約 969,589 件
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/5757.html
289 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 13 12 09.59 ID 1pgCD7RWo [15/38] [オープニング] アカン、死んでまいそう。 ふらり、ふらり。 足元が覚束ない。 まるで熱に犯されたように体が重い。 微熱があったのは知ってた。 だけど、そんなにひどくない。 そう思う自分がいたもの事実で。 でも、実際は今倒れそうになっている自分がいるのも事実なのだ。 こんなに自分は貧弱だったかな、と問いかけてみる。 怜「あ、せやった……ウチ、病弱やった……」 ふふふ、と。 一人でツッコミを入れて薄く笑う。 本来ならここで竜華やセーラがツッコミの一つや二つ、入れてくれるもんやのに。 なんでいないんだろう。 そこまで考えて、自分が今向かおうとしている場所にいるからだ。 そう理解する。 新学期。 3年生になった、春。 千里山高校には新入生が入ってくる日。 入学式の前に部の方で勧誘の準備をする。 そう、妙に張り切ってた監督が言ってたっけ。 でも、それには間に合いそうにない。 なんだか、体がふわふわ。 ふわふわと、してきたからだ。 ぐらりと、揺れる。 倒れるくらいなら、家で休んでればよかった。 硬いアスファルトに身を叩きつける直前。 ふと、そんなことを思った。 その時だ。 手を握られ、倒れるのを遅らせられる。 その一瞬。 その一瞬に手を肩に添えて、ひょいっと。 軽々と、私を支える男の子が見えた。 京太郎「大丈夫ですか!?」 それが、ウチと京太郎との出会い。 296 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 13 28 43.39 ID 1pgCD7RWo [16/38] 京太郎「千里山……俺と同じ高校の制服……大丈夫ですか、名前言えますか?」 怜「あ、うん……ウチは園城寺怜や」 京太郎「園城寺さんですね、俺は須賀京太郎って言います……意識はハッキリしてる、呼吸も異常なし、負傷も無し……救急車は必要ですか?」 怜「そ、そこまでせぇへんでええよ!ウチ、病弱なだけやから休んでれば……」 京太郎「そうですか……じゃあ、学校の保健室に行きましょう。立てます?」 近くのバス停のベンチ。 そこにウチを支えていった後、色々と尋ねてくる。 手馴れてるな、と思う。 さっき倒れそうになったとき、体を支えるのと一緒に頭と首をカバー。 そして今は意識の確認と体の診断をしている。 まるでお医者さんみたいやな。 緊急事態に対応するために勉強していたみたいだ。 そこまで考えて、男の子。 須賀京太郎君。 千里山が共学になったのは知っていたけど、こうしてその一人と会うことになるとは思わなかった。 彼の言葉、学校の保健室に行こうというもの。 それに思った以上に素直に「うん」と。 そんな言葉が出る。 四肢に力を込めて、立ち上がろう。 ぐっと。 ……ぐっと。 怜「…………」 京太郎「……園城寺さん?」 怜「……あ、足…」 京太郎「足?」 怜「……足に力、入らへん……」プルプル 京太郎「」 アカン、須賀君絶句しとる。 がんばれ怜ちゃんフッド、命を燃やすんや。 やれば出来るって炎の妖精さんも言っとるやんか。 怜「ふっ……く……」 京太郎「………失礼しますね」 その時、須賀君が動く。 学ランの上を私に被せ、布団のようにする。 そのまま、横抱きに。 ………横抱き? 300 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 13 48 28.97 ID 1pgCD7RWo [17/38] 怜「ちょ、ちょ、何しとん自分!?」ペチッ 京太郎「あいた」 怜「こ、ここここれってお姫ひめひめ……!」 京太郎「いや、握力無いからおんぶは無理っぽいなと思ったので」 怜「いや、せやけど」 京太郎「不快かもしれませんけど、まぁ保健室に行くまで我慢してくださいなお姫様」 さっくりと、そう言って歩き出す。 ……手馴れてるなぁ、やっぱり。 なんともいえない、初めて感じる感覚。 男の人に抱っこされるのは、覚えてる限りではお父さん以外ない。 新品の学ランの匂い。 ちょっと前まで、中学生だった男の子。 そんな妙な感覚を誤魔化すように、ウチは問いかける。 怜「……須賀君、“たらし”なん?」 京太郎「これ以上なく激しい中傷を浴びた気分なんですけど」 怜「普通の子は初対面でお姫様抱っこなんかせえへんよ」 あと、お姫様発言もせんな。 そう言うと頭を抱える……は出来へんな。 非常にバツが悪い。 そんな顔を須賀君はする。 それにくすりと。 小さく笑う。 一個お返しや。 そう思って、「あっ」と呟く。 そうだ、竜華たちに連絡入れとかな。 『今、保健室におる』。 目の前に見えた校舎を見ながら、ウチはそんなメールを送る。 保健室は開いていたけど、先生がいない。 何か用事かな、と思いつつ。 ウチは椅子に座り、肩に学ランをポンチョみたいにかけて。 ごそごそと、体温計を取り出す須賀君を見ていた。 京太郎「じゃ、俺は職員室にでも行って保健室の先生探してきますから、ここで体温でも測って大人しくしててくださいね」 怜「すまんなぁ京太郎や、ウチの体が弱いばかりに……こほっ、こほっ…」 京太郎「おかあ、そりゃあ言わねぇ約束だろ……って何でやねん」 怜「おお、ノリツッコミやな」 京太郎「はっはっは……いや、大事なさそうで何よりですよ」 306 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 14 05 07.03 ID 1pgCD7RWo [18/38] 怜「………」 京太郎「………」 怜「……あはは」 京太郎「ははは」 二人揃って、笑う。 なんか、笑ってしまうのだ。 怜「おもろいなぁ、須賀君」 京太郎「関西で暮らすことになりますからね、褒め言葉として受けときます」 ィ... 怜「そっかー」 ...キィ 京太郎「じゃ、俺はちょっと行って……何か聞こえません?」 トキィィ 怜「へ?」 トキィィィィ! 竜華「怜ぃ!!」 セーラ「トキ!!」 京太郎・怜「!?」ビクリッ 怜「……って、りゅーかとセーラ?」 その瞬間、バンッと。 ドアが叩きつけられるように開く。 反射的に、ウチと須賀君が手を握ってしまう。 それくらいのびっくり具合。 息荒い竜華と目を丸くしているセーラ。 竜華が息を整え、周りを見回す。 ウチと須賀君を見て、そして状況を確認。 すぅっと。 竜華が息を吸った。 竜華「怜が保健室に男連れ込んどるー!?」 京太郎・怜「「なんでやねん」」 アカンわ、もう疲れたで……。 [プロローグ:終了] 313 名前: ◆VB1fdkUTPA[!red_res] 投稿日:2013/02/10(日) 14 17 12.38 ID 1pgCD7RWo [19/38] 夢を見た。 ニュースを見る夢。 環状線で人身事故があった。 それだけの話。 ベッドで身を起こし、ニュースを見る照さん。 俺もぱちりと。 目を開く。 照さんが、俺が目覚めたのを見て笑う。 ゆっくりと。 ゆっくりと近づき、手の平に手を重ねて、キスをしてくる。 薄いシーツ越しに触れ合う素肌と素肌。 俺と照さんの唇と唇。 その間に伝う銀糸。 愛おしそうに。 俺の頬を撫でる照さん。 蛇が獲物を飲み込むように。 俺が埋れていく。 その感覚が、俺にはあった。 拒絶できない。 拒絶は許されない。 そう、言うように。 照さんの寵愛を、俺は受ける。 一方通行の愛を。 愛でられる人形の愛を。 縛られた心で、俺は受ける。 照さんが、笑った。 小さく。 大きく。 唇に弧を描いて。 笑う。 ニュースキャスター『……被害者は学生、遺留品から長野県在住の宮永―――』 笑う。 330 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 14 28 35.45 ID 1pgCD7RWo [20/38] 【8月14日:朝】 目が覚めた瞬間、トイレへと駆け込む。 胃液を吐き出す。 それだけの行為。 喉をひりひりと。 焼く感覚に涙が零れる。 なんだよ、あの夢。 なんなんだよ、これ!! ふざけんな、あんな夢ふざけるんじゃねぇ。 俺はあんなの望んでない。 望みたくもない。 俺は何も。 小さい、普通の幸せさえあればそれでいいのに。 何で。 何であんな夢ばかり……。 しかも、何で体験した事実みたいに。 なんで、感じるんだ……。 朝 京太郎「……」 浩子「なんや須賀、えろう顔色悪いやないか」 京太郎「船久保先輩、おはようございます……」 浩子「おはよーさん……って、ホンマに大丈夫か?」 よほど顔色が悪いのだろうか。 朝食の席に向かった俺は、先に食事をしていた船久保先輩に声をかけられる。 まぁ座れ、と席を空けられて俺は座る。 何処までも冷酷に見えて、でも何かと世話焼きの苦労性。 船久保先輩はそんな人だ。 浩子「何か食べれるか?」 京太郎「はい、なんとか……」 浩子「よっしゃ、ちょお待っとき」 そう言って、席を立つ船久保先輩。 朝のバイキング。 そこをぐるりと巡り、戻ってくる。 浩子「ほら、白かゆや。熱いからゆっくり食べ」 京太郎「ありがとうございます……」 レンゲを渡される。 白粥に、4種類くらいの漬物、それとキンピラ。 我の強い、油っけの無いメニューは無い。 それに感謝しつつ、俺は息を吹きかけ、一口。 京太郎「熱っ……」 浩子「そういうもんや、ええからゆっくり食べ」 京太郎「はい……なんか、船久保先輩妙に優しくないですか?」 浩子「おう、喧嘩売っとるんか」 京太郎「すいません!すいません!!」 浩子「はぁ……病人くらいには優しくするで」 京太郎「すいません……」 浩子「ええよ、こんくらい……ほら、ちゃっちゃと食べる。お仕事お仕事」 京太郎「了解っす」 359 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 14 49 59.83 ID 1pgCD7RWo [23/38] 【8月14日:昼】 船久保先輩に気遣われて朝を過ごした。 そんな今、俺は園城寺先輩と並んでソファーに座っている。 小さき咳の声。 あの春の出会いから四ヶ月が過ぎた。 この人が先輩だったということも、麻雀部の新エースだということも。 色々と知ってきた毎日だ。 細い背中。 その背中に皆の期待を背負っている。 その重圧は、どんなものなんだろうか。 この人の弱い体で。 どれだけの重荷を担ぐつもりなんだろうか。 ふと、そう思うことがある。 ただ、言えること。 一つだけ、言えること。 園城寺先輩は一人じゃない。 その事実だ。 清水谷部長も、セーラさんも、船久保先輩も、泉も、愛宕監督も。 そして他の部員に、俺も。 皆の思いを園城寺先輩は抱え、そして皆がその重みを支えている。 だから、この人は強いんだろう。 強くなれるんだろう。 竜華「怜、おるかー?」 怜「ここにおるでー」 竜華「お、ここに居ったかー病人コンビ」 京太郎「俺も病人扱いですか部長……」 竜華「当然や、船Qがウチに声かけてくるくらいなんやで?」 そう思っていると、部長がドアを開けてくる。 そうか、そろそろ開会式か。 俺は時計を見て、そう思う。 ゆっくりと立ち上がる園城寺先輩。 部長が片目を閉じ、「こっちは任せて」と合図する。 それに俺は頷いて、見送る。 レギュラーの。 思いを背負った、背中を。 今、全国大会が、幕を開く。 393 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 15 12 19.86 ID 1pgCD7RWo [28/38] 【8月14日:夜】 竜華「須賀君、こういう場合はどないするんやろ?」 京太郎「園城寺先輩の場合だと、基礎体力の時点で問題ありますからね……」 夜、俺は清水谷先輩と向かいあってノートを手に、話し合い。 書かれた内容。 それは合宿での園城寺先輩の身の回りに関することが記入されている。 栄養面、肉体面、精神面。 そういった情報がある、ある意味では女の子のプライベートなんて無いと言わんばかりの本。 たまに園城寺先輩が半目で見ていたのが気になるけど、まぁいいだろう。 いや、よくないんだけどね。 竜華「んー……怜の体力を考えると一荘が限界やね、やっぱり」 京太郎「セーブして戦える相手じゃありませんしね、全国区は」 大阪府大会。 そこではある程度セーブしての試合だった。 倒れるほどじゃないにせよ、それでも消耗は激しい。 ちらりと。 俺は視線を向ける。 ノートを見て真剣に考える清水谷部長。 そこでふと、俺は気づく。 部長の後ろ。 つまりは俺の真正面から。 ゆっくりこっそりと、園城寺先輩が近づいているのを。 怜「………」シッー 京太郎「リョウカイッス」 竜華「ん?須賀君なにか言うた?」 京太郎「イエナニモ」 竜華「そか?」 怜「……」(氷を取り出す) 竜華「んー……船Q呼んだ方がええかなー?」 怜「とりゃ」 竜華「ひっ……冷たぁぁぁ―――んぁ!?」 びくりと、部長が立ち上がる。 振り向けば、悪戯成功という顔をした園城寺先輩の姿。 部長が、ぽろりと出てきた氷を掴んだ。 「怜ぃぃい!」 「え、ちょ、ウチお医者さんに冷物はアカンって…」 「お返しや!」 怜「ひゃああああ!?って、冷たいわ!!」 436 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 16 25 18.89 ID 1pgCD7RWo [33/38] 【8月15日:朝】 雅枝「須藤ー、須藤おるかー?」 京太郎「監督、須賀です」 雅枝「おお、おるやん須藤!ちょ、こっち来い」 京太郎「須賀ですってば」 愛宕監督に呼び出される。 それはレギュラーじゃない俺を呼ぶ、という物珍しいことだと思う。 ぶっちゃけると、名前を本当なのかワザとなのか分からないくらいに間違えるからだ。 つか、須藤って誰だよ須藤って。 俺の苗字より一文字多いじゃねーか。 そんなことは、まぁおいて置いて。 監督が「入るでー」と軽く声をかけて部屋に入る。 あれ、ここって園城寺先輩と部長の部屋じゃ? そんな記憶の掘り返し。 それが完了する前に、ドアが開く。 中には、膝枕をする部長とされる園城寺先輩の姿。 ……うん、なんか白い花が咲いてそうだ、背景に。 雅枝「ほんなら須藤、二人は任せたで」 京太郎「はい?」 雅枝「ほな、よろしゅう」 京太郎「いや説明くらいしてください監督ぅぅぅぅ!?」 ツカツカと、足早に去っていく監督。 いやいやいや、待ってくれ。 何で女の子の部屋に置いてけぼりにされなきゃいけないんだ。 そう思っていると、ぱちり、と。 園城寺先輩が目を開く。 もぞりと、身を震わせて。 俺を見た。 怜「………なんで須賀君おるん?」 京太郎「分かりません」 まぁ、その後で今日の試合を撮りにいくから部長に細かい指示を受けることになったんだけどね。 そういうのって船久保先輩か監督の仕事なんじゃ…。 499 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 22 42 03.04 ID rJ3/o4NGo [2/9] 【8月15日:昼】 浩子「よっしゃ、準備ええな?」 京太郎「うっす!」 全国大会一回戦。 その試合を撮影するために俺は船久保先輩と会場へと向かう。 今日撮影するチーム。 そこには、以前PAで昼休憩の時に出会った阿知賀の皆さんも居る。 一回戦。 勝ち上がるのは一位通過のみ。 千里山は共学だからその心配は2回戦からになる。 となると、何所が勝つのだろうか。 俺としては、やっぱり阿知賀に買ってほしい。 そんな気持ちがあった。 そうこうしている内に会場につく。 席を探して、一角を確保。 カメラを準備する俺は準備を最低限終えると、ちらりと時計を見る。 あと20分で試合開始、というとこだろう。 俺は財布を掴み、先輩に顔を向けた。 京太郎「先輩、何か欲しいものありますか?」 浩子「買いにいくん?ほな、適当に飲み物と軽食頼むわ」 長丁場になりそうやし。 そう言って目線をタブレットに戻す先輩。 俺はオーダー通り、適当に飲み物とパンを買う。 うん、これだけあればいいだろう。 意外とこの人、食べるしなぁ。 セーラさん>船久保先輩=泉>清水谷部長>園城寺先輩。 食事量はこんなものだろう。 俺は早速パンを一つ齧る。 量は、ちょっと足りないかもしれない。 京太郎「先輩、試合終わったら情報整理と小腹満たしでお茶でもどうです?」 浩子「ええなそれ、そうしよか。店んことは任せるわ」 うーん、店か。 コーヒーお代わりできるし、ドーナッツとかいいかも知れないな。 会場近くにも店があるの知ってるし。 ……あれ、何で俺知ってるんだ?そんなこと。 523 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/10(日) 23 13 19.81 ID rJ3/o4NGo [5/9] 【8月15日:夜】 セーラ「おーおかえりー」 京太郎「セーラさん、今戻りました」 セーラ「あれ、船Qは?」 京太郎「先輩は疲れたから部屋で少し寝るみたいです」アトコレオミヤゲデス セーラ「お、ドーナツやん!おおきに!」 ホテルに戻る。 俺は小分けにされた箱の一つをセーラさんに渡し、肩を並べて歩く。 江口セーラ。 昨年の千里山のエースで、今大会でも中堅エースとして園城寺先輩との2段階での火力運用としている。 その性格は、一言で言えば豪快。 3900三回より12000一回、そういう火力ある打ち筋を好んでいる。 それでいて、性格も非常にサバサバとしている。 話している間に誰かの気分を軽くする。 そんな人だ。 そんな先輩の格好。 半ズボンに半そでTシャツ、上に学ランという姿。 格好のせいか可愛らしい男の子にも見えなくもない、そんな姿だ。 この人の欠点?と言えばいいんだろうか。 あまりに豪快すぎて、女の子らしくない、ということだ。 船久保先輩もそれでたまに雷飛ばしてるしな。 セーラ「ん?どないしたん?」 京太郎「いえ…セーラさんは元気だなぁ、と思いまして」 セーラ「そか?せやけど、暗い気分にワザワザなる必要もあらへんやろ?」 さっぱり。 そう言われると何も言えない。 そんなこの人だからこそ、こうして俺の顔に笑みは浮かぶんだろうけれど。 セーラ「なんや京太郎、なしてそない景気悪そうな顔してん?」 京太郎「あはは……いえ、セーラさんはそんままで居てください」 セーラ「ん?」 京太郎「何でもありません、お茶飲みます?」 セーラ「オレは紅茶な!」 京太郎「うっす、了解っす」 552 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 00 01 14.52 ID SjuryLolo [1/14] 【8月16日:朝】 世話係。 そう銘打たれた俺の肩書きはなんてことはない。 体の弱い園城寺先輩をサポートする皆のサポート役、ということだ。 その係を指名したのは監督だが、推薦したのはレギュラーの皆だ。 曰く、力があり、細かに気が利いて、信頼できる。 他にも女子部員が多くいる中、そうまで推薦してくれた。 その事実に何とも言えない恥ずかしさを感じつつも、俺は今日の仕事を準備する。 今日は何をしようか。 昨日の一回戦の試合のデータ処理をするために船久保先輩の所に行こうか。 ああ、そういやセーラさんの学ランのボタンが取れたって言ってたし後で直しにいかなきゃいけない。 泉は何も無い日は試合の映像を見てるし、後で昨日の分を渡しておくのもいいかも知れないな。 思えば、仕事ってのは結構あるもんだ。 そんなことを思いつつ、俺はレクリエーションルームに入る。 雀卓が一台、大型のモニターが一つと、試合映像や練習を行える他、お茶なんかも飲める場所。 俺が主に常駐するこの部屋に入って見れば、そこにはソファーに横になる園城寺先輩の姿と、先輩を膝枕する清水谷部長の姿があった。 京太郎「おはようございます、部長、先輩」 竜華「おはよう須賀君」 怜「おー、おはようさん京太郎ー」 片手をひょいっと。 上げて挨拶する園城寺先輩。 この人、早速膝枕してるよ…。 京太郎「今日は早速ですか、先輩……」 怜「ふふふ、怜ちゃんパワーを竜華に充填中やで」 京太郎「意味分かりませんから」 怜ちゃんパワーってなんだ、怜ちゃんパワーって。 しかも部長は部長で満更でもなさそうだし…。 竜華「もう、怜ったら……」 怜「ええやん、もうちょいだけ……」 京太郎「もしもーし、まだ朝ですよー?」 怜「せや、京太郎もどや?ええで、竜華の太腿は病み付きになるで…!(ゲス顔)」 アンタおっさんかなんかか。 670 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 20 09 08.75 ID JVGYGWJ7o [3/44] 【8月16日:昼】 接触対象指定↓3 気配が薄い。 元々の呼吸も浅く、体温も低く、線も細い。 生きている人間が出す気配。 それが薄い園城寺先輩の接近には気づかないことが多い。 俺は誰もいないはずのレクリエーションルームで一人、ソファーに寝転がっていた。 このソファー、元々はベッドになるようなもので、非常に大きい。 また、ふっくらとしていて体を包む柔らかさがある。 きっちりと座るにはきついが、だらけるのには向いている。 そんなソファだ。 俺は午前中の仕事、主に船久保さんやセーラさんの一件を終え、昼食を済ませる。 そうして出来た休憩時間に、まどろんでいる。 テーブルの上には新聞。 さっきまで時間つぶしに読んでたのだが、文字を読むとどうにも眠気が来る。 気づけば、寝ていた。 それが今だ。 左手に着けられた腕時計を見よう。 そう思って、腕に力を込めると感じる重み。 なんだ?と、視線を腕に向ける。 見えたのは、俺の腕を枕に眠る園城寺先輩の姿。 フリーズ。 ………え?どういうことなの? 怜「ん……」ゴソリ 京太郎「ちょ!?」 寝返りを打ち、すっぽりと。 俺の懐に丸まる先輩。 ウチのカピバラが俺の布団に潜り込むような感じだな。 思わずそうのほほんとしたが、直ぐに再起動する。 いや待て、待ってほしい。 何で園城寺先輩が俺の腕枕で寝てるんだ!? 教えてくれ怜ちゃん、俺は今どうすればいい。 俺は何故か、SD化してふよふよと浮いている怜ちゃんを幻視して問いかける。 怜ちゃんが、にっこりと笑う。 俺もにこりと、引きつって笑う。 答えは一つらしい。 怜ちゃん『これは責任やね』ニッコリ 京太郎「言われなき罪をつけないでください!!」 【8月16日:夜】 一年生。 千里山という名門高でレギュラーを掴む。 それは並大抵のことじゃあない。 それを一年生で成し遂げた数少ない人物。 それが泉という女の子だった。 性格は一言で言えば、不敵。 誰にも負けない、劣っていない。 それを自負して、糧にする。 対抗心と向上心の塊みたいな奴が、二条泉という女の子だ。 ただ、あまりに上手く行き過ぎると舐めてかかり、手痛い反撃を受けてリズムを崩される。 そんな面があるんだけれども。 まぁ、言うならば小生意気。 真面目だけど、小生意気が正しい評価かも知れない。 泉「あーうー……」 京太郎「その…あれだ……お疲れ?」 泉「そないな慰めせんといてぇ……」 俺は雀卓に撃沈する泉にどう声をかけるか考える。 14時くらいから始まった部内での練習試合。 それは泉が大きくマイナスをつけられた結果になった。 まぁ、セーラさんに妙に調子よかった園城寺先輩、そして部長。 我が部のトップ3と真正面からやりあえば読めた結果な気もするけど。 さめざめと、涙を流す泉。 俺はそれに苦笑しつつ、茶を淹れる。 こういう時はあれだ、気分を落ち着かせるのも一番なんじゃないか。 置かれたカップに気づいた泉が顔を上げて、俺を見る。 その顔は……複雑? うん、そんな色がある。 泉「そない優しくせんとってぇ……」 京太郎(駄目だこら) 優しくしないでいいんだったらデコピンしてやろうか。 思わず、そんなことを考えた俺は悪くないだろう。 だってめんどくさいんだもん。 733 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 21 03 41.31 ID JVGYGWJ7o [12/44] 【8月17日:朝】 泉「はぁー……なんやごっつい人おんなぁ……」 京太郎「まぁ、白糸台高校の初試合だからなぁ」 2回戦初日。 俺は泉と共に大会会場へと来ていた。 目的はただ一つ。 白糸台高校の試合を見る。 それに尽きる。 準決勝。 そこで千里山は白糸台とぶち当たることになる。 少なくとも、千里山も白糸台もそこまで勝ち残る前提だ。 負けることを考えて試合に出る選手はいない、ということだ。 見回せば、やはり人は多い。 誰もが白糸台の力を見に来ている、そういう顔だ。 まぁ、俺たちもそうなのだけれど。 しかし、だ。 取材陣は妙に騒がしい気がする。 耳を澄ませば、「宮永照選手がいないぞ」やら「何所に行ったんだ…?」やら。 そんな声が聞こえる。 泉「チャンピオンおらんって、言うてる?」 京太郎「何かあったんか?」 うーむ。 俺と泉は顔を見合わせ、首を捻る。 その時だ。 声がかかる。 何所か鋭い、そんな声が俺に。 菫「すまない、ちょっと聞きたいんだが……」 京太郎「え、へ?俺ですか?」 菫「他に誰がいるんだ?」 泉(あれ、ウチもおるよね?) 菫「聞きたいことがある、宮永照を見なかったか?」 京太郎「いえ、知りませんけど……」 照さんって、あの照さんだよな? 俺は首を捻る。 ふと泉にも聞こうと顔を向ければ、そこにあるのは少し気圧された。 そんな表情の泉がいる。 ……ああ、この人は何所かで見たと思えば、白糸台の次峰の弘世さんか。 772 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 21 33 25.93 ID JVGYGWJ7o [16/44] 菫「チッ、アイツめ……いや済まない、ありがとう」 小さく舌打ち。 苛立ちというよりは焦りに対してのものだろうか。 こうして知らず知らずの人である俺に聞く。 それくらい焦ってるんだろうか。 京太郎「照さんは、甘い物好きですから近くのそういう店を探せばいるかも知れませんよ」 菫「何?おい君、今何を―――」 京太郎「それじゃ、ほれ泉いくぞー」 泉「えちょ、ま、待ってぇな!」 俺は泉の手を引いて、そそくさと離れる。 試合まであと20分。 ……不戦勝だけは、やめてほしいなぁなんか。 菫「あの男……ん?淡から電話か……もしもし?」 淡『あ、すみれー?テルー見つけたよー!』 菫「何、何所にだ?あと変わってくれるか」 淡『ドーナツ屋さんー。テルー、電話だよー』 照『あと一個だk』 菫「よし待ってろ、今そっちに行って引きずってきてやる」 774 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 21 36 50.36 ID JVGYGWJ7o [17/44] 【8月17日:昼】 試合が終わる。 いや、正確には強制的に終わった、だ。 先鋒宮永照。 その大立ち回りによって削られ、弘世選手によって集中的に抉られ。 そうして中堅では役満が炸裂。 