約 756,914 件
https://w.atwiki.jp/battleconductor/pages/84.html
レイドボスバトル 概要 マップ 難易度設定 攻略初級編近接攻撃の立ち回り 遠距離武器の立ち回り 上級編近接攻撃の立ち回り 遠距離武器の立ち回り WAVE1 WAVE2 WAVE3 バグ・ボス情報小型バグ初級 上級 中型バグ初級 上級 大型バグ(レイドボス)初級 上級 報酬 アップデート履歴 コメント レイドボスバトル 2021.08.18~09.06 9 59(14日)の期間限定イベント。 全国のプレイヤーとオンラインで協力バトルできる。 ロケテストやカードゲーマーでは、一人プレイだけどボスを倒してスタンプを集めるオフラインレイドモードの存在が確認されたが、今回は実装されず。後のレイドボスバトル(常設)にて実装された。 オンラインレイドのマッチングは1分。見つからなかった場合は、その人数分COMが充当される。 最初の30秒は店内でマッチングを開始し、30秒間一人も見つからなかった場合、全国にマッチング範囲を切り替える。ただ必ず店内同士マッチングできるわけではないとのこと。 店内で一人でもマッチングした場合、全国にマッチング範囲は広がらない。 要はエンジョイジェムバトルと同じマッチング仕様。 概要 「ほぼすべてのインフラを支える神姫netに謎の障害が発生! その原因は武装神姫Rの世界から送られてきた謎の電子生物バグが確認された。 生活インフラからゲームセンターまでマスター達の生活を守れ! 最大4人のマスターと協力して、「バグ」と呼ばれる敵と戦う。 60秒+120秒にわたって襲来する集団を撃退した後、続いて240秒の時間内にボスを討伐する事が出来れば勝利となる(つまりゲーム時間は420秒)。 WAVE1は小バグ×8体、WAVE2は中バグ×8体、WAVE3は中バグ×4体+大型バグ(レイドボス)×1体。 青いバグは近接武器、赤いバグは遠距離武器が有効。 いずれも倒されるとリスポーンするが、通常のジェムバトルで神姫を倒した場合と同様、 倒された後も当たり判定が数秒ほど残っている。 小型バグ中型バグのサーチ範囲は片手ライトガンの射程(0.20)と同じくらいの模様。 ターゲット変更ボタンは通常のジェムバトルと働きが違い、 基本的にレバー上側が最も近い相手、下側が最も遠い相手からそれぞれロックオンしていく。 ボスには5箇所の部位があり、うち4箇所は破壊すると一定時間ダウン(行動不能)する。 部位によって有効な武器種が異なる事に注意。 攻撃範囲が広い武器で攻撃すれば、一度に複数の部位にHITする。 仲間の神姫と同じ敵をロックオンすると、攻撃にダメージボーナスが追加される。 (2人で+20%、3人で+40%、4人で+60%) 回復・補助武器で仲間に攻撃を当てると、仲間のLPを回復させる事が出来る。現状では… 「オルフェウス」(イーアネイラ) 「マルレーン712[C]」(シュメッターリング) 「ホーリーエコー」(ハーモニーグレイス) の追加武器3種となっている。 (ブライトフェザーのバスターシュリンジやスタンショッカーも適合しそうなものなのだが……) バグ、ボス共に「防御力ダウン」等のデバフ系スキルの効果を受けるが、効果がどれくれいかは不明。 「状態異常スタン」等一部のスキルは効果を受けない。 なお、このバグは「武装神姫R」の世界から流入してきたものである事が判明している(エーデルワイスの項も参照)。 集団の姿はプチマスィーンに、ボスの姿は「グラディウス」シリーズのダッカーに類似する。 ビジュアルイメージに対し体躯がかなり大きいのは、おそらく誤射防止のためか。 NPCとして「謎のエーデルワイス型」が登場。参加プレイヤーが一人か三人の時に戦場に姿を現す。 ステータスはLV60かLV100の模様。AIは他のジェムバトルと同じ。 なお、武装神姫Rの設定もあり、エーデルワイス用武装の防御力に少量のバフが掛かっている。 ジェム回収ボタンの仕様が変更されており、レイドバトルでは撃破された仲間にジェム回収範囲を当てることで、再出撃までの交代時間を短縮することがでる。 (レイドバトルはジェムバトルより再出撃までの時間が倍近く長くなっている) レイドバトル中は仲間をロックオンできず、画面タッチでのみロックオンすることができる。 また、ロックオンせずともジェム回収範囲が当たればOK。 ジェム回収展開速度は他のジェムバトルと同じ仕様。 チャットボタンのタッチによって他マスターへメッセージを送る事が可能。 メッセージ内容は「よろしんき」「ありがとう」「たすけて」「グッジョブ」「武装神姫」の5種類固定で設定されている。 マップ 神殿に近いが、神殿よりもオブジェクトが減ってほぼ更地と化している。そしてMAP全体が闇に包まれており… 近接バグは上に攻撃できないため、MAP四つ角にある背の高い柱に乗れば近接バグからの攻撃が届かずに済む。 難易度設定 「初級」と「上級」の二種類がある。 ※所属リーグに関係なく、他のバトルモード(マッチング)と共有しない。 「初級」はエンジョイジェムバトルと同じく、武装LVが20に強制統一される。 「上級」には武装LVの強制統一などはない。敵のLVは所属リーグに影響されない。LV100相応。 攻略 同時ロックオン補正があるが、それ以上に武器補正ダメージボーナスの方が大きいです! 例) 誰もロックオンしていない近接バグに遠距離攻撃>4人全員がロックオンした近接バグ(+60%)に近接攻撃 初級編 近接攻撃の立ち回り 元々ハイリスクローリターンなカテゴリーだが、バグ相手ではさらに分が悪くなってしまう。 小型中型の近接バグのDPSがかなり高く、こちらからの武器補正もないのでまずダメージレース負けする。 殴りあうと損害がとんでもなく大きくなるので、基本的に相手にしないのが良いのだが、逃げ切るのは不可能。 報酬は諦めて柱に乗ってひたすらやり過ごすのも手だが、WAVE3では通用しない。 正直レイドボスよりも中型近接バグをどう対処できるかがクリアに繋がっていると言っても過言ではない。 もちろんレイドボスも厄介。どの攻撃も強烈で、長時間殴れることはほぼない。 ウェポンやボディに攻撃が届かない ダメージボーナスがないので、攻撃する箇所はほぼ脚のみとなる。(回し蹴りと後ろ蹴りの軸足になっている左脚が狙いやすい) 遠距離武器の立ち回り このバトルでの大切なダメージ源。遠距離から攻撃できるというだけでどれだけ楽に立ち回れるかが分かるだろう。 とりあえずヴァッサーマン・D-MPやFB256 1.2mm滑腔砲等の射程が長い武器で観察と攻撃を繰り返してレイドバトルの経験を積もう。 ただ射程が長い=DPSが低いなので、ある程度慣れてきたらDPSに優れた片手ライトガンを装備しよう。中でもポーレンホ-ミングがオススメ。典型的なPLには当たり難いがCOMには当たり易いという性質が理由。装弾数を3にすればかなりのDPSになる。 10/7から再開された際にはバグステータスに調整が入り多段hit系の射撃武器は装備構成次第でかなり与ダメージが減少するよう調整されたので考えもなしにポーレンホーミングを使うと泣きを見る羽目になる。近接バグも割りと固まって襲って来やすくなったので爆風付きの腰持ちヘビーガンには追い風となっている。 上級編 近接攻撃の立ち回り 基本は初級と同じだが、よりダメージレース負けしやすい。 初級では他の近接武器カテゴリーでクリアできるが、上級ではほぼ双頭刃斬撃武器一択。 遠距離武器の立ち回り 必要なダメージ量が増えたので生半可な武器ではタイムアップする。 やはり装弾数を3にしたポーレンホ-ミングがオススメとなる。耐近接攻撃があってリロードが高速化するフォートブラッグもオススメ。 しかもお互いにシナジーがあるので、とりあえず困ったらフォートブラッグに装弾数を3にしたポーレンホ-ミングで良い。というかそれ以外だとかなり難易度が上がる。 WAVE1 60秒と短い上に敵が最大6体しかMAPに存在できないので、最大報酬まで獲得するのは結構難しい。撃破したらすぐ別のバグを狙おう。 遠距離バグの攻撃ダメージはしょぼいので無視して良い。 60秒経てば次のWAVEに進む MAP下側に遠距離武器持ちバグが出現しないので、最悪MAP下側の柱の上に乗ってるだけでも良かったり。 約15秒経過すると40秒間MAP左上にスキルポッドが出現する。 WAVE2 120秒間ひたすら近接バグを凌ぐ。 理論上四人でMAP中央に居続ければどのバグも起動させずに済ませられるが、COMが一人でも入るとアウト。 自信がなければやはり柱の上に乗るのが一番。すぐ隣の遠距離バグから常に攻撃されるので、ガードで対処しよう。オススメはMAP左上。 約20秒経過すると40秒間MAP左上にLPポッドが出現する。 約75秒経過すると40秒間MAP左上にスキルポッドが出現する。 WAVE3 240秒の間にレイドボスを撃破すればクリア。 約60秒経過すると40秒間MAP左上にLPポッドが出現する。 約120秒経過すると40秒間MAP左上にスキルポッドが出現する。 バグ・ボス情報 小型バグ WAVE1のみに出現。 WAVE1開始時の近接バグは、開始一秒時点で自身から一番遠かった神姫のみ狙うAIになっている? 増援の近接バグは、サーチ範囲に一番最初に入った神姫のみ狙うAIになっている。 遠距離バグは、サーチ範囲に入った神姫(複数いる場合は一番近い神姫)を狙うAIになっている。 最初に出てくるバグなだけあって火力も耐久も控えめかと思いきや、近接バグが結構油断ならない。 攻撃頻度がこちらの近接攻撃なみに速く、見た目以上のいんちきくさい攻撃範囲を持っている。しかもダメージもそこそこある。 一度取り付かれて攻撃モーションに入られたらダメージは避けられないと思って良い。 初級 ス 体 500? ? 攻撃名 功 射程 弾速 備考 近接攻撃 ? 0.1? 遠距離攻撃 ? 0.25? 80? 上級 ス 体 500? 5000? 攻撃名 功 射程 弾速 備考 近接攻撃 300? 0.1? 遠距離攻撃 100? 0.25? 80? 中型バグ WAVE2とWAVE3に出現。 WAVE2WAVE3開始時の近接バグは、バトル開始時点で自身に一番近かった神姫のみ狙うAIになっている。 WAVE2増援の近接バグは、サーチ範囲に一番最初に入った神姫のみ狙うAIになっている。 WAVE3増援の近接バグは、バトル開始時点で自身に一番近かった神姫のみ狙うAIになっている。 遠距離バグはどちらのWAVEも、サーチ範囲に入った神姫(複数いる場合は一番近い神姫)を狙うAIになっている。 小型バグの倍近い耐久と火力。 一回のダメージがそれなりにあり、複数出てくるのもあってダメージが積み重なりやすい。 背丈が神姫とほぼ同じだが、横幅が神姫三人分・空中に浮いているとあって、かなり大きく見える。 複数の攻撃タイプがいるが、中でも近接バグが厄介。 0.3秒~0.5秒とリキャストが速く、見た目通りの判定もあって近寄られると危険。ただし遠近バグ共に地上リアの挙動と同じ為、ホバリングを続けれる限りは近接バグの攻撃は届かない為安全である。 特にWAVE3はMAP真ん中に出現・増援するため、起動させないよう立ち回るのは不可能に近い。 上級をクリアするにはこの近接バグをどれだけ上手く対処できるかにかかっている。 初級 ス 体 500? ? 攻撃名 功 射程 弾速 備考 近接攻撃 ? 0.07? 零神のMVソードに類似。WAVE3にも出現 レーザー ? 0.25? 80? 貫通属性。WAVE2ではMAP左下と右下を担当。WAVE3にも出現 ヘビーガン ? 0.25? 60? WAVE2ではMAP右上を担当。誘導が良い ガトリング ? 0.25? 60? WAVE2ではMAP左上を担当 上級 ス 体 500? 7500? 攻撃名 功 射程 弾速 備考 近接攻撃 500? 0.07? 零神のMVソードに類似。WAVE3にも出現 レーザー 500? 0.25? 80? 貫通属性。WAVE2ではMAP左下と右下を担当。WAVE3にも出現 ヘビーガン 400? 0.25? 60? WAVE2ではMAP右上を担当。誘導が良い ガトリング 100? 0.25? 60? WAVE2ではMAP左上を担当 大型バグ(レイドボス) 3WAVEに出現。 とにかくでかく、その巨体に見合った耐久と火力を誇る。 いずれの攻撃もダメージが大きく、近接攻撃の大半が予備動作がないのでガードは不可能。 しかも位置取りによっては一部の近接攻撃がボディに届かないので、基本的には遠距離武器の射程ギリギリから攻撃するのが安定になる。 「右脚」「左脚」「ボディ」「ウェポン」「頭」の五つから構成されている。「ボディ」以外は破壊可能。 