約 969,195 件
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3457.html
http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379321075/ 3・ 京太郎「もう嫌だ……やっぱりこの世界に男とかイラネーし……もう俺、百合に生きる……」 京太郎「え? きんモザ最終回? なんか涙でてきたわ……陽綾……二人のゆりんゆりんももうすぐ終わりか……」 京太郎「陽綾……最強だよ……見れなくなるなんて……考えられない……ああ……もう終わるのか……」 京太郎「死ぬ……死のう……もういいんだ……何もかも終わった……え? なんだこれ、桜Trickアニメ化?え、マジで?」 京太郎「地上波で百合キス見れるのか! 公共の電波に百合キス流すのか!? く、くくくく……来た……百合の時代がよぉ!!」 友人「おい……京ちゃん、しっかりしろ」 京太郎「百合は素晴らしいんだぜ? 恋愛なんて……しなくていいんだ」 友人「んなこと……」 京太郎「女の子は女の子とくっつくべきなんだ……俺が咲と付き合おうなんておこがましかったんだ……」 友人「……ばかやろう」 京太郎「え」 友人「ばっかやろおおおおおおーーーーーー!!」 京太郎「……ゆーと!?」 友人「お前誓ったんじゃないのかよ! 普通に恋もする百合男子として生きていくことを!」 それは、咲に恋することによって生まれた誓い。 確かに存在していた、大事な誓い。 京太郎「でもあれは咲に対する誓いで……」 友人「お前……どんな風に振られたんだ?」 京太郎「や、やめろよ、俺の傷口をえぐるのは」 友人「違う、癒してーんだ」 友人は、真剣であった。 京太郎「……詳しくは覚えてねーけど――今の状態じゃ付き合えない――だったかな」 友人「ならまだチャンスは有る!」 京太郎「チャンスって……またアタックするのか? ストーカーみたいになるのやだぜ、俺」 友人「もちろん新たな恋を探してもいい」 京太郎「咲……以外?」 友人「ほら、まだ未来は広がってるじゃねーか。うじうじしてんじゃねーよ」 顔を上げると、世界は桃色に染まっていた。 桜は、新たな旅立ちの象徴だ。 目の前にひらひらと飛んできた桜の花びらを、右手で掴もうとした。 しかし握るときの風圧で花びらは軌道を変え、つかむことが出来なかった。 たった一度の挑戦で物事がうまくいくとは限らない。 京太郎(チャンスがあるなら、また挑戦すればいい) また新たに飛んできた花びらを、今度は受け止めるようにしてつかんだ。 手に一枚の桜の花びら。 今度は、つかめた。 友人「入学式だ――行こうぜ」 京太郎「……おう」 咲への想いは消えないけれど。 咲への想いが叶わなくても、人生は続いていく。 人生は深海のように暗闇だ。 前後も左右も上下だってわからない空間を、ただひたすらに歩く。 京太郎(進んでないかもしれねーけど、同じ場所でもがいてるだけかもしれねーけど) 目印がなくとも、彼は進んでいく。 そこに、ちいさな光が見えた気がした。 高校1年生――4月。 合格していた。はっきり言ってもうタコス生活は諦めていた。 滑り止めの高校でたこ焼きやタコさんウインナーを食べる生活を覚悟していた。 いや、もちろんたこ焼きもタコさんウインナーも好きだけど、タコスと比べると数段落ちる。 優希「タコスうまー」 和「それ、何個目ですか」 優希「本日5個目ー」 和「まったく、ゆーきは……ずいぶんと食べた個数、少ないですね」 のどちゃんも、ずいぶんと私の行動に慣れたものだ。 高校で新しく担任になったササヒナには 「タコス一個が約150kcal……これを消費するのに必要な階段昇降は30分……」 「タコスを5つ食べた場合2時間30分も階段昇降をしなくてはならない……フルマラソン並みの時間が……!」 「ひいいいいい!!」 と驚かれたのに。 和「そろそろ行きましょうか、ゆーき」 優希「食堂へかー? まだ6個目はいらないじぇ」 和「違いますよ……麻雀部へ、です」 麻雀部は旧校舎にあるようだ。 普段授業を受けている校舎からそこそこ距離があって、踏切を一つ超えた先に旧校舎は建っていた。 ……それにしても、よかったのだろうか? 私の横を歩くのどちゃん――原村和は麻雀のインターミドルチャンピオンだ。 本人が望みさえすれば、麻雀の強豪校ならどこでも特待でいけたはずだ。 なのに彼女は、清澄を選んだ。 それは嬉しいことであり、心残りのすることだった。 私がのどちゃんの可能性を潰してしまったのではないか、と。 旧校舎に到着。 優希「なんか幽霊が出そうな校舎だじぇ」 和「……」 優希「のどちゃん?」 和「ゆ、幽霊なんているわけありません!」 優希「もしかしてのどちゃん、怖いのか?」 和「こ、怖くなんかありませんよ! 幽霊なんか非科学的です、ありえません!」 優希「の……のどちゃん」 和「どうしました?」 優希「の……のどちゃんの後ろにいるやつ……なんだ?」 和「ひいいいい!」 優希「やっぱり怖がってるじょ」 和「だ、だましましたね、ゆーき!」 優希「幽霊を怖がる必要ないじぇ。もしのどちゃんに襲いかかってきたら私が守ってやるからな!」 和「ゆーき……」 優希「ふっふっふ」 和「さっき私を怖がらせようとしたことを、いいセリフでごまかそうとしてませんか」 優希「さあ、部室まで直行だ!」 和「こら、待ちなさい、ゆーき!」 私はのどちゃんの可能性を潰してしまったかもしれないけれど。 それでもやっぱり、一緒にいるとが楽しかった。 ――一緒に、か。 あの日、試験の日に出会った少年のことを思い出す。 結局、一方的に名前を聞かれただけで、あいつは名乗らなかった。 優希(受かったのかなぁ……) もしかしたら落ちてしまったのかもしれないけど。 彼のおかげで私が受かったというのも、ほんの少しはあるから。 もう一度、会いたいと思っていた。 もし彼が別の高校へ行っているならば、奇跡でも起こらないと無理なんだろうけど。 優希「たのもーだじぇ!」 麻雀部の扉を開く。 京太郎「ん? お、優希。よっ」 優希「な、な、な、な……」 京太郎「な?」 優希「なんでお前がここに!!」 奇跡も感動もなく、普通に再会したのだった。 仮入部期間初日。 京太郎は優希と再会した。 やけに優希は驚いていたようだったけど、まあこれくらいよくあることだろう。 そんなことよりも大事なことがあった。 優希の後ろにいた少女のことだ。 それは入学当初、男子の間でかわいいと話題になっていた少女、原村和だった。 しかも麻雀のインターミドル覇者。 この麻雀部には不釣合いの超大物だ。 ……しかし一番大事なのはそこではない。 一番大事なのは、和が背負っているカバンだ。 原村和はお金持ちな家のお嬢様のような少女だ。 そういうタイプの少女が持つカバンは、お淑やかなカバンであるはずだ。 なのに、彼女が背負っていたのは。 京太郎(ワイルドなワンショルダーバッグだとォ!?) 京太郎誰に対しても丁寧語で話すお嬢様風の少女には似つかわしくないカバン……) 京太郎(いや待て……もしかしてあのカバンは誰かからもらったものなんじゃ……?) 京太郎(引っ越しが多くてなかなか友人が作れない和……) 京太郎(そんな彼女はとある引っ越し先で快活な少女に出会う。生活スタイルの全く違う二人は最初、お互いの文化の違いに戸惑う) 京太郎(しかしその二人にはある共通の趣味があった。それが麻雀!) 京太郎(二人は麻雀を通じて友情を深めていく……だが、和は再び引っ越しをしなければならなくなった!) 京太郎(離ればなれになる、そのことに気づいたとき、二人は気づく……お互いの関係はすでに友情ではなくなっていたことを……) 京太郎(山登りが趣味である快活な少女は普段自分が山登りで使っているカバンと同じものをプレゼントする) 京太郎(ワンショルダーバッグは二人の絆の証なのだ!) 和「えっと……部員さんですか?」 不信そうな目。警戒されているようだった。 京太郎「はっ……いや、俺も一年で見学にきたんだ。入部する気満々なんだけど……部長! 新入生、来ましたよー!」 久「うっ、やば、寝ちゃってた」 部室の奥にベッドがあり、そこからモゾモゾと部長が這い出てきた。 和「えっと、確か……議会長さん?」 久「ここでは部長だけどね」 まこ「おー今年はよう揃っとるね。久しぶりじゃのぉ、この部室にこれだけ人が集まるんは」 久「まこ! まだお店の手伝い忙しいんじゃ」 まこ「せっかく新入生が来るかもしれんときにここに来ないなぁもったいなかろ?」 京太郎「染谷先輩は優しいなぁ」 まこ「やめぇ」 京太郎「(本当は部長のことが心配で来たに違いない! お互いに信頼しあった熟年夫婦系百合ップル!)」 京太郎「そう思うだろ、牌ちゃん?」 牌「いきなり来ていきなりどうした」 京太郎「部長と染谷先輩の関係の話」 牌「むふふ、怪しいよね、あの二人。一年間部室で二人きりだったわけだよ? 」 牌「二人きりの部室とかさ、百合の花が咲かないほうがおかしいよ」 京太郎「二人きりの部活動は百合名場面名鑑にも記載されてるほど百合の世界じゃコモンセンスだからな」 牌「でもね! 私ここで一年間二人を見張ってきたけど、エロティックな展開なかったんだよ? おかしくない?」 京太郎「だから俺はプラトニック派だっつうの」 牌「プラトニック派とかもうそれ百合じゃない」 京太郎「エロティックの方が邪道だ」 牌・京太郎「ぐぬぬぬぬぬ」 京太郎「それはそうと、牌た……ちゃん」 牌「いま牌たんって言おうとしなかった?」 京太郎「やっぱりお前って人間の配牌を操ったりできんの?」 牌「んにゃ、配牌は別の神が担当してる。私が操れんのはツモ牌だから」 京太郎「配牌とツモ、別の神がやってたのか」 牌「配牌がいいのにツモ運が悪かったり、逆に配牌最悪なのにツモ運がよかったりするでしょ?」 牌「別の神が担当してるのが原因なのだ!」 京太郎「あのさ……俺の過去の牌譜持ってきたんだけど」 牌「えーなになに? ぶっ! あはははっ、なにこれ! くふふふふ、ひどい! これはひどい!」 京太郎「これはお前のせいじゃないんだな」 牌「違うよーあはははははっ、おなか、いたい、ぷぷぷぷぷ、ある意味いい配牌!」 京太郎「かわいそうだろ」 牌「あははっ、まあ流石にねぇ」 京太郎「じゃあ俺のツモ運あげてくれよ」 牌「なんで? イヤだよ。私は気に入った女の子のツモ運を上げることにしか興味ないし!」 京太郎「ほんのちょっとでいいからさぁ……」 牌「あんまりしつこいと、むしろツモ運下げちゃうよ?」 京太郎「勘弁してくれ……」 仮入部期間2日目。 部室にて。 京太郎「新しい人、来ませんねぇ……」 まこ「この辺で麻雀する人は女子は風越に、男子は松商に行くけぇね、こんだけ集まっただけで奇跡じゃろ」 京太郎「……団体戦、出たいですね」 まこ「あと一人くらいなら助っ人でも呼べばええが」 京太郎「男子は……」 まこ「絶望的じゃのぉ」 京太郎「まさか俺しか男子部員がいないとは」 子供のときから憧れてきた高校麻雀団体戦で全国へ。 それは野球で言うと甲子園みたいなもので。 少年少女の憧れの一つだ。 久「男子でひとり、麻雀できる人を知ってるわよ」 京太郎「本当ですか!? 誰ですかそれ、教えてください!」 久「2年の本藤君なんだけど……ただ、ちょっと怖いかもね」 京太郎「怖い……?」 久「なんというか……片手で卓を担げそうなタイプ?」 京太郎「ま、まあ最近のは軽いですし」 久「五つまとめて」 京太郎「指一本あたり雀卓ひとつですか」 化け物だ。 京太郎「どこにいるんですか、その化け物さん」 久「2-Cにいるはずだけど……え、本当に行くの?」 京太郎「そのつもりですけど」 久「……がんばっ!」 なんだろう、嫌な予感しかしない。 京太郎「優希、ちょっといいか」 優希「んー? なんだじぇ」 京太郎「一緒に勧誘に行こうぜ!」 2-Cに到着。 京太郎「そういえばどんな見た目か聞いてなかったな。誰かに聞かないと」 そう言いながら教室に入る。 天井の柱にぶら下がって懸垂をする巨漢がいた。 京太郎(あ、絶対あの人だ) 雀卓でジャグリングしそうなタイプだった。 京太郎(それにしても) 目がヤバイ。 人殺したことある系男子。 喋りかけたら踏みつぶされそう。 京太郎「……優希」 優希「………………」 京太郎「色仕掛けの時間だ」 優希「いやいやいやちょっとまままままま」 京太郎「このためにお前を連れてきたんだ」 優希「京太郎、適材適所って言葉、知ってるか」 京太郎「たとえお前に不幸が襲っても、俺が人体錬成するから」 優希「禁忌だじぇ、もっていかれるじぇ」 帰ろうかと一瞬思ったが、考え直す。 きっと大丈夫だ。 怖そうな人が実は優しいというのは定番パターンである。 頭がいいやつは絶対天然キャラだ。 ボーイッシュなキャラは絶対乙女趣味を持っている。 いつも笑ってる細めのキャラは絶対裏切る。 普段優しいキャラは絶対、怒ると怖い。 美少女には絶対、解決したら好感度の上がる辛い過去がある。 きっと彼はその見た目の怖さでいろいろ勘違いされてきたのだろう。 本当は優しいのに、誰もそれを理解しない。 京太郎(そうだ……俺が、本藤先輩の理解者になれば……!) 本藤「なんだてめーらは、ジロジロ見やがって」 普通に怖かった。 本藤「要件があるならさっさと言え、おい」 京太郎「えっと……あのですね! 麻雀部に入ってくれないかと」 本藤「麻雀部ぅ!?」 京太郎「はい!」 本藤「麻雀部……ねぇ」 京太郎「うっす!」 本藤「ふん。俺を満足させられたら、入ってやってもいいぜ」 部室に帰還。 生還ともいえるかもしれない。 久「本当に連れてくるとはね……」 本藤「か、会長がいるじゃねーか! こ、怖い! こんなところにいられるか! 俺はもう帰るからな!」 京太郎「ちょちょちょ待ってください! なんで怖いんですか!」 本藤「前に懸垂で柱を壊したとき……会長に超怒られた」 京太郎「は、ははは……」 本藤「超怖かった。今も震えが止まらない。帰りたい」 部長は「怖いかもね」と言っていたが、部長が本藤先輩のことを怖いのではなく 本藤先輩が部長のことを怖い、という意味だったのだ。 まこ「……わりゃぁいったいどれだけ恐ろしいことをしたんじゃ」 久「ひっどーい! 私、うら若き乙女なのよ? そんなひどいことするわけないじゃない」 まこ「似合わんからやめんさい」 五分後。 本藤「よし、トラウマは克服した。須賀、麻雀やるぞ」 京太郎「トラウマ克服するの早いですね、本藤先輩」 本藤「いつまでも男がビクビクするわけにはいかねぇだろ」 久「本当に大丈夫?」 本藤「ひいっ! やめてください! 解体しないでください! お願いします!」 優希「もう見ていられないじぇ」 十分後、ようやく麻雀を開始する。 卓についたのは京太郎、本藤先輩、染谷先輩に優希だ。 ただし今回は京太郎と本藤先輩の対決なので、染谷先輩と優希は基本的には降りるように打つことになった。 京太郎配牌 一四七②⑤⑦158東南西發 京太郎「(配牌は……いつも通りか)」 京太郎ツモ3 京太郎(まずは、本藤先輩がどんなタイプなのか見極める)打、西 八巡目 本藤「ツモ、3000・6000」 京太郎「はい」 京太郎がテンパイする前にツモあがり。初っ端から跳満。 京太郎(リーチしなくても満貫の手でリーチをした……か。高火力タイプ……だったら怖いな) 京太郎配牌 二五九②⑥158南西北白中 京太郎(まったくいつもどおり……流したいな) ツモ、白 打、西 京太郎(助かる) 十二巡目 京太郎(やった、聴牌……上がれないのはわかってるけど) 京太郎「……リーチ」 本藤「悪いな……ロン、8000」 京太郎「! はい」 京太郎(この順目で追っかけリーチは無謀だとは思ってたが……やっぱりダメか) 反撃しようと試みるが……。 東四局三本場、京太郎は飛ばされてしまった。 本藤「終わり、だな。お前の実力はわかった」 京太郎「ま、待ってください! もう一度チャンスを!」 本藤「なんか勘違いしてないか」 京太郎「え」 本藤「今回の対局で入部するかしないかを決めるわけじゃない。俺が見たいのは、どれだけお前が骨のあるやつかということだ」 本藤「一週間後、もう一度俺と麻雀を打て」 本藤「それまでに強くなって俺を満足させろ」 本藤「俺を満足させられるのは、強くなろうとしているやつだけだ」 そう言い残して、本藤先輩は去っていった。 久「須賀君、さっきの対局見てたけど……」 京太郎「配牌のことですか」 久「こう、なんて言えばいいのかしら、牌の神様に嫌われてるって感じ?」 京太郎「確かに嫌われてますけど、あの配牌は牌の神様とは関係ないですよ」 本人に聞いて確かめたし。 久「なんだか、本当に会ってきたみたいな言い方ね」 京太郎「ははは」 するどいよこの人。 京太郎「俺が麻雀を始めたのは中学3年からですけど――最初にやったとき、すでにあんな配牌でした」 京太郎「それから今まで、ずーっとあんな配牌です」 あんな配牌。 七対子を考えなければ8シャンテン、つまり上がるのに九枚の有効牌が必要な形。 七対子を考えたら6シャンテンで済むが、ひとつも対子のない状態から目指すのは無謀すぎる。 平均のシャンテン数は3.5前後であることを考えると、結構笑える運の悪さだ。 いや、まったく笑えないけど。 そして現在の問題は、1週間で本藤先輩を満足させるくらいの成長度を見せること。 京太郎「1週間でどれだけ強くなれますかね……」 久「まだ須賀君、打ち慣れてないのよね」 京太郎「リアルだと五十局前後しかやってませんから」 久「とにかく慣れないとね」 まこ「それじゃったら、京太郎。うちでバイトしてみんか?」 京太郎「バイト……ですか」 久「まこの家は雀荘をやってるのよ」 京太郎「は、破産しそうなんですけど」 まこ「ノーレートじゃけぇ心配せんでええよ」 京太郎「……わかりました」 やれることは何でもやってみよう。 京太郎「俺、やります!」 なんであれ、必ず力になるはずだから。 そのバイト中に聞く話が彼の人生を狂わせていくことを、彼はまだ知らない。 3・終
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3318.html
竜華「いや、ほんまに怜めっちゃ可愛いねん。あんな、そんでな」 京太郎「いやだから」 京太郎「俺、恋愛経験とかほんとないですから」 竜華「うそや~。須賀くん絶対モテるやろ~」 京太郎「そ、そうですかね~?」 竜華「うんうん。よく見れば顔もかわいいし!」ジー 京太郎「///」 竜華「ま、怜にはかなわへんけどな~」 京太郎「なら園城寺さんのことをもっと良く知るために尾行してみましょう」 竜華「了解!」ビシッ 京太郎「まずは変装ですね」 竜華「帽子被って眼鏡かければばれへんやろ……」カブ 京太郎(あ、なんか可愛い) 放課後 教室 京太郎「なあ優希、俺ふと気づいたんだが」 優希「なんだじぇ、京太郎、ついに私の下僕として働く決心がついたか」 京太郎「つくわけねえだろ、そんな事よりもっと重要なことだよ」 優希「……一応聞いといてやるじぇ」 京太郎「いや、これは気づいたというか発想の転換というかとにかく大発見なんだけどさ」 優希「さっさと言え」 京太郎「ったく、分かったよ、最近気づいたのだが!」 京太郎「俺って超モテモテになれる状況なんだぜ!」 優希「……いやいやねーよ」 京太郎「で、俺にどうしろと?」 竜華「い、言わなくてもわかるやろ!?」 京太郎「さあ?」 竜華「須賀くんもけっこういじわるやわ・・・」 京太郎「まあ、俺でよければ力貸しますよ?」 竜華「ほんまに!?」 京太郎「ほんま、ほんま」 竜華「そ、そのな///怜とキスとかできたらいいな~って思っててん///」モジモジ 京太郎「ほうほう」 竜華「でも恋人でもないのに、絶対おかしいやろ?」 京太郎「そりゃそうですよ・・・」 竜華「だからな・・・//須賀くんにはウチと怜の恋のキューピッドになってほしいんよ///」 京太郎「はあ・・・キューピッドですか・・・(想像よりしんどそうだな・・・)」 竜華「だ・・・だめ?」ウルウル 京太郎「うっ・・・(その目は反則ですよ・・・)」 竜華「もちろんタダでとは言わん!」 竜華「成功したらでこちゅーしたるで///」 京太郎「ほんとですか!?喜んでお受けします!」 ~千里山女子高校~ 竜華「来たな」 京太郎「来ましたね」 竜華「それじゃ、さっそく入ろか~」 京太郎「ちょ、ちょっと待ってください!!」 竜華「なんや?あ、トイレか?男子用はあっちやでー」 京太郎「ちがいますよ!ここ女子高でしょ?男の俺が入ったら間違いなく通報されますよ!」ソワソワ 竜華「なんや~そんなこと心配してたんか~」 京太郎「そんなことって・・・」 竜華「だいじょーぶ、だいじょーぶ。ウチが一緒にいるんやで?そこらへんはなんとかなる」 京太郎「は、はあ・・・」 京太郎「」ブルブル 竜華「どうしたん?」 京太郎「なんだか急にトイレに行きたくなっちゃいました・・・」ソワソワ 竜華「なんや、やっぱトイレか。いっといれ~なんちて」 京太郎「・・・いってきます」 男子トイレ前 京太郎「ふう・・・すっきりした」 京太郎「・・・でも女子高の男子トイレで用をたすなんて背徳的というか・・・」 雅枝「そこにいるのは誰や!」 京太郎「!?」ビクッ 雅枝「なんや君、見ない顔やね。許可証は持ってんのか?」 京太郎「許可証・・・ですか?」 雅枝「受付でちゃんと手続きした時にもったはずやろ?・・・もしかして君、不法侵入か?」 京太郎「えっと・・・その・・・(竜華さん、許可証の話なんて聞いてませんよ!)」 あ、いたいた須賀くーん 雅枝「今度は誰や」 竜華「もう遅いから、便器ん中に詰まってるんかとおもったわ~・・・って先生・・・」 雅枝「あんなあ・・・」 竜京「すみませんでした・・・」ペッコリン 雅枝「事情はともあれ、無断で男を入れるのはどうかと思うで」 竜華「ほんとうにすみませんでした・・・わたしが無理言って来てもらったんです。須賀くんは悪くありません・・・」 京太郎「竜華さん・・・」ジワッ 雅枝「・・・まあ今回は大目に見てやるけど、次は許さへんからな!」 竜京「はい・・・」 雅枝「それと、清水谷!」 竜華「は、はい!」ビクッ 雅枝「色々とがんばりーよ!」ポン 竜華「!」 竜華「あ、ありがとうございます!」 竜華「よっしゃ!先生からも許可をもらったことやし、本格的に活動しようか~」 京太郎「はあ・・・」 竜華「まず怜をストーキングするで!」 京太郎「・・・本気ですか?」 竜華「あたりまえやん!恋人になるっちゅう相手のことを知らなくてどないすんねん!」 京太郎「まだきまったわけじゃ・・・」ボソッ 竜華「なんか言ったか?」ギロリ 京太郎「い、いえなにも!」ビクビク 校門前 竜華(変装)「よし、これならどっからどう見てもただの若いカップルやろ」 京太郎(変装)「そうかもしれませんけど・・・なんでこんなに厚着するんですか・・・」 竜華「そうしないと雰囲気でないやろ!わからんかな~」 京太郎「・・・まあ多少は」 竜華「せやろせやろ。・・・あっ怜が来たで!隠れて!」 怜「~♪」テクテク 怜「~♪」フンフフーン 京太郎「どこへ行くんでしょうか?」 竜華「さあ・・・今日は病院ではないはずやで」 京太郎「やけに詳しいですね・・・あ、角を曲がりましたよ!」 竜華「行こ行こ」 京太郎「どうやらあの中へ入っていったみたいですね」 竜華「あれは・・・プール?」 京太郎「みたいですね」 竜華「でもなんで・・・」 京太郎「とりあえず入ってみましょう!」ワクワク 竜華「なんでそんなに元気なん・・・」 プール(室内) 竜華「いや~でもラッキーやな~カップル割引で安く入れるなんて」 京太郎「そうですねー(竜華さん・・・なかなか見事なおもちをおもちで・・・!)」 竜華「なんや須賀くん、さっきからボーっとして・・・あっもしかしてお姉さんのナイスバディに見蕩れてたんか~?」ケラケラ 京太郎「むしろ何故見ないのか疑問に思いますね」 竜華「え・・・///?」 京太郎「竜華さんほどのスタイルの人が目の前にいるのに見るなと言う方が酷だといったんです」 竜華「えっと・・・それはどういう///」 京太郎「あ!園城寺さんも来ましたよ!隠れないと!」 怜「いっちに、さっんし・・・」グー 京太郎「体操してますね」 竜華「してるな」 京太郎「あれ・・・園城寺さんって激しい運動とかしちゃダメって言ってませんでしたっけ?」 竜華「最近は体調がいいみたいだから、少しずつ体を動かしてるみたいやで?」 京太郎「そうっだったんですか・・・ところでなんでそんな遠くにいるんですか?見つかりますよ?」 竜華「う、うるさいあほー///」 京太郎「・・・?あ、怜さんのところに誰かやってきますよ!」 照「久しぶり」 怜「おう、チャンピオン。わざわざすまんな~」 照「別にいい。合宿の最中だから」 怜「いや~でも恩にきるわ~」 照「・・・それより例のものは?」ソワソワ 怜「焦らんでも大丈夫やって。ちゃーんと用意してあるからな。帰りに渡すわ」フフン 照「わかった」ワクワク 京太郎「照さんでしたね」 竜華「そ、そうやね」 京太郎「いい加減こっちに来ませんか?いくらなんでも離れすぎですよ・・・」 竜華「やかましい///!」 京太郎「やかましいって・・・俺は竜華さんのためを思って・・・」 竜華「うっさいわ、ぼけ///」 わーわー ぎゃーぎゃー 怜「やけにさわがしいなあ」 照「気にしない。それより、早く練習しよう」 怜「お、チャンピオン。いつになくやる気やね~」 照「たくさん運動した後のお菓子は格別」フンス 怜「っておかしのためかいっ!」 照「それだけじゃない。怜も泳げるようになりたいんでしょ?私は頑張る人の手伝いがしたい」 怜「チャンピオン・・・」グスッ 照「まずは顔を水面につけられるようにしよう」 怜「わかったで~」 照「じゃあ、せーので息をおもいっきり吸って、そのまま10秒間顔を水面につけて」 怜「は~い」 照「いくよ・・・せーの」 すうぅぅ・・・ 照「いーち、にーい、さーん、しーい」 怜「・・・(あかん・・もう苦しくなってきた・・・)」ブクブク 照「ごーお、ろーく、なー・・・」 菫「照のやつ・・・ここで見かけたと聞いて来たんだが・・・まったく、練習サボりやがって・・・」 照「!?」 照(やばいやばいやばい・・・) 照(部活をサボってプールに来ていたなんてばれたら・・・)ダラダラ 照(とりあえず。隠れよう・・・) 京太郎「も、もう変なこと言いませんから、許してください・・・痛っ!」 竜華「ぜ、絶対許さへん!」ペシペシ 京太郎「だから、すみませんでしたって・・・あたっ!」 竜華「乙女を弄んだ罰や!くらえ!」バシバシ 京太郎「いてて・・・って、と、怜さんは!」 竜華「!?」 竜華「せやった・・・ウチ本来の目的を忘れとった・・・」 竜華「って怜がいない!」 京太郎「!」 京太郎「竜華さん!よく見てください!あの水面にうつぶせに浮かんでいるのって怜さんじゃないですか!?」 竜華「!?」 竜華「ってどさくさにまぎれてなんで名前で呼んでんねん!」 京太郎「それより・・・なんだかヤバくないですか・・・もしかして・・・」ダッ 竜華「ってちょっと待ちー」 京太郎「怜さん!しっかりしてください!」パシパシ 怜「・・・」 竜華「あわわわ・・・須賀くん・・・どうしよう!?」 京太郎「竜華さんは人工呼吸と心臓マッサージの経験は?」 竜華「授業でやった程度で・・・本格的な手順は・・・」 京太郎「・・・分かりました(怜さんと竜華さんには悪いけどここは俺がやるしかない・・・!)」 竜華「須賀くん・・・どないしよう・・・怜が・・・怜が・・・」 京太郎「しっかりしてください!人工呼吸は俺がやります、竜華さんは職員の人に救急車を呼んでもらってください!あとAEDも!」 京太郎「怜さん・・・すみません・・・」フー 京太郎(大丈夫、龍門渕であれだけ実習したんだから、きっと大丈夫・・・!) 京太郎(怜さんは俺が助けるッ!) 菫「ん?なんだか向こうが騒がしいな・・・行ってみるか」 照「・・・ここまでくれば見つからないはず。・・・あ、そういえば怜のこと忘れてた・・・」 照「戻ろう・・・」 照「う・・・そ・・・」ガクン 京太郎「照さん?」 照「京ちゃん・・・?」 照「ねえ・・・怜は・・・怜はどうしたの!?」 照「なんで、目を閉じて・・・そんな・・・いや・・・!」 京太郎「しっかりしてください!怜さんは大丈夫です。呼吸も戻りました。だから落ち着いて!」 照「そっか・・・よかった・・・よかったよおお・・・」ウエーン 京太郎「よしよし」ナデナデ 竜華「怜!」 竜華「須賀くん!救急車もうすぐ着くって!」 竜華「それより怜は!?」 京太郎「大丈夫、心配ありません。ちゃんと戻ってきましたよ」 竜華「そっかああ、よかったああ~~・・・」グスン 竜華「ってあれ・・・なんでウチ泣いてるん・・・あれ?おかしいなあ」ポロポロ 京太郎「竜華さん・・・」ダキッ 竜華「ちょ、なにすんねん・・・///」 京太郎「今だけ胸貸しますよ、竜華さんみたいに柔らかくはないですけど」 竜華「一言多いんねん・・・でも、ありがと・・・」ポロポロ 照「うえええーーーんえんえんえん・・・京ちゃーん!」ウエーン 菫「お前たち、なにをやっている・・・?」 京太郎「結局あのあと、怜さんは無事救急車で運ばれた」 京太郎「大事をとって入院する形にはなったけれど、すぐに退院できたみたいだ」 京太郎「そして今日俺と竜華さん、照さんと菫さんは怜さんの家に招待された」 ピンポーン はーい 京竜照菫「おじゃましまーす」 怜「いらっしゃ~い」 菫「あの・・・このたびはウチの馬鹿がご迷惑をおかけして・・・」フカブカー 照「ごめんなさい」ペッコリン 怜「それよりあがってあがって」 菫「いや、私たちは本当にお詫びを言いに来ただけだから・・・」チラッ 照「・・・」コクン 怜「極上のお菓子もあるでえ~」ニヤリ 照「!?」 照「・・・」チラッ 菫「駄目だからな」 怜「はは、まあお土産にしたるから、持ってきやー」 照「・・・ありがとう、怜」パァ 菫「まったく、こいつは・・・」 怜「さてと、二人も帰ったし須賀君くんと竜華も帰ってやー」 竜華「ほな、さいなら・・・てなんでやねん!」 京太郎「お元気そうでなによりです」 怜「ほんとにありがとうな、京太郎くん」 怜「なんか、君がいなかったら、ウチ今頃お墓の中だったらしいで」 京太郎「そんな・・・自分にできることをしただけです」 竜華「ってなんで下の名前で呼び合ってんねん!」バン 怜「だってウチらは熱いチッスをした仲やで?名前で呼ばない方がおかしいやろ」 竜華「そんなんノーカンやノーカン!」 京太郎「あははは・・・」 怜「じゃあする?」 京竜「・・・へ?」 怜「どうせ竜華のことやから、『怜を助けたらキスしたるで~』とかぬかしたんやろ?」 京太郎「微妙に違っているような・・・」 怜「お礼やお礼。こんなきれいなお姉さんにキスしてもらう機会なんて滅多にないで~」 京太郎「いや・・・でも」 竜華「駄目や駄目や!その理屈はおかしいで!」 怜「も~遅い~」 チュッ 京太郎「////」 竜華「あわわわ・・・」 怜「ふぅ・・・どうやった?お姉さんの味は?」 京太郎「///」 怜「あら・・・見事に気絶してますわ・・・」 怜「なんや、こうしてみると京太郎くんもなかなかの色男やなあ~」 竜華(こ、このままじゃまずい・・・!) 竜華(怜が須賀くんに惚れる前にわたしの気持ち伝えなあかん!) 竜華「怜・・・話がある」 怜「なんや・・・そんな暗い顔して」 竜華「あんな、ずっと伝えようと思ってたんやけど・・・」 竜華「ウチ、怜のことが好きなんや」 怜「うちも好きやで~」 竜華「な・・・ウチが言いたいのはそういう好きやない!」 怜「ほうほう」 竜華「ウチは怜のこと愛してるんや!ライクやなくてラブなんや!」 竜華「・・・ウチは本気やで?」 怜「奇遇やな、ウチもや」 竜華「・・・怜の気持ちはようわかった。ごめんな・・・変なこと聞かせてしまって」 怜「いや・・・ウチそんなつもりじゃ・・・」 竜華「ごめんな・・・。今日は帰らせてもらうわ・・・ほなな」 怜「あ・・・」 「待ってください!」 竜華「なんや須賀くん起きてたんか」 京太郎「竜華さんの気持ちはよくわかります・・・」 京太郎「ですが、怜さんの気持ちも考えてあげてください!」 竜華「気持ちもくそも、答えは見えてるやろ。わたしの言葉にオウム返しで、ふざけてんのやろ・・・!」 怜「それは・・・」 京太郎「それは、相手が竜華さんだからですよ」 竜華「・・・わたしならふざけてもおこらないってか」 京太郎「ええ、そうです」 竜華「なんや、ほんとうかいな・・・しらけるなあ」 京太郎「怜さんは本当はとっても恥ずかしがり屋なんです」 竜華「いきなりなんの話やねん」 京太郎「怜さんが竜華さんの告白に冗談っぽく返した理由・・・わかりますか?」 竜華「・・・」 京太郎「自分が大好きな人・・・『竜華なら、自分の冗談にも笑って付き合ってくれる・・・』」 京太郎「『竜華なら、冗談の中にある本当の気持ちを汲み取ってくれる・・・』」 京太郎「そう信じて、怜さんなりに竜華さんに告白の返事をしたんです」 竜華「怜・・・そうやったんか」 怜「・・・うん」コクン 京太郎「それと、あの時怜さんがプールへ行ってた理由・・・分かりますか?」 怜「京太郎くん!それはうちから説明する・・・」 竜華「・・・怜」 京太郎「わかりました」 怜「うち、知っての通り、病弱やろ?」 怜「そのせいでみんなにいつも迷惑ばかりかけてしまって・・・」 怜「この間やって、みんなが怜シフトを敷いてくれたおかげで、わたしは合宿に参加することができた」 怜「ほんとにうれしかった・・・でも、罪悪感もあったんや・・・」 怜「休憩時間に部員みんなで海に行く時もウチに気遣って竜華たちは宿に一緒に残ってくれた・・・」 怜「ほんとにほんとにごめんなあ。みんなで楽しい合宿のはずやったのに・・・」ポロポロ 竜華「だから、今度の合宿では、みんなと海で遊べるように練習してたわけか・・・」 怜「・・・」コクン 怜「ごめんな・・・竜華」 ギュッ 竜華「ウチの方こそ、ごめんな?」 竜華「勝手に勘違いして、怜にもひどいこと言って・・・」 怜「ええんや。お互いさまやで」 竜華「そっか・・・でもせっかくの愛の告白を冗談で返されるのはな~」 怜「うっ・・・」 怜「わかったわかった」 チュッ 京太郎「よかった~」 怜「なんや京太郎くん、まだいたんか!」 竜華「びっくりした~てか誰~?」 京太郎「えっ・・・」ガーン 竜華「ウソウソ、冗談やって!」 怜「もう~あんまいじめたらかわいそうやで」 竜華「お前が言うな!」ポコッ 怜「あいたー」 京太郎「じゃあそろそろ俺は帰りますね」 怜「ほんまにありがとうな」 竜華「おおきに~」 京太郎「いえいえ、ではまた」 「須賀く~ん忘れ物やで~」 京太郎「あれ?忘れ物なんてしましたっけ?」フリムキ チュッ 竜華「ちゃんと渡したからなっ!京太郎!」 京太郎「あの日から3か月・・・二人からこんな手紙が届いた」 京太郎君へ この前は本当にありがとう! 京太郎君がいなかったらと思うと震えて夜も十時間しか眠れません(←なんでやねん!) いろいろ冗談も行ったけど、京太郎くんへの感謝の気持ちはほんまもんやで! 京太郎君はウチらの恋のキューピッドや! また大阪に来た時は一緒にあそぼーなー ほな、またなー歯ー磨けよー(やかましいわ!) 京太郎「ふふ、元気そうでなにより・・・ってあれ?まだ続きがある」 追伸 この前二人で海に行った時の写真、送ります(眼福やで~、悩殺されろ~) そこには相変わらず美しいプロポーションを保っている竜華さんと 彼女をお姫様だっこしている全身真っ黒のガチムチと化した怜さんの姿が写っていた。 京太郎「俺も筋トレしようかな・・・」 咲「やめて」 おわり
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/925.html
咲「リンシャンツモ。また京ちゃんのトビで終了だね」 京太郎「マジかよー」 優希「いくら咲ちゃん相手とはいえ弱すぎだじぇ」 京太郎「何回かデカイ手張ってたんだけどな…」 和「諦めない姿勢は認めますけどもっと手堅く打った方がいいと思いますよ…ほら、こことか…」たゆんっ 京太郎「お、おう。努力する…」 清澄高校に入学してから数ヶ月、俺は代わり映えのない日々を過ごしていた。 自分以外男のいない環境に最初こそ期待したが現実はそう甘くはなく、浮いた話の一つもない、体よく雑用として使われるだけの日々だ。 まこ「おうー皆の衆ー、遅くなってすまんのぅ。ってなんじゃ部長はまだ来とらんのか」 咲「あ、染谷先輩おはようございます」 優希「そういえばまだ来てないじぇ」 和「学生議会か何かじゃないんでしょうか?」 まこ「ほうかもしれんの。よし、打ちながら待つとするか。誰か…」 京太郎「あ、じゃあ休憩ついでにビリだった俺が抜けますよ」 まこ「ほうか、すまんの」 優希「犬、それならタコスを買ってくるじぇ!」ダキツキ 京太郎「お、おう。全くしょうがねーな」 優希「お、動揺したね?私の色気にドキっとしたか?」 幸い女の集団に溶け込めていない訳ではない。 だが男の目線を気にしない彼女達の無防備な姿が毎日俺を誘惑する。 和の胸、部長の脚、優希の過剰なまでのスキンシップ。 無意識なのかからかっているのかは分からない。 他の男が聞けば羨ましいというかもしれないが、そんな生殺しの日々に俺は欲求をつのらせ悶々としていた。 京太郎「ば、バカ言ってんじゃねーよ。じゃあちょっと行ってくるわ」 咲「京ちゃん、気をつけてね」 これ以上この部屋にいては精神衛生上よくない。 俺は逃げる様に部室を後にした。 京太郎「しかし学食にタコスがあるのってうちくらいだよな…」テクテク 一人になってようやく落ち着いた。 タコスは学食に売っているのですぐに買えるのだが折角得た平穏だ。 俺は遠回りをして戻る事にした。 ハヤリガシボリトッチャウゾー☆ ナンダコノチジョ!?クルナ!ヤメロ!! 京太郎「…ん、何だ?」 ドッチカラタベヨッカナー クソッ!マホチャンニゲルンダ! ソンナ!マホダケニゲルナンテ ドッチモイッショニイタダキマース☆ 京太郎「こっちの方から聞こえた様な……な!?」 副会長「うわああああ!!」ドピュドピュ マホ「あっ、ひゃああああ!!」ビクンビクン それは目を疑う様な光景だった。 際どい格好のお姉さんが白昼堂々と男女を絶頂させている。 人気のない校舎裏とはいえ目の前の肢体の誘惑を必死に堪える自分の日常とあまりに解離した現実離れした光景。 理解が追い付かない。 思考は完全に停止しているのに体は押し込められた欲求を解き放つかの様にその一部を固くさせていた。 はやり「うーん、おいしい☆嫌がってたけどオチンチンの方は最初からビンビンだったねーロリコンさんなのかな?」ツヤツヤ 副会長「あっ…くぅ…何なんだお前…やめ…触るな…」 はやり「淫魔のおねーさんのはやりだよ☆しかしはやりがイかせてあげても堕ちないなんてこれは筋金入りだね……で・も☆」チラッ マホ「…………」ムクッ 副会長「ま、マホちゃん……大丈夫かい…早く逃げるんだ…」 マホ「……副会長さん…マホなんだかお股がムズムズするんですぅ…」クネッ 副会長「な…ぇ…?」 はやり「こっちの子ならどうかなー?」 マホ「副会長さん…マホおかしくなっちゃったんでしょうか…」ピトッ 副会長「あ…ハァ…ハァ…マホちゃん…何を…」ビンビン はやり「なんと!淫魔にイかされた女の子は淫魔になっちゃうのでしたー☆」 マホ「副会長さんマホとお話してる時ずっとオチンチン大きくしてましたよね……女の子ってそういうの気付いてるんですよ?」 副会長「あ…ああ…」 マホ「こ・れ・で…マホの事、どうしたかったんですかー?」スススナデナデ 副会長「あ…ああ……うわああああ!!」ガバッ マホ「きゃっ、急にマホを押し倒したりしてどうしたんですか?」 副会長「ハァハァ…マホちゃんが…マホちゃんがいけないんだ…僕を誘惑して…」 マホ「んっ…もうっ、オチンチン擦り付けちゃやですよぅ」 副会長「ハァハァ…マホちゃんのお股のムズムズをお注射で治してあげるからね…」 マホ「ホントですか?お願いしますぅ」 副会長「ああ…入れるよ…マホちゃん…マホちゃんのオマンコに僕のオチンチン…ぁ…ぁぁ…」ズププ 副会長「おっ、おおっ、入る……入ったああああ!!」ジュポン マホ「ああんっ♪」 副会長「ハァハァ!夢にまで見たマホちゃんのオマンコに!生で!ハァハァハァハァ…ああああ」パンパンパンパン マホ「あっ…あっ…そんなに激しく…あんっ…しないでください…」 はやり「やっぱりロリコンさんだったんだねー☆ちょっと誘惑されただけで理性飛んじゃって…これじゃあレイプだぞ☆」 マホ「レイプ…この気持ちいいのレイプっていうんですか?あんっ…マホ副会長さんにレイプされてとっても気持ちいいですぅ」 副会長「レイプ…マホちゃんをレイプ…ハァハァ…あっ…出る……出してやる…マホちゃんの中僕で一杯にしてやるぞ…」パンパンパンパン 副会長「出るよ!マホちゃんの中に白いお薬!あ、出っ、あああああああ!!」ブピュッブピュッビピュッ マホ「んっ…んんっ…あはぁ♪」ビクンビクン 副会長「はぁ…はぁ……はぁ…はぁ」 マホ「んっ…凄いです、ホントにお股のムズムズが治っちゃいました…あんっ」ゴプッ マホ「……副会長さん」 副会長「はっ…僕はなんて事を…ま、マホちゃんそのこれは……」 マホ「……またお股がムズムズしたら……マホの事レイプしてくださいね♪」 副会長「あ…ああああ…マホちゃあああん」ガバッ はやり「うふふ…この子はもうマホちゃん無しじゃ生きられないね☆初めてなのにマホちゃんやるぅ☆」 マホ「ふふふ…でもマホもっとしたいです」 マホ「ほーら、副会長さん…マホの事レイプしてください」フリフリ 副会長「マホちゃん…マホちゃんんん!!」 はやり「お盛んだねぃ。はやりもまだ足りないから校舎で他の子漁ってこーよおっと☆」 マホ「きゃっ、そうですよ…今度は後ろからワンちゃんみたいに…あんっ…あんっ♪」 はやり「聞いてないね…まぁいっか。次会うときはお友達いっぱいだよ☆またねー☆」バサッバサッ 京太郎「…………」シコシコ 京太郎「………フー…フー…フッフッ」シコシコシコシコ 京太郎「あっ…くっ…」ドピュドピュ 京太郎「はぁ…はぁ………ふぅ」 京太郎(…………何だったんだ今のは…これは現実なのか?) キャアアアア!! 京太郎「な、何だ!?」 京太郎(そういえばあいつ校舎に行くとか言って…) アンッアンッ♪オォォォ!! 京太郎「まさか校内で今と同じ事が起こってるのか…」 京太郎「ヤバいな…咲達を連れて逃げないと!」ダッ 第一話 淫魔はやりん襲来 京太郎「はぁ…はぁ…咲!みんな!無事か!?」バァン 優希「遅いじょ犬!!タコスは…」 京太郎「ああ、ちゃんと買ってきて…ってそれどころじゃないぞ」 咲「さっき本校舎の方から悲鳴が聞こえたけど何かあったの?」 京太郎「ん…ああ…よく分からんが大変な事になってるんだ」 まこ「なんじゃ、歯切れが悪いのぅ…」 京太郎「多分信じてもらえないでしょうけど……カクカクシカジカ」 まこ「コレコレウマウマ……はぁ?なんじゃそら」 和「…………そんなオカルトあり得ません」 優希「……このタコスなんか変な臭いがするじぇ」 京太郎「いや本当なんだって!信じてくれよ…」 咲「うーん…流石にちょっと…」 ピンポンパンポーン↑ はやり『あーあー、マイクテスマイクテス』 はやり『よい子のみんなこんにちはー、淫魔のおねーさんのはやりだよ☆』 はやり『えっと……この学校ははやりとその仲間達が占拠しました』 はやり『今頃は学校のお外もはやりの仲間達が制圧してると思うからみんなも抵抗しないで出てきてね☆』 はやり『あ、ちょうど映像が入ってきたよ☆みんなで一緒に見てみよっか』 豊音『あーもー、ちっちゃいオチンチン勃起させちゃってこの子かわいいよー』 菫『なんだお前……何故罵られてるのに勃起してるんだ?』 菫『…ああなるほど……変態なのか』ニヤリ 霞『ほら、素直にならないとコレ……握り潰しちゃうわよ?』コリッコリッ シロ『ダル……ねぇ、そこの君…ちょっとお願い聞いてくれる?』 淡『ほらほら、早くイって!淡の凄いでしょ!』 照『…………』ギュルルルルル ウワアアアア はやり『みんな楽しんでるねー☆はやりも早く遊びにいーこおっと』 はやり『みんな、またねー☆』 ピンポンパンポーン↓ まこ「なんじゃ今のは…」 京太郎「だからマジなんですって」 優希「にわかには信じられないじぇ…」 咲「どうしよう…京ちゃん…」 京太郎「みんなを連れて脱出しようと思ってたんだが外もヤバいのか…」 和「そ、そんなオカルトあり得ません!そ、そうです電話で助けを呼びましょう」 ツーツー 和「そんな…電話が通じないなんて…」 まこ「どうやらマジのようじゃな。迂闊に動けん以上ここに立て込もって救助を待つしかないかのぅ」 咲「ここ色々あって生活するには困りませんしね…」 京太郎「部長の事が心配ですけど仕方ないですね…」 まこ「あいつならきっと大丈夫じゃ。ほれ、そうと決まれば急いで戸締まりじゃ!はようせい!」 京太郎「は、はいっ」タッタッタッ 京太郎「取り敢えず急いで入り口閉めとかないとヤバいよな…」タッタッタッ 久『…………』 京太郎「ん?今の部屋誰かいたような…」 久『…………』クルッ 京太郎「部長、部長じゃないですか!こんな所で何してるんですか?」 久「あら、須賀くんじゃない……汗だくでどうしたの?」 京太郎「はぁ…どうしたじゃないですよ…大変な事になって……まぁ無事で良かったです」 久「無事って大袈裟ね。学生議会は副会長が来なくて始められないわ変な放送で中止になるわで踏んだり蹴ったりだったけど私は何ともないわよ?」 京太郎「大袈裟じゃないですよ…部長があんな風になっちゃってるんじゃないか心配で…」 久「ふぅん。……ねぇ…須賀くん…あんな風ってどんな風かしら?」 京太郎「え、いや…それはその…」カァッ 久「あら、何で赤くなるのかしら?須賀くんは私の事心配してくれてたのよね?」ニヤニヤ 京太郎「それは…その…」ムクムク 久「しかもおっきくしちゃって…須賀くんの中で私はどうなっちゃってるのかしら?」クスクス 普段から人をからかって楽しんでいる人だからこれくらいの会話はいつもの事かもしれない。 だが淫らに人を誘惑するこの仕草、いつもの部長ならその一線だけは越えない。 この人はもう手遅れだ。 京太郎「そ、そうだ…俺ちょっと急いでるんで…部長すみませんけどこれで…」 京太郎(早くこの場から逃げてみんなに知らせないと…) 久「あら、そう?」 久 「…………スッ」アシクミカエ 京太郎「!?」 久「残念だわ…」ムチムチ 京太郎「あ…」 俺が逃げ去ろうとしたその刹那、部長はわざとらしく大きく動作で見せつける様に足を組み換えてきた。 俺にそっと目配せして、正体に気付いて逃げようとする俺をあろう事かパンストに包まれた脚で誘惑してきたのだ。 京太郎「…………」ゴクリ 久「ふふ…須賀くん、どうしたの?」 京太郎「あ…いえ……なんでもありません」 京太郎(危なかった…俺は何を考えてるんだ…パンストなんかに惑わされて……パンスト…) 京太郎(…部長の透けたパンツ…あそこに鼻をすりつけて…) みんなの手前いつもは横目にしか見れない部長の脚。 逃げなければいけない、分かっているのに俺の体はその付け根の張り詰めた太ももの誘惑に釘付けになっていた。 久「ふふふ…ねぇ須賀くん……あなた満足してる?」 京太郎「な、何を……」 久「須賀くんがいつも私の脚を見てるの…私気付いてるのよ?」 京太郎「!?」 久「私のここ…興味あるんでしょ?いつも想像してた様な事…してみたくない?」 京太郎「あ…ああ…俺…俺…」 久「……ほら、きなさい♪ たっぷり私の匂いを吸い込ませてあげるわよ」ムチィ 艶かしく脚を開閉する部長の悩ましい美脚に俺は完全に誘惑されていた。 みんなに早く事態を告げて安全を確保しなくてはいけないのに。 久「…須賀くんがしたかった事…全部叶えてあげるわよ?」 久「ほ・ら…ここにきなさぃ…♪」ガバァ 京太郎「あぁぁ…はぃ…行きます…今行きますぅ…」 抗えない、抗える訳がない。 四つん這いにふらふらと犬の様に近づく。 むちむちの太ももが食虫植物の様に口を開けている。 久「ねぇ…もっと近くに…ほら早く…」ムワァ 俺は匂いに誘われる虫になっていた。 甘い蜜に惹き付けられ補食されてしまう。 部長のパンスト、卑猥な肉の罠。 そしてその絶景が今目の前に…… 久「いらっしゃーい♪」ギュムッ 京太郎「ハァハァ…んっ…むぐっ」 久「いい子ね……ほら、むちって太ももで挟んであげるわ」ムッチムッチ 京太郎「ああ…ああ…いい匂いです…それにこの感触ぅ…ぁぁ…」 俺の顔を挟んだまま太ももが閉じられていく。 パンストの圧迫、眼前の透けパンティ。 部長の芳香とフェロモンが一体となり、倒錯した天国へと俺を蕩かしていく。 京太郎「ハァハァ…部長…部長…」クンクンスリスリ 久「あんっ…もう、そんなにがっついて……いいわよ、もっとクンクンしなさい」 部長、太もも、パンスト。 それらの単語の一つ一つが俺をこの上なく興奮させる。 魅惑の布に包まれた割れ目を鼻が擦る度にむれた女の匂いが脳内を甘美に埋め尽くす。 京太郎「ああああ……部長部長部長部長!!」 狂った様に顔を擦り付ける、甘い罠の前に理性はとうに崩壊していた。 射精してしまう、部長のパンストに屈服し、触ってもいないのに射精してしまう。 京太郎「ぁぁ…俺…出る…出そうです」 久「ふふ…いいのよ♪私の太ももに顔を挟まれながらぴゅっぴゅっぴゅっ~ってしちゃいなさい♪」ギュー 京太郎「むっ、ふが……ん…ぁ…」 更に脚の締め付けが強くなる。 