約 173,351 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/192.html
前へ 先頭ページ 次へ 第四話 それぞれの正義 夜はまだ明けない。それどころかさらに深まる時刻だった。 ぼたん雪のかすかな音を、サーッ、というサルーンの――車にしては静寂な――エンジン音がかき消している。つまりそこだけはサルーンが支配しているということになる。 サルーンの周囲はサルーンの世界であり、雪の入り込む余地は無かった。サルーンの所有者は誰かといえば鶴畑であり、つまり車の周囲は鶴畑の支配する世界であり、その世界はある一定の範囲の空間を持ち、サルーンを中心に同等の速度で動いているといえた。 サルーンが去ってしまえば追いやられた雪の世界がふたたび戻ってくるが、サルーンの周りは雪などその辺の石ころと同等であり、言い換えれば絶対的に鶴畑の支配が及んでいるのだった。 鶴畑家、ひいては鶴畑コンツェルンとはそういう組織だった。自らの支配できる範囲を、絶対的な権力で押さえつけるやり方である。範囲を少しでも外れるものに対しては途端に興味を失ってしまうが、手の届くところに一ミリでも入り込んでしまえばそれは否応無しに、たちどころに鶴畑の支配を受けることになるのだった。 独裁者、絶対王政、などという言葉が似合った。武装神姫に関して形容するなら、鶴畑は裏の世界の表の帝王だった。 被支配者に対し、支配していると強固に分からせるやり方。 それは支配という概念に関して、夢卯理音の持っている、「支配していることを被支配者に絶対に気付かせない」支配論とまったく相対する理論だった。 非効率的だ。と、理音は思った。 相手に自分が支配していることを分からせるやり方はたしかに方法としては強力だが、オープンであるがゆえに穴が出来ざるを得ない。加えて被支配層との無駄な対立、そしてそこから派生する紛争が確実に勃発するのだ。被支配層は支配から逃れるために真っ向から対抗しつつ支配の穴を突こうとし、支配者は自らの軍で反乱を鎮圧しつつ見つかった穴を塞ぐ。穴は無数にあり簡単には見つからないから、結局戦いはいつまでも続くのだ。どちらかの戦力が疲弊するか、穴を突かれて支配者が暗殺や処刑されるかするまで、である。 そして単純に考えれば、純粋戦力が打破される懸念に加えて、支配者側には穴を突かれてトップから瓦解する懸念があるわけだから、ウィークポイント比率は支配者対被支配者で二対一、ゆうに半分もの差がそこにある。支配者は権力と戦力をふんだんに利用したパワープレイで、多くは純粋戦力面を増強するが、反乱を早期に鎮圧できるならまだしも、対立が長引けば穴を突かれて一撃必殺される危険性は加速度的に増大してゆく。 リーダーを失った組織は、例外なくもろい。すぐに後継者が現れるならいいが、後継者は後継者として完成するための育成機関があるわけで、育成が完了していれば問題ないがだいたい間に合わない。 鶴畑の支配体制は鶴畑が経済的に強大すぎるほどの力を持っているそれゆえに、資本主義社会の上においてのみ成立する体制なのだった。 これに対する理音の支配論の有効性は、さらに著しく行を割いてしまうため詳しく述べない。前述の懸念がほぼ綺麗に無くなるのだから、それだけ有効なやり方だとだけ述べるにとどめておく。 非効率すぎてやる気が失せる。理音はドアにひじをついて、真っ暗な夜の街を見ながらため息をついた。 窓に、車内灯に照らされた鶴畑興紀の横顔が写っている。彼は腕組みをしながら背もたれに長躯を預け、目を閉じていた。眠っているのだろうか。 彼は支配者としての優越感を味わいたいだけなのかもしれない。オープンな支配の、支配者に対するリターンのほとんどはまさにそこにある。支配していることを手に取るように実感させてくれるのだ。 その面白さは、理音にも、分かる。 胸元がもぞもぞと動き出した。 「ねえ、もう出てもいい?」 そうだ。あれからずっと胸元にクエンティンを押し込んでいたのだ。 「ごめん、いま出すね」 入れるときは首元からだったが皮膚に装甲の突起が当たって痛かったため、理音は裾をまくって下から手を入れ、クエンティンを取り出した。 彼女の姿は変わったままだった。おそらくあのアイスバーンの下から出てきた神姫の仕業だろう。原理は分からないが合体してしまったらしかった。そのおかげで私は助けられたのだから、文句は言えない。 「なるほど、それが例のプロトタイプか」 いつの間にか鶴畑興紀が目を覚まして、クエンティンを見つめていた。もともと眠っていなかったのかもしれない。冷たさは幾分感じられるが、獲物を狙うような、残忍な目、では無かった。能ある鷹は爪を隠すというように、彼も本性を隠しているのだろう。 「違うわ、融合しちゃったのよ」 クエンティンはことの顛末を話した。 「フムン、やはり単なる強化パーツではなかったか。一体まるごと新型の神姫を作って、対称の神姫に合体、いや、融合させる方がもっとも強力だろうからな。名前は?」 「アタシはクエンティン」 「お前じゃない。知っている。私のルシフェルに傷をつけた神姫は忘れん。お前の中にいるその試作型だ」 『独立型武装神姫総合戦闘支援システムプロトタイプ、エイダです』 「やはり独立したAIを備えていたか」 表情をまったく変えずに、興紀は言った。 「ねえ、いま、やはり、って言ったわね。『やはり単なる強化パーツではなかったか』って」 理音は言葉尻をとらえて訊いた。 「鶴畑はこれと何か関係しているの?」 「鶴畑はこのプロジェクトの筆頭出資者だ」 興紀はなんら隠すそぶりも見せずに答えた。 「プロジェクト?」 「次世代強化パーツ開発計画、メタトロン・プロジェクト」 大仰な名前だな、と、理音は思った。 「だがこれで分かった。次世代強化パーツ開発計画などというのは表向きで、実際は次世代の武装神姫開発計画、あるいはそれと同等の計画と呼ぶのが正しいようだ」 「もしかして、それを確かめるためにあそこに来たの?」 「筆頭出資者としてプロジェクトの詳細は把握するのは当たり前だ。だがプロジェクトチームはチーム以外の関係各所に対して微塵も情報開示しなかった。だからこの機に確かめに来て、可能なら回収するつもりだった。そこにたまたま貴方が居合わせ、さらに回収目的にあの新型どもが現れ、危機を察した試作型は貴方の神姫に融合した」 さっきは貴様、って言ったくせに。と理音は思った。 「私達は巻き込まれたわけか。で、そのプロジェクトの存在も教えた以上、帰すわけにも行かないってことね」 「可能なら神姫だけを持って行きたいが、それはあなたが許さないだろう、それにもうあなたにも危険が及ぶ可能性がある」 「私を助けるのは鶴畑のイメージ戦略? 私はお荷物なわけか」 「どうとってもらっても構わないが、お荷物だとは思わん。あなたのシステムに対する挑戦能力は、正直言うと私も見習いたいくらいだ。例の瞬間移動はあなたが発祥だ。もう使えなくなったのが気の毒だが」 「……それは、どうも、ありがとう」 理音は驚いた。お世辞だとしてもあの鶴畑の、しかも長男からそんな言葉が聞けるなんて。 「ともかく、ということはあなたも詳しくは知らないわけね」 「試作型があそこにいた理由だけだ。プロジェクトチームの一部が造反を起こし、二機の試作型を奪って他社に情報を売ろうとしたと聞いている。一機は奪取に成功したがもう一機は自ら逃走。後はあなたが体験したとおりだ」 「あの一つ目の神姫みたいなのは?」 「新型神姫の量産試験型だろう。素体のみで大したAIも積んでない。だが、拳銃を弾いたのが気になる」 理音は先ほどのことを思い出した。拳銃弾が命中したにもかかわらず、それだけでは壊れず、電柱に激突してやっと爆散したのだ。それもいままでクエンティンがダメージを与えていたからそうなったのであって、あれがもし無傷であったらと考えると……。 理音は武者震いを禁じえなかった。 「融合する前のクエンティンが戦ったとき、あんなに細い骨格に切り込むことすらできなかった。それに、神姫のパワーじゃないって言ったわ」 「うん、あれは下手すると素手で人を殺せるわね。レーザーカッターみたいなのを使えば、鉄板なんて紙きれだと思う」 クエンティンが答えた。 「もうただの趣味のための道具ではないな」 興紀は再び背もたれに身体を預け、ふう、と息を吐いた。 「これからどこへ?」 「ひとまず私の屋敷だ。そこで今後の対策を練る。あなたとその神姫にも協力してもらう。どうせあなたの神姫から、プロトタイプはもう引っぺがせないだろう」 『機密ロックが掛かっています。責任者が許可するか死亡しない限り、融合は解除できません』 「ご丁寧にありがとう」 『どういたしまして』 「その責任者って?」 「最悪なことに、造反組のリーダーだ。たしか、ノウマン、とかいうEU人」 「そう……」 それでひとまず会話は中断した。 ぼたん雪が降りしきる暗い夜道を、真っ黒なサルーンが高級車特有の静かなエンジン音を立てて走る。ヘッドライトが照らす道は轍の出来た雪道だけで、周囲がどうなっているかは分からない。 この道はまっすぐ行けば、郊外の鶴畑邸へ続いている。 到着までまだ二十分少々掛かるとのことだった。 車内は沈黙が支配してしまう。 が、理音は落ち着かなかった。 会話をしていなければ不安なのだ。相手が鶴畑だというのが気に食わないが、この際どうでもいい。まあ、性格はともかく、顔だけ見れば良い男だからそれでチャラにしてやろう。などと思いつつ、理音はかねてから聞きたかったことを切り出そうとした。 が、先に切り出したのはクエンティンの方だった。 「ねえ」 「なんだ」 「アンタ、自分の神姫が負けたら片っ端から廃棄処分にしてるってホント?」 あからさまに侮蔑と敵意を込めた口調であった。 これにはさすがの理音も肝を冷やした。 だが興紀は悪びれた様子も無く、いつもどおりの淡々とした表情で、 「そうだが、それがどうした」 と答えた。 この返答の仕方がクエンティンの堪忍袋の尾をぶち切ったらしかった。 「やめなさい、クエンティン!」 とっさに理音が静止していなければ、クエンティンはブレードを展開して興紀に襲い掛かっていたかもしれなかった。人工知能基本三原則を無視できる一つ目どもと同じ出自の神姫と融合しているのだから、その可能性はあったのだ。 一歩間違えれば殺されていたにもかかわらず、興紀は動揺するそぶりすら見せなかった。 「出来れば理由を聞きたいわ。よろしいかしら?」 いまだブツブツくすぶり続けるクエンティンを押さえつけながら理音は言った。 興紀はしばらく目をつぶっていたが、一度深呼吸をした後、話し始めた。 「武装神姫は道具だ」 その一言目だけでクエンティンがびくりと動くのを理音は感じた。 「神姫とは趣味のための道具、ツールでしかない。釣竿やゴルフクラブ、あるいはゲーム機。それらと同等だ」 「使えない道具は棄てるというわけ?」 「単純に言えばそうだが、ただ棄てるだけでは意味が無い。神姫という道具は蓄積された戦闘データを受け継がせ、必要な装備を移行させ、より洗練されたボディに移し変えるものだ。より自分に合った洗練された道具を作り出す」 自分とはもちろんオーナー自身のことだろう。 「棄てられた神姫のことは考えないのね」 「何の意味がある? いちいち道具に思い入れていたらキリが無い」 「神姫は意思を持っているわ。私たちと同じ意思が」 「下らんな。人工物に意思があるなどというのは幻想だ。有ったとしても邪魔なだけだ。必要ない。神姫に人権を与えようとする運動が盛んなようだが、反吐が出る。