約 245,190 件
https://w.atwiki.jp/sdora/pages/1828.html
属性 水属性 最大Lv 70 初期HP 4266 最大HP 6399 レアリティ ★5 タイプ ウォーリア 初期攻撃力 1471 最大攻撃力 2206 初期防御力 1041 最大防御力 1561 初期スピード 1621 最大スピード 2432 +HP上限 2550 最大HP上限 8949 +攻撃力上限 975 最大攻撃力上限 3181 +防御力上限 525 最大防御力上限 2086 +スピード上限 975 最大スピード上限 3407 リーダースキル 白刃の守り 火属性の敵から受けるダメージを15%軽減 フォーススキル1 ソルユラティオ 敵単体に水属性のn%ダメージの防御無視7連撃。スキル後、自身に3ターン毒を付与。 Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5 Lv6 Lv7 Lv8 Lv9 Lv10 38 39 40 41 42 43 44 ディレイターン 3 効果持続ターン - フォーススキル2 白刃の舞 HP25%を消費し、水属性のn%攻撃を16~20回連続攻撃。防御力無視。 Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5 Lv6 Lv7 Lv8 Lv9 Lv10 20 20 21 21 22 23 23 ディレイターン 4 効果持続ターン - 通常進化 [木陰の双刃]キル 特殊能力 闘争本能[弱] / 先制 / [強]魔族キラー 幻獣契約 [燦めく白砂]キル 契約素材 [三頭海獣]ヴェルデクス(2)[千本棘]パララゼリス(2)[涜聖]ブリスヴェルミー(2)[雷光]トロヴァロ 入手方法 レアガチャ、他。 備考 CV 羽田 亜未・水着ユニットが登場するガチャイベント『波打ち際の守護女神』開催!_http //crw.lionsfilm.co.jp/news/detail.php?id=527 k=3 ・イベントクエスト『三少女漂流記』・2020/08/27アップデートにて進化/契約に潜在解放が追加。_http //crw.lionsfilm.co.jp/gesoten/news/detail.php?id=2101 k=2 資料 *初期ステータス。 コメント 名前
https://w.atwiki.jp/testest-umigamedb/pages/21.html
6月16日亀人10 主題者:チーズ・コルウィル タイトル:殺し屋・カメコ 【問題】 カメオは上司のウミスケ部長を殺したい程恨んでいた。 とある日カメオはバーで1人で呑んでいると、隣にカメコと名乗る女が座ってきた。 カメコ「あなた上司のウミスケさんという方を殺したい程恨んでますね」 カメオ「!!!何故それを!!」 カメコ「ふふふ…50万円支払って頂ければ私が代わりにウミスケさんを殺して差し上げますわよ」 カメオ「わかりました…お願いします」 カメオはカメコに50万円を支払った。 そして3か月後ウミスケ部長はカメオの目の前で死んでしまった。 しかし辺りを見回せどカメコの姿がない… 一体どうやってカメコはウミスケ部長を殺したのだろう? 【解説】 + ... 医師「ウミスケさん、あなた脳に腫瘍が出来てます。 一刻も早く手術しなければ3か月持つかどうか…」 ウミスケ「今会社が忙しくてな…入院してる暇がないんだ!! 特に部下のカメオ、あいつを早く一人前にしなければ…」 そう言い残し、医者の言うことを聞かずその場を後にしたウミスケ部長。 ナース「先生、今の…」 医師「ああウミスケさんね。 部下のカメオって人に人一倍厳しく接しているらしくて、 そのせいか裏では彼に相当恨まれてるらしいよ」 ナース「そうですか…」 そう、このナースの正体がカメコだった! カメコ「ふふふ♪いいこと聞いちゃった♪ カメオって人あそこのバーでちょくちょく見掛けるから 今度見かけたら声かけてみよう♪」 こうしてカメコは殺し屋を装い、いとも容易く50万円を手にしたのだった… 《死》 亀人に戻る 前の問題 次の問題
https://w.atwiki.jp/orirowa2014/pages/174.html
「…どうしてこうなった」 鵜院千斗はかなり落ち込んでいた。 無論殺し合いなどというものに参加されてしまったせいである。 名前はちょっと普通じゃないが、身体能力や性格など全般において普通の彼がなぜこんなことに巻き込まれてしまったのか。 始まりは誤って悪党商会の面接を受けてしまったことだろう。あの時、間違えなければこんなことに巻き込まれることはなかっただろう。 後になって受けようとした会社が超ブラック企業だったと知ったが、こちらも大差ないように思える。 何せヒーローと衝突しなければならないのだ。最悪人間の原型を保ったまま死ねないかもしれない。 戦闘員として戦地に駆り出されている以上、死体は見慣れてはいる。だが千斗はそんな死に方御免であった。 故に本気で悪党商会の仕事に取り組むことはなかった。取り組んだところで死ぬだけなら、のらりくらりと過ごした方が良い。 それがヒーロー側にも伝わってたりするかなと思ったことはあまりない。毎回こちらが軽く死ねる攻撃をしてくるヒーローは最早恐怖の対象でしかない。 無論そこまで嫌なら仕事を辞めるという選択肢もあった。だが主に二つの理由が彼を辞職という選択肢をさせないでいた。 まず一つ目は社長の森、上司の茜ヶ久保、近藤らにその事を言い出せる勇気がないからである。 むしろ「仕事辞めます」などと言い出したら「じゃあ死んで」などと言われそうで怖いからだ。 実際彼らは一般人に対して酷く冷たい。そりゃ悪党なんだから当然なんだが、正直善良な一般市民を手にかける姿を見ていると気が重くなる。 茜ヶ久保なんかは嬉々としてそれを実行するもんだからはっきり言ってドン引きである。 勿論例外もいる。半田幹部や孤児のユキがそうだ。彼らは一般人を手にかけることはない。 悪党としては失格だとは思うが、むしろ千斗は常識人が俺以外にもいたとひそかに喜んでいた。 まぁそのやり方が社内で内部対立を起こしかけているのだが、それは別の問題である。 二つ目は、あまり認めたくないことだが、社員の皆に情が移ってしまっていることである。 やってることは極悪非道だが、なんだかんだ社員をやっているとみんなどこかしら良い奴に見えてしまうのである。 半田は体格の割に先述のように一般人に手をかけないジェントルマンだし、ユキもこちらを本当の家族のように思っていると態度で感じることがある。 先ほどドン引きすると言った茜ヶ久保に至ってはなぜか気に入られる始末で、なんだかんだコミュニティを築いてしまった結果やめづらくなってしまった。 「でもこんなことに巻き込まれるならやっぱ辞めときゃよかったかなぁ…」 そう言いながら歩道を歩んでいく。地図によれば現在地はJ-8、警察署がある地区だ。 まぁいるとは思ってないが、せっかく近くにいるのだから警察署に寄ってみたくなる心理を理解してほしい。 決して警察官がいたら助けを求めようだなんて思っていない、ホントだよ? などと考えながらようやく警察署が見えたあたりで、彼は聞いてしまった。 戦地での指示を正確に聞き取るために鍛えられた聴力を彼はこの時ばかりは恨んだ。 というのも聞こえたのは何かを振るう音だったのである。音からすると棒状の何かを振った音だろう。音源は警察署で間違いない。 警察署で何を振るうというのか、いやむしろ何に向かって振るっているのか。 人に向かって振るっているのなら、止めなければならないだろう。 千斗はそう考えて、警察署まで急いだ。 鵜院千斗が警察署にたどり着く前。 「殺し合いか…」 警察署でそう呟いたのは、銀髪の女性であった。ハンチング帽と厚手のコートがボーイッシュな雰囲気を漂わせている。 彼女の名前はバラッド。本来警察署にいることがおかしい人物である。 というのも彼女は殺し屋なのだ。それもその職に特化した組織の一員である。 もともとは殺し屋などと縁のない彼女だったが、ある日を境に組織に入ることとなった。 そのある日とは彼女の父親の命日でもある。もっとも殺したのは彼女なのだが。 というのも彼女の父親は娘に虐待を施していたのである。それでも相手が父親だからと彼女はされるがままになっていた。 だがその日の虐待は限度を超えており、このままでは殺されると感じたのであろう。ついに父親を手にかけてしまったのだ。 もしあの時、組織に拾われていなかったら今のバラッドはいない。そういう意味で彼女は拾ってくれた組織の上司に感謝していた。 だが今はもういない。彼は組織のトップに立つという理由で実の息子に殺されてしまった。 そう今の上司であるイヴァン・デ・ベルナルディに。 ―…見方によってはチャンス…? そうこの殺し合いというイベント下なら、普段は護衛に守られている彼も一人で動かざるを得ないはずだ。 それにこの場にいる殺し屋は、サイパスを除けば、イヴァンにもコントロールができない奴らばかりだ。 イヴァンを守るために動く、なんて殊勝な奴はいないだろう。 殺すならこのタイミングを逃す手はない。 そう思い立った彼女は警察署を出ると同時に見たくない奴の顔を見ることになった。 「…ピーター」 「おや、バラッドですか、こんな所で会えるとは」 ピーター・セヴェールは殺し屋組織における美男子である。 殺しの腕自体はそこまで立つほうではない。むしろバラッドよりも低いだろう。 だがそれでも彼には一種の恐怖心がある。というのも彼は一種の変態だからである。 そりゃこの職業上変態趣味な輩は多くいることは解っている。ピーター以外にも組織には何人か変態がいるから実感している。 だがピーターはその中でもよりによって女性を殺すことに悦を感じるほうの変態なのだ。たまにこっちを見る目が気持ち悪くてたまらない。 しかも気に入った女性の死体を保存して弁当にして食しているという。ドン引きもいいところである。 「いや、しかしこんな所で会えたのも何かの縁、どうです?共に行動でもとりませんか?」 「せっかくだけど、遠慮させてもらうよ」 故にこのような会話の流れになるのも至極当然であった。 「そうですか、それは残念、ではせめて少し雑談でも」 「それもお断りで」 当然であった。大事なことなので二回言った。 「じゃあ、せめて支給品の交換くらいしませんか?」 「……いや、それも」 当然おこと「ちょうど日本刀が支給されていたのですが」 「ぜひとも交換しよう」 ……まぁこんなこともある。 人には誇れない趣味だが、私は刀剣を暇があれば収集している。 その数は最早一つの部屋では飾れないほどであり、コレクションルームなんてものをわざわざ借りているくらいだ。 一時期、高校生にしてかなり切れ味のよい刀鍛冶がいると聞いて、組織専属にしてみたらどうかと直談判したことさえある。 無碍もなく断られてしまったが。 「おお、これは凄い」 そして交換して手に入れた日本刀を見て、私は思わず頬を綻ばせる。というのも先述した人物がかつて打った刀だったからである。 デビュー仕立ての頃の作品なのかところどころムラがあるが、確かに素晴らしい刀だと手放しで褒められるモノである。 戦闘に特化しているところもまた非常に好印象だ。こんな名刀を渡されたら試し切りせずにはいられない。 「斬っていい?」 「ダメに決まってるでしょう」 このやり取りも組織ではお約束である。 ショボンとしながらも、こちらも交換する品を提供する。 「ほう、これは…いいのですか?」 「もともと銃は嫌いだし、私は刀があれば十分だから」 そう言ってピーターに手渡したのは、機関銃だ。 ピーターは機関銃と刀は釣り合わないのでは考えているみたいだが、私の場合はそうでもない。 少なくとも刀を手にした私は機関銃の銃弾くらい避けるのはたやすい。そういう考えもあって渡した。 「では交換はこれで終了ですね」 「ああ、そうだね」 そしてしばらくの間無言になる。どう切り出すべきか悩んでいたが、思い切って話す。 「じゃあ、始めようか」 「何を?」 「殺し合いに決まってるでしょ。つかあんたそうするつもりだったんでしょうに」 そう言って私は刀を構えた。対するピーターは驚いた表情でこちらを見つめる。 「何故…というかいつ頃気づきました?」 