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■東西学園 男女制服資料 確定版■ ★資料1★女子制服基本デザイン オーバー(ワンピ型の上着)+インナー+スカートが基本 ボタンは前面5対,背部1対,袖に1つずつ ボタンは☆を2つ重ねたデザイン 首元のリボンは襟から出すこと オーバーは固めの素材なのであまり皺は寄らない ★資料2★女子制服用 寸法合わせプレート 青ライン=ボディの位置確認 グレーのエリア=襟 緑のライン=オーバーの袖 オレンジのライン=インナーの形 モスグリーンのエリア=リボンの形 茶色の丸=ボタンの位置 ワインレッドのライン=オーバーの前合わせ ★資料3★オーバーを脱いだ状態 リボンはピン留めです アンダーはホワイトのパリッとした薄い素材 アンダーの襟に折り返しはありません アンダーの袖はスリット有 アンダーはスカートの中に入れてもいいです ★資料4★男子制服デザイン 男子は右開きケーシータイプの上着になります インナーとボタンのデザインは女子と同じ ボタンは前面5個のみ 左胸にポケット(フェイクではない) ズボンはストレートタイプ
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カチカチと音を立てて針が時を刻む。 真紅「そろそろなのだわ。」 若干日が傾き始めた午後4時。 ティータイムというには少し遅いが、真紅は席を立つと紅茶を用意しに台所へと向かった。 湯を沸かしている間に、テレビとビデオデッキの電源を入れてチャンネルを合わせる。 準備は整った。茶葉に湯を注いで待つ。 数分も経たないうちに、黒い影が庭に降り立った。水銀燈だ。 真紅「何か用?」 水銀燈「今日こそ白黒つけてやるわぁ、真紅!」 真紅「生憎だけれど、私は忙しいのだわ。これからくんくんが始まるもの。」 水銀燈「そっ、そうなのぉ?それならまぁ…しょうがないわね。」 水銀燈が視線を漂わせる。真紅は笑みを零した。 真紅「仕方ないのだわ。上がっていきなさい。ちょうど紅茶を淹れすぎたことだし。」 真紅には水銀燈の目的が最初から戦闘では無い事など分かりきっていた。 水銀燈は毎週この時間になるとやって来て、くんくんを見て帰って行くのだ。 水銀燈「それなら…お邪魔するわぁ。」 素っ気無く装ってはいるが、輝く瞳が全てを物語っていた。 二人で並んでソファーに座る。既にティーカップは二つ用意されていた。 くんくんが始まると真紅は画面を注視し、一言も言葉を発さなくなったので、 水銀燈はさりげなく真紅の方へ視線を向けた。 幼さが残りながらも整った顔。 横から見るとくっきりとした目鼻立ちがよく分かった。 思わず我を忘れて見入ってしまう。 真紅はくんくんに熱中していてこちらには気付いていないようだ。 水銀燈もくんくんには目が無いが、それでも今は真紅を見ていたかった。 それほどに真紅は水銀燈にとって魅力的だった。 そうしてただただ見惚れていると、一瞬真紅がこちらを見たような気がした。 水銀燈は慌てて膝の上で握り締めた両手に視線を落とした。 見られただろうか。 きっと緩みきった顔をしていただろう。 恥ずかしさの余り赤面してしまった。 真紅「どうしたの?水銀燈。俯いてしまって。調子が悪いの?」 見られてなかった… 安心したのも束の間、真紅は水銀燈の顔を覗き込んだ。 真紅「あら?顔が赤くなっているのだわ。熱でもあるのかしら?」 二人の顔は10センチと離れていない。 必死で弁解しようとしたがしどろもどろになってしまった。 すると真紅が両手を水銀燈の頬に沖、額を水銀燈のものと重ねた。 真紅「やっぱり少し熱っぽいのだわ。ちゃんと休まなければ駄目よ。」 水銀燈「だっ、大丈夫よっ!」 やっとのことでそれだけ捻り出したが、 真紅の思いもよらない行動によって既に思考は停止し、視界は歪んでいた。 真紅「そう?とりあえず水を取ってくるのだわ。」 そう言うと真紅は台所へと向かっていった。 その背中が見えなくなると、水銀燈は大きく深呼吸して、息を整えようと努めた。 胸に手を当てると自分のものとは思えない程激しい鼓動がまだ続いている。 水銀燈「それにしても真紅…いい匂いだったわぁ…」 思い返してまた頭に血が昇って来たので、必死で首を振って気持ちを引き締めた。 そうしていると真紅が水を注いだコップを手に戻ってきた。 水銀燈はそれを受け取り一気に飲み干す。 緊張で渇ききった喉に冷えた水が染み渡っていく。 ようやく水銀燈は少し落ち着きを取り戻すことが出来た。 真紅「あ…」 真紅がテレビに目を向けている。 真紅「終わってしまったのだわ。」 そういえばすっかり忘れていたが今日はくんくんを見に来ているということになっていたのだった。 既に画面の中では次回予告が流れている。 真紅「仕方が無いのだわ。今日は帰ってゆっくりなさい、水銀燈。 こじらせたりしたらお父様もきっと悲しむわ。」 水銀燈は安堵と名残惜しさの入り混じった複雑な気持ちだったが、 とにかくこれ以上理由無くここに居られないことだけは確かだった。 水銀燈「ふん。また来てやるわぁ。」 真紅「ええ。いつでも来るといいのだわ。」 その言葉にまた心を揺られた水銀燈だったが、悟られぬように背を向けると飛び立っていった。 自分は真紅が好きなのだろう。 多分。いや、間違いなく。 でもそれを伝えようとは思わなかった。 自分と真紅が並んで笑い合っている姿など想像できないし、 そうした関係は水銀燈の求めるものとは違う気がしたのだ。 やはり今ぐらいが丁度いい。 お互い相手に干渉はせず、ただ同じ時間を共有する。 水銀燈「来週が楽しみだわぁ。」 だからこう一言だけ呟いて、水銀燈は紅く染まる夕焼け空へと消えていった。 『その後…1』 真紅は水銀燈が帰っていくと、ビデオを巻き戻し、取り出した。 ラベルには『くんくん』と書いてあった。 さっきまで水銀燈と見ていたものである。 いや、水銀燈の目にはほとんど入っていなかっただろうが。 真紅は思い出して笑みを浮かべた。 水銀燈のあの顔。 こちらが見ていないと思っていたのだろう。口まで開けてだらしなさ極まる顔をしていたが、 真紅は全て見ていたのだった。 わざわざ録画したくんくんを流していたのも水銀燈を観察するため。 そして今日は直に水銀燈をいじることができた。 真紅「水銀燈、今日はまた一段と傑作だったのだわ。」 勿論悪意は無い。 自分に好感を持ってくれていることは純粋に嬉しいし、水銀燈自身の事もとても素敵だと思っている。 ただあそこまで丸分かりな好意をひた隠しにし、 しかもそれが成功していると思い込んでいる様はとても可愛らしいし、 何より真紅の嗜虐心をこの上なくくすぐるのだった。 「好き」だなんて言わない。言ってしまったらつまらない。 多分それは口に出した瞬間に酸化して、どこか嘘っぽくなってしまうのだ。 水銀燈とはそういう間柄にはなりたくなかった。 ティーカップを持ち上げ、水銀灯が飛び去った方へと顔を向ける。 すすった紅茶はすっかり熱を失っていたが、水銀燈の事を考えるだけで最高の味になったように思えた。 『その後…2』 めぐ「ヘタレね。」 水銀燈「でっ、でも…」 めぐの病室。 水銀燈が今日の出来事をにこにこしながらめぐに話していると、急にめぐが説教を始めたのである。 めぐ「ヘタレよヘタレ。これがヘタレでなくて何だと言うの?」 水銀燈「そんなに何度も言わなくてもいいじゃないよう…別にあたしはヘタレじゃ…」 正座させられた水銀燈は俯き、ドレスの裾を指でこねくり回している。 めぐ「これだけ通い詰めてる相手に自分の気持ちもまともに伝えられない奴がヘタレじゃなくて何よ。」 水銀燈「だからあたしと真紅はこっ、恋人だとか、そんな…」 水銀燈は自分が言った言葉で想像を巡らせたのか、頬を紅潮させた。 水銀燈「だからそんなんじゃ…」 めぐ「はぁ…水銀燈が何考えてるのか知らないけどね。 私は単に人に好意を持ったり、その事を伝えたりするのがそんなに 不自然なことだとは思えないって言ってるだけよ。」 水銀燈「でもぉ…そんなあからさまに仲良しって間柄でもないしぃ…」 めぐ「言い訳だけはいくらでも出てくるのね。…あぁ、それじゃ今度行ったときにお礼でも言ったら?」 水銀燈「え?お礼?」 めぐ「水銀燈のことだからどうせ招いてもらってお礼の一つも言ってないんでしょう。違う?」 水銀燈「それはまぁ…そうだけどぉ。」 めぐ「せっかくあなたに良くしてくれるんだから大事にしなさい。 その子だって水銀燈のこと好きだと思うわ。」 水銀燈「んぅ…まぁ、頑張ってみるわよう。」 それを聞くとめぐはにっこり笑い、水銀燈を抱きしめた。 水銀燈はまた暇つぶしの道具にされたことに憤りを覚えつつも、 真紅とのこれからの接し方について考え始めていたのだった。 「好き」だなんて言わなくても。もっと近づいていけるのかも知れない。 水銀燈は自然と笑みを浮かべていた。