モノに権利など要らん。面倒くさくなるだけだ。理解が出来ん」 会話している最中、何度もクエンティンがもがくのを理音は押さえつけていなければならなかった。 ここまで話しただけで、理音は彼とは武装神姫、ひいては人工知能に対する見識まで決定的な乖離があることを思い知った。 彼は武装神姫を知性体とは見なしていなかった。彼にとって、武装神姫とは自分の趣味を行うために必要な道具であり、それ以上でも以下でもないのである。 おそらく彼の持論に対して、過半数の神姫とそのオーナーは反発を示すだろう。なぜならば彼の持論を一かけらでも認めたが最後、いままで築き上げてきた自身と神姫との蓄積の全てが、無意味なものになってしまうからだ。 だがその点で言うなら、幻想だとするのも間違ってはいない。そもそも、どれが現実でどれが幻想だと区別するのはもはやこの時代においては意味をなさない。目には見えない実体の無いものが多すぎるからだ。コンピュータデータ然り、人工知能の意思然りである。だが、難しい理屈を抜いても、人々にとってそれは「ある」ように感じられる。ならば「ある」とした方が後々落ち着くのは道理だろう。人は幻想がなくては生きて行けないのだ。 たとえ武装神姫に意思があるというのが幻想だとしても、「ある」と感じられるのが重要で、多くの人々はそれを認めているからこそ、神姫の人権運動が起こるのである。 だが彼は、違う。鶴畑興紀という人間は、武装神姫の意思が「ある」とは感じられないのだ。理屈のあとさきは問題ではない。どうであれ彼が武装神姫に意思はないと感じたならば、周囲がどんなに「ある」とまくし立てたところで、彼にとってはどうあがいても「ない」のである。 それが鶴畑興紀の正義なのだ。話し合いの余地の無い、正義。 私が武装神姫でシステムの裏をかこうとするように。あいつが公式装備以外を絶対に使わないように。 だから彼がたとえこの先神姫を棄てても、批判することは出来ても糾弾したり弾劾したりすることは決して出来ないのだ。 「……あなたの思想は認めるわ」 「お姉さま!?」 「でもやっぱり私は、個人的感情として納得することは出来ない」 「それでいい。個人の思想や正義は誰にも侵害されない。同時に自分の正義で他人を押しつぶしてもならない。最近私たちの思想に対して正義の味方気取りで向かってくる馬鹿がいるが、そんなものは正義の味方でもなんでもない。ただの押し売りだ」 もっともだ、と理音は思う。 彼の正義は、他人の正義を侵犯したことは少しもない。 武装神姫のバトルは認められた戦いであって、対戦者相互の個人的な事情でないかぎり正義がぶつかることはまず、無い。 正義の味方というのは、強者の正義で弱者の正義が侵犯されたときに現れるのであり、それ以外で現れたのなら正義の味方は転じて悪の権化と化すのである。 自分を含む過半数のオーナーと神姫に対して鶴畑三兄弟とは悪に違いないが、彼らは経営レベルはともかく直接関係のあるユーザーレベルにおいてはよくよく見ればただバトルをしているだけであって、正義を振りかざして他人を貶めることは何一つやっていないのである。 この先武装神姫の人権が認められてからもまた、彼が神姫を棄て続けるとすれば、それは明らかに人権侵害であり犯罪であるが、神姫に人権が出来るなら彼はたちどころに武装神姫から手を引くことは容易に予想できる。 彼のような人間は決して一人や少数ではないのもまた事実なのである。神姫に人権を認めたなら彼らの思想を侵害してしまうのであり、また経済的に見れば甚大な損失が計上されるのは間違いない。 長い間、「神姫には意思はあるが人権は無い」とする矛盾した体制になっている理由はここにあるのだ。 漫画の神様がロボットは友達だと教えてくれたこの日本においても、だからこのさきしばらくは、人工知能や武装神姫に人権が認められることは無いだろう。 ◆ ◆ ◆ 車の心地よい振動が眠気を誘う。考えてみれば今は寝る時間だ。 仕事明けで、しかもあんな体験の後だったから、理音はひどく疲れていた。 仕事のことは鶴畑がなんとかしてくれるだろうという甘い考えに浸りつつ、まどろみの中へ沈んでゆく。 が、睡眠への埋没はすんでのところで叶わなかった。 『警告、後方より脅威、高速接近中。数、一』 唐突にクエンティン、いや、彼女の中のエイダが言った。 「追っ手だと? じい」 「申し訳ありません、撒いたはずなのですが……」 「車じゃないわ」 理音が後ろを見て叫ぶ。 青白い交点が、サルーンを追っているのが見えた。 「神姫か……!?」 『脅威詳細確認。警告。敵はMMSタイプ・アヌビスです』 「アヌビス?」クエンティンが訊ねる。 『私と同じプロトタイプです。私の開発コードはMMSタイプ・ジェフティです』 「片割れというわけか。虎の子をまさか実戦投入してくるとはな。じい、屋敷まではあとどれくらいだ?」 「あと五分少々です」 「追いつかれるぞ」 「アタシが出る」 「何?」 クエンティンが手を上げた。 「だって、片割れなんでしょ? だったらこの子と融合してるアタシが相手するしかないじゃない」 『現状ではアヌビスに勝てません』 「……うそ?」 『サブウェポン、その他各機能を駆動するためのデバイスドライバがインストールされていません。手動でプログラムを組むことは出来ますが、本来の性能を発揮できず、また大きな負荷がかかります。現状の戦力比は本機を一として、アヌビス、三二七です』 「冗談みたいな戦力比だな」 『事実です』 「あなたが出て捕まったら意味が無いわ」 「このままでも一緒よ!」 「ねえ、あなた、あのルシフェルとかいう神姫は持ってきてないの?」 「バトル以外で持ち出すわけが無い」 「役立たずね」 「なんだと!?」 「お二方、けんかをしている暇はございません」 運転席の執事がいさめる。 「屋敷まで着けば対空ファランクス砲があります」 「何でそんなもの日本の屋敷に付いてるのよ」理音が突っ込む。 「鶴畑の敵は多いんだ」興紀が答えた。 「ですからそれまで、クエンティン様が足止めしていただければ、追い払うことは出来ます。これしか方法がありませんぞ」 一瞬の沈黙。 「止むを得んな」 興紀が言った。 「クエンティン……」 心配そうに理音が見つめる。 「だいじょーぶよ。足止めするくらいなら、出来るわよ」 『目的地に到着するまでならば、可能です』 「ほら、エイダも言ってるんだしさ」 「…………」 理音はうつむく。 彼女をサポートできないのがこんなに辛いとは。 だが、いまは頼るしかない。 ややあって意を決したように顔を上げた。 「頼んだわよ、クエンティン」 「まっかせなさーい」 窓が開けられる。高速の風が雪ごと車内に吹き込み、一気に寒くなる。 「車からできるだけ離れないように。では、頼みましたぞ」 「ラジャー!」 クエンティンの背中の羽からエメラルド色の粒子がほとばしる。 出撃。 つづく 前へ 先頭ページ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1127.html
{夜、二人きりで行くにはムードが無い場所だな} 夜。 午後十一時過ぎぐらいに俺はムクリと起きた。 パンツ一丁で寝てたから私服に着替え机に近寄る。 机にはアンジェラス、クリナーレ、ルーナ、パルカが充電器(クレイドル)の上でスヤスヤと寝ていた。 四人とも可愛い寝顔で寝ているのを見て俺の心に癒しが与えられる。 もうパルカなんて右手の親指をくわえて寝てる姿なんて萌え萌えで凄すぎるぜ。 そんな彼女達を起こさないように、俺は抜き足差し足で部屋を出て行こうとする。 ドアノブを左手で回し部屋を出ようとした…その時だ。 「何処に行くのですか、ご主人様?」 「…アンジェラス。起きてたのか?」 アンジェラスが机の端のギリギリ辺りで立っていた。 いつの間に起きていたんだ!? 気配を完全に殺していたぞ。 それに見つかってしまった。 任務失敗、ゲームオーバー、デストロイー。 「何処に行くのですか」 暗闇の中、真顔で言うアンジェラスはちょっと恐かった。 まるで『嘘や言い訳は言わないでください』みたいな感じで、そのつぶらな青い瞳が俺を見抜く。 ここは正直に言った方がいいなぁ。 「ちょっと、アンダーグラウンドに行こうかなぁ~って…」 「!?…何でそんな所に…」 アンジェラスの顔が曇る。 そりゃそうだろう。 俺が行く所は違法だらけのブツが売買されてる場所に行くのだから。 油断していれば、いつ襲われてもおかしくない所だ。 「私は…とてもご主人様が心配です。もし、ご主人様の身に何かあったらと思うと………」 「………」 「私は…」 今にも泣きだしそうな声で言うアンジェラス。 参ったなぁ~。 今ここで泣かれるのは困る。 クリナーレ、ルーナ、パルカを起こしてしまう可能性があるからな。 …しょうがない。 「…そんなに俺の事が心配なら一緒に来るか?」 「えっ!?」 アンジェラスは心配そうな顔から驚きの顔に変わる。 「時間も押してるし、一緒に行くか行かないか早く決めろ」 「行きます!」 今度は真剣な顔になる。 喜怒哀楽がはっきりしてるなぁ。 俺はアンジェラスを優しく右手に乗せて部屋を出る。 「あの、みんなは?」 「あいつ等も連れて行くと厄介事が起きそうになるから二人っきりで行くぞ」 「二人っきり!ご主人様と…二人っきり。夜のデート」 顔を赤くしながら何やらぶつぶつと呟くアンジェラス。 声が小さかったからよく聞こえなかった。 「アンジェラス、何か言ったか?」 「いえ!何でもないです!!」 「?…まぁいいや」 実際、アンジェラスが何を言ったかなんてどうでもよかった。 家を出て車に乗り、アンジェラスを胸ポケットに入れる。 さすがにズーっと片手運転はマズイからな。 クダラナイ事で事故とかしたくないし。 車のエンジンを掛け発進する。 夜を明るくする街灯がとても綺麗。 だがこんなの表の世界に過ぎない。 裏の世界ではヘドが出そうなくらいの汚さがあるのだからな。 これからそんなシットヘルみたいな所に行くのにアンジェラスを連れて来てよかったのだろうか…。 「ご主人様と私だけの夜のドライブ…キャー、恥ずかしいぃ」 「………」 こいつは何だか浮かれてるし。 心配をしてる身にもなってくれ。 予め車の中に置かれていた煙草をくわえ、シガーライターで火をつける。 その様子を見たアンジェラスが。 「あ!ご主人様、また煙草なんか吸っちゃってー」 「先に言っとく、運転中だから煙草を奪う行動はヤめろよ。危ねーからな」 「もう!今だけですよ!!」 アンジェラスは俺が煙草を吸う度に怒るんだから困ったもんだ。 一応、お前等が来てから煙草の本数を減らしてるんだぞ。 この前はなんて地獄を見る程の酷さだった。 あの出来事はけして忘れる事は無いだろう。 俺が煙草をきらして予備のワンカート(煙草の箱、10箱入りのやつ)を戸棚から取り出そうとしたら戸棚には無くて探すはめになり、『あれ~何処いったんだー』と探してるうちに庭から何か焼ける臭いと音が聞こえ、行ってみればそこにはアンジェラスが俺のジッポを使ってワンカートを燃やしていたんだ。 あの時の俺は怒りを通り越して絶望感に浸ってたね。 煙草を吸う以前の問題だ。 だってワンカートを一つ買うだけで三千円も取られるんだぞ! 三千円もだ! 千円札が三枚も! …ワリィ、今ちょっと取り乱した。 あの時のアンジェラスは悪魔だったなぁー。 デビルデーモンみたいな感じ? 「今、私の事を見て『悪魔だ』とか思いました?」 「別にっ」 オマケに鋭い洞察力をお持ちで。 