約 969,049 件
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/2864.html
(準決勝・実況席) 恒子「さぁ、準決勝先鋒戦前半戦もいよいよ大詰め、オーラスを迎えました! ここまで下馬評通り宮永選手の圧倒的リードで進んでおります」 恒子「対して新道寺、かなり大きなマイナスを背負っています。これは苦しいか!」 健夜「さすが宮永選手、だね。おととしよりも去年、去年よりも今年、着実に進化してる」 照『リーチ』 123s4567778p發發發 恒子「おぉっと! オーラスで駄目押しのダブリーが入った!」 健夜「しかも4面張。豪快なフィニッシュになりそうだね」 煌『……』 『煌手牌』 125m289s23369p東南 ツモ南 ドラ4s 健夜「うーん、これはもしかしたら新道寺の子から出ちゃうかもね。手なりで打つなら9筒が不要牌だし」 恒子「なるほどー。さすがプロ生活20年ともなればそれぐらいの予想はお手の物だね」 健夜「だからアラフォーじゃ……って、ずいぶん長考だね」 恒子「まぁねー。これだけ点数取られた状況でダブリーかかっちゃ無理もないか」 健夜「俯いて……ちょっと震えてる。大丈夫かな?」 煌『……』 煌『……』 煌『……』スゥ 健夜「ん? 深呼吸してる?」 恒子「出しちゃうのかな?」 煌『……』ギリッ 煌『ッ!』打5萬 恒子「ブッ!」 健夜「こ、これはずいぶんと思い切ったね」 恒子「す、すこやん。これはどういう打牌なのかな?」 健夜「うーん、おそらく123の三色とチャンタ、ピンズ一通とピンズの混一色を見た一打……かな?」 健夜「この格好から5萬周りを引いても高い手にはならないからね。 赤頼みも阿知賀の彼女がいる状況じゃ望み薄だし。だったら手役を作らなくちゃいけないとなると」 恒子「5萬切りってことかー。でも、この手牌から? まぁ、点数取り戻すために高い手狙うのはわかるけど、うーん」 健夜「そうだね。ダブリー入っている状況でやるにはなかなか勇気があるというか無謀だけど……成就、するかなぁ」 (新道寺控室) 姫子「は、花田ってあんな豪快な一手が打てる奴だっけ?」 美子「」ブンブン 仁美「驚いたわ」ポカーン 哩「(……そか。そうだな)」 哩「(花田、頑張れ。お前の意地、見しぇてやれ)」 (会場) 照「(随分脂っこいところを通してきた……。でも、この待ちだったらいずれ)」カチャッ 煌「……れ……ない」打8索 照「?(何か言ってる)」 煌「ま……ら……」打9索 煌「………れない」打2索 煌「……け………」打1萬 煌「………れ……」打2萬 照「(この子……危険牌を6枚も……!)」 煌「……」打5索 煌「……」打6萬 煌「……」打東 煌「……」打發 玄「(新道寺の人が突っ張ってくれてるから安牌には困らないけど……)」パシッ 怜「(あの宮永照のダブリーの前にここまで……)」パシッ 照「(引けない……嫌な、感じがする)」パシッ 煌「っ!」チャッ 煌「……9筒。暗カン」 照「(私の待ちの一つを……!)」 煌「……けられない」打中 照「えっ?」 煌「決勝に行って、会いたい子がいるんです。同じ舞台に立って、伝えたいことがあるんです」 煌「今更出て行って、私の言葉は届かないかもしれないけど。強くもない先輩ですけど。それでも、それでも」 煌「先輩として……かわいいかわいい後輩と」 煌「どうしても、話がしたいんです。そのために同じ所に立たなくちゃいけないんです」 煌「だから」 煌「だからっ!」 煌「だから、ここで、負けられないんです!」ギッ 煌「リーチっ!」打2筒 照「(追いつかれた!?)」 玄「(嘘……ダブリーを掻い潜った)」 怜「(ありえへん……)」 照「くっ……」ツモ5筒 照「(アガれない……! しかもこれはっ!)」パシッ 煌「ロンッ!」 『煌手牌』 3335567p南南南 カン9999 ドラ4s、中 煌「リーチ、一発、南、混一色、三暗刻……こんな場でも、乗るものですね。裏3で24,000」 (白糸台控室) 尭深「嘘……」カシャン 誠子「わっ、尭深! 湯呑湯呑!」 菫「……初めてだ」 淡「えっ?」 菫「あいつが、照が三倍満に打ち込んだのを初めて見た。そもそも跳萬以上に振り込むこと自体、いつ振りか」 淡「……新道寺の先鋒は実績もなくて、捨て駒だって話じゃなかった?」 菫「あぁ、そのはずだった。そのはずだったんだが……」 誠子「途中までの打牌も平々凡々だったのに」 菫「なんだ。いったい、あの選手に何があったんだ?」 (実況席) 恒子「」 健夜「こーこちゃん、しっかり」 恒子「はっ。あまりのことに思わず言葉を……」 健夜「危険牌12枚切って三倍満打ち取りだからね。しょうがないよ」 恒子「いや、出来過ぎでしょ」 健夜「うん、私だって普通に宮永選手がアガって終了だって思ってたもん」 恒子「でも結果として、あのチャンプが三倍満放銃とは……」 健夜「あの子の打牌にすごく強い意志を感じたよ。想いや意志で麻雀が勝てるなら苦労はしないけど、それでも」 健夜「それがなくちゃ、勝てないときもあるんだよね。本当にすごかったよ」 (会場) 煌「はぁ、はぁ、はぁ」 怜「(えらい消耗しとるな。あんな真似すりゃ無理もないか)」 玄「(負けられない……か)」 ――――決勝に行って、会いたい子がいるんです。同じ舞台に立って、伝えたいことがあるんです ――――どうしても、話がしたいんです。そのために同じ所に立たなくちゃいけないんです 玄「……私だってっ!」 照「?」 玄「私だって、負けられないのです。決勝に行って、会わなくちゃいけない人がいるんです」 玄「大切な、大切な友達で」 玄「そこまで長い付き合いじゃなかったかもしれないけど、それでも大切な友達で」 玄「だからっ、私だって!」 玄「絶対に、負けれないんです」ゴッ 煌「……」コクリ 怜「なんや、二人して熱くなって……」 怜「……ふふ」 怜「でもこういうの、嫌いやないで。こっちも……負けてられんなぁ」ゴッ 照「(この子たち……!)」 (観客席) 京太郎「……」 和「……」 優希「……」 京太郎「……優希」 優希「……なんだじぇ?」 京太郎「あの、新道寺の人って中学の時の先輩なんだって?」 優希「そうだじぇ」 京太郎「……いい先輩だな」 優希「うん……後輩思いで面倒見がよくて、世話になったものだじぇ」 京太郎「そうか……和」 和「……なんですか」 京太郎「あの阿知賀の人が……」 和「はい、昔の友人です」 京太郎「いい人だな」 和「はい、あんなに私のことを想ってくれてるなんて正直思ってもみなかったです」 京太郎「そうか、よかったな?」 和「……はい」 京太郎「……」 和「……」 優希「……」 京太郎「……決勝、何が何でも行かなくちゃな」 和「……ええ」 優希「……そうだな」 京太郎「……」 和「……」 優希「……」 3人「(どうしよう……)」 (会場某所) 照「……」 菫「お疲れ、照」 照「うん」 菫「何とか2着通過だったな。危なかった」 照「……ごめん」 菫「な、なぜ謝る?」 照「本当は私がもっと点数を叩きたかったけど……7,000点しか稼げなかった。前半戦のリードを大分食いつぶされたから」 菫「謝ることではないだろう、プラスはプラスだ。だけど、正直驚いた。照が準決勝でここまで手こずるとは」 照「その……」 菫「いや、別に攻めているわけじゃない。本当に驚いただけ」 照「……」 菫「……私は」 照「菫?」 菫「私は照とあの清澄の大将の関係はよく知らない」 照「っ」 菫「デリケートな話なんだろ? だから無理に聞き出そうとはしない。だけど……聞いてるんだろ? あの話」 照「……」コクリ 菫「で、これはさっき試合後に聞いたんだが、新道寺と阿知賀の2人はどうやら 清澄のメンバーと知り合いらしいな。……だから、会って話がしたいと」 照「……」 菫「本当になのか。本当だとしたら、どうしてそんなことになってしまったのか。 大切な友人だから、かわいい後輩だから、できるなら止めない。泣かせる話だな」 照「……何が言いたいの?」 菫「阿知賀は勝ったが新道寺は落ちた。私たちはあの子の願いを踏みつけて行くわけだ」 照「……菫」 菫「わかってる。別に後悔をしているわけではない。……だけど、踏みつけるのではなく、それを背負っていくことはできるはずだ」 照「せお、う?」 菫「きっと、話をして、できるなら止めたいんだかったんだろうな、あの子は」 照「多分」 菫「で、だ。……お前だって、話したい子がいるんじゃないか。あの話を聞いていたってことは何も感じなかったことはないと思うが」 照「……」 菫「……さっきの発言を撤回する。ちょっと踏み込んだことを言うぞ?」 照「えっ?」 菫「『妹』なんだろう?」 照「っ」 菫「『姉』として、『家族』として、できることができるんじゃないか? 止めてやることも、できるんじゃないか」 照「……」ウツムキ 菫「悪かった。ズケズケとプライベートなことに踏み込んだことは謝る。だけど、考えてみてほしいんだ。頼む」 照「……うん、わかった」 菫「そうか、よかった。……さっ、何か食べて帰るか?」 照「うん」コクリ 京太郎「今日こそは……」 我等が清澄高校の準決勝を翌日に控えた夕暮れ時、本日は部員一同ゆっくりと過ごすこととなった。 こんな状況なので人目を気にしているというのもあるが、最近はいろいろありすぎてみんな疲れ気味だ。 和などは最近は掲示板の内容に目を通しつつ怒ると言う大変不毛な行為を繰り返している。 見るのをやめればいいもののどうしても気になるそうな。 俺もホテルでゆっくりしていようと思ったが、どうしても行きたいところがあったのでこうして東京の街を歩いている。 京太郎「さて、今日は居るかな?」 財布の中の小銭を確かめながら、俺は目的地であるゲームセンターに足を踏み入れた。 入り口に設置されているクレーンゲームや大型筐体には目もくれず、 比較的奥に設置されている格闘ゲームのコーナーに足を向けた。 休み中なので俺と同じような高校生と思われる人間も多い。 その人ごみをかき分けながら、筐体の一つ一つに目を向ける。 京太郎「居たっ」 思わず口に出てしまう。 プレイヤーネームに『AwaAwa100』という表示。 筐体の向こう側でプレイしているため顔は見えないが、間違いなく彼女だ。 相変わらずのえげつない腕で、俺の目の前で対戦している少年が操作しているキャラクターを固め殺している。 京太郎「あの6Cを1発目から小パンで……」 考えてきた対策を軽く口に出して復習する。 まぁ、この状況で分かったと思うが俺はリベンジにやってきたわけである。 大会始まる前の期間にぶらりと寄ったゲーセン。 せっかく東京に来たんだからと軽い気持ちでよくやっている格ゲーをプレイしてきたときに乱入してきたのがこいつだ。 正直自分の腕はそこそこあると思っていたが、そんなプライドをメタメタのギッタギタにしてくれたのがこいつだ。 負けも負けたり20連敗。しかも対戦していたのが自分と同じぐらいの女の子とあっては凹みに凹んだ。 あれから何度か対戦を挑んでいるが今のところ全敗である。 しかし、この前対戦した時は惜しいところまで行ったのだ。 最終セットまでもつれこみ、大技が入ってコンボを完走すれば勝ちというところだった。 京太郎「まさか、残影牙拾いに失敗するとは……牙昇脚にしておけばよかったなぁ……」 あとちょっとで勝ちというところで痛恨のコンボミス。 そしてグチャグチャっとなったところであえなく敗北した。 思わずうがーっと叫んだところで、お互い顔ぐらいは知っている程度に対戦していたが 会話はしたことがないはずのあいつにこう言われたのだ。 ?『コンボミスをすることで勝ち確を逃すことができるwwwwwねーねーアレ落とすってどうなのwwwwww今どんな気持ちwwwww』 人は言った。格闘ゲームは人の性格を悪くする、と。 若干記憶が脚色されている気もするが、ファーストコンタクトがこれだからかわいい女の子といえども印象最悪である。 で、そう言われて顔真っ赤になった俺は懲りずにこうやってリベンジにやってたのだ。 ちょうど目の前の少年がパーフェクト勝ちをされ、肩を落として席を立った。 俺は入れ替わるように席に座ろうとして、気になっていたことを思い出し、筐体の向こう側を覗いてみた。 ?「~♪」 そこにはCPUを相手に楽しそうにコンボ練習をする姿。癪な話だがかなりの美少女、というやつだろう。 そうやって、改めて顔を見直して俺は確信した。 京太郎「(……やっぱり)」 3人で観戦したAブロックの準決勝。 観客席から見つめる画面の向こうに、俺をぼっこぼこにした奴が白糸台の大将として恐るべき実力を発揮する姿があった。 その立ち振る舞いは負けた俺を煽る姿とは一致せず、思わず呆気にとられたものだ。 京太郎「(白糸台の大将……大星淡、だったか。麻雀も強くて格ゲーも強いとかなんだよそれ)」 この世の不公平さを嘆きつつ、俺は100円を入れてカードを筐体に読み取らせた。 今日こそは勝ってやる。 こうやって負け続けるのは精神衛生的にも財布の中身的にも大変よろしくないからだ。 (対戦中) 京太郎「っつつつ」ガチャガチャ 淡「画面端ごあんなーい。固めるよー」ガチャガチャ 京太郎「あぶねっガードできた……」ガチャガチャ 淡「ふーん、大分頑張ってきたみたいだねー」ガチャガチャ 京太郎「ここで暴れてッ」ベシベシ 淡「あっ、やばっ」イタイニャス 京太郎「中段通った!」イキマスヨ、ジャヨクホウテンジン! 淡「立った! 立ったって!」ガチャガチャ 京太郎「よっしゃ! ここで蛇翼からODでっ!」コレカラガホンバンデスヨ! 淡「あーあ、さすがにこのセットは取られたかな」ガチャガチャ 京太郎「よし、これで蛟竜で締めれば……あっ」ガチャガチャ 淡「あ、繋がってない。んじゃ、美味しくいただきますっと」ニャスニャス 京太郎「あああああああああああああああああ! 保障高過ぎだろぉぉぉぉぉ!」ディストーションフィニッシュ! 京太郎「」 結論から言おう。 負けた。負けました。10連敗しました。 しかも何戦かは勝ちが見えてたのにお手手プルプルしてコマンド入力をミスるとかいうあまりにもアレな負け方。 ベッコベコに凹まされて現在は自販機コーナーのベンチで自棄コーヒー中である。 京太郎「ふぅ」 いつもよりコーヒーが苦く感じる。これが敗北の味というやつか。 完全に負け癖がついてしまった。家庭用が出たら練習しよう。 長野に帰る前に1度ぐらいは勝ちたいなぁ。 湯だった頭でそんな風に取り留めのないことを考えているときだった。 淡「ねーねー」 京太郎「俺?」 淡「そうに決まってるじゃん」 話しかけてきたのはあいつだった。 というかまともに話しかけられたのはこれが初めてだったからちょっと戸惑ってしまう。 そいつは探るような視線を俺に遠慮なく向けながら口を開いた。 淡「ねぇ、ちょっと聞きたいことあるんだけど、いい?」 京太郎「別に、いいけど」 淡「清澄の須賀京太郎って、あんた?」 考えてみれば当たり前の話だ。 相手も麻雀部員だ、例の噂を聞きつけていて居るのは当然だろう。 だが、あの噂が流れていることを知ってから他校の人間とこうやってまともに話すのは初めてなので、 内心めんどくさいことになったな、とちょっと焦る。 京太郎「……そうだけど」 淡「やっぱり? ネットの画像の通りだ。へー、ふーん」 そう言いながらジロジロと上から下まで品定めするように見てくる。 こいつ(いいよね、こいつならこいつ呼ばわりで)は礼儀というものを知らんのか。 このゆとりめ。いや、俺もゆとりだけど。 一方的に聞かれるのもしゃくなので、ちょっと反撃してやる。 京太郎「そういうそっちは、白糸台の大星淡さんだよな?」 淡「へぇ、私のこと知ってるんだ」 京太郎「準決勝、見てたしな。うちが決勝に行けば、当たる相手だし」 淡「なるほどねー。いやー、有名になるのも大変だー」 ケラケラと笑うこいつを見て驚きの表情一つも見せないことにげんなりする。 こいつ大物だわ。 それともただのバカなのか。 個人的な所感では間違いなく後者。 うん、確信。 京太郎「で、何の用だ?」 淡「あ、もしもしテルー? うん、そう、いまね……」 京太郎「聞けよ」 俺の問いには答えず目の前の珍種は気づけば俺を無視して電話を始めていた。 思わず乱暴な突込みが入ったけど、いいよね。同い年だし。 黙って帰ってもいい気がしたけど、それはそれでめんどくさいことになりそうだし、仕方なく電話が終わるのを待った。 淡「うん、それでね、大会が終わったらね……」 淡「それでね、たかみーが抹茶ケーキを……」 淡「ケーキといえば駅前のモールに……」 淡「そうそう、Aちゃんに彼氏が……」 淡「この前会ったんだけど、なんかすごい電波で……」 淡「哲っちゃん達者で打ってるかいってブツブツ言いながら体がプルプル震えてて……」 京太郎「お前何の話してるんだよ」 5分間我慢したんだけどもういいよね。 横で聞いてる限りどう考えても俺と関係する話をしているとは思えない。 付き合ってられんとばかりに踵を返そうとしたとき、そいつは俺の顔を見て『あっ、やっば忘れてた』って顔をした。 淡「あっ、やっば忘れてた」 京太郎「おい」 一点読みが通ったのにまったく気持ちよくない。 というか俺はこんなツッコミキャラだっただろうか。 部の皆といるときは結構ボケるほうだと思っていたのだが。 淡「うん、そう。噂の清澄の、うん、会いたいって言ってた」 淡「そうそう、そいつ。今ゲーセンに居るよ」 淡「あっ、ゲーセンに行ったことはスミレには黙っておいてね? また怒られるから」 淡「うん、それで、どうする……うん、うん」 淡「わかった、あそこだね。りょーかい」 俺を置き去りにすることたっぷり10分。 俺は途中で痺れを切らしクレーンゲームでぬいぐるみを3つ取ってで 『妹の彼氏を姉が寝取り泥沼になった姉妹に挟まれ精神崩壊する彼氏ごっこ』をして遊んでいた。 彼氏が追い詰められた挙句の自殺後、葬式帰りに二人が刃傷沙汰になるという佳境のシーンでこいつはようやく電話を切った。 即興のシナリオにしてはなかなかいい出来だと思う。 なんかの賞にでも応募してみようか。 淡「明日なんだけど、ちょっと時間ある?」 電話を切って一言目がこれ。 単刀直入である。突然すぎて色気も何もあったもんじゃない。 女の子の誘いだからもっとテンションが上がってもよさそうだが心はコールアングレの音が響く 中央アジアの草原のような穏やかさである。 こいつはあれだ、優希と同じカテゴリだ。 京太郎「うち、明日試合なんだが……?」 淡「自分が出るわけじゃないでしょ。それに開始前に時間は調整したから問題なし!」 京太郎「おい」 返事を聞く意味があったのだろうか。 あと、そろそろ殴っても文句は言われないだろうか。 淡「明日10時に会場最寄駅の横にある喫茶店で人が待ってるから。じゃ、よろしくっ!」 そう言ってそいつは振り返り帰ろうとする。 俺はそれを呆然と見送りかけたが肝心なことを聞いてないことに気づいてあわてて声を掛けた。 京太郎「ちょ、ちょっと待てよ。待ってるって、誰が!? 何で!?」 淡「んー?」 俺の呼び止めの声にそいつはくるりと踊るようにその場で回って、少し考え込むようなそぶりを見せる。 うーん、とちょっと考え込んでいるような声が漏れて聞こえてきた。 淡「何でかは私もよくわかんない。一度話がしたいーって言ってたのを聞いただけだから。あと、誰が、だけど」 そこまで言うと、不意ににやっという音が聞こえそうな感じで笑った。 その笑い方がなかなかにピッタリで、ちょっとというかかなり可愛くて、正直ドキッとした。 した後ですごく悔しくなった。謎の敗北感である。 淡「うちで一番有名な人、っていえばわかるでしょ?」 京太郎「それって……」 淡「じゃあね、絶対行ってよ! それともっと練習してきなよー。コンボミスりすぎっ!」 びしっと指を突き付け、そう言いながらあいつは去って行った。 俺はあまりに突然の事態に呆然とそれを見送るしかなかった。 京太郎「一番有名な、人」 そう言われると心当たりは一人しかいない。 しかし何故、という気持ちが大きい。 麻雀を始める前からおぼろげにその存在は知っていた。 だが、所詮はそのレベルの話であってお互い面識もないのに突然どうしてなのかが全く分からない。 意図が読めない。 行くべきなのだろうか。 部の皆には話すべきなのか。 そんな感じにもやもやしたものを抱えながら俺はホテルへ足を向けた。 淡「あ、そうそう」 京太郎「どわっ! なんだよ、いきなり戻ってくるな!」 淡「そのぬいぐるみ、かわいいね。ちょーだい!」 京太郎「……」 京太郎「……」 京太郎「……」 京太郎「……」 京太郎「……ほら」 淡「え、本当にくれるの?」 京太郎「……暇つぶしで取っただけだし」 淡「やった、ありがとう! じゃーねっ!」 うん(困惑) うん(現状認識) うん(把握) なんだあいつは(戦慄) 新種の生命体と対話した次の日、俺は予定時間の15分ほど前に指定の店に着いていた。 部のメンバーはもうそろそろ会場入りしているころだろう。 俺はこのことを報告するか悩んだが、結局黙っていた。 ここに来ることを適当にごまかして、皆とは現地で合流する手はずになっている。 本来であればこんな状況だしちゃんと話すべきだと思ったんだが……。 京太郎「言えないよなぁ、やっぱり」 あの癖っ毛たくましいポンコツ娘の顔を思い浮かべると、どうしてもその気になれなかった。 そんな感じで、心にしこりを抱えながら水をすすっているとドアベルが小さく鳴った。 ちらりと視線を向ける 京太郎「(あぁ、やっぱり)」 まさか、という気持ちはあったが、やはり想像通りの人がそこにいた。 その人は店内をきょろきょろと見回し、俺の姿を見つけるとゆっくりと近づいてくる。 そして、少しの沈黙の後に口を開いた。 ?「須賀、京太郎君?」 京太郎「はい、そうです」 ?「はじめまして、宮永照と言います」 咲、やっぱりお前には言えないよ。 お前のお姉さんと会ってくるなんて。 咲に姉がいるのは知っていた。 それと同時に二人の間に簡単に口に出せないような『何か』があるのも知っていた。 そもそも離れて暮らしているのだ、いろいろあるんだろう。 中学の時、家族の話になったら咲が露骨に辛そうな顔をしていた時以来、咲に家族の話はしないようにしてきた。 友人とは言え、触れてはいけないところ、触れてほしくないところってのは誰にだってあるだろう。 そう、だからここに来ることを言えなかった。 照「来てくれてありがとう」 京太郎「いえ……」 俺の向かいの席に座る……この人を何と呼べばいいのだろう? 宮永さん? 当たり障りないが、咲のことを名前で呼んでるせいでなんとも変な感じだ。 照さんとか? いや、初対面で下の名前は馴れ馴れしすぎだろう。 チャンプ? お互いに恥ずかしすぎだろ。 あいつが言ってたテルー? 命を大切にしない奴はうんにゃらっていうあのセリフを思い出すな。 どう口火を切ればいいのかわからず俺は手元の水に口を付けた。 照「何か飲む?」 京太郎「あ……えと、はい」 照「コーヒーでいい?」 京太郎「大丈夫、です」 どうにも緊張する。 そもそも女の子と二人でお茶をするなんて初めて……いや、咲は例外ね。 いや、女の子っていうのも何か微妙だ。 相手は年上の人だし、見た目からも『女の子』というより『女性』と言ったほうがしっくりする。 水を持ってきた店員さんに対して穏やかに注文する姿はとても大人っぽく感じた。 年齢としては2歳しか違わないのに、不思議だ。 店員さんが去った後は再び気まずい空気が流れる。 斜向かいの席に座っているおばさんたちの楽しげな笑い声が妙に耳に入ってくる。 目の前の人も同じく落ち着かないような感じだったが、一口水を飲んでから口を開いた。 照「突然呼び出してごめんなさい」 京太郎「いえ、別に……」 照「その、私のこと、知ってる?」 唐突な問いだった。 どういう意図なのか、どう答えるべきなのか。 どんな回答を求めているのか、何を聞きたいのか。 いまいちわからなかったが俺は頷いた。 京太郎「あの、俺からもいいですか?」 照「うん」 その一言を口に出すのは結構勇気が必要だったが何とか絞り出す。 京太郎「咲の、お姉さんですよね?」 俺の問いに少しの沈黙ののち、小さく頷いた。 わかりきっていたことだったが、これで確信に変わった。 確かによく見ると顔立ちとか少し咲に似ている。 ただ、纏う雰囲気は大違いなせいかあまりピンとこない。 店員「お待たせしました」 そうこうしているとちょうどコーヒーが運ばれてくる。 コーヒーは嫌いではないが砂糖なしで飲むほど俺の味覚は子供から脱却できていない。 テーブルの上にあったスティックシュガーをひとつ取り、コーヒーに混ぜていく。 向かいではどこか憂いを帯びた感じでコーヒーにミルクを入れる咲のお姉さんがいた。 普段周りにいる女性陣が絶対にしないようなその表情はちょっとドキッとする。 照「」サラサラサラサラサラ 照「」ドバー スティックシュガーを5本、ミルクピッチャーに入っていた2人分のミルク全部をコーヒーに投入しているのはちょっと気になるけど。 別に俺は入れないので俺の分のミルクまで使っているのは構わないのだが、甘すぎないのだろうか。 いや、それ以前にあれをコーヒーと呼んでいいのだろうか。カフェオレ? そういえばカフェオレの定義ってなんだろう? 照「」カチャカチャ コーヒー(?)を混ぜている咲のお姉さんを見ているとふと昔を思い出した。 咲も中学生の時に「京ちゃんが思ってるより私は大人なんだから!」とか強がってブラックコーヒーを勢いよく飲んだ結果、 チョコレートファウンテンの如く口からコーヒーを垂れ流したことがあったな、と。 そんなことを考えていると、俺の視線に気づいたのか、少し顔を伏せたまま口を開いた。 照「今日、来てもらったのは、その……」 そこまで言ってまた口ごもる。 若干の沈黙ののち何か思い悩んだ表情で手元のコーヒーカップに手を伸ばした。 何かを流し込むかのように、咲のお姉さんはコーヒーに口を付けた。 照「熱っ!」 そして、思ったより熱かったのか慌てて口を離し 照「あっ」 勢い余って手まで離し 照「あちちちちちちち!」ガシャーン! そしてコーヒーは見事に咲のお姉さんの胸のあたりにぶちまけられた。 床に落ちてけたたましい音を立てて割れるコーヒーカップ。 散らばる破片 照「あっつ! あっちゅい!」バタバタ 胸元にこぼれたコーヒーが扱ったのか慌てて胸元をつまみ服を肌から離している。 てんやわんやとはまさにこのことか。 俺は一瞬ポカンとするが慌てて手元のおしぼりを差し出した。 お姉さんはそれを受け取り胸元のコーヒーのシミを必死にこすり始める。 こするんじゃなくて叩かないといけないんじゃと思っていると仕事の早い店員さんが颯爽と飛んできた。 店員「お客様、大丈夫ですかっ!」 照「すみません、大丈夫です……」 店員「すぐに掃除いたしますので!」 照「本当にすみません……」 俺は店員さんが持ってきてくれたおしぼりで机の上を拭きながら、しみ込んだコーヒーと格闘している咲のお姉さんを見てふと思った。 ――この人、間違いなく咲のお姉さんだわ。 ――血は争えん。 それと同時にこうも思った。 ――こぼれたのが水だったら着けている下着ぐらいは見えたかな。 ほら、思春期真っ盛りだし、これぐらいの下心は許してもらえるよね? 俺は机をおしぼりで拭きながらそんな自己弁護に走っていた。 15分後、落ち着きを取り戻した俺たちは再び向かい合って座っている。 咲のお姉さんの手元にはサービスで用意してくれた新しいコーヒーがある。 照「それで、来てもらった理由は……」 大変シリアスな面持ちをしているが、胸元に広がる大きなコーヒーのシミがぶち壊しにしている。 白糸台の制服が真っ白ということもあり、大変目立っているのが悲劇以外の何物でもない。 何とも微妙なテンションに陥っていた俺だが、次の一言にはさすがに衝撃を受けた。 照「どうしても、謝りたくて。ごめんなさい」 そう言った後、頭を下げられる。 初対面の女性にこうやって頭を下げられる経験などあるわけがない俺は 京太郎「いや、えっ、ちょっと、へっ?」 当然キョドるわけである。 さっきの騒ぎで微妙に店内の注目を浴びてることもあり焦る。 ほら、さっきはあれだけ騒がしかったおば様方がチラチラとこっちを見ながらヒソヒソ話をしている。 そんな俺の返事を待たず、頭を下げたまま畏まり、重い口調で喋り始めた。 照「須賀君が今どういう状況に置かれているか、っていうのは聞いています」 照「私は妹と長く離れて暮らしているから妹がそんなに荒れてるなんて知らなくて……」 照「昔は気弱だったあの子がどうしてそうなっちゃったかはわからないけど」 照「でも……私が、近くに居たら止められたかもしれない。だけど、それが、出来なくて……」 照「だから、ごめんなさい」 下げた頭をさらに深く下げ、年下の俺に妙に丁寧だが絞り出すような謝罪の声を出すお姉さん。 ここまで言われて俺はようやく理解した。 京太郎「(姉として、妹の行いを謝罪してくれてるってことでいいんだよな)」 京太郎「(……すごく仲が悪いとか、確執があるのかとか勘ぐってたけど、そうでもないのか?)」 そうだとしたらそれはそれで大変喜ばしいことなのだが、そもそも謝る原因が大きな誤解だというのが大問題である。とんだ謝り損だ。 どう訂正したものかと頭を悩ませているとお姉さんはとんでもない右ストレートを繰り出していた。 照「その、私にできることは何でもします。だから……」 ん? 何でもする。 何でもすると言いましたよこのお姉さん。 恐らくはお姉さんとしては、現在の問題を解決するために何でもするっていう意味だろうけど、言っちゃったよ。 性に目覚め、色を知り、一番肉に飢えているこの年代の男の子に何でもすると仰いましたよ。 食事のシーンに定評がある某漫画でも言ってたよね、『強くなりたければ喰らえ』って。 つまり、わかるな? 和が知ったら斬刑に処された後、諏訪大社に必勝祈願の贄として捧げられそうなことを考えること10秒。 俺は脳内に繰り広げられたR-18劇場を若干名残惜しさを残しながら幕を下ろした。 京太郎「頭を上げてください。その、誤解なんですよ!」 照「……えっ?」 頭を下げ続けていたお姉さんはようやく頭を上げてキョトーンとした顔で俺を見てくる。 俺自身、この状況を誰かに面と向かって釈明するのは初めてなので若干混乱していたが、これまでのあらましを話した。 あくまで誤解であり、別に俺自身は虐げられてはいないということ。 せいぜいほかの学校でも下っ端がやるようなことをやっているにすぎないこと。 まぁ、多少からかわれることはあるけど苛められているとか、そういうことはないこと。 ほかのメンバーも別に北○の拳の登場人物やヤクザみたいなそれではなく、いたって普通の女の子であること。 むしろ彼女たちのおかげで俺は楽しく過ごせていること。 たっぷり20分ほどかけて、俺自身なんて説明するべきか若干悩みながらも説いていった。 照「……なるほど、言われてみれば確かにおかしい」 京太郎「よかったです、わかってもらえて」 照「咲が悪魔合体をして人修羅になったとか、冷静に考えればありえない」 京太郎「長野はボルテクス界ではありませんし、アマラ経絡とも繋がっていません」 照「須賀君もオリジナルはもう死んでいて実は3人目だっていう噂もありえない」 京太郎「生憎と人造人間のパイロットでもなければ電光機関の使い手でもないです」 どっかで聞いた設定だが、大方騒ぎに便乗した愉快犯が書き込んだのだろう。 現在流れている噂の9割方がそうだけれども。 と言うより、何故明らかにおかしい噂を信じちゃったのだろうか。 照「でも、よかった」 京太郎「えっ?」 照「さっきの須賀君の話を聞いて思ったけど……咲、みんなで仲良く、楽しくやってるんだ」 京太郎「はい、それは保証します」 中学時代は殻にこもりがちだったアイツが最近は社交的になった。 笑った顔を見る機会だって増えた。 そう考えると麻雀部に誘った俺としても誇らしいものがあり、胸を張ってそう答えられた。 照「須賀君のおかげかな?」 京太郎「俺だけじゃないですよ。ほかのメンバーや、他校のライバルたちのおかげですよ」 照「それでも、ね。ありがとう、須賀君」ニコッ 京太郎「(うぉ……)」 あまり感情の起伏が大きくない人なのか、ほんの口元が笑ったぐらいだったけど、今日初めて見たその笑顔にちょっと落ちかけた。 危なかった、服に広がるコーヒーのシミがなければ即死だった。 照「」モグモグ 京太郎「えーっと、宮永さん?」 照「照でいい」モグモグ 京太郎「じゃあ……照さん」 照「何?」モグモグ 京太郎「ほっぺたにクリームが」 照「」ゴシゴシ 誤解も解け、ひと段落したタイミングで俺たちは現在ホットケーキをつついている。 クリームとブルーベリーソースがかかったそれはなかなかに美味である。 どうやらこの喫茶店の一押しメニューらしく、照さんが奢るから食べたいと訴えたため、相伴にあずかっている。 本当はさっさと会場に向かうべきなのだろうが……。 照「それにしても、そんな噂が広まってるとなると、やりにくくない?」モグモグ 京太郎「はい。遠巻きから見られて白い目で見られるし、対局している人たちは怯えてるし……」 1、2回戦の阿鼻叫喚っぷりを思い出すと思わずため息が出る。 出場メンバーでもない俺ですらこんな始末だから、女性陣の心労はいかほどか。 京太郎「最初は放っておけば沈静化すると思ってたんですけど、なかなか……。少なくともこの大会中は消えそうにないですね」 照「うーん」モグモグ 京太郎「弁解しようにもネットに否定意見書いたところでほかの多数意見に流されて終わりですし、 かと言って参加者全員に一人一人釈明するのは無理ですし」 照「なるほど」モグモグ 京太郎「いろいろ部内でも考えたんですけど正直お手上げ状態で」 照「」モグモグ 京太郎「それで……」 照「」モグモグ 京太郎「……」 照「」モグモグ 京太郎「……美味しいですか?」 照「うん」モグモグ 聞いているのかホットケーキに夢中なのかよくわからない照さんは一応返事を返してくれる。 白糸台のレギュラーというのはマイペースな人間しかなれないという決まりがあるのだろうか。 照「わかった」 俺が雀力と性格の因果関係について考えていると、ホットケーキを食べ終えて表情は変わらないけど 心なしか満足そうな照さんが口を開いた。 照「正直、私もどうすればいいかわからない。だから私も帰って皆に相談してみる」 京太郎「皆って……」 照「うちのメンバー。ちょうどこの後Bブロックの観戦とミーティングだし」 京太郎「おぉ……」 天下の白糸台のメンバーが解決案を考えてくれるというのか。なんと豪華な。 レギュラーの中の約1名は全くアテにならないが気になるけど、まぁ、それはそれだ。 京太郎「でも、いいんですか? こんな面倒なこと」 照「うちは準決勝終わったから少し時間がある。それに……」 京太郎「それに?」 照さんは少し思い悩むような表情を見せる。 俺は残り1切れになった最後のホットケーキを口に含んでコーヒーで流し込みながら、返答を待った。 照「私は、咲のお姉ちゃんだから。それじゃ理由にならない?」 京太郎「……いえ」 その一言が聞けただけで、少し胸のつかえが取れた気がした。 ここ最近微妙な話ばかり聞いていたので余計にうれしく感じる。 照「ただ、このことは咲には黙っておいて」 京太郎「それはいいですけど……。ただ、その、ちょっとお願いが」 照「?」 京太郎「二人の間に何があったかはわからないですけど……よかったら咲が東京にいる間に、会ってやってくれませんか?」 照「……」 京太郎「咲、口には出しませんけど寂しがってます」 照「……うん」 京太郎「大きなお世話ってのはわかってます。何様だっていうのもわかっています。だけど……お願いします」 照「……わかった」 頭を下げた俺に照さんが返事をしてくれるまでに少し間があったが、肯定の返事が聞けたことにほっと胸を撫で下ろした。 大きなお世話だったかもしれないし、これが火種でまた争うことになってしまうかもしれない。 だけど知らんぷりを決め込むよりはずっとずっとマシなはずだ。 渡りに船とばかりに勢いで言ってしまったが、後悔はない。 照「じゃあ、また私から連絡するから、番号だけ」 そう言って照さんは携帯を取り出す。 妹はいまだに持っていない携帯だが、さすがに都会人は格が違った。 それにしもて、全国に行ったら女の子の知り合い増えるかなーと若干妄想じみた期待をしていたが、まさか叶うとは思わなかった。 色っぽい何かではないけれども、まぁ、それはそれだ。 照「じゃあ、行こうか。そろそろ時間でしょ?」 京太郎「あ、そうですね。そろそろいかないと不味いです」 時間を確認すると大会開始までにもうあまり時間がなかった。 さすがにこれ以上遅れると部長に叱られてしまう。 照「ここは私が」 京太郎「悪いですよ、そんなの」 いくら友人のお姉さんとは言え、会ったばかりの人に奢られるのもどうなのだろう。 そう思い、伝票を持って立ち上がった照さんを慌てて追いかける。 すると照さんは振り返って若干ふんぞり返る感じで口を開いた。 照「いいから、先輩に任せて」フンス ちょっとドヤ顔というか偉そうな顔というか、その表情が俺に対して偉ぶるときの咲に本当にそっくりで思わず軽く笑ってしまう。 しかたない、ここはおとなしく奢られておこう。 恐らく妹と一緒で、ここでさらに抵抗するとヘソを曲げてしまうだろう。 そう結論付けて俺は照さんにご馳走様です、とだけ伝えた。 そう言うと照さんは満足そうに伝票をレジのお姉さんに差し出した。 店員「お会計2400円です」 照「」ポケットゴソゴソ 照「」カバンゴソゴソ 照「」ポケットパンパン 照「」カバンバサバサ 照「」 照「財布忘れた」 京太郎「……」 照「……」 京太郎「……払っときます」 照「……ごめんね」 京太郎「いいですよ、(妹さんで)慣れてますし」 あの妹にしてこの姉有。 1時間にも満たない逢瀬だったのに、俺内カテゴリにおける照さんのランクが『年上の綺麗な女性』からグーンと下がり 『ポンコツ』(現在のところ咲のみ該当)に落ちて行ったのが悲しい。 現実の非情さと財布へのダメージに俺は涙を禁じ得なかった。 (白糸台控室) 照「遅れてごめん」ガチャ 菫「遅いぞ、照……ん?」 淡「テルー、なんで冬服着てるの? 暑くない?」 照「暑い。けど、コーヒーこぼして制服の替えがなくなったから……」ダラダラ 菫「……昨日カレーこぼしたばっかりだろ」 尭深「一昨日はチョココロネのチョコレートこぼしてましたね」 誠子「つまり全部クリーニングに出したから着替えがなくなったってわけですか」 照「そういうこと」 尭深「(この人は社会に出てちゃんとやっていけるんでしょうか……)」 淡「そう言えば、清澄の須賀、だっけ? 会ってきたんでしょ? どうだった?」 菫「お、おい。聞いてないぞ。昨日の今日で会ってきたのか!?」 尭深「だ、大丈夫でしたか?」 照「うん、何も問題なかった。と言うか……」 (説明中) 誠子「つまり」 淡「すべて誤解だったってこと?」 照「そう」 誠子「現実的に考えておかしい噂もありましたけど、もろもろひっくるめて全て嘘っぱちだったってことですか」 照「そうらしい。ひどい扱いの目撃証言もあくまで仲間同士でのじゃれあいレベルで 須賀君も別に怒ってるとかそういう認識はなかった」 菫「そうだったのか……」 尭深「まぁ、冷静に考えれば現実的にありえない話が多かったですし……」 菫「(ん、と言うことは……)」 ――前話より―― 菫『わかってる。別に後悔をしているわけではない。……だけど、踏みつけるのではなく、それを背負っていくことはできるはずだ』 菫『……さっきの発言を撤回する。ちょっと踏み込んだことを言うぞ?」 菫『妹なんだろう?』 菫『姉として、家族として、できることがあるんじゃないか? 止めてやることも、できるんじゃないか』 ――回想終わり―― 菫「(あああああああああああああああああ!)」 菫「(は、恥ずかしいいいいいいいいいいいいいいい!)」 菫「(『妹なんだろう(キリッ』だってああああああああああああああああああああああ!)」 菫「(誰か私を殺せえええええええええええええええ!)」 誠子「先輩は何をもがいてるんだ?」 尭深「さぁ……?」 (5分後) 菫「で、だ。私たちに知恵を出してほしいと?」 照「うん」 誠子「でも、解決案って言われても……」 菫「部として付き合いのある、知り合いの記者に取り上げてもらうか? いや、面白おかしく扱われるのがオチか」 尭深「そう言う意味だと、下世話な雑誌とかにこの騒ぎが取り上げられると取り返しがつかないかも……」 菫「決勝で戦うかもしれない相手だ。できればそういうことは避けたいな」 誠子「やっぱり、一度広まった噂を鎮めるっていうのはなかなか……」 一同「うーん」 淡「へー、阿智賀の監督にプロ復帰の噂ねー。というか元プロだったんだ」パソコンカチカチ 誠子「皆で悩んでるってのに何やってんだ。ほれほれ」ムニムニ 淡「へいじぶぁんみるあいふぁにみへはだへだっへばー(掲示板見る合間に見てただけだってばー)」 照「何を見てたの?」 淡「麻雀関連のニュースに特化したサイト。飛ばしも多いけどなかなか面白いよ」 照「どれどれ……『小鍛冶健夜プロ、熱愛発覚』」カチカチ 尭深「ガセネタですね」 菫「即答はやめてさしあげろ」 照「『咲-saki-第12巻、本日2013年12月25日発売』」カチカチ 淡「皆買おうね!」 尭深「安易なメタネタはちょっと……」 照「『牌のお姉さん。WEBにて麻雀教室の生放送配信決定。新衣装お披露目に期待大』」カチカチ 誠子「荒れそうだなぁ……いろんな意味で」 菫「しかし、淡の言うとおり玉石混合だな。流石ネットと言ったところか」 尭深「あっ」ピコーン 淡「どうしたの? どっかのゲームみたいに頭の上にひらめきの電球マーク出してるけど」 誠子「抜刀ツバメ返し、最後までひらめけなかったなぁ……」トオイメ 菫「なんだその例え……。で、どうした?」 尭深「もしかしたら……この方法ならいけるかもしれません」 照「?」 尭深「かくかくしかじか」 (説明中) 菫「……おい、流石に不味いだろ」 淡「えー面白そうじゃん! 本人に断りを入れれば問題ないでしょ。そう、あれ、毒を持って毒を制す的な」 照「確かに、効果はありそうかも。部員全員を当たれば必要なものは揃えられそう」 誠子「元手もかからないし、まぁ、こっちの負担は少ないか」 菫「本当に上手くいくのか? 私は本人に会ったことないから何とも言えないが」 淡「大丈夫、あいつは何度か会ってるけど、性格上絶対うまくいくって! ね、テルー?」 照「……うん。それは、確かに」 淡「ねー、いいでしょ? 目立つところは私とテルーでやるし」 菫「しかし……」 照「菫」 菫「ん?」 照「お願い」ジッ 菫「うっ……」 照「」ジーッ 淡「」ジーッ 尭深「」ジーッ 誠子「」ジーッ 菫「あー……」 菫「まったく」ハァ 菫「わかった。わかったから、そんな目で見るな。私がまるで悪者じゃないか」 照「よかった、ありがとう菫」 淡「よし、決まりだね! じゃあ、さっそく準備準備ー」タタタッ 誠子「(不安があるとすれば淡が遊び半分だってことか)」 尭深「(大丈夫だよ、きっと、多分、おそらく)」 菫「うーん……」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6168.html
