約 173,348 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2863.html
中学を卒業し、春休み兼高校への準備期間といったところの3月。 卒業後の3月というのは夏休み並に長い休みとなり、宿題もないため基本的に卒業生は皆遊び呆ける期間ということになる。 「ゲーム『グラディウス』でプレイヤーが操る……ビックバイパー、と……」 そしてその時期にこの少年は学校の準備など忘れ、ゲームセンターでクイズゲームにかまけていた。 「……あっ」 『残念だけどここでお別れだー、また会おう!』 画面の中の先生から告げられる予選敗退の言葉。 『こんな時だってあるさ! さあもう一度!』 「……悔しいけど仕方ないか」 荷物を纏め、ゲームセンターから退店しようとする。 が、そこで少年はある人だかりを目にする。 「……?」 人間、人だかりがあると寄ってみたくなるものである。 少年もその例にもれず、その人だかりの方へ行く。 「何かな、この人だかり……?」 少年は同年代の少年達と比べると背が高い方であり、すこし背を伸ばしただけで人だかりの向こう側は見ることができた。 「ん……」 もう少し背を伸ばすと、人だかりの中心にある筐体に書かれた文字が目に入った。 「……武装神姫?」 どうやら筐体の中で少女たちが戦っているようである。 が、それ以上は事前情報も何もないため分からなかった。 「何をしている?」 「えっ?」 背伸びの最中に少年は声を掛けられる、振り返ってみるとそこには友人の顔があった。 「……櫻庭君?」 少年の友人の名前は櫻庭(さくらば)遊理(ユウリ)。 少年の一番の親友で中学までは一緒であったのだが、高校は別々となってしまったので、日常的に会うことはなくなってしまうのである。 無論、今のように地元で会うことは多いのであろうが。 「いや、人だかりができてたから…… でも奇遇だね、こんな所で何をしてるの?」 「いやまあ……ちょっとな。 お前は……」 「まあ、いつも通りマジアカをちょっと……」 マジアカ、コナミのクイズゲーム、クイズマジックアカデミーの略である。 「「「おおおおおお!!」」」 そんなことを話していると、人だかりの方から歓声が沸く。 「……何?」 「悪いな、通してもらえるか?」 「ああうん……え? 櫻庭君って……えっと、この人だかりができてる何かに興味があるの?」 「ん……まあな」 『マスター、もう付いたのか?』 「ああ、いや……」 遊里のバッグから、褐色肌の小さな少女が顔をのぞかせた。 「……なにそれ?」 少年は少女をみて、おそらくこの少女の所有者であろう友人に聞く。 それに対し友人ははぁ、とため息をつい少年に話した。 「武装神姫、聞いたことないか?」 「ええと、な……」 ない、そう即答しようとする。 しかし少年は以前、どこかで武装神姫という文字を見たことがあるような気がした。 が、思い出すことはできなかった。 「どうした?」 「いや……ないよ、聞いたことは」 聞いたことはない、嘘は言っていない。 見た気がするだけなのだから。 「そうか、まあ……簡単にいえば、着せ替えて戦うロボットアクションフィギュアだ」 「へえ……ロボットなの?」 少年は遊里のバッグから顔を出している小さな少女の方を見る。 「じゃあ、この子も?」 体を屈めて、少女に顔を向ける。 『マスター、誰だこいつ?』 「俺の友人だ、後で紹介する」 「すごい、喋った」 最近のロボットの技術はここまで進歩していたのか、と少年は感心する。 「……でもなんか、高そうだね」 「まあ、ちょっといいパソコンが買える程度の値段はするな」 その「ちょっといいパソコン」を持っている少年からすると、その値段は容易に想像できた。 「……良く買ってもらえたね」 「まあ、合格祝いにな」 『マスター、そんな事話してていいのか? 終わっちまうぞ!』 「ああ、そうだな。 そうだ、お前も見ていくか?」 「いや……いいよ、今日は日が悪いや」 マジアカを折角プレイしに来たものの、予選敗退となり少々落ち込んでいるようである。 「そうか、ならいいさ。 劫火、行くぞ」 『おう!』 遊里はその少女と共に人ごみの中へ消えていった。 「……武装神姫、か」 (そう、僕はこの時、こんなものに興味は持っていなかった。 ……かわいいとは思うけど、数ある萌えキャラ系コンテンツの一つだと思っていた。 でも、この後あらゆる意味で意外な形で、意外な広い交友関係を持ち、意外な事件に巻き込まれていくことになるなんて…… 今の僕には、知る由もなかった) 「ただいま」 少年は帰宅早々、誰もいない家に告げる。 この少年の親は共働きであり、あまり家に帰っては来ないのである。 「ん?」 見慣れない箱が届いている。 「……なんだろう、これ」 そう言いながら箱に書かれている商品名を見る。 「え……」 今日3月26日は予約していたゲームの発売日、 コ○ミスタイルでの予約なので、今日はお届けの日、ずっと待ちわびていた日であった、筈なのだが…… 「……ああ、そうか。 今日はもう26日だったか……」 ずっと前に予約していたのだが、受験等いろいろあって忘れてたようである。 「『ハヤテのごとく!! ナイトメアパラダイス豪華版』。 本当に何故かかなり高かったけど……」 そう、この少年はハヤテのごとく!の大ファンである。 ハヤテのごとく!の主人公、『綾崎(あやさき)ハヤテ』の姿に憧れたのがきっかけでその作品を愛するようになったのである。 もっとも、この少年をオタクの世界へ橋渡ししてしまった作品でもあるのだが。 「……なら、さっそく!」 少年は予選敗退で落ち込んでいることも忘れ、その箱を抱え階段をものすごい勢いで駆け上がる。 二階の自分の部屋の扉を開けると、机の上のPSPを持ち出してベッドの上に座り込んだ。 「PSPよし、充電器もよし、箱の状態もよし……」 さながら一世代前の教習所のビデオのようにわざとらしく指差し確認をする。 「それにしてもゲームソフトにしては大きな箱だな。 それだけ特典が豪華なのかな……やっぱり、凄く高かったし」 特別版ということは、予約特典、早期購入特典が多数付いているということである。 彼は特に特典の内容は気にせず、コナミスタイル販売限定の一番高い物をとりあえず予約したのだ。 『ハヤテのごとく!』の大ファンという理由だけで。 「……それじゃあ、オープン!!」 満を持してその箱を開け。 「うぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」 中身を確認し、必要以上のリアクションをとる。 「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…… ……え?」 箱の中身を見た彼は必要以上のリアクション以上に驚きを隠せない様子を見せた。 何かが足り無かったわけでもなく、内容がそれほどでもなく拍子抜けしたわけでもない。 その中に、予想外の物が入っていたからだ。 「これって……まさか?」 箱の右側に収まっているゲームソフトへの興味はどこへやら。 左側に収まっている箱を手に取り、上下左右裏表、箱の外装をすみずみまで見回し、彼は静かに口を開く。 「武装……神姫?」 それはまぎれもなく、武装神姫だったのである。 「このパッケージ絵って……」 金髪ツインテール、ツリ目のライトグリーンの瞳。 そして、白皇学院の制服を模したカラーリングの素体。 少年にはそれに描かれている少女が誰か、一目で分かった。 「ナギ……?」 ナギ、ハヤテのごとく!のメインヒロインの名前である。 その武装神姫のパッケージに描かれていたのは、ハヤテのごとく!のヒロイン、三千院(さんぜんいん) ナギその人だった。 「武装神姫……ナギ……!?」 驚きのあまり、再び声が出なくなった。 そして、ようやく理解した。 ナギのフィギュア付属が付属するというコナミスタイル販売限定豪華版だけが、異常に高かった理由が。 「ちょっといいパソコンが買える値段」である、武装神姫が付属するのならば、それは高くなるわけである。 そしてこの時やっと思い出したのだ『武装神姫』という単語をどこで見たのか。 その場所は、彼がこの度予約したゲーム、『ハヤテのごとく!!ナイトメアパラダイス』の公式サイト及びコナミスタイルに書いてあった、 『コナミスタイル「武装神姫ナギ」付き豪華セット』という文字だったのである。 「……」 彼はゲームは基本初見プレイ派なので、公式サイトには通わなかったために、ゲームの予約以来目にすることがなかったのだ。 「……これでいいのかな? よくわからないけど……」 待ちわびていたはずのゲームソフトには手をつけず、ナギの箱を開封し、起動に手間取っている彼の姿がそこにあった。 やっとのことで設定は終わり、あとは起動させるだけである。 『お嬢様型ナギ。 セットアップ完了、起動します』 「え……もう? 起動するの? 本当に?」 驚いているうちに、その少女は金髪のツインテールをなびかせ、ライトグリーンの瞳を開きながらゆっくりと起き上がる。 『ん……』 その少女は目を閉じて背伸びをした。 「わぁ……!」 『……おぉ……お?』 その金髪ツインテールの小さな少女は眠たげな目こすりながら、『マスター』の方を向く。 「う……動いた……!!」 『……当然だ、動くぞ、神姫なのだから』 「……そ、そう、だよね」 聞きなれているツンデレ系ヒロインの鉄板である釘宮理恵ボイスが部屋に響く。 今さっき起動した金髪ツインテールの少女がツンデレボイスで、マスターだけに話しかけている。 アニメのように『綾崎 ハヤテ』やその他キャラクターや、全国の視聴者に向けてではなく。 (ナギが僕だけに話しかけてくれている) 感動で胸が打ち震えた。 事前情報がなかった分、特に。 『……問おう。 お前が、私のマスターか?』 「え?」 ハヤテのごとく!特有のジト目を少年に向けながら、別のアニメの名台詞を言う。 二人称は変わっているが。 「……はい、かな?」 『……おい、もうちょっと乗れよ』 「い、いや、あのアニメは見てなくて……」 『途中で切るなよ、アニメは自ら全て見て初めて評価をするのだ』 「……ごもっともです」 別に視聴を切ったわけではないが。 『む……』 少女渾身の目覚めのあいさつを躱されたせいか、少女の顔が明らかに不機嫌になったのが分かった。 『なんだか、あまり歓迎されていないように感じるのだが。 なんだ? もしや転バイヤーか? 起動して問題がなかったらリセットして売り飛ばすつもりか? ならば残念ながら未開封のほうが高かったと思うぞ』 「い、いや、生まれてこの方僕は転売なんてしたことないけど」 この少年はダブったトレーディングカードを売ったことすらないのである。 「その……驚いたから」 『驚いた?』 「うん……神姫を手に入れるつもりなんてなかったから…… まさか、ゲームの特別版の特典で付いてくるなんて」 『……なんだ、公式サイトを見ていないのか? ちゃんと神姫ナギが付属すると書いてあったと思うのだが』 「……はい、確かに書いてあったんですけれども」 公式サイト及びコナミスタイルで予約時に二目見て以来今まで忘れていた、とは言えないわけである。 「その、僕予約の内容とか気にせずに予約するから」 『……』 その言葉を聞いて、少女は顔を背ける。 『それでは私が傷つくではないか……』 「え、え?」 『だってお前は、私を心からは必要としていないんだろう?』 神姫というものは基本的には買った人に必要とされているからこそその人の下へ行くのであるが、 この少年の場合は『武装神姫ナギ』が付属することを知らなかったわけである。 捉えようによっては、必要とされていない、とも感じてしまうかもしれない。 「そ、そんなことないよ! えっと……お、お嬢様?」 『ん、お嬢様?』 「だって君はナギなんでしょ? だからお嬢様」 この神姫である少女の元となった人物、ハヤテのごとく!のヒロイン、三千院 ナギは圧倒的材力を持つお嬢様、という設定である。 『あぁ、そういえば設定がまだだったな』 「え、せ、設定?」 『……神姫を手に入れる予定がなかったのなら知るわけがないな。 仕方ない、教えてやろう、まず私のマスター……つまりお前のことを私がどう呼ぶかを決めるのだ』 「ま、マスター……」 『あぁ、マスターになる気はないのだったか? 別になりたくないのならいいぞ、誰かハヤテ好きの知り合いにでも引き取ってもらえ。 それかやっぱりヤ○オクにでも出したらどうだ、私としても私を落札してくれるなら大事にしてくれるだろうからな』 「い、いや、なります! えっと、僕、ハヤテのごとく!が大好きですから!」 『……そうか。 その言葉に、嘘はないな?』 「ありません!! 絶対に!」 『……ほう』 「……」 少年は15年間生きてきて中で一番今までになく真剣な目を少女に向けて言った。 『ならばお前は。 私とハヤテの出会った時の、ハヤテの告白のシーンを一字一句言えるのか?』 「……」 沈黙が走る。 目を閉じて、息を整えた。 『まあ、流石にそれは冗談……』 少女が言い切る前に少年はゆっくりと目を開け、口を開く。 「僕と…付き合ってくれないか?」 『へ?』 少女に確認をとる間もなく、それを演じ始める。 「僕は君が欲しいんだ」 『なっ……』 真剣さが伝わる。 先ほどとはまるで違う気迫に、思わず後ずさりをしてしまうほど。 「わかってるさ!! だがこっちだって本気だ!!」 『……』 その真剣な眼差しに思わず彼女は…… 『で…でも!』 そのシーンのナギの役を、無言で引き受けた。 「こんな事、冗談じゃ言わない…」 吐息のかかる距離。 完全に役にのめり込む二人。 「命懸けさ…… 一目見た瞬間から… 君を…」 犯罪者の目。 ……をするハヤテを完璧に演じる。 「君をさらうと決めていた。」 『………………』 「………………」 二人はしばらく見つめあう。 そして、『ナギ』は口を開いた。 『本気の想い…… 伝わったぞ』 「…… シャキーン」 『擬音まで言わんでいい』 「……ごめん」 『……フ』 少女は笑顔で『ハヤテ』に言う。 『合格だ。 お前の想いは本物だな』 少年も笑顔になり、少女に言う。 「君に合格をもらえるなんて……光栄だな」 『私も、お前がマスターならば安心できそうだ。 さっきの言葉は撤回しよう』 「……ありがとう」 ハヤテのごとく!を好きでよかった。 少女の言葉を聞き、少年は心からそう思った。 『では、続けよう。 なんと呼んでほしい?ご褒美にできるだけ希望に応えてやるぞ』 「呼び方……か」 なんて呼んで欲しい? 少年はそう言われたのは初めてだ。 