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デザイナー 声優 神姫解説 性格セリフ一覧 親密度○時イベントのオーナーの呼び方 神姫ハウス内コミュニケーション ステータス情報 覚えるパッシブスキル一覧 神姫固有武器補正 神姫考察攻撃力 防御力 機動力 運用・総評 神姫攻略法 お迎え方 アップデート履歴 コメント デザイナー 島田フミカネ(ストライクウィッチーズ、メカ娘等) 声優 阿澄佳奈(ひだまりスケッチ:ゆの、WORKING!:種島ぽぷら、這いよれ!ニャル子さん:ニャル子、ささみさん@がんばらない:月読鎖々美、他) 神姫解説 アーンヴァルを3rd規格の素体ベースで新造し、武装も新たにリニューアルした最新モデル。前モデルよりクロスレンジ戦闘能力が強化され幅広い戦術が可能となっている。AI設定は素直なものとなっており、初心者オーナーでも扱いやすい神姫と言える。 名称:天使型アーンヴァルMk.2(てんしがたあーんゔぁるまーくつー) メーカー 素体:FRONT LINE 武装:FRONT LINE 型番:FL016 (FLO16とする記述もある) フィギュア発売:2010年7月15日(バトルマスターズ同梱)/2011年9月22日(フルアームズパッケージ)(バトルマスターズMk.2同梱) 主な武装:M8ライトセイバー(未使用時は両肩に装着。バトコンでは双斬撃武器) M8ダブルライトセイバー(二つのM8ライトセイバーを合体させた状態。バトコンでは双頭刃斬撃武器) GEモデルLS7レーザーソード(腕に固定する大型ソードだが、大型過ぎて取り回しに難あり。バトコンでは防具用武器) GEモデルLS9レーザーソード(上記ソードの欠点を解消した、手持ち式の大型ソード。バトコンでは両手斬撃武器) リリアーヌ(ビット。こちらは攻撃対象に直接斬撃攻撃をする。バトコンでは未実装) ココレット(ビット。こちらは攻撃対象に射撃攻撃をする。バトコンでは未実装) アルヴォPDW11(ハンドガン。バトコンでは片手ライトガン) アルヴォPDW11エクステンド(アルヴォPDW11に銃剣アタッチメントを装着した状態。バトコンでは未実装) GEモデルLC5レーザーライフル(一部パーツを変えてGEモデルLC7レーザーキャノンにできる。バトコンでは未実装) GEモデルLC7レーザーキャノン(一部パーツを変えてGEモデルLC5レーザーライフルにできる。バトコンでは防具用武器) ラファール(パーツの組み替えで生成する支援機。名前はフランス語で「疾風」を意味しており、同名のフランスの戦闘機も存在している。バトコンではアクティブスキル使用時に拝見できる) ※なお、彼女の武装アルヴォPDW11(ハンドガン)は同じフロントライン製神姫、天使コマンド型ウェルクストラの所持武装とまったく同名である。バトマスではDLC武器「アルヴォPDW11+アルヴォGB1ガンマウントブレイド」として収録されている。バトルロンドでもそうだったのでこの一致はミスなのか意図的かは不明。 通称「白子」「白子Mk.2」「しろにー」「あんばる(初代機と同じだが、偶に使われる事がある)」。 FRONT LINE社のベストセラー機種アーンヴァル系列の最新モデル。 初期モデルのアーンヴァルは、改修、追加パーツによるアップデートが限界を迎えていたため、素体を3rd規格で新造し、武装の機能を統合パッケージ化したもの。 初期モデルが戦闘スタイルによって選択していた単能武装を、個々のパーツに複数の機能を持たせることにより、一体の神姫が無理なく使えるサイズにまで小型化している。 スペック的には、これまで苦手としていたクロスレンジ戦闘能力が特に強化されマルチロール化した反面、単純な直線加速力、最高速度などは初期モデルに劣る。 また、アーマーパーツは組み合わせて支援機「ラファール」として運用可能であり、幅広い戦術を選択することが可能となっている。 本モデルはリリース後も随時仕様のアップデートを行っており、2041年時点においてはロールアウト時と比較して多彩な武装が可能となっている。 新たな追加装備としてバリエーション機であるテンペスタ(FL016/T)で試験的に採用された大型ウイング、脚部バランサーなどのパーツを同機の実績により正式導入。更に既存火器の機関部を流用した大型ソード・GEモデルLS9レーザーソード、長距離用ランチャー・GEモデルLC7レーザーキャノンを採用し、クロスレンジからロングレンジまで広い範囲において攻撃力が上昇している。 基本AI設定は初期モデルを踏襲した素直なものとなっており、初心者オーナーでも扱いやすい神姫と言える。 上の解説にあるとおり、武装神姫第1弾として発売された天使型アーンヴァルの正統後継機なのだが、フィギュアは(ストラーフMk.2と共に)ノーマル版(上記のロールアウト時)はバトマス特別版、フルアームズパッケージ版(上記の2041年時点)はバトマスMk.2特別版のおまけ(というか、大きさからしてゲームの方がおまけ)という特殊な流通形態(どちらの特別版も、コナミスタイル限定販売)を取ったため、入手手段が限られてしまったという経緯を持つ。 (リペイント版であるテンペスタが一般流通するという、これまでの「ノーマル=一般流通 リペイント=限定流通」とは逆のパターンとなったのはこのためでもある) 2012年以降、正規ルートでは新品のアーンヴァルMk.2の入手は不可能と言っても良い(棚卸し等のイベントで一瞬、限定版が復活することはあるが、大体が訓練された武装紳士達に一瞬で瞬殺されるため、神姫初心者が入手できる可能性は限りなく低いと言わざるを得ない)。 なお、3rd素体で一新した素体、さらにおそらくは武装神姫史上最多数の武装パーツにより、プレイバリューは歴代神姫の中でも屈指であると言え「さすがはフロントライン社のフラッグシップモデル」と呼べる出来になっている。 