約 956,825 件
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6316.html
「で、次はここか」 礼儀正しくラーヌン次郎をペロリと平らげた淡に連れられて、京太郎はゲームセンターに来ていた。 「そうそう!麻雀ばっかしてちゃ麻雀だけの麻雀人間になっちゃうよ!アラフォー待った無し!」 「んー、確かにな……しかし、でかいな」 長野にこんなでかいゲーセンはなかったなーとおもいつつ、そのあまりにもやかましい店内へと二人は足を踏み入れた。 ゲームセンターの中は予想よりもだいぶ騒がしかった。 都会のゲーセンは二階三階とあるのか……と京太郎はギャップを感じる。 「しかし、来たはいいけど俺はあんまりゲームは得意じゃないんだよな」 「そうなの?」 「外で遊ぶほうが好きだし」 「……なんで麻雀部入ったの?」 呆れた目で見られるが、入ったのだから仕方がない。 「じゃあわたしがよくやるゲームを一緒にやろう!んふふ~、ずーっと麻雀の練習ばっかでしばらく来れなかったから久しぶり~」 「やっぱ名門校は練習キツイのか」 「キツイっていうか、長い!」 ウガーッと淡は不満を漏らす。長い練習をキツイというのではないのかと思ったがたいした問題でもないと思い聞かないことにした。 「えーと、あった、これこれ!」 先を歩いていた淡がビシッと指をさした。その先を見てみると、なにやら洗濯機のようなピカピカ光る機械がある。 「……なんだこれ」 「マイマイ!」 「……あぁ、前行った時に誰かがやってたよーな」 淡は早速チャリンとコインを投入し機械の前に立った。 そしてじっと京太郎を見てくる 「やらないの?」 「え?俺もやんの?」 「空いてるんだしやろうよー」 「お、おう……ここか」 京太郎はいわれるがまま淡と同じように隣の機械にも100円を投入しその画面の前に立った。なにやら淡がニヤニヤしている。 「じゃあシンクロモードでプレイしようね」 淡が勝手に画面をタッチしてモードを選択していく。なにやらよくわからない、初めてプレイするゲームなので任せるしかなさそうだ。 「じゃあ簡単な歌曲で練習!がめんのマーカーに合わせてタッチするだけだから簡単でしょ!」 「そうか?まあやってみるか……」 そしてゲームが始まり曲が流れ出す。すると中央の画面に言われた通りマーカーが現た。チラリと淡を見ると、外側のラインに触れた時にタッチしている。見よう見まねで京太郎もやってみる。 「お」 そのままゆったりとしたテンポでマーカーが流れ続けてくる、要領をつかんだ京太郎は曲に合わせてマーカーを押し続ける。 (しかしこれは……恥ずかしいな) 誰が見ているわけでもないが、まるで踊っているようではないか、と思いつつも、一曲が終了した。 「はい終わり。どう?簡単でしょ?」 「まぁ、そうだな。でもお前よくこんなのやれるな……」 「人の目なんか気にしない!さ、次やろ次!次は少し難しいのやろう!」 画面をカチカチと押している淡は楽しそうだ、付き合ってやるのも悪くはないか…… 京太郎は画面に向き直る。次の曲が選択されたようだ。曲名は……LUCIA? 「ふう、クリア~。……あれ?!クリア!?きょーたろークリアできたの?!」 「やっぱお前すげー難しいの選びやがったな!?死ぬかと思ったぞ!?」 「えー……京太郎えー……なにその才能、そこは失敗するとこでしょー……」 「言いたい放題だなこんにゃろめー!」 「ギャー!グリグリやめてぇ~!」 じゃれ合いながらゲームを離れ、次は麻雀ゲームをやることになった。 「えー、ここまで来て麻雀?」 「いいじゃねーか別に、初心者潰しの大星さん」 「ごめんってばー」 反射神経が疲労しきった京太郎はドスッとゲーム機の前の幅広の椅子に腰を下ろした。 「ちょ、つめてつめて」 「え、お前ここ座んのかよ」 すると淡は京太郎をぐいぐいと押して、無理やりに同じ椅子に座り込む。 二人なら問題なく座れる椅子ではあるが、画面を覗き込むと体が密着しそうで落ち着かない。 「ん~、じゃあへっぽこな京太郎には私が指導をしてあげよう。光栄に思いたまえ」 「はいはいありがとさん……」 チャリンとコインを投入し、画面をタッチして対局画面へと移っていく。隣の淡はなんだかんだといいつつ楽しげに画面を見つめている。 「ふふー、頑張ってねきょーたろー」 「おう」 「ねー京太郎」 「ん?」 「京太郎の麻雀を始めたきっかけってなに?」 「あー、それはなー……」 「あ、それ鳴いて」 「え、マジ?……入ったきっかけなー、麻雀部に好きな子がいたからだ」 「なにそれ」 「いやマジで。中学の頃までは運動一筋だったんだけどさ、同学年でスッゲー可愛い子が、麻雀部に入ってさ、お近づきになれればなーって……お、ツモった」 「なにそれ、不純」 「男なんてそんなもんだ。で、まぁ、それでやり始めたんだけど、案外面白くてな」 「ふ~ん……へんなの」 「なにがだよ」 「その割にはガッツあるなーって……私にボコボコにされれば、すぐに心折れて、少なくともその場では麻雀やめる!とか言い出すかと思ってた」 「いいたかないけど負け慣れしてるからな……」 「ダサいよー」 「うっせー」 「……ここは三索か?」 「三色の目あるんだからもったいないでしょ、もっと欲張りなよ」 「そ、そうか……で、淡はさ、どうだ」 「なにが、麻雀始めたきっかけ?」 「いや、そうじゃなくて、麻雀って楽しいか?」 「……え?それ聞く?普通同じ質問返さない?」 「聞きたいんだ」 「別にいいけど……楽しくなきゃやってないでしょ」 「やっぱ強いし楽しいか」 「そりゃね。負けることもたまにあるけどだいたい勝てるし……」 不意に、淡の顔が俯いているのが視界の端に移って、京太郎はそちらを見た。 「でも、ね、昨日は……相手も強くて楽しかったんだけどさ、すごく悔しかった……」 「……そうか」 再びゲーム画面に顔を向ける。そこから淡のアドバイスは終局まで入ることはなかった。 「今日はお疲れ様」 「おう」 ゲームセンターを出た二人は、帰り道を行きながら話していた。先ほど浮かばない顔をしていた淡もいまはすっかり明るい表情だ。 「本当楽しかった~。しばらく息抜きできなかったからさ!」 「いつも緩みまくってる気がするけどな」 ルンルンと広い歩幅でゆったり歩く淡の姿を見ていると京太郎も心が和む。こんなにも凛とした美貌なのにどうしてこうも癒しオーラが放てるのか、不思議でならない。ふだん幼馴染のポンコツを眺めていると余計にそう思う、あれはあれで可愛いが。 「……それにしてもさ、知り合って3日目なのにこんな風に仲良く遊ぶって不思議だよねー」 「お前が人懐っこいからだよ」 「犬みたいに言うなー!」 ポスポスと叩かれるが全く痛くない。淡のいう通り、知り合って3日目だというのに既にこのさっぱりとした子供っぽい性格の淡に、京太郎は心を許していた。 そして、二人の帰路の分かれ道へと差し掛かる。 「じゃ、ここでお別れ」 「そうだな」 「えーと、お金返したし、忘れ物とかないし……よし、大丈夫。じゃあ、ばいばーい京太郎」 淡は軽く手を振って沈みかけた夕日の方へと歩き出した。 揺らめく金の長髪がまさしく黄金色に輝いて、その性格とは裏腹の神々しさを醸し出す。 思い立って、京太郎は声をあげた。 「淡!」 その声に反応して、淡は振り返る。小首を傾げて、なんなのか、と問いかけてくる。 「明日の、清澄と白糸台の決勝線さ!」 「絶対に、清澄が勝つぜ!」 自分のことでもないのになにを偉そうにと自虐しながらも京太郎は自信満々に言い切った。 その言葉を受けて、少し呆然とした淡も、段々とその口角を上げて、悪役っぽい顔をする。 「いーや!勝つのは私!」 自信満々に言い切った後、再び背を向けてズンズンと淡は去っていった。 「……」 そして、京太郎も、淡と反対方向、夕日に背を向けて歩き出した。 翌日、インターハイ団体戦の決勝戦。 より一層多くの観客が詰め寄る中、清澄の控え室は緊張に包まれていた。 「……もう少しで開始だな」 「おう……」 「……おい優希、これみてみろ」 「お?……あー、タコス」 「お前ガラにもなく食べるの忘れてたぞ、食べなきゃ力がでないんだろ?」 「おう!気が聞くじぇ京太郎!……んー!うま!」 「俺の謹製タコスだ……それくらいしかしてやれねーからな……勝てよ、優希!」 「……任せとくじぇ!」 「……ふぅー」 「三連覇がかかると、さすがに緊張するか?」 「……」 「それとも、妹か?」 「関係ない……私は、ただいつも通り……勝つだけ」 「……任せた」 「任せといて」 決勝戦、先鋒戦開始 …… ………… ……………… 重苦しい、沈黙。緊張感の張り詰める控室。 「ゆーき……」 緊張した面持ちで和が見つめる画面には、対面で宮永照と対峙する優希の姿があった。 東4局、親番は照。 一言で言うと最悪である。宮永照との対局においてラス親を取られるのはほぼ負けを意味している。 もはや暗黙の認識と化している宮永照の能力、打点上昇ツモと《照魔鏡》。相手が起親で親番を潰すのが最高である。、その真逆はやはり最低である。 しかし優希は引き下がらない。点数98300点。まだまだ負けていない。 だが、長い南場が待っている。 「……お姉ちゃん」 咲が、ぼそりと呟く。 まさしくここで決勝戦は最大の山場を迎えている。 優希は、勝てるのか。 「……ん?」 不意に京太郎のポケットが震える。マナーモードにしてあるスマートフォンが震動したのだ。 画面を開くと、LIMEのようだ。差出人は、大星淡。 『やっほー。今控室だよねー?ねぇ、先鋒戦がどんな風に終わるか予想しあおうよー 私はねー、白糸台以外マイナス!どうー?(#′∀')』 「……」 京太郎は、黙って返信文を書いた。 『余裕だなおい。そうだな、俺の予想は……白糸台が一位で、清澄はプラス収支だ』 送信…… すぐに返信が来た。 『えー?そこは清澄が一位っていうところでしょー?(・3・)』 すぐに、返信 『まぁそれが理想だけどさ……あの清澄のタコスは昨日俺のアイスを奪いやがったからな。それに……』 文を書き終えて、京太郎は再び送信を押す 『点数負けてても、あんまり関係ないんだ』 ……変身は、来ない お人好しが過ぎると、京太郎は皮肉に笑う。 画面の向こうでは、優希が宮永照に直撃をかましていた。 (っ……食いついてくる) 宮永照は、清澄と阿知賀のタッグに苦戦していた。 実に理にかなったコンビ打ちを展開されて、上がる前に潰されている。 松実玄の力で、ドラは誰の手にも行き渡らない。 優希はその類稀なる集中力と運で、宮永照に食らいつくもあと一歩、いや、二歩。であれば、二人でやることは簡単だ。 優希は、ドラとは無関係の場所で手を作り上げる。 玄は手の内にドラを溜め込み、優希の欲しがる牌を切り鳴かせる。 単純だが強力だ、玄の一押しが優希を宮永照に喰らいつかせている。 (気があう人でたすかったじぇ……さて) 阿知賀の方にウインクをしてから、優希は宮永照へと向き直る。ここまでやってまだ五分だ。いや、少し不利かもしれない。 しかしこれなら十分勝てる。優希は深く深呼吸をし、改めて卓上を見渡した。 (負けるわけにはいかないじぇ!この優希様が点を稼いで、みんなを有利になるにスタートさせなきゃならないんだからな!)タンッ 「ロン!」 「あ」 臨海に直撃させられた 混沌とした、先鋒戦、終了 白糸台は一位通過で、122500点 清澄は100200点。 今までの試合と比べると白糸台のリードが明らかに少ない。 会場内は騒然とした。 「うぬぬぬ……ただいまー」 「ゆーき!」 「おわーっ!?」 部屋に入ってくるなり感極まった和に優希は抱きつかれた。顔が胸に埋もれている。 「すごい!すごいですゆーき!あんなすごい麻雀!」 「むぐぐぐ……ぷはっ。うー、でもかなり離されちゃったじぇ……」 「何言ってんの、上々よ」 「うん……お姉ちゃん、すごく悔しそうだったし。すごいよ優希ちゃん!」 「そ、そう?へへ……まぁ、この私なら当然!」 えっへんと胸を張る優希は、そのまま京太郎に向き直った。 「京太郎!お前のタコスの力もかなりあった!たすかったじぇ!」 「へへ、早起きした甲斐があったってもんだ」 あの宮永照相手にプラス収支で二位通過、湧き上がる面々をよそに、のっそりと染め屋まこが立ち上がった。 「おう、ようやったの、優希……ほんじゃ、わしはこの荒れた場をフラットにしてこようかの」 「まこの胸みたいに?」 「張り倒すぞおどれ」 「っ……」 「何を落ち込んでるんだお前は、ダントツ一位だろう。その顔見せたらさっきの先鋒のメンバーにすごい嫌なもの見る目で見られるぞ」 「いや……落ち込んではいない。ただ疲れた」 「ほう」 「あそこまで、喰らいつかれたのは久しぶり……まぁ、楽しかった」 「……うん、そうか。さて、私の番か……苦汁を舐めさせられたからな、準決勝で。名誉挽回と行こう。照のリードをより磐石にしなければならないな」 「スミレ~がんばってね~」 「菫せ、ん、ぱ、い。淡、阿知賀と清澄の対象の牌譜見ておけよ」 「は~い」 (読まないなあいつ……) 「……お」 またも、淡からのLIMEが届いた。 『う~、京太郎やるじゃん!』 『どうだ、俺の戦況千里眼は!』 『千里眼ってなに?千里山の親戚?』 頭を抱えた。 『千里眼ってのは千里先まで見渡せるほどの視力って意味だ』 『せん……なに( ・・)?』 『せ、ん、り!』 『距離じゃん、未来じゃないじゃん(′・3・)』 『戦術ってつけたろーが!』 素直に戦術眼と書けばよかったと後悔。予想以上に手間取らせる。 『それより次峰戦の予想!私はねー、白糸台が一位でドベは阿知賀!』 『おうそうかいそうかい』 チラリと画面を見て、返答 『阿知賀は二位かな、俺的には』 (あー、なんじゃろーなこれ) まこは頭を抱えたくなるような無茶苦茶な卓上を見た。 そして、対局相手たちを見る。 松実宥、そんな格好をして頭が茹らないのか、問い詰めたい。 弘世菫、お前こっち見ろ、うちは二位だぞ。阿知賀ばっかみんな。あ、みた。 慧宇、お前は……まぁよく知ってる。一回やったし。 (なんじゃこれ) 頭を抱えたくなる。なんと混沌とした場か、面子も卓上も。 自分が地味に見えてくるから困る。緑髪だぞ緑髪。 (しかし、ま) 眼鏡を外し、卓を見つめる。 (やることは変わらん) 牌をきる。 (だいぶ、なんというか、見たこともない表情しとるけどな?ご機嫌とりは、いつもの通りやればええ) (逃がさんぞ松実宥) 弘世菫は若干頭に血が上っていた。対面に位置する松実宥にただならぬ熱い視線を送っている。無論、あれじゃない意味で。 (無論これはチームの勝利を目指している。そのためなら感情を殺すべきだ、しかし……) 感情論を切り捨てては麻雀は勝てない、一度ならず二度までも躱してのけた松実宥に直撃をとらなくては、この劣等感が対局中ずっと足かせになる。 (必ず射抜 抜いて見せる、必ず) 神経を集中させる。名門校のプレッシャー、三連覇のプレッシャー。勿論、ある。 しかしそれすら一瞬忘れた。稼いでくれた友のため、後に続く後輩のため、この戦いは負けられない。 (清澄のはまだ手ができてはいない雰囲気だ、臨海もあと少しといったところが、なら、狙い撃つ!) 弘世菫は、狙いを定めた松実宥の捨て牌をみて、最高の待ちで満貫の聴牌を作り牌を切り出した 「ポン」 「!」 上家の清澄が鳴く。 (くっ、しかし、阿知賀までツモが回れば!) 「ほれ」 「あ!」 「ロン、5200」 阿知賀が上がった。清澄の捨て牌で。 ほいほいとまるで気落ちせず清澄は松実宥に点を支払う。 (……なるほど、強敵じゃないか、清澄の……染谷まこ!) 弘世菫の、視線を感じ、染谷まこは少し笑った。 白糸台、123800で次峰戦を終える。 対して阿知賀、点数を10万点代まで回復させる。 清澄と臨海はもつれ合う形でわずかに臨海が上。 「帰ったぞー、いやーすまんの優希、お前さんの点棒まいてきちゃった」 「先輩……すごく意地が悪い麻雀だったじぇ……」 「まーこー……あなた白糸台への嫌がらせに集中しすぎじゃないのー?」 「しゃーないじゃろ怖いし、調子づかれて突き放されるよりなるったけフラットにフラットに。だいたいこのくらいの点差なら……お前さんら勝てるじゃろ」 まこは、三人に目を向ける。 竹井久、原村和、宮永咲、この三人ならきっと追い抜ける。 「わしの役目は、射程圏内で耐えることと、相手をぐしゃぐしゃにかきみだすこと……あとは任せたぞ、久」 「……まっかせときなさい」 「やられた!!まんまとやられた!!!!」 「お、落ち着いてください部長」 「落ち着けるか!染谷まこめ……私が狙い撃つ相手全員に自分で振り込むし!いざ染谷を狙ってみよにも上がりを目指さない上がり方のせいで手が読めない!」 「……おそらく白糸台を独走させないために、あえて自分の点を吐いて菫のペースを乱してた。自分が上がる気がないんだから、当然相手はいろんな牌を持てるしひらひら逃げられる」 「ウグググ、悔しぃ……!!」 「部長キャラ崩壊してます……」 「あっはっはっは!スミレおもしろーい!」 「うがあああ!!」 「ギャー!?暴力はいけません~!!スミレのアホー!」 中堅戦 清澄の部長竹井久、ついに憧れの舞台に立つ。 (やば……すごい緊張する) なんせ悲願の優勝がかかった試合だ、今までよりはるかに大きい重圧がかかる。 (でもまぁ……後輩にかっこいい先輩の姿を見せつけるラストチャンス!怯えず行くわ!) しかし久は引かない。強い気持ちで手を作っていく。 新子憧、渋谷尭深は、確かに強敵ではあるが、他と比べれば火力はマシだ。 問題は、雀明華。自風を使って速攻で上がられると、瞬く間にオーラスに突入してしまう、そしてそのオーラスは渋谷尭深の本領。 それまでに、何としても点を稼ぎたい。 (どう戦おうかしらー……) んーと、少し考える。 そして、控え室のメンバーのことを思い出して、少し笑う。 (……かっこよく戦いたい。自分の好きなように、自分が楽しめるように、誇れる麻雀を) きっと前を向く。かわいいかわいい後輩連中の目にやきつけよう、この戦いを。 「……ツモ!」 我らが大将咲、頼れる副将和、信頼するまこ、かわいい優希、面倒かけてしまった京太郎。 全員を思い、久はいつも通りに派手なツモ上がり(モーション的な意味で)を決めた 一方京太郎は控え室から抜け出てトイレへ向かっていた 「あーちくしょう!緊張して飲み物飲みすぎた!」 自分が戦っているわけでもないのに京太郎はいつの間にか2リッターのミネラルウォーターを飲み干していた。 それに気づいた瞬間尿意をもよおす、しかも強烈。 そのせいで京太郎は久の想いが詰まったツモを見逃した。運のない男である。 「くっそー……どうしてこう締まらないかねー」 小便器に用を足し、急いで手を洗う。 男子力高めな京太郎はしっかり隙間まで、液体石鹸を使って洗い流した。 「さてと!すぐさま観戦に!」 トイレを飛び出し、いざ走り出す!目的地は清澄控え室!目標は試合観せ…… 「うはぅ!?」 「ぐおっ!?」 腹に、何か突き刺さった。 おそらく金色のものと視認したそれは走り出さんと身を乗り出した京太郎の硬い腹筋にドスリとめり込む。 カウンターの要領で名状しがたい金色に頭突きをもらった京太郎は二、三歩後ずさり、青い顔をして腹を抑えた。 「うっううぅ……ご、ごめん、前、見てなかった……」 「いや、俺も走ってたから……」 お互いくぐもった声で謝罪をし、お互いを見やる。 「……ん?京太郎じゃん」 「……淡?」 「ここでいいか」 「うん、オッケーオッケー」 そのあと、控え室に戻ろうとした京太郎に淡は、一緒に試合を観戦しようと持ちかけた。よって今二人は、大型モニターの備え付けられたスペースにいる。椅子は埋まっているため、壁に寄りかかる形だ。 「いやー、スミレを怒らせちゃってさー。大将戦までなるべく外にいようと思って」 「呑気すぎるだろ」 画面の向こう側では、控え室で後輩達が勇姿を見ているだろうと信じて戦う久が映っている。 その内の一人京太郎はその久の対戦相手の高校の大将とだべりながら見ているが。 「てゆーかー、京太郎勘鋭すぎー。この淡ちゃんより予想を当てるなんて、生意気だぞー!」 「理不尽な……」 プンスカ怒る淡を横目で見て、京太郎は苦笑いした。 「別に、勘が鋭いわけじゃねー。それなら麻雀弱いわけないしな」 「あーそっか」 「納得すんのな……俺は、ただ単に清澄に都合がいい展開を予想っぽく言ってただけだ」 「都合がいい?四位なのに」 「チーム戦だからな」 久が白糸台から直撃をとった。点数はそれなり、一気に差を詰める。 「わお。たかみーから直撃って、やるー。てかなにあの待ち」 「そういう人なんだよ。守り硬い相手の方がやりやすいんだ」 適当にだべりながら、試合を観戦する。画面の向こうで1回目の半荘が終了。風神こと明華が白糸台の大物手を阻止する。 「あーたかみー!」 「相性悪いな、ありゃ」 「うわー、点数が10万点だいに……でもいーもん!私が取り返すもんね!」 ふふーんと淡が胸を張る。 「そこ、ふつーは大丈夫かなーとか不安に思うとこじゃねーの?」 「高校100年生に負けはない!」 ふんすと語る淡の目に揺らぎはない、本当に、自分自身の実力を信じているのだろう 「チーム戦だぜ?これ」 「? 負けてても、私が取り返せばいーじゃん。大将の役目でしょ?」 「勝ってたら?」 「勝ってたら、ぶっ飛ばすまであがる!」 「なにもかわらねーじゃねーか戦法!」 「なにさー!よーはアガらせずにアガればいいんでしょ!私にはそれができる!」 再びふんすーと鼻を鳴らす。 京太郎は苦虫を噛み潰したような表情をした。 「……淡、俺の予想を教えてやろうか」 「予想?」 「多分な、白糸台は結構リードして、副将戦を終える。二位は清澄だ」 「ほほー」 一息、ついて 「……で、お前は、咲に負ける」 告げた。 「……ほっほーん」 結構カチンときたようだ。淡がメラメラと瞳の炎を燃やして見上げてくる。 「えーつまり、この淡ちゃんが、そのサキに、大きな点差ごと捲られて、逆転サヨナラ負けを喫すると」 「そうだ」 「……んにゃわけあるかー!」 淡は吠えてシュバッと京太郎の背後に周りベチベチと背中を叩いてくる。 「いててて、やめろ!」 「生意気だぞー京太郎のくせにー!てか、バカにしすぎー!」 フンッと今度は不機嫌に鼻を鳴らし、淡はきっと睨んできた。 「そんなに言うなら見てるがいい!この淡ちゃんがアッショーしてきてやるから!そしたら京太郎サーティーワンおごってよね、3段で」 何度目か、淡は鼻をふんすとならしてずかずかと歩き去って行った。 「……」 京太郎は、その背中を、少しばかり、心配そうに見つめた。 「で、須賀君は私の勇姿を見てなかったのね~……」 「いや、見てましたって!」 「よそのモニターで、いざこれから戦う高校の大将と駄弁りながら?」 「」 ものすごい勢いでいじける久に京太郎は徹頭徹尾謝罪する。 あのあと、対局を終えた久に優希が何やらチクったのだ。 どうやら飲み物を買いに出たら淡と喋って観戦していたのを見ていたらしく、それを聞いた部長は至極不機嫌である。 対局の結果は、白糸台が137000 、その他の高校は全員10万を下回るが似たり寄ったり。 三校で渋谷尭深を徹底的に狙い撃ち、一時白糸台は4万点近くまで点数を落としたが、ラス親の尭深はわずか三巡で四暗刻字一色を完成させる離れ業を披露、全校から大量の点棒を抉り取り、結局はプラス収支で終えてしまった。 「くっそー、泣きそうな表情になるもんだから油断したらこれよ、これも全部須賀君の仕業よ」 「なんだって!?絶対に許さないじぇ京太郎!!」 「それ俺かんけーねーし!!」 いじいじし続ける久と弄られる京太郎を他所に、原村和は準備を始めていた。 「……負けられませんね、せめてトップとの点差を10000まで縮めます」 「うん、頑張ってね!」 「もちろん、負けるわけにはいきませんから」 落ち着いた表情で、和はほかのメンバーを見渡した。 「みなさんから受け継いだバトンを最高の形で咲さんにつないで見せますよ」 「ふぅ……なんとかなった……怖かった……お茶……」 「さすがだね尭深、いや、相手の顔!いい気味だったね!」 「2人のために、しっかりと点を取れてよかった」 「相手にとっては、たぶんトラウマになる。だって、三巡で32000点オール、もはや神業」 「ど、どうもです」 「淡はまだ帰ってこないのか!」 「ダイジョーブですよ部長、なんやかんや割と余裕を持って帰ってきますって。さて、行きますか……準決勝の汚名を返上しなくちゃ」 「……あんまり気負わないで」 「ん、ありがと」 「……」 ちらりと、スマホを見る。LIMEはこない。淡はヘソを曲げに曲げたらしい。 おそらくあの調子で、決勝に望むことだろう。 京太郎は心配である。 別に心配することではないはずなのだが、とにかく心配なのだ。 恐らく淡はひどい目にあう。この、大舞台の、締めくくりとなる対局で。 しかし今はそれよりも和のことだ。 画面の向こうですでに対局は始まっている。いつも通り、静かに正確に手を進めていく和。 原村和にとって、対戦相手というとは実のところ、さほど重要ではない。 和にとっての麻雀とは、全員が同じ条件のもとで、運に左右されながらも、知略の限りを尽くし、できる限りの最良の道を選び続けるゲームだ。 無論、対戦相手の癖とか、そういうのはかなり重要な情報ではあるのだが、和はそれよりも、とことんデジタルに、とことん合理的に、低い確率よりも高い確率を、低い効率よりも高い効率を。 (配牌で暗刻がふたつ……両方筒子ですか) それ以外もそれなりにまとまっている。向聴数こそ並の三向聴だが、高めを狙えそうだ。 一瞬で計算を済まし、最も不要な牌を切り出す。 そして、対局相手を見る。 臨海のメガン・ダヴァン 白糸台の亦野誠子 そして……阿知賀の、鷺森灼 部長曰く、全員が不可解奇妙な「パワー」を持っているらしい。 (そんなオカルトありえません……が) 普段なら、バカバカしいと一蹴するが、和は、考えを切り替える。 オカルトは信じないが、打ち回しに独特の癖があるというのは事実だろう。 だったら、それを見咎めない手はない。 和は、ただ淡々と、手を作り上げる。 恐ろしい速度で 「ツモ」 7巡目、裏目もなく、最高の牌効率で打ち回した良配牌は、素晴らしいスタートを切らせてくれた 「2000.4000です」 (……強いなー) 亦野誠子は、ため息をつきたくなった。もちろん対戦相手に失礼なので実際にはしない。 (……綺麗な手を作るな、無駄も一切なし、最短距離を突っ走る) 門前で上がったことがない自分からすれば羨ましい限りである、その運を、少しよこせ、あと胸も (いや、運の問題じゃあない) 自分の手に、向き直る (役割を果たせ) 現在白糸台は135000、他は全員マイナスで、4万近く突き放している。 ダントツで有利だ。このまま淡にバトンをつなげば、その圧倒的防御力とスピードと火力、つまるところパーペキな淡ならばきっと勝ってくれる。 (つまり、私のこの対局結構重要じゃん) 「ポン」 化け物どもを相手に、立ち向かう (このままじゃ終われない) (汚名返上の最後のチャンス、ふいにしてたまるか) 「チー!」 二副露、あと一つ (綺麗にまっすぐ上がりを目指してくれて助かる、切る牌を結構絞れるからな) 「ポン!」 三副露 「ツモ!1000.2000!」 「亦野、よくやった」 「あはは……汚名返上には少し、地味すぎ、ましたかね……?」 「お疲れ様、誠子ちゃん……はい、お茶」 「ありがと……」 「……さすが、白糸台の副将」 「よしてください、先輩……あれ?淡のやつは?」 「ここだよーん!」 「うわ!おま、どこから!」 「ロッカー!!」 「狭いところが落ち着くのって、なんだろうね、あれ」 「やめろ照。……ていうか淡お前なぁ……いや、なんかもういい」 「へへーん、見てたよー!すごいじゃん!でもこれじゃあ余裕すぎて私の見せ場ないかなー?」 「……準決勝で苦労させたからさ、少しでも楽になってくれれば気が楽になる……準決勝でも言ったけどさ、頼んだよ淡」 「まっかせときなさーい!高校100年生のこの大星淡様が!」 「……清澄に、ひいてはその中の一人金髪のデクのボーに思い知らせてやる……!!ケケケケケケ!!!」ユラユラユラァァァ 「……金髪のデクのボー?」 「誰のことかな?」 「……さぁ?」 (もしかして自販機に頭ぶつけてたあの男子か?ていうかあいつすでに髪がユラユラしてるぞ、地味にこのssで初の「」の後の擬音じゃないか?) 「……」 京太郎は画面を見つめる。 すでに、大将の四人がそろい踏みだ 起親、高鴨穏乃から順に、咲、ネリー、そして大星淡である。 全員がスタートを待ち、卓上に視線をおろしている。咲はああ入ったもののこの大舞台で死ぬほど緊張しているだろう。 ……と、思ったら淡がちらりとカメラ目線になり、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。なんとなくこちらを見たような気がして少し後ずさる。 (はは、おっかねーおっかねー) 実は淡が入場する直前、京太郎のLIMEに淡からトークが届いていた 内容は『この私のアイス好きをなめるなよ、破産させるまで食ってやる!(#`д′)』 なんとも、腹に据えかねているようだ。それはもう、ものすごく。 京太郎は、今更それに返信をした。今は試合中、淡もマナーモードにしているはずだ。 文を書き終え、送信。 『テレレレテレレレーン』 『あ、マナーモードにしてないや、ごめんごめーん!』 「……」 絶句 (俺悪くねーよな?) 少し冷や汗をかいたが、気を取り直す。 ポケットにスマホをしまい、再び京太郎は画面に集中した さて、と 淡は卓上を見下ろした。 淡はラス親であり、起親の高鴨穏乃が元気よく牌を切り出したところだ。 準決勝では苦渋を舐めさせられたが今度はそうはいかない。 メラメラと燃え上がるリベンジ根性を抑え込み、続けて対面。 宮永咲 静かに、素早く牌を切った。手慣れた手つきだ……当然か。 宮永咲、最近知り合って、結構気があう京太郎が言っていたが、私はこいつに、捲られて負けるらしい。 やってみろと、やれるもんならやってみろと、高らかに叫びたい。 点数はおよそ28.000点。そして、相手は必ず五向聴。こっちはダブリー『かけてもいい』 負けるものか、うち負けるものか。 髪がざわつく。意識を集中する。上家のネリーが切り出した。 淡、それを受けて改めて自分の手配を眺める。 ニヤリと少し笑い、牌を切り出した。 リーチは、しない。 「なんと……」 久は唸った。大星淡がダブリーをかけなかったことに疑問を覚えたのだ。 「戦略を変えてきたかの」 まこの指摘の通りだろう。淡は聴牌を崩しー向聴に戻す。しかし、役を絡めやすい組み合わせに近づけたようだ。 「驚くことじゃありません。あの手なら確かにダブルリーチをかけずに粘ったほうがいいですね」 和は苦々しい表情で言う。相手の出だしがすこぶる好調なのに対し、咲の手牌がバラバラなのが気になるのだろう。 「ダブリーは制約じゃないのか……」 優希が呟いた。あの能力はドラゴンロードのような『制約』がないようだ。すなわち、遅い相手を眺めながら手を組み替える余裕があるのだ。 「……」 京太郎、黙って画面を見つめる。焦りは、ない。 (いいじゃんいいじゃ~ん!) 大星淡は大変機嫌よく牌を切り出した。 4巡目、二向聴まで戻したが役が絡みドラなしでも満貫にてが届く。 そして、手元には崩さずにとってある暗刻もある。 倍満もゆめじゃな~いとウキウキしながら相手を待ち受ける。さあ追いついて見せろ、と。 誰も、リーチをかけない。 五巡目に入って改めて淡は卓上を見下ろす。ここからは油断しない。もしかしたら上がってきやがるかもしれないのだ。 捨て牌からはその気配はない。 ツモり、切る。手は進まながったが別に構わない。 カドまでまだまだあるのだから。 ~~~ (きたー!!) 「リーチ!」 高らかに宣言、リーチ棒をだす。 一応基本にならって、両面待ちの形にした。そして、次のツモ。 「カン!」 んでもって 「ツモ!」 淡はアガった。ところがどっこいカン裏がさっぱり乗らず、まさかの満貫そのまま。 (うぐぅぅぅなんでー!?) 満貫をツモあがりしたのに頭をかきむしる淡に三人の冷たい目線が刺さる。おっと失礼と姿勢を正し、気を取り直す。 (いいもんいいもん!上がったのは淡ちゃんだし!サァツギの局こそ……) . ¨  ̄ ̄ ¨ . . ´ `ヽ . ´ . ′ . / . ,′ ;. / / / { ニニ二三三二ニニ / / \ ニ二二三三三二二ニ / イ /\_ \ ___ ニニ二三三二ニニ ∠ イ | / ,ィ  ̄ ̄三三| ニニ三王 三l 三|ニニニ= | | |. 厶イ | i 二| 三トニ二三ト、三ト、 ト、ニニ= | |/ j j从| | |、 | | | ト、ニ王ニ{{ o }}ニ= | ! | ト、圦乂| 乂| \{ \| ヽ{ヽ{ イノ 乂_{ jハ 从イ/´ -=ニ`ト . - .イ二ニ=‐- 、_ r=ニ =ニ二|`ト _ . r |二ニ ニ7 }ニ〉 ハ マニ ニ二ハ !二ニ / / /ヽ. / Vハ \ ニ二ハー- -一 j二ニ / / / ∧ ′ \\\ ニ二ハ───‐/二ニ //イ / | \\\ 二∧ /二ニ ///,/ ,/ 1 | }八 {\\\ 二∧ /二 /// // ∧ | 「!?!?」 対面の視線……否、死線を感じ体が震えた。 おもわず目をそらしてしまう。 (え、な、なになに!?ちょーこわい!?) (あ、淡ちゃんは怯まないもんね!テルーの妹だとかなんとかだけど、そんなのカンケーないし!) その照が控え室で咲にたいそう怯えていることなどつゆ知らず東二局。 相変わらず淡は好調であり他家のスタートはやはり遅そうだ。 (ふーんだ、このまま突っ切って……) 「カン」 「っ」 対面、宮永咲のカン。 おそらく有効牌を引き入れられたと、直感が告げる。 (少し余裕なくなったけど、でもまあ有利なのは……) 「カン」 「ぅ」 三巡目、再び咲のカン。 「カン」 五巡目。またもカン、しかも全て暗カン。 おまけに、その五巡目のリンシャン牌。 「ツモ」 淡にとって完全に想定外、五巡目のツモあがり。 「三暗刻三槓子、リンシャンカイホー、満貫」 早い、強い。ドラが載ってないことが救いだ。 清澄との点差、咲の親満で縮まる。 咲は、すでに淡の急所を見抜いている……京太郎は悟った。 実は対局前に、淡攻略には簡単な抜け道があると言っておいた。どうやら見つけたらしい。 おそらく、ここから淡は相当苦い思いをすることになる。自分は聴牌スタート、相手は五向聴スタートで、自分の『遅さ』に苦しむ羽目になるのだから。 画面の中で、咲が左右の二人に目を運ぶ。その二人も各々を見合い、そして再び卓上を眺める。 スマとを開く。淡とのLIMEに当然、既読は付いていない。試合中だし。 「ポン!」 ネリーの牌に咲が無く。カンが積み重なり、淡の優位性が薄まる。 (カンでツモ増やして向聴数荒稼ぎとか、対抗できるかっつーのー!!もー!!) 淡はイライラしながら自分の親番の東4局を進める。手牌は相変わらず好調。ー向聴を維持しながら高めに作り変える。4巡目にして超良系の手が出来かけている。しかし 「カン!」 咲が、早い。恐ろしいほどの速度で手を作る。 理由は簡単だ。二人が、咲の鳴き頃の牌を切っている。 (私の点数を削りにきた……!!) 穏乃、ネリーの考えは読めた。防御力の異常に高い淡に手が届く咲に点数を稼がせ、その後に咲を削ろうという魂胆だ。そのために今は咲に協力しているのだ、『その方が手っ取り早いから』 (そんなのくやしーじゃん……!!) 強いから、警戒されているからこその作戦にしかし、まるで前座のように扱われてると感じ、淡はイラついた。そして、満貫確定の聴牌へと、牌を切り出す。 「カン」 (あっ) もちろん、相手の暗刻がなんなのかなど読めるはずもないだろう。しかし、やっちゃったと思わずにはいられない。 わずか五巡目で生牌を危険視など普通はしない。しかし、咲にその考えが甘かった。 「ツモ、リンシャンカイホー」 責任、払い 頭がクラクラする。 淡の総合能力は確実に咲に勝る。 しかし、他二人のブーストで、咲の火力、スピードが恐ろしいことになっている。 (勝てる?これ) 責任払いの5200、安くない。 己の中に生まれた不安をしかし、淡は強引に呑み下した。 (弱気なこと考えるな!負けるわけにはいかないじゃん!!) 三人が協力したからなんだ。そんなもの言い訳にはしない。私が優位なんだから目をつけられるのは当たり前。 (負けるわけには……!!) 焦る。最初にあった余裕など、最早かけらも残っていない。 …… ………… ……………… 食いしばった奥歯が痛い。ような、気がする。 半荘1回目が終わった。 死に物狂いで打って、上がったのは二回。 最初の満貫のツモ、そのあと、咲にたいしてなんとか3900の直撃。 しかし、点差はわずか7000点まで縮まってしまった。 強い。 顔を覆う。手の隙間から差し込む蛍光灯の明かりがひどく鬱陶しい。 強い。 このままでは凌ぎきれない。 どうしよう どうしよう 絶望が淡の胸の内を埋め始めた。 負けるのが、恐ろしい。 負けてしまう、恐ろしい。 悔しい、悔しい。 みんな、他のみんなは全員+収支で帰ってきて、私のせいで全て台無しになって、負けて いやだ いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ 「どう、しよう」 休憩時間は長くない。まだ余裕はあるが、二回目の対局が迫ってくるのが恐ろしい。 「……」 救いを求めて、スマートフォンを見る。周りに誰もいないいまこの廊下で、唯一、何かにつながっているモノだ。 すがるように、ホームボタンを押す。 LIMEが、一件 須賀京太郎 怖かったら呼べ 握りしめたスマートフォン。すでにスライドしてLIMEを開いている。 須賀京太郎が試合開始直前に送ってきていた短い文章が、他愛のない会話の一番下に表示されていた。 (……なんで、わかんのよ) 試合開始する前、というのが激しくムカついた。 私がこうなることを、見越していたかのようだ……いや、事実そうなんだろう。だって須賀京太郎、私が負けると予想していたのだから。 「……」 既読はつけてしまったが、無視してしまおうか。 気分転換で開いただけで、返信する気分ではなかった、言い訳はそれで済む。 不本意だが私は、凄まじい重圧に襲われているのが傍目から見ても分かるだろうから。 でも…… 「……」 指が、動く なんで、書こうか 偉そうに、とか、舐めるな、とか、憎まれ口でも送ろうか そんな心配は無用と、強がって突っぱねようか。 結局、打ち込んだのは、『助けて』と、たったこれだけ。 あぁ、情けない、一皮剥ければ私はこんなに弱かったのか。 視界がじんわりと滲んでくる。そして、震える指で、送信を押した。 途端、奇妙な電子音がなる。 「はいはい、呼ばれて飛び出て即参上」 音の方を振り向くと、いま読んだばかりのはずの、金髪の男がこちらへ歩いてきていた。 「ほれ」 何を言うでもなく、その大きな手を差し出してきた。見ると、そこには小さな棒付きキャンディー。 「脳みそってスゲー大食いな器官でさ、しかも甘いもんしか受け付けねーらしいぜ」 「……そうなんだ」 なんとも、どうでもいい豆知識を聞かされた。 くれるのだろうと思って、それを手に取る。包み紙をとって、口に咥えた。 ……甘酸っぱい、けど少しベタついている。 夏の気温のせいか。 「……びみょー」 「ははっ、まぁもらいもんの飴だからな、文句はその人に」 「もらったものを誰かにあげる?フツー」 笑う余裕がないから刺々しくツッこむけど、このノッポはどこ吹く風だ。 ーーー気楽そーな顔してさーーー 「……なんで、送ってすぐに来たの?」 「こりゃ呼ばれるなって思って。紳士たるものレディの呼びかけには5秒以内に応じるもんだぜ」 「ストーカー?」 「ちげーよドアホ」 「アホだと~?」 あぁ、全く、こっちの気分も知らないで 楽しそうに、話しやがってさ 「こっぴどくやられたな、どーだうちのタイショーは」 「……一対一なら勝てるし」 「それ麻雀じゃねーし。で、どうだ。言った通りだろ?」 「……」 「お前、うちのあのあれにまくられて負けるって」 ポンっと、頭に手が置かれて、撫でられた。言葉とは裏腹に、手つきは優しい。 「……なんで、わかったの?私が負けるって」 「そりゃあ、3人がかりで潰されるだろーなーーって思ったんだよ」 「……ふーん」 安直な答えを聞かされた。確かに、あの3人に事実私は追い込まれている。大ピンチだ。血の池の方が生ぬるい地獄だとすら思うも。 「それと……もう一つ」 スッと、頭から手が離れる。顔を上げると、こっちをじっと見つめていた。 「お前は、お前が負けるのを怖がってるから、負ける」 その目は、真剣だったけと言ってる意味はまるでわからない。 「なぁ、麻雀で勝つって、なんだと思う?」 「……そんなの、点数が少しでも高ければ勝つでしょ」 「そおーだそのとーりだ!たとえ百点棒一本でも多い奴の、勝ちだ。100点でも低けりゃそいつの負けだ」 何を、当たり前のことを。京太郎は続ける。 「そのルールのせいてで俺の部内の一年生四人の中では、トップ率はダントツドベの0.95だ。わかるか、10回やって1回目トップになれるかどーかだ。そりゃそーだ、何もかもが劣ってる俺があいつらに容易に点数合戦で勝てるわきゃないからな」 「何その自虐情けない」 「やめろ死にたくなる」 えらそーに語ってたかと思えば途端に顔を曇らせる。 「まぁともかく麻雀ってのはそういうゲームだ……で、淡、聞くぜ。いま、この麻雀で勝ってるのは誰だ?」 唐突な、質問。 何を変なことを聞いてくるのか、億劫な口を開いて答えてやる。 「そんなの……私だよ。7000点、上にいる、けど……」 「そーだお前はまだ勝ってる!お前の仲間たちが、稼いでくれたおかげでな」 その言葉に、四人の顔が思い浮かぶ。 四人は、必死でリードを広げてくれた。対策されまくって、まるで自分の麻雀を打てなかっただろう、それなのに、決して引かず、互角以上の成果を出さて、私にバトンを渡した。 でも、そのリードは、もう…… 「淡、お前が負けてるのは、お前が3対1に追い込まれてるからだけじゃねーんだ」 「……」 「お前は、麻雀の基礎を見落としてるぜ。大将戦が始まった時お前は28000点もリードしてた、それなのに、なんでお前は場をささっと流さなかったんだ?」 「それは……」 「こう考えてみろ、淡。28000点のリードってのは、仮にこれが個人戦だとすれば、お前は50000点だとすると2位は22000点っていう超超大差だ。おまけに実際は相手はまだ8万9万あるから箱割れにするのは難しい……だとすればお前がやることは一つ。速攻で流す麻雀だよ」 京太郎の顔は、真剣だ。 「そりゃ、早く上がれそうな高い手なら目指せばいいけど、普通はここまでの大差ならささっと鳴いて、パパッとクイタンなりなんなりで流したり、あるいは安めの相手にわざと振り込んだりしてもいい。お前は相手を無理やり遅らせられるんだし、相手が3人で挑んでくるならそれを潰すために早上がりに徹底すべきなんだ」 「なんでお前がそうしなかったのか」 「それはお前がこの大将戦を、チーム戦のラストじゃなくて自分一人の戦いとしか見てないからだぜ」 「っ!」 その言葉は、驚くほど強く、鋭く、私の胸を貫いた。 そんなことないと叫ぼうとしてと、声がでない。 反論したい、でも言い返せない、だってそれは、その通りだったんだから。 「お前は負けん気が強いからな……準決勝で負けたの悔しいって言ってたし。だから、この大将戦で自分も+収支で終わらせたかったんだ」 「……私は」 「そこが、お前の急所だった。高い手で上がって優位になりたかった、自分”も”勝ちたかった……そこが、相手を遅らせてなお食らいつく猶予を残しちまう、お前の弱点なんだ」 まぁ咲のあれはそれでも勝てるかどうか怪しいと思うけど、と、京太郎は顔を少し引きつらせて語るが、私は、もう何も言い返せなかった。 私は、私の勝手な欲望だけで、大局を見ずに、自分のことしか見ずに、その結果、みんなの稼いだ点数を無駄にしてしまった。 もう、ダメだろうか、勝てないだろうか みんなに会わせる顔が、ない 「……嫌だよぉ……」 言葉が溢れる、涙が出てくる。 「負けるの、やだよぉ……勝ちたいよぉ……!!」 私が勝ちたいんじゃない、チームで勝ちたいんだ、今更私はそれに、気づいた。京太郎の、言葉で でも、もう遅い、私のリードはもう少ししかない もう…… 「諦めるにはまだ早いと思うけどな」 すっと、前に何か差し出される。それは牌譜のようだ。 涙をぬぐって、差し出されたそれを見てみる。 「これ……牌譜のノート……?」 「さっき言った、うちの一年四人で打った牌譜だ……お前に見せたの内緒だぞ?部長に知られたら殺されちまう」 お前の偵察した詫びだ、と苦々しげに京太郎は言う。その牌譜に目を落とすと…… (……南3局で、京太郎…1300点?) 絶望的だ。ほぼ勝ち目はないしかし京太郎の南4局には、逃げ腰な姿勢は見当たらない、よどみなく、フラつきながらも上がりを目指している 「一位の和に役満直撃すりゃ捲くって一位だ、勝ち目はあった、まだ諦められなかったんだ、結局負けたけどな」 「さて……淡い、お前は今、どんな状況だ?」 私は……大星淡は今…… 「私は……みんなが、稼いでくれた点数のおかげで、7000点リードして一位。残りは半荘一回。私は、相手の手を6向聴まで遅らせられる」 なんだ、まだ、ぜんぜんやれるじゃん。すくなくとも、この男のこの牌譜よりも。 てゆーか、私、有利じゃん。なんで、不安になってたんだろ。 「……うん……うん」 立ち上がる。話してる間に、あと少しで第二回開始の時間が迫っていた。 迷いは、断ち切った。 不安は、投げ捨てた。 よどみなんて、もう、ない。 まだ飴はけっこう大きい。流石に咥えたまま会場には行けないから、口から出して、京太郎にもたせた。 「え、おま、これ」 「ありがと、きょーたろー。でも、敵に塩送ったこと、こーかいさせてやるから!!」 不安なんて微塵もない、支えてくれたみんなのおかげで、私はまだ有利なんだから、あとはそれを私が最後までつなぐ。つないで見せる! 「おい待て!ほら!」 ああなんだと言うのだ!大きな声で呼び止められ振り返る。ぬっと、ハンカチを差し出された。 「涙ふいてけ、顔ひでーぞ」 「……サンキュー!」 受け取って、今度こそ走り出す。 私は負けない、白糸台のみんなのために、そして、お節介なこいつからアイスクリームをおごってもらうために! 「勝つぞぉ!うおおおおお~!!」 「会場で叫ぶなって~!!」 ……