「……ピンと来ないよ」 おそらく、それが普通である。 「例えば、どんなの?」 『そうだな、普通ならば「マスター」やら、お前の名前やら。 それとも「私の執事」、とでも呼ぼうか。 そうだ「バカ犬」でもいいぞ。 望むなら「兄さん」とも呼んでやらないこともないが』 バカ犬、兄さん。 どちらもハヤテとは関係のない作品である。 声を当てている声優は同じであるが。 その縁でハヤテのごとく!でネタにされたこともある。 『……推奨は全くしないが、「下僕」やら、「豚」やら、「そこのお前」、「そこの人」でも』 「……普通に僕の名前で」 ナギの姿の少女にバカ犬およびほかの呼び方で呼ばれても違和感しかない、とハヤテは考えた。 きっとそれはハヤテのごとく!よりとらドラ!やゼロの使い魔がのほうが好きな人でも同じことであろう。 『まあそれが無難だな。 では……あ』 少女は何かを思い出したように、話を中断し口が空いたままにした。 『そういえば、名前を聞いていなかったな。 お前、名前は?』 「名前……僕の?」 『そうだ、どうした、早く言うがいい』 「うん……僕の名前は」 吐息のかからない距離。 机の上の少女の眼を真っ直ぐと見て、少年はその名を言う。 「ハヤテ」 『え?』 「鷹峰(たかみね) 颯(ハヤテ)。 僕が憧れた君の執事と……同じ名前だ」 ハヤテのごとく!の主人公、綾崎ハヤテはヒロインである三千院ナギの執事という設定である。 その、自身と同名の『綾崎ハヤテ』の、何があっても、どんな不幸があっても挫けずに立ち向かっていく『ハヤテ』の姿に。 『ハヤテ』にハヤテは憧れた。 『ハヤテ』の勇姿を見た瞬間……彼はハヤテのごとく!のファンになったのだ。 『ハヤテ……か……お前……』 「ん?」 『……まさか名前を詐称などしていないだろうな?』 「してない! ええい!! だったらこれを見よ!」 ハヤテは生徒手帳を取り出し、個人情報の乗っているページを見せた。 まだ高校に入学していないため、中学時代の生徒手帳であるが。 『おぉ……!! こ……これは……!!』 「ふふん」 『随分と無愛想な顔の写真だな』 「君に言われたくないし見るべきところはそこじゃない! それにその時は眠かっただけ!」 『おぉー、本当に名前はハヤテではないか!!』 「だから最初っからそう言ってるじゃない! ……流石に苗字は綾崎じゃないけどね」 ちなみに『綾崎』及び『三千院』という苗字は実在しないそうである。 『まあ、ならばいいのだ。 なんというか、呼びやすくて良い』 「それは……よかった」 『では、次は私の名前だ。 いい名前をつけるのだぞ、一生物なのだからな』 「え?」 名前。 (この少女に付ける名前なんて一つしかない) ハヤテはそう思うのだが、一応聞き返す。 「ナギじゃ……だめなの?」 『いいや、ダメではない。 だが、ゲームでもデフォルトネームと言うものがよくあるだろう? 私で言えば「ナギ」はデフォルトネームなのだ、別に変えてもかまわないぞ。 別に魔法少女モノが好きならフェイトと呼んでくれてもいいし、全く関係ない名前をつけても構わないのだ』 (あぁ、そういう事なんだ) しかし、ハヤテにとってはこの少女を『ナギ』以外の名前で見ることはできなかった。 「でもやっぱりナギはナギじゃないと……しっくり来ないな」 『そうだな、キャラクターの名前を勝手に変えてプレイすると違和感があることもある。 それはそれで懸命な判断だな』 「そ、それはどうも……」 『ということは、私の名前は「ナギ」でいいんだな?』 「うん、もちろん」 『わかった、それじゃあ私の名はナギだ。 よろしく頼むよ、ハヤテ』 ナギはハヤテに向かって微笑んだ。 「う……!」 その笑顔にハヤテは思わずキュンとしてしまった。 この瞬間、ハヤテの中でナギの株が鰻登りだったことは言うまでもない。 『ところで、早速だが私は疲れた。 クレイドルを出してくれ』 「……」 『……おい、ハヤテ?』 「えっ? あ、あぁ、はい、何?」 『……クレイドルを出せと言っているのだ』 「ク、クレイドル?」 『私の入っていた箱に一緒に入っていなかったか?』 その言葉を聞いて、ハヤテは箱の中を探す。 すると、比較的大きめな白い物体を見つけた。 「えっと、これ?」 それを取り出してナギに見せつける。 『おぉ、それだそれだ!』 ナギは早く早く、と言わんばかりにクレイドルに向かって両手を伸ばしている。 「えっと、どう設定すればいいの?」 『適当に組み上げてUSBのケーブルをパソコンに差し込めばいい』 (大雑把すぎるって……) そう思いつつもハヤテはナギのために設定をする。 パソコンにUSBケーブルをつなげるという組み上げると言っていいのかわからないほど短い手順であったが。 「……組み上げた(?)けど」 パッと見ハヤテには、この物体の正体が何かわからなかった。 「これ、何?」 『簡単に言ってしまえば、充電器だ』 (これで充電器なんだ) 「でもこれ……どうやって充電するの? ナギにこれのどこかにある何かを差し込めばいいの?」 『いいや』 ナギはクレイドルの上に乗り、それに横たわりながら言う。 『この上で寝ていれば、勝手に充電されるのだ』 「……へぇ」 (最近の充電器って、進歩してるなぁ) そう思いながらハヤテは呟く。 「……科学の力ってすげー」 『まぁというわけで私は寝るぞ、起動したばかりでエネルギーが少ないのだ。 夜には充電が終わるはずだ、話なら後にしてくれ』 「え、あ、あの……」 『Zzz……』 ハヤテが止める間もなく、ナギはクレイドルで眠りについてしまった。 「……」 ナギの寝顔を見ながら、ハヤテは呟く。 「武装神姫……か」 ひょんなことから神姫のマスターになってしまった少年、鷹峰ハヤテ。 これは、ナギや友人とともに駆け抜けた、ハヤテの激動の高校生活を綴る物語である。 プロローグ 「悪夢の楽園より」 完 次回『ナギのごとく!』 『学校……お前、ニートじゃなかったのか』 ハヤテ「あくまで、執事ですから……」
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2251.html
≪ねここの飼い方・劇場版≫ ねここの飼い方・劇場版 ~序章&一章~ ねここの飼い方・劇場版 ~二章~ ねここの飼い方・劇場版 ~三章~ ねここの飼い方・劇場版 ~四章~ ねここの飼い方・劇場版 ~五章~ ねここの飼い方・劇場版 ~六章~ ねここの飼い方・劇場版 ~七章~ ねここの飼い方・劇場版 ~八章~ ねここの飼い方・劇場版 ~九章~ ねここの飼い方・劇場版 ~十章~ ねここの飼い方・劇場版 ~十一章・終焉~ ○劇場版は以下の作家さんとリンクしております 岡島士郎と愉快な神姫達 神姫狩人 HOBBY LIFE,HOBBY SHOP 武装神姫のリン 凪さん家の十兵衛さん 魔女っ子神姫☆ドキドキハウリン 師匠と弟子 トップページへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2614.html
番外その二 「食人姫 (しょくじんき)」 それは、ある日の朝方のことでございました。 まだ朝日の差し込みきらない、ビルディングの薄暗い谷間を、小さな人影がひらり、ひらりと飛んでゆくのが見えます。やや、あれは恐らく、ちまたを賑わせている『武装神姫』というものに相違ありません。 この武装神姫とは、見た目には女の子の姿をした人形と変わりがありませんが、自由自在に動き、人と同じ千差万別の個性、心をもつことから、人々に親しまれているのです。ちなみに彼女が好むのは、人目につかない暗がりから、人間というものを気の向くままに観察することでした。ですから今朝もこうして、道行く人が空き缶を蹴飛ばす姿や、時計を覗き足早で立ち去る姿を、ベランダの手すりから足をぶらぶらさせて、じっと見物していたのでございます。 と、彼女の目が、階下にあります公園のベンチに座る男をとらえました。男はなにやら所在ない様子ですが、どうしたというのでしょう。 彼女はしばらく、マンションのベランダの手すりに座ってそれを見つめていましたが、やがて背を向けると、いつの間にやらどこかへ飛び去ってゆきました。 ※※※ さて、所変わって夕方の公園でございます。 男は朝と同じように、ベンチに座ってうなだれておりました。垂れ下がった手に握られた茶封筒には、いくらかの千円札が入っています。ははあなるほど、彼は身銭を稼いでいたんでございますね。 ええ、この男はまだこの町に出てきたばかりで、日々の暮らしになんとか困らぬよう、アルバイトで生計を立てておりました。ただ、こと金を稼ぐとなると世の中なかなか上手く行かないものですから、一度にそれほどの稼ぎは得られません。今日はコンビニ、明日は居酒屋と、あちらこちらを渡り歩いていたのです。 そんな男には、一つ目標がありました。例の、武装神姫のオーナーとなり、そしていずれは『バトルロンド』にて全国に名を連ねるほどの実力者になることです。オーナーとは、文字通り武装神姫の持ち主のことでして、しかしこの武装神姫、しっかりしたものを揃えるのには意外と費用がかかるのでございます。中古となれば手は届きもしましょうが、しかしゆくゆくは全国ですから妥協をするつもりは、当初男にはありませんでした。そんなわけで、彼はただただその夢を大事に守りながら、日々の仕事を乗り越えていたのです。 しかし夢が叶わないというのは、なかなかどうして心に良くない風を吹かすものです。男はいくらも良くならない、また武装神姫が買えるようにもならない今の生活にほとほと疲れ果てておりました。 夕日が、だんだんと山の端に消えてゆきます。 男は短く息を吐いて、己の手に握られた茶封筒を見つめておりました。ああ、いつになれば俺の暮らしは良くなるのだと、男は考えました。まだ、彼を産み育てた母親への仕送りも残っているのです。 その、丁度夕日がマンションの影に隠れた時でございます。 何気なく地面を見つめていた男は、前方からコトリと、音がしたのに気がつきました。目を上げてみれば、それ、男が座っているベンチの正面、手の触れそうな距離に、銀の箱が置かれているではありませんか。 男は目を疑いました。何故って、どこからどう見ても重たそうです。風に吹かれてきたとも到底思えません。男はそこで初めて、ブランコの後ろの木陰から、二つの目玉が自分を見つめておるのに気付いたのです。 男はうろたえました。そうでしょう、訳の分からぬ怪しげなものに見つめられているとなれば、ごく自然な反応です。蛙や鼠の類いだって同じでしょう。 目玉、――いや実際には目玉と形容してもよいものか、なぜならそれは薄暗い木陰に守られて、男には電球が二つ暗がりの中で輝いているようにしか見えず、ついに正体をつかむことはかなわなかったのです――は、男に向かって言いました。 曰く、武装神姫は欲しくないか、と。 男は今度は己の耳を疑いました。男は、自分が武装神姫を欲しいと思っていることを、ごく親しい人間にしか知らせていなかったからです。突然現れたこの得体の知れないものが、何故それを知っているというのでしょう。 目玉は、男の心中を察したのか、こう続けました。 心配しなくていい。これは君への贈り物で、私は君の手助けをしたいと思ってやって来た。そのケースの中にいい神姫が入っているから、開けて持って行くといい。平気だ、新品と変わらない。 男は、ただもうこの怪異に恐ろしいのと驚いたのとで、この場から逃げだそうかと思いましたが、しかし同時に男は、何故かは分かりませんがこの箱を開けて見たい衝動にもかられました。恐い物見たさとでも言いましょうか。箱はふたがずれていて、軽く手が触れれば開いてしまいそうです。あと少しで中身が見えるか、見えないかです。 何より、これがもう少しでも離れた場所に置かれていたならばあきらめもついたでしょうが、男には己の手の届く場所にある箱を調べもせずにこの場を立ち去ることが、ついに出来なかったのでございます。 男は、恐る恐る箱に手を触れました。 始め、覗いたのは黒い布でした。続いて黒い手足と、夕日を受け白く光る髪が現れ、男は目を見張りました。確かに、彼の求めていた武装神姫に違いありません。目玉は、男が安堵したのを見て、低い笑い声を漏らして揺れました。 何度も男が武装神姫を、角度を変えて眺める度に、それは日光を照り返して美しく輝くのです。手に取ったものが、あまりにも素晴らしかったために、男は恐ろしいのも忘れて目玉に礼を言いました。茶封筒の中身を差しだそうとさえしましたが、目玉はまた低い声を漏らしながら、それは結構だと言いました。そうして、一つだけ言っておくが、君はそれをいつまでも大事にしてくれるかなと問いました。男は、もちろんだと頷いて、再び礼を言いました。 目玉はまたくつくつと揺れると、木陰の闇の中へ溶けてゆきました。 男は、自分は夢でも見ているのかと思い、何度も目をこすりましたが、彼の手の中にまだ神姫はあったのです。 ※※※ さて、男は自分の家に帰ってから、すぐにもう一度箱を調べました。 全く、見れば見るほど素晴らしい神姫です。黒い体はうるしを塗ったように輝いており、そこから少女らしい白い太ももや胸元が覗く様は艶めかしくもあります。コンピュータによって調べたところによると、この神姫は戦闘機をモチーフにしているようで、なるほど付属の鎧と思わしきものにもプロペラや機銃が付いております。 男は早速この神姫を起こそうとしました。クレイドルなるものを使って充電をすることはとうに調べてありましたから、箱に同封されたクレイドルをコンピュータにつなぎ、この神姫を寝かせました。 夜もふけた頃になってから、男が再び確認すると、神姫は充電が済んだようで起き上がっていました。話しかけてみましたが、反応は返ってきません。おかしい、俺をオーナーだと認めているはずだがと男は考えましたが、次の日は早朝からアルバイトが控えていたために、これ以上は詮索せず、男はさっさと床につきました。 ※※※ 翌々日には、男は近所のゲームセンターへと出かけました。 ゲームセンターには、『バトルロンド』の試合を行うための設備があり、男は自分の神姫の実力を試そうと思ったのです。登録のためのカードを、少し時間がかかりましたが作り、まずは練習として、人間ではなくコンピュータの命令する神姫と戦わせました。 相変わらず神姫は表だった反応を返しませんでしたが、試合を行うとなると話は別でした。能面のような表情の裏に確かな意思を宿し、男が命じるまでもなく、試合に向かってゆくのです。そうして、圧倒的な実力で、相手をなぎ倒しました。 黒い翼をきらめかせ、桃色の剣が一閃する度に、のっぺらぼうの人型人形がばったばったと切り伏せられてゆく様子は、男にこれまでにない爽快感をもたらしたのです。 