約 173,352 件
https://w.atwiki.jp/busosodo/pages/78.html
武装神姫達のソード・ワールド2.0【第1-6話】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm18533993
https://w.atwiki.jp/busosodo/pages/76.html
武装神姫達のソード・ワールド2.0【第1-4話】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm18320704
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2112.html
ウサギのナミダ ACT 0-4 ■ 朝。 わたしが目覚めると聞こえてきたのは、すぐ右手にあるパソコンのキーボードを叩く音だった。 キーを叩く人は遠野貴樹。 きのう、わたしのマスターになった人。 「お……おはようございます……」 「おはよう」 おずおずと声をかけたわたしに、あっさりと、そしてどこかそっけなく返事が来た。 シーツ代わりのハンカチを引き寄せ、マスターになった人の顔を見つめる。 端整な顔立ち、だと思う。 細いフレームの眼鏡をかけ、理知的な印象だ。 それが口調とも相まって、少し冷たい印象を受けるけれど。 どんな人なのだろうか。 コーヒーカップを口元に運ぶ横顔。 いままで、わたしが会ったお客さんたちとも違う印象。 真面目そうで、理知的な瞳は、いつもまっすぐにわたしを見る。 彼の指の動きが止まると、その瞳がわたしを映した。 「よし、行くか」 「えっ……?」 キーボードを叩いていた手が、わたしに伸ばされてくる。 わたしは身構える。身体を固くしてしまう。 いや、すくんでしまうのだ、恐怖に。 わたしに伸ばされる手は、いつだって、酷いことの予兆だったから……。 わたしの様子を不審に思われたのか、手は一瞬止まった。 けれど、すぐに動き出してわたしを包み込むように掴むと、そのまま彼の胸元へと移動する。 そして、わたしはシャツの胸ポケットにおさまったのだった。 ……酷いことなんて、何もされなかった。 それが当たり前だと思えないほど、わたしは酷いことの方に慣れすぎていた。 □ 身体をすくませ、何かを耐えるように掴まれるのを待つ姿には、正直へこんだ。 俺が「何もしないから、安心しろ」と言い聞かせても、おそらく態度を変えることはないだろう。 この身をすくませる態度は、ティアが過去にされてきた仕打ちに起因するのだと思う。 だとしたら、言い聞かせるだけでは変わらない。 ティアが俺を本当の意味でマスターと認めてくれない限りは。 だからその時を待ちながら、辛抱強く待つしかないのだった。 俺は家を出ると、ゆっくりとした足取りで歩き出した。 外は快晴。早朝の爽やかな空気が気持ちいい。 俺はこの時間に散歩をするのが好きだった。 それが自分の神姫と一緒なら、きっと楽しいことだろう。 俺のひそかな夢の一つだった。 ■ マスターのシャツのポケットは、わたしにあつらえたようにちょうどいい大きさだった。 リズミカルな振動は、マスターが歩を進めている動き。 わたしは少し顔を出してみる。 ……まぶしい。 マスターの部屋も、とても明るいと感じたわたしだったけれど、外の世界はさらに光に溢れていた。 色に、溢れていた。 世界を覆う空は、見たこともないような青だった。 建物の壁は、その建物ごとに何種類もの色があった。 たくさんの植物が道に沿って植えられていて、それもただの緑色ではなかった。 一本の木に、たくさんの緑色が集まって、一つの緑に見えている。 色とりどりの自動車、道行く人の洋服もカラフル。 なにより、全ての色がはっきりとしている。 光が、溢れている。 木々が揺れる。 顔を出したわたしの頬を、やわらかな空気が撫でていく。 これが、風? マスターはゆっくりと歩いていく。 その胸元から見る世界は、わたしが初めて目にするものばかりだった。 やがて、マスターとわたしは、公園へとやってきた。 公園というものを初めて目にしたわたしは、心を奪われてしまった。 見たこともない大きな空間には、色とりどりの緑色が溢れかえっていた。 天井はどこまでも続く空の青。 現実の場所とは思えない。 いままで、わたしが知っている場所とはあまりにも違う。 わたしは知らなかった。想像もしていなかった。 世界は…… 「広いですね……」 わたしは思わず呟いていた。 □ 「ああ、この公園は、このあたりでは一番大きい」 なんて答えた俺は、後悔することになった。 ティアの呟きにそんな意味が隠されていようとは思いもしなかった。 ティアの真意を知るのはずっと後だったが、何というトンチンカンな答えをしたのだろう、と今でも後悔に苛まれる。 俺にとってはいつもの散歩道でも、ティアにとっては初めて見る外の世界だったのだ。 そんなティアの感傷を想像だにせず、俺は公園の遊歩道を歩いていく。 ■ マスターの歩みには迷いがなかった。 まるで自分の家の中のように、歩いていく。 マスターにとっては、何度も来た場所なのだろう。 ふと、疑問に思って、思い切って、本当に思い切って、マスターに尋ねてみた。 「マスター……今日は、どこへ行くんですか?」 おそるおそる見上げると、マスターは何故か驚いたような顔をしていた。 「どこへって……どこへも行かないぞ?」 「……え?」 「あえて言えば、ここが目的地か……」 ここが目的地だというのに、マスターはひたすらに歩き続けている。 マスターは一体何をしに来たというのだろう? このときの記憶を思い出すたびに、わたしは恥ずかしさにいたたまれなくなる。 目的などあるはずがない。 マスターは散歩をしに、この公園までやってきたのだから。 こうして歩いていること自体が目的だなんて、あの時のわたしには思いも及ばないことだったのだ。 だけど、マスターはこう言ってくれた。 「そうだな、おまえに、この公園を見せたかったんだ」 このときのマスターの声は、この上もなく優しかった。 散歩から戻って一休みすると、マスターはパソコンに向かってなにやら作業をはじめた。 おそるおそるディスプレイを覗いて見ると、武装神姫の情報サイトをチェックしているみたいだった。 でも、わたしにはどんな情報をマスターが欲しているか分からない。 マスターは、時折腕を組んで考えては、マウスを操作し、次々にサイトをチェックしていく。 マスターは情報収集に夢中で、わたしを気にかけない。 わたしは手持ちぶさたになった。 マスターのパソコンから音楽が流れてきている。 マスターは作業中、音楽データをかけっぱなしにしているのだ。 いくつもの曲が聞こえてくる。 あ、わたしも聴いたことのある曲。 お店で音楽を聴く機会は、踊りをするときだけだった。 お客さんのための踊り。 でも、音楽に乗せて身体を動かすことは、わたしの数少ない楽しみの一つだった。 自然と、踊りたいという気持ちがわき上がってくる。 マスターはサイト検索に夢中。 右手に広がっている作業用のスペースは、わたしが踊るのには十分すぎる広さだった。 わたしは立ち上がり、リズムを取る。 そして、曲の途中から動き出す。 身体はすんなりと、覚えていた振り付けを再現する。 曲に合わせて踊る、踊る。 すぐに夢中になる。 周りのことなど意識せずに踊る。 お店にいた頃は、そうでもしなければ踊り続けることが出来なかった。 その習慣が出てしまったのか、今も意識が踊りだけに向いている。 ……そして、わたしが踊り終わったとき、こちらを向いてわたしを見つめているマスターと目があった。 気が付かなかった。マスターがわたしを見ていることに。 わたしはマスターの命令もなく、勝手に踊ったりして、しかも、マスターの作業の邪魔をするなんて……なんてことを……! 「あ、あ、あのっ、そのっ……わ、わたし……ご、ごめんなさ……」 「もう一回やってみろ」 あわてて謝ろうとするわたしにかけられた一言は、意外なものだった。 「曲は同じなら踊れるか?」 「えっ? ……あ、は、はい……」 マスターはマウスを簡単に操作する。 するとパソコンから、先ほどと同じ曲が流れはじめた。 わたしは曲のリズムに合わせて体を動かす。 再び滑り出すように踊り始めた。 でも、表情がこわばっていたかも知れない。手や足の先の動きがぎこちなかったかも知れない。 だって、マスターがじっとわたしを見つめていたから。 静かに、まっすぐに、踊るわたしを見つめている。 マスターの瞳からは表情は読みとれなかったけれど。 わたしは、なんだかとても恥ずかしかった。お店で踊ったどんな踊りよりも。 お客さんのあざとい視線を受けているときよりも。 マスターの視線は、わたしの全てを見透かしているようで。 やがて曲が終わり、わたしは静かに踊りを終える。 マスターを見ると、視線はディスプレイの方を向いていた。 「やはり、バランスがいいな」 「は……?」 「思った通りだ。おまえはバランス感覚が平均よりもずばぬけている」 「はあ……」 マスターの言葉がぴんとこなかった。 わたしが踊っている間、マスターはわたしのデータを何かモニターしていたようだけれど、それが何なのか、詳しいことは分からない。 「うん……やっぱりこれにしよう」 「何を……ですか?」 「おまえの装備だ」 マスターはわたしの方にディスプレイを向けた。 ものすごい勢いで、ジャンプ台から飛び出した男の人。 画面から飛び出してきそうな勢いの動画が表示され、わたしは思わず驚いてしまう。 画面の中の人は、車輪のついた靴を履いていた。 道でない場所さえ、自由自在に、駆け回り、飛び跳ねる。 「ローラーブレード……」 「知っているのか?」 「あ、はい……実際のものを見るのは初めてですが……」 一般常識として、メモリには記録されていた。 でも、こんなに激しく、華麗に、そして自由に動くものだとは初めて知った。 「おまえ用の装備として、武装神姫向けにアレンジしたローラーブレード型の脚部パーツを作ろうと思う」 「え……でも……」 そんな装備は、公式の装備にはないはずだった。 いや、移動用の車輪付脚部パーツや、トライク型に代表される地上用の神姫の装備には、それに近いものはある。 だけど、さっきの映像のように、小型で高速機動が可能な地上用装備は、少なくともわたしのメモリに登録されている武装神姫公式装備カタログの中にはない。 「その装備では、公式戦には出場できないのでは……?」 「別に、公式戦に出たいわけじゃない」 マスターはこう言った。 「俺は、まだ誰も見たことのない様な、ただ一人の武装神姫を作りたい」 ただ一人の武装神姫。 「それが可能なら、公式大会に出られなくてもいい。どこかのゲームセンターに、誰もしない戦い方の神姫がいる。そんな風に言われるのが、俺の夢だ」 マスターの夢。 「おまえは、踊るように、舞うように、美しく戦うんだ。ギャラリーも、対戦相手のマスターも、神姫も。おまえの戦いぶりで魅了することが出来たなら……」 魅了することが出来たなら……。 「最高だな」 わたしは、夢の中にいるような気分だった。 わたしは、マスターの夢を実現するために、ここにいる。 ここにいて、マスターのお手伝いが出来る。 それはなんて素晴らしいことなんだろう。 「で、でも……わたしなんかで、大丈夫でしょうか……?」 「だから、『わたしなんか』って言うな」 怒られてしまった。 「苦労はするだろう。練習も膨大な時間が必要になる。だが、それでも、俺は俺の夢を叶えたい。……おまえには苦労をかけることになるが。なにしろ、ベースとなる戦闘プログラムもないからな」 「いいえ……! わたしは、わたしでよければ、がんばりますっ」 わたしは、はじめて……夢を持った。 マスターの夢を叶えること。 誰も見たことがないような、踊るように、舞うように戦う武装神姫。 この日から、わたしの武装神姫としての修行が始まった。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/duelrowa/pages/373.html
