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G・L外伝 ~Gene Less~ 外伝1 解体屋 「しっかし、なかなかセカンドに上がれないよな。まあ仕事の合間に行く位じゃこんなもんか」 「マスター、私の持つような西洋剣は、どちらかと言えば“斬る”ではなく“壊す”なんですよね?」 「ん? ああ、そうらしいな。侍型の持つ日本刀と違って、重さで斬るからそうとも言えるな。あっちの方がいいか? なら変えるぞ」 「いえ、だったらマスターのお仕事と同じだな、と思いまして。いいですよね、ああいうお仕事」 「いい仕事かねえ。きついし汚れるし、割に合わないぞ。まさかそういうのがいいのか、シビル?」 「はいっ! 親方!!」 「親方言うな親方」 瓦解、崩壊、崩落。落下轟音、大粉塵。 「うにゃぁ!?」 崩れ落ちたビル。巻き起こした土煙はにゃーごと世界を茶色に変える。視界を確保するのに大きく後ろへ飛び退く、つーか思いっきり逃げる。だって怖いんだもんあいつ! なんでにゃーより先に建物ばっかり攻撃するにゃ!? それも、も~満面の笑みで。訳わかんないにゃ!! 跳躍、反転逃避。爆砕、粉砕、崩壊。 「にゃあっ!!! 追っかけてくるにゃ~!?」 三角跳びの足場に使った家屋がどちゃっと一瞬で粉塵に飲まれる。当たり前だけど、敵は思いっきし追っかけて来てるにゃ! にゃーことマオチャオのにゃーの助は、そのなんだか良くわかんない対戦相手から逃げるだけでいっぱいいっぱい。え、マスター? 逃げてにゃいで戦えって? ムリムリムリムリ! にゃーの本能が無理って言ってるもん! いや戦うのが武装神姫だろって? そんなコト言うならマスターが戦ってみるにゃ! 「きっとヘタレはちびっちゃうにゃ・・・ってにゃぁあ~!!!」 崩壊崩落、落下、轟音。 「いたたた・・・なんでにゃーがこんな目にぃ・・・!?」 マスターと口ゲンカしてる内に今立ってた足場までなくなっておっこちたにゃ。あ、危なかったにゃ~。目の前にでっかい鉄骨刺さってるしぃ。 「早く逃げにゃいと・・・ にゃ!?」 なんと気づけばそこはステージの端っこ。もう逃げ場にゃし? そーいえばこのステージ中に響いてた破壊音がもうしてないにゃ。静かになって、ちょっとづつ土埃もおさまって来る。にゃんとそこに広がってたのはガレキだらけのまったいらな荒野。つーかサラ地。ここってゴーストタウンステージだったハズにゃーのにー? 「ぐぐぅ・・こーにゃったら少々見苦しいのも仕方ないにゃ。伏兵に忍ばせておいたぷちを結集してフクロに・・・ あれ? ぷち? オマエラどこにゃ?」 「お探し者は彼等? 駄目じゃないか、現場に子供(?)を連れて来ちゃあ」 「うにゃ!?」 声に振り向くと、そこには下僕(ぷち)たちがくるくる目を回して転がってる。逃げる途中で巻き込まれてたっぽいにゃ、しかも敵に助けてもらうなんて役立たずぅ。 「さて、解体する構造物も無くなったことだし・・」 そういって、煙の向こうから、1歩、また1歩と近付いてくる対戦者。黄色い重甲冑のサイフォス。建物を壊しまくってたのは、左手のドリルと、あと右手に持ったパイルバンカーらしいにゃ。あ、パイルバンカー捨てて、背中のなんかでっかいエモノに持ち替えてる。あれは・・ツルハシぃ? 「そろそろ・・・最後の仕上げと行きますか」 その破壊魔の足音、ひどくゆっくりと近づいて来る。 「・・けど、にゃーだって!」 跳躍、急襲、爪。 勇気を振り絞って飛びかかる。そうだ、きっと怖かったのは、相手がよく見えなかったのと、モノ壊すってヘンな行動のせいにゃ。でもそれが無いなら、理屈から言って残るのは重そーな鎧だけ。なら、あーゆーカタブツなんてすばしっこいにゃーの敵じゃにゃい! 見えるっ! 動きが見えるにゃっ!! 「反撃にゃああああ!」 「ふんっ!」 「にゃ?」 急剛投、穿孔。轟、掠。 「ドリル投げるにゃんて!? ・・でも、そのくらい!」 「隙あり!!」 轟振、打突。飛飛飛飛、子猫。逸、逸、直撃、縺絡。 「にゃあにぃ!? ・・ぶにゃ!!」 にゃんと更に、敵はツルハシでゴルフみたいにぷち達を打ち飛ばす。その内の黒ぷちがにゃーの顔面にぶち当たって視界を塞ぐ。ま、まっくらぁ・・・。 「うにゃあっ! 自分で助けといて、りふじ・・」 「問答無用!!」 剛振、粉砕。 「にゃああん!?」 歩、歩、歩、寄。歩、歩、歩、逃。 「ううぅ。にゃあぁ・・・ 来るにゃぁ・・!」 また、ゆっくりと近付いてくる、黄色いアイツ。なんとか最後の一撃は避けたけど、にゃーの爪はツルハシに壊され、武器がないにゃ。もう後ずさりする場所もないにゃ・・。 無防備で涙目のにゃーを見て、それでもにじり寄ってくるまっ黄色の重鎧。その姿はまるで・・・で・・・で・・・、う~んとえっと~なんていうんだっけかにゃあーゆーの。えっとこーノドモトまで出掛かってるんだけどにゃ~。黄色くって~、なんか重そ~で~、そんでもって色々ぶっこわしてムダムダとか言って~・・・ 「あっ! ロードローラー!」 「せめてバックホーに例えなさ~い!!」 轟打粉砕、昏倒。 『勝者、“サイフォス”シビル!!』 騒、歓声、歓声。 「親方、勝ちましたよ。ファーストリーグ初勝利です! ・・って嬉しくありませんか」 「・・・まあな」 「どうしてですか?」 「お前・・・どうして毎度相手よりフィールド壊すんだよ!? しかも今回はファーストだからリアルフィールドだって言うのに!」 「だって、親方の仕事と同じじゃないですか?」 「同じなわけあるか! 俺は仕事で壊すの! 金貰うの! だけどお前のは一銭にもならないだろ!」 「なりますよ! ファイトマネー貰えるじゃありませんか!!」 「モノ壊したのは報酬に関係ないだろう!!」 「そうです、むしろ赤字です」 「ほらこう言う人だって・・・ え?」 「私、当神姫センターのバトル運営者なんですが・・・」 「はい?」 「ぶっちゃけ出入り禁止」 「はうっ!!」 こうして破竹の勢いでファーストリーグに上り詰めた“破壊王”ことシビルとそのマスターは、初日ソッコーでリーグ参加権剥奪されるという伝説を残しましたとさ。 ちゃんちゃん。 目次へ
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「『ALChemist』…よし、ここだ」 ぽちとたまが充電のために寝た後、PCの画面を見てひとり呟く。 何をしているかというと、先日のぽちの勝利の祝いとして何か買ってやるために何がいいかネットをさまよっていたのだ。 そして見つけたのがこの『Electro Lolita』というブランド。可愛らしいデザインで俺が着せたい…もとい、2人も喜ぶだろうと思いこれに決めた。 もちろんたまにも買ってやるぞ?なんたって俺が着せたい…ゲフ、ゲフン、たまの存在だって勝利に影響を与えてるんだからな。 「それで、場所は…お、アキバか。そういや最近行ってなかったな」 独り言が増えたかな?まぁいいや。明後日は日曜だし、間宮でも誘って行ってこよう。 と、いうわけで当日。 「んじゃ、野暮用で間宮と出かけてくるから、よろしくな」 「んー、避妊はちゃんとしないとダメだよー!」 「たッたま!バカなこと言わないのっ!!…あの、気を付けて…」 「否認?よくわからんけどまぁ、行ってくるわ」 それから地元の駅で待ち合わせしていた間宮とアイカと共に、30分ほど電車に揺られて昼前にやっと我らが聖地秋葉原に着いた。40年くらい前には2時間くらいかかったらしいな、科学の進歩は素晴らしい。 「うおー、久々だなぁ、ここ」 「うん、私も久しぶりに来たよ~」 前に来たときから変わってないな。正面には大人の…いや、それはいいや。 「んじゃま、もうすぐ昼だし飯でも食うか」 「そうだね~。じゃあ…あそこのお店入ろ~」 そう言いながら間宮が指差しているのは俗に言うメイド喫茶ってヤツだ。 「ん、あれは…まぁいいか」 今日付き合ってもらってるわけだし行きたいところに行ってやろう。ぶっちゃけおもしろそうだ。 「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様方!」 店に入るとメイドさんが出迎えてくれた。お嬢様方ってのはアイカも入ってるんだろう。 「ふぇ…お嬢様って…私…ですか…?」 「はい、お嬢様、こちらのお席にどうぞ!」 アイカがびくびくしながら尋ねるとメイドさんは窓際の席に俺達を案内してくれた。 こういうとこは高いんだろうな…とか思いつつメニューを見る。ん、これ… 「あれ~、『武装神姫用メイドグッズゲットキャンペーン』だって~。なんだろね~」 俺が言う前に間宮がそれを読み上げた。するとテーブル脇に待機していたメイドさんが、 「えぇ、1000円以上ご注文のご主人様にヘッドドレスやエプロン等のグッズを差し上げています。メーカー公認なんでバトルにも使えますよ」 と、説明してくれた。 なら、もらうしかないじゃないかっ!! 「行ってらっしゃいませ、ご主人様、お嬢様方!」 店から出た俺と間宮の手にはしっかりとフリフリの付いたエプロンが握られていた。 「ぁの…桃ちゃん、私…着るの……?」 「うん~、可愛いと思うよ~」 そう間宮が言うとアイカは少し考えるような顔をしてから真っ赤になり、バッグの中に潜ってしまった。 まったく、かわいいやつだぜ(*^ ^*) 「よし、じゃあ目的地に向かいますかっ」 俺達が目的地としているMMSショップ『ALChemist』はここからは少し歩いたところにある無線会館の地下2階にあるらしい。 「そういえば間宮は行ったことあるのか?」 「うぅん、ないよ~、初めて~。なんだか『槇野 晶』っていう女の人が店長さんなんだって~」 「あぁ、そうらしいな。確かその人が服のデザインとかまでやってんだろ?すげぇよな」 「うん~私も前にアイカに作ってあげたけど、きれいにできなかったよ~。――あ、あそこだ~」 話ながら歩いているうちに無線会館に着いた。ここの地下だな、うん、わくわく。 「いらっしゃいませですの!えと、初めての方ですよね、ゆっくり見て行ってくださいですの♪」 到着した俺達を迎えてくれたのは綺麗な蒼い目の可愛い女の子だった。 「悠くん、あの店員さんかわいーね。外人さんかな~?」 さっそく商品を見始めた俺に間宮が小声で話し掛けてくる。 「じゃないかな?てかパーツとかも色々あるんだな。来てよかったよ」 さすがは有名なMMSショップなだけあって、品揃えは確かだ。それで、『Electro Lolita』は…と。 「お、これか」 色々なデザインの服飾品が並んでいる。それはネットなんかの画像で見るのより繊細で、見入ってしまった。 しかし…どういうのがいいんだろうか。可愛いのもいいが、2人が喜ぶようなのがいいし。 全部買う ひたすら悩む →店員さんに聞く よし、ここはあの店員さんに聞いてみようかな。 「すいません、妹…うちの神姫に欲しいんですが…どんなのがいいんでしょ?」 「はいですの、神姫の好みとかはわかりますか?」 すぐに笑顔で対応してくれる店員さん。いい人っぽいな。 「うーん、好みか…2人なんだけど、片方は機能性とかあると喜ぶかな。もう片方は動きやすいのがいいと思いますね」 店員さんは少し考えて、数着の服を選んでくれた。 「これなんかが条件に合うと思いますの。でも、神姫はマスターが自分のために選んでくれたものが一番うれしいんですの♪」 ふむ、確かにそうかも…って自惚れかな?そんなことを考えながら店員さんが選んでくれた服を見ていると。 「葵、そろそろ私が代わろう―――っと、接客中か」 奥の方から声が聞こえた。 「ようこそ、気に入ったものはあったか?」 声の主はこちらに近づいてきたらしい。誰が来たんだ?そう思って顔をあげると… 「いいのが多くて悩んじゃいま……ょぅι゛ょ?グハッ!!」 そこにいた幼…女性に蹴りをいただいた。 「誰がょぅι゛ょかッ!私は槇野晶だ!客とて容赦はせんぞ、次はないからなッ!」 「すみません…ってあなたが店長さん?」 どう見ても子供なのに、ということばを飲み込んだ。 「いかにも、そうだが?見た目で人の中身まで判断するのはよくないぞ」 またすみません、と謝って商品の吟味に戻る。お、これなんかぽちにいいな。 「それにしますの?」 葵と呼ばれた店員さんが聞いてくる。 「ふむ、それか。それは動き易さを重視したタイプだがデザインもよかろう?…それとなると、落ち着いた性格の…ハウリンか」 選んだ服だけでぽちのことを言い当てた槇野店長。この後、たまの服を選んだ時にも性格やタイプを言い当ててみせた。 この人から神姫への愛、というかそんな感じのものをとても感じられる。本当に神姫が好きなんだろうな。 「ありがとうございました、またどうぞですの♪」 「うん、是非また来させてもらいます」 しっかり選んだ服を持って店を後にする。 「すごかったね~いいの買えた~?」 確かにすごかった。是非また来たいな、よければ店長さんとももっと話したいし。 「あぁ、また行こうな。今度は2人も連れてきてやろう」 そうそう。早く帰ってプレゼントしてやるんだ、喜ぶ顔が目に浮かぶ! つづくぅう