コンピュータとの戦いを数試合、そして人の命令する神姫との試合をさらに数試合して、男は帰りました。その日の成績は全勝でした。 男は顔中に笑みをたたえて帰って行きました。ましたが、彼から少し離れたところで、他の客があつまってひそひそと話をしているのには気がつきませんでした。 一週間の後に、男はそのゲームセンターの番付に載るようになりました。もとより小さなゲームセンターであったことも一つの理由でしょうが、しかし男の神姫の実力は際だっていました。いったい、なぜこんないいものをただでくれてやったのだと、男は内心目玉に向かって言いました。 その二日後には、男は大会に出ようと考えました。 近所のゲームセンターではなく、駅前の大きな場所です。もういつものような試合では男は満足出来なくなっていましたから、少し遠出をして力試しをしようと企んだのです。もう男はすっかりバトルロンドと、自分の神姫の強さの虜になっていました。相も変わらず、神姫が自分の言葉に人間らしく答えを返してくれないのが、もどかしくもありましたが。 ※※※ さて肝心のその大会でございますが、駅前の大会といっても、男が期待していたような規模ではありませんでした。人数も実力も、男が頂上を争うにはあまりにぬるすぎるように感じられたのです。男は、口には一切出しませんでしたが、この分では午後は暇になりそうだと考え、他の参加者が神姫に指示を出す様をあくびをかみ殺して見ていたのでございます。 そういうわけでしたから、男は難なく準決勝まで進出しました。 さて、今度の男の相手は見目麗しい女の子でした。二十か二十一に上がったか上がらないかくらいの年齢に見え、付き添いらしい女友達と二人連れで参加しているようです。試合の準備をしている間、彼女らの話し声は男の方まで聞こえてきました。 「……ねえシューちゃん。うち、ほんまに参加しても良かったんかなぁ」 「なにゆーてんねん。アンタただでさえバトルせーへんのやし、こういう時くらいパーっと結果出して見せつけてやらなあかんて」 男は内心彼女らを憎たらしく思いました。はん、見るからにいいとこのお嬢さんだ。馬鹿にしていやがる。お前らのような奴らだったら、わざわざこんな場所に出てこなくてもいいだろうに、さっさと俺に勝ちを譲らないか。 こんな調子でしたから、それが顔にも表れてしまったのでございましょう。相手の女の子は、男がいつのまにか自分を見ているのにうろたえましたが、それでも小さな声で挨拶をいたしました。 「あの、どうぞよろしゅう」 と、両手を着物の裾で揃えておじぎをしたその仕草は、傍目には非常に可愛らしく映りましたが、男にはそれがまた小憎らしく思えてなりませんでした。しかし、相手の神姫が今にも斬りかかりそうな剣幕でこちらを睨んでおりましたので、面倒が起こってはいかんと男は視線を逸らしました。 さあ両者互いに神姫を戦いの場に送り出し、さてさて一体どうなることか。 相手方の神姫は、男の神姫と対面して、いくらか驚いたようすで目をしばたたかせました。が、審判の合図と共に、半歩下がって距離を取りました。 男はこの試合、今までと同じようにあっけなく決着がつくものと思っていました。しかし、それはものの見事に外れてしまったのでございます。 まず始めに仕掛けたのは男の神姫ですが、相手はひらりひらりと身をかわし、まるで触れさせてくれる気配がありません。こちらが剣を突き出したかと思えば、体を右へ左へひねり、およそ敵を打ちのめせるとは思えない横笛で、男の神姫の足を軽く払うのです。おまけに背負った三味線は、つま弾く度に弦を伸ばし、男の神姫を絡め取ろうとするではありませんか。試合は膠着し、男はだんだん焦りを覚え始めました。 相手の神姫は、男の神姫と同じ、能面のような表情でしたが、時折なにを思ったのか、首をかしげたり眉をひそめたりといった動作を端々に挟むのでした。しかし男はただもうこの試合に勝つことだけを頭に置いておりましたから、そんなものは目に入りやしません。ええ、それで男は、対戦相手や観客までもが男の神姫を見て、不審そうに首をかしげているのに気がつかなかったのでございます。 対戦相手の女の子は始め、口をもごもごと動かすだけでしたが、男の神姫が剣を閃かせ、彼女の神姫がそれを三味線の弦で絡め取った瞬間、とうとう意を決したように言ったのです。 「……コウメちゃんやろ?」 男は思わず目を上げて彼女を見ました。 「ねえ、あなた、サオトメくんのコウメちゃんやろ?」 男は始め、ただぽかんと大口をあけて見ていましたが、彼女が自分の神姫に向かって話しかけていると、しばらくしてから分かったのです。 「え? ……ああっ、ホンマや! コウメちゃんやんか! ……ちょっとお兄さん、その子どこで手に入れたん? ドロボーかアンタ!」 泥棒。付き添いの女の子の言葉に、男はもう驚くばかりです。一体こいつは俺に向かってなにを言っているのだと思いましたが、なんとその場にいた観客までもが、彼女の言葉にああっと納得した様子でいるではございませんか。 「そうや、どっかで見たことあるなぁと思うたらコウメちゃんや。……その子な、ウチらの知り合いの神姫やねん。一年ぐらい前から行方不明になっとったんやけど、はは~ん。アンタが持っとったんかこのヘンタイドロボーが!」 「ちょっとシューちゃん、言い過ぎやわ」 「でも見てみい! コウメちゃん前はホンマに気立てが良くてようしゃべる子やったで。こいつがなんやいじっておかしくしたんとちゃうか!?」 「シューちゃんたら。……あの、だいじおへんかったら、お話聞かせてもらえませんやろか?この試合、無効にしてもろうてもええですから」 相手の女の子は優しくしずしずとそう言いましたが、どうやら観客の誰かがこの店の店員を呼んだようです。男の腕が掴まれました。 男は気が動転してしまいました。あの目玉にしてやられたとも思いました。どうやら彼女らの話を総合すると、この神姫は盗まれたものだったらしいのです。しかもこの場の反応から察するに、相当に名の知れた神姫だったに違いありません。これは大変でございます。他人の神姫を勝手に自分のものにしたあげく、それを使ってしまったのですから。 神姫同士は互いに一歩も譲りません。男は大慌てです。ただあの時公園のベンチにたまたま座っていたばっかりに、男は泥棒の罪を着せられなければならないのです。そんなことになってはたまりません。ですから、男は声を限りに叫びました。 「ち、違う! こいつはもらったんだ、あいつ、に――――」 その時でした。 これまでなんの反応も示してこなかったはずの男の神姫の表情が、まるで氷が溶けるように変わったではありませんか。 対峙していた女の子の神姫は、はっと目を広げ、男の神姫を見ました。男の神姫は、はじめここがどこだかといったふうに呆けた表情をしておりましたが、やがてその顔にありありと恐怖の色が浮かんだのです。 「ぼ、ぼたっ、た、たすけっ――――!!」 神姫は、男の声もかすむほどに、声高く叫びました。途端に、がくがくと前後に体を震わせ始めたではありませんか。 女の子の神姫は、突然なにかを察知したように三味線の弦を千切り、背後にいる自分の主人を振り返り、キッと鋭く言いました。 「主ッ! お下がり下さい!」 その瞬間でございました。 男の神姫が入った装置の中から、だいだい色の炎が、息をつく間もなくごうっと吹き上がったではありませんか。ですから、手前にいた男はたまりませんでした。顔中に焼け付くような痛みと、人々の悲鳴、機械の破片をあっと言う間もなく受け、炎の舌に飲まれたようにそのまま意識を手放してしまったのでございます。 ※※※ 太陽が、さんさんと町を照らしております。 丁度お昼の休憩にするには良い時間でありましょうが、ここから見えます病院の敷地に、一台の救急車が、息せき切って入ってくるのがみえます。 あ、今救急隊員が担架を降ろしたようでございますが、乗っているのはあの男です。目にも指にも、ミイラのように痛々しく包帯が巻いてあります。あの様子では、今後使い物になるかどうかも分かったものではありません。 一体どうしてあのような奇怪な事件が起こったのか、全く不思議でなりません。男があの箱を開けさえしなければ、いや、ベンチに座ってさえいなければ、このようなことにはならなかったのかもしれませんが、それももはや機械が破裂してしまった今となっては、調べようもないことでございます。 ……さて、男の様子を、敷地の隣に生えた木の上から観察しているものがありました。例の、ベランダにいた神姫でございます。 彼女は、男が運ばれてゆく一部始終をじっと見物しておりましたが、やがて男が病院のガラス戸の後ろに消えてしまうのを確認すると、くつくつと低い声を上げて笑いました。どうしたのでしょう。これはあくまでもただの推論でございますが、いつまでも大事にすると言ったはずの男が、我が身かわいさにあっけなく神姫を手放そうとしたことが、おかしく感ぜられたのかもしれません。しかし、それも詳しくは調べるべくもないことでございます。 そうして、いつの間にやら彼女の姿は、洛中を千年もの間吹き渡るこの風に乗って、全くかき消えるように、どこへともなくいなくなってしまったのでございます。 武装食堂へ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2158.html
ウサギのナミダ ACT 1-28 ■ マスターは家に帰るまで、ずっと無言だった。 胸ポケットの中で、やっと落ち着いたわたしは、マスターの顔を見上げる。 マスターはいつも真剣な表情の人なのだけれど、なにかいつも以上に脇目も振らない様子だった。 すでに夕闇が迫っている。 足早に帰宅を急ぐ。 マスターが何をそんなに急いでいるのか、このときのわたしにはまだ分かってはいなかった。 家に着いて、マスターがまずしたことは、わたしをクレイドルに座らせることだった。 わたしは素直にクレイドルに座った。 わたしは少し沈んだ思いで、マスターの指示を待つ。 今日のわたしを、マスターはどんな風に思っただろうか。 雪華さんとの試合の後、なし崩しに騒ぎになってしまって、マスターとお話する時間もなかった。 あの時、わたしは感情の高ぶるままに言葉を口にした。 そんなことは初めての経験で、今のわたしは自分の行動にとても驚いている。 マスターはとても驚いていた。でも、わたしは言葉を止めることができなかった。 分かってもらいたい、それを伝えなければいけないと思うほどに、強い想いだった。 それは後悔していないけれど。 マスターがどう思ったのか、それだけは気がかりだった。 マスターは、カップに飲み物を入れて、机の前へとやってきた。 いつものようにPCの電源を入れると、椅子に腰掛ける。 クレイドルに座るわたしと向かい合う格好になる。 カップを机におく。 そして、軽く吐息をついた。 「さて……どこから話そうか、考えていたんだが……」 マスターはいつものように、真っ直ぐわたしを見た。 だけど、無表情じゃない。 どことなく優しげな、落ち着いた表情で、でも瞳にはなにか決意のようなものを秘めているように見えた。 「ティア……お前に分かるかな……どうしても欲しいものが、どうしても手に入らないときの苦しみってやつが」 え? マスターは何を話しているんだろう。 わたしは目をぱちくりとさせて、マスターを見る。 マスターはあまり表情を変えないまま、優しい口調で、ゆっくりと話し始めた。 「俺はもうずっと……お前と会うずっと前から、武装神姫のオーナーになりたかった。 バトルロンドを始めたくてな。 神姫に興味を持ったのは、お前も会ったことのある、海藤とアクアを見てからだ。 ……そうだな。今回の件の報告も兼ねて、今度会いに行くか。 海藤とは高校の頃から仲が良くて、違う大学に進学しても、よく会ってた。 もっぱら俺があいつの家に行ってたんだけど。 そのたびに、海藤とアクアの仲の良さを見せつけられてな……俺だけじゃなくて、他の友人たちも神姫に興味を持ったというわけさ」 マスターは独り言を言うように話を進めていく。 これは……この話は、マスターの本当の想い……。 「それからずっと……探していたよ、俺の神姫を。 友達が次々と神姫のオーナーになっていく中で、俺は神姫を迎えられずにいた。 あちこちのショップにも行った。 神姫センターにも行って、バトルロンドの観戦もしたし、そこで興味が出た神姫のパッケージも手に取った。 新発売の神姫の情報はくまなくチェックした。 メーカー展示会に気になった神姫を見に行ったりもした。 ネットオークションで安く出回ってるパッケージ品もチェックしたし、ネットショップの掘り出し物も何度もチェックした。 ……海藤の家でアクアを見てから、お金を握りしめてホビーショップに行ったことだって、一度や二度じゃない。 それでも……それでも俺は、神姫を買うことに踏み切れなかった」 マスターの寂しそうな表情。 その時の気持ちを、思い出しているのだろうか。 「なぜ、ですか?」 わたしは尋ねた。 もちろんその時に、マスターが神姫をお迎えしていたら、わたしは今こうして、マスターと話をしていることもないのだけれど。 「どうしても……納得が行かなかった。 どの武装神姫のパッケージを手にしても……これが俺の神姫だって、思えなかった。 だから、どんなに神姫マスターになった友達が羨ましくても……俺は神姫を迎えられなかったんだ。 どうしても、自分が心から納得の行く神姫がほしかったんだ」 マスターはわたしを見つめながら、かすかに苦笑した。 「その頃の俺の気持ち……分かるかな……。 武装神姫のオーナーになりたくてなりたくて……狂おしいほどに神姫が欲しくてさ。 そのくせ、どこを探しても、自分の神姫が見あたらないんだ。 すでに発売されているものなら、探しようもある。プレミアついていたって、お金を出しさえすれば手に入る。 でも……この世にいるかどうかもわからない『自分が納得の行く神姫』を探すなんて……雲を掴むような話だ。 探して探して……必死で探しても見つからなくて……あの何とも言えない、焦りというか渇きというか……そんな、胸をかきむしりたくなるような焦燥感が、いつも心にあってさ……。 神姫の情報を集めたり、見たりするのは楽しいのに、それが欲求を逆撫でして苦しくなるような……そんな感覚に苛まれる。 友達はみんな神姫マスターになって、楽しそうに、幸せそうにしていてさ。 それで俺はまた焦りと羨ましさにかられて……その繰り返しさ」 マスターは自嘲するように笑う。 ……知らなかった。 マスターが武装神姫にそんなに強い想いを抱いてたなんて。 