約 969,041 件
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/4740.html
h48-01 京淡咲 h48-02 京淡咲 h48-03 京・白糸台 h48-04 京・宮守 h48-05 京佳 h48-06 不明 h48-07 京咲 h48-08 京・清澄 h48-09 京玄 h48-10 京照 h48-11 京優 h48-12 京・清澄 h48-13 京穏憧 h48-14 京久 h48-15 京咲久 h48-16 京久 h48-17 不明 h48-18 京和 h48-19 京由暉子 h48-20 京善野 h48-21 京咲優淡 h48-22 京憧 h48-23 京和 h48-24 京玄宥 h48-25 京・臨海 h48-26 京洋怜 h48-27 京和 h48-28 京由暉子 h48-29 京淡 h48-30 不明 h48-31 京怜竜 h48-32 京いちご h48-33 京憧 3年生京太郎 h48-34 京・阿知賀 h48-35 不明 h48-36 京・千里山 h48-37 京久 3年生京太郎 h48-38 京・白糸台 h48-39 京・宮守 h48-40 京竜 h48-41 京竜 h48-42 京・千里山 h48-43 京・千里山 h48-44 京春 h48-45 京・千里山 h48-46 京竜 h48-47 京怜竜浩
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/2865.html
『今から白糸台の控室に来れない? 何とかする方法を思いついた。PS.必ず1人で来て』 照さんからのメールを受け取ったのは夕暮れ時、ちょうど準決勝が終わるぐらいの時間帯だった。 無事に決勝進出を決めて喜びで沸き立つ控室の中で、俺はそのメールの内容に驚いていた。 京太郎「(朝に話したばかりなのにもう思いつくとはなぁ)」 俺たちがあれだけ悩んだというのにあっさり思いつくとは。 やはり王者は格が違った、と言うやつか。 ただ、引っかかるのは『1人で来て』と言う一文である。 京太郎「(……大丈夫なのか?)」 若干の怖さもあるが、正直俺たちではどうしようもないので縋るしかない。 せっかく決勝戦まで駒を進めたのだ。 何も憂いがない状態で試合に集中してもらいたい。行くしかないだろう。 なんとなく言いづらいのもあり、メンバーにはトイレに行くと言って俺は白糸台の部室を目指した。 朝方の行動も結構疑われこともある。 話を聞いたらさっさと戻らなきゃいかんな。 京太郎「ここ、だよな」 扉に張られた紙には『白糸台高校控室』と書かれている。 別に後ろめたいことをしているわけでもないのだが、ちょっと緊張する。 周りを見回しあたりに人気がないことを確認したのち、扉をノックした。 京太郎「清澄の須賀です」 照「どうぞ」 俺はその声に導かれるように控室の中に入った。 部屋の内装はあまり俺たちの部屋と変わらない。 ただ、うちと違いいろいろと物が多い どこかの差し入れと思われる花の鉢植えや、大きな段ボールなどがけっこう置かれている。 あそこの花とか確か胡蝶蘭だよな。結構なお値段するはずなのに。 流石名門校は違うな、と妙なところで感心した。 照「来てくれてありがとう」 淡「やっほー」 部屋の中には照さんと珍種が一匹。 こいつが白糸台の制服を着て控室にいるのは当たり前の話なのだが、やはりちょっとした驚きを感じる。 そして服と言えば照さんの服が見慣れぬ制服になって居る。 どう見てもあれ冬服だよな? 何とも言えない気持ちを味わいながら2人の向かいの席に座った。 京太郎「それで、解決する方法が見つかったって……」 照「うん。ただ、その前に」 そこで照さんは佇まいを直し、俺の目をじっと見てきた。 思わぬ行動にちょっとたじろいでしまう。 照「解決のために、須賀君にはちょっと頑張ってもらわなくちゃいけない。恥ずかしい思いもすると思う。それでも、聞く?」 真剣なその口調に俺は思わず気圧された。 頑張ってもらう、それはまぁいい。 だけど恥ずかしい思いってなんだ? いったい俺に何をさせようというんだろう、この人は。 記者会見でも開いて釈明させてくれるとでもいうのだろうか。 それとも俺になんかもう口では言えないぐらい酷いことでもさせて噂を上書きでもさせようっていうのか。 京太郎「えっ……と、俺はいったいどんなことをするんですか?」 照「ごめん。それは理由があって言えない」 京太郎「い、言えないって……」 照「わかってる。だから、こんな胡散臭い話には乗れないというのならそれは構わない」 俺の問いかけを一刀両断で切り捨てる照さん。 ますます脳内には疑問符が駆け巡る。 解決案は知りたいが、内容を知らされずお前ちょっと働けよと言われても正直困る。 まぁ、流石にからかってるとか清澄を貶めるようなことはしない人だと思うけど。 今日初めて会った人だけど個人的にはこの人を信用したい。友達のお姉さ 京太郎「……本当に、その案で解決できるんですか?」 照「うん、大丈夫。須賀君だから、きっと大丈夫」 どういうことだ? 俺だから大丈夫? 意味が分からん。 だが、その自信満々の素振りを見る限り確信があるのだろう。 照さんの顔を見ても動揺しているとかそういうことはなく、堂々としたものだ。 それでもやっぱり、胡散臭いものは胡散臭いし、怪しい。 それはどうあがいてもぬぐえない。 京太郎「(だけど、なぁ)」 きっとこの噂は決勝の時まで残っているだろう。 そうなるとまたいろいろとめんどくさいことになるだろう。 さっきも思ったが、せっかく決勝までこれたんだ。 苦労して必死に掴んだせっかくの決勝へのチケットなんだ。 変な噂でその勝負にケチをつけられるのはあんまりだ。 もし、照さんの言うとおり俺ならこの状況を覆せるというのなら 京太郎「わかりました。俺にできることならします。だからその方法を教えてください」 やるしかないだろう。 多少ワリを食うみたいだけれども、構うものか。 照「わかった」 そう言うと照さんは間を置き、チラチラと視線をさまよわせた後に口を開こうとした。 だが、それを遮るようにあいつがニヤッと笑いながらこちらに口を挟んできた。 淡「ねぇ、ほんとにいいのー?」 京太郎「なんだよ」 淡「だってさー。テルーからいろいろ話は聞いてるけど、噂って大半が嘘だけど一部事実も混ざってるんでしょ」 京太郎「そりゃまぁ、そうだけど」 少なくとも荷物持たせられて走らされたとか、炎天下の中買い出しに出かけたとかは事実だ。 だけど、俺自身はあまりそのことについて気にしてないし、自分から買って出た面だってある。 淡「なんだかなー。そっちは一生懸命部のために頑張ろうって言う気持ちがあるのはわかるんだけどさ」 そこまで言って底意地の悪そうな嫌な笑いを向けてくる。 淡「向こうはどう思ってるのかなー?」 京太郎「……何が言いたいんだよ」 妙に突っかかるような言い方をするのでさすがにカチンとくる。 思わず顔にも出てしまったがそんなことは気にも留めず続けた。 淡「だーかーらー。あんたの好意を向こうは利用してるんじゃないかって言ってるの」 京太郎「利用、って」 照「ちょっと……」 照さんが窘めるように口を挟んでくるが、気も止める素振りを見せない。 むしろより一層悪そうな顔を見せてくる。 淡「どう考えたって向こうは体よく利用してるだけだって。仲間だなんて思ってナイナイ」 淡「たぶん、最初は追い出すつもりでいろいろと押し付けてたけど思ったより使えるから置いといてるとかじゃない?」 淡「女の子ばっかりの中に男一人だからねー。そりゃいいように使われるかー」 何が楽しいのかケラケラと笑いだす。 それとは反対に俺の内心はひどく軋んでいた。 頭がカーッと熱くなってくる。 淡「絶対アイツら陰でバカにしてるよ。いい奴隷だ、とか、下心目的だ、とか」 淡「そんな連中のために体張ることないって。バカバカしいじゃん」 淡「だからさ、部も早いところ辞めるなりしたほうがいいんじゃない? 時間を無駄に使うのもったいないでしょ」 淡「このままだとずーっといいように使われるか、適当なところで放り出されるのがオチだよ?」 京太郎「……」 なんだこいつは。 皆のことをろくに知りもしなくせに。 俺たちがどんな思いでここまで来たのかそれをわからないくせに。 淡「それにしてもそういうことするかなー、普通」 淡「人の良さとか好意につけこむとか最低でしょ」 淡「そりゃ、麻雀の腕はすごいのかもしれないけど人間性はお察しかー」 淡「ついてないね、そんな奴らに出会っちゃったなんて」 淡「いやー本当に酷い連中」ケラケラ 京太郎「……」 ぶつりと、大切な何かが切れる音が聞こえた。 京太郎「……ざけんな」 淡「ん?」 京太郎「ふざけんじゃねーよ!」ガンッ 目の前の机に感情の赴くまま拳を叩きつけた。 2人はびくりと体をすくませていたがそれを気に留める余裕は俺にはなかった。 ここまで腹を立てたのはいつ振りだろうか。 もしかしたら初めてかもしれない。 それぐらい、こいつの言ったことは許せなかった。 京太郎「お前が何を知ってるっていうんだよ! 俺たちの何がわかるってんだよ!」 京太郎「何が利用してるだ! 何が奴隷だ! お前の勝手な思い込みで言いやがって!」 京太郎「そりゃ、男はたった一人だし、初心者だって俺だけだ。だけど、だけどな!」 京太郎「うちのメンバーは……うちの仲間は、そんな理由で人を見下すような、1人をいじめるようなそんな人間じゃねーよ!」 叩きつけた拳が痛む。 どうやらさっき机に叩き付けた際に痛めたらしいが、よっぽど興奮してたせいか今更気が付いた。 だが、それでも俺の苛立ちと怒りは収まらなかった。 京太郎「……大体、俺だって無償の好意で下働きしてるんじゃない。そんな聖人じゃねーよ」 京太郎「あのメンバーたちだから、俺だって頑張ろうって気になるんだ」 京太郎「たった4か月ぐらいだけど、あの部に入れて本当によかったって思える」 京太郎「一人しかいない、しかも男の初心者相手にあれこれ教えてくれて、気にかけてくれて」 京太郎「だから、俺だって部員として皆の、皆のためにしてるだけなんだ」 京太郎「皆に、勝ってほしいから。麻雀では協力できないからせめて他のところで……」 京太郎「頑張ろうって、思っただけなんだ」 入部してからここまでのことが蘇ってくる。 本当に、いろいろなことがあった。 そして、いろいろなことを得た。 言いようのない感情から体が震え、痛む拳をギュッと握る。 京太郎「部長は、俺のことをからかうし、言いように使ってくるけど、 それでも男一人の俺が気を遣わなくてもいいようにいろいろ考えてくれてる」 京太郎「染谷先輩だってちょっと飄々としてるところもあるけど、すごく面倒見がよくて、 練習がない日は雀荘に連れてってくれていろいろ教えてくれる」 京太郎「和だって、口じゃ厳しいことを言うことも多いけど、一番熱心に教えてくれる。俺が理解するまで何度でも付き合ってくれる」 京太郎「優希も、あいつは口じゃ憎たらしいことばっかり言ってくる。でも、いい奴だよ。ひた向きで、本当にいい友達だ」 京太郎「咲は一番長い付き合いだから、俺がちょっと悩んだり迷ったりしてるとすかさず声をかけてくる。普段はぼーっとしてるくせに」 京太郎「そんな、連中なんだ。お前の言ってるような人間じゃない!」 感情が高ぶりすぎたのか、ここまで言って涙が出そうだった。 別に悲しいことがあったわけではないのに。 とっさに顔を伏せる。 京太郎「皆で、ここまで6人で、一緒に悩んで、一緒に頑張って、一緒に喜んで……」 京太郎「本当に一歩ずつ、躓いたり、迷ったりもしたけど……皆で……皆で……」 京太郎「一生懸命、やってきたんだ。たった6人だけの小さな部活だけど、皆で協力し合って、必死に戦ってきたんだ」 京太郎「それで、ようやく、ようやくここまでやってこれたんだ」 京太郎「それを……」 京太郎「それをっ!」 京太郎「それを、馬鹿にするなっ!」 京太郎「皆を馬鹿にするなっ!」 京太郎「俺にとっての……」 京太郎「大切な、大切なっ」 京太郎「大切な仲間なんだ」 言いたいことを言いきった俺は顔を伏せたまま黙り込んだ。 感情のままに叫び続けたせいか若干呼吸が荒くなった。 照「……ごめん、淡が酷いことを言って」 照さんの謝罪の声が聞こえる。 正直照さんに謝られても腹の虫は収まらない。 だが、反論する気力も使い切ったので黙っていた。 照「須賀君の覚悟、よく分かったから……。これ、私たちが考えた解決方法。読んでみて」 そう言って照さんは机の上にふたつに折られたA4サイズの紙を差し出してきた。 思いがけないことがあったが、そもそも俺がここに来たのはこれが目的だった。 俺は少しの緊張を胸に、恐る恐る紙を手に取り、開いてみた。 そしてそこに書かれていた文字に目を通そうとしたが、それは一瞬で終わった。 『はずれ☆』 「へっ?」 女の子特有の丸っこい字で書かれたその一言の内容が理解できず俺は間抜けな声を漏らしてしまった。 先ほどまでの怒りはどこへやら、状況が理解できず顔を上げた。 するとそこには申し訳なさそうにする照さんと、満面の笑みで笑う大星。 その手にはいつの間に持っていたのだろう、段ボールで作ったであろう簡素なプラカードを持ち、そこにはこう書かれていた。 淡「ドッキリ大成功ーーーーーーーー!」 尭深「だ、だいせいこー!」バサッ 誠子「尭深、恥ずかしいのはわかるけど"う"をちゃんとつけて。いろいろとほら、まずい」バサッ 京太郎「うおぉっ!」ビクッ 大星の叫びと共に近くに置かれていた大きな段ボールのふたがいきなり開き、女の人が二人飛び出してきた。 1人はノートパソコン、もう1人はパソコンにつながっているWEBカメラを手に持っている。 素でビビった俺は情けない叫び声をあげつつ思わずのけ反った。 っていうか何、この状況? 菫「……案の定放心しているな」ガチャッ そんな状況で扉を開けて入ってきた人がまた一人。 と言うかこの人たち、確か白糸台のレギュラー陣だよな? 京太郎「……あ、へ、その、ドッキリ?」 照「ごめん、須賀君を怒らせたのは、わざと」 淡「いえーい!」 菫「お前は煽りすぎだっ」ベシッ 京太郎「わざ、と?」 照「うん。須賀君の、演技でもなんでもない心からの気持ちを聞きたかった。 須賀君がどれがけ部を大切に思っているのかっていうのを」 何故? Why? わざとって何? つーかどういう事よ? 何でそんなことをするのよ? 理解が追い付かない俺の脳みそはそろそろフリーズを起こしそうだった。 菫「まず、騙すようなことをしてしまったことを謝罪したい。人に訴えかける姿を撮るにはこういう手段を取らざる得なかった」 京太郎「な、なんでそんなことを?」 菫「当然の疑問だな。で、それについてもう一つ謝らなくちゃいけないんだが……」 そういうと髪の長いその人はちらりと段ボールから飛び出してきた人たちのほうを見て申し訳なさそうに告げた。 先ほども言ったがその手にはパソコンとWEBカメラ……待て待て待て! パソコンとWEBカメラ!? 菫「君が『俺にできることならします』って言った後からずっと、君の姿をUs○reamで生配信をさせて貰っていた」 淡「もちろん掲示板でもURL付で宣伝してるよ!」 京太郎「」 (そのころの清澄) まこ「鶴賀の部長が慌てて電話かけてきてこれを見ろとURL送ってきたから見てみたら……」パソコンカチカチ 咲「……京ちゃん」 優希「……ばーか」 久「まったくもう、何かこそこそとしてるなぁとは思っていたけどこんな事たくらんでたのね」クスクス 和「でも、どう見ても台本とかじゃなくて素ですよ、コレ。……まぁ、だからこそちょっと気恥ずかしいですけどね」 まこ「誰が考えた筋書きか知らんが……まったく。流石にここまでのものを見せられちゃそう悪く言うやつはおらんじゃろ」 久「あーあ、もうほんと。やってくれるわね。誰だかわからないけど、文句言わなくちゃ」 優希「そうだじぇ! うちの部員を騙した罪は重いじぇ!」 和「ですね。そもそも、肖像権の侵害ですよこれは!」 咲「(……言葉の割にはみんな嬉しそう)」 咲「(私もだけど)」クスッ (そのころの姫松) 恭子「これって、奴隷って噂されてた子、やな?」 洋榎「せや。……この子の言うとること、ホンマか?」 漫「嘘には、見えませんでした。……つまり」 恭子「全部デマやった言うことか。土下座し損やん……」 絹恵「あ、あははは……」 由子「」コーホー 洋榎「というかいつまでそれ着とるんや」 漫「気にいったん?」 由子「」ノーヨー (そのころの宮守女子) エイスリン「ヤッパリ、ウソ!」ニコニコ 胡桃「エイスリンさん、前はあんなに怯えてたのに随分変わったね?」 エイスリン「アノ人、優シカッタ!」 塞「そういえば試合後は普通に話しできてたね」 エイスリン「ウン」ニコニコ 胡桃「それにしても、嘘だったなら私は結構ひどい態度とっちゃったな……」 豊音「私、泣いて土下座しちゃった……恥ずかしい……」 白望「(そもそもなんでみんな最初っから信じてたんだろう)」 白望「ダルい」 (そのころの永水女子) 小蒔「あの……霞ちゃん?」 霞「」 巴「……ダメ、完全に魂が抜けてる」 初美「そりゃ、あれだけ啖呵切ったのにそれがそもそも勘違いだったとしたら」 春「恥ずかしさで立ち直れない……」ポリポリ 霞「」ガタガタ 小蒔「あぁ、霞ちゃんが! 霞ちゃんが!」 初美「これは立ち直るのにしばらく時間がかかりそうですよー」 霞「スミマセンスミマセンスミマセン」ガクガク (そのころの阿知賀) 憧「」 隠乃「」 玄「」 灼「あー……」 宥「えっと、いい子だね、この子」 憧「でも、それってつまり、全部ガセネタだったってことだよね?」 晴絵「さすがにこの子の叫びが嘘とは考えにくいね」 灼「それに、冷静に考えれば信憑性に欠ける話ばっかりだった」 隠乃「ネットって怖い……」 玄「うぅ、信じちゃったことに反省」 憧「(あああああああああああああ、噂にかこつけていやらしいこと考えたああああああああああああああああああああああああ)」ブンブン 晴絵「決勝近いのに、大丈夫かねこれ……」 (そのころの新道寺) 煌「あー! あー!」ジタバタジタバタ 仁美「花田、どうしたんです?」 美子「さっきからソファーに寝そべってクッション被ってじたばたしてますけど」 姫子「あー、さっきの生放送? あれで清澄の噂が嘘ってわかったやろ? それでいろいろ自己嫌悪とか恥ずかしさとかで死にたくなっちょるみたい」 哩「花田、しっかりしろ」 煌「うー」ギュッ 哩「ほら、クッションから手ば離せ。勘違いだったんはしゃあないちゃろう」 煌「はい……」オズオズ 哩「なぁ、花田。うちとしても敗退したことは悔しいが、今回の大会で収穫はあったと思っちる」 煌「えっ?」 哩「花田、チャンプから3倍満打ち取ったじゃろ? それに、後半はすさまじい追い上げみしぇたしな」 煌「あれは……なんというか、無我夢中で。あはは、たまたまです」 哩「ふむ?」 哩「(……少し叩いて鍛えれば、変わるかもしれんな)」 ――翌年度、恐るべき粘り強さと土壇場の火力の高さで全国に花田煌という名前を轟かすことになる ――かどうかは誰にもわからない 淡「と言うわけで配信はここまでー。見てくれた人ありがとー」フリフリ 照「これを見てくれた人なら、あの噂が根も葉もないものだっていうのは、わかってもらえると思う」 菫「彼らとて、必死に戦ってここまでやってきたんだ。つまらない噂で彼らの努力に 水を差すのはやめてあげてほしい。各自の良心に期待する」 淡「それじゃー、バイバイ!」 尭深「……はい、今配信を止めました。もう大丈夫です」カチカチ 誠子「ふぃー、肩こった。段ボールの中狭いから」 菫「やれやれ、こういうことはこれっきりにしたいな」 京太郎「あの……」 放心&置いてけぼりのダブルコンボの俺はしばらく口を閉ざしていたけど放送が止まったと聞いてようやく口を開いた。 この部屋へやってきて30分も経っていないのに怒涛の展開すぎるだろう。 照「改めて、ごめんね。騙すような真似をして」 京太郎「いえ、その、そんな」 正直怒るべきかどうなのか判断が付きかねていた。 恥ずかしい思いをするとは聞いていたが、まさか全世界に醜態を晒すことになるとは思いもしない。 菫「動揺するのはわかる。無茶苦茶な手段だしな。咎められても文句は言えないな」 尭深「ん……ただ、やっぱり結構な効果があったみたいですよ。掲示板見てるんですが結構な騒ぎになっています」 誠子「どれどれ。『感動した』『私は最初っから嘘だと信じていた』 『つーかそもそもこの話言い出したの誰よ』 ……手のひら返し早いなぁ」 尭深「結果的にウチがこの放送をしたことがある程度の説得力を持たせたみたいですね。 それでも悪く言ってる人はいますけど、少数派ですね」カチカチ 京太郎「そう、ですか。……それは、よかった」 いろいろ腑に落ちないものはあるがこの状況に一撃を加えてくれたことには感謝しなくちゃいけないだろう。 照さんの確認に「体張っても恥ずかしい思いをしてもいい」と返してしまった手前、強く出れないというのもある。 考えてみれば既に俺の名前、学校、顔写真までネットに出回っていたんだ。 それらは噂が沈静化したところで消えないわけでして。 今更ひとつ動画が増えても大して状況は変わるまい。 嫌な話だけど。 菫「しばらくは注目を浴びるかもしれないが、悪い感情は持たれないだろう」 照「本当に、上手くいってよかった」 それにしてもだ。 京太郎「その、もし俺が皆を悪く言われたときに何も言い返さなかったらどうしたんですか?」 照「そんなことは考えなかった」 京太郎「そんな無茶苦茶な……」 即答である。 おいおい、ちょっとそれはノープランすぎやしないか? そう口に出そうと思ったが照さんは自信を帯びた口調で続けた。 照「須賀君が喫茶店で私に対してあの噂が嘘だって説明してくれた時の必死さと 真剣さを見て、本当に仲のいい部だっていうことはわかったから」 照「絶対に反論してくるだろうって、確信していた」 淡「そーれーにー、あれだけ負けて顔真っ赤にしてる奴がそんなに 気の長い奴なわけないじゃーん。絶対ガチギレすると思ったよ」ケラケラ 今までパソコンをいじりまわしていた大星がにやにや笑いながら口を挟んできた。 相変わらず憎たらしい奴め。 反論できないけど。 しかし、大星はともかく照さんとは今日会ったばかりだっていうのに俺と言う人間がいろいろ見透かされてるのにちょっと驚く。 やはり麻雀強い人と言うのはどっかそういう感覚が鍛えられているのだろうか? まぁ、騙された感はあるし気恥ずかしさもあるけれど、結果が出たのならこれ以上どうこう言うこともあるまい。 ならば、言うことは一つだ。 京太郎「まぁ、その、すっごい無茶苦茶な手段ですし、これ訴えたら勝てるんじゃないかって気もしますけど」 尭深「(ぎくっ)」 京太郎「でも、効果はあったみたいですし……だからその、ありがとうございました。わざわざ俺たちのために」 菫「構わんさ。照の頼みだったし、何より決勝で戦う相手だ。盤外の事情で勝負に水を差すのは本意じゃない」 何この人男前。 これが王者の風格っていうやつですか。 全力を受け止めた上で叩き潰すとかいうそういう横綱相撲的な。 照「それに頑張ったのは須賀君だから。私たちは少し協力しただけ」 俺はただブチ切れて喚いていただけなのだが。 しかし、冷静に考えるとそんな姿をたくさんの人に見られたわけだ。 落ち着いてきて、今更ながらすごく恥ずかしくなってきた。 淡「ふふー、なかなかいいキレっぷりだったよ」 京太郎「こいつ……」 また何か突っかかってくるのかと思ったけどいきなり神妙な顔をしてこっちを見てくる。 思わずぎょっとして二の句が継げなくなってしまった。 淡「仲間をあんなふうに言われたら誰だって怒るよね。フリだったとはいえごめんね、酷いことを言って」 そう言って頭を下げてくる。 ……この卑怯者め、そう素直に謝れると何も言えないではないか。 こういうタイプの人間が殊勝に謝ってくると効果は絶大だとひしひしと感じた。 京太郎「いいよ、別に。もう気にしてねーし」 淡「うん、よかったぁ!」 結局あっさり許してしまう自分のチョロさに若干自己嫌悪を覚える。 俺はちょちょぎれそうになる涙をこらえながら、これから控室に戻るのにどういう顔をして戻ればいいのか頭を悩ませていた。
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3387.html
~インターハイ9日目~ 店員「いらっしゃいませー、6名様でよろしかったでしょうか?」 菫「5……いや、えっと」チラ 京太郎「やべぇ……マジやべぇ……」ブツブツ 菫「……」 菫「(大丈夫か、この子……?)」 菫「は、はい。6人?でお願いします」 店員「それではこちらのお座敷へどうぞー」 菫「はい」 店員「それではご注文がお決まりになりましたら、こちらのボタンを押してお呼び下さい」 菫「あ、ハイ……ありがとうございます」ペコ 店員「では、ごゆっくりどうぞ」 京太郎「……」 照「……」 淡「……」 亦野「……」 尭深「……」 菫「(平常心……平常心……)」 菫「……」 菫「……えー、では」 菫「皆、まずはありがとう。ここまでよく頑張ってくれた」 菫「おかげで私達は無事、決勝まで辿り着く事が出来た」 菫「とても厳しい戦いだったと思う」 菫「だが決勝では更に……」 照「菫……」クイ 菫「ん、なんだ?」 照「関係無い人も居るのに大会の話をするのは……」チラッ 京太郎「……」ポカーン 菫「……」 菫「あ、あぁ……そうだな。すまなかった」 菫「……」 菫「(あれ?)」 菫「(なんで私が謝ってるんだ?)」 菫「(その関係ない子を連れて来たのはお前じゃないのか?)」 照「お腹空いた……」グー 菫「(大体この子……何者なんだ?)」 京太郎「……」オロオロ 淡「ちょっと、落ち着きなよキョータロー」 照「面白いから止めなくていい」 菫「(淡や照とも面識があるみたいだし……)」 京太郎「……」ガタガタ 菫「!」 菫「(思い出した、インハイ初日の!)」 … …… 菫「すみません……うちの部員がご迷惑を」ペコペコ 京太郎「いや全然気にしてねっすよwww寧ろいい経験になりましたwwwwはェww」 淡「申し訳ありませんでした……」ボロボロ 照「許してあげて……」 菫「お前も謝れバカ!」ゴチン 照「いたい…」ビリビリ …… … 菫「(照と淡が攫ってきた子か!)」 照「お腹空いた……」グー 淡「テルー、見て見て」クイ 照「ん」 淡「おしぼりでアヒル!」バーン 照「おぉ……」 菫「……」 菫「(わからん……つまり、お詫びに誘った。という訳か?)」 尭深「……」 亦野「……」 亦野「(なんだこの状況……)」 亦野「(というか誰なんだ、この男の子……?)」 京太郎「……」 亦野「……」 亦野「(宮永先輩が連れてきて、とりあえず近くのファミレスに入ったけど……)」チラ 照「出来た」グシャ 淡「……」 淡「テルー、不器用過ぎだよ……」 亦野「(ダメだこの人達)」 亦野「(弘世部長は……)」チラ 菫「うーん……」←頭を抱え込んでる 亦野「(良かった……悩んでるの、私だけじゃなかった……)」ホッ 亦野「(……)」 亦野「(尭深……)」 尭深「……」 尭深「(……誠子、誠子)」 亦野「(あ、あぁ……なんだ?)」 尭深「……」 尭深「(こ、の、場、を)」 尭深「(盛、り、上、げ、て)」 亦野「……」 亦野「(無理)」 尭深「……」 尭深「(じゃあ……)」 尭深「(自己、紹介、に、持っていって)」 亦野「(まぁ、それならなんとか……)」 亦野「……」 亦野「えーと」 亦野「折角集まったんだし、まずは皆の自己紹介から……」 菫「(合コンか!?)」 菫「(いや、亦野が精一杯がんばってくれてるんだ……まずは乗っかろう)」 亦野「それでは……えーと」 尭深「(各自、名前と……)」 亦野「各自名前と……」 菫「(よし、いいぞ亦野!そのまま……)」グッ 尭深「(二つ名)」コク 亦野「……あと、二つ名を」 菫「(二つ名!?なんだそれは!?)」 尭深「……」 尭深「それでは私から……」スタッ 菫「(尭深!)」 菫「(ここでお前なのか!?)」 尭深「……」 尭深「白糸台虎姫のお茶汲み担当、渋谷尭深です。以後お見知りおきを……」 菫「(なんだソレ……)」 京太郎「……」パチパチ 亦野「……」パチパチ 照「……」パチパチ 淡「わー!」パチパチ 菫「(えっ)」 菫「(驚いてるの私だけか!?)」パチパチ 菫「(それにしても……)」 亦野「……えーと次は」 尭深「(次、誠子)」 亦野「わ、私が……自己紹介を」 尭深「……」パチパチ 照「……」パチパチ 淡「亦野先輩だー!」パチパチ 京太郎「……」パチパチ 菫「(なんでコイツ達ノリノリなんだ?)」 菫「(尭深は……さっきのは例外として……)」 菫「(亦野に尭深……二人とも自分から場を仕切りたがるようなタイプではない思っていたんだが……)」 菫「(うーん……)」 亦野「え、えーと……」 亦野「(私の二つ名ってなんだ!?)」 尭深「……」サッサッ 亦野「(釣り?フィッシャー?)」 尭深「×」サッ 尭深「(コメディ、担当)」パクパク 亦野「……」 亦野「コメディ担当!亦野誠子です!」シャキーン 菫「な……」 菫「(よりにもよって亦野がコメディ担当!?)」 菫「(いや、まずコメディ担当ってなんだ?)」 尭深「……」パチパチ 照「おぉ……」パチパチ 淡「おおー」パチパチ 京太郎「……」パチパチ 菫「(さっきから亦野は一体何を言ってるんだ……)」パチパチ 照「じゃあ、次は私が……」ムクリ 菫「(照か。ある意味こいつが一番危険だ……この状況の元凶だしな)」 淡「テルーだ!」パチパチ 照「……宮永」 照「……」シーン 照「照です!」カッ 亦野「……」パチパチ 尭深「……」パチパチ 淡「わーわー!」パチパチパチパチ 京太郎「……」パチパチ 菫「……」パチパチ 菫「(あれ、二つ名は)」 京太郎「宮永先輩、二つ名忘れてますよ」 照「あぁ……」 照「まぁいいや」ポリポリ 淡「ご飯前にポッキーはやめなよー」 菫「(ダメだ……コイツに突っ込んだら負け(?)だ……)」 淡「じゃあ次、私!」スタッ 菫「(淡か、淡は別に問題無いだろ)」 淡「えと、えと…」 淡「こ、コスモ級1年生!大星淡です!」 菫「(ああ……)」 菫「(悩んでも、いつも通りの淡だ……)」パチパチ 尭深「(かわいい……)」パチパチ 亦野「(コスモ級ってなんだ?)」パチパチ 淡「せんきゅー!せんきゅー!」 照「次、菫どうぞ……」パチパチ 菫「わ、私か」 菫「(流れに乗るか、それとも……)」 京太郎「……」パチパチ 菫「(この男の子を先に持っていくべきか……)」 菫「(私はどうするべきなんだ……)」 菫「うーん……」 亦野「(ああ、部長……あんなに悩んでらっしゃる……)」 菫「(ダメだ……私一人じゃ判断が出来ない……)」 菫「(取り敢えず、まともそうな二人に指示を仰ごう)」チラ 菫「(亦野)」 亦野「……」 菫「(はダメだ……)」 菫「(こいつは何故かさっきから意味不明なボケを連発している……)」 菫「(と、なるとやはり渋谷か……)」チラ 尭深「……」グッ 菫「!」 菫「(GOサインか!?)」 尭深「……」コク 菫「(行けということか!?)」 照「菫、早く」 菫「くっ……分かった」 菫「……」スタッ 菫「白糸台麻雀部の部長、兼シャープシューター!弘世菫です!」 照「ぷっ……」パチパチ 淡「プププ……」パチパチ 尭深「素晴らしいです、部長」パチパチ 亦野「……」パチパチ 京太郎「……」パチパチ 菫「お、おぉ……皆、ありがとう……」 菫「(照と淡は後でシめよう)」 菫「それじゃあ次は……」 淡「あ、ねーねー!」ピョンピョン 菫「(もうお前は黙ってろ淡!)」 淡「そういえば菫のシャープシューターってさ、どういう意味なの?」 菫「な……」 亦野「(うわ……)」 尭深「(がんばって下さい、部長)」 菫「……えーと」 菫「(私も世間からそう呼ばれてるだけで意味なんて知らないんだが) 」 菫「(よし、無難だ)」 菫「わた……」 照「普段割と使ってる物」 菫「……」 菫「(コイツ、また余計な事を……)」 38 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/02/12(火) 02 38 55.84 ID Y+J3RNGc0 [23/31回(PC)] 淡「えー、なんだろ?」 照「勉強の時よく使う……」 誠子「あの……」 誠子「それ、もしかしてシャープナーのことですか?」 照「!」 照「……」ダラダラ 京太郎「宮永先輩……」 淡「私、テルーの将来が心配だよ……」 菫「(こいつに心配されたら本当に終わりだな……私も気を付けよう)」 39 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/02/12(火) 02 39 24.58 ID 2WQrcw8S0 [2/2回(PC)] し 40 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/02/12(火) 02 39 26.87 ID izhLVhwj0 [1/1回(PC)] 支援 41 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/02/12(火) 02 41 08.24 ID Y+J3RNGc0 [24/31回(PC)] 菫「と、とにかく!」 菫「私たちの紹介も済んだ事だし、そろそろ彼の紹介を……」 京太郎「え、えーと……俺は」 照「……」 照「姉弟です」 菫「な……」 菫「(ここに来て姉弟!?)」 菫「(こいつ確か妹は居ないって……)」 菫「……」 京太郎「……」ポカーン 菫「(まさか妹じゃなくて弟なら居ます。みたいなそんなオチか!?)」ガーン 亦野「(部長……)」 42 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/02/12(火) 02 41 17.57 ID vJKEY3Zf0 [2/3回(PC)] 支援 43 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2013/02/12(火) 02 43 21.09 ID 1wOyOeap0 [1/1回(PC)] おい!あらたその悪口はやめろ! 44 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/02/12(火) 02 44 46.66 ID Y+J3RNGc0 [25/31回(PC)] 照「正確には淡の兄です」 菫「……」 菫「(こいつ……もうふざけてるだけなんじゃないのか?)」 菫「……」 菫「そうなのか?淡」 淡「え、えーと……」オロオロ 菫「(焦っている……やはり嘘か……)」 尭深「弘世部長、私……」 尭深「淡に兄が居る、と本人から聞いたような記憶が……」 亦野「(そっちに助け舟!?)」 45 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2013/02/12(火) 02 46 24.45 ID Y+J3RNGc0 [26/31回(PC)] 菫「そ、そうか……ありがとう」 菫「(くそ、渋谷の介入で一気に状況判断が難しくなった……)」 菫「(もしかして、こいつもグルか?)」 尭深「……」ズズー 菫「(お茶の湯気で眼鏡が曇って表情が伺えない……)」 菫「(もう本人に聞こう。最初からこうすれば良かった……)」 菫「あの、失礼ですがこちらの……大星淡のご兄弟の方でしょうか?」 京太郎「いや、俺は……」 淡「(面白そうだから乗っかって!)」 京太郎「(マジですか……)」 京太郎「は、はい。そうです」 京太郎「(確か大星だったよな……大星、大星……)」 京太郎「……」 京太郎「兄の大星須賀京太郎です」キリッ 尭深「……」 菫「……」 菫「(おおほしすがきょうたろう?)」 菫「(どういうことだ……大星が名字なら……下のすがきょうたろうが名前か?)」 菫「あの……すみませんが、どういった漢字を使うのか教えてもらっても」 照「書いた」スッ 菫「いや、お前には聞いてないんだが……」ペラ 菫「大星・S・京太郎……」 尭深「ぷっ……」 亦野「……」 菫「(兄妹と言われても一応分かるが……二人とも綺麗な金髪だしな)」 京太郎「……」 淡「……」 菫「(だがこのミドルネーム(?)は何なんだ……)」 菫「(淡にはついてないし……もしかして洗礼名か何かか?)」チラ 菫「照、ちょっと聞きた……」 照「……ぷくく」プルプル 菫「……」 菫「ふう……」 菫「おい、照」 照「何、菫……」 菫「ちょっと来い」 照「命を大事にしないやつなんてだいっきらいだ……」ズルズル 淡「ああ……テルーが……」 菫「お前もだ、淡」 淡「……」 淡「はーい……」スタスタ 菫「あと、尭深も来い」 尭深「……」スタスタ 京太郎「……」 誠子「……」 誠子「じゃ……そういうことで」スタスタスタ 京太郎「……」 京太郎「死のう」 カン
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6427.html