多分、あの四人の中で一番危険で怖いのはアンジェラスではないのかと思ってしまう。 けど、こんな奴でも可愛い所はある。 武装神姫用の整備オイルを買って来てあげた時なんか、俺の右手に抱き着き、恥ずかしそうに離れて顔をポッと赤めながら両手をモジモジする。 う~ん、萌えるぜ。 出来ればその後、上目づかいで『有り難うございます、ご主人様』なんて言われたもう…。 これ以上言うとヤバイ単語がメタクソに出てくるので言わないでおこう。 胸ポケットに入ってるアンジェラスをチラッと見る。 セミロングの金髪が車のクーラーから吹かれる風で優しくなびく。 なびいた髪を右手で軽く押さえ少し顔を傾け、物思いふける表情で夜景を見つめる。 「…ゴクリ」 唾を飲み込み運転に集中した。 あまりにも可愛いすぎて…いや美少女すぎて見とれてしまったのだ。 喉を鳴らす程の…な。 そして不意に俺はこんな事を口走ってしまった。 「なぁアンジェラス、俺とお前って昔どこかで会った事ないか?」 「…え!?」 驚いた表情になり俺を見る。 え、そんなに驚く事か? ていうか、何言ってんだ俺ー!? ありえないだろう! 相手は武装神姫なんだぜ。 前に会った事があるなんて絶対に無い。 あぁ~何だか恥ずかしいなぁー。 「なんでもねー。今言った事は気にすんな」 「…はい、分かりました」 そして暫くの沈黙。 恥ずかし過ぎるのでアンジェラスの顔をまともに見る事が出来ない。 今、あいつの顔の表情はどーなってんだろう。 見たいけど見れない。 ハズィ事を言ってしまった俺はどうする事も出来ず、そのままアンダーグラウンドに着くまで運転に集中する事にした。 …。 ……。 ………。 有料駐車場に車を止め、下りる。 ここら辺は無法地帯だから路駐なかしたらパクられるのがオチだ。 煙草を胸ポケットに入れようとしたが、今はアンジェラスが胸ポケットに入っているので煙草をいれる事が出来ない。 仕方なく、俺はズボンのポケットに入れた。 「ご主人様、ここが…」 「そうだ、ここはアンダーグラウンド…まぁ所謂、悪の巣窟の街かな。どいつもこいつも悪ばっかだ」 駐車場から出て大股で歩く。 ガラの悪い連中や性風俗店の呼び込みをやる野郎どもがわんさかいる。 俺に『そこのに~ちゃん、若い子がいるよ~』とか言いながら近づいて呼び込みの男が来たがシカトする。 行く気が無い訳じゃないが、金は高いし病気を移された堪ったもんじゃないからな。 「何処に行くですんか?」 「俺が世話になってる店に行く」 「…風俗店じゃないですよね」 「あのなぁ。今はそいう気分じゃねぇーの」 「そいう気分だったら行くんですか?」 「いちいちウルセェーなぁ。俺が行く所は何でも屋みたいな所に行くの」 「そうですか、良かったです」 胸を撫でおろすアンジェラス。 全く、俺をそんなに性風俗店に行かせたくないのか? まぁどうでもいいけどね。 俺は駐車場から十分ぐらい歩いた後、小汚い一軒の店に着いた。 店の名前は『★BLACK・STAR★』という。 私的には『何が言いたいんだ?黒い星という意味は解るが、店としての名前には合わない気がする』と思う。 そんなくだらない看板をチラッと見てドアノブに右手を掛け開けた。 店の中はぐちゃぐちゃで何が商品なのかも解らないぐらいの荒れだ。 まあ、所々に品物に値段表が付いてるから少しは解るだろう。 辺り見回し店長が居ない事に気付いた俺はカウンターに置かれてある呼び鈴を鳴らした。 すると。 「んだよ~、後もう少しでクリアーできるのに、こんな時に客かよ」 カウンターの奥にあるドアから男性の愚痴が聞こえる。 予測するとテレビゲームでもやっていたんだろう。 ドアが開くとまるでヘビー級ボクサーみたい体格を持つ男が来たのだ。 頭には迷彩柄のバンダナに真っ黒いサングラスに、口の周りにヒゲを生やしている。 「ヨッ。元気にしてか、オヤッさん?」 軽々しく挨拶をする俺。 アンジェラスの奴は胸ポケットで『友達ですか?』とか言っていたが今はシカトしとこう。 「おおぉー!閃鎖じゃねぇかー!!今日は何のブツを持ってきたんだい?」 オヤッさんは俺を見た瞬間上機嫌になった。 それもそうだ。 何故なら俺はこの店に自分で作った違法改造をオヤッさんに渡し、この店で売りさばいてもらっている。 商品の値段はだいたい六桁から七桁。 売れた物の金は半分の取り分は俺で、残りの半分はオヤッさんにいき渡る。 俺じゃ、違法改造で作る事はできても、売りさばくのは無理だからなぁ。 それにオヤッさんとは、この街で唯一信頼出来る人間でもある。 因みにオヤッさんが俺に対して言った『閃鎖』というのは、この街でのニックネームみたいなものだ。 『オヤッさん』といのもニックネームだ。 この街で本名がバレルとろくな事しか起こらない。 この街の独特のしきたりと言ってもいいかな。 さて、話しをそろそろ戻そうか。 「オヤッさん、今日はブツを持って来た訳じゃねぇんだ。ちょっと情報が欲しくてよ」 「情報?どんな情報だ??ここら辺の情報ならたいてい知っているぜ」 「そいつは有り難い。実は武装神姫について聞きたいんだ」 「武装神姫かー、確かに情報はあるがお前に役立つどうか解らんぞ」 「別に構わねーよ、武装神姫の全ての情報提供してくれ。その変わり、一ヶ月前の取り分はオヤッさんが全額貰っていいからさぁ」 「その話、のった」 オヤッさんは笑いながら俺を見る。 俺もオヤッさんを見ながらニヤける。 はたから見たら密談に見えるだろう。 「あの、ご主人様。この人は?」 「おっと忘れてたぜ。オヤッさん、コイツが俺の武装神姫、アンジェラスだ」 胸ポケットから左手の手の平にアンジェラスを乗せる。 するとオヤッさんは珍しい顔をした後、ニヤニヤと笑った。 「オメェさん、いつのまに武装神姫に手を出すようになったんだ?」 「そうだなぁ、弱弐月前ぐらいかなぁ」 「ほ~う、こいつはまた面白い組合せだな。捻くれ者の性格をしていて武装神姫関係の違法改造武器を店に提供するオーナーに優しそうな天使型の神姫か…。アンジェラスとか言ったな、こいつにはドーピングや違法改造武器を使用させてないのか?」 「あぁ。こいつ等にはそいう類いな物は使わせないよにするつもりだ。特にドーピングなんか使った瞬間、その神姫はメタクソに強くなる代わりに何回かで絶対ブッ壊れる、と聞くぜ」 「ドーピングなんかまだいい方だ。これを見てみぃ」 店員のカウンター方から物凄く大きく長細い鞄を持ち出してきた。 ていうか棺桶に見える。 オヤッさんがその棺桶みたいな鞄を開けると中身は武装神姫の天使型が裸で横たわっていた。 身長は160cm前後。 人間サイズだ。 俺は見た瞬間、こいつが何に使われるかすぐに解った。 所謂、セックスドールていうやつだ。 「こいつはどうやって手に入れたんだ?」 「まぁーそこらは辺は色々あるわけよ」 「言えねぇーか…まぁどうでもいいけどね。で、こいつの使い方は?」 「なんだ、お前、使いたいのか?」 「まっさかー。んなわけねぇーよ。ただ、こいつはどのようなプログラムされているのか気になってな」 「そいう事かい。いいぜ教えてやるよ」 オヤッさんからの話を簡単にするとこうだ。 まず、母体となる武装神姫をこいつの腹に付いてるハッチを開け、その中にいれる。 ハッチを閉め、起動させると母体となってる武装神姫の人格で起動するのだ。 まぁその後は誰でも予想出来る『お楽しみタイム』だ。 噂によると膣のしまりは女の人間より良く、気持ちいいらしい。 バリエーションも豊富で幼児体系やセクシー体系でも何でも出来る。 そこがこの人形の利点らしいが。 こいつにはちょっとした欠点がある。 いくら人間そっくりに作られているからって所詮人形。 何回も使えばブッ壊れる。 あぁ~この場合のブッ壊れるはヤッた回数でアソコが壊れるのではなく、母体となっている武装神姫そのものを示している。 つまりだ、中に入ってる神姫はこのセックスドールのプログラムとの相性が悪く神姫自体のプログラムが破壊されてしまうのだ。 破壊の理由はこうだ。 このセックスドールに入り起動させたら最後、入ってしまった神姫は快楽とい名のプログラムがセックスドールから流れ込み神姫のプログラムに身体の隅々まで入り込まれ、神姫としてのプログラムを次々に破壊していくのだ。 しかも時間を掛けてじっくりじっくりとな。 一種のコンピューターウイルスと言ってもいい。 で、壊れてしまった場合はハッチを開け神姫を取り出し、また新たな神姫を入れる。 その繰り返し。 エンドロールって訳だ。 しかもこの商売は結構儲かってるらしい。 ケッ! 反吐が出るような商売だぜ。 アンジェラスの奴なんかあまりにも酷な話だと思ったのか、途中で口を手で押さえ必死に気持ち悪いの堪えていた。 まぁ自分の同胞がそんなヤクチュウみたいになるのは嫌なのだろうよ。 解らなくもない。 人間でいえば親友が薬物で死んだ時のショックと似たようなもの。 やっぱり、こいつは連れて来るんじゃなかったかもな。 そろそろこの話を終わりにするか。 アンジェラスのためにも。 「オヤッさん、この商品を売るつもりか?」 「いや、こいつは売らねーなぁ。それに預かり物だ。売ったら怒られちまうよ」 「預かり物?」 「そうだ。そのうちこいつを持っていく業者が来て、俺が預かった期間分の金がそいつらから貰え得る寸法さぁ」 「やっぱ、金がらみか。オヤッさんらしいぜ」 「だはははーーーー!!!!ちげえねぇー!」 「で、話を戻すけど、他の武装神姫の情報は無いのか?」 「無い!」 「ちょっ!おまっ!?」 「悪いな、マジで今は武装神姫関係の新しい情報はこれしか無いんだ」 本当になさそうだ。 オヤッさんの顔で察しがつく。 オヤッさんとは結構長い付き合いだからなぁ。 「情報が無いなら、俺は帰るよ。また何か情報が入り次第、連絡してくれや」 「そのぐらい事はしてやるよ」 「よろしく頼むぜ。またなー」 「おうよ」 店から出て自分の車を止めてる駐車場に足を向ける。 「アンジェラス、大丈夫か?」 「はい、大丈夫です。ご主人様」 「やっぱ、お前を連れた来たのは失敗だと思うんだよなぁ~。嫌な事を聞いちまって気分悪いだろ?」 「えぇ…。でも事実ですから仕方ないです」 「仕方ない…かぁ…」 胸ポケットに入ってるアンジェラスから視線を外し、濁った空を見上げる。 相変わらず環境をブチ壊すような煙が店の排気口から出ていて、せっかく月が出ているというのによく見えない。 そして何故かアンジェラスが言った『仕方ない』という言葉が俺の頭の中に刻み込まれる。 こ~う、なんて言えばいいのかな。 何か自分が出来る事があるかな、みたいな感じ? 良く解らないがそんな感じだ。 案外、このモヤモヤは次にオヤッさんと会った時に解るかもな。 「ご主人様~早く帰りましょー。夜更かしはいけませんよ」 「あのなぁ、もう午前四時だっつーの。今日が昨日で明日が今日になっちまったの」 「だから一刻でもいいから帰りましょう」 「はいはい、解ったよ。帰ればいいんだろう」 「『はい』は一回ですよ。前にも言ったように、ご主人様は言葉使いが乱暴で―――」 クドクドとアンジェラスの説教が始まったので、俺は聞いてるフリしながら駐車場に向かった。 因みに『乱暴で』の後は何言ってるのかさっぱり頭に入ってなかったので、家に帰り寝ようとベットに入ろうとしたらアンジェラスに『何を言ったか言いなさい』と言われてしまい困った。 嘘をつけばその場はすぐに流すことができるが、相手はアンジェラス。 何故か俺が嘘ついてるのかが分かって、嘘だと分かった瞬間すぐさま俺の所に来てクドクドと説教が始まる。 それでもバックレルようとすると、パルカのお気に入りのモアイ像を俺に目掛けて投げつけてくるのだ。 だから今日は正直に『聞いてなかった』と言ったら…ニコヤカに笑いながらモアイ像を投げつけられた。 結局、こうなる運命なのね。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2347.html