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3955.html
前話 次話 みさき「こんにちわ、副将戦の実況を務める村吉みさきです。そして解説の」 理沙「……野依理沙!」 みさき「解説の野依プロです」 みさき「さて、今の状況ですが」 1位白糸台1912 2位清澄1282 3位臨海1016 4位阿知賀805 みさき「このように各校が白糸台を追う形となっています」 理沙「……白糸台!!」 みさき「はい、正直先程までとあまり変わらないので割愛させていただきます」 理沙「!?」 和「……少しでも、差を縮められるよう頑張ってきます」 優希「のどちゃん頑張るんだじぇ!!おっぱいだけなら1位だじぇ!!」 まこ「しょーもないこと言いおって……同じこと言うようで悪いが、頑張るんじゃぞ」 久「いつも通り、頼むわよ」 和「……はい」 久「ところで咲と須賀くんは?」 まこ「……いつも通り迷子と迷子探しじゃ」 誠子「汚名返上してきます!」 尭深「うん……頑張って」 淡「亦野せんぱーい!もうハンデいらないからやっちゃってー!!」 誠子「まかせとけ!そんなこと言えなくなるくらいやってくる!!」 菫「全く、お前までアホなことを……」 照「……誠子」 誠子「……はい」 照「準決勝のこと、まだ気にしてる?」 誠子「……はい。私があんなに失点しなければって、何度も思いました」 照「そっか……失点がどうとか、言う人はいるかもしれないけど、私は何も言わない」 照「……副将戦はまかせるよ。誠子らしく、頑張ってね」 誠子「……はい!!」 ダヴァン「では、いってキマス」 智葉「おう、まかせたぞメグ」 明華「ファイトです」 ネリー「一気に逆転ぐらいやっちゃおー!」 灼「……いってくる」 晴絵「灼……」 灼「……私は、優勝してからハルちゃんがプロ目指すって思ってるから」 晴絵「!」 憧「そうね。まだ最後まで分からないし」 穏乃「目指せ優勝!」 晴絵「……頼んだよ、部長!」 灼「……うん!!」 試合会場前廊下 和「この試合次第で……」 咲「の、和ちゃん!」 和「さ、咲さん!?」 京太郎「間に合ったかー!」 和「須賀くんまで!?」 京太郎「いやー、危なかった。また咲が迷子になるもんだから」 咲「それはいいよ!」 和「いや、よくないですよ」 咲「和ちゃんまで言う……」 京太郎「ま、それは後でいい。和、見せてやれよ。インターミドルチャンピオンの、ネット麻雀最強ののどっちの実力を」 咲「和ちゃんなら大丈夫って、私達信じてるから!」 和「咲さん……須賀くん……」 咲「負けないでね!!」 和「はい……はい!勝ってきます!!」 みさき「さて副将戦が始まりましたが、見どころはどこでしょうか?」 理沙「……せ」 みさき「あ、全部と制服以外で」 理沙「……白糸台」 誠子(そうだ……もう準決勝みたいになる訳にはいかない) 誠子(例え誰だろうと、私は勝つ!) 和「……ツモ」 誠子(清澄……) ダヴァン(準決勝より調子よくなってル?) 灼(この人が玄達が会いたがってた……強い) 和(……何故でしょうね。こんなにも偶然が続くなんて) 和(そんなオカルトありえません、と言いたいですけど) 和(今は、勝つ方優先です!) 和「ツモ」 みさき「前半戦終了です!原村選手、前半戦だけで大きく稼ぎました」 みさき「さて、この先どうなると思いますか?」 理沙「……逆転、ありそう!」 みさき「はい、白糸台も、かなり差を詰められてきました」 和「ふぅ……」 京太郎「よう、飲み物持ってきたぜ」 和「須賀くん。わざわざありがとうございます」 京太郎「すごかったな。このまま和が逆転するかと思ったぜ」 和「まだ分かりませんよ。どうなってもおかしくないんですから」 京太郎「そうだよな……」 和「……須賀くん」 京太郎「なんだ?」 和「私が転校したら…」 京太郎「え?」 和「……やっぱりなんでもないです」 和(転校、しなければいいんですから) 京太郎「なんか転校とか聞こえたけど……」 和「そうですね……これは大会が終わってから話ます」 京太郎「お、おう……転校とかしないよな?俺、和がいなくなったら寂しいぞ?」 和「……そういうこと、こういうところで言わない方がいいですよ?」 京太郎「いや、事実だし?それに咲や優希、まこ先輩や部長だってそう言うって」 和「……ありがとうございます」 和(……負けられなくなりましたね。ええ、絶対に) 誠子「はぁ……あんだけ言って……」 淡「亦野せんぱーい!」 誠子「ん、淡…」 淡「えい」ほっぺ掴む 誠子「……ひぇんぱいにむかっへひゃにひゅるんだ」ほっぺむにー 淡「んー、準決勝の時やってたしー」 尭深「……淡ちゃん、片方は私がやるから」 誠子「ひゃはみ」 尭深「……あんまり色々言えないけど、ファイトだよ」 誠子「……ひょろひょろはなひてふれひゃい?」 淡「……もちょっと」 尭深「……なかなか癖になる」 菫「……何やってんだか」 照「アレはアレでリラックスできればいい」 菫「お前にやってやろうか?」 照「私は別に……ちょっと待って。いや、だから私は……いひゃい、いひゃいいひゃい」 ダヴァン「……ジャパニーズ土下座デスカ?」 智葉「はえーよ」 ネリー「そーだよ!やるなら終わってからだよ!」 智葉「そっちでもねーよ!」 明華「日本の諺にあるじゃないですか『終わりよければ全てよし』」 ハオ「つまりネリー次第……」 ダヴァン「ネリー、頼みましたヨ」 ネリー「ネリー!?」 智葉「なんか違うし……緊張感ねーのかお前ら」 晴絵「灼」 灼「ハルちゃん……」 晴絵「諦めてないよな?」 灼「当たり前!」 晴絵「よし!じゃあ後半戦に向けた対策だ!」 灼「うん!」 宥「て、手伝います!」 憧「そうね。まだ試合は終わってないんだし、最後まで優勝目指そ!」 晴絵「よし、じゃあ3人は穏乃のウォーミングアップだ!で、まずは和対策で…」 誠子「ポン」 誠子(そうだ、私はもう負けられない) 誠子「ポン」 誠子(例え相手がどんなに強くても) 誠子「ポン」 誠子(一度負けた相手でも) 誠子「ツモ!」 誠子(勝つ!!) 誠子「ポン」 和(またポン……オカルトとか、そういうことより和了ること優先ですね) 誠子「ポン」 灼(ほとんど何もしてない……最後くらい……) 誠子「ポン」 誠子(よし!このまま…) ダヴァン「ロン」 誠子「……え?」 ダヴァン(最後まで大人しくしてるなんて、ないデスヨ) みさき「副将戦終了!トップは白糸台のまま、このまま優勝してしまんでしょうか?」 理沙「……分かんない!」 みさき「ですよね!」 理沙「……でも、大将戦は何か起きそう」 みさき「……野依プロがこんなに喋るなんて」 理沙「そこ!?」 副将戦結果 1位白糸台1912+352=2264 2位清澄1282+610=1892 3位臨海1016+289=1305 4位阿知賀805+95=900 前話 次話 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3348.html
http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1393921285/ 京太郎「よし、ナンパしよう。」 京太郎「運が悪くなるが、女性にモテると噂の泣きぼくろも付けた。」 京太郎「しかしリスクが高いな。よし、コンマに頼ろう」 京太郎「けど逆に悪いコンマだと...」 京太郎「考えても仕方がないか。よーし...こい!!」 京太郎「っと、その前にターゲット決めないとな。」 京太郎「あれは...清水谷さんか?それにしても、あんなに急いでどこへ」 竜華「怜~」 京太郎「人探しか。ちょうどいいな。すみません清水谷選手ですよね?」 竜華「怜~...って、なんやねん。今忙しいから、またあと...」 京太郎「大変そうですね。俺も手伝いましょうか?」 竜華「あ、はい。お、お願いします...///」 京太郎「じゃあ、一緒に探しましょうか。」 竜華「う、うん(あかん...うちどうして、こんな初めて会う男に)」ドキドキ 京太郎「(この黒子のおかげか、すんなり接触できたな。)」 竜華「あ、え...っと、」 京太郎「自己紹介がまだでしたね。須賀京太郎です。」 竜華「し、清水谷竜華です!(あかん。声が裏返ってもうた)」 京太郎「じゃあ、行きましょうか。」ニコッ 竜華「は、はい!!」 竜華「へえー、うちらと同じやな。」 京太郎「といっても、雑用ですけどね。」 竜華「雑用でも偉いやん。それに、うちらも須賀君みたいな人やったら大歓迎やで?」 京太郎「俺も、竜華さんに会えてラッキーでしたよ。竜華さん、素敵ですもん」 竜華「須賀君ったら、上手やな~。本気にしてまうやろ///」 京太郎「本気だったら、どうします?」 竜華「え?」 京太郎「俺が本気で竜華さんに惚れていたとしたら?」 竜華「ちょ、ち、近いで...須賀く「京太郎」」 京太郎「京太郎って呼んでください。竜華さん」 竜華「け、けど...あって間もないし...と、年上をからかったらダメやで、京太郎君(ち、近い)」 京太郎「竜華さん。」 竜華「京太郎君...(あかん...けど、振りほどけん。振りほどきたくないねん)」 京太郎「嫌だったら、言ってくださいね。」 竜華「い、嫌なわけ...ない「ひゅーひゅー」」 怜「竜華、えらい楽しそうやなー」 京太郎「あなたは確か...」 竜華「あ、あああ!」 怜「なんやお楽しみ見たいやし、お邪魔虫は退散しよかな~」 竜華「ちゃ、ちゃうねん。ちゃうねん。怜~」 怜「すごいな~竜華は。肉食系女子やん。」 竜華「こ、これは...その...」モジモジ 怜「ウチよりやっぱり男がええんか~...残念やー」 竜華「ちゃうねん。そら怜も大事やけど...京太郎も」 怜(あわてる竜華もかわええなぁ) 京太郎「これ以上の接触は危険か?」 京太郎(焦るな...効果は理解した。あとはじっくり...ふふふ) 竜華「京太郎君?」 京太郎「おっと、どうかしましたか?」 竜華「あ、あのな、怜も見つかったことやろ?だから、お礼、なるかわからんけど一緒にお茶飲まん?」 怜「えらいルックスの男やな...けど、竜華の太ももは渡さんで!」 竜華「怜!」 京太郎「あはは。ありがたい話ですね。」 竜華「ほな、一緒にいこ?」 京太郎「けど、買い出しの最中なので失礼します。」 竜華「そうなんか...残念や」 京太郎「じゃあ、また会いましょう。」 竜華「ほんま?約束やで!」 京太郎「じゃあ、竜華さん、怜さん。失礼します」 竜華「ほなな~」 怜「なあ竜華?」 竜華「なんや?」 怜「また会う。言うてたけど、連絡先しっとるん?」 竜華「そらもう...あーー!!」 怜「はぁ...(しゃあない。この怜ちゃんが竜華の恋を成就させたるで!)」 竜華「怜、ニヤニヤしてどしたの?」 怜「なんでもないで~」 京太郎「ふぅ...予想以上の効果だな。」 京太郎「買い出しで頼まれていたおやつも買ったし帰るか。」 京太郎「お店でかわいい店員におまけもしてもらった。ふふ...この黒子があればこの世のおもちは...ふふふ、はーっはっは!」 京太郎「ただいま戻りましたー」 まこ「おー、おかえりー」 久「ずいぶん遅かったわね。リュックはそこにおいてちょうだい。」 京太郎「ええ。色々ありまして。よいしょっと」 咲「お帰り、京ちゃん!」 京太郎「ああ。ただいま。咲」 咲「......」 京太郎「咲?」 咲「あ、何でもない。なんでもないよ?(なんだろう...今日の京ちゃん見てるとドキドキする)」 京太郎「変な咲」 咲「私変じゃないもん!」 和「......」 京太郎「変な人はみんなそういうんだよ。咲」 咲「だから、私変じゃないもん!」 京太郎「はいはい。」 和「咲さん。」 咲「なに?和ちゃん」 和「あっちで牌譜を見直しましょう。さあ行きますよ。」 咲「え、でも、さっきみんなで」 和「いいから早く」ズルズル 咲「またねー京ちゃん」 京太郎「おう。またな~(おかしいぞ...この魅惑の黒子が和に効かないだと?)」 京太郎「安物だからか?レズでも効くはず...それに、さっき部長にも効かなかったような...」 久「さっきからなにブツブツ言ってるの?」 京太郎「部長!脅かさないで下さいよ」 久「失礼ね。あら?須賀君、泣きぼくろなんてあったかしら?あら、取れないわね。」 ドクンッ! 久「ひぅっ」 京太郎「部長?」 久「な、なんでもない。何でもないわ(おかしいわ...須賀君の顔を見てから胸が変ね)」 京太郎「そうですか。(部長、さっきまでの反応と全然違うな。)」 久「あははは。」 京太郎「熱でもあるんですか?」ピトッ 久「ち、近いわよ。(須賀君の顔...最近まともに見てなかったけどこんなに...)」 京太郎「熱はないみたいですね。良かった」 久「い、一応お礼を言っておくわ。ありがと」 京太郎「いえいえ。部長に何かあったら大変ですから」 久「そうね。何かお礼をしなくちゃ...そうだ♪」 まこ「また悪い顔しとる」 久「今度から私のことを『久』って呼んでいいわよ。」 京太郎「久ですか?でも、部長は先輩」 久「これは命令よ。京ちゃん」 京太郎「きょ、京ちゃん?まぁいいか。わかりました。久(部長の目、これは竜華さんと同じだ)」 久「よろしい♪」 まこ「また変な思い付きかのう?」 久「京ちゃん、これからもよろしくね♪」 美穂子「う、嘘ですよね...」 美穂子「私の、私の上埜さんが...男に」 美穂子「許しません。上埜さんは尻軽じゃありません。あの男...許しません...絶対に!」 京太郎「おまけで貰ったお菓子...どうしようかな。部屋で一人で食べるのもつまらないし」 京太郎「夜風に当たりながら食べよっかな?」 京太郎「そうと決まったら...夜の公園で食べよう」 公園 京太郎「どこで食べようかな?」 京太郎「あそこがいいかも。」 京太郎「ここでいいや。いただきまーす。」 「いただきます。」 京太郎「誰だ!」 照「お菓子の妖精。そのボッキーがほしい」 京太郎「ああ、どうぞ。」 照「いただきます。」ガツガツ 京太郎「ああ、俺のボッキーが...」 照「最後の一本...いただきます。」 京太郎「ちょっと待てや」 照「なに?今忙しい」 京太郎「まずそのポッキー返せ。もともとは俺のボッキーだ」 照「......」ジー 京太郎「?」 照「!」 京太郎「ボッキー返せ」 照「んー」 京太郎「ボッキー咥えてどうした?」 照「ボッキーを二人で食べる///」 京太郎「赤らめる前に、口元の食べかす何とかしろよ。」 照「失敬。」ごしごし 照「よし。んー♪」 京太郎「どうしようかな」 照「はやふ~♪」 京太郎「......」ぎゅー 照「いたい...」 京太郎「あんまり食べると、太りますよ?」 照「太ったら責任取ってね。京ちゃん」 京太郎「ふざけ...京ちゃん?」 照「久しぶり。元気だった?」 京太郎「照さん!?」 照「かっこよくなったね。」 京太郎「久しぶりの再会がボッキー強奪なんて...照さんは相変わらずですね。」 照「照れる。照だけに///」 京太郎「久しぶりに会ったんだし、どこか行きます?」 照「なら、ケーキでも食べない?じゃんけんで負けたほうがおごりで」 京太郎「じゃんけんって...そこは先輩である照さんが」 照「じゃーんけーんポン!」グー 京太郎「ポン」パー 照「......」 京太郎「やったー」 照「仕方がない。菫を応援に呼ぼう」 照「うん。そう。財布もって...よろしく」 京太郎「照さんが奢ってくれるんじゃなかったんですか?」 照「私に任せて」フンス 京太郎「まあいいか。」 照「ついた。」 菫「まったくいきなり財布を持ってこいなんて」ブツブツ 照「菫早いね。」 菫「お前のせいだろう...が...?」 京太郎「はじめまして。」 照「どうかした?」 菫「おい、あのイケメンはなんだ」ヒソヒソ 照「弟、婚約者?」 菫「ふざけるな!ずぼらなお前にこんな」 京太郎「あのー」 菫「ああ、失礼した。初めまして。白糸台の部長である弘世菫だ。」 京太郎「初めまして。須賀京太郎です。」 菫「よろしく頼むよ。」 京太郎「はい。こちらこそ」 菫「......(照にはもったいない男だな。このルックスに金色の髪...私にぴったりじゃないか)」 菫「いきなりで悪いが、ここより私たちのホテルに来ないか?照の身内というなら、歓迎しよう。」 京太郎「ホテルですか?」 照「私も一緒」 菫「そうだ。なんなら、泊って行ってもいいぞ?ベッドは2つしかないし、照の寝相は悪いから私と一緒だが」 菫「そうだ、麻雀はできるか?もしできないなら私が教えてやろう。なに、遠慮はするな。」 菫「食べ物は何が好きだ?ホテルに行く前に買い出しに行こう」 菫「なに、財布の心配はするな。照のお菓子代に比べれば...どうだ?くるだろ?くるよな?」 京太郎「おっと、メール...すみません。帰らなきゃいけないみたいなので、失礼します。」 菫「そ、そうか。なら...お詫びだけさせてくれ。」 京太郎「お詫びですか?」 菫「ああ。ちょっとじっといしていてくれ。動くなよ?」 京太郎「はぁ」 菫「んむっ」 京太郎「んんっ!」 照「ほぁっ!」 菫「ふぅ、ファーストキスだ...特別だぞ」 京太郎「な、な...」 菫「じゃあまた会おう京太郎君。行くぞ照(これで彼も私にシャープシュートだ)」 照「え、んー...わかった。」 京太郎「ラッキー...だったのかな?」 宥「す、すごいなぁ...うぅ、寒い。早く温かいもの買わないと」 宥「けど、白糸台にあんな人いたかなぁ?」 京太郎「急いで帰って来いって部長、何の用事なんだろ?」 宥「きゃっ」 京太郎「おっと、すみません。大丈夫ですか?(おもちだ、服に隠れてるけど、大きなおもちだ!)」 宥「は、はい」ブルブル 京太郎「失礼ですけど、寒いんですか?」 宥「う、うん。私、変だよね」 京太郎「......」ぎゅっ 宥「え、えぇ」 京太郎「いきなりごめんなさい。寒そうで見ていられなかったので」 宥「い、いえ...(この人...あったかぁい♥)」ぎゅっ 宥「ふわぁ///」 京太郎「どうですか?」 宥「う、うん。あったかかったです」 京太郎「じゃあこれで、俺は失礼しますね。」 宥「あ、あの、ちょっと待って」 京太郎「どうしました?」 宥「ありがとう。私、松実宥です。」 京太郎「須賀京太郎です。宥さん」ニッコリ 宥「また、ギュッてしてほしいな」 京太郎「ええ。いいですよ(おもちが大きい人は大歓迎です)」 宥「約束だよ」チュッ 京太郎「こちらこそ」チュ 宥「キスってあったかーい♥」 京太郎「じゃあさようなら。」 宥「はぁ~い」 京太郎「黒子様様だな。」 京太郎「これさえあれば何でもできるぜ。貧乳も寄ってくるのが難点だが」 京太郎「あ、そうだ。部長に連絡してねーや。怒られっかな」 京太郎「げっ...着信20件?スゲー怒られるかも」 ぷるるる 京太郎「もしもし、ぶちょ『須賀君?今どこ?無事?』」 京太郎「あのー『何回かけても出ないから心配で心配で、あ、これはあれよ、そう。部員の失態は部長の失態だからよ。』」 京太郎(いつもの部長じゃない。) 『ちょっと?返事をしなさい。もしかして、女の子と一緒かしら?』 京太郎「そ、そんなことあるわけ...会ってました。」 『いますぐ私たちの宿泊先に来なさい。理由は、わかるわね。』 京太郎「はい。」 久「お帰りなさい。京ちゃん」 京太郎「ただいま帰りました。部長」 久「部長?」 京太郎「ただいま久」 久「よし♪」 京太郎「ところで、咲たちは?」 久「あら?またほかの女の話?それ、失礼だからやめたほうがいいわよ。私だからちょっとの罰で許してあげるけど」 京太郎「待てよ...今の俺は魅惑付...いけるか?」 久「ちょっと、私の話聞いてる?」 京太郎(よーし...) 京太郎「久」ギュ 久「な、なによ。急に抱き付いて」 京太郎「心配かけてごめんな。」 久「な、別に心配なんて...してたけど」 京太郎「俺は、清澄高校の須賀京太郎。どこにもいかないさ。」 久「ん...なら、私のそばにいなさい。部長命令よ。」 京太郎「それはちょっと...」 久「さっきのは嘘かしら?それとも、あなたも私の前から消えるの?」 京太郎「それはその(目が...なんだ、光が消えたというか)」 久「あははは。冗談よ。じょーだん」 京太郎「じょ、冗談?」 久「みんなもう寝ちゃったし、だれも見てないからからかってみたのよ」 京太郎「は、はぁ」 久「さ、夜も遅いし、もう帰っていいわよ。それとも一緒に寝る?」 京太郎「じゃあ失礼します。」 スタスタ...... 久「泊っていけばよかったのに」 次の日 京太郎「うーん、いい朝だ。飯も食ったし皆に合流しようかな。」 京太郎「あれ?部長、早いですね。」 久「こら、また部長って言ったわね」 京太郎「おっと、おはよう久」 久「おはよう、京ちゃん」 京太郎「それにしてもどうしたんですか?」 久「朝一番で日光に浴びると肌にいいのよ」 京太郎「へー」 久「京ちゃんもどう?」 京太郎「今日もまた買い出しに行けばいいですか?」 久「そうね。離れるのは寂しいけど」 京太郎「ははは。久らしくないですね。」 久「私だって女の子ですもの。たまには甘えたくなるわ」 京太郎「ちょっと、急に抱き付かないで下さいよ。」 久「残念ね。せっかく京ちゃんを独占できるのに」 京太郎「独占って...物みたいに言いますね。」 久「それはいいわね。でも、覚えておいてちょうだい。京ちゃんが物なら、私はさっさと自分のものにしているわ。」 京太郎「はい?」 久「なんてね♪さ、みんなを呼んでくれる?」 京太郎「はい!」 久「ふふふっ男子三日会わざればって言うけど本当ね。」 久「京ちゃん......今は遊びなさい。けどね、いずれは私のものよ。そうなった時には...ふふ」 京太郎「今日も人がいっぱいいますね。」 和「女子の大会なのに...どうして男が」ブツブツ 咲「京ちゃん、強い人いるかな?」 京太郎「うーん...咲より強いとなると」 和「咲さんより強い人なんていません。なぜなら咲さんですから」 京太郎「和?」 久「そうね。でも、油断は禁物よ。IHには魔物が潜んでいるわ。」 優希「どんなやつも私のタコスの具にしてやるじぇ~」 京太郎「笑顔で恐ろしいことを言うな。」 優希「う、うるさいじょ!い、犬のくせに...かっこよくなって...」ボソッ 京太郎「なんだ?」 優希「な、なんでもないじょ!」 久「その前に、。京ちゃん...少し話したいことがあるの」 咲「あ、私も話したいことあるんだけど」 京太郎「えーっと...こういう時はどちらから」 和「咲さん、一緒にお花をつみにいきませんか?行きましょう」 咲「え、え?わ、引っ張らなくても歩けるよ」 和「さぁ行きましょう。」 咲(最近京ちゃんとお話しできないなぁ...それに、部長の京ちゃんに対する反応...気のせいかな?) 久「ふふっ...ナイス和」 京太郎「何か言いました?」 久「いえ、何も言ってないわ。じゃあまこ、優希、さきに部屋に行っててくれる?私たちもすぐに向かうから。はい、これタコスよ」 優希「わかったじぇ~」 久「ふふふっ......行ったわね。」 京太郎「部長?」 久「こら、また呼び方忘れてるわよ。」 京太郎「あ、久。みんなの前じゃ恥ずかしくて」 久「ねぇ、ちょっと相談に乗ってくれないかしら?」 京太郎「相談ですか?」 久「ええ。最近、京ちゃんのことを思うと、なんだか胸が苦しいのよ。京ちゃんが優希と喋っていると特に、咲ともそうよ。」 京太郎「もしかして病気ですか?一緒に医務室行きます?」 久「そうね。でも、これはきっと医務室へ行っても治らないわ」 京太郎「も、もしかして、心臓病とか!?」 久「うーん...もっと大病ね」 京太郎「なんてことだ...部長が...うわっ」 久「でも、京ちゃんに抱き付くと、動機もおさまるの。それに、心の隙間が満たされていく気がするの」 京太郎「で、でも...こんな場所で抱き付かれたら周りの目が...」アセアセッ 久「いいじゃない。美少女に抱き付かれて幸せでしょ?」 京太郎「は、離れてくださいよ。恥ずかしいじゃないですか」 久「なによ...仲のいいところをアラサーとかに見せてあげましょうよ。」 京太郎「アラサーって...」 ギヤァー アラサーが発狂したぞー!抑えろー!! 若いからって調子に乗るんじゃないぞ☆ 鬼が出...ぎゃー!! 久「ね、面白いでしょ?それに、今は私とおしゃべ「京太郎君!」」 京太郎「この声」 竜華「久しぶりやな~やっと会えたで~覚えとる?」ギュッ 京太郎「竜華さん!(相変わらず大きい!)」 竜華「覚えててくれたんか!?うれしいわ~♥」 久「竜華さん?」ムカッ 京太郎「もちろんですよ。」 竜華「さすが京ちゃん、かっこええだけやないな~」ムギュー 京太郎「それほどでも」 久「ねぇ、貴女清水谷さんよね?私の京ちゃんから離れてくれないかしら?」 竜華「なんでや?それに、京太郎君はあんたのもんやないで?あんたが離れたらええやん」 久「い、いうじゃない...でも、『部外者』である貴女のほうが無関係じゃないかしら?」 竜華「なんやと?」 久「それより、私たち試合があるから帰りたいのだけど」 竜華「そんなら帰ればええやん。」 久「そうね。じゃあ京ちゃんも行くわよ。」 竜華「ちょ、京太郎君は試合ないやろ?な?」 京太郎「確かに、試合はないですけど」 久「だからなにかしら?」 竜華「ほんなら、京太郎君借りてってもええやろ?」 久「ダメに決まっているわ。彼も大事な部員、人だもの」 京太郎「だ、そうです。すみません」 竜華「う、嘘やろ?」 久「残念だったわね。じゃ、試合があるので失礼するわ。行くわよ、京ちゃん」 京太郎「は、はい。じゃあ、失礼します。竜華さんたちも頑張ってください!」 竜華「きょ京太郎君...」 久「決勝で戦えるといいわね~、できればもう会いたくないけど」クスクス 竜華「京太郎くーん!」 竜華「......あの女、許さんで」 京太郎「部長に言われて買い出しは無しになったけど、軟禁状態だ」 咲「ぶ、部長に京ちゃんを部屋から出すなって言われてるから、ごめんね。でも、その分二人でお話しよ?」 京太郎「そういえば...あの人は今何してるのかな?」 京太郎「菫さん...おもち大きかったな。」 咲「菫さん?誰?」 京太郎「あ、き、気にするなよ。」 咲「ふーん...」 菫「はぁ...」 照「菫?お菓子食べる?」 菫「はぁ......会いたい」 照「無視された...お菓子買ってくる」 菫「会いたい、会ってギュッてしてほしい。」 淡「誰に~?」 菫「王子様だ」 淡「ぷっ...あはははは!」 菫「何がおかしい!」 誠子(弘世先輩の独り言...なんて言えない) 淡「だって、王子、いまどき王子って...あははは!今時言わないですよ?」 菫「それくらいカッコよかったんだ!」 淡「うっそだー!菫先輩って大げさ~」 菫「違う、けして過大評価などでは...いや、なんでもない。」 淡「??」 菫「いいから、この話は終わりだ。(おっと、危ない。ライバルは少ないほうが狙いやすいからな。淡にこれ以上喋るわけには...)」 淡「変な菫先輩...!」 菫「どうした?変な顔をして」 淡「イケメンなら、彼女とかいるんじゃないんですか?」ププッ 菫「なんだと?」 淡「だって~イケメンだったら普通はいるでしょ~」 菫「あり得ん...彼に彼女...私以外の」 誠子(独り言から察するに、弘世先輩は彼女じゃないんじゃ...) 淡「菫先輩は彼女じゃないですよ?たぶん」 菫「あ゛ぁ?」 淡「ひっ!」 誠子「地雷を踏みに行くなんて...さすが大星、高校100年生」 菫「耳が遠くなったかな、もう一度言ってくれないか?」 淡「あわわわ...そ、そんなに言うのなら、会わせてくださいよー...なんちゃって~」 菫「なんのつもりだ?」 淡「い、いえ、せっかくなんで、先輩の見てみたいな~「奪る気か?」」 菫「私の王子様を奪う気かと聞いているんだ」 淡「そ、そんなつもりは」 菫「嘘だ!」 バンッ!! 淡「ひっ!!」 淡「な、なんで...」 菫「あまり調子に乗るなよ?彼と同じ金髪だからと言って、お似合いとは限らない。私のような大和撫子こそが一番なんだ。」 淡「菫先輩...なんか変...」 菫「それにだ。彼に私はファーストキスをささげている。この意味が分かるか?」 菫「おとぎ話でもあるように、彼は私の運命の相手だ。王子様なんだ。気安くお前のような1年が」ブツブツ 淡「に、逃げなきゃ...」 淡「ご、ごめんなさーい!」ダダダダッ 菫「逃がすか。大将戦もあるんだぞ?それに、逃げるふりをして、彼に会うつもりじゃないのか?」 淡「そ、そんな、顔も知らないのに...」 菫「黙れっ!!」 淡「ひぅっ!」 誠子(ご愁傷様...大星) ガラララ 照「ただいま。」 誠子「お、お帰りなさい。」 尭深「...ただいま」 淡「うわーん、てる~、尭深せんぱ~い」 照「何かあったの?」 尭深「?」 菫「あぁ、会いたいなぁ...君も会いたいよなぁ...私はここだぞ?早く来てくれ私の王子様」 照「?」 竜華「あぁ、あかん、だめ...んっ」ビク 竜華「京太郎君、京太...いっ..」 『京ちゃんは私のものよ~』 竜華「うわぁぁ! はぁ、はぁ...」 竜華「慰めても慰めても、この体は満足せん...怜に膝枕しても、まだ足りんねん。しかも、いつもいく寸前にあの女の顔が浮かぶ...」 竜華「竹井久...」ギリッ 竜華「うちがいない間に彼に変なことしとらんやろな...あの女なら、部長権限や言うて」 竜華「あかん。考えれば考えるほど彼、京太郎君が不安や。よしっ探しに行こ!」 竜華「待っててな、京太郎君♥」 竜華「けど、どこ行ったらええねん。京太郎君の連絡先も、宿泊先も聞いてないし」 怜「本能やで竜華」 竜華「怜!」 怜「運命の相手なら、必ず会えるで。うちら2人みたいにな」 竜華「怜~」ギュッ 怜「これじゃ、いつもと逆やんか。世話が焼けるでほんま」 竜華「行ってくる、応援してな。怜」 怜「後のことは、まかせてーな。」 竜華「おおきに、おおきに。」 竜華「確か、京太郎君はうちらと逆の会場やったな」 竜華「会場に来たものの、もう夜やし会場にもおらん。」 竜華「......」 久『貴女には、京ちゃんはもったいないわ。他校のくせに、京ちゃんも迷惑よ。』 竜華「あない屈辱、二度と忘れられんねん。けど、このままじゃ京太郎君とも会え...『だーれだ♪』」 竜華「ひぁぁっ!」 京太郎「おっと、そんなに驚かなくても、俺ですよ。」 竜華「その声...!」 京太郎「はい。京太郎です。竜華さん、覚えてますか?」 竜華「うちの名前まで...感激やぁ~」ギュッ 京太郎「抱き付くなんて、案外甘えん坊でかわいいですね。」 竜華「本物に触れれてうれしいわ...やっぱり、京太郎君は運命の人やったんやな。」 京太郎「運命の人ですか?」 竜華「そや、大阪から来たうちと、長野から来た京太郎君、普通会えへんで?」 京太郎「確かにすごい偶然ですね。」 竜華「それに、昼間は竹井久に邪魔されても、夜には2人きりで会える。これはもうあれや!うちらはロミオとジュリエットやん!!」 京太郎(竜華さんは俺の黒子でベタ惚れ状態...ルックス、スタイル良し、邪魔者もいない。仕掛けるなら今か?) 京太郎「ジュリエット、会えてうれしいよ。」チュッ 竜華「んんっ!」 京太郎「貴女と会えたのが運命なら、俺はどんな運命も受け入れましょう。」 竜華「んっ、それって...うちと」 京太郎「ええ。とりあえず、俺の部屋に来いよ。2人きりで、な?」 竜華「う、うん。ええの?」 京太郎「もちろんだ。それとも、竜華は俺が怖いか?」 竜華「ううん。こわないよ?」 京太郎「今日は泊っていくだろ?」 竜華「ええの!?泊る!」 京太郎「ふふっ(こんなに簡単にいくとはな)」 竜華「笑った顔も、かっこええなぁ~」 京太郎「竜華もいいよ。特に、足がいい。」 竜華「ひぅ、もう、手が早いなぁ。」 京太郎「竜華も期待してただろ?」 竜華「もぉ~、言わんといてぇな、はずかしいやん」 京太郎「ま、部屋でゆっくりな。」 竜華「優しく、頼むで///」 怜「竜華...」 怜「寂しなるけど、よかったなぁ竜華、幸せになり」 怜「避妊はしっかりな。怜ちゃんはクールにタクシーで帰るで。」 ブロロロロ 竜華「とき?」 京太郎「どうした?」 竜華「怜がいたような...気のせいやろか?」 京太郎「いたなら、誘うか?」 竜華「ううん。気のせいやったわ。それより、はよしよ?(怜には悪いけど、彼だけは誰にも渡したないねん。)」 京太郎「まったく、こんなに淫乱に育てた覚えはないぞ。」 竜華「こんなん、京太郎君の前だけやで。」 京太郎「ははっ、じゃあ今日は帰さないからな。」チュッ 竜華「んっ...こっちも、帰る気ないで♪」チュッ 京太郎「ふっ、んっ、んっ」 竜華「あんっ、んんっ、ひぐっ、あんっ」 京太郎「この体、触り心地、最高だな。」 竜華「ひっ、そこはだめ、弱い、ひっ!!」 京太郎「竜華の体、だれのものかしっかり叩き込んで」 竜華「来て、うちも、もう、んん~~~!」 まこ「良い子もいるだろうし、S○Xシーンは省略じゃ。すまんのう。」 京太郎「朝か...なんだ、この感触」 竜華「んんっ...」 京太郎「そうだ。竜華さんが泊ってたんだった。」 竜華「京太郎くぅん...」 京太郎「そうだ。俺はやったんだ。これでもうキャスターにはならない。俺はランサーだ。女を突いたんだ。」 竜華「えへへ...」 京太郎「それにしても、いい体だな。」モミッ 竜華「あうっ、も~なんなん、朝から」 京太郎「裸で寝てるほうが悪いんですよ。触りたくなりますって」 竜華「そんなん、京太郎だって同じやん。もっかいする?」 京太郎「やりたいけど今日も試合あるでしょ?体、べとべとでしょ?シャワー浴びません?」 竜華「そやな。名残惜しいけど、うちも学校あるしな。でもまたしてくれるやろ?うち、もう京太郎君の彼女みたいなもんやんか」 京太郎「そうですね。じゃあ、俺と付き合います?」 竜華「うん!ゆ、夢じゃないよね?あの女も出てこんよね。」 京太郎「何言ってんすか。現実ですよ。俺に抱かれたことも、俺の彼女になったことも」 竜華「京太郎!」ギュッ 京太郎「竜華」 竜華「浮気したら...許さんで」 京太郎「竜華?」 竜華「京太郎がうちを選んでくれたのは嬉しいで。でもな、もし京太郎がほかの女と一緒にいたら...」 京太郎「だ、大丈夫。竜華以外の」 竜華「なら安心や。やっぱり、相思相愛だと安心するで。そや、写メとっとこ。怜たちに見せよっと」カシャ 京太郎「りゅ、竜華?」 竜華「よし、きれいに撮れたで。」 京太郎「ちょ、ちょっと(しまった、おもちを前に焦りすぎたか?)」 竜華「なんや?キスか?ええで、んっ」 京太郎「そ、そうじゃなくて、その...写真とか、彼女とか、ちょっと急ぎすぎじゃないかな~なんて、」 竜華「は?」 京太郎「ひっ...(竜華の目から光が)」 竜華「なんや、何か不満でもあるんか?」 京太郎「そういうわけじゃ...ただ、あまり縛られても俺が困るというか」 竜華「うちがそんな重い女に見える?ただ京太郎と幸せになりたいだけやん。そやろ?それとも、うちが嫌いになったんか?」 京太郎「そういうわけでは...(おかしい、黒子があるのに、優位に立てない)」 竜華「ならええやん。あの竹井とかいう酷い女にも伝えといてな。京太郎にふさわしい女は誰か、っちゅうことをな。」 竜華「そや、なんならうちが伝えたるで。電話、貸して」 京太郎「い、いや、さすがに『貸せ!』」 竜華「よし、それでええねん。あ、もしもし?え、京ちゃん?おもろいこと言うなぁ、私の京太郎君やで?気安く呼ばんといてえな。」 京太郎「あ、あわわ」 竜華「京太郎君ならおるで。そや、あんま酷い仕事押し付けたらあかんよ?」 竜華「彼氏を奴隷扱いされて喜ぶ女なんておらんで?なに?誰が彼氏彼女やと?うちと京太郎君に決まっとるやろ。鈍いなぁ」 竜華「そういうわけや。ほなな。」 京太郎「まずいことになった......」 竜華「なにがや?」 京太郎「久に...」 竜華「京太郎?久、言うたか?」 京太郎「え、ええ。」 竜華「うち以外と親しくなったらあかんで?京太郎はイケメンやし、女の子が勘違いしてまうやろ?」 竜華「だから、うち以外の名前呼びはもう禁止や。わかったな?」 京太郎「でも、幼馴染とか、呼びなれてる「返事は?」」 京太郎「了解です。マスター!(な、なんだ...