【銭湯】 一同「混浴!?」 番頭「最近お客が来なくなってねえ、これなら家族もアベックも来やすいと思ってねえ」 京太郎(この面子で混浴なんて願ってもみないビッグチャンスじゃないか!) エイスリン「コンヨク?」 華菜「京太郎と一緒に入れるってことだし!」 エイスリン「イクノ?」 郁乃「京太郎くんと一緒に入れるってことやで~」 エイスリン「ヤタッ!」ニコッ 華菜「なんで無視するんだし!」 照「京、私のスタイルに酔いしれるといい」 京太郎「いやそれだけはないから安心しろ」 霞「昔は別々だったのに……」 京太郎(これで霞さんの胸を生で……) 番頭「あ、水着は着るようにな」 京太郎「は……?」 カポーン 京太郎「シャワーが共同なだけまだマシか……」 京太郎「皆が入って来るまで何しよ」 京太郎「待ってるか……」 ガララ 照「京、もう来てたの」 京太郎(レーザーレーサー!?身体洗えねえだろ!) 照「これが似合ってるって言われた」フフン 京太郎「出るとこ出てないからだろ」 照「…………」ズーン エイスリン「キョウタロー、オマタセ!」 京太郎「」ブフォッ 京太郎(白の紐……だと……)ドバドバ 京太郎(エイスリンさんは無いものだから興味が無かったが)ドバドバドバドバ 京太郎(くっ……)ドバドバドバドバドバドバドバドバ 京太郎「天使、か」ガクッ 照「きょ、京ーー!!」 華菜「おーい京太郎ー起きろー」ペシペシ 京太郎「ん……」ムクッ 霞「顔色悪いけど、大丈夫?」 京太郎(ハイレグ……)チラッ 霞「京太郎くん?」ドタプーン 郁乃「も~寝るの早いで~」 京太郎(この中だと郁乃さんが一番普通なんじゃ……)チラッ 郁乃「どうどう?似合っとるか~?」ポニョン 京太郎「郁乃さんらしくていいと思いますよ……」チラッ 霞「こっちはどうかしら?」ドタプーン 京太郎「」ブフォッ 霞「えっ?京太郎くん?京太郎くん?」ユッサユッサ 怜(先生に行ってみたらどうや、って言われて近所の銭湯に来たはええけど……) 照「これなら泳げるかも」←レーザーレーサー エイスリン「~♪」シャアァー←白の紐水着 華菜「はぁー今日も疲れたなー」←薄桃色のワンピース 郁乃「京太郎く~ん、大丈夫~?」←黒のマイクロビキニ 霞「京太郎くん!京太郎くん!」←白のハイレグ 京太郎「Oh yes...」ドバドバ 怜「何やこの惨状は……」 京太郎「うおぉ……クラクラするぅ……」 照「京、大丈夫?」 京太郎「お前なら何とか大丈夫だ」 照「…………」ジトッ 京太郎「冗談だから!殺気感じるからやめて!」 照「…………わかった」 照「その代わりに、京の背中を流す」 京太郎「何の代わりだよ……」 照「私に任せて」 京太郎「……じゃあよろしく」 照「うん」 照「どう?」ゴシゴシ 京太郎「んー気持ちいいぞー」 照「良かった」ゴシゴシ 京太郎「毎日やってほしいくらいだぜ」 照「…………」 京太郎「照?手ぇ止まってるぞ?」 照「ごめん」 照(毎日……) 照「……」ギュッ 京太郎「おっ、おい、照、何だよ?」 照「京の背中、大きい」ギュッ 京太郎「おーい?聞こえてるかー?」 京太郎「ちょっと当たってんだけど……」 照「……当たってるんじゃない、当ててる」ギュッ 京太郎「お前に言われてもなぁ……」 照「」プチッ ミシミシミシミシ 京太郎「照!?腹!腹がおかしなことになるガハッ!」 ミシミシミシミシ 京太郎「柔らかい!十分柔らかいから!興奮するから!」 照「…………」 照(ずっとこうしていたい)ギュッ ミシミシミシミシ 京太郎「グハァッ!」 京太郎「」チーン 怜「京くーん、起きとるかー」ツンツン シャァー 照「終わったよ」 京太郎「おう、あんがとな」 照「身体洗ってくるから先にお風呂入ってて」 京太郎「あー、じゃあ俺が洗ってもいいか?」 照「えっ……」 京太郎「おい何だその汚物を見るような眼は」 照「だって京はセクハラしてきそうだし……」 京太郎「しねーよするわけねーだろ」 照「」プチッ メキメキメキメキ 京太郎「あああああアイアンクローやめて!」 メキメキメキメキ 京太郎「わかった!セクハラするから!照の身体エロくてセクハラしちゃうから放して!」 照「そういうことなら……いい」 京太郎(何だこのやり取り!) シャアー 京太郎「シャンプー入るかもしんないから目瞑ってろよ」 照「子どもじゃないんだから大丈イッ!」 京太郎「ほれ言わんこっちゃねえ」 照「…………」シュン 京太郎「顔は後で洗えよ、で問題は身体だけど……」 京太郎(レーザーレーサーぴっちりしすぎだろ……) 京太郎(洗う方法つったら脱がせる……禁止されてるからダメだな) 京太郎(だとすれば……) 京太郎(水着の中に手を入れる!) 京太郎「照、ちょっと我慢しろよ」 照「何をする気、ひゃっ!」 京太郎「こうでもしねえと洗えねえんだよ」ゴシゴシ 照「……後で覚えてて」 京太郎「やなこった」ゴシゴシ 照「冷たいよ」 京太郎「俺はあったかいぜー」 京太郎(照の肌、こんなに柔らかかったんだな) 京太郎(洗ったばかりだからいい匂いもするし、少し色っぽい) 京太郎「」ムクッ 照「?」ビクッ 照「京、骨が当たってるみたい」 京太郎「骨?」 JR京太郎「ムクッ」 京太郎(サポーターが効いていないのか!?) 京太郎「お、おう、もうちょい待っててな」ゴシゴシ ムニョムニョ 京太郎(今は萎えるのを待つしかない!)ゴシゴシ ムニョムニョ 照(さっきからくすぐったい……でも人の身体にこんな尖った骨があるのかな?) 照「……」フリムキ 京太郎「うわっ、見るな!」 照「…………」 京太郎「」ムクッ 照「」 京太郎(これってひょっとしたら死ぬんじゃあ……)ダラダラ 照「…………」ツンッ 照「京、この骨は何?」 京太郎(……気づいていないのか?) 照「少し柔らかいけど……」ツンツン 京太郎(保健体育とかは寝てそうだもんなぁ……) 照「?」ツンツン 京太郎(照には男特有の骨ってことで納得してもらった) 京太郎(昔は四人で風呂入ったんだけどな……) 霞「はぁ……」 京太郎「そんなため息ついてどうしたんすか?」 霞「私の身体、少し水着だと洗いにくいのよね……」 京太郎「……ああ、なるほど」 霞「この際京太郎くんでいいかしら……でも……」ブツブツ 京太郎(俺ってどんだけ信頼無いんだろう) 京太郎「霞さん!俺を信じてください!絶対に霞さんのおっぱいを弄ったり揉んだりしたいなんて思ってませんから!」 霞「いまいち信じられないのよね……」 京太郎「この目を見てください!」ギン 霞「心底信頼できなさそうね」 京太郎「俺の評価低すぎるでしょ!」 霞「そうねぇ……目隠ししてくれたら、お願いするけど」 京太郎「了解しました!」キラキラ シャァー キュッ 京太郎「終わりましたよ」メカクシ 霞「ありがとう、助かったわ」 京太郎「いえいえ、どういたしまして」 京太郎(予想外だった……) 京太郎(まさか目隠しをするだけではなく) 霞「」ニギッ 京太郎(玉質を取るとは……!) 霞(はっちゃんの男対策実際にやってみたけど……) 霞(……癖になりそうな触り心地ね)ニギッ 京太郎「ヒィッ」 京太郎「死ぬかと思った……」 エイスリン「」ジーッ 京太郎「?」 京太郎(何か視線を感じるような……)チラッ エイスリン「……」プクーッ 京太郎「エイスリンさん?」 エイスリン「!」アワワワ 京太郎「何やってるんですか?」 エイスリン「キョウタロー、ワタシモ!」 京太郎「え?」 エイスリン「ワタシモ!……?」ハテ? エイスリン「…………アゥゥ」 京太郎(エイスリンさん、何が言いたいんだ?) 京太郎(ホワイトボードも無いし……そうだ!) 京太郎「エイスリンさん!」フキフキ エイスリン「?」 |write me!| 京太郎(鏡を使えばいいんじゃないか!) エイスリン「!」フキフキ |エイスリンが泡だらけになっている絵| 京太郎「つまりエイスリンさんも俺に洗え、と」 エイスリン「!」コクコク 京太郎(他の二人よりは楽そうだし……まあいっか) 京太郎「そこで洗いましょうか」 エイスリン「アリガトウ!」 京太郎「どういたしまして」 京太郎「お痒いところはございませんかー?」ゴシゴシ エイスリン「ダイジョーブ!」 京太郎(胸は中寄りの小、さして興味はない) 京太郎(だがこの水着がいけない、どう考えたって誘ってるんだもの) エイスリン「キョウタロー?」 京太郎(いや待てよ?照がアレだったんだ、エイスリンさんなら……)ゴクリ 京太郎「あー手が滑ってしまったぞー」ボウヨミ ツルッ エイスリン「ンッ……?」 京太郎(集中しろ!須賀京太郎!) サワッ エイスリン「ッ!」 エイスリン「……キョウタロー……?」 京太郎「まだじっとしててくださいねー」 エイスリン「……?」 サワサワ エイスリン「ンンッ!!」 京太郎(触るだけでこんなになるなんてどれだけ……) 京太郎(あと一回……いや三回、いやいや五回……) サワッ エイスリン「ハァッ……ハァッ……」ビクッ ビクッ 京太郎(やりすぎたかな?) 京太郎(あとはちゃんと脚とか洗わないと……) 京太郎「あーすっきりしたー!」 照「気持ち良かった」ポカポカ エイスリン「キモチヨカッタ!」ポカポカ 霞「たまにはこういうのもいいかもしれないわね」ポカポカ 郁乃「楽しかったな~」ポカポカ 華菜「カナちゃんを楽しませるとはよくやるし!」 怜「なんでこの人たちと一緒におるんやろ……」 郁乃「お風呂上りと言えばやっぱりコーヒー牛乳やな~」 照「いちご牛乳が一番だと思う」 霞「普通の牛乳もいいと思うけど?」 怜「フルーツ牛乳でもええやろ」 エイスリン「?」 華菜「コーラに決まってるだろ!」 ヤイノヤイノ 京太郎(俺はどうしようか) 京太郎(こういう銭湯とかに来たときはいちご牛乳って決めてるんだよな) 京太郎「照ー、いちご牛乳買おうぜー!」 照「やっぱり京はわかる子だね」グッ 京太郎「風呂上りだと牛乳といちごの両方の甘さが強まって美味いんだよな!」 照「それがあの人たちにはわからんのですよ」 京太郎「くくくっ、可哀想な奴らめ」 一同「」イラッ 照「それじゃあ買いに行こう」 京太郎「おうよ!」 京太郎(……だんだん、照の言葉の端に気持ちが見えるようになってきた) 京太郎(気のせいかもしれないけど) 照「京、一口いる?」 京太郎「俺とお前で同じもの飲んでるだろ」 照「それもそうだけど……」 照「…………」シュン 京太郎「…………はぁ」 京太郎「ほらよ、一口」つ瓶 照「ありがとう、私も」つ瓶 ゴクッ 京太郎「うん、やっぱり美味い!」 照「うん」 京太郎(あれ?これって間接キスなんじゃ……)チラッ 照「?」 京太郎(……ま、照がそんなこと知ってるわけないし) 京太郎(照が狙ってるとは思えないから、違うか) 京太郎(畜生、恥ずかしがってる照を期待した俺がバカだったぜ!) 【11月第4週 平日2】終 【夜】 「年末にはそっちに帰って勉強するつもりだよ」 「その話だけど、あなたはいいの?」 「そっちでできたお友達と過ごせる時間、ニホンならあと四か月もあるんでしょ?」 「もうやりたいことはやれたからいいよ」 「ニホンの大学にだって、支援はしてあげるのに、どうして画家なんて目指すの?」 「麻雀もまだ続けたいんでしょ?」 「麻雀は、みんなの足を引っ張ってばかりだからやめようと思うの」 「それならニホンにいるより、そっちの大学に行って、おじいちゃんのところで絵の勉強がしたいなって」 「……そう、わかったわ。そっちはもう夜遅いんでしょう?もう切るわね」 「ありがとう、お母さん」 「おやすみ、エイスリン」 エイスリンが清々荘からいなくなるつもりのようです 【街】 郁乃「~♪」 郁乃(今日も楽しかったな~) 郁乃(京太郎くんといっぱい話せたし~こんなんやったらずっとこのままでもええかもな~) 「おい、そこの姉ちゃん」 郁乃「は~……」 「ちょっと寝たってな」 ドゴッ 郁乃「ッ!」 チンピラ1「ええ顔のしかめ方やなぁ」 チンピラ5「あーせや、こんな顔やったわ。まさか最新の睡眠薬が成長を退行化?させる薬やったとはなぁ」 チンピラ4「写真ともピッタシ!正真正銘の赤阪郁乃はんやな」 チンピラ2「あぁ、元姫松の代表やったっけ?」 チンピラ3「こないな上玉襲おうとしとったとはなぁ」 チンピラ1「なんでもええ、はよ車に運びぃ」 郁乃(この人たち……あんときの……) 郁乃(なんで、また見つかってもうたんや) チンピラ6「クルマガデルデー」 郁乃(助けて……) 郁乃が清々荘からいなくなりました 【11月第4週 休日】 京太郎「あんな広い風呂に入ったおかげからか身体が楽だ!」 京太郎「早起きも楽々だし、絶好調だ」 京太郎「こんな朝は何をしよっかなー」 朝 京太郎「ちはーっす!」 由子「京ちゃん、こんにちはなのよー」 おっさま「今日も頑張ってなー」 京太郎「今日はエイスリンさんいないんですか?」 おっさま「奥におるけど、少し元気が無いように見えたな」 京太郎「そうですか、わかりました」 由子「あっちの卓にホットコーヒーよろしくなのよー」 エイスリン「ワカッタ」 京太郎「エイスリンさんそれアイスティーですよ!」 エイスリン「ア……」 京太郎「ホットコーヒーはこっちです、しっかりしてくださいね」 エイスリン「ウン……」シュン 京太郎(なんかいつもと違うような気がするな……) カランコロン 京太郎「あっ、いらっしゃいませ!」 京太郎「――――って、照かよ」 照「京、にエイスリン?」 京太郎「ああ、俺たちここで働いてるんだよ」 照「ふーん……じゃあ次、私と打って」 京太郎「おう!受けて立つぜ!」 結果 京太郎 51+200+35+30=316 照 1+152+90=243 由子 73+120+15=208 エイスリン 57+105+15=177 京太郎「ツモ、4000・8000」 由子「また京ちゃんの一人浮きなのよー」 照(……京ちゃん?) エイスリン「マタ、キョウタローニマケタ」シュン 照(キョウタロー……) 京太郎「ここまで照に勝てるようになるとはなー、あっはっはー!」 由子「最近の京ちゃんはホンマ強いわぁ」 照(京ちゃん……) 照(なんかむかむかする……)ムスー 京太郎「照、どうかしたか?」 照「なんでもない」ムスー 京太郎「?」 由子「お茶いれてきたのよー」 京太郎「ありがとうございます!由子さんのお茶好きなんですよ!」 由子「京ちゃんに喜んでもらえるとこっちもうれしいのよー」 キャッキャ 照「むぅ……」プクー カランコロン 京太郎「いらっしゃいませー」 洋榎「ほぇー、こんなとこで働いとったんかー」 雅枝「京太郎、リベンジや!はよ卓に着きぃ!」 京太郎「ええっ、何すかいきなり!」 洋榎「京太郎に勝てばウチが日本一なんや!はよ卓に着きぃ!」 京太郎(なんだこの親子……面倒くせぇ) カランコロン 由子「いらっしゃいませー」 小蒔「わぁ、ここが雀荘ですかぁ」 初美「滅多に来れませんからねー」 初美「むむっ!あそこに須賀京太郎がいるのですよー」 京太郎(さらに面倒くさい雰囲気……!) 京太郎「あ、あははー、どうもー」 小蒔「須賀さん、お久しぶりですっ!」ペコッ タユン 京太郎(前言撤回、ここはさながら天国だ) 洋榎「あ!アンタ永水の先鋒やないか!」 小蒔「愛宕さん、でしたっけ?もお久しぶりですっ!」ペコッ タユン 洋榎「」イラッ 洋榎「なぁ、オカン、ウチ神代と打ってもええか?」 小蒔「えっ、どうしてですか!?」 洋榎「けったいな胸しよってからに……」ギリッ 京太郎「今回も勝ちますよ!」 小蒔「私が勝ちます!」グッ タユン 洋榎「神代……飛ばしたるわ」イライラ 初美「姫松の主将も子どもっぽいですねー」 洋榎「見た目小学生に言われたないわ!」 結果 京太郎 24+200+35+30=289 小蒔 52+(100+160)÷2+30=212 洋榎 88+133+15+15=251 初美 12+116+30-30=128 初美「なんで蚊帳の外だったはずの私が一人沈みなんですかー……」 洋榎「やっぱり女は胸やないっちゅうことやな!」ペターン 小蒔「はっちゃん、元気出してください!」タユン 初美「うわーん!姫様ー!」 小蒔「いいこいいこー」ナデナデ 洋榎「やっぱり洋榎ちゃ「なんか」」 京太郎「こうして見てると親子みたいですね」 小蒔「そうですか?」 洋榎「あ、あのー」 京太郎「薄墨さんが子どもで神代さんがお母さん、みたいな?」 小蒔「それなら須賀さんはお父さんですね!一緒にはっちゃんをなでなでしましょう!」 京太郎「どういう理屈!?」 洋榎「…………」ブ゙ワッ 京太郎「いいこいいこー」ナデナデ 小蒔「いいこいいこー」ナデナデ 初美「私はそこまで子どもじゃないのですよー」ニヘニヘ 洋榎(あかん……入りにくい雰囲気が作られとる……) 京太郎「言動と行動が一致していないような……あ、洋榎さんもなでなでしますか?」 洋榎「ええんか!?」パァァ 京太郎「洋榎さんは姉ポジションということで」 洋榎「ほなウチも!」ガバッ 初美「もうこれ以上撫でないでほしいのですよー」 洋榎「…………」ガーン 洋榎「…………」シュン 雅枝「京太郎、国麻から勢いづいとるな」 由子「ここ最近負けなしなのよー」 雅枝「男子やっちゃうんに大したやつやなぁ」 エイスリン「…………」 夕 京太郎「今日はなんかいっぱいもらえたな」 京太郎「奮発して買い物しよっと」 京太郎「何を買おうかなーっと」 京太郎「麻雀教本、小説、参考書……あれ、あの人は……」 お品書き 1.牌のお姉さんの麻雀教本 中級編…2000円 2.牌のお姉さんの麻雀教本 上級編…2800円 3.小鍛治健夜の目指せ!グランドマスター!…2800円 4.戒能良子のものまね王!…2800円 5.迫り来る怒涛の修羅場…2000円 6.女性を落とす40の方法…1000円 7.ライトノベル…600円 8.小説…600円 9.参考書…900円 憩「文系科目はええとして、理系科目……」 京太郎「」コソコソ 憩「数学はやっぱり赤チャートがええかな……」ブツブツ 京太郎「わっ!」 憩「ひゃぁっ!」 京太郎「びっくりしました?」 憩「なんや京太郎くんかぁ、心臓が止まるか思ったわ」 京太郎「何探してるんですか?」 憩「参考書を探しとったんやけど、京太郎くんは?」 京太郎「俺は麻雀の教本とラノベを」 憩「京太郎くんも勉強せなあかんで」 京太郎「それはわかってんですけど、どうも集中できないというか……」 憩「ふふっ、京太郎くんらしいなぁ」 京太郎「憩さんはどうしてそこまで勉強をするんですか?」 憩「お医者さんになれー、って言われとるからなぁ」 京太郎「ああ、お父さんでしたっけ」 憩「……うん」 京太郎「嫌なら嫌、って言った方がいいと思いますよ」 憩「それもそうなんやろうけど……」 憩「……あ、もうこんな時間かぁ。ごめんな、もう行かな」 京太郎「そうですか、じゃあまた!」 憩「はーい、またなー!」 京太郎「憩さん、あんなんでいいのかよ……」 京太郎「あーもう!暇だ!」 夜 京太郎「そうだ、今日は照と菓子パーティーか」 京太郎「メールで呼べばいいだろ」 京太郎「さて、何を食べよう」 ガチャ バタム 京太郎(出てくるの早いな) トタトタ ズルッ 京太郎(なんでこの短距離で転ぶんだよ!) コンコン 京太郎「おう、入れ入れ」 照「……うぇぅ、ぐすっ」ボロボロッ 京太郎「あーあ、膝擦り剥けてるじゃんか、早く入れ」 照「うん」 京太郎「ったく、どういう転び方したんだよ」 照「こう、ズルッと」 京太郎「わからんわ」 京太郎「絆創膏付けて終わりっと」 照「お菓子、どこ?」 京太郎「お前それしか頭にねえのな」 照「そのために来たから」 京太郎「……どうせ俺はどうでもいいんだよな……」ウジウジ 照「あ……そ、そんなことはないよ」アセアセ 照「京も、大好きだよ……?」 京太郎「どうして疑問形なんだよ、まあいいや早く食おうぜ」 照「お菓子は?」 京太郎「ああ、これだよ」 照「こっ、これは……!」 照「東京駅の名店のスイーツセット!」 京太郎「他にもあるけど今日はこれだ」 照「美味しそう……」ジュルリ 京太郎「涎垂れてるぞ」 照「あうっ」フキフキ 京太郎「チーズケーキとプリンケーキ、どっち食べたい?」 照「どっちも」 京太郎「どっちか」 照「…………」ウーン 照「…………」ウーーン 照「…………」ウーーーン 京太郎「おーい、照ー」 照「…………Zzz」 京太郎「寝るな」ペシッ 照「うむっ!」 京太郎「じゃあ半分こでいいか?プリンケーキとチーズケーキそれぞれ」 照「全部食べたい」 京太郎「お前なぁ……」 照「……しょうがない、従う」 京太郎「じゃあ照が先にプリンで、俺がチーズな」ヒョイ 照「うん」 京太郎「いただきます」 照「いただきます」 京太郎「ん……」パクッ 照「……」パクッ 京太郎「うまい!」テーレッテレー 京太郎「そっちはどうだ?」 照「」ニコニコ 京太郎「美味いんだな」 照「京、はい」スッ 京太郎「いいのか?」 照「こうすれば簡単に半分こできるから、あーん」 京太郎「あーん」パクッ 京太郎「お!こっちも美味いな!じゃあ今度は……」スクッ 京太郎「ほい、あーん」 照「……」パクッ 照「……」ニコニコ 京太郎「美味いか?」 照「うん」 京太郎「ふー、食った食ったー」 照「おいしかった」 京太郎「また暇があったら食べるか?」 照「また半分こしたい」 京太郎「だな」 照「スプーンと容器持って帰ってもいい?」 京太郎「綺麗だもんな、二つともいいぞ」 照「ありがとう、じゃあもう帰る」 京太郎「おう、じゃあな」 照「……ふふ」 ガチャ バタム 京太郎「何か今背筋がゾクッとしたような……」 京太郎「風呂入ろ」 シャァー 京太郎「ケーキ美味かったなー、食べさせ合いは予想外だったけど……!?」 京太郎「待てよ……俺がやっていたのは……」 【照の部屋】 照「」クンクン 照(京の匂い……)クンクン 照(これは残った食べかすがあるから……)ペロッ 照「……おいしい」 夜 京太郎「もうすることもないし寝よ……」 「いよいよ夢の対決!」 「男子トッププロVS女子トッププロ!」 「男子代表は須賀京太郎!」 「彼を卓で待つのは女子のツートップ!野依理沙!戒能良子だぁぁー!」 ワァァァ- 理沙「負けない!」プンスカ 良子「たとえ京太郎が相手でも、ベストを尽くすよ」 京太郎「上等です。下剋上、見せてやりますよ!」 ワァァァー! 「男女対抗戦!開始ィィィィッ!」 【11月第4週 休日】終 【12月第1週 平日】 京太郎「充実した夢を見た気がした」 京太郎「身近に感じてたけど、良子さんも凄い人なんだよな」 京太郎「俺もいつかあの人たちに並び立てるのかな……」 朝 京太郎「うぅ寒ぃ……」 京太郎「マフラー編まないとな……」ガクガク 郁乃「京太郎く~ん!」タッタッ 京太郎「おはようございます、郁乃さん」 郁乃「おっはよ~」 京太郎「?痩せましたか?」 郁乃「そないにスリムに見える~?」 京太郎「ええ、まあ」 郁乃「えへへ~なんか照れるな~」 京太郎(そういえば、土日は郁乃さん見かけなかったな……) 京太郎「そうだ、来年のスマブラの新作ってどう思います?」 郁乃「むらびとさんはおもろかったな~、それになかなか強いやんあれ」 京太郎「チャージショットを拾うとか正気の沙汰じゃないですよね」 郁乃「まあうちのガノンちゃんにはつう」 郁乃「WiiFitトレーナーさんも、人選おかしいやろ」 京太郎「今回はネタに走りすぎてる気がしますね」 郁乃「切り札もマリオに似とるしな~」 京太郎「ロックマンはかっこよかったですよね」 郁乃「あの子ははよ使うてみたいな~エグゼくんもおってプログラムアドバンスとかも使えればさらに面白そうやけど」 京太郎「他キャラとソウルユニゾンとかも……ってカービィで十分か」 郁乃「クッパソウルとか見てみたいな~」 京太郎「来年買ったら皆でやりましょうか、果たして誰が一番強いのか!」 郁乃「…………来年、か」 京太郎「どうかしました?」 郁乃「いや~来年でスマブラ歴15年の私を舐めてもろたら困るな~」 京太郎「俺だって伊達にスマブラ歴12年を名乗ってませんからね、負けませんよ」 郁乃「そういえばポケモンって――――」 昼 エイスリン「……」カキカキ 京太郎「誰かいますかー」 エイスリン「」ビクッ 京太郎「エイスリンさん?珍しいですね、部室にいるなんて」 エイスリン「キョウタロー、オベントウ?」 京太郎「一緒に食べますか?」 エイスリン「ウン!」 京太郎「今日は部室の絵を描いてるんですか?」 エイスリン「オモイデヅクリ」 京太郎「あと3か月ですもんね」 エイスリン「…………」ウツムキ 京太郎「エイスリンさんは、どうするんですか?」 エイスリン「……カエル」 京太郎「ニュージーランドの大学ですか」 エイスリン「」コクッ 京太郎「でも確かニュージーランドには麻雀はまだマイナー競技なんですよね」 エイスリン「ダカラ、マージャンヤメル」ウルウル 京太郎「えっ?」 エイスリン「キョウタローモ……アエナイ」ポロポロ 京太郎「…………そうですか」 京太郎(エイスリンさん……予想はできたことだけど) 京太郎(ああして泣いてるのを見るのは、堪えるなぁ) 京太郎「俺と照が見学か」 照「菫とは違ってお菓子食べ放題」 京太郎「あんまり食うと太るぞ」 照「……」ムニッ 照「…………」ガーン 照「暇つぶし」ピッ 京太郎「だからってなんでテレビつけんだよ……」 テレビ「六月に統一牌騒動で世間を騒がせた加藤良三氏は――――」 京太郎「あ、この人こんなことになってんのか」 照「誰?」 京太郎「六月くらいにプロリーグであっただろ、統一牌問題」 照「統一牌?」 京太郎「従来の統一牌は削りにくいように作られてたんだけどこの人が作ったのは削りやすく作られてたんだよ」 照「削る?」 京太郎「まあ細かいことは置いておいて、そんでそんときのこの人の言葉が「私は知らなかった」とかで無責任だーって言われてたんだよ」 照「……?」 京太郎「お前には難しい話だったな、ごめん」 照「莫迦にしないで、私にもわかる」 京太郎「疑問符散々出してたやつが何言ってやがる……」 霞「京太郎くん、ちょっとこっちに来てくれるかしら、照ちゃんは卓に入ってて」 照「わかった」 京太郎「頑張れよ」 照「言われるまでもない」 京太郎「ははっ、そうかよ」 京太郎「で、何の話ですか?」 霞「連盟から連絡があってね、これ」 京太郎「えーっと、プロ・アマ交流戦監督に就任……?」 霞「今年の交流戦は学年対抗らしいのよ」 霞「各学年二チーム、プロは一チームと高麻連公認の選手、つまり私たち教員+プロの一チーム」 霞「合計八チームで行われるんですって」 京太郎「それで俺には二つ目の一年生チームの監督をしろ、と」 霞「そゆこと、あなたは兼任監督だけどね」 京太郎「じゃあ俺も打てるってことですか?」 霞「まあそうね、一年生の候補シートはその二枚目にあるから頑張って考えてね」 京太郎「はい!……てか決定事項なのかよ」 霞「それじゃあみんなのところへ戻りましょうか」 プロ・アマ交流戦、一年生チームBの兼任監督に選ばれました! 夕 京太郎「対戦方式はいつもとは違って四人制」 京太郎「先鋒、次鋒、副将、大将の四人と学生は二人の補欠」 京太郎「俺がどっかに入るとしてあと五人か……」 京太郎「部屋に戻って考えるか、誰かと帰りながら相談でもしようかな」 照「京、これで帰るの?」 京太郎「待ってたのか?」 照「べっ、別に京のことを待とうと思ってここに立ってたわけじゃないんだからね」マガオ 京太郎「その台詞をお前から、しかもそんな無表情で言われてもな……」 照「せっかく本読んで勉強したのに」 京太郎「その本はアテにならないから捨てておけ」 照「そうする」 照「京が好きな台詞とかは無いの?」 京太郎「好きな台詞?」 照「私に言われてみたいこと」 京太郎「そう言われてもなぁ……」 京太郎「俺が言われてみたいのはだなー」ゴニョゴニョ 照「……そう」 照「じゃあ、言うね……」 京太郎「……」ゴクリ 照「今日産婦人科行って来たんだ」 照「…………」 照「先生に言われたんだ……おめでただって」サスサス 京太郎(いいなぁこの一線越えた感じ)グッ 照「ごめんね、京まだ結婚できないのに」 京太郎「ん?」 照「私のせいで京に迷惑がかかる」 京太郎「おい、もう終わってるんじゃないのか」 照「ごめんね、ごめんね、子どもなんか作っちゃって」 照「もう京の目の前には現れないから、じゃあね」 京太郎「なんで鬱になってんだよぉ!?」 照「こっちの方が京が好きかと思って、あと本に載ってた」 京太郎「もうその本燃やせ」 照「でも、どうやったら子どもは腹にできるの?」 京太郎「…………」 京太郎「お前は純粋なままでいてくれ」 照「?」 京太郎「俺が言われてみたいのはだなー」ゴニョゴニョ 照「……そう」 照「じゃあ、言うね……」 京太郎「……」ゴクリ 照「今日産婦人科行って来たんだ」 照「…………」 照「先生に言われたんだ……おめでただって」サスサス 京太郎(いいなぁこの一線越えた感じ)グッ 照「ごめんね、京まだ結婚できないのに」 京太郎「ん?」 照「私のせいで京に迷惑がかかる」 京太郎「おい、もう終わってるんじゃないのか」 照「ごめんね、ごめんね、子どもなんか作っちゃって」 照「もう京の目の前には現れないから、じゃあね」 京太郎「なんで鬱になってんだよぉ!?」 照「こっちの方が京が好きかと思って、あと本に載ってた」 京太郎「もうその本燃やせ」 照「でも、どうやったら子どもは腹にできるの?」 京太郎「…………」 京太郎「お前は純粋なままでいてくれ」 照「?」 京太郎「俺が監督……ってことは女の子たちとウハウハできるのか……」 京太郎「ここは最近の女子高生の話を聞いておこう」 京太郎「できれば同学年で……片岡は論外、泉は身体の感覚おかしいし、もこもアテにならなさそうだし」 京太郎「淡も……あいつは寝てそうだな」 京太郎「咲に送ってみるか」 京太郎『元気かー』ピッ ヴーッ ヴーッ 咲『何なのいきなり』 京太郎『咲に聞きたいことがあったんだ』ピッ ヴーッ ヴーッ 咲『今小説のちょうどいいところなんだけど』 京太郎「懐かしい流れだな、ここは……」 京太郎『咲にしか頼めないことなんだ!お願いします咲様!』ピッ ヴーッ ヴーッ 咲『しょうがないなぁ、天使な咲ちゃんにお任せあれ!』 京太郎『どこが天使だよちんちくりんのくせに』ピッ ヴーッ ヴーッ 咲『へぇーそんなこと言っていいんだ?』 京太郎『ごめんなさい許してください俺の話を聞いてください』ピッ ヴーッ ヴーッ 咲『いいよ、何?』 京太郎『全国大会で可愛かった一年生おせーて』ピッ ヴーッ ヴーッ 咲『ねえ京ちゃん怒っていいかな?怒っていいよね?怒るしかないよね?怒らずにはいられないよね?』 京太郎『もちろん咲は可愛いと思うぞ、ちんちくりんだけど 咲を除いた子だと誰が可愛いかなって思ってさ』ピッ ヴーッ ヴーッ 咲『一言余計だよね でもそういうことならまずは』 京太郎「よし、咲の話を聞いて作ってみたぞ!」 岩手 南浦数絵 ポニーテールなクール系可愛い 東京 大星淡 天真爛漫だけど心が折れそうになった時の表情が可愛い ?慧宇 留学生で、日本語も上手、お団子が可愛い、胸もある(画像検索参照) 長野 片岡優希 タコス モモ 胸がある、可愛い 愛知 対木もこ 小柄で可愛い、どこか放っておけない感じ 大阪 二条泉 夏服はヘソ出しノースリーブの大胆ファッション、おびえたときの声が可愛い 奈良 高鴨穏乃 血気盛んなポニーテールっこ、案外小柄で可愛い 新子憧 モダンな雰囲気の女子高生、男が苦手らしい 兵庫 森垣友香 帰国生、胸もある、元気で可愛い 安福莉子 花のカチューシャ、高鴨に振り込んだときの顔が可愛い 鹿児島 滝見春 黒糖をいつも食べてる、ポニーテール?で胸もある、大人しいけどごくごく稀に見せる笑顔が可愛い 京太郎「ふぅ、こんなもんか」 咲『こんなところかな』 京太郎『参考になった!ありがとな、咲がいてくれてよかったよ』ピッ ヴーッ ヴーッ 咲『いつもよくそんなことが言えるね、それじゃあおやすみ』 京太郎『おやすみー』ピッ 京太郎「大会はクリスマスイブ、そのちょっと前に合宿を開くこともできるそうだ」 京太郎「日程とかも俺が考えなきゃいけないのか……面倒くさそうだな」 【12月第1週 平日】終 京太郎「候補リストは……これか」 京太郎「手順はメンバー六人、俺がいるから五人を選出」 京太郎「後に合宿、もしくは全員練習を行いオーダーを決定、連盟へ提出か」 京太郎「メンバーを先に決めなきゃならねえのが難点だな」 京太郎「候補リストは……これか」 岩手 宮守 南浦数絵 雀力124 東京 白糸台 大星淡 雀力124 臨海女子 ハオ慧宇 雀力136 埼玉 越谷 水村史織 雀力108 神奈川 妙香寺 三尋木咏 雀力132 長野 清澄 宮永咲 雀力156 清澄 片岡優希 雀力116 清澄 東横桃子 雀力128 愛知 覚山王 対木もこ 雀力112 奈良 阿知賀女子 高鴨穏乃 雀力124 阿知賀女子 新子憧 雀力132 大阪 千里山女子 二条泉 雀力120 兵庫 劔谷 森垣友香 雀力128 劔谷 安福莉子 雀力116 鹿児島 永水女子 滝見春 雀力124 京太郎「この中から選ぶのか……」 京太郎「詳細情報は次のページから、か」 京太郎「誰のを見てみよう」 京太郎「南浦さんは南場からの勢いが圧倒的、対照的に片岡は東場の勢いが強い」 京太郎「淡は他家の手を遅めてからの早和了り、ハオさんは随分と変な和了りをするみたいだ……なぜだ?」 京太郎「水村さんと安福さんと森垣さんはデータが少ないから何とも言えないが、森垣さんは帰国子女で高火力選手か」 京太郎「滝見さんは守備が堅いみたいだ」 京太郎「泉と憧は安定して上手いらしいな」 京太郎「……さて、誰を選ぼう」 京太郎「本気で勝ちに行くなら咲と淡は呼んでおこう」 京太郎「他の三人は……」 京太郎「咲、淡……」 京太郎「高鴨、と滝見さんが安牌か?」 京太郎「これで俺も含めて五人、っと」 京太郎「あと一人……どうしよう」 残留候補リスト 岩手 宮守 南浦数絵 雀力124 東京 臨海女子 ハオ慧宇 雀力136 埼玉 越谷 水村史織 雀力108 神奈川 妙香寺 三尋木咏 雀力132 長野 清澄 片岡優希 雀力116 清澄 東横桃子 雀力128 愛知 覚山王 対木もこ 雀力112 奈良 阿知賀女子 新子憧 雀力132 大阪 千里山女子 二条泉 雀力120 兵庫 劔谷 森垣友香 雀力128 劔谷 安福莉子 雀力116 京太郎「咏がこのリストにいるってことは麻雀はまだ続けてるってことなんだよな」 京太郎「…………」 京太郎「また、あいつと一緒に戦いたいな」 京太郎「……決めた!」 京太郎「咲、淡、高鴨、滝見さん、咏」 京太郎「これでいいよな、うん」 京太郎「でも咲の情報と照らし合わせると……」 咲→まな板 淡→大人しい 高鴨→平地 咏→せんべい 滝見さん→大きい 京太郎「…………」 京太郎「巨乳ハーレムかぁ、やってみたかったなぁ」 京太郎「まあいいや、次は合宿の日程だな」 京太郎「大会は三週間後で今週は無理らしいから来週か再来週のどっちかだよな」 京太郎「再来週から冬休みだからそこ使うか、他のところも大体そうだろうし」 京太郎「あれ?そういえば来週って……」 日程 12月第2週 期末試験 12月第2週休日 冬休み開始 12月第4週(冬休み11日目) プロ・アマ交流戦 京太郎「期末試験忘れてたぁぁぁぁあああ!!!!」 京太郎「合宿プランは三泊四日にして、旅館は温泉があるところにしとくか」 京太郎「次はいつから始めるかだけど……」 京太郎「真ん中辺りにやるか、その方が前も後ろも休めて楽だし」 京太郎「これを連盟に送れば第一段階は終わりだな」 京太郎「……明日から試験勉強しないと……」 【12月第1週 平日】終
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/4475.html
―麻雀部部室前― 梢「今日も頑張りましょうね」 美幸「そだねー」 澄子「……あの」 美幸「どしたの、澄ちゃん?」 澄子「中から何か聞こえません?」 梢「……確かに、1年生3人の声が聞こえます」 美幸「ホント?……ホントだ」 友香「……でね、先輩たちなんだけどさー」 梢「どうやら私たちの事について話しているようですね」 美幸「……ちょっと聞いてみよ」 澄子「そうですね」 ―麻雀部部室― 友香「もう私たちが入部して結構経ったねー」 莉子「そうだね、あっという間だったね」 京太郎「俺はまだ1か月経ってないけどな」 友香「京太郎は別にどうでもいいよ」 京太郎(ひっでぇ) 友香「……でね、先輩たちなんだけどさー」 莉子「いきなりどうしたの?」 友香「どう思う?正直な話」 京太郎「どう思うってそれはだな……」 莉子「うん……」 友香「ね、返答に困るでしょ?……そこで」 友香「先輩たち1人1人のいい所・悪い所を挙げていくんでー!」 京太郎「ほう……」 莉子「ゆ、友香ちゃん……いい所は分かるけど、悪い所って……」 友香「ふふん、莉子は何にも分かってないねー」 友香「人間にはいい所、悪い所がそれぞれ必ずあるっ!」 友香「悪い所が言えるということはそれだけ深い付き合いが出来てるってことなんだよ!」 莉子「な、なるほど……」 京太郎(一理ある……のか?) 友香「てことで始めよう!」 友香「まずは美幸先輩からだっ!」 美幸「うわ、私だって!」 美幸「ま、まあ私ほどの人間になれば悪いとこなんて無いんだけどね!」 美幸「うはは!」 梢(え) 澄子(ツッコみ待ちですか、ツッコんで欲しいんですか!?) 友香「はい、まず美幸先輩のいい所っ!莉子どうぞ!」 莉子「え、えーと」 莉子「明るい所……かな」 友香「なるほど……確かに」 友香「じゃあ次は京太郎!」 京太郎「ふむ、お嬢様っぽくないところかな」 京太郎「ああいう身分の人って結構お高く留まっている所があるもんだけど」 京太郎「椿野先輩とは接しやすいかな」 友香「そだねー、美幸先輩はいい意味でお嬢様ぽくないね」 友香「えっと、私はねー」 友香「うーん、あれー……?」 莉子「ど、どうしたの?」 友香「2人と言ったことと同じかなー、あはは……」 京太郎(なんやそれ……) 美幸「うん、なかなかいい気分だね」 美幸「って友香ー!!何その適当な返答!」 梢「明るいしか取り柄ないですからね、しょうがないです」 澄子「そうですね」 美幸(こ、こいつら……!) 梢「あ、どうやら悪い所を言い合うみたいですよ」 美幸(……ふー) 美幸(緊張するなもー) 友香「じゃあ次は美幸先輩の悪い所!莉子っ!」 莉子(ま、また私が最初……) 莉子「え、えーっと……うぅ」 友香「莉子、気持ちは分かるけど言わないと」 莉子「うん……じ、時間にルーズすぎるとこ……かな」 莉子「ちょっと遅刻とか……寝坊が多すぎるんじゃないかなって……」 友香「うん、確かに……」 京太郎(一理ある) 友香「はい、じゃあ京太郎!」 京太郎「下品すぎる、露出趣味は止めてほしい」 京太郎「最初は何とか耐えれたけど、最近はもう無理」 京太郎「あんな貧相な胸見せられても嬉しくないし」 京太郎「正直ドン引きですわ」 莉子(し、辛辣だ……) 友香「じゃあ、私だね」 友香「だらしない、この一言に尽きるね」 友香「部屋なんか軽いゴミ屋敷だし」 友香「めんどくさがり過ぎ、ちゃんとお風呂も入ってんの?」 友香「ホント、どうにかして欲しいかなー」 莉子(す、すごい言い草……) 友香「あと、もーもー五月蠅い」 友香「あんたは牛か」 美幸「」 梢「ぷくくっ……」 澄子「くくくっ……」 美幸「お前ら!笑うな!」 梢「す、すいません……ぷくく」 澄子「くくっ……正直残当ですね」 美幸「なんで!おかしいおかしい!」 美幸「露出とかネタだし!ちゃんとお風呂も入ってるもん!」 梢「あれ……美幸、臭いますよ」 澄子「ちゃんとお風呂に入らないからですよ」 美幸「うっ……ひどいよぉ……お風呂入ってるもん……」 美幸「うわあああああああん……」 梢(あら、泣いてしまいました) 澄子「あ、次は部長について話すみたいですよ」 友香「次は梢部長のいい所!はい莉子!」 莉子(また私から……) 莉子「えと、優しい所かな」 莉子「部員全員のことをよく見てくれてると思う、な」 莉子「部長らしい部長さんだよ」 友香「なるほど……次は京太郎!」 京太郎「莉子と同じかもしれないけど、部長として素晴らしい成果を上げていると思うよ」 京太郎「問題児2人の教育もしっかりやっているしね」 友香(問題児2人?誰だろう?) 京太郎「あと可愛い」 京太郎「眼鏡、部長、貧乳、大人しめの性格……役満だ」 莉子(……) 友香「……最後は私だね!」 友香「うーん、あれー……?」 莉子「ど、どうしたの?」 友香「2人と言ったことと同じかなー、あはは……」 京太郎(なにこのデジャブ……) 梢「ふむ、まあ当然のことです」 梢「私の普段の行いがいいからですね」 梢「友香はまた適当な返答でしたが」 美幸「真面目な事しか取り柄ないからね、しょうがないね」 澄子「そうですね」 梢(美幸、いつの間に立ち直って……) 美幸「あ、そろそろ悪い所を話すみたいだねー」 梢(ふ、ふん……) 梢(まあ私は大丈夫でしょう) 友香「はい!次は梢部長の悪い所!莉子どうぞ!」 莉子(……はぁ) 莉子「えっとですね……ネットでは私のことを戦犯、死刑囚という声がかなり大きいようなんです……」 莉子「まあ、あんな顔全国放送で晒してどうこう言うのもあれなんですけど……」 莉子「実際劔谷敗退の戦犯って梢部長だと……思います」 莉子「一番失点してますし……」 莉子「1年生の私をスケープゴートにするのは止めてください……」 友香(莉子が意味不明なこと言ってる……) 莉子「ふぅ……スッキリした」 友香「え、えーと次!京太郎!」 京太郎「ああ見えて梢さん、実はあざといし重い」 京太郎「普通風邪引いたくらいで家まで来るか?」 京太郎「正直魂胆が見え見えでちょっと引いたわ、しかも泊まるとか」 京太郎「あれだ、あの人は彼女にしたら依存されるぞ」 京太郎「俺が少しでもほかの女に手を出してみろ」 京太郎「空の鍋をかき回したり、鉈持ったりするぞ……あの人」 友香「分かるわー、最後は私!」 友香「キャラ薄い」 友香「眼鏡、お茶、大人しい性格とか……」 友香「白糸台の渋谷尭深と被ってるんだよぉ!下位互換なんだよ!」 友香「あと喋り方も特徴ないし!私や美幸先輩が必死にキャラ付してるってのに!」 友香「正直依藤先輩と書き分けが難しいんだよ!」 京太郎(俺以外の2人はなにいってだ) 梢「」 美幸「うはっ!うははは!」 澄子「くすくすっ……」 梢「……あなた達ぃ、笑わないでくださいっ!」 美幸「うは!うはは……ごめんごめん」 澄子「ふふっ……正直残当ですね」 梢「おかしい!おかしいですよ!」 梢「ヤンデレじゃないし!下位互換じゃないし!戦犯じゃないし!」 美幸「やーい無個性!モブキャラー!」 澄子「私の喋り方、マネしないでください」 梢「うっ……ひどいですぅ……個性あるもん……病まないもん……」 梢「うわあああああああん……」 美幸(あっ、泣いちゃった) 澄子「お、次は私について話すみたいです」 澄子(ふふ、私はバカな上級生2人とは違いますよ……) 友香「よっし、この話はここで終わり!」 京太郎「そうだな、こんなもんだろ」 莉子(あ、あれ?) 莉子「あの……」 友香「うん?どうしたの莉子?」 莉子「あの、依藤先輩は……?」 友香「……」 京太郎「……」 莉子(え、何この感じ) 友香「……あの人はいいんだよ、別に」 京太郎「ああ、そうだな」 友香「あの人は、地味すぎて語る所……無いから」 莉子(え) 澄子「えええええええええええええええ!!」 澄子「いや、ちょーっと待って!待って!!」 美幸「うははははは!!」 梢「ぷくくっ……」 澄子「笑うな!そこっ!!」 梢「す、すいません……ぷくく」 美幸「哀れ、哀れすぎる!」 美幸「まさか語ってすらくれないなんて……うはは!」 梢「ふふっ……正直残当ですね」 澄子「おかしい!おかしいですよ!」 梢「自分でも多少地味だとは思ってましたけど!いくらなんでも酷すぎでしょお!」 美幸「存在感ゼロ!真の無個性!」 梢「我が部に『いない者』がいたとは……ぷくく」 澄子「何で!酷い!」 澄子「もっと私を褒め称えて!もっと私を罵ってよ!」 澄子「いや、もうむしろ悪口だけでもいいから!」 澄子「お願いっ!私を『いない者』にしないでーっ!」 澄子「もっと私を罵ってよおおおおおおおおお」 澄子「ア―――――――――――ッ!」 カン!
