身の回りの世話はメイド長がしているということで図書館の司書に、ということだった。 人間にしては細かい所まで目が行き、司書としての働きは悪くない。 何しろ乱雑に並んでいるだけだったこの図書館の膨大な書籍を 彼は一月足らずで分類別、かつアルファベット順に並び替えるという所業をやってのけたのだ。 それは知識を得ることが容易になったということでもあり 私にとっては、とてもありがたいことでもあった。 司書として優秀なのは上述した通り、なのだが 彼は一切の素性を伏せている。 「別にいいじゃないですか、そんな事」 といって、何度尋ねても笑って誤魔化す。 そもそも、レミリアに何の段取りもなく謁見したということは、あの門番を倒してきたということで。 (……ただの人間に、役立たずとはいえあの門番が倒せるのかしら) 只者ではないということは確かである。 「よし……と」 今日の仕事も滞り無く終わった。 魔理沙という魔法使いの少女が、「読み終わったから返すぜ」と 3ケタになろうかという本を持ち寄った時にはさすがに面食らったけれど。 いつものようにパチェリー様は本を読み耽っている。 本当に知識欲が旺盛な方だ。 件の本の山もようやく棚に戻し終え、帰りに苦戦するパチェリー様を手伝い、今に至る。 「さて、やることが無くなりましたね……どうしましょうか」 家事に関しては一般人程度にはできるものの、この館のメイド長には遠く及ばない。 手伝おうかとも思ったけれど、また「私の仕事までやらなくてもいいのよ」とやんわり拒絶されそうだ。 (お茶を淹れるくらいなら問題は無いでしょう……さて、キッチンはどこでしたっけ) 廊下を歩いているメイド(妖精)の誰かに尋ねれば分かるかな。 パチュリーの反応楽しみにしつつ、鼻歌交じりで廊下へ続くドアを開けた。 「あら、○○。仕事はどうしたの?」 廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。 「おや、咲夜様。本日の仕事でしたら、全て滞り無く終わりましたよ」 「途中で魔理沙が本を返しに来たはずだけど、それも含めて?」 「ええ、勿論」 「まだ夕刻には程遠いのに……凄いわね」 感心するように溜息をつく咲夜様。 「それ程の事でもございませんよ。図書館という、小さな空間での事ですから……それよりも、昨夜様?」 貴方に言いつけてある仕事の量なら、夜までかかるはずなのだけれど、と呟いていたメイド長に、尋ねる。 「あ、ええ……何かしら?」 「キッチンは、どこでしょうか?」 「さて、こんなものでしょうか」 咲夜にキッチンの場所、ポット、茶葉、ティーカップの在処を尋ねた後、別れてからキッチンに辿り着くまでおよそ15分。 (想像以上に広いですねぇ、この館は……) 妖怪の類や、人間のハズなのに飛べるメイド長からしたら短いのかも知れないけど、徒歩ではいささかキツい。 「保温ポットが確かここに……ああ、ありました」 時間を考えると淹れてからそのまま図書館に戻るようでは冷めてしまう。 淹れたお茶を保温ポットに移しなおし、腕に抱えて歩き出す。 (喜んでくれるといいのですが) 「パチュリー様? ああ、そちらにいらしたんですね」 「○○? どうしたの?」 「いえ、喉が渇いたかと思いまして。お茶をお持ち致しました」 壁の時計を見やる。丁度アフタヌーンティーくらいには丁度いい。 要不要の声も聞かずにポットからカップへお茶を注ぐ○○。 ただし、そのお茶は暗がりで見てもやや青い。 「……何ソレ、毒?」 今まで見たことがない色のお茶であったため、少々警戒を抱く。 「まさか、とんでもない。私も飲むのに毒を入れるわけが無いじゃないですか」 そうして淡々と二つのカップにお茶(?)を淹れ終わり、私に一つ差し出す。 「では、ご賞味くださいませ」 「本日のお茶はマロウブルーティーです。ちょっとしたハーブティーですよ」 喘息持ちの彼女の為に、直接的ではないが、喉へ良いと書かれていたお茶を差し出す。 まさか茶葉の棚にハーブティーまであるとは予想もしていなかった。 普通の紅茶を淹れようと思っていたのだが、目的のハーブを見つけたのでそれを淹れることにした。 「効果は?」 「さて。"知識"の名を冠す貴女なのだからもうご存知だと思っていたのですが」 「もったいぶらずに教えなさいよ」 「万病の予防になると言われています。喉や声に特によく効くのだとか」 素っ気無く言い、そのまま自分の分に口をつける。うん、苦い。 彼女の分には砂糖を一応つけておいたのだが、自分のを用意するのを忘れるとは……不覚。 「それなりに苦いですから、砂糖をつけることをオススメしますよ」 ちょっと顔をしかめつつ、笑顔で忠告をくれる○○。 なんでこうも気がよく回るのだろう。 なんでここまで優しいのだろう。 何故、色んなことを知っているのだろう。 私でも知らないことが、あるのに。 「パチュリー様?」 呆けてしまっていたらしい。私としたことが。 「え、ええ……わかったわ。ご忠告ありがとう」 「どういたしまして。残りはここに置いていきますね。保温ポットですからしばらくは持つはずです」 「貴方はどうするの?」 「明日の仕事になりそうな事をあらかじめ片付けておきます。 カップ等を下げたくなったらお呼び下さい。すぐに参ります」 それだけ言って自分のカップを手に踵を返す○○。 「ねえ、○○」 ふと、口から零れてしまった。 「どうかしましたか?」 「これからは、私のことは呼び捨てでいいわよ。何ならパチェ、でもいいわ」 彼の事が、もっと知りたい。 私の中の知識欲に、小さな火が灯る。 「しかし、貴女は私の主の御友人。そうそう無礼をはたらくわけには」 「良い、と言っているのよ。わからないなら命令よ、コレは」 「……承知致しました。パチュリー。…これでよろしいですか?」 「ええ。下がってもいいわ」 「御意に」 彼の姿が見えなくなってから、自分の顔を抑える。 (言っちゃった…言っちゃった…!) 今、顔はきっと火のように赤いのだろう。 でも、それはそれで良かったような気もする。 これから、少しずつ仲良くなればいいのだから。 少しずつ、知っていけばいいのだから。 うpろだ547 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「あら○○、お茶の時間かしら」 「はいパチュリー様、レミリア様が呼ばれていますよ」 「ありがと・・・どう?紅魔館にはなれたかしら?」 「・・・まぁ、まぁと言った所です」 少し言いよどんで眼を背けた その様子からまだなじめないでいるのは解かる 「・・・人間と言うのは慣れるイキモノよ、人間だった貴方も例外ではないわ」 「そう・・・だといいんですが」 「慣れるわ、人間は人殺しすら慣れてしまうもの」 そう言って彼女は可笑しそうに笑った 俺を残して彼女はお茶を飲みに行った、俺はとんでもないところに来たと再認識した 「あら・・・何をやってるの?」 「あ、パチュリー様、少々散らかっていたので本の整理を・・・埃も溜まっていますよ、喘息にはよくありません」 「・・・あ、ありがと」 そのまま片づけを再開した、埃が立つので数冊の本を持って出て行ってもらった 「何か片付けが楽しくなってきた・・・」 「おいパチュリー!本を借りに来たぜ!」 ドアを乱暴に開け放ち白黒が登場した 「出たな白黒!この図書館は清掃中だ!貴様の好きにはさせん!!」 「おのれ○○!またしても私の邪魔をするか!」 なんとノリのいい魔法使いだ、絶対特撮見てやがる 「と、言うわけで清掃中だ、悪いが今日は帰れ」 「ああ、邪魔して悪かったな、仕事がんばれよー」 立った数分で退場、白黒の出番は基本的に少ないらしい ふいてはわいて、本を整理して、一段落したので開けている窓を閉めようと 「え?」 うっすらとだが空が白み始めている 「・・・徹夜か・・・パチュリー様怒ってるかな」 「怒ってないから安心しなさい」 「そっかーそれなら・・・!?パチュリー様!」 「おはよう○○、もう6時ぐらいかしらね」 図書館を見て回るパチュリー、それをびびりながら見る○○ 「綺麗になったわね・・・ありがとう○○この図書館も喜んでると思うわ」 「い、いえもったいないお言葉です、はい」 「ふふふ・・・いい子ね、使い魔にしたいぐらい・・・レミィ怒るかしら」 「そ、それは」 「その気になったらいつでも言いなさい、すぐに僕にしてあげるわ」 「は、はい考えておきます、それでは」 彼女の読書を邪魔すまいと思い図書館を去ろうとしたとき 「○○・・・本当に色々と、ありがとう」 今世紀最高(当社比)の笑顔をくれた、朝日をバックにした彼女の笑顔は最高だった 「眼がー眼がー!!灰にー」 日の光を浴びる莫迦な吸血鬼、色々台無し 終 8スレ目 562 ───────────────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/th_izime/pages/319.html
ご覧になりたいスレをお選びください。 パチュリー受け:1スレ目 パチュリー受け:2スレ目 パチュリー受け:3スレ目 パチュリー受け:4スレ目 パチュリー受け:13スレ目 パチュリー受け:35スレ目 パチュリー受け:36スレ目
https://w.atwiki.jp/toho_tactics/pages/25.html
パチュリー + 目次 特徴スペック 説明 長所 短所 技サマーレッド サイレントセレナ ロイヤルフレア 立ち回り戦法 サバイバル キング チーム考察 キャラ対 特徴 スペック 体力 ディレイ 移動量 80 3 1 説明 豊富な飛び道具を持ち、中距離での戦いを得意とする。 その中でも一番強力な技が「ロイヤルフレア」。 自分の周囲3マス全てに50ダメージを与える大技。上手くいけば相手のチームを半壊滅まで追い遣ることが出来る。 SPを溜めてプレッシャーを与えつつ、中距離から近づいていくのが理想だが…… ゲーム中唯一自身のディレイが3であり、これによるデメリットがかなり大きい。 通常であれば避けられるディレイ2の技を喰らってしまい、レミリアの「グングニル」は移動した後でも当たるので、マークされると避けるのはほぼ無理。 体力も低く、移動量もないので近づくのさえ困難。「ロイヤルフレア」を撃つ前にやられて終わり なんてことが多々ある。 他の移動量1のキャラと違って近づいていきたいキャラなのに、その近づくのが難しいジレンマ。 対処方法を知っていると「ロイヤルフレア」を使うのはほぼ無理である。 長所 大ダメージを与えられる範囲技を持つ 低コストで飛び道具を出せる 短所 確定技がない ディレイが遅い 体力が少ない 移動量が少なく、近づけない 技 サマーレッド 威力 ディレイ SP 段差 20 2 5 × SPと威力のバランスが非常に良い技。 サイレントセレナ 威力 ディレイ SP 段差 20 2 20 ○ 遠くから攻撃できるのと、段差を無視して攻撃できるのが魅力。 他の範囲技と比べると、紫よりディレイが速く、魔理沙のような自爆ダメージもないため範囲技の中では優秀。 しかし、SP消費が多いため「ロイヤルフレア」との両立は困難。 ロイヤルフレア 威力 ディレイ SP 段差 50 3 60 ○ 絶大な範囲と莫大な威力を誇る大技。 是が非でも当てて行きたい技だが、確定で当てられる場面は少ない。 密着状態で撃てば(紫以外の)相手は逃げることが出来ないが、密着状態になることはほぼないので現実的ではない。 立ち回り 戦法 とにかく近づいていきたい。 中距離タイプではあるが、技の飛距離が2・3マスとかなので結局のところ近づかないといけない。 それに、SPを溜めたままでいれば「ロイヤルフレア」の範囲に近づかせないというプレッシャーを与えていける。 「ロイヤルフレア」に頼りきりだと、最悪何も攻撃せずに倒されてしまう可能性がある。 「サマーレッド」や「サイレントセレナ」も優秀な技なのでこれらを主体に戦うのも良い。 「サマーレッド」はコスパが良い技だが、自身が近づきにくいため撃てる機会が少ない。 こうなると飛距離あり・広範囲・段差無視が揃った「サイレントセレナ」が撃っていくには優秀。 ただ、優秀だからといって撃ちすぎると「ロイヤルフレア」が撃てなくなるので節約大事。 サバイバル 説明 キング 説明 チーム考察 紫 パチュリーで戦うには必須なパートナー。 特に重要なのが「スキマ」で、近づくために場所交代が役に立つ。 「スキマ」の移動範囲がちょうど「ロイヤルフレア」より1マス多いため、同ターンに「スキマ」移動からの「ロイヤルフレア」なんてことも出来る。 この2人を採用すると自身の足の遅さとSP切れで的になる問題となるので、そこは他のキャラでカバーしたい。 キャラ対 霊夢 説明 魔理沙 説明 アリス 説明 レミリア 無理。 咲夜 説明 にとり 説明 パチュリー 説明 天子 説明 ヤマメ 説明 紫 説明