何をどうすればここまで火力を運用できるのか。 そう思ってしまうほどに凄まじい、白糸台における蹂躙だった。 最後の大将戦なんか、悲惨だ。 配牌に嫌われたように他高校は攻撃の基点を失い、その中でも相応に動いた新道寺を除いた2校は敗退した。 あれがチャンピオン。 あれが白糸台。 まさにそれを証明する。 そんな結果だ。 泉は船久保先輩と合流してトンボ返り。 きっと、今日は明日に備えて特訓だろう。 そう思いつつ、俺は一番遅くに会場を出る。 日差しはまだ強い。 園城寺先輩なら倒れてしまいそうだな。 そう思いつつ、俺は横目を引かれる。 そこには、うなされるように倒れてる園城寺先輩の―――。 怜「今、いくで…」 京太郎「いっちゃ駄目ー!?」 アカン。 この人、毎回こういう登場の仕方してないか!? 俺が駆け寄る。 脈拍とか、その他もろもろの確認。 ………あれ? 京太郎「……先輩?」 怜「んー?」 京太郎「貴女、普通に平気ですよね?」 怜「そんなことあらへんよ、眩暈が止まらんねん」 京太郎「目線逸らさないでください」 怜「~♪」 京太郎「吹けない口笛もいいですから」 この人はまったく。 808 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 22 02 04.91 ID JVGYGWJ7o [21/44] 怜「……いや、あんな?」 京太郎「どうせ、俺の姿が見えたからどっきりでも仕掛けよう、ですか?」 怜「よう知っとるやん」 京太郎「はぁ……」 くすくす。 そう笑う先輩に俺はため息をつく。 なんか、気を抜かれる。 そんな気分だ。 怜「よっと……」 小さく掛け声をかけ、体を起こす先輩。 その足取りはしっかりしている。 健康状態に異常はない。 その見解は正しいようだ。 ふふん、と。 妙に澄まし顔をする先輩を見下ろす。 ……はぁ。 怜「ほな帰ろか、京太郎」 京太郎「はいはい、了解しましたよお姫様……はぁ……」 怜「―――――お姫様、な……」 812 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 22 04 43.77 ID JVGYGWJ7o [22/44] 【8月17日:夜】 泉「大丈夫…大丈夫や……」 京太郎「………」 泉「ウチは高校一年最強のつもりや……いける…いけるんや……!」 京太郎「………泉?」 泉「千里山優勝待ったなし!……せや、いけるやん―――」 京太郎「………泉ぃ!!」 泉「ひぃ!?」 びくり、と声をかけても反応しなかった泉が反応。 それに少し声を大きく、監督みたいな感じで声をかけるとびくりと震えていた。 あ、なんか涙目になってる。 そんな泉は俺を視界に納めると、ゆっくりと引いた構えを解く。 そこに出てきたのは、笑顔。 なんというか、何時もどおりの不敵な顔だ。 泉「な、なんや京太郎か……え、用事あるん?」 京太郎「そろそろ飯だから呼びに来たんだよ…」 ほれ、いくぞー。あ、ちょお待ってー。 そんな軽いやり取りをして、俺と泉は並んで歩く。 レストランはホテルの地下。 エレベーターに乗り込み、俺は地下行きのボタンを押す。 妙な空白がある。 無言の空間というか、何か話そうにも話せない……そんな空気だろう。 俺はちらりと、泉を見る。 さっきの姿は無い。 あの姿……自己暗示するような光景。 泉は明日が、最初の公式戦になる。 当然、緊張するだろうし、俺には分からないプレッシャーを感じているのかも知れない。 気づけば、ポンッ、と……俺は泉の頭に手を置いていた。 泉「え、ちょ、何!?」 京太郎「いやさ、泉……今はとりあえず、飯食って寝るのがいいと思うぜ?」 悩まなくてもいいじゃねーか。 高1最強、だろ? そんな軽い言葉に泉が小さく、俺を見上げる。 京太郎「ま、頑張れよ、泉」 俺にはこれくらいしか、できねーけどな。 844 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 22 29 12.51 ID JVGYGWJ7o [27/44] 【8月18日:朝】2回戦当日 セーラ「よっしゃー!今日勝って準決勝や!」 浩子「そないなこと言って制服忘れんでくださいよ」 セーラ「……アカン?」 泉「アカンです」 京太郎「船久保先輩、ベッドの下に隠してあったの確保しました」 浩子「ほぉーう?」 セーラ「ひ、ひぃ……」 朝。 出陣前の準備中。 そんな中で俺は悲鳴をあげるセーラさんを泉と一緒い生暖かい目で見ていた。 2回戦。 シード故にここからが試合となることもあり、気合の入れようも一層違う。 俺は涙目になって船久保先輩の魔の手(間違ってない雰囲気ではある)から逃げるセーラさんを見る。 公式戦。 そこではセーラさんも、普段の男装から制服へと着替える。 本人はあのセーラー服がどうにも恥ずかしいのか、顔を赤くしているのが愉しいのか。 通称・乙女モードなるそれは船久保先輩のタブレットPC内に多く画像が納められている。 つまり、いじられるのだ。 セーラさんは船久保先輩にしょっちゅう。 それがこの乙女モードへの苦手意識を生み出しているのかも知れない……多分。 セーラ「きょ、京太郎!た、助けて……」 京太郎「え、ちょ、ちょちょちょ!?」 セーラ先輩が俺の背中に隠れる。 いや、何かすごい違和感を感じる。 普段のセーラさんは、言うなら兄貴肌。 そういった雰囲気を持つ人だ。 それが今はあれだ、こうして縮こまって俺の背中に隠れている。 しかもちょっと涙目で、だ。 背中に感覚を感じる。 きっと、背中のシャツを掴んでいるんだろうか。 あのセーラさんが。 涙目で。 ………。 京太郎「どうぞ、船久保先輩(ゲス顔)」 浩子「おおきに、須賀(ゲス顔)」 セーラ「んなぁぁぁ!?」 915 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 22 58 49.32 ID JVGYGWJ7o [36/44] 俺はセーラさんを確保する。 そして、船久保先輩の前へ。 きっと、良い笑顔が浮かんでるだろう。 多分、船久保先輩が今浮かべたような笑顔が。 セーラさんは目を見開いて俺を見ている。 捨てられた子犬みたいな目だな、と漠然と感じる。 きっと俺は売られていく子牛を見送る目をしているだろう。 どなどなどーなー、である。 泉「……」 京太郎「……ん?泉、どうした?」 そこでふと、俺は視線を泉に。 なんというか、判断に困る。 そんな顔をしている。 あれか? セーラさん弄りに参加したかったんだろうか? 俺は目の前に手をやって、振ってみる。 反応が無い。 ……うーむ? 京太郎「……てぃ」ペシッ 泉「あんっ…!」 ぺしりと。 軽く俺はツッコミを入れる。 これくらいは普段もやってるから問題ない。 それでやっと気づいたのか、頭を抑えてキョロキョロと周りを見回す泉。 それに俺は声をかけて、ゆっくりと部屋を出ていった。 京太郎「……にしても、泉変な声出してたな……」 920 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 23 01 13.68 ID JVGYGWJ7o [37/44] 【8月18日:昼】2回戦当日 試合自体は、そう語ることは無い。 阿知賀。 PAで出会ったその高校との対戦があった。 それくらいだ。 園城寺先輩も、泉も、セーラさんも、船久保先輩も、清水谷部長も。 それぞれの仕事を全うした。 その結果が、1位通過だ。 俺は帰宅の準備を始める皆と共に準備する。 視線をチラリと。 園城寺先輩へ。 体力はだいぶ、回復したとは思うんだけど。 京太郎「園城寺先輩、大丈夫そうですか?」 怜「うん……なんとかな」 竜華「怜、頑張ったからなぁ」 怜「せやね……ちょお疲れたわ」 ぐでん、と。 部長の膝枕に体を崩す園城寺先輩。 いや、それはいい。 それはいいんだが、今は撤収の時間だ。 俺がそう言うと、不満顔の両者。 ……俺が何をしたっていうんだ。 怜「知らんよ、そんなん」 竜華「せやなー」 京太郎「理不尽ですよね!?」 ぷくーっ。 そう頬を膨らませる園城寺先輩に部長。 ああもう、この人たちはどうしてこう…。 俺が小さく頭を抱える。 そして見れば、くすくすと。 顔を見合わせて笑う二人。 ……セーラさんに続いて、俺も弄られ枠なんだな。 それを妙に実感する、瞬間だった。 953 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 23 18 56.73 ID JVGYGWJ7o [41/44] 【8月18日:夜】2回戦当日 セーラ「う、うぅ……」 ―――例え話をしよう。 もし、男まさりな女の子が居たとして。 その子が普段しないような女の子らしい格好で顔を真っ赤にして隅っこに隠れるように座っている。 そんな光景がある。 それは実にありえない光景だろう。 かくいう俺も、直面していると硬直して動けなかったくらいだ。 いや、誰だってそうだろう。 俺は悪くないぞ、これは。 ………おほん。 そして、だ。 セーラ「きょ、きょう、たろぅ……?」 俺が居ることに気づいたんだろう。 蹲った状態から顔を上げ、俺を見上げる。 そして、妙に舌足らずな声で。 俺の名前を呼ぶ。 ……うむ。 なんだろうか、こう、笑顔になるな! 妙な心の爽快感すらある気がするぞ! 悪くない、悪くないぞ。 こういうのもいいじゃないか。 普段頼りがいがある子が妙に弱々しい姿とか。 実に庇護欲を刺激する状態じゃないか? セーラさんを見る。 所謂、ふわふわ、という感じの服だろうか。 ワンピースが妙に映える気がする。 元々可愛らしい顔をしているセーラさんに良く合う格好だろう。 そして、これを仕組んだ人物は一人しかいない。 俺はこちらに近づいてくる足音に首を向ける。 現れたのは、カメラを持つ船久保先輩。 そして泉だ。 ………セーラさん、俺の後ろに隠れないでください。 24 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 23 46 41.32 ID JVGYGWJ7o [3/9] 京太郎「船久保先輩はまだしも、泉……お前もか……」 泉「ち、違っ!これは船久保先輩の命令で……!」 浩子「泉もノリ気やったやん」 泉「先輩命令やったやないですかー!?」 悲鳴を上げる泉。 まぁ、後でしっかりと泉にはお話してやろう。 俺はそう思いつつ、船久保先輩を見る。 うーん。 この人、本気で嫌がってるとそこまでしないんだけどなぁ。 そう思いつつ、俺は腕を組む。 ここから先へは通しません。 そんな意思の表れだ。 それが通じたのか、船久保先輩は妙に面白そうに部屋から出ていった。 泉「ほ、ほなウチも……」 京太郎「おっと、泉は別だ」 泉「な、何でぇ!?」 京太郎「俺が先輩を説教できないが、同学年は出来るんだよ!」 泉「ひぃ!?」 逃げようとする泉の襟首を掴む。 そこに正座し、俺は泉の前に立つ。 さぁて、とりあえずは足が痺れるまでしっかりと反省して貰おうではないか。 35 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/11(月) 23 53 54.22 ID JVGYGWJ7o [5/9] 【8月19日:朝】 なんてことは無い。 園城寺先輩が散歩に出たい。 そう言ったから、お供しますと告げただけ。 ふらふら。 そんな足取りで前を行く園城寺先輩を俺は追う。 なんというか、気づいたら倒れてそうで妙に気が気でない。 そんな気分だ。 俺は目を細め、空を見上げる。 天気はいい。 それに今日は風もある。 夏とはいえ、日陰はかなり涼しい日だ。 そうそう、本なんかを読むには一番良い日かも知れない。 そう、俺は木影の下に座って本を読む女性を片目に写して思う。 その時だ。 俺に、戸惑いが混じった声が聞こえた。 照「もしかして……京ちゃん?」 京太郎「え?」 声。 懐かしい声だ。 思わず立ち止まって、視線を向ける。 影の下。 そこに小説片手に座り込んだ人。 小さく。 本当に小さく。 照さんが笑っていた。 照「久しぶりだね、京ちゃん」 京太郎「お久しぶりです、照さん」 怜「……チャンピオンと知り合いなん、京太郎?」 京太郎「どわあああ!?何時の間にそこに!?」 怜「二人して見つめあっとる時やで」 見れば、園城寺先輩はジト目で俺を見ている。 ぱちりと。 照さんが、園城寺先輩を見た。 照「千里山の……園城寺さん?」 怜「どうもー、宮永さん。ウチの京太郎がお世話になっとるみたいやな」 134 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 00 34 03.99 ID cIlx3zjQo [5/28] キョトンと。 そんな顔をする照さん。 ああ、そういや俺が千里山高校に入学してるの知らなかったっけ。 それを今伝えると、「驚いた」と一言。 やっぱりこの人はサバサバしている。 そう思っていると、怜さんが俺の手を引く。 行こう、ということだろうか。 京太郎「じゃ、じゃあまた、照さん!」 照「うん、またね」 怜「京太郎、時間は有限やからはよ行こか」 京太郎「ちょ、ちょちょ!引っ張らないでください園城寺先輩!!」 つかつかと。 普段からは考えれない力で俺の手を引く園城寺先輩。 暫くそれが続いて、急に。 急に、先輩が止まった。 京太郎「お、園城寺先輩……?」 怜「……怜」 京太郎「へ?」 怜「怜って、呼んで」 え、いや、あの。 俺は思わず困惑する。 いきなりだな、とか。 嫌じゃないんですけど、とか。 口を開けば言葉は出る。 ただ。 園城寺先輩の顔を見ると。 それを口にすることが出来なくなっていた。 思いつめた顔。 それを、されたから。 怜「お願いや、京太郎……怜って、呼んで欲しいねん」 怜「お願いや……」 怜「お願い……」 怜「―――ウチを一人にせんとって……」 148 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 00 42 11.02 ID cIlx3zjQo [6/28] フルフルと。 寒さに身を抱くように、園城寺先輩が……怜さんが言う。 それに答える術が、俺には無い。 いや、答えれない。 そう言うべきだろうか。 ただ言えること。 それは、何所までも。 ……怜さんの体が何所までも。 弱々しく、小さく。 儚いものに見えた。 それが、俺が見た怜さんの姿だった。 京太郎「あの……怜、さん」 怜「うん」 京太郎「……なんか妙に恥ずかしいっす」 怜「そか……」 ふらり。 怜さんが体をふらつかせる。 疲れてるみたいだ。 俺は慌てて支えて、怜さんを見る。 怜さんは。 何所までも弱々しく笑う怜さんは。 今も、同じように小さく、笑っていた。 怜ちゃんレベル4だし! 157 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 00 46 49.47 ID cIlx3zjQo [7/28] 【8月19日:昼】 ……怜さんとの衝撃的な散歩から少し時間が過ぎた。 今、ベッドで眠る怜さんを見送り、俺は部屋を後にする。 疲れたらしく、帰ると怜さんは寝てしまったのだ。 それを報告するために俺は清水谷部長を探す。 多分、レクレーションルームだろうか。 探せばいるだろうと俺は脚を向け、入る。 中にはセーラさんも居るのが見えた。 セーラ「お、京太郎やん。怜は?」 京太郎「そのことで部長に報告です」 竜華「うん、どないしたん?」 京太郎「怜さん、疲れたから部屋で寝るそうです」 そう告げる。 ほー、とセーラさん。 仕方ないなぁ、と部長。 一様に違った反応を見せて、ぴしり、と。 お互いが固まった。 ぎしり、と。 俺に視線が向く。 セーラ・竜華「「怜……さん……?」」 京太郎「あ」 俺がそう呼んだ。 その事実に二人が反応する。 あ、良い顔してるよセーラさん。 昨日のあれ、まだ恨んでるんですか? それに部長。 世界が終わったみたいな顔しないでください。 何もありませんから。 セーラ「よっしゃ京太郎、ちょう座り!」 竜華「尋問やな、これは」 京太郎「勘弁してくださいよ……」 189 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 01 06 37.46 ID cIlx3zjQo [10/28] 【8月19日:夜】 セーラ「ツモ!2000・ザンキュー!」 京太郎「と、飛んだ……」 泉「京太郎……駄目駄目やないか」 竜華「せやなー。もうちょい頑張らなきゃアカンなー」 夜。 部長とセーラさんによる尋問は泉が来訪したことで終わりを告げた。 そうして今は数合わせを含めての麻雀に参加した俺はその圧倒的戦力差になす術なく殲滅されたところである。 おかしい。 そんなに悪い打ち筋じゃないと思うんだけど勝てる気がしない。 これがレギュラーの実力、という奴だろうか。 当ててもダマの安手が限界だったのも虚しい。 くそう、悔しいぞ。 なんか知らんけどすげぇ悔しいぞこれ。 泉「まー京太郎はまだ駄目駄目ですからねー」 京太郎「宣戦布告と受け取るぞ、泉」 泉「げっ!?」 ははははは!何処に行こうというのかね? 泉を捕獲し、俺はその頬を抓りながら笑う。 セーラさんも部長も笑う。 半泣きで悲痛な声を漏らす泉の声。 それがここに響いていた。 セーラ「あっはっはっはっは!あー、笑ったわ!……京太郎、そろそろやめてやり」 竜華「せやせや、泉も反省しとるやろうし」 京太郎「二人がそういうんでしたら……」 ぽいん、と。 引っ張っていた頬を勢いよく離す。 うむ、良い弾力であった。 俺は頬を押さえて俺に背中を向ける泉を見る。 ……ちと、やりすぎたか? 妙に息が荒く、頬を摩っているのが見える。 ……痛かったのか? なら、悪いことをしたなぁ……。 241 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 01 36 23.55 ID cIlx3zjQo [14/28] 【8月20日:朝】 はて、俺は何をしてるんだろうか? 今の現状を説明する言葉を捜してみる。 しかし、どれも今の状況を示すにはどうにも足りない気がする。 俺の表現的な問題ならいい。 いいんだけど、これは絶対に違うからそう言えないだろう。 泉「あ、そこ……っ」 京太郎「ここか」 泉「う、うん……ええ感じや」 ぎしり。 ベッドが軋む。 ベッドに寝転んだ泉と、ベッドに膝立ちで体重をかける自分。 その振動と共にスプリングが悲鳴を上げる。 ぎしりと。 その音と共に、泉が声を漏らした。 泉「も、もうちょっと、強…くぅ!?」 京太郎「す、すまん!痛かったか!?」 動きを止めて、俺は泉の顔を見る。 目尻に涙。 拙い。 初めてだから失敗したのかも知れない。 そう思い、これ以上はやめる。 そう口にしようとすると、泉は俺の服を掴む。 無言だ。 無言で、俺を見た。 続けてほしい。 そんな色合いで。 俺を見る。 京太郎「……いいのか?」 泉「うん、大丈夫やから……」 京太郎「ったく、どうなってもしらねーぞ?」 京太郎「マッサージとか初めてなんだからな」ギュッ 泉「ひぃん!?」 あ、すまん。 272 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 01 58 56.66 ID cIlx3zjQo [18/28] 【8月20日:昼】 寝違えて体が痛い。 そう言っていた泉をマッサージして、そのままベッドに放置した俺はレクリエーションルームに居た。 泉は動けない。 その旨を部長に伝えて、俺はお茶を用意する。 今ここにいるのはセーラさんと部長だけ。 となると、お茶はそんなに時間をかけて飲むものじゃない方がいいだろう。 セーラ「今日もええ色やな」 京太郎「まぁ、修行してますから」 俺はセーラさんの言葉にそう答える。 無意識。 無意識に俺はそういうスキルを学んでいることが多い。 お茶入れも、清掃も。 何かと万遍なくだ。 まぁ、それがここで役立っている。 そう思えば、悪いものじゃないだろう。 竜華「せやなー、昔から助かっとるしなぁ」 セーラ「確かに、京太郎の淹れるお茶は美味いからなぁ」 京太郎「褒めても何も出ませんよ」 にやりと笑うセーラさん。 にこりと笑う清水谷部長。 それに俺は小さく息を吐いて苦笑する。 全く、調子がいい人だ。 そう思いつつ、俺は冷蔵庫から紙箱を取り出す。 中身はシュークリーム。 それを皿に載せて、俺はお茶を淹れた。 全く、しょうがないなぁ。 290 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 02 18 04.94 ID cIlx3zjQo [22/28] 【8月20日:夜】 明日が三回戦。 Aブロック準決勝その日。 ふと思えば、まだ試合自体には1回しか出ていないんだよな、と。 俺は少し不思議に思っていた。 この数日。 それはとても長いと俺は感じた。 思い返せば全部が勝負。 勝ち負け、勝者と敗者を生み出し続けた毎日だった。 そう思う。 一回負ければ終わり。 明日、終わるかも知れない。 そのプレッシャーは、どんなものなんだろうか。 先輩たち。 セーラさん、清水谷部長、怜さん。 3年生の皆はこれが最後になるのだ。 怖い。 俺はそう思う。 負ければ、そこで終わってしまう。 そう思うと、怖い。 怖くて怖くて。 俺は、今ここに居るセーラさんと部長に聞いていた。 だけど、帰ってくるのは笑い声。 部長も、セーラさんも。 二人が顔を見合わせ、そして大笑いする。 にやりと、セーラさんが笑った。 不敵な笑みだと、俺は思った。 セーラ「負けたら終わり……なら、勝てばええんやろ?」 竜華「そういうことやで」 気持ちの問題。 最初から負けることを考える必要は無い。 負けてから、負けたことを考えればいい。 これは麻雀。 将棋やチェスのように、手詰まり、ということは無い。 全てが運に、己によって左右される競技だ。 諦める。 その必要は無いのだと、二人は笑っていた。 380 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 19 29 22.22 ID je3npvgDo [8/13] 【8月21日:朝】準決勝当日 ━━━━━ ━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━ 【Aブロック準決勝:先鋒戦】 ――――牌が重い。 意識が薄れていく。 こんなに、辛かったかな。 麻雀って、こんなに苦しかったのかな。 そう自分に聞いてみる。 答えてはくれない。 今は、自分の体力が敵になっているから。 自分の体すら、味方じゃなかった。 せめて足を踏ん張って、腕を張ろう。 そう心では思っても、膝が笑う。 声が聞こえた。 『もう、諦めよう』 『私は頑張った』 『無理して苦しむ必要なんか無い』 『ほら、倒れちゃえば楽になる』 ふらりと。 体が震えた。 その甘美な誘惑に誘われてしまった。 でも。 でも……。 あと、少しだけ。 もうすぐ、試合が終わるから。 照「リーチ」 リーチ、したな……? ウチのお仕事は、これでおしまい、や。 ……。 ……ちょっと。 疲れた、なぁ……。 401 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 19 37 21.69 ID je3npvgDo [12/13] 怜「おつかれ、さん………」 短く挨拶をして、立ち上がろうと力を入れる。 ただ、自分は想像を超えて消耗しているらしい。 ぐらりと。 椅子という支えを失った体が崩れる。 スローになる視界。 驚きに目を小さく見開いた宮永照に、新道寺と松実さんが咄嗟に手を伸ばすのが見えた。 間に合わない。 きっと、会場の床は冷たいやろうなぁ。 そんな考えが浮かぶ。 だけどそれは、叶わない。 手を握られた。 二人にだ。 視線を向けなくても、分かる。 あの手を知っている。 その温もりを知っている。 竜華。 京太郎。 二人が必死に、声をかけているのが見えた。 声が聞こえない。 意識が沈んでいく。 でも。 こうして眠ってしまうのは。 寂しくない。 京太郎が一緒だから。 ちっとも寂しくなんかない。 そう思える、意識の喪失。 ぴとりと。 震えるウチの手が、京太郎の頬を撫でていた。 406 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 19 49 38.94 ID je3npvgDo [13/13] 嫌な予感がした。 消耗するのは理解していた。 だから、俺たちは全員で駆けつけている。 怜さんの居る試合会場に。 中継の映像。 それでも見て取れるほど憔悴したその姿に。 俺は気づけば、部長と一緒に駆け出していた。 係員の制止の声。 それを振り払い、ドアを開く。 歓声が聞こえ、アナウンスは終了を知らせる。 入り口のドアを開いた。 視線は、椅子に座る怜さんに固定される。 だけど、分かる。 椅子に座っているだけで、肩で息をしていた。 立ち上がり、軸がぶれる。 拙いと。 俺はそう考える前に駆け出していた。 倒れる怜さんの背に手を入れ、崩れ落ちるのを防ぐ。 乱入してきたに近い俺に他高校の生徒がざわめき、驚きを露にするが、それでもって今の事態を把握した人間も多かった。 選手が、倒れた。 その事実と同時に、実況席は実況から観客などに対する説明を開始する。 同時に、スタッフも動く。 救急車の手配や、一時試合中断など。 全国大会がこの一瞬で全て、冷たいものへと変化していた。 京太郎「怜さん!返事できますか!怜さん!!」 竜華「怜!いやや、目ぇ開けて怜ぃ!!」 怜「あ、はは……心配しすぎや、二人、とも……」 泉「担架きました!!」 京太郎「分かった!!」 俺は園城寺先輩を抱き上げ、通路へと向かう。 見れば、救急隊がこちらに駆け寄ってくるのが見えた。 担架に乗せ、即座に運搬開始。 そのまま会場裏口へと運ばれる怜さんを俺は最後まで見送っていた。 407 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 20 04 40.14 ID Ca8CHG5So [1/33] 京太郎「監督には連絡しておきました!……部長、怜さんをお願いします」 竜華「う、うん!そっち、任せるわ…!」 救急車に同乗し、去っていく部長。 近くの病院へと入るのだろう。 場に残った俺は船久保先輩と顔を合わせる。 船久保先輩は、いかにも苛立っている。 そういう顔で、舌打ちを一つ鳴らしていた。 浩子「……チャンピオン、あそこまで圧倒的なんは想定外やった」 ドラ集めに怜さんの未来視。 その火力の基点、流れを抑えられてなお圧倒。 それに想定外だと、船久保先輩は言う。 俺も、あそこまでとは思ってもいなかった。 あの人は、あそこまで強かったのか。 あそこまで、高みに居るのか。 恨む理由はない。 誰もが全力で戦った結果だ。 ただ一つ、言えることがあるとすれば。 まだ試合は始まったばかり。 そんなことは、後で考えれば、それでいいのだ。 浩子「……さて、と」 京太郎「戻りますか?」 浩子「誰もおらんのに、ここに居てもしゃあないやろ……せや、お昼の出前表貰ってから帰るわー」 ほなな、と。 手をひらひら振って去っていく船久保先輩。 それに俺は頭を一つ下げると、足を部屋の方角に向ける。 そういえば、泉はどうしたんだろうか。 怜さんに言われた後、セーラ先輩が付き添って先に試合会場の方に向かったはずだ。 そう思っていると、視線の先。 そこにぽつんと。 壁に背を預け、顔に手をやっている泉の姿が見えた。 408 名前: ◆VB1fdkUTPA[saga] 投稿日:2013/02/12(火) 20 20 57.70 ID Ca8CHG5So [2/33] 京太郎「泉…?」 泉「あ、京太郎……」 京太郎「……どうしたんだよ、そんな顔して」 軽く挨拶。 それをして相対した泉の目尻には涙があった。 見れば、震えている。 そう分かるくらいに、泉は怯えていた。 俺には分からない、泉の恐怖。 ―――彼女……二条泉にある思いは複雑だった。 己が負けるのは、良い。 いや、良いという訳じゃない。 元より自己の尊重など深く考えていない。 自分の負けで、どれだけさげずまれようと……それは自分だけの責任でいい。 だが、それでも。 この全国、団体、チーム。 それにおいて、そこにあるのは、自分だけの責任じゃない。 自分が負ければ、仲間が苦しむのだ。 その事実、その重圧が、泉を震わせていた――――。 京太郎「泉……?」 俺が声色を変え、泉に問いかける。 びくりと震え、泉がそのまま、笑みを浮かべた。 まるで強がるような、そんな笑み。 泉「きょ、京太郎……ウチ、負けんで」 京太郎「……あぁ」 泉「……せや、勝負するで。ウチは勝つ、勝ったら京太郎に命令させて貰おかな」 京太郎「おう、上等だ。負けたら罰ゲームだぜ」 泉が小さく、笑う。 俺も笑う。 片手を泉が上げ、俺も上げる。 力強い、ハイタッチ。 お互いが、交差した。 京太郎「勝ってこい、泉」 泉「当然や…!」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/924.html