口が勝手に...)」 竜華「そないかしこまらんでも...長い付き合いになるんやし、よろしくな。京太郎♪あつっ、なんや、太ももに変な模様が」 京太郎「ウソだろおい...あれってジョークじゃなかったのかよ。」 竜華「なんや、何か知っとるんか?」 京太郎「それは俺を縛る呪い...最大3つまでマスターの願いをかなえます。(まただ...また勝手に)」 竜華「そうなんか...それって、私の夫になれ。とかも効くんか?」 京太郎「それがマスター...主の望みなら」 竜華「ええこと聞いたで。これから楽しみやな、京太郎♪」 京太郎「はい。主の御心のままに(俺はこの時初めて、竜華さんが怖いと思った。)」 京太郎「まずいことになった...この黒子、デメリットがあるとは聞いていたが、ここまでとは」 竜華「なにブツブツ言ってんの?」 京太郎「何でもありません。主、それよりこれからどう行動するのですか?」 竜華「その、主言うのやめてほしいな。なんか距離感じてしもうて寂しいねん」 京太郎「しかし、主は主であり」 竜華「竜華でええよ。京太郎」 京太郎「わかりました。竜華様」 竜華「なんか違うけど、まあええわ。それより、さっきから電話鳴りやまんね」 京太郎「ええ。どうやら、部長からのようです。」 竜華「しつこいなぁ...そや、京太郎から直接言えばええねん。」 京太郎「言えというのは?」 竜華「そやなぁ...『部長、俺彼女ができました。俺はこの人に忠誠を誓います。』でええよ。あの女の悔しがる顔が目に浮かぶで」 京太郎「で、ですが、それでは...」 竜華「京太郎、言えへんの?」 京太郎「...わかりました。(逆らえない...黒子のせいか?しかし、このままじゃ)」 竜華「ほら、電話やで。しっかり言いや」 京太郎「もしもし部長ですか?ええ。須賀京太郎です。実はですね部長、俺彼女ができました。俺は今後この人に忠誠を誓います。」 竜華「ええでええで~」ニマニマ 京太郎「冗談ではなく、え、脅されてる?そんなことは...」 竜華「脅すわけないやんかな~」ギュッ 京太郎「わ、竜華、急に抱き付かないで...え?今どこか?まだ旅館ですけど」 京太郎「え、いや、来られても困るんで...え、竜華に変われ?」 竜華「ええで、電話貸して。もしもし、さっきからヒステリックな声あげて...あんまり京太郎困らせんなや」 竜華「え?困らせてるのはお前?馬鹿言うなや。あんたホンマしつこいで。な、京太郎もそう思うやろ?」 京太郎「俺は......竜華さんのものじゃない!」 竜華「なんやと?」 京太郎「助けてくれ、久!咲!」 竜華「久言うたな。さっきの話は無しや。今日は京太郎君、千里山に連れてくわ。色々お話したいしな。じゃあ切るで。」 プツッ...ツー、ツー 竜華「京太郎、今の言葉なんや?なんかの冗談やろ?彼氏になって気が動転してただけやろ?そうに決まっとるよな?」 京太郎「俺は、竜華のことは確かに好きだ。けどな、こんな関係望んでないんだよ。がはっ!」 竜華「言うやんけ...京太郎、やっぱり男らしいなぁ、そういうところも大好きやで」 京太郎「だったら、さっさと俺を解放「それはできんナぁ」」 竜華「そや、これ試してみよか。3つまで願い事かなうんやろ?」 京太郎「霊呪...それで俺を縛る気か?」 竜華「ううん。縛るなんて人聞き悪いなぁ...ただ、京太郎君の目を覚まさせるだけやないか」 京太郎「覚まさせる?」 竜華「そや。誰の彼氏か、うちがどれだけ京太郎を愛しているか、ほかの女が京太郎にとってどれほど害悪かをな。」 京太郎「主、いえ、竜華...どうして」 竜華「さっきから主や竜華やキャラぶれとるなぁ...久のせいか?久の声聞きいてからやもんな。ほんま清澄の部長は悪女やで」 京太郎「......俺にどんな呪いをかけるつもりですか?」 竜華「そやなぁ~...一番はあれやろ。うちと結婚、子作りやろ。」 京太郎「そ、そんな...」 竜華「けどな、京太郎には本心で好いてもらいたいねん。こんなのに頼らんでな」 京太郎「ならば、そんなものに頼らず、俺を解放してくれれば「それはあかん。」」 竜華「京太郎は魅力的やからな。逃げられんようにしとかんと...そや、これにしよか」 竜華「命令や。これからはできる限り、うちと一緒にいてもらうで。」 キィーン 京太郎「あぐっ、がっ、頭が...(なんだこれ、脳みそに針を刺されているような...)」 竜華「効いたんかな?京太郎?」 京太郎「何でしょうか、わが主、竜華様」 竜華「京太郎のこれからの予定は何?」 京太郎「今日は、これから竜華様と千里山高校のメンバーと合流し、その後は竜華様の付き添いになります。」 竜華「ん~~♪」 京太郎「竜華様?」 竜華「清澄はええんか?」 京太郎「はい。竜華様と一緒にいることが、俺の使命ですから。」 竜華「そやな。なら、こんなホテルチェックアウトして、うちらのホテルこれから泊ろっか。1人増えても一緒やもん。」 京太郎「竜華様のそばにいられれば、俺は構いません。」 竜華「ええ返事や。さすが京太郎やな。」 竜華「怜もびっくりするやろな...うちが彼氏連れてきたら...じゃ、行くで。邪魔者が来たら面倒やし」 京太郎「はい。」 竜華(この霊呪、効き目抜群やな。使いどころ選ばんと...) 京太郎(清澄のみんな...ごめん。俺はもう、戻れないかもしれない) 竜華「♪」 一方そのころ 阿知賀イベント コンマによっては修羅場有 宥「うう、寒い...」 玄「おねーちゃんがマフラーを脱いだ!?」 憧「嘘、雪でも降るの?」 宥「寒いとね、あっためてもらえるんだよ?」 憧「あっためてもらう?」 玄「だ、誰に?」 宥「金髪の...太陽みたいな人///」 憧「そ、それって男?」 宥「うん...とっても、あったかい人」 玄「ど、どんな人なのです?」 憧「だから、金髪の太陽みたいな人って」 宥「それに、すっごくきれいな顔なの。泣きぼくろも素敵で」 憧「ベタ惚れじゃん...名前とかわからない?」 宥「うん...一回しか会ったことないから...また会いたいなぁ」 憧「一目ぼれ!?」 宥「そうなるのかなぁ...でも、あの人はすごく素敵なの。あったかくて、私を包んでくれるの」 憧「ゆ、宥姉がそこまで...」 玄「お姉ちゃんをここまで...ええい、見つけ次第とっちめてやるのです!」 宥「誰を?」 玄「そのナンパ男をなのです!」 宥「なんで?」 玄「だって、お姉ちゃんに抱き付くなんて...」 宥「とっちめて、もし私が嫌われたら?」 玄「えっと、それは...」 憧(真顔で問い詰める宥姉、怖いわ) 玄「そうなのです!とっちめるより、捕まえてお姉ちゃんに会わせるのです。」 宥「探してくれるの?玄ちゃんは優しいね」 玄「あ、当たり前なのです!私のコンマ運にかかれば、男の1人や2人、すぐ」 憧(玄ってコンマ運いいっけ?) 宥「じゃあ、お願い、しようかなぁ...きっと、この会場にいると思うから」 玄「お、お任せあれ!」 玄「行ってくるのです!」 宥「頑張ってね~」 憧「試合始まるのに、見つけられるのかな?」 玄「その前に、おトイレ行ってくるのです!」 憧(ホントに大丈夫かなぁ...) 玄「見つけたのです!」 憧「はやっ!」 玄「女子トイレの近くにいたのです。金髪、イケメン、泣きぼくろ、ビンゴなのです。」 京太郎「ここは?」 憧(うわ、すごいイケメン...化粧しっかりすればよかったかも。でもなんで女子トイレの前?) 玄「まぁまぁ、お姉ちゃんが話があるのです。」 京太郎「お姉ちゃん?」 宥「お、覚えてますか?」 京太郎「貴女は確か...宥さんでしたっけ?」 宥「はい...覚えてて、くれたんですね。」 憧「宥姉嬉しそ~」 玄「お姉ちゃん、私もほめてほしいのです。」 宥「試合、頑張ってね。」 玄「そ、それだけ?」 宥「憧ちゃん、玄ちゃんのことお願いしていい?2人きりになりたいの」 憧「は、はい。ほら、玄、行くよ。」 ズルズル 玄「お姉ちゃーん!」 宥(見つけてくれてありがと...玄ちゃん) 京太郎「それで宥さん、いったい何の用事でしょうか?」 宥「あの、あう...えい」ギュッ 京太郎「!?」 宥「あったかーい」 京太郎「宥さん?」 宥「少しだけ、少しだけでいいの。貴方のぬくもりに包まれたいの」 京太郎「困ったな...弱っている女性を拒むわけにもいかないが、わが主との約束もある......」 宥「主?誰かなぁ?」 京太郎「俺の大切な人です。髪が長く、俺のことを心配してくれる心優しい方です。」 宥「......」ギュッ 京太郎「宥さん?」 宥「聞いてもいい?その人って、誰?もしかして...彼女?」 京太郎「ええ。わが主こと竜華様は俺の彼女です。」 宥「...して」 京太郎「何か言いました?」 宥「どうして...どうして彼女なんて...」 京太郎「それが主の望みだからです。」 宥「貴方は...それで満足なの?」 京太郎「ええ。それが彼女、竜華様が望んでいることですから」 宥「さっきからそればっかり...私に抱き付いたのはどうして?彼女がいたなら、どうして白糸台の人ともキスをしたの?」 京太郎「そのようなこともありました。しかし、今の俺は竜華様が大事なんです。俺が一緒にいなければ...だから、これで失礼します。」 宥「行かせない。貴方は...きっと騙されてる。」 京太郎「...離してください。」 宥「いや...わがままだけど、ここで離したら、もう会えない気がするから」 京太郎「竜華さんが俺を待っているんです。」 宥「また竜華さん...そんなにあの人がいいの?」 宥の病み度が3/10となりました。 京太郎「ええ。あの人が私の主ですから。」 宥「だったら...私はどうすればいいの?」 京太郎「それは...あがっ、っつ!(またこの痛み...なんだこれ)」 宥「だ、大丈夫?」オロオロ 京太郎「え、ええ。軽い頭痛ですから。失礼します。」 宥「ここで、休む?」 京太郎「優しいですね。宥さん...」 宥「貴方が...心配だから」 京太郎「そのやさしさを...いっ、ほかの人に向けてあげてください。俺なんかよりもいい人が...」 宥「無理だよ...」 宥「京太郎君だから、こんなに心配なんだよ?」 京太郎「宥さん...」 宥「わがままだってわかってる...けど、京太郎君は私の...大事な」 竜華「やっと見つけたで。京太郎」 京太郎「竜華様!」 宥(清水谷...竜華...) 竜華「ほら、ほかの女と話とらんで、部屋いくで。命令忘れたんか?」グイッ 宥「あっ......」 竜華「なんや?人の彼氏に手だすつもりか?」 宥「そうじゃない...京太郎君は頭痛が...」 竜華「そ、そうなん?大丈夫?」 京太郎「はい。竜華さんに会ってから、頭痛が引いていきました。」 竜華「らしいで。案外、あんたが原因やったりしてな。ほな、京太郎に何かあったら困るし、あんま近づかんでな」 宥「自分勝手...」 竜華「なんか言ったか?」 宥「自分勝手だって言ったんです。」 竜華「面白いこと言うな、あんた。松実、宥やったか?」 宥「貴方に京太郎君は相応しくない。別れて」 竜華「あほらし、恋人ごっこしたいなら、ほかの男でやれや。行くで京太郎」ギュッ 京太郎「はい。竜華様」 宥「京太郎君!」 竜華「竜華でええ言うとるやろ。それと、敬語禁止な」 京太郎「ごめん、竜華...心配かけて」 竜華「ま、許したるわ。京太郎はイケメンだから、さっきみたいなストーカーぎょうさんおるやろうしな。けど、2度はないで」 京太郎「竜華を裏切るなんて、絶対しないさ。」 竜華「ええこや。今日の夜も、たっぷりしよな♪」 宥「なんで...京太郎君...あったかくないよ...寒いよ...ぐすっ」 憧「あれって、清水谷さんだよね?なんで、うちらの部屋に...って、宥姉!?」 宥「うぅ、ぐすっ、許せない、絶対許せないよ...京太郎君がかわいそう」 憧「京太郎ってさっきの?それに、清水谷さん...なにがあったの?」 京太郎「怜さん...大丈夫かな...」 竜華「怜のためにも、絶対勝たなあかん。そやろ?」 京太郎「ええ。精一杯、サポートしますよ。」 竜華「ありがとな...京太郎、うち不安なんや。」 京太郎「不安?」 竜華「怜の病気の再発、それに、京太郎までいなくなってまうかもって考えたら...怖いんや」 京太郎「竜華...」ギュッ 竜華「京太郎?」 京太郎「一度忠誠を誓ったからには、絶対裏切りません。約束します。」 京太郎「だから、もう悲しい顔はしないでください。」 竜華「きょうたろ~」ギュッ セーラ(こいつら病室で何いちゃついとんねん。) 次鋒戦 泉「高1最強としてここは...」 菫「ロン、8000だ。」 泉「またですか...」 宥「ねぇ...少し聞いてもいいかな?」 泉「私にですか?」 宥「うん。千里山に...京太郎君、いるよね?」 泉「え、ええ。おりますけど」ビクッ 菫「なに、京太郎だと?」 泉「な、なんですの?二人とも、今試合中ですよ?」 菫「なぜ君たちのところに彼がいるんだ?」 泉「そら、清水谷先輩の彼氏だからって聞いて「彼氏だと?」」 菫「今彼氏といったか?」 泉「え、ええ。言いましたけど」 菫「ふざけるな!!」 泉「わ、私に言われても」 宥「彼、ストーカーがいっぱいだから困るよね。今も...千里山に監禁されて」 泉「か、監禁!?」 宥「違うの?だって...清水谷さんが、私の京太郎君を奪っていったよ?」 菫「監禁か...今はやりの王子を助ける姫...ふふふ。私にぴったりだな。」 泉「監禁なんてしてません!清水谷先輩と京太郎さんは相思相愛です。さっきだって、園城寺先輩が倒れるまでは部室で...///」 菫「腹は決まったな。」 宥「必ず助けてあげる...」 泉「な、なんです、二人して...そんなに睨まないで下さいよ」 菫「狙いは千里山だ」 宥「京太郎君...待っててね。かならず助けてあげる。」 泉「そんな理不尽な...勘弁してくださいよ」 菫「私の王子をさらった罪」 宥「あったかさを奪った...あの女」 菫・宥「「潰す(してあげる)」」 泉「とばっちりじゃないですか~」 美子(私だけ蚊帳の外...) イベント ランチタイム~竜華と京太郎~ 京太郎「竜華さん、何か食べないと体に毒ですよ?」 竜華「食べたいけど...食べたないねん。」 京太郎「怜さんが心配なのはわかりますけど、竜華さんだって試合あるんですよ。」 竜華「じゃあ京太郎が食べさせてや。」 京太郎「え?」 竜華「だから、京太郎が食べさせてくれるなら食べる言うてるんや」 京太郎「それは、いいですけど...」 竜華「決まりやな。じゃあさっさと食べにいくで」 京太郎「あれ、ほかのみんなは呼ばないんですか?」 竜華「あほ、2人きりで食べたいんや。って、何言わせるねん///」 京太郎「じゃあ、何食べます?」 竜華「そやなぁ...京太郎と一緒ならなんでもええけど...ま、食堂言って決めよ♪」ギュッ 京太郎「はい。」 「もきゅもきゅ...パフェおかわり」 竜華「混んどるなぁ...」 京太郎「はぐれないように、気を付けないといけませんね。」 竜華「はぐれても、今まで会えたやろ?だいじょうぶやで」 京太郎「それもそうですね。どれにします?」 竜華「京太郎のおすすめってある?」 京太郎「そうですね、タンパク質やビタミンも摂取できる、オムライスとかどうですか?」 竜華「京太郎が食べさせてくれるなら、なんでもええよ♪」 京太郎「じゃあ、俺のは竜華さんが選んでください。」 竜華「じゃあ、ハンバーグとかどう?お肉やし、好きやろ?」 京太郎「じゃあそうしましょうか。注文してくるので、席の方お願いします。」 竜華「はいはーい。」 竜華「どこにしよかな...あ、ここ空いてる。京太郎も見えるし、いい場所やな。」 竜華「京太郎は優しいなぁ~...最高の彼氏や~♪」 宥「ここ、いいですか?」 竜華「すんません、彼氏が座るんで...って、あんたか」 宥「奇遇ですね。私も...彼氏を待ってるんです。」 竜華「京太郎なら渡さんで」 宥「それは彼が決めることですよね?これだから話を聞かない大阪人は...」 竜華「べらべらとよう喋るやんけ。さっさと目の前から消えろや」 宥「下品ですね...彼を返してくれれば...すぐ帰りますよ?」 菫「いーや、彼は私のものだ。」 宥「弘世さん...」 菫「悪いな、彼にはファーストキスを奪われたこともあるのでな。」 竜華「なんや、さっきからぞろぞろと...目ざわりや。」 菫「京太郎はこんなガラの悪い魔女につかまったのか?」 竜華「誰がガラの悪い魔女だ。それに、どっちかっていうと、あんたらのほうが人の男に手を出そうとする悪女に見えるで」 菫「なんだと?」 宥「ふふっ...」 竜華「ちっ...あんたら見て食事なんて出来るかい...京太郎、ここ出るで。」 京太郎「え、今食事貰ってきたところですよ?」 竜華「京太郎のストーカーがびっしりおる場所で飯なんて食えるかいな」 照「私は婚約者だから大丈夫」 菫「照、誰が婚約者だ!」 照「京ちゃんとはホテルに行きそうになる仲...ミスで行けなかったけど」 菫「なに、それは本当なのか?」 宥「ウソつきばっかり...私が彼を...」 照「この前はいけなかった。だから今度こそ行く」 竜華「言いたい放題言いよって...」 照「やっぱり、京ちゃんには、おしとやかな女の子の方がいいと思う。」ムシャムシャ 菫「同感だな。すくなくとも、こんな獣みたいな女は相応しくはない。」 竜華「なんやと?白糸台だか何だか知らんけど、あんまりふざけたこと言ってるとしばくで」 宥「ほら...口でかなわないと暴力...獣同然」 竜華「お前ら...」 京太郎「ちょっと、喧嘩はやめてくださいよ。」 照「喧嘩じゃないよ?」 菫「そうだな。」 宥「うん...京太郎君も、嫌なことは嫌って言ったほうがいいよ」 竜華「な、なにをやねん!」 照「貴女が彼女だって言い張ること」 菫「それが彼にどれだけ負担となっているか、考えたことがあるのか?」 竜華「んなわけあるかい!京太郎...そやろ?」 京太郎「え、ええ。もちろんです。竜華さんは、俺の彼女です。」 宥「」ズキッ 菫「くっ...」 照「?」 竜華「ほら見んかい、京太郎がこう言ってるんや。外野はさっさと帰りな」 菫「しかし、それが京太郎の、私の王子の本心とは限らない!照!」 照「照魔境で見てみる。」 竜華「なんやと?」 京太郎「照魔境?」 宥「待ってててね。今、私たちが助けてあげるから」 照「出た。京ちゃんの本心は...一度忠誠を立てたからには、俺は竜華さんと添い遂げる!らしい」 菫「馬鹿な!?」 宥「う、嘘...」 竜華「ほら見んかい、彼女っちゅうんわな、無理やりなるもんやないんやで!」 菫「しかし、彼と貴様の接点すらもないじゃないか!」 竜華「うちらはな、偶然会い、一度は障害にぶつかりながらも、あきらめんと再度あった仲や。つまり、本能から結ばれとんのや!」 宥「本能...」 竜華「怜から聞いたで。あんた、妹使って京太郎探し当てたそうやないか。うちがトイレ行ってる間に、ようもまぁ盗んだもんや」 宥「ちがっ...盗んでなんか...」 竜華「ま、そんなことしてもすぐ見つけるけどな。それくらいうちらの仲は深いんや!」 宥「あっ...あぁ...」 菫「しかし、彼とキスしたのは私だ。」 照「それはちょっとうらやましい」 竜華「キスくらいくれたるわ。その程度のつながりで...よくもまぁ吠えれるもんやなぁ」 菫「それくらいだと!?」 竜華「これ見てみい。京太郎もほら」 京太郎「は、はい。」 菫「首筋?」 宥「赤い...あったかい...まさか...」ガクガク 竜華「さすがにぶりっ子っちゅうわけやないやろ。見た通りや。そんなわけで、さっさと帰りな」 照「待って」 竜華「なんや、まだあるんかい」 照「鏡で見た。足の模様...何?」 竜華「ああこれかい。うらやましいやろ?」 菫「刺青か?大阪はこれだから」 竜華「じゃかぁしいわ!いい機会やし教えたる。これはな、京太郎とつながった証なんや。」 照「つながった証?」 竜華「簡単に言えば、おまえらストーカーと彼女の違いみたいなもんや。」 宥「私はストーカーなんかじゃない...ストーカーじゃない」 竜華「ええ機会や。この証の力...見てみるか?」 菫「力だと?」 竜華「といいたいところやけど、見せるのはもったいないわ。」 宥「その証...奪いさえすれば」ブツブツ 竜華「無駄やで。それにな、京太郎はうちと一緒にいないと、大変なことになるんよ。」 照「大変なこと?」 竜華「そや。そこのマフラー撒いてるストーカーさんなら、よお知っとるやろ?」 宥「頭痛...まさか...」 竜華「そや。詳しくはそのストーカーから聞きや。もうええやろ。こっちも大事な時間無駄にしたないねん。」 竜華「行くで、京太郎。ここじゃ食べれんやろ?怜の場所いこか」 京太郎「は、はい。」 照「待って、京ちゃん」 竜華「なんやねん...しつこいなぁ」 照「京ちゃんの声で聴きたい。本当に、私たちが嫌いになったの?」 竜華「あほか、そんなもん決まっとるやないか。」 照「貴女には聞いていない。私が効いてるのは京ちゃん」 竜華「...さすが個人戦チャンプ...ずいぶん偉そうやなぁ」 照「照魔境で見ても、それが京ちゃんの本音とは限らない。だから答えて、京ちゃん」 竜華「ふん、何度聞いても変わらんで。京太郎」 京太郎「俺は...」 竜華「言ったれ言ったれ」 京太郎「俺は......」 菫「京太郎...」 宥「京太郎君...」 京太郎「俺は...俺は、竜華さんの彼氏じゃない!」 照「京ちゃん!」 菫「よっし!」 竜華「嘘やん...またなんかの冗談やろ?朝みたいにな、そやろ?」 京太郎「主、いえ竜華さん」 竜華「なんや?キスか?それとも、ベッド行くか?」 京太郎「初めての相手はあなたでした。それに、初めてできた彼女...嬉しかったです。」 竜華「なんやねん...なんでそんなさみしい顔すんの?」 京太郎「怜さんにお別れが言えないのはつらいですけど、いくら縛られようとも、やっぱり本心は帰れませんでした」 京太郎「正直に言います。最初に竜華さんを抱いたとき、覚えてますか?」 竜華「も、もちろんやん。」 京太郎「本当はあの時、竜華さんの体目当てでした。」 竜華「なん...やて?」 京太郎「本当にすみませんでした。いくら謝っても、許してくれるとは思いません。」 竜華「いやや。そんなこといわんで...」 宥「往生際が悪いですよ...清水谷さん」 京太郎「訴えるなら、訴えてもらっても構いません。」 菫「安心しろ。君は私が守る。」 京太郎「菫さん...」 菫「いっただろ?君は私の王子様だと」 宥「あったかいギュッてしてくれる?」 京太郎「宥さん...」 照「良かったね。京ちゃん」 京太郎「照さん...」 「...んで」 「...んで、...郎」 「...じる。」 京太郎「竜華さん?」 竜華「そっかぁ、うち捨てられたんかぁ...なら、京太郎なんて...」ブツブツ 菫「醜いな」 宥「散々私たちを馬鹿にしてたのに...」 京太郎「竜華さん...」 竜華「いらんよね。けど、京太郎を誰かに渡すんも嫌や。京太郎はずーっとうちのものや。ほかの誰でもない、うちのものなんや。」ブツブツ 照「なんだか怖い...」 竜華「なああんたら...うちから京太郎を奪って楽しいか?」 竜華「うちは許さん...あんたらを絶対に許さんで。うちが地獄に行っても、それは1人でやない。京太郎も一緒や。」 照「なにするき?」 竜華「アハハハハ!令呪を持って命ずる。京太郎、うちを殺せ!」 「「「!?」」」 菫「馬鹿らしい...何が命ずる!だ。くだらない。」 宥「京太郎君もそうおも...う...え?」 京太郎「う、ウソだろ...やめてくれ...殺したくない...殺したくないんだ」 竜華「ここは食堂...刃物ならいっぱいあるで。」 照「止めなきゃ...あぅっ」 菫「すごい力だ...おい、周りのみんなも手伝え!」 竜華「もう遅いで。ほらおいで、ここやで。京太郎の大好きなここ刺してえな。」 京太郎「やめ...ひぐっ、やめてくれ...」 竜華「あはは、泣いてる顔もええなぁ...さ、はよ頼むわ。京太郎の手で、うちを殺して。」 京太郎「嫌だ。だれか、誰か...俺を止めてくれー!!」 宥「ダメ...力が強すぎる。」 菫「周りの連中も刃物を持っているせいか、手を貸そうともしないとはな。」 竜華「安心しいや。ちゃあんと、最後の令呪も残したるさかい...」 京太郎「いやだぁーーー!」 ザクッ! 竜華「かはっ...そ、げふっ、それでええんや、それで...これで、げほっ...京ちゃんは永遠に...」 女の子が刺されたぞー! 救急車、それに警察をよべー! 京太郎「あ、あぁ...」 照「京ちゃん!」 京太郎「照さん...おれ、おれ...」 菫「よくも、京太郎を人殺しに!」 竜華「最後、っのれい、じゅ、を、もって、命じる...」 菫「また何かする気か?」 竜華「自害せよ、京太郎...うちの、げほっ、ために...」 菫「まずい、宥、照、京太郎を止めろ!!」 宥「京太郎君!」 京太郎「と、止めないでください...俺は、俺のせいで...」 宥「いや...いやだよ...こんなの...あったかくないよ...」 照「やめてー!」 ザクッ 京太郎「がはっ...い、いてえ...けど、ぐふっ...竜華さんはこれ以上の痛...」 竜華「さ、最初の令呪...覚えとる?」 京太郎「え、ええ...一緒にいるですよね。」フラフラ 照「動かないで、出血が...」 京太郎「これでお互い...地獄行きですかね...げほっ、おえっ」 菫「血が...おい、救急車はまだか!」 京太郎「手遅れですよ。ヒュー...ヒュー...じぶんでもわかる。」 宥「だめ、貴方はあったかくないと...また私をあっためて...ぐすっ」 京太郎「竜華...本当に、こうなっちまうとはな...」 竜華「2人で...死ぬと..ロミオと...ジュリエットみたいやな...先、いっとるで」 京太郎「ああ...地獄でも、一緒にいてやるよジュリエット」 竜華「......」 京太郎「笑顔で逝きや...あぁ、待っててくれ...ジュリエット...俺も、もうすぐ...」 照「京ちゃん!!」 菫「京太郎!」 宥「京太郎君!!」 京太郎「......」 「いやぁぁぁ!!」 DEAD END
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/2249.html
http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1372845067/ 京太郎「……飛びました」 優希「またー!?ほんとに犬は弱いじぇ!」 和「こら、優希」 久「あはは、須賀君たら駄目駄目ねー」 まこ「そう笑ってやりなさんな」 久「それじゃ、咲と交代して須賀君は買出しお願いね」 咲「ごめんね京ちゃん」 京太郎「はい、行ってきます」 スタスタ ガチャ バタン 京太郎「…………はぁ」 ―須賀邸― 大沼『……ツモ』 『決まったー!!大沼プロの優勝です!!』 <ワーワー 京太郎「……」 京太郎「…………はぁ……」 京太郎(なんで俺はこんなに麻雀が弱いんだろうな……) 京太郎(最近はずっと麻雀の勉強してるんだけど……強くなった気がしない) 京太郎「……才能、無いのかな」 京太郎(…………それに、正直……清澄の顔に……俺が泥を塗ってる気がする) 京太郎(皆は団体や個人戦で良い成績収めてるのに、俺は一回戦敗退) 京太郎(これじゃ来年は男子麻雀は和や咲目当ての奴しかこないんじゃねえか?) 京太郎(実力のある奴は皆俺を見て清澄に見切りつけて風越に行っちまうんじゃ……) 京太郎「……はぁ」 京太郎「………………部活、やめちまうか……」 ―翌日― 京太郎「……ふぁあ……」 咲「あれ、京ちゃん。おはよ」 京太郎「ん?ああ、咲か」 咲「眠そうだね?」 京太郎「ん?はは、まあな」 咲「……?」 京太郎「?どうした?」 咲「ううん……なんだか、元気ない?」 京太郎「……」 京太郎「いんや?元気過ぎて困るくらいだぜ?」 京太郎「ちょっと寝不足でさあ、まぁ授業中寝れば大丈夫だ」 咲「もう、駄目だよ!授業中に寝ちゃ!」 京太郎「ははは」 京太郎(……わりぃな、咲) ―3年教室― 「竹井さーん」 久「んー?なにー?」 「一年生の男の子が来てるよー」 久「一年生の……?あ」 京太郎「……」ペコ 久「わかったーすぐ行くわー」ガタ ―廊下― 久「おはよう、珍しいわね。須賀君が会いに来るなんて」 京太郎「……いきなりすみません」 久「いいわよ別に。で?どうかしたの?」 京太郎「……えっと」ゴソゴソ 京太郎「…………すみません、コレを」スッ 久「ん?何ー?まさかラブレター?」 久「………………――え?」 【退部届】 京太郎「……すみません、急に」 久「……え」 久「冗談、とかじゃ……ないの?」 京太郎「……すみません」 久「……」 京太郎「……」 久「……考え直してくれたり……しないかな」 京太郎「……御世話になりました」ペコ クルッ 久「あ!ちょっと須賀く――……」 京太郎「……」タッタッタ タッタッタ…… 久「……行っちゃった……」 久「……………………困った、わね……」 スタスタ 優希「情報技術の授業は楽だからいいじぇー」 和「そうですね」 タッタッタ 優希・和「え?」 京太郎「……」タッタッタ 優希「おう!犬っころ!」 和「あ、こんにちわ須賀く――……」 ビュン 京太郎「おう、じゃあな二人とも!」タッタッタ 和「わわ、廊下は走っちゃ駄目ですよ!!」 タッタッタ…… 和「……行ってしまいました」 優希「何を急いでたのか」 タッタッタ 京太郎「……」 京太郎(少し……後ろめたいけれど……これでいいんだ) 京太郎(麻雀だったら……雀荘でも、ネットでもできるし) 京太郎(元々、和に憧れて入った部活だし……もういいんだ) 京太郎「……」 タッタッタ 京太郎「……これで、いいんだ」 ガタッ!! 京太郎「あぐっ!!?」 ドターン 京太郎「っ……!いてて……!」 京太郎(……な、何も無い所で転んじまった……?) 京太郎(でも、何か足に引っかかったような感触が……) ―帰り道― スタスタ 京太郎「……」 京太郎(結局……みんなには何も言わずに帰ってきちゃったな) 京太郎(皆怒るかな……いや、変わりなさそうな気がする)ハハ 京太郎(でも、咲には怒られそうだな……『誘ったくせにやめるなんて最低』とか) 京太郎「……」 京太郎(咲にゃ悪い事したな……) 京太郎(待ってろよ、すぐにすっげー強くなって……お前相手に飛ばないように、いや) 京太郎(お前に勝てるくらい強くなって、お前を楽しませてやるからな……!) スタスタ 京太郎「……」 スタスタ 京太郎(……ん?) クルッ 京太郎「……」 シーン…… 京太郎(……気のせいか?) クルッ スタスタ 京太郎「……」 スタスタ スタスタ 京太郎「っ!」バッ!! シーン 京太郎「……」 京太郎(…………おかしい) クルッ タッタッタ 京太郎「……っ」 <タッタッタ 京太郎「!」 京太郎(やっぱりだ)チラッ <タッタッタ 京太郎(誰か後をつけて来てる……!) ピタ 京太郎「……」クルッ シーン…… 京太郎「……咲……か?」 京太郎「……」 京太郎「優希……?部長……?」 シーン…… 京太郎「……」 京太郎「……染谷先輩……?」 京太郎「…………まさか、和ってことは……」 シーン…… 京太郎「……」 京太郎(……何も返事が無い) 京太郎(小学生のいたずらか何かか……?) 京太郎「……」 京太郎(…………とにかく、帰るか……) ピタ 京太郎「……ん?」 京太郎(……なんだ?) 京太郎(あの……電信柱の下から……誰かがこっち見てる……?) 京太郎「……」 スタスタ 京太郎「誰、だ?何か用か?」 京太郎(まさか、本当に咲が俺を追っかけて来て――……) 京太郎(隠れっ――――……)ピタッ 男「……」 京太郎「……」 京太郎(……誰だ) 京太郎(誰だ、このおっさん) 男「……」 京太郎(……何だ、このおっさん……なんで、俺をじっと、見て) 京太郎(え、て、事は……さっきから俺を追いかけてたのって) 京太郎「…………――――っ!!!!」ゾッ ダッ 京太郎「ひっ……!!」タッタッタ 京太郎(き、気味悪ぃ!) 京太郎(全速力で逃げよう!!!!) タッタッタ…… …… … ・ ―須賀邸― 京太郎「……はぁ……」グテー 母「どうしたの京太郎、そんなに疲れて」 京太郎「いや……なんでもない……」 京太郎(結局なんだったんだ……あの後は何も無かったし……) 京太郎「……」 京太郎(でも、なんだろう……あのオッサンどっかで) コンコンコンコン 京太郎「……ん?」 コンコンコン 京太郎「……」 京太郎(誰か玄関をノックしてる……?) コンコンコンコンコンコン 京太郎(なんでチャイムを鳴らさな……) コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン 京太郎「……」 コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン 京太郎「っ……」ゾク 京太郎「な、なあ母さん!さっきからずっと玄関のドアをノックされてんだけど!」 母「えー?本当ー?」ジャバジャバ 京太郎「でてくれよ!なんかしつこくて……」 母「洗い物してるんだから京太郎出てよー」ジャバ カラン 京太郎「そっ…………!……ったく……!」ガタ スタスタ 京太郎「……」 京太郎(や、俺の考えすぎか……。流石に撒いたはずだし) ガチャッ 京太郎「はーい」ギィ シーン…… 京太郎「……?」 京太郎(誰も……いない……?) 京太郎「……はぁ」 京太郎(なんだろう、動物とかか) 京太郎(な――……) 男「……」 京太郎「……――え」 男「……」 京太郎「……」 京太郎(あいつ) 京太郎(家の、塀の外から……こっち見てるあのおっさん) 京太郎(あいつ、あいつだ) 京太郎(夕方の……あいつだ……!!) 男「……」 京太郎「な……な……」 京太郎(なんだこいつ……なんだこいつ) 京太郎「な、なんの用ですか……!あんた……!」 男「………………鬼門」 京太郎「っひぃっ!!!」バターン タッタッタ! 京太郎「か、母さん!!家の前に変な人が居るんだけど!!」 母「はぁ?変な人?」 京太郎「そ、そう!!なんか、禿げたおっさんでさ!!」 母「ちょっと見てくるわ」スタスタ 京太郎「ちょ、あ、危ないって!」 母「見るだけだから大丈夫よ」スタスタ ガチャッ 母「……」 京太郎「か、母さん!俺の後ろに隠れて――……」 母「何もいないじゃない」 京太郎「……――え?」 シーン 母「……あんた、疲れてる?」 京太郎「ほ、本当だって!!確かにあそこにいたんだ!!」 バタン スタスタ 母「ほらほら、もうバカ言ってないでさっさとお風呂入っちゃいなさい」 京太郎「でも本当に――……」 <ワーワー 京太郎「……――?」 『……ロン』 『また決まった―!!大沼プロ、捲り上げた―!!』 母「まーた麻雀の番組……」 京太郎「……こいつだ」 母「え?」 京太郎「こいつだ、大沼プロだ」 京太郎「俺が言ってた変なおっさん、こいつだよ!!」 京太郎「大沼プロがさっきあそこに本当にいたんだよ!!」 母「……」 京太郎「さっき塀の外から――……」 母「京太郎」ポン 京太郎「え?」 母「あんた、ここ最近ずっと麻雀の勉強してて碌に寝てなかったでしょ」 母「もう寝なさい……暖かくして、風邪引かないように」 京太郎「ほ、本当だって!本当なんだって!!」 母「さ、カピは今日はママと寝ましょうねー」 カピ「ピカピ」 京太郎「母さん!母さーん!!」 …… ―翌朝― スタスタ 京太郎「ふあ……ふぅ……」 京太郎(……結局、信じてもらえなかったな……本当なのに) 京太郎「……」 京太郎(でも、もしかしたら大沼プロに似てるだけのおっさんだったのかもな……) 京太郎(いや、それでも問題だけども) 京太郎(もう来ないといいな……今の所、家の外にも居なかったし、つけられてる様子も) 「京ちゃん」 京太郎「っ!!!!!?」ビクゥッ!!!! 咲「はゎっ!?」ビクッ!! 京太郎「って、さ、咲?咲か……」 咲「ご、ごめんね?驚かせちゃって……」 京太郎「いや、いいんだ……ごめん、おはよう」 咲「う、うん……おはよ」 京太郎(ビックリした……良かった、咲か……) 京太郎(……ん?咲?) 咲「……っ……」 京太郎「……」 京太郎(……あ) 京太郎(そうだ……俺、昨日……) 咲「あの、ね?京ちゃん……」 咲「なんで…………麻雀部、やめちゃったの……?」 京太郎「……」 京太郎(……――部活、やめちゃったんだっけ) 京太郎「……ごめんな」 咲「う、ううん……でも、何で――……」 京太郎「……悪い、咲」 咲「え?」 ダッ 咲「え!?京ちゃん!?」 京太郎「ちょっと急ぐから先行く!ごめんなー!!」タッタッタ 咲「……京ちゃん……」 タッタッタ…… 京太郎「っ」 京太郎(だっせぇ……!だせえぞ俺!!何逃げて来てんだよ……!) 京太郎(本当に根性なしだ俺……!!素直に言えばよかったんだ!!) 京太郎(『弱すぎて自信がなくなったから、やめました』って――……) タッタッタ 京太郎「……」 京太郎(……あぁ……) 京太郎(……駄目だな、俺……本当) 京太郎(駄目な奴だ……) ガサッ 京太郎「ん?」 京太郎(なんだ?今……道の左の山の奥) 京太郎(何か――……) ガサッ!!ガサガサガサガサッ!!!! 京太郎「……」 大沼「……」ガサガサガサッ!!! 京太郎「う」 京太郎「う……~~っ……!!!?」 大沼「……」ガサガサガサガサ!!!!! 京太郎(あ、あいつだ……!!) 京太郎(あいつが、山の奥を……走ってる……!!!) 京太郎(俺の事) 京太郎(俺の事を凝視しながら) 京太郎(俺に平行して、走ってきてる!!!!) 京太郎「う」 ダァッ!!!!! 京太郎「うわああああああああ!!!!!!!!!」タッタッタ ガサガサガサッ!!!!! 京太郎「ひっ……!ひい……!!」 京太郎(は、走らなきゃ!!あいつより早く走らなきゃ!!) 京太郎(右にはガードレール、その向こうは少し高い崖だ……!!) 京太郎(後ろには、咲がまだ歩いてる……巻き添えにしちまう!!) 京太郎(前しか、逃げ道が無い……!!)チラッ 大沼「…………」ガサガサガサガサガサガサ!!!!!!! 京太郎「ひぃっ!!!!」 京太郎(とにかく走るんだ……!!もうすぐで人気の多い場所に、開けた場所に着く!!!!) ガサガサガサッ 京太郎「えっ?」 大沼「…………」ガサガサガサガサ 京太郎「う」 京太郎「うわぁぁぁっ!!!!」 京太郎(こ、こっちにきやがった!!!!今まで並走してたのに!!いきなりっ!!!) 大沼「…………」ガサガサガサガサ!!!! ガサッ!!! 大沼「………………おはぎ」タッタッタッタッタ 京太郎「ひぃぃぃ!!!」 京太郎(山から抜けてっ!!!道路に来たっ!!!!) プァァァ――――!!!!! 京太郎「うわぁっ!!!!!」ガバァッ!! キキィー!!!! …… ドサァッ!! 京太郎「はぁっ……!!はぁっ……!!」 ガチャッ バタン 女「だ、大丈夫ですかっ!!?」タタタ 京太郎「はぁっ……!!はぁっ……!!?」 京太郎(あれ……あ、あいつは……)キョロキョロ シーン 京太郎(……いなく、なっ……た……?) 女「もう!危ないでしょ!いきなり飛び出してきちゃ!!」 ―学校― スタスタ 咲「おはよー……」 クラスメイト「宮永さんおはよー」 咲「おはよ……あれ?」キョロキョロ クラスメイト「ん?どしたの?」 咲「えっと……京ちゃ……須賀君は?」 クラスメイト「京太郎君?さっき保健室行ったよ」 咲「え?保健室?」 クラスメイト「うん。なんでも来る途中に怪我しちゃったみたい」 咲「怪我……!?」 ―保健室― 京太郎「いつつ……」 保険医「もう、なんで登校するだけで怪我してるの」ペタペタ 京太郎「すみません……」 保険医「はい、おしまい」ペシン 京太郎「いだっ!」 保険医「全く……歩ける?」 京太郎「はい、なんとか……」 保険医「そう、それじゃ私は職員会議行ってくるから痛みが引いたら教室に帰りなさいよ」 京太郎「はい、分かりました」 保険医「それじゃ、御大事に」 ガラッ ピシャン 京太郎「……はぁ」 京太郎(……) 大沼『………………おはぎ』 京太郎(どうしよう……) 京太郎(あいつの事……先生達に相談した方がいいのかな) 京太郎「……」 京太郎(やっぱり相談した方がいいよな……) 京太郎(俺以外にもこんな目に遭わせないようにしなきゃ) スクッ 京太郎「よし」 京太郎(それじゃ……教室じゃなくて職員室に) スタスタ 京太郎「!!」 スタスタスタスタ 京太郎「……」 京太郎(この、足音……保健室に向かってきてる) 京太郎(……まさ、か……) スタスタ…… ピタ 京太郎(…………っ) ガラッ!! 京太郎「……っ!!」 スタスタ 優希「せんせぇー……ちょっと体調が」 優希「……――って」 京太郎「……」 優希「……京、太郎……」 京太郎「…………はぁぁぁ……」ヘナヘナ 優希「って、ええ!?ど、どうした!?」 京太郎「いや、優希か……本当にびっくりした……」 優希「だ、大丈夫か……?」 京太郎「悪い悪い、ちょっと色々あって――……あ」 優希「……」 京太郎(……これまた、気まずい奴が……) 京太郎「……えっと」 優希「……なあ、京太郎……」 京太郎「……」 優希「……本当に辞めるのか?」 