破壊した部位に攻撃を当てると、通常よりもダメージボーナスが入る。 初級 部位 体 備考 右脚 30000? 近接武器でダメージボーナス有り 左脚 30000? 近接武器でダメージボーナス有り ボディ ? ウェポン 30000? 頭 30000? 遠距離武器でダメージボーナス有り 総合体力 120000~200000? 攻撃名 功 射程 弾速 備考 後ろ足で蹴る ? ? 右足で後ろに蹴りを二回。 回し蹴り ? ? 少しため動作をした後、左足を軸に右足で時計回りに一回転回し蹴り。 突進 ? 0.5? ? まっすぐ突っ込む。二回連続で突進する場合も。 レーザー ? 0.25? 80? 頭をかがめる動作をした後、ボディとウェポンの接続部からレーザーを4連射。銃口補正があまりないので、少し離れれば直角に歩いて避けれる。貫通属性 主砲 ? 無限 60? ウェポンから誘導する弾を一発。誘導性能がとても高く、股下にいても飛んでくる。 上級 部位 体 備考 右脚 150000? 近接武器でダメージボーナス有り 左脚 150000? 近接武器でダメージボーナス有り ボディ ? ウェポン 150000? 頭 150000? 遠距離武器でダメージボーナス有り 総合体力 600000~750000? 攻撃名 功 射程 弾速 備考 後ろ足で蹴る 1000? ? 右足で後ろに蹴りを二回。 回し蹴り 1200? ? 少しため動作をした後、左足を軸に右足で時計回りに一回転回し蹴り。 突進 1000? 0.5? ? まっすぐ突っ込む。二回連続で突進する場合も。 レーザー 1300? 0.25? 80? 頭をかがめる動作をした後、ボディとウェポンの接続部からレーザーを4連射。 主砲 1500? 無限 60? ウェポンから誘導する弾を一発。誘導性能がとても高く、股下にいても飛んでくる。 報酬 バトル参加報酬として初級は【Rネジ】×10個、上級は【Rネジ】×20個獲得できる。 WAVE1の小バグ、WAVE2の中バグを撃破する事で、一定の確率でご褒美(コンテナ)が貰える。 WAVE3は中バグの撃破数は関係なく、レイドボスの部位を破壊するごとに(最大4つ)、レイドボスを早く討伐するほど(残り150秒を切ると10秒毎に-1つ?)多くのご褒美が貰える。 レイドボスを倒せなくとも、WAVE1WAVE2に獲得した報酬と、レイドボスの部位破壊をした数の報酬は貰える。 この時点で噂されていたバトコンオリジナル神姫「闇神姫」については、レイドボスバトル(常設)にて実装された。 アップデート履歴 日時:2021.08.18 内容:期間限定イベントとして追加実装。 今回はオンライン初級・上級のみで、オフラインの実装は見送られている。 日時:2021.07.16~18 内容:公式ロケテスト。なおこれに伴い、飛鳥の先行参戦が発表されている。飛鳥とレイドボスの関係はまったくないとの事。 コメント ソロならN SR SRかな。NPCの一人編成にスキルのカーテンコールは有効なのか? -- 名無しさん (2021-08-19 04 30 09) 有効みたいですよー。控えがシュメッターリング2人ならURでも最出撃までの時間が4秒になるので、かなり有効ですよ。 -- 名無しさん (2021-08-19 07 19 59) 期間限定のイベントであってもこれ常時実装させるなら一部の武装とスキル見なおさないと其一択になるような…と言うか協力プレーだから成果は全体で共有であっても一人が大暴れする流れはもうそれオンラインでやる必要性がないようなと思える -- 名無しさん (2021-08-31 23 20 32) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1189.html
前へ 先頭ページへ 次へ 第十六話 共鳴 着地する。 よく整備された滑走路のアスファルトが、その下の整地用に敷かれた土と一緒に飛び散る。小さなクレータがひとつ出来上がった。 長大な滑走路の向こうには、飛行船が発進した森があって、滑走路のところだけが開いている。終端部にはやはり、地下の格納庫へとつづくであろう大きなエレベータハッチが口を開けていた。 ――開いている? “前方ハッチより反応多数。ラプターです” エイダの警告。 直後、いくつもの光点がハッチから飛び出してくる。十、二十、三十、四十――、まだまだ増える。 「いまだあれほどの戦力を隠し持っていたとはな」 ビックバイパーアタッチメントを纏ったルシフェルが後方から追いついた。その後ろにはファントマⅡを装備したネイキッドの部隊。 「こっちの戦力は」 「私とお前を除いて三十だ。数だけなら圧倒的に足りないな」 話している間にも、ハッチからは次々とラプターが出てくる。 「エイダ、奴らの総数は」 “聞かないほうが賢明です” 人間くさい答えをするようになったな、とクエンティンは思う。 “単純物量差は十倍以上です” 「聞かなきゃよかったな」 「どっちにしろ、ぶっ倒さないと進めないんでしょ」 スラスターの出力を溜める。青白い余剰出力が羽の間からこぼれる。 「やるわよ」 「ふっ」 口の端に笑みを浮かべて、ルシフェルも構える。 「この場での戦力は正直に言って、私たち二体だけだ」 「一人頭だいたい一五〇体潰せば良いわけね」 クエンティンの背中の空間が展開し、細長い板状の物体がトランプを広げるように現れる。ホーミングミサイルである。エイダがあらかじめ解除しておいてくれていた。 左手を前方に掲げ、複数の標的をロック。 ミサイルの発射が引き金になった。三十二体と三百体超の神姫が、同時に突撃を開始する。 ◆ ◆ ◆ 「おかしい」 命令や報告がひっきりなしに飛びかう潜水艦のCICで、全戦域の概況を一括表示する正面スクリーンを凝視しながら、鶴畑興紀はつぶやいた。彼は指令席に座り、デスクに両肘をついて顔の前で手を組んでいる。 「どうしたの」 その傍らに立っていた理音が訊く。 状況は素人目に見ても順調であるはずだった。いや、順調すぎて気持ち悪いくらいであり、何か突拍子もないことが起こるのではないかという予感が理音にはあった。 「上手く行き過ぎてるのが怖い?」 「そうじゃない」 興紀は首を振る。眼鏡を取り、眉間を抑えて深呼吸を一つすると、いつのまにかいなくなっていた執事がタイミング良く戻ってきて、湯気の立つブラックのコーヒーを置いた。 コーヒーを冷まさず一気にあおる。興紀が飲めるくらいの温度にしてあるのかもしれない。空になったコップを執事が持ってゆく。 「向こうの戦力の浪費が激しい」 それが自分の問いに対する答えであると理音が気づくのには少し時間がかかった。興紀の動作に見とれていた。 「それは……、良いことなんじゃなくて?」 「そうなんだが」 トントン、とデスクを指で叩く。 「引っかかるんだ。向こうが全力で抵抗していないように感じられる」 「切り札があるとか――」 「これは段取りの決められたアクション映画じゃない。切り札があるなら最初から使う。最初から全力でやる」 「突入部隊からは。人間のほうの」 「まだこれといった報告はない。多少の交戦はくぐっているが、おおむね順調だ。さしたる抵抗もせずに敵兵があっさり降伏したところもあった。調べた結果が先ほど来たが、敵兵士はそのほとんどがはした金で雇われた傭兵だったそうだ」 「じゃあ、虎の子の飛行船団が落ちたからかしら」 「たしかにあれは奴の作戦の要だが、それならば撃墜された時点で全面降伏するはずだ。いまもって抵抗を続ける意味の方が不明瞭になる」 つまり、抵抗を続けている理由が立つと抵抗の弱さが疑問になり、抵抗を止める理由が立つと今度は抵抗を続けている事実に首をかしげざるをえない、ということである。 「現に抵抗が続いているのだから、まだ諦めていないんじゃないの」 「アーマーンを動かすのか。だがジェフティがこちらの手にある以上、起動することはできないだろう。できたとして、先日捕獲した折にやっているはずだ。おそらくクエンティンと融合していることが起動を阻んでいる要因だ。だから私もクエンティンを戦力として送り込めたんだ。人為的に分離させることは不可能なようだからな」 顔の前で手を組み、ふたたび正面スクリーンを見つめる興紀。 「向こうの行動がそれぞれ、微妙に噛み合っていない。何かがおかしい」 息をつく。今度はため息だった。 「ただの時間稼ぎか? 私は何か思い違いをしているんじゃないのか……?」 デスクに置かれた書類を取る。 例のジェフティ、アヌビス、そしてアーマーンの関係を描いた簡略図であった。狼、アヌビス神のアイコンとヒヒ、トート神のアイコン、その真ん中にある、円形の、島らしきアイコン。アーマーン。中心には逆三角形の中抜きがあり、さらにその中にこちらを睨むような半円がある。半円の周囲には円周が一本引いてあって、その円周上には点が一つある。 興紀の背筋を悪寒が走った。 「これは、島ではないのか――?」 『D部隊がアーマーンの指令センタードア前へ到達!』 オペレータの一人が興奮した面持ちで声を張り上げ、反射的に興紀は疑問を脇にやった。 「突入しろ。ブービートラップに注意だ。ノウマン以下中心メンバーの身柄は全員確保。不可能なら――射殺しろ」 すばやく命令を出す。オペレータが一字一句そのまま部隊へ通達。スピーカから部隊長の復唱が聞こえた。 予定よりも非常に早いクライマックスを、理音たちは迎えていた。 ◆ ◆ ◆ ミサイルの直撃を喰らったラプターがエレベータハッチの奈落へ墜落してゆく。 “進行エリアの敵、全滅。味方残存、十二” 「戦力の三割以上の損害。戦略的にはこっちも全滅ね」 二百メートル以上はあろうかという格納庫の穴をクエンティンは見下ろす。 ナトリウムランプの煌々とした照明がくまなく照らすが、飛行船はともかく、待ち受ける敵の姿がない。 「突入部隊が指令センターに到達した。メンバーは全員拘束されたそうだ」 戦闘後の斥候を終えたルシフェルが降り立つ。 「あれ、じゃあ、もうおしまい?」 「あっけなさすぎるがな」 ものすごく歯切れが悪いが、案外こんなものなのかもしれない、とクエンティンは思った。現実はそうドラマチックにはいかないものだ。 今までが劇的すぎたのだ。夜食を買いに出た道端で新型のプロトタイプと運命的な出会いをして、武装神姫の今後を揺さぶる大事件に巻き込まれて。 全てが終わった今となっては、貴重な体験をさせてくれた皆々様に感謝、そんな気持ちだった。 特にエイダに対しては。 「ねえ、エイダ」 無言。 「エイダ、さっきから戦闘サポートばっかりで一言もおしゃべりしてないけど、どうしたの?」 エイダは答えない。 すると、まったく唐突に、全チャンネルで通信が繋がった。 『こちら司令室。全員警戒態勢。非常事態だ』 「マスター?」 ルシフェルが眉に疑問符を浮かべて応答する。 「どうしたんです。中心メンバーの身柄は確保したのでは?」 『ノウマンが自殺した』 首の後ろのあたりに寒さが走ったような感覚をクエンティンは覚えた。 「ちょっとちょっと!」 通信に割りこむ。 「じゃあ別にいいじゃない。肝心の首謀者が死んだんでしょ? 警戒態勢しく必要なんてどこにも――」 『アヌビスの行方が分からなくなっている』 今度こそクエンティンはぞっとした。 『アヌビス、つまりデルフィのオーナーはノウマンに設定されている。オーナーが死亡、またはその他の理由で神姫とのコミュニケーションが恒久的に不可能になった場合、安全のために神姫のAIは機能の一切を停止して強制スリープモードに移行する』 そんなことは知っている。オーナーが知らなくても、武装神姫なら誰でもデフォルトで組み込まれている機能であり、知識だ。 『だが、デルフィが機能停止した痕跡がない。現在アーマーンの全階層を総動員で捜索しているが、まだ発見されていない』 「それってまさか、デルフィが自律駆動しているってこと?」 オーナーの束縛なしに。 『その可能性は非常に高い』 そんなことがありえるのだろうか。 オーナーの存在は、人間が考える以上に神姫にとってかけがえのないものだ。たしかに人側から見れば、「オーナーが死ねば神姫は強制スリープモードに移行する」だけなのだろうが、神姫にとってオーナーを失うということは即座に自らの存在理由の否定に繋がる。原則として、オーナーのいない神姫はありえない。神姫は神姫である以前にロボットであり、ロボットは人間に命令されることで存在理由とアイデンティティを発生させる。 命令する人間のいないロボットは発狂するのだ。 AIのなかった時代ならば、そうした人間とロボットの関係はあいまいで確立しておらず、ゆえにロボットの発狂などという現象は起こることもなかった。 しかし、AIは自ら考え行動する、意思を持ったロボットである。AIの誕生とともに、命令する人間との関係の確立はなくてはならない事項であった。命令する人間がいるからこそ、AIは安心して行動できるのである。 