約 173,351 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1308.html
「ところで犬子さん」 「なんでしょうマスターさん」 「貴女本体の起動と充電用クレイドルとPC接続キットの設置。これで、準備としては十分なのでしょうか?」 「はい。マスターさんの私の主な使用意図は、電子秘書及び実生活での電子ツールの使用サポート、とのことでしたよね? それでしたら、私本体のみの起動で十分にこなすことが可能です」 「なるほど、頼りにしております」 深々と座礼するマスターさん。 「ご丁寧に。誠心誠意勤めさせていただきます」 同じく擬似座礼で深々と頭を下げ返す私。 どうにもマスターさんが正座でこちらに向かれるので、私も自然と同じ姿勢を取りたくなります。 「ですが、ですね……貴女の入っていた箱の中に、他にも色々な部品が入っているのが、何と言うか非常に不安をそそられるのですが」 ざりざりと、箱を揺らして中にパーツが大量に残っていることを主張するマスターさん。 「ああ、それですね。ご安心ください。そちらは武装パーツですので、戦闘行為を行わないのであれば基本、必要はありません」 「戦闘行為、ですか」 「戦闘行為、です。これでも一応、『武装』神姫ですから」 「そういうものなのですか」 「そういうものなのです。もちろん、マスターさんのように電子秘書的な活用をしていただいても結構ですし、単に着せ替えやコミュニケーショントイといった愛玩目的で購入される方もいらっしゃいます。必ずしも、バトルを行なう必要はないのです」 私は似非正座から立ち上がるとその場でくるりとターンし、可愛らしいポーズをキメて言葉を続けます。 「アナタに合わせた、アナタだけの遊び方! アナタに役立つ、アナタだけの活用法! 武装神姫の世界は、アナタのお望みのままに工夫次第でどんどん広がって行きます! もちろん、それをお助けするサポートグッズも各種充実! さあ、アナタもレッツトライっ!」 「それも販促義務ですか?」 「申し訳ありません、起動直後だとどうしても」 「ままなりませんねぇ」 「ままなりません。あ、同じようにバトル関連情報の告知もありますけど、ご覧になります?」 「せっかくですから、見せていただきましょう」 「了解いたしました。では……」 私は改めて今度は軽くシャドーボクシングを決めると、びしっと勇壮なポーズをとって言葉を続けます。 「遠距離の敵を撃ち抜け! 接近して相手を圧倒せよ! 敵の攻撃を華麗に交わせ! なんといっても、バトルは武装神姫の花形! 様々な武装神姫の、様々な戦い方! 基本セット同梱の武装でもバトルはお楽しみいただけますが、そのほか様々なニーズに合わせて、武装も各種充実! あなたの戦略に合わせて武器を増やすもよし、あなたのこだわりに合わせて武装を選び抜くもよし! 強い武装・カッコイイ武装・かわいい武装・コミカルな武装、各種豊富に取り揃えた武装神姫武器パーツは、全国神姫センター及び提携各店、ネット通販でお求めになれます!」 「お勤めご苦労様です」 深々と座礼するマスターさん。 「いえいえ、ご清聴ありがとうございました」 再び似非正座の姿勢を取り、深々と擬似座礼。 「それでつまりこちらの部品は、そのバトルのためのものと言うことなのですね」 「ええ、基本そのとおりです。ですが、日常生活においても役立てることは可能です」 「おお、そうなのですか?」 私は立ち上がり、箱の中からパーツを一つ一つ取り出して行きます。 「ええ、例えばこのヘルメット、【頭甲・咆皇】などは、単純に不意の衝撃から素体頭部パーツを守るほかにも、各種センサーの増強も行なえます」 「おおー」 「次にこちらの【胸甲・心守】及び【腕甲・万武】ですが、こちらも単純な素体保護の他に、組み合わせることで簡易的なパワードスーツとなり、神姫素体のみでは持ち運びの困難な物体の移送も可能となります」 「おおー」 「それからこちら、【脚甲・狗駆】及び【ドッグテイル】は、素早い移動とその際のバランサーとなり、ハウリンタイプの誇る接地機動性能を十二分に引き出せます。神姫にとっては約10倍のスケールである人間の生活空間で活動するためには、必須なものと判断いたします。 なお、【ドッグテイル】には本物の犬を模した、簡易的な感情表現機能が備わっていることを付記します」 「おおー」 「武器パーツの説明に入りまして、まずはこの【十手】。刃などもない単純な形状の打撃武器ですが、単一素材で構成された円柱形の骨太な構造の頑強さは神姫の近接武装の中でも群を抜いております。 テコの原理を利用することで、繊細なマニュピレーターに代わりプルタブの開封を行なう事も可能でしょう」 「おおー」 「マスターさん、わりと『どうでもいい』と思ってませんか?」 「気のせいですよ犬子さん」 「そうですか」 「そうです」 「では説明を続けさせていただきます。こちらの小さいお稲荷さんのようなものは、【プチマスィーンズ】です。中枢ユニットを介して遠隔操作が可能で、遠隔射撃を得意とする分離独立攻撃ユニットなのですが、まぁ射撃はせずとも、神姫以上にコンパクトなボディとその敏捷性、さらには群体であるという特性を活用すれば、家具の陰に隠れた探し物なども効率的に探索可能です」 「おおー」 「【棘輪(きょくりん)】、【吠莱壱式(ほうらいいちしき)】は共に遠隔武装です。日常生活においては、えーと、その……害虫駆除に応用することが可能かと」 「さすがにこの辺になると苦しくなってきますね」 「申し訳ありません、やはり基本的にバトル前提のツールですので」 「そうなのでしょうね」 「そうなのです」 「ですが……」 ふむ、とマスターさんは顎に手を当てて考え込みます。 「『武装』神姫である以上、やはりそれらの装備もひっくるめての武装神姫なのでしょうね」 「……ご慧眼です、マスターさん」 といいますか、バトルには興味をお持ちでなさそうだったマスターさんが、バトルも含めての武装神姫であるとご自身で気付き、そしてそれを認めて下ったことに深い敬意と充実感を覚えます。 「念のため確認しますが、それらの部品を装備しても、例えば僕の本来の目的である電子秘書の役割に齟齬をきたすような、そういったデメリットはありますか?」 「いえ、そういうことはありません。強いて言えば、充電時の消費電力が、武装分が上乗せされて30%ほど大きくなる程度です」 「なるほど、日常生活でも役立てることが可能で、デメリットもその程度と言うのなら、使わない理由はありませんね。 犬子さん、せっかくですので、その装備をつけてみていただけますか?」 「了解しました――あの、私自身が装備してしまってよろしいですか? それともマスターさんがパーツの取り付けを行ないますか?」 やはり武装神姫も玩具であり、セッティングなどをオーナー自身の手で扱うことも楽しみ方の一つではあります。 「あー、いえ……見たところ組立説明書もないですし……ここは犬子さん、お願いできますか?」 「了解いたしました」 まぁ、オーナー自身云々は、一般論のお話ですし。マスターさんの場合は例外に含まれることは明白です。 「では、少々お待ちいただきますが……」 ちょっとここで、言葉を切り。 「あの、もしよろしかったら、装備してる間は後ろを向いていていただけると嬉しいのですが……」 「ええと、それは構わないのですが……僕自身に取り付けされるのはよくて、犬子さんがご自身で取り付けをなさる場面を見られるのはイヤなのですか?」 「そのあたりは微妙な神姫ゴコロといいますか、察していただけると助かります」 「複雑なのですね」 「複雑なのです」 マスターさんは私の入ってた箱を手に取るとそれを縦に置き、それからくるりと背中を向けました。 どうやら、衝立に使えと言うことのようです。 「紳士ですねマスターさん」 「終わったら呼んで下さいね、犬子さん」 そう応えるマスターさんの耳が、ちょっぴり赤くなっていました。 <そのに> <そのよん> <目次>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/433.html