京太郎「……」 優希「え、えっと」 優希「あの、一昨日言った、弱いなんちゃらっていうのは冗談というか」 優希「その」 優希「えっと……」 京太郎「……優希」 優希「やめるのは……考えてみて欲しいというか」 京太郎「……」 優希「えっと、いや、正直、私も言い過ぎたし」 京太郎「……――優希」 優希「あう、えっと、うう……」 京太郎「……優希」 優希「と、とにかく!」 京太郎「おい、優希」 優希「気にすることは――……え?」 京太郎「優希……こっち」 優希「え……京太郎?」 京太郎「こっち、来い」 京太郎「ドアの方……振り向かずに」 大沼「……」 京太郎「早く……こっち……!!来い……優希……!!」 優希「え?な、なにが」 京太郎「振り向くな!」 優希「っ!?」ビクッ 大沼「…………」 京太郎「いいから……こっち来い」 優希「う、うん……」スタスタ 京太郎「……ここ、座ってろ」 優希「ど、どうした?ドアに何か……」 京太郎「……優希」 優希「え?」 京太郎「しばらく、耳と目……塞いでてくれ」 優希「……」ギュッ 京太郎「……あ、アンタ……なんなんだ」 大沼「…………」 京太郎「なんで俺をつけてるんだよ!!警察に突き出すぞ!!」 大沼「……」 京太郎「……っ……」 ガシッ!! 京太郎「どっか!!」 ブンッ!!!! 京太郎「いけよぉっ!!!!!」 バリィン!!!!! 優希「ひっ!?」ビクッ 大沼「……」バッ!! 京太郎「!!待ててめぇっ!!」ダッ ガラッ! 京太郎「逃げるなっ!お前っ」バッ 保険医「須賀!!どうしたの!今の音!!」スタスタ 京太郎「せ、先生!!」 保険医「あー!薬瓶が割れちゃってるじゃない!」 京太郎「先生!!今そっちに男が行きませんでしたか!?」 保険医「え?」 京太郎「禿げてて、ヒゲ生やしたおっさんが行きませんでしたか!?」 保険医「や、私は忘れ物取りに……こっちから来たからちょっとわかんないけど」 京太郎「……じゃあ、反対側に……?」 優希「きょ、きょうたろぉ……!?」ビクビク 京太郎「ん?……あ」 優希「も、もういい……!?ねぇってばぁ……!」フルフル 保険医「……ちょっと須賀……」 京太郎「あ、いや」 保険医「いやらしい事してて……誤魔化すためにそんな事いってるんじゃないでしょうね……」 京太郎「ほ、本当です!!本当なんです!!!!」 優希「ま、まだかぁ……!?」ビクビク ―教室― ガラッ 京太郎「はぁ……」 咲「!京ちゃ……」 クラスメイト「おー!どうしたんだよ京太郎ー!」 クラスメイト2「なになにー?重役出勤じゃーん」 京太郎「はは……色々あってな……」 咲「……っ」 咲(京ちゃん……大丈夫なのかなぁ) ガラッ 先生「ほら、席つけー」 咲(……次の休み時間に話してみよう) 先生「えっと、突然だが、今日はこれで終わりだ」 生徒「「「えぇ!!!?!」」」 先生「ちょっと校内に不審者が紛れ込んだとある生徒から報告があってな……今日は自宅から出ない様に」 ザワザワ 「まじかよ」「やったぁ!」「早く帰ろうぜ」 咲「……」チラッ 京太郎「…………」 咲(……まさか、京ちゃんの怪我と何か関係が……) 先生「あー、それと……須賀」 咲「!!」 京太郎「……はい」 先生「お前はちょっと残ってくれ……それじゃ、号令」 <キリーツ レーイ 先生「よし、先生達が誘導してるからそれに沿って安全な道で帰れよー」 ザワザワ 先生「……それじゃ、須賀」 京太郎「はい……」 咲(……京ちゃん……) ブロロロロロ…… 先生「はは、お前が変質者につけ狙われるとはなぁ」 京太郎「笑い事じゃないですよ……」 先生「すまんすまん、まぁちゃんと家まで送ってやるから」 京太郎「お願いします……」 先生「しかし、最近お前目のクマ凄いなと思ってたが……こんな状況じゃ眠れやしないよなあ」 京太郎「はは……まぁ、でも家の中は安全ですから」 先生「あはは、違いない」 京太郎「あ、先生。赤ですよ」 先生「おっと」 キィー 先生「すまん話に夢中で」 京太郎「はは、しっかりして下さいよ」 京太郎「……」 京太郎「…………あ、れ」 先生「ん?どうした?」 京太郎「……」 先生「……須賀?」 京太郎「……」 京太郎「先生、青、です」 先生「ん?ああ、すまん……で?どうかしたか?」 京太郎「……走ってください」 先生「え?」 京太郎「走ってください」 先生「走ってるが」 京太郎「もっと!速く!!走って!!!!」 京太郎「乗ってる!!!…………後ろの車!!!!」 大沼「……」 京太郎「あいつが……あいつが乗ってる!!!!」 先生「なにっ!!!?」 京太郎「後ろ見ないで!!走って!!」 先生「そ、そういうワケにもいかんだろう!」 京太郎「いいから!!」 先生「いや!ちょっと降りて先生が捕まえて――……」 京太郎「駄目!!駄目だって!!」 京太郎「あいつ……いや!!」 京太郎「あいつら……!!!!一人じゃない!!!!!」 先生「一人じゃない……!?」チラッ 先生「…………たし、かに……見えにくいが、車に何人か乗ってる……!」 京太郎「あいつら!!!笑ってる!!!!」 京太郎「笑ってるよ!!!!あいつ!!!!」 大沼「…………」ニコォ 京太郎「遊んでる!!」 京太郎「俺たち二人追いかけて……あっ、あ、遊んでるんだ!!!!」 先生「ど、どうする……!」 京太郎「……!」 先生「一先ず、警察署がしばらく行った所にあるから、そこまで」 ガチャッ!! 先生「!!!?須賀ぁ!!!?」 京太郎「多分あいつらの狙いは俺です!!!!」 京太郎「車だと小回りが利かないと思うんで……俺、走って帰ります!!」 先生「ば、バカっ!!」 京太郎「先生!さようならっ!!!」 バッ!!! 先生「須賀ぁ――――!!!!」 ドンッ ゴロゴロゴロゴロ!! 京太郎「ぐぁぁっ!!……――くっ!!!」ガバァッ!! 京太郎「っ!!」ダッ!! タッタッタ 京太郎「はぁっ!!はぁっ!!」 京太郎(すぐに小道に入ったから……多分、大丈夫だ……!!) 京太郎(もし、俺に気付いたとしても……そんなに早くは) タッタッタ 京太郎「……」 京太郎「……」クルッ 京太郎「……」 京太郎「…………――嘘、だろ」 大沼「………………」タッタッタッタ 京太郎「う、あぁ」 大沼「…………」タッタッタッタ 京太郎「わ、わぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!!!」 京太郎(あ、ありえるか!こんなの!こんなんありえるか!!!) 大沼「…………」タッタッタッタ 京太郎「な、なんで」 京太郎「なんで俺を追いかけんだよ!!!!!」 京太郎「何がしたいんだよぉ!!!!!!!!!やめてくれよぉ!!!!!!!」 大沼「…………素敵なくらし」タッタッタッタ 京太郎「……!!!!?」 大沼「…………膝の皿を使って」 大沼「…………飯をよそう」 大沼「…………素敵なくらし」 京太郎「!!?……!!?……!!!!!?」 大沼「………………痙攣」 大沼「………………脳内のポリープ」 大沼「………………単騎待ち」 京太郎「わ」 京太郎「わけ、わかんねぇっ」 京太郎「わけわかんねぇ!!来るなぁぁ!!!!」 京太郎「来るなぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!来るなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」 大沼「………………喉仏は」 大沼「………………悲願なので」 大沼「………………素敵なくらしを」 大沼「素敵なくらしを……素敵なくらしを」 京太郎「うぁぁぁっ!!!!うぁああぁぁぁあ!!!!」 ズザァァァッ!! 京太郎「はひぃう!!!!」 京太郎(よ、ようやく開けた場所に着い――……) タッタッタ 京太郎「……」 京太郎(なん、だ) 京太郎(なんだ、向こうから走ってくる人) 京太郎(こっちを、凝視しながら……こっちに向かって――……) 健夜「……」タッタッタッタッタ 京太郎「わ、あ、あう」 京太郎「あっ、わぁぁぁっ、わあああああっ」 京太郎(同類だ……!!多分、あの人、大沼の……!!同類だ!!!!!) ダッ!! 京太郎「はひっ!!」 タッタッタ 大沼「…………素敵なくらし」タッタッタ 健夜「待ってよー」タッタッタ 京太郎「はぁっ、はぁっ!!!!」 京太郎(なん、だ、こいつらっ) 京太郎「なんなんだ!!あんたらぁっ!!!!」 健夜「きっと止まればいいよ。そこに腰を据えるんだよ」 健夜「きっといい人生が待ってる。全てが生まれ変わる」 健夜「多分あなたも分かってるはずだよ」 健夜「アラサーだよ」 京太郎「わああぁぁぁっ!!!来るなぁっ!!!来ないでくれぇぇっ!!!!」 タッタッタ 京太郎「!!」 京太郎(前から人が!!) 京太郎(た、助けを) 京太郎「す、すみませっ……」 京太郎「……」 京太郎(……なん、で……この人……) 京太郎(俺の事、凝視、して…………) 京太郎(走って……) 照「美しい暮らしなどいない」ギュルルルルル 京太郎「……」 京太郎「ウワァァ」 京太郎「ウワアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」 大沼「………………尿道」 健夜「きっと、素晴らしい威光を授かれるよー」 照「ここには健康的なハイエンドなどいない」 京太郎「ウワアアァ!!!!!ウワアアアアア!!!!!」 京太郎(逃げ道っ!!逃げ道!!っは!!!!) 京太郎「っ!!!!」 京太郎(か、河に……!!) ガシッ!! バッ!! 京太郎(飛ぶしかねぇぇっ!!!!!) バシャーン!! 京太郎「っっぷはぁっ!!!」 辻垣内「腹を切れ」バシャバシャ 京太郎「うああああああああああああああああ!!!!!!!!」 ―須賀邸前― 咲「……」 ズザッ 咲「!!」 京太郎「ぜぇっ……ぜぇっ……」ヨロッ 咲「京ちゃん!」ダッ ガシッ 咲「大丈夫!?京ちゃん、大丈夫!?」 京太郎「さ、き……どうして」 咲「だって、京ちゃんが心配だったから……大丈夫だったの!?」 京太郎「はぁっ……はぁっ……変な、奴らに……追いかけられまくって……」 京太郎「でも……はぁっ……皆、撒いてやったぜ……」 咲「と、とにかく休まなきゃ!!」 ガチャッ 京太郎「ただ、いまっ……」 シーン 京太郎「誰も、いない……か」 咲「大丈夫?早く休まなきゃ!」 グイッ 咲「靴、脱げる?」 京太郎「大丈夫、だっての……」 咲「……もう……無理しちゃだめだよ……」 ―京太郎の部屋― ドサッ 京太郎「はぁっ……!はぁっ……!!」 咲「すごく疲れてる……」 京太郎「……はぁっ、わるい、な……咲」 咲「ううん、気にしないで」 京太郎「っ!そ、そうだ……!」 ムクッ 咲「!だ、だめだよ!寝てなきゃ!!」 京太郎「あ、あいつらの事……警察に、電話しなきゃ」 咲「だめ!休まなきゃ!!」 京太郎「……咲」 咲「休みなさい!」 京太郎「……」 咲「もう、本当に京ちゃんはいつもいつも……」 京太郎「……咲」 咲「……ん?」 京太郎「……悪かった」 京太郎「勝手に……部活……やめて」 京太郎「お前、らに……相談も無い、ままで……」 咲「……京ちゃん」 京太郎「俺……情けなかったんだ」 京太郎「一人だけ、才能なくて……」 京太郎「俺だけ、必要とされなくて……」 京太郎「くやし、かったんだ……」 ギリッ…… 京太郎「悔しかったんだ…………本当、は」 咲「……」 京太郎「いつの、間にか……麻雀自体を……すげぇ好きに、なってて」 京太郎「でも、才能も……頭も足りなくて……」 京太郎「お前たちに…………すげえ、嫉妬……してた……!!」 咲「……」 京太郎「そんな、ちっぽけな……屑なんだ……俺は……――俺はっ……!!」 ナデ…… 京太郎「!!」 咲「…………そんな事ない」 京太郎「……咲」 咲「そんな事ないよ」 咲「京ちゃんは京ちゃんなんだから」 咲「そのままで……いいんだよ」 咲「屑なんて……言っちゃ駄目」 咲「私は、知ってるよ」 咲「京ちゃんの良い所も……勿論、悪い所も」 咲「でも、そんな私が見ても……」 咲「京ちゃんは、ゼッタイゼッタイ……屑なんかじゃないよ」 京太郎「……――――咲……」 咲「だから、休まなきゃ……」 京太郎「………………え?」 咲「休まなきゃだよ。京ちゃん」 咲「ちゃんと休むのは肯定だよ。休めばきっとわかるんだ」 咲「人生はきっと美しいって」 京太郎「……」 ヴーヴー 京太郎「……携帯……が」ゴソッ 咲「皆、屑は休まないし休めないよ。風が吹くもの」 咲「だから休んだら今度は風になるの。次は鬼ごっこの鬼役になるの」 咲「そうすればもう誰もが休めない、全部風速が持っていくの!」 京太郎「……」 着信 宮永咲 咲「全部全部!!!!!美しい人生が始まって終わっていくの!!!!」 ピッ 咲『あ、もしもし京ちゃん?』 京太郎「……咲」 咲『うん、大丈夫だった?』 京太郎「……何が」 咲『ううん、今日、クラスでなんだか様子おかしかったし……』 京太郎「……」 咲「次は皆を箱の船で雨の洪水に浮かべるの!!!!!」 咲「きっと皆は『助けてー』って言うよ!!!!!!!!」 咲「でも駄目!!まだ駄目!!!!」 咲「だってそれはまだ人生じゃ、生きている人じゃないから!!!!!」 京太郎「………………」 咲『京ちゃん?どうしたの京ちゃん!』 咲『京ちゃ――……』ピッ 京太郎「……」 咲「まるでそれはア・プリオリな頸椎上の宣教師みたいに」 咲「笑って泣いて、食べて、転んで、交わって生きるの!!!!」 咲「素晴らしいでしょ!!!」 咲「だって皆カルテを待ちわびる間に」 咲「脂ぎった肉を精一杯頬張る事ができるんだよ!!!!!」 咲「誰だって止める権利なんてないよ!!!!!!!きっと自分自身にだって!!!!!」 咲「京ちゃん!!!!踊ろう!!!!踊ろうよ!!!!!もうすぐ車が来るよ!!!!!」 咲「大変な事なんだよ!!!!そしてコレはとっても大事な事!!!!!」 咲「踊ろう!!!!!!!!!!京ちゃん!!!!!!!!!!!!!」 咲「人生は!!!!!!!!!!!美しいよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 京太郎「……」 京太郎「人……生……?」 スタスタ 大沼「…………人生」 詠「七転八倒とは言うけどねぃ」 藤田「人を殺して食べる飯は糧になるのか」 辻垣内「それを趣味と、スポーツと言い張る姿はまるで」 衣「跳梁跋扈の魑魅魍魎」 美穂子「人は一人では生きられないもので」 豊音「気付いた時にはやりたい事がちょーしんどいよー」 淡「それでもご飯をお腹いーっぱい食べたくなるのは」 洋榎「ひとえに欲望のお陰っちゅうやつや」 健夜「アラサーだよ」 はやり「だから素直になるのが一番☆」 咲「愛おしい人は放っておいて」 照「邪魔な人は撲殺し尽くさなきゃいけない」 戒能「それが、ビューティフル・ライフ」 京太郎「人生七転八倒とは言うけど」 京太郎「人を殺して食べる飯は糧になるのか」 京太郎「全てをモラルと、常識と言い張る姿はまるで」 京太郎「跳梁跋扈の魑魅魍魎」 京太郎「俺は一人では生きられないもので」 京太郎「気付いた時には一人だった!!!!一人きりだった!!!!」 京太郎「それでも飯を食べたくなるのは」 京太郎「俺に欲望しかないからだ!!!!!」 京太郎「だから素直になるのが一番で」 京太郎「愛おしい人は放っておいて」 京太郎「邪魔な人を殺しに行こう!!!!!!!」 京太郎「それが、ビューティフル・ライフ!!!!」 京太郎「それが、ビューティフル・ライフ!!!!」 京太郎「それが、ビューティフル・ライフ!!!!」 京太郎「それが、ビューティフル・ライフ!!!!」 ―長野のとある病院― 母「あの……先生……それで、京太郎は……」 医師「……大変申し上げにくいのですが……雀力に起因する心因性知覚障害です」 母「……雀……力……?」 医師「えぇ、京太郎さんは麻雀部に所属されてましたね?」 母「はい……」 医師「それで、全国大会まで勝ち進んだとか……原因はそれです」 医師「麻雀の手練というのは、特殊な波といいますか、そういうものを放っておりまして」 医師「その波長によって精神に影響を及ぼすケースが稀にあるんです」 母「……」 医師「まあこれは普通その波を放っていない普通の人間には影響がないんですが……」 医師「おそらく京太郎さんはあまりにも強い雀波を間近で長い年月をかけて浴び続けてきたのでしょう」 医師「……きっと、京太郎さんのご学友の方の仲に……強い雀波の発信者がおられます」 医師「今回はきっとその影響により、京太郎さんの麻雀に対するコンプレックスが」 医師「“今までに見た麻雀の強い人々が追ってくる”という幻覚をみせたのでしょう」 スタスタ 咲「……」 ―京太郎の病室― コンコン 咲「京ちゃん……京ちゃん、お見舞いに来たよ」 咲「……」 ガラ 咲「京ちゃん、お花を持ってきたよ」 咲「……」 サァァァ…… 咲「……京ちゃん?」 咲(いない…………あれ?) 咲(窓………………開いてる) ――東京―― 「いやぁ、今日も流石でした!大沼プロ!」 「また今度もお願いします!御疲れ様でした!!」 大沼「…………お疲れ」 スタスタ 大沼(帰って一杯やるか……)スタスタ 大沼「…………」 ピタ 大沼「……?」 京太郎「はぁっ……はぁっ……!」ニコォ… 大沼「……!?」 大沼(何だ……?この、寝巻きの格好をして) 大沼(ツルハシを持っている少年は…………) ……………… ガチュッ ガチュッ ガチュッ 京太郎「愛おしい人は放っておいてっ」 ガチュッ ガチュッ ガチュッ 京太郎「邪魔な人を殺しに行こうっ」 ガチュッ ガチュッ ガチュッ 京太郎「それが、ビューティフル・ライフ」 京太郎「それが、ビューティフル・ライフ」 京太郎「それが、ビューティフル・ライフ」 京太郎「それが、ビューティフル・ライフ」 カン!
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/6315.html
須賀京太郎にとって東京という土地は、憧れと、驚きと、そして若干の嫌悪を抱かせる場所であった 長い期間開かれるインターハイ。その最中選手たちはずっと麻雀に明け暮れるのかというと、決してそうではない。 地方から集まった生徒たちは高いビルにはしゃいだり、迷宮のごとき駅の内部に辟易したり、たまに漂う奇妙な異臭に鼻をつまむ羽目になったり、形は様々ではあるがエンジョイしているものが多い。 特に試合に出る選手たちは息抜きという名目で遊びまわるものも多いようだ。 そんななか、須賀京太郎は麻雀に明け暮れていた。 「……ぉ、ツモ。500.1000」 「あちゃ、逃げ切られたか……」 「ふぅ、危なかった」 僅差で逃げ切った京太郎は手元のスコアシートに対局の結果をサラサラと記し、手持ちのカバンに押し込んだ。 「いやぁ、結構やるねあんた」 「いや、マジで運が良かったよ。白の暗刻が配牌で来てたからな」 上家の学生と軽く感想を交え、時計の針にちらりと目をやる。5時を少し回ったばかりである。 「ん、そろそろお暇するかな」 京太郎は席を立ち、支払いを済ませて、雀荘を後にした。 (東京のいいところは、ノーレートの雀荘がたくさんあるってところだな……) 地元でノーレート雀荘といえば、京太郎は一つ上の先輩染谷まこの家、roof-topしか京太郎は知らない。 しかしさすが東京というべきか、メジャーなゲームで、学生にも大流行の麻雀を行うためのノーレート雀荘はそこかしこにある。 おまけに今はインターハイの真っ只中。付き添いできた部員やら、見学に来て熱に当てられたものやらで街は溢れかえっている。 雀荘に入り席に着けばものの数分で四方が埋まり、すぐにゲームを始められる。数をこなすには絶好の環境に、京太郎は歓喜した。 始まりは、長野県で行われた大会にて、一回戦で敗北したことだった。 悔しかった。歯噛みした。しかしそれは理性で抑えられる範囲であった。 自分たちの大会もあるのに、しっかりとアドバイスをくれた先輩や同級生の面々に申し訳が立たなかった、しかしそれは顔を出せぬほどではなかった。 前よりも麻雀に費やす時間が増えた。しかしそれは可能な範囲、常識の範疇であった。 じわりじわりと麻雀という競技の熱が京太郎を蝕んでいたが、それはまだ仄かな光を発し始めた、熱してる最中の生鉄だった。 それに一気に火が通り、バチバチと火花を散らすほどの熱を帯びさせたものは、インターハイの第二回戦、清澄、宮守、永水、姫松の戦いだった。 痺れた、といった表現がおそらく当てはまる。京太郎は仲間たちの戦いを、対戦相手の強さを、間近に見せつけられた。 そして、その激しい戦いの最中にこんな考えが脳裏をかすめた 『俺もあんな戦いをしてみたい』 闘争心に火がついたら居ても立っても居られない。 二回戦インターハイ五日目、試合が終わった直後に京太郎は街へ飛び出した。最低限の荷物だけを持って雀荘に駆け込んだ。 そして、店から締め出される時間まで対局に夢中になった。 体の中の熱をできる限り吐いた京太郎は、しかしまだ体の内側に燻る火種に高揚しながら、呟いた。 「楽しいじゃんか」 前々から知っていた、とは言わない。 こんなに楽しいのは初めてだった。明確な目標を持った麻雀は楽しかった。 『彼女たちのように打ちたい』 その熱だけが、京太郎を変えた。 「明日は準決勝、か」 それなりに遠くの雀荘にいた京太郎は、ホテルまでの帰路をのんびりと歩いていた。 「……なんか、差し入れでも買ってくかな」 今頃メンバーは明日戦う対戦相手の対策会議でも開いていることだろう。甘いお菓子あたりをもって激励に行こう。 そう思った京太郎は、長野のものよりもだいぶ小さいコンビニへと入った。 「いらっしゃいませ」 店員の無機質な挨拶を聞き流し、お菓子コーナーに目を通す。 (んー……なにがいいかな?きのこたけのこは余計な争いが生まれたらやだし……アルファート……とか、あとは雨なんかもいいかもな) 適当に量のあるものを引っ掴みカゴに放り込んでゆく。そして会計に向かう前に、雑誌コーナーに立ち寄ってみた。 (お、最新号だ) 思えば今日は愛読する雑誌の発売日だったか。 これ幸いと雑誌を手に取りパラパラと京太郎は目を通す…… …… ……アア ……アアアアア (……ん?) ふと、なにやら叩きつけるような音が聞こえる。思わず読みふけってしまった京太郎は顔を上げた。 そこは、ガラス越しの滝が見えた。 「……うわ、マジかよ」 雨である。土砂降りである。天地を逆さまにしたとはこのことか。 5秒で全身が濡れ鼠になるであろう夕立の中を慌ててかけてゆく人や傘をさす人、水を弾き飛ばす車が行き交っている。 「……あ、やべ」 京太郎はコンビニの入り口近くに目を向けた。そこには傘コーナーがあったが、黒いビニール傘一本しか見当たらない。 「やばやば」 雑誌を戻し、傘へと駆け寄る。この雨の中を走って帰るのは避けたいところだ。 最後の一本を手に入れようと京太郎は腕を伸ばし…… 「ふぃ~やばかったー!」 突如水の塊がコンビニの中に飛び込んできた。 なにやら黄色と白が混ざったような……水っぽい何かである。京太郎や店員が目をぱちくりするのを意にもせず、水塊はバチャバチャと体を振っている。 「えーと、タオルと、傘傘……」 思いの外かわいらしい声をしているその水はまず近くのタオルに目をつけたようで、それを手に取った。そして反対側に設置されていた傘にも目をつけてを伸ばし…… 「ん?」 目があった。それはもうバッチリと 垂れ下がった濡れそぼった前髪から覗く瞳は、その惨めな惨状とは反対にキラキラと輝いていた。 さながら星のようだ、と京太郎は思案する お互い傘に手を伸ばした姿勢で、少しの間、見つめ合う 「……どうぞ」 京太郎はおそらく女であろう相手に、最後の一本を譲った。流石にここで傘を取ってしまってはカッコが悪いと、男の子のプライドが叫んだのだ。 「ほんとに?ありがとっ!」 髪の隙間から覗く……多分、整った顔立ちの女はにっこりと笑うと傘を手に取り、レジへと向かった。 (仕方ない、走って帰るか……) 京太郎は苦笑し、ガラス戸の外へ目をやる。雨の勢い未だ止まず。明日風邪を引くことにならなければいいが……と考える。 相手レジで会計を済ませた後、出入り口でかるく屈伸をする。そして、コンビニの外へ…… 「えー、お会計800円になります」 「はーい……あ」 「……お札、ずぶ濡れ、小銭もない」 「……申し訳ありません、その……それ、お札、ですか?」 「……わからない」 深くため息を吐いて、京太郎は再びレジへ向かった 「やーありがとー!助かったよ!まさか財布の中身がずぶ濡れなんて想像もしてなかった!」 タオルでゴシゴシと髪を拭う女を京太郎は……先ほどより若干引きつった苦笑で応じた。 「いやいやいいよ。傘を譲ったついでだ」 「ごめんね、お金出させちゃって。絶対返すから!」 一通りぬぐい終わった彼女はまだ湿った髪を手櫛で整える。すると……10人いたら12人が美少女というであろう美貌か姿を現した。 眉目秀麗だのなんだの様々な褒め言葉が当てはまるであろう顔立ちの中で、一際目が魅力的だった。 夏の満天の夜空のような輝きを宿すその瞳は、見るものを捉えて離さない。 「お、おう……」 部活仲間も美少女が多いが、それとは別で、明朗快活でありかつ、美術品のような美しさを持つ不思議な魅力の少女だった。 「ねぇ、名前と連絡先教えてよ。また連絡するから」 「おお、俺は須賀京太郎。今携帯出すから待ってろ」 美少女に連絡先を聞かれる、という時点で京太郎は先ほどの傘タオル計800円の支出の価値はあると思った。若干舞い上がりつつ、京太郎は懐から携帯を取り出す。 「ふーん、キョータロー、覚えたよ!私は大星淡!ちょっとまって、スマホスマホー」 濡れそぼった服を漁り、淡も携帯を取り出した。 お互いの連絡先をいざ交換しようとして…… 「……携帯、つかない」 「……」 深く深く、京太郎はため息を吐いた 結局京太郎は、口頭で電話番号を教えた後に恐ろしいほどの土砂降りの中をホテルに向かって全力疾走していた。 大星淡の二の舞にならないように、店員にビニール袋を数枚貰い、それで何重にも貴重品や買った品を包むという工夫を凝らしてある。 一緒の傘で行く~?という淡の提案は大変、それはもう大変魅力的であったが京太郎と淡のホテルは真反対の方角にあり、とても往復する暇はなかった。 「はしるーはしるー、おれーたーちー……」 中学時代のハンドボールで鍛えた体力にはまだ余裕があるが、容赦なく降り注ぐ水が体温を奪っていき、おまけに視界も悪い。今日は麻雀ではそれならに勝てたが、厄日と言わざるを得なかった。 ようやく宿にたどり着いた京太郎。 透明の自動ドアの向こうでずぶ濡れの京太郎を店員が少し嫌そうな顔で見たが、しまってあったタオルで体を拭い始めるとすぐ笑顔になった。 (やれやれ、水を滴るいい男にもサービスは無しか?……なーんて) とりとめのない考えをしながら服に染み込んだ水を絞り出し、肌に張り付いた水滴その他もろもろをぬぐい落とす。 (……果たして、連絡し返してくれるかね?) 連絡先を互いに交換すればよかったが、京太郎は淡の電話番号を聞けなかった。なんと自分の番号を暗記していなかったのである。 絶対連絡すると淡は言っていたが…… (まぁ別にいいか、800円くらい) 800円で美少女に恩を売り、その報酬は夕立の中のランニング、少々どころではなく気落ちするが、表情には出さない。 「さて、冷えちまったし風呂でも入るか」 それなりにさっぱりした京太郎は、水ががぼがぼとなって気持ちの悪い靴を踏み鳴らしホテルの中へと入った。 … …… 「あら、須賀くん」 「んぉ?」 大浴場近くで風呂上がりの牛乳を一気飲みしていると後ろから声をかけられた。 振り返ってみれば、我らが清澄麻雀部の部長にして策略家、竹井久の姿があった。手にはタオルの入ったカゴを抱えている。 「もうお風呂入ったの、早いわね」 「はは、ちょっと集中砲火を受けまして……そういう部長こそ」 「夕飯前にさっと入っちゃおうと思ってね」 時計を見てみると短針は6を長針は2を指している。 こうなると入浴時間は40分程度、風呂上がりのケアを含めるともっと余裕がなさそうだ。女性は長風呂と思っていた京太郎は少しポカンとする。 「いやだって、暑い部屋に五人寄り集まってあーだこーだ頭働かせたら汗かいちゃったんだもん」 少し恥ずかしそうに久は笑う。試合中は大胆不敵にして相手の裏をかき思考を引っ掻き回す、悪待ちの部長とは同一人物とは思えないほど、その仕草は可愛らしい。 「で、どう?今日も雀荘で打ってきたんでしょう。勝てた?」 「まぁまぁ、といったところですか……その話は後の方が良さそうですけと?」 「え?あぁそうね、流石に時間が……また後で、みんなでお話ししましょ」 じゃねー、といって久は女湯へと駆け込んで行く。 軽く手を振って見送った京太郎は、瓶をカゴにつっこみ自分の部屋へと戻った。 「……ん?」 ホテルで自分にあてがわれた、女子メンバーとは距離のある部屋。 京太郎は充電器を差し込んであった携帯電話を開いてみると3件の着信履歴があった。 三軒全部同じ番号で、約2分おきに掛け直されていてそこから電話は来ていない。 「……」 なんとなく電話をしてきた人物がわかった京太郎は、何の疑いもなくその電話番号へと電波を飛ばした。 ……数回ほどのコール音が響き、その後 「はいはーい大星淡でーーーす!!」 左耳から右耳へ点棒が貫いていったような大音量である。たまらず京太郎は頭を離し顔をしかめた 「あれ?もしもーし、きょーたろーだよねー?もしもーーーし」 「聞こえてるよ、てかうるせぇ、大星淡さん」 「なんだー、聞こえてたなら返事してよー!こちとら何回も電話かけたんだからねー!」 やかましいやつである、たまったものではない。 「はいはい申し訳ない……で、淡さん」 「気さくに淡様と呼んでくれて構わないよ」 「大星さん」 「……淡でよろしく」 「おうで、淡。何の用……ってのはわかってるけど、しっかり連絡してくれたな」 「あったりまえじゃん!恩はしっかり返すもの!仇と同じくね!」 少々喧しいものの、京太郎はこの淡のさっぱりとした物言いが嫌いではないようだ。少しだけ口角を上げて会話を交える。 「でー、コンビニで京太郎がいってたホテルの名前で調べたら場所はわかったんだけどさ、今日はこんな雨だし明日は準決勝があるから、ちょっと無理そうなんだよね。明後日まで東京にいる?」 「おう、勿論……ん?」 受け答えの後、少し考える。 明後日まで、というのは問題ない。明日の準決勝、清澄は必ず勝つだろう。万が一、いや那由多が一決勝に進出できないとしても、個人戦に出場する咲と和の付き添いでまだまだこのホテルに居座ることになる。 問題は…… 「準決勝?」 「そ、準決勝。淡ちゃんは高校100年生の大将だから忙しいのだ!」 そう、準決勝である。言い草からして応援ではなく選手として出場するということであろう。そして、大将という言葉…… 「白糸台の、大星淡?」 「え、今気づいたの?」 まったくである、勉強不足である。今この瞬間まで須賀京太郎は大星淡が白糸台の大将ということまで気がつかなかった……否、そういえば特集雑誌に名前が載ってるのを見たと思うし、清澄の会議においても名前を聞いたような気がする。 「……いやすまん、そんなやつと偶然コンビニで知り合うとは思ってなかったからな」 「んー、まー、それはしょうがないかー。この私と知り合うという幸運で頭の中が全部白になっても無理はない!」 「いやそういうんじゃなくてフツーに忘れてた」 「……」 沈黙。 「ともかく!そっちの都合がいいなら明後日にはお金持って届けに行くから、電話に出られるようにしておいてね!以上!じゃねー」 そして唐突に電話は切られた。言いたいことを言われるだけ言われて終わった……いや、何度か冷たい返しをしたが 「……偶然ってあるもんだな」 携帯を再び充電器へ。京太郎は奇妙な出会いに驚きを感じながら、ホテルの食堂へと向かった。18.52分。もうすぐ夕食である。 ここのところ毎日食べてはいるが、ホテルの飯というのはうまいものである。スコールめいた雨の中マラソンでカロリーを多めに消費した京太郎はそれを補わんとかたい腹筋を押し上げるほどに胃の中を埋め尽くした。メンバーに冷たい目で(除、タコス。むしろ京太郎より食う)見られた気がしたが、知ったことではない。 そして、食後の女子メンバーの部屋。 「さあ!明日の準決勝に向けて最終ミーティングを行うわよ!」 「……あれ、これ俺がいていいんすか?」 「いいですよ、同じメンバーなんですし、ね」 持ち込まれたホワイトボードを前に京太郎含めたメンバーがリラックスした様子で座する。 昼間、京太郎が不在の間に対策案をまとめあげていたのだろう。各々がそれを読み返し確認する作業である。 「あぁそういえば、差し入れにお菓子買ってきたんだった。どうぞ」 「なっ……ゆ、夕飯の後にチョコだなんて……京ちゃん、ひどいよ……」 買い揃えた菓子の袋を破いてくと悪鬼羅刹を見るような目で咲が睨んできた。 「いや、じゃあ食うなよ」 とか言ってると、染谷先輩は俺に頭を下げ 「わしはいただこうかの。甘いもの欲しかったとこじゃ。ありがとな京太郎」 和ははにかんで軽く会釈し 「私もいただきます。すいません須賀くん」 部長は……すでに手を伸ばし 「お~、たけのこの里がないのはあれだけどいいチョイスねー!」 「……私も食べる」 咲も流された 「最初っからそういえばいいんだよ」 「おう私もいただくじぇ!よくやったぞ犬!」 「おめーやっぱダメだ」 「は?」 「……イヤーッ!」 突如!ユーキ=サンは体を跳ね上げ立ち上がりキョータロ=サンにパンチ! 「グワー!」 そのまま2人はもつれ込みカラテの応酬!!血中タコスを込めた技がぶつかり合う! 「なにやってんのよあんたたち……」 「放っとけ、すぐ戻るじゃろ」 じゃれ合う二人をよそに四人はミーティングを再開。優希は完全にマウントを取り京太郎の腋を容赦なく擽る! 「おらおらー!焼き鳥にしてやるー!」 「やめ、やめっ……うははは、やめっ優希……!!」 「あぁそういえば須賀くーん」 「はーい」 「おわっ!」 部長の呼びかけに即応じた京太郎は優希をかかえて立ち上がった 「なんすか部長」 「お、おまっ、おろせ京太郎!バカ!」 ぽこぽこと京太郎を叩く優希を肩にかかえて部長の方を向く京太郎。 「いや。実は……ちょっとお願いしたいことがあってね」 「なんすか?」 「あした、須賀くんも、会場に来てくれるわよね?」 「そりゃもちろん」 「おろせー!このー!」 全身全霊をかけて応援……と行きたいが大声を出すわけにはいかない。チームメンバーとともに控え室で選手を見守る予定である。 「そこでさ……ちょっと、頼みにくいんだけど。もう一つの準決勝の偵察に行って欲しいの」 「もう一つの?」 もう一つの準決勝といえば、Aブロックの白糸台、阿知賀、千里山、新道寺の戦いである。 「言うまでもないけど、私たちは優勝する」 する、という物言いに京太郎は久の意志の強さを改めて感じる。この大会に、誇張なしに全てをかけているのだろう。 「そこで一つ、不安要素があるの。白糸台の大将、大星淡」 「え」 先ほど電話で話した相手の名前が上がり、少しだけ京太郎は動揺した。 「白糸台の新一年生、突如として大将として抜擢された超新星……データが少なすぎるのよ」 「うむ……探したんじゃが、奴の牌譜が本当に数えるほどしか見つからなかった」 そんなすごいやつだったのか、と今更ながら京太郎は思う。 「須賀君には、大将戦だけでいいから、向こうの試合を見てきてもらって、向こうのチームの牌譜……できればなにか癖のようなものをつかんできて欲しいの。申し訳ないけど……お願いできるかしら」 「え、あぁ、勿論です」 半ば反射的に京太郎はそれを了承した 対策会議という名の雑談タイムは、夜9時には終了となった。明日に備えて早く寝るらしい。 自室に戻った手持ち無沙汰な京太郎は麻雀の指南書を寝そべりながら読んでいた。 「……五索の中央を削れば四索に……イヤー無理だなこれ……」 しかし、どうにも頭に入ってこない。胸の奥のモヤモヤとした感覚が邪魔をしてくるからだ。 「……偵察、ねぇ」 悩みの種は部長の頼みであった。 Aブロック準決勝の大将戦の、特に大星淡の偵察。 京太郎は思案する。部長の頼みは当然のことである、と。優勝にかける思いは、きっと誰よりも強いはず。 となれば、未知数の実力を持つ白糸台の大将、当然不安要素として警戒するはずだ。 その牌譜や打ち方を知りたがるのは当然であるし、それで自分を頼ってくれるのはありがたい。 たしかに大将戦を応援することはできなくなるが、自分は清澄が勝ち抜くことを信じて疑っていない。 では、と考える。自分は何を、もやもやうじうじとしているのか、と あれ、鳥が違うな……ちょいといじって正解探すから気にせんといて 答えはすぐに分かった。どうやら自分は大星淡の偵察という役目に対して罪悪感を持っているらしい。 今日知り合ったばかりで、恩を売ってやって、また会う約束をした……と、たったそれだけの、知り合い未満にも当たるほぼ他人の、しかもおそらく清澄が最後に戦うであろう対戦相手である。 牌譜をとる、打ち筋の研究、それは全く卑怯なことではない。強者とは常に対策を練られるものだ。 そう、まったくもって不自然ではないし、何も問題はない行為である。 「……でもなぁ」 にもかかわらず京太郎はチクチクと針に刺されるような罪悪感に苛まれる。 知り合いになってしまった、ということが何よりも大きいのかもしれない。 傘を譲った時や、名前を名乗った時の輝くような笑顔の淡に対して、まるでコウモリのような行為を働くことに、不快感がこみ上げてくる。 「……寝よ」 しかし、優先するのは清澄だ。部長の頼みだ。そこは譲れない。 京太郎は考えるのをやめ、指南書を放り出し、布団へと潜り込んだ。 そして、翌日である。天気は快晴、だが室内競技である麻雀には関係がない、むしろ会場の外で茹だるような暑さに辟易することになる。 「あっちぃ~……おはよ~ございま~す……」 「おお京太郎……おはようさん。暑いのぉ……」 朝八時すでに気温は30度を上回っている。廊下で鉢合わせたまこもあまりの暑さにうんざりとした顔をしていた。 「部屋ん中は良かったんじゃがのう……長野と違って暑さがいやらしいわ……」 「本当ですねぇ……部長達は?」 「今頃慌てて身だしなみ整えとるわ。わしは一足早く起きて朝風呂を楽しんできた」 なんとも準備のいいことである。要領の良さは我らが部活の中で一番かもしれない。 「じゃあ、朝ごはんいただきましょうか」 「そうじゃの……」 「はぁ……」 「エライ目にあったわね……」 控え室への道をたどりながら、がっくりと肩を落とす。まさか唐突なタックルを受け、さらに人混みの視線を浴びることになるとは思わなかった。 「しかし……須賀くん?さっきのは、大星淡……さん?」 「そうですね、本人も言ってましたし」 「……知り合いなの?」 小首を傾げて久が問うてくる。疑問に思うのも当然だろう、なぜ縁もゆかりもない同士であろう二人が知り合いなのか。 「実は双子ちゃんで両親の離婚に巻き込まれたとか?」 「ないです」 「親戚とか?」 「ないです」 「まさか遠距離恋愛?!」 「ない」 「……須賀くんまさか弱みを」 「ねーーですよ!!」 久の知的好奇心溢れる質問責めに簡潔な答えを返す。ここで言い淀んだらそこにつけこまれてからかわれることこの上なしだ。 「まぁジョークはともかく……一体何があったの?この数日でしょ?知り合うとしたら」 「まぁ、そうですけど……」 京太郎は昨日起きた淡との出会いを話す。コンビニで出会ったこと、金を貸したこと、電話連絡しあったこと…… 「お人好しねぇ須賀くん」 そして、第一声がこれである、しかしぐうの音も出ない 「相手がバカ素直でよかったわよ本当に、フツー連絡なんてしてこないで借りパクされるわよそんなの」 「仰る通りです……」 「どーせ相手が可愛いからカッコつけたかったんでしょう」 「いえ、一目見たときは濡れ女子かと思いました」 「……なんで貸したの?」 「気まぐれでしょうか」 「……」 呆れはてた目で見られた。善行を行ったはずなのになぜ……京太郎は唸る 「で……須賀くん。そんな知り合いの大星淡の偵察、できる?」 途端に鋭い目つきで久は問うてきた。不安要素を少しでも削りたい故か 「ええ、できます」 しかし、京太郎はきっぱりと返した。 「出会って1日2日のあいつよりみんなを優先するのは当然だし、それに……」 「さっき自販機に頭ぶつけられた恨みがありますからね」 「あなた器が大きいのか小さいのかよくわからないわ」 …… ………… ……………… 「……そろそろ、か」 スマートフォンをチラリと見た京太郎は立ち上がる。Aブロックの準決勝はBブロックより少し早く始まった。そのためBブロックよりも大将戦が始まるのも早い。 「じゃあ、行ってきます」 「おお京太郎、頼むぞ」 まこに一言告げて画面を食い入るように見つめる一年娘三人に気づかれぬようコソコソと控え室を後にする。 鞄から取り出したるはノートとシャーペン 「こいつにザーッと記録してくりゃいいんだよな」 牌譜の記録は散々やった、問題はない。 少し離れた大型モニターの前、すでに多くの人が集まっているが幸い一つだけ席が空いている。 「隣失礼します」 「んー……」 ぐったりとした白髪の女生徒の隣……少しスペースを空けた に腰掛け、画面を見つめる。 ちょうどタイミングよく大将戦のサイコロが振られた頃で、席に着く四人の中に、見知った顔の大星淡もいた。 (さて……高校100年生の麻雀、見せてもらうぜ淡) 8割型麻雀への熱意、1割ほど恨みを込めて、一つは一つの挙動すら見逃すまいと、京太郎は記録を開始した。 闘牌描写はキングクリムゾンッ!!!!家庭は吹き飛び結果だけが残るッ!!!! -‐==‐- ´ ` / ヽ / , ! | | i. / |i , ‐‐i| . ト、_|‐‐ | i| | l / |i | |/八 . | | | i| | |/ 〔!| N ○ \| ○ |ノ ,リ. 〔 八! l圦 ,, ' ,, l // |しょうがないねー N | . v ァ . ∨/ . | ヽ| | l_≧=ァ≦ト /_,′ 八 ノ厂| l 〔, / / `丶、 ` /∧ i| | 「⌒ / / /∧ / イ′ j ト、∧ / ′´ .イ ' / | |\ハヒ/| |ニニ/ 〉 / ノ〈 i i ニ| | ´y' ! | .' / 〉 / j / ノ i| | 〔___! ト、〕. 〔′| `ー‐' /// | | i| Υ─| | .′ 家庭が吹き飛んだ!! …… 終わった。 長い対局だった、京太郎は背もたれにもたれかかりぐっと背伸びをする。 結論から言うとわけがわからなかった。 大星淡の麻雀には、訳のわからない何かがあった。 およそ常人には理解できないものだ、と 手元の記録を見てみる。牌の切り出しだけを見ればまるで初心者だが、ほぼ全ての局で結果がついてきている。 他家が必ず5向聴以降から始まるだの、ダブリー連発だの、カンドラ丸乗りだの、まるでイカサマか超能力者だ。 パタリとノートを閉じ、溜息を吐く。 「こりゃ負けねーや」 確信を持って呟いた。 (さて、帰るとするか) 清澄の方はどうなったろうか、まだ試合が終わっていなければいいが…… 京太郎はスッと立ち上がる。座りっぱなしだったせいで筋が伸びきっている。グッと背伸びをし…… 「ん?」 足元に、何かが落ちていることに気がついた。白くてふわふわとした何か…… 「……?」 拾い上げてみるとチャリンと金属音がなる。よく見てみると鍵が付いていた。 このフワフワはキーホルダーか何かだろう。 「落し物か」 落ちていた場所的に隣の席に座った誰かのものだろう。ふと、席に着くとき隣にいた白くてフワフワの、ちょうどこのキーホルダーのような髪型の女生徒が思い浮かぶ。 「……みつけちゃったらしょーがねーな」 部長の言う通り相当にお人好しの甘ちゃんのようだ、と自虐をし、京太郎は人が流れて行く方とは逆向きに歩き出した。 歩く途中にふと思い出す。 あの女生徒、どこかで見たことがあると。 「……たしか、二回戦の先鋒の」 小瀬川白望、だっただろうか。先鋒戦を一位通過したことと、基本道理ながら、たまにしっちゃかめっちゃかな手の入れ替えをしていたはずだ。あまり意識していなかったから気が付かなかったようだ。 「……でも、だからって」 冷静に考えればこの広い会場の何処にいるかもわからない彼女にキーホルダーをどう届けに行けばいいのだろう。 んー、と唸り、考える。 「落し物センターにでも行くか、はたまた……ぁ」 と、考えているうちに『目印』を見つけた京太郎は、我ながら運がいいとそこへ走り出した。 「すいません」 高い高いそれに声をかけるとびくりと震えたソレはくるりと振り向いた。見下ろされるなどいつぶりのことだろうか。赤い瞳に見据えられる。 「え、えー、と、私、かなー?」 威圧感のある風貌とは裏腹にオドオドと可愛らしい声で応答する彼女。大将戦である意味一番目立っていた人物はさすがに忘れなかった。 「はい、宮守の姉帯豊音さんですか?」 「そ、そうどけどー……」 なにやら怯えられているが、それは置いておく。 確認が取れたところで京太郎は懐から先ほどのキーホルダーを取り出した。 「これに見覚えありませんか?」 「あー!」 それを見た途端、長い腕を伸ばし豊音が手を……正確にはそのキーホルダーをつかんできた。流石に京太郎も怯む。 「これ……ど、どうしたの?」 「先ほど拾いました。まぁ色々と心当たりがあって、もしかしたら……と声をかけてみたんです」 「ほ、本当?ありがとー!」 「うおお!?」 両手を握られブンブンと振り回される。おそらく握手だがその威力からプロレス技に分類してもいいかも、と京太郎は思う。 「って!こーしちゃいられないってー!」 「うぉあ!?」 そして腕を掴まれたまま急に豊音は走り出した。 (はっや!?) ハンドボール時代散々全速力で走り回った京太郎すら引きずられないのがやっとの速度、やはり体格の差なのか。 「えーとえーと……ここかなー!」 「うぉう!?」 そして突如立ち止まられ、ブレーキも間に合わず転ぶ羽目になった。豊音を巻き込まないので精一杯だ。 「ってて……」 「え? あっ!?ご、ごめんねー、怪我は、ない?」 「は、はい、まぁ」 慌てて身体中をペタペタと触って怪我の有無を確認してくる豊音。コミュ力不足ではなく特殊なコミュ力をもっているのだなーと悟る 「ここは……え、さっきと真逆の位置に」 地図を確認すると先ほどいた会場東部分のちょうど反対にいる。結構の距離があるのだがそれだけ早かったということだろう。 「……なにしてんの?」 「うおっ」 突如背後から声がする。慌てて振り向くと、二回戦で見覚えのある連中が勢ぞろいしていた。 「あー……こんにちは」 「え……あ、こんにちは」 何とも微妙なふいんき(なぜか変換できる)のなか、正面にいたやたらと背の低い子に挨拶をする。 向こうも状況を把握できないまま挨拶を返した。 「あ、みんなー、えっとねー、この人がシロの落し物を見つけてくれたんだよー!」 「……落し物?」 満面の笑みで告げる豊音に当人のシロはうねうねとした眉をひそめた。 「シロ!ワキガアマイ!」 「エイちゃんそれ違う。シロ、何落としたの?」 「わかんない……」 お団子の人、たしか……塞、だっただろうか。 モノクルが印象的な副将だったはず。 「えーと、これなんすけど」 パッパッとズボンの埃を払った京太郎は手に握ったキーホルダーを差し出す。 「アー!?」 それを見て大声をあげたのが金髪の……エイスリン、次鋒だったか。 「シロ!ヒドイ!」 「……あー」 「あぁ、君隣に座った」 「え、今そこっすか?」 シロ……白望、だったかは、ひどい猫背のまま京太郎にゆったりと歩み寄りそのキーホルダーをつまみ上げる。 「……私のだってよくわかったね」 「なんか似てたので」 「え、毛玉に似てるってなに……まぁとにかくありがと」 なんとも微妙な表情のまま白望に軽く頭を下げられる。これで解決、と京太郎は五人の方を向く。 「それじゃあ、俺はこれで……」 「シロ!オロカモノ!グショー!ナマケモノ!」 ポコポコと効果音がつきそうな殴打を連発するエイスリン、それを背中で受ける白望。なんとも微笑ましい光景である。それをポカンと見つめていたら引き際を見失った。 「こら二人とも!煩い!ちゃんとお礼言って!ほら!」 「あーもう……いやなんかありがとね。あれあの子が白望にプレゼントしたものだからさ。君が見つけてくれてよかったよ」 「いやそんな」 塞にぺこりと頭を下げられた。京太郎は年上に頭を下げられたことに思わずひるむ。控え室になるべく早く戻りたいこともあり、少しばかり焦りがでた。 「ちょーお礼とかしたいんだけどー。名前とか連絡先とか教えてよー」 美人のお姉さん型に連絡先を聞かれるなど普段はあり得ないことではあるが、早く清澄の元に戻りたい。やんわりと断るタイミングを京太郎は…… 「……」 「……え、なんすか?」 気がつくと白望はじーっと京太郎を、見つめていた。 その頭の中を覗き込むように、瞳を、じーっと 「……お礼に、アドバイス」 「へ?」 「何かに迷ったときは、身近な大人を頼ること。それとこれ」 意味深なことを告げたのちに白望はどこからか一つ、ペロペロキャンディを取り出した。 「こいつをあげよう」 「は、はぁ……」 なにやら他の四人が顎が外れそうなほどに大口を開けてみているが、これはチャンスか。すかさず京太郎は身を翻した。 「じゃ、じゃあ俺はこれで!それでは!」 あのまま時間を浪費したら何を言われるかわかったものじゃない。注意されない程度の小走りで京太郎は駆け出した。 「……シロが、見知らぬ男にあんな風に話すなんて」 「あまつさえ、ダルがらずにアドバイスやお礼の品を送るなんて」 「ちょーちょーびっくりだよー……」 「Apocalypse……」 「ひどい言い草だ……」 白望は相変わらずだるそうに、しかしその届けられたキーホルダを大切そうにポケットにしまった。 「大切なものを届けてもらったし……ちょうど私が適任だったし」 「適任?」 「……迷い子のお世話」 「で、その落し物の持ち主を探して、結構遅れた、と」 「そうです」 「お人よしねぇ……」 「流石にどうかと思うのぉ」 「早く帰って来れば咲さんの大将戦見れたのに」 「ひどいよ京ちゃん」 「バーカバーカ!」 「皆さんすいませんでした。優希除く」 控え室に戻ってきたらこの有様であった。試合が終わっても待っていてくれたらしい、ありがたい話だ。 「見つかったから良かったものの……普通に大会運営の係りの人に持ってけばよかったのに」 「返す言葉もありません」 ウカツ!な行動であったことは京太郎も自覚がある、素直に頭を下げて謝った。 「まぁこの辺にしとこうかの、久。決勝進出決まったことだしな!」 「そうでしたね!みんな、本当におめでとう!」 心の底からの、祝福だ。 中堅戦までを見ていた京太郎は相手が強いことはよくわかっていた。しかし、優勝候補の一角臨海を抑え、トップで決勝進出が決まったことは正真正銘快挙である。 「で、須賀くんの方は首尾はどうだった?フラグ立てるのに夢中で忘れてたなんてなしよ~?」 「ふらぐ……?」 首をかしげた京太郎であったが、とにかく偵察結果のノートを差し出した。 「ありがとう。どれどれ……おお、よく表情とかも見て観察してるわね!」 驚いた、という風に久は言うと食い入るようにノートを見つめた。他の四人もどれどれとより集まる。 「……須賀くん、他家が全員五シャンテン以降から始まったというのは」 「マジだ。二半チャン全部、そうだった」 「……信じられない」 オカルトを一切合切認めない和も思わず顔をしかめる。データに現れている以上、そこには確率を超えた何かがあることを理性でなく本能で感じたのかもしれない。 「噂で聞いたのマジだったんじゃな……」 「なんなんだじぇこいつ、ダブルリーチをほぼ毎回してるし!」 「うー、思ってたよりやばげね……」 かきつくように覗き込む優希を制しながら久は頭を抱えた。想定の数倍恐ろしい魔物であることは明確だ。ノートのデータからは表情に出やすいこと以外何も弱点がない。 「わ、私勝てるかなぁ……」 思わず、咲が弱音を吐く、それに反射的に京太郎は言葉を返した。 「絶対勝てる」 五人が、目を丸くして京太郎を見つめた。 「試合を見てきた俺が保証する。ぜーったいに勝てる」 「……身内贔屓?」 「客観的な判断でも同じですね。間違いなく勝てます。咲が負ける要素がありません。それよりも阿知賀の大将の方がまずいかも、そっちを注視したほうがいいです」 阿知賀の大将と聞いて和が少し反応したがスルー、京太郎は確信を持ってそう告げた。 「……そこまで信頼してくれるなら裏切れないわね。根拠は、何?」 「友情パワー?」 「……胡散臭くなったわ」 「……そりゃないよ京ちゃん」 「なんでだ!?」 会場を後にしたメンバーは旅館へ徒歩を進めていた。明日の中日を挟んでいよいよ大会も決勝戦だ。 対策会議はどんなにしてもしたりない……が、ともかく今日はもう休みたかった。すでに日が暮れかけている。 「いやー、疲れたわね、激戦だったもの……」 「肩凝ってかなわんわ」 ずいぶん軽くなった荷物を抱えて京太郎は後ろをついて行く。ふいに、進行方向の地平から上がりかけた月を見て奇妙な思考が頭をかすめた (あいつ……淡は今どうしてるかな……) ーーーーー 例によって大量のホテル飯を胃に詰め込んだ京太郎は、いざ部屋に戻りベッドに横になると教本を広げた。 明日、自分にできることはない、そして今日1日ずっと牌に触っていないせいでもはや我慢の限界だ。 明日は早くから、開店時間から雀荘に駆け込んで麻雀に明け暮れるとしようと思う。 しかしそれとは別の考えが、須賀京太郎の脳内に麻雀教本の知識を刻むことを阻害していた。 大星淡のことである。 確か明日が金を返すと約束した日であったか。しかしそっちはもはやどうでもよく、京太郎は今、淡が何を考えているのかがこの上なく気になっていた。 (あそこまで強いと、いったい普段何を考えているんだろう、戦う相手が何に見えてるんだろう……大将戦で、ある意味負けてしまってどんな気分なのだろう) 色めいた考えなど微塵もない、麻雀が強い人への疑問であった。 内にくすぶる麻雀への熱意があらぬ方向へと向かおうとしている。 無論そんなことを本人を前にして言う気はさらさらないが、なんとなく、スマートフォンを手に取り、真っ黒な画面をじっと見つめた。映るのは漆黒の中にきらめく自慢の地下の金髪である。 と、突然スマホが手の中で震えだした。 「お?」 番号を見てみると、登録されていない番号である、一体誰なのか……変な電話だとやだなぁと思いつつ京太郎は通話をタッチした。 『もしもーーしきょーたろーー?』 なんとも間の抜けた声が響いてきた。今朝自販機に頭突きをかます羽目になった原因、大星淡の声である。 「あん?淡か?」 『そうそう!出てくれてよかったー。昨日の電話ってホテルの公衆電話からしたからさー。今日急いで新しい携帯を買いに行ったんだ!前のやつ古かったし丁度いいかも!』 I s phone6.7の音質を聞いておどろけーと宣ってくるが、音質はこちらのスマートフォンの依存なので向こうの携帯の性能の一端も知ることができないようだ。 「そらまたご苦労さんだな」 『でしょー?親にも携帯壊して怒られてさー……あぁ、そうそう、今朝はごめんねー、あの時お金返そうと思ったんだけどさー、スミレに捕まっちゃってさー』 「スミレ……白糸台の次鋒か」 『そーそー!もー、自分は甘いもの我慢しないくせに他には厳しいんだから~!そんなんだから体重計恐怖症になるんだよね!』 散々な言い草だと京太郎は思う。普通部下が誰かの頭を自販機にぶつけさせてる現場を見たら怒るのが当たり前だとは思うが。 「まぁそれはともかく、なんの用事だ?」 あぁそうそう、と淡は思い出したかのように、世間話を打ち切り要件を告げた。 『明日さ、どうせなら一緒に遊ばない?』 「明日ぁ?お前、決勝は?」 『ミーティングは今日の夜と明日の夜、それ以外はフリーなんだよねー』 なんとも余裕溢れるスケジュールである。部長が聞いたら闘志に火がつきそうだ。対抗してこちらもオールフリーにするとか言い出しかね……かねる、か。 『でさー、京太郎も麻雀やるんでしょ?私がみっちりと指導してあげてもいーんだよ?それ以外にもー!ゲーセンとかー、マンガとかー!』 「優雅なこった……てか、金は?」 『乾かした!』 「……」 Q.金は? A.乾かした! 歴史に残る珍解答であることは間違いないであろう。 事情を知ってる京太郎以外ではお前は何を言っているんだとなること請け合いである。 『ねーいーでしょー?せっかくの機会だから他の学校の、それも他県の人!遊べるなら遊びたーい!』 「……本当に珍しいやつだなお前」 『ほえ?』 「なんでもねーよ」 ここまで人見知りしない性格なのは珍しい、東京の人は全員他人に無関心で交通事故の現場を写メる奴ばかりだと思っていた京太郎は本当に淡が東京生まれの東京育ちか疑問になってきた。 「わかった、付き合うよ。俺も明日は雀荘に入り浸ろうと思ってた。強い奴と戦えるならこっちからお願いしたいくらいだ」 『お、いうね!もしかして強い?』 「すごくよわい」 『えー、なにそれ口先だけ~?口先マーン』 「やかましい。で、俺は10時頃には雀荘行きたいんだが」 『じゃあ10時頃にあのコンビニで待ち合わせしよーよ!』 「おうわかった。後でこの番号でLIMEの申請送っておくからさ、登録しといてくれ」 『はいよー!じゃあ明日ねー!』 通話が終わった。騒がしい声が途切れ、部屋の中に空虚なエアコンの音がかすかに響く。 「本当になんつーか、面白い奴だな」 一人呟く。しばらく黒くなったスマホの画面を眺めた後、それを充電器につないでまくらの傍に起き、京太郎は再び教本を読む。 先ほどまで頭の中を埋めていた余計な思考は、既に消え去っていた。 翌日、京太郎は六時には起きて朝風呂を堪能し、ストレッチののちに朝食をしっかりと食べた。ここで7時半。 そこから部屋で持ってきた荷物の整理及び纏めた牌譜をファイルに整理、そして近くのスーパーでメンバーはの差し入れを購入、この時点で9時、そして待ち合わせのコンビニに九時半にはついた。 この行動は別に京太郎に気合が入っていたわけではなく、差し入れの購入以外は基本的な行動であった。 そして集合時間よりも早く集まるのもハンドボール部時代の癖だ。 「少し早く来すぎたか」 私服の京太郎はクーラーの効いたコンビニ内で適当な漫画雑誌を手に取った。暇つぶしにはちょうどいい。 コンビニの外には様々な人が歩いて行く。スーツを着た如何にもなサラリーマン、無駄に化粧を重ねたおばさん、赤いジャケットにもみあげのすごい人もいれば、和服を着たちびっこも通る。 視界の端でそれを捉えながらもほとんど意識せずに漫画を読む。大して面白くもないそれでも暇はつぶせる程度には役に立つ。 しかし、視界の端にキラリと何かが光り反射的に京太郎は顔を上げた。 窓の外、以前会った時とは違う、柔らかく艶やかな金髪をたなびかせた、大星淡が窓の外からこちらを見つめていた、満面スマイルのおまけ付きだ。 すこしだけドキリとしたことを頭の奥底にしまいこみ、京太郎は漫画をしまうとてきとうなガムをひとつ買い、コンビニの外へ出た。 「おはよう京太郎!」 「おお、おはよう淡」 コンビニから出た京太郎にさっそく淡が元気いっぱいの挨拶をしてきた。 日本人離れした美貌とはミスマッチなはずのにこやかな顔だがそれがまたかわいい。美人は得である。 「おぉー……ねね、靴の裏見せて」 「は?」 「裏!」 いきなり訳のわからない要求だ。片足を上げてくいっと足首を曲げてやる。 「……あれー、スパイクないね」 「この季節にスパイク付きの靴はく奴がいるか」 「長野県民でしょ?」 「長野県民をなんだと思ってやがる」 / / // . 〃 . iト、| . | ヽ ヽ ヽ 乂 .′ / ,イ . / ! . i| | . |\ . ハ .′ i`ーァ′/ ! . i | . | | . | \ . ヽ . ____ i-‐ ´ . .′ !/ . ′| . | | . | | . | \ .  ̄| ̄ ̄ `ヽ /i| |. | | . | | . ! | . |_,,-‐====‐\ . | . | . i j〃 . i| |. |‐===┼- | j -‐ \ . . | . | . | / . i| {. ! \八 . | jノ , -‐ __,,.⊥ . } . | . 人 ′ . 八 Ⅵ ≫=ミ、 . ! ≫≦Y⌒'マハ 、 . .′ . | . .\ i . i . \{ハ 《 )i ハ\{ ″{ .) i } } 》 . / . /! . \ .\ | . | . i '. ヾ い; jj 八∨乂 _;ノ ノ . / . | . .`ー-田舎モン! | . | . | . | . l'. V辷ク ゞ゚-‐ ' . / . / . | . . | . | . | . | . |ハ / . / . / . . | . . | . | . | . | . | . , / . . .′ . / . | . . . | . | . | . | . | . / ,. ,イ . / . 人 . . . . |.. i | . | . | . | ゝ. 、 ノ .′ // / . / . . / \ .\ . l 从 . | . | . { / > . { /' / . / . . ′ \ .\ . 乂{ \. !\〉、 \_/ . . 〕jッ。. . ィV`ヽ /. / . . / \ .\ . . `\ \{ \;/ . . //{{ ` ´ | |│ ,// . . / \ .\ . . 「……ガム食うか」 「食べる!」 包み紙を剥がし、一つくれてやる。なんの疑いもなく淡は口に入れた。 「……から!辛い~!」 「田舎モンっていった罰だ」 「ひょおはほおほはは~!!」 ペシペシと叩かれるが大して痛くない。いいザマだ。 渋い顔をした淡が落ち着くまで適当にぶらつく。ぷくーっと顔を膨らませた淡がようやく口を開いた。 「あー、辛かった」 「俺はそれくらいが好きなんだ。で、電話で話した通り、最初は雀荘でいいか?」 「んー……そだね、コテンパンにしてやるから!」 ウネウネと髪をうねらせながら不敵な笑いを浮かべる淡。どうやら辛口ガムで随分とヘソを曲げてしまったようで、本当にコテンパンにされそうだ。 「はは……手加減しないなら願ったり叶ったりだな」 「ほほー、いうねー、口先マンのくせに~」 「そこから得るものがあるかもしれないだろ」 折れない心とか、とは続けない。負けること前提で進めるのはあまりよろしくない気がする。プライド的な意味で。 というわけで、二人は近くの適当な雀荘に入った。決勝戦前の中日なだけあり、多くの学生で溢れかえっている。 「んー……あ、卓空いてる」 「お、本当だ」 空っぽの卓で対面になるように2人は席に着いた。この様子ならすぐに残りも埋まるだろう。 「ラッキーだね!」 「あぁ、待つかと思ったんだけど……」 しばらく待っているうちに空いた席に一人、また一人とつき、四方が埋まる。ついに開幕だ。 「回ニニO _--ー「T「 ̄\ /二\ 「 l L_コュ 凵 ヽ |( )| L 」コー゙゙゙゙゙ ̄ ゙゙゙̄ーヽ`二´.| /二\,, / ヾ\ 〆). |( )レ ヽ ヽ .ヽ`二/ ヽ .ヽ. ヾ / / ハ -/-ト | 、. | `フ | |ーヾ | i/ | / ヾ | | / | ハ | ヽ\ ヽ __´ | ヽ | ハ ヽ | ヾ __.  ̄ ,,=≡ニ=,,. | | | ヽ V 、ヽヾ ,,=ニ≡ /// ノ レ ヾヽよろしくおねがいします!. / .| ´ _´___ ∠ | ルレ. | | |./// ト--ー゙| ,,. | /レ | | ヽ ヽ _ノ_,,-i ´fヨヽ | レヽ ト ド ̄ ̄日フヽ | ヾ ヽ_ ヾ ____ ,ー 、 /ヽ  ̄ ド ( { .|ベ/ ヽ | ヽヽ__ゝーノソ ト___ | (`ー(ー´ \. ハ ヽ ヽ | ∧ ,ヘト o|ヽ ヽ| トoヾ_へ\\ | | ヽ_/ ヽoヽ ,,ゝ弋コヾ| ─- 、 、 , -───-ヽレ_ , ´ ` 、 / \. , ' 丶. / ヽ. i ,ィ ,ヘ l | / !.{ ヽ \ ヽ | l ,イl| ヾ;、 \ ` ー-ゝ、_ 、 | i l. i / ヾゝ `''ー  ̄_ニ;三=ーヽ . | |. ヽ ヽ!T'==-_、 `‐ `〒‐'fr;ゥj´ _j j リヽ し1! \` l `'´ hタヽ --゚‐'_ `T!´r) } ,リ }. l  ̄ /j ` リ r 'ノ ラ ._.ノ l. ヾ - 、_ニ1 ノよろしくお願いします `ー;ァ. ヽ -ー‐一 ゞー- ,∠ _ ` ー ゝ、 ` r‐;-‐`''"~ ̄ | _,.> 、__, -‐',コ | | 「f´ ̄ ∠∟-‐''´ | | ,. =‐ | | | | | | / -=' | | , j , ヽ /_ -‐`ー─ _,.ゝニゝ/ / `ー---‐ '´ 〉〉 / '´  ̄ ノ/ .レ' f ,ニニン /. くく ./l | | / / ̄ ̄ ̄ 「よろしくお願いします」 「よろしくね~」 全員挨拶が終わり、卓へと向かう。すると、突然対面に座る淡の雰囲気が変わった。 . , ´ ` 、 / \ // .. .... . ヽ // . . . /. . .. . . . . .∧ // . . ´ . . . . .... . . ... ....... . . . . . . . 、 ', .1} } . ./ . / . . . . . . . . . . . .ト;. . . . ', . . . . . . ', .',. 7ミニ彡 . / . . // / //}. . / ,' .ヽ . . .',. . 、. . |.. .∧ __ { ,'.| /}/ . . // / . . . . ..´/. ./ ./ / V...ノ . . .',. . |. . | ∧. /7} ヽ{| ./.ノ. . . ./ /. . . . . ./ メ;..' . /. .V.;. . . . .} |. . | .トヘ. {人_ .ヽ_ミx´, . . ./ / . . . ーx_ //ァ/ ./イ . . . . .|. .|. . | . ヽ.ヽ. ゝ  ̄... . . ., | . ./ . ' . . ./ _≧≦_.´ ._x≠キ" . . .|. .|. . | . . . 》 〉 __`''ーt―r ' ./. ., .{ .l. . イ ',.〈丁≧ァ` k´r‐=≠、. . . .!. . . . !;/,_'_r''´,-=、 `''ー==≧ . . .{{ ';| / ゝ_, r';_; }. ./ 5、_/;}lノ . . .|. . . . |.// ,Xァ.` .≧=-`''-、_. . . . . . . r ヘ .|. ヘ ``'''. ヾソ-'./. . ./|. . . . |/ / `、  ̄´ /´.ヘ V ヘ , / . . / / . ノノ / .∧ ト ./ ヘ ,ヘ > _ __ __ ,/イノ レ'/ / l ∧ | `,' ヘ ヘ >.、 _, =r< .,'. . . . //// / ` ー、 八_} . .ヘ ヘ ∧‐- ./ /. . . . / .//イ .l. . } ,イ .. .ヘ .ヘ ∧`''ー.〈_ ゝ、 . ∧// / | ; ' . / まだサイも回していない段階で既に真剣そのものな表情になっている。モニターで見た大将戦でもこんなに本気《マジ》の表情を見せただろうか。 (たぶん……さっき言ってたコテンパン、か?) しかしその瞳の奥に悪戯心のようなものが見え隠れしている。さっきのガムの仕返し、といったところか。他二人はとくに気づいた様子もなく卓に向いているのでこのオーラは自分にだけ向けられているらしい。 (まいったね、こりゃ……) 処理が終わり、各々が自分の配牌を取っていく。 すべて理配し終えた段階で京太郎は思わず溜息を吐いた。 (マジで五向聴だ) 他の二人も表情が浮かばない。どうやら例の力が発動している……らしい。 六向聴ではないだけマシと割り切り、京太郎は手を入れ替えてゆく。決勝の様子から、自摸配まで弄くるパワーではないらしく、入れ替えは順調に進んでいく。 しかし…… 「んー……」 7巡目ほどの、あの手からかなり早いテンパイにたどり着いた京太郎はチラッと対面の淡を見た。視線にも気付かずにジッと卓上を見つめている。 引いた三索を加え、二萬を切ればテンパイだ。しかしどうにも、気が進まない。 (俺がテンパイしてんのにこいつがテンパイしてねーのか?) まさかダマテンで狙っているのではなかろうか、という疑念が浮かぶ。どちらにしろまだ東一局、焦らなくてもいいかと京太郎は淡には安パイの三索を切った。 二萬も通らない牌ではない故、和に見られたらどやされるだろうが。 しかし下家が次に二萬を切ってもそれはあっさり通った。 (ありゃりゃ) 予感が外れたか、と京太郎は頬をかく。 次順、あっさり京太郎は三索をひいた。オカルトは信じるが自分にそんな力はない、と知っている京太郎はどちらかといえばデジタルよりだ。もう大丈夫と安心して、不要牌の二萬を切り落とした。役は安い、リーチはしなくても…… 「ロン」 「……え?」 宣言、その方向を向くと淡がニヤリと笑って牌を倒していた。 「えーと、3900!」 「あ、あぁ……」 マジで?という心情で京太郎は点棒を淡に渡した。まさかこんな露骨に狙い撃たれるとは……と思ったあたりで、他の二人がとくに変な様子はないことに気づく。 (……あぁ、そういえば) よく考えれば下家が二萬を切った後安心した京太郎は淡を注意してみていなかった。その時に手を入れ替えたのかもしれない。 (俺のミス、か……) 淡に狙い撃たれたのではないかというバカバカしい疑問を京太郎は振り切り、さあ次だと親の一本場の卓に向いた。 , ⌒ ー  ̄ ̄ 、 /_,. - \ /´ / /⌒\ ヽ , ´ , V . / / / / / | V V | /-- ´' / / / l|{ | l| | | { / イ { ' |_,斗| | 、_l__/_ィ |l∧ / , ∧ | {∧{ { 、 /}/}/ } /∧| / イ / {∧{ 、__,.V {∨ 、_,/ イ}' `  ̄´ V∨乂l \ ムイ/ 从 ' 八/はぁ…… -〈〈/\ v-っ イ》く__ /////∧\} > -- < |//}///> 、 /////////\} 「/〈////////\ /////////////|--、 r-|/ イ//////////\ //////////////∧、__「//////////////// \ {//{////////////〈 ∧ }///////////////////} |//|/////////////V/\ //////////////////'//| _, -──- .,_ '´ `丶、 / \ , / \. / . / ヽ ′ / / `、. .' / /, // /| | ` i . / 」_ ′/ | | i| . i. i | j/, /イ`メ、 | 小 || ト.! j .| ∨/ / |/ ヽ | ァT丁l | | ノ i| V j 抖竿ミ ノ ノ ,ノイjノ | i___ ____彡' , i| i| j 八| x x /ィ竿ミ 刈 | } ̄¨ え≠ / 八 i|/l | | x x / ノ | ′あー楽しかった! / -‐ ' ハ 八 ト、 ヘ.__ ` 厶 イ ノ/ __,.斗‐=≠衣 ヽ八\ 丶.__ソ . イ(⌒ソ イく jア¨¨^\ \ \ >-=≦廴_ ア /ノヘ\ 斗ァ'′ \ \ ヾ. \___ ⌒ヾく<,_ `ヽ )ノ/圦 | 、\ ヽ 、∨tl `ヽ . ∨ V\ i { `| Vi \ ハ i } | } i } ∨,} }≧=- | 辻_V\`i} i } | /} iハ} 辻ノ ノ ¨〕V//リ iノ ////V〔 ¨〕 結果的に京太郎は負けた。ぼろ負けした。ネギトロにされてしまった。 その四人で4回卓を囲んだが、京太郎の結果は4着3着4着2着。 別に淡は京太郎だけを狙っていたわけではなかった。他の二人も特別強いわけではなかった。 しかしラスを二回引いたぶっちぎりのドベの京太郎に対し、淡は全局一位。まさしくコテンパンである。 /l ,,,;;-―''"  ̄ ̄ ̄ `ヽ、 l |/ 二`ヽ、 ノ/ \ / \ / / L、 / / / _ _ ソ'ノイ `ヽ=、 ./ / / ___\ ∠ ノィ \ / _ l ` _/ \\ ィ" ヘ ヽ | / ┐) `ァ ヽ、 `<_l! ` ´ \ l \ lくそ!トーレスめ!トーストにしてやる! 、_ ノ | r.〈 / ` 、 ∠、 | | 、 | \´ l ヽ \ ___チ `〈_ ノl!ノ ノ | | Y \_ `ー __ 、 ノ .| | | || |  ̄フ´ / ー-、_ヽ ´ | _ノイ / \ チ´ / |;;;/ | / ,,r-、`、 ノ l!_ レ' / L_, /;;;;;;;;;;`ー、  ̄ ̄ l \ `ー-、 ノ / チ_ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;フー、 | \ ー / 、 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ \」_ `ヽ、 / チ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; / `ヽ、_ .〉`ー― '"'" ̄ ̄;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ // `ヽ.」;;;;;;;;;;;_;;;;;;/ // /`ヽ、-―'" \\ .// / / l__. \\ .// / / /;;;;;;;;;\ \\ // / / /;;;;;;;;;;;;;;;;;\ お昼時になり他の二人が卓を離れたため京太郎と淡も雀荘を出る。 「いやぁー……京太郎、マジで弱かったねー」 「うるせーよ牌を見透かしたみたいに狙い打ってきやがって……」 「わざとじゃないしー」 ルンルン気分の軽い足取りで歩く淡とは対照的に京太郎は沈んだ気分でそれについて行く。 「かてねーとは思ってたけどここまでボコボコにされると自身失うぜ」 「ふふーん、この高校100年生の淡ちゃんに勝とうなど、一年生のきょーたろーじゃ99年はやいのさ!」 ビシィッ!と指で刺されてもぐうの音も出ない。ぐぬぬと唸った京太郎は何かいい返さねばと口を開いた。 「つ、次は負けねーからな!」 「……え?」 とたんに、淡の動きが止まった。 「次……?」 「え、ダメ?……あ、そうか、大会終わったらもうお互い遠くだもんな、でもネトマなら」 「いやそーじゃなくて」 京太郎の言葉を遮り、淡がポツリと呟く。 「また、してくれるの?麻雀」 「あぁ、そりゃ勿論」 「……そう」 「うーん……まぁ、いいか」 スッと顔を上げた淡は先ほどまでの明るい表情に戻ると、またずんずんと歩き出した。 「じゃあお腹減ったし、なんか食べようよ」 「奢らねーぞ」 「え?そりゃそうでしょ、学生同士だし。何食べるー?ラーメンとかどう!ラーメン!」 「……本当に、お前は珍しいやつだよ」 「ほえ?」
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/2291.html
http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1357370912/ 私は暗い部屋に呼び出され一つの御遣いを賜った。 今神代家は危機に瀕している。 その解決策として私が出向く事となった。 ですが、それはあまりにも人道に悖ること。 一筋縄では済まない、罪の意識を背負って人生を歩む事を強いられる。 その中の一人として私が使者として呼ばれたのです…… 「失礼致します。」 「来たか……」 「それでご用件は……」 「姫様のことについてだが……」 「上の協議の結果、ある結論に到った。」 「五年前の時と同じ方法で祓う。」 「! ですが、既に出来る者が……」 「そうだ、今ここに出来る人物はいない、だが飽くまで『ここには』だ。」 「……あの男の息子も15になった、もう十分に大人だ。」 「本家を守る為にもあの少年の力を貸りる。」 「指し当たってお前にはあやつの説得をしてもらうぞ。」 「……何故、私なのですか。」 「六女仙の中であの少年と仲が良かったのはお前だろう。」 「姫様は動けるわけが無い上に、姫様自体この方法に反対するはずだ。」 「……あとはわかるな、霞。」 「……はい、わかりました、御爺様。」 今更どの面さげてあの子に会いに行けば良いのでしょう。 確かに私達が仲が良かったとは言え、それは飽くまで5年前迄の話。 5年前起きた出来事と私達がしてきた仕打ちのことを知れば溜息も出る。 あの子達親子が私達に抱くものを考慮して説得するのがどれだけ無理難題な事なのか。 御歴々には分からない事なのでしょう。 私とて小蒔ちゃんには死んでほしくない。 だがそのためにあの子に「小蒔ちゃんの身代わりになってくれ」とどうして言えようか。 私はやり切れない感情を捨て切れないまま、長野へ飛んだ。 ――清澄―― 京太郎「何か久し振りの部活って感じだー。」 咲「インターハイ終わってやっと帰ってきたって気分だよ。」 京太郎「部室の扉を開けてあげましょう。」 咲「うむ、苦しゅうない。」 京太郎「ようこそお姫様……あっ」 咲「誰がお姫様か、あと「あっ」てなにさ。」 京太郎「ハハハ、わりーわりー、気にすんな。」 京太郎(何か、昔の癖が出ちまったな……) ――長野―― インターホンを鳴らして家人が出てくるのを待つ。 久しぶりに会う人だが疎遠になってしまっていたので緊張する。 緊張する理由はそれだけではないのだけれど…… やがて訪問宅の扉が開き、懐かしい顔と対面する。 「はい。」 「お久しぶりです、おば様。」 「……なにしに来たの?」 おば様が私の顔を見るなり纏った空気が強張った。 明らかな怪訝な顔付きに、緊張した空気がより一層張り詰める。 「……本日はお願いにやって参りました、主におば様のご子息にですが。」 「帰って。」 おば様の表情が途端に変わり、憎悪の視線が私に刺さる。 覚悟はしていた、罵られるのも蔑まれるのも。 それでもここで引き下がるわけには行かない。 「お願いです、話だけでも……」 「帰って! 私から旦那を奪ってその上一人息子まで奪うつもり!?」 「その件に関しては申し訳ありませんでした……ですが今は事態が事態なのです。」 「ですから、何卒お力添えを……」 「帰って……帰って頂戴、これ以上私から大切なものを奪おうとしないで……」 最後にそう言ったあと、おば様は扉を閉めた。 こうなったら直接あの子の元に行くしかない。 確か清澄高校に通っているはず…… 清澄といえば私達がインターハイで対局した相手校よね。 麻雀部に顔を出して少し手を貸してもらおうかしら…… 説得に成功する可能性を考えると藁にも縋る気持ちだった。 ――清澄高校・麻雀部―― まこ「さーて、心機一転部活始めとするかのう。」 優希「うー、だるだるだじぇー……おい犬ー、ダコスーダコスをくれー……」 京太郎「お婆ちゃん、タコスはさっき食べたばかりでしょう?」 優希「はて、そうだったかのう、爺さんや。」 そんな下らないやりとりをしていると 突如部室内にノックの音が響き渡る。 扉が開き、見覚えのある一人の女性が入ってきた。 霞「こんにちは、失礼するわね。」 まこ「あんた、確か鹿児島の……」 霞「はい、永水女子の石戸霞です、今日はお願いにやってきました。」 京太郎「…………!」 咲「ひっ……」 和「? どうかしましたか? 咲さん。」 咲「……ううん、なんでもないよ、和ちゃん。」 京太郎「あ、お茶葉切れてるみたいなんで、ちょっと俺買出しに行って来ます。」 まこ「……おう、行ってきんさい。」 優希「いぬー! ついでにタコスも買って来ーい!」 咲(京ちゃん……行っちゃった……) 咲(さっき、一瞬……ほんの一瞬だけど……京ちゃんが、今まで見たことないくらい恐い顔をしてた……) まこ「で、遠路はるばる鹿児島からやってきた理由はなんじゃい?」 霞「ええ、実は人を捜しているのよ。」 石戸さんが懐から一枚の写真を出した。 そこには複数人の女の子と1人の男の子が写っている。 どこか見覚えがある面々の中で一人だけ浮いた男の子は、黒髪ではあるが、正しく京ちゃんだった。 霞「この男の子を捜しているんだけど、誰か心当たりはないかしら?」 まこ「うーん、さぁのう?」 咲「あの、石戸さん?」 霞「何かしら? もしかしてこの子に心当たりがあるのかしら?」 咲「……いえ、その……この男の子を捜し出してどうするつもりなんですか?」 霞「……御家の関係もあって詳しくは言えないけど、鹿児島に一緒に来てもらうわ。」 優希「そういや名前はなんていうんだじぇ?」 霞「名前は須賀、須賀京太郎よ。」 優希・和「「え!?」」 久「あら、うちの須賀君と同じ名前ね。」 咲「部長……どうして……」 久「今、学生議会の仕事を終えてきたばかりなのよー。」 霞「それじゃさっきの男子が京太郎君ってことなのかしら?」 まこ「……まぁ、そういうことになるのう。」 霞「……京太郎君を借りてもいいかしら? こちらとしてもそれなりに便宜は図るわ。」 久「別に構わないわよ。」 咲「部長!?」 まこ「久、お前、京太郎にも聞かずに勝手に決めおって……」 久「あら別にいいじゃない、須賀君をちょっと貸すだけなんだし。」 霞「…………」 咲「でも京ちゃんが首を縦に振らなかったら……」 久「行かせるわ、恩を売っておくことは部にとってプラスになることだしね。」 咲「でも……」 久「これは部長としての最後の仕事よ、あなた達にはこれからがあるんですもの。」 霞「……では私はこれから本人に聞いてくるわ。」 優希「……行っちゃったじょ。」 まこ「…………」 優希「染谷先輩、戸棚なんて開けてどうしたんだじぇ?」 まこ「うん? いやちょっと確認をのう。」 まこ「……なんじゃ、やっぱりお茶葉は切れておらんかったか。」 京太郎「…………」 霞「捜したわよ、久しぶりね、京太郎君。」 京太郎「……お久しぶりです、霞さん。」 霞「金髪にしたのね、最初は京太郎君だと気付けなかったわ。」 京太郎「……それで、今更俺に何のようですか?」 霞「……単刀直入に言わせてもらうわ、私と一緒に鹿児島へ来て。」 京太郎「……俺らはもうそっちとは関係ないはずでしょう?」 