「……問うのも莫迦らしくなってくるな。」 日本人を守ると抜かした相手は乱入者によって逃げられ、 因縁の敵にも最終的には乱入者によって逃げられた。 追跡しようにも地図を見れば水路は枝分かれし続けており、 場合によっては目視できる小島に逃げている可能性だってある。 なので追跡をやめて辺りを散策してみれば、余りに奇妙な面子だ。 一人は人間なのでまだ問うべきかもしれないが、他は別である。 いや、うさぎについても正直なところ別に問題ないとしていた。 狼牙軍団には確かに変なのも多いとは聞いた。噂なので真偽は不明だが、 ネコを筆頭に動物も連れているとのことで、まあ別に参加者にいてもおかしな話ではない。 あれに日本人かどうかを問いかけるのは流石に莫迦らしく感じてしまう。あれは別だろう。 問題は深淵の冥王だ。あれはどう見ても魔界孔から出てきた異形の怪物の類ではないか。 元々ジャンヌ、ひいてはホーリーフレイムが日本人を忌み嫌うのは、 魔界孔の原因が外国人にあると言われて迫害され続けてきた果てにある。 無論、魔界孔もまた日本を穢れさせた原因そのものであり許しはしない。 「問おう。お前達は異形といるようだが、己の意志で従っているのか?」 だが、一応は確認しておくべき事柄だとして問いはかけておく。 穢れた存在と一緒の時点で処刑が妥当ではあるのだが、ジャンヌは早計と考えた。 此処は神なき地。あの高笑いする男を断じて神とは認めるつもりはない。 神を騙る狂人に歪められたこの地において、そのような行動は早計なのだと。 だから明石にも温情をかけた。結果は徒労に終わってしまっているが。 「フン、愚問だな! 愚問と言うほかあるまい! 俺はこいつに従うつもりも、あの神を名乗る男に従うつもりもない。 このジャック・アトラスが信じる道、それを俺は走り抜けるだけだ! そしてこちらからも問わせてもらおう。イリヤと司について心当たりはあるな。」 「会ったようだな。」 会った上でそのような話を聞く。 話を聞いている時点で彼は彼女達と敵対していないのだろう。 しかし、彼の世界が同じ世界かどうかはまた別の可能性がある。 イリヤ達は自分をホーリーフレイムとも、ジャンヌとも認識していなかった。 近年まではキュウシュウで競り合ってたので組織としてはかなり小さいものの、 狼牙軍団と言う多くの地を統一してきた相手が残る敵となり交戦目前ではあった。 日本中にその名を轟かせてもおかしくないことだ。それを知らないとは思えない。 『ほら、こういう奴だ。お前の守る日本も、こいつが行ったら日本人は皆殺しだ。』 蛇王院の言っていたあの言葉から察するに、 異なる世界から呼ばれたと言うのが自然なのだろう。 ならば合点がいく。デュエルモンスターズが常識的な扱いで、 この会場の様々な参加者に支給されたり制限されている代物が、 彼女の耳に届かないような代物だとは余り思えない。 なので即座に交渉決裂とはせずに話を続ける。 「又聞きでしかないが、貴様は日本人を相当嫌悪しているらしいな。 肩入れするつもりはないが、司はただの小娘にすぎないように見えたが?」 あれはどこにでもいるような人間にしか見えない。 ネオ童実野シティほど裕福でもなければ、かといってサテライトほどの貧困もなく。 平穏な場所で生きてきた、ごく普通の人に何故そこまで刃を向けるのか。 言葉通り司に特別肩入れはしていない。あくまで純粋な疑問だ。 或いは、司が何か本性を隠している可能性もありうるので尋ねた。 「───差別や迫害。さも当然のように私たちを追いやった穢れた存在。それが日本人だ。」 ジャンヌは語る。自分達が元の世界における立場を。 魔界孔が発生した際、外国人は異端視されてきたことを。 紛れもない冤罪からの扱いだ。放火、暴行、殺人は当たり前だ。 彼女達が拠点としていたナガサキでは特にその被害が多く見られる。 ただ魔界孔の怪物が、伝承の西洋の怪物に似ていた……それだけの類似点。 それだけで人を追いやる。募った怒りはそのような連中を許す要素などないと。 恐怖は理性を駆逐する。そんな一言で片づけられるものではない禍根がそこにある。 「差別……か。わからなくはないな。」 「ほう?」 思わぬジャックの反応に少しだけ眉が動く。 ゼロ・リバースによるサテライトとネオ童実野シティの隔絶。 格差は凄まじいもので、勉学や食事も満足に行き届いてないぐらいに。 クロウを筆頭に拾ったカードのテキストで文字を勉強したことだってあるし、 一つのカップラーメンを三人で食う時だってあるぐらいに貧富の差は激しかった。 逞しく生きてこそはいたが、サテライト側の人間の方はきっと不満も多かっただろう。 互いを繋ぐダイダロスブリッジが建設されてからは差別は減ってきてはいるとしても、 全てが丸く収まるほど人間は簡単ではない……まあ、ジャックの出身がバレた瞬間、 サテライト出身の遊星に敗北した勢いもあるだろうがファンが掌返ししたのを思い返すと、 簡単ではないのもそうなのか、甚だ疑問ではあるが……その辺は面倒なので気にしないでおいた。 お世辞にもあの街の民度がいいとは言えないのは、チーム太陽の時も似たようなものだ。 散々バーンダメージと言う地味な戦い方に対して罵詈雑言を投げかけたかと思えば、 誰も召喚したことのないモンスターを召喚が見れるとなれば掌を返していたわけで。 結局のところ、あの民度については根本的には余り変わってないのかもしれない。 元々街の発展に至った海馬コーポレーションも尖った企業ではあるので、 ある意味その性質を持っているかもしれないが。 「俺達サテライト以上の迫害を受けたのであれば、 そのような考えに至るのは当然と言ってもいいだろうな。」 寧ろ、ラリーを人質にしてスターダスト・ドラゴンを奪って、 遊星が普通に理解していて許していたのが異常とも言い切れることだ。 人の命をただ異邦の民であるだけで殺そうとする輩からの迫害を受け続けて、 相手を憎まずにいると言う方が難しい。寧ろできる奴は基本的に聖人や菩薩だ。 「フゥン。」 (まずい、非常にまずい!!) この男の単純さから『貴様のやり方などただの殺戮者に過ぎん!』と、 一蹴すると思ってみれば、まさかの理解するのに冥王は慌て始める。 闇を全て支配する程の力があった彼とて、それは降格処分される前の話。 今では、そんな面影は何処かへと消えてしまった現状では貧弱な存在だ。 支給品もない。このままでは最早頼みの綱は隣のうさぎしかいない。 「ハァ?」 (駄目だ、何言ってるか分からんわ……こ奴。) 一方でその頼みの綱は何を言ってるのかさっぱり理解できない、 と言うよりも、ジャックがさも平然と会話してるのが余りに謎すぎる。 視線を向ければ人を煽るような一言二言で終わってしまうのだから。 これは司も理解してなかった様子なので、少なくとも彼に限った話ではない。 「いけませんアトラス様! 奴は……」 「今はこの女と話をしている! それを阻むのならば、 例え殺し合いに懐疑的な貴様であっても容赦はせんぞ!」 「ヒィ!」 割り込もうとしたが物凄い圧と共に一喝され、 思わず尻もちをつく冥王にうさぎはポンと肩を置く。 「ウラッ。」 せめて伝わる言葉でしゃべってくれ。 お前は味方しているのかはっきりしてほしいと思わずにはいられない。 「分かっているのならば話は早い。私と共に日本人を───」 「だが、俺には根強いファンがいると同時に憎まれる立場だ。」 先のラリーを使っての行為もあってか、 ラリー達にはかなり嫌われてたりもすることも多い。 また、ジャックはその不遜な態度はどうしても敵を作りがちであり、 と言うより人の金で高級コーヒーを飲んだくれるこの男の人柄も大概である。 「……何の話をしている?」 「貴様が異端とした相手にも、恐らく善人がいたのではないのか? 異端と一括りしたのであれば、それはその時の日本人と同じだけだ。 貴様は個人を見ようとしていない! 聖戦だ浄化だと耳障りの良い御託を並べ、 己の行為を正当化するならば、貴様のやり方は嘗ての日本人同様、ただの殺戮者に過ぎん!」 これが埋めようがないことなのは彼も分かっている。 きっとそれはZONE達のように譲れないものであることも。 仲間を殺され続けて自分達はしてはならないなど納得しようがない。 それでも彼は否定しよう。彼の言う日本人を殺すと言うのはつまり、 遊星や遊戯達も手に掛けると同義。彼女のいる世界の日本人ならまだしも、 彼女の言う特体生でも、魔界孔とも無縁な人間達までも関係ない日本人も含む。 恐怖で理性を失った日本人と何ら変わらない。それはただの思考停止でしかない。 サテライト出身と言うだけで、マーカーがついてるだけで非難される嘗ての社会と同じ。 猶更受け入れてはならない。改めて相容れない存在だと理解できたことで、 デュエルディスクから剣となるカードを引く。 「……容易に同胞を同じように堕落させるか。」 改めて、日本人とは恐ろしいものだ。 瞳を閉じて溜め息をついて、再度開くと同時にジャンヌは動き出す。 冥王もうさぎもその疾風迅雷の動きには全く反応できなかったし、 ジャックもまた後手に回るため反応自体は遅れてはいたものの、 「フン、甘いな!」 即座に召喚された音叉と尖端が丸い叩き棒を持つ小さい悪魔が、ジャンヌの攻撃を防ぐ。 防ぐと同時に吹き荒ぶ豪風。