息もつけない程の圧迫。 パンストに包まれ、部長のぬくもりを感じ、俺はこの快感に支配される。 京太郎「んっ…んんっ!むがっ…ん、んんっ!!」ブピュッドプッドプッ 久「あんっ♪あらあら…ホントに出しちゃって…仕方のない子ね」 京太郎「フー…フー……俺…俺…」 久「ふふっ…何も考えなくていいのよ?」 久「今から須賀くんは私の奴隷。一生私に顔を弄ばれながら過ごすの…素敵でしょ?ほら♪」ギュム 京太郎「むぐっ!あ…ぐ……んんん…」 久「それにまだ終わりじゃないわよ?次は最高に気持ちのいい顔面騎乗でイカせてあげる」 久「お尻に押し潰されて息もできなくなるの……気持ちいいわよぉ」ギュウウウ 京太郎「んむっ、むっ……ん…息が…んぐっ…もが…」 久「ほら…今度はオチンチンも触ってあげる…こんな美少女にしごいて貰えるなんて滅多にないわよ?」シュッシュッ 京太郎「んんっ……んんんんっ!」ビクンビクン 部長の柔らかいお尻に押し潰されながら股間をしごかれる。 先程とは比べ物にならない圧迫感。 命の危機に体は子孫を残そうと限界まで勃起する。 久「あらあら、さっき出したばっかりなのに元気ねぇ…私の手、須賀くんのでグチョグチョにされちゃうわ」グチュグチュ 京太郎「むっ…むーっ…」カクカク 俺の股間が部長に擦り付けられ、尿道の奥から扱き出された残り汁が部長の手を汚し潤滑液となる。 受け身ではあるが自分の痴部を部長の様な美少女に擦り付ける快感。 今にも息が切れそうな状況に反し俺の体はこの上ない喜びを感じていた。 久「もう…自分で腰振っちゃってかわいいわね……大好きよ須賀くん」チュッ 京太郎「ん!?んんんっ!!」ビュルルルブピュッブピュッドプッドプッ 久「きゃっ、あんっ♪」ビチャビチャビチャ 突然の亀頭へのキス、それが引き金となった。 俺の精液が部長の顔を汚している事実に俺の心はこの上ない充足感を感じていた。 久「案外出せるものなのね♪ほら、もっと射精しなさい?ほらほらほら」グリグリ 京太郎「あぐっむぐっ……んんんっ…」ドプッドプップッ 京太郎「はぁ…はぁ…はぁ……」 久「さてと、このまま堕としちゃってもいいけど楽しみは取っておかないとね。……咲達は部室かしら…」 久「須賀くん、いい子で待ってるのよ?いい子にしてたら…今度はみんなでもっと気持ちよくしてあ・げ・る」 京太郎「ぁ…ぁぁ…ぅ…ぁ…」 咲「……ちゃ…ちゃん!…京…ゃん!京ちゃん!」 京太郎(……ぅ……なんだ…?) 優希「起きろ!起きるんだじぇ、犬ぅ!!」 京太郎「…ぁ…咲…優希?」 咲「良かった…気がついた…」 優希「このバカ犬!ご主人様を心配させるんじゃないじぇ!」 京太郎「俺は……そうだ、部長が!」 咲「部長がどうかしたの?」 京太郎「部長はもう手遅れだった!今お前らを狙って部室に…」 優希「!部室にはのどちゃんと染谷先輩が残ってるじぇ!」 イ,イヤデス!ワタシノハジメテハサキサンニ!イヤ,イヤアアアアア!! 咲「今の声…和ちゃん…そんな…」 オ,オドリャヤメンカ!ヤ,ヤメ…ヌワアアアア!! 優希「や、ヤバいじぇ…早く逃げないと部長がここに……」 咲「!?きょ、京ちゃん!早く逃げよ!」 京太郎「え……あ、ああ…そうだよな…逃げる…逃げないと…」 久『いい子にしてたら…今度はみんなでもっと気持ちよくしてあげる』 京太郎「っ!」 優希「犬、おい!どうした?大丈夫か?」 咲「京ちゃん?」 京太郎「ああ…ああ…」 咲(さっきから京ちゃんの様子がおかしい…この部屋前に京ちゃんの部屋で嗅いだのと同じ臭いがするし……此処で何があったんだろう) 優希「仕方ない、咲ちゃん!犬を引っ張ってでも連れていくじぇ!」ズルズル 咲「う、うん」ズルズル 京太郎「逃げる……でも待ってないと…部長…」ブツブツ 優希「もうすぐ出口だじぇ!外に出てそれから…」ズルズル 咲「!?待って優希ちゃん、誰かいる!」 マホ「あれ、先輩方こんにちはー」 優希「ま、マホ…お前…」 咲「後ろで四つん這いになってるのってうちの副会長…それじゃ…マホちゃん、そんな…」 マホ「そっちのお兄さんは何だか元気ないですねぇ。マホが元気づけてあげましょうか?」ピラッ 京太郎「!!」ムクッ 優希「い、犬!気が付いたか!」 咲「きょ、京ちゃん…」 マホ「お兄さん…マホのスカートの中見たいんですか?」 京太郎「な…違……違う、違うぞ咲」 咲「う、うん…分かってるよ京ちゃん」 マホ「えー、副会長さんは見たいぃ見たいぃ、って必死にお願いしてくれるんですよぉ?」 マホ「マホで気持ちよくなるために何でもお願い聞いてくれて………ほら」スルスル マホ「お兄さんもぉ…マホのここ使いたくないですかぁ?」クパァ マホ「マホお股がムズムズするんです……お兄さんのお注射で治してくれませんか?」 京太郎「ゴクリ……………俺は…俺…いや…そんな…」ギンギン 優希「い、犬…お前…なに大きくしてるんだじぇ…」 咲「こ…こんな小さい子で…京ちゃん…なんで…」 マホ「何言ってるんですか先輩、男の人はみんなロリコンなんですよぉ?」 マホ「マホみたいな子のこと見ていやらしい事考えてぇシコシコオナニーするんですよぉ…副会長さんが教えてくれました」 マホ「ほら…お兄さんもマホの事押し倒してレイプしてください♪とぉっても気持ちいいですよぉ?」 京太郎「…ぁ……ぁ…」 咲「京ちゃん…」 カツン…カツン… 咲「!?」ビクッ 久「あら、咲に優希…こんな所にいたのね」 優希「ぶ…部長まで…」 久「それにしても…せっかく和とまこを連れてきたのに居なくなってるなんて…これはお仕置きしないといけないわね、須賀くん」 和「連れ出したのは咲さんですね……ふふふ…咲さん…私がたっぷりお仕置きしてあげますね」 優希「挟まれたじぇ…」 咲「そんな…」 マホ「お兄さん♪」カツン 久「須賀くん…」カツン 和「咲さん…」カツン 京太郎「ぁ…ぁ…」 キキィーッ!! 久「!!」ピクッ 『伏せてください!!』 マホ「ふぇっ!?」 ドカーン 優希「ひゃっ、こ、今度は何だじぇ…」 ハギヨシ「無事ですか皆さん!!」 咲「ハギヨシさん!?」 京太郎「ぁ…ぁ…」 ハギヨシ「須賀くん…なんとお痛わしい姿に…詳しい話は後です!須賀くんは私が運びますから皆さんは車へ!」 咲「は、はい」 バタン!ブオォォォォォ …パラパラ 久「ふぅ、全く危ないわね」 和「咲さんに逃げられてしまいました…」 マホ「痛たた……副会長さんが盾にならなかったらマホぐちゃぐちゃでしたよ…」 久「あれ、ハギヨシさんよね?」 和「となれば行き先は龍門渕ですね」 久「ふふふ…逃がさないわよ、須賀くん」ジュルリ 車内 咲「ハギヨシさん、これは一体…」 ハギヨシ「今回の騒動、龍門渕はなんとか他よりは治安が保てています」 ハギヨシ「守りも固まりようやく救助に出た次第なのですが……遅かった様ですね」 優希「犬…京太郎は一体どうしちゃったんだじぇ?」 ハギヨシ「おそらく誰かの手にかかり魅了されてしまったのでしょう……幸いまだ意識は保てていますから回復の余地はありますが…」 ハギヨシ「ああ、見えてきました。もう大丈夫です、ようこそ龍門渕へ」 京太郎「う…此処は…」 ハギヨシ「気付きましたか、須賀くん」 京太郎「ハギヨシ…さん?俺は…此処は一体…」 ハギヨシ「此処は龍門渕家の敷地です。清澄で貴方達を救出して連れてきたんです。ここならもう大丈夫ですよ」ニコッ 京太郎「救出…そうだ、咲達は!?」 ハギヨシ「安心してください別室でお休みになっています。須賀くんも今は体を休めた方がいいでしょう」 京太郎「そうですか…すみません」 ハギヨシ「いえいえ、いいんですよ。体が回復したら敷地内は自由に動いていただいて構いません」 ハギヨシ「ただ…別館の方には近付かない様にしてください」 京太郎「?…わかりました」 ハギヨシ「では私はこれで…何かあれば呼び鈴でメイドを呼んでください」 京太郎「何から何まで…本当にありがとうございます」 ハギヨシ「私と須賀くんの仲じゃないですか。では……」カツンカツン キィィバタン ハギヨシ(……ごめんなさい須賀くん……本当に…ごめんなさい) 別館 副会長「こ、此処は……あああマホちゃん、マホちゃんは何処に…マホちゃんマホちゃん」 衣「今宵の生け贄は少しばかり騒がしいな」 副会長「!?」 一「もう誰かのお手付きみたいだね、初めてを堕とすのが楽しいのに残念だなー」 衣「そうか?衣の前に屈服させて前の誰かの事など思い出せなくする。その方が…衣は楽しい」 副会長「あ…ああ…」ムクッムクッ 一「あれ、ボク達まだ何もしていないのに…この人勃起してるよ?」ピラッ 衣「ほう、なかなか生きが良さそうだ。たっぷり調教して衣のおもちゃにしてやるぞ」チラッ ハギヨシ「清澄より連れ帰った方々皆様目を覚まされたした。一人は既に手の施し様がなかったので先に別館の方へ…」 透華「そう…分かりましたわ。残りも順次投入して決して衣達を飽きさせない様に、今の衣を押し込めておくにはそれしかありませんわ」 ハギヨシ「……かしこまりました」 透華「衣…みんな…なんでこんな事に…」 透華(それでも…絶対にわたくしが守ってあげますからね) 副会長「ハァハァ…」 衣「くくく…お前どうして衣の足を見てガチガチになっているんだ?」 一「ボクなんか全身凄い目で見られてるし…なんか身の危険を感じちゃうな」クネクネチラッ 副会長「ハァ…ハァ…そんな布みたいな服で…ハァハァ…誘ってるんだ…僕は悪くない…レイプ…マホちゃんみたいにレイプしてやる…ああああ!!」ガバッ 衣「猪口才な…一」 一「うん。えぃっ」カシャンカシャン 副会長「な、えっ…うわっ」ズシャア 一「確かにボク達は小さいけど手錠で縛っちゃえばお兄さんも何もできないよ」 衣「どうやら前のご主人様はロクに躾もしなかったらしい…」 衣「これは衣が自分の立場を分からせてやらないといけないな」 一「ほーら、ボクのアソコ見える?ここに入れたかったんだよね?…でも何もさせてあげないよ」タクシアゲ 副会長「フー!フー!フー!」 衣「まるで獣だな。ほら、衣に懇願してみろ、少しばかり温情をかけてやるかもしれないぞ?」 副会長「フー!フー!お願いします!入れさせて…出させてください!出させ…出したい出したい出したい」 衣「そこまで言うなら仕方ない。ほら、衣の足を使わせてやる」スッ 衣「自分でその粗末なものを押し付けて気持ちよくなってみろ」 副会長「!ほっ…おほっ…おほおおおっ」グニッズルンッペチンペチン 衣「ふふふ…狂った様に擦り付けて…どうだ、衣の足は柔らかくて気持ちいいだろ?」 副会長「はい、はいぃ、ありがたき幸せです、衣様衣様ぁ」 一「あーあ、さっきまでボクに釘付けだったのに今度は衣にメロメロだよ…ちょっと妬けちゃうな」 衣「自分の性器を足蹴にされて興奮するとは変態だな…雄の誇りはないのか?流石の衣もちょっと引いてしまうぞ?」 衣「ほら、気持ちいいか?マホとかいうのの事を忘れて衣に絶対服従を誓えば衣も足を動かしてやるぞ?ほら…」クニ 副会長「ふぁああ。誓う、誓います!マホちゃんの事なんて知りません!だから…だからああ」ビクッビクッ 衣「よぅし、よく言った。衣の足でお前は衣のおもちゃになるんだ」フミッフミッコシュコシュギュウ 副会長「フォッ、フォッフォッ……おおお!んおおおお!!」ビュクッビュクッビュクッ 衣「なんと醜い喘ぎだ…本当にこういうのが好きなのだな……」 一「マホちゃんって子、衣の足だけに負けちゃったね。まぁこの人踏まれて感じるマゾみたいだし相手を支配する衣の方が相性よかったのかもね」 副会長「おおん…おおお」 衣「ほら、衣に対する礼を忘れているぞ? 何とか言わないと踏み潰して使い物にならなくしまうぞ、それっそれっ」グリグリ 副会長「ほおぉぉぉ…衣様ぁおみ足でしごいてくださってありがとうございしたぁ」 衣「よし、よく言えたな。ご褒美に好きなだけ出していいぞ。ほら、イっちゃえイっちゃえ~」 一「あ、衣ばっかりズルいよ!そろそろボクも混ざるからね!」ジュルッ 副会長「ああ…ああああ!!」ブピュッブピュッ ………… 一「残念、もう出なくなっちゃったね」 衣「こやつも衣を満足させられる打ち手ではなかったな」 副会長「…………」ピクピクッ 衣「おいお前、今日は衣の大好きなエビフライだ」 衣「夜にはちゃんと衣を満足させられるくらいタルタルを出すんだぞ?」 あれからハギヨシさんに色々教わった。 いち早く体勢を整えた龍門渕が防衛組織を作っている事、各地から生き残った人間を救助して回った事、俺の不調は淫魔に魅了され一時的に精神状態がおかしくなっていたのが原因である事。 京太郎「咲達にはみっともないとこ見せちまったな…」 清澄から脱出する際の事を思い出す。 副会長を引き連れた淫魔の小さな体、その童顔からは考えられない程の淫らな誘惑。 そしてそれに反応してしまった俺を見る咲や優希の信じられない物を見る様な蔑んだ目。 京太郎「ハァ…ハァ……!?」ムクムク 京太郎(……ぇ?…俺…何で勃起して…) 咲『嘘…京ちゃん…』 優希『犬…最低だじぇ…』 京太郎「ハァハァ…クソっ、何だ!何だよこれ!」ビンビン 京太郎(違う…俺にそんな趣味…違う、違うんだ) このままでは自責の念に潰されてしまいそうだ。 俺はベッドから起き上がると邪念を振り切るように部屋を飛び出した。 京太郎「……はぁ…はぁ」 何処をどう走ったか覚えていない。 気付けば全く見覚えのない区画まで来てしまっていた。 勃起はおさまり今は走り回った疲労感だけが体を包んでいる。 京太郎「参ったな…誰かに道聞かないと戻れないぞ……誰か…ん?」 モウ…ワリ…ナノヨ! オチ…イテ… オネーチャ…ドウシテコンナ… 京太郎「良かった、誰かいるみたいだ……あの…」 憧「だからもう世界は終わりなのよ!」 灼「またそれ?…少しは落ち着いたら?」イライラ 玄「おねーちゃん…うう…」グスッ 憧「落ち着けですって!?しずがやられて!宥姉も晴絵もやられて町も滅茶苦茶で!それで落ち着けですって!?」 灼「……はるちゃんはやられてない」イライラ 憧「は?何言ってるの?あんたも見たでしょ、晴絵は私達を逃がすために囮になって…」 灼「やられてない」 玄「おねーちゃん…」グスグスッ 憧「………」イラッ 憧「玄さん…あんたもそうやって宥姉宥姉って…元はと言えば宥姉のせいじゃない!」イライラ 玄「!!」 憧「私達はいつも通り部活してただけなのに…おかしくなった宥姉が突然やってきて……しずを…しずを…」 玄「で、でもお姉ちゃんも被害者で…」 憧「そんなの関係ないわよ!!」 玄「うぅ……」 憧「………もういい、やってられない」 玄「ぇ?」 憧「あんた達何かと一緒にいるなんて無理、私は独りで勝手にやらせてもらうから」 玄「そんな…憧ちゃん…私達仲間なのに…」 灼「……行かせてあげなよ」 玄「あ、灼さん!?」 灼「私も憧といるのは無理。ほら、早くして」 憧「ええ、言われなくてもそうするわよ!じゃあね!」ダッ 京太郎(…なんだこれ………って、こっちに!) 憧「!?……どいて」ドンッ タッタッタッ 京太郎「…………」 凄い場面を見てしまった。 こんな空気の中に踏み込んでいける訳もなく完全に出るタイミングを失った。 京太郎「仕方ない…なんとか自分で戻ってみるか…」 憧「はぁ…これからどうしよ…」 憧「適当な男でも捕まえて泊めてもらおっかな…」 憧「しずもいなくなっちゃったしなんかもうどうでもいいや……はぁ」 「『ダル……」』 憧「………え?」 シロ「…………」 憧「あ、あんた一体何処から…」 憧(な、なんだろ…凄く綺麗でかっこよくて……ドキドキする) シロ「ダルい……」 憧「え…」 シロ「……君に…してほしい事が…」 憧(なんだろ…逆らえない…私この人のために何でもしてあげたい) シロ「私のモノになって…私の言うこと…聞いて。……お願い」チュウウウ 憧「!?」ズキューン アアアアアッ 京太郎「何だ今の声…こっちの方か…」タッタッタッ 憧「…………」ポー 京太郎「あれはさっきの…おい、大丈夫か!?」 憧「ぇ……ああ…うん…」 シロ『ダルいから…私のために此処を落としてきて…』 憧(そうだ…あの人のために…私…やらなきゃ…) 京太郎「どうした、本当に大丈夫か?」 憧「……うん、私はホントになんともないの。ねぇ…お兄さん…そんな事より…私お兄さんにお願いがあるの…」ピトッ 京太郎「な、何だ…?」 憧「私友達と喧嘩しちゃって…今晩行く所がないんです…」 京太郎「そ、それって…」 憧「今晩…私をお兄さんのお部屋に泊めてくれませんか?」ウワメヅカイ 京太郎「…………」ゴクリ 目の前の女の子は正直言ってかなり可愛い。 何処が突出している訳ではないがバランスの取れた柔らかそうな体、制服を着ていても分かる今時風のオシャレな雰囲気、心なしか良い匂いが鼻腔をくすぐる。 スクールカーストで言えば間違いなく最上級レベルの女の子、そんな子が今俺を頼り誘惑している。 京太郎「い、いや…でもマズイだろ」 こんな美少女と二人きりで一夜を過ごせる、女に囲まれていても浮いた話一つない俺にとってはまたとないチャンスだろう。 魅力的な提案だ……だが。 京太郎「…………」 咲『きょ、京ちゃん…こんな小さい子に…』 優希『犬…お前…』 あれだけ醜態を晒した後だ、そんな昨日の今日で部屋に女を連れ込んでいるなんて事がバレたら咲達からの信用は地に落ちる。 失ってしまう…咲達を…それだけは避けなくてはいけない。 京太郎「悪いけど俺……」 憧「…私…お兄さんしか頼れる人がいないんです…だから…」ウルッ 京太郎「うっ…」 憧「お兄さん…私を一人にしないで…お願い…」ムニィ 上目遣いに涙を溜めすがるような懇願。 小刻みに震えるその姿が俺の庇護欲を刺激し、押し付けられる双丘が俺の欲望に発破をかける。 京太郎「そ、そう言われても…俺…」 憧「私お兄さんの望む事…何でもしてあげるから…」チラッ 一瞬覗いた胸元から見えた薄桃色のブラ。 それに掻き立てられた欲求を後押しする甘い誘惑。 もう限界だった。 京太郎「………分かった…なんとかする…俺に任せろ」 憧「ホント!?やった…お兄さん…私嬉しい…お兄さんお兄さん」ギュウウ 女の子特有の柔らかい体が押し付けられる。 普段優希にされているそれとは決定的に違う、からかいではない、全面的に俺に向けられた好意。 抱きつかれるというのはこんなにも気持ちのいいものだっただろうか。 京太郎「ちょっ…ヤバい…離れて」ビンビン 憧「?ああっ…お兄さん…これ…///」 京太郎「いや…その…これは…」 気付かれてしまった。 下心満々であったのは事実だがいざ指摘されるとやはり恥ずかしい。 京太郎「……すまん」 これを見た彼女は俺にどんな視線を投げかける事だろう。 気分が一気に沈み不安の眼差しで彼女を見る。 憧「……もう、仕方ないなぁ」クスッ 京太郎「!?」 憧「…エッチな事は…お兄さんのお部屋に行ってから…ね?」サワサワ 京太郎「!?」コクコク 狂った様に首を振る。 気付けば俺はこの娘の虜になっていた。 憧「…………」ニヤッ ガチャッバタンカチッ 憧「うわぁ、此処がお兄さんのお部屋ですかぁ。って、部屋自体は私達のと同じなんですけど二人だと広いですね♪」 京太郎「あ、憧ちゃん…その…何でもしてくれるって話…」 憧「あっ…そうでしたね///じゃあ…お兄さんは私に何…して欲しいですか?」ピタリ 京太郎「あ、憧ちゃん…俺…俺」 憧「あれ~?お兄さん目が泳いでますよ?もしかして童貞さんなんですか?きゃはは♪」 京太郎「いや…その…」 憧「クスッ……お兄さん……私に筆下ろしして欲しいんですか?こ・れ・を、私の中に押し込んでぇ…私の事…」サワサワ 京太郎「あ、憧ちゃ……そんな触ったら出ちゃ…」ビクッビクッ 憧「えー、もう出しちゃうんですか?……オ・マ・ン・コにぃ…入れなくていいんですか?……ほら…ほら…本当に我慢できないんですか?」モミュモミュ 京太郎「い、今触らな……あっ…ああああっ」ドプッドプッ 憧「…あーあ、出しちゃいましたね?スカート汚しちゃって…これ、ブランド物なんですよ?ねぇ」 京太郎「ぅ…ハァハァ…ご、ゴメ…ハァハァ」ビクッ 憧「ほら、どうしてくれるんですか?何とか言ってくださいよ」グリュグリュ 京太郎「あっ…ああっ」 憧「うわ…何でまた大きくなってるんですか?女の子にマーキングたから?それとも罵られて興奮してるんですか?ちょっと引くんですけど…」 京太郎「くっ…うぅっ…憧ちゃん…またっ」ビピュビュッピュッ 憧「……ふぅん…お兄さん反省もそずにそういう事しちゃうんだ…へぇー♪」ビチャビチャビチャ 京太郎「ああ…憧ちゃん…ゴメン…ゴメン…うっ」ビクンビクン 憧「もう分かったからいいですよ。好きなだけ童貞ザーメンぶちまけてください、変態お兄さん♪」 憧「た・だ・し、ここからは別料金ですよ♪」 ………… 憧「あーあ…もう服も下着もグチョグチョ…出しすぎですよ、お兄さん」 京太郎「ふぅ…ふぅ…ふぅ」 憧「お兄さん、私に貢げて幸せだったでしょ?」 京太郎「な…そんな事は…」 憧「私にお金払ってエッチな事されて……ここ、いっぱい気持ちよくなってたでしょ…ね?私にお金渡すの、想像してみて?」スリスリ 京太郎「…………」ムクッ 憧「ほら、もうオチンチン掴めるくらい大きくなっちゃった。オチンチンの方は貢げば気持ちよくなれるって理解しちゃってるんですよ?」 憧「お兄さんはぁ、もう私に貢いで喜ぶ変態さんになっちゃったの♪」 京太郎「違…俺は…俺は…うわああああ」 憧「あーあ、行っちゃった。ちゃんと最後までしてあげればよかったかな…まぁいいや、またね、お兄さん♪」 逃げ出した俺は部屋に戻る事もできず当てもなくさ迷っていた。 こんな情けない姿誰に見られたくない…そう思うと足は自然と人気のない方へと進んでいく。 気付けば俺は近づかない様に言われていた別館まで来ていた。 人はいる様で明かりは灯っている。 京太郎「ここ…別館か……俺こんな所まで…」 小蒔「あ、あの…すみません」 京太郎「ん……?」 京太郎(うぉっ…なんつーおもち…) 突然の声に振り返るとそこには巫女服に身を包んだ童顔の少女が座っていた。 少女というより爆乳。 大人しそうな顔に似つかわしくないその突出した一点に少女の印象の全てが詰まっていた。 小蒔「あ、あの…ちょっとお願いがありまして…」ブルン 京太郎「な、なんですか…」ゴクリ 意識していないのに自然と目が胸にいってしまう。 はちきれんばかりに張り詰めた双丘が少女に対する感情を悉く歪ませる。 無邪気であどけなく、この世の穢れを何も知らない様な顔の少女。 だと言うのに俺は庇護欲ではなく劣情を掻き立てられ、その背徳感が更に興奮を煽る。 『キャベツ畑やコウノトリを信じている可愛い女のコに無修正のポルノをつきつける時を想像するような下卑た快感』 京太郎(俺のチンポで滅茶苦茶にして泣かせたい) 完全な無意識で、俺の雄としての本能がそんな事を思わせた。 小蒔「それはですね」ズイッ 京太郎「!?」ゴクリ 思わずつばを飲む。 身を乗り出した事で腕に潰されぐにゃぐにゃと形を変える胸。 とても柔らかく、いい匂いがしそう。 京太郎(……何であろうと頼みを聞けばこの胸をもっと堪能して……) 京太郎(!って、俺は何を考えてるんだ、そんな目で見たら失礼だろ……そうだ俺は正当な理由でこの娘を助け……ああ、しかし大きいな…) 小蒔「?どうかしましたか?」ムニィムニィ 京太郎「あっ、いや…ああ、いいよ…俺ができる事なら何でも聞いてやるよ」 小蒔「あっ、ありがとうございます!私…嬉しいです…」ムニュウ 京太郎「うぉぉ……」 不意に抱き付かれ爆乳が押し付けられる。 下心はないと自分に言い聞かせこらえるが俺も男、こんなに無防備では俺の理性がもたない。 京太郎「分かった、嬉しいのは分かったから離れてくれ」 小蒔「あ、はい、すみません」 小蒔「あのですね……私ちょっと悩んでいるんです…」 京太郎「ふ、ふむ…」 小蒔「何だか今の世の中…こう…みんな満たされていませんよね?」 小蒔「ええと、 うまく言えないんですけど…みんな不安でいっぱいで…自分のしたい事は我慢して…そんな人達を私が何か変えられないかなって思って…」 京太郎「お、おぅ……」 何だろう、とってもいい子だ。 考えている事はあまりに漠然としていて夢想家と言って差し支えないレベルだが、それでも誰かのために頑張りたい気持ちが伝わってくる。 小蒔「それで…あの…私に何ができるか…必死で考えて…あのっ…その…」パサッ 京太郎「えっ?ちょ、何を…」 小蒔「こういうの……考えたんです…」たぷんたぷん 俺は一瞬呆気に取られた。 少女が巫女服をはだけ零れ出た爆乳をたぷたぷと弄ぶ様に見せ付けてきたのだ。 京太郎「…………」ゴクリ 視線が釘付けになる。 少女特有の甘酸っぱい香りが鼻腔をくすぐる。 歪んだ感情が先程感じた少女への感銘を塗り潰し再びその肉体への欲望が顔を出す。 小蒔「あの…私ってこのおっぱいくらいしか取り柄がないですから…。その…おっぱいを使って幸せに…ほら、男の人っておっぱい大好きじゃないですか……だから」 小蒔「ん…んっ♪どうですか?このおっぱい…気持ちよくなれそうですか?ほら……」ムニッグニッ 京太郎「あ、ああ…」 十本の指に弄ばれ乳房がぐにゃぐにゃと形を変える。 淫らすぎる誘惑にしばし戸惑い思考が蕩ける。 艶かしく瑞々しい肌がむちむちとはじけて俺を誘う。 この状況は正常ではない。 この少女は明らかに淫魔で俺を誘惑している。 そんな事は誰の目にも明白だろう、だが。 京太郎「ハァハァ…ハァハァ…」ボロン 俺はいつの間にかギンギンに勃起した愚息を取りだし、獲物を狙う野獣の眼光と共にそれを少女に向けていた。 小蒔「あっ…すごい…やっぱりおっぱいがいいんですね?……大きい…でも…頑張らなきゃ…」 小蒔「んっ…ほら…いいんですよ…お兄さんが頭の中で考えてる事…私にしちゃっても…」 京太郎「ハァ…ハァ…」ビンビン 小蒔「不安も、我慢してる事も…全部忘れて私で気持ちよくなってください…」 京太郎「……ハァハァ…ハァハァ」 卑猥な双乳を妖しく揺らす少女。 広がる魅惑の隙間。 若干汗ばんできた肌がこすれ合い、にちゃりと絶妙な音を奏でる。 理性が一枚ずつ剥がされていく。 フラフラと吸い寄せられる様に少女に近付いていく。 密着し閉じられた乳房の間に肉棒が迫り… 京太郎「…フー…フー」ピトッ 小蒔「きゃっ、熱っ…」 京太郎「おぉぉぉぉぉぉ!!」ズルンッ …入った。 一瞬で生暖かい柔肌の感触に包まれる。 これが純真無垢な少女の胸の肉壷だ。 しっとり濡れた汗が潤滑液となる。 ぬるぬるとすべりがよく、突く度に甘いおっぱいのイメージが手に取るように伝わり脳天へと突き抜ける。 京太郎「おお…おぉぅ…気持ちいい…気持ちいい…まとわりついてきて…ああ…」ヌチャヌチャ 小蒔「んっ…あん♪気持ちいいですか?私…初めてだから…」 京太郎「ああ…とっても気持ちいい…こんな事するなんて…いやらしい子だ…おぉぅっ」パンパン 小蒔「あんっ…そんな事言わないでください……あんっ…あんっ」 突きながら乳房を握り締める。 指に潰されチンポで突かれ、俺の意思のままに形を変える。 少女の胸を好き勝手に蹂躙し、俺好みに作り替える。 初めて感じる極上の征服感が感情を昂らせる。 小蒔「はふっ…お兄さんの…すごく固くて………すごい…私の胸に響いてきます…これが幸せになれてるって事なんですね…」 京太郎「ああ…いい…いいぞ…絞り上げられて…ああ…おらっ…舐めろ…舌出せ…ぉ…ぉぉぉ」ドサッパンパンパンパン 小蒔「きゃっ…そんな、急に激しい…やっ…んっ…ちゅ」ウルッ 少女を押し倒し馬乗りの体勢になる。 少女の目に涙が浮かぶ。 京太郎「ハァ…アァ……アアアァァ!!」パンパンパンパン そんな嫌がる素振りを見せても逆効果だ。 馬乗りパイズリを決め少女の体を俺のチンポが支配する。 穢れを知らなそうな幼い顔は涙を浮かべ、甘く整ったケーキの様だった乳房は淫らに形を変えている。 最高の気分だった。 小蒔「んっ…きゃっ…いや…や…しょ、正気に戻ってくださいお兄さん!こんな…こんなの…あんっ」 京太郎「ハァハァ…こんなおっぱいぶら下げて歩いてる方が悪いんだ…ハァハァ…おしおきしてやらないとな…」パンパン 俺は獣になっていた…彼女がそうさせたのだ。 小蒔「あっ…ああんっ…お兄さん…おっぱいがぁ…ひっ…熱いぃ…」 京太郎「ハァハァ…いやらしい胸しやがって…滅茶苦茶に……くっ…ああ…出る、出すぞ!お前のエロい胸に…」パンパンパンパンパンパン 小蒔「ん…ぁ…だっ、出してください…お兄さんのオチンチンで…私のおっぱいおしおきしてください…ほら、おっぱいギュッて…」 京太郎「ぉぉ…締まる…ああっ、出るぞ!童顔巫女の爆乳おっぱいに…出るっ、出る出る出る!おおおお!んあああおぉぉぉ!!」ブピュウッドプッドプッドプッドプッ きつく絞り上げられるおっぱいに腰を無茶苦茶に叩きつける。 涙と汗で崩れる彼女の顔。 俺は悪魔のような咆哮をあげて射精した。 京太郎「はぁっ、くぅ…まだ出る…出る…ぉぅ」ビュッビュッ 京太郎「はぁ…はぁ………ふぅ」 ひとしきり射精を終える。 直後に感じる疲労感と罪悪感。 俺は、少女を、犯してしまった。 誘ってきたのはあちらだが行為の内容は一方的なレイプに等しい。 京太郎「ぁ…ぁぁ…俺…なんて事を…」 京太郎「す、すまん……悪かった…俺なんて事を…」 小蒔「はぁ…はぁ…ふふふ」クスッ 小蒔「いいんですよ…これで私役に立てました。お兄さんをおっぱいで気持ちよくさせて…ほら、こんなに出されて」ペロッヌチャァ 京太郎「ぁ…」 付着した粘液を舐めとる。 谷間の奥からドロドロの液体がダラリと流れ落ちる。 もちろん俺の欲望に汚れた精液だ。 先程まで蹂躙していた胸はぬらぬらと糸を引き、行為の激しさを物語る。 その淫靡な様に再び堕ちてしまいそうになる。 小蒔「私の初めて…お兄さんのレイプで奪われちゃいました。でも…いいんです。私…嬉しいです…お兄さんが初めてでよかった…」 京太郎「な、何を言って…」 目を妖艶に細めてじわりとにじり寄ってくる。 先程までのあどけない顔ではない男を知った女の目。 まるで何かが乗り移ったかの様な変貌。 魅惑の胸がたぷんと揺れて、深い谷間がねちゃあと膣穴の様に広がっていく。 小蒔「好きです…お兄さん。私の事…レイプしてください…お兄さんの言葉攻め…好きです…もっと囁いて…好き…好き…」 京太郎「だ、ダメだ…あれは一時の気の迷いで…あああ」ジリジリ 小蒔「んっ、ダメですよ…逃げないでください…レイプが嫌いな男の人なんていないんですよ…みんな可愛い女の子を犯したい犯したいって思ってますから…」 小蒔「だから私はいいんです…お兄さんなら歓迎です。ほら…」スルスル 小蒔「今度はこっちを…レイプしてくださいね?」クパァ 京太郎「う…うわああああ」ダッ 俺はまた走り出していた。 自分がした事への罪悪感、底知れないものへの恐怖心、様々な感情が俺を突き動かす。 あれはヤバい、一度ハマればもう抜け出せない。 直感が、本能がそう告げている。 走って、走って、行く当てもなく走り続けて 気が付けば俺は咲の部屋にいた。 バァン 京太郎「はぁ…はぁ…」 咲「きょ、京ちゃん?…急にどうしたの?」 京太郎「ぁ……咲…」ヘナヘナ 咲「ちょ、京ちゃん大丈夫!?しっかりして!」 咲の顔を見た瞬間、俺はへたりこんだ。 張りつめていた緊張が解け一転、安堵による脱力。 此処に来た経緯、学校での出来事への弁解…咲に言い訳しなくてはいけない事は山ほどある、考えるだけでも憂鬱な筈なのに。 京太郎「…咲…俺…その…」 咲「京ちゃん……うん…大丈夫…大丈夫だからね…何も言わなくていいよ…京ちゃん」ギュッ 京太郎「咲…」 なのに目の前に咲がいる、俺はただそれだけで安心しきっていた。 咲「…落ち着いた?」 京太郎「ああ…悪い…」 咲「いいよ……私と京ちゃんの仲じゃない」 ………… 京太郎「……何も聞かないんだな」 咲「だって京ちゃん聞いてほしくなさそうな顔してるんだもん」 京太郎「…すまん」 咲「それに何があっても京ちゃんは京ちゃんだもん。私、京ちゃんの事信じてるから…」 京太郎「咲……」 思えば咲とは異性とは思えない程親しい付き合いをしてきた。 一番近い異性、なのに俺は咲の事を恋愛の対象として見ていなかった。 咲に魅力がない訳ではない。 みんなに誘惑され乱れる心を落ち着けられるたった一人の相手。 咲の存在は俺にとって安らぎだった。 咲がいて本当に良かった、そう感じる。 自分の心が咲に満たされていくのが分かる。 咲が俺に好意を持っているのには気付いていた。 それでも俺は今までの関係が崩れるのを恐れ、気付かないフリをしていた。 京太郎「なぁ…咲……今晩ここで寝かせてくれないか?」 咲「ふぇっ!?きょ、京ちゃん……べ…別にいいけど……ぅゎ…///」ドキッ だが今は目の前の少女がどうしようもなく愛おしい。 俺の大切な人。 そう意識すると咲の全てが愛しいく感じる。 赤らんだ頬、俺を見つめる期待と不安の眼差し、オロオロと震える小動物の様な仕草。 咲はこんなに可愛かっただろうか。 京太郎「…咲」ギュッ 咲「ゃ…ぁ…京ちゃ…///」 気が付くと自然と抱き締めていた。 咲の温もりを感じる。 …手離したくない。 抱き締める腕に力がこもる。 咲「んっ…京ちゃん…………ねぇ…んん…」 咲が目をつむって顔を近付けてくる。 俺にキスを促している。 咲「んっ…んっ…京ちゃん…京ちゃん」チュッチュッ 京太郎「んっ…んっ…咲…咲…」 押さえていたものが解き放たれる様に一心不乱にキスをする。 互いを貪る様に体を絡ませ擦り付け合う。 咲「好き…好きぃ…京ちゃぁん…」チュッチュッ 潤んだ瞳が俺を見つめる。 艶やかな髪から香る女の香りが、瑞々しい唇から紡がれる甘い言葉が俺の脳を蕩けさせる。 もっと咲を感じたい。 京太郎「…咲っ」ドサッ 咲「きゃっ」 俺は咲をベッドに押し倒した。 京太郎「ハァ…ハァ……咲」モミュモミュ 咲「ゃ…あんっ…だめ…京ちゃ…あんっ」ピクッピクンッ キスをしながら咲の体をまさぐる。 俺の手で咲が踊る。 汗に濡れた髪が艶かしく光る。 咲の挙動その全てが俺を魅了した。 京太郎「ハァハァ……咲…咲…」ギンギン 咲「ぁ…京ちゃん…これ…」 京太郎「……咲…俺……咲としたい…」 咲「……うん…いいよ…京ちゃん……」 スカートがたくし上げられ、蒸れた女の匂いが鼻孔をくすぐる。 スカートを摘まむその手は小刻みに震え不安の入り交じった瞳が俺を見つめる。 京太郎「……怖いか…?」 咲「…うん…ちょっと……でも大丈夫…私も…京ちゃんとしたい…」 スカートを摘まんでいた手が不安を隠す様にギュッと握り締められる。 その姿がとてもいじらしい。 咲「…ね…一緒に気持ちよく…なろ?」 京太郎「ああ…咲…入れるぞ」 俺を押し留めるものは何もなかった。 京太郎「はっ…くぅ…咲…入る…入ってるぞ…ぉふ」ズププ 咲「んっ…ん……分かるよ…京ちゃんが私の中に入って…んっ」 俺のモノが咲の中に呑み込まれていく。 暖かいの感触に包まれる。 これが女の中……初めて感じる快楽、相手を犯す快感に入れただけで射精してしまいそうになる。 京太郎「フー…フー…ふぉぉぉぉ」ズププ 押し進める度にプチプチと何かを引き裂く様な感触。 結合部から流れ出す鮮血がシーツを赤く染める。 純真無垢な少女の純潔を奪った、その証。 京太郎「ハァ…ハァ……全部入って…咲の中…すげぇ…」 咲「んっ…っ…ぁ…痛ッ…痛い…京ちゃん…」ジワッ 破瓜の痛みに目元に涙が浮かぶ。 小さな体を更に縮こまらせ俺を見つめる。 その姿が庇護欲を掻き立てる。 京太郎「咲……」ギュウ 守りたい。 その本能が咲を抱き締めさせる。 咲「ぅ…ひっく…京ちゃん…」 京太郎「…大丈夫だぞ…」 咲が泣き止むまで俺は髪を撫で続けた。 京太郎「もう大丈夫か?」 咲「…うん…大丈夫……いいよ…動いて…いっぱい気持ちよくなって…」 京太郎「……分かった…じゃあ…いくぞ」ズッズッ 控えめに腰を動かし始める。 蹂躙し貪り尽くす様な気には全くならなかった。 感じてほしい、咲に気持ちよくなって欲しい。 ただそれだけを考えて腰を振り続けた。 咲「んっ…んっ…あんっ」 京太郎「咲……気持ちいいか?…咲」 咲「ん…いい…いいよ…京ちゃん…京ちゃん…」 腰を動かす度に咲が感じる。 俺が咲を気持ちよくしてやれているという実感。 咲が俺を感じさせ俺が咲を感じさせる、奉仕し合う性交。 一方的に快楽を貪るだけのそれとは違う温かな充足感。 もっと気持ちよくしてやりたい、もっと必要とされたい。 そう思う程に咲が愛しくなり腰の動きが早まる。 京太郎「ハァハァ……くっ…ハァ…咲…俺…もう出そうだ……ハァハァ…出したい…咲…中で…お前の中に…」パンッパンッパンッ 咲「んっ…あんっ…いいよ…京ちゃん…出して…いっぱい出して…私の中…んっ…京ちゃんで…いっぱいにして…」 京太郎「ハァハァ…イクぞ…中で…おっ…おぉぉぉぉぉ!!」ドクッドプッドプッ 咲「んんんんっ!!……ふぁ…すご…おなか…なか…熱…」 京太郎「はぁ…はぁ………ふぅ。……最高だったぞ…咲」 咲「…はぁ…はぁ…京ちゃん…私も…」クタァ 射精を終えて疲労感が襲ってくる。 だがそれ以上に体を満たす満足感と幸福感。 巫女の少女を犯した時とは全く異質の感覚。 いつまでもこうしていたい。 京太郎「咲……大好きだ…」ギュウ 咲「京ちゃん……私も…」ギュウ 挿入したまま抱き合う。 離れたくない。 俺達はそのまま夜が明けるまで互いを貪り合った。 俺が動き精を放つ度に、咲が喘ぎ絶頂する。 咲が喘ぎ絶頂する度に、俺は動きを早め精を放つ。 互いが互いを求め必要とし、それに存在意義を見い出し快感を得る。 互いが互いの存在に依存する。 俺はそんな関係にドップリとハマっていた。 京太郎「…………zzz」 咲「…………」 咲「…………キュフフ」 咲「もう京ちゃんは私なしじゃ生きられない…私も京ちゃんなしじゃ生きられない」 咲「これでずっと一緒だね……京ちゃん」 キュフフフフ 京太郎 は 咲さん に 堕とされて しまいました GAME OVER こっから他の子に誘惑されるとか咲さんが可哀想過ぎるから咲さんも淫魔でしたって事にして二人は幸せなキスをして終了 最後の辺りからロード 小蒔「だから私はいいんです…お兄さんなら歓迎です。ほら……入っちゃいますよ?今度はこっち…レイプしてくださいね?」ピトッ 愛液でぐちょぐちょになった割れ目。 ガチガチになった息子を騎乗上位で密着させられる。 逆転する立場、もはやこれは逆レイプだ。 最初から誘惑され彼女のいいように操られていたのだ。 俺は彼女の欲望を満たすだけの操り人形。 望まれるままに野獣へと姿を変える。 京太郎「ハァハァ…本当にお前はエロいヤツだな…自分から誘惑してハメさせるなんて…」ズプ 小蒔「んっ…そうです…私淫乱なんです…オマンコ男の人に使わせちゃうんです…淫乱の私をもっと罵って…犯して…オマンコ犯してください…」ズプププ この表情、とても抗えない。 しおらしくたおやかな受身が、支配したいという雄の本能を刺激する。 それでいて支配の大本は彼女にある。 なんという錯誤の快楽だろう。 京太郎「ハァハァ……この淫乱巫女が…オラッ!望み通り犯してやるよ!!」ブチブチブチ 小蒔「きゃああああっ!!」 馬乗りになったお尻を掴み一気に挿入する。 膜を突き破る感覚、流れ出る純潔の証、あどけない顔が苦痛に歪む。 穢れを知らない少女の初めてを欲望にまみれたチンポが奪い、取り返しがつかない程に少女を踏みにじり汚し尽くす。 薄汚れた獣性に俺は醜く歪んだ笑みを浮かべていた。 京太郎「ハァハァ…なんだ…お前処女だったのかよ…ハァハァ…処女のくせに…巫女のくせに…こんなエロい事しやがって…」ジュプッジュプッ 小蒔「ゃ…痛…ぁっ…お兄さ…激し…ぃゃ…優しく…」ブルンブルン 京太郎「お前の初めては俺のもの…お前の体は俺のもの…この先誰とヤろうとお前は俺の中古なんだよ!」ジュプンッジュプンッ 小蒔「ぁっ…だめ……ぃゃ…あんっ」ブルンブルン 京太郎「初めてで…罵られて犯されてるのに…ハァハァ…こんなに揺らして…誘惑しやがって…この淫乱が!」カプッジュルルル 小蒔「ゃ…お兄さん…おっぱい噛まないで……んんっ」ビクンッビクンッ 腰を突き上げる度に眼前で爆乳が淫らに踊る。 こんなものを見せ付けられたらマトモではいられない。 俺はいやらしく誘う爆乳にかぶりつき母乳を求める赤子の様に一心不乱に吸い付いた。 京太郎「んむっ…んむっ…ハァハァ…おぅっ…出る…ハァハァ…出す…中に…中に出してやる…」ジュプッジュプッ 小蒔「!!?だめ……中は!中はやめてください!!」ブルンブルン 京太郎「ハァハァ…出る!出る!孕め…孕め……おぉぉぉぉ!!」ビュルッビュルッビュルッ 小蒔「いやぁぁぁぁ!!」ビクンッビクンッビクンッ 京太郎「はぁ…はぁ…はぁ…」 小蒔「ぁ……ぅ……」ゴポォ 京太郎「…………」ゴクリ 京太郎「…………おぃ…まだ終わりじゃないぞ…もっと…壊れるくらい無茶苦茶にしてやる…」ズププ 戻りかけた精神が少女の体を見る度に獣に堕とされる。 小蒔「…ぁ…ぁ…」ピクッ 京太郎「オラッ…オラッ…オラッ…」パンッパンッパンッ 蹂躙し征服する雄の本能。 俺は黒い煩悩にハマり続ける。 もう少女を犯し続けるしかない。 京太郎「ハァ…ハァ…ハァハァ」パンッパンッパンッ 小蒔「…………」ニヤリ 京太郎 は 小蒔 に 堕とされて しまいました GAME OVER 小蒔ちゃんは何も知らなそうな顔して自然と体でマトモな人を狂わせて堕とすタイプのイメージ。
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/5069.html
京太郎「えっと、この時の捨て牌がこうだから、ここで切るべきは……」ペラ… ペラ… 照「京ちゃん、お菓子ちょうだい」 京太郎「あ、照さん。お菓子ですか?えっと……あったあった、はいどうぞ」 照「ん、ありがと」 淡「あ、テルーいいな~。キョータロー、私にも~!」 京太郎「はいはい、ほれ」 淡「やった~!おっ菓子~おっ菓子~♪」 京太郎「ふぅ……」 尭深「お疲れ様、京太郎くん。なんというか、ゴメンね?あの2人を押し付けるような形になっちゃってて」 京太郎「いえいえ、気にしないでください、尭深さん。でも、確かにもう少し落ち着いては欲しいですね……」 尭深「宮永先輩と同学年の弘世部長はあんなに落ち着いてるのにね……」 京太郎「全くですよ……」 誠子「自由奔放に生きてる方が麻雀強くなんのかねぇ?」 京太郎「どうなんでしょう?規則正しくって言い方が正しいかは分かりませんが、そういった部類の菫さんや 尭深さん、誠子さんも強いですし」 誠子「止せよ、京太郎。弘世部長はともかく、私らはそこまで強くなんて無いんだから。 ちょっとスタイルが火力寄りで宮永先輩や弘世部長、淡と同じチームになれたからレギュラー取れただけさ」 尭深「うん、本当に。あの2人は別次元だよ……」 京太郎「あはは……それじゃあいっそ、あの2人の異常な強さは白糸台の七不思議にしてしまってはどうでしょうか?」 誠子「お、それいいな、って言いたいとこだけど、実は既に白糸台七不思議ってちゃんとあるぞ?」 京太郎「え?マジですか?」 尭深「うん。階段に浮き出る男の顔だとか、夜中に睨んでくる音楽室の肖像画だとか」 京太郎「あ~、やっぱり大分在り来たりなものではあるんですね」 尭深「家庭科室の裸エプロンの幽霊とか」 京太郎「え、何それ、見た~い」 誠子「京太郎……」ジト(;¬_¬) 京太郎「いや、だって珍しいじゃ無いですか!決してやましい気持ちではありません!」 菫「ほ~ぅ?本当か?」 京太郎「うぉわっ!?菫さん!?いつの間に!?」 菫「今戻って来た。それにしても随分とまた懐かしい話題だな。去年の夏頃だろう?それが流行ったのは」 尭深「お疲れ様です、弘世部長。そうですね、大体1年前くらいです」 淡「むむ?なんか面白そうな話してる~?ねぇねぇ、何の話?」 京太郎「ああ、白糸台の七不思議についてな」 淡「七不思議?って何?」 京太郎「ん?知らないのか?ある地域に起こる不可思議な現象を7つを纏めて言う言葉、まあ平たく言えば地域の怪談話だな」 淡「か、怪談……?」 京太郎「そうだ、どうせなら今夜調べてみません?丁度明日は学校も部活も休みですし」 淡「え゛!?」 菫「さすがに放課後の、しかも夜に学校の敷地内に入ることは許されんぞ?生徒会長にでも頼めばなんとか なるかも知れんが……」 淡「ぶ、部長!わ、私達は麻雀部なんですから、麻雀を頑張っていればそれでいいのではないでしょうか?!」 菫「あ、ああ、確かにその通りなんだが……」 誠子「あ、淡?どうしたんだ、お前?」 淡「な、な、何が?私はただ麻雀部のなんたるかを……」 尭深「淡ちゃん、もしかして怖いの苦手?」 淡「!?」 京太郎「あ~、なるほど。夜の学校に行きたくないから必死になってんのか」 淡「そ、そんなことないもん!淡ちゃんは高校百年生なんだからお化けなんて怖くないもん!」 京太郎「そんじゃあ、今日の放課後、七不思議探検な」 淡「の、望むところよ!」 菫「おいおい、だからそれは……」 京太郎「菫さん、これはひょっとしたらチャンスかも知れませんよ?」 菫「チャンス?」 京太郎「淡がビビリまくっている中、皆が全く動じなければ、今後それをネタに淡を多少は 大人しくさせられるかもしれません」ポソポソ 菫「…………生徒会長に掛け合ってこよう」ガララッ 尭深「……凄い誘導術。将来詐欺師になれそうだね」 京太郎「ふっふっふ、そう褒めないでくださいよ……」 誠子「いや、褒めてないだろ、どう考えても……」 ガララッ 菫「夜8時、校門に集合だ。いいな?」 京太郎・尭深・誠子「はい」 淡「うぅ……は、はい……」 照「ん」 誠子「あ、宮永先輩、いつの間に」 照「今。夜の学校、楽しみ」ワクワク 京太郎「ですね!」 ~~~夜~~~ 菫「で、照だけがいない、と」 京太郎「あはは……みたいですね」 尭深「寝てしまったんでしょうか?」 誠子「或いは忘れてしまったとか?」 淡「…………」プルプル キョロキョロ 菫「まあ、ともあれ、このメンバーで行くしかないか」 京太郎「ですね。行きましょう!」 淡「うぅ~……」プルプル ~~~~ 菫「入口から近いのから順に行くか」 尭深「そうなると一番最初は……」 誠子「一階廊下の逆さ首、ですね」 淡「さ、逆さ……?」 尭深「その昔、まだ日本が戦火に見舞われていた頃のこと……度重なる空襲の魔の手は遂にこの白糸台高校にも伸びてきたの。 当然警報と共に学内にいた生徒達は皆逃げ出したのだけど、当時高校2年生だった一人の学生が逃げ遅れて……」 淡「……っ」ゴクリ 尭深「炎に包まれ崩れ落ちた校舎一階から、ギャアアアァァァァ…………と悲鳴が……」 淡「ひっ!?」ビクッ 尭深「その後校舎は建て直されたんだけど、その学生が亡くなったと思われるこの廊下では、 夜中になると潰されてしまった天井から、ズルリ……と首を覗かせているんだとか……ほら、あ~んな風に……!」ピカ 淡「○×△※□〒~~~っっ!!??」ギュッ 京太郎「おっと。あ~、こりゃ相当苦手みたいですね。ってか、尭深さん。いつの間にあんな物を……」 誠子「ん~?あ、肌色の風船か、これ。それにお面被せて……ちょっと怖っ!」 菫「尭深のイタズラは抜きにしても、夜の校舎はそれだけで中々に雰囲気があるな。っと、 あまり時間を掛け過ぎてもなんだ。次へ行こうか」 京太郎「あ、はい」テクテ… 淡「!?ま、待って!置いてかないで、キョータロー!!」ギュウッ 京太郎「……淡、怖いんだったらしっかり掴まってな」 淡 コクコク 京太郎(なんか超かわいい……) ~~~~ 尭深「―――――という怨霊がこの教室に……」 淡「×☆※〆♭★~~~っっ!?!?」 ~~~~ 尭深「―――――といった具合に男を誘惑して……」 淡「△■§▽○~~……っ!?!?」 ~~~~ 菫「なんだかんだでここが最後の7つ目になるんだが……」 淡「うぅ~~……」ギュッ プルプル ナミダメ 京太郎「尭深さん、ちょっとやりすぎでは……?」 尭深「……百物語では手を抜かない派なので」 誠子「ま、まあ、ちゃっちゃと終わらせてしまいましょうか」 菫「うむ、そうだな」 ガラッ 誠子「えっと、ここは確か、指導室の地縛霊、ですね」 尭深「かつて白糸台高校に誰の手にも負えない暴れ者が在籍していました。余りの暴れっぷりに 手を焼いた当時の校長が秘密組織にとあることを依頼。 その日から3日間、その問題児は姿を見せなかったそうです。 ところが、3日後、指導室の椅子で変わり果てた姿で見つかった。 どうやら秘密組織によって拷問に架けられ、全身の骨という骨が砕かれて…… 以来、この指導室では夜になると骨が一本一本砕かれる音g」 パキッ 淡「ひぃぃぃっ!?!?」 コリッ 京太郎「お、音が……」 ポキッ 誠子「断続的に続くな~」 バキッ 菫「これはどんな仕掛けなんだ、尭深?」 ピキッ 尭深「…………わ、私、ここには何も仕掛けては……」 京太郎・誠子・菫「…………え?」 京太郎「そ、それじゃあ……」ダラダラ 誠子「こ、この音は、まさか……」ダラダラ 菫「ほ、本物……?」ダラダラ 尭深「…………」ソロ~リ ソロ~リ 誠子「あっ、尭深、一人だけ逃げようとするな!」ダダッ 尭深「っ!」ダダッ 菫「こ、こ、こらっ、お前達っ!わ、私を置いていくなっ!!」ダダッ 京太郎「や、やべぇっ!!淡、逃げるぞ!!」ギュッ ダダッ 淡「もうヤダ~~!!おうち帰るぅ~~~~!!!!」ダダダッ パキッ ピキキッ ボリボリ 照「……おせんべ、美味し」 翌日から照を除いたレギュラー陣+京太郎が大量のお守りや梵字の書かれた御札を部室に持ち込み、 注目の的になっていたとか…… カン!