7月◇日 クラスの友達が喫茶店でバイトを始めた 冷やかしに行ったら大会の時に会った幽霊みたいな人、鶴賀の副将東横桃子さんに会った 見つけた瞬間、あっって言ったら向こうも気付いたらしく、何故か心底驚いた顔をした 少し話してみると、存在感が薄いから気づかれないとか、鶴賀の大将が見つけてくれたとか色々な話を聞いた 存在感が薄い、なんてことないと思うんだがな。おもち的に 普通に可愛いんだし、気づかない奴らがおかしかったんじゃないか?と言ったらなんか笑われた おかしなこと言ったか? その後は会話が弾んで、連絡先を交換した 今度はこの店で別のメニューを試そうという約束をして別れた そうそう、俺のことを京さんと呼ぶから、モモでいいとも言ってくれたな いい奴だったな、モモ ちなみにバイトしてる友達はずっと裏で掃除してたらしい 優希「こいつ、この短期間で一気に女子の連絡先を増やしてるじぇ!?」 まこ「しかもあのステルスを素で見つけよるとは……」 咲「京さんって……私の京ちゃんなのに……」 和「ステルスなんてオカルトありえませんし、私ですらまだ須賀くん呼びなのに……」 久「何気に鶴賀のメンバーの半分以上と連絡先交換してるわね。このまま鶴賀制覇しそうで怖いわ」 7月??日 今日のことは……あまりよく覚えていない 学校に行って、部活に出て、学校を出たのは覚えている ただ……その後何故か見つけた見知らぬ雀荘にフラッと入った どうやら少し場違いな雀荘だったらしい。やばいとこだと気付いた時には、俺は貧血気味だった 頭があんまり回らなくなってきたとき、卓にアゴが尖った白髪の人が入った よく覚えていないが、最終的にはその人が1位で、俺が2位だったような気がする 「よくやった。ところでフグ刺しが食いたいな」とその人が言ったと思ったら、何か高そうな店に居た そこでフグ刺しをご馳走になった。すっげー美味かった そこからは覚えていないが、気付いたら家の近所に居た 本当に所々全く覚えていないから、夢なのだろうか いや、フグ刺しの味はしっかり覚えているし、今も若干貧血気味だから夢じゃないだろう ……今気付いたが、ポケットに何か入っている 透明なガラス製の牌? よく分からないが珍しいものだし、お守りとして持っておこう 久「…………え?冗談とかじゃなくて本当に?」 まこ「おい、なんか噂で聞いたことあるワードがいくつかあったぞ」 優希「いやいやいやいや、さすがに……なぁ?」 和「え、えぇ……何かの間違いでしょう。よく覚えていないって、ありますし……」 咲「アレ?よく見たら日付もなんか読めない……京ちゃん?」 7月▽日 今日から短期間、染谷先輩の家でバイトを始めた といっても卓に入ると負けっぱなしでお客さんに教わることの方が多かった だけど教える方が好きな人もいるのか、常連さんにそこそこ気に入ってもらえたようだ 何人かの常連さんには染谷先輩の彼氏か?とかからかわれたがただの後輩だと言った 俺なんかには染谷先輩みたいな優しい人もったいない その後も部では気にかけてもらっていること、普段から気遣いなどができること、急に頼んだのにバイトをさせてくれたことなどを話した 途中飲み物など持ってきた染谷先輩の顔が赤かったが、夏風邪だろうか バイト初日はそんな感じで無事に終わった ただ常連の人達がこれからもよろしく、と意味深に言ってきたのはなんだったんだろう 終わった後、染谷先輩が余計なことを言うなと言われたが、事実しか言ってない そう言ったら腹を一発殴られて「……バカ」と言われた 何かミスしたか? 久「落としたわね」 和「落としましたね」 咲「落としたね」 優希「ウェルカムだじぇ」 まこ「やかましい!」 久「で?どんな感じだったのかしら?」 まこ「どうもこうも!……からかってきよる常連にやれ優しいだの世話になっとるだの本気で言うてくれて!……おかげで彼氏はどこじゃって言われるわ」 咲「多分京ちゃんは気づいてませんよね」 優希「だからタチが悪いじぇ」 和「それにしても須賀くん大会前にバイトしてたんですね」 まこ「あぁ……あの阿呆、応援のために別で行くつもりやったわ。自分がわしらと一緒に行くって思うとらんかった」 久「は?……ちょっと、一緒に行ったし、部屋は別だけど宿は一緒だったじゃない」 まこ「どーもわしら5人だけで行って、自分は別じゃと思うとったらしい」 咲「な、なんですかそれ!」 まこ「女子5人に男子1人だから、じゃと。さすがにブチ切れたわ」 和「お人好しにもほどがありますよ……」 優希「まぁ、そんなんだから染谷先輩も落ちたんだな?」 まこ「……やかましい、1番早かったのは黙っとれ」 優希「1番は咲ちゃんだじぇ!!」 咲「こっちに飛び火した!?」 7月■日 全国大会前にそのための買い物に行くことになった 俺は家にあるものでいいんだが、女子はそうもいかないらしい まぁ女子5人に荷物持ち1人になるのは行く前から分かっていたよ でも部長、笑顔で下着売り場まで俺を連れていくのは勘弁してください、 咲もこれどう?とか持ってくるな!!お前に黒は似合わねぇよ!!そもそも胸足りてねーよ!! しかし和が持っていたのは……すごく、大きかったです…… さすがに長時間居る訳にもいかないので別のところを見ていたら、風越の福路さんと龍門渕の天江さんと国広さんに会った 福路さんは部の買い出し、天江さん達は買い物に来ていたらしい 何度か会っている人達なので普通に雑談した それなりに仲良くなれたので、連絡先を交換した。3人の中で唯一携帯を持っていた国広さんとだけだが 天江さんは大丈夫らしいが、福路さんは携帯を持っていないので、とりあえず俺の番号をメモして渡しておいた 近い内に買うと言っていたが、大丈夫だろうか そうこうしているうちにみんなも戻ってきて、買い物の続きをした とりあえず優希が買おうとしたタコス手作りキットとかいう胡散臭いのはみんなで止めた 夜に国広さんとメールしたが、結構話しやすい、いい人だった 和「今度は風越と龍門渕にまで手を出しましたよ」 久「龍門渕って確か全員一緒に住んでるようなものだから、一気に5人分ゲットかしら」 まこ「どうじゃろな。龍門渕家の連絡先から個人用の連絡先ってゲットしそうじゃな」 咲「すでに1人はゲットしてますし、時間の問題だったり……」 優希「ぐぬぬ……」 7月◎日 明日から夏休みだ 今日は部長は学生議会の仕事があり、染谷先輩も家の手伝いがあるらしく部活は休みだった それでもなんとなく1年生全員部室に集まってしまった そのまま特に打つわけでもなく、ダラダラ雑談したりちょっとしたゲームをしたりして過ごした 特に示し合わせたわけでもなく揃うなんて、思えば馴染んだもんだな 改めて思う、男子1人で他全員女子なんて状況、よく慣れたな俺 最初は誰か男入らねーかな、って思ったりもしたけど、他に男がいないならいないでなんとかなるもんだ 前に、麻雀部の今の状況は羨ましいけど俺じゃなきゃ無理だ、って言ってきた友達がいたが、俺は特別何かしてるわけじゃないんだがな 普通に話して、普通にやってるだけだ 今日だって男女比はアレだが、普通に友達同士で駄弁ってただけだしな 特に身構えたりしないで普通でいいんだ。普通で そういえば、夏休みの宿題を大会前に片付けようって話が出たな カピー見たいって話から俺の家ってことになったし、掃除しとかないとな ベッドの下はダミーでヤングガン●ン数冊置いて、本命は本棚の辞書カバー裏に移動させとこう 和「結局今も男子は須賀君1人ですしね」 久「結構勧誘したんだけどねー」 咲「私なんて京ちゃんに引っ張られてきましたし」 優希「まぁ結果オーライだじぇ」 まこ「ところでこの辞書カバー裏の確認は?」 咲「明日にでも」 久「任せるわ」 7月☆日 今日は麻雀部全員で染谷先輩の家にバイトに行った なんでも浴衣デーということで浴衣でバイトすることになった 夏祭りの時も見たが、全員の浴衣姿はまた素晴らしいものだった ただ、咲が転んで浴衣が着崩れた瞬間、下着が見えた 付けてない&履いてない、はやはり都市伝説だったか……三咏木プロの試合を追うのやめようかな しかし浴衣で動いていると結構着崩れるものだな 俺も気付けば着崩れて半分肌蹴たような状態だった たまたま気付いた時一緒に打っていた女子中学生には悪いことしたかな、顔逸らしてたし 確か、和と優希の後輩だったっけ。合宿にも来ていたとか 今度ちゃんと挨拶しとくか 咲「浴衣が着崩れて胸元ガッツリ開いてて最高だったんですけど次の浴衣デーはまだですか?」 和「そうですね。正直写真を撮っておかなかったのをかなり後悔したので是非私も」 優希「おかげでムロマホも京太郎の話を聞きたがってたな。記憶には焼き付けてるけどやはり写真や実物がいいじぇ」 久「落ち着きなさい1年生。そりゃ色気があって正直抱いて欲しいくらいだったけど落ち着いて冷静にね」 まこ「あんたも落ち着け。あの頃は忙しかったが、各方面に評判じゃたからちゃんと次回を企画しとる」 7月★日 今日は1年生全員で夏休みの宿題を進めるために俺の家に集まった 高校に入ってから、咲以外の女子を家に上げるなんて初めてだから少し緊張した まず予想していたが、カピーがモフられた。諦めろ、お前の宿命だ 何より和の胸に埋まったりしてたんだから代わってほしいくらいだ!! 一通りカピがモフられた後は、普通に宿題を進めた 宿題は毎年夏休み終盤前には終わるようにやってるが、今回は7月中が目標だ ちなみに和はいつもは計画的に終わらせるタイプらしい。和らしい 咲も割とコツコツやるが、必ず最終日まで忘れている宿題があるんだよな。今年はそんなこと無いと思いたい 優希は……まぁ聞かなくても分かる。数学写すなよ 和に教わったりしたこともあって、今日だけでかなり宿題が進んだ この調子なら7月中に終わらせることも充分にいける 明日から部活終わってから部室で宿題をやろうと決めたところで解散した 夜にネト麻で知り合った人たちとメールしていたら、なんと全員がインターハイの時期に東京にいるらしい それぞれと予定が合う日に会うことになった しかしこんな偶然があるとはな。まさか何人かインハイに出場する選手が混じってたりするのか? 考えすぎかな、せいぜい何人か応援で行く人がいるくらいだろう 和「そういえば結局優希だけ宿題が終わってなくて結局大会で忘れてたとか言って提出できませんでしたね」 優希「だ、大体インターハイに出るんだから宿題くらい免除でもいいはずだじぇー!!」 久「さすがにそれはできなかったわ。頑張ったけど、あくまで初参加の学校だしね」 まこ「そもそも夏休み入る前から宿題ははよーやっとけって言うとったじゃろ?お前さんのせいじゃ」 咲(実は問題集1冊忘れてて京ちゃんに泣きついたなんて言えない……) 7月▲日 この前から携帯の電池の調子が悪いので携帯ショップに行ったら、風越の福路さんと池田さんに会った なんでも、インターハイ前に連絡を取り合うために携帯を買いに来たらしい ちょうどいいからという理由で俺も携帯選びに付き合った 機会類が苦手らしいので操作が簡単なのをということだった でも池田さん、老人用やキッズケータイは女子高生に持たせる物じゃないでしょう 色々迷ったが、結局は操作が比較的楽で安い、古い機種にした その後さっそく使い方を教えたが……機械に関しては咲以上にポンコツなんですね なんとか電話の掛け方や取り方は教えた とりあえず、以前の約束もあったので俺の番号を教えておいた メールの練習するためにということでアドレスも教えたが、大丈夫だろうか それとついでに池田さんの番号とアドレスも交換した でも池田って友達にもいるんだよなー……登録名、池田(猫)にしとこう 久「どうりで美穂子の携帯、新しいのにやたら古い機種だったのね」 咲「私以下って酷いよ京ちゃん!私は新しい携帯も使えるよ!」 和「でも借り物で咲さん自分の携帯持ってませんよね?」 まこ「サラッと風越2人の連絡先もゲットしとるぞ」 優希「キャプテンの方はともかく、池田は(猫)だし大丈夫だじぇ」 7月◆日 夏休みなので少し遠出をしようと思い、電車に乗った しかし電車を間違えるは、長時間寝てしまうわで目が覚めたら見知らぬ場所だった どうやって帰るか悩んでいた時 「ワハハ、君は確か清澄の男子だったかー?」 鶴賀の中堅、蒲原さんと大将、加治木さんがいた 蒲原さん達は鶴賀の麻雀部5人でドライブ中だったらしい 訳を話すとドライブついでに清澄まで送ってくれると言ってくれた 少々申し訳ないが、お言葉に甘えて送ってもらうことにした 車には鶴賀の麻雀部全員が居て、内3人とはすでに連絡先の交換もしていると言うとかなり驚いていた 特に加治木さんは 「私はあんなことまでしたのにどうやって……」 等と言っていた。その隣でモモが照れるっすとか言っていた しかしこれで清澄まで行ければ後は歩いて帰れる、本当に良かった。 と、そこまでは思っていたんだ、うん 感謝はしている。これは本当に。心の底から ただ……あんな運転なんて、想像できるわけがない ゆれる、なんて生易しいもんじゃない 昔咲の家族と一緒に行った、古い遊園地のジェットコースターを思い出した そういえば、あの時照さんジェットコースターで回りながら自分の腕も回していたっけ 咲は泣きながら拒否していたけど、それが正解だったんだよな…… シートベルトをしていたはずだが、それでもぶつかりそうで危なかった 何度かこっちぶつかりそうな加治木さんやモモを庇ったりして、抱き着いたような形になってしまったが、やっぱり駄目だったかな 2人ともほとんどこっちを向いてくれず、全く喋らなくなってしまった なんとか帰り着いた時、なにかあった時のためにと蒲原さんと一緒に加治木さんも連絡先は交換してくれたから、嫌われてはいないと思う とにかく体のあちこちが痛い。早く休もう まこ「鶴賀制覇、早かったのぅ……」 優希「京太郎に抱きしめられるなんて……そんな時こそステルスすればいいじぇ」 和「全く羨ま……じゃなくて安全運転が大事ですよね」 久「それにしても抱きしめたぐらいじゃなんにも思わないのかしら」 咲「昔散々お姉ちゃんとやりましたから……遊園地の時も隣の取り合いでした」 7月▼日 部長が大会前の休養ということで急遽休みになった 暇なのでネト麻でもしようと思ったら、ハギヨシさんも休みで暇らしく、屋敷に来ないかと誘われた という訳で龍門渕家の屋敷に行ったが……でけーわ 本物の金持ちというものを見たね 屋敷の中に入ると、なんとメイド服の一さんが出迎えてくれた 本物のメイドなんて初めて見た そのままハギヨシさんの部屋まで行き、ハギヨシさん、歩さん、一さん、そして俺、というメンバーで麻雀を打つことになった といっても練習などという訳でなく、適当に雑談しながらののんびりとした麻雀だった ハギヨシさんがわざと国士を狙ったり、歩さんが衣さんのような口調で話して噛んたり、一さんが部長のツモを真似しようとしたりとなかなか楽しかった 俺は咲のように嶺上開花を狙ったが……そもそも槓すらできなかった そんな風に過ごしていると、麻雀をしていることが気になったのか、龍門渕のメンバー全員がハギヨシさんの部屋に集まっていた 皆さんいい人で、楽しく話しながら麻雀をした ただ、最後に少し本気を出そう、というハギヨシさんの提案で、俺、ハギヨシさん、透華さん、衣さん、というメンバーで打つことになった 今になって思うが、なんであの時の俺はこのメンバー相手に打とうと思ったんだ。なんか透華さんすごい静かになってたし 結果は……言うまでもなく俺が最下位だった それ以外はほとんど差がないような状態だった ただ、オーラスすごい低い手だが、和了れた 少しは成長しているということだろうか 帰りは疲れて寝てしまったという透華さん以外、全員が見送りに来てくれた またぜひ打とう、ということで全員と連絡先の交換をした 透華さんの分は一さんから教えてもらった 次こそ全員ゴッ倒す!!とまではいいから、もう少しくらい和了れるようになりたい 久「速攻で龍門渕制覇!?」 優希「し、しかもなんかとんでもないメンバーと打って和了ってるじぇ!?」 咲「えっと、この日の翌日に京ちゃんに会ったけど、普通だったよ?」 まこ「こいつなんかオカルト持っとるように思えてならんのじゃが……」 和「そ、そんなオカルト……ありえませんって……多分」 久「せめて自信満々に言って欲しかったわ」 8月×日 今日、ついに東京に着いた 今日は宿泊施設に行くだけだった。うん、俺1人なのは分かってた 少し買い物ついでに周辺を見たが、人が多い。人がゴミのようだ 咲じゃないが迷子になりそうだ 宿泊施設周辺を少し見て回った。ついでにコンビニでみんなにお菓子等を買った そういえばその時珍しい恰好の人達がいたな ジャージに動物がプリントされたTシャツに、夏なのに異様に厚着をしている人に……後は普通の恰好の人だった しかし厚着の娘と、厚着の娘に似ているが普通の恰好をしていた1人はなかなかのおもちだった 特に厚着している方は、目立たないがあの集団ではトップだろう そういえば、厚着の娘に似ている娘と目が合った気がしたが……なんだろう、不思議な感じがした インターハイの開会式は明日、まぁ俺は雑用や応援だけだが、今日は早く寝よう そういえば、ネト麻の6人も今日東京に着いたってメールがあったな 明日になったら予定がはっきりするから、会う日を決めようって、それぞれ言ったけど、全員インターハイ関係で東京に来てたとはな 明日の組み合わせ次第で応援する日とか決めるんだろうな インターハイ、メインはみんなの試合だが、ネト麻仲間に会うのも楽しみだ 咲「私そんなに迷子になってないよ!」 久「咲、それ須賀くんの目を見てはっきりと言いなさい?言えるならだけどね」 まこ「しかし厚着にジャージ……どう考えてもこいつら阿知賀じゃろ」 和「ええ……穏乃は制服以外ほぼジャージでした」 優希「ほぼジャージとは……とんでもない奴だな」 久「ほぼタコスの優希が言うの?」 8月○日 今日は開会式と抽選会だった ついつい全国まで来たと思ってテンションが上がってしまって開会式で大声を出してしまった……周りから結構見られてたな しかし全国……すばらしいおもちの持ち主もたくさんいた 特に巫女服の高校……永水か。あそこはもう素晴らしいの一言に尽きる シードで清澄とは2回戦で当たるのか……試合の録画は必ずしておかないとな さらに様々なおもちの持ち主がいて、目が離せないな そういえば強豪校2校といきなり2回戦で当たることになったな……大丈夫だろうか 何かしてやれることはないかな……タコスでも作ってみるか? 龍門渕のハギヨシさんが居たし、聞いてみよう それと、今日ネト麻仲間と合う日を決めた もっとも忙しいらしいので昼を一緒に食べたり、軽く話したり程度で1日一緒に観光、等はみんな難しいらしい まぁ俺もあんまり遊んでいるわけにはいかないし、丁度いいかもしれない 今日はここまでにしておこう 明日、ハギヨシさんのところを訪ねてから出かけよう 久「全く……あの時は少し恥ずかしかったわ」 まこ「まぁ、そんだけ京太郎も気合い入っとったんじゃろ」 和「でもやっぱり胸ですか……」 咲「…………」ペタペタ 優希「咲ちゃん、それのどちゃんの前でやったら虚しくなるだけだじぇ?私もよくやったし……」 8月△日 今日からインターハイは本格的に試合が始まった ただ、清澄の試合はまだ先なので今日は各自、自由だった 朝、少しハギヨシさんにタコスのレシピを聞いた 知っているか不安ではあったが、問題無かったらしく、分かりやすくそして丁寧に教えてくれた 昼はネト麻仲間のTOYONEさんと会った うん、まさか俺が見上げる必要があるほど背が高い女の人がいるなんて思わなかったよ ハンドルネームTOYONEさん、本名姉帯豊音さん、宮守女子の大将らしい まさか本当にインハイ出場してる人が来るとは思ってなく、かなり驚いた 向こうも俺が年下の男と知ってかなり驚いていた まぁ、もともとネト麻でよく話していた訳だからすぐに打ち解けられたが 少しした後、実は少し不安で友達に来てもらっていると言ってきた 女の人だし、警戒するのは当然だろう。というか会った時から後ろの4人見えていたし 結局宮守女子の5人全員と昼飯ということになった そこで改めて自己紹介した 先鋒の小瀬川白望さん、なんか美人なんだけど常に気だるそうにしてるおもち多めの人だ 次鋒のエイスリン・ウィッシュアートさん、海外の人ということもあるがかなり可愛かった 中堅の鹿倉胡桃さん、衣さんと同じか、それより小さい人だ 副将で部長の臼沢塞さん、結構しっかりした人だった。腰がいい感じだった 全員3年生で、今年がインハイどころか大会自体初出場らしい その後、軽く打ったが……うん、インハイ出場の選手相手に勝てる訳ねーわ いいけどね。飛ばされるの慣れてるし。焼き鳥とか日常だし。アレ?目から汗が…… その後も楽しく過ごした 別れ際に、順当に行けば2回戦で清澄と当たること、絶対に負ける気がないことを、改めて言われた それはこっちもだ。初出場なのも、後が無い人がいるのも、同じだ 選手じゃない。けど、清澄だって優勝する気で来ている。そう言った お互い、恨みっこなしってことで、そう臼沢さんが締めて、別れた 後から5人全員からメールが来てた。みんないい人だ 宮守女子の人と会ったということは黙っておこう 余計なことを言う必要ないだろう 明日、タコスでも作ってみるか 久「何をやっているかと思えば……」 和「また女の子と……それも対戦相手になるかもしれない人じゃないですか!」 優希「お、落ち着くんだじぇのどちゃん。ほら、最後はタコスのことだし」 咲「なんとなく、私は予想付いてたよ。むしろ、まだ落としてないっぽいから安心した」 まこ「それでいいのか?……わしら麻痺してきとらん?」 8月□日 午前中、本格的にタコスを作った ハギヨシさんの指導もあって、我ながらなかなかのものができたと思う たまたま居合わせた龍門渕の人達に食べてもらったら、かなり好評だった 井上さんはおかわりを要求するし、国広さんは自分も作ってみたいと言っていた 本格的に執事にならないかとスカウトされたが、遠慮しておいた でも才能がある、とか言われてその後も色々と教わった 昼に、約束していた通り、ネト麻仲間の膝枕さんとソムリエさんに会った 公園で膝枕して待ってる、とか言われて冗談だと思っていたが、本当にいたよ しかもどこかで見たことあると思ったら、全国2位の千里山高校の先鋒、園城寺怜さんと大将、清水谷竜華さんだった インハイ出場選手どころか、とんでもない有名人に会うなんて誰が想像できるか 改めて自己紹介して、適当な店で昼食にした しばらくお互いの話をした。地元の話、部の仲間の話、太ももと胸の柔らかさの話(主に怜さんが竜華さんについてだが) 赤面して怜さんを止める竜華さんが落ち着いた頃、怜さんと竜華さんは時間だからここまで、ということになった お互いのブロックが違うので決勝戦まで応援すること、今度は二人の友達のセーラさんという人も連れてくるという約束もしてくれた 2人ともいい人だった。特に竜華さんはすばらしいおもちの持ち主だった 決勝までは、清澄と千里山を応援しよう 勿論1回戦は宮守も応援する さて、明日のタコスの準備してから寝よう 久「またすごい人と知り合ってるわねぇ」 まこ「千里山の園城寺と清水谷って、宮永照ほどじゃないがかなりの有名人じゃぞ」 和「でも確か準決勝で穏乃が……グッジョブです」 優希「のどちゃん黒い黒い。私としてはあのタコスをすでに龍門渕のやつらに食べられてた方が問題だじぇ」 咲「私も私も。この時以前の京ちゃんの手料理なんて中学の時の調理実習くらいでしか食べたことなかったのに」 久「ちょーっとそっちについても聞かせてもらえるかしら?」 まこ「おう、キリキリ吐かんかい」 和「咲さんが作ってもらったものをまた作ってもらいましょうか」 優希「タコスも追加でー」 咲「あ、アレ?なんで私が責められてるの!?」 8月●日 ついに始まった清澄高校のインターハイ1回戦 部長やっぱりすげーわ。最後に相手を飛ばした時とかかっこよすぎる 今更だが試合中だけ髪を結んでるけど、可愛くて結構好みだな すげーかっこいいのに、そういうところがあるとか色々とすごい 宮守も無事に勝ち抜いたみたいだった 2回戦で当たるのか……2回戦からは2校が勝ち上がれるし、清澄と宮守の2校、とかならないかな 相手が姫松とおっぱ…永水だから厳しいって染谷先輩言ってたっけ でも頑張って欲しいな そういえば、変わったこともいくつかあった 帰り道に1回戦突破記念で何かお菓子でも買っていこうと思ったが、何故か期間限定のお菓子が売り切れていた 期間限定の割りに美味かったからみんな好きだったのにな 誰か買占めでもしたか? それと、コンビニから出た時、コンビニの袋をいくつも持ってる人を遠目で見かけた あの後ろ姿は咲だったのか? 結局帰ったら咲は居たし、コンビニの袋なんかも持ってなかった なんだったんだろう? 久「…………」 和「部長?なんで黙って……何こっそり髪結ぼうとしてるんですか!」 まこ「うわ、にやけ顔隠しきれとらんぞ」 優希「髪なら私も結んでるのに……部長みたいなのがいいのか?」 咲「私も昔みたいにしようかな……それにしても最後の誰だろ?」 8月◇日 東京に来てからみんないくつかの名所を見たりしていた だけど、咲だけどうも元気がなかったり、出かけなかったりしているので無理矢理連れ出した 最初は乗り気じゃなかったが、この前たまたま見つけた地元にないような大きな本屋に連れて行ったら目輝かせて本を物色していた 照さんのこととか色々複雑かもしれないけど、これがいい気分転換になればいい 結構な量買っていたので、昼に宿舎に帰った みんな出ているみたいだったのでコンビニで適当な弁当を買って咲と食べた 咲は買ってきた本を読みたそうにしていたので、午後は1人で出かけた 適当に見ていた時、たこ焼き屋に眼鏡を掛けたすばらなおもちの持ち主がいた 和ほどはないが、スポーツをしていたのか健康的な感じのするいいおもちだった。隣にいたポニテは知らん 「なかなかいいおもちだ」つい、口に出ていたらしい。 が、俺以外の声も聞こえた 隣を見ると、そこにもおもちを持った長い黒髪の娘がいた 今思い出すと、東京に来た初日に見た娘だ 向こうも驚いた顔をしていた。俺だって大概驚いたが 「あなたも……おもち好きですか?」 返事に迷う必要はなかった その後数時間、俺はおもち好きの同志、松実玄さんとおもちについて熱く、熱く語り合った 名残惜しかったが、お互い素晴らしいおもちを見つけたら教え合う、という約束をして俺達は別れた 東京に来て、素晴らしいおもちと出会えたが、こんなに素晴らしい同志と出会えるなんて思っていなかった ありがとう、東京 ありがとう、インターハイ そういえば、お互いの名前やメルアドは教えたが、どこの高校かは言わなかったっけ ま、大丈夫か。俺達にはおもちがあればそれでいい 優希「……のどちゃん」 和「……こういう人でした。初めて会った時も私の胸見てました」 久「ほんっとに何やってるのかしら」 まこ「お、復活したか。しれっと髪結んどるのか」 咲「京ちゃん……前半の感謝の気持ちを返して」 久「さて、おもちは置いといて。何デートしてるのかしら?」 優希「さーきーちゃーんー?」 和「長い付き合いですからある程度はと思ってましたが……これはさすがに」 まこ「無視はできんな」 咲「ま、また私ー!?悪いことはしてませんよ!?」 久「連れ出した、って書いてあるし……手は握られた?」 咲「え……その……京ちゃん強引で……」 まこ「アウト。罰ゲームじゃな」 優希「確保だじぇー!」ガシッ 和「逃がしませんよ」ガシッ 咲「え?い、いつの間に!?」 久「さて……覚悟しなさい」ワキワキ 咲「や、やめてーー!!」 ※この後めちゃくちゃくすぐられた 8月▽日 みんなは明日に向けて練習していた 明日は強豪の永水や姫松と当たるのだから当然だろう 俺は雑用、だけど別に苦でもないし、みんなのためだ 買い出しに出た時、たまたまたこ焼き屋を見つけたので寄った 値段の割に量があるのでみんなの分も買った。丁度頼んだ分で最後だったらしい 買って帰る時、ポニテの人が入れ違いに店に来た 元気よく買いに来たみたいだったが、俺の分でもう最後だ。それを知ると、いきなり話しかけてきた 「なぁ金髪のにいちゃん。ちょーっと譲ってくれん?」 これが巨乳なら譲ってもよかったが、貧乳のポニテだった。正直無視したかった 「えーやろー?ほら、あれや。インタビュー受けた時、金髪イケメンが譲ってくれたたこ焼きのおかげで勝ちました、言うたるからな!?」 どんな交換条件だ、と思ってよく見たら、明日当たる姫松の愛宕洋榎だった 「なんや?サインか?たこ焼きと交換でどうや?人数分書くで?」 対戦校のエースのサインを試合前日にもらうとか、どんな冗談だ 高校名を出すのも面倒っぽかったのでそのまま丁寧に断りたかったが、なかなか折れない 「よっしゃ分かった!ここでネタやるから、おもろかったらたこ焼きな!?」 絶対に笑うものか、そう思った 本場大阪人はさすがだった。どちくしょう 約束通りたこ焼きはひとつ譲った。もちろんお金ももらった それから近くのベンチで話ながら一緒に食べた 「なかなかツッコミのキレがええな。見どころあるで!」 そんな理由で連絡先も交換した。こんなのが主将でいいのだろうか姫松高校 「清澄かー。楽しみにしとるで!ほななー」 なんだかんだで清澄だと言っても普通にボケとツッコミの応酬だった 歯に青のり付いてたが、あえて何も言わなかった。笑ってしまったのが悔しかったし、これくらいいいだろう しかし、試合前日の日記がその対戦相手とか、書いてしまってからだがどうなんだろうな 明日の試合、俺にできることは少ないが、やれることはやろう とりあえず気合い入れてタコス作るか 久「あー……これもあったからやけにこっち気にしてたのね」 まこ「あのたこ焼きも数が少し少なかったんはこういう訳じゃったか」 和「試合前日に対戦校と、なんてよく仲良くなれますね」 優希「きっかけもたこ焼きだしなー」 咲「これは京ちゃんもだけど、この人もそういう人だからじゃない?」 洋榎「これや!次にガースーに披露するネタはこれに決まりや!!」 絹恵「お姉ちゃん、古いネタ帳見るんはそれくらいにして掃除せーへん?オカン帰ってくるで?」 洋榎「まぁ待ちや。ちょい古いネタやけど、またガースーの大爆笑をやな」 絹恵「あ、オカンおかえりー」 雅枝「……洋榎?大掃除もせんと何しとるん?」 洋榎「……ちゃ、ちゃうんやで?これは新ネタを」 雅枝「ええから掃除!!」 8月■日 インターハイ2回戦、今日は雨だった 2回戦強豪相手だったけど勝ったー!! 優希がマント着ていったり、染谷先輩があっという間にトップ取ったり色々あった 部長はなんか不調っぽかったが、大丈夫だろうか?和のエトペンも無事か?何かあったらハギヨシさんから教わった裁縫で直せるかな 途中巨乳巫女……じゃなくて永水がかなりやばそうな感じだったけどなんとか勝った でも正直宮守が負けたのは残念だ。後で連絡するべきか?いや、勝っといて連絡ってのもなー。もう少し考えよう 勝ち残ったのは清澄と姫松、姫松かー。普通に見れば順当なんだろうがなー 会場から出る時少し愛宕洋榎さんとすれ違った これ見よがしにこっちをドヤ顔で見たのが少しイラッときた 後でたまたま見つけたおいしそうなからあげの画像を送ってやろう。深夜の揚げ物なんて食べれないような時間に なんにせよ、2回戦突破おめでとう 夜に少しコンビニに行った 帰り道、とんでもないのに声を掛けられた 背は優希と変わらないくらいだ なのに……なんだあの和並のおもちは 油断して2度見したぞ 曰く、傘が壊れてしまったから途中まで入れてくれないか、ということだった どこまでか聞いたら、少し遠回りする程度だったので目的地まで一緒に行った 道中色々話して驚いたが、この娘もインハイ出場選手だった 有珠山高校の真屋由暉子、同じ1年生だった 聞いてから思い出したが次の対戦校だった 別に向こうも気にしてないみたいだったので気にしなかったが しかし、さすがに初対面の男に傘に入れてくれは危なくないか?そのおもちなら尚更だ そしたら本人は「そうですか?あなたは、大丈夫な気がしましたよ?」と言ってくれた 複雑だが、今後はやめておくように言った 宿まで送っていくと、心配したのか有珠山高校のメンバー全員が外に居た 送ってくれたことのお礼を言われ、由暉子とは連絡先を交換した 「また会いましょう京太郎。明後日は恨みっこなしですよ」 そう言って別れた。同学年だから、ということでお互い下の名前で呼び合うということにもなっていた しかし……優希と同じくらいの身長で和と同じくらいのおもち……とんでもないのがいたもんだ 写真こそゲットできなかったが、これは玄さんに報告だな 優希「……私と同じくらいの身長で」ジー 咲「……和ちゃんと同じくらいの胸」ジー 久「なにそれ。反則じゃない」ジー まこ「近くで見れんかったからよく分からんが……どえらいもんじゃな」ジー 和「だ、だから胸は……」 久「……揉んだら大きくなるのかしら」ヒソヒソ 優希「揉んでもらったら、じゃないか?」ヒソヒソ 咲「確か好きな人とか……でも遺伝もあるんじゃない?」ヒソヒソ まこ「遺伝か……愛宕のとこの姉妹は全然じゃぞ?」ヒソヒソ 和「む、胸の話はいいでしょう!」 久「……とりあえず和の揉む?」 和「!?」 爽「ねー、揉んでいい?」 由暉子「優しくですよ?」 揺杏「ほんっと無抵抗だな」 誓子「いいのかな……」 成香「あの、嫌なら嫌って言った方がいいですよ?」 由暉子「優しくなら大丈夫ですよ。でも、本命には激しくお願いしたいですね」 8月◎日 今日は色々驚いた インターハイ準決勝第1試合 照さん容赦ねーなー。本気で怒った咲が麻雀打つ時と同じくらい怖かった 怜さんと照さん応援するかなー、とか思ってたけど……玄さんなんでいるんだよ 全然そう見えないが、準決勝まで勝ち残るほどの学校だったのか 知ってるの3人とか誰応援しろってんだよ! 結局は照さんが圧倒的だったけど……怜さん、大丈夫かな 玄さんには後でおもち関係のメールでもすればいいか 昼にネト麻仲間の姫様さんからメールがあった なんでも、しばらく会えそうな時間が無くなるから昼に会えないかというメールだった 試合を見ながら昼食が取れるところ、ということだったので会いに行ってみたら……永水女子がいた 姫様、っていうのは先鋒の神代小蒔さんだったらしい 選手じゃないが、昨日の今日でちょっと気まずいわ でも、みなさんいい人だったので自然と打ち解けることができた 適当に試合を見ながらだったが、それなりに楽しく過ごせた 何より神代さんがいい人というか、いい子だった。年上にこの言い方はどうかと思うが、一番しっくりくる 短い時間だったが、昼を食べたところで別れることになった なんでも個人戦までの間、海に行くことになったらしく、時間が作れなくなったらしい しかも宮守の人達とも海に行くらしい なんだその想像するだけで広がる天国 本気でサボっていきたかった…… とりあえず全員と連絡先だけ交換した 一緒にいたロリ……じゃなく薄墨さん曰く、携帯やパソコンなど不慣れな人が多く、練習がてらメールに付き合った欲しい、とのことだった おもちがある美人とのメールを断る理由もないので快諾した 宿舎に戻ってみると、1年生3人がいなかった どうやら知り合いがいたとかで会場まで行ったらしい その時優希が余分に作っていたタコスを持っていって、中学の時の先輩に渡したらしい あいつもいいとこあるよな 試合結果はまさかの1位阿知賀、2位白糸台という驚きの結果だった 正直、白糸台と千里山だと思っていた 怜さんや竜華さんには悪いが、おめでとう、照さん、玄さん そういえば、夜に優希と和の中学の先輩という、新道寺の花田煌さんが訪ねてきた 優希と和への応援とタコスのお礼、そしてタコスのレシピが知りたいとのことだった 一応レシピは教えたが、分からないことがあった時のために俺の連絡先も教えておいた 照さんにあんなにやられていたのに、特に落ち込む様子もなかった。メンタル強い人だな 日記が長くなってしまったが、明日は清澄の準決勝 俺にできることは少ないが、応援やできることはやろう 手始めに、姫松の愛宕洋榎さんにおいしそうなたこ焼きの画像を送ろう 無論、深夜に 優希「こいつ、たった1日で6人の女子の連絡先を……!?」 久「しかもあの永水なんて……とりあえず和の揉みましょうか」 和「八つ当たりはやめてください!しかし、花田先輩の連絡先までさらっと……」 まこ「末恐ろしい奴じゃ……本人が無自覚なのが救いじゃな」 咲「えぇ……ところで、私ってお姉ちゃんみたいな雰囲気で打ちませんよね?」 久「…………」 まこ「…………」 和「…………」 優希「…………」 咲「え、違いますよね?あんな風じゃないですよね!?なんで目逸らすんですか!?」 久「……姉妹って、似るものよ?」 咲「部長!?」 8月☆日 インターハイ、準決勝 ついに、決勝進出!! もう応援してるだけなのにテンション上がったわー 途中まで臨海や姫松がかなりやばかったけどなんとか追い付いて2位に着いた ちなみに1位は臨海、先鋒の辻垣内さんとか相当すごかった 去年の個人3位は伊達じゃないな 姫松も頑張ってたけどなー、中堅の愛宕洋榎さんとか、2回戦ほどじゃないけどかなり稼いでた やはり昨日のたこ焼き、朝のお好み焼、そしての試合直前の串カツが効いたか(全部画像だけど) 部長が試合中にらまれていた気がするが気にしてはいけない なんか今も隣で鳴ってる携帯も気にしてはいけない 有珠山も少しだけ頑張って欲しかったんだがな 後半の追い上げは目を見張るものがあった。決して由暉子と和のおもちを比べていたわけではない 夜に衣さんと会った 東京では珍しく、月が綺麗な夜で、月明かりの中の衣さんは息をのむほど綺麗だった 少し歩きながら、決勝について話した 去年、衣さんたちは臨海が臨海に負けた時の話だった 衣さん曰く、アレでも臨海は本気じゃないらしい 決勝では当然本気だろうと、そしてそれに勝った白糸台も来る さらに驚いたのが、決勝に進出したもう1校、阿知賀と一度練習試合をしたという話だ 正直、俺なんかじゃどうやったら勝てるかとか、全然分からない でも、俺はみんなを信じて応援するだけだ 衣さんも笑ってそれでいい、と言ってくれた インターハイが終わったら、是非また打とうということになった せめて前よりいい結果が出せるよう練習しておこう 明日のため、できることからやっていこう とりあえず、玄さんの携帯にこっそり撮っておいた試合中の由暉子のおもち画像でも送ろう 久「ああ、『後輩にどんな指導しとるんや!!』って言ってたのはこのことだったのね」 まこ「何をしとるんじゃ……」 久「全く、私に言ってくれればもっといい画像用意してあげたのに」 和「それはちょっと……というか須賀君は玄さんにまで何送ってるんですか」 優希「この時かー……あの人すごかったじぇー」 咲「うん、みんなすごい人ばっかりだったね」 まこ「いや、お前さんほどじゃないと思うぞ?」 咲「え?そんなことないですよ」 優希「あの時の咲ちゃん、今まで相手した誰より怖かったじぇ」ヒソヒソ 久「ええ。心底同じチームで良かったと思ったわ」ヒソヒソ 咲「?」 8月★日 清澄高校全国優勝おめでとう!! すげーよ!!全国優勝だよ!!マジで!! 最初は照さんが超本気出してやばかったけどもう超接戦で、 最後咲がまくった瞬間なんて泣いちまっくぁwせdrftgyふじこlp 久「ちょっと、どうしたのよ?続きは?」 咲「そ、それが読めなくて」 まこ「どれどれ……うわ、なんじゃこれ」 優希「書きかけな感じもするじぇ」 和「思い出しました。この時長野県内の高校みんなで騒いでて、須賀くんが居ないんでみんなで連れて行ったんです」 久「あー、そういえば優希と龍門渕の井上さんと風越の池田さんで引っ張ってきてもらったわね」 まこ「とっさに隠そうとして、ってとこじゃな」 久「ま、仕方ないわ。あの時より嬉しいことなんてめったにないわ」 和「ですね」 優希「咲ちゃん、次のページは大丈夫か?」 咲「だ、大丈夫っぽいから読みますよー?」 ふぅ、やっと落ち着いた 前のページがぐちゃぐちゃになっちまったからこっちに続きを書こう どこまで書いたかな、トップはずっと白糸台だったけど、最後の最後でなんとか咲がまくったんだ どこが悪かったとか、どこが駄目だったとかなく、どの高校のどの選手も全力を出した、と思えるいい試合だったと思う 細かい順位は……どうだったかな、最後も僅差だったと思う とにかく優勝おめでとう みんなインタビューで大変そうだった、特に部長や和なんて泣いててちゃんと喋れたかも怪しかった その後、宿舎に戻ったら風越、龍門渕、鶴賀のみんなが簡単な祝勝会を開いてくれた というかさっきもそれで引っ張られてぐちゃぐちゃになったんだがな みんな祝ってくれて、来年はうちの学校だ、いやうちだ、とか言い合ってた 来年も清澄ですよ。そして、来年は俺もやってやる!! さて、団体戦の優勝はうれしいが、明日からは個人戦だ 長野代表は咲と和、そして風越から福路さんだ まだ応援頑張ろう 今気づいたが、知り合ったみんなからおめでとうメールが来ていた ただ、まだ会えてないネト麻仲間のお菓子大好きさんと百年生さんは、明日会えないかというメールだった 明日の昼にでも、また時間作るかな それと、愛宕洋榎さんから水着姿でポーズをとった画像が、玄さんから誰かのおもちの画像が送られていた 前者はおもちがないから削除して、後者はお礼を言っておこう 久「……えっと、そんなに泣いてたかしら?」 和「……いや、オーバーに書いてるだけじゃないですか?」 まこ「いやいや、がっつり泣いとったじゃろ」 優希「のどちゃん泣き過ぎてエトペン潰れかけてたじぇ」 咲「そういう優希ちゃんも泣いてたよ?」 まこ「泣とらんやつなんておらんわ。京太郎だって泣いとった」 久「……そうね。嬉しかったわ」 和「……えぇ」 優希「のどちゃんがまさか転校を賭けていた、なんて知った時は超怒ったけどな」 和「も、もう!それはいいんです!」 咲「あれは酷かったな……言ってくれても良かったのに」 和「そ、それは……心配をかけたくないというか、プレッシャーになってはいけないと思ったというか」 咲「くすっ、良いよ。結局転校無しになったんだし」 優希「だじぇ」 和「2人とも……」 ピリリリリリ 久「あら?電話かしら?もしもし?」 京太郎『部長?あ、いや元部長?すいません、電波の問題で今まで連絡できなくて』 久「す、須賀くん!?ど、どうしたの?」 京太郎『どうしたもなにも、もうすぐで鶴賀に着きますけど、俺はどうすれば?』 久「あ……やば」小声 まこ「おい、なんとかせぇ」小声 久「あー……ごめんなさい!!実は今まで連絡できなかったけど、鶴賀は大丈夫なの!」 京太郎『は、はい?それじゃ俺は?』 久「ごめんなさい!!そこから龍門渕へ向かって頂戴!」 京太郎『い、今から龍門渕に!?一体どれだけかかると思って…』 久「実は卒業式の時に渡そうと思っていた和の秘蔵セクシー写真があるのだけど……」 京太郎『何時間かかろうと、行ってきます!!』 久「さすがね。ありがとう。バニーガールとチャイナ服、どっちがいい?」 京太郎『…………どっちかひとつ、なんですか?』 久「……両方用意しましょう」 京太郎『そこにシビれる!あこがれるゥ!』 ガチャ 久「ふぅ……さ、続きね」 和「いや待ってください!!なんですかセクシー写真って!!いつ撮ったんですか!?」 久「やーねー。そんなもの無いわよ」 和「はい?」 まこ「おい、嘘ついたんか?」 咲「そ、それはちょっと……」 優希「かなり酷いじぇ」 久「何言ってるの。今から撮るのよ」 和「…………え?」 久「万が一、見つかった場合の保険も兼ねて、数枚撮っておきましょうか」 まこ「酷いのぅ。ほい衣装」 和「なんであるんですか!?」 優希「お、ナース服発見」 咲「わ、わぁ……こっちの服透けてる……」 和「じょ、冗談ですよね?結構可愛い服もありますけどこれは……」 久「あ、須賀くんに撮ってもらった方がいいかしら?むしろそうしましょう。さ、咲、続きよ」 和「待って下さい!納得してませんよ!?」 まこ「こっちがええか?」ピラッ 優希「これ、水着?」 咲「ほとんど紐じゃ……」 和「…………露出少ないのでお願いします」 8月▲日 今日から個人戦が始まった まだ予選だが、なかなかすごい試合もあった どういうことか、初戦が咲、竜華さん、豊音さん、愛宕洋榎さんだった 知り合いばっかりで約1名以外応援しにくいわ!! なんか豊音さん団体戦の時よりやばい感じしたし、愛宕洋榎さんは咲につっかかってるし そんなに「おもちつけて出直せ!!」ってメールが気に障ったかな。ちゃんとこれくらい、ってちゃちゃのんのグラビアまで入れたのに 竜華さんは割と落ち着いて打っていた。結局はギリギリで咲が豊音さんから直撃奪ってトップだったが 別のところでは和と小蒔さんという夢のような光景が広がっていた 観客に男性客が他の試合より多かったのは気のせいじゃないと思う 和は普段通り打っていたが、小蒔さんが後半大きい和了だったせいか3位に終わった。トップがもちろん小蒔さんだ 昼の時間、ネト麻仲間のお菓子大好きさんと百年生さんと会う約束をしていたので、待ち合わせの場所に向かった 待ち合わせ場所はそれなりに目立つ場所にしていたが、やけに人が多かった 何か有名人でもいるのか?と思ったら、いたよ有名人2人 白糸台の先鋒であり、チャンピオン、そして昔の知り合い、宮永照さん、なんでそんな目立つとこいるんだよ それと1年生で白糸台の大将、大星淡だった 照さんが俺のこと覚えているとも思わないし、何かの待ち合わせかと思った まさかネト麻してた相手がチャンピオンとか想像もできねぇって こっちに気付いた時、かなり驚いた顔をして「……京ちゃん?」って呼んでくれた 大星さんの方も「え?確か清澄の?え?アンタが!?」とか言ってた とりあえず手遅れかもしれんが目立つので適当に目立たない喫茶店に移動した 改めて、お菓子大好きさんが照さん、百年生さんが大星さんだと自己紹介してくれた しかし、ネト麻やって、リアルで会う約束して、それが昔の知り合いとかどんな確率だよ 照さんは結構俺のことを覚えててくれたようだった 一緒に遊んだこととか、懐かしそうに話してくれた 咲のことは「……私に妹はいない」って喧嘩はまだ続いているみたいだった じゃあ俺とどうやって知り合ったんですか?と聞くと 「…………知り合いの紹介」かなり苦しい返事だった さすがに姉妹喧嘩にどうこう言う気はないが、咲がいなかったら照さんと知り合ってないんだし、いないもの扱いはちょっとな 照さんは善処する、とは言ってくれた 「……テルーのそんな顔初めて見た」 と大星は驚いていた 大星は話しやすくて、なかなか気が合う奴だった 元々ネト麻のチャットでもよく話すが、リアルだともっとよく話す 「須賀京太郎?じゃ、キョータローね!私は淡でいいから!」と、出会って数分で下の名前で呼び合うことになった 2人とも個人戦に出場しているらしく、丁度試合が無い時間帯らしい 照さんは個人戦3連覇を、淡は咲へのリベンジがとりあえずの目標らしい とりあえずは二人も応援すると言った 「……同じ学校の娘よりも?」 照さん、そこはさすがに咲と和を応援します 「……仕方ないね。分かった」 照さんは少し膨れていた。雑誌とかで見る笑顔より自然な感じの表情で、かなり可愛かった 「私も応援しろー!テルーも咲もみんな倒す!!」 淡もそう言っていた 試合が始まるということで2人と別れた 照さん、俺は昔みたいに姉妹仲良いのが好きです そう言ったら照さんはかなり考え込んでいた 午後は、照さんは相変わらずトップで勝ち続け、淡は途中で当たった去年2位の荒川憩や去年3位の辻垣内智葉さんに苦戦していたが、頑張っていた 咲も大体はトップで、和もずっとトップとはいかなかったが、かなり安定した感じで勝ち残った 夜に何人からかメールが来た。個人戦に出場している人達だった 今日は調子が良かったという小蒔さん、相手が強かったがなんとか勝ち残ったという竜華さん ドヤ顔でたこ焼き持った写メ送ってくる愛宕洋榎さん、後で昼に照さんが食べてたパフェの画像送ろう 今度は2回戦みたくならなかったとでメールしてきたエイスリンさん、永水の小蒔さんや和の試合を見ていたという玄さん みんな頑張っているみたいだ 少し打ちたくなったな 書き終わったら、今日打てなかった優希や染谷先輩、部長でも誘って打とうかな 長くなってしまった、今日は何より照さんとまた会えたことがうれしかったな 昔みたいに、また3人で遊んだりしたいもんだ これはさすがに麻雀以外で、だが 和「……ネト麻で知り合った6人が全員インハイ選手とかそんなオカルトありえません」 咲「というかお姉ちゃんもネト麻できたなんて……」 久「ここまできたら何人と知り合うのか数えるのが怖いわ」 優希「そーいえばこの時京太郎と打ったっけ?」 まこ「いや、打っとらんの。やっぱやめたんか?」 久「あー……確かこの時丁度龍門渕の人と靖子が来てたのよ」 まこ「……おいまさか」 久「私と靖子と衣さんとで、ね?」 和「この時の須賀くんにそのメンツって……」 咲「……京ちゃん結構無茶するからなぁ」 優希「このメンツで打ったのに、翌日あのタコスが作れるとは……」 まこ「いや、お前さん何させとるんじゃ。そういや、目立つとこで宮永照と会うって、結構いろんな人に見られたんじゃないんか?」 和「そういえば一時期チャンピオン熱愛疑惑とかいう記事があったような……」 咲「……あながち嘘じゃないんだよね」 8月◆日 個人戦2日目 今日は午前中から永水の2人が絶好調だった 同じ卓の人が可哀想なくらいだった小蒔さん、団体戦の鬱憤を晴らすように四喜和を和了り続ける薄墨初美さん あんなすごい人と優希や和は打ってたのか……改めて同じ1年なのにすげーな 和の試合を見にいくと、阿知賀の人達と龍門渕の人達に会った どちらも和の応援みたいだったが、意外なことにこの2校は知り合いだったらしい 阿知賀の人達とお互いに自己紹介して、一緒に応援した 初めは男子1人ということで警戒されていたが、玄さんと同志だと言うと安心されたようなさらに警戒されたような微妙な顔をされた 心外だ。俺達は純粋におもちが好きなだけだ 龍門渕の人達も微妙な顔をしていた気がしたが、気にしてはいけない 和は愛宕洋榎さんと同じ卓だった 和はいつも通り打っていたが、なぜかやたらと愛宕洋榎さんは調子が良かった そのまま愛宕洋榎さんがトップで和が2位だった。その卓じゃおもちは最下位だったくせに 今度ハギヨシさんの手料理の写メ送ってやる 昼の時間、龍門渕の皆さんは帰ったが、俺は玄さんの提案で阿知賀のみんなと食べることになった なぜか高鴨がラーメンを熱望していたのでラーメンになった どうせだからと咲と和も呼ぼうとしたら、試合もあるからと遠慮された ラーメン屋に入ったらなんと千里山の怜さんと竜華さん、そして千里山の中堅、江口セーラさんがいた 会ったこと自体も驚いたが、何より怜さんがいることにびっくりした。この前倒れたばっかだろう 話を聞くと、ちょうど退院したばかりでラーメンが食べたいという希望からラーメン屋に行くことになったらしい まぁ、元気そうではあった ついでのような形になったが、この前言っていたセーラさんも紹介してくれた 男みたいな恰好とか言っていたが、個人戦の合間だからかセーラー服だった。似合っていると言ったら赤くなったのが可愛かった 阿知賀のみんなは試合したから知っているかと思ったら、たまたま別のとこで会ったことがあるらしい 大人数になったが、みんなでラーメンを食べることになった 色々話している内に信用してくれたのか、ラーメン屋から出て別れる時に阿知賀のみんなとも連絡先を交換した セーラさんはむしろ向こうから教えろと言ってきた。この人俺より遥かにイケメンじゃね? 午後、なぜか怜さんと、竜華さんとセーラさんを応援することになった 1人でほっとけないとか竜華さんは言っていたが、男にまかせるのはいいんですかね 竜華さんは昨日より調子よさそうだった。怜さんが退院して安心したからだろうか セーラさんは、照さんや絶好調の小蒔さん、新道寺の白水哩さんなどの有名選手と当たって苦戦していた そして、予選が終わった 竜華さんもセーラさんもなんとか勝ち残っていた 2人と合流して、別れる時「2人がそっちの1年生と当たっても恨みっこなしやで~」と怜さんが言っていた その時はこっちも咲と和を応援するし、その結果どうなっても恨んだりしない 夜に、咲、和、優希と軽く打った といっても俺なんかじゃ相手になるわけもなく、雑談しながらだった 2人は今日当たった相手について話したりしてくれた 和は団体戦の時よりかなり気楽そうな感じだった。