それだけに重ね々々、限定流通なのが悔やまれるところである。 余談になるが、このフルアームズ版のテンペスタが、コナミ内製のフィギュアが一般販売された武装神姫の掉尾を飾っている(2012年3月15日)が、新作ではなくリデコリカラー品であるため、その一ヶ月前(同年2月23日)に発売されたフブキ/ミズキ弐型を「最後の武装神姫」として挙げる声もある。 ただし、武装なしの素体だけであれば、2016年にアニメ版Blu-ray BOXの購入者特典として復刻生産されたもの(アン名義)が少数存在するが、細部が当時品と若干異なっており、これはこれで物議を醸した。 ちなみに、テンペスタ(フルアームズパッケージ)カラーのM8ダブルライトセイバー[R]がレイドボスバトルのロケテ報酬として、GEモデルLS9レーザーソードがレイドボスバトル(第二回)の闇神姫打倒の報酬となっている。 メインビジュアルにいるだけあって、公式媒体に於いても各ゲーム版で皆勤賞。発売時期の問題でコミック媒体各作品には登場しない(初代アーンヴァルは登場)ものの、アニメでは主役級レギュラー「アン」としてお馴染みの神姫である。 そして、当然のように2024年のパチスロ版にもメインビジュアルから登板。あちらでは通常の姿と「リミッター解除」としてテンペスタの姿とを使い分ける。 似たような能力を持つ神姫としてはバトマスのDLCに収録されたアニメ「Moon Angel」に登場する本機、個体名「かぐや」が存在。ただし、あちらはあくまでも神姫に身をやつした別の存在で、変化後の姿も「アーンヴァルMk.2黒」という、テンペスタとは別のオリジナル神姫扱いである。 看板神姫 パーツを組み替えることで別形態になる、という仕様上今作では一番のパーツ量を誇る。 ……が、テンペスタ実装後は先にFAP装備をあちらへと実装される等、ちょっと不遇気味。 ここは、オリジナル機としての挽回(!?)に期待したいところ。 全パーツ全レアリティ揃えれば、初心者卒業だ! 性格 真面目な優等生といった感じの性格。 誰にでも丁寧に接するため人当たりは良く、そこらの人間よりもずっとコミュ力が高い。オーナーに献身的な姿勢もあって人気も高い。 ただ冗談が通じなかったり洞察力がなかったり本音が直ぐ出たりと所々オーナーのカバーが必要なのは覚えておこう。 セリフ一覧 + おはようございます!マスター♪ ログイン時 通常(朝) おはようございます。来てくれたんですね!嬉しいです! おはようございます。今日も頑張りましょう! 通常(昼) こんにちは!今日の調子はいかがですか? こんにちは。ランチは終わりましたか?お昼抜きだと力が出ませんからね。 通常(夕) こんにちは。おやつはいかがですか?では、頑張りましょう! おかえりなさい!バトルの準備をしましょう! 通常(夜) おかえりなさい!今日はどんな感じで行きましょうか! こんばんは。夜遅くまでお付き合いいただき、ありがとうございます。 通常(深夜) こんばんは!夜のバトルも一興ですね。楽しみましょう! こんな時間でも頑張るなんて流石です! 年始 あけましておめでとうございます!本年も頑張りますので、どうぞよろしくお願いしますね! バレンタイン 思いを伝えるために、チョコを用意しました。足りなければまだまだあるので、遠慮なく言ってくださいね♪ ホワイトデー えっ?これを私に…?嬉しいです!あっ、バレンタインのお返しなんですね!じゃあ来年もさらにお返ししますね! エイプリルフール ゴールデンウィーク 夏季 暑くなってきましたね。体調を崩さないよう体調管理はしっかりしましょう! 七夕 星がきれいですね。今日は愛し合う二人が出会えるロマンチックな日です! 水着 ただ今期間限定イベント開催中です。特別に水着を着ちゃうそうですよ?期待してくださいね♪ ハロウィン トリックオアトリート!あ、お菓子ないんですか。じゃあ、どんなイタズラがお好みですか? 冬季 寒くなってきましたね。メンテナンスされてますか?規則正しい生活が、健康の第一歩ですよ! クリスマス メリークリスマスです!この特別な日、もし良かったら、今日はずっと一緒にいたいです! 神姫の発売日 え?これを私にですか?ありがとうございます、マスター!私の誕生日覚えていてくれたんですね!とっても嬉しいです♪ オーナーの誕生日 誕生日おめでとうございます!一緒にお祝いできて私も幸せです♪ 神姫ハウス 命名時 呼び方変更 (呼び方)、どうでしょうか?この際、呼び方を変えてより適切な関係性を築くというのは? (→決定後) (呼び方)ですね。わかりました! LvUP後 MVP獲得 3連勝後 やりましたよ、(呼び方)!3連勝です!このまま勝ち続けられるように頑張りますね! 3連敗後 専用スキル解放時 親密度Lv5後 (呼び方)!今日もバトルお疲れ様でした!え、これから用事があるんですか?いってらっしゃーい! 親密度Lv10後 そういえば(呼び方)とお出かけってまだしたことないような…。今度、(プレイヤー名)を誘ってみようかな? 親密度Lv20後 (呼び方)!もしよければ今度私とお出かけしませんか?いいですか?やったー!ありがとうございます! 親密度Lv30後 (呼び方)とお出かけできるなんてうれしいな♪じゃあどこに行きましょう?行きたいところとかありますか? 親密度Lv40後 私が選んでいいんですか?じゃあ…。ゲームセンター?ショッピング…?映画…?どこがいいかな…? 親密度Lv50後 よし!決めました!(呼び方)!私、お洋服が見たいのでショッピングに行きましょう! 親密度Lv60後 せっかくのお出かけだから何を着ていこうかな?(呼び方)!この服はどうですか?かわいいですか? 親密度Lv70後 よし!この服に決めました!私に似合ってますか?褒めてもらえるとうれしいですね、えへへ。 親密度Lv80後 わー!