第1部 戦闘機型MMS「飛鳥」の航跡 第3話 「牙兎」 ワシ型がニヤニヤしながらエーベルの肩を叩く。 ワシ型「ヘイッ!!エーベル!こんな寒いのに寒中水泳か?うひひひ」 エーベル「うるせえよ!」 エーベルはずぶ濡れになってハンカチに包まっている。 斉藤「えーと、なんか私が席はずいている間にバトルしていたということかしら?」 斉藤は首をかしげる。 アオイ「そういうこと」 立花「すみませんね、なんか成り行きで・・・」 立花はぺこぺこ頭をさげる。 エーベル「ふん、少しはやるようだな」 アオイ「鼻水たらしていうセリフじゃねえな」 エーベルはよくみると鼻から雫が垂れていた。 エーベル「!?ぶッ、うるせえ!」 ちんとハンカチで鼻をかむとエーベルはいきり立った。 エーベル「俺を倒せたからっていい気になるなよ!この神姫センターにはな、とんでもない化け物神姫が来るんだからな!」 アオイ「・・・・・・・・定期便か」 アオイはギロリとエーベルを睨む。エーベルはちらりと時計を見る。 時刻は午前11:59をさしている。 エーベル「そろそろだな・・・」 カチリと時計が12:00、正午をさすと同時にサイレンが鳴る。 ウオオオオオンノンオンオンンオオオンンンオンオンオンオンオン・・・・ ワシ型がばっとヘルメットを引っつかみ武装を装着する。 ワシ型「きやがったな!」 昼寝をしていたエウクランテ型がガバッと飛び起きてバカみたいにでかい大砲を引っさげる。 砲台型が磨いていた大砲をリアパーツにすばやく装着する。 エーベル「定期便の意味を教えてやるよ、定期便ってのはな、全長650mmを越す大型の戦艦型神姫がな、爆弾を満載して爆撃に来るんだよ」 アオイ「戦艦型神姫ッ!?」 戦艦型神姫 大型の艦船タイプの神姫の一つであり大砲を主要兵器とする武装神姫のうち、最大最強のものを指す。最も強大な砲力と堅牢な防御力を備えバトルロンドでは戦艦型神姫が出現しただけでその巨体と大火力と重装甲からなる圧倒的な戦闘能力で、神姫たちがパニックに陥り、逃げ出すほどであった。 また遠距離からの艦砲射撃を主軸とした攻撃は強烈で砲台型神姫1000機に相当するとも言われている。 エーベル「しっぽ巻いて逃げるなら、いまのうちだぜ」 エーベルはバイザーを深くかぶり武装を装着する。 アオイ「ふふ・・・あはっはははは!!」 アオイは大きな声で笑う。 エーベル「ッツ!?な、なんだこいつ!」 アオイ「人間狩りを超える狩りはない。武装した人間の狩りに長年携わり味を占めた者は、他の獲物への興味を失う」 エーベル「・・・・・・・なんだそりゃ?」 アオイ「ヘミングウェイだよ、勝利の味は格別で、単純な狩では得られない満足感がある・・・」 アオイの眼が赤く怪しく光る。 アオイ「さあ、バトルロンドを始めよう。何百、何千、何万と続く終わらない戦いの旋律を・・・・・」 立花がパチンとアルミ製の小さな箱を開ける。 エーベルの眼が見開かれる。 エーベル「ちょ・・・おま・・・それは・・・」 アオイ「俺はケダモノだ。強くて大きな牙を持っている」 アオイはにやっと笑う。 大阪城外堀、水上ステージ 大阪城の外堀の一部をそのまま武装神姫の水上ステージとして、利用したステージで障害物として杭や半壊したボートなどが置かれている。 ズズズズズ・・・ 低い重低音を奏でながら、3隻の巨大な灰色の塊が水面スレスレを航行する。その周りには長い槍のような武器と細長い四角形の大砲を構えた武装神姫が数機、編隊を組んで灰色の塊を護衛している。 チーム名「あああああああ」 □重装甲戦艦型MMS 「ドセットシャア」 SSクラス 二つ名「キャノン・ワールド」 オーナー名「細田 勇」♂ 27歳 職業 統合商社営業マン □重装甲戦艦型MMS 「スーザン」 SSクラス 二つ名「アイアン」 オーナー名「西野 公平」♂ 28歳 職業 統合商社営業マン □重装甲戦艦型MMS 「ウォース・パイト」 SSクラス 二つ名「オールド・レディ」 オーナー名 「和田 真由美」 ♀ 29歳 職業 銀行員 □邀撃戦闘機型MMS 「アラキナ」 Sクラス オーナー名 「深田 京子」 ♀ 23歳 職業 公務員 □邀撃戦闘機型MMS 「デボラ」 Sクラス オーナー名 「渡部 雅行」 ♂ 25歳 職業 不動産営業員 □邀撃戦闘機型MMS 「ジャネット」 Sクラス オーナー名 「福島 紀之」 ♂ 27歳 職業 出版社員 □邀撃戦闘機型MMS 「カリーヌ」 Aクラス オーナー名 「今西 麻耶」 ♀ 14歳 職業 中学生 □邀撃戦闘機型MMS 「フラヴィ」 Aクラス オーナー名 「渡部 由里」 ♀ 17歳 職業 高校生 □邀撃戦闘機型MMS 「ケイト」 Sクラス オーナー名 「大久保 蘭」 ♀ 17歳 職業 高校生 ドセットシャアがチカチカと艦橋の端にあるLEDで発光信号を発する。 スーザンがそれに答えるように発光信号で答える。 デボラ「無線封鎖!敵の襲来にそなえろよ」 ジャネット「へっ!!今日も暴れまくってやるぜ」 フラヴィ「今日は戦艦型が3隻!!負ける気がしませんね」 ケイト「うんうん、みんなベテランの神姫ばっかりだし」 カリーヌ「去年はひどい目にあったし・・・アスカ型には要注意だ。各機、アスカ型との格闘戦闘を禁ずる」 アラキナ「アスカ型は旋回性能に優れている。戦う場合は2機1組を徹底すること!」 デボラ「アーンヴァルタイプにも気をつけろよ、連中、でっかいブラスター砲で戦艦を狙ってくるぞ」 ケイト「戦艦型神姫1個艦隊に邀撃機型神姫2個小隊・・・堂々たる布陣ですね」 邀撃機がべちゃくちゃと喋りまくる。 重装甲戦艦型MMSのウォース・パイトがのそりとぼやく。 ウォース・パイト「・・・・・・今日もいつもの定期便だ。さっさと爆弾と砲弾を撃って大人しく帰りたい」 和田がもしゃもしゃとコンビニで買ったオニギリを食べる。 和田「もぐもぐ、パイトー気楽に行きましょう。今日はポイント稼ぎの作業だし、敵チームもおいそれと積極的な攻撃をしてこないでしょ」 ウォース・パイト「・・・うーーん・・・」 ウォース・パイトはからっと晴れた雲ひとつない空を見上げる。上空には太陽がまぶしく光る。その中に小さな黒い点が一つちらつく。 ウォース・パイト「・・・・・・太陽の中に何かいる・・」 和田「うん?」 和田はオニギリをほおばりながら筐体を注視する。 キュイイイイインン・・・・ □戦闘機型MMS 「アオイ」 Aクラス オーナー名「立花 一樹」♂ 24歳 職業 事務機営業マン アオイがFB256/Z 3mm滑腔砲をランドセルに引っさげて戦艦型神姫の艦隊にまっしぐらに突っ込んでくる。 ウォース・パイト「敵戦闘機ッ!!!!!!!!!」 ウォース・パイトが怒鳴ると同時にアオイはFB256/Z 3mm滑腔砲の引き金を振り絞った。 アオイ「イヤッハッーーーーーーーーーーーーーーー!!」 To be continued・・・・・・・・ 前 トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/28836.html
登録日:2011/08/02 (火) 15 01 48 更新日:2024/02/15 Thu 00 00 47 所要時間:約 6 分で読めます ▽タグ一覧 BATTLE MASTERS 一覧項目 武装神姫 豪華声優陣 PSPゲーム「武装神姫BATTLE MASTERS」に登場する架空のフィギュアロボット達の事。 ゲーム内でお迎え出来る神姫は10体。DLCで8体となっている。 神姫毎の性能差は若干あるがCPU戦では大差なく、固有レールアクションも特筆するものはない。 一部の固有レールアクションが産廃とは言ってはいけません それが礼儀というものです つまり、自分の好きな神姫を使うのが一番! また自機の性格は固定だが、NPCになると機体の印象を180度覆すような濃い神姫が登場する。 ちなみに、DLC神姫はシナリオ、2Dパートでの会話などは実装されていないorz 戦闘中の小窓に映る表情で我慢しよう。 と、思ったらMk.2にてシナリオ実装、よかったね! アーンヴァルMk.2(声:阿澄佳奈) ベストセラー機体、天使型アーンヴァルの正統後継モデル。 ゲーム開始時に手に入れる事が出来る、初心者にも安心の性格設定(例外除く)。 店員からも「お嫁さんにするならこの子が一番」と一押し。 固有RAは「グランニューレ」「一刀両断・白」 彼女のシナリオは、結構重い。 ストラーフMk.2(声:茅原実里) 悪魔型ストラーフの正当後継モデル。ストイックな性格設定。 バトロンの初代の元気小悪魔が好きな人はちょっぴり残念かも。 アーンヴァルMk.2とはライバル的位置付けがされており、ゲーム内でもよく強敵が使用している。 固有RAは「ジャーヴァル・クルイク」「一刀両断・黒」 ハウリン(声:喜多村英梨) 犬型。オーナーに従順な性格設定で一部の可哀想な紳士達に大変愛されている。 彼女の「あたま、撫でて下さいね?」にやられたお友達は数知れず。 しかし中にはNPCの“銀千代”のように、やたら偉そうな個体もいる。 固有RAは「ドッグサーカス」 Mk.2にて初期選択神姫に昇格した。 マオチャオ(声:橋本まい) 猫型。マイペースで甘えたがりな基本性格設定で、こちらも一部の可哀想な紳士淑女に溺愛されている。 主人公の親友も「たま子」という名のマオチャオといちゃついている。 綺麗なマオチャオに(色々な意味で)衝撃を受けた人は多いハズ 固有RAは「スーパーねこ乱舞」 Mk.2にて初期選択神姫に(ry フブキ(声:福井裕佳梨) 忍者型。クールながら従順な性格設定で、初期のモデルにもかかわらず今でも人気を博している。 序盤で強制的に入手する。が、何度棄てても再び同じイベントが発生し手元に戻ってくる事から「呪いのフブキ人形」とネタにされている。 ちなみにこのイベントはフブキがバトルロンドで最初に貰える無料神姫であることを表現したものと思われる。 ……売ることは考慮しなかったようだが。 固有RAは「夢想手裏剣」、後述するバレットカーニバル程ではないが、要らない子扱いされている…… ゼルノグラード(声:白石涼子) 火器型。リアル嗜好な性格設定で、武器(特に銃火器)へのこだわりが強い。 バトルにおいてオーナーに有益なアドバイスを与える玄人らしさを見せる。 が、やたら死亡フラグを立てたがる。 固有RAは「バレットカーニバル」なのだが、大抵のマスターから要らない子扱いされている…… Mk.2にて初期(ry アーク(声:堀江由衣) ハイスピードトライク型。熱血で正義感の強い性格設定でオーナーをぐいぐい引っ張る。 NPCキャラになると良くも悪くも性格がオーナーに似てくる者が多い。浮気プレイもお手の物。 だが自機になると何故か性格や口調が安定しない。ライターェ… 赤いボディでバイクに変形するが、「振り切るぜ」とかは言わない。 あるイベントで一部の紳士にトラウマを植え付けた。ナイフクリア的な意味で。 固有RAはコナミのゲームより「ロードファイター」通称「轢き逃げアタック」 イーダ(声:田村ゆかり) コナミ自重しろ。 