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6418.html
夕 京太郎「打ち上げに行くか、っと場所は―――」 京太郎「遅れましたー……あ」 怜「お、男子チャンピオンさんや」ヒュードロ 竜華「よお来たなー」ヒュードロ 京太郎「ど、どうも、なんで二人とも白装束なんですか?」 竜華「ふっふっふーそれはなぁー」 咏『やめろ!その服だけはやめろおおおお!』 浩子『ええやないのええやないの』 咏『嫌だあああああ!』 京太郎「あ、ちょー嫌な予感」 京太郎「文化祭で使った衣装のまんまパーティーって正気ですか」 郁乃「私はそこまで恥ずかしい恰好やないからな~」 京太郎「まさかここまで計算して!?」 郁乃「さ~どうやろな~」 京太郎「ぐぬぬ……」 郁乃「着替え終わったことやし、どっか適当なテーブル行って食べてきや~」 京太郎「言われずともその気でしたよ」 郁乃「ん~なんか傷つくな~」 憩「お肉もらいますーぅ!」 エイスリン「ワタシモ!」 霞「エイスリンちゃん、袖危ないわよ」 エイスリン「アッ」 京太郎「ここ、座ってもいいですか?」 霞「ダメって言ったらどうするの?」 京太郎「他のテーブルに行きますけど」 エイスリン「ダメ!」 京太郎「えっ」 エイスリン「キョウタロー、コッチ!」 京太郎「なんだそういうことですか」 憩「せやったら京太郎くんはウチの隣やな」 エイスリン「ワタシノ!」 霞「エイスリンちゃんの隣は私なのだけれど」 エイスリン「アッ」 霞「ナチュラルに酷いわね」 京太郎「これで鍋終了ですか」 霞「はやかったわねー」 エイスリン「マンプク!」 憩「これで何かデザートでもあればええんやけど」 霞「この後の二次会で頼めばいいんじゃないの?」 京太郎「二次会なんてあるんすか」 霞「今日文化祭に来てた人とかともいるかもしれないけどね、結構大きい店よ」 京太郎「へー、あ、デザートと言ってはなんですけど」 京太郎「きのこの○山買ってきたんですよ、いります?」 霞「はぁ?」 憩「きのこ!ちょうだい!」 京太郎「はいどーぞ」アーン 憩「ん~おいしいわぁー」 エイスリン「ア○ルフォート……」 霞「ちょっといいかしら?何?きのこ?京太郎くんはきのこ派だったの?」 京太郎「派ってわけではないっすけど」 霞「きのこ派じゃなかったらたけのこも買ってくるでしょ、なのにたけのこ買ってこないって貴方の目は節穴なのかしら?」 京太郎「えっ、ええぇぇぇ」 憩「えーきのこおいしいやないですかー」ブー 霞「きのことか笑止千万、あんな棒っきれ一掴みで粉々よ」 京太郎「そりゃ掴んだら粉々でしょうよ」 霞「じゃあ貴方たちはきのこのどこがいいのか教えてくれるかしら?」 京太郎「だから俺はきのこ派でもたけのこ派でもないですから」 霞「はっ、どうだか、憩ちゃんは?」 憩「ウ、ウチは……あの形が……」ゴニョゴニョ 霞「不潔ね」 憩「」ガーン 霞「エイスリンちゃんは……ああ、ア○ルフォートとか言うぽっと出だったかしら」 エイスリン「ア○ル!オイシイ!」グスッ 京太郎(なんでこんな険悪な雰囲気になってんだよ……) 郁乃「とうちゃ~く」 京太郎「ここですか、結構大きいですね」 雅枝「よく千里山の打ち上げでも使っとるからな、お得意様やで」 咏「んじゃーさっさと入ろーぜー」 ガチャ やえ「たけのこだ!」 菫「いやきのこだ!」 咏「……失礼しましたー」 菫「ほれ照、牛肉だぞ」 照「アイスが食べたい」 菫「栄養もしっかり摂れよ」 憩「」ジーッ 菫「何を見てるんだ?」ポヨン 憩「ハムッ、ハフハフ、ハムッ!」ガツガツ 京太郎「ちょっ、そんなに食べたら危ないですよ」 憩「食べないと大きくなれないんや!」ガツガツ 京太郎「えぇぇ……」 照「……京」クイクイ 京太郎「どうした?」 照「アイス持ってきて」ボソボソ 京太郎「わかった、味は?」 照「……なんでもいい」 京太郎「了解」 京太郎(とは言ったものの、他の二人の分も持っていくか) 京太郎(どれがいいかな……) 照「……京はわかってない」 菫「……サク○レか……」 京太郎「ええっ、どっちもおいしいじゃないですか!」 菫「そう言いながら○ガリ君を食べてるのがお前という男だ」 憩「ウチは梨味大好きやで!」 京太郎「そういってくれるのは憩さんだけです、ありがとうございます」ナデナデ 憩「えへへ~」 照「……」ムッ 照「やっぱり京はわかってる」 照「だからなでなでして」 京太郎「ごめんどういう理屈かさっぱりわからない」 京太郎「俺も梨味好きですよ」ナデナデ 憩「梨味ナンバーワンやな~」 照「むむむ……」ズーン 菫(えっ、何なのカップルなの?) 京太郎「打ち上げ終わり、今日も疲れたな」 京太郎「今日の〆は何をしようか」 夜 京太郎「寝る前にメールでもするか」 京太郎「照辺りにするかな」 京太郎『今日は楽しかったか?』ピッ ヴーッ ヴーッ 照『すまない、照は寝ている』 照『後で返信させるから待っていてくれ』 京太郎「いや、じゃあ……」 京太郎『誰なんだよアンタ』ピッ ヴーッ ヴーッ 照『弘世菫だ』 京太郎『整理させてください』 京太郎『弘世さんは寝ている照の携帯を見て』 京太郎『俺に返信した、と』ピッ ヴーッ ヴーッ 照『つまりは照に変身したわけだ』 ヴーッ ヴーッ 照『すまない忘れてくれ』 照『それではまた会おう』 照『おやすみ』 京太郎『おやすみなさい』ピッ 京太郎「まだ新幹線なのかな……いやそれにしても友だちの携帯なんて見るかふつー……」 京太郎「なんとなく怜さんにメールしよ」 京太郎「そうと決まれば……」 京太郎「とりあえず憂さ晴らしでも」 京太郎『チャンピオンなので今度そっちにお邪魔しますね(ドヤッ)』ピッ ヴーッ ヴーッ 怜『うわ、なんか腹立つわ』 怜『練習やなくて雑用にこきつかったる』 京太郎『嘘です嘘です冗談です!』 京太郎『練習させてくださいお願いします何でもしますから!』ピッ 京太郎「あっ、咄嗟に変なもん書いちまった」 ヴーッ ヴーッ 怜『何でもかーまあ考えとくわ』 怜『そうそう、千里山は女子高やから』 怜『今日のコスプレ似合っとったでー』 京太郎『……つまりまた女装しろと』ピッ ヴーッ ヴーッ 怜『そうやないと校内入れへんからな』 京太郎『マジですか……』ピッ ヴーッ ヴーッ 怜『でもアレやで、ハーレムやで』 怜『右手に正妻、左手にオトコ系美少女』 怜『背中に爽やか美少女、膝に超絶病弱美少女』 怜『どや、最高やろ?』 京太郎『……ですね!』 京太郎『よっしゃー今から楽しみだー!』ピッ ヴーッ ヴーッ 怜『ほなそろそろ寝るわ、おやすみ』 京太郎『おやすみなさい』ピッ 京太郎「……おお」 京太郎「なんか知らないけど興奮してきた!」 京太郎「明日からも頑張るぞー!」 【10月第2週 休日】終 【10月第3週 平日】 京太郎「文化祭終わり!」 京太郎「今週末は選抜の合宿か、そろそろオーダー決めとかするのかな?」 京太郎「今週も頑張って行こう!」 京太郎「今朝も相変わらずのぼっちだったんだぜ!」 咏「ふーん」 和「そうですか」 京太郎「あれ、二人とも冷たいなー」 咏「お前が誰と来ようと知らんし」 和「同感です」 京太郎「うわっ辛辣」 昼 京太郎「ご飯の前には手洗いっていうけどそんなんあんまり気にしないよな」 京太郎「とりあえずトイレトイレーっと」 京太郎「あっ」 和「あっ」 和「またお手洗いで弁当ですか……」 京太郎「ち、違わい!トイレだよトイレ!」 和「でも、友だちいないんでしょう?」 京太郎「憐れみの目で見ないで、ちょっと辛い!」 和「よろしければお昼を一緒に、というのもやぶさかではないのですが」 京太郎「だからただのトイレだから!大きい方だから!」 和「えっ……」ドンビキ 京太郎「あっ」 京太郎「…………」 京太郎「」ダッ きょうたろう は にげだした! 京太郎「なんかもう、なんだかもう疲れた……」 京太郎「もう帰ろっかな……」 放課後 京太郎「今日も練習に来たぞ」 絹恵「あ、京太郎くーん」 京太郎「絹恵さん、こんにちはー」 絹恵「うん!ええ挨拶やな!」 京太郎「今日も一緒に頑張りましょうね」 絹恵「京太郎くんこそな!」 京太郎(相変わらず何もすることがなくて困る) 良子「やあ、また来てたんだね」 京太郎「良子さんに会うためですよ」 良子「ふむ、ずいぶんとグラッドなことを言ってくれるね」 京太郎「紅茶かコーヒー、いりますか?」 良子「それじゃあ今日は紅茶で」 京太郎「了解です」 京太郎「アールグレイ?ですね」 良子「うん、ありがとう」 良子「そういえばキャンプの件なのだけれど、場所は東京になったよ」 良子「最近できたばっかの旅館を取っておいた」 京太郎「東京ってことは……白糸台と、ですか?」 良子「というよりは関東選抜の最終候補+αといったところだね」 良子「こちらも同じく最終候補14名で向かう、オーケー?」 京太郎「オーケーです」 良子「よし、それじゃあ事務連絡も終わったことだし、何か話さない?」 京太郎「いいんですか?コーチともあろうお方が」 良子「京太郎と話すのは楽しいからね」 京太郎「大丈夫なのか選抜……」 京太郎(良子さん、元気そうだけど友だち出来たのかな) 京太郎(まさか俺以外に友だちがいないとか……なんか嬉しいけど悲しい) 京太郎(聞いてみるか) 京太郎「良子さん、最近は友だち出来ましたか?」 良子「よく聞いてくれた!」 良子「実はこの前初めて針生アナと福与アナと食事をしたんだよ!」イキイキ 良子「お二人ともいい人で本当に楽しかったよ」 京太郎「そういえば針生アナの連絡先は持ってたんでしたっけ」 良子「インターハイのときにお世話になったからね」 京太郎(同年代で同性の友だちが出来たのか、とすると俺はもうお払い箱かな、なんだか複雑な気持ちだけど) 京太郎(良子さん嬉しそうだし、なんて言えばいいんだろう) 京太郎(なんかちょっぴり悔しい気がする……) 京太郎「じゃあ!じゃあですね!」 良子「ん?どうした」 京太郎「俺とも今度食事に行きませんか?」 良子「えっ?」 良子「そっそれって……デート?」 京太郎「デートじゃないですよ、友だちとしてです」 良子「だ、だよね!」アセアセ 京太郎「それで、いいですか?」 良子「うん、もちろん!いつにする?」 京太郎「そうですねー……」 京太郎「この練習が終わった後でいいでしょうか?」 良子「了解、楽しみに待ってるよ」 京太郎「はい、それではまた後で」 京太郎(良子さんと食事かー楽しみだな) 京太郎(そろそろ対局に入ってみよう) 京太郎「さて空いてる卓はーっと」 雅枝「須賀、こっち入れ」 霞「私たちと打ちましょうか」 洋榎「京太郎が最後の一人かーウチの勝ちも同然やな!」 雅枝「須賀ー洋飛ばしたらなんかご褒美やるわ」 洋榎「えっなんで!?」 霞「ツモ、4000・8000」 京太郎「」ズタボロ 洋榎「京太郎大丈夫かー?」 京太郎「あはは……」 雅枝「よーし、ほなもう一局いくでー」 霞「監督、京太郎くんはもう……」 雅枝「うーん……それじゃあ戒能コーチ入ってや」 洋榎「どんだけウチを虐める気なんや!おかしいやろ!」 京太郎「あはは……」 京太郎「練習終わり……ああ、なんかへこむな……」 良子「ごめん、遅れたね」 京太郎「いえ、いいですよ」 良子「それじゃあ行こうか、どこに連れて行ってくれるんだい?」 京太郎「えーっと、ここですね」 京太郎「ここですね」 |ワグナ○リア| 良子「ワグナ○リア?」 京太郎「最近人気があるみたいですよ」 良子(……ワグナ○リア) 良子(そういえばこの前……) 恒子『ここの近くにワグナ○リアっていうレストランがあるらしいよ!』 えり『それがどうかしたんですか?』 恒子『あっれー針生アナ知らない?最近このへんのカップルに大人気なんだってさ!』 良子『だったら私たちが行くことはないのでは?』 恒子『いやーでも一回は行ってみたくない?』 恒子『戒能プロは彼氏ができたらしいし針生アナだって……』プクク えり『だから彼はそんな人じゃないですから!』 良子『ボ、ボーイフレンドなんていませんから!』 恒子『ええ~ほんとに~?』 良子(やっぱり京太郎は私のこと……)カァァ 京太郎「良子さん、どうかしましたか?」 良子「どうもしていないノーウェイノーウェイ」 良子「それじゃあ何を頼もうかな!」 京太郎「結構迷いますね……」ウムム 「ご注文はお決まりでしょうかー?」 京太郎(なんで刀なんか下げてんだこの人……) 京太郎「俺はこのえびフライプレートで、良子さんは?」 良子「私も同じので」 「はい、それでは彼女と食べよう!タルタルソース付えびフライプレートがお二つ、でよろしいでしょうか?」 京太郎「えっ」 良子「えっ」 「えっ?どうかなさいましたか?」 京太郎「なんでもないです、お願いします」 「かしこまりましたー」 京良(品名ちゃんと呼んでなかったー!) 京太郎(やばいやばいよ、良子さんに変な目で見られるよ!) 良子(京太郎……私なんかが彼女……)プシュー 京太郎「…………」 良子「…………」 京太郎(気まずい!気まずいぞこれ!) 京太郎(どうにかして空気を変えないと!) 京太郎(どうしようどうすればいいんだ!) 京太郎(でも、良子さんも同じのを頼んだんだよな) 京太郎(ということは良子さんもちゃんと品名を読んでいなかった?) 京太郎(なーんだ、そんなことだったんだな) 京太郎「つまり……そういうことです」 良子「そ、そういうこと……って」 良子(京太郎は私を彼女だと思っている?) 良子(でもさっきはデートじゃないって……) 良子(決心したってことなのか?)カァァ 良子「わ、私も……」 良子「これから、よろしく///」カァァ 京太郎(よろしく?よくわかんないけどわかってもらえたみたいだ) 「お待たせいたしましたー、どうぞごゆっくりー」 京太郎「それじゃあ食べましょうか」 良子「うん……」カァァ 良子(私が彼女……でも彼女って何をすればいいんだ?) 良子(この前買った本によると……) 良子(あーん、だっけ?) 良子(…………) 良子(こんなパブリックなところでやるのは……恥ずかしい) 良子「……」モグモグ 京太郎「……」モグモグ 良子「きょ……京太郎」 京太郎「なんですか?」 良子「そ、その……だな……」モジモジ 良子「あ……」 京太郎「あ?」 良子「あ!アイス!アイスがほしい!」 京太郎「ですね、ここいら辺ちょっと暑いですし」 京太郎「頼みましょうか」ピンポーン 良子「……ありがとう」 良子(なんでヘタれるんだ私のバカ!) 京太郎(良子さん楽しんでくれてるみたいだな) 【帰り道】 京太郎「えびフライおいしかったですねー」 良子「うん……そうだね」 良子(緊張しすぎて味なんてわからなかった……) 京太郎「それじゃあ俺はここまでですね、良子さんはまたビジネスホテルに泊まってるんですか?」 良子「なかなかいいホテルだよ、京太郎も来る?」 京太郎「いやいやいや!そんなことしたら流石にまずいですって!」 京太郎「もしサタデーとかに撮られたらどうするんですか!」 良子「そうだね、京太郎に迷惑がかかるし」 京太郎「他の人にもそんなこと言っちゃだめですからね、誤解して襲ってくるかもしれませんし」 良子「……うん」 京太郎「夜遅くなると危ないですし、そろそろ行きますね」 良子「グッナイ」 京太郎「今度は合宿でー!」ブンブン 良子「じゃあねー!」ブンブン 良子「……ふぅ」 良子「京太郎が心配してくれている……ハッピーな気分だよ」 良子「あと二年か……」 京太郎「合宿は東京って言ってたよな」 京太郎「なら挨拶でもしておくべきだよな」 京太郎「でも誰にしよう……」 京太郎「照とか淡にしてもあんまり意味ないし、弘世さんか小走さんか辻垣内さん?」 京太郎「いや、ここは渋谷さんにしよう」 京太郎「気楽な内容で行こう」 京太郎「ここは丁寧にあいさつからいくか」 京太郎『突然のメールすみません、須賀です』 京太郎『今度の合宿よろしくお願いします』 京太郎「送信っと」ピッ ヴーッ ヴーッ 尭深『こんばんは』 尭深『こちらこそよろしくね』 尭深『それはそうと、どうして須賀くんが挨拶なんて?』 京太郎「部外者から見ればわからないよな、説明しておくか」 京太郎『一応俺もその合宿についていくことになってるんですよ』 京太郎『だから挨拶を、と思いまして』ピッ ヴーッ ヴーッ 尭深『そういうことなんだ』 尭深『それなら弘世部長か小走先輩の方がよかったかもね』 京太郎「そういえばそうだよな……」 京太郎「渋谷さんは照と淡の間の学年なんだよな」 京太郎「そこいらへんも訊いておくか」 京太郎『ところで、照と淡が面倒かけてませんか?』ピッ ヴーッ ヴーッ 尭深『宮永先輩も淡ちゃんも私のお茶菓子食べてくれるし』 尭深『二人ともいい子だよ』 尭深『須賀くんは心配性なのかな?』 京太郎『心配性というか、まあそうですね』 京太郎『バカ二人がお世話になってます』 ヴーッ ヴーッ 尭深『まるで二人のお兄ちゃんみたいだね』 京太郎『そう見えますか?』ピッ ヴーッ ヴーッ 尭深『とっても、ね』 尭深『そういう人がいるのってちょっといいかも』 京太郎『ふっふっふ、別に俺を頼ってもいいんですよ?』ピッ ヴーッ ヴーッ 尭深『じゃあそうしてみようかな』 尭深『悪いけどそろそろ寝るね』 尭深『合宿でも頑張ろうね、お兄ちゃん』 尭深『おやすみ』 京太郎「渋谷さんからお兄ちゃん……かぁ」 京太郎「いいね!」 京太郎「あのメンバーのなかで一番のおっぱいだったし、なんか燃える」 京太郎「俺もそろそろ寝るかな」 【10月第3週 平日】終 【10月第3週 休日】 【合宿1日目】 雅枝「説明は以上や」 雅枝「合宿中は各自自分の実力のために尽力するように」 雅枝「あー、そうそう合宿中テレビの密着取材が入るさかい、そこんところよろしく」 雅枝「ほな各自対局開始!」 京太郎「あのー、良子さん?」 良子「何かな京太郎」 京太郎「良子さんこの前東京のホテルって言いましたよね?」 良子「ここも十分立派な東京のホテルじゃないか」 京太郎「立派ですとも、ええ立派です、立派ですけども!」 京太郎「なんで、なんでこんな山奥なんですか!?」 京太郎「新大阪から東京まで来たぞ!って浮かれてたら電車に乗って」 京太郎「どこで降りるんだろうなーとか考えてるうちに終点まで来てるし!」 京太郎「まあまだそれは良しとしてですね」 京太郎「ここって旅館じゃないですか!」 良子「旅館もホテルじゃないか?」 京太郎「なんか違うんですよ!」 良子「な、なるほど……」 良子(よくわからない) 京太郎(あれ、俺って何が言いたかったんだろ……) 京太郎「大体の人にも挨拶したし、何しよう」 良子「京太郎、暇なの?」 京太郎「良子さん……そうなんですよ、よかったらまた特訓してくれますか?」 良子「うん、私におまかせあれ!だよ」ムネハリッ 京太郎「おおぅ……」 京太郎「シャープシュート」ゴッ 良子「いいぞ、雰囲気でてる!」 京太郎「それじゃあ次ですね」 京太郎「カン!カン!もいっこカン!」 京太郎「麻雀って楽しいよね!」ニッコリ 良子「うん、いいよ」グッ 良子「うまく私の真似ができるようになってるね、流石は京太郎だよ」 京太郎「えへへ、そうですか?」 良子「それじゃあ次に行ってみようか」 京太郎「今度は負けませんからね!」 良子「ふふん、どうかな」 良子「ねえ、京太郎、よかったら私の力を身に着けてみない?」 京太郎「身に着ける、ですか?」 良子「うん、本家に伝わる簡単な儀式なんだけど、どう?」 京太郎「うーん……なんか怪しいですけど」 良子「大丈夫だよ、三十分でもあれば終わるし、疲れるのは私だけだから」 京太郎「それも少し……悪い気が」 良子「やっぱり……ダメ?」ウワメヅカイ 京太郎(唐突に可愛いんですけどなにこれ!) 良子「京太郎?」 京太郎「わかりました、ただし安全にお願いしますよ」 良子「うんっ!」 【儀式終了】 良子「儀式終わり!どうかな?」 京太郎「」ハナヂドバァ 良子「あれ?京太郎?京太郎?」ユッサユッサ 京太郎(お互い裸になって体を寄せ合う儀式とか……)チラッ 良子「京太郎?」タユンタユン 京太郎(そんなん考慮しとらんよ……)ドバァ 昼 憩「おーい、京太郎くーん!」 淡「こっち来なよ!」 京太郎「うげっ」 淡「なんだようげってー!」ウリウリ 憩「せやでーこっち来て一緒に打とうやー」 尭深「あ」 京太郎「あっ渋谷さん助けて!」 尭深「お茶入れたけどいる?お兄ちゃん」ニコッ 京太郎「」ブフォッ 憩「お……お兄ちゃん?」 淡「なるほどー京太郎はそういう趣味なんだ……」 京太郎(あれっ、なんかやばい感じ) 憩「ほなこっち来て打と!お兄ちゃん!」ニコッ 淡「お兄ちゃんは私のだよ!ね?お兄ちゃん」ニコッ 尭深「お茶熱いから気を付けてね、お兄ちゃん」ニコッ 京太郎(何この状況どうすりゃいいの……) 京太郎「ロン、これで俺の勝ちだな」 淡「あわわわわ」 淡「まさかお兄ちゃんに負けるなんて……」 京太郎「いつまで続けるんだそれ」 尭深「はい、お茶」 京太郎「渋谷さんはもどったんですね」 憩「ウチがトップやー」 尭深「うん、言葉にすると恥ずかしいから」 淡「ねーねー京太郎!お昼食べに行こうよ!」 京太郎「はいはい、勝手に行ってこい」 憩「ウチ!ウチがトップやで!」 淡「むぅ、京太郎酷いよ!」 京太郎「ふふん、俺に勝ってから言うんだな!」 淡「わかったよ!じゃあもう一局だ!」 京太郎「受けて立つ!」 京太郎「昼でも食いに行くかなーってここいらへんで食べられる店ってないんだよな」 京太郎「食堂行こ」 「なあ!みんなでプール行かねえか?」 「この前できたあそこっすか?」 「そうそう!タダ券もらったから、どうだ?」 「……私なら大丈夫」 「お姉ちゃんも泳げないでしょ」 「……泳げるもん」 「じゃあ決まりっすね、みんなで行くっす!」 雅枝「須賀、どないした?」 京太郎「はっはい!なんでしょうか!」 雅枝「飯食べ終わったんやったら練習や練習」 京太郎「いやーまだデザート頼んでなかったんで」 雅枝「ほな話しながら食べよか」 京太郎「おっ、いいですね」 雅枝「なんか聞きたいこととかあるやろ、どや?」 京太郎「そういえば……」 雅枝「なんや?」 京太郎「監督の旦那さんって一体どんな人なんですか?」 雅枝「旦那……」 雅枝「……はぁ」 京太郎「あっ、すみません」 京太郎「踏み入ったこと聞いて……」 雅枝「いや、別にええんや」 雅枝「あの男はほんまに……最悪や」 京太郎「あれ?お亡くなりになったとかじゃ?」 雅枝「そうなってくれたらええんやけどな、もう離婚したわ」 京太郎「やっぱりすみません……」 雅枝「いつかは話すことになるかもしれんから別にええわ」 京太郎「……いつかは?」 雅枝「私が須賀にお義母さん呼ばれるかもしれんからな」 京太郎「あ……あー」 雅枝「絹も洋も、泣かせたら承知せんで、ええな?」 京太郎「いつかは監督を鳴かせるかもしれませんよ?」 雅枝「はっはっは、後で覚えとけよ」ニッコリ 雅枝「私は先戻るわ、ほなまた」 京太郎「さよならー」 恒子「ほうほう須賀京太郎くんは熟女にまで手を出している、と」 みさき「これは大スクープですね」 京太郎「ちょーっと待ってくださいそこのお二人さん」 恒子「ありゃ、ばれちゃった?」 京太郎「ばれるも何もないですよ」 みさき「この子が有名な須賀京太郎くんですね……」 えり「有名も何もインターハイ優勝者でしょうが」 みさき「あ、そうでしたね」 えり「村吉アナはツッコミ側だと思ってたんですけど」 みさき「針生アナがいるのでまあ多少は」 京太郎「どうしてお三方がここにいるんですか……」 恒子「聞いてなかったかな?ここに取材が入ってるって」 京太郎「でも別々の局ですよね、それに三日もいるつもりですか……」 恒子「そのくらい話題性があるってことだよ、あ、私たちも練習に参加したりとかもするから」 京太郎「麻雀できるんですか?」 えり「ルールとセオリーは十分覚えてますから」 みさき「だてにアナウンサーやってませんからね」 京太郎「まあそういうことなら」 恒子「そーそー、その意気だぞ少年!後で麻雀教えてねー」 京太郎「えっ?」 えり「そういうことなので失礼します」 みさき「これ私の名刺です、どうぞ」 京太郎「あっはい」 恒子「そんじゃねー」 えり「失礼します」 ガララ 京太郎(なんだよこの合宿ー!) 昼 京太郎「食後の腹ごなしにちょっと打つか」 京太郎「どの卓が空いてるかなー」 智葉「須賀、ここにいたのか」 京太郎「辻垣内さんじゃないですか、どうしたんすか?」 智葉「うちの監督が用があると言ってな、とりあえずついてこい」 京太郎「は、はあ……」 智葉「監督、連れてきました」 臨海監督「おっ、来たか」 京太郎「初めまして、須賀京太郎です」 臨海監督「初めまして、うむ中々にハンサムじゃないか」 京太郎「どうも、監督さんこそスーツが似合っててかっこいいですよ」 臨海監督「世辞がうまいな、気に入ったよ」 臨海監督「そんなに硬くならなくていい、そこに座ってくれ、サトハも」 臨海監督「前から常々君とは打ってみたいと思っていたんだ、興味を持つと我慢できないタイプでね」 臨海監督「三麻もいいが、あと一人誰か欲しいな……」 明華「私が入りましょうか?」 臨海監督「ミョンファか、よろしく頼む」 明華「須賀さん、よろしくお願いします」 京太郎「いえこちらこそ」 智葉「それでは始めましょうか」 京太郎(臨海の監督さんにレギュラー二人ってなんか緊張する……) 臨海監督(スガ……カイノウに似ている打ち手だ) 臨海監督(地区予選ではアラカワ、インターハイではミヒロギと似た打ち方をしていたがこれは一体どういうことなんだ) 臨海監督(そして、これで終わりだ) 臨海監督(……パールハーバー) 臨海監督「ツモ、海底面清、4000・8000」 臨海監督「三人ともトビだな」 智葉「」チーン 京太郎「」チーン 明華「」チーン 臨海監督「面白い対局だったよスガ、来年はうちに来ないか?」 明華「またですか監督……」 智葉「面白いも何も一方的なタコ殴りだったのですが……」 京太郎「そもそも臨海って女子校じゃないんですか?」 臨海監督「大丈夫大丈夫、金さえかければ何とでもなるから」 京太郎(絶対ダメな大人だよこの人……) 夕 臨海監督「午前の様子を見るに、スガは暇なそうだが、どうだ?私と特訓でもしないか?」 京太郎「まあ確かにやることないですね」 臨海監督「よし、なら早速取りかかろう」 京太郎「そういえば監督さんはメジャーで活躍していたんでしたっけ?」 臨海監督「活躍、というほどではないがな」 臨海監督「あそこの卓が空いたようだ、入っていてくれ」 臨海監督「まあ、今日はこんなところかな」 臨海監督「欧米流の麻雀なんだが、理解はできた?」 京太郎「……ほんのちょっと」 臨海監督「そうか……物事最初はこんなものさ」 京太郎「そうですよね……」 京太郎(世界って広いんだよな、考えてみれば明華さんだって世界ランカーらしいし) 京太郎(でも俺だって日本一の男子高校生なんだ!) 京太郎(まだまだ負けてられないよな!) 臨海監督「ふっ、まだ続けてみるか?」 京太郎「……はい!どうせなら時間ギリギリまで!」 臨海監督「うん、いい意気だ。それでは次は……」 雅枝「これで今日の練習は終了や!」 雅枝「各自部屋で休むように!ほな解散!」 「ありがとうございましたー!」 京太郎「結局あの後もわからないまんまだったな……」 京太郎「後二日もあるんだからのんびり行こう」 京太郎「さてと、俺の部屋は……ここか」 京太郎「どうせ一人部屋なんだろうな……」ガチャ 「赤阪さんお帰りなさ……い……」 京太郎「あ……えーっと」 京太郎(この人確か……多治比さん、だっけ?) 真佑子「ど、どなたでしょうか?」ガクガク 京太郎(ってのんびりしてる場合じゃねえ!) 京太郎「すみません、部屋間違えました!」 真佑子「ちょっ、ちょっと!」 バタム! 京太郎「部屋番……401だよな、良子さんに文句つけないと……」 郁乃「あっれ~京太郎くんここで何しとるん~?」 京太郎「実は部屋の場所がわからなくて……」 郁乃「でも京太郎くんと私は同じ部屋やろ~?」 京太郎「えっ」 郁乃「ほな入るで~」 真佑子「多治比です……どうも」 京太郎「須賀京太郎です、よろしくお願いします」 郁乃「二人とも仲良くな~」 京太郎「さっきはなんかすみませんでした」 真佑子「いいですよ、着替えを見られたってわけじゃないんですから」 真佑子「顔上げてください、ね?」ニコッ 京太郎「は……はい」カオアゲ 京太郎(多治比さん、優しい人だな……) 真佑子「この私の優しさに感謝して一生跪いてろこの下等が」ボソッ 京太郎「……はい」 京太郎「…………」 京太郎「ええっ!?」 京太郎(急にキャラ変ったよ何この人!?) 夜 京太郎(ちょっと気まずいから他の人の部屋にでも行くか) 京太郎(誰の部屋に行こう……) 京太郎「適当に歩いてきたけど、ここは誰の部屋かな?」コンコン 京太郎「失礼しまーす」ガチャ 雅枝「……須賀?」 京太郎「……あ」 雅枝「私の部屋に何の用や?」 京太郎「そ、それはですね……」 京太郎「えーっと、ここは誰の部屋だ?」 ガチャ 臨海監督「スガ?こんなところで何をしているんだ?」 京太郎「ここ監督さんの部屋だったんすね」 臨海監督「いかにもそうだが、どうしたんだ?」 京太郎「それはですね……」 京太郎「ちょっと部屋の居心地が悪かったのでお話でも、と思いまして」 臨海監督「ん……そうか、いいぞ上がれ」 京太郎「失礼しまーす」 臨海監督「それで何の話をしようか、私はなんでもいいよ」 京太郎「ううん、そうですね……」 京太郎「じゃあ監督さんの過去の経歴について……とか?」 臨海監督「経歴、か」 臨海監督「知っての通り私は元メジャーの選手だったんだがあまり活躍と言う活躍はなくてね」 臨海監督「コカジさん相手にはズタボロだったよ、まあ恋人がいたというのもあったんだろうけど」 臨海監督「そんなこんなで限界を感じてメジャーから身を引いたんだ、そんなところにかかってきたのが臨海からの声だった」 臨海監督「どうやら私は人に教える方が向いているみたいでね、内心複雑だったよ」 臨海監督「話していて自分でもつまらないな、今度はスガの話を聞かせてくれるか?」 京太郎「俺の方が退屈ですよ、まだまだ」 臨海監督「ふむ、そうか」 臨海監督「そういえばスガはミヤナガと幼馴染らしいけど、そこはどうなんだ?」 臨海監督「噂に聞くに遠距離恋愛だとか」 京太郎「俺と照が遠距離恋愛!?誰がそんなことを!」 臨海監督「私が」 京太郎「根も葉もなかったよ!」 臨海監督「でも結構そんな噂は聞くぞ、それこそアラカワと付き合ってる、とかミヒロギと付き合ってるとか」 京太郎「そもそもなんでそんなことを初対面の監督さんが知ってるんですか」 臨海監督「さっきも言っただろう、私は興味を持つと我慢できないタイプなんだ」 京太郎「えぇぇ……」 臨海監督「そういえば最近はカイノウやハリウアナと関係を持っているとも聞いたがそこのところは?」 京太郎「ないない、なんでもないですから」 臨海監督「そうか……つまらないな」ボソッ 京太郎「聞こえてますからね!」 【脱衣所】 京太郎「風呂は確か温泉って言ってたよな、楽しみだ」 京太郎「そういえば霞さんから……」 霞『ここの温泉は混浴だから、京太郎くんは11時から入ってね、その前に他の子を入れちゃうから』 京太郎『つまり11時前に入れば混浴ができる、と』 霞『そんなことしたらどうなるか……わかるわよね?』ニッコリ 京太郎『イエス!マム!』ビシッ 京太郎「というわけで用心をして11時半」 京太郎「誰か入ってないかな……」 京太郎「いるわけないよな……」 ガララ カポーン 京太郎「うん、わかってた」 京太郎「ちょっとの希望はあったよ、洗面所の前の髪の毛とか、石鹸の匂いとかで期待してたよ」 京太郎「でももうなんか……寂しいよな」 京太郎「気を取り直して飛び込んでみるか」 京太郎「イィィィィッヤッホオオオオオウ!」 バッシャーン 【そのころの脱衣所】 良子「……ふぅ」ヌギヌギ 良子「今日はあまり京太郎と喋れなかったな……」 良子「恋人……なんだよね」※違います 良子「もっとアグレッシヴにならないといけないよね、よし」 イィィィッヤッホオオオオオウ! バッシャーン 良子「まだ誰か入っているのか?」 良子「いや、この際中の人とも仲良くなろう!私ならできる、私ならできる!」 良子「こんばんはー」ガララ 京太郎「あー!気持ちいいー…………」 良子「…………」 良子「これはドリームだ、そうに違いない」ホッペツネル 良子「いたっ!」 良子「ってことは……夢じゃない?」 京太郎「え……っと、どうして良子さんがここに……?」 良子「……それは……だな……」 良子(そういえばカスミに言われてた気がする……) 良子(このまんまだと私は京太郎の風呂に入りに行った淫乱女だと思われるんじゃ……)ガクガク 良子(どうすればいいんだ……) 京太郎(なにこれどうしよう……なんで良子さんがここにいるんだよ) 京太郎(一応腕で隠れてはいるけど……ナイスな……)ブフォッ 良子「京太郎、鼻血出てるぞ!」 京太郎「えっ、うわ本当だ」 良子(京太郎がのぼせてる……のぼせたときってどうすればいいんだっけ……) 良子(えっと、確か……) 良子(膝枕……か) 良子(縁に座って……)チャポン 良子「きょ、京太郎!///」カァァ 良子「膝枕……するよ」 京太郎「えっ」 京太郎(現状を整理しよう) 京太郎(俺は温泉に入っている、当然裸だ) 京太郎(そして今、良子さんに膝枕してもらっている……良子さんも裸だあそこは腕で隠しているけど) 京太郎(どうすればいいんだよ……良子さんの肌やわらかいし白いし……) 良子「京太郎、落ち着いた?」ナデナデ 京太郎(頭、撫でてくれるし……怜さんとかいつもこんな気分なのかな……) 京太郎「はい、ありがとうございます」 良子「よかった、どうしたのかと思ったよ」ホッ 京太郎「……っておかしいでしょう!」ガバッ 良子「」ビクッ 京太郎「どうして良子さんがここにいるんすか!」 良子「……ごめん、入る時間を間違えたんだ……」 良子「私は……京太郎と入っても、その……嬉しいんだけど」 良子「迷惑だよね……もう上がるよ、ごめん」ショボン 京太郎「そ、そんなことないです!俺も嬉しいです!もっと二人で楽しみましょうよ!」 京太郎(何言ってんだ俺ぇぇぇえ!) 良子「そう……なの?」パァァ 京太郎(ええいままよ!) 京太郎「もちのろんですよ」 良子「じゃあまずは何する?体洗いっこする?それとも一緒にお風呂に入る?」 京太郎「え、えーっと……」 京太郎(何その選択肢……おかしいでしょ……) 京太郎「じゃあ……良子さんの身体を洗いますね」 良子「いいのか?」 京太郎「俺だけされてばっかりっていうのは少しなんなので」 良子「……わかった」 京太郎「まずは髪から洗いますね」 良子「うん」 京太郎「どうですかー?」ワシャワシャ 良子「気持ちいいよ」 京太郎「おかゆいところはありませんかー?」 良子「ふふっ、サロンみたいだな」 京太郎「俺もそう思いました、あははっ」ワシャワシャ 良子「痛っ!」 京太郎「ど、どうしました!?」 良子「ごめん、ちょっとシャンプーが目に入ったみたいで……」 京太郎「ごめんなさい、もうちょい丁寧にやります」 良子「ごめんね……」 京太郎「次は体洗いますね」 良子「よろしくね」 京太郎(流石に前はできないよな……) 京太郎「良子さん、髪もそうでしたけど肌も綺麗ですよね」 良子「そうかな?意識したことはなかったけど……嬉しいな」 京太郎「はい、背中終わりです。あとはご自分でどうぞ」 良子「えっ……前は?」フリムキ 京太郎「俺から言ったことですけど、前はダメでしょう」 良子「ダメ……でも……」 良子「……京太郎なら……ううん」 良子「京太郎に、洗ってほしいんだよ」ウワメヅカイ 良子「それでも、ダメかな?」ウルウル 京太郎「」ドキッ 京太郎「どうなってもしりませんからね!」 良子「京太郎になら、どんなことでも……」モジモジ 京太郎(腕が終わってついに最初の関門……胸) 京太郎(確かに触りたいとは思ってましたよ、揉みたいと思ってましたし顔もうずめたいと思っていました) 京太郎(でも何でこのタイミング……) 京太郎(腹くくるしかないよな…………ぐへへ)ワキワキ 京太郎「失礼しますね」モミッ 良子「んっ……」 京太郎(やわらけぇー!やわらけえよぉー!)ムニョンムニョンモミモミモミモミモミ 京太郎(感動!感動した!俺ぁ感動したよぉぉぉぉおお!)モミモミモミモミモミモミ 良子「きょ、うたろぉっ、!そ、そのくらっ!ああっ!」 京太郎(ふぅ……満足した、次はへそか)チョン 良子「んぁっ!」ビクン 京太郎(へそが弱いのかな?)クニクニ 良子「あんぅ、やぁっ!」ビクンビクン 京太郎(……エロい) 京太郎「これで洗い終わりですね、そろそろ入りましょうか」 良子「……ぅん」ビクンビクン 【そのころの脱衣所】 霞「戒能プロ、どこ行ったんでしょうね」 善野「一緒に来ればよかったんやけどねー」 健夜「ここの温泉って若返り効果があるんですよね!」 雅枝「せやで、年寄りに優しいやろ」 臨海監督「コカジプロには特にね」 健夜「どういうことですかね?」ピキピキ ワーワー キャーキャー 良子「…………」 良子(あの声は小鍛治プロ?ということは……) ソロソロハイローカー ガララ 良子「京太郎、潜って!」 京太郎「えっ、何を!?」 健夜「あれ?戒能プロいたんだ?」 霞「呼びに行ったんですけど、もう来てたんですね」 良子「が、我慢できなくてね」 良子(どうしよう、このままだと京太郎が痴漢にされてしまう……) 良子(そういえばあっちに……) 良子「あっちの方にもう一つ大浴場がありましたよ」 善野「あっちってどこ?」 良子「別の脱衣所から入るんですよ、こっちは疲労回復の湯であっちが若返りの湯らしいです」 雅枝「あ、あっちやったんか、ほな行ってくるわ」 臨海監督「私も行きますかね」 善野「小鍛治プロも石戸さんも早くいかへん?」 霞「私はまだ10代ですし……」 健夜「」ギロッ 霞「ひっ、行きますね!」 健夜「私も行こうかな」 良子「私も後から行きますね」 雅枝「ほなまたー」 ガララ 良子「……はぁ」 良子「京太郎、大丈夫か?」 京太郎「」マッサオ 良子「京太郎?京太郎?」 京太郎「」マッサオ 良子「京太郎ー!」 京太郎(現状を整理しよう) 京太郎(俺は温泉に入っている、当然裸だ) 京太郎(そして今、良子さんに膝枕してもらっている……良子さんも裸だあそこは腕で隠しているけど) 京太郎(って、何このデジャヴ) 良子「京太郎、起きた?」 京太郎「おかげさまで、どうもすみません」 良子「ううん、よかったぁ」ホッ 京太郎「こう二回も膝枕してもらってると悪いっすね」 良子「心配したから……いいよ」 京太郎「そう言われても……じゃあ俺も何かしてあげますよ!」 京太郎「何しましょうか?」 良子「何って……なんでも?」 京太郎「俺にできることなら、なんでも」 良子「じゃ……じゃあ……それじゃあ……」モジモジ 良子「充電……してもらってもいいかな?」 京太郎「……充電?」 京太郎(充電って……充電ってまさか……) ここから妄想―――――――――― 良子「京太郎の電気、私に流してほしい!」 良子「しびれさせて?」 京太郎「良子さん!」ガバッ 良子「きょうたろぉ、激しいよ……」 京太郎「流し込むぜ!俺の電気!」 ――――――――ここまで妄想 京太郎(ぐへへ……) 良子「京太郎、どうかした?」 京太郎「いえいえなんでもないですよ、それで、充電とは?」 良子「……エクスプレインよりもやってみた方がはやいと思うから、京太郎は浴槽の縁に座って」 京太郎「はい」 京太郎(……座ると俺の息子がやばいことにならないか?) JR京太郎「呼んだ?」 京太郎(ちょっとすっこんでろ!間に挟まってろ!) 良子「それで私がそこに座る、と」ストン 良子「充電充電!」 京太郎「充電充電!」 良子「チャージチャージ!」 京太郎「チャージチャージ!」 京太郎(どんなプレイ!?) 京太郎(何が悲しくて現役で美人で巨乳な若手プロと疑似挿入して充電充電言わないといけないの!?) 良子「……京太郎」 良子「疲れた」 京太郎「声が涸れるまで叫んでたらそうなりますよ」 良子「だよね……」 良子「……京太郎」 京太郎「何ですか?」 良子「国麻、頑張ろうね」 良子「私は地区選抜のコーチとして、京太郎は個人の部で、一緒に勝とう」 京太郎「……はい、絶対に負けませんからね」 良子「ふふっ、楽しみだね」 京太郎「俺もですよ」 良子「……もう少し、このままでいいかな?」 京太郎「もう吹っ切れましたよ……」 良子「……ありがとう」 良子「京太郎」 京太郎「なんですか?」 良子「私、京太郎といると……毎日が楽しいんだ」 良子「京太郎はどう?」 京太郎「俺もですよ、良子さんや照や憩たちがいて毎日が楽しいです」 良子「……うん、そうだよね」 良子「それじゃあ私は小鍛治プロたちの方に行くから、京太郎は後で出てきて」 京太郎「はい、おやすみなさい」 良子「おやすみ」フリフリ ガララ 京太郎「よし、出てきていいぞ息子よ」 JR京太郎「我慢できねえぜ!」 京太郎「温泉はちょうど白濁!此処ならできる!いくぞ我が息子よ!」 JR京太郎「ヒャッッッッハアァァァ!」 【合宿初日】終