(呼び方)もおしゃれしてとってもかっこいいです!じゃあ早速出かけましょう! 親密度Lv90後 どうですか、この服!とってもかわいいと思いませんか?え、プレゼントしてくれるんですか? ありがとうございますうれしいです! 親密度Lv100後 (呼び方)!この間のお出かけあれってデートですよね…?大好きな人とのデートとっても楽しかったな。また一緒にお出かけしましょうね♪ 親愛度Lv1~19限定 親愛度Lv20~39限定 親愛度Lv40~59限定 親愛度Lv60~79限定 親愛度Lv80以上 頭タッチ(親密度1~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 胸タッチ(親密度1~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 尻タッチ(親密度1~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 通常会話 私の好きなことですか?そうですね…。私は(呼び方)と一緒にバトルをしてる瞬間が一番大好きです! (呼び方)のメンテナンスのおかげか、ここのところすごく調子がいいんです。 クリスマス限定 メリークリスマスですね(呼び方)!パーティーの準備をしてますから今日は一緒にお祝いしましょうね♪ 年始限定 旧年中はお世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いします。どうですか?年末にこっそり挨拶の練習をしてたんです♪ 武装カスタム 戦闘力Up時 戦闘力Down時 武器LvUP時 素体カスタム 親密度LvUp時 限界突破時 わあ…まだまだ強くなれますね! 出撃時 入れ替え バトル開始時 がんばりますので、見ていてくださいね! 自分の力を出し切ってがんばります! → 楽しいバトルにしましょうね! バトル中 撃破時 コンテナ入手時 被弾時 オーバーヒート時 スキル発動時 これでパワーアップです! (HP回復系) ○○してあげます! これが天翔る天使の騎馬!グランニューレ! チャーミークリアボイス いきますよ!正々 堂々 楽しいバトルにしましょうね♪ 被撃破時 次出撃時 サイドモニター 応援時 交代時 被撃破時 バトル終了時 1位 やったぁ~!勝ちましたぁ!こんなに鮮やかに勝てるなんて、自分でもびっくりです! やりましたよぉ私!見ててくれましたよね! → ご褒美に頭撫でてください! 2位 2位でした。すっきりしない結果ですみません。 → 諦めませんよ!必ず成果を挙げてみせます! 3位 えっ、と…すみません、3位だなんて…次は、きっと… → この敗北の反省を活かして、必ず勝ってみせます! 4位 → コンテナ獲得後1位 そしてコンテナもゲットです! コンテナ獲得後2位以下 でも、コンテナは持って来ましたよ。プレゼントです! 親密度LvUP時 前よりもちょっとだけ、お力になれると思います! マスターレベルUP時 レイド成功時 レイド失敗時 カラフルコンダクト いつまでもあなたのそばにいます (2021/09/07~) 何なりと私に言ってくださいね 全力で勝ちます見てください いつまでもあなたのそばにいます(実装当初の歌詞と同じ) 神姫ショップお迎え時 はじめまして!お越しいただきありがとうございます! はじめまして!頑張りますので、よろしくお願いします! ゲームオーバー時 一緒に戦えて嬉しかったです!また来て下さいね! その他 + リセット開始 神姫の想い、大切に。 + 選択した神姫をリセットします。よろしいですか? リセット開始 え、リセットするって本気ですか? はい を押す 私、忘れたくないんです!もう一度チャンスを下さい! はい を押す(二回目) そう…ですか…本当は私…いえ、何でもありません、さようなら… リセット完了 はじめまして!お越しいただきありがとうございます! リセット取消 はあぁ、良かったぁ!もぉ!タチの悪い冗談はこれっきりにしてください! 親密度○時イベントのオーナーの呼び方 マスター・お兄様・ご主人様 神姫ハウス内コミュニケーション LV60~LV69 頭 LP 胸 防御 ステータス情報 親密度Lv1 ATK DEF SPD LP BST N 30 40 110 300 100 R 35 45 120 350 120 SR 40 50 130 400 140 UR 45 55 140 450 160 親密度Lv100 ATK DEF SPD LP BST N - - - - - R - - - - - SR - - - - - UR - - - - - マスクステータス 1/s ジェム回収展開速度 ブースト回復量 ダッシュ速度 ダッシュ時ブースト消費量 ジャンプ時ブースト消費量 対空時ブースト消費量 防御時ブースト消費量 N 1750 150 960 85 50 20 70 R 1050 105 70 40 90 SR 1140 125 90 60 110 UR 1230 145 110 80 130 覚えるパッシブスキル一覧 モード オブ エンゼルアーンヴァル専用パッシブ一定の確率で攻撃を無効化 防御力アップ[小]防御力を上げる 攻撃スピードアップ[小]攻撃時のスピードが上がる クリティカル発生アップ[小]クリティカルが出る確率が上がる ジェムの出す量軽減[小]敵に攻撃された際に出すジェムの出す量を少なくする 早熟型のパターンで覚えるスキル ホーミング性能アップ[小]射撃時の弾のホーミング性能が上がる 攻撃力アップ[小] *要限界突破(L110)攻撃力を上げる ブーストアップ[中] *要限界突破(L120)ブースト時の移動スピードアップ 通常型のパターンで覚えるスキル 射程増加[小]攻撃距離が伸びる ブースト最大値アップ[小] *要限界突破(L110)ブーストゲージの最大値を上げる 攻撃力アップ[中] *要限界突破(L120)攻撃力を上げる 晩成型のパターンで覚えるスキル 体力最大値アップ[小]体力の最大値を上げる スピードアップ[小] *要限界突破(L110)移動する際のスピードアップ 射程増加[中] *要限界突破(L120)攻撃距離が伸びる 神姫固有武器補正 ※レアリティが上がる毎に得意武器は-5%、苦手武器は+5%される。