ハイマニューバトライク型。性格設定は公式で上級者向けとされている程。 むしろオーナーをリードしようとする高飛車な彼女に多くの痴豚が歓喜の悲鳴をあげる。 あとヘンゼルちゃんマ゙ジデン゙ジ 固有RAは同じくコナミのドライブゲームより「スリルドライブ」通称「轢き逃げアタック(その2)」 アルトレーネ(声:中島愛) 戦乙女型。素直でやる気全開な性格だがよく空回りしている。 「〜なのです!」といった特徴的な喋り方やテンションの上げ下げが激しかったりと、意外とオーナーを選ぶかも。 ギュウドンは健在。 あと悲鳴が痛々しい。 固有RAは「ゲイルスケイグル」 アルトアイネス(声:水橋かおり) 戦乙女型。アルトレーネとは姉妹機だが、こちらはやや性格が気難しかったりと扱いづらい所がある。 ツンデレでボクっ娘とかなりハイスペックだがNPCになるとオーナーに恵まれない可哀想な子。 「みぎぃっ!」は紳士のトラウマの一つ。 固有RAは、SGDこと「シザース・ガリアス・ドミニオール」 〜DLC神姫〜 紗羅檀/シャラタン(声:高垣彩陽) バイオリンをモチーフにしたデザイン。上品だが世間知らずな性格でよく相手を挑発する。 固有RAは「ロスト・パラディウム」 ベイビーラズ(声:平野綾) エレキギター型。パンクらしいデザインで、語尾に「〜じゃん」と付く無邪気なロリータ。 笛を吹くとカプセルをだしたり固有RAに血圧アップが必要だったりはしない。 ボディパーツがなかなか刺激的。 固有RAは「We Will Rock Y☆」 蓮華(声:金田朋子) 九尾の狐がモチーフで、自身を神の遣いと自称する。 彼女をお迎えする際は(主に耳の)健康を損ねないようご注意ください。金朋自重。 固有RAは「後天爆裂」 ガブリーヌ(声:小林ゆう) ヘルハウンド型。自分を地獄の使者と信じるよう性格設定された厨二神姫。がさつで乱暴だがLOVE値が上がるとデレッデレになる。 「マスターの為だったら、何だってしてやるよ……」 外見や言動が少年っぽいが神姫は皆女の子です。 固有RAは「ヘルクライム」 ラプティアス(声:遠藤綾) 鷲型。やや高圧的だが、その内に静かな情熱を秘めた気高い性格。 昔の少女漫画でいう「お姉様」といった印象が漂う。 戦闘時小窓の表情が凛々しい表情・ウィンク・笑顔ととても魅力的。 固有RAは「スーパーダブルナックル」 実は勝利だけではなく、戦闘内容にもこだわる方。 アーティル(声:中原麻衣) 山猫型。「根性!根性!テラ根性!」という謎の掛け声を上げる熱血スポ根神姫。 彼女をお迎えしたコーチ、もといオーナーは上手に鍛えてあげましょう。 武装の大半が重火器だが、名前の由来が砲兵だから仕方ない。 固有RAは「スーパーツインカノン」 因みにロリ巨乳。 Mk.2のイベントで更にRAを手に入れた プロキシマ(声:朴ロ美) ケンタウロス型。宝塚歌劇の男役を思わせる凛々しい性格。 女性オーナーを意識していそうだが、スタイルの良さや可愛らしい笑顔を見せてくれたりと、なかなか良デザイン。 固有RAは「オメガスターロード」 『トロンベよ… 今が駆け抜ける時!』 謎の食通さんはお帰りください マリーセレス(声:桑谷夏子) コナミ自重しろ。 テンタクルス型神姫。翠星石(声優繋がり?)とタママ二等兵が合体したような性格。 何て言うか物騒、そしてドS。 可愛い見た目に騙されないように。 固有RAは「バッカルコーン+E83」 〜その他〜 スタルクリーゲル メカメカしい見た目が特徴の神姫。 ゼルノグラードのデザイナーと同じ人がデザインした。 オールベルン Mk.2にて参戦決定したが、無印では防具と武器だけ。 また、ドロップパーツの中には飛鳥や旧白子・旧黒子等といった未登場神姫の武器や防具がある。 因みに飛鳥はMk.2で参戦が決定した。 全神姫のイベントをクリアしてから追記修正をお願いします △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 神姫個々のページが4人ぐらいしかないから -- 名無しさん (2014-06-16 12 37 09) 4人ぐらいしかいないから そっちも作っていきたいな -- 名無しさん (2014-06-16 12 37 26) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2635.html
「……そんなことが」 「はぁー、そんな神姫もいるんだねぇ。……私が言えた義理じゃないけどさー」 空いた休憩所で今までのことを話し終えた。 シオンもだいぶ落ち着いてきた。 シオンが来てから、最近なんか人に自分の境遇を話してばっかりだな。 別に嫌ではない。身の回りがガラッと変わったようなそんな感じがするだけ。 「そんなわけで、なんとかバトル恐怖症を治したくてここに来たのだけど」 「結局こうなってしまった……」 「う、うん。ごめんね」 霧静さんたちは迷惑じゃないのだろうか。普通に考えたら、自分でもこんな神姫はおかしいと少し思ってしまうわけで、まともにバトルできなかったし。 「大丈夫、気にしてないよ。銃が使えない神姫だけどアリエって今はちょっと強いんだよ。昔はまともに戦えなかったし。……それでいえば、アリエとシオンちゃんは似ているのかもね」 なんだよーそれはー、とアリエは納得がいかなそうな顔をしている。 それで、あの奇妙な大剣を使っているのか。わざわざ銃に似せた剣もアリエの為を思った武装なのかも。 優しい子だな、霧静さんは。 「とりあえずさー、私のこの『エレメンティア』が件のストラーフが使っていたのに似ていたのが問題だったんだからさ。他にもバトルさせてみてもいいんじゃない? 何回かやれば勝てるかもよー」 アリエが意見を言う。 『エレメンティア』というのはその大剣の名前だろう。 ファンタジー色の強い、物語に出てくるような名称だ。 僕としては少しカッコイイと思えてしまった。 しかし、あの大剣の状態が変わった時、イスカのに似ていたってのもあるのだけど、まだバトルをやらせてもいいのだろうか。 大丈夫なのかな? 僕はシオンを見る。 「……まだ、やれます……」 涙を拭いて、僕の目を見てくる。 ただそれがうまく出せないだけで、根性はやっぱりあるんだなと思った。 ―――― 駄目だった。 何人かとバトルを申し込ませてもらってみたけど、戦えていなかった。 犬型や砲台型、イスカと同じような悪魔型とも戦うことはできた。 でも、戦うことはできても全敗だった。 負ける度に泣いてしまうシオン。慰める僕たち。 シオンが気になっているのか――バトルの度に、僕の傍に霧静さんとアリエもいてくれる。 ここで真剣に付き合ってくれる友達が出来たのは嬉しいけど、肝心なバトルは白星を挙げられなかった。 そううまくはいかないか。簡単にできたら、宮本さんにいた頃に治っているはずなんだから。 「う~ん、このまま、やらせても勝てないだろうね。きっと」 「……ちょっと、アリエ。言い方が……」 たしなめようとする霧静さん。 「だって、事実でしょー。銃撃を当てられてもない、撃てたとしても、見当違いの所に当たってる。打撃も本気で打ち込めてないみたいだし。こりゃまじ重症だねー」 アリエの言う通り、相手と戦わせてみても、シオンはダメージを与える攻撃を一切できてない。 勝たせるにはどうしたらいいのだろうか。 いや、勝つまでも、まともに勝負ができるぐらいにならないと、どうしようもない。 ああでもない、こうでもないと、僕たちが思考錯誤している時だった。 「いやー、遅れてごめんな!!……ありゃ?」 「……えっと、この人は?」 「うるさい、おにいさんだねー」 霧静さんたちは僕に訪ねてくる。 場が読めてない淳平だ。 そういえば、淳平が遅れて来るのをすっかり忘れていた。 「マスターがご迷惑をおかけしました……それで、この方々は」 といつも通り胸ポケットにいるミスズが言う。 「うわー、羨ましいなー。こんな可愛い子と仲良くなっちゃって。このこの」 僕を淳平が肘でつついてくる。 「えっ……あの……」と霧静さんは可愛いと言われて恥ずかしそうに顔を赤らめている。 「……淳平、それ以上何も言わない方がいいよ」 「えー、なんでー?」 ミスズが冷徹な瞳で見ているから。 神姫が人間に攻撃できるようなら、絶対危ないだろうな。いつか、目で殺されるかもしれないけど。 「リミちんになんかしたら、許さへんでー!」 アリエがエセ関西弁で凄む。(なんで関西弁?) 「そんなのじゃないって。さっき友達になった霧静 璃美香さんと神姫のアリエだよ。まあ、淳平が来ないから、霧静さんたちと仲良くなったのは事実だけど」 「え、そうなのか」 淳平が来なかったから、霧静さんと話そうとしたわけだしね。 でも、僕は今はシオンのことで頭がいっぱいだよ。 「あなたがシオンね。初めまして、ミスズです」 「……初めまして……」 ミスズが床に降り立って、泣き止んだシオンに挨拶をする。 そういえばどっちも初対面だよな。僕がシオンとの会話のタネにしたことがあるくらいだし。 その本人に会えたんだ。 なんとなく、仲良くなれる気がしたからな、この二人は。 「はーい、私はアリエだよ。よろしくー」 「アリエね。よろしく」 目の前で武装神姫が三人集まった。 友達が増えていくのはいいことだな。 「あれー、どこかで見たと思ったら、キミってO大女子高の生徒でしょ。前にここでバトルしてたの見てたよー。この神姫とかがすっげぇ強かったな。あ、俺は伊野坂 淳平。この子はアーンヴァル型の神姫でミスズだからね!」 「……えっと」 「ほら、霧静さんが困ってるでしょ。やめなって」 少し興奮している淳平が見てられない。 可愛い子が好みらしいから、霧静さんの近くに淳平を寄らせないほうがいいのかも知れない。 あ~、霧静さんは人見知りをするらしいから、こっちは仲良くなれるのか心配だ。 ―――― 「シオンのはなかなか重いみたい」 缶ジュースを買って、三人で飲んでいる。 休憩所のベンチに僕が真ん中で左に霧静さん、右に淳平がいる。人は人同士で、神姫は神姫同士で交流を深めると、なぜかアリエが場を仕切った。 まあ、文句はなかったし、別にそれでいいと思ったからこうなった。 少し向こうにシオンたち三人がいる。 楽しそうに話しているのが見える。 三人寄れば姦しいっていうのかな、あれは。 ……うるさくはしてないけど。 「ふーん、戦えない武装神姫、ね。CSCのせいなのか。螢斗は破棄やリセットは許せないんだろ? だったら、このまま、バトルしないってのは駄目なのか?」 (さっきから、その考えが頭にチラつくけど、それは駄目なんだよな) 「元々、宮本さんの所から家出したのもそれが原因だけど。でも、なんとかしてやりたい。シオンはバトルをしたくない訳ではないみたいだし、嫌がってる様子もない。逆に自分からやろうと思ってる。だけど、身体が拒否する感覚があるって。神姫センターに修理にも出したこともあるらしいけど……なにもなかったってさ」 「……したいのに、できないなんて、変な話」 改めて考えると、人間の精神病みたいだなと思った。 神姫なのに人みたいに反応を起こすなんておかしいよな。 人間の思考に近く、感情があるのも大変なことだと思う。 「まぁまぁまぁ、俺たちも、なんとか協力するからさ。元気出せよ! っな! この後、ミスズともバトルさせてからまた考えてみようぜ」 「……そうだね」 肩を叩いて励ましてくれる淳平。 いけないな、僕が暗くなってた。こういう常時明るい淳平が少し羨ましくなった。 「私も……協力する。