私と彼女、小さな小さな“幸せ”を 対戦相手に名刺を渡して意気揚々と帰る、私・槇野晶と神姫・ロッテ。 とは言えそろそろ、夕食の時間であるな……。買い物を手早く済ませ、 外食へ赴く事にしようか。たった2人のささやかな祝宴だが、十分だ。 「マイスターっ、わたしチキンのサンドが食べたいですの♪ねっ?」 「む?遠出になるが……よし、今日は頑張ったからな!いいだろう」 「やった!マイスター、マイスター、大好きですの。えへへ~……」 「わぷ、こらっ。すりすりするなっ!?うぅ、しょうがない娘だッ」 我々が帰りの足で向かったのは、神田神保町にあるサブウェイである。 少し秋葉原からは離れているが、ロッテの好物なのだ。仕方あるまい? 何、「神姫の食事って電気じゃないか」だと?……その筈、なのだが。 「いっただ~きま~すの~、マイスターっ!!チキン、チキンっ」 「冷めはしても逃げはせん、落ち着いて食べろ……って、もうッ」 「はむ、はむ、はむっ……もっきゅ、もっきゅ、もっきゅ……♪」 「相変わらずおいしそうに食べるなぁ、ロッテ。可愛い“妹”だ」 「はみゅう?ふぁいすふぁ~、んぎゅっ……どうかしましたの?」 「う゛ぁ……そ、そのな。ほら、ドレッシングを零すんじゃない」 この通り、ロッテは平然と“人間用の”チキンサンドを食べている。 飲んですぐに「嫌いですの」と言い放った、炭酸飲料や辛い物以外は 食料ならなんでも食べてしまう。無論、15cmの体格に見合った量しか 食べられぬ故、自然と私と半分ずつシェアする事になるのだが……。 「そう言えば、ロッテや。お前がその様に食事するようになったのは」 「えっと……確か、以前定期メンテナンスにお出かけしてからですの」 「む、そうか……あの時頼んだ先は、確か“ちっちゃい物研”だな?」 「はい♪あれからなんだか、とても快調ですの。お腹は空きますけど」 東杜田技研。そう大きな会社ではないが、マイクロマシン分野に強い。 そこの一部署が“ちっちゃい物研”と自らを名乗っている。そして以前 メンテを依頼する際、知人を頼って同部署を指名した覚えがあるのだ。 あれは研究員……“Dr.CTa”の技術論文を読み、感銘を受けたからか? 実際同社の手際は見事な物だ、私に解決できない不調は全て解消した。 特に補助バッテリーの持続性が、30%程伸びているのは驚きだった。 「だが、ううむ……その時の事は、まだ思い出せないのかロッテ?」 「えと、あ。そう言えば……白衣のお姉さんが嬉しそうに手を……」 「ふむなるほど、そういう事か。感謝せねばならんな、ある意味で」 なんとなく掴めた。が、追求はするだけ無意味であるとも理解が及ぶ。 “Dr.CTa”か仲間の誰かが、実験の為ロッテに改造を施したのだろう。 となればロッテからそれを取り外すのは、かなりの大手術になる筈だ。 そもそも、だな?こんな可愛く物を食べるのに……外すなどとはな?! せっかくの“妹”から、食を取り上げるという冷酷な行為はなッ!?! 「……マイスター?なんだか顔が紅いですの、どうしました~?」 「な、なんでもないっ!……そう言えば、こんなビラがあるぞッ」 「武装神姫・第五弾?セイレーンにマーメイドに、イルカ……?」 「うむ。今度は海シリーズらしい……水着も開発せねばならんか」 と私が水着のデザインを思案し始めた横で、何やらロッテが唸り出す。 あからさまに縦線が入る程の、負のオーラさえ背負っている様だった。 何事?と顔を近づけ、ロッテの様子を伺ってみる。そして出た言葉は。 「……マイスター。なんだかこの妹達、胸がおっきいですの」 ホットティーを噴いた。見ればなるほど、確かにキャンペーンガール…… 正確にはキャンペーン神姫か。彼女らの胸部は、至上類を見ない豊かさ。 成長期なのに躯が小さい私も、アーンヴァルタイプのロッテも心は同じ。 どちらから切り出そうかと悩んでいたが、先行したのはやはりロッテだ。 「マイスターも、わたしの胸大きい方がやっぱり……いいですの?」 「ぐ!?……いいんだ。ロッテは今のロッテが一番可愛いからな!」 「てへ……マイスターも、今のマイスターが一番大好きですの~♪」 そう言って肩に飛び乗ったロッテに、私は頬を寄せ頭を預けさせてやる。 嫉妬心が無いわけではないし、今後は豊満な躯用の服も作らねばならん。 我々としてもいろいろネガティブな物は感じるが、それはそれであるッ! 別に胸の善し悪しで全ての価値が決まるわけではない、気楽に構えよう。 彼女は大切なパートナーであり、彼女にとって私もそうであるのだから。 「あ。マイスター、紅茶が付いてますの。んっ……♪」 「わ゛!?こ、こらっ、頬にとはいえキスするなっ!」 「えへへ~、大好きって言ってくれたご褒美ですのッ」 ──────この笑顔があればね、別にいいじゃないの。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/827.html
人物紹介 月夜 のどか Nodoka TSUKUYA 実の兄から神姫を強奪したちゃっかりさん(?)。 剣道部で、家も古い剣術道場。マリーと香子を溺愛、多分お兄ちゃんのことも好き。 月夜 時裕 Tokihiro TSUKUYA 実の妹に神姫を強奪された不幸な人。 アーニャが可愛くてしょうがない。香子ちゃんファンクラブ(通称ナイツ・オブ・ワイトドリーム)の会長兼会員ナンバー1番。多分妹のことも好き。 斎藤 香子 Kako SAITO カトー模型店に集まる全ての男性神姫マスターのアイドル的少女。 恥ずかしいのであまり公言はしないが、実は自分のファンクラブがあることがちょっとした自慢。 バトルを始めて、のどかに負けるまで全てのバトル(ただし非公式)に連勝を続けてきた。いつしか付いた通り名は『プリンセス・オブ・ワイトドリーム』。 ワイトドリーム(White Dream)とはチューリップのトライアンフ系の品種の1つ。 カトーさん Mr Kato カトー模型店の店主。お髭のおじ様。 神姫紹介 マリー・ド・ラ・リュヌ Marie de la Lune 人形型MMSノートルダムの武装神姫。月のマリーさん。 人形型云々というのはマリー自身とまわりの人間がそう言ってるだけ。もともとは素体だった。 マリー(マリア)と名づけられたからノートルダム(我らが貴婦人:聖母)。 傘っぽい武器とドレスっぽい何かを着けて戦う。 アーニャ Anya アーンヴァルモデルの武装神姫。ボディは紫色。 時裕のパートナー、変なお嬢様口調で話す。 時裕と二人きりのときはアンヌシカと愛称で呼ばれる。 ラーレ Lale ジルダリアモデルの武装神姫。ボディは通常のジルダリアタイプより少し明るい白。 ジルダリアらしく状態異常を引き起こす武装を使いこなす腹ぐ...否、知能派の娘。 ラーレとはトルコ語でチューリップのこと。 武装紹介 ロンブレル・ロング L ombrelle longue 『長い日傘』 日傘みたいな武器。一応ライトセーバーとライフルになる。 ラ・ローブ・ジュアン(ウォードレス) La robe jouant -War dress- 『遊ぶドレス』 ドレスのくせに傘よりも攻撃的な装備。ミサイルなどを追撃するための機関砲、フレキシブルに動くクワガタのような角が特徴。 チューリップ The tulips カトー模型店オリジナルウェポン。麻痺効果のある武器のシリーズ名。 超速効性ライフルタイプのフォステリアナ、遅効性ロッドタイプのトライアンフ、超遅効性ソードタイプのレンブラントがある。 どれもチューリップの系統の名前。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/180.html
「狐狩り」 ”狐狩り”という競技がある。 人間が銃を持って獲物を追うのではなく掛け声で猟犬を操り、いかに早く狐を”仕留めさせる”かを競う競技だ。 イギリス貴族のスポーツとして愛されてきたというこの競技は、21世紀に入って動物保護の見地から禁止法が施行された。 西暦2036年。 狐狩りは形をかえて存在している。 「まったく、夜中の上に雨ときてる。ナンバーテン(最悪)だぜ。」 背中に装備したスラスターユニットをふかしてビルの屋上へ着地したMMS、俺と同じストラーフ型のチャーリーが言う。 だが言葉とは裏腹に表情は生き生きとしていた。久しぶりのアウトドアミッションだから無理もない。 「その割りには嬉しそうじゃないかチャーリー?」 「へへ。今回の狐はストラーフだろ?俺たちと同じで高性能だ、久しぶりに狩り甲斐がある。Cドールやポイポイどもはトロくていけねぇ、張りがねぇよ」 ”狐”は当然最後には破壊される。 そのためほとんどの場合は中古市場でも売れなくなった旧型の愛玩用や安価な害虫駆除用の機体が使われる。 高価な武装神姫が使われることは珍しい。 今回肩に装備した高感度センサーで眼下の夜景をサーチしながら、自分(ストラーフ)がもう狐に使われるようなロートルになったのかという思いがわいた。 『油断してヘマをするなよチャーリー。俺に恥をかかせたら電源を入れたままスクラップにしてやるからな。』 マスターの声が無線で届く。 『あと120秒センシングして発見できなければ次のポイントへ向かえブラボー。』 「了解。 質問の許可を頂けますかマスター?」 『いってみろ』 「今回の狐について何か情報をお持ちでしょうか?」 マスターの声に首をすくめていたチャーリーがこちらを見た。おかしなことを聞くと思ったのだろう。 「相手は武装神姫です。AIの成長を予測できる情報があれば戦闘を有利に展開できると推察します。」 まるで指揮官機アルファのような事を付け加えた。 自分でも驚いた。 武装もしてない狐役に遅れをとる気など毛頭ないのに。 きっと… 俺が知りたいのは・・・ どうしてそのストラーフがオーナーに捨てられたのか、だ。 『狐になるという事は使い物にならんという事だ。お前らが危惧するような成長はしていない。安心しろ。』 アルファに聞いたことがある。AIの成長に失敗するケースがあるのだと。 武装神姫でありながら戦闘に怯え、拒むようになるのだと。 マスターの言葉でその話を思い出すと 不安が嘘のように消えていった。 武装神姫である誇りを忘れ、ただの愛玩人形と変わらん臆病者か。 狐になって当然というわけだ。 俺は違う。 「使い物にならない」事などない。 『俺はお前達の成長を信じているからな。失望させないでくれよ、ブラボー。』 マスター・・・ コアのあたりが熱くなったように感じる。 「PiPi!!」 センサーが反応した。チャーリーと視線をあわせる。 「いくぞ、チャーリー!」 人差し指をたてて見せ、反応のあった眼下へスラスターユニット噴かしてダイヴする。 「マジかよ、ブラボー!」 その様に驚きと喜びのまじった声が後に続く。 指1本。 それは60秒で仕留めるという決意。 mission complete-