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6072.html
咲「えへへ。私で大成功だったから、次はお姉ちゃんの番だね」 照「いいの?」 咲「うん! 京ちゃんは私達二人のものだから」 照「ありがとう……咲」ギュッ 咲「それじゃあ、あのサイトを参考にしよう!」 照「うん。続きは……」 【合コンで男を落とす6つのテクニック / 泥酔おもらし女子で高レベルな恋愛を】 1. 太モモを触らせる 2. 男性の手を握ってニギニギ 3. 男性に指酒を飲ませる 4. 八方美人は嫌われる / 複数に嫌われてもひとりの男をゲットせよ 5. お弁当女子で女子力アピール 6. 泥酔おもらし女子 咲「こ、これは!?」 . ´ ` 、 . , , ,. / ′. / , / ′. ∧ .i. | i| . | 、 i /_\ | .| | i| . | | ハ l |i | ./ ,イ '| .| _|_ il ト、 . | }/_, ∨ |i | / /' | l| .|_l |__ x、八. | \} '",,_ i´) |i | .// | 八 | 乂_弋ツ>\ |<弋ツ.ノ . ∧ リ. | ′ | \| ハ  ̄ \{  ̄´ / ∨ | |l λ , ハ | i| 込、 __ __,. ,イ ! 、 | __| |__,. ー‐ ´ ./| | ハ |-‐= ' | .l| | . /> . イ.>| | / ‐ | |l 八 |. ′ / | /| /_ '} 八 / \ | |-- 、 --/ . | / | / \| ト-========イ }' .ノ' 照「まさに、私にふさわしい女子力アピール……」ニヤリ 咲「(あの日、京ちゃんとファミレスデートしてからというもの)」 京太郎「さ、咲! お腹空いてないか?」 咲「う、ううん。大丈夫」 京太郎「そっか。何かあったらすぐ言えよ」ビクビク 咲「えへへっ。ありがとうっ!」 京太郎「……」ブルブル 咲「(京ちゃんがすっごく優しくなった。これも全部、あのサイトのお陰だね!)」 【女子力を上げる四つの心得】 咲「ありがとう、アラサー嬢さん」ニッコリ 宮永家 照「そう、よかった」ヨシヨシ 咲「えへへ。私で大成功だったから、次はお姉ちゃんの番だね」 照「いいの?」 咲「うん! 京ちゃんは私達二人のものだから」 照「ありがとう……咲」ギュッ 咲「それじゃあ、あのサイトを参考にしよう!」 照「うん。続きは……」 【合コンで男を落とす6つのテクニック】 1. 太モモを触らせる 2. 男性の手を握ってニギニギ 3. 男性に指酒を飲ませる 4. 八方美人は嫌われる / 複数に嫌われてもひとりの男をゲットせよ 5. お弁当女子で女子力アピール 6. 泥酔おもらし女子 咲「こ、これは!?」 照「まさに、私にふさわしい女子力アピール……」ニヤリ 咲「でも、私達合コンなんてできないよ?」 照「私にいい考えがある」 咲「本当?」 照「うん。後は……」ピッポッパ 咲「電話?」 照「応援を呼ぶ」 第二章 モテル反撃!犯される女子力! ファミレス 京太郎「……(ここは、咲がおかしくなったあのファミレスだ)」 カランカラーン 淡「うぁー! すっずしぃー!」 菫「ふぅ。長野は遠いな」 照「……あ、京ちゃん」 京太郎「照さん! それに、大星と弘世さんも!」 照「……(やっぱり間近で見るとカッコイイ)」ニヤ 京太郎「(今日、照さんを長野に呼んだのは他でもない。咲のことで話があったからだ)」 淡「長野旅行だー! いぇーい!」 菫「はしゃぐな淡。迷惑だろう」 淡「ぶぅー」 京太郎「(なのになんでこの二人が着いてきてるんだろう)」 照「(これで人数は四人。合コンの条件は満たしている)」ニヤリ 菫「席順はどうする? 須賀君の横に私でもいいか?」 淡「はいはーい! 私が座るー!」バッ 京太郎「おわっ!? なんだよ急に!?」 淡「いいじゃんいいじゃん! 金髪仲間だー! いぇーい!」 京太郎「テンション高いな、ほんと」クスッ 照「……」ゴゴゴゴゴ 菫「(照の顔が虎眼先生みたいになってるな)」 照「(落ち着いて。所詮、淡は人数合わせ。私の女子力で蹴散らすのみ)」 淡「何たのもっかなー?」ワクワク 照「(まずは落ち着くことが大事)」スゥーハー コソコソ 照「!(あれは!?)」 店員?「(頑張って、お姉ちゃん!)」カンペ 照「(咲! ありがとう……頑張るから!)」グッ 淡「オススメあるー?」 京太郎「オムライスがうまいらしいぞ」 淡「えー? 私、オムライス食べられない!」 京太郎「なんで?」 淡「だって卵がかわいそうじゃん!」 京太郎「おいおい……お前まで変なこと言うのか」 淡「あははっ! うそうっそー! オムライス大好き!」ケラケラ 京太郎「(可愛いなコイツ)」 照「(まずい! 淡に先んじられないように!)」メラメラ 【合コンで男を落とす6つのテクニック】 原文ママ 合コンでステキな男性を見つけたとします。 あなたは、その男性を絶対に落としたいと思っているとします。 でも、思っているだけじゃ落とすことはできません。 徹底的に女性の魅力を武器として男性を落としましょう。 合コンに来ている男性のほとんどは性欲を発散できずに困っているので、 女性の魅力を徹底的に利用すれば高確率で男を落とすことが可能なのです。 静かにひとりで飲んでいる男がいても、単なるムッツリスケベなだけで内面はドスケベです。 男性は性欲のかたまりと思って間違いありません。女性の武器を使って落としましょう。 結局、性的アピールが強い女性が勝者となります。 照「(つまり、この完璧な体で京ちゃんを篭絡する!)」 淡「ヒヨコが可哀想~♪ でも美味しいから食べるぅ~♪」 菫「なんでそんなに機嫌がいいんだ?」 淡「ん~? えへへ、なんでかなぁ~?」チラッ 京太郎「? なんだ?」 淡「んふふー、なんだろうね?」クスクス 照「きょ、京ちゃん!!」ガタッ 京太郎「はい? なんですか?」 1. 太モモを触らせる 照「(恥ずかしいけど、負けていられない!)」 京太郎「?」 照「わ、私」ワナワナ 京太郎「どうかしたんですか?」 照「乾燥肌で困っているんですよ~><」 京太郎「……え」 菫「ぶふぉっ!?」ミズブシャー 淡「わぁっ!? 冷たいっ!?」 京太郎「か、感想肌?」 照「触ればわかるよカサカサ~(涙)」ガシッ 京太郎「へ? テーブルの下から俺の手を……?」 照「(このまま太ももを触って貰う!!)」ギラギラ ガバッ 照「どう~? カサカサでしょ~?」 京太郎「(え? 何が起こってんのこれ? 俺の手が……照さんのスカートの中に!?)」 照「(ひゃんっ……京ちゃんの手あったかい……)」ドキドキ 菫「」 淡「うわーびしょびっしょ」 京太郎「て、照さん!? な、ななななっ!?」バッ 照「あっ……(手を離されちゃった。でも、次はこっちが京ちゃんを)」グッ バッ 照「次は京ちゃんの肌をチェックしたいなぁ~?」 京太郎「うぇ!?」 照「(狙うは足!! でも、京ちゃんはズボンだから!)」ガサゴソ 京太郎「ちょ、ちょっと!? テーブルに頭突っ込んでなにしてるんですか!?」 照「じっとしててねぇ~♪」カチャカチャ 京太郎「ちょ!? 何してんすか!? ズボンを脱がさないでください!」ジタバタ 照「(一気に脱がすっ!!)」ギュルギュルギュルギュル! 京太郎「いやぁぁぁぁっ!」スッポォーン 菫「須賀のズボンが弾けとんだ!?」 淡「可愛いトラパン履いてるじゃん」 店員?「……」カシャッ カシャカシャカシャカシャ! 京太郎「(いきなりスカートの中に手を突っ込まされたかと思えば、今度はズボンを脱がされた)」ガビーン 照「(うまくいった。次は……!)」 京太郎「照さん! 何を!?」 照「すっごいスベスベ~♪」サワサワサワ 京太郎「ほわぁっ!?」 照「(このまま京ちゃんを触り続ける)」 1. 太モモを触らせる あなた自身のほうから男性に太モモを触らせましょう。 必然的に太モモが露出したスカートをはいていくことになります。 できれば生足がベストです。 「乾燥肌で困っているんですよ~>< 触ればわかるよカサカサ~(涙)」 という話題で自然に太モモを触らせ、男性を興奮させます。 男性はプライドの塊なので興奮しているようすを見せませんが、 心の中ではドキドキしているはずです。 どっちの太モモが乾燥しているかで対決する方向に流し、 男性の太モモも触ってあげると落とせる確率がグンとアップします。 男性の生足を出させるのは衣服の構造上難しいので、足首とかでもかまいません。 たとえ男性の足が乾燥していたとしても「すっごいスベスベ~♪」と言って、 ずっとそのまま足に手を置いておきましょう。 照「(あ、これいい。京ちゃんの肌に触るのイイ)」サワサワサワ 京太郎「く、くすぐったいですって!」 淡「いいなー! 私もやるー!」 京太郎「?!」 照「(まずい! このままじゃ淡が!?)」 店員?「(ここはフォローを!!)」ダッ 京太郎「ちょ、お前もかよ!?」 淡「よいではないかー、よいではないかー♪」ワキワキ 店員?「お客様ー! おしぼりお持ちしましたー!」バシィン 淡「ふげらっ!?」 菫「店員が淡の顔面におしぼりを叩きつけた!?」ガーン! 照「(咲!! ありがとう!!!)」 淡「あつっ! あつつつっ!」バタバタ 京太郎「だ、大丈夫か?」 淡「あ、でもさっき濡れたからちょうどいいや」ノヘヘーン 菫「そういう問題か?」 照「(咲のアシストのおかげで淡の介入を防げた)」サッ 京太郎「(あ、戻った)」 照「(この調子で次の作戦に進む)」グッ 2. 男性の手を握ってニギニギ 照「淡。ちょっと席を替わって」 淡「ほへ? なんで?」 照「なんでもいいから」 淡「はーい! ここだと須賀の顔見づらいし、正面の方がいいもんねー」 菫「たくっ、一度立ち上がるハメになる私の立場にもだな」 照「座るね、京ちゃん」 京太郎「あ、はい。(さっきのはなんだったんだ?)」ズボンハキハキ 淡「ほー、中々男前じゃん。前田くん!」 京太郎「前田くんなんていねぇよ。でも、あんがとな」 淡「えっへへ」ニカッ 照「(いけない。淡から気をそらさないと!)」 サワッ 京太郎「!?(照さんの手が!?)」 照「あ、ごめんね」 京太郎「い、いえ」 照「私、冷え性だから暖かいの好き」ギュッ 京太郎「っ」ドキッ 店員?「(いい! いいよお姉ちゃん!)」 照「(……でも、緊張しすぎちゃって手汗をかかないなぁ)」チラッ 京太郎「(て、照さんの手……)」 照「(よしっ)」スッ 菫「照?」 照「かーっぺっ!」ペチャッ ※手のひらに唾を吐きました 京太郎「!?」 淡「!?」 菫「!?」 照「……」ベチョッ ニギニギ 京太郎「」 照「京ちゃんの手あったかぁ~い」ニギニギ 京太郎「あ、え?」ネチョー 店員?「(凄いよ! お姉ちゃん凄すぎるよ!!!)」ムハー 2. 男性の手を握ってニギニギ これは掘りごたつや座敷のときに使えるテクニックです。 狙っている男性の横に移動して座ったとき、偶然手が重なったかのように男性の手に自分の手をかぶせます。 あなたは男性に謝りつつも、「私冷え性だから温かいの好き」と言って、 重ねた手にもっと力を入れてニギニギしましょう。 男性はカッコつけて動じないふりをすると思いますが、内心は大興奮です。 あなたが手汗をかいていればモアベター。 男性は女性の汗に性的な興奮を覚えますから、手汗がついた手で触れると興奮してくれます。 手汗がかいてないときは唾液で濡らしておくと良いでしょう。 京太郎「……」 淡「テル? 頭でも打った?」 照「私は至って平常。何もおかしくない」 菫「(胃が痛くなってきた)」ズキズキ 京太郎「あ、あはは……(あれ? もしかして照さんも……)」 照「(京ちゃんが笑ってくれてる! やっぱりこのテクは役に立つ!)」ニヤニヤ 店員?「(さぁお姉ちゃん! 次の実践だよ!)」 3. 男性に指酒を飲ませる 照「(まだ未成年だからお酒は無理。ここは……)」 店員?「お飲み物のサービスです」サッ 京太郎「へ? サービス?」 店員?「ソウデース」 京太郎「ていうか、なんか咲に似てるよーな?」 店員?「失礼します!」ダダダッ 淡「やったー! コーラだー!」 菫「いい店だな。騒いでいる客にサービスとは」 照「(ナイスアシスト! さすがは私の妹!)」 京太郎「まぁいっか。じゃあ、折角だし頂きましょう」 淡「美味しー♪」ゴクゴク 京太郎「コーラなんてどう飲んでも一緒だろ」 照「!!!」ガタッ 京太郎「な、なんですか!?」ビクッ 照「お、美味しい飲み方を知ってる」 菫「なに? コーラのか?」 照「……//」コクッ 淡「え? 知りたい知りたーい!」 京太郎「コーラの美味しい飲み方かぁ」 菫「どうするんだ?」 照「え、えっと。まずは……指を、コーラに突っ込むッッッ!!」ボシャッ シュワァァァッ 淡「~~~~~~ッッッ!!!?!???」 京太郎「(すっげー泡立ってる)」 菫「照!? 貴様ッ!!! コーラの炭酸を抜くなどとっ!!」 淡「上等な料理にハチミツをブチまけるがごとき思想!!!」 京太郎「(なんでこれくらいでキレてんだこの人達)」 照「まだこれから。慌てるような時間じゃない」サッ 京太郎「抜いた指をどうするんですか?」 照「こうする」スッ パクッ 京太郎「!?」 照「んぅっ……じゅるっ、んずぅぅっ……れろぉ、んちゅっ、ちゅるるっ」ジュボジュボ 京太郎「な、何を!?」」 照「(もっと激しく!) じゅるるるるっ! ずぼぉぼぼぼっ!)」ジュボジュルル 菫「(照がひょっとこ顔になってる)」 淡「」 店員?「せくしー! えろいっ!!」ムハー 京太郎「あ、ぅぁ」パクパク 照「(凄く驚いてる。このタイミングがチャンス!)」チュポン 京太郎「な……なんですか……今の?」 照「指コーラって言うんだよ」 淡「(炭酸抜きコーラじゃないんだ。エネルギー効率とかじゃないんだ)」ブツブツ 菫「(もはやツッこむことすら億劫だ)」 京太郎「そ、そうですか」 照「……」ジャブジャブ シュワー 京太郎「(またやってるし)」 照「しゃぶってみ♪」スッ 京太郎「え?」 照「しゃぶってみ♪」ズイッ 京太郎「ほわぁっ!?」ビクッ 照「美味しいよ」ニコニコ 京太郎「い、いえ! いいです! ご遠慮します!!」 照「……(京ちゃんはしゃぶりたいけど、恥ずかしがってる。なら)」ギュルギュルギュルギュル 京太郎「ひぃぃい!?」 照「(無理やりねじ込む!!!!!)」ズボォォォッ 京太郎「おべぇもがぁぁぁぁっ!?」グリグリグリグリ 照「どう? 美味しい?」ニコニコ 京太郎「うべぇぇぇっ!?(口の中がぁぁぁ!?)」ジタバタ 照「うめぇ? えへへっ、ありがとう♪」 店員?「(あれ、今度私もやろう)」 3. 男性に指酒を飲ませる できるだけ濃いお酒をストレートで注文しましょう。ロックでもかまいません。 とにかく原液が濃いお酒を注文して、指を突っ込んで付着したお酒をしゃぶるように飲みましょう。 男性はあなたの飲み方を見て驚くと思いますが、それがポイントなのです。 「指酒(ゆびざけ)っていうんだよ」 と言って、あなたが落としたい男性に指を差し出して「しゃぶってみ♪」と言いましょう。 男はだいたいがドスケベなので、あなたの指をしゃぶってくれるはずです。 嫌がるそぶりを見せたとしても、それは建前。本心はしゃぶりたくてたまらないはずなのです。 美味しいかどうか聞いて「美味しい」と言ってくれたら、その男性をお持ち帰りできると思っていいでしょう。 _,.... ― ... ,.. '´ \ ___ / \ / ヽ  ̄`/ // . / . . . . . . . . . . . ヽ \ ,..-‐=、_/ / i . / . /ハ |. .| . . . .. i f/ _ i | ;!. .|.ハ .ハ | | !、 !、 | | |. i { / -i | {^| . |,ィ≧y. リ |;ヒト、 | . ! ..i _..;;=≠'"´ ー| | 、ヘ |弋ン... ..ぞソ/iハノ\! <ハーイ 京ちゃーん /'" ゝi、 ヽ _ _゙ / `ヽ、 //\ i、 ` ....、__,..ィ' \、 // /゙ ー-L \// / ー-、_ \ / \/ \ / >ー-、___,.// 、 / _,...-≠ .. ノ{ i ヽ\/ ,ィ' ` ..、 / / ゙、 ヽ 丶  ̄ \ \ / ... / | i 丶 \_ \ r{\ . . { } |ヽ i ` 、_. \ / \ィー-ァ--‐イコ〕 / / } i ` .、 ヽー-、 /  ̄ ̄ ̄Y´ | <_; -‐' | | ` 、__゙、 / メ -‐へ、 i i ――― 、 /;';';';';/ ______/\;';';';';';';';';' \ /;';';';';/ /;';';';';';';';';';';';' ;' ;';';';';';\;';';';';';';';';';';';';';/;';';';';/ /;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 、 /;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';'; / \ {;';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';';/ ,. /;';';';';';';';';';';';';';';';';';';'/ ′ /;';';';';';';';';';';';';';';';';';' / / , /;';';';';';';';';';';';';';';';' ;' / / / / / ′. /;';';';' ;'; \;';';';';';' ;' / ′ / / / l| l| |. /;';';';'; \;';';';\;';';';';/ l ′ /l/l | l| l| l| l| | これがねー♪ /;';';';';、;' ;' \;';';';\./ //l / ,/ l | l| l| l| l| |. {、;' \;' \;';';';\ ; / / .′ /l / l | l| l| l| l| 「 ̄ ̄ ̄ ̄ ‐- . . .__ }_\;' \;' \;' ;' // i | ∧j/\ l ト、 /}/}/| l| | . // \;' \;' \/ | l/ ∧芹≧x八 | | / _____」L リ┐ |. . . .|. ((// -‐ァ\;' \/. | V)炒`. \{‐ァ'≦芹トリ /}/} ∧{. . . .|. (// // }; ; lリ l / l圦 ....V)炒 //__,ノ / { .|. (/ (/ }彡'. |/l ll 、 ' / / / | l l|/ \ _ /}___/ | 八 l| \ ` ≦/ ̄ ̄ ‐- | \{  ̄ ∠___. .‐- | /. . .\ ‐- | ┌―┴― \ \ | _ノ. . \ \ | _/___ \ \___ノ / _ _ . \ ∨ {/  ̄\ \ , . . . ... __, ‐---‐-、 . . . . . . . . . f´ , | . . . . . . . . i ! | | |ヽ . . . . . . . . . . └-L_ ! | ,ィ ハ . . . . . . T`'"´ し′! . . . . ゙、. . . . . . . . . ! . . . i . . . . . _;.-┴┐ | // ,!-、_ // . . . . _/ ....| 〈 // ./ . . . .| ヽ / \ Y . . . . . / i 指コーラってー♪ !、_! . . / \ . . . . .゙、 // ヽ . . . . . .. i / __,ゝ, _,,..-‐''""´ ̄ ̄``゙ ゙ヽ .. . . i / / / \ _,....-‐''"_,..-‐_''"´ ̄ ̄ ̄二二二\ . . . . . .i / / / -=、-ァ''" . . . . / ノ)‐''"- . . . . . . . . . . ヽ ..... V // / / . . . . . . . . ! /_;/ . . . _;. .-― . . . ゙、 .... ノ'′/ / / . / . . . /'"//ィ彡 ._. -―-、_ . . . . . .. i .......... / / // / .// . . / ''"´∠ X;エ二._. . . . |................ / /!.// _.イ;/-i . ./ / i. (三}'} ナー-、`. . . . | / / | i .{ ,.ィ´ | |/ / . . _//_,. -― . . . | / \ | | |. | / i j i r.、 . -‐;i二7.;. . . .. . . / ( ヽ ! 、| .! / 、 、 | | ∠..-‐/ . . ./ . . / ヽー-、 .、 ヽ{ i. |./ \__,.、-‐ー、._ └' '、=∋メ'"..-‐'"; ‐/ \ `ー-..、_ / `ー-、_ \ 、V _,...-‐''"´ ` ー---――∠ . _;. -イ / \ \ ;イ \ (_!-rf'"´ //7 .;.ィ. . . . . . . /. . . / / \ メ| i、イ \、-、ー-、_ _, =ヒ ∠ノ / . . . ./ / / / ____\ \ { \ __> .. \ . \ }\ <言うんだよー♪ \ ... \ . \ \ , , /\ \ .. \ l \ \ \ヽ/⌒7 ′ ′ , | li\ / -‐/ ̄ ̄ ̄/ ̄\ \} }\ \ } ∨ / ∧ , ′ /{ }\ | \ l| \ / / / / y'⌒ヽ\人 /\ \_}/ ,/ ̄ / ∧ ∨,√| \_} \__} \ _ -‐ / -‐ / /../ / ̄ ̄ ̄\ ∨ } ′/ ∧ | ∨ l| }i-‐ // { ,.../ { \ | | | / i| | l ll| |li、 / \/l l...| | ∨ | | | ii| i| 丶 ,′ >‐- 八 ll...| |___ | l| | |l ill| | l ll| |lli ii| i| \ | -‐ {. . ト---≠ ┴ァ‐- {/ ̄ ‐- __| l| | |li ii| \ | ∨∧\{/∨ / f´}/) -=ニ | |lli illl| | l iii|\ \ | _∨∧彡クj //)-} /ヽ.  ̄} |llli illll| | l ll| |lli ll| i|. . . \_____|______/. . . /i⌒}/,〈 ´~ (/ 〉 , |lllli illlll| | l ll| ii|lli ii| ll|| i|、. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . / / \ \ `~´{_ ′ lll|い√ ̄} | ∧ l「` -=i|ll| ii| ill| /. \. . . . . . . . . . . . . . . . < ̄ ̄ _/. . . /l__//>-- \ , l| )ノ l| |,/ l i リ^i\ } /^}/}  ̄\. . . . . . . . . . . . .`ー‐‐. . . . . /,/ ̄ ̄\ト、 } \ ′リ l| |′ l | \从,/ | / \. . . . . . . . . . . . . . . . . . ./ ,/  ̄ `ー- _〉 リリ リ′ }′. | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | '′. |. | | 〈/〉-‐=ニ二ニ=-- _,,| ∧ }ニ=-  ̄ ̄ ̄ -=ニ=- _〉 〈 }  ̄「\ 照「美味しいでしょー♪」ギュルギュル 京太郎「がばっばばばばばっ!?」 照「えへへ」チュポン 京太郎「げほっげほげほっ!!」ウルウル 照「(涙目になるほど嬉しかったんだ。えへへ、可愛いなぁ)」 菫「(須賀……可哀想に。でも、泣き顔可愛いな)」 淡「大丈夫? はい、おしぼり」 京太郎「さ、さんきゅー……」 淡「ちょっとテル! 須賀が可哀想じゃん!」 照「(これだからお子様の淡は、何もわかってない)」ヤレヤレ 京太郎「(大星ってイイ奴だな)」 照「(計画を次のステップへ)」フフフ 4. 八方美人は嫌われる / 複数に嫌われてもひとりの男をゲットせよ 菫「私もどうかと思うぞ、照」 照「……は?」 菫「え?」ビクッ 照「……チッ、ッセェナ」ボソッ 菫「え? えぇっ!?」オロオロ 京太郎「あ、あの?(なんか照さんが急に怖い顔に)」ビクビク 照「うんっ♪ なぁにぃ? 京ちゃんっ★」キャルゥン 淡「!?」 菫「!?」 店員?「(可愛いよお姉ちゃん!!!)」 京太郎「(なにこれ)」 淡「ちょっとテルー! 今の何?」 照「あ?」ギロッ 淡「ひっ!?」ビクビク 京太郎「(マジでナニコレ)」 菫「お、おい照! 私達はお前について来てやってるというのに! なんだ今の態度は!」 照「(そろそろいいかな)」 菫「おい! ちゃんと話を聞け!!」ドンッ 京太郎「あ、あの? 照さん……」 菫「て……」 照「なんかぁこの人ストーカー臭せぇーんですけどぉ~」 菫「る……?」 京太郎「!?」 淡「!?」 菫「い、今なんて……?」ワナワナ 照「容疑者予備軍マジウケルんですけどぉ~(笑)」 ,. '" ,. 、\ ,. -‐ 、 / / ` ´` \ / \ヽ ,.' ' / i ! ヾ / ' l / ,'./ l. !| ! ゙ l ' / .l / // 'l l ! l ! !l. ' .' l/ ー '-―_-' リ└- _!,!_ ! ! ' l l イ~~~下 ,.二、、ー,、/l! l l .l l ヽ ノ 'i リ ヽ.! l. l | ! l! ` " l l l l ー- _! , l l.!. l ! | ト、 |! l l ! .l.ヽ , ― 、 ,. | ` ┘ l ! !.l 丶 ⌒ .イ ! ! l l ! .! < .!. l l ! ゙、 i ` ´ ! l l ! ヽ 、 .! ! ! l /ヽ. ヽ \ l、 ! l l./ 、 丶 ヽ. \ヽ` 、 l ,.' 丶ヽ ヽ \_.ヽ、 ノ. l ヽ\ \ ヽ ヽ\ 、 l \ 丶 \ヽ ヽ. l i ヽヽ. \、. ヽ . l / l ヽ ヽ ヽ.\. ヽ lヽ. / l,' ` ヽ. ヽ \ ゙ ! ! 菫「」 京太郎「な、ななっ?!」 照「ハァ~チョーウザ~。私は京ちゃん一筋だしぃ~?」 菫「て、照……貴様、貴様ぁぁぁぁっ!!!!」ガタァーン!! 淡「わ、わわぁっ!? 落ち着いて! ね、ね!!」ガシッ 照「ウザッ(笑)」クスクス 菫「ああああああああああああっ!!!」 菫「もう我慢の限界だ!! 覚悟しろ!!!」バンバン 淡「喧嘩はダメだってばー!!」ガシッ 京太郎「お、落ち着いてください! ね! ね!」 菫「ぐぎぎぎぎががががっ!!!」 照「や~ん、怖い~♪」ダキッ 菫「っらぁぁぁぁ!!!」 店員?「(さすがお姉ちゃん。親友とも言える弘世さんを犠牲にしてまで)」ホロリ 4. 八方美人は嫌われる / 複数に嫌われてもひとりの男をゲットせよ 女性が合コンでミスを犯しやすいのが「八方美人」です。 合コンでは決して八方美人になってはいけません。 合コンが始まってから10分くらいは静かに目立たないようにし、じっくりとターゲットを決めます。 ターゲットを決めたら、その男性にだけ徹底的にアプローチをして、 他の男性たちに対しては冷たいと思われるくらいツンとしていいでしょう。 「何で俺だけに優しいんだ?」と思わせるのです。 ターゲット以外の男性がしつこく話しかけてきたら、ターゲットの男性に 「なんかぁこの人ストーカー臭せぇーんですけどぉ~容疑者予備軍マジウケルんですけどぉ~(笑)」と言いましょう。 周囲にも聞こえるように言うことで、周囲の人たちも「ああ、この子はA君だけを狙ってるんだな」と思ってくれるでしょう。 周囲の反応が気になる? だからあなたは八方美人なんですよ。あなたは何のために合コンに来ているのですか。 1匹も得ずに帰るのですか。そんな漁師いらないですよ。 ターゲット以外の男に嫌われてもいいじゃないですか。 照「(これで京ちゃんは私が一途だと分かったハズ)」ニヤニヤ 菫「何をニヤニヤしてるんだ!!! こっちを見ろ!!」 照「ぷっ(笑)」 菫「ああああああああっ!!!」 京太郎「弘世さん!!」ギュッ 菫「あっ」トクン 京太郎「気持ちはわかります。でも、争いは何も生みません」ジッ 菫「ぅ……ぁっ、そう、だな……」ヘナヘナ 淡「はぁー、疲れたー」 京太郎「大星もありがとな」ナデナデ 淡「!! うん、えへ、えへへっ!」 京太郎「そろそろ本題に入りましょうよ」 菫「あ、ああ。そうだな」ドキドキ 淡「本題って何ー?」 京太郎「それは、咲のことなんだけ……」 照「(まだテクは終了していない!)サッ 5. お弁当女子で女子力アピール 照「ねぇねぇ、京ちゃん! これを見て!!」バッ 京太郎「……はい」ナミダメ 淡「(むー、須賀が可哀想)」ムスッ 菫「なんだそのノートは?」 照「……」シラー 菫「頼む、須賀」ビキビキビキ 京太郎「あ、はい。なんですかこれ?」 照「明日作るお弁当の絵、毎日描いてるんだ私♪」パラパラ 菫「(初耳だ)」 淡「(いつも学食じゃん)」 京太郎「へぇ、それは凄いですね。見せてもらっていいですか?」 照「うんっ!」 京太郎「どれど……」 ________________ |\ ∥ /| | ( ̄肉)_/ ̄V ̄ヽ_.∥_____∠ | | ( ̄肉) | 手| 手 | ∥ i\チーズ| | | |`ー´ | 羽| 羽|.∥-ー、\.\ /l | | |( ̄肉) | 先| 先|∥ ハム ) \l/l .| | | `ー´ ヾ」^ヽノ∥ヽ_ノ |__| |\ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∥ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ./| | ┌/⌒⌒⌒⌒ヽ.∥ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | | ( ( ヾ )∥ l⌒l| | | |\ 飯 /∥ / ̄| .|| | | | ヽ ) ノ∥ く`ヽ、゙i.肉ヽ ) | | | ヘ ノ |∥ .\ \ゝ | | | | | `ー^ー'∥ `ヽノ  ̄Ⅵ | .  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 京太郎「(壊滅的に絵心がねぇぇぇぇっ!!!!!)」ガァーン 照「美味しそうでしょ? 彼氏が出来たら毎日作ってあげるんだぁ♪」 京太郎「あ、はい……それはいいですね」 照「!!!」ドキドキーン 淡「豚の餌じゃん」 菫「同感だな」 京太郎「か、彼氏さんは幸せだと思いますよ。多分」 照「そ、そう思う?」パァァ 京太郎「……ハイ」 照「そっかぁ、幸せかぁ」ニヤニヤ 淡「……」 照「でもハダカでエプロンは絶対にしないよっ><」 京太郎「え? 別にそんなこと言って……」 照「彼氏の家に泊まったら彼氏のトランクスはいてお弁当作るの♪」 京太郎「は?」 . ´ ` 、 イ / / . ニlニ / ,イ ∧ | / / | l / | |! | | , イ  ̄ ̄ ̄| N /__ | ト、__| | | ′ i| | ∨ 八 ト、 | N リ |l |. 八 { l ____ ` \| ___|/ | 八 |l / リ \N '~⌒`` ´⌒``〕/ ;__ 八. / / ハ """" ' """" '// / 〔、 、 . / __ 圦 lヽ r ┐ // / /) \ / l l\\ | .! ノ . '_/ 厶 "/ ト、 ヽ .' |八 \\__| .!> __ . イ´ 、__フ‐ ヽ. | \ |. .′ V.rヽ _|___ | /_〔 ̄ | V 〕 //.へ`ー- .、Υ 八 l | |{/´ ̄〕 !、___/ヽ /' \. 八 '′ l / ∧ 〈 、 \ / \ .'. / /_ ∨´ \ / -‐== / ∧ / / _ ./⌒ヽ. \............./ =- V / -‐=' ._ ∨ヽ__/ Υ⌒/ .′. 〔二〕´ ._ V´/ |ニ/ ∧〔\ 八 ∨ |_V .! / N' \ 个 、_/ 照「ハダカでトランクスなのっ♪」キャピキャピ 京太郎「」 菫「コイツ頭おかしい」 淡「……テルー」ボソッ 照「京ちゃんもお弁当食べたい?」ニヤニヤ 京太郎「あ、あはは……じゃあ、いつか機会があれば」 照「いつか作ってあげます~ぅ」キャハッ 5. お弁当女子で女子力アピール かわいい女子っぽいメモ帳にお弁当のイラストをたくさん描いて、落としたい男性に見せましょう。 「明日作るお弁当の絵、毎日描いてるの私」と言えば、男はだいたい落とせます。 「彼氏ができたら毎日作ってあげるんだぁ♪」と言うとポイントがさらにアップします。 「でもハダカでエプロンは絶対にしないよっ><」 「彼氏の家に泊まったら彼氏のトランクスはいてお弁当作るの♪ ハダカでトランクスなのっ♪」 と言えば最高です。 家庭的でありながら、エロティックな女性に男性は弱いのです。 エロいだけでなく弁当も作れる女子の女子力はかなりのものです。 できるだけかわいい感じの色鉛筆を使ったお弁当のイラストがいいと思います。 実際にお弁当を作っていなかったとしても、嘘でもいいのでやりましょう。 付き合ってからお弁当を作るように言われても、無理して作る必要はありません。 「またいつか作ってあげます~う」や「そんなこと言ってないよぅ、ぐすん」 「ほかの女が言ってたんじゃないの~? ぷんぷーん」 と甘え口調で言っておけば男性は突っ込まないでしょう。 店員?「(やっぱりお姉ちゃんは凄い!!)」 淡「(私のせいなのかな? 私がテルを……)」グスッ 菫「(私か? 私がいけないのか……?)」 京太郎「(咲に続いて照さんまで……)」 ズゥーン 照「(かなり場が温まってきた。やるとすれば、今しかない!)」 店員?「(やるつもりだね、お姉ちゃん! 遂にアレを!!)」 照「(今回の切り札!! それは!!)」 6. 泥酔おもらし女子 照「(もちろん酔っ払うことは出来ない。でも、こう考えるべき)」 店員?「(酔っ払うことを利用したテクなら、逆に酔っ払わないことで)」 照「(より迫真になるハズ!!!)」キラーン ※なりません 京太郎「(なんだ、悪寒が……)」ゾクッ 照「……あー、トイレ行きたいなぁ」ボソッ 京太郎「え?」 照「でも、場所が分からないなぁ」 京太郎「え、えっとあっちの……」 照「分かんなぁい、あぁ、漏れちゃうかもぉ!」ジタバタ 京太郎「いやだから! あっちの!」 照「「ここで出ちゃったらやあよ! やあよ!」ジタバタジタバタ!! 京太郎「」 菫「」 淡「」 店員?「(頑張って!!)」ドキドキ 京太郎「(ナニコレ? どうすればいいんだ?)」キョトン 照「トイレつれって! 出ちゃったらやあよっ!」ギュゥ 京太郎「お、俺がですか!?」 淡「えぇぇぇっ!?」 菫「ま、待て照。付き添いなら私が……」 照「やらぁ! 京ちゃんがいいのぉ! 京ちゃんじゃなきゃやらぁ!!」ジタバタ :_,. -─……─- : . ´........................................................\: :/.......................|........ト、..............................ヽ: : /....................| |...i|........| \...........|....|............:/.........../ .....|.._|_八......| \__....|............i : ̄ ̄ ̄|...|....| [ \| \|....|............|: :|...|....|┬─┬ ┬─┬ |............| |...ト..| 乂 ノ 乂 ノっ|............|: :i|...|....| |............|: ||...|..人 , _ 人.......l..| 八Λ.....> _ . <......../|/ \|\_,ノ⌒ 〈___/ ⌒ ‐-ミ ;/ ̄ | \ ∧ / / / \; / | \ ∨_/ / ハ :/ \ Χフ / /  ̄/ Τ  ̄ ',; ;\ | 〈 ∧ 〉 | / 京太郎「」 菫「て、照……」ドンビキ 照「出ちゃう、出ちゃうからぁ!」ジタバタ 京太郎「わ、分かりましたから! ね! 落ち着いて!」 照「えへへぇ……」スクッ 京太郎「じゃあ、こっちへ」 照「やあよ! やあよ! やあよっ!」バタバタ 京太郎「暴れないでください!!!」 淡「……なにあれ? 馬鹿なの?」 菫「ああ。馬鹿だ」 京太郎「ほら、ここが女子トイレですよ」 照「うぅ……やあよ! やあよ!」ブルブル 京太郎「(照さんが叫ぶから視線が痛かったな)」 照「さびしんぼやあよモードだから」 京太郎「へ?」 照「ここで待ってなきゃやあよモードだよ」ガチャッ 京太郎「……はい」 バタン 照「……万事うまくいってる」ニヤリ 京太郎「……帰りたい」 照「(ここでおしっこする必要は無い。少し待ってから……)」 ガチャッ 京太郎「え?」 照「お待たせ」 京太郎「(ちょ、今水流したか? ていうか、え? 手を洗った!?)」 照「(トイレしてないんだから、手を洗う必要は無い)」 京太郎「……」 照「ねぇねぇ、あのなかで誰が一番かわいいと思った?」 京太郎「えっ」 照「……」ジィー 京太郎「い、いきなりなんですか?」 照「答えてくれなきゃやあよ! やあよ!!」バタバタ 京太郎「わ、分かりましたから落ち着いてくださいってば!」 照「……」ピタッ 京太郎「……お、おおほ……」 ´ ` 、 / \ , `ヽ . / / . ' ' ' ', ∨ i / i | | | l | | | /. | |i | | } l | | \. | l | | | / | |i | 乂─人 ト、 | \ | ─ | | | / __| |l |,,___ ` \{ '´ } ,,N 八 |  ̄ ̄ ̄ | 八 小'庁示ミ、 '乏示庁`| / i| 八 ハj \{ 乂 ソ 乂 ソ レ'| | ヽ / | Λ ハ〕. | 丶 . / | トハ ' /‐'| | , / / | | . 込、 ,イ. . . | | ′ / / | | . . l. . ... ` ’ ... . . .i . i .| | ! ,. / i| |. . i| . i| .〕ト イ. . i. . . l . l .| | ; l | /{ ,r─‐= i| | ̄ ̄ ̄`ノ .;ト..,|. . . l . l .| | / | } /⌒ヽ 八 | ヽ 〈 `゛l . l .l 八 / | / / \ ヽ} ∨___∧ | / .,) }' /′ \ ,_ ` ._ ,}′ 、 // 、\ ,_ } / λ 京太郎「照さんです」キリッ 照「んへへへへっ! 京ちゃぁんっ!」ダキッ コソコソ 店員?「(あと一歩だよお姉ちゃん!)」 京太郎「じゃ、じゃあ戻りますか」 照「……うん」ドキドキ 京太郎「(とても咲のことを相談できるレベルじゃない。また今度にしよう)」 照「(ここで、最後……!)」ドキドキ 京太郎「……照さん、今日は……」 照「アファーッ!!!!」ピタッ 京太郎「!?」ビクッ 照「(この日の為に貯めた、尿! それを全て!!!!)」スッ チョロッ チョロロロロロッ ※咲世界の女性はみんなノーパンだということを念頭においてください ジョバババババッ!!!!! 京太郎「!?!?!?!?」 照「アッファ~~ン! やあよ……やあよゆうたのに」ダババババッ 京太郎「?!!?!?」ビシャビシャッ 照「やあよぉ……止まらんよぉ」ビジョバババババッ 京太郎「……」ポタポタ 照「やあよもー!」ポチャポチャッ 京太郎「……」ビショヌレ 照「やあよもー! こんなんじゃ、みんなのところに行けないよぉアッファ~~ン(涙)」シクシク 京太郎「……」 照「え~ん(涙) 恥ずかしいから帰りたいよぉ」グスグス 京太郎「……え、あ、はい」 店員?「(お姉ちゃん、あんなにたくさん……凄い!!)」 照「やあよぉ! やらやらぁ! おうちかえるぅ」ブルブル ~~ ~~ -―――- ~ ~ ..... . `丶 / \ } } . . { { / / . . │ |\ |\ | . } } / | / | | ト- |--∨\ | { { / /| |ノ| 八 | _..斗-=ミ\| | | / | /-匕-=ミ\|\| 〃⌒゙ヾⅥ | | }  ̄ ̄ | | イ /〃⌒ヾ {{ }} }|/| | | { { | 八ハ{ {{ }} ゞ==(⌒) | / | } |/| {. ハ (⌒)=='' /// |/} | | ヽ_| /// __,ノ | }. { | 八 _.. ‐~‐-、 イ | {. } | 个 .._ (_,,.. ‐~~' イヘ | レヘ _≧=一ァ 〔/⌒T iT7ス / ∨\ /r ̄ ̄ ̄7____/ / ∧/ } { ∧ | / / / ∧ { } / {\/⌒)_∠__/| / ∧ / ゙T{ 二(__ `ヽ _ヽ / ∨ハ. {_ / \/ _〉. { /\ _ | ノ _) 人._ |_/|/ } } \_____,|/ /i i\  ̄ ̄`ヽ j { ∨ / /|i ハ i \ | / / i i i ハ i i i i 丶 ... ______丿 〈 i i i i/ i i i i i| | } 京太郎「……じゃあ、待っててください」 照「う、うん」 スタスタ 京太郎「あの」ビチョビチョ 菫「どうした須賀!? さっきの照の叫びは……!?」 淡「びしょ濡れじゃん! 何かあった!?」 京太郎「今日は、もう……お開きで」 菫「え?」 京太郎「お願いします……ヒグッ、じゃないとぉ……俺、おかしく、グスッ」プルプル 淡「須賀……っ! 許せない!! テル!!!」ガタッ 菫「やめろ淡。須賀の気持ちを汲んでやれ」ガシッ 淡「でもっ!! でも……こんなの、酷いよ」ブルブル 京太郎「……ごめんな」 淡「っ!」ズキッ 京太郎「じゃあ、俺。照さんを送っていくので」 菫「……頼む」 照「大成功」ホクホク 店員?「やったね! いぇーい!」 京太郎「照さん」 照「……!」 京太郎「じゃあ、タクシー呼ぶので……ホテルまで」 照「やあよ! 京ちゃんの家じゃなきゃやあよ!」バタバタ 京太郎「……ぅぅっ、わ、わかっ、ヒック、分かりましたぁ……うぁぁっ」グスッ 照「(嬉し泣きしてるっ!! やったぁ!)」パァァ 京太郎「(くそっ! 俺は、俺はまた救えなかったのかよっ!!!!)」ポロポロ 照「……えへ、えへへっ」 京太郎「照さん、俺……絶対に、見捨てたりしませんから」ギュッ 照「(プロポーズ!!)」ドキドキーン 店員?「(おめでとう! お姉ちゃん!!!)」 6. 泥酔おもらし女子 泥酔したふりをして、トイレの場所がわからないふりをしましょう。 「ここで出ちゃったらやあよ! やあよ!」と言って、周囲をあせらせます。 泥酔している設定なので、大げさにオーバーアクションしていいです。 落としたい男性に「トイレつれてって! 出ちゃったらやあよっ!」 と言い、男性にトイレに連れてってもらいましょう。手をバタバタさせながら 「やあよ! やあよ! やあよっ!」と言いながら移動すると男性はキュンとします。 トイレに入る前に、「さびしんぼやあよモードだからここで待ってなきゃやあよモードだよ」 と言い、男性にはトイレの前で待っていてもらいましょう。 男性は女性の脱糞音や放尿音をよく思いませんので、できるだけ静かに排泄しましょう。 もちろん排泄しなくてもかまいません。 1分くらいしてトイレから出たら、 「ねえねえ、あのなかで誰が一番かわいいと思った?」と言いましょう。 もちろんあなたがカワイイと言ってくるはずなので、あとはそこで雑談を進めて男性をゲットしてください。 高度なテクニックですが、トイレへの移動中におしっこを漏らすという方法もあります。 「アファーッ!」と声を出して立ち止まり、おしっこを漏らしつつ「アッファ~~ン! やあよ……やあよゆうたのに」 と言い、ヘタりましょう。男性は驚くと思いますが、ここからがミラクル展開が開幕するのです。 「やあよもー! こんなんじゃ、みんなのところに行けないよぉアッファ~~ン(涙)」 と男性に言い、恥ずかしいからこのまま帰りたいと伝えましょう。 無責任な男性でなければ、あなたをフォローして他のメンバーに 「なんかあの子気持ち悪くなちゃったみたいだから、俺、家までタクシーで送っていくわ」 という展開になります。タクシーに乗ってから「あなたの家じゃなきゃやあよ」と言い、 自分の家ではなく男性の家に行くようにしむけましょう。 そしてそのあとは……わかりますね? 男性の家には女性ものの服はないはずですから、洗濯して乾くまで、あなたは男性と甘い時間を過ごせるわけです。
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3368.html