特に武装神姫はそのシステム上、オーナーと神姫、という図式で、他のどんなAIよりも「命令する人間」と「命令されるロボット」との関係を密にする。だからこそ複雑でフレキシブルな命令をこなすことができ、自ら学んで成長する、まるで人間のようなAIが生まれたのである。 オーナーの死亡等によるコミュニケーション不可能から行われる強制スリープモードは、発狂しないための安全策なのである。もしもこのプロセスが何らかの原因で実行されなかった場合、神姫は発狂する。 ではなぜ、オーナーのいない野良神姫がいるのか? これは、その神姫がオーナーのコミュニケーション不可能状態を観測していないからである。神姫の中では、オーナーが不在=オーナーの死亡とはならないのである。これが神姫のAIが画期的たるゆえんで、つまり解決しない問題(タスク)をほうっておくことができるのである。普通のコンピュータはタスクが解決しない場合、無限の思考ループに陥って大抵フリーズする。神姫にはそれがない。野良神姫はとどのつまり、命令待ちの状態で自ら判断して行動しているわけである。そしてオーナーとの密な関係のために他の人間の命令を聞かない(「命令を聞いた方が都合がよい」と判断した場合、命令に従うこともある)。まさに野良である。 発狂した神姫を、幸か不幸かクエンティンはまだ見たことがない。もしも自分のオーナーが、理音が死んだら――。そうふと思うだけで、たとえようのない不安と恐怖が押し寄せてくる。 では、エイダは? 彼女には―― オーナーがいない。 ではエイダは発狂しているのだろうか? どうもそうとは思えない。 「エイダ、アンタってさ――」 足元の奥深くから殺気を感じた。 「ひっ!?」 思わず短く悲鳴を上げてしまい、数センチほど浮いてしまう。 「どうした?」 傍らのルシフェルが手を伸ばす。 バシッ! 「っ!」 クエンティンの体に触れる寸前、ルシフェルの手は見えない何かに弾かれる。 ルシフェルは目を疑った。 クエンティンの全身のエネルギーラインが赤く明滅している。 「最下層、バラストタンク……」 独り言のようにぼそりとつぶやくのを、ルシフェルは聞いた。 「なに?」 「共鳴してる。エイダとデルフィが。すっかり忘れてた。二人は双子みたいなものだって」 寒さに震えるように、自らの身体をかき抱くクエンティン。 「アイツ、呼んでるわ。ちょっと行ってくる」 バースト。そのまま爆発的な急加速。衝撃波で吹き飛ばされるルシフェル。 「クエンティン!」 ルシフェルの静止も聞かず、格納庫の穴へ急降下。バラストルームへと続くルートがヘッドアップで表示。深い。地下七六〇メートル。島の底辺から太いシャフトでぶら下がっている、四つの丸い大きなタンクが立体映像で映る。 デルフィはそこにいる。クエンティンにはそれがわかる。 不可解なのは―― そこに、ノウマンの反応もあったことだ。 つづく 前へ 先頭ページへ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2209.html
ウサギのナミダ 番外編 オリジナルの矜持 ~前編~ ◆ 蓼科涼子にとって、それは千載一遇のチャンスだった。 いつも四人組で行動している彼女は、今日はたまたま一人だった。 そして、いつも仲間たちと一緒にいるあの人も、今日は胸ポケットに自分の神姫を連れているだけ。 あの人は、いつものように、ゲームセンターの壁に背を預け、大型ディスプレイに映し出されるバトルロンドの様子を、見るともなしに見ている。 しかし、その視線は鋭い。 ときどき、独り言のようになにか呟いているのは、自分の神姫に何か意見を求めているのだろうか。 ストイックな人だ。 だが、涼子はそれが好ましいと思う。 とにかく、これは滅多にないチャンスだった。 二度とは訪れないかも知れない。 涼子はごくり、と唾を飲み込む。 緊張に背筋が伸びる。 胸に握り拳を当てて、深呼吸を一つ。 「よし」 心を決めて、一歩踏み出した。 はやる気持ちを抑えながら、涼子はゆっくりと、その人に近づいてゆく。 周りから横やりが入れられないよう、注意を払いながら……。 やがて、その人の前にたどり着く。 「……あのっ! すみませんっ!」 まずい。 声がうわずっている。 それに伴い、涼子の緊張が加速する。 目的のその人は、ゆっくりと涼子に視線を向けた。 まっすぐに、涼子を見る。 「ああ、君は……」 もちろん、涼子と彼は顔見知りだ。 だが、こんな風に差し向かいで、まっすぐに視線をもらうなんて今までになかった。 緊張が高まって、頭がクラクラする。 しかし、涼子は、勇気を振り絞る。 そう、こんなチャンスは二度と来ないのだから……! 「あのっ! 遠野さんっ! わたしを……弟子にしてくださいっ!!」 沈黙。 二人の間を、ゲームセンターの喧噪が流れていく。 「…………は?」 あ、こんな顔もするんだ。 その人……遠野貴樹は世にも間抜けな表情をしていた。 ◆ ことの起こりは、四人組の一人・園田有紀が、自分の神姫であるヴァローナ・タイプのカイに、新たな武装を与えたことだった。 「へぇ……純正ストラーフ装備ね」 「中古だったんだけどさあ、状態も良くて、格安だったんだよ。ちょっと予算オーバーだったけど、思い切って買っちまったい」 八重樫美緒の感心した声に、有紀は得意満面だ。 それも仕方があるまい。もともと有紀はストラーフ装備でパワーファイトすることを望んでいた。 資金の都合でライトアーマーの神姫を購入したが、ストラーフ装備と相性のいいヴァローナを選んだのも、将来を考えてのことだ。 ヴァローナ・タイプはストラーフ・タイプの姉妹機であり、武装の相性もいい。 いずれストラーフのフル装備を手に入れる、というのは有紀の口癖だった。 その思いは、『エトランゼ』久住菜々子と知り合ってから、ますます強くなっているようだった。実際、有紀はエトランゼのバトルに心酔している。 まさに、念願かなった、といったところだった。 有紀の神姫・カイも、はじめてのストラーフ装備に満面の笑みを浮かべながら、細かく動作を試していた。 心中穏やかでないのは涼子である。 涼子たちは、四人の中で対戦して遊ぶことがほとんどだった。 その四人のランキングは決まっている。 一番は八重樫美緒。彼女は頭脳的なバトルを得意としている。オールラウンダーであるウェルクストラ・タイプは、まさに彼女の神姫としてうってつけだった。 四人の中ではダントツの強さを誇る。 二番目は、蓼科涼子と園田有紀で争われている。 有紀の神姫・カイは、猪突猛進のパワーファイター。 涼子の神姫、パーティオ・タイプの涼姫は機動力を生かしたヒットアンドアウェイを得意としている。 二人の実力はほぼ拮抗していたが、最近、涼子はあまり勝てなくなってきていた。 特にスランプというわけではない。 だが、以前のように勝ちに行けなくなっている。 状況打破のため、新装備の導入も考えてはいるが、いかんせん、女子高生の限られたお小遣いの中では、なかなか手が出せるものではない。 そんな状況での、カイの新装備導入である。 涼子は焦った。 このままでは、美緒と有紀に追いつけなくなってしまう。 自分の涼姫も、なんとか新しい装備や新しい戦い方を模索して、強くならなければ。 ちなみに、ポモック・タイプのモナカのマスターである江崎梨々香は、勝敗にこだわらない。装備もデフォルトだし、勝っても負けても楽しそうにしている。なので、涼子は、目下のライバルは有紀だと思っていた。 □ 「ですから、装備や戦い方のアドバイスをいただきたいんです。お願いします!」 「……なるほど。詳しいいきさつはわかった。だけど、なあ……」 ポニーテールがトレードマークの少女は頭を下げた後、必死の視線で俺を見つめてくる。 困った。 彼女の気持ちは、わからないでもない。 蓼科さんはバトル指向の持ち主だから、バトルをやるからには勝ちたいと思うのも、自然な話だ。 だが、だからこそ、俺に持ちかける相談じゃないと思うんだが。 「……俺とティアは大して強くないし、勝敗にもこだわってない。君の相談からはかけ離れてると思うんだけど」 「ご謙遜を。クイーンに敗北を認めさせた神姫のどこが強くないって言うんですか?」 俺は苦虫を噛み潰した。 そういう風評は、俺にとっては何の価値も持たない。 「だったら、久住さんにお願いした方がいいんじゃないか? 『エトランゼ』の異名をとる彼女は、俺よりずっと経験が豊富だし」 「あ、菜々子さんはダメです」 「なぜ?」 「有紀が、菜々子さんに弟子入りする! と息巻いてまして……」 なるほど。 確かに、エトランゼに憧れていて、しかもストラーフ装備を手に入れたなら、久住さんに教えを乞うのはもっともなことだ。 しかも久住さん自身、ストラーフ装備には特別な思い入れがあるから、園田さんの願いを無碍に断ることはあるまい。 「それに、わたしはティアの戦い方に憧れています。高速機動で相手を翻弄し、軽量装備で渡り合うスタイルは、わたしが目指すスタイルなんです。だから、遠野さんに是非教えを乞いたいと」 ううむ。 残念ながら、蓼科さんの言っていることは筋が通っている。 似たようなスタイルの武装神姫プレイヤーから教えを乞いたいと思う気持ちは分かる。 だが、オリジナル装備を使う、俺のような神姫プレイヤーは、他人にアドバイスするのが難しい。 公式装備なら、同じ装備を使う神姫に有効なアドバイスもできるだろう。公式装備は量産品であり、基本的な性能も大きくは変わらない。 オリジナル装備というのは、他人が使わない唯一無二のものだ。 だから、俺がティアの装備について語ることは、ティアにしか通用しない。他の神姫の参考にはならないのだ。 公式装備こそは正統派であり、オリジナル装備はむしろ邪道なのだ。 だからこそ、レギュレーションを満たさないオリジナル装備は、公式大会には参加できない。 蓼科さんは教えて欲しいと言うが、俺には有効なアドバイスが出来るとは、まったく考えられないでいる。 しかも、下手なアドバイスをすると、彼女を邪道に引き込んでしまいかねないのではないか。 俺が腕を組んで思い悩んでいると、蓼科さんは上目遣いで俺を見て、言った。 「だめ……ですか?」 くそっ。 どうして女の子という生き物は、男の防御を無効にするずるい攻撃ばかり持ち合わせているんだ。 蓼科さんたち四人の少女は、いずれも、大城が知り合いになれたことを大喜びするくらいに、美少女ぞろいだ。 そんな可憐な女の子に見つめられて、お願いされて断る手段を、残念ながら俺は持ち合わせていなかった。 俺は降参の溜息をつきながら、言った。 「……わかった。アドバイスくらいなら、してもいい」 「ほんとですか!?」 「でも、俺に言えることなんて、観念的なものになると思うし、あまり参考にならないかも知れないけど」 「いいです、それでも。よろしくお願いします!」 頭を下げ、にっこりと笑う蓼科さん。 ……正直、可愛い。 どうにも困った俺は、彼女から視線をはずし、うつむき加減で言った。 「それじゃあ、とりあえず一戦しよう」 「え?」 「君の神姫の現状が知りたい。バトルするのが手っ取り早いからね」 「わかりました。やりましょう……真剣勝負でお願いできますか?」 「もちろん、そのつもりだ」 ◆ バトルのレギュレーションを簡単に打ち合わせて、空いている筐体に向かい合って座る。 バトルの設定は、ライトアーマー戦。フル装備のバトルとの違いは、武装が限られること。サイドボードの容量も、フル装備のバトルよりずっと狭い。 ティアはいつもフル装備のバトル設定だが、今回は涼姫に付き合ってくれるようだ。 フィールドは、おなじみの廃墟ステージ。 そのステージもライトアーマー設定ということで、ずっと狭かった。 「嬉しそうですね、涼子」 鼻歌など出てきそうなくらいにニコニコしている自分のマスターにそう声をかける。 「もちろんよ。だってあの『ハイスピードバニー』が全力で相手してくれるのよ? 今の実力でどれほど通用するのか……勝てないにしても、一矢報いてみせるわ」 最近、勝率が落ちてきているのを棚に上げて、そううそぶく。 フル装備が許可されている無差別級で戦う神姫とは言っても、武装は所詮ライトアーマー並なのだ。 ライトアーマー級の俊敏さを生かせば、少しは勝負になるだろう、と涼子は踏んでいた。 準備を終えて、向かいに座る遠野を見る。 ヘッドセットに何事か囁いている。 この試合の作戦だろう。 自分を相手にどんな作戦を立ててくるのだろうか。 涼子は、緊張を感じると共に、少し楽しみでもあった。 双方とも準備が終わる。 同時に、スタートボタンを押した。 バトルロンド、スタートだ。 ◆ 涼姫は、廃墟になったビルの屋根から屋根へと飛び移り、駆けている。 パーティオ・タイプは身の軽さが信条。 この程度は朝飯前だ。 涼姫はビルの屋上から、ストリートを伺う。 ティアの装備はローラーブレードのようなレッグパーツだから、まずはストリートに姿を現す、と思う。 