https://w.atwiki.jp/orz1414/pages/120.html
■パチュリー1 君がいてくれるのなら、なんだって出来る。 絶対に寂しい思いなんてさせない。 喘息だって治してあげられる。 だから・・・だからパチュリー、目を開けてくれよ。 お願いだからもう一度、笑顔を見せてくれよ。 生きていた頃の君に、逢いたいよ・・・。 1スレ目 18 ─────────────────────────────────────────────────────────── 既に日の暮れた紅魔館の中の図書館に俺はまだ居た。 俺の仕事というものがまだ終わってなかった為だ。 普通な役職の俺の主な仕事といえば、図書整理と、この中の警備の二つ。 前者は本当に時間がかかるし、後者はどこかの白黒の魔法使いが来たら、色々な 覚悟を決めなければならない事が欠点だ。 だが、そんな仕事にもいい事というのは存在するものだ。 「…仕事は終わったの?」 「あぁ、パチュリーさん。まだ終わってませんから、先に戻ってくれても構いませんよ」 この図書館の主、パチュリー=ノーレッジが、そのいい事の大半を占めている。 貴重な本を貸してくれたり、普通では手に入らない本なんて見せてもらうのも珍しくない。 それよりも俺にとっては、パチュリーさんに出会えることが一番の喜びだった。 「ダメ。私は最後まで残って、鍵を閉めなきゃならないから」 「でも、遅くなりますよ?」 「待ってるから、さっさと終わらせて」 と彼女はイスに腰掛けて、本を読み始めた。 待っていると言ったから、多分俺の仕事が終わるまでずっとここで本を読んでいるつもりだろう。 「分かりました。じゃあ行ってきます」 ……… 約一時間かかって、管理カードを書き終えて俺は戻ってきた。 白黒の持っていった本に時間がかかったという理由なのは内緒だ。 「パチュリーさん、終わりました…よ?」 「すぅ…すぅ…」 俺を待っている間、どうやら本も読み終わったらしく、パチュリーさんは眠っていた。 それにしても、身体が細くて白い。ちゃんと栄養は取っているのだろうか? いや、それよりもこの後をどうするかだ。このまま放っておくのも夢見が悪いけど、何の許可もなしに 身体に触るのもなぁ…。こういう時の頼みの小悪魔の娘も居ないし… 「仕方ないか…」 悪いとは思ったがパチュリーさんを背負う。思ったとおり彼女の身体は軽かった。 やっぱり栄養を取ったり、運動したりした方がいいよなぁ… ようやく辿り着いた時に、パチュリーさんは目を覚ました。 「ここ、は?」 「パチュリーさんの寝室ですよ」 背から降ろしてしばらく支えてやる。初めはフラフラと危なげだが何とか普通に立つ。 「それじゃ鍵は俺が閉めますから、お休みなさい」 鍵置き場から鍵を回収して部屋から出ようとすると、いきなりパチュリーさんに袖を 握られた。 そこからは、もう既にスローモーションだった。 パチュリーさんの唇が近づいてきて、俺の唇にそっと触れた。 それがキスだという事を理解するのに、二、三分はかかった気がするが、多分普通の時間的に言えば 数秒なんだろう。 「お休み…」 最後に顔の赤いパチュリーさんを見てから、俺は――さっさと部屋を出て行った。 図書館を出て鍵をかけて自分の部屋に戻ってから、まだ唇にあの感触が残っていた気がした。 やっぱり…これは、そういう意味なんだろうか? あれ以来、どうもパチュリーさんと一緒にいると気恥ずかしくなってしまった。 考えてみれば俺って、女の人にキスされた事なんてないんだよな…。 いや、ファーストキスなんてロマンチックに言う気はないけど…どうも、しっくりこない。 もしもパチュリーさんが寝ぼけててキスしたなんて言ったら、それはそれで悲しいけど。 「あ…そこ、間違ってますよ」 「…あ、すいません」 どうやらずっと考え事をしていたためか、手元の管理カードの記入にミスをしてしまっていたらしい。 小悪魔の娘に謝ってから、記入を訂正する。それほど大きなミスではないが、失敗には違いない。 「どうしたんですか?今日もボーっとしてますね」 「いや、ちょっと寝不足で…」 あながち間違ってはいない。 あの日以来、夜はずっとあの時の事を考えて、最近の寝る時刻といえば、前寝ていた時間の半分くらいだ。 「もしかして、パチュリー様と何かありましたか?」 「…!いえ、別に何にも無いですよ!?」 何やってるんだ俺。あからさますぎてバレバレだ。 俺のその様子に、小悪魔の娘はくすりと笑い、 「パチュリー様は魔理沙さんとあなたが来てからお変わりになりました。 魔理沙さんとは良い友人として、あなたに対しては――」 とそこで言葉を切る。 「…俺に、対しては?」 「恐らく、あなたが考えている事と同じだと思いますよ?」 俺が考えている事って…。いや、そんな事があるはずがないよな…。 「…それでは、頑張って下さいね」 それだけ言って、小悪魔の娘は次の仕事に移ろうとしていた。 「…待ってくれ」 俺の言葉に小悪魔の娘は振り返る。 今、彼女に対してどうしても言わなければならない事があった。 「何ですか?」 「…ありがとう、これで少しは勇気が出た」 彼女は先ほどと同じような笑みを浮かべて 「いえいえ、パチュリー様が幸せなら、いいんですよ」 それはまるで、娘を嫁に出す母親のような言葉だった。 俺の方は昨日の小悪魔の娘の言葉で、今日告白する覚悟はできた。 しかし俺は全くといって良いほど、他の可能性を失念していた。 「…どうして、今日に限ってパチュリーさんが休みなんだよ!」 「あの、図書館ではお静かに…」 「あ、すいません…」 そう今日はパチュリーさんは体調を崩してお休みなのだ。 それもかなり心配なのだが、俺がこのテンションを保つのも無理が出てきた。 昨日のままなら、まだそのままの勢いで告白できると思っていたのだが、今になって 不安が出てきた。 「…はぁ」 「やっぱりパチュリー様が居ないと作業がはかどりませんね」 俺の方を見ながら言う小悪魔の娘。 どうせ俺はパチュリーさんが居ないとやる気が出ない男さ…。 「仕方ないですし、今日はもう終わりにしましょう。あなたも面会したいでしょう?」 「あ、まぁ…」 …本当は心配でしょうがない。体調が悪いのはいつもの事だけど、俺の方もいっぱいいっぱいなのだ。 できる事なら、スパッと事を進めたい。 「…ちゃんと行ってきて下さいね」 「はいよ」 …やっぱり、何か持ってくべきだよな。しかし俺が持ってるものでパチュリーさんが 喜びそうな物なんて無いんだけどな…。 そう考えながら、俺は紅魔館の中庭に足を運んでいた。 『えっと、パチュリー様のお見舞い?じゃあ、これとか持っていってね』 初めに、服装やら何やらが中国っぽい門番にそう言われて花束を渡された。 『パチュリー様のお食事、持っていってあげてね』 その花束を持ちながら紅魔館と図書館を繋いでいる廊下近くを歩いていると いきなりメイド長に止められて、お盆とお粥まで持たされた。 …何で俺がパチュリーさんのところに行くって分かってるんだ? いや、まぁ仕事とかで一緒にいることが多いけどさ…。今日、休みだってみんな知ってるだろうか? 『果物とかも持っていってあげなさい』 最後にこの館では昼間、出会う事がほとんどありえないお嬢様と遭遇して、そんな事まで言われた。 それだけ持たされた俺の腕はほとんど機能停止寸前だったが 果物と花束を一緒に袋に詰めて、お粥を片手で持つという荒業で何とかなった。 しかし、この作戦には重大な欠点がある。 彼女の寝室に辿り着いた時、目の前のドアを開けられなかった。 「…どうしよう」 「はい、どうぞ」 救いの女神は案外近くにいた。いや正確には彼女は小悪魔だが。 とりあえず彼女に感謝しながら、俺は部屋の中に入った。 気を利かせたのか小悪魔の娘は鍵を取っていった。どうやらもう閉館予定らしい。 「ありがとう」 「いえいえ、どういたしまして」 いつもの笑顔で、小悪魔の少女は微笑んだ。 寝室で彼女――パチュリー=ノーレッジは規則正しい寝息を立てていた。 どうやら症状は安定しているらしい。 「…う…ん」 「起きましたか?」 「…何で、あなたがここに…?」 寝ぼけながら身体を起こすパチュリーさん。 「お見舞いですが、迷惑でしたか?」 「そんな事……ないけど…」 このまま行くと、気まずさが更に上がる気がして俺は慌てて話題を振った。 「こ、これ門番の人から花束です。あと、こっちはお嬢様から果物です」 「レミィ…から?」 何とも意外そうに声を上げる。お嬢様もあまり果物なんてあげないようだ。 「後はご飯ですけど…食べれますか?」 「…ちょっと今の状態じゃ、普通に食べるのは辛いかもしれないわ」 「そうですか…温かいうちが美味しいと思うんですけどね」 「……て」 とても小さな声で、パチュリーさんは何事かを呟く。 「はい?」 「た、食べさせて」 上目遣いに頬を染めながらそんな事を言う彼女に対して、その時の俺は ちょっぴり、くらっときてしまった訳で… 「え、と…じゃ、あーんして下さい」 食べさせてもらう方と、やっている方どっちが恥ずかしいんだろう?とそんな無駄な事を 考えながら俺は高鳴る鼓動を押さえていた。 「…あーん」 おずおずと小さな口を開いて、レンゲを口に入れる。 「どうですか?」 「……おいしい」 そりゃメイド長特製ですから、と言おうとして言いとどまる。 何となく言いたくなかった。理由らしい理由は、分からないけど。 結局、彼女はお粥を全部食べ終わってしまった。 しかし流石にあーんというシチュエーションは初めてだった。 やってみると死ぬほど恥ずかしい。 「…それじゃ、果物を剥きましょうか」 「レミィからの林檎ね…」 魔女が持つ林檎は毒林檎という相場が決まっているけど、パチュリーさんじゃ 適用され無さそうだな…。 「はい、じゃあ剥きますよ」 慣れているわけじゃないけど、ここにきて最初の方に叩き込まれた技能に皮むきはあった。 「……あーん」 これは、また食べさせろと? いや、死ぬほど恥ずかしいだけで、それ以外は別に問題ない。 むしろ、率先してやらせてもらいたい。 「はい、あーんです」 …そんな独特で甘い空気がしばらく流れた。 「……さて、本題に入りましょうか」 その後、しばらく本や白黒への対策など他愛のない話で盛り上がり、俺は決心した。 「私もあなたに、伝えなければならない事があるの」 まさか彼女にも重大な話があるのか? 「…別に良いですけど、急ぎのお話ですか?」 「いえ、他愛のない話だから、あなたの後で良いわ」 他愛のない話、か。じゃあ多分、大丈夫だろう。 「…えと、それじゃ一回しか言いませんから、よく聞いてください」 よく深呼吸して、呼吸を整える。今なら普通に言える、そんな気がした。 「パチュリーさん、俺、あなたが好きです」 「……そう」 「…返事は――」 「いいわよ」 「そう、ですか…やっぱり…って……はい?」 「いいって言ったのだけど」 …いい、って事はこれはOKって事だよな? 「…お、俺の用事はこれで終わりです!パチュリーさんの用事って何ですか!?」 慌てて言う俺に対して、パチュリーさんは赤い顔で俯きながら 「…あなたが大事だって分かったの。だから一生、私と居て、下さい――」 俺は、その日陰に生きる本の少女を急に愛しくなって、抱き寄せた。 「…ははっ、喜んで…パチュリー」 嬉しい時の涙という物を、俺は初めて流した気がした。 その日の俺はまさしく、人生最良の日だった。 蛇足―― これは彼が彼女に対して告白した後のお話である。 「…お嬢様、あの行動に関してなのですが」 「あぁ、咲夜の言いたい事は分かっているわよ。どうして異種族同士の恋愛を助長するような事を したのかって事でしょう?」 この館の主であるレミリア=スカーレットは紅茶を飲みながらカーテンを開く。 まだ空は完全に夕闇に染まっていない。微かに出ている月を見て 「だって友人の恋愛を応援しないものなんて居ないでしょう?」 それはそうですが、と言おうとする。