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/25490.html
登録日:2011/10/01(土) 00 27 18 更新日:2024/03/18 Mon 20 41 00 所要時間:約 6 分で読めます ▽タグ一覧 BATTLE_MASTERS NPC もうやだこの国 キャラクター バトマス 一覧項目 武装神姫 登場人物 ここで紹介するのはPSPゲーム「武装神姫BATTLE MASTERS」に登場するNPCキャラクターである。 ゲームの詳細はリンク先の別項に記されているのでそちらをどうぞ。 フィギュアロボット「武装神姫」と共に生活する人々を「マスター」または「武装紳士/淑女」と称する。 彼等は主に神姫を戦わせる為の筐体が置かれたゲームセンターに通い詰めている。 自らの神姫と一体となってバトルの頂点を目指す者、ただひたすら神姫を愛でる者、壮大な野望を抱く者とその様相は色々。 時は2040年。日本のゲームセンターはかつてない熱気に満ちていた。……健全じゃ無い意味で。 ゲームの主役は飽くまで「武装神姫」である為、人間は“外見的”に控え目な描写が施されている。 その為、立ち絵は輪郭だけをかたどった影として描かれており、声も当てられていない。 人間はおまけ。担当声優の巧みな演じ分けが光る個性的なNPC神姫を楽しむゲーム。そう思われていた。 時は2040年。人々はこう述懐する。 「日本のゲームセンターは隔離病棟だ」 このゲームに登場する神姫マスター達、やたら個性が強く、完全に神姫を喰ってしまっている。 一般的に言う「ヲタク」や「駄目人間」は元より、「要介護者」「廃人」はたまた「犯罪者」が跋扈している。 一部を除き皆一様に神姫を愛している者ばかりなのでプレイヤーは一歩引いた目線で温かく見守って欲しい。 柴田勝&柿崎静馬 大半のプレイヤーが最初に戦うであろう少年マスター達。 柴田は、初心者という事もあり良き練習相手となってくれる。相棒は「プルミエ」 柿崎は熱血少年。撃墜とかはしない。相棒は「ナギ」 ゲームに慣れない序盤は彼らをひたすら狩りまくるのが定石。 小早川千歳 主人公のライバルとなる女の子であり、バトルコンテストのF大会でも優勝を争うことになる。 実力と自信共に兼ね備え向上心もある一方、敗北にとらわれる精神の弱さも目立つ。 F2大会で完全に荒みきってしまい、遂には犯罪に手を染めてしまう……。 そんな彼女を相棒「リリス」が懸命に導く。 無印では最終的に警察のお世話になることになるが、Mk.IIで再起を果たすことになる。 津軽冬至 自宅に届く挑戦状を読む事で戦えるマスター。 元F2ランカーだったが一度戦線を離れた。再び闘志に火がついたのか、主人公にリハビリを依頼する。 相棒は「雪華」。ブランクがあるとはいえ、実力は侮れない。 犬童太&三毛屋ベンガル 前者は犬好きの男性で、後者は猫好きの女性。 両者ともにケモテック製神姫(ハウリン&マオチャオ)を溺愛している。 三毛屋は不明だが、犬童はマオチャオ使いを毛嫌いしている模様。 シルバー・クレイ&ダリル・ブレナン 海外からのマスターで友人同士。 シルバーは空手使いのアメリカ人。ダリルはイギリス人で生粋のヲタク。 二人とも神姫バトルにどっぷりハマっている。 真紅女帝(クリムゾンエンペラー) アーク型を使用するレディース(女暴走族)のグループで、三人がかりで主人公に戦いを仕掛ける。 最初のハンディキャップ戦とあって難易度はかなり高く、多くのプレイヤーに煮え湯を飲ませた。 気性の荒い総長、同じく副長、そしてやや反抗気味な見習いという構成。 実はゴスロリ杯に出ている総長。可愛い。 女帝なのにエンペラーとは如何に。まぁ総長可愛さから許す。 因みにこれ、同社がかつて発売したフライトシューティングゲーム「エアフォースデルタ」が元ネタである。 ドグラ・モゲラ ストレス解消のために神姫バトルにのめり込むオカマで、立ち絵のシルエットはアフロの男性。パイルバンカーを装備したフブキ型「菊花」を連れている。 表面上罵り合っているが妙に息の合った彼女らの掛け合いはなかなか微笑ましい。 武器限定の公式戦「スロウバンカー杯」のトリも飾る。よほどパイルが好きと見える。 ↑ ここまでが比較的マトモな方 ここからは魔道 ↓ 給料シーフ&嫁 アーク型神姫「シルファ」と絶賛不倫中の紳士。 惨事嫁の目を逃れ、駅のロッカーに神姫を住まわせて日々通い詰めている。 身も心も神姫に捧げ神姫もまた愛に応えるその姿に、多くのプレイヤーから尊敬のまなざしを集め、製作者インタビューでも「羨ましい」と称賛された。 Mk2で遂に子供が産まれました ……という夢をみたのさ そんな彼の惨事嫁だが、Mk2に登場。 自分の神姫を無理やり賭けバトルに出場させ、稼いだ金で別の男(しかも犯罪者)に貢いでいた。 痴豚 イーダ型神姫「ミランダ」の忠実な下僕。いわばSMの関係を築いている。 どうやったのかは不明だが、自らの神姫に自分を“豚”と呼ばせ罵倒するようプログラムしているらしい。 15センチ程のロボットにしばかれてブヒブヒ言っている男の勇姿ときたら、もうやだこの国。 しかしMk2で遂に痴豚が逆襲に出る ……という夢をみたのさ 練馬大将軍 世界征服を目論む悪の総本山なんていう、壮大な妄想を抱いた只の困ったお爺ちゃん。 そんな彼の戯言を神姫「ミュー」は軽く流しながら手厚く介護してくれる。 神選組 神姫の力で新世界を創造する(?)ため奮闘する三人組。 しかし実際は局長を名乗る女の子と、無理やり付き合わされている他二名といったところ。 上記の目標を掲げるあたり、局長はかなり残念な頭の持ち主。自分で打ったメールを忘れていたり。 音黒野美子 神姫バトルに黒魔術的な要素を取り入れた斬新過ぎるマスター。相棒は「クロミ」 魔術といってもハチミツをぶっかけて呪文唱えてるだけ。 神姫壊れちゃう!!! 「はしかのようなもの」にかかっているらしい。要は中二病患者。 兜茂 特撮、ロボット、美少女を愛する少年の心を持った男。 子供達からの人気は高いが、保護者達からは煙たがられているらしい。 元ネタは仮面ライダーストロンガーで、神姫の名前もまんま「ユリコ」。 埴場怜太 神姫を偏愛する心理を研究しようと自ら神姫「クラリス」のオーナーになりどっぷりハマった残念な大学教授。 まさにミイラとりがミイラである。 勘のいい人なら気付くが元ネタは「羊たちの沈黙」で有名なハンニバル・レクター。 以下、Mk.IIから登場したマスター。 時速30Km 「ひんぬー」をこよなく愛し、自分のツガル型神姫に「和津香(わずか)」と名付ける程。 本人の名前は恐らく風圧の感触の事と思われる。 彼との初バトルする時ハウリンを出すと「貧乳はステータス」とか言っちゃう。キタエリ自重。 魔法使い 30年の年月を経て遂に魔力に目覚めた男。とどのつまり只の童貞。 その能力は「現実を見ない」というもの。 つまり現実逃避。 ベイビーラズ型「美紗緒」の由来は「操(みさお)」 足寄百合香 百合に加え脚フェチまでこじらせた女マスター。 充電と称して神姫「美月」の脚に頬擦りしたりペロペロしたりする。 …この人変態か? ベイビーラズの中の人である平野綾さんの「らめぇええ」が聞けるのである意味貴重? 漆黒の牙 「俺の腕が」とか「契約」とか口走る、絵に描いたような中二病。 自分の神姫をオッドアイにする等妙なこだわりを感じさせる。それどうやってやるの? この他ぶっ飛んだマスター多数。 興味があったら調べてみるのも一興である。 追記・修正お願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] エアフォースデルタのクリムゾンエンペラーって実在機が宇宙に行っちゃうあれじゃないかwwww -- 名無しさん (2014-06-16 21 52 15) そういや変態だらけだったな。パートナーの神姫も声優と見た目が一緒なのにキャラが違うから面白かった -- 名無しさん (2016-08-03 12 42 57) でも実際に神姫発売されたら魔道に落ちる自信あるわ -- 名無しさん (2016-08-03 12 46 12) 給料シーフは双方の為にも慰謝料どんだけ払ってでもさっさと離婚した方がいい -- 名無しさん (2017-04-20 17 34 11) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2666.html
