約 969,582 件
https://w.atwiki.jp/miyanaga/pages/21.html
白糸台
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/876.html
菫「で、何の真似だ」 京太郎「えっと…その…」 菫「お前が私をつけていたのは申し訳ないくらいにバレバレだ、理由によっては赦してやる。話せ」 京太郎「すいません、でも話しても許して貰えそうにないですし…」 菫「それは私が判断するから早くするんだ、このまま通報されたいなら話は別だが」 京太郎「そ、それは勘弁してください!お話しますから!」 京太郎「えーっと、こんな感じです…」 -全国大会ちょっと前- 久「須賀くん、君には全国大会では偵察をしてもらうわ!」 京太郎「はぁ…でも一体どうやって?練習風景を覗き見て牌譜でもとれと?」 久「まあそんな感じね」 京太郎「ほとんど無理なこと前提じゃないですか…」 久「冗談よ、冗談!ただBブロックの試合に注目してもらって要対策なところの対策をあらかじめ練って欲しいの」 京太郎「それならなんとかできそうですが…」 久「じゃあよろしく頼むわね、須賀くん。わからないことがあれば何でも聞きに来ていいから」 京太郎「了解です、力になれるように頑張ります」 白糸台はブロックAでかつ、抽選は全国当日だったわ、訂正 京太郎「えーっと、こんな感じです…」 -全国大会ちょっと前- 久「須賀くん、君には全国大会では偵察をしてもらうわ!」 京太郎「はぁ…でも一体どうやって?もしかしてそこの練習風景を覗き見て牌譜でもとれと?」 久「まあそんな感じね」 京太郎「ほとんど無理なこと前提じゃないですか…」 久「冗談よ、冗談!ただ私たちと別のブロックの試合に注目してもらって要対策なところの対策をあらかじめ練って欲しいの、私は自分達のほうのブロックの対策に注力するから」 京太郎「それならなんとかできそうですが…」 久「じゃあよろしく頼むわね、須賀くん。わからないことがあれば何でも聞きに来ていいから」 京太郎「了解です、力になれるように頑張ります」 菫「まあ、ここまでは理解できる。じゃあテレビ中継に張り付くだけで十分じゃないか」 京太郎「まだ続きがあってですね…」 まこ「それはちょっと無茶すぎんかの?」 久「それくらいしておかないと彼を腐らせることになるでしょう?」 まこ「だったら他の方法もあったじゃろに…」 久「きっと別ブロックの有力校はシード校になると思うの、つまりね」 まこ「つまり?」 久「須賀くんが多少しょっぱい対策を練ったとしても、全国に行く以上シード校の対策は既にある程度あるわ」 まこ「あまりにも京太郎が不憫じゃろ…」 久「そうじゃなくて、須賀くんが何か報告さえしてくれれば、彼のおかげで対策も取れるって形になるの、むしろ彼の面子を立ているわ」 まこ「なんつーか、怖い女じゃ。わしですら寒気がする」 久「褒め言葉として受け取っておくわね」ニッコリ 京太郎(聞いてしまった…) 京太郎「うわぁ~ショック、なんてことはないですね!その分みんなを見返してやれるんだから!」 回想終了- 菫「まぁ…なんだ…ご苦労なことで」 京太郎「だから白糸台部長の弘世菫さんをつけて来たんです!」 菫「確かに動機もわからんでもないし、気持ちはわかる。だからといって他校の偵察を受け入れるほど甘くはない」 菫「今日の出来事はなかったことにするから、素直に帰るんだ」 京太郎「お断りします!」 菫「あのなぁ…赦してやるから素直に引き下がれって言ってるんだぞ?」 京太郎「弘世さんの言うことは確かに尤もですが、清澄麻雀部員としてこの機を逃すつもりは毛頭ありません!」 菫「清澄…というと、君は長野の高校の子か」 京太郎「はい、今年初出場なんですよ」 菫「つまり大会本部に清澄の部員が云々と言えば解決できると」 京太郎「えっと…それは…」 菫「世辞じゃなく君の気持ちはわかる、だから何もなかったことにしたい。それじゃ駄目なのか?」 京太郎「これは清澄麻雀部員としてではなく男としての須賀京太郎の問題なんです」 京太郎「ただ俺一人のプライドのためにあなたたちの弱点をリサーチします!」 菫「えっと…須賀君でいいか、そこまで正直だと逆に好感が持てる、だが私も白糸台の部長としてのプライド…」 照「菫、何やってるの?」 菫「あ、照かちょっと面倒なことに巻き込まれてな」セツメイセツメイ 照「じゃあ二人から意見を聞いて、私が判断する。それでいい?」 菫「ああ」 京太郎「大丈夫です」 説明タイム終了- 照「なるほど、判断をする前に京ty…須賀くんに少しの質問と要望、大丈夫?」 京太郎「はい」 照「本当にどうしても私達のリサーチがしたい?」 京太郎「はい!」 照「そのために何でもしてくれる?」 京太郎「何でもしますから!」 照「じゃあ、一局打って、ちょうどここにカード麻雀があるから」 菫「?」 照「ほら、菫も入って、二人じゃ流石に退屈」 菫「あぁ…」 照「せっかくの出会いを祝して半荘で、よろしく」 京太郎「よろしくお願いします!」 菫(意図がわからないが…まあ考えあっての事だろう) 京太郎「うぅ…断トツ最下位…」 菫「言うまでもなく照の独壇場だったな、で、照の判断とやらは?」 京太郎(どう見てもダメだよなぁ…今の対局から何かわかることは…) 照「他レギュラー達に紹介してあげる、今から時間ある?」 菫(…え?) 京太郎「…」ポカーン 京太郎「あ、あります!」 照「ん、でも流石に夕食後のほうがいいかな、この時間にまたここに来てくれる?」 京太郎「はい、では一旦失礼します」タタタッ 菫「…どういうことだ?」 照「ただの気分のせい…」 菫「そんな訳あるか、正直に言え」 照「京ちゃんは菫に一回も振り込んでなかったこと気付いてた?菫が狙い打とうとしてたのに」 菫「言われなくても…そんなことわかっている」 照「正直狙い撃ちをする菫への対処法は私にもわからない、きっと京ちゃんは何か菫への対策はとれていたと思う」 照「その対策を研究して、それを対策して私は菫に全国で活躍して欲しい、それじゃダメ?」 菫「…ダメじゃない、わかったよ。ありがとう、照」 照「どういたしまして」 夕食後- 京太郎「ちょっと早く来すぎたかな、自販機でアイスコーヒーでも…っと」ガシコーン 菫「なんだ、早いな」 京太郎「弘世さん、こんばんは」ニコッ 菫「あぁ…こんばんは」 京太郎「弘世さんが案内をして頂けるのですか?」 菫「いや、照…じゃない、宮永がここに来ると言っていた。さっき照と言っていたカード麻雀を一緒にやった奴だ」 京太郎「流石に偵察する相手のフルネームくらい把握してますから、自分の前で照って呼んでも通じますよ、菫さん?」 菫「ま、まだ知り合って間もない女性に対して下の名前でだな…」 照「あれ、菫もいたの」 菫「照が迷子になったらアレだから先に着ておいた」 照「…」ムーッ 照「そこまで方向音痴じゃない、心外」 菫「すまなかったな、じゃあ行こうか」 京太郎「今日はよろしくお願いします」ペッコリン 菫「で、どこでみんなと顔を合わせるんだ?」 照「え?ホテルでしょ」 京太郎「!?」 菫「だ、男女がホテルの同室など…は、破廉恥にもほどが……//」 照「ただ私達の麻雀の練習風景の見学でしょ、他に破廉恥な要素はない、むしろ破廉恥な要素はあった?」 京太郎「確かにそうですが…人目が…」 照「さっき何でもするって言ったでしょ、京ちゃん」 京太郎「確かに…って、まさか照さんって…」 照「やっと気付いた?積もる話は後で」 渋谷「渋谷です…よろしく」 亦野「君が須賀くんか!亦野だ!よろしく頼む!」ガシッ 京太郎「はは…よろしくお願いします」 淡「私は大星淡、同い年だし私は京太郎って呼んじゃうね、京太郎も淡って呼んじゃっていいから!」 京太郎「えーと、よろしくな、淡」 照「自己紹介は済んだ?じゃあ…」 菫「その前に一つ質問いいか、照」 照「構わない」 菫「なんで私の部屋が集合場所なんだ!」 照「多数決…」ボソッ 渋谷(正直私は乗り気じゃないし…) 亦野(私の部屋の軍備を見られる危険に晒すなんて言語道断!) 淡(別に部屋は綺麗だったけど、面白そうだったから片付いてないことにしちゃったし) 菫「お前ら…部屋はある程度整理しておけと…」 照「京ちゃん、さっそくだけど、私達の中に入って打つ?それとも外野で見学する?」 京太郎「えっと…」 菫「せっかくだ、入って行け、もし牌譜が欲しいなら後で寄越すから」 京太郎「ありがとうございます、ではよろしくお願いします」 淡「じゃあ私も入るねー!」 渋谷亦野「「…」」ジー 京太郎(そんな見られるとやりにくいな…) 京太郎「ではよろしくお願いします」 菫(私の弱点…今ここで見極めなければ…!) 照「事情は言ってあるけど、みんな偵察だからってわざわざ打ち方を変えないで」 照「偵察されて得たデータ如きに負けるような白糸台とは私は思ってない、安心して」 照「悪いけど少しの間、一人の人間のプライドのために付き合ってあげて」 京太郎「すみません、照さん…」 京太郎(どんな惨めでも俺は勝ってみせる…!) 淡「じゃ、やるよー!」 京太郎「また…焼き鳥のまま最下位…」 菫(また…狙えなかった…!) 淡「京太郎ちょっと弱いよ、もっと頑張ってくれないとつまんない!」 京太郎「悪い、きっと弱いから偵察なんて負かされてるんだな…ハハッ」 淡「もう少し京太郎が強くならないと偵察としての意味もないよ?もっと上達してからにしたら?」 京太郎「正論だけど…今日一日だけだし…」 照「いや、二日目以降も構わない」 京太郎「えっ?」 照「さっき言ったとおり白糸台は偵察された程度で負けないし、京ちゃんが来てくれるのはこちらにもメリットがある」 京太郎「では…またお邪魔しても…?」 照「大丈夫、気にしないで」 淡「じゃあ次回までに淡が麻雀教えてあげよっか?白糸台はシードで暇だし」 京太郎「じゃあ淡に頼もうかn」 菫「もしよければ私にその役目を譲って貰えるか、淡?」 淡「んーいいよ!菫がどうしてもって言うなら!」 菫「そんなこと言ってないだろ!」 淡「あー照れてる菫可愛い」 菫「馬鹿言え!」 渋谷「…」ズズー 照「もう夜も遅いし、そろそろお開きにして京ちゃんを帰すよ」 亦野「はい!これが牌譜だ!今日はご苦労だった!」 渋谷「…また」 淡「まったねー!」 菫「え、えーっとだな君に麻雀を教えるにあたって連絡先が欲しい」 京太郎「ええ、いいですよ」ポチポチ 菫「じゃあ、明日の朝頃連絡するけど、返事できるか?」 京太郎「はい!わざわざありがとうございます!今日は失礼します!皆さんおやすみなさい!」 照「道がわからないだろうから、私が送ろうか」 京太郎「正直道がわからないんで助かります」 淡「京太郎ー!テルーに手を出すなよー!」 京太郎「出さないって、では」ガチャッ 道中の公園にて- 照「昔話代なら120円でいい…」 京太郎「相変わらずちゃっかりしてますね…アイスティーでいいですか?」 照「ありがとう。それと敬語やめて、他人行儀は嫌」 京太郎「だって、最初は照さんって気付かなかったし」 照「そんな変わったつもりはない…」 京太郎「いや、やっぱり変わったよ、より可愛くなってる」 照「あ、ありがとう…」カア… 京太郎「で、照さん…」 照「いいよ、本題に入っても。真剣な時の京ちゃんの表情はすぐわかる」 京太郎「流石にわかるかー、えっと…」 照「咲のこと…でしょ?」 京太郎「…」 照「そういうときの沈黙は肯定を表す。言いたいことはある程度わかるけど無理だから、ゴメンね」 京太郎「でも咲は照さんに会いたいって麻雀を再開して!」 照「やっぱり今傍にいる分、京ちゃんは咲派なんだ」 京太郎「そういうわけじゃ…」 照「言い方が酷かった。ゴメンね」 京太郎「いえ…別に」 照「きっと京ちゃんのことだから、二人を中立的な立場から和解させたいのはわかる」 京太郎「なら…」 照「そのことは咲が私に勝たないと、お互い納得できない。道理が通ってないけど、姉妹喧嘩なんてこんなもの」 照「道理がないからこそ、解決策は単純。力を示せばいい、そこに綺麗な合理性はいらない」 京太郎「…それが団体戦での勝利でも?」 照「当然、白糸台を舐めないで。まあ、勝てたらの話だけど。だから京ちゃん、私達の仲直りの為に偵察頑張ってね」 京太郎「そういうことか…なら完膚なきまでに俺の偵察力をもって叩き潰すから待ってろ!」 照「うん、待ってる」ニコ… 菫の部屋- 淡「スミレー♪」ニヤニヤ 菫「な、何だ気持ち悪い」 淡「いやいやー、京太郎に惚れでもしたの?先生に立候補なんて柄にもないじゃん」 菫「いや、彼は私の狙い撃ちを完全に回避してきた、彼の先生役をやる内にその理由を見つけたい」 淡「ふぅ~む、なるほどなるほど~」 渋谷「…」ズズー 亦野「ああ、菫先輩にも今日の牌譜です、どうぞ」 菫「牌譜を見ても全くわからん…淡、何かこれを見て心当たりはないか?」 淡「まったくもって!」 菫「はぁ…答えは明日以降か…」 翌朝- 京太郎「朝かー、今日はAブロックの試合だったっけ…注目校はどこだっけ…」ユゥガッタメイル 京太郎「メール…って弘世さんか、えっと」 From 弘世 菫さん『昨日の夜の待ち合わせ場所に11時頃で大丈夫か?』 京太郎「『おはようございます、その時間で大丈夫です。本日はよろしくお願いします』送信っと」prrr 京太郎「もしもし?」 咲「おはよう、京ちゃん?朝からゴメンね?もし暇ならAブロックの試合見に行かないかな?」 京太郎「悪い、部長から野暮用頼まれてて行けそうにない、和達とでも行ってくれ」 咲「じゃあ和ちゃん達と見に行くね、京ちゃん。いつもご苦労様、ありがとう」ピッ 京太郎(いかなる理由であれ嘘は気が引けるな…まあ支度しないと) 11時頃- 菫「遅いぞ、どれだけ待たせる気だ、もう10時50分だろ」 京太郎「すみませんでした…」 菫「先に言っておくが私は基本的に15分前行動を心がけている、留意しておけ」 京太郎「はい…ところで」 菫「なんだ?」 京太郎「その服お似合いですね、大人って感じがして美人オーラが出て」 菫「そ、そういうのはやめてくれ…!自分が設定しておいて悪いが中途半端な時間だし指導は昼食を済ませてからでいいか?」 京太郎「大丈夫ですよ、何にしましょう?パスタにします?それとも…」 菫「須賀くんに任せるとは言ったが…」 京太郎「えーと、何か不満でした?」 菫「正直に言うと、店を選ぶセンスがいい。こんなに落ち着けるカフェで不満になる訳がない」 京太郎「ありがとうございます、正直ホッとしました。弘世さんの好みに合うかどうか不安で…」 菫「割と合ってるから安心しろ…で」 京太郎「はい?」 菫「注文は決まったか?」 京太郎「じゃあ、ハムサンドと食後にホットで」 菫「っと、私はBLTサンドにしたいのだが後で一切れ交換しないか?どんなものか気になる」 京太郎「こちらこそ、喜んで。…店員さーん!」 店員「お待たせいたしました、BLTサンドとハムサンドです」 店員「召し上がりましたら食後のコーヒーお持ちしますので、お知らせください。ごゆっくりどうぞ」 京太郎「じゃあ、頂きます」 菫「頂きます」 菫「ん、おいしい…」 京太郎「えっと、一切れ頂いていいですか?あまりに美味しそうなんで」 菫「あぁ、大丈夫だ。ほら、あーん」 京太郎「あーん…って、弘世さん!?」 菫「こ、これはだな照とか淡とかにあげる時の癖で、カ、カップルがやるようなあーんの意図はなくてだな…その…ちが…」 菫「…!ちょっと席を外す…」 菫「ふぅ…食後のコーヒーは落ち着くな…」 京太郎「両方とも美味しかったですね、おいしいコーヒーもありますし、何か甘いものでも頼みません?」 菫「私は須賀くんと同じ奴でいい、さ、さっきの反省を生かしてだな」 京太郎「じゃあブラウニーでいいですか?」 菫「構わない」 店員「ではこちらブラウニーです、ごゆっくりどうぞ」 菫「ご馳走様でした」 京太郎「ブラウニーも美味しかったですね」 ブブブブ 菫「ん?すまない電話みたいだ、ちょっと席を外す」 京太郎「はい、お構いなく」 菫『もしもし?』 淡『やっほー!スミレー!上手くやってるー?』 菫『淡か…』 淡『いくら男の子と出かけた経験がないからってパニクっちゃダメだよ、へーじょうしん、へーじょうしん』 菫『何の話をしているんだ』 淡『誤魔化さなくていいよ、通話時間もったいないし』 菫『わかった、須賀くんと一緒にいるのはお見通しと言う訳か、で、何の用だ?』 淡『さっきも言ったじゃん、へーじょうしんが大事だって』 菫『それだけか?』 淡『それだけだけと、へーじょうしんだよ!』 菫『…切るぞ』プッ 菫(平常心って言ってもそのおかげでさっきは恥をかいたんだぞ…) 菫(むしろ平常心ってなんだ、普段意識しないから全くわからんぞ…) 菫(それでもさっき、恥をかいたのは平常心を失っていたというのも大いにありうる) 菫(平常心平常心平常心…ああゲシュタルト崩壊してきた) 菫「す、すまない、待たせた」ギクシャク 京太郎「大丈夫ですよ」 菫「そろそろ出ようか、指導する時間がなくなるしな」 京太郎「そうですね、じゃあ出ましょう」 菫「えっと会計は…」 京太郎「ああ、もう会計は済ませておきましたよ」 菫「えっ?そ、それは申し訳ないから私の分は出す…」 京太郎「今日の授業料ということで受け取ってください、むしろこうでもしないと俺が申し訳ないですよ」 菫「なんだ…その…ありがとう…」 京太郎「すごく今更ですがどこで指導をして貰えるんですか?」 菫「えっと…だな…その…ネットカフェでネトマを打ちながら添削しようとは思ってたんだが…」 菫「公共の空間ゆえ声を出しにくい…から…」 菫「わ、私の部屋でやるぞ!」 菫の部屋- 菫(平常心…平常心…) 京太郎「お邪魔します」 菫「パソコンの用意するから少し待っててくれ、とりあえずネトマを打ってもらって添削する、さっき言った形でいいか?」 京太郎「はい!よろしくお願いします!」 菫「そこでだ、私が隣からすぐ口出しできるように牌を切る時に理由などを可能な限り話しながら打ってくれ」 菫「集中が途切れるだろうが、時間も限られているしな…よし立ち上がった、ほれ」 京太郎「はい…その…マウスカーソル可愛いですね」カタカタ 菫「こ、こう見えて、ネコが好きだからいいだろ!…それはさておき指導を始めようか」 30分後- 京太郎「テンパイ即リーワーイワーイ」 菫「トップだしリーチのみの手より手代わりでタンピン期待のダマでいくべきだろ…」 京太郎「そうですかね?」ロン! 京太郎「あー捲くられてる」 菫「あのなぁ…」 菫(どう見ても素人の中でも酷いレベルじゃないか…これは) 菫「一旦やめにして、牌譜を検討しよう、あと基礎的な理論も今叩き込む」 菫「正直基礎的な理論は口で説明するよりサイトを見たほうが早い」カタカタ 京太郎「はあ…」 菫「飲み物買ってくるからその間にそのサイトを…えーっとここだ、ここを全部読んでおく事」 京太郎「わかりました」 菫「須賀くんの分も適当に買ってくるけど何でもいい?」 京太郎「大丈夫です、ありがとうございます」 菫「じゃあ、少し行って来る」ガチャ 菫「早く読んだとしても30分ほどかかるだろうし、少し時間を潰すか…」 亦野「菫先輩、お疲れ様です。例の子はどうですか?」 菫「悪い意味で想像以上だったよ…」 亦野「それはご愁傷様です」ハハ 菫「他人事みたいに言うな、巻き込むぞ」 亦野「謝りますから冗談はやめて下さいよ、そうするとより不思議ですね」 菫「何が?」 亦野「彼が菫先輩に絶対に振り込まないことですよ、きっと彼がわかりやすいアナログの癖でも捉えたのですかね」 菫「私にそんな癖あったか?」 亦野「いえ、私にはわかりません。これはただの仮説ですし冗談程度に聞き流してください。では!」 コンビニ- 菫(確かに須賀くんの昨日の牌譜と今日の打ち筋と大差はないし…誠子の仮説が正しいのか?) 菫(もしアナログ的な癖があるとしたら矯正しなければ…マズいだろうな) 菫(かといってそんなもの自分でわかる訳ないだろ、本人に直接聞くか…?) 菫(はぁ…こんな状態で大会に出て大丈夫か…) 菫「って、考えてたらかなり時間が経ってるじゃないか、お詫びになんか甘いものも買って…」 菫「急ぐか」 菫「ゴメン、色々あって遅れた。本当に申し訳ない」 京太郎「…zzz」 菫「なんだ寝てるのか…ちゃんと最終章まで目は通したようだな」 菫「淡が昼寝していたときより幸せそうに寝てて、起こしにくい…」 菫「自分でもキャラじゃないと思うのだがな…冷房つけっぱなしだし風邪引かれても後味が悪いし、一般道徳としてだな…」ファサ 菫「って、私は誰に言い訳しているんだ…」 菫「やれやれ…」 菫「そういえば牌譜の検討、し損ねたな…」 菫「っと、本当に私の柄じゃないんだが…」カタカタ 京太郎「…zzz」 菫「アメを与えるのも大事だしな…」カタカタ 菫「かと言って、ムチを寄越すってほど厳しくするつもりはないがな…」ハッ 菫「独り言が過ぎたな、作業に集中しよう」カタカタ 京太郎「んー?」ムニャムニャ 菫「おはよう須賀くん、よく眠れたか?」 京太郎「えっ、俺まさか…」 菫「寝てたぞ、全力で」 京太郎「あ、あの…すみません」 菫「構わない、きっと疲れが溜まっていたのだろう、疲労した身体に指導は無意味、無理はせずちゃんと休め」 京太郎「はい…」 菫「だから気にするなと言っただろ、これ牌譜に対しての私のコメントだから参考程度に…」 京太郎「ありがとうございます!」ガシッ 菫「ひゃっ!てっ、手をいきなり握らないで!」 京太郎「ご、ごめんなさい、つい…」 菫「わ、わざとじゃないなら構わないから…さっきのネトマの牌譜を見ながら解説する、いい?」 京太郎「はい!」 菫「その前に君に買ってきた飲み物とお菓子がある、それで眠気を覚ましてくれ」 京太郎「ありがとうございます…ってえぇっ!」 菫「ど、どうしたんだ?」アセアセ 京太郎「オランジーナは最近一番好きな飲み物なんですよ!」 菫「な、ならよかった、じゃあ始めるぞ」 京太郎「よろしくお願いします」 菫「じゃあ東二局のこの場面から…」 京太郎「あっ、なるほどなるほどなるほど~」 その少し後- 菫「解説は不慣れだけどわかって貰えた?」 京太郎「十二分ですよ!そこらへんのサイトより何倍もわかりやすかったですよ!」 菫「あ、ありがとう…」 京太郎「今までの事を踏まえてネトマでもう一局打ってみたいんですが、大丈夫ですか?」 菫「ああ、構わん、成長した証を少しくらい見せてくれよ、そうじゃないと、私が報われんからな」ニヤッ 京太郎「プレッシャーかけられると困りますよ…」 菫「お、マッチングしたか、今回は何も喋らずに君の自由に打ってくれ」 京太郎「はい、…この初手ならこう動くべきかなー」 京太郎「うあ…二着かー、菫さん、ゴメンなさい…」 菫(いや…これは…もしかして…) 菫「いや今回はトップのツモが良過ぎた、君の打ち方自体は悪くなかった」 京太郎「世辞でも嬉しいです、これも菫さんのご指導のおかげです!」 菫「少しでも上達してくれて私も嬉しいよ、指導した甲斐がある」 京太郎「そうでしょうか?」 菫「少しくらいは自信を持て、自信がない打ち筋はジリ貧になりやすいからな…」 菫「君に基本的な指導をすることで、私も初心に帰れた、例を言う」 京太郎「こ、こちらこそお礼をイワナ…」 菫「例なら実践で打った後に言ってくれ、じゃあ、行くぞ」 菫(何か引っ掛かることがあったけど…まあ、いいだろう…) 菫(わざわざ気にすることでもないし、むしろ…) 菫「流石に焼き鳥は勘弁してくれよ、教師役の私が何をしていたか疑われる」 京太郎「はい…!」 …… 淡「やっほー!」 照「どうも…」 京太郎「俺の成長、見せ付けてやりますよ!」 半荘後- 淡「あんな大口叩いた割にトばれるとかえって反応に困るよー」 京太郎「…」 照「まあ…残念だけど予想通り」 菫(結局須賀くんからまたロンあがりできなかった…)ズーン 京太郎「今日はありがとうございます、勉強になりました」 淡「まあ、勉強されるべきな私達だしね」ドヤッ 菫「アホかお前は…」 照「じゃあ遅いしそろそろお開き…」 京太郎「では失礼します、今日はありがとうございました!」 照「帰り道の案内いる?」 京太郎「二回目なんで、大丈夫です、お気遣いありがとうございます。では、失礼します!」 菫「ああ、またな」 淡「じゃーねー!おやすみー!」 照「気をつけて…」 京太郎「みなさんおやすみなさい!」ガチャッ 淡「ねーテルー、一つ聞いていい?」 照「どうぞ」 淡「今更だけど照と京太郎ってどんな関係なの?元恋人だったり?」ワクワク 照「そんなことはない、ただの長野にいた時の旧友だ」 菫「ただの旧友にしてはやけに仲良くないか?」 照「私は友人が少ないから、数少ない友人を大事にするのは当然…」ドヤァ 菫「そのなんだ…すまないことを…」 淡「テルー、可哀想!私はいつまでもテルーと仲良しだよー!」ガシッ 照「あ、ありがとう淡…ちょっと…苦しいから…離して、あ、菫はその哀れむ目を止めて」 翌日- 京太郎(菫さんのおかげで何か掴めた気がする) 京太郎(ああ、ここでこう打った理由が自分でもわかるな) 京太郎「少しは成果が出た…のかな」 咲「京ちゃん、ボーっとしてどうしたの、会場に行くよ」 京太郎「ああ、悪いな」 咲「私、一回戦から活躍するから見ててね!」 京太郎「おう、頑張ってこい」 京太郎(早く何か、Aブロック側の対策を立てないとな…) 京太郎(実際、対策する時間はかなり限られてる、時間を無駄にできない) その後- 咲「出番がなかった…」 京太郎「ま、まあ落ち込むなよ。