咲夜の口を押さえて 「彼とパチェは寿命が違いすぎるの、きっと彼はパチェを置いてこの世を去るでしょうね」 …友人には幸せになってもらいたい。 だからこそレミリアは彼に対して、少しだけ力を使ったのだ。 パチュリーが彼を思っていることは前々から知っていた。滅多に人間の話題を出さないパチュリーは 彼の話が出てくるたびに、どことなく嬉しそうに話す。 あぁパチェは彼に恋をしているんだな、と感覚的に悟った。 たとえ非業の死が二人を別っても、愛の絆は永遠にその心の糸を結び続けるだろう。 「それで咲夜、お願いなんだけど、あの役をやってくれないかしら?」 「いえ、それはお嬢様がやるべきでしょう。二人を繋ぐ紅い糸を、作り出した張本人なのですから」 「ダメよ。私は真剣な場で何を言うか分からないもの」 「多分、大丈夫だと思いますよ。あの場では」 結婚式の場というのは、新郎と花嫁が主役だ。 そして、その愛を壊すものは誰一人としていない。 誰もが祝福をしにその場所に集まるのだから―― 「これより、行われる誓いは神の前において嘘偽りなく、 己が心に正直に答える事。よろしいかしら?」 「はい」 「はい…」 式場の中は明るく、それでいて厳かな雰囲気に包まれていた。 神父の役をやっているお嬢様は淡々と聖句を読み上げるが時折、パチュリーに 優しそうな笑顔を覗かせる。 「新郎、――。汝、健やかなる時も病める時も、新婦パチュリーに生涯、永遠の愛を誓うか?」 「誓います」 こうなる事を俺は望んでいた。 そう彼女と一緒に人生を歩む事を… 「では、新婦パチュリー。汝、健やかなる時も病める時も如何なる時も新郎――を愛する事を 誓うか?」 パチュリーはその聖句を聞きながら俺の方を一瞬見た。 「……誓います」 してやったり、といった表情を見せながらお嬢様――神父は言った。 「では、誓いの口付けを…」 「…パチュリー」 俺はパチュリーのヴェールを持ち上げる。練習とかで何度もやったはずなのに どうも、みんなの前でやるその時だけは妙な気恥ずかしさに襲われた。 唇が触れた時、俺はみんなが騒がしくなるのを肌で感じていた。 口で騒いでいるわけじゃない、心が騒いでいるんだ。 「…ありがとう」 教会――と言っても実際は大きな外部屋を改修したものだが――から出ると 大きな歓声に包まれた。この声はすべて祝福のものなのかと思うと、心地よく感じる。 太陽の光が苦手だといった彼女も、今回だけは特別なのか 眩しそうに目を細めるだけでいるだけだった。 「…神社とかでやってくれると嬉しかったんだけどねえ」 紅白の巫女が唇を尖らせていた。 「まぁまぁ、普通に祝福してやれよ。目出度い席なんだからさ」 と白黒の魔法使いが諌めるように巫女の肩に手を置く。 「おめでとうございます。――さん」 いつの間にか小悪魔の娘が近くまで来ていた。 思えばこの娘のおかげで、俺はこうなったのかもしれない。 「…ありがとう。キミのおかげで俺はこうなる事が出来た」 「いえいえ、私はちょっと後押ししただけですよ。だから、こうなったのはあなた自身のおかげです」 「…それでも、ありがとう」 俺の言葉に小悪魔の娘は「どういたしまして」と言い残して、祝福する声の渦に入っていった。 「…さぁてパチェ、そろそろブーケを投げなさい」 神父の役をしていたお嬢様もいつの間にか着替えて、ブーケが投げられるのを今か今かと 待っていた。 見ると、他の女性達もそれを待っているのか妙にそわそわしている。 「パチュリー」 「…えぇ」 上空高くブーケは投げられた。 そのブーケは弧を描き―― End 如何でしたでしょうか? これは誤字とか加筆修正を加えたものであり、あんまり内容は変わっていません。 ちなみに結婚式を、つい最近になって見てきたのは内緒です。 とりあえず、俺×パチェのSSはこれでお終いです 1スレ目 260 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「よっと、邪魔するぜ」 そう言って入ってきたのは、魔理沙だった このヴワル図書館の常連者でもあり……そして本泥棒だ 「お、○○じゃないか」 「魔理沙、今日は勝手に本を持って行くなよ。 ……あとでパチュリーさんに怒られるのは俺なんだから」 「おいおい、それじゃまるで私がここに来るたびに本を取っていくような言い草じゃないか それにだ。私は本を借りているだけだぜ?」 ――未だに返しに来るところを見たことないけどね。 と、まぁ言ってもしょうがないので心の内に閉まっておく。 「それにだ、今日はパチュリーにちょっと用があってな。 本を借りに来たわけじゃない」 「パチュリーさんに?」 「ああ。というわけだ、パチュリーがどこに居るか知らないか?」 「パチュリーさんなら…えーと―――」 俺はパチュリーさんの大体の居場所を魔理沙に伝える。 「サンキュ。助かったぜ」 そして、手に持った箒に跨り―― 「そうだ。今度、また外の世界の話、聞かせてもらうぜ。 じゃあな!」 白黒の魔砲使いは俺の視界から消えていった。 私が本を読んでいると、遠くから騒がしい音が聞こえてきた。 この飛行音、おそらくは魔理沙だろう。 そして、間もないうちに白黒の魔砲使いが姿を現した。 「よぅ、パチュリー」 上空から聞こえてくる声。 「何? 今日もまた何か持っていくつもり?」 「おいおい…どうしてお前も○○も第一声がそれなんだ?」 「常習犯だからに決まっているからじゃないの」 「私は泥棒か何かか?」 「泥棒じゃないの、それもとびっきりの」 「酷い言われようだぜ」 「で、今日は何の用?」 その後、魔理沙と取り留めのない会話をする。 最近の出来事、取り留めのないこと、その他色々… しかし、どことなく違和感を感じる。 「…というわけなんだが…… どうかしたか?」 どうやら思考が顔に出ていたらしい。 ただ、向こう側から問いかけてくるのであれば、ここは流れに乗させてもらうことにした。 「魔理沙…あなた、何か隠していない?」 きょとん、とする魔理沙。 「何かって…別になんにも隠していないぜ?」 「そうかしら。さっきまでの会話、何か違和感を感じたわ ――そうね。一番聴きたい事を中々繰り出せない。 と、言ったところかしら?」 「――――」 沈黙が訪れる。 「やっぱ、分かるか?」 「私は知識と日陰の少女、パチュリー・ノーレッジよ。 私が持つ知識の中には読心術の心得もあるわ」 魔理沙は観念したかのようにため息をつき―― 「その、だな… ○○ってさ、誰か…誰か好きなヤツって……いるのか?」 息が詰まる。 今、魔理沙はなんて言ったの? 「いや、いざ本人にそれを聞くのは…ちょっと、な。 で、パチュリーなら、もしかしたら知っているんじゃないかと思ってな……」 「………け…ゃない」 「…? パチュリー?」 「いくら私でも、他人の好いている人が分かるわけないじゃない!」 「!?」 本当に自分が出したのだろうかと疑いたくなるような、大きな声。 こんなに大きな声を出したのは生まれて初めてかもしれない。 「ど、どうしたんだ、パチュリー… そんな大きな声を出して……」 「え、あ…ごめんなさい。魔理沙が変なことを聞いてくるから…つい」 「…そうか」 多分。いや、絶対。魔理沙は○○のことを―― 「その…○○だけど……」 だから私はあえて聞くことにした。 「好きなの? 魔理沙」 魔理沙の本心を。 「ああ――好きだぜ」 その後、話すことがなくなったので魔理沙は帰っていった。 そして幻想郷の夜が訪れる。 私は自分のベッドに腰をかけて、昼間のことを思い返す。 魔理沙が――○○のことを好き。 実はそのことは薄々感づいていた。 最近、魔理沙と会話するとき、大抵○○のことが話題に上がってくる。 その時の魔理沙の顔は、意気揚々としていたのに気が付いた。 だが、そのことに気がついたもの、ある一つの理由から。 だって、私も――― 「あの人の事が―――好きだから」 ある日、俺はパチュリーさんに呼び出された。 やっぱまたお咎め…か? というか、それ以外特に理由が浮かばないが… まぁ、なんにせよ。行けば分かるということだ。 数分後、パチュリーさんの部屋の前に立つ。 (さて…鬼が出るか、蛇が出るか。答えはこの扉の向こう――か) 意を決して、ドアをノックする。 「パチュリーさん、○○です」 「いいわ、入ってきなさい」 「…失礼します」 ドアを開け、部屋に入る。 そして、テーブルに備え付けられた椅子に腰掛けるパチュリーさんを見る。 「それで…なんのようですか?」 「そんなに急かさなくてもいいわ。…とりあえずこちらに来て腰掛けなさい」 「はぁ…」 意図がつかめないが… とりあえず、言われたとおり向かい側の椅子に腰掛ける。 「今回あなたを呼んだのは…そうね。少し話をしようと思って、ね」 「話…ですか」 珍しいこともあるものだ。パチュリーさんから話の誘いがあるなんて。 …まぁ、パチュリーさんと話す機会自体珍しいので、俺としてはうれしい限り。だが―― 「しかし、なんでまた」 当然の疑問といえば当然というべきか。 「特に理由なんてないわ。ただ、あなたと話がしたかった。それだけよ」 だが、彼女から帰って来た言葉はアッサリとしたものだった。 ――俺は、夢でも見ているのか? そう思いたくなるような返答。 つまりは普段からは到底考えられない理由ということだ。 「その前に…」 パチュリーさんは、テーブルに置いてあるポットを手に取り、カップに紅茶を注いでゆく。 「あ、それぐらい、自分が」 「いいのよ。たまには自分でやるのも面白いものだわ」 これまた普段の彼女からは想像出来ない行動であった。 普段なら子悪魔さんか、俺がいれるのだが…自分でやるなんてことがあっただろうか。 「はい、どうぞ」 「あ、はい。頂きます」 カップが手渡される。 それを手に取り、一つ軽い礼をして紅茶を一気に飲み干す。 「相変わらず、一口で飲み干すのね」 「あ、はい……。癖みたいなものなので……すいません」 「いいのよ。飲み方なんて人それぞれだわ。 礼儀に沿った飲み方をする人もいれば、貴方のように自分の飲み方をする人もいるもの」 「そう…ですね …ところで、話って、一体なんですか?」 「ん…そのことなんだけど 貴方、何か違和感を感じない?」 「違和感…ですか?」 別に何も感じない、と言おうとした矢先、体に異変が起きていくのを感じた。 「な…っ!?」 あ。コレは、なんかマズイ。 凄い、嫌な予感がする―――。 「ふふ…先ほど貴方に飲ませた紅茶。実はとある魔薬を含んでいてね? ふふふ……」 パチュリーさんの、目が、怪しく耀く。 「――お休みなさい。 ○○」 「パチュ―――――」 言葉を言い終えることなく――俺の精神は深遠の底へと沈んでいった。 「ふふふふふ……」 目の前には、私の薬で倒れたあの人が居た。 安らかに、まるで寝ているかのようにうつ伏せている。 「でも、もう目覚めることは――」 そう。この人は目覚めることは、もう、ない。 魔理沙が○○のことを好きと聞いてから、 私はあることを考え始めた。 この人を私のものにしたい。 この人を私だけのものにしたい。 この人を誰にも渡したくない。 この人を魔理沙に渡したくない。 この人を魔理沙にだけは渡したくない。 そして、これが私の結論。 私の部屋に閉じ込めて、私だけのものにする。 貴方の顔も、躰も、手も足も。 全て私だけのもの。 何も語ってくれないけれど――それでも 「貴方は、私だけのモノよ……」 「よぅ、パチュリー」 「…あら、魔理沙」 図書館で本を読んでいると魔理沙がやってきた。 「相変わらずな生活を送っているな。たまには外に出てきたらどうだ?」 「そんなの、私の勝手でしょう?」 「ま、それもそうだな… おお、そうだ。最近○○見かけないんだけど、知らないか?」 私は心の奥底でほくそ笑んだ。 普通であれば、何も知らないフリをするか、嘘を付けばいいのだろうけど―― 「○○なら私の部屋で寝いているわ――」 あえて私は本当の事を言う。 「―――永遠にね」 「なっ――――」 驚愕する魔理沙。 「あの人は、私だけのもの―――誰にも、特に、魔理沙だけには渡さないわ」 静まり返る図書館。 完全無音が世界を支配し、時が止まる。 そして、やはりというべきか。静寂の世界の針を動かしたのは魔理沙だった。 「それは、どういう意味だ。パチュリー」 「言葉通りよ。彼は私の部屋で寝ているわ。 