約 373,640 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1073.html
翌日の朝。自室のベッドの上で目を覚ました俺を襲ったのは、恐ろしいほどの肉体的疲労感と精神的脱力だ。 なんなんだこれは。立って起きあがることすらできねぇ。まるでフルマラソンか、トライアスロンに訓練なし、 準備体操なしで突撃敢行後のようだぞ。 近くでじりじりと鳴っている目覚ましを止めようと手を伸ばすが、それすら適わない。 「まずい……このままだと……」 「キョンくーんー、あさーさーさーさーあさー♪」 いつものようにノックなしで訳のわからん歌とともに俺の部屋に現れたのは我が妹だ。。 「起きない遅刻するよー。早く早くー」 とまあ、布団に潜りっぱなしの俺に乗っかってドカドカと騒ぐもんだからまるで拷問だ。 いつもなら寝ぼけてあまり気にならないが、今日は変に意識がはっきりとしている上に全身筋肉痛っぽいので、 痛くてたまらん。だが、それでも身動きもできないんだから、俺の身体は一体どうなっちまったんだ。 いつまでたってもベッドから出てこないことに業を煮やしたのか、ついに我が妹は最終手段を行使した。 布団を強引にまくり上げ床に放り落とす。そして、仰向けになっていた俺の顔面に迫ってきたのは……シャミセンのケツだ! 「うおわ!」 火事場の馬鹿力ってすばらしい。俺は布団から飛び起き、部屋の隅に逃げ出す。危機一髪だった。 危うくおはようのキスをシャミセンのケツで完了しかねなかったぜ。いつもそんなものをしてくれる人はいないけどな。 「あーキョンくん起きたー。シャミはすごいねー」 「にゃあ」 全く脳天気な会話してくれるもんだ。一気に目は覚めたけどな。 だが、全身の疲労感がなくなったわけがない。こんな状態でこれから学校に行かなきゃならんのか。果てしなく憂鬱だ。 ◇◇◇◇ 何とか歯を磨き、朝食を取り、ブレザーを着込み、学校に向かって出発だ。自転車を一漕ぎするたびに 身体が悲鳴を上げるぜ。さすがにだるそうな俺を見てオフクロが休めば?なんて言ってくれたが、 不思議と学校に行かなきゃならん気がするんで、登校を決行中だ。学校まで無事につければいいが。 ぜいぜいと息を切らしながらチャリンコロードを完了し、最後の早朝ハイキングコースに入る。 「ようキョン」 後ろから声をかけられて振り返ってみれば、谷口がいた。 「よう谷口」 「何だよ元気ねえな。風邪か?」 風邪だったらまだいいんだが……しかし、何だろうか。この感情は。ついつい谷口の顔を見つめてしまう。 これは――感激か!? 何で谷口の顔を見て感激しなければならないんだ!? おかしいだろ俺!? 「おはようキョン。どうかしたのかい?」 今度は国木田が登場だ。って国木田の顔を見ても同じ感情が生まれてきたぞ。なんだなんだなんだ。 しばらく、黙って谷口を見つめていた俺に不信感を抱いたのか、 「おいキョン、どうかしたのか? 普段から変わっているところがあるが、今日は格別に変だぞ――まさかっ!?」 谷口は大仰に声を荒げて、 「まさか俺に惚れたとか……!?」 「誰が惚れるかバカ!」 反射的に俺は怒鳴り返す。いいか、俺はれっきとしたノーマルなんだぞ。朝比奈さんを見ていれば身体がぽかぽかしてくるしな。 ん、これこないだも言わなかったか? しかし、谷口は疑惑の目線で、 「いいやわからねえ。何せあの超強力電波発信源・涼宮の連れだからな。どんな電波を受信しているかわかったもんじゃない」 「まあまあ、谷口。キョンも何だか疲れ気味みたいだから、あまりからかうと悪いよ。 そういう本質的な話はまた後でってことで」 おい国木田、それだとフォローになってないぞ。 そんな馬鹿話をしつつ、俺たちは学校に向かう。昨日も同じ事をやっていたはずなのに、今はこんな当たり前の日常が たまらなく楽しかった。 ◇◇◇◇ 何とか学校にたどり着いた俺がまず確認したのはハルヒだ。正直、教室の向かうまで姿がなかったりとか、 席そのものがなかったりとか、しかし、なぜ俺はこんな心配をしているんだとか、と内心はらはらしていたが、 ――いた。いつものように窓際最後尾の席でだらんと力なく机に寝そべっている。 俺はほっと胸をなで下ろし、次席に座った。すると、ハルヒは顔だけを上げて、 「おはよ、キョン」 「ん? ああ、おはようハルヒ」 ハルヒから挨拶をしてくるとは珍しい。ハルヒはまた机に顔を埋めると、わざとらしいほどの大きなため息をつき、 「あー、今日は学校を休めば良かったわ。何だかわからないけどものすごく疲れた感じがするのよね」 「何だ、おまえが疲れるなんて天変地異の前触れじゃないのか?」 「しっつれいね! あたしだって疲れるときぐらいあるんだから」 ま、ハルヒがこれだけな状態になっているんだから、何かあったことは確かだろう。 何一つも覚えていないが、恐らく昨日の夜から今日の朝にかけて。 俺はだらーと壁に背中を預けると、 「なあハルヒ」 「何よ」 「疲れたな」 「……そうね。本当に疲れた……」 ◇◇◇◇ 午前の授業終了後、俺は一限目から爆睡中のハルヒを放って教室から飛び出した。 かく言う俺も授業の半分近くは居眠りしていたおかげで、少し体力が改善している。 だから、今の内に顔を見ておきたい人の残りを確認しに行くってわけだ。 未だに何でこんな事をしようと思うのかさっぱりわからないが。 「あ、キョンくん」 「キョンくん、やーっほーっ!」 2年の教室前であったのは朝比奈さんと鶴屋さんだ。いつもながらお美しい朝比奈さんに会って感動するのは当たり前だが、 それ以上に感情を揺さぶったのは鶴屋さんの方だ。くそ、谷口の時は意地で押さえ込んだがもう限界だこりゃ。 「え、え、え?」 「おおっとと、ど、どうしたんだいキョンくん? あたしなんか悪いことでもしちゃったっけ?」 二人があわてるのも無理もない。ついにこらえきれなくなった俺の目からぽろぽろと涙がこぼれ落ち始めたからだ。 理由はさっぱりわからんが、とにかく今は泣きたい気分になっている。 「ああ、いえ、ちょっと寝不足なんであくびをかみ殺しただけですよ」 「あーなんだいなんだい。驚かせないでくれっさ!」 ほっと一安心の表情を浮かべる鶴屋さん。全く今日の俺はどうかしている。いきなり泣き出すなんて、 端から見ると情緒不安定で青春まっしぐらな若者みたいじゃないか。 「やあ、これは皆さんおそろいで」 このタイミングで背後から急接近してきたのは古泉だ。俺は必死に目をこすって涙を吹き上げてから振り向く。 こいつにまで涙を見せたら、周りから本気で誤解されかねないぞ。 「なんだ古泉か。こんなところに何の用だ?」 俺は必死に感激していることを悟られないように言う。古泉は肩をすくめて、 「ちょっと朝比奈さんに用がありましてね。いえ、そんなに大したことではありません。 ちょっとした疑問を確認したいだけです。いいでしょうか? 少し人目のない場所の方がありがたいんですが」 「え? あ、はい。わかりました」 こら待て古泉。朝比奈さんを人気のないところに連れ込んで何をするつもりだ。 朝比奈さんもこんな野郎の口車に乗ってはダメですよ。 俺が古泉に抗議の声を上げようとするものの、鶴屋さんに止められる。ウインクして来るところを見ると、 どうやら任せてといっているようだ。鶴屋さんがそばにいるなら、まあ安心か。 とりあえず、俺はこの場を退散して、次の目的地に向かう。 「あいつなら何か情報を持っているだろうしな」 向かったのは部室だ。俺とハルヒの疲労現象。その原因を唯一知っていそうなのは長門ぐらいだ。 「長門いるか? ちょっと聞きたいことがあるんだが」 そう言いつつ部室にはいると目前に長門が出現した。俺が来ることを予測していたのか、 出入り口の前に立っていたようだ。 「来ると思っていた」 「そ、そうか。なら話が早い。昨日から今日の朝にかけてだが――」 「いわない」 きっぱりと言い切る長門。ここまではっきりと意志を示すのは初めて見た。そして、長門は続ける。 「あなたがそう言っていたと聞いている。わたしもその時の記憶は存在していないため、はっきりとしたことは不明。 情報統合思念体から送られてきた情報から得たことによる判断。あなたは自分がそう言っていたと伝えれば、 納得するだろうと言っていた模様。中途半端に思い出しても辛くなるだけだと」 何だよ、俺まで宇宙人・未来人・超能力者的秘密主義者の仲間入りかい。 俺自身にも言えない事っていったいなんなのやら。かえってきになるだけじゃねえか。 そんな俺に長門は一歩顔を近づけ、 「ただ、これだけは言える。そこでのあなたは勇敢だった。何ら恥じることはない」 ……どうやらとんでもないことがあったようだな。それこそ思い出さないほうがいいぐらいなことが。 俺自身がそう考えて言っているようだし、それで納得しておこうか。