とりあえず一回戦突破おめでとう」 咲「ありがとう、でも早いうちに全国の舞台で打ってみたかったよ」 京太郎「まあ咲なら強ければ強い相手のほうが緊張せずに楽しんで打てるだろ?」 咲「もう、少年漫画の主人公みたいに言わないでよ…」 京太郎「二回戦の活躍楽しみにしてるから、頑張れよ」 咲「うん頑張る!」 その日の夜- …プルルル 菫「もしもし?」 京太郎「もしもし、弘世さん?どうかしましたか?」 菫「いや、清澄の一回戦突破のお祝いだ、おめでとう」 京太郎「はは…自分は全く力になってませんがね…」 菫「まあこれで私達Aブロックの対策がより必要になったわけだ、頑張れよ」 京太郎「はい」 菫「明日は白糸台の試合がある、試合を見て対策があるなら練ってみせろよ?」 京太郎「ど、努力します」 菫「せいぜい頑張れよ、じゃあな」 京太郎「あっ!ちょっとまっ…」 菫「どうかしたか?」 京太郎「ちゃんと明日は勝って下さいよ?俺が編み出した弘世さん対策が無駄になるので」 菫「え、私対策って具体的になんなん…」 京太郎「明日はお互い早いですし失礼しますーおやすみなさい」 菫「…切られたな。私対策がどうとうとか言ってたけど本当に具体的な策でもあるのか?」 菫「もういい、今度須賀くん本人に直接聞こう、明日さえどうにかすればいいんだ」 菫「で、今度っていつだ?…まぁいい、寝るか」 Aブロック二回戦終了後とある公園 京太郎「今日は二回戦突破おめでとう、今までの礼をこめて差し入れもって来た!是非みなさんで」 照「ありがとう、甘いものは本当に助かる」 京太郎「そういえば今日は他のみなさんは?」 照「疲れたみたいで部屋で個別に休んでる、体調管理もレギュラーの仕事のうちだもの」 京太郎「じゃあ照さんも休まなくて大丈夫なの?」 照「大丈夫、私は先鋒だから。体力的には大丈夫」 京太郎「ならいいんだけど…」 照「じゃあせっかくだし120円で昔話、いいかな?」ニコッ 照「今日は楽しかった、遅くまでありがとう。帰り道に気をつけて」 京太郎「それ普通は男が言うセリフじゃないかな…」 照「普通は、ね」 京太郎「あー悪かったよ、帰り道には気をつけさせて頂きますよー」 照「じゃあ、バイバイ」 京太郎「照さんも気をつけてー」 … 京太郎「弘世さんにはさっき直接祝おうと思ったけど、いなかったら仕方がない、メールでっと…」 京太郎「流石にこの時間はまずいか、明日の朝にでも送るか」 菫の部屋- 菫「…」 菫(…どう考えても祝辞の一つ寄越さないのは失礼だろ!世話になっておきながら!)ソワソワ 淡「すみれー、ほら、落ち着いてー。どーどーどー」 菫「おい、動物扱いするな」イラッ 淡「人間だって立派な動物だよ!つまり菫も動物!よーしよしよしよし」ワシャワシャ 菫「ちょっ…やめ…」 淡「イライラしても何も解決しないよ、もっと大雑把に行こうよ」 菫「なにを言って…」 淡「菫は真面目だから可愛がりようがあっていいよねーってこと」ワシャワシャ 菫「やめろって…あぁもう!」 淡「菫、ケータイ借りるねー、京太郎に電話するー」 菫「はぁ?今何時だと」 淡「菫は真面目だなぁ、もっと大雑把に行こうって言ったばっかりなのに」 prrr 京太郎『もしもし、弘世さん?』 淡『残念、淡ちゃんでした!』 京太郎『おう、淡か。とりあえず二回戦突破おめでとう、格好良かったぞ』 淡『でしょー、カッコいいでしょー。京太郎は見る目あるよ!』 京太郎『どーいたしまして、つーかなんで淡が弘世さんの携帯から?』 淡『やっぱり菫と話したいのー?しょうがないなー青春しちゃって!今電話代わるよー』 淡「はい、菫。どうぞ」 菫「えっ」 淡「ほら、電話の向こうで京太郎が待ってるよ。早くしないと」 菫「わ、私が電話に出る必要もないだろ」 淡「京太郎を待たせたままにするほど菫は礼儀がないなんて、ガッカリだよ」 菫「いや…そうじゃなくて」 淡「いやいや、そうだよ。普段人に礼節を説く人間がすることとは思えないよ」 菫「あー、もう電話に出るから黙ってろよ!」 淡(菫は扱いやすくて可愛いなぁ!) 菫『も、もしもし…?』 京太郎『もしもし、弘世さん。遅れましたが二回戦突破おめでとうございます』 菫『まあ当然の結果だが、ありがとう』 京太郎『…』 菫『…』 京太郎『今日は弘世さんもお疲れみたいですし、お祝いだけさせてもらって早めに失礼させていただきます。お休みなさい』 菫『ああ、お休み。そちらも頑張ってくれ』 京太郎『ありがとうございます、では』 ツーツーツー 淡「何この糖分が全くない会話は!やる気あるの!」 菫「会話にやる気ってなぁ、淡…」 淡「やる気ないなら自分の部屋に帰れ!」ビシッ 菫「いや、ここ私の部屋だし」 淡「そうやってツッコミできるならなんで京太郎と会話のキャッチボールをしないのさ!」 菫「その…してだな」ボソボソ 淡「え?」 菫「緊張してたんだよ悪いか!私だって人間だぞ!」 淡「じゃあもう一回電話しようよ、諦めたらそこで試合終了って偉い人も言ってたしねー」prrr 菫「ちょっ、待て少しは猶予期間をだな…」 淡「はい」 菫「は?」 淡「もう繋がってるよ」 菫『もしもし?須賀くん、淡が迷惑を掛けて申し訳ない』 京太郎『構いませんよ、迷惑と思っていませんし』 菫『その…なんだ、迷惑じゃないならまた電話しても大丈夫か?大会中は心労が積もって仕方がない、愚痴でも聞いてくれ』 京太郎『今までのお礼もありますし、清澄の試合中じゃなければいつでも大丈夫ですよ。』 菫『ありがとう…またの機会に電話する、じゃあ本当にお休み』 京太郎『お休みなさい』 ツーツーツー 菫「ふぅ…これで満足したか、淡?」 菫「って、なんでこういうときだけ無駄に空気読んで席を外す…」 準決勝終了- 菫「お疲れ様。決勝進出、やったな」 照「当然のこと、むしろ決勝以外眼中にない…」 淡「というか私がいれば宇宙単位で敵なしだしね!」 … 菫「はいはい、そうだな。じゃあ帰るぞ」 淡「うー、ノリが悪いよー」 照「流石に凹む…」 菫の部屋- 照「やっほ」 菫「何しにきたんだ」 照「数少ない友人との交友を深めに」 菫「…そうか」 照「…流石の菫でも決勝の前は緊張してる?」 菫「そりゃするさ、私だって普通の女子高生だぞ」 照「面白いジョーク…」 菫「照の好みに合って良かったよ」イラッ 照「私は菫を信頼してる、だから緊張する必要はない。菫のミスくらい簡単に取り返せる」 照「だからそんな表情しないで」 菫「なんというか…お前がそういうこと言うと違和感あるな…」 照「…心外」 菫「悪かった、じゃあ明日は優勝しよう!」 照「もちろん」 prrr 照『やっほ、京ちゃん。私達に勝てそう?』 京太郎『正直余裕だよ、相性で8 2くらいかも』 照『それは楽しみ、ところで一つ質問いい?』 京太郎『?』 照『京ちゃんがやってた、菫対策、ヒントだけでも教えてくれる?純粋に興味がある、もちろん菫達には黙っておく』 京太郎『んー、恥ずかしいから、秘密で』 照『何それ…まあ大会終わったらちゃんと聞かせて。最後に一つ』 照『勝ってね』 京太郎『頼まれなくても』プツッ 決勝戦当日 久「正直驚いたわ、阿智賀一校だけでもこんなに綺麗な対策を示してくれるなんて」 京太郎「いえそれほどでも…」 久「やっぱり白糸台のはないの?あれば期待したいけれど」 京太郎「さすがに去年の優勝校は部長がきっとすでに対策立ててるかなーて、阿智賀に研究時間を注ぎました」ハハハ 久「そう…残念ね。でもこの濃度のデータなら一校でも十二分よ、ありがとう」 京太郎「白糸台に手をつけてなくてすいません…」 久「想像通り白糸台は対策を練ってあるから安心しなさい!」 久「…じゃあ、みんな!勝つよ!」 照「ほら、菫。何か一言」 菫「…ゴホン」 菫「私達は勝って当たり前だ、今更何も言う必要はない」 菫「だが敢えて宣言する、皆の者、勝つぞ!!」 シーン 菫「えっ」 照「菫が昨日一時間くらいかけて考えたセリフなんだからみんな乗ってあげて…」 菫「そんな長く考えてもないし、お前も乗ってなかったじゃないか!」 照「まあ、場も和んだところで、頑張っていこう」 基本的に試合は染谷さんがキンクリしてくれました 照「負けちゃったね…」 淡「み、みんなゴメンね…私が…私が…」 照「いいのいいの淡は悪くない…」ヨシヨシ 菫「それでも準優勝だから、恥じることはっ…」 照「菫も泣かないの、決勝で一番頑張ってたでしょ」 照(本当に負けるとは思ってなかったから驚嘆の感情のほうが強いなぁ…) prrr 照『もしもし。ん、約束通り顔を出す。時間はまた連絡して』 照『あとさ』 照『ゲスト呼んでいい?』 とある公園にて- 京太郎「こんばんわ、照さん」 照「…」 京太郎「変な話だけど、ここで仲直りして欲しい、約束したよね?」 照「構わない」 咲「お姉ちゃん…」 照「咲…久しぶり、優勝おめでとう」 咲「お姉ちゃん!」ダキッ 京太郎「あれ?想像してたのよりスムーズすぎ…」 照「喧嘩こそしてたけど、仲自体は悪くないから…」ナデナデ 咲「…そうだよ、京ちゃんはどんなのを想像してたの?」 京太郎「まぁ…いいか」 照「ところで」 照「白糸台の対策見事だった、あれは京ちゃんがやったの?」 京太郎「いや、俺は白糸台についてはノータッチだよ、卑怯なことしたくないし」 咲「…?」 照「ゴメン、咲しばらく静かにしてて後で事情は話すから」 京太郎「というか、本当に俺じゃ対策は取れなかったってのが実情かな」 照「あれでも、菫は完全に京ちゃんが対策取れてたよね?」 京太郎「それは…えーっと」 照「正直理由は察するけど、今ここで言葉にして吐いて」 京太郎「いや…菫さんって美人じゃないか…その」 京太郎「あんな可愛い人と対局したらさ、視線とかより敏感に感じるっしょ…」ゴニャゴニャ 照「本当にゴメンね、咲」ギュッ 照「京ちゃん、悪いけどグダグダ言わず簡潔に纏めて。私の意図を察して」 京太郎「…なら一目惚れして対局中も全神経が菫さんに向いてたからと言えば満足か」 照「うん、満足した」 照「だから咲、諦めようね?私も諦めるから」 咲「お、お姉ちゃん…!」 照「ゲストはお約束通り後ろにいるから、後は頑張ってね」ニッコリ 菫「わ、私が全力で癖があるのかとずっと悩んでいたら…そ、そんなオチか」 京太郎「…ごめんなさい」 菫「どれだけ塞ぎ込んでたかも語ると一日を越えるんだぞ…睡眠時間も減ったし…」 京太郎「…本当にすみませんでした…!」 菫「あーもう!だ、だからだな、怒ってはないから!」 菫「君から私になしかしら直接的な言葉とか、行動が欲しいんだ」 京太郎「じゃあお言葉に甘えて…」ダキッ 菫「ふぇっ?」 菫「で、な、何の真似だ」 京太郎「えっと…その…」 「付き合ってください」 カン
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6424.html
「ななっ!今度さ、みんなでプール行かねえか!」 「プールっすか?」 「お前らもどうだ?」 「麻雀の方がいい」 「だ、だよねー」 「そんなこと言って、どうせ泳げないんだろ?」 「そんなことはない」 「へー、じゃあ証明しろよ!今週末俺んちの前で集合な!」 「首を洗って待ってて」 「ははっ!よく言うぜ!」 「京太郎、どうだったよ」 「照姉ちゃんも行くってさ!」 「よしよし、楽しんでくるんだぞ」 「父ちゃんは車よろしくな!」 「おう、任せとけ」 【十日目 決勝戦】 京太郎「痛た……なんだ今の夢」 京太郎「照と、咲とモモ?」 京太郎「……いよいよ、今日なんだよな」 京太郎「もこ、っ、離れろ」 もこ「んむー」ギュゥウ 京太郎「絶対起きてるだろ!」 もこ「起きてないー」ギュゥゥウ 京太郎「起きてんじゃねえか……はぁ」 京太郎「もこー離れろー」 もこ「んーん」 京太郎(どうにかして起こさないとな……) 京太郎「もこーもこー」 京太郎「……そうか、まだ起きないんだな」 京太郎「あぁ、今わかったよ、それがお前なりの考えなんだよな」 京太郎「それじゃあ俺はもう行く」 京太郎「ラ・ヨダソウ・スティアーナ」 もこ「!」 もこ(ラ・ヨダソウ・スティアーナ……別れ) もこ「……」ガバッ 京太郎「お」 もこ「……嫌だ」 もこ「京太郎、まだ……」 京太郎「ん?」 もこ「まだ、共に、戦場へ」 京太郎「……ああ」 京太郎「いいぞ、行き掛けに朝飯食ってくか」 もこ「うん!」ニコッ 京太郎「荷物とかはもうまとめたか?」 もこ「準備万端、心配無用」 京太郎「よし、いざ出陣だ!」 京太郎「俺が一番乗り、か」 京太郎「この卓で、打つんだよな」 桃子「京太郎に先越されたっす……」 咲「もう、速すぎだよモモちゃん」 桃子「咲も体力つけないとダメっすよー!」 咲「そうは言っても、私運動音痴だし……」 京太郎「……なあ二人とも、話があるんだ」 咲「わかった」 咲「でもね、最後は京ちゃんが頑張らないとだよ」 桃子「照姉と約束をしたのは京太郎なんっすからね」 咲「そうだよ、ここまで来るのは私たちみんなの約束、でも勝つか負けるかは京ちゃん自身なんだから」 京太郎「……ああ、そうだな」 京太郎「絶対に勝つ」 京太郎「またみんなで打って、俺が勝つ」 照「…………」 京太郎「四人揃ったな、じゃあ――」 「――試合、開始だ」 東一局 親 咲 25000 桃子 25000 照 25000 京太郎 25000 全員ノーテンのため、流局 咲「ノーテン」 桃子「ノーテン」 照「ノーテン」 京太郎「ノーテン」 京太郎(……) 京太郎(幸先悪っ!) 京太郎(まあいい、これで……)ゴッ 照「…………」ゴッ 照の【照魔鏡】と京太郎の【照魔鏡】発動! 照「…………」 照(…………京) 東二局一本場 咲 25000 親 桃子 25000 照 25000 京太郎 25000 照「ツモ、600・1100」 照(……私の親番) 照(でも、京相手にどれだけ稼げるんだろう……) 京太郎(照の連続和了……今日なら、俺なら) 京太郎(まだ太刀打ちできる気がする!) 東三局 咲 24400 桃子 23900 親 照 27300 京太郎 24400 京太郎(いや、さっきのただの意気込みだから) 京太郎(少ししか自信が無かったから) 京太郎(なのになんで……) 京太郎「ロン、12000」 京太郎(マジで和了っちゃってんの俺!?) 照「…………」 京太郎(まあいい、これで親番は流した!) 京太郎「まだまだこれからだ!」 東四局 咲 24400 桃子 23900 点数移動:14300 照 15300 親 京太郎 36400 京太郎「照、それポン!」 京太郎(俺の親番……ここでもっかい行っとくか!) 京太郎(……咲、お前の十八番、借りるぜ!) 京太郎(いや、できないだろうけど……) 京太郎「カン!」 グラッ 京太郎「……っ」 京太郎「…………」 咲「京……ちゃん?」 桃子「ツモらないっすか?」 京太郎「っあ、ごめんごめん」スチャ 京太郎「……よし!」 京太郎「嶺上ツモ!4000オール!」 照「…………」 桃子(……まあ、このくらいっすかね) 桃子(こっから先は、ステルスモモの独壇場っすよ) 桃子が[ステルスモード]に移行しました 東四局一本場 咲 20400 桃子 19900 照 11300 親 京太郎 48400 京太郎(跳満に親満!ツイてる!ツイてるぜ俺ァ!) 咲「京ちゃん、それロン、16300」 京太郎「えっ」 京太郎「…………」 京太郎「えっ?」 咲「なんで聞きなおしたの」 南一局 親 咲 36700 桃子 19900 照 11300 京太郎 32100 照(流石に甘すぎたかな……) 照(ここからは、本気) 照(誰にも邪魔はさせない) 照「―――ロン、2000」 南二局 咲 34700 親 桃子 19900 照 13300 京太郎 32100 照「……ツモ、1000・2000」 照(ここは、もう攻める!)ゴッ 咲「!」ゾクッ 咲(この感じ……お姉ちゃん) 咲(大変なことになるかも……) 【鏡開き】発動! 南三局 咲 33700 桃子 17900 親 照 17300 京太郎 31100 照(最後の、親番) 手牌:一ニ112①⑧⑨南西北發中 ツモ:東 照(一索が頭、後は揃うのを待つだけ) 打:2 京太郎(ん?結構調子よくねえか?) 手牌:四四五133358③⑥⑥⑥ ツモ:5 京太郎(タンヤオ三暗刻、上手くいけば四暗刻まで行けるかも……) 京太郎(……あれ?) 打:③ 咲(二暗刻、多分これは、やっぱりお姉ちゃん) 手牌:三三三八222688④⑤⑦ ツモ:二 咲(でも、そっちがその気なら) 打:八 桃子(配牌四対子って……) 手牌:六七②②③④④④⑧東西西北 ツモ:東 桃子(まずは様子見っすね) 打:六 照(…………) 手牌:一ニ11①⑧⑨東南西北發中 ツモ:白 照(これで、一向聴) 打⑧ 京太郎(んーっと、これは……) 手牌:四四五1333558⑥⑥⑥ ツモ:四 京太郎(……狙ってみるか) 打:8 京太郎(でも、こんなこと前にもあったような……?) 咲「……ポン」 咲(お姉ちゃんのあの気配、昔と同じ……) 手牌:二三三三2226④⑤⑦ 【888】 咲(まずは……) 打:6 桃子(黒ばっかっすね) 手牌:七②②③④④④⑧東東西西北 ツモ:⑧ 桃子(混一色、一盃口か七対子あたりっすかね) 打:七 照(国士無双九萬単騎……) 手牌:一八11①⑨東南西北白發中 ツモ:9 照(これなら、勝てる) 打:八 京太郎(……そういや、よくあったっけ) 京太郎(みんな揃って役満手って) 京太郎(まあ俺は気づかなくて四暗刻崩しちゃったりしてたけど) 京太郎(今思うとクソもったいねえよな) 京太郎(……さて) 手牌:四四四五133355⑥⑥⑥ ツモ:5 京太郎(四暗刻単騎待ち……ってか三巡目でこれはおかしいだろ、どうなってんだ全自動卓) 京太郎(恐らくは照も役満……当たったら一溜りもねえ) 京太郎(でも、俺は……) 京太郎(直接対決だ、照) 咲(……んー) 咲(四槓子……和了れる、かな) 手牌:二三三三222④⑤⑦ 【888】 ツモ:8 咲「カン」 手牌:二三三三222④⑤⑦ 【8888】 ツモ:⑦ 咲(…………) 打:二 桃子(これで一向聴?っすかね) 手牌:②②③④④④⑧⑧東東西西北 ツモ:西 桃子(客風は来なくていいっすよ……) 打:北 桃子(もう集まっちゃったからしょうがないっすけど) 照(不要牌……?) 手牌:一119①⑨東南西北白發中 ツモ:⑦ 照(それだけじゃない、ヤオチュー牌がモモたちに流れてる) 照(こんなこと、今まで……) 照(……咲がずらした?) 照(いや、それなら既に手は止まってるはず) 照(…………) 照(違う、この感じ) 照(麻雀を始めたころに、段々引き戻されていくこの感覚……) 照(手が進まなくて、もどかしくて、けどわくわくして楽しい気持ち) 照(……懐かしい、気持ち) 打:⑦ 照(これは…………) 咲「ポン」 手牌:三三三222④⑤ 【⑦⑦⑦】 【8888】 咲(テンパイ……だね) 打:④ 桃子(……うわ) 手牌:②②③④④④⑧⑧東東西西西 ツモ:⑨ 桃子(一向聴のまんまっすか) 打:⑨ 照(……九筒) 照(モモのツモは本来、私のツモだったはず) 照(なら、私のツモは……) 照「…………っ」 手牌:一119①⑨東南西北白發中 ツモ:1 照(……一索) 照(もし、私の予感が当たってたら、これは多分京の和了り牌) 照(絶対的な確証はない、けどこの予感は本物) 照(オリることもできるけど、そうすれば勝ち目が無くなる) 照(…………) 照(……突っ張るか、逃げるか) 照(どうすれば……) ―――――――――――――――――――――― 京太郎「ポン!」 京太郎「チー!」 京太郎「それもポンだ!」 京太郎「さらにポォーン!」 咲「京ちゃんまた裸単騎?」 京太郎「男たるもの一個で十分だ!」 京太郎「それに今回はただの裸単騎じゃないんだぜ!」トン! 照「ロン、36000」 京太郎「そげぶっ」 桃子「致命傷っすね」 京太郎「……ちぇっ、前に一索捨ててたから和了れるって思ったのに」 京太郎「つーかその手だったら一索捨てない方が速かったじゃんか!」 照「安全だと思ったからね、考えなしの京とは違うんだよ」 京太郎「何だよそれー、危なくてもテンパイしろよー」 京太郎「高いのが恐くてやってられるかよ!」 咲「それ、完全に負ける人の台詞だよ」 京太郎「なあなあもう一局打とうぜ!」 桃子「そろそろ帰った方がいいっすよー」 キーンコーンカーンコーン 京太郎「あ……」 照「終業だね」 桃子「今日はこれでお開きっすね」 咲「早く帰らないとまた先生に怒られるよ?」 京太郎「よし、早く帰ろう」キリッ 三人「切り替え早いな(っすね)」 京太郎「……あ、忘れてた!」 京太郎「ななっ!今度さ――――」 ―――――――――――――――――――――― 照(危なくてもテンパイ、か) 照(…………) 照(……私も) 照(前に、進もう) 照(たとえこれで当たっても、後悔はしない)スッ 照(これが、私の選択) 照(だから――) ――――トンッ 京太郎「――ぁ」 京太郎(……来た) 京太郎(これで……俺の勝ちだ)ギュッ 京太郎(後はただ、声を出すだけ!) 「ロ――――」グラッ (何だ、何だこれ……) (何かが、流れ込んでくる……) 「――――ンっ!?」 叫びと、目の前の人だかり 無意識の内に俺の足は走り出していて、誰の声も聞かずに飛び込む 柔い衝撃の後に少し温い水が体を包み、俺の前進を遮ろうとした 息つく間を与えずに手で水を掻いて押し出して、水が口を満たしても脚で水を蹴って押し退ける 掴みそうで掴めない感覚の先にあったのは、目指していた柔らかい肌だった 五つの感覚が、差し出した手を包む 抱えた女の子の顔は蒼白く生気を失っていて、その辛そうな表情に不安を覚える 咽る、気管に入り込んだ水に体が拒否反応を示したのだ 女の子を映す眼は光を失い、咽る内に呼吸もままならなくなり、脚からは力が抜けていく ――いなくなってほしくない ただ放すまいと腕に力を込める、絶対に救いたいと切に願う ――――だが、やがてはその願いも、込めた力も、意識が落ちると同時に果てた 京太郎「……はぁ、はぁ」 咲「京、ちゃん?」 桃子「大丈夫っすか?」 京太郎「ぁ、ああ、大丈夫だ――」 京太郎(深呼吸……深呼吸) 京太郎「すぅぅぅぅぅーー……」 京太郎「……はぁぁぁぁぁーー」 京太郎「……よし!」 ――――ロン!―――― ――――四暗刻単騎、32000!―――― 終局 京太郎 63100 咲 33700 桃子 17900 照 -14700 腹の底から声を出した、堂々と終わりの声を告げた、牌を倒した手は汗まみれで、なぜか体が熱かった それは、照を飛ばしたことの興奮からか、それとも―― 京太郎「俺の勝ちだ、照」 照「…………うん」 少しだけ下に向けた照の顔はどこか満足気で、今さっき脳裏に浮かんだ女の子の青褪めたそれが重なった ……じゃあ、俺が助けたのは…… でも、俺が照と水場に行くなんて、そんなこと、一回しか―― 『ななっ!』 ――何かが白くぼやけている ――何かが、思い出せない 京太郎「……なあ」 桃子「どうかしたっすか?」 咲「京ちゃん?」 京太郎「一つ、聞きたいんだけど」 京太郎「……俺、俺たちで海とか行かなかったか?」 照「…………」 咲「海?」 『今度さ、みんなで――』 京太郎「――――あ、いや」 京太郎「……プール」 そうだ 京太郎「プール」 膨れ上がった袋の結び目を解くように 京太郎「……三年前、みんなでプールに行ったよな?」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 俺は表彰式を終え、取材とかその他諸々の用事を済ませた後に街の喫茶店で照と落ち合うことになった ちなみに、咲とモモは都合が合わないので来ないそうだ 俺よりも取材が多い照は少し遅れて店へ来た あらかじめ俺が頼んでおいたココアを一口啜って、照は口を開いた 照「熱い」 京太郎「そりゃそうだ」 照「水が欲しい」 京太郎「はいよ」 照「ありがとう」 透明なグラスに入った水を火傷した舌でチロチロと舐める照の姿は、何と言うか可愛らしかった 照の様子が落ち着いたのを見て、話しかける 京太郎「で、話してくれるんだよな」 京太郎「三年前、俺に何があったかを」 照「……うん」 照「私は、もう逃げない」 もう一口ココアを啜って、照は話し出した ―――――――――――――――――――― 俺と照が出会ったのは、俺がモモと知り合ってから三年後、小学二年生のある春の日だった いつもは休日も暇な俺とモモで遊ぶはずだったが、モモは家の用事で遠出をしていたため、俺は暇な休日を過ごしていた 新たな出会いを求めて近くの公園へ出かけたときに、俺は照を見つけた 京太郎「なーなー姉ちゃん」 照「……何?」 京太郎「せっかくこんなに天気良いんだからさ!ぱーっと遊ぼうぜ!」 照「私には本で十分」ペラッ 京太郎「はっはーん、お前ひょっとして友だちいねーんだろ」 照「」ピキッ 照「そんなことない、友だちの一人や二人……」 京太郎「じゃあ俺とでも遊べるだろ?」 照「しょうがないな、お姉さんが相手してやる」 京太郎「よっしゃあ!何する?何する?」 照「えーっと、かくれんぼ、かな?」 京太郎「そんじゃあお前鬼だからなー!」 照「えっ」 京太郎「今日は楽しかったぜ!ありがとな!」 照「こちらこそ」 京太郎「モモがいないからひまだーって思ってたんだけどお前がいてくれてよかったぜ!」 照「……照」 照「宮永照だから、照って言って」 京太郎「テル、か俺は京太郎だ!」 照「……長いから京でいいかな」 京太郎「おう、大かんげーだ!」 京太郎「んじゃまた会おうぜ!じゃな!」 