如何に海千山千の猛者(変態)揃いの武装紳士淑女であっても武装神姫から離れた日常と言うものはある。 黒野白太も例外ではなく彼から武装神姫を切り離せば関東地方の○県×市にある中学校に通う一中学年生だ。不登校でもなく授業は真面目に取り組んでおり総合成績は上の下、身体も障害も持病も無い良好な状態を維持している。苛めに遭っているわけでもなく、かと言って過剰に頼られているわけでもない、月並みに綺麗な学生生活。 そんな黒野白太に唯一の悩みは中学三年生にもなるのだからそろそろガールフレンドが欲しい、そのくらいだ。凄腕の神姫マスターともなれば女性の神姫マスターの交流もあるが、所詮それは神姫バトルがパイプになって繋がっている関係であり、どんな武器が強いだとか、この神姫にはどの武装が相性がいいだとか、強くなる秘訣だとか、そんな話ばかりで色恋沙汰とは程遠い。付き合うのであれば武装神姫に対しての理解があり出来れば年上の女性である事が黒野白太の願望である。 閑話休題、兎にも角にも到って健全な中学生生活を送っている黒野白太は普段通りその日の授業内容を消化して、放課後最前のホームルームを終えると直ぐに筆箱とノートと教科書を取り出してその日の予習と復習を始めた。放課後に予習と復習を終わらせるのが黒野白太の日課である。それから三十分程すると教室には黒野白太だけになり、一時間程すると日が暮れ始め、二時間程すると黒野白太は予習と復習を終わらせて学校を出た。 神姫バトルの大会がある日などには学校にも神姫を連れていきそのまま神姫センターに向かうのだが、此の日は何も無く、そも学校に神姫を持ちこむ事は禁止されており教師に見つかってしまえば取り上げられてしまうので連れて来なかった。そういうわけで黒野白太は唯の中学生として帰路に着き学校から出て自転車を漕いでマンションに辿り着く。正面入り口から見て右側、駐車場とは建物を挟んで反対側に在る駐輪場に自転車を止めて階段を上り鍵を使って玄関の扉を開けた。 「ただいまー。」 住人の迎えの言葉は帰って来ない、ラノベによくある理由で黒野白太は一人暮らしをしているのだから。と言っても神姫は一人と呼べるのか微妙なので一人暮らしと表現したが彼の神姫であるストラーフMk2型神姫イシュタルもいる。廊下の奥から漂ってくる胃袋を刺激する香ばしい匂いがイシュタルの居場所を教えてくれた。その通りイシュタルは台所に居てリアパーツの副腕と自身のもの計四本の腕で御玉杓子を持ち汁物が入った鍋を混ぜていた。 元々ストラーフ型が重装甲で神姫バトルに出るように造られている所為か自分よりも大きな御玉杓子を苦も見せず操っている。予定の無い平日の食事はイシュタルが作る、これは数年前からで黒野白太にとっては別に珍しい風景でも無かった。機械である神姫の記憶はデジタルだ、神姫であるイシュタルは冷蔵庫の中身と食事から採れる栄養バランスを記憶して調理する事が出来る。尤も神姫は栄養を第一にする上に味覚が無いのでのでそのまま調理すれば不味い料理が出てくるのだが、その辺りは黒野白太の干渉で解消していた。 「ただいま。」 「おかえり。夕食はもう少しで出来るから待っていてくれ。」 「分かった。」 黒野白太は台所を出て近くの自室で分厚い手掛け鞄を下ろし明日の授業の時間割を思い出しながら教科書やノートや参考書を入れ替える。明日の授業と鞄の中身を一致させるとパソコンを起動させ神姫ネットや知り合いの神姫マスターからの連絡の有無を確かめる。それが無いと知るとパソコンの電源を落とし外出用のお洒落な肩掛け鞄に財布や神姫の武装を入れて外出の準備をする。準備も終えて「さて次は何をしよう。」と少し悩み神姫の情報雑誌に手を出した所で台所からイシュタルが自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。 台所に戻ると調理は済んでいてイシュタルは食器を運んでいたので黒野白太は食器を受け取って盛り付けてテーブルにまで運ぶ。最後に紙パックの牛乳をコップに注ぐと何かを思い出したかのように黒野白太はテレビのリモコンに手を伸ばしてテレビの電源を点けた。ニュース番組がやっていたのでそこから流れてくる情報を頭に留めておく程度に聞き流しにしつつ最近になって食卓(戦場)を共にする事になった新入りである真っ黒な箸に手を付けた。 「いただきます。」 両手を合わせて目を瞑る、神姫以外に誰も居ないのにそんな事をするのは長年に渡って染み付いた癖のようなものだ。黒野白太が夕食を食べている間、イシュタルはする事が無いので今日の新聞を足場にして新聞を読んでいる。それも何時もの事であるが黒野白太は何気ない拍子でイシュタルを見てしまい、イシュタルも同様の理由で黒野白太を見た。目が合ってから少しの時間が経っても黒野白太は見つめたままなのでイシュタルもまた動けないので時間が止まってしまったかのような錯覚がする。 「…。」 「何だ?」 「これ、美味しいね。」 「どういたしまして。」 そして時は動きだし黒野白太は夕食に向き直ってイシュタルは読み掛けていた新聞の政治経済の記述を読み直す。神姫バトルだけではなく日常生活においても黒野白太は思いつきで行動する。が、無視すると拗ねるので適当にあしらうのが正解であるとイシュタルは分かっているからだ。それ以降は黒野白太は無意味な言動もせず数十分ほどして夕食を食べ切り最後に自己流(アウトロー)の〆として牛乳を飲み干すと箸を置いて両手を合わせて目を瞑る。 「御馳走様でした。」 「御粗末様。」 黒野白太は食器を流し台にまで運んでからタワシを手に取り洗剤を塗り込んでわしゃわしゃと食器を洗い始める。洗い終えるとよく振って水気を切りタオルで完全に水気を拭き取ってから積み重ねていき、洗う食器が無くなると食器を食器棚に戻す。その後で調理に使った鍋なんかも洗って拭いて、それが終わった頃にはイシュタルは新聞を読み終えて黒野白田の部屋に向かっていた。 一方の黒野白太はタオルで手を拭いハンカチで口元を拭い壁に掛けた鏡で髪を梳いており、それが終えると殆ど同時にイシュタルは黒野白太の部屋から外出用の肩掛け鞄を台所にまで持って着ていた。黒野白太がそれを受け取ると肩掛け鞄を渡したイシュタルは鞄の中に飛び込んで僅かな隙間からひょっこりと顔を出した。 「さて。じゃあ行くか。」 テレビを消し部屋の電灯を全て消しマンションの玄関に出ると鍵を掛けて階段を下り自転車小屋へと向かう。自転車に乗ってから寄り道をする事も無く神姫センターにまで着いて自転車置き場に自転車を置いて自動ドアを潜る。自動ドアを潜った頃にはイシュタルは勝手に肩掛け鞄から出て一跳びで黒野白太の左肩(彼女の指定席)にまで跳び乗って腰を下ろした。 センターに入り神姫バトルの筺体使用の受付を済ませた黒野白太がきょろきょろと対戦相手を探し始めるとセンターに充満していた熱気が僅かに白んだ。その原因が黒野白太である事は黒野白太自身が誰よりも理解している。モブキャラの誰か「『刃毀れ』だ…。」と漏らしてしまった。実力が知られる有名人が神姫センターに姿を現せればセンターに波紋が起こるのは無理もないが黒野白太の場合はちょっと訳が違う。 プロレスや芸能人には所謂『ヒール』が存在する、反則行為を行ったり悪口を言ったりする事で大衆に自分のキャラクターを確立させる役者である。それは神姫バトルにおいても存在し黒野白太は『武器を失った神姫を一方的に嬲る事が大好きな』ヒールとして知らされていた。そんな人物が神姫センターに来られれば他の利用者がどう思うか太陽が沈むより真っ暗な気分になるのは明確である。 利用者の中には中2病真っ盛りな輩も居て口には出さずとも出ていくとメルヘンな事を考えているのか視線で黒野白太の退場を訴えている。これについては黒野白太も反省している、四年前に若気の至りで『刃毀れ』のキャラクターを提案してきた記者にOKを出した自分を殴りたいとすら思っている。何故なら自分が使っている神姫が悪魔型神姫ストラーフ型だったものだから余計にストラーフ型=悪役のイメージが強調されたからだ。 褐色萌えである黒野白太にとって愛するストラーフMk2型に勝手なイメージを付けてしまったのは心苦しいものがあった。渾名の害はそれだけでなく、名が知れてインターネットや情報雑誌と言った玉石混淆な魔界に名が広がって言った為に所為で黒野白太=『刃毀れ』という阿呆な図式を組み立てる輩が出始めたからである。 「黒野白太、いえ、『刃毀れ』ですね。君に神姫バトルを申し込みます。」 「いいえよ。」 「いいえよ?」 「『正直嫌だけど断る理由も無いし別にいいよ。』の略。」 「いつまでその余裕が持ちますかね。今日は君に勝つ為にとっておきの武装を用意したのです!」 例えばたった今黒野白太に神姫バトルを申し込んでおきながらも何故か少年漫画だと失敗するフラグを立てたモブキャラのような。 …。 …。 …。 『やっぱりとは思ってたけどあいつ馬鹿だ。』 神姫バトル開始から数分後 銃撃戦になりハンドガンで牽制を入れつつバトルフィールドに設置されている障害物を盾に黒野白太は呟いた。相手は大剣や爆弾と言った壊れ難いか壊されない武器で固めている、がその装備は偏っておりアーンヴァルMk2型神姫の特性を殺しているとしか思えない。差し詰め武器を壊す『刃毀れ』に勝つには壊れない武器を持っていけばいいとモブキャラは判断したのだと黒野白太は推測する。 別に彼は武器の破壊に執念を燃やしているのではなく相手の心を折る手段として武器の破壊を選んだだけだ。武器が壊せないのであれば装甲を一枚一枚剥ぎ取るだけである。相手に言い訳のしようがない敗北を与えてやる為に情け容赦無い凌辱をしてやろうとグレネードランチャーに手を掛けたがイシュタルに止められる。 