さすがに転校云々がかかっていた時より楽に打てるらしい でも愛宕洋榎さんはうるさかったとか 逆に咲は気を張っているようだった 予選では当たらなかったが、この先勝ち進んでいけば照さんと必ず当たるんだ。当然だろう どんな気持ちか分からないし、俺にはどうもできないが、咲も照さんも、本来仲がいい姉妹だ 悪いことにはならないと思う 和「ラーメン、誘ってくれて良かったのに」 咲「うん、私もそう思う」 優希「遠慮しなくても良かったのになー。誘われれば私も言ったじぇ」 まこ「……自分を客観的に見れとらんのか」ヒソヒソ 久「ああ、龍門渕の一さんも『なんかやばい感じだった』って言ってたわね」ヒソヒソ まこ「さすがチャンピオンと姉妹っちゅうことか」ヒソヒソ 咲「どうかしました?」 久「……なんでもないわ。そのままの咲でいいからね?」 咲「?」 8月▼日 個人戦、3日目 今日からは直接順位に関係する試合だった 強い選手同士が当たることも増えるらしい また知り合い同士が当たるのかと思っていた1試合目、組み合わせを見て目を疑ったね 宮永咲と宮永照の名前があった どこかで当たるとは思っていたが、1試合目とかさすがに予想できない 咲が組み合わせを見てどんな顔をしていたか、見えなかった 部長達もどう言うべきか悩んでいるようだった だけど咲は、「じゃあ、いってきます」と、今までと変わらない感じだった せめてこれくらいと思い、俺も変わらないように「頑張れよ咲」と言った 何もしてやれないのが少し悔しかった 試合は、照さんが1位、2位が咲、という結果だった 試合開始も試合中も、咲と照さんは何か話している様子はなかった 試合自体も……同じ卓だった名前も覚えていない2人が可哀想だった ただ、最後に照さんが何かを書いた紙を咲に渡していた それを受け取った咲は笑って帰ってきた そして嬉しそうに、「これ、お姉ちゃんの携帯の番号だって」と言っていた 昔の咲と照さんに何があって、そして試合の後に何を話したのか分からない だけど、少しだけ昔みたいに2人は仲の良い姉妹に戻れたみたいだった その後も照さんは圧倒的に勝ち続け、咲も照さんほどではないが勝ち続けた 昼過ぎに、和の試合の応援に行くと、新道寺の花田さんに会った なんでも和の試合に新道寺の部長、白水哩さんもいるらしく、応援に来たらしい 和の応援もしたいけど、今は新道寺の部員として白水さんを応援するとか。真面目な人だ 途中から、花田さんの隣に新道寺の人が来た。大将だった鶴田姫子さんだった 初めは花田さんと話している俺を警戒しているようだったが、タコスを作ったのが俺だと分かるとすぐにお礼を言ってきた 相当好評だったのか、タコス 試合は白水さんが1位、和は2位だった。試合後、白水さんと和もこっちに来た 和は負けたことを気にしている様子はなく、普通に白水さんとも話していた 白水さんも花田さんと鶴田さんと親しそうに話している俺に驚いていたが、すぐに仲良く話せるようになった その後、白水さんはすぐに別の場所での試合、花田さんと鶴田さんはその応援ということで別れた 少ししてから、花田さんから2人に連絡先を教えていいかというメールが来たので、俺も二人の連絡先を教えてもらった それから俺は和の応援をしていた やはりインターミドルチャンプはみんな注目しているのか、人が多かった 和、小蒔さん、竜華さん、福路さん、という初日以上に夢のような組み合わせの試合では特に多かった 後、愛宕洋榎さんとセーラさん、そして淡と小走やえという人の試合がうるさすぎて少し話題になった なお、その試合は小走やえという人が僅差でトップだったとか 和「この時に仲直りできたんですね?」 咲「うん。この時から少しずつ話して、って感じで」 優希「良かったじぇ」 まこ「全くじゃな」 久「そうね。ちなみに仲直りしてからどんな感じなの?」 咲「えっと……京ちゃんの中学の時の写真を送って欲しいって言われました」 まこ「オイ」 咲「あ、後待ち受けにしたいから写メもって……でも私その辺り分からなくて……」 久「……やるわね」 和「ええ……少なくとも昔からの知り合いでもあったからでしょうか……」 優希「いずれにしても恐ろしいじぇ……試合でもえらい目にあったし……」 まこ「ところで写真は送ったんか?じゃったらわしにも……」 久「あ、抜け駆けしないでよ!」 咲「お、送ってませんよ!」 咲(こっそりお姉ちゃんが持ってた子供の時の京ちゃんの写真と交換では渡したけど……) 8月×▼日 個人戦、最終日 長かったインターハイも終わってしまえばあっという間だった 個人戦の優勝は、やっぱり照さんだった 団体での3連覇こそ逃したが、個人での3連覇は逃さなかった やっぱりすげーな照さん。一応お祝いのメールを送ったが、まぁ言われ慣れてるだろう 咲は8位、和は10位という結果だった。まぁ、1年生でここまでできたんだから充分だとは思う 咲も照さんと打てて満足そうだったし 閉会式が終わった後、永水のみんなに会った 軽く挨拶した後、これからはネト麻で他の4人とも打とうという話をした 優希が来年は負けないとか言ってたが、色々な部分ですでに負けてるぞ そして、新道寺の花田さんが優希と和に会いに来た 2人と打てなかったのが残念だったらしい ネト麻のアカウントだけ教え合っていたので、ついでに俺も教えてもらった 少ししてから鶴田さんと白水さんが花田さんを呼びにきた 軽く話した後、タコスのお礼ということで小さいチェーンを貰った ストラップかなにかだろうか?まぁありがたくもらって何かに使おう 長野に帰るのは明日なので、最終日ということで俺も同じ部屋で遅くまで打った この大会であったことや、対戦相手のこと、色々なことを話しながら遅くまでみんなで楽しく麻雀をした いっそ同じ部屋で寝るかと部長に言われたが、さすがに男子1人女子の中で寝る度胸はない ある程度で撤収させてもらった 久「この時無理矢理にでも引き留めておけば……」 まこ「やめんかい」 優希「京太郎争奪戦だったじぇ!」 和「すでに隣の奪い合いでしたけどね。咲さんが自然と須賀くんの隣をキープしていたのには驚きましたけど」 咲「なんというか……昔からの習慣で……」 久「うわー、暗に私はあなたたちと違うんです、って言ってるわー」 まこ「咲も結構やるのう」 優希「よ、この悪女!」 和「やはりこのアドバンテージは強いですね」 咲「そ、そんなにひどいことしてないのに!?」 8月○◆日 長野に帰ってきた 東京から帰るまで時間に余裕があったので最後に少しだけみんなで東京観光に行った 途中で阿知賀と千里山の人達に会った 阿知賀のみんなに会った時は和は嬉しそうにしていた ただ、阿知賀のみんなが優希を見た瞬間「憧!?」と言ったのはなんだったんだろうか 昔にそっくり、ってさすがに赤の他人でそれはないだろう そもそも優希と憧では色々と大きさが違う。大きくはないが、決して小さくもないのだから 染谷先輩が阿知賀の部長だという灼さんと軽く練習試合や合宿について話していた そのうち阿知賀と練習試合でも組むつもりだろうか 千里山の人達とは駅近くで会った その時2年生の船久保浩子さんと、1年生の二条泉さんも紹介してくれた 竜華さんやセーラさんは、個人戦で当たった咲や和と話していた 船久保さんがどこかで見たことあるなと思ったら、あの愛宕洋榎さんの親戚らしい どうやら船久保さんは愛宕洋榎さんから俺のことを聞いていたらしく、酷い男と言われていたとか 心外だ。ただ夜中においしそうなものの写メを送っただけなのに とりあえず優希の食べていたタコスの写メを愛宕洋榎さんに送っておいた そして、俺達は長野に帰った 駅に帰りつくと、出迎えがいっぱいいた 部長も聞いてなかったらしく、驚いていた まぁ、人数ギリギリの部が全国優勝ってどこの漫画だって話だし、人気も出るものかな 清澄の生徒もかなりいて、知り合いも結構いた どの人も「おかえりー」「おめでとうー」「タコス半額にしてやる」とか色々言ってくれた でも誰だ「須賀は爆発しろ」「死ね」「もげろ」って言った奴 とりあえず学校の部室に荷物を置いて別れた しばらくはとりあえず休みらしい また部活始める前に連絡入れるから、それまでゆっくりしろとのことだ 全国優勝したんだ、多少休んでもばちは当たらないだろう 咲、優希、和、染谷先輩、竹井部長、日記だけど、お疲れ様でした 久「この時は驚いたわ。小さい駅にあんなに人がいるんだもの」 まこ「あの動画におったみんながきとったの。わしは帰ってから常連がみんな店におってびっくりしたわ」 咲「あんまり話したことない人もいてびっくりしたなぁ……」 優希「中学ののどちゃんの時より多かったな」 和「ですね。やっぱり個人より団体の方が地元の人もうれしいんでしょう。私もインターミドルの時より嬉しかったですし」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6460.html
?- 京太郎「またか」 「さて、あと罪としての繋がりが薄いのは強欲か」 京太郎「知らんけど」 「まぁともかくだ、どこに行くのもお前の自由だ」 京太郎「おう」 ?- 京太郎「なんだこの扉?」ギィッ 「いつも一緒にいた奴の部屋、どこにいても必ず一緒にいるよ、そいつだけは」 京太郎「どういう意味だ?」 「現実の距離とかの意味じゃないぞ、まぁ言ってこい」 バタン 「最後まで話聞けよ」 ?の部屋 京太郎「ん、ここは……長野か?」 ?「あれ、どうした?」 京太郎「あ、前の」 ?「そっか、前以来だな」ウンウン 京太郎「なんか知らない扉があったから入ってみたんだけど」 ?「なるほどね、じゃあ次の扉に入った時に手伝ってやる」 京太郎「え、そりゃ助かるけど」 ?「あくまでもアドバイスとか程度だけど、してやるから期待しててな」 京太郎「おう、ありがとうな」 ?「その変わりちょっとは私と……あれ!?」ビクッ ?「構えよ!」ウォイ! 72日目- 京太郎「んぁ?」 照「ん……」zzz 京太郎(なんで照ちゃん俺の寝てる布団で寝てるんだ……おもちが無いからか、精神衛生上良いぞ!) 宮永母「あらら」 京太郎「!?」 宮永母「まだ時間あるからゆっくりしてても良いわよ」フフフッ 京太郎「お待ちになって!お慈悲をっお慈悲をっ!」 宮永家前- 京太郎「それじゃありがとうございました!」ペコッ 宮永母「また来てね」 京太郎「はい、ではまた!」 照「途中まで行こっか」 京太郎「おう!」グッ 京太郎「さて、どうすっかな」 京太郎「まぁ良いか!」ハハ 京太郎(すまん透華、もうちょっとだけじらすぜ!) 京太郎「よし、あとで電話しよ~」 京太郎(昼まで時間つぶすかな) 京太郎「プロは暇(偏見)」 京太郎「今日も良子さんに電話してみよう!」 プルルッ 良子『私です』 京太郎「戒能さん、今日暇ですか?」 良子『まぁ暇ですが』 京太郎「行っても平気ですか?」 良子『わかりました、昨日と同じ場所で待っていてください』 京太郎「大丈夫ですか?」 良子『今日はすぐ行きますので』 京太郎「はい」 良子『ではまた後で』 京太郎「はーい」プツッ 朝- 京太郎(よし、弘世さんにも連絡完了!) 良子「お待たせしました」 京太郎「いえ、めちゃめちゃ早いですね、まだ十分ぐらいですよ」 良子「そうですね、まぁ良いでしょう、車にどうぞ」 京太郎「まぁそうですね、お邪魔します」 京太郎「そう言えば戒能さんたちプロの男性絡みの話ってありませんね」 良子「……痛いところをつきますね」 京太郎「あ、でも女子高が多いんでしたっけ?」 良子「そうそう、そういうことです、男性との絡みも少ないですから」 京太郎「なるほど……お、じゃあ俺ってレアなんですかね!戒能さんみたいな人なら大歓迎なのになぁ!」 良子(っべー、ハンドルから手を滑らせるところでした、ノーウェイノーウェイ) 良子「ははは、お上手ですねー」 戒能良子家- 京太郎「お邪魔しまーす」 良子「どうぞ」 京太郎(へぇ~思ったより和風、ってより永水の人と従姉妹ってぐらいだし納得か) 良子「そう言えば、今週号の週刊麻雀なんですが」 京太郎「はい?」 良子「須賀君の特集組まれてますよ」 京太郎「ウェェィ!?」 良子「そっちに取材の連絡とか言ってると思いますよ、学校に」 京太郎(ここ数日いなかったからなぁ~) 京太郎「良いですか?」 良子「どうぞ」 京太郎「……」オソルオソル 京太郎(まずは……白糸台、次は臨海女子、そして……永水、千里山、姫松……っで俺!?) 京太郎「確かに俺だっ!」 良子「男子高校生トップクラスの人気ですよ、写真もローカルでやってた個人戦のものばかりですけれど」 京太郎「うわぁ、なんかピンとこないっす!」 良子「でしょうね、取材とかは受けておくものですよプロになった時の仕事の入る量が違うので」フム 京太郎「いやに現実的ですね~」 良子「大人の世界ですから」 京太郎「なるほど」 京太郎(詳しくは後で見よう) 昼前- 良子「ランチはどうしましょうか?」 京太郎「あ~どうしましょうね~」 良子「作るか食べに行くか、ですね」 京太郎「そうですね~」 京太郎「買いに行きましょうか!」グッ 良子「では行きましょうか」ニコッ スーパー- 京太郎「何が良いですかね~」 良子「なににしましょうね」 記者「ちょっと貴方、須賀京太郎君じゃない!?」 京太郎「うおっ、なぜ!?」 記者「えっと、私こういう者なんだけれども」スッ 京太郎「えっと、出版社って」 良子「記者さんですよ」 記者「あのね、取材させてほしいの!」 京太郎「か、戒能さんっ」 記者「うおっ、良く見れば戒能プロ!」 京太郎「ど、どうすれば」 良子「そこは京太郎君の御好きに」 京太郎「せっかくだし受けます」 記者「ありがとう!ここ、ここに来てくれる!?いつでも良いから、須賀君に合わせるから!」 京太郎「お、おうおうおう、わかりました」 良子「せっかくですので今から行ってしまいますか」 京太郎「ふきゅっ!?」 記者「ありがとうございます戒能プロ!」 良子「付き添いで一緒に行くので平気ですよ」 京太郎「じゃ、じゃあそれで」 記者「じゃあ話は通しておくから!」 良子「では商品を戻していきましょうか」 京太郎「は、はい……」 京太郎(WEEKLY麻雀TODAYかぁ……) 本社- 良子「思ったより近いでしょう?」 京太郎「はい、思ったよりは」 良子「では行きましょうか」 京太郎「了解です!」 京太郎(な、なんかわからんが良さげなソファに座らされたっ) 良子「私も近くで見ていますから」 ??「どうも、いやぁ後輩から聞いて驚きましたよ、あ失礼、私西田順子と言います」 京太郎「あ、ご丁寧にどうも」ペコリ 順子「いやぁ、あの原村和のいる清澄高校を破った龍門渕高校の須賀京太郎君、私気になりますよ~!」 京太郎「は、はぁ」 順子「さて、どこから聞きましょうかねーあ、一応聞いておきますが戒能プロとの関係は?」 京太郎「え!?」 京太郎「まぁ、ある意味では師匠ですかね?」 順子「師匠、ですか?」 京太郎「永水に連れて行ってもらって修行つけてもらったりとかしましたんで」 順子「なるほど、永水とも関わり合いを、ふんふむ!」 京太郎(だ、大丈夫だよな?) 順子「じゃあ、麻雀はいつ頃から?」 京太郎「えっと、小学生のころからだから、もう7年ぐらいになります」 順子「それは小さい時からやってたんですね」 京太郎「ええ、それはもう……化物を相手にしていて」 順子「そう言えば戒能プロ以外にも三尋木プロ、小鍛冶プロ、瑞原プロなどもお名前を上げていましたが関係は?」 京太郎「まぁそれも全員師匠みたいなもんで」 順子(え、プロ四人全員師匠!?) 順子「インターミドルなんかには出てませんでしたけど、どうして?」 京太郎「その時は友達とやるのが楽しかったんで、って感じですね」 順子「そうなんですか、ぶっちゃけ強いですか?」 京太郎「なんてこと聞くんですか」 順子「謙遜したり大見得きったりと、人によって色々ありますからね~」 京太郎「ん、俺は強いです」 順子「おお、自信満々ですね」 京太郎「弱いって言ったらいろんな人たちに怒られますんで」 良子(それが正しい) 順子「じゃあ目指すは優勝?」 京太郎「優勝以外に目指すものはありません!」 順子「じゃあ、期待させてもらいます!」 京太郎「はい!」 順子「須賀君的に、今年の女子インターハイ団体で一番の優勝候補などはありますか?」 京太郎「やっぱり白糸台ですかね」 順子「案外普通な答えなんですね」 京太郎「別に賭け事じゃないんですから大穴を狙う必要はないでしょー」 順子「まぁそうなんですけど」 京太郎「あくまでも、龍門渕を除いた上での話ですけどね?」ニッ 順子「はい、今回はこれで終了ということで、ありがとうございました!」ペコッ 京太郎「いえ、こちらこそありがとうございました」ペコッ 良子「さて、だいぶ遅れてしまいましたがお昼を食べに行きましょうか」 京太郎「はい、あ、あと電話番号とかメールアドレスとかは?」 順子「教えてもらえると助かります、今度取材するときにお願いしたいので」 京太郎「はい」 順子「さて、こちらです」 ???「ん?」 京太郎「あ……」 良子「これはこれは―――」 京太郎「大沼、プロ?」 秋一郎「ほぉ、それが例の暴食か」 良子「そのようです」 京太郎「は、はじめまして!須賀京太郎です!」ペコッ 秋一郎「暴食、色欲、それから魔眼か」 京太郎「えッ!?」 秋一郎「へっ、おもしれぇガキだな」ニッ 京太郎「!?」ゾクッ テクテクテク 良子「さて、行きましょうか須賀君」 京太郎「あ、はい……」 夕方- 京太郎(結局、昼を食べて少し話してたらこんな時間になったなぁ) 良子「それでは」 京太郎「はい、ありがとうございました!」ペコッ 京太郎(とりあえず白糸台に行くかー) 白糸台高校前- 京太郎「さて、誰かに連絡しないとな!」 尭深「いらっしゃい」 京太郎「どうも、迎えに来てもらってありがとうございます」 尭深「別に良いよ、誰かしらいないと入れないだろうし」 京太郎「入れるのも異常ですけどねぇ」 尭深「麻雀至上主義な学校だし、麻雀のこととなると許可は取りやすいから」 京太郎「なるほど」 尭深「有名人だしね」フフッ 京太郎(笑っても可愛いな、おもち) 白糸台高校・麻雀部部室- 京太郎「どうもこんにちはっす」 菫「いらっしゃい、昨日は照の家に泊まったそうだが、見境ないな」ニコッ 京太郎「ご、ご慈悲をっ!」 菫「まぁ君がなにかするとは思えんが」 照(してくんないんだよね) 淡(うちでも良いのに~) 京太郎「あははは」ハハッ 尭深「どうぞ」 京太郎「淹れるの早いっすね!?」 誠子「どう須賀君、最近パスタ、クルクルしてる?」 京太郎「隠す気ないのかよ!?」 京太郎「淡、安定はしてるか?」 淡「当然じゃん、誰だと思ってんの?」ニッ 京太郎「おう、お前はそういう風が良いよ、元気なお前が一番だ」 淡「いいいっ、一番!?」アワワッ 京太郎「おう、安心する」ナデナデ 淡「そ、そっか……えへへ」パァッ 京太郎「全国には、全員集まるからな……飲まれないように」 淡「飲まれる?」 京太郎「お、なんか先輩っぽかったな」 淡「え、京太郎って高校百年生以上なの?」 京太郎(アホだな)ウンウン 夕方2- 京太郎(さて、どうするかなぁー)キョロキョロ 京太郎「じゃあ打ってるところ見てますよ」ニコニコ 菫「そうか、じゃあアドバイスは頼むな」 京太郎「了解です!」 京太郎(罪悪感はあるが、これもみんなのため!) 菫「私たちは見学だな」 京太郎「まぁ、大局的な物の見方ができて見学ってのも良いですよね」 菫(大物っぽいぞ) 淡「終了~」 京太郎(淡と照さん、全力では無かったか?) 菫「淡の絶対安全圏とダブリーに、照は連続和了まで……場が荒れたな」 誠子「なんて日だ!」クワッ 尭深「収穫完了」 京太郎(まったくだ、収穫は十分) 夜- 京太郎「さて、お疲れさまでした」 菫「今日もお疲れ!」 淡「くじびきー!」 京太郎「よし!」 照(今日こそ二人きりに!) 京太郎「フフフッ!」 誠子「よし!」 尭深「今日こそ」 京太郎「ふぅ……」 京太郎「またかぁぁぁっ!?」ガクッ 淡「ざまー!」ケラケラ 尭深「残念」 照「ごめんね京ちゃん」 菫「さて、二回戦だ」 誠子「回避、超回避しろ!」 淡「マジ無理、マリカしょ」 京太郎「バカ言ってないでやるぞ~」 京太郎「掃き掃除とか頼むなー」ガチャガチャ 淡「なにしてるの?いかさま?」 京太郎「なんでだよ!まぁとりあえず、整備だよ」 淡「なにか必要あるの?」 京太郎「整備用の道具はそろってるのに使ってなさそうだからなぁ」 淡「あぁ、みんな良くわかんないって」 京太郎「そっか、こういうとこ油差しとかないとな」 淡「へぇ~男の子だね!」 京太郎「男の子だよ」カチャカチャ 淡(か、かっこいいかも!) 淡「送るのご苦労、またね!」 京太郎「はい、お疲れさん」フリフリ 京太郎(さて、泊まる場所かぁ) 京太郎「誰かに頼りすぎだよなぁ」ウン 京太郎(迷惑じゃないかなぁ?) 京太郎「さて、どうするかなぁ」ムムッ 京太郎「ん~、明日仕事だったりしないかな?」 京太郎「電話してみよ」 プルッ 咏『もしもし?』 京太郎「実は今東京に居てですね……泊めてくれませんか?」ハハッ 咏『良いよ、明日暇だしねぇ』 京太郎「助かります、じゃあ行きますんで!」 咏『うん、待ってる』 京太郎「さて、どっか寄るか?」 京太郎「ようし、真っ直ぐ向かうぞ!」 三尋木咏家- ピンポーン 咏「いらっしゃい」ヒョコッ 京太郎「咏さんありがとうございます」 咏「うん良いよ良いよ、頼ってくれれば」ニコッ 京太郎(?) 咏「東京にはいつから?」 京太郎「数日前からですよ」 咏「最初から頼ってくれれば良かったのにね」 京太郎「まぁそうなんですけどねぇ」 咏「まぁ良いか、たまには晩御飯作るから座っててよ」ニコッ 京太郎「了解っす」ブーブー 京太郎「ん、電話か?」 差出人:良子 本文『ヘルプ、はやりさんが泥酔してます』 京太郎「oh……」チラッ 咏「~♪」 京太郎(どうするか) 京太郎(よし!) プルルッ 良子『もしもし、京太郎君、援軍を!は、はやりさんそれは違います!』 京太郎「今すぐ行きますよ」 良子『それは助かります!場所は先日の、あっ、そこだめですはやりさんっ!』 京太郎「じゃ、じゃあまた後で!」 咏「どうしたの京ちゃん、御飯できるよ?」 京太郎「すみません、ちょっと出かけてきます!」 京太郎「本当にすみません、すぐ!すぐ戻りますから!」 咏「……うん」コクリッ 京太郎「すみません!急ぎますから!」 ダッダッダッ 咏「……まったく、冷めちゃうなぁ」 京太郎「お待たせしましたぁ~!」 はやり「あ、京ちゃんだ!」ギュッ 京太郎「ぬおっ!?結構意識あるじゃないですか!」 良子「ソーリー京太郎君、はやりさんが京太郎君を呼ばないと私をいじくりまわすというので、とりあえず」 京太郎「ええ~」 良子「もう良いでしょうはやりさん?」 はやり「うん、とりあえず今日の京ちゃん分は補充したから!」グッ 良子「はぁ……送って行きましょうか?」 京太郎「良いんですか?」 良子「Yes」コクリ 京太郎「自分で帰りますよ!」 良子「ここに来るまで結構かかったでしょう、自分で帰るタイムをロスしますよ?」 京太郎(家の前ぐらいまで送ってもらうかな?) 京太郎「やっぱ送ってもらって良いですか?」 良子「Yes、迷惑をかけましたから……はやりさんは一人でお帰りください」 はやり「え~良子ちゃんひどーい!」ワー 良子「京太郎君をもてあそんだんですから」 はやり「なんだかやらしいね?」 京太郎「んなことないです」 はやり「じゃーねー京ちゃん♪」 京太郎「はい」 はやり「写メ取っちゃお!待ち受けにするから!」 京太郎「付き合いますよそのぐらい」ハハッ はやり「そっか、じゃあね京ちゃん!またね☆」 京太郎「はい」 良子「では、行きましょうか」 京太郎「はい」 良子「一応言っておきますが、私は飲んでませんよ?」 京太郎「そこはマジでお願いします」 三尋木咏家前- 京太郎「ありがとうございました良子さん!」 良子「いえ、また付き合ってくださいね京太郎君」 京太郎「はい!」 良子「では」 京太郎「よし、インターホンは押さなくて良いって言ってたよな」ウン ガチャッ 京太郎「咏さ~ん?あ、料理並べられてる」 京太郎(あぁ、料理冷めちゃったなぁ) 咏「京ちゃん……」スッ 京太郎「ん?」 自分の師匠である三尋木咏がそこには居た 俺が理解するには遅すぎた……気づけば咏さんは俺の胸に飛び込んで来てて、焼ける様な感覚はすぐに来た 京太郎「がっ、あ゛ぁ゛ぁ゛ッ!?」 使用である咏さんが泣いていて、俺は何を言えるわけでもなく苦痛に声を上げる 咏「ひどいよっ、京ちゃんッ!なんで、なんで良子ちゃんと一緒に帰って来てんのさぁ!」 それが悪かった?いや、それだけで俺が刺されるとは思えなかった 痛みを必死で我慢しながら、突き刺された包丁を見る 咏「なんの理由も言わず出てって、あんな女と帰ってきて、あたしにはわかんねーよ、久しぶりに連絡が来て、嬉しくってッ……でもはやりちゃんや良子ちゃんに京ちゃんと一緒にいたとかいう話聞いてっ」ポロポロッ 最初に俺を好きだと言ってくれたのは咏さんのはずだ、そんな咏さんに俺はしばらく連絡しなくて、挙句に近くにいてもまったくなにをするでもなかった 俺が悪いのか?いや、きっと悪いからこうなってるんだろう 咏「ッ!」 胸の中心、その下あたりに刺されていた包丁が抜かれて、俺は足に入れていた力を失ってそのまま倒れる 京太郎「うっ……た、さんッ……」ゼェハァッ 俺はなんとか体を仰向けにするけど、俺の上に咏さんが馬乗りになった 咏「ごめんね、京ちゃん、大好きだよっ……」 最後に見た咏さんのその笑顔は、俺の大好きな咏さんの可愛らしい笑顔とは程遠かった…… 三尋木咏BADED ※その前にBADED(ゲームオーバー)のため『カピーの部屋』に送られます ハギヨシ「えー今日は初登場です、須賀京太郎君」 パチパチパチ カピー「カピ!」ツッタサカナニエサヲヤル! ハギヨシ「まぁ今回の場合はだいぶ特殊でしたがね、東京に来たら一度ぐらい会ってあげましょう、大事なイベントもありましたしね」 カピー「県大会優勝だな」 ハギヨシ「普通に喋るんですか」 カピー「面倒だらね、とりあえず咏も色々協力してくれたんだし会いに行かないとな、それに三尋木咏がお前を好きってことはお前自身知ってるわけだからな」 ハギヨシ「一緒に鹿児島に行って以来ですからね……まぁ、基本的にそれほど警戒することもないでしょう、現状でも危険な女性はいないようですから」 カピー「ということで、三尋木咏の鬱憤はこれで晴れたから次に同じ時間軸の同じ状況になっても対応が変わってくるからな!」 ハギヨシ「では、またお会いしましょう」 ルールル、ルルル、ルールル、ルルル、ルールールールールー 京太郎「自分で帰りますよ!」 良子「ここに来るまで結構かかったでしょう、自分で帰るタイムをロスしますよ?」 京太郎(家の前ぐらいまで送ってもらうかな?) 京太郎「やっぱり自分で帰ります!」 良子「そうですか?」 京太郎「はい、ありがとうございます」 はやり「じゃあ私がっ!」 良子「貴女は私と来ましょうね」グイッ はやり「やぁ~ん京ちゃん~♪」 京太郎「あはは、じゃあまた~」 ダッダッダッ 三尋木咏家- 京太郎「た、ただいま帰りました~」ゼェハァッ 京太郎「あれ、咏さん?……あ、冷めちゃってる」 咏「……京ちゃん」 京太郎「あ~咏さん、その、すみません」ペコッ 咏「なにしてきたの?」 京太郎「えっとですね、はやりさんが泥酔しちゃったって聞いて良子さんを助けに~」 咏「なるほどね」ジトー 京太郎「その、すみません……」ペコッ 咏「いいよ、レンジで温めるしかねーじゃん、知らんけど」イソイソ 京太郎「うぅ、申し訳ないっ」 京太郎「咏さん」ギュッ 咏「ひゃわっ!?な、なにやってんの京ちゃん!?」カァッ 京太郎「いえ、俺を好きだって言ってくれた人に寂しい思いさせちゃったかなって」 咏「べ、別に……いや、本当はちょっとだけ寂しかったっつーか、いや、知らんけどっ」フイッ 京太郎「ごめんなさい」ギュゥッ 咏「ちょっと、キツい」 京太郎「あ、すみません」パッ 咏「れ、レンジが鳴るまで……このままが、良い……」ギュゥッ 京太郎「……はい」ニコッ 京太郎(30秒ぐらいだけどなぁ) 京太郎「ふぅ、おいしかったです!」 咏「なら良かったよ、練習したかいがあるってもんだよね、わからんけど」 京太郎「いやぁ、ほんとおいしかった」ニコッ 咏(よし、胃袋は掴んだ!) 京太郎「咏さんってなんで俺のこと好きになったんです?」 咏「ふぇっ!?」 京太郎「いえ、なんとなく」 咏「べ、別にそういうのは言うもんじゃねーと思うんだけど?」 京太郎「まぁそうですけど、容姿だけなら俺より良い奴なんて五万といると思いますし」 咏「でも、容姿だけ見たって私ん中では京ちゃんが一番だけどねー……ッ」フイッ 京太郎(言ってからはずかしくなってんじゃん) 咏「京ちゃんのこと好きなんだから、それで良いじゃんっ!」 京太郎(かわいい) 咏「京ちゃんお風呂どうする?」 京太郎「入りますよ?」 咏「先に入る?」 京太郎「後に入りますよ」 咏「へぇ……覗いても良いよ?知らんけど」 京太郎「おもちないですし」ボソッ 咏「京ちゃん、なんて?」 京太郎「いえ!もしかしたら覗くかも!」 咏「えへへ、待ってるね!」テテテッ 京太郎(待ってるって……大胆すぎる……おちつけマイサン) 京太郎「さてマイサンも落ち着いたし、どうする?」カァッ 京太郎(あそこまで言われたしなぁ、待ってるって言ってたけど……)ムムッ 京太郎(待っててもらってのぼせても怖いからな) テクテクテク 京太郎「咏さん、覗きませんからね!」 ガラッ 咏「なんでだよ!」 京太郎「ビショビショのまま出てこないでください!」 咏「バスタオル巻いてるじゃん!」 京太郎「そう言う問題じゃなくてっ」 京太郎(不肖の息子、おもちが無くても全然反応するじゃないかぁ!) 咏「あっ」 京太郎「す、すみません咏さん、男の性なもので」 咏「え、えっと……一緒に、入る?」 京太郎「じゃ、じゃあ、入ります」 咏「じゃ、じゃあ待ってるから!」ダダッ 京太郎(良く無い、非常に良く無い展開だ……だが、行く!)ゴッ 咏(なんか麻雀やってる時を思い出す気迫が) 風呂- 京太郎(さて、現在背中を洗ってもらってるわけだが……) 咏「気持ちいい?」 京太郎「はい」 咏「良かったぁ~」 京太郎(まずいな、振り返って俺のマイサンをバラすわけにもいかん……一回ばれてるから知らんけど) 咏「んっ」スリッ 京太郎(っ!?)ビクゥッ 咏「はやりんとか良子ちゃんだったら良かったんだろーけどね、わっかんねーけど」スリスリ 京太郎(これは、咏さんのっ肌!?) 京太郎「う、咏さん!」ガバッ 咏「ひゃんっ!?」 京太郎(やばい、本能のまま押し倒してしまった……)ゴクリッ 咏「きょ、京ちゃん……あたしのこんな、貧相な体、だけど……」 京太郎「そんな体に興奮させられてるんですけどね」ググッ 京太郎(うむ、理性が効いているが、どうにもヤバいなぁ) 京太郎「う、咏さんっ……」 咏「えへへ、良いよ京ちゃん、まぁできても知らんけど」ニッ 京太郎「うぅっ」 咏「ま、あたしを選ぶか選ばないかは別にしても……ほら」ギュッ 京太郎「ッ!?」 咏「良いよ、おいで?」 寝室- 京太郎「……」 咏「京ちゃ~ん」ギュッ 京太郎(あぁ、やらかした……まぁ中では防げたから妊娠はないだろうけど) 咏「はじめて、あげちゃったんだよねぇ」ニコッ 京太郎(うん、知ってる) 京太郎「その、ありがとうございます」 咏「え?」 京太郎「初めてをもらったとかを抜きにしても、俺みたいな優柔不断な奴を……好きでいてくれて」 咏「なに気にしてんのさ……たとえば京ちゃんがあたしを選ばなくても、あたしの初めてが京ちゃんで京ちゃんの初めてがあたしだったってことは一生忘れないでしょ?知らんけど」 京太郎「ま、まぁ」 咏「なら良いよ……京ちゃんはロリコンだったってことで」ニッ 京太郎「ちょっ、咏さん!?」 咏「冗談冗談だよ~」アハハ 京太郎「か、勘弁してくださいよ~」 咏「まぁ最悪、愛人枠でもいいし」ニヤッ 京太郎「そんな不誠実なマネはできません」 咏(まぁ、そう言うよねー) 咏「それでさ、第二ラウンド……する?」 京太郎「……」 京太郎「い、良いんですか?」 咏「目が爛々としてるし、あたしも……一回じゃ満足できないんじゃね?知らんけどっ」プイッ 京太郎(かわいい) 72日目終了- ?- 京太郎「せっかくいい気分で寝てたのに」 「あんなことしてから選ばないとか、サイテーだな」 京太郎「うっせぇ!」 「まぁトゥルーには一歩近づいたな」 京太郎「はぁ?」 「ほら、選べ」 京太郎「さて、はやりさんだな」 「お前マジでそこ選ぶのか?」 京太郎「ん、なんで?」 「いや……まぁ、知る必要のないことまで知るかもしれないってことだ」 ?「協力するのは嫌なんだけど、するって約束したもんなぁ」 京太郎「なんだ、二人して」 ?「とりあえず行こうか」 京太郎「おう」ギィ 「頑張れよ」 バタン 京太郎「ここは、テレビのスタジオ?」 ?(深層心理の世界、ってこれはあの小娘に教えてもらったろ?) 京太郎「小娘?」 ?(あぁ、トシだよ) 京太郎「小娘って……あ、はやりさんだ」 ?(いや、あれはスケープドールっていうかはやりそのものじゃないな) 京太郎「どういうことだよ?」 ?(まぁとりあえず、場所を移動するぞ) 京太郎「はやりさんの世界だけだいぶ違うな」 ?(年期と奴のこの力への理解故、と言ったところだな) 京太郎「は、はぁ……」 ?(アイツの最も最深部に踏み込むぞ、お前が過ごした中にあるはずだ) 京太郎「ん?」 京太郎「じゃあ他のスタジオに行ってみるか」 ?(まぁ選択に文句を言うつもりはないけれど、知る必要は無いと思うな) 京太郎「ん?」ガチャッ はやり「みんなのアイドル!牌のお姉さんはやりんだよ~☆」 スタッフA「売れるもんですね」 スタッフB「やっぱり大きいお友達からの支持が大きいけどな」 ディレクター「まぁ、売れるうちに頑張ってもらわないとな」 京太郎「うわ、グロい」 ?(だから言ったのに) 京太郎「うん、こんな場所はゴメンだわ」 ?(でも実際にこう言ってるのかはわからない、彼女の深層心理の世界だから……実際は被害妄想かもしれないしな?) 京太郎「それを信じますよ、ほんと」 はやり「京ちゃん!」ダッダッダッ 京太郎「はやりさん?」スッ ?(不味いな) はやり「」ザザッ 京太郎「ん?」ドクンッ 京太郎(すれ違った瞬間っ、なんだ、ノイズ?) ?(はずれってことだな、次の場所に行くか?) 京太郎「ッ……あぁ、はやりさんの家に行こう」 ?(わかった、大丈夫?) 京太郎「問題ないけど、結構遠いのか?」 ?(はやりの家を想像してそこらの扉を開けてみろ) 京太郎「ん……」ガチャッ 京太郎「おお、はやりさんの家」 テクテク 京太郎「リビングで、なんか部屋の隅っこにいる」 ?(まぁ、避けて通ることも可能なんだがお前がわざわざ踏み込んだんだぞ) 京太郎「なんか知らんが俺のせいか……」 京太郎(とりあえずテーブルの上のビール缶の謎の量……) はやり「欲しい物はね、手に入れたんだよ?」 京太郎「え、はい?」 はやり「いろんなものを手に入れたのに、なんだか満たされない……」ボォー ?(強欲の代償だな) 京太郎「なんでまた」 ?(いや、正確には長い間『強欲』の力を持っていた故だな) 京太郎「長い間持ってると、代償があると?」 ?(そういうことだ、制御して代償を払わないことも可能だが、制御できずに持ち続けた結果がこれだ) 京太郎「はやりさん……」 ?(知らなくて良いことなのに) 京太郎「はやりさん」 ?(どうするもお前の自由だ、酷い結果にはならないだろうし) 京太郎「……シロを助けた方法と同じ方法なら」 ?(やるだけやってみて) 京太郎「」ゴッ はやり「~~~ッ!?」ビクビクッ 京太郎「ふぅ」 はやり「きょ、京ちゃんっ、色欲ぅっ!?」ハァッハァッ 京太郎「はい、ちょっといただきました」 はやり「な、なんでっ、かな☆」 京太郎「あんまり何を言っても聞きそうになかったんで」ウン はやり「ふぇ?」 京太郎「いやね、この空間見てたら他のみんなと違って誰もいないんですよ」 はやり「そ、れと、どういう関係ッ、?」 京太郎「たぶんですけど、はやりさんの欲しいものって信頼をおける人だと思うんです」 はやり「は、やや?」 京太郎「だから、はやりさんの周囲には健夜さんや良子さんや咏さんがいるのに、なんでその人たちがここに居ないんですか、欲しいなら強欲なら素直になればいいのに」 ?(そういうな、大人になったら) 京太郎「だから、まず俺から信頼してみるってのはどうです?」 ?(聞かないかー) 京太郎「頼りないかもしれないですけど、できる限りは頼りになれるようにしますから……周囲の人を、もうちょっと信用してみたらどうです?」 はやり「大人になると、大変なんだよ☆」ハァハァ 京太郎「まぁ子供の俺にはまだわからないですけど、信用……できませんか?」 はやり「そういうことじゃないんだけどぉ~」フゥ 京太郎「じゃあ良いじゃないですか、守りたいものが欲しいなら俺がなります、守ってくれるものが欲しいなら俺がなります、信頼できるものが欲しいなら俺がなります、だから……ね?」 はやり「こんな熱く口説かれたのは初めてだヨ☆」 ?(キツい) 京太郎「あはは、じゃあ俺を」 はやり「私を」 ―――守ってください バァッ 京太郎(雰囲気が変わった?) はやり「ありがと、京ちゃん」ギュッ 京太郎(夢なのにおもちがっ!) はやり「お礼ね♪」チュッ 京太郎「~~ッ!?」 はやり「またね!」 ?- 京太郎「んぁ?」 「まぁ起きる前にな」 京太郎「最初の場所か」 「扉が二つほど増えたからな」スッ 京太郎「色欲と、暴食?」 「そう、あそこはレベルが違う、まぁ自分自身の世界を知る機会なんてそうそうないからな……楽しんで来い」ニッ 京太郎「嫌な感じ」 「あぁ、だろうと思う……また次の夜に会おう」 京太郎「……おぅ」 73日目- 朝- 京太郎「ん、もう朝かぁ……」 咏「んぅ~……」zzz 京太郎「俺は最低だぁ」ハァ 京太郎「ずっと落ち込んでてもしょうがないよな、どうするかぁ」 京太郎「さっさとシャワーを浴びよう、たぶん匂いがついてるだろうし」ウン 咏「ん~どしたの?」 京太郎「シャワーをと思いまして」 咏「あたしも一緒に入るよ」 京太郎「りょ、了解っす」グッ 京太郎(昨日あんなにしたし、大丈夫だよな?) 京太郎「ふぅ、さっぱりしたぁ」 咏「そうだねぇー、知らんけど」フフッ 京太郎「ん、どっか言ったりしますか?」 咏「あれ、珍しいじゃね、京ちゃんがそんなこと言うの」 京太郎「そうですか?」 咏「うん、あまり構ってくんないしー」ケラケラ 京太郎「んー」 咏「まぁ私はどっちでもいいけど、家の中でもいろいろできるしー、知らんけど!」 京太郎「出かけましょうか、せっかくですし朝ご飯も食べて」 咏「ん~じゃあ着物どれにしよっかな~」 京太郎(やっぱ着物なんだ……まぁ私服だと正直大人に見えないからなぁ) 京太郎「さて、どこ行きますか」 咏「……わっかんねー、」 京太郎「じゃあ~」 京太郎「浅草とかにしときますか!」 咏「浅草って、まぁいいけど人多いよ?」 京太郎「どこ行っても人は多いでしょうし、なんか咏さん合いそうだなぁって」 咏「へぇ……じゃ、行こうか♪」 京太郎「はい!」 浅草- 京太郎「おお、にぎわってますね……屋台も出てますし」 咏「いつもこんな感じだけどね」 京太郎「結構来るんですか?」 咏「そんないうほどでもないけど、どこ行こうか~」 京太郎「うおっ人が多いっ!」 咏「ん~暑い」パシッ 京太郎「ん?」ギュッ 咏「ほら、はぐれるとまずいから……手をね?わ、わかんねーけど」 京太郎(かわいい) 咏「好きな店入りなよ、時計とかは高いから買ってやんねーけど」 京太郎「あはは、興味もありませんしね」 咏「きっとプロになったらテレビとかも出るんだろうけど、京ちゃんだったらテレビ映えもするし」 京太郎「そうですかね?」ハハッ 京太郎(満更でもない顔してんだろうなぁ) 咏「京ちゃん時計を買うとか」 京太郎「ぞっとします」 咏「仕掛け人やりたいな~」 京太郎「怖いっす!」 昼前- 京太郎「そういえば結局朝ご飯食べてませんねー」 咏「おなかすいたんじゃねー?」 京太郎「適当に探して入りますか~」 京太郎「どっかほかの場所に行きますか」 咏「そだね~」 京太郎「さすがゴック、なんともないぜ!」 咏「いや、水陸両用ならあたしはカプール一択だね」 京太郎「え~」 咏「あの丸いのが良いんじゃないか」 京太郎「なるほど」 昼- 京太郎「よさげな店があってよかったですね~」 咏「そだね、結構おいしそうなのあるし」 京太郎「俺はこの天丼にしときます」 咏「じゃあ、あたしは何にしよっかな~」 京太郎「ん?」 京太郎(んぁ、あれって……) ??「おいメグ、あまりかきこむな、喉に詰めるぞ」 ??「んぐっ、でもサトハ……日本の料理は美味い!」 ??「わかったから少し落ち着いて食べろ」 京太郎(ッ、臨海女子の辻垣内智葉とメガンダヴァン!?)ハッ 京太郎(全国インハイの選手がなんでこんなところにッ) 咏「京ちゃん、決まったよー」 京太郎「あ、はい、じゃあ注文しちゃいましょうか」 京太郎(いや、まさかこんな場所であの臨海女子を見つけるとは思わなかったなぁ) 咏「……」ムッ 京太郎「痛ッ!?」バッ 京太郎「う、咏さん?」 咏「わかんねー」フイッ 京太郎「今、蹴りましたよね?」 咏「知らんし」プイッ 京太郎(……なぜ蹴られたしッ!) 京太郎(よし、チラっとだけな……)チラッチラッ 咏(むぅっ……) 京太郎(ん、大物のオーラはするが、一体何者なのか……)ゴクリッ 咏(京ちゃんのばかっ!) 智葉(奴は、長野の須賀京太郎……よもやこんなところで顔を合わすことになるなんてな)フッ 昼過ぎ- 京太郎「すみませんでしたほんと」 咏「知らんし」プイッ 京太郎「埋め合わせはしますから!」 咏「……絶対?」 京太郎「はい!」 咏「じゃあ、約束だから」ギュッ 京太郎「はい」ギュッ 咏(京ちゃんの手、大きいなぁ) 咏「あれ、そういえば帰らなくて良いの……?さすがに帰ったほうが良いんじゃない?」 京太郎「あぁ、そうですねー」 京太郎「そろそろ帰ります」 咏「そっか、なら荷物取りに帰ってから駅行かないとねー」 京太郎「はい」 駅- 京太郎「それじゃあ帰りますね」 咏「うん、また行ったりするかもしんないからねぇ」 京太郎「了解っす、楽しみにしてますよ」ニッ 咏「うん……またね!」ニコッ 京太郎「また!」 長野- 京太郎「ふぅ、なつかしき我が故郷!」ゴッ ネェママー ミチャイケマセン! 京太郎(……さて、帰るか) 智美「ワハハ、京太郎じゃないかー」 京太郎「あれ、蒲原さん?」 智美「久しぶりだな、最近長野で見ないって噂になってたぞー」 京太郎「しばらく東京にいましたからね」 智美「個人戦はしばらく先だぞー?」 京太郎「いや、そういうことじゃなくてですね」 智美「まぁ、モモもさびしがってるからそろそろ会ってやってくれ、またなー」 京太郎「あ、はいまた!」フリフリ 京太郎「夜風が気持ちいいなぁ」 京太郎(どっか寄ってくか?) 京太郎「ん~」 モモ「京さん!」ダキッ 京太郎「ぬおっ!?」ビクッ モモ「久しぶりっすね!」 京太郎「あぁ、そうだなー久しぶりだな」ハハッ モモ「ん、なんかいつもの匂いと違うっすね」スンスン 京太郎「匂うな匂うな!」 モモ「なんでっすか?」 京太郎「なんで良いと思った?俺も匂うぞ?」 モモ「しょ、しょうがないっすね」 京太郎「冗談だよ」 モモ「え~」 京太郎「まぁ良いけど」 モモ「とりあえず、また遊んでくださいね♪」 京太郎「おう、また電話する」ナデナデ モモ「はいっす!」ビシッ 夜- 自宅・自室- 京太郎「久々の我が家は良いな……俺、もう大人なんだな」キリッ 京太郎「ん、メール?」 京太郎「えっと、一件か」 差出人:歩 本文『さっきハギヨシさんが帰ってきたって言ってたけど、帰ってきたの?』 京太郎「ん、さすがハギヨシさんだな」 本文『おう、やっぱこっちの方が空気が良いよ』 差出人:歩 本文『へぇ、まぁ今度行くわけだけどね』 京太郎「そういやそうだなぁ」 本文『そしたらいろいろ場所紹介してやるからな!』 差出人:歩 本文『別に良いけど、まぁ楽しみにしてるから また学校でね、おやすみ』 京太郎「おやすみっっと」 龍門渕家・歩部屋- 歩「まったく、しばらく学校にも顔出さないでなにやってんだか……」ハァ 歩「たくどうすんのよこの状況、龍門渕の全員あんたに気があるってどういうことよ、もぉ」 歩(ろくなことにならない予感しかしないっつーの)ハァ 自宅・自室- 京太郎「さて、寝るかな!」 カピー「カピ!」ドウシタ? 京太郎「寝るんだよ、あ、カピーって水陸両用ならどれ?」 カピー「カピ」アビスガンダム! 京太郎「おやすみカピー」 カピー「カピッ!?」ナンデ!? 73日目終了-
https://w.atwiki.jp/sangamaki/pages/16.html
. 照「ふっふっふ」カタタタッ ターン! 照「かんぺき!」ドヤッ 照「あ、押し間違えてた」アセアセ 京太郎「クッキー焼けたぞー」 照「なぬっ」 京太郎「照はコーヒー?紅茶?」 照「……コーヒー、ブラックで」 京太郎「大丈夫なのか?ほい」 照「今日こそは……」ズズッ 照「にがい……」 京太郎「砂糖とミルクな、ったく砂糖5個入れなきゃ飲めねえってのに無理すんなよ」 照「ブラックってかっこいい」 照「それに京はブラック飲めてる、私にもできなきゃおかしい」 京太郎「どっから出てきたそんな法則」 照「クッキーちょうだい」 京太郎「今日はストロベリーソース付きだぞ」 照「うん、おいひい」ハムハム 京太郎「いいことだ」 照「……で、今日の相談」 照「この場面」 京太郎「えーっと……主人公とヒロインが愛を語り合うシーンか」 照「京は、どんな掛け合いが好き?」 京太郎「俺か、照の方はどうなんだ?」 照「私は……」 主人公「愛してる」 ヒロイン「私も」 二人は幸せなキスをしてベッドへ…… 照「……みたいな」ドヤッ 京太郎「なんでそんな内容でドヤ顔できんの!?」 照「えっ、どこかダメだった?」 京太郎「やり取り淡白すぎるだろ」 京太郎「それにすぐ『ベッドへ……』って前もそうだったけどベッド好きすぎるだろ」 照「京との夜が忘れられなくて」 京太郎「お、おう」テレテレ 照「うん」テレテレ 京太郎「じゃなくて!このまんまワンパターン化させてると読者に飽きられるし、『この京宮須照って作者……淫乱』みたいに言われるぞ」 照「淫乱……嫌だ」 照「でもワンパターンじゃない、京はいろんな方法で攻めてくる」 京太郎「うーんこの小説の中の話なんだよなー」 京太郎「そうだな、こう名言的なものを入れてみるとか?」 照「…………」 主人公『知ってるか?IはHの後に来るんだぜ』 ヒロイン『私も』 肌を触れ合わせ、お互いを抱き寄せ、二人は…… 照「これに決定」 京太郎「なんでよりによってそれを選んだかな?」 京太郎「ヒロインの台詞も変わってないし」 照「……じゃあ」 主人公『キッチンとかけまして、俺たちの関係とときます』 ヒロイン2『そのこころは!』 主人公『どちらもIの後にHが来ます』 ヒロイン3『うまい!』 ヒロイン『私も』 そして四人は…… 京太郎「なに唐突に謎かけ始めてんの!?ヒロイン2と3どっから出てきたの!?絶対この後謎かけ続いてるよね!?『そして四人は謎かけ大会を夜通ししました』ってなるよね!?」 照「この前の菫と淡と一緒にシたときを思い出したから」 京太郎「俺あのとき謎かけした覚えなかったよ!」 照「脳内補正」 京太郎「いらない補正だな!」 照「はぁ……」 主人公『愛してるの言葉じゃ』 『足りないくらいにぃー!』 主人公『君が好き!』 ヒロイン『私も』 そして三人は…… 照「人数減らした」ムフー 京太郎「合いの手誰!三人って合いの手の人も巻き込んでるよね!」 照「……誰だろう」 京太郎「考えてなかったのかよ……」 照「というか、そこまで言うなら京はどうなの」 京太郎「俺か……そうだな」 主人公『愛してる』 ヒロイン『私も』 主人公『でも、言葉は使うたびに価値が落ちていく、だから俺はもう愛してるを使わないことにするぜっ!』 ヒロイン『大丈夫、私たちの愛はそんな言葉じゃ足りないくらいだもの』 主人公『そうか、つまり言い続ければ「愛してる」で足りるような愛になるのか』 ヒロイン『そうよ』 主人公『愛してる』 ヒロイン『私も』 京太郎「これぞ芸術」 照「なにを言ってるのかわからない」 照「まだ私の方がマシ」 京太郎「そうか?いいと思ったんだけどなー」 照「あ、そろそろお迎えの時間」 京太郎「あーもうそんな時間か、んじゃ行ってくるわ」 照「うん、行ってらっしゃい」 京太郎「……えーっと」 京太郎「愛してる」 照「私も」 照「そして二人は……」 京太郎「それはもういいから」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6057.html