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お題 『水銀燈と自殺志願者』 薔薇水晶「…今日は、掃き掃除をしたから1点、ちゃんと学校に来たから2点、落ちている財布をちゃんと届けたから8点…。というわけで、今日の夜は自由に遊んできていいよ…♪」 水銀燈「やったわぁ!!やっぱり、あの財布は罠だったのねぇ♪」 そう言って、喜び勇んで学校を出て行く水銀燈。 実は、前回の『水銀燈、学校乗っ取り事件』のせいで、薔薇水晶の家に1ヶ月お世話になることになった彼女には、あるルールが課せられていた。 それは、1日の中で10点分の『いい事』をすると、夜9時までは自由に外で遊んできてもいいというもの…。 ただし、迷子を助けてあげなかった等の『悪いこと』が発覚した場合には、厳しい罰を受けなくてはならないというものだった。 約2週間ぶりの自由な時間に、水銀燈の心は躍る。しかし、途中で肝心なことに気がついた。 水銀燈「…何やってるのよ、私は…!いつから、そんな安っぽい女になったの!?」 気分は、一気に最悪なものへと変わっていった。 しかし、そんな彼女を勇気付けたのは、自由時間の存在だった。 とりあえず、今はつかの間の自由を味わおうと水銀燈は駅のホームへと急ぐ。 そして、今か今かと列車を待ちわびている時、ある1人の女子高生の姿が水銀燈の目に映った。 うつろな瞳、一歩一歩線路へと向かう足…それはまさしく自殺のサイン…。 急いでそれを引っ張ると、水銀燈はその少女に向かってこう言った。 「そんなことされちゃうと、電車が止まっちゃうでしょう…!私の自由な時間を奪わないで…!!」 それはまさしく、魂の叫びだった。 水銀燈「あーあ…電車行っちゃったぁ…。あれ乗らなきゃ、ショップの営業時間に間に合わないのに…。」 実に恨みがましい目で、電車を見送る水銀燈。それに対し、申し訳なさそうな表情を迎える少女。 水銀燈「で…何が、原因で死のうと思ったの?他校とはいえ、私も一応教師だし、話ぐらいは聞いてあげるわぁ…。電車行っちゃったしぃ…。」 その言葉に、少女は涙ながらに語りだした。 少女A「ごめん…なさい…!私…ずっとみんなからいじめられてて…それで…もう生きるのが嫌になっちゃって…」 『いじめ』という単語に、つい昔の自分の姿が重なってしまう。 そういえば私も昔、あんなうつろな目を鏡で見たことがあったっけ… 水銀燈「…で、死のうと思ったの?やり返そうとか思わなかったの?」 少女A「そ…そんな、怖くてとても…」 水銀燈「…いい?あなたは今、自殺しようとしてたのよ?その気持ちがあれば、なんだって出来るわよ…。この私のようにね…。」 そう言うと、水銀燈は過去の自分の話をしだした。 水銀燈「…で、ある日思ったのよ…。何でこんな奴らに、苦しめられなきゃいけないんだろうってね…。で、気がついたら、その子のこと階段から突き落としてたわぁ…。」 少女A「えっ…!?」 水銀燈「でも、その子の顔とても滑稽で面白かったわよぉ?で、私の顔を見ながら、青ざめた顔でこう言ったわ。『こ、殺さないで…』って…♪」 少女A「そ…それでどうしたんですか!?」 水銀燈「別にぃ…?ただ、『今は殺さないであげる…でも、死にたくなるように手助けしてあげる』って言っただけよぉ? 後は、家を燃やしてやった子もいたし、一家離散に追い込んでやった子もいたわねぇ…。」 少女A「ひ…酷い…。」 水銀燈「酷い?やつらがやった事を、真似してやっただけよぉ…。いい?世の中から、いじめは無くなることはないの。それから身を守る方法はただ一つ。それは、『力』を持つことよ。」 少女A「力…?」 その返答に、水銀燈の目が怪しく光った。 水銀燈「そう…。弱者が強者のえじきとなるのは、自然界の常よぉ…。だったら、他人より優れた力を持つほかに、自分を守るすべは無いの。」 キッパリとそう言い切る水銀燈。そして、続けてこう言った。 水銀燈「…といっても、あなたのようなお馬鹿さんはそんな力持ってないでしょう?何せ、自殺しようなんて考えるくらいだものねぇ…。だから、私が良い物をあげるわぁ…」 そう言うと、水銀燈は1枚の名刺をさし出し、こう言った。 水銀燈「…そう、それは『団結力』という力よぉ…。あなた1人じゃできない事も、みんなで助け合えば、何とかなるもんよぉ…。」 そう言いながら水銀燈は、昔募金によって『柿崎めぐ』という少女を助けたことを思い出していた。 それは、他人の力を全く信じなかった水銀燈にとって、それはまさに未知の力だった。 以後、水銀燈はその力を軽視できなくなり、むしろ積極的に利用しようとしていた。 水銀燈「…ま、多分あなたのような子には、その『薔薇水晶』って子がきっと力になってくれるはずよぉ…。『愛』とか『正義』とか言う馬鹿げた方法を使ってね…。」 その行為に驚き、そして感謝を述べる少女。水銀燈はこう続けた。 水銀燈「ま…でも、そんなの多分ダメだろうから、これも渡しとくわぁ…」 そう言って、さらに3枚の名刺を差し出す水銀燈。その名刺にはそれぞれ、『弁護士』、『○×TV チーフプロデューサー』、『□△新聞 編集室長』の肩書きが入っている。 水銀燈「いいでしょう…コレ♪もし困ったことがあったら、この人たちに頼みなさい。すぐに、あなたをいじめてる奴らを追い詰めてくれるわよぉ…♪『水銀燈さんの知り合い何ですけど…』って言えば、すぐ助けてくれるから…♪」 少女A「あ、ありがとうございます!…水銀燈さん…で、よろしいんですよね!?あなたの名前は一生忘れません!ありがとうございます!!」 そう言って、深く頭を下げる少女。それに、水銀燈はこう返した。 水銀燈「…いいえ、私はそんな名前じゃないわぁ…。私の名前は、翠星石…。あの水銀燈が、そんな良い事するわけ無いじゃなぁい…。」 何か言おうとする少女を残し、水銀燈はそう言うと、駅の外へと消えていった。 「…門限まで、あと2時間もあるじゃなぁい…。どこで時間潰せばいいのよ…。」とぼやきながら。 その後、水銀燈は門限を5分オーバーして薔薇水晶の家に戻り、久しぶりに買い物に行って満足したふりをし続けた。 水銀燈が嫌いなこと…それは、他人に自分の弱みを見せる事、他人を助けること、そして、他人を信じること…。 薔薇水晶は小言を言いながらも、そんな水銀燈を今日も温かく出迎えた。 完 [ このシリーズ一覧 ] 2つの力 闇の住人 穏健派の逆襲 愚者の苦悩 王の帰還
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「最高じゃなぁい!こんなに楽しかったのは久しぶりよぉ!」 スタジオでの興奮覚め遣らぬ中、四人はスタジオ近くの喫茶店でたむろしていた。 「そうね。この二人なら文句はないわ」 紅茶に舌鼓を打ちながら言う真紅。 「気に入って貰えたようでなによりだよ」 いつでも笑顔を絶やさない蒼星石。 「この翠星石と蒼星石がセッションしてやったですぅ。文句なんて言ったらぶっ殺すですよ」 少し蒼星石の影に隠れながら過激発言をする翠星石。 ハハッ、と軽く聞き流す蒼星石。慣れっこなのだろう。 「まぁ…。これから長い付き合いになると思うし、よろしくね」 蒼星石が右手を差し出し、真紅がそれに応える。 「よろしくお願いするのだわ。蒼星石」 しっかりと、互いの手を握る。 「ほら、翠星石も」 「あ…。よ、よろしくお願いしてやるですぅ!」 翠星石が真紅と握手し、蒼星石は水銀燈と握手する。 「よろしくね。水銀燈」 「こっちこそよろしくねぇ。元STONE FREEのベーシストさん」 「あれ、知ってたんだ」 「一応ねぇ。アナタ達って結構有名なリズム隊コンビよぉ? まぁそんな事より、バンド名どーするぅ?これから必要になるでしょぉ?」 「そうね。その通りだわ」 水銀燈の言葉に、真紅も同意する。 「翠星石はなんでもいいですぅ」 「せめて名前ぐらいは女の子らしいのがいいわね」 真紅がちらっと水銀燈の方を見ながら言った。 「なんでこっち見るのよぉ。それじゃまるで私が女の子らしくないみたいじゃなぁい?」 いや、水銀燈自身は、同性でも目を奪われる程の美貌の持ち主だ。だが一度ギターを弾けば、男顔負けのプレイを繰り出す。 それは今集まったメンバー全員に言える事だ。 真紅はその事を言ったのだろう。 これから大々的に活動するのであれば、目立つのはそのプレイ、音楽性。 だから真紅は、せめて名前ぐらいは、と言ったのだ。 これには大いに悩まされた。 「名前なんてテキトーにつけちゃっていいじゃなぁい」 と水銀燈は言ったが 「名前なんてモノの本質を示すには至らない些細なもの。でも必要なもの。だから大切にしたほうがいい」 と蒼星石が妙に物憂げな顔で言ったので、下手に決められなくなったのだ。 挙句、水銀燈と翠星石が変に意気投合し、おもしろおかしい名前を列挙しだす始末。 「ひらがなに☆を入れると何か怪しげな響きになるですぅ…『れす☆ぽぉる』とか」 「それいいわねぇ。でもやっぱり頭にtheeは外せないわぁ」 真紅は真紅で、紅茶を飲みながら遠巻きに見守っている。 この光景を見渡し、蒼星石は重大な事に気付いた。 まとめ役がいない。 「はいはい、そんなおもしろおかしい名前ばっかり挙げてないでさ。『女の子らしい』っていう最初のコンセプトからだいぶ脱線してるよ?」 蒼星石がまた元の道にもどしたはいいが、結果行き詰まってしまう。 「なにか…お悩みのようですね…」 不意に声をかけられ、全員がふりむいた。 そこには、喫茶店の制服に眼帯、という奇妙な出で立ちのロングヘアーの少女が、少し恥ずかしそうに立っていた。 「あ…なにかに…行き詰まった時…は…この紅茶がオススメですよ…サービスなんで…ぜひ飲んでください…」 眼帯の少女は、持って来た新しいティーカップを四人の前に並べ、一緒に持って来たティーポットから紅茶を注いだ。 「あら、いい香り…」 真紅がすぐさま反応する。 「でしょう…?私も…悩んだりした時…よく飲むんです…。 