しかも、ただの睡眠ではなく、私の造った魔薬によって永遠に目覚めることのない眠りに付いているわ」 その台詞に魔理沙は反応して、私の襟元を掴む。 「どういうことなんだよ、パチュリー!?」 「どういうことも…魔理沙。貴女○○の事が好きなんでしょう? 私は○○を魔理沙に取られるのが嫌だった。 だから――こうしたのよ」 流石に魔理沙も気が付いたらしく、ハッとする。 「パチュリー…まさか、お前」 「そうよ。――私も○○の事が好きだもの! だから私は彼を私だけのものにするためにこうしたの! 他の誰にも取られないようにするため! 魔理沙に○○を取られないようにするために!!」 「この……バカッ!!」 「そうよ! 馬鹿みたいでしょ!? でも、あの人の事が好きで好きで好きで好きでしょうがないのよ!」 「だったら、直接想いを伝えればいいじゃないか!!」 「しようと思ったこともあった! でも、怖かったのよ! 振られるの怖くて!」 「っ…この大馬鹿パチュリーッ!!」 瞬間、弾ける様な音が鳴ると同時に、私の頬に痛みが生じた。 魔理沙が、叩いたのだ。 「この、大馬鹿…! コレはアイツのとの約束だから言うつもりはなかったけど、 もうガマンできない!!」 「アイツはなぁ!!」 「―――嘘」 私は言ってやった。 アイツとの約束だから絶対言う事はないと思ったけど、 この馬鹿を説得するにはこれしかないと思った。 「本当だ。――この前聞いた。嘘なんかじゃない」 「…っ!」 パチュリーはこの場を離れ、自分の部屋へと飛んでいった。 「はぁ…悪いな、パチュリー。叩いちまって」 自分の手を見る。 かなり思いっきり引っ叩いたので、かなりヒリヒリする。 「…わりぃ、○○。約束、破っちまった」 それは数日前のこと。 私は○○に告白した。だが―― 「悪い、魔理沙。気持ちはうれしいけど。――俺には、好きな人がいるんだ」 と、あっけなく振られてしまった。 で、その好きな相手というのが 「俺は、パチュリーさんが――いや、パチュリーが好きなんだ。 ただ――正直向こうがどう思っているのか怖くて…… だから、いつか俺自身がパチュリーに告白するときまで この事は魔理沙の胸の内に秘めておいてくれないか?」 とのことで。 「つまりは、まぁ。両想いだったって訳だ」 とんだすれ違いや、恋に臆病な二人が起こした小さな騒動。 「ま、親友として二人を祝福するぜ」 そうして魔理沙は図書館を後にした。 ――一筋の雫を頬に流しながら。 深遠の闇が広がる世界。一切の光が存在しない世界。 俺はここにいた。 ふわふわと浮いているような感覚。 体を動かそうにもまるで動く気配が無い。 そこには、ただ薄れた意識だけが存在していた。 「……!!」 ――声が聞こえた。 懐かしい声。久しぶりに聞いたような気がする。 それと同時に、闇の中に一粒の光が生じた。 俺はそこに向かって意識を飛ばす。 「…! ……!!」 より一層光が大きくなった。 声も先程より良く聞こえるようになった。 この声は――ああ。 「お……い! ……て!!」 再び大きくなる光。先程と同じく。より聞こえるようになった声。 俺の、愛しい人の声。 その、愛しい人の名は――― 「お願い…! 起きてっ……!」 ――その瞬間、世界が光で包まれた。 「……パチュリー」 そこには――愛しい人の涙に濡れた笑顔があった。 私は紅魔館の廊下を歩いていた。 あの人が呼び出してくれた場所に向かうため。 あの後、私は安堵心からそのまま寝てしまった。 寝顔を見られたのは少々恥ずかしいが、○○が目覚めてくれて本当に嬉しかった。 あの薬は対象者を永遠の眠り――とは言っても、別に死ぬというわけではなく、 永遠に睡眠させる薬、といったものである。 外の世界の言葉を使うならば――植物人間、と言う言葉が一番近いかしら。 ともかく、本来なら目覚めることは絶対ない筈なのだが。 「奇跡……とでもいうのかしらね」 普段なら使わないであろう言葉。 だが、こんな事が起きたのであれば、それはもう奇跡と呼ぶしかないだろう。 そして―― 「お待たせ」 あの人の所へ辿り着いた。 「パチュリーさん」 優しく微笑みかけてくれる。 「それで、話って、何かしら?」 「えー、っと、その。ゴホン」 私の大切な人。 「俺は、パチュリーさん……いや、パチュリー。 ――俺は、君が好きだ。君と共に一生を歩んで行きたい。 もしよかったら、俺と付き合って…くれないか?」 「―――よろこんで、お受けいたします…」 fin えー無意味に長くなってしまいました。 結果的には『自分×パチェ』になりました。 なんかキャラが崩壊している気が…いろんな意味でごめんなさい ちょっと纏まっていない感じがする。 大抵の流れからすると「眠る=死」なんだけど、魔理沙は何故か気が付いていた模様 そこら辺は目を瞑っていただきたいorz 1スレ目 346 351-353 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「貴方と一緒に生きることが、得られる筈の知識をどれほど失わせるか解る?」 「確かに君にとっては、俺はそんなものかもしれない。 だが俺は、通り一遍等の知識では到底得られないものをお前に与えてやることが出来る。 俺の今までの、そして残りの人生全てをかけて誓ってもいい。 俺は、誰よりもお前を幸せにしてやれる。どんな知識よりも尊いものをお前に経験させてやる。 絶対に後悔はさせない。だから俺と…」 しつこく食い下がる俺。俺の気持ちは、想いは、そんな一言で泡となり消えてしまうようなものじゃない。 それを感じ取ったのか、先刻までの無関心、無感情な顔をあらぬ方向へそむけるパチェ。 その表情は気のせいか、少し悲しげにも見える。 「どうしてそんなに…」 「どうして?決まってる。お前が好きだからだ。愛しいからだ。何よりも大切で、誰よりも愛してるからだ。 君のニ百年の知識がどれほどかは分からないが、俺のこの想いが劣るとは思わない」 俺が想いを放つ度に、その体躯を震わせるパチュリー。顔は完全に下を向き、表情はこちらからは見えない。 言葉を噛み締めているのだろうか、膝の上に置かれている手の、震えが、徐々に、強く、なって、いって――― その、手の上に、一滴の、涙が、零れた――――――― 長い、その長い長い沈黙は、永遠にも、一瞬にも感じられ、 さながら、罪を告白するかのように、パチュリーが言葉を紡いだ。 「………百年前、幻想郷はとても賑やかだった。沢山の妖怪や幽霊達。……それと、幾人かの人間。 紅白の巫女、白黒の魔法使い、この館のメイド長、だった、人。 毎日賑やかで騒がしかったけど、不快ではなかった。 でも、その日々は有限だった。 みんな、先に逝ってしまったわ。でもそれも当たり前、人間ですものね。 数百の年月を生きる妖怪と違って、人間はせいぜい数十年。種族が違うことを、これほど恨んだ時はなかったわ。 最初はみんな気付かない振りをしてた。 でも、宴会を開くたびに、弾幕ごっこをするたびに、 あの楽しかった日々が、もう二度と訪れない事に、みんな徐々に気付いていって。 ……そして、幻想郷は変わってしまった。 レミリアはここを飛び出したし、冥界の姫は静かにその生を終えたというわ。 ……亡霊が生を終えるというのも、変な話だけれど」 言って、パチュリーはクスッと笑う。自虐的な笑みを浮かべて。 「だから、貴方がどんなに想ってくれても、私には無理。 アレはみんなの心に深い傷跡を残した。もちろん、私にも。 もう二度と私はあんな思いをしたくない。 私はもう二度と、人間と関わる気はない」 静かな告白。俺は何も言うことが出来なくて―――― 1スレ目 429-430 427を受けて 備考:未完。さあ、続きを(ry > 427~ 分類不可1を参照のこと。 ─────────────────────────────────────────────────────────── SS書きは東方キャラを愛しているか? 「生涯忠誠! 命懸けて! パチェ萌え! パチェ萌え! パチェ萌え!」 1スレ目 821 ─────────────────────────────────────────────────────────── _________________ 「パチュリー、紅茶淹れたぞ」 <(本を読んでいる)ありがとう、そこに置いといて。・・・○○、辞書はどこかしら> _________________ 「えーと・・・ほれ」 <ありがとう> _________________ 「・・・・・・・・」 <・・・・・・・・(ぱらぱら)> _________________ 「・・・・・・・・」 <・・・・・・・・(ぱらぱら)> _________________ 「・・・・・・・・」 <・・・・・・・・(ぱらぱら)> _________________ 「・・・・・・・・」<・・・・・・・・> _________________ 「・・・・・・・・」<・・・抱きつかないで> _________________ 「いいじゃん」<本が読めないわ> _________________ 「なあパチュリー・・・」<何よ・・・ん・・・> _________________ 「<・・・・・・・・・・・・・・>」 _________________ 「・・・ふう」<・・・ふはっ> _________________ 「なあパチュリー」<何よ> _________________ 「愛してるぞ」<・・・・・・・> _________________ 「・・・・・・・」<知ってるわ> _________________ 「・・・そうか」<・・・そうよ> _________________ 「・・・・・・・」<・・・・・・・> _________________ 「・・・・・・・」<・・・・・・・> _________________ 「・・・<・・・・・・・・・・・>」 _________________ (がちゃり) 〔パチュリー様ー、○○さーん本の整理についてご相談したい事・・・が・・・〕 「・・!!<・・・・・・・・!!>」 __________________ 1スレ目 866 ─────────────────────────────────────────────────────────── パチュリー・ノーレッジ様は紅魔館一のお風呂嫌い 本を読めない時間は無駄なの、なーんて言っちゃって あれを鴉の行水って言うのよね。なんて囁かれてるし それを言うならもやしの行水よ。調理前にさっと水洗いだけだから 変化の少ない紅魔館の生活も少々飽き気味。仕事変えてもらえないかなぁ だってね、パチュリー様って暗すぎるの。図書館が暗いからかしら でも掃除部は大変だしぃ…調理部は面白そうだけど、私料理苦手なのよね 「ねぇねぇ。知ってる? 人間の男が1人雇われたって話」仲間のメイドから、驚くべき知らせ な、なんだってー(AA略 図書館に人手が欲しいし、丁度いいわ …いいオトコかしら? …あんま期待しちゃダメよね でも外界から来た人間って…? なんかすっごい弾幕とか撃ちそう…どうやっても避けられないとか カラフルなだけの弾幕とかは絶対嫌よ。意味無いしぃ 「パチュリー様、おはようございます」いつもの朝…なはずなんだけど 「…おはよう」本当パチュリー様は暗いのね。朝なのに 「もう知ってるかもしれないけど、外界から来た方よ。…ここで働きたいって」 へぇ…割といいオトコかも。少しは楽しめるかしら? 「レミィが連れてきたらしいけど…何か思うところでもあったのかしら」 うわぁ…なんか意外。あのお嬢様が、ね 「よろしくお願いします」 わわっ礼儀正しいのね。思わずドキンとしちゃったじゃない 「あ…え、えっと宜しくね」しっかりしろッ私。先輩らしく威厳ってモノを出さなきゃ 「それじゃ、あなた色々教えてあげて頂戴。」 思いもかけぬ言葉に、私の胸は高鳴るばかり それから十日ほど。私としては彼に図書館の仕事を全て教えたつもり 彼ったら真面目なの。礼儀も弁えてるし、素敵よね 私ったら彼のことばかり見て、失敗ばかりでパチュリー様に起こられたり彼にフォローされたり …その度に胸がキュンとする 「そこまで思いつめてるんなら、告っちゃいなさいよ」仲間は気軽にそういうけど 私なんてしがない一メイド 私も人間だったら良かったのに 「どう? 彼の様子は。ちゃんとやってくれてるかしら」 パチュリー様は私を呼び出すと問い掛ける。