こっちが身を隠しながら戦うのは分かっているだろうから、誘いに来るはずだ。 はたして、ティアは現れた。 広いメインストリートを大きく使って、ジグザグに疾走している。 「見つけました」 『よーし、近付いてきたら、突撃よ! まずはM573でティアの足を止めて!』 「了解」 涼姫は、基本的にノーマルのパーティオの装備である。 ただ、左腕の装備のみ、ポモックの射撃武器「PML-01 ポモスバーグM573」に換装してある。 M573を撃って足を止め、涼姫得意の接近戦に持ち込む。 これが涼子の考えた戦術だった。 装甲の薄いライトアーマー相手なら、十分に実用的な戦術。 ライトアーマー並の装備であるティアにも、当然通用するはずだ。 ティアは、涼姫のいる廃墟のビルに接近してきた。 ビルの前で方向を変えようとする瞬間、そこを狙って、涼姫は飛び出した。 「はああああぁぁっ!!」 ビルの屋上から落下しながら、ティアを狙い撃つ。 しかし、銃弾は地面の砂埃に消える。 断続してティアを撃つが、そのことごとくを華麗なステップでかわされた。 涼姫が着地する。 ティアはターンの最中で明後日の方角を向いている。 だが油断はしない。 目視せずとも狙い撃てるのがティアだ。 こちらを向いていたサブマシンガンの銃口が火を噴いた。 予想通り。地を蹴って回避する。 こちらも再びティアを撃つ。かわされる。ティアは止まらない。 「……はい!」 小さな返事が聞こえた。 マスターの指示に応えたのだろうか。 ティアは涼姫を見据えると、今度は鋭く方向を変えて走り出した。 速い! 涼姫は左腕の銃口でティアの姿を追う。 □ 予想通り、涼姫はティアの姿を追って、銃身を振り始めた。 涼姫の装備を見てすぐに、彼女の装備の弱点が分かった。 おそらく、クレバーなバトルを得意とする八重樫さんは気が付いているだろうし、園田さんも無意識のうちにバトルの流れの中でその弱点を突いているのだろう。 勝率が上がらないのも仕方のないところか。 このバトルは蓼科さんと涼姫の実力を見ることが目的だから、その弱点を遠慮なしにあぶり出すことにした。 ティアに出した指示は一つ。 涼姫の左後方に回り込むこと。 これだけで、涼姫は思うように戦えなくなるはずだ。 ◆ 「くっ……」 涼姫は焦っていた。 どうにもティアを捕らえることが出来ない。 ティアが涼姫の左側に回り込み始めたときから、M573の射線を彼女に合わせられないでいる。 涼姫が銃口をティアに向けたときには、すでに彼女はまたさらに左側に回り込んでいるのだ。 一度間合いを切るべく動いたが、ティアの高速機動ですぐに左後方を取られる。 かくて涼姫は、反時計回りに身体を回転させながら、ティアを追う形になった。 当たらなくてもいい。 かすめる程度にティアを撃てれば、あのやっかいな足を少しでも止めることができるはずだった。 しかし実際は、かすりもしない。 相手の足を止めるどころか、相手に振り回されて、自分の方が足を止めている。 「え……?」 涼姫はそこでようやく気が付いた。 機動力が持ち味の自分が、動けなくなっていることに。 はっ、となって、改めてティアを狙う。 しかし、既に遅かった。 身体を回転させて、ティアを視界に入れたとき、彼女は既に至近に潜り込んでいた。 「うわっ!」 間近に見えるティアの顔。 身体の回転にようやく追いついてきた左腕を向ける。 しかし、ティアは涼姫の銃口を跳ね上げた。 間髪入れず、がら空きになった涼姫の身体にサイドキックを打ち込む。 「きゃあああああ!!」 地面の上を二転、三転、ストリートの片側まで飛ばされて、ようやく止まった。 涼姫は、蹴りを喰らったおなかを押さえて、立ち上がる。 不思議とダメージは少ない。 手加減されたのだろうか。おそらくそうだろう。 とどめを刺すならば、蹴りの代わりに、左手に握ったコンバットナイフを突き立てればよかったのだから。 涼姫は再び、左腕を持ち上げる。 どんなことをしても、ティアの足を止めなくてはならない。 『姫! 大丈夫!?』 「涼子……なんとか、戦えます」 『よかった……それじゃあ、ビルの壁を背にして、M573を構えなさい。死角を減らして、ティアの動きを絞るのよ』 「わかりました」 涼姫は涼子の指示に従い、すぐさま背中をビルの壁に着けた。 そして右腕のPTR-01のブレードを展開して脇に構え、左腕のM573を正面に伸ばす。 その銃口が示す先。 ティアが立っていた。 □ 涼姫の行動は、ある意味では正解だ。 壁を背にされれば、どんな神姫でも行動は格段に制限される。 しかし、その戦法が許されるのは、真っ正面の攻撃に絶対の自信を持つ神姫だけだ。 涼姫のように軽量武器しか持たない神姫では、自らの行動をも制限し、逆に不利になる。 しかも相手はティアである。 地上型とはいえ、機動性では後れをとらない自信がある。 蓼科さんに、考えの浅さを思い知らせるとしよう。 俺はティアに指示を出すべく、ヘッドセットをつまんだ。 ◆ ティアは背を伸ばし、涼姫の正面に立っている。 美しい立ち姿。 激しい躍動への予感をはらむ、たたずまい。 リラックスした状態でありながら、一分の隙も見いだせない。 涼姫は急に自分が小さく感じられた。 涼子は「ティアの行動を制限する」と言ったが、本当に制限できているのか? ティアは地上型だし、真っ正面に立っているならば、左右どちらかに動くとしか考えられない。 しかし、ティアに射撃が当たるとも思えないのだった。 構えた左腕があまりにも心細い。 ティアが構えた。 動く。 ティアの身体はスライドするように、先ほどとは逆で、涼姫の右側に回り込んできた。 涼姫はあわてて、M573を放つ。 当たらない。 銃口でティアを追う。 しかし、すぐに追えなくなった。 身体が邪魔で、左腕を右に振ることが出来ない。 ティアを追うためには、背中を壁から離さなくてはならない。 涼姫は身体を離し、ティアを正面から捕らえようとした。 ティアは涼姫を回り込み、壁際までやってくる。 そうなれば、ティアも速度を落とし、壁際で対峙できるはずだ。 しかし、ティアは速度を落とさない。 壁に激突する! そう思った瞬間、黒兎の身体がかき消えた。 「!?」 壁に激突したのではない。 レッグパーツのホイール音はいまだこだましている。 ならば……。 涼姫は思い出す。 そう、ティアは壁の上などものともせずに走れる神姫だ。 だとすれば、いま、ティアは、壁を走っている! 涼姫の予測は当たっていたが、遅すぎた。 ティアは涼姫の頭上を越え、その背後に着地した。 その気配を感じ、振り向こうとしたが、できなかった。 ティアは涼姫の左腕を取ると、それを頭上に上げるようにして押さえ込み、そして身体を密着させて、ビルの壁に涼姫を押しつけた。 凶悪に輝くコンバットナイフの刃が涼姫の眼前につきつけられる。 目を見開いたまま、身動きのとれない涼姫。 彼女が見つめる白銀の刃の先。 ティアが、なんだか困ったような顔をしていた。 □ 一戦終えた後、俺はゲーセンの壁際で缶コーヒーを飲んでいる。 一口飲んで、ちらりと隣の蓼科さんを見る。 がっくりとうなだれ、ひどく落ち込んでいた。 ……やりすぎただろうか。 でも、真剣勝負だと言ったのは彼女なのだから、仕方がないと思う。 「まさか、あんなにあっさり……」 「まあ……今回は真剣勝負だと言うんで、遠慮なく弱点を攻めたし」 「ううう……」 蓼科さんはますます落ち込んでしまった。 どうも彼女は、涼姫の弱点に気が付いていなかったらしい。 涼姫が左腕に装備したM573は、長所でもあるが弱点でもある。 片腕に射撃武器を装備し、それを撃って相手を牽制し、もう片腕の近接武器で接近戦に持ち込む。 この戦術自体はオーソドックスだ。 しかし、蓼科さんはその戦術にばかり固執している。 だから攻撃は単調になるし、涼姫の足を止めるようなミスを犯す。 「まあ、オーソドックスな戦術だから読みやすいっていうのはあるけれど」 「……いつ弱点に気付いたんですか?」 「スタート直後、涼姫の装備を見たとき……かな」 「そんな早くですか……!?」 蓼科さんは、またがっくりとうなだれる。 そこまで落ち込まれると、俺にも罪悪感が溢れてくるんだが。 俺がどうやって声をかけようか、困っていると、 「……オリジナル装備って……どうやって思いつくんでしょうか……」 そんなことを呟いた。 いやだから、お勧めしないと言っているんだが。 「それは人それぞれだろうね」 「遠野さんは、どうやってティアの装備を思いついたんですか?」 「ああ……俺、スキーやるから」 スキーは、俺の唯一と言っていい、スポーツの趣味だ。 雪上を滑走するあの興奮と開放感は何物にも代え難い。 「だから、フリースタイルみたいな動きの出来る神姫がほしいと思ったんだ」 「なるほど……」 「俺はあんまりオリジナル装備を使う神姫プレイヤーに会ったことはないけど……みんなそうじゃないかな。 自分の趣味や興味のあるもの、あるいはインスピレーションで自分が突き詰めたいと思ったスタイルを実現するために、オリジナルの装備を用意するんだ」 公式装備に、それを実現するものがあればいい。それが最良だ。 だが、なければ作るしかない。 オリジナル装備を使う者は、公式装備のメリットを捨てても、自分のスタイルを貫こうとする者たちだ。 ゆえに、求道者であり、邪道を行くものなのだ。 「……もし、わたしがオリジナル装備を思いついたら……作るの手伝ってくれますか?」 「……オリジナル装備は邪道だし、茨の道だ。 それでもなお、君がオリジナルでいきたいというなら……その時には協力しよう」 蓼科さんはようやく顔を上げると、にこりと笑った。 ◆ 高い空に、鐘が鳴り響く。 「あー、終わった終わった!」 うーん、と伸びをしながら立ち上がったのは、園田有紀。 彼女がそうして立つと、もともとの長身がさらに高く見える。 終業のチャイムを合図に、クラスメイトもそれぞれに立ち上がり、解散していく。 高校生の放課後はなかなかに忙しい。 有紀は、帰り支度をしている仲間の一人に声をかけた。 「美緒~。ゲーセン行くだろ?」 「ええ、そのつもり」 「じゃあさ、今日は特訓に付き合ってくれよ、みんなでさ」 「特訓? なに?」 「もっちろん、カイの新装備さ! こないだ、菜々子さんに手ほどきしてもらってさ、いろいろ教わったんだよね~」 はすっぱな有紀の言葉に、美緒は苦笑する。 有紀のエトランゼに対する心酔は、美緒たちの憧れとは少しベクトルが違う。 そのバトルスタイルに惚れ込んでいるのだ。 「いいわ。付き合うわよ。みんなも行くでしょ?」 いつもの仲間である、他の二人に視線を向ける。 江崎梨々香は、はいはい、と手を挙げて、 「わたしも行くよ~!」 とにこやかに笑った。 彼女の神姫・モナカはポモック・タイプなのだが、性格や雰囲気が、マスターによく似ている。 「……ごめん、わたしちょっと用事があって図書館に行かなくちゃいけないから……今日はみんなで行って」 もう一人の仲間、蓼科涼子は、トレードマークのポニーテールを揺らしながら立ち上がった。 美緒は驚きを隠せない。 涼子は四人の中でもバトル好きだ。 有紀をライバル視しているにしても、気心知れた仲間だから、有紀の申し出を断るようなことがあるはずはなかった。 「涼子……?」 「……気にしないで、ほんと。ちょっと調べものがあって、ね。だから、今日はごめん」 涼子は荷物を肩に掛けると、そそくさと教室を後にした。 残された三人は、顔を見合わせた。 はたして、涼子は学校の図書館で本を開いていた。 机の一角を占領し、十冊ほどの本がうずたかく積まれている。 一冊ずつぱらぱらとめくっては、机にいる彼女の神姫と何事か話をする。 気を遣って、できるだけひそひそと話しているが、つい声が高くなったときなどには、図書委員に厳しく注意されていた。 「なにやってんだ、ありゃ……」 有紀が呆れ気味に呟く。 バトル派の涼子が、試験前でもないのに、ゲーセン行きを断ってまで、図書館で調べもの。 気にならない方がおかしい。 そう思って、涼子の様子を物陰から盗み見る美緒たちだった。 だが、何をしているのか、さっぱりわからない。 「生物図鑑に乗り物図鑑、百科事典に航空写真集……?」 涼姫と一緒にそれらの本を見ているということは、神姫がらみなのだろうけれど。 ときどき、わしわしと頭を掻きながら、それらの本を一心不乱にめくる。 その様子に声をかけることもためらわれて、三人はそっとその場を後にした。 ◆ 「そう簡単に見つかるもんじゃないわね……」 帰り道。 図書館で閉館まで格闘していたが、今日も成果はない。 日はとっぷりとくれて、あたりは既に夜だ。 図書館に通って四日。 オリジナル装備のヒントを掴もうと必死だったが、芳しい成果はない。 武装神姫の多くにモチーフがある。 アーンヴァルは天使だし、ストラーフは悪魔。