5・ 牌の世界 京太郎「今日、本藤先輩との再戦だ」 牌「……へえ」 京太郎「俺、強くなったかな」 牌「さあ、なってないんじゃないの」 牌「もうこれ以上強くなりようがないもん」 牌「考えうるパラメーターはもう限界まで伸びてるんだよ?」 京太郎「あとは配牌と、ツモ運」 牌「なに? 上げて欲しいの、ツモ運」 京太郎「その言い方だと……やっぱりダメか」 牌「やだね、やだやだ。めんどくさい」 京太郎「そこをなんとかさー、俺が頑張ってるとこ見ただろ?」 牌「……うん、見てたよ、全部」 京太郎「ちょっとは感化されたんじゃないか」 牌「ないない、全くもって。男には感化しないよー」 京太郎「そっか……なら、しょうがないな」 牌「……どうするつもり」 京太郎「このまま打つしかないだろ」 牌「認められんの?」 京太郎「しばらく麻雀にブランクがあったうえで、このまえ本藤先輩と打ったんだ」 京太郎「この一週間でだいぶ勘は取り戻した。それを成長ということにしてもらおうと思ってる」 牌「………………」 京太郎「じゃ、また明日」 牌「………………見とく」 部室に意識が戻る。 八坂「よう」 京太郎「やっさん! どうしてここに」 八坂「本藤先輩と打つんだろ? それの観戦に来た」 まこ「入るか?」 八坂「ありがとうございます、遠慮なく」 京太郎「麻雀部に入ってくれるのか」 八坂「京ちゃんが本藤先輩に認められればな」 京太郎「そりゃまた難しい条件」 八坂「それぐらいできないと、あいつは倒せない」 京太郎「あいつって……?」 八坂「来たみたいだぜ」 扉がゆっくりと開く。 巨体が京太郎の前に立ちふさがった。 本藤「見せてもらうぞ、お前の変化を」 対面に座る。 八坂「京ちゃん、本藤先輩の強さの秘密はもうわかったのか」 京太郎「前に気づいたよ。防ぎようねーけど」 本藤先輩の使う技術は「神逆」という手法だ。 理論はさほど難しくない。 筋力で雀卓を変形させるだけだ。 上手く変形させれば数枚ほどの牌なら任意の場所に持ってこれる。 プロならば笹塚プロ、掛橋プロあたりが使い手として有名だ。 大沼プロも若いときは使っていたらしいけど。 京太郎(操れるのは多くても4枚ほど……この前打ったときは赤ドラを2枚と両隣の牌を集めてた……) 京太郎(和了り形を見たら毎回入ってたしそれは一目瞭然。高火力なのもうなずけるってものだ) 配牌を見る。 8シャンテンの形。 本藤「会話はできたか」 京太郎「…………?」 本藤「わからないか、牌とのだよ」 京太郎「なっ……」 本藤「その様子だと出来たみたいだな」 京太郎「まさか本藤先輩……あなたも」 本藤「んなわけないだろ、俺にはできないよそんなこと」 京太郎「じゃあなんで」 本藤「お前はそれができるやつだと思ったからだ」 京太郎「………………」 本藤「出来るやつなんてほとんどいねーよ。というか、それが出来るやつはあと一人しか知らない」 八坂「本藤先輩、それってもしかして、上崎って人ですか」 本藤「なんだ、知ってるのか?」 八坂「俺が麻雀から離れた原因ですから」 六巡目。 京太郎「……ツモ。七対子ドラ1。1600」 河がまだ一列のときに和了れたのは何年ぶりだろうか。 本藤「ムダヅモなしか? 牌に愛されてるな」 京太郎「いや……さっき協力しないって言われたんですけど」 協力してくれる気になったのか、牌。 しかし東ニ局。 本藤「ツモ。3900オール」 京太郎「うわ、マジか……協力するのはさっきの一回だけってことかよ」 捨て牌に並ぶ裏目った牌たち。 八坂「つーかツモ運悪くなってね?」 京太郎「さっき運よくした分、代価を払えって感じなのか? もっと純粋に協力してくれてもいいのに……」 その後も捨てた牌を次にツモるということが続き、オーラス。 跳満直撃で本藤先輩をまくれるところまできた。 本藤「次、チャンスをやる。それで俺に勝ってみろ」 本藤先輩は「神逆」を、京太郎の配牌に発動させる。 京太郎の配牌が4シャンテンになった。 京太郎「本藤先輩、これって……」 本藤「神が決めたことに逆らうから、『神逆』と言うんだ。一度くらいならこれぐらいは出来る」 本藤「さあ、打ってみろ。その配牌ならばお前の力を発揮できるだろ」 京太郎「……はいっ!」 その日、京太郎は八年ぶりの三倍満を達成し、本藤先輩に勝利を収めたのだった。 次の日。牌の世界。 京太郎「勝ったぜ」 牌「ふーん、興味はないけど、おめでとう」 京太郎「東一局目、ありがとな」 牌「なんのことやらさっぱり」 知らんぷりをする牌。せっかくお礼を言っているのに。 まあ、いいけど。 京太郎「今日は、聞きたいことがあってさ」 牌「……なに?」 京太郎「俺とお前、昔、会ったことがないか?」 牌「……さあ、よくわかんないけど、いつの話?」 京太郎「9年前」 記憶のほとんどない9年前。 蓋をした9年前。 そこから漏れだした記憶の断面に、確かに牌はいた。 牌「どうだろう」 上を見上げて退屈そうに、牌は言った。 牌「私、付喪神なんだけど」 京太郎「付喪神……」 長く使った道具に宿る神、だったか。 牌「私が神になったのは8,9年前くらいなのだ。だけど、神になってから誰か人間に会ったことはないよ」 京太郎「って、ことは」 牌「勘違いじゃない?」 京太郎「勘違い……?」 本当にそうなのか? だってこんなにも記憶の中の少女と牌はそっくりなのに。 なのに別人? 他人の空似? 京太郎「わかった、変なこと聞いて悪かったな」 疑問は残るがこれ以上追求しても埒があかない。 それに、このことはこれ以上追求しないほうがいいような気もするし。 牌「ま、待って!」 京太郎「ん?」 牌「あ、あの」 京太郎「なんか思い出したか!?」 牌「そうじゃなくて、あの……あ……がとう」 京太郎「えと……」 牌「ぁ……ありがとう、これ」 そう言って牌が指をさしたのは、PCとコミスタ(パッケージ版)。 京太郎「あ、ああ……素直にお礼を言うとは……大人になったな」 牌「大人も何も神だ!」 京太郎「はいはい、わかってるよ」 頭を撫でる。 牌「く……気持ち悪い……屈辱……! でも、今はお礼のため、我慢……」 京太郎「別に俺、髪フェチじゃないから」 牌「じゃあ無駄に触るな!」 京太郎「はいはい……」 せっかくセットした髪型が崩れるので、気安く他人の髪を触るのはやめましょう。 5・終 6・ 京太郎「咲……」 咲「京ちゃん……」 手が重なりあう。 暗闇の中では視覚が役に立たない。 それにともなって他の感覚が鋭くなってくる。 衣服の擦れる音が聞こえる。 時計の針が動く音が聞こえる。 心臓の鼓動が聞こえる。 触覚が、敏感になっていく。 京太郎「本当にいいのか、咲……」 咲「うん……」 咲の肩に手を置いて、そして――。 「おっきろーーーーーーーーー!」 ――ようやく目が覚める。 さて、牌の世界へ飛ばされるとかいうファンタジーな展開に、京太郎がたいして動じなかったのには理由があった。 それはすでに京太郎があるファンタジーを飼い慣らしていたからだ。 京太郎「……おはよう、カピ」 カピ「あ、ようやく起きた! ご主人さま、起きた!」 喋るカピバラというファンタジーだ。 京太郎「いい夢だったのに……! 正直、これ夢だなってわかってたけど……! あとちょっとだったのに!」 カピ「なになに? いい夢? 知りたい!」 京太郎「教えない」 カピ「さきちゃんの夢でしょ!」 京太郎「へ? なんのことだ?」 カピ「寝言でさきさき言ってた! ごまかせない!」 京太郎「ひどい」 カピ「フラレたのに健気!」 京太郎「うぅ……」 カピ「ストーカー野郎!」 京太郎「今日のお前ひどくね?」 カピ「それにしてももう高校生だっていうのに女の子の一人も部屋に連れてこないとは……人間の寿命は長いって言うても心配やわ」 京太郎「やめてください」 カピ「いないの? 仲いい女の子?」 京太郎「いや、そんなこと言われてもさあ……。あ」 カピ「どしたの」 京太郎「そういえば今日、和が来るんだよ」 カピ「へ~! その人、仲いいの?」 京太郎「う~ん、向こうはまだ俺のことを信用してない感じはあるんだけど」 カピ「じゃあ、何で来るの」 京太郎「こんなことがあってさ……」 昨日のこと。 見事、ニ人の男子部員を集めた京太郎。あと二人の男子部員と、一人の女子部員を求め、和に相談した。 京太郎「和。お前に憧れてここに来た麻雀の強いやつっていねーの?」 和「いえ……別に私は憧れられるような存在じゃありませんし」 そんなわけない。 京太郎「後輩とかは?」 和「あ……二人いるんですけど……確かにあの子たちは慕ってくれますね。嬉しいです」 京太郎「二人? 中学も強豪校ではないのか」 和「高遠原です」 京太郎「へえ、優希と一緒か。二人は幼馴染だったり?」 和「私は中学2年生のときにこっちに引っ越してきたんです。親友ですけど、幼馴染というわけではないんですよ」 京太郎「引っ越しか。前の中学は麻雀部強かったのか?」 和「そんな有名じゃない……いえ、麻雀部はありませんでした」 京太郎「なんてとこ?」 和「阿知賀女子学院中等部、です。知らないと思いますけど……」 京太郎「……奈良県の?」 和「知ってるんですか!?」 京太郎「小2のころから小4までの間、奈良県の小学校に行ってたんだよ」 和「私は小6からなので……ちょっと時期が違いますね」 京太郎「阿知女かぁ……じゃあ、もしかしてだけど、高鴨穏乃って人、知ってるか?」 和「え!? 知ってます! 須賀君も穏乃の友達だったんですか?」 京太郎「う~ん……どっちかというと、穏乃のおばあちゃん――雪乃さんと仲が良かったんだけどな」 和「えっと、たしかお土産屋でしたっけ?」 京太郎「和菓子屋でもあるけどな。和菓子を買うため、その店によく行ったんだ」 京太郎「最初は親と一緒に、だけどな。……雪乃さん、優しくって。いろいろよくしてくれたよ」 京太郎「学校帰りとかしょっちゅう雪乃さんのところに遊びに行ったっけ……いい思い出だ」 雪乃さんには大切なことをいろいろ教わった。京太郎の人生観の一部は、彼女によって形作られたと言っても過言ではないくらいだ。 京太郎にとっての初恋は咲であることに間違いはないが、雪乃さんにもほんのり淡い恋心を抱いていた。 年齢差は大変なことになるけど、それはまあ……。 和「穏乃とは、そのときに?」 京太郎「ああ。小学校は違ったけどな。雪乃さんを通して紹介された。遊んだのは数回だけど……まあ穏乃はあんな性格だ」 京太郎「人見知りだった俺とも、仲良くしてくれたよ。いいやつというか……すごいやつって印象だった」 和「……そうですね、私もそう思います」 奈良で過ごした三年間、それは幸せな時間だった。 奈良に来る前はあんなに心が苦しかったのに……。 ――苦しかった? あれ? 何で苦しかったんだっけ? 何で俺、引っ越したんだっけ? 和「そのころ穏乃はどんな感じでした?」 京太郎「見るか? アルバムにそのころの写真があるし」 和「お願いします」 京太郎「あ、そうだ。小6の穏乃も見たいな。どんな風に成長したのやら」 和「じゃあ、私もアルバムを持っていきますね」 持っていく? 持ってくるじゃなくて? 和「須賀君の家へ」 カピ「のどかちゃんのこと好きなの?」 京太郎「ん? おもちが大きいから好きだぜ。咲と絡ませたら最高の百合ップルだろうな……」 胸の大きさに差がある百合ップルは最高。京太郎が辿り着いた、一つの真理だった。 カピ「そうじゃなくて、恋愛感情的に」 京太郎「ははは、まだ出会って一ヶ月も経ってないんだぜ? どうやって惚れるんだよ」 カピ「そういえば気になる! どうしてご主人さま、咲ちゃんのこと好きになったの?」 京太郎「え~? うふふふ///」 カピ「なんか気持ち悪い」 京太郎「いろいろ咲のことが気になるイベントはあったんだけど……決定的だったのは修学旅行のときだな」 カピ「お、何だかまともそう」 京太郎「修学旅行の一日目、夕食の時の話だ。その夕食はいくつかのコースから好きなメニューを選べた」 京太郎「まあ若者の集団なわけだからみんな肉料理とかを選んでた。その中で咲は秋刀魚の塩焼きを頼んでたんだ」 京太郎「いや、秋刀魚の塩焼きも、もちろん美味しいよ? でも、それを選ぶ人は少なかったからさ、思わず注目しちゃったんだ」 京太郎「それでな、すごいんだぜ、咲。すっげー綺麗に魚を食うの」 京太郎「骨と身を綺麗に分けて、食べれるところは全部食べて、最後に残るのは綺麗な骨」 京太郎「俺、魚食うの苦手でさ、親に厳しくしつけられたからそこそこ綺麗には食えるんだけど」 京太郎「咲のは今までに見たことがないくらいに綺麗だった。あのときは、もう、マジで惚れたね。結婚したくなった」 カピ「目の付けどころが、シュールです」 京太郎「そうかな、惚れ惚れするぜ?」 カピ「まあ、それはいいんだけど……のどかちゃんが来る前に本棚の百合本は隠してね」 京太郎「……忘れてた」 本棚上部から下部までそびえ立つ百合! 百合! 百合! こんなの見られたらドン引き間違いなし! 京太郎「片付け完了! あとは和が来るまでゆるゆりの最新刊を読んで待ってよう」 カピ「片付け完了してない!」 京太郎「………………」 京太郎「……ふへっ」 京太郎「…………ふぬっ」 京太郎「……ふぅ。ゆるゆりは百合じゃないよなー。ほんのり百合っぽい、友情日常漫画って感じ」 カピ「そうなの?」 京太郎「ひまさくは百合だけど」 カピ「あれ」 京太郎「結京も百合だけど」 カピ「おい」 京太郎「あれ? やっぱり百合漫画じゃね?」 京太郎「っていうか、この世の漫画は全部百合漫画じゃね?」 京太郎母「京太郎ー! お友達が来たわよー!」 京太郎「うおおっ! 思ったより来るの早い! ゆるゆりは……ベッドの中にでも入れとくか」 カピ「ガンバッ!」 京太郎「いらっしゃい、和」 和「お邪魔します、須賀君」 部屋に和を招き入れる。 普段部室でしか会わない人が自分の部屋にいるのは何だか不思議だった。 和「……何だかいろいろと驚きました。須賀君ってお金持ちだったんですね」 京太郎「違う違う、お金持ちなのは俺の親」 京太郎「尊敬はしてるけどな、親のこと」 京太郎「ま、そこに座ってくれ」 小さいテーブルの前に置かれた座布団の一つを指さす。 和が座ったのを確認し、その反対側に京太郎も座る。 和「須賀君、結構本を読むんですね」 本棚を見上げながら和は言った。 ちなみに百合本棚はクローゼットに入れ、普段はクローゼットに入れている麻雀関連の本棚を外に置いてある。 カモフラージュのためだ。 和「麻雀関連の本がいっぱい……これ、一年やそこらで集められる量じゃない気が……」 京太郎「ん? ああ、5,6年分くらいだけど」 和「須賀君って麻雀を始めたの、最近じゃなかったですっけ」 ……そういうことにしてるんだった。 自分の昔話は秘密にしておくようにやっさんに頼んだのだ。 本当は強いんだぜー! とか恥ずかしいし。 つーか今の俺じゃ、誰にも勝てないから、バレるわけないんだけどな! 京太郎「えーと、打ち始めたのは最近だけど、本とか見て研究は昔からしてたんだ」 京太郎「さ、そんなことより、アルバム見ようぜ」 カピ「キュー!」 京太郎「ん? お前も見たいか?」 カピ「うっす!」 和「いま喋りませんでした!?」 京太郎「珍しいな、和がそんな変なことを言うなんて」 カピ「キュー」 和「き、気のせいですか」 京太郎「そうそう。カピバラが喋るとか非科学的。せーの、はいっ……『そんなオカルト』?」 和「それ、持ちネタじゃないです!」 1ページ目。 手をつないでる写真。 和「仲良かったんですね」 京太郎「懐かしいなあ……」 家族同士で写っている写真。 和「家族ぐるみの付き合いだったんですね」 京太郎「むしろそっちが中心だったかな。よくいろんなところに行ったなぁ」 京太郎「山とか、キャンプ場とか、山とか、なっらーけんこーらーんどとか、山とか」 山での写真が何枚か出てくる。 和「このときから穏乃、山が好きだったんですね……」 京太郎「へえ、その言い方だと今も好きなのか? うん、確かにあいつ、山には並々ならぬ執念があったし」 京太郎「一回だけ、だけどな。俺と穏乃の二人で山に登ったんだよ。近くの小さな山」 京太郎「まだあのときは幼かったし、遭難――ってほどじゃないけど迷子になって――」 心細くて、不安で、怖くて、泣きそうだった。 でも穏乃は違った。 楽しそうだったんだ。 京太郎「怖くないの?」 あのとき、俺は聞いた。 その質問に、うん、と答えるだろうと期待して。 穏乃「そんなことないよ。山は怖いものなんだよ」 穏乃「天気だって、動物だって、地形だって、山は人間に牙をむくことがあるんだ」 穏乃「それでも、そういうことをちゃんと理解したとき」 穏乃「山は私たちにいろんなものを与えてくれるんだ」 穏乃「私は、楽しさをもらった」 穏乃「山は怖いけど、楽しいんだ!」 そのときの穏乃の顔を見ているうちに、心が落ち着いたんだ。 落ち着いた心で周りを見回したら、帰り道が何となく見えたよ。 ……あ、この話にオチはないんだけど、印象に残ってる、大切な思い出だ。 和「私も、穏乃と登ったことがあります」 京太郎「お、そうなのか」 和「1つだけ穏乃に言いたいことは、山登りに適した格好をすべきということです」 京太郎「その辺はなあなあで済ませよう」 和「いいんでしょうか……山登りが好きなある人が」 和「『こんな格好で山登んな!小さい山だろうが慣れた山だろうが関係ねえ! 山なめんな!』って激怒してましたけど」 京太郎「どんなものでもマニアというのは面倒くさいものだからな」 百合男子もそうだけど。 京太郎「さてと、次のページ……」 一緒にお風呂に入ってる写真。 京太郎「……は、また今度にして、和の持ってきたアルバムを見せてくれ!」 和「何ですか、今の写真」 京太郎「恥ずかしかったのでナシ」 和「お風呂ですか」 京太郎「まだお互い幼かったからな――実に微笑ましいよな!」 和「はぁ……まあ、普通ならそうなんでしょうけど……穏乃の場合はそうはいかないような」 京太郎「へ? なんで」 和「穏乃が小6のときの写真です」 京太郎「変わってない」 和「こっちが中1のときの写真です」 京太郎「難易度の高い間違い探しか」 和「最後、引っ越すときに撮った写真です」 京太郎「女の子らしくなった……ということはなかった」 和「つまりその写真は幼かったころの微笑ましい1ページというわけにはいかないんです。今現在の写真と言っても過言じゃないんです」 京太郎「いや、その理屈はおかしい」 本当におかしい。 和「というわけでこの写真はお預かりするということで」 京太郎「いやいや、なんでそうなる……ハッ」 もしかしてもしかすると。 百合名場面図鑑収録「あの子の写真を持ってるのは私だけじゃないとイヤ」なのか!? そういえば和のカバン。誰かから貰ったんじゃないかと妄想したが、あれは現実!? あのカバン、穏乃のイメージとマッチングしてるし! 間違いない! 穏和は現実だったんだ! 百合はファンタジーじゃなかったんだ! 百合は現実だったんだ! 京太郎(いや、落ち着け俺、素数を数えるんだ。2,3,5、7、11、13……あ、間違えて奇数を数えるの忘れてた) 和「どうしたんですか?」 京太郎「なんでもない、とにかくその写真を元の場所へ」 手を伸ばす。少し届かなかったので体を乗り出した。 和「そんなに必死に取り戻そうとするとは……やはり」 京太郎「ないない、ありえな、うわっ!」 バランスを崩す。 和を押し倒す。 ベッドにダイブ。 京太郎「………………」 和「………………」 今朝見た、夢のことを思い出した。 目の前の少女が咲だったらな、と思った。 京太郎「和……」 和「す、須賀君」 カピ「キーッス!」ヘイッ! カピ「キーッス!」ソレ! 和「あれ、なにか言いました?」 京太郎「……ちょっと待っててくれ」 和「なにをするんですか?」 京太郎「カピを可愛がってくる」 和「それ今する必要あるんでしょうか……」 京太郎「クッ……まさかこのことを教えなければならないとは」 和「な、なんですか」 京太郎「誰にも言うなよ?」 和「は、はい」 京太郎「俺と和、二人だけの秘密だからな?」 和「わかりました」 京太郎「実は俺……一時間に一度はカピをモフモフしないと手が震えたりするんだ」 和「モフモフ中毒ってやつですか? 大変ですね。もしモフモフしなかったら、いったい……」 京太郎「俺自身がカピバラになる」 和「予想通りです」 京太郎「と、いうわけで、さあ! こっちの部屋でモフモフだ! カピ!」 カピ「堪忍してくれー!」 バタンッ! ―――――――――――― 京太郎「と、いうわけで、さあ! こっちの部屋でモフモフだ! カピ!」 須賀君はニコニコとした表情でカピさんを抱きかかえた。 カピ「堪忍してくれー!」 気のせいだろうか。喋った気がするのだが。 いや、そんなオカルト――いや、やめよう。持ちネタ扱いされる。 バタンッ! 扉が閉まる。 和「そういえば、さっき……」 ベッドに倒れたとき、背中にゴツっとしたものが当たった気がする。 和「何でしょう、四角い感触でしたけど……」 布団の中に手を入れると、中から本が出てきた。 和「漫画……でしょうか?」 タイトルは「ゆるゆり」。聞いたことはない。 しかし、その本が放つ魔力に、和は冒されていた。 読んでみたいという、恐ろしい魔力に。 和「……須賀君が来るまでの間、読んでみましょうか」 カピをモフり終えた京太郎は、自分の部屋に戻ってきた。(※モフる=人前で喋らないように指導すること) 京太郎「わるい、和。遅くなった」 和「い、いえ。だ、大丈夫です」 ……何故だろう。 心なしか和の顔が赤い気がする。 そしてそれ以上に。 和から百合のにおいがする気がする。 和「ま……まさかあんな世界があっただなんて」 京太郎「和?」 和「は、はい!」 京太郎「もしかして、体調が悪いのか?」 和「い、いえ! そういうわけでは」 京太郎「ならいいんだけど」 和「そ、そうです、須賀君! カピさんは?」 京太郎「今は眠ってる」 和「そうなんですか」 京太郎「物理的に」 和「どういうことですか!?」 京太郎「俺のモフりテクが気持ちよかったんじゃないか?」 和「妙な造語を創らないでください」 京太郎「さて、それじゃ本格的に和が持ってきた写真を見ますか!」 和の写真。和と穏乃と知らない女の子ふたりの写真。 和「この子――憧というんですけど、誰かに似てると思いません?」 京太郎「えー? うーん……俺の知ってる人?」 和「もちろん」 京太郎「むむむむ……」 普段は女の子を百合妄想のために使っているので、あんまり顔を覚えていないのだ。 大事なのは関係性だし。 顔の良し悪しなんておまけなのだ。 でも、今回は違った。 答えの少女が唯一、京太郎が百合妄想を出来なかった人物だからだ。 京太郎「ゆうき……そうか、優希か!」 ちゃんと顔を覚えている三人のうちの一人だった。 和「そうです。あれ……思ったより時間がかかりましたね……即答すると思ってたんですが」 京太郎「はは……いや、こういうの苦手でさ」 そのとき京太郎の脳裏にあるひらめきが宿った。 まだ京太郎は疑問に思っていたのだ。 なぜ優希で百合妄想をすることが出来ないのかと。 もしその原因が容姿なら。 優希と似た憧という少女でも百合妄想は出来ないかもしれない。 そうなると疑問が解消される。 京太郎「……行こう」 和「行くって、どこへ……」 京太郎「奈良」 和「え」 京太郎「吉野へ行こう!」 和「今からですか!? 五時間はかかりますよ!?」 京太郎「時山さん」 時山「はい、ここに」 京太郎「ヘリ、出してもらえますか」 時山「かしこまりました」 和「え? え? え? 執事さん?」 時山「ちなみに私、萩原さんの旧友です」 和「なんかこの人、めちゃくちゃ下手な伏線を張りましたよ」 京太郎「そういうのは伏線とは言わない」 6・終 7・ 空。 それは無限に広がる自由のキャンパス。 この空間を支配することは人類の夢。 また、ポエムってしまった。 ……とにかく、上空1000メートル。 京太郎と和は空中散歩を楽しんでいた。 和「自家用ヘリって……須賀君、どれだけお金持ちなんですか……」 京太郎「金持ってるのも稼いだのも親だって。俺はすねをかじってるだけー」 褒められたことじゃないのかもしれないが、「親のお金には頼らない!」と言ったことがない。 親の支援なしに生きていくことなんてまだ出来ないし。誰だって親に守られて生きていくんだし。 精神だけ独立しても、それはただの反抗期だ。 本当に親に反抗したいなら経済的にも自立しなければだめだ。 反抗したいと思ったことはないけど。 将来、どうやって生きていくかも決めていないのに。 京太郎(そういえば染谷先輩は、もう将来のことを考えてるんだっけ) 京太郎(すごいよな……染谷先輩) 京太郎(俺も、考えてかなきゃ……ならないよな) 父親の神社を継ぐにしても。祖母の会社を継ぐにしても。 百合愛を活かせる仕事ができればいいのかもしれないけど、お金が得られるようになった趣味は楽しくないとも言うし。 麻雀のプロは……一度潰えた夢だし。 飛行機にはもう何度も乗ったことがあるが、ヘリコプターに乗ったのは初めてだ。 しかもそのヘリコプターは部活の友人のもの。 そしてその友人、須賀君は遠くを見る目で、考え事をしているようだった。 和「あの、大丈夫ですか?」 京太郎「………………」 呼びかけても返事がない。私の声が耳に届いていないようだった。 和「須賀君!」 京太郎「ぅおっと、すまん、考えごとしてた」 和「穏乃のことですか」 京太郎「いや、将来のこと」 和「唐突ですね」 京太郎「そうか? 俺の頭の中じゃ、論理的なプロセスがあったんだけどな……なぁ、和」 和「何ですか?」 京太郎「和は、将来の夢、あるか」 真剣な顔だった。 彼は、ときどきこういう顔をする。 出会ってからまだ少ししか経っていないけれど、もう数回ほどこんな顔を見た。 その真剣な顔を見ると、わたしはギクリとする。 怖いのだ。 何かを抱えてそうな瞳。モヤモヤとしたものがお腹の底で渦巻いているような嫌悪感。 和「……小学校の先生とか、お嫁さんとか、色々なってはみたいものはあります」 京太郎「いいな、それ」 和「だけど、だからといって、なれるわけじゃないですけどね」 京太郎「と、いうと?」 和「いえ、別に……そう思っただけです」 京太郎「親、か?」 和「……その何でも見透かしてるような態度、好きじゃないです」 京太郎「堪えるなぁ。いろんな人にときどき同じこと言われるけど」 和「……すみません」 京太郎「俺は親からの支配とか、そういうの感じたことないから、和の気持ち……わからないよ」 京太郎「だから俺がいくら良いことを言ったところで、それは上辺だけの台詞だ。誰かの借り物の台詞だ」 京太郎「何か悩みがあったとしても、それを解決できるのは俺じゃない。……きっとそのうち、それを解決してくれる誰かに出会えるよ」 和「……はい」 京太郎「でもさ、話したら少し楽になることもあるし、聞かせてくれないか。解決はできないだろうけど、聞くことは出来る」 和「そういう須賀君にもあるんじゃないですか?」 京太郎「なにが」 和「悩み事、です」 京太郎「……う~ん、特に……思い当たることはないな。いくつか疑問とかはあるけど、悩み事ってほどのものじゃないし」 京太郎「基本俺、お気楽に生きてるからなー」 和「本当に、そうですか?」 須賀君の目を見ていると湧いてくるこの感情。 須賀君の過去に、何かあったのではないかという疑惑。 それはまだ消えていない。 和の目は真剣だった。 言い逃れできなさそうな空気。 しかし、京太郎にとっての悩み事は、他人に話せることではない。 京太郎(『どうして百合アンソロジー「つぼみ」が休刊になったのか悩んでる』なんて、とてもじゃないけど言えねえ……) この真実を知ったときは悲しくて悲しくて、どうしてこの世界はこんなにも残酷なんだろうと嘆いたものだ。 京太郎「……やっぱり、悩んでることなんて、思いつかないな」 和「そうですか……そうなんですね」 納得いかないようではあったものの、それ以上の追求はなかった。 和「私も将来のことをいろいろ考えたりしますけど」 京太郎「おう」 和「でも今は目の前に大きな課題があるんです。まずはそれをどうにかしないといけないと思ってます」 京太郎「課題? それって……」 和は言うべきか言わざるべきか少し悩んでいるようだったけど、観念したかのように息をついた。 和「今年のインハイ、優勝できなかったら麻雀をやめさせられるんです」 京太郎「……そっか」 和「………………」 京太郎「残りの部員、見つけなきゃな」 和「……見つかるんでしょうか」 京太郎「そりゃ、きっとどこかに」 和「でも、三年生も二年生も一人ずつしかいなかったんですよ? もう私たちの学年は二人いるのに、あと一人見つけるなんて……」 京太郎「大丈夫だって、必ず見つかる」 そのとき京太郎の脳裏に横切ったのは咲の姿だった。 あいつなら、麻雀をやってくれるかもしれない。 誘ってみよう、そしたらきっと何かが起こるはずだから。 時山「あと五分で到着です」 京太郎「ありがとう、時山さん。例のもの、用意は出来てますか?」 時山「こちらです」 和「須賀君、そのかばん、なんですか?」 京太郎「見たいか? ほら」 カバンの中に入っていたのは、女性用の服、一式。 和「わぁ、かわいい……ブランドは……D.A.SUTUARTですか。私、ここの服、好きなんです」 和「NAGANO STYLEとコラボしたシリーズは大流行でしたよね」 京太郎「NAGANO STYLEの服もあるぜ」 和「これ、今春の新商品ですね! NAGANO STYLE、好きなんですか?」 京太郎「おう、メンズ商品も充実してるからな。少ない布面積に盛り込むふんだんな装飾は海外でも高評価されてるらしいぜ」 京太郎「デザイナーの長野雫さんが、海外の賞を取りまくってたみたいだし」 和「でも、どうしてこんな服を?」 京太郎「和、言ってただろ? 穏乃は今、阿知賀女子に進学してるかもしれないって」 和「実際のところはわからないですけど……」 京太郎「穏乃の家に電話して確かめたんだ。どうやら本当に阿知女みたいだぜ」 時山「そのようにお聞きしました」 和「そうなんですか」 京太郎「で、穏乃は今どこにいるか聞いたんだ。どうやら穏乃は、麻雀部の活動で学校にいるそうだ」 和「麻雀、ですか!?」 京太郎「驚くようなことなのか?」 和「いえ……。穏乃、小学校卒業と同時に麻雀をやめていたので……」 京太郎「……そうだったのか」 和「そうですか……よかった」 京太郎「また穏乃と打ちたかったのか」 和「え……いや…ふふ、そうですね。打ちたかったんだと思います」 京太郎「……よかったな、和」 和「……はい」 きっと和にとって、奈良で過ごした数年は大切なモノだったのだろう。 彼女はそういうことをはっきりというタイプではないのでわかりにくいけれど。 和「で、結局その洋服はなんのために……?」 京太郎「と、言い忘れてた。女装のためだよ」 和「えっと……よくわかりません」 京太郎「阿知賀女子学院は女子校だぜ? 女子校は百合の聖地!」 京太郎「男っぽいものは取り除かねばならない!男の俺も本来なら立ち入るべきではないが……今回は事情が事情だ」 京太郎「極力百合の園を汚さないように女の子になる配慮ぐらいはするべきかと思ってな!」 和「何を言ってるのやらさっぱり……」 京太郎「阿知賀は共学化しやすい学校だが……この世界線は共学化しなかったんだ」 京太郎「いや、共学化なんてしたら百合の花が枯れるから勘弁願いたいんだが……」 和「えっと……結論は」 京太郎「女装したいから、女装する」 和「なるほど、須賀君の声って、女装しそうなタイプの声ですもんね」 ……そこまで思い切ったことは言ってない。 京太郎「和は少しぶっちゃけすぎるところがあるよなー」 和「そんなつもりはないんですけど……せっかくだし、もう少しぶっちゃけてみましょうか」 京太郎「和に『ぶっちゃけ』という言葉は似合わないというぶっちゃけをしたいところだけど、どうぞ」 和「どうして須賀君、急に奈良に来ようと思ったんですか?」 京太郎「えっと……それは」 優希への思いが何なのか確かめるため。 ……そんなこと言えない。 京太郎「穏乃に久々に会いたかったから」 和「それ、本当ですか」 京太郎「和……お前まさか本当の理由を知って……!」 和「本当は最近の阿知賀スレブームに便乗しようとしてるんじゃないですか」 京太郎「ぶっちゃけた!」 ちげーよ! 和「もしくはシリアス展開ばかりが続くのが辛くてギャグ展開で済みそうな場所に緊急避難してるという可能性も」 京太郎「到着だぜ……! 阿知賀……!」 素早く服を着替え、京太郎はヘリから飛び出した。 新子憧は、刺激的なことが好きだった。 しずは、刺激的な少女だ。 私がしずのそばにいたいと思ったのは、そんな刺激的なところに惹かれているのだろう。 しずのそばにいたら、刺激的で、楽しい日々が続くのだ。 部活の休憩時間、憧は屋上へ風に当たりに来ていた。 屋上は四方が高いフェンスに囲まれていて多少開放感は損なわれているものの、校舎の周りの森林を一望できて気持ちがいい。 頭をつかう麻雀を得意とする憧にとって、頭の休憩のために屋上は最高の休憩場所だった。 ……ところで。 刺激的なことが好きとは言ったが。 ヘリコプターが私をめがけて飛んでくる。 エンジンの音なのかプロペラの音なのかはわからないが爆音が耳をつんざく。 そのヘリから一人の少女が飛び出してくる。 息を呑むほど美しい少女だった。 パラシュートが開く。 美しい少女は優雅に体を動かし、巧みに軌道を修正しながら。 ゆったりと、憧のいる屋上へ着地した。 空から降ってきた美しい少女。 屋上を吹き抜ける風で長い髪がうねる。 その少女は輝いているかのようだった。 少女は空を見上げ、自慢気な声で言った。 京子「なるほどSUNDAYじゃねーの」 SATURDAYだ。 ほどなく、ヘリも着陸し、中から出てきたのは、憧もよく知る少女だった。 和「須賀君なんでわざわざパラシュートなんて使ったんですか」 京子「特に意味は無いよ。そして今は京子と呼んで!」 和「跡部人気に便乗するためですか」 京子「和、ぶっちゃけキャラになる気か」 憧「の…………」 和・京太郎「ん?」 憧「和ぁ!?」 和「お久しぶりです、憧」 ……ここまで刺激的なことは求めていない。 京太郎が初めて女装をしたのは中学1年生。 百合を汚さないために始めた女装。 でも今は百合とは別の独立した趣味になっている。 どうしてこの趣味は理解者が少ないのだろうか? こんなに可愛い服を着られるのに。 そもそも男の服にはキュートさが足りない。もっと男の服にもフリフリなやつがほしいです。 最近スカートがメンズファッションとして取り入れられたときは「俺の生まれる時代は間違ってなんかいなかった!」 と思ったものだが、実際のところ、まだ一般化してないし、そもそもスカートと言ったってミニは許されていない。 丈が長くてゆるふわ系フリフリスカートも大好きではあるのだが、短いやつも履きたいのだ。てなわけで今、俺はミニスカート姿だ。 いや、「俺」という無粋な一人称はやめよう。 私、須賀京子は阿知賀女子学院に降り立っていた。 女子校である。 女子校である! 百合の聖地である! 少子化の影響で共学化なんてしてないのである! 阿知賀に来た途端、そこらかしこから百合の香りが漂ってきた! 憧「………………」 阿知賀に来て一番最初に目についた少女もまた、ほのかな百合の香りに包まれていた。 京子「はじめまして!」 憧「あ……はい、はじめまして」 握手をする。 憧「えっと、和、この子は……?」 和「須賀京太郎、男です」 憧「え」 京子「はい?」 憧「え」 和「須賀君、こちらが先ほど写真でお見せした新子憧さんです」 京子「へえ……『女の子は一年もあれば見違えるぐらい変わるものだ』と本藤先輩が言ってたけど、本当なんだね! 私、感心!」 和「案外あっさりなリアクションですね」 京子「女の子はいつでもかわいくなれるんだよ? 私、知ってる」 和「カプ総合スレや阿知賀スレで『憧の急成長に驚く』シチュエーションの話がたくさんあるから」 和「競合を避けるためにあっさりなリアクションしたのかと。ぶっちゃけそう思いました」 京子「ぶっちゃけキャラはやめよう、和」 しかしこんなに姿が変わってしまうと、本来の目的である「優希への思いが何であるか確かめる」が達成できなくなる。 わざわざ奈良まで来て得られるものがなにもないのでは、悲しくなってしまう。 そこで、新たな目的を思いついた。 百合の種探しである。 百合の種探しとは。 もうすぐ百合ップルになりそうな女の子を探して事前に仲良くなり、女の子たちがゆりゆりしているさまを観察させてもらうことだ。 憧「えっと、あの」 京子「あなた、恋、してる?」 憧「はい?」 京子「好きな女の子、いる?」 憧「え、ちょっ、まっ」 京子「いるんだね! 私、応援してるから!」 憧「え? う、うん」 京子「LINEのID交換しよう! それで逐一、好きな女の子とやったイベントを報告してね!」 憧(え? あれ? どうなってんのこれ!?) 京子「ID!」 憧「あ、はい……」 百合の可能性をひとつゲット。幸先のいいスタートだ。 京子「じゃ、他の百合の香りを追ってくるから、このへんで……」 憧「ちょっと待って!」 京子「どうしたの?」 憧「和。この人とどんな関係!?」 いきなり旧友が謎の女装男とともにヘリで現れたら、そりゃ二人がどんな関係なのか気になるだろう。 和「須賀さんとの関係ですか」 京子「和ちゃんとの関係、かぁ……」 部活仲間? 友だち? 何だろう……、私と和の関係って。 ……そういえば。 ヘリの中で話し合った。 将来のこと。将来、なにになりたいか。 私たちは、将来のことを話しあった関係なのだ。 和・京子「将来のことを話しあった関係」 京子「だよ」 和「です」 憧「え」 憧「えええええええええええええええええ!?」 阿知賀麻雀部室にて。 京子は京太郎に戻っていた。 京太郎「ひどい……ひどい……この世界は俺の敵だ……」 玄「ど、どうしたの京太郎くん」 京太郎「玄さん……ここって女子校ですよね」 玄「うん」 京太郎「百合の園ですよね」 宥「ユリの花が咲くのは5月からだけど……」 京太郎「なのに男性教師がいるんですよ!?」 玄「え!? 普通だと思うけど」 京太郎「俺の知ってる女子校は男なんて一人もいないんです!」 玄「どういうこと!?」 京太郎「くそっ……これだから現実は……! もっと百合漫画を見習えよ……!」 京太郎「こんな思いをするぐらいだったらカプ総合スレでいろんな女の子とインスタントにイチャイチャしてるほうがマシだ!」 穏乃「ねーねーきょーたろー。さっきの女の子の姿、もう一回見せてよー」 京太郎「よし、じゃ、着替えてくるぜ!」 灼「ハルちゃんはもうすぐ来るとおも……」 和「そうですか……それじゃ赤土さんが来るまでここで待っていていいですか?」 穏乃「赤土先生は今、職員会議中だから、30分もしないうちに来ると思うよ」 京子「手うがは大切だよ 手うがしようね!」 和「としのーきょーこー?」 京子「 !? 」 和「なんでもありません」 穏乃「わーすっごい! かわいい!」 憧「なじみすぎ!!」 なじんでいた。 憧「っていうかしず! こいつと知り合いなの!?」 穏乃「きょーたろはうちのお得意さんだったんだよ」 憧「玄と宥姉は!?」 玄・宥「初対面」 憧「なじみすぎ!」 京子「すみません……憧さん……。私、邪魔でしたよね……」 京子「みんなと話すのが楽しくて、つい騒いじゃいました……。本当にごめんなさい……」 憧「え……いや……別に怒ってるわけじゃ」 京子「心配して損した!」 憧「譲歩して損したんだけど!?」 元の姿に着替える。 あまりに長い時間京子でいると、自らのパーソナリティを喪失しかねないからだ。 玄「和ちゃんと京太郎くんは将来のことを話しあった関係なんだよね?」 和「はい、そうですね」 玄「いいなあ~……憧れるなあ……」 京太郎「そんなに憧れることですか?」 玄「そりゃ当然! 女の子なら当然なのです!」 京太郎「じゃあ玄さんも俺達と将来のことを考えませんか?」 玄「えぇっ!? だ、だめだよ、そんな! 和ちゃんが怒るよ」 和「構いませんよ」 玄「寛容!? 長野ってそんなに爛れた場所なの!?」 京太郎「何故長野の悪口を……。温泉とかいっぱいあっていいところですよ?」 玄「うちにもいい温泉があるのです」 京太郎「へえ、いいですね! 温泉旅館か何かですか?」 玄「うん。あ、良かったら温泉、どうですか?」 京太郎「あ、それじゃあ、入ります。和も入るよな?」 和「いいですね、温泉。お願いします」 玄「ま、まさか一緒に?」 京太郎「なんでそうなるんですか」 玄「あはは、さすがにまだ早いよね! よかった!」 和「早い遅いの問題なのでしょうか……」 玄「とすると、お二人はどこまで……?」 京太郎「どこまで、とは?」 玄「二人で今までにやったことは?」 二人でやったこと? う~ん、特に思いつかない。 和「そうですね……さっき須賀君の部屋でベッドに押し倒されました」 玄「すごく進んでる!?」 京太郎「あーあれかー。そういえばそんなこともあったな」 玄「そんなどうでもよさそうに……」 京太郎「まあ(バランスを崩して押し倒すなんて)よくあることですし」 玄「長野怖いのです」 京太郎「なぜさっきから長野へバッシングが……? いいところなんですよ長野。交通マナーが少しばかり悪いですけど」 玄「それって良い所だと言えるの……?」 京太郎「奈良も鹿さんの交通マナー悪いんですよね? それと一緒です」 玄「結構違う気が」 玄「でも羨ましいな……。和ちゃんのおもちを自由に扱えるなんて」 京太郎「え、扱えませんよ?」 玄「そこはまだ許してないんだ」 和「『まだ』ってなんですか『まだ』って。一生許しませんよ」 玄「そこはプラトニックなんだ……長野って訳がわからないのです。おもちを触れないとか……長野には行きたくないのです」 京太郎「長野に何か恨みでも……?」 玄「おもち帝国岐阜の隣に位置しながら、長野のおもちは平均以下の大きさしかないんだよ!?」 京太郎「ならば恨むのも致し方無いですね」 玄「そうなのです……ってあれ? 京太郎くん、おもちという言葉をなぜ……?」 京太郎「そういえば玄さん、なぜ俺が作った隠語を……?」 玄「…………」 京太郎「…………」 この世に、奇跡は存在した。 300km以上離れた奈良と長野で、同じ言語文化がまったく別の人間によって誕生していたのだ。 京太郎「奇跡ってあるもんですね……」 玄「うん……私、感動しちゃったよ」 そこで京太郎はあることを思い出した。 京太郎「おもちスレって知ってますか」 玄「うん。私、あのスレの住人だもん」 京太郎「こんな形でオフ会をすることになるとは思ってませんでした」 玄「うん、仲間に会えて、私……嬉しい」 京太郎「俺もです。でもせっかくだったら他の住人さん……」 京太郎「もち吉さんとか、†妖魔†さんとか、黒の騎士さんとか、チャチャさんにも会いたかったですね」 玄「京太郎くん……。ここで重大発表があるんだ」 京太郎「……なんですか?」 玄「その人達、全部、私の自演なんだ……」 京太郎「…………え」 玄「そう、それはあの日のこと――」 おもちのことを語りたかった。 おもちのことで夜を明かしたかった。 でもそんな話を出来る人はいなかった。 日に日に募るおもちへの思い。 それは発散されることはなく。 ――私は、私と語ることにしたのだ。 掲示板を作り。 自分のパソコンと、おねーちゃんのパソコンと、自分のケータイと、おねーちゃんのケータイと 旅館のパソコンを使い分け5つの人格を作り出し。 たった一人でおもち談義をしていた。 楽しい時間だったけれど、虚しさは募り続けた。 だからその日現れたその人は、私にとってかけがえのない人だ。 あなたが初めておもちスレを見たとき、私は人生であれほど嬉しかったことはなかった。 時には心苦しいながらもあなたのおもち観を叩いたりもした。 それでも私は、あなたに感謝している。 玄「ごめんね……自演なんかして……」 京太郎「玄さん……」 痛いほど、彼女の気持ちが理解できた。 京太郎にも似たような経験があったのだ。 百合が好きになって。 誰かと語り合いたいほど好きになって。 でもそれを語れる人はいなかった。 今でもあの頃のことを思い出すと心が寒くなる。 大切な何かが欠けていたあの日々。 それはちょうど紅生姜のない牛丼のようで。 決して戻りたくない過去だ。 京太郎「いいんですよ玄さん……! いいんです……! そんなことはもう……!」 玄「でも、ずっと騙してたんだよ? 大切な京太郎くんを……ずっとずっと騙してたんだよ?」 京太郎「気にしてないです……! 玄さんの気持ち、とても良くわかりますから……!」 玄「京太郎くん……!」 和「そうですよ、玄さん。須賀君は玄さんの気持ちを良く理解してますよ」 玄「和ちゃん……!」 和「須賀君もよくSSスレで自演しまくって自分のスレを人気があるように見せかけてますし」 京太郎「これでぶっちゃけるのは最後にしよう、なっ?」 しばらくすると、阿知賀麻雀部の顧問であるという赤土さんがやってきて、和と話していた。 赤土さんが来た瞬間、灼さんの百合指数が十倍に底上げされ、歓喜したのは言うまでもない。 京太郎はそっと部室を出ると、廊下にある自動販売機でビックルを買い、ベンチに座って瞑想した。 阿知賀女子麻雀部は百合の土壌であるとともに、片思いしかない、悲恋の世界だ。 灼さんの思いは一方通行だし、憧の思いも一方通行だ。 百合の物語は悲しい最後を迎えることも多い。 だからこそ現実ではハッピーエンドを迎えてもいいと思うのだ。 憧と灼さんに、何とかしてハッピーエンドを与えられないだろうか。そう思った。 京太郎「……ん?」 憧「あ……」 そこに、憧がやって来た。 京太郎「何か飲みに?」 憧「……やっぱ戻る」 京太郎「俺のことなんか気にすんなよ」 憧「……別に」 京太郎は立ち上がり、自動販売機の目で財布を出した。 京太郎「何飲む?」 憧「ちょっ……自分で払うから」 京太郎「そうか、つぶつぶドリアンジュースか」 憧「カルピスソーダ!」 京太郎「はい、購入っと」 憧「あ……しま……」 京太郎「隙を見せたな」 憧「くっ……。それ、いらないから」 京太郎「俺、炭酸苦手なんだけど」 憧「……子どもみたい」 京太郎「よく言われる」 憧「……あーもう、貰うわよ! ありがとねっ!」 京太郎「助かるよ」 近づこうと一歩踏み出した瞬間、憧は一歩、後ずさった。 京太郎「…………」スタ 憧「…………」スタ 京太郎一歩前進。 憧一歩後退。 京太郎「…………」スタスタ 憧「…………」スタスタ 京太郎ニ歩前進。 憧ニ歩後退。 これはもしかして、俺、避けられてね? 何故だろう。 嫌われるようなことをしたか? したけども。 京太郎「俺のことは嫌いでも、LINEで百合話をする約束はやめないでください!」 憧「……別にあんたのことが嫌いなわけじゃないわよ」 京太郎「好きというわけでもないのか」 憧「好きになる要素ないでしょ」 京太郎「たしかにな」 否定はできない。 京太郎「じゃあなんで近づこうとすると離れるんだ」 憧「あ……えと……それは」 京太郎「それは?」 憧「……苦手だから」 京太郎「なにが」 憧「お、男の子が……」 京太郎「はは、なるほどな」 憧「……ダメだよね、やっぱり、異性が怖いなんて」 京太郎「……そんなことねーよ」 憧「そんなわけない! 治すべきなんでしょ!?」 京太郎「いいじゃねーか、異性が苦手なくらい。無理して慣れようとする必要はないよ」 憧「でも……」 京太郎「治したいならゆっくり治していけばいい。慌てなくたっていいだろ」 というか。 治してほしくない! 男嫌いとか最高じゃんか! それってもう百合に生きろっていう神様からのメッセージだぜ、きっと。 憧がここまで育てた百合の芽を枯れないように守るのは、「男が苦手」というステータスなのだ。 