わたしは呟くように話すマスターの顔から、目が離せなくなっている。 「……あの夜……お前と出会ったあの夜、俺は飲み会の帰りだった。 気心知れた仲間たちとの飲み会だったんだけど……俺はちょっと機嫌が悪くなった。 神姫マスターになった連中は、口をそろえて言いやがる。 『そんなにこだわって選んでないで、とりあえずお迎えしてみればいいじゃないか』ってな。 連れてきた神姫と笑いながら……そう言うんだ。 腹立たしかったよ。 とりあえず、ってなんだよ。大切なパートナーを選ぶのに、こだわるのが当たり前だろう。 でも結局、俺は神姫マスターでない時点で、仲間たちの言葉に反論もできなかった。ただ、苦笑するしかなかったんだ」 そう言うマスターの表情は、少し悔しそうだった。 その時の感情を思い出しているのだろうか。 そして、マスターは言った。 「その後で……お前に出会ったんだ……」 ものすごく、安心したような、優しい顔をして。 見たことない、そんなマスターの顔。 わたしはかえって緊張してしまう。 「ゴミ捨て場で、あいつが……井山が何か悪態ついて捨てたのを、たまたま見かけたんだ。 ゴミのポリ袋の上でうめいていたのがお前だった。 見た瞬間に『ああ、これが俺の神姫だ』って思った。 当たり前みたいに……いや、衝撃的だったかな。どうだろう。 ただ、これが運命なんだって思ったんだ。 ……いや、違う。格好つけすぎだな。 たぶん、お前に、一目惚れしてしまったんだ」 照れくさそうに笑うマスター。 今日のマスターはいつもと違う。 まるで菜々子さんと話すときのように、くるくると表情が変わる。 「それでお前を連れて帰ってきた。 クレイドル買ってきて、充電して、メンテナンス用のソフトをPCにセットアップして……舞い上がっていたと思う。 俺の神姫がやっと手元に来た、ってな。 お前の記憶を見て……俺も一瞬ひるんだ。それでも、お前を自分の神姫にしたい気持ちは変わらなかった。 これが運命でなくて何だ、って思ったよ。 ……そしたらさ、目覚めたお前が言うんだよ。 『わたしをお店に戻してください』 って」 ……あ。 思い出した。 あの時わたしは、自分のマスターになりたいというこの人に、そう願ったのだ。 あの時、マスターはわたしにものすごく怒ったけれど。 わたしはなんで怒られるのか、よくわからなかったけれど。 いまなら分かる気がする。 「そりゃないだろ。 俺はやっと、やっとの思いで自分の神姫を見つけだしたって言うのに、地獄のような場所に返してください、じゃあさ……。 そりゃあ怒りもするさ、俺でも。 どうしても諦められなかった俺は、お前を言葉で丸め込んだ。 お前が武装神姫になりたいかどうかなんておかまいなしで……俺が望む戦闘スタイルを押しつけた。 さんざん練習させて、つらい思いもさせた。 お前が俺のところから逃げられないのが分かっていて、そんなことさせていた」 マスターの言葉に、何か違和感を感じる。 わたしは……武装神姫になりたくなかった? マスターが望む戦闘スタイルが嫌いだった? 練習は、つらかった? マスターのところから逃げ出したかった? ちがう。 ちがいます。 わたしの想いとマスターの考えはすれ違っている。 マスターは無理矢理わたしを武装神姫にしたというけれど。 わたしがそう望むのなら、それは、無理矢理ではないんじゃないですか? 「……それでも、俺は嬉しかったんだ。 自分だけの神姫と、俺たちだけの戦闘スタイルで、バトルロンドを戦えるのが。 夢が叶った、と思った。 久住さんや仲間たちにも出会えた。ゲームセンターで過ごす時間は……バトルロンドをプレイしている時は、本当に楽しかった。 そんな時間をくれるお前に、ずっと、感謝していたんだ。 でもな……心の底ではずっと思っていた。 本当は、俺の楽しみのために、ティアを無理矢理戦わせているだけなんじゃないか、って。 お前の自由を奪って、自分だけ楽しんでいるエゴイストなんじゃないかって」 「そ、そんなこと……ありません!」 わたしはついに口を出してしまった。 マスターの話を遮ってしまった。 臆病な心が、顔を覗かせようとするけれど。 でも、わたしは勇気を出して、言う。 声が震えててもかまわない。 言わなくちゃ。 だって、マスターは間違っているから。 「わたしも……わたしも幸せでした。 薄暗いお店しか知らないわたしに、世界を教えてくれたのはマスターです。 わたしが知らなかった気持ちを……楽しい気持ちも、嬉しい気持ちも、風の心地よさとか、友達の優しさとか、技を自分のものにできたときの喜びも……全部全部、マスターがくれたんです」 こんなに幸せでいいのかって、今でも思ってる。 マスターは少し驚いたような顔をしていた。 「……そうなのか?」 「そうですよ」 「それなら……お前がそう思ってくれるなら、俺も救われるよ。 俺はこの間思ったんだ。 ……もし、バトルロンドができなくなったとしても、お前が走ることができれば、それでお前が喜んでいるのなら、それでいいって。 何より大事なのは、お前がそばにいてくれることだってな」 ほっとした表情で、そんなことを言った。 やっとわかった、マスターの本当の気持ち。 でも、わたしは以前から疑問に思うことがある。 「あの……」 「なんだ?」 「ほんとうに……ほんとうに、わたしなんかでいいんですか」 「わたしなんか、って言うな」 いつもの言葉。 でも、厳しいところは、表情にも口調にもなくて。 優しく微笑んでいる。 わたしに向かって。 「お前じゃなきゃ、だめなんだ」 ……ああ。 さっき言っていたマスターの気持ちが、いま、少しだけわかった気がする。 欲しくて欲しくて、それでもどうしても手に入れられないもの。 わたしにとって、それは、マスターの笑顔だった。 いま、このマスターの笑顔こそ。 わたしがずっと、欲しくて欲しくてやまなかったもの……。 「でも……わ、わたしは……マスターに、とんでもない迷惑をかけてしまって……」 「迷惑なんて、いくらでもかければいい。それでもいいんだ」 「じゃ、じゃあ……手の甲をわたしに差し出すのは……?」 「お前、掴もうとすると怖がるだろ」 「……わたしの前で、表情を変えないのも……?」 「なんだ、気がついていたのか? 俺が表情を変えなければ、お前が不用意に怖がらなくてすむだろ」 やっぱり。 無表情のことは、この間、やっと気がついたのですけど。 マスターは照れくさそうな顔をして、頭を掻いた。 「まあ……俺は元々、仏頂面だからな……」 「で、でも……マスターとわたしは、毎日顔を合わせてました。 それなのに……ずっと無表情でいるなんて……」 「そんなの、お前が俺の神姫でいてくれるなら、大したことじゃない。 いつかお前が俺のことを心から信じてくれたら……そうしたら、掴むことも許してくれると思ったし、笑いあうこともできるって……信じていた」 そんな……。 「わたしは……ずっとマスターに笑って欲しいと思っていました」 「そうなのか?」 「そうですよ」 マスターは苦笑する。 「そうか……俺たちはお互いに、お互いの笑顔を見たいと思いながら、ずっとずっと遠回りしてきたんだな……」 「……そうですね」 「なぁ、ティア……」 マスターは不意に真剣な表情でわたしを見た。 真っ直ぐな視線。 この人は真っ直ぐにわたしを見てくれる。初めて出会ったときから、ずっと。 「俺の神姫で……いてくれるか? 俺はバトルロンドを続けたいけど、お前が嫌だというならそれでもいい。 こんなわがままで情けない男でも、マスターと認めてくれるか?」 ……どうしてそんなに自信なさげなんですか? もう答えなんて、決まりきっていることじゃないですか。 それをはっきりと伝える方法を、わたしは思いついた。 「マスター。手のひらを出してください」 「……? こうか?」 マスターは怪我をしていない方の左手を、手のひらを上にして、わたしの前に出した。 わたしはクレイドルから立ち上がり、マスターの手に歩み寄る。 そして、その手の上に腰掛ける。 ちょっと緊張したけれど、何も怖いことなんてなかった。 この人を信じているから。 マスターの親指に顔を寄せて、キスをした。 「これは……わたしの誓いです」 顔を上げて、マスターを見る。驚いてる。 わたしはうつむいてしまう。 マスターの顔、まともに見られない。いまさら、とても恥ずかしくなって。 「わたしはあなたの神姫です。 わたしのマスターは、世界でただ一人、あなただけだと……誓います」 マスターの手はあたかかくて、心地いい感じがした。 もう一度、マスターを見る。 わたしの顔はこれ以上ないほど赤かったかも知れないけれど。 マスターも、とても照れくさそうな顔をしていた。 やがて、見つめ合うわたしたちは、どちらからともなく笑い始めた。 マスターと初めて心から笑いあえた。 ああ。 わたしが一番欲しかったものが、今ここにある。 長い長い一日の果てに。 わたしは、本当の意味で、遠野貴樹の武装神姫になった。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/240.html
神姫(?)設定 『マオ』 開発コード・Maxwell-X01 世界に普及した身長15cmの玩具、武装神姫になりすます事でターゲットに接近し、 暗殺を行なう為に開発された『人殺しの道具』。 しかし創生主・柏木一の組織への反旗により、施設内の全ての人間を殺害し逃亡。 柏木一の意思により柏木浩之の元で暮らす事に。 実は射撃が苦手。 立ち止まっている状態からなら重火器でも精密なワンホールショットをしてみせるが、 自分が動いていると全然当てられない。 反動制御などは神レベルなのだが、戦闘の基本たる移動射撃ができないのだ。 本来の運用では自分よりも遥かに大きい人間が標的で、 しかも加速時間からの射撃なので動きながら撃つ事が全く考慮されていない。 ボディは市販品をチューニングしたもので、特に変わった点は無い。 問題はコア(頭部)で、いくつかの常識を逸脱したテクノロジーが搭載されている。 1.加速時間ドライブ 本編参照。 2.真空機関 永久機関。 真なる空(虚無とか虚空と言った方が適切なのだが)から 無限のエネルギーを取り出す装置。 2006年の時点で『理論だけでも存在している』唯一の永久機関である。(本当) 物理学では『何も無い状態』は本当に何もないのではなく、 プラスとマイナスの存在が均衡して『どちらも存在していないように見えるだけ』と 言われている。 宇宙の創生はこの”真なる空”の状態から波の様にプラスとマイナスへの揺らぎが生じ、 物質や熱が生まれて宇宙が誕生したとされているのだが、 同じ現象を箱庭で再現しようとしたのが真空機関だ。 マオに搭載された真空機関は出力方式を電力に限定されている。 理屈の上では機関の大きさに関係なく膨大な電圧を出力できるのだが、 接続できる配線の太さがボルトネックになり低出力に抑えられている。 もうひとつの機能がコアの冷却だ。 無限に『もってこれる』のと同様に、無限に『もっていく』こともできる。 これを利用し、高性能ゆえに膨大な熱を吐き出す 結晶コンピューターの冷却を行なっている。 3.結晶コンピューター マオの思考・記憶をつかさどる珪素脳。 熱伝導率の非常に高い単一の固体で構成されており、 それ自体がヒートレーンの役目も果たす。 思考速度はそれなりだが、とにかく記憶容量が異常に多い。 欠点は発熱の多さで、ヒートシンク程度では到底間に合わず融解してしまう。 小型の筐体に収めるには無限に熱を食わせられる真空機関との併用が不可欠。 4.分子結合バッテリー 六角形の分子結合を持つ物質。 従来型が六角形の中に1つの電子を捉えることしか出来なかったのに対し、 1つの分子で6個の電子を捕らえられるように改良された。 安定性が高く(どこかのバッテリー見たく燃えたりしないよ?)、非常に軽く、 体積に対し大容量なのだが、製造が難しく恐ろしく高価。 恐ろしいのが、これらが「所詮は人の作りし物」だという事。 今の所同等な存在は出てきていないが…真空機関を研究している(いた)のは 柏木一だけではないし、加速時間ドライブにしても 機密が漏れていなかったという保障はどこにもない。 一度作られた物なのだ。 他の人間に作れないと何故言い切れようか? それだけではない。 もしマオが人類に反旗を翻したら? 彼女の珪素脳には研究所にあった全てのデータが記録されている。 もちろん自分自身の製造方法も、だ。 加速時間ドライブを併用した絶対的なハッキング能力、人を簡単に殺せる力、 自分の姉妹やパーツを作る技術。 真空機関の出力が限定的なのは配線の都合だけで、 暴走させれば小国を地形ごと消し飛ばす程の破壊力をもった兵器にもなる。 今は柏木浩之を慕う故に人類に敵対する事はないが、 ある意味人間と同じ「感情を持った」存在だ。 いつ何処で気持ちが変わってしまうのか。 人類を滅ぼして地球を神姫の星に変えてしまうのか。 当のマオ本人ですら、人類に友好的であり続ける保障は出来ないのだ。 『小姫(こひめ)』 天使型を祖とするカスタム神姫。 巫女装束に誘導特性を持った投擲武器の護符(突刺+スタン効果)・ 射撃武器の長弓と趣味に走りまくった装備。 袴の中の脚部はエアバイザーの翼を加工した物に交換されており、、 本体の浮遊、護符・弓矢の加速、反発フィールドによる防御を可能にしている。 浮遊だけに専念すれば高度を2m前後で維持できるが、 反発フィールドも展開するとせいぜい数cmが限界。 フィールドを前面に集中配置して繰り出される『破魔矢』は非常に強力で、 亜高速レールガンにも匹敵する破壊力を発揮しつつも曲線射撃を可能にする。 しかし1発ごとにフィールドの再配置が必要な事、 発射の前後は防御性能が皆無になるなど、いつでも使える武器ではない。 対マオ戦では使っていなかったが、反発フィールド内に微粒子を散布する事で ビームやレーザーにも高い防御力を発揮する。 マオに敗退した後に、近戦防御用の5連装ショットガンユニットを両肩に装備した。
https://w.atwiki.jp/battleconductor/pages/59.html