「最初から、その様子じゃあんたは何故気取られたのか理解できてないようだけどね」 「…どうして気づいたのか、教えてくれませんかね、今後の参考にするので」 あいにくながら、こっちはそこまで親切にするつもりもない。一気にピーターの懐まで踏み込む。 日本武術で言うところの縮地というやつだ。ヴァイザーならともかく戦闘に不向きなピーターではこの攻撃を回避できまい。 機関銃で抵抗されることも考えていたが、あまりに突然すぎて対応もできないようだ。 だが運がいいのか悪いのか、ピーターは後ろに倒れることで最初の一刀を回避した。 しかしここまでだ。相手が倒れている以上こちらの優位は絶対に揺るがない。 今度はこっちが質問する番だ。 「何故殺そうとしたの?私とあんたの力量差を計れないほど馬鹿じゃなかったでしょう?」 本当に疑問に思っていたことであった。何故この男は私を殺そうと動いたのだろう。 「……支給品にね、弁当がないんですよ…」 「「……は?」」 …何を言っているんだ、こいつは。 だがそれよりもおかしな現象が起きている。別の方向からも「は?」と聞こえたんだが。 ピーターもそう思ったのか、別方向で上がった声の方向に顔を向けている。 「「「あ」」」 そうして私たちは出会ってしまった。 ―どうしてこうなった。 鵜院千斗は頭を悩ませていた。先ほどまで自分は誰か襲われているなら助けようと考えてここまでやってきた筈だった。 なのに現在その選択を後悔しているのは、助けた相手がカニバリズムの変態だからである。 ―茜ヶ久保といい、どうして俺が助けるやつは異常な人ばっかなんだろう… しかも女性を襲った犯行動機が食欲を抑えきれなかったってバカすぎる。 知り合いらしい女性も机に座りながら頭を悩ませている。当の被疑者は床に正座して頭を垂れている。 正確には強制的に正座させている。どうも戦闘力はさほど高くないらしく、俺でも押さえつけることができた。 どうも戦地で幾分か鍛えられてしまったらしい。あまり嬉しくないが。 「…えと、そろそろ反省したか?」 とりあえずそう問いかける。何度目かになるその問いかけに男は、正座の影響だろうか、顔を青ざめながら叫んだ。 「反省って、貴方は私に餓死しろとおっしゃいますか!」 「携帯食料があるだろ!それで我慢しとけよ!」 「先ほども言いましたけど、私の舌があの味を受け付けないのです」 「だからって女性襲うやつがいるか!」 ちなみにこのやり取りは、双方から話を聞いてからこれで五度目である。 いい加減このループから抜け出さなくてはならない。 そう思っていたら、女性が正座している男にこう言った。 「…死体で譲歩できる?」 「「…死体?」」 「そう、もうすでに殺し合いが始まってから二時間は経過してる。何も全員が全員殺し合いに乗らないわけじゃないでしょう。 となると、絶対に死体が出てると思う。中には女性の死体だってあるはずよ。それを食すってことでどう?」 それはそれで吐き気がするが、現状この提案を飲むしかないのだろう。 男は頷いた。「もうそれでいいです」ってかなり投げやりではあったが。 「これでいい?…そういえばまだ名前を聞いてなかったな」 「鵜院千斗っていいます。そちらも無理な事を聞いていただきありがとうございます」 「いや、こっちもあんな動機で人を殺すのはちょっとね…」 このやり取りはどういうことかと言えば、単にこの変態を殺さない方法を考えてくれないかとお願いしたためである。 襲われた側にそんな事懇願するのは非常に酷な事だと思うが、どんな人間であれ死んでほしくはないと千斗は思っていた。 だからいつも茜ヶ久保も助けてやっているのだろうと思う。例え相手がどうしようもない変態でもその方針は変えるつもりはなかった。 「あの、その蔑んだ目つきやめてくれませんか…ちょっと新たな境地に至りそうで怖いんですが」 「…やっぱ殺しましょうか」「その方が人類のためかな、主催者もそう言うと思う」 「あ、すみません、許してください、なんでもしますから」 ひと悶着あったがとりあえず状況は解決した。 「しかしウィンセントだっけ…君はお人よしなんだね」 女性がそう問いかけてくる。 男の手首を縄で縛りながら、俺は答える。 「いや、それは違います。俺はただの悪党ですよ」 実際、これは女性と男性が知り合いだから比較的穏やかに話はまとまったのだ。 もしこれが親を殺した犯人とその犯人に復讐したい人という構図ならこうも話はとんとん拍子に進まなかっただろう。 そして例え話が解決に導けたとしても、復讐をしたい人に残った心の蟠りが消えるわけじゃない。むしろ溜る一方だろう。 それを承知で助けているというのだから、大悪人と言われても仕方がない。 なんだかんだで俺も悪党商会の一員だったんだなとふと思った。 「…ふーん、そういえば私の名前を言い忘れてたけど、聞きたい?」 そういえば、名前を確かに聞いていなかった。 「あ、じゃあお願いできます?」 「…バラッド、これからよろしくウィンセント」 そう言って握手して、この人も女性なんだと実感した。 そういえばさっきからイントネーションがおかしいような気がする。指摘してみようか。 「メイド服着てくれませんか?」「は?」「あ」 次の瞬間、腕を締め上げられて、この人には冗談でも軽口は言わないようにしようと心に誓った。 「名前を名乗るだなんて何を考えているのですか?」 手首を縄で縛られているピーターがそう問いかけてくる。ウィンセントは少し見回りに行ってくると席を外している。 問いかけるならこの瞬間しかないと踏んで声をかけてきたのだろう。 「…なにが?」 「いや、組織の秘密は他人にばらすのはNGでは…?」 「ああ、それね、私は組織を抜けることにしたよ」「は?」 実際前からずっと考えていたことではあった。もともと組織に所属したのはイヴァンの父親が拾ってくれたからだ。 そしてイヴァンの父親に恩を返したくて、組織の殺し屋として尽力したが、今はもうその人はいない。 「今私が組織にいるのは仇であるイヴァンを殺すためだけと言ってもいい…」 そしておそらくこの島でイヴァンは死ぬ。私の手にかかるか、その他の手にかかるかはわからないが。 生きて帰ることは絶望的だろう。 「…なるほど、だから抜けると言ったのですね」 「ええ、幻滅した?」 「いえ、貴女が抜けるなら私も抜けようかと考えただけで…ぶっ!?」 「あ、ああ、ごめん。意外なことを言いだしたのでつい殴っちゃった」 「ちょ、酷くないですか?!普通『私のために組織を抜けてくれるなんて…』とか思いません!?」 「実際ちょっとだけ思った。だから殴ったんだけどね」「ナンデ!?」 「なんでってあんたの言動で嬉しくなる時、たいていはこっちを殺す気だってもうわかってるからさ」 実際、最初にあった時、一緒に行動しませんかと言われた時少し嬉しく感じたので、殺す気できてるのだなとわかったのだ。 おそらく彼自身は無自覚なのだろうが、動作や言動に女性の心にピンとくるモノがあるのだろう。 それを女性は彼に惚れたと勘違いしてしまうのだが、彼の手口をわかっている者からすれば罠だとすぐにわかってしまう。 「つまり女性だからといって、同一組織の女性に通用すると思ったら大間違いと言うわけよ」 「なるほど、それは盲点でした……ん?でもそれだと私が殺すかどうかやっぱわからなくないですか?」 「え?なんで?」 「だってさっきの言葉は演技でもなく、本気でしだだだだだだだ」 「その言葉が既にウソじゃん」「ちょっとぉ!?この人かなり理不尽なんですが!ダレカタスケテー!」 見回りから戻った鵜院千斗はこの光景を見て、ラブコメしてるなぁとか思ったとか思わなかったとか。 【J-8 警察署/深夜】 【鵜院千斗】 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム0~3 [思考・行動] 基本方針 助けられる人は助ける 1 しばらくはバラッド、ピーターと行動する。 2 できれば悪党商会の皆(特に半田と水芭)と合流したい。 3 バラッドさん、俺の名前のイントネーションおかしくないですか? 【バラッド】 [状態]:健康 [装備]:朧切 [道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム0~2(確認済み) [思考・行動] 基本方針 イヴァンは殺す 1 しばらくは鵜院千斗、ピーターと行動する。 2 ピーターを殴る 3 試し切りしてみたい ※鵜院千斗をウィンセントと呼びます。言いづらいからそうなるのか、本当に名前を勘違いしてるのかは後続の書き手にお任せします。 【ピーター・セヴェール】 [状態]:顔に殴られた痕、手首拘束 [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、MK16、ランダムアイテム0~2(確認済み) [思考・行動] 基本方針 女性を食べたい(食欲的な意味で) 1 しばらくは鵜院千斗、ピーターと行動する。 2 誰かバラッドとめてー! 3 早く女性が食べたいです。 【朧切】 銘は九十九一二三。 その刀は朧すらも断ち切るという刀。 ただ初めて打った刀なので、若干たどたどしく感じられるところもある。 【MK16】 特殊部隊用戦闘アサルトライフル、SCAR-Lの通称。 装弾数20発/箱型弾倉30発。 狙撃から近距離射撃などの状況でも対応できる多様性がある。 024.チーム名は…ミルファミリー! 投下順で読む 026.邪神降臨 時系列順で読む GAME START 鵜院千斗 俺、美少女になります! GAME START バラッド GAME START ピーター・セヴェール
https://w.atwiki.jp/crossborder/pages/17.html
月光~銀色の乱舞~ トップページ>Novel s>月光~銀色の乱舞~ 月光~銀色の乱舞~ ★もしも、仙道夏騎に妹がいたら…… 『12人の優しい殺し屋 side R』第1回目の放送の時にスタッフが考えたという設定――仙道夏樹には妹がいる――を、現実化すると、こんな風景が繰り出されるかも!? と言う事で、書いてみたSSの第1弾です。 ★もしも、仙道夏騎に妹がいたら…… 『12人の優しい殺し屋 side R』第1回目の放送の時にスタッフが考えたという設定――仙道夏樹には妹がいる――を、現実化すると、こんな風景が繰り出されるかも!? と言う事で、書いてみたSSの第1弾です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 久し振りに実家に戻った日。 なぜだか、妹も家にいた。 いつもは実家に帰ってくる暇などないと言っているのに。 「あ、お兄ちゃん」 「ん? どうした?」 「以前約束してた角坂翔のサイン、持ってきてくれた?」 「あ~。忘れた……。すまない。まさか今日いるとは思わなかったからな」 「酷~い! あんなに約束したのにぃ。まぁ、いいわ。 今度来た時、置いてって。時々家に寄ってるんだ。最近」 「そうなのか? だから今日も?」 「そっ。まさか、今日、お兄ちゃんがいるとは思わなかったけどね」 「俺だって、今日来れるとは思ってなかったからね」 「そうなの? まさか、突然スケジュールが空いたとかって?」 「ん~、まぁ、そんなもんかな」 「そっかぁ。結構いろいろ大変なのね」 一丁前な口を利くようになった妹も、もう成人を過ぎている。 社会人として年数が経てば、こんな風になるものかね。 あの幼い頃の可愛らしかったアイツは、どこへ消えてしまったのやら……。 そんなことを思うと、ちょっと淋しい気分になってしまう。 まぁ、それが大人になっていく――と言うことなのかもしれないが。 「今夜の映画、角坂翔の出てるヤツなんだ? あ~、これ、映画館で見逃したやつだ」 なんていう声が、リビングから聞こえてくる。 追っかけ――と言うほどでもないが、どうやら、結構なファンらしい。 時折会う事があるなんて知ったら、きっと悔しがるんじゃないだろうか。 「春香。良く行くのか? 映画」 「角坂翔の出ているのだけね。他はあんまり興味ないから」 そう言いながら、新聞をたたんでいた。 「私さ、好きな俳優さんが出ているのしか興味ないんだよね。 偏ってるってよく言われるんだけど」 「別にいいんじゃないのか? 好きなものまで他人にとやかく言われる筋合いはないだろう?」 「ん~、でもね。職場の人と話が合わなくなっちゃうのよ。 ウチの職場の女の子達、凄く芸能人に詳しくてね。 