変な男に捕まったらせっかくの百合の芽が花を咲かせる前に枯れてしまう。 そんなのは許せない。 京太郎「憧、俺は気にしないから」 憧「そっか……ゆっくりでいいんだ」 京太郎「ああ」 憧「……ありがとね、京太郎」 京太郎「?」 憧「うらやましいな……和」 京太郎「へ……? 憧、お前、なに言って……」 穏乃「大変だよ、きょーたろー!!」 そんな憧との会話中、穏乃が慌てた様子で駆け込んできた。 京太郎「どうした!?」 穏乃「和が、和が、熱を出して倒れて……!」 京太郎「え……あっ!」 そうだ。確かに今日の和の様子は変だった。 普段はあんなにぶっちゃける性格じゃないのに、今日はやたらとぶっちゃけていた。 あれは体調が悪くて調子がおかしかったんだ! 松美館。 看病しやすいよう、板場に一番近い部屋を貸してもらった。 板場に氷があるからだ。 晴絵「疲れが溜まってたみたいね。この時期は生活の変化も多いし、体調を崩しやすいからね」 和「……そうですね」 穏乃「おかゆ持ってきたよ! 食べられる?」 和「ありがとう穏乃。いただきます」 京太郎「ごめんな、和……。俺が無理に連れ回したせいで」 和「いえ……私も気づかなかったですから……」 ……そうじゃないんだよ、和。 奈良に来たのは俺の勝手な用事で。 それに巻き込んだのがいけなかったんだ。 京太郎は立ち上がり和のそばを離れ、部屋の入口にいる時山さんのそばへゆっくりと後ずさった。 時山「原村様のご両親への連絡、完了しました」 京太郎「ありがとう、時山さん」 場所が奈良だったのは不幸中の幸いか。 もともと和が住んでいた場所なので、親同士の繋がりもあったため、奈良にいることで大きなトラブルにはならなかった。 時山「この部屋と隣の部屋を使わせていただくよう、手続きも致しました」 京太郎「……いつもすみません」 時山「いえ、お役に立てるのならば」 京太郎「……天江家でのことを思い出してるんですか」 時山「…………違いますよ。それに今の衣様は龍門渕家にいらっしゃるのでしょう?」 時山「龍門渕家にはあの荻原さんがついています。何の心配もいりません」 京太郎「……わかりました」 夜。 京太郎「それじゃ和、何かあったら遠慮なく呼んでくれ。おやすみ」 和「はい、おやすみなさい」 和のいる部屋を出た京太郎は自分の部屋に戻ろうとしたが、思い直してロビーに行った。 ロビーの端にある自動販売機の前に立つ。 京太郎「……昼に一本ジュース飲んじゃったからな。一日二本は飲み過ぎ……」 水を買う。 出てきたペットボトルを目に近づけて、水の向こう側を見通す。 水を通すとゆらゆらと世界が揺れる。 それは牌の世界に似ていた。 京太郎「今日は牌に会えなかったな……」 なぜだろうか。最近、牌のことを考える時間が増えた。 今ごろ牌は何をしてるだろうとか、どんなことを考えてるのだろうとか、過去にどんなことがあったのだろうとか。 考えるだけ無駄なのに、気づけばそんなことばかり考えていた。 ゆらゆら揺れる空間に、揺れる人影が映った。 京太郎「……こんな時間に外出して親に怒られないのか」 穏乃「……和のことが心配で」 憧「ちゃんと許可は取ったわよ」 灼「部長としての責任もある……」 京太郎「大丈夫だ、今は安定してる。ゆっくり休めば元気になるはずだ」 穏乃「そっか……よかった」 安堵したように三人はソファーに腰を下ろした。 京太郎「早く戻ったほうがいいぜ。許可を取ったとはいえ親も心配だろ」 穏乃「許可っていうのは松美館にお泊りする許可だよ」 京太郎「あ、そういうこと……よく親の許可取れたな」 憧「あんたの親はどうなのよ。いきなり外泊なんてして」 京太郎「ふ……俺の親か……?」 視線をそらし、天井を見上げる。電灯が眩しかった。 穏乃「まさか……親」 京太郎「ああ……」 視線を戻す。 京太郎「超怒ると思うぜ!」 穏乃「予想と違った!」 京太郎「はぁ……明日がこえーよ……。何時間説教されるのやら……下手したら説教だけで2ページは消費する可能性も……」 穏乃「のび太のパパか」 憧「和のこと……心配?」 京太郎「そりゃそうだろ」 憧「そうよね、将来のことを話しあった関係だもんね」 京太郎「? 確かに、そうだけど」 穏乃「どうやって二人は知り合ったの?」 京太郎「部活が一緒だった」 穏乃「ほほー……定番だね。で、告白はどっちから」 憧「ちょっと、しず!」 穏乃「ヘヘ……いいじゃんか」 京太郎「告白って何のことだ?」 憧「してないの!?」 京太郎「ただの友だちに告白なんてするわけないだろ」 穏乃「え? ……将来のことを話しあった関係なんじゃ」 京太郎「おう。将来、何になりたいかについて語り合った関係だぜ」 憧・穏乃「………………」 灼「知ってた」 京太郎「え? え? なにこの空気」 灼「アラタ」 その後、旅館の雀卓で三人にボロボロにされた京太郎だった。 麻雀終了後。 京太郎は穏乃を外へ呼び出した。 明かりの近くには虫が沢山いたため、少し暗がりになっていた池のそばへ。 松美館の池は宴会所の窓から一望できる場所にあった。 月明かりが池の表面で反射してきれいだ。 穏乃「どうしたの、きょーたろー」 京太郎「なんだかんだでゆっくり話せなかったからさ。思い出でも語ろうかと」 穏乃「思い出かー。実はそんなにないよね」 京太郎「まーな。期間的には短かったし」 小学校が同じだったわけでも、一緒の麻雀教室に通っていたわけでもない。そんな都合の良い過去はないのだ。 京太郎「あのさ、穏乃は覚えてるか」 穏乃「なにを」 京太郎「俺がここに引っ越してきたときのこと」 穏乃「うーん……半分くらい」 京太郎「俺、何か言ってなかったか」 穏乃「……………………………………」 穏乃は目を閉じて、顔を傾けた。 忘れかけたことを思い出そうとしているのだろう。 穏乃「そういえば、ときどき言ってた気がする」 京太郎「なんて?」 穏乃「『あのとき、俺は足が動かなかった』って」 穏乃「『そんな情けない俺の隣を、あいつは駆け出した』」 穏乃「『あのとき俺がその役目を負っていたら、サキも、テル姉も、あいつも――あんなことには』」 京太郎「……その先は!? まだ他に何か言ってなかったか!?」 穏乃「ん……えっと……何か言ってたっけ」 穏乃の肩を掴む。 京太郎「何でもいいんだ! どんな些細な事でもいいから、頼む!」 穏乃「い……痛いよ、きょーたろー」 京太郎「あ……わるい」 肩から手を離す。 手が痺れていた。どうやら知らないうちに強く握っていたようだ。 穏乃「なにか、あったの」 京太郎「…………」 穏乃「すごく、必死だった」 見抜かれている。 和は俺のことを「何でも見透かしてるよう」と表現したが、穏乃ほどではないと思う。 京太郎「今日、和とアルバムを見たんだ。俺が奈良にいたときの――つまり穏乃との写真。そのアルバムを見て気づいたことがある」 京太郎「そのアルバムに、空白期間があるんだ。二年間分の写真がすっぽり抜けていたんだよ」 それは、記憶に蓋をした時間。 京太郎「俺がそのころの写真を捨てたのか、親が隠したのか分かんねーけど……思い出さなきゃならない」 穏乃「……わかった。あのときのこと、もっと思い出してみる」 穏乃は黙って空を見上げた。 穏乃「ひとつだけ、思い出した」 京太郎「…………」 穏乃「『好きだったのに』」 京太郎「え?」 穏乃「『好きだったのに』って言ってた」 次の日。 阿知賀女子学院屋上。 ヘリに乗り込んだ京太郎たちは阿知賀女子麻雀部の六人に見送られていた。 プロペラの音が轟いている。 穏乃「和! そこからなら、みんなを見れる!?」 和「見えますよ!」 大きな声で和は返事をした。 穏乃「これが、私たちのチーム!」 穏乃が両腕を大きく広げる。 和「はい!」 穏乃「全国で和と遊ぶために、作ったんだよ!」 和「……!」 穏乃「全国、絶対来いよ、和!」 和「そんな約束は……いえ」 和は京太郎の顔を横目で見て、覚悟を決めたように言った。 和「必ず、行きます!」 奈良が離れていく。 京太郎と和にとっての思い出の場所が。 京太郎「そんな約束はできない、っていうのかと思った」 和「そう言うつもりでした」 京太郎「じゃ、なんで」 和「ふふ、どうしてでしょうね」 京太郎「答えは?」 和「答えは教えませんよ」 こうして、二人の奈良の旅は終わった。 旅に意味を求めてはいけないとは言うけれど。 大切なものを手に入れた気がした。 7・終 8・ 京太郎「さあ、今日も牌ちゃんと戯れに、牌の世界に行こう」 部室に一番乗りした京太郎は、卓の上に整理された牌に触れる。 触れた瞬間に感じる、頭から血が抜けるような感覚にも随分と慣れた。 京太郎「到着っと……」 辺りを見まわす。 京太郎「あ、いた。おーい、牌……」 声をかけようとしたところで、あることに気づく。 京太郎「え……牌のそばにいるやつ、誰だ?」 牌のそばにいたのは、遠目にもわかるイケメン高身長な男だった。 京太郎「は……? ちょ……どういうことだよ」 頭が働かない。どうしてこんなことになっているのか。 牌は、楽しそうな表情でその男と会話していた。 京太郎「……いや、別に……あいつが誰と話してようが俺には関係ないし」 そうだ。牌と京太郎の関係はただのライバル関係なのだ。 牌が誰と仲良かろうが、それはどうでもよいことなのだ。 ――だけど。 京太郎「……帰ろう」 話しかけることは出来なかった。 京太郎「咲……俺の白でお前の萬子の混一色に放銃してもいいか?」 京太郎「う゛ん゛、い゛い゛よ゛(裏声)」 友人「……何やってんのお前」 誰もいない教室。 そこでの一人小芝居を見られていた。 京太郎「ゆーと! 見て分かんないのか? 咲を麻雀に誘う練習だ!」 友人「へー、別のことを誘ってるようにしか見えなかったわ」 京太郎「真剣にやってたのに」 友人「はぁ……まったくお前は。もっと普通に誘えばいいだろ」 京太郎「うっ……そうなんだけど、恥ずかしくってさ」 友人「普通に話すみたいに誘えばいいだけだっつーの」 京太郎「あ、そうだ、ゆーと。麻雀部に入ってくれ」 友人「いいぜ」 京太郎「優しい」 友人「今の感じで咲ちゃんを誘えよ」 京太郎「難易度高い」 友人「ヘタレめ」 京太郎「言い訳できねえ」 友人「じゃ、ちょっと練習してみるか。俺を咲ちゃんだと思え」 京太郎「咲はもっとかわいい」 友人「うるせえ、さっさとやれ」 京太郎「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる! 入部しろ!」 友人「自由意志を尊重しろ」 京太郎「安心しろ! ――俺、須賀京太郎は不可能の力と共にここにいるぜ!」 京太郎「俺が咲の入部を受け止めてやる! だからお前は入部届を持っていけ!」 友人「壮大過ぎる」 京太郎「一緒の部に入部して、友達に噂とかされると恥ずかしいし……」 友人「もはや誘ってねえ」 京太郎「な゛ん゛で゛入゛部゛し゛な゛い゛ん゛だ゛よ゛! ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 友人「文字数稼げて便利!」 いよいよ咲を誘う時がやってきた。 特別なセリフも気障な口説き文句もいらない。 ただ普通に言えばいいだけだ。 外で本を読んでいる咲を見つけた。 友人「さあ、行け!」 京太郎「あ、明日にしないか?」 友人「行け!」 どんと押された。 京太郎(ええい、ままよ!) 京太郎「咲~!」 咲「京ちゃん」 京太郎「まーじゃ……」 咲「まーじゃ?」 京太郎「まあ、じゃあ、学食へ行こうぜ!」 咲「その間投詞いる?」 食堂。 咲にレディースランチを注文してもらってる間に友人に首を絞められた。 友人「何やってんだお前は」 京太郎「く……苦しい。だ、だってさ」 友人「だってじゃねえ」ギュウウウウ 京太郎「しまってるしまってる! ここで決める! ここで決めるから!」ゴキゴキゴキ 咲「はい、レディースランチ、持ってきたよ」 京太郎「おーう……サンキュー……」ギュウウウ 咲「仲いいね、二人!」 京太郎「これが、仲良くしてるように……見えるのか」ゴキゴキギュウ 咲「じゃれてるだけでしょ?」 それはひどい。 友人は一旦その場を離れ、遠くから俺達を見守ることにしたようだ。 正直友人にはこの場にいてアシストをして欲しかったのだか、この件は俺一人で片付けるべき問題らしい。 京太郎「咲……あのさ」 咲「おいしい?」 京太郎「あ、美味いぜ」 咲「それはよかった」 京太郎「…………ういっす」 タイミングが見つからない。 あれ、勧誘ってこんなに難しいことだっただろうか? ……いや、これは俺のせいだ。 俺が咲に特別な感情を抱いているから、こんなふうになってしまったのだ。 今は咲への感情は切り離そう。 大切な友人を部活に誘う。それだけのことだ。 京太郎「咲、麻雀部に入らないか」 溜めもせず、情緒もなく、京太郎はそう言った。 咲「……ごめん京ちゃん、麻雀キライだから」 京太郎「キライってことは、麻雀、出来るんだ?」 咲「まあ、そうなるけど」 京太郎「なら、大丈夫だ」 咲「大丈夫って……」 京太郎「どんな理由で麻雀が嫌いになったのかは知らねーけど、うちの麻雀部なら大丈夫」 京太郎「あそこなら、あのメンバーなら、たとえ嫌いでも――楽しく麻雀を打てる」 咲「……よくわかんないよ」 京太郎「えっと、つまりだな……あの、その」 咲「でも、京ちゃんがそう言うなら、そうなのかもね」 京太郎「咲……」 咲「いいよ、わかった。行ってみる」 部室。 新メンバー友人と見学の咲を連れてやって来た。 京太郎「みなさんいますかー!!」 本藤「しっ、須賀! 静かにしろ」 京太郎「ど、どうしたんです?」 本藤「部長が眠っていらっしゃる」 京太郎「はあ」 本藤「怖いから起こしてはならない」 本藤先輩、トラウマ克服できてねえ。 本藤「っと、客か?」 でかい図体、威嚇するような面で本藤先輩は言った。 咲のやつ、怖がらねえよな……? 咲「宮永咲です。よろしくお願いします」 なんの緊張もない様子で、咲はお辞儀をした。 そういえば咲は他人に物怖じしないタイプなんだっけか。 友人「こここここんにちは! うううううう梅原友人です」 ……よっぽどこっちのほうが怖がってた。 和「お茶入れますね」 咲「あっ……さっきの――」 京太郎「お前和のこと知ってんの?」 和「先ほど橋のところで――」 八坂「悪いね、ちょっとこいつに用事があるから先に打っといて!」 京太郎「やっさん?」 和の言葉を全部聞く前に、やっさんに腕を引っ張られ、部室の外に出た。 京太郎「どしたよ」 八坂「……あいつはなんだ」 京太郎「どっちのことだ」 八坂「宮永さん」 京太郎「咲か……友だちだけど」 フラれた相手だとは言えない。 京太郎「……どうしたやっさん、顔色、悪いぞ」 八坂「分かんないのか、お前には」 京太郎「え?」 八坂「……化け物だぜ、あいつ」 京太郎「なっ……」 八坂「いや、魔王か……?」 麻雀の強い人間が発する何か。 それは悪魔だとか魔物だとか、にも例えられる。 京太郎「いやいやいや、ちょっと待てよ。俺もそういうのを感知する力があるんだぜ? でも咲からは特に何も」 八坂「隠してるんだ」 京太郎「…………」 八坂「いや、隠れているのかもしれないな。意図的にか偶発的にかはわからないけど、強さが隠れている」 京太郎「なんでお前はそんなことがわかるんだ」 八坂「同種の物を見たことがあるからだ」 京太郎「同種の……もの?」 八坂「あの日――俺が麻雀をやめた日――見たんだ。あれに似た、なにかを」 部室に戻り咲の打ち方を確認する。 京太郎「(……まじかよ)」 八坂「(わざと手を安くしたな。何のためだと思う)」 京太郎「(一位にならないため……とかか)」 咲が麻雀を嫌った理由はわからない。だが人が麻雀を嫌いになる理由は限られている。 その定番といえば、自分が勝つと他の人の機嫌が悪くなる、とかか。 八坂「(一位にならないため、か。それもあるが……それだけじゃない気がする)」 京太郎「(えっ!?)」 八坂「(もう一局見よう)」 ――そこから始まる物語は、咲と和の物語。 その日、咲は3連続プラマイゼロを達成したのだった。 その日の放課後。 一太「部員、九人揃ったのかい」 京太郎「えっと、副会長さん。お久しぶりです」 一太「君ならやると思っていたよ。麻雀部再建」 京太郎「……あと一人、男子が足りてませんよ」 一太「僕を、入れてくれないか?」 京太郎「え?」 一太「君がいれば、会長はもう悲しまなくて済む」 京太郎「よくわからないですけど……入部なら大歓迎ですよ」 ――こうして、男子も女子も団体戦に出られることになった。 一週間後。 通学路の途中、京太郎は草むらに隠れて観察していた。 友人「……何してんの、お前」 京太郎「指」 友人「……は?」 京太郎「いま、和が小指にキスしたんだ」 友人「おう」 京太郎「昨日、咲と和は指切りをしてたんだ。隠れて見てた」 友人「本格的に気持ち悪いなお前は」 京太郎「あれは百合名場面名鑑収録『あなたの触れた場所がじんじんするの……』だ!」 友人「もしかしてこれから先、原作にそって百合百合してる様子を観察するだけの話になるのか!?」 京太郎「いいな、それ!」 友人「よくねーよ。あと2週間しかないんだぞ。盛大に何も始まらないにもほどがあるわ」 学校。 咲「じゃあお昼一緒に食べようねー」 和「はい、ではまた」 京太郎「咲……おまえ……和と仲良くなったのか」 百合ップル誕生への歓喜で、京太郎はそう言った。 咲「うんっ」 京太郎「お……俺もお昼ご一緒してよろしいですか」 もちろん、百合の観察のためである。 合宿をしよう。 そういうことになった。 そして合宿の前日。 京太郎はある場所にやって来ていた。 百合オンリーイベントである。 合宿の日程と重ならないか心配であったが、ギリギリ一日ずれていたのだ。 京太郎「買うぞー! 超買うぞー!」 pixivで追ってる好きな絵描きさんの新刊を素早く買う。 しかし、京太郎にとっての本番はこれからだ。 それは新人の発掘である。 この業界は常に新しい人が入ってくる。 そこにある金の卵を探す。やりがいのあることだった。 京太郎「とりあえず、まずは好きなカップリングの同人誌から見ていくか」 絵柄も好みな「はるちは本」を発見。 京太郎「あの、読んでみてもいいですか」 女性「どうぞ!」 ……うん、やっぱり好みの絵柄だ。 ??「すみません、俺も読んでみていいですか」 女性「はい!」 他に客が来たようだ。 京太郎「あ、俺、邪魔ですか? すみません」 本藤「いえいえ、そんなことは」 紙袋を両腕にいっぱい抱えた、いかつい顔の男が、そこにいた。 まさしく本藤先輩であった。 京太郎「…………」 本藤「…………」 京太郎「き、奇遇ですね」 本藤「お、おう、そうだな須賀」 ??「ちょっとあんたら、そんなとこで立ち話してるんじゃねえよ」 京太郎・本藤「あ、すみませ」 八坂「…………」 つんつん頭の、小柄でツリ目な少年が、そこにはいた。 疑う余地なく、やっさんだった。 京太郎・本藤「……」 八坂「や、やあ!」 京太郎・本藤「……あ、この本、一部ください」 女性「ありがとうございます! やった、完売だよイッチー!」 一太「本当ですか!? やりましたねササヒナ先生」 京太郎・本藤・八坂「おっす」 一太「 」 京太郎「……」 本藤「……」 八坂「……」 一太「……」 あのあと、四人は互いに連携し合い、目当ての同人誌を買い漁った。 ほとんど無言でである。 会場の出口で、その空気に耐え切れなくなった本藤先輩がようやく口を開いた。 本藤「……お前ら明日の合宿の買い物は終わったか」 八坂「あ、まだっす」 京太郎「じゃ、今からみんなで買いに行きますか!」 一太「いいですね、梅原くんも誘いましょう!」 三十分後。 友人「みんなで集まって買い物って……。女子じゃねーんだから」 ぶつくさ言いながらも集合場所にやって来た友人。 友人「お、いたいた。もうみんな集まってんのか」 四人は、何か会話をしているようだった。 タッタッタッと小走り気味に四人に近づき、耳を傾ける。 八坂「女にも性欲はあるんだよ勝手な童貞の妄想を押し付けんな !!」 京太郎「プラトニックラブをバカにしてんのかボケ! 距離感を楽しむものだろうが!」 一太「ひたすらにイチャイチャラブラブしてりゃいいんですよ!」 一太「現実感やら修羅場やらシリアス展開やら、そういうのは作者の自己満足ですよ!」 本藤「笑わせるな! 葛藤や修羅場を乗り越えてこそ真実の愛に辿り着けるのだ!」 本藤「そこに至っていない百合なぞ見せかけ! お前の意見こそ本当の自己満足なのだ!」 八坂「そう、肉体関係まで描かなくても良いみたいな風潮が広まったせいだ!」 八坂「それでアリバイ百合とかいうただの金儲け作品が量産されたんだ!」 友人「よし、帰ろう!」 こんなやつらと同じ場所にいられるか! 俺は一人で買い物するぞ! 京太郎「来たか、ゆーと!」 見つかった。 友人「帰ります!」 本藤「今からカラオケ店で朝まで『百合ソング大会&百合談義』をするのだ。貴様には審査員になってもらうぞ」 友人「いやだああああああああああああ」 一太「僕が一番正しいことを証明してみせましょう」 八坂「はっ、笑わせるぜ先輩。今から宗旨変えの準備をしといたほうがいいですよ」 京太郎「つーか――……」 ――梅原友人はこの日、未来永劫絶対に百合作品を読まないことを心に誓ったのだった。 ――ただし、ゆるゆりは除く。 次の日。合宿の日。 合宿棟に向かう前に、京太郎は牌の世界に来ていた。 京太郎「……よう」 牌「京太郎!」 牌の笑顔。 それを見た瞬間、心がチクリとした。 牌が見知らぬ男と会話をしていた場面を思い出したのだ。 京太郎「……すまん! 今から合宿なんだ。今日はもう帰る!」 牌「ちょっと待ってよ!」 牌に腕を掴まれた。 京太郎「……どうした」 牌「最近、なんか変だよ」 京太郎「……気のせいじゃないか?」 牌「ち、違うもん」 牌が握っている場所がじんじんする。 京太郎「ごめんっ!」 手を振りほどき、元の世界に戻る。 京太郎「はあ、はあ、はあ……」 部室で卓に掴まりながら、呼吸を整える。 咲「大丈夫、京ちゃん?」 京太郎「咲!? 合宿棟に行ったんじゃ……今の、見てたのか」 咲「道に迷っちゃって……いま来たばかりだよ。大きな音が聞こえたからびっくりして」 京太郎「そ、そうか」 咲「京ちゃん……辛そうな顔してるよ?」 京太郎「……んなことねーよ」 誤魔化すしかなかった。本当のことを言うわけにもいかないし。 咲「……信じてあげて、京ちゃん」 京太郎「咲……?」 事情がわからないはずなのに、咲はそう言った。 もしかしたら何となくバレているのかもしれない。 まさか俺が牌の世界に行ってるとまでは思わないだろうが。 ……そうだ。ちゃんと聞こう。誰と話していたのか。その人とどんな関係なのか。 勝手に勘違いするのはやめよう。 次の日。合宿中。 早朝に合宿棟を抜けだした京太郎は部室に向かった。 牌に会いに行くためだ。 旧校舎にはまだ誰もおらず、静かな空気が薄気味悪かった。 卓の上に並べられた牌に触れようとして、手が止まった。 京太郎「まだ怖がってるのか、俺は」 真実を知るのが怖い。 出来るのならば真実を知らないままで生きていたかった。 京太郎「なんたるヘタレ具合だよ、俺は……!」 目を瞑って、勢い良く牌を握りしめる。 牌の世界。 最近はどんどんと明るくなっていった牌の世界も、最近また少し暗くなった気がする。 京太郎「牌……」 牌「……来てくれたんだ」 視線が合う。 どうしようもなく逸らしたくなったけど、我慢した。 目を逸らしてはいけない。 逸らした瞬間にまた勇気を失ってしまいそうだった。 京太郎「牌、聞きたいことがある」 牌「……なに?」 京太郎「10日ほど前、お前が会話してた男、あいつ誰だ?」 聞いてしまった。 怖い。 どうしてなのかわからないけど怖い。 牌は、ゆっくりと口を動かした。 牌「お兄ちゃんだけど?」 京太郎「………………」 牌「?」 京太郎「……お兄ちゃん?」 牌「うん」 京太郎「あ……は……はははは!」 牌「え!? 笑うとこ!?」 なんだ、なんだ、そういうオチか! うじうじ悩んでいたのがアホらしい。 さっさと聞いてしまえば楽だったのに。 京太郎「……よかった」 牌「京太郎……」 京太郎「牌……」 自然と、二人は体を近づけあった。 そして――お互いの身体が触れ――。 卓「妹を貴様には渡さーーーーーーーーーーーーん!!」 触れる前に突き飛ばされた。 卓「この獣め! 我が妹に気安く触れるとは!」 牌「あ、卓兄! おはよ」 卓「うへへへへ、おはよ我が妹よ」 京太郎「何だお前は!」 卓「我か? 我は《麻雀 卓》! 配牌を操る神なり!」 京太郎「配牌を操る、神?」 卓「敬い給えよ!」 京太郎「なーるほど……なぁ……」 卓「なんだ!?」 京太郎「お前かあああああ! 俺の配牌を8シャンテンとかいう糞配牌にしたのは!!」 卓「そのとおりだが?」 京太郎「だが? じゃねえ! さっさと治せ! ろくに麻雀できねーよ!」 卓「我から妹を奪おうとする蛮族にはピッタリの誅罰だ」 京太郎「悪魔あああああああああ!」 卓「野蛮人がああああああああ!」 牌「二人とも元気だねー」 牌はニコニコしていた。 牌「卓兄、京太郎の配牌を良くして、とまでは言わないけど、普通に戻してあげてよ」 卓「な、なぜだ我が妹よ! どうしてこんなやつの味方をする!?」 京太郎「へっ」ドヤッ 卓「ええい、うっとおしい!」 牌「お願いだよ」 卓「く……」 牌「お・に・い・ちゃ・ん?」 卓「任せ給え!!」 あれが兄という種族か……。なんと業の深い……。 卓「我が妹の頼みだから仕方なく貴様の配牌を普通にしてやったが……よく覚えとけ! これは貴様を認めたわけではない!」 京太郎「わかってるよ」 卓「貴様に妹はやらん!!」 京太郎「わかりましたってば、お義兄」 卓「おいいまてめえなんつった」 京太郎「つーかマジモンの兄妹なのか」 牌「んーとね、神様になってから兄妹になったんだよ。牌と卓は兄妹関係になる決まりなのだ」 卓「我は本物の妹と思っておるぞ!」 京太郎「オーケーオーケー」 卓「ええい、聞けいっ!」 ……さてと。 ここらで一つ、片をつけよう。 今あるピースで思い出せることは全て思い出した。 京太郎「さて……そろそろ覚悟を決めるか」 牌「覚悟?」 京太郎「逃げていたことに立ち向かう」 合宿の起床時間は7時半。 現在は6時半。あと1時間ある。 京太郎は自分の家に向かった。 京太郎「母さん」 母「どうしたの、京太郎。合宿中でしょ」 京太郎「俺が小学校1年生だった頃のことを、教えてよ」 母「……そっか。もう、いいのね」 京太郎「もう子どもでいられる年齢でもないしな」 母「ちょっと待ってて」 京太郎の母は薄いアルバムを持ってきた。 母「これが、その時の写真よ」 アルバムを受け取る。 薄くて小さいアルバムなのに、ずしりと重く感じた。 ゆっくりアルバムを開く。 京太郎「……ああ、そうか……やっぱり、そうなのか」 そこに写っていたのは四人の子ども。咲、照、京太郎、そして――牌ちゃん。 京太郎「いや――牌ちゃんじゃない――みなも――宮永みなも」 あの日、8年前。飛行機事故で命を落とした少女。 咲の従姉妹である少女。 俺が――。 初めて好きになった少女。 8・終 9・ その写真は、宮永みなもの最後の写真となった。 それ以来、咲は写真が嫌いになった。 わざわざアルバム委員になって、自分の写真が卒業アルバムにできるだけ載らないようにするくらい。 写真はその当時の記憶を蘇らせるからである。 咲は、カメラのレンズを避けるように生きている。 たまたま映ってしまったときにはその写真を抹消するために全力を尽くす。 昔は別に写真に映ることは嫌いじゃなく、むしろ好きだったのに。 みなもの死は、咲を写真嫌いにした。 みなもは、泳ぐことが好きであった。 いや、正確には――水、海、川、魚、貝。そういう物ならなんでも好きだった。 泳いでる魚をただ見てるだけでも楽しんでいたし、魚を食べるのも好きだった。 魚は綺麗に食べた。みなもはよく、咲に対して魚のきれいな食べ方を伝授した。 今でも咲はきれいに魚を食べる。 そんな咲の姿をみなもと重ねて、京太郎は咲のことが好きになった。 みなもの代用品として好きになったとも言えるけど。 牌の世界は海に似ていた。 みなもは自分の好きな海の世界を、牌の世界で再現したのだ。 そこまでするぐらい、海のことが好きだったのだ。 京太郎「きっかけは事故、だったけ」 咲はあの頃からよくこける子どもだった。 道路の真ん中で、咲がこけたのだ。 運悪く、そこにトラックが迫っていた。 京太郎「穏乃が言ってたのはこれか……」 京太郎「『あのとき、俺は足が動かなかった』」 京太郎「『そんな情けない俺の隣を、あいつは駆け出した』」 京太郎「みなもが、駆け出した」 京太郎「みなもは、咲を救ったんだ」 京太郎「自分の足を犠牲にして」 みなもは泳ぐことができなくなった。 泳ぐことは、みなもが好きなことの一つだ。 それを奪われたことはそうとう悲しいことであったはずなのに。 みなもは笑顔だった。 京太郎「そして、飛行機事故か」 バイトでの、染谷先輩との会話を思い出す。 親戚同士での海外旅行。 宮永照、その妹のみなも。そして二人の従姉妹の宮永咲。その家族たち。 楽しい旅行になるはずだった。 整備不良による事故。 それ以来、整備のことを学び、整備好きになった京太郎はここでは置いておく。 ビルに突っ込んだ飛行機は、燃料を漏らし、ビルを燃焼させた。 燃え盛るビルの中で、みなもは動けなかった。 体を焦がす炎の中で、みなもは動けなかった。 京太郎は蓋をした。 好きだった少女、みなもの死を。咲との日々を。照との思い出を。 蓋をして、無かったことにした。 咲も、京太郎と一緒だったのだろう。 ただ、咲は強くなろうとした。 また誰かを傷つけてしまわないように。 体育の内申点が10あるのは、強くあろうとしたからだ。 ……結局、こける癖は治らなかったけど。 だけど、照は違った。 記憶に蓋を出来るほど、幼くはなかったのだ。 そのときの記憶を保っていられるほどに強く、耐えられないほどに弱かった。 照に、もう妹はいない。 彼女は、咲を許していない。 家を出た京太郎は、湖に来ていた。 合宿の起床時間まであと20分。そろそろ戻らないとまずいけれど、どうしても来たくなったのだ。 四人でよく遊んだ、思い出の場所だった。 京太郎「……もう、誤魔化す必要はないよな」 認めたくなくて、心の中で否定したけれど。 いいかげん、嘘をつくのにも無理が出てきた。 だから、叫ぶ。湖にむかって。自分にむかって。過去にむかって。 京太郎「みなものことが好きだ! 牌のことが好きだ! 愛したい! 愛されてえ! そばにいたい! そばにいてほしい! 京太郎「ずっと見ていたい! ずっと見ていてほしい!」 ああ、なんだ。 認めてしまえばこんなに簡単。 牌への気持ちを。 ようやく、肯定できた。 ――合宿終了。 今日も牌の世界にやって来た。 京太郎「県予選まであと6日だぜ!」 牌「ついでにあと4日で、あの日だ!」 京太郎「あの日?」 今日から4日後というと、7月7日だ。 京太郎「あ、七夕か」 牌「それで、おしまいかぁ……」 京太郎「おしまい?」 何が終わるのだろう? 牌「秘密!」 京太郎「気になるだろ」 牌「知ったところで京太郎じゃどうにもならないし!」 京太郎「久しぶりにヒドイな」 最近は牌ちゃんが優しかったから、この俺に対するヒドさ、なんだか懐かしい感じだ。 京太郎「さてと、そろそろ部室に誰かが来る頃だろうし、帰るわ」 牌「あ……うん」 寂しそう声で牌は言った。 京太郎「どうした?」 牌「……もうちょっと、一緒にいてよ」 京太郎「……わかった」 二人は、手と手を重ね合わせた。 それが、今できる限界だった。 京太郎「今日の牌、少し変じゃないか?」 牌「……どこが?」 京太郎「どこって言われると困るんだけど」 牌「なら、気のせいだよ」 京太郎「…………そっか」 どこか、おかしい感じがするのは確かだが、それが何であるかはわからない。 もしかしたら本当に気のせいなのかもしれない。 次の日。 京太郎「あと5日で県予選かぁ」 牌「緊張してる?」 京太郎「してる、してる、超してる。もともと俺、緊張しやすいタイプだし」 牌「高校入試の日も緊張しまくったんだっけ?」 京太郎「うわっ、懐かし……。あの日はひどい目にあった」 牌「かわいそう」 京太郎「……たしかお前、俺が試験の日にトラブルがいくつも重なってギリギリ合格になるように祈ってなかったっけ」 牌「オボエテナイヨ」 京太郎「覚えてる人の言い方だ!」 次の日。 京太郎「この世界、また明るくなったな」 牌「そうだねー! あと2日でおしまいだもん」 京太郎「おしまい? 前も言ってたよな、『おしまい』って」 牌「そう、おっしまーい!」 京太郎「教えてくれよ、何がおしまいなのか」 牌「だから秘密だって!」 京太郎「乙女の秘密的な何かか?」 牌「はっずれー」 京太郎「むむむ」 次の日。 京太郎「あと3日」 牌「うん」 京太郎「『おしまい』は明日だっけ?」 牌「そうだよー!」 京太郎「あのさ」 牌「うん!」 京太郎「……いや、なんでもない」 牌「へんなの」 牌は、アハハと笑った。 それにつられて京太郎も笑った。 次の日。 久「新しい雀卓が来たわよー!」 旧校舎の入り口で部長は言った。 京太郎「えーっと、この箱を部室に運べばいいんですか?」 久「ごめんね、昼休みなのに手伝ってもらっちゃって」 京太郎「いやいや、いいですよ。少しは雑用をしないと心がざわつくんで」 久「そ、そうなの」 部費を溜め続けること10ヶ月。ついに新しい雀卓を買う資金が溜まったのだった。 京太郎「ようやく、ですね」 久「この雀卓はすごいわよ。洗牌はもちろん闘牌までやってくれるのよ」 京太郎「闘牌はやる必要ないですよね!?」 久「人間がやることは一つもない! これが本当の全自動麻雀卓よ」 京太郎「雀卓業界も迷走してますね……」 久「でも、これで――」 おしまいの合図。 久「あの雀卓の出番も、おしまい――ね」 京太郎「――おしまい」 世界のおしまい。 京太郎「……すみません、部長! ちょっと行ってきます!」 久「須賀君!?」 京太郎は部室に向かって走りだした。 階段を駆け上り、扉を壊す勢いで開き、牌を握りしめた。 京太郎「!? 牌の世界に行けない!?」 いつも通りにやっているのに景色が変わらない。 牌を手のひらに置いたまま、何度か手を握ったり開いたりしたが変わらない。 京太郎「……っ! 手遅れなのかよ!?」 嫌だ。 京太郎「もう逢えないのかよ!」 嫌だ嫌だ嫌だ! これでおしまいだなんて。 これで最後だなんて、そんなのは絶対に嫌だ。 京太郎「頼む、少しでいいから、牌に会わせろおおおおおおおおおおっ!!」 強い衝撃が脳に直撃した。 それは今までに味わったことがないほど強烈な痛みだった。 京太郎「ぐっ……」 世界が反転した。 視界がぼやける。 吐き気もこみ上げてきた。 それでも京太郎は目を大きく開き、世界を確認した。 牌「……来ちゃったんだ」 京太郎「牌……」 牌の世界は崩壊しつつあった。 空間にヒビが入り、砂のように細かく分解され、空間に溶けていく。 世界の終わりとはこういうものなのだろうか。 牌「……もともと、終わるはずの世界だったんだ」 牌「今よりももっと早いタイミングで、この夢は醒めるはずだった」 牌「付喪神の一生って、そういうものなんだよ」 牌「取り憑いた道具が、壊れてしまったら、それでおしまい」 牌「そんな、脆い世界だったんだ」 牌「この世界も、あの日――消えるはずだった」 京太郎「あの日……」 牌は京太郎の顔を見た。 泣いてはいなかった。 牌「そこに、誰かさんが現れた」 牌「その誰かさんは、この世界の寿命を伸ばしたんだ」 牌「ほんと、余計なことをしてくれたよね」 京太郎「よけいな、こと?」 牌「あのときこの世界が終わっていたら、こんな気持ちにはならなかったのに」 牌「京太郎のせいで、すごく、イヤだよ」 世界が崩れていく。 音はなかった。 世界の終わりって、こんなに静かでいいのだろうか。 京太郎「聞いても、いいか」 牌「なんでも」 京太郎「俺の世界には、牌に愛された子と呼ばれる存在がいる。咲とか、照姉とか」 牌「……うん、そうだね」 京太郎「ということはさ、愛してるんだよな、咲のこと」 牌――みなもは、咲を守ったことが間接的な原因となり、命を落とした。 みなもは、咲を恨んでいないのだろうか――ずっと気になっていたことだ。 牌「好き、大好きだよ、二人とも」 京太郎「どうして、好きなんだ?」 牌「……なんでだろう、私が神様になったときにはもう好きになってたんだ」 なるほど、そういうシステムなのか。 人間だったときの記憶は引き継がれず。 けれど、感情は残っている。 思いは、つながっている。 京太郎「……教えてやるよ、牌。お前の感情の理由」 牌「――え?」 世界が、消えた。 崩壊は完了したのだ。 でも、あと一言だけ。一言だけでいいから伝えさせてほしい。 京太郎「お前の名前は、宮永みなも――だ」 牌「――!」 みなも「――ありがとう」 ――ああ。 世界の崩壊って、こんなに――綺麗なんだ。 みなも「だいすきだよ、きょーにぃ!」 気づくと、京太郎は部室で一人、牌を握りしめていた。 京太郎「……こんなにお前は近くにいるのに」 どうしてこんなにも遠くなってしまったのだろう。 牌のことが好きなのに、愛せない、愛されない、そばにいれない、そばにいてくれない、ずっと見れない、ずっと見ていてくれない。 もう、いいよな。 終わらせちゃってもいいよな。 誰も見ていないし、誰も気にかけないだろうし。 なんてことはない、ここで一つの小さな思いが消えてしまっただけなのだから。 京太郎「そういや今日、七夕だっけ」 ――七夕? 京太郎「あ」 そこに見えたのは、一つの希望。 京太郎「紅生姜のない牛丼って、そういうことなのか?」 京太郎「そういう意味なのか?」 大切なモノが抜けているとか、そういう単純なものじゃなくて。 もう一つの意味があるじゃないか。 京太郎「……つーことは、――はあいつで、――は俺?」 京太郎「は」 京太郎「あはははははっ!」 こじつけにも程があるだろ。 でも、今日という日に世界が崩壊したのなら。 とても偶然とは思えない。 京太郎「信じてみるか」 京太郎「紅生姜のない牛丼屋を」 京太郎「俺は」 京太郎「全国優勝してみせる」 止まっていたと思っていた時間は、止まってなんかいなかった。 ずっと、流れ続けていたんだ。 それに気づかないふりをして、両手から大切なモノをたくさんこぼしていたんだ。 ――それを取り戻すための大会が、始まろうとしていた。 9・終 10・ 京太郎「さあ、一回戦だ!」 先鋒、八坂。次鋒、友人。終了。 一太「さて、僕の番ですね」 京太郎「頑張ってください!」 オーラス。 一太「あの日のことを思い出すな……」 次々に麻雀部をやめていく部員たち。 部員が減るたびに、久の寂しい顔を見なければならなかった。 それが、つらかった。 そして、やってはいけないことをした。 自分も部活をやめたのだ。 近くで久の顔を見ているのが辛くなったから。 怖かったから。 あのとき、やめるべきではなかった。 一太「ツモ!」 一二三①②③112233西西 京太郎「出たー! 一太先輩必殺、3以下の数牌を集める『ロリロリハンターズ』??」 一回戦突破。 京太郎「さあ、決勝だ!」 八坂「気をつけろ……ここの大将はマジでヤバい」 大将戦。 京太郎「はあ……はあ……はあ……、くそっ」 近江「麻雀ってよぉ、クソみてえな競技だよなぁ」 京太郎「……運ゲーだからか?」 近江「違う違う、そういうことじゃねえよ」 近江「言い方が悪かったな……人間を悪に染める競技、ってことだ」 近江「普段は温厚な奴が、麻雀やってると怒りっぽくなったり」 近江「他人のためにいろいろやれる人間が、麻雀をやるとマナー悪く他者を貶し始めたり」 近江「虫も殺せない奴が、他人を低く見て侮ったり。負けてりゃ不機嫌。勝ったら聞きたくもねえ自分の麻雀理論を語り始めたり」 近江「初心者がいると勝てねえとか言うやつもいるな……自分よりも圧倒的に強いやつがいても勝てねえくせにな」 近江「そういう奴が欲しいのは自分よりも少し弱いやつなんだ。勝ちてえから、そんなクズみてえになる」 近江「俺は麻雀が嫌いだぜ? だから麻雀やってる奴を潰して、競技人口を減らし、この世から麻雀を消してやろうと思ってる」 すでに、京太郎と近江以外の2人は精神を壊されている。 近江「だから、負けてくれや。俺は全国へ行ってたくさんの選手を潰す必要がある」 京太郎「……いい夢だな。応援してえよ」 京太郎「色んな俺が、みんな口を揃えて同じことを言うんだ」 京太郎「『たとえ負けても、俺は麻雀が好きだ』『才能はねーかもしれねーけど、麻雀を打つのが好きなんだ』 京太郎「『嫌いって言ったけど、やっぱり俺……麻雀のことを忘れられない。俺、こんなにも麻雀が好きだったんだ』 京太郎「『麻雀が好きなんだ』『麻雀が好きだ』『麻雀が好き』『麻雀が好き』『麻雀が好き』」 京太郎「いろんな世界の俺――みんな『麻雀が好き』としか言わない」 京太郎「気持ち悪かった」 京太郎「麻雀が嫌いだとは言えない空気」 京太郎「たとえ嫌いになっても、最後には好きになるという収束感」 京太郎「麻雀が好きじゃないといけない、みたいな強制感」 京太郎「たとえどんな理不尽なことが起こっても麻雀を好きと言わないといけないという押しつけ感」 京太郎「『麻雀が好き』というセリフで誰かを惚れされないといけないという展開の束縛感」 京太郎「麻雀を嫌っちゃいけないのか?」 京太郎「永遠に一生、嫌いなままで麻雀を続けたらいけないのか?」 京太郎「麻雀が嫌いな俺には生きる価値がないのか?」 京太郎「ずっと、そうやって生きてきた」 京太郎「だからお前の行為を否定しない」 京太郎「だからといって、理解もしない」 京太郎「お前を更生される言葉なんて俺には思いつかない」 京太郎「お前を更生されるような劇的な過去、俺にはない」 京太郎「ただ俺は、全国に行きたいからお前を倒す」 ……… …… … 京太郎「ツモ! 字一色!」 近江「この俺がああああああ??」 京太郎「ついに来た……! 全国の舞台、東京!」 千歳「へえ……君が長野代表かい?」 京太郎「誰だ??」 本藤「て、てめえは……インハイチャンピオン千歳真!」 京太郎「インハイ……チャンピオン」 千歳「ねえ、一局打とうよ」 京太郎「出場校どうしは打てない決まりじゃ……」 千歳「いいんだよあんなルール。あんなのはただのオカルト持ちが勝ちやすくなるようにするためにできたルールだ。従う必要はない」 京太郎「だけど」 本藤「いや、やっておけ、須賀。一度体験しておいた方がいい」 本藤「インハイ史上、『最弱』のチャンピオンと呼ばれたやつの打ち方を」 京太郎「最……弱?」 京太郎vs千歳 京太郎「勝ってしまった……!」 千歳「ふー強いね須賀君。……悔しいな。でも」 千歳「麻雀って楽しいな!」 京太郎「……負けたのに楽しいのかよ」 千歳「そりゃ、勝ったり負けたりするのが麻雀じゃないか」 千歳「勝ってるときだけ『楽しい!』って言って、負けてるときだけ『麻雀はクソゲー』とか言うやつもいるけど」 千歳「そういうやつは麻雀を楽しんでるんじゃない」 京太郎「……じゃあ、何を楽しんでるんだ」 千歳「そういうやつらが楽しんでるのはね、勝つことだよ。勝つことを楽しんでるんだ」 京太郎「いったいこの世に、お前が言う意味で麻雀を楽しんでる奴は何人いるんだろうな」 千歳「さあね。ま、君との再戦、楽しみにしてるよ」 そう言うと千歳は去っていった。 本藤「千歳真……。やつの全対局の連対率は三割を切る」 京太郎「それなのにどうやってインハイチャンピオンに……?」 本藤「やつには、ここぞというときに必ず勝つ魔力がある」 本藤「……逆に負けてもいい場面は必ずと言っていいほど負ける。手を抜いているわけではなく、そういう風になってるんだ」 京太郎「だから……『最弱のインハイチャンピオン』」 全国一回戦。先鋒。 八坂「よろしく」 霊山「よろしく」 八坂「(アイドル雀士、霊山祥哉……。あいつの力は……)」 オーラス。 モブ 140000 八坂 130000 モブ 130000 霊山 0 八坂「(宮永顔負けの得点調整力……!)」 咲のプラマイゼロは29600~30500点という幅がある。もちろんこれを狙ってやるのは十分化け物じみているが……。 八坂「(こいつは、本当の意味で0点……。幅はない、少しでも間違えたらトビ終了だ)」 霊山「さーて、0点完成。反撃といきますか」 彼がアイドル雀士と呼ばれる理由は顔の良さだけではない。 0点からの逆転という華やかさ。 これが観客を惹きつけるのだ。 霊山「親は俺だ。まずは天和」 八坂「くっ」 それが霊山の力。一度0点になると最強の力を発揮する。 霊山「リーチ」 霊山「ツモ。12000オール」 八坂「(……強い! この状態になった霊山は上崎にも匹敵する!)」 あの日、麻雀をやめることを決めた日を思い出す。 憧れであり、自分の目標だった小鍛治さんが始めて負けた日のこと。 決勝は9番勝負だった。 そのとき卓にいたのは、永世七冠「小鍛治健夜」。 世界ランキング一位「ライアン・グリーン」。役満率一割越え、役満のクイーン「雪蘭」。 そうそうたるメンバーの中に異彩を放つ存在がいた。 当時、六歳の少年「上崎永楽」だった。 その9番勝負は、たった5戦目で終わってしまったけど、対局時間は過去最長だった。 親である上崎がテンパイし続け、それ以外の三人がノーテン罰符を払い続けることを25回×5局し続けたのだ。 上崎「牌の神様を殺したから」 インタビューでそう答えた上崎を見て、八坂は麻雀をやめた。 八坂「……だけど、決めた」 八坂「上崎を、倒すことを」 八坂「だから、こんなところで立ち止まれねえ!」 ……… …… … 八坂「ロン! 12000!」 霊山「ぐはあああああ」 決勝、オーラス。 千歳「こ、このボクがこんな大切な場面で負けるなんて」 京太郎「悪いな……俺にはこいつがいる」 首から下げたチェーンの先に、一萬がつけられていた。 京太郎「もう一度、会うと決めたんだ」 ――おめでと、きょーにぃ。 京太郎「!」 「紅」べに色の花。あでやかな花。転じて、花のような女性。 「姜」美しい娘。美女。 「生」生きていること。 「紅生姜」とは、生きている美しい少女のこと。 つまり、「紅生姜のない」は、美しい少女が死んだことを表す。 つまり、みなもの死。 「牛」で思い出すのは、牽牛――つまり、彦星だ。 「丼」の「真ん中の点」は清い水の溜まった様子。 牽牛が俺で、清い水が天の川。紅生姜がみなも。 この物語は、七夕伝説と同じだ。 天の川の向こうにいるみなもには、会えない。 京太郎「でも、やっぱりいたんだ」 直接触れ合えなくても、俺のことを見ている。 天の川の向こうで、確かに。 京太郎とみなもの物語は、一言で言うと。 京太郎「紅生姜のない牛丼屋――か」 カン!