そのうち、照とモモと三人で遊ぶようになって、咲も混じって来るようになった いつからか俺たちは麻雀で時間を過ごすようになった 照曰く、俺は照と互角に打てるほどだったらしい。「曰く」や「らしい」というのは俺が昔のことを覚えていないからだ それこそ飛ぶこともあったが、今日のように照たちを飛ばすこともあったそうだ ……そうして、六年前の夏に俺たちは約束を交わした 国民麻雀大会で四人で打つ、という無謀で実現可能だった約束を 俺たちが小五になると照だけは中学に上がり、必然的に俺たちが一緒に遊ぶ回数も減っていった 距離感を感じた俺から照への呼び名は照姉ちゃん、と少し疎遠なものへと変わっていた そんなこんなで三年前、俺たちは中学へ上がり、照と麻雀部を設立した 顧問の先生は厳しい人で、遅くまで残っていると怒られたりもした 四人で麻雀を打って、喋って、帰って、遊んでいた それでも、照との距離は縮まっていないように思えた 照は一人だけ俺たちと違う学年で、中三ともあって先生に呼ばれたりして部活に来れないこともしばしばだった そこで、俺は四人の距離をもっと縮めるために、夏休みの間にみんなを県内のプールに誘った 元は俺の疑問を聞いた父さんの提案で、当日も父さんに連れて行ってもらった 俺たちが行ったのは、25mプールとか流れるプールだとか、ウォータースライダー、波のプールとかがあったりするオーソドックスでそこそこ大規模なプールだった 照とモモは流れるプールで泳ぎ、俺は25mプールで咲の泳ぎの稽古をつけていた 例の件は、その昼時に起きた ――――ここから先は、照の話によるものだ 【side-照-】 照「モモがどっか行っちゃった……」 照「みんな迷子になりすぎだよ、やっぱり私がしっかりしないと」 照「もう一泳ぎして行こう」チャプチャプ 照「…………」 照「私も京に教われば良かったかな」 照「けど、そうすると馬鹿にされそうだし……」 照「はぁ……、ッ!」 照「痛っ!」 照(あ、脚が……!)ジャバジャバ 私が脚をつったのは、流れるプールの中でも幅が大きいところ このままだと溺れる、と恐怖して 誰かが助けてくれる、と希望したその矢先――― ピンポンパンポーン 『ただいまより、安全確認を行いますのでご遊泳中のお客様はプールからお上がりください』 ―――無機質な音と少し低めの声が館内に響いた 照(なっ、なんで……) 周りの人の注意は当然プールサイドへ向いて、私の方は見もしない 溺れまい、ともがけばもがくほど力は発散されていって、息は途切れ途切れになっていく 呼吸を整えようとしても口に入ってくるのは水ばかりで酸素の一欠けらもないように思える ようやくプールサイドに人が集まって、大声が聞こえた 「助けろ!」とか「危ない!」だとか 人だまりの端から、飛び込んでくる人影が見えた。金色の軌跡が目に入った ああ、やっと助けに来てくれた、と安堵して、身体から力が抜けていった 荒い吐息が肌にかかって少しくすぐったかった 意識が遠のく中で、触れた手を握り返した 温かくて、優しい手を 気が付いて体を起こすと、目の前では咲とモモが泣いていて、私の隣では京が寝ていた 二人の話によると、あのとき私を助けてくれたのは京で、その京自身も息ができなくなって溺れてしまったらしい 咲「えっと、じゃあ私京ちゃんのお父さん呼んでくるね」 桃子「あ、私も行くっす!」 照「行ってらっしゃい」 咲「はーい、まだ寝てていいからねー」 ガチャ バタム 照「…………」 照「……京?」 隣で寝ている幼馴染に声をかけてみても―― 京太郎「ぐぅ……ぅ……」 ――返ってくるのは寝息だけだった 照「……もう」 ベッドが近いのでほっぺを突っついてみる 私のと比べると少し硬いほっぺは私よりも多くの表情を作り出す 笑ったり、怒ったり、寂しがったり、悔しがったり、京も咲もモモも私には作りにくい表情を見せてくれる 休日は遊びに連れ出して、平日は麻雀で相手をしてくれる ここ二年はあまりそういうことはできなかったけど、一人の私に構ってくれる 初めて遊んだときだって…………あれは京が寂しかっただけか 京太郎「ぐごぉ…………」 隣の恩人に「ありがとう」と小さく呟いて、手を握った 今度は、寝ている京は、握り返さなかったけど ――――――――――――――――――――――――― 照「……しばらくして京も目が覚めて、おじさんも来た」 照「次の日の部活動でもみんなで打った……でも」 照「異変があった」 京太郎「異変?」 照「京が弱くなってた」 京太郎「弱い……か」 照「前は点数計算もできてたのに、その日からはリーチも鳴きも役満もわからなくなっていて」 照「まるっきりの初心者になっていた」 京太郎「……は?」 照「私もよくわからないけど、多分溺れて気絶したときに京の頭がおかしくなったんだと思う」 京太郎「いやどういうことだよ」 照「事故のショックで記憶を失うとか、そういうことらしい」 京太郎「さっぱりわかんねえんだけど」 照「話を戻す」 京太郎「おい」 照「……咲は京を楽しませようと京を勝たせるように細工をするようになった」 照「私が東京へ行く前には8局全部プラスマイナスゼロなんてことができるようになってた」 照「モモも京を気遣って消えることが少なくなった」 照「……あの日から、私たちは変わってしまった」 照「変えてしまったのは、私」 照「だから、私はまた、京たちの輪から遠のいていった」 照「遊ぶこともなくなったし、麻雀をすることもなくなった」 照「そんなときに、母さんの転勤話がでてきた」 照「ちょうど白糸台からも話が来てたし、このままでいいと思って私は東京へ行った」 照「京は、モモと咲と一緒にいた方が幸せだと思った」 照「私はもう必要ないんだ、って思った」 京太郎「…………」 京太郎「まあ、何となくわかったけど、じゃあどうしてお前は三箇牧に来たんだ?」 京太郎「おばさんのことも、白糸台のことも都合悪いじゃんか」 照「白糸台は……嫌だった」 京太郎「部員の人たちは結構慕ってるみたいだったけど?」 照「私が入ってから麻雀部に来た人たちはほとんどが私目当てだった」ドヤァ 京太郎「若干どや顔しながら言うなよ」 照「そのうちにみんなやる気を無くしていって、その人たちと打つことも少なくなった」 照「私はただの客寄せパンダなんだ、って」 照「東京の上野だけに、ね」ドヤァ 京太郎「あーはいはい」 照「それから、だんだん麻雀に嫌気が差していった」 照「けどみんなとの約束も破るわけにはいかないから、続けた」 照「……それで、母さんから京が三箇牧に受かったって聞いた」 照「咲たちは長野の公立、京だけは大阪の私立、一緒にいるはずだった咲たちと京が離れた」 照「……私は京に謝ろうと思った」 照「あれさえなければ、京は咲たちと仲良くなれたはず」 照「あの日のことを全て打ち明けようって思った」 照「だから、今日……」 京太郎「ちょいタンマ」 照「なに?」 京太郎「お前、何か勘違いしてないか?」 照「?」 京太郎「俺が三箇牧に来たのは麻雀と勉強を頑張るためなんだけど」 京太郎「麻雀部、確か六年前に優勝してたし、全国二位もいるって聞いたし」 京太郎(あの学校複雑だからゆっくり探そうと思ってたんだけど、案外早く見つけちゃったんだよな……) 京太郎「別に俺があの二人と仲が悪いとかそういうわけじゃないぞ?」 照「そうなの?」 京太郎「今日見ただけでわかるだろ」 照「…………」ウーン 照「……あっ」ピコーン 京太郎「ったく、今の今までお前は……」 照「…………」ズズッ 京太郎「……なあ」 照「何?」 京太郎「陽も落ちるし、そろそろ帰るか」 照「うん」 京太郎「ホテルまで送ってくか?」 照「菫と淡が迎えに来るから大丈夫」 京太郎「そっか、じゃあまたな」 照「うん……あっ」 京太郎「どした?」 照「優勝おめでとう」 京太郎「ああ、ありがと」 照「バイバイ」 京太郎「またメールするからー!」 国民麻雀大会で優勝した! 京太郎「さて、どっか行こうかな」 夕 京太郎「結局暇だなー」 京太郎「他の人もゆっくりしてるんだろうし遊びに誘ってみるか」 京太郎「団体戦の労いも兼ねて雅枝さんを誘うぞ!」 京太郎「……人妻と遊びに行くっていいのか?」 prrr prrr 雅枝『愛宕です』 京太郎「雅枝さん!遊びに行きましょう!」 雅枝『いきなり何言うとるんやお前』 京太郎「団体戦、疲れたでしょう?」 雅枝『確かに疲れたけど、それがどないした?』 京太郎「なら洋榎さんの相手なんかしてないで俺と遊びに行って疲れを取りましょう!」 雅枝『どっちにしても疲れる気がするんやけど』 京太郎「まあまあ、行きましょうよ」 雅枝『そもそも行くってどこ行くんや』 雅枝『それに、夜用事があるから長くは遊べへんで』 京太郎「じゃあ行ってくれるんですね!」 京太郎「行くのは 雅枝「ファミレスで何するつもりや」 京太郎「駄弁ったり、くつろいだり」 雅枝「ええ歳した大人がええんやろか……」 京太郎「まっ、もう来ちゃいましたからね」 雅枝「せやな」 京太郎「雅枝さんは何を食べますか?」 雅枝「軽いもんでええわ」 京太郎「すみませーん!ハンバーグプレート二つー!」 雅枝「ちょいちょい待て!今軽いもん言うたやろ!」 京太郎「え?200gって軽くないですか?」 雅枝「単純な重量ちゃうわ!」 京太郎「あはは、わかってますよ、関西人を試しただけですから」 雅枝「アンタなぁ……」 店員「それで、ご注文は?」 雅枝「抹茶ぜんざい」 京太郎「じゃあ俺は……」 店員「かしこまりましたー」 雅枝「結局食うんか」 京太郎「こう見えて早食いなんですよ、俺」 雅枝「ふーん」 京太郎「素っ気無いっすね」 雅枝「遅くなりそうやから戒能プロに連絡しとこ」 京太郎「良子さんがどうかしたんですか?」 雅枝「ああ、戒能プロと臨海んとこの監督と善野監督とで飲み会行くんや」 京太郎「それが夜の予定っすか」 雅枝「ほな電話するから静かにしとき」 京太郎「」ピッピッピッ 京太郎「あ、良子さんですか?飲み会、俺も行っていいですか?」 京太郎「はい、了解っす!」 ピッ 京太郎「俺も行くことになりました」 雅枝「行くことにさせたんやろが」 京太郎「そうとも言いますね」 店員「お待たせいたしましたー」 京太郎「おっ、来た来た」 京太郎「そんじゃあお先に頂きまーす」 雅枝「ほんま気ままやな」 京太郎「そういえば絹恵さんってまだ成長してるんですか?」 雅枝「何の話しとるんや、ええ加減にせんと怒るで」 京太郎「洋榎さんは着けなくていいですよね、あれなら」 雅枝「使い回しばっかやから助かるわ」 京太郎「まあそうでしょうね」 雅枝「…………」 雅枝「娘たちと同じくらいの男となんて話しとるんや私は……」 京太郎「同感です」 雅枝「男子高校生と居酒屋行くってアカンやろ」 良子「オーライですよ、プロバブリー」メソラシ 臨海「久しぶりだな、須賀」 京太郎「お久しぶりです、監督さん」 善野「優勝おめでとな、須賀くん」 京太郎「どうも、ありがとうございます」 良子「早速中に入りましょうか」 京太郎「飲み会って大体どんなことするんですか?」 雅枝「アンタがさっきしようとしとったことや」 京太郎「ただ酒飲んで話すだけですか」 善野「そういうことやな」 良子「それではもう頼んでしまいますねー」 京太郎(流れで来たはいいけど……) 京太郎(適当に誰かと話すか) 京太郎「それにしても、なんでこの面子で飲み会なんてしてるんですか?」 京太郎「良子さんと善野さんと雅枝さんと霞さんならわかるんですけど……」 臨海「むっ、私がいると不満なのか?」グビッグビッ 京太郎「そうじゃないですけど、気になるなーと」 雅枝「前の合宿で協力もしてもろうたしな、あと石戸はああ見えて未成年やし」 京太郎「なるほど」 臨海「ふぇぇ、カイノー!須賀が虐めるぅぅぅ!」ビエーン 京太郎「えぇぇっ!?」 雅枝「もう出来上がってもうたんか……」 良子「待ち合わせ前にワンカップをスリーカップくらい飲んでましたからね」 善野「ええなぁ、お酒」 京太郎「飲めないんですか?」 善野「お酒とか、色々と先生に禁止されとるからダメなんよ」 善野「居酒屋来てもおつまみくらいしか食べられへんのよね」 良子「あ、そうでした善野さん、今度の姫松とのゲームなのですが」 善野「あー、せや頼んどったね、どないしました?」 良子「それがですね――――」 京太郎「……」チュー 雅枝「……」ヒョイ パクッ 京太郎「……」パクッ 雅枝「……」ゴクッ 雅枝「……何か話そか」 京太郎「そうしましょう」 店員「お待たせいたしましたー」 店員「こちら、砂肝と若鶏のから揚げでございます」 京太郎「」ピクッ 雅枝「」ピクッ 京太郎「から揚げ……」 雅枝「ほなレモンかけるで」 京太郎「え、何言ってるんすか?レモンかけるとか正気ですか?」 雅枝「から揚げにはレモンって相場はきまっとるやろ」 京太郎「雅枝さん、それ一回内科に行った方がいいですよ」 雅枝「から揚げにレモン無しで食べられる方がどうかしとるわ」 京太郎「俺の方が主流だと思いますけどね」 雅枝「ほな他のにも聞いたろか?」 京太郎「いいですよ、どうせ……」 「レモン?から揚げにレモン?……ププッ」 京太郎「とかなるんですから」 雅枝「さあどうやろな、そっちこそ」 「どうして、から揚げに何もかけないで食べることができるだろうか?いいや、できまい」 雅枝「とか言われるに決まっとるわ」 京太郎「なんで反語?」 京太郎「……雅枝さんの家に電話して答えてもらうってのはどうですか?」 雅枝「ふん、ええわ、愛宕家に勝負を挑むとはええ度胸や」 京太郎「じゃあ俺からかけますね」 prrr prrr 洋榎『はいはーい、いつもニコニコ元気な愛宕やでー』 京太郎「あ、洋榎さんですか?」 雅枝「なんや洋榎か……」 洋榎『京太郎か、どないしたん?』 京太郎「洋榎さんってから揚げに何かけます?」 洋榎『ウチと絹は何もかけへんで』 雅枝「……は?」 京太郎「雅枝さんがかけたりするんじゃないんですか?」 洋榎『オカン帰り遅いからな、絹とウチだけで食べとるんや』 洋榎『あ、もちろん作るんは絹やで』 京太郎「知ってます」 洋榎『今日も飲み会やいうし、たまには一緒に食べたいわ』 京太郎「……俺からも言っておきますね」チラッ 雅枝「……」 絹恵『お姉ちゃーん、ご飯できたでー』 洋榎『はーい、ほなまたな』プツッ 雅枝「…………」 京太郎「…………」 京太郎「俺の勝ちですね!」ドヤァ 雅枝「この雰囲気で言う言葉!?」 京太郎「んー、でも家族と食べた方がいいですよ」 京太郎「なるべく早く切り上げるとか……はもうしてるんでしょうね」 雅枝「……そうなんやけどな」 京太郎「俺も一人暮らしなんで寂しいんですよ、だから洋榎さんたちも寂しいんじゃないかな、と」 雅枝「せやったら今度うちに来るか?四人で食べるのも悪ぅないやろ」 雅枝「なんなら京太郎のこと迎えに行くのもええし、あとは……この後とか?」 京太郎「……雅枝さんが俺を家に連れ込んだら、洋榎さんたちってどんなリアクションするんでしょうね」 雅枝「…………」 雅枝「!」 雅枝「べ、別に変な意味は無いんやからな!」 雅枝「こうすれば洋も絹も京太郎も寂しないやろ!」 京太郎「わかってますよ、機会があればお願いします」 雅枝「それでええわ、それで」 雅枝(ちょっと変なこと想像してもうたやないか、まったく) そして四時間後 良子「きょぉたろぉ……もう遊べないの?」 京太郎「松山と大阪じゃあ流石に無理でしょう」 良子「いやだいやだいやだぁー!」ギュッ 京太郎「あーもう面倒くせぇ……」 雅枝「京太郎?聞いとる?」 京太郎「はいはい、それで洋榎さんがどうしたんですか?」 雅枝「それでなーそこで洋がなー」 臨海「焼酎もう一杯……」Zzz 善野「……そろそろお開きにしよか」 京太郎「ですね」 臨海「新大阪どっちらっらへ?」 京太郎「何言ってるのかわかんないっすよ」 良子「きょぉたろぉ、送っていってぇー」 京太郎「よっかからないでくださいよもう、ほらしっかり立って」 雅枝「あ、洋と絹が見えるわぁ……」 京太郎「いないですよ!どこにもいないですから!何見えてるんですか!」 雅枝「あはははぁ……」 京太郎(大人ってめんどくせぇ……) 善野「ふふふっ、ほな帰ろか」 京太郎「ちっとも笑いごとじゃないですよ」 洋榎「ほな監督お疲れさんさんさんころり~」 絹恵「さよなら~」 雅枝「本物や、本物がおる~」ウツラウツラ 洋榎「とっとと帰るで」グイグイ 雅枝「うぇへぇはぇ~洋の腕やわらか~い」 洋榎「気持ち悪いわ!」 絹恵「せやったら私は左!」 雅枝「絹もやわらかいなぁ~」 善野「また学校でな」フリフリ 良子「あぁぁ……帰りたくないー」ギュッ 京太郎「帰ってください、タクシー来てますから」 臨海「カリフォルニアへレッツゴー!」 運転手「えっ」 京太郎「新大阪まででいいですから!」 良子「きょぉたろぉとどこまでも~」 京太郎「さっさと離れてくださいよっ」 ブロロロロ 京太郎「というわけで帰りましょうか」 善野「ええの?」 京太郎「善野さんみたいな人が一人で夜道を歩いてたら危ないですからね、行きましょうか」 善野「よろしく頼むで、王子様」 京太郎「かしこまりました、お姫様」 京太郎「段々寒くなってきましたね」 善野「風邪引きやすぅなるのは勘弁や……」 京太郎「風邪と言えば……末原先輩ってどうなんですか?」 善野「どういう繋ぎ方しとるんや」 善野「恭子ちゃんはええ子やで、いつも一生懸命やし、洋榎ちゃんよりも主将らしいし」 京太郎「俺が打ったときも強かったですよ、少し自信なさそうに見えましたけど」 善野「宮永咲ちゃんにやられたときからあんな調子やったんや、洋榎ちゃんたちとみんなで励ましたけどな」 善野「今度、須賀くんと打ってみたいわ」 京太郎「はい、俺もです」 善野「これからも同じ大阪やさかい、よろしうな」 京太郎「ははっ、三箇牧は負けませんからね」 善野「こっちやって負けてばっかりやないんやで」ニコッ 善野「あ、もうここまででええわ」 京太郎「そうです、か、じゃあまた!」 善野「はいはい、お疲れさん」 京太郎「善野さんも送って無事帰って来たことだし、何かするか」 夜 京太郎「少し寒いけど散歩して来よう」 京太郎「夜も遅いし、いつも通り人もいないなーっと、あ」 京太郎「あの人は……」 エイスリン「ア!キョウタロー!」 京太郎「すっごく久しぶりな感じがしますね」 エイスリン「!」 エイスリン「ン……」ゴソゴソ エイスリン「キョウタロー、コレ!」つ|京太郎が笑っている絵| 京太郎「これ、俺のために?」 エイスリン「」コクッ エイスリン「キョウタロー、オメデトウ!」 京太郎「うわぁ、ありがとうございます!」 エイスリン「ドーイタシマシテ!」 京太郎「で、何してたんですか?」 エイスリン「sketch!」 京太郎「夜道を描いてたんですね」 エイスリン「ゼンゼン、カイテナカッタカラ!」 京太郎「ずっとホテルでしたもんね、やっぱりこっちの方が楽ですよ」 エイスリン「ラクチン!」ニコニコ エイスリン「…………」カキカキ 京太郎「……」ジーッ エイスリン「キョウタロー?」 京太郎「何ですか?」 エイスリン「ツキ、キレイ?」 京太郎「確かに綺麗ですね、それが何か?」 エイスリン「"I like you"ハ『ツキガキレイ』!」 京太郎「そうなんですか?」 エイスリン「ナツメソウセキ!」 京太郎「へぇ、そんなことが」 エイスリン「キョウタロー、ツキガキレイ!」 京太郎「同感ですね」 エイスリン「エヘヘ……」 エイスリンの好感度が上がった! 【11月第1週 休日】終
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/1204.html
白糸台、部室 ガチャ 照「おはよう」 淡「おはよー」 誠子「おはようございます」 尭深「おはようございます」 照「菫はまだ?」 誠子「さっき出て行きましたよ」 淡「今日なんか手紙が学校に届くんだってー」 尭深「でもそろそろ」 ガチャ 菫「戻ったぞ。なんだ照も来たか」 尭深「今来ましたね」 淡「菫先輩、その小包は?」 菫「さあな。なんか麻雀部宛てできたらしい」 照「おかし?」 菫「にしては箱の割に軽い。開けてみるか」 淡「なーにっかな、なーにっかな」 菫「これは……」 喋るKちゃんぬいぐるみ、サンプルプレゼントキャンペーン!! 誠子「……はい?」 尭深「先輩、続きを」 日頃のから当サイトを利用していただきありがとうございます つきましては、新商品喋るKちゃんぬいぐるみのサンプルをお送りさせていただきます この喋るKちゃんぬいぐるみは、抱きしめるとランダムで喋ります ぜひ、感想をアンケートに記入の上で郵送してください 菫「……以上だ。この際麻雀部のパソコンで頼んだのが誰とか聞かない」 照「ホッ」 菫「では受け取った私からいく」 淡「ずるい!」 菫「ふ、Kちゃんは私の手の中だ。なんとでも言え」 誠子「先輩、悪役みたいになってますよ」 菫「うるさい……よし」ギュッ Kちゃん「多分、初恋だった…」 菫「う、わ」 誠子「これはまた」 尭深「……結構いい」 淡「次私私!」 照「私」 菫「あー、亦野、パス」 誠子「え?わ、ちょっ」ギュッ Kちゃん「闇の炎に抱かれて消えろ!」 誠子「……何今の」 尭深「サンプルだから、色々入ってるみたいだね」 照「難しいね」 淡「よし!私行く!」 誠子「はい」 淡「こーい!」ギュッ Kちゃん「お客様の中に貧乳がお好きな方はいませんかー!!」 淡「…………」 照「…………」 淡「……そんなにちっちゃくないもん」 菫「……これ怖いな」 尭深「淡ちゃん。次、私ね」 淡「……はい」 尭深「ん」ギュッ Kちゃん「俺が皆を守るから、誰か俺を守ってくれ」 誠子「当たりだね」 菫「みたいだな」 淡「……理不尽だ」 尭深「……守るよ」 照「尭深、次私」 尭深「はい」 照「ん……」ギュッ Kちゃん「かさばる。傘だけにな」 照「…………」 誠子「これは酷い」 菫「照?もう一回やってみないか?」 照「ん……」ギュッ Kちゃん「手伝おうか?」 淡「結構声高いね」 尭深「どんどん行きましょう」 照「ん……」ギュッ Kちゃん「もっと強く抱いてー!」 照「……」涙目 淡「テルー……」 照「……最後」ギュッ Kちゃん「どうですか?お姫様」 照「!!」 菫「おお、やっと当たりが出たな」 誠子「良かったですね!」 尭深「声も普通でしたし」 淡「良かったねテルー!……どしたの?」 照「……なんでもない」 照(……京ちゃんの電話番号、探そう) サンプルは、一部の声が非常に不評だったが基本的に好評だったとか
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6173.html