いつも通り本から目を離さずに …全然見て無いのかしら 「はい、凄く真面目ですしミスもほとんどありません。立派な方だと思いますが」 私としては素直に答えたの。本当のことだしね 「そう…」 私は見逃さなかった。パチュリー様の頬がうっすらと紅潮したことを よりにもよって、ライバルがパチュリー様だなんて 私にどうしろって言うの? 私が手を出していいわけないじゃない それこそパチュリー様お得意の魔法で一発で消し飛ばされるに決まってるじゃない 御機嫌を損ねて吹き飛んだ同僚だって見たんだからっ 木の符で吹き飛ばされるの? 水の符で貫かれるの? 金の符で押しつぶされるの? どれだって嫌よ …熱いキスを交し合ってる二人がいた 覚悟はしていたけど、いたたまれないものね 私の恋は終わった でも…こっそりサポートするのもいいかも。彼が幸せなら 義理と人情秤にかけりゃ、ってね だったら私は義理に生きるわ 彼の同僚として、先輩としてね …頑張ろっと パチュリー・ノーレッジ様は紅魔館一のお風呂好き 綺麗になるための大事な準備よ、なーんて言っちゃって 1スレ目 937 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「何よ、また埋まったの?」 眠たそうな呆れたような目でその少女は言う。 そう、俺は埋まっていた。ちなみに、埋まる前は本の整理をしていた。 幻想郷広しと言えど、整理中の本の雪崩に巻き込まれるのなんて俺くらいのものだろう。 俺の名はやがて「雪崩に巻き込まれる程度の能力」の持ち主として幻想郷中に 「暫くそのままで良さそうね」 「はい下らない事考えてましたごめんなさい。 助けてパチュリー パチュリー助けて」 少女の名はパチュリー・ノーレッジ。外見こそ少女のそれだが、生粋の魔女にしてこの魔法図書館の主だ。 ―俺は元々幻想郷の外の人間だったが、まあ色々あって、この図書館で雑用っぽい事をしている。 「何回目だっけ?」 「はい。今日だけで3回埋まってますがどう見てもドジです。本当に」 「ドジね」 「ありがとうございました。」 何事も無かったかのように俺に背を向けて歩き出すパチュリー。スルーかよ、ノってくれよ。 「おいてかないでー」 あ、こっち向いた。 …そんな目で見んでも。 「はぁ…」 ため息こそつかれたが、彼女は俺の前まで戻ってきてくれた。 「手、出せる?」 「なんとか…って、魔法使わんの?」 「貴方の周りの本、殆どが魔道書よ」 「オチが見えたので手で引っ張り出して下さい」 「ん」 白く小さな両手が本の山から生えた俺の手を取る。 暖かく柔らかい。…そういやパチュリーの手に触れたのは初めてな気がする。 悲しくも外の世界で女性経験に恵まれなかった俺は、こんな事でも思考がテンパってしまうのだ。 「あー、あんまり無理せんでも。 誰か呼んで来てくれるだけでも良いし」 喘息持ちの彼女に無理はさせられない。 けど引っ張られている手に意識がいってしまい、何だかぎこちない言い方になってしまった。 「んー」 パチュリーは特に気にした様子も無く、ぐい、ぐい、と彼女なりに力を込めて俺の手を引っ張る。 やがて、いくらか動かせる程度まで腕を出す事ができた。 「オッケー。後は自力で出られそ…うおッ!?」 「っ!」 本日4度目のドジ。自由になった腕を急に動かした所為で、新たな本の雪崩を以下略。 まあ要するに――どう見てもドジでした。 まあ、俺の周りの本が崩れたお陰で抜け出せるには抜け出せたんだが まあその…前のめりに倒れこんだワケで、俺の目の前には彼女がいたワケで。 四つん這いになった俺の下に、彼女がいるワケだ。 「・・・」 普段はあまり表情を出さない彼女が、頬を染めて、僅かに潤んだその瞳を閉じ ――いや、今そんな表情されるとマズいから!色々と! 「どう見ても押し倒してます。本当にありがとうございました。」 …何とか誤魔化してみる。そうでもしないと気恥ずかしくて開花宣言しそうだった。 「そうね。どう見ても 押し倒してるわねえ」 頭上から聞こえる突然の声。 …頭上? 見上げてみる。 … 「ヤア!咲夜サン! こんな所で会うなんて奇遇ですネエ!」 アハハ 咲夜サン何て顔してんだよ それ人間がしていい表情じゃナイヨ咲夜サン咲夜サン咲夜s… ――― その日は 俺が幻想郷に来て以来 最も辛く長い 一日となった 114 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「……こりゃ、下は相当な有様ですよ」 紅に染められた館に、振動が響き渡る。 肌に感じるのは、常識外れの魔力の奔流。 「そんなことっ…けほっ…言ってる場合じゃ…!」 「駄目ですパチュリー様!まだ身体も魔力もボロボロなんですから!」 ベッドから起き上がろうとしたパチュリーさんを、小悪魔さんが制止する。 その強い剣幕に、彼女はジト目で睨み返していたが、やがてベッドに沈み込んだ。 紅魔館の地下には、レミリアさんの妹がいる。 全てを破壊しつくすと言われている吸血鬼、フランドール・スカーレット。 地下で続けられている激闘は、その妹さんが満月の影響で暴走したことに端を発する。 「レミィ……魔理沙……咲夜……」 シーツを握り締め、小さく漏らすパチュリーさん。 地下に向かったのは姉のレミリアさん、俺の師匠の魔理沙さん、メイド長の咲夜さん。 どう見積もっても、やり過ぎじゃないかと思ったこのメンバーが、小一時間も闘っている。 妹さんと俺はまだ面識はないが……パチュリーさんまで行こうとした以上、相当な相手なんだろう。 (……策はある。咲夜さんが無事なら…まだ) 闘いが長引くにつれて、不安が強くなっていく。 敗北の2文字なんて、どうしても当て嵌まらない3人でも、負けることがあるのだろうか……? ズゥゥゥン……。 一際大きい地響き。 それが、決着だったのだろうか。先程までの痛いくらいの魔力の波が、うっすらと引いた。 「うそ……」 「そ、そんな…」 2人もその変化を感じたのだろう。 様子からすると、負けたのは……。 「小悪魔さん。夜明けまで…いえ、月が沈むまで、あとどのくらいありますか?」 「え!?あ、そうですね…4時間といった所でしょうか」 4時間……か。まともに闘える時間じゃない。少なくとも、俺の主観時間では。 「……咲夜に地下室全体の時間をある程度止めてもらって、月が沈むまでの時間を稼ぐ。 地下室と外の時間の流れをずらし、少ない戦闘時間で持ちこたえる……といった所かしら?」 「パチュリーさん…気付いてたんですか?」 「けほけほっ…残ってる戦力は、私達と美鈴。 貴方が行く計画なら、全部読めてたことになるわね」 貴方が考えそうなことね、とも付け加えられた。 「しょ、正気ですか?」 「いやまぁ、俺に正気も狂気もあってないようなもんですけど」 驚く小悪魔さんに、軽口で返す。 幻想郷に来る前の自分だったら、絶対に自分から行こうだなんて思わなかった。 だから、狂ったと言われても仕方ないけど……変われたと信じたい。 「半人前の魔法使いに、妹様の相手が務まると思ってるの?」 床に伏せっているとはいえ、パチュリーさんの言葉には力がある。 知っているが故の、説得力。 「半人前って……これでも、4分の3くらいまでは行ってると思うんですけど。 小悪魔さん、探してほしい魔導書があるんですが……」 小悪魔さんにタイトルを伝えると、彼女は足早に図書館の方へと消えていった。 「4分の3でも、1人前には届かないわよ。 それに、無知は剣にはなっても盾にはならない。貴方は妹様を知らな過ぎる」 「盾なんて最初から持ってませんよ。俺は剣しか持ってませんし。やってみなけりゃ解りませんよ」 腰に下げた剣を見せて、笑いかける。彼女は呆れたのか、深々と溜息を漏らした。 「はぁ……何を言っても無駄みたいね。魔理沙以上に無茶するとは思わなかったわ」 「一点だけでも魔理沙さんを越えてるなら満足ですよ」 「……他には、図書館でのマナーくらいは褒めてあげるわ」 「そりゃ光栄ですね」 そこまで言うと、彼女は黙り込んで、そっぽを向いてしまった。 ……横になっている彼女の側には、大低小悪魔さんが付き添っている。 それが今はいない。俺が頼んだ訳だけど。 2人っきりでの――――沈黙。 本を読んでる時はそうでもないけど、互いに黙ってると……気まずい。 「……怒ってますか?」 「呆れてるだけ。 ……そういえばその剣、何処から持って来たのよ」 「魔理沙さんのコレクションからです。俺、接近戦の方が得意なんで。 バレたらマスタースパークで消し炭にされそうなんで、内緒にしてくださいね」 瞬間、彼女は物凄い勢いで向き直った。……直後に咳込んだけど。 「貴方ねぇ…壊したりしたら、本気でやりかねないわよ」 「…マジですか?」 「貴方の師匠なんでしょう。想像力が足りないわよ」 ……想像してみよう。 魔理沙さんが真っ正面から…いや正面に限らず、俺を狙ってあの魔砲をぶっ放して来たら……? 『お前の飛び方は丁寧過ぎて退屈だぜっ。 ま、その分狙いやすいんだがな。 恋符「マスタースパーク」!』 「何笑ってるのよ」 「あ~……今から会う妹さんより、魔理沙さんの方がよっぽど恐いだけです」 妖怪と弾幕りあったことはある。弾幕がどんなものかも、大体解る。 ただ、魔理沙さんの本気の弾幕だけは、見たことがない。 「原型…残ればいいなぁ」 「妹様には楽観的なのに、魔理沙には悲観的なのね」 「師匠なんで…はは、まいったな。 だったらいっそのこと、パチュリーさんの弟子にしてもらえませんか?」 苦笑いしながら、口に出してみる。帰って来た答えは…概ね予想通り。 「私が消し炭にされそうだし、お断りするわ。でも……」 「パチュリーさん…?」 そっと手が触れられた。少し冷たくて、白くて、綺麗な手。 「美鈴や咲夜に話を通してちゃんと入って来るなら、図書館に来るのは構わないわ」 彼女は、いつも本を読んでいる横顔からは想像出来ない、優しい表情で微笑んでいた。 「え、あ、そのっ……」 「貴方の言葉なら、魔理沙も本持ってくのを自重するかもしれないし。 ……何で赤くなってるのよ」 俺には……言えない。 側にいるだけで、触れ合えるだけで、満たされてしまうから。 この幸福を、俺の欲張りで壊したくないから。 「……何でも、ないですよ」 だから、その手を握り返すことで答える。 俺が出来るのは、きっとこれが精一杯……。 「あ、あの、お二人とも……」 「こ、小悪魔!?あなたいつから……っ!」 「いいい今先程来たばかりで何も見てません聞いてませんっ!! わわわわわ賢者の石なんか持ち出さないで下さい~! ごめんなさいお二人がいい雰囲気だったのでとても間に入れなくて……。 ってパチュリー様本気ですか私謝ったじゃないですかぁぁぁ~っ!?」 「問答無用! 火水木金土符『賢者の石』!」 「いやぁぁぁ~~っ!?」 あ~~……うん。 本気の弾幕って、このくらい苛烈なんだな。 避けられるように、俺も精進しないと。 「きゃぅっ!」 あ、小悪魔さん、また被弾してる。 この密度じゃ無理もないか。 ・ ・ ・ 「ごほごほっ……」 「ううぅ……私はただ、パチュリー様の笑顔が見ていたかっただけですのに……」 「じゃ、そろそろ妹さん止めてきますけど……大丈夫ですか?」 俺から見れば、2人とも大丈夫そうには見えない。 被弾しまくった小悪魔さんは、さながら咲夜さんにお仕置きされた美鈴さんみたいにボロボロ。 加害者のパチュリーさんも、元々体調を崩してた所でスペルカードを使ったためか、一層具合を悪くしている。 加えるなら、屋内でスペルカードを使ったためか、図書館の方まで結構な被害が行ってる。 小悪魔さん、結構逃げ回ってたからなぁ……。 「そうね……けほっ…。今更止めても行くんでしょ?」 「今なら、俺が時間稼ぎにならなくても、まだ美鈴さんがいますから」 こんな状態じゃなければ、看病していたかったけど、そうも言ってられない。 魔理沙さん達が先発なら、俺は中継ぎ、抑えは美鈴さん、ってトコか。 妹さんがとんでもない弾幕張ってたら、中継ぎどころか捨て石にもならないかもしれないけど。 「小悪魔さん、パチュリーさんを看てて下さいね。 ……後で、図書館の整理手伝いますから、元気出して下さい」 「……はい」 しょげている小悪魔さんを慰めると、俺は本を手に取り地下室に行くために立ち上が――― 「ちょっと待って…」 ――ろうとして、袖を掴まれた。パチュリーさんだ。 「本はちゃんと返してよね。その……貴方自身の手で」 ……言葉に詰まった。 