https://w.atwiki.jp/shienki/pages/778.html
※白糸台ネタ その4 ※※レギュラーの人達不在 九月愛さんが入室しました 九月愛:悪いな、遅れた ネオ緑茶:いえ、お疲れ様です先輩 九月愛:んー、、、 九月愛:、、照は? ネオ緑茶:先ほど退室されました。なんでも今日の所はもうお休みになられるとの事です 九月愛:……遅れてきた私が言えた事ではないが、早くないか?まだ8時前だぞ? ネオ緑茶:………明日は、清澄の試合ですし 九月愛:………あー ネオ緑茶:………えぇ 九月愛:……… ネオ緑茶:……… 九月愛:………何か、言伝とかあったりは? ネオ緑茶:………特に、預かってません 九月愛:……… ネオ緑茶:……… 九月愛:………ちなみに、誠子と淡は? ネオ緑茶:………メタな話題になりますが、よろしければ 九月愛:………えぇっと、 ネオ緑茶:………取り合えず原作での台詞待t 九月愛:うん、わかった、もういい ~で~ 九月愛:さて、照がいないとなるとどうしたものか ネオ緑茶:………日課の宮永先輩弄りも出来ませんしね 九月愛:あぁ、、、一気に手持ち無沙汰になってしまったな ネオ緑茶:そうですね……… 九月愛:……… ネオ緑茶:……… 九月愛:………いつもの部屋でも行ってみるか? ネオ緑茶:……それが、あっちも今は割と過疎ってるみたいでして 九月愛:………あー、そっか。あっちも全国出場の奴がいt ネオ緑茶:ちなみにレギュラーの内、三人が東京INしています 九月愛:………私の記憶では、あの中で全国はのどっちだけだった気がするんだが ネオ緑茶:応援要員です 九月愛:………一応聞いておくけど、居残りは? ネオ緑茶:つ namber 九月愛:………… ネオ緑茶:………… 九月愛:………えぇっと ネオ緑茶:………さっき覗いたら切なそうn 九月愛:うん、わかった、もういい ~で~ ネオ緑茶:永水部屋はいつも通りやってるみたいですが 九月愛:却下 ネオ緑茶: ネオ緑茶:申し訳ございませんでした。確かに大会中だというのn 九月愛:………あー、いや、そういう事ではなくてな ネオ緑茶:………? 九月愛:………… ネオ緑茶:………? 九月愛:………アイツ等のアバターってさ、、、全員アレがあるだろう ネオ緑茶:? 九月愛:………ほら、その、な ネオ緑茶:? 九月愛:………… ネオ緑茶:?あの先輩、アレって一体何を指しt 九月愛:…………仮面 ネオ緑茶:? 九月愛:……おどろおどろしい、あの気味の悪い仮面 ネオ緑茶: ネオ緑茶:あぁ、ボゼ様の事でしたか 九月愛: 九月愛:…………尭深は、ああいうの平気なのか ネオ緑茶:……えぇっと、、その、、まぁ眺める分には 九月愛:……… ネオ緑茶:……… 九月愛:……… ネオ緑茶:あの先輩、ひょっとして怖かったr 九月愛さんが退室しました ~で~ 九月愛:……臨海部屋も通常営業か、アイツ等も暇だな ネオ緑茶:それでは、今日の所はここd 九月愛:………だけど、ここもやめておくか ネオ緑茶:………ちなみに、理由としましては? 九月愛:変態がいるからな ネオ緑茶:そうですよね 九月愛:しかも救いようもないレベルのだしな ネオ緑茶:全くですね 九月愛:……… ネオ緑茶:……… 九月愛:………あと、それの相方も苦手だしな ネオ緑茶:……そうでしたか ~で~ 九月愛:………気が付けば、何もせぬままこんな時間か ネオ緑茶:………あっという間に時間って過ぎるものですよね 九月愛:………今からだと、どこいっても中途半端になりそうだな ネオ緑茶:……そうですね 九月愛:……… ネオ緑茶:……… 九月愛:………仕方ない、今日の所はもう寝るとするk ネオ緑茶:あの 九月愛:ん? ネオ緑茶:その、、ですね ネオ緑茶:私たちのブロックで勝ち上がってくる所はどこだと思いますか? 九月愛:………Aブロックの12校か、正直どこが相手でもいいんだが ネオ緑茶:……えぇっと、ですね。強いて挙げるとすればどこでしょう 九月愛:………データを見る限りは、どこが勝ってもおかしくはないな 九月愛:どこも全国区らしく、そこそこ高水準で強豪校だ ネオ緑茶:そう、、ですよね 九月愛:……… ネオ緑茶:……… 九月愛:……… ネオ緑茶:……では、他のブロックを勝ち進んでくるのh 九月愛:尭深 ネオ緑茶: 九月愛:どこが来ようが、誰が相手だろうが、私たちは負けない 九月愛:そうだろう? ネオ緑茶:………はい 九月愛:だったら、もう何も気にする事はないだろうに ネオ緑茶:………はい ネオ緑茶:申し訳ございまs 九月愛:それとも、構ってほしかったのか? ネオ緑茶: 九月愛:なんてな。さて、明日は私たちも照と一緒に清澄の試合を見るとしよう 九月愛:そういうわけだから、朝早めに出るから今日はここで落ちr ~で~ 九月愛さんが退室しました ネオ緑茶: ネオ緑茶: ネオ緑茶: ネオ緑茶: ネオ緑茶:構って、ほしかったです そんなこんなな話 何やら全国入りしても白糸台の台詞がまだまだな気がしないでもないような …………… いえ、まぁ、一番対戦が近い永水もまだまだな気がしn てかそういえば姫様も今思い出せば一度m ちなみに、この後に自分で打った文を見て赤くなってる尭深さんがいたとかいなかったとか 万が一にも菫さんが戻ってこられたら言い訳不可能レベルとか何とか ……………… エラい勢いで部屋を畳んだとかそうでないとか で、お茶を飲んで落ち着こうとして思い出し紅潮。真っ赤 そしてヘタレた自分にちょっぴり自己嫌悪。せめて居る時に、とか何とか ふぅお茶でも飲んでおちtって熱ぁぁってああああPCにお茶gって熱あぁあああああああああああああああもおおおおおおおおおおおおおおお -- 名無しさん (2010-07-10 06 15 07) っつかこの二人にも台詞なかった気が… -- 名無しさん (2010-07-10 11 44 59) 菫は一言だけ台詞あったろ oii -- 名無しさん (2010-07-10 14 07 26) 尭深ちゃん可愛いよ尭深ちゃん。そして原作での台詞いつだろう尭深ちゃん -- 名無しさん (2010-07-10 14 13 54) てる☆てる: (※妹を全力で応援したいけど周りの目が気になるジレンマ) -- 名無しさん (2010-07-13 12 39 23) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/8827.html
京淡・Before After 夏休み前 淡「テルーの腰巾着! あんたみたいな弱っちいのが一軍に入り浸るなんて認めてないんだから!」 京太郎「別にお前に認められないくてもいいんだが。ていうか照さんとお前の面倒を見られるやつを他に連れてきてから言えっての」 淡「いーっだ! 悔しかったら負かしてみろ! 100年かかっても無理だろうけどね!」 夏休み後 淡「ね、ねえ、これ似合う、かな?」 京太郎「いやまあ、悪くないんじゃね?」 淡「そう? そうだよねっ、淡ちゃんに似合わないわけないわけないよね。胸もおっきくなったし、美少女で天才だしっ」 モブ(なあ、大星のやつインハイ前と態度違いすぎね?) モブ2(あー、準決勝で2位になったじゃん? その時に色々あったって麻雀部の人から) 淡「あのね、キョータロー、私……」 照「京ちゃん、部活」 淡「テルーはなんでいっつもタイミングよく邪魔するの!?」 照「鏡で覗いてない、偶然。京ちゃんセンサーが働いてるだけ」 京太郎「うーん、俺も虎姫になじんできたぞ。もっとみんなのアシスト頑張らなきゃ!」 モブ(あいつ気付いてなくね?) モブ2(抑え役の3年がいなくなった来年が心配すぎるわ、白糸台) なんだかんだで、白糸台は不穏の種もありつつ日常を過ごしていた。 カン
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/551.html
http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1342344359/ 京太郎「俺以外みんな強く全国に行くような連中だし俺は場違いだよな…」 京太郎「部長にかかれば俺以外の雑用係を確保するのも簡単だろうし…」 京太郎「タコスはハギヨシさんに頼めば作ってもらえるだろうし…」 京太郎「和には振り向いてもらえないし…」 京太郎「そしてなにより……」 京太郎「昔と違って咲は一人ぼっちじゃないしな…」 京太郎「麻雀通して沢山友達ができたんだ…もう俺が面倒見なくても大丈夫だろ…」 京太郎「と、いう訳で麻雀部を辞めたんですよ」 ハギヨシ「ならこれからは須賀さんは放課後時間があるという事ですね?」 京太郎「そうですけど?」 ハギヨシ「それならば、もしよろしければ私の仕事の手伝いをしてみませんか?」 京太郎「どうしてこうなった…」 透華「貴方がハギヨシの言ってた執事見習いの方ですの?」 京太郎「あ、はい」 京太郎「というかハギヨシさんに言われるままに来ちゃいましたけど自分なんかがやれることってあんまり無いと思いますよ?」 透華「まぁハギヨシにも何か考えがあるのでしょう、これからどうなるのか分かりませんがよろしくお願いしますわ」 京太郎「ハイ、分かりました」 ハギヨシ「お嬢様とのご挨拶も済んだようですね」 京太郎「しかし本当に俺は何をすればいいんですか? 大体のことってハギヨシさんだけで出来るでしょう?」 ハギヨシ「いえいえ、貴方にしか出来ない事をしてもらいますよ」 ハギヨシ「私がお願いしたい仕事というのは衣お嬢様のお相手をすることなのですよ」 京太郎「っていうと確か大会の時に大将をやっていた?」 ハギヨシ「はい、衣お嬢様は以前はご友人もあまりいらっしゃらなかったのですが…」 ハギヨシ「お嬢様が集めた方たちのおかげで最近は本当に楽しそうにしているのです」 ハギヨシ「ですが、衣お嬢様と仲の良い男性となるとお世話係をしている私くらいしかいませんで」 ハギヨシ「歳の近い男の方と仲良くなることも衣お嬢様のためになるかと考えていたので」 ハギヨシ「まさに須賀さんはうってつけという訳なのですよ」 京太郎「家事などの仕事をするんじゃなくて天江さんと仲良くなればいいんですね」 ハギヨシ「その通りです」 京太郎「なるほど、それなら俺でも出来そうですね」 ハギヨシ「引き受けてくれますか?」 京太郎「はい、いつもハギヨシさんにはお世話になってますし、これくらいならどうってことないですよ」 衣「む?見なれぬ顔がいるな」 ハギヨシ「私の仕事の手伝いをしてくれる須賀京太郎さんといいます、今日から来たので衣お嬢様にもご挨拶をと思いまして」 京太郎「どうも、須賀京太郎といいます」 衣「ふむ、そう固くならくていいぞー?」 京太郎「そうですか?でも自分の方が年下ですし」 衣「そんなの関係ない、普通に話した方が衣も話かけやすいしな」 京太郎「分かった、俺もあまり固っ苦しいのは苦手だしできるだけ普通に話すな」 衣「うむ」 ハギヨシ「ところで衣様、須賀さんは今日が初めてで丁度いいですし」 ハギヨシ「今日は衣様のお世話は私の代わりに須賀さんがやってもよろしいでしょうか?」 衣「ほー いつもと違うとなんだかわくわくするな! うん、今日はきょうたろうと遊ぶとしよう!」 京太郎「よし、じゃあ遊ぶか!」 衣「おー」 京太郎「ところで遊ぶと言っても何をする?」 衣「きょうたろうは麻雀できるか?」 京太郎「一応できるけど弱っちくて面白くないかもだぞ?」 衣「強さは関係ない、打てるなら一緒に麻雀をしよう」 京太郎「それならやるか、しかしやるからには俺も本気で行くぞー」 衣「その意気だ、かかってこいきょうたろう!」 京太郎「んだー負けたー」 衣「やっぱり衣と打つのはもう止めとくか?」 京太郎「なんのまだまだー」 衣「! 衣と打って負けたのにまだ打ってくれるのか?」 京太郎「? そりゃー負ければ悔しいしな、衣さえ良ければもう1回やろうぜ」 衣「うん! もっと打とう!」 京太郎「そう来なくっちゃな! 次は負けないぞ!」 衣「なんの!返り討ちにしてくれる!」 京太郎「言ったなー」 京太郎「結局1回も勝てなかった」 衣「でも何度か面白い打ち筋をしていたし、きょうたろうはもっと強くなれると思うぞ」 京太郎「そっか、ありがとな」ナデナデ 衣「うぁーなでるなー衣の方がおねーさんなんだぞー」 京太郎「ってもうこんな時間か、そろそろ帰らないと」 衣「え?帰るのか?」 京太郎「あぁ、明日も学校あるしな」 衣「そうか……」 京太郎「なに、明日も学校終わったら来るからまた遊ぼうぜ?」 衣「そうか! なら約束だぞ!きょうたろう」 京太郎「あぁ、それじゃまた明日な」 衣「うん、また明日!」 『翌日』 京太郎「と、いう訳で今日も来たぞー」 衣「おーきょうたろうよく来たな、待ってたぞー」 京太郎「さて、今日は何をする?」 衣「ふむー そうだな」 京太郎「予定がないなら外にでも出てみるか? いつも家の中ってのもあれだろうし」 衣「おぉ! いいな、おもしろそうだ! 衣もきょうたろうに賛成だぞ!」 京太郎「よし、それじゃあ遠くに行くと帰りが遅くなるし近場を散歩でもするか」 衣「さんせーい」 衣「わーい」 京太郎「そろそろ時間も時間だし帰るか」 衣「むぅ もうそんな時間なのか楽しい時間はあっというまだな」 京太郎「はは、楽しんでもらえたようで良かったよ」ナデナデ 衣「だからなでるなというのにー」 衣「む?」 京太郎「ん?どうした?」 衣「あれは…」 京太郎「アイスクリームの移動販売車? ここらへんあんまり人通りないのに何考えてんだ?」 衣「あいす…」ジー 京太郎「食べたいのか?」 衣「!」ハッ 衣「いやっ 食べたくなんてないぞ! おねえさんな衣はアイスなんか全然…」ダレー 京太郎「にしてはよだれ出てるぞ」 衣「!」ハッ 衣「///」ゴシゴシ 京太郎「まぁ夕食前だし我慢するか?」 衣「うぐぅー」 京太郎「夕食残さず食べられるっていうなら買ってやろうか?」 衣「いいのか!?」 京太郎「おぅ、ただし夕食ちゃんと食べるんだぞ?」 衣「食べる食べる!」 京太郎「よし、じゃあ買ってやるぞ」 衣「味がいっぱいある!」キラキラ 京太郎「本当にいっぱいあるな なんだこの親田辛味大根味って、いくら地元の特産だからってこれは…」 衣「衣はこれがいい!」 京太郎「いちご味か、オーソドックスでおいしそうだな」 衣「うん!」 京太郎「よし、すいませんこのいちご味1つください」 おっさん「まいどー」 京太郎「はい、落とさないように気をつけろよ」 衣「うん ありがとな、きょうたろう」 京太郎「じゃあ帰るか」 衣「おー」 衣「おいしい」ムグムグ 京太郎「それは良かった」 衣「きょうたろうは買わなかったのか?」 京太郎「あぁ、たくさんは食べれそうになかったしな」 衣「少しなら食べるのか?」 京太郎「ん? まぁ夕食前だし少しくらいなら満腹になってしまったりはしないだろうな」 衣「なら衣のアイスを一口たべるか?」アーン 京太郎「え?」 衣「いやか?」 京太郎「いやいやいや、そっちこそいいのか?」 衣「何がだ?」 京太郎(そういえば男の知り合いってハギヨシさんくらいしかいなかったんだよな) 衣「きょうたろー?」 京太郎(なら普通に仲のいい女友達と同じように接してくるのもうなずけるか…) 衣「いらないのかー?」 京太郎(どうする? ここはやんわりと断った方が…) 衣「聞いてるのか?」ジワ 京太郎「ん? ってなんで泣いてるんだ!?」 衣「だってきょうたろう呼んでも返事してくれないし…」 京太郎「あー ごめんな 考え事してたんだよ」 衣「アイスいらないのか?」 京太郎「あー アイスはなー」 衣「衣のアイスいらないのか?」ジワ 京太郎「あー! 貰う貰う! 丁度衣が食べてるの見て俺も欲しくなってた所だしな!」 衣「そうか! なら遠慮せずに食べていいぞ!」ニコー 京太郎「じゃあ一口だけ貰うな」 衣「うん、どうぞどうぞー」 京太郎「むぐ お、結構美味いな」 衣「だろー」 京太郎「美味かったよ、ありがとな」ナデナデ 衣「なでるなー」 京太郎「お、早く食べないとアイス溶けちまうぞ?」 衣「はっ 早く食べなきゃ」ペロペロ 一「おかえり、丁度晩御飯が出来たところだし須賀君も食べてくかい?」 京太郎「え? そこまでしてもらうのは悪い気がするんだが」 衣「アイスのお礼だ、食べていけばいいじゃないか」 京太郎「でもな…」 一「アイス?」 衣「!!」ビクッ 一「衣、ごはん前にアイス食べたの?」 衣「な、なんのことだ? 衣はアイスなんて食べてないぞ?」 一「じー」 衣「」アセアセ 一「ほっぺにアイスついてるよ?」 衣「え!?」バッ 衣「あれ? ついてない??」 一「やっぱり食べたんだ」 衣「あーうー」 一「まぁ晩御飯ちゃんと食べるんなら何にも言わないよ」 一「で、須賀君はどうするんだい?」 京太郎「なら迷惑じゃなければ晩御飯を食べてから帰ろうかな」 一「うん、衣もなついてるし迷惑なんかじゃないよ」 京太郎「そっか、そりゃ良かったよ」 衣「いっしょにごはんだー」ワーイ 京太郎「これ美味しいですね」 一「それは良かった 須賀君、おかわりはいるかい?」 京太郎「あ、ならお願いしてもいいですか?」 一「ん、了解」 純「いっぱい食うなー 衣もこれくらい食べないと大きくなれないぞー」 衣「むっきー そういうじゅんは大きすぎるぞー」 純「ハハハ 悔しかったらもっと大きくなってみろー」 衣「むー」 衣「衣もおかわりするぞ!」 一「食べれるのかい?」 衣「大丈夫だ! おねーさんな衣にかかればごはんのおかわりくらい簡単にできる!」 透華「あまりお姉さんとおかわりに関係はない気もしますが」 智紀「やらせてあげればいい」 衣「もうおなかいっぱい」 一「言わんこっちゃない」ハァー 京太郎「今日は夕飯までごちそうになってお世話になりました」 透華「あら?もう帰るんですの?」 京太郎「まぁ明日も学校がありますしね」 衣「んー? きょうたろう帰るのか―?」ウツラウツラ 京太郎「おう、でもまた明日もちゃんと来るぞ」 衣「うん、なら待ってるぞー」 京太郎「よしよし えらいえらい」ナデナデ 衣「だからなでるなー///」 京太郎「じゃあまた明日、今日は散歩で疲れてるだろうし早めに寝ろよー」 衣「分かったー、また明日な―」 一「おや、来たね」 京太郎「あ、一さんこんにちは 衣が見当たらないんですがどうしたんですかね?」 一「今日の学校が思いのほか疲れたみたいで、京太郎君が来るまで休むって言ってたんだげど」 一「この状況から察するにまだお昼寝中みたいだね」 京太郎「そっか、なら今日はハギヨシさんの仕事手伝ってから帰ろうかな」 一「それだと衣が起きたとき可愛そうだよ」 一「衣が起きるまで僕とお茶でもしながら待ってるってのはどうだい?」 京太郎「え? いいんですか?」 一「うん、そういえばキミとちゃんと話す機会ってあんまりないしね」 一「多分そろそろ起きると思うし、それまで少しの間のんびり待ってようよ」 京太郎「それもそうですね」 一「どうぞ、紅茶で良かったかな?」 京太郎「全然大丈夫ですよ」 一「それは良かった、お茶菓子もあるし 遠慮せずに食べてね」 京太郎「はい、いただきます」 京太郎「」クピクピ 京太郎「この紅茶美味しいですね」 一「はは ありがとう」 京太郎「それにこのお茶菓子のクッキーも凄い美味しいですよ」 京太郎「どこのクッキーなんだろう? こんな美味しいの食べたことないぞ、さすがお金持ち」 一「あーそのクッキーはお金持ちとかは関係ないよ?」 京太郎「え? でも凄く美味しいですよ? 有名なケーキ屋とかの商品なんじゃ?」 一「ないない、だってそれ僕の手作りだもん」 京太郎「え!? 本当ですか?」 一「嘘なんてつかないよー」 京太郎「あ、すいません」 京太郎「じゃなくて! これが手作りですか? この美味しさ、普通に店で買うよりずっと美味しいんですけど」 一「面と向かって褒められるとなんか照れるね///」タハハ 京太郎「だって本当に美味しいですよ、店が開けるレベルですよ!」 一「もう褒めなくていいよぉ///」 キョウタロー キテルノカー? 一「あっ 衣が起きたみたいだよ 早く行ってあげて」 京太郎「みたいですね、分かりました」 京太郎「紅茶とクッキーご馳走様でした、すっごい美味しかったですよ」 一「たはは ありがとね///」 オーコロモーオキタノカー アーキョウタロウミッケー 一「京太郎くん、か」 一「明日はケーキでも作ってみようかな?///」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/709.html
照が長野から逃亡(3度目)した翌日・放課後 白糸台高校麻雀部部室前の廊下 淡「ふー!やっと授業終わったーっと。さて部活部活ー…って…あれ?どうしたんですか?皆さんお揃いで」 菫「ああ、淡か。いや何ちょっと…な」 淡「?」 尭深「…うん。ちょっと…」 誠子「ちょっと…ね…」 淡「変な先輩方…っていうか、もう早い人部活始めてる時間ですよね?どうしたんですか一体」 菫「今日は、レギュラー以外は皆休みだ」 淡「はあ?この時期に!?」 菫「…ちょっと、例のお姫様が変なんでな」 淡「…」ヒクッ 菫「…今部室の中に居る」 淡「ここから覗いてみても大丈夫ですか?気付かれたら襲いかかってきたりしませんか?あと、噛まれたりしません?」 菫「問題無い。何なら触っても大丈夫だと思うぞ」 淡「触ってもって…」 菫「見た感じの機嫌自体はな。すこぶる良いんだ。否。良すぎる。気持ち悪いくらいに」 淡「…え?」 尭深「あれはブチギレてる証拠。ただし、自分自身に」 誠子「1年は知らないかもだけど、試合で納得いかない麻雀をした日の翌日とかたま~になるんだよ。最近はそういうのもほとんど無かったんだけど…こりゃ過去最大級かもね」 菫「周りに自分の不機嫌を悟られまいと不自然に周囲に愛想を振りまく」 尭深「記者会見でも無いのに全方位営業モード」 淡「うわぉ…」 誠子「まったく…怪我を悟られないために自然に振る舞う野生動物みたいだ。他の部員も気味悪がってさ」 菫「だから私が皆を帰したんだ。…まあ、淡ならアイツの奇行には馴れてるし大丈夫だろう。ためしに話しかけてみればいいさ」 淡「はあ…」 菫「さあ、行け」クイッ 淡「…もしかして、皆さんで廊下に居たのって、私に先陣を切らせるためじゃ…」 菫「そうだ。行け」 尭深「がんば」 誠子「悪いね」 淡「せめて誤魔化すくらいはして欲しかった…」 淡「…わかりましたよ。じゃあ、骨は拾って下さいね。あと、皆さん今日は帰りに私に一個ずつお菓子を奢ること」 菫「善処する。どら焼きでいいか」 尭深「抹茶プリンあげる」 誠子「私はマックでなんかセットでも」 淡「…約束しましたからね」 淡「…はぁ」 淡「…」 淡「おっはよーございまーーーす!」ガチャッ 照「ん?ああ、淡!お疲れ様!」キラキラ 淡「ひっ!?」ゾワワワッ!! 照「もう、遅いじゃない。菫が今日は大会も近いから、レギュラーだけでミーティングだって言うからずっと待ってたのに…」 照「みんな、私がずっと待ってるのに来ないんだもん。不安になっちゃう!」プンプン 淡「す、すみません…じゅ、授業が長引いちゃいまして…」 照「そうだったの?なら仕方ないね。部活も大事だけど、あくまで私達学生の本分は勉強だもんね!」ニコッ 淡(だ、誰だこの人ーーーーーーーー!!?) 照「それにしても、来たのは淡だけ?菫達は知らない?」 淡「…」チラッ 菫「…」カキカキ 菫「」サッ メモ『近くに居るって言ったら殺す』 淡「…」 照「淡?」 淡「は、はい!…すみません、私も良くは知りませんので…おそらくみなさんもうすぐ来るとは思うんですが…」 照「もうっ!相手は全国で地区予選を勝ち抜いてきた手強い高校ばかりなんだよ?しっかりミーティングして、相手を研究しなきゃ、油断してたら足元すくわれちゃうんだから!」 淡(言ってることは正論なのになんでこんなに心に響かないんだろう…) 照「あ。そうだ淡。ところで、お腹すいてない?」 淡「は?」 照「大切なミーティングの前に、糖分補給。ちゃんと頭回らせておかないと、ミーティングの内容が頭に入らないぞっ☆」 淡(なんだろう。本人は大真面目なのかもしれないけど、凄く馬鹿にされている気がする…) 淡「は、はあ…まあ、甘いモノは大好きですが…」 照「そうでしょ?だと思って、淡にプレゼント!」 淡「…」 照「あとでみんなが集まってから出そうと思ってたんだけど、みんなが遅いんだししょうがないよね」ゴソゴソ 淡「…」 照「…はい!じゃ~~ん。東京ばな奈~!しかも4箱も!」 淡「…おうふ」 照「ね!ね!ね!私達でみんなが来るまでに1箱食べちゃわない?実は私これ大好物なんだー」 淡(やばい…意識が遠のいてきた…) 照「…淡?」 淡「あ、す、すみません…そうですね。食べましょう。いただきます。ありがとうございます…」 照「ふふ。淡は面白いな。はいどうぞ」スッ 淡「いただきます…」 照「…」 淡「はむはむ…うん。おいひい」モグモグ 淡(なんかアレであるけど…まあいいか。東京ばな奈自体は嫌いじゃない) 照「…」 淡(うーむ。この柔らかい食感と濃厚なクリーム。流石高いだけあって結構なお味…)ホワホワ 照「…」シュン 淡「?宮永先輩、どうかしました?」 照「あっ!ご、ごめんごめん!淡が美味しそうに食べてくれるものだから、ついつい見ちゃって…」 淡「はあ…」 照「本当に、ごめん…」 淡「…?」 照「ごめん…ごめん…気持ち悪いよね私…ごめん…」 淡(なんか一気にダウナー系!!?) 淡「い、いやいや!そんな事ないですって!ただ宮永先輩は食べないのかなーって思っただけなので!」 照「えっ!?あ、そ、そう!?いや、ごめんごめん。そうだったね。それじゃあ私もいただきますっ」 淡「」ホッ 照「はむっ!もぐもぐ…」 照「」ホワ~~ン 淡(おお。マジで美味しそうな顔。口元が緩んでる) 照「うん、美味しいね」 淡(ここは話に乗って、良い感じにご機嫌を取っておこう) 淡「そうですね、最高に美味しいです。私東京ばな奈大好き!」 照「ふふ。私もだ。東京ばな奈は、昔長野に居た頃から憧れのオヤツだったんだ」 淡(口調が戻ってきた!機嫌が治ってきた?よしこの調子で) 照「だから、こっちに来て早速、初めて買って食べて、予想通り…いや、それ以上に美味しくて嬉しくて…いつか、大好きな人とこの大好きなオヤツを一緒に食べるのが夢で…」 淡「…?」 淡(…あれ?) 照「先日、ついに居ても立ってもいられなくてその夢を叶えようと勇気を出して、その人に会いに行って…いつでもいっしょに食べるチャンスは一杯あって…」ジワッ 淡(ま、マズい。地雷を踏んだ?) 照「そうしたらあんな事があって、凄くびっくりしたけど、本当に嬉しくて、けど気が動転しちゃって、何をすれば良かったのかも私は訳がわからなくなってしまって…」ブツブツ 淡(うわああああ!これはヤバイ!本格的にヤバい!怖い!面倒くさい!なんとか話題を逸らさないと…) 照「本当に…痛感したよ。私は救いようのない馬鹿だ。…いっそ死んでしまいたい」 淡「な、何言ってるんですか!!!」 照「…淡?」 淡「み、宮永先輩は馬鹿なんかじゃないです!」 淡「そりゃたまには…て言うか、しばしば…結構…かなり…アレでソレな所もありますし、私には特に実害も結構な頻度で及んでて勘弁して欲しいなーこの人とか思うことも良く有りますけど!」 淡「この私に対する偉そうな態度がムカツクんでいつか麻雀で徹底的にボッコボコにして悔しがってるを写真に撮ってネットでばら撒いてやりたいとかも思ったりしますけど!」 淡「な、なんだかんだいいところは一杯有りますよ!宮永先輩は!ほら…その…角とか…」 照「淡…具体的に褒めたとこが角だけ…」 淡「と、兎に角!そんな欠点も含めて!麻雀の強さや人格も含めて!私は宮永先輩のことは、その…嫌いじゃない…んで…」 淡「し、死ぬとか…そういうのは…無しで…お願いしたいんですが…」 淡「…なんか悲しくなっちゃいます。私を悲しませないで下さい。先輩なんですから」 照「…ごめん」 淡「まったくです」 照「…」 照「…」 淡「…」 照「…」 淡「…」 淡(し、しまったーーーーー!何恥ずかしいこと言ってるんだ私!アホか!!しかも今の何にも考えずに口から出たって事は、本音か!!アホだ!!) 照「…」 淡「…」 照「…」 淡「…」 淡(しかも会話無くなったし!) 照「…」 淡「…」 照「…」 淡「…」 淡(ううううう…沈黙が重い…) 淡(な、なにか…話題…話題は……あっ!) 淡「あ、あれ?宮永先輩」 照「…何?」 淡「い、いえ。その…卓の上に置いてある携帯…」 照「ああ。それがどうした?」 淡(あ、口元が緩んだ。これはやっぱり、聞いて欲しいからわざわざこんなところに置いたんだろうな。と言う事は私のこれからする質問は間違ってない!) 淡「可愛いストラップが着いてますけど、こんなの持ってましたっけ?」 照「あ…ああ、それは…。ちょ、ちょっと入手までの経緯に複雑な事情があるんだけど…」 淡(おお、珍しい。はにかむような、困ったような、嬉しいような、悲しいような…こんな複雑な表情も出来たんだこの人) 淡「えー?なんですか?複雑な事情って。あ、もしかして好きな人にでも貰ったとか?」 照「な!!?お、おい淡。お前なんでそんな…いや、そういう訳では…えっと…その…」オロオロ 淡(おおおー!?なんだこの反応!乙女か!!まさか弘世先輩の言ってた、例の幼馴染君の話なのかーーーーー!?) 照「あ、あの…ね?淡。こ、こういう話はちょっと恥ずかしいから…特に菫にはナイショにしておいて欲しいんだけど…」 淡(はは。まさか酒に酔わされてすでに自白済だとは思うまい。同情しますよ。宮永先輩…) 淡「えー!聞きたい聞きたい!教えて下さいよ宮永先輩!この、ハート型のストラップを受け取った経緯!」スッ 照「…は?」 淡「へー。プニプニしてるんだ。面白いですねコレ」プニプニ 照「…」ビキッ 淡「それによく見たら顔が付いてる。あはは、ブサ可愛い感じで結構いいかもー…」プニプニ 照「…淡?」 淡「なんか、この安っぽい感じがいい味出してますねー。メイドイン・チャイナって感じで…」プニプ… 照「…おい、貴様何してる」ガシッ 淡「…へ?」プニッ? 照「誰が触って良いと言った」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 淡「…えーっと…」プニプニ… 照「」ガタッ 淡「…あ、あの…宮永先輩…?」 照「」ギュインギュインギュイン 淡「なんか、その…腕にサイクロン的な何かが集まってるような幻影が…」 照「死ね!」ブンッ 淡「おわあっ!?」サッ 照「避けた!?」 淡「な、何するんですか!いきなり殴りかかってくるなんて!」 照「五月蝿い!無断でそのストラップに触るな!それは私のものだ!」ブンッ 淡「ひょわぁ!?お、落ち着いて下さいよ!」サッ 照「くっ…ちょこまかと…!!」 淡(あわわ。宮永先輩が運動音痴だから助かってるけど、このまま避けてるだけじゃいずれ捕まる…) 照「逃がさない…」ジリジリ 淡「ぐううう…」 照「ふん!!」ブンッ 淡「わっ!」サッ 照「たあ!」ブンッ 淡「やば、避けれな…」 淡「きゃぁ!」サッ バキッ 照「痛っ…」 淡「~~~っ…」プルプル 淡「…」 淡「…はれ?」 照「いたたた…」 淡「あれ…殴られてない…?って…あ。無意識に先輩の携帯盾にしちゃったんだ…」 淡「…げ」 照「くっ!淡!お前、よくも私の携帯を…」 照「…」 淡「…まず」 照「あ…」 淡「えーっと…」 照「あああ…」 淡「その~…」 照「ああああああああああああああああああああああああ!!!」 淡「す、すみません…ストラップ…千切れちゃいました…ね…」 照「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!」 淡「うあー…」 照「わあああああああああああああああああああああん!!わあああああああああああああああああああん!!わああああああああああああああああああ!!!」 淡「…こ、これはどうしたものか…」 照「うええええええええええええええん!ええええええええええええええええええええええん!!えええええええええええええん!!!」 淡「こんな泣きまくってる宮永先輩初めて見た…ど、どうしよ…」 菫「まったく…何をやってるんだお前は」スタスタ 誠子「あーあ。可哀想に…」スタスタ 尭深「泣ーかした泣ーかした」テクテク 淡「せ、先輩方…」 菫「いじめっ子め」 淡「え…何ですかこの雰囲気。まるで私が悪いみたいな…」 照「ええええええええええええええええええええん!ええええええええええええええええん!!淡のばかあああああああああああああああああああ!!」 淡「私が悪いの!!?」 菫「ほら、照。落ち着け。大体、さっきから変だぞお前。何があったか一から話してみろ」ユサユサ 照「ヒッグ…ううえええ…す、すみれえぇええええええええ…うええええええ…」 誠子「よしよし、大丈夫ですよー。宮永せんぱーい。私達で良ければいつでも力になりますからー」 照「ええええええん。あ、ありっがとっ!せい゙ごぉおおおおおおおおおおお」 尭深「はい、冷たいお茶。落ち着いて…」 照「たかみ゙~~~~~~~~~~~!!」 尭深「ん」ナデナデ 淡「なんだこれ…」 菫「よしよし。落ち着いたら話聞いてやるから。な?ほら。特別にだっこしてやる」ギューッ 照「うん。うん。ありがと…うん。ごめんねすみれ…うん…」スンスン 菫「はいはい。そしたらちょっと休めお前」ナデナデ 照「すみれのおっぱいやわらかい…」ギューッ 菫「わかったわかった。お前は硬いな。はいはい」ナデナデ 照「…」ギューッ 菫「はぁ…」 淡「幼児退行してるし…」 照「…」ギュッ 照「…」 照「…」コックリコックリ 照「…」 照「すー…すー…」 淡「寝た」 菫「…ま、ざっとこんなものだ」 淡「…おみそれしました」 尭深「淡には、おっぱいが足りない…」 淡「ほっといて下さい!!」 誠子「まあ、なんにせよ話はこの人が起きてからだね」 淡「はあ…」 照「すやすや…」 10分後 菫「落ち着いた?」 照「…うん。すまない菫。尭深。誠子。ついでに淡」 淡「ついで…ぐぬぬぬ。まあ、私もすみませんでした。その…色々失礼なこと言ったりやったり」 照「いや。私の方こそすまない」 菫「よし、お互い謝罪は終わったな?それじゃあ、話してもらおうか。照、お前、日曜に…いや、ここ数日に何があった?」 照「…」 菫「話せ。お前、ここ数日の自分の奇行を誰にも疑問視されてないと思っていたのか?」 照「…」 菫「全国の近いこの時期にエースに身も心もあっちへフラフラこっちへフラフラされては私達も堪ったもので無いんだ。もういい加減話してくれてもいい時期だろう」 誠子「それに、私達だって、宮永先輩にはなんだかんだお世話になってきてますから。恩返し…じゃないですけど、力になれる所は、なりたいんですよ」 尭深「魚の干物のお礼もまだ。お返ししたい」 照「…」 淡「わ、私も…」 照「…淡?」 淡「私も…宮永先輩には、その…悲しい顔似合わないって言うか…その、そんな顔されてたら調子狂うって言うか…」 照「…」 淡「…その…げ、元気だして欲しいから…」 照「…」 照「…わかった」 淡「…」 照「…何があったか話す」 菫「…そうか。ありがとう」 照「けど、その前に」 菫「ん?」 照「尭深。お茶淹れてきて」 尭深「?…わかりました」 照「はい皆。東京ばな奈。みんなに均等に渡るように。あ、余った分は私のだからな。買ってきたのは私だし」 誠子「へ?」 淡「何やってるんです?」 菫「さあ」 尭深「淹れてきた」 淡「早っ!」 照「ありがとう。それじゃあみんな。聞いて欲しい。私の犯した馬鹿な間違いの話を」 菫「馬鹿な間違いねえ」 照「で、ついでに相談に乗って欲しい。これから私はどうすればいいか。何をすべきなのか」 誠子「何をって…まあ、出来る限りで」 照「でも、その前に、もう一個聞いて欲しい事がある」 尭深「もう一個?」 照「ああ。これは、最近の話じゃないんだけど…」 照「私の初恋の話」 淡「!!」 照「そして、私がこっちに来る前の、長野に居た頃の話」 照「私が、それまで一体どんな人間だったのか…」 照「それまでどんな人生を歩んできていたのか…」 照「どんな事を考えてきていたのか…」 照「物凄く恥ずかしい話なんだけど…」 照「もしかしたら、私の事を馬鹿にしたり軽蔑するようになるかもしれないけど…」 照「凄く凄く話すのが怖い話なのだけど…」 照「今まで、誰にも言えなかった話なんだけど…」 照「…でも、みんなには聞いて欲しい」 照「…お願いだから、聞いて欲しい」 淡「えっと…」 淡(なんかすっごく重そうな…だ、大丈夫なのかな私こんな話聞いちゃっても…) 誠子「おっ!もったいぶりますねー!」 尭深「なんだかワクワク。B級映画か糞アニメみたい」 淡「えっ。いや、お二方そんな軽い感じな…ってか、渋谷先輩今さらっと酷い事言いましたね」 菫「是非も無いさ。お前がそうやって大袈裟に言った相談事が私に本当に手に負えなかった事は無いんだ。今までもそうだったのなら、これからもそうだ」 淡「弘世先輩まで!?」 菫「話してみればいい。その口ぶりだと、どうやらその話は今までお前にとって随分と重荷だったらしいが…」 菫「お前のような麻雀以外ポンコツ女が一人でえっちらおっちら運んできた荷物など、我々5人で抱えればどれほどのものでも無くなるさ」 淡「…」 菫「それが仲間って奴だろう?まあ、柄じゃないがな」 淡「…」 淡「ま、私だって宮永先輩よりはしっかりものな自信ありますし。ちょっとくらいなら心の支えにはなれると思いますが」 照「…ありがとう。あと淡、あとで覚えてろ」 淡「…えへ」 照「…ふふ。それじゃあ長くなるから、お茶でも飲みながらゆっくりと話していこうか」 照「…」 照「…すーっ…」 照「…はーっ…」 照「…」 照「…あれは、私がまだ中学生だった頃の話だ…」 照「そう。たった数年前の話…」 淡(その日私が聞いた話は、まるで遠い世界の、知らない人の事のようでした) 淡(なぜなら、お話の中に出てくる宮永先輩は私の知ってる宮永先輩と全く違う人のようで…) 淡(途中で「年月はこうも人を変えるんですね」と素直に溢しちゃった私は、亦野先輩にゲンコツを食らったりもするんですが、まあそれは置いといて…) 淡(兎にも角にも、それはほんのちょっっぴりむかしのはなしです) 淡(牌に愛され、高校生史上最強のチャンプとまで言われ、まるで神に選ばれたかのような才能を誇る少女の、意外な昔話) 淡(妹想いで、優しくて、どん臭い、普通の女の子の話) 淡(それは宮永照が中学3年生の頃の話でした) 3年前・ある夏の日 宮永家リビング そこには、ソファに腰掛け、物憂げに本を読む宮永照の姿があった 照「…ふう」 照「…もう、5時か…」 照「…咲、遅いな」 一息ついて深呼吸。ふと気になって壁掛けの時計を見やると、呟く 普通の中学生1年生の女の子が帰って来る時間としては、それほど遅い時間では無い。部活をやっていたり、友人と遊んでいればこれくらいの時間に帰ってくるのは寧ろ早いくらいだ 照「…大丈夫かな」 …だが、照はソワソワと不安そうに窓から外を覗くばかりだ。妹の帰りを待つその姿はどう見ても普通の様子では無い。過保護も過ぎるように見受けられるが… 照「…あっ」 タッタッタッタ… 小走りに狭い歩幅の足音が聞こえ、安堵した声を漏らす照。雑誌をコーヒーテーブルに置き、立ち上がる。急いで玄関まで向かう 照「…」 ガチャッ 果たして玄関に辿り着くとほぼ同時、勢い良く宮永家のドアが開かれた 照「…おかえり、咲」 優しい笑顔でおかえりの挨拶を告げ、そっと腕を広げながら、靴も履かずに土間へ降りてゆく。膝を曲げ、目線を妹の高さに合わせる。足が汚れるが知ったことか。それよりも今は… 咲「…ヒッ…ヒック…ヒック…」 照「…また、いじめられたの?」 咲「…」コクン 照「そう。頑張ったね。もう大丈夫だよ」ギュッ 咲「うわああああああああああああああああああああああああん!!」 照「よしよし。もう大丈夫。もう大丈夫。もう怖くないから、大丈夫だよ」ナデナデ 咲「おねえちゃああああああああああああん!!!」 この大切な妹を、慰めてあげなくてはならない。この、最愛の、妹を 照「お姉ちゃんがついてるから。大丈夫だから。大丈夫。大丈夫だよ…」 咲「ええええええええええええええん!!えええええええええええええん!!!ええええええええええええええええええええええん!!!!」 照「…」ギュッ 妹は 咲は、いじめられっこ 臆病で 人見知りで どん臭くて いじめられて当然の…いじめられっこ いじめられ、泣いて帰ってくる咲を慰めるのが、この頃の照の日常 泣き続ける妹を抱き締めながら、いつからこんな事になったんだろう、と考える 深く思い返すまでも無い。そう、あれは咲が中学生になって間もない頃の事だ 4月のある日、照が学校から家に帰ってくると玄関に咲の靴が置いてあったので、先に帰ってきていた妹とおしゃべりをしようと、部屋を訪ねることにした (中学生にあがって一人部屋を貰って、咲は大喜びしていた) ノックしてドアを開けて貰おうと手を差し伸ばした瞬間…部屋からすすり泣く妹の声が聞こえたのだ その瞬間、気付けば部屋に飛び込んでいた。いつドアを開けたのかすら記憶にないくらいだった。