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/573.html
http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1338852213/ 新幹線車内 照「…」ムスッ 乗客「ねーねー。あの子怖くない?」ヒソヒソ 乗客「ほんとだ。すっごい機嫌悪そう」ヒソヒソ 乗客「彼氏にでも振られたのかな?」クスクス 乗客「しーっ!駄目だよ、聞こえちゃうって!」ヒソヒソ 照「…」ギロッ 乗客「「ひっ!?」」ビクッ 照「…」 乗客「「あわわわわ」」スタコラ 照「…ふん。悪かったな。これが素だ」ボソッ 照「…」 照「…ちっ」 ガタンゴトン 『間も無く、長野ー長野ー』 照「っ!」ピクッ 照「…」 照「…」ソワ… 照「…」ソワソワ 照「…」ソワソワソワ 照「…」キョロキョロ 照「…」ゴソゴソ←自分の鞄を漁ってる 照「…」スッ←お目当ての鏡を見つけて取り出した 照「…」カパッ←開けた 照「…」クシクシ←前髪を整えている 照「…」ジー 照「…はぁ」 照「…はは。確かに、鏡の中の女は機嫌の悪そうな怖い顔をしている。まったく、これが素だとは我ながら恐れ入るな」 照「…まあ、無理もない。長野に余り良い思い出は無いしな。自然と顔に出ているやもしれん」 照「…そうだ。京ちゃんが居なければ、こんなところ二度と来てやるもんか…」ギリッ キイーッ 照「…ふん。着いたか」スクッ 改札前 照「…思えば、東京に行ってから長野に戻って来たのは初めてだったか」 照「…咲やお父さんには…会いたくないし、連絡しないで良いか」 照「京ちゃんは…連絡先知らないしな。私がこっちに居た頃は、まだ京ちゃん携帯持って無かったし」 照「仕方ない。今は清澄高校だったな?帰り道で待ち伏せしてやろう。咲や知り合いに見つからないよう、こっそり会いに行かなければ」 照「ふふ。帰り道にいきなり私が居たら、京ちゃん驚くだろうな。…そうだ。折角だし、物陰に隠れて、わっ!ってやってやろうか」 照「京ちゃんリアクション良いからな。きっと飛び上がって驚いてくれるに違いない」クスクス 照「その後、お詫びにご飯をおごってあげよう。京ちゃんよく食べる子だし、喜んでくれるだろうな。食べっぷりがいいから、見てて楽しいし」 照「うん。お姉さんらしく、ちょっと高級なお店に連れて行ってあげよう」ウンウン 照「そ、それで、そ、その後…け、携帯の番号とメアド聞いて…」モジモジ 照「そ、そこまで出来れば、完璧だ!」 照「さあ、改札通して、まずは京ちゃんの家まで…」ピタッ 照(…けど、ちょっと待てよ?) 照(…久しぶりだしな。もし私の事見て、誰?とか言われたらどうしよう) 照(…いや、それだけならまだ良い。もし完全に忘れられてたりなんかしたら?) 照(それどころか、久しぶりに会ったのに、嫌そうな顔なんてされたらどうしよう…) 照「は、ははは。考え過ぎだな。京ちゃんに限って、そんな薄情な男に育っている訳ないだろう」 照「さあ、時間も余り無いんだし、そろそろ改札を…」ピタッ 照(け、けど待てよ?もし彼女連れだったりしたら、嫌な顔くらいするんじゃ…) 照「…ん?」 照「…」 照「か、彼女!!!?」 近くに居た人「ひっ!?」ビクッ 照「あわわわわわ」アセアセ 照(し、しししししまった!今まで京ちゃんに彼女が出来るだなんて、考えた事も無かった!) 照「うわああああ…」キョロキョロ 照(け、けどけどけど!よくよく考えてみたら、もう京ちゃんも高校生だぞ!?そろそろ彼女くらい欲しいと思ったって不思議じゃない!) 照「はううう…」オドオド 照(そ、それに、京ちゃん格好良いし、優しいし、絶対モテるに決まってるし) 照「うええええ…」グスッ 照(冷静になって考えてみたら、京ちゃんに彼女出来てない方がおかしいくらいじゃないか!)←全然冷静じゃない 照(それに、京ちゃんの事好きになるような子なら、私みたいな性格ブスはそうそう居ないだろうし)オロオロ 照(京ちゃんに釣り合うような子なら、顔だって最高に可愛いだろうし、スタイルだって良いだろうし…) 照(はっ!そう言えば、去年の全中優勝者の原村和とか、全部満たしてる上に清澄の同学年じゃないか!!!) 照「も、もしあんな子相手だったら、勝てる訳ないじゃない…」ガタガタ ハラリ 照「あ、切符っ!」スッ ガチャン ピンポーン 照「うわわっ!」 駅員「大丈夫ですか?」 照「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!」 駅員「気にしないで下さい。はい、切符どうぞ。このまま改札通りますか?」 照「っ!ちょ、ちょっと待って!」 駅員「はい?」 照「こ、心の準備がまだなんで…」 駅員「は、はあ。でしたら大変申し訳ありませんが、他のお客様のご迷惑ですので一旦改札から離れて戴けませんでしょうか」 照「あ。わ、わかりました…」スゴスゴ 新幹線ホームのベンチ 照「…はあ」 照「…」 照「なんか、怖くなっちゃったな…」 照「…もし京ちゃんが誰か他の子と付き合ってたりしたら…」 照「わたしどうすればいいのぉ~?」グスッ 照「ううう~…」ギュッ 照「京ちゃ~ん…」 照井「…」 照「…もし」ボソッ 照「…もし、京ちゃんが本当に誰かと付き合ってたとしたら…」 照「どんな子か確かめなきゃいけないけど…」 照「…やっぱり怖いよ。京ちゃん」ブルブル 照「…」 プルルルル 『間も無くー。東京行きの新幹線が到着しまーす』 照「…」 プシュー 『到着ー。到着ー』 照「…」チラッ 『出発はー。2分後ー。2分後ー』 照「…」 『次ー。東京行きー。新幹線発車しますー』 プシュー ガコンガコンガコン… 無人のベンチ「」 新幹線車内 照「…臆病者め……」 ガコン…ガコン…ガコン… 照「…臆病者め。臆病者め。…臆病者め!」 照「うう…」ペタン 照「ううううう…」ジワッ 照「ううーっ!」 照「う、うう、うええええ…」 白糸台麻雀部部室 ワイワイガヤガヤ 淡「それでさー」アハハハ 照「…」ガチャッ 菫「ん?照?どうしたんだ。今日は家の用事で休むんじゃ…」 照「…」イライラ 菫「(これは相当機嫌が悪いな。巻き込まれる前に退散するか)っと、そう言えば私も今日は用事があるんだった。淡。後は任せた」 淡「へ?弘世先輩帰っちゃうんですか?けど、宮永先輩来たんなら、後は宮永先輩に…」 菫「…淡」 淡「…はい?」 菫「許せ」ドヒューン 淡「うわ。早」 淡「…まったく。なんなんだろーね。うちの三年生は。…けど、天下の白糸台が若干一年の私に部を託しちゃうかー。やっぱり私って、天才?」ニヤニヤ 照「…」 淡「今日は宮永先輩もなーんか心在らずーな感じだし?今のうちに部の影響力を上げとくのもイイ感じだよねー」 照「…でる」ボソッ 淡「さーて!そうと決まったら、みんなー!今日は私が部長代理を務めまーす!って言う訳で、今日の練習は…」 照「弛んでるぞ貴様等あああああ!!!!」ガアアアア 淡「ひいっ!?」ビクッ 照「なんだ貴様!その打ち筋は!」ビシッ 一年「ひいっ!?」 照「ふざけるな!こんな温い麻雀をするような奴に、我が白糸台麻雀部の部員が務まるか!」 一年「す、すみませ…」 淡「あ、あわわわわ」 照「お前はなんだあああ!!」ビシッ 二年「ひいっ!?」 照「貴様!今、逃げに回ったな!?ふざけるな!我等は王者だ!いついかなる時もどっしりと構え、相手を迎え撃つ麻雀をしろ!!」 二年「す、すみません!すみません!」 淡「み、宮永先輩!?落ち着いて下さい!」 照「ああん!?」ギロッ 淡「怖っ!?」 照「なんだあ?淡。貴様、さっきから聞いてれば、随分と調子良い発言を連発していたようじゃないか」クククク 淡「き、聞いてたんですか!?」 照「いいだろう。貴様のその天狗の様に伸びた鼻っ柱をへし折ってやる。卓に付け。今日は私の気が済むまで、延々付き合って貰うぞ」ゴゴゴゴゴゴ 淡「ひいい!すみません!すみません!調子乗ってすみません!謝りますからそれだけは!今晩見たいテレビがあるんです!」 照「知るか!敵前逃亡などという情けない行為、白糸台麻雀部にとって最も許されざる事だ!恥を知れ臆病者!」 淡「うわああん!何この先輩!いつにも増して理不尽だあああ!」 照「黙れ!いいから卓に付け!」ズリズリ 淡「もう私臆病者でいいですから~!」ジタバタ 照「い、い、か、ら、来~い!」ギリギリ 淡「誰かー!誰かー!この人の抑止力になる人、連れて来てー!!」ジタバタ 照「そんな人間は居らん!!」 淡「い~や~だ~!!!」 照「うおおお!来ーい!!!」グイッ 淡「ぎゃああああああ!!!」 清澄高校麻雀部部室 久「よっし!それじゃあ、今日の部活はここまで!」 まこ「ん。お疲れさん」 和「お疲れ様でした」ペコリ 咲「はあ~。今日も終わった~。お疲れ様です!」 優希「くふう~。最近、部活がハードだじぇ~。全然勝てないし…」ガクリ 和「あ、ゆ、優希…えっと…」 京太郎「お疲れ様です、みんな。特にタコス、お疲れ」 咲「…むっ」 優希「なんだー?京太郎。私に特別に労いの言葉をかけるとは、貴様も成長したのう」ムクリ 咲「うー…」ジー 京太郎「わはははは。最後の方お前フルボッコだったしな。流石にお疲れ様だぜ!」 和「え!?ちょっと、須賀君!?落ち込んでる人にそんな…」 優希「むっきー!?そういう事か!やっぱり貴様は成長の無い奴だじぇ!そこに直れ、犬め!成敗してくれる!」ガタッ 和「あれ、復活した…」 京太郎「うおっ!?」ビクッ 優希「うおおお!食らえ!必殺スリーパーホールド!」 京太郎「ぐげげげギブギブ」パシパシ 優希「このこのこの!これでもかこれでもか!」グイグイ 京太郎「ごふう」 まこ「くっくく。相変わらずあの二人は気が合うのぉ」ニヤニヤ 久「そうねぇ。ちょっと凹ませても須賀君が煽ったらすぐ復活するし、優希を鍛える分には凄く助かるわ」クスクス 和「優希なにやってるの!?だ、大丈夫ですか!?須賀君!」 まこ「そのたんび京太郎が死にかけるのは申し訳ないがのぉ。和は相変わらず本気で焦っとるし」 久「まあいいんじゃない?胸押し付けられてるようだし、役得でも有るわよ」 咲「…」ペタペタ 京太郎「何が役得ですか!こんな抉れ胸押し付けられても嬉しく有りませんから!それより早く助けて下さいって!」 優希「ほう。よくぞ吠えた小僧!よほど命がいらんと見える。ならば死ねい!!」ギリギリ 京太郎「ぐおおお!お、おい、タコス!やり過ぎだ、マジで首締まってる…か、ら…」 和「ゆ、優希、須賀君、顔が青ざめて来てるから…」オロオロ 久「さって。私は帰ろっかなー」ガタッ まこ「ワシもワシも」ガタッ 京太郎「薄情者共め…それに比べて和マジ天使…」 和「優希!もう止めて!私、貴女を殺人者にしたくない!」 京太郎「あ、和さんもサラッと酷い…?」 優希「おりゃおりゃ」ギリギリ 京太郎「わ、わかった。タコス、タコス奢るから…」 優希「その言葉が聞きたかった」ピタッ 京太郎「ちっくしょー…」 優希「なら今度の日曜、長野の方に行くじぇ」 京太郎「はぁ?」 優希「長野駅の前のデパートにな。最近超美味いタコス屋が出来たらしいのだ」 京太郎「長野駅って…毎度毎度どうやってそんな情報仕入れてんだお前は。しかも、今度の日曜?明後日じゃねーか」 優希「うむ。遠征費もお前持ちだじょ」 京太郎「はああ!?なんで俺がそこまで!」 久「あらいいじゃない。二人で行ってくれば?」 京太郎「部長!?」 優希「流石部長!話が分かるじぇ!」 和「優希、何言ってるの?部長もです!全国までもう殆ど時間が無いんですよ!今は少しでも練習しなくちゃいけないのに…」 久「優希、最近疲れてるみたいだしね。気分転換に遊びに行くのも良いと思うわ。根を詰めすぎて、精神的余裕を失うよりずっと有意義だわ」 和「うう…」 久「幸い、今は部費に余裕有るしね。二人の交通費くらい適当な名目で持ってあげるから」 まこ「悪いやっちゃな~」クスクス 久「いひ~」ニンマリ 優希「その日みんなは何してるじぇ?」 久「もち、部活。4人居れば出来るし、休む理由が無いわ。須賀君には悪いけど、優希の付き添いだと思ってくれれば良いから」 京太郎「うーん。部長がそこまで言ってくれるなら…俺は全国有りませんしね」 咲「…」ペタペタ 咲「…はぁ」 久「はい、それじゃ、決定ー。当日の予定は二人で決めておきなさい。これで私たちは帰るから」 まこ「まあ、全国が近いってのもその通りじゃ。あんま羽目外さんようにな。…ホテルでハメてくるのは黙認しちゃるか…」ニヤニヤ 久「オラァ!」スパーン まこ「あいたー」 和「?」 久「はーい。ふざけたワカメ先輩アウトー」ズリズリ まこ「ま、まちんしゃい!まだカバンが…」 久「明日の朝早起きして取りに来なさい!」 まこ「んな殺生なー」 バタン 優希「♪」 和「随分ご機嫌になりましたね。優希」 京太郎「まあ、最近部活尽くしだったのに調子悪かったもんな。部長じゃねーけど、ちょうどいい息抜きなのかも…」 和「まあ、なんでもいいです。せっかくなので、楽しませてあげて下さいね」 京太郎「あいよ」 和「それじゃあ、私はそろそろ帰りますので」 京太郎「あれ?今日はみんなで帰んないの?」 和「家の用事で、早く帰ってくるよう言われているんです。今からじゃ少し急がないと」 京太郎「なら仕方ない」 和「では」スタスタ 京太郎「また明日なー。和」 優希「のどちゃんばいばいだじぇー」ニコニコ 京太郎「さって。俺らも帰ろうか」 優希「おう!」 京太郎「咲ー?てなわけだから、帰るぞー」 優希「そう言えば咲ちゃん、さっきから静か過ぎたじぇ」 京太郎「お前がうるさいだけだっつーの…咲?」 咲「ブツブツブツ」 京太郎「駄目だ。自分の世界に入っちまってる」 優希「またかぁ…」 京太郎「ったく。仕方ない。俺らは先帰るか」 優希「大丈夫かや?」 京太郎「こうなったらしばらく帰って来ないしな」 優希「わかったじぇ。咲ちゃーん。先に帰ってるじょー」 京太郎「もう暗いし、一人で帰ろうとすんなよ、と。メモ置いとくぞ」 優希「じゃ、帰るじぇ」 京太郎「ん」 バタン 咲「ブツブツブツ」 咲(やっぱり京ちゃんって、おっぱい大きい子の方が好きなのかな)ペタペタ 咲(私みたいな貧相な子、やっぱり女の子として見てくれてないのかな…)シュン 咲(そうだよね。そう言えば麻雀部に入ったのも和ちゃんが居たのが一番の理由だったし、男の子だもんね。当たり前だよね)ガクリ 咲(和ちゃん、羨ましいなぁ。可愛いし、スタイルいいし、性格だって優しくてしっかり者で、可愛いし…) 咲(私も和ちゃんみたいだったら、京ちゃんに好きになって貰えたのかなぁ)クスン 咲(いいなぁ…) 咲(あ、けどけど、優希ちゃんは、その、私と同じくらいのスタイルだけど、京ちゃんと仲良くしてるよね!すっごく仲良いよね!) 咲(…最近は、幼なじみの私より仲良いもんね…)シュン 咲(やっぱり、明るくて可愛いからかなぁ…)クスン 咲(そうだよね。優希ちゃん、凄く可愛いもん。地味で根暗な私とじゃ、全然違うもんね) 咲(私と一緒に居たって、楽しくないだろうし…京ちゃん優しいから、今までは私が一人にならないように黙って傍に居てくれてたけど…) 咲(そうだよね。最近は部のみんなめ居るし、わざわざつまんない子の相手するより、可愛い子や楽しい子とお喋りしたいよね)ズーン 咲(うう。せめてスタイルに将来性が期待出来ればまだ希望が持てたのに…) 咲(お姉ちゃん見る限り、それもあんまり期待出来ないし…)クスン 咲(…せめて、麻雀でみんなの期待に応えられるように頑張ろう) 咲(京ちゃんに女の子として一番好きになって貰えることは出来ないけど、せめて、麻雀で格好良いところみせたいな) 咲(私の唯一の取り得だし) 咲(…京ちゃんのお陰で、また好きになれた麻雀だもん) 咲(…頑張ろう) 咲「…うん。頑張るぞっ!」ギュッ 咲(っととと!思わず声に出ちゃった!みんなに変な子って思われちゃうよ!) 咲(あうう。どうやってごまかそう。取り敢えず、何か言わなきゃ…) 咲「…あれ?」 咲「…」 咲「…」キョロキョロ 咲「…」ポツーン 咲「あ…れ…?誰もいない…」 咲「あ、お外真っ暗…」 咲「…京ちゃーん?」キョロキョロ 咲「…部長ー?」ヒョイ 咲「染谷せんぱーい…」ジワ… 咲「の、のどかちゃ~ん?」ウル… 咲「優希ちゃあああーん…」 咲「…」ウルウル 咲「みんなどこぉおお!?」ダッ 咲「あうっ!?」コケッ ドンガラガッシャーン 咲「あうううう…もうやだぁ…」シクシクシクシク 咲「うわあああん!みんなに置いてかれたぁああ!」 咲「酷いよみんな!人がちょっとぼーっとしてるうちに、みんなで帰るなんて!」 咲「うううー。いじわるー!私だって怒る時は怒るんだからね!こうなったら、私だってみんなの事もちょっと困らせてあげるんだから!」 咲「…けどまずは、散らかった机直さなきゃ…」モゾモゾ 咲「お外暗いなー…私、無事に帰れるのかな…」ゴソゴソ 咲「怖い人とか出たらどうしよう。心細いよぉ…」 咲「…あれ?なんだろこの紙」ピラッ 『気付いたか? もう暗いし一人で帰ろうとすんなよ! 最悪俺の携帯に連絡くれたら迎えに行ってやるから! 最近変質者とかも出るんだし、お前なんか格好の餌食になるからな! ぜーったい一人で帰んなよ! 京たろー』 咲「…」 咲「…うん。ありがと」ギュッ 咲「…」ピポピポ 咲「…あ、お父さん?私。咲。悪いんだけど、迎えに来てくれないかな」 咲「うん。今、学校。ちょっと部活で遅くなっちゃって…うん…うん…ごめんなさい…お願い…じゃあ、旧校舎の入り口で待ってるね。ありがとう…」 咲「…ふう」ピッ 咲「…お父さん来るまで、座ってよ」ストン 咲「…」 咲「…」 咲「…はぅ」グデン 咲「…私の、ばか」ポツリ 咲「…意気地無し……」クスン 翌日 東京駅新幹線ホーム 照「…」 照「…なんで私は、また此処に居るんだ…!」ハァ 照「ぐぅ。それもこれも、昨日長野まで行っておいて、おめおめと引き下がってしまったからだ…!」 照「部活を2日連続で休むのは心苦しいが、しかしこのまま引き下がったままというのも、具合が悪いし…」ソワソワ 照「そ、それに、昨日はあれから結局空が白むまで延々全力で淡と対局したし、いつもよりむしろ内容の濃い練習だった筈だし…」ウロウロ 照「だ、第一、こんなところで心に凝りを残して、全国で力を出し切れなかったら、それが一番部に迷惑だろうし…」グルグル 照「そ、そうだ!結局、私が京ちゃんに会って精神を安定させるのが、我が部にも一番プラスなんだ!」キョロキョロ 照「ぜ、前人未踏の全国三連覇に向けて、例えどんなに小さな芽であろうと、懸念材料は摘み取るのが王者だし…仕方ないよな!」コクコク 照「よし!そうと決まったら、早速長野まで行こ…」ダッ ガシャン ピンポーン 照「…」 駅員「すみませんお客様。新幹線に乗るには、切符を買って戴かないと…」 照「…すみません」シュン 照「…よし。切符は買った。気を取り直して、今度こそ行こう」 照「ふふ。私もすっかり東京人だな。こうして迷う事無く、一人で切符も買える」 照「ここまで至るにはさしもの私でさえ、2年半という時間が必要だったが…ふん。長野の田舎者共にはこんな高等技術、まるで理解出来まい」 ※私に長野県民をdisる意図は有りません 照「…あっ。そう言えば、お土産とか買ってった方がいいのだろうか?」 照「…京ちゃん、結構食いしん坊だしな。よし、何か東京らしいお菓子をお土産に買って行ってあげよう。喜ぶぞ」ニヤ お土産物売り場 照「…へえ。これは…凄いな」キョロキョロ 照「なんでもある。…凄いな」キョロキョロ 照「…おお。このチョコレート、小さいが、お洒落で可愛い。…凄いな」 照「さ、3,000円!?この大きさで!?」 照「す、凄いな…」 照「あっ!魚介類売り場だ!珍しい魚置いてないかな!?」タッタッタ 照「酒盗?へえ、鰹の塩辛なんてあるんだ!面白いな」ワクワク 1時間後 照「はっ!」 照「しまった。あまりに色々有りすぎて、目移りしてしまっていた…もうこんな時間か」 照「ま、まあ、仕方ないよな。東京人が自分のところのお土産を見る事など滅多に滅多に無いのだ。こんなに沢山有れば、色々見てしまうのは自明の理だ」 照「…気が付けば色々買ってしまっているな。…これ以上買っては、お小遣いが少々厳しくなる。自重するか」 照「…おっといかん」 照「ふふ。私とした事が、。最も大切な物を忘れていた」 照「折角の東京土産なのだ。ならば、選ぶのはこの近代都市からの土産に相応しい、最も洗練された品を買っておかなければ」 照「そう。文明的で、近代的で、ハイカラで、洗練された、至高のお菓子」 照「全地方民の憧れ」 照「東京バナナ」キリッ 新幹線車内 ガタン…ガタン…ガタン… 照「ふふ…良い買い物をした」 照「特にこの東京バナナ。京ちゃん、絶対喜ぶだろうな…」 照「京ちゃんが美味しそうに食べてくれたら、私はそれだけで満足だ…」クスッ 照「…」 照「…勢いで買った干物とか、どうしよう」 照「…昨日なんだかんだで付き合わせてしまったからな。詫びの気持ちも込めて、淡にやるか」 『間も無く、長野ー長野ー』 照「おっといかん。そろそろ到着か」 照「これから京ちゃんに会いに行くのだ。身嗜みを整えねば」 照「鏡、鏡…と」ゴソゴソ 照「ふん。あったか…」スッ 照「さて、と。前髪を…」 照「!!?」 照「な、な、な…なんだこれは!」 照「…隈…だと…?」 照「な、ななな、あわ、あわわわわ」ワタワタ 照「そう言えば、昨日から一睡もしていないんだった。どおりで目がショボショボすると思った!」 照「なんて目つきの悪さだ。まるで哲也の印南じゃないか!」 ※言い過ぎです 照「もしかして私は、ここまでずっとこんな顔してやって来てたのか!?」 照「くっ!どおりで、さっきの土産物屋の店員とかみんなちょっと私に怯えると思った!」 照「ど、どうする!どうすればいい!?」 照「顔を洗うか?いや、そんなんで治まるほど薄い隈じゃない!」 照「メイクでごまかす…?自慢じゃないが、私は化粧は下手だ。余計酷い顔になったら目も当てられん」 照「どこかで仮眠を取る?…ホテルで休むには、もう手持ちが…」 照「…そ、それとも、このまま会いに行くか…」 照「ゴクリ」 照お姉ちゃん脳内シミュレート ケース:もしこのまま京太郎の前に立ったら 京太郎「いやー!今日も学校楽しかったなー! 入学3日で友達百人出来たし、全校の女子にモテモテだし、参っちゃうなぁ けど今は部活も高校から始めたサッカーで一年生ストライカーでレギュラーだし、それが一番かな! 弱小校の清澄なのにスカウトの目に留まって、卒業後はバルサでメッシとツートップ確実だし!」 照「ふ、ふひひひひ。京ちゃん」ガサッ←草むらから出てきた 京太郎「うわっ!?」 照「う、うふふふ、ひ、久しぶりだね…」ウネウネ 京太郎「だ、誰だお前!」 照「だ、誰だなんて、ひ、酷いなぁ。フヒッ↑て、照だよぉ。宮永照」 京太郎「て、照さん!?」 京太郎「う、嘘を吐くな!照さんは今年高校三年生だぞ!お前みたいに、いかにもヒロポンやってそうな危ない女な訳ないだろうが!」 照「あ、ああ。私の事、覚えててくれたんだな?京ちゃん。私嬉しいぞ。この隈は、その、うちの後輩の淡が原因でだな…」 京太郎「うるさい!お前みたいな妖怪が、俺の尊敬する照さんの名をかたるな!」 照「そ、そんな…」 京太郎「クソっ!よりによって照さんの名前を利用するなんて!不愉快だ!今すぐ俺の前から消え失せろ!!化け物!」 照「違うの、京ちゃん…」 京太郎「まだ言うか!この…」 照「あ…そ、そうだ!お土産!東京バナナ!私が照だって証拠!ほら、私今東京住みだし…」 京太郎「照さんの偽物からの土産だなんて、例え当局バナナだって嬉しくねーよ!」パシッ ドサッ 照「あ…」 照「そ、そんな…駄目だよ京ちゃん。いくら私が気持ち悪いからって、食べ物を粗末にするなんて…」 京太郎「黙れ黙れ!汚らしい売女め!二度とこの地に足を踏み入れるな!」 照「そんな…京ちゃん、いつからそんな人を傷付けられるような子になっちゃったの?照姉ちゃん、それが一番悲しい…」 京太郎「ふん!人なんざなあ!付き合ってる人間によって簡単に変わっちまうもんなんだよ!」 照「…え?」 「すみません須賀君。お待たせしちゃいましたか?」 照「っ!お、お前は!」 京太郎「あっ。和。そんな事ないよ。俺も今来たところ」ニコッ 照「!?」 和「そうですか?良かったぁ…私、須賀君をお待たせしちゃってたらと思って、ガキの癖に下品なおっぱいゆっさゆっささせながら、淫乱らしく無駄に官能的な感じで汗流して、一生懸命走って来たんですよ!」 京太郎「ははは。心配しないでも良いよハニー。俺が5分や10分の遅刻で怒るようなチンケな男な訳がないじゃないか」 和「そ、そうですよね。須賀君、優しいですもんね///」 京太郎「当たり前さ。それに、天使の様に可愛らしい容姿の君を、叱れる訳ないじゃないか。そこの薬中とは天と地の差だ」 照「…え?」 和「あら?そこの見窄らしい方、物乞いでは無かったんですか?…おや、どこかで見覚えがある方ですね」クスクス 照「あ、あう…」 京太郎「ん?どうした?和。お前、この女印南と知り合いだったのか?」 和「…」ジー 照「あ、あわ、あわわ…」オロオロ 和「クスッ」 照「ひっ!?」 和「いえ。勘違いでした。私の知り合いではありません」 京太郎「そうか」 照(ば、バレなかった…?) 和「さあ、行きましょう?須賀君。いつまでもこんなところに居ては、目の隈が移ります」 京太郎「ん。そうだな。和。まず、どこに行きたい?」 和「私、ホテルに行きたいです!」 京太郎「ははは。和は変態だなあ」 和「うふふ。今日も須賀君のリー棒を私のマンズに責任払いして下さいね」ニコッ 京太郎「勿論さ。今日は徹マン確定だぜ」 和「うふふ。楽しみです。二人でビギニング・オブ・コスモス目指しましょう…」 京太郎「御無礼させて貰うぜ…」 照「」ポツーン 和「…それでは、失礼。チーム・虎姫エースにして高校最強雀士にして、負け犬の、宮永照さん?」クスッ 照「!」 和「クスクスクス」 京太郎「じゃあなー。印南」 和「さようなら。印南さん。…明日からの貴女の渾名、楽しみですね?」ニコッ 照「う…」 照「うわあああああ!?」ガバッ 搭乗員「あ。やっと起きた」 照「はあ…はあ…はあ…」 照「…?」キョロ… 照「ゆ、夢…?」 照(ど、どこから…?) 照(…どこからだって良い。とにかく…) 照「よ、良かった…」ボソッ 添乗員「ちっとも良くないですよ!」 照「ひゃっ!?」 添乗員「君ねぇ!制服着てるって事は、高校生!?しっかりしなさいよまったく!」 照「?…?…?」 添乗員「揺すっても揺すっても全然起きないし!やっと起きたと思ったら寝ぼけた事言って!早く降りなさい!次の電車が来ちゃうじゃないか!」 照「あ、す、すいません…」ジュル 添乗員「涎拭きなさい!良い年してみっともない!制服もシワになってる!後で化粧室で身嗜みしっかり整える事!」 照「は、はいっ!」ガタッ 照(怖っ!) 化粧室 照「…はぁ」ゴソゴソ 照「…ん。身嗜みは整ったかな」 照「…少し寝たお陰で隈も薄くなったか」 照「…それにしても、さっきの夢、最悪だ…」ガクリ 照「京ちゃんには嫌われるわ、彼女は出来てるわ…東京バナナは捨てられるわ…」 照「…」ブルッ 照「…」 照「…まさか、正夢じゃ、ないよな?」ボソッ 照「…」 新幹線車内 ガタン…ガタン…ガタン… 『毎度ご乗車、有難うございます。この新幹線は、東京行きー。東京行きー』 照「…」 照「きょ、今日は、その、日が悪い!うん!」 照「手持ちも少ないし!もうすぐ日も落ちるし!折角京ちゃんに会うなら、日が高い内に行かないとな!うん!」 照「あ、そうだ!明日!明日は日曜日だし!明日の朝もう一回来よう!それなら日の高いうちから京ちゃんに会えるし、沢山遊べる!今日はその偵察!下準備のための偵察だ!」 照「そ、それに、ほら!干物とか、チョコレートとか、日頃頑張ってる部のみんなに一刻も早く食べさせてやりたいし!」 照「だ、だから、仕方ないんだ!これは!」 照「そうだ…仕方ないんだ…」グスン 照「きょ、今日帰るのは、仕方ない、んだ…」 照「これは、仕方なく帰るから、仕方ないんだ…」ヒック 照「明日は、明日こそは、行くんだ…」 照「だ、だから、東京バナナは、東京バナナだけは、大事に取っておくんだ」 照「う…」 照「うえ…」 照「うええええん…」 白糸台麻雀部部室 淡「はひ…昨日は酷い目に合った…」 菫「大丈夫か?淡。凄い隈だぞ」 淡「弘世先輩ー…わかってましたね?絶対分かってやってましたよね?貴女」 菫「うん?何がだ?」 淡「すっとぼけないで下さいよ!昨日私に部を任せた事です!よもや只の虎への人身御供だったとは…」 菫「ああ。その話か。すまんかった」 淡「すま…!うぐぐ、なんて誠意の籠もってない…」 菫「ところで、その怪奇!虎女についてなのだが」 淡「はい?」 菫「今日、見たか?」 淡「さあ?私だって、さっき起きて来たばっかりですからね。私より2つも年上の宮永先輩じゃ、まだ寝てるんじゃないですか?その、若さ的に」 菫「お前も言うようになったなぁ」 淡「えへへ。伊達に一年生レギュラーじゃないですし」 菫「だが、いくら今日が土曜で自主練日とは言え、全国の近いこの時期にエースが練習不参加では、部の士気に関わる」 淡「スルーっ!?」 菫「まったく、どこで油を売っているんだあのお姫様は…」 淡「あの…」 菫「ん?」 淡「僭越ながら、一つ質問が」 菫「許す」 淡「ありがとうございます。えーっと、ですね。質問って言うのは、その、宮永先輩の虎姫って渾名に関してなんですが…」 菫「うむ」 淡「なんでよりにもよって、あの人に『姫』なんて感じを使ったんですか」 菫「…うん?」 淡「いや、ずっと昔から思ってたんですけどね?あの人、どう考えても『姫』って感じじゃないでしょ」 菫「だが、虎の姫だぞ?ぴったりだと思うが」 淡「甘いです!」バンッ 菫「む、むう?」 淡「甘い!甘い!甘過ぎます!チョコレートなんかより!」 菫「お、おう」 淡「虎姫!?そんなプリティーな通名、あの人には甘いって言ってるんです!」 淡「いいですか!あの人を指すなら、これくらい言わなきゃ役不足です!冷酷無比な殺戮ターミネーターとか!他者の絶望を喰らい力を増す魍魎の類とか!一人エクスペンタブルズとか!仮にどうしても姫って付けたいなら、姫路城を一撃で破壊するデカいトカゲとか!」 菫「お前がアイツをどう思ってるかはよくわかった」 淡「兎に角!あの人を姫だなんて、天と地と人が許そうとも、私が許しませ…」 ガチャ 照「すまん。遅くなった」 淡「」 菫「お。来たか虎姫」 照「?なんだ?菫。藪から棒に」 菫「何でもない」 照「そうか。…淡?どうした固まって」 菫「いや、人生相談を受けていてな」 照「?まあいい。ほら、受け取れ」ヒョイ 菫「これは…菓子か?…お台場の恋人?」 照「ああ。ちょっと野暮用で東京駅に行って来たのでな。ついでに、日頃精進を重ねている部員の皆に、と思ったんだ」 菫「珍しい事もあるもんだ」 照「ほんの気紛れさ」 淡「…」 照「淡」 淡「ひゃ、ひゃい!」ビクッ 照「昨日は済まなかったな。私の練習に無理やり突き合わせてしまって」 淡「あ、い、いえ…そんな滅相も無い…」 照「そんなお前には、特別にこれをやろう」スッ 淡「え?」 照「大した物ではないがな。感謝の気持ちを込めた、ほんの礼というやつだ」 淡「え…」 淡「あ、ありがとう、ございます」 照「どういたしまして、だ。さて。それでは私は他の部員達にも、菓子を渡さなくてはならんので、これで失礼する」スッ 淡「あ…」 照「おい、そこの一年!ちょっといいか!」スタスタ 淡「…槍が降る」 菫「まあ、そう言ってやるな」クスクス 淡「私、今ちょっと宮永先輩の事尊敬しちゃいそうになりました…安い女なんでしょうか」 菫「素直に懐柔されておけ。私が楽だ」 淡「…はい」 菫「…そう言えば、さっき、お前姫がどーのとか言ってたな?」 淡「あっ!そ、それは…」 菫「実はな。ここだけの話、あいつ、結構あの通り名気に入ってるんだぜ?」ニヤリ 淡「え…?」 菫「らしくない?」 淡「は、はい…なんか、そう言うのくだらないって切り捨てるイメージが…」 菫「まあ、実際そうなんだろうがなぁ」ニヤニヤ 淡「?」 菫「私も昔、そこが気になって、本人に聞いてみた事がある」 淡「っ!で、答えは!」 菫「断固黙秘」 淡「ありゃりゃ」ヘナ 菫「ま、それはそれで良かったんだが。なんか癪でな。騙して酒を飲ませて喋らせた」 淡(この人だけは敵に回さないようにしよう) 菫「なんでもな。アイツ、地元に二個下の弟分がいるらしいんだが」 淡「あ、私と同じ」 菫「そいつが好きらしい」 淡「ぶふううううう!!!!!!!!!」 菫「誰にも話すなよ?本人に気付かれたら、お前は消されるぞ」 淡「絶対喋りません!墓の下まで持ってきます!!」 菫「でな。アイツが言うには、その弟分ってのが、妹の同級生でもあったらしく…」 淡「ああ。例の、記者会見でムキになって存在否定した妹さん?」 菫「で、その弟分君が、その子の事をたまに姫と呼ぶらしい。…私から言わせれば、からかい半分にしか思えてならんのだが」 淡「ま、まさか…」ヒクッ 菫「羨ましかったらしい」 淡「うわぁ…」 菫「涙ながらに延々5時間語られた」 淡「ご愁傷様です…」 菫「妹さんとの不仲もどうやらその辺が絡んでるようなのだが…」 淡「おっ!重大情報じゃないですか!」 菫「語られたらしいが、どうも聞き流してたようで記憶が無いのだ」 淡「ずこー」 菫「まあ、仕方ないな」 淡「」 菫「…ま。何はともあれ、だ。そんな阿呆みたいな事情ではあるが、本人は気に入っている通り名だ。そう無碍にしてやるな」 淡「はあい」 菫「ところで、その袋、何が入ってるのだろうか?」 淡「あ、そういえばそうですね」 菫「寄越せとは言わないが、私にも見せてくれ。アイツが何を買ってきたのか興味だけはある。むしろやると言われても要らん」 淡「不安になること言わないで下さいよ。それじゃあ、開けますよ」ゴソゴソ 淡「っじゃーん!」 ジンギスカンキャラメル 淡「」 菫「」 淡「な、ななな」ワナワナ 菫「さて。練習するか。またあとでな。淡」スタスタ 淡「なななな!」 淡「なんで北海道ーー!!?」ドー?ドー?ドー?←エコー 照お姉ちゃんがお土産買ってた頃 清澄高校麻雀部部室 京太郎「おはよーございまーす」ガチャ 咲「あっ!京ちゃん、おはよう!」パタン 京太郎「おっす咲。なんだよちっくしょー。今日は一番乗りだと思ったのに」 咲「ふふーん♪相変わらず甘いねっ」 京太郎「たはは…本読んでたのか。相変わらず文学少女してるな」 咲「うん。最近あんまり本読む時間が無かったから、早起きしてここで読もうと思って」 京太郎「そうか」 咲「あ、あと、染谷先輩から電話があって、今日は部活来れないって」 京太郎「あ、確かに鞄無くなってる」 咲「早朝取りに来たのかな?」 京太郎「てか、なんで咲に…」 咲「さあ?」 京太郎「ま、いいや。二人じゃサンマも出来ないしな。誰か来るまで、まだ本読んでていいぜ」 咲「うん。ありがと。京ちゃんはどうするの?」 京太郎「早起きしたせいでまだ眠いからな。コーヒー淹れる」 咲「京ちゃん、コーヒー好きだよね」 京太郎「まーね。咲も何か飲むか?」 咲「あ、う、うん…じゃあ、私もコーヒー…」 京太郎「はい?あれ、咲。お前コーヒーなんて飲めたっけ?」 咲「えっ?」 京太郎「いや、だって、いっつもは紅茶…」 咲「…」 京太郎「咲さん?」 咲(きょ、京太郎ちゃんと同じものが飲みたいから…なんて、言える訳、無い…よね) 京太郎「咲ー?」 咲「あ…だ、だって、同じ物の方が、京ちゃんも作るの楽でしょ?」 京太郎「いや、別に、俺インスタントのつもりだったし…紅茶程度、大した手間じゃないし…」 咲「えっ!?あっ!いや、そのっ!」アセアセ 京太郎「もしかしたら俺に気を遣った?別に遠慮しなくていいぞ」 咲「やっ!ちがっ!そうじゃなくって!あのっ!」ワタワタ 京太郎「?」 咲「えっと、えっとね?そのね?あの、その、ね?」 咲(うわーん!上手な言い訳が出て来ないよー!) 京太郎「…」 京太郎「あっ。そうか」 咲「ふぁっ!?」ビクッ 京太郎「はっはーん。なーるほーどねー」ニヤニヤ 咲「ど、どうしたの?京ちゃん…?」 京太郎「いやね。今日に限って咲がなんでそんなにコーヒー飲みたがるのかって不思議に思ったんだけど…」 京太郎「わかっちまったぜ」 咲「ひゅっ!?」 京太郎「これはズバリ、あれだな。そういう事だな」ニヤニヤ 咲「あわわわわ」 咲(ど、どどどどうしよう!?京ちゃんと同じものを飲みたいから、だなんてそんな事バレたら…) 京太郎「それにしても、咲もそんな事考えるようになったかー」ニヤニヤ 咲(あ!で、でもでも!京ちゃんの事だし、全然的外れな可能性も結構あるよね。っていうか、かなり高いよね。お願いします!今回ばかりはそうであって下さい!!) 京太郎「大人になったなー。咲」ニヤニヤ 咲(うわーん!なんかやっぱりバレてるっぽいー!?) 咲「や、止めて京ちゃん!そこから先は言わないで!」 京太郎「そんなに大人の味に興味あるのか」ニヤニヤ 咲「…へ?」 京太郎「そうかそうか。コーヒー飲んでみたいのか、咲も」ニヤニヤ 咲「…はいー?」 京太郎「いやー!咲もほんっと!成長したなー!まさか、コーヒーなんて苦い物を飲んで大人ぶりたい!だなんて見栄張る事考えるようになるなんてな!」 咲「…はぁあ!?」 京太郎「けど、無理しないでいいんだぜ?咲。お前、まだ小学生じゃねーか。コーヒーなんて苦いもの飲んだら、それ以上身長伸びなくなっちま…」 咲「うっさい!馬鹿京ちゃん!」ポイッ 京太郎「いてっ!咲お前、ハードカバーを人に投げつけるとかどう言う了見だ!」 咲「べー!」 京太郎「このー!」 咲「ふんっ!だ!!」プイッ 京太郎「…」 咲「…」 京太郎「…咲?」 咲「…」プイッ 京太郎「なあ、咲」 咲「…」ツーン 京太郎「さーきー?」 咲「なんにも聞こえませーん」クルッ 京太郎「ったく、このお姫様はすぐへそ曲げるんだから…」ブツブツ 咲「…何が姫だ」プイーッ 京太郎「…一応独り言だったんだけど」 咲「…」ツーン 京太郎「はぁ…」 咲(…お姫様って言ってくれた) 京太郎「悪かったよー。咲ー」 咲(…えへへへ) 京太郎「おーい。咲ー?」 咲「…コーヒー」 京太郎「…ん?」 咲「コーヒー淹れてくれたら許してあげる」 京太郎「…りょーかい」 コポポポ… 京太郎「…」 咲「…」ペラッ 京太郎「…」 咲「…」ペラッ 京太郎「…そう言えば、咲?お前、昨日はどうやって帰ったんだ?」 咲「え?…ああ。お父さんに迎えに来て貰って…」 京太郎「そっか」 咲「うん」 京太郎「なんだよー。それならそれで連絡くれても良かったのに」 咲「あ…ご、ごめん。気が回らなかった…」 京太郎「ま、いいけどさ」 咲「本当、ごめん…ね」 京太郎「いーって大丈夫大丈夫!」 咲「…」 京太郎「…」 咲「…ねえ、京ちゃん?」 