京太郎「は?」 菫「二度も言わせるな、恋のキューピットだ、通りすがりのな」 京太郎「き、キューピットって羽が生えてて弓矢を持ってるあの……」 菫「そうだ」 京太郎「……でも貴方は羽も生えてないし弓矢も持ってな――――」 菫「馬鹿者、普段は閉まっているだけだ」 バサァッ 京太郎「うおっ!?」 菫「……」バサッバサッバサッ 京太郎「は、羽が生えた……」 菫「どうだ?」 京太郎「どうと言われても……」 菫「これで証明できただろう」 京太郎「貴方が……その、《恋のキューピット》だということを?」 菫「そうだ」 京太郎「……それで、なんで貴方が俺のところに?」 菫「……お前はバカか?」 京太郎「えっ?」 菫「恋のキューピットの仕事と言えば一つしかないだろう」 京太郎「……あー」 菫「お前の恋を叶えに来た」ドヤァ 京太郎「……」 菫「この私が来たからには、速攻で!」 菫「――――君の思い人のハートをシャープシュートしてみせよう」 京太郎「お、思い人と言われても……」 菫「?」 京太郎「そんな人思いつきませんよ」 菫「……何?」 菫「待て、お前ひょっとして好きな人がいないのか?」 京太郎「え、ええ」 菫「……」ウムム 菫(……妙だな、私のレーダーでは確かにこの男から反応があったんだが) 菫「……うーむ」 京太郎「あのー」 菫「む、なんだ」 京太郎「俺、そろそろ行っていいですか?これから買い出しもあるので」 菫「待て待て待て」 菫「何度も言うが私は恋のキューピットだ、目的達成の為には私はお前のそばにいなくてはならない」 京太郎「そばにって……これから部活なんですよ?貴方をいきなり連れてったら迷惑かかるでしょう」 菫「心配するな、私は他人には見えないのだ」 京太郎(またお約束な……) 菫「とにかく、お前から恋愛オーラを感知した以上、成就するまで協力させてもらうぞ」 京太郎「はぁ……」 京太郎(まぁ、この人美人だしちょっとは役得か) 京太郎(……それにしても) 菫「ん?私の顔に何か着いてるか?」 京太郎「どっかで見たことあるような……」 菫「はぁ?」 京太郎「えーと、んーと、うむむむ…………あ!」 京太郎「思い出した!白糸台の弘世菫!」 菫「……」 京太郎「アンタ、白糸台の弘世菫だろう!?」 菫「違うな」 京太郎「はい?」 菫「白糸台の弘世菫と恋のキューピットの私は別人だ」 京太郎「そりゃどういう……」 菫「ここに降りてくる時に彼女の容姿を借りたんだ」 京太郎「降りてくる?」 菫「天界からな。ちょうどテレビ中継やってたし」 京太郎「て、天界って……」 菫「まぁそういうことだ」 菫「それより買い出しとやらに行かなくてもいいのか?」 京太郎「え?……やべっ!そうだった!早く帰らねーと部長にどやされる!」ダダダダッ! 菫「……大変そうだな、お前も」 …… 京太郎「ああー、やっと全部買い終わった……」 菫「少し持つか?」 京太郎「んにゃ、いいすよ、別に」 菫「そうか……」 京太郎「……」テクテクテクテク 菫「……」フワフワフワフワ 京太郎「……羽があるって羨ましいですね」 菫「は?」 京太郎「俺も貴方みたいに自由に空を飛びたいで―――――ん?」 菫「?どうした?急に立ち止まって」 京太郎「あれは……確か」 「…………」テクテクテクテク 京太郎「おーい、すみませーん!」 「……ん?」 京太郎「どうしたんですか?こんなところで」 「貴様は…………済まん、名が思い出せない」 京太郎「須賀ですよ、須賀京太郎。清澄の麻雀部です」 「……ああ、あの雑用の!」 京太郎「ざ、雑用って……」ガーン 菫「……おい須賀よ、彼女は誰だ?」 京太郎「ああ、彼女は――――」ボソボソ 京太郎「龍門渕高校の天江衣さんですよ」 菫「ふむ、なるほど」ボソボソ 衣「?どうかしたか?雑用」 京太郎「あ、いや別になんでもな――――って雑用って言うのはちょっと……」 衣「む、そうか。ならば…………えーと、んーと」 京太郎「……須賀です、須賀京太郎」 衣「ならきょーたろーだな」 衣「改めてよろしく、きょーたろー」 京太郎「こちらこそ……それで、どうしてここに?」 衣「ん、ああ。むしょーに咲と打ちたくなってな、来た」 京太郎「そ、そうですか……」 菫「おい須賀よ」ボソボソ 京太郎「?なんですか?」ボソボソ 菫「彼女はいくつなんだ?」ボソボソ 京太郎「えーと……俺の一つ上です」ボソボソ 菫「は?」ボソボソ 京太郎「だから、俺の一つ上です」ボソボソ 菫「……どう見てもランドセルが似合う年齢にしか見えないのだが」ボソボソ 京太郎「俺も始めて見た時そう思いましたよ……それに、ちゃんと見た目通りいい人ですから安心してください」ボソボソ 菫「わかった」ボソボソ 衣「おいきょーたろー」 京太郎「は、はい!」 衣「先刻からどうした?様子が可笑しいぞ?」 京太郎「あ、あはは、別になんでもないですよ」 衣「むむむ……」 京太郎「それより、清澄に行きたいんでしょう?案内しますよ」 衣「ああ、済まないが頼――――」 シュンッ! 「探しましたよ、衣様」 菫「!?」 衣「あ、ハギヨシ!」 京太郎「師匠!」 菫(こ、こいつ……一体どこから……!) ハギヨシ「目を離した隙に迷子になられてしまうなんて……心配しました」 衣「べ、別に衣一人でも清澄に行けたぞ!」 ハギヨシ「ふふっ、そうですね……おや京太郎君奇遇ですね。こんにちは」 京太郎「ええ、師匠。こんにちは」 ハギヨシ「その手に持たれた袋を見るに……買い出しですか?」 京太郎「ええ、その通りです」 菫「おい、須賀よ」ボソボソ 京太郎「?」ボソボソ 菫「この男は誰だ?」ボソボソ 京太郎「俺の師匠です」ボソボソ 菫「なるほど、わからん」ボソボソ 京太郎「そこの衣さんの執事なんですよ、見た目通り」ボソボソ 菫「ふむふむ、成る程成る程」ボソボソ 京太郎「炊事洗濯掃除……ありとあらゆるスキルがパーフェクトな俺の自慢の師匠です」ボソボソ 菫「把握した」ボソボソ ハギヨシ「しかしそれだけ大きな荷物を持たれて……大変でしょう?」 京太郎「あはは、もう慣れましたよ」 衣「雑用根性か、ふふ、素晴らしいな」 ハギヨシ「衣様、そんなことを言われてはなりませんよ……よろしければ私が少しお持ちしましょうか?」 京太郎「え、本当ですか?ありがとうございます」 ハギヨシ「ふふ、これも執事――――いえ、師匠の務めですから」ニコリ 京太郎「……ははっ、師匠には到底かないそうにありませんよ」 ハギヨシ「精進あるのみ、ですよ」 京太郎「押忍!熟知してます!」 菫「……」フワフワフワフワ 菫「……ん?」 ピピピピピピピピピ…… 菫(これは……恋愛反応?) 菫(今、須賀から発信されたのか……) 菫(なんだ、やっぱりいるじゃないか、好きな人) 菫「……」 菫「………………んん?」 菫(おいおいおいおい、ちょっと待てちょっと待てちょっと待て) 菫(て事は何か?須賀はもしかして――いや、もしかしなくても、だ……まさか、いや、そうに違いない) 菫(そう、須賀は……) 菫「ロリコンなのか!!!!!!!」 京太郎「?どうかしましたか?」ボソボソ 菫「い、いや、なんでもないっ気にするな」ボソボソ 京太郎「そ、そうですか…………ところで」ボソボソ 菫「?」 京太郎「天使なんですから、念話の一つや二つ出来ないんですか?」 菫「…………」 菫【……すまん、忘れてた】 京太郎【ええー……】 京太郎【こんな便利なものがあるなら最初に言ってくださいよ!】 菫【すまん、本当ど忘れしてた】 京太郎【まったくもう……】 京太郎「あ、それよりハギヨシさん達は歩きですか?」 ハギヨシ「ええ、衣様がこの町を少しみて回りたいとおっしゃられたので」 京太郎「ははっ、何もないでしょう?ここ」 衣「そんな事ないぞっ!すべての場所には様々な良さがあるっ!この町もしかりだ!」 京太郎「……そういうもんなんですかね?」 衣「そういうものだ!」 ハギヨシ「衣様のいう通り、そういうものですよ」 京太郎「へぇ……あ、見えて来ましたね。うちの高校」 菫「ほう、あれが……」 菫(……) 菫(……しかし) 菫(まさか須賀がロリコンとは……たまげたなぁ) 菫(今回が私の初任務だというのになんてことだ……なんてことだ……) 菫(これは難題になってきたぞ) 菫(私の脳内のバイブル(りぼん、マーガレット、などなど)にはそんな話書いてなかった気が……どうだったっけか) 菫(くっ!だがやるしかないか!) 菫(キューピットスミレ!狙い撃つぞ!) …… ガチャッ 京太郎「ただいま帰りましたー」 「あ、京ちゃん。おかえりーっ」 「犬!遅いじぇ!」 「あら、お帰り……少し遅かったんじゃないの?」 「そんなら少しは扱いゆるうした方がええんじゃないかのう……」 京太郎「ああ、ただいま、咲。それにみんなも」 京太郎「んで部長、言われたとおり買ってきましたよ」 京太郎「――――それと、ゲストです」 咲「ふぇ?ゲスト?」 衣「咲ーーーーっ!」 ぴょーーーんっ! 咲「え……衣ちゃん!?」 「天江さん?!」 「ど、どうしてここに……」 衣「それはもちろん打ちに来たからだぞ!ののか!」 和「ええー……」 久「ま、そういう事ね」 咲「そういう事って……」 衣「それじゃあ早速打とう!今すぐ打とう!」 まこ「咲と和と……あと一人はどうするかのう」 久「んー……なら私が」 優希「いや!私が打つじぇ!タコスパワーも充電したし!」 京太郎「え?……ってお前!あんだけあったのにもう食ったのか!」 優希「ふふん!私の胃袋は底なしだじぇ!」 京太郎「太るぞ」 優希「!!なにを~~っ!」ポカポカポカポカ 京太郎「うわっ!いてっ!叩くなって!」 優希「うるさいうるさいうるさいっ!犬なんてこうだじぇっ!」ポカポカポカポカ 京太郎「ああもう叩くなって!……っで、でもお前やっぱたくさん食った方がいいな!」 優希「んむ?」 京太郎「いっぱい食って成長しなくちゃなんねーし!」 優希「……おのれ犬!ゆ゛る゛さ゛ん゛!!!!!お前は今すべてのまな板族を敵にまわしたのだぁっ!!!」 京太郎「……身長の話だこらーーーー!!!」ぐわっ! 優希「えっ!?あっ!こら!そんな乱暴に頭くしゃくしゃするなーーーー!」 京太郎「うるせー!お前が勘違いしたのがいけないんだろーー!」くしゃくしゃくしゃ 優希「う、うひぇひぇひぇひぇ!やめろーくすぐったいじぇ!!」 まこ「……相変わらずお前らは騒がしいのぅ」 久「まぁ少しは騒がしい方がウチらしいわ ね。あなたもそう思うでしょ?和」 和「そう言われても、よくわかりませんよ」 咲「…………いいなぁ」ボソッ 衣「むむむむ!早く打つぞっ!」 咲「えっ、あっ、うん!」 和「あの二人はほっといても問題ないでしょう」 咲「え、えーっと、あと一人はどうするの?」 衣「ふむ……」 久「ふふっ、もちろん私よ!腕がなるわねー!」 まこ「まぁ待ちんさい、ぬしぁワシらの大将じゃけんのう、ここはワシにまかせんしゃい」 久「あら、私は中堅よ?」 まこ「部長っていうことじゃ!……二人はあんなんやから」 京太郎・優希「」ワーワーギャーギャー まこ「ここは我が部の名参謀たるこのワシが……」 衣「……よしっ!決めたぞっ!」 まこ・久「「!!」」 衣「きょーたろー!一緒に打とう!!」 「「「「えっ?」」」」 京太郎「だいいちおまえはいっつもそうやってーーーー」 優希「むむ!お前は私の犬なんだじぇ!だからーーーー」 ワーワーギャーギャー 菫「……」 菫【……おい須賀よ】 京太郎「だからーーーーんあ?」 菫【ご指名だぞ】 京太郎「は?」 衣「きょーたろー!私と打とう!」 京太郎「……ええっ!?」 衣「ほらほら早く早くっ!」 久「……どうして須賀君を?」 衣「そんなこと決まっている!清澄の雑用の実力を知るためだ!」 咲「き、京ちゃん!頑張ってね!」 和「まぁトばないことを目標にしましょう」 京太郎(……プ、プレッシャー!) んで。 京太郎「ぐわああああああああああ――――ッ!!!!!!!」 優希「ス、スガダイーーーーン!!!」 京太郎「お……お……お……!」 優希「しっかりしろ!犬!傷は浅いぞ!」 京太郎「へへ……燃え尽きちまったぜ……真っ白に……よ」 優希「くっ!今救急車を!」 京太郎「おい……優希さんよ……」 優希「し、喋るな犬!もう、喋るな!」 京太郎「故郷の母さんに……伝えてくれや……」 京太郎「今まで世話ぁしてくれてありがとうってな……」 優希「い、犬……」 京太郎「それと……最後に……一服……させてくれや……」 優希「い、犬……!」 スッ(ココアシガレット) 京太郎「へ……へ……結局禁煙……失敗しちまった……な……」 京太郎「……」ガクン 優希「い、犬?……お、おい犬!目を開けるんだ!犬! 優希「い、犬…………京太郎……きょうたろおおおおおおおおおっ!!!!!!!」 久「南場まで持たなかったわねー」 まこ「まぁしゃーない」 和「自然の摂理ですね」 咲「きょ、京ちゃーん?だいじょうぶー?」 菫(なんだこれ) ウワーン!キョータロー! ハイハイサンモンシバイハソコマデニシトキナサイ ブチョウ!ノリワルイジェ! 衣「……」 衣(や、やってしまった……!) 衣(また……また衣は人を壊して……!) 衣(う……うう……ううう……!) 京太郎「だああああああらっしゃあ!!!!」 がばあっ! 衣「!!」 京太郎「……ふぅ」 京太郎「……いやー!コテンパンにやられちゃいましたよ!」 衣「へっ?」 京太郎「衣さん、本当に強いんですね!」 衣「え?え?えっ?」 京太郎「飛ばないように飛ばないようにと頑張ってはみたんですけどねー」 咲「結局とんじゃったね」 京太郎「う、うるへー、わかってらっ」 衣「お、お前」 京太郎「ん?」 衣「きょーたろーは私と打って、壊れたりしないのか?」 京太郎「へ?」 衣「こ、衣と打っててもう麻雀なんて打ちたくなくなったりはしないのかっ!?」 京太郎「……」 京太郎「……俺の雑用と咲達のしごきを受けまくったこの心なら、平気のへーですよ」 まこ「負け犬根性丸出しじゃのう」 久「まったくね」 優希「右に同じだじぇ」 京太郎「ぐ……!」 衣「で、でも……」 京太郎「そうっ!」 衣「」ビクッ! 京太郎「咲のリンシャン責任払い!優希の東場爆発!部長の悪待ち!和の完璧デジタル引っ掛け!まこ先輩のチンイツを食らったこの俺なら!」 京太郎「このぐらい……!」 京太郎「屁の突っ張りも効かんですよ!!!」 和「トびましたけどね」 京太郎「ぐうっ!」グサッ 咲「自慢にならないねー」 京太郎「ぐうううっ!」グササッ! 京太郎「お、お前らなぁっ!」 衣「…………」シュン 京太郎「…………」 京太郎「……ですから」ポンッ 衣「!!」 京太郎「今度ここに遊びに来た時も、また打ちましょうね?」ナデナデナデ 衣「…………うんっ!!」にぱっ 久「微笑ましいわねぇ」ボソボソ まこ「まったくじゃ」ボソボソ 優希(……ううー) 和(咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん咲さん) 咲「…………」ムッ 菫「っ!!」ビビクンッ! 菫「……」 ビビビビビビビビビビ……! 菫(強い恋愛反応が……今彼女から!) 菫「……」 菫「……」そ~っ 咲「…………」 咲「……羨ましいなぁ、衣ちゃん……」ボソッ 菫「……」 菫(……ははあ、成る程な) 咲「私も頭、撫でてもらいたいなぁ……」ボソボソッ 菫(彼女はおそらく、須賀のことを――――――んん?) 菫(よく調べてみればこの部室、恋愛反応が数個ある) 菫(須賀から一つ) 菫(この少女から一つ) 菫(あの元気な天真爛漫娘からひとつ) 菫(ピンク女から―今まで気づかなかったのが不思議なくらいに―馬鹿でかい反応がひとつ) 菫(……めちゃくちゃ濁っているが) 菫(そして) 菫(生まれたばかりの、小さい反応が、ひとつ) 菫「…………」 菫(……これは) 菫「面白くなりそうだ、な」 菫(だから……見届けさせてもらうぞ?須賀?) これにて、おしまい
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6578.html
永水編、宮守編ときたら次はきっと白糸台編……。 ちなみに今度のインタビューのテロップでは須賀照(予定)。 今日は咲の許可を得て京ちゃん独占の日。 忘れもしない。私と京ちゃんが初めてあった日のこと……。 あれは咲と和解して、咲が彼氏を連れてくると言った日だった。 『須賀京太郎です。 その、宮永咲さんとお付き合いをさせてもらっています』 『……そう。 京太郎くん、君が咲にふさわしいかしっかり見させてもらう』 『は、はい! あとこのゴディバのチョコを挨拶代わりに……』 『京ちゃん。結婚して』 『はいィ!?』 確かに『ハイ』って言ったのを覚えている。うん、言った。 ……冗談は置いておく。うん、冗談。 彼は私たちが出来なかった咲の心の隙間を埋めてくれた。 咲と家族になることによって、咲が求めているものを埋めてくれた。 咲から離れていた私に、何か言う資格なんてなかった。 「お義姉さん?」 京ちゃんは卑怯だ。 京ちゃんは咲が声をかけて欲しい時に声をかけてくれる。 お父さんが酔って弱っている時に一緒に酔ってあげる。 こうして私が声をかけて欲しいと思ってるときにも、的確に声をかけるんだから。 「なんでもない」 「なんでもなくないです。 ほら、仏頂面やめて」 むにゅ、と私の頬をつまんで横に伸ばす。 京ちゃん、既婚者がやることじゃないよ? 妹の旦那にそんなことされたら興奮しちゃうよ。 「京ちゃん。私を呼ぶときは照でいい。 『おねえさん』は嫌。それが誕生日プレゼントでいい」 「はぁ……。それでいいならそうします。 というかお義姉……、照さんの誕生日なのに咲のやつどこに行ったんだ」 何を隠そう咲との取引で今日は京ちゃんを独占する日なのだ。 咲が京ちゃんと一緒にいると安心するのがよく分かる。 彼は人を安心させる雰囲気を持っている。麻雀しか知らなかった私にも、咲のついででもいい、こうして人の優しさを教えてくれた。 私はただ、誰かに側にいて欲しかった。 一番いて欲しいときに、父親がいなかったから、父親を求めたんだと思う。 でも今日は『お父さん役』を求めてるわけじゃない。 「照さん?」 後ろから抱きしめる。『あすなろ抱き』と言うらしい。 この格好で耳元で囁くとイチコロだって尭深が言ってた。 ……あれ、なんて囁けばいいんだっけ。 いいや、私の思いをそのまま言葉にしよう。 「京ちゃんお菓子」 「ひいぃゃぁぁぁぁ!?」 京ちゃんがすごい勢いで暴れる。くすぐったかったのかな。 確かにこれはイチコロだ。京ちゃんは耳元が弱いんだ。 「照さん、何を……。 まぁいいです。お菓子ですね」 「うん。帰ってきたら膝枕して」 「はいはい」 うむ、満足。 今日はこのまま一日中甘えよう。 営業スマイルだって疲れるんだから、家でくらいこうしていたっていいはず。 ……あれ、そう言えば私が借りてる家ってどこだっけ? カン 目次に戻る
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6407.html
【インターハイ2日目】 竜華(眠れへん……) 京太郎(眠れねぇ……) 京太郎「ふぁぁあ」 咏「お、眠そうだねぃ」 京太郎「まあちょっとな」 京太郎「そうだ、咏、特訓しようぜ」 咏「いいけど、あんまり無理すんなよな」 京太郎「わかってるって」 京太郎「すぅ……」 咏「ロン、48000」 京太郎「はっ!」 京太郎「あれ、いつの間に飛ばされてたんだ?」 京太郎「昼飯、どうしよ」 京太郎「で、どこ行く?」 咏「うーん、そうだねぃ」 店員「ただいまスシロー全品100円セールを行っておりまーす」 咏「あれでいいんじゃね、知らんけど」 京太郎「寿司か……」 京太郎「金、持つかな……」 京太郎「咏って意外と食べるんだな」 咏「前も一緒に朝飯食ったろ」 京太郎「あのときは咏がへこんでたからあんまり食べてなかったような気が」 咏「そういえば裸見られたんだっけねぃ」 京太郎「あれは本当にすまなかった」 咏「いいよ、昔のことなんて」 咏「さ、食い終わったしどっか行こうぜ」 京太郎「おう!」 京太郎「三枚は少なかったかな?」 京太郎「午後はどうしようかな」 京太郎「一応宿舎に戻ってきたけど……」 京太郎「そうだ!遊びに行こう!」 京太郎「でも一人は寂しいから」 ――――――――――――――― 京太郎「竜華さん、怜さん遊びに行きましょう!」 怜「ええけど、遠出するのは嫌やな」 竜華「何する?」 京太郎「人生ゲームしましょう!」 怜「ボードは?」 京太郎「郁乃さんから借りてきました!」 竜華「3人だけでやるん?」 京太郎「もちろんじゃないですか!」 竜怜「「はぁ……」」 京太郎「あ、そうだ」 京太郎「1位の人が2位の人に1つ命令をして」 京太郎「1位の人と2位の人が1つずつ3位の人に命令するって言うのはどうですか?」 怜「ま、私の楽勝やな」 竜華「怜、あれ使ったらダメやから」 怜「えっ」 怜「私の勝ちやな」ドヤ 京太郎「まさかカジノで全勝するとは……」 竜華「ズルい!ズルいで怜!」 怜「勝った私が正義やもーん」 怜「ほな、命令タイムや」 怜「まずは京くんやな」 京太郎「な、何をすれば?」 怜「うーん……」 怜「膝枕」ボソッ 怜「膝枕よろしく」 京太郎「そんなのでいいんですか?」 怜「ええんや、よっと」 竜華「京くん……」ジトッ 京太郎「うっ、すみません」 竜華「何しとんの!膝枕いうたら頭なでなでもするんや!」 京太郎「そんなことだったんですか!?」 怜「京くん早く」グイグイ 京太郎「わかりましたよ」ナデナデ 怜「えへへ」 怜「少し硬いけど、アリやな」 竜華「で、ウチは?」 怜「そうやな……」 怜「私の耳を甘噛みしてもらおか」 怜「出来なかったら昨日のことバラすで」 京太郎「昨日のこと?」ナデナデ 怜「2人で仲良く混浴しとったこと」 竜華「なんで怜がそれを!?」 怜「そらわかるやろ、京くんの靴はあるのにどこにもいない」 怜「シャワー浴びとるとき、竜華はいつも鼻歌歌っとんのにやけに静か」 怜「今の反応からして私の推理は当たっとったみたいやな」 怜「さあ、どうする?」 竜華「ど、どうしよ」ボソボソ 京太郎「ヤっちゃえばいいんじゃないですか?」ボソボソ 竜華「でも、怜の耳なんて……///」ボソボソ 京太郎「あのことがみんなにバレたらどうなると思いますか?」ボソボソ 竜華「ぅぅ……」 竜華「わかった、やったる!」 竜華「いくで、怜」カプッ 竜華「ほ、ほうふぁ?」ハムハム 怜「く、くすぐったいからしゃべらんといて」 竜華(怜、いい匂いするなぁ……せや) 竜華(このくらい、ええやろ)ペロッ 怜「あっ、りゅ、竜華何を」 竜華(おいしいわぁ)レロレロ 怜「や、やめて……」 竜華(怜の首……) 竜華「……ぷはっ」 竜華「いただきまーす」 怜「んんっ!りゅ、りゅうかぁ……」 竜華(怜の首、白くて、やわらかくて、スベスベしとって)レロレロ 竜華(最高やぁ……)レロレロ 京太郎(静まってろ我が息子!いくら目の前でやられてるからといって焦っちゃいかん!) 怜「すぅ……」 京太郎「怜さん、寝てしまったみたいですね」 竜華「満足満足」 京太郎「それで、俺からの命令なんですけど」 竜華「わ、忘れとった……」 京太郎「腕枕させてください」 竜華「う、腕枕!?」 京太郎「はい、どうぞ」 竜華「う、うん……」 竜華(は、恥ずかしい!) 竜華(京くんと一緒に寝とるってだけでも恥ずかしいのに、腕枕て) 竜華(京くんも恥ずかしがってるんやろな)チラッ 京太郎「ぐぅ……」 竜華(寝とるんかい!) 竜華(全く、京くんは全く!) 怜「すぅ……」 京太郎「んぅ……」 竜華(ウチも寝よ) 京太郎「う、腕が動かねェ……」 京太郎「もう夜か」 京太郎「清澄……咲とモモのところは勝ったのかな」 京太郎「外食してくるか」 京太郎「昨日は宿舎ですませたんだよな」 竜華「……ん、京くんどこ行くん?」 京太郎「少し外へ」 竜華「そか、行ってらっしゃい」 京太郎「またまた来たぜ財布の味方サイゼリヤ!」 竜華「いっつも来とるん?」 京太郎「はい、いつもは相席なんですけど」 京太郎「今日は違うようです」 竜華「……あれ、ここ料理が残っとるけど」 桃子「きょ、京太郎!」 竜華「うわっ!」 京太郎「なんだ、モモか」 桃子「それはこっちの台詞っすよ」 桃子「その人は一体誰っすか?」 京太郎「この人は千里山の清水谷竜華さん」 桃子「ああ、個人戦の人っすか」 桃子「デートでもしてるんっすか?」 竜華「ち、ちゃいます!」 竜華「京くん、この子は?」 京太郎「俺の幼馴染の東横桃子っていうんですよ」 京太郎「清澄の部員です」 桃子「まさか京太郎が彼女を作ってたなんて意外だったっす」 桃子「あとで咲にも報告っすね」 京太郎「いや、恋人とかじゃないから」 メニュー 東北風グラタン 関東風ドリア 中部風カルボナーラ 関西風タコのカルパッチョ 九州風ハンバーグ 京太郎「それで、清澄はどうだったんだ?」 桃子「中堅戦で部長が飛ばして終わりっすね」 京太郎「モモたちがBブロックで俺たちはAブロック」 桃子「戦えるとしたら決勝で、っすね」 京太郎「おう、絶対負けんなよ」 桃子「そっちこそ」 竜華「2人とも仲ええなあ」 京太郎「怜さんと竜華さんみたいなものですよ」 桃子「そっちも十分仲良さそうっすけどね」 【2日目】終了 【インターハイ 3日目】 京太郎「明後日がとうとう初戦か」 京太郎「今日の試合で勝ったところと当たるんだよな」 京太郎「気にせず麻雀するか」 京太郎「ここが対局室か」 郁乃「お~京太郎くんええところに来たな~」 郁乃「ここで打たへん?」 