霞「……そうも言ってられないくらいこちらは危機的状況なの。」 霞「このままだと、神代本家……いえ、霧島全体が危ういわ。」 霞「だから貴方に、助けて欲しいの。」 京太郎「……んな……」 霞「お願い、貴方の力が必要なの。」 京太郎「ふざけんな!! そっちがしてきたこと忘れたとは言わせねぇぞ!?」 霞「…………」 京太郎「あんたらが俺の親父見殺しにして! 恐くなって俺ら一家を追出したくせに今度は助けてくれだぁ!?」 京太郎「ざけんな! 虫が良すぎんだろうが!!」 霞「そう、そうよね……今更、虫の良すぎる話よね……」 霞「でも、その狙われてるのが小蒔ちゃんだと聞いたら貴方はどうする……?」 京太郎「!……どうもしませんよ……俺は、聖人君子でも何でもないんです。」 京太郎「追出された俺たちが今更あなた方を助ける義務も義理も無い……」 霞「それともう一つ、姫様を狙っているのはおじ様を喰い殺した、あの化け物よ。」 京太郎「っ!……むかつくぜ……!」 霞「恨んでくれても、殴られても構わないわ……私たちはそれほどのことをしたもの。」 霞「それを承知の上で小蒔ちゃんを助けて欲しいの。」 霞「神職に携わる人間としてでも、分家の人間としてでもなく、小蒔ちゃんの友人として……」 京太郎「……少し時間をください。」 霞「……わかったわ、あまりに急なことだし、今後の事も含めて考える時間は必要よね……」 霞「……ちなみに部長さんには既に了承を貰っているわ。」 京太郎「……搦め手ですか、貴女らしくもない。」 霞「それほど切羽詰ってるの……」 京太郎「……あまり良い返答は期待しないで下さいよ。」 霞「……でも、それでも私は待ち続けるわ。」 霞「貴方が来るまで……小蒔ちゃんのために……」 京太郎「…………」 ――須賀家―― 京太郎「ただいま。」 京太郎母「……おかえり。」 京太郎「もしかして、霞さん、家にも来たのか?」 京太郎母「そうよ、あんたどうするつもり?」 京太郎「……わからねぇよ。」 京太郎母「私は鹿児島に戻るのは反対だからね……」 京太郎「……そんなの分かってるよ。」 京太郎母「……ごはん出来てるわよ。」 京太郎「ああ、わかった、食ったら寝るよ。」 京太郎母「……そう、それがいいわね、このことはさっさと寝て忘れちゃいなさい。」 飯を食い終わったあとベッドに横たわり、身の回りのことについて整理した。 鹿児島から昔馴染みの霞さんがやってきて、姫様が危険だからと俺を呼び戻しにきた。 部長には既に話は通っていて了承済み。 姫様を狙っている相手は俺の親父の仇。 親父は糞爺共の命令で一人で行った。 その結果、相手に手傷を負わせ、何とか一時的に祓う事は出来たが、親父はそのときに死んでいる。 お袋は先代の時の元六女仙の一人だが、祟りや須賀の力を 危険視した爺共が下したあまりの仕打ちに、俺を連れて長野に越した。 まだ中学に上がる前の俺は、何の事情も聞かされずに長野に移り住んだ事に不思議だった事を今でも覚えている。 そのあとお袋にことの成り行きを聞かされ、本家とか因習というものはあまり好きではない単語になった。 頭の中で整理してもどうすれば良いか分からず、思考はぐるぐると迷い回る。 そのうちいつの間にか俺は、目蓋の重さによって眠りに落ちていた。 『京太郎くん、遊びましょう!』 『あ、姫様、いいけどどこで遊ぶ?』 『京太郎くんのお部屋がいいです。』 『わかったよ、ちょっと散らかってるけど文句は言わないでよ。』 『文句なんて言いません!』 『それでは……』 『俺の部屋へようこそ、"お姫様"』 はっとして起きる。 幼少の頃の思い出だ。 忘れたいと思っていた過去が、思い出が追いかけてきた。 そんな錯覚すら覚える夢の内容。 "くだらない"と、"切り捨てたものだ"と、そう思っていた。 それでも過去はやってきた、過去から逃げる事は出来ず、今も「まだかまだか」と俺を執拗に付回す。 どうやっても自分が生きてきた道程は、無かった事には出来ない。 「因縁ってものは、切っても切れないものなんだな……」 「"大切な仲間や家族を護るのが使命"か……それが俺達一族なんだもんな……なぁ親父……」 多分、鹿児島に行ったら長野にはもう戻って来れない。 今の内に身の回りの整理をしておこうと思った。 京太郎「よし、これでいいか。」 京太郎母「何がいいの?」 京太郎「ああ、お袋……俺行くよ、鹿児島に。」 京太郎母「あんた最大の親不孝者だね、いやこれからなるのか。」 京太郎「悪いとは思ってるよ。」 京太郎母「思っているなら鹿児島には行くな。」 京太郎「……鹿児島に戻るのは俺個人の感情だよ、決して分家とか本家とかじゃない。」 京太郎「それに、親父の仇討ちでもあるんだ。」 京太郎母「わかったよ……あんた頑固になったね、まったく誰に似たんだか……」 京太郎「ごめん、お袋。」 京太郎母「さっさとご飯食って学校行きなさい、荷物は私が纏めといてあげるから。」 京太郎「ああ、わかったよ。」 京太郎「その前に電話掛けとく。」 京太郎「もしもし、霞さん?」 霞『はい、京太郎君ね。』 京太郎「鹿児島行きの話、受けます。」 霞『そう、受けてくれるのね。』 京太郎「ええ、学校に顔出したら直ぐに支度しますんで。」 霞『では飛行機のチケット手配しておくわ。』 京太郎「お願いします。」 霞『京太郎君……ありがとう、そしてごめんなさい。』 京太郎「俺は自分の都合で鹿児島に行くだけです、霞さんに言われたからじゃありません。」 京太郎「それでは。」 学校まで行き、職員室で担任と少しばかり話して書類に少しばかり署名をした。 放課後になり、部室に顔を出す。 部室には既に染谷先輩と部長がいた。 京太郎「こんちわー」 久「あら、こんにちは須賀君。」 京太郎「部長、鹿児島の話なんですが。」 久「ええ、石戸さんから聞いたのね、もう聞いているとは思うけど須賀君には鹿児島に出向いてもらうわ。」 京太郎「そうですか、ではこれを。」 懐から退部届けを出した。 先程書いていた書類はこれである。 まこ「なんのつもりじゃ、京太郎?」 久「……須賀君、これ、どういうことなの?」 京太郎「鹿児島に行くという事は、俺が清澄から『転校』する可能性があるってことです。」 久「ちょっと……そんな事聞いてないわよ!?」 京太郎「でしょうね、霞さんが素直に言うわけが無い。」 京太郎「霞さんなんて言ってましたか?」 久「ただ須賀君を借りたいとしか言ってないわ。」 京太郎「あの人が一言でも『返す』なんていいましたか?」 久「っ!……石戸さん……とんだ食わせ者ね……」 京太郎「まぁ、飽くまで『転校』する可能性があるだけです。」 京太郎「だから退部届けだけ部長に渡しておきます。」 久「そう、わかったわ、でも『預かる』だけよ?」 京太郎「ご自由に、それでは俺は鹿児島に向かいますんで。」 まこ「京太郎。」 京太郎「はい、なんですか?」 まこ「咲達にはもう言ったのか?」 京太郎「……大丈夫ですよ『転校』するときはちゃんと咲達には言いますから。」 京太郎「……短い間ですが今までお世話になりました。」 京太郎「さようなら。」 まこ「…………」 久「…………」 まこ「……のう、久。」 久「私のせいかしら……」 まこ「さてのう、そんなことわからんよ。」 久「はぁ……」 俺は迎えに来た母親の車に乗って空港まで向かい、霞さんと合流したあと鹿児島行きの飛行機に乗った。 霞「こんな事に巻き込んでごめんなさい。」 京太郎「いいですよ、最終的には俺が決めたことですし、それに部長達には挨拶は済ませましたから。」 霞「許されたくて言うわけじゃないけど……事が終わったら、貴方の言う事なら何だってしてあげるわ。」 京太郎「"事が終わったら"ですか、そのとき俺はどうなっているんでしょうね……」 霞「あ……ごめんなさい、無神経な発言だったわ。」 京太郎「いえ、気にしないで下さい。」 霞「…………」 それから鹿児島に着くまでは重たい沈黙の中、一切話すこともせず、本家へと歩を進める。 神代家の敷居を跨ぐなんていつ振りだろうか。 もうこの門を潜るの事なんてないと思っていたのに。 妙な郷愁感を抱きつつ敷居を跨ごうとしたら掛け声と共に俺の体へと何かが衝突してきた。 「お久しぶりです! 京太郎君!」 「うおっ!? ……お久しぶりです、姫様。」 姫様、おもちがあたってます、今まで冷静でシリアスモードの 京太郎君の京太郎君がおかしな方向に向かっちゃうので離れてください。 絶対俺のおもち好きは霞さんとお姫様のせいだ、うん、そうに違いない。 そんな誰に言ってるかもわからない言い訳をしてる最中に矢継ぎ早に声を掛けられる。 「お久しぶりなのですよー」 「久しぶり、京太郎。」 「お久しぶりです初美さん、巴さん。」 小柄な体躯でだらしなく巫女服を着ているのは薄墨初美さん。 眼鏡を掛けた赤髪の人は狩宿巴さん。 信じられない事に(主に初美さんの方だが)二人とも俺より二つ年上である。 最後の一人に黒糖を齧りながら現れる女がいた。 「ん、久しぶり。」 「おう、久しぶりだな、春。」 こいつは少し離れた親戚(と言ってもここにいる全員は漏れなく親戚なのだが)の滝見春。 一番血筋と歳が近いはずなのに何考えてるか一番分からん奴だ。 「すまないな、京太郎君……」 「おじさん……」 中年の男性が出て来て申し訳なさそうな顔をしながら俺に声を掛けてきた。 お姫様の父親だ。 京太郎「祓う側の尻拭いは任せてください。」 自分では冗談っぽく言ったつもりだが、姫様以外には苦笑い物だったらしい。 と言うより姫様以外は全員顔に暗い影を落としていた。 知らぬは当事者の姫様のみ、ってところか…… おじさんに中に入るよう促がされ、大きな屋敷の一室に通される。 二人きりになりおじさんは少し間が空いたあと、苦々しい顔をしながら口を開いた。 小蒔父「すまないね、こんな事に巻き込んでしまって。」 京太郎「……須賀家の宿命みたいなものですから。」 京太郎「逃げられるものでもないですよ。」 小蒔父「君たちがされた仕打ちを考えたらこんな事頼める立場ではないが……」 小蒔父「君に小蒔を護って貰いたい……」 京太郎「……ええ、分かっています。」 小蒔父「……私は、我が子可愛さに君に犠牲に成ってもらおうとしている。」 小蒔父「君のお父さんの件についても……」 小蒔父「私は……最低な大人だ……」 京太郎「…………」 小蒔父「それでも私は……一人の父親として小蒔には生きていて欲しい……」 京太郎「別におじさんたちに想う事が無いとは言いませんが、親父はみんなを守るために動いた。」 京太郎「それに本家とか分家とかは好きではないですけど、おじさんがやらせたわけじゃないし、姫様も関係ない。」 小蒔父「でも、それでは君の気持ちは晴れないんじゃないのかね?」 京太郎「……もし怒りをぶつけるとしたら爺共と親父の仇に対してですよ。」 京太郎「どうせ今回、俺を呼ぶように考えたのも、奥に引篭もって偉そうに踏ん反り返ってる糞爺共でしょう?」 小蒔父「気持ちはわかるが、あまりそういう言い方は感心出来ないな……」 京太郎「っと、失礼しました。」 京太郎「とりあえず、化け物退治の方法でも考えますよ。」 小蒔父「そうか、こういう知識は君たちの方があるだろうから、そこは君たちに任せるよ、必要なものがあるなら言ってくれ。」 そう言っておじさんは部屋を出て行った。 多分、俺は生きては帰って来れないかもしれない。 少なくとも、俺自身ただではすまない。 親父が手傷を負わせたとはいえ、相手はとてつもない化け物なのだ。 ものの数分も経つと、巴さんと春がおじさんに連れられてやってきた。 この狩宿家と滝見家の二人と須賀家の俺は、所謂祓う側の人間だ。 と言っても各々の家は役割が違うし、何より須賀家は代々、祓う側の中でも少々特殊なのだが…… 巴「早速だけど、京太郎君、どうやるか決まってる?」 春「やりかたによっては必要なものが変わる……」 京太郎「八つ門で奴を祓おうと考えています。」 小蒔父「八位門、あそこか……」 京太郎「内容を簡単に言うと。」 京太郎「八つ門の一つを開けておいて俺と奴が入ったら門を閉めてください。」 京太郎「そのあと、各門の周りにお酒を撒いて札を貼ってください、そこからあとは俺がやります。」 春「そんなことしたら京太郎も一緒に閉じ込められる……」 京太郎「ああ、そうだよ。」 京太郎「そのあとは内側からもお札を貼って二重に結界を張る。」 京太郎「それが須賀のやり方だ。」 それだけ言うと周りが意味を察したのか、空気が少し変わった。 小蒔父「…………」 巴「……京太郎君、何か入用な物ってある?」 春「私たちはサポートしか出来ないけど……」 京太郎「サポートだけで十分。」 京太郎「巴さん、清めの酒とお札をお願いします。」 巴「直ぐ用意するね。」 京太郎「春には仕事用の剣を頼めるか?」 春「わかった。」 小蒔父「私に出来る事はないかね?」 京太郎「……では、女物の服……白無垢がいいか、それと玉串とかを用意してもらえますか。」 小蒔父「何に使うかは知らないが揃えておこう。」 これでいいのか、これでいいんだ。 これからやる事に、皆に少しは巻き込まれて貰おう。 どうせ貧乏くじ引かされたのは俺なんだ、少しわがまま言って皆に動いてもらっても罰は当たらないだろう。 春と巴さんが戻ってきた。 どうやら明日までには用意できるらしい。 小蒔「何をしてるんですか?」 初美「あ、姫様、今の隣の部屋の会話を聞いているんですよー。」 霞「初美ちゃん……なんでそんなことしてるの……」 初美「えー、だって気になりませんかー?」 初美「私たち"降ろす側"は"祓う側"のやってる事を知らないんですよー?」 霞(そうだったわ、初美ちゃんや小蒔ちゃんは知らないのね。) 霞(私は事前に聞かされていて知っていたけれど、この二人には聞かせない方がいいんじゃないかしら……) 霞「ちょっと、盗み聞きなんて行儀が良くないわよ。」 初美「ちょっとだけですよー。」 初美「ほら、姫様も。」 小蒔「じゃ、じゃあ、ちょっとだけ、ちょっとだけですよ……」 霞「小蒔ちゃんまで……んもう!」 小蒔父「言われた物は粗方揃ったみたいだね。」 小蒔父「それで他になにかあるかい?」 京太郎「……では、準備が整ったら姫様との婚礼の儀を執り行わさせてください。」 小蒔「え!? えー!?」 霞「しっ、小蒔ちゃん、静かに。」 初美「バレちゃうですよー。」 小蒔「ごめんなさい……」 小蒔父「それで玉串や白無垢を用意させたのかね……」 小蒔父「……だが、君の年では結婚は出来ないだろうに。」 京太郎「ええ、ですから形だけで良いんです。」 京太郎「少しでも作戦を成功する確率を上げるためにも。」 初美「どういうことですかー?」ボソボソ 霞「……多分、神様の前で縁を取り持ってもらい、お酒を飲むことによって神様のお力添えをしてもらうつもりなのね。」 霞「婚礼で使う玉串も神様の依代とされているのよ。」 霞「お酒は神様との交流の手段でもあるわ、特にお神酒とかは神様の霊力が宿っているから。」 初美「あー、そういうことですかー。」 京太郎「そのあと姫様が着た白無垢を頂いてもいいですか?」 小蒔父「白無垢なんて使って何をするつもりだね?」 京太郎「相手を油断させやすくするためですよ。」 おじさんとの話が終わったところで、一度向き直り、やや大きい声を出す。 京太郎「と、言う事で良いですか? 姫様。」 小蒔「ひゃい!?」 初美「……どうやらバレてたみたいですよー。」 霞「久しぶりだったから忘れてたわ……須賀家の人はこういうのには妙に鋭いのよね……」 3人がおずおずと部屋に入って来た。 姫様が俺の顔とおじさんの顔を交互に見やり、口を開く。 小蒔「あの、あの……本当にやるんですか……?」 京太郎「形だけでいいので、付き合ってもらえませんか?」 京太郎「俺が嫌なら仕方ないですけど。」 小蒔「い、いえ、そういうことではないんですが……」 小蒔父「小蒔、精々白無垢を着て三献の儀(三々九度のお酒)をするだけだ、付き合ってあげなさい。」 小蒔「あ、は、はい、わかりました。」 おじさんが何かを思い出したように俺の傍にやってくると、軽く耳打ちした。 小蒔父「……そうだ、もし、御歴々に復讐したいと思っても意味のないことだと思うよ。」 京太郎「?……どういうことですか?」 小蒔父「人が許されざる道を選んだときは勝手に自滅の道を選ぶものなのさ。」 小蒔父「まぁその前に老い先短いのだからお迎えが来るだろうがね。」 何となくおじさんも爺共の姿勢が嫌いなのはわかった。 こっち側の人間という事がわかって少し嬉しい。 そしていよいよ、神前で婚礼の儀をしたのだが、緊張していて、あまり覚えていない。 それは小蒔ちゃんや斎主をやったおじさんも同じだったようだ。 小蒔ちゃんは巫女だし、おじさんは神主だからこういうことは慣れているはずだろうに…… 俺の記憶にあるのは三々九度のお酒を飲んだくらいか…… もうやる事はやった、これから根の国へ向かうカウントダウンが始まるだろう。 逃げられないし、逃げる気もない。 独り、昔懐かしい場所で気持ちを固めていたら、横から声を掛けられた。 霞「京太郎君、少し良いかしら。」 京太郎「構いませんよ。」 霞「……いつ、出るの?」 刺さる視線と共に、短く、そう聞かれた。 京太郎「お酒が抜けたら、着替えて八つ門へ向かいます。」 霞「そう……」 短く返され沈黙が続く。 ふとお酒を飲んでいた小蒔ちゃんが気になった。 京太郎「霞さん、お姫様はどうしていますか?」 霞「小蒔ちゃんはお酒を飲んだせいか寝ているわ。」 京太郎「そうですか。」 京太郎「……それでは霞さん、さようなら。」 霞「ええ、さようなら……」 霞「……さようなら、か。」 彼は覚悟していたのだろう、これが今生の別れになるかもしれないと。 それが自分の、延いては須賀家の歴史が終わるとわかりながら、宿命を受け入れたのだ。 霞「京太郎君はおじ様と同じ道を辿るのよね……」 小蒔「え……」 霞「!?……小蒔ちゃん……?」 小蒔「どういう……ことですか……?」 小蒔「京太郎君が須賀のおじ様と同じ道を辿るって、どういうことですか……!?」 霞「そ、それは……」 小蒔「須賀のおじ様は数年前に川の氾濫に巻き込まれて亡くなったって……」 小蒔「それでどうして……京太郎君も同じ道を……辿るんですか?」 霞「…………」 迂闊だった、聞かれてしまった。 姫様にこのことが知れたらこうなる事がわかっていたのに…… 霞「わかったわ、簡単にだけど話すから聞いてね……」 小蒔「はい……!」 もうそろそろ、支度をするとしよう。 家から持ってきた鞄から、親父の仕事着を取り出す。 下には純白の括り袴を穿き、上半身には白小袖を。 更にその上から、動きやすいように多少作り変えられた浄衣を着る。 そのあと朱色の指貫のグローブを着けて、用意してもらっていた数枚の御札と剣を携える。 あとは白無垢を被れば準備完了だ。 当の白無垢を取りに行く為、小蒔ちゃんの部屋を訪ねる事にした。 部屋の前で声を掛ける。 少しの間のあと、小蒔ちゃんの声が返ってきた。 何処か暗い声色。 戸を開けると、何故か不機嫌な顔をした小蒔ちゃんと霞さんがいた。 霞さんは俺の顔を見て立ち上がると、近くまで寄ってきて耳打ちした。 霞「ごめんなさい、成り行きとはいえ、少し、小蒔ちゃんに貴方の事を話してしまったわ。」 京太郎「……わかりました。」 そう言ったあと霞さんは部屋を出て行った。 小蒔「霞ちゃんから聞きました、京太郎君、これから危険な所へ行くんですよね……」 どうやら霞さんは小蒔ちゃんに全てを話した訳ではない様だ。 単純に妖魔退治の類だと思ってくれているのだろう。 小蒔ちゃんに咎められない事をほっとしていると小蒔ちゃんが続ける。 小蒔「白無垢がいるんですよね?」 京太郎「ええ、出来れば頂きたいのですが……」 小蒔「そこで待っていてください。」 小蒔「……はい。」 小蒔ちゃんが俺に白無垢を着せてくれた。 そして片手に何か持っていて、それを目の前に差し出してきた。 小蒔「これを、私だと思って持っていってください……」 京太郎「これは、簪?」 小蒔「これが京太郎君を護ってくれることを祈ってます。」 京太郎「櫛の原型、髪に挿すことによって魔を払う、ですか。」 京太郎「有り難く頂いていきます。」 小蒔「必ず……生きて帰ってきてください……」 京太郎「それは……」 小蒔「約束です!」 そういって小蒔ちゃんは、俺の右手を無理矢理取って、小指を絡ませた。 小蒔「ゆーびきーりげーんまーん、嘘吐いたーら針せんぼーん飲ーます、ゆびきった。」 京太郎「死人には、針は飲めませんよ……」 小蒔「京太郎君は死にません!」 京太郎「でも、もし死んだら?」 小蒔「そうしたら私が飲みます。」 京太郎「そんなことしたら姫様が死んじゃいますよ。」 小蒔「……そういう意味です。」 京太郎「俄然、死ねなくなってきましたね……」 小蒔「はい、だから生きて帰ってきてくださいね。」 きっと小蒔ちゃんは察したんだろう、今回のがどれだけ危険なのかを。 もし、祓い切れなかった時は須賀の人間がどうするか、そしてどうなるかを。 最低で道連れ。 最善で生還。 これが目標になる。 京太郎「それでは行って来ます。」 小蒔「いってらっしゃい……」 軽い別れを告げ、決戦場まで足を向ける。 八つ門に辿り着くとそこには既に春と巴さんが待機をしていた。 巴さんも春も何も言わない。 これから起こることが、これから何をするのか大体想像が付いているからだ。 声を掛けないでいるのは信頼の証と思って受け取った。 八つ門の内、一門開いているところから入る。 あとは待つだけだ。 暫くするとなにやら音が聞こえてきた。 川が流れてくるような地を這う音。 傷を負ってか隻眼ではあるが、牛など軽く一飲みしそうな巨躯の大蛇が一門から入ってきた。 その大蛇が語り掛けて来る。 《白無垢を着て花嫁の真似事か?》 《我に嫁入りとは殊勝な心掛けだな……》 大蛇がそうせせら笑う様に言うと一門が閉められた。 蛇は門のことなど意にも介さず続ける。 《だがな、臭う……臭うぞ……》 《どんなにその白装束で誤魔化しても臭う……》 《忌まわしいあの男と同じ血の臭いが!》 「なんだ、バレてたのか、小細工って案外通用しないものだな。」 白無垢を脱ぎ捨てて剣を構える。 門に貼るお札の準備も大丈夫だ。 《この眼の代償は貴様ら一族の血で償ってもらうぞ!》 この世の物とは思えないほどの巨体がうねりながら、その隻眼を以って俺へと照準を定める。 金切り声を発したと思った次の瞬間、その巨大な顎が俺を飲み込もうと大口を開け、禍々しい牙を突き立てようとしていた。 攻撃を寸での所で右へ左へ身を躱しながら門にお札を貼る。 これで第一目標はクリアだ。 大蛇はその巨大な尾を以って叩きつけようとしてくる。 なんとかフェイントを入れながら横っ飛びに転がって回避する。 当たったら堪ったものじゃないだろう、その証拠に叩きつけられた石畳の床が捲れている。 尾や噛み付きに因る攻撃を躱しながらも剣で一太刀、二太刀と切り込んでいく。 その内傷だらけになった蛇が怒号を飛ばす。 《ええい! ちょこまかと煩わしい!》 その声と共に顎と尾の同時攻撃が始まる。 同時となると躱し切れなくなって来る。 このままではいずれ手詰まりになるので、跳躍して落下する勢いで尻尾を切断した――が…… 切断したと同時に剣が折れてしまった。 どうやら硬い何かに刃が当たってしまったようだ。 「やべぇ……!」 剣が折れたことに戸惑っていると蛇の巨体が鞭のように撓り、俺の身体を叩きつける。 とっさに左手で庇ったものの、体が玩具のように吹き飛ばされてしまい、 壁に叩きつけられ、糸の切れた操り人形のように床に落ちる。 どうやら先の攻撃で身体を庇った左手が原型がわからないくらい拉げ、肋骨も何本か折れたようだ。 痛みで動けないでいると大蛇の顎が俺の身体を捕らえる。 《かかかか……どうした? 我の尻尾を切断したくらいで勝利を確信したか?》 この世の不吉全てが籠もっているような瞳で俺をニヤニヤと嘲笑するように覗いている。 《忌々しい血族の生き残りだ……このままじわじわと絞め殺してやろう!》 「ぐあああぁぁ!?」 折れた骨が顎で締め付けられる。 体が軋み、悲鳴を上げる。 《良い鳴き声だ……もっと聞かせて貰いたいな……》 「余裕かましていると……足元掬われるぜ……これでも食らいな!」 勝利を確信し、俺を嬲り殺そうとする蛇の残った片目に髪に挿していた簪を突き刺した。 《ぐおおおぉぉぉ!?》 京太郎「へへっ、目刺しになった気分はどうだ、姫様の櫛は特別効くだろう?」 残った片目を簪で潰された蛇が悲鳴を上げながらのたうつ。 折れた剣を捨て、とある神様を降ろすために目を瞑り、所謂トランス状態になるよう意識をシフトする。 祈るように神降ろしの成功を願う。 その内、どこからともなく頭の中に直接、声が聞こえてきた。 『俺を呼ぶのはお主か? 童(わっぱ)、名はなんと言う……』 「須賀京太郎と申します。」 『して、何のためにこの大蛇と戦う?』 「……可愛い女の子を助ける為というのは駄目でしょうか?」 『くくくく、そうか女子(おなご)のためか……』 『豊穣の稲田を彷彿とさせる頭髪も中々に良い……』 『何より須賀という姓……』 『……気に入った、童に力を貸してやる。』 『そこにある剣を取れ、俺が力を貸すのはこれだけだ。』 『あの蛇を屠れるかどうかはあとは童次第だ、くたばらんようにな。』 「ご助力感謝致します。」 切断した蛇の尾から覗く剣を引き抜き確かめてみる。 錆びてはいるもののやはり親父が持っていた剣だった。 俺が錆びた剣を手に取り、翳(かざ)した途端、剣が様変わりしていく。 今まで実際には見たことの無い剣だったが、どういうものかはわかっている。 京太郎「やっぱり大蛇と言えばこの剣だな……」 京太郎「拾い食いしたら腹壊すってこと、良く覚えておけ!」 京太郎「親父の剣でてめぇに引導渡してやんぜ!」 剣を逆手に取り、巨大な大蛇の脳天に刺す。 今度は剣を順手に持ち替え、引き抜き、そのまま蛇の首を落とし、致命傷を負わせた。 切り落としたあと、蛇の断末魔と恨み言が木霊する。 《ぎゃああぁぁぁぁ!!》 《おのれ……おのれぇ……忌まわしい須賀の血を絶やせなかったのが口惜しや……口惜しや……》 それだけ言って大蛇は毒々しい紫の血の泡となって消えていった…… 役目を終えた親父の剣は、元の錆びた剣に戻り、ぼろぼろに朽ち壊れてしまった。 まずい、意識が朦朧とする…… 蛇から食らった攻撃で満身創痍になっていた身体をなんとか這いずって門の外へと出る。 簪を片手に俺の意識はそこで途切れた。 春ちゃんと巴ちゃんがぼろぼろの京太郎君を担いで戻ってきた。 小蒔ちゃんは酷く狼狽している。 とにかく彼の手当てをして、床に就かせることにした。 今は小蒔ちゃんが彼の傍に付いている。 だけどそろそろ小蒔ちゃんも限界だ。 怪我を負った京太郎君よりも…… 京太郎君の看病をする小蒔ちゃんの様子が痛々しかった。 小蒔ちゃんの手は何度も身体を拭くために水に付けたせいで赤くなり、目の下には濃い隈が出来ている。 もう何日も小蒔ちゃんは寝ていない。 私が小蒔ちゃんに休むように言っても、首を頑として縦に振らない。 京太郎君から離れようとしない。 京太郎君は生きているだけでも奇跡であるくらいの傷を負っていた。 逆を言えば今は小康状態を保っているとはいえ、いつ容体が急変してもおかしくはなかった。 未だに意識を取り戻さない彼に対して、小蒔ちゃんはいつも語りかけている。 「知っていましたか? 京太郎君。」 「私、実は『姫様』って呼ばれるのは好きじゃないんです。」 「周りが私に期待してそれが重圧に感じて……」 「でも、不思議とあなたの『お姫様』は嫌いじゃありませんでした……」 「あなたの呼び方は揶揄う様で、どこか優しくて。」 「でも、どうせなら『小蒔ちゃん』って呼んでくれた方が私は嬉しいです……」 「だから早く元気になってください……」 それを聞いて胸が苦しくなる。 罪悪感が私の胸に圧し掛かる。 これが彼を巻き込んだ私への罰なのかしら…… 「小さい頃はよく皆で遊びましたね……」 「京太郎君は稽古を抜け出していたから怒られていましたけど……」 「川に行って水遊びしたときも楽しかったです……」 「うふふ、あのときは水に流されかけてびっくりしました。」 「今となっては良い思い出ですね……」 「あと、小さい頃といえば……」 そこまで言って小蒔ちゃんの言葉が詰まった。 目には滲む何かがある。 彼と話すことは子供の頃ばかり…… 「なんで……でしょう、今……あなたはここにいるのに……」 「小さい頃のことばかり思い出すのは……」 涙がぽろぽろと零れ落ちている。 やはり小蒔ちゃんも限界だったのね。 女の子を泣かせるなんて、京太郎君も酷い男だわ…… 小蒔ちゃんは涙声で彼に言葉を投げかける。 「急に遠くへ行ってしまって……」 「いきなり戻ってきて……」 「かと思ったら今度は大怪我をして戻ってきて……」 「京太郎君は勝手過ぎます……」 「もう……勝手なことしたらだめですよ……」 「勝手に逝ってしまったら、許しません……」 「絶対に許しませんから……」 小蒔ちゃんが言い終わったとき、微かに彼の眉が動いた。 「うっ……」 「!?」 「……あの神様、やる事が荒っぽいぜ……」 「京太郎君……? 京太郎君!? 京太郎君!」 「へ? 姫様?」 「良かった……意識を取り戻してくれました……」 「本当に良かったです!」 小蒔ちゃんが思わず京太郎君に抱きついていた。 これで一先ず安心できる。 「ぬわぁ!? いっだだだ!? 姫様離れて!? 俺、骨折ってるから!」 「あ、すみません、私ったら……」 「……あーその、姫様にはお世話かけましたみたいで。」 「そんなことありません……私が掛けた迷惑に比べれば……」 「姫様のおかげで、俺は帰って来れたんですよ。」 右手にずっと持っていた簪を差し出し、笑顔で応える。 「多分これがなかったら俺は帰って来れなかった。」 「簪、汚れちゃいましたし、他のを用意しないとですね……」 「怪我が治ったら新しい簪を買いに行きましょう。」 「はい! 一緒に行きましょう!」 「あ、その時はちゃんと私を守ってくださいね?」 「ええ、いいですよ。」 「なんたって俺は……」 「神代の……いや、小蒔ちゃんの守人ですから。」 【京太郎「神代の守人」~蛇殺し編~】 カン
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/1263.html
淡「京太郎!部活終わったらちょっと付き合って!」 京太郎「なんだいきなり」 淡「実は東京でKちゃんが限定販売されるって噂があるの。一緒に来てくれない?」 京太郎「ぬいぐるみ買いに男連れてく気かよ……暇だからいいけどさ」 淡「ありがとー!じゃ、後でね!」 淡「遅れてごめん!レギュラーだからミーティングだーって菫先輩がうるさくて」 京太郎「いいって。早く行こうぜ。途中の本屋でちょっと見たいものあるけどいいか?」 淡「じゃ、その前にどっか入らない?ちょうどお菓子切れててさー」 尭深「……淡ちゃんに、京太郎くん?」 京太郎「あ、渋谷先輩」 淡「タカミー、さっきぶり」 尭深「うん。2人は……デート?」 淡「!?」 京太郎「ちょっと買い物行くだけですよ。そんなデートって程じゃ…」 淡「こ、これって京太郎とデートなの!?じゃ、じゃあ今までのも含めたら何回…」顔真っ赤 尭深「……じゃ、デート楽しんで来てね」 京太郎「先輩……行っちまった。デートねぇ。淡」 淡「ひゃ、ひゃいっ!!」 京太郎「何驚いてるんだ?」 淡「な、なんでもないから!で、何?」 京太郎「いや、これってさっき先輩が言ったようにデートなのか?」 淡「あー、そ、そうだねー。京太郎がどうしてもって、言うなら、デートってこと、にしてあげてもいいよ?」 京太郎「いや、そこまでじゃないけど」 淡「……そっか」シュン 京太郎「しかし、今日いつも以上に人が多いな……よし、淡」 淡「何?ひゃっ!」手、握られる 淡「い、いいきなりなんなの!?」 京太郎「こうしないとはぐれそうだからな」 淡「私はテルーじゃないよ!」 京太郎「どの道人多いんだからしばらくこのままでいいだろ。さっさと行こうぜ」 淡「もー……特別に許す!」 京太郎「そりゃ良かった」 淡「うん……じゃ、張り切っていこー!」 京太郎「おい、引っ張るな走ろうとするな!」 その日の淡はいつも以上に機嫌良かったとか
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/1157.html
次話 始まりは、京太郎がハギヨシの部屋に遊びに来たことだった 京太郎「いや~きれいな部屋ですね」 ハギヨシ「執事ですからね。屋敷程ではありませんがそれなりにきれいにしてます」 京太郎「さすがですね。アレ?このぬいぐるみはなんですか?手作りっぽいですけど」 ハギヨシ「ああ、それは少々事情がありまして」 京太郎「事情?」 ハギヨシ「お嬢様に趣味のひとつでも持ったらどうだと言われ、軽く作ってみたのですが、非常に好評でして」 京太郎「いいことじゃないですか」 ハギヨシ「ええ。それをネットで公開していたのですが、売ってくれないかという方が出てきました」 京太郎「確かに下手な既製品よりいい出来ですからね」 ハギヨシ「そんなことを続けていたら」パソコン画面を見せる 京太郎「?」覗き込む ハギーの手作り☆ぬいぐるみショップ 京太郎「……これはまた」 ハギヨシ「智紀様が運営をしてくれ、サイトのデザインなどはお嬢様や衣様の趣味で」 京太郎(この少女趣味はどっちのだ……) ハギヨシ「そんなわけで最近充実してますね」 京太郎「あ、結構乗り気なんですね」 ハギヨシ「ええ。そういえば、何か新しいものを考えていたのですが京太郎君は何かいいアイディアはないですか?」 京太郎「俺がぬいぐるみをですか?」 ハギヨシ「ええ。男性からの意見もあるかもしれませんし、何よりそろそろ新しいことを試してみたかったのです」 京太郎「そうですね……こう、抱き枕みたいなものとかどうでしょう?」 ハギヨシ「ほう。いいですね」シュババッ ハギヨシ「こういうものですか」エトペン抱き枕 京太郎「いつの間に、って聞くのは野暮ですよね」 京太郎「後は……今までのぬいぐるみは動物やキャラクターものですよね」 ハギヨシ「ええ。著作権的に危ないミッ○ーなどはありませんが」 京太郎「夢も魔法もないですよね」 京太郎「……注文があれば、写真からできるようにするとかどうでしょうか?」 ハギヨシ「オーダーメイドということですか?」 京太郎「例えば、麻雀で有名な小鍛冶プロの写真があれば、小鍛冶プロのデフォルメされたぬいぐるみみたいな」 ハギヨシ「面白そうですね。実在の人物のぬいぐるみ」シュッ シュババッ シュバババババッ ハギヨシ「無論、本人の許可が無ければできませんが、やりがいはありそうですね」デフォルメ京太郎ぬいぐるみ 京太郎「あ、俺。俺のぬいぐるみは言いだしっぺですから問題ないですよ。なんなら売っても」 ハギヨシ「それはどうも。抱き枕案は使うとして、こちらはサイトに隠して載せてみましょう」 ハギヨシ「あなたの好きな人のぬいぐるみを作ります、ってね」 京太郎「ははは。いいかもしれませんね」 ハギヨシ「ところで京太郎くん。このぬいぐるみと君をサンプルとして載せてもいいですか?」 京太郎「構いませんよ。俺の写真も必要ですよね」 ハギヨシ「名前と目線は隠しておきましょう。このぬいぐるみはKちゃんとでも名付けて」 京太郎「じゃ、写真ですね。カメラあります?」 ハギヨシ「ええ。ではこの京太郎くんとこのKちゃんぬいぐるみの写真を載せるということで」 ハギヨシ「しかし、ネット上に自分の写真を載せて、京太郎くんは大丈夫なんですか?」 京太郎「ははは。俺なんかがネットで写真公開したって注目される訳ないですよ」 京太郎「なんなら、そのKちゃんぬいぐるみが欲しいって言う人がいたら、新しく作ってもいいですよ」 こうして、『ハギーの手作り☆ぬいぐるみショップ』には新しいぬいぐるみと隠されたサービスが追加された そして隠されていたサービスは見つけられ 菫「ふふっ、相変わらず可愛いサイト…これは!」 菫「……すいません、いつも利用してる弘世ですが」 Kちゃんぬいぐるみは思わぬ人気を呼び 淡「よーし届いたー!」 淡「おおっ、写真よりイケてるじゃん!!」 人から人へと伝わっていった 穏乃「憧ー遊びに、ってこの人形!」 憧「え?あ!これはそのね、ついっていうか可愛いし、かっこいいし…」 穏乃「……私も欲しいんだけど、どこで売ってるか教えて!」 憧「え?……ああ、いいわよ。このサイトでね」 また、ハギヨシの見事な腕前で個人のオーダーにも完璧に応え 哩「……オプションで鎖と首輪っていけるやろか」 姫子「割高になりますけどかなりの質らしいですよ」 哩「じゃ、いくか」 姫子「あ、もしもし。はい、オプションの鎖は7本でお願いします」 さらなる人気を呼び 尭深「はい。このお茶とのセットを」 尭深「オプションで眼鏡?是非お願いします」 一大ブームを築くことになった 照「はい、この人形は私も持っています」インタビュー中 照「大好きな人形で、いつも抱いていたいくらいですね」ニコッ その売り上げはとどまるところを知らず 白望「ダル……田舎だからって届くの遅い……」 白望「でも……この人形はダルくない……」 地方でも持っている者がいるほどであり 霞「……私に人形は似合わないかしら」 霞「でも、この人形がかわいすぎるのがいけないのよね。限定和服使用」 龍門渕家に多大な利益をもたらすことになった 智紀「……サーバーが落ちた」 透華「一体何をしたんですの?ネットバンクの口座が桁レベルで増えてるのですけど」 衣「わーい、新しいぬいぐるみー」 なお、モデルとなった彼は、最後までそのことに気付かなかったらしい 京太郎「最近視線を感じるが……気のせいだろ」 余談ではあるが、モデル使用料として、彼の口座には驚くほどの金額が入れられ、 京太郎「ハギヨシさん。え?モデル使用料?」 京太郎「ありがたいですけどそこまで売れたわけじゃ…」 京太郎「……え?」 最初に作られた『Kちゃんぬいぐるみ』は、作られたその日から 咲「京ちゃん何そのぬいぐるみ?」 咲「え?くれるの?ありがとう!」 咲「……うん。嬉しいよ、京ちゃん」 どこかの高校生が毎晩寝る時に抱いているとか 咲「おやすみ、京ちゃん」 Kちゃんぬいぐるみ、大阪にて 大阪、合宿所 浩子「ふぅ、さすがに疲れたわー」 浩子「姫松に三箇牧、そしてうち千里山」 浩子「おばちゃんもなんて合宿組むんや……」 雅枝「ひーろーこー……」 浩子「うわっ!おばちゃ、あ、監督!どないしたんですか?」 雅枝「ちょっとこっち来てや」 洋榎「男のくせにぬいぐるみなんか似合わんやろ!!」 セーラ「俺は女や!!」 絹恵「お姉ちゃん落ちついて」 憩「そうですよーぅ?怒鳴り合うんはアカンですよーぅ?」 竜華「せやでセーラ。ここはゆっくり落ちついてうちが1番やって主張するんやで」 恭子「しれーっととんでもないこと言いよるなそっちの部長」 怜「まー、しゃーないっちゃしゃーないんよ」 浩子「これはなんの騒ぎですか」 怜「あ、フナQ」 絹恵「浩ちゃん」 浩子「絹ちゃん、なんでウチの江口先輩と洋榎ちゃんが言い合ってるん?」 浩子「周りも微妙に煽っとるし」 由子「ちょーっと問題が起きたのよー」 浩子「……Kちゃんぬいぐるの取り合い?」 怜「せや。最初はうちの監督とセーラに泉、姫松、三箇牧の部員何人かが一緒に車で買い出しに行ったんよ」 三箇牧A「で、そこの店先でたまたまウチの部員がKちゃんぬいぐるみを見つけて」 浩子「アレってネット販売限定やないんですか?」 三箇牧B「販売元が龍門渕グループらしくて、その関係の店だったから試験的な特別販売、やってさ」 漫「で、残ってたぬいぐるみ4つをとりあえず予算の余りがあったうちで立て替える形で買ったんですよ」 泉「そして帰ってきたら3校でどう4つを分けるかでああなりまして」 由子「主に洋榎と江口セーラが言い合って、荒川憩がちょいちょい狙ってるってとこなのよー」 雅枝「本来ならほっときたいんやけどな」 セーラ「うちの車で行ったんやからうちが2つや!」 洋榎「立て替えたんはうちの学校やで?うちが2つに決まっとるやろ!」 憩「まーまー落ちついて。そもそも見つけたんはうちの学校ですよーぉ?」 雅枝「あー言ってるし、3人中2人が関係者やからな。どうしたもんか」 怜「ちなみに各校2人ずつ持ってないらしいからどこも引けんらしいわー」 浩子「そういえば江口先輩と清水谷先輩持ってないゆうてましたね」 由子「うちは洋榎と絹ちゃんなのよー」 三箇牧A「うちは憩ちゃんともうひとりやね」 浩子「平行線ですやん。どうしようもないですよ」 洋榎「大体なー、女やけどその格好はおかしいやろ!」 セーラ「格好は関係無いわ!」 洋榎「そんなんで夜中ぬいぐるみ抱いたりするんか?話しかけたりするんか?」 セーラ「な、なんで知っとるんや!!」 洋榎「え?」 竜華「え?」 憩「あら」 泉「先輩……結構乙女やったんですね」 恭子「男装してる割には……」 セーラ「……あ」 洋榎「…………」 セーラ「…………」 洋榎「なんか、すまん」ペコッ セーラ「謝んな!!」顔真っ赤 セーラ「ああそうや。俺だってそういうことしたいんや!」 洋榎「本気で悪かったとは思ってるけど譲れんわ!」 洋榎「もしたった1個しか取れんかったらなあ、ネットで画像見ながらため息ついてる絹が悲しむんや!」 絹恵「お姉ちゃん!?なんで私のこと言うん!?」 恭子「……でもこないだ、代行がいくつも持ってるからって主将は拝み倒しながら譲ってくれって頼んでましたよね」 洋榎「な!?」 