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与太話7 : 週刊少年ジャンプのように 「マ、マママスターッ!! えらいこっちゃぁー!!」 特にすることもない退屈な日曜日。 たまには何もしないのもいいかとダラダラ漫画を読んでいたわけだが、あまりに唐突にエルが叫ぶものだから驚いた拍子に椅子ごとひっくり返ってしまった。 自画自賛したくなるほどの反応速度で後頭部へのダメージを回避した分、負荷はすべて腰に回った。これぞ今呼んでいた漫画の悪役が駆使する過負荷 『不慮の事故(エンカウンター)』 である。ダメージを押し付ける対象が他ならぬ自分であるあたり不完全ではあるが、そもそも過負荷というのは負完全なものなんだし、きっとそのへんの違いは瑣末なものだろう。 いやはや実に恐ろしい。こうもあっさりと漫画の世界の能力を再現してしまうとは、自分の才能が恐ろしい。実は俺も素敵な能力の持ち主であったらどうしよう。その素敵な能力で武装して、分不相応に武装して、箱庭学園なる学校の生徒会長にケンカを売りに行くべきだろうか。 いや、やっぱやめとこう。姫乃を残して二次元の世界に旅立つわけにはいかないし、何より腰が痛くて立ち上がれそうにない。 「いつまでひっくり返ってるんですかマスター! 一大事ですよ! 武装神姫界に永久に残る記念碑的なアレですよ!」 「……あ、ああ、うん。今ちょっと起き上がれないからエル、何があったか言ってくれ」 「えへへ~/// 知りたいですか? そんなに知りたいんですか?」 よく分からないが、エルの言う【記念碑的なアレ】は神姫がウザくなる成分を含んでいるらしい。そんなものに触っては駄目だぞ、と手を伸ばしかけると腰にズキリと突き刺さるような痛みが走った。 この調子だと頭を上げることもできそうになくて、机の上でエルがどんな顔をしているのかも分からない。 もしかしたらわざと俺をひっくり返して、痛みに耐える俺を見下ろしてニヤニヤしていたりするのだろうか。俺が過負荷(マイナス)になったせいでエルまで過負荷に堕ちてしまったとか。 ウザ迷惑な能力である。 「ではでは、発表します! なんと! なんとなんとなんと! 戦乙女型アルトレーネの再販が! 誰もが待ちに待ち焦がれ恋に恋焦がれたアルトレーネの再販が! 決☆定! したのでしたー!!」 パチパチパチ! と力強くも小さな拍手の音が聞こえてきた。 アルトレーネ再販か、良かったな、うん。 これであの神姫センター名物になりかけた戦乙女戦争は恒久的に防がれたってわけだ。世界の平和に万歳。みんな、折り鶴はゴミになるから作らないでおこうぜ。 「んん~? ノリが悪いですねマスター。ああ、もしかして今が嬉しすぎるあまり将来が愁しすぎるんですね! 私達ももう長い付き合いになりますから、マスターの考えていることはよ~く分かっていますとも。でも大丈夫です! 私さえいればマスターはずっと幸せです! 具体的に言うと姫乃さんとの付き合いでは決して得られない【おっぱい成分】は私が補填しますから!」 エルが言った直後、机を蹴ったような音がした。その音に不吉なものを感じたのも束の間、ひっくり返ったままの俺の腹の上にエルが飛び降りてきた。 身長15cm程度のからくり人形、武装神姫。 その身体が華奢で小さなものであっても。 飛び降りた場所が低い場所であっても。 腹から腰に伝達された衝撃は、十分なトドメとなった。 「ふごおおおおおっ!」 姫乃に付き添ってもらって(か弱い姫乃に肩を貸してもらってもかえって俺の負担が増えるだけだった)病院に行くと、医者から「湿布貼っとけば治るんじゃね」とだけ言われて帰ってきた。ヤブ医者の言うことは無視するとして、俺にできることは大人しく横になるくらいだった。無力なものである。これでは二次元の世界で学園バトルに巻き込まれたとしても、メインキャラ達と戦うどころかコマの隅っこで驚く群衆が関の山だ。 「気持ちは分かるけど、あんまり弧域くんを困らせちゃ駄目よ」 「すみません……」 残りの湿布を片付けてくれる姫乃が話しかける先、エルは机の下でしょぼーんと影を落としていた。さっきまでのはしゃぎ様からここまで落ち込まれると、なんだか俺がエルを苛めているみたいで申し訳なく思えてくる。俺も姫乃も怒っているわけじゃないけど、エルは浮かれていた分だけ過剰に落ち込んでしまったのだ。 椅子の足に寄りかかったニーキはアルトレーネ再販なんて関係無く、いつもどおりエルに呆れている。 「君は悪くない、と言うわけではないがそろそろ出てきたらどうだ。せっかくのアルトレーネ型再販なのだから今は喜んでおくべきだぞ」 「そう、ですけど……でも……」 「面倒な性格だな君は。少しは至極単純な君のマスターを見習うといい」 「ヒトが動けないことをいいのにコノヤロウ。じゃあ俺が今、何考えてるか当ててみろよ」 「フン、造作もな………………っ!? な、なにを考えているんだ君は! そんな破廉恥な格好でヒメに看護させる気か!」 「弧域くん!? 私になにさせる気よ!?」 「いやあ、その、ナースキャップの着用だけは認めてもいいかなと」 「意味がわからない!」 エルの深い深い溜め息が机の下から漏れた。 本当にアルトレーネ再販が嬉しかったんだろうな。再販プロジェクトではアルトアイネスのみ条件を達成してアルトレーネは見送られたけど、今回の再販はそれだけディオーネに要望があった、つまりそれだけアルトレーネが望まれたってことだし、絶対に不人気なんかじゃない。 その嬉しさを、何らかの形で表したかったんだろう。 かつて自分達が不人気ではないと、声高に叫んだように。 「ごめんなエル、今日は神姫センターに行ってバトルしたかったんだよな」 「…………」 「俺だって記念にバトルして、エルが強い神姫相手に勝って、二人で再販と勝利の喜びを味わいたかったぜ。俺はビールとか大っ嫌いだけどさ、今日だけは電気ブラン以外の酒もがぶ飲みできそうだ」 「……マスターを動けなくしちゃったのは私です。全部、私のせいなんです……」 はあ……と再び大きく重い溜め息。 ちょっと腰を打ったくらいで動けなくなったのは情けないけど、俺だっていつまでもエルの溜め息を聞いてやれるほど心が広いわけじゃない。 「勘違いしてないかエル。バトルは神姫センターでしなきゃいけないって決まりはないんだぜ」 「でも、このあたりでバトルできる一番近い場所が電車で二駅のあの神姫センターです。それ以前にマスターは起き上がることだって……」 「そういうことじゃなくてだな。神姫の強度は並じゃないからな、案外どんな場所でも戦えたりするぞ。たぶん」 ニーキだけは俺の言いたいことを早いうちに理解して、やれやれと首を振った。なんだかんだ言われるだろうけど、バトルには付き合ってくれるだろう。ニーキはこれでかなり付き合いのいい奴なのだ。 「どんなステージでも戦いますけど、その筐体が無いと――――あ、もしかして」 「そう、そのもしかしてだ。ニーキも付き合ってくれるよな」 「君や姫乃に怪我をさせてしまう可能性がある。物が壊れたらどうする。片付けは誰がやる。近所に知られて騒ぎになったらどうする」 「全部そうならないよう頑張ってくれ。エルとニーキならできるだろ?」 「はいっ!」 「はあ……」 「どういうこと? 弧域くんはこの部屋どころかベッドからも出られない、のに?」 やはりというか、わざとそうしたというか、姫乃だけが一人置いてけぼりになっていた。姫乃は漫画で非常に重宝されるタイプだな。意味不明な能力や黒幕の正体を解説するキッカケになってくれてすごく助かる。 でも今回はそんなに難しいことじゃないしニーキの台詞もあって分かりやすいと思うんだけどな、と自分の彼女の鈍さが心配になってきた。 とはいえ姫乃に解説をしてやるのは隣に立つ俺の役目だ。大した能力もないくせに異能バトルに巻き込まれるよりは、そのバトルを遠くから眺めて解説役に徹するほうがいいだろうし。 「ベッドから出られないのなら、寝転がったまま見える場所で二人にバトルしてもらえばいい。今回のバトルステージは “この部屋” だ」 「 !? 」 目をまん丸にして姫乃はいっそわざとらしいくらい驚いてくれた。 うむ、今日も俺の彼女はかわいい。 一旦姫乃の部屋に戻ったニーキが装備してきた武装は、というか武装と呼んでいいのか、真っ黒の学ランを着ていた。クールなストラーフ型によく似合うと思う。 学ラン主人公が姫乃の最近のトレンドらしくここのところニーキはこの服ばかり着ている。でも俺の中にはさっきまで呼んでいた漫画の影響で 学ラン=気持ち悪い男 という図式が出来上がってしまっていた。というか、この賭けバトルもその男の台詞からの発想である。 いや、発想ではなく丸パクリだった。 ニーキが勝てば、俺は姫乃の言うことをなんでも1つだけ聞く。 エルが勝てば、姫乃は裸エプロン。 「おまかせ下さいマスター! 必ずやニーキ姉さんを打ち負かし、姫乃さんの恥じらう姿をご覧頂きましょう!」 「なんでそんなにヤル気なの!? 目を覚ましてエル、弧域くんに変なことに利用されてるのよ!」 「変なことだろうと変態的なことだろうと私はマスターのために戦うだけです」 「キメ顔で言わないでよ全然かっこよくないからね!? ニーキも何か言ってよ!」 「心配するなヒメ。私が負けると思うのか」 「そ、それは……でも……」 「万が一私が負けても、ヒメが多少恥ずかしい思いをするだけだ」 「こんなの絶対おかしいよ!」 一人異を唱える姫乃をまた置いてけぼりにして、エルとニーキは机の上で対峙する。 エルの装備はいつも通り、鉛色のロングコートに、両脚には無骨な白い強化パーツ。両手に持つ二振りの大剣をゆったりと構えている。 対するニーキは何も持たず、構えを取るわけでもなく、半身になって立っているだけだ。小道具はすべて学ランの下に隠している。 バトルを繰り返すことでエルが【スピード】に特化していったように、ニーキは【不可解さ】に特化していった。俺がエルと出会って最初に挑んだバトルでニーキが見せた『認識できない移動』は一度はエルが破ったものの、ニーキはそこからさらに発展させて今やレーダーにすら映らなくなり、そんな贅沢品を持たないエルが頼る直感さえも狂わせてしまう。 どういう仕組かをニーキは教えてくれず、その能力は謎に包まれたままだ。かっこよくて羨ましい。健全な大多数の男子が憧れるように、俺もそういう素敵な能力を持ってみたい。学園異能バトルの当事者になってみたい。 「余計なことを考えるのは後にしてくれ。弧域、バトルの合図を」 特段構えているわけではなくても(そしてこんな不真面目なバトルであっても)ニーキの張り詰めた糸のような緊張は感じられる。ニーキだけでなくエルもそうだ。大剣を握る手に必要以上に力が入っている。立ち回りにミスを許されない二人の戦法上、必然的にこの二人のバトル開始前は息苦しいものになってしまう。 「どういうこと?」 ナイス聞き役だ姫乃。 「神姫バトルって単純に火力や防御力が高ければいいってこともあるけどさ、基本的に立ち回りが重要になるんだよ。悪い例だけど、初心者狩りばっかりやってるシケた神姫のほとんどが飛行できるんだ。なんでかって、戦い慣れてない神姫が空を飛び回る奴に攻撃を当てられるわけがないし、ほぼ全方位から来る攻撃を避けられるわけがないだろ」 「うーん」 「極論、相手の攻撃が当たらず自分の攻撃だけが当たる位置に立ってさえいれば負けようがないよな。実際は相手も動くからそんなことは不可能だろうけど、お互いが動く中でベストポジションを見極めてそこに立たなきゃいけない。