理沙「綺麗!」 京太郎「そうですね」 京太郎(理沙さんの方が綺麗ですよー、なんて。そんなこと恥ずかしくて言えねぇよ) 京太郎(けど、本当に綺麗だ) 京太郎(俺は理沙さんが好きだ) 京太郎(告白……したい) 京太郎(今、絶好の機会だ。告白するには最高の舞台だ) 京太郎(だけど勢いに任せて言ってしまっていいのだろうか?) 京太郎(俺は……俺はっ!!) 「ありがとうございました。足元に気をつけてお降りくださいませ」 京太郎(駄目だ、やっぱり言えない) 理沙「綺麗だった」プンスコ! 京太郎「ええ、そうですね」 京太郎(俺は、理沙さんと釣り合ってるのだろうか?) 京太郎(……そんなことない。まだまだ甘ちゃんのガキだ) 京太郎(一つのことにも打ち込めない。ハンドボールだって続けられなかった) 京太郎(もし付き合うことが叶ったら、理沙さんはそんな俺でもいいって言ってくれるだろう。優しいからな) 京太郎(でもそれでいいわけがない。せめて自分に自信が持てるような何かが欲しい……) 理沙「?」ジー 京太郎「なんでもないですよ」ニコ 京太郎「今日は楽しかったです」 理沙「私も!」 京太郎「理沙さんにも楽しんでもらえたなら誘った甲斐がありました」 京太郎「またどこかに行きましょうね」 理沙「」コクコク 京太郎「それじゃそろそろ……」 理沙「ばいばい」フリフリ 京太郎「さようなら」フリフリ 京太郎「……」トコトコ チラ 理沙「」フリフリ 京太郎(まだ手振ってるや)フリフリ 京太郎「ただいまー……まぁ返事なんてないけど」 京太郎(さ、風呂沸かして、待ってる間ネト麻でもしますか) 京太郎「……ん? あ」 京太郎(そうだ、一つあるじゃん。俺が夢中になってるもので頑張れそうなの) 京太郎(これだよ、麻雀。インハイがある) 京太郎(全国で優勝……とまではいかないだろうけど十分な成績を残せたら俺にとって誇りになるはずだ) 京太郎(少し不純な理由かもしれないけど……でも勝ちたい。雀士としても、男しても) 京太郎(そうと決まれば麻雀漬けの日々を……あ、バイトどうしよう……) 京太郎(予選まで一刻の猶予も無い……でもせっかく俺なんかを雇ってくれた……) 京太郎「……っ!」 京太郎「ということで辞めさせて下さい!」バッ マスター「……本気ということですね」 京太郎「……はい」 マスター「それでどこで練習するんですか?」 京太郎「近くの雀荘に行こうかと」 マスター「お金は?」 京太郎「こ、ここで稼いだお金と親からの仕送り金で」 マスター「足りるのですか?」 京太郎「…………」 マスター「……店の物置にマットと汚れた牌があります。場所はそうですね……そこのテーブルを使うと良いでしょう」 京太郎「マスター?」 マスター「どうせ京太郎君の来る時間は客入りが悪いですから使っても平気です。悪いと思うなら時折コーヒーでも頼んでください。ただしここで稼いだお金の範疇で」 マスター「……京太郎君」 京太郎「……はい」 マスター「一人で大事を為すことは容易ではありません。しかし協力してくれる人がいるのなら、作ることが出来たのなら大事を成すことは難しくないでしょう」 マスター「こういう機会に頼ることを覚えてください。……そして今の気持ちを忘れてはいけませんよ」 京太郎「……ありがとう、ございます」 ガサゴソ 京太郎「お、あったあった。うわ、ほんとに牌は汚れてるな。マットは……掃えばつかえるな」 バサバサ パッパッ 京太郎「よし、いけるな。牌を綺麗にしよう」 ゴシゴシ キュッキュッ 京太郎(マスターには感謝しないとな。厚意で使わせてもらうんだ) 京太郎(ほんとありがたい……) ポタッ 京太郎(あれ?なんで涙出てんだ?悲しくないのに)ゴシゴシ 京太郎(頑張ろう……) 京太郎(知り合い呼ばないとな、ていっても麻雀出来る知り合いって言ったら限られてくるけどな) 京太郎(よし!明日から始動だ!) ───────── ────── ─── カランカラン 淡「やっほー!きたよー!」 京太郎「おっす。照さんもありがとうございます」 照「ん」 京太郎「でも呼んだ手前あれですけど部活大丈夫ですか?」 照「平気。それに淡は京太郎と打たせたほうが良いから」 淡「そゆこと。部活のほうはスミレもいるしね。あの人ブチョーだから」 京太郎「なるほど」 淡「あれ?そういえばいつもの服は?」 京太郎「ん?ああ、辞めたんだバイト。まあこうやって厚意に与って場所を貸してもらってるんだけどな」 淡「そうなんだー。まぁそうでもしないと予選負けちゃうかもだしね。きょーたろー下手っぴだし」 京太郎「そういうのは俺に勝ってから言うんだな」フフン 淡「言ったな!今日はぼっこぼこにしてやる!」 照「三麻?」 京太郎「あ、はい。もうちょっとしたらもう一人来るんでそれまでは」 照「わかった」 淡「そういえばきょーたろーってこっちの人じゃないよね。イントネーション時々変だし」 京太郎「あ、やっぱそういうのってわかるもん?」 淡「結構ね」 京太郎「俺、長野からこっちに来たんだよ」 照「」ピクリ 淡「長野……長野って何があるの?」 京太郎「そうだなー、有名なのはスキー場とかか。白馬村って聞いたこと無いか?」 淡「どっかで聞き覚えあるような……」 照「オリンピックあったとこ」 淡「おお!」 京太郎「それですそれです」 京太郎「他にも善光寺とか諏訪大社とかの神社系も有名だな」 淡「知らない」 京太郎「めちゃくちゃ有名なんだけどな」 淡「神社とかきょーみないし」 京太郎「賽銭とかしないのか?」 淡「私拝んだほうがご利益あるよ!」 京太郎(何言ってんだこいつ) 京太郎「あと何があったっけ……」 照「軽井沢」 京太郎「ああ、そっか避暑地として有名ですもんね。自分が行かないと忘れます」 京太郎「そういや軽井沢には白糸の滝ってのがあったような」 淡「うちの高校と同じ名前だ!」 タン 京太郎「あ、それロン」 淡「ええ!?話に現抜かして見逃してよ!」 京太郎「甘いなぁ……さっき照さんに直撃とられた分取り返さないと」 淡「テルからとってよ!!」 京太郎「照さんが俺の当たり牌出してくれたらな」 照「負けるつもりはない」 淡「むー……」プク カランカラン 健夜「おまたせー。ちょっと遅くなっちゃったかも」 京太郎「いえいえそんなことないですよ。むしろ仕事終わりに呼び出しちゃってごめんなさい」 淡「小鍛治プロかぁ」 照「やっぱりこっち来て正解だった」ゴッ 健夜「チャンプ!?ね、ねぇ京太郎君。こんなの聞いてないんだけど……」コソコソ 京太郎「まぁ淡……そっちの金髪の子に誰か連れてきてって頼んだんで自分も誰が来るか分からなかったんですよ」 健夜「京太郎君の指導どころじゃない気がするんだけど……」 京太郎「……照さーん」 照「何?」 京太郎「理沙さんの時と同じでお願いします」 照「……京太郎の為にここに来た。二戦したい」 京太郎「うぐっ!?……いやでも時間的にガチ二戦は厳しいのでなんとか」 照「……またこういう機会組んでくれるなら」 京太郎「それでお願いします」 照「わかった」 健夜「それじゃ最初は京太郎君と大星さんに教えながらでいいのかな?」 照「自分には問題点だけ挙げてくだされば結構です。自分で直しますから」 健夜「あ、あはは。宮永さんは大丈夫そうだね」 京太郎「ほんとに照さん大丈夫かな?」ヒソヒソ 淡「へーきへーき……たぶんね。いざとなったらお菓子で釣ろう」ヒソヒソ 京太郎「照さんってそんなにお菓子好きなのか」ヒソヒソ 淡「毎日部室で食べてるぐらいには」ヒソヒソ 健夜「仲良さそうに話してるとこ悪いんだけどそろそろ始めないの?」 淡「むー……まぁいいや。始めよ」 京太郎「なんでむくれてんだ?」 淡「きょーたろーはバカだから一生わかんないよ」 京太郎「むっ。喧嘩売ろうってか」 淡「さっきの分やり返してやる!」 健夜(ほほえましいなー) ───────── ────── ─── 健夜「お疲れさまー」 京太郎「今日はありがとうございました」 健夜「二人とも将来有望だから、教えてて楽しかったよ」 淡「私は今でも強いけどね」 健夜「高校レベルだったら十分だね。プロでもそこそこやっていけるんじゃないかな」 淡「……うん、わかってる」 京太郎「ていうか健夜さんには敬語使わないんだな」 淡「なんか親しみやすくてつい」アハハ 健夜「別にいいよ、私苦手だし。京太郎君も敬語じゃなくていいんだよ?」 京太郎「あはは、まぁ後々ということで」 照「……小鍛治プロ。またやりましょう」 健夜「そんなに慌てなくても卒業したら存分に出来ると思うけど」 照「卒業までにもっと強くならないといけないので。あなたよりも強く」 健夜「……私なんかもう前線退いてるんだよ?」 照「でも、日本で一番強い」 健夜「咏ちゃんとは打ったことある?」 照「はい」 健夜「そっか……まぁ宮永さんの場合私とか咏ちゃんより理沙ちゃんやはやりちゃんタイプの方が苦手そうだけどね。あの二人は周りを使うのが上手だからね」 照「……」 京太郎「つまりどういうことなんだ?」 淡「テルは攻撃タイプより防御タイプが苦手ってこと。一定以上のレベルだとね」 京太郎「……なるほど」 淡「わかってないでしょ」 京太郎「ソンナコトナイヨー」 健夜「それじゃまたね」フリフリ 京太郎「ありがとうございました」 淡「ばいば~い」 照「」ペコリ 淡「それじゃ私達も帰るね」 京太郎「ん。俺は閉店作業手伝ってくる。そろそろだと思うし」 淡「辞めたんじゃないの?」 京太郎「まぁそうなんだけどさ。やっぱ何もしないっていうのは後味悪いからさ」 淡「ふーん」 京太郎「じゃあな」 カランカラン 淡「テル、帰ろ!」 照「……」 カランカラン マスター「忘れ物ですか?」 京太郎「そろそろ閉店作業に入りますよね?」 マスター「はい」 京太郎「手伝わせてください」 マスター「……お給料は出ませんよ?」 京太郎「もちろんです」 マスター「……ではいつも通りテーブルからお願いします」 京太郎「了解です」ニッ 京太郎「お疲れ様でしたー」 マスター「お疲れ様でした」 カランカラン 照「京太郎」 京太郎「あれ?照さんまだいたんですか?淡は帰ったみたいですけど……」 照「話がある」 京太郎「? なんですか?」 照「…………やっぱりなんでもない」クルリ 京太郎「あ、じゃぁ俺から一つ聞いてもいいですか?」 照「……何?」ピタ 京太郎「もしかして咲のお姉さん……とかだったりします?」 照「っ!!」 京太郎「やっぱそうですか。少し似てると思ったんですよ。後長野って言ったとき反応してましたし」 照「…………咲とは仲良かったの?」 京太郎「ずっと同じクラスで割といつも席が近くでしたから。でもそっか咲にお姉さんがいたのか。あいつ自分のこと話さねぇからなぁ」 照「…………」 京太郎「あ、いや、話せって言ってるわけじゃないんですよ。なんらかの事情があるんでしょうし」アセアセ 照「……京太郎はすごい」 京太郎「へ?」 照「それじゃ」スタスタ 京太郎「……行っちゃった」 ―――次の日――― ~♪ 京太郎「ん?淡からだ」 淡 >キョータローとずっと練習していいって許可もらったよ! 淡 >部活は最初だけ顔出したらいいって(≧v≦) 京太郎「おお!俺としてもすげぇ嬉しいな!」 京太郎 >これからよろしくな!インハイ頑張ろうぜ! 淡 >私と練習出来るんだから予選は一位通過だからね! 京太郎「そうだな……頑張ろう」グッ 淡「当たり前じゃん」ヌッ 京太郎「おわぁぁっっ!!」ビクッ!! 淡「あははははは!!びっくりしすぎでしょ!」 京太郎「おまっ!もうちょい離れて声掛けろよ!まじでビビるわ!!」 淡「キョータローは反応いいからついイジめたくなっちゃうんだよねー」 京太郎「いつか絶対やり返す」 菫「なんか凄い声が聞こえたが大丈夫だったか?」 京太郎「あ、菫さんと照さん。今日は二人とも来てくれたんですね」 照「もちろん」 菫「私はお礼も兼ねてな」 京太郎「お礼?」 菫「ああ。そちらから話を持ちかけられたわけだが、我々の強化にも繋がるし場所も使わせてもらうわけだからな」 京太郎「そんな、それならお礼はマスターにしてください。マスターのおかげで出来るんですから」 菫「勿論マスターにも礼を言う。だがこういう機会を得られるのも君のおかげだ。ありがとう」ペコリ 京太郎「いや、その、えっと……」カァァ 淡「キョータロー顔真っ赤だよ」ニシシ 京太郎「うっせ!!」 照「それで今日はプロの人来るの?」 菫「お前というやつは……もうちょっと空気を読め」ハァ 京太郎「照さんらしくていいですけどね」ハハハ 照「?」 淡「テルじゃないけどさ、今日は誰か来るの?」 京太郎「ふっふっふ。今日はいっぱい来るぞ」 淡「ほんと?」 京太郎「ちょうど今、いやもう終わってるかそろそろ終わるぐらいだと思うけどチーム戦やってるらしくってさ、それの帰りに寄ってくれるみたいだ」 菫「今っていうと……野依プロと瑞原プロのところか」 京太郎「よくわかりましたね」 菫「まぁ君の知り合いから考えたらな」 京太郎「その試合解説を健夜さんがやってるみたいで、健夜さんも寄ってくれるみたいです」 菫「てことは三人か」 京太郎「ほんとありがたい話です」 菫「ひとえに君の人柄のおかげだと思う」 京太郎「……そうですかね」ポリポリ 照「なんか京太郎のこと口説いてるみたい」 淡「ふーん……」 菫「いや、そういうわけではないぞ!京太郎も勘違いするなよ!」クワッ 京太郎「は、はい」 照「京太郎」チョイチョイ 京太郎「なんですか?」 照「"京ちゃん"って呼んでいい?」 京太郎「!? どうしたんですか突然」 照「京太郎って……」 京太郎「京太郎って……」ゴクリ 照「呼びにくい」 照「それだけ」 京太郎「……どんな理由ですか」ハァ 照「駄目?」 京太郎「いいですけど……やっぱ姉妹ですね」 照「?」 京太郎「咲も俺のこと"京ちゃん"って呼んでたんですよ」 照「……」 淡「何コソコソ話してんの?」 京太郎「なんでもないぞ」 淡「うそだー」 キャイキャイ 照「……」 理沙「京太郎!」プンスコ 京太郎「理沙さん、早かったですね。その様子ですと……勝ったんですね」 はやり「はやぁ……個人の収支でははやりの方がプラスだったんだけど、チーム的に負けたよ」 健夜「理沙ちゃんに上手いことばらけさせられたって感じだったね。」 理沙「」ブイ 京太郎(ばらけさせるってどうやるんだろう?) 理沙「京太郎には無理」 京太郎「!?」 理沙「まだまだ」 京太郎(まだまだ練習が足りてないってことか) 京太郎「頑張らなきゃな」 理沙「」コクリ 淡「あれで会話通じるんだ」 菫「ああいうのを以心伝心と言うのだろうな」 カランカラン マスター「いらっしゃいませ。おや、今日は大勢ですね」 京太郎「あはは、すみません」 淡「あ、ケーキセット一つ!」 照「私も」 菫「お前ら……席に着いてから注文したらどうだ」 マスター「構いませんよ。他の方も何か頼まれますか?」 健夜「どうする?私もケーキセット注文するつもりだけど」 はやり「はやりも頼もうかなぁ」 理沙「」クイクイ 京太郎「ん。菫さんはどうしますか?」 菫「そうだな……今回は頼もうかな」 京太郎「了解です。マスター、ケーキセット人数分お願いします」 マスター「わかりました」 京太郎「手伝いましょうか?」 マスター「……お願いします」 理沙「先座ってる!」 京太郎「はい、先に始めといてください。あとで交代で」 マスター「良い人に出会えてますね」 京太郎「はい、ほんとにそう思います」 コカジプロ、キノウノリベンジヲ テルハサイゴダケー アハハ… ノヨリプロ、ハイノヨミカタヲオシエテクダサイ ウシロカラミテル ジャァハヤリハフツウニハイルネ 京太郎「今日は人数多くて騒がしいですけどね。申し訳ないです」 マスター「……私は喫茶店を経営するにあたって心地の良い空間を作ろうと心がけています」 京太郎「言ってましたね」 マスター「はい。色々とありますが、結局のところお客様に満足していただかなければ意味がありません」 マスター「心地の良い空間には人が集まるもの。良いと感じれば常連になってくださったり、時には溜まり場や待ち合わせ場所にもなるでしょう」 マスター「ですのでこうして騒がしくなるのは何も問題は無いのです。他のお客様がいらっしゃったら少しトーンを落としてもらいますが」 マスター「さ、コーヒーの準備が出来ました。……どうしたのですか? 早く持っていかないとコーヒーが冷めてしまいますよ」 京太郎「……はい!」 こうして麻雀漬けの一ヶ月が始まった。 プロの人たちもよく練習に付き合ってくれて、正直かなり強くなったと思う。 咏さんだけは唐突に来て荒らすだけ荒らして帰っていったが……(咏さん曰く、圧倒的火力をいなす練習だとかなんとか) 理沙さんはかなり付き合ってくれて、喫茶店から引き上げたあとも家にお邪魔して教えてもらったりもした。 もちろん家にいる時もネト麻をしたり、麻雀の本を読んだり、とにかくもかくにも麻雀、という状態だったのだ。 もう今の自分に出来ることはやり尽くしただろう。 後は身に着けた技術を全力でぶつけるのみ。 勝って全国へ――― 今にも千里を駆けて行きそうな思いを心に、早々と時間は過ぎていった。 予選までもうすぐだ。 京太郎「……なぁ」 淡「何?」 京太郎「俺、男子の団体戦見に来たんだけど……」 淡「知ってる」 京太郎「ここ女子のじゃん。ていうかお前控え室いかなくていいのか?」 淡「もうちょっと時間あるからねー」 京太郎「そうか。じゃあな」シュビ! 淡「話し相手になってよ!」ガシッ 京太郎「離せ!腰に抱きつくな!」 淡「どうせ、強い人が出てくるのは、二回戦にも、勝ち上がるって!」グググ 京太郎「勝ち上がるか、わかんねぇ、だろ!」グググ 菫「何をやってるんだお前らは」マッタク 京太郎「あ、菫さんに照さん……と二人は……」 菫「ああ、君とは出会ったこと無かったな。彼女達は渋谷尭深と亦野誠子。残りのチームメイトだ」 尭深「」ペコリ 誠子「どうも」 照「男子のほう見に行かなくていいの?」 京太郎「照さん聞いてください!これが離してくれないんだって!」 淡「これって何さ!」 菫「じゃれるのは勝手だがそろそろ時間だ」 淡「まだ時間あるじゃん!」 菫「ギリギリでは他のメンバーに示しがつかん。私達は白糸台の代表なんだぞ」 淡「むー……」 京太郎「決勝は見に行ってやるからさ」 淡「約束だからね!」 照「京ちゃん」 京太郎「なんですか?」 照「これ」 京太郎「シュークリーム?」 照「美味しかったからあげる」 京太郎「ありがとうございます。自分があげられるものありませんけど……」 照「気にしないで。もういっぱいもらった」 京太郎「? まぁいいや。団体戦頑張ってください」 照「」コクリ 誠子「大星と宮永先輩、あの男の子と仲良いんですね」 菫「淡はべったりだな。まぁあいつの支配を逃れられるからこそだろうが」 誠子「大星の支配に真っ向から勝てるんですか。男子にも凄い人がいるんですね」 菫「限定的だがな。照は……よくわからん。弟みたいな感覚なんじゃないか?」 京太郎「ここが男子の……ていうか人多いな!」 京太郎「男子のが多いって聞いてたけど、凄いなこりゃ」 京太郎「注目選手がいる学校は……「おーい、須賀!」ん?」 担任「やっと見つけた」 京太郎「あれ?なんで先生がいるんですか?」 担任「何、お前に渡したい物があってな。お前が出るのは個人戦だが今持っといても役に立つだろ。ほい」 京太郎「これって……去年活躍した選手の特徴っすか!おお……」 担任「お前が本気っぽかったから先生も本気を出してやったぞ。といっても去年のデータだから少ししか役に立たんがな。それとこれ」 京太郎「USB?」 担任「一応牌譜が入ってる。んじゃ、俺は帰るからな」 京太郎「ありがとうございます!」 京太郎「USBは帰ってから見るとして……綺麗にまとめてある、赤ペン先生みたいだ」 京太郎「ありがたく使わせてもらおう。さて、最初に出てくるのは……」 京太郎「だいたい見れた……かな。結構ここに書いてない人もいたな」 京太郎「やっぱ一年経つと出てくる人もいるよなー……」 京太郎(てか先生すげーな。去年活躍した人でここは伸びてくるかもって書いてある予想が大体あってる) 京太郎(これつくんのにどんだけかかったんだ……) 京太郎(この努力に報いなければ。いや、先生だけじゃない。マスターやみさきさん、淡や菫さんに照さん、プロの人たちに……理沙さん) 京太郎(この二ヶ月で色んな人の世話になってんだ) 京太郎(一週間後、まずはここからだ) 京太郎(…………) ───────── ────── ─── 京太郎「ということでおめでとう」 淡「雑じゃない?代表に決まったんだよ!この私が他をぶっとばしてね!」ドヤァ 京太郎(なんか色々ぶっとんだ気がする) 淡「ねぇ京太郎ってば」 京太郎「ん?まぁお前ならこんなもんだろ。むしろ照さんで飛ばせなかったことに驚いてる」 照「普通に打った」 京太郎「へ?それまたなんで?」 菫「一応手の内晒してしまうのを避けてのことだ。弱点を分析される可能性もあるからな。私も野依プロから指摘されたことを敢えて直してない」 京太郎「あー、なんかあれっすか、癖がどうのっていう」 菫「そうだ。野依プロレベルの観察眼をもった人がいてもおかしくない。そういう手合いが現れた時に逆手を取る為にな」 京太郎「そんなレベルならそれでも対応してきそうな……」 菫「だろうな。だが意表は突けるというものだ」 京太郎「なるほど。ん?じゃあ淡がダブリーしなかったのも……」 淡「菫に言われてたからね」 淡「そんなことより麻雀打とー!」 京太郎「さっきまで打ってたじゃねぇか」 淡「あんなんじゃ足んないよ!」 京太郎「じゃ理沙さんと喫茶店で合流するから一緒に行くか」 淡「やったー!!」 京太郎「って大丈夫ですか、連れてって」 菫「問題無い。変に機嫌損ねられるほうが困るしな」 菫「私と照は多分インタビューやら部活纏めるので拘束されるから行くとしても少しだけ遅くなる」 京太郎「わかりました。亦野さんと渋谷さんはどうされますか?」 誠子「私達も行っていいのか?」 京太郎「ええ。といいますか、今までも来てくださって良かったんですけど」 尭深「それは流石に悪い」 誠子「顔合わせたことなかったからね」 京太郎「だから遠慮してたんですね。でももう顔合わせてますし話もしましたよ?今度は一回打ってみませんか?」 誠子「……あぁ……入り込んでくるのが上手いんだなぁ」ボソ 尭深「人たらし」ボソ 京太郎「?」 誠子「わかった。お世話になろうかな」 京太郎「はい!」ニコッ スジ、タヨリスギ ヤッパリタヨリスギデスカ… コノマエワタシモイッタダロ 照「京ちゃん」 京太郎「なんですか?」 照「不安そう」 京太郎「そう見えますか?」 照「見える……どうしたの?」 京太郎「……まぁなんと言いますか、わからなくなりまして……怖いんですよね」 京太郎「男子の団体戦見て、この人達に勝たなきゃ、頑張ろうって意気込みました。でもそれと同時にこんなに活躍してる人に自分の麻雀が通用するのかって不安になったんです」 京太郎「……最初は自分に誇りが欲しかったんですよ。誰にでも言えるくらい立派なものが」 京太郎「恥ずかしい話ですけど理沙さんにちょっとでも追いつきたかったんです。それで告白したかったんです。不純な理由ですよね」 京太郎「もちろん、今も根本的なところは変わってないんですけど、それに匹敵するくらい麻雀を好きになって、こんな理由で強くなろうって決意した自分が本気でやってる人達や手伝ってくれてる人に申し訳ないような、意思が弱いようなそんな気がして……」 京太郎「って何話してんですかね。正直引きましたよね」アハハ… 照「…………」 ギュ 京太郎「て、てるさん!?」 照「指のここ、たこ出来てる」 京太郎「へっ!?あ、はい」 照「努力した証拠。ちょっと打っただけじゃ出来ないよ、このたこは。少なくとも意思が弱い人なんかには出来ない」 京太郎「…………」 照「麻雀を始める理由も強くなりたい理由も人それぞれ。それを他人が貶める権利を持ってない。持ってるのは自分だけ」 照「京ちゃんは気持ちが変わってないって言った。それと同じぐらい麻雀が好きって言った」 照「なら申し訳ないなんて思う必要ない。何も問題無い」 京太郎「……ありがとうございます。なんか自信出てきました」ニコ 照「その調子」 京太郎「照さんも何かあったら相談してくださいね」 照「……一つだけ」 京太郎「なんですか!」 照「咲が全国に来る」 京太郎「ええっ!?……麻雀出来たのかあいつ」 照「数日前に連絡があって、私と同じ舞台に立つからって」 照「それで長野も今日だったから結果見たら咲のところが勝ってた」 京太郎「有言実行ってすげーな」 照「私は咲から電話があった時何も言えなかった」 京太郎「……なんでですか?」 照「ちょっとしたすれ違いみたいなもの。でも話し辛くって。咲も多分同じ気持ちだった……んだと思う。それだけ言って私達の電話は終わった」 照「麻雀でなら話せると思う。でも、もしその後話す機会があったら……」 京太郎「……何言ってるんですか。話したいんですよね、咲と」 照「…………」 京太郎「あとは……気合ですよ、気合。ふぁいやー!」 照「……ふふ」 京太郎「それです!その笑顔でいきましょう!笑えば言葉も出てきますよ!」 照「そうかも」 淡「きょーたろー!打とう!」 京太郎「もう一局打ってたら閉店時間越えるだろ!諦めろ!」 淡「えー!」 マスター「構いませんよ」 淡「マスターやっさしー!」 京太郎「マスター、こんなの許可してたらこいつつけあがりますよ」 淡「そんなことないよー。それより早くっ」 京太郎「ああ、もう、わかったよ。照さんも打ちませんか?」 照「わかった」 誠子「私はさっきまで見てもらってたからいいや」 尭深「私も」 菫「それじゃ私が入らせてもらおう」 理沙「京太郎!」 京太郎「はい、終わったらアドバイスください」 ───────── ────── ─── 京太郎「皆帰りましたね」 京太郎「そういや今日の解説聞いてましたけど、結局緊張していつも通りでしたね」 理沙「頑張った!」 京太郎「一応理沙さんが解説で上手く喋れるよう引き合わされたんですよ、俺ら」 理沙「……話すのは楽しい」 京太郎「うんうん。結構喋りますもんね」 理沙「仕事は別」 京太郎「ですよねー」 理沙「要点は言ってる!」 京太郎「慣れてない人からしたらなんだこの解説ってなりますよ」 理沙「…………みさきに似てる」 京太郎「親戚ですから。言い方は似ますよ」 理沙「……っ」 理沙「み、宮永、照、と……」 京太郎「え?照さんと何話してたかって?」 理沙「…………」コク 京太郎「うーん……まぁ相談に乗ってもらった感じです」 理沙「!! わ、私も!」 京太郎「うーん……何かあったらさせてもらいます」 理沙「」ショボン 京太郎「こ、今回のは理沙さんには少し話せない内容だったと言いますか、なんと言いますか」ワタワタ 理沙「……」 京太郎「……理沙さん」 理沙「何?」 京太郎「個人戦頑張りますから、見ててください」 理沙「……っ!」 理沙「見てる……最初から見てる!」 京太郎「ありがとうございます」ニコ 理沙「最初から見てる」 京太郎「?」 理沙「なんでもない!」プンスコ ―――西東京地区 個人戦 予選開催日――― 京太郎「そろそろ出ようかな」 ~♪ 京太郎「ん?」 理沙 >応援してる! 京太郎「……よし!」 京太郎 >個人戦頑張ってきます! 京太郎「行って来ます、理沙さん」ギュウ 担任「須賀、調子はどうだ?」 京太郎「今日も来てくださったんですね」 担任「お前なー……一応顧問なんだぞ」 京太郎「……そうでした」 担任「なんだその間は」 京太郎「冗談ですって。先生が用意してくださったやつ、すっごい役立ちました。ありがとうございます」 担任「ま、他何にも見てやれなかったからな」 京太郎「先生って強いんですか?」 担任「んにゃ、全然。指導力もねぇから廃部ほぼ決まってたんだよ」 京太郎「そりゃそうですね」 担任「……お前以外と毒舌だな」 京太郎「あはは……すみません」 担任「俺のことはどうでもいいんだよ。今日明日とお前の晴れ舞台なんだからよ」 担任「魅せてくれよな」バシ 京太郎「はい!」 京太郎(さて、組み合わせは……最初は知らない人ばっかりだな) 京太郎(男子は人数多いから女子と違って昼までの8戦で落とされる) 京太郎(ここで注目選手と当たらないのはかなり大きい。点数をしっかり稼がないと) ギィ 京太郎(もう他の人集まってるな) ドクン ドクン 京太郎(落ち着け……少なくともここにいる人よりもずっと上手い人達と打ってきたんだ) 京太郎(負けるわけには……いかない!) 京太郎「よろしくお願いします!」 京太郎(最初の配牌は……二向聴、これは初っ端から俺の流れなんじゃないか?) 京太郎(周りは……対面が渋い顔してるな、ちょっと遠い感じか) 京太郎(上家も下家もめちゃくちゃいい手って感じの表情じゃないな) 京太郎(ツモは……入ってきてる。三色も狙えるけど……最初にあがって流れを掴んどきたい。次は親番だしな) 京太郎(スピード重視だ) 京太郎「!! リーチ!」 「!? 早い」アワワ 京太郎「それ、ロン! 立直、一発、ドラ1 5200!」 下家「こんなの事故だー」 京太郎(こっから俺の親番だ!) 京太郎「お疲れ様でした」 「おつかれさん」 「お疲れ様でした」 「お疲れ様……事故だ……」 京太郎(上家の人に結構食いつかれたな。確か団体戦に出てなかった高校の人だ。やっぱ知らないからといって侮れないな) 京太郎(ともあれ、まず一勝。次は……) ───────── ────── ─── 京太郎「ふぅ……」 京太郎(今のところ四位。この調子で行けば予選は突破出来るな) 京太郎(問題があるとすれば活躍してる人らに当たった時だな) 京太郎(一位と三位の人に当たったけど三位の人は運がいいだけだ。どちらかと言えば五位……一回戦で当たった人のほうが怖い) 京太郎(一位の人はなんかもう凄かったな。暗槓してドラ作って点数爆上げしてきたもんな) 京太郎(恐ろしいほどのドラ麻雀だ) 京太郎(ただ守りは薄い。さっきはやられた……というか他の人が対応しきれなかった感じだった) 京太郎(次当たった時は逆にあのドラを利用してやる) 京太郎(それから二位の人……団体戦を見た感じだと引っ掛けとか上手い感じだったな) 京太郎(しかも警戒してくる人にはしっかりと使い分けてる) 京太郎(一番厄介だ) 京太郎(後は……) ~♪ 京太郎「理沙さん?」 理沙 >お昼 京太郎 >まだ食べてません 理沙 >ここ来て! 京太郎「えっと……女子のほうの控え室か」 京太郎「行ってみるか」 京太郎「ここかな?」 コンコン みさき「はーい」 京太郎「やっほ」 みさき「なんだ京太郎君か。アシの人かと思っちゃった」 理沙「入って!」 京太郎「うい、お邪魔します」 理沙「食べて!」 京太郎「お!美味そう!」 みさき「普通は仕出し弁当なんだけどね……」チラ 理沙「!! た、たまたま!」 みさき「まぁこの量は二人じゃ食べきれないからね」 京太郎「ありがたくいただきます!」 みさき「そういえば調子いいみたいだね」 京太郎「んーでも四位だからなー……予選だから明日がんばりゃいいんだけど」 みさき「今日は落ちないっていう慢心は止めた方がいいんじゃない?」 理沙「京太郎は大丈夫!」 京太郎「ありがとうございます。それと慢心なんか一個もしてないよ。一試合終わるごとに紙にメモしてんだぜ」パラ みさき「うわ、細か。ていうかこのデータどうしたの?」 京太郎「顧問の先生にもらった。ペンで書き込んでるのが俺が分析したやつ。まぁ分析ってほどのことは書いてないけど」 みさき「ふーん……顧問の先生ちゃんと顧問してるんだね」 京太郎「そりゃな」 理沙「……この子」スッ 京太郎「ん?ああ、今五位の人ですね。単純に上手いんですよ、その人」 理沙「聴牌の時、よく河を見てる」 京太郎「! 癖……ですか」 理沙「」コクリ 京太郎「てか見てたんですね」 理沙「休憩中」 みさき「そういえば見てたね、男子の中継」 京太郎「ありがとうございます、参考になりました」 京太郎「それとお弁当、美味しかったです!」 理沙「よかった」 みさき「じゃあね」 京太郎「それじゃ」 バタン みさき「……心配なの?」 理沙「……力入りすぎ」 みさき「確かにね」 ~♪ 理沙 >明日もお弁当作る 京太郎「やったぜ!」 淡「あれ?きょーたろーじゃん!」 京太郎「おー、皆さんお揃いな感じで」 菫「何をやってるんだ?ここは女子の控え室しかないぞ」 京太郎「さっきまで理沙さんにお呼ばれしてたんですよ」 淡「えー、そうなんだ……!」 淡「ね、ね!明日は私達と食べようよ」 京太郎「わり、明日も理沙さんと食べる約束してんだわ」 淡「ぶーぶー」 照「お菓子あるよ?」 京太郎「いやお菓子があるかないかじゃないですから」 照「尭深がお茶も入れてくれる」 京太郎「それも問題じゃないですよ!」 京太郎「そっちの調子はどうですか?」 照「一位」 淡「二位!」ドヤ 菫「三位だ」 尭深「十五位です」 誠子「……十八位」 淡「ま、照と菫と私で明日もぶっちぎっちゃうと思うよ」 菫「慢心はよくないぞ。京太郎はどうなんだ?」 京太郎「四位です」 淡「結構いいとこまでいってんじゃん、京太郎の割りに」 京太郎(うぜぇぇ) 照「明日が本番」 菫「そうだな。私達もどうなるかわからんしな」 京太郎「そうですね。一応そのつもりで予選突破しそうな人は分析してます」 菫「その調子だ」フッ 照「……京ちゃん」 京太郎「なんですか?」 照「いつも通り」 京太郎「頑張ってきますよ」 京太郎「よし……大丈夫……」 京太郎(午前中の感じでいけばいいんだ) 京太郎(河もしっかり見ないと。余裕が無くなってきた時疎かになってた) 京太郎(流れをしっかり掴むことを意識して……) 「取らないのですか?」 京太郎「へあっ!?す、すみません」パシッ 京太郎(北か。配牌次第だけど、とりあえず鳴かない振り込まないことが最優先かな) ───────── ────── ─── 京太郎「ロン!門混、ドラ1 8000点です」 「多面張だったのか……」「まくられたー!」 京太郎「ありがとうございました」 京太郎「ふぅ……とりあえず予選突破」 京太郎「三位だし上出来だな」 『それでは予選一位通過の―――君のインタビューです』 『絶妙なタイミングで暗槓をしかけて点数をあげているようですが…』 『はい、自分は手をつくるのが早いことが得意なので、そこに点数を乗せようとして今のスタイルになりました』 『なるほど、では――――』 京太郎(自信満々だな。今まで積み重ねて完成させたスタイルだからか。……) 担任「よお!凄いじゃないか須賀!」 京太郎「ありがとうございます。結構上手く出来ました」 担任「解説にも注目されてたぞ」 京太郎「マジですか?」 担任「おお。今もそのこと話してんじゃないか?……ほれ」 『今日の個人戦はダークホースが続々と飛び出してきたという印象が強かったですね』 『六位につけた○○君や、四位の××君』 『それからトップ10の中に一年生で唯一入った三位の須賀君といった団体戦には出れなかった選手が上位に食い込んできてる』 『特に須賀君。一年生で三位以内に入るのは西東京予選では十年近く見てない』 『一年生とは思えない見事なオリや相手にアガリ牌を読ませない打ち方が出来るからこそだな』 『えっと……今入ってきた情報によりますと須賀選手は中学では麻雀ではなくハンドボールをやっていたようです』 『……麻雀をずっとやってきたわけじゃないと』 『みたいです』 京太郎「……なんか身バレしてるんですが」 担任「テレビってすげーな。ていうかハンドボールやってたのか」 京太郎「まぁ。一応県予選で決勝までいったので調べたら出てきたんだと思います」 担任「ふーん。まぁ確かにガタイ良いからな。不思議じゃねーわ」 担任「んじゃ、また明日な」 京太郎「はい」 京太郎「……帰るか」 理沙「京太郎!」 京太郎「理沙さん。仕事終わったんですか?」 理沙「」コクリ 理沙「女子のほうが早い」 京太郎「あー、人数的な問題ですか。試合後の解説とか入って丁度男子が帰るぐらいだったんですね」 理沙「そう……食べに行く!」 理沙「お祝い!」 京太郎「いやいや予選突破しただけじゃないですか」 理沙「いいから!」 京太郎「……わかりました」ニコ 理沙「…………」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ みさき「やっぱり白糸台の三人が飛びぬけてたね」 理沙「」コクリ 「ねぇ、見た?男子の個人戦」 「見た見た!三位の子イケメンだったよねー」 「そうそう!対局中は格好良い感じなのに対局後におじぎしてにこって笑う顔とか可愛い感じだし、なんだろう……そう大型犬っぽい!」 「わかるかも!撫でてあげたくなるよねー。後細マッチョっぽい。中学じゃハンドボールやってたみたいだよ」 「あんた好きだよね、細マッチョ。イケメン且つ可愛い、高身長、麻雀強い、向かうとこ敵無しじゃん」 「私あの子応援するわー」 「私も私も!」 理沙「…………」 みさき「あー、京太郎君モテモテだね。まースペック良さそうだもんね。案外スケベだけど」 理沙「…………」 みさき「気になるの?」 理沙「!? ならない!」 みさき「ふーん……まぁいいや、いこ」 理沙「…………」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 理沙「」ブンブンブンブン 京太郎「どうしたんですか?」 理沙「なんでもない!」プンスコ ―――西東京地区 個人戦 本選――― 京太郎(こっからは昨日の予選を勝ち上がった実力者ばかりだ) 京太郎(弱い人なんていない。昨日作ったデータを元に一人一人しっかり対策を考えないと) 京太郎(ただでさえ自分は経験が少ないんだ。こういうところで埋めないと勝てない) 京太郎(一応、全員分メモってる……何人かほとんど書いてなくてデータ不足だけど) 京太郎(もし……このデータ不足の人たちが半荘では強かったら?そういうのはありうる) 京太郎(昨日の最初バカヅキしてた人だって、昨日は最終九位まで落ちてたけど、あの運がフルに使われてたら?) 京太郎(俺は三位から落ちる。一位二位の人は安定してた。今日も変わらないだろう) 京太郎(そう考えたら枠は後一つなんだ……そこに入り込まなければならない) 京太郎(勝たなきゃ全国に行けないんだ……勝つんだ、勝って全国に行くんだ……) 京太郎「よろしくお願いします」 「よろしく」「よろしくー」「よろしくお願いします」 京太郎(北家か。まぁどこでも最初は様子見だけど。自分の親番までは点を取られないように上手く流す) 京太郎(対面が引っ掛けの人だ。注意していかないと……) 京太郎(配牌は……五向聴か、よくないな。まぁ泣き言も言ってられないが) 京太郎(でもこういう時は……入ってくるんだよな。なるたけ早く聴牌にしたい)タン 京太郎(下家の人は確か染める傾向にあったな。索子きったってことは萬子か筒子でいく可能性が高い、警戒だな) 京太郎(上家はデジタル打ちだ。だけどデジタル打ちの相手ははやりさんで慣れた。こっちには絶対負けない) 京太郎(と、俺のツモ番……いいね、入ってきてる。鳴いて仕掛けなくても大丈夫かな)タン 「……あ」 「ツモ。中、門混、チャンタ、一盃口、ドラ3 6000・12000だ。ラッキー」 京太郎(ぐっ!流石にこれは注意したところでなんとか出来ねーよ!!くそっ!!) ───────── ────── ─── 京太郎(今のところ一位二回と二位が二回。七位か……一戦目でマイナスだったのがかなり痛い) 京太郎(後六戦……四回……いや五回は一位になりたい) 京太郎(まだ団子状態なんだ、抜け出さないと) 京太郎(それに三位の人以外にはまだ当たってない。後半で当たることを考えると絶対に負けられない) 京太郎(ちゃんとデータを整理してそれから……) 理沙「京太郎!」 京太郎「え……なんですか?」 みさき「さっきから何回も呼んでたよ。大丈夫?」 京太郎「あはは……ごめんなさい」 みさき「……ちょっと気負いすぎじゃない?」 京太郎「そんなことないって、ご馳走様でした」 みさき「ストップ」 京太郎「何?」 みさき「全然食べてないじゃん。しっかり食べないと力でないって」 京太郎「でも……」 みさき「はい、食べる。それとも何?あーんでもして欲しいの?」 京太郎「……理沙さんからなら」 理沙「!? する!!」 京太郎「いや、冗談ですって」 理沙「」ショボン 京太郎「今度こそ本当にご馳走様でした。それじゃ」 みさき「気張りすぎないでね」 理沙「……京太郎!」 ギュ 京太郎「!?」 理沙「」ギュー みさき「わーぉ……」 京太郎「り、理沙さん……」 理沙「……ん」パッ 理沙「力抜けた。それでいい」ナデナデ 京太郎「ちょ、恥ずかしいですって」 理沙「いってらっしゃい」 京太郎「……いってきます」 バタン 理沙「……京太郎」 京太郎「」スゥーハァー スゥーハァー 京太郎「よし!」バシッ 京太郎(大丈夫だ、いつもの俺だ。焦りすぎるな) 京太郎(いつも通り、いつも通りだ。照さんにも言われたじゃないか) 京太郎(こっからが正念場だ!)キッ ───────── ────── ─── 京太郎「お疲れ様でした」 「おつかれ」「お疲れ様でした」「おつかれさまー、今回は事故らなかったー」 京太郎(よっし!今のところ四位で次がラスト) 京太郎(最後が……ぐっ、一位の人と三位の人と同じ卓だ。くそ、どんな振り分け方してんだよ) 京太郎(落ち着け……今一位と二位の人は飛びぬけて得点が高い。この二人を抜かすのはほぼ不可能) 京太郎(だけど三位の人、この人までは後12。最後の試合、俺が一位抜けしたら俺が三位だ!) 京太郎(まず一位の人、この人は暗槓でドラを増やして得点を上げてくるドラ麻雀だ) 京太郎(狙いどころは槓に拘ってくるところ。そこをつければ勝機は見える) 京太郎(それから三位の人。この人はほんとに運が良いだけだからどうしようもない) 京太郎(ただ変な打ち方をするわけじゃない。落ち着いて対処すればいい) 京太郎(もう一人の人は……うん、普通だ。この人を飛ばされて終わられることは阻止しないと) ―――男子個人 最終戦――― 東一局 親:下家 ドラ表示牌 四索 下家(普通) 25000 対面(ドラ爆) 25000 上家(運) 25000 京太郎 25000 京太郎(自分は北か。とにかくドラ爆……対面の人が暗槓を仕掛けてきたらほぼ聴牌してるだろうから警戒だ。言い聞かせろ、集中しろ!) 京太郎(配牌は……四向聴。自分の和了率がそんなによくない手牌だ。一局目ってこともあるし自分のツモの様子みながらだ) 京太郎(他の人の様子は……下家の人が緊張してるな。かなり顔が強張ってる。他二人は少し余裕があるのか) 京太郎(上家は楽しそうだな。予選の時もそうだった) 京太郎(そうだな……俺も楽しまなきゃ) ―――九巡目 京太郎(今のところ動きがないな。自分の手は一向聴まで進められたが……他が動かないなら俺から仕掛けていくか?) 対面「カン!」 京太郎(!? ついに動いた!九筒の暗槓。新ドラは一萬。二萬は河に流れてない……下手したら持たれているかも) 対面「リーチ」 京太郎(さらにツモ切りリーチ……張ってたのか。リーチしてからカンしなかったのは警戒されていたのに気付いていたからなのかどうか……) 京太郎(ひとまず対面の当たり牌を考えなきゃ) ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ │ │ │ │.4 │②│③│③│④│⑥│⑦│⑧│ │ │ │北│北│北│索│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│中│中│ └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ 京太郎(あまり出してないのは索子か……ドラ周りが出てない……うーん……) 京太郎(自分の手配にある四索……もしかしたらこれやばいかな) 京太郎(さてツモは……二筒が入ってきた!聴牌に出来るけど……駄目だ、流石にこの4索は出せない) 京太郎(安牌の二筒出すしかないな……ああさようなら……) 下家「」 東 対面「」 九萬 上家「」 九萬 京太郎(俺は……東か。そのままだそう) 下家「」 七筒 対面「!! ツモ!」 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐ ┌─┬─┬─┬─┐ │二│二│二│⑥│⑦│⑧│.3 │.3 │.5 │.6 │ │.7 │ │⑨│ │ │⑨│ │萬│萬│萬│筒│筒│筒│索│索│索│索│ │索│ │筒│ │ │筒│ └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘ └─┴─┴─┴─┘ 京太郎(やっぱりその辺だったか!しかも二萬三枚も持ってやがる!) 対面「裏は……残念。立直、ツモ、ドラ四で3000・6000」 京太郎(上がられた……ここでこいつを調子づかせたら止まらない。次はスピード重視で流す!) 東二局 親:対面 ドラ表示牌 八萬 下家(普通) 19000 対面(ドラ爆) 37000 上家(運) 22000 京太郎 22000 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ │二│三│四│七│②│③│④│⑤│.2 │.3 │.9 │ │ │ │萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│索│索│索│西│西│ └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ 京太郎(二向聴!しかも西と三色が狙える。絶好の手だ) 京太郎(最初のツモは……まぁそうはこないわな。ツモ切りで) 下家「」 西 京太郎「ポン!」 京太郎(よし!自風牌げっちゅ!あとは四索か頭になるやつがきてくれりゃ聴牌だ) 対面「」 發 上家「」 四索 京太郎「チー!」 京太郎(ついてるついてる!んじゃ九萬切ってノベタン待ちで行こうかな) 京太郎(ん?發か……対面が捨ててるけど……もしかしたらそっちで出るかな?) 京太郎(よし、張り替えて、發の単騎だ) 対面「」 發 京太郎「ロン!西 三色 2000です」 対面「くそっ」 京太郎(もしかして聴牌寸前だったか?助かったぜ) 上家「ツモ ツモのみなので500でー」 上家「ロン 純チャンなので7700の一本場は8000です。キタキタキター!」 