気にはなるが、知ってしまった方が後悔しそうだ。 俺はふっと笑みを浮かべると、 「ありがとな長門。何だかすっきりしたよ」 「わたしはあなたからの伝言を伝えただけ」 「でも、ありがとな」 「……うん」 ◇◇◇◇ 教室に戻ると、俺を待ちかまえていたのはクラスメイトの阪中である。 いかん、昨日のハルヒ球技大会参加要請をすっかり忘れていた。 もじもじと不安ありありな表情で俺に昨日の返事について聞いてくる阪中だったが、 「あーすまん、昨日ハルヒに参加を打診したんだが、つれない返事しかかえってこなかったよ。 あれじゃまず無理だろうな」 俺の言葉にどんどん落胆の表情になっていくのを見ると罪悪感にちりちりと苛まれる。 とはいっても、昨日のハルヒの感じじゃ参加なんてとても…… 俺はまだ机に寝そべっているハルヒの方をちらりと見る。昨日のハルヒだったら確実に返事は同じだろうが、 なぜか今日のハルヒからは別の返事が返ってくるような――根拠も何もないんだが、そんな気がした。 「ハルヒに直接聞いてみたらどうだ? 結構気が変わりやすい奴だからいい返事が返ってくるかもしれないぞ」 そう言って阪中をハルヒの元に行くよう促した。 ハルヒのそばに立ったもののなかなか言い出せない阪中だったが、やがて意を決したようにハルヒに球技大会以来を お願いした。端から見ていても痛くなるほどにお願い口調で頭まで下げている。 「いつもクラスの中で浮いているんだから、たまにはこういう行事に参加しろよな」 俺も援護するが、ハルヒは完全無視状態だった。眠っているわけではないようなので、こりゃダメか? しばらく沈黙が続いた俺たちだったが、やがてハルヒがすっと上半身を机からあげると、 「……ま、いいわよ。参加してあげる。何かスポーツでもしてすっきりしたい気分なのよ。運動不足なのか疲れ気味だし」 昨日とは正反対の言葉を返してきた。言い訳がましい事まで言って、全く素直じゃない奴だ。 「でも!」 ハルヒはこっちを振り返り、 「いい? やるなら優勝よ。一位以外はあり得ないわ! ふふん、今日の放課後から早速特訓だからね! いっとくけど、あたしの訓練は厳しいわよ! 覚悟してなさい! あと、キョンもボール拾いとして参加すること! いいわね!」 「何で俺まで」 と抗議するが、喜びを爆発させた阪中に遮られた。なんというかもう、ハルヒの手を握ってお礼を乱発し、 俺に向かっても頭を下げまくる。一体何がそこまでさせるのやら。 ――ただ俺も内心ではかなりうれしいことがあった。参加を了承したときのハルヒの顔。 自信満々で言った後に見せた100Wの笑顔。とんでもなく久しぶりに見たような気がしたからだ。 ……これからもよろしく頼むぜ、ハルヒ…… 『涼宮ハルヒ』 疑似閉鎖空間に入れられた後、北高生徒を率いて激戦を指揮し続けた総指揮官。 最後までSOS団にかかわらずすべての生徒たちを励まし、思いやり続け戦い抜いた。 一方で、鶴屋さん戦死直後と1日目の夜間に自らに向けて引き金を引きそうになるが、ぎりぎりのところで耐えている。 しかし、キョンが死んだ場合、3度目の衝動に駆られても止めることはできないだろうと確信していた。 精神的に消耗する中、SOS団とキョンの存在だけが彼女を支えていた。 『長門有希』 ハルヒから任命された副指揮官。実際には前半戦は砲撃隊指揮官で、後半は喜緑江美里ともに情報操作戦を続けた。 疑似閉鎖空間に閉じこめられた後、かつてないほどの【絶望】の感情に陥ったが、 喜緑江美里から与えられたヒントで希望を取り戻し、敵との情報操作戦に勝ち抜いた。 『朝比奈みくる』 癒し系担当などという不明な任務についていたが、実際には負傷者の看護を行った。 凄惨な傷を目撃するたびに失神していたが、献身的な看護を行い、多くの生徒たちの命を救った。 『古泉一樹』 古泉小隊指揮官。後にUH-1のパイロット。 的確な指示と援護により、大きな戦果を続けた。 同じクラスである9組の生徒たちを巻き込んでしまったことを激しく後悔し続け、 また、涼宮ハルヒに無関係な生徒多数を巻き込んだ敵に対して人知れず感情をあらわにすることもあった。 敵の策略によりUH-1を撃墜されて戦死する。 『鶴屋さん』 鶴屋さん小隊指揮官。 涼宮ハルヒの撤退命令を拒否し続け、北山公園の敵砲撃地点の制圧を続行し、見事困難な作戦を完遂した。 実際に涼宮ハルヒの影響が低いと言うことで、小隊に配属されていた生徒たちは彼女の命令を拒絶することが可能だったが、 30名中26名が戦死した激戦でも、彼女の姿勢に異を唱えるものは一人としていなかった。 鶴屋さん自身は敵の罠であることを承知の上でこの作戦を了承し、ここで散る覚悟だった。 「今あたしたちが敵を制圧できなければ、敵は学校への攻撃を続行し犠牲者はますます増えるんだ。 だから、どんな犠牲を払っても敵をやっつけないといけないのさ。これが最後。みんなには犠牲を強いてごめんなさい。 一斉射撃後にあたしが先陣を切る。少しでもあたしがひるめば遠慮なく後ろから撃っていい。行くよっ!」 突撃の際に敵の銃撃を受けるが、決して止まることなく制圧を完了した。そのときの傷が元で戦死。 戦場で戦った生徒:272名 死者:117人 負傷者:76人。 この戦場を駆け抜けたすべての生徒たちを讃える。 ~~おわり~~
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/571.html
ねぇ、キョン。 ねぇ、キョン、返事をして? ねぇ、キョン・・・。 聞いて、あたしの話を聞いて。 キョン! ねぇ、キョン。 あなたはあたしを裏切らないよね? ハルヒの声がした。 ハルヒが俺の名前を呼んでいる。 どうしたんだハルヒ? 目を開けて起き上がると、そこは色も音も無いただ真っ黒な空間に俺は居た。 見渡すほどの広さも感じられない。ただ黒一色の空間。 足元もフワフワとして、まるで星一つ無い宇宙空間に放り出されたようだ。 俺は確かベッドで眠っていたはずだ。それがどうしてこんな場所に居るんだ? まさか例の閉鎖空間とやらに呼ばれてしまったのだろうか。 なら、ハルヒもこの場所に居るはずだ。どこにいるんだ、ハルヒ。 「ハルヒ!」 ハルヒの名前を呼ぶ。だが返事は無い。 ハルヒの声がして、この妙な空間・・・閉鎖空間だと思ったが違うのか? なら、例の急進派か? 「ハルヒ!おい、返事をしてくれ!ハルヒ!」 もう一度ハルヒを呼ぶ。・・・やはり、返事は無い。 キョン! キョン! キョン! どうして返事をしてくれないの? ・・・・。 ・・・・。 ・・・。 キ ョ ン ! ! 『・・・ョ・・・ン・・・・・キョ・・・・!・・・・ョ・・・』 微かに、だが確かにハルヒの声が聞こえた。やっぱりハルヒはここにいるのか? 「ハルヒーーーっ!!ハルヒ!!どこだ、おーい!!」 大声を出してハルヒの名前を呼ぶ。だが一向に返事は無い。 ・・・どうなっているんだ?ハルヒじゃないなら長門、古泉の誰でも良い。返事をしてくれ。 『 キ ョ ン ! ! 』 突然、この空間全体が揺れるほど大きい声で俺の名前が叫ばれた。 実際、 ず ず ず ず ず ず どっ どっ どっ と辺りが激しくゆれ出した。 ゆれ出した空間の一部が、ぐにゃりと歪む。 それはだんだんと色が付き、ますます歪みを増してゆく。 ぐにゃ その歪みは、だんだんと、ある人間の顔を模してゆく。 「・・・ハルヒ・・・・・・・!?」 空間に浮かんだ歪みは、ハルヒの顔になった。 その顔は笑って、俺を見下ろしている。 呆然とそれを見上げていると、また空間の一部から腕が二本飛び出して俺の体を無理矢理掴んだ。 つ か ま え た ぁ ! 大 好 き よ 、 キ ョ ン ! おわり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/262.html