『ランチャーを放つのはちょっと待ってくれないか。』 『うん、何で?』 『確かに相手のマスターはどうしようもない阿呆かもしれないがそれに巻き込まれた神姫が哀れだ。』 『そりゃそうだけどさ。でも神姫バトルに参加した以上は一蓮托生でしょ。』 『だが無駄な犠牲者が出るのも好ましくないだろう。』 『神姫を傷付けずあのモブキャラの心だけを折る方法があるの?』 『あると言ったら?』 『いいね、やってみてよ。』 その言葉を合図に黒野白太は機体の支配権を全てイシュタルに譲るとイシュタルは身に纏っていた装甲を全て脱ぎ捨てる。装甲だけでなく武器も捨ててストラーフMk2型のリアパーツに収納されている大剣のみを手に取った。段々とイシュタルが何を思い付いたのかを理解し始めた黒野白太はイシュタルのマスターとして彼女の成功を祈りフラグぐらい立てて置く。 『そんな装備で大丈夫か?』 『造作も無い。』 マスターの気遣い(死亡フラグ)を叩き折ったイシュタルはモブキャラからの銃撃が止んだ瞬間を見計らって物陰から出た。 「なっ、何で武装を捨ててるんですか!?」 「分からないのか? お前如きを倒すのにこれで充分と云う事だ。」 大剣の切っ先を向けながらも凛と響いたイシュタルの挑発にモブキャラはまんまと乗せられて手榴弾を乱暴に投げた。弧を描いた手榴弾がイシュタルを目前に落ちて爆発する瞬間に駈け出して爆風を背後に走り出す。相手の武器が大剣のみならば近付かせまいとモブキャラは手榴弾で粉砕しようと目論むが唯単に単調過ぎた。 モブキャラが手榴弾を握った瞬間にはイシュタルは爆弾が何処に来るかを確定させ投げられた瞬間にその場から離れて回避する。全神姫中でも鈍足な位のストラーフMk2型でも何処で爆発しどの程度巻き込むかが分かっているのであれば避ける事は難しくない。戦場のパイナップルを三つ避けて二人の距離が当初の半分を切ったところでモブキャラはハンドガンを取り出した。 黒野白太はちょっとモブキャラに感心しつつもイシュタルには何も言わず傍観に徹している。銃口が向けられるのと同時にイシュタルは走りながら左に跳び数コンマ遅れて弾丸がイシュタルが元居た場所を通り抜けた。焦り始めたモブキャラが持つハンドガンの銃口がふらつき始めジグザグに動いているだけのイシュタルに正確な狙いが付けられない。 一発二発三発四発五発と全て気泡に終わり大剣を持ったイシュタルが目前にまで迫ったところでモブキャラはハンドガンを投げ捨てた。近接武器なら外さないと大剣を持つが 振り下ろされた刃が届くよりも遙か速くイシュタルの大剣が装甲の隙間を縫ってモブキャラの心臓(コア)を突き貫いた。信じられないとありありと伝わる表情で崩れ落ちるモブキャラを抱き止める事も無くイシュタルは大剣を抜く。 「勝者(ウィナー)・イシュタル。」 静かにも美しく神姫バトルに黒幕を降ろした一人の神姫に、唯一の観客である黒野白太が惜しみの無い拍手を送った。 …。 …。 …。 「何で…何で僕が負けたんだ…あんな相手に…。」 悔しがっているモブキャラに色々と傷口に塗りつけたい黒野白太であったが今この場はイシュタルに任せようと決めつけていた。それに気付いているのかイシュタルは指示されたわけでもなく筐体の上で仁王立ちをしてモブキャラを睨みつけている。この後に怒り狂ったモブキャラがイシュタルに掴み掛かっても直ぐに殴り飛ばせるように黒野白太も前に出ていた。 「君が負けた理由? 簡単だ、君が馬鹿だからだ。」 人を傷付ける言葉の代表格を言われモブキャラはコロっと悔しがるのを止めてイシュタルを睨み返す。その手の中でアーンヴァルMk2が自分のマスターに冷静になるように努めているがその効果が出る様子は無さそうだ。イシュタルは自分よりもはるかに巨大な存在の憤怒の形相に、元々神姫には恐怖は無いのだが、恐れる様子も無く凛として続ける。 「途中で使ったハンドガン、恐らくそこのアーンヴァル型に勧められて入れたのだろう?」 「…そうですけど、それがどうしたって言うんですか。」 「まだ分からないのか。 そこのアーンヴァル型の方が君を勝たせる為に何をしていたのかを。」 「ど、どういう事だ!?」 最後の言葉はアーンヴァルMk2に向けられたもので手の中の神姫は申し訳無さそうに表情を曇らせる。 「そこのアーンヴァル型は何も言わなくていい。あたしが全て言う。おかしいと思ったんだ、総じて学習意欲が高い機体が多いアーンヴァル型が何故あんな馬鹿げた装備をしているのかとな。答えは『オーナーである君が神姫の話を全く聞かなかった』から。勝つ為の努力を怠らなかった神姫の言葉を君は全て無視したからだ。『刃毀れ』は所詮は私達の戦法の一つに過ぎない。通じないと分かれば捨てる。そこのアーンヴァル型はそれを知っていたからハンドガンを持たせたんだ。」 少し神姫ネットで調べれば分かる事で確かに黒野白太が武器を壊した回数はズバ抜けている数字であるものの神姫バトルをした総合に比べ武器を壊した回数は約三分の一程である。黒野白太にとって武器を壊す戦法とは対戦相手の心を折る戦法の一つに過ぎない。それをアーンヴァルMk2は知っていたのだろう、だがそのオーナーであるモブキャラは自分の神姫を無視して自分勝手(エゴ)を突き進んだ。 オーナーの自分勝手(エゴ)に所詮は神姫であるアーンヴァルMk2型が強く出られる筈がない、神姫はどれだけ経験を積んでも奴隷の域を超える事は無く神姫にとってオーナーの命令はC・S・Cに等しく反対も反抗も反逆も出来ないようになっているのだから。勝とうと願ったアンヴァルMk2の精一杯の忠告を無視し努力を無駄にした、それこそがモブキャラが敗北した原因である。 「理解出来たか。それが神姫バトルだ。」 最後にイシュタルは冷たく言い放って筺体を降り黒野白太の左肩に飛び乗って腰を下ろす。意気消沈としているモブキャラを励ますアーンヴァルMk2型にイシュタルに全てを任せると決め付けたはずの黒野白太は声を懸けた。 「僕について調べてくれた君に僕達の秘密を教えてあげる。僕が『刃毀れ』と呼ばれるようになったのは四年前の事だ。」 何を言っているのか理解できずキョトンと首を傾げたアーンヴァルMk2であったが直ぐにその意味を理解してその青い瞳に驚愕の色が映えた。 「四年前は神姫ライドシステムなんて無かった。僕は外野から武器を壊せって指示を出しただけ。実際にそれをやってた奴は…。」 「おい、マスター。敗者に何を言っているんだ。勝者は次の戦いに備えるべきだろう。」 「はいはい。んじゃあ、またね~。」 覇気を込めて軽口を抑えつけるようなイシュタルの言葉に背中を押されて黒野白太はその場を後にした。 「そう言えばあのモブキャラの名前、何だったっけ?」 「さぁな。覚えるだけメモリの無駄だ。」 「酷いな。多分向こうの方が年上だと思うよ?」 「神姫バトルに年齢は関係無いだろう。居るのは勝者と敗者のみ。…そうだな、次に戦った時に私達に全力を出させるようなら覚えておこう。」 「それがいいね。」 筺体を後続の神姫プレイヤーに譲ってそんな雑談をしながらも対戦相手を探している二人に男が近付いてきた。身長が百七十センチ程の男は傍らにアーク型神姫とイーダ型神姫を待機させてイーダ型の方は敵意を剥き出しにしている。 「よう、今の見てたぜ『刃毀れ』。」 「やめろ。有象無象なら兎も角、友達にその渾名で呼ばれるのは恥ずかしい。」 「御久し振り。相変わらず神姫を舐めたような戦い方をしていますわね、イシュタル。」 「久し振りに会ったってのに直ぐに喧嘩売るのは止めなよ、バアル。」 「バッカスは気にしなくていい。バアルの言う通り私は相手を侮って戦っていた。」 敵意を留めようとしないイーダ型神姫バアルに気苦労するアーク型神姫バッカスを気にする事も無く赤見青貴は僅かな笑みを黒野白太に見せた。 「いや、珍しいものを見たもんだ。お前が相手を立てるような真似をするとはな。」 「やったのは僕じゃない、イシュタルだよ。初めは僕も普段通り(心を折ろうと)しようと思ってたから。」 「マジか。やっぱスゲェなイシュタルは。」 「他ならぬマスターが他人の神姫を褒めてどうすると言うのです!」 「マスター、頼むからバアルを怒らせないでくれ。私の胃がストレスでマッハだ。」 「あ、悪い。」 ようやく敵意三割増しのバアルを宥めているバッカスに気を留めた赤見青貴軽い謝罪の言葉を口にした。 「珍しいものを見た、僕もその言葉を返すよ。赤見、柔道はどうしたんだ?」 「もう高校受験が迫ってるから辞めさせられたよ。で、今日はようやく母さんの許可を貰って息抜きに来たわけ。」 「そう言えば赤見は他県に行くんだったね。成程、分かったよ。」 「お前は? まぁ、お前がやることと言ったら神姫バトルしかないか。で、今日はまだバトルするんだろ?」 「まぁね。どう? 久し振りにやらない?」 「やだよ。お前に負けたらしばらく立ち直れなくなるだろ。」 「何を弱気になっているのですかマスター! ここで会ったが百年目、ケチョンケチョンにして差し上げますわ!」 「バアル、それ負けフラグだから」 「お前最後に戦った時、武器どころか装甲も壊されて思いっきり泣いてたじゃねえか。」 それでも降参だけは断固として拒否したあの時のバアルの勝利への執念だけは黒野白太とイシュタルは評価していた。 「そうか。折角、旧交を温めようかと思ったのに、残念だ。」 「『刃毀れ』が言うとその台詞も嗜虐心が食み出して見えるよな。」 