8月×▼日 個人戦2日目、今日も激闘だった 午前中、初美さんと咲が対戦していた。最後は2人のトップ争いになっていた が、最後は咲がカンからの嶺上開花でトップになり、初美さんは2位だった 北家だったのに、初美さんが和了れず咲が和了っていたことが何回かあったが、咲は初美さんより上なのか 胸はどっこい……いや、咲も少しは……いやしかし……無いな。うん、どっちも無い 次に小蒔さんの試合を見に行くと、県大会でも対戦した藤原利仙さんと対戦したいた 県大会の個人戦でも対戦していたが、また当たるとはどんな偶然だろう 最初は藤原利仙さんがリードしていたが、最後に小蒔さんが役満を直撃させて逆転していた 藤原利仙さんもすごかったけど、やっぱ小蒔さんすげー ふと、見ていると「あちゃー……これはアカンなーぁ」という声が聞こえた 隣を向くと、ナース、いや、荒川憩選手と、3人くらい見覚えが無い人達が隣にいた 「あ、隣ごめんなーぁ。ちょうど見やすくてな?」笑顔でそう言う荒川選手。いや、1人だったからむしろいいけど そのまま軽く話すと、どうやら荒川選手は個人的な知り合いらしい藤原利仙さんを応援していたらしい 俺が同じ学校だから小蒔さんを応援していた、というと、一瞬きょとんとした顔をしていたが、連れに永水が共学になったと聞いて納得したいた そこで改めて自己紹介をしあった 荒川憩さん、そして一緒に来ていた対木もこさん、百鬼藍子さん、霜崎絃さん、全員個人での実力者らしい こうして知り合ったのも何かの縁、ということで荒川憩さんと連絡先を交換した その後、藤原利仙さんが来た どうやら俺のことを知っていたらしく、少し警戒されたが、荒川さんにたまたま知り合ったと聞くと普通に対応してくれた そのまま伝言を頼まれた。まだ終わらない、と さっきの試合は2位だったので、まだ勝ち残って、また対戦するつもりらしい 必ず伝えると約束して、俺は別のところでやっている初美さんの試合を見るために移動した 移動途中、ふと、からあげの屋台が目についた 珍しいと思ったが、どうやら人気の屋台らしく、残りわずか、という看板まで出ていた 小腹も空いていたし、少し興味が沸いたので買ってみた。作り置きかと思えば、ひとつ食べると、揚げたてアツアツのからあげで、予想を遥かに上回るおいしさだった ゆっくり食べようと思い、近くのベンチに座った すると、目の前にポニテの人が入れ違いでからあげを買っていた どうやら最後だったらしく、無事に買えて、安心したようにからあげを食べようとしていた が、悲劇が起きた ポニテの人はいきなり一口で食べようとして、アツアツの肉汁が予想以上だったらしく、「熱っ!?」と言いながら、食べようとしたからあげを落としてしまった さらに、からあげが落ちる途中、手に肉汁が掛かったらしく、つい手を離し、なんとからあげ全てを地面に落としていた 「う、ウチのからあげがあああああああ!?」悲痛な叫び声だったが、無常にもからあげは地面に転がり、どう見ても3秒ルールもアウトな状態になってしまっていた 目に見えて分かるように落ち込んだポニテの人。酷い、そう思いながら同情的な視線を向けていると、目が合ってしまった ……うん、さすがに可哀想だった。ひとつ、どうですか?そういうと、目を輝かせながらこちらへ来た 近くに来て改めてその人を見ると、姫松の愛宕(貧)だった。なにやってんだよ姫松のエース そう思うが、俺があげたからあげを幸せそうに食べる姿を見てなんともいえない気持ちになった その後、からあげのお礼を必ずする!ということで連絡先を交換した 午後の試合、愛宕(貧)さんは小蒔さんに負けた後、俺が永水だと知って敵だったのか、等とよく分からないメールを送ってきた 返事にハギヨシさんから送ってもらったタコスの画像(以前もらったもの)を送ってやった。深夜の夜食になるような時間に なんでこんな時間に送ったのか自分でもよく分からない。ただ、送らなければならない、そんな気がした 小蒔「藤原さん、この時は県大会の時より、さらに手ごわくなってました」 初美「向こうも姫様を意識してましたからねー。後1年生よりはあります!」 小蒔「えぇ。だからこそ、私も全力以上で対応しました」 霞「ライバル意識かしらね。初美ちゃん?そういう虚勢をはるのは止めましょう?」 初美「……あっちだって無いですよー」 巴「うーん……さらっと荒川選手や愛宕選手と仲良くなってることは言わなくていいのかな」 春「京太郎、愛宕の方にはもっと遅くに色々画像を送って」 巴「あ、結構試合の時のこと根に持ってるんだね」 洋榎「……最近また京太郎が何かと美味そうな食べ物の画像を送ってくるんやけど」 絹恵「ええんやないん?美味しそうなものなら」 洋榎「よくないわ!!狙いすましたように夜に来るんやで!?また何か食べたくなるような時間に!!これはもう陰謀や!!」 雅枝「……で、それがつまみ食いした理由やと?」 洋榎「……ダメ?」 雅枝「駄目に決まっとるやろこんのアホ娘!!今日は洋榎だけからあげ抜きや!!」 洋榎「そ、それだけは!!オカン、後生やからそれだけは勘弁してや!!!」 8月○◆日 個人戦3日目 今日から強い選手同士当たる試合も多くなり、色々と目が離せなかった 午前中に初美さんと原村和の試合があった 圧倒的なおもちの差ではあったが、試合では原村和が初美さんに振り込んだ しかし、それでも全く動じた様子もなく打つのは流石だった 結果は初美さんが1位、原村和が2位だった 昼に、ネト麻仲間のお菓子大好きさんと王者さんと会うことになっていた 2人もそこそこチャットで話したりしているので、3人でお昼でも、ということになっていた 先に来たのは王者さん、奈良の王者、奈良の個人戦1位の小走やえさんだった 今日まで残っている辺り、王者というくらいの実力者ではあるんだろう そして、少し遅れて来たお菓子大好きさんだけど……宮永照さんだった 咲の姉であり、俺も昔会ったことがある。本物の全国の王者来ちゃったよ 奈良の王者めっちゃびっくりしてた。そして俺を「あ、京ちゃんだった?久しぶり」っつって俺もびっくりした とりあえず周りがざわついたんで、適当な店に入った 照さんは昔会った俺のことを覚えていたらしく、昔と変わらない感じで話しかけてきた 俺も少し懐かしくなって話した。ただ、咲とはまだ喧嘩中らしい お互い団体戦が準決勝敗退という結果に終わったこともあり、少し微妙な感じではあるらしい だけど、「……個人戦で多分当たるし、その時かな」と何かを決めたような表情で照さんは言っていた やえさんはそこまで何も言わなかったが「……ま、私と当たる前に頼む。どっちか先に当たると対戦できなくなるからな」と強気に言っていた 照さんは少し驚いたようだったが、雑誌とかで見せないような、ニヤリという感じで笑い「……対戦するの、楽しみにしておく」と言っていた なにこの王者の会話。どっちも王者の貫録だよ。背も胸も小さいけど それからも昼食を取りながら色々話して別れた。照さんとやえさんもお互い連絡先を交換していたようだった そして午後、試合の組み合わせが発表された 宮永照、宮永咲、小走やえ、荒川憩 どこでどういうフラグが立ったんだろうかと一瞬マジで考えた ああいう会話してすぐに3人当たるってどういう組み合わせだ。なんか去年の全国2位の憩さんもいるし 最終日の終わり間際とかじゃねーのかよ、こういう組み合わせ 色んな意味での注目の試合だったが、1位照さん2位咲、3位憩さん4位やえさんという結果だった 試合は、今まで見たものと次元が違うような試合だった。つーか、結果4位とはいえ、とんでもないの3人いたのに一時トップに立ったりしたやえさんまじすげぇ 試合が終わってから照さんと咲が何かを笑顔で話していた おそらく、仲直りはできたんだろう 試合が終わってから「咲の奴すげーな」と呟くと、隣から「え?」という声が聞こえた 隣を向くと、金髪で眼鏡のすばらなおもちの持ち主がいた どうかしたのか聞くと「あ、いえ!つい、咲って知り合いっぽく言うので、咲さんの知り合いかと思って」と金髪眼鏡おもちの娘は言った ちょっとした知り合いだと言うと、その娘もそうだと言った なんでも、同じ長野の高校らしい。そこまで聞いて思い出した 長野決勝団体戦で居た女の子だ。試合自体は見てないが、簡単なダイジェストのような動画で見た おもちがあったので少しだけ記憶にあったのは言わないが 確か、鶴賀学園と言うと正解だったらしい。「ワハハ、私達も有名になったもんだ」と、その隣から小柄で人も話しかけてきた 同じ鶴賀学園の人らしい。それから何かの縁ということでしばらく一緒に試合を見ながら話した 2人は妹尾佳織と蒲原智美というらしい 全国前に、長野の決勝4校で合同合宿をやったらしく、それからの縁らしい 俺も今は永水で、元々長野に住んでいたことを話すと、元地元民ということで色々話してくれた そのまま話が弾み、連絡先を交換した 今日も小蒔さんと初美さんは勝ち残った だが、個人戦は明日が最終日 最後まで頑張って欲しい 小蒔「この試合はすごかったですね」 霞「ある意味決勝以上に注目された試合だったわよね」 初美「とんでもない姉妹対決でした。何気にこの4人全員と京太郎知り合いだったんですねー」 巴「というかインターハイで女の子と知り合いすぎじゃないですか?」 春「なんか気付くと女の子のことばっかり……」 8月△▲日 個人戦最終日 個人戦の優勝は照さんだった 団体戦で負けたからか、かなりの気合いが入っていたようで、圧倒的だった 後でお祝いのメールを送ろう 小蒔さんは5位、初美さんは20位という結果に でも初美さんは途中照さん憩さん、臨海の辻垣内さんの去年の上位3人それぞれと当たってこの結果だ。充分すごいと思う 小蒔さんは霞さん曰く、今回は終始絶好調だったらしく、この結果らしい 去年と違うものがあったから、等と言っていたが、六女仙揃っていたことか? 霞さんはなんかこっち見て笑ってた 閉会式が終わった後、新道寺の煌さん、姫子さん、哩さんがに来た 挨拶と合宿を秋に3年生も含めてからやらないか、という話だった 霞さんや初美さんももちろん大丈夫だと返事をして、また連絡をいつするかも話して別れた 次に、豊音さんとエイスリンさんが来た 2回戦から決勝まで、ずっと対戦した相手だから挨拶に来たらしい 豊音さんは改めてサインのお礼を言い、エイスリンさんはわざわざ俺達の絵を描いてくれていた 団体戦の5人と俺もいれた6人の絵だった こちらも絵のお礼を言い、また連絡すると約束して別れた 会場を出て、帰るのは明日なので今日はこれからどうするかとみんなに聞くと、ハギヨシさんと衣さんに会った そういえば約束していた。どうやら既に連絡していたらしく、このまま打とうということらしい インターハイ延長戦というところか、思わぬところで永水と龍門渕の勝負になった といってもお互い基本的にリラックスしてのんびり打った。一部例外を除いて そう、小蒔さんと衣さんだ。去年も対戦できなかったらしく、お互い本気だった 何故かその2人の卓に、俺とハギヨシさんが入ることになった 絶対人選ミスだよこれ 内容は……うん、酷かった。飛ばなかった自分にびっくり。後すっごいいい笑顔だった小蒔さんと衣さんにもびっくり いつも通りのハギヨシさんもすげぇ そのまま遅くまで打って、宿泊施設まで送ってもらった 初美「最終日のあの3連戦さえ1位ならもっと上位でしたのにー」 巴「さすがにあの組み合わせは仕方ないよ」 小蒔「衣さんと打つのは本当に楽しくて、今から来年が楽しみです!!」 霞「そう。でも、天江さんって大将じゃないかしら?」 春「姫様は多分先鋒だから……」 小蒔「衣さん、来年は個人もって言ってましたから大丈夫です!私も頑張ります!!」 霞「なら大丈夫ね。仲良くなれて良かったわね」 8月□★日 鹿児島に帰ってきた 帰るまでに少し時間があったので、咲に連絡して会いに行った あんまり会えなかったのもあるが、あれから照さんとどうだったのかも少し気になった 待ち合わせ場所に行くと、咲と照さんがいて少し驚いた 「ドッキリ大成功」とか照さん言ってたけど、なんか違う 咲も笑っていた。どうやら俺が心配する必要もなかったらしい そこから照さんのおすすめというスイーツを食べに行った その時の2人は昔みたいな仲の良い姉妹だった 残り少ない夏休み、照さんは一度長野に行くことを考えているらしい 俺も夏休みにどこか行きたいと思っていたし、照さんに合わせて長野に行くのもアリか そう言うと咲が喜んでいた。鹿児島に一度帰ってからまた連絡することになった その後は2人をきっちりそれぞれの部長の下まで送ってから宿舎に戻った 清澄、白糸台、どちらの部長からも感謝された。苦労してんだな 宿泊施設に戻ると、咏さんが来ていた なんでも少し前まで良子さんも来ていて、改めてお祝いに来てくれたらしい 良子さんは途中で帰ったが、咏さんは少し残っていたとか 「最後に会った時からどーなったか気になってたんだけど……なるほどねぃ、中々いいじゃん」 「こりゃ化けるかもね。わっかんねーけど」俺の顔を見ながら咏さんはそういった また連絡してねー、と扇子を振りながら帰っていった。なんだったんだ? そして、俺達は鹿児島に帰った 帰り道、愛宕(貧)からメールが来た 大阪に帰ったとかでたこ焼きを持った写メが付いていた これを書く前に黒豚の料理の写メを送った。ちょっと遅い時間だが、まぁいいか 帰り着いた時間も少し遅かったが、麻雀部のみんなや小蒔さんとこのおっさんなど、結構な人達が出迎えてくれた 俺はなんかめっちゃ男たちに叩かれた。俺が何をしたというんだ 部活はしばらく休みらしい。まぁ移動もそうだがずっと試合してたんだ。疲れもあるだろう みんな、お疲れ様 小蒔「優勝、できたんですよね」 霞「えぇ。忘れられないわ」 初美「絶対忘れませんよー。後、良子さんが京太郎に会えなくて残念がってたことも」 春「良子さんも要注意だから……」 巴「一応従姉妹だけど、そう言っていいの?」 8月●☆日 明日から長野に行くことになった ちょうど部活も休みなので、東京の照さんを途中で合流していくことになった というか、日程は照さんに合わせてで、咲と照さんの両親に照さんと一緒に行ってやってくれと頼まれた まぁ、照さん1人で長野へって、結構不安だしなぁ…… その代わり、東京で1日泊めてくれるらしい まぁ鹿児島から長野に行くなら1日移動になりそうだし、ちょうどいいかな 向こうではハギヨシさんが泊めてくれることになった いきなりだったのにありがたい話だ とりあえずこっちのお土産を何か持っていこうとみんなに相談したが、なんかそっけなかった 春は黒糖以外としか言ってくれないし、小蒔さんはうちのお守りでもどうですか、としか言ってくれない そもそも照さんと長野に行く、と言った時から少しそっけない気がしたが、なんだろうか まぁまたお土産でも買ってこよう 適当に名産品っぽいお菓子をいくつか買ったし、明日の用意をして早く寝よう 霞「そういえば、京太郎くんが旅行に行ってる間、2人はやけに機嫌が悪かったけど……」 初美「なんだったんですかー?」 小蒔「その、3年生が引退したから、12年生だけで早めに練習しましょうって言おうと思ってたんですが」 春「他の女と旅行とか言い出して、つい」 巴「嫉妬?」 小蒔「……はい」 春「……後、姫様以外を出し抜きたかった」 初美「サラッとなんて計画してたんですか」 春「実際は3人でっていう予定だったのに……」 小蒔「その通りにいかなかったからといってあんな態度を取ってしまうなんて……はしたないですよね」 霞「そうね。でも気持ちは分かるわ」 小蒔「霞ちゃん……」 霞「でも私達を抜きにしようとした分お説教ね?」 小蒔「うぅ……分かりました」 8月◇◎日 東京に着いた 照さんが駅で待ってるとの話だったが……居なかった 期待はしてなかったよ。むしろ予想通り 探していたら、明華さんに会った なんでいるのかかなり驚かれた。そのまま一緒に照さんを探すことに。なぜだ 照さんはまた予想通り、売店でお菓子を見ていた 「え、アレチャンピオン?アレがサトハに勝ったんですか?……日本って分からない」お菓子に夢中の照さんを見て、明華さんはそう言った ごめんなさい、あんなチャンピオンで 合流して、とりあえず雀荘に行くことになった。なんか照さんと明華さんがやけに打ちたがっていた つーか有名人2人と歩く。めちゃくちゃ目立つ。照さん何度かサインとか頼まれてたし 雀荘では俺達3人の卓に誰も入ろうとしなかった。まぁチャンプいるしなー 結果は分かり切っていたフルボッコ。なんで2人はやけに本気なんだ ただ、本気で打ったからか、2人はそれなりに打ち解けていた。そのまま夕方まで打って、俺が飛び続けたが そのまま別れて、照さんの家に行った かなり久しぶりだが、照さんと咲のお袋さんにも会った 向こうも俺のことを覚えていたらしい。主に迷子の姉妹捜索でだろうが 空いてる部屋に通してもらい、少し荷物を整理しようと鞄を開けると、執事服があった 何故だ。いつぞやにもらったやつだけど、なんで紛れ込んでるし そのまま見なかったことにしたかったが、タイミング悪く入って来た宮永母子に見られてしまった そこからは2人の強引な押しにより、俺は執事服を着ることになった 「……ちょっとこの執事欲しいわ」そうコメントしながら写メる宮永母。マジでやめて そのままの恰好で夕飯。執事らしく手伝った。以外なことに照さんもそこそこ料理ができた 咲といい、基本ポンコツだけどその辺りはなんとかなるのか 夕飯中、照さんが半分ふざけてか、執事らしく振る舞ってほしいと言ったので、ハギヨシさんをイメージしながらやってみた 思った以上に執事っぽかったのか、照さんも宮永母も相当驚いていた 「照、ちょっとプロ行ってその財力でこの執事雇えない?」「私専属執事にするよ?」などという母と子の会話 内容はまったく微笑ましくないが。むしろやめて そのまま片付けは宮永母子にまかせ、俺は風呂に入った。そこでやっと執事服を脱げた 旅行初日からなんで執事なんだ まぁ、明日は長野だ。久しぶりの長野、楽しみだ 春「京太郎の執事姿……」 霞「神社に似合いそうにないけど、確かに欲しいわね」 巴「神社じゃなくて専属というのは?」 初美「というかサラッとチャンピオンの家に泊まってますね」 小蒔「お互いの家に泊まるような関係だったなんて……」 春「姫様大丈夫。チャンピオンより胸で圧勝してる」 初美「はるる。ちょっと怒っていいですか?」 明華「……サトハー。どうして宮永照に負けたんですかー?」 智葉「はぁ?そりゃあいつが単純に強いからだろ」 明華「……納得いかない」 智葉「?」 照「……菫、執事っていくらぐらいかかると思う?」 菫「…………何を言ってるんだお前は」 照「プロでいくら稼げるかはまだ分からないけど、トッププロまでいけば1人くらいはいけるよね?」 菫「だから何を言ってるんだお前は!?今時執事雇ってるとこなんて金持ちくらいだろ!!」 8月▽■日 メリーさんの電話という都市伝説がある 「あたしメリーさん、今……」という奴だ 長野駅に着いた時、電話がかかってきた 「あ、あたしメリーさん……今、長野駅にいるの」それですぐ切れた 「あたしメリーさん、今長野に入ったの」またすぐ切れる 「あたしメリーさん、今改札口の前にいるの」 「あたしメリーさん、ちょっとトイレに行ってくるね」 「あ、あたしメリーさん……トイレどこぉ」 「あたしメリーさん、今トイレにいるの」 「あたしメリーさん、今改札口に向かっているの」 「あたしメリーさん、ちょっと改札口に行くのに時間かかるの」 「あ、あたしメリーさん……もう少しで改札口にいくの」 「……京ちゃんどこぉ……」 我ながらよく書いたと思う。この電話があった後、半泣きの咲を探して見つけ出した なんでも、久しぶりに会う前に軽いイタズラでも、と清澄の麻雀部の部長に入れ知恵されたらしい でもな、咲。せめて非通知でかけよう。黙っておいたけど そんな訳で咲と再会した。照さんの方は東京で色々話したからか、普通に咲と話していた 久しぶりの長野……変わらねーな まだ半年も経ってないのに、随分と懐かしく感じる そのまま3人で適当にふらついた 通っていた中学、部活が終わってからよく寄っていた店、休みの日に食べに行った店、ハギヨシさんと出会ったきっかけの本屋 何も変わってなくて、安心した その後、咲の家まで行った 久しぶりに会った咲の親父さんは俺を歓迎してくれ、照さんにはおかえりと言っていた 照さんも、ただいまと笑顔で言っていた 咲と照さんは仲直りできたし、またそのうち4人で暮らすことになるのだろうか。まぁ、俺が口出すことじゃないか そのまま家族水入らずの邪魔になると思ってどこかへ行こうとしたら、親父さんに止められた やけに必死に止める親父さん、その理由はすぐに分かった 「じゃあ、久しぶりに」「うん、麻雀を楽しもっか」姉妹のなんと微笑ましい会話だろうか これが宮永姉妹の会話でなければすごく心温まる一幕だったのにね 親父さんは、俺を巻き込みたかったらしい。このとんでもない家族麻雀に。 正直恨んだ。昨日の比じゃないくらい酷い結果だった その後、ハギヨシさんに連絡して迎えに来てもらった 泊めてくれる、との話だったが、まさか龍門渕家の客室とかね 結構遅い時間だったので、挨拶は明日にして、荷物を整理した さて、書き終わったらハギヨシさんにお土産でも渡しに行こう 明日も少し色々見て、中学の友達にでも会おう 巴「ホラーかと思ったらただのギャグじゃないですかー」 霞「試合の時はそれこそホラーみたいに強くて怖かったのにねぇ」 春「その後の家族麻雀のがよっぽどホラーみたい」 初美「京太郎、よくこんなにすごい人達と打てますねー」 小蒔「京太郎くん、そういうところは誰よりもすごいですよね」 京太郎は今、鹿児島 京太郎「……ふぅ、やっとウチに持ってこれたか、黒糖1年分」 京太郎「つーかすげー量だな。1日どれくらい消費での1年分だ?春基準か?」 京太郎「まぁいいか。とりあえずこれは後にして、早く…」 ピンポーン 京太郎「ん?客か?」 「お届け物でーす。印鑑かサインお願いしまーす」 京太郎「はーい。……はい、サイン書きました」 「ありがとうございまーす」 京太郎「あの、一体何のお届けものなんですか?」 「えーっと……懸賞みたいですね。屋久島のグルメ詰め合わせらしいですよ」 京太郎「へぇ、屋久島の。親父が応募したのかな」 「えぇ。ちょと大変でしたよ。屋久島のグルメ詰め合わせ、1年分は」 京太郎「……はい?」 「ですから、屋久島のグルメ詰め合わせ1年分です。年内配送って話なんで、こんな時期になっちゃってすいませんね」 京太郎「ちょ、ちょっと待ってください。1年分?」 「はい。えっと、首折れサバにトビウオにきびなご、豆腐に焼酎『三岳』。伊勢海老に鹿肉にポンカン。あ、まだありますね」 京太郎「……なんだこの量!?」 春「ん?京太郎?」プルルルルル 春「はいもしもし?……え?屋久島1年分?……うん、うん分かった。伝えとく」ピッ 初美「どうしたんですかー?」 春「なんか、屋久島のグルメ1年分ってのが懸賞で当たったらしい」 霞「屋久島のですか。懐かしいですね」 巴「え、また1年分?」 春「量がすごくて大変だから、まだ遅れるって。後、みんなで食べないと京太郎の家じゃ食べきれない量だって言ってた」 小蒔「また当たったんですか。すごいですねー」 初美「……まさかまた神様が?」 霞「どれだけ日記が気になるのかしら」 巴「こんなことで本気出し過ぎじゃないですかね」 春「……とりあえず、続き読む」 8月▼○日 長野旅行2日目 ハギヨシさんが本気出した朝食はすごかった 写メ撮って後で愛宕(貧)に送った 友人と会おうと思ったが、連絡無しでこっちに来たため、みんな都合が悪かったらしい 咲と照さんも今日は別行動らしいし、1人で適当にふらつくことになった どうするかと思っていたら、ハギヨシさんに最近少し有名になった雀荘に行ってみてはと勧められた せっかくなので、行ってみた 店の名前は「Roof-top」なんでも、そこの娘がインハイに行ったことから少し有名になったらしい 長野でインハイって言えば咲の清澄か 実際、店はそこそこ人が居た。残念ながらインハイに出場したという娘はちょうどいなかったが どうするかと思っていると、思わぬ人物から声を掛けられた 「京太郎さん?な、なんで長野にいるんですかー!?」夢乃マホ、色々会って知り合いの中学生だ どうやらマホもここの娘と知り合いらしく、店に来て会えずにどうするか、という状態だったらしい せっかくだから打とう、となって、適当に2人空いた卓に入った 周りから兄ちゃん度胸あるね、嬢ちゃん大丈夫か?とか言われた なんのことか分からなかったが、打ってから分かった。俺とマホはプロが居る卓に入ってしまったらしい 南浦プロ、シニアのプロらしい。そら勝てねーわ でも、俺の知ってるプロと違った。あんなんばっかじゃないんだな、プロって いい経験になった しばらく打った後、マホと別れて店を出ようとした時、南浦プロに話しかけられた 「お前見ない顔だな。清澄か?違うのか」物珍しかったらしく、色々教えてくれた 「一回清澄に行ってみるといいぞ。あんな公立の無名高校が強豪を破っちまうんだから。まぁウチの孫もそのうちそうするんだがな」今思えば孫自慢がしたかっただけか? 清澄高校、受験するかもしれない高校だったので行ったことはある いい機会だと思い、道を調べて向かうことにした 高校自体は普通の公立高校、といったとこだった 咲の話で、旧校舎に麻雀部があるらしいので、そっちにも向かった 旧校舎に麻雀部か。ひょっとしたら、俺が清澄に入学して、清澄の麻雀部に入部していたかもしれない そんなことを考えていると、いきなり後ろから声を掛けられた 「あら?最近は減ったと思ってたのに、また見学者かしら?」 振り返ると、セミロングの髪にロングスカートの女性が立っていた どこかで見たことあると考えていると、思い出した。春の対戦相手だった清澄の中堅、そして清澄の部長だ 春の対戦相手、と呟いたのが向こうにも聞こえたらしい 「春……って永水の?……あ!あなたが咲が言ってた永水の須賀くん?」たったそれだけで素性を当てられた どうやら咲が永水に俺がいる、ということを話していたらしい 「なるほどねー……咲の幼馴染……ね、咲って昔からああなの?」そう聞いてくる清澄部長 何を指しているかは知らないが、昔からポンコツではあった。そういうと納得したような、がっくりしたような感じだった それからは、咲のポンコツっぷりが起こした数々の逸話を聞いた 出先で迷子になるわ、パソコンを教えてようとしても扱えないわ、大変だったらしい 変わらねーなー こっちも咲の昔の話をしたりと、それなりに打ち解けることができた 咲、お前のポンコツっぷりが初めて役に立ったぞ そのまま連絡先を交換した。後日、咲の目の前で電話して驚かせる予定らしい その時は全力で乗ろう それくらいで俺は竹井さんと別れた そのまま今日は龍門渕家に戻った 思わぬ出会いや再会もあったし、プロとも打てた 中々いい1日だった 春「清澄の中堅……」 巴「あのツモがすごい人ですね」 小蒔「びっくりしましたよね」 初美「ちょっとかっこいいですよねー」 霞「真似しちゃだめよ?」 久「♪~」 まこ「なんじゃ、掃除サボってメールか?」 久「やーねー人聞きの悪い。ちょっと須賀くんに咲のポンコツっぷりの報告をね」 咲「な、何やってるんですか!?」 久「ああ、大丈夫よ。大体想定内って須賀くん言ってるから」 咲「そういう問題じゃないですよ!?」 8月◆△日 長野旅行3日目 相変わらずハギヨシさんの料理がすごい 深夜の時間に愛宕(貧)に送った 少し時間を置いてホラー系の画像を送ると、すぐに何通もメールが来たが無視した 今日はインハイで知り合った鶴賀の蒲原さんと妹尾さんと、その同じ高校の部のみんなと遊ぶことになった こっちにいると連絡すると、ドライブに行くからと誘われた 蒲原さんはわざわざ迎えに来てくれ、一度降りてから初対面の3人を紹介してくれた 津山睦月さんに、加治木ゆみさん、そして東横桃子さんの3人 ただ、何故か東横さんに普通に挨拶しただけなのに驚かれた よくわからなかったが、別にいいか それから蒲原さんの運転でドライブに出かけたが……すごい運転だった が、そのおかげで何度か隣の東横さんのおもちが当たったりしたのですばら!車酔い?なにそれおいしいの? 