「ねぇ、キョン。駆け落ちしよっか?」 朝っぱらから物思いに耽っていると思ったら・・・何を言い出すんだ、コイツは。 ”駆け落ち”なんていう言葉は、お互いを愛し合っているが結ばれない運命にある二人がその運命を打ち破るためにだな。 「あたしとさ、樹海に行かない?」 しかも、死ぬこと前提でかよ。 頬杖つきながら、ぼーっとした顔で空を眺めんでくれ。 俺はいつも馬鹿みたいにテンション高いお前しか知らんのだ。 そんな違う一面を見せられたら、したくなくても『なぜか』動揺してしまう。 「ねぇ、聞いてるの?」 頬杖を止めてこちらを向いたハルヒの眉がキリキリと上がる。 これでこそ、俺の知っているハルヒだ。 論理的な思考型な俺は、理由を聞いてから何事にも答えるようにしているが、 ハルヒは突飛なことを言う割りにその理由を聞かれると不機嫌になるし、答えようとはしない。 『駆け落ちしよっか?』って言った理由をハルヒに聞くのはナンセンスだ。 …だが、聞いてしまう。 だって、それが俺の思考パターンだからだ。 「聞いてたけど、どうしてまた駆け落ちなんだ?・・・その前にどうして俺なんだ?」 こいつはいつも主語と述語が抜ける。そして、その経緯、説明もない。 まるで”私の思考はアンタには伝わってるから、説明しなくてもいいのよ”みたいな。 あいにく俺は、古泉みたいに超能力者でもないから相手の思考を読み取ったりできない。 …ってアイツは閉鎖空間の中でしか能力使えなかったか。 例えにもならないとは、本当に使えない奴だ。 「キョンなら、着いてきてくれると思ったの!」 恥ずかしそうに目線を外す・・・普通の女の子っぽい仕草も出来たんだな。 って、どうして俺なら着いてきてくれるなんて思ったんだ? 俺の思考を読み取ったかのようにハルヒが続けて口を開いた。 「だって、アタシのいう事素直に聞いてくれるんだもん。だから」 ちょっと待て。この際、俺の長所・性格・人物像は関係なしかよ。 どうみても、ハルヒの主観イメージだけじゃねぇか・・・ しかし、俺が安易に否定すればハルヒはまた不機嫌になるだろう。 古泉・長門・朝比奈さん(大)は口を揃えて、その事を忠告したけど、俺には関係ないし、 どうするかはハルヒ次第なのだから・・・ごく平凡一般の俺がとやかく言っても仕方がない。 まぁ、古泉の言っていたハルヒの言葉をできるだけ尊重するようにしてやんわりと話を流してみるか。 「お前がどうして『駆け落ち』だとか、『樹海に行きたい』とか言ったか分からんが、そんな事しなくても俺は3年間お前にこきつかわれる運命だ」 「いつ、何処で、何時、何分、何秒にアタシがアンタをコキ使いたいって言ったのよ!」 「お前の俺への態度を見たら、誰が見ても奴隷とご主人様みたいな関係に見えるぜ?」 ハルヒが何か言おうとしたので、トドメの一撃を刺しておこうと思う。 「でも、別にお前に使われるのは嫌いじゃない」 ちょっとでも、恥ずかしい台詞を言われるとあたふたして、柄にもなく論理的に否定したり、話変えたりするから この戦法はかなり有効なのだ。・・・しかも、実証済み。 すると、暫くハルヒは何か考え込んだ後、パチンと手を合わせて、俺を指差した。 「決めたっ!アタシに使われるのが好きなら、高校3年間と言わずその後も使ってあげるわ」 「・・・なーんて、事があったんだよ」 部室にて、古泉と将棋を指しながら今日の昼休みにあった事を話した。 …というか、どうしてコイツは手数掛かるのに穴熊作ろうとしてんだ?その間に攻め込まれたら終わりなのに。 「キョン君はまた仕出かしましたね」 なんて、真剣な台詞をにこやかに言う古泉。 続けて「僕のバイトもずっと続きそうですねぇ」なんて言いながら、ため息つきやがって。 「どういうことだよ?俺がなんかやったか?」 俺が質問を投げかけると、古泉は鼻の頭を撫でながらこう言った。 「涼宮さんは新たに思い込んでしまいました・・・いや、決意したと言ったところでしょう。彼女は言ったのでしょう? 『高校3年間と言わずその後も使ってあげるわ』と。その意味は分かりますか?その後とは彼女にとってどれぐらいの期間なんでしょうねぇ。 その言葉を推理して、最も現実的で実現可能な事となると・・・」 「なんだよ」 「キョン君。結婚式には呼んでくださいね。・・・あと、あなたは主夫に向いてますよ」 古泉がまたアホな事を言い出した。 こいつは、推理してるとき自分に酔っているんじゃないかと思うことがある。 推理に気を取られて、将棋がおざなりになっているのはコイツらしい。 「王手・・・はい、どうやっても詰みな。しかし、お前の例えはよく分からん」 「はは、負けちゃいましたね」 自分が負けたのにニコニコとしているのもコイツらしい。 さて、と。ハルヒが朝比奈さんの写真撮影を終えて帰ってくる前に、このフラッシュメモリにmikuruフォルダを移動させておくか。 将棋の片付けをしている古泉がポツリとこう言った。 「あなたは、涼宮さんにプロポーズしてOKされたんですよ。順序から言うと、涼宮さんがプロポーズして、あなたがOKしたというか」 なんて言いながら、クスクス笑う古泉。 今のお前相当キモイ悪いぞ。 fin
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/200.html
ハルヒ「なに!?なんなのこれ?ちょっとキョン? 来なさい!3秒以内!!」 インターネットサーフィンをしていたハルヒが突然騒ぎ出した。やれやれ。 キョン「お前ももう少しパソコンの使い方覚えろよ・・・ って!なんじゃこりゃあ!!!!」 俺は思わず叫び出した。 パソコンがフリーズしたかと思ったら、なんとそこに画面いっぱいに朝比奈さんのメイド服と、長門のカメラ目線のアップと、ハルヒの指をこちらに向けて踊っている写真がポップアップで出ていたのである!! 朝比奈さんが万が一自分のこんな写真が全世界に流れていると知ったら、おそらく卒倒してしまうであろう。 キョン「ウイルスだな・・・しかし何だってこんな― 長門 「見せて」 カタカタカタカタ・・・ 長門 「行ってくる」 キョン「オイ行くってどこに!?待て!」 長門 「すぐそこ」 そう言うと、長門は部室を出て行ってしまった。 うーん。なにが分かったのだろうか。 直後、隣の部屋から声が聞こえてきた。 「いらっしゃい。あ!長門さん!待ってたよ!」 『ドカーン、バゴーン、ズガーン!!』 「長門さん!?止めてくれ!」 『ドガーン!』 「済まなかった!あやまr」 『ドーン!』 「ごめんなさいごめんなさいごめんなs」 『ドカーン!』 コツ、コツ、コツ。 長門 「ただいま」 キョン「よう、早かったな。久々のコンピ研はどう だった?」 長門 「ユニーク・・・」 ―翌日― コンピ研が無期限活動停止処分になったのは言うまでも無い。 涼宮ハルヒのウイルス 完
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1055.html
第三章 7月7日…とうとうこの日が来てしまった。 俺は何の対策も考えていない。 何かいい考えは無いかと考えている間に午前の授業が終わった。 昼飯は一年の時と同様谷口や国木田と食べている。 卵焼きを突いていた谷口がこんなことを言い出した。 「涼宮って去年の7月7日おかしくなかったか?俺学校の帰り道で東中の前通るんだけどさ、 俺去年の七夕の日学校が終わってゲーセンによってから帰ったんだ。たしか8時ごろ、 東中の前を通ったら涼宮が校庭でずっと立ってたんだ、しかも雨が降ってたのに傘もささずに。あれなんか意味あるのか?あいつのやることはやっぱよくわからん。」 「ふ~ん、そうか」俺は平然を装った。なんとなく動揺しているのを見られるのはまずい気がした。 心の中では適当に済ませばいいなんて考えていた俺をもう一人の俺が殴っていた。俗に言う心の中の天使と悪魔と言うやつである。 そして悪魔のほうが天使にぶっ飛ばされたわけだが、天使が勝ったところでどうにかなるわけでもなく俺は途方に暮れていた。 午後の授業もあっという間に過ぎ、とうとう部活の時間だ、今日だけはあいつと顔を合わせたくないのだが行かないほうがめんどくさいことになる気がするので文芸部室へと足を運んだ。 すると足取りが重かったせいか俺が部室に着く時には全員がそろっていてハルヒが嫌な笑みを浮かべた。 この瞬間俺は背筋が凍りつくような寒気を感じた。 このときの俺はこれから何が起こるかなんて知るよしも無かった。 ハルヒは全員がそろったと言うことでこう言った。 「今日は七夕で不思議も油断しているかもしれないわ!今日はこれから久しぶりに市内探索しましょ!!」 なんだって?最近驚いてばかりってのに驚きだ。市内探索?今から? 実は今までに5回市内探索が行われたのだが、結局一度もハルヒとなることは無かった。 そしてハルヒは例のごとくどこにしまっていたのか爪楊枝を取り出し例のごとく俺たちは爪楊枝を引いた、 そして驚いたなんと俺とハルヒがペアになっていたのである。 その瞬間明らかに長門、古泉両名の顔が明らかにゆがんだ。 ハルヒは言った。「何であんたとペアなのよ。まあいいわ、足手まといにならないようにしなさいよ!」いかにもハルヒらしい発言が聞けて俺は安心した。 「わかってるよ。」そう言い返しておいた。俺はなんかうれしいかった、それが何故かはわからないが。 そして夕方5時過ぎに俺とハルヒは学校を出た、そして行くあてはあるのかと聞いてみたするとハルヒは当然のように「東中。」 俺はそうか何しに行くんだ?とわざと聞いてみた。 するとちょっと怒ったように「あんた昨日の話聞いてたの?あたしは人を探しているのよ!」と答えるハルヒ。 俺は何故か行ったらまずい様な気がした、しかし断る理由も無く、思いつきもしなかったため「冗談だ、なら急ごう」そう言ってハルヒの前を歩いた。 