今でもはっきりと覚えているのは、部屋の隅で小さくなって泣いている妹の姿 思わず激しい剣幕で何があったのかを問い正し、咲がいじめにあったのを知ったのは、それからすぐの事だった 大した理由など無い。強いて言うなら、ただ弱そうな獲物が目に入ったからいじめる事にしたのだろう。子供のいじめなどそんな程度のものだ 泣きじゃくる妹の前で、ただ呆然と立ち尽くすしか出来なかったその日から、咲と照にとってひたすらに辛い日々が始まった しばらくして咲が泣き止んだのを見計らい、極力優しい様に声をかける 照「…もう、大丈夫?」 咲「…うん。ありがとうお姉ちゃん」 気丈に答える咲。目は真っ赤で、頬はクシャクシャだ。無理をしてるのがはっきり分かる。照の胸にまたチクリと鋭い痛みが走る 照「…そう」 自分の無力さに目眩を覚える 咲「お姉ちゃんが、慰めてくれたから…」 照「…」 咲「大丈夫…ありがとう、お姉ちゃん…」 照「…」 そういって笑う咲の笑顔が、悲しい 照「…ごめんね、咲」 咲「ふぇ?」 照「私がなんとかしてあげられればいいんだけど…」 咲「…」 無力感に打ちひしがられながら、思わず呟く。一度咲の担任に掛け合った事もあるが、巧妙に行われるいじめを暴く事は、照には出来なかった 照自身がいじめっ子に話を着けることも事も考えたが、逆に照が居ない時にいじめが激化する可能性を考え、それも出来なかった 親に相談するのは、二人とも考えもしなかった。最近両親の仲がギクシャクしているのには気付いている。今余計な問題を抱えさせて、これ以上二人の仲が悪くなるのだけは避けたい 照「ごめんね…ごめん…ごめん…」 だから、強く強く…ギュッと咲を抱き締める。せめて、この子の心の痛みを少しでも和らげられるように 咲「あはは…いたた…痛いよ、お姉ちゃん…」 照「ごめん…ごめん…ごめん…ごめんね、咲…」 咲「お姉ちゃん……お姉ちゃん……お姉ちゃん…うええええ…」 照「咲…咲…咲…」 そんな地獄のような日々を送っていた二人に、思わぬ救いの手が現れたのは、それから少し経ってからだった 照「…遅くなっちゃった。咲は、もう帰ってきてるかな」 早足で帰路に就きながら、そんな事を呟く照 友人から遊びに誘われ、断っている内に結構な時間が過ぎていたのだ 最近は咲の為にとなるべく早く帰宅しようとしているので、友達と遊ぶ事も少なくなった さっきはそれで最近付き合いが悪いと非難を浴びていたところだ 理由を尋ねられても、妹がいじめられているからなど、友人に話せるような内容ではないので、はぐらかして謝るしか無い ここで適当な嘘を付けないのは照の美徳でも有り、欠点でもあった 照「早く咲を慰めてあげないと…」 ようやく家の前まで辿り着いた。逸る気持ちを抑え、呼吸を整える。殊更ゆっくりと玄関を開け、靴を確認すると、咲の靴が有る。帰ってきてる 照「…すぅー…はぁー…よし」 咲の前では余裕を持って接しよう。ここで自分まで余裕を失っては、咲の心の拠り所が無くなってしまう。そうだ、今、咲には私しかいないのだから… リビングに咲の姿を確認し、優しく、元気に挨拶の声をかける 照「た、ただいま!咲…」 咲「あ、お姉ちゃん!おかえりっ!」 照「…え?」 咲「えへへ。今日は遅かったね。久しぶりに私の方が早く帰ってきたもんね」 照「あ、そ、そうだね…」 咲「今日も暑かったね。汗かいてない?冷凍庫にアイスが有ったから、持ってこようか?」 照「えっと…」 咲「あ、でもお姉ちゃん、ちゃんと手洗ってうがいした?アイスはその後だからね!」 照「うん…」 咲「うんっ!じゃあ私、お姉ちゃんが洗面所から戻ってくる前にアイス用意しておくから、早く戻ってきてね!」 照「さ、咲…?」 咲「ん?どうしたの?お姉ちゃん」 照「ど、どうしたの…?その…」 咲「うん」 照「なんだか今日は…その…凄く嬉しそう…だけど…」 いつも苛められて帰ってきていた貴女が、今日に限ってなんでこんなに嬉しそうなの? そんな想いを、どうやって伝えようか迷っていると、咲が察して、いや、実は言いたくて言いたくて堪らなかったのだろう。自分から話してくれた 咲「えへへ。聞いて聞いて、お姉ちゃん!実は今日ね…!」 咲の話は、興奮していた為か、ややまとまりに欠けるものだった いつものようにいじめっ子にちょっかいを出されて泣いていたら、一人の男の子に助けられた 割りと背も高めのその子は一度も話した事の無かったクラスメートで、放課後に咲がいじめられていた現場に、偶々立ち寄ったらしい その子は同学年の女子とはいえ複数の悪そうな子達相手でちょっと怖気づいていた様で、「いじめ、カッコ悪い。by前園」と結構ふざけた感じで注意してくれた いじめっ子達もその間抜けな注意に毒気を抜かれたのか、それとも男子相手では分が悪いと思ったのか、引っ張っていた咲の髪を離してスゴスゴと退散していった 余りにもあっさりとしたその撤退に、咲自身も拍子抜けしてしまったくらいだ それよりも、いじめっ子達が完全に立ち去ってから小さな声で「やーいやーい!弱い者いじめしてるんじゃねーよ、この臆病者どもー!」と急に強気?な態度で悪口を言い始めた男の子の姿が余りに滑稽で 咲は、泣きながら大笑いしてしまったという 京太郎「ああー!何笑ってんだよ、人が折角いじめっ子ども追い払ってやったのに!」 咲「あはははは!グスッ。ご、ごめんなさい!け、けど、だって、みんな居なくなってからそれって…あははは…!グスッ…ヒック」 京太郎「せめて泣くのか笑うのか、はっきりしてっ!」 咲「…ヒック…ヒック…ご、ごめんなさ…ヒック」 京太郎「…訂正。やっぱ笑ってもいいです」 咲「うぇ…ご、ごめん…なさ…ヒック…ヒック…うええええ…」 京太郎「おいおいおい。なんか、俺が泣かしたみたいになってるし…勘弁してくれよ。ダチに見つかったら俺が殺されちまう…」 咲「ううん。ごめんね。須賀君は悪くない…ありがとうね…ありがとう…ありがとう…」 京太郎「…」 咲「ありがとう…ありがとう…ありがとう…ありがとう…」 京太郎「…いじめられてたのか」 咲「…」 京太郎「そっか…」 咲「…」 京太郎「…あー…」 咲「…」 京太郎「…その、なんだろ」 京太郎「…あ、そうだ。あいつらって、クラスの連中だよな」 咲「…うん」 京太郎「…だよな」 咲「…うん。あと、隣のクラスの子も何人か。中学の時一緒だったんだって」 京太郎「はぁ。参ったなぁ。まさか自分のクラスでいじめが有ったとは。こえーなー」 咲「…」 京太郎「あ、悪い。えっと、別にお前が悪いって言ってるんじゃ無いぞ?」 咲「うん…」 京太郎「えっと…宮永だっけ」 咲「…うん」 京太郎「…ま、元気だせ」 咲「…」 京太郎「…」 京太郎「しょ、小学校の頃とか、こんなの無かったんだけどなー…」 咲「そうなの?私の学校は小学校でも有った」 京太郎「…お前もいじめられてた?」 咲「ううん。…私は、怖くて見てるだけしか出来なかった。…下手に手を出したら、私もいじめられるんじゃないかって…」 京太郎「そ、そうなのか」 咲「うん。…誰も助けてあげれなくて…遂にその子、転校しちゃった」 京太郎「おお、ヘヴィ…」 咲「…罰が当ったのかな。私があの時、あの子を助けてあげなかったから、私もいじめられるようになったのかな」 京太郎「…」 咲「…だからみんな、私の事助けてくれなかったのかな」 京太郎「あー…」 京太郎「いや、ただ単に知らなかっただけじゃね?」 咲「…え?」 京太郎「いや、だって。現に俺、今助けたじゃん」 咲「…須賀君みたいな人、中々居ないよ。私も須賀君みたいに勇気が有ったら…」 京太郎「有っても、宮永じゃどうにもならねーだろ」 咲「…だよね」 京太郎「…」 咲「…」 京太郎「えっと…ま、まあ、今回は女子相手だったし…俺でもどうにかなりそうかなって思っただけだし」 咲「…」 京太郎「う、運が良かったんだよ。もしあれが番長グループみたいのだったら、俺だってどうしてたかわかんないし…」 咲「…番長グループなんて有るの?この学校」 京太郎「…いや、流石に無いでしょ」 咲「だよね」 京太郎「…お前、結構ツッコミ上手いな」 咲「ごめん」 京太郎「…と、とにかく!怖いものは怖いんだ。そうやって、いじめられてた子を気にしてやれるだけ、お前は優しくていい奴なんだろ」 咲「けど…結局その子は…」 京太郎「その子を救うためにやりようとかは有ったのかもだだけどさ。だからって、宮永みたいな子にそんな、他人のために全てをかけていじめっ子と戦えなんて、言えないだろうし…」 京太郎「大体、その子だって転校して転校生デビューしてるかもだろ!」 咲「だったらいいけど…」 京太郎「だったら、その先はその子次第だ!あー!もうこの話やめやめ!暗い話しても良い事無いって!明るい話しようぜ!」 咲「明るい話って…」 京太郎「例えば、最近したおもしろい遊びとか!」 咲「最近…いじめられるから、なるべく早く帰るようにしてた。お昼休みとかは、教室で寝たふりして…」 京太郎「ですよねー!俺が悪かったですすみません!!」 咲「…」 京太郎「あう…」 咲「…えっと…」 京太郎「…うん」 咲「す、須賀君は…どんな遊び…とか?」 京太郎「…あー…そうだなー…」 咲「…」 京太郎「…例えば、この間の金曜に生物の授業で、先生が川の生き物の話してたろ。ほら、トビケラの幼虫がどうのって」 咲「うん。ザザムシの事だね。長野くらいなんだよね、あれ食べるの。たまにスーパーに置いてるけど、気持ち悪い…」 京太郎「…次の日にダチと川に行って釣りしてたんだ。そこでなんとなく石ひっくり返したらザザムシが居て…」 咲「…まさか、食べた?」 京太郎「じゃんけんして負けたほうが食べるって話になったんだけど、食べ方が分からなくて…取り敢えず揚げれば食えるだろうって焚き火起こして素揚げしてみたら、爆発した」 咲「なにそれ怖い」 京太郎「いや、マジで大惨事だったぜ。飛び散ったなんかの汁と油が驟雨の如く降り注ぎ横殴りに俺ら…ああ、全部で4人いたんだけど…を襲ったから」 咲「いきなり難しい言葉使い出した」 京太郎「そんで慌てて一旦避難しようとしたら、ダチが袖に油入れた小鍋引っ掛けて」 咲「大事件じゃん」 京太郎「それをかわそうとしたら俺、ジャケットに火が燃え移る」 咲「うわ」 京太郎「ダチ爆笑」 咲「爆笑なんだ」 京太郎「慌てふためく俺に、ダチが叫ぶんだ。川に飛び込め!!」 咲「脱ぐって選択肢は無かったの?」 京太郎「もう必死で」 咲「なるほど」 京太郎「で、飛び込んだはいいんだけど、水深がメチャクチャ浅くて、膝までしか濡れなくて」 咲「駄目じゃん」 京太郎「また友人爆笑」 咲「愛されてるね」 京太郎「どうすんだよこれ!!って半切れで叫んだら、全員でバケツに入った水ぶっかけて来やがってさ」 咲「最初からそれで良かったよね」 京太郎「そのあとでみんなして俺を抱えて一番水深深くて急流なとこに投げ込みやがった」 咲「男の子って凄い」 京太郎「為す術もなく流される俺」 咲「自然の脅威だね」 京太郎「10mもせずに岩に引っかかる俺」 咲「自然の優しさだね」 京太郎「必死こいて岩に手を着いて、ビショビショの服でみんなのとこに戻ってさ」 咲「よく風邪ひかなかったね」 京太郎「その後はもう乱闘よ。全員川に流してやったぜ。俺も流されたけど」 咲「私のいじめって、なんだか大したこと無かった気がしてきた」 京太郎「ちょっとは気が楽になったか?」 咲「え…もしかして、そのために…」ドキッ 京太郎「いや、ちょっとこの間の武勇伝を話したかっただけ」 咲「ぷっ…」 京太郎「…ま、ちょっとでも喜んでくれたんなら…」 咲「あはははははははははは!!」 京太郎「…」 咲「あははははははっはははははははははははははは!!けほっ!!ふはっ!げほげほ…っあはははははははははは!!」 京太郎「…」 咲「あははははははは!!須賀君っておもしろっ!!あはは!!あはははははははは!!」 京太郎「お、おう…」 咲「くふっ…あはは!あはははははははは!!ご、ごめ…ツボに入った…あははははは!!」 咲「はぁはぁ…」 京太郎「落ち着いた?」 咲「うん」 京太郎「そっか」 咲「うん……………………きゅふふふふ…」 京太郎「変な忍び笑いしやがって…ま、いいや。宮永って、結構明るい奴だったんだな」 咲「え?」 京太郎「お前がこんなにコロコロ表情変えてるの、初めて見た」 咲「そう…かな?」 京太郎「ああ。今のお前くらいアグレッシブな奴相手なら、誰もいじめには来ないだろ。普段人と話す時もそれくらい明るいキャラでいけよ」 咲「…けど、友達居ないし…誰とでも仲良く話せる訳じゃ…」 京太郎「…もしかして、宮永って人見知り?」 咲「…」 京太郎「…っぽいな」 咲「…うう。他人とお話する時は、どうしても気構えしちゃて…」 京太郎「…の割に、なんかお前俺相手には結構息合うよな。きもーち毒舌だし」 咲「だ、だって…なんか、その…」 京太郎「?」 咲「なんか、須賀君って、その、話やすいし…」 京太郎「初めて言われた」 咲「そう…?」 京太郎「…うーん。でも、確かにな。俺も宮永とは話ししやすいって言うか…テンポが合うんだよな」 咲「…」 京太郎「とても初めて会話したとは思えない、むしろ長年の知り合いのような…」 咲「…」 京太郎「…ああ、良い事考えた」 咲「え?」 京太郎「幼馴染」ビシッ 咲「は?」 京太郎「宮永、今から俺の幼馴染設定な」 咲「はい!?」 京太郎「実は、小さい頃から面識が有ったのです」 咲「須賀君、頭大丈夫…?」 京太郎「殴るぞ」 咲「ごめん」 京太郎「だから、俺の知り合いはお前には初めて会った人間でも、ただの他人じゃ無い」 京太郎「逆に、俺の知り合いから見ても、へー幼馴染居たんだー。じゃあこれから仲良くしてねー的な?」 咲「そう上手く行くかな…」 京太郎「大丈夫だって。俺の知り合い馬鹿ばっかだし。…それに、女の子の幼馴染って欲しかったし」 咲「それが本音!?」 京太郎「やべっ!!」 咲「…」ジーッ 京太郎「い、いやいや!そ、そそそそそんな事有りませんぞ!?」 咲「…ふふっ」 京太郎「…宮永?」 咲「…幼馴染だったら、いじめっ子から守ってくれる?」 京太郎「…」 咲「幼馴染だったら…私が泣いてる時、助けに来てくれる?」 京太郎「…」 咲「幼馴染だったら、私が困ってる時…ピンチの時…駆けつけてくれる?」 京太郎「…それって、幼馴染ってより、ゲームのお姫様と騎士の関係じゃ…」 咲「…あれ?そうかな…」 京太郎「…ま、いいけどさ」 咲「…」 京太郎「幼馴染だからな。守ってやるよ」 咲「…じゃあ、私達、今日から幼馴染だ」 京太郎「…なーんか、力関係が理不尽なことになってる気がするんですけど…」 咲「…ふふっ♪」 京太郎「…ま、いっか。それじゃあ、これからよろしくな。『咲』」 咲「!!」 京太郎「…ん?」 咲「ううん!よろしく!『京ちゃん』!!」 京太郎「うげ、京ちゃん?なんだその間抜けっぽいあだ名。初めて言われたぜ」 咲「えー。いいじゃん。可愛いあだ名だよ!」 京太郎「だって、なんだか恥ずかしい…」 咲「いいじゃんいいじゃん。京ちゃん京ちゃん京ちゃ~ん♪」 京太郎「うおーっ!なんかむず痒い!」 咲「へっへっへ~」 京太郎「覚えてろ、こうなったらこっちにだって考えがある」 咲「な~に?どうしたの、京ちゃん」ニヤニヤ 京太郎「ん。なんでもねーよ。それより、もう下校時間だ。帰らねーの? 咲「あ、そっか。そうだね。それじゃあ私はそろそろ…」 京太郎「」ニヤリ 京太郎「姫、家までお送りいたしましょうか?」 咲「」ピシッ 京太郎「」ニヤニヤ 咲「…はい?」 京太郎「姫」 咲「…ひ…め…?」 京太郎「はい。お姫様」 咲「あ、あううううう…」カアアアアア 京太郎「ぷぷっ」 咲「な、ななななななあ…」 京太郎「あははははは!なーにそんな顔真っ赤にしてんだよ!」 咲「なっ!なに言ってるのー!」 京太郎「あはははは!照れてら。可愛いぞー、ひめー」 咲「~~~~~っ!!」プルプル 京太郎「お?どうした?ひーめ!ひーめっ!宮永姫!」 咲「うわあああああん!もうっ!もうっ!もうっ!もうっ!」バシッバシッバシッ 京太郎「あはははは!いてっ!いてててて!こらやめろ姫!」 咲「う~~~~っ…」 京太郎「ん?どした?ひ…」 咲「うわああああああああああああああああん!京ちゃんのばかあああああああああああああああああああ!!」ダッ 京太郎「あー…やりすぎたか」 咲「いじわるーーーーーーーーーーーーーーーー!!」タッタッタッタ… 京太郎「咲ーーーーーー!気を付けて帰れよーーーーー!!また明日なーーーーーーーーー!!」 咲「…と、こんな感じ」 照「そっか。良かったね、咲…」 咲「うん!」 照(良かった…うん。本当に良かった…咲に、味方が…) 咲「えへへへ。ちょっとおっちょこちょいでイジワルだけど、本当格好良かったんだよ」 照「そう…良かったね…良かった…良かった…」 咲「お姉ちゃん…?」 照「うっ…うっ…うっ…」ポタ…ポタ… 咲「お姉ちゃん?なんで泣いてるの…?」 照「良かったよぉ…本当に良かったよぉ…嬉しい…こんなに嬉しいのは生まれて初めてだよぉ…本当に…良かった…」 咲「お姉ちゃん…」ギュッ 照「うええええええええええええええええええええええん!!」 咲「…ありがとう、お姉ちゃん。…私のために泣いてくれて」 照「えええええええええええええええん!!えええええええええええん!!!ええええええええええええええええええええええええええええええん!!」 その後、イジメはぱったりと止んだ。例え傍に京太郎が居なくてもだ。要は切掛だったのだ いじめっ子に怯えずに立ち向かう意志さえ見せれば、たった一握りの勇気さえ示せば、それだけで打ち勝てたのだ その日から咲は少しづつ変わってゆく 京太郎を通じ、いつしか友人が出来た その友人から紹介され、更に友人が出来た そして遂には、咲は自分から友人を作ることにさえ、成功したのだ 泣いてばかりいた弱虫は、いつしかその名の通り、花の咲くような満面の笑顔を浮かべるようになっていた まるで今までの分を取り戻すように、今、彼女の前には沢山の「楽しい事」ばかりが広がっている そして だから だから 咲は、気付かない 気付かなかったのも、仕方ない 仕方ない 仕方ない 咲は、悪くない 悪く、ないんだ… 数ヶ月後、咲はすっかりクラスに馴染み、家でも照に嬉しそうに友人の話をするのが日課になっていた 国語の点数で良い点を取った事、次から体育の授業がマラソンなので嫌な事、クラスで図書委員に立候補した所、満場一致で当選できた事、休み時間に友達としたおしゃべりの事… 嬉しかったことも、楽しかった事も、嫌な事でさえも、目をキラキラと輝かせながら、大好きな姉に語る咲 特に、『京ちゃん』の話題では、その目の輝きが一層増し、照には眩しいくらいだった 穏やかな気持で咲の話を聞き、相槌を打つ照 咲「それでね!それでねっ!京ちゃんったら…」 咲「その時、京ちゃんってば…」 咲「そうしたら京ちゃんが…」 咲「京ちゃんのお陰で…」 照「ふふ。咲は、本当に京ちゃんの事が大好きだね」 咲「んなっ!」ビクッ 照「ははは」 たまにからかってやると、ゆでダコのように顔を真っ赤に染める妹が愛しい 咲「…」 照「咲?」 咲「…私、将来は京ちゃんのお嫁さんに…」 照「そ、そう…か。あはは」 ガチ過ぎた 咲「そ、その…お姉ちゃん?あの、やっぱ、付き合う時って、やっぱり、その、わ、私から告白した方がいいのかな…」 照「…ねえ、咲」 咲「うん?」 『京ちゃん』 咲にとってのヒーロー 照「…須賀君の事、ちゃんと捕まえておかないと駄目だぞ」 咲「うん!!」 ならば、当然照にとってだって、ヒーローだ 照「そうだ。今度家に呼んだら良いよ。お姉ちゃんにも、須賀くんを紹介して欲しいな」 咲「もちろんだよ!!」 …最愛の妹を救ってくれたのだから 照「じゃあ、明日学校が終わったら連れておいで」 咲「えー!そ、そんなに急に!?こ、心の準備が…」 照「ふふ。そんなこと言ってていいの?」 咲「?」 照「なるべく早く彼氏にしちゃわないと、誰かに取られちゃうかも」 咲「っ!それは嫌!!」 照「でしょ?だったら、少しでも早く、沢山、仲良くならないと。…ね?」 咲「うん…」 照「大丈夫。咲は可愛いよ」 咲「…」 照「私が保証する。がんば」 咲「お姉ちゃん…」 照「…ね?」 咲「…ん。じゃあ、明日京ちゃんを連れてくる」 照「うん」 咲「けど、お願いがあるの、お姉ちゃん」 照「何?お姉ちゃんに出来る事なら、なんでも聞いてあげる」 咲「京ちゃんにお姉ちゃんを紹介したいから…明日は、早く帰ってきて」 照「…」 咲「最近、お姉ちゃんたまに遅いから…一応、お願い」 照「…」 咲「…大好きな人を、大好きなお姉ちゃんに紹介したいから。大好きなお姉ちゃんを、大好きな人に紹介したいから…だから、明日は早く帰ってきて欲しいの」 照「…」 咲「…駄目?」 照「…うん。わかった。なら、明日は急いで家に帰るよ」 咲「本当!?」 照「うん。…ふふ。大好きな妹の、大好きな人だもん。紹介してくれるのを楽しみにしてるよ」 咲「やったあ!ありがとう、お姉ちゃん。…私、頑張るね!」 照「うん。頑張れ、咲」 咲「…うう。けどなんか緊張してきた」 照「はは。大袈裟だよ」 咲「むうー!だってだって!」 照「咲」 咲「…どうしたの?お姉ちゃん」 照「…」 咲「?」 照「お姉ちゃんは、いつだって咲の味方だから」 咲「…ありがとう。けど、お姉ちゃん。私だって、いつだってお姉ちゃんの味方!」 照「…そう。ありがとう、咲」 咲「えへへ。あ、そうだ。あとね、お姉ちゃん。もう一個お願い」 照「ん?」 咲「今日、お姉ちゃんと一緒の布団で寝てもいい?」 照「…またか。中学生にもなって咲は甘えん坊だな」 咲「えへへ。だって、お姉ちゃんあったかいんだもん」 照「ふふ、仕方ないな。それじゃあ、一緒に寝ようか。お風呂に入って着替えておいで。私はその間に宿題を終わらせるから」 咲「うん!じゃあ、お風呂入ってくる!」 照「ああ、行ってらっしゃい」 照「…」 翌日、咲は約束通り京太郎を家に連れて来た 自慢の姉を紹介する、と言って だがしかし、その日、午後6時に京太郎が家を出るまでに照が帰ってくる事は無かった 咲が京太郎を家に誘っているのと同時刻 照(授業、終わった…!!) 帰りの挨拶と共に、弾かれたように椅子から立ち上げる照 照(早く、帰らなきゃ。今日は咲が『京ちゃん』を連れて来るんだ!早く…!早く帰らなきゃ!!) 授業道具はホームルーム中にこっそりと鞄に詰め終わっていた。そそくさと教室の後ろ側のドアへと向かう 照(急げ…急げ…急げ…急げ!!)ガラッ 教室のドアを開ける。さあ、あとは廊下を一目散に駆けるだけ… 「はーいちょっと待った、宮永さん」 …肩を強く掴まれた 照「痛…」 「あ、ごめんごめーんねー。けど、そんなに急いで帰ることないじゃんさー」 「そうそう。私らとー遊んでこうよー」 「あんたの付き合いが悪いから、こうしてわざわざ無理矢理にでも遊びに誘ってやってるんだよ。喜べよ」 「いつもの遊び場に行こうか。屋上ね」 照「…離して」 「あ?」 照「…お願い。今日はどうしても大切な用事があるの。明日だったら付き合うから…お願いだから、今日は許して」 「ざけんなっつーの。アンタの都合なんて知ったこっちゃねーんだよ」 「今日は私らの機嫌が悪いの。そんだけだから」 「遊び道具が生意気な口聞いてんじゃねーぞ」 照「…」 「なに?その目」 「調子にのってるんじゃ…」 照「っ!!」バシッ 「うわっ?」 照「…!!」ダッ 「逃げた!!」 「このガキ…!捕まえろ!」 「こいつ!」ガシッ 照「きゃっ!離して!お願い!お願いだから!!」 「うっせー!おい!早く連れてくよ!」 照(なんで…) 「なんだよお前ら!こっち見んな!」 照(なんで、いつも誰も助けてくれないの…?) 照「いやっ!」 「うぜえ!」パンッ 照「…っ!」 「黙った?よーし、それじゃあ行っくよー」 「ったく。普段抵抗なんてしない癖に…おもちゃの分際で…」ブツブツ そう 少し前から、照はいじめられていた 運動は出来ないが、頭が良く、器量も優れ、人格者 そんな照が、友人達から距離を置き(実際には当時いじめられていた咲のために家に早く帰るようになっただけだが)、孤立した あんなにムカツク女が一人ぼっちだ なら、今の内にいじめてしまえ そうして少しずつクラスの不良達にいじめられ始めた照は、徐々に友人達から本当に距離を取られ始め 今では、完全無欠のいじめられっ子 そして、いつしかその不良達の彼氏がカラーギャングだと言う噂が流れ始めた頃 照の味方は誰も居なくなっていた まるで、いつかの妹のように 不良達にサンドバックにされながら、照は考える 照(ごめん、咲。お姉ちゃん、今日、間に合いそうにない…かも…) 髪を掴まれながら、考える 照(ごめんね。ごめんね。咲。お姉ちゃん、馬鹿だよね…昨日あんな事言っておいて…ごめんね…) 腹を殴られながら、考える 照(折角咲が勇気出してくれたのに、ごめんね。『京ちゃん』と、仲良く遊んでてね。お姉ちゃんのせいで気まずくなったり、しないでね…) 倒れ伏し蹲りながら、考える 照(…はは。ごめん…ごめんね。ごめんね。咲…お姉ちゃん、最悪だ) 背中を蹴られながら、考える 照(…お姉ちゃん、咲が…ちょっと、羨ましいって思っちゃった…) 考えるのは、絶望に潰れそうな自分を支える唯一の希望 大切な妹がくれた、不確かな希望 『いつか、誰かが私を助けてくれないかな』 『いじめっ子を追い払って、私をここから助けだしてくれる人が』 『泣いてる時に助けに来てくれて、困ってる時、ピンチの時に駆けつけてくれるゲームに出てくる騎士みたいな人』 『友達を作ってくれて、笑わせてくれて、勇気をくれる人が…」 『いつか、私にも『京ちゃん』が現れてくれないかな…』 その日、照が家に帰り着いたのは、夜の8時を過ぎてからの事だった 結局、不良達が照への暴力に飽きて彼女を開放したのは、午後6時半を過ぎた後 不良達も心得たもので、面倒を避ける為に顔などの傍目に見える部分に痣を付けることはしないでくれていたが 鍛えていない照の身では、殴られたダメージが抜けて歩けるようになるまで、そしてその足で家まで帰り着くまでには、1時間強の時間を有したのだ 照「咲…咲…」 未だ痛みの引かない身体を引きずって、うわ言のように妹の名を呼び、帰宅する照 どういう訳か、日の落ちたこの時間にも関わらず、家の中は暗く、光が漏れてこない 照「二人とも、まだ帰って来てないのかな…」 最近帰りの遅い両親が、今日もまだ帰宅していないのだろうかと考える 照「…けど、咲は今日、『京ちゃん』を家に連れて来てるから家に居るはずだし…」 ズキン。頭に鈍い痛みが走る。思考が上手く回らない。まあいいや。早く家に帰って、ゆっくり休もう。ズキン。ああ、お腹も痛い。思いっきりパンチされたし… 照「…畜生、あいつらめ…」 不良達のニヤニヤとした厭らしい笑いが頭から離れない。ズキン。鈍い痛みが増してきてイライラする ああ、なんてどうしようもない奴なんだ私は。咲との約束を破っておいて、こんな怖い顔をして家に帰るつもりか こんな、こんな…ああ、マズい。駄目だ。お腹が痛い。頭が回らない。イライラする。ズキン。痛い。腹が立つ。痛い。痛い。痛い。ズキン… ガチャッ 扉が開く。痛い。マズい。咲だ。急げ。平気な顔を作れ。ズキン。ああ痛い…痛い…疲れた…痛い… 照「…」 咲「あ、お姉ちゃん…」 照「…咲」 咲「…おかえり」 照「…ごめんね。遅刻しちゃった」 咲「…」 照「きょ、『京ちゃん』は、連れて来れた…の?」 咲「…うん。もう帰ったけど」 照「そっか…」 咲「…うん」 照「そっか…うん。そっか……」 咲「…ねえ、お姉ちゃん」 照「うん?」 咲「…どうして遅れたの?」 ズキン @ 照「…」 咲「…」 照「…」 咲「…」 沈黙が痛い。重い。息苦しい。この沈黙は、咲が怒っている証だ。こうなった咲はしつこい。なんとか誤魔化さなきゃ。それに、今日の結果も知りたいし 照「それは…」 咲「それは?」 照「…」 咲「なんでそこで黙るの?」 照「えっと…」 ああ、けどマズいなこれは。頭とお腹が痛くて、思考が全然まとまらない。咲に真実を知られるのだけは避けたいし… 照「その…」 咲「なにさ」 けど、どうやって言い訳しよう。咲は人の気持ちには鋭い子だ。下手なこと言ったらすぐに感づかれちゃうよ。こんな事なら帰る前に言い訳を用意しておくんだった 照「あの…」 咲「言えないような事なの?」 照「いや、そういう訳じゃないんだけど…」 咲「なら早く教えてよ…!!」 ああ、マズい。マズい。咲が苛ついてるよ。ごめんね咲。だけどお姉ちゃんも今結構いっぱいいっぱいなの。早く横になって痛いのを回復させなきゃ… 咲「なんで黙ってるの!!」 ああ、咲がなにか言ってるよ。怒ってる。当然だよ、私が悪いんだから。ごめん咲。ごめんね、咲。駄目なお姉ちゃんでごめんね。本当にごめんね 咲「お姉ちゃん!!」 いじめられるのって、こんなに辛いんだね。痛いんだね。ごめんね、咲。お姉ちゃんが悪かったよ。あの時、咲がいじめられていた時、私は強引にでも咲を助けるべきだったんだ 咲「…お姉ちゃん?」 私が助けてあげるべきだったんだ。あの時、咲がいじめられてるって知った時、その瞬間にでも、いじめっ子の家にでも殴りこんで、取っ組み合いしてでも、咲をいじめから救うべきだったんだ 咲「お姉ちゃん!」 だって、こんなにも、こんなにも、いじめは辛いものだったんだから。痛いものだったんだから。咲の立場を思いやってる風に見せかけて、結局私は自分が可愛いだけだったんだ 最愛の妹を見殺しにして、『京ちゃん』が現れなきゃ、咲は未だにいじめられてて、私は友達と仲良くやってて、それで、それで… ……………そ れ で 私 は 咲「お姉ちゃん!!!」 ドサリ 目が覚めた時、照は自室のベッドに眠っていた 傍には泣きじゃくる咲の姿。…取り敢えず、気付いたことを知らせようと声をかける 照「…咲」 咲「お姉ちゃん!?気付いた!良かった!」 照「…私、は…」 咲「心配したんだよ!?いきなり倒れたから…大丈夫?」 照「ん…あいたたた…」 起き上がろうとして身体に痛みが走る。起き上がるのを断念して、もう一度横になる …と、そこである事に気付く 照「…寝間着になってる。咲が着替えさせてくれたの?」 咲「…うん。汗が凄かったから」 照「…」 咲「…」 照「…って、言う事は…」 咲「…うん」 照「…」 咲「…」 照「あの、さk…」 咲「…あの、お姉ちゃん、その…み、見ちゃった…んだけど…」 照「…」 咲「…」 照「…」 咲「…お、お腹とか…青くなってて…」 照「…」 咲「す、すり傷とかも、いっぱい有って…」 照「…咲」 咲「そ、その…み、見覚えって言うか、その…経験が有る痣って言うか…」 照「…」 咲「…お姉ちゃん、いじめられてるの?」 照「…」 咲「なんとか言ってよ!」 照「咲」 咲「なんで!?いつから!?あんなに友達がいっぱいいたお姉ちゃんが!なんでいじめられてるの!!?」 照「咲!」 咲「わけわかんないよ!私みたいに友達の居なかった子ならまだわかるとして、お姉ちゃんはクラスの中心だったじゃない!ちょっと前までは友達だっていっぱい連れて来てて!!」 照「咲!」 咲「そういえば、お姉ちゃんが友達連れて来なくなったの、私がいじめられてるのをお姉ちゃんが知ってからだよね!?ずっと気になってたの!もしかして、私がいじめられてたのに関係してるんじゃ…」 照「咲!!!!」 咲「っ!!」ビクッ 照「…関係ないよ。それは」 咲「…嘘」 照「本当」 咲「嘘だよ!!だったらなんで目を伏せたの!?お姉ちゃんの嘘を吐く時の癖…」 照「咲、質問に答えて」 咲「…っ」 照「…お父さんとお母さんには、連絡した?」 咲「…うん。した。二人ともすぐ帰るって」 照「なんて言って?」 咲「えっと…お、お姉ちゃんがいきなり倒れたって…」 照「そう。なら、咲。口裏を合わせるんだよ。私は貧血で倒れたの。いい?いじめの事なんて絶対言っちゃ駄目」 咲「で、でも…」 照「咲だってわかってるでしょ?今、お父さんとお母さんは凄く難しい状態にあるの。二人に余計な心配をかけちゃ駄目」 咲「け、けど、お姉ちゃん、その痣けっこう酷いよ…?私の時なんかと比べ物にならない位酷い怪我。最近たまに帰ってくるのが遅いのって、もしかしていじめにあってたからなんじゃ…」 照「…咲は賢い子だね。そのくらい賢いなら、わかるでしょ?今二人に私がいじめにあってるなんて知られたら、また喧嘩になっちゃう」 咲「けど!!」 照「…最悪、二人が離婚しちゃうかもしれないんだよ!!!!」 咲「…え?」 照「…」 咲「…り、りこ…ん…?」 照「…っ」 咲「り、離婚って…な、なにそれ…なんでお姉ちゃんがそんな事…」 照「…まだ決まったことじゃないけどさ。…二人が、離婚の話ししてるの、この間聞いちゃった」 咲「そ、そんな…」 照「…ねえ、咲。今私がいじめられてるなんて知られちゃったらさ。…私をいじめから遠ざけるとかそんな口実にされて、二人が別居なんて事にも…」 咲「そ、それ…は…」 照「…それは嫌でしょう?」 咲「い、嫌だよ!そんな…そんな事…」 照「じゃあ、やる事は一つしかないんだ」 咲「…」 照「…ね?」 咲「お姉ちゃん、大丈夫なの…?」 照「大丈夫だよ。今までは咲の言ってたように、私は人気者だったんだ。こんないじめ、一過性の物だよ。そうだ。はしかみたいなものだよ」 咲「…」 照「それより、京ちゃんとは、どうだったの?」 咲「へっ!?」 照「ふふ。うちで二人きりだったんでしょ?なんか素敵な事なかったの?」 咲「な、なんにもなかったよ!いきなり何言ってるのお姉ちゃん!」 照「ははは。何だ残念。咲、なら、もう一回連れておいでよ。今度はいじめにあってじゃなくて、普通にすっぽかしてあげるから」 咲「へ?」 照「二人っきりのチャンスはあんまりないかもよ?」 咲「~~~~~~~~!!」ボッ 照「あはは。顔真っ赤だ」 咲「もう!お姉ちゃんのいじわる!もう知らないんだから!!」 照「ごめんごめん。…さ、それじゃあ、咲もそろそろ寝る準備しておいで。お母さんたち帰ってきたら、私から説明はしておくから」 咲「…」 照「咲」 咲「…うん。わかった」 照「いい子だ」 咲「…」 照「心配しないの」 咲「…」 照「…ね?」 咲「…うん。わかった」 照「ん。じゃあ、おやすみ。咲」 咲「…」 咲「…おやすみ。お姉ちゃん」タタタタタ 照「…」 照「…ふう」 照「…」 照「…ごめんね。咲」 こうして、日常は守られた。それは子供たちが家族の離散の危機を防いだ事を意味し、同時に照の受難の日々が続く事も意味する いじめは続く。受難は続く。万人に悪者をやっつけてくれる都合の良いヒーローが駆けつけてくれるなんてお伽話は無い 『京ちゃん』は現れない 照はいじめられ続ける いじめは次第にエスカレートし、照は、次第に精神を病み始める。イライラすることが増え、性格も捻くれ始めて来る やり場の無い怒りが彼女自身を飲み込み始め、次第に周囲への態度が変わり始める 自分の生まれた土地が憎い。周囲の人間が憎い。今の内に精々喜んでおけ。いつか必ず見返してやる、この田舎者共め… そんなある日、照は遂に出会うのだ 彼女にとっての救いの神に ヒーローに 彼女だけの、『京ちゃん』に それは、ある秋の放課後の出来事だった この日、照は教室の掃除当番で、いつものように誰とも会話する事無く、黙々と掃除を終わらせてすぐ、そっと消えるように教室を出た 今日は不良達は昼から何処かに遊びに行ったのか姿を見せず、照にとって久しぶりの恐怖を伴わない幸運な数時間を味わえた。無事に一日を終えられた事にほっと一息を吐く とは言え、既にこの教室には彼女が友人と思える人間は居ない 自分を不良達からのスケープゴートにして青春を謳歌する同年代の人間達を心の底で呪いながら、帰宅の準備を早々に済まし教室を後にする 掃除で遅れた分、早く帰りたい。この腹立たしい同年代共の顔を見ずに住む場所へ。唯一の味方が居る場所へ 一刻も早く、帰りたい そう考え、近道をしようと大通りの公園を通り抜けようと考えたのが悪かった 「おっ。宮永じゃん」 「本当だ」 照「っ!?」 照は知らなかった。その公園が最近、不良達の溜まり場になっていた事を 「馬鹿な奴だねぇ。うちらがこの辺で遊んでんの、知らなかったんだ」 「いじめて欲しくて来たじゃないの?いじめられ過ぎてドMに目覚めたとか」 「けけけけ!きもっ!」 照「……」スッ 「おい、どこ行くんだよ」 「無視しないでくれますぅ~?宮永さん」 ニヤニヤと不快な笑みを浮かべ、照を四方から囲む4人の不良達。随分と手馴れている。大方こうやって弱そうな獲物を囲ってカツアゲでもしていたのだろう 照「…どいて」 「ああ?」 「何言ってんのコイツ」 イライラが爆発し、勢い余って強い口調が出てしまう。言った瞬間にしまったと思った 「何偉そうな口利いちゃってる訳?」 「学校外だから殴られないとでも思ってんの?」 「調子のんなよ」グイッ 照「あっ…!」 案の定、すぐに実力行使が来た。4人の内一人が、徐ろに照の髪を引っ張ったのだ。慣れた痛みだが、思わず細い悲鳴が出てしまう。…悔しい 「ノコノコいじめられに来やがって。丁度いいや。金よこせよ。恵まれない子供達に愛の募金ってやつ」 照「やだ…!」 「この雑魚が!反抗してるんじゃねぇよ!」グンッ 照「あぐっ!?」 髪の毛を掴んだまま振り回される。プチプチと何本か髪が抜ける音と、激痛が走る そこが限界だった。今日は久しぶりにいじめられない筈だったのに。早く帰って咲とゆっくりお話する筈だったのに 自分の情けなさに腹が立つと同時に、遅ればせながら目の前の4人に対する怒りが鎌首をもたげてきた 照(なんで私が、こんな底辺みたいな屑共らにいいようにいじめられなきゃいけないんだ…!!) 照「やめてよっ!!」バシッ 「うわっ!?」 「こいつ!!」 照「も、もうやめてよ!!どっか行ってよ!!なんで私をいじめるの!!!他の人でもいいじゃない!!!」 「うるせえ!お前がムカツクからいじめるんだよ!!」 「理由なんかあるか!!」 照「いい加減にしてよ!!!」 何を言っているのかよくわからなかった。口から出るのは、今まで腹の底に溜まっていた黒く卑屈な感情。憎悪。自分でも驚くぐらい醜い言葉が次々に飛び出す 照「ムカツクって言うなら、他のクラスの奴らだってムカツク奴らいっぱい居るでしょ!?私なんてもう貴方達に逆らったりもしてないよ!?他の人をいじめてよ!!」 「はぁ?何言ってんだコイツ」 照「どんなに殴られても、いじめられても!今まで私、貴方達にそんな気に触るほど反抗したことあった!?敵対したことあった!?」 照「お金だってそんなに持ってないし!いじめる意味無いじゃない!!」 照「お金欲しいならもっとお金持ってる子にたかってよ!ストレス解消したいなら、もっとなんの取り柄もないような弱い子いじめてよ!!」 照「私『達』ばっかり狙わないでよ!!」 「うっぜ。何だコイツ」 「顔面行っとく?」 「いいね。やろやろ。最近コイツ殴られてもスカした顔する様になってきたから、生意気だったんだよね。いきなりキレられてマジムカツクし」 照「っ!!」 照(なんで…!どうして…!どうして私達ばっかり、こんな目にあうの!?私ばっかり不幸な目に会うの!?なんで!?どうして!!?) 「おい、宮永」 照「な、なに…?」 「どうしてお前をいじめてるか教えてやろうか」 照「…」 「お前が『お前』だからだよ。特に理由なんて無いの。強いて言うなら、浮いてるからかな?誰からも距離があるから、いじめやすいんだよ」 照「…っ!!」 「ねーねー。後で彼氏に連絡しようか?何人か飢えてるの連れてきて、ハメ撮っちゃおうよ。高く売れるかも」 「おっ。いいねー」 照「ひっ!?」 「さ、そんじゃやりますかー」 照「い、いや…」 照「来ないで…」 照「誰か…」 照「助けて…」 金髪「何してんの?」 照「…えっ?」 「…ああ?なんだこの金髪」 金髪「いや、お姉さんたち何してんのって」 「すっこんでろよチビ。格好付けてナイト気取りか?お姫様よりちいせー奴がなにしてもダッセーし、そんなんしてもモテねーんだよキメーな」 金髪「いや、そんなつもりじゃねーし」 「見てわかんないのかよ、アタシら今、カツアゲやってんだよ。わかったらとっととどっか行けよガキ」 金髪「いや、カツアゲにしてはちょっとバイオレンス感多くねえっすか?」 「ふざけたガキだな。お前からも毟ってやろうか?」 「ナマ言ってんじゃねーぞ?アタシの彼氏はカラギャンやってんだぞ。テメーなんか速攻ボコられるからな」 金髪「…」 「何黙ってんだよ」 金髪「早くどっか行けよ。俺はこの子に用が有るんだよ」 「ああ!?」 金髪「怒るぞ」 「ふざけんなよ。今から彼氏呼ぶわ。ボコって貰うから覚悟しろよ」 金髪「いいのっかなー」 「なんだよ」 金髪「俺は『あの』佐藤さんに可愛がって貰ってるんだぜ」 「!?」 「さ、佐藤さん…!?」 「『あの』佐藤さんって、もしかして『あの』福西組の佐藤さんの事…か?」 「あ、『あの』狂犬で有名な佐藤さんか…」 「や、やべえな…」 金髪「そうそう。その佐藤さんに可愛がって貰ってる俺が、どこの誰だか知らねーがお前らの彼氏?にやられたって言ったらよ。お前、そのカラギャンごと潰されるかもよ」 「くっ…」 金髪「ほら、今ならまだ無かった事にしてやるから。早くどっか行け馬鹿野郎」 「…くそっ!行くぞ!」