ここはタレント事務所ですか?ってくらい、芸能人のこと把握してるのよ」 「そうなのか……。それもまた大変だな」 「まぁ、全部の話についていくのは、もうとっくに諦めてるわ。 でも、角坂翔のことについては、譲れない。 彼のことなら、私が一番詳しくなってやるってね」 「相変わらずだな。春香は……」 「なによ。いいでしょ? それくらい」 「悪いとは言ってないさ。 じゃあ、ちゃんとしたもの、貰ってきてあげるよ」 「ホント? やった♪」 途端に満面の笑み。 よほど嬉しかったらしい。 「あ~、いいなぁ。春香ちゃんだけ。えこひいきだぁ」 「なによ。私は前々から約束してたんだから」 「あたしも何か欲しいなぁ。ねぇ、なにかない? お兄ちゃん」 「冬香って、誰が好きなんだっけ?」 「え? あたし? ん~。あんまり芸能人には興味ないんだけどぉ」 「でしょうねぇ。いまだにアニメとかが好きなんだもんね」 「なによぉ。アニメ好きだからってバカにしないでよぉ」 「してないしてない。じゃあさ、好きな声優さんとかいないの?」 「いることはいるけど……。難しそうだしぃ。 それにサインでなくても、いいんだよねぇ」 「そうなんだ? なら、何か買ってもらえばいいじゃない」 「そ~だねぇ。おねだりしても、いい?」 少し舌っ足らずな冬香は、一番下の妹。 いつまで経っても、甘えん坊気質は治らないみたいだ。 「ちょっと、ちょっと。あなた達、なに夏騎兄さんに強請ってるのよ? いい年して……」 「亜希お姉ちゃん!? 今日帰ってくるなんて聞いてないよ?」 「何よ。突然帰ってきたら、都合でも悪いわけ? ははぁん。私がいると、甘えられないからでしょ?」 「なっ!? 誰がそんなことをっ?」 「やれやれ。またはじまった……」 肩をすくめて、一時避難とばかりにリビングを抜け出す。 亜希と春香は年は違うのだが、何故かいつもこんな感じで喧嘩のようになる。 とは言っても、口喧嘩だけなのだが。 そう。 亜希、春香、冬香――の3姉妹が、家の妹達。 春香と冬香は双子の妹だ。 長女でもある亜希は、やはり長女だけにしっかり者。 末妹である冬香は甘えん坊で、春香は……ちゃっかり者と言えるだろうか? そんな感じの3姉妹。 ここしばらくは、兄妹が4人とも揃うなんて事はなかった。 珍しく、今日は全員が揃う事になるなんて。 少しの骨休みのつもりで寄ったんだが……なんか、余計に疲れそうな気がする。 これは、さっさと仕事にもどれと言う、神のお告げなのか? そっと小さくため息をつきながら、いつの間にか暗くなった庭を眺める。 昼間の太陽ほどとはいかないが、それでも、薄明るく照らし出された庭には、くっきりとした影さえもある。 ガラス戸一枚隔てたそこは、まだ自然が残っているという感じだ。 多分、開け放てば虫の声などが聞こえるんじゃないだろうか。 全体的に青白く見える庭は、何処か幻想的な雰囲気を醸し出していた。 今日は、空も冴え渡っていて、楚々とした光が辺りを静かに照らしている。 雲ひとつない空に浮かび上がる、蒼白く輝く満月を見上げた。 月は何も言わず、静かに辺りを照らしているだけ。 ふと、不可聴の何かが聞こえたような気がした。 庭の少し高めに茂った樹木の葉先に月光が集まって零れ落ち、光の乱舞になりそうな錯覚が襲った。 はっと我に返る。 リビングでは、まだ、ふたりの口喧嘩が続いていた。 しかも、いつの間にか話の内容が摩り替っている。 よくも、そんなに喧嘩のネタがあるものだ。 妙なところで感心してしまった。 『いいかげんにしなさい!』 母親の雷が落ちた。 途端に、妹達も大人しくなる。 さすがのふたりも、母親にはまだまだかなわないらしい。 そう思うと、くすりと笑みが漏れてくる。 まだ子供の部分も残っているんだな――と、なんとなく、嬉しくなった。 end.- ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― このお話での設定は、次の通りになります。 長女;亜希(あき) 夏騎のひとつ下の妹。仕事の出来るキャリアウーマン。 某会社の秘書課に勤めるやり手の女性。ずっと仕事一筋でまだ彼がいない。 次女;春香(はるか) 5つ下の妹。社会に出てまだそんなに年月は経っていない。 角坂翔の大ファン。今まで彼が出ていた映画はほとんど観ている。 三女;冬香(ふゆか) 春香と同じく5つ下の妹。手先が器用で服飾の仕事についている。 アニメなどが好きで、コスプレのような衣装とかも手作りできる。 春香と冬香は双子の姉妹と言う設定です。 お気に召しましたら、この作品の評価をどうぞ 選択肢 投票 最高!!★★★ (0) ブラボー!★★ (0) 拍手★ (0) ニックネーム ひとこと すべてのコメントを見る 上へ トップページ>Novel s>月光~銀色の乱舞~
https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/10592.html
842 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2015/07/15(水) 15 08 16.03 ID I2K1sHyh0 流れ関係なくガンドッグ報告 現代日本(ぽいもの)が舞台で異能ものと言う訳ではないセッションなのに、副業で、はした金でも殺しを請け負う、殺しが大好きなキャラクターというのを作られた そういう世界観じゃないし現代日本ではそういう人は生きていけないですよね、と注意して妥当な設定に変えてもらおうとしたら 「リアル現代日本でもそういう人はいますが」「知り合いに多いんで実物と対面させてあげましょうか?」 「リアル知り合いをディスられたみたいで腹立つ」「GMでもないのに設定変えろとか何なの」 と顔真っ赤にして早口で言ってきた なんかPCであるって時点で警察にもバレないとかの前提はパスできてるという考え方らしい これまで捕まってないんだからこれからも捕まらない、そうだ 当然のように却下食らってたが「単発シナリオなんだから良いでしょ」「実際そういう人がリアル知り合いにいるんだから良いでしょ」と延々と食い下がってた なんで「女子供関係なく出来る限り陰惨な殺し方をする」と嬉しそうに設定語ったキャラが通ると思ったんだ セッション自体に支障は来さないからとか言うがそんなキャラとチーム組みたくないから俺がPLの立場だろうと拒否するのは困じゃないよね? 843 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2015/07/15(水) 15 10 47.12 ID vDsZKRuM0 [4/5] 842 乙 またいつもの自由なTRPGを履き違えたやつか・・・ てか、リアル殺し屋が知り合いにいるとかばらしたらそいつ殺されるんじゃねーの?ゴルゴ的に考えてw 845 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2015/07/15(水) 15 15 37.61 ID iAgS0Vba0 [1/2] 799 PLに「ゲームを遊ぼう」という意思がない時点でアウトでPLが困 もう色々書かれてるみたいにそんな地蔵PC動かすの吟遊しかないし 842 確かに不愉快な設定をつけた時点でそのPLは困 プレイ前ならさっさと卓を抜けよう プレイ後なら追加報告お待ちしてます 848 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2015/07/15(水) 15 26 05.55 ID abUFpjo10 「リアル現代日本でもそういう人はいますが」「知り合いに多いんで実物と対面させてあげましょうか?」 これは困に言質を取られる例として覚えておいて損は無いな 851 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2015/07/15(水) 15 38 37.57 ID q2+Jnbeo0 [2/2] 848 じゃ連れてこいと返したらどうするんだろうな、その困は 854 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2015/07/15(水) 16 04 15.63 ID VuHa6B8B0 [3/7] 単発シナリオだから外道キャラをやりたいというのはわからなくもないが、 端金で殺人を請け負う馬鹿(しかも警察に捕まらない)とかいうファンタジー世界の 住人をお友達に持つなんて奴とは近づきたくないな。 万が一にもおまわりさんの前で話を聞かれて、自分がそいつらの仲間とか 思われたら大変だし。 855 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2015/07/15(水) 16 22 15.23 ID fybphQlI0 [3/3] 仮にそういう人と友達としても簡単にバラすようじゃ縁切りしたくなるだろうになあw スレ418
https://w.atwiki.jp/heiseirowa/pages/92.html
『自分のことを殺し屋だと思われてる一般人』 [登場人物] 新田義史、野原ひろし ──………オーイ… ──オーイッ!!! オイッ!!! 隠れてないで出てこいッ!!! 新田ァっ!どうせ見てんだろッ?!!! ──さっさと出てきてケリ付けようやッ!!! オーイッッ!!! どこだ!!! ────………。 …タ、タ、 タ、タ、タ、タ、タ、タ、タ、タ、タ、タ、タ、タ、 タッ ────……は、ははっ。 ────………ははははっ、ははっ…。はは……、すげぇな。お前 ──……! あっ、テメェ………。…おい。…なんで………、 ──笑ってやがんだ………。テメェ。 ────いや、…もう呆れて笑うしかねぇよ…っ。はは………。信じられん…。 ────シラフじゃできねぇって、この惨状…。お前さぁ酔ってんの? タ、タ、タ、タ、 タッ、 ──…………。血と金と暴力に飢えた外道……、おでましだな………ッ。 ────……はは…………。……ま………、 ────参ったよ………。おいっ………─────。 ◆ プオオオォォ────… ガタン、ゴトン ガタン、ゴトン ガタン、ゴトン バクン、バクンッ── 電車内のドアへ前のめりになり、移りゆく景色を眺めることもうかれこれ一時間。 残り四十八時間という僅かなタイムリミットを、俺はただ汗を滲ませ、痛む胃を堪えながら立ち尽くすだけにロスしてしまった……。 周りは客一人いない車内、車窓からの風景は真っ暗な夜──ド深夜。 普通の観点からしたら、今の俺は残業帰りの疲れたサラリーマンなのだろうが…、────状況が違え…ッ。 何が違えって、この電車の動向を見りゃ一目瞭然なんだが…、さっきからコイツは往復しているだけなんだよ。 つまりはな、[渋谷駅]から[新宿駅までの区間]をシャトルランみてぇに行き来してるんだ。 なんでそんな珍妙な挙動をしてるのか……。 そいつは全て、線路に立ち塞がる『バリアー』だかのせいなんだよ。 バアアアァァァンッッッ ……… ……………… …ガタン…、ゴトン…… ガタン、ゴトン ガタン、ゴトン …この通り、バカみてェに巨大なバリアーに衝突しては、反対方向へ発進し、またバァァァンとぶつかる。…そして、また何事もなかったかのように反対方向へ……の無限ループだ。 一応、渋谷駅に折り返した時は到着のアナウンスと共にドアが開かれるが、さっきからこのエンドレス渋谷区間は止まりを見せねえ。 したがって、今、銀のドアから見える河川敷はもう二十回目の景色となる。 あぁ、…訊きたいだろうよ。 『何故そんな電車から降りないのだ』 『電車がそんな奇妙な動きを繰り返して、周りの人間や車掌は何も思わないのか』 『そもそもバリアーって何なんだ』 『それ以前にお前は誰だ』 …そら突っ込みどころ満載だよな。 自分でもさっきからめちゃくちゃな状況説明を言っているのは分かってるよ。 だが、全て見たまんまの事実なんだから困ったものだ……。 …一番最後の質問だけは簡単に答えられるから、まず、明かしておく。 俺の名前は新田義史。──裏社会でセコセコあぶく銭を稼ぐ非カタギなんだが、まぁ素性なんか今はどうでもいい。 で、一番目から三番目の質問までまとめて答えさせてもらうが、これに関しては全部……、 ──『状況が違えから』、としか言いようがねぇんだわ………。 ▽ ざわ… ざわ…… ざわ…… 『おかけになった電話番号は、現在電波の届かない場所にいるか…………、』 「チッ…!」 ピッ 「……親父も、カシラも、アニキも、サブも…………ッ。どいつもこいつも雁首揃えて『電波の届かない場所に~』って……」 「…なんで? 全員山奥に埋められてんの?」 主催者がボンクラっぷりを露呈したお陰で凄い活気づいた、あの時バス車内。 殺し合いだか何だか知らねえが、現状俺は拉致られてるわけで。 上層部からアホの若手下まで片っ端からヘルプコールを掛けたが、誰一人とて使い物にならない。 示し合わせたように揃って『お掛けになった電話番号は~』と、どうせ皆して地下おっパブで嵩じてらっしゃるんだろうが、サブ共の淫靡な笑い声を想像したら腹が立って来る。 「俺はこんな目に遭ってるつうのによ……ッ」 ……。 「いや、『俺らは』こんな目に遭ってるつうのに………ッ」 「むにゃむにゃ……。もう…イクラは食べれないよ~…………」 …隣でヨダレを垂らしてグースカ眠る俺の義娘────ヒナ。 「ちょっと!! み、皆さん暴力はいけませんからね?! 暴力はっ!!」 「あーん?? うっさいねん! 何も分からんくせにガキは黙っとれやゴラッ!!!!」 「ひっ!!! …な、なんで私怒られなきゃ…………。私だって被害者なのに…………」 …主催者を囲んで揉めてる輪に入り込む────三嶋瞳。 恫喝一つで完全に意気消沈してるのが実にあいつらしかった。 こんな具合で、どういう因果か知らねえが、俺の知り合いもちょびちょび紛れ込んじまっている。 陰謀……、俺を陥れる為、敵対組織からの罠………、色んな可能性を考えたが正直今はどうでもいい。 ガキ二人も無論どうでもよかった。 この混沌としたバス内にて、俺が最も『注視』し、最も『愕然』とさせられた人物が一人いる。──バスの最前で主催者に怒りを飛ばす、その女。 俺とその女子との関係性と聞かれれば、別に妹でも娘でもビジネスパートナーでも、彼女でもない。 …彼女だとしたら、そいつはとんでもない歳の差で、一躍俺はロリコン扱いだ。 だが、少女。 ヤツの見せる屈託のない笑顔と、素直で純粋な心は天使そのもので、アウトローとして汚れ疲れ切った俺の邪心を癒やす、『現代社会のオアシス』だったんだ…──。 ざわっ、ざわっ…… 「殺し合いなんてしないわよっ!!!」 …やめろ。 「今すぐわたし達を返しなさいっ!! そしたら許してやっても構わないんだからっ!!!!」 ……やめろ。 余計なことを言うんじゃない。 「…さっきから何無視してんのよっ!!! もう、許さない………! ただじゃおかないわよ……」 ……やめてくれ。やめてくれっ…!!! お前…、自分の命が『首輪』で握られていることに気づけ………っ。 これ以上喋ったら危ういんだよ…! 「わたしの超能力で……、あんたなんか……っ!!!」 やめろっ!!! 俺の……、俺の天使────アンズッ……!!! 「倒してやるんだかっ────…、」 ──アンズ────────────────────────ッ……!!!!!!!! ピカンッ… △ バアアアァァァンッッッ!! 『…次は渋谷駅ー。渋谷駅。お降りのお客様は、お荷物に注意なさってご降車ください』 『──発車します』 ……… ……………… …ガタン…、ゴトン…… ガタン…、ゴトン…… 『何故お前は電車に降りないのか』。 ────答えは、死にたくないからだ。 眉がピクつく。 歯がギシギシ震え、脂汗がナメクジみてえにじんめり跡を残す。 足裏の震えが電車の揺れに共鳴する。 つり革を持つ右手が握る力の加減を知らない。 胃腸が排泄物ではち切れそうなくらいホロホロする。 全身が、俺の身体あらゆる部位すべてが、動けッ動けッと精神的に追い込んでやがる…。 ────そうさ。死にたくないだろう。 ────だが動け。救え。アンズの元へ、今すぐ駆け抜けろ。 ────走れ、俺…。新田……ッ。 「ぐぅうっ……グッ……………!」 裏社会じゃ、あらゆる異名を作られ、無数の反社共から畏怖される俺も正体はこんなチキンだ。 ビビっちまって、何十回目となる夜の河川敷を眺めるしかできねえ、腰抜けだ。 だが。 男に産まれたからには、どんなに怖くても、不器用ながら動かなくちゃならねえ時がある。 …愛する者のために………、行動を。 動いた場合待っているのは、自分の死。 動かざる場合待っているのは、アンズの死。 二つの重荷が天秤にかけられ、ゆらゆらとはかりが延々上下する様が、俺の乱気流激しい精神内と似か寄る。 それと同時に、置き石でもあったのかガタンッと物理的に揺れ動く電車内。 衝撃ゆえに、ここに来て立ち尽くす以外のアクションを取ってしまった。 ────尻もちをつかされた俺が、隣の車両にて。 まるでビー玉みたいな死んだ眼の『危険人物』を目にしたのは、この時だった。 ◆ ガタン、ゴトン… 「くんくん…。この香り、くぅ~~~~~~~~!!」 「うまそ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」 オレの名前は野原ひろし。 愛する妻と二人の子供を持つ平凡なサラリーマンだぜ! 子供の内、長男でさえもまだ五歳児のひよっ子、妹にいたってはつい最近産まれたばからの赤ん坊だ。 このわんぱく坊主たちの成人を見届けるためにも、日々事故や病気に気をつけてきたオレなんだが……。 …最悪なことに「殺し合いをしろ」だなんて物騒なモンに、今巻き込まれちまったんだぜ………。 がび~~~~~~~んっ!!!! 「黄色い麺、優しい色合いのスープ……。それもさることながら、カップ麺にしてこのもやしのクオリティ…!」 「美味そうだぜ!! 我慢できねえ!」 …しかし、焦りは禁物だ。 普通の人間なら「し、死にたくない~~~!!(;■д■ lllu)」とか、「こ、殺し合い……。怖いけど仕方ない🗿💦」だとか正常な判断ができなくなるところだが、…オレは違ェぜっ!! 現に、オレは電車で席に座りながら、ゆったりもやしラーメンをすする余裕を見せてんだからな! 殺し合いに大事なのは、ズバリ平常心だろう。 したがって、オレは営業のプロであると同時に、バトル・ロワイアルのプロでもあるのだっ!!! (…バトロワのプロってのは…まぁ語弊があるか……) 「平常心……。これは殺し合いに限らずビジネスでも同じこと言えるだろうぜ。冷静な判断が何事も成功に繋がるからな!」 「ま、そんじゃ。とりあえず……、」 「いっただきま~~~~~~~~~~~す!!!」 割り箸を口でパキッると、さっそくオレは箸をカップ麺に突っ込んだ。 持ち上げてみれば、湯気を昇らせる麺に、絡まりまとわる無数のもやしたち…。 味噌の温かい香り、日本の伝統調味料である赤茶色いそいつのスープが嗅覚を刺激するぜ。 アツアツのそれを、オレは間髪入れずすすり込むのであった! ふー、ふー、ふー…… ……ズルズルズルズル、ズルズルガーーッ ゴクンッ こ…っ、これは………──!! 「うまいぃ~~~~~~~~~~──…、」 「おいアンタ────」 「ギクッ!!!」 お、オレとしたことが…。 ラーメンに無知で、眼前の『もう一人の乗客』──参加者に気づかなかったようだぜ……。 不意に話しかけられてビックリしちまった。 …とりあえず箸を置いて、ゆったりと顔を上げることにした。 「…アンタさ、これまで何人ぶっ殺したか。言ってみろよ」 渋い男の声が響くぜ…。 なんだか嫌な質問をするそいつは、金髪にオールバックで漆黒のスーツを着た男だった。 …一見にして、普通の社会人には到底思えねェー…。 そいつのオーラもさることながら、金のジャラジャラしたネックレスが威圧感あって、裏社会の人間と印象づけられる。そんな男だったぜ。 そいつは何を思ったかオレに銃を突きつけて立っていたんだ。 「……いや銃ッ────???!!!」 「……………」 いやいやいや! なんだよ突然?! …おい、これって……。 かな~りマズいんじゃねェーのか…………??! 「こ、殺してないですよ??! ひ、一人も!!」 「あぁだろうな。返り血は一滴もついてねぇし、そら殺してないだろうよ。────『今は』、な」 「は、はいぃ~~~~???!」 「…アンタ、もしタイムスリップして幼少時代のヒトラーに出くわしたら……、…どうするよ?」 「え??! え????? そ、それより…とりあえず銃を──……、」 「俺なら、殺すっ…。」 「えっ?!」 「例え、ガキでもだ。将来起こる虐殺を食い止める為に、歴史を変える決意をするよ。俺は」 「な、なんのはな──……、」 「すっとぼけた態度取ってんじゃァねえぞ!! あぁッ?!!」 「ヒィッ!!!!」 の、野原ひろし三十五歳!! 今ヤカラに目をつけられて大ピンチ中!!!!! 「一目で分かんだよ。その風貌…、殺し慣れたって感じの目、殺意にまみれた雰囲気で…! テメェがこの人生で何百人手に掛けてきたかがなぁ!──」 「────…バレバレなんだよ。この『殺し屋』がッ………!!」 「え、……? え~~~~~~~~~~~~~~っ????!!!!!」 しかも、因縁つけられたとかじゃなく、訳分からん勘違いで絡んで来たんだコイツ!!!! な、なんだよ!!!?殺し屋って??!!! オレ、そんなやべーやつみたいな見た目してねェ~~だろ!!!! 「この殺し合いで将来的な犠牲者を出さないためにも、だ。…正史じゃ犠牲となる命を一つでも救ってやる……」 「ま、待て!! 話をし──…、」 「俺が未来を変えるんだ…。今………──」 ひぃい………! 「────アンタを始末してだなぁああっっ!!!!!!!!」 ひぃいいいいいいっ!!!!!! 助けてぇええ~~~~~~~~!!!!! 神様~仏様~おそっさま~~…、 しんのすけ~、ひまわりぃ~~ …みさえぇえ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!! ──パアアアァァァンッッッ ◆ …… ……… …ガタン、ゴトン ガタン、ゴトン ガタン、ゴトン 「…すみませんでしたァアアア!!!!!!」 「いやいや…、いいんですよ。疑心暗鬼になるのも……ね……」 …いやホントはよくねェ~~けどっ!!! 「あ、あなたがまさかカタギの方だとは……、本当に本当に申し訳ない…!!! どうか許してくださいィイイ!!!!」 「いや…、もう頭上げてくださいよ~~!! 新田さん……!」 …いや、まだ許せる気はねェ~~けどよっ!!! ズリズリズリズリィ────ッと床に頭擦り付けて土下座されりゃあ、オレだってそう言うしかねェぜ…。 サラリーマンとしての礼儀でな…。 「本当にッ、申し訳ありませんでしたァア!!!!」 ……。 ふぅ…、まったく地獄に来たみたいだったぜ…。テンション下がるなぁ~~~~…。 あれから、営業で培ったトーク力を駆使して、間一髪説得に成功したわけだが、どうやらこの新田という男……相当追い込まれていたらしかった。 無理もないっちゃないわけだから、オレも許してあげるのが筋だぜ。 …それにしても、このヤクザ者……、話せば分かる根は優しい人間でよかったもんだ……。ほ~~っ……。 「ま、ま、新田さん…。お近づきの印にこれを…!」 新田が頭を擦り続けてもう数分。 額から流血する勢いなもんだから、さすがに……。と、オレはバックから缶ビール二本を差し出した。 話を聞く限り、新田も娘が一人いるという……オレと同じ苦労を持つパパ仲間だ。 キンキンに冷えたこいつをクイッで、似た者同士のお互い親睦を深めようって寸法よ。 「……す、すまねぇ………。すみません…、野原さん……」 オヤジ二人。 席に座り、いつものこの時間じゃ口にすることなんかない発泡酒の蓋を開ける。 プシュッ ゴクッ、 ゴクゴクゴクゴク…… ぷは~~~~~~~~~~っ!! うまい~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!!! 「…野原さんは……、どこからお越しで?」 「…え、あぁ。オレは春日部からです。双葉商事で冴えないながらやってましてー」 「……双葉商事、ですか。…そいつは良い。…俺なんかゴミみてェな闇金で娘を食わしてやってんですから。野原さんは立派ですよ」 「いえいえそんな………」 「…ふう……。子育てってほんと苦労まみれですよね…。ふと我に返ったら嫌になってきますよ…。なにしてんだ、俺って…ってね……」 「…たしかに。