「機械仕掛けの姫のwiki」の用語集 用語集1st神姫(ふぁーすとしんき) 2nd神姫(せかんどしんき) 3rd神姫(さーどしんき) EXウェポンセット(いーえっくすうぇぽんせっと) MMS(えむえむえす) SOUND VOLTEX(さうんどぼるてっくす) 悪神姫(あくしんき) いちかのごちゃまぜMix up!(いちかのごちゃまぜみっくすあっぷ) エアパスタ(えあぱすた) オトカドール(おとかどーる) オトメディウスX(おとめでぃうす・えくせれんと!) お役所神姫(おやくしょしんき) コンダクトン(こんだくとん) 職業神姫(しょくぎょうしんき) スティールクロニクル(すてぃーるくろにくる) スプリングベジタブル(すぷりんぐべじたぶる) チェイスチェイスジョーカーズ(ちぇいすちぇいすじょーかーず) テレビアニメ「武装神姫」(てれびあにめ・ぶそうしんき) 2・22事件(に・にーにーじけん) Naked素体(ねいきっどそたい) ノラ神姫(のらしんき) バトコンおじさん(ばとこんおじさん) パチスロ武装神姫(ぱちすろ・ぶそうしんき) 武装神姫R(ぶそうしんき・あーる) 武装神姫Moon Angel(ぶそうしんき・むーんえんじぇる) フルセット(ふるせっと) ボンバーガール(ぼんばーがーる) マシニーカ(ましにーか) 麻雀ファイトガール(まーじゃんふぁいとがーる) メガミ神姫(めがみしんき) ライトアーマー(らいとあーまー) リデコ(りでこ) リペイント(りぺいんと) コメント 「機械仕掛けの姫のwiki」の用語集 「武装神姫」の総合的な用語集です。 [注意!]実神姫が販売されていた頃以来のwikiですので、総じてかなり情報が古くなっています。 用語集(あ か) 用語集(さ た) 用語集(な は ま や ら わ 記号) 用語集 本作品に密着している用語については、以下をご参照下さい。 用語集 (あ~な) 用語集 (は~わ・英・数) 1st神姫(ふぁーすとしんき) MMS1st素体を使用した神姫の俗称。 2006年の武装神姫初登場以来長らく採用されてきた素体で、本作中では初代アーンヴァル、初代ストラーフ、ツガル、ジルダリア、ジュビジー、エウクランテ、イーアネイラ、ブライトフェザー、ハーモニーグレイス、サイフォス、紅緒、ヴァッフェドルフィン、ヴァッフェバニー、ウェルクストラ、ヴァローナ、フォートブラッグ、ムルメルティア、飛鳥、アーク、イーダ、フブキ、ミズキと、大多数の神姫が該当する。 なおシュメッターリングとハウリン、マオチャオも本来はここに該当するが、本作では当初のデザインコンセプトを重視してかいずれもプロポーションが大幅に変わっており、3rdのSmall素体相当とされている。 2nd神姫(せかんどしんき) …というものは存在しない。何故なら「MMS素体を使用した他版権のキャラクターフィギュア」に採用されているのが「MMS2nd」規格だからである。 その多くは「beatmaniaDX」「クイズマジックアカデミー」「オトメディウス」といったコナミ内製作品、また「天元突破グレンラガン」のように放映当時コナミがスポンサーを務めていた作品からの出典となっている。 そして、悲劇のMMS「SOL」もこのカテゴリーに該当する。 + SOLとは… Special Operations Lady。SWATやデルタフォースといった、既存の特殊部隊をモチーフとするシリーズ。 第8弾組と同時期の発売で、豊富な装備類が最大の売りだったが、ベストやズボン等に短期間で劣化してしまう軟質素材「TPR(サーモプラスチックラバー)」を使用していたため、開封した時点で既に崩壊していたという事案が頻発。 結果、発売後たった2ヶ月でコナスタでは取扱停止、そのまま絶版となってしまった。 ちなみに前述「グレンラガン」のヨーコにも同じ素材が使用されており問題となったが、こちらは再生産時に素材がマトモなものに変更されている。 ちなみに、「スカイガールズ」の各キャラには胸部等を小改修した1st素体、「ハヤテのごとく!」コラボモデルの武装神姫ナギには3rdSmall素体が使用されている。 もしレイシスがMMSフィギュア化されていたなら、このカテゴリに入ったものと思われる。 3rd神姫(さーどしんき) MMS3rd素体を使用した神姫の俗称。2010年以降の後期ラインアップにおいて採用された新設計の素体で、Tall/Smallと2種の身長が設定された。 プロポーションが若干変化し、関節可動域も1stを上回る反面、1stとの武装の互換性や素体そのものの耐久性は若干犠牲になった事が聊か物議を醸した。 更に現在では、首関節を筆頭に経年劣化で割れ易くなっているという問題もユーザーサイドから指摘されている(当然だが既に絶版品であるため、公式でのサポートなどを期待してはならない)。 本作中ではTallモデルがアーンヴァルMk.2(及びテンペスタ)、ストラーフMk.2(及びラヴィーナ)、ラプティアス、アルトレーネ、紗羅檀、オールベルン、ジールベルン、プロキシマに。Smallモデルがガブリーヌ、蓮華、アルトアイネス、ベイビーラズ、マリーセレスに採用されている。 なお、アーティルは実神姫としてはSmallモデルだが、本作稼動当初はTallモデルであるかのように扱われていた(現在は修正されている)。 EXウェポンセット(いーえっくすうぇぽんせっと) 武装神姫のシリーズ開始から間もなくして、より廉価な「ヘッドと武装のみ」というセット扱いで販売された神姫。 ヴァッフェバニー、ツガル、フォートブラッグ、ヴァッフェドルフィン、グラップラップ、シュメッターリング、ゼルノグラードがこれにあたる(リンクのない神姫は本作未登場)。 一部の例外(ツガルBX及びフォートブラッグのリペイントモデル「ダスク」、最後発のゼルノグラード及びリペイントモデル「ベリク」)を除き、素体を持たない仕様で発売されたため、完全な形にするには「Naked」と呼ばれる素体を別途購入するか、他神姫からボディを都合する必要があった。 使用するNaked素体については、1st神姫用の使用を推奨する(設計が変更された3rd神姫用では、使用出来ない状況がある)。 ちなみに5周年記念イベントのトークショーによると、一番売れたのはフォートブラッグだった模様。 MMS(えむえむえす) Multi Movable System。可動フィギュア界の大御所・浅井真紀氏が原型を製作し、コナミデジタルエンタテインメントが販売したアクションフィギュア、その素体部分の規格をさす。 当時としては圧倒的な関節可動域と、2021年現在でもなお通用し得る驚異的な耐久性を誇る。また汎用ジョイント径は3.3mm(腿部は4mm)で統一されており、ユーザー側の好みで自由に組み変える事が可能。更にユーザーサイドで武器をガレージキットや他社プラモデル等を元に造り上げたり、人形のように布製の服を着せたりといった事まで出来た。 こうした事から、現在静かなブームとなっているすべてのガールズプラモデルにとって「事実上の始祖扱い」となっている。 誰が呼んだか「可動フィギュア界のオーパーツ」。 厳密には1st~3rdの三種規格が存在し、武装神姫に採用されているのは最初の「1st」及び最後の「3rd(Tall/Small)」である。 SOUND VOLTEX(さうんどぼるてっくす) KONAMI製の音楽ゲーム。アナログデバイス(通称・ツマミ)とBTボタンをタイミングよく操作することで、流れる音楽にエフェクトをかけていくのが特徴で、現在は6作目の「EXCEED GEAR」が稼働している。 最大の特徴は“楽曲を公募していること”。楽曲提供者にはゲームをプレイしていることを公言している人もおり、運営側とプレイヤー側の距離感の近さはある種武装神姫に近い。 バトコンには、2022/12/22にデフォルトのナビゲートキャラであるレイシスが初のコラボキャラとして実装されたという繋がりがある。 ちなみに「ボンバーガール」ではレイシスの実装が稼働当初から告知されているが、そちらには何故か未だに実装されていない。 悪神姫(あくしんき) 主にレイドボスバトルで登場する存在。あるいはレイドボスバトル(第七回)で登場するウェルクストラ型リペイント機の、便宜上の呼称。 本作に於いては、理由は様々ながらも「エラーと結託して悪事を行う神姫」の総称であるようだ。 ちなみにバトロン~バトマス期には、不正改造により戦闘力を底上げされた神姫を「イリーガル神姫」と呼んでいた。 いちかのごちゃまぜMix up!(いちかのごちゃまぜみっくすあっぷ) 2022年11月1日~2023年1月11日、「ビートマニア」などコナミの音ゲー全般にて開催された連動企画。 楽曲のアンロックのために必要なブーストの条件には「音ゲージャンル以外のコナミ製ゲームもプレーする」というものがあり、「ボンバーガールレインボー」「クイズマジックアカデミー」等と共に本作もまた、その対象として含まれていた。ちなみにステクロとCCJは含まれてない ところが、このイベントが開始された途端、明らかにブースト目的のプレイヤーによるものと思われる「捨てプレー」がジェムバトル/レイドボスバトル問わず散見されるようになり、その一方で音ゲーメインのプレイヤー達からは「訳が分からないゲーム」とSNS上にて批判を喰らう結果となってしまった。 正直、本作のチュートリアルが言葉足らず状態である事も問題ではあるのだが、そもそも長年の稼動によって操作系及びゲーム性が洗練されてきた音ゲーのメインプレイヤー層からすれば、その対極といっても過言ではない本作を、初見でいきなり遊びこなす事自体が至難の業といえるだろう。 好意的に考えれば、音ゲー以外のゲームにも触れてもらう事でジャンル全体の再開拓を意図したもの、なのだろうが…。 エアパスタ(えあぱすた) 「エアパスタすれば食費を神姫愛に回せるだろ?」との事で、神姫界隈で昔から伝統的な食物(?)だが、その実態は単なる「食事抜き」の隠語。 当時世代においても比較的若年層の間で多用された言い回しだが、既に実神姫そのものが絶版されて久しい現在においては高騰しがちな中古市場でしか取り扱われておらず、それが本作で参入したマスター達にとっては当時世代以上に高い壁となっている現実がある。 とはいえ、趣味は健康こそが大前提。そして、その健康を損なう食事抜きなど本末転倒。 従って、このような事を言っている間はまだまだ「おこちゃま」である。 オトカドール(おとかどーる) 2015年、コナミデジタルエンタテインメント→コナミアミューズメント(2016年再編以後)により稼動していたコナミ初の女児向けトレーディングカードアーケードゲーム。正式名称は「オトカ♥ドール」と、中央にハートマークが入る。 タイトルと同じ「オトカドール」と呼ばれるキャラクター(達)を操作してコーデバトルをするという内容で、「モンスター列伝オレカバトル(2012年~)」のカード生成システムが使用され、バトルそのものにはコナミ伝統の音ゲーのノウハウも取り入れられている。 また、レイシスのお里こと「SOUND VOLTEX」シリーズとも何かと縁が深い。 2022年3月末日をもってサービス終了したが、2023年9月末に(本作とも縁の深い)カードコネクトのコンテンツとして突然の復活を遂げている。 なお、この作品にはかつて武装神姫バトルロンドを開発したスタッフの一部が参加しており、その縁でかバトコンにも楽曲や武装が多々提供されている。オトカドール武装も参照。 オトメディウスX(おとめでぃうす・えくせれんと!) KONAMI製のアーケードゲームにして往年の名作「オトメディウス」シリーズの続編として、2011年春にXbox360用として発売されたシューティングゲーム。 武装神姫シリーズからは初代アーンヴァルと初代ストラーフが、「戦力増強のためにホビー用の小型ロボットを戦闘用に換装・改造して作成された、試作型“人工天使”」という形でゲスト出演しているが、この作品に於いてはキャラクターデザイナーが吉崎観音氏(「ケロロ軍曹」「けものフレンズ」シリーズ等)に統一されているため、武装どころかプロポーションまでもが大きく変更されてしまった。 ストラーフはDLCとしての提供。アーンヴァルにはDLCとして、公式の「ゆかたアーマー」を反映した浴衣Ver.が存在する。 2024年にXBOX360用ストアの閉鎖が発表されたのでいずれ購入不可能になる為注意 なおオトメディウス側にも、MMS2nd規格で立体化されたキャラクターが2名いる。 お役所神姫(おやくしょしんき) 職業神姫の中でも、特にお役所(実質的には神姫NET管理局)務めである個体の事。 本作では、以下の神姫たちがこれにあたる。 名称 タイプ 所属 登場エピソード 備考 種村ジュビ子 種型ジュビジー 神姫NET管理局環境農業課 レイドボスバトル(第三回・第七回・第八回) 黒種ジュビ美 種型ジュビジー(リペイント) レイドボスバトル(第三回) その後プレイアブル実装(→ジュビジーB) 鎧原フォスター(鎧原) 騎士型サイフォス 神姫NET管理局ネットワーク課 レイドボスバトル(第八回) 剣崎フェスター(剣崎) 騎士型サイフォス(リペイント) 悪神姫化により脱退 その仕事は概してかなりの激務となるようで、基本的に実力の高い神姫でなければ務まらないようだが、中にはワーカホリックを拗らせてしまったような者も存在する。 ちなみに過去の公式作品に於いてはノベライズ版、通称「神宮司シリーズ」で主人公の刑事・神宮司八郎が所有する神姫「アトラ」や部下の森永穂波が所有する神姫「アニー」がこれに近いが、彼女達は同作およびバトマスにおいて公僕たるマスター達のバディ相当として度々活躍していながら、あくまでも彼らの所有物という扱いであって、実は職業神姫ですらない事に留意されたい。 コンダクトン(こんだくとん) なにかとちょくちょく登場してくる、本作のマスコット的存在。ジェムポッドの「ぶた」と同じ姿形をしている。 過去にはジェムバトル時稀に参戦していたバトコンスタッフのアイコンとして使われたり、はたまたTシャツ武装の図柄のひとつになったり、モチーフとして採用されたダイナー武装に至っては極小の個体が足の上で動き回ってたりと、ある意味八面六臂の大活躍である。 しかし意外な事に、その正体は謎に包まれている。プチマスィーンズやラビボンの同類にも見えるが、果たして…? 職業神姫(しょくぎょうしんき) 武装神姫の世界において、神姫は神姫バトルに用いられる以外にも、様々なマスターの下で様々な仕事に従事している事になっている。 本作で明言されているのは、言わずもがなのアイドル。更にレイドボスバトル(第四回)においては、花屋のアルバイト神姫としてジルダリアが2人登場している(第三回についてはお役所神姫の項を参照)。 この他にも、アニメ版ではフライトアテンダント、ナース、サンタクロース等といった職業神姫たちの存在と活動が描写されていた。 