京太郎「んあ?」 咲「…もしかして、ずっと連絡待ってた…?」 ピーッ!! 京太郎「お湯沸いたか」ガタッ 咲「あ…」 京太郎「」スタスタ 咲「…」 京太郎「…」コポポ 咲「…」ペラッ 京太郎「んー。まあ、ちょっとな」 咲「…そっか」ペラッ 京太郎「おう」 咲「…」ペラッ 咲(…えへへ) 京太郎「へい、お待ち」コトン 咲「ラーメン?」クスッ 京太郎「ズズズ」 咲「あれ、砂糖とミルク…」 京太郎「あ、いけね」ガタッ 咲「…いいよ。そのまま飲んでみる」 京太郎「大丈夫か?」 咲「ズズ…」 咲「…うえ」ベー 京太郎「はは。やっぱり駄目か。今持って来てやるよ」スクッ 咲「ごめんね…」 京太郎「えーっと、ミルクどこだったかなー」スタスタ 咲「…」 咲「…」チラッ 咲(京ちゃんのコーヒー…) 咲「…」 咲「…」チラッ 京太郎「お。あったあった。えっと、あと砂糖とスプーンと…」ゴソゴソ 咲「…」サッ 咲「チュッ」 コトッ 京太郎「お待たせー…って、どうした?咲。そんなニヤニヤして」 咲「えへへ。なんでもありませーん」ニヤニヤ 京太郎「?」 咲(…えへへ。…関節キス…しちゃった) 咲「コクン。…うん!おいしい!」 京太郎「?そ、そうか?そりゃ良かった…」 咲「えへへへへ~♪」ニヤニヤ 咲(コーヒー、甘い…おいしい…)コクンコクン 京太郎「どうだ?京太郎特製コーヒーの味は?」 咲「…クスッ。普通かな」 京太郎「あら手厳しい」 咲「だって、インスタントに砂糖とミルク入れただけでしょー?」クスクス 京太郎「馬鹿にすんなよ?他にも隠し味ちゃんと入れてんだかんな!」 咲「へー。へー。何入れだのさー。私、見てたけどそんな様子無かったよ?」 京太郎「それは、愛」キリッ 咲「プッ」 京太郎「あ、受けた?受けた?よっしゃ、俺の勝ちー!」 咲「あははは!何それ、京太郎キモーい!」クスクス 京太郎「キモいはキツい!」 咲「あははは!あははははは!!も~!!京ちゃんってば、も~!」クスクスクス 京太郎「うぐ…これだけ笑われると逆に軽くショックなんですが…」 咲「こんなに笑ったの久しぶりだよ~」 京太郎「そ、そっか…うん。良かったです…」 咲「あはははは!」 京太郎「くすん」 咲(気分が和らいで、心が落ち着く…なんて優しい時間…) 咲(そろそろみんな来る時間だけど…) 咲(もうちょっと、こうしてたいな…) ガチャッ 優希「おっはよーだじぇ~!」 京太郎「お。優希か。おはよう」 咲「…」 咲「ゆ、優希ちゃん。おはよう」クスン 優希「おっ!犬に、咲ちゃんだじぇ!まだ二人しか来てないのか?」 咲「う、うん…」 優希「む?なんか芳しい香りがするじぇ」スンスン 京太郎「ああ。もう一人来るまで、暇だったからな。咲とコーヒー飲んでたんだ」 優希「ほう!朝コーヒーとな!」 咲「あ、朝コーヒーって///」 優希「何故そこで顔を紅くした、咲ちゃん…」 咲(よ、夜明けのコーヒーって連想しちゃった…) 優希「いいないいなー!私もコーヒー飲みたいじょ!」 京太郎「お前も飲むか?…って、お前みたいなちびっ子にコーヒーなんか飲める訳ねーだろーが」 優希「馬鹿にすんなよー?ブラックだって余裕だじぇ」 京太郎「うそん」 優希「ほんとん」 京太郎「信じらんねー。まじで信じらんねー」 優希「むっ!ならば証拠を見せてくれる!ブラックコーヒーを持てい!」 京太郎「えー…」 優希「どうやったら信じるのだお前…」 京太郎「うーん…そんじゃあ、これならどうだ?ちょうど俺のコーヒーがブラックだから、お前がこれを飲んでみて、大丈夫そうなら淹れてやる」 優希「受けて立とう!」 咲「えっ?」 京太郎「くっくっく。さーて。そのやせ我慢が、いつまで続くかな~?」 咲「ちょっ…」 優希「って言うか、今回はマジで楽勝だじょ。ほれ、さっさとカップ寄越すじょ」 咲「あの…」 京太郎「ほれ」スッ 咲「ああっ…」 優希「ん」ヒョイ 咲「やだ…」 優希「ゴックゴックゴック」 京太郎「あああああ!?」 咲「きゃああああああ!?」 優希「ごち」カラッ 咲「」ガーン 京太郎「お、お前!全部飲みやがったな!?」 咲「」ガーンガーン 優希「ま、貴様が淹れたにしては上出来な味だったじょ。百点満点中40点をくれてやる」 咲「」ガーンガーンガーン 京太郎「しかも低っ!」 優希「ほれ、早く新しいのを淹れるじょ」 京太郎「くっそー。タコスといい、味覚だけ変に老けやがって…」 優希「タコスを馬鹿にするでない!」カッ 和「おはようございます、皆さん…」ガチャッ 優希「あっ!のどちゃん!おはようだじょ!」 京太郎「おっ!和おはよう!今日も可愛いな!」 和「須賀君、何言ってるんですかもう…馬鹿な事言ってないで、部活しますよ」ハァ 京太郎「バッサリか…」ガクン 優希「むう…」 咲「」クスン それからしばらくして 照お姉ちゃんが駅員さんに怒られてた頃 久「ごめーんみんな!遅くなっちゃった!」ガチャッ 和「部長!」 京太郎「あ、部長。お疲れ様です」 優希「お疲れ様だじぇ!」 和「お疲れ様です。どうしたんですか?何かトラブルでも?」 久「いやぁ、ちょっと学生議会の方でトラブっちゃって。この後もご飯食べたらまた戻んなきゃで」 和「そうだったんですか…」 久「ほんと、この時期にごめんねー。なんとか早めに片付けるから」 和「仕方ありませんよ。お疲れ様です。学生議会長」 京太郎「そう言えば、そろそろ昼飯の時間か」 優希「はら減ったじぇ~」 咲「確かに、私もちょっとお腹空いちゃった…」 和「言われてみれば、わ、私も…」 和「」クーッ 和「あうう///」チヂコマリ 久「ふふっ。ところでみんな、今日のお昼はどんな予定?」 京太郎「どんなって…これから購買行って…」 優希「同じく」 咲「私は、その、お弁当を…」 和「私もです」 久「そっかそっか」ウンウン 和「?どうしたんですか?」 久「いや、迷惑かけるお詫びにね。今日はみんなに学食で奢ってあげようかなーとか思って」 優希「」ガタッ 京太郎「え!いいんですか!?」ガタッ 久「まっかせなさーい!お弁当組は、スイーツ奢ってあげる」 和「そんな!悪いですよ!」 咲「そ、そうですよ!」 久「いいからいいから!私ね。後輩出来たら、みんなを引き連れて学食で奢ってあげるっていうのが夢だったの!まこはそういうの嫌がって奢らせてくれないし」 和「う…。そう言われると…」 咲「断れない…」 久「よーっし!それじゃあ早速行くわよー!」 照お姉ちゃんが東京行き新幹線に乗り込んだ頃 学食 ガヤガヤ 優希「着いたじぇー!」 和「お休みなのに、意外と混んでますね」 久「よーし、後輩諸君!好きな物を注文するが良い!」 優希「タコス!」 久「だと思った!」 和「私は…それじゃあ、イチゴとユズとカリンのフルーツパフェで」 久「了解。私はカツ丼にしようかしら。咲と須賀君は?」 咲「えーっと…私は…あ、じゃああんみつで…」 京太郎「咲、ちょいと待った」 咲「…うん?」 京太郎「咲。悪いんだけどさ…」チラッ 咲「?」 京太郎「ほら、な?」 咲「…ああ。…も~!またぁ?」 優希「?」 久「?」 和「?」 京太郎「なー?今日のも美味そうなんだよー」ペコペコ 咲「まったく、京ちゃんは仕方ないなぁ~」ヤレヤレ 優希「…なんの事だじぇ?」 和「さあ?」 久「?ねえ二人共。どういう事?」 咲「すみません、部長。私、やっぱりレディースランチでお願いします」 久「へ?」 京太郎「で、俺があんみつで」 久「へ?」 和「…ああ。なる程」 優希「のどちゃん?どういう事だじぇ?」 和「須賀君がレディースランチを食べたいらしいので、宮永さんと注文を取り替えっこしたいそうです」 優希「ふむ。生活の知恵だじぇ」 久「…ああ。そう言う事ね。別に構わないわよ」 京太郎「よっしゃ!ありがとうございます!ここの学食、レディースランチがメチャクチャ美味いんですよ!」 久「へえ。それを知ってるって事は、常習犯ね?アンタら」 咲「あ、あははは…」 優希「ふむ。確かに美味そうなメニューしてるじぇ。まあ、最強の食べ物たるタコスには敵わんがな!」 和「それはあなたにとってだけよ。優希…」 優希「じょっ!?」 みんな「あはははは!」 その頃、東京行き新幹線の一席では 照「…」グーッ 照「…」 照「…少々、腹が減ったな…」 学食のおばちゃん「はい、カツ丼特盛りだよ」ゴトン 久「ありがとうございます。…さて。みんな、注文の品は揃ったわね?」 咲「はい!」 和「部長。空いている席、確保しておきました」 久「流石和ね。それじゃあ、みんな。せ~のっ!」 みんな「いただきまーす!」 モグモグ 京太郎「うはー!相変わらず美味いなー!レディースランチ!」 久「カツ丼も絶品よ」パクパク 優希「タコスは、もはや語るに及ぶまい」モグモグ 和「あ。咲さんの卵焼き美味しそう…」 咲「和ちゃんのタコさんウインナーも美味しそうだよ」 和「じゃ、じゃあ、取り替えっこしません?」 咲「うん!いいよ!」 その頃、東京行き新幹線 照「…何か、小腹を満たせるような土産は無かっただろうか」ゴソゴソ 照「…干物は駄目だな」ヒョイ 照「…この焼き菓子は、部員達の土産だ。私が食べる訳にはいくまい」ヒョイ 照「キャラメルは…淡の分だ」ヒョイ 照「残るは…」 照「……東京バナナ」 照「…」 照「…」 照「…」ゴゴゴゴゴ ガタン…ゴトン…ガタン…ゴトン…ガタン… 学食 久「ハムハムハムハム。うん。美味しい。可愛い後輩達に囲まれてるから、なお美味しいわ」 優希「おおう。部長、意外といける口だじょ。私も負けられん!」パクパク 和「ふふっ。優希、あんまり急いで食べちゃダメですよ?ほら、口の周りにソースが付いちゃってます」フキフキ 優希「モガムガ」 咲「京ちゃん、レディースランチ美味しい?」 京太郎「最高。これも単に咲のお陰だぜ。ほんと、ありがとな」 咲「ふふっ。どういたしまして」ニコッ 新幹線 照「ハムッ」 照「モグモグモグ」 照「…ゴクン」 照「…うん。やはり東京バナナは美味いな…」スッ ピリピリピリ 照「…もう一個食べよう」 照「ハムッ」 照「モグモグモグ」 照「…ゴクン」ピリピリピリ 照「…ハムッ」 学食 久「ふう。お腹いっぱいだわぁ」 優希「私もだじぇ。お腹がタコスで満ち足りたじぇ。幸せだじょ…」 和「ご馳走様です、部長。パフェ、美味しかったです。誰も黒崎兄妹かよ!って突っ込んでくれなかったのだけは寂しかったですけど…」 優希「きっとスルーされたんだじぇ」 和「くすん」 久「何の話よアンタら…」 咲「あ、でもでも!本当に美味しかったりです!あんみつも!ご馳走様でした!」 京太郎「俺もです。レディースランチはいっつも美味いけど、今日のは特別に美味く感じました。ご馳走様でした」 久「ふふ。お粗末様。そうね。私もいつもの学食より美味しかった。ねえ、なんでだと思う?」 優希「?タダ飯だったからかや?」 和「それは私達だけでしょ!」 久「あはははは!」 久「答えはね。今、ここに大好きな人達が居るからよ」クスッ 優希「じぇ?」 和「部長?」 久「みんなとご飯を食べられるから、私は幸せなの」 京太郎「ど、どうしたんですか?いきなり」 咲「部長…」 久「実を言うとね。私、ずっと寂しかったの」 久「ほら、私が一年生の頃、それまであった清澄高校麻雀部はほぼ無くなっちゃったでしょ?」 和「え、ええ…」 久「本当、あの頃は寂しかった…まこが来るまで、私はずっと一人ぼっち」 久「誰も麻雀に興味無い。麻雀で遊ぶ事も出来ない。麻雀の話で盛り上がる事も出来ない。そんな中、お昼休みはずっと一人、孤独を抱えてご飯を食べていた」 久「あの頃のご飯は、信じられないくらい味気なかったなぁ」 和「部長…」 久「あ、勿論今は違うわよ!?」 久「まこが来て」 久「和と優希が来て」 久「須賀君が来て」 久「そして咲が来て!」 久「みんなで麻雀やって!」 久「麻雀の話で盛り上がって!」 久「切磋琢磨し合って、高め合って、みんなで一緒に戦って!」 久「そして今、こうして一緒に美味しいご飯を食べている!」 久「…まこが今日、居ないけどね。あんにゃろめ、なんて間の悪い」 久「…ま、それもあの子らしいっちゃらしいんだけどね」ヤレヤレ 久「…みんな、みんな、私の大切な大切な後輩。あなた達がいるから、私は今、ご飯が美味しいし、すっごく幸せよ…」 京太郎「部長ー」ウルウル 和「部長…」ジーン 咲「部長…」 優希「うわーんっ!ぶちょー!」ガバッ 久「おっとぉ!あはは!格好つけすぎちゃったかしら?」ナデナデ 和「部長!私、もっともっと頑張ります!」ガタッ 久「うわっ!和?」 和「だから、絶対!みんなで、全国、優勝しましょうね!」 京太郎「おおっ!和が燃えてる!」 和「そうと決まればぼやぼやしてられません!早く部室に戻って練習しますよ!」 優希「らじゃ!」ビシッ 久「…ふふ。そうね。頑張ろうね」 咲(…全国優勝、かぁ) 咲(…そのためには、お姉ちゃんの高校に勝たなきゃいけないんだよね…) 咲「…」 照『ふん、雑魚共が。全員粉々に叩き潰してくれる』 咲(えっ!?) 照『ロン』 咲(えっ!?) 照『ロン』 咲(いやっ!) 照『ツモ』 咲(止めてっ!) 照『清澄高校、恐れるに足らず。全員飛びだ』 咲(待って、お姉ちゃん!) 照『退屈な有象無象共め。貴様等のような塵に麻雀をやる資格等無い!疾く消え失せろ!!』 咲「ひっ!?」 咲「…あ、あれ?」 咲(ま、幻…?)ブルッ 京太郎「ん?どうした?咲」 咲「う、ううん何でも無い…」 京太郎「そうか?なら、俺らも部室に急ごうぜ。和と優がすげー燃えちまってるしな。早く行かないとどやされそうだ」 咲「う、うん…」 久「なら私もそろそろ議会の方行ってくるわ。終わったら顔出すから、頑張ってね。みんな」 京太郎「あ。はい!ご馳走様でした!」 咲「ご馳走様でした」ペコリ 久「ばいばーい」スタスタ 京太郎「…じゃ、俺らも行くか」 咲「うん…」 咲(…私達、勝てるの、かな。…お姉ちゃんに…) 咲(…怖いよ。…京ちゃん) その頃の照お姉ちゃん 照「ふう。気付いたら全体の半分食べてしまったか」 照「流石東京バナナ。実に美味い」 照「…最高に美味い」 照「最高だ…」 照「…」 照「…京ちゃんと食べたかったなぁ…」 照「…」 照「…」ジワッ 照「っ!な、泣いてなどおらんっ!」ゴシゴシ 照「…」 照「…」ジワッ 照「ふぐっ!」グスッ 照「うう…」 照「や、やはり、正解だった…今日、引き返しておいて…」 照「な、なんだ、これはっ!」 照「ふっ!不良、品、じゃ!ないかっ!」 照「おいしく…ヒック!ない!…ヒック!」 照「せっ!折角の!東京!バナナなのに…!」 照「おいしく…ヒック!ないっ!ぞっ!ヒック!…京ちゃん…!」 照「京ちゃあぁぁあん…」 照「うぇ…」 照「うえええぇ…」 照「ええええん…」 ※それはそれとして、東京バナナは完食しました そして翌日 日曜日 東京駅新幹線ホーム 長野行き新幹線始発2分前 照「…」ゴゴゴゴゴ ガーッ キキーッ プシュー… 照「…」 照「…時は来た」 照「もう後戻りは出来ない…」 照「…臆病者の私は、昨日死んだ」スッ 照「私は…誇り高き白糸台麻雀部エースとして…」 照「高校最強の雀士として…」 照「…『虎姫』の名に賭けて!!」 照「…私は!もう!もう決して逃げない!!」←両手に、まだ閉まってる売店の人に泣きついて売って貰った東京バナナ 遡って前日 夜 咲の部屋 家の電話で和と談笑中の咲 咲「あはははは。そうだったんだー!」 和『ええ。その時の優希のはしゃぎっぷりと言ったら、凄かったんですよ』 咲「本当に優希ちゃん、タコスが好きなんだねぇ」 和『まったくですね。しかも美味しいタコス屋さんの情報等も、どこからともなく仕入れきますし』 咲「あれ、凄いよね。どうやって調べてくるんだろう?」 和『どうやってるんでしょう?流石の私も、長野駅近くのタコス屋まで把握してるとは思いませんでしたし…』 咲「えー!長野駅の方まで!?凄いなー優希ちゃん。ねえ和ちゃん。そのお話詳しく教えて…」 和『あれ?』 咲「…え?」 和『あの…咲さん?その話した時、確か貴女もその場に居たような…』 咲「あれ?そうだっけ?あれー?いつしたっけ?」 和『覚えてないんですか?一昨日の話ですよ?優希と須賀君が、明日一緒に長野駅まで行くって話は覚えてますよね?その理由がタコス屋だった筈ですが…』 咲「え゙っ」 和『えっ』 咲「…」 和『…』 咲「…ごめんね、和ちゃん。ちょっとその辺詳しく…」 和『?まあいいですけど…事の発端は…』 咲「…」 和『咲さん?』 咲「あわわわわ…」オロオロ 和『咲さーん?』 咲「ど、どどどど、どうしよう、和ちゃん…」ウルウル 和『はい?』 咲「そ、それって、デデデデ、デートだよね?」 和『ああ。言われてみれば確かに』 咲「…」 和『咲さん?』 咲「…ごめん和ちゃん…私、明日どうしても外せない用事があるの思い出しちゃった…」 和『え?そうなんですか?』 咲「うん…ごめんなさい。明日、部活休まなきゃ…」 和『そうですかー。それなら仕方ないですね。気を付けて行って来て下さい』 咲「ん?う、うん…」 和『ところで咲さん?』 咲「な、ナンデショウカ…」 和『おうちの用事との事ですが、失礼ながら咲さん、方向音痴ですから。私ちょっと心配です』 咲「へ?」 和『ですから、仮に、そう、もし仮にその用事と言うのが、一人でお出かけするようなものでしたら不安ですので。予めめちょっと咲さんにアドバイスをさせて下さい』 咲「え?和ちゃん、何言って…」 和『いいですか?新幹線は、長野駅です。新幹線に乗るなら、長野駅ですよ』 咲「は、はあ…」 和『ふふっ。そして長野駅の行き方は…』 咲「え?え?え?」 和『…ちゃんとメモ取ってます?』 咲「え、あ…ご、ごめんなさい…」 和『それじゃあ、もう一度最初から…いいですか?まずは通学路にある駅で切符を買って…』 和の部屋 咲『ありがとう、和ちゃん。メモ、大事に使わせて貰うね』 和「はい。気を付けて。…もし途中で道が分からなくなったら、安易に動き回らずに近くの人に道を尋ねるんですよ」 咲『あはははは…』 和「…もうっ!笑い事じゃないんですからね!甘く見てたら、用事に間に合わなくなっても知りませんから!」 咲『それは…困っちゃうよ…』 和「なら、ちゃんと道を尋ねる事!いいですか?」 咲『はーい…』 和「…ふふっ」 咲『…和ちゃん?』 和「…私、優希の事、大好きなんです」 咲『…?』 和「元気で、明るくて、おっちょこちょいで…」 和「中学の頃からの、大切な、大切な、親友…」 咲『…』 和「出来れば、あの子には一番に幸せになって貰いたい。それくらい、大好きな、お友達」 咲『…和ちゃん』 和「…でも、咲さんも、大切なお友達です」 咲『…』 和『ふふっ。けど、やっぱり優希の方が、まだちょっと大事かな?』 咲『…』 和『…だから、私は優希の味方ですから。…敵に塩を送るのは、これが最初で最後です』 咲『…』 和「…けど、もしも。もしも咲さんが私の今回の行為に、感謝して下さる気持ちがあるなら…これだけは。これだけは、心に留めて置いて下さい」 和「私、二人とも、大好きですから!」 和「優希も!咲さんも!竹井部長も!染谷先輩も!須賀君も!」 和「麻雀部全部が!みんなが!大大大大好きですから!」 和「だから!…だから、お願いですから…例えあなた達の関係がどう変わろうとも…」グスッ 和「…お願いですから…誰の事も、嫌いにならないで…」 和「お願い…」 和「う…」 和「うえええ…」 咲『…和ちゃん…』 咲『…』 咲『…ありがとう』 咲の部屋 咲「うん。うん。ありがとう…それじゃあ、私も、もう寝るね…うん。ありがとう。」 咲「…おやすみなさい」プツッ 咲「…」 咲「…はあっ」ドサッ 咲「…」クシャクシャクシャ 咲「…はあ」 そして、時は再び日曜日 ちょうど仮面ライダーアクセルが「振り切るぜ!」とかなんとか言ってる時間 長野駅 優希「着いたじぇー!長野駅!」 京太郎「ふー。結構遠かったなー」 優希「タッコスー♪タッコスー♪」ダッ 京太郎「あ、おい!走んな優希!」ダッ ジャー 咲「ふー。すっきりした」 咲「…ちょっと早く来過ぎちゃったかな?」キョロキョロ 咲「やっぱり、そう簡単には京ちゃん達見つからないよね」 京太郎「そういえば、タコス屋のあるデパートって、どこなんだ?」 優希「ん。すぐの目の前のビルだじぇ!」 京太郎「近っ!」 優希「因みに、実際の長野駅がどんなとこかは知らん!」 京太郎「ご了承下さい」 優希「で、タコス屋は、地下一階にあるじょ」 京太郎「へー。ならすぐだな」 優希「デパート開くのが9時からだから、それまで駅を探検するじょ!」 京太郎「はいはい」 優希「よっしゃ!いくじょ~!」ダッ 咲「和ちゃんによると、タコス屋さんは、目の前のビルの…地下一階だね」 咲「まだ開いてないや。えっと、9時からだね。まだ結構時間あるなぁ…」 咲「…ウロウロしても良いこと無いし、今のうちに傍まで行っておこ」 『二番線ホーム、電車が到着しまーす』 プシュー… 新幹線座席 照「…」スクッ! ホーム 照「…」ザッ! 改札 照「…」スッ! ガシャン ピンポーン 照「!?」 照「」オロオロ 駅員「どうしましたー?」スタスタ 駅員「ああ。お客さん、これ特急券じゃなくて領収書だね。今お客さんの胸ポケットに刺さってるやつが特急券じゃない?」 照「///」ペコペコ シューッ 照「…」ホッ 駅員「ああ。通ったね。そんじゃあ、さっさと通っちゃってよ」 照「…」キッ 照「…」ガツッ 照「…」 照「ふんっ!」ガツッ 照「…」 駅員「…ほら。お土産の袋、おじさんに貸しなさい。こっちで持っててあげるから」 照「…恩に着る」 照(…遂に。遂に来てしまったか…) 照(…長野) 照(…ふん。やはり、東京に比べれば、田舎だな) 照(…記憶の中の長野駅よりは都会だったが) 照(…早く京ちゃんに会いたいな…) 照「えっと、切符売り場は…」クーッ 照「…」 照(…まずは、腹ごなしが先決だな。京ちゃんの前で腹など鳴らしたら、目も当てられん) 照「どこか軽食を取れる施設は…」キョロキョロ 照「む。目の前のデパート。昔は無かったな」 照「9時開店か…もうすぐだな」 照「よかろう。京ちゃんのところへ行くのは、あそこで何か食べてからとする」 照「そうと決まれば、早速…」 照「行くぞ」 開店5分前 デパート正門前 京太郎「そろそろ開店だなー」 優希「楽しみだじぇ~」ワクワク 3分前 デパート隣コンビニトイレ内 咲「あううう…そろそろお店開いちゃうよぉ」 咲「…けど、緊張して、尿意が…」 咲「早く済ませなきゃ…」アセアセ 1分前 デパート裏口非常用ドア前 照「…ふん。所詮田舎のデパートか。見た目は立派でも、開店直前に入口に誰も居ないとは…」 照「第一、見窄らし過ぎる。設計者の神経を疑うな」 照「ふん。これだから田舎は嫌なんだ」 デパート、開店 デパート地下一階 タコス屋 店員「いらっしゃいませー」 優希「一番乗りだしぇー!」 京太郎「だから走るなって…おっ!マジで美味そうな匂い!」 優希「これは久々の大ヒットな予感がするじぇ~」 京太郎「メニューも色々あんな。ビーフにポーク、チキン、ラム、シーフード…豆、ミックス…etc.すげー…」 優希「素晴らしい!」 京太郎「テイクアウトもあるみたいだけど…」 優希「この場で食う!そしてお代わりも有りだよな?」 京太郎「…ま、いいんじゃないか?」 優希「うっは~♪」 優希「はむっ!はふはふ!」ムシャムシャ 京太郎「おっ!こりゃやべえ!超美味い!」ムシャムシャ 優希「ふふふふ。来て良かっただろー?」ムシャムシャ 京太郎「おう!」ムシャムシャ デパート一階 咲「地下一階、地下一階…あうう。地下への階段どこぉ?」ウロウロ 同一階 照「まさかあれが非常口だったとは…。流石長野、わざわざ都会人向けに陰湿なトラップを用意してくれるじゃないか…」トボトボ 照「どれ…案内板によると、フードコーナーは地下一階か。…さっきエスカレーターを見たな」 咲「とにかく、早くエスカレーターでも、階段でも、エレベーターでもいいから、見つけなきゃ…」チョロチョロ 照「確か、あっちの方に…いや、こっちだったか…」キョロキョロ 咲「どこかなぁ…」ウロウロ 照「…む?ここはさっき見たぞ?おかしい。おのれ長野。デパート内に狐を飼って、客を惑わしてでもいるのか」グルグル 咲「あうっ!?」ドンッ 照「うわっ!?」ドンッ 咲「」ペタン 照「」ペタン 咲「いたたたた…」ジンジン 照「む…う…」サスサス 咲「あうう…誰かにぶつかっちゃった?」 照「くぅ…私とした事が、他者に迷惑をかけようとは…」 咲「はっ!あ、あのっ!すみません!私、余所見してて!お怪我ありませんか!?」ガバッ 照「む?いや、こちらこそ済まなかった。私も他の事に気を取られていてな。そちらこそお怪我は無いだ…」ムクッ 咲「えっ?」 照「ろ…う…?」 咲「…お、お姉ちゃん…?」 照「か…」 咲「え…?嘘…?な、なんでお姉ちゃんが長野に…」 照井「さ、咲!?なんで貴様がここに…」 咲「そんな…なんで…ただでさえ京ちゃんの事で大変なのに、こんなところでお姉ちゃんにまで会うだなんて…」フラフラ 照「むっ!京ちゃん!?」 咲「…私どうしたらいいのぉ…もう分けわかんないよぉ…」 照「おい咲!京ちゃんが大変とはどういう事だ!?答えろ!」 咲「…」 照「…」 咲「…ねえ、お姉ちゃん?」 照「なんだ?」 咲「…地下一階への階段…知らない?」 照「…一緒に探そうか」 再び地下一階タコス屋 優希「ふい。ポークタコス。ご馳走様だじぇ」 京太郎「お前すげーなぁ。これでビーフとチキンとポーク完食か」 優希「こんな遠くまでなんて、滅多に来れんからな!目標は全メニュー制覇だじぇ!」 京太郎「マジか…」 優希「次はラムタコスだじぇ!京太郎はいいのか?」 京太郎「俺は今食ってる一個でいいかな…これ、ボリュームあるし。あとはコーヒー飲んでるわ」 優希「むう。そうか…」 京太郎「ラムタコスだったな?コーヒー頼むついでに頼んできてやるよ。待ってな」ガタッ 優希「おう!すまん!」 タコス屋前 ザッ 咲「や、やっと着いた…」 照「ここに…ここに京ちゃんが…」ジーン 咲「…」ソワソワ 照「…」ウロウロ 咲「…」モゾモゾ 照「…」クルクル 咲「…ね、ねえお姉ちゃん」モジモジ 照「…な、なんだ?咲」キョロキョロ 咲「…行かないの?」 照「…お、お前こそ」 咲「…こ、怖いよ…」 照「…ふ、ふん。この臆病者め。情けない…」 咲「…」 照「相変わらずだな貴様は…方向音痴だし、鈍臭いし、泣き虫だし…」 咲「…」 照「ああ。格好悪い。情けない。無様だ。いっそ見ていて憐れだぞ」 咲「…お姉ちゃんだって迷子になりかけてた癖に」ボソッ 照「なにぃ!?」 咲「…」 照「おい、咲!貴様、姉に向かってなんだその口の利き方は!」 咲「ふんっ!お姉ちゃんに妹は居ないんじゃなかったの!?私にもお姉ちゃんなんか居ませんから!」 照「こいつ…!」 咲「べー!っだ!!」 照「あ、アッカンベー…だと!?この私に!?このちんちくりんが!」 咲「お姉ちゃんの方こそ、高3にもなってスタイルこっちに居る頃とあんまり変わってないじゃない!」 照「馬鹿を言うな!胸だって大きくなっているわ!その…3センチくらい」 咲「中学から3センチ!?」 照「う、五月蝿い五月蝿い!黙れこの無礼者!貴様に私を笑う権利など無いぞ!」 咲「なにさ!」 照「どうせ貴様も私と同じ宿命を負った、同孔の狢に過ぎんと言っている!」カッ! 咲「っ!」ビクッ 照「牢記しておくが良い!二年後、貴様が今吐いた言葉が、今度は貴様の喉を食い破らんと牙を剥くのだ!」 咲「くっ…」 照「ふはははは!己が言葉に羽根を切り裂かれる無様な貴様の姿が目に浮かぶわ!楽しみにさせて貰う!」 咲「ちゃ、ちゃんと牛乳、毎日飲んでるもん!」 照「甘い!それも既に私が通った道よ!」 咲「ううううー…」 照「諦めろ!運命とは…決して逆らえぬ、大河のうねりにも似たものよ!」 咲「あう…」ガクリ ※日本人は牛乳の吸収効率が悪いので、小魚等でカルシウムを採りましょう。また、同時に鉄分も 京太郎「すいませーん。追加注文したいんですけど…」 咲照「「!?」」 ヒュッ 京太郎「…ん?今、どっかで聞いた事有る声が聞こえたような…」キョロキョロ 店員「お客様ー?どうかされました?」 京太郎「…ああ、すみません。えっと、ラムタコスと、コーヒーを…」 照「…何故隠れた。臆病者」コソコソ 咲「…お姉ちゃんこそ」コソコソ 照「…」 咲「…」 照「…タコス屋の向かいは、百円ショップか…」チラッ 咲「?」 照「…付いてこい、咲。これくらい私が持ってやる」 咲「お姉ちゃん…?」 店員「お待たせ致しましたー」 京太郎「ありがとうございます」 京太郎「さって、と。優希のとこに戻るか」スタスタ 店員(さっきから何回も来てるけど、あの子達、高校生かな?よく食べるなぁ) 店員(なんか、カップルっぽいけど、初々しいし、見てて和むなぁ) 店員(ふふっ。お幸せに♪) 店員「…っ!?」ゾワッ ゴゴゴゴ 照(ピンクアフロ+☆型眼鏡+宴会用のコスプレ制服(上下)計420円)「…」ザッ! 咲(真っ黄色のロングウイッグ+ティアドロップの濃いグラサン+宴会用コスプレ軍服(USnavy空軍元帥仕様200円)計525円)「…」ザッ! 店員「い…いらっしゃい…ませ…」 照「…ラムタコスと牛乳」 咲「me too」 店員「か、かしこまり…ました…」 店員「こ、こちらで召し上がりますか?それともテイクアウト?今なら、テイクアウトが非常にお得になっておりますが…なんかもう、色々と」 照「ここで食べていく」 咲「me too」 店員「…か、かしこまりました…」 照「咲。あそこの席が良いな。多少姿の確認はし辛いが、あそこなら見つかる可能性は低そうだし、会話の聞き取りも容易だ。延長上にトイレや注文カウンターが無いのも大きい」 咲「yes I see」 照「よし。決まりだ」 店員(なんぞこれ…) 店員「お待たせしました…」サッ 照「うむ」スッ 咲「thanks a lot」←最近学校で習った言い回し 照「むっ。結構ボリュームがあるな…皿が重いのか」フラッ 咲「あわわっ」フラッ 店員「だ、大丈夫ですか?なんなら席まで私がお持ち致しますが…」 照「何。問題無い。余り目立ちたく無いのでな」フラフラ 咲「oh…oh…ちょ、待って…お姉ちゃ…」ヨタヨタ 照「英語」 咲「please wait…」フラフラ 照「頑張れ」スタスタ 咲「…じーざす」 照「ふう…無事着いたか」コトン 咲「お姉ちゃん!酷いよ!」コトン 照「咲。お前も無事着いたか」 咲「私のサングラス、お姉ちゃんのより暗いんだよ?ただでさえタコスが重いのに、これじゃまっすぐ歩けないじゃない!」プンプン 照「おい、咲。声が大きいぞ」 咲「大体、お姉ちゃんってばいっつもそう!そうやって好き勝手に…」 照(くっ…頭に血が登っている。早く落ち着かせねば、周りの注目も集めてしまうだろうし…致仕方ない…か) 照「咲」 咲「東京に行ったのだってそう!少しくらい私にだって相談してくれたら…」 照「咲。これを見ろ」スッ 咲「私だって、少しは、お姉ちゃんの…力…に…?」 照「じゃーん。東京バナナ」 咲「…」ゴクリ 照「落ち着いたか」 咲「う、うん…あの、お姉ちゃん?そ、それって…本物?」 照「ああ。…咲。そろそろ事情を説明して貰えないだろうか。何故お前が、京ちゃんに隠れて尾行する事になっているのか?そして、京ちゃんに、一体どんな大変な事が起こっているのか?」 照「納得がいく説明をしてくれたならば、この一番小さい箱の東京バナナを貴様にやろう」 咲「…」 咲「…わかった。それじゃあ」 咲「…一から…話すね」 照「…京ちゃんが…デート!?」 咲「うん…」ハムハムハム 咲「…ほわわ~」ニヘラ 照「ば…馬鹿な…そんな…!嘘だ…!」 咲「嘘じゃないよ。ほら、あっちの席に、可愛い女の子が座ってるでしょ?…片岡優希ちゃんって言うの…」ハグハグハグ 照「ほ、本当だ…」ガクガクガク 咲(東京バナナ美味しいなぁ~(*´∀`*))←自分より動揺してる人が居ると、冷静になる子 照「くっ!と、遠目からだが、確かに可愛い!」 咲「あ…もう食べ終わっちゃった…」ショボン 照「…はは。私では、とても太刀打ち、出来ん…な…」ガクリ 咲「やっぱりお姉ちゃんも、そう思う?」ガクリ 照「…ああ。成りは小さいが、アイドル級じゃないか…」 咲「だよね…私達姉妹みたいな地味な子じゃ、太刀打ち出来ないよね…」 照「ううう…」ジワッ 咲「ううー…」クスン 京太郎「どーだ?優希。ラムタコスは」 優希「うむ!独特の風味の柔らかいラム肉がタコスのスパイシーなソースに不思議なほどマッチして、それをシャキシャキの野菜が引き締め、香ばしいトルティーヤが全てを包み込んで調和させてるじょ!」 京太郎「そ、そうか。美味いか…」 優希「私は今、最高に幸せだじょ~…」 京太郎「ははは…」 優希「京太郎。お前も一口食うか?」 京太郎「お?いいのか?」 優希「勿論だじぇ。メニュー制覇の道はまだまだ長いしのう」 京太郎「んじゃ、お言葉に甘えて」パクッ 京太郎「うん!美味い!」モグモグ 優希「えひひ~。だろだろ~?」パクッ 照「…」 咲「…」 照「…なあ、咲。アイツ、殺していいか?」ニコッ 咲「だ、駄目だよう!」ビクッ 照「ぎぎぎぎぎ!!な、なんだアイツ!!さり気なく京ちゃんにあ~んしやがって!」ギリギリギリ 照「し、しかも!関節キスだと!?まだ付き合ってもいないのに、なんて破廉恥な!なんだあの売女!!」ワナワナワナ 咲「…」←昨日の朝こっそり間接キスした人 照「や、やはり許せん…!あんな変態女、京ちゃんには相応しくあるまい!引導を渡してくれる!」 咲「だ、だから駄目だよ!それに京ちゃんの目の前で優希ちゃんに悪さしたら、お姉ちゃんまで嫌われちゃうからね!」 照「ぐおぉお!?あ、あのタコス女め!そこまで計算済みとでも言うのか!」 照「なんという恐ろしい相手だ…!」 咲「いやいやいや」 優希「ふう。ご馳走様!ラムタコス完食だじぇ!」 京太郎「お粗末さん。次は何食べる?」 優希「シーフード!…けど、その前にちょっとお花を摘みに行ってくるじょ」 京太郎「ん?そうか?なら、俺はこのまま待ってるぜ」 優希「すぐ戻るっ!」ガタッ 京太郎「行ってらー」 京太郎「…」 照「…小娘が席を外した。…どうしたのだ?」 咲「…」モジモジ 照「…咲?」 咲「ご、ごめん、お姉ちゃん。私ちょっとおトイレに…」 照「ああ。行って来い」 咲「行ってきます…」ガタッ 照「ああ。行って来い」 照「…」 照「…」チラッ 京太郎「」ボケーッ 照「…今なら、京ちゃん一人だけか…」 照「…」ガタッ 照「…」スチャッ 照「…」ガタッ 照「…」スチャッ 照「うう…」ソワソワ 照「くっ…や、やはり…怖い…!」 照「京ちゃんは、果たして私のような地味な女の事を覚えてくれているのだろうか?」 照「…忘れられてたりしたらどうしよう」 照「嫌そうな顔されたりしたら、どうしよう…」ジワッ 照「露骨に他人行儀な態度取られたりしたら…」 照「…だが、こうして悩んでいる間にも、時間は過ぎて行く…」 照「さっさと覚悟を決めろ!宮永照!さっきの小娘が戻って来ては、尚更声をかけにくくなるぞ!」 照「…ぐううう…!」 照「ううううう~っ!」 照「…ええいっ!南無三!」ガタッ 京太郎「ふぁ~あ。今日も早起きしたから、ちょっと眠みーや…」ゴシゴシ 「あの…京ちゃん」 京太郎「…優希が戻って来るまで、ちょっと寝ておこうかな…」 「京ちゃん…」 京太郎「…コーヒーって、あんま眠気覚ましになんねーのかな?」 「京ちゃんっ!」 京太郎「ん?」クルッ ピンクアフロの怪しい女「ああ…良かった。気付いてくれた…」ホッ 京太郎「ぶふうぅぅぅう!!?」 京太郎「え!え!うえ!?すわ何事!?え!?」キョロキョロ 照「ふふ。吃驚しただろう?私が此処に居るなど、夢にも思わなかっただろう?」ニコッ 京太郎「いや。そりゃ確かに、夢にも思いませんでしたけど…」 照(ああ…京ちゃんだ!このオーバーリアクション、京ちゃんだ!) 京太郎「え?なにこれ。ドッキリ!?」 照「ふふふ…」 照(優しそうな風貌は、ちっとも変わらないね) 照(…ううん。ちょっとキリッと…男らしくなったかも) 照(…背は、沢山伸びたね) 照(昔は私より小さかったのに、今は頭一つ分くらい追い越されちゃった…) 照(胸板も厚くなったし…) 照(うん。やっぱりだ。君は私の思い描いてた通り。いや、それ以上に…) 照「京ちゃん、カッコよくなったね」 京太郎「えっ!?」 京太郎「いやいやいや…えーっと、お姉さん?アナタ何言って…」 照「ふふ。否定する事は無い。これは私の素直な感想だ。黙って受け取って欲しい」 京太郎「は、はあ…一応…ありがとうございます…?」 照「久しぶりに会ったのだ。積もる話も有るのだが…今は都合が悪そうだしな。出来れば、また後で二人切りで会えないだろうか」 京太郎「え…」 照「…ああ、そうだ。君ももう高校生だものな。携帯は持っているだろう。良かったら、番号を交換しないか…」 京太郎「ちょ、ちょちょちょちょっと待ってる下さい!」 照「…嫌か?」 京太郎「…って言うか、あんた誰」 照「」ピシッ 照「そ、そんな!私の顔を忘れたのか!?京ちゃん!」バンッ! 京太郎「忘れたって言うか、そもそも知らねーよ!大体なんで俺の名前知ってんだ気持ち悪りい!」バンッ! 照「ひっ!?」 優希「ただいまだじょ京太郎ー…ん?誰だじぇ?この人。京太郎の知り合いかや?」 京太郎「んな訳あるか!真っ赤な他人だ!」 照「そ、そんな!」 京太郎「行くぞ優希!こんなおっかねー奴と一緒の場所に居られるか!」グイッ 優希「ああん。いけずぅ」 照「ま、待って!京ちゃん!」 京太郎「断る!って言うか、話しかけないで下さい!」 照「お、お願い!ならせめてこれだけでも!」スッ 優希「おおっ?東京バナナだじぇ。東京土産としては在り来たりだが、結構美味いよな。…私達は銀座イチゴのが好きだが」 照「お願い…せめて、これだけでも受け取って…京ちゃんが美味しそうな顔で食べてくれたら、私はもう、それでいいから…」 優希「なんかよく分からんが、良かったな~?京太郎」 京太郎「変なモノ入ってたら嫌なので、入りません!」プイッ 照「」ガーン 京太郎「では、さようなら。永遠に」ドヒューン 優希「あ、ちょっと待つじょ、京太郎~」ドヒューン 照「…」 咲「ただいまー。ちょっと迷っちゃった。…あれ?お姉ちゃん?京ちゃんは?」 照「…帰る」クルッ 咲「え?え?どうしたのお姉ちゃん…」 照「…咲」 咲「え?」 照「次会う時は、インターハイか…」 咲「え?あー…うん」 照「…次は、敵だ」 咲「…うん」 照「後日、あのタコス娘に伝えておけ」 咲「…うん」 照「お…」ジワッ 咲「…お?」 照「お…」ウルッ 照「おぼえてろ~!!!うわ~~あああん!!!!」ドヒューン 咲「あっ!待ってお姉ちゃん!さっぱり訳がわからない上に、最悪の捨て台詞だよそれ!」 照「うえ~~~~~ん!!」ダダダダダ 咲「行っちゃったし…」ポツーン そして時は流れ、インターハイ決勝先鋒戦 控え室 優希「それじゃあ…行ってくるじぇ!」 久「行ってこい!優希!」 和「優希…頑張って!」 まこ「頼んだぞ…!」 京太郎「優希!休憩時間…タコス作って持ってってやる!」 優希「サンキュー京太郎!それなら私は百人力だじぇ!」 咲(なーんか嫌な予感が…) 会場 優希「さあ!頑張るじぇ!」 照「…来たか…タコス娘…!」ギロッ 玄「ひいっ!?」 照「己が運命を呪うがいい…貴様にはッ!死んだ事を後悔する時間すら与えんッ!!」クワッ 玄「ひいいっ!?」ビクビクッ 照「死ねぇぇええ!!!」 終わり! 藍染「…ところで、いつから照がタコス屋でコスプレしたままだと錯覚していた?」 藍染「…これが私の斬魄刀『鏡花水月』の力。『完全催眠』の効果だよ」 藍染「今回の結末は、取りあえずスレの進行に帳尻を合わせたに過ぎん」 藍染「真実の物語が知りたければ、ss速報へ移りたまえ」 藍染「…但し、私は機械が些か苦手でね。携帯からこれ以上の即興は勘弁して貰おう。また、それならば、携帯からスレも立てても良いものかどうか…」 藍染「…誰かお願いですから、うちに来てネット環境設定して下さい…」 以上!!!