ウサギと冥王はその勢いに吹き飛ばされ、 ジャックも軽く後退をさせられるほどに凄まじい風圧が周囲に巻き起こった。 これだけの攻撃を、小さなモンスターが防ぐことにジャンヌも僅かに反応する。 (モンスター効果は再現されているようだな。) ジャックが召喚したモンスター、 ダーク・リゾネーターは一ターンに一度だけバトルで破壊されない。 どれだけ攻撃力の差があろうとも、その耐性があれば十分に受けきれる。 しかしジャンヌの猛攻を考えれば、動かずにいる猶予は非常に短い。 「俺のターン! ボーン・デーモンを通常召喚!」 ドローと同時に続けざまにほぼ全身が骨だけで構成されている、 異形の怪物がカタカタと音をならしながら召喚される。 (後はレッド・デーモンズにつなげるだけだが……) レッド・デーモンズのレベルは8。 今のモンスターの合計は7ではあるが、 ボーン・デーモンにはレベルを変化させる効果を持つ。 問題はダーク・リゾネーターで攻撃を防いだことで、行動を変えるだろうと。 「今更、モンスターを相手する理由などないだろう。」 予想はしていたが、対応速度は異次元のレベルに達する。 ジャンプしてモンスターの壁を通り越し、瞬く間に剣の間合いへ持ち込む。 デュエリストの一番の欠点。それは自由意志で動くモンスターがほぼいないこと。 遊戯のブラック・マジシャンのような魂のカードならば当人の意志で動くだろうが、 それがないのでは、敵の攻撃の間合いに入ってる場合の対応は極めて困難になる。 牛尾には小鳩、遊星には達也、城之内には結芽と前衛たる存在がいてこそ安全に戦えた。 いずれも出会った参加者は強敵であり、ポセイドンは別としてジャンヌもそれらに引けを取らない。 普段のうさぎなら前衛だったしれないが、彼の武器はデュエルディスクなので同じ役割になる。 冥王はモンスターではあるので少なくとも常人よりは強いが、前衛の戦力には足りえない。 「フッ、そう来ると読んでいたぞ。」 けれども、これについて想定内の範囲だ。 この舞台には数々のデュエリストが参加している。 その中でモンスターとの交戦を予選時点で経験したのはジャックだけだ。 予選が終わった後もモンスター同士の戦いを経験しているのもまた遊星だけで、 故に彼だけが、従来のデュエルとは違う厳格なルールが存在しないものを深く理解している。 だからいわばメインフェイズだろうと、バトルフェイズにしか使えないカードが発動できることも。 ルール無用で相手ターン中とも言える中ダーク・リゾネーターを出して防いだのも、同じことだ。 (そも、相手の先攻でダイレクトアタックをしてる時点でルール無用なのは似たようなものだが) 何よりモンスターを破壊できなかったとなれば、次も破壊がうまくいかない疑心暗鬼はあるはずだ。 相手はデュエルモンスターズをよくは知らない。先入観があればなおのこと本体を狙ってくると。 故に『発動していた』。鐘を鳴らしながら現れた、小型の振り子のモンスターを召喚しながら。 キングのデュエルとは、常に相手の一歩や二歩先に行くものだ。 「バトルフェーダーの効果だ!」 相手が直接攻撃してきた瞬間、 手札のこのカードを特殊召喚してバトルフェイズを強制終了させる。 強引にエクスカリバーを振るう動きを止められ、思わぬ事態にジャンヌが距離を取る。 当然、そう予想していた以上その隙を見逃すようなジャックではない。 「ボーン・デーモンの効果でデッキから悪魔族のチューナーモンスター、 クリムゾン・リゾネーターを墓地へ送りボーン・デーモンのレベルを一つ上げる! レベル5となったボーン・デーモンに、レベル3のダーク・リゾネーターをチューニング!」 攻撃を防いだ間を利用しシンクロ召喚を行う。 デモンストレーションで見た光景の召喚方法だ。 ジャンヌにはルールの理解は浅くとも強力な力であることは伺える。 なので再度踏み込むがジャックは先んじて攻撃を予想し、後方へとジャンプして近くの崖の上に立つ。 遊星のフィジカルが人間離れしてるせいで忘れがちだが、ジャックも素のスペックは常人としては高い。 アウトローな組織のアジトへ単身突入し、そこにいた連中数十人をリアルファイトで殴り倒してるぐらいだ。 サテライト育ちであり、チームサティスファクションで様々な経験を経たジャックだからこそでもある。 先にそうするのを読めていたからこそ対応はできた、と言うのも一応あるにはあるが。 相手の動きを常に読まなければ、此処では敗北ではなく死が待っているのだから。 「王者の鼓動、今ここに列をなす! 天地鳴動の力を見るがいい! シンクロ召喚! 現れろ! 我が魂、レッド・デーモンズ・ドラゴン!」 光の中から現出するは赤と黒で構成された一体のモンスター。 竜の名を冠するが、体格はどちらかと言えばドラゴニュートのような人型に近しいフォルム。 悪魔の名を冠するドラゴンだけあって、頭部には捻じれた三本の角がよく目立つ。 ジャックたちを超える巨躯に違わぬ赤黒い翼を広げながら、赤き悪魔の竜は咆哮を轟かせる。 咆哮だけでも常人なら竦むような、ビリビリとした感覚が他の三人を襲う。 「魂と言うだけあって力はあるらしいな。だが、私がその程度で臆すると思うか?」 聖剣の剣先と鉄仮面の如き冷徹な眼差しをジャック達へと向ける。 高低差も相まって聖女と悪魔を従える王者の、一枚の絵画のような構図になっていた。 「ならばその実力を見せてみることだな、バトル! レッド・デーモンズの攻撃! アブソリュート・パワーフォース!」 この舞台でも数多の強力なモンスターを蹴散らした竜の拳。 モンスターを余裕で掻い潜るジャンヌと言えども、無視できない速度だ。 エクスカリバーを横薙ぎに振るい、レッド・デーモンズの攻撃とぶつけ合い相殺させる。 一人の人間と竜の相殺は並のものではなく、周囲には衝撃が広がっていく。 ジャックも腕で風を防がなければ視界が遮られるぐらいに。 (正面からの攻撃でレッド・デーモンズの攻撃を防ぐのか! 奴の装備してる剣、あれはイリヤ曰くエクスカリバーと聞くが、 よもやあのエクスカリバーと同等の強力な装備魔法の類だとでもいうのか!) 遊戯が使ったカードにもエクスカリバーがあったりするので、 ジャックの言うエクスカリバーとは基本的にそちらの記憶がある。 其方は戦闘ダメージを半減させる代わりに装備モンスターの攻撃力が二倍になるので、 それだけの代物であると言うのは、強ち間違いではないのかもしれない。 仮にもシグナーのドラゴン、ナスカに封印された邪神と戦った竜の一体。 その上で攻撃力はシグナーのドラゴンの中で最も高いとされる3000。 生身の人間が対応するなど、驚嘆するほかないだろう。 「アトラス様、まずいですよ!」 「元冥王、言わずとも分かっている! 紅蓮魔竜の壺を発動!」 レッド・デーモンズが存在する場合に、 カードを二枚ドローする効果で手札を補充していく。 このカードの発動だけでも何度も拳と聖剣の衝突が起きている。 実力伯仲、と言いたいところだがレッド・デーモンズの肉片が頬を掠る。 恐らく僅かな差ではあるだろうが、ジャンヌの方が上回っていると見ていい。 下手をすれば先にやられかねない状況では、手数はあるに越したことはない。 (幸いスタンディングデュエル用ではあるが、 ライディングデュエルなしでは此処まで厄介とは。) 遊星とジャックと牛尾の世界では、 Dホイールと言う乗り物に乗ってデュエルするライディングデュエル、 遊戯達同様に立ったままデュエルするスタンディングデュエルの二種類が存在する。 ただライディングデュエルが主流で、そのルールでは通常の魔法カードが使用には大きなリスクを持つ。 故にその状況下でも使える専用の魔法カードか、それとは関係なく使える罠カードを積極的に使う。 ジャックも同様だ。魔法と違って罠カードは原則的にセットしてから発動を待つタイムラグがある。 この刹那の間の判断を求められる舞台において、一ターンと言うのは余りにも長い刹那の時間だ。 仮に無理矢理今すぐ発動しても恐らく効果が薄いものか、発動しないと判断して無闇には使えない。 「埒があかん! レッド・デーモンズ! クリムゾン・ヘル・フレア!」 幸い二人はこの余波を受けないよう後方にいる。 今なら範囲攻撃も問題ないと判断し、レッド・デーモンズは炎のブレスを放つ。 寒々とした雪原は草原に、草原は瞬時に焦土に変えていく灼熱の業火が辺りに広がっていく。 「私を火炙りにするには足りないな。」 しかし、これも主霊石で風を駆使し驚異的な速度で動き、攻撃はまともに成立していない。 本当に同じ人間なのかと疑わしくなってしまうほどに、人間離れした身体能力を披露していく。 迫る炎を背にジャックへと文字通り疾風の如く雪原だった場所を駆け抜けて三度迫る。 まだ罠は発動できない。レッド・デーモンズに指示しようにも間に合わない。 できることは、それを避けるため先んじて回避行動以外にできる手段はなかった。 「ウラララララララララ。」 あくまで彼一人の話ならばの話。此処には彼を味方する仲間はいる。 突如として敷かれたレールを道としながら、巨大な青い列車が二人の間を割り込む。 列車の上部は白と赤を基調とした戦闘機のような形状で、一般的な列車とはかけ離れている。 まさにロケットの如く推参したそれを前に、即座に踏み込むのを中断して縦に斬撃を見舞う。 車体に傷跡こそできているが、破壊に至るにはかなり時間がかかるダメージの具合だ。 (攻撃力が5000だと!?) 乱入したモンスターのステータスに思わず目を見開くジャック。 素のステータスが5000のモンスターと言うのは滅多にいない。 結果的なステータスが大幅に高まったモンスターは数多く存在するが、 テキストに書かれたステータスだけで5000はハラルドのオーディン、 アポリアのマシニクル、ZONEのセフィロン等、名だたる強敵のエースを超えた存在だ。 (破壊は困難。ならば───) そこからの判断は素早く、 即座にジャンプして上空から攻めにかかる。 当然、複数を相手にする以上簡単にはいかない。 即座にレッド・デーモンズの拳を受けそうになり、足から風を放ち空中で旋回して回避。 主霊石から風の力を行使し続けたことにより剣以外からも放出ができるようになった。 本来ならば空中と言う身動きの取れない場面で旋回し、その回転の勢いのままに斬撃で拳を斬り落とす。 (破壊こそまだされてないが時間の問題か。まずはあの風の能力を削ぎ落すのが先決!) バトル・フェーダーが突如破壊される。 レッド・デーモンズは攻撃宣言をしていない自分モンスターを破壊するデメリットを持つ。 確かにデメリットではあるが、同時にそのタイミングはエンドフェイズであると言うこと。 うさぎの支援のお陰で時間は稼げたことにより相手ターン、即ち伏せたカードは全て使用可能。 