なお、仕える神が不明なシスターとか、神(自称)とかについては、このカテゴリーに含めて良いのかどうか…? スティールクロニクル(すてぃーるくろにくる) 2011年12月7日から稼動開始した、本作のコンパネ的意味での前身にあたるKONAMI製アーケードゲーム。初代・2代目「Be」・3代目「Be XROSS ARMS」・現行バージョン「Victroopers」が存在する。 本作には筐体のコンパネ周りが一部転用された他、いくつかのスティールスーツ及び武器が神姫用武装として移植された(ステクロ武器の項を参照)が、リザルトの基準が不明瞭な点は本作のレイドボスバトルにも引き継がれてしまっている。 なおこの作品、冒頭に「現行バージョン」と記載したとおり、いまだ稼動してはいる。ただ公式展開としては事実上停止または終了している、との声も。 ハウンド達は未だに“2014年の夏”を待ち続けているのだ… スプリングベジタブル(すぷりんぐべじたぶる) 本作のビジュアル中、所謂「SD絵」を担当しているとみられる人物。 作中コミックとみられる「ぶそうしんき あーまーどぷりんせす ばとるこんだくたー!」の作画担当(原作担当は「バトコンおじさん」なる人物)とされており、実際に稼動初期にはTwitter上でコミックが掲載されていた。 本作以外では「チェイスチェイスジョーカーズ」「麻雀ファイトガール」にも関わっている為、最近は本作の漫画はなかなか拝めないものの期間限定ログインボーナスにて入手可能なスタンプでは定期的な新規SD絵が実装されている。これLINEスタンプとして売り出しませんかね? また時折公式Twitterアカウントで公開される限定衣装のデザイン設定画の絵柄を見る限り表には出ないだけで衣装デザインを担当している可能性もあると思われる。 QMAやボンバーガールのケイ壱先生といい、掛け持ちが大変そうである チェイスチェイスジョーカーズ(ちぇいすちぇいすじょーかーず) 略称「CCJ」または「チェチェジョ」「ェェョ」「痴女」。2022/12/21に稼動開始するKONAMI製アーケードゲーム。 ざっくりと書けば「3on3の鬼ごっこ」……なのだが、実はバトコンの筐体が転用された仕様であり、本作からの不可逆コンバート(新作筐体なし)と言う形でゲーセンに導入された。 2022年初夏に行われたロケテストの際に聊か強引な宣伝処理がなされた事、本稼動となる12/21を前にコンバートを行った店舗がかなりの数に登ったため、ただでさえ稼動数が多いとは言えなかったバトコンの筐体が大量にその犠牲となってしまった事等紆余曲折はあったものの、こちらもこちらで固定ファン層を構築するに至っている。 なお、武装神姫とのコラボは現状行なわれていないが、ボンバーガールやQMAとは積極的にコラボしており、パインやマラリヤといった面々が参戦している。 テレビアニメ「武装神姫」(てれびあにめ・ぶそうしんき) 略称「アニメ神姫」「アニ神姫」。2012年10~12月にかけてTBS系で放映された、そのものずばりのアニメ版武装神姫。放映された話数は12話分だが、当時未放映・円盤収録の第13話が存在するため全13話。 武装神姫の公式展開が概ね終了したとみられていた時期での放映は、同期にあの「ガールズ&パンツァー」がいたせいもあってか、一般アニメ視聴層からの反響は然程でもなかった一方で当時の神姫オーナー層には大きく驚かれ、また従前の公式作品群よりも優しい世界観と、神姫達の丁寧な描写で概ね歓迎される作品となった。 これにより、中古ショップや(当時まだ新品を置いていた)量販店などの神姫の在庫が一気に払底。その後の2・22事件の遠因となった他、5年後にMX系で放映されたテレビアニメ版「フレームアームズ・ガール」に作品としての基本構成をまるまる模倣された事でも知られる。 主人公格として出演した神姫はアン・ストラーフ(ヒナ)・レーネ・アイネス。この他セミレギュラーとしてクララが出演している。 その他鳥Pの受けがいい人気どころの神姫たちはあらかた声つきで出番も多めにもらえていたが、それ以外の神姫たちはほとんど台詞もなく事実上のモブ扱いという「露骨なまでの格差の存在」が、極僅かな失点か。 ちなみに、この作品に登場するマスター「理人」は顔がキモいなどと批判される事もあるが作中登場する唯一の人間キャラであり、神姫達に対する優しく真摯な姿勢から「理想的な武装紳士」とも呼ばれる。 本作においては、この作品から主人公神姫たち4人の水着が期間限定ながら実装されている。 2・22事件(に・にーにーじけん) 2014年2月22日、当時六本木ミッドタウンのコナミ本社にあったコナミスタイル直販店にて、武装神姫の在庫を一斉放出すべく開催されたイベント「武装神姫特別販売会」のこと。 2020年JAEPOでの本作のリリース発表まではKONAMIによる実質的に最後の武装神姫公式イベントであり、明らかにテレビアニメ武装神姫から派生した案件でもあるため、あえてここに記載する。 上記した状況もあってか、まだ日も昇らないうちから1500人とも2000人とも言われる神姫オーナー達が全国各地から集結。加えて同日に発売されたPS4の購入待ち行列とも重なって、ミッドタウン界隈に突如として大群衆が発生した結果、パトカーがお出ましする事態にまでなった(もちろん一般常識的な事件性などはなかった訳だが)。 更に、このイベントで意中の在庫神姫を買う事が出来なかった神姫オーナー達が、秋葉原や中野など東京都内の中古ショップに殺到。「武装神姫の在庫だけが一時的に綺麗サッパリ消滅する」と言う現象すら発生した。 Naked素体(ねいきっどそたい) その名の通り、ボディに何もペイントされていない「裸」素体の事。EXウェポンセットのカテゴリーに属する神姫にとっては必需品。 1st/3rd規格において白と黒、それに神姫の多彩な肌色に合わせた数種類の肌色素体がラインアップ。更に体操服素体(1stのみ)やスクール水着素体も存在した。 特に3rd規格のそれは、同時期の神姫達のクオリティの高さもあって、中古市場では異常なプレ値で取引されている事で知られる。 ドールメーカー・アゾンを筆頭とするドール服ディーラー達の手になる被服での運用は、武装オンリー派の一部武装紳士達には忌避されたものの、1/12ドール界隈では一転して大反響となり、同社において後年作「アサルトリリィ」の1/12ドール展開に繋がった事は言うに及ばず、現在の各社(特にコトブキヤ)製美少女プラモデルの運用や、変わった所ではドールハウス界隈にまで影響を及ぼしている(尤も、当時の神姫上層部にとって「この運用は想定外だった」との事だが)。 これもまた、武装神姫のオーパーツぶりの傍証と言えるだろう。 なお公式媒体での出現例は、コミック「2036」に登場した九頭乃やアニメ版の神堂といった「悪い武装紳士」達が大量に運用していた以外では、バトマスMk.2における「ミミック」くらいのものだったが、本作においてはレイドボスバトル(第三回)のホワイト/ブラックミラージュの中核ユニットとして、久々の登場を果たしている。 …なんだ、やっぱり敵側じゃあないか。 ノラ神姫(のらしんき) 野良神姫、あるいは「はぐれ神姫」とも。 その名の通り、何らかの理由でマスターを失った神姫の事を指す。 多くの場合は単独ないし少人数で行動しているようだが、中にはアニメ版第9話に登場した「地下帝国」のように、規模の大きいコロニーを築くものもいる様子。 本作ではノララーフ(公式コミックに登場するストラーフMk.2。ゲーム中には登場しない)、及びマーモット(イベント限定プロモーションカードに採用されたムルメルティア)がこれにあたる。 バトコンおじさん(ばとこんおじさん) 本作の開発スタッフとされる人物。 不定期的にジェムバトルやレイドに参戦したりユーザー主催の交流会に現れたりしていた。 本作の拘りからして神姫愛のある人物かと思われるが的外れなゲームバランス調整や広報の問題を改めない、悪質な立ち回りを行うユーザーの報告が多数寄せられたにも関わらずBANなどの対処しないと言った有能かと言われると疑問点が非常に多い。 また本作の開発に関しては鳥P及び浅井氏とは大きなトラブルになっていたらしく同氏らからブログで本作への憤慨を見せる投稿が出てしまう程であった。 パチスロ武装神姫(ぱちすろ・ぶそうしんき) 株式会社コナミアミューズメントより2023年9月12日に正式発表となったパチスロ作品。 2024年1月稼働開始。 登場する神姫達のキャラは概ねアニメ版をベースにバトマス版のものが折衷されており、キャラグラフィックモデルはバトコンのものとも異なる、全体的により幼めな風貌のものとなっており、関節部分などはバトコンよりも実物に近く作られている。 アニメ版のメインキャラだったアーンヴァルMk.2、ストラーフMk.2、アルトレーネ、アルトアイネスの他、エウクランテ、ハウリン、マオチャオ、アーク、イーダ、ヴァローナ、ベイビーラズ、紗羅檀が参戦。 そして、バトコン(2023年11月現在)どころかバトマス時代においても未実装だったグラフィオスとウェスペリオーが、古のバトロン以来本当に久々の登板となった。あれ?イーアネイラは…? なおアーンヴァルMk.2テンペスタも登場しているが、彼女に関しては「通常個体が“リミッター解除”された別モードの姿」という、バトマスDLC収録のアニメ「Moon Angel」に登場したかぐやの別モード「アーンヴァルMk.2黒」によく似た立ち位置となっている。 名前の通りパチスロではあるが、公式シミュレーターアプリが無料で配布されておりスマホで遊ぶ事が可能。ただしキャラボイスとボーカル曲はゲーム内課金で解禁する仕組みとなっている。 また今後は同じくパチスロ化したボンバーガールはメダルゲーム扱いとなってるコナステ版、複数のゲームを切り替えて遊べるゲーセン向けメダルゲーム筐体FEATURE Premiumに収録されているので同様の対応になる可能性もあるかもしれない。 もちろん、稼働後にホールに行って遊ぶという手もあるが…パチンコ・パチスロは18歳になってから。 そして、パチンコ・パチスロは適度に楽しむ遊びです。のめり込みに注意しましょう。 武装神姫R(ぶそうしんき・あーる) 株式会社コナミデジタルエンタテインメントからリリース予定のソーシャルゲームアプリ。 2020年公式発表にてバトコンと共に「鋭意製作中」とされ、リリースされた暁には武装神姫コンテンツ完全復活の狼煙を上げるものと期待されていた。 ……が、エーデルワイスの立体化・発売以後、何の音沙汰もない状況が続いている……。 ちなみに前述した通りRの発表を行ったのは株式会社コナミデジタルエンタテインメントであり、バトコン及びパチスロ版武装神姫の開発販売を行う株式会社コナミアミューズメントとは同じKONAMIグループの別会社という立場である。 武装神姫Moon Angel(ぶそうしんき・むーんえんじぇる) 武装神姫バトルマスターズ(及びMk.2)のDLCに収録されている、武装神姫初のオリジナルアニメ作品。約5分サイズで1話分の全10話(テレビアニメの放映枠に換算すれば、約2話分にあたる)。 登場神姫はアーンヴァルMk.2、ストラーフMk.2、ゼルノグラード。とはいえ前二者は、実は神姫の皮を被った自立式汎用兵器のコアである 本作はどちらかといえば某ダンボール戦機や某メダロットに近い作風となっていたため、燃え&シリアス展開を重視するマスターには歓迎された一方で、その後に放映されたテレビアニメ版が日常系寄りだった事から「感性が風邪をひいた」というマスターも散見された。 かつてコナスタ限定ながら円盤も販売されており、特典としてアーンヴァルMk.2に対応した劇中登場のヘッド武装「ティアラ」が付属した。 フルセット(ふるせっと) 通常の箱入り武装神姫。本作に登場するほとんどの神姫がこれに該当し、主にEXウェポンセット及びライトアーマーに対してこの語が用いられる事がある。 1st素体時代の一般販売モデルにはパッケージに上蓋が付いており、更に一部の神姫は眠り顔で封入されていた事から「ユーザーが神姫の箱を開ける=その神姫を起動する」という楽しみを味わう事が出来た。 コナスタ限定モデルおよび3rd素体時代においてはこの蓋がオミットされており、現在コトブキヤから販売されているものに至ってはプラモデルであるが故に組み立て作業が必須となるため、こういった楽しみを望むならば1st素体時代の一般販売品を求めるのが良いだろう。 ちなみにほとんどの場合、武装が組み換え分など含めて多種多様なため、パッケージ内のブリスターはほとんどの場合3段、多いものでは4段にも至る。これを開く時に勢いで中のパーツを周辺にブチマケてしまう「ブリスターボム」と呼ばれる悲劇もよく知られているところなので、ブリスターを開く時には気をつけておきたい。 ボンバーガール(ぼんばーがーる) 略称「ボンガ」。2018年8月より可動を開始したKONAMIの対戦型アクションゲーム。 2022年7月にメジャーアップデートして新シリーズ「レインボー」となった他、コナステ版サービス及びパチスロ版が存在する。 原作は言わずと知れた往年の名作「ボンバーマン」だが、プレイアブルキャラクターは全員女の子であり、撃破時には脱衣カットインが表示されるのが最大の特徴。 コナミの往年の作品群をプレイアブルキャラのモチーフとして取り入れている事でもよく知られ、特に「ときめきメモリアル(初代)」「出たな!ツインビー」に関してはメインヒロインがそのままの姿で登板している他、ツガルについては原典を踏まえた上で武装神姫も出典作と明言されている。 マシニーカ(ましにーか) エーデルワイスに使用されているが厳密にはコナミ内製の武装神姫ではなく、コトブキヤによる後年のプラモデルシリーズ「メガミデバイス」の規格。 素体設計はMMSと同様に浅井真紀氏が担当しており、いわば「直系の子孫」とでも言うべき存在。本作のレイドボスバトル(第一回及び第二回)において、彼女が「未来世界の存在(?)」として設定されたのは、おそらくこのあたりの事情が絡んでいると思われる。 MMS素体を基にしながらも、可動性能が大幅に向上(その代わり耐久性は大幅に低下。プラモデルだからしょうがない)。また往年のMMS並みに設計変更が激しい規格でもあり、最新作の「皇巫シリーズ」以降では更なるブラッシュアップがなされたのと引き換えに、従来メガミとの素体的互換性がかなりの部分で犠牲にされてしまった。 なお、2023年8月19日に行われたコトブキヤの生放送におけるメガミデバイスの素体系譜説明においてメガミ版アーンヴァルとストラーフに対しては「MMS4」との表記が行われていたが、これはあくまでも1stとマシーニカの機構を合わせたものを便宜上そういった形で表記したのであって、「MMS4th」という事では無い模様。 