北校から中学まで30分ほどで着いた。着いたはいいがまだ部活やら補修やらで残っている生徒がいるようだこれでは中に入れない。 「どうする?ハルヒ。」と聞いてみる。 「そうね、今入るのはまずいわねどこかで時間を潰しましょう。近くにちょうどいい公園があるわ、そこに行きましょう。」 あの変わり者のメッカか…こいつも好きらしいな断る理由も無い。 「わかった。」と答えた。 公園に着くと二人でベンチに座った。傍から見れば完全にカップルだ。 お似合いに見えるかは置いといてだな。 「だいだい8時ぐらいまでは待ってなきゃだめだろうな。」と俺。 「そうね、後2時間ぐらいね」とハルヒ。 「なんか話しでもするか。」 そして俺たちはしゃべり続けた。 新しいクラスがつまらないこと、朝比奈さんのコスプレ衣装の希望、これからのSOS団の活動内容について、新しい担任がむかつく事 そしてあっという間に2時間が過ぎた。 ハルヒが時計を確認し「そろそろ時間よ、行きましょう」そして後についていく俺。 学校に着くとさすがに真っ暗で携帯のライトで周りを照らした。 そしてこの後俺は信じられない光景を目の当たりにする ハルヒがライトを向け俺の名前を呼ぼうとしたときだ。 「キョ… 涼宮ハルヒがいきなり倒れたのだ、俺は焦った。 こんなに焦ったのはハルヒが消失しちまったとき以来だ。 焦りながらも俺は古泉に電話を掛けた、後から考えればナイスな判断だったと思う。 「古泉!!ハルヒが倒れた!!!!」 「どうしました落ち着いて下さい。」 「北校でハルヒが倒れたんだよ!!」 「わかりました15分…いや10分で向かわせます。」 「わかった。早くしてくれ」 こんな感じだったと思う、あまり覚えていない。 たぶん10分ぐらいで救急車が着たんだろうが俺には3倍ぐらい長く思えた。 そして機関御用達の病院にハルヒは検査入院ということで入院した 第四章
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3580.html
・涼宮ハルヒの決闘王国 ・涼宮ハルヒの決闘王国2
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/824.html
ここは文芸部部室こと我らがSOS団の溜まり場だ 朝比奈さんは今日もあられもない姿で奉仕活動に励み、長門は窓際の特等席で人を殺せそうな厚さのハードカバーを読んでいる。 俺はというと古泉と最近お気に入りのMTGを楽しんでいた――ちなみに俺のデッキは緑単の煙突主軸のコントロール、古泉は青単のリシャーダの海賊を主軸にしたコントロールだ――ここ最近は特に目立った動きもなく静かな毎日を送っていた。 ……少なくとも表面上は。だがな。 何故こんな言い回しをするかって?正直に言おう。オレ達は疲れていたんだ。ハルヒの我が侭に振り回される毎日に。 そりゃ最初のうちは楽しかったさ。宇宙人、未来人、超能力者と一緒になって事件を解決する。そんな夢物語のような日常になんだかんだ言いながらも俺は胸を踊らせたりもした。 だって、そうだろ?宇宙人と友達になれるだけでもすごいのに未来人や超能力者までもが現実に目の前に現れて俺を非現実な世界に連れていってくれるのだ。まさに子供の頃の夢を一辺に叶えたようなものだ。 これをつまらないと言う奴はよほど覚めた奴か本当の意味での大人くらいなものだろう。 そして俺は本当の意味での大人ではなかった。だからなんだかんだと文句を言いながらも心の底から楽しむことができたのだ。 では何故冒頭で否定的とも取れる意見述べたか?理由は単純、ハルヒの我が侭がオレ達のキャパシティを大きく上回ったことにある。 例えば閉鎖空間。SOS団を結成してからというものその発生回数は減ったもののその規模が通常のそれより遥かに大きくなったのだそうだ。 しかもその原因のほとんどが俺にあるというから責任を感じずにはいられないね。 そして俺に最も精神的苦痛を負わせた事件がある。それはこんな内容だった。 それは些細なことで始まったケンカだった。あの時は俺が折れるべきだったのだ。 悪いのはハルヒだからハルヒが謝るべき。 なんてつまらない意地を張らずにハルヒに土下座をして許しを請うべきだった。 しかしあの時の俺は強気だったしバカだった。 あろうことか俺はハルヒにお前が長門や朝比奈さんを少しは見習って女らしさというもをうんたらかんたらと説教を始めてしまった。 それがいけなかった。 前々から俺と長門の関係を怪しんでいたハルヒは激昂し、「なんでそこで有希が出てくるのよ!!」と怒鳴ると怒って帰ってしまったのである。 朝比奈さんはおろおろと怯え、長門は無表情だがどこか責めるような目線を送ってきた。 そしてこの件について一番の被害者になるであろう古泉はいつもの0円スマイルではなくまっこと珍しいことに真顔だった。 真顔の古泉が怖くて仕方なかった俺は古泉に平謝りしその日は解散となった。 明日ハルヒに謝ろう。そうすればまたいつも通りのSOS団が帰ってくるさ。俺はそんなことを考えていた。 だから翌日昼休みに消耗しきった古泉に呼び出されたことに少なからずも俺は動揺していた。古泉のあんな顔を見るのは始めてだった 「昨夜閉鎖空間が発生しました」 「そうだろうなあ…いや本当にお前には迷惑をかけた。すまんこの通りだ許しくれ!」 古泉は気にしてないと言わんばかりに微笑し淡々と話しを続けた。 「僕よりも涼宮さんに謝ってあげてください。なんせ昨夜の閉鎖空間の規模は今までの比ではなく我々《機関》だけでは対処できずに長門さんの勢力に協力してもらいやっとのことで鎮めることができたのですから」 古泉は淡々と話す――本当にすまん 「そして我々《機関》の中から始めての犠牲者もでました。あなたもご存知の新川さんが森さんをかばいが殉職しました。その森さんも背骨を折られ車椅子生活を余儀なくされました」 俺は絶句した。そりゃ人はいつか死ぬのだ。その事実は受け止めなければならない。 しかしこんなかたちで知人の不幸を知らされるとは夢にも思っていなかったからである。 真夏だというのに小刻みに震え、冗談だよなと言う俺を見て古泉は首を左右に振り否定。 また微笑し淡々と話し始める――なんでそんなにあっけらかんとしているんだよ…いっそのこと罵利雑言を浴びせ思いっきり殴ってくれ… 「僕は、僕達は別に貴方を責めているわけではありません。貴方はただ巻き込まれただけの一般人ですからね。ですが貴方の軽率な行動が簡単に僕達の命を刈り取ってしまう…この事実を忘れないでください。 では、後ほど」 そういって古泉は教室に戻っていった。 俺はというと食堂で昼食をとっていたハルヒに詰め寄り恥じも外聞も捨て泣きながら土下座した。 この時ばかりは周りの視線が気にならなかった。それくらい俺は焦っていたんだ。 とまあ、こんなことがありしばらく俺は古泉よろしくハルヒのイエスマンに成り下がっていたのだがこれにもちょっとしたエピソードがある。 なんでもかんでもはいはい肯定する俺にハルヒが不満を持ったのである。本当に難儀なあ、奴だこいつは… 古泉曰く俺は否定的立場を取りつつも最後にはハルヒを受け入れる性格でないといけないらしい。つまり新川事変(朝比奈さん命名)以前の俺だな。 新川事変以来ハルヒにビビっていた俺には無茶な注文だったがまた下手に刺激して閉鎖空間を発生されても困るので努めて俺は昔の俺を演じることにした。 おかげで自分を欺く術に異様にたけてしまった。全く嬉しくないネガティブな特技である。 ついでなので俺の肉体に最も苦痛を与えたエピソードもお話ししよう。 その日はいつものように文芸部部室で暇を持て余していた俺は古泉指導のもと演技力に磨きをかけていた。 そこに無遠慮なまでにバッスィィィィィン!!とドアを蹴破り現れたのは我らが団長涼宮ハルヒその人である。 ハルヒは何か悪巧みを思いついた時に見せる向日葵の様な笑顔――俺にはラフレシアの様な笑顔に見えたのは秘密だ――で開口一番 「アメフト大会に出るわよ!」 と、宣った。せめてビーチフットにしていただきたかったぜ。 大会はいつなんだ?という問いに満面の笑みで 「明後日よ!!」 と答えるハルヒ。まったくこいつは…… 「無理だ。アメフトのルールは野球とは違って複雑だぜ?」最初は否定的立場にいながら―― 「大丈夫よ!図書室でルールブック借りてきたしいざとなったらあんたの友達の中川くんに助っ人になってもらえばいいわ!!」 俺はハルヒの持ってきたルールブックにいちべつし、軽いため息を吐くと 「“中河”だ。わかった…中河には俺から連絡しておくさ」 ――最終的にハルヒの我が侭を受け入れる。どうだ?完璧な演技だろ?アハハハハっ、よし、今日も古泉にレキソタンわけてもらおう。 以外と効くんだ。アレ。 