そこを見極め損ねた瞬間、相手が有利な位置に来て攻撃されるからな」 「うむむむむん」 「そしてエルとニーキは種類こそ違っても移動に重点を置いていて、それをミスした時にカバーできるだけの火力も防御力も無いだろ。だからミスできない。相手のミスを見逃せない。そんなわけで緊張しちゃうってわけだ」 「……えっと、つまり失敗しちゃいけない、ってこと?」 今のは話が長くなってしまった俺が悪いんだろうか。それとも理解してくれなさすぎる姫乃が悪いんだろうか。 「その『つまり』にどれだけの理解が詰め込まれてるか知らないけど、まあ実際に見たほうが早いな。それじゃ待たせたなエル、ニーキ。いくぜ――」 静かに対峙する二人は気持ち腰を落とした。 二人の頭の中では俺と姫乃のいるベッド以外の場所を足場と捉えている。往慣れたこの場所でどんなバトルが見られるのか、楽しみにしているのは俺だけじゃない。 エルも、ニーキも、薄く笑みを浮かべていた。 「レディ、ゴー!」 同時、エルは机を叩く音を残して、ニーキは気配を残して、その場から消えた。 「こ、弧域くん、さっき見れば分かるって言ってたけど、これじゃ見れなひゃっ!?」 ベッドの隣のクローゼットに剣が叩きつけられる音に驚いた姫乃が頭を抱えた。 確かにニーキがいたその場所に剣を振ったエルは目の前でニーキが消えようと驚くこともなく、周囲に目もくれずクローゼットを駆け上がった。直後、“背後にいた”ニーキがエルを追うようにマシンピストルによるフルオートを放つ。しかし既に高く駆け上がっていたエルには当たらなかった。無闇にクローゼットを傷つけただけである。 「姫乃は主にニーキに目がいくだろ。でもニーキが動くと絶対に見失うから、むしろ相手の神姫を見たほうが分かりやすくなるぞ」 「エルも早すぎて全然分かんないんだけど」 「じゃあもうアレだ。二人とも瞬間移動してるって考えたらいいんじゃないか」 「ああ、なるほどね。そうしてみる」 自分の能力を理解してくれない姫乃がマスターだと、ニーキはさぞ戦い甲斐が無いことだろう。かといって俺もニーキの移動法の仕組みを知っているわけじゃないけど。 でも確かにエル対ニーキの初バトルの時よりも二人のバトルスピードは格段に上がっていて、もはや別世界と言っても過言ではない。エルは単純に速度が向上していて、ニーキは神出鬼没さが増している。それに加えてバトルの経験値も多く積んだ彼女達の戦闘はもはやケチのつけようもないものだった。 「そこですっ!」 何もない場所にエルが斬り込んだ――かに見えたがそこには確かにニーキがいて、咄嗟に突き出されたマシンピストルごと斬り払った。 「くっ!」 「ニーキ姉さんのパターンもちょっとずつ読めてきましたよ。次はこっちです!」 斬られた直後にニーキが姿を消しても慌てることなく、エルはさらに畳み掛けて右のほうに剣を振った。ニーキのトリッキーな動きに騙されそうになるが機動力はあくまで平凡だから、姿を消したとしてもそれほど遠くへ移動しているわけではない。だからパターンさえ読んでしまえばニーキ攻略は難しい話じゃないのだ。 ……一昔前のニーキ相手ならば、確かにそれは有効だった。 「えっ……!?」 エルの右に現れたニーキを、エルは確かに斬った。だがそのニーキはダメージを負うでもなく、剣をすり抜けてフッと消えてしまった。 「どうした、私の幻影でも見えたか」 こつん、とエルの後頭部に黒い棒が押し付けられた。 「次に会ったら言っておいてくれ。『囮役ご苦労』とな」 ニーキのハンドガンが火を噴くギリギリ前、エルは頭を体ごと投げ出すように倒して辛うじて射撃を躱した。 倒れかけたエルにニーキがハンドガンを向けるが、ニーキが引き金を引くより先にエルは剣を床に叩きつけてニーキから離れた。 「分身とか忍者ですかニーキ姉さんは! 実はストラーフ型じゃなくてフブキ型なんじゃないですか」 「正真正銘、私は悪魔型だ。それと気をつけるんだなエル。そっちは――」 エルが離脱した先は本棚だった。最上段一列には教科書やノートが並べているが、それ以外は漫画で埋まってしまっていて、入りきらなかった漫画を棚の前に山積みしている。さっきまで読んでいた漫画も山の一部になっている。 漫画の山の麓まで逃れたエルは、恐らく、ニーキが仕掛けたトラップのスイッチを起動したのだろう。 「――そっちは本が崩れて危ないぞ」 ドサドサと音を立てて本の雪崩がエルを飲み込んだ。 これこそがニーキが持つ【不可解さ】の真骨頂だ。 いくら科学が発達したからといって自分の分身を気軽に作り出せるなんて聞いたことがないし、ニーキは今まで一度も分身だか残像だかを作り出したことはなかった。ニーキは「必要だったから分身した」と言うだろう。 エルがニーキの射撃を回避し、逃げた先に丁度罠を仕掛けておくなんてことができるだろうか。ニーキは「エルが逃げた場所に罠があった、それだけだ」と言うだろう。 認識されない移動をベースに、ニーキは不可解なほど自分に都合の良い状況を作り出しては相手を追い詰めていく。 まるで持ち駒を無限に用意した将棋のように。 まるでクイーンのようにポーンを動かせるチェスのように。 「そう、ニーキの能力こそまさに……『デビルワールド!』」 「勝手にセンスの無い名前を付けるな」 冷静につっ込まれた。ニーキだって自分の技にアレな名前付けてるくせに。 「言っておくがな、私の技に名前を付けているのはヒメだぞ」 「ちょ、ちょっとニーキ! それは言わない約そ……ち、違うのよ弧域くん? ほら、あれよ、きっと聞き間違いよ」 「ふ~~ん」 「…………」 「『 血 風 懺 悔 』」 「イヤッ! 言わないで!」 「『 夢 想 指 揮 ・ 護 姫 』」 「やめて恥ずかしくて死ぬっ!」 「『 十 三 回 旋 黒 猫 輪 舞 曲 』」 「いっそ殺してええええええええっ!」 「恥ずかしがるような技名を私に使わせないでくれ……」 いや、俺もカッコイイ名前は悪くないと思う。学園異能バトルならばやっぱり、ちょっと小洒落た技を持っていて然るべきだろうし。そういう意味でニーキは見た目も能力も漫画の登場キャラとして相応しい(敵か味方かはともかく)。 でも忘れないでほしい。 そういう小難しい技を打ち破るのはいつだって単純な技だったりすることを。 例えば、そう。 本の雪崩が殺到する瞬間に離脱できるほどの超スピードの前では、小細工なんて全くの無意味だ。 「技の名前が気に入らないならさ、参考例を聞いて考え直してみろよ――エル、言ってやれ」 「『紅魔――』」 武装やトレーニングで強化するといったレベルを超えた能力を持つニーキだが、その代わり、というわけではないが、普通の神姫ならば誰もが持つ特性を持っていない。そしてそれが決定的な弱点になってしまっている。 「弱点? どういうこと?」 「聞き役ありがとう姫乃。でも今は勝負中だからな、簡潔に言うぜ」 本棚の頂上を蹴りニーキに向かって超スピードで突進する鉛色の弾丸。 呑気に俺や姫乃と会話していたニーキは慌てて姿を消すが、もう遅い。 「ニーキにはさ、第三の目になってくれるマスターがいないんだよ、姫乃」 「『 ス カ ー レ ッ ト デ ビ ル ! 』」 「あ、メルですか? お姉ちゃんで――――うんうん、ありがとうございますっ! ついに姉妹揃って再販ですね! ――発売日ですか? そこまで贅沢は言いません。発売はまだまだ先ですけど、今工場で眠っているアルトレーネ達が優しいオーナーに出会える日を楽しみにしています! ――――――第三次戦乙女戦争? えっ、それはどういう――――ふんふん――――な、なんですかそれ!? そんなの許せません! 今すぐオーメストラーダに電凸を――――もう解決? またコタマ姉さんですか。ん? マシロさん、ですか。聞いたことない名前ですね。――ああ、コタマ姉さんのお姉さんですか、それなら納得です。それよりメル、今マスターの部屋の流し台の前に姫乃さんが立ってるんですけどね、どんな格好してると思います? ――――いい勘してますね、そのまさかです! ――ナースキャップ? そういえばマスターもそんなことを言ってましたけど、どういうことですか?」 「ちょ、ちょっとエル!? なにしゃべってるのよ!」 身体を隠すように縮こまった姫乃が流しから戻ってきて、エルが話していた携帯電話を奪い取った。 腕二本だけでは隠そうにも限界があり、またエプロンが必要最低限の布面積のものしかなかったため、どうしても隠し切れない場所というのが出てくる。 それは例えば、肩紐からストンとほぼ垂直に落ちる布の隙間からだったり。 それは例えば、料理とは前を向いて行うものでありカバーする必要の無い背後だったり。 実に。 実に眼福である。 もう俺は死んでもいいんじゃなかろうか、とさっき口に出したところ「そうすべきだ。君はさっさと死ね」と割とキツい捨て台詞を残してニーキは姫乃の部屋に帰っていった。 さっきの負け方がよほど悔しかったらしい。 「メル? 今エルが言ったことは全部デタラメだからね――――嘘! 全然分かってないでしょ! お願いだから貞方くんには――――――怒るよ? ――――――うん、ホントにしゃべっちゃ駄目だからね。約束よ、いい? ――うん、ありがとう。それじゃあね、はーい」 半ば強引に通話を切ったらしい姫乃は携帯をエルに返して、俺に凝視されていることに気付いた。 「あ、あんまりジロジロ見ないでよ……」 「なに言ってんだ。ジロジロ見なきゃ裸エプロンの意味が無いだろ」 この男のロマンをまさか実現できる日が来ようとは、いや実は姫乃が正式に俺の彼女になってくれた時点で期待はしていたわけだけど、こうしてリアルで目の当たりにできたとなるとその感慨もひとしおだ。 王道の学園異能バトルもいいけど、やっぱりちょいエロを含んだラブコメも外せないな。ただし絶対領域が僅かに解放されてるから少年誌には載せられないけど。 くそっ、未だズキズキ痛む腰が恨めしい。立ち上がることができたらキャベツを刻む姫乃の背後にまわってエプロンの隙間に手を差し込めるってのに。 「あっち向いててよぉ。料理してると手が塞がっちゃうから隠せないじゃない」 「隠せないのなら隠さなければいいじゃない」 「そ、それじゃただの痴女じゃない! あくまで弧域くんにやらされてるんだからね! それに私の身体なんて見ても面白くない、でしょ?」 「全然そんなことないぜ。具体的に言おうか、上から順に鎖骨――」 「言わなくていいから! ……もう、分かったから、せめてそんなに目を大きくして見ないでよね」 そう言って前を隠したまま流し台までバックで移動して、しばらくそのまま俺と見つめ合い固まったままだったが、意を決したのかクルリと流し台のほうを向き、再び料理に取り掛かった。 美桃! 「はあ……なんだか私はお邪魔みたいですね」 姫乃に通話を切られたエルはやれやれ、と携帯を置いて玄関へ向かった。 エルのおかげで男のロマンを叶えることができたという男として最低の事実が、今更になって罪悪感として重くのしかかってきた。 「私も姫乃さんの部屋に行ってます。終わったら呼んでください」 料理中の姫乃の下を通り過ぎ 「こ、コラっ! 下から覗き込まないでっ!」 玄関を自力で開けて出ていってしまった。 俺の部屋で、姫乃とふたりっきりになった。 裸エプロンとふたりっきりになってしまった。 包丁がまな板を叩く音と電気コンロの上で水が沸騰する音だけが聞こえてくる。 「えーと……母さんや、今日の晩飯はなに?」 何となく気まずくなったこの雰囲気をごまかしたかったのだが、姫乃は返事をしてくれずに野菜を切る手を止めた。 玄関の外から隣室の扉が閉まる音が聞こえてきた。 「な、なあ母さんや。晩飯……」 包丁を置いてゆっくりとこちらを向いた姫乃は、口を開いた。手は身体を隠さずに。 「今更聞くのもなんだけど……晩ご飯、何がいい?」 「えっ? そ、そうだな。母さんの作るものなら何でもいいよ」 「コレが食べたい、とか言ってくれないと、献立を考えるのって結構大変なんだからね」 「ご、ごめん」 電気コンロを止めて、姫乃はベッドに歩み寄ってきた。僅かに上気した頬が艶かしい。 「じゃあ、3つの中から好きなのを選んでね。1番、肉じゃが。2番、オムレツ。3番――私」 「…………」 「にはは。せっかくだから言ってみたけど、本当の夫婦ってこんなこと、言うの、かな。ん~恥ずかし~!」 「――3番」 「ん?」 「3番でお願いします」 思わず敬語になってしまった。 ここで1番や2番を選ぶ男は漢じゃない! 