ドイツの…ローゼンと言う人が…お茶の葉を…まるで愛娘を育てるように…大切に育てているそうです…」 言いながら、順に紅茶を注いで行く。 「ローゼンは…アリスと呼ばれる… どんな花よりも気高くて… どんな宝石よりも無垢で… 一点の汚れも無い… 世界中の…どんな少女でも敵わない程の… 至高の美しさを持った少女の様な…紅茶を生み出そうとして… 七つの紅茶を…生み出しました…これはその一つ…五番目の紅茶、ライナールビンです…」 古いカップをトレーに戻しながら、眼帯の少女はゆっくりと言葉を紡ぐ。 「…その事から…その七つの紅茶達は… ローゼンの少女…ローゼンメイデンと… 愛好家の間では呼ばれています…。 結局…理想…アリスとなる紅茶を生み出す前に… ローゼンは気付いたんですが… 自身が生み出しました… 七つの紅茶全て…一つ一つが… 掛け替えのない存在だと言う事に…」 カップを乗せたトレーとを持ち、ごゆっくり、と言い残して眼帯の少女は奥に消えていった。 「ローゼン…」 「メイデン…」 眼帯の少女の言葉は、四人の心に響き渡った。 「いいんじゃない?至高の少女を目指す、掛け替えのない存在。気に入ったわ。とても」 真紅がライナールビンを味わいながら言った。 「決まりねぇ。ま、アリスになるとしたら私しかいないけどぉ」 「言ってろですぅ」 「まぁまぁ。じゃ、僕らは今日からローゼンメイデンだね」 喫茶店の片隅のテーブルで、ロックバンド・ローゼンメイデンは静かに産声を挙げた。 ~次回予告~ ついに!ローゼンメイデンの快進撃がはじまるッッ! 真紅「次回『fire』下僕(ファン)になることを誓いなさい」 翠「絶対見るですぅ!」 (3)へ戻る/長編SS保管庫へ/(5)へ続く
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運命の分かれ道 ◆.WX8NmkbZ6 ルパン三世は夜神月と共に、田村玲子の問い掛けを聞いた。 問いの後、長い沈黙が続く。 その間に濡れた体の上にバスタオルを這わせていた玲子が、大方の水滴を拭い終えた。 それを察してルパンが玲子本人から預かっていたデイパック内の新しい服を出すと、彼女はそれを受け取って身に纏う。 大浴場での用事が一通り済んだ事で、三人は連れ立って最上階の展望スペースまで移動した。 三人それぞれが椅子を持ち寄って着席し、問いについて改めて思考を始める。 奇しくもそれは正午、第二回放送と同時。 『こんにちは、みんな』 緊張した場に対する間の悪さにルパンは舌打ちする。 声変わり前の少年の声。 話す内容のおぞましさとミスマッチな、たどたどしささえある調子が不気味だった。 そしてそこで玲子が観察対象として警戒していた泉新一、更にルパンの仲間である次元大介の名が告げられる。 「……やっぱな」 ルパンは放送が終わるのを待ってからそう口にした。 望遠鏡で総合病院の様子を見ていた――そこで次元の死を目撃した。 それを見間違いだった、勘違いだったと済ませられるとはルパンも思っていなかった。 ただ、気分が悪い。 何も出来なかった自分が苛立たしい。 同じく仲間である石川五ェ門の生存を確認出来た事がかろうじて、せめてもの幸いと言えるだろうか。 ふと玲子が「やはり呼ばれたのは咲世子か」と小さく漏らした。 ルパンがそれについて詳細を聞き出そうとすると、当然のようにはぐらかされる。 「ただの独り言だ……それより、仲間が死んだらしいな。 どんな気分だ?」 その言葉に、ルパンは逆上しかけた。 仲間の死への好奇心――それは相手が人間なら、殴り掛かっていたかも知れない。 しかしルパンを思い留まらせたのは、彼女がパラサイトという人ならざるものだという事実に他ならない。 そして彼女はパラサイトと人間について根元的な疑問を抱いている。 ルパンの感情の揺れに関心を示すのは無理からぬ事なのだ。 「気分ね……最悪さ、そりゃあな。 いつ死んだっておかしくねぇ事してるったって、あいつもこんな所で死にたかぁなかっただろうよ」 懐から煙草を出そうとして、普段と違い持ち合わせていない事を思い出す。 諦めて両手を頭の後ろで組み、玲子との会話に専念する事にした。 何せ、解答を誤れば『食われる』のだ。 そんな死に方では、後で次元に笑われる。 「そういうお前さんはどうなんだい? 知り合いだったんだろ?」 問い返すと、玲子は能面のようだった表情を僅かに――微かに変えた。 困惑の色が見え、それが玲子を人外として見ていたルパンには意外だった。 「……分からんな。 だが群れを形成していた仲間が死んだ時とは違うようだ」 玲子の知り合いである泉新一によって、仲間が殺された。 その時は特に感慨はなかったという。 それと今との違いに、玲子は少し考え込んだ。 「恐らくより興味があったから、だろう。 パラサイトを宿したまま人間の脳を残す、極めて特異な存在……パラサイトであり、人間でもある。 この少年なら何らかの答えに辿り着くのではないかと、期待していなかったと言えば嘘になるからな」 玲子が出した結論は、やはり『悲しい』等といった感情とは別物だった。 関心が薄かったから悲しくない、というのではない。 関心は濃かったし感じ入るところはある。 しかし、そもそも悲しいという感情が存在しているのかすら不明瞭なのだ。 それがパラサイトであり、目の前にいる存在である。 玲子には人間的な『ブレ』があるが、人外である事に変わりはない。 その点を、ルパンは改めて心に留めた。 「改めて聞こう。私達は『何』?」 放送で中断された問いを再び示され、ルパンは視線をちらりと月の方へ移す。 月は沈黙を保っていた。 顔色が悪くどこか呆然としているようで、会話について来ているのか定かでない。 聡明な月らしくない姿にルパンは不安を覚える。 ルパンと月の主張が衝突してしまった、まさにその時に玲子が来訪した。 二人がお互いに言葉を尽くす時間は与えられず、ルパンには今の月が何を思っているのか分からない。 ただ、今は玲子の問いに答える事に集中する。 月と改めて向き合うのはそれからだ。 ルパンはそう決めて、玲子に視線を戻した。 「そうは言うけどよ。 俺達に客観的な答えを求めるってのは、ちょーっと無理があるんじゃねぇか?」 「と言うと?」 「俺達は下手したらお前さんに食われちまうんだぜ。 こっちにしてみりゃ、何とかして人食いなんかじゃねえって説得しなきゃならねえんだ」 ルパンと月にしてみれば、命が掛かっている。 それも自分達のだけでなく、玲子がこれから出会う人間全てのだ。 答えるべき内容は初めから決められてしまっている。 「……成る程、確かに脅迫しているも同然の状況だな」 玲子も得心がいったようで、数秒沈黙してからこう応えた。 「ならば約束しよう。 お前達の回答の内容に関わらず、私はお前達を食わない。 また回答が私の満足出来るものならば、私はもう人を食わない」 ルパンは椅子から転がり落ちそうになり、それまで反応の薄かった月も目を見開いた。 対する玲子は無表情のまま。 パラサイトは食人を本能に命じられているものの、必ずしも人を食わなければ生きていかれない訳ではないという。 それでも、本能に逆らうのが簡単な事とは思えなかった。 「……いいのかい、そんな約束しちまってよ」 「私は、『仲間』全体の未来の可能性の為に努力している」 この約束が守られるのなら――例え回答が「パラサイトの本質は食人にある」というものでもあっても。 それに満足出来れば、玲子はもう食人をしないのだ。 つまり玲子が『答え』を求めるのは、それに従って生きる為ではない。 純粋に『知る』為に、仲間の為に求めているのだ。 「お前さんが約束を破るってー可能性は?」 「信じるかどうかはお前達の判断に任せるしかないな」 「『食わない』ってだけで、殺しちまうとか?」 「言葉遊びの趣味はない。 殺す気もないから安心しろ……勿論、自衛の場合は除くがな」 ルパンはその姿勢に共感するものがあった。 幾つもの犯罪に手を染め、盗み出した財宝は数知れず。 だがいつも、財宝そのものを求めていた訳ではなかった。 「いい~ぜ、その条件で。 『私達は何』……このルパン様なりの答えってやつをくれてやる」 ルパンが椅子に座り直し、足を組みながら言い放つ。 それでも月は不安げな視線を送ってきていた。 月の心配も分かる――玲子が約束を反故にすれば、この場で二人とも死ぬかも知れない。 この会場にいる参加者全体に危険が及ぶかも知れない。 玲子との対話自体が賭だ。 だがあらゆる死線を潜ってきたルパンには、この賭に勝てるという確固たる自信があった。 ▽ ――僕は…………何者なんだ? 様々な考えが混濁して纏まらず、月は二人のやり取りの静観に努めていた。 荒唐無稽な世界については、諦めと共に受け入れている。 異常な破壊力の拳を持ったカズマ。 F-1周辺で起きた戦闘の中、高速で駆け回り、人間では到底届かない高さまで跳躍した者達。 そして、パラサイト。 ここに来て「信じられない」と耳を塞いでいてはその先に死があると、月は感じていた。 緊迫した空気の中でルパンの顔色を窺う。 失敗の可能性を微塵も感じさせず、むしろ生き生きとしていた。 世界を股に掛けて活躍する大怪盗――というのは、嘘偽りでも誇張でもないのだろう。 それでも月の方が緊張してしまうのは、月がまだ玲子に答えられるような回答を持ち合わせていないからだ。 パラサイトは、そもそも生物と定義して良いのだろうか。 生物は自己増殖と細胞による構成、代謝の三つの条件によって定義される。 