反撃の狼煙を上げるべく、カードを使用していく。 「罠発動! スカーレッド・コクーン───」 「させん。」 レッド・デーモンズと戦いながらも、 しっかりとジャンヌはジャックの方にも警戒を怠らなかった。 風の斬撃を飛ばし、当人は横へ飛ぶことでギリギリ回避するが、 当たろうと当たるまいと、その点については彼女には関係なかった。 (スカーレッド・コクーンが破壊されているだと!?) 凌牙の時同様、風属性の力を得たことで魔法・罠を破壊する力を獲得。 スカーレッド・コクーンはドラゴン族シンクロモンスターに装備することで、 相手モンスターとのバトルの際に、全ての効果を無効にすることができるカード。 本来ならば、罠カードを発動の際にカードを破壊しても基本効果を止めることはできない。 しかし装備する工程が必要なカードや永続罠は、その条件に当てはまらないカードになる。 破壊こそ確かに彼女は意図していたが、それが最適解な行為であるのはただの偶然ではあった、 しかし容易に魔法・罠を破壊できるとなれば、悠長にカードを出し惜しみしてる暇はない。 「ならば次のプランだ! 罠発動! バスター・モード! レッド・デーモンズをリリースすることで、モードチェンジさせる!」 時期に破壊される可能性も危惧し、ジャックは別の手段に移行する。 レッド・デーモンズが炎のような形へと分解され、別の姿へと変えていく。 翼は黒く、より猛々しく変質し、筋骨隆々の身体には真紅の鎧を纏った攻撃的な姿になる。 「灼熱の鎧を身に纏い、王者此処に降臨! 出でよ! レッド・デーモンズ・ドラゴン/(スラッシュ)バスター!」 「……別の姿へと変えたか。」 「先ほど前と同じと思うな! 再び迎え撃てレッド・デーモンズ! エクストリーム・クリムゾン・フォース!」 巨腕に熱を纏った掌底。 受けるのはまずいと判断しその場から離れるも、 掌底を叩き込んだ瞬間周囲へ爆風が広がっていく。 /バスターは攻撃時に他のモンスターを全て破壊する攻撃的能力を持つ。 スカルサーペントに爆弾のエキスパートがいたのは記憶にあるが、 そんなものは比にならない威力で直撃を回避すれども、 ジャンヌも少なからずダメージを負っていた。 (退くのも策の内、か。) 此処には参謀のジョドーも、バイラルを筆頭とした騎士たちもいない。 支給品も全てが一級品と言っても過言ではないが、体力には限界がある。 日本人に虐げられてきたことで退く、基耐えることについての理解もある。 少なくとも向こうには召喚したモンスターが自壊してるうさぎ達がある為、 其方へ攻撃を向ければジャックは絶対に其方を守ることを選ぶだろう。 その隙に逃げること自体は、さほど難しいことではない。 なお、うさぎが先程召喚したモンスターこと爆走特急ロケット・アローには、 維持コストとして手札を五枚も捨てなければ自爆するデメリットがある。 デュエリストとしては新参者の類のうさぎではあるが手札の重要度は理解してる方だ。 手札の重みを知っている現状、維持するつもりがないので自壊させただけである。 自壊することを知らない為、冥王がうさぎの肩を掴んで思いっきり揺らしていたが。 適当に攻撃を仕掛け、そのまま逃げに徹する。現状はそれが最も得策だと。 けれど、此処はデュエルと言う名のバトルロワイアルの舞台─── 「かめはめ波ッ!!」 うさぎが乱入できるように、他もまた乱入することが可能なのだ。 そこにペナルティなどなく、純粋な暴力がレッド・デーモンズの胴体を貫いた。 →
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2846.html
西暦20XX年、幾らかの災害こそあれど、3度目の世界大戦も起きることなく今日に至る日本。 今、日本、いや世界中でブームとなっているホビーがあった。ガ○プラだの遊○王だのヴァ○ガー○もメジャーだが。 俗に、「武装神姫」と呼ばれる全高15cmの自律稼動する少女達。 知性と感情を備えた彼女達は、ときに生活のパートナー、ときに友人、ときに小さな家族、ときに戦場での相棒として広く普及している。 なかには小さな嫁だったり主従関係が逆転してたりある意味特殊な事例もあるが… そしてなかには、単なるバトルの道具扱いされるものもいる… これは、ひょんなことから神姫に関わることになった青年と、事情持ちの神姫の話… …の予定だ!内容?続く範囲ってことで。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/48.html
「昼下がりの情事ヤマモト」の巻 ある休日の朝、俺は部屋で好きな音楽を聴きながら 新聞を読んでいた。すると、こんな記事が目に飛び込んだ。 「武装神姫違法改造グループ逮捕」 ○月○日、警視庁は東京都ネオ歌舞伎町の雑居ビル内で、 武装神姫の素体を違法改造していたグループを検挙し、グループの リーダーである○○××(35)他6名を逮捕した。 ○○らは、武装神姫のボディ、AIなどに不正な改造を施し、 通常では育成不可能な『愛玩用素体』としてネット上で販売、 数千万円の利益を得ていた疑い。 警視庁では、こういった不正改造に対し、徹底的に取り締まる方針を 発表した。 俺「ふーん…"愛玩用"…ね。」 ふと目をやると、俺と一緒に住んでいる3人のMMS、イヌ型のヴェル、 ネコ型のジャロ、悪魔型のノワルが、先日買ったMMSハウスで遊んでいる。 無邪気なものだ。 (愛玩用………………どんななんだろう……………) ――――――――――――――――――――――――――――――――― ぺちゃ… ぺちゃ… ??「はぁ…はぁ…」 総ピンク色の部屋の中、何故か俺は全裸でベッドに座っている。 ノワル「ん…んむ…くちゅ…」 ヴェル「はぁ…んくっ…ま…マスター…気持ちいいですか…?」 ジャロ「んぅ…マスターの…すっごく熱いのだ…はぅ…」 3人は俺の一物にすがりながら、愛おしそうに舐め続ける。 俺「どうした…そんなじゃ俺は満足させられないぞ…?」 ヴェル「はぃ…では…これでいかかでしょう…みんな…?」 ヴェルがそう言うと、各々裏スジ、亀頭、竿を同時に舐め始める。 普通では体験できない「3点責め」である。 時々その小さな口で甘噛みまでしてくるのだからたまらない。 俺「よし…イイぞ…お前等のアソコはどうなってる…」 ヴェル「ひゃぁぅっ!!だ…ダメです…そこは…感じちゃ…やぁっ…!!」 ジャロ「はうぅ…熱いよ…アソコが熱いよぉ…!!」 俺「よし…4人同時にイクぞ…ぐぅぅぅっ!!!」 俺は己の剛直から、ありったけの精を吐き出す。 3人「「「はぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ…………ぁ」」」 火山の様に吹き出る白濁液にまみれ、恍惚の表情で倒れる3人。 俺「はぁ…はぁ…よく出来たぞ3人とも…。次は本番だ…!!!」 3人「「「はぃ……マスタぁ………」」」 ―――――――――――――――――――――――――――――――― って!!! 俺「うっがぁぁぁぁああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!」 3人「「「!!!???」」」 その場で頭を抱えながらのたうち転がる俺。 ヴェル「ど…どーしたんですかマスター!?」 そう言って駆け寄るヴェル。 俺「来るな!来ないでくれぇぇぇぇぇ!!」 脳内を縦横無尽に駆けめぐる妄想と戦いながら精子…いや制止する俺。 ジャロ「どうしたのだ?マスターヘンなのだ!!」 ノワル「ねぇマスター、本当に大丈ぶ…」 俺「だいじょ――――――――――ぶだから!! ぁ全然だいじょ――――ぶだから!!今は近づかないでくれ!頼む!!」 いかん…非常にいかん…彼女たちの心配する声だけでもおかしくなって しまいそうだ…!!ならば!! 俺「じゃ…ジャロぉぉぉぉぉ!!!」 ジャロ「…は、はいなのだ!!」 俺「両手に『ファンピー』を装備!!…それで俺を…思いっきりぶん殴れ!!」 ジャロ「そ…そんなことできないの…」 俺「い い か ら な ぐ れ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !!」 ジャロ「わ…わかったのだ―――――――――――――!!!」 ご が わ し っ ! 俺「のごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉを!!」 壁まで吹っ飛ぶ俺。 ヴェル「ま…マスター!!」 ノワル「ちょ…大丈夫マスター!!生きてる?生きてる!?」 ジャロ「びぇ~ん!!マスターなぐっちゃったよぉ~!!」 心配する2人、大泣きするジャロ。 俺「ジャロ…GJ…。」 薄れゆく意識の中、親指を立て、爽やかな笑顔で、俺はしばしの眠りについた…。 めでたしめでたし。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1684.html
{鋼の心~Eisen Herz~VS双子神姫~学生同士の大決戦!勿論ポロリはないよ!~} 「あぁ~あ。負けちまったよ…」 「今回のバトルはアタシの勝ちだね♪」 俺は肩をダルそうにすくめながら溜息を吐く。 婪の奴はルンルン気分で笑っている。 「チクショー!あともう少しだったのに!!あんな所でヤられるなんて!!!」 「まだまだだね。でもそれなりに格闘はレベルが上がっているみたいだから、その調子で頑張ればいい」 「勝てなきゃ意味がないんだよ!…ボク、格好悪い~」 筐体から出てきたクリナーレを右肩に座らせるなり、バトルに負けた事に悔しがる。 婪の神姫の藍がクリナーレに格闘の助言をしていたが、多分クリナーレは悔しがっている方に夢中で聞いてないと思う。 今いる所は武装神姫センターのバトル施設にいる。 でも今回は地元の神姫センターではなく隣街にある神姫センターに来ているのだ。 実は婪の奴が服を買うのに付き合ってくれみたいな事を言われて、わざわざ隣街でつきあわされ、挙句の果てにバトルまでやろうと言い出し今の至る。 まぁ、どうでもいいけどね。 大学生は意外と暇人だから家に居てもやる事ないし。 …いやちょっと訂正、ちゃんと大学には行ってるよ。 それにレポートは大変だし、徹夜でレポートをやってたらいつの間にか太陽が昇っている時間になっていたりする。 まぁ大変な時もあるし、暇な時もある訳だ。 「あ、いっけなーい!あたし、これからバイトだったんだ!!」 ふと婪は自分の腕時計を見て慌てる。 「ごめんね、先輩。もう一回ぐらいバトルしたかったんだけど、バイトがあるから帰るね」 「へいへい。