犬、猫、兎、海豚、カブトムシ、クワガタムシ、戦車に飛行機……様々なものの意匠を装備に取り込んでいる。 そうした公式装備に使われていない何かを探そうとすれば、おのずと範囲は狭まるし、自分の好みともなかなか合わない。 昆虫図鑑とかも目を通したが、涼子には十分グロテスクな写真群に、正直引いた。 「そう簡単に見つからないって、遠野さんも言ってましたよ。気長に行きましょう」 涼姫は前向きだが、涼子は焦っている。 こうして、自分のスタイルを探している時間は、全くの無駄ではないのか。 この間にも、有紀のカイも、美緒のパティも強くなっているはずなのだ。 図書館通いなんて続けるより、装備を妥協しても試合をする方が強くなれるのではないか。 だが、同時に、その妥協を決して許さない自分がいる。 今のスタイルは付け焼き刃の仮のものだという意識が強い。 だから、いつかはこうして自分のスタイルを模索しなくてはならない。 それが今だというだけなのだ。 焦りを募らせながらも、無意味とも思える調べものを続けなくてはならない。 涼子は深くため息をついた。 「ただいま……」 「おかえりー」 家の扉を開け、気のない挨拶をすると、これまた気のない返事が返ってきた。 靴を脱ぎ、ポニーテールを揺らしながら、リビングへと向かう。 「雄太……また映画?」 気のない返事をしたのは、涼子の弟だ。 彼は最近、映画にはまっていて、古今東西の映画を、ムービーチャンネルの配信サービスで見まくっている。 もっとも、原作付きやアクション映画ばかりなのだが。 今も、古い映画を、家のメインのテレビを占領して鑑賞中だった。 「うん~。面白いんだよ。姉ちゃんも見れば」 「いやよ。あんたが見てるの、古いのばっかりなんだもん」 涼子はキッチンの椅子の上に鞄を置くと、グラスに牛乳をあけて、飲み干した。 弟は夢中で映画に見入っている。 何がそんなに面白いのやら。 涼子は横目でテレビの画面を見た。 弟が好きそうな、アクション映画だ。 アメリカの高層ビル街が映っている。 興味なさげに、視線を逸らそうとした、次の瞬間。 一人の奇妙な男が、高層ビルの間をふっ飛んで行った。 赤と青の、趣味の悪いボディスーツを身に纏い、ビルの谷間をすいすいと駆けていく。 涼子は画面に釘付けになった。 羽を付けて飛んでいるのではない、その独特の動き。 まさにビルの谷間を「すり抜ける」というのがふさわしい。 彼は、摩天楼を縦横無尽に駆け回る。 「こ、これだーーーーーっ!!」 画面にかぶりつきになった涼子と涼姫は、同時に声を上げた。 突然叫び出した姉に、弟はどん引きしている様子だが、そんなことはかまっていられない。 弟の肩をつかんでぐらぐら揺さぶりながら、勢い込んで尋ねる。 「ちょっと! この映画なに!? 何の映画!?」 「ア、アメコミの有名なヒーローだよ……三十年くらい前に実写化されたやつ。その二作目」 「二作目って……何作あるのよ?」 「四作か、五作かな……」 「全部見られる!?」 「今週、アメコミヒーロー映画特集が配信中だから、たぶん……」 「はじめから! 一作目から全部見るわよ!!」 「ええ~? 俺、もう見たんだけど」 「弟のくせに文句言わない!」 雄太は、横暴だ、と思った。 いつもはクールな姉であるが、一度スイッチが入ると手が付けられないのは、幼い頃から身に染みている。 結局は雄太があきらめ、そのシリーズを頭から全部一気に鑑賞する羽目になった。 涼子は晩ご飯もそっちのけで、映画に夢中になった。 気が付いたときには、家の中は真っ暗で、家族はみんな寝静まっていた。 涼子はまだ制服も着替えていなかった。 □ 土曜日。 いつものようにティアを連れて、公園に散歩に出かけ、それからゲーセンに向かうその途中で、蓼科さんから電話があった。 『ちょっとこれから、相談に乗ってほしいんですが!?』 勢い込んでしゃべる彼女に、俺はちょっと気後れする。 だが、約束は約束である。 ゲーセンではゆっくり話すことも出来ないということで、いきつけのミスタードーナッツで待ち合わせることにした。 俺が店の入り口をくぐると、奥に座っていた蓼科さんが立ち上がり、一礼するのが見えた。 アメリカンコーヒーだけで席に着いているのを見て、俺は余分にドーナッツをトレイに乗せ、会計して、蓼科さんの向かいに座った。 「甘いものは大丈夫だよね?」 「あ、はい、すみません……」 好きなものをどうぞ、というと、一番安いオールドファッションにおそるおそる手を伸ばす。 甘いものとコーヒーは、不思議と心を落ち着かせる。 興奮気味に見えた蓼科さんも、心が整理できてきたようだ。 「目が赤いけど、大丈夫?」 「……二日ほど寝てなくて」 頭を掻きながら苦笑する蓼科さんに、俺は呆れた。 あの電話のテンションを二日も維持してたのか。 お互い一つずつ、ドーナッツを食べたところで、蓼科さんが本題を切り出した。 バッグからレポート用紙の束を取り出し、俺に差し出す。 「……これは?」 「やっと思いついた、オリジナル装備です。アドバイスしてもらいたくて」 装備の概要がレポート用紙数枚にまとめられている。 まだアイデアのラフの段階だが、イラストで図解されており、なかなかわかりやすい。 俺は一度ざっくりと目を通した後、じっくりと読んだ。 時間にして五分くらいだろうか。 蓼科さんは緊張した面もちで俺を見ている。 「……よくまとまってると思う。実現性が高いとすれば、B案の方かな」 「ほ、ほんとですか!?」 「ああ。こっちなら、パーティオの装備に手を加えればいいし、使える部品も想像が付く。安く上がると思うよ」 蓼科さんは笑顔を弾けさせた。 ……いやだから、その無防備な笑顔は反則だろう。 俺は彼女を直視できず、うつむいたまま言った。 「で、どうする? 装備を作るなら、パーツを買いに行かないといけないけど」 「……じゃあ、明日、買いに行きたいので……付き合ってもらえませんか?」 「いいとも」 俺は即答した。 このときにはもう、俺も面白くなってきていた。 新たなオリジナルの武装神姫。 同じオリジナル装備の使い手として、心躍らないはずがない。 だが。 「ただし、条件がある」 「え……なんですか」 「今日は帰って早く寝ること。買い物途中に倒れられたら、たまらない」 俺の言葉に、蓼科さんはなぜか顔を赤くしてうつむいた。 ◆ 「あれ……遠野くんはまだ?」 日曜日の午後、菜々子はバトルロンドコーナーで辺りを見回す。 この時間なら先に来ているはずの遠野が見あたらない。 「あ……そういえば昨日、秋葉原に買い物に行くから、今日は来られないかも知れないって」 美緒の言葉に、菜々子はがっかりした。 大学のレポート提出が間近で、昨日は必死でその作業に明け暮れた。 そしてなんとか今日、ゲーセンに来る時間を空けてきたのだ。 それなのに、想い人がいないのでは、昨日の苦労が全く無駄になってしまう。 がっくりと肩を落とし、うつむく菜々子。 そこに梨々香の言葉が飛び込んできた。 「あれ? そういえば、涼子ちゃんも秋葉原にお出かけって言ってたよね?」 「……梨々香っ」 たしなめるような美緒の呼びかけに、梨々香はまったく頓着しなかった。 「もしかしてー、涼子ちゃんと遠野さん、二人でお出かけだったりして~」 あは、なんて笑っている梨々香に、美緒は頭を抱えた。 我が親友ながら、空気読め、と言いたい。 そして、正面から伝わってくる、ただならぬ気配に、美緒は身体を硬直させる。 「ふーん……そう……」 聞こえてきた絶対零度の呟き。 見れば、菜々子の背後に、ただならぬ暗黒のオーラが立ち上っている、ように見える。 美緒はもう涙目になりながら、ことの成り行きを見守るしかない。 そこへ。 さらに空気の読めない親友が声をかけてきた。 「あ、いたいた! 菜々子さ~ん!」 有紀は片手をぶんぶん振りながら、小走りに駆けよってくる。 ゆらり、と振り向いた菜々子の動きは、亡霊じみていた。 そんなことも気にとめず、有紀は話し始める。 「菜々子さん! 今日もご指導、お願いしていいっすか?」 「……指導? ふふふ……いいわよ……」 「はい! お願いします! ビシビシ鍛えてください!」 「わかったわ……ビシビシ、ね……」 心酔している『エトランゼ』から、ストラーフ装備の使い方を直接指導してもらえるのだ。 その言葉に舞い上がり、多少当人の様子がおかしくても、有紀の目には入っていない。 ああ、神様。 美緒は親友の行く末に、不安を禁じ得ない。 やがて。 「ぎょあー」 断末魔的な悲鳴が断続的に聞こえてきた。 その日の菜々子はスパルタだった。 後編へ> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2142.html
ウサギのナミダ ACT 1-22 ◆ ギャラリーにはどう見えているだろうか。 おそらくは、力と技がぶつかり合う、真っ向勝負に見えているだろう。 確かに、雪華は正々堂々、真っ向勝負を挑んできた。 逃げない。揺らがない。 ミスティ得意のレンジに踏み込んでまで勝負を挑んでくる。 その姿勢を貫き、勝利を目指す。 それこそが『クイーン』の二つ名の由来であり、神姫プレイヤーから人気を集める理由だった。 だが、バトルの当事者は思い知る。 真っ向勝負? とんでもない。 劣勢とか、そう言うレベルじゃない。 『そこでリバーサル! 二連撃!!』 菜々子の指示が飛ぶ。 もう何度目かの得意技。 この間合い、このタイミング、この速度、そして身体をロールさせながら繰り出す二連撃。 熟達したアーンヴァルでも、このリバーサル・スクラッチはかわせない。 だが。 雪華は、これを紙一重でかわす。手にした剣で反撃すらしてみせる。 「くっ……!」 正々堂々? 真っ向勝負? 違う。 これは「練習」だ。 こっちの本気を練習台にしてしまう、圧倒的実力差。 ミスティは敵を見上げる。 空中に浮かび、羽を広げた雪華は、まるで降臨した大天使のようだ。 その美しい姿に、ミスティは戦慄した。 「本身は抜かないのかよ!?」 「あれは、そう簡単に抜けるもんじゃないのよ!」 虎実の叫びに、菜々子は応える。 虎実は、ミスティの攻撃が雪華に全く効いていないことを見抜いているようだ。 『本身を抜く』には、試合前からしっかり心構えをする必要がある。 バトル中に切り替えるような便利な使い方はできない。 それに、たとえ本身を抜いたところで、食い下がれるかどうか。 (……まさか、これほどとは) 菜々子は戦慄する。 正々堂々のバトルロンドで、こうもあしらわれるのは初めての経験だった。 どうすればこれほどの実力が身につくというのか。 だが、諦めるわけにはいかない。 せめて一矢報いなくてはならない。 『エトランゼ』の名に賭けて。 そして、遠野とティアにつながなくてはならない。 菜々子は絶望と戦いながらも、ミスティに矢継ぎ早に指示を出していく。 ■ 帰りの電車の中、わたしはずっと考えていた。 マスターのこと。 マスターがわたしを守るために、すべてを賭けてもいいと、言ってくれたのだという。 エルゴの店長さんがそう言っていた。 わたしには、マスターの想いが分からない。 わたしの過去が暴かれたせいで、あれほど酷い目に遭わされたというのに。 それでもなお、わたしを自分の神姫にするために、全力を尽くしてくれている。 マスターのその想いが伝わって、店長さんを動かし、刑事さんを動かし、風俗のお店がなくなって、多くの風俗の神姫が救われた。 それほどの大きな想いをわたしに向けてくれている。 なぜですか? なぜ、それほどまでに、わたしにこだわるんですか? わたしはそんな価値のある神姫ですか? わからない。 わかりません。 わたしにできることなんて、マスターのそばにいて、マスターの指示通りに走るこくらいなのに。 シャツの胸ポケットから、マスターを見上げる。 マスターは物思いに沈んでいるようだった。 この間までのつらそうな表情でないのは救いだったけれど。 わたしはマスターの心に寄り添えないままだった。 刑事さんはわたしに、素晴らしいマスターの神姫であることを忘れてはいけない、と言った。 それはもちろんなのだけれど。 そのマスターのために、わたしは何がしてあげられるんだろう……? □ 時間がないので、昼食は電車の中でパンをかじった。 一度アパートにとって返し、ティアの武装一式を手にして駅前に戻る。 ゲームセンターに着いた時には、久住さんの電話から、もう二時間以上が過ぎていた。 久々のゲームセンターの入り口。 俺は少し感傷的になる。 一歩を踏み出すのが少し怖い。 俺は店の出入りを拒否されているわけで、躊躇するのも分かって欲しいところだ。 久住さんはいるだろうか。 自動ドア越しだと、奥の様子は分からない。 彼女がいてくれないと、俺は針の筵なんだが。 それでも俺が足を進められたのは、今朝方の出来事があったからだろう。 すくなくとも、もう店に黒服の男たちが現れることはない。 自動ドアが開く。 