「い、いやいや弧域くん、さっきのは」 「俺の食べたいものを言って欲しいんだろ。3番」 「そ、そうは言ったけど、でも今は料理中だし……」 「栄養はいつでも補給できるけど、今は姫乃分を摂取したい。だから3番――姫乃を食べたい」 「…………そんなに、食べ、たいの?」 俺が頷くと、姫乃はさらに顔を真っ赤にしてベッドに腰掛けた。 姫乃を真横から見る位置になって、エプロンの絶対領域が完全に解放された。 裸エプロンを最初に考えた紳士は間違い無く天災的な天才だ。見慣れたはずの薄い胸とエプロンに触れている先端に、俺はこれほどまでに目を奪われてしまっている。 「でも腰、痛くないの?」 「腰が使えないのなら使わなければいいじゃない」 「さっきからどうしてアントワネットなのよ」 ビバ☆ラブコメ! 今もし二次元の神様が現れて異能バトルができるだけの力を与えてくれると言ったならば、俺は迷わず 「そんなことはいいから朝の曲がり角で食パン咥えた可愛い転校生とぶつからせてくれ」 と頼むね。 いや、違うか。 俺はハーレムって柄じゃないし、姫乃一人とずっとイチャイチャしていればいいや。 少年誌のラブコメのような八方美人なんて良くないに決まってる。 攻略するのは、姫乃一人で十分だ。 祝 ☆ ア ル ト レ ー ネ 再 販 ! おめでとうございます! これで多くのレーネ難民が救われることでしょう! 躊躇うことなくポチりました! 既にエルが一体ウチにいますが、そんなことは瑣末なことです。 一体いるのなら、もう一体お迎えすればいいじゃない。 名前はもう『アマティ』で決定しています。 ああアマティよ、早くその可愛いお顔を見せておくれ。 武装をせずに何が武装神姫か、とは思うわけですが、バトルをするなら少しくらい超科学的な能力があってもいいんじゃないかと思う今日このごろです。 全身がゴムでできた神姫素体とか。 13kmまで伸ばせるビームサーベルとか。 美味しいヂェリーを飲む毎に強くなる神姫とか。 いっそ素体の中に九尾を封印しちゃったり。 もういっそすべてをなかったことにしてしまったり。 まあ、どんな能力も裸エプロンの前では霞んでしまいますが。 15cm程度の死闘トップへ
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前へ 神姫とは。 ある世界においては、全稼働型の美少女アクションフィギュアのことである。 神姫とは。 またある世界においては超高性能AIを搭載した、主人に従う心と感情を持つフィギュアロボットのことである。 神姫とは。 古今東西あらゆる属性を取りそろえ、抜群の容姿と戦闘力を兼ね備える完璧超人(?)である。 神姫とは。 主人の好機に槍となり、なにより生活に潤いを与えてくれる存在である。 そして鷹峰家の神姫とは…… 『ハーヤーテー!!』 別に東京の朝空に響き渡ってはいないが、ハヤテは少女の声を聞き即座に自分のベッドから飛び起きた。 鷹峰ハヤテは十五歳。職業は高校生……予定。 予定というのは、今は中学校卒業後の高校への準備期間であり、まだ高校生ではないからである。 「……どうしたの、ナギ」 眠たげな眼をこすりながら、ナギの声のするほうを向く。 すると小さな二つの液晶画面に向かっていた少女が、不機嫌そうな顔でこっちを向いた。 『バトルハウスで100連勝できない!!』 彼は苦笑いをしながら、あぁ、と思った。 「朝からゲームですか」 『何度やっても60くらいで止まってしまうのだ。 ハヤテ、もうマルチバトルでもいいから助けてくれ』 「……そうだね、面白そう」 彼はそう言いながら部屋の扉に手をかけた。 「じゃあ、着替えて顔を洗ってくるよ。 そしたら僕も入ってあげる」 神姫とはいえ、少女のいる部屋で着替えるのは抵抗があったのである。 『……わかった、早く済ませろよ』 心の中で「はい、お嬢様」と言いつつ、ハヤテは廊下で着替えを済ませ、洗面台で顔を洗った。 「ただいま」 樫の木でできた扉を、極普通に開ける。 『遅い!「ハヤテ」なら全力疾走で来るところだぞ!』 「いや、階段もあるしそれはちょっと」 ハヤテは3DSを起動しながら言う。 「……それで、どんな作戦で行こうか」 『雨パでいいだろう』 「え? 僕晴れパなんだけど……」 『えー? そうなのか? じゃあ私に合わせろよ』 「えぇ? でも…… うーん……」 『あー、もういい、私はこれで行くぞ!』 「え、え? じゃあ僕もこれで……」 バトルの明暗を分ける2人のパーティの相談しないまま受付を済ませる2人。 だがそのパーティの中身は…… 「あれ、ナギ普通のパーティで行くの?」 『そういうお前も普通のじゃないか』 「それは、ナギに合わせようかと……」 『私もお前に…… おっと、始まってしまったな。 む、相手は初戦から強いのを繰り出してきたぞ……』 「大丈夫、たたみがえしがあるよ……ほらっ」 『おおっ!』 彼女を防御技で守って見せると、少女は感心の声を上げた。 彼女こそがハヤテの神姫であるナギ。ハヤテのごとく!のヒロインである三千院ナギをモデルとしたれっきとした武装神姫の一人である。 「主を守るのは、執事の務め、だよね」 『うむ、これで安心して積めたぞ!』 「よし、じゃあ攻撃だ!」 『うむ! ……当たった! 凄い! やったぞハヤテ!』 協力により、見事強力な相手を倒した二人はお互いに賞賛しあった。 『やっぱり、ゲームは二人でやると楽しいな』 「寝起きでマルチバトルするとは思わなかったけどね、ところで」 『ん?』 「このハヤテのごとく!のノベライズ版一巻プロローグ風のオープニングの流れはいつまで続くの?」 『そうだな、そろそろやめるか』 というわけで、普通の流れに戻ります。 第1話 「ナギのごとく!」 本日4月6日。 あれからもう十日が経とうとしていた。 もちろんあれとは、ナギが鷹峰家に来たあの日である。 「……はぁ、もう明日は学校かぁ……」 『学校?』 「言ってなかったっけ。 明日は高校の入学式なんだ。 だから、明日から学校」 『なんだ、お前ニートじゃなかったのか』 「……違うよ。 っていうか、生徒手帳見せたよね?」 休暇中ニートのような生活をしていたのは確かであるが。 ナギが鷹峰家に来たことも相まって、二人でゲーム三昧な毎日を送っていたのである。 「そうだ、ナギは僕が学校行ってる間どうするの? ……ナギも学校来る?」 『誰がそんなもの行くか。 家でゲームでもしているさ』 (そう来ると思ってた) 原作でも不登校気味で一日中家で漫画とゲームをしておりスーパーインドアライフを全力で満喫しているようなヒロインである。 (連れてけなんて言われたらどうしようかと思ってたけど、余計な心配だった) 「じゃあ、ナギは家で待機ね」 『……ハヤテもサボったらどうだ。 ゲームの続きをしようじゃないか』 「僕は初日から学校をサボれるほど、ナギみたいに神経が図太くないからね」 『む!あれは別にサボったわけではない! ただちょっとその……たどり着けなかったと言うか……なんて言うか……』 「でも登校中に海に行こうとしたり勝手にはぐれて時間を潰そうとしたり……」 ※ハヤテのごとく!4巻参照。 アニメではそのシーンは削られてました。 『うるさい!とにかく私は学校には行かんからな! 一人で一人用のゲームでも漁っているから安心して学校に行ってくるがいい!』 「あはは、はいはい。 さて……じゃあ」 時計を見ると、もう11時50分。 あと10分もすれば4月7日。入学式の日だ。 ちなみに学校が始まるのは8時40分である。 (通学の時間とか計算して……7時くらいに起きればいいかな。 やっぱり最低でも7時間は寝たいから、そろそろ…… でも、やっぱり初日から遅刻は嫌だし、もう少し早く?) 『ハヤテ?』 「とりあえず、アラームをセット……」 ハヤテはスマホを操作し、アラーム機能の画面を開く。 時間を6時にセットし、音量を最大に、ちゃんと設定されたのを確認し、携帯を閉じた。 「それと、明日持っていくものは…… 上履きと、筆記用具に、財布に、携帯電話(スマホ)に…… あと、ゲーム機も……」 復唱しながらバッグに詰めてゆく。 (こんなものかな) 確認を終え、ハヤテは歯を磨きに行くために立ち上がる。 「じゃあ、僕は歯を磨いて寝るよ。 ナギもクレイドルに戻ったら?」 『あぁ、そうだな。 ハヤテが寝るんじゃ仕方ない、私も寝るさ。 ……でも、電気を切るのは戻ってきてからだぞ、いいな』 「わかってるよ」 ナギは一人で眠れない、という部分も再現されているようで、 こういった細かい再現もファンであるハヤテとしては嬉しいところである。 「ただいま」 『おお、戻ってきたか』 そう言ってナギはクレイドルに座り込む。 『それじゃあ、もう寝るぞ』 「そうだね、それじゃあおやすみ、ナギ」 『うむ、おやすみ』 ハヤテはナギがスリープ状態になったのを確認し、そのままベッドに転がりこむ。 (学校か…… ……確かに二人で一日中ゲームしてたいって気持ちはナギと同じなんだけどな) ハヤテはそう思いながら、眠りについた。 次へ
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「先輩!イルカがこっちを向きましたよ」 「おー、かわいいなぁ。しってたか?イルカは睡眠をとるときに脳を半分ずつ寝かせているんだ」 「そうなんですか?理系としては興味深いですね」 「そのあたりは俺はサッパリだけどな・・・」 「・・・・・あ、次のショーが始まりますよ」 気まずくなって話題をそらす由佳里、その心遣いが優一には痛かった。 電車で小一時間ほどの距離にある水族館、その一角の一番広いスペースを占める大型プールで行われている、イルカのショーを二人は見物していた。 すると突然、イルカの一頭が大ジャンプして着水、大量の水飛沫が二人に降りかかる。 「のわっ!?」 「きゃぁ!!」 「はっちゃー、ビショ濡れだな。大丈夫か?」 「どうにか・・・」 優一は暗い色の服装のためか頭が濡れた以外目立った被害は無いが、由佳里の方は白いブラウス越しに下着が透けてしまっていた。 「・・・・とりあえずこれ、羽織っとくといいよ」 「はい・・・」 そう言って彼は紅くなりながら自分の半袖ジャケットを由佳里に手渡した。 -- 「フンガー!!!」 「お姉様落ち着いてください!」 「駄目だコリャ」 反対側の座席の一角、優一らが座っているちょうど反対側に八雲達がいた。 「だって、今もの凄く良い雰囲気だったでしょう!?」 「だから落ち着いてくださいって!」 怒りやら嫉妬やら負の感情で、アカツキは完全に我を失っていた。 「とにかく、見つかったら面倒だから、二人とも静かにしてくれよ・・・」 「『女の嫉妬は地獄の業火』、って言うでしょ。諦めなさいな」 頭を抱える八雲に追い打ちをかけるミコト。シラヌイは彼の気持ちが何となく判る気がした。 お天道様が南のど真ん中を通過する頃、イルカショーを見終えた二人は外のベンチで休憩を取っていた。 「えっと・・・・・・由佳里、今何時だ?腹減っちまった・・・」 「丁度十二時半ですね。実はお弁当、作って来たんですよ。先輩もどうですか?」 そう言うと由佳里は自分のバッグからゆうに五人分は有りそうな重箱を取り出したが、空腹感が既にピーク(優一の体はトコトン燃費が悪い)に達していた優一からしてみれば好都合だった。 「いよっしゃ。戴くとするかな」 「あhfhrkfじゃいおええかm!!」 「だから!いい加減にしてください!!」 一方、100メートルほど離れた植え込みの影では段々と手に負えなくなってきたアカツキをシラヌイが必死に止めようとしていた。 「手作り弁当とは・・・・やるな・・・・」 「同感」 「まさか、まさかまさかまさか、『君も食べちゃいたいよ』みたいな展開に・・・」 「「なるわけあるか!!」」 二人に気づかれない最大限の音量で突っ込むミコトとシラヌイ。いつもの敬語は何処へやら・・・。 「はふぁー」 ため息をつく八雲、辟易するのも無理は無いだろう。元来彼は他人の行動や言動を疑うことがない。よく言えば正直者、悪く言えば早とちり仕勝ちな人物だからだ。 「兎に角、二人とも後で黒崎に謝っとけよ」 気を取り直して八雲はアカツキとシラヌイに忠告すると、シラヌイは沈黙を持って了解としたが、アカツキから拒否の言葉が飛び出した。 「・・・・・・・・」 「嫌です!」 「へっ?」 