中河にアポを取り、快く承諾してくれた中河に感謝しつつ決戦当日である。 ちなみにハルヒが借りてきたルールブックとはアイシールド●1である。 いっそ事故かなんかで死んでくんないかなあ、あいつ。 試合内容は散々たるものだった。 相手チームが原因不明の腹痛を訴え棄権したり交通事故で棄権したり実家が燃えて人数が足りないチームと戦い、とうとう決勝戦である。 彼らには悪いがこちとら世界の命運がかかっている。多少の犠牲はつきものと割り切って試合に挑もと思う。 ここでとりあえず我がチームの選手とポジションを紹介する。 まずはラインの谷口、国木田、コンピ研部長、ランの俺とハルヒ、クォーターバックの長門、なんでも屋の古泉、その他雑用の鶴屋さん、朝比奈さんに妹 そしてリードバッグ(ボール持った奴を守るポジションらしい)の経験者中河だ。 これで優勝を狙ってるんだから正気の沙汰じゃない。本当に志しなかばで散っていった方々のご冥福を祈る。 いい加減まともに試合が出来ていないことにハルヒがイライラしてきたのでこの試合は小細工無しの真っ向勝負だ。 オレ達は経験者中河の指示にしたがい順調に点差を広げられていった。 ちなみに中河の提出した作戦は「いのちをだいじに」だ。 さすがの中河もまさか女子供と混じってアメフトをするとは夢にも思わなかったのであろう。 いろんな意味でアップアップだ。 そんな時に限って古泉の携帯が鳴り、長門は空を睨み、朝比奈さんは耳を澄ましてやがる。あぁ、忌々しい…
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5652.html
今日は暖かい空気に包まれた2年生になってはじめての5月。 別に変わらないと思うかも知れんが、俺にとってはとてもいいことなのだ。 なんといっても、ハルヒが大人しく、何も暴走しないにもかかわらず、ご機嫌なのだ。 俺の顔を見るなり「おはよっ!今日から5月ね。気合入れていくわよ!!」というものの、何も起きない。 しかし、この後、俺が想像もしなかった事態になっていたことを知らされることとなった。 部室に行くと、そこには長門は居なく、別の奴がいた。 古泉一樹。自称、超能力者。 コイツだけとは珍しい。なにか企んでいるかのような笑みを浮かべている。 「お待ちしておりましたよ」 「何の用だ?また、ハルヒ絡みか。手短に頼むぞ」 「幸いです。僕も手短に済ませて置きたいことなので」 なんだ。もったいぶらずに言え。 「これは失礼。あなたにとってこれがいいことかは分かりませんが」 だからなんだ。気になるから焦らすな。 「実はですね。僕たちの力が少しずつ、使えなくなっているんです」 どういう意味だ? 「僕たち『機関』の方々の数名が閉鎖空間に入れなかったり、また入れたはいいものの、力が使えない、と言う人が続出してるんです。どういう意味か分かりますか?」 正直に言う。さっぱり分からん。力が使えなくなっただ?ハルヒが超能力者がいないものと本当に信じてしまったのでもいうのか? 「理解できてるじゃありませんか。その通り。彼女はもう信じていない。または、半分以上信用していない、ということです。使えないのは超能力者だけではありません。多分、長門さんや朝比奈さんもそうです」 「ちょっと待て。それは矛盾してないか?朝比奈さんがタイムスリップできなくなったら、未来の朝比奈さんは実在しないぞ。つまりだ、この場所で会った大人の朝比奈さんは居なくなるのか」 「いえ、その心配はありません。朝比奈さんの使っているタイムスリップシステムタイム・プレーン・デストロイド・デバイス、略してTPDDは未来に涼宮さんではない方が造られているので、TPDDの使用許可さえすれば、使わせてもらえるはずです。出来なくなるのはおそらく未来との連絡。つまり、連絡できる間に朝比奈さんは未来に帰らなくてはならないということです」 つまり、朝比奈さんが元居た時間対に俺たちからすると未来に帰るのも遠くない、ということか。 「そういうことです」 じゃあ、長門は? 「長門さんは統合思念体との伝達が出来なくなる恐れがあります。それか…」 「それか、なんだよ」 俺がそういったとき、調度いいタイミングで長門が入ってきた。 聞くに聞けない状況だ。 朝比奈さんが未来に帰り、長門がどうなるんだ? そういえば、大人バージョンの朝比奈さんと初めて会ったとき、久しぶりといっていてな。それはひょっとしたらこれが原因で帰らなければ為らなくなったんじゃなんだろうか… その後、ハルヒが掃除当番で遅れながら来た。 「あれ?みくるちゃんは?」 知らん。俺が来たときも居なかった。 「先程いらして今日は用事があって来れないと言っておくように言われました」 「そうなの。ま、いいわ。お茶は私が酌むわ!」 大丈夫なのか、という心配を抱きながら俺はまたさっきのことを考えていた。 そのとき、俺の携帯が鈍く唸った。思わず叫びそうになった。 メールが届いただけだが、そのメールを見てどれだけ驚いたか。 「すまない。俺はもう帰る」 「なんで?」 「おふくろからだ。直ぐ変えるようにと書いてある」 「ホントに?ま、いいわ。直ぐ帰りなさいよ」 俺は部室を後にした。 実はおふくろからというのは噓だ。 メールの送り主は光陽園駅前公園で待っていた。 「いきなりどうしたんですか?朝比奈さん」 そう、呼び出されたのは朝比奈さんになのだ。 「あの、話したいことがあるんです…えっと、禁則事項とかあるからあんまり分かりにくいと思うけど…」 「大丈夫です。それは理解の上です」 「良かった。で、本題なんですけど…私、未来に帰らなくてはならなくなってしまいました」 恐れていた事実に俺はただ愕然とすることしか出来なかった。 「上司からの命令なの…えっと、涼宮さんがなんていうか未来人を信じなくなって、いままでできた禁則事項の交換?見たいなのが出来なくなってしまうそうなんです。でね、禁則事項が普通に言えるようになってしまうんです。それだとこちら側からすれば歴史を変えることに繋がってしまうの。だから、後もう少しの間で電波が持つか持たないかって感じで、だから禁則事項が禁則事項なんです。ごめんね、わからないよね。でも、ここに居られるのもあと少しみたいなの…」 悲しそうに言う朝比奈さんを見て、ハルヒは何を考えてやがると思った。 「それだけです。ホントにいきなりでごめんね。じゃあまた明日部室で」 俺はくたくたになりながら家に帰った。 まさかこんなことになるとは思わなかったしな。 二人が言ったことがほとんど一致してしまう。恐怖とも言える。つまり、あと一人からもこんな話が… そう思いながら鞄を開けると何か紙切れのようなものが落ちたのを感じた。 見るとそれは栞だった。そこには手で書いたとはとても思えない字で『今日 午後7時 私の家に』と。 普通に考えれば誰かなんてわかんないだろが、俺にはわかる。 午後7時。俺は見慣れたマンションの見慣れた部屋に居た。 「………」 「で、何の用だ?」 もう分かってるさ。もう3回目だぜ?これでわかんないのは谷口ぐらいだ。 「上手く言語化できない。情報の伝達に齟齬が発生するかも知れない。でも、聞いて」 その前ぶりを聞いたのは1年前ぐらいか。もう1年経ったのか。俺もアレから少しは変わったな。もちろん、こいつも。 「私は、今、ここにいる。でも、もうそれも長くない。涼宮ハルヒが宇宙人の存在を信じなくなったから。私の使命は涼宮ハルヒを観察し、入手した情報を統合思念体に報告することだった。でも、伝達するのも今は限界が来ている。惑星表面にあった情報フレアも観測できなくなった。ここに不思議なことが起こることはもうないと思われる。あなたとの会話も統合思念体からの命令でしているが、それすらも出来なくなっている。地球上にいる有機生命体は100人以上がその犠牲となっている。そして統合思念体が出した結論。有機生命体の回収。私たちを回収し、涼宮ハルヒの観察を終わりにする。私はもちろん、喜緑江美里も回収される。朝倉良子のとき同様、我々は光となり、この世から身を引く。私たちの存在を知っている人には統合思念体が情報操作を行い、転校したことになる可能性もあるが、比較的高度な確率で私たちが地球人類にナノマシンを注入し、記憶を綺麗に忘れさせる方法の2種類ある。どちらにせよ、私たちはこの世から消え去る」 随分でたらめな話だ。なんだよ、それ。結局俺はかやの外か。 「ちがう。あなたは涼宮ハルヒにとっての鍵。それだけは変わらない。この突然改変もあなたが原因となり出来た」 俺が犯人なのか?俺は普通の人間だぞ?変わったことは何もしていない。 「私もそれは分かっている。ただ、問題なのは涼宮ハルヒ。彼女はあなたという存在に好意を示している。 「はあ?あいつが、俺に?馬鹿をいえ。あいつは恋愛感情なんて精神病の一種だと思ってる奴だぞ?それを今更。