だがパラサイトは子孫を残さない。 ウイルスが生物か否かで議論されて『非生物的存在』といった呼び名を与えられているように、新たな区分が必要かも知れない。 そんな相手を説き伏せられるのか、ルパンを信じてはいても不安は拭えなかった。 月が固唾を飲んで見守る中、ルパンは回答する。 「俺達にとっての隣人、ってのはどうだい」 「本気ですか」と、口を挟みそうになった月は慌てて言葉を飲み込んだ。 余りに無防備な答えに見える。 だらしなく座り、椅子を体ごと傾けては椅子の脚二本、或いは一本だけで倒れないよう釣り合わせる――遊び半分で話をしている。 だがルパンと半日行動を共にした月は、彼を尊敬していた。 例え犯罪者であっても、月から見てもルパンは聡明で経験豊かな大人なのだ。 人間の良いところも悪いところも肌で知り、物事の酢いも甘いも飲み込んできた。 そんな彼の回答が納得出来るものでなかったとしても、阻みたくはなかった。 だから月は彼の話の続きに耳を傾ける。 「そりゃあ人を食うなんてとんでもねぇ。 社会はパラサイトってのを認知すりゃあ排除しようとするだろーぜ、山から出て来ちまうような肉食動物と一緒でよ。 だが人を食わないでも生きられるってんなら、お互い妥協してやってくってのもいいんじゃねーの?」 人の言葉を理解する熊や狼と同居出来るか――否。 むしろ人々は、普通の熊や狼以上に危険な存在として滅ぼそうとするだろう。 それはパラサイトが熊や狼よりも強いから、ではない。 同じ言葉を使いながら、それでもまるで生態の異なる生物が『不気味』だからだ。 だから例え「人を食わない」と全てのパラサイトが約束したとしても、人間はパラサイトを受け入れられないだろう。 月にはそう思えてならなかった。 しかもルパンは問題をすり替えている。 それに、玲子もまた気付いたようだった。 「妥協とはつまり、先程の約束を他のパラサイトにも強制するという事だな。 彼らを説得するのは非常に難しい……それに、これは私の問いへの回答ではないな。 お前の願望だ」 「その通りさ」 玲子の指摘に、ルパンはあっさり頷いた。 してやったりとでも言いたげな表情は、こうして彼女と話すのを純粋に楽しんでいるようにさえ見える。 玲子が突然気まぐれを起こせば食われるかも知れない、という警戒心が窺えない。 彼女への信頼の出処が、月には分からなかった。 「客観的にパラサイトってもんが何かってぇ問いに応えるなら、バランサーってとこか。 食物連鎖のてっぺんで調子に乗って、文明を発達させながら空気も海も汚すわ壊すわ。 そんな人間達を食っちまう――敬虔なクリスチャンなら天罰、なんて言葉を使うかも知れねぇなぁ」 月が答えたとすれば、恐らくこれに近いものになるだろう。 バランサー。 増え過ぎた人間を減らす。 人間を食わなくても生きられるにも関わらず「この種を食い殺せ」と本能に命令されている。 本能――神の意思か、それとも地球の悲鳴か。 クリスチャンでもロマンチストでもない月はそこまでは思わないが、結論は似たようなものだ。 腐った世界の腐った人間達を食い殺し、星全体の均衡を保つ。 パラサイトとはそういうものだ、と。 「だから隣人ってのはお前さんの言う通り、俺がそうあって欲しいってぇ期待みたいなもんさ」 「何故期待する? 食われる恐怖からか?」 「勿論、食われるのは御免だ。 だけどよ……俺ぁどうにもすっきりしねぇんだ」 ガタン、と乱暴な音を立てながら椅子の脚が床に着く。 ルパンの表情からは軽薄な笑みが消え、唇を引き結んだ真面目なものになる。 「お前さん達が人間の言葉を理解出来んのは、上手く擬態して人間を楽に食っちまう為か? そんな理由じゃ……さぁみしいだろ」 「『さみしい』?」 月は、ルパンの言わんとしている事を理解した。 玲子を一人の『人間』として扱い、正面から真剣に向き合っている事も伝わってきた。 だがそれでも、月がルパンに賛同する事は出来なかった。 「お前さん達の頭が良いのは、人間とこうして話をする為……って思いてぇじゃねぇか」 ルパンの感情は間違っていない。 少なくとも、玲子相手なら。 しかし玲子の話からすると、彼女はパラサイトの中でもかなりの変わり種なのだ。 そんな彼女を基準に考えるべきではない。 会話出来る。 思考出来る。 確かにただの肉食動物とは違う。 だが、だからこそ危険なのだ。 社会に融け込み、普通の人間と同じように生活し、影で人を食らう。 まして玲子以外の多くのパラサイトが人間を家畜程度にしか見ていないのなら、共存は不可能だ。 知能が高くても、話し合いが通用するかは別問題。 玲子の言う通り、彼らを説得するのは「非常に難しい」。 そして月の神経では、彼らを隣人とするのは耐えられない。 「しかし、人を食らうという本能を捨てられないうちは人間の隣人ではない。 そうだな?」 「あぁそうさ。 人を食う奴でも隣人でいい、なんて言えんのは自分が食われる覚悟がある奴だけだ。 俺はとても善人たぁ言えねぇ生き方をしちゃあいるが、それでも食われてやる気はさらさらねぇ」 「人を食う事を止め、人間達と同化する形で隣人として共生していく……それがパラサイトの未来、あるべき姿」 「俺にとっては、の話だけどな」 「成る程、お前の考えは分かった」 もし、それでもそれでも彼らと共生したいのなら。 彼らに定期的に『餌』を与える――人間がパラサイトを「飼う」形で管理出来るなら、或いは。 そう。 ――死刑囚や指名手配犯といった犯罪者をパラサイトに提供する形なら、共存が可能なのでは? ――罪を犯せばパラサイトに食われるという恐怖が抑止力となり、世界の平和にも―― 月は、瞬時に己の我に返る。 これは。 この考え方は。 「犯罪者なら死んでも構わない」なんて非道な考え方は。 ――まるで、キラそのものじゃないか……!!! 叫び出しそうになる。 自分の内側に、本当にLが言ったような犯罪者の側面が眠っているようで――頭を掻き毟りそうになる。 ルパンがそんな月の異変に気付いてか、声を掛けようと口を開いた。 だがその声は届かない。 外と接していた窓ガラスが砕け散ったのだ。 ルパンが刀をデイパックから出しながら目を向けると、そこには少女が浮いていた。 黒い羽を持ち、しかし羽ばたく事なくガラスがあった場所に浮遊している異様な少女。 彼女は整い過ぎた顔立ちに妖艶な笑みを張り付けていた。 しかしその完璧と言って良い顔には僅かに傷が付き、紫水色の瞳にはヒビが入っている。 その事から彼女が『人形』なのだと気付いた。 (人形が……動いている……!?) この会場では有り得ない事が有り得るのだと、納得はしてはいる。 それでも衝撃は変わらない。 己が何者なのか、その答えも分からないまま、月はその少女と邂逅した。 ▽ 「ごめんなさぁい。 入り口を見たら不細工なイタズラがしてあったから、こっちから失礼したわぁ」 水銀燈は展望室の中へと入り、宙に浮いたまま三人を順に睨め付けた。 この場では穏当に協力者を得るつもりでいる。 相手が単体ならばともかく、三人相手に戦うのは水銀燈の力を以ってしても面倒だからだ。 まして一人でも討ち洩らせば、水銀燈は危険人物として情報を広められてしまう。 確実に殺せる状況でないなら手を出すべきではない。 故に水銀燈は、出合い頭に攻撃するような真似はしなかった。 そこで一歩前へ出てきたのは、真っ赤なスーツに猫背の男。 「こいつぁー驚きのべっぴんさんだぜぇ。 俺様はルパーン三世。 お名前を教えて貰えるかい、お嬢ちゃん」 その態度に虫酸が走った。 たかが人間に子供扱いされて良い気分になるはずがない。 それでも会話を打ち切る訳にはいかず、水銀燈は微笑を消して不快感を露わにしながら応じる。 「……そっちの二人のお名前が聞けたら、教えてあげても良くってよ」 そう言うと目付きの鋭い女は躊躇いなく「田村玲子だ」と言った。 少年の方は暫し逡巡し、俯きながら「夜神月」と答える。 二人がすんなりと従った事で少しだけ溜飲を下げ、水銀燈もまた名乗った。 「ローゼンメイデンシリーズの第一ドール、水銀燈よ」 「そうかい、ありがとよ。 で、お嬢ちゃんは殺し合ったりなんかしねぇよなぁ?」 「当然よ、くだらないわぁ」 水銀燈からは、この三人と行動を共にするという選択肢がなくなっている。 この者達が使えるようなら、と一つの可能性として考えてはいたのだが、ルパンの態度によってそれが消えたからだ。 だが三人がこの場所にいるという事は、窓際の望遠鏡で会場全体の動きを把握している可能性がある。 その為水銀燈の目的は、協力者を得る事から情報を得る事に移っていた。 しかしルパンと水銀燈がそれぞれに何か言おうとした、それよりも数瞬早く玲子が口を挟んだ。 「お前は人形なのか?」 「ええ、そうよ。だから何?」 水銀燈は眉根を寄せる。 玲子の声に侮蔑的な響きはなかったが、向けられる視線は無機物に対するものに他ならず――それがルパンの態度以上に、癇に障る。 「作られた目的は?」 「……それは」 言おうか言うまいか、僅かに悩む。 情報を得るのが目的であり、質問したいのはこちらの方。 わざわざローゼンメイデンとして答えてやる義理はない。 しかしここで答えない事は父への不義のようにも思え、水銀燈は正面から答えた。 「完璧な少女になる為よ」 「なってどうする?」 即座に更なる問いが重ねられ、反射的に攻撃しそうになる。 これがアリスゲームの中でなら、既に玲子には無数の黒い羽根が襲い掛かっていただろう。 