「だって、私たちに相談せずに勝手に由佳里さんと出かけちゃったんですよ!後を付けない理由はありません!」 『私があの時シラを切っていればこんな事には・・・!』 内心、「しまった」と思うシラヌイ。自分の所為で優一に怪我をさせてしまったことに。 「兎にも角にも、ランチが済んだら・・・。否!今すぐにでも突撃です!!」 「あ、ちょっと!お姉様!!」 時既に遅し。どこにしまっていたのか、完全武装でアカツキは二人の元へ突貫していた。 「うん?ってえぇえ!?アカツキ!?なんでここに!?」 「マスタァアア!!覚悟ーーーー!!!」 「待て!!話せば判る!!」 「問答無用!!話す必要はありません!!!」 まるで何時ぞやに起きたクーデターを彷彿とさせるやり取りを交わしながら、数分ほど、一人と一体の一方的なドッグファイトが続いた。 ドッグファイトが終わって、悠一は肩で息をしながらアカツキ達に説明していた。 「ぜぇはっ、ぜぇはっ。だから、由佳里に誘われたって、言ってンだろ・・・!」 「だからと言って、隠し事をしていたことには変わらないじゃないですか!」 「あの・・・ごめんなさい、アカツキちゃん。私が、先輩を誘わなければ・・・・」 「そんな!由佳里さんが謝る事じゃ・・・。それに、悪いのはそれに鼻を伸ばして乗っかったマスターの方ですよ」 「だから、黙っていたのは悪かったって言ってるだろうが・・・」 「まあ、その位で良いんじゃないかな?彼にも事情が有ったって事で」 優一は内心「有り難い」と思ってしまった。八雲が間に入らなければ、延々と続いたであろう循環を止めてくれたことに。 「それはともかくとしておいて、久しぶりだな御名上。三年ぶりか?」 「ああ、二日前イギリスからね。本物のタワーブリッジはデカかった・・・」 「ミコトも連れているってことは・・・」 「そう!向こうでも、いや向こうだけでなく世界中で武装神姫は大人気さ!良い修行になったよ。・・・・・ヨーロッパチャンピオンには返り討ちにされたけど・・・」 「あれは別格だろ・・・。ともかく、今度一戦どうだ?留学に出るときは全然だったお前の腕前、どの程度か見たくなった」 「良いねぇ、それ。じゃあ、都合が付いたらすぐにでも連絡するよ」 「あいよ、またな。さてと、俺らも帰るとするかな?」 「マスター、まだ話は終わっていませんよ?」 「そ、そうだったな。はは・・・ははははは」 その後、優一が家路につくのは日も暮れかける時刻だったそうな。 その日の夜、優一達が寝静まった頃合いを見計らって、一つの影がムックリと起き上がると窓を開け、夜空へと飛び立って行った・・・。 第壱拾七話へ続く とっぷに戻る
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前を見た少女と、煌めく神の姫達(その二) 第四節:真心 楽しかった夕餉も終わり、私達は電車で次の場所へと向かった。そこは、 冬のお台場である。バレンタインには相当早い為か、夜と言ってもさほど カップルの数は多くない。私達の邪魔をされないという意味では、上等! 「とりあえず、観覧車にでも乗るか?街の夜景を見るのも、いいだろう」 「はいっ!あたし達も、こんな所に来るのは初めてですから緊張します」 「……多分それは、マイスターも同じなんだよ?だって頬が、紅いから」 「マイスターも来た事無かったの?大丈夫かしら……でも付いていくわ」 「折角のデートですから、デートコースはマイスターにお任せですの♪」 民放キー局が遠くないこの場所にあるのは、湾岸地区の夜景を楽しむには 最適と、午前中に買い求めた雑誌の記事で書かれていた大観覧車である。 なるほど……目の前にしてみれば、小さな私の躯にはかなり大きい。更に 躯の小さな神姫達ともなれば、天を突く程の巨大な風車なのかもしれん。 「……ふむ、どうだ。これに乗って、今から暫く皆に話をしたいのだが」 「う、うん。良いわよ……アタシには何がどうとか、まだ分からないし」 「きっと東京の夜景が、煌めく無数の宝石みたいに映るはずですの~♪」 「楽しみ、かな。さぁ、マイスター……行こう?邪魔のされない領域に」 「どんな時間が過ごせるのか、楽しみですね……ええと、大人一枚です」 訝しむ受付嬢に“大人一枚”と復唱して、私達はゴンドラへと乗り込む。 デートスポットに一人で来る、こんな外見の私を不審に思うのも当然か。 だが無闇にそれを怒るよりも、今は大切な“妹”達との時間を尊重する! 「ほう……これが、東京の夜景か。どうだ皆、自分達が住まう街の灯は」 「うん、綺麗!凄く綺麗よ……世界がこんなに輝いてるのに、アタシっ」 「それ以上は言いっこ無し。エルナちゃんも、この光景を楽しむんだよ」 「そうですよ。ほらアレ見て下さい!東京タワーですよ、東京タワー!」 「夜空の星はちょっと見辛くても、夜の灯火はまた綺麗ですの~……♪」 その自制が奏功し、皆は輝く夜の街並みに釘付けとなっている。無論私も 東京の美しさを再認識して、荒み気味の“心”が満たされるのを感じる。 陳腐とは思うが、こういう些細な事さえも……今なら大事に思えたのだ。 そして最上部へ差し掛かった辺りで、私は話を切り出してみる事とした。 「……さてと、まずは今日の修理で何をしたか。それを告げねばならん」 「修理、ですか?あたし達は全身のモーターと、電装機器が不調で……」 「とても立ってられなくて、セーフティが起動したんだよ。大丈夫かな」 「有無。それらの交換・修理は無論だが、CSCへの負荷が大きかった」 正直、今告げて良いかは悩んでいた。だが、この後にもっと重大な告白を せねばならん以上は、この程度なら『大事の前の小事』と言えるだろう。 私は、少し不安げに見つめる四人を膝に乗せて“治療”の内容を告げる。 「そこで損耗が軽微な“プロト・クリスタル”の情報を利用したそうだ」 「利用?それって、データの補強に別のCSCを用いたって事ですの?」 「そうだ。現行型CSCの論理ダメージは、そうして修復したらしいぞ」 そして物理的な傷は、Dr.CTaが持つマイクロマシン用の技術で回復した。 その辺をどうやって直したのかは、私には分からぬが……恐らく彼女なら 後顧の憂いがない程度に“傷”を修復してくれた、そう私は信じている。 「そしてエルナ。お前の“CSC”も、同様の方法で修復したと聞いた」 「えッ!?ちょっと、CSCって……アタシにそんなのが入ってたの?」 「有無。当然、現行型CSCではない。もう一つの“プロトタイプ”だ」 「じゃあ……これでエルナちゃんは、正真正銘“神姫”になれたのかな」 「更に言えば、本当の意味であたし達の“妹”にもなりましたね……♪」 それはロッテのCSCが正式に認可される程度に、CSCと酷似した珠。 神姫の試作品が源流ならば、それも必然だったのだろうが……エルナに、 “心”が宿るのを拒む者が居なかったのは、これで確かとなったのだッ! 「やっぱりエルナちゃんは、愛されてましたの。そしてこれからもっ♪」 「う、うん……アタシにも“心”……“真心”が、宿ったのかしら?」 「無論だろう。四人とも、各々の“真心”を得て蘇ったのだ。大丈夫!」 恐らく同じ修理法は何度も使えぬだろう。それだけの“離れ業”なのだ。 だが、Dr.CTaがそうして皆を蘇らせた事は……私達にとって特別な意味を 持つだろう。“魂”が神姫にあるならば、その繋がりがより強固な物へと 進化したという事が、言えるのだからな。私にとっても、誇らしい事だ! 「そっか……じゃあ、アタシもお姉ちゃん達の大切な“妹”になれる?」 「勿論ですの!エルナちゃんは、これからもずっと大切な存在ですの♪」 「ボクらも……アルマお姉ちゃんも、ロッテお姉ちゃんも……なのかな」 「それは、マイスターの“告白”を聞けば分かると思いますよ……うん」 「そうだな。では今こそ、言おうではないか……っと!?ちょっと待て」 そして“様態”の説明が一区切り付いた所で、皆の視線は私へと集まる。 そう、いよいよ告げねばならぬ時が来た……と思ったのだが、見ると外の 風景は、輝く夜景から元居たビルの谷間へと戻ってきていた。そう、今は 観覧車の中……一周してしまえば、降りなければならない。迂闊だった。 「う、うぅむ……時間が来てしまった。場所を変えて、そこで話そうか」 「それがいいですの。ちょっといい雰囲気だったのに、残念ですの……」 「ぅぅ……じゃあ何処に往きますか?あたしは何処でも大丈夫ですけど」 「やっぱり、ロマンチックな場所がいいと思うんだよ。大事な事だから」 「アタシは……胸が熱くなる感じがしてたから、助かるわ。少し怖い位」 ──────私も怖いけど、だけど……とても胸が暖かいよ。 第五節:約束 場所の選定ミスによって、告げるタイミングを逃した私達。だが、ここで 諦めるつもりはない。という訳で、観覧車を後にした私達は海浜公園へと やってきた。潮騒の音が、優しく夜闇を揺らす……そんな静かな場所だ。 だが、どうも仕切直しとなった空気は重苦しい。何から話せばいい……? 「……ところでさ、マイスター。なんでアタシの名は“エルナ”なの?」 「む。いきなりだな、エルナや……そうか、名前の由来が知りたいのか」 「そうみたいなんだよ。ボクは、お店の名前からもらったんだけど……」 「あたしもですね。“ALChemist”から一文字もらってます……あっ!」 そんな雰囲気を撃ち払ったのは、エルナだった。そう、“妹”の名前には しっかりと意味がある。店名から、ドイツ人女性の名を導き出したのだ。 “Alma”と“Lotte”、そして“Clara”に“Erna”。不思議か?だがッ! 「そう。エルナの“r”と“n”は、“m”を分解して捻り出した物だ」 「つまり“錬金術師”の名を冠する大切な神姫、って事になりますの♪」 「アタシも、同じ存在なのね……じゃあ残りの字は、どうするのかしら」 私の考えを聞いて、エルナは嬉しそうに……しかし、少しだけ不安そうに 私を見つめる。彼女の純粋な問いに対する答えは、私の胸にある。それは 少し照れくさい言葉となるが、“告白”の切っ掛けとしては上等だろう。 「まず、“ist”は“Christiane”……クリスティアーネから取った物」 「……なら残りの“h”はどうしますの?それが、気になりますの……」 「そうだな。“Herz”……ドイツ語で、“心”や心臓を意味する単語だ」 『え……?』 そうだ。皆の中心には“心”が……私の“心”がある。今から告げるのは それを確固たる物とする為の、誓いの儀式だ。言葉は、選ばねばならん。 「エルナ。新しく私達の“妹”となる、気高き紫の姫君よ」 「な、何?……マイスター、何でもいいわ。話して……」 「お前を解き放った以上は、終生まで側にいてもらうぞ?」 「これ……首飾り?お姉ちゃん達と、お揃いの……?」 私は、答えを待たずポケットから一つのペンダントを取り出して、彼女に 付けてやった。そう、私の……歩姉さんのペンダントを元に作り上げた、 五人お揃いのペンダント。これがエルナに与える、“約束の翼”である。 何れは此処に神姫バトルの階級章を嵌め込む。そうして完成する逸品だ! 「……クララや、静かなる翠の姫君よ」 「何、かな?マイスター……」 「智恵と、秘められた優しさ。これからも大事にしてほしい」 「……大事に?……それは……」 クララは答えを紡ぎ出そうと俯き何かを思うが、私は更に皆へと告げる。 四人もいるのだ、一々区切るよりは一遍に告げてしまった方が楽だろう? 「アルマよ。陽の如き、明るき紅の姫君」 「は、はいっ!?」 「お前の暖かさと“姉”としての矜持は、皆を支えていくだろうな」 「ぁ……支えるだけじゃ、ダメなんです……その……」 アルマは反論しようとしたが、そこで一端言葉を句切った。そのまま私は 残った一人へと、そして皆へと想いを告げる事とする。血が沸騰しそうな 感覚を堪えて、私は言葉を絞り出す。最早、隠す事は出来ないのだから。 「……そしてロッテ、澄み切った蒼の姫君よ」 「はいですの♪」 「お前は、純粋な“心”で私の……皆の力となった」 「……そう言ってもらえると、光栄ですのっ」 「そして、皆……今だけは、私の『本当の言葉』を伝えたい」 『はい……』 それは、遠い昔に棄ててきた私の“弱さ”。しかし、完全に捨て去る上で 彼女らに、それを伝えないといけなかった……ううん、伝えないとダメ。 