京太郎「いいですけど、他の面子は?」 郁乃「咏ちゃんとエイちゃんと憩ちゃんやで~」 京太郎「郁乃さんは打たないんですか?」 郁乃「善野ちゃんと試合見に行くからな~」 郁乃「ほなよろしく~」 京太郎「勝手な人だな……さて」 京太郎「始めましょうか」 京太郎(北大阪地区予選、最高火力の咏) 京太郎(和了率全国一のエイスリンさん) 京太郎(そして昨年の個人戦2位の憩さん) 京太郎(相手にとって不足なし!) 京太郎(ってか凄すぎるだろこのチーム) 咏「うっし!」 エイスリン(テンパイ!) 京太郎(普通に負けそうな気がする) 憩(この2人は厄介やさかい) 憩(ちょっと様子見や) 咏「ロン!12000!」 東2局 京太郎 25000 親 エイスリン 13000 咏 37000 憩 25000 エイスリン「ウウッ……」 カキカキ 咏(ふっふーん、次は三倍満いっとくかねぃ)トン エイスリン「ロン、12000!」 エイスリン「フリダシ!」 東2局1本場 京太郎 25000 親 エイスリン 25000 咏 25000 憩 25000 憩(エイスリンさんはやっぱ凄いなぁ、でも)トン エイスリン「フフフ、ロン!」 憩(これで打ち止めや) 【白衣の護り】発動! 咏「お、それって」 エイスリン「24300!」 憩「……え!?」 東2局2本場 京太郎 25000 親 エイスリン 49300 咏 25000 憩 700 憩(聴牌……ここが使いどころやな) 憩(来て!) 【孔穿つ閃光】発動! 憩「よっと」スチャ 憩(なるほど、今回はこれか) 憩(点数少ないんやけどなぁ) 憩「カンや!」 憩「嶺上ツモ、500・700」 東3局 京太郎 24500 エイスリン 48600 親 咏 24500 憩 2400 京太郎(あれ、か……) エイスリン(カケナイ) 咏(一向聴までは来てみたけど……) 憩「ツモ、1300・2600!」 憩(この3人、きっついわぁ) オーラス 京太郎 23200 エイスリン 47300 咏 21900 親 憩 7600 憩(2位浮上には最低でも跳満) 憩(一か八か)ピキーン 【孔穿つ閃光】発動! 憩(ダメや、次にかけよか) 憩(これで、最後……) 憩(今さらか……) 憩「海底ツモ、2000オール!」 オーラス1本場 京太郎 21200 エイスリン 45300 咏 19900 親 憩 13600 京太郎(ううむ、6400、点棒付けて6700) 京太郎(まくれないか……) 京太郎(でも咏や憩さんに和了られるよりはいいか) 京太郎「ロン!6700!」 終局 エイスリン 45300 京太郎 27900 咏 19900 憩 6900 京太郎「2位か、まああの面子相手によくやったよ」 京太郎「ん?天下一品?」 京太郎「確か大阪にもあったな、食べてみるか」 京太郎「そういえば昨日までは誰かと昼食べてたんだよな」 京太郎「久しぶりのぼっちか……」 京太郎「対策をしよう!」 京太郎「初戦の相手は……」 京太郎「埼玉代表の越谷高校、兵庫代表の剣谷高校、奈良代表の阿知賀女子」 京太郎「阿知賀は松実さんたちのいるところだっけな」 京太郎「対策は俺に任せろー」 京太郎「剣谷高校……何か感じるな、ここの対策をするか」 京太郎「持ってきてよかったパソコン、あってよかったネット環境」 京太郎「さてと、一応全部見てみるか」 ――――――――――――――――― 京太郎「目を見張るべきは副将戦の人、森垣さんか」 京太郎「このおもちはなかなかのなかなかだな」フム 京太郎「よし、対策開始!」 京太郎「森垣友香、剣谷高校一年生」 京太郎「帰国子女のおもちもち、っと」 京太郎「手の速さと高火力が目立つな」 京太郎「でも咏には劣るか?」 京太郎「捨て牌のくせ、組み方、よし」 京太郎「取りあえずレポート完成、憩さんにメールしておくか」 京太郎「対策は誰かと一緒に立てるのもありかもな」 京太郎「船久保さんとか霞さんとか、後は郁乃さんも良い対策を立ててくれそうだ」 夜 京太郎「霞さんにお願いしてみるか」 京太郎『対戦校の対策を立てたいのですが、手伝ってくれませんか?』 京太郎「こんな感じかな」ポチッ 竜華「京くん何しとるん?」 京太郎「ちょっとメールを」 竜華「じゃあ今風呂入らへんの?」 京太郎「はい、先いいですよ」 竜華「ほな入らせてもらうわー」 京太郎「竜華さんの入浴……」ゴクリ ヴーッヴーッ 京太郎「返ってきた」 霞『別にいいけど、いつやるの?』 京太郎「うわ、それを忘れてたか……どうしよ」 京太郎「今からは無理だし、明日の夜もな」 京太郎「午前だな、よし」 京太郎『明日の午前9時に対局室で会いましょう』 霞『了解よ、おやすみ』 霞『P.S.竜華ちゃんに手を出したらいくら京太郎くんでも』 霞『”容赦”しないから』 京太郎「なんでただのメールで」ガクガク 京太郎「こんなに怖いと感じるんだ」ガクガク 竜華「お風呂あがったで、京くんどうぞ」 京太郎「はい……」カタカタ 【3日目終了】 【インターハイ 4日目】 京太郎「ふぁぁ、今は……7時か」 竜華「ん……ときぃ……」ギュッ 京太郎「」 京太郎「竜華さんのおもちは離れがたかったけど、約束は守らないと」 京太郎「おはようございます!」 霞「あら、早いのね」 京太郎「時間ピッタリなんですが」 霞「京太郎くんのことだから1時間くらい遅れるかと」 京太郎「評価低すぎじゃないですか?」 霞「それで、誰の対策をするのかしら」 京太郎「松実宥さんにしようかと」 霞「ああ、宥ちゃんね。わかったわ」 霞「これが牌譜よ、あと一回戦の映像」 京太郎「誰でも郁乃さんなら大丈夫だと思いますが、一応」 霞「それで、どう思う?」 京太郎「混一色、清一色が多いですね」 霞「そうね、宥ちゃんはどうやら中や萬子が多く集まるようね」 京太郎「そんなことがあるんですか?」 霞「この牌譜と映像が証拠ね」 霞「それに、そんなオカルトはあり得るわ」 霞「私と対局するとき、急に一つの色の牌が来なくなるときとかなかった?」 京太郎「そんな、まさか……」 霞「このインターハイにはそんな子が何人もいるの」 霞「剣谷や越谷には少ないようだけれどね」 京太郎「オカルト、か」 京太郎「咲の嶺上も、モモのステルスも」 京太郎「麻雀とはなんなのか」 京太郎「そば屋に来てみたぞ」 京太郎「夏だからな、涼しいものを食べたい」 京太郎「ざるそばでいいよな」 京太郎「涼んだところで、午後はどうするかな」 京太郎「街に行こう」 京太郎「どこに行くかな」 京太郎「明治神宮に来てみたぞ」 京太郎「ん、あれは……」 哩「あの縄……縛られたかぁ」 姫子「鳥居に吊るされれば尚更よかとです」 哩「おお、流石は姫子」 京太郎「どんな話してるんですか」 哩「君は須賀君やなか!三倍満の!」 姫子「部長よく覚えとるとですね」 哩「あの三倍満は気持ち良かった」ゾクゾク 京太郎(この人たちがよくわからない) 京太郎「お2人は何をしにここへ?」 哩「神頼み」 姫子「インターハイ優勝できるようにってお願いしに来たとです」 京太郎「新道寺はAブロックでしたよね」 哩「須賀君のおる三箇牧もだろ?」 京太郎「なんで知ってるんですか?」 哩「あの後福岡に帰ってから調べたけん、北大阪の男子個人戦1位やって」 哩「須賀君、頼む!また私に打ちこんで!あの大きか直撃!」ドゲザ 姫子「私もお願いします!」ドゲザ 京太郎「ちょ、お2人とも立ってください!みんな見てますよ!」 哩「……」チラッ 姫子「……」チラッ 哩姫「「それもアリ!」」ドゲザー 京太郎「いやナシだよ!」 京太郎「あの2人は調子狂うな、ほんと」 京太郎「ただいまですー」 竜華「お帰りー」 怜「お帰りー」 京太郎「あれ、怜さん来たんですか」 竜華「今日は怜も一緒に寝るんやで」 京太郎「ああ、そうですか」 京太郎「じゃあお菓子でも食べましょうか……って」 京太郎「は!?」 京太郎「じゃあトッポでも食べますか」 竜華「支点、力点、作用点!やな」 京太郎「それはポッキーです」 竜華「うまいっ!」 怜「テーレッテレー」 京太郎「それもうチョコ菓子じゃありませんよ」 怜「いやーでも明日が三箇牧の初戦かー」 竜華「ウチらに勝ったんやから負けたら許さへんで」 京太郎「じゃあ俺はお2人にあんなことやこんなことをされるんですか」 怜「せやな、決めとかなあかんな」 竜華「あ、あんなことやこんなこと……///」 怜「京くんも頑張ってな、最後まで元気たっぷり、そう――――」 怜「このトッポのように!」ドヤァ 竜華「あんまし上手ないな」 京太郎「トッポはこんなに美味いのに」 怜「……」ジトッ 竜華「……」ジトッ 京太郎「すみませんでしたぁっ!」 【4日目】終了 【インターハイ 5日目】 京太郎「とうとう初戦か、気合入れないとな!」 京太郎「試合は10時からで、今は7時」 京太郎「なんかやるか」 京太郎「もう会場に行くか」 ――――――――――――― 京太郎「ここが三箇牧の控室だな」 京太郎「お菓子と、飲み物と」 京太郎「よし、これで準備万端だ!」 インターハイ女子団体戦Aブロック2回戦――――― 熱き戦いが今――――― 始まるッ! えり「さあ、インターハイもついに5日目、今日から二回戦が始まります」 えり「本日戦う8校のうち、準決勝進出を果たすのは4校」 えり「二回戦第二試合の各選手が対局室に向かいます」 えり「過去4回の出場は全て初戦敗退、今年ついに悲願の二回戦進出を果たしました埼玉県代表越谷女子、先鋒の新井ソフィア」 えり「全国屈指の激戦区兵庫県を勝ち抜き初戦では群馬と茨城を圧倒した劔谷高校からは、椿野美幸」 えり「そして奈良県代表、阿知賀女子学院、10年ぶり二度目の出場。先鋒は松実玄」 えり「前回出場時のエース選手赤土晴絵が監督を務めています。10年前はベスト8までいきました」 えり「そしてこの二回戦からついに登場するシード校は」 えり「過去34回出場、激戦区北大阪を連続で制していた千里山女子!!」 えり「―――を倒し、異例のシード権を獲得した、三箇牧高校!」 えり「先鋒を務めるのは、言わずと知れた昨年の女子個人戦チャンピオン」 えり「宮永照」 ―――――――――――――― 京太郎「ついに来ましたね!」 照「うん」 憩「ってまだ行ってなかったんかいな」 照「もう行くから、あと3分」 京太郎「それ絶対行かないパターンのやつでしょ」 照「…………」 玄(この人が、宮永照!) 美幸(せっかくここまで来れたのにこの人と当たるなんてやだよ、もー) ソフィア(どうやって勝てばいいんだ?) 照(他の人たちの目が怖い) 開局 親 宮永照 100000 ソフィア 100000 美幸 100000 玄 100000 ソフィア(チャンピオンは東1局で和了ることは少ない) ソフィア(今のうちに速攻でリードする!) ソフィア(って言ってもドラが無いから打点ひっくいな……) 玄(ドラはあるのに……)トン ソフィア(相手はチャンピオンなんだから、1000でも儲けもんだよな) ソフィア「ロン、1000」 照「………」 美幸「っ!」 玄「!?」 照(越谷は速攻型、劔谷はどちらかといえば防御) 照(阿知賀は……なんだこれ) 照(手強そうなのは阿知賀だな) 東2局 宮永照 99000 親 ソフィア 101000 美幸 100000 玄 100000 照(阿知賀はドラを捨てられない……) 照(試してみるか) えり「ここで宮永選手、三面張を取らず間張で聴牌」 玄(いきなり点取られちゃったよぉ……)トン 照「ロン、1000」 玄「はい……」 えり「今のはおかしな手順でしたね」 良子「宮永は待ちを悪い方にとってテンパイ、松実はドラを切らずに他の牌を切って振り込んだ、という手順のことですか?」 えり「はい、不思議というか、何というか」 良子「おそらく松実は何らかの縛りを受けている、今までの牌譜からはそのような傾向が見られる」 えり「縛り、ですか」 東3局 宮永照 101000 ソフィア 101000 親 美幸 100000 玄 98000 照(今日はエイスリンさんまで回るといいな……) 照(阿知賀の人、テンパイしてない) 照(よし) 照「ロン、2000」 玄(ま、またなのぉ……) 玄(でも、赤土先生に教えてもらった) 玄(宮永さんには、弱点があるって) 玄(まだまだ!) 東4局 宮永照 103000 ソフィア 101000 美幸 100000 親 玄 96000 京太郎「全然ドラが来ませんね」 憩「あの松実玄ちゃんに全部持っていかれとるみたいやな」 咏「あんなの相手にしたくないねぃ」 エイスリン「テル、ツライ?」 郁乃「せやな~ドラ無いと打点上げづらいからな~」 照「ロン、3900」 照(なんだっけ、この人の名前) 照(確か……新井ケフィアだっけ) ソフィア(いいえ、ソフィアです) 南1局 親 宮永照 106900 ソフィア 97100 美幸 100000 玄 96000 照(親、後ろにどんな人がいるか分からないし) 照(なるべく稼いどかないと) 照(平たくしたいけど……) 玄(うぅ……) 照(何でこの子がいつもアガリ牌持ってるんだろう) 照「ロン、7800」 南1局1本場 親 宮永照 114700 ソフィア 97100 美幸 100000 玄 88200 穏乃「玄さん大丈夫かな」 憧「こんなのもう制約とか関係無しに運が悪いとしか言えない」 宥「まだ、大丈夫だよ」 照「ロン、9900」 ソフィア「はい」 美幸(テンパイできてるのに、やだこれもー) 照(越谷の人、歌上手そうだな……) 南1局2本場 親 宮永照 124600 ソフィア 87200 美幸 100000 玄 88200 えり「流石はチャンピオン、今のところ5連続和了」 良子「阿知賀の松実に縛りがあるとすれば、宮永にも縛りはある」 えり「どういうことでしょうか?」 良子「彼女は和了る度に打点を上げている、例えばこの試合」 えり「ここまでの打点は1000-2000-3900-7800-9600ですね」 良子「次は少なくとも11600以上と予想できる、彼女はこれを毎試合行っているわけだ」 良子「わざわざ高目を見逃してロウな和了をしたり、これも一種の制約と考えられる」 良子「それがトゥルーならば、そろそろガタが出てくるはず」 えり「松実玄、ですか」 照「リーチ」 美幸(早すぎるよもー) ソフィア(安牌がさっぱりだ、クソッ)トン 照「ロン、12600」 南1局3本場 親 宮永照 137200 ソフィア 74600 美幸 100000 玄 88200 照(次は跳満、きついな) 照(阿知賀、おそらく次にまた戦うかも) 照(ドラを使わずにってすごい制限プレイ) 美幸(ずっと和了れないじゃんもー) ソフィア(抉られてんな……) 玄(全然テンパイできない……どうしよぉ、お姉ちゃん) 照「ロン」 玄「うっ」 照「18900」 ソフィア(そろそろ止めないと!) 美幸(でもどうやって……) 南1局4本場 親 宮永照 156100 ソフィア 78500 美幸 100000 玄 65400 同コンマのため、流局 南1局5本場 親 宮永照 157600 ソフィア 77000 美幸 98500 玄 66900 照(流れた……) 照(阿知賀がいい感じに止めてくれるかと思ったけど、まだ続けなくちゃなの) 照(はぁ……) 照「ロン、3000」 南1局6本場 親 宮永照 160600 ソフィア 77000 美幸 95500 玄 66900 えり「チャンピオン宮永止まらない!」 えり「流局してもなお攻め続けます!」 良子「流局で親が流れれば楽だったのだが、これではもうどうなるかわからないな」 照「ツモ、1600オール」 南1局7本場 親 宮永照 165400 ソフィア 75400 美幸 93900 玄 65300 照「ツモ、2000オール」 京太郎「これ、地区予選のときより酷くありません?」 郁乃「私に回ってくるかが不安やな~」 エイスリン「マタデバンナシ?」 憩「いやいや、流石に照ちゃんでもわかっとるやろ」 咏「そうだといいんだけどねぃ……」 南1局8本場 親 宮永照 171400 ソフィア 73400 美幸 91900 玄 63300 照「ロン、10200」 玄「はい……」 玄(まだ、みんなの点棒を守らなきゃ!) ソフィア(これがチャンピオン……敵うわけがないんだ) ソフィア(あははははははははははははは) 美幸(このまま友香ちゃんまで行くかな……) 照(いつまで続くんだこれ) 南1局9本場 親 宮永照 181600 ソフィア 73400 美幸 91900 玄 53100 照(次は9600辺り……阿知賀はカンドラとか裏も集めるのかな) 照「カン」 照「リーチ」 照(カンドラも河に無しって……) 照(じゃあ裏は……) 照「ロン、12300」 照(裏は、っと) 照(無いな……) 南1局10本場 親 宮永照 193900 ソフィア 61100 美幸 91900 玄 53100 照(10本場か、計算楽でいいな) 美幸(あと少しで届きそうなのにー!) ソフィア(次和了って20万点っておかしいだろ……) 照「ツモ、5000オール」 南1局11本場 親 宮永照 208900 ソフィア 56100 美幸 86900 玄 48100 美幸(チャンピオンを止める方法……!) 美幸「ポン!」 美幸「ポン!」 照(この人……) 美幸「まだまだあきらめないよーもー!」 美幸「ロン!1000の11本場、11!?」 美幸「11本場は4100!」 玄「はい……」 ワァァァァ えり「ついに宮永照の連荘が止まりました!」 えり「その長さ11本場!止めたのは劔谷高校椿野美幸です!」 郁乃「凄い歓声やな~」 京太郎「なんか悪役みたいですよね」 南2局 宮永照 208900 親 ソフィア 56100 美幸 91200 玄 43800 照(やっと終わったか……) 照「ロン、1000」 南3局 宮永照 209900 ソフィア 55100 親 美幸 91200 玄 43800 玄(劔谷の人が止めてくれた……この人は諦めてないんだ) 玄(私も、諦めない!もう振り込まないよ!) 照「ロン、2000」 ソフィア「はい……」 玄(よし!)フンス オーラス 宮永照 211900 ソフィア 53100 美幸 91200 親 玄 43800 ソフィア(後半ずっと私しか振り込んでないぞ……) ソフィア(あれ、後半長くね?どっから後半?) 照「ロン、3900」 えり「先鋒戦ついに決着ー!」 えり「三箇牧の先鋒宮永照の連続和了が他校を圧倒!2位とは12万点差をつけています!」 えり「劔谷高校は難を逃れ現在2位」 えり「越谷女子と阿知賀は拮抗状態となっています」 先鋒戦終了 三箇牧 215800 (+115800) 越谷女子 49200 (-50800) 劔谷 91200 (-8800) 阿知賀 43800 (-56200) 照「お疲れ様でした」 玄「ありがとうございましたぁ……」 美幸「おつかれっした、もー」 ソフィア「しんどいわー」 京太郎「ようやく、ですね」 郁乃「ほな行ってくるな~」 郁乃「なんとか飛ばさないように頑張るわ~」 咏「よろしく頼むねぃ」 京太郎「さて、俺も少し出るか」 京太郎「ふいー出た出た、照の試合長かったからなー」 良子「お、須賀くんじゃないか」 京太郎「あ、戒能さん」 京太郎「解説よかったですよ、わかりやすくて」 良子「そ、そうか、少し自信が無かったんだが……良かったか」 良子「センキュー、須賀くん」 良子「まだまだ頑張ってみるよ」 京太郎「早く終わっちゃいそうですけどね」 良子「そうだ!聞いてくれ!」 京太郎「な、なんですか」 良子「針生アナと連絡先を交換したぞ!」 京太郎「本当ですか!おめでとうございます!」 良子「リアリー感無量だ!」 ピンポーン 「間もなく次鋒戦が開始します」 「各選手は対局室にお集まりください」 ピンポンパンポーン 良子「おっと、もう行かなくてはいけないようだ」 良子「グッバイ」 京太郎「はい、頑張ってくださいね!」 良子「オフコースだ!」 ―――――――――――――― 宥(玄ちゃんの取られた点棒、お姉ちゃんが取り返すからね)ギュッ 郁乃「夏にマフラーか~変わっとるな~」 宥(この人が、赤阪さん……) えり「解説は引き続き戒能プロ、実況は私、針生が務めます」 えり「場決めも終わったところで、次鋒戦、開始です」 東1局 親 郁乃 215800 宥 43800 澄子 91200 花子 49200 花子(テンパイ来たか!) 花子「うっし、勝負!」 宥(テンパイできないよぉ……玄ちゃんもこんな感じだったのかな……) 郁乃(松実ちゃんはたしか白糸台行ったときにおったな~) 郁乃(まあ、あっちは一回も会っとらんから憶えとらんみたいやけどな~) 花子「ツモ、1600・3200!」 東2局 郁乃 212600 親 宥 42200 澄子 89600 花子 55600 花子「このまま!リーチだ!」 郁乃(越谷の子の次は阿知賀の子やな~) 郁乃(そういえば阿知賀っていうと……) 宥(テンパイできたぁ~) 宥(赤土先生のアドバイスを守って稼がないと) 澄子(なんだか調子悪いですね……) 澄子(先輩が守ってくれた点棒、私が増やしますよ)トン 花子「ロン、5200」 東3局 郁乃 212600 宥 42200 親 澄子 84400 花子 60800 宥(玄ちゃん……) 宥「リ、リーチ」 宥(私、頑張る) 郁乃(今度は松実ちゃんの番やで~) 郁乃(京太郎くんが言うには萬子と中が来やすい、やったっけ) 郁乃(姉妹揃っておもろいな~) 花子(三箇牧と劔谷はオリたか……) 花子(でもこの点差、まだまだ勝負!) 澄子(テンパイできない……もう嫌ですよぉ) 宥「ツ、ツモです!」 澄子(い、一発……親被り) 澄子(でも、役によっては!) 宥「8000・16000」 宥「九蓮宝燈…です」 澄子「」 東4局 郁乃 204600 宥 74200 澄子 68400 親 花子 52800 宥(玄ちゃん……できたよ)ギュッ 穏乃「宥さん凄い!」 憧「でも九蓮宝燈和了ったからテンパイできてないみたいだね」 灼「死なないといいけど」 玄「お姉ちゃあああん」ウワーン 晴絵(役満……流石は妹、と言ったところか) 晴絵(赤阪……) 澄子(役満親被りとか……ありえないでしょ) 澄子(私も頑張りますよ) 澄子「ツモ、1600・3200」 南1局 親 郁乃 203000 宥 72600 澄子 74800 花子 49600 えり「前々局、九蓮宝燈わ和了した松実宥またもやノーテン」 えり「そして三箇牧の赤阪郁代の単独テンパイです」 えり「彼女の過去の牌譜を見ると、役満を多く和了るようですね」 良子「それだけじゃない、彼女の入った卓では必ず役満を和了る者が出る」 良子「それが偶然なのか、彼女の特性なのかはわからない」 えり「そんな卓には入りたくないですよ……」 郁乃(一回も和了っとらんのは少しアレやから~) 郁乃「ツモ、3200オールやで~」 南1局1本場 親 郁乃 212600 宥 69400 澄子 71600 花子 46400 郁乃「ツモ、3300オール」 宥(また、頑張らないと……) 花子(三箇牧強すぎんだろ、どうなってんだよ) 澄子(こうしてどんどん地味になっていくんでしょうね) 南1局2本場 親 郁乃 222500 宥 66100 澄子 68300 花子 43100 郁乃(う~ん、ここまでやな~) 郁乃(ちょ~っとミスってもうたわ) 宥「リーチ」 えり「ここで松実、先制リーチをかけますっと……これは……」 良子「立直面清タンヤオ平和二盃口、三倍満」 良子「裏が乗れば、或いは――――」 宥「ツモ」 良子「一発ツモで、役満だ」 宥「8200・16200」 南2局 郁乃 206300 親 宥 98700 澄子 60100 花子 34900 穏乃「また役満!?」 憧「いやいや、有り得ないでしょ」 玄「お姉ちゃあああん!」ウワーン 灼「よしよし」 ――――――― 京太郎「役満2回目ですか……」 咏「前も2回だったねぃ」 憩「これ回ってくるんかな……」 宥「ツモ、4000オール」 南2局1本場 郁乃 202300 親 宥 110700 澄子 56100 花子 30900 郁乃(さ~てと) 郁乃「ここまでやで~」 花子(何言ってんだこいつ) 澄子(よほど配牌が良かったのでしょうか……配牌?) 郁乃「ツモ~」 郁乃「8100・16100やで~」 花子(えっなにこれは) 澄子(次元が違いますわ) 南3局 郁乃 234600 宥 94600 親 澄子 48000 花子 22800 郁乃(あ~やりすぎたな~) 郁乃(松実ちゃん張ってそうやから~)トン 宥「ロン、16000です」 郁乃「はいはい~」 澄子(さ、最後の親番が……) オーラス 郁乃 218600 宥 110600 澄子 48000 親 花子 22800 澄子(テンパイ…さっきまで粘りますよ!) 花子(劔谷折れねえな……こっちはテンパイできてねえってのに) 宥(玄ちゃん、点棒取り返したよ) 郁乃(あ~とは) 郁乃(無難に華麗に店じまいや~) 郁乃(店じまいの意味ちゃうけどな~) 澄子(これでオーラスに和了れば私も目立てるはずです!)トン 郁乃「ロン、6400」 郁乃「終わりやで~」 澄子「……え?」 えり「次鋒戦決着ー!」 終局 三箇牧 225000 (+9200) 阿知賀 110600 (+66800) 劔谷 41600 (-49600) 越谷 22800 (-26400) えり「阿知賀は最下位から一気に2位へ」 えり「和了りは役満、数え役満、倍満と圧倒的な火力」 えり「越谷、劔谷はともに順位を落としています」 えり「そして三箇牧はリードを保ちトップ、となりました」 えり「役満ツモが3回もありましたが、戒能プロはどう思いましたか?」 良子「どう考えたっておかしいだろこんなの」 えり「中堅戦は、休憩をはさんで開始です」 ―――――――――――― エイスリン「セイロン!」 照「正論」 憩「正論やな」 咏「このまんまだと飛んじまうけどいいんかい?」 エイスリン「ソレハダメ」 咏「んー、どうすりゃいいかわっかんねぇな」 咏「ま、てきとーにやってくるわ」 霞「行ってらっしゃーい」 照「そういえば、京は?」 憩「もう出て行ったで」 京太郎「俺も役満和了ってみたいなぁ……」 京太郎「と、菓子屋に到着だ」 京太郎「ん?あれは……」 郁乃「ほなまた後でな~」 ??「頑張ってな」 アリガトウゴザイマシター 郁乃「善野ちゃん元気そうでよかったわ~」 京太郎「ああ、今の人が善野さんですか」 郁乃「きょ、京太郎くん!?」 京太郎「郁乃さんが驚くなんて珍しいですね」 郁乃「な、なんでここに?」 京太郎「照に菓子買ってきてって言われたんで。あ、もちろん郁乃さんの分もありますよ」 京太郎「焼きプリンとかシュークリームとか」 郁乃「…………」 京太郎「郁乃さん?」 郁乃「そ、そっか~おおきにやで~」 郁乃「ほな私ちょっとお花摘み行ってくるわ~」 京太郎「い、郁乃さん?」 郁乃「ごめんな~」タッタッ 京太郎「何の話をしてたんだろう?」 郁乃(今の話、京太郎くんに聞かれたんかな……) ――――――――――― 咏「お、お前たしか浜名湖にいなかったかぃ?」トテトテ 憧「いたけど、それが?」テクテク 咏「ふ~ん、ま、今日はよろしくねぃ~」トテトテ 咏(やけに大人っぽいけど……) 憧(やたら小っちゃいけど……) 咏(こいつ、本当に高一かよ……) 憧(この子、本当に高一なの……?)