それだけの怒りを抑え込み、拳を震わせながら答える。 「お父様に、愛して戴くのよ」 「その後は?」 「いい加減になさいッ!!!」 背の羽を膨張させ、感情を剥き出しにする。 それから? 胴体を……未完成な私の体を、今度こそ作って戴くの。 それから? あの真紅が持っていたような、私だけのブローチを戴くの。 それから? 温かな手のひらで優しく頭を撫でて戴くの。 それから? 日溜まりの中で優しく抱き締めて戴くの。 それから? 「美しいね」と優しいテノールで囁いて戴くの。 それから? お父様に、永久に愛して戴くの。 私だけを、私一人を、いつまでもいつまでも愛して戴くの。 願い続けた。 戦い続けた。 そうして何百年も夢見た願いに踏み込まれた事が、耐え難い屈辱だった。 「お父様に愛して戴くのよ、永遠に……その為に私は……!!」 激昂する水銀燈に対し、玲子は表情を僅かも崩さなかった。 そして、淡々と言う。 水銀燈の『願い』に、感想を述べる。 相変わらず、何も感じていないかのように。 「なるほど、まさしく人形だな」 黒い羽の群れが展望室全体に広がり、玲子に向かって一斉に踊り掛かった。 それを玲子は、頭部から伸びた触手の先の刃で払い落とす。 庇うように前に出たルパンも一つの鞘から二本の刀を抜き、玲子まで届いた羽根は一本もなかった。 頭が変形するという気味の悪い姿に水銀燈は微かに動揺したが、それで止まるような激情ではない。 「ちょおっと待った待った!! お二人さん、ここは――」 ルパンが間を取り持とうとするが、聞くつもりはなかった。 羽根の群が龍の姿に変わり、展望室の中を駆け抜ける。 しかし、標的は玲子ではない。 ルパンと玲子から少々距離を取っていた月だ。 それに気付いたルパンが射線に割り込もうとするが、別の角度から飛ばした羽根でそれを阻む。 「坊主、避けろ!!」 「えっ……」 バクン、と月が龍に飲み込まれる。 玲子の態度は変わらなかったが、ルパンの方は明確に動揺を見せた。 「おい、坊主ッ!!」 「安心なさぁい、怪我はさせていないわ」 龍は月を腹の中に抱えたまま、蠢いて水銀燈の横まで移動する。 そこでどう利用してやろうかと思案したのだが、月に対し違和感を覚えた。 羽根に埋もれた彼の顔は見えないが、何やら様子がおかしい。 囚われながら、何の抵抗もしないのだ。 叫ぶでも暴れるでもなく、大人し過ぎる。 「お嬢ちゃんだってこんな事で揉めんのは本意じゃないはずだろ? 玲子の言った事が勘に障ったってんなら、俺の方から謝る。 こっちの持ってる情報も全部渡す。 ……だから坊主を放しな」 「いいわねぇ、その条件」 水銀燈の求めた物が全て手に入る。 計算違いはあったが、結果的には面倒を回避出来たと言えるかも知れない。 「……やっぱりやぁめた」 だが水銀燈は、交渉に応じなかった。 窓から身を投げ出し、羽を広げる。 それを追い掛けるように龍が展望台の外へ、生き物のように波打って流れていった。 「坊主――――ッ!!!」 ルパンの叫びを聞きながら水銀燈は展望台に背を向け、山中へ消える。 ▽ 水銀燈が展望台を離れてから、ルパンの行動は早かった。 窓際に走り寄り、水銀燈の着地点までの方角や距離を確認。 階段を駆け降りながら器用に入り口のトラップを回収し、展望台を出る。 「お前さんが付いてくる必要はないんだぜ?」 かなりの距離を走ってから、初めてルパンが玲子の方を振り返った。 山道の中で背後に向かって走る、器用な移動の仕方だ。 「話がまだ途中だ……しかし急いでいたとは言え、良く私に背を見せられたな」 「約束しただろ、俺達の事は食わねぇって。 そう言や、もう一個の約束はどうするんだい」 玲子から視線を外し、再び正面を向いて山道を駆けながらルパンが問う。 ルパンの回答に満足したのか否か。 玲子は彼の背を追いながら応えた。 「その前に、お前は妙に私を信用しているようだが何故だ?」 「そりゃあ、お前さんが人間臭いからさ」 即答だった。 走る速度は緩まず、ルパンの表情は窺えないままだ。 人間臭さで信用するのなら、人間は信用出来るという事か。 そう問うと、ルパンは「そんな訳ねぇだろ」と否定した。 「お前さん、自分で言うより随分表情があるぜ。 考え方も下手な人間よりよっぽど信じられるってもんだ。 しかも美人とくりゃあ、おじさんクラクラだぜぇ」 「私に性別はない」 「そうかい? 俺には、お前さんがれっきとした女に見えるんだがね」 「……」 ルパンがさらりと何事でもないように告げたその言葉は、玲子の心に刺さった。 どこにあるのかも分からない、概念的な存在である心に――確かに突き立てられた。 ――オギャア ――オギャア 「お前は、変わった人間だ」 「そりゃどーも。それで――」 言いかけて、疾走していたルパンが停止する。 山中の、少し開けた場所に散らばる黒い羽根。 その中心には一枚の紙、そして拳銃が置かれていた。 「こいつは……」 ルパンが紙を取り上げ、玲子もそれを覗き込む。 考えた結果、僕は彼女と行動を共にする事にしました。 僕と貴方は別行動をした方がお互いに効率的に動けると思います。 脅された訳ではありません。これは僕の意志です。 その証拠に、これを残します。 今までお世話になりました。 夜神月 水銀燈が月に同行するよう脅迫しているなら、銃を手放させない。 戦う力を持たない月は、水銀燈の足手纏いになりかねない――それを水銀燈が許容するはずがなかった。 つまり「銃を残して行く」と、月は水銀燈に対し自分の意見を主張しているはずなのだ。 そう見せかけようとしたと考えるには、水銀燈の性格は短絡的過ぎた。 月がマインドコントロールを受けた可能性は残るが、十中八九はここに書かれている通り、自ら決めたのだろう。 何よりルパンには、月がこうし自らて離脱を決意する事に心当たりがあるようだった。 「失敗しちまったなぁ、ったく……」 頭を掻き、悔しそうに呟く。 「追わないのか?」 「今追っかけても、坊主は戻って来ねぇよ。 ああ見えて頑固で負けず嫌いだからよ、決めちまったもんはしょーがねぇ。 あのお嬢ちゃんが癇癪を起こさなきゃ暫くは安全だと思うが……」 ルパンは残された拳銃――コンバット・マグナムを握り締めていた。 やがて紙とマグナムをデイパックに仕舞うと、ルパンはコロリと態度を変えた。 「さーて、お次はどこに行くかねぇ……」 「……もう一つ、質問させて欲しい。 篠崎咲世子が見た夕焼けは、他の夕焼けと何が違う?」 ――あの夕焼けの美しさを、わたしは生涯忘れない。 ――たとえわたしが死んでも、きっとわたしは風になって、あの夕焼けを忘れない。 「そりゃあ夕焼けは夕焼け……違うのは郷愁って奴のせいさ、多かれ少なかれ誰にだってある」 それを引き起こすのは、目に映る景色かも知れない。 鼻孔が捉える香りかも知れない。 耳に入る音声かも知れない。 肌に触れる風かも知れない。 舌を打つ旨味かも知れない。 他郷にあって故郷を懐かしく思う気持ち。 過去のものや遠い昔などに惹かれる気持ち。 「故郷を持たず、生まれたばかりの私には縁遠い感覚……という事だな」 「裏返しゃ、そのうち分かるって事じゃねぇの」 お前さんは真面目過ぎるぜ、もっと気楽にやろうや……そう言ってあっけらかんと笑い、ルパンは歩き始める。 「ほんじゃま、達者でなぁ。 俺様久々に一人でお仕事すっからよ」 質問を終えた玲子にルパンを追う理由はなく、そのまま見送る事にした。 彼が展望台に戻るつもりは無いらしい。 生い茂った樹木の葉が陽光を遮る。 ルパンの赤いスーツが木漏れ日によって斑模様に照らされていた。 その背を見て、納得する。 (そうか、これが『さみしい』か) パラサイトの知性が人間を食う為にあるのでは、『さみしい』。 成長を見守ろうとしていた相手が去って行くのは、『さみしい』。 勿体無い、とは違う。 玲子はルパンの抱く感情の一端を理解した。 先程の『女』という言葉についてもそうだった。 この男は玲子に奇妙な感覚を植え付ける。 それは決して『答え』への遠回りではないと思えた。 「で、約束は?」 「……そうだな、勿体振るのはやめよう。 私は一定の満足を得た」 まだ一つの解答例を得ただけだ。 真実は考え続けたところで分からないだろうし、それでも玲子は考え続けるだろう。 だが確かに、そこには充足感があった。 「私はこの先、人を食わない」 【一日目日中/D-5 山中】 【ルパン三世@ルパン三世】 [装備]小太刀二刀流@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚- [支給品]支給品一式、玉×5@TRICK、確認済み支給品(0~1)、紐と細い糸とゴム@現実(現地調達)、 M19コンバット・マグナム(次元の愛銃)@ルパン三世、夜神月が書いたメモ [状態]健康 [思考・行動] 1:仲間を募ってゲームを脱出し、主催者のお宝をいただく。 2:月の事が心配。 3:竜宮レナや園崎詩音の事が少しだけ気になる。 4:ロロ・ランペルージと接触したい。 ※総合病院で起きた戦闘の一部始終を目撃しました。 緑のスーツの人物(ゾルダ)と紫のスーツの人物(王蛇)は危険人物と判断しました。 ※寄生生物に関する知識を得ました。 