隣の東横さんも何故かおもちが当たっても気にすることなく、むしろ積極的に話しかけてきた 普通に返事するだけで何故かやけに嬉しそうだった 運転はアレだったが、ドライブ自体も結構楽しかった 中学の時、遠出して行った場所や、蒲原さんおすすめという景色、 休憩した時に買ったプロ麻雀せんべいで出たカードがすごいレアで津山さんに上げたらすごく喜ばれたり、 俺が永水ということで、オカルトな打ち方への対策について加治木さんと話したり、来て良かったと思えるドライブだった 運転はアレだったが 別れ際に東横さん、加治木さん、津山さんの3人とも連絡先を交換した 春「また女の子の連絡先が増えた……」 初美「スキあらば女の子の連絡先増やしてますねー」 巴「別に悪いことじゃないんだから……少しどうかと思うけど」 霞「そうよ。人と仲良くなるのはいいことよ。どうかと思うけど」 小蒔「えと、確かに私も少し……」 初美「姫様が嫉妬ですかー?」 小蒔「そ、そそんなじゃないですよ!」 霞「あら、かわいいわね」クス 桃子「♪~」 佳織「桃子さん、機嫌よさそうですね」 智美「ワハハ、だな。京太郎と知り合ってから、メールが楽しそうだ」 睦月「それはいいことですけど……そこまで何かありましたっけ?」 ゆみ「普通に話してただけだな。ま、モモにとってはそれが嬉しいんだろうがな」 桃子「お、返事来たっす!」 8月▲□日 今日は移動で疲れた 朝から長野を出て、東京で照さんを降ろし、鹿児島に帰るという日程 朝お世話になったハギヨシさんを初めとする龍門渕家の方々に挨拶して、照さんを拾って駅まで送ってもらうことに 透華さんからそのうち永水と練習試合をしてみたいと言われたので、新部長やインハイに出た3年生に話しておくと約束した 宮永家に着くと、照さんは眠そうにしていたが、一応用意はできていた なんでこの人は雑誌や試合中はクールな感じなのに普段とかこんな気抜けた感じなんだ わざわざ咲も起きて出てきていた 名残惜しそうにしていたので、今度は鹿児島に来てみないかと言うと喜んでいた でも絶対に1人で来ようとするな。照さんと2人でも駄目だ、と強く言い聞かせておいた 新幹線に乗り、揺られること数時間 その間に照さんが食べたお菓子……お土産が残って良かったと心底思う そのまま一旦東京で降り、照さんを家まで送った 送って、そのまま出ようとすると、驚いたような顔をする照さん また泊まると思っていたらしが、泊まりませんよ。今日は宮永母いないでしょうに すごく残念そうな顔をする照さんだった。また必ず来る、と言ってやっと納得してくれた その後、少しだけ俺を呼び止め、部屋から小説を1冊持ってきて、俺にくれた 「暇つぶしに、私のおすすめ」そう言っていた そして東京から鹿児島へ 照さんからもらった本は恋愛小説で、幼馴染の男の子を取り合う姉妹の話だった 最終的には姉が男の子と付き合う話だったが、それなりに楽しめた そして鹿児島にたどり着く しかし不思議だ まだ引っ越して半年なのに、すっげー帰ってきたー、って感じがした こっちに馴染んでるってことかな それなりに遅くなったので、みんなへのお土産は明日渡そう 霞「このチャンピオンの行動……」 小蒔「?」 巴「さりげないような、間接的なアピールですね」 春「さらっと姉妹でってのがなんとも……」 初美「チャンピオンはこっちでも強敵ですかー」 照「うーん……」 照「これ……いや、こっち……」 照「……次会う時、どれ渡そう……」 バサッ 姉妹で取り合う恋愛小説 年上の幼馴染との恋愛小説 8月★●日 今日は部活だった 新部長を決めたりと主に話し合い等が中心だったので、最初にお土産を出して、みんなでつまみながら話した 初めは小蒔さんを部長に、という話だったが、本人がそういうタイプじゃないということで辞退していた 結局は別の人が新部長になった 心機一転、新しい永水高校麻雀部として頑張っていこう 部活が終わってから、個人へのお土産を渡して回った ただ、旅行中のことを話すと、何人かが不機嫌になったりした 照さんとの話や咲との話、後は向こうでの知り合いや新しく知り合った人の話だったが……変なことは言ってないはずだけどな 夜に愛宕(貧)さんと普通に麻雀に関することでメール 性格のわりに守る方が得意だということに少し驚いた 旅行中、隙あらば美味しそうなご飯の画像を送っていたが、今日はあえて終始普通にメール なんとなく、メールの文面でも不安なような、少しおかしいような感じになっていくのが面白かった 普段なら画像を送るようなタイミングで何も送らなかった時は、「メール間違えとらん?」と来たのは笑ってしまった メールの最後、画像を1枚添付した 旅行中に撮った景色の画像だ。動揺しているのが目に浮かぶ あえて何もしない、こういうのもアリだな 春「……旅行の話が女の子の話ばっかりなのが悪い」 小蒔「です」フンス 霞「流石にねー、宮永照と旅行しました、みたいな話だし」 巴「それはそうと、愛宕さんとこんなことするくらい仲良くなってたんですね」 初美「完全に京太郎の手のひらの上ですけどねー」 洋榎「……こんなぁ」 絹恵「お姉ちゃん携帯持って何しとるん?」 洋榎「いや、そろそろ京太郎からメールが来ると思うんやけど」 洋榎「最近、全っ然夜中に飯とかの画像送ってこんから、なんかあったんかなぁ、思ってな?」 絹恵「……その画像のせいで夜中に大声あげたり、なんかつまんでオカンに怒られたりしよったやん。ええんやないの?」 洋榎「ええんやけど……なんか、なんか違うんや……こう、言葉で言えん妙な感じがな?」 絹恵(……お姉ちゃん、京太郎くんのイタズラにすっかりはまってへん?) 8月☆◇日 夏休みも残り少なくなってきた 親父が知り合いから大量に花火をもらってきた 手持ちから打ち上げまで、子供の頃は咲とゆっくりやって、中学に上がってからは男友達と馬鹿やったな 量も大量にあったので、みんなを誘って花火をすることになった 小蒔さんと六女仙全員、ということで明星ちゃんと湧ちゃんも来た 普通の手持ち花火から打ち上げ花火、ロケット花火を手に持ってやったり、ねずみ花火を一袋まとめて付けたりと懐かしいこともやった やっぱり花火は楽しい。みんなも楽しんでくれたようだった 花火の終盤、それぞれ手持ち花火をやっていると、春が近づいてきた のんびりと花火をやりながら、不意に「……ありがとう」とお礼を言ってきた 花火のことなら気にしなくていいと言うが、春は違うと言った 「……こっちに、鹿児島に来てくれて、ありがとう」春は続けた 高校に上がって、俺がこっちに来て、毎日が楽しいらしい 自分でも、あんまり笑顔を見せないのは自覚しているが、最近は増えたと小蒔さん達をはじめとするみんなに言われたらしい 昔より笑顔が増えたのも、毎日楽しいのも、俺が来てかららしい 「だから、ありがとう。今日もすっごく楽しい」そういう春は、とても綺麗な笑顔だった 少し照れくさくなったが、お礼なんていらないと俺は言った 春はきょとんとしていたが、構わず俺は続けた まだ俺がこっちに来て半年もたっていない。たった半年もだ それだけの期間楽しかったからってお礼なんて必要ないし、まだまだ高校生活は残ってる 花火が楽しかったなら来年も再来年もやるし、まだまだ楽しそうなイベントはあるんだ 俺だって春と居て楽しい。だからお礼なんていらない、今思い出せば何を言ってるんだってなるが、言ってやった ちょうど言い切ったところで花火が消え、春の顔は見えなかった だけど小さな声で、「……それでも、ありがと」そう聞こえた ちょうどみんなも持っていた花火が終わってしまったらしく、締めの線香花火をした やっぱり、花火の締めはこれだ 誰が最後まで残っているか、粘りたかったが、春が何故かくっついてきたせいで、俺のが早々に落ちてしまった 文句を言おうと思ったが「また来年に」そう笑顔で返されて何も言えなかった 初美「私達が見てないところで青春してたんですねー」 小蒔「私も京太郎くんに会ってから毎日楽しくなりましたし、お礼を言いたいですね!」 霞「同じように言われると思うけど…あら?どうしたの春ちゃん?」 春「……この日から……その……自覚して……」カオマッカ 巴「あー……今まで無自覚だったんだね。春ちゃん顔に出ないからねー」 春「……思い出したら恥ずかしい」 初美「ではでは是非どんな気持ちだったか聞かないとですねー」 霞「……つまりこういう瞬間が全員分あるのかしら?」 初美・小蒔・巴「「「!?」」」 春「……よし次」 小蒔「ちょ、ちょっと待ってください!霞ちゃんはいいんですか!?」 霞「あら、別にいいわよ。むしろ見せつけましょうか?」 初美「むむむ……負けてなるものかですー!」 巴「え!?ちょ、私はちょっと……春ちゃん!?ページめくるの早くない!?」 9月×日 今日から2学期が始まった 学校に着くと、数少ない男達にいきなり絡まれた どうやら俺がインハイに付いていったことを知ったらしい 他の奴らは……まぁ、男子だからって優遇される訳じゃあないよな 優勝おめでとうと言われながら叩かれまくった。大体やり返したけど 始業式で麻雀部のみんなが壇上に呼ばれたり、大変そうだった 2学期初日ということで学校はすぐに終わり、部活だった 部活には引退したはずの霞さん、初美さん、巴さんもきていた 受験等あるんじゃないのか聞くと、家の神社等を継ぐとのことで、受験はしないらしい だからこれからも時間があれば麻雀部に顔が出せるということだ まだまだ教わりたいことが多かったんだ。毎日という訳はいかないだろうが、それでもありがたい そう言うと、早速俺への特別メニューを組んでくれた 俺、霞さん、初美さん、巴さんというメンバーで対局だった 練習にはなるけどさぁ……限度ってもんがあるだろう…… 帰り道、流石にぐったりだったのを悪く思ったのか、たまごアイスを奢ってもらった みんなもたまごアイスを買っていたので、少し期待したが、食べ慣れているのか勢いよく白いものが顔にかかることはなかった 残念だ。そして食べ終わってこっちをドヤ顔で見る初美さんが少しイラッときた。違う、あなたじゃない 逆に俺が失敗して顔に思いっきりかかってしまった 無念…… 霞「夏休み明けねぇ……去年の方が騒がれたから、今年はそれほどじゃなかったわよね?」 初美「ですねー。去年は姫様大暴れでしたからねー。あ、今年もでしたねー」 小蒔「……ところで、京太郎くんはどうしてたまごアイスで期待していたんでしょうか?」 巴「あー……アイスが美味しく食べられるかじゃないんですか?」 春「……京太郎のえっち」 小蒔「?」 9月○日 ぼちぼち体育祭と文化祭の話が出てきた 今年は男子がいるので体育祭でも文化祭でも色々駆り出されそうだ 別に体を動かすことは好きだからいいけどな 文化祭、麻雀部でも何かやるのか気になったので、部室に来ていた巴さんに聞いてみた 去年は小蒔さんを中心に簡単なお祓いをしたり、おみくじやお守りを売ったりしたらしい 小蒔さんの親父さんがノリノリを手を貸してくれたとか ちょうどインハイでの活躍もあり、かなり人が来て、おそらく今年もそれになるだろうと話してくれた それでいいのか神職。神様的にもアリなんだろうか それを聞くと、巴さん曰く、お供え物を普段より豪華にしたら問題なかったらしい 神様ってなんだろうね 初美「盛り上がりましたねー。『インハイで活躍したあの娘がお祓いを!』って感じで」 霞「お守りもよく売れたっておじ様喜んでたわね」 小蒔「多くの人がお守りを持てたり、多くの人のお祓いができたりで私は良いことだと思いましたよ?」 巴「まぁ、京太郎君の言いたいことも分かりますけどね」 春「神様、結構アバウトでノリがいい」 巴「いや、その言い方はちょっと……」 9月△日 妙な夢を見た 何故かすぐに「これは夢だ」と自覚できる夢だった 不思議な感じだったが、夢なら好きにしようと思い、適当に歩いていると小蒔さんがいた 制服でも、巫女服でもない、普通の私服の小蒔さんが、まるで待ち合わせをしているように立っていた 俺はなんとなく、そのまま小蒔さんの手を取って、街に行った 街では服を選んだり、小物や本を見て回ったり、ファミレスで昼食を取ったり、ゲーセンで遊んだりと、まるでデートみたいに過ごした そのまま夢の中で夕暮れになった頃、俺と小蒔さんは公園に着いた そのままベンチに座った 夢だけど、楽しかったです そう言うと、小蒔さんは驚いたような顔をして、笑顔になり、何かを言った そこで目が覚めた 普通、夢の内容なんんてすぐに忘れるが、不思議と覚えており、今もこうして日記にかけるほどだ そのまま学校に行った。そして昼休みに小蒔さんと会った 小蒔さんは「夢でしたけど、楽しかったです」と言ってきた まさかと思いどういうことか聞くと、小蒔さんも同じ夢を見ていたらしい 夢でも楽しかったので、お礼を言いたかった、らしい 「……同年代の方とああいう風に出かけるの、初めてだったんです」少し恥ずかしそうに小蒔さんはそういった 小蒔さんなら無理もないだろうな。本家だかなんだか、そういうとこだし じゃあ今度は、現実でああいう風に出かけませんか、そう誘うと、驚いた後、笑顔になってくれた 姫様だとか言われてるが、普通の女の子だしな 近い内に、夢の時より楽しくなるような日にしよう 小蒔「……夢の中だけど、現実みたいで、手を握ってくれてドキドキしました」 霞「2人で同じ夢って」 初美「また神様ですかー」 小蒔「その辺りは分かりませんけど……楽しかったです!」ニコッ 霞「そういえば、夢の最後何か言ったらしいけど、なんて言ったの?」 初美「確かに、京太郎は分からなかったみたいですしねー」 小蒔「……その……ますと……」 春「姫様、もっと大きな声で」 巴「こら、そう言わない。でも、聞こえませんよ」 小蒔「……お慕いしております、と……つい……」 春「……姫様も堕ちた」 巴「言い方。分からなくはないけど」 9月□日 休日、今日は砂風呂に行ってみた 前々から行きたかったのだが、色々あって行けなかったところだ 施設に着いてすぐ、砂風呂に入った 色々予想していたが、予想以上に良いものだった 身体がすっきりしたような気がする その後、普通の温泉もあったのでそっちにも入り、混浴がないことを心底がっかりして、風呂を出た 飲み物はもちろん牛乳。のんびり飲んでいると、後ろから「あーっ!?」という声が聞こえた 振り返ると、なんと阿知賀の玄さんがいた なんでこんなところにいるのか聞くと、懸賞で当たったので宥さんと一緒に来ているらしい。まさかこんなところで会うとは ちなみにその時の宥さんはまだ砂風呂らしかった。その時点で3時間は入ってると聞いたが、結局最後まで会わなかった 何時間入ってたんだろう すると玄さんが小声で「実はお風呂ですばらなおもちの持ち主2人を見つけまして」と言ってきた それはそれは確認しない訳にはいかない。そのまま牛乳を飲みながらお持ちの持ち主を待った 少し待っていると、その人は出てきた 雰囲気から、おそらくは人妻だろう。眼鏡を掛けていて、大きくすばらなおもちが浴衣の下からも主張していた つい玄さんと握手した 次のその人の娘であろう人が出てきた。先の人ほどではないが、それでも充分に大きくすばらなおもちだった 俺は玄さんとハイタッチした いいものを見せてもらった、そう思っていると、その親子の会話が聞こえてきた 「なんや、絹だけなん?」「お姉ちゃんもうちょいで出てくるてー」 姉がいる?つまりは3人目!?俺と玄さんはアイコンタクトで互いの目的を理解した そのまま待つこと数分、出てきたのは……残念だった さっきの娘は姉と言ったが、ならば残念だ。その姉は妹より背が低く、さらにはおもちも無い なんてことだ。こんな人のために待ったのか 玄さんと肩を叩き合いながら、お互いを慰めていると、その姉……貧乳がこちらへやってきた なにかと思うと、「京太郎か?うわっ、こんなとこで会うなんてめっちゃすごいやん!」そう馴れ馴れしく話しかけてきた 誰だ?貧乳の知り合いは初美さんと宮永姉妹で充分だぞ?そう思いながらジーッと貧乳の顔を見る どこかで会ったことあるような無いような……そう考えていると、貧乳が何か合点がいったように手を叩いた そして、自分の手で髪を後ろでひとつにまとめ、そして俺はそこでやっと貧乳の正体に気が付いた 愛宕(貧)だった。さっきの妹は眼鏡をしていないから気付かなかったが、愛宕(巨)だった つまり最初の人は、愛宕(母)!……母親に似ればよかったね、愛宕(貧) 「あぁ、なるほど。いつも洋榎とメールしよるっちゅう男か」そう話しかけてくる愛宕(母) 愛宕一家(父以外)も懸賞で当たって来ていたらしい。どんな偶然だろうか 愛宕(母)に言われた。いつも(貧)に送っている写メは見ていると。何を言われるかと思うと、褒められた いいセンスしている、写真も美味しく見えるように撮ってる、と (貧)は文句を言ってほしいと言っていたが、愛宕(母)はアンタが我慢すればええこと、とばっさりだった つまりは母親公認の仲……これからも送っていいってことか!! という訳でこの日記を書き終わったらまたメールしようと思う。無論(貧)にはカツ丼の画像でも付けて ついでにその場の流れで愛宕(巨)の方とも連絡先を交換した こっちには普通にメールしよう。カピーの写メでいいか 初美「砂風呂ですかー。最近言ってないですねー」 巴「またみんなで行く?中等部の2人も誘って」 小蒔「いいですね!私も最後に行ったのは大分前ですから、楽しみです!」 春「……まぁ、愛宕はいいか」 霞「結構点取られてたものね。これは止めなくていいわね」 洋榎「ああああああ!!また!なんでこんなタイミングですき焼きの画像なんて送ってきよるねん!!」 絹恵「あはは、このカピーちゃん可愛くておもろいわー」 雅枝「おお、ホンマやなぁ……いやー、ホンマええもん送ってくる子やね」 洋榎「オカン!ウチのは完全に悪意の塊で送ってきよるやろ!?」 雅枝「何言うてるん。美味しそうなもんやろ。ええわ、むしろお礼言っとき」 洋榎「この前夜の11時に串カツやったのに!?起きとったけどあんまりやん!?」 雅枝「我慢しーや。絹、他の画像あるん?」 絹恵「あるで!こっちがおすすめでな?」 洋榎「京太郎ーー!!!覚えとけーー!!!」 9月●日 今日は中秋の名月だった だからか、みんなで小蒔さんの家に集まって月見をすることになった 家で多めに団子作ってから小蒔さんの家に行くと、既にみんなは集まっていて、大人たちは宴会やってた 親父までいつの間にかいたし、飲めりゃいいのかまるで駄目な親父、略してマダオめ 親父が月見っぽいもん出せー、とか言ってきたから持ってきた団子はやった 大人たちが食べてしまいそうだったので、小蒔さんのお母さんに断って台所を借り、改めて作った その場にいたおばちゃん達がやけに見てたと思ったら、娘の婿に来ないかと言われてびっくりした 冗談に乗ったからか、その場のおばちゃん達のほとんどに言われたからまたびっくりだ 適当に流して、出来立ての団子を持って縁側に行くと、みんなが待っていた やけに顔が赤い気がしたが、なんだろうか それからは丁度雲もなく、綺麗な月が出ていたので、のんびり月見をした こうやって月見をするのは初めてだったが、思ったよりいい感じだった またやるのもいいかな 巴「確か、京太郎くんの作った団子が美味しいのと、手際とかがすごい良かったから……うぅ、お母さん……」 霞「おばあ様まで言い出したから驚いたわ」 春「……うちはかなり前から既成事実をって言われてる」 初美「おばさん過激すぎじゃないですか!?……あ、うちもそんな感じでしたー……」 小蒔「実は父からその気なら婚約者にするかって言われてまして……」 春「え?」 巴「本家が全力で!?」 霞「ちょっとそれは初耳ね」 初美「姫様がその気ならって……まさか……」 小蒔「で、でですけどこういうことは2人の気持ちが大切ですし!……あ、あんまりそういう無理強いをしては嫌われそうですし……」アタフタ 霞(嫌うことは無いと思うけど) 巴(むしろ喜びそうですよ) 春(でも姫様が強引にいかないからまだチャンスが) 初美(……まずはおっぱい好きをなんとかしないと駄目ですかねー) 9月◇日 部活終了後、麻雀の指南書を探しに本屋に行くと春に会った 春は指南書について、部室にあるのじゃ駄目なのか聞いてきたが、そうじゃない 秋に向けて、本気で麻雀が上手くなりたいから新しいのを買いにきたんだ 指南書はいくつあってもいいし、この前みたいに負けたくない、そう言った すると春は、自分の持っている指南書も貸すし、いつでも麻雀の相手をする、と申し出てくれた 「夏に負けて悔しがってたのは知ってるし……京太郎のためなら、なんだってしてあげたい」そう言ってくれた ありがとう、春 それからいくつか春と相談しながら新しい指南書を買い、家に帰ってから早速ネト麻の相手をしてもらった これからも頼むことになるだろうし、また黒糖で何か作るか 初美「はるるはまた抜け駆けですかー?」 春「違う。京太郎のために協力してるだけ」 巴「にしては大胆なこと言ってるよね?『なんだってしてあげたい』って」 春「本心」 小蒔「な、なんでもですか?」 春「なんでも」 霞「えっちなことも?」 春「むしろ歓迎」ドヤァ 初美「なんでそこで胸を見せつけるようなドヤ顔ですかっ!?」 巴「春ちゃんが強敵かな……」 小蒔「わ、私もああいう風になれば……」 霞「小蒔ちゃんには小蒔ちゃんの良さがあるわよ?」 霞(でも、私もうかうかしてられないわね) 9月▽日 部活前、少し床の汚れが気になったから掃除していたら、霞さんが来てくれた 手伝おうかと申し出て俺のそばに来ようとしたが、もう終わるところだからと断ろうとした瞬間、 霞さんがまだ濡れていた床に滑って、前に倒れようとした 俺は思わず受け止めようとしたが、運が悪いのか、俺まで滑ってしまい、霞さんのクッションになるような形で俺まで転んでしまった なんとか頭は打たなかったが、転んだ時、手に柔らかい感触があった つい手を動かすと、むにむにと非常に柔らかく、そして暖かな感触だった そこで気付いた 俺、霞さんのおもちを揉んでいた!? 霞さんが俺に正面から覆いかぶさるような状況だった 慌てて謝ったが、霞さんは少し足を捻ったのか上手く立てず、そのままの状態が続いた しばらく俺の手におもちが!永水に来て以来の夢がこの手に!! なんとか霞さんに上からどいてもらい、すぐにまた謝った そりゃおもちを揉めたのは嬉しいが俺が床を濡らしたせい、俺が転ばせたような訳だし、喜ぶのは悪い 転ばせて勝手におもち揉んで喜ぶとか酷い。謝るしかない でもあの感触が忘れられない!!でも同時に罪悪感が!! とにかく謝った。謝りながら霞さんを保健室に連れていったりした 帰りは当然送っていった こうして日記を書いてる今もあの感触は思い出せるが、その原因が霞さんを転ばせて怪我させてと考えるとなぁ…… 素直に喜んでいいものか、悩む とりあえずまた霞さんに謝ろう。そしてこの感触は忘れられない 巴「欲望と紳士が揺れてる……」 霞「顔真っ赤にして謝る京太郎くんが可愛かったから気にしてないのにね」 霞「それに、胸を触られたのも、保健室に連れて行ってくれて一生懸命手当してくれたのも、ちょっとドキッとしたわ」 初美「揉まれた分役得ってわけですかー?おっぱいなんてただの脂肪ですよー……ふんだ」 霞「でも、これで真っ赤になって可愛い京太郎くんが見れたのは確かよ?」 春「……今度押し倒す」 小蒔「じゃ、じゃあ私も!」 巴「姫様待って。多分春ちゃんが言ってるのは別の意味」 9月■日 今日は体育祭だった 数少ない男子ということで色んな競技に出ることになりかなり疲れた 特に借り物競争では、物でなく人が指定されていて大変だった 俺は『眼鏡の先輩』とあったので巴さんに頼んだ 急いでいたので、かなり強引な感じで手を引いてゴールした 隣の奴なんて『合法ロリ』とか書いてあったのが傑作だった 初美さんを連れてきたのは大正解だと思うが その後も徒競走で春がおもちの差でギリギリ勝ったり、玉入れで小蒔さんの胸の上に玉入れの玉が乗ったり、 激しく揺れる霞さんの胸を男子全員協力の下撮影(写真、動画両方)したり、いい1日だった ただ、最後の競技のリレーで俺は転んでしまった リレーのバトンを渡すその直前に派手に転んだが、なんとか遅れないようにと転びながら無理矢理バトンを渡した おかげで順位を落とすことなく、1位だった が、その代わり足は派手にすりむいて、無理矢理変な体勢をとったせいか足も捻ってしまった たまたま近くにいた巴さんに肩を借り、保険医の居るテントまで行ったが、もう閉会式直前、更に間の悪いことに俺より先に怪我した奴もいた 傷を洗って保健室で、なんなら勝手に使ってもいい、とのことなのでそのまま巴さんに肩を借りて保健室まで行った 傷を水道で洗ってとりあえずは消毒まで巴さんに手伝ってもらいながら終わらせ、そのまま保険医を待つことになった 待ってる間に、借り物競争で無理矢理手を引っ張ったことを謝った 巴さんは別にいいと言ってくれた。そして「こういう時くらい、助けてあげたいしね」そう言った 別に普段からかなり助けられてると思うけどな 4月の時からよく麻雀の基本的なところから教わってるし、普段も小蒔さんがぼーっとしてたり、 春や初美さんが何かした時も助けてくれるのは巴さんだし いつも助けてくれるのは見てるし、充分助かってる そう言うと、巴さんは照れたように「よく見てるんだね……ありがとう」と言ってくれた その辺りで保険医が戻ってきて、治療してくれた すでに閉会式も終わって片付けが始まっていたが、俺はなるべく安静に、という訳だったので先に帰れとのことだった 結局片付けも参加せず、巴さんに肩を借りて帰った こういう時も、助けられてるな 春「……怪我した京太郎が先に帰ったのは知ってたけど」 初美「こうなってたんですねー。