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/5760.html
519 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/25(月) 22 25 10.59 ID NE2j6i/Ao [17/32] HAHA-!ヘイ、マイハンド! なんでそんなご立派なおもちを捏ね繰り回してるんだい? 愚問だなボーイ、そこにおもちがあるからさ! 京太郎「すいませんっしたあああああああ!!!」 その日、俺はきっと初めて空中バク転土下座を行った人になっただろう。 ゴンッと。 額が地面と打つ。 痛い。 でもまずい。 今の、明らかにセクハラだよね? アウトだよね? いや、俺だけがアウトならいい! いや良くないけどもだ! 俺だけがアウトなら、まだ皆に迷惑かけない。 だから、だからここは一つ! 京太郎「お慈悲を!お慈悲を!!」 衆目とか関係ねぇ! もう俺にはプライドなんてないしな! ……やべぇ、本当に涙が流れてきたぞこれ。 そんな俺にかかる影。 見れば、俺の前に膝立ちする小蒔さんの姿があった。 小蒔「京太郎様、頭を上げてください」 京太郎「いやでも、小蒔さん」 小蒔「お忘れですか?」 手を握られる。 そのまま、小蒔さんの頬に手を。 まるで猫が体を摺り寄せるように、頬ずりする。 小蒔さんは、にこりと、笑っていた。 小蒔「私の全ては、京太郎様のものなんですよ……?」 そう、何処か10代の少女が放つとは思えない。 妖艶な笑みを以って。 笑っていた。 526 名前: ◆VB1fdkUTPA[!red_res] 投稿日:2013/02/25(月) 22 26 53.17 ID NE2j6i/Ao [18/32] チッ 547 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/25(月) 22 37 59.34 ID NE2j6i/Ao [19/32] 京太郎「え?」 宥「ど、どうしたの?京太郎君?」 何か、聞こえたような。 いや、気のせいか。 そこで気づいた。 妙に意識がはっきりしている。 さっきまで、何かに“魅了”されてたみたいに、目の前の女の人にしか目が行かなかったのに。 兎に角――――どうやら、小蒔さんは問題ないらしい。 俺は謝罪を一つ。 そのまま宥さんと店へと行く。 背中に、笑顔でこちらに手を振る小蒔さんの視線を受けながら。 俺は妙な違和感と共に。 そこから、立ち去っていった。 ……あれ? 何で、俺はあの人の名前を―――― シロ「……知り合い?」 小蒔「はい!とても大切な人です!」 シロ「そっか……だる……」 小蒔「“今回”はシロさん、気にしないんですか?」 シロ「え?」 小蒔「いえ――――それなら、いいんです」 シロ「ふぅん……」 シロ(なんか、知ってる顔だったなぁ、きょうたろー) 555 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/25(月) 22 41 08.92 ID NE2j6i/Ao [20/32] 【8月20日:昼】……昼と夜は鶴賀と風越の皆さんと練習ですのよ 朝の出会いはさて置いて。 俺は部屋の片隅で宥さんのマフラーを補修しつつ、今も賑やかに卓を囲む面々を眺めていた。 偶然、と言うには運命的かも知れない。 今、卓を囲む面子。 それは清澄高校と決勝戦で争った強豪たちなのだ。 明日に迫る準決勝。 阿知賀は白糸台、千里山、新道寺と卓を囲む。 2回戦ではしてやられた、というのが本音だろう。 千里山一校に弄ばれたという感が否めない試合だった。 そのための対策。 一日で何処まで出来るか。 そう問われれば、俺に答えれることは無い。 全員、俺以上のセンスを持つ人ばかり。 それに俺の常識を当てはめる方が間違ってるだろう。 そんなことをちくちくと編み物しつつ考える俺。 ……うん、まぁあれだ。 時期が夏なのにマフラー弄ってるとか、女の子ばかりの部屋で男が編み物してるとか、言いたいことは分かる。 浮いてるってレベルじゃないよな、うん。 正直言うと視線がそろそろ辛いです…。 そんな俺だったが、今現在。 丁度空き時間なのだろうか。 こっちに穏乃、鷺森さん、玄さんが来るのが見えた。 穏乃「京太郎、何やってるのー?」 京太郎「見りゃ分かるだろ」 灼「相変わらず器用だね、須賀君」 それぞれがからかうように。 しかし興味有り気に俺の手元を覗き込んでいる。 京太郎「掃除に洗濯、料理に作法、悲しいけど何でかこういうのだけは身につくのが異常なんですよねー」 灼「……主夫にでもなるの?」 京太郎「それもいいかも知れませんね……」 ふふふ、と笑う俺。 でっかい汗を浮かべる鷺森さんと穏乃。 そんな俺に唐突に、あっけらかんとした声が割り込む。 玄「じゃあ京太郎君、ウチの旅館でよければ就職面倒見るよ?」 784 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/28(木) 21 11 23.27 ID 1uZxanBCo [4/29] 京太郎「へ?」 穏乃「京太郎、玄さんところで働くの?」 灼「……大胆?」 玄さんの発言。 それに三者三様の反応を見せる俺たち。 いやいや、いきなり過ぎるいきなり過ぎる。 玄さんは玄さんで「?」というマークを頭上に浮かべてるし、鷺森さんはジト目だし、穏乃は普通にそういうもんだと思ってるし。 玄「え?え?なにその反応?」 灼「いや、なんというか…ちょっとこっち」 玄さんが鷺森さんに手を引かれていく。 数秒後、ぽんっと。 顔を赤くする玄さん。 はて、なんだろう? 勢いよくこっちに来てるんだけど。 玄「違うからね!?そういう意味じゃないからね!?」 京太郎「何がですか?」 うん、わかんねーわ。 わっかんねー全てがわっかんねー。 788 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/28(木) 21 17 12.44 ID 1uZxanBCo [5/29] 【8月20日:夜】 少女、新子憧にとって――――正直に語ろう。 須賀京太郎という存在は、信用におけない存在だった。 昨年まで女子高。 その中に入ってきた、未だに異物である男子。 見た目も金髪と、チャラそうだ。 そんな第一印象だったのは認めよう。 男慣れしていないからこその距離感。 京太郎が麻雀部に入った当初。 その距離感を作って接していたのは、事実だった。 憧(ま、そんなの考えすぎだってのは今だからこそ言える話なんだけど、ね…) 憧は、己の前を行く京太郎を見る。 明日の試合中に消費する物の買い出し。 そうして外に出ようとした京太郎に散歩名義でついて行く自分。 気づけば、気心知れた仲―――流石にシズや玄さんほどじゃないけど―――になっている。 こいつは―――京太郎は、不器用だ。 人の好意に気づかない不器用な奴だ。 今日の昼間だって、普通に聞こえるような玄さんの言葉。 それも彼女の表情と合わせれば、別の意味があるように感じるだろう。 京太郎は優しい。 皆に接する時は何時も笑顔。 そうして無自覚に、こうして当てられていく。 所謂、魅力、という奴だ。 京太郎は不思議な魅力に満ちている男の子だった。 だから玄さんも、ああしてそんな言葉が出てしまうのだろう。 それがとても悔しい。 自分は素直じゃないから。 素直になれないから。 玄さんという男女変わらず笑顔を振りまける、積極的な人。 京太郎とはお似合い、なんだろう。 それがたまらなく憎い。 846 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/28(木) 22 34 33.53 ID 1uZxanBCo [12/29] 憧「え……」 京太郎「どうした?」 憧「な、なんでもないわよ!」 京太郎「そ、そうか?なんか顔、怖いぞ」 憧「大丈夫……大丈夫よ」 何を、考えてしまったのだ? 今、とても。 ……とても、考えちゃいけない。 そんなことを、考えてしまわなかったか? 思わず、額を触れる。 冷たい。 おかげで、正気に戻れた。 大丈夫。 うん、大丈夫。 私は私、何時もどおりだ。 何時もどおりになれる。 きっと明日も、笑って。 笑って、京太郎や皆と会話できるだろう。 それが、楽しいのだから。 本当に? 860 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/28(木) 22 42 50.52 ID 1uZxanBCo [15/29] 【8月21日:朝】準決勝ですのよ 穏乃「準決勝だー!!」 憧「はいはい、シズ。行くわよー」 京太郎「やれるだけはやったしな、二人とも」 朝。 ホテルのロビーに真っ先に集まった俺たちはサービスのコーヒーが入った紙コップ片手に佇みつつ、会話を交わす。 準決勝だ。 もう、決勝戦の手前。 その日が来たんだ。 そう思うと、妙な高揚感がある。 なんというか、あれだ。 京太郎「気づけば、こんなとこまで登ってきちまったんだなぁ…」 憧「実際に登ったのは私たちだけどね」 京太郎「ぐふぅ!?」 こ、言葉の槍…。 ……泣いてないぞ。 穏乃「まったまた~、憧ってば照れちゃって」 京太郎「へ?」 憧「ちょ、シズ!!」 穏乃「京太郎の頑張りを何気に一番評価してるのって憧じゃ―――」 憧「ふんっ!!」 穏乃「いったぁぁぁい!?」 振り落とされる拳骨。 それが直撃した穏乃が頭を抱えてしゃがみ込む。 うん、あれはマジだったな。 憧「余計なこと言わないの!!こいつが調子に乗ったらどうすんのよ!」 こいつって俺か? 俺のことなのか? ……俺だって聖人じゃないぞ。 こうまで言われれば、反撃だってしたくもなる。 憧め、目を見開くといいわ…! 913 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/28(木) 23 06 28.22 ID 1uZxanBCo [20/29] 憧「全く、シズったら……」 京太郎「憧……」 憧「何よ?言っとくけど、さっきのは全部シズの出任せ―――」 京太郎「お前、本当にいい奴だな」 憧「ふきゅ」 にこやかにそう笑いかける。 恐らく生涯で一番の笑みだろう。 その自負がある。 なぁに、向こうが俺を調子に乗らせないって言うなら簡単だ。 俺はただ素直に感謝すればいい。 がはははは、憧め! 罪悪感でも感じてくれればやりやすいぞ!! 京太郎「憧、ありがとな。俺、もっと憧に認めて貰えるように頑張るからさ」 憧「……」 京太郎「……?あ、憧ー?」 憧「――――きゅぅ」 穏乃「憧が倒れたぁぁぁ!?」 京太郎「何ぃぃぃぃぃ!?」 え、ちょ、何で!? 919 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/28(木) 23 09 04.85 ID 1uZxanBCo [21/29] 【8月21日:昼】準決勝ですのよ 準決勝。 現在は中堅戦の真っ最中、というところだ。 俺は穏乃と一緒に会場内を移動しつつ、あとどれくらいだろうか、と考えた。 京太郎「白糸台の渋谷さんの役満も怖いけど、千里山の江口さんがやばいよなぁ」 穏乃「火力あるからねー、先鋒で取れなかった分稼ぎ直してるって感じだね」 俺と穏乃の手にはジュースのボトル。 買った量が少なかったこともあり、結構早く切れてしまった。 そんなこんなで穏乃に手伝って貰い、買いにきたのだ。 だけど宥さん、この時期にホットは厳しいっすよ、探すの。 いや、なんとか見つけましたけどね。 しかし、あれだ。 こう暑いと海とか行きたくなるな。 長野に住んでた頃なんか、海なんて新潟にでも抜けないと行けなかったしなぁ。 個人的には川なんかでもいいんだけど。 川水浴とか、案外風流な気がしなくもない。 小蒔「海でしたら、昨日タイミングが会えば一緒に行けましたのに」 京太郎「いやぁ、そいつは残念でしたよ」 小蒔「はい、とっても」 京太郎「はっはっは……」 小蒔「うふふ……」 京太郎「……」 小蒔「………」 京太郎「………何時の間に?」 小蒔「京太郎様が海に行きたそうな顔をしていた時からです」 すげぇな神代さん。 ステルスと読心術使えるのか。 って違う!! 穏乃「あれ、その人誰?京太郎」 京太郎「え、えっと……」 小蒔「さあ……ご想像にお任せしますね?」 京太郎「……いや、本当にどういう関係でしたっけ!?」 おかしい! なんかおかしいぞ!! 俺、この人がこうだっての受け入れてねぇか!? あ、あれー? 951 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/28(木) 23 31 24.23 ID 1uZxanBCo [25/29] 【8月21日:夜】準決勝終了ー 長い戦いが、終わった。 ああ、なんというか。 見てるだけで疲れる、というような展開だった。 それは確かだろう。 かなりの激戦だったのだ。 準決勝大将戦という戦いは。 京太郎「まぁ……」 穏乃「うん…」 灼「そうだね……」 宥「終わった、んだよね……」 そうだ、終わった。 あの長い戦いは。 俺たちが、決勝に足を進める、という形で。 胸にあるのは、寂しさにも似た感情なんだろう。 燃え尽き症候群。 そういうのと似てるかも知れない。 穏乃は、大将戦の熱が冷めてしまったから。 鷺森さんは、師の思いを決勝に繋げれたから。 宥さんは、きっとそんなことはなく、ふんわりと微笑んでるだろう。 誰かが言った。 頂上が見えると、人は安心する。 それと同時に、虚無感を覚える。 有名なプロ雀士の言葉だったような、違ったような。 それを置いても、俺は顔を叩き「よっしゃ!」と声を張り上げた。 京太郎「次、決勝ですよ!決勝!!」 穏乃「お、おー…?」 灼「あ、そうだね……そっか、決勝だ……」 宥「うん、決勝だね」 京太郎「穏乃、鷺森さん、しっかりしてくださいよ……」 ……いかんなぁこれ。 気力を回復。 それが明日にでもやんなきゃいけないことかも知れないな。 540 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/03/04(月) 21 34 38.90 ID CR+GJ5Z2o [14/39] 【8月22日:朝】 準決勝から一夜明けて。 俺は眠りが浅かったせいか、妙に早く目を覚ましていた。 シャワーでも浴びれば良い時間になる。 そんな思いもあったが、結果としては本当に時間に変化は無い。 カラスの行水。 そんなつもりは無いけど、あれだ。 女子の入浴と比べればやっぱりそういう時間差はあるだろうな、うん。 飯まで時間あるし、散歩でも行くか。 そう思って俺は部屋を出る。 しかし、あれだな。 昨日の熱気がまだ体に残ってるみたいだ。 寝つきが悪かったのも、きっとそれだ。 極度の興奮状態、とか。 そういう感じ。 他の皆は寝れたんだろうか? 俺であれだから、あんまり寝れてない気がするんだけども。 そんなこと考えながらホテルの外に出ると、見覚えのある背中。 宥さんと、穏乃だ。 その二人並んだ間から見える少女。 なんというか、絵本の中から出てきたような、そんなふわふわな……あれだ、ゴシックロリータ?とかいうファッションだろうか。 そんなレースを多く使った服に身を包む小柄な少女と、目が合う。 目が合ったのは片目だけ。 眼帯のように、リボンで少女は右目を覆っているのだ。 前者の服装と合わせ、個性的。 いや、個性的というかもはや属性の塊みたいな感じだ。 そう、これで中高年生がかかるという一種の選民的思想。 所謂中二病だったら数え役満だ。 例えば、「“ご機嫌いかが(ハロー)”――――“怪物さん(モンスター)”」とか。 ……怪物で白糸台の照さんが思い浮かんだ俺は、悪くない。 京太郎「二人とも、どうしましたー?」 この間、わずか数秒ッ! そんなナレーションを合間に挟みつつ、俺は宥さんと穏乃に声をかける。 二人も気づいたのだろう。 こちらに振り向くと、それぞれ声をかけてくれた。 穏乃「おはよ、京太郎」 宥「おはよう、京太郎君」 567 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/03/04(月) 22 15 03.71 ID CR+GJ5Z2o [18/39] 京太郎「うっす、おはようございます……それで、そちらの人は?」 宥「前に、練習に付き合ってくれた東海王者の対木さん」 穏乃「個人戦にも出てるんだよ!」 京太郎「あ、その節はどうも…」 俺が居なかった時の知り合いだったか。 ぺこりと俺が頭を下げると、向こうもぺこりと頭を下げる。 服装はあれだけど、髪型と体格が知り合いに似ている。 今のお辞儀も、何故かあいつを思わせた。 ぺっこりん。 もこ「………」 その思い返すような視線。 それに気づいたのか、こちらを見上げる片目がくりりと丸い。 思わず見返す。 見つめあう俺と対木さん。 ……何故か、急に顔を逸らされたけど。 何でだろうか。 573 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/03/04(月) 22 22 43.89 ID CR+GJ5Z2o [19/39] 【8月22日:昼】 何やらぼそぼそと呟きつつ、ふらふらとどこぞに行ってしまった対木さん。 それを見送った俺たちは皆と朝食を済ませ、それぞれ自由行動となっていた。 とは言っても、俺は個人行動にならないのだけれど。 宥さんと穏乃。 その二人とよく接触するのだ。 俺は今も一緒にいた。 やってることはそれぞれ別だけど。 京太郎「あの」 穏乃「え?どうしたの?」 宥「京太郎君?」 京太郎「あ、穏乃。用事は宥さんにあるんだ」 穏乃「あ、ごめん…」 宥「それで、何かな?」 妙にうれしげな宥さん。 しょぼくれる穏乃。 それからしばらくして、今度は逆パターン。 穏乃に用事があると、宥さんが落ち込む。 そんな循環に陥っているのだ。 なんでだろう。 俺、何も悪いことしてないよな? 実に居心地悪いぞ、これ。 いや、そんなことないか? 二人とも笑顔だし。 うん、あれだ。 気のせいだな。 二人のタイミングが妙に被った。 それだけに過ぎないんだろう。 うんうん。 仲の良い姿しか見えないし、きっとそうだろうな。 619 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/03/04(月) 22 47 00.42 ID CR+GJ5Z2o [23/39] 【8月22日:夜】 灼「ということで、明日は予定通り決勝に向けての調整、ってことで……」 灼さんの一言。 それによって会議が終わる。 風呂がまだだったのだろう。 穏乃と玄さんが真っ先に部屋を出て行き、残ったのは俺、灼さん、憧、宥さんだ。 何するか。 そう思ったが、ここは俺の部屋。 皆が居なくならないと私事も出来ないだろう。 見れば、宥さんは俺のベッドの布団に包まって震えている。 憧は牌譜と睨めっこ。 灼さんはグローブの手入れ中だ。 というか宥さん。 それかなり雀の涙な気がします。 夏の布団なんて薄いもんばっかりですしおすし。 そんな願いは通じる訳も無い。 無為に過ぎていく時間。 不意に、灼さんが口を開いた。 灼「決勝……」 その呟き。 一日が過ぎて、実感する。 今は、決勝に備えている。 その事実に。 それぞれ、敗退していった相手高校との知り合いも出来ていた。 負けるな。 そう背中を押された人も居る。 阿知賀はそれが特に顕著だろう。 全国各地で、そう背中を押されていったのだから。 憧「やれるだけ、やるしか無いですよね」 宥「うん……そうだね」 灼「色んな人の思いを背に、受けてるからね」 くすりと、笑う。 なんというか、うん。 なんか、気持ちのいい空気だ。 これがずっと続けば、いいな。 675 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/03/04(月) 23 08 51.47 ID CR+GJ5Z2o [32/39] 【8月23日:朝】 ――――京太郎君は、ひどい子だ。 いつも皆の視線を集めている。 ほら、今日もまた。 シズちゃんも、憧ちゃんも、玄ちゃんも、灼ちゃんも。 京太郎君に視線を向けている。 無自覚な優しさ。 それに気づけば惹かれているのだ。 皆も。 私も。 それがとても嫌なことだ。 そう思う自分が居る。 最初は認めたくなかった。 嘘だ。 こんなことを考えるなんて、私じゃない。 きっと私の中にもう一人の私が居るんだ。 そうじゃなきゃ、あんなこと思わない。 皆が京太郎君に向ける顔。 その笑顔がとても汚いものに見えたなんて。 ああ、駄目。 そんなのは嘘にしか思えない。 でも。 こうも思うと、納得してしまう。 『皆は、敵なんだ』 その一言。 それだけで何も悩まず、断じることが出来る。 玄ちゃんも、シズちゃんも、憧ちゃんも、灼ちゃんも。 そして、もう一人増えた巫女さんも。 全部敵。 全部、敵。 820 名前: ◆VB1fdkUTPA[!red_res] 投稿日:2013/03/06(水) 23 59 15.57 ID xgRrhZ2go [2/2] そっか。 敵は、倒さなきゃいけない。 京太郎君を私から離してしまうのなら。 “○○”しても、離さなきゃ。 だって、京太郎君はあったかいから。 あったかいから。 他の人にそれを取られたく、無いなぁ。 ………そうだ。 取られたくないなら、取られない方法を取ろう。 例えば、京太郎君を取られないように隠しちゃうとか。 例えば、もうあの子たちが京太郎君の前に出れないようにしちゃうとか。 例えば、京太郎君が私を必要としてくれるようにするとか。 ふふふ、と。 口元をマフラーに隠して笑う。 そうだ、そうしよう。 いっしょに、あったかくなろう。 そうすれば、京太郎君だって。 京ちゃんだって、“私”から離れていかないよね? ね……? 823 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/03/07(木) 00 03 37.32 ID 7H4LaEISo [1/17] 【8月23日:昼】 朝。 俺はまた偶然と出会った巫女さんこと、神代さんと会話を交わした。 言ってることは何かとあれだったが、そこに悪意なんてものは無い。 むしろ何処までも楽しげで、微笑ましい気持ちになる。 そんな気持ちのまま迎えた、今日。 俺は穏乃と会話したり、また今では宥さんと会話していた。 やることはある。 というより、ここまで来ると慌てて動く方が逆効果だ。 決勝は明日。 それに備えるというのも、メンタル面での調整の仕事だ。 まぁ、と俺は思う。 穏乃が一番リラックスしているだろう。 逆に玄さんはまだ固い。 それを払拭するため、憧と灼さん、赤土さんが付きっ切り。 宥さんと共に過ごしている時間が長いのも、それが理由かも知れない。 しかし、あれだな。 なんというか、二人っきりってのは恥ずかしい。 宥さんがにこにこしてる、というのもある。 それもあるが、なんというか。 ……なんというか、宥さんが近い。 距離が妙に近いのだ。 ソファーは3人がけ。 余裕はあるけど、近いぞこれ。 宥「京太郎君」 京太郎「な、なんでしょう」 宥「……ごめんね、何でも無いの」 くすくす、と笑う宥さん。 からかわれた、のか? 子供っぽく笑う宥さんにそんな感情が浮かぶ。 いや、むしろギャップがあって非常にいいのだけれど。 それからまた時間は過ぎていく。 気づけば、宥さんは俺の肩に頭を預けて眠っていた。 ……やばい、ちょっとずつずれておもちが当たってる……!! 848 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/03/07(木) 00 28 51.67 ID 7H4LaEISo [4/17] 【8月23日:夜】 京太郎「………はっ!?」 いかん、寝てた!? 俺はソファーに背を預けたまま上を向いた状態で寝ていたらしい。 ゆっくりと、妙に固まった首を解しつつ曲げる。 そうだ。 宥さんが寄りかかってきて、動こうにも動けなかったからそのままにしていて。 気づけば、寝てた……のか? たぶん。 きっと。 俺は腕時計を見る。 だいたい、一時間くらいか? そんなには寝ては無いらしい。 そこまで考えて、体が違和感を感じる。 なんか、体に乗ってる。 視線を、下に。 見れば、そこには宥さんの顔。 ……ああ、そういうことか。 ずれて、俺にしな垂れかかってる感じなのか。 いやーっはっはっは。 京太郎「憧に見られたら殺される……!!」 宥さん!宥さん! お願いします! 起きてください!! ああくそ体全体があったっけぇな!! 宥さんの体やわらけぇなぁ!! しかも「ん…」とか色っぽい声漏れてますから! やめてください、しんでしまいます。 宥「あったかぁい……」ギュッ さらにきつくホーミタイ入りましたぁ!! 893 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/03/07(木) 00 56 04.16 ID 7H4LaEISo [10/17] 【8月24日:朝】決勝戦は朝~昼なのよー 決勝戦、当日。 思えば、遠くに来たものだ。 そう俺は思っていた。 決勝戦だ。 決勝戦。 この時点で、阿知賀の皆は全国において4位の地位。 そこに納まっている。 その道。 思い返せば数ヶ月しか俺には無い。 だけど、その中で皆が積んできた努力。 それは知っている。 努力した。 苦心した。 足掻いた。 上を向き続けた。 決して諦めなかった、時間だった。 その努力が。 願いが。 報われる時が来たんだろう。 俺は朝早くから自分の仕度を終え、一人牌譜を眺めていた。 今の俺が出来ることは無い。 これだって、落ち着くためだ。 ふぅ、と息を吐く。 こういう時、何か出来ればいいんだけどな。 一つのことに集中すると気がまぎれるし。 そう思ってたとき、部屋をノックする音。 はて、誰だ? そう思いつつ、俺はドアを開く。 そこには、シャツとスカート姿の宥さんが居る。 ……あれ? セーター着てないぞ? 宥「こ、こここにわすれれちゃっててて……!」ガクガク 京太郎「ちょ、取り合えず中に入ってください!」 身を抱いてガタガタ震える宥さん。 シャツ一枚だからこそ分かるおもち。 実にすばらである……って違う!! 974 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/03/07(木) 01 47 10.16 ID 7H4LaEISo [14/17] 俺は宥さんを部屋に招き、そして部屋を探す。 セーター、セーター。 あった、椅子の裏。 それを拾い上げて、俺は宥さんの元に。 ちょっと目を離した隙に人の布団に丸まってる宥さんの前にセーターを持っていくと、セーターがすっぽりと引き込まれていった。 あれだ。 巣穴にひまわりの種を溜め込むハムスターみたいな、そんな感じだ。 もぞもぞと脈動する布団。 内部から微妙に聞こえる衣擦れ音。 なんというか、うん。 青少年の育成に多大な影響を及ぼしそうな感じだ。 きっとそうだろう、そうに違いない。 しかし、その脈動は止まる。 それに思わず、不審顔。 はて、一体どうしたんだ? 宥「………すぅ…」 京太郎「寝ないでください!!」 宥「あう」 こ、この人。 油断も隙もねぇというか、なんか変だぞ!? 誰だって、負けたくない。 負けて悔しいと思わない人間なんて、いない。 その感情の変化する先。 それが怒りなのか、悲しみなのか、屈辱なのか。 それは千差万別、人それぞれだ。 玄さんは、その中では“悲しみ”へと感情が向かう人だった。 本選第二回戦でも、悲しみに包まれた人だった。 今回の、試合。 決勝卓。 それは言うならば、殲滅だった。 照さん―――宮永照。 彼女によって、決勝卓の先鋒は今まで以上の混沌を示していたのだ。 玄さんは火力を抑えた。 清澄―――片岡選手は火力を捨て、速度を上げた。 臨海―――辻垣内選手はその両者のサポートを受け、照さんを押さえ込んだ。 恐らく、千里山の園城寺さんや花田さん以上に。 だけども、それは届かない。 結果としては。 点を失う清澄と阿知賀。 少しながらも+出資に持ち込んだ臨海。 そして、2回戦、準決勝と同じように稼いだ白糸台。 それに明確に分かれた、試合だった。 絶対王者。 それがまさに白糸台なのだと。 そう示すように、無言で試合終了のブザーに耳傾ける照さんの姿が、印象的だった。 宥「―――それじゃあ、行ってくるね」 宥さんが立ち上がる。 その時、俺に小さく目配せ。 それが意味するものを理解して、俺も立ち上がる。 見れば、とぼとぼと。 歩いてくる玄さんが見えた。 宥さんを視界に、玄さんが移したと同時にぽたりと。 涙が零れ落ちる。 あんなに頑張ったのに、と――――そう叫ぶように。 玄さんが、宥さんの胸に顔を落としていた。 209 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/03/09(土) 22 07 55.35 ID jKLDaReGo [4/17] 《間もなく、決勝戦次峰戦が開始します。選手は卓に移動してください》 京太郎「……宥さん」 宥「うん……玄ちゃんを、お願いね」 アナウンス。 それと同時にゆっくりと、宥さんが玄さんの肩を押す。 引き離すように、しかし、優しげに。 玄さんはまだ泣いていた。 泣いていたが、自分のやるべきことも理解していた。 震える声で。 宥さんへ、笑いかけていた。 玄「がんばって――――お姉ちゃん!!」 宥「うん、お任せあれっ♪」 そう、お茶目に笑みを浮かべる宥さん。 それに小さく、玄さんが笑う。 そうして、宥さんが去っていった後。 俺は小さく笑みを顔に貼り付けたまま玄さんに話しかけようとして――――その表情に、体が硬直する。 玄さんの表情。 先ほどの小さな笑みはない。 あるのは、暗い感情だろうか。 恐怖とも言えるだろう。 自分の全てを否定された、そんな顔だ。 玄さんの全てを否定し、排除された。 そういう、試合だ。 今、玄さんは所謂虚脱状態。 無力感に包まれているのだろう。 言葉をかける、ということが出来ない。 俺は何も出来ないのだから。 今、この場で彼女を理解できる人である宥さんは試合へと行ってしまった。 だから。 だから、今の俺が出来ること。 それは――――。 京太郎「………玄さん、散歩にでも、行きませんか?」 210 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/03/09(土) 22 16 56.49 ID jKLDaReGo [5/17] 会場の外に出る。 少し曇り空。 もしかすると夕立になるかも知れないな、と思う。 前を行く俺。 後ろについてくる、玄さん。 暫く歩く。 歩いて、立ち止まる。 ベンチ。 そこに何も言わず腰掛けると、玄さんも隣に腰掛けた。 さて。 会場内に居るよりは開放的。 そう思って連れ出してみたが、どうしようか。 正直、ノープランだ。 ただ言えるのは、俺は女の子の涙が苦手であるということ。 そしてもう一つ。 俺には、これくらいしか出来ないということ。 気づけば、玄さんの肩を抱き寄せて。 俺は自然と、頭を撫でていた。 怒るかな? そう思ったけれど、そうじゃなくて。 静かに、とても静かに。 涙を流す、玄さんの嗚咽。 それが俺の耳に、響き渡っていた。 時間は、そろそろ中堅戦になるだろう。 でも、今は。 今くらいは、皆を信じてここに居たい。 玄さんが、笑顔で皆の下に戻れるように。 きっと。 { | | 〃〃 .. ; .. 〃〃 ! | } { i | |i ′ | } リ | 从 ____ 从 j } { | . {个 ... `ー´ ... 个 / リ ニタァ… { 八 乂........〕ト r<......} / 八 { \(⌒^..........`"""""´.........ノイ / \ 八 「`.................................................八 /"', 丶 / V V.............................................../ /......} ,. / √V V゙"*。.,.............................../ /"""`ヽ ′ / | V V i""""了i'""""/ / Y , 237 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/03/09(土) 22 38 00.94 ID jKLDaReGo [6/17] そうして、俺たちの夏は―――終わる。 決勝卓、決勝戦。 そこで起こる、一つの戦い。 その結果は、語るべきじゃない。 誰も、知っている。 そこには勝者と敗者。 そのどれかに分かれていたのだから。 一つ、最後に言うとすれば。 俺たち、阿知賀は。 全員が全員、笑顔で。 笑顔で、その結果を受け入れていた。 その事実が、あった。 ホテルへと戻る。 どんちゃん騒ぎをしてからで、皆部屋に戻っていた。 当然、俺も。 しかし、こう終わってしまうと寂しい。 花火も、桜も。 ぱっと咲いて、ぱっと散る。 そんな刹那的な輝きに魅せられる日本人の感性だろうか。 今もそんなものだ。 祭りは行くまでが一番楽しく、終わった後は空しい。 そういうのは、本当に楽しめたから。 きっと、そうだからだ。 京太郎「………はぁ」 ぼふん。 ベッドに倒れこみ、俺はため息を一つ。 これはこれで、妙な感覚だ。 俺だって、阿知賀の一員なんだ。 それを再度実感するような、そんな感覚。 きっと、来年も。 来年は、きっと。 京太郎「……って、ノック?」 なんだなんだ? 今朝に似たような展開があった気がするぞ? そう思いつつ、俺はドアの鍵を解除した。 239 名前: ◆VB1fdkUTPA[!red_res] 投稿日:2013/03/09(土) 22 40 47.84 ID jKLDaReGo [7/17] / `ヽ, / , ′ / / { ′ , / ′ { │ ′ │{ │ | | { ノ !八 トミ ! | } ―――こんばんは、京太郎君 │ { | | \ | l\ . | | } { | 从 |\|i \|\| \ | | } { | ! 斗云f f云ミ `| | } { | | しzノ しzノ | | } { | | 〃〃 .. ; .. 〃〃 ! | } { i | |i ′ | } リ | 从 ____ 从 j } { | . {个 ... `ー´ ... 个 / リ { 八 乂........〕ト r<......} / 八 { \(⌒^..........`"""""´.........ノイ / \ 八 「`.................................................八 /"', 丶 / V V.............................................../ /......} ,. / √V V゙"*。.,.............................../ /"""`ヽ ′ / | V V i""""了i'""""/ / Y ,. / | V | 乂___ノ ,乂___/ / / } ′ / | }ノ} | {_____} {_____{ { / 八. / { | } 八 V / { { .′ /.....\j } {/i{ 叭i jイ八` ∨ / 乂{ヽ{ /.............} ノ { 八 {...{ ´ \ V / /}.............八/\. /......\ {...V ヽ δ / }.........ノイ........... \. /.................`.....V } / ノ.................................. \ 264 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/03/09(土) 23 02 40.66 ID jKLDaReGo [8/17] 京太郎「ゆ、宥さん?どうしたんです、こんな時間に」 宥「ごめんね、昼間のことなの」 入っていい? そう尋ねる宥さんに俺は「部屋に変なものないよな……な?」と、自分の脳内を思い返し、どうぞ、と頷く。 今出てるのは何枚かの服と、雑誌。 それも週間漫画のそれだ。 問題ないだろう。 部屋に入る宥さん。 お茶でも入れますよ、と俺。 それににこりと、宥さんが笑った。 宥「ありがとうね、京太郎君」 京太郎「いえいえ、これくらいしか出来ませんから」 紅茶でいいかな。 そう考えたが時間を見て改める。 紅茶のカフェイン含有量はコーヒーよりも多い。 コーヒーにしておこう。 ミルク大目のカフェオレ仕立てにすれば、そんなに気にならないだろうし。 そんなこと思いつつ、俺は手元で作業を続けながら声をかけた。 京太郎「それで、昼間のことなんですけど……」 宥「うん。玄ちゃんに接しててくれたよね?玄ちゃん、それですっごく楽になったみたいなの」 京太郎「そうですか……うん、よかったです」 宥「だから、そのお礼を言いに」 えらく“らしい”理由だ。 となると、お茶は長いさせるような理由になってしまうか。 そうは思ったが、何か含みある。 そんな気配を感じた。 俺は少し身構えつつも、カップを渡す。 宥さんはそれを両手で受け取ると、「あったかい…」と。 そう漏らしていた。 275 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/03/09(土) 23 11 20.52 ID jKLDaReGo [9/17] 俺も一口。 砂糖は抑え目のカフェオレだ。 俺はこういうミルクたっぷりの砂糖少な目。 そういう飲み物を好む。 ココアの砂糖少な目ミルク大目とか、実に好物だ。 カロリーも抑えれて、なおかつ味もしっかり、カルシウム摂取も出来る。 効率的ではあると思う。 京太郎「それで、何ですか?」 宥「……終わっちゃったな、って思って」 終わっちゃった。 それが意味するのは今日の試合。 大会が、ということだ。 「そうですね」と俺。 一口、またカフェオレを啜り、「でも」と口を開いた。 京太郎「でも、また来年があります。来年には絶対に全国一位に……っ!!」 宥「……」 自分の喋る内容。 それに慌てて口を噤む。 そうだ。 宥さんは、三年生。 もう、来年は無い。 これが最初で―――これが最後だったのだ。 宥さんが笑みを浮かべる。 自然と、「すみません」と。 俺は頭を下げていた。 京太郎「すみません……俺、無神経なこと……」 宥「ううん、大丈夫……それでね、話はそのことなの」 京太郎「は、はあ……」 困惑する俺。 来年のこと。 それを言われると、俺は何のことだろうか、と考える。 そんな俺に、宥さんは微笑んだ。 宥「来年は、もう私が居ないから……玄ちゃんも、皆も……京太郎君が支えて上げて」 283 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/03/09(土) 23 19 31.06 ID jKLDaReGo [10/17] 京太郎「宥さん………」 宥「私は、皆とは一番付き合いが浅いから……それでも、玄ちゃんとはよく接せれたけど…」 つまりは、皆を支えて欲しい。 そう、宥さんは言っているのだ。 確かに、と。 俺は考える。 宥さんは、皆から頼りにされていた。 それこそ、本当のお姉さんのように。 でも、自分は居なくなる。 近い内に、確定した未来だ。 だからこそ、自分の分も。 宥さんは皆の支えをと、俺に頼んでいる。 そういう、ことなんだろうか。 京太郎「なんで、そんなに……」 そんなに、嬉しげなんですか。 そう問いかけようとして。 宥さんが俺の唇に人差し指を当てることでその先を言わせない。 そのまま、その指を自分の口元に、シーッ、のポーズ。 片目を閉じた宥さんが小さく、笑みを浮かべていた。 宥「―――私、お姉ちゃんだから」 京太郎「……!」 ……少し、どきりとした。 というかドキドキしてる。 宥さんの新しい面を多く見せられた。 そんな気分が、あった。 だから、だろうか。 俺は気づけば、口を開いている。 自然と。 宥さんの顔を、見つめて。 まるで引き込まれるように。 宥さんの手を、しっかりと握って。 京太郎「そんなこと、言わないでくださいよ!」 京太郎「俺が、宥さんと皆の絆を断ち切らせませんから―――!!」 293 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/03/09(土) 23 28 28.33 ID jKLDaReGo [11/17] .| | |ハ | | | \ ||| .}′ \ヽ/ Ⅳ . _ハ ド、 |ヽ、| | ,\ ヽ _, ────―――――。 { 、 { ヽ 、____ ハ \ ー-- ̄>-- | | \ 、 ___, | \  ̄ ̄ ̄ ふと。 宥さんの唇が、歪んだように見えた。 だけど、次の瞬間には表情は違う。 まるでどう言えばいいか分からない。 そんな、そんなもやもやとした可愛らしい表情。 気のせい、か。 うん、きっとそうだ。 気のせいだろう。 俺は未だに宥さんの手を握っているせいか、少し恥ずかしげな宥さんと目がまた合う。 慌てて、手を離す。 少し、目を逸らしてしまう。 くそ。 何だ俺、顔赤いぞ。 そんなことを知ってか知らずか。 宥さんはことん、と。 俺の肩に、まるでそれが当然のように。 ゆっくりと頭を預けて、呟くのであった。 宥「あったかい……」 《END:限りなく自分の手を汚さないで男を墜とす方法その1》