しかも何で俺」 「彼女はちょっとしたことでも感じてしまうほどデリケート。だからちょっとしたあなたの優しさでも恋愛と感じとってしまうほど」 俺があいつに優しく?冗談はよせ。 「冗談ではない。あなたは彼女のご機嫌を損ねてはならない。特大な閉鎖空間が発生し、そこに閉じ込められる恐れがある」 そういえば、前にもそんなことがあったな。 「私も出来る限りの全力を出して手助けする。あなたの望みなら私はそれに従う。それが私の最後の使命」 そうか…なんでもいいのか? 「いい」 「じゃあ。明日、ポニーテールで登校してきてくれないか?」 「私の髪型ではポニーテールは困難」 「なんでもするんじゃなかったのか?」 「…分かった。実行してみる」 俺のわがままを聞いてくれてありがとよ、長門。 「別に構わない。コレが最後の望みにならないように」 そういって俺は長門の部屋をあとにした。 次の日の放課後。俺は真っ先に部室に向かった。 ドアをノックしても応答がない。 部屋に入ると長門がいつもの場所で読書していた。髪型は昨日の俺がリクエストしたポニーテールで。 「長門、良く似合ってるぞ」 長門は何も答えなかったが、嬉しそうな雰囲気だった。 「あら、キョン。もう来てたの。今日はやけに早いわね。あら?有希。今日はポニーテールなんだ。そうだ!」 そういうと俺を廊下に追っ払い「いいって言うまで入ってきちゃ駄目よ」と言い残して部室に入った。 すると、朝比奈さんと古泉が並んでやってきた。なんでそんな組み合わせなんだ? 「そこでばったりあったんですよ。昨日あなたにいった情報を交換したかったですしね」 そうか。 「キョンくんはなにしてるの?涼宮さんがお着替え中?」 「さあ。俺もさっぱりで」 すると、部室から「もういいわよ」という声が聞こえた。 ドアを開けて驚いた。 着替えていたのはハルヒではなかった。 いつも朝比奈さんが着てるメイド服をポニーテールの長門が着ていたのだ。 すると、取り繕った笑みを浮かべて古泉が 「わあ。長門さん凄くお似合いですよ」 「でしょ?可愛いでしょ?たまにはこういうのもいいわよね。みくるちゃんは今日は着替えなくてもいいわよ」 機嫌よくいうハルヒに朝比奈さんは嬉しそうにしていた。 「有希って背小さいし、顔整ってるしで萌え的にはいい素材なのよね。それに今日はポニーテールだし完璧だわ!」 と、いうなり長門にお茶を運ばせるように命令した。 順番にお茶を配っている長門をみると、表情が変わらなくても、内心では緊張していたのかもしれないと思う。 「お茶…どうぞ」 俺にそういってお茶を渡すと元の場所に戻ってまた本を読み始めた。 なんか変な感じだな。無表情兼無口の長門と癒しキャラである偽メイド朝比奈さんが入っているので長門兼朝比奈さんになっている。そこに黄色いカチューシャを着けて団長と書いてある腕章をつけたら長門兼朝比奈さん兼ハルヒになってこれまた厄介なことになりそうだな。 その帰り、ふと古泉に尋ねた。 「なあ、古泉」 「なんでしょう」 「ハルヒがこの状況を作りあげたのなら元に戻る方法もあるんじゃないのか?」 「あるにはあります。でも、とても困難です」 「どうやるんだ?」 「そうですね…涼宮さんはあなたを好いていらっしゃる。ならば閉鎖空間であなたが本当に好きな人を告白してみればいいのですが、いまの涼宮さんが閉鎖空間を生み出すのは困難に近いんです」 まてよ…昨日、長門は機嫌を損ねると閉鎖空間が出来るといっていた。そして閉じ込められると。それと今の話。 「なんとかなるかも知れないぞ。明日、早速実行だ」 「あら?有希だけ?」 ゆっくり頷く長門。俺は今掃除用具入れの中に隠れている。ちなみに古泉は窓の外の足の踏み場が少ししかない場所。 朝比奈さんはホワイトボードの後ろに椅子を置きその上。ハンガーラックで調度いい具合に見えない。 「有希、今日はポニーテールじゃないんだ」 反応しない長門。 「ん。何?私を虐めてるの?有希」 すると、長門は本を閉じ、新しい本を出した。 「もう。私、帰る」 そういうと怒ったようにドアを閉めた。 「長門。ホントにコレでいいのか?」 「いい。これで今夜閉鎖空間が現れる」 夜俺が眼を覚ましたのは部室だった。 「キョン、やっと起きたの…またここよ。もう、この時期は変な夢を見るのよね」 そうかい。俺は夢じゃないのくらいわかる。 「キョン?どうしたのよ。変よ」 ま、きにするな。 「気になるわよ!…ま、いいわ。夢のあんたも変わり者ね」 「お前にだけは言われたくないね」 「そう。ね、ねえキョン。ちょっと外に出ない?」 そろそろくるか、古泉の言っていたことが。 「あ、あのね。夢のあんたにいうのもその、なんなんだけど…私、言える自身がないから、あんたにいうわ」 なんだ、このハルヒは。本当にハルヒか?不気味だ。 「あ、あ、のね。私、ね。アンタのことが」 そういうハルヒは俺の肩に手を置いていた。そんな俺はその手を掴んで、言い返した。 「ハルヒ、俺も言いたいことがあるんだ」 「え…?」 「あのな、俺実は…」 夢から覚めた俺は気分がすっきりしていた。 俺は迷惑だと思ったが、長門に電話した。 「…」 「長門か?あのさ、世界変わったか?」 「変わった。必要以上に・・・」 そうか。しかし何が必要以上に変わったんだ? 「・・・秘密。あえて言うならアナル。」 「なあ。ひとつ頼みがあるだが…」 次の日。 俺はまた忍足で部室へ向かった。 「ん?あら、キョン。遅かったじゃない。今日は古泉君がコスプレしてるんだからね」 古泉はいつもの場所で微笑んでいた。今日は映画で使った超ミニスカのウェイトレスの服だった。さらにツインテールだった。 「ねぇキョン」 「なんだ?」 「キョン、実際問題誰が好きなの?」 んなもんいない。強いて言うなら朝比奈さんだな。あのお方こそ目に入れても痛くないというものだ。 「ばかじゃないの」 馬鹿で結構。今は何言われても頷ける。 すると長門と朝比奈さんが入ってきた。またこのコンビか…朝比奈さんは少し涙目になっていた。 「みくるちゃん?泣いてるの?」 「い、いえ。違います。欠伸しただけです」 「そう。それよりキョン。あんた昨日なんで来なかったの?」 「行かなかったのは俺だけじゃないだろ?」 「責任者はあんたよ!!」 「何でだよ」 「何でもよ!!」 俺たちが言い合いをしてるときだった。 「ふふ」 微かだが笑い声が聞こえた。 その声の持ち主はハルヒでも朝比奈さんでも長門でももちろん俺でもない。 古泉が控えめに俺のアナルを見つめてた 「古泉?」 そういったかと思うといきなり満面の笑みを浮かべて 「古泉君がキョンを襲ってるわ!!」 そうだな、俺はそういって襲ってくる古泉から逃げていた。 昨日コイツに言ったのは間違えだったか? でも、朝比奈さんだといっても間違いじゃないんだしな。これでよかったんだ。 昨日俺が放った言葉。 俺は―――古泉以外のSOS団全員が好きだ。 ♪お・わ・り♪
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3079.html
キョンの病欠からの続きです …部室の様子からもっと物が溢れ返ってる部屋を想像したんだが…。 初めて入ったハルヒの部屋はあまり女の子らしさがしないシンプルな内装だった。それでも微かに感じられるその独特の香りは、ここが疑いようもなく女の子の部屋なのだと俺に認識させてくれた。 「よう、調子はどうだ?」 「……だいぶ良くなったけど…最悪よ」 …どっちだよ。 ハルヒは少し不機嫌な表情でベッドに横になっていて、いつもの覇気が感じられなかった。いつぞやもそう思ったが、弱っているハルヒというのはなかなか新鮮だな。 「ほら、コンビニので申し訳ないが、見舞いの品のプリンだ。風邪にはプリンなんだろ?」 サイドテーブルに見舞いの品を置くと、ハルヒはそれと俺の顔を交互に見つめて訝しげにこんなことを言ってきた。 「……あんた、本当にキョン?中身は宇宙人じゃないでしょうね?あたしの知ってるキョンはこんなに気が利かないわよ?」 弱っていても失礼な奴だな、お前は。俺にだってこの程度の気遣いは出来る。 「…ま、昨日は世話になったからな」 実際、熱にうなされ苦しんでる時にハルヒの存在にどれだけ救われたことか。あと、その風邪を移したのはほぼ間違いなく俺だろうしな。 そう思うと俺は何かせずにはいられない気持ちになってしまい、その素直な感謝の気持ちが俺に自分らしくない台詞を口に出させていた。 「何かして欲しいことあるか?宇宙人を連れてこいとかいう難題以外なら、今日は素直に言うことを聞いてやろう」 俺がそう言うとハルヒは黙ってしまった。時計の秒針の音だけがカチカチと部屋に流れる。 そろそろ沈黙が痛くなってきて、俺が自分の台詞を後悔し始めた頃、ハルヒは絞り出すように少し震えた声でお願いを口にした。 「…………手」 「ん?」 