「だから渾名で呼ぶのは止めろ。」 「あ、そうそう。紫原と緑間…後、金子さんは、ここに来ているのか?」 黒野白太との共通の友人で神姫マスターだったが、金子と聞いた瞬間に三体の神姫は一斉に顔を顰める。唯一、能面のように無感情だった黒野白太は普段通りの笑顔を取り戻していた。 「来てないよ。まぁ、イロイロあったからね。」 「そうか。やっぱり三人とも神姫バトル辞めちゃってるのかもな…。」 「あんな事があったんだ。家族から神姫を捨てろって言われていても可笑しくは無いしね。それは僕達が何とかしていい問題じゃないよ。」 「…そうだよな、残念だけど「残念だけど僕はもう行くから。じゃーねー。」あ、あぁ、じゃあな。」 あっけらかんと赤見青貴から離れた黒野白太はふらふらとしていたがふと立ち止まってイシュタルだけに聞こえるように言った。 「紫原と緑間と…金子さん、元気かなぁ。」 それは神姫である自分が関わっていい問題ではないと、イシュタルは無言の内に込めて返答していた。 …。 …。 …。 それから数時間後、神姫センターが終業時間を迎えたので黒野白太は自転車を漕いで帰宅していた。帰宅して直ぐに黒野白太は学校から出された宿題を片付けてイシュタルと一緒に今日行った神姫バトルの反省会をする。 宿題に懸けた時間よりも長い反省会を終わらせてから入浴し寝間着に着換え髪を乾かすとベッドに潜り込んだ。風呂から出た時点で神姫であるイシュタルはクレイドルの上で休眠(スリープモード)になっている。 某のび太張りに素早く眠る事の出来る神姫に少しばかり羨ましいと思いながらも掛け布団に身を包ませた。「おやすみ、イシュタル。」と最後に今この部屋に居る唯一の家族の名前を呼んで黒野白太は全身の力を抜き、やがてゆっくりと夢の世界へと落ちて行った。 そうして朝になり黒野白太は眠りから覚め腕を目一杯伸ばして予めセットしておいた目覚まし時計を叩いて耳障りな息の根を止める。のそのそと芋虫のようにベッドから降りてから立ち上がり欠伸をしてから軽く柔軟体操をして固まった身体を解す。 イシュタルはまだ休眠(スリープモード)になっていたので起こすがしばらくの間はふらふらとしていて見ていて危なっかしい限りである。「わはひは、朝に弱いんだよ…。」とは本人の弁ではあるが果たして神姫が朝に弱いとはどういう事だろうか。 兎にも角にもそんなイシュタルに注意しつつも着替えた黒野白太はイシュタルとさっさと朝食をつくりさっさと食べ切る。食器を洗い食器棚に戻した後、黒野白太は風呂掃除をしたが危く石鹸で足を滑らせ床に顔面を叩きつけるという悲劇を引き起こしそうになった。最後の最後で踏み止まった自分を褒め称えつつも風呂場から出ると残り時間ギリギリまで新聞を読む。 最近神姫による爆発事件が起こっているらしい、黒野白太は武装紳士の一人として一抹の不安を覚える。神姫の爆発事件を知りイシュタルを見ると、彼女ははうつらうつらなまま昨日バトルに使った武装の手入れをしている。黒野白太は人差し指でイシュタルの頭を撫でて、寝惚けている彼女はその事に気付かなかったが、時計を見て新聞を畳んだ。 そろそろ学校に行く時間だ、今日も特に予定は無いからイシュタルは置いて行く事にする。学校用の分厚い手掛け鞄を持ち新聞の天気予報に依れば午後から雨らしいのでビニール傘を持っていく。 「行ってきます。」 「いひってらっしゃい。」 マンションの玄関に出て一回に降り自転車小屋へと向かう途中、黒野白太はふと足を止めて空を見上げた。曇りの空は灰色で僅かな日差しが漏れるだけで確かに午後に雨が降ると言われれば誰でも納得出来るだろう天気である。ただ黒野白太が見ているのは曇りの空ではなくちょっと思ってしまった事を呟いてしまった。 「八年前―――両親に神姫を勝ってもらっていなかったがどうなっていただろう。」 過去の「if」考えても過去が変わるわけでもない、それなら未来の「if」を考えた方が建設的だ。黒野白太自身それはよく分かっていたがそれでも感傷的に考えざる得ない。これまでの文字数9628。その内で神姫が関わっていないのは僅か948文字だ。 「一日の約十分の九が神姫と関わっていても、それ以外は何も無くても、両親とも友達とも今は殆ど関わっていなくても、人生に生き甲斐を見出している残念ながら僕は幸せだと思ってしまう。」 それが本心だった。
https://w.atwiki.jp/src_c_material/pages/213.html
ACE COMBAT ヴォンバ的ホームページ 管理人 ヴォンバ素材区分 U 備考
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1059.html
第5話 「歴史」 コイツが俺と同じで、左足がちょいと不自由だってのは今更な話。 フツーに歩く分には『少し違和感がある』程度らしいから、いいっちゃいいんだが……問題は例のデカブーツ。 何度も言うようだが、やたらとデカくてゴツい。 こんなモノくっつけたまま移動するってのは、コイツの足にかなりの負担が掛かるだろう。 かと言って外しちまうと、今度は背中の腕やら何やらが重すぎてロクすっぽ歩けやしない。 さてどうしようかとアレコレ考えていたが、ルーシーの『じゃあ右足にだけ装着しましょう』というヒトコトで解決した。 ……つっても、そう簡単に行くわけじゃない。 本来2本の足で支えるべき背中の装備+素体+他各種の重量を1本足で支えなきゃいけないってんで、オートバランサーの調整と一緒に補助シリンダーを装着しよう、という話になった。 細かい調整はコイツ自身が担当するらしいし、俺がやったのはシリンダーの注文くらいのもの。 ここでも俺に気を使っていたが、今や俺とコイツはパートナー。 気にすんなと頭を撫でてやったら赤くなって俯いた。 愛いヤツめ。 ま、部品の到着だ何だでしばらく先になりそうなんだけどな。それまではまったりしよう。 数日の間に改めて世間を見渡せば、武装神姫の話題はそこかしこに転がっていた。 TVで流れるCMに始まり、ネットには1日2日じゃ回りきれないほど大量の専門サイトが乱立し、新聞には取り扱いショップの折り込みチラシ。 外に出れば駅に貼られたポスターに電車内の吊り広告、トドメに街頭でコスプレしたお嬢さんらが笑顔でビラを配り、『武装神姫』のロゴやイラストがプリントされたTシャツだのジャケットだのハチマキだのをした連中が群がってるときた。 「いやはや猫も杓子もナンとやら……こんなんで大丈夫なのかね、世ン中ってのは」 「現在、『武装神姫』は株価市場に影響を与えるほどの大ヒット商品になっているんですよ」 どこか誇らしげなルーシーの言葉に、俺は学生時代に受けた歴史授業の事を思い浮かべた。 「1990年代後半から2000年初頭にかけて爆発的に肥大化した『オタク産業』の再燃ってか」 20世紀の時代から海外でも評判の高かった日本産のアニメ・マンガ・ゲームの3つが基本になってる『2次元産業』に、食玩ってのを中心に広がった『3次元産業』をまとめて『オタク産業』と呼ぶ。 1990年代初頭の『バブル崩壊』から日本経済は延々と停滞・下降を繰り返していたが、唯一と言っていいほど上昇を続けていたコレのおかげでなんとか持ち直したらしい。 当時はヨソの国から「かつての『黄金の国』は現代になって『夢物語』に救われた。 まさに夢のような国だ」なんて陰口を叩かれた事もあったらしいが……何しろ今から40年近く前の話。 俺たちの知った事じゃない。 たかだかオモチャが世界を動かす……武装神姫は、またそういう時代を運んできたのかも知れない。 ちなみに俺は、学生時代のテストで「当時の国内で最もオタク産業の盛んだった場所は?」って問題に「アキバハラ」と答え、めでたくでっかいバツをもらった。 ……いいじゃんか、どーせ『アキバ』で意味は通じるんだから。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1098.html