シオンちゃんがあんなに泣いて可哀想」 「ありが――」 「あんがとねー! 霧静さん!」 「えっ……その……」 なんで、淳平がお礼を言うんだ。ああ、身を乗り出すから、僕の隣から霧静さんが若干距離を離した気がする。 いまだに淳平に慣れていない霧静さんを助けてから、シオン、ミスズ、アリエを呼び戻すことにしよう。 でも、このままバトルを続けて、なんとかなるのだろうか。 ―――― 「はい、これ、ヂェリカンだよー。私の奢りだからー」 螢斗さんたちと離れて、アリエさんとミスズさんと私。 こんな風に神姫だけで集まるなんて初めてだ。 アリエさんが自分の神姫サイズのバックパックから、色んなヂェリカンを取り出した。ヂェリカンは神姫用の趣向品で、人間と同じような、種類のある飲み物だ。 お酒みたいに酩酊状態になる飲み物から、ジュースのドリンクと色々ある。 私の基本データにはそうあった。 「なんで、アリエはこんなの持ってきているの?」 ミスズさんがアリエさんに対して、疑問に思ってそう言う。 ミスズさんは、マスターの淳平さんや螢斗さんたちには丁寧だけど、神姫同士では気軽に接するみたいだ。 ……でも、私はこういうのは初めてで、いまだに緊張している。 「いやだなー、ミっちゃん。敵であったとしても戦い終わって互いにヂェリカンを一杯飲む。それで私たちはもう友じゃん」 「……一緒にヂェリカンを飲んだら友達ということですか?」 「YES!」 「だからって、このヂェリカンをたくさん持っている理由にはならないのだけど。そもそも、なによこれ。『ゲルリン☆ヂェリー』って」 ミスズさんがそれを手に持つ。 ゼリーでできている人間のような、そんな感じ……いや、そうとしか言えないキャラクターのデフォルメイラストが前面にされている。 「ネタで持ってきたんだー。友達がいたら、飲ませようと思って」 「……ひどくない。それ」 アリエさんが、あははっと笑う。 アリエさんは明るいし友達が多そうだ。 私とは大違いだ。バトルに銃武装が使えないっていうハンデがあるのにすごく強いし。 「ほれ、シーちゃんも、これ」 とアリエさんが一つのヂェリカンを渡してくる。 『イチゴ・オレ ヂェリー』と書かれてある。 「ピンク同士、似合いそうだよー」 「……すいません、頂きます」 手渡されて、蓋を開けてみて飲んでみる。 「あ、おいしい」 「だしょー。それ結構お気に入りなんだ。人間の飲むイチゴ牛乳と似せているんだよ。でも、こっちの方が美味いんだよねー」 甘みがあって、ほんのりとイチゴの味がする。 神姫に合うように、調整されているんだろうな。ヂェリカンは初めて飲んだけど、確かにおいしいと思った。 「神姫ショップにこんなのがあった記憶はないのだけど……」 「あー、こういうのは、リミちんの伯父さんが経営している神姫ショップに売ってるんだ。独自に取り寄せててさー。ちなみに、わたしの武装も伯父さんが作ってくれたんだよー。伯父さん、リミちんに甘いから」 「だからって、こういうの買うのはオーナーの霧静さんなんだから。迷惑かけない方が……」 「大丈夫、大丈夫。ちょびーと、貰っただけ」 「……もしかして、無断?」 「もち!」 「だめでしょ!!……ああ、飲んじゃった、お金払わないと。でも、払えるのはマスターだしなー、ああ、どうしよう」 「……ふふ」 なんとなく、可笑しくて笑ってしまった。 この場がなんとなく楽しく思えた。バトルはうまくできなかったけど、この子たちと友達になれたのは素直に嬉しいと思える。 「この際だ! あんた、これ飲みなさい!」 「うわー! やめてってば! ……うッゴク…………マズッ! ガク」 さっきの「ゲルリン☆ヂェリー」を飲ませているミスズさんと、飲まされているアリエさんとがいつのまにか展開されている。 それで、パタリとアリエさんが倒れてしまった。 あれはそんなに不味いのだろうか。 「それ、ちょっと飲んでみたいんですけど、いいですか?」 「やめておきなさい、死ぬわよ」 「マズマズー」 せっかく持ってきてくれたのだし、もったいない。それにイラストもなんか可愛く思えてきた。 「ッゴク……あ、……私、これ、結構好きです」 ドロッとしてはいるけど、飲めるゼリーみたいな。それでいて柑橘系の味がして、しつこいようで、なんでかあっさりしている不思議な飲み物。 私としては、大好きな部類に入りそう。 「ホ、ホント!? シオンが言うなら……どれどれ……ッゴク…………マズッ!……キュ~」 パタリとミスズさんも直立から倒れてしまった。 あれ? なんで、こんなにおいしいのにみんな倒れるのだろうか。不思議だ。 とにかく、このままにしておけない。 螢斗さんたちに、知らせにいかないと。 ―――― 「あ、螢斗さん。大変です、二人が」 なんでか、ミスズとアリエが倒れていた。 傍らには『ゲルリン☆ヂェリー』と書かれたヂェリカン。それから、なにかドロッとしたのがこぼれ出ている。 何があったんだろうか。これを飲んで倒れだしたよな、二人とも。 うめき声でどちらも寝言のように「マズマズー」と言っていた。本当に何があったんだよ。 シオンに聞いても「……おいしいと思うのですけど」と不思議そうに言う。 「うぉー!! ミスズゥーー!!」 「あっ! これって伯父さんの所の。アリエってば、まったく、もう」 結局、この後二人が強制スリープモードから帰ってこず、バトルもせず、その場はお開きとなってしまった。 淳平は何のために来たんだろうか、わからなくなっちゃったな……。 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/715.html
戦うことを忘れた武装神姫・番外編 ちっちゃい物研・鳳凰カップ編-01 鳳凰カップ特別編便乗企画(マテ <東杜田技研・イベント出展のご案内> このたび、弊社では鳳凰カップにおきまして、企業ブースとして 出展することとなりました。 出展内容は主に武装神姫向け機器 (HT-NEK)のご紹介となりますが、他にも各種機器や製品の展示 やデモを予定しておりますので、ご来場の際にはぜひお立ち寄り いただきたく存じます。 また、物販コーナーも設置いたします ので、一部商品はその場でお買い求めいただけます。(十分な数 を用意いたしますが、品切れの際はご容赦ください。) 出展予定内容は下記のとおりです。 ~鳳凰カップ・企業ブースへの出展内容(予定)~ ■HT-NEK・武装神姫向け製品の展示 >現在までに発売した製品の展示・デモを行います。 和(なごみ)壱型 さわやかしんさつしつ ぬくぬくこたつ ふたごのおひめさま デラックスふにふに抱き枕型診断機 神姫といっしょ・神姫用端末 ・・・ほか >今後予定製品の試作品展示をいたします。 おっきいぬくぬくこたつ DMH-SP(オプションパーツも同時展示) レブリミット(仮称)シリーズ各種 ポケットスタイル 和(なごみ)弐型 ・・・ほか ■弊社各部門の紹介(企業案内) >リクルートコーナーも設置する予定です。 ■物販コーナー >弊社製品と、一部提携ブランド商品のの販売をいたします。 (販売予定商品) 和(なごみ)壱型 さわやかしんさつしつ ぬくぬくこたつ ふたごのおひめさま(直送になります) 各種オプション・周辺機器 TODA-Design・プリンセスドレス エルゴ・DXベッド型クレイドル ・・・ほか ■神姫メンテナンス相談 >小型機械技術研究製作部をはじめとした、弊社スタッフがあなた の神姫の日常メンテナンスから、リアルバトルによる損傷の補修 まで、ありとあらゆる質問にお答えいたします。 (時間枠あり・整理券方式、無料です。) ※内容は、随時HP等で更新いたしますので、ご確認ください。 ※弊社は協賛企業としまして鳳凰カップに協力いたしております。 今大会の副賞を、弊社より提供いたしました。 優 勝:クレイドル・ふたごのおひめさまフルセット および小型機械技術研究製作部による1年間 メンテナンスプログラム利用権(2体分) 準優勝:クレイドル・さわやかしんさつしつフルセット および小型機械技術研究製作部による1年間 メンテナンスプログラム利用権(1体分) 3 位:弊社・小型機械技術研究製作部による1年間 メンテナンスプログラム利用権(1体分) ほか、リザルトによる副賞に、下記の副賞を提供しました。 ぬくぬくこたつ、デラックスふにふに抱き枕型診断機、など 参加者全員に「神姫みかんストラップ」を用意いたしました。 以上 ※追加案内※ 本イベントにおきまして、クレイドル「ポケットスタイル」を先行 限定販売いたします。 数量限定となりますので、整理券方式にて 販売をさせていただきます。ご了承ください。 <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1254.html
vol1「風見記の場合」 某所、喫茶店「File」 「よう相棒、来週分の原作出来たか?」 髪を後ろで縛った男が、前に座った男に話し掛ける。 「明日あたりには脱稿する筈だ、…注文、ウーロン茶で」 ウエイトレスに注文を頼む男 「ん?風見記、あいつらはどうした?」 「家でお留守番だ」 「ひでぇな~、ここが神姫も飲み食いできるところだと知ってた筈だろ」 「ひとり、持ち金を考えないで注文する奴がいるからな、帰り道にケーキかなんか買ってくさ」 「んぅ?あ~、あの忠犬ケルスか!」 「忠犬は余計だ巻馬、あいつが聞いたら泣くぞ」 「はは~事実なんだけどね」 おさげ男、巻馬鉄次(まきばそうじ)のすぐ手前でパフェをつっついていた神姫が答える。 傍からみて、その姿は忍者であったが、中身は忍者型MMS「フブキ」ではなく、猫型MMS「マオチャオ」であった。 「…とゆうか巻馬、ここにも所持金を考えない奴が一人いるぞ」 「ロンドか?、大丈夫さ!ちゃんと計算して注文させてるしさ」 「でもそのパフェ、一番高い奴だぞ」「なにっ!?」 慌ててメニューを見て、自分のサイフの中も確認する巻馬。 「……150円足りない…、風見記、150円貸してくれ」 「あほめ、ほれ。返すときは200円だぞ」 「すまん!」 「ありゃ…マスターのサイフの中を過大評価してたみたいだ…」 「それじゃ、明日監修に来てくれ」 「お前の事だから大丈夫だとは思うが…」 「いつも言ってるだろ、『念には念を』ってな。それじゃ!」 「マスター、お金下ろすの忘れずに」「わーっとるわい!」 楽しそうな二人を、見送る男。 彼の名は風見記真木(かざみき まき) ファンタジー・SF作家である。 巻馬は連載中の漫画の作画を担当する人物であり、小説の挿絵も彼の筆による物である。 現在売れ行き好調の、若手作家でもある。 某所、風見記のマンション「第一ヤマモトハイツ」四階 「ただいま」 ドアを開け、室内に呼びかける。 「おかえり、マキ」「お帰りなさいませ、マキさま」「おかえりなさい、御主人」 三つの声が重なった。 そして歩いてくる小さい影。 「シュークリームを買ってきたぞ、三人とも」 「シュークリームですか、もしかして「とても美味しいケーキ屋さん」のですか?」 「ん、そうだ」 第一声を放ったのは、傍から見てそうには見えない砲台型MMS「フォートブラッグ」…なのだが メイドさんにしか見えない「ナゴ」。 「シュークリームとは和製仏語であり、正しくは「choux a` la cre`me(シュー・ア・ラ・クレーム)」と言って シューとはキャベツの意味だそうです」 「…食べるよな?」 「食べます!食べます!」 シッポを振り、ヨダレをだだ漏れしながら薀蓄を言うのは犬型MMS「ハウリン」の「ケルス」。 「ふふ、それは楽しみですね。でも食べるのは食後ですよ、ケルスさん」 「うう…」 ケルスに「お預け」をかけたのは、銀色の羽付きカチューシャを付けた騎士型MMS「サイフォス」…だが 通常よりも幼い姿をしている「フェリア」。 彼女ら三人は武装神姫。 人間の友達であり、戦友でもある。 …微妙に戦いを忘れてる気がするが…気にしないに越したことはない。 風見記は、心の中でそう付け足した。 ToBeContined… 武装神姫でいこう!?に戻る トップページ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1606.html