「……昨日みたいに手を握りなさい」 「ああ…」 差し出された右手に俺も右手を重ねる。……素面でやると結構恥ずかしいもんだな。 ハルヒの熱が伝わったのだろうか?俺の顔も熱くなってきた。きっとハルヒの手が熱いからだ。うん、そういうことにしておいてくれ。 「……あと、頭撫でなさい」 ……そんなことを命令口調で言っても威厳はないぞ? 「……早くしなさいよ」 恐る恐る手を伸ばし髪に触ると、ハルヒは一度ビクッと強張ったが、その後はおとなしく髪を撫でられていた。 そうしてさわさわと撫で続けていると、ハルヒはくすぐったそうに目を細めていたが、少し無理をして起きていたのか、1分もしない内に眠りの世界へと落ちていった。 どのくらいそうしていただろうか?目の前のハルヒからはスゥスゥと規則正しい寝息が聞こえてくる。 黙っている時のハルヒは反則的なまでに可愛く、それがまたあどけない寝顔なのだから、じぃっと見ていると妙な気分になってくる。 いかんいかんと頭を振りながらも、俺はどうしてもハルヒの寝顔から目を離せずにいた。 今までこんなに穏やかに、じっくりと、しかも本人の目の前でハルヒについて考えたことはなかった。 だからだろうか?その事実に気が付いてしまい、そして驚くほどすんなりとそれを受け入れることが出来たのは。 俺はなんだかんだでハルヒのことを憎からず思って…いや、むしろ積極的な好意を持っている。 「……そうか、俺はハルヒのこと好きだったんだな」 それを言葉にして口に出してみると、急に落ち着かなくなり恥ずかしさが込み上げてきて、俺はハルヒが起きる前に帰ってしまうことにした。 椅子から立ち上がり鞄を手に取ろうとした時、俺はハルヒの額に浮かんでいる汗の存在に気が付いた。 …クソ、気になっちまった。 ハルヒの穏やかな寝顔に似合わないその汗がどうしても許せず、気が付くと俺は枕元のタオルを手に取っていた。 ハルヒの額の汗を丁寧に拭うと、シミひとつない白い肌が露になる。純粋に綺麗だな…と思っていると、ハルヒは不意に俺の名前を呟いた。 「……ん…キョン…」 「…………」 チュッ …………待て、俺は今何をした? 俺の唇に残るほのかな温もりは間違いなくハルヒのそれであり、ハルヒの額に残る微かな赤みは間違いなく俺が付けたそれだった。 要するにキスだ。キス?額にとはいえ俺がハルヒにキスをしたのか? ぶわっと今度は俺の額に汗が浮かんでいくのを感じる。ハルヒの寝息が聞こえなくなるほど心臓の音は大きくなっていった。 俺の頭に窓から逃げようという意味不明な選択肢が浮かんだ瞬間、ハルヒは静かに目を覚ました。 「……ん」 ゆっくりと、ハルヒの目が開いた。 ヤバイ、怒鳴られる。いや、むしろ殺される。 上がりっぱなしの心臓の回転数は今にも限界値を突破しそうだった。 宇宙人でも未来人でも超能力者でもいい、自業自得なことも分かってる、それでもお願いだ。時間を1分前に戻してくれ! 「……あ…今少し眠ってた?」 …気が付いてないのか? 「…え?あ、そうだな、10分くらいかな?」 …気付かれなかったことにほっとした反面で、少し残念に感じるこれはどういった感情なのだろうか? こちらの動揺をよそにハルヒは俺をじっと見つめ、なにげない一言で止めを刺した。 「今日はありがと、キョン」 「…ッ…」 その素直な感謝の言葉が胸に刺さり、心臓が止まりそうなほどの罪悪感が俺を責める。こんな気持ちになるのなら、いっそのこと気付かれて公開処刑されたほうがまだマシだ。 脳内裁判にて裁判長・長門が俺に有罪を言い渡したところで、目の前に予期せぬ逃げ道が現れた。 「…ふゎ…まだ眠いからもう少し眠るわ」 「あ、あぁ、眠いなら寝たほうがいいぞ、うん。なんせ風邪だからなっ」 自分でも不自然だと思える早口に俺の動揺は更に深刻なものになっていき、それがとんでもなく卑怯な行為だと理解しつつも、俺には真実を語らずに逃げ帰るしか、自らを落ち着かせる術はなかった。 「じゃ、じゃあ、俺は帰るな!また明日っ」 バタン! 転がるようにハルヒの家から出ていくと、外は既に暗くなり空には綺麗な月が浮かんでいる。 ふとハルヒの部屋を見上げると、まだ眠ると言ったはずのハルヒがこちらを見下ろしていた。 何か言っているような気がしたが聞き取れるはずもなく、俺は明日からどんな顔でハルヒに会えばいいんだろう?と思いつつ、逃げるように家路に着いたのだった。 「……どうせなら口にしなさいよ、馬鹿キョン」 End
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1085.html
第四章 これが、ハルヒの夢。 俺の目の前には、360°不毛の大地が広がっている。 上には、全てを焼き尽くすような太陽。あいつの夢にしては、何と殺風景なのだろうか。 そういえば、長門は、「夢の中は、涼宮ハルヒの思念を反映し易い状況である。」とか言ってたな。 つまり、ここではハルヒの願い事は、ほぼ全て叶うという事だ。 この灼熱の空間もあいつが生み出したのか?閉鎖空間よりタチが悪い。 神人は出ないだろうが、長門とは違う、ハルヒの想像通りの宇宙人が出てもおかしくはないな。 ウダウダ考えても仕方ないので、俺は歩き出す。とりあえず、ハルヒを探さねば……… だが、何処へ行けば良いのか分からない。目的のハルヒの位置も分からなければ、入口も出口も無い。 周りは全て同じような光景。 あてもなく、しばらく歩く。 「暑い、暑すぎる。」 独り言が勝手に出てくる俺は末期なのだろう。ほら、蜃気楼で周りが歪んで見える。 おや、そろそろ、お迎えが来たようだ。上から天使が降ってくる。 テ●ドンもびっくりのもの凄いスピードで。 ………降ってくる? 「どいてどいてー!!」 そんな事言われても、避けれる訳が無い。 「ぎゃっ!!」 痛ってーなこの野郎。 「ひっ!?キョン?」 やっと会えた。 「よぉ、ハルヒ。」 「ち、近づくなー!!」 ハルヒはふらふらと逃げ出す。 「待てよ!!」 俺は力を振り絞って、ハルヒにタックルをする。 「う゛うぅぅぅ。」 ハルヒは地面に顔をぶつけたようで、かなり痛がってた。 「悪い。大丈夫か?」 「大丈夫な訳無いでしょ!!バカキョン!!」 逃げ出すお前が悪い。 「だって、それは…」 それは何だ? 「あたしがあんたを殺そうとしたから。」 バツが悪そうに、ハルヒはポツリと漏らす。 「ごめん。」 「全く持ってお前らしくない言葉だな。」 「本当にごめん。」 「ごめんは禁止だ。」 「何であたしがあんたに従わないといけないのよ。」 申し訳ないと思うなら黙ってて欲しい。 「分かったわよ!!ところで、ここ何処?あたしがどうしてこんな場所にいるの?」 「夢だよ。夢。」 まさか、長門が俺とハルヒの脳内をリンクした事を俺が説明出来る訳ない。 「ふーん。だったら現実世界は大変なのね。夢が覚めたら、殺人未遂で豚箱入りか………全て失っちゃった。」 「大丈夫だ。多分、俺もお前も無事だ。」 「でも、明日からあんたに会うの辛いわ。」 「俺は何にも思っちゃいないよ。」 「嘘よ。嘘でしょ!!」 激しい口調でハルヒは続けて言う。 「また、あたしに殺されかけたらどうするの? もう、嫌だよ………こんな辛いの。」 ハルヒの瞳は潤んでいた。泣いているのだろうか。 「な、泣いてない!!」 指摘した途端、上着の袖で顔を拭う。やっぱり、泣いているな? 「煩い!!」 分かった。分かったから落ち着け。 「じゃあ、腕貸せ。」 ハルヒは俺の腕を勝手に使い、枕にしやがった。 「少し、休む。」 下が凸凹な地面なだけに、少し痛い。 「少し、落ち着いてきたかな。」 それは、よう御座いました。 「少し冷静になって考えたの。」 「何を?」 「何にせよ、これ以上キョンに迷惑を掛けたくないの。」 今まで、数々の悪行を重ねた奴が何を言う。 「だからさ………」 「あぁ。」 「あたし、死ぬわ。」 「は!?」 その時の俺は相当マヌケ面だったらしい。 ハルヒは急に吹き出した。 あくまで、表面上。目は笑っていない。なんか腹が立った。 おい、ハルヒ。 「ん?何、キョ…」 ハルヒが言葉を詰まらせたのは、俺がこいつの胸倉を掴んだからだ。 「何言っているのか分かっているのか?」 「……当たり前よ。」 「それで誰が喜ぶ?」 「………」 「お前が死んじまったら、何にもなんねぇだろ!!」 「で、でも……」 「俺達には、お前が必要なんだ。」 そうだろう?朝比奈さんや長門、阪中や谷口と国木田のアホコンビとか、鶴屋さんに森さんや新川さん。 その中に古泉も入れてやっても良い。 みんながお前を必要としてるんだ。 そして……… 「今現在、俺はお前が心から愛おしい。」 俺はハルヒを抱いた。力強く、精一杯抱いた。 ハルヒの顔は、見えない。いや、見れなかった。恥ずかし過ぎる。こんなこと。 「やっと、あたしの気持ちに気付いてくれたのね。」 「……カマかけやがったな?」 