恭子「結局代行は言うだけ言って譲りませんでしたけど、その時本気で落ち込んでたり…」 洋榎「恭子ー!どっちの味方や!!」 セーラ「はっはっは。なんやお前もそういうとこあんねんな」 洋榎「やかましい!!」 憩「まーまー。2人ともそんな怒鳴らんで…」 洋榎「引っこんでろ2年生!」 憩「……うちも引けないんですよーぅ?」 三箇牧A「そういや憩ちゃん、部室で注文した時、人数分足りなくてじゃんけんで決めたけど、負けてマジ泣きやったもんね」 三箇牧B「インハイより落ち込んでたよね」 憩「そ、それはですね」 泉「……ああいう面もあるんですね」 漫「全国2位の以外な一面、やね」 憩「うう……」 洋榎「こうなったら麻雀で決めよか」 セーラ「構わんけど、3人でか?」 洋榎「4人のがいいやろ。というわけで絹、入り」 絹恵「私!?」 セーラ「そらアカンやろ!竜華ー!やるでー!!」 竜華「まかしときー!」 洋榎「そっちも同じことしてるやん!」 憩「うちに勝てる思ってるんですーぅ?」ゴッ 郁乃「ちょっと待ったー!」 セーラ「うおっ!?」 洋榎「代行!?」 郁乃「やったら中立の4人目がおるで~」 恭子「いきなり出てきて……誰ですか?」 郁乃「ふっふっふ~。入ってきて~」 良子「ハロー」 怜「うお、戒能プロ!?」 由子「そういえばインハイの時も代行が呼んでたのよー」 良子「Kちゃんぬいぐるみ争奪戦と聞きまして」 三箇牧A「このプロ、ノリノリである」 郁乃「あ、良子ちゃんが1人浮きしたら全部良子ちゃんのやで~」 6人「……は?」 良子「ノーウェイノーウェイ……本気で行きますよ?」ゴッ 洋榎「……やってやるわー!!」 セーラ「おお!やるでー!!」 憩「……本気です」 浩子「……なんか収まったやん」 雅枝「うーん。アレも赤阪さんの腕、なんやろか?」 恭子「絶対楽しんでるだけですよ」 怜「しかしアレやね。ここまで白熱した取り合いになって、そして半分以上が持ってるKちゃんぬいぐるみ」 泉「なんもかんもKちゃんのせいやー、ですか?」 怜「……泉がウチのセリフ取ったー」 恭子「うちのマジック貸したろか?」 怜「額にKちゃんって書こ」 泉「なんか酷い!?」 この取り合いは、各校1つずつ、戒能プロが1つという結果に落ちついた この1つをめぐった各校の争いがあったとか無かったとか 後日 浩子「……ん?」 『Kちゃんぬいぐるみ、大阪特別仕様発売決定!!』 新たな争奪戦があったとか Kちゃんぬいぐるみ、東京にて 白糸台、部室 淡「ねー、Kちゃんぬいぐるみって知ってる?」 菫「なんだいきなり」 誠子「知ってるも何も、流行ってるじゃんアレ」 淡「ふっふっふ。実は!私はブームが始まる前から持っていたのだ!」 淡「こう、Kちゃんが大々的になる前の、隠しから普通に表示された時に買ったんだよー!」 菫(私は隠しサービスの時から知っていたが……) 淡「最近じゃあんまり手に入りにくいし?教えてあげようかなーって」 尭深「……淡ちゃん。私、持ってるよ?」 淡「え?」 誠子「あ、私も持ってるぞ?」 淡「そ、そんな……チラッ」 菫「……自分で言うな。後、なんで私を見る」 淡「菫先輩は持ってないの?」 菫「……別にいいだろ」 淡「持ってるね」 尭深「持ってる」 誠子「確実だな」 菫「……シャープシュート(物理)」シュッ 誠子「なんで私!?」ドスッ 淡「なーんだ。みんな持ってたのかー」 淡「あ、テルーは」 菫「ああ、あいつは持ってるぞ?」 尭深「この間のインタビューで抱いてましたよね?」 誠子「アレね。確か通常バージョンじゃなかったよな?」 淡「え?なにそれ?」 誠子「知らないのか?サンプルの通常バージョンに加えて、オーダー次第でオプション付けたり服買えたりできるんだぞ?」 淡「なにそれ!」 尭深「私のはお茶とのセットで眼鏡付き」 誠子「私のは釣り人姿だ。オプションの釣り竿のクオリティがすごいぞ」 淡「ずるい!」 菫「……淡、考えてみろ。お前のは初期のオリジナルだろう?スタンダードでいいんじゃないか?」 淡「……それもそうだね!」 菫・尭深・誠子(ちょろい) 淡「あ、菫のは…」 ガチャ 照「ごめん、遅れた」 淡「あ、テルー!」 菫「お、来たか」 誠子「お疲れ様です」 尭深「お茶いれますね」 照「うん、ありがとう」 淡「ね、テルーも持ってるよね?」 照「何を?」 淡「Kちゃんぬいぐるみ!」 照「京ちゃ、Kちゃんね」 淡「?うん、そうだよー」 誠子「ちょうどその話をしてたんです」 尭深「先輩のは、服が制服じゃなくて私服ですよね?」 照「あ、ああ。そうだね」 淡「ねえ、なんで?」 照「……なんとなくかな」 淡「ふーん?」 照(本当は持ってる写真にあった京ちゃんの私服だけど) 菫「そんなことより、明日の臨海女子との練習試合だが」 淡「あ!菫先輩のはどんなの?」 菫「……だからいいだろ。それより明日の」 照「知ってる」 菫「おい!」 淡「どんなの?」 照「……王子様」 淡「え?」 照「弓を持った、王子様」 淡「…………」 尭深「…………」 誠子「……あー……」 菫「シャープシュート!!(物理)」シュッ!! 誠子「だからなんで私!?」ドスッ!! 照「うん。かっこいいよね王子様」 菫「黙れ」 淡「白馬はある?」 菫「うるさい」 尭深「お姫様もいるんじゃない?」 菫「やめろ」 誠子「弘世先輩自身がお姫様になったぬいぐるみとか?」 菫「…………」ギリギリギリ 誠子「え?そんなわけ…」ドスッ!ドスッ!ドスッ!! 菫「……では、明日の臨海女子との練習試合の話だ」顔真っ赤 照(悪いことしたかな) 照(でも、それだけ京ちゃんがかっこいいってことだよね) 臨海女子 智葉「で、明日は白糸台との練習試合だ。各自、本番のようにやれよ」 ネリー「ねーサトハー」 智葉「なんだ」 ネリー「このKちゃん、ネリーと同じ服で頼めるかなー」 智葉「……さすがに可哀想だからやめてやれ」 ネリー「えー?ハオは中国っぽい服って言っただけでかっこいいカンフーの服だったのにー」 ハオ「ふふん。日本人には中国っぽいだけで伝わるのです」 ダヴァン「私はオプションにラーメンデス」 ダヴァン「この日本の細かい技術はスバラシイデス」 智葉「ほんとそれ、無駄に凝ってるよな」 ネリー「明華は?」 明華「フランスとだけ言ったらナポレオンの格好でした」 智葉「それはまた……」 ネリー「あー……」 ダヴァン「oh……」 ハオ「…………」 明華「いいですよね?」ニコッ 4人(気に入ってる!?) ネリー「じゃーサトハはー?」 智葉「別に普通の格好だ」 ダヴァン「あ。持ってはいるんデスネ」 ネリー「えーつまんなーい」 智葉「お前らが変え過ぎてるだけだ」 智葉「全く。明日は白糸台がこっちに来るんだから、持って帰るかしまっとけよ?」 ネリー「はーい」 ダヴァン「ネリーは持ってないデショ」 翌日、Kちゃんナポレオン仕様が白糸台麻雀部に発見されるのは 淡「やっぱずるい!」 菫「……これもいいな」 照「……え?」 また別の話 Kちゃんぬいぐるみ、奈良にて 阿知賀、部室 穏乃「~♪」 憧「どしたのシズ。やけにご機嫌じゃない」 玄「鼻歌まで歌って、いいことでもあったの?」 穏乃「実は、今日ついに届くんだ!」 灼「何が?」 穏乃「Kちゃんぬいぐるみ!」 憧「ああ、あの時の」 宥「あの時?」 憧「Kちゃんぬいぐるみ、あたしも持ってんの」 憧「それをこないだシズがうちに来た時に見て、欲しいって言ったのよ」 玄「なるほどなのです」 灼「最近人気だよね」 穏乃「いや~、注文した時はタイミング悪く在庫無くって、やっと届くんですよ!」 穏乃「それが楽しみで!」 晴絵「なんだ。シズにもそういう女の子らしいとこあったんだな」 穏乃「赤土先生酷い!」 憧「普段ジャージだからでしょ」 灼「私もそう思う…」 玄「しずちゃんは昔からジャージだからね~」 宥「あったかそうじゃない……」 穏乃「う~、なんかみんな酷い」 憧「まあまあ。それで、頼んだぬいぐるみはどんなやつ?」 穏乃「もちろんジャージ!」 灼「ぬいぐるみまでジャージって……」 玄「しずちゃんらしいね」 穏乃「憧みたいな普通のもいいかと思ったけど、やっぱこれかな~って思ってさ」 憧「全く。シズらしいっちゃシズらしいけどね」 玄「憧ちゃんのも普通のやつなんだ?」 憧「そうだけど、"も"ってことは玄も?」 玄「うん、持ってるよ。そして私もスタンダードなやつ」 玄「やっぱりスタンダードなのが一番でしょ」 宥「……玄ちゃん、嘘はいけないよ?」 灼「玄が嘘?」 玄「お、お姉ちゃん!?」 晴絵「ほう、珍しいな。玄はそういうこと言わないと思ってたんだが」 宥「初めはドラゴンがいいって言って、困らせてたよね?」 玄「な、なんで知ってるの!?」 宥「電話の声が聞こえてて」 穏乃「ドラゴン……」 憧「まー、玄らしいわねー」 灼「玄……」 晴絵「そりゃー困るわー」 宥「最後はドラゴンの着ぐるみになったけど、あんまり無理言っちゃ、駄目だよ?」 玄「ううう……」 玄「お、お姉ちゃんだって!」 宥「わ、私?」 玄「あったかい格好って言って注文して!」 玄「あったかくない、ってクレーム付けてたのを知ってるよ!」 宥「だ、だって実際あったかくなかったし……」 晴絵「宥基準じゃなー」 灼「服の枚数の指定までしないと」 憧「でもドラゴンよりマシじゃない?」 穏乃「ど、どうだろう?」 玄「結局また送ってもらったじゃない!」 宥「つ、追加でお金も払ったよ~」 宥「ミニこたつまで付いてたし」 憧「なにそれすごい」 灼「細かいオプションのクオリティがすごいってのも評判だよね」 晴絵「それでもこたつとはすごいな。どんな人が作ってるんだ」 穏乃「灼さんも持ってるんですか?」 灼「わ、私?」 憧「ま、この流れじゃ聞くよね」 灼「ま、持ってるけど」 穏乃「どんなのですか?」 灼「ふ、普通のを…」 晴絵「灼まで嘘はいけないな~」 灼「は、ハルちゃん」 晴絵「灼にぬいぐるみが届いた時、嬉しかったらしくて写メ送ってきてな?」 憧「へえ。見せて見せて」 灼「ま。待ってほし…」 玄「ここまできて1人だけ秘密は駄目なのです」 宥「あったかくないよ?」 灼「うっ……」 晴絵「ほれ、これだ」 穏乃「どれどれ」 猫耳&猫尻尾&肉球のKちゃん 4人「かわいい!!」 灼「うう、恥ずかし……」 穏乃「灼さんこれすっごく可愛いじゃないですか!」 憧「くっ、やられたわ。これはやられた」 玄「灼ちゃん、いいなー」 宥「あったかそう……」 晴絵「はっはっは。好評で良かったな」 晴絵「さて、今日はこれくらいにしておこうか」 穏乃「はーい。さ~て、早く帰って受け取らなきゃな~」 晩成 やえ「……初瀬よ」 初瀬「なんですか小走先輩」 やえ「お前もKちゃんぬいぐるみを持っているのか?」 初瀬「……持ってますよ。流行ってますし」 やえ「ふっ、流行っているから、などニワカ丸出しの言い方だな」 初瀬「小走先輩……」 やえ「いいか?王者とは、このような流行りに惑わされぬものだ」 初瀬「……自分1人運悪く買えなかったからって強がるのはやめませんか?」 やえ「……ニワカは相手にならんよ」涙目 Kちゃんぬいぐるみ、岩手、宮守にて 宮守、部室 シロ「ダル……」 塞「これがKちゃんぬいぐるみ」 豊音「ちょーかわいいよー」 胡桃「結構かっこいいよね」 エイスリン「カワイイ!デモカッコイイ!!」 シロ「返して……」 豊音「えー?うちじゃシロしか持ってないんだよー?」 胡桃「手に入りづらいし」 塞「もう少し貸しててよ」 エイスリン「ハイ!」頭下げる絵 シロ「……ま、いいか」 シロ(帰ったら私だけだし) 胡桃「シロ、これ抱いて充電させて」 シロ「ダル……」 豊音「自分のも欲しいなー」 塞「この辺りでも買えるっちゃ買えるけど最近はずっと売り切れらしいしね」 胡桃「流行りだしてから話聞いたから遅かったのがね」 エイスリン「ン!」Kちゃんぬいぐるみの絵 豊音「わ、エイスリンさんすごいよー」 胡桃「エイちゃんそれすごく良いよ!」 塞「うんうん。私達はしばらく絵で我慢だね」 シロ「……しばらく麻雀部に置いとく」 エイスリン「ホント!」 胡桃「ありがとうシロ!」 豊音「ちょーうれしいよー!」 塞「みんなシロに感謝だね」 シロ「……別に」プイッ シロ(Kちゃんぬいぐるみもいいけど、1人よりみんなで楽しんだ方がいいし) Kちゃんぬいぐるみ、九州にて 新道寺、部室 姫子「部長、これは譲れなかです」 哩「私も譲れん」 姫子「……」 哩「……」 ガチャ 煌「お疲れ様です。ってなんですかこのすばらくない雰囲気」 美子「お疲れー。どがんしたと?」 仁美「ん、2人が喧嘩?珍しかね」 姫子「お疲れ様です。喧嘩、じゃなかです」 哩「そうやね。ちょっとした話し合いたい」 仁美(それから喧嘩に発展しそうなんやって) 美子「じゃ、なんの話ね?」 哩「Kちゃんぬいぐるみっち知っとっか?」 仁美「最近流行っとるやつ?」 煌「私持ってますよ?この間姫子が部長と2人で1つ買ったって教室で言ってましたけど」 姫子「花田、私達が話し合いよる原因はそれ」 美子「Kちゃんぬいぐるみが?」 煌「2人で1つだから取り合いになった、というのは」 仁美「こん2人でそれは無かね」 姫子「……部長が」 煌「部長が?」 姫子「せっかくオプションの鎖と首輪も買ったのに、縛るより縛られる方がいいって言うから!」 美子「……はい?」 哩「やっぱり他人に使うよか自分に使った方がよかと!それにKちゃん縛るなとは言っとらん!」 仁美「……あー」 姫子「一緒に縛るの楽しみにしてたんですよ!?」 哩「それ最初に言っとらんやろが!!」 姫子「部長が悪かですよね!?」 哩「私は悪なかよね!?」 3人(……正直どうでもよか(いいです)) 煌「ここで言い合うのはすばらくないですよ?」 哩「それは分かっとる」 煌「それに、おふたりも喧嘩するのは嫌でしょう?」 姫子「そーやけど」 美子「なんか折中案ば考えるとか?」 哩「……そんなとこやね」 姫子「不満は残りますが、分かりました」 仁美「折中案……1日ごとにお互いの意見を聞くとか?」 哩「……現状そげんするしかなかかな」 姫子「うーん。折中案にするにしてももうちょい考えたかですね」 美子「もうひとつKちゃん買うんは?」 哩「姫子が両方縛りたがるだけやね」 姫子「う、その通りです」 煌「……思い付きましたよ」 哩「ほう、どげんかと?」 煌「まず、もう1体ぬいぐるみを買う」 姫子「それさっき先輩が言ったやつ」 煌「買うのはKちゃんじゃないですよ?」 哩「は?」 煌「部長のぬいぐるみです!」 美子「あっ」 仁美「なるほど」 姫子「そ、そがんことできっと?」 煌「Kちゃんはもともとただのサンプル。本来は『好きな人のぬいぐるみ』が買えるというサービスです」 煌「で、姫子は部長のぬいぐるみを縛ればいい。部長もご自分のぬいぐるみは嫌じゃないでしょう?」 姫子「花田……」 哩「花田……お前はやる奴だと思っとった」 美子(普通は嫌やけどね) 仁美(まー部長やし?) 煌「これで問題解決です」 煌(しかし、縛る縛らないに慣れるってどーなんでしょうね) 姫子「帰ったら早速頼みましょうね!」 哩「ああ。それまでは、さっきの1日ずつでよか?」 姫子「はい!!」 3人(ま、いいか) 新道寺のエース2人は、今日も仲良くやっている 姫子「ところで部長のぬいぐるみ来たらKちゃんはどうします?」 哩「じゃ、私のぬいぐるみがKちゃんに縛られてるっぽくしてみよか」 永水 小蒔「うーん……」 霞「……」ニコニコ 小蒔「ううーん……」 初美「えへへー」 小蒔「むむむ……」 春「……♪」ポリポリ 小蒔「…………」 巴「ふふっ」 小蒔「……みんな酷いです!!」 霞「あら?どうしたの?」 初美「別に何もしてないですよー?」 春「……ただみんな」ポリポリ 巴「Kちゃんぬいぐるみ持ってるだけですよ?」 小蒔「私だけ持ってないの、知ってるじゃないですか!?」 霞「そうだったかしら?」棒読み 初美「さー」棒読み 小蒔「酷いですー!!」 春「……ずっとKちゃん買うの迷ってる姫様が悪い」ポリポリ 巴「さすがにその通りとしか」 小蒔「ぐすん」 霞「それにしても、どうしてそこまで迷っているの」 初美「そうですよー?」 小蒔「だってみんなのがどれも良くって迷うんですよ」 巴「みんな違いますからねー」通常Kちゃん 春「……個性」浴衣Kちゃん 初美「ですよー」水着Kちゃん 霞「私のは手に入るか分からないわよ?」限定和服仕様Kちゃん 小蒔「うう、いっそ何か自分だけのものも考えているんですけど」 霞「思い付かないと」 小蒔「はい……」 初美「姫様が好きなようにすればいいですよー?」 春「……それが難しい」ポリポリ 巴「姫様の好きなものから持ってくるとかどうですか?」 小蒔「好きなものですか……みんなとかですね」 4人(姫様……)ジーン 小蒔「うーん、巫女服でしょうか……」 霞「さすがにKちゃんは男の子だから巫女服はやめた方がいいわね」 巴(なんか似合いそうだけど) 初美「いっそ神様って注文したらどうですかー?」 春「……キリストとかになったらどうするの?」ポリポリ 初美「……人にしましょー」 小蒔「うーん」 巴「姫様。あんまり真面目に考えず、直感とかで決めたらどうですか?」 小蒔「直感ですか?」 巴「はい。こういうことぐらい、気楽にいきましょう?」 霞「そうね。あんまり小蒔ちゃんを悩ませるのもね」 初美「ですー」 春「……」ポリポリ 小蒔「じゃあ、私は」 数日後 小蒔「届きました!」 霞「良かったわね」 小蒔「はい!」 初美「でも、なんで宮司の格好にしたんですかー?」 小蒔「私が巫女だからです!」 霞「?」 小蒔「その、こういう男の人と会ってみたいなって思って」 初美「え」 小蒔「あ、巴ちゃんと春ちゃんにも見せてきますね!」 霞「……初美ちゃん」 初美「……なんですかー?」 霞「なんか、すごいフラグっぽいものが立った気がするのだけど」 初美「お祓いでなんとかなりますかねー」 Kちゃんぬいぐるみ、長野にて 京太郎も合同合宿に参加しました 全国大会前くらいの時間です Kちゃんぬいぐるみが全国で流行り始めたその時長野では 風越 美穂子「……ネット麻雀って難しいわ」 池田「ははは」 美穂子「画面が真っ暗のままなんて……どう打てばいいのかしら」 池田(キャプテン……やっぱりパソコンは無理だし。そもそもそれまだ起動してないし) 未春「キャプテン、私がやりますから卓にどうぞ」 美穂子「そう?じゃ、頼んだわね」 池田「みはるんナイスだし」 未春「さすがにね……さてネット麻雀はっと。アレ?なんだこのサイト?」 池田「ん?……なんだこの少女趣味」 未春「あはは。何々、最近女子高生雀士に人気の商品?」 池田「どれどれ」 未春「ぬいぐるみ?ってこれ……」 池田「見たことあるっていうか……」 美穂子「2人ともどうかした……の……」 鶴賀 桃子「部室到着っす、って一番乗りっすか」 桃子「待ってる間にネットでもっと」 桃子「何かないっすかね~」 桃子「お?女子高生雀士に人気の商品?」 桃子「……え?」 ゆみ「ん?モモだけか?」 桃子「せ、先輩!これ見てほしいっす!」 ゆみ「なんだ?とりあえず見るから落ちつ……なんだこれは?」 龍門渕 ハギヨシ「~♪」 純「なあ、最近ハギヨシ機嫌良くないか?」 一「最近趣味が見つかったらしいよ?まあいいことじゃない?」 純「ふーん。趣味ねえ」 透華「ハギヨシはいますか?」 ハギヨシ「ここに」 透華「ちょっと細かい注文が入ったと智紀が」 ハギヨシ「はっ」シュタッ 純「透華、注文ってなんだ?」 透華「ああ、ハギヨシの趣味のことですわ」 一「趣味で注文?なにそれ?」 透華「ああ、2人は知りませんでしたわね。なら、見た方が早いですわ」 透華「これです」 純「……は?」 一「……これってたしか清澄の」 和自宅 和「ふう、今日はこんなものですか」 和「あら?このサイトはなんでしょうか?」 和「……アリですね」 和「……え!?須賀君!?」 久自宅 久「あら、ゆみじゃないどうしたの?」電話中 久「は?今から言うサイトを見ろ?」 久「……意外と少女趣味なの?」 久「……え?何これ?」 久「は?私は知らないわよ!?いや、これはほんとに知らなかったから!!」 清澄 久「集まってるわね?」 和「須賀君がまだです」 咲「あ、なんか用事で遅れるって言ってましたよ」 久「そっか……こういうときに限って」 まこ「なんじゃ?京太郎に用でもあったか?」 久「ある、といえばあるわ。聞きたいことが」 和「部長も?」 優希「おや、和ちゃんが京太郎に用なんて珍しいじぇ」 和「ええ、ちょっと聞かないといけないことがありまして」 久「ひょっとして、和もあのサイトを?」 和「!まさか部長が!?」 久「私は昨日知ったからね?」 まこ「一体何のことじゃ?」 京太郎「うーっす、遅れましたー」 久・和「須賀くん!!」 京太郎「うおっ!部長に和?」 久・和「Kちゃんぬいぐるみって何!?」 優希・まこ「?」 咲「……え?」 和「このサイトです」 まこ「また少女趣味なとこじゃの」 久「和、そこよ」 和「はい」カチッ 優希「!?きょ、京太郎のぬいぐるみ!?」 まこ「こりゃあ一体……」 咲「…………」 京太郎「あー、これですか」 久「ええ、これはいったい何なのか、教えてもらうわよ?」 京太郎「これはですね…」 説明後 京太郎「…というわけでして、ここまで人気になってるのは俺も初めて知りました」 優希「京太郎のぬいぐるみ……」 まこ「なんとまあ面倒なことになっとるのぅ」 久「昨日ゆみから電話で聞いて知ったけど、これはね」 京太郎「一応許可は出してますし、目線は隠してありますし」 和「こんなの分かる人にはすぐわかりますよ?」 京太郎「ひょっとしてこれが原因で大会に出られなかったり?」 久「それは無いと思うけど……別に悪いことしたわけじゃないし、怒ったりはしないけど、不特定多数の人に知られるのだから気をつけておきなさいよ?」 京太郎「はい……でもなんでこんな人気に」 咲「だって、結構いいもん」 優希「咲ちゃん?」 咲「作りは細かいのにしっかりしてるし、かわいくてかっこいいし、人気でるよ。ふん」プイ まこ「咲、持っとるんか?」 咲「京ちゃん自身から貰いました」 京太郎「そういえば第一号を貰ったんで咲にやったな」 咲「……私だけの京ちゃんだったのに」 和「咲さん?」 咲「京ちゃんなんか知らないもん」プイ 久「自分だけだと思ったらみんな持ってるから拗ねたってとこね」 まこ「全国の女子高生雀士に人気の商品、ときたからな」 京太郎「俺なんかのぬいぐるみがなんで?」 まこ「この男は……」 優希「なーなー。これ、どうやって注文するんだじょ?」 咲「!?」 和「優希、これはですね。あら、売り切れですね」 久「本当に人気なのね。昨日注文した時はあったのに」 和「部長も?」 まこ「……"も"?」 和「……あ」 久「……好奇心よ好奇心!お試しってやつ?」 和「そ、そうですよ!」 優希「好奇心なら譲ってほしいじぇ」 久「駄目よ!」 和「駄目です!」 咲「部長も和ちゃんも……」 京太郎「なんなんだ?」 まこ「お前さんは……鈍いの」 優希「……私も欲しいじぇ」 そして全国大会へ おまけ 届いた人達 池田「おお~見事だし!」 未春「すごい出来がいいね!」 美穂子「これを上埜さんで頼めば…」 桃子「届いたっすよ~ステルス仕様!」 ゆみ「なんだそれは……」 桃子「私と一緒に消えることができるっす」スゥ~ ゆみ「ぬいぐるみも消えた!?」 桃子「先輩のは、和服?」 ゆみ「こう、凛々しい感じが良かったからな」 純「しっかしこれまた上手くできてるな」 透華「ハギヨシですわよ?これくらい当然ですわ」 一「なんか、ボクも欲しいかな……」 ハギヨシ「こちら、マジシャン仕様となっております」シュバッ ハギヨシ「それと皆さん用に執事仕様をご用意しましたので」シュババッ 一「い、いつのまに……あ、でもこれいいね」 純「お、おう。俺に似合わないが……いいな」 透華「パーフェクトですわハギヨシ」 ハギヨシ「光栄の極み」 和「……普段は私の胸ばかり見てますよね」 和「……えいっ」ぬいぐるみにでこぴん 和「……ふふふっ。胸以外も、ちゃんと見てくださいね?」 久「ごめんね、雑用ばっかりまかせて」 久「指導もちゃんとしてあげられないし、酷い先輩よね」 久「……大会が終わったら、必ず指導してあげるわ」ぬいぐるみ抱きしめ 久「……おやすみ」 おまけその2 はやり「…………」 健夜「…………」カチッ 『Kちゃんぬいぐるみが今大人気!』 『個人サイトの手作り品?高クオリティ』 『Kちゃんぬいぐるみ大阪限定仕様発売決定!』 健夜「ネットでもすごい評判だね、Kちゃんぬいぐるみ」 はやり「…………」 健夜「うん、一体一体が手作りだって」 はやり「…………」 健夜「だからさ……諦めない?コレ」 『牌のお姉さん☆はやりんぬいぐるみ 好評発売中!』 はやり「……売れるもん」 健夜「パクリ扱いされてるけど……」 はやり「……今だけだもん」 健夜「でもさ、この在庫の山はちょっと……」 はやりんぬいぐるみ入り段ボール×10 はやり「……なんで!なんでただの高校生のぬいぐるみが売れて私のが売れないの!!」 はやり「おまけにパクリ扱いって、私のはKちゃんの前に発売予告してたわー!!」 健夜「お、落ち着いて」 はやり「こんなのがさ!」Kちゃんぬいぐるみ取りだす 健夜「あ、持ってるんだ」 はやり「なんで!!」叩きつけ……ない 健夜「……どしたの?」 はやり「……かわいい」 健夜「はい?」 はやり「……可愛いし、かっこいい。だから八つ当たりできない」 はやり「ちくしょー!!!」 次話 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3351.html
http //yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1254535905/ 俺「SOGAの麻雀ゲーイベントの咲カップで優勝してしまった」 俺「なんか...優勝したはいいが貰えたのは"称号"というデータカード内でしか意味のないモノ...」 俺「はあ、時間と資金を費やした割りに見返りが少ないなあ」 俺「……」チラ 女子高生「キャッキャッ」 俺「何年もゲーセンに通っているから彼女も出来ず、ましてや就職にも着けていない...」 男「咲カップ優勝者の○○様ですね」 俺「?はあ、どちら様ですか?」 男「いやいやSOGAの咲カップ優勝商品の副賞を届けるのが遅れてしまいました」 俺「副賞?なにかくれるんですか?」 男「では、お楽しみになってください。それと注意事項が一つ、向こうで寿命以外の理由で死んでしまっ...」 俺「ん?はあはいはいなんですかその夢物がたr」ギュイイイイイイインッッッ 俺「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 ???『大丈夫?京ちゃん』 京太郎「うっ...」 ???『急に倒れてどうしようかと思っちゃったけど...どう?頭痛くない?』 京太郎「は...?」 京太郎「ここは...」 咲『七久保駅...だけど、本当に大丈夫?京ちゃん』 京太郎「長野?なんで俺が長野に...ていうか」チラ 咲「京ちゃんもしかして記憶喪s」 京太郎「うおぉぉぉぉおぉぉぉ!!!」 咲「!」ビクッ 京太郎「咲!超咲!魔王様!!!!!」 咲「京ちゃん、やっぱり...」グス 京太郎「はあはぁ」 咲「具合...大丈夫?」 京太郎(なるほど俺の目の前に咲がいていつの間にか長野県にいた) 京太郎(それがあの男が言っていた副賞ってやつでじゃあその副賞はどこまでが副賞なんだ?咲と会うだけか?) 京太郎(それとも一定時間咲の世界を体験出来るだけいやしかし寿命云々言っていたわけだからそれに) 咲「京ちゃん!」 京太郎「っ!あ、ああ。大丈夫だよ咲。俺は至って正常だよ」ニコ 京太郎「……で、俺は京太郎なわけだな?」 咲「当たり前だよ...本当に平気なの?」 京太郎「平気平気!……で、時期はいつ?一話?県予選前?それともアニメ最終回後?もちろん合宿のとこな」 咲「いち...?京ちゃん、今は県予選の団体戦後だけど...やっぱりどこか変だよぅ」 京太郎「咲!」 咲「?」 京太郎「好きだ!」 咲「!」ボッ 京太郎「よしまずは清澄高校だな、じゃあ咲!先に戻ってるから!」 咲「う、うんばいばい」テレ 【清澄高校】 京太郎「来た...来てしまった」 京太郎「土地勘が無いから交番で場所を聞いたけど、考えたら自分の通ってる高校の場所がわからないとか白恥もいいとこ」 京太郎「まずは...というか真っ先に行くべきは麻雀部!」 京太郎「のどっちに部長...タコスとワカメはまあどうでもいい」 京太郎「いざっ麻雀b」 ???「どっせぇーい!」 ドガーン!! 京太郎「痛ぁ!つぅかいきなり人の背中を蹴る人物なんて作中に一人しかいねえ!!!」 京太郎「くぉらタコス!」 優希「おはようだじぇー京太郎!」 京太郎「この野郎悪びれもせず...いや、これは明らかにリア充。京太郎、不憫だがやっぱ明らかに勝ち組だなお前」 優希「よーっし!部室までひとっとびだじぇー!」 京太郎「ちょっ肩に乗るな肩に!」 京太郎「あぁ首の圧迫感が最高だじぇ...」 優希「んー?どうした京太郎?」 京太郎「太ももの肉感が気持ちいいって言ってるんだ」 優希「なっ!...そうか!ようやくワタシの魅力に気付いたのか京太郎!」 京太郎「はいっ!太ももがやーかいですっ!」 優希「うーんなんか調子が狂うじぇー」 京太郎「ようやく部室に着いたな...」ゼェ 優希「これくらいでへたるなんてだらしない男だな京太郎!」 京太郎「うるせえよ...」 優希「うー、太ももが京太郎の手汗でベトベトだじぇ」 京太郎「ハァ、うるせえから、すこし黙って...」ゼェハァ 優希「よーし、皆おはようだじぇー!」 バンッ ???「こら優希、部室に入る時は静かにって言ってるでしょ」 優希「うっ...次からは気をつけるじぇ...」 ???「まったく、ソレを聞くのも何回目かしら」 京太郎「おぉ...」 久「アラ、おはよう須賀くん」 京太郎「うぉぉぉぉぉぉ!」バッ 京太郎「俺の女になれ!」キュイイイイン 久「んー?」 京太郎「ハッ」 京太郎「くそっアニメを間違えてしまった!」 京太郎「おはよざーっす部長!」 部長「おはよう今日も元気ね」 京太郎(時間制限があるならもたもたしてられんな) 京太郎「フラグの立て方を普段から確認してれば良かった...」 咲「おはようございます」 久「おはよう咲、じゃあ面子も揃ったみたいだし早速始めましょうか」ニコ 【結果】 久+12 優+7 咲+6 京-25 京太郎「俺は全国優勝者だぞ...」 久「負けてるのに終盤ベタオリってどういうことかしら」 京太郎(安パイだと思っても部長がアガるし、前半タコス強ぇし勝てねえ...) 咲「でも、京ちゃん強くなりましたよね」 京太郎「そうか?」 優希「少し驚いたくらいだじぇ」 久「まあ、いつもより考えれていたわね」 京太郎「ありがとうございます!須賀京太郎一生の幸せもんです!!!」 京太郎「いやー誉められるって嬉しいもんだな」ニコニコ 久「それじゃあ約束通り買い出しお願いね」ニコ 京太郎「負けたら買い出しでしたね...」 久「そうそう、買い出しついでに龍門渕に寄ってほしいの」 京太郎「どうしてですか」 久「個人戦後に他校が集まって合宿をしようって話になってね」 京太郎「合宿すか」 京太郎(たしかアニメでは龍門渕から一人も個人戦入賞者が出なかったんだよな) 京太郎(まあ知らねえやどうせ俺もいけねえし適当に済ませるか) 【ショッピングモール】 京太郎「買い出し買い出し...って、なんで普通に京太郎やってるんだ」 京太郎「元の世界には未練ないが、もし戻れるなら色々やって戻りたいし、そもそも戻れないならちょっとした恐怖じゃないだろうか」 京太郎「戻れないなら一生、須賀京太郎として生きるわけなんだから大人しく楽しんだ方が間違いはないし」ブツブツ ドンッ 京太郎「痛っ」 ???「すまない、話に集中してしまい不注意だった」 京太郎「いや...てかこの人一人じゃねえか、一体誰と話...」 京太郎「あっ」 京太郎「おいおい加治木ユミさんじゃないっすかー!」 加治木「なんだ、どこかで会っ...いや、なに?そうだ初対面だ。...本当に知らないんだ誤解しないでほしい」 京太郎「おいおい独り言ってレベルじゃねえぞ...」 京太郎(ここは離れるが吉、だな) 京太郎「それじゃあ僕はこの辺で」ペコ 加治木「ん?ああそれじゃあ...だから違うと言ってi」 京太郎「やべえガチだアレ」 ――……10分後 京太郎「桃ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 京太郎「オワタ...」 京太郎「なにが"離れるが吉、だな"だよ俺のアホ!」 京太郎「しかしステルスをこの身で体感出来たんだ、それだけで十分じゃないか」 京太郎「俺の咲ラン上位に会えただけでもOKとしようよ」 京太郎「落ち込んだ勢いで縞パンスクミズ白ニーソも買ったけどあいつら着てくれるかな」 京太郎「それは置いておくとして次は龍門渕か...痩せキャラはそんなに好きじゃないんだが顔見せくらいしておこうかな」 【龍門渕高校】 京太郎「でかい...」 京太郎「土曜だってのに結構生徒がいるなあ」 京太郎「龍門渕もウチみたいに部活で集まってくれてると良いんだが」 京太郎「しかしいきなり他校の生徒が入れるのだろうか、清澄の制服を着てるし...」 京太郎「変に怪しまれないよう龍門渕のメンバーが通るのを待つか」キョロキョロ 警備員『えー校門付近不審者発見』 透華「……で、どうして私が警備室に?」 警備員「この男が"龍門渕透華の知り合いである"と申したためお呼びした次第です」 透華「はぁ...」チラ 京太郎「 」ニコッ 透華「知りませんわ、警察にでも付き出しておやりなさい」 京太郎「ちょっ!待ってくれ透華!」 警備員「おい動くな!」 京太郎「俺は原村和から伝言を預かって来てるんだ!」 透華「原村和から?」ピク 京太郎「そうだ。伝言を伝えに来た俺にこんな仕打ちひでえよ!!!」 透華「……警備員、その男を離しなさい」 透華「いいでしょう、話は麻雀部部室で聞きますわ」 透華「なるほど、原村和が"私と"是非合宿を行いたいと」 京太郎「その通りです」 透華「分かりましたわ、合宿の件お引き受けしますと伝えてくださいまし」 京太郎「はいっ!」 透華「……」 京太郎「……」 透華「……いつまでいらっしゃるおつもり?」 京太郎「いやー...もう少しお話がしたいなぁと」 透華「もう貴方と話す事なんてありませんでしてよ」 京太郎「そう言わず...」 純「良いじゃねえか、丁度ハジメ達がいなくて暇なんだ」 透華「……私、少し席を外させてもらいますわ」 バタン 京太郎(実際龍門渕透華は咲ランでも下位のキャラ、帰っても問題はない) ガチャ 一「あれ、透華は?」 純「ああ、ついさっき出ていった」 一「ふーん...そこの人は?」 純「変質者」 京太郎「おいおいノッポさんお願いしますよ」 純「なにがだよ」 一「透華が帰ってこないと卓も囲めないし...」 純「ハジメ、そこの兄さんがお話をしたいんだとさ」 一「はあ...なにをお話します?」 京太郎「そうだなあじゃあ鹿児島の神代について」 一「鹿児島の神代ですか...」 京太郎「全国にいった時の参考にしたいんで」 一「なるほど、さすがマネージャーさん熱心ですね」 京太郎「いや一応選手なんだけど」 一「神代は...字一色をアガります。それも一局に何度もね」 京太郎「ふむふむ」 一「――…とまあこれくらいかな」 京太郎「なるほど参考になりました!」 京太郎(戻ったら暴露で神扱いだなwww) 一「じゃあ京太郎さんは麻雀を始めて間もないんですね」 京太郎「そうなんですよ...」 純「なに仲良くなってんだよ」 京太郎(あぁ女の子と話すのがこんなに楽しいなんて) 京太郎(でもこいつ百合属性持ちだよな) 京太郎(なに話しても楽しそうに聞いてくれるし) 京太郎(だけどフラグ立たないとか) 一「それでですね」 京太郎「もういいや」 一「?」 京太郎「チェンジで」 智紀(チェンジとかwwwwwバロスwwwww) 智紀「おはよう」 一「あっともきーおはよう」 純「うっす」 京太郎(眼鏡属性の無い俺がワカメの次に下位なキャラキター) 京太郎「はじめまして『変質者』です」 純「ハッハッハ」ゲラゲラ 京太郎(なにくだらないことしてんだよ) 智紀(リア充乙) 純「おっ面子揃ったんじゃないか」 一「そうみたいだね」 智紀「それじゃあはじめる」 京太郎「俺も入ってるんですね」 京太郎(ともきー想像通り大人しくてワロタ) 智紀(こいつら強えんだよwww初心者っぽいやついるし俺負け試合確定ワロチwwwwwもはや消化試合の様相wwwwww) 【結果】 純+22 一+ 6 智- 8 京-20 純「弱えなマネージャー」 京太郎「マネージャーじゃねえよ」 一「京太郎さんやっぱりマネージャーなんじゃ」 京太郎「ほっとけ」 智紀(この弱さww横浜乙wwww) 京太郎「もう帰るわ」ガタ 純「もうそんな時間か」 京太郎「楽しかったわ衣によろしくな」 純「じゃあアド交換しようぜホラ赤外線でちゃっちゃとな」 京太郎「……」 純「ちゃんと三人の入れといたから暇な時にでもメール寄越せ」 一「じゃあ、またね」 智紀「……また」 智紀(リア充の行動力パネェww) 京太郎「ああ、またな」ガチャ 京太郎「……」ジーン 京太郎「あ、涙出てきた...」 京太郎「いやー彼女いたためしも無いし、イジメ受けてたくらいの俺がこんな楽しい暮らしをおくれるとは」 京太郎「……なんか死にたくなってきたな」 京太郎「……」ブンブン 京太郎「いよーっし!頑張るぜ俺は!!!目標は女の子と...どうしよう」 京太郎「セクースはチョモランマレベルで高レベルすぎるし」 京太郎「中学生から女の子と話してないからよくわかんねーや!」 京太郎「この町にはイジメっ子もいないしいいトコだなあ」 京太郎「……俺って本当駄目な人生だったな...」 京太郎「なんで咲の世界にいるのにこんな辛い事思いだしてるんだろ」 京太郎「ダメなやつはなにやってもダメなんだよ」 男「お目覚めになられましたか?」 俺「ハッ?」 男「記録は...半年と2週間でしたね」 俺「俺は...」 男「死因は自殺です」 男「いや、中々頑張ったと思います。現にSEXまでいったじゃないですか」 男「機会があればまたお呼びいたしますよ」 男「ちなみに今までチャレンジした人数は貴方を含めて55人です」 男「ここまで進めたのは貴方だけですよ?貴方以外のチャレンジャーは20人は咲-saki-のキャラと関係ない人物と結婚をし、寿命を全う」 男「他の33人は貴方同様自殺です」 男「ですが先ほども申した通り咲-saki-のキャラとSEXまでいったのは貴方だけです」 男「貧乳は嫌いだと申されていたはずですが...フフフ」 男「自殺の理由はs」 俺「SEXSEXうるせえんだよ!!!!!!」 男「……では、またSOGAの咲-saki-カップへの参加お待ちしています...」 俺「そうか...やっぱり死んだのか俺は...」 俺「やっぱりダメなやつはなにやってもダ...いや、ロリひんぬー最高ぉぉぉぉぉ!!!」 俺「よし、第二回の開催に向けてMJをやりまくるぞ!」 男『S○GA、MJ咲-saki-カップ上位陣には副賞が与えられます。皆々様奮ってご参加お願いします。 10月3日現在、第二回開催の日取りは未発表』 了 ???「あいつ...死んだのかな」 ???「失踪してから2週間、ホームに飛び込むのを見たって人もいるけど死体は見つかってない」 ???「……」グス 加治木「おや...」 ???「……」 加治木「君も献花を?...そうか、まだ忘れるなんて無理な話だよな」 ???「放っておいて」 加治木「おや、いつもとは話し方が違うじゃないか。もっと明るいほうが」 スッ 桃『先輩』 加治木「桃」 桃「そうっとしておいた方が良いっすよ」 加治木「……では、私はこの辺で帰るよ。……こう言っては残酷かもしれないが――生きているといいな」 ???「……ぁりが、とぅ」グスッ アイツは今、どこにいるんだろう。天国にいるのだろうか――生きているのだろうか。 俺「……」ジャラジャラ 俺「ゲーセンも飽きてきたなぁ」 俺「……クリアしてないせいかわからないが、向こうの世界の事をよく覚えていない」 俺「咲カップも今は開催してないし...どうやって戻ろうか」 男『こんにちわ』ヌッ 俺「ひっ!」 俺「ってお前...貴方は」 男「突然すみません、こっちで貴方に再びチャンスを与える話が上がっていまして」 俺「ま...本当か!?」 男「ぬか喜びにならないように、決まってから報告に来ようと思ってましたが」 俺「で、……いつ行けるんですか?」 男「早ければ明日です」 俺「そうか...そうか」 男「早い方が良いんですよ」 男「貴方がいた世界は、貴方が戻ってきた時点でリアルタイムで時間が進んでいます」 俺「ということは...」 男「まあ向こうでは2週間立っているという事です。相手の子も心変わりして他の男性と付き合っているかもしれませんね」 俺「そんな」 俺「待てよ」 俺「俺はどの子と仲良くなったんだ」 俺「この前の話を聞くにひんぬーキャラである事は推測できるんだが」 男「時間もありませんしその話は」 俺「早くても明日なんだろう!教えてくれよ!今咲ラントップは衣たんなんだが?」 