うちのしんのすけも悪ガキとかそんなレベルじゃないから大変です」 「…ヒナのやつ……。ぐーたら飯食って便所に行って寝るだけの可愛げないガキでして。…そんなヤツ相手でも毎日洗濯したり、弁当作ったり世話焼いてやったのですが………」 「はは…っ」 「苦労して子育てした末路が、親子揃って殺し合いに出場とは、ね………」 ………えっ?! 「え?! あ、あんた娘さんもここにいるのかっ???! 今??!!」 「…………………………」 新田はオレの問いかけに無言で頷き、そのまま頭を上げなかった……。 …おいおい……。 そら平静でいられなくなるのも仕方ねぇって話だぜ。 オレだって、しんのすけがここに参加してるとなりゃあ呑気にラーメンなんて食えたもんじゃねェー。 同情するぜ新田さん……。 同じ父としてよ……。 「…まぁ、アイツが死のうが生きようがどうでもいんですが………」 …え? 「…アンズもっ……。アンズも……ッ! 殺し合いをさせられてるんですよ…ッ!!! 娘と友達みたいなやつの………アンズがッ!!!」 「……はい?」 「俺…、恋愛感情とかじゃないんですけど…好きなんですよっ……! アンズが……。あの…天使の微笑み……好きなんです………!」 「………あんたもう酔ってんの…?」 「アンズで癒やされたくて、毎日アンズがいるラーメン屋に行ってるのに………──畜生、畜生っ………!!」 「俺は無力だ………っ。…うっ、ぐっ……うぅっ………」 …ガタン、ゴトン ガタン、ゴトン 泣き上戸かよ…こいつ……。 号泣しながら片手のビールを震わす新田に、…正直俺は何もできねェ~。引くだけだぜ…。 娘の友達が大好きおじさんって……。 …おいおいやばくね~か?! …ガタン、ゴトン ガタン、ゴトン 『次は──、渋谷駅ー。渋谷駅です』 実子の命より血の繋がりもないガキを心配する新田と共にして、正直先が思いやられるオレであった……。 とほほだぜ……。 ガタン、ゴトン ガタン、ゴトン 『お降りのお客様はお荷物を、確かめになってご降車ください──。なおー、偽物のほうが圧倒的に価値があります。そこに本物になろうという意思があるだけ────、』 『────────偽物のほうが【本物】といえるだろ。』 (西尾維新『偽物語』 貝木泥舟の台詞──) ◆ ────…おい…、俺の人生はつまらなくなんかねぇよ。 ────ある日全裸のガキが降ってきて…、そいつの父親役をさせられて…、年下のガキを閣下と崇めて…、壺もベントレーも超能力でぶっ壊された挙げ句…、未来を変えるため四六時中頑張らなくちゃならない……。 ────そんな『幸せ』を、あんたにも分けてやりたいくらいだぜ。 ──………いらねぇよ。分けんな、ンなもん。 ──…じゃ、もうそろそろいいよな? やろうぜ、『バトル・ロワイアル』……! ────…おいおい……。…瞬殺だよ…? ──…! 言うじゃねぇか!! 伊達じゃねぇな…テメェは…。はっはっはっはっはっはっはっ!!!! ──じゃあ『死ね』ッ────────────!!!!! ▲ 偽 物 語 ▲ ────ひろしテーマパーク── 以上、囘想終了。 【1日目/E1/電車内/AM.01 35】 【新田義史@ヒナまつり】 【状態】健康 【装備】AT拳銃 【道具】??? 【思考】基本 【静観】 1:アンズ────ッ!!!! …アンズ────ッ!!!! 2:野原ひろしと行動 3:ヒナは…まっ、どうでもいいだろ……。 ※新田の参戦時期は、高校生編以降です。 【野原ひろし@野原ひろし 昼飯の流儀】 【状態】健康 【装備】??? 【道具】キンッキンに冷えた5000ペリカの缶ビール@トネガワ 【思考】基本 【対主催】 1:やべーおっさん(新田)と行動 2:常に平静を保って行動する…これが俺の流儀だ! 前回 キャラ 次回 004:『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』 006:『愛しさと、切なさと、心強さと』 新田 028;『新田さんは捨牌だゾ』 ひろし 028;『新田さんは捨牌だゾ』
https://w.atwiki.jp/marcher/pages/932.html
「ねえ香音ちゃん、聞いて聞いて。超おもしろい話があるっちゃけど」 「おもしろいとか言ってておもしろかったことあんまないじゃん」 「いいからいいから。この前さ、『戦争』あったっちゃろ?香音ちゃんは参加しとらんやったけど」 「ああ、組を一つ潰したってやつ?」 「別に潰すんが目的やったわけやなかったっちゃけどね」 「『前線(フロント)』さんとこの依頼だっけ?」 「そう。会長の愛人さんが拉致されたとかで、助け出してくれって」 「で、助け出すついでに皆殺しにしたと」 「返せって言ってもどうせ返さんのやけん、そうするしかないっちゃろ?」 「ま……そうだね。うちらは殺し屋だし」 「それでさ、あいつら超ウケると。自分らのこと魚の名前で呼び合ってんの!」 「魚?タイとかヒラメとか?何でまた…あ、『海野商会』だからなのかな。ウケるっていうか寒いんだけど」 「『俺が何で“イタチザメ”って呼ばれてるか教えてやろうか?』とか言ってんの!超ウケん?」 「ちなみに何で?」 「知らん。聞く前に殺したけん」 「聞いてやれよ」 「でさ、一番ウケたのがさ、もう、プッ!超ウケる!アハハハハ……!」 「一人で笑うなよこっちは置いてけぼりだよ」 「香音ちゃん、カワハギって魚知っとーと?」 「知ってるに決まってんじゃん。おいしいよね」 「そうなん?衣梨、魚は苦手やけん。骨多すぎて迷惑やない?」 「迷惑やない?って言われても。魚だって人間が食べやすいために生きてるんじゃないし」 「刺身やったら食べられるっちゃけど」 「カワハギは刺身でも食べられるよ」 「そうなん?けど別にいいや」 「いいのかよ。…っていうか何の話だよ」 「そうだそうだ、でさ、『俺は“カワハギ”だぜぇ~』とか言ってるやつがいたと」 「そんなワイルドだろう?みたいな感じに言ってたの?」 「それはちょっと盛ったw」 「盛ったっていうのかなそれ。そもそも盛る意味が分かんないけど。で?」 「そいつも『俺が何で“カワハギ”って呼ばれてるか知りたいか?』とか言ってんの!」 「またかよ。別に知りたくはないけどそれでどうしたのさ?」 「『俺は人間の皮を生きたまま剥ぐのが大好きなんだ特にお前らみたいな若い女のな』とか言ってんの!超ウケん?」 「趣味悪すぎて普通は笑うよりドン引きなんじゃないかな」 「でさ、それ聞いたはるなんがすっごい真面目な顔して返したっちゃけど、それがもう、超ウケる!思い出しても超ウケるっちゃけど!アハハハハ……!」 「また置いてけぼりかよ」 「『カワハギって自分の皮が剥がれやすいからカワハギって名前なんですよ』って!ウケる!アハハハハ……!」 「オチ?まさか今のがオチ?もうちょっと溜めて言うとかしてよ。ここまで引っ張っといてそんなサラッと言うなよ」 「そう言われよったときの顔がまた笑えたっちゃん」 「まあそれは想像するとちょっとおもしろいけど」 「その後めっちゃ怒ってさ」 「だろうね」 「そしたら優樹ちゃんが『まさためしてみたいー』とか言い出してさ」 「ん?何が?話が飛んだけど」 「『あのカワハギさんの皮ほんとにはがしやすいかやってみたいー』って」 「……言いそう」 「そしたらはるなんがまた真面目な顔で『あの人は本当のカワハギじゃないから無理じゃないかな』ってw」 「言いそう」 「超おもしろくない?マジウケるっちゃけど!衣梨笑いすぎでお腹痛かったもん」 「…笑ってたの?」 「もう超笑ったー」 「笑ってるの一人だったでしょ」 「何で分かったと?」 「分かんないことが分かんないよあたしには」 「あー、超おもしろい話やったー。満足すぎる。お腹いっぱい」 「……よかったね」 ため息を吐き、香音は考える。 衣梨奈との話の中、急速に膨れ上がった思いについてだった。 その表情には、深い悩みが表れている。 今日の夕ご飯、焼き魚と煮魚のどちらにしようかというその切実な悩みは、衣梨奈が去った後も続く。 そうだ、どっちも食べればいいじゃんという素晴らしいアイディアが浮かんだのは、しばらく後のことだった。 投稿日:2013/11/27(水) 17 02 08.95 0 back 『リゾナント殺人請負事務所録』 Interlude.1~殺し屋たちの信念~ next 『リゾナント殺人請負事務所録』 Interlude.3~ビン入り殺し屋たちのおはなし~
https://w.atwiki.jp/marcher/pages/946.html
人の手が入らなくなった場所は、あっという間に荒れ果ててゆく。 それなりに大きな通り沿いにあるこのボウリング場も、潰れてからまださほど経っていないはずだが、完全に廃墟の様相を呈している。 入口へと向かい駐車場を歩く亜佑美の足元は、ひび割れたアスファルトの隙間から伸び出した雑草に覆われている。 急速な自然破壊が叫ばれる昨今だけど、もし自然が本気を出したなら、人間世界の駆逐なんてそれとは比較にならないくらいあっという間だろうな。 そんな気にさせられる。 「最強の殺し屋は自然だよ」なんて道重さんが冗談ぽく言っていたことがあったけど、実際そうなのかもしれない。 それならそれで、人間の中で最強の殺し屋を目指すまでだけどね。 片側が完全に割れた自動ドアのところへと到達し、亜佑美は店内をそっと窺う。 当然ながら照明は切れているため薄ぼんやりとしか見えないが、様子はある程度掴めた。 入ってすぐの場所はゲームコーナーであったらしく、いくつかゲーム台が残されている。 正面奥にはビリヤード台が置かれているのも見えた。 スプレーによる趣味の悪い落書きが壁や床に描かれているのは、最早お約束といったところだろう。 割れたガラスの破片を踏まないよう気を付けながら中に入る。 ドアの傍にいたときから僅かに聞こえていた声が、更に大きくなった。 世の中を舐めてかかっている未成年特有の、癇に障る笑い声が特に響いている。 大っ嫌いなんだよね、こういう笑い方するやつ。 ゲーム台の一つに身を隠し、目を細めて店の奥を望む。 曇天の夕刻である現在、光は僅かにしか差し込んでいない。 元々採光部が少ない造りなのもあって、店内は随分と暗い。 だが、ネコ並みに夜目の利く亜佑美にとっては、十分すぎるほどの明るさだった。 …ネコがどれくらい見えてるのか知らないけど。 レーンが40ほど並ぶ、その奥の方。 亜佑美のいるところからおおよそ50メートルあたりに、彼らはいた。 レーンの手前、フロント等のあるフロアから一段下がったところに設けられた、球の取り出し口や椅子のあたりに3人の影が見える。 3つの影は、レーンの方を指差したり手を叩いたりしながら、不愉快な叫び声や笑い声を響かせ続けている。 こちらには全く注意が向けられていないのを見て取り、一気に距離を詰める。 一切の音を立てず、亜佑美は3人のすぐ背後へと到達し、一段上のフロアの椅子の陰に身を潜めた。 「準備オッケーって感じ?誰からやる?」 「俺、よゆーでストライク出せっから、お前らの分なくなっかもよ?」 「ノーコンのくせにフカシこいてんじゃねーよ」 男が2人と女が1人。 少年2人と少女が1人と言い換えた方がいいかもしれない。 年齢は、全員が亜佑美と同じくらいだ。 「でもやっぱ最初の人がダンゼン有利だよねー」 「歯の場所で点数変えっとかすりゃいんじゃね?」 「んじゃ前歯が1ポイントで真ん中らへんが2ポイントで奥歯が3ポイントな。ついでに鼻折ったらスペシャルボーナス5ポイントにすっか」 …そういうことね。 「標的」たちが何をしようとしているかを知り、亜佑美は顔をしかめる。 3人の向こう側、レーンの中ほどに横たわる影が見える。 僅かにもがくその影は、ガムテープか何かでぐるぐる巻きにされているようだった。 目もテープで塞がれており顔はよく分からないが、3人と同じ年頃の少年であるのは分かる。 「やめてよ!こんなことやめてくれ!」 唯一自由な口で震える声を振り絞って必死に許しを乞う姿は悲愴だった。 『ヤメテヨ!ヤメテヨ!」 1人が少年の叫びを真似、後の2人が手を叩いて爆笑する。 耳障りな声が、すぐ背後の亜佑美に生々しく届いてくる。 あーマジこういうの受けつけないんですけど。 暴力行為そのものについては、亜佑美も人のことをとやかく言えない。 …うん、当たり前だけどね。 だが、こういう陰湿な暴力はどうしても肌に合わない。 