伝えたい気持ちが、一気に強くなっていく。 剣を握る勇気はあっても…………それでも俺は、その境界を超えることは出来なかった。 「ありがとう……ございます」 だからせめて、それ以上自分の気持ちに嘘はつかないように、大事な人の手をぎゅっと握り返した。 「な、何がよ…?」 「何とか、最後まで戦えそうってコトですよ」 困惑している彼女の手を離し、笑いかけると、俺は図書館を後にした。 ―――図書館から出た俺は、辺りに誰もいないことを確認して、目を閉じてみた。 あの笑顔も、手の温もりも、彼女への想いも、ちゃんと心の中にある。 伝えることも叶わない想いでも、心の中にちゃんとあるなら、それはきっと力になるはず。 だからきっと、負けたって立ち上がれる。そんな気がする。 生を諦めかけた自分が、幻想郷での生活で立ち直れたみたいに。 「じゃ、行きますか」 目を開き、自分に対して呟く。 甘い時間はもう終わり。 ここから先は、勝負の時間。 4分の3の魔法使いが、お相手しましょう……。 「ごほごほっ…小悪魔。明日からでいいんだけど、探して欲しい薬があるの」 「あれ……喘息の薬、もう切れてましたか?」 「人の話は最後まで聞く。 見つかりづらいと思うから、永遠亭の薬師に話を聞いた方がいいかもね」 「はぁ。それで、何の薬を探せばよろしいんですか?」 「その………バカにつける薬」 「………あの、パチュリー様?誰が使うんですかそんなの」 「い、いいじゃないのそんなこと……あ、レミィ達には秘密でね」 ちょみっとだけ後書き……っていうかむしろ懺悔 一部始終をゆかりんが見てそうだw まさに、「スキマ様が見てる」 今回の話、そーとー前から妄想だけはあったんですが、スレ見つけるまではただの妄想で終わってました。 しかしスレ見つけて、書こうとしたらさあ大変。 書きたいことが多すぎる(妄想が過ぎます)。 全部書こうとしたら量がとんでもなくなる(文章能力的に許容量オーバー)。 そもそも全部書いてたらいつまでかかるか分からない(遅筆なんです)。 少なからずともパチュが泣く展開に(自分パチュ萌えなんです)。 とまあそんなこんなでレティが文になるくらい(失礼)内容削減。 結局こんなんなりました。合唱。 削減前の大筋は、 1.この後魔法剣でレーヴァテインとチャンバラ。 2.相打ち(魔力使いすぎが死因)で、三途の川へ。 3.色々と小町に諭されたり弄られたりで彼岸へ。 4.えーき様からお説教、色々あって白玉楼へ。 5.ゆゆ様に引っ張られてもう一度紅魔館へ……。 うん、絶対書ききれない。書かなくてよかった。自分じゃ質が保てない。 いや保つほどの質もないけど悪化しないよりはマシです。 プロポとは違いますし告白もありません。イチャついてもいません。 キスもなけりゃ抱擁もないです。きっと雰囲気違いますね、すみません。 ココアの甘さよりは、微糖のコーヒーみたいな。切なく苦いけど暖かい、みたいな。 手を繋いだだけの幸せでも大事なことを……あーもー言葉に出来ません。 本当にバカにつける薬が欲しいです。対象はもちろん自分自身。 もうこのまま長々と続きそうなんでここいらで止めときます。 1週間全力投球で書ききれただけで満足ですもん。 それでは読んで下さった皆様、 このスレを設け、盛り上げた全ての皆様に感謝申し上げます。 ありがとうございました。 122 ─────────────────────────────────────────────────────────── 紅魔館の厨房の片隅で、包丁の音がリズミカルに響く。 パチュリーさんに料理を教えて欲しいと頼まれたのはつい先日の事だ。 図書館の雑用として配属された筈の俺だが、みょんなことで作ったパチュリーさんへ の食事を気に入られてしまってから、彼女専用のコックへと昇進(押し付け)と相成ったのだ。 まずは基本的な料理の作り方と食材の切り方等から教えていく。 千切り・微塵切り・短冊切り・十文字切り・天空剣Vの字切り── 何か間違っているような気もするが気にしない事にした。 彼女の可愛らしいエプロン姿── 真剣なジト目── つまりはパチェ萌(ry 一月も経過する頃には、彼女の奇行は紅魔館中の噂になっていた。 三度の食事や風呂より読書…であった以前からすると奇行と考えられるのも無理は無い。 「……パチュリーさん」 「何?」 「どうして、急に料理を学ぼうなんて気になったんです?」 ぎこちなさの残る彼女の手を制止させ、包丁の手本を見せる。 「……わからない?」少しの沈黙の後、声を小さく、だがはっきりと告げる。 「あなたが……好きだからよ」 刹那、左手に激痛が走る。 「うあっ!」思わず包丁を放り出す。 思いもかけない告白に動揺してしまったか、指に包丁がざっくりと入ってしまった。 反射的に水桶に手を入れる。水が瞬く間に紅に染まる。 「…! ちょっと待ってて…薬とか探してくるわ」 ──あなたが……好きだからよ 彼女が戻ってくるまでの間、その言葉が頭から離れなかった。 今まで女の子と縁など無かった。それなのに…。 ほどなくして彼女は薬やら包帯やらを持って戻ってくる。 青い色の液体が入った小瓶──これが究極幻想のボーションなる代物だろうか。宝箱の鍵を開けたりする薬ではなさそうだ。 「…手、見せて」 水から手を出す。激痛に思わず声を上げたくなる。 「止血の、魔法よ」 彼女はそう言うと、顔を近づけて俺の指をその小さな口に含む。 「ちゅ……ん……んぐっ」 顔を紅潮させながら指を柔らかく吸い、患部をそっと舐め上げる。ごくんと喉を鳴らして血を飲み込む。 「さっきの返事…してなかったな」 彼女の細い身体を引き寄せ、抱き締める。 「ん……」紅く汚れた小さい唇を塞ぐ。 初めて愛した女性の唇は、薬と血の味がした。 ****** 176を見てパチェに指パチュ…指チュパさせたくなった 186 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「フゥ…ようやく半分読み終えたか…」 「○○、独り言を声に出さないで」 「あ、すみません」 僕は今、紅魔館の図書館で読書をしている。 たまには本を読むのもいいかな?と思ってココに来てみたのだが… ちょっと声を出すたびにココの住人であるパチュリーに注意されてしまうのだ。 …まぁ、確かに図書館内では静かにしないといけないのが常識なのだが… 「○○?あなたの持っているその本…」 「ん?これがどうかした?」 「ああ、やっぱり。それって私の読みたかった本よ。返しなさい」 「え…でも今読んでる途中だしパチュリーも今違う本を…」 「いいから返しなさい」 「…ハイハイ」 まぁ、こんな感じで僕の持ってきた本は何故かパチュリーの読みたかった本であることが多く、奪われてしまうのだ。 「…さてと、ちょっと休憩」 「○○、休憩するなら紅茶を淹れて来て頂戴」 「ん、分かりました」 「それと、適当に本を持ってきて。あなたが選ぶ本は何故か私の読みたい本であることが多いから」 「ハイハイ…かしこまりました」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「淹れて来ましたよ。オレンジペコーですけどいいですか?」 「ええ、分かってるじゃない○○」 「ハハ…なんとなくですよ。で、いくつか本を持ってきましたが…」 「…あら、全部私の読みたかった本…」 「え…?ハハハ、なんつうかそのすごいですね…」 ちなみに僕の持ってきた本は10冊である …パチュリー、そんなに読みたい本があるのか… 「ねぇ…いくらなんでもおかしくない?」 「ん?何がですか?」 「何であなたは私の好みとか読みたい本が分かるのかしら?」 「え?いや、何ででしょうね?僕はただその場その場で決めてるだけですけど…」 「…研究の必要がありそうね」 「ハイ?」 あ、なんだか嫌な予感が… 「あ、その…僕帰ります」 「(ガシッ)逃がさないわよ…」 「え、ちょっとタンマ…」 「フフフ…しばらくココに泊まっていきなさい」 「い、いや…そんな迷惑ですよ…」 「あら、ココの図書館は少なくとも私が管理してるのよ。あなたが泊まるぐらいわけないわ」 「…まぢすか」 「フフフ…楽しみね…」 ああ母さん…たった今僕は人間から研究対象に格下げされました… 「…って、何で人の服脱がしているんですか!」 「研究するのに衣服はジャマなの。我慢しなさい」 「うう…恥ずかしい…」 「…どうでもいいけど立派ね」 「そんなに見ないでくださいよ!」 「研究するのに研究対象を観察しなくてどうするの?」 「ううう…なんでこんな目に…」 …パチュリーって一体… 「…って何やってんですか」 「何って…体温を測っているんだけど」 「いや、何で体温を測るのに抱きつかないといけないんですか!」 「体温計が無いのよ」 「…なんでそういう日常で必要なものが無いんですか…というかどうやって抱きついて体温測るんですか!?」 「人肌」 「…いや、そんな一言で言われましても…もう、好きにしてください…」 …五体満足で帰れるかな… というか、本当に家に帰れるかな… 「ってパチュリー、顔が近いんだが」 「よーく見る必要性があるのよ」 「いや、だからと言って近すぎ…んむっ!?」 え…なんでキスされてんの? 「ぷはぁっ…な、何をしてるんだよ!」 「唾液の採集」 「いや、だからそんな一言で片付けるなよ…ってかキスする必要性あるのか!?」 「人間の唾液を採取するにはこれが一番いいのよ」 「ウソダドンドコドーン」 「他にも方法はあるけど…面倒くさいのよね…」 「出来ればその方法でやって欲しかったよ…(ファーストキスだったんだぞ…)←小声」 「何か言ったかしら?」 「いいや、何も」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「さて次は…」 「まだあるのかよ…」 「ネタばらしね」 「は?」 「実は…今までの検査って何の意味も無いのよ」 「…えっ」 「研究するのには服を脱がす必要はないし、体温計はちゃんとある。そして唾液なんて最初から採集する必要性が無い」 「…嘘だろ…じゃあ…じゃあなんでこんなことをしたんだよ!」 パチュリーはいきなりそっぽを向いて言った 「あなたが…好きだから…」 「…はい?」 「あなたを愛してるから…だからこんなことをしたの」 「……」 「もう…逃がさないわよ」 そういうとパチュリーはいきなり呪文を唱え始めた すると図書館の戸の鍵が閉められていた。 「もう、私以外開けることは出来ない…」 「…そんな態度で示さなくても…良かったのに」 「いいのよ。これが私なりの愛情表現なの」 「やれやれ…」 「…ねぇ、あなたは私のことどう思ってるの?」 「どうって…好きじゃなかったらこんなことには付き合わないよ。…って言っても無理やりつき合わされたっぽかったけどね」 「…嬉しい」 「さてと、パチュリー?これからどうするんだい?」 「そうね…とりあえずは…」 そういってパチュリーは僕にキスをした。 先ほどとは違い、求めるような大人のキス。 僕もそれに精一杯答えた。 そして… 「パチュリー様ぁ…図書館から出れなくなって…」 「「あ…」」 「……」 「……ハハハ…よぉ、リトル」 小悪魔がいるのを忘れてた… ちなみに今はパチュリーが僕を押し倒し、僕はパチュリーの胸を触っている状態である… 「…し、失礼しました…ごゆっくり…」 「リトル…後で司書室に来なさい…」 「…パチュリー?何をする気だ?」 「決まっているでしょ、お仕置きよ」 「パ、パチュリー様!?」 「あなた、私たちの楽しみをジャマしたんだから当たり前よね…」 「い、いやぁ…」 「…ハハハ…こりゃまた……はぁ…」 はい、どう見てもネチョまで後一歩です。ありがとうございました。 なんつうかその…すみませんでした 196 ─────────────────────────────────────────────────────────── ――――妖怪は人間を襲う。 ――――人間は妖怪を退治する。 ――――そう、当たり前の事。 ある日、いつも通り本を読んでいたら魔理沙が来た。 だが今回は、もう一人変わった少年を連れてきた。 その少年は妖怪が好きらしい。…そんなことはどうでもいいが。 咲夜が四人分の紅茶を持ってきて、二つを私と魔理沙のところに置く。 その後、少年(りりと言うらしい)に近づいて、 「りり君、あなたのことを待っている方がいるの。来てくれる?」 