後誰が合法ロリですか」 巴「い、いやー……ちょっと強引に引っ張られた時からちょっとドキッとしちゃって」 霞「あら、そのまま京太郎くんを独占?」 小蒔「独り占めはずるいですよ!」 巴「そ、そんなんじゃないですよ!?ただ……嬉しかったなーって……その……」 春「……堕ちた」 初美「堕ちましたねー」 霞「巴ちゃんは強引なのが好きなのねー」 小蒔「強引に……わわわ……」 巴「え!?や、そうだけど、霞さんの言い方はちょっと誤解が生まれるというか……そんなんじゃないですって!!もう!!」 9月◎日 今度、どこかの高校と合同合宿をやることになった インハイ優勝校ということでいくつかの学校から申し込みも来ていて、さらに費用は学校持ちなので遠くの高校にも行けるらしい 合宿には霞さん、初美さん、巴さんの3人も参加するらしく、俺まで連れて行ってもらえるらしい 俺もいいのか疑問ではあるが、現部長は大丈夫だと言っていた まだ学校自体は決まっていないらしい おもちのある娘がいる高校……いやでもうち以上のおもちの持ち主がいる高校があるのか? だが大きさだけでは……いやしかし……悩むな。決めるの俺じゃないけど 高校が決まり次第連絡するらしい 楽しみだ 霞「ああ、やったわね、合同合宿」 初美「ですねー。私達も是非!って話でしたよねー」 巴「3年生ですけど、まぁ特例でしょうね」 小蒔「色んな人と打てて勉強になりましたね!」 春「黒糖が持って良かった……」 巴「だから食べ過ぎだって」 9月☆日 今日から連休の白糸台高校での合同合宿だ 合宿は1、2年生中心だが、一部の3年生までいた。 白糸台と聞いてから予想はしていた通り、やっぱり照さんもいた 俺はなんか普通に受け入れられた。というか白糸台の人達からなんかやけに見られていた 理由はすぐに分かった。照さんが俺のことを話していたんだ 「京ちゃん、久しぶり」そう気さくに話しかけてくる照さん。永水のみんなが相当驚いていた とりあえずお土産にお菓子あげて大人しくしてもらった。照さんの隣にいた3年の、確か次鋒だった人が申し訳なさそうな顔をしていた うん、その苦労はよく分かる。嫌というほど、分かる それからは色々な人と打った 今回のインハイで優勝できなかったが、やっぱり白糸台は強豪校、どの人も俺なんかよりはるかに上手い しばらく打った後、休憩ということでお茶を淹れようと白糸台の人に何かそういう場所が無いか聞いた 丁度、お茶好きの人が今そこに行ったから大丈夫だと言われたが、それならせめて手伝いでも、と思い場所を教えてもらった 少し急いで廊下を歩くと、曲がり角でお茶を持った人とぶつかった そのまま巻き込むように転んでしまった。気付くと、俺はその人の胸をがっしり掴むような形で倒れていた。すばらなおもちだった 慌てて離れたが、今度はお茶が掛かってしまったのか、白い制服が透けて、下着が見えていた。緑だった 俺はその人、渋谷尭深さんにすぐに謝った 結局、休憩中にお茶を淹れ直すこともできず、片づけで終わってしまった 渋谷さんは着替えてから続きに参加していた その日の練習が終わってから、改めて渋谷さんに謝り、クリーニング代を出すと言った 渋谷さんは別にいいと言っていたが、なんとか受け取ってもらえた ただその後、「その……透けたの、見ました?」そう聞かれた 見たけど、それを他校の先輩に言っちゃっていいのか!?そう悩んでしばらく黙っていると、渋谷さんは何か察したのか 「……内緒にしておいてくださいね?」そういって帰っていった …………やっぱ明日また謝ろう。照さんに買ってきたお菓子1箱渡そう 霞「そういえば休憩中にどこかへ行ったっきりだったと思ったら」 初美「白糸台の渋谷尭深……また胸ですかー!?」 巴「不注意とはいえお茶まで掛けて……大丈夫だったのかな?」 小蒔「京太郎さんならちゃんと謝りそうですが」 春「何も言われなかったし、何も言わなかった……何かある」 9月★日 合宿2日目 休憩時間、渋谷さんのところに行ってお菓子を渡し、改めて謝った 渋谷さんは少し驚いていたが、もう気にしていないと言ってくれた それから渋谷さんが入れてくれたお茶を飲みながら、渡したお菓子を食べた 丁度お茶に合うようなお菓子だったのが気に入ってくれたらしい お茶について少し話していると、白糸台の次鋒だった人、元部長という弘世菫さんが来た なんでも、照さんが俺のことを部内で話していたらしく、俺と実際に話してみたかったらしい なんとなく分かった。この人が今まで照さんの保護者やってたのが それからはすぐに打ち解けた。迷子の話から始まり、いかにポンコツに対応するべきかの話でかなり盛り上がった 菫さんは「君が居てくれたらと今心底思うよ……」そう遠い目をしながら言った 周りの白糸台の人達からの視線が、興味から同情に変わったように感じたのは、多分気のせいじゃないだろうな そのまま渋谷尭深さん、弘世菫さんの2人と連絡先を交換した 渋谷さんとはまたお茶の話のため、菫さんとはポンコツへの対応の相談のためだ 菫さん、後半年頑張ってください こうして合宿は終わった いい人と知り合えて良かった 巴「……えーと……渋谷さんはともかく」 初美「弘世さんの方は……なんといいますか……苦労していたんですねー」 小蒔「これってある意味陰口とかそういうものになるんでしょうか?」 春「……多分違う」 霞「宮永照……あらゆる意味で強敵ということかしらね……」 「弘世先輩!宮永先輩がまたどこかに!!」 菫「またかあのポンコツは!!購買の方は!?」 「いません!その周辺も!!」 菫「じゃあおそらくコンビニ周辺だ!一応3年間いたんだ、周辺にはいるはずだ!!」 尭深「……お疲れさまです、お茶とお菓子をどうぞ」 菫「あぁ、ありがとう……ん、うまいな」 尭深「須賀くんのおすすめです」 菫「そうかー……私も須賀のおかげで照を探すコツが分かって助かっている」 菫「ほんっとあいつがうちに居たらなぁ……少なくとも私のストレスは軽減されたのになぁ……」 尭深「いい人ですからねー」 尭深(出会い方はアレだったけど……でも須賀くんならアリかな?) 菫「あぁ、全くだ」 「弘世先輩!宮永先輩が見つかりました!!」 菫「本当か!?」ガタッ 「でも、なんでか今1年生3人と打ってて……めちゃくちゃギギギーっていってます!!」 菫「止めろー!!あのポンコツ1年相手に手加減しない気かー!!」 尭深「……先輩、引退した後なのに大変ですね」 9月▲日 今日は珍しく早く目が覚めた なのでちょっと散歩に行ってみた 普段通ってる道も、早朝で誰もいないとなると全く違うもののように見えるから不思議だ そのまま適当にふらついていると、初美さんに会った 初美さんも早朝の散歩らしく、一緒にぶらぶらすることになった 軽く話ながら適当にぶらぶらしているだけだが、結構楽しかった 途中、初美さんの知り合いらしいおじいさんに会った ボケなのかマジなのか、初美さんに小学校は楽しいか?等と聞いてきた時は笑いそうになった 初美さんもおじいさん相手なのかやんわりと小学校じゃないと言っていた おじいさんが去った後、初美さんは不貞腐れたような感じだった 「どーせちっちゃいですよー」とか言っていたので、でも先輩だ、と言った 初美さんは驚いたようにこっちを向いた。俺はそのまま続けた 確かに小さいし、正直初対面ではどこの小学校かと思ったけど、ちゃんと先輩だって分かってるし、先輩らしいところだってある そんな気にすることない、そう言った 初美さんは初めてそういうこと言われた、と驚いていたが、その後は機嫌が良くなったのか、俺の背中に飛び乗った 先輩らしくねー、と言ってやったが「ちっちゃいからいいんですー。ほらほら先輩命令ですよー。れっつごー!」と楽しそうに言っていた 仕方なく、そのままの状態で散歩を続けて、初美さんの家まで送っていった 別れ際、「もし、私がこれから成長して背とか胸がおっきくなったらどうしますー?」と聞かれた 初美さんは初美さんだし、どうこう変わる気はない。と言った でも胸は見るかも、と付け加えたら笑いながら程々するようにと言われた 扉を閉める時、「ありがとうです」そう小さく聞こえた気がした たまには早起きも悪くない また早起きして散歩でもしようかな 霞「あらあら……秋ぐらいから早起きになったと思ったら……」 春「合法ロリという武器を使う気に……」 初美「そうじゃないですよー!!……えと……ちゃんと年上として見てくれたというか……その……」 巴「ハッちゃん、アウトー」 小蒔「あ、あうとー?」 初美「ち、違うですよー!?ただ馬鹿にしないで正面から見てくれたとか、真面目な顔がかっこよかったとか、そういうのですよー!?」 春「京太郎は合法ロリまで堕とす……」 霞「でも巨乳が好みだけど貧乳を彼女にする人もいるし……初美ちゃんだからって侮るわけにはいかないわよね」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3954.html
前話 次話 菫(さて……とりあえずは準決勝の借りも返したいが……ここで狙うのは) まこ「ツモじゃ」 菫(あっちの準決勝で暴れてたこいつだな) ハオ(また要注意……) 宥(あったかくない……) 菫(一旦清澄は置いておこう。2位を射ぬいておくか) ハオ(……効かない) 菫(!?やっぱり癖はまだあったか……) 決勝前日 照「……やっぱり分かんない」 尭深「ですね。ここまで見切られてなかった癖……どんなものでしょう」 誠子「そのために射ぬかれ続けた私は?」 菫「くっ……だが阿知賀は確実に見抜いた上でかわしていた。このままではいけない」 淡「ねー、疲れたからテルー代わってー」 菫「こいつはまた……」 照「いい。じゃあ淡、菫をよく見ててね」 誠子「……」タン 菫(そろそろ亦野を狙うか)チラッ 淡「菫先輩ー、イライラしてるからって亦野先輩にらむのはやめましょうよー」 誠子「え?私?」タン 菫「ロン」 誠子「ぐはっ」 照「……淡、今なんて?」 淡「え?だから睨むの…」 照「……菫、今度は尭深を狙って」 菫「あ、あぁ……」 尭深「!?」ビクッ 菫(アレから分かったのは、無意識で狙う相手を睨んでいるということだけ。だから毎回打つ前に少し目を閉じるようにしたが……) 宥(目閉じられたら誰を狙ってるか分からないけど……指の動きはある。けど) まこ「ロン!」 菫(清澄……) 宥(あったかくない……) はやり「前半戦終了!!」 菫「くっ……やはりまだ癖はあったのか……」 照「うーん……本当に小さいものだと思うけど」 誠子「いっそ普通に打ちます?」 尭深「でも清澄はかわせなかったよ?」 淡「もうずっと目閉じとこう!」 菫「お菓子とタコス没収するぞ」 淡「ごめんなさい」 照「まだ差はあるから、無理しないでやれば平気」 菫「だといいがな」 ハオ「……日本のアレは面倒」 智葉「せめて学校名で言え」 ハオ「……緑の妖怪?」 智葉「人だからな?同じ日本人として殴るぞ」 宥「うぅぅ……あったかくない」 玄「お姉ちゃんファイト!」 晴絵「うーん……上手く守ってはいるんだが、向こうが一気に稼いでるな」 宥「……もっと、頑張ります」 まこ「ふぅ……やっぱ疲れるわー」 久「大健闘じゃない」 まこ「んー……白糸台に狙われたら防げんぞ?」 久「その分一気に攻めちゃいましょ」 はやり「んー、はやり的には弘世選手が目閉じてるのが気になるな☆」 良子「目、ですか?でも、同じことやってる人は他にもいますよ?新道寺のチェーンの人とか」 はやり「決勝でやりだした、ってのがポイント☆白糸台の部長が、意味なくそういうことやる訳ないしね」 菫(……今度こそ、阿知賀を射ぬく!) 宥(動いた……ここは一旦逃げて) 菫(!?またかわしたか!) 宥(そして……今度こそ!) 宥「ツモ!」 ハオ(……この厚着もやる) まこ(こりゃもっと稼がんとの) 菫(もうオーラス……やはり阿知賀を狙う!) 宥(指は動いたけど、もう少しだし……ここはこのまま行く!) 菫「ロン!」 宥「そ、そんな……」 菫(目を閉じておくのは正しかったか……だが根本的なところに癖があるか) まこ(やっぱ白糸台強いわ) ハオ(……全然駄目) はやり「次鋒戦終了!!清澄が4位から一気に2位になったよ☆」 良子「でも臨海との差はわずか。さらにトップの白糸台との差もまだまだありますね」 はやり「最初にも言ったでしょ?最後まで油断したら駄目」 はやり「ここまで来た選手達が、簡単に終わる訳ないんだから」 良子「はやりさん、キャラクターが……」 はやり「……ノーウェイノーウェイ☆」 良子「私の!?」 先鋒戦結果 1位白糸台1292+299=1591 2位清澄104+703=807 3位臨海605+160=765 4位阿知賀255+247=502 実況「どうも、中堅戦の実況は自分と」 靖子「解説の藤田靖子でお送りする」 実況「なんか長野から呼ばれたんですが……大丈夫なんでしょうか」 靖子「気にしたら負けさ。ところでカツ丼食っていい?」 実況「駄目です仕事してください」 靖子「仕方ないな。では、今の状況はこうなってる」 次鋒戦結果 1位白糸台1591 2位清澄807 3位臨海765 4位阿知賀502 実況「やはり白糸台が圧倒的にリードしてますね」 靖子「だが、まだ中堅戦だ。最後に試合をひっくり返したとこを、私達は見ているだろう?」 実況「……気持ちは分かりますが公平な解説をお願いします」 靖子「分かっているさ。ま、自分とこの県を応援したくなる人情ってやつさ」 実況「全く……」 久「さて、行ってくるわ」 優希「ファイトだじぇ!!」 京太郎「頑張ってください!」 久「もちろんよ……私の最後の試合でもあるんだもの」 和「部長……」 咲「最後って……」 まこ「……しんみりするのは早いじゃろ。こっから部長がトップを取ってくるんじゃから」 久「あら、そんな期待されたらプレッシャーでミスしそうだわ」 まこ「言ってろ。どうせいつも通りやるんじゃろ」 久「そうね。最後まで、いつも通り私らしくやらせてもらうわ」 まこ「おう……頼んだぞ、部長」 久「頼まれました……ちょっと勝ってくるわね」 尭深「行ってきます」 淡「頑張れたかみー!天和しちゃえー!!」 菫「またアホないことを……」 誠子「本当に狙えないこともないから笑えないですね」 照「……尭深」 尭深「は、はい」 照「……しっかりね」 尭深「……はい」 ハオ「……頼んだ」 明華「頼まれました」 智葉「気をつけろよ。思ったより頭が切れる奴がいる」 ダヴァン「清澄デスカ?」 智葉「いや、阿知賀も作戦のようなものがあるだろう。準決勝がそんな感じだった」 明華「どちらにせよ、ここで2位くらいにはなっておきたいです」 憧「んじゃ、行ってくるねー」 晴絵「渋谷尭深だけじゃなく、清澄の竹井久、準決勝より気を付けることは多いけど、憧ならやれるからね」 穏乃「いっけー憧ー!!一気にトップ!!」 灼「さすがに無理……」 久「……んー」タン 憧(この人が和のとこの部長……変な待ちしてくるって言ってたけど、今のとこはまだ……)タン 久「ロン!」 憧「ふきゅっ!?」 明華(うわー、また面倒ですねー) 尭深(なんであんな……) 実況「竹井選手が和了ました。いや、長野の時も思いましたがよくアレで和了れますね」 靖子「おいおいまた腕上げたか?……」 尭深(清澄の悪待ちは分かってたけど、実際に相手すると少しやっかいだな……) 憧(うぅ……泣きたい……鳴けない……) 明華(ふむ……もう少しですかねー) 久「……ツモ!!」ヒュッ、バシッ! 憧(ま、また!?) 実況「前半戦終了!!トップは依然白糸台ですが、清澄みが追い上げてきています」 靖子「ふむ……あの卓で唯一の3年生だしな。やはり気持ちも経験も違うと思うよ」 実況「気持ち……ですか。全国の決勝なのに?」 靖子「3年生と1、2年生はそれだけで差ができるものだ。もっともそんなこと関係ない奴もいるがな」 靖子「さて、このまま清澄が行くか、他が止めるか、見物だな」 久「ふぅ、やっぱり手強いわねー」 まこ「何言っとるんじゃ」 久「あら、来てくれたの?」 まこ「ほっとくわけなかろう。ほれ」 久「ありがと……ねぇ」 まこ「なんじゃ?」 久「もう、次の半荘で終わっちゃうのよね」 まこ「……まだじゃろ。その後和と咲が打って、優勝してからじゃろ?」 久「……そうね。なんか、もっと打ちたいなーってね」 まこ「まずは今打たんとな。大丈夫か?」 久「ええ……ありがとね」 まこ「優勝してから言えっての」 久「あはは」 尭深「お茶の補充を……」 誠子「はい、これだよね?」 尭深「ありがとう……これで後半も」 淡「後半こそ天和?」 誠子「そこから離れろよ……」 明華「清澄に追い風が吹いてますね」 ネリー「あの人変な待ちばっかだけどねー」 智葉「それで和了ってんだからたいしたもんさ」 ハオ「対策は?」 明華「やられる前にやる」 ダヴァン「なんですかその(物理)っぽいの」 明華「大丈夫です」 憧「ああああ、全然和了れない……」 穏乃「し、しっかり!」 宥「ほ、ほら、また運分けるよ~」抱きしめる 玄「わ、私もドラを」抱きしめる 憧「……なんか負けた気がするから2人で来るのはやめて!」 穏乃「負け?」 灼「あぁ……うん」ペタペタ 晴絵「ちょっと鳴けないのが辛かったね……」 憧「後半で巻き返してやる!!」 憧「チー!」 明華(鳴いて速攻……前半では目立ってませんでしたけど、さすがに終始静かなままとはいきませんね) 久(でも、今は東4局……ここは阿知賀に和了って貰った方がいいかしら) 憧(今度こそ、先に和了ないと……) 尭深「……ツモ」 憧(うわ……やっぱ泣きたい) 実況「ここで渋谷選手が役満を和了りました!!」 靖子「この選手もよく役満を和了るな……これはこれで怖いな。直撃したらと思うとゾッとする」 憧(……このままいいとこ無しなんて、終われない!!) 明華(なーんか私終始地味ですねー。しかももうオーラスだし) 久(また役満とか勘弁して欲しいわ……) 憧「チー!」 尭深(阿知賀?……でももう少しで和了れる……)タン 憧「ロン!!」 憧(最後の1回くらい、もらう!) 尭深(……もう少しだったのに) 実況「中堅戦終了!!最後に阿知賀が白糸台から直撃を取りました」 靖子「危なかったな……もう少しで役満だった。阿知賀の選手は最後によくやったよ」 靖子「ところで…」 実況「カツ丼は無いですよ」 靖子「……ファミレスでも行ってくるか。衣誘って」 実況「いや、せめて試合終わってからにしましょうよ」 中堅戦結果 1位白糸台1591+321=1912 2位清澄807+475=1282 3位臨海765+251=1016 4位阿知賀502+303=805 前話 次話 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6316.html
「で、次はここか」 礼儀正しくラーヌン次郎をペロリと平らげた淡に連れられて、京太郎はゲームセンターに来ていた。 「そうそう!麻雀ばっかしてちゃ麻雀だけの麻雀人間になっちゃうよ!アラフォー待った無し!」 「んー、確かにな……しかし、でかいな」 長野にこんなでかいゲーセンはなかったなーとおもいつつ、そのあまりにもやかましい店内へと二人は足を踏み入れた。 ゲームセンターの中は予想よりもだいぶ騒がしかった。 都会のゲーセンは二階三階とあるのか……と京太郎はギャップを感じる。 「しかし、来たはいいけど俺はあんまりゲームは得意じゃないんだよな」 「そうなの?」 「外で遊ぶほうが好きだし」 「……なんで麻雀部入ったの?」 呆れた目で見られるが、入ったのだから仕方がない。 「じゃあわたしがよくやるゲームを一緒にやろう!んふふ~、ずーっと麻雀の練習ばっかでしばらく来れなかったから久しぶり~」 「やっぱ名門校は練習キツイのか」 「キツイっていうか、長い!」 ウガーッと淡は不満を漏らす。長い練習をキツイというのではないのかと思ったがたいした問題でもないと思い聞かないことにした。 「えーと、あった、これこれ!」 先を歩いていた淡がビシッと指をさした。その先を見てみると、なにやら洗濯機のようなピカピカ光る機械がある。 「……なんだこれ」 「マイマイ!」 「……あぁ、前行った時に誰かがやってたよーな」 淡は早速チャリンとコインを投入し機械の前に立った。 そしてじっと京太郎を見てくる 「やらないの?」 「え?俺もやんの?」 「空いてるんだしやろうよー」 「お、おう……ここか」 京太郎はいわれるがまま淡と同じように隣の機械にも100円を投入しその画面の前に立った。なにやら淡がニヤニヤしている。 「じゃあシンクロモードでプレイしようね」 淡が勝手に画面をタッチしてモードを選択していく。なにやらよくわからない、初めてプレイするゲームなので任せるしかなさそうだ。 「じゃあ簡単な歌曲で練習!がめんのマーカーに合わせてタッチするだけだから簡単でしょ!」 「そうか?まあやってみるか……」 そしてゲームが始まり曲が流れ出す。すると中央の画面に言われた通りマーカーが現た。チラリと淡を見ると、外側のラインに触れた時にタッチしている。見よう見まねで京太郎もやってみる。 「お」 そのままゆったりとしたテンポでマーカーが流れ続けてくる、要領をつかんだ京太郎は曲に合わせてマーカーを押し続ける。 (しかしこれは……恥ずかしいな) 誰が見ているわけでもないが、まるで踊っているようではないか、と思いつつも、一曲が終了した。 「はい終わり。どう?簡単でしょ?」 「まぁ、そうだな。でもお前よくこんなのやれるな……」 「人の目なんか気にしない!さ、次やろ次!次は少し難しいのやろう!」 画面をカチカチと押している淡は楽しそうだ、付き合ってやるのも悪くはないか…… 京太郎は画面に向き直る。次の曲が選択されたようだ。曲名は……LUCIA? 「ふう、クリア~。……あれ?!クリア!?きょーたろークリアできたの?!」 「やっぱお前すげー難しいの選びやがったな!?死ぬかと思ったぞ!?」 「えー……京太郎えー……なにその才能、そこは失敗するとこでしょー……」 「言いたい放題だなこんにゃろめー!」 「ギャー!グリグリやめてぇ~!」 じゃれ合いながらゲームを離れ、次は麻雀ゲームをやることになった。 「えー、ここまで来て麻雀?」 「いいじゃねーか別に、初心者潰しの大星さん」 「ごめんってばー」 反射神経が疲労しきった京太郎はドスッとゲーム機の前の幅広の椅子に腰を下ろした。 「ちょ、つめてつめて」 「え、お前ここ座んのかよ」 すると淡は京太郎をぐいぐいと押して、無理やりに同じ椅子に座り込む。 二人なら問題なく座れる椅子ではあるが、画面を覗き込むと体が密着しそうで落ち着かない。 「ん~、じゃあへっぽこな京太郎には私が指導をしてあげよう。光栄に思いたまえ」 「はいはいありがとさん……」 チャリンとコインを投入し、画面をタッチして対局画面へと移っていく。隣の淡はなんだかんだといいつつ楽しげに画面を見つめている。 「ふふー、頑張ってねきょーたろー」 「おう」 「ねー京太郎」 「ん?」 「京太郎の麻雀を始めたきっかけってなに?」 「あー、それはなー……」 「あ、それ鳴いて」 「え、マジ?……入ったきっかけなー、麻雀部に好きな子がいたからだ」 「なにそれ」 「いやマジで。中学の頃までは運動一筋だったんだけどさ、同学年でスッゲー可愛い子が、麻雀部に入ってさ、お近づきになれればなーって……お、ツモった」 「なにそれ、不純」 「男なんてそんなもんだ。で、まぁ、それでやり始めたんだけど、案外面白くてな」 「ふ~ん……へんなの」 「なにがだよ」 「その割にはガッツあるなーって……私にボコボコにされれば、すぐに心折れて、少なくともその場では麻雀やめる!とか言い出すかと思ってた」 「いいたかないけど負け慣れしてるからな……」 「ダサいよー」 「うっせー」 「……ここは三索か?」 「三色の目あるんだからもったいないでしょ、もっと欲張りなよ」 「そ、そうか……で、淡はさ、どうだ」 「なにが、麻雀始めたきっかけ?」 「いや、そうじゃなくて、麻雀って楽しいか?」 「……え?それ聞く?普通同じ質問返さない?」 「聞きたいんだ」 「別にいいけど……楽しくなきゃやってないでしょ」 「やっぱ強いし楽しいか」 「そりゃね。負けることもたまにあるけどだいたい勝てるし……」 不意に、淡の顔が俯いているのが視界の端に移って、京太郎はそちらを見た。 「でも、ね、昨日は……相手も強くて楽しかったんだけどさ、すごく悔しかった……」 「……そうか」 再びゲーム画面に顔を向ける。そこから淡のアドバイスは終局まで入ることはなかった。 「今日はお疲れ様」 「おう」 ゲームセンターを出た二人は、帰り道を行きながら話していた。先ほど浮かばない顔をしていた淡もいまはすっかり明るい表情だ。 「本当楽しかった~。しばらく息抜きできなかったからさ!」 「いつも緩みまくってる気がするけどな」 ルンルンと広い歩幅でゆったり歩く淡の姿を見ていると京太郎も心が和む。こんなにも凛とした美貌なのにどうしてこうも癒しオーラが放てるのか、不思議でならない。ふだん幼馴染のポンコツを眺めていると余計にそう思う、あれはあれで可愛いが。 「……それにしてもさ、知り合って3日目なのにこんな風に仲良く遊ぶって不思議だよねー」 「お前が人懐っこいからだよ」 「犬みたいに言うなー!」 ポスポスと叩かれるが全く痛くない。淡のいう通り、知り合って3日目だというのに既にこのさっぱりとした子供っぽい性格の淡に、京太郎は心を許していた。 そして、二人の帰路の分かれ道へと差し掛かる。 「じゃ、ここでお別れ」 「そうだな」 「えーと、お金返したし、忘れ物とかないし……よし、大丈夫。じゃあ、ばいばーい京太郎」 淡は軽く手を振って沈みかけた夕日の方へと歩き出した。 