{夜、二人きりで行くにはムードが無い場所だな} 夜。 午後十一時過ぎぐらいに俺はムクリと起きた。 パンツ一丁で寝てたから私服に着替え机に近寄る。 机にはアンジェラス、クリナーレ、ルーナ、パルカが充電器(クレイドル)の上でスヤスヤと寝ていた。 四人とも可愛い寝顔で寝ているのを見て俺の心に癒しが与えられる。 もうパルカなんて右手の親指をくわえて、寝てる姿なんて萌え萌えで凄すぎるぜ。 そんな彼女達を起こさないように、俺は抜き足差し足で部屋を出て行こうとする。 ドアノブに左手で回し部屋を出ようとした…その時だ。 「何処に行くですか、ご主人様?」 「…アンジェラス。起きてたのか?」 アンジェラスが机の端のギリギリ辺りで立っていた。 あぁ~見つかってしまった。 任務失敗、ゲームオーバー、デストロイー。 「何処に行くんですか」 真顔で言うアンジェラスはちょっと恐かった。 まるで『嘘や言い訳は言わないでください』みたいな感じで、そのつぶらな青い瞳が俺を見抜く。 ここは正直に言った方がいいなぁ。 「ちょっと、闇市場に行こうかなぁ~って…」 「!?…何でそんな所に…」 アンジェラスの顔が曇る。 そりゃそうだろう。 俺が行く所は違法だらけのブツが売買されてる市場に行くのだから。 「私は…とてもご主人様が心配です。もしご主人様の身に何かあったら、と思うと………」 「………」 「私は…」 今にも泣きだしそうな声で言うアンジェラス。 参ったなぁ~。 今ここで泣かれるのは困る。 クリナーレ、ルーナ、パルカを起こしてしまう可能性があるからな。 しょうがない。 「…そんなに俺の事が心配なら一緒に来るか?」 「えっ!?」 アンジェラスは泣きだしそうな顔から驚きの顔に変わる。 「時間も押してるし、一緒に行くか行かないか早く決めろ」 「行きます!」 今度は真剣な顔になる。 喜怒哀楽がはっきりしてるなぁ。 俺はアンジェラスを優しく右手に乗せて部屋を出る。 「あの、みんなは?」 「あいつ等も連れて行くと厄介事が起きそうになるから二人っきりで行くぞ」 「二人っきり!ご主人様と…二人っきり。夜のデート」 顔を赤くしながら何やらぶつぶつと呟くアンジェラス。 声が小さかったからよく聞こえなかった。 「アンジェラス、何か言ったか?」 「いえ!何でもないです!!」 「?…まぁいいや」 実際、アンジェラスが何を言ったかなんてどうでもよかった。 家を出て車に乗り、アンジェラスを胸ポケットに入れる。 さすがにズーっと片手運転はマズイからな。 クダラナイ事で逮捕はされたくないし。 車のエンジンを掛け発進する。 夜を明るくする街灯がとても綺麗。 だがこんなの表の世界に過ぎない。 裏の世界ではヘドが出そうなくらいの汚さがあるのだからな。 これからそんなシットヘルみたいな所に行くのにアンジェラスを連れて来てよかったのだろうか…。 「ご主人様と私だけの夜のドライブ…キャー恥ずかしい」 「………」 こいつは何だか浮かれてるし。 心配をしてる身にもなってくれ。 予め車の中に置かれていた煙草をくわえシガーライターで火をつける。 その様子を見たアンジェラスが。 「あ!ご主人様、また煙草なんか吸っちゃってー」 「先に言っとく、運転中だから煙草を奪う行為はやめろよ。危ねーからな」 「もう!今だけですよ!!」 アンジェラスは俺が煙草を吸う度に怒るんだから困ったもんだ。 一応、お前等が来てから煙草の本数を減らしてるんだぞ。 この前はなんて地獄を見る程の酷さだった。 あの出来事はけして忘れる事は無いだろう。 俺が煙草をきらして予備のワンカート(煙草の箱、10箱入りのやつ)を戸棚から取り出そうとしたら戸棚には無くて探すはめになり、『あれ~何処いったんだー』探してるうちに庭から何か焼ける臭いと音が聞こえ、行ってみればそこにはアンジェラスが俺のジッポを使ってワンカートを燃やしていたんだ。 あの時の俺は怒るを通り越して絶望感に浸ってたね。 煙草を吸う以前の問題だ。 だってワンカートを一つ買うだけで三千円も取られるんだぞ! 三千円もだ! 千円札が三枚も! …ワリィ、今ちょっと取り乱した。 あの時のアンジェラスは悪魔だったなぁー。 デビルデーモンみたいな感じ? 「今、私の事を見て『悪魔だ』とか思いました?」 「別に」 オマケに鋭い洞察力をお持ちで。 多分、あの四人の中で一番危険で怖いのはアンジェラスではないのかと思ってしまう。 けど、こんな奴でも可愛い所はある。 武装神姫用の整備オイルを買って来てあげた時は、俺の右手に抱き着いて後に恥ずかしそうに離れて顔をポッと赤めながら両手をモジモジする。 う~ん、萌えるぜ。 出来ればその後、上目づかいで『有り難うございます、ご主人様』なんて言われたもう…。 これ以上言うとヤバイ単語がメタクソに出てくるので言わないでおこう。 胸ポケットに入ってるアンジェラスをチラッと見る。 セミロングの金髪が車のクーラーから吹かれる風で優しくなびく。 なびいた髪を右手で軽く押さえ少し顔を傾け、物思いふける表情で風景を見つめる。 「…ゴクリ」 唾を飲み込み運転に集中した。 あまりにも可愛いすぎて…いや美少女すぎて見とれてしまったのだ。 喉を鳴らす程の…な。 そして不意に俺はこんな事を口走ってしまった。 「なぁアンジェラス、俺とお前って昔どこかで会った事ないか?」 「…え!?」 驚いた表情になり俺を見る。 え、そんなに驚く事か? ていうか、何言ってんだ俺ー!? ありえないだろう! 相手は武装神姫なんだぜ。 前に会った事があるなんて絶対に無い。 あぁ~何だか恥ずかしいなぁー。 「何でもねー。今言った事は気にすんな」 「…はい、分かりました」 そして暫くの沈黙。 恥ずかし過ぎるのでアンジェラスの顔をまともに見る事が出来ない。 今、あいつの顔はの表情はどーなってんだろう。 見たいけど見れない。 ハズィ事を言ってしまった俺はどうする事も出来ず、そのまま闇市場に着くまで運転に集中する事にした。 …。 ……。 ………。 有料駐車場に車を止め、下りる。 ここら辺は無法地帯だから路駐なかしたらパクられるのがオチだ。 煙草を胸ポケットに入れようとしたが、今はアンジェラスが胸ポケットに入っているので煙草をいれる事が出来ない。 仕方なく、俺はズボンのポケットに入れた。 「ご主人様、ここが…」 「そうだ、ここはアンダーグラウンド…まぁ所謂、悪の巣窟の街かな。どいつもこいつも悪ばっかだ」 駐車場から出て大股で歩く。 ガラの悪い連中や性風俗店の呼び込みをやる野郎どもがわんさかいる。 俺に『そこのニ~ちゃん、若い子がいるよ~』とか言いながら近づいて来るがシカトする。 行く気が無い訳じゃないが、金は高いし病気を移された堪ったもんじゃないからな。 「何処に行くですんか?」 「俺が世話になってる店に行く」 「…風俗店じゃないですよね」 「あのなぁ。今はそいう気分じゃねぇーの」 「そいう気分だったら行くんですか?」 「いちいち五月蝿いなぁ。俺が行く所は何でも屋みたいな所に行くの」 「そうですか、良かったです」 胸を撫でおろすアンジェラス。 全く、俺をそんなに性風俗店に行かせたくないのか? まぁどうでもいいけどね。 俺は駐車場から十分ぐらい歩いた後、小汚い一軒の店に着いた。 店の名前は『★BLACK・STAR★』という。 私的には何が『何が言いたいんだ?黒い星という意味は解るが、店として名前には合わない気がする』と思う。 そんなくだらない看板をチラッと見てドアに右手に掛け開けた。 店の中はぐちゃぐちゃで何が商品なのかも解らないぐらいの荒れだ。 まあ、所々に物に値段の名札が付いてるから少しは解るだろう。 辺り見回し店長が居ない事に気付いた俺はカウンターに置かれてある呼び鈴を鳴らした。すると。 「んだよ~、後もう少しでクリアーできるのに、こんな時に客かよ」 カウンターの奥にあるドアから男性の愚痴が聞こえる。 予測するとテレビゲームでもやってるんだろう。 ドアが開くとまるでヘビー級のボクサーみたい体格を持つ男が来たのだ。 頭には迷彩柄のバンダナにサングラス、にヒゲを生やしている。 「ヨッ。元気にしてか、オヤッさん?」 軽々しく挨拶をする俺。 アンジェラスの奴は胸ポケットで『失礼ですよー』と言っていたが今はシカトしとこう。 「おおぉー!閃鎖じゃねぇかぁー!!今日は何のブツを持ってきたんだい?」 オヤッさんは俺を見た瞬間上機嫌になった。 それもそうだ。 何故なら俺はこの店に自分で作った違法改造をオヤッさんに渡し、この店で売りさばいてもらっている。 商品の値段はだいたい六桁から七桁。 売れた物の半分の取り分は俺で残りの半分はオヤッさんにいき渡る。 俺じゃ、違法改造で作った物を売りさばくのは無理だからなぁ。 それにオヤッさんとはこの街で唯一信頼出来る人間でもある。 因みにオヤッさんが俺に対して言った『閃鎖』というのは、この街でのニックネームみたいなものだ。 『オヤッさん』といのもニックネームだ。 この街で本名がバレルとろくな事しか起こらない。 この街の独特のしきたりと言ってもいいかな。 さて、話しをそろそろ戻そうか。 「オヤッさん、今日はブツを持って来た訳じゃねぇんだ。ちょっと情報が欲しくてよ」 「情報?どんな情報だ??ここら辺の情報ならたいてい知っているぜ」 「そいつは有り難い。実は武装神姫について聞きたいんだ」 「武装神姫かー、確かに情報はあるがお前に役立つどうか解らんぞ」 「別に構わねーよ、武装神姫の全ての情報提供してくれ。その変わり、一ヶ月前の取り分はオヤッさんが全額貰っていいからさぁ」 「その話し、のった」 オヤッさんは笑いながら俺を見る。 俺もオヤッさんを見ながらニヤける。 はたから見たら密談に見えるだろう。 「あの、ご主人様。この人は?」 「おっと忘れてたぜ。オヤッさん、コイツが俺の武装神姫、アンジェラスだ」 胸ポケットから左手の手の平に乗るアンジェラス。 するとオヤッさんは珍しい顔をした後、ニヤニヤと笑った。 「オメェさん、いつのまに武装神姫に手を出すようになったんだ?」 「そうだなぁ、弱参月前ぐらいかなぁ」 「ほ~う、こいつはまた面白い組合せだな。武装神姫関係の武器を違法改造で店に提供するオーナーに優しそうな天使型の人形か…。アンジェラスとか言ったな、こいつにはドーピングや違法改造武器を使用させてないのか?」 「あぁ。こいつ等にはそいう類いな物は使わせないよにするつもりだ。特にドーピングなんか使った瞬間、その神姫はメタクソに強くなる代わりに何回かで絶対ブッ壊れる、と聞くぜ」 「ドーピングなんかまだいう方だ。これ見てみぃ」 店員のカウンター方からデッケー長細い鞄を持ち出してきた。 つか棺桶に見える。 