その声に少年が少しおびえた顔をした。 「大丈夫…たぶん何もされないわよ」 すると魔理沙が口を挟む。 「待ってるって誰なんだ?」 誰かが待っている。それは私も興味があった。 「お嬢様です」 その答えに私は少し驚いた。レミィが興味を示す事は滅多に無いのだ。 「あー…ダメだな。私はそいつを守れと言われているんだ」 流石に魔理沙でも人を見殺しにはしない。これは普通の事である。 だが、今の私にはレミィが何に興味を持っているかが気になった。 「魔理沙…きっとお嬢様はなにもしないわ」 それに、お客として呼んでいるのだ。それを殺すことはレミィのプライドが許さないだろう。 「そうは言ってもな…りりどうする? お前が決めろ」 少年は行くだろうとは思うが、一応は見てみる事にする。 「わ、わかりました。その…お嬢様に会います…」 その言葉に咲夜は少年を連れて出ていった。 <ここから、自作部分です> 「……大丈夫かな。あいつ」 パチュリーに何もしないといわれても気になることは気になる。 「大丈夫よ、レミィはよほどの事が無い限り、お客様を殺すなんて失態はしないわ」 「よほどの事って、どう言う事だ?」 「そう、例えば…」 そう言ったと私に指を指して。 「あなたが本を百冊借りたまま返さないとか」 「おいおい、百冊も借りてないぜ?」 「今、八十三冊目よ」 そんなに借りていたとは知らなかった。 と、そろそろ少し返してやろうかと考えていたとき、 「にゃー」 …猫? 「おー、パチュリー。随分上手い声真似じゃないか」 「私じゃないわよ、この子よ」 そう言って膝に乗せていた(座っているので死角)から猫を取り出した。 その猫は全身紫色で、はっきり言って変わった猫だった。 「ついに猫イラズじゃ敵わなくなったのか」 「猫イラズは代用品。この子が里帰りしている間の」 冗談めかしていったつもりだが、パチュリーは真面目に返してきた。 というか、猫が里帰りなんて聞いた事が無い。前に回転する尻尾が二本の黒猫なら見たが。 「でも、アレルギーとかしつけとか色々大丈夫なのか?」 「この子は特別よ。一応使い魔のようなものだし」 「使い魔、ねぇ…。便利なのか?」 「まぁ、実験台とか魔力増幅装置みたいなものね」 「それじゃあ戦闘には使えにくいんじゃないのか? 落ちたりすると危ないし」 「飛べるからそこらへんは問題無いわ」 流石はパチュリーだ、極悪非道だぜ。 これ以上聞くと、この猫が可哀相になってきたので話を変えることにする。 ちなみに猫はパチュリーの膝の上に帰還していた。 「そ、そういえばさ」 「何?」 「パチュリーは弟子とか取らないのか? あの薬師みたいに」 「もう弟子なんて取らないわよ」 まぁそう答えるだろうとは考えていたが、一つの言葉が頭に引っかかった。 「もう? ってこは、取った事あるんだな」 「ええ、一人だけ」 「パチュリーが弟子なんて取るなんてな」 「悪い?」 悪くは無いが、ありえないと思っていた。 「…その話し、詳しく聞きたい?」 「ああ、聞きたいぜ」 ネタになることは間違い無い、反射的に身を乗り出しす。 「それは、むか~しむかしのことじゃった…」 「まてパチュリー。その言い方だとおじいさんが桃を割って中から出てきた人間が鬼を退治しそうだ」 鬼といえば、あの鬼はどうしたのだろうか? 「仕方が無いわね…」 そう言うとパチュリーは話し始めた…。 「それは、そう。30年くらい前でね、ここで起こったのよ…」 ――――人間が妖怪を食べる? 無茶ね。 30年前にも図書館に住んでいた私は、いつも通り本を読んでいた。 ちなみに、その頃は誰もいなくて、一人で黙々と読んでたわ。 でも、それが一つの出来事によって壊され始めたのよ…。 「…? 誰かしら?」 突然の気配。しかも図書館の奥から。 無論メイド達は近づいてこないし、ありえない事だ。 「……面倒だけど、読書の邪魔になるし…」 そう言うと少し浮かんで気配のほうに近づいていった。 「で、そこには誰がいたんだ?」 「一人の少年よ。背丈は私より小さいわ」 「おいおい、随分小柄だな」 その少年は、周りの本棚を呆然と見ていただけだった。 「あなた、誰? どこから来たのかしら?」 いきなり殺すのも悪いだろうと思って、その少年に話しかけた。 「…えっと、僕は○○です。村から来ました。…それ以前にここはどこですか?」 いきなり話しかけてきたのに答えるとは変わった人間だ。 というか、進入してどこか知らないと言うのもおかしな話しである。 それに、普通の人間なら湖の真ん中にさえ近づけないはずである。 「ここは、図書館よ。あなた、何でここに来たのかしら?」 「えーっとですね。…頭の上で指をくるくる~っと回したら、何時の間にかここに来てしまいまして」 正直ありえない。魔法も何も唱えずに指を頭の上で回しただけでここについてしまったのである。 「あなた、回す前に何か考えてた?」 「たしか、大量の魔法の本が読みたいって、微かに」 なるほど、つまりは念じている最中に術式か何かが出来あがってしまって、ここに来たわけである。 だが、移動呪文はかなり高度な呪文である。それを適当にやって出来るのだろうか? それに、私は彼に興味があった。 「…あなた、魔法を使いたいと思う?」 何故かは解らないが、なぜかこの少年には魔法を教えても良いかもしれない、という考えが生まれていた。 「魔法ですか? 使いたいですよ」 「親は?」 「…居ません。………前に妖怪に殺されました」 それなら好都合である。 「そう。じゃあ、ついてきて」 そう言ってもとの場所に戻った。 「で、若き○○はダークサイドに落ちたのか」 「何の話よ」 「まあそれはともかく、なんで弟子なんかにしたんだ?」 「才能がね、あったのよ。彼の目を見たら解ったわ」 「勿論、それ以外の理由もあるんだろ?」 「……………胸キュン?」 「イメージ崩れるぞ」 「余計な御世話。それで、彼は私の事をなぜか先生と呼んだのよ。理由はわからないけど」 「まぁ、悪い気はしなかっただろ?」 「まぁ…ね」 「…ここまでが基礎の基礎。わかった?」 「解りました」 うん、私が教えた事をすぐに飲み込んでくれるので正直教えがいがある。 「さて、次は……。…ついてきて」 「? はい」 理由も聞いてこないので、いちいち説明する必要が無くて楽である。 その割に質問は良くする。変わった子だ。少し抜けているところも少々。 二人が着いたところは本棚の境目である。 「この本棚をパッと見渡して。周りのよりも明るい本があったらそれを取る。解った?」 「はい。…でも、なぜですか?」 「周りよりも明るい本はあなたの得意魔法。とりあえず得意のからやるべきだから…。まぁ、私は全部だけどね」 それで納得したのか、順順に見渡していく。 …が、全然目にとまるものが無いらしく、一つ二つと取りに行かずに通る。 (この子には、得意魔法が無いのかしら…?) そう思いかけたとき、 「あ、ありました!」 やっと見つけられたためか、喜び勇んで取りに行った。 そうして戻ってきたときには四冊の本があった。 「何の本だったんだ?」 「光、闇、日、月よ」 「じゃあそれが得意属性だったんだな」 「しかも、最後の地点にあったのを取ってきたからね、随分嬉しかったんじゃないかしら」 「でも、得意属性の本が一冊ってのはありえないじゃないか? ここは魔法図書館だぜ?」 「元々、その四つの属性については少なかったから。それだけしか目に入らなかったのかもしれないわね」 レミィと○○の出会いはそれはもう変わったものだった。 「え~っと日の呪文…は、こうやって…」 ああ、どうして彼は普段難しい属性が得意なのだろう…。 暴発が恐くて仕方が無い。本を読んでる暇さえないのだ。 「わっ!」 と、いきなり部屋が眩しくなった。 「ど、どうしたの!?」 「呪文が発動しちゃって」 「どんな呪文!?」 「えっと、たしか…ロイヤルフレア」 「ロイヤルフレア!? まさかあなた、本を右開きしたでしょ!」 「ええ、まあ」 ○○は眩しくないのか? こっちは眩しすぎるが。 「魔道書は左開き! それじゃあ高位呪文から覚える事になっちゃうじゃない!」 「えーっと、これを解く方法は…」 なんて暢気に探してる。やっぱり眩しくないようだ。 と、 「パチェ? 入るわよー」 レミィが入ってこようとしてきた。…拙い、吸血鬼に日光は死と同じである。 「レミィ! 入ったら死ぬわ!」 「何言ってるのパチェ? そんなわけないじゃない」 死にます。灰になってお終いです。 それならばと思って○○の方を向くが、眩しくて全然見えない。 「○○! 闇の魔法で相殺!」 もうなんど大声を出したか。それを聞いた○○は、 「あ、はい。えーっと、オリエンタルダークブライトは、こう…」 暢気に読んでいる。あー、もう。 「早く!」 と、術式が出来たのか。今度は真っ暗になってしまう。 それなのに○○は本を読んでいる。暗くて読めなくないのか? ―――ガチャ 「うわ! 全然見えないじゃない!」 間一髪、レミィが生還しました。ってそういう場合じゃない。 「○○、なんて書いてある…?」 恐る恐る尋ねる。 「えーっとですね。一度空間を包み込んで闇にしたあとに大爆発。です」 あーなるほど、それでロイヤルフレアを包み込んだと。って、 「また右開き!?」 「ええ、負けるとダメだと思って…」 「左舷から開くの! なにやってんの!?」 今、なにか電波が入りました。大変結構でございます。 じゃなくて! このままだと全員死んでしまう。 「○○! 範囲を極限まで小さく出来る?」 「やってみます!」 そう言うと、一部を除いて元の明るさに戻った。 「そのままの状況で維持!」 「はい!」 そして呪文を唱え、○○が小さくしたところを包み、圧縮して、固める。 「もう、良いわよ…はぁ」 ここまで、疲れたのは始めてだ…。 「そうですか?」 「何が何だったのかしら…」 「二人とも能天気過ぎるわよ…」 「それはともかく…、この玉どうしますか?」 「それ? それは閃光弾として使えるけど…、今使ったらレミィが灰になるわ」 「というか、あなた誰?」 「っていう感じでね、それはもう大変だったんだから…」 「パチュリー、愚痴っぽくなってるぞ…」 「でね、そのころはまだ私弾幕のこと教えてなくて…」 「酒、入ってんのか?」 「酒といえば、○○は酒もダメでね…。悪酔いはしないんだけど苦手で…」 「おーい店主! 酒一本追加!」 「店主とはな……アチャー!(ヘッドバット」 「???」 「でね、そのころはまだ私、くわしい弾幕の事教えてなくて…」 「いかん、ループしてきた…」 「まさか、中国に負けたのよ?」 なぜか○○は来ない、散歩に行ってくると言ったっきり全然。 心配になってきたので、最近雇ったらしい門番のところに聞きに行く。 つもりだったが、 「ちょ、聞いてくださいって!」 「貴様のような人間、見た事も聞いた事も無い!」 元凶だった。 ○○は最近外に出ないため、○○のことが門番の耳に入っていなかったのだ。 この門番、得意技が体術のために、私達のような魔法使いには相性が悪いのだ。 そういえば、スペルカードについて教えるの忘れていたのも関係しているのかも。 (あ、詠唱中に止められた。…まぁ、そうでしょうに) と、そろそろ助けに行ってあげようとしたところに。 「なっ!」 門番が出した突きをかわして掴み、前のほうの足を払った。 しかもその行動中にも詠唱を続け、終わらせる。 「ふるいけやかはすとびこむみづのをと!」 視界が一瞬眩しくなった。 直視はまぬがれたため、すぐに目が元に戻る。 と、そこ居たのは。 目を回している門番が一人。 …○○は逃げたらしい。 (まぁ、あの子らしいわね。あまり危害を加えないあたり) 思わず苦笑してしまう。さて、戻るか。 「なんでそいつは攻撃しなかったんだ?」 「まぁ、紅魔館の人だからというのが理由ね」 「……そのころから中国は負けてたのか…」 「その後にスペルカードとか色々教えたわ。あの子は弾幕ごっこの素質もある見たいだったし」 「ほぉ、一度戦ってみたかったな」 「う~ん、自分から仕掛けるタイプじゃなかったけど…。やるときはやる子だったわ。強さは…そのころは普段の私と同じぐらいね」 「そうなると、そろそろパチュリーのほうが弱くなるんだな」 「…喘息のせいよ」 「っていうか酔いは醒めたのか?」 ――――人間が妖怪を食べる? まぁ、鳥なら良いんじゃない? 出会ってからほぼ一年。○○はメキメキと力をつけていった。 