【田村玲子@寄生獣】 [装備]篠崎咲世子の肉体、黒の騎士団の制服@コードギアス 反逆のルルーシュ [支給品]支給品一式×3(玲子、剣心、咲世子)、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、不明支給品(0~2)、双眼鏡@現実、 ファムのデッキ@仮面ライダー龍騎、首輪×2(咲世子、劉鳳)、着替え各種(現地調達)、シェリスのHOLY隊員制服@スクライド、 黒の騎士団の制服@コードギアス 反逆のルルーシュ [状態]ダメージ(大)、疲労(小)、数カ所に切り傷 [思考・行動] 0:人間を、バトルロワイアルを観察する。 1:新たな疑問の答えを探す。 2:茶髪の男(真司)を実際に観察してみたい。 3:正当防衛を除き、人を食わない。 ※咲世子の肉体を奪ったことで、彼女が握っていた知識と情報を得ました。 ※シャナ、茶髪の男(真司)を危険人物だと思っています。 ※廃洋館で調達した着替え各種の内容は、後続の書き手氏にお任せします。 ▽ 「痛ぅっ!!」 視界を塞いでいた黒い羽根が消えたと思えば、地面に落下した。 地上から一メートル程の高さで拘束を解かれたらしい。 月が見回すとそこは展望室ではなく、山の中ようだった。 目の前には水銀燈の姿がある。 宙に浮かずに地面を踏み締め、尻餅を着いた月を見下ろしていた。 「気分は如何?」 「……僕に、何の用だ?」 「あら、気を遣ってあげたのに」 口元を手で隠し、水銀燈はクツクツと肩を揺らす。 羽根に飲み込まれてから、月は抵抗しなかった。 人質のように利用される事に口惜しさはあったが、自力で抜け出そうとする気にはならなかった。 自分が何者なのか、分からない。 これからどうすればいいのか、分からない。 何より、ルパンや玲子とこれから―― 「貴方があの二人と一緒にいたくなさそうだったから、連れてきてあげたのよ」 言い当てられ、月は項垂れた。 キラなのかも知れない自分を抱えながらルパンと向き合う事が、耐えられない。 元より自分のせいでルパンは展望台に縛り付けられていたのだから、消えてしまえればどんなにいいかと考えていた。 「でも貴方が使えない人間なら、ここで死んで貰うわ」 いつの間にか水銀燈の手には剣があり、月の首に突き付けられている。 水銀燈が本気だという事は、これまでの彼女の行動から見ても明らかだった。 「貴方は何か私の役に立つかしら?」 挑発的な言葉を投げ掛ける水銀燈に、月は覚悟を決める。 諦めにも似た思いがあった。 「…………あぁ。立つよ」 水銀燈は、続きを促すように目を細める。 「君はさっき、仲間……それと情報が欲しかったんだろ? でも失敗した――だから僕を連れ去る気になった。 抵抗が薄い僕が相手なら、多少乱暴な手段を使っても仲間に引き込めると思った」 「そうね」 水銀燈はあっさりと肯定した。 先程のように逆上されては会話にならないという心配があったが、杞憂で済んだようだ。 「ここから言えるのは、君が余り交渉が上手くないという事だ」 「今回に関しては認めてあげるわ。それで?」 水銀燈は今、完全に優位に立っている。 その為か失敗を指摘されても落ち着いており、月としては好都合だった。 「僕は戦う事は出来ないが、人との会話や交渉は上手くやれる。 それに君が今回得られるはずだった情報だって渡せる。 いずれ首輪を外す方法だって見付ける」 「口では何とでも言えるわ」 「僕なら出来る」 月はルパンと比べれば、ただの高校生に過ぎない。 しかし日本一優秀な、という形容詞を付ける事が出来る。 この殺し合いの中でも有用な人間であるという自信があった。 「僕は君の役に立てる。 その証明に――君はこのままだと、ルパンさんに追われる事になるだろう。 危険人物だという情報を流されるかも知れない。 それを、僕が止める」 月は、覚悟をした。 ルパンと決別する――覚悟を。 現在の位置を水銀燈に尋ねると、展望台から数百メートル程の所だという。 上空から着地したままの場所――ルパンが水銀燈の着地点を確認していないはずがないのだから、ここは既に知られているという事だ。 そして、ルパンの行動力ならもうこちらに向かっているだろう。 彼の能力と展望台からの距離を考えれば、ゆっくりしている時間はない。 月は剣を突き付けられたままデイパックから筆記用具を出し、文章を書き付けた。 握った鉛筆が汗でじっとりと湿る。 平静を装っていても、首に刃物が触れている状態は呼吸一つにも緊張した。 書き終えると黒い羽根が散乱した場の中央に置き、その上に重石代わりにマグナムを乗せる。 「これで、ルパンさんは恐らく追って来ない。 悪い噂を流す事もまず無い」 「これだけで?」 「ああ。僕が一緒に行動しているのに君が危険人物だと噂が流れれば、協力している僕まで危険視されかねない。 それに自分で判断したと言っておけば、ルパンさんは僕の意志を尊重してくれると思う」 つまりは、ルパンの月に対する善意を利用しようとしている。 罪悪感が芽生えるが振り払い、「これをしまってくれないか」と剣を指差すと水銀燈はその剣を霧散させた。 月はそれで漸く立ち上がる事が出来た。 「君は、殺し合いに乗っている――んだな」 「そうよ、お父様に会う為にね」 人を殺す気でいる。 それを恥ずかしげもなく、むしろ誇らしげに言う水銀燈に気分が悪くなった。 しかし『キラ』という名が脳裏にチラつき、彼女に対してよりも自分に対して嫌悪感を抱く。 「僕は、殺し合いなんて馬鹿げていると思ってる……だから、僕は君が人を殺そうとすれば止める」 「何ですって?」 水銀燈が眉間に皺を寄せるが、月は構わず続ける。 「僕は君が生き残る為の協力はするし、脱出の為の努力もする。 でも参加者を減らす手伝いは出来ない」 「……分かったわよ。それでいいわ」 唇を尖らせるような不満気な声だったが、納得していない訳ではないらしい。 そして水銀燈はふと思い出したように、月に確認を取る。 「貴方は頭脳労働担当……そうよね」 「ああ、僕は戦えない」 「それなら、nのフィールドに行く方法を考えておきなさい」 「n……?」 聞き慣れない言葉を聞き直すと、彼女は億劫そうにしながら説明した。 思念で構成された現実世界の裏側であり、誰かの精神の世界。 つまりはそこを経由すればこの会場から出られるのではないか、という話だった。 「それで、今はそこに行かれない?」 「妙なのよ。鏡から入ろうとすると、『入る気が失せている』……」 彼女の言う奇妙な感覚は、本人にしか分からないものだ。 入れない、のではない。 入ろうとする意思そのものが、消されてしまう。 V.V.が彼女に催眠術でも掛けたのだろうか。 「……分かった。今は分からないけど、それについても情報を集めるよ」 月が頷くと、水銀燈は「頼りにしているわ」と微笑んだ。 そのうちに話が過ぎてしまった事に気付き、月は水銀燈を促した。 「そろそろここを離れよう、もうルパンさんが来てもおかしくない」 水銀燈と共にその場を後にする。 最後に一度だけ、手紙を置いた場所を振り返った。 ――さようなら。 【一日目日中/D-5 山中】 【夜神月@DEATH NOTE】 [装備]なし [支給品]支給品一式、確認済み支給品(0~2)、月に関するメモ [状態]健康 [思考・行動] 1:仲間を募りゲームを脱出する。 2:Lに注意する。 3:情報収集を行い、終盤になったら脱出目的のグループと接触する。 4:命を脅かすような行動方針はなるべく取りたくない。 5:僕は……。 ※F-1で起きた戦闘の一部始終を目撃しました。どの程度の情報が得られたかは、後続の書き手氏にお任せします。 ※ルパンから銃の扱いを教わりました。 【水銀燈@ローゼンメイデン(アニメ)】 [装備]無し [所持品]支給品一式×3(食料を一つ譲渡)、メロンパン×4@灼眼のシャナ、板チョコレート×11@DEATH NOTE 農作業用の鎌@バトルロワイアル、不明支給品0~2(橘のもの、確認済) [状態]右目にヒビ割れ、右眼周辺に傷、深い悲しみと憎悪 [思考・行動] 1:優勝する。 2:真紅のローザミスティカを得る。 3:夜神月を利用して下僕を集める。 4:3を達成したら、狭間偉出夫を殺しに行く。 [備考] ※ゾルダの正体を北岡という人物だと思っています。 ※nのフィールドに入ろうとすると「入ろうとする意思そのものが消されてしまう」ようです。 【黒の騎士団の制服(女性用)@コードギアス 反逆のルルーシュ】 玲子が廃洋館内で調達。 黒の騎士団の団員の制服。バイザーは付属していない。 時系列順で読む Back Blood teller Next 死せる者達の物語――Everything is crying 投下順で読む Back 月光 Next DEAD END(前編) 106 少女が見た日本の原風景 ルパン三世 136 急転直下 田村玲子 137 寄生獣 夜神月 144 銀の邂逅 月の相克(前編) 118 鏡像 水銀燈
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Story ID W7Yw6c2S0 氏(154th take) みずがねあかり 将来の夢:ギタリストかテロリスト 好きなもの:音楽と風邪薬と安全ピン 好きな人:お父様とあさきとエンペラー 一言:アナタガァ私ニィ崇リ殺サレルカナァ!? 短編連作SS保管庫へ