下家「ひえー!」 京太郎(今度はこっちが乗り出した。安手でいいから流そう) 京太郎「チー!」 京太郎(よし張った!タンヤオのみだけどこのさいなんでもいい!) 対面「カン!」 京太郎(こっちも調子良さそうだな。お、今のでドラ一ついた) 対面「それから、リーチ!」 京太郎「通さないぜ、ロン!タンヤオ、ドラ一 二本場は2600」 対面「ぐぅ……っ!」 京太郎(リー棒までついてお得な感じだな) 東四局 親:京太郎 ドラ表示牌 西 下家(普通) 10500 対面(ドラ爆) 30900 上家(運) 31500 京太郎 27100 ―――八巡目 京太郎(お、きたきたきた!これは立直せざるをえませんな!) ┌──┐ │七萬│ ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┼─┬┴┬─┬─┬─┬─┐ │三│四│五│六│②│②│⑥│⑦│⑧│.3 │.4 │.5 │.6 │ │萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│索│索│ └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ 京太郎「リーチ!」 京太郎(三面張だし誰も出さなくてもツモるだろ……多分。…………こい!!) 京太郎「! ツモ!メンタンピン、ツモ 2600オール!」 京太郎(よし、一位に踊りでた!このままキープしたいけど……下家の人やばそう?) 京太郎(……差し込めたら差し込むか) 『須賀選手からロン。立直、南 で2600。一本場なので2900点のアガリとなります』 『今のは須賀君が差し込んだみたいだ』 『そうなんですか?』 『これで子の満貫は直撃でも受けきれる』 『なるほど』 南一局 親:下家 ドラ表示牌 東 下家(普通) 10800 対面(ドラ爆) 28300 上家(運) 28900 京太郎 32000 京太郎(後2000ほど稼がせたいけど自分の点数も気にしなきゃいけないからな……) 京太郎(さてさて……うわ、四向聴。ここで逃げに走りたくはないけど……ツモ次第だからなんともいえねぇ……) ―――十巡目 対面「カン! んで、立直」 『あぁーっと、仕掛けてきた!』 『しかも南 ―――ハネ満確定の手だ』 京太郎(まじかよ……ハネ確ってことは下手したら下家が飛ばされる) 京太郎(奴の当たり牌を考えろ……この形に持ち込んで一番多い待ちは……両面待ちだ。実際東一局でもそうしていた) 京太郎(またそうくるとは限らないが……その線で考えた時、三―六―九筒の筋か、一―四萬、二―五萬、のどれか) 京太郎(下家……三筒二枚と六筒を捨ててる。こういう時下家は抱えない…………くそ!) 京太郎「」六筒 対面「ロン。裏は……乗ってないな。立直、ダブ南、ドラ四 12000だ」 京太郎(……上家とはだいたい8000点、対面とは20000だ。こっから巻き返せるのか……) 京太郎(いや、まだだ!諦めるな!) 京太郎(チャンスは……絶対来る!) 南二局 親:対面 ドラ表示牌 九萬 下家(普通) 10800 対面(ドラ爆) 40300 上家(運) 28900 京太郎 20000 ―――三巡目 上家「ポン」 京太郎(中を鳴いた……今ので聴牌か?それともとりあえず役をつけたかっただけか?) 京太郎(次は上家の親番だし速攻はありうる) 京太郎(他の三元牌は……出てないな……俺が發を一枚持ってるけど) 京太郎(うわ、白引いた……一応様子見だ。この二枚は手持ちにしとこう) 下家「」 發 京太郎(おまっ!警戒しろよ!!) 上家「ロン! 小三元!7700です!」 下家「げぇ!?」 京太郎(やべぇ……まじかよ……これで下家は3100。苦しい展開が続くな……) 南三局 親:上家 ドラ表示牌 二筒 下家(普通) 3100 対面(ドラ爆) 40300 上家(運) 36600 京太郎 20000 京太郎(あ゛ーきつい。ツモでも親の満貫で終わる。下家直撃は論外。子はハネツモでぎりぎりセーフか?でも後がもたない) 京太郎(なにより俺も点数稼がなきゃいけないのに……) 京太郎(配牌は……五向聴……きつい、きついよ。自分の場合四向聴より和了率いいけどさ?それでも辛い) ―――四巡目 下家「リーチ」 京太郎(!? きた!!よし、とりあえず自分は安牌だ。流石に振り込んだら逆転出来る気がしねぇ)タン 下家「一発……ならずかぁ」トン 対面「」七筒 下家「!! ロン!リーチ、三色 5200!」 京太郎(5200!? てことは……親っパネで一位!) 京太郎(て、落ち着けー。そうだ親なんだ。そんな手が出来るとは限らないし、連荘狙いでいこう) 京太郎(俺がアガれば終わらないんだ) 京太郎(ここで勝たなきゃ……絶対に勝つんだ。俺は―――) 京太郎(全国に行くんだ!) 南四局 親:京太郎 ドラ表示牌 三筒 下家(普通) 8300 対面(ドラ爆) 35100 上家(運) 36600 京太郎 20000 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ │ │ │ │ │ │ │九│②│③│④│⑤│⑧│⑨│.3 │ │白│白│西│西│北│南│萬│筒│筒│筒│筒│筒│筒│索│ └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ 京太郎(!? 配牌がきてる!これは混一がつくれる。きたら速攻で鳴いて鳴いて手をつくってやる) 京太郎「チー!」 京太郎(よし後は……どっちでもいいけどなんとなく五筒捨てで) ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┬─┐ ┌─┬─┐ │ │ │②│②│③│④│⑤│ ┌──┤⑧│⑨│ │ │ ├──┐ │白│白│筒│筒│筒│筒│筒│ │⑦筒│筒│筒│ │西│西│ 西│ └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └──┴─┴─┘ └─┴─┴──┘ 京太郎(出来れば白が嬉しいけど……) 上家「」 二筒 京太郎「それ、ロン!混一、ドラ一 5800」 京太郎(低いほうだけど仕方ない、いや上出来だと思おう。まだ勝ってないんだから) 南四局一本場 親:京太郎 ドラ表示牌 七索 下家(普通) 8300 対面(ドラ爆) 35100 上家(運) 30800 京太郎 25800 京太郎(南が最初から二枚。鳴くか入ってきたらまず一役だ。連荘できる。チャンスを待つんだ) ―――九巡目 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐ ┌─┬─┐ │ │ │四│四│⑦│⑧│⑨│.7 │.9 │.9 │ │ │ ┌──┤五│六│ │南│南│萬│萬│筒│筒│筒│索│索│索│ │南│ │七萬│萬│萬│ └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘ └──┴─┴─┘ 京太郎(来た。四萬・九索のシャボ待ちか。低いけど仕方無い) 京太郎(流石にドラは出ないだろ) 京太郎(対面もそろそろ手が出来上がる頃だろうしな) 京太郎(……本当に出ないか?思考停止するな) 京太郎(八索は今のところ出てない。出す、もしくは持ってるとしたら誰だ?) 京太郎(……対面、索子をほとんど捨ててない。集めてるのか……もしくは、八索の暗槓……) 京太郎(ありうるのか?一試合に二回もドラをカンするなんて……) 京太郎(……いや、こんな感に頼り切った麻雀で勝てるのか?) 京太郎(……でも、俺は知ってる。オカルトっていうものを知っている) 京太郎(頭の中で囁いてる気がするんだ……僅かな希望を掴めって) 京太郎(俺の中の何かが……) 京太郎(いや……) 京太郎(オカルト、それが俺に伝えてる気がするんだ……) 京太郎(俺は……俺の中のオカルト―ちから―を信じる!)九索 京太郎(さぁ来い!) 下家「」 南 対面「……」カチャ 対面「! カン!」 パタッ ┌─┬─┬─┬─┐ │.8 │ │ │.8 │ │索│ │ │索│ └─┴─┴─┴─┘ 京太郎「……信じてたぜ」ニヤッ 対面「!?」ピタ 京太郎「ロン!南、槍槓、ドラ一 5800の一本場は6100!」 『きぃぃまったぁぁぁーーーーーー!!!槍槓という珍しい役でさし、見事に逆転しました!』 『あそこでシャボ待ちをとらずに嵌張待ち、しかもドラ待ちを選ぶとは……お見事』 京太郎「おつかれ……さまでした!」 担任「須賀ァ!!」ダキ! 京太郎「わぷっ!ちょ、先生!」 担任「おま!さっきの試合鳥肌もんだぞ!」 京太郎「はな、離してくだ、さい!」パッ 担任「あはは、すまんすまん。でも、うん、あんな試合見せられて興奮するなって方が無理だ!」 京太郎「まだ結果出てないんですから」 担任「うはは、そうだったな」 『さて、他の卓も全て終了致しました。これより集計結果を発表したいと思います』 担任「お、きたみたいだぞ」 京太郎(頼む……)ギュウ 『それでは結果を表示いたします』 京太郎(頼む、頼む!!) 京太郎(ここまで来たんだ、暫定一位の人も三位の人もまくったんだ!) ―――全国へ 『結果は……』 京太郎(色んな人が応援してくれたんだ、だから俺はここにいるんだ) 京太郎(こんなに全力で願ってるんだ) 京太郎(ここが終わりじゃないんだ!まだ途中なんだ!) 京太郎(だから頼む―――) ―――勝って、全国へ ◇男子個人戦 最終順位 一位 ~~~~ ~~~高校 三年生 +245 二位 ~~~~ ~~~高校 三年生 +221 三位 ~~~~ ~~~高校 二年生 +164 四位 須賀京太郎 ~~~高校 一年生 +162 五位 ~~~~ ~~~高校 三年生 +153 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 京太郎「………………」 担任「…………そうか」 京太郎「…………」 担任「……須賀」 京太郎「…………」 担任「おい、須賀!」 京太郎「あ…………はい、なんですか?」 担任「……お前は一年生だ。確かに悔しくて仕方無いかもしれんが、まだ二年ある」 担任「…………」 担任「あぁ!もう!……すまんな、俺はお前に掛けてやる言葉がわからん」 京太郎「いえ大丈夫ですよ……」ニコ 担任「……」 担任「ほんとに大丈夫だな?雨降りそうだから早く帰れよ」 京太郎「わかってますよ。それじゃ」 スタスタ 担任「……おれぁ、顧問失格だ。慰めること一つできやしねぇ、何にも言葉をかけてやれねぇ……無力だ……」 淡「きょーたろー!」タッタッタッ! 京太郎「……」 淡「待ってって!」ガシ 京太郎「ん?淡かどうかしたか?」 淡「……っ!」グッ 淡「個人戦四位だったって」 京太郎「ああ、うん、駄目だった……」ニコ 菫「はぁはぁ……京太郎……」 照「京ちゃん……」 京太郎「そんな走ってこなくても良かったんじゃないですか?なんなら携帯に連絡入れてくれれば……」 菫「もう何回も電話したぞ」 京太郎「え?……ほんとだ。すみません」 淡「……まだ!まだ麻雀歴浅いんだしさー」 淡「ほら、他の人なんて何年もやってるんだよ!」 菫「っ!!」 京太郎「でも、もう目の前だったんだ……すぐそこだったんだ……」 淡「……っ」 淡「れ、練習が足んなかったんだよ!だから届かなかったんだって!」 菫「おい!淡!」 淡「ま、また喫茶店にあつまってさ「ほんとにそうだよ」……」 京太郎「足りなかったんだ。だから、だから全国に行けなかったんだ……」 淡「っ!!!私はそんな落ち込んでるきょーたろー見たくないっ!!元に戻ってよっ!!はやk バシンっ! 淡「……」 菫「いい加減にしろ、淡」 京太郎「……すみません、今日は帰ります。淡、次会うときには戻しとくから……」ニコ スタスタスタ 菫「……淡!お前は「だって!あんなのないって!」」 淡「あんなに頑張ってたのに!あんなに、野依プロのために一生懸命だったのに!」 照「!!知ってたの?」 淡「テルときょーたろーの会話聞いちゃったんだもん」 淡「だから!慰めようと、思ったのに!」 淡「わたし……」 淡「なぐさめかた、なんて、しらないん゛だもん゛!うわ゛ぁぁぁぁっぁぁぁ!!!!」 照「」ヨシヨシ 菫「…………っ」 菫「京太郎のおかげで強くなれたのに、私は、彼の力になれないのか……?」 一人歩く道の上、重苦しく、空を灰色が覆っている。 綺麗に見えていたものを汚く塗りつぶしていた。 一歩、また一歩、その歩幅は短くなっているように感じてしまう。 追い討ちをかけるように分厚い雲は雨を垂れ流しはじめ、行く手を阻む。 なぁ、目から溢れる心を全部流してくれよ この叫びを全部溶かしてくれよ なんだよ…… 晴れやかな気分を少し鬱屈とさせるだけじゃないのかよ なんで暗い心をもっと暗くするんだよ なんでだよ…… なんでだよ…… そうして彷徨いながらもなんとか部屋にたどり着いた。 奥にも行かず、タオルを取りにいくでもなく、ただただ玄関に座り込んだ。 そうしていると、だんだん、気持ちが溢れ出して来た。 駄目だった。 そう駄目だったのだ。 淡の言うとおりだ、麻雀をやってた月日も練習量も、足りてない。 それもあと一歩。 たったの一歩だ。 だけど、その一歩は―――遠い。 震える体を、腕を抱きしめる。 血が出るのも厭わず、強く抱きしめた。 理沙「京太郎」 声につられ顔を上げると、そこに好きな人がいた。 あぁ、駄目だ。 顔を合わせたくない。 こんなみっともない姿、見て欲しくない。 隠れる場所も無いのに、ただ惨めに蹲るしかなかった。 ―――あれ?暖かい…… あぁ理沙さんか。 理沙さんが俺を抱きしめてるのか。 さっきまで止まっていたはずの涙がまた溢れ出して来た。 京太郎「駄目だった……届かなかった……」 理沙「」ギュウ 理沙「見た。休憩中も見た。女子が終わった後も見た。見れる時全部見た」 理沙「輝いてた。……かっこよかった」 勝てなきゃ、意味無いんだよ…… 京太郎「俺は!勝てなかった!勝てなきゃ意味無いのに!」 理沙「なんで?」 京太郎「だって自分に誇れるものにしかったんだよ!勝てば自信になる、誇れるものになる!それから……」 理沙「?」 京太郎「っ!!」 こんな勢いに任せてぶちまけようとした自分に気付き、途中で止める。 あまりにも惨めだ…… 理沙「……勝たないと無理?」 京太郎「そりゃそうだろ!」 理沙「そんなことない!」 その思いの籠もった一言に言葉を失い竦んでしまう。 理沙「最後の試合、一番だった」 理沙「もう京太郎は知ってる」 理沙「……認めること」 理沙「全部」 京太郎「全部……」 理沙「」コクリ 理沙「全部。弱いとこも」 理沙「認めるから信じられる」 理沙「信じて」 理沙「それに……」 理沙「それだけで麻雀やってたわけじゃない。違う?」 京太郎(そう……だよな。ただ自信が欲しくて、勝つ為だけに麻雀やってたわけじゃない) 京太郎(照さんとも話してたじゃないか、麻雀が楽しいからやってるんだって) 京太郎(確かに悔しい) 京太郎(でも、それ以上のものを手に入れてる) 京太郎(……なんでだろう?明るく感じるや) 京太郎「……駄目だなぁ、なんか三位に入れなくて、全部終わりみたいに感じてた」 京太郎「いや、まだ、ショックだけどさ」 理沙「……これから」 京太郎「うん、これから、もっと頑張らなきゃ」 京太郎「なんか理沙さんには全部お見通しだなぁ」 理沙「当たり前!」プンスコ 京太郎「当たり前?」 理沙「ずっと見てた!」 京太郎「……あぁずっとって麻雀だけじゃないってこと」 理沙「そう」 理沙「……もう誤魔化さない」 京太郎「へ?何が―――」 チュ 理沙「―――好き」 京太郎「え……ええぇぇぇぇ!!!」 京太郎「その、えっと……先越された」ガク 理沙「」ブイ 京太郎「いやなんでブイサインなんですか」 理沙「京太郎は?」 京太郎「……好きです……てかわかってたんでしょ!!」 理沙「言葉は大事」 理沙「……もういっかい……いい?」 京太郎「……うん」 チュ 京太郎「あ!そういや淡とかに連絡しなきゃ!」 京太郎「それから先生とマスターにも!」 京太郎「あと!」 グ~ 京太郎「……お腹空いた」 理沙「」クス 理沙「作る!」 理沙「その前にお風呂!」 京太郎「ああ、なんか寒いと思ったら濡れっぱなしだった」 理沙「早く!」プンスコ 京太郎「ういー」 ───────── ────── ─── 「あーあ、もう卒業かー」「早かったなー」 「あ゛ぁぁぁ~~!!」「ほおら、泣かないでよ。わたしまで、もらい泣きしそうじゃんかぁ……」 「お前、集合写真で変顔きめてんじゃねーよ!」「伝説になるな……」「ねーよ」 「あれ?そういや京太郎は?」「あー……もう走っていった」「あー……なるほど」 「あーあ、須賀君の第二ボタン欲しかったなぁ」「もらってもしゃーないだろ。だってあいつには「こういうのは記念なの!」はいはい」 「……代わりに俺のやろうか?ほれ」「う、うん、ありがと……」 「何青春してんだよ!」「してねーよ!」「そ、そうよ!」 「にしても京太郎なぁ……」「まぁしょうがない」 「あいつはこの学校の伝説だな、生きる伝説」「そりゃな、こんな廃部決まってたような弱小高校の麻雀部所属なのに個人二連覇だもんな」 「予選敗退した一年の時ですら噂になってたからな、鬼強い一年がいるって」 「おまけに現役女子プロ雀士と熱愛だからな」「くそ、うらやましい」「へぇー……」「あ、いや違うって!」 「ま、今頃……」「熱々だろうな」「熱々でしょうね」「まだ少し肌寒いのにねー」 ───────── ────── ─── 京太郎「はぁ……はぁ……」 まだ花が綺麗に咲き誇るには早い、そんな季節。 いや、一部ではすでに咲き始めているか。 俺は集団を抜け校門を駆け抜ける。 半月も経てば花びらを舞わす桜並木道をただひたすらに駆けた。 緩やかな下り坂の先、目指しているものを見つけ、よりスピードを上げていく。 後100m……50m……10m…… 近づくに連れ段々ゆっくりに、駆け足から歩きに、その一歩を確かに踏んでいく。 そして立ち止まった。 スプリングコートに身を包んだ彼女は、今日という日も手伝っているのか、どんな花よりも綺麗に見える。 理沙「疲れた?」 京太郎「全然!」 そして一呼吸。鍛えてる体はこんなことではへばらず、元のリズムへとすぐに戻ってくれた。 二人とも無言ではあったもののどちらからともなく見つめあう。 理沙「京太郎!」プンスコ 京太郎「……わかった。いや、わかってるよ」 ポケットから箱を取り出し、中に入ってるリングを取り出した。 二人とも納得して約束していたにも関わらず緊張するな――― 震えそうになる手を動かし、彼女の左手を取る。そして、薬指にリングをはめた。 京太郎「結婚してくれますか?」 理沙「……」コクリ 顔を赤くして小さく頷いた後、言葉に出来なかった分を詰め込むように口付けをしてきた。 答えるようにして、その小さな肩を優しく抱き寄せる。 また一つ、花が咲き、春の訪れを報せているようだ――― カン!
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6458.html
?- 京太郎「またか」 「お前、何を守りたいんだ?」 京太郎「守りたいものなんかねぇよ」 「守りたいものがないのに戦うなんて不自然だろ」 京太郎「そんなことないだろ、楽しいから麻雀を打ってるじゃだめなのか?」 「そんな領域の話じゃ、もうなくなってるからな」 ?「助けてッ!」 京太郎「ッ!?」 「ほら、助けてやらなくていいのかよ」 京太郎「誰なんだよ、どうすれば良い!?」 「突然必死になるなよ」 京太郎「誰かが助けを求めてるだろうが!」 「誰でも、助けるのか?」 京太郎「当然だろ!」 「お前一人じゃ無理だって言ってるだろ?」 京太郎「どういうことだよ!」 「とりあえず、俺が候補を選別してやるよ……ほれ」パチンッ 京太郎「文字が書かれた、扉?」 「好きなのを選べよ……怠惰とは絆があるし、もう良いだろうとは思うけどな」 京太郎「俺は……」 京太郎「池田……か」ギィッ 「もう役立たず寸前の扉か、おもしろい奴」 バタンッ 京太郎「……相変わらず暗いな、ん?」 華菜「せ……だ……あ……だ」 京太郎「池田?」 華菜「あたしのせいだあたしのせいだあたしのせいだっ!」 京太郎「どうした池田!?」 華菜「あ、須賀……あたしのせいだし、あたしはっ、あたしの守りたいものを守れないっ!」ガシッ 京太郎「は、はぁ?」 華菜「頼む、助けてくれよ須賀ァ……華菜ちゃんは、一人じゃなんもできないんだよっ」フルフルッ 京太郎「どういうことだよ?」 華菜「守りたいものがあるのに、なんもできないっ!あたしはァッ!」ボロボロ 京太郎「池田、俺が助けてやるよ」スッ 華菜「本当に?」 京太郎「もちろんだ、じゃなきゃ俺がここに来た意味もない……」 華菜「じゃあ、お前が助けて欲しい時は絶対にあたしが助けてやるよ……須賀」ガシッ バァッ 京太郎「あたりが……」 華菜「花畑?」 美穂子「華菜」 緋奈・奈沙・城奈「おねえちゃん!」 京太郎「おい、向こうに行けよ」 華菜「まだだ、まだなんだよ……あたしがあそこに行くには、まだダメなんだ」 京太郎「なんでだ?」 華菜「あたしと須賀は近い、怠惰とも近いみたいだけどさ、もっと近くに行かなきゃなんない奴らがいるだろ?」 京太郎「……あぁ」 華菜「全部終わってからだな、京太郎」 京太郎「おう、華菜」 67日目- 京太郎「ん……」 宥「んぅ」zzz 晴絵「ん~」zzz 京太郎「あぁ、天国に居たんだった」 京太郎(たまらん……) 京太郎「ん、不味いっ」 京太郎(冷静になれば、当たっていることに気付いた……俺のアレが宥さんの太ももに……) 宥「んぅ?」 京太郎(不味いっ) 宥「あっ……」カァァッ 京太郎「お、落ち着いて下さい」 宥「そ、そのごめんね、抱き着いて寝ちゃって!」アタフタ 京太郎「大丈夫ですから動かな、あふっ」 宥「ふぇ?」 京太郎(良い太股でした) 宥「固いのが……?」 京太郎「大丈夫ですから一端出ましょうか、着替えてくるってのはどうです?」 宥「そうだね、そうする」スクッ 京太郎(……たまらん) 宥(だ、抱き着いたまま寝ちゃってた)カァァッ 京太郎(あれからすぐに晴絵も起きて、三人で朝御飯を食べてから、俺の荷物を車に積んでそのまま宥さんを松実館へと送り届けて玄さんごと乗っけて、穏乃と新子さんと灼さんを迎えに学校へと向かった) 阿知賀- 晴絵「よし、今から長野に向かうよ!」 穏乃「はい!和に会いに行こう!」 京太郎(うちが弾き落としたから全国でらんないんだよなぁ) 憧「さて、楽しみね」グッ 玄「お、おもちっ、また大きく?」ハァハァ 京太郎「こいつはダメだ」 晴絵「どこに乗る?」 京太郎「ん~」 京太郎「真ん中に乗っときます」 晴絵「じゃあ二人に挟まれてもらおうかな」 京太郎(別に挟まれる必要ないんじゃ?) 京太郎「おう、俺が間で良いんですか?」 宥「温かいから良い」コテンッ 灼「昨日なにかあった?」 京太郎「いえ、別にそんなはずは……」 晴絵「さて、出発進行!」 京太郎(蒲原さんの運転と比べると凄まじい安心感だなぁ) 玄「車って新鮮だな~」 晴絵「この面子ならほとんど久しぶりなんじゃない?」 京太郎(前の玄さんと晴絵、楽しそうに話してるし当分は大丈夫か) 憧「車酔いしないでよ?」 穏乃「大丈夫だって!」グッ 京太郎(後ろの二人、元気だなぁ) 宥「あったか~い」ギュゥッ 京太郎「あの、宥さん?」 宥「ん?」 京太郎「いえ、なんでも……」 灼「いや、ほんとどうしたの?」 京太郎「いや、特になんでもない、はずなんだけど……」 京太郎「結構走ってきましたね」 晴絵「そうだね、みんな寝ちゃった?」 京太郎「そうだな、穏乃と新子さんはさっきまでネトマで役満テンパイしてるとか騒いでたからか」 晴絵「ハハハ、京太郎も寝て良いんだよ?」 京太郎「いや、晴絵が運転してんのに俺まで寝るのもなぁ」 晴絵「じゃあ話し相手になってくれるの?」 京太郎「もちろんだ」 晴絵「なんでそうなってんの?」 京太郎「俺が宥さんに抱き着かれて、灼さんを膝枕してることに関しては俺のせいじゃない」 晴絵「へぇ~」 京太郎「ちょっと怒ってる?」 晴絵「別にぃ~?」 京太郎(なんか不機嫌だな) パーキングエリア- 晴絵「みんな、パーキング着いたよ!」 穏乃「ついたー!」 憧「うわっ、びっくりしたぁ!」 京太郎「起きるの早すぎだろ!」 灼「ん?……あ」カァッ 宥「ん~おはよ~」ニコッ 玄「ハッ!眠ってしまっていたのです!」 晴絵「向こうに行ったら死ぬほど打つんだから今の内に休んどきなさい」 京太郎「さて、パーキング行くか」 穏乃「なんか買ってくる!」 京太郎「さて、俺は……」 京太郎「穏乃~」 穏乃「京太郎!色々あるよ、買うよ、買おうよ!買わなきゃ損だよ!」 京太郎「お前さてはパーキングエリアの回しもんだろ」 穏乃「これください!」バッ 京太郎「お前平気なの?」 穏乃「なにが?」 京太郎「車酔い」 穏乃「……たぶん」 京太郎「こわい!あとアホすぎぃ!」 穏乃「憧みたいなこと言わないでよ~!」 京太郎「言うよ!」 穏乃「あ、あれもおいしそう!」 京太郎「やめろ穏乃ぉ!」 京太郎(止めきれなかったということは、言うまでもないだろう) 晴絵「ん、おかえり~」 穏乃「ただいま!」 憧「ずいぶん買って来たわね」ヒキ 京太郎「止めきれなんだっ」 憧「あぁ、しょうがないわよ、うん」 穏乃「みんなも食べてね!」 玄「ありがとー」 宥「あったかいのある?」 灼「……私ももらおう」 晴絵「さて、どうしましょうか」 穏乃「席替え!」 京太郎「今回は俺が助手席座りますよ」 晴絵「話し相手ありがとうね」 京太郎「いえいえ」 穏乃「京太郎ってなんでもできるよねー」モグモグ 京太郎「そんなことないし、っていうかお前を止めることもできなかった」 穏乃「ん?」 憧「ほら、酔い止め飲んどきなさい」 穏乃「ありがとう憧!」 京太郎(なんだろう、どことなく新子さんとシンパシーを感じるぞ) 憧(貧乏くじのシンパシーを……) 晴絵「寝るまで早かったわね」 京太郎「結構騒いでましたからねー」 晴絵「ちょっと疎外感?」 京太郎「いえいえ、後ろの穏乃からちょくちょく食べ物もらいましたし」 晴絵「あはは、穏乃は人懐っこいからね~」 京太郎「女子高に居て良かったですよ、下手すりゃ何人の男を勘違いさせてたか」ハハッ 晴絵「ありそうありそう」アハハ 京太郎「そう言えば、龍門渕が三位以下ならやりあえたんですけどね」 晴絵「まぁ一位だからね~、でも長野って魔境らしいし」 京太郎「いや、マジで清澄は化物揃いなんで気を付けてくださいと」 晴絵「気を付ける?」 京太郎「ポキッと折れてもおかしくないぐらいの奴がいるんで」 晴絵「個人戦一位の宮永咲、か……」 京太郎「みなさんオカルトを感じる力はありますよね、確か」 晴絵「うん、憧もあるし」 京太郎「……気を引き締めないと当てられますよ」 晴絵「あ、あはは、京太郎が言うと恐いなぁ」 京太郎「ただの脅しなら良かったんですけどね」ニガワライ 晴絵「だ、大丈夫かな」アセッ 京太郎「さて、ラストのパーキングになりそうですね」 晴絵「そうだね、ほらみんなお昼食べるよ~!」 穏乃「お昼だって!」 玄「なにっなにっ!?」 憧「うるさいわよぉ」 灼「おはよ」 宥「う~ん」 晴絵「さて、行きましょうか」 京太郎「了解です」 フードコート- 京太郎(それぞれ買って来た) 憧「穏乃ぉ、良くそんな食べるわね」 京太郎「俺より多いぞ」 穏乃「これから動くから!」 灼「まだ車だから」 憧「もう高速道路走りなさいよ」 穏乃「え?」 灼「良いの?的な顔してる」 晴絵「やだこの子恐い」 穏乃「たっぷり寝たしもう寝ないぞー!」 京太郎「じゃあ安心して寝れる」 憧「ずっと起きてたの?」 京太郎「まぁ別に問題も無いけど、そんなこと言ったら晴絵の方が疲れてるだろうし」 晴絵「大丈夫大丈夫、運転してると案外眠くなりにくいから」 京太郎「どこに座るかな」 京太郎「真ん中に乗っときますかね」 晴絵(京太郎の隣とか羨ましい) 京太郎「ん、俺真ん中で良いの?」 憧「別に良いわよ、慣れてきたから」 京太郎「そりゃ良かった」 憧(まぁ人畜無害そうなあんただけだけど) 玄「オモチマイスターとして語り合うのです!」 憧(いや、そうでもないかも) 京太郎「だから、俺はオモチマイスターなんかじゃないですって!」 玄「ふっ、溢れ出るオーラは私にしっかり見えているのですよ!」 京太郎「こわっ!」 憧「そ、そうなの?」ドンビキ 京太郎「あぁ違いますから、違いますからぁ!」 京太郎「新子さんってなんで男のこと苦手なんだ?」 憧「理由っていう理由がないのが問題なのよね」 京太郎「そうだよな、どうにもできないもんなぁ~」 憧「うん、どうしようもない」 京太郎「慣れるまでが大変だなぁ」 憧(晴絵見てると、まだ大丈夫って気がして怖いのよね) 玄「憧ちゃんってモテそうな気がするんだけど?」 京太郎「あ、それは同意、可愛いし」 憧「ちょ、やめてよっ」カァッ 長野・清澄高校- 晴絵「着いたわよ!」 穏乃「よっしゃぁ!」 憧「出るわよぉ!」 玄「突撃、隣の清澄なのです!」 灼「あんなに騒ぐ憧も珍しい」 宥「そうだねー」 京太郎「よっと、なつかしき長野の空気……三日ぶりだけど」 晴絵「さて、確か迎えが」ゾクッ 玄「ッ!?」ゾクッ 憧「なっ」ゾクッ 穏乃「ぅぇっ!?」ゾクッ 灼「ひっ」ゾクッ 宥「えっ」ゾクッ 京太郎「だから慣れてない人には心構えが必要……っていうか迎えに来させる相手を間違えてるだろ」 久「いらっしゃい阿知賀のみなさん!」 咲「清澄高校へようこそ!」ニコッ 京太郎「よう咲!」 咲「うん京ちゃん……京ちゃん!?」ニドミ 京太郎「奈良に行ってついでに帰ってきた」 咲「そ、そうなんだ……」アゼン 晴絵「この度はありがとう」 久「いえいえ、こちらも部員を育てるのに良いですし、ご案内します」 咲「こっちです」 穏乃「友達?」 京太郎「まぁな」 宥「寒かった……」 京太郎「とりあえず、こっからだぞ」 憧「和に……」 玄「会える!」 清澄高校麻雀部部室- 久「戻ったわよー」 咲「和ちゃん、お待たせ」 穏乃「お邪魔します!」 憧「失礼します」 京太郎(なんか、凄い場所に居合わせてるんじゃねぇか?) 和「……久しぶりですね、穏乃、憧、玄さん」 玄「和ちゃん、立派に!」 京太郎(玄さん、お前って奴は……あれ、原村さん髪型変わってる) 穏乃「和~!」ガバッ 憧「和っ、大きくなったわね!」 優希「和ちゃんの昔の知り合いかぁ」 玄「うわっ、ちっちゃい憧ちゃん!」 優希「他人の空似だじょ!」 晴絵「久しぶり、和」 和「赤土さんまで」 灼「楽しそうだね」 宥「場違いだね」 京太郎「まぁまぁ、清澄側は三人置いてけぼりですから」 夕方- 京太郎「楽しそうに打っちゃってまぁ……てか咲相手にも良く折れないな」 久「本当にね、須賀君は暇?」 京太郎「まぁそうですけど、そろそろ帰りますよ」 まこ「ん、そうなんか?」 京太郎「まぁ、っていうか自動卓もう一つ増やしたんですね」 まこ「うちから一つ持っていきおったんじゃ」 京太郎「あぁ、ご愁傷様です」 久「打つ?」 京太郎「今日はやめときます、じゃあ俺は気づかれない内に」 まこ「ええのんか?」 京太郎「まぁ、火曜日まではいつでも会えますし」 久「そうね」 京太郎「じゃあこれで」 久「はい、また遊びに来てね?」ニコッ 京太郎「了解です」 京太郎(せっかくの再開なんだし、水を差すのもなぁ) 京太郎「さて、どっか行くかなぁ~」 京太郎「ん~やっぱ地元が一番だな」 京太郎「あれ、南浦さん?」 数絵「あぁ須賀君……」 京太郎「久しぶり」 数絵「メールは良くしてたけど、やっぱり宮永咲と池田華菜、あの二人は鬼門だったよ」 京太郎「あ~、あの二人は当たらなかったみたいだけど」 数絵「それが良いと思う、あの二人が当たったらその他が飛んで終わってた」 京太郎「ですよねぇ……」 京太郎(今の俺じゃ池田には勝てないだろうし、いや池田は今どうしてんだろう?) 数絵「まぁ、来年こそ全国に行くつもりだから須賀君に教授をお願いしようかな」フッ 京太郎「お、お任せあれ!」 数絵「うん、ありがとう……それじゃ」 京太郎「おう」 夕方2- 京太郎「さて、次はどうするか……」 京太郎「そろそろ帰るか~」 京太郎「あれ、美穂子さん」 美穂子「あら京太郎君」パァッ 京太郎(夢で出てきたな、『憤怒』の扉で……あれ、夢だけど) 美穂子「最近、華菜がずっと調子悪そうだったのよ」 京太郎「え、大丈夫でした?」 美穂子「うん、すっかり平気みたいだけど……京太郎君に会いたがってたけど、なにかした?」ジトッ 京太郎「いえ、なにもしてませんよ」 美穂子「そう……ならいいけど」ボソッ 京太郎「え?」 美穂子「なんでもないわ、また風越に来てね?」 京太郎「あ、了解っす!」ビシッ 美穂子「それじゃあね」フリフリ 京太郎「はい!」フリフリ 夜- 自宅・自室- 京太郎「さて、明日から学校だな」 京太郎「ネトマだな!」 一人目 アコチャー 二人目 ピーチ姫 三人目 かまぼこ 京太郎「お、さっそく新子さん、じゃなくて憧とモモか」 アコチャー:キョータロ、さっそくよろしくね ピーチ姫:知り合いっすか!? かまぼこ:さすがだな、ワハハ キョータロ:よろしくお願いします! 京太郎「かまぼこ、一体何者なんだ」 トップ 京太郎 二着 アコチャー 三着 かまぼこ ラス ピーチ姫 アコチャー:いや、ほんと強いわね キョータロ:鍛えてますから! ピーチ姫:鬼才っすよね かまぼこ:ワハハ、一回でも勝ってみたいもんだな ピーチ姫:それに今回はラスっす キョータロ:まぁそんな日もあるって 京太郎「うん、ほんと」 かまぼこ:ワハハ、相変わらず強いなぁ キョータロ:まぁ麻雀ぐらいですから、取り柄 かまぼこ:ん、そうなのか?案外なんでもできるイメージあるぞ キョータロ:そんなことないぞ、ワハハ かまぼこ:マネするなよ キョータロ:まぁ、一人じゃなにもできませんよ かまぼこ:そうだな、あっ良いこと思いついた! キョータロ:え? かまぼこ:まぁ気にしないでくれ、ワハハ 京太郎「ん、ログアウトした」 京太郎「あ、モモからだ」 ピーチ姫:相変わらず強いっすね、龍門渕も大概でしたけど キョータロ:あの時のみんなは凄かったな、俺もとてもじゃないが一人じゃ相手できないだろうし ピーチ姫:でも、勝つのは私たちっすよ! キョータロ:楽しみにしてるよ ピーチ姫:今度遊びに来てくださいね キョータロ:ああ、行くよ ピーチ姫:楽しみにしてるっす! 京太郎「ん、ログアウトしたのか」 京太郎「さて、今日は寝るか」 カピー「カピ!」イッショニネル? 京太郎「いいぞー!」 カピー「カピ」ヤッタ! 67日目終了- ?- 京太郎「またか」 「もう逃げられねぇよ」 京太郎「で、今回も同じか?」 「そうだ」 京太郎「また扉か……」 「そう言うな、結果として絶対に損はしない、というよりお前に必要なことだろこれは」 京太郎「わっかんねー」 京太郎「淡だな」ギィ 「拒絶されるか、どうか……」 バタンッ 京太郎「ん、池田ほど暗くないけど……なんだこれ?」 京太郎(白糸台の部室だけど、全部氷だと?) 淡「……」 京太郎(部屋の端で……壁?) (なにかを犠牲にして、あいつに手を差し伸べられるか?) 京太郎「なにか?」 (お前自身の何かを、今すぐだ) 京太郎「なにかを……」 京太郎「いいぜ、友達を助けるためだ……そんぐらい、くれてやる!」グッ 京太郎「オラァッ!」ゴッ バリンッ 淡「あれ、京太郎?」 京太郎「お前、なにか悩んでるようには見えなかったんだけどなぁ」 淡「悩んでる、悩んでる?私が、なにかを悩んでる?」 京太郎「守るもの、お前にはあるか?」 淡「……私は、なにを守るの?」 京太郎「そっか、お前も俺も同じならさ、来いよ」 淡「京太郎……でも、まだここから私は出られないっ」グッ バキバキバキッ 京太郎「また、氷の壁が?」 (拒絶されたが、受け入れられないわけじゃないらしい) 京太郎「どういう、あれ周りには……白糸台のみんな?」 (ほら、チャンスは掴めたぞ) 京太郎「無に終わったわけじゃないんだな?」 (そういうことだ、出直して来い) 京太郎「わかった」 バタンッ 68日目- 朝- 京太郎「ん……朝かぁ」 京太郎(なんか、違和感がある) 京太郎「ん、なんだ……?」 京太郎「さて、あの夢って本当になんかあんのか?」 テクテクテク 京太郎「あ、ハギヨシさん」 ハギヨシ「京太郎君、すべて終わりました」 京太郎「ん、はい?」 ハギヨシ「いえ、貴方はその道をただ進んでいくだけで結構です、私もできれば今の貴方の隣を歩いていたい」 京太郎「俺とハギヨシさんはずっと一緒ですよ、俺の一番の親友って言って……良いんですか?」 ハギヨシ「はい、構いませんよ、むしろ嬉しいぐらいです」ニコッ 京太郎「よっし!じゃあ今度からそう言わせてもらいますからね!」 ハギヨシ「ええ」 授業- ☆強化する項目が無いのでスキップします 昼- 京太郎「さて、お昼お昼っと」 京太郎「どうもー」 ハギヨシ「おや京太郎君、報告はしたはずですが?」 京太郎「そうじゃなくて、ハギヨシさん俺っ」 スッ ハギヨシ「言わなくて結構、大体わかりました」フッ 京太郎「ハギヨシさん!」パァッ ハギヨシ「まずは、その相手との接触を図ってください、連絡を取るでも会いに行くでもどっちでも構いません、その相手の中に自分という存在を埋め込む、嫌な言い方になってしまいましたが京太郎君にはそれができる」 京太郎「えっと?」 ハギヨシ「貴方がその扉を叩き、打ち破るんです」 京太郎「……は、はぁ」 放課後- 京太郎「さて、どこか行くかな……?」 2、部室に行く 部室- ガチャッ 京太郎「おいっす」 透華「金曜日の偵察ご苦労さま」コトッ 京太郎「え、お前が淹れた紅茶?」 透華「の、飲んでみなさい」 京太郎「おう」ズズッ 透華「どう?」 京太郎「普通」 京太郎「おう衣」 衣「ん、どうした京太郎?」クルッ 京太郎「ッ……あぁ、いや、魔断剣は使えてるか?」 衣「あぁ、決勝の時ほど強い威力は出せないが確かに使えている」 京太郎(衣から魔物の気配が薄れてるんだよな、最近……) 衣「どうした?」 京太郎「いや、なんでもない……全国も頑張れよ?」 衣「うむ、至極当然だ!」 放課後2- 京太郎(さて、どうすっかな……) 京太郎「智紀、奈良県代表の阿知賀の情報ならあるぞ」 智紀「わかった……」カタカタカタ タンッ 京太郎(罪悪感もあるけどなぁ) 智紀「なるほど、決勝ほど苦戦はしなさそうだね」 京太郎「まぁ、それを言っちゃあな」 智紀「わかった、一応警戒はしとこう、特に牌を集めるこの松実って二人は」 京太郎「だな」 夜- 自宅・自室- 京太郎「さて、どうすっかなぁ~」 京太郎「ん、なんだ……」 カピー「カピ」ネムレ、ヤスラカニ 京太郎「んぅ……」zzz ?- 「おめでとう、だな」 京太郎「なんだ?」 ?「まぁあまり深く考えなくて良いよ」 京太郎「誰だお前」 ?「とりあえず、いつも通り扉を選びなよ」 京太郎「いつも通りって、なんで知って……まぁ良いか」ハァ 「さぁ行けよ」 ?「今回は、いつもと少し違うけど」カピー 京太郎「じゃ、末原さんだな」ギィッ 「不安定さで言えばトップクラスだな」 ?「大丈夫、きっと大丈夫だから……」 バタンッ 京太郎「あれ、ここは……繁華街?スクランブル交差点のど真ん中じゃん……人も山ほどいるし……」 恭子「京太郎君……」 京太郎「……恭子さんって、呼ぶべきですよね」 恭子「うん」 京太郎「誰も、動かないんですね」 恭子「これが、私の望む世界なんかもしれん……」 京太郎「誰も動かない世界が?」 恭子「うぅん、力でどうにかなる世界……絶対的な力が、欲しいんよ」 京太郎「欲しかったんでしょう、今じゃ力があるはずだ、それに恭子さんが欲しいのは」 恭子「そう、自分を守る力……私自身をただ守る力」 京太郎(こう聞いてみると、池田って結構良い願いを持ってたんだなぁ) 恭子「だから、私の力は京太郎君の役にはたたへんよ」 京太郎「その考えだって、変わる時が来ます」 恭子「……明確な答えが、欲しいんや、私は所詮守るものもないから……自分しか守れないから、守るものがある人が、羨ましいんよ」 京太郎(俺なりの答えで、それでも良いのか……?) 京太郎「明確な答えはありません、それでも……守るものは、恭子さんの守るものはあるはずです」 恭子「私の、守るもの?」 京太郎「はい、恭子さんが自分を守るのは、きっとみんなの期待を一身に背負ってるから、きっとそれって誰かを守ること、なんじゃないんですかね?」 恭子「誰かを守ること?」 京太郎「人との信頼、期待、みんなの夢、それを守るために、力を羨んだ、だからこそ、それ故の『憧れ』からの『嫉妬』だったんだよ、いいかげん始めろよ末原恭子!」 恭子「はじ、める?」 バァッ 京太郎(あたりの景色と人が、動き出した……?) 恭子「私は……」 京太郎「ほら」ユビサシ 恭子「え?」クルッ 洋榎「恭子!」 絹恵「末原先輩!」 由子「恭子ちゃん!」 漫「末原先輩!」 郁乃「末原ちゃん~」 京太郎「……行けよ」 恭子「京太郎君も、私の守るものになってくれるかな?」 京太郎「恭子さんが望むなら……けど変わりに俺にも恭子さんを守らせて、くれるか?」 恭子「うん、ありがとう」ニコッ 深夜- 京太郎「起きちまったなぁ……」 カピー「カピッ!」オツカレ 京太郎「ん?」 カピー「カピー」ドウスル? 京太郎「どうするかなぁ」 京太郎「……出かけるか」 京太郎「ん……あれ?」 界「京太郎君?」 京太郎「咲のお父さん!?」 界「あはは、久しぶりだね」 京太郎「なんでまた?」 界「買い物さ、京太郎君は?」 京太郎「俺は夜風に当たりにきただけですよ」 界「最近は咲が楽しそうだよ、麻雀を再開したとも聞いたし……久しぶりに麻雀の雑誌を買ったら京太郎君もいるし」 京太郎「あ、あははは」 界「頑張ってくれ、応援してるよ……あぁあと、咲楽しそうにしてる時もあれば、なんだか恐い時があるんだよ」 京太郎「恐い?」 界「娘相手におかしなことなんだけどね、ごめん忘れてくれ」 京太郎「どういうことだ?」 自宅・自室- 京太郎「さて、どうするか……」 カピー「カピ」アシタ? 京太郎「おう」 京太郎「旅行に行くか……!」ヨシッ 京太郎「よし東京にいくぞ!」グッ カピ「カピ」イッショニイキタイナ 京太郎「そりゃ難しいなぁ」 68日目終了- 69日目- 朝- 京太郎「さて、東京に行くし、誰かに連絡してみるか」 京太郎「連絡しなきゃ(使命感)」 京太郎「照さんだな」 プルルル 照『ん、もしもし?』 京太郎「寝てました?」 照『……寝てないよ』 京太郎「いえ、今学校ですか?」 照『うん』 京太郎「今日東京に行くんで、放課後とか大丈夫ですか?」 照『……デートの』 京太郎「麻雀部です!」 照『わかった、菫に許可もらってもらう』 京太郎(自分じゃやらないんだ) 京太郎「お願いします」 照『うん、楽しみにしてるね』 京太郎「は~い」 プツッ 京太郎「よし」 東京- 昼前- 京太郎「ついたぁ~……さて、まずは……」 京太郎「さて、宿探しが一番だな!」ウンッ ヒトリゴトイッテルー 京太郎(……誰かに聞くか、いや自力で探せそうな気もするけどな) 京太郎「はやりさんに電話してみよう」 プルルッ はやり『もしもし!牌のお姉さん、はやりんだよ☆』 京太郎「あのですね、東京の安くて良い泊まる場所とかってあります?」 はやり『私に連絡するなんてお目が高い!任せて、はやりんが必ず京太郎君を寝かせる場所を見つけるよ!夜になったら連絡するネ☆』 京太郎「はい、どうもありがとうございます」 はやり『気にしないでね♪またねー』 京太郎「はい、また夜に」プツッ 京太郎(相変わらずのハイテンションだな) 昼前- 京太郎(さて、昼を食べるついでにどこか行くか) 京太郎(お、あの喫茶店とか良さげだな) カランカランッ 店員「いらっしゃいませー」 店員「こちらへどうぞー」 京太郎「どうも」ペコッ 京太郎(結構入口近くだなぁ……メニュー見れば結構がっつり食えそうなものあるし) カランカランッ 京太郎「ん?」 京太郎「トシさん!?」 トシ「あら京ちゃん、偶然ねぇ……良いかい?」 京太郎「どうぞ!」 トシ「なんで東京に?」 京太郎「んっと、内密にお願いしますね?」 トシ「わかったから良いよ」フフッ 京太郎「えっ!?」 トシ「わかったから良いよ、とりあえず何か頼もうかね、奢ってあげるよ」 京太郎「ほんとですか!?じゃ、お言葉に甘えて!」ヤッター トシ「どうぞ」フフッ 京太郎「そう言えばトシさんって俺とかシロとかの能力に関しては詳しいんですか?」モグモグ トシ「話として知ってるだけだよ、それも噂程度の」 京太郎「なるほど、なんかよくわからないんですけど……宮守は良いんですか?」 トシ「まぁ空けててもあの子たちは元気に楽しくやってるからねぇ」 京太郎「まぁ、そうですよね、あの五人見てると無償にホッとします」 トシ「わかるよ」ウンウン 昼過ぎ- 京太郎(トシさんとも別れたし、どうするかな) 京太郎「来たは良いけど、一人で楽しめる場所って少ないよなぁ」 京太郎(一人だからと思ってきてしまった……秋葉原で行って以来だな)フッ カランカラン モブ「いらっしゃいま……せ……」 京太郎「あ」 モブ(なんで奈良から帰ってきて秋葉原から別の場所にしたと思ったら来るのさ長野の須賀ァぁァッ!?)ビクビクゥッ! 京太郎「えっと」 京太郎「麻雀したいんですけど、卓空いてます?」 モブ(私はあんたとしたくないっ!) モブ「空いてます」ニコッ モブ(うぁぁんっ、おうち帰るぅ!あ、実家長野だから余計にエンカウント率上がる) 京太郎「じゃあ東風戦ということで」 モブ「はい」ニコッ モブ(ひぃ~!) メイドG「かしこまりました」 メイドO「じゃあ、やりましょうか」 京太郎(全て、支配する!)グォッ モブ(これはっ、おぼれる!?)ゾクッ メイドG(え、あと一歩のところで……) メイドO(どういうこと?) 京太郎「ドロー!」カッ 能力『月海支配(喰)』発動 モブ(今日こそは!) 能力『ノーネーム』発動 京太郎(来たかッ!) モブ(ひぃッ!?)ビクッ 京太郎(逃がさねぇ!)カッ 能力『魔物喰い』を発動 ブチリッ モブ(ひぃ~!?)ウルウル 京太郎(ふぅ……) ◇効果処理開始 京太郎(ごちそうさまっと)フゥ 能力『魔物喰い』 効果:相手の能力を無効にし点数を01にする モブ(た、食べられたっ……まただぁ) 能力『ノーネーム』無効 京太郎(さて!全員、沈んでもらう!) 能力『月海支配(喰)』 効果:全員の点数を-30する ◇効果処理終了 京太郎「ツモ、16000・8000です」ダンッ メイドG「や、役満!?」 メイドO「ウェイッ!?」 モブ(だ、だめだぁ~、そんなん考慮してないよぉ~)ウルウル ◇順位 トップ 京太郎 83 二着 モブ 66→01→00 三着 メイドO 27→00 ラス メイドG 20→00 京太郎「ふぅ、ありがとうございました」 モブ「ありがとうございました」ウルウル 京太郎「あの、良く会いますよね?」 モブ「え、はい」 京太郎「あぁ良かった、またどこかであったらよろしくお願いします」ニコッ タッタッタッ モブ(あぁ……麻雀で私は殺されるんだなぁ)スッー メイドG「泣いてるの?」 メイドO「みたいだね」 夕方- 白糸台高校前- 京太郎「さて、誰に連絡するか;あ」 京太郎「よし、連絡もとったし」 淡「お待たせ京太郎」 京太郎「……夢、以来か?」 淡「うん、そうだね」 京太郎「……まぁ行こうぜ」 淡「うん!」ニコッ 白糸台高校・麻雀部部室- 京太郎「どうもこんにちはー」 照「京ちゃん、久しぶり」 京太郎「おう、久しぶり」 菫「よく来てくれたね」 京太郎「まぁ、はい」 尭深「粗茶ですが」 京太郎「どうも」 誠子「どう須賀君、最近リール、クルクルしてる?」 京太郎「どういうこと!?」 