一方的で、自分は反撃を受けないノーリスクの暴力。 自分は暴力を振るう側であり、振るわれる側にはなり得ないと、無根拠に、無条件に信じ切ったまま行なわれる暴力。 大っ嫌いなんだよね、そういうの。 人に拳を振るうからには自分も拳を受ける覚悟を。 誰かを殺すからには自分も殺されるかもしれないという覚悟を。 それを持っていてこそ、初めて暴力行為は許されると思う。 …いや、法律では許されてないんだけどさ。 隠れていた椅子の陰から身を起こし、立ち上がる。 こちらにたまたま顔を向けていた少女がその姿を認め、ギョッとしたような表情をした。 「誰?」 少女の声に、少年2人もこちらを振り返って驚いたような表情を見せる。 「なんだてめー!どっから入った!」 やや肥満気味の体型の方の少年が、凄んでくる。 何その無駄な質問。 どっから入ったも何も入口からに決まってなくない? 「いつからいやがった」 どこから入ったのかは大して聞く意味がなかったとさすがに悟ったのか、こちらの答えを待たずに質問を重ねてくる。 「いつからいたのか?今でしょ」 流行語風にジェスチャー付きでそう返すと、少年たちの顔に分かりやすく血が昇る。 「テメー!舐めてんのかコラ!」 「ぶっ殺すぞ!」 覚悟もない人間が軽々しく使わないで欲しいな、殺すなんて言葉。 この仕事を侮辱されてるような気分になるんだよね。 「ねー、その子も“ピン”にしちゃおうよ」 一人、薄笑いを浮かべていた少女が、言いながら傍らに置かれていたガムテープを拾い上げる。 あーなるほど、リーダー的な位置にいるのはこいつなんだなと直感する。 少年2人におそらくその意識はないだろうが、中心にいるのはこの少女だ。 整った顔をしている。 いかにも「不良少女」という感じはまったくなく、むしろ生徒会長をしていますと言われても信じるだろう。 案外、実際にそうだったりするのかもしれない。 こういう、内面の醜さを表面の皮で巧みに覆い隠しているタイプも大嫌いだ。 ついでに言えば、胸のあたりが無駄に膨らんでいるのも。 「でもやばくねーか?どこの誰かもわかんねーのに」 太った方じゃない方――背の高い方の少年が、眉をしかめる。 少年たちの方も、見た目だけで言えば、日頃は「普通」の学生生活を送っているとしてもおかしくない。 「マワしちゃえば問題ないでしょ。ついでにその動画でも撮っとけばさ」 何でもないことのように、少女はさらりと言う。 「それは燃えるごみでいいんじゃないかな」くらいのノリで。 その考えは、あまりに浅はかで愚かだ。 でも、だからこそ闇の世界のそれとはまた違う生々しい不快さに彩られている。 「じゃ、ヤっちまうか。おい、お前押さえとけよ」 少女からガムテープを受け取った少年が、小太り少年を顎でしゃくる。 ニヤッと笑い、小太り少年はナイフを取り出して振って見せる。 「逃げてもいいぜ。陸上の短距離でインターハイにも出たそいつから逃げ切れっならな」 ナイフの先で背の高い少年を指し、小太り少年は嘲笑を浮かべた。 「あんたら、ワンピースって漫画読んだことある?」 「……あ?」 「仕事仲間があんまりしつこく言ってくるから最初の方読んだんだけどさ、確かこんな台詞が出てきたんだよね」 想像していたどんな反応とも違ったらしい亜佑美の言葉に、少年たちはポカンとなっている。 「『ナイフを抜いたからには命を賭けろよ』……ん?ピストルだったかも」 「さっきから何言って――」 「『それは脅しの道具じゃない』って言ってんの」 言葉と同時に地面を蹴る。 数歩のところまで迫っていた小太り少年の頭上を体を反転させながら跳び越え、背後に降り立つ。 そして空中で開いていたバタフライナイフを振り、跳び退く。 一瞬遅れて裂けた首から血が噴き出す。 さらにしばらく遅れて、脂肪の付いたお腹が床で弾んだ。 「ひぃ…!」 それを見て、腰を抜かしたらしいノッポの少年がへたり込む。 少女の方はとみると、さすがに蒼褪めた顔ながらも、なんとか立っていた。 「あたしらの世界では、ナイフはこうやって使う」 微かに痙攣する小太りな体を冷たく一瞥し、へたり込んでノッポじゃなくなった少年にその視線を向ける。 少年は、口をパクパクさせて何も言えないでいる。 「な、なんなのよあんた…」 背後の少女の方は、震える声ながら気丈にも問いを向けてくる。 でも、それは最初に訊いとくべきだったよね。 ま、結果は変わんないんだけど。 「あたしはあんたらのこと殺すように依頼された殺し屋」 「こ、殺し……?何言ってんの?何言ってんだよお前!」 まあそりゃ思いもしないだろうね。 自分の前に「殺し屋」なんてものが現れるなんてさ。 「依頼者の希望だから、あんたらが殺される理由教えておくよ」 ブレードに付いた血と脂肪を拭い、少女の方を振り返る。 「犬…殺したよね?」 「……犬?」 「そう、フレンチ・ブルドッグ」 少女の視線が、反射的に記憶を辿るように泳ぐ。 彼女にとっては、そして彼らにとっては、例えばある日に食べた昼食のメニューとさほど変わりないことなのだろう。 もう終わってしまった、振り返ることもない過去。 まあ、自分にしたところで半年後にこいつらのこと思い出せって言われたら、同じ反応するかもしれないけど。 「何?何なの?それだけのことで?たったそれだけのことで?」 思い出したのか思い出せなかったのかは定かではないが、自分が殺されようとしている理由はとにかく理解できたらしい。 蒼褪めていた頬が紅潮し、引き攣っている。 恐怖を上回ったのか突き抜けたのか何なのか、とにかく怒りの方が前面に出てきたようだった。 「犬が何よ!何でそんなことで私がこんな目に遭わなきゃいけないの?大体あんたに何の関係があんの?」 「だから言ってんでしょ。それがあたしの仕事なの」 「人殺しが仕事なんて最低!恥ずかしくないの?」 思いがけない言葉を浴びせられ、思わず苦笑する。 ま、確かに最低だけどあんたみたいなのに言われるとはね。 「最低なのはそうかも。でも恥ずかしいとは思ってないな。誇ってるわけでもないけど。とにかく、あたしは犬の仇を討ってくれって依頼されてここにいる」 「犬?だから犬って何よ!そんなの警察に任せときゃいいじゃん!どっかの犬がどうなったとか知ったことじゃないんだけど!関係ないし!」 「警察に突き出したところで大した罪には問われない。あんたらは特に未成年だしね。それじゃ気が済まないってさ」 依頼してきた老夫婦は、激した様子もなく、むしろ淡々とそういった言葉を連ねていたらしい。 だが、むしろそこに底知れない憎悪の色が感じられたと聖は言っていた。 「犯人」を突き止めたときにあがったであろう復讐の産声も、きっと耳を澄まさないと聞こえないほど静かだったろうね……と。 老夫婦にとって、この少女たちに遊び半分に殺されたフレンチ・ブルドッグが、どれほどの存在だったのかは分からない。 だが、資産を投げ打ってでも復讐に充てたいというのなら、それに応えるのもあたしたちの仕事だ。 「取り返しはつかない。あんたらがやったことがあんたら自身に返ってきたんだ。自分の責任は自分で取りな」 とん、と少女の前に踏み込み、ナイフを突き出す。 不必要に膨らんだ左の乳房の下に、刃先が潜り込んでいく。。 金属が脂肪を貫き、肋骨の間を通り、筋肉に到達する感触が伝わってくる。 怒ったまま驚いたような表情を浮かべた少女の喉から、息とも嗚咽ともつかない音が漏れる。 ナイフが体の外に出ると同時に、少女の体はその場に崩れ落ちた。 「さて、もう一人」 血を踏まないように気をつけながら少女の体を蹴り転がして仰向けにし、死んだのを確かめると、亜佑美はへたり込んだままの少年を振り返った。 亜佑美と視線が合うと、これ以上ないくらいの恐怖の表情を浮かべた。 「や、やめ……たすけ……」 先ほど大声でしていたガムテープ巻きの少年の真似からは程遠い掠れ切った声が漏れている。 「無理。何回も言うけど仕事だし」 再びナイフを拭いながらそっけなくそう言うと、何とも言えない表情になった。 「逃げるなら逃げてもいいよ?足に自信あるんでしょ?」 どうせ立つこともできないだろうと思って言った言葉だった。 だが、絶望の中に差し込んだよほどの希望だったのか、少年は奇跡のようにすっくと立ち上がり、段を跳び上がると出口に向かって駆け出し始めた。 おおっとこれは予想外…と舌を出し、上のフロアへとジャンプする。 そして、10mほど先の背中を目指して地面を蹴った。 「はい、捕まえた」 「えっ?」 何が起こったのか分からない…といった表情のまま、少年はつんのめって転倒した。 出口まではまだ遠い。 「インターハイ出場だっけ?さすが速いじゃん。100mの自己ベストどれくらい?」 「じゅ、10秒8……」 呆然とした表情で、少年は素直に答える。 「ふーん、ちなみにあたしは多分3秒くらいかな。測ったことはないけど。あと走り高跳びは多分5mくらい?それも測ったことないけど」 「さん………?」 一瞬、何言ってんだこいつ…という表情をした後、再び恐怖の色がゆっくりと広がっていく。 事実、自分が一瞬で追いつかれたことを思い出したのだろう。 「ば、化け物………」 尻をついたまま後退り、少年はガチガチと歯を鳴らしながらそう言った。 「化け物ぉ?それはひどくない?」 「ふひっ…!」 一歩、少年の方に近づくと、大げさなくらいに動揺して体の向きを変え、そして腕で体を支え損ねて床に突っ伏した。 上手く力が入らないのか、そのまま起き上がれずにもがいている。 その背中を踏みつけ、素早くナイフを突き下ろす。 裏側から体内に入ったナイフは、背骨の脇を通り、肋骨の隙間を抜けて心筋を切り裂いた。 「『人間』の中で最強目指してんの、あたしは。ま、今日の仕事はそういうのからほど遠くて気が進まない類なんだけどさ。でもこれも同じ仕事だから」 命の色が消えた顔に向かってそう言い、ナイフを拭く。 「さて、あとは…」 レーンの方を振り返る。 そこには相変わらず、芋虫のような少年の姿があった。 脈をとり、「標的」たちの確実な死を確かめつつ、亜佑美は転がったままの少年のところへと向かう。 傍らに立つと、気配を感じたのか少年は僅かに身を竦ませた。 「あんたのことだけど――」 「ぼ、僕は目隠しをされていて、何が起こったのかまったく分かりませんでした。声は聞こえたんですけど、年配の男の人だったと思います」 「……へぇ。なるほど」 短絡的に、「この人は自分のことを助けに来てくれたんだ」…などと都合よく思わなかったことに、好感を抱いた。 実際、助けに来たわけではまったくない。むしろ逆に、「目撃者」であるところのこの少年をどうするべきかと思案していたところだった。 この状況下、それを冷静に感じ取って、第一声でああいう言い方をしてきたこの少年は、頭の回転が速いのだろう。 「ま、実際見てはないもんね。吐き通せる?その嘘」 「通せます。通します。誓います」 命乞いの哀願というよりは、誠実さを訴えかけようとするようなその声に、亜佑美は頷きを返した。 「分かった、信じる。もちろん、聞こえたかもしれない他の話も全部忘れてもらうよ」 「聞こえていません。僕は何も聞いてない」 「了解。あとは餓死する前に見つけてもらえることを祈ってるよ。悪いけどそこまではあたしも責任持てないからさ」 踵を返し、レーンの上を戻る。 なんらかの痕跡を残していないか確認した後、ボウリング場を出た。 ただでさえ薄暗かった空は、急速にその闇を増しつつある。 駐車場の雑草を再び踏みしめながら、携帯を取り出して電話を掛ける。 「譜久村さん、今、終わりました。西河優美、前原篤嗣、渡野遊馬――3人とも確かに」 「ご苦労さま。何もなかった?」 「…特には。ただ……あの……しばらく経ったら、誰かに通報なりさせる手配をしてもらってもいいですか?」 「…ん、どうして?」 「いえ、その……」 「甘いね、亜佑美ちゃん。…わかった、いいよ。やっとく」 「ありがとうございます」 電話を切り、ほっとため息を吐く。さすが聖はあれだけでおおよその事情を悟ったようだ。 無関係の一般人を巻き込むことはできるだけ避けるのが基本方針とはいえ、今回はギリギリのラインといったところかな? でも――― 目指すのは「人間の中で最強の殺し屋」なんだから、ちょっとくらい人間らしさがあったって……いいよね? 投稿日:2013/12/30(月) 11 43 40.12 0 back 『リゾナント殺人請負事務所録』 Interlude.5~殺し屋たちの資質~ next 『リゾナント殺人請負事務所録』 Interlude.7~殺し屋たちはその日、居場所を欲し『闇』へと手を伸ばす~