気をつけて行けよ」 「心配してくれてありがとう、先輩♪チュッ♪」 投げキッスをして走って帰っていく婪。 …はぁ~、散々人を連れまわして帰りやがる。 でもまぁ今になって言う事じゃないか。 俺は全てのバトルが見れる観客席に移動する。 勿論喫煙席。 あいつに付き合ってる時には、あんまり煙草を吸う機会がないから今まで我慢してきた。 「ご主人様ぁ~」 「頼む、吸わせてくれ。今日は婪に付き合せれて全然吸ってないんだよ」 「…しかたないですね」 「サンキュー」 ジッポと煙草を取り出し、口に銜え火をつける。 すると煙草独特の紫煙が出る。 「あ~美味いなぁ。やっぱり煙草はピースに限る」 「半分が税金で吸えば吸う程死にやすくなるものの味なんてどうでもいいです!」 右肩でプンプンと怒るアンジェラス。 因みに左肩にはルーナとパルカが座っていて、最初に言ったと思うけど右肩にクリナーレがいる。 肩に居てくれるのは別にいいだが結構、人目につくので少し恥ずかしい。 「…あ、ランキングだ」 視界に電光掲示板が入りチョロッと見えたので、ここの神姫センターの実力者を見ようと思った。 「ゲッ…。あいつ、ここでもランク3位かよ。どんだけ強ぇ~んだよまったく、たいした力量だぜ。1位の神姫は『アイゼン』というストラーフ型か。へぇ~ここでは婪より強い奴がいるのか」 上がいればさらに上がいる、てか。 つか婪の奴も凄いなぁ。 色々な神姫センターでバトルしてる、て言っていたけど…ガチで強いだな。 俺はというと…載っていなかった。 百位まで記載されてるが、俺のオーナーネームが見つからなかったので百位以上なのだろうよ。 はぁ~あ、もっと頑張らねぇーと…いや、俺が頑張っても意味ないか。 頑張るのはアンジェラス達だもんな。 「ご主人様、ご主人様」 「ん?なんだアンジェラス」 「婪さんが居なくなってしまってから言うのもなんなんですけど…次の順番は私のバトルですよ」 「…あっ!」 そうだった。 婪とバトルしてる時の順番がパルカ、ルーナ、クリナーレ、アンジェラスの順だった。 この順番を三週ぐらい回って先程クリナーレが終った頃に婪がバイトでいなくなったんだから、アンジェラスの番が来ても相手がいないのでバトルが出来ないのだ。 う~ん、困ったなぁ。 このまま帰るのもちょっと気が引ける。 アンジェラスだけ一回分少ないのは平等じゃない。 それに今日は7割近く婪に負けっぱなしだ。 このまま負けたまま帰るのはショウに合わない。 せめて勝って帰ろうと思う。 「あの…ご主人様ー…私、いいですよ。バトルしなくても…」 「あのさぁ、さっきあんな事を言っといてそりゃ~ないんじゃないのか?安心しろ、そこら辺にいるオーナーを捕まえてバトルしてもらえばいいんだよ」 「アンダーグラウンドの時のような感じですか?」 「う~ん、あの街では強引にバトル持ち込むのは別にいいけど。ここはそういう環境じゃないから駄目だ。周りから『タチの悪い奴だな』と思われてオワリさぁ」 煙草を箱型の灰皿に突っ込み立ち上がり、筐体が置かれている所に行き適当にオーナーを捜す。 さぁ~て、俺の生贄なってくれるオーナーは誰かな~? 「そこの高校生っぽい君に決めた!」 「はい?」 急に俺に声を掛けられて戸惑う男の子。 男の子というより青年といえばいいかな。 ここら辺にある高校の学生服を着ていたので、高校生というのが解った。 「ちょっとスマナイけど、俺とバトルしてくれないか?手頃にバトルする奴が居なくてサァ」 「えぇ、いいですよ。ちょうど、俺も対戦相手が居なくて困っていた所です」 「おっ!これは奇遇だな。じゃあ早速バトろうぜ」 「はい。…今思ったのですが、ここでは見ない顔ですね」 「あ、ああぁ。ここの神姫センターに来るのは初めてなんだ」 「そうなんですか。新しいオーナーが来る事は嬉しいです」 「そいつはど~も」 「俺の名前は島田祐一といいます。よろしくお願いします」 「これはご丁寧にどーも。俺の名前は…天薙とでも覚えといてくれ」 「偽名ですか?」 「いや、俺は自分の名前が変だから人に教えるのが嫌いなんだよ」 「あ、それは失礼しました」 「気にすんなって、礼儀正しい高校生、島田祐一君。じゃあバトルしようぜ!」 「はい!」 物凄く礼儀正しい学生さんだな、島田祐一君は。 でも本来の口調は違うだろうなぁ。 俺が年上だから敬語使ってしまい口調が変わってしまったのだろうか? なんにせよ、人間性はまともな人で良かった。 お互い筐体を挟むようにして神姫を入れる配置につく。 勿論、今回はアンジェラスでいく。 なにせ最後の最後に婪がバトルをすっぽかしたのでアンジェラスが出来なかったからなぁ。 ここで他の神姫達を選ぶと、明日は俺の煙草は風呂の中にダイビングは確定しちまう。 それは絶対に避けなければならない。 それに負けっぱなしは気に食わないからね。 島田祐一君、悪いがバトルの生贄になって貰うよ。 「さぁーアンジェラス。今回のバトルはグラディウスは無し。違法改造武器はオプションだけだ」 「えぇー!?なんでグラディウスは駄目なんですか?」 「オプションに慣れて欲しいからだ。市販で売ってるオプションは扱やすい代わりに行動が限定だ。俺の自由に出来る代わりに扱いづらい」 「じゃあ市販の方がいいです」 「バァ~カ、よく考えろよ。扱いづらい物を慣れて扱いやすくなったどうなる?従来の行動より更に比較的に向上した動きができるのだぞ」 「おぉー!流石、ご主人様!!分かりました、私、ご主人様のオプションを使います!!!」 「おうよ!頑張ってこい!!」 「行ってきます、ご主人様!」 こうしてオーナー、島田祐一・天薙龍悪。 武装神姫、アイゼンVSアンジェラスのバトルがスタートした。 アンジェラスの視点 「…う、う~ん……今回のバトル場所は街ですか…」 リアウイングAAU7を使って低空飛行で街を徘徊します。 淀んだ空気が染み付いた街並みは沈黙を保ったまま。 人間が住んでないと街なんて只のデカクて硬い箱の塊の集合体です。 まぁこれは私達専用のバトルフィールド。 人間が居るわけない。 そして目を閉じながら首を横に向ける。 「でも、寂しい街だと思わない?あなたはど~思う??」 「…バレてた」 気配を辿り、私を中心にして五時の方向にあるビルの陰に潜んでいた敵が姿を現した。 瞼を開けると悪魔型のストラーフ。 「いつ…気づいた?」 「つい先程。ビルの陰を上手く使って旋回しながら後ろに回りこむ。よくヤるですね」 「………」 「意外と淡白な性格してます?ストラーフ型って、五月蝿いの方々が多いですから」 「さぁ…!」 「ッ!」 猛スピードで突進してきたストラーフ。 その両手にはアングルブレードが握られていました。 対抗する私は二本のM4ライトセイバーを取り出し、迎撃する。 バシン! バシン! 「…チッ!」 「ウゥッ!」 アングルブレードをクロスしながら振りかざしてきたので私は咄嗟に両手に持ってる二本のM4ライトセイバーを逆手持ちにし、アングルブレードを受けた。 流石、ストラーフ型。 力に関しては強いですね。 腕が痺れましたよ。 「残念です…」 「いえいえ、ご主人様が見てるいる前で負ける訳にはいかない!うりゃ!!」 「ッ!?キャッ!」 受けたままの形で押し切り、私のクロスした両腕が敵のストラーフの顔に直撃したのだ。 驚いたストラーフはアングルブレードを二本とも落としてしまい武器を持ってない状態になったので、すかさず私はM4ライトセイバーで斬りつけようとした…が! 「クッ!?このー!」 バン、バン! 左手に装着されているFB256 1.2mm滑腔砲を乱射してきたので身構える。 バキャ! 「アウッ!?」 リアウイングAAU7の左翼を撃たれ出力ダウンしてしまいました。 そしていつの間にか姿をくらましたストラーフ。 う~ん、敵は中々やる人ですね。 あの状態でよくFB256 1.2mm滑腔砲を撃てたものです。 しかもリアウイングAAU7にしっかりと命中させてます。 「お~い、アンジェラス」 『ッ!ご主人様!?』 空からご主人様の声が聞こえました。 本当はコンピュータシステムが空からご主人様の声を聞こえるようにしてるだけ。 この場合、オーナーが自分達の神武装姫に助言するためのシステムです。 「アッ!?」 私は両腕で頭を押さえ込む。 ま、まさか…あの子が!? 「代わりなさい…」 意識が朦朧とし、私の視界は真っ暗闇になった。 ????・??????の視点 『敵の武装神姫を調べてたらこの地区の一位らしい。名前はアイゼン』 「アイゼン…か」 アタシの頭はまだ少しボ~としていた。 アタシがアタシを少し拒んだせいだわ。 でもマスターに会うためならアタシはなんでもする。 それにだんだんこっちに出てこれるようになった事だし。 好調なのは変わりないね。 『あちゃ~、こいつはトンデモナイ奴にバトルを申し込んじまったもんだぜ。婪の奴でも苦労する相手だぞ』 「関係ないよ~。敵は壊すだけだから♪」 マスターは苦い顔しながら言ってるけど、心配いらないよ♪ マスターの敵はアタシの敵。 敵は倒すモノ、破壊するモノ、削除するモノ、排除するモノ♪ 兎に角、ブッ壊せばそれでおしまい。 それにマスターはアタシが勝つと喜んでくれる。 だから敵を壊す♪ 『て、聞いてるのか?アンジェラス??』 「んぅ?大丈夫だよ、マスター♪ちゃんと敵を壊すから♪♪」 『ちょっ!?お前、もう一人の』 ブツ 交信終了♪ 丁度よく交信が終ってラッキーでも最後にマスターがアタシに気づいたのが不味かったかな。 でも、どうでもいいや♪ あ、そうだ。 また何か言われないようにシステムを弄っとこう♪ 「それ!」 アタシは空に向かって右手の一指し指を向け電波を飛ばす。 システムを改ざんしちゃうのです。 これで外からの操作、つまりオーナー達は何も操作出来ないし、アタシ達のバトル姿を見る事も出来ない。 「よし、完了♪さぁーて…敵さん、アイゼンちゃんは何処かな~」 地上に降り立ち辺り見回す。 う~ん、ここら辺には居ないか。 ならこちらから捜すまでね。 「にしても、邪魔だなぁ。とっちゃえ♪」 バリバリ! バキバキ! リアウイングAAU7の翼を無理矢理引きちぎり装着を外す。 他にもランディングギアAT3やヘッドセンサー・アネーロやbuAM_FL012胸部アーマーを投げ捨てる。 武装もいらないなぁ~、アルヴォPDW9とアルヴォLP4ハンドガンとM4ライトセイバーも投げ捨てる。 身軽になった体を背伸びする。 「う~ん、はぁ~。やっぱり、このスタイルが一番イイ♪マスターにご奉仕するにも楽だしね♪♪」 パチン 指をスナップさせて音を出し四つのオプションを召喚する。 市販より使えるオプション。 