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6349.html
京太郎「もう麻雀部にいても俺の存在意義は無いよな……」 京太郎「なんだかんだで和目当てで入っただけだし、ここらが辞め時かな」 京太郎「ちわーっす」ガチャ 咲「あっ、京ちゃん」 優希「おおー犬!ちゃんと今日は来たな、えらいじょ!」 京太郎「ちゃんと毎日来てるだろ……」 久「こんにちは須賀君」 京太郎「あ…どうも……部長」 久「来てもらって早速で悪いけど、あなたに買い出し頼んでもらっていいかしら?」 久「えっとねぇ……今日はクリーナーと何か甘い物を」 京太郎「無理ですよ部長。今日は無理なんです」 久「無理?えー、どうして?ひょっとして今日は体調が悪かったりする?」 京太郎「俺、今日限りで麻雀部辞めるんで」 久「ほうほう、麻雀部を辞めると……それはそれは」 咲 久 優希「!?」 京太郎「これ、退部届です」スッ 京太郎「ハンドボールで全国を目指すからです」 久「ハンド……ボール?」 まこ「はて?なんで急にハンドボールなんぞに目覚めたんじゃ」 咲「……京ちゃんはこう見えて、中学の時ハンドボールで県大会決勝まで行ってるんです」 まこ「ほぉ!それはすごいの」 優希「初耳だじぇ」 和「わ、私もです」 京太郎「はは……一応、清澄に入る前に色んな所からスカウトは来てたんだ。全部断ったけど」 久「どうして?清澄に来たってハンドボールなんて有名じゃないのに」 京太郎「それは、やっぱり咲をほっとけなくて…」チラッ 咲「えぇっ?!わ、私?」 京太郎「でも、もう俺が居なくても大丈夫そうだし、俺もあいつみたいに自分に合った人生を歩もうかなって思って」 京太郎「だから麻雀は今日で終わりにします」 咲「京ちゃん……」 京太郎「部長。退部届受け取ってくれますよね?」 久「………」 久「あなたの人生よ、好きにしなさい」 京太郎「ありがとうございます……お世話になりました」 咲「ぶ、部長!」 優希「どうして引き止めないじょ!?」 久「私には須賀くんを引き止める権利なんてない」 久「それに、本人もそれは望んでないみたいだし」 和「……あの、須賀くん」 京太郎「和にも色々世話になったな。麻雀教えてくれてありがとな」 和「いえそれはいいんですが…本当に辞めてしまうんですか?麻雀部」 京太郎「ああ」 和「私が入って、優希も入って、それからあなたが入って……ずっと盛り立ててきた麻雀部を」 京太郎「そうだよ」 和「……分かりました。なら、もう私は何も言いません」 優希「わ、私は絶対認めないじょ犬!飼い主を捨てて遠くへ行くなんて許さないからな!」 久「遠くって大袈裟ね優希は。清澄にいるんだからいつでも会えるでしょ?ねぇ、須賀くん」 京太郎「………」 久「……まさかあなた」 京太郎「実は」 京太郎「体育推薦転入で白糸台へ行くことになってます」 優希「ぎゃぽ!?」 咲「そんな……嘘でしょ?だって、そんなこと昨日まで一言も!」 京太郎「ウソじゃない。もう手続きも全て済ませて、東京に行く準備も済ませてある」 まこ「ちゅーことはずいぶん前から麻雀部だけじゃなく清澄も辞める気やったってことじゃな」 久「……私が麻雀部を辞めるのダメって言ってたらどうしたのかしらね?」 優希「ふざけるな!!そんな話聞いてないぞ!」ガシッ 京太郎「うわっ!」 優希「京太郎は清澄だじぇ!白糸台なんかに行かせたりしないじょ!」 京太郎「お、おい!足に引っ付くなって!靴とかの汚れがついちまうぞ」 優希「首を縦に振るまで離れないからなー!」ギュウウ まこ「まるで駄々っ子じゃの」 和「ゆーき……」 京太郎「……困ったな」 咲「……」 京太郎「ああ、咲。ちょうど良かった、お前からも何か言ってやってくれ」 咲「一つさ、ルール追加してもいいかな?」 京太郎「何だよ」 咲「京ちゃん達三人は十万点持ちのスタートで私は0点からのスタートってことで」 優希「じぇ!?」 咲「それ以外はいつもと同じルールだよ」 和「さ……咲さん、いくらあならでもそれは無茶ですよ」 久「随分イカれたルールね。で、何の為にそんなルールを作ったの?」 咲「特に理由は何もありませんよ」 京太郎「清澄に留まってもらう、とか言うんじゃないだろうな?」 京太郎「そんな賭けに乗るつもりは無いぞ馬鹿馬鹿しい」 咲「もう、本当に何もないってば!」 京太郎(持ち点が0点なんて何企んでんだ咲は) 京太郎(俺だけじゃともかく優希も和もいるってのに、一回でも和了されたら終わりじゃねーか) ――――― ―――― 和「………」 和(誰も振り込まない……) 優希「………」 優希(誰も和了しないじぇ……) 咲「あ、またみんな聴牌で流局だよー」 咲「これじゃ中々終われないね」ニコッ 久(驚いた…これ支配なんてそんなレベルじゃないわ……) まこ(全員が全員聴牌するものの誰も和了できないとは。天江衣の一向聴地獄みたいじゃのう) 京太郎「咲……そろそろ」 咲「え?」 京太郎「もう俺の負けでいいからさ、やめにしないか?」 咲「何言ってるの京ちゃん」 咲「この一局が終わるまでは清澄に居てくれる約束だよね?」 京太郎「そ、そうだけどさ……」 咲「ならこの一局が永遠に続けばずっと清澄に居られるよね」 京太郎(い……いや流石に冗談だろ……冗談だよな?) 京太郎(しかし、俺はいいとしても……) 和「………」フー 優希「うう…頭がクラクラしてきたじぇ」 京太郎「咲、二人とももう限界だ。やめよう」 咲「ダメだよ。そしたら京ちゃんがいなくなっちゃう」 京太郎「そんなこと言ってる場合かよ!」 京太郎「和も優希もお前の大事な友達だろ!」 咲「早く終わらせたいんだったら和了すればいいじゃん」 京太郎「お前……」 京太郎「本当に咲か?」 咲「あはは、何言ってるの」 咲「私は京ちゃんがよく知ってる、読書が趣味の地味でドジな宮永咲だよ」 京太郎「っ」ゾクッ 京太郎(咲は……こんな奴じゃ無かった) 京太郎(ドジで地味だけど、一緒に居るとすげー安心できる女子だったけど……いまはただただ怖い) 咲「あ、また聴牌で流局だよー!」 京太郎(……いや、咲を麻雀部に連れてきたのは俺だ) 京太郎(くだらない理由で連れてきて咲を変えてしまったのは俺のせいじゃないか) 咲「本当に………麻雀って楽しいよね!」 カン
https://w.atwiki.jp/45451919/pages/82.html
『間もなく、個人戦一次予選を開始致します』 咲「凄い人数だね…」 まこ「個人戦は団体戦に出れん生徒も来るからのー」 和「相手が居なくてもソロプレイなら誰でもできますから」ハアハア 京太郎「はいはい話を逸らさないよー」 久「個人戦で全国に行けるのは3人。誰と当たっても、全力全開手加減無しで」 優希「さっすが部長! わかりやすいじぇー」 久「勝っても負けても悔いのないようにね!」 「「「「「はいっ!」」」」」 久「あ、須賀君」 久「男子は会場違うから。急がないと間に合わないわよ」 京太郎「うおぉいっ!」ダダダッ! 京太郎「ぜー、はー…ま、間に合った!」 京太郎「清澄高校の須賀京太郎です、登録お願いしますっ!」 「え、えっと京太郎君? 登録はあっちだけど…」 京太郎「いいっ!?」 「もう…こっち、急がないと時間なくなっちゃうよ」ギュッ 京太郎「うおっと…ありがとうございます」 「お礼なんて別に…そ、それより行かないと!」 京太郎「そうっすね…あの」 「な、何?」 京太郎「手、綺麗ですね」ジッ 「えええっ!? そそそ、そんなことっ!」 京太郎「お、あれが登録所か。すいません小鍛治さん、行ってきまーす!」 健夜「あ…もう、元気だなあ」クスッ 健夜「男子は人数が多いから、一日目でも負けがあるよ」 京太郎「うげ、マジっすか…二日目まではなんとか…」 健夜「ゆ、夢はおっきくないとダメだよ!?」 京太郎「それじゃあ全国優勝で!」グッ 健夜「スケールが変わりすぎだよ! もう…」 健夜「京太郎君…手、貸してくれるかな」 京太郎「? はい」スッ 健夜「…頑張ってね」ギュッ 京太郎「はいっ!」 京太郎(なんて言った手前、恥ずかしい姿は晒せねーよな) 京太郎「よろしくお願いしますっ!」 京太郎(さーて…いい牌来いよ?)カチャ ※京太郎の戦績は安価で決まります。戦績次第では全国編の展開に変化が生じる予定。 コンマの数値で1~4位を決定します。おっきい順。 ↓1 京太郎 ↓2 相手E ↓3 相手R ↓4 相手O ・コンマゾロ目で数値にプラス10 ・48 69 の場合はプラス30 ・下四桁が1919 4545 0721 の場合、???? 一日目は全3回戦。 1回戦は1,2,3位で勝ち抜け。2,3回戦は1,2位で勝ち抜け。 582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 20 01 41.89 おまかせあれ! 583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 20 02 01.68 すばら! 584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 20 02 27.35 でえい 585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 20 02 29.11 あ 京太郎1位! 京太郎「おしおしおしっ! 幸先いいぜ!」 京太郎「2回戦はこのあとすぐか…へへ、咲たちに昼の時間、自慢できる結果にしないとな!」 健夜「良かった…でも、気を抜いたらだめだからね」ホッ 京太郎「よろしくお願いしますっ!」 コンマの数値で1~4位を決定します。おっきい順。 ↓1 京太郎 ↓2 相手E ↓3 相手R ↓4 相手O ・コンマゾロ目で数値にプラス10 ・48 69 の場合はプラス30 ・下四桁が1919 4545 0721 の場合、???? 589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 20 07 27.42 はい 590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 20 07 53.34 おまかせあれ! 591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 20 08 13.78 ぬ 592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/29(火) 20 08 21.39 そもそもなぜすこやんが……? 京太郎2位! 京太郎「あ、ありがとうございました…」フー 京太郎(あっぶねー…300点差で2位かよ) 京太郎(ま、勝ちは勝ちだよな!)ヘヘッ 健夜「ひ、ひやひやするよ…なんだか自分が打ってる時より怖いなあ」 ※一旦茶番タイムへ 京太郎「小鍛治さん! 勝ちましたよ、俺!」 健夜「うん、おめでとう…今日はあとは、午後の3回戦だね」 京太郎「ありがとうございますっ。じゃあ俺、部活のみんなに伝えてきます!」 健夜「あ……もう、あんな子だったかなあ?」 健夜「もっと頼りになる気がしたんだけど…ツッコミの人が少ないからかな…」ハア… 健夜「でも、あれが本当の京太郎くんなんだよね」 健夜「ふふっ、かわいいなあ」 健夜「応援するからね。京太郎君」 京太郎「よっ、飯食ってたか。元気いいなー」 咲「京ちゃん! なんだか元気だね」 和「個人戦はどうでしたか?」 優希「安心しろ! 優希ちゃんハンドでチビ京太郎を慰めてやるじぇ!」ワキワキ 京太郎「ふっ…その必要は、ないっ!」 まこ「お、とゆーことは」 京太郎「2回戦勝ち抜けですよ! 3回戦進出っす!」 久「あらま…それはまた、今後の指導のし甲斐がありそうね」 咲「おめでとう!」 優希「ほほー、めでたいめでたいじょー」 和「おめでたですね」 京太郎「待て」 和「どこの女ですか!?」 京太郎「落ち着け!」 優希「そーなるとタコスの補充ができないじぇ…むむむ」 京太郎「ああ、そう言うと思って。ほれ」タコス 優希「むぐ…タコス?」 京太郎「冷めても美味いタコスだとさ。匂い控えめで気配りバッチリだぜ」 優希「ほへー、京太郎よくやった! えらいぞ!」 咲「凄いね。京ちゃんが作ったの?」 京太郎「いやいや、途中の屋台で執事さんが作ってたんだよ」 まこ「なんじゃそら…」 久「ちょっと考えられないわねえ」 和「須賀君、常識の範疇で物を言って下さい」キリッ 京太郎「どの口々が言いやがる…」 京太郎「っと、そろそろ時間っぽいな」 咲「京ちゃん頑張ってね!」 優希「タコスの陰から応援しといてやるー」 和「頑張って下さいね。いえジョーク抜きで」 久「全力でね。冷めたら負けよ!」 まこ「後でな。また元気よく報告頼むからのー」 京太郎「うっす! 行ってきます!」 京太郎(ふー…やっぱ緊張するけどさ) 京太郎「よろしく、お願いしますっ!」 コンマの数値で1~4位を決定します。おっきい順。1,2位で勝ち抜け。 ↓1 京太郎 ↓2 相手E ↓3 相手R ↓4 相手O ・コンマゾロ目で数値にプラス10 ・48 69 の場合はプラス30 ・下四桁が1919 4545 0721 の場合、???? 622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 20 44 24.74 * 623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 20 44 28.23 おまかせあれ! 624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 20 44 41.91 ニワカは相手にならんよ! 625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 20 45 03.07 へ 京太郎2位! ※合宿編、全国編で展開に変化 京太郎「ありがとうございましたぁっ!」 京太郎(……) 京太郎「……っしゃあああ!」 『男子個人戦、1日目を終了――!』 『明日の4、5回戦で全国行きへの切符を手にする選手が決定します!』 健夜「……わあ」 健夜「なんだか、胸が熱くなってくるよ」 健夜「懐かしいなあ…あんなに喜んで、楽しそうで」 健夜「……うん」ギュッ 健夜「私も、頑張らないとね」 京太郎「小鍛治さん! 俺、やりましたよ!」 健夜「うん、見てたよ。おめでとう…でもまだ明日があるからね?」 京太郎「うぐ…な、なんか腹が痛いんですけど…」 健夜「緊張するよね。初めての試合ならなおさら」 健夜「明日も見に来るからね? 格好いいところ見せて欲しいなあ」 京太郎「うえっ!? し、仕事とかいいんですか…?」 健夜「新幹線使えば間に合うから大丈夫だよ」 京太郎「そっすか…明日も頑張りますから、応援頼みます!」 健夜「うん、じゃあまた明日…」 健夜「はー…」 健夜「こーこちゃん? ごめん、今夜の打ち合わせ、明日にしてもらえる?」 咲「京ちゃん! 凄いよ!」 久「ほーんと。もしかしたらもしかするかもね?」 まこ「こりゃあ京太郎の方がわしより強いかもしれんのう…」 優希「京太郎のタコス力も相当のもんだな!」 和「知りませんでした。須賀君はとんだテクニシャンですね、突き合って下さい」 京太郎「いやあ…すみません、明日も応援行けなくて」 まこ「何言うとるんじゃ。こっちのほうが申し訳ないっちゅーんじゃ」 久「正直私が応援したいくらいなんだけどね…こういう時、会場が違うってのが困るわ」 咲「私は心の中でずっと応援してるからね!」 優希「私はタコス場の陰から見守ってるじょー」 京太郎「ありがとな!」 和「もう…放置プレイだなんて、悪くないですね…」モジモジ ~2日目~ 京太郎「ふー…あと2回。やべえよ…き、緊張が…」 健夜「だ、大丈夫? ええとこういう時は人の字を書いて」 「ふん…金髪雑魚が存外勝ち抜いていると聞いたけど、とんだ偶然だ」ザッ 京太郎「う、うえ?」 健夜「あ…龍門渕高校の」 「力を感じない。力へ至る道筋も見えない…」 「それなら後は人の意思。お前の意思だけしか頼れないんだ」 「…お前は、衣が思ったよりも強い。だから…その」 衣「頑張れと言っているっ!」 京太郎「……おう、ありがとな!」 京太郎「それじゃ、行ってきます!」 『さあ男子個人戦準決勝! 上位二人が勝ち抜けとなります!』 京太郎「…おしっ!」パンッ! 京太郎「お願いしますっ!」 コンマの数値で1~4位を決定します。おっきい順。1,2位で勝ち抜け。 ↓1 京太郎 ↓2 相手S ↓3 相手Y ↓4 相手D ・コンマゾロ目で数値にプラス10 ・48 69 の場合はプラス30 ・下四桁が1919 4545 0721 の場合、???? 662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 21 23 06.91 ころたんイェイ~ 663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 21 23 07.84 ほ 664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 21 23 19.04 ほい 665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/29(火) 21 23 23.68 せい 京太郎1位! 決勝進出! 京太郎「……ほへ?」 京太郎「マジで?」 『準決勝終了ー! ここに決勝進出の4名が決定しました!』 『うち一人は女子団体戦で優勝した清澄高校! 今年は波乱の展開です!』 衣「これは…」ガタッ 健夜「力はないけど、そのぶん純粋に麻雀が楽しめてる…のかな」 健夜「私達にはもう、あんまり分からない感覚かもしれないけれど」 衣「……あ」 衣「そっか、キョータローは、麻雀をしているんだな」 健夜「うん……」 衣「……」 健夜「ねえ、良かったら今度一緒に打ってみない?」 衣「良縁か奇縁となるか…衣がお前に通じると思うか?」 健夜「さあ…」クスッ まこ「京太郎!」バシッ 京太郎「うおっ!? 染谷先輩、それに優希!」 優希「ちょ、おま、ほんとに凄すぎだじぇ!」 まこ「全国行きも全然ありえるとは…わしより強いっちゅうんはマジじゃったか」 京太郎「い、いや偶然というかなんというか…」 まこ「アホ。運も実力、しかし麻雀は運だけじゃダメなんじゃ」 優希「そういうことだ! 誇れ! タコス神に!」 京太郎「…ああ!」 まこ「次の決勝戦はわしらも観客席におるからの」 優希「頑張れ京太郎! 勝利祈願のタコスグミだじぇ!」 京太郎「ありがたいけど超まずそう…」 京太郎(小鍛治さんに天江、優希に染谷先輩…) 京太郎(多分他の人も見てるんだよな) 京太郎「…お願い、します」 コンマの数値で1~4位を決定します。おっきい順。1,2,3位で全国進出。 ↓1 京太郎 ↓2 相手S ↓3 相手E ↓4 相手X ・コンマゾロ目で数値にプラス10 ・48 69 の場合はプラス30 ・下四桁が1919 4545 0721 の場合、???? 704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 21 49 05.16 ??「京ちゃ須賀京太郎は東京の白糸台に転校すべき……わた宮永照先輩が直々に指導すると言っていた」 705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 21 49 07.82 すこやんイェイ~ 706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 21 49 09.80 シャイニングツモ! 707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 21 49 21.69 おまかせあれ! 「ご無礼。手を抜く気は無いんでね」「悪いなその牌だ…だが目はいいぜ、アンタ」「アンタ、背中…いや、いい色だ」 『決着ー! 個人戦決勝、全国行きが決定しました!』 『清澄の須賀選手、惜しくも全国を逃しましたが堂々の4位! まだ一年生の彼は今後が期待されます!』 京太郎「……はー」 京太郎「ありがとう、ございましたっ!」 京太郎「……」 京太郎「あー」 健夜「京太郎君」 京太郎「…すんません、負けました」ペコッ 健夜「ううん。頑張ってた。初めから見てたから、分かるんだよ?」 健夜「悔しいよね。泣きたいよね…」ギュッ 京太郎「……ふ、ぐっ…」 京太郎「お、れっ、本気で、がぢ、勝ちたくてっ!」 健夜「うん…いいんだよ。泣いていいの」ギュウッ 京太郎「…う、ううううううう!!」 優希「……あ、京太郎…」 まこ「惜しかったのー」ポン 京太郎「はは、負けちゃいましたよ。さすがに決勝はキツイっすね」 衣「……」ピョン 衣「奇しくもキョータローの思う所はよく分かる」 衣「1週間前の衣も同じ思いだった。だからキョータロー、衣おねえさんの胸で泣いていいぞ!」フンス 優希「…無い胸で泣けとは片腹大激痛だじぇ!」 衣「なにをー!?」 優希「なんだー!」 まこ「ったくわりゃあ…」 京太郎「…はは!」 京太郎「はいはい、二人ともそこまでにしとけー」 京太郎「咲! 和! 個人戦全国出場おめでとう!」 咲「う、うん…あの」 和「須賀君は…その」 京太郎「…ったく、なーに微妙な顔してんだよ」ワシャワシャ 咲「わわっ!」 和「あうぅっ」 京太郎「そりゃ全国行けたら嬉しかったけどさ。多分それと同じくらい、団体戦と個人戦でお前らが全国行くのが嬉しいんだよ」 京太郎「それともアレか? 男だし、全国行けないならお留守番かよ? ねえ部長」 久「んー? そうねえ…咲と和がそう言うなら留守番してもらおうかしら」クスッ 咲「そんなこと!」 和「ありません!」 京太郎「それに、お前らの面倒も見ないとダメだからなー。麻雀打つ暇もねーよ」 京太郎「だからさ…今年は全力でサポートするから、来年はもうちょっとマトモになってくれな?」 咲&和「「……えー」」 京太郎「そこは頷くだろ普通!」 京太郎「小鍛治さん、今日はありがとうございました」 健夜「ううん。約束だったし、私も京太郎君には色々教えてもらったから」 京太郎「へ? なんですかそれ…?」 健夜「ん、内緒。でも本当に格好良かったよ」 京太郎「いや…みっともないとこ、見せちゃって」 健夜「それも含めて格好良かった、ってこと。ときめいちゃったかも」クスッ 京太郎「へっ!?」 健夜「なんて、ね。それじゃあまたね…インターハイは私も解説で出るから、また会おうね!」 京太郎「……はいっ! ありがとうございましたっ!」 健夜「うん、バイバイ」 健夜「もうこんな時間かあ…こーこちゃん怒ってるかなあ」 健夜「…いいよね、たまには」 久「さ、そろそろ帰るわよー。準備はいい?」 和「須賀君、これを」スッ 京太郎「……ローション?」 和「須賀君のタイミングで準備してください」キリッ 京太郎「この展開見越してこれ持ってきたの?」 久「はいはい、そこも行くわよ」 咲「あ、はいっ」 京太郎「……」クルッ 京太郎「また来年、来るからな」 京太郎「…へへっ」 優希「あー! 京太郎がエロい顔してるじぇ!」 まこ「ま、まさかわりゃあ…建物フェチだったんか…」ゴクリ 咲「うぅ、建築物にはなれないよ…」グスン 久「廃墟ツアーとか行ってみる? ティッシュ持って」 和「廃墟なら穴もあるんですよね…」ゴクリ 京太郎「結局こんなんかよ!?」 京太郎「…ま、こんなんが丁度いいか」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6356.html