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4限目の終了を告げるチャイムが響き、生徒達に活気が溢れた。 水銀燈「はぁい、それじゃあ今日はここまでねぇ」 昼食の準備を始めた生徒達にそう言い残し、水銀燈は教室を後にする。 手には授業で使った教科書やらプリントと小さな弁当箱。 外を見れば梅雨も明け、もう夏の香りがしている。 水銀燈「たまには、外でお弁当っていうのもいいわよねぇ」 グラウンドがある方向とは別の、あまり目立たない芝生の上に寝ころびながら呟く。 眼前にはただただ青い空とそこに浮かぶ白い雲。 ゆったりと吹いてくる風が心地よい。と、 蒼星石「ですよね。水銀燈先生」 いきなりその視界に見慣れた顔が現れた。 水銀燈「うわっ、いきなり脅かさないでよぉ…」 蒼星石「ふふ、すいません。それにしても水銀燈先生がこんな所に来るなんて珍しいですね」 そう言って蒼星石は水銀燈の横に腰を下ろし、同じように寝転がる。 水銀燈「あらぁ、私がこういう所に来たら悪いかしらぁ?」 蒼星石「別に悪くはないですけど。少し不思議に思ったので」 水銀燈「…不思議ねぇ」 相変わらず空は青く、いつの間にか雲は流れ一面真っ青。 昼食を取ることも忘れて2人はその光景をただ黙って眺めている。 そんな時、突然蒼星石が口を開いた。 蒼星石「水銀燈先生は小さい頃、夢なんてありましたか?」 水銀燈「なによぉ、突然そんなことぉ」 蒼星石は水銀燈の返事を待たず続けた。 蒼星石「僕は今の職、つまり教師に小さい頃からなりたかったんです」 水銀燈「…ということは夢は叶ったのねぇ。よかったじゃなぁい」 蒼星石「でも最近よく考えるんですよ。今のままで本当にいいのかって」 水銀燈「なんでぇ?蒼星石先生は生徒にも人気があるし、授業も分かりやすいって評判じゃなぁい」 蒼星石「確かに、みんなは僕を好いてくれているけど…それに答えられる自信がないんです」 水銀燈「…」 蒼星石「僕は周りが思っているほど強い人間でもないし、ましてや万能なんかじゃないんですよ」 蒼星石「でも僕は教師だし、生徒に対しては常に見本になるような先生じゃないといけない」 蒼星石「そう考えると、僕なんかがみんなの見本として教壇に立つ資格なんて…」 水銀燈「貴方、見掛けによらずお馬鹿さんなのねぇ」 蒼星石「なっ!」 思わず起きあがり、少し怒りを含んだ声で声を上げるがそんな事は気にせず水銀燈は続ける。 水銀燈「まず、貴方は何の為に教師を目指したのぉ?」 水銀燈「確かに先生っていうのは生徒から憧れられたり、好意を持たれたり、尊敬されたりするわぁ」 水銀燈「でも、それは自分が理想とする姿ではなくて、ありのままの貴方だと私は思うのよぉ」 水銀燈「確かに生徒に対して良き先生であろうと考えるのはいいことだわぁ。私も見習わないと」 蒼星石「でも、僕にはその自信が…」 水銀燈「別に気負う事はないのよぉ、私みたいにお気楽過ぎてもダメだけどねぇ」 そう言うと、ポケットから煙草を取り出して慣れた手つきで口へと運ぶ。 水銀燈「要するに自然体で過ごせば私はいいと思うわよぉ?少なくとも今の貴方は私が羨ましいと思うほど素晴らしい先生だもの」 シュボッ、という音と共に煙草に火がついて白い煙が青い空へと消える。 水銀燈「騙されたと思って、しばらくは素の自分でありなさぁい。私が言えるのはここまでよぉ」 そこまで言ったとき、昼休みの終わりを告げるチャイムが響いた。 水銀燈「あらぁ…貴方の相談聞いてたらお昼ご飯食べ損ねちゃったじゃなぁい」 蒼星石「…ありがとうございます、水銀燈先生」 水銀燈「なぁに?私はただ単に貴方の問いに答えただけよぉ?ふふっ」 そう笑って、食べ損なった弁当とプリントを持って水銀燈は職員室へと去っていった。
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水銀燈「う…な、何…!?この感じ…!?」 その日、水銀燈は奇妙な体験をした。 ベッドで気持ちよく寝ていたときに、いきなりその体がずしんと重たくなった。 例えていうのなら、誰かが上に乗っているような感じ…それが金縛りではないかと気づいた時、水銀燈の頭の中に色々な考えが交錯した。 「20歳を超えたら、金縛りに遭わないというのは嘘だったの…?」とか、「目を開けたら、お化けがいたらどうしよう…」とか…。 しかし、最終的にはこういう結論に達した。 「いくらお化けだろうと何だろうと、この私の寝込みを襲おうなんて、いい度胸してるじゃない…!」と。 その刹那、ほとんどマウントポジションを取られているような状況にもかかわらず、相手に殴りかかろうとする水銀燈。 それをかわすと、水銀燈の上に乗っていた『モノ』は、こう言った。 ?「あ、ビッチ…じゃなくて、『水銀燈さん』…。おはようございます。」 そこには、この頃の水銀燈にとって最大の敵であった、雪華綺晶の姿があった。 水銀燈「…あなた、影で私の事…そういうふうに呼んでたのね…!?」 雪華綺晶「ええ、妹にも怒られましたが、あなたにはお似合いでしょう?」 全く悪びれる様子の無い雪華綺晶。そんな彼女に、水銀燈はこう切り替えした。 水銀燈「…あなたって、ホントむかつくわね…。人に嫌われるタイプでしょ?」 雪華綺晶「…ビッチさんには負けますよ…。」 その言葉に舌打ちをすると、水銀燈はこう言った 水銀燈「あっそ。…まあいいわぁ…。それよりも、私の部屋で一体何をしていたの…!?それと、あのうるさい妹はどうしたのよ…!?」 雪華綺晶「妹は、風邪でお休み…。で、6時45分になったらあなたを起こしてって言われたから、時間まで待っててあげ…」 水銀燈「…そう。じゃあ、仕方ないから学校に行かないとね…。」 それは、雪華綺晶にとって意外な反応だった。 あの水銀燈なら、これ幸いとばかりに学校を休みそうなものだが…。 そんなことを考えながら、じっと水銀燈の顔を見つめていると、それに気がついた水銀燈はこう言った。 水銀燈「…何見てるのよ…。だって、あのクラスは私のものでもある訳だから、薔薇水晶が休んじゃったら行かなきゃしょうがないじゃない…。」 しかし、その発言を聞いて雪華綺晶の頭はますます混乱した。 そして、ちゃんと規定の時間前に登校する2人。 その2人から薔薇水晶が病欠だと聞くと、真紅はすぐに他の先生を代わりに授業に出すことを決めた。 その白羽の矢が立ったのは、ほかでもない水銀燈だった。 水銀燈「…何で、私な訳ぇ?」 真紅「いいじゃない。あなたは、2時間目と6時間目が空いてるんだから。それに昔、社会科系の授業全てを受け持っていたんだから、薔薇水晶の代わりに授業を進めることも出来るでしょう?それで、他のところは空いてる者が自習時間を見張るということでいいと思うの。」 水銀燈「やぁよ。薔薇水晶のことは薔薇水晶に任せるのが一番よぉ。今更、私が入っていく余地なんて無いわぁ…。」 真紅「貴女らしくないわね…。まさか、去年の失敗を未だに引きずっている訳ではないでしょう?」 水銀燈「…何とでも言いなさぁい…。とにかく私は、授業なんかするつもりは無いわぁ…」 その後も、水銀燈は頑としてその意見を変えようとしなかった。 その後、自習時間は、何の問題も無く終わった。 が、雪華綺晶にはどうしても確かめておきたいことがあった。 真紅はさっき『去年の失敗』と言った。しかし、あの水銀燈…1度私に謝罪したくせに、性懲りも無く何度もちょっかいをかけてくる水銀燈が、なぜたった1度の失敗で、あんなに尻込みしていたのか…。 それだけが、どうしても気になっていた。 そして、放課後…雪華綺晶は意を決して、真相を問い詰めた。 すると、水銀燈はようやく重い口を開いた。 「…まあ、薔薇水晶の身内であるあなたには、話しておいたほうがいいかもね…。」と言いながら…。 水銀燈「ほら、あの子って自分にコンプレックス持ってるって言うか、どこか自分に自信が無いようなトコがあるのよね…。それでいて、打たれ弱いし…」 雪華綺晶「うん…だから、私が守ってあげなきゃって思ってる…。」 それを聞き、「素敵な姉妹だこと」と茶化すと、水銀燈は続けてこう言った。 水銀燈「…だから、下手に私が授業なんかやっちゃうと、後の反応が怖いのよ…。ほら、人間十人十色なわけだしぃ、もし万が一…薔薇水晶より私の授業のほうがいいなんて言い出す生徒が出たら、それこそ大変なことでしょう?」 雪華綺晶「…うん。」 水銀燈「…それに、風邪の症状は軽そうだしぃ…2・3日すれば大丈夫だろうから、替えの授業なんて必要ないと思ったのよぉ。」 雪華綺晶「え…?何でそんなことが分かるの…?」 水銀燈「…あなたが、この学校に来てるからよ。もし、熱が40度近くまであったら、あなた薔薇水晶のそばを離れないでしょう?だから、大したこと無いって分かったの。」 それは、雪華綺晶にとって意外なことだった。 あれほど敵だと思っていた相手が、まさかこれほどまでに愛する妹のことを気遣ってくれていたとは…。 おそらく、公然と他人を『糧』と言ってはばからない彼女にとって、人の心…ましてや思春期の男子生徒の心をつかむくらい簡単な事だろう。 それを使って、元の自分の地位を取り戻すことも出来るはずだし、まして今回はそのビックチャンスだったはず… …でも、彼女はあえてそれをせず、それどころか嫌っている真紅に『負け』を認めてまで…己のプライドを捨ててまで、妹を守ってくれた…。 雪華綺晶「…お姉さま…」 水銀燈「…え?」 そう、水銀燈が答えるより早く、雪華綺晶は水銀燈の背中におぶさった。 雪華綺晶「お姉さまぁー…♪」 水銀燈「な、何なのよ!?気持ち悪い!!早く離れなさい!!」 その後、雪華綺晶は決して水銀燈の背中から離れようとせず、水銀燈は仕方なしに薔薇水晶へ助けを求めた。 そんなことが起こっているとは露知らず、玄関のチャイムの音を聞き、苦しそうに咳をしながら表へ出る薔薇水晶。 そこに現れたもの…それは、かつてあれほど嫌っていた水銀燈に甘える雪華綺晶と、困った顔をしながらも、何故か少し嬉しそうな水銀燈の姿…。 そんな2人を、薔薇水晶は最高の笑顔で出迎えた。 完 翌日