麻雀ファイトガール(まーじゃんふぁいとがーる) 2023年3月から稼働を開始した麻雀格闘倶楽部の派生作品。 バトコンのSD絵を担当するスプリングベジタブル氏がこちらでもSD絵を描いている。 狙えそうな役や安牌を知らせるサポート機能に麻雀格闘倶楽部と異なり1クレジットで対局に最後まで参加出来る等の初心者向けの仕様や状況に応じて対局中に使用キャラクター達によるセリフやリアクションが発生したり条件を満たしていればリーチ時にキャラソンを流せるシステムや登場キャラクターの多くがデカパイである事など賑やかな部分が特徴となっており、初心者層や既に麻雀格闘倶楽部をプレイしてるユーザー層からも支持を得ている。 なおこちらもボンバーガールおよびときめきメモリアルとコラボしており、パインと藤崎詩織が参加している。 メガミ神姫(めがみしんき) 数ある武装神姫のラインアップの中で、近年になって模型メーカー・コトブキヤから発売されたものが、便宜上この呼称で呼ばれる事がある。 具体的にはエーデルワイス、アーンヴァル、ストラーフ。それぞれリペイントバージョンも発売されている。 詳細はマシニーカの項を参照。特にMMS時代最初期の商品をオリジンとする後二者においては、十数年の歳月を経て造形・ギミック・箱の大きさ面で大幅な進化を遂げている。 なお「武装神姫R」の発表当時には、同作に登場すると見られる神姫達の発売も告知されていたのだが……?????? ライトアーマー(らいとあーまー) EXウェポンセットに代わり発売された、素体+軽武装のシリーズ。おおまかな見分け方は、フルセット版よりも小さくNaked素体と共用のスタンドパーツ。 この頃には通常ラインアップの神姫達はプレイバリューの高い武装が高コストをも齎しており、このシリーズとのハイ・ロー・ミックスを意図した展開となっていた。 シリーズ上はウェルクストラ、ヴァローナ、ブライトフェザー、ハーモニーグレイス、パーティオ、ポモック、こひる、メリエンダがこれにあたる(リンクのない神姫は本作未登場)。 ちなみにフブキとミズキ、シリーズ終盤の一部神姫(具体的にはアーティル、ラプティアス、ガブリーヌ、蓮華、そしてベルンシリーズ)は、製品のボリューム的にはライトアーマー相当なのだが、扱いとしては一応ライトアーマーでない事に留意されたい。 リデコ(りでこ) リデコレーション。玩具・プラモデル業界において、製品の生産コストを有効に落とすべく考え出された手法。 複数の製品内にて構成されるパーツに共通するものが多く見られた場合、ほとんどがこのケースとして解釈される。 武装神姫の場合、展開初期から新作2~3種がひと組で発売されるパターンが専らだったが、概ね3rd素体登場後は時代背景に伴う開発コストの上昇に伴い、主に武装においてよく使われる手法となった。 多くの場合は成型色の変更、一部では素体サイズの変更をも伴っており、本作に登場している神姫だけでもアーンヴァルMk.2とストラーフMk.2(意外かも知れないが、分解してみると共通パーツが多く用いられている事がわかる)、フブキとミズキ、アルトレーネとアルトアイネス、ラプティアスとアーティル、ガブリーヌと蓮華、オールベルンとジールベルンがこれにあたる。 また、元モデルに対してパーツを追加するスタイルのものもあり、本作ではアーンヴァルMk.2テンペスタ、ストラーフMk.2ラヴィーナがこれにあたる。 リペイント(りぺいんと) または「リカラー」。玩具・プラモデル業界において、上記リデコと同様の経緯で一般化している手法。 「過去一度発売された製品でもカラーを変更すれば別の製品として認識される」と言う解釈の下、主に某有名変形ロボット玩具ブランドにおいて多用というかもはや濫用されている事で知られる。 武装神姫においても最初期から最末期まで割と頻繁に用いられており、その多くはコナミスタイルなど流通販路を限定したモデルか、さもなくば立体そのものがないゲーム内限定の存在となっていた。 フィギュアとしての展開が実質終了した後の本作においては、レイドボスバトルのボスキャラとしての扱いが専らとなっている。これらを倒して手に入れた武装をすべて装備すると、リペイントバージョンとしての姿を再現できる上総合性能も微妙に変化する、という訳だ。 製品名 本作での個体名 実神姫フィギュア 特記事項 ツガル Blue X'mas ver. (なし) あり 装備再現でカラフルコンダクトの内容がアップデートされる ジュビジー リペイントVer.(bk.) 黒種ジュビ美 なし その後プレイアブル実装される(→ジュビジーB) ジルダリア リペイントVer.(bk.) イバラ なし その後プレイアブル実装される(→ジルダリアB) ヴァローナ リペイントVer.(wh.) ドロシー あり ウェルクストラ リペイントVer.(bk.) ストラ/悪神姫 あり 名義は2人だが仕様としては同じ扱い サイフォス リペイントVer.(bk.) 剣崎 なし 本名は「剣崎フェスター」だが作中では苗字?のみ表記 紅緒 リペイントVer.(bk.) 刀華 なし ちなみにツガルやフォートブラッグにおいては、リペイントモデルで採用された素体デザインや武装がオリジナルモデルにフィードバックされている。 だが、果たして「リデコのリペイント」となるMk.2フルアームズパッケージ達(未実装)の扱いやいかに。 コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2103.html
ウサギのナミダ ACT 0-1 □ あいつと初めて会った日のことは、いまでも覚えている。 あれは師走の寒い晩のこと。 冷たい雨がしとしとと降り続ける夜だった。 全く俺らしくない考えだが、信じている。 あれは運命の出会いだった、と。 大学の仲間と飲んだあと、アパートに戻る帰り道。 俺は一人、雨の中を歩いていた。 あまりたくさん飲んだわけでもないので、少しほろ酔いだった。 気心知れた連中との飲み会だったので、無理な酒を飲まされないのはありがたい。 いつもよりも遅い帰り、近道をすべく、繁華街の裏道を歩く。 いかがわしい店もならぶところだが、そこはそれなりに田舎だから、それほど危険を感じない。 まして冷たい雨が落ちている夜はなおさらである。 冬の雨の冷たさに、酔いに火照った身体は徐々に冷え始めている。 息が白い。 寒さで頭が冴え始めているのを感じながら、俺は少し足を早めた。 そのときだ。 左奥の路地から、息を切らした太った男が飛び出してきた。 この雨にも関わらず、傘をさしていない。 男は、一度左右を見渡すと、 「ちぃっ!」 舌打ちをして、手に持っていたモノを、電柱に叩きつけた。電柱に激突したそれは、下に置かれていたゴミの山に落ちた。 「お、おまえのせいで……何でボクがこんな目に……」 とかなんとか呟いていたようだが、よく聞こえなかった。 男は俺に注意を払うこともなく、俺が進む道の奥へと駈けだしていった。 いつもの俺なら、そんなアブナイ行動をしている男など無視していたし、その男が捨てたモノに注意も払わなかったろう。 だが、そのときは知らず酒が回っていたのだろうか。 俺はそのゴミ置き場をながめつつ、通り過ぎようとした。 パタパタと雨をはじくポリ袋の上から、小さなうめき声が聞こえてきた。 女の声だ。 俺の頭に、奇妙な確信が浮かぶ。 さっきの、太った男が捨てたモノ。 それはきっと……アレにちがいない。 俺が今、一番興味を持っているもの。 俺は見るともなしに、ゴミ置き場をのぞき込む。 はたしてそこには、一人の少女が、目を閉じてうめいていた。 少女と言っても、人間じゃない。 神姫だ。15cmのフィギュアロボ。 彼女は、力無く四肢を投げ出し、弱々しくうめいている。 いったい何のタイプだろうか? 裏道の街灯は薄暗くてよくわからない。 ただ、少し苦しげな表情のその顔は、マスモデルにはないタイプで……可憐だった。 俺はそっと彼女をすくい上げると、ポケットからハンカチを取り出してくるんだ。 神姫はなんの反応もなく、ただ時々小さくうめくばかりだ。 俺はそっとカバンに入れようと思ったが、先ほどの路地から激しい靴音が聞こえてきて、思わずハンカチにくるんだ神姫をジャンパーの内ポケットにつっこんだ。 路地から飛び出してきたのは、数人の男だった。 やっぱり傘はさしていない。 男たちは派手なスーツを着ており、一目でそれっぽい職業だとわかる。 彼らはきょろきょろと辺りを見回す。一人が俺に近づいてきた。 「なあ、ちょっと尋ねるが……」 「な、なんですか?」 あえてうわずった口調で答える俺。 「ここに、太った黒縁メガネの男が走ってこなかったか?」 「……それならいまさっき、あっちに……」 俺はさっきの男が走り去った方の道を指さした。 「そうか、ありがとよ。……おい!」 俺に話しかけた男は、仲間たちに指示をとばす。 俺が指さした方の道に複数のグループを行かせ、俺の来た方向と、右手の路地に一人ずつ行かせた。 なかなかに組織だった動きだ。 男たちはもう、俺には目もくれなかった。 俺は念のため、太った男が走っていった道は使わず、右手の路地に入って、いったん大通りに出る。 アパートまでは少し遠回りになるが、人混みに紛れ込める。連中と関わらなくてすむだろう。 太った男とスーツ姿の男たちのもめ事の原因は、明らかに俺のジャンパーの内ポケットに入っている。 何があったかは知らないが、余計な揉め事には巻き込まれたくない。 たとえその原因を俺が持っているのだとしても。 もう、先ほどの神姫を手放す気にはなれなかった。 こういうのも、運命の出会いというのだろうか? いままで、たくさんの武装神姫の製品を見てきたけれど、いまほど胸が高鳴ることはなかった。 ずっと探していた。そして今夜見つけたのだ。 ただ一人、俺が夢中になれる神姫を。 冬の雨の寒さを忘れてしまうほど、俺は胸を高鳴らせ、アパートへの帰り道を急いだ。 俺の名前は遠野貴樹。 理工系の大学に通う学生だ。 武装神姫には前から興味があった。 高校時代からの友人の一人が、神姫にどっぷりとハマっている。 そいつと神姫の仲の良さを見るにつけ、他の仲間たちはからかいながらも少しうらやましく、興味深く見ていた。 俺も例外ではなかった。 仲間の数人は、もう武装神姫を始めている。 俺も始めようと思い立ったのは仲間内でも早い方だったが、いまや神姫のマスターでない仲間の方が少なくなった。 なぜ俺が武装神姫を始めなかったのか。 いなかったのだ。気に入った神姫が。 あちこちの神姫ショップも回ったし、新製品が発表になるショーにも足を運んだし、定期的にネットオークションもチェックしている。 それでも、俺がパートナーにしたいと思う神姫はいなかったのだった。 アパートに帰った俺は、カバンをおろすと、上着に付いた雨粒を落とすのももどかしく、ジャンパーの上着からハンカチに包まれた神姫を取り出した。 テーブルの上にそっと横たえ、ハンカチを開いてみる。 そこには、ほっそりとした少女の裸身があった。 あわてて目をそらしたが、すぐに目は神姫に釘付けになった。 俺がいままで見た神姫とは、明らかに違う。間接部が皮膚に覆われていて、やたらと人間らしく見える。 顔はやはり既製品の物ではない。カスタムだろうか? 少し幼い感じの顔立ちが、いまは疲れきったような表情で、静かに目を閉じている。 頭にはウサギの耳らしき意匠……つまりこの神姫はバニーガールなのだろうか。 そして、なにより俺の目を離さないのは、ねじくれたように折れている手足だった。 まともなのは右腕だけで、左腕と両脚は間接ではないところで不自然に曲がっていた。 いま、この神姫は死んだように動かない。 本当に死んでしまったのではないだろうか? もう二度と動かないのではないだろうか? 冗談じゃない。 やっと自分がほしいと思った神姫に出会えたというのに! そのときのあわてふためきぶりは、他人に見られなくてよかったと思う。 いつも冷静沈着でうっている俺のキャラとあきらかに違っていた。 俺は乱暴に携帯電話を取り出すと、アドレス帳を呼び出すキー入力すらもどかしく、一人の友人の電話番号を呼び出した。 電話をかける。えらく長く感じたコール三回で相手が出た。 『はい、海藤で』 「海藤か!? 聞きたいことがある!」 海藤曰く、このときの電話は俺だとは一瞬信じられなかったそうだ。 だが、人のいい海藤は、一方的に用件をまくし立てる俺に対して、丁寧に受け答えしてくれた。 海藤仁は、仲間内で一番武装神姫に詳しい奴だ。 さきほど神姫を拾った旨と現在の状況をかいつまんで説明し、どうすればいいのかと俺は聞いた。 『ああ、それは単なるバッテリー切れじゃないかな、たぶん』 「バッテリー? そうか、なら、充電するにはどうすればいい?」 『神姫用のクレイドルを使うんだ』 こんな基本的な質問をしているあたり、俺がいかにあわてていたかの証明である。 「どこかで売ってるか? ……バラで」 『各社からいろんなのが出てるよ。神姫扱ってるところなら、たいがい売ってるね』 時計を見る。午後8時半。 自転車をとばせば、最寄りの家電量販店の閉店前に間に合うはずだ。 「わかった。これからクレイドル買ってくる。また連絡する」 それだけ言い放って、俺は電話を切った。 そのまま玄関へ向かう。 まだ俺は帰ってきたときのまま、ジャンパーすら脱いでいなかった。 外は雨。 それでも俺は自転車の鍵を手にすると、アパートを出た。 傘をさしながらの自転車の夜間運転。 正直、自殺行為だ。 だが、そのときの俺は何かすごい衝動につき動かされ、とにかく、あの神姫を動かすことが一番大事なことだと思っていた。 俺は降りしきる雨の中、ペダルをこぎだした。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/263.html
アールとエルと 著:アールのマスター 加筆修正されているところもあります 本編 アールとエルと ある日、おもちゃ屋で手に取った武装神姫 目覚めた神姫、アーンヴァルのアールとの 新しい日々が始まった… 捨てられていたストラーフのエルも加わり 三人の生活は続く… 登場人物及び神姫紹介 1話 目覚め 2話 好きなものは? 3話 初めてのおでかけ 4話 新しい家族 5話 剣の舞姫(ソードダンサー) 6話 運命の日 岡島士郎と愉快な神姫達とリンク 7話 新たな武器を探せ HOBBY LIFE,HOBBY SHOPとリンク 8話 剣の名は 9話 鳳凰杯への挑戦 鳳凰カップシリーズ参加作品 10話 もうひとつの戦い 鳳凰カップシリーズ参加作品 11話 鳳凰杯・激突!『剣の舞姫』VS『鋼帝』鳳凰カップシリーズ参加作品 12話 鳳凰杯・悪魔の裁き鳳凰カップシリーズ参加作品 外伝 しるくろぉぉどぉ No1 エプロンろぉぉどぉ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1159.html