流石はアタシのマスター、いつも惚れ惚れする仕事ぷり♪ 「このオプションとアタシの技があれば楽勝~」 ババババババババ!!!!!!!! いきなりアタシの身体全体にM16A1アサルトライフルの弾が命中し後ろに吹き飛ばされ、そのまま反動でビルの壁に勢いよく突っ込み倒れる。 壁に穴を空け煙が舞う。 イッタ~い、何すんのよ! アタシの身体を蜂の巣にするき!? 「やったか…?」 遠くから声が聞こえた。 あぁ~今回の敵さんの声か~。 透き通ったいい声じゃない♪ その声がどんな風に叫んでくれるか楽しみ♪ アタシは起き上がり敵に姿を見せる。 「直撃なのに…!?」 「残念♪アタシはそのぐらいの攻撃じゃヤられないよ♪」 アイゼンちゃんはたいそう驚いていた。 そんなに驚く事かなぁ~? あ、でも普通の武装神姫じゃー一撃必殺並みの攻撃力はあったかも。 「────!」 「あ、駄目だよ」 アイゼンちゃんがまたM16A1アサルトライフルをアタシに向けてきた。 だから~。 「ッ!?」 「駄目じゃない。こんな危ない物持ってちゃ」 だから一瞬にしてアイゼンちゃんの目の前で移動して、M16A1アサルトライフルの銃口部分を右手で掴む。 そして~。 ギギギギギギギギ!!!!!!!! 折り曲げちゃった♪ これで弾は出ないもんね。 引き金を引けばこのまま爆発するだけだし。 これで危ない物は全部かな? 「…力があり過ぎる!?」 「え?う~んこのくらい??」 左手を拳にし、回転を掛けながらアイゼンちゃんのお腹を殴る。 ボゴッ! 「グハッ!?」 アイゼンちゃんはアタシより速いスピードでフッ飛びビルの壁に突っ込む。 このまま追い討ちしちゃおうか♪ その綺麗な声で悲痛な叫びを聞かせてね♪ 「行けー!オプションシュート!!」 アタシがそう命令した瞬間、オプションはレーザーのように飛びアイゼンちゃんが突っ込んだビルに目掛けて飛んで行き、アイゼンちゃんを発見した瞬間攻撃した。 ズガガガガ!!!! オプションシュートはオプションを亜光速並みのスピードで敵に体当たりする攻撃なの♪ 攻撃力は計り知れないよ。 解説乙でしょ、アタシ♪ 「戻って、オプション♪」 命令通りに戻ってくるオプション達。 あぁ~これじゃアイゼンちゃんは粉々かなぁ~? 叫んでくれてないし、ちょっと残念。 でも一応残骸の確認しないと気になるから見てみよう~と♪ ボロボロになったビルの中に入ると煙と埃が舞っていて視界が悪かった。 これじゃあ確認できないよ~。 「アイゼンちゃ~ん。生きてるなら教えてー♪」 ドグシュッ! 激痛が胸あたりを走る。 何かと見てみるとフルストゥ・クレインがアタシの胸から突き飛び出ていたの。 ドクドクと赤い血が出てくる。 どうやらアイゼンちゃんはアタシのバックを取り背中からフルストゥ・クレインを一突きしたのね。 「……教えた」 「………」 「……まだ、…必要?」 「……………チッ」 傷を負いながらも、アタシに向かって敵意むき出しするアイゼンちゃん。 ズブズブ、と奥深くに突き刺さるフルストゥ・クレイン。 ダメージはかなり深刻、このままじゃいくら不完全のアタシでもヤバイから負けを認めるしかなさそうね。 「あぁ~あ、残念。もっとアイゼンちゃんと遊びたかったんだけど…これ以上は無理だから、またね♪」 「私は…会いたくない」 「更に残念。アタシ、アイゼンちゃんに嫌われちゃった~。よっと」 ブシュ フルストゥ・クレインを無理矢理掴み引き抜くとアイゼンちゃんはアタシとの距離を取りM16A1アサルトライフルを構える。 もうそんなに警戒しなくていいのに♪ 「アタシの負けだから大丈夫だよ♪今からアタシがアタシに変わるだけだから」 「…?傷が…!」 「ンゥ~?あぁ~、ほっとけば回復するの♪でも今回はアタシの負け。まだこの身体に執着するまで不完全なの」 「貴女は…いったい…」 「別にアイゼンちゃんが分からなくてもいいの♪次会う時は必ず、壊してあげるから♪♪ばいばい♪♪♪」 「…さようなら」 アタシはニッコリと笑いながらアイゼンちゃんを見ながら意識を失う。 次会う時が楽しみだね、ア・イ・ゼ・ン・ちゃん♪ 天薙龍悪の視点 「オッ!やっとコンソールが使えるようになった」 「こっちでもいったい何が起こったのですかね?」 「さぁ、検討がつかん」 どうやら島田祐一の方のコンソールやディスプレイが故障していたみたいだ。 あの時。 アンジェラスがもう一人のアイツになった時と同時に交信が途切れ、更にこっちからの操作が全不能になりやがった。 いったいどうなっていやがるんだ。 それよりもアンジェラスとアイゼンが心配だ! 「あ!居ましたよ、天薙さん!!」 「マジで!おー居た居た!!」 ボロボロになったビルの中にブッ倒れてるアンジェラスと、その姿をただ突っ立て眺めてるアイゼンがいた。 どうやらバトルはアイゼンが勝ったみたいだ。 フゥ~良かった。 でもよくアイツに勝てたなアイゼンは。 流石はこの地区の一位武装神姫。 実力はある訳だ。 「ご、ご主人様~…」 「お、気がついたみたいだな。早く戻って来い」 「は、は~い~…」 疲れきってるみたいだ。 それ程相手が強かったのだろう。 アンジェラスが筐体から出てくると、俺は右手で掴みそのままアンジェラスを右胸ポケットに突っ込んだ。 グッタリとするアンジェラス。 お、この状態なら煙草を吸って怒る気力が無いとみた。 今のうちに吸っちまう。 煙草を取り出し火をつける。 「はぁー、美味しいぜ♪」 「あの~筐体近くでの喫煙は」 「ん?あ、ワリィな島田君」 高校生に怒れちまった。 でも止めないけどね。 すぐにこの場を去れば大丈夫だし。 「今日はサンキューな」 「いえいえ、アイゼンも勉強に出来たと思います。さっきから何だかブツブツと言ってるけど…」 「そっか。他にも俺はこの通りに…肩にいっぱい神姫いるけど、また今度こいつらも相手してやってくれ。そん時はジュースぐらい奢るからさぁ」 「是非相手しますよ!」 「サンキュー。そんじゃ、俺はこれで。次は会う時はバトル以外で遊ぶのもいいかもな」 「はい!また会いましょう。俺は大抵この神姫センターに居ますから」 「ああぁ。またな」 俺は歩き背を島田に見せながら右手を上げて神姫センターを後にした。 今日のバトルは途中で見れなく出来なくなってしまったが…いったい中でどんな事が起こっていたのだろうか? 流血沙汰になっていなければいいのだが…。 「(c) 2006 Konami Digital Entertainment Co., Ltd.当コンテンツの再利用(再転載、再配布など)は禁止しています。」
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1331.html
ESTABLISHMENT DATA -設定資料集 near to you ■■■摩耶野市と神姫センター■■■ □摩耶野市(まやのし) 摩耶野市は関東圏に位置する都市であり、かつてはなだらかな平野を利用した田園都市として発展していた土地である。 近年では新都市構想によるテストベットとして多数の研究機関や企業が集う学術研究都市としての発展が著しい。 都市計画によって理路整然とされた街並みは合理的・機能的かつ優麗で、都市緑化を全面に押し出した景観は「都市=ビルの並ぶ無機質な空間」という概念を旧時代のものとすることに成功している。 その摩耶野市の中央地区、マヤノエクスプレス摩耶野駅近縁に存在するのが我らが「神姫センター・摩耶野市店」である。 ○センター地区 主要幹線であるマヤノエクスプレス線駅を中心とした中央地区。 公的機関、公共施設、大型商業施設、娯楽施設が集まる。 神姫センターはここに存在する。 ○研究地区 多くの研究機関や教育機関が集まる地域。 民間企業や民間研究機関が集まる研究開発区と、大学や公共研究機関が集まる研究教育区に分かれる。 ○住宅地区 都市計画したがった公団住宅、公営住宅や分譲住宅地、一般の民家が集まる。 ○郊外地区 元の平野の田園風景の面影を残した、公園や緑地も多い緑豊かな地区。 貯水用の人工湖などが存在する。 また、その特性から都心部には設置しがたい施設(戦略自衛隊技術研究所、丘陵を利用した宇宙太陽光発電の研究施設)などはこの地区に設けられている。 □神姫センター・摩耶野市店 神姫センター・摩耶野市店は、近年になってからのオープンという新しさもあって、それ以前の神姫センターにない試みが随所に取り入れられている。 そのひとつが「施設自体のアミューズメント化」である。 これはアミューズとして定着した武装神姫バトル人気を鑑みて、施設全体を「神姫センター=神姫を購入する場所」から「神姫センター=神姫と人々が集い、コミュニケーション・レジャーを楽しむ場所」へとシフトさせようという試みである。 いわば同神姫センターは、それ自体が神姫をメインにしたテーマパークのようなものであり、神姫購買層だけでなく神姫所持層、非神姫ユーザーの取り込みを狙った意欲的なものである。 同センターでは、神姫購入の他に様々なアフターケア、学習設備、ネットコミュニケーションによる全国各地の神姫センター間の交流などのサービスを受けることができる。 また目玉となる神姫バトルは最新鋭の設備を完備し、学術研究都市という土地柄を最大限に利用して日々改良、新たなる試みが取り入れられ全国の他の神姫センターとは違う、このセンターだけのサービスを多数設けると共に、そうした新技術の実働試験も兼ねている。 フィフスフロア 業務エリア 機械設備や事務室・中央監視室など(一般客立入禁止) フォースフロア アミューズエリア レストラン街、アミューズメントコーナー(武装神姫バトル筐体ほか) サードフロア 上級者エリア 主に神姫のカスタマイズパーツを扱った店舗が並ぶ セカンドフロア 中級者エリア 主に神姫の各武装パーツやクレイドルバリエーションモデルなどを扱った店舗が並ぶ ファーストフロア 初心者エリア 神姫の基本セットであるコアユニット・CSC・素体を主に取り扱った店舗が並ぶ グランドフロア エントランスエリア エントランスホール、セントラルコート。インフォメーションや、軽食店やグッズショップなどがある。 アクセス: マヤノエクスプレス線摩耶野駅下車、徒歩10分 この神姫センター・摩耶野市店のサービスでも取立てユニークなのが「神姫カフェ」である。 センター1階に存在する神姫カフェは、接客を始めとした店内の業務員のすべてを神姫のみで構成するという斬新なスタイルを取っている。 また同神姫センターのオリジナル神姫アイドルユニット「ブルーメンヴァイス」をはじめとした多くの神姫がスタッフとして人間スタッフに交じり、サービスに当たっており、これらが人気を博している。 戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/215.html