数字はレア度Nのもの。 得意武器 +30% 片手斬撃武器・両手斬撃武器・双斬撃武器・双頭刃斬撃武器・片手ライトガン・防具用武器・肩持ちヘビーガン 不得意武器 -30% 格闘打撃武器・両手打撃武器 神姫考察 攻撃力 神姫自体のATK値は低め。覚えるパッシブスキルも攻撃力に直接関わるのはクリティカル発生アップのみ。防具でカバーしないと火力負けは必須。 近接武器は頭一つ抜けた火力の双頭刃斬撃武器で火力の低さをカバーするか豊富なアクティブスキルを選べる両手斬撃武器のどちらかになる。 遠距離武器は片手ライトガン頼りになる。防具用武器でも戦えなくは無いが、射程は短いわ癖が強いわで試合に付いて行けない。 防御力 必ず覚える防御力アップに晩成型のみ覚える体力最大値アップ。神姫自体のDFE値や周りと比較すると物足りないか。 専用パッシブスキルは発動すれば強力なスキルだが低確立。 その専用パッシブスキルに防御面で大きく依存しているだけなので、総合的にな防御力は平均的よりやや高めといったところか。 専用パッシブスキルの発動率に自信があるならATK値重視のアセンも面白いかもしれない。 機動力 ごく平凡だが、全体の中では遅い分類に属する。 運用・総評 武装神姫というコンテンツの顔だけあって、なんでもできる幅広い対応力(得意武装の数が多い)のが売り。 特に数多い自身の武装がすべて得意武器に設定されているのが大きい。同一武装限定なんて縛りでも問題なく対応できるし、極論この神姫だけ育てても完結できる。 打撃系武器は一緒に開発されてないためか苦手武器扱いだが、どちらも扱いに癖があるので装備しなくても問題ないだろう。 専用スキルの発動率は約20%。攻撃自体無かったことにするのではなく、ダメージ表記のない0ダメージにする。0ダメージの攻撃を受けているので、ガード成功時にも発動し、その分ブーストも消費する。 発動してしまえばどんな攻撃も0ダメージにする強力なスキルだが、あくまで確立。発動すればラッキー程度の認識で。 同じ無効化のヴァッフェドルフィンとは得意武器がほぼ全て被ってないうえに発動条件はこちらのが緩い。自身の得意武器によってはあちらからの乗り換えを検討しよう。 機動面では優れた特徴が何もないので、近寄るのに苦労する。個体値ブースト単に機動力を上げるアクティブスキルか長射程でカバーしないと厳しい立ち回りを強いられる。 近接武器メインならGEモデルLS9レーザーソードG、遠距離武器メインならパウダースプレイヤーがオススメ。 防御力は最高峰なので、NRURのような最後のURで逃げ切る戦略にはうってつけ。 神姫攻略法 唯一の特徴である専用スキルも完全受け身のスキルのため、基本的に無視で良い。 ただ無視しすぎていつの間にか取り返しのつかない量のジェムを獲得していたなんて時は、専用スキルも合わさってかなり撃破に時間がかかってしまう。 相手もURで逃げ切る戦略が多いと思うので、基本の対策である早めにURを引きずり出すか完全放置でURを出させないか、随時様子を見て柔軟に立ち回ろう。 そうそうないとは思うが、渾身の単発超火力を無効化されたなんてこともなくはないので、できるなら手数の多い武器で挑みたい。 お迎え方 稼動開始(2020/12/24~)から神姫ショップに登場 アップデート履歴 日時:2021.5.26 内容:専用パッシブスキルの説明文変更 日時:2021.4.27 内容:得意武器に「双頭刃斬撃武器」の追加 苦手武器から「片手打撃武器」の削除 バトルメンバーにいる場合、バトル中のBGMが変更されるように。なお一番手に配列しないとBGMは変更されない。 日時:2023.8.7 内容:DEF、DEX、ジェム防御力、クリティカル、ダッシュスピード、ジャンプスピード、ブーストゲージ回復量を上方修正 ※実は7月のアップデート(どの日かは不明)で更新されていたのだが、発表はこの時となった。 コメント 作品の顔ともいえる神姫ではあるが昨今エーデルワイスに枠取られがち…性能の差というか異常な機動力の差なんだけど -- 名無しさん (2021-01-05 22 41 29) ヘッドセンサーユニコーン[A]全ステータスアップ [B][C]コンボの最終ダメージ増加 -- 名無しさん (2021-01-06 21 13 08) スキルが溜まりやすい? -- 名無しさん (2021-08-11 22 14 00) 晩成型で1防御力アップ2体力最大値アップ3攻撃スピードアップ4ジェムの出す量軽減5クリティカル発生アップ -- 名無しさん (2021-08-22 02 13 59) 名前 コメント
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ウサギのナミダ ACT 1-7 □ 翌日の日曜日、俺はやはり迷いながらも、ゲーセンに向かった。 井山と会って話をするためだ。 奴に会って話をしないことには、状況は何も進展しない。 ティアは渡せないが、雑誌にティアのあんな画像を載せることはやめさせなくてはならなかった。 井山と連絡を取ろうと思ったが、奴とは昨日のゲーセンで会ったのが初対面だった。 結局、俺はゲームセンターに行かなくては、井山と話も出来ないことに気が付いた。 念のため、ティアはおいてきた。 正直、ティアの落ち込みようは心配だった。一緒にいてやりたい。 だが、連れていって、またティアが傷つく姿を見るのも嫌だったし、井山に無理矢理奪い取られないとも限らない。 