男「……ひどい男ですよ貴方は」 俺「oh...違うのか?おい違うのか??」 男「……」 俺「遠くを見るなぁぁぁぁぁぁ」 男「冗談はこの辺にして、私も忙しい身なので失礼させてもらいます」サッ 俺「速っ...リアルハギヨシかよ」 客A『おいなんか咲-saki-の世界に行ったとかいうやつが来てるみたいだぜ!』 客B『はいはい結局関係ない他のキャラと結婚したってやつなww』 俺「……」 ピザ『だからよーマジで無理ゲーwww』 客A「そんなに無理なのか?」 ピザ「いや存在自体は京ちゃん(笑)なんだけど相手は普通の女の子なわけだからもう無理でしたww」 ピザ「俺がまともに話せるわけないしwww少し触っただけで変態扱いだしwwww」 客B「でも80の大往生だったんだろ?」 ピザ「話によると上位者は大体行けたらしいから他のやつらに聞けww」 ピザ「まあこれも聞いた話だけど俺を含めて26人が挑戦して咲-saki-のキャラを落としたやつゼロwwwwwはい無理ゲー」 ピザ「しかも向こうで自殺するやつもいたって話だしww」 ピザ「はじめにキャプテンの胸触って変態扱い→総スカンとかヒドスwwwww」 客A「向こうの奥さんとの記憶はあるんだ?」 ピザ「寿命エンドはクリアだから一応覚えてるが、咲-saki-キャラとのトゥルーエンドの場合は行ったり来たり出来るようになるってよ」 客B「早く第二回開催しろよSOGAw」 俺「あの野郎、俺にはなにも話してねえんじゃねえか」 【当日】 俺「で、結局あれから2週間で結果1ヶ月離れた件について」 男「まあ、これでも十分早くした方なので」 俺「そうか...」 俺「で、向こうに戻ったら記憶も元に?」 男「今のまま、記憶は戻りません」 俺「じゃあ他のキャラを好きになったら」 男「それはそれで特に問題のある事とも思えませんし」 男「相手から言ってくるんじゃないでしょうか?」 俺「そうか、向こうから近寄ってきてくれるよな」 俺「お願いします...」 ギュイイイイイイイイイインッッッ 京太郎「うーん...」 ???『……』タラ 京太郎「ここは...」 ???『……だしっ』 京太郎「うわぁっお前は...」 池田「須賀だしっ!」 池田「コーチ...いやキャプテン呼んでくるしっ!」ダダッ 京太郎「コーチよりキャプテンが先とか...」 女子A「須賀くん!」 女子B「なんで須賀さんが!?」 京太郎「えっと...どちら様で?」 女子A B「!」 女子A B「まさか記憶喪失」 福路「京太郎さん!」 京太郎「美穂子ちゃ」 女子A「キャプテン!須賀くん記憶喪失で...」グス 京太郎「いやいや」 福路「そう...でも生きて戻ってくれて嬉しいわ」グス 池田「キャプテンが泣くからアタシまで...うえーん」 京太郎「ついていけねえ...」 【風越学園】 京太郎(まあ記憶もないわけだし...) 福路「よかった、本当によかった」 京太郎(今はこの状況よりも個人戦、果ては全国大会の結果が気になるんだ) 京太郎「あのー...福路さん?」 福路「本当に記憶を失ってしまわれたんですね」シク 池田「でも名前は覚えているみたいですよ」 ツンツン 京太郎「つつくな池田ァァァ!」 池田「ひっ」ビクッ 福路「京太郎さんっ」 京太郎「すみません...」 京太郎(一度でいいからやってみたかったんだよな"池田ァァァ!") 福路「ソレ、やめてくださいって言ったはずで...でも記憶を失くされたんですから怒っても京太郎に悪いですよね」シクシク 京太郎(俺、やっぱりやってたのかコレ...) ピーポーピーポー…… 京太郎「んっ?」 福路「救急車です。本当は発見した場所からも動かしてはいけなかったんですが」 京太郎(そうだよな、1ヶ月行方不明だったら心配もされるよな) 【病院・病室】 京太郎「とりあえず絶対安静、と」 バタンッ! 久「須賀くん!」 京太郎「部長...それに清澄の皆」 バッ 咲「京ちゃんっ!」 優希「京太郎!!!」 まこ「二人とも、嬉しいのはわかるか、相手は病人じゃけえ抱きつくのはよしぃ」 部長「お医者様の話だと健康そのものらしいけどね」 京太郎「皆...こんなに心配してくれてありがとう」 京太郎(はじめて会ったのにはじめてな気がしないなあ) 京太郎「……で、いきなりで悪いんですけど」 一同「?」 京太郎「俺の彼女って誰ですか?」 まこ「ぶっ」 久「フフフ、あーおかしいわ。さすが須賀くんね」 和「はじめての会話がそれですか」フフ 京太郎「あれー...どういう意味でしょうかその反応は」 優希「京太郎に彼女なんてありえないじぇ~」 咲「久しぶりなのに京ちゃんったら」 京太郎(この中にはいないのか...まあウケてるみたいだし今はこれでいいか) 京太郎「悪いないきなりこんな事聞いて」 入院生活は3日で終わったがその後も警察やらの事情聴取でしばらくはまともに家を出る事が出来なかった。 そして俺は家の中、自室のベッドの上で携帯とにらめっこをしていた。 京太郎「うーむ、番号リストを見るに大分他校の生徒とも繋がりがあったらしい」 京太郎「龍門渕メンバーのアドなんてどうやって手に入れたんだ俺...きっと何ヶ月もかかったに違いない」 京太郎「履歴は...おわっ」 京太郎「咲とタコスはわかるとして龍門渕のハジメにみはるん、文堂さんまで」 京太郎「おいおいどんだけだよ...」 京太郎「あれだな、なにが恐いって失踪前にやり取りしたメールが全部消されてるところだよな...」 京太郎「とりあえず明日から外を歩いて色々情報を入れていくか」 【ショッピングモール】 京太郎「なんとなくこっちから連絡もしづらいし、足で情報を確保するのは昔からの常識だろう」 ドンッ 京太郎「痛っ」 加治木「すまない、話に夢中‥お前は」 京太郎「おおー!加治木さんじゃないですか!」 加治木「清澄の須賀...そうか、もう出歩いて大丈夫だったんだな」 京太郎「いやーお騒がせしてすみません...そういえば加治木さんとはアドレス交換してませんでしたね」 加治木「あ、ああ」 京太郎「交換しましょうよ!」 加治木「……問題はないが...まて、他意はない。アドレスの交換くらい...それはお前の推測...」 京太郎「加治木さん?」 加治木「ちょっと待ってくれ...だからな、なんで須賀と会うとお前はいつも...」 京太郎(あぁ可哀想な人なんですね加治木先輩...) 京太郎「いやいいです、またの機会にでも」 加治木「そ...そうか」 京太郎「じゃあ僕はこれで」 加治木「またな京太郎」 ――…10病後 京太郎「おおっと桃桃ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」 桃「!」ビクッ 京太郎「いやーなんかビビッときたよ今!」 桃「……っス」 京太郎「おぉまだ見えねぇ声は聞こえるのに!不思議!」 加治木「……なんだ桃、お前は名前で呼ばれるくらい仲が良いみたいじゃないか」 桃「ちがうっス先輩!この人とはなにも」 加治木「……なあ京太郎、記憶を無くしているみたいだから言っておくが君は私をユミと呼んでいたぞ」 京太郎「マジっすか!やるな俺」 ???『ワッハッハ珍しいやつがいるなー』 京太郎「ワハハさん!」 蒲原「おっなんだいつも通りじゃないかー」 加治木「いや、一応これでも記憶を無くしているらしい」 京太郎「ワハハさん!」 蒲原「ワッハッハなんだ京太郎」 京太郎「俺って誰かと付き合ってたりしました?」 蒲原「ブッ」 蒲原「ワッハッハ面白い事言うなーお前は」 京太郎「またその反応ですか...」 加治木「京太郎」 京太郎「はい?」 加治木「誰も名乗り出なかったのか?」 京太郎「彼女...ですか?いえ」 加治木「……」 桃「先輩?」 加治木「ふむ、蒲原。私達も早くカラオケに行こう」 蒲原「おいおい待てよユミちん~」 京太郎「?」 京太郎「今日は土曜だったな」 京太郎「……誰かに電話してみるか...」 京太郎「こうしてみると見事に女友達のアドレス数が男友達と同じくらいあるって考えると凄いな...」 京太郎「じゃあどうしようか...衣たんのアドレスがない以上...」 ピッ プルルルルルプルルルルル ピッ 一「は、はい国広です」 京太郎「ええ...と国広さん?」 一「……はい」 京太郎「あの...携帯に結構履歴が残っていたのでそれなりに交友があったのかと思って電話したんですけど」 一「……はい、間違っていません」 京太郎「よかった!」 一「あの、電話先で話すのもなんなのでお合いしませんか?」 京太郎「!はっはい」 京太郎「では...はい、11時に駅前の...はい」 京太郎「失礼しまーす」 ピッ 京太郎「完璧営業先相手のトークだったぞ今の会話」 京太郎「会って衣の番号を聞くか!」 プルルルルルプルルルルル 京太郎「おっ」 ピッ 京太郎「もしもし?」 京太郎「ああお前か」 京太郎「んっ?なにがだよ」 京太郎「はあ」 京太郎「11時から予定があるな」 京太郎「お前も来るか?」 京太郎「ええと龍門渕の国h」 ブツ 京太郎「あっ」 京太郎「切りやがった...」 京太郎「まあいいか今度あった時にでも謝るなりすれば」 京太郎「出掛ける服装は……まあ別に意識するような相手でもないし普通でいいだろ普通で」 京太郎「おはようっ」 一「ふふ、時間的にはこんにちわ、だね」 一「ねえ須賀くん」 京太郎「んっ?」 一「記憶ってどこから無くしてるの?」 京太郎「ええ...と、君とアドレスを交換した記憶は忘れているかな」 一「初めて会った日の事を忘れているのか...」 京太郎「初めて会ったその日にアド交換したのか?すげえな」 一「まあ純のおかげだったりするんだけどね」 一「じゃあ改めて、」コホン 一「はじめまして須賀くん」 京太郎「はじめまして」 一「アタシは京太郎って呼ぶし君もハジメって呼んでほしいな」 京太郎「わかったよ...ハジメ」 一「うんっ」 京太郎(百合キャラと仲良くなってもあまり意味ない気がするなぁ) 一「じゃあどこにいく?」 京太郎「そうだな...って、透華は一緒じゃなくていいのか?」 一「……透華がいた方がいい?」 京太郎「いや意外だなぁと思ってさ、ハジメって透華好きだろ?ガチで」 一「!」 京太郎(初めて会った時の記憶もないのにこれだけの事を言って大丈夫なのか) 京太郎「ハジメとは仲が良い友達だって思って聞くけど、男と女どっちが好き?」 一「う...ぁ」 京太郎「"どっちも"は困るな」 一「……オト...」 京太郎「いいや無理しなくても!」 一「京太郎...」 京太郎「俺達は親友だろ?友達がレズビアンだろうが関係ないぜ!」グッ ガッシャーンガラガラ... 京太郎「さあ遊びに行くか!」 京太郎「ん?おいハジメ!はやく来いよ!」ニコッ 一「なんでこの場面で過去最高の笑顔作れるかな...」 京太郎「カラオケでもボーリングでもどんときなさいだぜ!」 一「あー...うん、やっぱりいいな」 一「今いくよ!」 京太郎「来いよ親友!後で天江の番号教えてくれよな!」 ガッシャーンガラガラ... 京太郎「さっきからなにかが折れる音が聞こえるなあ...」 京太郎「いやー楽しかったー!」 一「もうこんな時間...」 京太郎「そうだな、少し名残惜しいな...どうだ?家に泊まっていくか!」 一「えっ?それって...」 京太郎「ダメか?」 一「……」ブンブン 京太郎「良いのか?」 一「……」コクッ 京太郎「いぃよっし!今日はスマブラ大会だー!!!」 京太郎「そうと決まれば人数集めないと...あーそうかお互い知り合いが良いよな!」 京太郎清澄鶴賀風越は俺に任せてくれっ龍門渕はそっちに任せた!」 一「……」ハァ 一「そんなに人数集めるなら京太郎の部屋じゃ少し狭いと思うよ、透華に頼んでウチでやろうよ」 京太郎「おぅ!よく気が利くな!じゃあそっちの手筈も頼んだぜ!」 京太郎「また後でな~」ダダッ 一「……ふー」 一「かわいいなまったく」 【鶴賀】 津山「合宿とは久しぶりですね」 妹尾「半年ぶりです~」 桃「どうしたっスか先輩?」 加治木「いや...麻雀ならOBとしても喜んで参加するのだが、些か私はゲームというものに疎くてな」 蒲原「ワハハーユミちんはゲームなんてやった事ないだろう」 加治木「いや...」 蒲原「んっ?もしかしてあるのかー」 加治木「そうだな...上からスライムが落ちてくるゲームなら」 桃「今日集まってやるのはなんのゲームでしたっけ」 妹尾「たしかスマブラという格闘ゲームです」 蒲原「どうだユミちん?」 加治木「……」フルフル 妹尾「ダメですかぁ~」 桃「辞退しますか?」 加治木「ダメだ、引き受ける」 桃「どうしてっすか?」 加治木「津山を見ろ...」 津山「~♪」ホワ~ 桃「部長のあんな浮かれた顔初めて見るっす」 蒲原「むっきー...」 加治木「鶴賀は参加だ」 【風越】 福路「ゲーム大会...」 池田「麻雀じゃあキャプテンに勝てないからって...これが清澄のやり方だしっ」 深堀「私は指をカチャカチャやるのは苦手で...」 池田「関取の太い指じゃAもBも同時押しだしっ」 文堂「あたしもちょっと...」 美春「あ、あたしも...」 池田「じゃあ風越は...」 福路「……ええ、今回はすみませんが辞退、ということで」 【龍門渕】 透華「ウチでゲーム大会ですって?」 一「うん...駄目かな?」 透華「皆さんの寝室の確保には困りません、しかしお泊まり会というのは初めてですし...」 純「なにが"お泊まり会"だよ、ガキかお前は~」 透華「透華以外は全員参加のつもり、後は透華の意志次第」 衣「ゲーム!ゲーム♪」 透華「皆していじわるですわ」 透華「……わかりました。龍門渕透華はこの提案お引き受けいたしましてよ」 一「透華!」パァ 一「ありがとう!」 ダキッ 透華「あ、当たり前でしてよこるくらい」アセ 純「照れてる照れてる」 智紀「当たり前でしてよこ"る"くらい」 透華「ともきー!」 【――清澄】 久「ゲーム大会...」 まこ「キューブのじゃな」 和「私はやった事ないのですが...」 久「大丈夫よ和。鶴賀の大将も初心者らしいし現地で覚えればいいじゃない」 和「はぁ...」 咲「あたしもよくわからないし一緒に覚えようよ原村さんっ」 和「――ッ!は、ハイ」ニコ 優希「全国の高校生...いや、日本には私の敵はいないっ!」 京太郎「お前ゲームならなんでも得意そうだなぁ」 優希「京太郎がスマブラやるっていう事は64か?」 京太郎「よくわかったなそうです64スマブラです」 まこ「スマブラはキューブかXじゃろう、のう久?」 久「いや、スマブラは――64よね!」ビシッ まこ「誰に向かって言っとるんじゃ...」 【龍門渕邸】 透華「えー皆様、今夜はようこそ我が龍門渕邸にいらっしゃいました」 加治木「明日は休日だからといって就寝時間をあまり遅らせないようにな」 久「じゃあっ皆4チームに別れたわね?」 桃「現部長には悪いっすが鶴賀の代表は加治木先輩っスね」 蒲原「ワッハッハ別に気にしてないみたいだぞー」 津山「黒ファルコン黒ファルコン...」 久「それじゃあっ第一回龍門渕邸スマブラ大会はじめるわよー!」 一同「おー!」 ~ライフ3~ Aブロック 1.優希2.純3.津山4.智紀 Bブロック 1.まこ2.妹尾3.蒲原4.久 Cブロック 1.一2.和3.透華4.桃 Dブロック 1.咲2.加治木3.衣4.京太郎 【Aブロック】 1.優希2.純3.津山4.智紀 優希【リンク】「負けても吠え面かくんじゃないじぇー!」 純【ファルコン白】「まあ龍門渕メンバーはやりまくってるからな、正直俺かともきだろ」 智紀【ドンキー】「勝つ」 智紀(ファルコン変態スーツ乙ww) 【結果】 1.津山【黒ファルコン―撃墜数8―】 Bブロック 1.まこ2.妹尾3.蒲原4.久 まこ【ネス】「県大会の借り、ここで晴らしちゃる」 妹尾【サムス】「練習はしましたけど...」 蒲原【フォックス】「こいつ強いと思ったのアタシだけかー」ワッハッハ 久【ピカチュウ】「うーん、まあなんとかなるでしょう」 【結果】 1.久【撃墜数―6―】 Cブロック 1.一2.和3.透華4.桃 一【青カービィ】(練習を見る限り透華以外は素人だな) 和【ファルコン】「理論じゃスピードがある方が有利です」 透華【黄ネス】「目立ってなんぼですわっ」 桃【ピンクカービィ】「はー使い安いのはこの子っす」 【結果】 1.透華「途中でカービィが消えましたわ...」【撃墜数―5―】 Dブロック 1.咲2.加治木3.衣4.京太郎 咲【プリン】「皆上手いなあ」 加治木【赤プリン】「このモンスターの目はやる目だ」 衣【ピカチュウ】「ころものピカチュウが最強だ!」 京太郎【青カービィ】「ピカチュウ以外は初心者のプリンか...先にピカチュウだな」 【結果】 京太郎【撃墜数―6―】 1.津山【黒ファルコン】 2.久【ピカチュウ】 3.透華【黄ネス】 4.京太郎【青カービィ】 桃「麻雀の上手さなんて関係ないってわかるっスね」 蒲原「ワハハむっきーの試合は画面よりもコントローラー見てる方が面白いゾ」 加治木「――で、出来るやつらからするとこの中で勝ちそうなのは誰なんだ?」 一「ピカチュウとネスの当たり判定は鬼だけど...」チラ 純「ファルコンって上手いやつが使うと更に強いんだな...」 智紀「第二回開催の時はアイツを外すべき」 加治木「……はあ」 【実況省略――結果】 1.津山【黒ファルコン―撃墜数8―】 久「いやー...強いわね」 透華「ぜんっぜん目立ちませんでしたわ」 京太郎「井の中の蛙ですね、わかります」 蒲原「じゃあ優勝者には京太郎からの熱いキッスが...」 津山「ええぇぇぇ!」 衣「なにっ!?接吻か!」 透華「衣は見ちゃいけませんわっ」 津山「――」グルグル 蒲原「ちなみに譲渡可能です」 津山「!」ハッ 津山「はいっ!」 ポス 加治木「いや...肩に手を当てられても...」チラ 京太郎「初耳もいいとこだぞ」 加治木「いやー困るな」ニヘ 加治木「じ、じゃあこの権利はポケットに...」 桃「駄目ッス!」タッチ 桃「はいっ!」 ポス 透華「ええぇ嫌ですわっ」 透華「誰か!誰か...アラっ」 一「……?」 透華「タッt......いや、出来ませんわ」 ポス 純「おい俺かよぉぉ!」 ワーワーキャーキャー 京太郎「あー学生の頃も似たような目にあったなぁ...その時はウイルス源だったけど」 まこ「ほいっ」 ポス 優希「あっ」 京太郎「おっ優希か!もう観念するんだな」 優希「旦那の欲望を受け止めるのが妻としての役目だじぇー!」 ダッ 京太郎「うわっ!?」 ドスン ちゅー 久「アラ...」 まこ「悪ふざけも大概にしぃ」笑 加治木「おっと...」 加治木「……おっと...」 桃「はい二度見しても現実は変わりませんよ先輩」ニコ 透華「あっ...」 純「バカだなアイツら」笑 智紀(リア充ノキワミアッーwww) 一「……」 京太郎「おまっちょっ」 優希「若い性を堪能したか京太郎!」 京太郎「なに笑ってんだよ俺のファーストキスかえせ!」 久「えっ」 咲「京ちゃん...」 透華「だれかー衣の耳もふさいでくださいましっ!」 加治木「おやおや...」 シーン…… 京太郎「悪かったな童貞でぇェェェうわぁあぁぁぁん!」ダダッ 桃「逃げちゃったス」 まこ「皆露骨に引きすぎじゃあ」 津山「いや、貞操観念の緩い時代に見事な男です」 純「あーもうワタシお嫁にいけないってか」 一「じゃー誰かが貰ってあげないとね」 京太郎「なんだよSEXしてる方が偉いなら誰か漢にしてくれよ...」 『京太郎』 京太郎「……」チラ 京太郎「お前か、今は放っておいてくれ。俺はあそこの大きい池に入水じさ...いや、それだけは冗談でも言っちゃいけないな」 優希「京太郎!」 京太郎「……どうしたんだやけな真剣な顔しt」 バッ 京太郎「重い重いー...んっ」 京太郎「……なに泣いてんだよ」 優希「……」ヒック 優希「泣いてなんかない、じぇ」 京太郎「なにを強がってるんだよ、泣きたいのはこっちだよ大事なファーストキスを」 優希「はじめてなんかじゃないじぇ」 京太郎「?」 優希「さっきのは京太郎のファーストキスじゃないの」 一『……』 京太郎「なんだよソレ」 京太郎「だって実際さっきのが初め...」 京太郎「……」 優希「気付いた?」 京太郎「お前はそれを知ってるんだな」 優希「……」 京太郎「そうか、付き合ってたんだもんな」 京太郎「キス以上もしたわけで...」 スッ 優希「!」 京太郎「全然ダメだな俺は、あまりにも遅すぎだ」 ギュ 京太郎「わるいな優希...」 優希「……」ヒック 京太郎「泣くなよ、悪かったってこれから思い出していけばいい」 『そんな結末こそ全然ダメだね』 ガラッ 久「あらおかえり京太郎K...」プッ まこ「いやー災難じゃったn...ダメじゃ...」プッ 久「アッハッハ京太郎さっきのは気にしないで先に進みましょうよ!」 まこ「ガハハじゃけえ童t...いやなんでもないわ」ブブッ アッハッハ!ゲラゲラ! 京太郎「最悪じゃねえか清澄...先輩達だけだぞ爆笑してんの」チラ 純「うっ」サッ 京太郎「……」チラ 鶴賀一同「……」クッ 京太郎「んだよー!笑えよ笑いたきゃ笑えばいいだろー!!!」 アーハッハゲラワラwwwww 京太郎「なんか笑い屋につられて笑う客の気分がわかるくらい見事な爆笑っぷりだ」 京太郎「んっ」チラ 一「……」 京太郎「ハジメは笑わないのか?」 一「どうして?」 一「好きな人が綺麗な身体だってわかって嬉しいくらいだよ」 ―― 今のは、聞こえたぞ この場にいる全員に。 京太郎「んっ?ああそうだな」 一「うんっ」ニコ 久「さぁておトイレはどこかしら」 まこ「連れションじゃわしもいくわ」 純「じゃあ俺が案内する」 純「ホラ透華もだ」 純「皆いくぞー」 ゾロゾロ バタン キャーキャー ――さすがに年頃の女の子なだけあって恋愛話には弱いらしい、 きっと今も何人かはドアに耳を当てて聞き耳を立てているんだろう。 京太郎「あのぅハジメさん」 一「ボクはハジメって呼んで。そう言ったはずだよ」 京太郎「ああ、ハジメ――今のは」 一「好きだよ、京太郎」 京太郎「――」 一「愛している」 京太郎「――まあ、」チラ 優希「……」 一「あれ?どうして片岡さんは残っているのかな」 京太郎「……ええと」 一「返事を聞きたいな」ニコ 京太郎「正直、さっきまでだったら嬉しかったと思う」 一「本当?」パァ 京太郎「だから――さっきm」 一「記憶を失う前の事なんて関係あるの?」 京太郎「!」 一「ただ記憶を失う前は片岡さんの方が先に出会っていた分アドバンテージがあった」 一「で、記憶を失ってからはボクとこうして遊んでくれて――事実ボクに好意を持ってくれてる」 一「今の気持ちよりも過去の方が優先なんだ」 一「さっきまでなにも思ってなかった子と、繋がりがあったと分かったら一番になっちゃう。それでハッピーエンド。そうなんだ」 京太郎(――事実すぎる) 優希「……」 一「ボクは、悲しいよ?すごく、泣きたくなる」 加治木「ちょっと待ったー!」 バタン 桃(*1) 久(*2) 透華(*3) 加治木「ここは第三者の意見が必要だと思う」 加治木「当事者達は頭に血が上って冷静な判断が出来ないと見た」 加治木「私はそう――だな、どっちもダメだ!」 純「すげえなあの女」 智紀「のぼせる皆の目を醒ました彼女がある意味一番冷静なのかもしれない」カタカタ 京太郎「今日は……」 一「一旦中止にするよ。また二人で遊びにいこうね」 京太郎「はは、」チラ 優希「……」ムー 加治木「女に脅されてるから手を出せないという理由が一番不安定でダサい」 純「はい一2.0タコス2.5~」 透華「そこっ賭けないっ!」バンッ 桃「先輩~」ヒック まこ「誰じゃ酒を持ってきたのわー!」 久「いや~良い気分ね!」ヒック 和「これはひどいですね...」 咲「みんな楽しそうだし、良いと思うな」 和「宮永さんがそう言うなら...」 智紀「就寝時間に下着写メして2ちゃんにうpしよう」カタカタ 京太郎「あーどうしようか」 加治木「決着はキチンとつけろよ」ニッ 京太郎「一人部屋は寂しいなー!」 京太郎「旅館の部屋よりも広いところで布団を敷いてねるなんて寂しいなー!」 久「隣から声が聞こえてくるんだけど...」 透華「我が家の壁を通り抜けるなんてどんな大声で愚痴ってますの?」チィッ ウッフキャハハ 久「こっちはこっちで恋バナに花が咲いてるしね」 透華「みんなお子さまですわっ」 京太郎(真剣に考えると大変な事だよな、嬉しい悩みではあるけど) 京太郎(それに、俺が命を絶った理由ってのも謎だし...恐ぇななんか) 京太郎(部屋もバカ広いし余計恐い...) 京太郎(無理言って向こうに入れてもらおうかな) 京太郎「失礼しまーす」 ガチャ 京太郎「こっちで寝させてもらえないでしょうか」 シーン イイヨ 京太郎(なんでシーンとしてるんだ、そしてなぜOKだしたヤツは声色を変えて返事をする?) 京太郎「了承を得たので入りますね...後で怒らないでくださいよ」 オコラナイヨー 京太郎(だから誰だよさっきから) 京太郎「じゃあドア側の布団に入りますよー」 ダメー 京太郎(おぅふ、今度は以外と近くから聞こえてきた...暗闇でよく見えんがコイツからは拒絶されてるのだろう) 京太郎「じゃあドコなら良いんですかー」 マドガワー マンナカー ドアマエヒダリハジー 京太郎(腹立ってきた...) 京太郎「じゃあドア前の左側に入りますよー」 京太郎「失礼しまーす」ボソ 京太郎「んしょっと」ゴソ 京太郎「少し詰めてくださいねー」 グッ 京太郎(くそ...全然動く気無いなコイツ) グッ 京太郎「ちょっと、誰かわからないですけど少し向こうに寄ってください」ボソ ???「うーん」ムニャ 京太郎(寝とるー!?) 京太郎(どうしよう、考えるんだ...そうだ少し押そう) グッ、スポ 京太郎(あぁっ手が浴衣の中に...) 京太郎(相手によってはラッキースケベで済むんだが...) ムニュ 京太郎(この弾力はあの二人のどちらでもねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!) ムニュ...ムニュ 京太郎(こっこれはー!) 京太郎(経験があるとはいえ実質童貞の俺には刺激が強すぎる!) モニュ ???「ぁん...」 ザワザワ 京太郎(うぉーい!声を出さないでくれえー!) 京太郎(だが気持ちよすぎて俺の左手が止まらない) ???「……んっ...ぁ」 ザワザワザワザワ 京太郎(駄目だ俺!抜くんだ左手を!!!) スッ ???「……スゥ」 京太郎「ふぅ……」 ???「ん……ふわ~あ」 京太郎(起きたー!) ???「むにゃ...どうして須賀がここにいるんスか?」 桃「ふにゅ...というかアタシは...たしか先輩に胸を揉まれていて...」 京太郎(寝ぼけて全部口に出してる!) クスクス コラッ、モモー 京太郎(注意してるやつはなんとなく誰かわかるな...) 京太郎(ここは危険だな...どこかに入らないと寒い) 京太郎(後は真ん中と窓側だな) 京太郎(ここは入りやすい窓側に決めた) 京太郎(桃。一応お礼は言っておく、本当ごち...ありがとうございました) 京太郎(窓側...なんか変則的な配列だな) 京太郎「失礼しまーす」 スッ 京太郎(おっ誰もいない) 京太郎(一人分開けてくれたのか...優しいなあ。明日起きたら誰誰か確認しよう) 京太郎(これで大人しく寝r) サワ... 京太郎(んっ?) サワ ツー 京太郎(誰だふくらはぎから徐々に上へ触るやつは!?) サワ... 京太郎(いやっ声が出ちゃうっ) 京太郎(……じゃねえよ、痴漢にあった女性の気持ちがわかるな、おっかねえ) モミ... 京太郎(マジで誰だコイツ尻を触るなよ) 京太郎(左側だな...) 京太郎(悪ふざけだろうし少し無反応でいたら飽きてやめるだろう) サワ サワサワ ツー... ギュッ 京太郎「ぁっ」 ザワザワ 京太郎(チィィィ!声が出てしまった...つうかモロに触りやがったぞ) 京太郎(この野郎...いや女か) スッ 京太郎(浴衣の下側に手を...直接触る気か?大胆すぎるだろコイツ...!) 京太郎(いまだっ!) ガシッ ???(あっ...) 京太郎(捕まえたぞ...引っ張って誰か確かめてやる) ズッ... 京太郎(髪の毛が見えてきた...) ズッ... 京太郎(……) ???「……スマナイ」ボソ 京太郎(なにやってるんすか加治木さん...) 加治木「いや、その、な?これくらいの事をしていれば更に仲良くなれるとだな...」ボソ 京太郎(どんな超理論だよ...) 京太郎「じゃあ、逆にこっちが触っても良いってわけですね」ボソ 京太郎(まあこれで大人しく引き下g) 加治木「……」コクン 京太郎(なぜ斜め下を向いて頬を赤らめるー!!!) 京太郎(駄目だ...結構美人だから襲ってしまいそうだ) 京太郎(ここは大人しくこちらから引き下がろう) 京太郎「もうやめにしてくださいよ...」ボソ 加治木「……いやだっ」 京太郎(くっ、この女...) 京太郎(もうキレた) 京太郎(じゃあ触りますよ...) モミッ 加治木(んっ...)ピク モミモミッ 加治木(……んっ)ピク 京太郎(声を圧し殺して我慢とはなんて嗜虐心を煽るんだ) 京太郎(ひひ...じゃあ生で) スッ 京太郎(んっ?それにしてもやけにハッキリ見えるなあ) 京太郎(!) 京太郎「あっ...」 久「電気が付いてると良く見えるでしょう?須賀くん」 京太郎「これは...誤解...」 久「……ハァ、その浴衣に突っ込んで今にも揉みしだこうとしている手はなに?」 透華「龍門渕の屋敷内でこのような下劣極まりない行為...万死に値しますわ」ワナワナ 京太郎「加治木さん!貴女からも理由を説明してくれ!事実を!」 加治木「"いいのか...?"と聞かれたので"……コクン"と応えた」 京太郎(確かに事実だけどもー!その前らへんを詳しく!) 優希「ありえないじぇ……」 一「さっきの今でこれですか、言ってくれたらボクが応えてあげるのに」 京太郎(……ハッ!この二人よりも大きな殺気が後ろに...!) 桃「……」 京太郎「いやっこれは...ちがっ」 桃「いつまで入れてるんスかー!!!早くその手を抜くっス~!!!」 京太郎「ぬわーーーーーー!!!」 こうして、俺は朝日が昇っても起きる事が出来ないほど痛めつけられた。 京太郎「……もう昼か」 京太郎「まだ満足に体が動かない...」 一「もう起きても大丈夫みたい?」 京太郎「ああ...みんなは?」 一「大浴場、そこから上がったら帰るらしいよ」 京太郎「そうか...」 一「ねえ」 京太郎「?」 一「今なら誰もいないよ」 京太郎「……駄目なヤツだ俺は」 一「?」 スッ 京太郎「やっぱりかわいい」 一「あっ当たり前だし」アタフタ 一「……ありがとう」 京太郎「今はハジメの方が好きだよ」 一「……っ」グス 優希『……』 京太郎「よいしょっ...と」 ハジメ「ボク、なーなーの関係って嫌なんだ」 京太郎「はあ」 カチ 『今はハジメの方が好きだよ』 一「録音しちゃったよ」 一「ボク的には二股でも良かったんだけどー...」 一「心変わりしてさ。こうでもしないと納得出来る状況にならないんだよね」 京太郎「……」 京太郎(まあどちらかを選ばないといけないわけだし) 一「ボクを選んだから悪役。彼女を選んだからピュアな心の持ち主――そういうわけじゃないと思うな」 一「……好き?」 京太郎(……駄目だ大好きだ) 京太郎「言う、ちゃんと告白する」 久「ふー良いお湯だったわぁ」 和「本当、旅館の温泉に引けをとらないくらいでした」 優希「……」 和「優希?」 咲「そういえば、優希ちゃんお風呂で見なかったよね」 優希「……」ダッ 優希「き、京太郎」 京太郎「引っ付くなタコス」 京太郎(なんて言えねえよ) 京太郎「お、どうした優希」 優希「あの、さっきの話...」 京太郎「聞いていたのか」 優希「……好き?」 京太郎「あ、……好き、だ」 京太郎「……けど1番じゃ、ない」 京太郎「どっちかに決めるって決めたんだ優希、お前が嫌いになったわけじゃない...」 優希「……ぁぅ」 加治木「悪者を見つける必要はない、彼女には悪いが決断をした側にも傷は残る」 和「……」 京太郎(和が泣きそうな顔で睨み付けてくる) 京太郎(それはそうだよな他人事だったら俺も男を責めると思う) 京太郎(いっそ嫌ってくれ、なんてのは優希に悪い) 優希「じゃあアタシ頑張るよ!」 京太郎「!」 優希「頑張って京太郎から手を出すような女になってやるんだから!」 優希「その時は優しく迎えてあげるから感謝するんだじぇ!」 京太郎「優希...」 この子は俺が思っているより、ずっと強かった。 京太郎「優希」 優希「駄目!もっと後!もっと魅力的になってからだ!わかったか京太郎!」 京太郎「……ああ!」 優希「いよーっし!そうと決まればのどちゃん!」 和「はい?」 優希「のどちゃんの乳を飲んでアタシもおっぱい 京太郎「はあ」 大きくするじぇー!」 和「やめてよ優希~!」 久しぶりに清澄の笑顔が戻ってきたようだった。 京太郎「おーいハジメ!」 一「あっコッチだよ京太郎!」 京太郎「いやー少し電車が遅れて...」 一「もうっ...まあ今日は記念日だから特別に許してあげるよ」 京太郎「今日?――あぁ」 あれから俺は一と付き合い出し、一年の月日がたとうとしていた。 一「もう...忘れてたの?まあ、そこがキミらしくもあるんだけどねっ」 今でも一番は一だ。そしておそらくこれからも一番なのだ、 京太郎「よし!今日は俺がキチンとエスコートしますよお姫様」 一「うんっ」 京太郎「好きだよハジメ」 一「ボクも――大好きだよ京太郎」ニコ 二人の人生はこれからも続いていく。 おわり
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/3314.html
京太郎(蛍光灯と単三電池と……よし、これで買い出しは終わりだな) 京太郎(さっさと帰ってタコス買っていかないとまた罵詈雑言が浴びせられるんだろうなぁ) 京太郎(お、ゲームコーナーか……) 京太郎(麻雀始めてから、ゲームやってねぇなあ) 京太郎(中学の頃はあんなに夢中になってたのに……) 京太郎(ちょっと覗いて行ってみるか) 京太郎(おぉ、コレ新作出てたのか……主人公変わってね? タイ人みたいだな) 京太郎(うーん、この空気に触れてしまうと、買わずにはいられなくなってしまう……) 京太郎(ベスト版でも買ってくかな) 京太郎(アクションはハマると極めるまで抜け出せなくなるし、クリア前にブランクあけちまうとリハビリが必要だしな) 京太郎(RPGか……アドベンチャーもいいな) 京太郎(いっそギャルゲーでも……お、これなんか良さそうだな) 京太郎(『アカイイト』か……『少女の視点で体験する和風伝奇ホラー』?) 京太郎(ホラーなのか……弟切り草みたいな感じか?) 京太郎(っていうか主人公女なのか? じゃあ恋愛ものじゃないってことか) 京太郎(主人公女が女で他のキャラも女……珍しいな) 京太郎(よし、値段も手頃だし、コレにすっか) ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 京太郎「なるほど……」 京太郎(田舎に住んでる人間には、別段珍しい光景じゃないな……) 京太郎(それにしても、今のところはホラー要素が見当たらないな) 京太郎(不気味な洋館が出てくるわけでもないし、何か変なものを見かけるわけでもないし……) 京太郎(もうちょっと進めないとわからんな) 京太郎「うお……吸われてる……」 京太郎(首から出血って、結構やばいんじゃね?) 京太郎(…………っていうか、なんか) 京太郎「……エロいな」ボソッ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ~次の日~ 咲「おはよう京ちゃん……なんだか眠そうだね」 京太郎「あぁ……ちょっとな……」 咲「もしかして、また朝までゲームしてたの?」 京太郎「なんでわかるんだよ……」 咲「去年までそんな感じだったし……最近はそうでもなかったけど」 咲「で、今度は何のゲームしてるの?」 京太郎「あぁ……まぁ……」 咲「……ひょっとして、エッチなやつ?」 京太郎「なっ!? ち、違うぞ!」 咲「……」ジトッ 京太郎「うっ」 咲「……ちゃんと寝ないで授業受けるんだよ」 京太郎(マズイ……今の反応は図星っぽかったか……) 京太郎(それにしても……やはりユメイさんは最高だな) 京太郎(あの包容力あるキャラ、胸も結構ありそうだし) 京太郎(……だが) 京太郎(今までのゲームのキャラに対する感じとは…………何かが違う) 京太郎(なんだろう、これは) 京太郎(なんていうか、その……何なんだろうなぁ……) ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ―部室― 京太郎(面白かったんだけど、未だに消えないこのモヤモヤ感……) 京太郎(これは一体……)モンモン 和「ここのターツは愚形ですから、この場合は……」 咲「へぇ……そっか、そっちのほうが確かに確率は……」 咲「やっぱり原村さんの教え方はわかりやすいね! さすが原村さん!」 和「そ、そんな……こと///」 京太郎「……」ピク 京太郎(今の和……咲に褒められて照れてる、のか) 京太郎(そういえば今までも結構そういうことが……) 京太郎(なんていうか……なんかイイな……こういうの) 京太郎(何が、っていうのは、よく分からないけど……) ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 京太郎「う、烏月さんが……そんな……」 京太郎「アカイイトって……こういう意味だったのか……」 京太郎(ええい、やり直しだ! こんな結末納得できるか!) 京太郎(待ってろよ桂! 必ず俺が幸せにしてやるからな!) 京太郎「…………ん?」 京太郎(……そうか、俺はこの主人公に自分を投影してるわけじゃないのか) 京太郎(純粋に桂とその他のキャラが関わり合っているところが見たいだけで……) 京太郎(ユメイさん単体じゃなく、ユメイさんと桂の関係が好きだったんだ……) 京太郎(いや、でもコレっておかしいか?) 京太郎(……いや、漫画でも男同士の熱い友情に感動することあるしな、うん) 京太郎(問題ない、ゲームを続行する) ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 京太郎(ふふふ……ざまあみろ……主だかなんだか知らんがな……)フラフラ 咲「ねぇ京ちゃん……また徹夜したの?」 京太郎「おう……まぁな」 咲「流石に二日連続は……ちゃんと寝ないとダメだよ?」 京太郎「あぁ……とりあえずあと二人だからな……それが終われば……」 咲「え?」 京太郎「! い、いや……なんでもない……」 咲「?」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ―部室― 和「……」タン 咲「え?」 和「なんですか、咲さん?」 咲「えっと……その……」 咲「も、もうちょっとソレ持っといたほうが良かったかなぁって……」ヒソヒソ 京太郎(咲が和の耳元で……)ボケー 京太郎(構図的に、なんだか咲が和の血を吸ってるみたいに……)モンモン 京太郎(咲と……和が……) 京太郎「!?」 京太郎(お、俺は今何を……) 京太郎「うおおおおおおおおおお!!」ガンガンガンガン 久「ちょっ……何してるの須賀くん!?」 優希「気でも狂ったのか!?」 京太郎「いえ……ちょっと煩悩を……」ゼェゼェ 咲「京……ちゃん?」 京太郎「いや、大丈夫だ……」 咲「やっぱり寝不足で疲れてるんだよ……ちょっと寝てたほうがいいよ?」 まこ「寝不足?」 咲「京ちゃん、二日連続で徹夜でゲームしてて……」 和「どうしようもないですね」ハァ 久「須賀くん……今日はもういいから、とりあえずそこで寝てなさい」 京太郎「いや、でも」 まこ「また机にヘドバンされるのは迷惑じゃ」 京太郎「……はい」 京太郎(そうだよな、寝不足でおかしくなってるんだ) 京太郎(寝て起きれば、今の変な妄想も消えてる……さ) ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 京太郎(結局今日も徹夜してしまった……) 京太郎(しかし、これで一応すべてのキャラのエンディングは見たわけだ) 京太郎(あとはエンディングとCGをコンプリートするだけだが……面倒だしネットで攻略情報見るか)カチカチ 京太郎「……ん?」 京太郎(アオイシロっていう続編もあるのか……) 京太郎(…………明日買いに行くか) ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ~翌日~ 京太郎「なんだこれ……完璧にキスしてんじゃねぇか……」 京太郎(た、確かにそういう人がいることは知ってるが……)ドキドキ 京太郎(し、しかし一般的なゲームでこういう描写は……)ドキドキ 京太郎「……進めよう」 チュンチュン チュンチュン 京太郎「終わった……もう朝か」 京太郎(なんかコピペしたようなEDとバグっぽいのも見られたけど、よかったな、うん) 京太郎(それにしても、あのキスシーン……どういう評価されてるんだ?) 京太郎(出かける前にネットで調べてみるか……) 京太郎(えっと……ん? 『三大百合ゲー四天王はアカイイト、処女宮、あとひとつは?』って……) 京太郎「…………百合? なんだこれ?」 槓