私の弱い所も強い所も、全部……何もかも皆に見せないといけないから。 「コホン……皆、とても大切。『好き』とか『愛してる』だけじゃない」 「ま、マイスター……?」 「もっともっと純粋な『大切にしたい』って想いが、私にはあるんだよ」 「……マイスター、その口調……」 「でも、それを一言にしちゃうなら……やっぱりこうなっちゃうかな?」 「ずっと前、お店を立ち上げるより前の……弱かった頃の言葉ですの」 「だから、私は言うよ。アルマ、ロッテ。クララ、エルナ……四人とも」 「う、うん……何?」 そう……これは私が弱さを棄てる前に、歩お姉ちゃんと話していた言葉。 今この時は、この言葉で語りたい……だって、止められない想いだもの。 それはたった一言。陳腐でも、飾らなくてもいい。偽れない大切な言葉。 「“大好き”だよ……皆」 『あ……!?』 その言葉と共に、私は皆の小さな……とても小さな唇と、優しく触れる。 堅い殻の躯だけど、それでも“心”はとても甘く切なくて……暖かいの。 だけど、それを認識したから……私はやっぱり、素直になれないのだな。 「……は、はは。今更生き様は換えられぬが、雰囲気もあるしな?」 「マイスター……」 「だから今だけは、あの言葉で想いを……な、何だクララや?」 そう言い、照れながらも調子を戻した私の掌に乗るのは、クララだった。 彼女は、心なしか潤んだ様に映る“琥珀色の瞳”で、私を見つめている。 「異形を抱えて消えかかったボクを救ってくれたのは、貴女なんだよ」 「……う、うむ。そうだったな」 「その時から、ボクの“心”にはずっと貴女がいたもん」 「クララ……?」 「だから、ボクも言うよ……掛け替えのない大切な人に“大好き”って」 「んむ……ん、ぷは。クララ……むぐぅ!?」 そして私の唇に押しつけ返される、クララの小さな唇。そっと抱きしめる 私の手中で、彼女は身を退き……アルマへと、身を譲った。彼女もまた、 私の唇を奪い……そして、泣きそうな儚い笑顔を浮かべつつ言ったのだ。 「ん、ん……あ、アルマっ?」 「支えるだけじゃダメです。あたしも、皆を愛して……愛されたいから」 「アルマ、お前……」 「だって貴女の“心”が、あたしを暖かくしてくれたから……だから」 「……有り難うな、本当に」 「いいんです、一生お返しするんですから。“大好き”な人に……ね?」 涙が零れる。だが、皆の思いが籠もった“琥珀色の瞳”を見逃すまいと、 私はずっと皆を抱きしめながら、その想いに応えていくのだ。次に、私の 前に現れたのはエルナ。彼女は、頬を真っ赤に染めながら上目で告げた。 「……正直ね?まだ、何もかも信じ切れたわけじゃないの」 「エルナ……それは、そうだろうな」 「だけど、貴女達なら……お姉ちゃん達と貴女なら、信じてみたいわ」 「……そうか」 「“命”と“心”を掛けて救ってくれた皆を、“大好き”って言いたい」 「──────ッ!」 「それが、アタシの“真心”。素直じゃないけど、赦してね?……んっ」 「ん、む……んぅぅ!?」 エルナの告白と共に、私の唇は三度……そして四度塞がれる。最後に私へ “純潔”を捧げたのは……他ならぬロッテだった。彼女は、とても明るく 私に微笑みかけて、そして紅潮する顔をそっと抱きしめてきたのだ……。 「人と神姫では、歩いていける時間が違いますの。永遠は無理です」 「ロ、ッテ……?」 「だけど、全ての時間を“大好き”な人と共に使いたいですの♪」 「あ……ロッテ、皆……ッ!!」 「だって、本当に“大好き”なんですから……貴女の事が」 「……ぐす、みんなぁ……ッ」 「だから万一人間の恋人さんが出来たって、問題ないですの~♪」 「ッ……ばかぁ、っ!」 ロッテの“告白”を受けて、四人が私を見上げる。堪らなく、愛おしい。 私は優しく抱きしめた。小さな殻の躯に詰まっているのは“空”ではなく 純粋で穢れのない“心”。その眩しさで、また私の視界は潤んでしまう。 私は、ずっと……愛しい“妹”達を抱きしめて、歓喜の涙を流していた。 彼女らも、その想いは同じだろう……それがまた嬉しくて、微笑むのだ。 「ぐす……私の“弱さ”を見せたのはお前達だけだ、そして……だなっ」 「今後“弱さ”を見せる事は多分無いだろう……って言いたいのかな?」 「それでも大丈夫ですよ。今の……マイスターの“心”は、皆の中に!」 「ちゃんと刻まれたわ……大丈夫、忘れない。貴女の全てと共に歩むの」 「だから、もう一回だけ。皆で“告白”しますの♪いっせーのーせっ!」 『マイスター……“大好き”ですッ!!!!』 ──────私も、“大好き”だよ……。 ──武装神姫……小さな戦乙女。人と機械の垣根を越えて、そんな君達に 出会えた喜びは、ずっと朽ち果てない宝物だよ……小さな私の“妹”達。 皆で、ずっと一緒に歩んでいこうね。それが、皆の“願い”だから──。 妄想神姫:本編 / Fin. メインメニューへ戻る
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そのじゅういち「勝ち負けよりも価値ある性質の立ち合い」 僕が武装神姫のオーナーだという事が学校で噂になった。 原因はもちろんあの女――モトカノをあの女呼ばわりもアレだけど――があること無い事吹聴してまわっている為だけど、それに伴って僕にとっては懐かしい事すら噂になっていた。 あんまり僕にとって愉快じゃない事なんで、明言は避けとくけど、まぁ、若気の――といっても今でも若輩なんだけど――至りってヤツで。 ついでと言っちゃついでなんだけど、僕に美人の彼女がいると言う噂までおまけに広まったもんだから、ここの所、どーにも学校が居心地よくない。 人の噂も七十五日とは言うけど、二ヵ月半もこんな噂に悩まされ続けるのかと考えると、自然と憂鬱になるというもの。 というか、年明けちゃうし。 更に更に、この噂のせいで、僕は今年一杯の部活動の禁止を顧問に言い渡された。 曰く、「精神修行であるこの場に、たかだか一学年の間とは言え他のものの集中を邪魔する原因を置いておくわけにいかん」とか。「お前の所為ではないのだが、スマンな」とも言ってくれはしたけど、僕の意思は無視ですか? でも、僕としてもそれはありがたい事でもなくもなく。 ……やっぱりどうしたって学校が居心地悪いわけだから、それこそ放課後はさっさと学校から逃げ出したい訳だから。 かと言って、毎日開き直って神姫バトルを繰り返すだけのゆとりがあるわけでも無いので、学校には秘密で短期バイトでも探そうかとも思いながら、それでも僕は1時間20分電車に揺られて、平日だって言うのにエルゴまで来ていたりする。 ……バカだなぁ、僕。 今日はせっかく学校が早く引けたのに、なんだかチョット時間無駄にしてる様な。 何で休日にしなかったのか。バカだなぁ、僕。 「とはいっても先立つものも無いしなぁ……」 「ですぅ~」 懐のさびしさに僕とティキは思わず同じタイミングでため息を吐く。 なんで金欠だってのにわざわざ1時間20分強の時間を費やしてるのか。つくづくバカだなぁ、僕。 そんなに自分のことをバカだバカだといってても凹むだけなんで、気を取り直して僕は店内へと入った。 どうでもいいけど、神姫もため息って吐くもんなんだな。……ホントにどうでもいいことだけど。 「「「いらっしゃいませ」」」 店長とは明らかに違う、女の人の声が三つ、同時に発せられる。 一つはこの店のシンボル、『ウサ大明神様』ことジェニーさん。他の二人の声は、聞いたことの無い声。 と言っても、僕はこの店に来るのがまだ二度目なので、バイトの人だとしても知らなくて当然なんだけど。 一人は接客をしている女の子。僕と同じか、一つ二つ上くらい。高校生なのは見ただけで丸わかり。だって、制服着てるし。 もう一人は神姫。TYPE 吼凛。なんだか商品モデルをやってる風。うん。このハウリン、接客している彼女の神姫みたいだ。一応、距離感でそれくらいはわかる。 でもこのハウリンがアノ有名な魔女っ子神姫だなんてその時の僕には知る良しも無く。後々に思えばすごくもったいない。……写真でも一緒に取れたら式部に自慢できたのに! 「こんにちは、ジェニーさん。店長さんいますか?」 レジで店番をしているジェニーさんに話しかける僕。この前来た時、思わず『ウサ大明神様』と呼んでしまったが、彼女はどうやらあまりそういう風に呼んでもらいたくないらしい。 「お久しぶりですね。今、二階に居ますよ」 ジェニーさんはまだ二回目の僕の事を覚えてくれていたらしい。……神姫なんだから当然と言ってしまえば当然だけど、うれしかったりする。 「二階……筐体コーナーですね。でも、あれ? なんか随分盛り上がってますねぇ?」 事実、二階からどよめきとも喚声ともつかない一種異様な音がもれ響いている。 「チョットしたハプニングと言うか、イベントと言うか……」 ジェニーさんは苦笑を浮かべながらなんとも歯切れの悪い事を言う。 「? とにかく行ってみるですよぉ♪」 ティキは好奇心が抑えきれないと言う風にウズウズしている。 僕としてもそこら辺はティキと同じ気持ちなので、ジェニーさんにお礼を言うと、二階へと向かった。 二階は異様な熱気に包まれていた。 3on3の、所謂チーム戦。それがただのチーム戦なら、こんなにも盛り上がりを見せる事は無い。 まず参加者が凄まじい。 セカンドリーグで名を馳せる『D-コマンダー』と言えば、知らないやつはそう居ない。かくいう僕も、実際そのバトルを見た事は無いが、チーム戦におけるファースト昇進の壁と言われる風評を知らないわけが無い。 片や相手チーム。オーナーブースに二人いる変則マッチだけど、神姫はそれでも三姫。このメンバーもすごい。 『隻眼の悪魔』・『神速の紅眼』・『紅き眼の狙撃手』・『紅の剣客』・『朝霧の紅眼』……などと幾つもの二つ名を持ちながら結局固体名そのままの名で呼ばれることの多い隻眼のストラーフ、十兵衛。 二つ名を持たないまでもその戦闘スタイルから『ケット・シー』と揶揄される事も多いマオチャオ、ねここ。 最後の一姫はさすがにその手の情報に疎い僕だから名前まではわからないけど、それでもそのハウリンの戦闘スキルは、見ただけでその高さを窺い知れる。 「おい、ティキ…… 僕達、とんでもない時にとんでもないタイミングで来たみたいだ……」 こんなカード、早々見られるもんじゃない。と言うか、絶対お目にかかれない。 今、この場所以外のところでは。 「全てを吸収なんて、できるはず無いけど、それでも絶対に参考になるから、見逃しちゃダメだ」 「……ハイです!」 いつもにも増して真剣な僕とティキ。僕らはそのバトルに釘付けになった。 中でもやはり注目しちゃうのは、同じマオチャオであるねここ嬢だろう。基本は同じ特性を持っているわけだから、一番参考にしやすいって言うのもあるのだけれど。 迫力のバトルは終わりを告げ、僕は今サブモニターでのエキシビションとして流れてるさっきまでの試合を眺めていた。 周りはそのときの熱気のままに、バトルが盛り上がっているけど、僕はそのあまりのレベルの高さに、試合が終了したと同時に脱力してしまっていた。 格好悪いけど、腰が抜けたんだ。 そんな僕の頭の上で、上手にバランスを取って座っているティキも、その眼はサブモニターを注視していた。 エキシビションのねここ嬢を見ながら、僕は誰に向けるわけでもなく小声で言う。 「すっげー、すっげー、すっげー。 あんな挙動、参考になんないよ。あんな、『幻惑する流星』のごとき、『切り裂く雷神』のごとき挙動なんて」 多分僕は放心状態で、ティキにしてもきっと衝撃的な体験で。 でもそれでも。 きっとティキもそう思っているんだろうけど。 その地平に憬れて。 そこに立てない自身が悔しくて。 それでもそこに向かう決意を固めてる。 三回目の試合映像を見終えると、僕ら二人はお互いなにも言わず、誰にも何も告げず、大いに賑わっている店内から出て行った。 帰りの電車の中。 僕とティキ――ティキは僕のジャケットの内ポケットの中――は、バトルの余韻と、不甲斐ない自分達に向けられた悔しさに当てられたままに電車に揺られている。 「あっ!」 内ポケットでティキが声を発した。 何事かと思いコッソリとティキを覗く。ポケットの中のティキは何処か驚いたような顔をして―― 「あっ!」 そして僕も思い出す。 店長さんに、相談しようと思ってわざわざエルゴまでやって来た事を。 終える / もどる / つづく!