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6419.html
【合宿二日目】 京太郎「眠い……限界まで出し切ったんだからしょうがないよな……」 京太郎「朝だしなんかするかな」 京太郎「まだ時間あるし寝よ」 京太郎「……押し入れって狭いな」 良子「京太郎、好きだ!」 憩「いえ、ウチの方が好きですーぅ!」 良子「いや!私の方が好きだ!ラブだ!」 憩「京太郎くん!」 良子「京太郎!」 憩良「「どっちを選ぶ!」」※二人とも裸です 京太郎「うわああああああ!」 真佑子「あっ、須賀さん、おはようございます」 京太郎「おはようございます!」キリッ 京太郎(何だ今の夢……) 京太郎(いい夢だったな……)ポーッ 朝 京太郎「あ、良子さーん!」 良子「きょ、京太郎?」 良子(よくよく考えたら何やってたんだ私!) 良子(京太郎と混浴なんて……) 京太郎「どうしたんですか?」 良子「どうもしてないどうもしてないノープロブレムだよ、今日も特訓?」 京太郎「はい!よろしくお願いします!」 良子「ここは……こう……」 京太郎「……なるほど、でこう、と」 良子「そうそう、そんな感じだ」 良子(京太郎、いつも真面目だな……) 良子(今日の夢にも……///) 京太郎「次はどうするんですか?」 良子「」ドキッ 良子(真剣で、色々と私のことを考えてくれていて……) 京太郎「良子さん?顔真っ赤ですよ?」 良子「そ、そうか?すまなかった」 良子(……理屈じゃないのかもな) 良子「次は――――」 京太郎「ふぅ~むなるほどなるほどなるほど~」 京太郎(夢のことを考えたら全然わからないんだぜ!) 昼 照「ロン、48900」ギィン 照「……ふぅ」 京太郎「よっ、対局終わったのか?」 照「うん」 京太郎「じゃあ暇つぶしに何かしゃべるか」 照「いいの?」 京太郎「いいって何がだ?」 照「京、戒能さんとばっかり話してるから」 京太郎「ああ……特訓してるだけだよ、うん」 照「そうなんだ、よかったぁ」ホッ 京太郎「?何がいいんだ?」 照「ううん、なんでもない」 京太郎「次、俺と打たないか?」 照「えっ?」 京太郎「この前言っただろ?私に勝てたらって」 照「あ……うん」 京太郎「じゃあ勝ってやるよ、今この場所で」 京太郎「五か月前みたいに!」ゴッ 照「…………」 照「わかった、受けて立つよ」 照「全力で捻る、前とは違う」 開局 憩「よろしくお願いしますーぅ!」 菫「よろしく」 京太郎「よろしくお願いします」 照「……よろしく」 照(憩と菫……か) 京太郎(良子さんから教わったコピー術……) 京太郎(他人の打ち筋を真似するものだけど、良子さんは「降ろす」とか言ってたんだよな) 京太郎(よくわかんねえけど、今回は……怜さんを意識してみよう) 同コンマのため、流局 京太郎(照相手には東一局が鍵、まずは温存しつつ和了りにいく!) 菫(……よくわからないが、個人戦上位者と戦えるんだ、存分に射抜く!)ギィン 京太郎「ノーテン」 憩「ノーテン」 菫「テンパイだ」 照「ノーテン」 京菫(全然ダメだった……) 照「…………」ゴッ 【照魔鏡】発動! 照(菫……憩も変わらない) 照(……京) 照(また見えなくなってきてる……?) 東二局 京太郎 24000 親 憩 24000 菫 28000 照 24000 同コンマのため、流局 照「…………」 京太郎(……!)スチャ 京太郎(なんだ、この感じ……照に和了られる?) 京太郎(これは出さないでおくか……)トン 憩「ノーテン」 菫「テンパイ」 照「テンパイ」 京太郎「ノーテン」 京太郎(二連続流局って幸先悪くねえか?) 東三局流れ二本場 京太郎 22500 憩 22500 親 菫 29500 照 25500 照(憩が使うのは極端な支配) 照(その後の自分の流れを悪くする代わりにその局に和了りにいく) 照(そしてその流れを徐々に回復する) 照(それともう一つ、厄介なのがある……) 照「ロン、1900」 照(和了した人の流れを悪くする) 憩「…………」 照(でも、もう何回と視てきた) 照(その支配も菫の射抜きも、私には通じない) 東四局 京太郎 22500 憩 20600 菫 29500 親 照 27400 憩(照ちゃんに和了られてもうたか……) 憩(そういえば、照ちゃんと京太郎くんと打つのっていつぶりやったっけ……) 憩(……まあええ) 憩(今は京太郎くんの手伝いや!) 憩「リーッチ!」ピキィィィン! 照「っ……」 菫「……」 京太郎(やばい、何もできてねえ……) 憩「ツモ、リーチ一発三暗刻」 憩「裏2で3000・6000や!」 南一局 親 京太郎 19500 憩 32600 菫 26500 照 21400 京太郎(……!)ビクッ 京太郎(憩さんが……振り込む?) 憩「……」トン 照「ロン、1000」 憩「はいはーい」 京太郎(何だったんだ……今の) 京太郎(ってかそんなことより……) 京太郎(テンパイできてるのに……どうして和了れないんだ……) 南二局 京太郎 19500 親 憩 31600 菫 26500 照 22400 同コンマのため、流局 憩「テンパイ」 菫「テンパイ」 照「テンパイ」 京太郎「……ノーテン」 南二局一本場 京太郎 16500 親 憩 32600 菫 27500 照 23400 照「ツモ、400・600」 京太郎(照……連続で和了れてないな) 京太郎(ってことはアレも出しにくいはず……) 京太郎(……あれ?アレって何だっけ?) 京太郎(何かが……引っかかってる……?) 南三局 京太郎 16100 憩 32000 親 菫 27100 照 24800 照「カン」 照「カン」スチャ 照「……」トン 菫(暗槓二つ……少なくとも70符か) 菫(……ここか?) 照「ロン、2600」 菫「……はぁ」 オーラス 京太郎 16100 憩 32000 菫 24500 親 照 27400 憩(オーラス……) 憩(ここで和了れば、ウチは勝てる) 憩(照ちゃんに……京太郎くんにも!) 憩(……絶対に和了る!) 【孔穿つ閃光】発動! 憩「……カン!」 憩「リーチ!」 京太郎(…………) 京太郎(オーラス、それももう終盤なのに、なんでテンパイできないんだ……) 京太郎(体にまとわりついてた変な感じもなくなったし) 京太郎(このまんまで照に勝てるのかな……) 照(憩がリーチしたときは注意が必要) 照(それも特に役無しテンパイ) 照(だから多分今回も……) 照「…………」スチャ… 照(……今回は私の負け、か) 照「……」トン 憩「ロン」 憩「リーチ一発河底、裏6」 憩「16000や!」 結果 憩 46500 菫 24000 京太郎 18600 照 10900 京太郎「」チーン 照「」チーン 菫「」チーン 菫(焼き鳥二位、っておかしくないか) 菫(男女のチャンピオンに勝ったとは言えど……) 京太郎(焼き鳥でこの順位で照に勝ったって……) 京太郎(ちっとも嬉しくねえ……) 京太郎「照!」 照「何?」 京太郎「次だ!次こそお前に勝ってやる!」 照「……わかった」 京太郎「首を洗って待ってろよな!」 京太郎「何もしてないのに疲れた……」 京太郎「昼飯食いに行くか」 京太郎「……勝ちたいなぁ」 京太郎「遊んでるだけじゃダメなのかな……」 良子「京太郎、どうかした?」 京太郎「あ、お疲れ様です」 良子「そっちこそ。さっきの対局見てたよ」 京太郎「そうなんすか……恥ずかしいです」 良子「……ドントマインド」 良子「私だって高校生に負けることはあるし、それこそ小鍛治プロ以外のプロは誰だってそう」 京太郎「小鍛治プロって何なんですか一体……」 良子「誰だって負けるし焼き鳥にだってなる、それで落ち込んだら――――」 良子「ハムッ、ハフハフ、ハフッ!」 良子「こうやって食べたり、笑い飛ばしたりすればいいんだよ」ニコッ 京太郎「……そうっすね、ありがとうございます」 良子「ふふっ、どうってことないよ」 恒子「あ!須賀くんこんなとこにいた!」 恒子「さーさー!お姉さんたちのところに来ようか!」ズルズル 京太郎「えっ、ちょっ、何なんですかもう!」ズルズル ガララ ピシャッ 良子「…………」 良子「……今日も一人か、ふふっ」 昼 京太郎「まさか……」 恒子『量が多すぎて食べられないから代わりに食べて!』 京太郎「なんて用事だったとは……」 京太郎「あー腹いっぱい、この後どうしよ」 臨海監督(以後臨)「また暇なのか?」 京太郎「お察しの通りですよー」 臨「ふむ、じゃあ私が稽古をつけよう」 臨「須賀も勝ちたいだろ?」 臨「まずはこの手牌……何を切る?」 京太郎「そうですね……これでしょうか」 臨「む……正解だ」 臨「ではこれは?」 京太郎「これですね」 臨「これは?」 京太郎「これです」 臨「……これは?」 京太郎「これですね、考えるまでもありませんよ」 臨「……正解だ……」ズーン 京太郎(あれ?監督さんがなぜか落ち込んじゃったぞ?) 臨(せっかく集めてきた問題なのに……)シクシク 夕 臨「リベンジだ!」 京太郎「何ですかいきなり」 臨「このまま負けるわけにはいかない!さあ特訓だ!」 京太郎「えぇ……休ませてくださいよ」 臨「No fight, no life!」 臨「休む暇など与えないぞ!」 京太郎「嫌だー!」 臨「一問目!」デデン! 京太郎「はい」トン 臨「さて点数は!」 テテッ テレテレッ テレレレッ! 京太郎「おおっ!高得点!」 ヒューゥン… 京太郎「ダメだった……」 京太郎「ってなんで仮装大賞風なんですか!」 臨「余計なオプションを付けることで気を逸らす!」 京太郎「気を逸らさせたら特訓の意味ないですよ!」 臨「うぐっ……た、確かに」 京太郎「それじゃあ二問目お願いします」デデン 臨「……はい」 臨(なんか立場逆転してる……) 京太郎「ただいま帰りましたー」 郁乃「お帰り~」 真佑子「お帰りなさい」 京太郎「二人とももう帰ってきてたんですね、何してたんっすか?」 郁乃「ん~京太郎くんの呼び方についてな~」 京太郎「呼び方?」 真佑子「ゴミ虫とかフンコロガシがお似合いですねって話してたんですよ」ニコッ 京太郎(さらっとなんつーこと言ってんのこの人) 夜 郁乃「まあ今のは冗談やから~」 京太郎「冗談なんですか……」 真佑子「まさかそんな(冗談な)わけないじゃないですか」 京太郎「ですよね、そう(冗談)ですよね!」 真佑子「はい、勿論です」 真佑子「あ、私お風呂行ってきますね」 郁乃「行ってらっしゃ~い」 京太郎「行ってらっしゃーい」 ガチャ バタム 京太郎「さて、二人になったわけなので何かしましょうか」 郁乃「ええな~何しよか?」 郁乃「京太郎くん、イメチェンとかせえへん?」 京太郎「イメチェン……ですか」 郁乃「せやで~」 京太郎「……」ハッ! 京太郎「女装はしませんからね!」 郁乃「女装か~それもええけど~」 , '"  ̄` 、 / ヘ ./ ヽ、 ヘ ′ i !ハ ∧ i| | ! ヤ ∧ |i | / リ从 ∧ | /´レ勹´ _`_キ ∧ | !' ,r=‐ i。i | \____ | 爪 ´,, ″| ヽ、 `ヽ | ゝ .,ノ 从 `ヽ、 | 心 _/.)^._ イ´ ∧\ } 郁乃「だいじっこ!」..,ィ|i /./ | i \ } ソ{ ./ | ,'‐^ュ `k | i \"´ji { 广 ̄丁 j’ ´ ‐''ノ从 |-ミ } ji ル / 人__,,斗宀'" i \|ノ; /i | 彳"/ /' │ !"¨ ./ |ゝ-弋./ /__ __ _/i / |!/| | / / `´ |/ | i| | / / | | i| 京太郎(片目がやたらキラキラしてる!?) 郁乃「ふふっ、驚いたやろ~」 京太郎「これを俺にしろ……と」 郁乃「せやで~」 郁乃「あ、その前に……今のどうやった?」 京太郎「今の……ですか」 京太郎「好きです」 郁乃「せやろ~」 郁乃「……」 郁乃「へっ?」カァァ 郁乃「す、好き……?」 京太郎「なーんてね、ウソですよー」 郁乃「京太郎くんが私のことを好き……いやでも私はこんな体やし、それに照ちゃんや憩ちゃんやって……」ブツブツ 京太郎「聞いてないや」 京太郎「でもイメチェンか……やってみよっかな」 京太郎「目をキラキラさせて……」 真佑子「ただいま帰りましたー」 京太郎「試してみよう!」 ,.. / ヽ ´⌒> 、 / \ / | }! \⌒. / / ! | | ヽ \ /ィ | \∧ | /| |! トー― | _|VT示r ∨j/示rx/ V( 京太郎「だいじっこ!」 レ1( 弋,り 弋り {ソ V __ |/V{ ___ 从|>ー―――r―――/ / ___/ 、 V / イ7 / /――-、 \ ___/ | | ー 77 / / / ー― ノ ( | | / / / / / \| | | / / /´ ̄ ̄ ̄ / ! ∨∨ / /( _/\ /|/ ∨ / / / ⌒ヽ ー / \ / 人 〈 / / | し′  ̄ , >==≠ | /⌒ ト{_ | | |/ |/| | }! | \| {___/ /| | / 真佑子「……」 京太郎「だいじっこ!」 真佑子「……」 真佑子「部屋間違えましたー」 京太郎「ちょっと待ってー!」 京太郎「時間になったし風呂に行くか」 京太郎「昨日みたいなことは……ないだろうな」 カポーン 京太郎「ふぅ……」 京太郎「いいお湯だなー」 京太郎「月も綺麗だし、さいっこーだなー」 京太郎「……はぁ」 京太郎「誰か来ないかな……」 ガララ 京太郎「!」ビクッ えり「はぁ……」 えり「福与アナは全くいつもいつも……」イライラ えり「お風呂に入ってリラックスしましょう」 えり「というかなんでお風呂リポートまでしなくちゃいけないんですか、翌朝……」 ガララ えり「あぁ……月がきれ……い……」 京太郎「……えっ」 えり「」 京太郎「」 恒子『そーそー、23時以降は須賀君がいるから入っちゃダメらしいよー』 えり「……」 えり「はわわわわ!」 京太郎「見てません!何も見てませんから!」フリッ えり「し、失礼しました!」ダダッ 京太郎「あ、足元!石鹸!」 えり「えっ?」ツルッ 京太郎(やばい!風呂場で転んで頭打ったらシャレにならない!) 京太郎「間に合え!」 京太郎「ッ!」ダキッ ドンガラガッシャーン えり「……ん……ぅ」 京太郎「大丈夫ですか?」 えり「は……い」 京太郎「ふぅー良かった良かった、頭打って仕事ができなくなったりしたら大変ですからね」 えり「すみません……」 京太郎「いいっすよ、立てますか?」 えり「あ……」 京太郎「あのー?」←えりの下敷きになっている えり「あっ!すみません!」ガバッ 京太郎「だから大丈夫っすよ、いつつ……」 えり「あ、足が……」 京太郎「壁にぶつけちゃっただけなんで大丈夫ですよ」 京太郎「それじゃあ俺上がるんで、針生アナはゆっくりしていてください」ニコッ ガララ ピシャ えり「………… 」 えり「須賀くんはケガをしてまで私を……」 えり「…………」 えり「ありがとう、って言ってませんでしたね……」 えり「今度お礼をしないと……でもどうすれば?」 えり「男の人はどんなものがいいのでしょうか……」 えり「…………」ウーン えり「…………」コクッ えり「…………ふぁ」 えり「寝てはいけません!しっかり考えないと……」コクッ えり「…………」コクッ えり「何も思いつかないです……」 【二日目】終 【合宿三日目】開始 京太郎「んーまだちょっと痛いな……」 京太郎「天気もいいし、朝もまだ早いし、何しようかな」 真佑子「むにゅ……」 京太郎「多治比さん……幸せそうに寝てるな……」 京太郎「親睦を深めるために、久しぶりにやるか!」 【須賀京太郎の!寝起きドッキリ大成功!part12】デデーン! 京太郎「おはようございまーす」ヒソヒソ 京太郎「今回はですね、この、多治比真佑子さんにですね」 京太郎「寝起きドッキリをしかけたいと思いまーす」 京太郎「まずは多治比さんのですね、ほっぺたをつまんでみたいと思いまーす」ヒソヒソ 京太郎「失礼しますねー」ムニッ 真佑子「うみゅ……すぅ……」 京太郎「まだ起きないみたいなのでもうちょっと強めに……」クニクニ 真佑子「むにゃ~~~~」 京太郎(あ、なんか可愛い) 真佑子「……」ガシッ 京太郎「あっ」 真佑子「……須賀……さん?」 真佑子「えっと……何を?」 真佑子「私の上に馬乗りになって、顔をのぞきこんで……///」カァァ 京太郎「あ……」 真佑子「…………」 真佑子「女性の寝込みを襲おうとするとか、さいってーですね」ジトッ 京太郎「す、すみませんっしたー!」 真佑子「とりあえず黙ってくださいこのカス虫外道が」 京太郎「はい……」 真佑子「なるほど、寝起きドッキリですか」 京太郎「……すみません」 真佑子「いえ、私も勘違いして汚い言葉を言ってしまったので……おあいこ、ということで」ニコッ 京太郎「あ、ありがとうございます!」 真佑子「だからうっせーつってんだろ」 真佑子(頭を上げてください) 京太郎「えっ……」 雅枝「合宿最終日は何をしてもええ」 雅枝「部屋で休むのもええし、誰かと打つのもええ」 雅枝「ゆっくりと羽を伸ばすことやな」 雅枝「ほな今日も頑張っていこか」 「「はい!」」 京太郎「何でもしていいって言われてもな……」 京太郎「何しよう……」 照「京、また暇なの?」 京太郎「またって何だよまたって」 照「じゃあ……何か話さない?」 京太郎「話?そうだな、するか」 京太郎「じゃあ、今回の合宿、どうだった?」 照「……楽しかったよ」 京太郎「ってかよく考えたら照だけ一回合宿行ってないんだよな」 照「白糸台合宿のこと?」 京太郎「うん、またみんなで合宿とか旅行とかしたいよなー」 照「……そう」 照「…………」 照「京は、この合宿どうだった?」 京太郎「俺か?楽しかったぞ」 京太郎「まあまだ終わってねえけど、特訓したり喋ったりそれに風呂だって……」 照「お風呂?」 京太郎「いや!何でもないぞ!」 照「?」 照「私も……楽しい」 京太郎「この合宿が?ってさっきも言ってたじゃん」 照「……ううん」 照「私も、京と喋ったりするのが楽しい」ニコッ 京太郎「!……そ、そうか俺もだぞ」 照「ふふっ、良かった」 京太郎(照が笑ったとこなんて最近見てなかったよな……) 京太郎(なんで照なんかにときめいてんだ俺……) 昼1 京太郎「適当に卓を回ってみるかな……」 淡「ふっふー容赦しないよー」 咏「へへっ、お前は私にゃ勝てねえよ!」 泉「私を嘗めてもろたら困りますね」 恭子(何やこの卓……) 京太郎(面白そうだな、見てみるか) 【東一局】 咏「ロン!32000!」 恭子「メゲるわ……」 咏「私の勝ちだねぃ~」 淡「ぶー!開幕数えなんてずっこいずっこい!」 咏「実力なんだからしょうがねえだろー」 恭子「うっ」グサッ 淡「次面子変えてやろー」 恭子「あうっ」グサグサッ 泉「末原先輩……」 恭子「ええんや……私は所詮凡人……ふふ、あはは……」トボトボ 京太郎「末原さん、どっか行っちゃったな」 京太郎「追いかけてみよう!」 恭子「……はぁ」 京太郎「末原さん、暇ですか?」 恭子「えーっと、須賀くんやったっけ……」 京太郎「はい、俺今暇なんで何か話しませんか?」 恭子「……うん、ええよ」 京太郎「とりあえずお茶でも」 恭子「ミルクティーか、嫌いやないで」 京太郎「それならよかったです」 恭子「それで、何話そか」 京太郎「そうですね……「魔物」について、とか」 恭子「魔物……宮永姉妹とかみたいな人種か」 京太郎(やっぱりあの二人は相当なんだな……) 京太郎「全然勝てないですよね、あいつら」 恭子「……そっか、須賀くんはあの二人と幼馴染やったっけ」 京太郎「ええ、一応」 恭子「せやったら須賀くんも相当の打ち手なんやろ?男子個人戦チャンピオンやし」 京太郎「いや全然ですよ、照と咲に勝てたのなんて両手で数えられるくらいですし」 恭子「……須賀くんは、どう思うんや?」 恭子「宮永姉妹に荒川憩、神代小蒔に天江衣、大星淡とか三尋木咏、高鴨穏乃……あの次元を」 京太郎「んー……凄いとは思いますけど、勝てない相手ではないですよ」 京太郎「大体、勝てないって最初から思ってたら何もできませんよ」 恭子「……やっぱり、せやな」 京太郎「だから諦めないでもう一回挑戦すればいいんですよ!」 恭子「……うん」 恭子「よし、もう一回やったるわ!」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 照「ロン、1000」 照「ロン、2900」 照「ロン、6100」 照「ロン、8400」 照「ロン、12900」 照「トビですね」 恭子「メゲるわ……」 恭子の好感度がぐぐぐーんと上がった! 京太郎「末原さん頑張ってるといいな」←京太郎は上の結果を知りません 京太郎「よっと、食堂到着」 京太郎「今日は何食べよっかな」 淡「あ!京太郎だ!」 京太郎「ん?ラーメンが宙に浮いてるぞ?」 淡「もーなにそれー!」 京太郎「ラーメンが喋った!?」 淡「いい加減にしないと怒るよ」ゴゴゴゴ 京太郎「あいよ、お前も今から飯か?」 淡「そだよー」 京太郎「淡は何食べるんだ?」 淡「んー今日はちょっと暑いからそばにしようかなー」 淡「京太郎は?」 京太郎「俺はカツカレーだな」 淡「へー」 淡「おいしー!」ズルズル 京太郎「食べながら喋るんじゃありません」 淡「京太郎はつまんないなー」 京太郎「ちゃんとしないお前が悪い、そんなんじゃ誰も嫁にもらってくれないぞ」 淡「いいもん!私がお婿さんになるから!」ズルズル 京太郎「何言ってんだこいつ」 淡「それにどうせ京太郎が貰ってくれるし……」チラチラ 京太郎「はぁ……」 京太郎(なんか期待した目で見てるけど、なんて返せばいいんだ?) 京太郎「そういえばiPS細胞というので同性の間でも子供ができるらしいです」 淡「へっ?」 京太郎「淡が嫁にもらうんだったら渋谷さんとか大人しい人の方がいいんじゃねえの?」 淡「……京太郎のバカ」 淡「ごちそうさまでした!」 京太郎「えっおい淡!」 ガララ ピシャッ 京太郎「……どうしたんだあいつ?」 京太郎「飯を食べ終わったら眠くなってきたぞ……」 臨「須賀!須賀!手伝ってくれ!」 京太郎「なんですか?」 臨「ちょっと昼飯を作ろうと思っていたんだ、その缶詰を開けてくれるか?」つ缶切り 京太郎「別にいいですけど」 臨「じゃあ頑張ってくれ」ササッ 京太郎「なんで屋外?なんでそんなに離れるんだ?とりあえず開けてみるか」カチッ 缶詰「どもーシュールストレミングでーす」モワッ 京太郎「くさっ!なんだこれ!」 臨「よくやったぞ須賀!」 京太郎「滅茶苦茶くせえ……」 臨「まあまあ、これあげるから」 京太郎「サルミアッキ?」 臨「なかなかいい味だよ」 京太郎「それじゃあ……」パクッ 京太郎「まずっ!なにこれ!おえっ!」 臨「そうか?おいしいんだけどな」モグモグ 京太郎(味覚と嗅覚大丈夫なのかこの人!?) 臨「昼飯も食べ終わったことだし、特訓しようか」 京太郎「この状態でですか……」 臨「準備はいいな?」 京太郎「はい……」プーン 臨「今回の課題は私から和了ること!一度でも振り込んだらその時点で失格だ!」 京太郎「めんどくさそーですね……」 臨「それでは始めよう」 京太郎「ロン」 京太郎「ツモ」 京太郎「ロン」 京太郎「ロン」 京太郎「ロン」 臨「」チーン 京太郎「課題クリアですね!」 臨「……ああ、そうだな」ガクーン 京太郎「もう夕方か……あとは都会に戻って打ち上げして終わりだな」 京太郎「最後、何をしよう」 咏「遠き山に~♪」 京太郎「おっ、何やってんだ?」 咏「ちょっとネト麻をねぃ、やってみる?」 京太郎「まだ途中じゃねえの?」 咏「いや……」 『ロン、16000』 咏「これで終わり」 京太郎「こえーよお前……」 咏「んじゃ、やってみそ」 京太郎「よっと」ポチッ 咏「はぁ?何切ってんの?」 京太郎「こっちの方がはやく和了れね?」 咏「いや今のはそっち切るべきだろ、ほらさっきの有効牌」 京太郎「げっ、マジだ……ツモ切りっと」 咏「あっバカ!」 京太郎「えっ?」 『ロン、24000』 京太郎「と、とんだ……」 咏「言わんこっちゃない、次私の番な」 京太郎「おう……」ショボーン 【叙○苑】 京太郎「ただの合宿の打ち上げになんつーとこ来てんすか……」 良子「費用は府と都が持ってくれるからね、それにガールばっかりだし」 京太郎「だからってこれはもう……おかしすぎるでしょう」 照「京」 京太郎「んっ、照か」 照「とりあえずこっち来て」グイッ 淡「サンチュだけ食べまくる!」 菫「ちゃんと冷麺とかも食え」 照「カルビ頂戴」 京太郎「はいよ、ピートロは?」 照「……いい」 菫「照もクッパとかしっかり食べろ」 照「焼肉は楽しまねば焼肉に非ず、カルビはやく」 菫「もう肉は頼まないぞ」 照「あうっ」 淡「京太郎!ハラミ頼んで!」 京太郎「はいはい」 菫「須賀……お前からも言ってやってくれないか」 京太郎「えー……だって肉を焼かないと意味ないじゃないですかー」 菫「……むぅ」 淡「スミレは太るのが怖いんだよ」ヒソヒソ 京太郎「そういう淡はどうなんだ?」ヒソヒソ 淡「私は食べても太らないタイプだからね!」ババーン 照「同じく」 菫「くっ……須賀ァ!ただちに供給を停止させろォ!」 京太郎「えぇ……」 京太郎「とりあえずこれでも食べててください」<ピートロ 菫「むぐっ」 淡「京太郎ってば大胆!」 京太郎「何がだ」 照「でも菫はピートロが一番好きだったはず」 菫「…………」 菫「須賀!どんどん焼くんだ!」 淡「あ!ハラミとカルビとピートロくださーい!」 照「満足満足」ホッコリ 「お待たせしましたー」 京太郎「よーしじゃんじゃん焼くぞ!」 京太郎「まずはナスからだ!」ジュージュー 照「えっ」 淡「え」 菫「は?」 京太郎「な、ナスくらいいいじゃないか……」 照「……まあいっか」 淡「だね!」 菫「言いだしっぺは私だしな」 京太郎「よし焼けたな、みんな取ってけー」 照「……おいしい」モグモグ 淡「この火加減、京太郎はわかってるなー」モグモグ 菫「うむ、おいしいな」モキュモキュ 淡「やっぱり京太郎は私のお嫁さんになるべきだね」 照菫京「「「ぶふぉっ!」」」 京太郎「何て事言い出すんだよいきなり!」 菫「けほっ、二人はそういう関係なのか?」 照「あり得ない……うん」 淡「なにそれ酷いよ!」 京太郎「とりあえず黙って食べなさい」ペシッ 淡「いったーいぃ……」 京太郎「ようやく解放された……」トボトボ えり「あ……」 京太郎「は、針生アナ!?」 えり「こん、ばんは……」 京太郎「その、昨日はほんとにすみませんでした!」 えり「そんなことはないです、須賀くんに助けられたんですから」 京太郎「でも……ちらっと見てしまいましたし……」 えり「見……///」カァァ えり「忘れてください!///」 京太郎「すみません!」 えり「……とりあえずあっちの部屋に行きましょう」 京太郎「……はい」 えり「顔を上げてください、ね?」 京太郎「……」 えり「須賀くん、悪いのは私の方だったんですから」 えり「お詫びと言ってはなんですが……その……」 えり「一つだけ、なんでも言うことを聞きます」 京太郎「……えぇぇぇぇ」 京太郎(どうしよう……針生アナに命令ができるって結構夢みたいだけど……うむむ……) えり「……挿れますね」 京太郎「お願いします……んっ」 えり「ここが膜……でしょうか」コツン 京太郎「はい、おそらくは……いたっ!」 えり「ごめんなさい!……初めて、ですから」 えり「もう……動いていいですよね」 えり「いっぱい……出ましたね」 京太郎「なんかすみません……針生アナ気持ち良すぎですよ」 えり「ありがとうございます、あとお互い初めてなんですからいいですよ」 京太郎「そろそろ動きますね」ゴロッ えり「あー……こっちもたくさん溜まってますね」 えり「頑張って出しましょうね」 京太郎「……お願いします」 恒子(いやー針生アナと須賀くんがここにいるっていうから来てみたけど……) 恒子(ナニしてるんだあの二人!) 京太郎「あーすっきりしたー」 京太郎「針生アナの膝枕も堪能できたし実に満足だ!」 臨「須賀じゃないか」 京太郎「つかぬ事をお伺いしますけど……トイレで一体何を?」 臨「日課のレーションとプロテインをな」 京太郎「マナーだけはしっかり守るんですね」 臨「そろそろ戻るか、須賀も来ないか?」 京太郎「はい、よろこんで!」 京太郎「一人だったんですね」 臨「サトハたちが他の場所に行ってしまったみたいでな……はぁ」 京太郎「俺で良ければお付き合いしますよ」 臨「センキュー、でもあらかた食べたからそろそろデザートにしようかな……」 京太郎「じゃあ何か持ってきますよ」 臨「よろしく頼むよ」 京太郎「うーん……今並んでるのがないな……」 「お客様、アイスでしたら個室までお運びいたしますが?」 京太郎「そんなサービスが!」 「はい、ご利用なさいますか?」 京太郎「ぜひお願いします!」 臨「それで来たのがこれ……と」 京太郎「迂闊でした……」 臨「スプーン1本か……まあいい」 臨「須賀、食べさせてくれ」 京太郎「食べさせてくれって……はぁ」 京太郎「はい、あーん」 臨「あ、あーん」カァァ 臨「っ」モグッ 京太郎「おいしいですか?」 臨「うむ、なかなかだな」 臨「次はお前の番だ、あーん」 京太郎「い、いや!俺はいいっすよ!」 臨「私だって恥ずかしかったんだ!お前も同じ目に遭うべきだ!」 京太郎「でもこれじゃあ間接キスになっちゃいますよ!」 臨「あ……ぅ……///」 臨「うるさい!とにかく食べろ!」 京太郎「ちょっ」モグッ 京太郎「あ、おいしい」 臨「よし、次は私の番だな」 京太郎「……はぁ」 京太郎「あれ?そもそもスプーンもう一本頼めばよかったんじゃ……」 臨「あっ……」 雅枝「これで近畿・関東合同合宿は終わりや」 雅枝「次会うときは国麻の卓や、それまでに各々精進するように」 雅枝「それでは……解散!」 「「お疲れ様でしたー」」 臨「須賀」 京太郎「何すか?」 臨「これが私のメールアドレス、大阪に戻ったら連絡してくれ」 京太郎「はい、お疲れ様でした」 臨「うむ、お疲れ」 真佑子「あ、須賀さん」 真佑子「これ、私の連絡先です。よければメールくださいね」ニコッ 京太郎「それはどうも」 真佑子「それではまた!」 京太郎「さようならー」 【清々荘】 京太郎「部屋に帰って来たぞ」 京太郎「寝る前に何かするかな」 京太郎「監督さんにメールしてみよっかな」 京太郎「あんまり当たり障りのない感じで……」 京太郎『こんばんは』 京太郎『早速メールしてみました』ピッ ヴーッ ヴーッ 臨『おお!学校関係とか仕事関係以外で初めてメールを出した!』 臨『ありがとう須賀!』 京太郎「なんだろうすっごい既視感」 京太郎「つまりプライベートではメールしたことがない……」 京太郎「恋人とかもいなかったのか?」 京太郎『突然ですが、以前に恋人がいたことはあるんですか?』ピッ ヴーッ ヴーッ 臨『……まさか』 臨『恥ずかしながら、彼氏いない歴=年齢の生き遅れだよ』 臨『自分で言ってて傷つくな……』 京太郎「やり手のキャリアウーマンって感じなのに意外だな」 京太郎『きっといい人が見つかりますよ』ピッ ヴーッ ヴーッ 臨『そうだな』 臨『須賀とも出会えたことだし』 臨『そのときはよろしく』 京太郎「えっ、よろしくって何!?」 京太郎「まあ確かに監督さんスッゲー綺麗だけど……」 京太郎「……こんな会話淡としなかったか?」 京太郎「時間もあるし他の人にもメールしてみるか」 京太郎「そうだな……」 京太郎「針生アナに送ってみようかな」 京太郎「そういえば耳掃除と膝枕……よかったなぁ」ホッコリ 京太郎「さて何て送ろう」 京太郎『こんばんは』 京太郎『初めてのメールですね』 京太郎『針生アナは国麻にも来るんですか?』ピッ ヴーッ ヴーッ えり『こんばんは』 えり『一応最終戦の実況を任されているのですが、私にできるのかどうか不安で』 ヴーッ ヴーッ えり『すみません、こんな情けないメール送ってしまって』 京太郎『そんなことないですよ』 京太郎『針生アナなら大丈夫です』 京太郎『頑張ってくださいね』ピッ ヴーッ ヴーッ えり『ありがとうございます』 えり『私も須賀君のこと応援していますから』 えり『そちらこそ頑張ってくださいね\(^o^)/』 京太郎「何故か俺が終わってる……」 京太郎「顔文字とか使い慣れてないのかな?」 京太郎「そう思うとなんか既視感が……まあいっか」 京太郎『それではまた今週末、ですね』 京太郎『おやすみなさい』ピッ 京太郎「さて寝るかー」 【10月第3週 休日】終
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/2864.html