淡「あのね京太郎……私って、どうすれば良いのかな?」 京太郎「どうすれば良いって」チラッ 京太郎(みんなは麻雀に集中してる……)ホッ 淡「いっつも、夢じゃここの端に座り込んでるの……なんでか、みんなが氷の向こうにいるの」 京太郎「あぁ、俺も見た」 淡「でも出たいのに、出れなくて……」 京太郎「淡、でもお前この間っ」 淡「助けてよっ、こんな力なんてっ……」 京太郎「助ける」ガシッ 淡(京太郎、私の肩掴んで……?) 京太郎「絶対助けるから、お前の世界で待ってろ……俺が迎えに行く」 淡「……うん、待ってる」ニコッ 夕方2- 京太郎(淡は、大丈夫そうだな……信頼してくれてんのか)ウン 照「京ちゃん、麻雀教えて」 京太郎「はぁ!?俺が照さんに!?」 照「うん、ネットのやつ……わかんない」 京太郎「あ、あぁなるほど、そりゃ苦手ですよねぇ」ナットク 照「ケータイでやりたい」 京太郎「うん、じゃあアプリを落とすところからですね」 照「アプリ、落とす……乱暴!?」 京太郎「おう、そういう意味じゃない」 夜- 白糸台高校・校門前- 京太郎「ありがとうございました」 菫「いえ、こちらこそ」 淡「また明日ね、京太郎!」 京太郎「おう、じゃあな」サッ 京太郎「さて、ここらへんか?」 はやり「ギュピーン☆はやりん登場!」 京太郎「は、はい……とりあえずあれですね、今日の宿って?」 はやり「私の家でした☆」 京太郎「……ん?」 はやり「あれ、家は嫌かな?」 京太郎「嫌ではないんですが、不味いんじゃないかなって……思うわけですよ」 はやり「じゃあホテルも取ってあるけど、どうする?」ニコッ 京太郎「そうなんですか……家かホテル……」 京太郎「いや、取ってもらって悪いんですけどはやりさんの家で良いですか?」 はやり「うん良いよ、本当は取って無いから☆」 京太郎「取って無いって、なんて無意味な嘘を」 はやり「別に予約しないでも入れるし☆」 京太郎「ん?」 はやり「とりあえず行こうか♪」 瑞原はやり家- 京太郎「お邪魔しま~す」 はやり「上がって上がって~」 京太郎(ここが牌のお姉さんの家……) 京太郎(普通の家だ……普通のマンションの一室……) はやり「どうしたの?」 京太郎「いえいえ、ところで晩御飯は食べました?」 はやり「ん、まだだよ~出前でもとる?」 京太郎(牌のお姉さんの口から出前って単語が出るのも新鮮だな) 京太郎「じゃあ晩御飯作りましょうか、これでも料理には自信があるんで」 はやり「あ、あまりお勧めしないかな☆」 京太郎「どうしてですか?」 はやり「れ、冷蔵庫になにも無くて、丁度何もなくて、あ~なにも無いなぁ~!」 京太郎(珍しく焦っている……なにかあるのか?) 京太郎「……」ダッ はやり「京太郎君っ!?」 ガチャッ 京太郎(……ビール、ビール、つまみ、ビール、ビール、つまみ、ビール)バタン はやり「ふふっ……みちゃったね☆」 京太郎「……」 京太郎「行きましょう、買いに……」ジリジリ はやり「家の中でも良いよ☆」 京太郎「いえ、買いにいきましょう」 はやり「私これでも有名人だよ?」 京太郎「大丈夫ですって……ね?」 はやり「うぅん……オッケー☆」 京太郎(さて、はやりさんだってバレるわけにはいかないけど、まぁしょうがない) スーパー- はやり「今日の晩御飯どうしよっか☆」 京太郎(ポニーテールに帽子に眼鏡……誰だこれ) 京太郎「えっと、バーニャカウダーとか?」 はやり「楽しみ~☆」ギュッ 京太郎(腕を組むのか!?おもちがっ、豊満なおもちがっ!オモチマイスターとしてのっ、あぁぁ~) はやり(かわい~☆) 瑞原はやり家- 京太郎(ふぅ、帰ってきたが……なぜかエプロンまで買ってもらってしまった、使う機会これ以降使うことあるかわかんないのに)リョウリチュウ はやり「京太郎く~ん」ギュッ 京太郎「ふきゅっ!?」ビクゥ はやり「どう~?」 京太郎「は、離れてください」 はやり「えぇ~?」 京太郎「なんとかしますから」グッ はやり「じゃあ楽しみにしてるね~」パッ 京太郎(まずい、あのおもちは……兵器だッ!) 京太郎「できました~」コトッ はやり「わ~おいしそうだね☆」 京太郎「まぁこれでも料理やらの家事は、全部できるんで」 はやり「いつでもはやりの御婿にこれるね☆」 京太郎「からかわないでください!」グッ はやり(にゃははっ、おもしろいな~☆)ゾクッ はやり「あ、すごいおいしい♪」 京太郎「ありがとうございます」ニコッ はやり「おいしかったぁ~」 京太郎「どうも、あれビールとか飲むんですか?」 はやり「さすがに京太郎君の前では飲まないよ~」 京太郎「遠慮しないでくださいよ、どうせ今日は居候させてもらってるんですし」 はやり「じゃあ取ってきて~」 京太郎「まぁ洗物終わったらになりますけど」スクッ はやり「……」フフッ 京太郎「どうぞ~」 はやり「うん、京太郎君が洗物をしている間におかし出しといたよ☆」 京太郎「ありがとうございます」 はやり「ジュースもどうぞ☆」 京太郎(ペットボトルのジュース、ん……空いてる?) 京太郎「はやりさん、飲んでくださいよ」ニコッ はやり「……え?」 京太郎(笑顔が凍った、なにが目的だ?) 京太郎「ほら」ニコッ はやり「そ、それはちょっとね~……」 京太郎「飲めませんか?」 はやり「……わかったよ、飲むね」キュッ はやり「んっ」ゴクッ 京太郎(あれ、なんもない……)ガシッ 京太郎(なに、後頭部を押さえられた!?) 京太郎「うぉっ!」ガシッ はやり「んー!」 京太郎(ぎ、ギリギリで口をふさげたっ……) はやり「んんー!」ゴクッ 京太郎「ふぅ……」 はやり「はややー、こりゃやられちゃったなぁ」 京太郎「か、勘弁してください」ゼェハァ はやり「夜ははじまったばかりだよ☆」 京太郎「まぁまだ付き合いますよ」 はやり「それは嬉しいなー☆」スッ 京太郎「……これは?」 はやり「さっきの飲み物!」 京太郎(普通だ……これ、何も入ってないのか?) 京太郎(缶コーヒーなら、大丈夫だろ……)スッ はやり「どうぞ☆」 京太郎「ん、どうも……あれ、そう言えばはやりさんって明日仕事とかは?」ゴクッ はやり「な~いよ☆」 京太郎「へぇ、そうなんでっ……」ドクッ 京太郎(なんだっ、体がっ……) はやり「はやや!盛るの成功☆」 京太郎(犯罪です!) 京太郎「どうやって?」 はやり「口をつける所に塗っておいたんだよ☆」 京太郎「そっちはブラフですかぁ」 はやり「うん!でも良かったぁ~」ホッ 京太郎「な、んで?」ハァッハァッ はやり「ん~京太郎君が欲しいからかな?」 京太郎「へ?」 はやり「詳しいことは、秘密♪」 はやり「えい!」トンッ 京太郎「ぬおっ」ドサッ はやり「欲しいって、言ってるの……暴食と色欲の京ちゃん☆」ニコッ 京太郎(ッ……だめだっ、興奮状態っていうか、あぁもう、馬乗りになられるとっ) はやり「さて、京ちゃん、良いかな?」フフッ 京太郎「ッ~~!?」 京太郎「はやりさんっ、変な薬入れたってことは……それなりの覚悟は、あるんですかっ」ハァッ はやり「もちろんだよ☆」 京太郎「なんでまたっ」 はやり「だって、京ちゃんなら良いかなって♪」 京太郎(あぁ、そうか、良いのか) はやり「ほら、繋がろうよ……魂ごと♪」 京太郎「」 数ヶ月後- 咲「ッ」バタッ 白望「ッ」ドタッ はやり「はやや~強かったね~」 京太郎「そうですね、でも沢山もらったんで……おいしかったぞ、シロと咲!」ニコッ はやり「私の京ちゃんを取ろうなんて、強欲なんだね」ニコッ 咲「うあぁぁッ!」ドカッ 白望「……」 はやり「地面叩いたら、ほら血が出ちゃった~」 京太郎「やめとけよ咲……」 はやり「京ちゃん!」チュッ 白望「ッ!!?」 はやり「あ、ようやく表情変わった」 京太郎「次は何が欲しい?」 はやり「ん~、一位!」 京太郎「ん、それは欲しいな……じゃあ、行こうぜはやり」 はやり「そうだね京ちゃん!」ニコッ 強欲EXED
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/364.html
【咲 -Saki-】 須賀京太郎ハーレムスレ 4 h4-1 阿知賀小ネタ 【咲 -Saki-】 須賀京太郎カプ統合スレ 4 h4-2 お姫様 h4-3 照小ネタ h4-4 咲照小蒔衣池田・迷子 h4-5 京・純(魔王姉妹喧嘩有) h4-6 京・和 h4-6a続き 「台風一過」 h4-7 IH準決勝小ネタ h4-8 小蒔ネタ h4-9 ラノベ風(誤認識?)京ちゃんのはーとふるラブコメディ? h4-10 阿知賀ネタ h4-11 照京? 京ちゃんはでてこないけど h4-12 照小ネタ h4-13 宮守小ネタ h4-14 京・照 h4-15 京・透華 h4-16 連作短編的なの → 長そうなの h4-17 にわか先輩 h4-18 姉帯 h4-19 三尋木 h4-19a 続き h4-20 すばら h4-21 穏乃 h4-22 咲 h4-23 怜 h4-24 怜 h4-25 怜外伝 → 長そうなの h4-26 照小ネタ h4-27 愛宕家 h4-28 小蒔 h4-29 桃尻触り隊 h4-30 一 h4-31 美穂子 h4-32 桃 h4-33 竜華 h4-34 京・洋榎 「あまやどり」 h4-35 京×白糸台 h4-36 菫 h4-37 滝見春小ネタ h4-38 永水 h4-39 シロ h4-40 姫松小ネタ h4-41 永水女子×京太郎 憧ちゃん援交ネタin京太郎 → 長そうなの
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6420.html
【10月第4週 平日】 京太郎「今週末から来週末にかけていよいよ国麻か……」 京太郎「絶対に決勝まで行ってやるぜ!」 キーンコーンカーンコーン 京太郎(今日もロンリー登校だった……)ガックシ 咏「京太郎のやつ、また落ち込んでるよ」ヒソヒソ 和「いつものことですね」ヒソヒソ 咏「だね」ヒソヒソ 京太郎「昼飯を食べに行くぞ!」 咏「その前に授業の課題片付けろよなー」 和「静かにしてください」 京太郎「二人とも当たり強いな!俺でも傷つくよ!」 昼 京太郎「屋上に来るのも久しぶりだな……」 京太郎「一時期は狂ってるほどに来てたけど」 郁乃「あ、京太郎くんや~」 京太郎「郁乃さんっていつもここにいますよね……」 郁乃「ん~なんでやろな~」 京太郎「聞いた俺がバカでした」 郁乃「京太郎くん酷いな~お姉ちゃん怒ってるで~」プンプン 京太郎「あんまり怒ってるように見えないんですけど」 郁乃「まあ怒っとらんから」シレッ 京太郎(何なのこの人!)イラッ 郁乃「せや~二人っきりなんやし一緒に食べへん?」 京太郎「いいですね、食べましょうか」 郁乃「~♪」モグモグ 京太郎「郁乃さんのお弁当は霞さんが作ってるんでしたっけ?」 郁乃「せやで~居候やからな~」 京太郎「ダメな大人だこの人……」 郁乃「むぅ、さっきからいろいろと酷いこと言うな~」 京太郎「冗談!冗談ですから!」 郁乃「そうなん?」 京太郎「まさか本気でダメな人だとか思ってるわけないじゃないですかー」ボウヨミ 京太郎(実際この人何もやって無さそうだな……) 郁乃「なら良かったわ~」ニコニコ 京太郎(憩さんも郁乃さんもいっつも笑ってるよな) 京太郎(照も同じくらい笑えばいいのに―――)ポワポワ 照『そっか、良かった~』ニコニコ 京太郎(可愛いけど何か違うな) 郁乃「~♪」モグモグ 京太郎(話題途切れちゃったけど、どうしよう) 京太郎「郁乃さんは……国麻に出るんですか?」 郁乃「ん~団体戦は遠慮しておきたいな~」 郁乃「末原ちゃんたちと一緒に戦う言うんは魅力的やけど……私は本当は出ちゃダメやから」 京太郎「そう……ですよね」 郁乃「個人戦は面白そうやから出るけどな~」 京太郎「じゃあ俺と当たるかもしれないですね」 郁乃「手加減はせえへんよ?」 京太郎「上等です、勝ってみせますから」 京太郎「そういえば国麻ってプロの人たちも出るんですか?」 郁乃「それは冬の全国プロ・アマ交流戦だけやな~」 京太郎「やっぱりそうなりますよね」 郁乃「なんや?小鍛治さんとかと戦いたかったん?」 京太郎「それだけは遠慮しておきます」 郁乃「私も嫌やわ~」 郁乃「せや!京太郎くんが決勝戦まで行ったらご褒美あげるわ」 京太郎「ご褒美……って前の良子さんみたいな?」 郁乃「うん、誰か呼んであげるわ~誰がええ?」 京太郎「だったら……そうですね……」 京太郎「臨海の監督さん……でも?」 郁乃「……京太郎くんはかっこいい人が好きなん?」 京太郎「確かにそうかもしれませんねーってはぁっ!?」 郁乃「だっていっつもかいのーちゃんとかカントクちゃんとかとおるやん~流石に拗ねるで?」 京太郎「ただの偶然ですって」 キーンコーンカーンコーン 京太郎「あ、予鈴だ」 郁乃「今日はここまでやな~」 京太郎「そうっすね、ありがとうございました」 郁乃「私も楽しかったで~」 放課後 京太郎「相変わらず暇だ……」 京太郎「愛宕監督曰くもうすぐオーダー決めをするとか」 京太郎「俺もそういう会議に参加したりとかしなくちゃなのか?」 京太郎「今日こそは勝ってやる!」 泉「京太郎くん!久しぶりに打ちませんか?」 京太郎「へー泉は俺に勝つ自信があると」 泉「今日こそは勝ってみせますよ!」 俺は、打っていた 暖かな陽だまりの中で 照と咲とモモと、三人の幼馴染と 俺は彼女たちと互角に戦っていた それが何故かなのはわからない 思い出そうとすると溢れてくるのは水 水に溺れる感覚 あの感覚は……一体 照「京は私たちを懐かしい気持ちにさせる」 京太郎「懐かしい気持ち?」 咲「麻雀を始めたころの初めての気持ち」 京太郎「なんだそりゃ?そんなオカルトありえねえっつーの」 桃子「それが京太郎のわけのわからない強さなんっすよ」 京太郎「強さっつっても大して勝ててないし……」 照「それは京の運が悪いだけ」 京太郎「えぇ……」ズーン 京太郎(…………) 京太郎(今のは、一体……?) 洋榎「負けた……」ガックシ 泉「今日こそは勝てる思うとったのに……」 京太郎「まあまあ、二人とも元気出して!」 泉「京太郎くんに言われたないですわ」 洋榎「せやせや、ちゃっかり二位のくせに」 京太郎(なんで責められてるんだろ) 京太郎「さっきのはなんだったんだろうな……」 雅枝「須賀、肩揉んでくれるか?」 京太郎「はいはーい」モミモミ 雅枝「あ^~気持ちええな^~」 京太郎「ってなんで俺が監督の肩揉んでるんですか!」 雅枝「なら胸もええで」 京太郎「いいんですか!」ニヘラ 京太郎「って欲しくないわそんなもん!」 雅枝「なんや失礼やなーはい続き続き」 京太郎「はぁ……」モミモミ 京太郎「監督ー何か話しません?」 雅枝「別にええでー」 京太郎「そういえば国麻のオーダーってどうなってるんですか?」 雅枝「あーそれは今夜石戸の家で話そ思うとったんやけど」 京太郎「そうですか」 雅枝「須賀も参加してくれるか?」 京太郎「俺なんかの意見を参考にしてもいいんですか?」 雅枝「ええんやないの?須賀やったら贔屓なんてせえへんやろ」 京太郎「結構信頼されてるんですね、俺」 雅枝「まあ……せやな」 京太郎「なんか間があった気がするんですけど」 雅枝「手休めずに揉みぃ」 京太郎「はいはい、ここいら辺ですか?」グイッ 雅枝「んぁぁ、ええなぁ」 夕 京太郎「こんにちはー」 店員「おっ、須賀の坊ちゃん久しぶりやな」 京太郎「どうも、お久しぶりです」 店員「今日も何人かおもろいのが来てるで」 京太郎「へー楽しみですね」 店員「まあ立ち話もなんやから入って入って」 おっさん「げっげっげ、よう来たな須賀んとこのォ!」 善野「須賀くんか、よろしくな」 良子「面子もそろったことだし、スタートしようか」 京太郎 92+177+35=304 良子 74+200+60+30=364 善野 73+200+30-15=285 おっさん 96+120+15=231 京太郎(昔のあの感じ) 京太郎(なんであの感じを忘れていたんだ……) 京太郎(もっと……自由に!)カチャカチャ←ベルトを外す ゴッ 京太郎(来た!) 良子(……これ……は) 善野(ふむふむ) 良子「ツモ、これでフィニッシュです」 善野「お疲れ様でしたー」 京太郎「お疲れ様でした」 良子「京太郎、さっきは何を……?」 京太郎「よくわからないんですよね、昔の感覚と言うかなんというか」 善野「へー面白いこともあるんやなー」 良子「中々良かったよ、それではまた後で」 善野「ほな後でなー」 京太郎「さよーならー」 京太郎「善野監督って元気そうだよな……」 京太郎「会議の前にメールでもするか」 京太郎「多治比さんに送ってみるか」 京太郎「前カス虫外道とか言われたんだよな……」 京太郎「何て送ろう」 京太郎『こんばんは』 京太郎『多治比さんって美人ですよね』ピッ ヴーッ ヴーッ 真佑子『何ですかいきなり』 真佑子『気色悪いですよ』 京太郎「歯に衣着せてねえ!」 京太郎『突然あんなメールを送ってすみません』 京太郎『なんか口説いてるみたいですよね……』ピッ ヴーッ ヴーッ 真佑子『わかってくれればいいんですよ』 真佑子『私も少し言い過ぎちゃいましたね』 真佑子『あんなことを言われたらどうしていいかわからなくて』 京太郎「言い過ぎ……うん、そうだよな」 京太郎「ん?もうそろそろ時間か、こっちを終わらせないとな」 京太郎『こちらこそすみません』 京太郎『もう用事があるので失礼しますね』ピッ 京太郎「よし、会議だ会議!」 【10月第4週 平日】終 雅枝「全員揃ったみたいやな」 良子「イエスマム」 . . . .- ― -. . .,, ,,. ´ ` ,, ´ ヽ / ヽ ヽ / / , , ハ ', / / / / / ハ ', ハ // / / / l 〃 / ! } //!ヽ {l/ l 斗イ ! メ /| ! l/ / ! \ /;, { l N ハ | / \ _ _ _! l / /ト . \ . //丶, 、 |弍芝ミ / / l l ! ! ! / ,' \ ヽ 〃 〉 \ ! 戔沁 /イ .=芸ミx | | lイ// ヽ ハ / ,' イ 弋_ソV {戔刈ミ / / \ ', ./ l /| ,,, 弋_ ソ/ / Y ∧ .! l /八 ' ,,, / /イ . l } |/! / \ 、 / / ヽ l } | .∨ ムイヽ ,, イ /> \ 〃 / ,、---- ニl --/ 'イ | \ ヽ / //! ハ ムイ.___| ヽ} { | / ] ― ハ / r‐ V⌒Y イ ム/ ヽ ', 近畿Aコーチ 戒能良子 霞「京太郎くん、お茶入れてくれるかしら?」 , ' . . . . . . . . . . . . . . . . . .ヽ ..ヽ /. . . . . . . . . . . . . . . .;、 . . . . . . ヽ .. .ヽ // . ./.. /. ; / ';. . . . . . . . . . '; ....; /,' . ;'. /. l! ;' .'; l l . . ..i /.i | lL -亠 l  ̄丁T! ‐! l l . . |. i ! 、 l l!、 _」L l l --+HL_ l .;リノ . . ...| ! .l トゝ !´__ _ヽ 川 ,,z=-zy/j;イ .| | .l . lv'筰 卞 ヽ. ´ b jヽ .!l .| l l! .辷.ノ ー.― ll .| l l. ,,, ' ''' 'l . .| l l /l .|. l .l. ャー‐ッ / l / .l l ... イ / l. l >.....___ < | l / .. ' l . / l / . /. l .. /{ | / . / l . . / ゝ´ll /,' ./> 、 l . /// ! / / イ./ ヽ. l . / ,' / / ;.' / | .i. l=;/ l / ,; ,' / ! l ,' l ./ i / / / l! .l / 丿, ' /! ;' / / ! 三箇牧高校監督 石戸霞 郁乃「棚にせんべいあるからよろしくな~」 , '"  ̄` 、 / ヘ ./ ヽ、 ヘ ′ i !ハ ∧ i| | ! ヤ ∧ |i | / リ从 ∧ | /´レ勹´ _`_キ ∧ | !' ,r=‐ ⌒i| \____ | 爪 ´,, ″| ヽ、 `ヽ | ゝ .,ノ 从 `ヽ、 | 心 _/.)^._ イ´ ∧\ }..,ィ|i /./ | i \ } ソ{ ./ | ,'‐^ュ `k | i \"´ji { 广 ̄丁 j’ ´ ‐''ノ从 |-ミ } ji ル / 人__,,斗宀'" i \|ノ; /i | 彳"/ /' │ !"¨ ./ |ゝ-弋./ /__ __ _/i / |!/| | / / `´ |/ | i| | / / | | i| 三箇牧高校次鋒 赤阪郁乃 京太郎「はいはい」 /\-――‐- 、 , --=7 丶 `ヽ /, ヽ ヽ ∠/ / 、 、 丶 i / i ! l. l i. i | / ,/ ! ! l|| ! |、 ll ! | ヽ、 /_ -7 , | l ト、| |ヽ! N , 斗 r ,'_ ト--`  ̄ //! ! Nヽ!\|,//l/ l/! N ,ハ !| ´ / ,i丶 {=== l/ == =l/ ' ノ リ // l i `i _/,、/ ´ {ハ!ヽ{ ′ /!}/ ′ 丶 ー ―‐ ' / |′ \ / | __ i ー ' ! __ , ィ'´ . /-‐ ´} / `Y´ . .\ , -‐'' ´ . ./ . . ./― - 、 ,/__ / . . . . . /`丶、 ハ . . .i ., . ,′ . i `  ̄ / . . . . ../ . . . . . . .丶、 / . . .i . . |,' . i . . . . ! ヽ / / . . . . . / . ., . . . . . . . . ,.ヽ ! . . . .ヽ .{ . .l . . . . l. i / . . . . . / . ./ . . . . . ./ . . .i インターハイ男子個人戦チャンピオン 須賀京太郎 雅枝「おお、会議っぽいな」 京太郎「雅枝さんは無かったので我慢してください」 雅枝「不公平や……」 京太郎「そういえば試合表とかどうなってるんですか?」 雅枝「あーそれはな……」ゴソゴソ 雅枝「こうなっとる」 一戦目 関東 対 東北 対 近四中 対 九州 二戦目 近畿A 対 中部 対 一戦目の下位二チーム 三戦目 一戦目の上位二チーム 対 二戦目の上位二チーム 京太郎「うちのチームは楽なんですね」 郁乃「善野ちゃんのくじ運はええからな~」 京太郎「その善野さんは?」 良子「少し気分が悪いそうなので帰ってしまった」 京太郎「そうなんですか」 雅枝「ちなみに日程表はこうや」 一日目 第一戦 二日目 第二戦 三日目 決勝戦 四日目 オフ 五日目 オフ 六日目 個人戦一回戦 七日目 個人戦二回戦 八日目 個人戦準々決勝 九日目 個人戦準決勝 十日目 個人戦決勝戦 雅枝「個人戦は一位の選手の勝ち抜けや、それ以外はそのまま敗退」 雅枝「それで本題のオーダーをどうするかや」 良子「これが選抜最終候補のレコードだよ」 京太郎「なるほどなるほど……」 京太郎(よくわかんねえ……) 雅枝「まずはどこから決めよか」 良子「エースの置き場を決めておきたいですね……」 郁乃「姫松や新道寺みたいな変則型で行くのもありやな~」 霞「そうね……どうしましょうか」 京太郎「やっぱり先鋒から決めましょうか」 霞「そうね」 良子「注意すべきは永水のコマキ、龍門渕の天江、白糸台の宮永照でしょうか」 京太郎「咲はいいんですか?」 雅枝「宮永妹は大将向きみたいやからな、先鋒よりも大将の方が使いやすいやろ」 京太郎「確かにそうっすね、それじゃあ誰にしましょうか?」 雅枝「私としては荒川やな」 京太郎「俺も憩さんは安定してると思いますね」 郁乃「え~咏ちゃんの方がええと思うな~」 良子「私はあえて清水谷がいいと思います」 良子「安定感ならこちらも十分かと」 霞「みんな色とりどりだから困るわね……」 京太郎「多数決の結果憩さんに決まりました」 霞「次は次鋒ね」 郁乃「私は咏ちゃんがええと思うな~阿知賀の子みたいな感じで巻き上げるんや~」 良子「それなら園城寺選手の方がよくないですか?」 雅枝「その形やったら江口もありやな」 京太郎「皆さん結構ひねくれてますね」 郁乃「せやろか~?」 霞「次鋒は咏ちゃんね」 郁乃「次は中堅さんやな~」 京太郎「ここは姫松の伝統通り洋榎さんで行きましょうか」 良子「江口選手もよいのでは?」 雅枝「私は園城寺がええな、そないに消耗させずに済むやろうし」 雅枝「洋榎に決定やな!」ウキウキ 京郁霞良(すっごく嬉しそう) 霞「次は副将ね、郁乃ちゃん辺りがいいかしら?」 郁乃「霞ちゃんに選ばれるってなんか嬉しいな~」 京太郎「俺は怜さんですかね」 良子「新道寺のように江口選手でどうですか?」 京太郎「無記名投票の結果、副将は怜さんになりました」 雅枝「須賀は園城寺のこと名前で呼んどるんやな」 京太郎「成り行きで……」 郁乃「京太郎くんは誰とでも仲良くなるからな~」 霞「そこが京太郎くんのいいところね」 良子「…………むぅ」 良子「なんか嫌だ……」 京太郎「次は……ってもう大将しかないですね」 雅枝「大将は勝負所やな、もう後が無い」 京太郎「一番重要ですね」 霞「これも最初は候補を絞りましょうか」 雅枝「大将は……お前が適任やな」 郁乃「え?私~?」 良子「ミートゥーです」 霞「でも私は……」 雅枝「自分の生徒が選ばれるんやから喜ぶべきやろ」 京太郎(そうだ……二人とも郁乃さんのことを知らないんだ) 京太郎「郁乃さんは……それでいいんですか?」 郁乃「……別に、大丈夫やで」 雅枝「決定やな」 オーダー 先鋒 荒川憩 次鋒 三尋木咏 中堅 愛宕洋榎 副将 園城寺怜 大将 赤阪郁乃 雅枝「次会うのは土曜日やな」 京太郎「あれ?そういえば国麻の会場って……」 霞「ここ、大阪よ。私たちは中心街の方のホテルを取ってあるわ」 京太郎「わかりました。じゃあ俺帰りますね」 霞「お疲れ様ー」 雅枝「ほな私らも帰ろか」 良子「イエスマム」 雅枝「……なあ、その呼び方やめてくれへん?」 良子「イエスマム」 【10月第4週 平日 深夜】終 【10月第4週 休日】 【国民麻雀大会1日目】 日程について 一日目 第一戦 二日目 第二戦 三日目 決勝戦 四日目 オフ 五日目 オフ 六日目 個人戦一回戦 七日目 個人戦二回戦 八日目 個人戦準々決勝 九日目 個人戦準決勝 十日目 個人戦決勝戦 ※個人戦は一位のみ勝ち抜け 京太郎「朝から現地入りだ!俺って偉い!」 京太郎「初戦は関東と東北、関西と九州だったな」 京太郎「試合は昼から見に行くことができるけど……まずは何をしよう」 朝 京太郎「試合会場の下見に行くか」 京太郎「確か試合会場は……」 哩「お、須賀じゃなか」 京太郎「白水さん、もう来てたんですね」 哩「昨日新幹線ば使うてな、須賀は……なしてここに?」 京太郎「大阪選抜のサポーターっていうかコーチみたいなことやってるんですよ」 哩「こっちはそげなんいなか……羨ましか」 京太郎「と言っても何もやってませんし……」 京太郎「そういえば鶴田さんはいないんですね、いつも一緒なのに」 哩「姫子ん奴ば「せっかく大阪に来たやけん買い物ば行ってきます!」言うてな……」 京太郎「試合開始は……あと4時間くらいですね、どうします?」 哩「ん……どうしよか」 京太郎「じゃあ探検でもしてみましょうか」 哩「探検?」 京太郎「俺もまだ入ったことないですし、どうですか?」 哩「……どうせすることもなか、よかよ」 京太郎「では行きましょうか、お姫様」 哩「調子ばよかね」 京太郎「よく言われます」 京太郎「哩さんはどこのポジションなんですか?」 哩「試合ば見てんからのお楽しみ」 京太郎「元々教えてもらえるなんて思ってませんでしたけどね」 哩「ここばステージと?」 京太郎「そうですね、団体戦の試合はすべてここでやるらしいですよ」 哩「興奮してきよったな!」 京太郎「俺もです!」 哩「願わくば明後日、ここでな」 京太郎「明日じゃないんですね」 哩「私らは強いけん、負けばせんとよ」 京太郎「俺たちも行きますからね!」 哩「うん、楽しみや」 哩「あ、そろそろ時間たい。ここまでやね」 京太郎「それではまた、どこかで」 哩「さいなら~」 京太郎「試合やってるらしいけど、情報無しっていうのも面白そうだよな」 京太郎「ってことで街をぶらつこう」 京太郎「どこ行こっかなー」 prrr prrr 京太郎「はいもしもし」 霞『京太郎くん?控室にお弁当運んでおいて、それじゃね』 京太郎「ちょっと待っ(プツッ)て!」 プーッ プーッ 京太郎「何なんだよ……」 【会場】 京太郎「お弁当って言ったって……」 『大阪選抜様』 京太郎「あ、あった」 京太郎「箱一個分か、軽いな」ヨッコイショウイチ 京太郎「えーっと俺たちの控室はーっと」キョロキョロ 京太郎「確かこっちかな?」 夕 ヴーッ ヴーッ 霞『第一戦、関東と九州が負けたわ』 霞『第二戦に備えて今夜練習をするからできれば来てちょうだい』 京太郎「照のところと白水さんのところが負けたのか!?」 京太郎「意外だな……って関西は高鴨さんと東北には姉帯さんがいるのか……誰に当たってもやばいな」 京太郎「街を回って帰るか」 京太郎「神頼みに神社に来てみたぞ!」 京太郎「でも結構寂しいところだな」 ヒュゥー 京太郎「巫女さん一人いねえや」 京太郎「おみくじもお守りも無人だし、不用心だろ……」 京太郎「おみくじでもしていくか」 京太郎「金入れて」チャリン 京太郎「箱の中からつかむ……っと」 京太郎「……おおっ!」 末吉 願望 叶う……叶います、多分 恋愛 鏡を見てから出直してきなさい 待人 来るんじゃないかな 金運 稼ぐ貴方に禍が!今すぐ本殿にある黄金の壺を買いましょう!(要十万円) 学力 信じる者は救われる 京太郎「学力の項目黄金の壺売ろうとしてんじゃねえか!」 京太郎「ホテルは……ここでいいんだな」 京太郎「部屋番号は404か、今回も誰かと一緒なのかな……」 京太郎「なんでまた一緒なんですかぁぁぁあああ!!!」 洋榎「それはウチの台詞やぁぁぁあああ!!!」 京太郎「…………」 洋榎「…………」 京太郎「異議申し立て、行きます?」 洋榎「もうええわ、いつものことやし……」 京太郎「俺も絹恵さんじゃなくて洋榎さんでよかったです」 洋榎「おっ、京太郎もようやくわかってきたな!」 洋榎「オンナは胸やない!度胸や!」 京太郎(そういうことだけどそういうことじゃないんだよなぁ……) 夜 京太郎「洋榎さーん!遊びませんかー!」 洋榎「京太郎は練習行かへんのか?」 京太郎「れ……練習……?」 洋榎「なんや知らんかったんか……来ないでええんか?」 京太郎「じゃあ行きます!」 洋榎「せやったらこっち来ぃや」 雅枝「明日はいよいよ初戦や!」 雅枝「負けたらそこでお終いやさかい、気張るようにな!」 雅枝「ほな練習開始や!」 雅枝「須賀ーこっちやこっちー」 京太郎「はいはーい、なんですか?」 良子「今日は京太郎に特訓をしようと思ってね」 京太郎「特訓っていつもやってるじゃないっすか」 雅枝「今まで蔑ろにしとった部分があったからな、ほな始めるで」 京太郎「あんまり厳しいのは御免ですよ」 良子「さあ、どうだろうね?」 京太郎「えぇぇ……」 雅枝「はいそこもっと腰振ってー」 良子「グッジョブグッジョブ」 京太郎「んっふっ!ふんっ!」ブンブン 雅枝「ええでー絶好調やでー」 良子「ガンバ!」 京太郎「あのーいつまで俺はフラフープを続けなければならないのでしょうかー」ブンブン 雅枝「私らのどっちかから和了るまでやなー」 良子「それロンだよ」 京太郎「くそぅ……これで八局目じゃないですか!」ブンブン 良子(京太郎の腹筋……逞しいな……) 雅枝「そう思うんやったら早く和了ることやなーはいローン」 京太郎「人和ってどんだけ無駄な運使ってんですか!」ブンブン 京太郎「疲れた……」 良子「大丈夫か?」 京太郎「もう眠いっすよ……ふぁ」 良子「そうか、じゃあ今日はもう諦めるか……」 京太郎「諦めるって、何をですか?」 良子「せっかくだから、京太郎にイイコトしてあげようと思ったのに……」 京太郎「イイコトですって!?」 良子「京太郎が疲れているんじゃしょうがないよな、(特訓は)また今度にしよう」 京太郎(疲れているとできないイイコト……はっ!) 京太郎「ヤります!ぜひヤりましょう!」 良子「大丈夫なのか?」 京太郎「ばっちり!オールライトですよ!」 良子「よし、それじゃあそこに座ってくれ!」 京太郎(座る!良子さんはそういうのが好みなのか!) 良子「はい、サイコロ振るよー」 京太郎「……えっ?」 京太郎(イイコトってそういうことかよ……期待した俺がバカだった!) 京太郎「……ポン」 良子(京太郎、元気無いな) 良子(マネージャー愛宕がいなくなったから?私と二人っきりだから?) 良子(京太郎は嫌なのかな……)シュン 京太郎「良子さん?どうかしたんっすか?」 良子「京太郎は私のこと嫌……!」 良子「わわわわっ!今の忘れて!フォーゲット!ドントリメンバー!」 京太郎「ええぇ!?何ですか一体!?」 良子「なんでもない!なんでもないよー」 京太郎「は、はぁ……」 【1日目】終 【2日目】 京太郎「国民麻雀選抜大会……」 京太郎「俺は皆の力になれたのかな?」 京太郎「今日は朝から練習するらしいけど、どうしよう」 京太郎「やっぱり練習に行くか」 洋榎「ぐごーごえー」 京太郎「相変わらず寝相悪ぃな……」 洋榎「ぐげー」 京太郎「洋榎さーん、練習行きますよー」 洋榎「んあ?」 京太郎「練習だけで起きるのかこの人!?」 京太郎「咏、調子はどうだ?」 咏「ま、上々なんじゃねえの?」 京太郎「いつも通りみたいだな」 咏「私がこんなところで緊張してられっかよ、そだそだ、一緒に打たね?」 京太郎「よし、俺がビシビシ鍛えてやる!」 咏「あっはっは、どっちが鍛えられんだろねー」 京太郎「何をー!」 咏「……」トン 京太郎「……」トン 咏「……」トン 京太郎「咏?」トン 咏「なんだよ」トン 京太郎「そこまで気を張らなくてもいいんだぞ」トン 咏「……」トン 京太郎「誰もお前を責めない、だからもっと自由にやればいいんだ」トン 京太郎「インターハイのときもそうだったろ?」 咏「……わかってるよ」トン 京太郎「頑張れよ」トン 咏「……」トン 咏「……ありがと」ボソッ 怜「京くん京くん」 京太郎「何っすか?」 怜「ちょっと私と打たへん?」 京太郎「打たへんって、試合前なのに大丈夫なんですか?」 怜「せやからちょっとって言うとるやん」 京太郎「んー……わかりました」 京太郎「俺で良ければ、いくらでも」 怜「そかそか、おおきに」 怜「……京くん」 京太郎「今度は何っすか?」 怜「なんでウチを選んでくれたんや?」 京太郎「え?」 怜「聞いたで、京くんもレギュラー決めに参加しとったんやろ?」 京太郎「ああ、知ってたんですか」 怜「監督から話を聞いた愛宕姉から話を聞いた愛宕妹から話を聞いた船Qが言っとったで」 京太郎「そういえば親戚でしたねあの人たち……」 怜「……ま、ええわ」 怜「誰かが信じてくれてるってわかったわけやしな」 バスガデルデー 怜「ほな頑張って来るわ」 京太郎「俺が応援してますからね」 怜「おおきに、ほな会場で」ニコッ ガチャ バタム 京太郎「……あれ?」 京太郎「バス……会場で……って!」 京太郎「俺って徒歩なの!?聞いてないよそんなの!」 京太郎「いや!今ならバスに追いつくかも!」 京太郎「うおおおおおおおおお!」 恒子「っっっっっ!さあ!やってまいりました国民麻雀大会!地区選抜団体の部!」 恒子「注目の第二戦目!実況は私!解説は関西チームコーチ瑞原プロがお送りします!」 はやり「よろしくお願いしますっ☆」 恒子「ホントはすこやんがいるはずだったんだけど負けちゃったので急遽瑞原プロに代わっていただきました」 はやり「そういうのは反感を買っちゃいますよ」 恒子「いやいや、天下のスーパーアナウンサーとトッププロに喧嘩を売るやつなんていないでしょう」 はやり「あ、それもそうですね」 恒子「というわけでバンバン実況していきます!」 はやり「解説していきますっ☆」 恒子「CMの間もチャンネルはそのままで!」 健夜「はぁ……」 健夜(こーこちゃんってばまたあんなこと言って……)ズーン 照「…………」ペラッ 照(咲と憩……それに神代さん、か) 菫「……はぁ」 菫(私が大量失点したせいであんなことに……)アウアウ 淡「…………」 淡(さんがまき!今度は負けない!)オー! 智葉「…………」 智葉(静かだな……) 小蒔「み、みなさん!今日も頑張りましょうね!」ムフー 哩「頼りばしとるとよ」 小蒔「いえ、私は昨日も大したことは」アセアセ 姫子「部長、浮気しとっとですか?」ジトッ 初美「とりあえず頑張るですよー」 小蒔「監督も何か一言!」 秋一郎「…………」 秋一郎「プリン食べたい」ボソッ 小蒔「プ、プリンですか!私も食べたいです!」 初美「勝ったらみんなでプリン食べに行きますよー」 咲「あううう、もうすぐ試合だよぉ」 衣「海千山千、実に楽しみだ試合だな!」 美穂子「ではその前にお弁当でも、どうですか?」 衣「おお!衣の大好きなえびふらいがあるぞ!」 透華「いつも衣のためにありがとうございます」 美穂子「いえいえ、こうして衣ちゃんも喜んでいることですし」 衣「ふぁひふぁはへはいほは?」(咲は食べないのか?) 咲「えーっと、じゃあ私はタコさんウインナーにしますね」 美穂子「はい、どうぞ」ニコッ 郁乃「ほな頑張っていこか~」 憩「照ちゃんたちが相手やんな」 洋榎「打ちだおれの洋榎にかかればそんなん関係あらへんわ!」 咏「誰が相手でも勝てばいいだけなんじゃねえの?知らんけど」 怜「竜華の太ももが恋しいわ……」 洋榎「ウチが膝枕したろか?」 怜「妹さんのなら喜んでしてもらっとったけど……アンタはな……ふっ」 洋榎「鼻で笑われた!?」 京太郎「はいはい皆さん、集中していきますよ」 洋榎「なんや結局着いたんか」 京太郎「ダッシュで来たんですよ!」 郁乃「おかしいな~バスで行くって昨日メールしといたはずなんやけど~」 郁乃「送れとらんかったわ、てへっ」 京太郎「てへっ、じゃないですよもう!」 京太郎(お守りと、あのときの藁人形) 京太郎(ゲン担ぎに渡しておくか) 京太郎(……藁人形は縁起悪いけど) 京太郎「憩さん!」 憩「なんや?」 京太郎「これ、お守りです。いざというときに役に立つと思うので」 憩「京太郎くんのやないん?」 京太郎「俺はもういいので、憩さんに持っていてほしいんです」 憩「大事にするな、おおきに!」ニコッ 京太郎「怜さん怜さん」つ藁人形 怜「なんやこれ、ボケか?ボケなんか?」 京太郎「お守りです」 怜「正反対やないか、縁起悪いわ」 京太郎「ふふっ、そのツッコミは想定内ですよ!まだまだですね!」 怜「むっ、京くんのくせに生意気やで」 京太郎「まあ相手の髪の毛取ってこの釘刺しておけばいいだけなんで」 怜「さらっとえげつないこと言うな……」 憩(先鋒戦……九州と関東の代表は確か――) 淡「あ!ケイだ!」 初美「こんにちはーですよー」 淡「また高校マイナス百年生とかー」 初美「マイナスってなんですかマイナスって!私の方が年上なんですよー」エッヘン 淡「どう見ても年下でしょ」 憩「そろそろ時間やし、はよ席座っといたほうがええんとちゃう?」 初美「そうですねー、中部の人はまだなんですか?」 淡「この私におびえて逃げ出したとかでしょ、あはは」 タッタッタッ 美穂子「はぁ、はぁ、すみません、遅れてしまいました」 美穂子「今日は、はぁ、よろしくお願いします」 憩「違ったみたいやね」 淡「むぅ……」 初美「中部の人も来たことですし、ぱぱっと始めるのですよー」 東一局 親 初美 100000 憩 100000 淡 100000 美穂子 100000 美穂子(関東と九州は後が怖そうだから、まずは大阪の人を) 美穂子「カン」 美穂子「ポン」 美穂子(あ、あら、ツモっちゃいました) 美穂子(でも、先手を取るのもいいですね) 美穂子「ツモ、4000・8000」 美穂子(……そして) 憩(なんでウチが親の時に……) 初美(私の出番なのですよー) 東二局 初美 92000 親 憩 96000 淡 96000 美穂子 116000 淡(北が余っちゃうなー) 淡(ハツミが北家……そんでもって和了られたら役満) 淡(ちょっとやばい気がするけど……) 淡(それでも、私は和了にいく!)トン 初美「ポンですよー」 初美(後は東さえ来れば) 初美(そう言ってる間に来ましたねー) 初美「カン!」 初美(昨日は不発でしたけど、今日はもらいますよー) 初美「ツモ!8000・16000!」 憩「親っ被りか……」 美穂子(大阪の人……危なさそうね) 東三局 初美 124000 憩 80000 親 淡 88000 美穂子 108000 淡「ロン、2900!」 淡「やられっぱなしなんてやだもんね!」 淡「連荘だよ!」 憩(全然聴牌できひん……) 憩(いや、まだまだや!) 憩(みんなにつなげたる!) 東三局一本場 初美 121100 憩 80000 親 淡 90900 美穂子 108000 美穂子(まずはここ、かしら?)トン 憩「それ、ポンで!」 淡(鳴かれると関係なくっても腹立つ……) 美穂子(大星さんはもう張ったみたいね、これなら大丈夫かしら) 憩(なんやろ、調子がええ) 憩(鳴けるし、牌も通るし) 憩「いっこ、カン!」 初美(順番飛ばされてばっかりなのですよー) 初美(ちゃんと私も混ぜてほしいですねー)トン 憩「ロン、6400や!」 東四局 初美 114400 憩 86700 淡 90900 親 美穂子 108000 美穂子(荒川さんは……染め手、みたいね) 美穂子(でも打点も高そう……) 憩「……」トン 美穂子(そうね……ここは) 美穂子「ポン」 初美(このまま逃げ切るですよー)トン 憩「ロン、24000や!」 初美「ななっ!?」 淡(うーん……三位かー) 淡(このまんまじゃカッコ悪いでしょ!) 【圏外射撃】発動! 南一局 親 初美 90400 憩 110700 淡 90900 美穂子 108000 淡「ツモ!ダブリー裏4!」 淡「3000・6000!」 初美「うう……」 初美「次はもらうのですよー!」 憩(このまんま逃げ切れたらええんやけど……) 美穂子(ここさえ乗り切れば……) 南二局 初美 84400 親 憩 107700 淡 102900 美穂子 105000 美穂子(東が二枚) 美穂子(薄墨さんは東と北で鳴いたら終わり、ならここはキープしておきましょう) 初美「カンですよー」 初美(後は東さえ来てくれればいいのですけど、持たれちゃってるみたいですからねー) 初美(ここは、混一色狙いで!)トン 初美「ツモ!北混一色」 初美「2000・4000」 淡(最後の親、ここで決めちゃうよ!) 【圏外射撃】発動! 南三局 初美 92400 憩 103700 親 淡 100900 美穂子 103000 美穂子(大星さん……また高そうな手) 美穂子(薄墨さんか荒川さんが振り込むのは可哀想……) 美穂子(それなら、私が)トン 淡「ロン!18000!」 美穂子「はい」ニコッ 南三局一本場 初美 92400 憩 103700 親 淡 118900 美穂子 85000 初美(あうう、役満和了ったのにマイナスなのですよー……) 憩(また聴牌できひんかった……) 美穂子(そろそろ……和了りにいきましょうか) 美穂子「ツモ、4100・8100」 オーラス 初美 88300 憩 99600 淡 110800 親 美穂子 101300 初美(ノーテンですかー) 初美(親の人が和了るのを待つしかないですかねー) 憩(あかん……ぜんっぜんダメや……) 淡(もっと稼ぎたかったけどここまでかなー) 美穂子(え、えーっと……これは……) 美穂子「ノーテン」 初美「ノーテン」 憩「ノーテン」 淡「ノーテン」 先鋒戦終了 関東 110800(+10800) 中部 101300(+1300) 大阪 99600(-400) 九州 88300(-11700) 京太郎「これで終わり……ですか?」 雅枝「あんまり点動かんかったな」 良子「ドライな幕切れだね」 京太郎「次は咏だな、頑張れよ!」 咏「おう!わかってるよ!」 京太郎「それじゃ、ちょっとトイレ行ってきますね」 雅枝「……はぁ」 京太郎「今まで先鋒戦が長かったせいかあんま出なかったな」 淡「あ!京太郎だ!」 京太郎「お、淡か」 淡「見てた?今の試合!」 京太郎「相変わらずのダブリーだったな」 淡「でしょでしょー、もっとどばーっと稼ぎたかったけどね!」 京太郎「見てて面白かったぞ、最後はまあアレだったけど」 淡「うん……私も同じ」 京太郎「またお前と打ちたいな」 淡「今度は打ちのめしてあげるから!」 京太郎「へへっ、俺だって強くなってんだぜ!」 淡「さーどーかなー」 京太郎「なんだと?」 淡「あはは!京太郎が怒ったー!」 京太郎「待てこらー!」 淡「やーだねー」 憩(試合会場で何しとるんやあの二人) 哩(点数ば開いとるけん、なんとかして稼ぐ!) 菫(照の妹がいる中部をマークしておくべき、か) 咏「よーっす、よろしくねぃ」 菫「ああ、よろしく」 もこ「……………………」ブツブツ もこ「…………よろしく」ボソッ 咏 100000-100000*205/209=100000-98100=-1900 菫 100000-100000*227/209=100000-108200=8200 もこ 100000-100000*216/209=100000-102800=2800 哩 100000-100000*190/209=100000-90900=-9100 次鋒戦終了 関東 119000(+8200) 中部 104100(+2800) 大阪 97700(-1900) 九州 79200(-9100) 【次鋒戦での一幕】 もこ「…………」 咏(なんだこいつ) 咏(なんか力が出ねえ……しらんけど) 菫「ロン、3900」 哩(縛りばうまくいかん……) 姫子(部長ば稼げんかった分、私が稼ぐ!)フンス 智葉「よろしく頼む」 透華「中堅戦こそは私が勝ってみせますわ」ファサ 洋榎「けったいな髪形しとんなー」 透華「な、なんですのいきなり!」 智葉「試合前なんだから集中したらどうだ」 洋榎 100000-100000*217/196=100000-110700=10700 智葉 100000-100000*193/196=100000-98000=-2000 透華 100000-100000*182/196=100000-92300=-7700 姫子 100000-100000*195/196=100000-99000=-1000 中堅戦終了 関東 117000(-2000) 中部 96400(-7700) 大阪 108400(+10700) 九州 78200(-1000) 【中堅戦ダイジェスト】 洋榎「出鼻くじきリーチ!」 智葉「くっ……」 姫子「ツモ!2000・4000!」 洋榎「何やと!?」 透華(このままだと何も目立てないまま終わってしまいますわ!) 透華(おいでまし!) 透華「ロン!12000!」 智葉(私も負けていられるか!) 智葉「ロン、16000」 洋榎(三人がかりでそこまでウチを狙うんか……まあええわ、見せたる!) 「――――――ツモ!」 怜(……竜華) 怜(ウチ一人でも頑張って来るわ) 怜(……いや、一人やなかったな) 怜(荒川さんに咏ちゃん、愛宕さん、赤阪さんやっておるんや) 怜(私、ここまで来れたんやな) 美子「あ……よろしくお願いします」 怜「こちらこそよろしくお願いします」 絃「……よろしくお願いします」ズーン 怜「あんた、関東の霜崎さんやったっけ?なんでそんなに暗いんや?」 絃「……さっき自販機に五千円札を飲まれてしまったんです……」 怜「一葉さんが!?」 美子「誰だってそんくらいのことはあっとですよ」 絃「そう……ですか?」 怜(いやあり得へんやろ……) 衣「待たせたな魑魅魍魎!永久凍土よ!」 絃「永久凍土?」 美子「魑魅魍魎って悪か意味でしたよね?」 怜(面子濃いなぁ……) 怜(この藁人形、使ってみよ) 怜「天江さん?髪にゴミついとるで」 衣「何処にだ?」 怜「ちょっと待っててな、取ってあげるわ」プチッ 怜(綺麗な髪の毛やな……) 怜(これを人形の中に入れて……) 怜 100000-100000*269/212=100000-126900=+26900 絃 100000-100000*238/212=100000-112300=+12300 衣 100000-100000*196/212=100000-92500=-7500 美子 100000-100000*147/212=100000-69300=-30700 副将戦終了 関東 129300(+12300) 中部 88900(-7500) 大阪 135300(+26900) 九州 47500(-30700) 【副将戦】 怜(あとは釘を刺せばええんやっけ?)トントン 衣「うぐぅ……」 衣(何だこれは……ァ) 衣(不可思議、奇奇怪怪……) 絃(今日も私は不幸ですか、そうですか) 絃(はぁ……) 美子(何ば起こっとると?) 美子(テンパイができん……) 怜「ロン、16000」 怜(まだや!みんなと、まだ戦うんや!) 恒子「さあいよいよやってまいりました大将戦!」 恒子「果たして最終戦まで駒を進めるのはどの地区なのか!」 恒子「それでは大将の選手紹介だ!」 恒子「まずは九州選抜!」 恒子「トップと約八万点差!この逆境から立ち直ることができるのか!」 恒子「大将は!神代小蒔ー!」 はやり「胸とトンデモ火力に要注意ですね」 恒子「お次は現在三位!無事最終戦進出となるか!」 恒子「中部選抜大将はーっ!」 恒子「宮永咲ー!」 はやり「全てにおいてバランスのとれた選手ですねっ☆」 恒子「そしてそして!逃げ切れるのか大阪選抜大将!」 恒子「赤阪郁代ー!」 はやり「よくわからない、掴めない子ですよね」 恒子「個人戦以来の姉妹戦を制するのはどちらなのか!」 恒子「関東選抜大将はーーーーぁっ!」 恒子「宮永ー!照ぅー!」 はやり「CMの後もチャンネルはそのままでっ☆」 郁乃 100000-100000*206/291=100000-70800=-29200 照 100000-100000*341/291=100000-117200=+17200 咲 100000-100000*324/291=100000-111300=+11300 小蒔 100000-100000*293/291=100000-100700=+700 第二戦目終了 関東 146500(+17200) 中部 100200(+11300) 大阪 106100(-29200) 九州 48200(+700) 郁乃「ツモ、2600オール」 照(郁乃……) 照(たとえあなたが相手でも) 照(容赦はしない)ゴッ 照「ツモ、400・600」 照「ロン、2600」 小蒔「あっ、はい……」 照「ロン、5800」 照「ツモ、3300オール」 照「ロン、12600」 小蒔「……っ」ジワッ 小蒔(このまま、負けっぱなしなんて……) 小蒔「…………」スゥ 【娘よ、力を授けるぞ】 【存分に戦え】 【不完全なその器でな】 「――――ツモ」 小蒔「4300・8300」ゴッ 咲「カン」 咲(赤阪さんに神代さん、そして……) 咲「カン」 咲(お姉ちゃん) 咲「カン」 咲(今日は負けない) 咲「もいっこ――」 咲(負けたくない!) 咲「カン!」 咲「ツモ、8000・16000」ゴッ 郁乃(なんで……なんで) 郁乃(みんな私のことを信じてくれとったのに……) 郁乃(なんで、何もできないんや!) 郁乃(私やって、まだ!) 照「……ツモ」 恒子「大将戦、決着ー!」 恒子「最終戦へと駒を進めたのはァー!」 恒子「王者宮永照擁する関東選抜!」 恒子「そして、荒川憩、愛宕洋榎のダブルエース!大阪選抜だー!」 京太郎「5900点差、ですか」 雅枝「赤阪があそこまで荒れるんは意外やったな」 霞「滅多にないのに……」 良子「他の三人がクレイジーだったんでしょう」 雅枝「……今夜の練習で見てみよか、とりあえず今は帰らんとな」 雅枝「一時間後、会場前で集合や」 雅枝「それまでは自由時間、好きにしてええで。ほな後で」 ガチャ バタム 京太郎(自由時間か……) 京太郎(会場の中でもうろつこう)