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朝方の騒ぎも一段落し、浩子サンは渡した原稿持って出版社へ戻った。 にゃー供は浩子サンが連れて行った。なんでも校正だの添削だの、下手なバイト使うよりも優秀なんだそうだ。 …その内バイト代請求しちゃろか。 パットは二度寝。 …食うか寝てるか迷ってるかしかしとらんなあいつは。 神姫ショップをやってる友人曰く、まともに戦えばそこそこのランク狙えるそうだが本当かね? ジュリの手により砲台型神姫からラーメン型神姫に簡易改造されたアイリは、おそらく洗面所で顔の落書きを落としていると思われる。 …油性っぽかったからなー。落ちるのかアレ。 そのジュリはと言えば…どうしたのかやたら静かだ。 さっきアイリにぶっとばされたからその辺で伸びてるのか。 まぁなんだかんだで意味も無く頑丈だし、問題はないだろう。 そして俺はと言えば、なんとなく目が冴えてしまい、以前友人に貰ったビデオを観ている。 数年前の、神姫バトルセカンドリーグの決勝戦の記録映像。 そこには鬣をなびかせたアイツが。 『ジュリ』になる前のとあるサムライが、トロフィーを掲げて誇らしげに笑っていた。 「……そういやアイツ。最近ようやくこんな風に笑うようになったよな……」 それはほんの1年前。その頃を思い出しながら、俺は微睡みの中に落ちていった。 --- 今でも覚えている。 そいつを最初に見たのは、夕日に染まる河原だった。 夕日をバックに、ライオンの鬣みたいな髪をした女サムライが素振りをしている。 ソレが身長15センチほどの人形だと気付くのに若干の時間を要した。それ程の存在感があった。 紅い光に照らされた小さなサムライは、陳腐な表現だが、俺の目にはとても美しく、眩しく見えた。 ……そん時のことは誰にも言ってない。つか、恥ずかしくて言えません。 そんでまぁ、しばらくぼーっと飽きもせず眺めていると、ふと妙なことに気付いた。 (下手糞だな) そう。最初の内こそ気迫に圧倒されて気付かなかったが、下手なのだ。 チャンバラと言えば、精々時代劇くらいしか知らない素人の俺が見て解るほど。 なんというか「ただ棒を振っているだけ」というか、やる気の無い剣道部員が惰性で竹刀振ってるような。そんな感じで。 だというのに、当人の顔は真剣そのもの。よくよく思い返しても珍妙な光景ではあった。 一時間ほど見ていても変化がなかったので、見かねて声を掛けたところ…… 「うるせぇなぁギャラリーなら黙って見てろ。軽そうな頭カチ割るぞ三下。」 ……まぁ、第一印象は壊滅的に悪かったな。 --- その日の夜、原稿回収を口実に飯を食いに来た浩子サンに聞いたところ、そいつは『武装神姫』の侍型なのだと教えてもらった。 …高校の頃の友人がショップを始めたとか手紙で連絡してきたっけな。そういえば。 「……んで、その『ぶそーしんき』っつーのは、そのなんだ、肩に乗ってるグロちっこいのの仲間か?」 「そーよー。可愛いでしょ?」 んふふー♪とか笑いながら、ツギハギだらけの青白い人形に頬擦りをする浩子サン。 その不健康な肌の人形も、くすぐったそうに頬擦りを返していた。 …あとで聞いた話だが、そん時浩子サンが連れていたのは一部で『幻の神姫』と呼ばれたゾンビ型。 ビジュアル面で恐ろしく一般受けしなかったために、最初期の流通分を除いて再販されなかったとかなんとか。 嘘か本当か知らんが、一部の好事家には垂涎の的らしい。 「ほーらモモコ。ご挨拶♪」 『モモコ』と呼ばれたゾンビ型神姫は、サイケに塗り分けられた頭を小刻みに揺らしつつ、カカカカカ…とアメリカンクラッカーでも鳴らしてるような音を立てた。 ……それが笑っているのだと気付くのに数分かかった。 「……か、可愛い、か……?」 …正直、俺にはよく解らなかった。 --- それから数日。夕方になると、俺は川原で下手糞な素振りを繰り返すサムライをぼーっと眺めるのが日課になっていた。 サムライの方もこちらに気付いているようで、しかし、特に話しかけてくることもなかった。 --- 「なぁ浩子サン、神姫ってのは電池かなんかで動いてんのか?」 「ん?うん。詳しいところは私もよく知らないんだけどね。ちょっと充電しなくてもケータイくらいはもつよ。」 …とすると、どっかで充電とかしてんのかな。あいつ。 「……ねぇ慎くん、その子さぁ、マスターとかそばにいなかった?」 「マスター?…所有者ってこと?……そういやそれっぽいのは見たことねぇなぁ。日が暮れたらさっさとどっか消えちまうし。」 「うーん…そっか…あのね?」 浩子サンが言うには、マスターのいない野良神姫ってのも意外に多く、所謂野良動物みたくロクな目に遭わんのだとか。 「…明日あたり聞いてみるか」 --- 更に翌日。 その日のサムライはたまたま休憩しているのか、小さな石に座っていた。 俺もちょっと離れたところに座る。 しばらくぼんやりと眺めていたが、動く気配がないので話しかけてみた。 「なぁサムライ、今日は素振りしねぇのかよ」 「ノらねぇ」 見事なまでに一刀両断。 結局彼女はなんもしないで消えていったので、俺もそのまま帰った。 しかし、それからはちょくちょく会話するようになった。 実は向こうもキッカケを待っていたのかも知れん…てのは自意識過剰なんだろうか。 …実際大したことは話していない。その日の天気とか何食ったかとかどこに行ったとか、そんなことだ。 あとは黙って夕日を眺めたりとかな。 傍から見ればロボット人形相手に世間話ってのも異様な光景だと思うが、不思議と俺自身は変に感じなかった。 多分、対等に話せる相手があんまいなかったってのもあるんだろう。 俺はあえてサムライのことは聞かなかったし、彼女も特に俺のことを聞かなかった。 互いの呼び方にしてもそうだ。 「…しっかし手前ぇ毎日毎日来やがって。そんなヒマあんなら働けよおっさん。」 彼女は俺を『おっさん』と呼び、俺は俺で『サムライ』と呼ぶ。 何故だか解らんが、お互い名乗りもしなかった。 「あんなぁ…ちったぁ息抜きくらいさせろよ。日がな一日埋まらねぇ原稿用紙とにらめっこしてんだこっちは。たまに外出ねぇとマジで腐っちまわ」 ここでサムライは、驚いたようにこっちを見た。 お、意外に可愛い…ってなに言ってんだ俺。 「おっさんアレか。物書きか。」 「まぁそうだ。大して売れてねぇけどな。」 「ふぅン…」 そして、また二人でぼーっと夕日を眺める。 しばらくして、サムライが言った。 「……実はアタシのマスターも元は物書きでな。時代小説とか好きな人だったよ。」 「……そーかい。」 ここで俺は、一瞬迷った。本当に迷った。 聞くべきか聞かざるべきか。 でもな。それでもやっぱり…… 「なぁ……前から気になってたんだけどな。」 「ん?」 「……お前さんのマスターとやらはどうしたんだ。」 サムライが息を呑んだ…ように思えた。 ……そして沈黙。 いいかげん静寂に耐えられず冗談だと言おうとしたら。 サムライが音もなく倒れていた。 SIDE-Bへ
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第5話「白子とご主人様の戦闘準備」 「ご主人様にお願いがあります」 三人でのんびりくつろいでいたとき、白子が妙にかしこまって俺に声をかけた 「ん? なんだ? 改まって」 「実は私…。バトルに、参加してみたいんです!」 「ぎゃにぃい!?」 「し、白ちゃん!?」 まさか、こんな事を言うとは… 「黒ちゃんが毎日うなされてて、私たちにはどうすればいいのか分からない…」 「それは俺だって考えている。でも…」 「そんな、だって…。白ちゃんまで怖い目にあうこと無い!」 あわてて止めようとする俺達二人を白子はかぶりを振って静止する 「一杯、考えたんです。…私も、一度戦場に行ってみたら…何か分かるかも…」 白子が一瞬うつむくが、すぐに凛と顔を上げ 「もう、決めたんです」 その表情を見て、俺も黒子も、白子の説得は不可能だと察した しばし沈黙が流れ、やがて意を決したように 「ボクも、出る!」 「黒ちゃん!?」 「ボクが原因なのに、白ちゃんばっかりにやらせることなんてできない!」 俺は頭痛を感じたが、戦場の恐ろしさに立ち向かうことで黒子のトラウマも軽減されるかもしれない そう思えば、俺に出来ることはたくさんある 「タッグマッチの部門もある。二人ペアで参加するのがいいだろう」 「ご主人様…!」 白子がとがめるような声を出す。過保護な部分がある彼女は黒子を止めるべきだと考えているんだろう しかし、俺はそれを黙殺し、 「それと、二人に、新しい名前をつけてあげよう」 「ご主人様?」 「え? なんで?」 「せっかく試合に出ると決めたんだ。それなのに白子黒子じゃあまりにおざなりだろ?」 「あ、やっぱり自覚あったんですね…」 「じゃあ、ご主人様はボクが試合に出るのに賛成してくれるんだ!」 「ああ、いずれこういう日がくるかもと思って考えていた名前があるんだが、…マリンとアニタってのでどうだ? 白子がマリンで、黒子がアニタだ」 「マリンと、アニタ…ですか」 「いい名前です! 気に入りました!」 「そうか、気に入ってくれたか…。なら、お前達が史上最強の神姫として君臨できるような武装も用意せねばならんな…」 「は?」 「えっと?」 「クククク、待っていろ二人とも、俺が持つすべての技術を結集して究極の装備を開発して見せるぞ! フフフフフ、ハァーッハッハッハッハッ!」 「ご主人様!?」 「き、気を確かにしてください!」 なんか二人が心配していたが、俺は体中にやる気とアイデアが満ち溢れるのを感じていた ―――次の日の夜 「う~、ご主人様遅い…」 いつに無く落ち着きが無い白ちゃん…じゃなかったマリンちゃん 確かにちょっと遅いけど、まだ電車一つ分くらいしか遅れてない 「マリンちゃん…探しにいっちゃだめだよ」 ボクは面白くなって、ちょっと意地悪な声を出しちゃう それにマリンちゃんがぷぅ、と頬を膨らましてちょっと怒ったような声を出そうとした瞬間 バターーン! という、玄関を蹴り開けるような音が響き、 「ただいまぁ!!」 いつもと比べて異様にパワフルなご主人様の声が響く 昨日はひたすら紙にボクたち用武装ユニットの設計図を書きなぐって一晩明かし、 始発が動き始める時間には「早速上司を説得だ!」とか叫んで家を飛び出していったので非常に不安だったけど、一日中ハイテンションは続いたようだ 「マリン! アニタ! 所長を説得して、スポンサー契約を取り付けたぞ! これでうちの研究所が総力を上げてお前たちのバックアップを行う体制になった!」 急な展開に思わず呆れるボク。