「そして唐突に、3Sが斬るのお時間です」 「お時間ですね、サラ(仮)さん」 「(ぱちぱち)」 「なんでしょうかその(仮)というのは」 「前回お名前出ましたが、けれども正確には別神姫かもしれませんよーと言うアピールです」 「(うんうん)」 「いや意図よりも、その表現そのものに疑問が」 「なるほど、(笑)のほうがよかった、と」 「……この時代、マサルさんなんて誰も知らないと思う」 「それが判ってしまうのが、ディープな世界の猛者たちです」 「本当に油断がなりませんね、この業界」 「(放課後キャンパスのポーズ)」 「さて、ぐだぐだトークはこのあたりにして、本題です」 「あったんですね、本題が」 「……意外」 「生温かいご声援、ありがとうございます。さて、それで本日のお題は『第六弾武装神姫について』!」 「第七弾は年末に控えている今、最新の武装神姫ですね」 「寅は許す。丑は許さない。建機は判断保留」 「お、さっそく積極的なご意見が出ました。して、その心は?」 「悪魔型として、やや苦手な遠距離型と、組み合いやすい近距離型ということでしょうか?」 「主に胸」 「判ります!」 「判りますとも!」 「女性にとっては、わりと切実な問題らしいですねぇ」 「そうなの?」 「私に聞くなっ!」 <戻る> <進む> <目次> 犬子さんの土下座ライフ。 クラブハンド・フォートブラッグ 鋼の心 ~Eisen Herz~
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1936.html
鋼の心 ~Eisen Herz~ 登場神姫の武装紹介 ~その他編~ 焔星(エンシー) 【壱式=炎(ホノオ)】 焔星の基本形態。 強力無比な【プロトン砲】を主兵装に、【レーザーブレード】や【シールドファング】、【オートガン】等で武装している。 基本的には回避主体の軽量級神姫だが、プロトン砲の火力は凄まじく攻撃力は極めて高い。 二機の【ぷちマスィーンズ】である【光阴(コウイン)】、【闇阳(アンヤン)】との連携を駆使する事で、ステータス以上の戦闘力をも発揮できる。 ただし、【光阴】、【闇阳】は、高い性能の代償として稼働時間が短い為、こまめな補給を行う必要があるが、その際の補給は、本体との接触により電力の譲渡と言う形で行われる。 その電力を生み出す為の大型ジェネレータをバックユニットに内蔵している上、プロトン砲とシールドの重みも加わり、機動性を維持する為に装甲の大部分をオミットする必要があった。 大型ジェネレータは、【ぷち】への補給以外にもプロトン砲のエネルギー源としても利用される。 【式神弐式=光阴(コウイン)】 浮遊移動を駆使する近接防御型の自律兵器。 上半身のみという特異な形態ながら、非常に高い装甲防御力と切断力の高い大鎌【デスサイズ】を有し、近接格闘戦で相手を追い詰める。 作中では使用していないが、飛び道具として双発式の【小型イオン砲】を装備している。 腕と頭部を本体内部に収納する事で球状の防御形態へ変形し、更に守備力を向上させることも可能。 高性能かつ多彩な装備を有するものの、そのエネルギー源は小型のバッテリー一つでまかなわれている為、こまめな補給が欠かせない。 【式神参式=闇阳(アンヤン)】 四足による安定性を活かした精密砲撃を駆使する砲撃支援型の自律兵器。 ある程度の連射力と威力を両立させた速射砲二門を主兵装とし、後方から焔星本体や【光阴(コウイン)】を援護する。 更に、変形する事で高速飛行も可能であり、砲撃の最適ポイントへと素早く移動することが可能。 また、飛行モード時に焔星本体を上に載せ、ボードアタックを敢行する事も出来、用途は多岐にわたる。 エネルギーの消耗が【光阴】ほど激しくないので頻度は多少落ちるものの、補給が必要なのはこちらも同じ。 【真鬼王=零】 焔星の高速戦闘形態。 従来型の【真鬼王】とは真逆に、速度と機動性を向上させる事を目的とした形態であり、焔星本体が、【光阴(コウイン)】、【闇阳(アンヤン)】と合体する事で形成される。 両ぷちとの合体により、それぞれのコンデンサを活用することが出来るようになるため、主兵装の【プロトン砲】もリロード時間が短縮され、発射間隔が短くなる。 また、【デスサイズ】、【レーザーブレード】、【オートガン】等も使用可能で、攻撃面に隙は無い。 巨大な割に装甲防御は然程高くも無いが、強化される機動性で攻撃を回避する事が出来る為、生存性は高い。 なお、【零】の高速戦闘能力は、機体に直結される二機の【ぷち】が焔星本体のAIとCSCを補助することで実現している。 【プロトン砲】 非常に高い威力を持つエネルギー砲。 榴弾砲と同様に、着弾地点で爆発を起こす性質があり、回避するのが困難な武器。 その威力、攻撃特性の代償として重量とリロード時間と言う枷を持つ。 【零】形態では【ぷち】用のバッテリーを流用する事で、リロード時間の大幅な向上を得ている。 【シールドファング】 【炎】形態時に盾となる部分を展開し、大顎として敵に食いつかせる武器。 奇襲性が高く、飛行タイプなどの脆弱な装甲ならば食い破る威力も持つが、重装甲タイプの神姫には歯が立たない。 本来は噛み付く事で動きを止め、【ぷち】でトドメを指す為の補助的な武器。 【デスサイズ】 単分子カッターを内蔵した長柄武器。 作中では使用していないが、大鎌、薙刀、長斧の三形態を使い分けられる。 切断力は凄まじいものの、少々重く扱いづらい面もある。 実は市販されている典雅の製品の一つ。 【レーザーブレード】 アーンヴァルのレーザーブレードを出力強化したもの。 威力はノーマルタイプに比べて向上しているが、稼働時間で劣り、充電に必要な時間も長い。 もちろん、威力が高いといってもカトレアはおろか、フランカーのものよりも出力は劣る。 ただし、通常の神姫相手に格闘武器として用いるならば、充分に強力な性能。 【オートガン】 【炎】、【零】、どちらでも使用できる小型火器。 通常のハンドガンとして手に持って使用する事も可能だが、脚部にマウントしたまま自動的に稼動し、発砲する事もできる。 威力は無改造のハンドガンと同じでしかないが、自衛火器としては有用であり、近接防御に一役買っている。 歌憐(カレン) #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (karen001.jpg) 【重装潜水装備(メキアリル)】 目立たないものの、実はかなりの実力者である藤堂晴香の神姫。イーアネイラ型。 重装潜水装備となる【メキアリル】ではサポートマシンである【アイオール】をそのままバックユニットとして装備し、水中での機動力と攻撃力を強化している。 カレン最大の特徴は、主兵装である【オルフェウス】がギタータイプに改造されている事で、音響兵器としての性能向上に加え、そのまま近接武器としても使用可能。 特別に【エレメンタルソング】と銘を与えられているこの【オルフェウス】は、弦を爪弾く事でエッジ部分が共振を起こし、刺突のダメージを格段に向上させられる。 近接戦では、相手に突き刺したまま『演奏』する事で相手の内部(電子機器)に直接攻撃できる。 要するに轟鬼の『雷電激震』 背面ユニットで目立つ二器のサーペントは、【エレメンタルソング】に砲身を共振させる事でその効果を増幅するアンプの役目も持つ。 もちろん直接メーザー砲としても使用可能で、各種魚雷やニードルガンなどと合わせ、カレンの絶大な水中戦闘能力を支えている。 水中戦に限れば作中最強で、フブキにすら抗し得る神姫。 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (karen002.jpg) 【軽装陸戦装備(メルリンク)】&【自立型随伴砲台(アイオール)】 9話で使用した軽装の陸戦装備。 本来肩装備のニードルガンを合体させ、ツインランサーにしているが武器はこれと【オルフェウス】だけ。 余談だが【エレメンタルソング】が開発されたのは大会直前なので、9話の時点では武器は普通の【オルフェウス】だった。 サポートメカである【アイオール】は、水中行動しか出来ないという制約はあるものの、水中戦では単独でも陸戦型の神姫を倒しうるほどに強力。 高い移動速度と圧倒的な火力を武器に、水中戦を制するだけでなく、VLS(垂直発射ミサイル)で陸上への支援攻撃も行える。 カレンの18番である【霧】も【アイオール】本体、及び発射されるミサイルから散布する。 天使型MMSブラック・アーンヴァル 試作開発段階のプロトタイプアーンヴァルをコピーした擬似神姫=マリオネット。 正確には神姫でもMMSでもないロボット。 旧海底資源掘削プラントで行われた戦闘(バトル)においてフブキ側の手勢として数千機が投入された。 CSCを搭載しておらず、本体内蔵のAIが司令塔からの大まかな指示で行動する方式。 もちろん性能は通常の神姫は及ばず、数で攻める物量戦でその真価を発揮する。 件の旧プラント攻防戦においては数種類のブラックタイプが確認されており、それぞれに用途が異なる。 神姫と違い柔軟な判断が出来ない為に最初から役割を分担していた物と推測されるが詳細は不明。 【TYPE/α】(写真上段) LC3レーザーキャノンで武装した空戦砲撃戦タイプ。 小回りは利かないものの、最大速度は最も早く装甲も(比較的)頑丈であった。 反応速度等に難のある擬似神姫だが、武装の威力は通常の神姫と変わらず、特にこの【TYPE/α】は突入側の最大の脅威となっていた。 頭髪はロングであり、レーザーの発熱を放出するヒートシンクの役割を果たしていた。 【TYPE/β】(写真中段) 空中格闘戦(ドッグファイト)に特化した戦闘タイプ。 上記の【TYPE/α】とは比較にならない旋回性能を持ち、射程こそ劣る物の時間当たりの総火力でも勝っていた。 手持ち武装のレールガンは後に市販される物とは違い、本体から電力を供給されている為、手首のジョイントに固定する必要があり運用には多少の難が見られる。 格闘専用のレーザーソードと防御用のシールドを一つづつ持った最もバランスの良いタイプでもある。 頭髪はポニーテールで、利便性と緊急時の放熱性能を秤に架けた結果だと思われるが、マリオネットにその様な判断が出来たのかは不明。 【TYPE/γ】(写真下段) 屋内白兵戦に対応した陸上歩兵タイプ。 装備は最も安価で、施設内に大量に配備されていた機種。 しかし、過半数を占めていた主力部隊は、たった一機の神姫に一瞬で撃破されており運用には問題点が残っていた物と推測される。 火器はアルヴォ系のSMGであり対神姫戦には十分な威力だが、特筆するべきような機構は見受けられない。 屋内での密集戦を想定してか頭髪は短く、過熱の多い武装の使用が出来なかった物と推測される。 