オヤッさんがその棺桶みたいな鞄を開けると中身は武装神姫の天使型の人間の裸で横たわっていた。 身長は160cm前後。 人間サイズだ。 俺は見た瞬間、こいつが何に使われるかすぐに解った。 所謂、セックスドールていう奴だ。 「こいつはどうやって手に入れたんだ?」 「まぁーそこらは辺は色々あるわけよ」 「言えねぇーか…まぁどうでもいいけどね。で、こいつの使い方は?」 「なんだ、お前、使いたいのか?」 「まっさかー。んなわけねぇーよ。ただ、こいつはどのようなプログラムされてるの気になってな」 「そいう事かい。いいぜ教えてやるよ」 オヤッさんからの話を話を簡単にするとこうだ。 まず、母体となる武装神姫をこいつの腹に付いてるハッチを開け、その中にいれる。 ハッチを閉め、起動させると母体となってる武装神姫の人格で起動するのだ。 まぁその後は誰でも予想出来る『お楽しみタイム』だ。 噂によると膣のしまりは女の人間より良く、気持ちいいらしい。 バリエーションも豊富で幼児体系やセクシー体系でも何でも出来る。 そこがこの人形の利点らしいが。 こいつにはちょっとした欠点がある。 いくら人間そっくり作っているかって所詮人形。 何回も使えば壊れる。 あぁ~この場合の壊れるはヤッた回数でアソコが壊れるのではなく、母体となってる武装神姫そのものを示している。 つまりだ、中に入ってる神姫はこのセックスドールのプログラムとの相性が悪く神姫自体のプログラムが破壊されてしまうのだ。 破壊の理由はこうだ。 このセックスドールに入り起動させたら最後、入ってしまった神姫は快楽とい名のプログラムがセックスドールから流れ込み神姫のプログラムに身体の隅々まで入り込み、神姫としてのプログラムを次々に破壊していくのだ。 しかも時間を掛けてじっくりじっくりとな。 一種のコンピューターウイルスといってもいいかもな。 で、壊れてしまった場合はハッチを開け神姫取り出し、また新たな神姫を入れる。 その繰り返し。 エンドロールって訳だ。 しかもこの商売は結構儲かってるらしい。 ケッ! 反吐が出るような商売だぜ。 アンジェラスの奴なんかあまりにも酷な話だと思ったのか、途中で口を手で押さえ必死に気持ち悪いの堪えていた。 まぁ自分の同胞がそんなヤクチュウみたいになるのは嫌なのだろうよ。 解らなくもない。 人間でいえば親友が薬物で死んだ時のショックと似たようなもの。 やっぱり、こいつは連れてくるべきじゃなかったのかもなぁ。 そろそろこの話を終わりにするから。 アンジェラスのためにも。 「オヤッさん、この商品を売るつもりか?」 「いや、こいつは売らねーなぁ。それに預かり物だ」 「預かり物?」 「そうだ。そのうちこいつを持っていく業者が来て、俺に預かった期間分の金がそいつらから貰え得る寸法さぁ」 「やっぱ、金がらみか。オヤッさんらしいぜ」 「だはははーーーー!!!!ちげえねぇー!」 「で、話を戻すけど、他の武装神姫の情報は無いのか?」 「無い!」 「ちょっ!おまっ!?」 「悪いな、マジで武装神姫に関係してる新しい情報はこれしか無いんだ」 本当になさそうだ。 オヤッさんの顔で察しがつく。 オヤッさんとは結構長い付き合いだからなぁ。 「情報が無いなら、俺は帰るよ。また何か情報が入り次第、連絡してくれや」 「そのぐらい事はしてやるよ」 「よろしく頼むぜ。またなー」 「おうよ」 店から出て自分の車を止めてる駐車場に足を向ける。 「アンジェラス、大丈夫か?」 「はい、大丈夫ですよご主人様」 「やっぱ、お前を連れた来たのは失敗だと思うだよなぁ~。嫌な事を聞いちまって気分悪いだろ?」 「えぇ…。でも事実ですから仕方ないです」 「仕方ない…かぁ…」 胸ポケットに入ってるアンジェラスから視線を外し、濁った空を見上げる。 相変わらず環境をブチ壊すような煙が店の排気口から出ていて、せっかく月が出ているというのによく見えない。 何故かアンジェラスが言った『仕方ない』という言葉が俺の頭の中に刻み込まれる。 こ~う、なんて言えばいいのかな。 何か自分が出来る事があるかな、みたいな感じ? 良く解らないがそんな感じだ。 案外、このモヤモヤは次にオヤッさんと会った時に解るかもな。 「ご主人様~早く帰りましょー。夜更かしはいけませんよ」 「あのなぁ、もう午前四時だっつーの。今日が昨日で明日が今日になっちまったの」 「だから一刻でもいいから帰りましょう」 「はいはい、解ったよ。帰ればいいんだろう」 「『はい』は一回ですよ。前にも言ったように、ご主人様は言葉使いが乱暴で…」 クドクドとアンジェラスの説教が始まったので、俺は聞いてるフリしながら駐車場に向かった。 因みに『乱暴で』の後は何言ってるのかさっぱり頭に入ってなかったので、後でアンジェラスに『何を言ったか言いなさい』と言われてしまった困った。 嘘をつけばその場はすぐに流すことができるが、相手はアンジェラス。 何故か俺が嘘ついいてるのかが分かって、嘘だと分かった瞬間すぐさま俺の所に来てクドクドと説教が始まる。 それでもバックレルとパルカのお気に入りのモアイ像が俺に目掛けて投げつけてくるのだ。 だから今日は正直に『聞いてなかった』と言ったら…ニコヤカに笑いながらモアイ像を投げつけられました。 結局、こうなる運命なのね。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2318.html
第1部 戦闘機型MMS「飛鳥」の航跡 第1話 「飛兎」 「・・・けっ、しけた神姫センターだぜ」 広々とした神姫センターを見渡したアオイはがっかりした。 西暦2041年 1月10日 大阪府のちょうど真ん中にある大阪城公園。そこには公園施設の一部を利用した武装神姫センターがあった。 『大阪府 大阪市 森之宮神姫センター店』 このセンターでは連日のように多種多様な航空神姫。空を飛べる武装神姫が飛び立ち、神姫センター内にあるバトルロンドで激しい空中戦を繰り広げていた。 □戦闘機型MMS 「アオイ」 Aクラス オーナー名「立花 一樹」♂ 24歳 職業 事務機営業マン アオイはどこにでもいる普通のアスカ型神姫だ。オーナーの立花もしがないサラリーマン。 2人は土日になるとぶらぶらとそこら辺りの適当な神姫センターに出入りしては、小競り合いを行っていた。 立花「まあまあ、いいやないかーとりあえず暇そうな奴を見つけてチーム組んで出撃しようや」 アオイ「暇そうな奴ね・・・」 2人は神姫センターで受付をすると、ピスト(待機所)でゴロゴロと日向ぼっこをしていたり昼寝や、武器を磨いてたりしている神姫たちに近寄った。 アオイ「よう!調子はどうだ?」 気さくに声をかけると、三文小説を流し見している天使型神姫が顎をさすりながらなにやらぼやく。 天使型「顎がいてェ、この間のバトルロンドで思いっきり殴られてよ」 それの答えに対してワシ型がにやにやしながらおどける。 ワシ型「嘘ツケ!!菓子の喰い過ぎだろうが」 天使型「うるせえ」 アオイ「バトルロンドに行かないのか?」 羽を広げて日向ぼっこをしていたセイレーン型が時計をちらりと見て答える。 セイレーン型「まだ定期便には早いぜ」 アオイ「定期便?」 聞きなれない言葉だ。 昼根をしていた黒い天使型が薄ら目を開けて答える。 黒天使型「定期便だよ。毎日決まった時刻に爆弾とミサイルを抱えた爆装した武装神姫のチームが来るんだよ」 アオイ「機種は?」 黒天使「・・・なんだ?貴様?戦いたいのか?」 黒天使はむくりと起き上がりアオイを値踏みするようにじろじろと見つめる。 アオイ「戦いたいのかって?当たり前だろうが・・・オレは武装神姫だぜ?」 ニヤリと不敵に笑う。 黒天使型はしばらく考えると、アオイにデータを見せた。 □黒天使型MMS「エーベル」 Sクラス オーナー名「斉藤 由梨」 ♀ 22歳 職業 商社OL エーベル「俺の名はエーベルだ、少しオマエに興味が持てた。そんなに戦いたいなら、俺が少し相手してやろう。話はそれからだ」 アオイ「ふっ・・・いいぜ、話が分かる神姫で助かる」 立花「おっ?どうしたアオイ?さっそく仲良く慣れたのか?」 アオイ「マスター、バトルロンドの用意を」 立花「あれれ?バトル?」 エーベル「手間はとらせねえよ」 アオイ「お前のマスターは?」 エーベルはくいっと顎をひねる。 エーベル「便所だ。一旦入ると長いからな、あの女・・・こっちは待たなくていいぜ」 ドルンドルンとエーベルはリアパーツのスラスターを吹かせる。 立花「・・・・」 アオイ「口の悪い神姫だぜ」 立花「オマエもだろが」 アオイも尻尾のエンジンをブウウウンと唸らせる。 アオイ「いいぜ、楽しめそうだ!エンジンも暖まってきたしな」 2人のやり取りを横目で聞いていた神姫たちがわらわらと集まってくる。 砲台型「えーなになに?バトルするの?」 花型「うはっ面白そう」 悪魔型「どっちが勝つか賭けねえか?」 戦車型「おまえはすぐに賭けとかうせーんだよ」 騎士型「くだらないな」 ワシ型「エーベルは強いよー」 サソリ型「でもあのアスカ型も強そうだぞ?」 ネコ型「どっちが勝つかニャー」 野次馬がまだ戦いも始まっていないのにあーでもないこーでもないと騒ぐ。 立花はやれやれとバトルロンドの筐体にすわりタッチパネルを叩きバトルの準備を行う。 To be continued・・・・・・・・ 次へ> トップページに戻る