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6172.html
6月■日 今日から団体戦が始まった 団体戦のメンバーは六女仙で固めるということで、1年生の春まで入っていた 試合前、1年で大会とか大丈夫か聞いたが「……いつもみたいに頑張る」と言っていた いつも通りはいいんだが、いつも通りすぎて黒糖まで持ってくな そう言うとしばし俺を見た後、いきなり口に黒糖突っ込んできた 慌てる俺を見て、春は微笑みながら試合会場へと行った 試合は主に小蒔さんと初美さんの活躍で明日の試合へと勝ちぬいた 練習でも何度か見てるが、やっぱりすげぇ でも、今更だが思う 流石に巫女服は目立つ 探しやすいからいいけど、アレが正装なのか? まぁいいや、明日も応援しよう 春「黒糖の美味しさを知るといい」 巴「いや、もう充分に知ってると思うけど」 初美「大会ですかー。この時は姫様も大暴れでしたよねー」 小蒔「そんな……ただ、全力で当たってくる方々に、礼儀として全力以上で当たっただけです」 霞「おかげで県予選では楽だけど出番がないようだったわ」 巴(巫女服に関してはいいのかな……いや私も普段から着てるしあんまり言えないけど) 小蒔「?」キョトン 6月◎日 団体戦、優勝おめでとう!! 凄かったな、特に最後に初美さんが相手飛ばした辺りとか うん、ちょっと対戦校が可哀想な気もした。主に副将と出番無く終わった大将 これで永水は全国出場決定らしい とりあえずおめでとうと言いに行ったら初美先輩に会った 初美先輩はドヤ顔しながら「どうですかー?勝ちましたよー?」と言ってきた なんか微笑ましかったので頭を撫でるとしばらくそのまま撫でられていた でも、後から来た霞さんの「褒められてるの?」という言葉から子供扱いされてるように感じたらしく、怒られた ぶっちゃけ年下撫でてるような感覚だったけど、すごかったとは思う 来週は個人戦、俺もやってやるぜ!! 霞「あら、やっぱり年下感覚だったのね」 初美「京太郎め……私の方が年上ですよー」 春「……じゃあ撫でられたくない?」 初美「え!?そ……それは……」 巴「ハッちゃん、素直にうれしいって言えばいいのに」 小蒔「ですね。なんでしたら私が撫でましょうか?」 初美「い、いいですよー!」 6月☆日 授業が終わって部活までの時間、咲から電話があった 話を聞くと、咲の清澄高校も全国出場を決めたらしい 長野は名門の風越とか、去年相当暴れたらしい龍門渕とかいると聞いていたから、正直無理だと思っていた こっちも全国出場を決めて、来週の個人戦のことについて話した 前電話した時から少し時間が空いたのもあって、歩きながら長電話をしていると、足元を見ていなかったせいか、盛大に転んだ 俺1人転んだならまだいいが、たまたま前にいた春まで巻き込んでしまった 電話しながらだったので体勢を立て直すこともできず、春の胸に顔を突っ込んで押し倒すような形になってしまった 春も結構あるから柔らかかった……いやそうじゃなくて 倒れた後、電話中だったのもあり「悪い、咲」と言ってしまった 春はそれが気に入らなかったのか、相当怒った 黒糖を散らばらせたこと、転んで人を巻き込んで置いて謝ったのが他人だったこと、いつものような無表情だったがかなり怖かった 今度黒糖で何かお菓子を作ることで許してもらった 咲には後で掛け直し、事情を説明したが、なんか不機嫌になっていた 俺が悪いんだろうが……春も咲もやけに怒ったりしてたな なんか他に余計なことやったか? 春「胸に突っ込んだのに、他の女の名前とかは流石に無い」 初美「それは流石に無いですねー」 霞「確か、清澄の宮永さんはそこまで胸無かったしね」 巴「2人とも嫉妬ですね」 小蒔「わ、悪気は無いと思いますよ?」 春「……でも、駄目」 6月★日 個人戦初日、予選突破だぁぁぁ!! いやー、すっげービビった 相手明らかに俺より上手い人も居たけど、なんか今日は運が良かった アレかな、試合前に小蒔さんが来てくれたからかな わざわざ自分の試合もあるのに1人でこっちまで来てくれて、嬉しかった 周りの野郎共から嫉妬の視線を感じたが、小蒔さんの応援には変えられん 今思えば勝利の女神だったのかね 明日はそうとう厳しくなるだろうけど、やるだけやってやるぜ!! 霞「途中でどこかに行ったと思ったら……」 小蒔「き、気になってしまって……」 巴「気持ちは分かりますけど、ぜめて誰かと行ってくださいよ?」 初美「それにしても、勝利の女神ですかー」 春「……似合ってるし、それっぽい」 小蒔「そ、そんなことないですよー」 巴「本当に拝んだらご利益ありそうですよね?」ヒソヒソ 霞「むしろ本当に何かもらったんじゃないかしら?神通力とかを無意識に渡したとか」ヒソヒソ 巴「か、考えすぎですよー」ヒソヒソ 6月▲日 大会2日目、いいとこまで行ったんだが、負けた 試合前にフラッときた春から黒糖を貰って、結構リラックスはできていた いきなり人気のないとこに引っ張られて黒糖1袋を渡された時は何かと思ったが、春なりの応援だったんだろうな 「頑張って」しか言わなかったけど、充分伝わった そのおかげか、午前中はなんとか勝ち抜けた けど、ある程度勝ち上がると周りのレベルも上がってくる 俺はそのレベルまでいってなかったのだろう、当然のように負けた 俺に勝った奴は、その後決勝まで進んでいたし、いいとこまで行ったと自分でも思う けど、悔しい 1年で最初の大会だとか、相手が強かったとか色々あるが、負けは負けだ 悔しいなぁ、畜生 次だ、次の大会でやってやる まだまだ先の話だけど、今からでも練習して、もっともっと上手くなってやる!! 春「京太郎……」 巴「何も言わなかったけど、やっぱり悔しかったんですね」 霞「男の子だし、あんまりみんなの前で言いたくなかったんでしょうね」 小蒔「京太郎くん……今は、この時よりずっと上手くなってますよ」 初美「ですね。この時の経験は充分活かされてますよー」 7月×日 今日から麻雀部は合宿だ 俺は留守番、まぁ女子の中に野郎1人、当然だろう 春が大量の黒糖を持っていこうとしたのは一応止めておいた。どうせまだ隠し持ってるだろうし 留守番だが1人でネト麻くらいはできる。何より少しでも上達しておきたい ネト麻で、しばらく暇があるらしいハギヨシさんも付き合ってくれるということで、今日はずっとネト麻していた ネト麻だが、長くやっていると自然と仲良くなれるもんだ 今日だけで2人と仲良くなり、連絡先を交換した 1人目はハンドルネーム、膝枕さん かなり上手い人だった。なぜこんなハンドルネームなのかと聞くと、一緒に始めた友達が勝手に決めたとか どんな友達だ 2人目はハンドルネーム、王者さん この人も相当上手かった。なんでももっとうまくなってリベンジしたい相手がいるらしい たまに変則的な状況になっても、わりとすぐに対応していたのが印象に残った この日記を書き終わったら2人にメールしてみよう みんなどうしてるだろうか。とりあえず春の黒糖が1日で尽きないことを祈る 春「もっと持っていけばよかった……」 霞「流石に大きいバック一杯の黒糖は駄目」 巴「予備っぽい小さいバックに着替え諸々でしたからね」 小蒔「でも京太郎くんが合宿に来れなかったのは残念でしたね」 初美「私達だけならともかく、麻雀部全員でしたからねー。顧問の先生もいましたしー」 巴「みんな連れていっていいんじゃない?って話だったよね。雑用とか全部やってくれそうって」 霞「さすがに悪いと思うけど……全員分の周りのこと全部やりそうではあるわね」 春「結局顧問とかが駄目ってことだった……でも反対する人はいなかった」 小蒔「すごいですよね。京太郎くんの人望」 初美「ですねー」 竜華「うーん……やっぱこの名前変やな……変えよかなぁ……」 怜「アカンでー。それがベストや」 竜華「えー……もっと別のがええよー」 怜「せっかくウチのソムリエとセットやからええやん」 やえ「むー……こののどっちって奴強いわね……」 初瀬「小走先輩お疲れ様です……ってのどっち!?ネト麻の伝説みたいなのと対戦してるんですか!?」 やえ「んー?そんなすごい相手?まぁいいわ。もっともっとうまくなって、どこかで阿知賀にリベンジしてやるんだから!!」 初瀬「……やっぱりこの人すごい」 7月○日 今日もネト麻 また2人と仲良くなれた 1人目はハンドルネーム打倒はやりんさん 名前のインパクトも結構あるが、アバターもかなり可愛らしくて目立っていた 麻雀も結構上手かった。何より楽しそうにやっている感じがしていて良かった 2人目はハンドルネーム風さん 相当上手い人だった。1回も勝てなかった チャットの途中で日本語じゃない言葉を間違えて打っていたが、何語だったんだ? 多分だが英語じゃなかった 連絡先も交換したし、後でメールしよう それと、今日は合宿中の初美さんからメールが来た みんなの写メ付きだった 黒糖が切れて落ち込んでいる春と、うとうとしている小蒔さん、眼鏡を外して髪も降ろしている巴さん、 そして不意打ちで撮ったであろう、着物が肌蹴て色々な部分がギリギリ見えそうで見えない霞さん 最高でした、ありがとう初美さん お礼と言って俺の写メを半分冗談で送った 風呂上りで少しだらしない恰好をしてたが、まぁすぐに消すだろう 霞「全く、急に撮るんだからびっくりしたわ」 小蒔「恥ずかしいです……言ってくれればもっとちゃんとした写真にしたんですが」 春「あの時は黒糖が無くて大変だった」 巴「あの量を食べちゃうのがどうかと思うけど……というかハッちゃん、この京太郎くんの写メはなに?」 初美「え!?あ、ああー……もう消しましたねー……」 春「携帯確保」 初美「ちょっ!?はるる!?」 霞「どれどれ……よし、これみんなに送って初美ちゃんのは消しましょう」 巴「黙ってた罰ですね」 小蒔「わ、私にも見せてください!」 初美「うわーん!送ります!送りますから消すのだけはー!!」 由暉子「またアバター変えました?」 爽「分かるー?いやー、ちょっとこう、衣装の方向性をね」 由暉子「別にまかせましたしいいですけど、これも可愛いですね」 揺杏「よっしゃ、じゃあこのアバターと同じ衣装作るかー!」 明華「ネト麻だと風が吹きませんねー」 智葉「この寒いのに風なんか起こすな」 ハオ「それでも充分勝ってるじゃないですか。私の次に」 明華「面白い冗談ですね。ちょうどいいです、打ちましょうか。私が勝ったらイクラで」 ハオ「日本のお正月らしく数の子じゃなくていいんですか?」 明華「両方で」 智葉「おい部活で高いものの賭けはやめろ」 7月△日 今日みんなが帰ってきた とりあえず黒糖が切れている春に黒糖を差し出すと喜びのあまり抱き着いてきたのは驚いた おもちがグッド。でも霞さんに怒られた。至近距離で揺れるおもちもまたすばら それからお土産をもらった。留守番だったかららしい まず、まるぼうろ。普通に美味いよな そして……執事服?と浴衣か?どうも合宿先近くの商店街で福引したら当たったらしい サイズも入りそうだし……期待した目でこっち見てる人が多かったけど着ないぞ 小蒔さんから渡されたからつい受け取ったけど。ああいう時小蒔さんを使うのは卑怯だろ みんなが帰ってくるのが遅かったのもあり、今日もネト麻で2人と仲良くなれた 1人目はハンドルネーム、お菓子大好きさん ここ最近で一番上手い人だった。なんでもネト麻は最近始めたらしく、所々で慣れてないからかミスがあった お菓子が無くなったとか言ってログアウトしていったが、春の黒糖と近いものを感じた 2人目はハンドルネーム、リザベさん この人も相当上手かった。ネト麻じゃなくリアルはもっと上手いと言っていた リアルでどれくらいなのか少し気になった まるぼうろ食ったら、メールしてみよう 春「京太郎が衣装受け取ってくれてよかった」 巴「福引の『2等、衣装詰め合わせ』当てた時は驚いたけどね」 小蒔「似合そうでしたけど、京太郎くんは不満だったんでしょうか?」 初美「そんなことないですよー。実際似合ってたじゃないですかー」 霞「そうね。あそこまで似合うとは思わなかったわ」 照「……お菓子が足りない」 菫「お前あんだけ持ってきておいてもう食ったのか」 照「私にとってあれくらい朝飯前」ドヤァ 菫「ドヤ顔するとこじゃないからな?」 姫子「んっ……リアルでリザベやってネト麻で……無理ですねー」 哩「さすがにネト麻はなー」 姫子「さすがに部長との絆もネットの壁は無理ですか……」 哩「姫子、絆は嬉しかけどネット超える必要なかぞ?」 7月□日 この前春の胸に顔を突っ込んだ件で、黒糖のお菓子を作ることになってた 実際やってみると結構楽しくてつい色々作りたくなってしまった 黒糖ケーキ、黒糖アイス、黒糖プリン、黒糖ドーナツ、色々レシピもあったので春も呼んで作った 途中でつまみ食いしようとする春を牽制しつつ作るのは少し手間だったが 完成すると、春は喜んで食べてくれた どれも黒糖好きの春が認めるほどだったらしい とりあえず明日プリンでも持ってってみるか 今度は黒蜜にも挑戦してみよう 春「どれも絶品だった」 巴「つまみ食いはよくないからね」 霞「学校に持ってきて、みんな喜んだり落ち込んだりだったわね」 初美「私の知り合い、趣味特技、料理お菓子作りって書くのやめたのが1人いましたよー」 小蒔「確かに私より美味しいのは少し複雑ですけど、もっと美味しいものを作りたいです!」 7月●日 みんなで海に行った こっちは長野より暑いから結構早くから行けるらしい 海、そう海だ。つまり……水着だ ええ……最高でした。俺は、今日という日を忘れない 豊満なおもちを持ちながら、普段ガードが堅い小蒔さん、霞さん、春 その3人の水着姿……惜しげもなく見せつけられるおもち……素晴らしい 元々相当な大きさだと思っていたが、予想を遥かに超えて大きかった 他に人が少ないこともあり、無防備に揺れるおもちでうっかり鼻血を出すところだった 巴さんは、意外と結構露出が多いタイプだった 太ももと首筋の良さも再認識できたね 初美さん……スク水じゃないのか。悪くないけど一番似合うのはスク水だろうに 一緒に中学生の2人も来ていたけど、明星ちゃんは将来性抜群だった 湧ちゃんもなかなか可愛らしくて良かった いやぁいい一日だった 途中で他の人がいないことにリラックスしすぎた小蒔さんがポロリしたり、 霞さんに頼まれてオイルを塗ったり、初美さんと競争してたり おもちとか以外でも、かなり楽しくていい一日だった また来たいもんだ 小蒔「も、もう!忘れて下さいって言ったのに!!」 霞「小蒔ちゃん、それは無理よ」 初美「京太郎、がっつり見てましたしね」 小蒔「うぅ……恥ずかしいです」 春「大丈夫、京太郎は悪く思ってない」 巴「書き方はアレだけど、基本褒められてるしね……胸は仕方ないけど」 初美「ですねー……ちくしょー……」 7月◇日 最近、春はよく俺の家に来るようになった お袋とも仲良くやっているようだ それはいい。ウチに来ることも。ただ、そのせいでトラブルが起きた こっちは長野に比べて暑い なので最近は学校から帰って部屋に入るとすぐパンツ一丁だ。しばらくしたら着替えはするけど 今日もすぐに服を脱いで一息ついて、お茶でも取りに行こうと部屋のドアを開けると、廊下に春が立っていた 今まさにノックするといった感じだった春。至近距離で思いっきりパンツ一丁の俺 一瞬固まった後、すぐにドアを閉めた。うん、さすがに野郎のパンツ一丁なんて同級生の女の子に見せるもんじゃない その後春は何も言わずに帰ってしまった やらかしたと思い、すぐに着替えて春の家まで行った 春は呼んだら一応出てくれたが、すぐに顔を真っ赤にして引っ込んでしまった やっぱみっともないもの見せたせいか…… なんとか俺の家に来た用事、授業についてのことだったが、それを済ませた 春は結局引っ込んでから顔を出してくれなかった 明日、大丈夫だろうか 春「…………」 初美「はるる?顔真っ赤ですよー?」 霞「あら、何か見ちゃったの?」 春「……身体」 巴「身体?」 春「……海に行った時も思ったけど、京太郎結構いい身体してる」 霞「まぁ……そうね」 小蒔「それなりに鍛えてる、って言ってましたね」 春「……汗をかいて、無防備な感じの身体を至近距離で見たら……すっごく、ドキッとした」 初美「あー、だから顔を合わせられなかったんですねー?」 春「……正直、今も不意打ちで見たら、ドキドキする」 巴「こ、こっちまでドキドキする言い方しないでよ」 7月▽日 昨日のこともあってか、春がしばらく顔を合わせてくれなかった 学校でも、部活が終わっても駄目だった 帰り道も返事はするけどこっちを向こうとしない どうしたもんかと考えていると、塀の上に猫がいた こっちに気付いているのか、やけに可愛らしい仕草だった ちょっと近づくと、人懐っこいのか俺に向かってダイブしてきた 反射的に受け取ると、猫は俺の腕の中で寛ぐ始めた いきなりなんでそんな寛げるんだ 呆れたように猫を見ていると、春がこっちを見ていた どうやら猫に触りたいようなので、そっと猫を渡してやった おっかなびっくり春は猫を抱いて、撫ででいた 猫は気持ちいいのかニャー、と呑気に鳴いていた それが何かおかしくて、春と顔を合わせて笑った それからしばらくは猫を撫でたりしてまったりした 春は自然と俺の方を向いてくれるようになっていた 良かった 小蒔「猫ちゃん可愛いですよね。どこの猫ちゃんだったんでしょうね」 春「分からないけど、多分野良だった」 初美「サラッと京太郎の顔も見れるようになってるじゃないですかー」 巴「猫の力かな?」 霞「猫なら仕方ないわね」 7月■日 部活終了後、巴さんがやけに疲れた様子だったので声を掛けると、最近お祭りの準備もやっているらしい 詳しくは分からないけど、やっぱり神職の家ということで色々忙しいらしい 疲れて肩が凝ると言っていたので、肩もみをするか聞くと、喜んでくれた 長野に居た頃、ハギヨシさんに教わってテクニックを久しぶりに駆使してみた 肩もみ終了後、巴さんは机に突っ伏していた 途中何度か声を上げていたが、それくらい凝っていたんだろう 教わった通り、途中で止めずに一気にやった 巴さんは、肩は軽くなったけど次は他の人が居ないところがいい、と言っていた 声を上げるのは恥ずかしかったかな。なんか色っぽい声だったし 全身マッサージもできると言ったら今は止めておくと言われた とりあえず疲れた時いつでもやると言っておいた 初美「あー、肩もみですかー。京太郎に止めてって言っても止めてもらえなかったやつですねー」 巴「アレ、確かに効くけど……恥ずかしいし、止めてくれないしで……」 春「すごい声出てた」 巴「だからよ!」 霞「私も肩凝るし……またやってもらおうかしら」 小蒔「良いですね……私も……」 春「分かる分かる」 初美「なんですか、嫌味ですかー?」 巴「……やめとこうハッちゃん。悲しくなるだけよ」 7月16日 今日は霞さんの誕生日だった 少し前に小蒔さんが教えてくれたので、今回はプレゼントを用意する時間があった プレゼントは出かけた時に見つけた、髪を結ぶためのリボンにした 部活が終わってから、小蒔さん、初美さん、巴さん、春も残って、簡単なお祝いをしていたので、その時に渡した 霞さんは俺がプレゼントを渡したことに驚いてくれたが、すぐに笑顔でありがとうと言ってくれた プレゼントのリボンも気に入ってくれたようで良かった その場で付けて見せてくれて、似合っていると言うと嬉しそうにしていた 喜んでもらえて良かった 霞「不意打ちで京太郎くんもくれるんだから、驚いたわ」 春「京太郎のことはサプライズ」 小蒔「霞ちゃんが喜ぶと思ったんですけど、大成功でしたね」 初美「ですねー。実際に全国でそのリボンつけてましたよねー?」 巴「最近もたまに見ますけど、よく付けてるんですか?」 霞「そうね……大事な時とかに付けてるわ」 7月◎日 ちょっとした用事で小蒔さんの家の神社まで行った 小蒔さん、霞さん、初美さん、巴さん、春の5人で儀式?いや、神事というべきか?まぁなんかやってた しばらく時間がかかるらしく、横の方で待ってた そのまま眺めていたら、不意に意識が飛んだ そこからはなんかぼんやりとしか覚えてない なんか女の人に誘われたりとか、色々作ったりとか、 すげー切れてる女の人に追っかけられて全力で逃げたりとか、そういう夢を見た気がする 気が付くと、心配そうな顔のみんながいた 俺が目を覚ますとホッとしたような顔をして、今日は早く休むようにと言ってくれた なんだったんだろう? 初美「姫様に降りてくる神様の調整してただけですけどねー」 霞「まさか京太郎くんが当てられて神様降ろしちゃうなんてね」 春「しかも伊邪那岐……」 巴「うっかりで降りてくるものじゃないですよね」 小蒔「伊邪那岐様は間違えたとか言ってましたけど……京太郎くん、降ろしやすかったりするんでしょうか?」 霞「ちょっと分からないわねぇ……こっちの血だってほとんど入ってないようなものだし」 春「……才能?」 巴「神様降ろすのが?」 初美「こういうことでも起きない限り分からないような才能ですかー?」 小蒔「……とにかく、京太郎くんが無事なら私はいいです」 霞「そうね、姫様の言う通りだわ」 7月☆日 今日1学期が終わった。明日から夏休みだ しばらくは部活で、8月は応援かな 男友達と予定を話したりしたが、大体が部活だったりバイトだったりだ 麻雀部のインハイの話をすると、みんなから写真を頼まれた 小蒔さんの写真とか、霞さんの水着写真とか、巴さんの首筋写真とか、春の笑顔の写真とか、初美さんのきわどい写真とか 最後の奴は無理だろ。色々な意味で しかしほぼ全員が頼んできた。俺がインハイ会場に行けるとも言ってないのに、何を考えてるんだか 女子の大会に野郎1人で行けというのかね それと、今度夏祭りがあるらしい なんでも小蒔さん達も色々やるとか どういう繋がりか、親父の知り合いが出店をやっているらしい 手伝いが欲しいということで、当日バイトが決まった まぁ、祭りを回る時間はくれるらしいし、いいとしよう それにしても、もう夏か こっちに来て、あっという間だったな 今までと違う夏になるか、少し楽しみだ 小蒔「写真……そういえば、カメラ持ってましたね」 巴「やけに撮ってると思ったけど……こういうことだったのね」 初美「また私が……」 春「……そういえば、結局京太郎は部で連れて行った」 霞「当然よね。言い方は悪いけど、東京での雑用やらお世話やら、部員みんな満場一致で京太郎くん1人に任せられるって結論だったし」 初美「男子1人、ってどうだってのもありましたけど、結局京太郎が居たおかげですっごく大会中楽でしたしねー」 巴「細かい手続きとかも、全部だもんね。本当にすごいよね」 春「……執事みたいだった」 小蒔「そ、それは言い過ぎじゃないんですか?」 初美「……あの時の京太郎に執事服着せればよかったですねー」 7月★日 今日は夏祭りだった 昼間から出店は並んでいたり、浴衣の女の子は歩いていたりと結構盛り上がっていた 俺は昼から親父の知り合いというおっちゃんの下、焼きそばとお好み焼き、両方やる出店で手伝いだった 夏の暑さもあって、滅茶苦茶暑かったが、出店で作る側というのは少し新鮮だった 料理自体はそこそこできるので、最初にある程度教わった後は結構スムーズにやれた 結構知り合いも冷やかしに来て、それなりに忙しかった おっちゃんはかなり助かったと言ってくれて、早めに、そして予定より長い時間休憩をくれた 休憩中、少し辺りを回った後、小蒔さん達がいるという神社に行った 丁度小蒔さんとこの親父さんが何かやっていたところだった しばらくすると、巫女服の小蒔さんが出てきた 後ろに続くように霞さん達、知らない顔もいたが、出てきた 全員が出そろったと思った時、小蒔さんが舞を舞った 何か伝統的なものだろう。舞う小蒔さんは凛とした表情で、神秘的な感じだった 詳しくは分からないが、小蒔さんが中心なんだろう、それに続くように霞さん達もまた舞を舞った それは、小蒔さんが姫様と呼ばれているのが、なんとなく分かるような感じだった 今なら分かる。あの時の俺は、見惚れていたんだ 小蒔さん達、あの時舞っていたみんなに 舞が終わると、小蒔さんはいつものような笑顔を見せていた それから俺に気付いたのか、手を振ってくれたのでこっちも降り返した その辺りで時間になったので出店に戻ったが、しばらくしてすぐにみんなが来た おっちゃんの許可をもらい、全員に焼きそばとお好み焼きをサービスした みんな遠慮していたが、舞を見せてもらったし、今から一緒に祭りを回れないので強引に受け取ってもらった 一緒に祭りを回れないのは残念だったが、8月にもまた祭りがあるらしいので、その時は一緒に回ろうと約束した それからは出店でひたすら焼きそばとお好み焼きを作り続けた おっちゃんは普段より儲かったと、予定より多めにバイト代をくれた いい臨時収入だった。今度何か思い切って使ってみるか 小蒔「み、見惚れていたなんて……そんな、それほどのものではないのに……」 春「でも姫様すごかった」 初美「ですねー。例年よりも舞が良かったって言う人が多かったらしいですよー」 霞「そういえば……京太郎君が見てるかもしれない、って言ったら普段よりやる気だったわね」 巴「いつもと見てる人が違うと、変わるんですねー」 小蒔「うぅ……だって、みっともないところ見せられませんし……」 7月▲日 部活の帰り道、今日はみんなで帰っていた 途中、近所のでかい犬を飼っている人に会った 犬はきちんと躾されていて、飼い主が指示したお座りの体勢で待っていた ちょっと犬に触りたくなったので、飼い主の許可を取って撫でた が、初美さんが後ろから撫でようとしたとき、うっかり転んで犬の背中に乗るような形になってしまった 驚いた犬はそのまま初美さんを乗せて走り出してしまった 飼い主も驚いた時にリードを放してしまい、慌てて俺は初美さんと犬を追った 初美さんも振り落とされないようにしがみつき、犬もそのせいかさらに加速した しばし、犬に乗った初美さんを追う俺、という状態が続いた 数分後、商店街の人がなんとか押さえてくれて、初美さんは解放された。ちょっと泣いてた 犬も落ち着き、飼い主の下へ返した 帰ってから調べたが、子供でも犬に乗ってはいけないらしい 犬は人を乗せるような骨格じゃないとか マジで気を付けよう。あのまま初美さんどっかいきそうだったし 春「アレは驚いた」 小蒔「犬って乗っちゃ駄目なんですね」 巴「ハッちゃん軽いから乗れたんだね」 初美「好きで乗ったわけじゃないですよ!結構怖かったんですから!!」 霞「それからしばらく犬に近付かなくなったわよね?」 初美「あんなのもうお断りですよー」 7月◆日 夏休みも始まったばかりだが、今日は8月に東京に行く春に付き合って、宿題を進めた インハイに宿題は持っていきたくないらしい 2人でやっているのでそれなりに進むが、俺も春も特別頭が良い方でもないので、ひっかかるところはひっかかる ちょうど英語で悩んでいた時、「ハロー、元気ですかー?」と、良子さんが来た プロって暇なのかと思ったが、どうやらインハイの解説やらなんやらで休みだったりするらしい そーいや予選の時大沼プロいたっけ 宿題をしていることを良子さんに伝えると、分かる範囲なら教えてくれるらしい 丁度英語の宿題をやっていて、海外遠征生活が長い良子さん、ベストタイミングだった 「これくらいノーウェイノーウェイ……でも、ここでこの言い方じゃ伝わりませんよー……ちょっとツッコミでも書いとこ」と、言いながら最後まで付き合ってくれた こうして、俺と春の英語の宿題は片付いた ありがとう良子さん でも、春が国語の宿題持ってきた瞬間逃げたのはどうかと思う 巴「そういえば良子さん、よく来ますね」 初美「京太郎がいるからじゃないですかー?」 春「でも助かった」 小蒔「うぅ、英語は私も苦手です……私も教わればよかったです」 霞「小蒔ちゃんはそれでも頑張って終わらせるでしょ。でも、良子さん国語大丈夫かしら……」 良子「……やっべー」 はやり「どしたの?」 良子「海外遠征が長すぎて……ぶっちゃけ漢字がいくつか読めないです」 はやり「あー……一時期本当に長かったし、仕方ないんじゃないかな?」 良子「……高校生の宿題レベルが、ちょっと分からなかったんです」 はやり「……頑張って」 7月▼日 今日商店街に買い物に行くと、初美さんが見知らぬ男の人と話していた というか、一方的に付きまとわれている感じだった ……ロリコンか?確かに初美さんは合法ロリだけど 初美さんはこっちに気付いたのか、助けを求めるような視線を向けてきた 人が多いとこだったが、仕方ない 俺はそのまま男の人と初美さんの間に割って入った 「悪いけど、この娘俺のなんだ」……もうちょっと言い方なかったかな、あの時の俺 とにかくそう言って、ジッと睨んでやった 男の人は怯み、何か言おうとしたが、これ見よがしに初美さんと手を俗にいう恋人繋ぎにした 男の人はそれを見て諦めたようで、「……負けた」と呟いてどこかへ行った 初美さんは安心したのか、そのまま抱き着いてきた うん、それ自体は嬉しいんだけど、ここ商店街で、主婦の方々がヒソヒソ話すのがちょっときつかった そのまま初美さんを家まで送って帰った 帰ったら、親父から「お前、巨乳も貧乳もいけるのか?やるな」とか言われたんで蹴った 俺は巨乳派だ!! 巴「ハッちゃんにやたら付きまとってた人が居なくなったのはこういうことだったんだね」 小蒔「京太郎くん、かっこいいですね!!」 春「そこは同意……でも、やり方が……」 霞「そういえば夏頃に金髪の変な人がいるって話があったけど……」 初美「助かりましたし、嬉しかったんですけど、合法ロリってなんですかー!!京太郎の馬鹿ー!!かっこよかったのにー!!」 8月×日 今日はみんなでプールに行った 海に行った時も思ったが、水着が最高でした ふと、思わぬ人に声を掛けられた 「アレ?京太郎くん?」「やほー、久しぶり☆」小鍛治プロと瑞原プロだった インハイの解説の仕事前に、別の仕事でこっちに来ていたらしい 2人とも当然水着だった。うん、良かった。特に瑞原プロはおもちがすばらしい。28歳だけど 一緒に来ていたみんなもプロがいることにとても驚いていた 小鍛治プロも瑞原プロも、去年の永水の活躍からこっちのみんなを知っているようだった あんまり騒いだりするのもアレなので、ということで普通に遊ぶことになったが、やけに瑞原プロに呼ばれた 一緒に遊ぼうとか、この後暇かとか、やけに聞かれたが小鍛治プロが止めたり俺が断ったりで特に何かあるって訳じゃなかったが そしてやっぱりきつい 帰り際にまたこっそり呼ばれ、たまには連絡してネト麻でもやろうと2人に言われた 忙しいと思ったからあんまり連絡とかしなかったけど、たまにはネト麻で指導してもらったり頼もうかな 初美「いましたねー。小鍛治プロと瑞原プロ」 巴「なんで京太郎くんのこと知ってるかあの時は疑問だったけど、すでに連絡先交換してたんだよね」 小蒔「京太郎くんも普通に話してましたし、そういうところは尊敬します」 春「京太郎は誰とでも仲良くなれる」 霞「でも、プロとっていうのは普通じゃないと思うけどね」 はやり「うーん……ねぇ、今度番組に素人を呼ぶって名目で京太郎くん呼ぼうか考えてるんだけど、どう思う?」 健夜「む、無理矢理すぎない?というか京太郎くんのこと気に入ってるよね」 はやり「そりゃあね……年下も、いいし?」 健夜「高校生相手は犯罪じゃないの!?」 8月○日 明日からインハイで東京に行くらしい。俺も なんでだよと色々言いたかったが、レギュラー5人に男手も欲しかったとかなんとか色々言われて、結局行くことになった その用意をしていたが、親父からの用事で小蒔さんの家に行くことになった 届け物とかなんとか、とにかく小蒔さんの家に行くと、小蒔さんの親父さん、おっちゃんが待っていてくれた 頼まれたものを渡すと、暑かっただろうから茶でも飲んでいけということで、上がらせてもらった 冷たい麦茶を出してもらい、飲みながら一息ついていると、おっちゃんが神様を降ろしたのか、と聞いてきた 俺は身に覚えがないが、小蒔さんに聞いたらしく、俺はそういうことをやったらしい といっても俺自身は何も分からないんだ、降ろしたも何もないだろう、と返した するとおっちゃんは少し考えていきなりこういった 「……小蒔の婿にならないか?」茶吹いた いきなりなにを言うのかと思うと、なんでも神様を降ろすということはめったにできることじゃなく、 小蒔さんや霞さん、初美さんもその血筋からオカルトなことができるらしい つまり、そういう血筋を絶やさないためだとか いやいやいや、俺みたいなの駄目だろう。血筋も何も、春と遠縁ってくらいだぞ おっちゃんは少しマジな顔で、血や才能以外も、割となんでもできるしな、とか言ってた 今なら婚約だけでいいぞ?とか言うおっちゃんにとりあえず何か言おうとしたとき、小蒔さんが部屋に入ってきた 話を聞いていたらしく、顔を真っ赤にして 勘違いしてるっぽかったので誤解を解こうと思ったが 「そ、その……不束者ですが……」とか聞いちゃいねぇ しばらく真っ赤になる小蒔さんとそれを宥める俺、という状態だった なんとか誤解を解いた後、おっちゃんは「お前なら、小蒔を任せられる。なんなら六女仙側室にするか?」とか言い出した 流石にインハイ前にこれ以上面倒は増やせなかったので、一発腹殴って帰った 婚約とか側室とか、俺はまだ彼女すらいねーっての でもまぁ、小蒔さんとか……アリだな 小蒔「そ、その……私は今でもお慕いしておりまして……」 春「姫様落ち着いて」 初美「たまにとんでもないこと言いだしますよねー。アリですけど」 霞「そうよね。六女仙みんなを側室なんて。アリだけど」 巴「いや、魅力的ですけど、京太郎くん1人に7人って……」 春「1週間で1周できる」 巴「何が!?」 8月△日 今日、東京に着いた 移動して宿泊施設に行くだけだったが、長時間の移動だとさすがに疲れた 今日は特に何もなく、明日日程が決まり次第色々予定を立てることになるらしい みんな今日は出歩かないらしいので、少し1人でふらついてみた やっぱり東京は人が多い。長野や鹿児島なんか目じゃないくらいだ その時少し目についた人達がいた 俺よりはるかに背が高く、帽子をかぶった全体的に黒い人、それと対照的に小さい人、 それと海外の人だろうか?金髪に、首からイラストのボードを掛けている人に、白髪の人と、その人を引っ張っている髪をおだんごにまとめた人 5人全員同じ制服だったので、同じ学校の人達なんだろう。そんな人達だった インハイ出場高か?いずれにせよ、明日の開会式で分かるか そういえば、ネト麻仲間にメールで東京にいると伝えたら、なんとみんな東京にいるらしい すごい偶然だ。そのうち会おうみんなと約束した インハイの楽しみがひとつ増えたな そういや、咲はどうしてんだろ 明日にでも聞いてみるか 小蒔「この人達は……宮守の人達ですね!」 春「あぁ、初戦であたった」 初美「確かに個性的な人達が多かったですねー」 霞「そうね。結構印象に残ってるわ」 巴「……言いたくないんですけど、私達が言えることですか、それ?」 8月□日 今日は開会式と抽選会だった 選手の人達を見ていると、新道寺の人や、昨日の5人を見つけた それと、咲も見つけた。あいつも全国に出場か……そんなに麻雀上手かったんだなー しかし、全国の高校が勢ぞろい……すばらなおもちの持ち主はいたが、それでも霞さんを超えるおもちの持ち主はいなかった あのおもちは全国トップだったのか……後で改めて拝んでおこう そのまま抽選会も見に行った 抽選会、ウチってシードだったのか。そういや聞いてなかったな 新道寺は決勝まで完全に別ブロック、お互い決勝までいけば当たるらしい 昨日の5人、宮守高校は同じブロックで勝てれば2回戦で当たるところだった さらに、咲の清澄高校も2回戦で当たる 咲、1回戦だけは応援してやる。2回戦からは2位になるようにだが応援してやろう それと、今日ネト麻仲間と会う日も決まった 変更になるかもしれないし、時間はそんなに取れないかもしれないが、楽しみだ 霞「全く、こんな時まで胸ばっかり見て……」 初美「そういう割には嬉しそうですよねー?それとなんですかやけに胸を強調するポーズ取って」 巴「でも霞さん以上の人は確かにいなかったね」 春「これから大きくなりそうな人はいた」 小蒔「私もまだ大きくなってて……」 春「……京太郎が聞いたらなんて言うかな」 8月●日 遂に始まったインターハイ だがウチはシードでしばらく間が空いている おまけに対戦高の試合もまだなので今日は自由行動だ 昼に、約束していた通り、ネト麻仲間の打倒はやりんさんと会った 相手はなんとインターハイ出場校の同じ1年生だった 有珠山高校の真屋由暉子、ちっこいけど、かなりのおもちの持ち主だった 改めて自己紹介して、適当な店に入って話した 有珠山高校、聞かない名前だと思ったら、北海道の初出場の高校らしい それからゆっくり話した。地元の話、部の先輩の話、色々話した 由暉子は部に同級生がいないから、少し新鮮だと言っていた 俺でよければいつでも話相手になるというと、嬉しそうに笑ってくれた 会話がひと段落ついた頃、由暉子が時間らしいのでそこで別れた また連絡すると約束した いい奴だったな。それに、初美さんと変わらないくらいなのに、春に負けないあの胸か……すげーなー 同じブロックだから準決勝で当たるかもしれないんだよな……準決勝前までは応援しよう 巴「有珠山高校……確か、臨海相手でも2位だったところですよね」 霞「えぇ、初美ちゃんと同じ身長で……」 春「私と同じかそれ以上……」 初美「……なんで胸ばっかりですかー!!」 小蒔「京太郎くんも、悪気はないと思いますよ?」 初美「なお悪いですよー!!」 8月◇日 今日はみんなで東京観光に行った 小蒔さんが「去年も来たのでまかせて下さい!」と言っていた が、ぼんやりとしか覚えていなかったらしく、結局はみんなでガイドブック見ながら回った でも、昼に食べた、小蒔さんが進めてくれた店の料理は美味しかった 昼食後、店を出て次にどこに行くか話していると、見覚えのある執事服と、初美さんより小さい金髪の娘が目についた 執事服に気付いた瞬間、その人は俺達の目の前に来ていた 「おや、お久しぶりですね」その人は、この暑い中、汗ひとつかかずそう言った まさか東京で、久しぶりにハギヨシさんに会うとは思わなかった だが、みんなが驚いているのはそこじゃなかったらしい 「ん?あー、お前がハギヨシの言っていた友達か」小さい金髪の娘、天江衣さんはそう言った 去年のインターハイ最多獲得点数記録者、だったか。俺も名前だけは知っていたが……正直初美さんより小さいとは…… どんな人かと思ったが、小さい以外はフツーだった。なんか小蒔さんや霞さんはすごく驚いていたけど 立ち話もなんだから、ということで近くにあるハギヨシさん達が取っているホテルに行くことになった うん、予想してたけどすげー豪華だったね 後一瞬でお茶と茶菓子が用意された辺りはさすがハギヨシさん。いや師匠 俺やハギヨシさんは普通に近況を話したり、みんなは永水で全国に出ているというと天江衣さんが思い出したように去年の話をしだした 去年の小蒔さんの話から始まって、気付くと天江衣さんと小蒔さんは打ち解けていた。同学年だし、話しやすくもあるのかな 天江衣さんと小蒔さんを中心に、みんなも楽しそうにしていた しばらく話していると、何度か会ったことがある、龍門渕透華さんが来た 俺やみんながいることに驚いてはいたが、歓迎してくれたようだった が、透華さんが来た時はすでに夕方で、そろそろ帰らないといけない頃だった インターハイ中、また会う約束を俺はハギヨシさんと、小蒔さんは天江衣さんとして、俺達は帰った 小蒔さんは、今は無理だけどインターハイが終わったら、鹿児島に帰る前に天江衣さんと打つ約束をしたらしい 小蒔さんやみんなも楽しそうにしていたし、普通に東京観光するより良かったかもしれない 小蒔「衣さん、すごかったですね!!去年直接対戦できなかったから、すごく楽しかったです!!」 霞「そうね……でもそれに同卓した京太郎くんの惨状も忘れないであげてね?」 初美「尊い犠牲でしたねー……」 春「あのハギヨシさんもすごかった……京太郎の技術の根源を見た」 巴「なにもかもが予想はるか上の人達だったね」 8月▽日 今日は1日試合を見ていた 今日の試合で対戦校が決まるからだ 勝ったのは、姫松、宮守、そして清澄だった。録画して3試合とも見た まず姫松高校の試合を見た 先鋒と次鋒で差を付けられていたが、中堅で役満出した愛宕(貧)がすごかった。インターハイで役満なんて、すごい人だ 春、この愛宕(貧)相手で大丈夫だろうか? 副将の愛宕(巨)は、中堅の愛宕(貧)と違ってなかなかのおもちの持ち主だった 後で知ったが姉妹らしい。(貧)の方が姉で(巨)の方が妹か……知らなきゃ逆だと思うな 大将の末原さんも結構な強敵だろうな 次に宮守だ 霞さんが先鋒の小瀬川さんを「マヨヒガ」とか呼んでいたが、俺にはなんか悩んだら手が高くなったようにしか見えなかった 後、この高校の一番のおもちは小瀬川さんだな。他にも和了率がすごく高い、エイスリンさん、 腰がすばらな臼沢さんや、初美さんより小さい鹿倉さん、そして俺よりも背が高い姉帯さん、特徴的な人が多かった ただ、霞さんがやけにこの高校を気にしていたのが気になる。おもちでは圧勝してるのに 最後に、咲のいる清澄高校 ひょっとしたら、俺も通っていたかもしれないと思うと、少し不思議な気分になった 先鋒の片岡、ちっこいけどやけに東場で強い。1年生で先鋒とは、すごい奴なんだろうか 次鋒の染谷さん、眼鏡を途中で外したからやたら和了っていたような感じだ 中堅の竹井さん、この人がやばかった。まさかよく分からん和了をしまくって中堅で相手を飛ばして終わらせるなんて…… ぶっちゃけ対戦校が可哀想だ。特になにもできなかった副将とか大将とか インターミドルチャンプがいるから、とか雑誌やネットでは見たが、それだけじゃあないんだろうな でも副将の原村、そして大将の咲が見れなかったのは残念だ。特に副将 是非あのおもちを見たかった……霞さんほどの大きさじゃなくても、すばらなものだと思うのに…… 後、あの咲が大将なんてえらいとこにいて、ちゃんとできるのかも気になった 結局咲と連絡は取れてないし、どこかで会えないもんかな さて、これからは永水を応援だ 知り合いが居たり、元地元だったとしてもこれからは今いるところを応援しないとな 麻雀に関してはできることはあんまりないが、できることでサポートしていこう 巴「3試合1日で見ましたねー」 霞「そうね。宮守は驚いたわ。オカルトな打ち方をする人が多くて」 初美「おかげで全然北家で和了なかったのは忘れませんよー……」 小蒔「……でも、この(貧)って、どういう意味でしょう?愛宕選手のことなのは分かるんですが……」 春「……姫様は知らなくていい」チラッ 初美「だからなんで私の方を見るんですかー?はるるー?」 洋榎「へっくしょい!!……絹がウチの服着るから、サイズが合わんくなるわー」 絹恵「えー?お姉ちゃんとそこまで違ったかなー?」 洋榎「背とか肩幅とか、そこやないねん。