揺らめく金の長髪がまさしく黄金色に輝いて、その性格とは裏腹の神々しさを醸し出す。 思い立って、京太郎は声をあげた。 「淡!」 その声に反応して、淡は振り返る。小首を傾げて、なんなのか、と問いかけてくる。 「明日の、清澄と白糸台の決勝線さ!」 「絶対に、清澄が勝つぜ!」 自分のことでもないのになにを偉そうにと自虐しながらも京太郎は自信満々に言い切った。 その言葉を受けて、少し呆然とした淡も、段々とその口角を上げて、悪役っぽい顔をする。 「いーや!勝つのは私!」 自信満々に言い切った後、再び背を向けてズンズンと淡は去っていった。 「……」 そして、京太郎も、淡と反対方向、夕日に背を向けて歩き出した。 翌日、インターハイ団体戦の決勝戦。 より一層多くの観客が詰め寄る中、清澄の控え室は緊張に包まれていた。 「……もう少しで開始だな」 「おう……」 「……おい優希、これみてみろ」 「お?……あー、タコス」 「お前ガラにもなく食べるの忘れてたぞ、食べなきゃ力がでないんだろ?」 「おう!気が聞くじぇ京太郎!……んー!うま!」 「俺の謹製タコスだ……それくらいしかしてやれねーからな……勝てよ、優希!」 「……任せとくじぇ!」 「……ふぅー」 「三連覇がかかると、さすがに緊張するか?」 「……」 「それとも、妹か?」 「関係ない……私は、ただいつも通り……勝つだけ」 「……任せた」 「任せといて」 決勝戦、先鋒戦開始 …… ………… ……………… 重苦しい、沈黙。緊張感の張り詰める控室。 「ゆーき……」 緊張した面持ちで和が見つめる画面には、対面で宮永照と対峙する優希の姿があった。 東4局、親番は照。 一言で言うと最悪である。宮永照との対局においてラス親を取られるのはほぼ負けを意味している。 もはや暗黙の認識と化している宮永照の能力、打点上昇ツモと《照魔鏡》。相手が起親で親番を潰すのが最高である。、その真逆はやはり最低である。 しかし優希は引き下がらない。点数98300点。まだまだ負けていない。 だが、長い南場が待っている。 「……お姉ちゃん」 咲が、ぼそりと呟く。 まさしくここで決勝戦は最大の山場を迎えている。 優希は、勝てるのか。 「……ん?」 不意に京太郎のポケットが震える。マナーモードにしてあるスマートフォンが震動したのだ。 画面を開くと、LIMEのようだ。差出人は、大星淡。 『やっほー。今控室だよねー?ねぇ、先鋒戦がどんな風に終わるか予想しあおうよー 私はねー、白糸台以外マイナス!どうー?(#′∀')』 「……」 京太郎は、黙って返信文を書いた。 『余裕だなおい。そうだな、俺の予想は……白糸台が一位で、清澄はプラス収支だ』 送信…… すぐに返信が来た。 『えー?そこは清澄が一位っていうところでしょー?(・3・)』 すぐに、返信 『まぁそれが理想だけどさ……あの清澄のタコスは昨日俺のアイスを奪いやがったからな。それに……』 文を書き終えて、京太郎は再び送信を押す 『点数負けてても、あんまり関係ないんだ』 ……変身は、来ない お人好しが過ぎると、京太郎は皮肉に笑う。 画面の向こうでは、優希が宮永照に直撃をかましていた。 (っ……食いついてくる) 宮永照は、清澄と阿知賀のタッグに苦戦していた。 実に理にかなったコンビ打ちを展開されて、上がる前に潰されている。 松実玄の力で、ドラは誰の手にも行き渡らない。 優希はその類稀なる集中力と運で、宮永照に食らいつくもあと一歩、いや、二歩。であれば、二人でやることは簡単だ。 優希は、ドラとは無関係の場所で手を作り上げる。 玄は手の内にドラを溜め込み、優希の欲しがる牌を切り鳴かせる。 単純だが強力だ、玄の一押しが優希を宮永照に喰らいつかせている。 (気があう人でたすかったじぇ……さて) 阿知賀の方にウインクをしてから、優希は宮永照へと向き直る。ここまでやってまだ五分だ。いや、少し不利かもしれない。 しかしこれなら十分勝てる。優希は深く深呼吸をし、改めて卓上を見渡した。 (負けるわけにはいかないじぇ!この優希様が点を稼いで、みんなを有利になるにスタートさせなきゃならないんだからな!)タンッ 「ロン!」 「あ」 臨海に直撃させられた 混沌とした、先鋒戦、終了 白糸台は一位通過で、122500点 清澄は100200点。 今までの試合と比べると白糸台のリードが明らかに少ない。 会場内は騒然とした。 「うぬぬぬ……ただいまー」 「ゆーき!」 「おわーっ!?」 部屋に入ってくるなり感極まった和に優希は抱きつかれた。顔が胸に埋もれている。 「すごい!すごいですゆーき!あんなすごい麻雀!」 「むぐぐぐ……ぷはっ。うー、でもかなり離されちゃったじぇ……」 「何言ってんの、上々よ」 「うん……お姉ちゃん、すごく悔しそうだったし。すごいよ優希ちゃん!」 「そ、そう?へへ……まぁ、この私なら当然!」 えっへんと胸を張る優希は、そのまま京太郎に向き直った。 「京太郎!お前のタコスの力もかなりあった!たすかったじぇ!」 「へへ、早起きした甲斐があったってもんだ」 あの宮永照相手にプラス収支で二位通過、湧き上がる面々をよそに、のっそりと染め屋まこが立ち上がった。 「おう、ようやったの、優希……ほんじゃ、わしはこの荒れた場をフラットにしてこようかの」 「まこの胸みたいに?」 「張り倒すぞおどれ」 「っ……」 「何を落ち込んでるんだお前は、ダントツ一位だろう。その顔見せたらさっきの先鋒のメンバーにすごい嫌なもの見る目で見られるぞ」 「いや……落ち込んではいない。ただ疲れた」 「ほう」 「あそこまで、喰らいつかれたのは久しぶり……まぁ、楽しかった」 「……うん、そうか。さて、私の番か……苦汁を舐めさせられたからな、準決勝で。名誉挽回と行こう。照のリードをより磐石にしなければならないな」 「スミレ~がんばってね~」 「菫せ、ん、ぱ、い。淡、阿知賀と清澄の対象の牌譜見ておけよ」 「は~い」 (読まないなあいつ……) 「……お」 またも、淡からのLIMEが届いた。 『う~、京太郎やるじゃん!』 『どうだ、俺の戦況千里眼は!』 『千里眼ってなに?千里山の親戚?』 頭を抱えた。 『千里眼ってのは千里先まで見渡せるほどの視力って意味だ』 『せん……なに( ・・)?』 『せ、ん、り!』 『距離じゃん、未来じゃないじゃん(′・3・)』 『戦術ってつけたろーが!』 素直に戦術眼と書けばよかったと後悔。予想以上に手間取らせる。 『それより次峰戦の予想!私はねー、白糸台が一位でドベは阿知賀!』 『おうそうかいそうかい』 チラリと画面を見て、返答 『阿知賀は二位かな、俺的には』 (あー、なんじゃろーなこれ) まこは頭を抱えたくなるような無茶苦茶な卓上を見た。 そして、対局相手たちを見る。 松実宥、そんな格好をして頭が茹らないのか、問い詰めたい。 弘世菫、お前こっち見ろ、うちは二位だぞ。阿知賀ばっかみんな。あ、みた。 慧宇、お前は……まぁよく知ってる。一回やったし。 (なんじゃこれ) 頭を抱えたくなる。なんと混沌とした場か、面子も卓上も。 自分が地味に見えてくるから困る。緑髪だぞ緑髪。 (しかし、ま) 眼鏡を外し、卓を見つめる。 (やることは変わらん) 牌をきる。 (だいぶ、なんというか、見たこともない表情しとるけどな?ご機嫌とりは、いつもの通りやればええ) (逃がさんぞ松実宥) 弘世菫は若干頭に血が上っていた。対面に位置する松実宥にただならぬ熱い視線を送っている。無論、あれじゃない意味で。 (無論これはチームの勝利を目指している。そのためなら感情を殺すべきだ、しかし……) 感情論を切り捨てては麻雀は勝てない、一度ならず二度までも躱してのけた松実宥に直撃をとらなくては、この劣等感が対局中ずっと足かせになる。 (必ず射抜 抜いて見せる、必ず) 神経を集中させる。名門校のプレッシャー、三連覇のプレッシャー。勿論、ある。 しかしそれすら一瞬忘れた。稼いでくれた友のため、後に続く後輩のため、この戦いは負けられない。 (清澄のはまだ手ができてはいない雰囲気だ、臨海もあと少しといったところが、なら、狙い撃つ!) 弘世菫は、狙いを定めた松実宥の捨て牌をみて、最高の待ちで満貫の聴牌を作り牌を切り出した 「ポン」 「!」 上家の清澄が鳴く。 (くっ、しかし、阿知賀までツモが回れば!) 「ほれ」 「あ!」 「ロン、5200」 阿知賀が上がった。清澄の捨て牌で。 ほいほいとまるで気落ちせず清澄は松実宥に点を支払う。 (……なるほど、強敵じゃないか、清澄の……染谷まこ!) 弘世菫の、視線を感じ、染谷まこは少し笑った。 白糸台、123800で次峰戦を終える。 対して阿知賀、点数を10万点代まで回復させる。 清澄と臨海はもつれ合う形でわずかに臨海が上。 「帰ったぞー、いやーすまんの優希、お前さんの点棒まいてきちゃった」 「先輩……すごく意地が悪い麻雀だったじぇ……」 「まーこー……あなた白糸台への嫌がらせに集中しすぎじゃないのー?」 「しゃーないじゃろ怖いし、調子づかれて突き放されるよりなるったけフラットにフラットに。だいたいこのくらいの点差なら……お前さんら勝てるじゃろ」 まこは、三人に目を向ける。 竹井久、原村和、宮永咲、この三人ならきっと追い抜ける。 「わしの役目は、射程圏内で耐えることと、相手をぐしゃぐしゃにかきみだすこと……あとは任せたぞ、久」 「……まっかせときなさい」 「やられた!!まんまとやられた!!!!」 「お、落ち着いてください部長」 「落ち着けるか!染谷まこめ……私が狙い撃つ相手全員に自分で振り込むし!いざ染谷を狙ってみよにも上がりを目指さない上がり方のせいで手が読めない!」 「……おそらく白糸台を独走させないために、あえて自分の点を吐いて菫のペースを乱してた。自分が上がる気がないんだから、当然相手はいろんな牌を持てるしひらひら逃げられる」 「ウグググ、悔しぃ……!!」 「部長キャラ崩壊してます……」 「あっはっはっは!スミレおもしろーい!」 「うがあああ!!」 「ギャー!?暴力はいけません~!!スミレのアホー!」 中堅戦 清澄の部長竹井久、ついに憧れの舞台に立つ。 (やば……すごい緊張する) なんせ悲願の優勝がかかった試合だ、今までよりはるかに大きい重圧がかかる。 (でもまぁ……後輩にかっこいい先輩の姿を見せつけるラストチャンス!怯えず行くわ!) しかし久は引かない。強い気持ちで手を作っていく。 新子憧、渋谷尭深は、確かに強敵ではあるが、他と比べれば火力はマシだ。 問題は、雀明華。自風を使って速攻で上がられると、瞬く間にオーラスに突入してしまう、そしてそのオーラスは渋谷尭深の本領。 それまでに、何としても点を稼ぎたい。 (どう戦おうかしらー……) んーと、少し考える。 そして、控え室のメンバーのことを思い出して、少し笑う。 (……かっこよく戦いたい。自分の好きなように、自分が楽しめるように、誇れる麻雀を) きっと前を向く。かわいいかわいい後輩連中の目にやきつけよう、この戦いを。 「……ツモ!」 我らが大将咲、頼れる副将和、信頼するまこ、かわいい優希、面倒かけてしまった京太郎。 全員を思い、久はいつも通りに派手なツモ上がり(モーション的な意味で)を決めた 一方京太郎は控え室から抜け出てトイレへ向かっていた 「あーちくしょう!緊張して飲み物飲みすぎた!」 自分が戦っているわけでもないのに京太郎はいつの間にか2リッターのミネラルウォーターを飲み干していた。 それに気づいた瞬間尿意をもよおす、しかも強烈。 そのせいで京太郎は久の想いが詰まったツモを見逃した。運のない男である。 「くっそー……どうしてこう締まらないかねー」 小便器に用を足し、急いで手を洗う。 男子力高めな京太郎はしっかり隙間まで、液体石鹸を使って洗い流した。 「さてと!すぐさま観戦に!」 トイレを飛び出し、いざ走り出す!目的地は清澄控え室!目標は試合観せ…… 「うはぅ!?」 「ぐおっ!?」 腹に、何か突き刺さった。 おそらく金色のものと視認したそれは走り出さんと身を乗り出した京太郎の硬い腹筋にドスリとめり込む。 カウンターの要領で名状しがたい金色に頭突きをもらった京太郎は二、三歩後ずさり、青い顔をして腹を抑えた。 「うっううぅ……ご、ごめん、前、見てなかった……」 「いや、俺も走ってたから……」 お互いくぐもった声で謝罪をし、お互いを見やる。 「……ん?京太郎じゃん」 「……淡?」 「ここでいいか」 「うん、オッケーオッケー」 そのあと、控え室に戻ろうとした京太郎に淡は、一緒に試合を観戦しようと持ちかけた。よって今二人は、大型モニターの備え付けられたスペースにいる。椅子は埋まっているため、壁に寄りかかる形だ。 「いやー、スミレを怒らせちゃってさー。大将戦までなるべく外にいようと思って」 「呑気すぎるだろ」 画面の向こう側では、控え室で後輩達が勇姿を見ているだろうと信じて戦う久が映っている。 その内の一人京太郎はその久の対戦相手の高校の大将とだべりながら見ているが。 「てゆーかー、京太郎勘鋭すぎー。この淡ちゃんより予想を当てるなんて、生意気だぞー!」 「理不尽な……」 プンスカ怒る淡を横目で見て、京太郎は苦笑いした。 「別に、勘が鋭いわけじゃねー。それなら麻雀弱いわけないしな」 「あーそっか」 「納得すんのな……俺は、ただ単に清澄に都合がいい展開を予想っぽく言ってただけだ」 「都合がいい?四位なのに」 「チーム戦だからな」 久が白糸台から直撃をとった。点数はそれなり、一気に差を詰める。 「わお。たかみーから直撃って、やるー。てかなにあの待ち」 「そういう人なんだよ。守り硬い相手の方がやりやすいんだ」 適当にだべりながら、試合を観戦する。画面の向こうで1回目の半荘が終了。風神こと明華が白糸台の大物手を阻止する。 「あーたかみー!」 「相性悪いな、ありゃ」 「うわー、点数が10万点だいに……でもいーもん!私が取り返すもんね!」 ふふーんと淡が胸を張る。 「そこ、ふつーは大丈夫かなーとか不安に思うとこじゃねーの?」 「高校100年生に負けはない!」 ふんすと語る淡の目に揺らぎはない、本当に、自分自身の実力を信じているのだろう 「チーム戦だぜ?これ」 「? 負けてても、私が取り返せばいーじゃん。大将の役目でしょ?」 「勝ってたら?」 「勝ってたら、ぶっ飛ばすまであがる!」 「なにもかわらねーじゃねーか戦法!」 「なにさー!よーはアガらせずにアガればいいんでしょ!私にはそれができる!」 再びふんすーと鼻を鳴らす。 京太郎は苦虫を噛み潰したような表情をした。 「……淡、俺の予想を教えてやろうか」 「予想?」 「多分な、白糸台は結構リードして、副将戦を終える。二位は清澄だ」 「ほほー」 一息、ついて 「……で、お前は、咲に負ける」 告げた。 「……ほっほーん」 結構カチンときたようだ。淡がメラメラと瞳の炎を燃やして見上げてくる。 「えーつまり、この淡ちゃんが、そのサキに、大きな点差ごと捲られて、逆転サヨナラ負けを喫すると」 「そうだ」 「……んにゃわけあるかー!」 淡は吠えてシュバッと京太郎の背後に周りベチベチと背中を叩いてくる。 「いててて、やめろ!」 「生意気だぞー京太郎のくせにー!てか、バカにしすぎー!」 フンッと今度は不機嫌に鼻を鳴らし、淡はきっと睨んできた。 「そんなに言うなら見てるがいい!この淡ちゃんがアッショーしてきてやるから!そしたら京太郎サーティーワンおごってよね、3段で」 何度目か、淡は鼻をふんすとならしてずかずかと歩き去って行った。 「……」 京太郎は、その背中を、少しばかり、心配そうに見つめた。 「で、須賀君は私の勇姿を見てなかったのね~……」 「いや、見てましたって!」 「よそのモニターで、いざこれから戦う高校の大将と駄弁りながら?」 「」 ものすごい勢いでいじける久に京太郎は徹頭徹尾謝罪する。 あのあと、対局を終えた久に優希が何やらチクったのだ。 どうやら飲み物を買いに出たら淡と喋って観戦していたのを見ていたらしく、それを聞いた部長は至極不機嫌である。 対局の結果は、白糸台が137000 、その他の高校は全員10万を下回るが似たり寄ったり。 三校で渋谷尭深を徹底的に狙い撃ち、一時白糸台は4万点近くまで点数を落としたが、ラス親の尭深はわずか三巡で四暗刻字一色を完成させる離れ業を披露、全校から大量の点棒を抉り取り、結局はプラス収支で終えてしまった。 「くっそー、泣きそうな表情になるもんだから油断したらこれよ、これも全部須賀君の仕業よ」 「なんだって!?絶対に許さないじぇ京太郎!!」 「それ俺かんけーねーし!!」 いじいじし続ける久と弄られる京太郎を他所に、原村和は準備を始めていた。 「……負けられませんね、せめてトップとの点差を10000まで縮めます」 「うん、頑張ってね!」 「もちろん、負けるわけにはいきませんから」 落ち着いた表情で、和はほかのメンバーを見渡した。 「みなさんから受け継いだバトンを最高の形で咲さんにつないで見せますよ」 「ふぅ……なんとかなった……怖かった……お茶……」 「さすがだね尭深、いや、相手の顔!いい気味だったね!」 「2人のために、しっかりと点を取れてよかった」 「相手にとっては、たぶんトラウマになる。だって、三巡で32000点オール、もはや神業」 「ど、どうもです」 「淡はまだ帰ってこないのか!」 「ダイジョーブですよ部長、なんやかんや割と余裕を持って帰ってきますって。さて、行きますか……準決勝の汚名を返上しなくちゃ」 「……あんまり気負わないで」 「ん、ありがと」 「……」 ちらりと、スマホを見る。LIMEはこない。淡はヘソを曲げに曲げたらしい。 おそらくあの調子で、決勝に望むことだろう。 京太郎は心配である。 別に心配することではないはずなのだが、とにかく心配なのだ。 恐らく淡はひどい目にあう。この、大舞台の、締めくくりとなる対局で。 しかし今はそれよりも和のことだ。 画面の向こうですでに対局は始まっている。いつも通り、静かに正確に手を進めていく和。 原村和にとって、対戦相手というとは実のところ、さほど重要ではない。 和にとっての麻雀とは、全員が同じ条件のもとで、運に左右されながらも、知略の限りを尽くし、できる限りの最良の道を選び続けるゲームだ。 無論、対戦相手の癖とか、そういうのはかなり重要な情報ではあるのだが、和はそれよりも、とことんデジタルに、とことん合理的に、低い確率よりも高い確率を、低い効率よりも高い効率を。 (配牌で暗刻がふたつ……両方筒子ですか) それ以外もそれなりにまとまっている。向聴数こそ並の三向聴だが、高めを狙えそうだ。 一瞬で計算を済まし、最も不要な牌を切り出す。 そして、対局相手を見る。 臨海のメガン・ダヴァン 白糸台の亦野誠子 そして……阿知賀の、鷺森灼 部長曰く、全員が不可解奇妙な「パワー」を持っているらしい。 (そんなオカルトありえません……が) 普段なら、バカバカしいと一蹴するが、和は、考えを切り替える。 オカルトは信じないが、打ち回しに独特の癖があるというのは事実だろう。 だったら、それを見咎めない手はない。 和は、ただ淡々と、手を作り上げる。 恐ろしい速度で 「ツモ」 7巡目、裏目もなく、最高の牌効率で打ち回した良配牌は、素晴らしいスタートを切らせてくれた 「2000.4000です」 (……強いなー) 亦野誠子は、ため息をつきたくなった。もちろん対戦相手に失礼なので実際にはしない。 (……綺麗な手を作るな、無駄も一切なし、最短距離を突っ走る) 門前で上がったことがない自分からすれば羨ましい限りである、その運を、少しよこせ、あと胸も (いや、運の問題じゃあない) 自分の手に、向き直る (役割を果たせ) 現在白糸台は135000、他は全員マイナスで、4万近く突き放している。 ダントツで有利だ。このまま淡にバトンをつなげば、その圧倒的防御力とスピードと火力、つまるところパーペキな淡ならばきっと勝ってくれる。 (つまり、私のこの対局結構重要じゃん) 「ポン」 化け物どもを相手に、立ち向かう (このままじゃ終われない) (汚名返上の最後のチャンス、ふいにしてたまるか) 「チー!」 二副露、あと一つ (綺麗にまっすぐ上がりを目指してくれて助かる、切る牌を結構絞れるからな) 「ポン!」 三副露 「ツモ!1000.2000!」 「亦野、よくやった」 「あはは……汚名返上には少し、地味すぎ、ましたかね……?」 「お疲れ様、誠子ちゃん……はい、お茶」 「ありがと……」 「……さすが、白糸台の副将」 「よしてください、先輩……あれ?淡のやつは?」 「ここだよーん!」 「うわ!おま、どこから!」 「ロッカー!!」 「狭いところが落ち着くのって、なんだろうね、あれ」 「やめろ照。……ていうか淡お前なぁ……いや、なんかもういい」 「へへーん、見てたよー!すごいじゃん!でもこれじゃあ余裕すぎて私の見せ場ないかなー?」 「……準決勝で苦労させたからさ、少しでも楽になってくれれば気が楽になる……準決勝でも言ったけどさ、頼んだよ淡」 「まっかせときなさーい!高校100年生のこの大星淡様が!」 「……清澄に、ひいてはその中の一人金髪のデクのボーに思い知らせてやる……!!ケケケケケケ!!!」ユラユラユラァァァ 「……金髪のデクのボー?」 「誰のことかな?」 「……さぁ?」 (もしかして自販機に頭ぶつけてたあの男子か?ていうかあいつすでに髪がユラユラしてるぞ、地味にこのssで初の「」の後の擬音じゃないか?) 「……」 京太郎は画面を見つめる。 すでに、大将の四人がそろい踏みだ 起親、高鴨穏乃から順に、咲、ネリー、そして大星淡である。 全員がスタートを待ち、卓上に視線をおろしている。咲はああ入ったもののこの大舞台で死ぬほど緊張しているだろう。 ……と、思ったら淡がちらりとカメラ目線になり、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。なんとなくこちらを見たような気がして少し後ずさる。 (はは、おっかねーおっかねー) 実は淡が入場する直前、京太郎のLIMEに淡からトークが届いていた 内容は『この私のアイス好きをなめるなよ、破産させるまで食ってやる!(#`д′)』 なんとも、腹に据えかねているようだ。それはもう、ものすごく。 京太郎は、今更それに返信をした。今は試合中、淡もマナーモードにしているはずだ。 文を書き終え、送信。 『テレレレテレレレーン』 『あ、マナーモードにしてないや、ごめんごめーん!』 「……」 絶句 (俺悪くねーよな?) 少し冷や汗をかいたが、気を取り直す。 ポケットにスマホをしまい、再び京太郎は画面に集中した さて、と 淡は卓上を見下ろした。 淡はラス親であり、起親の高鴨穏乃が元気よく牌を切り出したところだ。 準決勝では苦渋を舐めさせられたが今度はそうはいかない。 メラメラと燃え上がるリベンジ根性を抑え込み、続けて対面。 宮永咲 静かに、素早く牌を切った。手慣れた手つきだ……当然か。 宮永咲、最近知り合って、結構気があう京太郎が言っていたが、私はこいつに、捲られて負けるらしい。 やってみろと、やれるもんならやってみろと、高らかに叫びたい。 点数はおよそ28.000点。そして、相手は必ず五向聴。こっちはダブリー『かけてもいい』 負けるものか、うち負けるものか。 髪がざわつく。意識を集中する。上家のネリーが切り出した。 淡、それを受けて改めて自分の手配を眺める。 ニヤリと少し笑い、牌を切り出した。 リーチは、しない。 「なんと……」 久は唸った。大星淡がダブリーをかけなかったことに疑問を覚えたのだ。 「戦略を変えてきたかの」 まこの指摘の通りだろう。淡は聴牌を崩しー向聴に戻す。しかし、役を絡めやすい組み合わせに近づけたようだ。 「驚くことじゃありません。あの手なら確かにダブルリーチをかけずに粘ったほうがいいですね」 和は苦々しい表情で言う。相手の出だしがすこぶる好調なのに対し、咲の手牌がバラバラなのが気になるのだろう。 「ダブリーは制約じゃないのか……」 優希が呟いた。あの能力はドラゴンロードのような『制約』がないようだ。すなわち、遅い相手を眺めながら手を組み替える余裕があるのだ。 「……」 京太郎、黙って画面を見つめる。焦りは、ない。 (いいじゃんいいじゃ~ん!) 大星淡は大変機嫌よく牌を切り出した。 4巡目、二向聴まで戻したが役が絡みドラなしでも満貫にてが届く。 そして、手元には崩さずにとってある暗刻もある。 倍満もゆめじゃな~いとウキウキしながら相手を待ち受ける。さあ追いついて見せろ、と。 誰も、リーチをかけない。 五巡目に入って改めて淡は卓上を見下ろす。ここからは油断しない。もしかしたら上がってきやがるかもしれないのだ。 捨て牌からはその気配はない。 ツモり、切る。手は進まながったが別に構わない。 カドまでまだまだあるのだから。 ~~~ (きたー!!) 「リーチ!」 高らかに宣言、リーチ棒をだす。 一応基本にならって、両面待ちの形にした。そして、次のツモ。 「カン!」 んでもって 「ツモ!」 淡はアガった。ところがどっこいカン裏がさっぱり乗らず、まさかの満貫そのまま。 (うぐぅぅぅなんでー!?) 満貫をツモあがりしたのに頭をかきむしる淡に三人の冷たい目線が刺さる。おっと失礼と姿勢を正し、気を取り直す。 (いいもんいいもん!上がったのは淡ちゃんだし!サァツギの局こそ……) . ¨  ̄ ̄ ¨ . . ´ `ヽ . ´ . ′ . / . ,′ ;. / / / { ニニ二三三二ニニ / / \ ニ二二三三三二二ニ / イ /\_ \ ___ ニニ二三三二ニニ ∠ イ | / ,ィ  ̄ ̄三三| ニニ三王 三l 三|ニニニ= | | |. 