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/2822.html
「んっふっふ~♪」 職場から久しぶりに自宅に帰るスバル・ナカジマの顔は盛大に綻んでいた。 明日が休みと言う事も勿論ある。だがそれ以上にその休みが姉であるギンガ・ナカジマと重なっている事が重要なのだ。 人命救助を任務とするスバルの仕事は、一定の休みがある種義務付けられているが、ギンガはそうでは無い。 捜査官としても、地上のトップに出世した父のサポートにも、ギンガは奔走していた。 故に休日数は少なくなるし、それがスバルと重なると言う事も滅多に起きない事態。 「明日は如何しよっかな~ただいま~」 スバルが楽しい予定、夢想を巡らせていると眼前には何時帰ってきても嬉しい我が家。 既に明かりが灯っている事から、ギンガは帰ってきている事が彼女には直ぐ解った。 本当ならここに父親であるゲンヤ・ナカジマも居る事が望ましいのだろうが、スバルはゲンヤが休みを取ったという話を耳にしない。 「あれ?」 確かに大きな声で言ったわけでは無いが、何せ他人様よりも鋭い姉妹の内でのこと。 直ぐに姉の返事があると思っていたスバルは首を傾げ……何かを思いついたようにニマッ!と笑った。 「驚かせちゃおう~」 実に少女らしくてスバルらしい思考なのだが、彼女にも増して鋭い姉のギンガには感づかれてしまうのは明白。 それも計算の内としてしまいのスキンシップを楽しむと言うのならば、特に問題は無いのだが……スバルは真剣である。 「そ~と……そ~と……」 静かにしたい気持ちが口から漏れる矛盾。ギンガの居る場所をリビングだと定め、ヒッソリと歩く。 近づくにつれて聴こえてきた声にスバルは首を傾げる。話し声だが、玄関には見た事が無い靴は無かった。 ギンガの声は聴こえるが、他の声がしない事から電話をしているものと推測できる。 特に深い意味も無いのだがスバルは足を止め、漏れ聞こえる声に耳を凝らしてみた。 「うん……お父さんとは話をしたの……そうね、簡単に分かり合えることじゃないけど……」 スバルは首を傾げた。『姉と父の間で何かあったのだろうか?』 どちらとも、特にゲンヤとはサッパリ会えていない彼女には解らない。 しかしそれでも二人は今までどんな諍いもない親子であり、その間で何かがあったこと自体が大きな衝撃。 「納得はできなくても理解はしてるつもりよ……なに? 『馴れない事はするな』って……」 更に言えばその電話の相手には、妹である自分にも伝えられていない事を、相談しているという事実がスバルの胸に炎を宿す。 そう、浅ましくも消える事が無い嫉妬の炎。誰なのかも解らない電話の先に誰かに。 「だいたい貴方だって!……え? いや……その……あぁ~切らないで!! おかしいでしょ? 『僕も女の人と電話で話すのは馴れてないから切る』ってどういう事よ!?」 嫉妬が勢いを増したのを確実。慌てたり、怒ったり……そんなギンガを見たのはスバルとて久しぶりだった。 ナカジマ家の全員集合率は昨今恐ろしく低下している。それでも中の良い家族、中の良い姉妹だと思っていた。 そんな関係を無力と感じさせるほどギンガが楽しそうに話す相手とは…… 「まっ……まさか!?」 辿り着いた恐ろしい想像にスバルは若干声まで出してしまった。 『ありえない……あの姉に限ってそんなこと……』 必至に嫌な予感を振り払おうと、静かに頭を抱えて振り回す妹には気付きもせず、ギンガは遂にその言葉を口にした。 「ところで明日はヒマでしょ?……解ってるんだから! お父さんに確認したもの。 職権乱用? 情報筋の有効活用よ。明日は……その……」 その言葉が放たれる前、空気が変わった。少なくともスバルにはそう感じられた。 春風のような花の香り。顔を赤らめるギンガの顔が容易く想像できる。その顔はきっと『恋する乙女』のソレ。 『デートしましょう』 スバルの脳内で明日の予定が瞬時に組み変わる。楽しみにしていた姉との食べ歩きは延期するしかない。 何せ彼女にはギンガのお相手を確認し、デートの内容を観察する必要があるからだ……妹として。 そこは寂れた工場地帯の一角。周りには目的とされた年数を超えて稼動するオンボロ達の群れ。 その群れの中にありながら……コッソリと大きく脈動している工場があった。 作っているのは違法な品。魔道師の地位を危うくする誰でも扱える強力な殺傷兵器。 質量弾丸発射式銃器、魔道師殺しと知られるAMB 対魔力弾丸。 「さて、最終確認といこか?」 そしてソレを狙う狩人の群れ。 「作戦開始時間は予定通り」 狩人の名は時空管理局本局 上層部直属 特務監査部。 監査部と名乗ってこそいるが、内外共に強権を振るう独立部隊。 向かいの廃工場内に響くのは微妙なイントネーションを示す女性の声。 それに聞き入る20人近い人影。手元には情報が羅列するポータブルウィンドウ。 「A班、B班は正面から突入。掃討しつつ、反対側の搬出口に追い込みます。 私、トリエラは搬出口から侵入し挟撃するっちゅう方向で……」 「敵の戦力については?」 「魔道師は皆無や。けど……AMB装填可能な銃器で武装している」 その言葉で人影たちにざわめきが走った。 『アンチ・マギリング・バレット』 対魔法鉱石で作られ、バリアジャケットや簡易障壁を貫通する実体弾が、火薬の反動で容易く高速を獲得して襲い掛かってくる。 公表こそされていないが、既にいくつかの管理世界では犯罪組織や反管理局団体に出回り始め、死者も出ていた。 「静かにせえ!」 そこで響くのは一括。説明していた少女 八神はやての声が空間を揺らす。 彼女の倍近く生きている者も居る屈強な人影 魔道師達からざわめきが消えた。 「私たちはなんや? そう、特務監査部や。 多くの予算、多くの権限、優秀な人材によって構成された本局の懐刀。 貴方達はそこら辺に転がっている才能も装備も無い可哀想な陸士やない。 本局、地上本部、正規、非正規を問わない管理局の栄え抜きや……ピーピー喚くな」 沈黙が降り、はやては頷く。言葉は無いが理解されていると確信した。 自分に集まる視線には既に覚悟がある。魔道師ランクSSのエリートであるはやても、戦歴では周りの面子には勝てない。 だからこそ相応の答えが返ってくることは確信していた。 「ほな……逝って来いや」 「「「「「了解!!」」」」 「はやてさん、背後から突入するのは私たち二人だけですか?」 多くの人気を失った廃工場の中、残されたはやてに話しかけるのは浅黒い肌に金髪の少女。 はやて以上にこんな場所にいるのが似つかわしくない人物だ。 「なんや? 不安なん?」 「いえ、与えられた仕事はします。しかしはやてさんを守りながらだと少々……」 トリエラがしているのは自分の心配では無い。彼女は義体、戦うために弄られたお人形。 本来のメンテを受けられなくなって時間が経つが、今のところ心身共に不備は無い。 故にしているのは暫定的な主であるはやての心配。 「私だってそれなりの魔道師なんよ? それに……」 グリグリ~とトリエラの金色の髪に覆われた頭を撫でながら快活に笑った。 何時もの濁った瞳は細められ、皮肉で飾られる事が多い口元には本物の笑顔。 「それに『兄妹 フラテッロ』は信頼しあうモノやろ?」 フラテッロとはトリエラの生まれた国で言う兄弟、如いては義体とその担当官をセットでいう言い方。 はやては最近飲酒に続いて手を出したタバコを懐から取り出し魔法で火をつけた。 「兄妹だからって仲睦まじいとは限らない……です」 トリエラのツンとした返答に、肺の中を満たした甘い香りを吐き出し、はやては苦笑する。 「私らも逝こか」 点けたばかりのタバコが宙を舞った。 スバル・ナカジマは隠れていた……植え込みに。 誰がやっても変な人決定なのだが、管理局の局員が行っている事に大きな問題を感じずに居られない。 ガサゴソと動く植え込みとその隅から覗く好奇心で爛々と輝く双眸。どう見ても不自然です、本当にありがとうございました。 「さて……ギン姉のお相手はと」 通り過ぎる人が自分へと降り注いでいく奇異の視線に気付く事も無く、スバルは辺りを見回す。 場所はクラナガンの中心地であり、多くの商業施設に囲まれた広場。 待ち合わせの名所として知られるこの場所の名前が、ギンガの口から漏れたのをスバルはしっかり聞いていた。 『せっかくだから二人でどこか行く?』 そんな風に聞いてきた姉を誤魔化すのは難事だったとスバルは回想。 微妙な表情で(妹と恋人どちらを優先するべきか?という)葛藤を滲ませながらでは、嬉しさ半減。 何とか元の予定を優先させる事ができたが、嬉しいやら悲しいやら…… 「って……男の人多すぎ!!」 そして眼前に横たわる問題にスバルは憤慨の表情。 待ち合わせの名所となれば人は多い。そして人間の半分は男である。 更にその中からあんまり小さな子供と老人と呼ばれる人々、そして女性と一緒に居る人を除外。 しかし『お父さん位の年齢はギン姉的にはストライクなんじゃまいか?』と言う妹的名推理により、中年男性は含まれたまま。 「だけどアイツだけは無いな……」 多すぎる候補の中で独りだけ、スバルはすぐさま除外した者が居た。 ベンチに浅く腰掛けた金髪の青年。仕立ての良い服を着て、口にはタバコを咥えている。 しかしもっとも問題なのはやる気の無い表情。まるで世界がどうなっても構わないと言いたげな気だるげな顔。 咥えているタバコも随分前に燃え尽きているのに、未だに咥えたまま。何処を見ているのか解らない視線がフラフラしている。 「やっぱりギン姉が選ぶくらいだからね~歳がちょっとくらい上でも驚かないけど、あぁ言う人は無いよ。 やっぱり仕事がバリバリ出来る人さ、うんうん!」 勝手に姉の恋人像を組み立てていたスバルの視界にギンガの姿が入った。 その姿に妹である彼女も息を呑む。良い服を着ているし、化粧も当然の如く。 だけどそれ以上に……表情が違う。喜びや期待でキラキラと輝いている。 正しく恋する乙女。よく知っているはずの姉がまるで違う人のようだと、スバルは感慨に浸る。 スキップし出しそうな足取りで向かう先にギンガの恋人が…… 「待った?」 「いや……大した事ないさ」 ……向かったのはスバルが唯一「アリエナイ!」と断言した男の元。 やる気が感じられず火の消えたタバコを咥え続けていた金髪の青年。 周りの視線やら姉にばれるやらの危険性を無視して、スバルは盛大に叫んでしまった。 「NoOoO!!」 AMB アンチ・マギリング・バレットとその発射銃器を密造している者たちにとって、魔道師とはある程度余裕を持って戦える存在だった。 こちらの攻撃を阻害する最大の要素である障壁とバリアジャケットは無力であり、速度と数では此方が圧倒的に勝るからだ。 そして管理局の魔道師と言うのは、そう言った敵と相対する事に圧倒的に馴れていない。 戦っているのに傷つく可能性に対して自覚が無いのだ。だが…… 「なんだ! この連中は!?」 オンボロ工場内に響き渡る発砲音。機械やダンボールを盾にして、応戦しながら彼らは叫んだ。 いま相手にしている魔道師の集団、確率論から言えば管理局所属である線は濃厚。なのにこの集団は慣れているし、覚悟しているのだ。 「本当に管理局なのか!?」 知識ある人が見れば襲撃者たちが持っているデバイス、着用しているBJが次元航行艦付きの武装連隊の同じデザインだと解る。 だがそこには差異が存在した。BJは光沢の無い真っ黒な仕様であり、顔を覆うゴーグルや頭部にはヘルメット。 そして本来同様のデバイスには内蔵されている筈の無いカートリッジシステム。 「第二階層、クリア」 「B2が負傷、後方へ下がる。C4が前進」 「ラジャ」 彼らが使うデバイスは従来品に無数の改造・改良を加えられている。 対物理衝撃特化のBJや障壁の生成、カートリッジシステムによる強力な射撃、解析や通信をこなす多目的ゴーグルなどだ。 管理局が従来型以外の凶悪犯罪に対処すべく、特殊部隊に配備を非公式で推し進めているカスタムデバイス ブラック・クロウ。 そしてソレが支給されていると言う事は彼らがエリートであり、同時に情け容赦の無い集団である事を示す。 何せ彼らは『血の特務監査部』なのだから。 「ドン」 応戦していた密造者一人が倒れる。