ダッ 「あ、待ってよ!!」ダッ 照「…」 金髪「…行ったか」 照「…」ポカーン 金髪「…ふう」 照「あの…」 金髪「…佐藤・鈴木・田中はどこにでも居る…」ボソッ 照「…はぁ?」 金髪「ふへぇ…流石にビビったぁ!福田組ってなんだよ。あれか、爽やかヤクザか。マジビビったわー。退いてくんなかったらどうしようかと思ったよ」 金髪「女とは言え、俺より年上だし4人だしなぁ…」ブルブル 照「君…」 金髪「あ、すみませんねお姉さん。本当はもっと格好良い助け方したかったんですけど、4人相手はちょっと…」 照「…どうして私を助けてくれれたの?」 金髪「へ?ん~…なんでって…」 照「…」 金髪「…なんとなく?」 照「…」ズルッ 金髪「…」 金髪「…うん、なんとなくだ。なんとなく…」 京太郎「…なんとなく、お姉さんが知り合いに似てたもんだから……」 それが、照と、『照の京ちゃん』との出会いだった 照「…」 呆気にとられ固まる照に、声をかける京太郎。心配そうな様子の中にも、少しだけ得意気な表情が見え隠れしており、それが幼い感じがして、照は可愛いらしいと思う 京太郎「…ところで、うわ。お姉さん、大丈夫?怪我してない?」 照「…」 京太郎「ああ、ほら。ちょっとそこのベンチに行って座ろうか。消毒液と絆創膏が鞄の中に入ってるから、怪我してたら言ってくれたら使っていいから」 照「…」 京太郎「ほら、な?歩ける?」 照「…うん」コクン 京太郎「そっか。よし、それじゃあ行こう。な?」 照「…」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…どうかした?」 照「…やっぱりあるけない」 京太郎「…そうっすか」 腰が抜けていた 照「…」 京太郎「…参ったな」 照「…」 京太郎「…ほら。手貸すから、ゆっくりで良いから歩こう?な?…ここに居たら、目立ってしょうがない」 照「…うん」 京太郎「ん」スッ 照「…」スッ 京太郎「よし、それじゃあゆっくり歩くよ?」 照「…」コクン スタ スタ スタ 京太郎「…」 照「…」 照「…初めてだ」ボソッ 京太郎「…ん?なんか言った?」 照「…ううん。なんでもない」 京太郎「…そっか」 照「…うん」 照「…初めて男の子に手、握られちゃったなって」 京太郎「って!なんでもなくねーじゃんか!」ズサッ 照「…ふふ」 京太郎「え、ちょ、お、おれ、その、そんなつもりじゃなくって!その!」ワタワタ 照「冗談だよ。もう一人で歩けるから。…ありがとう」 京太郎「…うう。なんか、いきなり気恥ずかしくなってきちまったじゃんよー…」ブツブツ 照「…ありがとうね」 京太郎「…」 照「…初めて、誰かに助けて貰ったなって…」 京太郎「…そっか」 照「…」 京太郎「…ん。ベンチ、着いた。お姉さん、座る。傷見せる」 照「なんでカタコト?」クスッ 京太郎「…」プイッ 照「…照れてるの?」クスッ 京太郎「むっ。…って、俺、一応恩人ですよね?お姉さんの」 照「はは。ごめんごめん」 京太郎「…ったく。これだから年上は苦手なんだよ…」ブツブツ 照「そういう君は、一年生?」 京太郎「そうっすよ。はい、傷無いか見せて下さい」 照「今日は大丈夫だよ。髪の毛掴まれただけだし」 京太郎「…『今日は』?」 照「あっ…」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…今日だけじゃないのか」 照「…」 京太郎「…いじめられっ子ってやつ?」 照「…」 京太郎「…そっか」 照「…」 京太郎「…あの、俺…」 照「あっ!!」 京太郎「うおっ!?」ビクッ 照「お、おもいだした!今日ははやく家にかえらないといけない用事があったんだった!」 京太郎「棒読み…」 照「というわけで、ごめんね!わたしはこれで帰るから!」 京太郎「あ、ちょっと…」 照「本当にごめん!それじゃあバイバイ!!」ダッ 京太郎「ちょっと!お姉さん!?おーーーーーーーーーーーい!!」 照「~~~~~~~~っ!!」タッタッタッタ 京太郎「…」 照は逃げた その金髪の少年との会話を打ち切って、逃げてしまった 照「何故そうしちゃったんだろうね」 淡「…」 照「彼が、会って間もない自分の問題に、深くまで踏み込もうとした気配を察したからかな」 照「正直に話しても、どうせいじめられっ子な自分を馬鹿にされるのがオチだと思ったのかも?」 照「ううん。違う。きっと、幻想を抱きたかったから」 照「この世には、私の悩みなんて何の問題でもない風に振る舞って、どんな困難からでもあっさりと私を救ってくれるヒーローが存在するんだって、そんな都合の良い幻想を信じていたかったんだ」 照「いじめから守ってくれて、孤独から救ってくれて、友達を作ってくれて、一緒に笑い合ってくれる。そんなヒーローが居ると信じていたかった」 照「私さえ拒絶しなかったら、そんな救いは有るんだって、私にも『京ちゃん』が出来る可能性はあったんだって、未だに信じていられるからって」 照「今思えば、結局彼の事を信じていなかったんだろうなって思う。どうせ気まぐれで私を助けてくれただけなんだって…その時は、まだ」 照「けど、私はその瞬間、同時に浮かれてもいたんだ。まるで全ての悪い事が、この瞬間に解決されたんだって勘違いしたってくらいに」 照「家に帰った時、私は満面の笑顔だったらしい。妹が、お姉ちゃん、どうしたの?って聞いてきてさ」 照「クスクス笑う妹を不思議に思った私が逆に尋ねたら、お姉ちゃんなんだか嬉しそう!…って、あの子まで嬉しそうに笑ってて」 照「笑顔の理由は教えてあげなかったけどね。まだこの記憶を独り占めしていたかったんだ。思えばこれがまたややこしい事になった原因かもしれないんだけど」 照「…けど、その日は。その日だけは本当に嬉しくて、久しぶりに二人で笑い転げまわったよ」 照「…本当に楽しかった」 照「しかも次の日、珍しい事にいじめっ子達は私を無視したんだ。…そうだな。訂正しよう。私と咲が楽しく過ごせた期間は、もう少し長かった。数日ほどかな。相変わらず友達は居なかったけどね」 照「そうだ。数日ほどいじめは無かった。私はホッとしたよ。あれがきっかけで、遂にいじめが無くなったんじゃないかと」 照「…けど、そうじゃなかった。いじめが再開したのは、彼に出会ってから4日後の事だ」 照「どうやら、いじめっ子達は彼が私の味方であるのかを探っていたらしい。行きがかりに助けられただけの関係だというなら怖くないとばかりに、数日間の分を取り戻すようにいじめられたよ」 照「この頃から、痣になる暴力が増えだした」 照「私は耐えたよ。もしかしたらあの時彼と話をしていたらいじめから開放されたんじゃないかって、何度も自分を呪った。けど、その度に自分に言い聞かせた」 照「いじめっ子達の彼氏が本当にカラーギャングなら、彼を巻き込むわけにはいかなかっただろ?って。私がいじめられて済むなら、それで良かっただろ?って」 照「ふふ。自分を誤魔化す言い訳ばかり上手くなっていたよ」 淡「…」 菫「…」 照「…そして、それから更に事が起こったのは、数日後の放課後だ。私は一時期のように授業が終わると同時に教室から一目散に逃げ出すのが日課だった」 照「この頃のアイツらは蛇みたいだったよ。今までは学校の外まで逃げ切れば私の勝ちだったけど、学校の外まで追いかけてくるようになったんだ」 照「勝率は…5分5分ってところかな。アイツらは明らかに楽しんでいた。鬼ごっこのつもりだったんじゃないかな。捕まったら適当な所に引き釣りこまれてボッコボコ」 照「この日は駅までの途中で捕まって、前回の時の公園に引きずり込まれたんだ」 照「…殴られながら彼がまた助けに来てくれないかって、うっすら思ったけどね。そうそう都合は良くなかったよ」 照「随分盛り上がっちゃったらしくて、ボロ雑巾みたいにされて。アイツらの気が済んで立ち去った後、私はもう立ち上がる気力も無かった」 照「このまま夜までここで寝てたら、危険だってのは気付いてたんだけどね。もうどうにでもなれって思って、そのまま意識を落としちゃった」 照「…目を覚ました時、私は真っ暗な公園のベンチで横になっていた。傍にはあの時の少年が座ってた。…その時の気持ちは…なんていうか、言葉では言い表せない感じだったな」 照「…複雑だったけど、いじめっ子達に対する感謝の言葉すら、脳裏を過ぎったよ」 全身に鈍い痛みを感じ、照は意識を覚醒させる。傍に誰かの気配を感じるが、嫌な感じはしない。むしろ、優しい気配に守られているようで、安心する 照「…ん」 京太郎「…あ」 照「いたた…あ、あれ?私…」 辺りを見回すと、ここはさっきの公園のようだ。但し、自分がいじめられていた場所とは少し離れている 横になっているのに視線が高い事と、背中の硬い感触で、自分がベンチの上で横になっていることに気付いた 京太郎「お姉さん、大丈夫?」 照「君は…」 隣の気配の正体にも気付く。…この間の彼だ。ゆっくりと身を起こし、彼の顔を見る。今にも泣きそうな、心配そうな顔だ 京太郎「そうですよ。この間の奴です。お姉さん、またアイツらにやられたんですか?」 照「ぐ…」ズキッ そうだった。私はまたアイツらにやられたんだ。さっきまでの殴る蹴るの暴行を思い出し、身体が痛みを思い出す その様子に、心配そうだった彼の表情が険しさを増す。怒気を孕んだ彼の形相に、思わず照の身が縮こまる 京太郎「ひっでぇ怪我だ…。この間の比じゃねぇ。幾らなんでもやり過ぎだろうが…!!」 照「…」 京太郎「なあ、今までずっとこんないじめされてたのか!?」 照「…うん」 京太郎「なんで黙ってるんだよ!」 照「…」 京太郎「先生だったり!友達だったり!相談してみろよ!!」 照「…嫌だ」 京太郎「はぁああ!?」 照「…みんな、信用出来ないもの」 京太郎「何ふざけたこと言ってんだよ」 京太郎「黙ってたらやられっぱないに決まってるだろうが!!なんで誰にも頼らないでほっといてんだよ!こんなボロボロにされといて、いい加減洒落で済まねーだろうが!!」 照「嫌だ…!いじめっ子も嫌いだけど、あんな奴らも信用出来ない!!」 京太郎「どうしてだよ!!」 照「どうしてもだよ!!!」 京太郎「…」 彼の激しい口調には情緒不安定になった照の神経を逆なでし、応える照の口調も荒くなる。溜まりに溜まったイライラが、遂に発散場所を求めて噴出する かつての友達連中にも、先生にもぶつけられなかった怒り。いじめっ子には怖くて口をつむぎ、不仲の両親には遠慮して、咲には隠すしかなかった泣き言を、行きずりの少年にぶつける …自分でもわかっていた。これはただの八つ当たりだ。彼は何も悪くないのに。むしろ助けてくれた側なのに。手を差し伸べようとすらしてくれたのに 照「今まで、何回だって相談した!妹の時に何度もしたよ!!けど、先生たちはずっと黙ったまんまだった!助けてくれなかった!!」 照「私の友達だってそう!今までずっと仲良くしてたのに、私がいじめられてるの知ってて、それでも黙ったまんま!いじめられてるの見ても、見て見ぬ振り!!」 照「そんな人達の事、どうやって信じればいいの!?」 京太郎「…」 照「逃げても逃げても追ってくるいじめっ子達、それを見て目を逸らす友達だった人!先生達は妹がいじめられてた時、私が掛けあってもなんにもしてくれなかった!」 照「どうせみんな私達の事なんてどうでもいいんだ!自分の事が可愛くて、怖い人には逆らえなくて、面倒な事には関わりたくない!人間なんてそんなもんなんだ!他人なんて信じられるもんか!」 照「君だってあの時、最初からアイツらがカラーギャングの関係者だって知ってたら、助けてくれた!?」 照「本当は女の子ばっかりだったから、自分でもなんとかなるって、そんな程度の軽い気持ちで助けただけじゃないの!?」 照「さっき、今までの比じゃない怪我って言ったよね!?そうだよ!君がつまんない正義感で下手に手助けしてくれたばっかりに!こんなにもいじめがエスカレートしたんだよ!?」 照「君のせいだ!!君のせいで私はこんなにいじめられてるんだ!!」 照「どうせ下手に希望を抱かせるくらいなら、気まぐれに助けないでくれれば良かったよ!中途半端に助けないでよ!!いい迷惑だよっ!!」 京太郎「…」 照「…はぁ…はぁ…っ!!」 京太郎「…」 照「…なんとか言ってみなよ!」 京太郎「…わかったよ」 照「…?」 京太郎「…アンタ、ガキだな」 照「…ガ、キ…?」 京太郎「うん。ガキ」 照「は?何言ってるの?君。君こそまだ1年生でしょ?私3年生だよ?そっちがガキじゃない。それにチビだし」 京太郎「身長は確かにまだアンタよりは低いけど…っていやいや。何だよその言い草。それにまるで俺が悪いみたいな」 照「だって、本当にあの後いじめが酷くなったし…」 京太郎「それに、この間だってなんか言い訳していきなり逃げたのそっちだ」 照「…うぐ」 京太郎「ありがとうも言わないで、さ。助けてもらってアレはないだろ」 照「…」 京太郎「ガキー」 照「うるさいチビ」 京太郎「…恩知らず」 照「恩着せがましいよ」 京太郎「ひねくれ者」 照「マセガキ」 京太郎「…はぁ」 照「…」 京太郎「…あ゙ーーーーー…」 照「…」 京太郎「…アンタ、名前は?」 照「…」 京太郎「…おーなーまーえー。なんて言うんですかー」 照「…先にそっちが名乗るのが礼儀だよ。子供はそんな事もわからないの?」 京太郎「子供だからわかりませーん。それに、子供だからいーやーでーすー」 照「…」 京太郎「…」 照「じゃあ私も名乗らない」プイッ 京太郎「あ、そ」プイッ 照「…」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…」 照「…照だよ」ボソッ 京太郎「…ん?」 照「…なんでもない」 京太郎「あっそ」 照「ん」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…」 照「…」 京太郎「…そっか」 照「ん?」 京太郎「照って名前なのか」 照「…っ!」 京太郎「なるほどねー。照ってのかー。ふーん。で、名字は?」 照「て、『照』!?」 京太郎「ん?どうした?照」 照「こ、コラ!君!」 京太郎「んー?」 照「な、なに!?その呼び方!」 京太郎「ん?何って、何が?」 照「わ、私は年上だよ!?呼び捨てにしないでよ!ちゃんと敬意を払って!」 京太郎「つっても、いじめられっ子相手に敬意払えって言われてもなー」ツーン 照「この…!」イライラ 京太郎「ま、どうしてもって言うなら?わかったよ。それじゃあこう呼ぶことにするわ。てーる『ちゃん』」 照「はぁああああ!?」 京太郎「ん?どうした?照ちゃん」 照「ちゃん!?ちゃんって何!?もうっ!もうっ!もうっ!!」 京太郎「うん。ぴったりだわ。照ちゃんって。ガキっぽいし」 照「むぅうううううううう!!」 京太郎「あはは。むくれてやんの。可愛いぞ?照ちーゃん」 照「か、かわ…」 京太郎「照ちゃん可愛い」 照「あああああああああああああ!」 京太郎「照ちゃん可愛い」 照「こらっ!馬鹿にして!」 京太郎「照ちゃん可愛い」 照「ああっ!こら!こら!こら!!君っ!もう!こらっ!」 京太郎「あはははは。おもしれーなー照ちゃんって」 照「ああもおおおおおおおおお!馬鹿ぁあああああああ!!」 京太郎「で、照ちゃんの名字はなんてーの?」 照「だ、誰が教えるもんか!」 京太郎「あ?なんでだよ照ちゃん」 照「ま、まだ照ちゃんって…!…じゃなくって!君の方こそ名前教えてくれてないじゃない!」 京太郎「だーかーら。名字教えてくれたら俺の方も教えてやるよ照ちゃん」 照「んもー!またぁあああ!」 京太郎「あはははは!」 照「うううう…」 京太郎「…で、名字」 照「…教えません」プイッ 京太郎「えー?なんでだよ」 照「どうしてもです」プイーーッ 京太郎「だったら、俺も名前おしえませーん」 照「…」 京太郎「…」 照「いじわる」 京太郎「いじわるです。ガキなので」 照「…本当にガキだ」 京太郎「名字は?」 照「教えるもんか」 京太郎「ガキー」 照「クソガキ」 京太郎「貧乳」 照「うるさい馬鹿」 京太郎「馬鹿です。ガキなので」 照「…」 照「…じゃあ、君の事なんて呼べばいいの?」 京太郎「んー?そうだなー。それじゃあ、ア・ナ・タ(はーと)とか」 照「発想がおっさん臭いよ」 京太郎「…」 照「…ふんっ」 京太郎「…じゃあ、通称きょ「本名じゃないなら、やっぱり言わないでいい」」 京太郎「…ん?」 照「…君がちゃんとした自分のフルネーム言うまで、『君』って呼ぶから」 京太郎「…」 照「わかった?『君』」 京太郎「…強情すなぁ」 照「そっちこそ。自分の本名言うだけだよ?」 京太郎「照ちゃんが名字言ったら教えるけど」 照「やだ」 京太郎「年上の余裕見せてもいいんじゃない?」 照「年長者に敬意を払ってよ」 京太郎「だかーらー…って…」 照「…?」 京太郎「…照ちゃん」 照「…なに?」 京太郎「…へへ。やっと笑顔になったな」 照「…え?」 京太郎「顔、笑ってる」 照「…」ペタペタ 照「…」 京太郎「…俺さ。照ちゃんよりチビだし、ガキだし、大したこと出来るかはわかんないけどさ」 京太郎「けど、あの時からいじめが酷くなったていうなら、確かに俺にも責任あるだろうしさ」 京太郎「それに折角友達になれたんだし、それなら俺は照ちゃんの事助けたいよ。なんか手を貸せることあったら、なんだって言ってくれよ」 京太郎「…力になりたいんだ」 照「…」 京太郎「…照ちゃん?」 照「…とも…だち…?」 京太郎「ああ。…友達だよな?」 照「友達…」 照「…友達」 照「…友達?」 京太郎「え。もしかして嫌っすか」 照「…」 照「…ううん。嬉しい」 京太郎「…ほっ」 京太郎「それじゃあ、明日っから放課後は一緒に遊ぼうぜ?この公園でさ」 照「え…け、けど、この公園は…」 京太郎「アイツらの溜まり場だってか?だからいいんじゃん。この間は俺にビビって撤退したんだし、俺らがきまぐれで助けた関係じゃなくて仲良しだって知ったら、きっとアイツらも手出さなくなるって」 照「そう…かな」 京太郎「そうそう!」 照「けど…怖いよ?」 京太郎「怖いけど」 照「アイツ等女の子だけど、沢山居るよ?喧嘩になったら君一人で勝てる?」 京太郎「いざとなったら照ちゃん手伝ってよ」 照「えー…」 京太郎「『えー』じゃ無しに!いじめっ子との喧嘩は、相手にめんどくさい奴って思わせたら勝ちなんだから」 照「けど、殴られたら痛いよ?」 京太郎「今と何違うんだよ」 照「…」 京太郎「…」 照「…ああ」ポン 京太郎「…」 照「確かに」 京太郎「…照ちゃんって、見た目と違って天然なんだな」 照「…?」 京太郎「…まあいいや」 照「はあ」 京太郎「あとは、あいつ等のバックにカラーギャング?が居るんだって?」 照「…うん。そいつ等が来たらどうする?」 京太郎「…まあ、そいつ等が来たら任せろよ」 照「…大丈夫?」 京太郎「…ん。まあ、一応考えはある」 照「おおー」 京太郎「…」 照「…ねえ」 京太郎「…ん?」 照「…頼っても、いい?」 京太郎「…」 照「……いい?」 京太郎「ああ。任せろって!」 照「…うん。じゃあ」 照「頼っちゃう」 翌日の放課後、照は必死に走って公園まで辿り着く。そこには、タバコを吸って缶ビールの缶を足元に転がした彼の姿。少し幻滅する それでも兎に角いじめっ子から逃れたい一心で彼に話しかける。居心地の悪い気分でつまらない雑談を続けていると、しばらくして後をつけていた筈のいじめっ子達の気配が消えた 頃合いを見て、京太郎が呟く 京太郎「…連中、行ったっぽい?」 照「…うん」 京太郎「ま、ざっとこんなもんってな」 照「…けど、びっくりした。君、タバコ吸うんだ。それに、お酒も…」 京太郎「ん?あー。これ?ははは。これはさ」 照「…」 京太郎「本当は吸わないんだけど、さ。ダチに貰ってきたんだ。まっずいわコレ。あと、空き缶はそこのゴミ箱から漁ったやつね」 照「…」 京太郎「ふふん。どーよ?対いじめっ子への威嚇用ってやつ?不良っぽさの演出とも言うかな」 照「…ぷっ」 京太郎「ふふ。どうだい?悪っぽいだろう。くくくく…」 照「あはははは!」 京太郎「あははははは!」 照「あはははは!バカみたい!」 京太郎「へ?」 照「だ、だって!不良っぽく見せるための小道具にタバコとお酒って!」 京太郎「あれ…へ、変だった?」 照「変って言うか…発想が子供っぽいよ!」 京太郎「…」 照「あはははは!可愛いなぁ、君は!子供っぽくて!あはははは!」 京太郎「…くすん」 照「あははははははは!」 再びいじめっ子から開放された照。けれど、照は連日、放課後になる度に急いで教室を飛び出す 原因はいじめっ子では無く、友達。クラスに馴染む気はもう無かった。彼女にとって唯一の友達に会うために今日も照は教室を飛び出す。そして益々クラスから浮く けど、どうでも良かった。楽しい日々は続く。胸には、未だに名前を教えてくれない意地悪な少年への確かな友情と、微かな恋心 絶対に私が名字を教える前に、向こうに名乗らせてやる。そんな子供っぽい感情を示す事が出来る相手は、今の照には彼しか居なかった 何をするでもなく、二人公園で会話を続ける日々 いじめの事も、クラスからの孤立も、両親の不仲も忘れて、夕方まで一緒に笑い合う 歯車が狂った事に照は気付かない いつ狂い始めたのかも分からない いや、もうとっくに狂っていたのだろう。ずっとずっと前に けど、それが明らかになったのは、それからしばらくして 季節は巡り、秋 その頃、照は進学する高校に迷っていた 10月27日 京太郎「へっくし!…ふー。寒いなー。今日は」 照「そうだね。もうすっかり秋だ。そしてもうすぐしたら冬」 京太郎「げっ。思い出させるなよ。雪積もったら嫌だなぁ」 照「地面が凍ったら嫌だね。私、毎年転んじゃうんだ」 京太郎「あー。俺も俺も。去年なんて、折角一度も転ばずに雪解け迎えれそうだってのに、何にもないトコで後ろからダチに突き飛ばされて完全試合達成ならずだったんだぜ」 照「ふふ。それは残念」 京太郎「それにしても…冬が終わったら、俺も2年生かー。そして照ちゃんは進学だ」 照「え?」 京太郎「どこに行くの?」 照「そ、それは…」 京太郎「うん」 照「…」 照(…なんて答えよう。未だに迷ってるんだよね。風越女子に進学して麻雀部をやってみたい気もするし、近い清澄でもいいかなと思ってるし…あとは…) 照「えっと…」 京太郎「…もしかしてまだ迷ってる?」 照「…うん」 京太郎「早く決めちゃえよ」 照「わかってるけど…」 京太郎「…照ちゃんが進学したら、流石にもうこうして会うのは難しくなるのかな」 照「…」 京太郎「…それまでに名字教えてくれていいんだぜ?」 照「き、君こそ、随分と強情だな!そろそろ名前教えてよ」 京太郎「えー?だから言ってるだろ?照ちゃんが名字教えてくれたらって」 照「私の台詞だよ!」 京太郎「ちぇー」 照「…もうっ!」 京太郎「…へへ。ま、そうだなぁ。そしたら、照ちゃんの進学校名でもいいかな」 照「…え?」 京太郎「照ちゃんが進む高校決めて、それ教えてくれたら俺の名前教えてあげる」 照「…」 京太郎「もし照ちゃんが遠くの高校に行く事になって何処に進むかわからなかったら、このままじゃ連絡の取りようも無くなっちゃうだろ?」 照「…うん」 京太郎「だから、さ。流石に進学と同時にハイサヨナラじゃ、寂しいしさ」 照「…」 京太郎「…へ、偏差値近かったら、同じ高校目指すかも…」ボソッ 照「…え?」 京太郎「…」プイッ 照「ねえ、君、今なんて…」 京太郎「な、なんでもねー!」 照「…そっか」 京太郎「そ、そう!」 照「…じゃあ、さ。受験受かったら教えてあげるよ」 京太郎「っ!」 照「けど、受かってからだからね。言っておいてそこ落ちたら格好わるいし」 京太郎「わ、分かった!絶対だぞ!」 照「…うん」 京太郎「頑張れよ!応援してるからな、照ちゃん!」 照「うん。ありがとう。それじゃあ、今日はちょっと大事な用事有るから、私はもう帰るね」 京太郎「あ…そういえば今日はなんかあるって言ってたっけ。駅まで送ってこうか?」 照「大丈夫だよ。最近はいじめっ子達も大人しいし」 京太郎「…本当に?」 照「うん。ありがとう。それに、買い物もしたいし」 京太郎「んー。まあ、照ちゃんがそう言うなら…」 照「それじゃあ、私は帰るね。バイバイ」 京太郎「ん。じゃーなー」 照「…さて、と」 照「…」 照「…あは」 照「…偏差値が近かったら、私と同じ高校を目指すかもっ…か。あはは」 照「…うん。決めた」 照「進学校は、清澄にしよう」 照「風越と違って共学だし、近いし、学力はそこそこ。麻雀部は無いけれど、そんなのどうだっていい」 照「2年したら、もしかしたら、あの子と一緒の高校に通えるんだ」 照「こんなに楽しみな事は無いよ」 照「ああ、楽しみだな。あの子と同じ校舎に通えるんだよ?あの子の先輩になれるんだよ?」 照「素敵だな…とても素敵だ」 照「…おっといけない。早くお店に予約していた玩具を取りに行かないと」 照「今日は咲の誕生日だもんね」 照「最近あんまり元気が無かったよな。最近あんまり話を聞いてあげてなかったけど、京ちゃんと喧嘩でもしたのかな?」 照「最近は私も放課後帰るのが遅くて、いっぱい構ってあげられてないから。今日こそは盛大に祝ってあげなくちゃ…」 照「早く玩具を受け取って、急いで帰って、パーティーの準備を手伝わなきゃ」 照「今日は早めに帰ってくるように伝えておいてあるし、急いで準備しなきゃ」 照「ふふふふふ…」 京太郎「…行っちゃった、か」 京太郎「…はぁ。俺ってば情けない」 京太郎「さっさと名前くらい教えればいいのに」 京太郎「そしたら照ちゃんももっと打ち解けて心許してくれるだろうになぁ…」 京太郎「そ、そんでもって…こ、告白も…」 京太郎「…しっかし、今更切欠も無しにこっちから名前告げるのもアレだったてのはわかるけど、なんだよ進学校決まったら教えるって」 京太郎「つまりそれまで名前伝えれないって事じゃん」 京太郎「名前も知られてないのに告るわけにいかないし…」 京太郎「…先延ばしかよカッコ悪い。臆病もんだわ俺…はぁ」 京太郎「…帰ろう」 京太郎「おお、そういえば、こんな早くに帰るの久しぶりかも。最近は放課後照ちゃんとダベってばっかだったしなー」 京太郎「…ダチとの付き合いも蔑ろにしちゃいかんよな。うん。アイツら、俺が年上の女の人と会ってるって知ってから俺に冷たいんだよなー」 京太郎「…しゃーない。咲に説得と橋渡し頼むか。アイツら、咲の言う事はちゃんと聞くし」 京太郎「…そう言えば、咲とも最近、放課後遊んで無かったなー」 京太郎「…って」 京太郎「…」 京太郎「…」 京太郎「…コンニチワ」 「コンニチワ」 「おい、なんだ?このガキ。お前、知ってんのか?」 「結構前に話した事あったんだけど、覚えてない?私らのイジメ対象庇った生意気なガキの話」 「ああ。コイツが」 「もーアイツなんかどーでも良かったんだけどさ。偶然会っちゃったんなら仕方ないよね」 「なになに?どうすんの?コイツ」 「折角だしやっちゃってよ。喧嘩、得意なんでしょ?」 「一捻りだな」 「そういえば、佐藤さんの件、嘘だったんでしょ?ムカつくし、またいじめ再開しようかな」 京太郎「あ、ヤバいこれ…」 京太郎「…」 京太郎(…はぁ。仕方ない。奥の手、使いますか) 京太郎(これだけは使いたくなかったんだけどなー…) 咲「…」テクテク 咲「…今日は誕生日、か」 咲「…はぁ」 咲「結局、京ちゃんは今日も放課後すぐにどっかに行っちゃった」 咲「ここしばらく、ずっとだよ。確かに友達は他にもいっぱい出来たけど…私は、京ちゃんと1番遊びたい…」 咲「…寂しいなぁ。誕生日だっていうのに、寂しいよ…」 咲「…京ちゃん」 咲「…」 咲「…ん?なんだろう、救急車…?」 咲「公園のほうだ。何かあったのかな?ちょっと見に行ってみよう」 宮永家 照「…咲、遅いな。まったく。どこほっつき歩いてるんだか」 照「…でもまあ、昔は考えられなかったことだよね。友達と放課後遊ぶようになったって事だし、京ちゃんには、感謝しなきゃだ」 照「でも、今日くらいは早く帰ってきて欲しいだけどな。咲の誕生日だし」 照「…あ。でも、もしかしたら京ちゃんにお祝いしてもらってるのかも?それなら遅くなるのもしかたないのかも」 ジリリリリ 照「…ん?電話だ」 照「はい、宮永ですが」 照「ああ、咲か。どうしたの?え?今病院?」 照「ちょっと、落ち着いて話して。何があったの?うん、うん」 照「え?京ちゃんが喧嘩で怪我した?」 照「…だから落ち着いて、咲。大丈夫。大丈夫だから。うん。今お姉ちゃんも行くね。うん。それじゃあ待ってて。すぐ行くから。うん」 照「大丈夫だよ、咲。泣かないで。お姉ちゃんがついてるから」 照「うん。うん。それじゃあ、今から行くから、待ってて」 照「…」プツッ 照「…」 照「…咲、待っててね。すぐ行くからっ!」 病室 咲「ヒック!…ヒッ!ヒック!!」 京太郎「…」 咲「うえええ…えええええ…えええええ…」 京太郎「…」 咲「京ちゃん…京ちゃん…京ちゃああああん…うえええええええ…」 京太郎「…ん」 咲「!!」 京太郎「…あれ、俺…」パチッ 咲「京ちゃん!!」 京太郎「…あ?…ここ…どこ…」 咲「京ちゃん!ここ、病院だよ!京ちゃん、悪い人に殴られて…」 京太郎「あー…頭痛てえ…くっそ」ボー… 咲「京ちゃん!京ちゃん!!」 京太郎「…あれ。照ちゃん」 咲「…」 咲「…え?」 京太郎「…?なんで俺の名前…?言ったっけか?」 咲「え?」 京太郎「…あはは。そんな泣くなよ照ちゃん。ひっで~顔してるぜ…いたたた」 咲「…京…ちゃん?」 京太郎「悪い、嘘。まだ目がまともに動いてないわ。頭打ったからかな。グラグラしてるんだ。気持ち悪い」 咲「京ちゃん…」 京太郎「ぐう…悪い、ちょっと目閉じるな。本格的に気持ち悪い。ああ、そうです。俺、京ちゃん…ははは。なんだか、アイツに言われてるみたいで変な感じだなぁ」 咲「ねえ…京ちゃん?何のこと?それに照ちゃんって…」 京太郎「…ほら、前にも話した事あんじゃん。俺の幼馴染の子でさ。ドン臭い奴がいるんだーって。宮永咲って言うんだけど、照ちゃんにそっくりでさ」 京太郎「…初めて会った時も、最初一瞬アイツがいじめられてるのかって思っちまったくらいなんだぜ。まあ、アイツはチンチクリンだけど。…はは。これナイショな」 咲「…京ちゃん」 京太郎「…ああ、ごめんごめん。会った事も無い奴の事言われてもどうしようもねーよな」 咲「…」 京太郎「あ~…しっかし、どっかのタイミングで名前言っちゃったっけなー。くっそぉ。ごめんなさい。覚えてねーや…」 咲「…」 京太郎「くっそ。畜生。格好悪いなぁ。なんかモヤモヤするし、改めて自己紹介させてくれないか?照ちゃん」 京太郎「…俺、須賀京太郎って言います…ヨロ…シ…ク…」 咲「…」 京太郎「……ごめん。ちょっと眠いから、寝るわ」 咲「…」 京太郎「…すう…すう…」 咲「…」 咲「…」 咲「…」 咲「…」 咲「…」 咲「…」 ガチャッ 照「…咲?病院の人にこの部屋だって聞いたんだけど…」 照「…って」 照「この子は…!!」 咲「…」 照「…咲?」 咲「…やっぱり」 咲「…知ってるんだ」 照「…咲」 咲「…ねえ、お姉ちゃん。お姉ちゃん、この子の事、知ってるんだ」 照「…」 咲「ねえ、お姉ちゃん。答えてよ。知ってるんでしょう?」 照「…」 咲「当然だよね。だって、さっきこの子、私の顔見て、『照ちゃん』って言ってたもん」 照「…っ!」 咲「ねえ、お姉ちゃん。ねえ。ねえ、答えてよ。なんでさっきから黙ってるの?ねえ」 咲「ねえ、知ってるんでしょう?お姉ちゃん、『京ちゃん』の事」 照「…この子が」 照「…『京ちゃん』だったのか」 咲「っ!!ふざけないでよ!!!」 照「咲」 咲「なにそれ!?なんなのそれ!!?ふざけてるの!?馬鹿にしてるの!!?ねえ!!」 照「咲、落ち着いて」 咲「落ち着け!?落ち着けって何さ!!この状況でどうして落ち着いていられるの!!!」 照「咲、京ちゃんが起きちゃう」 咲「うるさいっっっっ!!!!!」 照「…」 咲「ねえお姉ちゃん!お姉ちゃん!!なんで私がこんなに怒ってると思う!?ねえ!?お姉ちゃん!!」 照「…」 咲「お姉ちゃんが私にナイショで京ちゃんに会ってたからだと思う!?最近お姉ちゃんが私にあまり構ってくれてなくなってた原因がそれだったからだと思う!?京ちゃんと知り合ってたのを私に黙ってたからだと思う!?」 咲「違うよ!!全部違う!!そんな事よりも、もっと酷いよ!!そんな事全部どうだって良くなるくらい酷い!!!」 咲「京ちゃんがなんで怪我したと思う!?私聞いちゃったよ!最初に救急車を呼んでくれた人が、一部始終見てたって!!」 咲「京ちゃん、不良の人に散々に暴行受けてたって!!殴られながら、蹴られながら!!必死に土下座してたって!!なんでだと思う!?原因はお姉ちゃんだよ!!」 咲「お姉ちゃん、前にいじめてた人の彼氏がカラーギャングだって、話してくれたことあったよね!?その人だよ!!きっとその人に、復讐されたんだ!!」 咲「京ちゃん、言ってたらしいよ!!いくら殴ってくれてもいいから、これで手打ちにしてくれって!!この通りです、この通りですって!!頭地面に叩きつけながら必死に叫んでたって!!!」 咲「何もかも全部お姉ちゃんのせいじゃない!!!」 照「そ…そんな…」 咲「お姉ちゃんのせいだよ!!!お姉ちゃんのせいで京ちゃんがこんな目に合ったんだ!!!」 咲「いじめられてるからって!!京ちゃんに助けを求めたから!!!」 咲「お姉ちゃんなんかが…お姉ちゃんなんかが京ちゃんに近づくからいけなかったんだ!!!」 照「…」 咲「出てって!!!」 照「……さい」 咲「出てってよ!!!」 照「……さ…」 咲「今すぐここから出てけ!!!!」 照「五月蝿い!!!!!」 パンッ 咲「……」 照「さっきから黙ってたら…なにさ…!!」 照「咲は、私の気持ちなんか知らないんだ」 咲「…」 照「すぐに京ちゃんに会えて、仲良くなって。すぐにいじめも無くなって。友達だって出来て、学校で嫌なこと有ったって帰ったら私に泣きつけばいいんだ」 咲「…」 照「咲ばっかりズルい!私には京ちゃんと一緒に居る権利すら無いって言うの!?一生いじめられてろっていうの!!?そんなの不公平だ!!!」 咲「っ!!よく言うよ!私にずっと黙って京ちゃんと密会してたくせに!しかも自分の素性も隠して!?私の姉だって事も説明しなかったの!?」 照「だから、私はこの子のことを京ちゃんだって知らなかった!!」 咲「信じられるわけ無いじゃない!!!」 照「っ!!」 咲「ねえ…」 咲「…それとも、私のお姉ちゃんだって、知られるのが嫌だったの…?」 照「…」 照「…ああ。そうだよ」 咲「…」 照「お前なんかの姉じゃなければ良かった…」 照「お前なんか、妹じゃない!!!」 咲「~~~~~っ!!!」 咲「っ!!帰る!!!」ダッ 照「あ…」 バタンッ!!! 照「…」 照「…あ」 照「…ああ」 照「…ああああ」 照「ああああああああ!!」 照「うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 数時間後 照は、まだ病室に居た 先ほどの姉妹喧嘩の騒ぎを聞きつけて遅れ馳せながらにやってきた看護婦に叱られて、追い打ちのように意気を消沈させた照は、項垂れたまま備え付けの椅子に座り続ける 途中、京太郎の両親がやってきた。眠っている息子の顔を見て、ほっと一息吐く彼の両親に、申し訳ない気持ちでいっぱいになり、涙が零れた 挨拶もそこそこに、医者と話をしに行くので出来れば様子を見ていて欲しいと頼まれた照は、また所在無さげに椅子の上で京太郎の顔を見る 布団の上からでもわかるのは、包帯でぐるぐる巻きにした額だけだ 他にどんな怪我があるのだろう、後遺症は残らないだろうか、と心配でまた涙が溢れる 両親が戻って来た 肋が数本折れていたらしい。他にも打撲、内出血などは無数にあるが、後遺症になりそうな怪我は無し。ただし何週間かは入院することになるらしい 説明を受けて、次に照が咲から聞いた事情を話した。彼らは黙って聞いていた。途中何度も嗚咽が止まらなくなり、辿々しくもなんとか説明を終えた頃、今度は京太郎が目を覚ました 京太郎本人から、照の話とは全く違う、彼が絡まれた喧嘩に乗ったという話を聞いた彼の家族は、子供達に何も言及する事無く、今は入院に必要な道具を取りに家に戻っている 照は、動けない 固まったまま椅子に座り、じっと俯いたまま、何も話せない 照は泣いていた 声もなく、泣いていた しばしの逡巡の後、京太郎は意を決したように、照に話しかける 京太郎「…なあ、照ちゃん」 照「…」 京太郎「…照ちゃん」 照「…」 京太郎「…泣かないで。照ちゃん」 照「…無理、だよ…」 京太郎「…」 照「…全部、聞いたよ。なんで、逃げなかったの?なんで、そこまでしてくれたの?なんで、お父さんたちに、嘘の原因、教えたの?」 照「…なんで。なんで、なんで私を助けてくれるの?そこまでして」 照「なんで私なんかのために。なんで私なんかのために。なんで、どうして…」 照「なんで…なんで…なんで…?なんで?なんでそんなに優しいの?」 京太郎「…俺もさ。実は、昔いじめられっ子だったんだ」 照「…え」 京太郎「…ずっと前な。小学校低学年とかそんくらい。ちょっと体弱くってさ。まあ、照ちゃんみたいにひでーもんじゃなかったけどね」 照「…」 京太郎「…で、その後急に身体丈夫になって。割とヤンチャな友達も増えて…はは。その後、どうなったと思う?」 照「…わかんない」 京太郎「…いじめっ子になった」 照「…」 京太郎「…嘘だと思う?」 照「…」 京太郎「そう。マジ話ね、これ。…話すの、照ちゃんが初めてなんだぜ?」 照「…そう」 京太郎「何考えてたんだかね。あの頃は」 照「…」 京太郎「…ああ。本当、何考えてるんだかなぁ俺。こんな話して、照ちゃんに嫌われそうだって思っちゃった。当たり前だ。いじめから助けてようとした友達は、実はいじめっ子でしたってか。ああ、俺の馬鹿」 照「…」 京太郎「…ごめんな。けど、なんかどうしても話したくなっちまって」 照「…」 京太郎「…懺悔でもしてるつもりなのか俺は」 京太郎「…ああ。本当、馬鹿…」 京太郎「…馬鹿…馬鹿…馬鹿野郎…」 照「…本当だよ」 京太郎「…だよなー…」 照「うん」 京太郎「…」 照「…そんなので、私は『京ちゃん』を嫌いにならないよ」 京太郎「…」 照「…そりゃあ、びっくりしたけどね」 京太郎「…」 京太郎「…いじめられて、いじめて、いじめて、いじめて…で、ある日いきなり気付いたんだよな。『あ、俺コイツの事別にいじめたくていじめてるわけじゃねーわ』って」 京太郎「…ノリでやってたんだよ。いじめられてる間は一体どんな深い理由があって!とか、色々原因考えたりもしたけど、やる立場になって分かった。…いや、全員が全員ってわけじゃないのかもしれないけど、さ」 京太郎「…気付いて、駄目になった。もうそいつの事いじめられなくなった」 京太郎「同時に、今までいじめてきた奴らの事を振り返って怖くなった。俺はコイツらに一体どれだけの嫌な想いをさせて来たんだろうって」 京太郎「…その後は、いじめは止めろ!!って立ち上がれれば最善だったんだろうけどな。すぐには無理。いじめるふりして庇うとか、蹴散らすふりして本当にいじめられるの回避させる、とかその程度しか出来なかった」 京太郎「…ダチもみんな俺と大して変わんなかったよ。中学上がって、ちょっと大人になったら、いじめグループは自然消滅。リア充グループもどきの誕生だ」 京太郎「…糞だったよ。いじめ過ぎて壊れそうになって、転校しちまった子も居た」 京太郎「…本当、いじめ、格好悪い、だ」 照「…それで、助けてくれたの?」 京太郎「…」 照「…今までいじめてた人達の分、いじめを無くそうって。いじめられっ子を助けようって」 京太郎「…どうなんだろうね。それでも結局、俺は今までいじめてきた奴らにとっては、ずっといじめっ子だ」 照「…」 京太郎「許してくれなんていえねーよ。俺だって昔俺をいじめてた奴らは、未だに許せない」 照「…」 京太郎「自分勝手だろ?」 照「…」 京太郎「…幻滅した?」 照「…それでも」 照「…私にとって、京ちゃんは、ヒーローだった」 京太郎「…」 照「…私が会った京ちゃんは、いじめられっ子でもいじめっ子でも無くて、私を助けてくれるヒーローだったから」 京太郎「…」 照「だから、もし京ちゃんが今までの事を悪かったと思って、私の私を助けてくれた事を誇りに思えるのなら」 照「…京ちゃんは、今までにいじめて来た子達に恨まれながら、私みたいに困ってる人達を助けていけばいいんじゃないかな」 京太郎「…」 照「そうしてる内に、もしかしたら、君にいじめられて来た子達の中でも、今の君を知って許してくれる、なんて事があるかもしれない」 京太郎「…俺」 照「…期待しちゃ駄目だよ。私はあのいじめっ子達が今後改心したって、簡単に許してあげれる自信は無いから」 京太郎「…ああ」 照「…でも、君が望むなら」 照「私は、君と一緒に、その子達に謝ってあげる」 京太郎「…照…ちゃん…」 照「…薬、効いてきたのかな?眠そうだよ」 京太郎「…る…ちゃ…」 照「今日はもう、おやすみ。…また来るから」 京太郎「まっ……て…俺…たえ…い…と……」 照「…ばいばい」 京太郎「…る…ゃ…」 バタン