京太郎「背景に溶け込んでかなり立ったが潮時だ」 京太郎「このままこの立ち位置に居るだけじゃ世界から消されちまうな」 京太郎「いつの間にかいなくなってました、なんてシャレにならねぇし……なんとか目立たないと」 京太郎「そういや最近どこ行ってもずっと立ちっぱなしな気がするな……」 京太郎「優希に告白しねーまま消えるのも嫌だし、さっさと告白しとくか」 京太郎「何で俺はあんなちびっ子に惚れちまったんだろうな……俺が好きなのは和なはずだったのに」ハァ 京太郎「こんちわーす」ガチャ 優希「おー犬!やっと来たか!」 京太郎「っ!!」ドキッ 優希「にょ?どしたそんな顔して」 京太郎「い、いや…なんでもない。てか、犬って呼ぶんじゃねーよ!」 京太郎(コイツやっぱり可愛いなクッソ……) 優希「そんなケチケチするなって、私と京太郎の仲だじぇ」 京太郎「全くああ言えばこう言うなお前は」 京太郎「……とそれはいいんだが優希。お前に聞きたいことがあるんだ」 優希「ん?どした?」 京太郎「お前って彼氏とかいるの?」 優希「彼氏?きさまー、知らんとは言わせないぞ!私の彼氏はタコスに決まってるだじぇ!」 京太郎(いないってことか……よし!) 京太郎(まずは深呼吸深呼吸っと)スーハー 優希「京太郎?」 京太郎「お前のおもちを育てさせてくれ」ワキワキ 優希「おもち?おもちってなんだそれ?」 京太郎「女性なら誰もがついている、その二つの膨らみだよ」 京太郎「まぁ、お前の場合膨らみかどうかすら怪しいけどな」ハハハ 優希「……?」 優希「………」 優希「っ!!」バッ 京太郎「気づいたか?」 優希「お、お、おま……!そ、それっておっぱ……!」 京太郎「この際だから言うが、俺はお前が好きだ!大好きなんだ!」 優希「じぇっ!?」 京太郎「そりゃあもうこの手でおもちが大きくなるほど揉みあげるぐらいに!!」 京太郎「だから、どうか優希!俺にお前のおもちを揉ませてくれ、頼む!」 優希「………」ソロリソロリ 京太郎「あのー、優希さん?なんでそんなソロソロと後退してるんですか?」 優希「身の危険を感じる……これは貞操の危機だじぇ」 京太郎「なに言ってんだ、ただ俺はお前のおもちを大きく」スッ 優希「ぎょええええ!!」ダッ 京太郎「したいと思って………あれ?」 ヘンタイガ アラワレタジェー!! コラ!ロウカハ ハシラナイ!! 京太郎「………」 京太郎(え?逃げられた?) 京太郎「逃げられたってことは……じゃあ」 京太郎「……そうか。はは、振られちまったってことか」 京太郎「告白する前に終わっちまったよ、情けねぇ」 京太郎「情けねぇなぁ、俺……」グスッヒック 京太郎「泣いたらちょっとすっきりしたな」 京太郎「なんか別の事して気でも紛らわすか」 京太郎「じゃ咲でいいや」ケロッ 京太郎「あいつああ見えて結構可愛いしな、彼女としては及第点だろ」 ガチャ 咲「き、京ちゃん……今なんか優希ちゃんが凄い勢いで走って行ったんだけど何かあったの?」 京太郎「別に?ちょっとアイツの鼻にねりわさび入れただけだから気にすんなよ」 咲「なにやってんの!?そりゃ気にするよ!」 京太郎「ところで咲って彼氏とかいるの?」 咲「はい?どうしたのいきなり?」 京太郎「いいから答えろって」 咲「はいはい……って、そんなの京ちゃんが一番よく分かってるクセに。ホントいじわるなんだから」 京太郎「はは、だよなー!」 京太郎(咲に彼氏なんかいないってのは分かりきってたことだが一応な) 京太郎「じゃあさ咲!俺と付き合ってみない?」 咲「なに言ってんの。そんな冗談いいから早く優希ちゃんに謝ってきてよ」 京太郎「……本気なんだけどな、俺」 咲「………」 咲「いやいや、嘘でしょ?」 京太郎「何回も言わせんなって。だから俺は、本気で咲のこと好きだったんだよ」 咲「えっ……えっ?ええええええ!?」ボッ 咲「そ、そんなこと急に言われても!」 京太郎「咲、もしお前さえよければ………俺と付き合ってくれ!!」 咲「京ちゃんは、本当に私でいいの……?」 京太郎「"私で"じゃない、俺は"咲"がいいんだ!」 咲「……京ちゃんも知ってると思うけど。その、私さ」 咲「ずば抜けて勉強できるってわけでもないし、運動音痴だし超インドア派だけど」 咲「こんな私でよかったら、よろしくお願いします」ペコリ 京太郎「………えっ、マジで?」 京太郎(まさかこんなに上手くいくなんて思わなかったな……) 京太郎「えーと……お、おう!こちらこそよろしくな!」ペコリ 咲「えへへ、なんか京ちゃんとお辞儀し合うなんて新鮮だね」 京太郎「そんな関係じゃなかったしな」ハハ 咲「でもこれからは……」 京太郎「ん?」 咲「恋人同士だね」ニコッ 京太郎「っ!」 京太郎(なんだよ咲のヤツ……ちょっと可愛いじゃねぇか)ドキドキ 久「入りづらいわー……」 まこ「なんじゃあのピンクな雰囲気は」 和「咲さん、よかったですね。親友として嬉しい限りですよ」 「よー、須賀!咲ちゃんとやっと付き合いだしたんだってー?」ニヤニヤ 「やっとか……遅せーんだよ!」 京太郎「うっせー!」 京太郎(咲と付き合うようになってからは、毎日登下校を一緒にするようになった) 京太郎(休日は古本屋漁りとか作家の展覧会とかも色々行くようになった) 京太郎(正直俺には何が楽しいのかさっぱりだったが、咲が喜んでくれるならそれでいい) ―――――― ――――― 咲「はい、京ちゃん。あーん」 京太郎「あーん」 まこ「相変わらずじゃのう、あの二人は」 和「仲良き事は美しきかな、って言葉通りですね」フフッ 優希「ケッ」 久「はーい!イチャイチャタイムしゅーりょー!!」 久「青春するのは大いに結構だけどインハイも近いんだし、ほどほどにね」 咲「えへへ……」 優希「……咲ちゃんちょっとくるじぇ」 咲「え?」 優希「いいから!」グイッ 咲「わわっ、ちょっと痛いよ優希ちゃん!」 優希「咲ちゃん、京太郎と付き合うのはやめた方がいい!」 咲「えっ?」 優希「あいつはホンモノの変態だ!京太郎なんかと付き合ったら咲ちゃんが酷い目に合うじぇ!」 咲「ちょ、ちょっとなに言ってるの?」 優希「お願いだかた、信じてほしいじょ!!」 咲「ごめん優希ちゃん……私やっぱりあの人のこと信じてあげたいから」 咲「優希ちゃんの言葉を信じることはできないかな」 優希「――――!!」 優希「咲ちゃんの分からず屋!ほーこーおんち!!どうなっても知らないじぇ!」ダッ 咲「あっ、優希ちゃん!」 京太郎「おかえりー、ってあれ?優希は?」 咲「どうしよう京ちゃん……」 京太郎「え?」 咲「……私、優希ちゃんの事怒らせちゃったみたいだよ」グスッ 京太郎「わわっ!!泣くな泣くな!」 和「どうかしましたか須賀くん?」クルッ 京太郎「い、いや!なんでもないから!なんでも!」 和「……そうですか?ならいいんですけど」 京太郎(あっぶね。和に咲を泣かしてるところなんて見られたら軽蔑じゃすまないだろうな) 京太郎「その、何があったのかは知らないけどさ、優希ならどうせすぐに戻ってくるって」 咲「ほ……ほんとに?」 京太郎「ああ、だから泣き止めって。な?」ポンポン 咲「………うん」ゴシゴシ 京太郎「よし、いい子いい子。じゃあなんか気分転換に放課後どっか寄って帰るか」 咲「そうだね。私も賛成かな」 咲「京ちゃんはどこか行きたいとこある?」 京太郎「本屋でも行くか」 咲「えっ、本屋?」 京太郎「イヤだったか?」 咲「ううん!私は全然いいんだけど……京ちゃん暇じゃないかなって思って」 京太郎「全然平気だよ。俺は咲に楽しんで貰えたらそれが一番なんだからさ」 咲「ううっ……」ボッ 咲「京ちゃんなんかキザな台詞言い慣れてない?」 京太郎「言うのも使うのも咲が初めてだよ」 久「もう、いいからとっとと行ってきなさいよ二人とも」 まこ「見とる方が痒くなるんじゃ」 ―――――――― ――――――― 京太郎(本屋に来たけど、俺は特に欲しい物は無いな) 咲「………」ペラッ 京太郎(案の定、咲は新刊の試し読みに夢中になってるのか) 京太郎(俺も漫画じゃなくて何か文庫本でも読んでみよう)スッ 京太郎(……って、あれ?咲の真後ろにいる人どっかで見た事あるな)ピタッ 照「………」 京太郎(あっ、思い出した!インターハイチャンピオンの宮永照だ!) 京太郎(でも確か東京の高校通ってたはずだよな?なんで長野にいるんだ?) 咲「………」ペラッ 照「………」ペラッ 京太郎(……何て言うか並んで見たらどことなく咲に似てるな) 京太郎(名字も一緒みたいだし、もしかして咲が話してた"お姉ちゃん"なのか?) ―――――――――― 咲「私ね、京ちゃんと付き合えてすごく嬉しいよ。毎日がとっても充実してるし」 咲「これであとお姉ちゃんが帰ってきてくれればな……」 京太郎「………」 咲「あっ、ごめんね暗い話しちゃって!ほら、早くデートの続きしようよ!」 ―――――――――― 京太郎「…………」ゴクッ 京太郎(彼女のためだ、やるだけやってみるか)ザッ 照「……」ペラッ 京太郎「すいません」トントン 照「…?」 京太郎「こいつ俺の彼女なんすよwwwwww」クイクイ 照「……」ピクッ 京太郎「見てくださいよこのキュートな顔にちょっと小柄な体系wwwww」 京太郎「こんな可愛い子がベッドの上じゃあひあひ言ってるんすよwwwww」 照「…」ピクピクッ 京太郎「もう辛抱たまらwwwwwwww」 咲「っ!!!」バシッ 京太郎「うごっ!?」 咲「馬鹿!京ちゃんのエッチ!!」バシッバシッ 京太郎「ちょ、ちょっと痛い咲!いやホントに痛いって!!」 咲「なに大声で変なこと口走ってんの京ちゃん!?」 京太郎「い、いや……あのな?お前の姉さんに俺と咲が付き合ってることを伝えようとな」 咲「お姉ちゃん?何言って……」ハァ 照「………」 咲「えっ……」ビクッ 咲「な、なんでここにいるの……お姉ちゃん」 咲「な、なんでここにいるの……お姉ちゃん」 京太郎「おねえ…ちゃん?」 京太郎(じゃあまさかこの人が……インターハイチャンピオンが咲の姉さん!?) 照「……」 咲「お姉ちゃん!」 照「……」プイッ 咲「ねぇ、お姉ちゃんてば!」 照「…」ギロッ 咲「ううっ!」ビク 照「……はぁ」 照「帰る」スタスタ 咲「えっ……!ちょ、ちょっと待ってよ!」 照「……」スタスタ 京太郎(えーと、なんだこの雰囲気。本当に姉妹か?さっきから姉さんの方ずっと咲を無視してやがるし) 京太郎(とりあえず引き止めないと……!) 京太郎「あの、ちょっと待ってください!」 照「……」ピタッ 照「何?」 京太郎「えっとですね……」 京太郎「逃げるのか!」 照「……」ピクッ 京太郎「白糸台のあんたが東京からここに来たってことは咲に会いに来たんだろ? ここまで来て、なんで後一歩を踏み出せないんだよ!」 京太郎「お姉ちゃんなんだろ?見てやれよ、妹の、咲の成長した姿を!」 照「……」 ナンダナンダ‐? チワゲンカ? 咲「京ちゃん……」 京太郎「手を伸ばせば届く距離にいるんだ。逃げてないでいい加減始めようぜ、お姉さん」 照「………」 照「……咲」 咲「!」ビクッ 照「私はお前が嫌いだ」 咲「……そう……だよね、知ってたよ」シュン 照「どうしてだと思う?」 咲「………」 京太郎「その、部外者があんまり口を挟みたくはないけどさ……姉妹の間で何があったんだ咲?」 咲「……えっとね」 咲「お姉ちゃんのプリン食べちゃった、てへ」 京太郎「………」 咲「辛かったよね……悲しかったよね」 咲「本当に、本当にごめんなさいお姉ちゃん」ペコリ 照「絶対に許さない」 咲「……今は、許してくれなくてもいい」 咲「でも私はお姉ちゃんと、そしてお母さんと……また暮らせる日をずっとずっと待ってるよ」 照「……」 照「……弁償してくれたら、許してあげないこともない」 咲「えっ!?」 照「早く。私の気が変わらないうちに」 咲「わわ、分かった!京ちゃん!」 咲「……あれ?京ちゃん?」 久「あら?咲とデート行ったんじゃなかったの?」 京太郎「何か色々やってらんなかったんで帰ってきました」 優希「ざまぁみろだじぇ!」ウシシ 和「こら!ゆーき!」 ―――――― ――――― 京太郎「じゃあ、お姉ちゃんとは仲直りできたのか?」 咲『うん!これも京ちゃんのおかげだよ、ありがとね』 京太郎「全くだよ……あんなくだらねーことで喧嘩しやがって」 咲『むむっ、あんなのでもウチでは死活問題なんだよ!』 京太郎「はいはい。で、お姉さんとお母さんとはまた一緒に住むんだろ?」 咲『えへへ、そうだよ。お姉ちゃんが白糸台卒業したら、こっちに戻ってくるって』 京太郎「そっか……よかった」 咲『あ!それでお姉ちゃんから京ちゃんに伝えたいことがあるって』 京太郎「え?お姉さんまだいんの?」 咲『うん、ちょっとかわるねー』 ハイ,オネーチャン 京太郎(一体何の用事だろ……?) 照『……もしもし』 京太郎「あっ、今日はどうも……」 京太郎「俺に伝えたいことがあるって聞いたんですけど、どうかされましたか?」 照『姉妹丼に興味はない?』 京太郎「は?」 照『姉妹丼に興味はないかって聞いてるんだけど』 オネーチャン!? 京太郎「……そりゃ、ちょっとはありますけど」 京太郎「ってなに言ってるんですかアナタ!?」 照『君さえよかったら、私たち二人はいつでもいいから』 ヨクナイヨ!! 京太郎「……」 照『まだ東京に帰るまで三日あるから、それまでに返事をして』 京太郎「いや、今この場で決めます」 照『……そう。じゃあどうするの?』 京太郎(姉妹丼か……) ?「こらー!京太郎、彼女との最中に他の女と電話かー!」 京太郎「ちょ、馬鹿!静かにしてろって……!」 照『………』 京太郎「す、すいません!なんかテレビの音がデカかったみたいで……!」 咲『……もしもし、京ちゃん』 京太郎「あっ……咲!」 咲『今の声、電話越しに私にも聞こえたんだけど……後ろにいるの誰?』 咲『女の子の声だったけど、京ちゃんお姉ちゃんも妹もいないはずだよね?』 京太郎「だ、だからテレビだってば!誰もいないって!」 咲『……ほんと?』 京太郎「ホントのホントだ!」 咲『うん。じゃあ、信じる』 京太郎「へっ」 咲『彼氏のいう事だもん、信じなきゃね』 京太郎「そうか………ありが」ホッ ?「隙アリ!」バッ 京太郎「っ!!よせバカ!」 ?「あー、もしもし?京太郎の"元"カノジョさんの宮永咲さんですかー?」 咲『えっ……だ、誰ですか?』 優希「分からないのか?ひどいじぇ、いっつも一緒に部室で会うのに」 咲『この声……!優希ちゃん!?』 優希「ぴんぽーん!大当たりだじぇ!」 咲『ど、どうして優希ちゃんが京ちゃんと一緒に……それに"元彼女"ってなに!?』 優希「そのまんまの意味だじょ咲ちゃん」 優希「京太郎の今の彼女は私ってことだじぇ!」 咲『……変な冗談は辞めてよ』ギリッ 優希「あーそっか、咲ちゃんは知らないんだ。そーかそーか」 咲『はっ?』 優希「京太郎が咲ちゃんと付き合った理由はなー、私に振られたからだじぇ」 咲『……どういうこと?』 優希「本ばっか読んでる割にニブいなー咲ちゃんは。要するに……」 優希「京太郎は私に振られたから代わりに咲ちゃんで妥協しようって思ってただけだじぇ」 咲『………』 優希「その証拠に私がさっき学校でちょっと迫っただけですぐ堕ちたからな!」 咲『なに……言ってるの?意味が分からないよ優希ちゃん!』 咲『京ちゃんにかわっ!』 優希「ぶちっとな」ポチ 優希「さ、続きに戻るじぇ」 ツーツーツー 京太郎「ああああ終わった……!明日からどんな顔して学校に行けばいいんだ」 優希「安心しろー!京太郎は私が守ってやるからなー!」 京太郎「はぁ……」 ―――――――― ――――――― 咲「………」ゴトッ 照「……?」 咲「………」 照「咲、携帯落としたよ」 咲「……お姉ちゃん」 照「?」 咲「私も、白糸台に行っていいかな?」 照「え?急にどうした?」 咲「ダメかな?」 照「ダメじゃないけど。それじゃお父さんが……」 咲「私たち二人が説得すればお父さんもお母さんもまた一緒に暮らしてくれるよ」 咲「ね、お姉ちゃん?」ツー 照(血涙……!?) 照「咲、おまえ……!」 咲「なに?お姉ちゃん」 照「……いや、なんでもないよ」ガバッ 咲「わわ!どうしたの急に抱き付いてきて?」 照「ごめん、ごめん……咲」ガバッ 咲「お姉ちゃん?なんで謝ってるの?」 照「私はいなくならないから……」 咲「あはは、変なお姉ちゃん」 ―――――― ――――― 京太郎(あの本屋で別れた日以来俺は咲とは会わなかった) 京太郎(そして咲が転校したのを知ったのはあの優希と二股かけてることがばれた日から一週間後のことだった) ―――――― ――――― 京太郎「インターハイ……清澄は2回戦敗退、準決勝は永水と宮守か」 久「ごめんなさい、全ては削られた私のせいよ。どんなことも甘んじて受け入れるわ」 まこ「よせ。あんただけのせいじゃない、うちらがまだ未熟だったって話じゃ」 優希「終わっちゃったじぇ……インターハイ」グスッ 和「終わってしまいましたね……」 まこ「……あんたバケモンいるとか聞いてなかったけの」 優希「きょうたろぉぉぉぉ!!」ビエーン 京太郎「よしよし」ナデナデ 京太郎(もしあそこで咲がいれば……勝てたんだろうな) 京太郎(白糸台の大将が2回戦で3校同時に飛ばしたって聞いたけど……もしかして) 久「まぁ、負けちゃったのは残念だけど……せっかくだし和と私の個人戦まではゆっくりしましょうか」 まこ「それがええ。まだあんたら二人の夏は終わったワケじゃないけぇの」 京太郎(しばらく東京にはいられるみたいだな) 京太郎(せっかく東京にきたんだし、観光でもしようかな) 京太郎「ほら、おいしいタコスの店連れってやるからもう泣きやめって」 優希「な、泣いてなんかないじぇ!」ゴシゴシ 京太郎「そんな顔ぐしゃぐしゃにして説得力ねーって」 優希「うるさいうるさい!さっさと連れてけー!」 京太郎「了解しましたよっと、お姫様」 京太郎「……ってことですいません、ちょっと出てきますね」 久「うん。それはいいけど、日が暮れるまでには戻ってくるのよ」 まこ「ここで迷子になったらわしらでも探しきらんけの」 京太郎「はい」 和「………」 京太郎(和には相変わらず無視されたままか……) ――――――― ―――――― 優希「うまいじぇーーー!!!」バクバク 京太郎「切り替え早いな……」 優希「当たり前だー!タコスこそが私の力の源だじぇ!」 優希「よくこんなおいしい所知ってたな京太郎!」 京太郎「事前に調査してたんだよ。お前が喜ぶだろうと思ってな」 優希「っ!」カァァ 優希「きょ、京太郎のクセに生意気だじぇ!!」 京太郎「おいおい。彼女の為に一肌脱ぐのは当然だろー」 優希「うるさーい!!」 淡「ねぇ見てサキー!バカップルがいるバカップルが!!」 咲「……」 淡「あれ?ひょっとしてあの制服………前にサキがいた高校の」 咲「行こう、淡ちゃん」 淡「あ、でもひょっとしたらサキーの知り合いかもよ!」 咲「あははは。何言ってるの淡ちゃん」 咲「あんなの知り合いでもなんでもないよ」ニコッ まこ「一人で部屋に泊まらせてすまんのう」 京太郎「仕方ないですよ。流石に男の俺が女子がたくさんいる部屋に泊まるわけにはいきませんし」 優希「それじゃ私と一緒に寝るか京太郎!」 京太郎「はは、そしたら朝まで寝られなそうだからやめとく」 優希「私は一向に構わーん!」バッ 久「はーい、そこまで」グイッ 優希「ぐえっ!」 久「お盛んなのは分かるけどね……そういうのは長野に帰るまでお預けよ優希」 優希「うう……部長が言うなら仕方ないじょ」 優希「それじゃ京太郎、また明日」 京太郎「おう。おやすみ優希」 まこ「じゃあの」 久「おやすみなさい須賀君」 京太郎「部長に染谷先輩、お疲れさまです」 京太郎「……さて、と」 京太郎「優希も寝たしこれからゆっくり東京見物でもするか」 京太郎「ソープにでも行くか」 京太郎「東京来てからずっと優希が横にいるから溜まるモンも溜まるってもんだ」 ―――――― 京太郎「ついに来ちまった。憧れの吉原」ドキドキ 京太郎「日本一の風俗街なんだ……そりゃもうすげえんだろうな」 ソコノオニイサーン,ウチドウデスカー? 京太郎「え?」 コッチノガイイデスヨー? 京太郎「おおう……どちらも素晴らしいおもち」ゴクッ 京太郎「どっちもいいなぁ、これは悩むぜ」ニヘラ ?「………」ジーッ 京太郎「………」 ?「………」ジーッ 京太郎(な、なんだ?後ろから視線を感じるけど) 京太郎(気のせいか……?) 京太郎「っ!」バッ はやり「はや?」 京太郎(やっぱり…!なんか視線感じると思ったんだよ!) 京太郎「あの、俺になにか用事ですか?さっきからずっと見てるみたいですけど」 はやり「んー……別に用事ってほどじゃないんだけどね」 はやり「インターハイの会場で見かけた高校生がなんでこんな所にいるのかなーって思って」 京太郎「げっ!」 はやり「はやりの記憶違いじゃかったらだけどね☆」パチッ 京太郎(お、俺のこと知ってんのかこの人……まさかインハイ会場で見られててたなんて) はやり「キミ高校生だよねー?こんな時間にこんなところにいたら補導されちゃうよー?」 京太郎「ほっといてくださいよ。あなたには関係ないでしょう?」 はやり「関係大アリだよ!はやりは牌のおねえさんなんだから」 京太郎「何だよ牌のおねえさんって……」 京太郎「じゃあなんだよ?アンタが代わりに相手してくれるのか?」 はやり「はやっ!?」 はやり「はぁ……仕方ないなー」 はやり「そこまで頼まれたら断るわけにはいかないよね☆」 京太郎「え゛っ」 京太郎「い、いや……俺冗談で言っただけなんですけど」 はやり「そんなに遠慮しなくもてもいいって。さ、いこっ」グイッ はやり「こんなに可愛くて若い子ならはやりも大歓迎だよー」グイグイ 京太郎「ちょ、ちょっと!待って!」ズルズル 京太郎「誰か!おまわりさーん!!」 はやり「いいの?おまわりさん呼んじゃって?」 京太郎「へ?」 はやり「高校生のキミがこんな時間にこんな所歩いてたら間違いなく問題になるよねー」 はやり「インターハイ中に警察沙汰起こした学校って、出場停止になっちゃうらしいしさ」 はやり「怖いよねー☆」 京太郎「………」 京太郎(お、俺のせいで和と部長に迷惑が……?いや、それは絶対ダメだ!) 京太郎「………分かりました」 はやり「呑み込みが早くて助かるよー、じゃあいこっか☆」 はやり「んー……もっと強くしてもいいんだよ?」 京太郎「こ、これでも十分強くしてます!」パンパン はやり「えー、嘘だよね?これで?」 はやり「ひょっとしてキミ初めてなの?」 京太郎「違いますよ!」パンパン 京太郎(咲と優希は小柄で胸が無かったから動きやすかったけど……この人全身ムチムチしててヤバイ!) はやり「はやりこんなんじゃ全然足りないよ……動くの交代しよっか?」 京太郎「えっ?」 はやり「私が上にのっかってあげる☆」スッ 京太郎「いや、そ、それは……!」 はやり「んっ……」ズボッ 京太郎「っぁぁああああ!!!」 京太郎(こ、これは……!咲や優希とは違う大人の締りが……ううっ!) はやり「ああ、コレすごくいいよ!はやりもハまっちゃいそう!」 京太郎「も……もうちょっとゆっくりお願いします」 はやり「無理だよー!そんなの絶対に無理に決まってるじゃん!」 京太郎「ああああ……」 京太郎(ヤバいってコレ、このままじゃ…全部搾り取られる!」 ―――――――― ――――――― チュンチュン はやり「今日はありがとう、はやりとっても楽しかったな」テッカテカ 京太郎「そうですか」ゲッソリ はやり「もう帰ってもいいよー。キミが居なかったらみんな心配するだろうし」テッカテカ 京太郎「……はい」ゲソー 京太郎(もう朝の7時……帰っても寝る時間もねぇな) 京太郎(帰ってから何しよう……) 京太郎「優希」ゲソー 優希「ど、どうした京太郎……顔がゾンビみたいになってるじぇ」ビクッ 京太郎「今から俺にお前にタコスパワーを分けてくれ……頼む」 優希「えっ!」 優希「……で、でもそれは長野に帰るまでお預けって部長に」ゴニョゴニョ 京太郎「ダメか?」ウルウル 優希「ううっ……」 優希「……仕方ないな。そんな眼で見つめられると断れないじぇ」 京太郎「優希!」パァッ 優希「ただし部長には秘密!秘密だからなー!」 京太郎「分かってるって!じゃあ、ホテルだと部長達に見つかるかもだから外でヤろうか」 優希「外って……まさかお外か?それはまだ早」 京太郎「それじゃ行くぞー」ヒョイッ 優希「あっ!?こ、こら!離せこの駄犬!!」ポカポカ 京太郎「はは、照れんな照れんな」 京太郎「コレだよ!やっぱお前みたいな身体が一番なんだよ!!」パンパン 優希「きょ、京太郎!もっと優しくしろぉ……!」 優希「あと声がデカいじぇ!」シーッ 京太郎「んなこと言ったって……ああ締まる締まるっ!」 優希「もしこんなとこ誰かに見られた生きて行けないじょ……」 京太郎「大丈夫だって、もしそうなった時は俺が一生お前を守るから」 優希「じょぇっ!?……い、犬のクセにうるさい!」カァァ 京太郎「あー、気持ちよかった。やっぱ相手がムチムチかどうかよりも相性なんだよな」テッカテカ 京太郎「優希は風呂に入りにホテルに戻ったけど……さてこれからなにしようか」 京太郎「あいつがあがってすぐ食べれるように、タコスの作り置きでもしとくか」 京太郎「俺のわがままで付き合わせたんだからこのぐらいはしとかねーとな」 京太郎「"優希へ とっても気持ちよかったです、ありがとう。よければ食べてください 京太郎"」 京太郎「書置きはこんな感じでいいか」 久「へぇ、何が気持ちよかったって?」 京太郎「そりゃ優希の……っておわぅ部長!!」 京太郎「どどどうしてこんな所に!?」 久「それはコッチの台詞よ。あなたが私たちの部屋に入ってくところが見えたから、気になるのは当たり前でしょ」 京太郎「あ、あはは……!それもそ、そうですよね」 久「……見た感じこのタコスを優希に作り置きに来たってところかしら?」 久「だとしたらまったく……いい彼氏じゃない!」バシン 京太郎「いって!」 久「このタコスは優希に渡しとくから、ほらでてったでてった。これから美穂子たちがくるんだから」 京太郎「は、はい……失礼しました」 久「………」 久「……どうしてその優しさをもっと咲に向けてあげなかったのかしら」 ―――――――― ――――――― 京太郎「暇だな……何もやることねぇ」 京太郎「俺も個人戦に出てたらちょっとは忙しかったのかな」 京太郎「そういえば咲のいる学校もインハイに参加してるんだよな」 京太郎「確か今日の準決勝にも………あったこれだ。"白糸台高校"」ペラッ 京太郎「……よし、名目上は清澄の偵察ってことしにしといて咲とお姉さんの様子でもこっそり見に行くか」 ――――― ―――― 菫「今日の相手は全国ランキング2位の千里山と北部九州最強の新道寺……そして古豪の阿知賀女子だ」 淡「へー、その三つって強いのー?」 菫「それぐらい自分で調べろ」 淡「ぶー!菫先輩のけちんぼー!」 淡「まぁ、相手がどんだけ強くても関係ないんだけどね!でしょ?テルーにサキー?」 