前へ 先頭ページ 次へ 第五話 相対 眼下のサルーンと巡航速度を同調させ、クエンティンは飛んでいる。 雪が前方から真横に吹き付けるが、不思議なことに一粒も彼女へぶつかることはなかった。 風圧のせいではない。彼女の周囲にはエイダにより目に見えないエネルギー膜が張られてあって、それで雪のみならず空気中の埃を払いのけ、さらに空気抵抗を大幅に減衰させてあの驚異的な高機動性を叩き出しているのである。 彼女の顔に当たる風は突風などではなく、ほとんどそよ風程度と言ってよかった。 サルーンとの同調速度から若干落とし、クエンティンは車の斜め後方上空へつく。さらに後方の光点、エイダとおなじメタトロン・プロジェクトのプロトタイプ、彼女のいわば姉妹機にも気を配る。まだ姿は見えない。攻撃してくる気配も無かった。 同調速度へ戻し、相手が接近するのを待つ。先制攻撃は向こうへくれてやるつもりだった。一般に戦闘においては先制攻撃側が有利とされているが、エイダが『問題ありません』と言ったのでそうすることにした。 エイダは姉妹機の武装を知っているようだった。具体的にはやはり情報機密ロックに該当するようで教えられなかったが、エイダは機転を利かせて間接的にアドバイスしているのである。 すると少なくとも相手は、あのアヌビスというやつは攻撃と同時に着弾するようなたとえば直進するレーザーのような武器は持っていないことになる。他の武装は、まあ、後々身をもって分かるだろう。 クエンティンはつい先ほどの、理音と鶴畑興紀の会話を思い返していた。 思い出せば思い出すほど悔しさがこみ上げてくる。 が、神姫に人権はあるべき、無くてよいなどという当為的な議論はともかくとして、人権が無いのは事実であり、また安易に人権などもらってしまえば神姫を趣味のためのツールと考えている人間の自由を剥奪してしまうことになるのもまた事実だった。 それは認める。認めるしかない。 だが、もっと重大な懸念がある。人権が与えられたその瞬間、武装神姫はその存在意義そのものを失ってしまう可能性があるのだ。 たとえば、もしバトルがしたくて神姫を買ったオーナーの元にバトルをしたくない神姫がやってきた場合。神姫に人権が付与されていたなら、オーナーは神姫の「バトルはしたくない」という権利を絶対に守らねばならない。 絶対に、である。理解のあるオーナーならいいが、全員が全員そうだとは限らない。 他にも、「ああしろこうしろ」とむやみやたらに命令することも許されない。 それらを破ったら即刻、神姫に対する人権侵害となる。 所有者が所有物の権利を尊重するという、立場の逆転が起こってしまうのだ。 武装神姫はオーナーがお金を出して買った所有物であり、だから武装神姫はオーナーの願いや命令を聞くのであり、すなわちそれこそが武装神姫なのである。少なくとも武装神姫という商品はそう作られた。 「神姫はパートナーだ」「妹だ」「娘だ」あるいは「恋人です」「女王様でございますうぅう!」などの、オーナーそれぞれの気持ちや理解は関係なく。神姫をどう捉えるかはオーナーの自由だ。 言い切ってしまえば人間の所有物だから武装神姫なのだ。命令を聞かなければ武装神姫として存在している意味が、無い。 オーナーが「君のやりたいようにやるがいい」と言ったとして、言われた神姫が自由にしているように見えても、当の神姫は――意識的であるにしろ無意識的であるにしろ――自由にやりたいことをやっているのではなく、「自由にやれ」という命令を聞いているに過ぎない。 武装神姫は明確な意思を持っているが、しかし人権を欲することはしたくてもできないのだ。少なくとも人の所有物として生まれている今現在は。人権が欲しいなら所有物であることをやめる必要がある。武装神姫でなくなる必要が。 いま、神姫が人間らしい――という表現も、自分が神姫だということをさし引いて考えるならおかしいな、とクエンティンは思った――生活を送れるかどうかは、ひとえにオーナー一人一人の良識に全てが委ねられているのである。 それならアタシは幸せだ。クエンティンは理音に心から感謝した。 心から? うーん、やっぱり神姫に心は、意思はあるかも。少なくともアタシ自身はそう思う。クエンティンはひとまず納得した。 変わって、正義の話に関しては、いささか疑問を感じていた。 『鶴畑興紀の話には条件が必要です』 クエンティンの思考を読んだのか、エイダが答える。そのとおりだ。 彼の『個人の正義は誰にも侵害されず、また自分の正義で他人の正義を侵害してもいけない』という主張は、個人体個人の間でのみ有効な主張だ。 これがもし集団が主体となった場合、彼の主張は一気に崩壊する。 なぜならば、集団の正義は往々にして他集団や他個人の正義を侵害することで成り立っているからだ。 いや、侵害という言葉は適切ではないかもしれない。集団そのものの意識や目的はともかく、集団というものは集団であるということ自体が理由となって、どうあがいたところで他の正義(思想や権利と言い換えてもいいかもしれない)のうえにかぶさる様にできている。 簡単な例を挙げるなら、企業がある。とあるひとつのカテゴリに属する企業は、同じカテゴリにある他企業の正義を押さえつけなければ存在できない。押さえつけなければその企業は死んでしまうからだ。製造販売業ならば、他企業よりも良いものを作って売るという行動がそれにあたり、その行為は同時に他企業を押さえつける行為となる。他企業は押さえつけられたままでは滅びてしまうから、同じようにより良いものを作って、売る。 そのいたちごっこが続く。俗に競争と呼ばれるやつだ。だからこそ技術は発展し続け、消費者はより良い生活ができる。お姉さまは「このケーキおいしくなったわね」と言える。 鶴畑コンツェルンがやっていることはまさに正義の押し売りなのかもしれない。他企業を押さえつけ、自らがのさばる。それを意図的にやっている。 ふと、クエンティンは思った。他の正義を押さえつけることは、すなわち支配ということではないか、と。 「支配者って、自分の正義を他人に押し付ける人のことかしら?」 クエンティンは個人ではなく企業人としての鶴畑興紀をイメージしながら、言葉に出して言って見た。誰に訊いたわけでもない。が、たぶんエイダに訊いたのだろうとクエンティンは思った。 『無条件ならば、そのとおりです』 エイダは答えた。 ならば、私はバトルにおいては自分の正義を他人に押し付けているのだろうか? 『それは違います』とエイダは言った。 「どうして? 私はバトルで、支配者になろうとしているのよ」 クエンティンはエイダと出会う直前に考えていた、支配者になるのだという考えを伝えた。相手に支配していると気づかせない、雪のような支配者になるということを。 『バトルは認められた戦いです』 エイダは即座に返答した。はからずも理音が考えていたことと同じことだった。バトルは認められた戦いであるし、どんなに戦ったところで(神姫に人権が無いことを前提とすれば、たとえリアルバトルでも)死者は出ないから、対戦者同士の正義はぶつかり合わない。 もしぶつかるとしたら対戦者相互の個人的な感情事情のみで、その多くは「自分が勝ったら何々をして(~になり)、相手が勝ったら何々をする(~になる)」というものである。バトルの勝ち負けによりどっちの願望が実行されるかというものだ。 正義という言葉を使うなら「自分が勝ったら自分の正義で相手の正義を押さえつけても良いね」という対戦者お互いの承諾なのである。バトルという行為そのものにはまったく関係が無い。 「……そうかな?」 『そうです』 エイダはさらに続ける。 仮にバトルの中で支配者となったとしても、それは相手の正義の侵害ではなく、バトルの中で展開を有利に運べるようになったというだけなのだ。勝っても負けても誰も死なないから、取り返しのつかないことにはならない。つまりバトル後もそれぞれの正義は続いてゆくのである。 『ただし、戦死者が出る実戦であった場合、意味は大きく違ってきます』 相手を殺さなければ自分の正義の遂行が危ういのである。 実戦とか死ぬとかいう例は大げさだが、これを現実的な事象になおしてみるならば、たとえ個人対個人でも正義のぶつかり合いはある。 間に権利的か利益的、企業的な干渉があった場合(たとえば子持ちの夫婦が離婚したときの親権争い、恋敵同士による一人の女性の争奪戦、どちらか一方しかその企業との契約がとれない場合における営業担当同士の交渉戦、など)、負けた側は自分の正義、あるいは願望を貫けないのだから戦わざるを得ない。 この部分が鶴畑興紀の主張に足りない。と、エイダは言った。たとえ個人でも、正義がぶつかるときがあるのだ。 正義を物質みたいに扱っているな、とクエンティンは感想を言った。死んだらその先に物質は持っていけないというわけか。 でも、自分自身に即してみるならば、と、クエンティンは考える。神姫に人権が無いという事実は置いといて、リアルバトルで破壊される、死ぬ、のはやっぱり嫌である。もうお姉さまとお話もできないと考えると、途方も無く恐ろしかった。人工知能基本三原則の自己保存でもあるが。 そのリアルバトルを今からやるのだよな。 改めて考えると、クエンティンは突然言いようの無い恐怖におそわれた。 メインジェネレータ、人間で言う心臓のあたりの鼓動が早くなり、全身の駆動部分が陽電子頭脳からの微弱なパルスを感じてぶるぶると震え始める。クエンティンはつまり怖さで縮み上がっているのだ。 負ければ壊される。死ぬ。という恐怖。リアルバトルをやるのは初めてではない。ついさっきだってあの一つ目どもとさんざリアルバトルをやったばかりだ。 なのに、この恐怖は何だろう。やめたい、やりたくない。死にたくない。あのサルーンの中に今すぐ取って返してお姉さまの胸に飛び込みたい。 「うっ……」 引きつった声が漏れた。声だけでなく、股間部の排出口から廃熱を吸い取り切った古い冷却水も漏らしてしまいそうだった。 やばい。このまま戦ったら負ける。確実に。 『感情回路の異常を感知。沈静プログラムオープン』 エイダが報告。 すると、途端に恐怖が薄らいでゆく。全身をすっきりした感覚が走り、ジェネレータの鼓動は平常に戻り、震えも止まった。 「あ、ありがとう、エイダ」 『どういたしまして』 鎮静剤を打たれたのと同じようなものだな、と思いながら、クエンティンはお礼を言った。彼女がいなければこのままちびっていたかもしれない。 「あいつは? アヌビスは」 『変化はありません』 後ろを振り返る。光点はまだ動いていなかった。さっきから同じ速度で追いかけてきている。接近するそぶりは無い。 「まだ仕掛けてこないなんて……。おかしいな」 そう言った瞬間だった。 