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お題 『雛苺 寒中水泳』 薔薇水晶「銀ちゃん…。ちょっとこっち来て。」 ある冬の日、薔薇水晶はいつもより1オクターブ低い声で、同じ職員室内にいた水銀燈を呼び寄せた。 まずい…こういう時に続く言葉は2つに1つ…。1つは、『また悪いことしたでしょう…?』…。そして、もう1つは『何か、私に隠してることがあるでしょう…?』…。 その薔薇水晶の一言に、呼ばれた当の本人は「一体、何がバレたんだろう…」と思わず身構えた。 『営業活動』を再開したこと?それとも、理科室の使えそうな薬品を無断で持って帰ったこと?まさか、今住んでるマンションが賃貸じゃないって事がバレたとか!? …マンションの件…。これだけは何としても隠し通さないと…!前のランボルギーニのようには… 薔薇水晶「…何をブツブツ言ってるの?あのね、真紅さん達とも話し合ったんだけど、雛苺さんって結構体弱いじゃない?だから、インフルエンザとかが流行る前に対策を打とうと思うの…。」 その一言に、水銀燈は深い安堵のため息をついた。 水銀燈「…で、私に何をさせる気?」 薔薇水晶「ほら…銀ちゃんは水泳部も持っているし、たまに学校のトレーニングルームを利用したりしているでしょう?だから、その時雛苺さんも一緒に連れて行ってあげて欲しいの…。」 その時、どこからともなく雛苺が現れ、水銀燈にこう挨拶した。 雛苺「よろしくお願いします、なの!」 水銀燈「…別にいいけどぉ…。ただ、見ているだけでいいんでしょう?」 その言葉に、思わず目線をそらし、雛苺はこう言った。 雛苺「…う…あのね、ヒナ…泳げないの…。」 水銀燈「大丈夫よぉ…。ビート板もあるし、それに…」 雛苺「…そう言う問題じゃなくて…」 そこで一瞬言葉を止めた後、雛苺は衝撃の告白をした。 雛苺「ヒナ…水の中で目を開けるのが怖いのよ…」 水銀燈「…は!?」 この発言には、流石の水銀燈もただただ驚くばかりだった。 水銀燈「水が怖いって…。あなた、今までどうやって髪とか洗ってたのよ…。」 雛苺「…しゃんぷー…はっと…。」 その返答に、思わず水銀燈は頭を抱えてしまう。 全く…安請け合いするんじゃなかったと後悔しながら、水銀燈は雛苺を学校の屋内プールへと案内した。 水銀燈「今日は、水泳部お休みにしてあげたから、人の目を気にせずに練習できるわよ。…だから、今日一日でちゃんと泳げるようになりなさいよね…。私だって暇じゃないんだから…。」 雛苺「頑張るのー!」 そう言って、意気揚々と水に飛び込む雛苺。 しかし、その水しぶきが目に入ると、「ひゃっ!!」と情け無い声を上げた。 水銀燈「…とにかく、目をつぶったままでいいから、顔を水の中に入れて御覧なさぁい。」 雛苺「やー!!」 水銀燈「大丈夫よぉ…。そんなことじゃ、翠星石とかに笑われるわよぉ?」 しかし、そう言っても全く動こうとしない雛苺。 その時、水銀燈はある方法を思いついた。 水銀燈「仕方ないわねぇ…」 そう言うと、ドボンと水の中に入る水銀燈。 すると、水銀燈はいきなり雛苺に水をかけ始めた。 雛苺「やーん!!なにするのー!?」 水銀燈「だって、全然言うこと聞かないんだもぉん♪イライラするのよねぇ…そういうの…」 雛苺「う…。水銀燈のばかぁー!!」 そう叫ぶと、雛苺も水銀燈に向かって水をかけ始めた。 互いに一歩も引かない2人…それが10分ほど経った頃、水銀燈は急にその手を止め、こう言った。 水銀燈「ねぇ、雛苺…。今、私が水をかけたとき…あなたはどうしてた?」 雛苺「水銀燈に水をかける準備してたのよ!もう降参なの!?」 水銀燈「…その時、目はどうしてたぁ?」 雛苺「水銀燈を逃がさないように…あっ…!」 水銀燈「ほらね…。水なんて、全然怖いこと無かったでしょう?」 雛苺「う…ごめんなさい…。ヒナ、さっき酷いこと言っちゃった…。」 水銀燈「いいわよぉ…。別に気にしてないし…。さ、次はちょっと泳いでみるわよぉ?ほら、私の手を持って。それで足を動かすの。準備はいい?」 そういうと、雛苺の手をしっかりと握り、リードしてやる水銀燈。 上の観客席では、薔薇水晶と真紅がその光景を微笑みながら見守っていた。 完
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お題 『白崎・雛苺・薔薇水晶』 ?「すいませーん、誰かいらっしゃいませんかー?」 昼休み、水銀燈が職員室で1人、本を読んでいると1人の男が尋ねてきた。 顔はまあ悪く無いわね…と品定めをしながら、水銀燈は応対する。 水銀燈「なぁに?みんな今、お昼だから出払っちゃってるのよねぇ…」 ?「そうなんですか…。あっ!私、教育教材販売の『白崎』と申しまして…」 水銀燈「あらそう…。私、保健体育担当だから、そんなもの必要ないわぁ…」 白崎「そうなんですか!?いやー、だからそんなに健康的で美しいんですね!!」 水銀燈「ふふ…口が上手いのねぇ…。ま、どうせヒマだから、話ぐらいは聞いてあげるわぁ…。」 そう言うと、水銀燈は白崎を椅子に座らせた。 白崎「…というわけで、この商品は他校でも好評でして…」 熱心に商品の説明をする白崎。それとは対照的に、水銀燈は非常に眠そうである。 どうやら、この手の商品にはあまり興味が無いらしい。 水銀燈「ねぇ…そんなのじゃなくて、アクセサリーとか扱ってないのぉ?」 白崎「い、いや…私は教育教材が専門でして…」 水銀燈「つまんないのぉ…。」 白崎「あの…失礼ですが、水銀燈さんはあまり教育にはご関心が…」 水銀燈「んー?無いわよぉ。何で人様の子供のために、一生懸命にならなきゃいけないのよぉ…。自分のことだけで、精一杯だわぁ…。」 そう言うと、水銀燈は独自の教育論をこんこんと語りだした。 水銀燈「…というわけで、自分のことぐらい自分でやれって思うわけ。分かる?」 白崎「なるほど…仰るとおりです。確かに、最近の親は教師にすべてを任せる傾向がありますからねー…。そのくせ、権利ばっかり主張する…。」 水銀燈「あなた…話が分かるわねぇ…。好きになっちゃいそうだわぁ…♪」 その言葉に思わず照れ笑いを浮かべる白崎。 白崎「それは光栄です♪…でも、そうするとあまり学校も楽しくなかったりとか…」 水銀燈「そうね…でもいいトコもあるわよぉ…。色んな出会いや発見もあったしねぇ…」 白崎「例えば、新しいご友人が出来たとか?」 その問いに、「さあね…。」とそっけなく答えると、水銀燈は次の授業の準備をしだした。 そんな水銀燈に、白崎は最後の質問をする。 「…どうしたら、学校が楽しくなると思いますか?」と。 水銀燈「…ふぅ…。少し喋りすぎちゃったわねぇ…。」 普段見せない本心を、一部とはいえ他の人…それも初対面の相手に晒してしまったことを悔いる水銀燈。 そこへ、雛苺と薔薇水晶がやってきた。その表情は、どことなく普段より明るく見える。 水銀燈「どうしたのぉ?何かいいことでもあったのぉ?」 雛苺「うん!!これから1週間、水銀燈はヒナや薔薇水晶と一緒に暮らすのよ!?」 薔薇水晶「そうなの…さっき、教頭先生からのお達しで…」 水銀燈「何言ってるの!?そんなの絶対許さないわよ!!」 予想外のことに、珍しく慌てる水銀燈。 冗談じゃない…雛苺はともかくとして、薔薇水晶なんかと一緒に住んだら、絶対規則正しい生活をさせられるに決まっている…!! 自由を愛する水銀燈にとって、それは拷問以外の何物でもなかった。 水銀燈「とにかく、そんなの絶対にやぁよ。大体、そこまでする権利がどこに…」 雛苺「うー…。水銀燈は、ヒナのこと嫌いなの?」 水銀燈「そ、そう言う意味じゃなくて…」 薔薇水晶「嫌いなの…?」 水銀燈「!?何で、あなたまでそんな目をするのよ!?何なのよ、一体!?」 …こうして、3人は1週間、仲良く一緒に生活することとなった。 薔薇水晶「銀ちゃん!もう12時だよ!!いつも、そんな遅くまでお酒飲んでるの!?」 水銀燈「『午前』12時だから、暦の上ではもう朝よぉ?全然遅くなんて…」 薔薇水晶「そう言うのをヘリクツっていうの!!雛苺を見習いなさい!!」 水銀燈「じゃあ、雛苺のように夜10時に寝ろっていうの!?お馬鹿さん!!」 まるで、修学旅行の夜のように騒ぐ2人。 一方、別の家では、ある男がこんなことを考えていた。 ラプラス「水銀燈は朝に弱い割に、夜遊び歩いているから、よく学校をサボってたんですね…。まあ、仲の良い二人をそばに置いたことですし、これで彼女のさぼり癖も少しは治ればいいのですが…。」 そう、実は今回、ラプラスは白崎という人物に化けて、水銀燈のさぼり癖の秘密を探っていたのだ。 ちなみに、最後の質問に対する水銀燈の答えは、「さあ…誰かがいつもそばにいれば、それはそれで楽しいんじゃなぁい?」と言うもの… それを踏まえたうえで、水銀燈とは仲のよい雛苺と薔薇水晶が1週間、一緒に暮らすようにしたというわけだ。 ラプラス「…次は、翠星石ですか…。これも大変そうですね…。」 ため息混じりに、そう語るラプラス。 彼のこういった陰の努力があるからこそ、この学校が上手く成り立っているのかもしれない… 完