まず俺の耳に聞こえてきたのは、神姫の怒声だった。 「なぜだっ!! なぜあんな淫乱神姫にばっかりこだわるんだ!?」 叫んでいるのはハウリン。 その声を受け流しているのは、銀髪のアーンヴァルのようだ。 「迷惑なエロ神姫なんかより、あたしの方がよっぽど強いのに!!」 「随分とご挨拶だな、ヘルハウンド」 俺が静かに言うと、武装神姫コーナーにいた全員が俺を見た。 「黒兎のマスター……」 ヘルハウンドは怒りの眼差しを俺に向けてきた。 憎悪すら込められていそうだった。 「……遠野くん!」 ギャラリーから抜け出して、久住さんが駆け寄ってきてくれた。 いつものようにジーパン姿のラフな格好。俺は安心したような、残念なような、複雑な気分になった。 「連絡ありがとう。……遅くなってごめん」 「ううん。来てくれてよかった」 いつもよりも微笑みが弱々しく見えるのは気のせいだろうか。 そのとき、ギャラリーの一角から、声があがった。 「おいっ! 黒兎のマスター!! ど、どの面下げてここにきたっ!!」 三強の一人、『ブラッディ・ワイバーン』のマスターがこちらを指さして喚いている。 俺にはそれほどショックはなかった。 こうした中傷は予想の範囲内だったので、心構えもできている。 と、いきなり久住さんがワイバーンのマスターを睨みつけた。 「わたしが呼んだのよ。文句ある?」 耳が凍傷になってしまいそうなほどに冷たい声。 ワイバーンのマスターはそれだけで、急に黙り込んでしまった。 ギャラリーも、何か言いたげな表情だが、黙ったままだ。 ……いったい、どうなっているんだろうか。 俺が驚きを隠せずにいると、久住さんの後ろから、さきほどの銀髪のアーンヴァルを肩に乗せた青年が近づいてきた。 「あなたが、ハイスピードバニー・ティアのマスターですね?」 人が良さそうに微笑む青年と、真剣な面もちの銀髪の神姫。 その後ろに、カメラ用のベストを着用した、年上の女性がいる。 「……遠野くん、彼らがティアを助けてくれたの」 「高村優斗です。こちらは僕の神姫で、雪華」 青年とその神姫は、礼儀正しく会釈した。 それから、後ろの人物を示し、 「それから、この人は、僕らの取材をしている、『バトルロンド・ダイジェスト』の三枝めぐみさん」 「よろしく~」 三枝さん、というその女性は、ひらひらと手を振った。 俺も挨拶する。 「遠野貴樹です。それと、俺の神姫のティア」 「は、はじめまして……」 「ティアを助けてもらって……助かりました。感謝してます」 もう一度俺はお辞儀をした。 顔を上げると、高村と名乗った青年は、ゆるやかに首を振っていた。 「いえ、大したことではありません。 僕たちも、対戦希望の相手を助けられてよかった」 やはり、そうか。 俺はその一言で確信する。 この青年と神姫は、海藤の家で見た映像の、彼らだ。 「まさか、あの『アーンヴァル・クイーン』がティアを助けてくれたとは、正直驚きです」 「僕たちも驚いていますよ。……ああ、僕たちのこと、もう知ってるんですね」 「……秋葉原のチャンプが俺たちと対戦を希望するなんて……冗談じゃなかったんですか」 「まさか。冗談であんなこと言ったりしません」 高村はそう言って微笑んだ。 やたらと人が良さそうな青年だと思う。 その高村の肩に座る、美貌の神姫が口を開いた。 「あなた方との対戦に、ここまで足を運ぶ価値がある、と考えてのことです。 バトルが所望です。いかがですか、『ハイスピードバニー』のマスター?」 長い銀髪を背に流した神姫の言葉は、威厳すら備わっているように感じられる。 なるほど、『クイーン』二つ名は伊達ではない、か。 俺は雪華の問いに、静かに答えた。答えは決まっていた。 「残念だが、お断りする」 ギャラリーがどよめいた。 全国大会レベル、しかも優勝候補とのバトルだ。対戦してみたいと思う方が普通だろう。 しかも、三強の対戦希望を断ってまで、俺たちとのバトルに集中しようとしているのだから、神姫プレイヤーなら受けて立つのが筋と言うものだ。 久住さんが俺の肩にそっと手をおいた。 「遠野くん、彼らはティアを助けてくれたのよ?」 「わかってる。でも、それとこれとは話が別だ」 その手を、俺は邪険にならないようにそっと、はずした。 そして、俺は雪華に向き直って言い切った。 「ティアを助けてくれたことには感謝してる……本当に、感謝してもしきれない。 でも、君たちとバトルはできない」 「なぜです? 理由を教えていただけますか?」 「……君たちがマスコミの取材を受けているからだ」 高村の背後にいた女性は、きょろきょろと辺りを見回すと。 「あ、あたし……!?」 三枝さんは、自分を指さして、びっくりしていた。 俺は高村に話を続ける。 「対戦を申し入れてくるんだから、今俺たちがおかれた状況は知っているんだろう?」 「あぁ、うん。先週来たときに、どうも様子がおかしかったので、調べさせてもらいました」 「だったら分かると思うけど……いま、こんな風に俺たちがゲームセンターで歓迎されていないのも、雑誌記事のせいでね。 今俺は、完璧なマスコミ不信なんだ」 「……それで、僕たちの挑戦を受けないのと、どういう関係が?」 「『バトロンダイジェスト』の、君たちの記事は俺も読んでる。テレビ放送であんなことを言ったんだ。当然、俺たちとのバトルも記事にするつもりなんだろう?」 雑誌記者の三枝さんは俺の言葉に頷いた。 「だったら、対戦なんて受けられない。結果がどうなるにせよ、何を書かれるか分かったものじゃない。今の状況に拍車をかけられたら、たまらないからな」 「……ちょっと! さっきから黙って聞いていれば随分な言い方ね! うちとあんな低俗雑誌を一緒にしないでもらいたいわ!」 三枝さんがたまりかねたように口を挟んだ。 彼女がカチンときているのももっともだ。 なぜなら、俺自身、わざとひどい言い方をしているのだから。 「俺からしてみれば、大して変わらない。 三枝さん、と言いましたか。 あなただって、バトロンダイジェストの記事を書くにあたっては、俺たちに無様に負けて欲しいでしょう? 『クイーン』の連載記事なら、俺だって雪華の華々しい活躍が書きたい。 俺たちみたいな醜聞のただ中にいる神姫プレイヤーを叩きのめす記事なら、うってつけですから」 「なんてこと言うの……うちに記事が載れば、あなたたちだって、評価があがって、誤解が解けるかも知れないじゃない!」 「随分と上から目線ですね。 俺は取材をしてもらいたいだなんて、一言も言ってない。 むしろ迷惑だ。 だったら、あなた方はむしろ、取材させてくださいとお願いする立場なんじゃないんですか?」 三枝さんは言葉に詰まった。 少し心が痛む。 マスコミへの不信感は本当だ。だが、三枝さん個人に恨みがあるわけじゃない。 三枝さんをダシにして、このバトルを断ろうとしている。だから、彼女に悪いところがあるわけではないのだ。 久住さんの手が、また俺の肩におかれた。 「遠野くん……言い過ぎよ」 「……わかってる」 俺は一瞬だけ、彼女の手に触れた。 久住さんはため息をついただけで、何も言わなかった。分かってくれたのだろうか。 俺と三枝さんが睨み合う。 一瞬の沈黙。 それを破ったのは、雪華の声だった。 「それならば、ティアとの対戦は取材をしないようにしてもらいます」 「って、ちょっとぉ!?」 あわてたのは三枝さんだ。 「あなたたちとは、全国大会までの動向のすべてを取材する契約でしょう!? たとえ草バトルとはいえ、取材しないわけにいかないわよ!」 「ならば、契約を解除します。そうすれば、ティアと戦える」 三枝さんが絶句した。 マスターの高村が口を挟む。 「雪華……『バトルロンド・ダイジェスト』からは、いっさいの取材を断らない代わりに、スポンサードを受けている。そういうわけにはいかないよ」 「スポンサー契約など無くても、わたしたちは全国大会を戦えます。また、契約があるからといって、勝ち抜けるとは限りません。 セカンドリーグの全国大会選手でも、そんな契約をしているのはほんの一握りでしょう。大多数の選手と同様の条件でも、わたしたちは十分に戦えるはずです」 ……何か話が大事になってきた。 雪華の言うスポンサー契約は、神姫プレイヤーが特定の企業や団体と契約を結んで、バトルロンドの活動資金や武装などを出してもらうことだ。 そのかわりに、その神姫はメーカーが提供する武装やパーツを使用したり、ボディなどにメーカーロゴをペイントしたりして、広告塔としての役割を果たす。 通称「リアルリーグ」と呼ばれるファーストリーグは、そうしたスポンサー契約も盛んに行われている。 セカンドリーグではあまりそういう話はない。セカンドリーグ上位の有名神姫プレイヤーくらいだろうか。 雪華は『バトルロンド・ダイジェスト』と契約を結んでいるらしい。 バトルロンド専門誌からスポンサー契約を受けているとは、どれだけ実力があるということなのだろうか。 それにしても、俺たちとの対戦がそこまで重要か? スポンサー契約がなくなれば、資金面で厳しくなる。 そうした契約自体が少ないセカンドリーグとはいえ、全国を勝ち抜くにあたって、資金がないよりはあった方が有利であるはずだ。 それを雪華は、俺たちとの対戦で捨ててもいいと思っている。 いったい、何を考えているのだろう。 「だったら、そんな腰抜けほっといて、俺たちの挑戦を受ければいいじゃねーか。俺たちは取材、大歓迎だぜ?」 その声に、ギャラリーも沸く。 口を挟んだのは、『玉虫色のエスパディア』のマスターだった。 どうも、三強はクイーンに対戦を申し入れて、ことごとく断られたようだ。 にやにやとした笑みを張り付けた顔に、雪華は冷たい一瞥を放った。 「……あなた方との対戦は、意味がありません」 「な……なんだと……!?」 「わざわざここまで足を運んできた意味がないのです。 わたしたちがハイスピードバニーやエトランゼと対戦を望むのは、彼女たちが唯一無二の戦い方をしているからです。 わたしが東東京地区大会のインタビューで挙げた武装神姫は、いずれもそういう戦いを展開し、大会にはエントリーしない神姫ばかりです。 わたしはそのような神姫との戦いを望んでいます。 ただ強いだけの神姫なら、ここまで来る必要がないのです」 高村は、雪華の言葉に、肩をすくめて頷いていた。 なるほど。確かに、ティアの戦い方は唯一無二だろう。雪華はそこに価値を感じているということか。 三強は確かに強いが、大会にでてくる神姫に比べると見劣りがする。戦い方も、標準の域を出ない、というところか。 見れば、玉虫色のマスターは、口をぱくぱくさせながら、怒りの矛先を向ける方向を失っているようだった。 神姫にあそこまで言われたなら、もっと噛みついてきてもいいはずなのだが……何か思うところがあるのだろうか。 そんなことを考えていると、左胸のあたりから声がした。 「マスター……」 「どうした、ティア」 「雪華さんとの対戦、受けてください……お願いします」 突然何を言い出すんだ。 俺は驚いて、ティアを見下ろす。 雪華の様子を見ていたティアは、不意に俺の方へ視線を向ける。 その顔には必死さが滲んでいた。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/881.html
ホビーショップ『165-DIVISION』 都内某駅前の古いビルの地下にある、武装神姫中心の公式公認小売店舗。 店の雰囲気及び商品は、全体的に暗黒系でまとめられている。 店員の格好なども似たり寄ったりなのでおそろしくとっつきにくいが、初心者にも親切に対応し、購入後のサービスも行き届いている。 純正パーツは大手店舗には及ばないものの、基本的なメンテや簡単な修理に使う部品は一通り揃っている。 年に2回、割引セールがある。 リアルなら1対1。バーチャルなら2対2まで対応可能なバトルフィールドあり。時折、小規模ながら大会も開いている。 店長は大概あまり表におらず、ほとんど店員2名で対応している。 交通手段は周辺ではJR線一本のみで、更に休日は各駅停車しか停まらない、駅周辺に駐車スペース、駐輪スペースがないなど交通の便はイマイチ良くない。 しかも店のある場所が目立たず、先述の通り店の雰囲気が独特すぎて客を選ぶため、さほど繁盛しているわけでもないらしい。 店長:エンリコ 備考: 常にパンクとメタルの混ざったような格好をしている。 ただ、実際話してみると意外に気さくで面倒見がよく、特に初心者には親切に対応してくれる。 言うまでも無く、趣味はひたすら濃い。 エンカウント率は低め。 細身ですっきりとした顔立ち。 『エンリコ』はあくまで店内での呼び名。本名は不明。 店員一号:ヨル 備考: 黒メインのゴスロリファッションに身を包んだ女性。肩口までの銀髪で赤い目。片目に眼帯。 笑顔で明るく元気な人。そのため接客と、大会の際のアナウンスなども担当する。 やっぱり趣味は濃い。 『ヨル』はあくまで店内での呼び名。本名は不明。 店員二号:ハネ 備考: 白メインのゴスロリファッションに身を包んだ女性。腰までの銀髪。目が隠れるほどの前髪。 無口で物静かな人。そのためか品だしやレジ打ちなどの裏方作業が主。大会の際にはジャッジも担当する。 同じく趣味は濃い。 『ハネ』はあくまで店内での呼び名。本名は不明。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/713.html