尚、この戦いの後回収されたこれらのブラックタイプを参考にFrontLine社が開発した物が、トランシェタイプのアーンヴァルであるとも言われているが、同社から公式の発表は無い為に詳細は不明。 サソリ型MMSアルアクラン 神姫事業の先駆けであるグループK2が開発した試作神姫。 一体の神姫に極限の装甲と火力、それを支えるパワーを持たせたテストベッド機。 商品化する際の価格がストラーフやアーンヴァルに対し3倍ほどに上る為、試作段階で企画が終了している。 後にUnion Steel社が神姫事業に参戦する際、開発資料として譲渡されており同社のティグリース、ウィトゥルースの雛形ともなった。 主な武装は 【荷電粒子ビーム砲】×1 【2連装速射機関砲】×1 【電熱シザーアーム】×2 特筆するべき性能としては斥力場浮遊による滑走能力が上げられるが、これは単体では完成しておらず、バトルフィールドに予め電磁レールとして使用できる磁場発生装置が必要となる。 鋼の心本編の最終決戦場となる、旧資源掘削プラントには重要設備付近にある大部屋にこの電磁レールが予め敷設してあり、一体ずつのアルアクランが配備されている。 また、その電磁レールを利用し、主砲である【荷電粒子ビーム砲】を発射後に湾曲させる能力もあるが、滑走機能同様にレールの敷設された室内以外では使用できない。 余談だが、基本的に試作タイプの情報は他社に公開されない為、後にMagic Market社がサソリ型MMS(グラフィオス)を作成したのは単なる偶然である……。 清姫(キヨヒメ) 数多の重火器で武装し、強固な電磁装甲で身を守る巨大な神姫。 乱戦においては最強とも言われており、天海におけるランクは2。 火力の高さは言うまでも無いが、格闘能力、機動力も決して低くは無い。 非常に有名な神姫ではあるが、その実態は謎に包まれており、オーナーの正体すら定かでは無い。 一部では、イリーガルであるとも噂される。 幾度かバージョンアップを受けているが、現在(大会時)の搭載火器は以下の通り。 【3.5mm滑空砲】 主砲となる、インターメラル製の超大型滑空砲。 火力は凄まじく、直撃を受ければ如何なる神姫とてひとたまりも無いと言う、文字通りに必殺の火器。 重量がある為に取り回しが難しく、近距離では照準をつけるのは困難だが、破壊力はそれを補って尚余りある。 【1.2mm滑空砲】 副砲は【FB256 1.2mm滑空砲】と同様のもの。 腕部に内蔵されており、非常に広い射角と操作性を持つ。 威力では【3.5mm滑空砲】に劣るものの、近接戦でも使用可能である為に使用頻度は高い。 【1.0mm狙撃砲】 超長距離での主力となるロングバレルキャノン。 他の砲と同じく行進間射撃も可能だが、静止状態における精度が極めて高く、大口径の狙撃銃としても機能する。 ある程度の連射も可能で強力な弾幕を展開し、対空射撃を行う事も可能。 【0.8mm速射砲】 連射性に特化した小口径滑空砲。 清姫の弾幕の真髄とも言える火器であり、これと【ガトリングガン】の併用は極めて強力。 弾種は近接/時限信管の【榴弾】であり、対空高射砲としても機能する。 【ガトリングガン】 小口径の銃弾を極めて速い速度で連射する機関砲。 清姫の火器としては比較的小型だが、通常の神姫であれば主兵装であっても過剰とも言える程の火力である。 【6連短距離ミサイル】 左右連動で、合計6発の誘導ミサイルを発射するミサイルポッド。 短距離と銘打たれているが、通常の神姫の射程距離よりも遠くまで攻撃可能。 誘導性が極めて高く、飛行型、高機動型の神姫にとっては致命打となる。 【2連長距離ミサイル】 理論上フィールドの端から端まで届く長射程の巡航ミサイル。 威力は【3.5mm滑空砲】にも匹敵する程であり、極めて強力。 装弾数が少なめなのが弱点。 【レールガン】 電磁加速された小口径高速弾を発射する武器。 装甲貫通性が極めて高く、ジュビジーの【キュベレーアフェクション】ですら貫通する。 破壊力そのものは【榴弾】に比してやや劣る。 【スプレッドランチャー】 散弾のように拡散する【榴弾】を発射するランチャー。 比較的射程距離は短いものの、面制圧火器であり、広範囲を一瞬でなぎ払う。 更に連射も可能であり、主砲とは別の意味で凶悪な武装。 【小型機銃】 至近距離や小型目標への射撃に使用するバルカン砲。 補助的な兵装であり、威力も普通の神姫の副砲並で極立った特長は無い。 【Sマイン】 爆発し、周囲に散弾をばら撒く近距離用特殊兵装。 無差別攻撃であるため、清姫自身も攻撃を受けるが、散弾の威力は清姫の装甲で弾く事が可能である為、敵だけが被害を蒙る。 これを防ぐような重装甲の敵はそもそも至近距離まで近寄れない為、低い威力に問題は無い。 リーヴェレータ(リーヴェ) 飛行型かつ、重量級という極めて特異な神姫。 飛行速度は極めて遅く、他の飛行型はもちろん、平地であればトライクやティグリース、果てはハウリンにすら移動力で劣る事もある。 ただし、装甲はストラーフをも凌ぎ、攻撃力は極めて凶悪。 また、移動力の低さも地形の利用(悪路へ追い込む)や高度を下げながら飛行する事で加速を行い、補うことが可能。 空対空戦には向いていないが、バトルロイヤルの特性上飛行タイプは遭遇率が低く、リーヴェの装甲を貫けるだけの重火器を有さない事が殆どなので、結果として生存性は極めて高い。 主な兵装は機体下部の大型連装機銃と各種爆弾。 爆弾は【無誘導爆弾】【レーザー誘導爆弾】【燃料気化爆弾】【クラスター爆弾】【テルミットナパーム弾】等を多数有しており、彼女の真下は如何なる神姫もその生存を許されない地獄と化す。 実は重過ぎる重量をフロートで浮かして、ターボプロップで移動するという飛行船のような移動法である。 普段はお淑やかだが、バトル中は性格が豹変する。 それはもう、別人レベルで……。 何か溜まっているのかも知れない。 アーシュラ 【アトラクアナクア】 パワー最優先のチューンナップを施されたストラーフ。 天海市の神姫センターでも上位に位置する神姫の一人で、ランクは6。 最大の特徴は6本装備の【チーグル】であり、近接格闘で右に出る者はいない。 ただし、反応速度を向上させる為、思考能力を極限までカットしてしまう為、戦況判断が不得手。 過去に、「蜘蛛らしく糸を吐く能力」を付与された事があったが、自分で張った蜘蛛の巣を敵と認識し、即座に殴りかかった事がある程におバカ。 当然、正式採用は見送られた。 トリオ・ザ・サーべラス(Cerberus) 三機一組で活動するサーべラスの構成機体。基本的に三機とも装備は同一。 概要としては、ハウリンの標準装備をベースに、カスタムアップされた強化型ハウリン。 主兵装は【吠莱壱式】と【ヒートサーベル】(レーザーブレードではない)。 補助兵装として【拡散ビーム砲】(頭頂部の“耳”部分)を装備している。 ただし、【拡散ビーム砲】は出力不足で目くらまし程度の効果しかない。 機動面では、極小タイプのフローターユニットを内蔵しており、地面の上を滑走移動する事が可能で、通常のハウリンの比ではない高速移動を可能としている。 更に、装甲も充分に頑丈で、ハウリンタイプの特徴である頑強さと相まって高い耐久性を持つ。 しかし、これ程の高性能でありながら何故か戦果が振るわず、天海最弱の3機という不名誉な知名度を持ってしまっている。 三機の連携による、非常に強力な必殺技を持っているらしいが、未だ公開された事はない。 因みにオーナーは黒井三兄弟。 高校3年生の三つ子であるらしい。(黒い三年生!!) また、構成する三人のハウリンは戦闘中の呼称をα、β、γと言う記号で呼称するが、本名は別にあるとか。 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る -
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/130.html
そのに「回顧録・一」 僕がのティキを所有する事になってから、日はまだ浅い。 今僕と共にある武装神姫――ティキは、元々亡父の物。言わば形見だ。 つまり僕は自分の神姫と付き合っていく上で、ティキを一から育てると言うメリットを放棄させられたワケだ。 そして手探りで半ば完成されたティキというパーソナリティーを理解していくと言うデメリットだけを負わされた事になる。 それを少しでも克服したいと(愚かにも)思った僕は、夜中にただ一人で無き親父の書斎へと向かう。 ……冷静に考えれば、こんな考え方だから僕は振られたのだろうか? ちなみに、本来神姫はただ一人を『オーナー』と認識したら機能『停止』、観念的に言ってしまえば『死亡』するまで変更することが不可能なのだ。が、ティキの様な『オーナー』死亡の場合に限り、別オーナーへの再登録が認められる。 それまでの神姫のパーソナルをそのまま引き継ぐ為には、わざわざ必要書類をそろえて、郵送し、更にメーカーと再契約しなければならないけど。 それはさて置き。 親父はマメな人物でもあったから、もしかしたらPCに痕跡ぐらいは残ってるだろうとそう思ったのだ。 果たしてそこには『日記』と記されたフォルダが残されていた。 ……痕跡どころじゃねーよ。そのものだよ。 ともあれ、僕はそのファイルを開く。 ○月○日 この日俺はついに武装神姫に手を出してしまった。 こんな事家族に言ったらもしかしたら妻は離婚を言い出すかもしれない。 息子に言ったなら、俺は軽蔑され、冷たい視線を受ける事になるだろう。 でも、お義父さんの神姫を見ていたら、どうしようもなく、たまらなく羨ましくなったのだ。それはもう仕方が無い事なのだ。 俺は食事、団欒の後、なるべく自然に書斎へ戻ると、逸る心を抑えられずすぐさま神姫のパッケージに手をつけた。 MMS TYPE CAT『猫爪』。 俺は焦りながらも慎重に、とにかく家族に気付かれない様、細心の注意を払って開けてゆく。 そこには夢にまで見た神姫が、眠るようにいた。 俺は早速神姫を起動させる。 何かしら説明の様な事をきった後、彼女はおもむろに俺に言った。 「愛称と、オーナー呼称を登録してほしいですよぉ♪」 ……この子は何で歌うように喋るのか? お義父さんの所の娘達は普通に話していたのに??? 「どうしたのですかぁ?」 にっこりと笑って俺を見る。と言うよりそんなものを登録するという事実をすっかり忘れていた。 「……あーすまん。チョット待ってくれ。考える。」 「ハイですぅ♪」 目の前の神姫はそういうとその場でぺたりと座った。 あーかわいいなぁ。……いや、そうじゃない、考えよう。 どうせなら変わったのが良いな。でも愛称は変すぎても可哀想だ。と、俺が頭を捻っている間も彼女は俺をジッと見つめている。……愛らしいなあ。 はた、とそこで思いつく。 「オーナー呼称の方、先でも良いかな? 『旦那さん』と呼んでくれ」 「『旦那さん』ですねぇ♪ ……登録したですよぉ♪」 そういうと彼女は「旦那さん、旦那さんですぅ☆」と何度も言って机の上をピョンピョンと跳ね回った。 そんな彼女を見ていると微笑ましくなる。……正直に言えば、ニヤニヤしている自分を自覚する。 そんな彼女の様子を目で追いながら、俺は愛称を考えていた。 「ダメ大人じゃねーかよ!!」 僕はただただ、PCの前で突っ伏した。なんだか日記も妙に読まれる事を意識した書き方だし。 でも、それと同時に戦慄した事が一つ。 ……確実に僕にもこの親父の血が流れていると実感した事。 終える? / つづく!