そしてあくる日、いつも通り(?)起きる…が○○の気配が無い。 と、置手紙があった。 『先生へ、 少しばかり出かけてきます。 ○○』 なぜか、悪寒がした。 さすがに普通の妖怪程度なら簡単に倒せるだろうとは思うが、何故か心配になった。 それも錯覚と思い、とりあえず本を読む。 一日目、帰ってくる気配が無い。まぁ里帰りでもしているのだろうと思い気にしないでおく。 二日目、やっぱり帰ってくる気配無し、流石に少し心配になってきた。 そして三日目、 いつも通り本を読んでいたらレミィが来た。 「パチェ」 「何?」 「あの子、死ぬわよ」 「え…?」 突然の言葉に声を失う。 「今日の夜、死ぬ運命にあるわ」 「そう…」 何が悪かったんだろうか、やっぱり三日も空けると魔力が尽きるのだろうか? 「そうじゃないわよ。あなた、殺したくないでしょ?」 「…当たり前よ」 内心、とても焦っている自分がいる。しかしそれを必死で押しとどめる。 「だったら、なんで何もしないのかしら?」 「…運命、なんでしょう?」 「……パチェ、あなたが知らないとは思ってもいなかったわ」 「なにを、かしら」 「運命はね、それがわかっていたら変えられるのよ。過ぎたものなら変えられないけど、まだ過ぎてもいないものなら変えられるのよ。 知っているのに変えないのは、それがいい事かバカだからね」 「………」 「なんで、何もしないのかしら?」 「もし、助けられなかったら?」 「たとえ、助けられなくたって別の道がある。足掻かないでいるのは、バカな証拠よ」 「………」 「…パチェだから、教えてるのよ」 「……それは、友人だからかしら?」 「それもあるけど…、パチェが悲しんでる姿なんて見たくないし」 そう言い終えるとレミィは出ていった。 (運命は変えられる…か。…でも、もし死んでいたら) 『たとえ、助けられなくたって別の道がある』 『足掻かないでいるのは、バカな証拠よ』 気がついたら、外に飛び出していた。 外はもう夜。それでもパチュリーは探しつづけた。 『運命はね、それがわかっていたら変えられるのよ』 (変えて、みせる!) しかし、外は暗闇である。どこを探しても見つからない。 (魔力で探そうにも…、たぶんいつもの魔力じゃないからわからない…。 …○○が、日か光の魔法をつかってくれれば…) そう思い、辺りを見まわすがその類のものは見当たらない。 と、 ――――ズガンッ!! 大きい破裂音がした。その後、激しい閃光がパチュリーを襲う。 (これは…!) 前に、ロイヤルフレアをオリエンタルダークブライトで包み込んだものを固めた記憶がある。 (…たしか、その後○○に渡した気がするわ) しかし、光は一瞬で音も感知しづらい音だった。 (でも、微かに魔力はある) その魔力の元に向かってパチュリーは駆けた。 「○○!!」 そこにいたのは、満身創痍の倒れている○○と、妖怪の群だった。 「先生!? あ、危ないです!」 「大丈夫よ。…今日は、喘息の調子が良いから」 そう言い、二枚のスペルカードを取り出す。 「木&金符『エメラルドメガリス』」 魔法が妖怪達を襲う。 が、 「無傷…?」 「この妖怪は、全ての属性に、対して…耐性を持っています……」 それでは倒せない。心の中で舌打ちをしながらもを解決策を探る。 妖怪達は徐々に迫っていき、逃げ場が無くなってきた。 「……先生。僕に考えが」 「なに?」 「…先生の全てのカード、貸してください」 その一言でパチュリーには全てが読めてしまった。 「まさか、○○! あなたまさか………!」 「……そうです、全ての魔力を解き放てば、倒せるはずです」 ○○は マ○ンテを となえた! ぼうそうした まりょくが てきをおそう! なんてちゃちなものではない。下手をすれば体ごと吹き飛んでお終いである。 「ダメよ! そんなことで、命を捨てるの!?」 「しかし、このままだと先生まで!!」 ○○は自分を助けようとしてそんなことを言っている。それは解るが、納得が出来ない。 「でも!! あなたが…」 「大丈夫です、1%でも生きる確立があるなら、それに僕は賭けます。 このまま、一緒に死ぬくらいなら…、それくらい、賭けても良いんじゃないですか?」 「………だったら、私が」 「駄目です、あなたにはまだやることがあると思います。それに、死ぬなら自分だけで良いんです!」 「なぜ…そこまでするの…?」 「先生、僕の親は妖怪に殺されたと言ってましたよね?」 「…ええ」 「それ以来、僕は心を閉ざしていました。他人にあまり接せずに、暮らしていました。笑うなんてそのころは一度も無かったです。 でも、ここに来て変わりました。笑うなんてほぼ毎日あります。それに、親のいない僕にとって先生は親のようでした。 …………だからもう、大切な人を失うのはごめんです!!」 「テテッテ、テテーテーテ♪(マリオ」 「真面目に聞きなさいよ」 「湿っぽいのは嫌いなんだよ」 「…先生が無理ならいいです。四枚でも目くらまし程度にはなるでしょう」 「………いえ、全部あなたに託すわ」 「……ありがとう、ございます…」 そう言い、カードを11枚持ち魔力を、解き放つ。 「火水木金土月日闇光符『幻想夢物語』」 それは、美しいようで、儚く。 それは、儚いようで、晴々として。 全ては一人の思いとなり、妖怪達を襲う。 ――――ドガァァァァァァァン!! 敵が死んだかもわからない、砂埃の中。 二人がいた。 「…○○?」 「すみません、全部放出するほど勇気が無くて…」 その答えに、パチュリーは砂埃の服を気にせず一筋の涙を流し、笑った。 「それが、普通よ」 その答えに、○○も笑った。 しかし、 「え…!?」 「………無傷!?」 そこにいるのは、無傷の妖怪達であった。 「ここまで、効かないとは思いませんでした…」 と、一匹の妖怪が振りかぶった。 「!」 「せ、先生!?」 驚く○○をよそにパチュリーは○○を守るべく、妖怪の目の前に立ちはだかる。 「くっ!」 攻撃される。 それでもその場所を動かない。 「先生! なぜ、そんなことを!!」 「…私は、図書館でずっと一人で本を読んでいたわ。たまにレミィがくるけど、ほとんど一人で。 でも、あなたが来てそれは無くなった。時には実験をして、時には失敗して、そして笑いあった。 そして何時しか気付いたわ、あなたの事が好きだと。それには自分だって驚いた。 でも、それよりも強いものがあるのよ………。もう……、もう、あんな所に一人で居るのは嫌!! そのためなら、運命だって変えてみせる!!」 「!! 先生!」 「!」 また妖怪がパチュリーを貫こうと振りかぶった。 ――――ザシュッ!! 貫かれたのは、パチュリーではなくその妖怪だった。 一本の槍が、その妖怪を貫いていた。 「この、槍は…!」 「レミィ…!?」 「こうなるとは思っていたわ。とりあえず、間に合って良かったわ…」 その後、レミリアは妖怪達の方を向き。笑みを浮かべた。 「……さて、雑魚妖怪達、覚悟はいいかしら?」 一匹、また一匹と槍で貫かれる。どんなに逃げ惑おうと槍が逃がさず貫く。 そして、妖怪達は全員死んだ。 「…まさか、レミィが来るとは思わなかったわ…」 「大切な友人のためよ? これくらい当たり前」 「……そうね、ありがとう」 「先生。無茶し過ぎです…」 その言葉にパチュリーは普通に返す。 「あなたほどではないわ」 「……そうですか? …それは兎も角、ありがとうございました。…あなたに会えて本当に良かったです」 そこで唐突にレミリアが割って入った。 「パチェ……正直、この調子だと確実に死ぬわ。…ここ以外で、血が出過ぎてる。その上、魔力も殆ど無い」 「……え!?」 「やっぱり、ばれてましたか」 「…当たり前よ」 「……先生、死ぬ前に渡しておきたいものが…」 「待って! 死ぬなんて、言わないで!」 「パチェ、ここは訊くときよ…」 「この三日で見つけたものです…」 そう言って懐にあったものを差し出す。 「これは…グリモア……?」 「そうです、あると便利かと思いまして…」 「そのために、命をかけてまで?」 「……ええ」 「…無茶過ぎるわ、そんなので命を捨てるなんて!」 「…でも」 「でもじゃない! こんなグリモアなんかよりも、本なんかよりも、あなたが重要なの!」 「………しかし、もう無理です」 「くっ…!」 「最後に、一つだけ。…あなたが、好きです」 そう言うと、○○は目を閉じた。 「……○○」 「へぇー大変だったな」 「……あなた、途中から全然聞いてなかったでしょ」 「まあな。で、そいつはまだ生きてるのか?」 「普通は、死んでるわよ…」 「念のためだ、念のため」 そこで一旦話しが切れる。 「パチュリー様、何かする事は?」 と、小悪魔がやってきて聞いてきた。 「じゃあこの本とこの本、元の場所に戻してきてくれる?」 「はい」 そう言うと、小悪魔は指定された本を持って歩いていった。 「…しかし、小悪魔も大変だな。あいつ、ここの全部一人でやってんだよな?」 「まあ、そうなるわね」 「たしか、パチュリーが召還したんだよな?」 「…それ以外に誰がするって言うの?」 (……まさかね) 「さて、それじゃあ本を貰って帰る準備するかな?」 「もってかないでー」 「もってくぜ」 少しして、あの少年が戻ってきた。 結局、魔理沙から本を守る事は出来なかったが。 「お、もういいのか?じゃあ帰るか」 「その本ちゃんと返しなさいよ」 一応忠告としては言って置く。 「気が向いたらな」 結局こう返されるのだが。…八十四冊。 「さて、もういいわよ?」 そう言うと、膝の上の猫が飛んだ。 そして魔法を猫自身が自分でかける。 魔法をかけると、その猫は光に包まれ、光が解けた頃には一人の少年になってた。 紫色の髪の、パチュリーより小さい少年だった。 ただ、猫耳と尻尾を除いて。 「はぁ、久しぶりに元に戻れました」 少年は少し伸びをした後、パチュリーに向かって。 「っていうか先生、なんで猫なんですか?」 「なんとなく、よ」 「さいですか」 毎回思う疑問をとりあえず捨て、パチュリーに聞く。 「先生、なぜ本当の事を伝えなかったんですか? 本当はグリモアが只の本になって、そのかわり僕が猫になって助かったってことを」 「まあ、良いじゃないの」 「良くないです…。また隠す必要があるじゃないですか」 「それより…、あの子、どうだった?」 「……妖怪と人間が共存できる、と言ってました」 「それについて、どう思ってる?」 「…随分無茶を言っています。でも、そう考える気持ちもわからなくないのです。 それに、思う気持ちは十分過ぎます。…あの子はきっと凄い事をしますよ」 「…で、もしかして助けるつもり?」 「さあ? どうでしょう?」 「……一週間お昼ご飯禁止」 「あ、ピンポイント攻撃ですね?」 ――――思いが強ければ何にでもなる。 ――――たとえ、運命が決まっていても。 End ~~~あそ(び)がき~~~ どーも、こんにちわこんばんわ。めどいからA氏です。 パチェです、主人公猫です、むきゅーです(なにそれ 書いていて羨ましいやらなんやら…。 っていうか猫耳です。ああ、自分で書いていてなんだが主人公かわr(幻想夢物語 今回は399氏のりり君を後ろに友情出演。無駄に繋がれる。 ええ、ありがとうございます! さてさて、今回もハッピーエンド? ですが改造シーンを。 改造、1 『先生へ、 少しばかり呪ってきます。 ○○』 なぜか悪寒がした。 カーン、カーン、カーン… 改造、2 「無傷…?」 「この妖怪は、全ての属性に、対して…耐性を持っています……」 「だからって…………どくばりじゃ無茶よ! 相手のHPは一桁じゃないわ!!」 「経験値が………欲しかったんです! 魔法使いでも倒せると証明したかったんです…」 メタルキングは にげだした! 改造、3 「魔道書は左開き! それじゃあ高位呪文から覚える事になっちゃうじゃない!」 「………でも、これ巻物ですよ?」 「どこから持ってきたのそれ!?」 「入るわよー」 駄目だスネーク!未来が変わってしまう!タイムパラドックスだ! 415
https://w.atwiki.jp/gensouiri/pages/1908.html
咲夜さんが現代入り 動画リンク コメント・レビュー 咲夜さんが現代入り 何人目の幻想入りか 作者 ひとこと 主人公 動画リンク 新作 一話 コメント・レビュー 名前 コメント すべてのコメントを見る ※この作品のレビューを募集しています。レビューについては、こちらもご覧下さい。