マリンちゃんは一瞬ふらついたが、すぐに気を取り直してご主人様に噛み付く 「何でいきなりそこまで話が大きくなってるんですか!?」 そんな言葉をご主人様は全く無視してまくし立てる 「二人のための武装も、マリンのは4日後、アニタのも8日でロールアウト予定だ」 完全新規設計の武装ユニットをたった4日で…。でも 「ボクのは後なの?」 「ああ、それだけでなく、マリンのはサード基準、アニタのはセカンド基準の出力になっているから、セカンド昇格まではマリン一人で戦ってもらう」 「ど、どうしてですか?」 「マリンちゃんだけ戦わせるなんて…!?」 「厳しいことだが、これはスポンサー契約の条件の一つだからどうにもならんことだ。ついでに3ヶ月以内にセカンドに昇格できなければスポンサー契約は打ち切られる」 「たったの?」 「一人でやるのに、それは短いよ!」 あまりに無茶な条件にボクは大声を出してしまう 「大丈夫、サードからセカンドに上がった最短レコードは1週間だ。まあ、シングルで、八百長試合の噂が耐えない奴だったが…。それに比べれば競技人口の少ないタッグなら3ヶ月くらいでいける、かもしれない」 「でも一人でなんて!」 「まって、アニタちゃん…。いいの、私やる。ご主人様が出来るって言ってるんだから、それを信じる」 「マリンちゃん…? だって戦うのって危ないんだよ! 怖いんだよ!」 「わかってる。でも、怖いものから逃げちゃ駄目なの。アニタちゃんもそれに立ち向かうって決めたんでしょ?」 「マリンちゃん…」 「大丈夫、サードはヴァーチャルが基本だから、危険は無い、はず」 無責任な事を言うご主人様 「ご主人様…!」 ボクは思わず咎めるような声を出してしまう。でもマリンちゃんはそれを制して 「アニタちゃん、ご主人様を信じられないの?」 「そうじゃないけど…!」 「そうだ、俺を信じろ。俺の何よりも誇れることは、技術力だ。この世の何よりもな」 そう力強く宣言するご主人様。ボクは長らく黙っていたけど 「…はい」 と頷くしかできなかった 「とりあえず、武装データは先行して完成させてきたから、これでヴァーチャルトレーニングできるぞ」 といって、押入れから訓練機を引っ張り出してくるご主人様。そんなの持ってたんですね… 「それと、これもだ。昔、知り合いの研ぎ師に遊び半分で作らせたものだが、本物の業物だ。これも信頼しろ。俺の次にな」 そういって取り出したのは二振りずつのナイフとマチェットだった。鈍く輝き、見るからに鋭そうな… 「これは…?」 「作ったのは俺じゃないが、設計自体は俺がした。製法も素材もこだわってあるから、硬度も切れ味も並じゃないぞ」 「ご主人様…、本当はボク達にバトルさせたかったの?」 「まあ、そういう気持ちも無くは無かったが、バトルにはあまり興味ないといわれて諦めていたよ」 そういって笑ったご主人様。いつも以上に生き生きしているように見えるけど気のせいだと思っておこう 「とりあえず、俺は出来る事をすべてやった。後はお前達に任せるよ」 「はーい!」 「ご期待に沿えるよう努力します!」 誤配送のときには感じなかった、ゆっくりと温まっていく高揚感。戦うのは怖いけど、ご主人様とマリンちゃんが一緒なら大丈夫 そんな気持ちがボクの心の奥底から湧き上がってくる。やっぱり、ボクも武装神姫なんだ… その夜、久しぶりに、ボクは悪夢を見なかった 続く
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敗者復活戦終了!! 第四回戦闘記録 トーナメント表 三回戦 第一試合上弦VS六花 三回戦 第二試合マリーシVSアンリ・マユ 三回戦 第三試合エクスVSTITANIA 三回戦 第四試合来希VSルゼ 準決勝 第一試合上弦VSアンリ・マユ 準決勝 第二試合エクスVSルゼ 三回戦 第一試合 上弦VS六花 HP 20 16 3632 13 16 1226 13 8 3464 4 -4 上弦Op2『ビッグバイパー』機能停止 六花、Op1『雷神』機能停止 勝者「上弦」 サラ(仮)「さて、三回戦の緒戦は防御タイプの上弦さんと、回避タイプの六花さんのバトルです」 犬丸「結果は上弦さんの勝ち。上弦さんの強さ、運のよさが際立った戦いでしたワン」 テッコ「……上弦は回避タイプにとても強い。相性の時点で六花はかなり不利だった……」 サラ(仮)「今回もハウリングサンダーが光ってました。……なんか本当に良くハウリングサンダーが出ますね……」 犬丸「上弦さんのハウリングサンダーは、オプションありだと攻撃力12点、命中値6点(!)という異様なダメージが出ますワン」 テッコ「……回避型ではまず歯が立たない」 サラ(仮)「その上で非常に頑丈でもありますし、実質HPが25点あるようなものですし……」 犬丸「これだけの耐久力を削る間、高命中、高威力の攻撃に耐えねばなりません。非常に強力な神姫だと言えそうですワン」 テッコ「……とにかく、上弦はベスト4に進出。おめでとう」 三回戦 第二試合 マリーシVSアンリ・マユ HP 18 20 4321 6 20 アンリ・マユ、A11『キュベレーアフェクション』を突破 5315 -6 19 勝者「アンリ・マユ」 サラ(仮)「ALC的に超イチオシだったマリーシさん、流石に相手が悪すぎました」 犬丸「1ターン目に今まで数々の強敵を葬り去ってきた必殺の『キュベレーアフェクション』を使用しますが、アンリ・マユさんの攻撃は難なくその防御を突破。一撃で7割近くのHPを奪われましたワン」 テッコ「……アンリ・マユの攻撃の中で、マリーシの『キュベレーアフェクション』で跳ね返せるのは僅かに一つだけ」 サラ(仮)「つまり、5/6の攻撃は10点以上のダメージと言うことですね……」 犬丸「正に破壊神と言う他無い攻撃力ですワン」 テッコ「……その攻撃が、命中値5で飛んで来る恐怖」 サラ(仮)「ちょっと勝てる気がしませんね……」 犬丸「ベスト4に進出したのも頷ける性能ですワン」 テッコ「……次は防御タイプの上弦と勝負。盾と矛、どちらが勝つか見もの……」 三回戦 第三試合 エクスVSTITANIA HP 18 25 3156 18 16 エクス、『レールガン「ロンゴミアント」』クリティカル 5333 13 9 3353 4 1 エクス、Op1『複合ブースターパック「アヴァロン」』機能停止 1154 4 -5 勝者「エクス」 サラ(仮)「このクラスの戦いになると運が大きく勝敗を分けるようです」 犬丸「今回は特にエクスさんの運の良さが勝利に繋がりましたワン」 テッコ「……命中率も良いし、『ロンゴミアント』でクリティカルも出た」 サラ(仮)「一方でTITANIAさんは、1ターン目に『チーグル』を外したのが痛いですねぇ……」 犬丸「それが命中してさえいれば勝敗が逆転していただけに無念かも知れませんワン」 テッコ「……もちろん、どちらも強いのは明白。今回は運がエクスを選んだみたい……」 サラ(仮)「ですが、エクスさんの攻撃力と回避力はこの先も活躍しそうですね」 犬丸「しかし、HP18のエクスさんが一番耐久力低いと言うのも凄い話ですワン」 テッコ「……ん。まあとにかく、ベスト4進出おめでと」 三回戦 第四試合 来希VSルゼ HP 20 20 3156 20 19 1626 20 19 6611 18 19 2551 11 17 2151 4 15 来希、逆境発動 3331 1 11 2133 -2 9 来希、特殊能力発動 4252 -9 4 ルゼ、逆境発動 勝者「ルゼ」 テッコ「……まずは来希さんのお名前を間違えていた件について謝罪を致します。ごめんなさい」 サラ(仮)「珍しく殊勝ですね、テッコさん」 犬丸「何でも、リアルの知人にそういう名前の人が居るそうですワン」 テッコ「……無理も無い話?」 サラ(仮)&犬丸「いや、ダメでしょう。それは」 サラ(仮)「では、解説に戻りますよ。三回戦の最終バトルは戦闘力の差がそのまま結果に現れた戦いでした」 犬丸「むしろ来希さんが良く喰いついたと言う感じですワン」 テッコ「……攻撃力が不足気味で、ルゼの防御に阻まれてまともなダメージが入らなかったのに、良く頑張ったと思う」 サラ(仮)「特典無しの神姫でありながら、ここまで勝ち進んだ事こそを褒めるべきでしょうね」 犬丸「そしてルゼさんは見事ベスト4進出ですワン」 テッコ「……次の相手はエクス。面白い勝負になりそう……」 準決勝 第一試合 上弦VSアンリ・マユ HP 20 20 1453 12 15 1636 12 15 4613 2 15 上弦、Op2『ビッグバイパー』機能停止 2556 2 11 3544 -8 5 アンリ・マユ、Op2『ビッグバイパー』機能停止 勝者「アンリ・マユ」 サラ(仮)「さすが準決勝!! 素晴らしいバトルでした!!」 犬丸「互いに攻撃/防御型、攻撃力でアンリ・マユさんが、防御力で上弦さんが勝るため、どちらが勝つか予測できませんでしたワン」 テッコ「……結果、勝ったのはアンリ・マユ」 サラ(仮)「アンリ・マユさんの攻撃力は上弦さんの装甲をも貫きました」 犬丸「その分、防御では劣っているので、上弦さんの攻撃も防ぎきれず、どちらもボロボロになりますワン」 テッコ「……今回も勝利に一役買っているのは『ミサイル』」 サラ(仮)「リスクもありますが、この攻撃力は非常高く、命中率も相まって実に凶悪です」 犬丸「次はいよいよ決勝戦。この『ミサイル』がどう勝敗を分けるか、見所になりそうですワン」 テッコ「……惜しくも敗れた上弦さんも、三位決定戦で頑張って欲しい」 準決勝 第二試合 エクスVSルゼ HP 18 20 1551 10 12 3423 2 4 エクス、Op1『複合ブースターパック「アヴァロン」』機能停止 ルゼ、逆境発動 4634 -6 4 勝者「ルゼ」 サラ(仮)「これも素晴らしいバトルでした。……結果としてはルゼさんの勝利となります」 犬丸「勝敗を決めた要因は多々ありますが中でも大きなものはルゼさんの防御力ですワン」 テッコ「……ルゼの命中率も高いため、勝負がHPの削り合いになった」 サラ(仮)「そうなると防御力の無いエクスさんが圧倒的に不利です」 犬丸「攻撃力では勝っていたものの、防御力の差を詰めるには到りませんでしたワン」 テッコ「……逆境がダメ押しだったかも……」 サラ(仮)「ルゼさんが、Op装備でない為、ダメージを受けても弱体化しなかったのも要因の一つだと言えそうです」 犬丸「さて、これで決勝戦のカードが決まりましたね。アンリ・マユさんVSルゼさんです」 テッコ「……エクスも三位決定戦で上弦と対戦。いずれにせよこの四人は『うきうきバトル四天王』に認定」 読者参加企画『武装神姫うきうきバトル』へ戻る 過去ログ1 過去ログ2 過去ログ3 過去ログ4 文責:ALC