店の連中が来ていたら、それこそ無理矢理に奪われるだろう。 だから、俺一人で来ることにした。 俺はゲーセンに入ると、まっすぐに武装神姫のコーナーに向かう。 俺の姿を認めて、店内が少しざわめいた。 かまうものか。 店に来なければ、果たせない用事なのだから仕方がない。 大城が俺の姿に気がついて、すぐに寄ってきた。 「おい、遠野……しばらく来るなって……」 「井山は来ているか?」 大城の言葉を遮って尋ねる。 奴の名を聞いて、大城も理解したようだ。 「いや……まだ来ていないな……」 「昨日は来ていたか?」 「来た。お前が帰った後にな」 「じゃあ、今日も来るだろう……少し待つか」 「いや、待つって、お前よぅ……」 大城が口ごもる理由はよくわかっている。 そうでなくても、俺に向けられた視線は痛いほどに感じられる。 俺はよほど歓迎されていないらしい。 「井山とは、ゲーセンで会う以外に連絡の取りようがない。バトルするわけじゃないんだ。大目に見てもくれてもいいだろ」 「だけどよ……」 「どのツラ下げて、店に来た? 黒兎よ」 ハウリン・タイプの神姫を肩に乗せた男が、割り込んできた。 「ヘルハウンドの……」 「お前は出入り禁止のはずだろう」 「奴に……井山に話があって、」 「帰れよ。お前がいるのが、迷惑なんだ。そう言わないとわからないか?」 ヘルハウンドのマスターには取り付く島もない。 俺は急に悲しくなってきた。 ついこの間まで、バトルをしようと誘ってくれた奴だったのに。 こんなにすぐに、手のひら返したように、冷たい態度がとれるものなのか? あんたは、俺達の戦いの何を見てきたんだよ? 俺が一瞬、物思いに沈み、気がついたときには、バトルロンドのコーナーに来ているほとんどの客が俺に向かって罵声を投げていた。 「そうだ、帰れ帰れ!」 「お前なんかにバトルする資格はねぇ!」 「お前の汚れた神姫もだ!」 「迷惑なんだよなぁ、風俗の神姫の仲間と思われるのはさぁ」 「ていうか、ここに来ないで、風俗にでも行ってろよ」 「もう二度と来るな!」 こんな罵声を浴びせられる理由がわからない。 納得が行かない。 それでも、俺は叫び出したい言葉を飲み込んだ。 罵声を、甘んじて受けた。 そうしなければ、すべての道が閉ざされてしまうと思った。 拳を固く固く握りしめ、歯を食いしばって耐える。 俺は意志を振り絞って、固まってしまっていた両脚を引き抜くようにして、いまだ口汚く罵り続ける連中に背を向けた。 脇にいた大城に、 「奴が来たら、電話くれ。頼む」 「あ、あぁ……」 大城は頷いてくれたらしい。 今の一言を言うだけでも、重い口を懸命に開く必要があった。 俺はやっとのことで、ゆっくりと店の出口へと歩み始めた。 聞こえた言葉。 「あんな精液まみれのエロ神姫、使う気が知れねぇよなぁ!」 どっと、受ける気配。 俺の中でなにかが。 切れる、音がした。 怒りとか、悲しみとか、そう言う気持ちを踏みつぶして通り過ぎた、行きすぎた負の感情。 それが、心の奥から、どばっと噴出した。 真っ黒い感情は、タールのように粘液質なのに、あっと言う間に俺の心を塗りつぶした。 俺は身を翻すと、先ほどの言葉を発した一団に飛び込もうとした、らしい。 それが未遂で終わったのは、大慌てで後ろから追いすがった大城が、羽交い締めにしてくれたからだった。 「はなせっ! 大城、はなせぇっ!!」 「バカ、やめろ、遠野! やめろって!!」 押さえてくれた大城の腕から逃れようともがいた。 しかし、頭一つ分背が高くて体格もいい大城に、かなうはずもない。 身体はあきらめたが、心は前に出ている。 俺は今にも飛びかかりそうになりながら、先ほど笑った連中を睨みつけた。 視線で人を殴れたらいいと、本気で思った。 「ふざけるなよ……!!」 低く暗く、震え、かすれた声。呪いを吐き出しているような声。 「神姫は……! 神姫はマスターを選べないだろうが!! 神姫に身体売らせて金を稼いでいる奴も、金で神姫を汚して悦んでいる連中も、みんな人間じゃないか!! マスターが命令すれば、神姫は嫌でも、どんなことでもしなくちゃならない。 神姫に何の罪がある!? 何度も何度も心を引き裂かれるような思いをして……傷ついているのは神姫だ! それなのになんだよ!? 追い打ちをかけるみたいに、勢いで罵声を浴びせて、おもしろ半分にあざ笑って…… お前ら、それでも人間か!? それが人間のすることかっ!!!」 口にしてはじめてわかった。 俺が許せなかったのは、俺たちがバトルできなくなることでも、俺が痛い思いをすることでもない。 ティアを無神経に傷つける行為が許せなかったんだ。 その場にいた誰もが口をつぐんでいた。 俺はさらに言葉を重ねたかったが、うまく口から出てこない。 心の底からマグマが吹き出すように煮え立っているのに、表層の意識は、いまの言葉を放ったところで、奇妙に冷静になっていた。 そうだ。こんな連中は人間じゃない。 ならば、ここは俺のいる場所じゃない。 俺が異物であるのも当然だ。 俺の身体から急速に力が抜けた。 大城の腕を振り払い、うつむきながら立つ。 「もう、二度と来ない」 吐き捨てるように言って、俺はきびすを返した。 さっきまで脚を動かすのに苦労したのが嘘のようだ。 俺はしっかりとした足取りで、足早に出口へと向かった。 一刻も早く、この店から出たかった。 未練さえ、欠片も残っていない。 もうこの店でバトルする事もない、という感傷さえ思い浮かばず、俺は自らの意志で、この店との関わりを切り捨てた。 それで、自らの夢が絶たれるのだとしても。 俺が店から出ると、三人の男がこちらに向かってくる姿が目に入った。 冷えていた俺の心の水面が瞬時に沸騰した。 俺はその男たちに駆け寄ると、真ん中の太った男の胸ぐらを掴みあげた。 「井山……っ!」 「おや、君は……ひゃはっ、どうしたんだい? そんなに怖い顔しちゃって」 おどけたような口調で言う。 からかっているのか。 