厶イ | i 二| 三トニ二三ト、三ト、 ト、ニニ= | |/ j j从| | |、 | | | ト、ニ王ニ{{ o }}ニ= | ! | ト、圦乂| 乂| \{ \| ヽ{ヽ{ イノ 乂_{ jハ 从イ/´ -=ニ`ト . - .イ二ニ=‐- 、_ r=ニ =ニ二|`ト _ . r |二ニ ニ7 }ニ〉 ハ マニ ニ二ハ !二ニ / / /ヽ. / Vハ \ ニ二ハー- -一 j二ニ / / / ∧ ′ \\\ ニ二ハ───‐/二ニ //イ / | \\\ 二∧ /二ニ ///,/ ,/ 1 | }八 {\\\ 二∧ /二 /// // ∧ | 「!?!?」 対面の視線……否、死線を感じ体が震えた。 おもわず目をそらしてしまう。 (え、な、なになに!?ちょーこわい!?) (あ、淡ちゃんは怯まないもんね!テルーの妹だとかなんとかだけど、そんなのカンケーないし!) その照が控え室で咲にたいそう怯えていることなどつゆ知らず東二局。 相変わらず淡は好調であり他家のスタートはやはり遅そうだ。 (ふーんだ、このまま突っ切って……) 「カン」 「っ」 対面、宮永咲のカン。 おそらく有効牌を引き入れられたと、直感が告げる。 (少し余裕なくなったけど、でもまあ有利なのは……) 「カン」 「ぅ」 三巡目、再び咲のカン。 「カン」 五巡目。またもカン、しかも全て暗カン。 おまけに、その五巡目のリンシャン牌。 「ツモ」 淡にとって完全に想定外、五巡目のツモあがり。 「三暗刻三槓子、リンシャンカイホー、満貫」 早い、強い。ドラが載ってないことが救いだ。 清澄との点差、咲の親満で縮まる。 咲は、すでに淡の急所を見抜いている……京太郎は悟った。 実は対局前に、淡攻略には簡単な抜け道があると言っておいた。どうやら見つけたらしい。 おそらく、ここから淡は相当苦い思いをすることになる。自分は聴牌スタート、相手は五向聴スタートで、自分の『遅さ』に苦しむ羽目になるのだから。 画面の中で、咲が左右の二人に目を運ぶ。その二人も各々を見合い、そして再び卓上を眺める。 スマとを開く。淡とのLIMEに当然、既読は付いていない。試合中だし。 「ポン!」 ネリーの牌に咲が無く。カンが積み重なり、淡の優位性が薄まる。 (カンでツモ増やして向聴数荒稼ぎとか、対抗できるかっつーのー!!もー!!) 淡はイライラしながら自分の親番の東4局を進める。手牌は相変わらず好調。ー向聴を維持しながら高めに作り変える。4巡目にして超良系の手が出来かけている。しかし 「カン!」 咲が、早い。恐ろしいほどの速度で手を作る。 理由は簡単だ。二人が、咲の鳴き頃の牌を切っている。 (私の点数を削りにきた……!!) 穏乃、ネリーの考えは読めた。防御力の異常に高い淡に手が届く咲に点数を稼がせ、その後に咲を削ろうという魂胆だ。そのために今は咲に協力しているのだ、『その方が手っ取り早いから』 (そんなのくやしーじゃん……!!) 強いから、警戒されているからこその作戦にしかし、まるで前座のように扱われてると感じ、淡はイラついた。そして、満貫確定の聴牌へと、牌を切り出す。 「カン」 (あっ) もちろん、相手の暗刻がなんなのかなど読めるはずもないだろう。しかし、やっちゃったと思わずにはいられない。 わずか五巡目で生牌を危険視など普通はしない。しかし、咲にその考えが甘かった。 「ツモ、リンシャンカイホー」 責任、払い 頭がクラクラする。 淡の総合能力は確実に咲に勝る。 しかし、他二人のブーストで、咲の火力、スピードが恐ろしいことになっている。 (勝てる?これ) 責任払いの5200、安くない。 己の中に生まれた不安をしかし、淡は強引に呑み下した。 (弱気なこと考えるな!負けるわけにはいかないじゃん!!) 三人が協力したからなんだ。そんなもの言い訳にはしない。私が優位なんだから目をつけられるのは当たり前。 (負けるわけには……!!) 焦る。最初にあった余裕など、最早かけらも残っていない。 …… ………… ……………… 食いしばった奥歯が痛い。ような、気がする。 半荘1回目が終わった。 死に物狂いで打って、上がったのは二回。 最初の満貫のツモ、そのあと、咲にたいしてなんとか3900の直撃。 しかし、点差はわずか7000点まで縮まってしまった。 強い。 顔を覆う。手の隙間から差し込む蛍光灯の明かりがひどく鬱陶しい。 強い。 このままでは凌ぎきれない。 どうしよう どうしよう 絶望が淡の胸の内を埋め始めた。 負けるのが、恐ろしい。 負けてしまう、恐ろしい。 悔しい、悔しい。 みんな、他のみんなは全員+収支で帰ってきて、私のせいで全て台無しになって、負けて いやだ いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ 「どう、しよう」 休憩時間は長くない。まだ余裕はあるが、二回目の対局が迫ってくるのが恐ろしい。 「……」 救いを求めて、スマートフォンを見る。周りに誰もいないいまこの廊下で、唯一、何かにつながっているモノだ。 すがるように、ホームボタンを押す。 LIMEが、一件 須賀京太郎 怖かったら呼べ 握りしめたスマートフォン。すでにスライドしてLIMEを開いている。 須賀京太郎が試合開始直前に送ってきていた短い文章が、他愛のない会話の一番下に表示されていた。 (……なんで、わかんのよ) 試合開始する前、というのが激しくムカついた。 私がこうなることを、見越していたかのようだ……いや、事実そうなんだろう。だって須賀京太郎、私が負けると予想していたのだから。 「……」 既読はつけてしまったが、無視してしまおうか。 気分転換で開いただけで、返信する気分ではなかった、言い訳はそれで済む。 不本意だが私は、凄まじい重圧に襲われているのが傍目から見ても分かるだろうから。 でも…… 「……」 指が、動く なんで、書こうか 偉そうに、とか、舐めるな、とか、憎まれ口でも送ろうか そんな心配は無用と、強がって突っぱねようか。 結局、打ち込んだのは、『助けて』と、たったこれだけ。 あぁ、情けない、一皮剥ければ私はこんなに弱かったのか。 視界がじんわりと滲んでくる。そして、震える指で、送信を押した。 途端、奇妙な電子音がなる。 「はいはい、呼ばれて飛び出て即参上」 音の方を振り向くと、いま読んだばかりのはずの、金髪の男がこちらへ歩いてきていた。 「ほれ」 何を言うでもなく、その大きな手を差し出してきた。見ると、そこには小さな棒付きキャンディー。 「脳みそってスゲー大食いな器官でさ、しかも甘いもんしか受け付けねーらしいぜ」 「……そうなんだ」 なんとも、どうでもいい豆知識を聞かされた。 くれるのだろうと思って、それを手に取る。包み紙をとって、口に咥えた。 ……甘酸っぱい、けど少しベタついている。 夏の気温のせいか。 「……びみょー」 「ははっ、まぁもらいもんの飴だからな、文句はその人に」 「もらったものを誰かにあげる?フツー」 笑う余裕がないから刺々しくツッこむけど、このノッポはどこ吹く風だ。 ーーー気楽そーな顔してさーーー 「……なんで、送ってすぐに来たの?」 「こりゃ呼ばれるなって思って。紳士たるものレディの呼びかけには5秒以内に応じるもんだぜ」 「ストーカー?」 「ちげーよドアホ」 「アホだと~?」 あぁ、全く、こっちの気分も知らないで 楽しそうに、話しやがってさ 「こっぴどくやられたな、どーだうちのタイショーは」 「……一対一なら勝てるし」 「それ麻雀じゃねーし。で、どうだ。言った通りだろ?」 「……」 「お前、うちのあのあれにまくられて負けるって」 ポンっと、頭に手が置かれて、撫でられた。言葉とは裏腹に、手つきは優しい。 「……なんで、わかったの?私が負けるって」 「そりゃあ、3人がかりで潰されるだろーなーーって思ったんだよ」 「……ふーん」 安直な答えを聞かされた。確かに、あの3人に事実私は追い込まれている。大ピンチだ。血の池の方が生ぬるい地獄だとすら思うも。 「それと……もう一つ」 スッと、頭から手が離れる。顔を上げると、こっちをじっと見つめていた。 「お前は、お前が負けるのを怖がってるから、負ける」 その目は、真剣だったけと言ってる意味はまるでわからない。 「なぁ、麻雀で勝つって、なんだと思う?」 「……そんなの、点数が少しでも高ければ勝つでしょ」 「そおーだそのとーりだ!たとえ百点棒一本でも多い奴の、勝ちだ。100点でも低けりゃそいつの負けだ」 何を、当たり前のことを。京太郎は続ける。 「そのルールのせいてで俺の部内の一年生四人の中では、トップ率はダントツドベの0.95だ。わかるか、10回やって1回目トップになれるかどーかだ。そりゃそーだ、何もかもが劣ってる俺があいつらに容易に点数合戦で勝てるわきゃないからな」 「何その自虐情けない」 「やめろ死にたくなる」 えらそーに語ってたかと思えば途端に顔を曇らせる。 「まぁともかく麻雀ってのはそういうゲームだ……で、淡、聞くぜ。いま、この麻雀で勝ってるのは誰だ?」 唐突な、質問。 何を変なことを聞いてくるのか、億劫な口を開いて答えてやる。 「そんなの……私だよ。7000点、上にいる、けど……」 「そーだお前はまだ勝ってる!お前の仲間たちが、稼いでくれたおかげでな」 その言葉に、四人の顔が思い浮かぶ。 四人は、必死でリードを広げてくれた。対策されまくって、まるで自分の麻雀を打てなかっただろう、それなのに、決して引かず、互角以上の成果を出さて、私にバトンを渡した。 でも、そのリードは、もう…… 「淡、お前が負けてるのは、お前が3対1に追い込まれてるからだけじゃねーんだ」 「……」 「お前は、麻雀の基礎を見落としてるぜ。大将戦が始まった時お前は28000点もリードしてた、それなのに、なんでお前は場をささっと流さなかったんだ?」 「それは……」 「こう考えてみろ、淡。28000点のリードってのは、仮にこれが個人戦だとすれば、お前は50000点だとすると2位は22000点っていう超超大差だ。おまけに実際は相手はまだ8万9万あるから箱割れにするのは難しい……だとすればお前がやることは一つ。速攻で流す麻雀だよ」 京太郎の顔は、真剣だ。 「そりゃ、早く上がれそうな高い手なら目指せばいいけど、普通はここまでの大差ならささっと鳴いて、パパッとクイタンなりなんなりで流したり、あるいは安めの相手にわざと振り込んだりしてもいい。お前は相手を無理やり遅らせられるんだし、相手が3人で挑んでくるならそれを潰すために早上がりに徹底すべきなんだ」 「なんでお前がそうしなかったのか」 「それはお前がこの大将戦を、チーム戦のラストじゃなくて自分一人の戦いとしか見てないからだぜ」 「っ!」 その言葉は、驚くほど強く、鋭く、私の胸を貫いた。 そんなことないと叫ぼうとしてと、声がでない。 反論したい、でも言い返せない、だってそれは、その通りだったんだから。 「お前は負けん気が強いからな……準決勝で負けたの悔しいって言ってたし。だから、この大将戦で自分も+収支で終わらせたかったんだ」 「……私は」 「そこが、お前の急所だった。高い手で上がって優位になりたかった、自分”も”勝ちたかった……そこが、相手を遅らせてなお食らいつく猶予を残しちまう、お前の弱点なんだ」 まぁ咲のあれはそれでも勝てるかどうか怪しいと思うけど、と、京太郎は顔を少し引きつらせて語るが、私は、もう何も言い返せなかった。 私は、私の勝手な欲望だけで、大局を見ずに、自分のことしか見ずに、その結果、みんなの稼いだ点数を無駄にしてしまった。 もう、ダメだろうか、勝てないだろうか みんなに会わせる顔が、ない 「……嫌だよぉ……」 言葉が溢れる、涙が出てくる。 「負けるの、やだよぉ……勝ちたいよぉ……!!」 私が勝ちたいんじゃない、チームで勝ちたいんだ、今更私はそれに、気づいた。京太郎の、言葉で でも、もう遅い、私のリードはもう少ししかない もう…… 「諦めるにはまだ早いと思うけどな」 すっと、前に何か差し出される。それは牌譜のようだ。 涙をぬぐって、差し出されたそれを見てみる。 「これ……牌譜のノート……?」 「さっき言った、うちの一年四人で打った牌譜だ……お前に見せたの内緒だぞ?部長に知られたら殺されちまう」 お前の偵察した詫びだ、と苦々しげに京太郎は言う。その牌譜に目を落とすと…… (……南3局で、京太郎…1300点?) 絶望的だ。ほぼ勝ち目はないしかし京太郎の南4局には、逃げ腰な姿勢は見当たらない、よどみなく、フラつきながらも上がりを目指している 「一位の和に役満直撃すりゃ捲くって一位だ、勝ち目はあった、まだ諦められなかったんだ、結局負けたけどな」 「さて……淡い、お前は今、どんな状況だ?」 私は……大星淡は今…… 「私は……みんなが、稼いでくれた点数のおかげで、7000点リードして一位。残りは半荘一回。私は、相手の手を6向聴まで遅らせられる」 なんだ、まだ、ぜんぜんやれるじゃん。すくなくとも、この男のこの牌譜よりも。 てゆーか、私、有利じゃん。なんで、不安になってたんだろ。 「……うん……うん」 立ち上がる。話してる間に、あと少しで第二回開始の時間が迫っていた。 迷いは、断ち切った。 不安は、投げ捨てた。 よどみなんて、もう、ない。 まだ飴はけっこう大きい。流石に咥えたまま会場には行けないから、口から出して、京太郎にもたせた。 「え、おま、これ」 「ありがと、きょーたろー。でも、敵に塩送ったこと、こーかいさせてやるから!!」 不安なんて微塵もない、支えてくれたみんなのおかげで、私はまだ有利なんだから、あとはそれを私が最後までつなぐ。つないで見せる! 「おい待て!ほら!」 ああなんだと言うのだ!大きな声で呼び止められ振り返る。ぬっと、ハンカチを差し出された。 「涙ふいてけ、顔ひでーぞ」 「……サンキュー!」 受け取って、今度こそ走り出す。 私は負けない、白糸台のみんなのために、そして、お節介なこいつからアイスクリームをおごってもらうために! 「勝つぞぉ!うおおおおお~!!」 「会場で叫ぶなって~!!」 ……
https://w.atwiki.jp/miyanagake/pages/27.html
1/3 158 照にあすなろ抱きされて耳元で囁かれる京太郎 159 照の誕生日京太郎独占 181 照の誕生日京太郎独占権プレゼント 永水編、宮守編ときたら次はきっと白糸台編……。 ちなみに今度のインタビューのテロップでは須賀照(予定)。 今日は咲の許可を得て京ちゃん独占の日。 忘れもしない。私と京ちゃんが初めてあった日のこと……。 あれは咲と和解して、咲が彼氏を連れてくると言った日だった。 『須賀京太郎です。 その、宮永咲さんとお付き合いをさせてもらっています』 『……そう。 京太郎くん、君が咲にふさわしいかしっかり見させてもらう』 『は、はい! あとこのゴディバのチョコを挨拶代わりに……』 『京ちゃん。結婚して』 『はいィ!?』 確かに『ハイ』って言ったのを覚えている。うん、言った。 ……冗談は置いておく。うん、冗談。 彼は私たちが出来なかった咲の心の隙間を埋めてくれた。 咲と家族になることによって、咲が求めているものを埋めてくれた。 咲から離れていた私に、何か言う資格なんてなかった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 2/3 「お義姉さん?」 京ちゃんは卑怯だ。 京ちゃんは咲が声をかけて欲しい時に声をかけてくれる。 お父さんが酔って弱っている時に一緒に酔ってあげる。 こうして私が声をかけて欲しいと思ってるときにも、的確に声をかけるんだから。 「なんでもない」 「なんでもなくないです。 ほら、仏頂面やめて」 むにゅ、と私の頬をつまんで横に伸ばす。 京ちゃん、既婚者がやることじゃないよ? 妹の旦那にそんなことされたら興奮しちゃうよ。 「京ちゃん。私を呼ぶときは照でいい。 『おねえさん』は嫌。それが誕生日プレゼントでいい」 「はぁ……。それでいいならそうします。 というかお義姉……、照さんの誕生日なのに咲のやつどこに行ったんだ」 何を隠そう咲との取引で今日は京ちゃんを独占する日なのだ。 咲が京ちゃんと一緒にいると安心するのがよく分かる。 彼は人を安心させる雰囲気を持っている。麻雀しか知らなかった私にも、咲のついででもいい、こうして人の優しさを教えてくれた。 私はただ、誰かに側にいて欲しかった。 一番いて欲しいときに、父親がいなかったから、父親を求めたんだと思う。 でも今日は『お父さん役』を求めてるわけじゃない。 「照さん?」 後ろから抱きしめる。『あすなろ抱き』と言うらしい。 この格好で耳元で囁くとイチコロだって尭深が言ってた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 3/3 ……あれ、なんて囁けばいいんだっけ。 いいや、私の思いをそのまま言葉にしよう。 「京ちゃんお菓子」 「ひいぃゃぁぁぁぁ!?」 京ちゃんがすごい勢いで暴れる。くすぐったかったのかな。 確かにこれはイチコロだ。京ちゃんは耳元が弱いんだ。 「照さん、何を……。 まぁいいです。お菓子ですね」 「うん。帰ってきたら膝枕して」 「はいはい」 うむ、満足。 今日はこのまま一日中甘えよう。 営業スマイルだって疲れるんだから、家でくらいこうしていたっていいはず。 ……あれ、そう言えば私が借りてる家ってどこだっけ? カン
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3833.html
照「……ん?」 京太郎「あ、おはようございます」 照「……初めてだったのに、優しくって言ったのに」 京太郎「……すいませんでした」 照「……とりあえず、おはようのキス」 京太郎「はい……ん」 照「ん……」 京太郎「朝食どうします?」 照「もうちょっと、京ちゃんとこうしていたい」 京太郎「了解しました、お姫様」 照「ふふっ……ね、ぎゅってして?」 京太郎「はい」 照「……安心するね」 京太郎「照さんは、あったかいですね」 照「ん?……これ、引っかき傷?」 京太郎「あー……その、照さんが」 照「……優しくしなかった京ちゃんが悪い」 京太郎「いやいや、俺は力抜いて下さいって言ったのに…何する気ですか?」 照「……舐めて治そうかと」 京太郎「ちょっと痕があるだけで平気ですよ」 照「じゃあ……」 京太郎「んっ……キスマーク?」 照「私のってしるし」 京太郎「勝手に付けて……俺も付けますよ?」 照「いいよ。ちょうどグラビア撮影あるから、見えるようにして」 京太郎「……普通のキスで」 照「付けていいのに……ん」 カンッ!!
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6182.html
特別編 京太郎とハギヨシ 時期はインハイ以降です。一部インハイ中のシーンがあります。また、日記形式ではありません ※完璧執事なハギヨシさんが好きな方は読まないことをおすすめします ▲月●日 昼 ハギヨシ「京太郎くん、庭の掃除ですが…」 京太郎「終わらせておきました。倉庫の方も少し散らかっていたんで片づけておきました」 ハギヨシ「ありがとうございます。では私はお嬢様と少々外出するのでその間に屋敷の掃除と食材の買い出し、それから花壇の水やり」 ハギヨシ「それら全て終わってから、各道具の整備までお願いしますね。ああ、整備が終わったら皆さんにお茶とお菓子をお出しして、一緒に休憩してください」 京太郎「はい、分かりました」 純「……しっかしあいつすげーなー」 一「ん?あー、京太郎か。今休んでる人達の分のバイトだったよね」 純「あの仕事量、普段ハギヨシさんがやってる分全部だろ。他のメイドや執事なら1日かけても終わらねーのに」 一「半日、下手したら数時間でやっちゃうからねぇ。今いる他のメイドや執事からの評判もいいし」 純「ハギヨシさんなら2時間……いや、あのレベルは無理か。でもハギヨシさんレベルになる日も遠くねーよな」 一「ハギヨシさんが色々教えてて、今回のことでハギヨシさん自らの提案でバイトとして来てるらしいよ。確か、友人がバイトとして来てくれる、って言ったってさ」 純「へー。あのハギヨシさんの友人ね。どうやって仲良くなったんだか」 一「さぁ?ネット麻雀とか、タコスづくりとかがきっかけって言ってたし、案外共通点があるんじゃない?」 インハイ団体戦、数日前 京太郎「くっそ、タコスを早朝に売ってる店なんてさすがに東京にもねーよ」 京太郎「いっそ手作りするかな……でもタコスの作り方なんて知らないし、そもそも料理自体ほとんどしないしな……」 ハギヨシ「おや?京太郎くん、どうしたんですか?」 京太郎「ハギヨシさん、実は…」 説明中 ハギヨシ「…なるほど、でしたら私が教えましょう」 京太郎「いいんですか?」 ハギヨシ「ええ。友人が困っているんですから、助けるのは当然のことです」 京太郎「あ、ありがとうございます!」 ハギヨシ「では、簡単な基本から教えて、そこから簡単なレシピを教えましょう。まず調理室を借りることからですね」 京太郎「じゃあ俺ちょっと行ってきます」 数時間後 京太郎「今日はありがとうございます。おかげで助かりました」 ハギヨシ「いえいえ。それにしても京太郎くんはかなり筋がいい。どうです?執事などを目指しては」 京太郎「あはは。ハギヨシさんにそう言ってもらえるなんて光栄ですね。そうですね、アリかもしれませんね」 京太郎「それにしてもこのレシピ、分かりやすくて作りやすい、いいレシピですね。そうだ、少し聞きたいことがあるんです」 ハギヨシ「なんでしょう?大体のことは大丈夫ですよ?」 京太郎「ちょっと待ってください。確か、この漫画のレシピなんですけど……鞄の奥にあったかな?確か……うわっ!?」ドサドサッ ハギヨシ「大丈夫ですか?手伝いましょう」 京太郎「すいません、鞄ひっくり返しちゃって。あーあ、中身が全部出ちまったかな」 ハギヨシ「ああ、この本で……」 京太郎「え?ハギヨシさ……」 ハギヨシ「こ、これは……」金髪ロリ物エロ本、貧乳露出物エロ本 京太郎「!?」 京太郎(し、しまった!!あれは副会長に餞別にと押し付けられたエロ本!!しかもよりによって衣さんと一さんそっくりの女優の表紙!!) 京太郎(くっ……趣味じゃないけどエロ本自体の質や満足度が高いから捨てずに置いたのが墓穴だったか!!) ハギヨシ「…………京太郎くん」 京太郎「は、はい!!そ、それは……」 ハギヨシ「なかなかいい本をお持ちですね」 京太郎「…………はい?」 ハギヨシ「いや、さすがにここまで衣様や一様にそっくりとは……私でもやや似ている程度を見つけるのが限界だったのに……」ペラペラ ハギヨシ「しかも単なるロリ、露出だけでなく、他のページにはその趣味が無い人間でも手が進むほどのもの……」ペラペラ ハギヨシ「そして細かく多種多様なニーズに対応し、かつ1枚1枚のクオリティも高く、本そのもののボリュームもある……素晴らしい」パタン ハギヨシ「これほどの物を、一体どうやって……」 京太郎「それ自体はとある人からもらったものです……ロリや露出は趣味じゃないですけど、素晴らしいと感じました」 京太郎「俺本来の趣味は……こっちです」巨乳物エロ本、巫女物エロ本、ナース物エロ本 ハギヨシ「ほう……これもなかなかのもので……私はこちらを」メイド物エロ本、姉妹丼物エロ本、ライトSM物エロ本 ハギヨシ「少々マニアックなものもいくつかありますが、今はこれくらいですね」 京太郎「ほほう、これはこれは……しかし意外ですね。ハギヨシさんがここまでとは」 ハギヨシ「ふふふ、私も男でしてね。あまりこういうことを話せる機会がないもので、ついはしゃいでしまいました」 京太郎「いえいえ、男なら当然のことですよ……おお、この子はまた智紀さんにそっくりで」 ハギヨシ「見つけるのに苦労しましたよ。どうです?そちらはお貸しするので、こちらを借りても」 京太郎「どうぞどうぞ。そうだ、実はインハイでこの本そっくりの子を見つけまして」 ハギヨシ「興味深いですね。詳しくお願いします」 京太郎「ええ、確か…」 ▲月●日 夕方 ハギヨシ「ただいま戻りました。これは旦那様から預かった本日の給料です」 京太郎「ハギヨシさん、ありがとうございます」 ハギヨシ「そしてこれは先日借りたものです……しかしまた白糸台の渋谷さんにそっくりでしたね」和服巨乳物エロ本 京太郎「ええ。和服がまた似合っていたでしょう?」 ハギヨシ「素晴らしいです。そちらはどうでした?」 京太郎「病弱ながらも精一杯のことをする……病弱娘物、想像以上に素晴らしいですね」 京太郎「新しいことに気付けましたよ。また千里山の怜さんにそっくりなのがいいです」病弱娘物エロ本 ハギヨシ「いえいえ。多少マニアックですが」 京太郎・ハギヨシ『そこがいい』 ハギヨシ「……ふっ、私はいい友人に巡り合えました」 京太郎「それは俺もですよ」 ハギヨシ「これからも、よろしくお願いします」ガシッ 京太郎「こちらこそ、よろしくお願いします」ガシッ 透華「ハギヨシに京太郎さん?あら、こちらに居たんですね」 衣「んー?2人とも握手か?どうしたんだ?」 智紀「……友情の握手?」 透華「みたいですね。ハギヨシもあんな楽しそうに笑って……嬉しい限りです」 衣「うむ。家族もいいが友達もいいからな」 智紀「ん……私達も、どう?」 透華「いいですわね」 衣「わーい」 京太郎とハギヨシ、様々なことが違う2人ではあるが、2人の男は硬い友情で結ばれた者同士である エロ本の貸し借り、性癖の暴露などのハイリスクなこと、硬い友情で結ばれた者同士にしかできないのだから カンッ!!