「バレたか。でも、こうしてあんたを急かさないと、いつまで経っても中途半端なままよ。どうせ夢だし。」 恥ずかしい。 「嬉しい。本当に。」 ハルヒの手が俺の首にかかる。 「ねぇ気付いてた?あたし、あんたに沢山アプローチかけてたの。」 「知らないな。」 「………バカ。」 ハルヒは少し膨れた。その顔も可愛いぞ。 「変な褒め言葉ね。」 変で悪いな。 「あたしね…」 何だ? 「キョンが好き、でも、あんたはいつも振り向いてくれなかった。」 そんなつもりは無かったのだが。 「恋心が憎悪に変わっちゃったのよ。だから、あんなことした。多分。 苦しかったわ。毎日が地獄だった。やっぱり、恋の病は重い精神病ね。」 これがハルヒなりの解釈なのだろう。 こいつは、呪いのナイフの事なんか覚えていないのだ。 それはあくまで、表面上だけだが。 「夢なら覚めないで欲しいな。」 「大丈夫、俺が覚えてるさ。」 「本当?」 「本当だ。お前が願うなら、何でも出来る。」 「信じるからね。」 …………!? 「ハルヒ。」 「ん、何?」 「疲れたろ。」 「まあね、精神的にボロボロって感じよ。」 「お前はよく頑張ったよ。 幾日も悪魔の囁きに耐え、自分の感情をよく抑えられたもんだ。」 「でも、結局負けちゃった。」 「十分さ。だがこれで、お前の重荷も晴れた。だから、今は少し休め。」 「あんたは?」 「俺か?俺はまだ役目があるみたいだ。」 「……大変なのね。」 これが大変で済むのなら、まだ楽な方だ。 「少しだけ、行ってくる。」 「待って!!」 何だ?急にハルヒが呼び止める。 「もし、あんたがこの夢を覚えてたら、あたしに言って欲しい言葉があるの。」 プロポーズの言葉か? あまり、恥ずかしいのは言いたくないぞ。 「似たような物よ。」 そう言いながら、ハルヒは俺に、 ある『愛言葉』を耳打ちをして、送り出した。 「行ってらっしゃい!!」 「ああ、またな。」 「あんたが無事で帰って来るって、ずっと信じるから。」 しばらく歩く。 さて、この位離れれば良いか。 なあ、朝倉さん。 「よく気付いたわね。わたしがいる事に。」 「よく考えれば、出来過ぎた話だよ。」 ハルヒの創造力が、ここまで忠実に具現化する事は、今までに無かった。 ましてや、人々を殺人に巻き込んだなんておかしすぎる。 考えられるのは一つ。 俺の存在を危険視した者がハルヒを洗脳し、殺害を企てた。 それが、お前ら情報統合思念体の急進派だった。 朝倉は表情ひとつ変えずに微笑んでいる。 「そこまで、思索出来のは上出来ね。 だけど、あなたはまだ、この話の真実を知らないみたい。」 真実? 「そう、真実。」 知りたい。ちょっと怖いけど。 「それが、あなたにとって、破滅的な答えだとしても?」 そんなに俺に都合の悪い答えなのか? 「………あら?あと40分位でこの夢が消えちゃうわよ。」 何だと!?長門は? 「ここ」 「僕もいますよ。」 「長門!!どういう事だ?」 「僕はスルーですか。」 「朝倉涼子から、あなたを助ける為、古泉一樹と来た。 だから、涼宮ハルヒを抑える役が居なくなっただけ。」 「キョン君。どういう事か解ったわね。」 「知らん。」 「とりあえず、あなただけは逃げて下さい。」 「掴まって。」 古泉、お前は? 「一人で戦います。」 大丈夫なのか? 「勿論、長門さんがあなたを送ってここに帰って来るまでです。 安心して下さい。それ位は持ちこたえますよ。 ここは涼宮さんの夢。閉鎖空間に似て非なる物です。」 「させない。」 一瞬で周りが宇宙空間の様に変わった。 「わたしの情報制御下に入ったわ。つまり、わたしを倒さないと、逃げれないよ。」 「…まずいですね。僕の力が出せません。」 「わたしがやる。あなたは彼を守って。」 「分かりました。」 俺は? 「黙ってて。」 冷徹な表情でそう言い捨て、長門は宙に浮いた。 朝倉も一緒に浮く。 「さぁ、始めましょう。」 朝倉が言い終わる前に、長門の手から、紫色の放射物が無数に出てきた。 朝倉も掌から青いビームのようなものが沢山出た。 2つは打ち消し合う。 同時に両者が接近し、肉弾戦を繰り広げる。 長門の手刀が朝倉の脇腹に入り、朝倉の裏拳が長門の顔面にヒットする。 怯んだ長門に、朝倉は容赦なく追い討ちをかけ、最後に腹部に決まった蹴りで、吹っ飛ぶ。 「長門!!」 「…………大丈夫。」 長門は何か唱え、朝倉の横の空間が歪む。 歪みの中から、コンクリートの塊みたいな物が、朝倉を殴打する。 「チッ」 また長門は何かを唱えた。 すると、空間が歪む。 気付くとそこは、見慣れた場所だった。 「ここは?」 駅前。 ただし、空は灰色だった。 「閉鎖空間に極力似せた空間を造った。これであなたの力も出せる。」 「感謝しますよ。長門さん。」 古泉は赤い玉を掌に浮かべた。 「いけますよ。いつもの倍の力が出せそうです。」 古泉は赤い玉に変わり、朝倉に近づいた。 「………危ない。」 古泉の周りが爆発した。 「ふぅ…間一髪でしたよ。」 古泉はバリアに包まれていた。多分、長門のおかげだろう。 「流石に2対1は辛いわね。少々本気を出そうかな。 緊急コード230………アクセス……涼宮ハルヒ………ダウンロード開始」 「今のうちに!!」 長門と古泉は突撃を仕掛ける。 大きな赤い玉と紫色の光線が朝倉を襲う。 朝倉は赤い玉を避け、紫色の光線を足蹴でかき消した。 赤い玉は急旋回し、再び朝倉を襲う。 「ダウンロード完了。」 瞬時に古泉が吹き飛ばされる。 「グッ!!」 何があった? 「………解りません。」 「わたしは涼宮さんのデータを盗ったのよ。」 じゃあ、お前は世界を改変することも出来たりするのか? 「そこまでは収集出来なかった。メモリ不足ってやつよ。だけど、あなた達に勝つ能力を身に付けたわ。」 何を言っている。お前は、ハルヒより強いだろ?あいつから学ぶ必要性はあるのか? 「勝負を決める要素は、スピード・感・経験の三つ。 だけど、わたしはこの三つが……特に、感と経験が不足してるの。 わたし達インターフェースは、元々戦闘目的で作られた訳ではなく、あくまで監視目的。 スピードはあるけども、戦闘の経験なんて、プログラミングされていないの。 だから、わたしは涼宮さんから感と経験、つまり瞬発的な情報判断能力を貰ったの。」 「明らかに朝倉涼子は強くなった。わたしだけでは彼女には勝てない。」 マジか!? 「長門さん。僕の能力を使って下さい。 神人狩りで涼宮さんの行動パターンは、大体掴めます。」 その手があったか。 「分かった。」 「へぇ、それは厄介ね。一応、抵抗しようかな?」 「40.17秒程かかる。それまで持ちこたえて。緊急コード801startrun………」 長門は、素早く呪文を唱える。 「分かりました。」 「10秒かからないで倒せるわね。」 「ハッタリは、よしていただきたいものですね。」 「ハッタリかどうか、直ぐに分かるわ。」 そう言った瞬間、朝倉は消えた。 「どこへッ!?」 「後ろよ。」 !!! 「次はあなたの番」 「はやく……に……げて……下……さい」 「計画の為、ここで死んでもらうわ。」 朝倉は地面に手をつける。 すると、コンクリートの地面は豆腐のように削り取られる。 朝倉が削り取った塊は、だんだんと形を変える。 「見覚えあるでしょ?」 アーミーナイフをちらつかせ、朝倉はニヤリと笑う。 忘れる訳がない。それで俺は幾度と殺されかけたからな。 「それは、良かったわ。でも、サヨナラね。」 朝倉は、ナイフを投げた。 「ひぃっ!!」 なんとマヌケな声だろうか。谷口に聞かれたら、バカにされる。 そういや谷口、今どうしてるかな? 実際、そんな事考える余裕なんぞなかった。 尻餅をつき、なんとかナイフをかわす。 しかし朝倉は、俺の頭上で、拳を振り落とそうとしている。 「死になs……!?」 朝倉が吹っ飛んだ。 「ハア……ハア…………まだだッ!!」 古泉!? 「まだ生きてたの?先に殺しましょうか。」 朝倉の手が、槍の様になる。 「やめろ!!!」 俺は、朝倉に殴りかかるが、 「邪魔よ。」 朝倉の蹴りで、俺は近くの木に叩きつけられる。 背中と胸が凄く痛い。なんて様だ。カッコ悪いな……俺。 「その腕、邪魔ね。」 朝倉の槍になった手が伸びる。 「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ」 「あはっ♪」 俺の位置からはよく見えないが、多分朝倉は、古泉の肩に槍を突き刺した。 古泉の耳をつんざく悲痛な叫び声。 思わず、目を背ける。 呼吸が荒くなる。 脈拍も早い。 苦しい。 恐い。 「次は長門さんね。」 「遅くなった。ごめんなさい。」 「さぁ、早くわたしを倒さないと、彼が死ぬわよ?」 「知ってる。」 2人は、激突した。俺も目で追うのに精一杯だ。 「お久しぶりです。」 「え?」 えらく上品なお嬢様がそこにいた。 第五章へ