こっちが完全に喧嘩腰だというのに、奴は全く動じていない。 「貴様……どういうつもりだ……」 「ん? なにが?」 「ティアの……あんな姿の画像を雑誌に載せるようにし向けたのは、貴様だろうっ……!」 「ああ、君も見てくれたんだ? よく撮れてただろ? アケミちゃんのエロエロな格好がさぁ」 こいつは自分がティアの画像を提供したことを否定さえしない。 まったく悪びれていないのだ。 俺は、井山の胸ぐらを掴む手に、さらに力を込めた。 井山の取り巻きの二人は、最初は俺の出現に驚いていたようだったが、井山が俺に絡まれていても、止めようともせずにニヤニヤ笑っているだけだった。 「よくも……自分がオーナーになりたい神姫の……あんな画像を……公表できるもんだな……」 「あんな画像も何も……アケミちゃんは、はじめからああいう神姫だろ?」 「貴様はっ……! 神姫の気持ちを考えたことがあるのかっ!?」 「神姫の気持ち?」 井山はさも不思議そうに首を傾げ、そして、こうのたまった。 「そんなの、考えるわけないじゃん、おもちゃの気持ちなんてさぁ! そんなこと考える方がおかしいんじゃないの?」 「な……」 「アケミちゃんは、ああいうことをされるために生まれてきた神姫なんだよ。そういう運命なんだよ。だから、無理矢理バトルロンドで戦わされるより、ボクに奉仕している方がよっぽど似合ってるよ」 「なにが……運命だっ……!」 俺は頭がおかしくなりそうだった。 俺が今まで出会ってきた武装神姫のオーナーたちは、程度の差こそあったが、誰もが神姫をパートナーとして大切にしていた。 だが、こいつは何だ。 平気な顔で神姫にひどいことができる。そして、神姫はそうされることが当然だなんて……そんな奴が神姫のオーナーであっていいのか。 「だからさぁ、さっさとアケミちゃんを譲りなよ」 「なにを……」 「だって君、いまバトルロンドできないだろう? アケミちゃんみたいな神姫じゃ、誰もバトルしたくないよね」 「……」 「君の好きな神姫を買って、アケミちゃんと交換してあげるよ。そしたら、君はバトルロンドにまた参加できる。ボクはアケミちゃんとイイコトできる。それが一番いいんじゃない?」 その話に一瞬でも心が揺れなかったと言えば、嘘になる。 このままじゃ、俺達は前にも後ろにも進めない。 だが、しかし。 「貴様……ティアを……手に入れたらどうするつもりだって……?」 「決まってるじゃないか。可愛がるんだよ! 雑誌の記事みたいなことをしてさ、毎日毎日、こってりとね。ひゃはははは!」 「そんなことをしたら、ティアは苦しむばかりじゃないか!」 「あったりまえじゃないか。アケミちゃんはさぁ、苦しんでる姿が一番可愛いんだよ。そういう神姫なんだよ、こってり可愛がられるために、生まれてきたのさ、きっと」 話が通じていない。 俺とこいつの話は、根本から食い違っている。 神姫が苦しむ姿が、一番可愛いだと……? 「……ふざけるなっ!」 俺は井山を突き飛ばした 俺の乱暴な行為も意に解せず、奴は余裕の態度を崩さない。 「貴様の様な奴に……ティアを渡せるもんかよ!!」 「ふふん、そう言っていられるのも今のうちさ」 「……なにを」 「あの雑誌の編集者がさぁ、ボクが持ち込んだ企画、気に入ちゃってねぇ。 また、今週発売の号で、載るよ。今度はもっとエロいのがね!」 なんだと。 こいつは、この間のだけでは飽きたらず、まだティアを貶めようと言うのか。 「やめろ……これ以上、ティアを傷つけるな、苦しめるなっ!!」 「やだね。これからもまだまだ載るよ? そうしたらそのうち、アケミちゃんでバトロンどころか、連れて歩くこともできなくなるよね! ひゃはははは!」 「そんなの、お前だって同じだろ」 「ボクはいいんだよ。だって、アケミちゃんを外になんか連れ出さないで、ずっとボクの部屋で、こってりと可愛がるんだからね」 俺の脳裏に、ティアの顔が思い浮かんだ。 あの時。はじめて公園に連れていったあの日。 ティアはその広さ、明るさに驚いていた。 はじめてレッグパーツを装着して、公園で走ったとき。 ティアはとても嬉しそうに笑っていた。 笑っていたんだ。 それを奪われるのか。 こいつの元に行ったら、ティアは二度と外の風を感じることもなく、薄暗い部屋の中で、ただ怯え、苦しみ、泣き叫び、心が磨耗していくだけの日々を送るっていうのか。 そんなことは、どうしたって……許せるはずがない! 「渡さない……どんなことがあっても、ティアは決して渡さない!」 「いいや、いずれきっと、君はボクに泣きついて来るさ。だってバトルもできなきゃ、外に連れ出すこともできなくなるんだからね! ひゃははは!!」 井山の高笑いに、俺はせめて睨みつけることで、反抗するしかなかった。 正直、奴の話には現実味があった。 ティアを俺の神姫として活動する方法を、今の俺にはまったく思いつかない。 俺はまた、拳を強く握りしめ、耐えるほかにはなかった。 「そうそうこれ……」 井山はポケットから一枚の紙片を取り出し、俺に差し出した。 「ボクの連絡先だよ。アケミちゃんの件なら、いつでも連絡していいからさぁ」 俺の目の前にいる三人が大笑いした。 俺は……どうすることもできなかった。 無力だった。 この連中のいやらしい笑い声すら止めることはかなわない。 せめてできることは、井山が差し出した名刺をたたき落とし、走ってその場から逃げ出すことくらいだった。 後ろから井山が何事か言ったようだったが、よく聞き取れなかった。 情けなかった。悔しくて、頭に来てもいたが、結局何もできない自分が一番腹立たしい。 あんな奴に好き放題言わせて、それでも何もできずに見ているしかない俺は……なんと情けない男なのだろう。 裏通りの路地。 俺はいつしか立ち止まっていた。 「お、お、おおおおおおぉぉっ!!」 吠えていた。 負け犬の遠吠えだ。 吠えながら俺は、路地の薄汚れた壁に、拳を叩きつけた。何度も何度も、力一杯叩きつけた。 やり場のない負の感情を、壁に向かってぶつけていた。 