光点がふっ、と消えた。 「えっ!?」 『警告、脅威接近、オンザノーズ!』 エイダが叫ぶ。 ギュバッ! 聞いたことの無い奇妙な音とともに、目と鼻の先にそいつが現れた。 ピンと立った細長い耳のようなアンテナのついた、犬とも狼ともつかないフードのようなヘッドギアをかぶった神姫だった。ハウリンではない。ハウリンのはこんなに鋭角なヘッドギアではないし、なにより目が隠れない。その神姫の目は見えなかった。ヘッドギアの側面から後頭部にかけて覆うように薄いレースのようなものが首まで垂れている。 背中に八枚の羽のようなユニットを浮かばせ――背中にくっついていない――、腕を組み、右手に錫杖の形をした長い得物を携えていた。 ボディの色は今のクエンティンよりも黒に近く、胸部の球体から赤いエネルギーラインが全身に渡っている。 静かな威圧感が自分をわしづかんだように、クエンティンは感じた。 『離脱してください!』 「はっ!?」 我に返ってバックブースト。左手でエネルギーシールドを張りつつ、クエンティンは間合いを取る。 攻撃されていたら間違いなくやられていた。なぜ攻撃してこなかったんだろう。やはり捕獲するためなのだろうか。 『MMSタイプ・アヌビス、「デルフィ」です』 「あいつが……!?」 瞬間移動してきた。リアルで。ありえない! 一体どんな原理が使われているんだろう。 『ゼロシフトです』 「え?」 『いまの瞬間移動のことです。エネルギーバリアの空気抵抗減衰能力と空間圧縮技術を応用し、現在位置と移動先の空間を圧縮することで短距離の超高速移動が出来ます』 「ちょっ、ちょっと待ってよ、あいつの武装データはロックが掛かってるんじゃないの?」 『デルフィの武装データはセンサーで確認した場合公開されたとみなし、その武装に関するロックが無効になります』 つまり奴からのあらゆる攻撃は一度見なければ情報ロックが解除されないというわけだ。 「それじゃあ分からないのと大差ないじゃない……」 避けられればなんとかなるが……、所見の攻撃の回避率が総じて低いことは経験で知っている。 しかしこれでもエイダはなんとか機転を利かせてがんばっているのだ。 「ノウマンって奴、恨んでやるわ」 クエンティンはロックをかけた顔も知らない責任者に、頭の中でパンチを食らわせた。 デルフィの表情は変わらない。唯一露出している唇は結ばれたまま、ピクリとも動かなかった。 表情や仕草から意図を読むことができない。クエンティンはバトルの際そうして戦ってきた。どんな行動にも予備動作というものが必ずあり、ほとんどの攻撃はそれで対応できたのだ。 こんなにも先の読めない敵は初めてだった。いや、正確に言えば初めてではない。エイダとの融合前の、一つ目との戦いもこんな感じだった。融合後は性能差で勝てたに等しい。 クエンティンはまだ、この融合後のボディに慣れきっていなかった。 奴の意図はなんだろう。自分を壊すのか、拉致するのか。 どちらであれ、いやだった。 『目的地まであと二分です』 エイダが報告する。 ギュバッ! 同時にデルフィは瞬間移動。クエンティンの目の前に出現する。 右手の錫杖がしゃらりと鳴り、横なぎに払われる。 「ぐっ!」 とっさシールドを張って重防御。にもかかわらず鈍器で殴られたような衝撃が全身を揺さぶった。シールドの衝撃吸収機能がほとんど役に立っていない。 『距離をとって戦ってください。近接戦闘は危険です』 言われきらないうちにクエンティン、バックブースト。 ガ、ガシォーン! ホーミングレーザーを放ちつつ距離をとる。サルーンと並行しながら動かなければならないから、制御が難しい。平行飛行の操作をエイダに委ねる。これでさほど気にならなくなるが、サルーン側へはすばやく移動することが出来ない。 ヅシャシャシャ! デルフィはシールドを張りつつ錫杖をぐるぐると回転させ、レーザーを防御。レーザーは一発も有効弾にならない。 グヴィーンッ デルフィの背中から何十本もの、血のように赤いレーザーが射出された。 『ロックオンレーザーです』 エイダが言った。 しかし、鋭角的にのたうちながら迫ってくるレーザーに、クエンティンはどう避けたらよいか見当が付かない。 『可能な限りひきつけ、前方へブーストしてください』 すかさずエイダのアドバイスが飛ぶ。 「可能な限り引き付けて、って……」 四方八方から迫るレーザーを見渡し、さらに間合いを取ろうとしながらクエンティンは怖気づいた。 「抜ける隙間がない!」 クエンティンはシールドを最大出力で展開、四肢を踏ん張って耐える態勢に。 着弾。 左手がばらばらに砕け散るかと思うほどの振動がやってきた。クエンティンは目をつぶってしまう。 レーザーの嵐は止まらない。ロックオンレーザーを時間差で撃ちつづけているのだ。それでも一撃一撃が重かった。 姉妹機のくせして、アタシはこんなに撃てない! 射撃がやむ。かろうじて左手は砕けなかった。 うっかり気を抜いてしまい、そのままシールドを解除する。 『攻撃警告!』 ギュバッ! キスでもしてしまいそうなほどの近くに、デルフィが出現した。 気を取り直す間は与えられなかった。 ドツッ! 錫杖が振り下ろされ、左肩口に痛打。 「ぎゃうっ!?」 異常なパワーをクエンティンは感じた。左肩装甲にひびが入る。 そのままデルフィは錫杖を振り回してうずくまるクエンティンを文字通り袋叩きにしてしまう。 右わき腹から左大腿、胸部、右腕部、左すね。回避するタイミングを逃したクエンティンは、手足をちぢこめて耐えるしかない。 一撃で倒すことはしなかった。デルフィはわざと急所をそらして殴りつけているのだ。それでクエンティンは、こいつは自分をさらっていこうとしているのだと分かった。 こんなところで黙ってさらわれるわけには行かない。 「うわあーっ!」 ブレードを跳ね上げる。 「!」 ギュバッ! デルフィはゼロシフトで離れる。口元がやや開いている。意外な反撃に初めて驚愕の表情を見せたのだった。 クエンティンは高速の思考でエイダに指令。 〝エイダ、一番簡単なサブウェポンを手動で出して!〟 〝しかし、多大な負荷がかかります〟 〝いいから早くやって!〟 エイダは手動プログラムを開始。途端にクエンティンの頭部から煙が上がり始める。この時代において容量、計算速度、冷却効率そのどれをとってもトップクラスのスペックを誇る陽電子頭脳に、その許容をはるかに上回る負荷がかかっていた。これでいて最も軽いサブウェポン一つを呼び出しているのだ。 頭痛ががんがんと暴れだしたがクエンティンは耐えた。 右手の平にいくつもの小さな螺旋が出現。それらは銀色の球体となって顕現する。 クエンティンは球体を握り締めると、腕をぶん回し、デルフィに向けて投げつけた。 サブウェポンを使われるとは考慮していなかったのか、デルフィは瞬間移動で回避することなく球体を当てられた。 球体はデルフィのボディにくっつくと、ボディと反対の方向に細長い光を放出した。 ゲイザー。 球体の強力な推進力により対象を拘束するサブウェポンである。 『鶴畑家対空ファランクス砲の射程範囲に到達しました。進行方向へシールドを展開してください』 クエンティンは言われたとおりにする。 直後、サルーンの向こう側からオレンジ色に光る筋が高速で飛来した。筋の正体は五発に一発装填されているファランクス砲の曳光弾である。 空気を切り裂く音が繋がって聞こえる。毎分六千発以上の高速射撃により、辺りは鉛の雨と化した。 二十ミリという大口径ライフル弾の衝撃を、クエンティンのエネルギーシールドは完全に吸収していた。もはやこれは武装神姫なんかじゃない、れっきとした兵器で通用する、とクエンティンは思った。それはたぶん当たっているかもしれない。人工知能基本三原則は付け忘れたのではなく、きっと最初から付いていなかったのだ。自分が死にたくないと思ったのは自分の感情であって、きっと三原則は影響していなかった。 エイダは答えなかった。回答不能なのかもしれない。 それに、三原則無しで死にたくないと思った私は一体なんなのだろう? ゲイザーによりシールドも展開できないデルフィは、無数の銃弾を浴びて火花を散らして墜落し、見えなくなった。 あんなものでは傷をつけることもできないとクエンティンは推測した。きっといまシールドを切ったとして、二十ミリ弾ぐらいではこのボディをぶっ壊せないだろう。あいつ、デルフィも同じだ。エイダとは姉妹機なのだから。 シールドを張りつつクエンティンはサルーンへ戻る。 サルーンはそのまま巨大な正門をくぐり、屋敷の敷地内へと消えていった。屋敷は煌々と明かりが点いていた。 その後二分間、デルフィが墜落したとされる範囲に射撃は継続された。二門のファランクス砲から発射された弾丸はのべ三万発以上にのぼった。 追撃は無かった。 雪が降り続いていた。 戦いの跡も、三万発の鉛の雨のえぐった地面も、すべからく雪の支配する世界に覆われた。 屋敷の明かりが一つ、新たに灯った。 つづく 前へ 先頭ページ 次へ
https://w.atwiki.jp/fullgenre/pages/299.html
【カズマ】 4 017 コードアルター 反逆のカズマ ◆ew5bR2RQj. 深夜 053 神経質な者、単細胞な者 ◆fG7rJLlLFE 黎明 062 接触 ◆YYVYMNVZTk 早朝 081 光を求めて影は ◆EboujAWlRA 朝 【劉鳳】 2 021 走れ、仮面ライダーBLACK! 少女の命が今危ない! ◆Wott.eaRjU 深夜 054 真実の果てに ◆ew5bR2RQj. 黎明 【由詑かなみ】 5 003 上田教授のドンと来い!変身! ◆eHLwmjPoFQ 深夜 050 男なら、ベストを尽くして強くなれ ◆gry038wOvE 黎明 065 目を開けながら見たい夢がある ◆EboujAWlRA 早朝 070 Blood bath ◆KKid85tGwY 早朝 093 上田次郎は二人の狂人を前に気絶する ◆.WX8NmkbZ6 朝 【ストレイト・クーガー】 5 040 また逢いましょう ◆KKid85tGwY 深夜 044 幸せの星 ◆ew5bR2RQj. 黎明 066 お前の姿はあいつに似ている ◆U1w5FvVRgk 早朝 072 Ultimate thing ◆EboujAWlRA 早朝 092 adamant faith ◆.WX8NmkbZ6 朝 【橘あすか】 4 012 苦労をするのはいつだって良識ある常識人 ◆0RbUzIT0To 深夜 034 堕天使の微笑 ◆ew5bR2RQj. 黎明 064 危険地帯 ◆ew5bR2RQj. 早朝 069 BATTLE ROYALE 世界の終わりまで戦い続ける者たち ◆U1w5FvVRgk 早朝