咲「………」ペラッ 照「………」ペラッ 淡「……ってまた二人とも本読んでるし。こらー!二人ともミーティング中だぞー!」 咲「あっ……ゴメンね淡ちゃん」 咲「でも大丈夫だよ、そんなに心配しなくてもちゃんと結果は出すから」 照「このミーティング自体が無駄な時間だと思うけど」 菫「なかなか言ってくれるなお前達。特に妹はお前に似てきたようだな照」 照「そう?」 菫(まぁ、現に結果を残してきてるわけだから口出しできないのが現実だが……) 京太郎(よかった……元気そうだな咲。本の虫は相変わらずみたいだけど)フムフム 京太郎(お姉さんともこっちの連中とも仲良くやれてるみたいだし、退散するか) ガチャッ 京太郎「……!!」ビクッ ガチャッ 京太郎「!!」ビクッ 京太郎(やっべ!どっかに隠れねーと…!) 京太郎「……」キョロキョロ 京太郎「…」キョロ 京太郎(うわああああどこにも隠れるとこねぇ!) ?「……ん?」 京太郎「………」 京太郎「……えーと、その、ありがとう」 桃子「いいっすよ別に。たまたま通りかかっただけっすから」 桃子「あの人たちに見つかるとまずいことでもあったんすよね?」 京太郎「まぁ、な」 京太郎「ところであなたは確か……東横さんだっけ?鶴賀の」 桃子「そうっすけど……よく覚えてたっすね」 京太郎「え?」 桃子「あ、ごめんないさいっす。男の人で私の事覚えてる人って中々いないからちょっと驚いてしまったっす」 京太郎「はは……そりゃ覚えてるとも」 京太郎(だってこんなに可愛くて胸もデカいしな) 桃子(むむ、なんか身の危険を感じるっす) 桃子(助けてあげたはいいけどこの人なんか怪しかったし……) 桃子「あの、それじゃ私はこれで失礼するっすね」 京太郎「ちょっと待って。せっかくだから何か御礼でも……させ……」 京太郎「……あ、あれ?あの子どこ行った?」 桃子(残念っすけどステルス状態の私は加治木先輩以外には見つけれないっすよ) 桃子(それじゃさらばっす清澄の雑用さん) 京太郎「ほえー……あれが噂のステルスモモってやつか」 京太郎「あんだけスタイルよかったら見逃すことなんかねーって県予選の時は思ってたのになぁ」 京太郎「ま、でも助けてもらったことはありがたかったし今度改めてお礼でも言うか」 ―――――― ――――― ―――― 京太郎「はっ!!」ガバッ 京太郎「………」 京太郎「え………夢?今までの全部。夢?」 京太郎「っていやいや待て!あんなにリアルな夢あるわけがねーだろ……!」 京太郎「携帯携帯っと」スッ 京太郎「今日はインハイ真っ最中だし、8月のはずだよな」ピッ 咲「なにが嘘なの京ちゃん?」 京太郎「!?」クルッ 咲「うわっ!ど、どうしたのそんなすごい顔して?」 京太郎「……咲?」 咲「へ?私がどうかした?」 京太郎「お前ホントに咲か!?」ガタン 咲「わわっ!」 まこ「んんー?一体なんじゃ騒がしいのう」 久「突然爆睡しだしたと思ったら急に暴れ出したわね、彼」 咲「どどど、どうしたの京ちゃん!?」 京太郎「……あっ」 和「あの、どうかしたんですか須賀くん?」 京太郎「………いや、ちょっと寝ぼけてただけだよ」 京太郎(ああ、思い出した……優希にさっき告白されて悩んでてそのまま寝ちまったんだ俺) 京太郎「すまん咲、驚かせちまったな。みんなもごめんなさい」パッ 咲「はぁ」ホッ 咲「もー、脅かさないでよ京ちゃん……一瞬びっくりして漏らしちゃいそうになったよ」ボソ 京太郎「ホントゴメンって」 咲「だーめ、許してあげない!今日は罰として……」 咲「京ちゃんには夕飯の買い物と料理の手伝いをしてもらいます!」 京太郎「へっ?」 咲「もちろん食べるのも一緒だよ!」 京太郎「……ははっ」 京太郎「そんなことならお安い御用だよ、咲」 咲「えへへ、やった」 まこ「かーっ、若いモンはええのう!」 和「どこの親父さんですかまこ先輩は……」 久「私からすればまこも若いわよ」 久「あ、二人とも今日はもう帰っていいわよ」 咲「えっ?」 久「今日二人で仲良くご飯作って食べるんでしょ?なら、いつまでも縛り付けてるわけにはいかないじゃない」 京太郎「でもそれは流石に……」 久「はーい!意義は受け付けないわ」 久「部長命令、帰った帰った」グイグイ 京・咲「えええええ!?」 バタン 咲「………」 京太郎「………」 咲「い、行こっか!」 京太郎「そ…そうだな!」 優希「………」ジーッ 和「二人とも行ったことですし、そろそろ出てきたらどうですかゆーき?」 ガチャン 優希「………」 ギィィィ 久「須賀くんのことボロボロ言っておきながら、なんだかんだで結局好きだったんでしょ?あなたも」 優希「……ち、ちがうじょ!」グスッ まこ「まぁ、あれだけ言っとけば好意に気付かれること無かったよーじゃけど、ちょいと言いすぎたのう優希」 和「まったく素直じゃないですね、ゆーきは」 優希「だ、誰があんな変態なんか好きになるか!」 優希「咲ちゃんも咲ちゃんだじぇ!もうどうなってもしらーん!しらんったらしらん!!」 久「優希って意外にそーいう系のネタ本気で嫌うのね」ボソ 和「言う分や見る分には構わないんですけどね……いざ自分が対象になると」ボソ 優希(うう…悔しい…悔しいじょ……でも) 優希(咲ちゃん、お幸せにだじぇ……) 咲「今日ね、お父さんに京ちゃんの事紹介したいんだ」 京太郎「えっ」 咲「そろそろ隠し通すのもきつくなってきた頃だし……ね?」 京太郎「お、おう……!そうだな!」ハハ 京太郎(マジかよ……前に会った時は友達って思われてただろうし特に気にしなかったけど……) 京太郎(彼氏ですって言ったらまた別の話だよな。なんて自己紹介すればいいんだ) 界「お帰り、咲」 咲「ただいまお父さん」 界「ん?スーパーにでも寄ってきたのか?」 咲「うん。後でご飯作ろうと思ってさ」 咲「それでねお父さん……」 咲「今日はお父さんに紹介したい人がいるの」 界「……?」 咲「京ちゃーん」 ガチャッ 京太郎「お、おじゃまします」ペコリ 界「……須賀くん?こんにちは、咲がいつも世話になってるな」 京太郎「そうなんですよまったくー!コイツホント……」 咲「……ほら、京ちゃん」ボソッ 京太郎「あ、すまん………ごほんっ!」 界「?」 京太郎「従二位勲一等伯爵、須賀京太郎です!」 界(外務大臣……?) 京太郎「単刀直入に言いますが娘さんを僕にください!!」 界「えっ」 界「幸せにしてくれるならいいよ」 京太郎(軽っ!?) 界「ただし一つ約束してくれ」 京太郎「え?」 界「絶対に俺と母さんのようにはならないでくれ……それが約束だ」 界「子どもができた際に照や咲のような思いだけはさせないでほしいんだ」 咲「お父さん……」 京太郎「……」 京太郎「そんな約束はできませんね」 界「……なんだって?」 咲「っ!?」 京太郎「だって……」 京太郎「俺と咲が別れるなんて、絶対にありえないは話ですから」ナデナデ 界「……」 咲「うう……」カァァ 京太郎「ありえないのにそんな無駄な約束しても仕方ないですよね?」 界「……なるほど、十分よく分かった」 界「確かにキミの気持ちを受けったよ」 京太郎「そ、それじゃ……」 界「咲をよろしく頼むな」ペコリ 京太郎「咲……俺が、守ってやるからな」スピー 京太郎「一生……守って……」ムニャムニャ ギャハハハハ!! オイミンナー!スガナンカ オモシレーネゴト イッテルゾ!! ハハハ!! 咲「…」カァァァ 教師「はっはっは。宮永は須賀に愛されてるなー」 教師「でも授業中に寝るのは感心しないな、須賀ァ!!」バシン 京太郎「!?!?」ビクッ 京太郎「!?」キョロキョロ 京太郎「……咲?」 教師「愛しの宮永ならそこで顔真っ赤にして顔伏せてるぞー」 教師「とりあえずそのままたってろー」 ハハハハハ!! バカヤバカ! 京太郎(……ひょっとして今のもゆめだったのか)ガタッ 京太郎(あれ?でもその前の夢の中の夢も夢だったような) 京太郎(じゃあもしかしてこれも夢?) 京太郎(あれ?あれあれあれ?) 京太郎(……もうわっかんねー、全部わっかんねーや) 咲(京ちゃんの……ばかぁーーーーーー!!!!) カンッ!!
https://w.atwiki.jp/sangamaki/pages/85.html
. やえ「ここが西東京の名門、白糸台高校」 やえ「推薦は嫌だったから一般入試で入ったのだが」 やえ「ここに、いるんだよな……」プルプル やえ「ふっ、私としたことが、武者震いが止まらないとはな」 やえ「まずは……掲示板にクラスが発表されているんだっけな、いってみよう」 ワイワイガヤガヤ やえ「私のクラスは……B組か、また何とも微妙な」 菫「すまないが、自分のクラスが分かったのなら退いてくれないか?」 やえ「あ、ごめんなさい」 やえ(長い髪に端正な顔立ち……胸も私よりいくらか……) やえ(いやいや!私には麻雀がある、こんな人にも負けるはずがない!) やえ(……豆乳飲んでるんだけどな) やえ(教室に行くとするか) 【廊下】 やえ(受験のときはわからなかったが、やはり人が多いな) やえ(この中の何人が麻雀部に入るのだろうか……) やえ(っと、B組はここか) やえ「あっ」 菫「ん?」 菫「君はたしか掲示板の前にいたな」 やえ「そっちこそ」 菫「これからよろしく、名乗る必要は……今はないな」 やえ「よろしく」 照「あ、あの、通れないんですけど……」 やえ「!?」ゾクッ 菫「ああ、すまない」 照「ありがと」 菫「どうした?青ざめた顔をして」 やえ「今の人……」 菫「今の人?少しだけ見覚えはあるが……あの人がどうかしたのか?」 やえ「いや、何でもない」 やえ(あの雰囲気……まさか、な) やえ(自己紹介は明日のホームルームでやるのか) やえ(麻雀部入部希望者は部室に来いと言われていたが) やえ(ここでよかったんだよな) やえ「あっ」 菫「ん?」 菫「このやりとり二回目だぞ、何をしているんだ、こんなところで……小走さんだっけか」 やえ「部の招集でちょっとな」 菫「部、ということは小走さんも麻雀部に?」 やえ「弘世さんもなのか?」 菫「好きなだけさ」 やえ「とりあえず入ろうか」 バタム! やえ「失礼します!」 菫「失礼します!」 監督「はい、よろしく」 監督「これで62人目、2クラス分ってところか」 監督「推薦組が1人いないけど、もういいかな」 監督「これからこの部の簡単な説明をするわ」 監督「知っての通り、ここ白糸台高校麻雀部はインターハイ常連、故に部員は多く、三年生、二年生は合わせて約100人ほど」 監督「ここにいる貴女たち全員が入部するとして、一軍から八軍までの軍わけを行います」 監督「これから行う対局で貴女たちの今後が決まるから、頑張ってちょうだい」 監督「それじゃあこれからくじを引いてもらうわ」 やえ(流石は名門、最初からシビアだな) やえ(そういえば、まだ宮永照は来ていないのか……) 監督「はい!卓についたら始めてー」 やえ「よろしくお願いします」 やえ(ここまで十戦十勝、次は……) やえ「弘世さんと打つのか」 菫「よろしく頼む」 やえ「こちらこそ」 バタム やえ「ん?」 照「す、すみません、遅れました」 監督「あら、ようやく登場ね」 監督「あの卓に入って打っていて」 照「わかりました」 ネェアレッテ ヤッパリ デスヨネ ザワザワ 照「よろしくお願いします」 やえ「よろしく」 菫「き、君は……」 照「?」 菫「……いや、何でもない、始めようか」 東1局 やえ「ロン、12000」 照「はい」 やえ(守りは薄いみたいだな、避けると思ったのだが) 菫(この人が、宮永照) 照「…………」ゴッ やえ「!」ゾクッ やえ(なんだ!?宮永さんの気迫が、より一層強くなった) やえ(それに、なんだこの不思議な感覚は……) 照「オーラス、私から」トン やえ(オーラスまでやられたい放題、なんなんだよ一体!)トン 菫(まったく射抜けない、どうなってるんだ)トン 照「…………」ゴッ やえ「!」ゾクッ 菫「!」ビクッ やえ(何だ今の、東1局のときよりも強い気迫) やえ(何が起きてるんだ?) 照「…………」ゴオッ やえ「っ!」 やえ(また!) ギギギー 照「…………」 照「リーチ」 菫(2巡目リーチ!?) やえ(いくらなんでも速すぎないか?) やえ(とりあえず、オタ風の西を)トン 照「ロン」 照「48000」 やえ「なっ……!?」 やえ(国士無双、西の単騎待ち!?) やえ(ただの偶然なのか……?) やえ(結局、私は弘世さんと同じ四軍からのスタートとなった) やえ(宮永照……昨年のインターミドルチャンピオン) やえ(あの気迫は、一体何だったんだろうか) やえ(今わからなくても、これから何回も打てるんだし、いいか) やえ(白糸台高校……私はここで、王者となる!)
https://w.atwiki.jp/kyoutarouherlame/pages/53.html
こちらは、同じくアニキャラ個別内にある「京太郎×咲スレ」に投下されたSSなどを共有・保管させて頂いているページです→【咲-Saki-】京太郎×咲スレ7【ほっぺつんつん】 1-2スレ目 3スレ目 4-5スレ目 6スレ目 7スレ目 これ以降のSSは下のリンク参照 つ咲-Saki- 京太郎SSまとめ test -- (管理人) 2009-12-01 16 36 48 編集完了。リンク切れなどありましたら教えてください -- (管理人) 2009-12-02 17 36 31 いつもありがとうございます -- (名無し) 2009-12-02 19 26 42 「京×咲+良い嫁さんさなァのヤツ」 は誤字? -- (名無しさん) 2009-12-04 06 20 25 ごめんなさい。修正しときました -- (管理人) 2009-12-04 23 14 12 「大将戦」 みたいな本編再構成モノが見たいといってみるテスト -- (名無し) 2009-12-21 20 55 26 管理人いないの?もう3つぐらいSSたまってるけど -- (名無しさん) 2009-12-22 12 24 59 遅くなってすみません。最近多忙なため、ついつい後回しにしてしまいました。ちなみにこのページは誰でも編集できるので、私が更新遅れてる時はどなたか代わりに編集していただけると助かります -- (管理人) 2009-12-26 00 32 45 京咲さいこう -- (名無しさん) 2012-09-23 19 21 03 名前 コメント すべてのコメントを見る #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (京太郎×咲スレ共有SS)
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/725.html
これから連休だ、前々から計画していたことを実行しよう。 みんなに会えるのが楽しみで仕方ない。 例えみんなが『俺達』のことを忘れていても、顔だけでも見ておきたい。 まずは何所に行こうか。 そうだ、照ちゃんに会いに行こう。 長野から始発で鈍行に乗って。 東京まで行ったらどうしようか…… 遠目から顔だけ見て、帰ろうかな。 でも顔見ちまったら、声掛けたくなるよな。 照ちゃんが覚えているかなんてわからないのにさ。 白糸台の校門までくる。 凄く懐かしく感じる、本当は数日も経っていないし、そもそも今の俺は通っていないのに…… 校門で感慨に耽っていると、見知った顔を見つける。 あまりに嬉しくて、気付いたら、声を掛けていた。 京太郎「菫さん!」 菫「?」 菫「誰だね君は?」 やっぱり覚えていなかった、覚悟はしていたはずなのに苦しい。 やはり俺だけが知っていて、相手は覚えていないのは辛いな…… まるで俺だけが世界に取り残されたみたいだ。 せめて、照ちゃんが元気にしているかだけ知りたかった。 照ちゃんが元気でいるなら、それだけで良かった。 だから菫さんに聞いてみた、本人同士しかわからないような聞き方で。 京太郎「失礼しました、長野の清澄高校からやってきたんですけど……」 菫「?はぁ……」 京太郎「宮永家のポンコツの虎姫は元気にやってますか?」 菫「?」 京太郎「飲み物買いに行ったままどっかにいったりしませんか?」 菫「!?」 菫「君は一体……」 京太郎「ただの……麻雀部員ですよ、宮永家と縁がある……特に妹の咲の方に縁がある、ね」 菫「そうか、少し待ってくれるか?本人に聞いてくるのと他校の人間を入れるためにはちょっと手間が掛かるので。」 京太郎「それでも、照ちゃんほど手は掛からないでしょう?」 菫「ふっ、違いないな……」 菫「しかし、君がどれほど照の事を知っているのか知らんが、変な事はするなよ?」 京太郎「そんなに変な事をするように見えますか?」 菫「さてね、しかし不思議なやつだな。」 菫「まるで初めて会った気がしない。」 京太郎「……どこかで会っているのかも知れませんよ?」 京太郎「それか、苦労しているもの同士波長が合ったのかもしれません。」 菫「ふふっまぁ、そういうことにしておいておこう。」 やがて入る事を許可されたので、部室に向かう。 会いたい人に、まっすぐ、まっすぐ、足が向かっていく。 まるで帰巣本能に導かれるように…… そして部室の扉に手を掛けると、ある言葉を思い出した。 『京ちゃん、頑張って。』 『ようこそ、猛獣がひしめきあう麻雀部へ。』 京太郎「今更だな、猛獣なんて一杯見てきたのにさ……」 菫「君はなぜ……ここにまっすぐ来れたんだ?」 菫「そして何故君は"それ"を口にした……」 京太郎「多分信じられないですよ。」 戸を開き中にいる人に一瞥する。 本当に懐かしい。 でも懐かしい面々は、見知らぬ顔に怪訝な顔をする。 京太郎「やっぱり、か。」 照「あの、他校の方でしょうか?それとも学校見学でしょうか?」 これが一番応えた。 照ちゃんが他人行儀な態度で、外行きの営業スマイルで、俺に話しかけてくる。 でも、同時に元気でよかった思ってしまう俺がいた。 手っ取り早く済ませるために、一言だけ伝える。 京太郎「俺と勝負しないですか?照さん。」 照「……いきなりなんですか?」 京太郎「単純に本気で打ちたいんです、貴女と。」 淡「な!?そんなの受ける事無いよ、テルー!?」 照「理由は?」 照ちゃんの語気が強まった、敵としてみてくれたようだ。 敵、敵か、だが今はそれで構わない。 京太郎「打てば解る。」 照「卓に着こうか。」 照「ルールはどうする?」 京太郎「"いつも通り"二人打ちで。」 照「?」 照「そうだ、名前を聞いておこう。」 京太郎「須賀、須賀京太郎……」 京太郎「今はそれだけでいい。」 京太郎「そうそう、照魔鏡を使うなら、使った方が良いですよ。」 照「…………」 京太郎「俺も本気で行くんですから、照魔鏡を見せてください。」 これは賭けだ、照ちゃんが照魔鏡を使わなかったらどうしようもない。 それでも使うと信じている。 何故なら十年も付き合ってきたんだ。 だから照ちゃんを信じる。 賽が回る、牌が出てくる。 配牌を見て、照ちゃんをみる。 そして鏡が出るのを確認したら、こっちも照魔鏡を出す。 俺の真後ろには照ちゃんの照魔鏡が。 照ちゃんの真後ろには俺の照魔鏡が。 それぞれ合わせ鏡になって、お互いを何重にも映し出す。 そうする事で照ちゃんは自分のことも、俺の事も照魔鏡で見ることになると思ったからだ。 さぁ、照ちゃん俺の正体は?そして照ちゃんの正体は見えたか? ――照視点―― なんなのだろう、この男は、いきなり入ってきたと思えば、いきなり勝負を吹っかけてくる。 本気を出せと言われたので、照魔鏡を出せと言われたので出してみたが…… この男は私に対して照魔鏡を出していた。 一対の照魔鏡。 聞いたことも見たこともなかった。 ましてやこの男のことも、私を映す鏡など…… 鏡は真実を映し出す。 鏡は本性を映し出す。 鏡は正体を映し出す。 その鏡が告げている、『この人は私が最も大切にしていた人だ』と。 その鏡が告げている、『この人は私に最も近くに居た人だ』と。 その鏡が告げている、『この人は私が最も想っていた人だ』と。 知っているのに知らない、知らないのに知っている。 頭ではわからないのに、心が知っている。 心だけが知っているんだ、『この人は最も掛け替えの無い、愛した人だ』と。 そしたら自然に涙が出てきた。 涙が止まらない、止まらない。 心が理解してしまったのだ。 もうどうしようもないくらい泣いていた…… 照「……ちゃ……ん……」 京太郎「……照ちゃん。」 菫「なんでだ、照……」 菫「なんでお前はそんなに辛そうな顔をしているんだ……」 菫「須賀!お前が照を泣かしたのか!?」 菫が私の好きな人に掴みかかっている。 違う、違うんだ、菫……その人が帰ってきて嬉しいんだ…… もう会えない人と思っていた、そんな別の私が告げている。 照「や……めて……菫……」 菫「しかし、照……」 照「京……ちゃんは……悪く、ないの……」 京太郎「!……」 京太郎「よかった……」 照「菫、ゴメン、京ちゃんと二人きりにして……」 菫「…………わかった、ただし何かあったら直ぐに呼んでくれ。」 照「うん……。」 菫がみんなを引き連れ部室から出て行く。 今は京ちゃんと二人きりだ。 京太郎「照ちゃん……久しぶり……かな?」 照「なんで、なんで私と会えたの?」 止まらない涙は止めないで。 弾む心はそのままで愛した彼の言葉を待つ。 「だってさ、約束したから……」 「約束を果たしてもらわないと。」 「……咲との仲直りのこと?」 「それもあるけど、今は枕が欲しいかな。」 「そっか、またしてあげるって言ったもんね……」 そうして私たちは膝枕をするという約束を果たしながら。 涙を零しあっていた。 【合わせ鏡の照魔鏡】 京太郎(白糸台)・照「「もういっこカン!」」 俺は今、岩手に来ている、俺は照ちゃんに勇気をもらった。 だからもうちょっと頑張れる……頑張れる気がした。 そして宮守女子高校に着く、俺が居たときとはやっぱり違うんだな。 ともかく校門を潜って麻雀部に顔を出す。 ???「ダレ?」 京太郎「エイスリン先輩?」 エイスリン「?」 京太郎「あ、あの俺、ちょっとここに用事があって。」 エイスリン「オキャクサン?」 京太郎「まぁ、そんなところです。」 本当はお客さんと言うのも憚られる、元々俺はここにいたので客と言うより家人に近いのだが…… 塞「あれ?誰?」 エイスリン「オキャクサン!」 塞「そうなの?」 俺を支えてくれた人が居た。 京太郎「須賀京太郎です。」 塞「初めまして、臼沢塞です。」 京太郎「……こちらこそ。」 照ちゃんでわかっていたはずなのにな。 やっぱり辛いな…… 塞「あの、どこか具合が悪いんですか?」 京太郎「……いえ、大丈夫ですから。」 シロ「ん……」 塞「あ、シロ。」 京太郎「こんにちは。」 俺が迷った時に道を教えてくれた人が居た。 多分この人も覚えていないだろう、何よりそういうことが煩わしいと思うような人だ。 シロ「ちょっと失礼……」 この人はいきなりこっちにやってきて、こともあろうか俺の背中に登り始めた。 塞「ちょ!?ちょっと!?シロ!?」 シロ「凄くフィットする……」 京太郎「……そうですか。」 体のダル気はどうやっても変わらないようだ。 まったくこの人と来たら…… 半ば呆れ気味だったが嬉しかった。 心のどこかに、体の記憶に、少しでも俺のことが残っていたのかと思うと。 胡桃「こんにち……わっ!?」 トシ「おやおや珍しい人が来たもんだねぇ。」 豊音「えー?どうしてシロが男の人に乗っているのー?」 俺と手を繋いでくれる人が居た。 京太郎「その、成り行きで?」 シロ「私の体が彼の体を必要しているの。」 胡桃「!?」 豊音「か、過激だよー!」 京太郎「ちょ!?シロさん!?誤解を招くような言い方はやめて!」 トシ「ちょっと見ない内にとんだことになっていたみたいだねぇ。」 塞「この人は熊倉先生の知り合いなんですか?」 トシ「知り合いと言えば知り合いかねぇ?」 京太郎「!?」 トシ「ただ、最近歳を取ったせいか物忘れが酷くて……」 京太郎「…………」 相変わらずよく分からない人だ。 トシ「ただあんたたちが打てば思い出すかも……」 塞「それじゃあ私が入りますね。」 シロ「ダルいけど仕方ない……」 豊音「私も打つよー!」 この人たちと打つのはいつ振りだろうか。 一緒に卓を囲んだのはいつ振りだろうか。 そんな事を思い出すより先に今を楽しんでおきたいと思ってしまった。 シロ「よろしく……」 塞「よろしくね。」 豊音「よろしくだよー!」 京太郎「よろしくお願いします。」 いつものように打ち、いつものように本気で能力を使って当たりあい。 まるであの日が戻ってきたようだった。 「「「「ありがとうございました。」」」」 トシ「どうだい?何かわかったかい?」 塞「なにか前に打ったことあるような気が……」 シロ「ダルい……」 豊音「京太郎君と打ってると楽しいよー」 胡桃「それで熊倉先生、この人は誰なんですか?」 トシ「ああ、こいつはね、私の放蕩息子みたいなものさ。」 トシ「あとついでに放浪癖もあるねぇ。」 トシ「そんな勘当同然な息子は今まで忘れてしまっていたわ。」 京太郎「ひっでぇ……」 絶対この人は最初からわかっていた。 その上でとぼけて打たせたのだ。 本当に食えない人だ…… 豊音「でも、京太郎君と打つのは楽しかったよー。」 そう言って豊音さんは椅子から立ち上がろうとしてふらついた。 気付いたら手を伸ばしていて、豊音さんの手を掴んでいた。 初めて豊音さんと会ったあのときのように。 京太郎「危ない危ない。」 豊音「あ、ありがとー」 豊音「やっぱり京太郎君はいつも私を助けてくれるんだー。」 