なんだか、殴りつけている壁に赤い染みが出来はじめた。 叩いている右の拳の感覚がない。 時々、手の指あたりから、鈍く嫌な音が聞こえた。 だが、無視した。 俺は壁を叩くのをやめなかった。 ただひたすらに、その行為に没頭していた。 いつまでそうしていただろう。 「っておい!? 遠野!! おまえ、ちょ……なにやってんだ!!」 野太い大声が俺を呼ぶ。 そして、ひたすらに動かしていた右腕を、力任せに掴んできた。 「はなせ!! 大城っ!」 「バカ!! 手が血塗れじゃねぇか!! いてえんだろうが!」 「こんな痛み、ティアが受けた痛みと比べようがないっ!!」 それでも大城は、俺の右腕をがっちりと掴んで、放さないでいてくれた。 「遠野、お前……」 「それでも……おれは……ティアの痛みを分かちあってやることさえ出来ない……あいつの涙を、止めてやることさえ出来ない……おれは……おれは……っ!!」 もう言葉にならなかった。 俺は狂ったように慟哭した。 次へ> トップページに戻る
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ページの最後にエンドマークを打つ。 「・・・どーぉにか間に合ったか。」 例によってまた徹夜。窓から差し込むのは黄色い日差し。 軋む体を思い切り伸ばした。 ごきっ 「おほ、いい音♪」 「・・・『いい音』じゃねぇだろ。アホか。」 可愛らしいが、なんともガラの悪い声が背後から聞こえた。 誰かは知っているので、あえてそちらを見ずに返す。 「起きてたのかジュリ。」 「あぁ?あんだけ近くで負のオーラじゃんじゃか撒かれてンのに、暢気にぐーすか寝てられっか。死なすぞボケ。」 本心かどうかは別として、どこでそんな言葉遣い覚えて来るんだかなコイツは・・・ 思いながら振り向けば、足元に15センチほどの女性型の人形。・・・いわゆる『武装神姫』が仁王立ちしていた。 彼女の名は『ジュリ』。本当は『ジュリエット』にしたかったのだが、ジュリ曰く「サムライの名前じゃねぇだろ。少しは脳使えナス」ってんだからまぁ仕方ない。 大して変わらんと思うんだが。 一応は侍型と言うだけあって、黙って立ってればキリリとした和風美人だ。 黙って立ってれば、な。 「・・・なんか今失礼なこと考えなかったかコラ?」 「なんも言ってねぇだろうが。にゃー共はどうした?」 「『修羅場中の慎の字は教育上悪いから』って浩子姐さんが連れてったよ。パットとアイリも一緒だ。」 「・・・・・・お前も教育上どーかと思うけどな。」 ぼそっと言ったらすげぇ目で睨まれた。地獄耳め。 「とりあえず浩子サン起こしてきてくれ。原稿上がったって。」 「ん。慎の字は?」 「飯作ってくる。どーせにゃー共も一緒だろ。あいつらの分も用意せにゃならんしな。」 「わかった。・・・あんま無理すんなよ?」 ホンの一瞬、気遣わしげな表情を浮かべたジュリに気付かないフリをして手を振る。 ついこないだ風邪でぶっ倒れた時の事は、まだ記憶に新しいのだろうか。 えらい心配かけた気はするが、治った翌朝蹴りが飛んできたので、まぁチャラだ。 台所で包丁握って十数分後。 「あー。いいにおーい。」 「にゃー」 「にゃー」 「にゃー」 亡者が4匹現れた。 「居間で待ってろよお前らー。もうすぐ出来っから。」 「えー。お腹空いたよー。我慢できないよー。ねー?」 「「「にゃー」」」 「・・・まぁなんでもいいから頭直してこいよ浩子サン。ぐしゃぐしゃだぞ」 「えー。めんどーい。」 この目の前で寝癖満点の頭したお姉さんは『緋上浩子』サン。俺の担当編集者で、美人で子供の頃からの近所の幼馴染で年上で未婚。 表ではデキる女を自称するだけあって、切れ者に見えるが・・・ ご覧の通り、素はえらい子供じみていて、かつ寝起きは悪い。 彼女の腕の中にもまた小さな人影がみっつ。 猫型神姫の三つ子だ。 名前は『ノゾミ』『カナエ』『タマエ』。付けたのは浩子サン。 区別がつかんのでそれぞれの腹にそれぞれの名前を書いてある。 浩子サンには「神姫虐待よっっ!」とか言われたが、当人達はむしろ気に入ってるらしいので問題はない。 「にゃー」 「にゃー?」 「にゃー!」 「「「にゃー♪」」」 別にこいつらはわざとこう話してるワケじゃない。「にゃー」としか言えないのだそうだ。 詳しいところはよく解らなかったが、どうも俺が拾う前のマスターに変な改造を施されたとかなんとか。 実はこう見えて、かなり頭が回るので侮れない。 ウチにある本を、俺の趣味のラノベから参考程度にナナメ読みで放置してた学術書まで片っ端から読破しやがった。 おかげで偶に辞書代わりに活躍してくれる。 「・・・あぁあ、こちらにいらしたのですかぁ。家中探し回ってしまいましたよぅ。」 よたよたと更に一匹追加。 「あ、ごめんねパトリシアちゃーん。寝てたから起こすのも悪いと思ってー。」 「・・・だったらせめて居間まで運んでやれ。三匹も四匹も手間は変わらんだろうが。」 ふらふらとへたり込んだのは、天使型神姫。名を『パトリシア』。 初期不良品で、空間認識に欠陥があるらしく、ぶっちゃけ空を飛べない。 「はふぅ・・・大家さぁん。疲れましたぁ。」 「大家言うな。どんだけ迷ってたんだお前。」 「えぇとえぇと・・・」 「いいから居間に行って待ってろ。」 「はぁいぃ。」 「っていきなり逆だ!そっち玄関!」 しかも方向音痴のオマケつきと来た。 我が家は祖父譲りの平屋建て。実質住んでる人間は俺一人だというのに、多分3~4人でもちと広い。 そのせいか、よく迷ってへたり込んでいるのを見かける。 まぁ、人間じゃないとはいえ住人もそこそこいるから、大事になったことは無いけどな。 もっとも、そのおかげでウチは一部で『神姫長屋』とかあんま有難くない渾名で呼ばれてるそうだが。 「ほら浩子さんも。あいつ一人じゃ心配だ。」 「はーい。じゃ、行こっか」 「「「にゃー☆」」」 猫どもめ。