姉さまは強い 槙縞ランカーには、その神姫本来の属性を外れた武装を使う者が多いが、その中でも姉さまはある種格別だ 姉さまは強力な武器を使わない 本来ストラーフはパワードアームやパワードレッグを使った白兵戦が強力なタイプだろう・・・が、姉さまがそれらを使っているのを見た事は無い 武器セットや改造装備の中からでも、姉さまは拳銃やナイフ等、普通に手動で操作出来る簡単な武器しか、使っているのを私は見た事が無い 常に自分の価値観での格好良さを第一に武装をコーディネイトして出撃し、遊びながらでも必ず勝って帰ってくる 姉さまは私にとって、マスターである以外に憧憬の対象でもあった だから、使わない本当の理由を、考えた事は無かった 「使わない」のではなくて「使えない」のかも知れない等と、考えた事も無かった 第拾壱幕 「MAD SKY」 ばらばらと、私の周りに無数の武器が現れ、あるものは転がり、あるものは闘技場の床に突き刺さる マスターが戦闘に参加出来無い以上、サイドボードを利用するにはこういった形で、バトル開始時に一斉転送してもらうか、戦闘中に私がマスターに指示するしかない だが、この『G』相手に後者のやり方では間に合わないと判断した私は、サイドボードのありったけの火器を一斉転送してもらう事にした 相手に使用される危険性がある以上、普通なら誰もやらないだろうが・・・ 「・・・!!」 案の定、出現した武器には目もくれず一直線に此方に走って来る『G』 それだけ自分の闘法に自信があるのか、それとも ・・・・単に『使えない』のか・・・・ 兎に角、ジグザグに武器の丘を走り回りながら、手に付いた火器を打ち込む事にする こういう手合いには先手必勝・・・だ 『仁竜』の大刀を素手で粉砕した以上、白兵戦になったら多分勝ち目は無い ならば精度は落ちようとも、弾幕で削り殺す!! 唸る短機関銃、榴弾砲、ライフル、機関銃 半ば喰らいながらかわされる、爆風をかえって跳躍力に加算される、僅かに装備した装甲でいなされる、マント(私のと同じ防弾か!)で防がれる 無茶苦茶だ!動きは全く出鱈目だし、それ程速くも無いが、『G』は自身の身を削りながらも、私の全ての攻撃を回避している 否、違う 奴が回避してるんじゃない 私が怯えているからだ・・・心のどこかで、こんな攻撃で奴は死なないんじゃないかと思って怯えているからっっ・・・! 爆風を切り裂いて、殆ど満身創痍の姿に見える『G』が私の懐に入って来ている 「・・・あ」 「ひとつ」 鈍い音がした 「いやああああああぁぁぁぁぁぁぁ姉さま------------っ!!」 びっくりする程の声・・・絶望の片鱗を感じた時、人は叫ぶ 神姫は人の真似をする様に作られた だから彼女も叫んでいる その精巧な絶望を感じている心がプログラムされたものであろうとも プログラムされたものであろうとも「心」は「心」だ 席を立つ 「もう見ないのですか?マスター」 「あぁ、もうけりは付いただろう。この試合を見る為に僕は来たからね・・・別に残りたいなら君の意思を尊重するけど」 「ならばマスター、この闘いはまだ終わっていない。見届けるべきだ」 「!?」 勝敗のコールは確かに行われていない 何よりも、大きく吹き飛ばされた『ニビル』に向かって『G』は走り出している 「馬鹿な・・・どうやってあの攻撃をしのいだんだ?『G』の攻撃は甲冑も貫くのだろう?」 「マスター自身が言ったではないか・・・ニビルの、『Gアーム』だ」 意識はあった バーチャルスペースの方に、である どうやらデッドの判定は下されなかった様だ どうも私は闘技場の壁面に埋まっている状態らしい 体の状態は・・・ (片脚が・・・無い・・・!?) 恐ろしいパワーだ・・・武装神姫の細腕では装甲を付けていてももたないと踏んで、ヒットポイントをずらしてかつ脚で受けたのだが・・・ 太股の辺りに残骸を残しつつ、私の右脚は見事に砕け散っていた。ついでに横腹にも痛みがある・・・明らかに衝撃でボディスーツが引き千切れていた まだ動けるなら闘おうとも思っていたが、これでは死んでいないだけで、戦闘は不可能に近い 普通こういう状況になったらジャッジングマシンが私の敗北を宣言するのでは無いか・・・?と、思考は迫り来る破砕音で途切れた 「ふたつ」 粉砕される瓦礫と共に、再び大きく外に放り出される 床に叩き付けられ、呻く・・・だが今はその痛みについて考えている場合ではない (やっぱり・・・数えている?) なるべく攻撃の手を控えているのは、一撃必殺に誇りがあるからでは無いのではないか? あのパンチの速さと威力ならば、私の銃撃の幾つかは拳で迎撃出来た筈だ(余りにも想像したくない光景だが、多分可能だろう) だがそれをせず、危なっかしい方法で回避した (しかも数えている・・・という事は) 結論はひとつ、彼女の『Gアーム』は私のそれと同様に、使用回数制限があるのだ ならば、勝ち目はあるかもしれない ただ 問題となるのは その勝利を手に入れる為には恐らくもう私には たったひとつの手段しか残されていない事 この闘いは 多くの代償を支払ってまで 勝つ必要のある闘いだろうか? 『G』が迫る 私には・・・ 『そうよヌル。準決勝で会いましょ』 理由は、それで充分だった 「マスター!残りのサイドボードを一式、送って下さい!!」 いつもそれを、サイドボードに入れてはいた(ただ、そもそも私は、サイドボードを使って闘う事自体が初めてだったのだが) だがその装備を、私は封印していた 理由は簡単 その装備を使うと危険である事が、私のオーバーロード、「ゴールドアイ」の「代償」だからだ マスターは、知っている 私がこのオーバーロードを入手した時に、神姫体付けの拡張装備を使用すると、神経系が破損してゆく体になってしまった事を マスターは、知らない 残りのサイドボードとは即ち、“サバーカ”、“チーグル”、DTリアユニットplus + GA4アーム・・・まさにその体付けパーツである事を・・・! 電撃を受けたような衝撃が、私の体を貫いた 「結果、出ました」 「で、どうだった?」 暗い部屋でパソコンのモニタに向かっていた男が振り返る 逆光で、本当におぞましい怪物か何かに見えた 「実質上の未来予知が可能な『ゴールドアイ』の前には、いかな『ジェノサイドナックル』とて無意味です。『ニビル』の勝利に終わりました」 事務的な口調で応える・・・この男の前では彼女はいつもそうしていた 「ニビルは『ゴールドアイ』を使ったのだな?」 ねちこく、重ねて男は問うた。満足のいく応えに対し、数瞬自らの考えに沈み、すぐに口の端が吊り上る 「ククククク・・・ふはっはっはっは・・・・・・!ならば良い!これで少なくともあの筺体は、現状で望み得る最良の蟲毒壺としての状態になったわけだ!フハハハハハ!!」 「闘うがいい!木偶人形ども!俺の・・・俺の『G』の為に!!!」 高笑いと独り言を繰り返す男を見ながら、キャロラインは拳を硬く握り締めた 剣は紅い花の誇り 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/405.html
登場人物 木ノ宮 翔(きのみや かける) 16歳。勉強よりバイトを重視しているためか成績はちょっと危ない高校生3年。 あまりこういったロボットに興味は無かったが、武装神姫はなんかピンとキタらしく購入を決意。 晴れてティアナのマスターとなる。 なお彼の住む町は首都から遠く離れた地方都市の一角。 なので新発売の神姫は県中から人が集まる「ヨド○シ」とかに発売日に並ばないと買えないというか、並んでいても買えるかわからない。それほどの競争率。 イメージCV 鈴村 健一 ティアナ 新発売のジルダリアタイプ。 気さくな性格設定のためか翔とは対等な関係で接しているが、本当はもっと甘えたいと思っている。 第4弾の見た目は"武装"神姫としては従来のモデルより"貧弱そう"なのだが実際に戦闘になれば"スゴイ"らしい… イメージCV 榊原 ゆい * 大地 文典(おおち ふみのり) 翔の幼馴染…というよりは腐れ縁である。 中学の2年時に少し遠い町に引っ越したが高校で翔と再開する。その後はずっと同じクラス。 テストもクラスで10番以内には入るし、勉強を教えるのが上手い。 翔がバイトに勤しんでも落第しない理由はテスト前に文典の講義を受けているからである。 イメージCV 荻原 秀樹 沙耶 文典の神姫でハウリンタイプ。 ただ特殊モデルで瞳が深緑色、さらに長髪なので1度見ただけではハウリンタイプと気が付かない人もいる。 無邪気な性格で人当たりも良い。それでも人の迷惑になることだけはしない。 本物の妹のように文典と接しているが近頃はそれでは物足りない様子。 イメージCV 成瀬 未亜 小野 香住 翔、文典と同じクラスの生徒。 2人と面識は全く無かったが、トーナメントをきっかけに仲良くなる。 自分の神姫のニーナの野望達成のために毎日踊らされるすこし損なキャラ。 綺麗な黒髪のショートヘアーが特徴。 イメージCV 名塚 佳織 ニーナ 犬型だが基本的にいつもツガル装備を好んで装着している。 そして神姫アイドルのナンバーワンを目指して日夜活動している。 しかしいまのところスカウトに引っかかるということは無い。 それでも止めないのが彼女の負けず嫌いな性格を如実に表していると言っていいだろう。 ヘッドにツガルのミニツインテールを付けている為、ぱっと見は通常より可愛く見える。 イメージCV 野川 さくら 神代 鈴莉 2人が3年で進級した「神姫科」の教諭。翔たちのクラスの担任である。 基本的に神姫科は単位さえ取れていれば進級に評定の数値と言った要素は必要ない。 しかし、2年時までの成績が悪かろうと彼女の授業を1年受ければある程度の技術者になれるだけの基礎が身に付く。 それだけの実績を持つ名教師である。 イメージCV 北都 南 シロガネ 鈴莉の神姫でアーンヴァルタイプ。 とても礼儀が良く、優しく、時には厳しくと正に教師の鑑といえる神姫であり、神姫科の生徒の神姫が目指すべき目標でもある。 基本的に学校内では素体状態だが"生徒"に危険が迫れば"力"を使うという噂がある。 しかし真偽のほどは定かではない。 イメージCV 日向 裕羅 独自設定 「星林学園」神姫科 翔の通う「星林学園」は3年次の専攻コースに「普通科」「理学科」そして「神姫科」を儲けている。 神姫科は全国でもまだ数の少ない科であるが、プロフェッッショナルを講師に雇い、本物の神姫をパートナーと一緒に勉強をする。 神姫科でMMSの基礎構造からプログラミング、その他もろもろの基礎を学び、エスカレーター式で大学に進学してさらに細かな専攻の勉強をするという「高-大一貫校」という試みを日本で始めて採用した学校である。 今では都市部にも同じような大学が増えており、この学園が地方の郊外にあるため入試の志願者数は近年下降気味。 それでも生徒数は県で一番多い。 その下部組織として小-中一貫校の付属校も存在する。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1134.html