『どうせ管理局の攻撃は非殺傷設定だろう』 そう思っていた仲間が彼を助けようとして気がついた。倒れた仲間の胸部から流れる『赤い血』に。 「ヒィ! 非殺傷設定じゃない!?」 自分達は殺すことしか出来ない武器を振り回しておきながら、管理局員らしき集団に致死性の攻撃を浴びただけで恐怖が走る。 それは所詮彼らが戦う集団では無い事を示していた。 「我らは特別な殺害権限を与えられている」 「武装を解除し、降伏せよ。歯向かわなければ命までは執らない」 「警告は一度だけだ。後は泣こうが叫ぼうが知らねえぞ、ゴミども?」 既に管理局という組織の印象とは相容れない警告、特に最後は既にチンピラである。 だが優位に奢ることも無く、戦闘態勢を崩さない特務監査部実働部隊を前にしては、戦う者ではない密造人達のやれる事は限られている。 つまり『僅かな抵抗』か『速やかな降伏』。 スバル・ナカジマはイライラしていた。それはもう怒り狂っているといっても過言ではない。 ストレスの原因は僅かに離れた場所を歩く二人の男女。一人はギンガ・ナカジマ、つまり彼女の姉。 もう一人は名前も知らないその……ギンガの恋人? 「どうしてあんな二人が……」 イライラする理由は二人それぞれ別に存在し、ソレは全く別のベクトルと言って良い。 まずギンガに対して……それは一言で言えば『喜び過ぎ』である。 妹であるスバルすら久しぶりに見た笑顔。見るものを暖かくするような微笑。 嬉しさが全身から染み出しているし、今にもスキップしたり踊り出したりしそうだ。 「なのになんでお前は……」 ギンガは実に楽しそうだ。それはこの際認めてやっても良いとスバルは広い心で思う。 何せその……デートをしているんだ。楽しくないよりも楽しそうにしている方が良い。 問題はそのデートの相方である男の反応。なんで……どうして…… 「なんでそんなに退屈そうなの!?」 待っている時に宙を見ていたのと代わらないヒマそうな瞳。 そこには喜びは勿論、どんな感情も見つける事が出来なかった。 それはまるで人形のようで、少なくとも彼女?であるはずのギンガと歩くには適さない。 本人 ピノッキオからすれば『まんざらでもない』表情を浮かべているつもりである。 ギンガもそれを理解しているからこそ笑顔を浮かべているのだが、それをスバルが理解する事は不可能だ。 「私の大事なギン姉とデートをしているのにどういうこと!?」 抑え切れなかった怒りが遂にスバルの口から炸裂。しかし声だけで抑えきるのは難しい。 隠れ切っていなかったが身を隠していた街灯を掴む手に力が篭る。 ビキビキと鉄製のソレが変な音を立てた。 「あのおねーちゃん、力持ちだよ~!」 「しっ! 見るんじゃありません!」 痛いモノを見るような周りの視線もスバルの苛立ちを抑えるには足りない。 これで彼女が管理局の局員であり、日々災害の最前線で人命救助をしていると信じてもらえるだろうか? 「映画館か……デートの王道だね~」 とても楽しそうに、同時にとても退屈そうにそのカップルが辿り着いたのは映画館だった。 クラナガンでも最新鋭の設備と規模を持つその場所を前にして、スバルは何故か感慨深げに頷いた。 あのテンションで突入した二人が楽しめるのかは別として、デートの王道ともいえる場所に入っていった事が何となく楽しい。 色んな理由を上げる彼女だが、結局のところ『デート』と言う女の子の憧れに対する興味がもっとも大きい。 残念な事にソレが自分のモノではなくて、大事な姉がつまらなそうな男と入って行ったことだけが悔やまれる。 「さて私も……ってお金がない!?」 何だか自分のデートのようにワクワクドキドキハラハラして、中々寝付けずに寝坊したのが痛かった。 姉の先回りをするべく慌てて飛び出したものだから、そういう大事なものを忘れるのだ。 「あ~どうしよう~」 スバルは頭を抱えて考える。任務中でもここまでは考えないだろうという程に考える。 二人が一定時間、一定の場所に留まる事が確約されるのが映画というイベントだ。 それを逆手にとって一旦家に帰って財布を取ってくる……若しくは出てくるまで待つか? いや……ダメだ! この先のイベントが解らない以上、軍資金がゼロなのは行動の制限。 それに暗闇で良いムードになるのが映画というもの。二人がもう口に出すのも憚れることをするのではないだろうか? そんなシーンを見逃すのは惜しい。しかし入る事が出来ない以上…… 「カップル割引か~」 なんでも今日は恋人デーだとかで、男女でカップルならば割安で入る事が出来るらしい。 恋人チックな事を証拠に見せなければならないらしく、係員の前でギンガが男の手に抱きつく様子をスバルは指を咥えて見ている。 あの様子ならば中でもギンガのアタックが苛烈なのは予測するに容易く、自分はソレを見る事が出来ない。 「あら?」 そんなスバルに差し込む希望の光。 「なにやってんの? スバル」 振り返ればアイスを片手に訓練学校から親友、あの機動六課までの同僚 ティアナ・ランスターが私服で立っていた。 私服でアイスまで持っているのだから、仕事と言う事は無かろう!? スバルはマンガンの願いをこめて叫ぶ。 「ティア!」 「なっ何よ?」 先にお断りしておくが、この時のスバルはパニックになっていた。 本当は『親友だよね!?』と聞くはずだったのだ。 「私たち……恋人だよね!?」 でも心の中を占めるのはギンガの『恋人』の事で、それがゴチャマゼになった結果が上の惨事である。 「……」 結局ティアナがした事は数瞬の沈黙。そして手を祈りの形で組み合わせ、輝く瞳を自分に向ける親友に強烈な左フックを叩き込む事だった。 目次へ
https://w.atwiki.jp/marcher/pages/930.html
どうして俺が殺されないといけないんだ…ですか? それはすみません存じ上げないんですけど、どうして私があなたを殺すのかという質問にならお答えします。 お仕事だからです。 ふざけてなんていませんよ、私は真面目さだけが取り柄なんですから。 この業界一の真面目人間ってもっぱらの評判なんですよ。 …今のはちょっと盛りましたけど。 でもこのお仕事に、真面目に真剣に取り組んでるのは本当ですよ。 うちのエースの鞘師さんと比べても、上からの信頼の厚さでは負けてないんですから。 …って思ってるんですけどね自分では。 そのようなわけですので、申し訳ないんですけどあなたには死んでいただきます。 あ、ごめんなさい、命乞いはお聞きするわけにはいかなくて…… 本当にごめんなさい。 お金の問題ではないんです、言ってみればそうですね…そう、信念の問題なんです。 信念ってお金じゃ買えないじゃないですか。 私いいこと言いましたよね、今。 いえ、ですからふざけてなんていませんってば。 お金も確かに大事だと思いますよ。 信念とかえらそうなこと言いましたけど、私が今こうしてお仕事をしているのも、突き詰めればお金のためなわけですし。 私の大好きな漫画だってお金がないと買えませんし。 だから「信念>お金」って思ってるわけじゃないんですよ、決して。 でも、やっぱり譲れない部分っていうのはあるじゃないですか誰にでも。 え?こんなことが許されると思っているのか? それって人殺しなんてしてもいいのかって意味ですか? う~ん……実は私もそのことについてずっと考え続けてるんですけど、すごく難しい問題ですよね。 真面目に言ってるんですってば。 じゃあ、例えばあなたは人殺しはいけないことだと思いますか? では、何故いけないのでしょう? なるほど、駄目なものは駄目だというのは、確かに一面の真実だと思います、思いますけど…でもそれじゃ議論が成立しませんよね。 議論の余地がないようでしたらもういいですね……あ、他に何かあります? 自分に置き換えろ?自分が殺されたくないなら殺しちゃいけないよってことですね。 それもよく分かります、分かりますけど、じゃあ私がこう答えたらどうしますか? 私はいつどこでどんな理由でどんな風に誰に殺されたとしてもまったく構わない。 そういう人もいますよね?私がもしそうなら、今のあなたの言ったことはあなたを殺してはいけない理由にはなりませんよね? 屁理屈?そうでしょうか?自分に置き換えろなんていう方が勝手な理屈だと思いますけど。 誰もが自分と同じだとは思わない方がいいですよ…なんて、こんな小娘がえらそうにすみません。 ああ、遺された人が悲しむ……なるほど、それもありますよね。 ただ…あなたのような方にそういうことを言われても、説得力に欠けますね。 俺は人殺しなんてしてない?すみませんすみません、それはそうですね。 私の言い方が悪かったです、それは謝ります。ごめんなさい。 ただ、あなたもご自分のお仕事の中で多くの方を泣かせてきたことは、ご自身でよくお分かりですよね? そうです、それは別にあなたが悪いわけじゃない。 あなたのお仕事に、どうしてもついて回るというだけですよね。 でも、それはこちらも同じなんです。 あ、そうですよね、一緒にするなというお言葉はごもっともです。 いくらなんでも一緒にしちゃいけない。うん、いけませんよね。 でもですね、あなたがあなたのお仕事に矜持を持っていらっしゃったように、わたしにもあるんです。 さっきも言いましたけど、信念が。 たとえ他の誰かを悲しませることになったとしても、やり遂げないといけないという信念を持って、私はいつでも臨んでます。 だから言ってみれば、誰かが悲しむことは承知の上でやっているので……それはあまりに今さらですね。 私にとって、お仕事を放棄する理由にはなりません。 法律ですか。 でも刑法上には「殺してはいけない」とは書いていなくて、「殺したら罰を与える」って書いてあるだけですよ。 ふふ、そうですね、今のは完全に屁理屈です。 私だって分かっていますよ、それは「殺してはいけない」と言っているのと同じ意味だってくらい。 でも、バレなきゃいいんじゃないですか?…ってそれも屁理屈ですもちろん。 ただ、そう思って行動している人を止めることはできませんよね? 殺しても捕まらなきゃどうってことないじゃん…ってもし私が思っていたら、法律なんてないも同じじゃないですか? もしくは、捕まって死刑になっても構わないとか。 すみません、最初にも言いましたけど、命乞いは聞くわけにいかないんです。 私は、あなたを殺さないといけない。 それがお仕事だからです。 …疑問?まったくないと言えば嘘になりますね。 だから……私はいつもこういう風に議論をしてみるんです。 「どうして人を殺すのはいけないことなの?」という命題について。 ◆ ◆ ◆ 「でも、『これは!』という答えに出遭えたことはありません。まだ一度も」 「あ、当たり前だ!そんなものに、こ、答えなんてない!」 「かも……しれませんね」 裏返った男の言葉にほんの小さな頷きを返すと、春菜はその首の動きと同じくらいさりげなくナイフを振った。 「標的」の喉が切り裂かれ、赤いものが噴き出す。 目を見開き、金魚のようにただ口をパクパクとさせていた男は、やがてその動きを止めた。 男の目から生命の色が消えたのを確認し、春菜はナイフを仕舞う。 そしてふっと小さく息を吐き出した。 ああいう言い方をしたが、春菜には分かっている。 人を殺すのは「いけないこと」であると。 自分は「いけないこと」を生業にしていると。 この「業界」には、色んなタイプの人間がいる。 「人を殺して何がいけないんだ?」と本心から思っている者。 「人を殺すのが楽しい」と逆に思っている者。 「人を殺すのはいけないことだな、うん。だからやるんだよ」となどと嘯く者。 「人を殺していいか悪いかなんてどっちでもいい」というスタンスの者――― 何にしろ、人を殺してはいけない理由を深く考えることをする者は、この「業界」には少ないだろう。 いちいちそんなことを考えていては仕事にならない。 サッカー選手が「どうして手を使っちゃいけないの?」なんていちいち考えながらではプレイはできないに違いない。 だが、春菜は考え続けると決めている。 それは、「いけないこと」と知りながらこの世界に身を置く自分の、最低限すべきことなのではないかと思うから。 たとえ遥や優樹あたりにバカにされたとしても。 投稿日:2013/11/26(火) 19 51 07.66 0 back 『リゾナント殺人請負事務所録』 FILE.1~殺し屋たちは共鳴の夢を見るか~ next 『リゾナント殺人請負事務所録』 Interlude.2~殺し屋たちはおなかいっぱい~