ホンマ、姉妹やのになー……」 8月■日 対戦校も分かって、試合の日も近くなってきたので今日は1日練習だった といっても俺じゃ練習相手にもならず、むしろ教わる立場になりそうだったので雑用に徹した ちょっと買い出しに行った時、珍しい2人がいた 「……ここ、どこだろ?」「……ワカンナイ」背が高い人と、イラストボードを掛けた人、どうみても昨日試合してた宮守の2人です なんかほっとけなくて、声を掛けた 当然警戒されたが、持っていた地図で今いる場所を教えると感謝された 宮守の2人が携帯で連絡している間に宿泊施設に戻ろうとすると、呼び止められた 背が高い方、姉帯豊音さんにお礼をしたいと言われ、イラストボードの方、エイスリンさんは何か描き始めた しばらくそのままで居て欲しいと言われたので、急いでる訳でもなかったのでそうした 途中、お互いの自己紹介をした 俺が永水だと知って2人は驚いていたが、対戦校だからどうということはなく、姉帯さんは小蒔さんのサインが欲しいと言っていた 対戦校だからと気にしていた俺が気にしすぎだったみたいだ しばらく、エイスリンさんが何か描いている間色々話した さすがに麻雀に関しては話さなかったが、姉帯さんもエイスリンさんも、話すと以外とイメージと違う 姉帯さんは、見た目の割りにミーハーな性格だった とりあえず明日原村和のサインも欲しいらしい。対戦校相手に書いてくれるんだろうか エイスリンさんは、片言だがコミュニケーション自体はとれる ただ、途中、今描いてるものを中断して絵で描いて答えていた。結構いい性格してるっぽい そうこうしている内に、エイスリンさんの絵が完成した 見せてもらうと、俺の似顔絵だった。結構上手い 「オレイ!」と言ってくれた。ありがたく受け取った 他の宮守の人達が来る前に帰ることにした。帰る時、小蒔さんにサインを頼んでみると言うと、姉帯さんはすげー喜んでいた あそこまで喜んでくれるんなら、頼む甲斐もあるな 帰ったらサイン書けるか聞いてみよう 小蒔「だからあの時、『サインって書けます?』なんて聞いてきたんですね」 春「姫様有名だし、そういうことあってもおかしくない」 巴「実際書いたけどね」 初美「でも、対戦校と試合前に仲良くなるってどうなんですかねー」 霞「いいんじゃないかしら?この人達もいい人達だったし、京太郎くんなら問題ないでしょう」 エイスリン「♪」 豊音「何描いてるの?」 エイスリン「キョウタロ!」 豊音「うわー、エイスリンさん、ちょーうまいよー!」 8月◎日 明日は永水インターハイでの初戦 対戦高はどこも油断できないと、今日は1日練習だった 俺は雑用、みんなが明日のために集中できるよう、やれることはやった そんな感じで1日を過ごし、明日へ備えて早めに休むことになっていた 夜、明日のためにやり残したことはないか確認した後、部屋に戻ろうとすると、春に会った 少し話したい、と言うので俺の部屋へ上げた どうかしたのか聞くと、珍しく不安そうな表情の春は言った 明日の試合が不安らしい。中堅に愛宕(貧)に清澄の部長と、自分より格上の2人がいて、ちゃんと次に繋げられるか 確かに相手が1回戦に役満に連荘で飛ばしたりと怖い相手だろうな そう思い、俺は俯いてる春の頭を撫でた 春は驚いて顔を上げたが、構わず続けた 別に、1人じゃなくて団体戦なんだ。春が失点しても後にいる初美さんや霞さんが取り返してくれるし、みんな春を責めたりしないだろう 気にしないで、いつものように黒糖片手に打てばいい、そう言った しばらく春は茫然としたようだったが、いつものように、と呟くと俺の手を払った そして、いつもの表情の春がそこにいた 「ありがとう。明日、頑張るね」そう言うと春は部屋から出て行った 自分の部屋に帰ったんだろう 少しでも不安を取り除けたなら充分だ 俺もそろそろ寝よう 明日、永水が勝てますように 春「…………」 霞「へぇ、試合前日の夜に、京太郎くんの部屋にねぇ?」 初美「抜け駆けですねー」 小蒔「春ちゃん……そんな不安だったなんて……」 巴「姫様、多分もうその辺りは大丈夫ですよ?」 春「不安だから京太郎のとこに行った。不安は取り除けた。問題ない」 初美「京太郎のところに行ったのが問題なんですよー!しかも夜に!!」 8月☆日 インターハイ初戦、勝ったぁぁああああああ!! いきなり小蒔さんが大暴れしてリードを作ったのが大きかった 中堅の愛宕(貧)がかなり点差を縮めてきたが、それでもなんとかトップは守り、そのまま初美さんと霞さんがリードを守ってくれた 1位は永水、1位は宮守という結果になった 初美さんは宮守が残ったことがかなり不満だったみたいだが、勝てたからいいだろう 大将の姉帯さんの追い上げがすごかったし 姫松、そして清澄はここで敗退という結果になった 咲も頑張っていたとは思うが、それでも3位で終わった 後で連絡……できるか?少し考えよう とにかく勝って良かった この調子で次も勝てるといい 初美「すごかったですよねー、姫様大活躍ですよー」 小蒔「そ、そんな……ただ、京太郎くんが見てる前でみっともないことはできないと思っただけで……」 春「大丈夫、私もそうだったから」 巴「その分ハッちゃんが苦戦してたよね」 初美「うー……北家で和了れれば……」 霞「京太郎くんも言ってたけど、勝てたからいいじゃない」 巴「ですね」 8月★日 今日も練習、というか試合前なので午前中のみの軽い調整とかそういうものらしい 午後は自由だったので少し気晴らしにふらついていたら、今や懐かしく感じる迷子を見つけた 涙目でなにやってんだよ咲 声を掛けた時、一瞬驚いていたが、俺だと分かると安心したような顔になった つーか東京で迷子ってシャレになんねーぞ 話を聞くと、昨日の負けで清澄のみんなは結構落ち込んでいるらしい なのでしばらくは個人戦まで好きにしていい、だとか 咲もいつまでも負けをひきづってられないと、出かけたはいいが迷ったという……こいつ、成長してねぇ…… 仕方ないので一緒に適当な店に入ることになった 久しぶりなのでそれなりに積もる話もある 長野から鹿児島に行ってからの話、長野の友達がどうしているか、そして、お互いの麻雀部の話 少し言葉に困ったが、咲は別にいいと言ってくれた 負けちゃったけど、それで相手を恨んだりはしない、と言っていた むしろあの永水のメンバーの中、なんで男の俺がいるのか聞かれた それからもしばらく話していると、ふと店に置いてあるテレビに目がいった 最初は電源が付いていなかったが、今は付いていて、インターハイ準決勝が映っていた 大将戦の途中だったようだが、なんと白糸台が4位だった 咲も「お姉ちゃんのところが!?」と声を上げて驚いていた そういえば、姉の照さんが東京行ったとか聞いてたけど、白糸台だったと雑誌見て知ってたっけ 俺はなんでこうなったか携帯で調べたが、どうも阿知賀の先鋒、中堅がかなりの番狂わせを起こしたらしい 先鋒は照さんが序盤は圧倒的だったらしいが、それからどうも3校で協力したとか 中堅戦では阿知賀が千里山に負けない活躍で追い上げ、今みたいな順位になったらしい そのまま咲と試合を見ていたが、結果は1位阿知賀、2位新道寺という順位になった 白糸台は確実と言われていただけあって、テレビでもそうとう驚かれていた 咲も「お姉ちゃん……」と呟いて驚いていた インターハイ、何が起こるか分からないな。マジで それから咲を清澄が泊まっている宿泊施設に送って帰った 念のために、咲が最近借りたという携帯の番号も交換した 番狂わせか……うちもそうならないよう頑張ろう 霞「驚いたわよね。あの白糸台が負けるなんて」 巴「私は千里山が負けたのも驚きましたね。あそこ全国2位ですし」 小蒔「どこも油断してはいけないということですね」 初美「ですねー。何気に私達の試合で宮守が勝ったのもそうですし」 春「新道寺も強敵……」 8月▲日 インターハイ準決勝、勝ったああああああ!! 決勝進出だよ!すげーよ!! 今回も小蒔さん大活躍だったけど、個人3位の辻垣内さんがすげーやばかったけど、なんとかトップだった 途中で2位になったりしたが、初美さんと霞さんがなんとか巻き返したり、宮守の姉帯さんが2回戦以上の活躍を見せたりで、 結果は永水が1位、宮守が2位だった もっとも、点差自体はほとんどなく、かなりギリギリだった いや、でも勝ててよかったよ 夜、明日のためにみんなはミーティング中だったので、何かお菓子でも買いにコンビニに出かけた すると、コンビニで雑誌のグラビア写真を見ている女子高生がいた 珍しいと思っていると、「……おもちが足りない」そうその女子高生は呟いた チラッとそのグラビアを見るが、確かになりない 「確かに」そうつい言ってしまった 女子高生は慌ててこっちを振り返った 「……あなた、今……」そう聞かれた この人を見て、俺は何故かすぐに分かった 自分と同じだと 俺は迷うことなく、携帯の中の霞さんの写メ(水着)を見せた その人は、それを見て、涙を流しながら握手を求めてきた 「同志っ……まさか、こんなところで同志に出会えるなんて……っ」 それから数十分、俺はおもち好きの同志、松実玄さんとおもちについて熱く、熱く語り合った お互いの連絡先を交換し、またおもちについて語らうと約束して別れた お互いが明日の決勝の対戦校だと知っていたが、それを言うのは無粋というものだろう おもちと試合は、また別のものなのだ 初美「決勝前夜に何してんですかっ!!」 巴「しかも松実玄って、阿知賀の先鋒の……」 霞「……ほんとうに、もう……」 小蒔「あ、あはは……」 春「……まぁ、おもち好きも、誰かと仲良くなるのも、京太郎らしいこと」 8月◆日 優勝したああああああああ!!! すげーよ!!全国制覇だよ!! 小蒔さんは今までで一番すごかったし、最後霞さんが和了って優勝決まった時なんか泣いちまったよ 終わってから、一度合宿したからか、新道寺が控室まで来てくれた 優勝したことのお祝いと、早速来年は勝つと宣戦布告を受けた 小蒔さんと春が負けないとか言ってたけど、小蒔さんが言う瞬間噛んで、締まらなかった また合宿のため、ということで連絡先の交換をしていた 何故か俺も新道寺の大将、鶴田姫子さんと副将で部長の白水哩さんと連絡先を交換することになって、連絡先を交換しようとした そしたら、既にお互いの連絡先を知っている状態だった まさかと思ったら、ネト麻仲間のリザベさんが鶴田姫子さんだった どんな偶然だよ みんな驚いていたが、まぁ、改めてこれからもよろしく、ということになった ふと、霞さんが色紙を取り出して小蒔さんにサインを書くように言った 宮守の姉帯さんに頼まれていたらしい そういえばこっちも頼まれていた、と姫子さん(そう呼ぶように言われた)も色紙を出していた どうせだから一緒に持っていこう、ということになり、永水と新道寺の2校一緒の宮守の控室に行くことになった 控室に行くと、宮守のみんなは泣いていた タイミング悪かったかなー、と思ったが普通に部屋に入れてくれた 小蒔さん、そして姫子さんと哩さんのサインを持ってきた、というと姉帯さんは嬉しさからか更に泣き始めた まぁ、喜んでくれてたからいいのかな それからはなんだかんだで3校みんな仲良く話していた 俺は唯一の男子でアウェイな感じと、宮守の人に誰だコイツ?みたいな目で見られたが、この前知り合った姉帯さんとエイスリンさんが説明してくれた 宮守のみんなもそれで納得してくれ、迷っていた2人のことでお礼を言ってくれた そこで、宮守の監督の人が「どうせなら全員で写真撮ったらどうだい?」という提案をしてくれた その言葉に全員乗り、阿知賀も一緒に撮ろう、ということになり、今度は3校で阿知賀の控室まで行くことになった それからが大変だった 阿知賀の控室まで行き、写真を撮ることはOKだったが、マスコミが決勝の4校が仲良くしていることで驚いて、 インタビューやらなんやらで結局写真が撮れたのはそれから大分経ってからだった 何人かは連絡先を交換し、俺が写真を撮ったので、後日送ることになった とにかく疲れた でも、明日からは個人戦、まだまだ応援頑張ろう そういえば、個人戦になって少し時間が空いたからプロの人達もゆっくり試合を見るとか言ってたな どっかでひょっこり良子さんと会えたりするかもな 初美「優勝、できましたよねー」 霞「大変だったわよねー。初美ちゃんはいつもより北家で和了れなくて」 春「姫様は一番強い神様降ろした」 巴「どこの高校も強くて、気が抜けませんでしたねー」 小蒔「えぇ。でも、去年できなかった、全国優勝ができたことは、本当にうれしかったです」 霞「そう……ねぇ、小蒔ちゃん。来年の目標は?」 小蒔「勿論、また優勝することです!!」 春「ん、私も頑張る」 初美「応援してますよー」 巴「だね」 8月▼日 今日から個人戦が始まった 予選だが、全国から勝ち抜いてきた人達の予選、かなりすごい試合もあった 初戦が初美さん、愛宕(貧)さん、豊音さん、荒川憩さん、というすごい組み合わせだった 去年の全国2位はさすがに強かった、初美さんも団体戦の時以上に頑張ってはいたが、2位だった トップは荒川憩さん、後は僅差だった 昼に、ネト麻仲間の風さんと会った お互い都合が合わなくなったりしてでかなり遅くなったが、大会中に会えてよかった 俺が九州にいると言うと、やけに明太子のことを聞いてきたのでどんな人かと思ったら、臨海の雀明華さんだった 何が風だ。風神じゃねぇか。そしておもちもそこそこある。すばら 個人戦には出てないけど、普通に有名な選手だから目立ってたし、俺もビビった しかし話してみると割と話しやすかった。そして明太子のことを聞かれたけど、それはせめて福岡代表の新道寺に聞いて欲しい 何故か魚卵の美味しさの話で盛り上がった。北海道がやばいという話をすると分かりやすいぐらい目を輝かせていたのが可愛かった 明華さんは辻垣内さんの、俺は小蒔さんと初美さんの応援のため、昼を食べてから分かれた 小蒔さんは絶好調のようで、ほとんどの試合をトップで終わらせていた 少し暇があったので話しかけると、流石に少し疲れていたようだった 寝ているだけのように見えるが、やはり消耗するんだろうか 少しの時間だが、休憩に普通に眠らせてあげた。1人では危ないので、隣で俺が見張り代わりに座ったままでだが よっぽど疲れていたのか、俺の肩に寄りかかって熟睡していた。少しでも疲れが取れているといいんだがな その後も小蒔さんは調子が良く、初日を勝ち残った。初美さんも残れたらしい 明日は今日よりきつくなるらしいが、2人とも勝ち残れるといい 初日終了後、少し時間ができたので、ネト麻仲間の膝枕さんと会うことになった なんでも個人戦に出場しているらしく、勝ち残って、今やっと会える時間ができたらしい 待ち合わせ場所にはなんと千里山の大将、清水谷竜華さんがいた どうやら俺はまたとんでもない人と知り合えたらしい。麻雀の実力的にも、おもち的にも 竜華さんも俺が永水の生徒だとは思わなかったらしく、驚いた様子だったが、すぐに打ち解けて話すことができた そのまま近くの屋台でたこ焼きを買って、ベンチで座ってつまみながら話した お互いに応援か観光かと思っていたら、選手、出場校の選手だったこと、自分の高校の有名選手のこと、色々だ 特に俺は小蒔さんを、竜華さんは先鋒の園城寺怜さんのことを話した なんか放っておけない、というと竜華さんもそれに同意してくれた。園城寺さんは試合で倒れたりしていたし、その心配も当然だろう そんな話で盛り上がっていると、竜華さんの名前を呼ぶ、儚げな娘が来た。園城寺怜さんらしい 竜華さんを呼びに来たのかと思うと、そのまま竜華さんの膝枕で横になった。なるほど、これがハンドルネームの由来かと納得できた 何故かそのままの体勢でお互い自己紹介をした。傍から見たらシュールな絵だっただろう こちらに見せつけるように竜華さんのふとももを撫でてドヤ顔していたのが少しイラッときた。そして羨ましかった。代わってください しばらく話し、俺も竜華さん達も時間になったので、怜さんとも連絡先を交換して別れた 個人戦で当たっても恨むんやないでー、と怜さんが言い残して行ったが、そっちこそ小蒔さんや初美さんに当たっても知らねーぞ 春「臨海の……」 巴「そういえば対戦したものね」 霞「あの人の『風』もなかなかやっかいだったわね」 初美「そして清水谷さんに園城寺さんですかー。清水谷さんは強敵でしたね」 小蒔「園城寺さんも、試合で倒れたと聞いていましたけど、元気なようで良かったです」 明華「むむむ……明太子は冷凍してないといけないのですか……本場博多のものを……いや、しかし冷凍では……」 智葉「なぁ、一体いつまで悩んでいる気だ?それに、今日コンビニの明太子おにぎり食べてただろ」 明華「それとはまた別腹です」 智葉「どこでそんな日本語覚えたんだ……」 怜「あーしんどいわー膝枕が必要やわー」 竜華「やらんで。はよ片付けんといかんやろ」 怜「しゃーないなー。じゃあ胸で」 竜華「ひゃあっ!?ど、どこ触っとるんよ!!」 怜「おー、こらすごいわー……京太郎に竜華の胸揉んだってメールしたろ」 竜華「京太郎くんに!?ちょ、それはアカンって!!」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/5756.html
276 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/06(水) 21 43 00.58 ID zp+WGvdGo [22/32] 【8月16日:夜】 京太郎「はっ、はっ、はっ……!」 俺は走る。 走っている。 そうすることしか出来ないからだ。 視線を後ろに。 見えた。 金色が追ってくる。 淡「待っててばー!!」 京太郎「誰が待つかぁぁぁあ!!」 俺を追う狩人、大星淡。 昼間の一件から何かと俺へとちょっかいかけてくるようになり、そして今は油性ペンを片手に俺を追っている。 畜生め。 あのほっぺの酷使が未だに響いてるのだろうか。 それともそんなに恥ずかしかったのか? 今も真っ赤になって追ってきてるし。 しかし、だ。 仮にも俺は男。 女の子である淡とは体力も、歩幅も違う。 曲がり角を曲がり、返すように俺はレクリエーションルームに。 勢いよく、しかし音なく入ってきたせいか、驚きで咳き込む声が聞こえた。 尭深「けほ、けほっ……す、須賀君……?」 京太郎「すいません渋谷先輩!淡には俺は来てないって言ってください!!」 ロッカーを開き、その中に。 その十数秒後。 バンッと。 勢いよくドアが開く音が聞こえた。 淡「京太郎!!……あれ、たかみー?」 尭深「あ、淡ちゃん……?」 淡「たかみー、京太郎来なかった?」 尭深「須賀君?えっと、来てないけど……」チラッ 淡「そっかー……麻雀強くないくせに逃げ足だけは速いなぁもう……」 京太郎(大きなお世話だよちくしょー!!) 309 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/06(水) 22 55 00.91 ID zp+WGvdGo [25/32] ガチャン、たったった……。 俺は耳を澄まして、音を聞き取る。 フェイントが仕掛けられてるかも知れない。 そう思ったからこそ、俺はまだ待つ。 足音。 かなり体重が軽い。 ふわふわした、優しい足取りだろうか。 その足音が、ロッカーに近づいている。 京太郎「………」 尭深「須賀君、淡ちゃん行ったよ」 京太郎「………っはー!」 渋谷先輩の声。 それに俺は詰めていた息を吐き出し、ロッカーから出る。 ああくそ、ようやくだ。 ようやく逃げ切れた。 息も少し乱れている。 そんな俺を見て少し目元を優しげに緩ませた渋谷先輩が、「ちょっと待ってね」と言って給湯室へと向かっていく。 尭深「あの、これ濡れタオルと水出しの緑茶……良ければ」 京太郎「………」 尭深「あの……須賀君……?」 京太郎「天使じゃぁ……」ウッ 天使だ、天使すぎる。 優しいとか優しくないとかじゃない、もはやそれ自体が癒しだ。 思わず目元が緩む。 それにおろおろと、困ったような顔をする渋谷先輩。 それに何でもない。 何でもないんですと、俺は指で目元を掬う。 お茶、いただきます。 ……ああ、あったけぇなぁ……冷たいんだけど、あったけぇ……。 315 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/06(水) 23 03 37.38 ID zp+WGvdGo [27/32] 【8月17日:朝】 玄「あのー」 京太郎「はい?」 朝。 特にすべきこともなく、自由行動の許可が出ていた俺は財布をポケットに突っ込み、私服を着て街に繰り出していた。 俺が住む白糸台。 そこは西東京、いわゆる都心部から離れた僻地でもある。 その分、家賃もそれなりに安いし、まぁ普通に生活するには十分な場所だった。 だから東東京。 大会会場がある周辺の地理は正直言うと疎い。 ちょっと遠出するとなると、携帯の地図アプリとかのお世話になるのが通例だ。 そんな俺にかかる声が一つ。 女の子の声だ。 聞き覚えない声からして、白糸台の生徒じゃないな。 そこまで考えつつ、振り返る。 見知らぬ制服だ。 少なくとも、初めて見る。 それに俺が思わず首を傾げると、目の前の女の子は困ったような顔をしている。 なんというか、助けを求めている、という感じの顔か? 玄「あの、近くのJR線の駅って何処にあるか分かりますか?」 京太郎「駅ですか、俺も今行こうと思ってたので一緒で良ければ案内しますよ」 玄「わっ、ありがとうございます!」 結構勢いよく頭を下げる女の子。 それに釣られて震えるおもち。 ……まぁ、あれだ。 一瞬とはいえ目を引かれてしまった自分が居るということは正直に言うべきだろう。 実にすばらですよ、こいつァ…。 そんな時。 目の前の女の子、松実玄さんがぴしりと固まる。 それと同時に後ろに気配。 ……なんだ?この威容な威圧感と恐怖は。 手がね、勝手にね、カタカタって震えるんだ。 ぎちり。 視線はゆっくりと、後ろへ。 照「…………ふーん」 これはアカン。 440 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/07(木) 20 19 11.39 ID LbpamgC3o [7/28] 玄「み、みみみみみ宮永照さん……!?」 京太郎「な、何で照さん居るんですかー!?」 玄「え、須賀君知り合いなの!?」 京太郎「というか幼馴染で同じ学校と言いますか……」 照「別に、本を買おうと思って出てきただけ………そっか、京ちゃんはナンパしに行ってたんだね」 京太郎「ファッ!?」 そっかそっか。 そう一人で頷く照さん。 いやいやいや……いやいやいやいや! おかしいでしょう! 俺ってば困ってた人助けただけだよね? それに(おもちに対して視線は行ってたけど)やましい気持ちなんてないぞ! 俺はその主張を視線に込め、照さんを見る。 視線を受けた照さんは自分の胸に手を当てて、俺を見返す。 ……ああ、そうっすか。 俺が視線を向けたってことだけに怒ってるんですか。 玄「えっと……須賀君にナンパ、され……ちゃった?」 余計なこと言わないでください松実さんんん!!!? 447 名前: ◆VB1fdkUTPA[!red_res] 投稿日:2013/02/07(木) 20 26 20.01 ID LbpamgC3o [8/28] マツミクロ アチガ ゼッタイツブス 457 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/07(木) 20 30 19.09 ID LbpamgC3o [9/28] 【8月17日:昼】 京太郎「いやーはっはっは」 玄「あ、あはは、はは……」 照「………」 玄「………」 京太郎「………」 誰か、この空気から助けてくれ。 俺は四人がけのボックス席でそんなことを考えていた。 運よく開いていた席を確保。 行き先が偶然にも同じということもあり、旅は道ずれともいうものだ。 俺、照さん、松実さんはどうせ、ということで一緒に行動していた。 照さんがそうするように仕向けた、と言ってもいい。 まるでじろじろと監視するように、松実さんを見ている。 そんな、無言の圧力空間。 乾いた笑いしか出ないとはこのことだろう。 電車が停車。 降りる人も無く、乗る人が多少いるくらい。 その時。 俺の位置から見えた姿があった。 よくあるデザインのセーラー服。 それを着た、何処か足取りが覚束ない、一人の女の子。 顔色は、かなり悪い。 焦燥している、という感じだろうか。 その女の子が、視線を俺たちの空いている席へと止めた。 怜「ちょおスマンけど……相席しても、ええかな……?」 玄「園城寺さん!?」 怜「……あれ、確か阿知賀の……」 玄「玄です!松実玄!って、フラフラじゃないですか!どうぞ座ってください!」 怜「か、堪忍な……」ヨロヨロ ふらりと、椅子に腰を下ろす。 はぁ、と小さく息を吐いたのが見えた。 ……かなり消耗している、か? 照「園城寺……千里山の」 京太郎「あの、大丈夫ですか?」 怜「……あれ、おかしいな?なんやチャンピオンが男と居る幻覚が見えるわ……」 玄「園城寺さん、それ幻覚じゃないです……」 508 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/07(木) 21 23 45.38 ID LbpamgC3o [13/28] 京太郎「ちょっと失礼します」 怜「……変なとこ触らんといてー」 京太郎「触りませんよ!!」 俺は園城寺さんの目と顔色を見て、額を触れる。 熱い。 体の中に熱でも篭ってるんじゃないだろうか。 それに汗の量が少ない。 今日は暑い。 汗ばむくらい、誰だってしているはずだろう。 となると、この人は体温調整があまり効かないのか? 汗をかけないと体温調整が出来ない。 見るからに病弱なこの人はそんな体なのだろうか? そんなことを思いつつ、俺はカバンから冷え○タを取り出し、玄さんに協力して貰いでこに張る。 張った瞬間、「はうっ」と。 びくん、と反応した。 どうにも冷たかったらしい。 次の停車駅。 俺は150円を掴んでダッシュでスポーツドリンクを買ってくる。 それを俺は園城寺さんに渡して、そして最後に取り出した飴玉を口に押し込む。 カロコロと。 少し戸惑ったようにしていた園城寺さんが口内で飴玉を転がす音が聞こえる。 そのままスポーツドリンクを一口。 そうすることで結構顔色が良くなってきているように見えた。 怜「ぷはっ……あー……死ぬかと思ったわ」 京太郎「知らずのうちに脱水症状起こしてましたね……結構歩いてますよね?」 怜「うん、今朝調子よかったからちょうな……これ、塩飴やな」カラコロ 照「京ちゃん、私にも飴頂戴」 京太郎「無理が祟りましたね……あ、レモンと塩と梅がありますけどどうします?」 照「レモンがいい」 京太郎「はいどうぞ、あーん」 照「あーん…んっ……おいしい」カラコロ 京太郎「松実さんも要ります?」 玄「あ、じゃあ私は梅で……」 京太郎「はい、あーん」 玄「じ、自分で食べるから大丈夫だよ!」 京太郎「あ、すいません癖で……」 518 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/07(木) 21 41 08.68 ID LbpamgC3o [14/28] はっはっは。 伊達に照さんや淡の世話で磨かれたスキルだ。 以前よりも増して磨かれているぜ。 しかし、何でだろうなー? 俺、一人暮らしになる前にお袋から色々と仕込まれたけど、何故か何でも出来たし。 すわ才能か、と疑ったりもしたなぁ。 ………主夫の才能って何かあれだなぁ…。 そんなことを俺が思わず思うと、小さく。 クスッと、そんな笑い声が聞こえた。 怜「須賀君、やったっけ………君、おもろいなぁ」 京太郎「へ?」 怜「ん、何でもあらへんよ」 アナウンス『次は――――』 怜「ここで降りな」 京太郎「丁度、俺たちもですね」 よっと、立ち上がろうとする園城寺さん。 だが、がくん、と膝が砕ける。 そりゃ、そうだ。 塩分の不足は筋肉の動きに障害を引き起こす。 元々体が強くない園城寺さんなら、その効果も通常の数倍だ。 困ったような、そんな顔をする園城寺さん。 それに俺は小さく息を吐くと、背中を差し出す。 旅は道ずれ。 まぁ、そういうのは助け合いから続くもんだろう。 また小さく、園城寺さんが笑う。 すまんな、と。 小さく。 照「………っ」 玄「………んん??」 両名の病み&害意上昇 523 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/07(木) 21 46 57.11 ID LbpamgC3o [15/28] 【8月17日:夜】 京太郎「いやー、今日色々と買いましたね照さん」 照「そう」 京太郎「まさかこうなるなんてなー」 照「そう」 京太郎「……楽しかったなー、照さんと買い物いけて」ボソッ 照「……そう?」 京太郎(これ誘導尋問じゃね?) 帰り道。 俺は二人と別れて照さんと帰っていた。 松実さんは集合場所に向かい、園城寺さんはチームメイトの人が迎えに。 行き先の駅が同じというだけで、そこから先の行動は別々だ。 俺は照さんと一緒に目的を果たしたので特に不満はない。 ただ、照さんの距離が全体的にやけに近い。 そう感じるくらいだ。 ……というか、だ。 実際、照さんは俺の手を握ってる。 近いというか接触してるのだ、これ。 何でかなぁ。 俺、何も悪いことしてないのになぁ。 いやまぁ、ふらふらと何処かに消えることはこれで無くなるんだろうけど。 京太郎「……そういや、明日試合ですね」 照「うん」 大丈夫ですか? なんて言葉は、当然出ない。 聞くまでもない。 それだけのことだ。 ただ。 俺はちらりと、照さんを見る。 無表情の中にある、少しの喜色。 それを滲ませるような、人形みたいな顔。 この人は、こうして無表情のまま。 当然のように、勝つんだろうな。 そう、俺は思っていた。 ふと、俺はビルを見上げる。 月を背景に光るビルを背に。 俺は帰り道を二人で行く。 543 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/07(木) 22 30 01.26 ID LbpamgC3o [18/28] 【ビル屋上】 . . . . . . .. . . ...○ . . . . .. . . ........ .............................. .......................... , ;;; ;; ,iiiiiiii!!!i! , ;;--゙゙,,;;;;; ;;; ,,,,,;;;;,,,;;,,,....;;;;... .. .. ....;;;;;;;;;;;..,,;;... . .. ... ..;;,,,,,;;;;; ;;; ,,;;;;;';;llllliiiiii!!liiii!!!lll;; illlllllliiiiiillllllllllliiiiiiiiiiliiiiiiiiliiii!!!;;;,,,,,;;;!!!iillllllliiiiii!!;;;,,,,,;;;!!!iillllll!!!iiiiiiiiiiii!!!lll;; ;;;;;;i;;;;i;i;;iiii!!!lll ''"''"''"''"~~~''"''"''"''"''"''"''"""''"''~"''"''"''"''"'''~'''''"''"''~~~"''"''"''"''"'''"''"' ________________ '´ `ヽ__''~"''''''''''"''"''''"'' || || || || || || || || || || ||.! ((从リリ))ゝ|| ||\~"""''"''''"''"' || || || || || || || || || || ||.!,(リ‘ -‘ノ、!|| || . ||\'" ̄"''--...  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ /j 氷i0 ̄ ̄'\|| . ||\ .................................................................................... (_/_j_j|〉...................'\||!. ;||\ .................................................................................... ヒヒ!...........................'\|| .!.||\ .....................................................................................................................................'\||!. .||\ ............................................................................................................................................'\|| .─────────────────────────────────────── .| / | ./ ∧ .. . . . . | | . / ゙| . . . , '´ .| / . ∧| .|' .| / ./ .∧ . . . . | | / . .; ´ |イ . . ./ .| .| | / . / ∧ . . . . Ⅳ |' -‐--- '´ ' /i/ .| / . / /i . \ . . .| iム / 、 イ /| ……… .| . ./ / .| . . . .\ .从_ムー---‐ ´ .イ '! / .| / ./ .| . . . . 厂 ´ト、. ヽ _.. / / |′ .|' ./ | . . . ∧ . /| . `¨¨へ '´ ./ iル′ .|/' | / ∨ !、 . / |>o。_ / .!-ー-- .._ {. | ./ ∨{. Y/ | . . . ./i . ¨7 T¨¨¨¨¨¨´ ^ー 、 ` ̄ 17日、終了 557 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/07(木) 22 44 47.16 ID LbpamgC3o [21/28] 【8月18日:朝】2回戦当日です 『ないてるの?』 『ないて、ない……』 『うそだ、ないてるじゃん』 『ないてないもんっ!』 『いーや、ないてる!』 『ないてない!』 少年と少女が居た。 遠い記憶の中。 そこに微かに。 だが二度と忘れないように刻まれた風景の中に。 少年と少女が居た。 その出会いは偶然で。 その出会いは必然。 少年は、泣いている女の子を放っておけなかった。 少女は、泣くことで誰かの救いを求めていた。 その両者がかみ合っただけの話。 須賀京太郎、6歳。 ※※※、※歳。 小さな、運命の出会い。 それは何所までも普通で。 何所までも不器用な。 小さな、出会い。 京太郎『ほら、たてるか?』 ※『う、うん……』 京太郎『けが、ないよな』 ※『だ、だいじょうぶだよ!』 京太郎『そっか……あ、おれはすがきょうたろうっていうんだ……なぁ、きいていいか?』 教えてくれないか、君の名前。 ※『わたし……わたしは――――』 ※【私の名前は、※※※、だよ】 823 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/08(金) 23 34 41.89 ID Ks+wqLmPo [27/33] 「―――ちゃん!ぅ……ゃん!!」 「―――よう!お……ん!ど…しよ…!」 京太郎(あたまが、いたい) 声が聞こえた。 聞き覚えのある声。 なんだ? なんでそんなに、あせってる? 分からない。 脳みそがシェイクされるような感覚。 指先が、感覚を感じる全てが痺れているような。 そんな気だるさがある。 ゆっくりと、目を開く。 見えたのは……2本の角? 京太郎「照さん……咲……?」 照「京ちゃん…!」 咲「良かった、京ちゃん……」 京太郎「………え?」 俺は、ベンチに寝ている。 何でだ。 それを理解する前に、俺は二人を見た。 ……前は、あんなに咲を拒絶していた照さんが。 咲に反応していない。 だけどそれは一瞬だけ。 照さんが、俺の腕を掴んだ。 照「京ちゃん、待機部屋に戻ろう」 京太郎「いや、照さん?試合は……」 照「私の出番は終わって菫が出ている……いいから、帰ろう」 京太郎「いや、でも……」 俺は咲に視線を向ける。 そうだ、思い出してきた。 俺は試合終了後、またお菓子を買いに行った照さんを探しにいって、咲に会った。 少し話し込んで、照さんを探そうと思って咲と別れようとしたんだ。 そしたら、照さんが居て……。 その二人が向かい合う構図を見て、意識を失ったんだ。 この前は、そんなこと無かったのに。 829 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/08(金) 23 39 20.70 ID Ks+wqLmPo [28/33] だけど。 あの女の子は、誰なんだ? 知っている子だ。 そのはずだ。 そのはずなのだ。 それを思い返そうとする前に、手を引かれる。 見れば、照さんがまた手を引いていた。 俺は咲に視線を移す。 さっきまで険難な空気が無かった。 それは、照さんがそれを咲に向ける余裕が無かったから、だろう。 それだけ、俺が倒れたことに注意を向けてくれたのだろうか。 咲は、小さく頷く。 行っても大丈夫。 その意味だろう。 俺はすまんと、小さく呟いて照さんに引かれていく。 ぽつんと。 遠ざかる咲の姿。 また、何所かで見たことがある。 そんな光景だった。 832 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/08(金) 23 41 17.11 ID Ks+wqLmPo [29/33] 【8月18日:昼】2回戦当日です 京太郎「照さん……」 照「……」 京太郎「照さん……!」 照「………」 京太郎「照さん!!」 ぴたりと。 俺の手を引いていた照さんが止まる。 周りに人気は無い。 勢いよく、前すら見ずに歩いていたから当然だろう。 それが照さんなら、なおさらだ。 俺もここが何所だか、分からない。 そんな場所に俺たちは来ていた。 ただ、一つ。 一つだけ言えるとすれば、ここなら誰かが聞き耳を立てることも。 誰とも出会うことも無い。 ただそれだけは、分かるのだ。 俺は照さんを見る。 表情が無い。 感情の抜け落ちたような、そんな顔だ。 それは、咲を前にして見せた顔。 それを、俺に向ける照さん。 ぞわりと。 背筋が粟立つ。 この人は、何かを考えている。 ろくでもない何かを。 それを実感するだけの雰囲気が、あった。 京太郎「照さん……?」 照「………京ちゃんは――――」 京太郎「え……?」 また前を向いた照さんが口を開く。 それに俺は疑問の声で聞き返し。 照さんは、ゆっくりと振り返った。 照「京ちゃんは、どこにも、いかないよね?」 937 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/09(土) 21 45 04.50 ID vjZyLTM7o [3/11] 何所にもいかない。 そう聞かれる。 そう、問われる。 それに答えるのは、簡単だ。 何所にもいかない。 今の状況を受け流すには、最適の言葉だ。 だけど。 ああ。 何で、喉が震えるのだ。 そうだよ。 照さんだって、完全に全てが本気な訳じゃない。 これからの長い人生だ。 人との出会いも別れも多く存在するだろう。 何所にもいかない、というのはつまり、「勝手にいなくならない」。 そういうことを示しているのだろう。 当たり前だ。 それ以外の意味に取る理由がない。 ああ、そうだ。 うん、と。 はい、と。 そう答えろ。 俺がそうすれば、場は全て収まる。 にこりと、顔を引きつらせて、笑う。 答えようと、息を吸い込み。 京太郎「俺は―――」 照「あいつなんかと、もう会う必要なくなるもんね」 あい、つ……咲。 咲と、会う必要が無くなる……? 京太郎「照さん、貴女―――ッ!?」 照「ん……」 どういう意味ですか。 その俺の問いかけは、問う前に閉ざされる。 照さんの唇で。 唐突に。 あまりにも唐突に、閉ざされて。 947 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/09(土) 21 58 08.51 ID vjZyLTM7o [5/11] 壁に背中がつく。 追い込まれた。 痺れる脳みそじゃそこまで考えれなくて。 俺は目を見開く。 まるで眠っているように瞳を閉じた照さんが目の前に居る。 この人は。 いや、これは、誰だ? 分からない。 俺の知っている照さんは、もっと何も考えてない。 いや、何かとお菓子の事を考えていて、それでいて不器用。 そんな人だ。 なのに、今の顔は。 何所までも色気に満ちている、そう見える顔だ。 京太郎「っぁ……て、る……さん……」 照「っ……」 ずるずると。 俺は壁に背中をつけたまま、膝を砕く。 俺の尻が地面へとつき、今度は俺が照さんを見上げる角度に。 だけど、それは直ぐに同じ高さに。 照さんが、俺の足を跨いで膝立ちになって。 俺の頬を両手で挟む。 にこりと。 ゆっくりと、微笑む照さん。 今まで見たこともないような、笑顔で。 俺へと、告げる。 照「大丈夫だよ、京ちゃん……京ちゃんは、何も考えなくていいんだから……」 ああ……畜生。 何で、こんなことに…。 951 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/09(土) 22 01 21.68 ID vjZyLTM7o [6/11] 【8月18日:夜】 どれだけの時間が過ぎたんだろうか。 1分だったかも知れない。 1時間だったかも知れない。 ただ、俺がそれに気づいたのは本当にいきなりのことで。 ああ、携帯に出なきゃ。 それくらいの感想だった。 京太郎「もし、もし……」 菫『須賀か!?お前今まで何所にいってたんだ?』 京太郎「すい、ません……」 菫『まぁいいさ……お前は別にそんな問題を起こすような奴じゃないからな……お前、照を知らないか?』 京太郎「……すいません、知りません」 菫『参ったな……分かった、照に会ったら確保しといてくれ、じゃあな』 京太郎「はい、失礼します……」 電話を切る。 電話を切って、俺は視線を向ける。 俺の隣に座る、照さんを。 すみません、弘世部長。 照さんは、ここにいます。 それに。 ……それに、俺、問題起こしました。 届かない言葉。 俺は手を握り、眠るように肩に寄りかかる照さんを見る。 照「………菫から?」 京太郎「はい……」 照「そっか……」 小さく、そう尋ねる照さん。 俺は、そこから言葉は続かない。 照さんが、目を開いた。 照「どうしよう」 京太郎「俺に言わないでくださいよ……」 96 名前: ◆VB1fdkUTPA[sage] 投稿日:2013/02/09(土) 23 39 25.37 ID vjZyLTM7o [9/12] 照「帰ろう」 京太郎「……了解です」 照さんの言葉。 それに俺は頷く。 足が重い。 くそ、何でこんなに疲れてるんだ? 俺は思わず反射的に唇に手を添える。 そして、見上げた。 こちらを見下ろす、照さんの顔。 女の艶を見せた、顔。 ちろり。 照さんの小さい舌が、自分の唇を舐める。 ……くっそ。 何も言えん。 いや、言うべきことはある。 あるんだ。 でも言うに言えないというか。 この人が分からないというか。 そうだ。 俺は混乱している。 今は時間が欲しいんだ。 それも切実に、本当に。 冷静に物事を処理する時間が。 そこにあるのは、虚しさだけだから。 何かに見切りをつけなければ。 俺はきっと、駄目なんだろう。 照「帰ろう、京ちゃん」 照「……うっす」 明るくそう笑う照さん。 差し出される手を握らず、俺は自力で立つ。 照さんは腕を掴んで。 俺の顔を、覗き込んだ。 照「続きは、帰ったら」 ………ああくそ。 134 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/09(土) 23 56 59.05 ID vjZyLTM7o [12/12] 照さんと並んで帰る。 会話は無い。 会話することがない。 それが今のこの奇妙な関係を彩っている。 そんな気がするのだ。 照「~♪」 一人、機嫌良く前を行く照さん。 数日前。 咲と出会った道だ。 それを行く照さんには、翳りが無い。 俺はちらりと。 周囲を探る。 咲は来ないか。 そう思って、前を向き直す。 目が合う。 照さんが、目を見開いて。 俺の顔を、至近距離で覗き込んでいた。 照「誰、探してるの?」 京太郎「――――ッ!」 思わず、下がる。 じりっと。 下がる。 照「駄目だよ、京ちゃん」 京太郎「……何がです?」 照「そんなに不注意だと、怪我するよ」 京太郎「……気をつけます」 視線を車道に。 向けて喋る照さんに、俺も車道に視線を向ける。 気づかれてない。 それに詰めた息を吐いて。 照「アイツは来ないよ、京ちゃん」 息を、吸い込めなかった。 152 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 00 10 31.06 ID 1pgCD7RWo [1/38] 照「……」 京太郎「………なんの、ことです?」 照「……さぁ…?」 京太郎「答えてください!!」 俺は照さんに詰め寄る。 なんでだ。 この人が言ってること。 それが何でも軽いのに。 どこまでも重いと感じるのは。 それに。 それになんで。 なんで、この人はそんなに。 京太郎「なんでそんなに……笑顔、なんです……!?」 照「…………」 そうだ。 この人は笑ってる。 まるで何もかもが予想通りだと。 いや、自分の思うとおりになっていると。 そう嬉しげに。 笑っているのだ。 照「……さぁ?」 京太郎「さぁ、って……」 照「分からない……でもね、京ちゃん」 照さんがまた、俺の頬に手を触れる。 ゆっくりと、抱きついてくる。 それを離そうと。 そうすれば出来るだろうけれど。 照さんの言葉。 それだけしか、俺は聞けなかった。 照「アイツが居ない……それだけで、私は……」 ′ | \| ハ  ̄ \{  ̄´ / ∨ | |l λ , ハ | i| 込、 __ __,. ,イ ! 、 | それだけで……笑顔が、消えないんだ。 __| |__,. ー‐ ´ ./| | ハ |-‐= ' | .l| | . /> . イ.>| | / ‐ | |l 八 |. ′ / | /| /_ '} 八 / \ | |-- 、 --/ . | / | / \| ト-========イ }' .ノ' 158 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 00 18 03.76 ID 1pgCD7RWo [2/38] 話は終わり。 そう言うように。 照さんは俺の手を掴む。 ずるずると。 手を引いてくる。 くそ。 くそ、くそ、くそ。 動けよ、俺の手。 何で、動かないんだ。 気づけば、ホテルの前に。 皆が、手を振っていた。 ずるずると。 俺を引き込もうとする、照さん。 そうだ。 この人は。 照「さぁ、帰ろう?今の京ちゃんの居場所に……」 京太郎「照…さん……」 この人は……。 照「あそこは……今の京ちゃんが帰れる、数少ない場所なんだから」 …………。 【END:シマイ】