戦うことを忘れた武装神姫・番外編 ちっちゃい物研・商品案内-13 <東杜田技研・新製品のご案内-13> 注)当然ですが、以下の内容はすべて当方の脳内生成物であり、 現実には存在しませんので。。。 <東杜田技研・新製品のご案内> このたび、弊社の小型ロボット向けコスメブランド「T3」では、 近年 人気が高まっております「武士神姫」向け商品を開発、シリーズ名 「T3-乙女志向」として展開することになりました。 まず第一弾として「ボディーソープ」・「シャンプー」・「リンス」を発売 いたします。 〜「T3-乙女志向 ・ 神姫ボディーソープ・ 神姫シャンプー・神姫リンス」の特徴〜 ■各種小型ロボット向けのメンテナンス用品開発で定評のある当社 T3チームが総力を挙げ、小型機械技術研究製作部とも連携して 開発された、神姫向けのボディーソープ。 ■またシャンプーとリンスは当社T3チームと某大手化粧品メーカー との共同開発。 神姫の人工毛髪と抜群の相性を誇ります。 ■中性かつ低浸潤性ながら、強力樹脂クリーナー以上の洗浄力。 もちろん、神姫本体のペイントを侵すことはありません。(註1) ■敏感なフェイス部分にも安心してお使いいただける、独自の配合。 もちろん、オーナー様ご自身にもお使いいただけるよう、各種の 規制に適合させております。 一緒のお風呂・シャワーの際には ぜひお試しください!! ■神姫が嫌がることの無いように、独特の芳香剤を配合。洗浄後に は、ほんのりといい香りも漂います。 ■シャンプーとリンスは、各3種類を用意。お手元の神姫との相性や 香りによって選ぶ事が出来ます。 ■専用ボトルには、オーナー様が使う通常のポンプのほか、神姫用 の小型ポンプも装着されており、神姫自身がひとりで洗浄される 際にも安心の設計。 ■シャンプーが苦手な神姫のために、同時にシャンプーハットも発売。 5色を用意、お好きなものをお選びいただけます。 (註1)純正塗色は問題ありませんが、リペイントに関しましては 保障対象外とさせていただきます。 詳細は、下記を参照して下さい。また、新たな情報は随時公開いたし ますので、HPにてご確認下さい。 <T3-乙女志向 「神姫ボディーソープ」> ・天然由来の香料とボディの艶出し成分を配合。 ・500mLボトル(ポンプ2種付き) ・500mL詰め替え用リサイクルポリ容器入り ・別売りボトル <T3-乙女志向 「神姫シャンプー」> ・ストレート、ダメージケア、トニックタイプの計3種類。 ・それぞれに、天然由来の香料配合。 ・500mLボトル(ポンプ2種付き) ・500mL詰め替え用リサイクルポリ容器入り ・別売りボトル <T3-乙女志向 「神姫リンス」> ・ストレート、モイスト、ダメージケアの計3種類。 ・それぞれに、天然由来の香料配合。 ・500mLボトル(ポンプ2種付き) ・500mL詰め替え用リサイクルポリ容器入り ・別売りボトル <T3-乙女志向 「神姫シャンプーハット」> ・ピンク・水色・黄緑・黄色・白の計5色。 ・徳用詰め合わせ10枚セットもあります。 ・発売予定時期 (全商品・今夏予定。初回生産分のシャンプーには、 シャンプーハットが付属する予定です。) 以上 <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/883.html
第7幕「意思の同調状態」 TEPY SAMURAIのボディーを使用してはいるが、コアパーツにはTEPY DOGの物を取り付けている。ならばTEPYで呼称するのであればその神姫はハウリンであろう。 例えその殆どを紅緒のもので武装したとしても、やはり顔がハウリンならばそう呼ぶのが妥当ではないか。 大本がどうであれ、判別する為の材料としてまずコアパーツを見るのであれば、いくらその個体の大部分がTEPY SAMURAI 紅緒だとしてもそれは紅緒になりえない。 結城セツナの所有する武装神姫、焔はそういう位置に立つ神姫である。 そのバトロイは、圧倒的で劇的な、そんな結果を伴って終了に向かっていた。 戦いには相性というものが少なからず存在する。簡単に言ってしまえばジャンケンの様なもの。 グーはチョキに勝てるが、パーには勝てない。 実際はそこまで単純な話ではないのだが、それでも相性というものは戦いにおいて重要だ。 そしてそれは何も相対する敵との相性に限った事ではない。 個体間に差異の大きい武装神姫であるなら、組む相手との相性もまた重要である。 ティキと焔の相性は、元々一つであった何かが再び出会ったのかと言う位良好であった。 M・D・U『シルヴェストル』を装備したティキの姿を見たときは、さすがにセツナも焔も驚いた。 今までのティキとは明らかに違うそのシルエットは、その変化に見合うだけの力を持っていることが窺い知れる。 決して洗練されてはいないのだが、そこには様式美ではない美しさが見て取れた。 一方焔は相変わらずオフィシャルな武装を組み合わせた姿である。それでも今までの装備とは違っていた。 外套を外し、黒き翼、悪魔の翼を装備する事をやめ、ツガルの背部ユニット、レインディアアームドユニット・タイプγに差し替えてあった。起動性能が落ちた分は、鎧の各所にスラスターを増設して補っている。 まるで武者なんとかみたいな有様ではあるが、そこにはある種の洗練されたまとまりが感じられた。 「索敵と援護射撃は任せて欲しいのですよぉ♪」 ゲーム開始直後、焔に自信満々でそう言ったティキは、その言葉を証明して有り余るほどの働きを見せる。 高速で移動し、位置をそのつど変えながらも的確に攻撃。その間にも次の敵を正確に察知する。 その援護を受けながら、焔は自身の得物、斬破刀“多々良”を振るい効率よく敵を殲滅していった。 焔もセツナも、正直二人の成長に驚いていた。もちろん焔は自身の中にある海神の残したデータと比べて、ではあるが。 わずか二月の間に性能任せの力押しはなりを潜め、的確な状況判断の下に行動する姿がそこにはある。 それでも武装は多分に趣味的ではあるのだが。 目の前の敵は、ティキの援護の甲斐もあってか一刀の下に両断された。 焔は初めて実感として経験するティキとの協力プレイに、今まで神姫相手に感じた事の無い頼もしさを得る。 「?」 神姫相手に始めて感じる感情。でもその感情そのものは、決して初めてのものではない。 それに思い至り、焔はしばし動きを止める。 「うに? 焔ちゃんどうかしたのですかぁ?」 不意に動きを止めたパートナーにティキは声をかける。 「あ、あぁ。大丈夫……」 ごく普通の、相手を気遣った当然過ぎるやり取り。 当たり前の反応で、当たり前すぎる行動。 お互いに信頼しあう間柄で交わされる、他愛も無いもの。 だけど だけど……? 『結城さん』 セツナにのみ届けられる雪那の声。インカムを通した、極めてパーソナルな通信。焔にも、ティキにもその声は届いていない。 「……何?」 ゲームが終了した訳でもなく、実際にまだお互いの神姫は他の敵と戦っているが、この調子ならしばらく指示を出す必要もなさそうだった。 実は雪那は最初からこのタイミングを狙っていた。焔やティキに話を聞かれない時機を窺っていたのだ。 『いや、僕で結城さんの力になれるのかな、って』 あまり頼りになりそうには聞こえない、弱気な口調。 セツナは少しだけ逡巡する。 そして少しだけの決意をこめて、言葉を紡ぐ。 「うん、ありがとう。……唐突なんだけど、実はもう海神はいないの」 『…………』 インカムの向こうで、息を呑む音。 「それで、新しく焔を起動したんだけど、私あの娘にどう接して良いのかわからなくて、ね」 『……うん』 「別に、海神の代わりにあの娘を起動させた訳じゃないわ。言い訳に聞こえるかもしれないけど」 わだかまっていた感情が、決壊しそうになるのを感じる。 頭の隅にいる冷静な自分が「無様」と言っている。けど、感情が迸るのを止められない。 「ねえ、私があの娘を好きな様には、あの娘は感じてくれないのかな?」 普段とは違う、少し幼い口調。 「私、焔に嫌われてるのかな?」 声に湿り気が混じる。 常識は「神姫がオーナーを嫌う事はありえない」と告げる。が、焔はあの海神のCSCをそのまま使っているのだ。ならば焔が「オーナーに対して好意的な関係を望む」とは限らない。 海神とは、そういう存在だった。 だから だから……? だけど自分はご主人にその当たり前をしていたのか? だから自分は焔を常に信じ切れなかったのか? ただ決め付けて ただ望みすぎて 本当の意味で、自分の事だけしか思いやれずに 私は ワタシは 『きっと色々思い出して、考えたらそんな事無いってわかるはずですよ』 インカムを通して聞こえる優しい声。 『嫌っている相手のために何かを頑張るなんて事は、人間だって神姫だって出来っこないんですよ? だったら、焔も結城さんも、お互い好き合っているに決まってます!』 そうだ。焔が何で海神のデータを欲しがったのか。 それは焔自身の為ではなかったのだと、セツナはようやく思い至った。 きっとそれは私の為。 「あ……」 「? やっぱりどこか怪我でもしたですかぁ!?」 ようやく焔は思い至る。 「違う。そうじゃない」 ワタシに海神のデータを入れることになんであれだけ躊躇したのか。 それは焔が海神では無いから。焔は焔でしかない。焔にしかなれない。 だからセツナが見せたあの躊躇は、海神の為ではなかった。 それはきっと焔の為。 「本当に、嫌われて無いかな?」 答えは見つかったのに、わざと甘えるように聞く。 自分以外の誰かに、口にして欲しくて。 『当たり前です。こういう言い方は失礼なんですけど、二人とも相手を気遣いすぎなんですよ。……不器用すぎです』 雪那は笑う。 その笑い声も耳に心地よい。 『だから結城さんはいつかのゲームのときに海神に見せた、あの誇らしげな顔で焔を迎えるだけで良いんです』 私はその時どんな顔を彼に見せていたのだろう。 初めて雪那と出会った時の事を思い出しても、うまく思い返すことは出来ない。 『海神の事、信頼していたんでしょ? そして焔の事も信じたいんでしょ? なら考えすぎないで、感じたままに接すれば良いんですよ』 言われて初めて自覚する。 私は海神をパートナーとして信頼を寄せていたんだ…… セツナの目には一筋の涙。 焔、ごめんなさい。私は海神をちゃんと大切に思っていた。 次いでもう一方の目からも涙が零れる。 そして焔。私、貴女の事も負けないくらいに大切に思ってる。 友人として新たな関係を築かねばと、そこに囚われすぎていた。本当はそんな事を深く考える必要など無かった。 「いきなりで申し訳ないが、ティキ。ワタシは焔以外の誰かになれるだろうか?」 振り返り、焔は真っ直ぐティキの目を見る。 「? 焔ちゃんは焔ちゃんなのですよぉ? 焔ちゃん以外の誰かになんて、なっても意味が無いのですよぉ~♪」 意味が解らないながらも、ティキははっきりと答える。 「ティキはそう思うのですよぉ♪ それに……」 ティキは少しだけ間を開ける。 「海神ちゃんも、そう言ってたのですぅ☆」 焔の内に海神の『記録』はあっても『記憶』は存在しない。だから、その『記憶』は焔の中には存在しない。 だが だが、海神がそう言ったのであれば、それはセツナの意思と同じなので、それは焔の中にも受け継がれているのではないのか。 思い至り、そして焔は思い出す。 『正式名称の方はただの飾りだから』 その言葉は一番初めにセツナが言った言葉。 それは何よりも焔が海神とは違う存在だと宣言していた。 セツナが焔に望む事。それは焔が焔でいるという事だった。 「は……ははは。ワタシはただの飾りに振り回されていたのか」 到ってみればその答えはあまりにも単純で。 ゲームの最中だと言うのに焔は声を上げて笑った。 最初から、セツナと焔はお互いを思いやり、大切に思っていた。 そして、だから、どうしても、どうしようもなく、すれ違ってしまった。 絆は初めから判りやすい位に堂々と存在していたのに。 「『ありがとう』」 セツナは雪那に 焔はティキに その同じ刹那に同じ言葉を送る。 雪那は照れたように笑い ティキは満面の笑みを浮かべて 『『まだゲームは終わって無いですよ』ぉ♪』 「そうね」 『その通りだ』 そう、まだゲームは終わっていない。 『敵機確認したですよぉ~♪』 そういうなりティキは再び空へと舞い上がる。 そのティキを確認することなく、焔は迎撃体勢に移った。 セツナと焔はやっとスタートラインに立つ。ゲームは、これから。 トップ / 戻る / 続く
https://w.atwiki.jp/busou_bm2/pages/154.html
入手条件 性格 声優 デザイナー 素体性能プラス補正アビリティ マイナス補正アビリティ ライドレシオMAX時の上昇能力 イベント 固有武装装備時ステータス 色変更髪 瞳 入手条件 DLC「武装神姫 Moon Angel」全話DLでショップに追加 性格 基本的にはアーンヴァルMk.2と同一。 カラーリングこそアーンヴァルMk.2のリペイントテンペスタと似ているが、ペイントが違うため別物らしい。 ただし、戦闘前の掛け声(神姫決定時)等、性能以外でも細部が通常のアーンヴァルと異なっている。 また、内部的には別の神姫として扱われているためか、手作りの髪飾りでヘアエクステが消失したり、 ヘッドセンサーラシュヌ、ユニコーン改などを装備すると後頭部の描画が軽くバグったりする。 声優 阿澄佳奈(ひだまりスケッチ:ゆの、WORKING!:種島ぽぷら、他) デザイナー 島田フミカネ(ストライクウィッチーズ、メカ娘等) 素体性能 LP ATK DEF CHA DEX SPD 400 45 42 40 20 4 プラス補正アビリティ 攻撃力+3 小剣、大剣、ランチャー+1 マイナス補正アビリティ 防御力-3 斧、浮遊機雷-1 ライドレシオMAX時の上昇能力 防御力、武器エネルギー回復、スピード イベント アーンヴァルMk.2と同じ 固有武装装備時ステータス 色変更 色は編集者からみた色で、人によって見え方は異なります。 髪 A.淡紫(デフォルト) B.赤 C.青 瞳 A.赤(デフォルト) B.紫 C.黄