京太郎「俺の事を思い出したんですか……?」 豊音「だって初めての友達だもん……」 シロ「おんぶ……」モゾモゾ 塞「また!?」 シロ「だって京太郎は『いつでも背中を貸す』って言ってたし。」 京太郎「!?」 京太郎「シロさん……いつから思い出してたんですか?」 シロ「さて、いつからでしょう……」 この人もなんだかんだで食えない人だった…… エイスリン「…………」カキカキ エイスリン「キョータロー!コレ!」バッ そういえばさっきからエイスリン先輩が何か描いてたな。 京太郎「これ……って。」 エイスリン「ミンナ、イッショ!」 俺を含めて宮守のみんなが道を歩いている絵を見せてくれた。 あの時描いてくれた絵と瓜二つだ。 京太郎「そうですね、みんなで帰りましょう。」 胡桃「??」 トシさんがみんなを引き連れて道を行く。 道に怖いものがあるなら胡桃先輩が隠して。 道が無いならエイスリン先輩がそこに道を描いて。 道がわからないならシロさんが道を決めて。 道に穴があるなら塞さんが塞いで。 そうやって道が続いたなら豊音さんに手を引いてもらう。 豊音さんは俺が豊音さんを救ったと思っているみたいだが…… 「京太郎君と手を繋げると、ちょーうれしいよー!」 やっぱり、救われたのは、実は俺の方だったみたいだ。 【もう一度、描いて紡いだ道】 京太郎(宮守)・豊音「「もういっこカン(だよー)!」」 やって参りました、茨城に。 正直姉さんが一番怖い。 何が怖いかって今までの多くは対局の中で記憶の断片を取り出してきたけど(数名は怪しいけど)、相手が姉さんだと洒落にならない。 下手な事をするとレジェンドされちゃう…… しかしあの人はかわいそうだったな、健夜さんに跳満直撃なんてしなければ…… うだうだ考えても仕方ないな、なるようになるだろ。 とりあえず駅の改札口から出て、家までの道を歩いていく。 家までの道程はなにも変わってない、と言うか何も無い…… ……何も無いのは慣れてるけどさ。 しかし辺りがそろそろ暗くなってきた。 やはり岩手から茨城の鈍行は無茶だったか…… 学生の身に金銭関係は結構厳しい。 それでも節約する俺ってやっぱり主夫向きなのだろうか。 そんなバカな事を考えていたら、道端で蹲っている人が居る。 酔っ払いか?と思いつつ声を掛けた、が…… 京太郎「あの、大丈夫ですか?」 健夜「あ~大丈夫です~」 やっぱり酔っ払いだった、しかも身内である。 これは酷いかなりの出来上がり具合だ。 京太郎「帰れますか?送っていきますか?」 健夜「え~おくってくれるんですか~?」 京太郎「はい。」 そう言って俺は健夜さんを背負って家まで『帰る』事にした。 とぼとぼと家までの道を歩き、うんうん唸ってる仕方ないこの人はやっぱり放っておけないオーラがある。 この先、この人に良いお相手が出来るんだろうか? 恒子さんの言葉を思い出して、あんまり深くは考えないようにした。 健夜「う~ん良い背中だ~」 京太郎「吐かないでくださいよー」 健夜「大丈夫だよ~吐かないよ~」 そんな取り止めの無い会話をしながら、背中の温かさを懐かしむ…… ――健夜視点―― こーこちゃんに付き合って相当呑んでしまった。 しかもいつの間にか誰かにおんぶされている。 この子はいつの間にかこんなに大きくなってしまって…… はて、この子とはなんだっけ? まあいいや~何か懐かしい気がするもの。 もうちょっとだけ、このタクシーの乗り心地を楽しんでおこう。 酔いが醒めたら誰だか確かめれば良いし。 京太郎「大丈夫ですか?そろそろ家に着きますよー?」 健夜「あーごめんね、大分お酒が抜けてきたみたいです。」 京太郎「そうですか、お酒は程々にしてくださいね。」 京太郎「……家に着きましたよ。」 健夜「んー?なにしてるの?」 京太郎「え、なにしてるのって……」 健夜「上がっていかないの?」 京太郎「……まだ相当酔ってますね。」 健夜「……お酒はもう抜けたよ。」 京太郎「……健夜さん。」 健夜「……京太郎君、姉さんって呼んでくれないんだー」 自然と名前を呼んでいた。 さもそう呼ぶのが当たり前のように。 「さあ上がって。」 「これから私の自慢の『弟』を両親に紹介しなくちゃいけないんだからさ……」 「……お邪魔します。」 「違うでしょ?こういうときは――」 「ああ、そうでしたね。」 『ただいま、姉さん。』 『おかえり、京太郎君。』 【ただいま・おかえり】 京太郎(小鍛治)・健夜「「最後のいっこカン」」 七つまで神のうち。 それは七歳までは体が弱く、亡くなってしまっても『神様に気に入られて連れて行かれてしまったのだ』と納得させる為に出てきた言葉。 だがここでは違う。 ここでは次代の姫様が9歳前後の時、それまで次代の姫様と深い縁を付けた七歳前後の子供に神をとり憑かせ、殺すのだ。 そうすることで、九面を降ろす際の繋ぎのような役割が出来、次代の姫様の九面降ろしを成功しやすくなるのである。 今回の次代の姫様は小蒔様、そして贄は神社近くに捨てられ、小蒔様と一緒に育てられた金髪少年だ。 無垢な笑顔を振りまく二人には申し訳ないがこれも代々伝わるしきたり故、安らかに人柱になっていただくしかない。 【とある神社の手記】 これで連休最後の場所になるが、俺は今鹿児島にある神社を探して右往左往している。 ここに関しては記憶がないから土地勘も何も無い。 ただ地図と目印さえあればいいので、目的地までそれほど苦労はしなかった。 でかい鳥居が見えて来て、それを潜って行く。 途中、人とすれ違った。 ここの巫女さんだろうか? 頑張って本殿までの道程を登っていったら声を掛けられた。 ナイスなおもちをお持ちの方でした。 「あの、参拝の方ですか?」 京太郎「ええ、ある意味墓参りですが。」 「?ここは神社なのですが……」 京太郎「ここに7歳くらいで亡くなった金髪の男の子はいませんでしたか?」 「!!……あの、一体どちら様でしょうか?」 京太郎「須賀です、須賀京太郎です、その反応を見る限り、何か心当たりがあるんですね?」 「……よく似てらっしゃいますね。」 京太郎「そうでしょうね。」 「……どうぞこちらへ。」 本殿の道程とは少しはずれて、普通の家らしき道程へと向かう。 京太郎「あの、何所へ向かうんでしょうか?」 「姫様のところです……」 京太郎「姫様?」 「姫様とは代々本家からの巫女を受け継いでいる神代小蒔のことです。」 京太郎「はぁ……それと、えーっと貴女は?」 「これは私としたことが……」 霞「申し遅れましたが、私、石戸霞と申します。」 京太郎「これはご丁寧に……」 霞「多分、姫様に会えば須賀さんの目的に沿うはずです。」 それだけ話してあとは口を噤んだ。 どうせ着けばわかるのだから。 家に着いたと思ったら石戸さんが家に入っていった。 霞「姫様お客様です。」 小蒔「はぇ?」 霞「お 客 様 で す」 小蒔「はいぃ!」 なんかやり取りがあったと思ったら誰かが家から出てきた。 これまたナイスなおもちをお持ちで…… 小蒔「この殿方がお客様ですか?」 霞「はい、ただ姫様というよりは……」 小蒔「寝れば良いのでしょうか?」 霞「はい、お願いしますね。」 神代さんが深呼吸をして目を閉じると、別人になったような気配がした。 神代さんが喋り出す、先ほどとは明らかに違う声で。 小蒔(?)「やあ、よくきたね。」 京太郎「お前か、やっと会えたぜ。」 小蒔(?)「何しに来たの?」 京太郎「なんていうか……そうだな、強いて言うなら墓参りとお礼だな。」 京太郎「お前には引っ張り上げてもらったしな。」 小蒔(?)「気にしないで、僕は君だから、だから引っ張り上げたんだ。」 京太郎「あと、なんで『俺達』と一緒にならなかったか聞いていいか?」 小蒔(京太郎)「まだこの人は安定しないからね……」 小蒔(京太郎)「だからまだ僕が付いててあげなきゃいけないんだ。」 京太郎「……いつ頃まで?」 小蒔(京太郎)「そうだね……君の寿命が尽きる前ってことは無いけど。」 小蒔(京太郎)「この人がお母さんになって、次代の巫女が育ったらかな?」 京太郎「元に戻るのは当分先だなー。」 小蒔(京太郎)「そうだね、早くお婿さん見つけないとね。」 小蒔(京太郎)「あ、でも、もしこの人に手を出したら承知しないからね?」 京太郎「うへ~剣呑、剣呑。」 京太郎「それより、お前は幸せだったか?」 小蒔(京太郎)「存在しない僕にそれを聞く?」 京太郎「それでも聞いておきたい。」 小蒔(京太郎)「……少なくともこの人の傍に居たいと思ってるよ、それだけ。」 京太郎「そっか、それならいいんだ。」 京太郎「最後にお前の墓参りに行くよ。」 「僕にお墓はないよ。」 京太郎「それでも行きたいんだ、お前は俺だからさ。」 「……好きにすると良いんじゃないかな?」 京太郎「好きにさせてもらうさ。」 小蒔「う~ん……」 小蒔「あ~おはようございます~……」 京太郎「神代さん、わざわざ、ありがとうございました。」 小蒔「いえ、私も久しぶりに会えましたので……」 小蒔「と、言いましても、顔や名前も声も、わからないのですが……」 京太郎「きっとまた、会えますよ、その男の子に。」 霞「それでは須賀さん、参りましょうか。」 京太郎「ええ。」 そう言って俺は石戸さんに連れられて本殿に向かい、お参りして帰った。 【重ならぬことを選んだ最後の一人】 京太郎(永水)・小蒔「「リンシャンツモ、スーカンツ、和了です。」」 私は彼に会うために実家に戻ってきた。 東京まで来てくれて、私の記憶を思い出させてくれた彼の為に。 彼が通う高校と彼が住む家の間で彼を待つ。 そして彼が歩いてくるのを見て、声を掛けようとした。 でも彼の隣を歩く人影を見て躊躇ってしまう。 ねぇ、なんで彼と楽しそうに話しているの? ねぇ、彼と一緒に笑い合えるの? ねぇ、なんで彼の隣を歩いているの? わかるよ、だって私たち姉妹だもんね…… 貴女の顔を見れば彼に抱いている気持ちが。 皮肉だね、好きな物、好きなこと、好きな本―― そして好きな人まで同じだなんて…… ねえ、こんなときでも、 お姉ちゃんだから、我慢しないとダメなの? お姉ちゃんだから、譲らないといけないの? 結局、彼とは会わずにすっきりしない気持ちを持ち帰る。 そうして東京に戻ってきた私は記者会見を受けるのだが、気の置けない友人には心配を掛けてしまった。 前に彼が来てくれたときに、私が泣いたら、私の為に彼に突っかかったやさしい友人。 そんな友人に励まされた。 「諦め切れるならそれでいいんじゃないか?」 「でも、諦めきれないなら妹を押しのけても、彼を振り向かせればいい。」 「お前は少し抜けているところが、私から見ても良い女だ。」 「お前が本気になれば、相手が誰だろうと振り向かせられるさ。」 諦めきれるわけがない…… 答えなんて最初から決まっていた…… ゴメンね、貴女とはまだ仲直りは出来そうにない。 だって私は譲る気なんてない。 そして貴女にも譲らせたくない。 彼は自力で振り向かせる。 彼を想う気持ちなら私の方がある。 彼と一緒に居た時間なら私の方が多い。 貴女には負けないよ。 だからこれは、私からの宣戦布告。 「私に妹はいません。」 前は貴女を遠ざける為だったけど、今回のは宣戦布告。 だって今から私たちは…… 【恋敵宣言】 どうやら恋敵は咲だけじゃない様だ。 以前、彼に会いに行った時、気付いたのだが。 妹の他に猛アタックしている女子がいた。 彼はそのアプローチに気付いてないようだが、気付くのも時間の問題かもしれない。 私は記者会見で「妹に宣戦布告」したあと、部室に戻った。 照「練習しよう。」 菫「照、お前にしては殊勝だな。」 照「別に、ただ負けられない相手が出来たの。」 菫「ふん、別に構わんさ。」 菫「淡、誠子、卓に入れ。」 誠子「わかりました。」 淡「ルールはー?」 菫「照、いつも通りでいいだろう?」 照「構わない、ただ箱下ありにして。」 菫「……わかった、始めるぞ。」 照「ツモ、1飜30符、300・500」 菫(いきなり来たか。) 誠子(宮永先輩の連荘……いかに止めるか、それが勝負所。) 淡(全然手が進まないんだけどー!) 照「ツモ、2飜30符、500・1000」 菫(やはり止まらんか。) 菫(しかし何か違和感があるな……) 照「ツモ、3飜30符、1000・2000」 菫(なんだこの違和感……) 淡(誰かテルを止めてよー!?) 照「ツモ、4飜30符、3900オール」 菫(ついに親番に入ったか。) 菫(しかも打点が一気にあがった。) 照「ツモ、5飜、4000オールの一本付け。」 照「ツモ、6飜、6000オールの二本付け。」 照「ツモ、7飜、6000オールの三本付け。」 菫・誠子・淡「「「!?」」」 菫(打点が上がってないだと!?) 菫(!そうか……今までの違和感は……!) 淡「テルーの連荘って打点上がりじゃなかったの!?」 照「今まではそうだった。」 照「大会のルールでは最高で48000に行ったらそれで終わり。」 照「ツモ、8飜、8000オールの四本付け。」 照「ツモ、9飜、8000オールの五本付け。」 照「ツモ、10飜、8000オールの六本付け。」 照「でも、それじゃ勝てない。」 照「ツモ、11飜、12000オールの七本付け。」 照「ツモ、12飜、12000オールの八本付け。」 菫「勝てない、というのは、照、お前の妹の事か。」 照「そう。」 菫「だから飜数に切り替えたのか、今まで飜数の申告なんてしなかったから違和感があった。」 照「ツモ、13飜、16000オールの九本付け。」 菫「勝ちたいのは姉としてか?打ち手としてか?それとも……」 照「ツモ、14飜、16000オールの十本付け。」 照「姉でもなく打ち手としてでもない……」 照「ただ……女として勝ちたい。」 照「だからこれは私の我が侭。」 照「だから、みんなは無理して付き合わなくてもいい。」 菫「誰が付き合わないと言った?」 照「……え?」 誠子「付き合いますよー宮永先輩の恋話とかそんな面白そゲフンゲフン……先輩の良い話を聞きたいですし。」 淡「知らなかったテルー?女の子の大半は、恋愛話が好きなんだよ?」 尭深「身近で起きてる恋愛は特に好物です……」 菫「この部はその御多分に漏れず、そういう話が好きらしいな。」 照「……わかった。」 照「ツモ、大三元、字一色、W役満は不採用で16000オールの十一本付け。」 菫「しかし何所まで行くんだ、これ?」 照「行ける所まで。」 【恋敵を倒す為の練習】 ―2週目・数年前― ずっと誰かを待っていた。 ずっと私を引く手を待っていた。 居もしない友達が来ると思っていた。 何故だろう、会ったこともない人に会いたいなんて。 何故だろう、こんな何も無いところに人なんて来る筈無いのに、それでも期待してしまうなんて。 部屋の戸が叩かれる、瞬間、何かを思い出しそうになりながら興奮を覚える。 きっと初めて友達が来たんだ、と。 「どうぞー」 明るい声で応答する、こんなこと家の人たちからすれば、普段の私からは想像できないだろう。 ただ、想像していた友達は思ったより年上だった。 トシ「おや、こんなところ閉じこもって……」 豊音「私はずっと友達を待っているんだよー。」 トシ「友達ねぇ……」 トシ「あんた名前は?」 豊音「姉帯豊音って言うんだよー……」 トシ「そうかい、私は熊倉トシ。」 トシ「それで、豊音、あんたここから出たくないかい?」 豊音「…………」 トシ「友達に会いたくないかい?」 豊音「!……」 少し体が動いたと思う、『友達』……それほど私にとっては大切な『何か』なのだろう。 豊音「よろしく、おねがいします。」 トシ「こちらこそよろしくね。」 熊倉さんが手を伸ばしてきた。 握手なのだろうか、私はその手を掴んだが、何かが違った。 豊音「違う……」 トシ「どうしたんだい?」 豊音「何て言うか……もっと大きくてゴツゴツしてたんだよー……」 トシ「……その手の持ち主に会えると良いねぇ。」 豊音「……うん!」 ――2週目・一週間前・宮守女子麻雀部―― こっちの生活に慣れ、仲間も出来た。 友人と呼べる間柄の人も出来たが、未だに『友達』とは会えてない。 いつも通り部室に向かい、扉の前に立った時にいつもとは違う感じに戸惑う。 どうやら誰かが来ているようだ、しかもここの生徒ではない人が。 扉の向こうに気を取られていると、不意に後から声を掛けられた。 トシ「豊音どうしたんだい?」 豊音「あ、熊倉先生、中に誰かいるみたいで……」 胡桃「別に誰か居てもおかしくないでしょ?」 豊音「でもでもー男の人の声だったよー?」 トシ「ああ、それは多分、私の関係者だよ。」 トシ「それよりとっとと入っておくれ、あとがつっかえてるんだから。」 豊音「あ、ごめんなさい、今すぐあけます。」 部室の扉を開けると金髪の青年がシロに抱き付かれていた。 胡桃「こんにち……わっ!?」 トシ「おやおや珍しい人が来たもんだねぇ。」 豊音「えー?どうしてシロが男の人に乗っているのー?」 何故か見覚えがあるいつもの光景。 京太郎「その、成り行きで?」 シロ「私の体が彼の体を必要しているの。」 胡桃「!?」 豊音「か、過激だよー!」 彼女も彼のことについて身に覚えがあるのだろうか。 京太郎「ちょ!?シロさん!?誤解を招くような言い方はやめて!」 トシ「ちょっと見ない内にとんだことになっていたみたいだねぇ――」 私の視線は彼に釘付けになっていた。 トシ「ただあんたたちが打てば思い出すかも……」 塞「それじゃあ私が入りますね。」 シロ「ダルいけど仕方ない……」 豊音「私も打つよー!」 私は何かを思い出すために彼と打つことを決める。 シロ「よろしく……」 塞「よろしくね。」 豊音「よろしくだよー!」 京太郎「よろしくお願いします。」 きっと彼と打てば何かがわかるだろう、そう確信して、本気で打ちに行く。 途中、私は六曜の友引を使う。 彼はそれを見て、微笑んでいた気がした。 「「「「ありがとうございました。」」」」 トシ「どうだい?何かわかったかい?」 塞「なにか前に打ったことあるような気が……」 シロ「ダルい……」 豊音「京太郎君と打ってると楽しいよー」 本当に彼と打っていると楽しかった、友達と打っているみたいな、そんな感覚。 胡桃「それで熊倉先生、この人は誰なんですか?」 トシ「ああ、こいつはね、私の放蕩息子みたいな――」 彼との対局を反芻する。 豊音「でも、京太郎君と打つのは楽しかったよー。」 そう言って私は立ち上がろうとしたものの、どこかふら付いていたようだ。 気付いたら彼に手を掴れていた、あの時と同じように。 ああ、やっぱりこの人は…… 京太郎「危ない危ない。」 豊音「あ、ありがとー」 この人は間違いなく…… 豊音「やっぱり京太郎君はいつも私を助けてくれるんだー。」 京太郎「俺の事を思い出したんですか……?」 私の……初めての……『友達』 豊音「だって初めての友達だもん……」 ――2週目・現在・宮守女子麻雀部―― 彼が帰ってから一週間、私の心はずっともやもやしていた。 彼たちの死闘を見て、彼との別れの時に感じた、友達への感情。 初めての友達と別れたから…… それは何か違う気がした。 他のみんなとは違う、友達への感情。 わからない、わからない…… どうしてこんなに胸がもやもやするのか。 わからない、わからないから誰かに聞く事にした。 豊音「ねー塞ー?」 塞「なに、豊音?」 豊音「京太郎君が帰ってからなんだけどー……」 豊音「京太郎君が居ないとちょー寂しくて……」 豊音「胸がぎゅーってなるんだよー……」 塞「!?それって……」 豊音「?塞はなったことあるのー?」 塞「いや、私はなったことは無いけど……」 塞「普通はわかるものじゃないのかな?」 豊音「……?そうなの?」 シロ「あー、多分豊音はとてもダルい病気に罹っている……」 豊音「え!?私病気なの!?ちょーショックだよー!」ガビーン 塞「……あーなるほどね。」 豊音「どうにかならないかなー?」ウルウル シロ「この病気は京太郎がいないと治らない……かも。」 豊音「京太郎君が居ないとダメなのー?」 シロ「かく言う私もその病気に罹っている……」 塞「!?」 シロ「私の場合も京太郎(の背中)が薬なんだけどね。」 豊音「京太郎君をお薬にしちゃうのー!?」 塞「お一人様一つの薬とか高級品の薬だね、京太郎君は。」 シロ「じゃあ先に京太郎をもらっちゃおうかな。」 豊音「だ、ダメだよー!」 シロ「どうして?」ニヤニヤ 豊音「ど、どうしてって……その……」オロオロ 豊音「と、とにかくダメなんだよー!」 【拗らせると死に至る病】 健夜「長野って案外遠いな……」 と一人ゴチた私は、今、長野の清澄高校の前にいます。 なぜ、わざわざ茨城から長野まで出張ってきたのかというと、一つは仕事、もう一つは弟の様子を見るため。 そんなわけで今、弟の高校に居るんだけど。 私まだ高校生で通る……よね? それとも姉として行った方がいいのかな? まあ、いいや、いざとなったら有名人の顔パスを……ダメだ、これは最終手段だ。 えっちらおっちらとまごついていると声を掛けられる。 「どうしましたか?」 何か髪に特徴的な角がある女の子だった。 健夜「え、えーっとちょっと清澄の麻雀部に用があって……」 「はぁ、麻雀部なら案内できますよ?」 健夜「ならお願いできるかしら?」 「はい、ところで貴女のお名前と御用は?」 健夜「小鍛治健夜です、弟の様子を見に来ました。」 「ウチの部に男の人は一人だけ……」 健夜「あら、京太郎君のお友達?」 「あ、はい、宮永咲です。」 これは私のというか小鍛治家の将来の為にも篩いに掛けなきゃいけないでしょうね。 決して京太郎君がいないと私の私生活レベルが下がるとかじゃなく。 姉として、姉として弟の将来を心配しておくだけ。 部室に行ったら姉が居た。 なんだこれ、俺の姉は茨城に居るはずだぞ!? 健夜「あ、京太郎君、私来ちゃったー。」 何抜かしてんだこの姉!? 久「まさかこの間の与太話が本当だとは思わなかったわ……」 京太郎「俺も何でこうなってるのかわかんないです。」 健夜「久しぶりに打とうよ。」 京太郎「ああ、はい、それはいいんですけど……健夜さんなんで長野に居るんですか?」 健夜「仕事のついでに弟を見に来ただけだよ。」 京太郎「今日くらいは健夜さんの本気を出させます。」 健夜「……楽しみにしてるよ。」 健夜「それであと二人はどうするの?」 京太郎「どうしましょう……」 健夜「……そうね、そこの二人はどうかしら?」 咲「へ?私ですか?」 健夜「ええ、貴女にはここまで案内してもらったし、それにただならぬ物を感じるから。」 和「あの私が選ばれた理由は?」 健夜「あなたインターミドルのチャンプでしょ?なら少しは楽しゲフンゲフン……強そうだからよ。」 和「よくご存知で。」 健夜「あと、胸が気に食わない。」ボソッ 京太郎「!?」咲「!」和「?」 健夜「さぁ、始めようか、清澄の実力はどの程度の物なのか、そして京太郎君はどこまで成長したのか見せてもらうよ……」 和「……須賀君のご家族を失望させるわけには行きませんね。」フワッ 咲「私、本気で行きますね。」ゴッ 京太郎(真)「俺の全てを使って貴女にあたります。」ゴンッ 健夜「そう、それは楽しみ。」ゴゴゴゴゴ まこ「指名されんでよかった……」 久「奇遇ね、私もよ……」 優希「魔窟もいいとこだじょ……」 健夜「京太郎君、いつもと違う打ち方だね……」タンッ 京太郎(真)「白糸台で培った物と姉さんに教えて貰った物を混ぜて打ってますから。」タンッ 健夜「……そう。」タンッ 京太郎(真)「姉さんから教えてもらった十年が、俺の中に息づいていますから……」 京太郎(真)「簡単に消える物じゃないんです……」 健夜「……うん。」 あの人は孤独だった。 事、麻雀においてはあの人は今も孤独なのだろう。 強すぎる才気、絶対的な天運、他の追随を許さないほどの技術と勝負勘。 そのどれを取っても一流だ。 だから故に孤独を味わった。 だから故に人は遠ざかった。 小さい頃は背負ってもらった背中。 そして追えない背中をずっと見てきたが、今なら少しは追い付けるはずだ。 俺はあの人に孤独から救ってもらった。 だからこそ、あの人を孤独から救いたい。 あの人の隣に立てるようになりたい。 そしていつかは俺が支えられるようになりたい。 今は小さなその背中を……。 京太郎(真)「ロン、8000。」 健夜「はい。」スッ 健夜「京太郎君、本当に強くなったね……」 健夜「私もやっと本気で行けるんだ……」 京太郎「!……」 嬉しかった。 健夜さんが本気を出せる相手にまで俺が成長出来たということに。 同時に悔しくもあった。 あれだけ近くに居たのに、今まで孤独で居させたことを。 でも、これからは本気で相手をしてくれるんだ。 俺と、俺達と本気で打ってくれるんだ。 健夜「ツモ、8000オール。」 健夜「これで終わりだね……」 「「「「ありがとうございました」」」」 しかし、やっぱり姉という壁はとても高かった。 こちら側は誰一人手を抜いてないにも関わらず、追いつけなかった。 健夜「ありがとうね、京太郎君。」 京太郎「三人がかりでも勝てなかったです。」 健夜「それでも言わせて……こんなに成長してくれてありがとう。」 京太郎「!……姉さん、俺……」 京太郎「俺、もっと強くなります……」 京太郎「もっと強くなって、姉さんの背中を支えられるようになりますから!」 健夜「……うん、待ってるよ。」 健夜「それじゃ、今度、家に顔に出しに来てね。」 京太郎「ええ。」 そう言って去っていく姉さんの背中を…… いつの間にか小さくなった、その背中を見ながら…… いつかあの人の背中を支えられるようになりたいと改めて誓う。 【姉の小さな背中】