「相手の武装が解らないからここはアンジェラスで」 「ありがとうございます!ご主人様!!」 手の平でおおいに喜ぶアンジェラス。 まぁ喜んでくれるのは嬉しい。 だけど他の三人は少し残念そうな感じだ。 『後で他の奴等と戦うから、その時にな』と言うとパア~と明るい表情になる神姫達。 さて、そろそろ対戦するか。 装備…よし! 指示…よし! ステータス…よし! アンジェラスを筐体の中に入れ、残りの神姫達は俺の両肩で座ってアンジェラスの観戦をする。 「アンジェラス、頑張れよ!」 「はい!ご主人様!!」 「負けるんじゃないよ!一番最初の闘いなんだからな!!」 「お姉さま~頑張って~!」 「アンジェラスさんー!頑張ってください!!」 「うん!」 アンジェラスは元気な笑顔を俺に見せ、筐体の中へと入って行く。 そんな時だった。 気がつくと俺は両手で握り拳をつくっていたのだ。 いつになく俺の心は興奮している。 何故だろう? 多分、誰かを応援している事によって熱くなっているのかもしれない。 それとアンジェラスに勝ってほしい、という気持ちがある…かもなぁ。 俺は筐体の方に目を移すと中には空中を飛んでいる二人の武装神姫達が居た。 READY? 女性の電気信号の声が鳴り響き、一気に筐体内の中に緊張が走る。 勿論、外に居る俺達もだ。 FIGHT! 闘いの幕があがった。 お互いの距離150メートルからスタートして、まずは二人とも距離を縮め接近する。 アンジェラスは清龍刀を出し右手に持ち、敵のストラーフに斬りかかった。 「せいっ!」 ガキン! 振り下ろされた清龍刀はDTリアユニットplusGA4アームの右のチーグルで受け止められてしまった。 敵のストラーフはニヤリと笑い、もう片方のチーグルでアンジェラスの右わき腹を攻撃しようとする。 「ハァー!」 「ッ!?」 とっさにアンジェラスは清龍刀を自分から見て右側面に向けた。 自分のわき腹が狙われた事を察知し、清龍刀を盾にする事によりチーグルの攻撃を防ごうとしたのだ…だが。 グワシャンー! 清龍刀とチーグルがぶつかった瞬間、衝撃でアンジェラスは地上に向けて吹っ飛ばされてしまったのだ。 そのまま吹っ飛ばされたアンジェラスは、なんとか体勢を整えようとしたいたが、敵のストラーフはその時間帯も許さない。 何故ならば、シュラム・RvGNDランチャーを構えアンジェラスに狙いを定めていたからだ。 「オチローーーー!!!!」 ストラーフがシュラム・RvGNDランチャーを撃ち、弾がアンジェラスに目掛けて飛んでくる。 俺はこのままヤバイと思い、大声で叫んだ。 「アンジェラス!ポラーシュテルン・FATEシールドを使えー!!」 「あ、はい!」 装備していたリアウイングAAU7の翼に装着させていたポラーシュテルン・FATEシールドを左手に持ち、スキルのステディプロテクションを発動させる。 ボカーン! ステディプロテクションの発動と同時に弾が当たり、アンジェラスの周りは煙だらけになる。 大丈夫なのだろうか? 煙で何も解らない。 もしかしてステディプロテクションが間に合わなかった!? いや、それはないはずだ。 あの瞬間、ステディプロテクションの壁に弾が当たる所をこの目でしっかり見たのだから。 「大丈夫かー!?」 ヒューンィーン 俺が叫ぶと、なにやら静かに動く機械音が耳に入った。 まさか、この音は!? 「イッケーーーー!!!!」 アンジェラスの姿は見なくとも声だけで認識できた。 紛れも無くアンジェラスの声だ。 バシューーーーン!!!! 煙の中から一直線の青い光線が飛び出し、ストラーフ目掛けて飛んでいく。 「えぇー、そんなのアリ~!?」 ズバーーーーン!!!! 「アグッ!?」 ストラーフは直撃を回避したものの、DTリアユニットplusGA4アームの左翼部分に命中し、殆どもってイカレタ状態。 これで左翼が無いと同じ、相当なバランス体勢が悪くなちまったに違いない。 それにしても、やっぱりあの攻撃はアンジェラスだったかぁ。 使った武器はGEモデルLC3レーザーライフル。 準備250硬直300、とても時間を掛けないと撃てない武器だ。 本来ならアンジェラスが撃つ暇が無かったと思うが、煙の中に居たために敵のストラーフが攻撃出来なかった。 それにシュラム・RvGNDランチャーを撃った反動で時間が空いてしまった。 その空いた時間を使ってアンジェラスがGEモデルLC3レーザーライフルを使用したのだろう。 「今だ、アンジェラス!」 俺は右手の拳を左手の手の平に打ちつけ、パンッ、と音を鳴らせる。 アンジェラスは煙の中から勢い良く飛び出し、M4ライトセイバーを取り出す。 ビシューン、という音とともに柄から発する棒状の光の刃が飛び出す。 「決めます!」 アンジェラスが叫び、敵のストラーフに斬りかかった。 ズバズバズバズバズバズバズバー! M4ライトセイバーのスキル、ジャスティスラッシュが発動し敵のストラーフを斬り刻む。 丁度、10HITした時に敵のストラーフのHPが無くなり力尽き地上に転落していき、ゲーム終了。 俺の方の筐体に付いてるスピーカーから『WIN』と女性の電気信号の声が鳴り響く。 多分、相手の方では『LOSE』と言われてるだろう。 そりゃそうだ。 勝ちがあれば負けもある。 二つに一つ。 「ご主人様!勝ちましたー!!」 筐体の中で俺の事を見ながら喜ぶアンジェラス。 俺も自分の神姫が勝った事が嬉しくて微笑む。 両肩にいるクリナーレ達も喜びはしゃいでいる。 そうか…。 これが武装神姫の楽しみ方か。 確かにこれは楽しい。 おっと、アンジェラスを筐体から出さないといけないなぁ。 俺は筐体の神姫の出入り口の中に手を突っ込みアンジェラスを待つ。 数秒後、アンジェラスは満面の笑みをこぼしながら俺の右手の手の平に乗った。 「ご主人様、初戦は勝利です!」 「そうだな。よくやった、アンジェラス。これはご褒美だ」 「…あっ」 俺の右手の手の平に乗ってるアンジェラスの頭を左手の人差し指の腹の部分で撫でる。 本来なら手の平全体で撫でてあげたい所だが、彼女達の身体は15cmの大きさだ。 頭の大きさも小さいため撫でるのは難しい。 だから人差し指の腹の部分で優しく撫でる。 「気持ち良いです。ご主人様…」 頬を桃色に染めながら照れるアンジェラス。 可愛い奴だ。 「あー!いいなぁ~アンジェラスの奴~。よし!!次の試合はボクが出る!!!」 「ダーリンのご褒美を貰うために頑張らないといけませんわね」 「あの…私のバトルは最後でもいいので…もし勝ったら、お兄ちゃんのご褒美くれますか?」 両肩で何やらアンジェラスに嫉妬しているように見える三人の神姫達。 そんなにご褒美が欲しいのか? まぁ今日はトーブン、ここにいるつもりだから一応全員バトルさせてやるか。 俺はアンジェラスの頭を撫でるの止めて離すと。 「…え?もう、お終いですか………」 とても名残惜しそうに切ない顔で俺の事を上目づかいで見てくる。 うっ!? 可愛い過ぎてもっと撫でてあげたくなるシチュエーションだ。 だがもし、ここでまた再びアンジェラスの頭を撫でると両肩に乗っている三人に何されるか解らないので撫で撫ではお預け。 アンジェラスを右手から右肩に移動させ、俺は次の筐体に向かった。 闘いはまだ始まったばかりだ。 「さぁ行くぞ!俺達のバトルロンドの幕開けだー!!」 こうして俺達のバトルロンドがスタートした。 そしてこの日からアンジェラスの二つ名が出来た。 名は『全てを束ねる者』…。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2195.html
闇の中。 静寂に包まれた心地好い暗闇の中。 深く深く、意識がその闇の中へと溶けてゆく。 何物にも代えがたい至福の時。 そんなささやかな幸せを、突然鳴り響いた甲高いメロディーが容赦なく奪い去った。 「うあー……」 再び闇の中に戻ろうとする抵抗も虚しく、俺の意識は一気に呼び起こされる。誰だ、俺の安眠を妨げる奴は。 やかましく鳴り響く携帯を手探りでたぐり寄せ、この諸悪の根源との通話を繋げる。 「もしも……」 『はーやーとー! いつまで寝てんのー!?』 寝惚けた頭に飛び込んでくる怒鳴り声に、思わず俺は電話を遠ざける。こちらの返事も待たずに、あいつはあからさまな不機嫌さをぶつけてきた。 「なんだよ、朝っぱらからうるっせえな」 横目に時計を見るとまだ午前10時。とてもじゃないが健全な高校生が休日に起きる時間ではない。 『なっ、あんたが神姫見たいから付き合えって言ったんでしょー!? それなのにうるさい? そーゆーこと言うの?』 まだ頭がハッキリしないと言うのに、一息にまくしたてられる。えーと、神姫……? あ、そうか。 西暦2036年。 第三次世界大戦も、宇宙人の侵略もなかったこの平和な時代において開発された、全長15センチの自律型AI搭載ロボット、MMS(Multi Movable System)。 その中でも、最も一般的なのが『彼女』達。 オーナーに従い、様々な装備に身を包み戦場へと赴く彼女達。 そんな彼女達を、人はこう呼んでいる。 『武装神姫』と。 『武装神姫ーPRINCESS BRAVEー』 「うわぁー……」 想像以上の光景に、俺は思わず声をあげた。 都内某所にそびえるこの巨大なビル、通称神姫センター。このビルは部品や関連書籍の販売、更にはサポートセンターにバトルスペースまで、全てが武装神姫を取り扱う施設となっている。 そして俺はその中の販売コーナー、神姫本体の売り場に来ているのだが。 「これ全部そうなの?」 フロア全体に渡って所せましと陳列された神姫。カブトムシ型やコウモリ型、騎士型にセイレーン型、更には戦車型にシスター型とかなりの種類が並んでいて、あまり知識のない俺にはなにがなにやらまったくわからなかった。 「うん、すごいでしょー? もう随分シリーズも続いてるし、タイプ別に色々出てるからね」 舞はどこか嬉しそうに――おっと、そういえば自己紹介がまだだったな。 俺は新藤隼人。健全な男子高校生だ。以前からバトルに興味があり、ちょうど身近に神姫オーナーがいた為、俺も同じ武装神姫のオーナーになる事にした。 そして、その身近なオーナーというのが彼女、比々野舞(ヒビノ マイ)。家が近所だった事もあり、小さい頃からの腐れ縁を現在進行形で続けている。 後ろに結い上げたセミロングの黒髪と、丸い大きな瞳。 起伏の乏しい体を黒いボーダーラインのロングTシャツと袖のないパステルブルーのパーカーで覆い、青いキュロットから伸びる細身の足元には水色のスニーカー。 好きな青い色を基調としたその服装は若干の幼さを感じるが、露出した肢体は健康的に締まっていて、活発そうな印象を受けるだろう。 悪くない。うん、決して悪くない。 「……イヤラシイ目で見ないでよ、えっち」 「イヤラシクないですー。ちょっと客観的に観察してやっただけだよー」 舞はわざとらしく体を隠すと、冷ややかな目で俺を睨む。長い付き合いだが、そんな恥じらいがあったとは知らなかった。 「ふーん、変なの。ま、別にいいけどさ。隼人なんかに見られたって」 その発言は誤解を招くぞ。見てもいいのか?いいんですか?それとも異性としての意識が無いという事だろうか。うん、まったく興味が沸かない。 とにかく、舞はずいぶん前から神姫を所有しているので、初心者の俺としては色々意見を聞けるのは助かる。 ついでにこいつの神姫、天使型アーンヴァルのヒカリも紹介しておこう。片側だけ編みこんだ髪を耳の後ろに垂らしているのがトレードマーク。生真面目で大人びたアーンヴァルタイプには珍しくちょっと子供っぽいが、元気で可愛らしい娘だ。 このヒカリが俺も神姫を買おうってきっかけを作ったんだが、その辺りはいずれまた。二人は姉妹のように仲がよく、今日もヒカリは舞の肩に座って足をブラブラさせている。 「んで、どれ買ったらいいんだ?」 「自分で選ばなきゃしょーがないでしょー?どんな性格がいいかーとか、どんな戦い方したいーとかないの?」 舞は立てた指を左右に振りながらいくつかの選択肢を示していく。しかし、その動きに釣られてふらふらと頭を揺らすヒカリが気になって、話の内容はほとんど聞こえてこなかった。 「だいたいこんな感じかな?どう?」 「え?ああ、格闘戦がいい」 話は聞いていなかったが、戦い方ならそれしかないだろう。男だったら拳で語ってこそ。戦うの俺じゃないし、神姫は女の子だけど。 「アーンヴァル!天使型アーンヴァルがいいと思うの!」 舞の肩で話を聞いていたヒカリが、未だにふらふらしながら棚の白い箱を指差した。酔うぞ、お前。 さて、アーンヴァルか…… 確か高機動射撃タイプ、だったハズだ。初心者でも安定した勝率を狙えるとネットでの評判もなかなかだが、どうも俺の性には合わない。 「あすみん先生自重。そもそもアーンヴァルは格闘向きじゃないだろ?舞ともかぶるし、ややこしくなるって」 「むー、妹が欲しかったのに……」 「なんだ、そーゆー事か。ま、そうガッカリすんなって。後輩には違いないし、それなら妹みたいなもんだよ」 「んー、そっか。ならいいや!へへー、楽しみだなー♪」 頬をふくらませてすねていたかと思えば、もう屈託のない笑顔を見せている。幼さすら感じさせる彼女だが、俺も舞もそんなヒカリの笑顔が大好きだ。俺の神姫になる娘も、こんな笑顔を見せてくれるだろうか。 「あっ、ねぇこの子なんかどうかな?あんたにぴったりだと思うんだけど」 辺りを物色していた舞は一体の神姫を手に取ると、俺に差し出した。パッケージには獣の耳を模したヘッドギアと大きな手甲、そして焼ける様な橙色の瞳が印象的な少女が描かれている。 「犬型、ハウリン?」 「そ。いわゆる万能型なんだけどメインは近接格闘戦だし、防御力も高めだからあんたの要望にもぴったりでしょ?そーれーに……」 舞はぴっと指を立て俺に向き直ると、からかうように微笑みながら言葉を続けた。 「この子の性格。誰かさんみたいな、熱っ苦しい熱血感」 「誰が熱苦しいんだよ?失礼なヤツだな。でもまあ、たしかに悪くはないかもな」 僅かに胸が高鳴る。舞の手からハウリンの箱を受取ると、自然と俺も微笑んでいた。 「決まりだな。俺の相棒」