(準決勝・実況席) 恒子「さぁ、準決勝先鋒戦前半戦もいよいよ大詰め、オーラスを迎えました! ここまで下馬評通り宮永選手の圧倒的リードで進んでおります」 恒子「対して新道寺、かなり大きなマイナスを背負っています。これは苦しいか!」 健夜「さすが宮永選手、だね。おととしよりも去年、去年よりも今年、着実に進化してる」 照『リーチ』 123s4567778p發發發 恒子「おぉっと! オーラスで駄目押しのダブリーが入った!」 健夜「しかも4面張。豪快なフィニッシュになりそうだね」 煌『……』 『煌手牌』 125m289s23369p東南 ツモ南 ドラ4s 健夜「うーん、これはもしかしたら新道寺の子から出ちゃうかもね。手なりで打つなら9筒が不要牌だし」 恒子「なるほどー。さすがプロ生活20年ともなればそれぐらいの予想はお手の物だね」 健夜「だからアラフォーじゃ……って、ずいぶん長考だね」 恒子「まぁねー。これだけ点数取られた状況でダブリーかかっちゃ無理もないか」 健夜「俯いて……ちょっと震えてる。大丈夫かな?」 煌『……』 煌『……』 煌『……』スゥ 健夜「ん? 深呼吸してる?」 恒子「出しちゃうのかな?」 煌『……』ギリッ 煌『ッ!』打5萬 恒子「ブッ!」 健夜「こ、これはずいぶんと思い切ったね」 恒子「す、すこやん。これはどういう打牌なのかな?」 健夜「うーん、おそらく123の三色とチャンタ、ピンズ一通とピンズの混一色を見た一打……かな?」 健夜「この格好から5萬周りを引いても高い手にはならないからね。 赤頼みも阿知賀の彼女がいる状況じゃ望み薄だし。だったら手役を作らなくちゃいけないとなると」 恒子「5萬切りってことかー。でも、この手牌から? まぁ、点数取り戻すために高い手狙うのはわかるけど、うーん」 健夜「そうだね。ダブリー入っている状況でやるにはなかなか勇気があるというか無謀だけど……成就、するかなぁ」 (新道寺控室) 姫子「は、花田ってあんな豪快な一手が打てる奴だっけ?」 美子「」ブンブン 仁美「驚いたわ」ポカーン 哩「(……そか。そうだな)」 哩「(花田、頑張れ。お前の意地、見しぇてやれ)」 (会場) 照「(随分脂っこいところを通してきた……。でも、この待ちだったらいずれ)」カチャッ 煌「……れ……ない」打8索 照「?(何か言ってる)」 煌「ま……ら……」打9索 煌「………れない」打2索 煌「……け………」打1萬 煌「………れ……」打2萬 照「(この子……危険牌を6枚も……!)」 煌「……」打5索 煌「……」打6萬 煌「……」打東 煌「……」打發 玄「(新道寺の人が突っ張ってくれてるから安牌には困らないけど……)」パシッ 怜「(あの宮永照のダブリーの前にここまで……)」パシッ 照「(引けない……嫌な、感じがする)」パシッ 煌「っ!」チャッ 煌「……9筒。暗カン」 照「(私の待ちの一つを……!)」 煌「……けられない」打中 照「えっ?」 煌「決勝に行って、会いたい子がいるんです。同じ舞台に立って、伝えたいことがあるんです」 煌「今更出て行って、私の言葉は届かないかもしれないけど。強くもない先輩ですけど。それでも、それでも」 煌「先輩として……かわいいかわいい後輩と」 煌「どうしても、話がしたいんです。そのために同じ所に立たなくちゃいけないんです」 煌「だから」 煌「だからっ!」 煌「だから、ここで、負けられないんです!」ギッ 煌「リーチっ!」打2筒 照「(追いつかれた!?)」 玄「(嘘……ダブリーを掻い潜った)」 怜「(ありえへん……)」 照「くっ……」ツモ5筒 照「(アガれない……! しかもこれはっ!)」パシッ 煌「ロンッ!」 『煌手牌』 3335567p南南南 カン9999 ドラ4s、中 煌「リーチ、一発、南、混一色、三暗刻……こんな場でも、乗るものですね。裏3で24,000」 (白糸台控室) 尭深「嘘……」カシャン 誠子「わっ、尭深! 湯呑湯呑!」 菫「……初めてだ」 淡「えっ?」 菫「あいつが、照が三倍満に打ち込んだのを初めて見た。そもそも跳萬以上に振り込むこと自体、いつ振りか」 淡「……新道寺の先鋒は実績もなくて、捨て駒だって話じゃなかった?」 菫「あぁ、そのはずだった。そのはずだったんだが……」 誠子「途中までの打牌も平々凡々だったのに」 菫「なんだ。いったい、あの選手に何があったんだ?」 (実況席) 恒子「」 健夜「こーこちゃん、しっかり」 恒子「はっ。あまりのことに思わず言葉を……」 健夜「危険牌12枚切って三倍満打ち取りだからね。しょうがないよ」 恒子「いや、出来過ぎでしょ」 健夜「うん、私だって普通に宮永選手がアガって終了だって思ってたもん」 恒子「でも結果として、あのチャンプが三倍満放銃とは……」 健夜「あの子の打牌にすごく強い意志を感じたよ。想いや意志で麻雀が勝てるなら苦労はしないけど、それでも」 健夜「それがなくちゃ、勝てないときもあるんだよね。本当にすごかったよ」 (会場) 煌「はぁ、はぁ、はぁ」 怜「(えらい消耗しとるな。あんな真似すりゃ無理もないか)」 玄「(負けられない……か)」 ――――決勝に行って、会いたい子がいるんです。同じ舞台に立って、伝えたいことがあるんです ――――どうしても、話がしたいんです。そのために同じ所に立たなくちゃいけないんです 玄「……私だってっ!」 照「?」 玄「私だって、負けられないのです。決勝に行って、会わなくちゃいけない人がいるんです」 玄「大切な、大切な友達で」 玄「そこまで長い付き合いじゃなかったかもしれないけど、それでも大切な友達で」 玄「だからっ、私だって!」 玄「絶対に、負けれないんです」ゴッ 煌「……」コクリ 怜「なんや、二人して熱くなって……」 怜「……ふふ」 怜「でもこういうの、嫌いやないで。こっちも……負けてられんなぁ」ゴッ 照「(この子たち……!)」 (観客席) 京太郎「……」 和「……」 優希「……」 京太郎「……優希」 優希「……なんだじぇ?」 京太郎「あの、新道寺の人って中学の時の先輩なんだって?」 優希「そうだじぇ」 京太郎「……いい先輩だな」 優希「うん……後輩思いで面倒見がよくて、世話になったものだじぇ」 京太郎「そうか……和」 和「……なんですか」 京太郎「あの阿知賀の人が……」 和「はい、昔の友人です」 京太郎「いい人だな」 和「はい、あんなに私のことを想ってくれてるなんて正直思ってもみなかったです」 京太郎「そうか、よかったな?」 和「……はい」 京太郎「……」 和「……」 優希「……」 京太郎「……決勝、何が何でも行かなくちゃな」 和「……ええ」 優希「……そうだな」 京太郎「……」 和「……」 優希「……」 3人「(どうしよう……)」 (会場某所) 照「……」 菫「お疲れ、照」 照「うん」 菫「何とか2着通過だったな。危なかった」 照「……ごめん」 菫「な、なぜ謝る?」 照「本当は私がもっと点数を叩きたかったけど……7,000点しか稼げなかった。前半戦のリードを大分食いつぶされたから」 菫「謝ることではないだろう、プラスはプラスだ。だけど、正直驚いた。照が準決勝でここまで手こずるとは」 照「その……」 菫「いや、別に攻めているわけじゃない。本当に驚いただけ」 照「……」 菫「……私は」 照「菫?」 菫「私は照とあの清澄の大将の関係はよく知らない」 照「っ」 菫「デリケートな話なんだろ? だから無理に聞き出そうとはしない。だけど……聞いてるんだろ? あの話」 照「……」コクリ 菫「で、これはさっき試合後に聞いたんだが、新道寺と阿知賀の2人はどうやら 清澄のメンバーと知り合いらしいな。……だから、会って話がしたいと」 照「……」 菫「本当になのか。本当だとしたら、どうしてそんなことになってしまったのか。 大切な友人だから、かわいい後輩だから、できるなら止めない。泣かせる話だな」 照「……何が言いたいの?」 菫「阿知賀は勝ったが新道寺は落ちた。私たちはあの子の願いを踏みつけて行くわけだ」 照「……菫」 菫「わかってる。別に後悔をしているわけではない。……だけど、踏みつけるのではなく、それを背負っていくことはできるはずだ」 照「せお、う?」 菫「きっと、話をして、できるなら止めたいんだかったんだろうな、あの子は」 照「多分」 菫「で、だ。……お前だって、話したい子がいるんじゃないか。あの話を聞いていたってことは何も感じなかったことはないと思うが」 照「……」 菫「……さっきの発言を撤回する。ちょっと踏み込んだことを言うぞ?」 照「えっ?」 菫「『妹』なんだろう?」 照「っ」 菫「『姉』として、『家族』として、できることができるんじゃないか? 止めてやることも、できるんじゃないか」 照「……」ウツムキ 菫「悪かった。ズケズケとプライベートなことに踏み込んだことは謝る。だけど、考えてみてほしいんだ。頼む」 照「……うん、わかった」 菫「そうか、よかった。……さっ、何か食べて帰るか?」 照「うん」コクリ 京太郎「今日こそは……」 我等が清澄高校の準決勝を翌日に控えた夕暮れ時、本日は部員一同ゆっくりと過ごすこととなった。 こんな状況なので人目を気にしているというのもあるが、最近はいろいろありすぎてみんな疲れ気味だ。 和などは最近は掲示板の内容に目を通しつつ怒ると言う大変不毛な行為を繰り返している。 見るのをやめればいいもののどうしても気になるそうな。 俺もホテルでゆっくりしていようと思ったが、どうしても行きたいところがあったのでこうして東京の街を歩いている。 京太郎「さて、今日は居るかな?」 財布の中の小銭を確かめながら、俺は目的地であるゲームセンターに足を踏み入れた。 入り口に設置されているクレーンゲームや大型筐体には目もくれず、 比較的奥に設置されている格闘ゲームのコーナーに足を向けた。 休み中なので俺と同じような高校生と思われる人間も多い。 その人ごみをかき分けながら、筐体の一つ一つに目を向ける。 京太郎「居たっ」 思わず口に出てしまう。 プレイヤーネームに『AwaAwa100』という表示。 筐体の向こう側でプレイしているため顔は見えないが、間違いなく彼女だ。 相変わらずのえげつない腕で、俺の目の前で対戦している少年が操作しているキャラクターを固め殺している。 京太郎「あの6Cを1発目から小パンで……」 考えてきた対策を軽く口に出して復習する。 まぁ、この状況で分かったと思うが俺はリベンジにやってきたわけである。 大会始まる前の期間にぶらりと寄ったゲーセン。 せっかく東京に来たんだからと軽い気持ちでよくやっている格ゲーをプレイしてきたときに乱入してきたのがこいつだ。 正直自分の腕はそこそこあると思っていたが、そんなプライドをメタメタのギッタギタにしてくれたのがこいつだ。 負けも負けたり20連敗。しかも対戦していたのが自分と同じぐらいの女の子とあっては凹みに凹んだ。 あれから何度か対戦を挑んでいるが今のところ全敗である。 しかし、この前対戦した時は惜しいところまで行ったのだ。 最終セットまでもつれこみ、大技が入ってコンボを完走すれば勝ちというところだった。 京太郎「まさか、残影牙拾いに失敗するとは……牙昇脚にしておけばよかったなぁ……」 あとちょっとで勝ちというところで痛恨のコンボミス。 そしてグチャグチャっとなったところであえなく敗北した。 思わずうがーっと叫んだところで、お互い顔ぐらいは知っている程度に対戦していたが 会話はしたことがないはずのあいつにこう言われたのだ。 ?『コンボミスをすることで勝ち確を逃すことができるwwwwwねーねーアレ落とすってどうなのwwwwww今どんな気持ちwwwww』 人は言った。格闘ゲームは人の性格を悪くする、と。 若干記憶が脚色されている気もするが、ファーストコンタクトがこれだからかわいい女の子といえども印象最悪である。 で、そう言われて顔真っ赤になった俺は懲りずにこうやってリベンジにやってたのだ。 ちょうど目の前の少年がパーフェクト勝ちをされ、肩を落として席を立った。 俺は入れ替わるように席に座ろうとして、気になっていたことを思い出し、筐体の向こう側を覗いてみた。 ?「~♪」 そこにはCPUを相手に楽しそうにコンボ練習をする姿。癪な話だがかなりの美少女、というやつだろう。 そうやって、改めて顔を見直して俺は確信した。 京太郎「(……やっぱり)」 3人で観戦したAブロックの準決勝。 観客席から見つめる画面の向こうに、俺をぼっこぼこにした奴が白糸台の大将として恐るべき実力を発揮する姿があった。 その立ち振る舞いは負けた俺を煽る姿とは一致せず、思わず呆気にとられたものだ。 京太郎「(白糸台の大将……大星淡、だったか。麻雀も強くて格ゲーも強いとかなんだよそれ)」 この世の不公平さを嘆きつつ、俺は100円を入れてカードを筐体に読み取らせた。 今日こそは勝ってやる。 こうやって負け続けるのは精神衛生的にも財布の中身的にも大変よろしくないからだ。 (対戦中) 京太郎「っつつつ」ガチャガチャ 淡「画面端ごあんなーい。固めるよー」ガチャガチャ 京太郎「あぶねっガードできた……」ガチャガチャ 淡「ふーん、大分頑張ってきたみたいだねー」ガチャガチャ 京太郎「ここで暴れてッ」ベシベシ 淡「あっ、やばっ」イタイニャス 京太郎「中段通った!」イキマスヨ、ジャヨクホウテンジン! 淡「立った! 立ったって!」ガチャガチャ 京太郎「よっしゃ! ここで蛇翼からODでっ!」コレカラガホンバンデスヨ! 淡「あーあ、さすがにこのセットは取られたかな」ガチャガチャ 京太郎「よし、これで蛟竜で締めれば……あっ」ガチャガチャ 淡「あ、繋がってない。んじゃ、美味しくいただきますっと」ニャスニャス 京太郎「あああああああああああああああああ! 保障高過ぎだろぉぉぉぉぉ!」ディストーションフィニッシュ! 京太郎「」 結論から言おう。 負けた。負けました。10連敗しました。 しかも何戦かは勝ちが見えてたのにお手手プルプルしてコマンド入力をミスるとかいうあまりにもアレな負け方。 ベッコベコに凹まされて現在は自販機コーナーのベンチで自棄コーヒー中である。 京太郎「ふぅ」 いつもよりコーヒーが苦く感じる。これが敗北の味というやつか。 完全に負け癖がついてしまった。家庭用が出たら練習しよう。 長野に帰る前に1度ぐらいは勝ちたいなぁ。 湯だった頭でそんな風に取り留めのないことを考えているときだった。 淡「ねーねー」 京太郎「俺?」 淡「そうに決まってるじゃん」 話しかけてきたのはあいつだった。 というかまともに話しかけられたのはこれが初めてだったからちょっと戸惑ってしまう。 そいつは探るような視線を俺に遠慮なく向けながら口を開いた。 淡「ねぇ、ちょっと聞きたいことあるんだけど、いい?」 京太郎「別に、いいけど」 淡「清澄の須賀京太郎って、あんた?」 考えてみれば当たり前の話だ。 相手も麻雀部員だ、例の噂を聞きつけていて居るのは当然だろう。 だが、あの噂が流れていることを知ってから他校の人間とこうやってまともに話すのは初めてなので、 内心めんどくさいことになったな、とちょっと焦る。 京太郎「……そうだけど」 淡「やっぱり? ネットの画像の通りだ。へー、ふーん」 そう言いながらジロジロと上から下まで品定めするように見てくる。 こいつ(いいよね、こいつならこいつ呼ばわりで)は礼儀というものを知らんのか。 このゆとりめ。いや、俺もゆとりだけど。 一方的に聞かれるのもしゃくなので、ちょっと反撃してやる。 京太郎「そういうそっちは、白糸台の大星淡さんだよな?」 淡「へぇ、私のこと知ってるんだ」 京太郎「準決勝、見てたしな。うちが決勝に行けば、当たる相手だし」 淡「なるほどねー。いやー、有名になるのも大変だー」 ケラケラと笑うこいつを見て驚きの表情一つも見せないことにげんなりする。 こいつ大物だわ。 それともただのバカなのか。 個人的な所感では間違いなく後者。 うん、確信。 京太郎「で、何の用だ?」 淡「あ、もしもしテルー? うん、そう、いまね……」 京太郎「聞けよ」 俺の問いには答えず目の前の珍種は気づけば俺を無視して電話を始めていた。 思わず乱暴な突込みが入ったけど、いいよね。同い年だし。 黙って帰ってもいい気がしたけど、それはそれでめんどくさいことになりそうだし、仕方なく電話が終わるのを待った。 淡「うん、それでね、大会が終わったらね……」 淡「それでね、たかみーが抹茶ケーキを……」 淡「ケーキといえば駅前のモールに……」 淡「そうそう、Aちゃんに彼氏が……」 淡「この前会ったんだけど、なんかすごい電波で……」 淡「哲っちゃん達者で打ってるかいってブツブツ言いながら体がプルプル震えてて……」 京太郎「お前何の話してるんだよ」 5分間我慢したんだけどもういいよね。 横で聞いてる限りどう考えても俺と関係する話をしているとは思えない。 付き合ってられんとばかりに踵を返そうとしたとき、そいつは俺の顔を見て『あっ、やっば忘れてた』って顔をした。 淡「あっ、やっば忘れてた」 京太郎「おい」 一点読みが通ったのにまったく気持ちよくない。 というか俺はこんなツッコミキャラだっただろうか。 部の皆といるときは結構ボケるほうだと思っていたのだが。 淡「うん、そう。噂の清澄の、うん、会いたいって言ってた」 淡「そうそう、そいつ。今ゲーセンに居るよ」 淡「あっ、ゲーセンに行ったことはスミレには黙っておいてね? また怒られるから」 淡「うん、それで、どうする……うん、うん」 淡「わかった、あそこだね。りょーかい」 俺を置き去りにすることたっぷり10分。 俺は途中で痺れを切らしクレーンゲームでぬいぐるみを3つ取ってで 『妹の彼氏を姉が寝取り泥沼になった姉妹に挟まれ精神崩壊する彼氏ごっこ』をして遊んでいた。 彼氏が追い詰められた挙句の自殺後、葬式帰りに二人が刃傷沙汰になるという佳境のシーンでこいつはようやく電話を切った。 即興のシナリオにしてはなかなかいい出来だと思う。 なんかの賞にでも応募してみようか。 淡「明日なんだけど、ちょっと時間ある?」 電話を切って一言目がこれ。 単刀直入である。突然すぎて色気も何もあったもんじゃない。 女の子の誘いだからもっとテンションが上がってもよさそうだが心はコールアングレの音が響く 中央アジアの草原のような穏やかさである。 こいつはあれだ、優希と同じカテゴリだ。 京太郎「うち、明日試合なんだが……?」 淡「自分が出るわけじゃないでしょ。それに開始前に時間は調整したから問題なし!」 京太郎「おい」 返事を聞く意味があったのだろうか。 あと、そろそろ殴っても文句は言われないだろうか。 淡「明日10時に会場最寄駅の横にある喫茶店で人が待ってるから。じゃ、よろしくっ!」 そう言ってそいつは振り返り帰ろうとする。 俺はそれを呆然と見送りかけたが肝心なことを聞いてないことに気づいてあわてて声を掛けた。 京太郎「ちょ、ちょっと待てよ。待ってるって、誰が!? 何で!?」 淡「んー?」 俺の呼び止めの声にそいつはくるりと踊るようにその場で回って、少し考え込むようなそぶりを見せる。 うーん、とちょっと考え込んでいるような声が漏れて聞こえてきた。 淡「何でかは私もよくわかんない。一度話がしたいーって言ってたのを聞いただけだから。あと、誰が、だけど」 そこまで言うと、不意ににやっという音が聞こえそうな感じで笑った。 その笑い方がなかなかにピッタリで、ちょっとというかかなり可愛くて、正直ドキッとした。 した後ですごく悔しくなった。謎の敗北感である。 淡「うちで一番有名な人、っていえばわかるでしょ?」 京太郎「それって……」 淡「じゃあね、絶対行ってよ! それともっと練習してきなよー。コンボミスりすぎっ!」 びしっと指を突き付け、そう言いながらあいつは去って行った。 俺はあまりに突然の事態に呆然とそれを見送るしかなかった。 京太郎「一番有名な、人」 そう言われると心当たりは一人しかいない。 しかし何故、という気持ちが大きい。 麻雀を始める前からおぼろげにその存在は知っていた。 だが、所詮はそのレベルの話であってお互い面識もないのに突然どうしてなのかが全く分からない。 意図が読めない。 行くべきなのだろうか。 部の皆には話すべきなのか。 そんな感じにもやもやしたものを抱えながら俺はホテルへ足を向けた。 淡「あ、そうそう」 京太郎「どわっ! なんだよ、いきなり戻ってくるな!」 淡「そのぬいぐるみ、かわいいね。ちょーだい!」 京太郎「……」 京太郎「……」 京太郎「……」 京太郎「……」 京太郎「……ほら」 淡「え、本当にくれるの?」 京太郎「……暇つぶしで取っただけだし」 淡「やった、ありがとう! じゃーねっ!」 うん(困惑) うん(現状認識) うん(把握) なんだあいつは(戦慄) 新種の生命体と対話した次の日、俺は予定時間の15分ほど前に指定の店に着いていた。 部のメンバーはもうそろそろ会場入りしているころだろう。 俺はこのことを報告するか悩んだが、結局黙っていた。 ここに来ることを適当にごまかして、皆とは現地で合流する手はずになっている。 本来であればこんな状況だしちゃんと話すべきだと思ったんだが……。 京太郎「言えないよなぁ、やっぱり」 あの癖っ毛たくましいポンコツ娘の顔を思い浮かべると、どうしてもその気になれなかった。 そんな感じで、心にしこりを抱えながら水をすすっているとドアベルが小さく鳴った。 ちらりと視線を向ける 京太郎「(あぁ、やっぱり)」 まさか、という気持ちはあったが、やはり想像通りの人がそこにいた。 その人は店内をきょろきょろと見回し、俺の姿を見つけるとゆっくりと近づいてくる。 そして、少しの沈黙の後に口を開いた。 ?「須賀、京太郎君?」 京太郎「はい、そうです」 ?「はじめまして、宮永照と言います」 咲、やっぱりお前には言えないよ。 お前のお姉さんと会ってくるなんて。 咲に姉がいるのは知っていた。 それと同時に二人の間に簡単に口に出せないような『何か』があるのも知っていた。 そもそも離れて暮らしているのだ、いろいろあるんだろう。 中学の時、家族の話になったら咲が露骨に辛そうな顔をしていた時以来、咲に家族の話はしないようにしてきた。 友人とは言え、触れてはいけないところ、触れてほしくないところってのは誰にだってあるだろう。 そう、だからここに来ることを言えなかった。 照「来てくれてありがとう」 京太郎「いえ……」 俺の向かいの席に座る……この人を何と呼べばいいのだろう? 宮永さん? 当たり障りないが、咲のことを名前で呼んでるせいでなんとも変な感じだ。 照さんとか? いや、初対面で下の名前は馴れ馴れしすぎだろう。 チャンプ? お互いに恥ずかしすぎだろ。 あいつが言ってたテルー? 命を大切にしない奴はうんにゃらっていうあのセリフを思い出すな。 どう口火を切ればいいのかわからず俺は手元の水に口を付けた。 照「何か飲む?」 京太郎「あ……えと、はい」 照「コーヒーでいい?」 京太郎「大丈夫、です」 どうにも緊張する。 そもそも女の子と二人でお茶をするなんて初めて……いや、咲は例外ね。 いや、女の子っていうのも何か微妙だ。 相手は年上の人だし、見た目からも『女の子』というより『女性』と言ったほうがしっくりする。 水を持ってきた店員さんに対して穏やかに注文する姿はとても大人っぽく感じた。 年齢としては2歳しか違わないのに、不思議だ。 店員さんが去った後は再び気まずい空気が流れる。 斜向かいの席に座っているおばさんたちの楽しげな笑い声が妙に耳に入ってくる。 目の前の人も同じく落ち着かないような感じだったが、一口水を飲んでから口を開いた。 照「突然呼び出してごめんなさい」 京太郎「いえ、別に……」 照「その、私のこと、知ってる?」 唐突な問いだった。 どういう意図なのか、どう答えるべきなのか。 どんな回答を求めているのか、何を聞きたいのか。 いまいちわからなかったが俺は頷いた。 京太郎「あの、俺からもいいですか?」 照「うん」 その一言を口に出すのは結構勇気が必要だったが何とか絞り出す。 京太郎「咲の、お姉さんですよね?」 俺の問いに少しの沈黙ののち、小さく頷いた。 わかりきっていたことだったが、これで確信に変わった。 確かによく見ると顔立ちとか少し咲に似ている。 ただ、纏う雰囲気は大違いなせいかあまりピンとこない。 店員「お待たせしました」 そうこうしているとちょうどコーヒーが運ばれてくる。 コーヒーは嫌いではないが砂糖なしで飲むほど俺の味覚は子供から脱却できていない。 テーブルの上にあったスティックシュガーをひとつ取り、コーヒーに混ぜていく。 向かいではどこか憂いを帯びた感じでコーヒーにミルクを入れる咲のお姉さんがいた。 普段周りにいる女性陣が絶対にしないようなその表情はちょっとドキッとする。 照「」サラサラサラサラサラ 照「」ドバー スティックシュガーを5本、ミルクピッチャーに入っていた2人分のミルク全部をコーヒーに投入しているのはちょっと気になるけど。 別に俺は入れないので俺の分のミルクまで使っているのは構わないのだが、甘すぎないのだろうか。 いや、それ以前にあれをコーヒーと呼んでいいのだろうか。カフェオレ? そういえばカフェオレの定義ってなんだろう? 照「」カチャカチャ コーヒー(?)を混ぜている咲のお姉さんを見ているとふと昔を思い出した。 咲も中学生の時に「京ちゃんが思ってるより私は大人なんだから!」とか強がってブラックコーヒーを勢いよく飲んだ結果、 チョコレートファウンテンの如く口からコーヒーを垂れ流したことがあったな、と。 そんなことを考えていると、俺の視線に気づいたのか、少し顔を伏せたまま口を開いた。 照「今日、来てもらったのは、その……」 そこまで言ってまた口ごもる。 若干の沈黙ののち何か思い悩んだ表情で手元のコーヒーカップに手を伸ばした。 何かを流し込むかのように、咲のお姉さんはコーヒーに口を付けた。 照「熱っ!」 そして、思ったより熱かったのか慌てて口を離し 照「あっ」 勢い余って手まで離し 照「あちちちちちちち!」ガシャーン! そしてコーヒーは見事に咲のお姉さんの胸のあたりにぶちまけられた。 床に落ちてけたたましい音を立てて割れるコーヒーカップ。 散らばる破片 照「あっつ! あっちゅい!」バタバタ 胸元にこぼれたコーヒーが扱ったのか慌てて胸元をつまみ服を肌から離している。 てんやわんやとはまさにこのことか。 俺は一瞬ポカンとするが慌てて手元のおしぼりを差し出した。 お姉さんはそれを受け取り胸元のコーヒーのシミを必死にこすり始める。 こするんじゃなくて叩かないといけないんじゃと思っていると仕事の早い店員さんが颯爽と飛んできた。 店員「お客様、大丈夫ですかっ!」 照「すみません、大丈夫です……」 店員「すぐに掃除いたしますので!」 照「本当にすみません……」 俺は店員さんが持ってきてくれたおしぼりで机の上を拭きながら、しみ込んだコーヒーと格闘している咲のお姉さんを見てふと思った。 ――この人、間違いなく咲のお姉さんだわ。 ――血は争えん。 それと同時にこうも思った。 ――こぼれたのが水だったら着けている下着ぐらいは見えたかな。 ほら、思春期真っ盛りだし、これぐらいの下心は許してもらえるよね? 俺は机をおしぼりで拭きながらそんな自己弁護に走っていた。 15分後、落ち着きを取り戻した俺たちは再び向かい合って座っている。 咲のお姉さんの手元にはサービスで用意してくれた新しいコーヒーがある。 照「それで、来てもらった理由は……」 大変シリアスな面持ちをしているが、胸元に広がる大きなコーヒーのシミがぶち壊しにしている。 白糸台の制服が真っ白ということもあり、大変目立っているのが悲劇以外の何物でもない。 何とも微妙なテンションに陥っていた俺だが、次の一言にはさすがに衝撃を受けた。 照「どうしても、謝りたくて。ごめんなさい」 そう言った後、頭を下げられる。 初対面の女性にこうやって頭を下げられる経験などあるわけがない俺は 京太郎「いや、えっ、ちょっと、へっ?」 当然キョドるわけである。 さっきの騒ぎで微妙に店内の注目を浴びてることもあり焦る。 ほら、さっきはあれだけ騒がしかったおば様方がチラチラとこっちを見ながらヒソヒソ話をしている。 そんな俺の返事を待たず、頭を下げたまま畏まり、重い口調で喋り始めた。 照「須賀君が今どういう状況に置かれているか、っていうのは聞いています」 照「私は妹と長く離れて暮らしているから妹がそんなに荒れてるなんて知らなくて……」 照「昔は気弱だったあの子がどうしてそうなっちゃったかはわからないけど」 照「でも……私が、近くに居たら止められたかもしれない。だけど、それが、出来なくて……」 照「だから、ごめんなさい」 下げた頭をさらに深く下げ、年下の俺に妙に丁寧だが絞り出すような謝罪の声を出すお姉さん。 ここまで言われて俺はようやく理解した。 京太郎「(姉として、妹の行いを謝罪してくれてるってことでいいんだよな)」 京太郎「(……すごく仲が悪いとか、確執があるのかとか勘ぐってたけど、そうでもないのか?)」 そうだとしたらそれはそれで大変喜ばしいことなのだが、そもそも謝る原因が大きな誤解だというのが大問題である。とんだ謝り損だ。 どう訂正したものかと頭を悩ませているとお姉さんはとんでもない右ストレートを繰り出していた。 照「その、私にできることは何でもします。だから……」 ん? 何でもする。 何でもすると言いましたよこのお姉さん。 恐らくはお姉さんとしては、現在の問題を解決するために何でもするっていう意味だろうけど、言っちゃったよ。 性に目覚め、色を知り、一番肉に飢えているこの年代の男の子に何でもすると仰いましたよ。 食事のシーンに定評がある某漫画でも言ってたよね、『強くなりたければ喰らえ』って。 つまり、わかるな? 和が知ったら斬刑に処された後、諏訪大社に必勝祈願の贄として捧げられそうなことを考えること10秒。 俺は脳内に繰り広げられたR-18劇場を若干名残惜しさを残しながら幕を下ろした。 京太郎「頭を上げてください。その、誤解なんですよ!」 照「……えっ?」 頭を下げ続けていたお姉さんはようやく頭を上げてキョトーンとした顔で俺を見てくる。 俺自身、この状況を誰かに面と向かって釈明するのは初めてなので若干混乱していたが、これまでのあらましを話した。 あくまで誤解であり、別に俺自身は虐げられてはいないということ。 せいぜいほかの学校でも下っ端がやるようなことをやっているにすぎないこと。 まぁ、多少からかわれることはあるけど苛められているとか、そういうことはないこと。 ほかのメンバーも別に北○の拳の登場人物やヤクザみたいなそれではなく、いたって普通の女の子であること。 むしろ彼女たちのおかげで俺は楽しく過ごせていること。 たっぷり20分ほどかけて、俺自身なんて説明するべきか若干悩みながらも説いていった。 照「……なるほど、言われてみれば確かにおかしい」 京太郎「よかったです、わかってもらえて」 照「咲が悪魔合体をして人修羅になったとか、冷静に考えればありえない」 京太郎「長野はボルテクス界ではありませんし、アマラ経絡とも繋がっていません」 照「須賀君もオリジナルはもう死んでいて実は3人目だっていう噂もありえない」 京太郎「生憎と人造人間のパイロットでもなければ電光機関の使い手でもないです」 どっかで聞いた設定だが、大方騒ぎに便乗した愉快犯が書き込んだのだろう。 現在流れている噂の9割方がそうだけれども。 と言うより、何故明らかにおかしい噂を信じちゃったのだろうか。 照「でも、よかった」 京太郎「えっ?」 照「さっきの須賀君の話を聞いて思ったけど……咲、みんなで仲良く、楽しくやってるんだ」 京太郎「はい、それは保証します」 中学時代は殻にこもりがちだったアイツが最近は社交的になった。 笑った顔を見る機会だって増えた。 そう考えると麻雀部に誘った俺としても誇らしいものがあり、胸を張ってそう答えられた。 照「須賀君のおかげかな?」 京太郎「俺だけじゃないですよ。ほかのメンバーや、他校のライバルたちのおかげですよ」 照「それでも、ね。ありがとう、須賀君」ニコッ 京太郎「(うぉ……)」 あまり感情の起伏が大きくない人なのか、ほんの口元が笑ったぐらいだったけど、今日初めて見たその笑顔にちょっと落ちかけた。 危なかった、服に広がるコーヒーのシミがなければ即死だった。 照「」モグモグ 京太郎「えーっと、宮永さん?」 照「照でいい」モグモグ 京太郎「じゃあ……照さん」 照「何?」モグモグ 京太郎「ほっぺたにクリームが」 照「」ゴシゴシ 誤解も解け、ひと段落したタイミングで俺たちは現在ホットケーキをつついている。 クリームとブルーベリーソースがかかったそれはなかなかに美味である。 どうやらこの喫茶店の一押しメニューらしく、照さんが奢るから食べたいと訴えたため、相伴にあずかっている。 本当はさっさと会場に向かうべきなのだろうが……。 照「それにしても、そんな噂が広まってるとなると、やりにくくない?」モグモグ 京太郎「はい。遠巻きから見られて白い目で見られるし、対局している人たちは怯えてるし……」 1、2回戦の阿鼻叫喚っぷりを思い出すと思わずため息が出る。 出場メンバーでもない俺ですらこんな始末だから、女性陣の心労はいかほどか。 京太郎「最初は放っておけば沈静化すると思ってたんですけど、なかなか……。少なくともこの大会中は消えそうにないですね」 照「うーん」モグモグ 京太郎「弁解しようにもネットに否定意見書いたところでほかの多数意見に流されて終わりですし、 かと言って参加者全員に一人一人釈明するのは無理ですし」 照「なるほど」モグモグ 京太郎「いろいろ部内でも考えたんですけど正直お手上げ状態で」 照「」モグモグ 京太郎「それで……」 照「」モグモグ 京太郎「……」 照「」モグモグ 京太郎「……美味しいですか?」 照「うん」モグモグ 聞いているのかホットケーキに夢中なのかよくわからない照さんは一応返事を返してくれる。 白糸台のレギュラーというのはマイペースな人間しかなれないという決まりがあるのだろうか。 照「わかった」 俺が雀力と性格の因果関係について考えていると、ホットケーキを食べ終えて表情は変わらないけど 心なしか満足そうな照さんが口を開いた。 照「正直、私もどうすればいいかわからない。だから私も帰って皆に相談してみる」 京太郎「皆って……」 照「うちのメンバー。ちょうどこの後Bブロックの観戦とミーティングだし」 京太郎「おぉ……」 天下の白糸台のメンバーが解決案を考えてくれるというのか。なんと豪華な。 レギュラーの中の約1名は全くアテにならないが気になるけど、まぁ、それはそれだ。 京太郎「でも、いいんですか? こんな面倒なこと」 照「うちは準決勝終わったから少し時間がある。それに……」 京太郎「それに?」 照さんは少し思い悩むような表情を見せる。 俺は残り1切れになった最後のホットケーキを口に含んでコーヒーで流し込みながら、返答を待った。 照「私は、咲のお姉ちゃんだから。それじゃ理由にならない?」 京太郎「……いえ」 その一言が聞けただけで、少し胸のつかえが取れた気がした。 ここ最近微妙な話ばかり聞いていたので余計にうれしく感じる。 照「ただ、このことは咲には黙っておいて」 京太郎「それはいいですけど……。ただ、その、ちょっとお願いが」 照「?」 京太郎「二人の間に何があったかはわからないですけど……よかったら咲が東京にいる間に、会ってやってくれませんか?」 照「……」 京太郎「咲、口には出しませんけど寂しがってます」 照「……うん」 京太郎「大きなお世話ってのはわかってます。何様だっていうのもわかっています。だけど……お願いします」 照「……わかった」 頭を下げた俺に照さんが返事をしてくれるまでに少し間があったが、肯定の返事が聞けたことにほっと胸を撫で下ろした。 大きなお世話だったかもしれないし、これが火種でまた争うことになってしまうかもしれない。 だけど知らんぷりを決め込むよりはずっとずっとマシなはずだ。 渡りに船とばかりに勢いで言ってしまったが、後悔はない。 照「じゃあ、また私から連絡するから、番号だけ」 そう言って照さんは携帯を取り出す。 妹はいまだに持っていない携帯だが、さすがに都会人は格が違った。 それにしもて、全国に行ったら女の子の知り合い増えるかなーと若干妄想じみた期待をしていたが、まさか叶うとは思わなかった。 色っぽい何かではないけれども、まぁ、それはそれだ。 照「じゃあ、行こうか。そろそろ時間でしょ?」 京太郎「あ、そうですね。そろそろいかないと不味いです」 時間を確認すると大会開始までにもうあまり時間がなかった。 さすがにこれ以上遅れると部長に叱られてしまう。 照「ここは私が」 京太郎「悪いですよ、そんなの」 いくら友人のお姉さんとは言え、会ったばかりの人に奢られるのもどうなのだろう。 そう思い、伝票を持って立ち上がった照さんを慌てて追いかける。 すると照さんは振り返って若干ふんぞり返る感じで口を開いた。 照「いいから、先輩に任せて」フンス ちょっとドヤ顔というか偉そうな顔というか、その表情が俺に対して偉ぶるときの咲に本当にそっくりで思わず軽く笑ってしまう。 しかたない、ここはおとなしく奢られておこう。 恐らく妹と一緒で、ここでさらに抵抗するとヘソを曲げてしまうだろう。 そう結論付けて俺は照さんにご馳走様です、とだけ伝えた。 そう言うと照さんは満足そうに伝票をレジのお姉さんに差し出した。 店員「お会計2400円です」 照「」ポケットゴソゴソ 照「」カバンゴソゴソ 照「」ポケットパンパン 照「」カバンバサバサ 照「」 照「財布忘れた」 京太郎「……」 照「……」 京太郎「……払っときます」 照「……ごめんね」 京太郎「いいですよ、(妹さんで)慣れてますし」 あの妹にしてこの姉有。 1時間にも満たない逢瀬だったのに、俺内カテゴリにおける照さんのランクが『年上の綺麗な女性』からグーンと下がり 『ポンコツ』(現在のところ咲のみ該当)に落ちて行ったのが悲しい。 現実の非情さと財布へのダメージに俺は涙を禁じ得なかった。 (白糸台控室) 照「遅れてごめん」ガチャ 菫「遅いぞ、照……ん?」 淡「テルー、なんで冬服着てるの? 暑くない?」 照「暑い。けど、コーヒーこぼして制服の替えがなくなったから……」ダラダラ 菫「……昨日カレーこぼしたばっかりだろ」 尭深「一昨日はチョココロネのチョコレートこぼしてましたね」 誠子「つまり全部クリーニングに出したから着替えがなくなったってわけですか」 照「そういうこと」 尭深「(この人は社会に出てちゃんとやっていけるんでしょうか……)」 淡「そう言えば、清澄の須賀、だっけ? 会ってきたんでしょ? どうだった?」 菫「お、おい。聞いてないぞ。昨日の今日で会ってきたのか!?」 尭深「だ、大丈夫でしたか?」 照「うん、何も問題なかった。と言うか……」 (説明中) 誠子「つまり」 淡「すべて誤解だったってこと?」 照「そう」 誠子「現実的に考えておかしい噂もありましたけど、もろもろひっくるめて全て嘘っぱちだったってことですか」 照「そうらしい。ひどい扱いの目撃証言もあくまで仲間同士でのじゃれあいレベルで 須賀君も別に怒ってるとかそういう認識はなかった」 菫「そうだったのか……」 尭深「まぁ、冷静に考えれば現実的にありえない話が多かったですし……」 菫「(ん、と言うことは……)」 ――前話より―― 菫『わかってる。別に後悔をしているわけではない。……だけど、踏みつけるのではなく、それを背負っていくことはできるはずだ』 菫『……さっきの発言を撤回する。ちょっと踏み込んだことを言うぞ?」 菫『妹なんだろう?』 菫『姉として、家族として、できることがあるんじゃないか? 止めてやることも、できるんじゃないか』 ――回想終わり―― 菫「(あああああああああああああああああ!)」 菫「(は、恥ずかしいいいいいいいいいいいいいいい!)」 菫「(『妹なんだろう(キリッ』だってああああああああああああああああああああああ!)」 菫「(誰か私を殺せえええええええええええええええ!)」 誠子「先輩は何をもがいてるんだ?」 尭深「さぁ……?」 (5分後) 菫「で、だ。私たちに知恵を出してほしいと?」 照「うん」 誠子「でも、解決案って言われても……」 菫「部として付き合いのある、知り合いの記者に取り上げてもらうか? いや、面白おかしく扱われるのがオチか」 尭深「そう言う意味だと、下世話な雑誌とかにこの騒ぎが取り上げられると取り返しがつかないかも……」 菫「決勝で戦うかもしれない相手だ。できればそういうことは避けたいな」 誠子「やっぱり、一度広まった噂を鎮めるっていうのはなかなか……」 一同「うーん」 淡「へー、阿智賀の監督にプロ復帰の噂ねー。というか元プロだったんだ」パソコンカチカチ 誠子「皆で悩んでるってのに何やってんだ。ほれほれ」ムニムニ 淡「へいじぶぁんみるあいふぁにみへはだへだっへばー(掲示板見る合間に見てただけだってばー)」 照「何を見てたの?」 淡「麻雀関連のニュースに特化したサイト。飛ばしも多いけどなかなか面白いよ」 照「どれどれ……『小鍛冶健夜プロ、熱愛発覚』」カチカチ 尭深「ガセネタですね」 菫「即答はやめてさしあげろ」 照「『咲-saki-第12巻、本日2013年12月25日発売』」カチカチ 淡「皆買おうね!」 尭深「安易なメタネタはちょっと……」 照「『牌のお姉さん。WEBにて麻雀教室の生放送配信決定。新衣装お披露目に期待大』」カチカチ 誠子「荒れそうだなぁ……いろんな意味で」 菫「しかし、淡の言うとおり玉石混合だな。流石ネットと言ったところか」 尭深「あっ」ピコーン 淡「どうしたの? どっかのゲームみたいに頭の上にひらめきの電球マーク出してるけど」 誠子「抜刀ツバメ返し、最後までひらめけなかったなぁ……」トオイメ 菫「なんだその例え……。で、どうした?」 尭深「もしかしたら……この方法ならいけるかもしれません」 照「?」 尭深「かくかくしかじか」 (説明中) 菫「……おい、流石に不味いだろ」 淡「えー面白そうじゃん! 本人に断りを入れれば問題ないでしょ。そう、あれ、毒を持って毒を制す的な」 照「確かに、効果はありそうかも。部員全員を当たれば必要なものは揃えられそう」 誠子「元手もかからないし、まぁ、こっちの負担は少ないか」 菫「本当に上手くいくのか? 私は本人に会ったことないから何とも言えないが」 淡「大丈夫、あいつは何度か会ってるけど、性格上絶対うまくいくって! ね、テルー?」 照「……うん。それは、確かに」 淡「ねー、いいでしょ? 目立つところは私とテルーでやるし」 菫「しかし……」 照「菫」 菫「ん?」 照「お願い」ジッ 菫「うっ……」 照「」ジーッ 淡「」ジーッ 尭深「」ジーッ 誠子「」ジーッ 菫「あー……」 菫「まったく」ハァ 菫「わかった。わかったから、そんな目で見るな。私がまるで悪者じゃないか」 照「よかった、ありがとう菫」 淡「よし、決まりだね! じゃあ、さっそく準備準備ー」タタタッ 誠子「(不安があるとすれば淡が遊び半分だってことか)」 尭深「(大丈夫だよ、きっと、多分、おそらく)」 菫「うーん……」