流石に名付け親相手だと素直に言うこと聞きやがる。 更に数分。いい感じに魚が焼けてきたところでどたどたと足音が・・・ だんっ! 「ご隠居おぉおおっっ!!」 誰がご隠居だ誰が。 駆け込んできたのは我が家の神姫6匹目。砲台型神姫の『アイリーン』。 「ご隠居はやめれっつってんだろーが。毎度毎度家壊す気かお前は。」 「知るかっ!それよかジュリ姉どこっ!」 何故か怒っていて何故か完全武装してて何故か鼻の下に綺麗なカールのドジョウヒゲ(@マジック描き)。 バイザー降ろしてるから解らんが、恐らく額にはえらく達筆な『中』の一文字(@マジック描き)があるんだろう。 また寝てる隙に悪戯されたのか。 アイリが怒りに任せてばっしんばっしん柱を叩く度に、冗談抜きで家が軋む。 どうもコイツは腕力にリミッターがかかっておらず、危険視されて廃棄処分となったところを逃げてきたらしい。 元は闇バトルに出ていたとか言ってたが、どこまで本当なのだか・・・ 「あー。ジュリのあほたれだったら・・・」 やれやれ。一仕事終わったというのに・・・寝るのはしばらく後になりそうだ。 あ?あぁ失礼。申し遅れた。 俺の名前は『都竹慎之介』。 デタラメに嘘くさいが本名だ。物書きをやっている。 頭に「売れない」って冠詞が付くのが、まぁアレだが。 まぁそんな感じで、今日も長屋住まいの連中との騒がしい日常が続いていくのだ。 正直、疲れるけどな。
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MMS戦記 外伝「敗北の代価」 「敗北の代価 11」 注意 ここから下は年齢制限のある話です。陵辱的な描写やダークな描写があります。 未成年の方は閲覧をご遠慮下さい。 □ 重邀撃戦闘機型MMS「リカルダ」 SSSランク 二つ名「ミョルニル」 オーナー名「春日 凪」♀ 20歳 職業 神姫マスター 真っ赤に燃え滾るヒートナギナタを振り回し,戦国時代の武将のように名乗りをあげるリカルダに対峙する神姫たちは、ぽかんを口を開けて呆然と立ち尽くす。 オーナー1「な、なんだァ!?あいつ!」 砲台型C「あれがSSS級の化け物神姫、リカルダか」 悪魔型「び、びびるな!!!敵は一騎だァ!!!」 一瞬、神姫たちに動揺が走ったが、すぐさま体制を建て直し、リカルダを取り囲むようにじりじりと移動する。 春日はバトルロンドの筐体に備え付けられているタッチパネルを操作し、状況を把握する。 春日「残り、88機!敵は3つの集団に分かれている」 春日はマーカーで3つのくくりを作る。 春日「まずは集団A、陸戦タイプの神姫を中心とした大集団、数は50、どうせこちらの速度にまともについていけない、適当につぶしておけ」 リカルダ「イエス」 春日「次に集団B!!空戦タイプの神姫を中心だな、数は1ダース(12機)、機種はアーンヴァル、エウクランテ、アスカが多いな・・・まずはこいつらから血祭りにあげろ、皆殺しだ!」 リカルダ「OK」 春日「最後に集団C・・・砲戦タイプの神姫ばかりだな!数は20、機種は戦艦型4隻、戦車型6両、砲台型10台!鈍亀ばかりだ、うまく誘導して同士撃ちにさせろ」 リカルダ「了解」 春日はバンっと筐体を叩く。 春日「見敵必殺(サーチアンドデストロイ)!!!見敵必殺だ!!立ちはだかるすべての障害を排除しろ!」 リカルダ「Sir,Yes sir MyMasterrrrrrrr」 ヒュイイイイイイイイイイイイイイイ リカルダのリアパーツに装備されている巨大な素粒子エンジンが緑色に輝く粒子を撒き散らし唸り声を上げる。 巡洋戦艦型A「奴を倒せば兜首だ!賞金を手に入れて富と名声を手に入れろ!」 装甲戦艦型A「支援射撃を開始する!全神姫突撃突撃ィ!!」 数隻の戦艦型神姫が主砲をリカルダに向けて発砲するのを皮切りに再び神姫たちが吼えるように声を上げて、武装を手に掲げてドッと津波のように襲いかかる。 神姫「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」 リカルダはまったく臆することなく、巨大な素粒子エンジンを全開に吹かして真正面から突撃を仕掛ける。 リカルダ「あは、あはっはは!!この程度の数の神姫でこの俺を倒せるとでも?笑わせるッ!!!」 轟とエンジンを轟かせてリカルダは燃え盛るナギナタを引っ掴んで迎え撃つ。 砂漠を砂埃を立ち上げて、真っ先に攻撃を仕掛けてきたのは、ハイスピードトライク型 アーク、ハイマニューバトライク型 イーダ、モトレーサー型 エストリル、クルーザー型 ジルリバーズのバイク使いの4神姫だった。 バイク使いの4神姫はリカルダの姿を認めると、ばっと散開し一斉に手持ちのマシンガンやキャノン砲、ハンドガンで射撃を開始する。 リカルダ「遅い遅すぎるぜ、それで速く動いているつもりか?」 リカルダは地面スレスレをホバリングするように砂山や岩を盾に攻撃を回避し、ズンと地面を強く踏みしめると、同時に地面に巨大な亀裂と穴が穿つ。 パンッと空気が爆ぜる音がしたと同時に、ハイスピードトライク型 アークの紅の武装が異常な形にくにゃっと歪みバラバラに分解されて吹き飛んだ。 □ ハイスピードトライク型 撃破 真横を走っていたクルーザー型のジルリバーズの目が見開かれる。 ジルリバーズ「なっ・・・」 ぐしゃぐしゃに潰れたトライク型の後から破壊音が衝撃波となって届く。 ドギャアアアアアアアアアン!! チカチカと何かが光ったと思った瞬間、モトレーサー型 エストリルの薄いピンク色の体が黄色い閃光に飲み込まれて爆散する。 □ モトレーサー型 撃破 ジルリバーズ「あ、あああ・・・」 彼女の眼前で瞬く間に僚機が沈む。 あまりにも速い、度外れた速さ、圧倒的な凄まじい破壊の力に彼女は驚愕し見届けることしか出来ない。前方でハイマニューバトライク型イーダが変形を解除し、大剣を構えて対抗しようと、リカルダに攻撃を仕掛けようとするが・・・ 次の瞬間、ジルリバーズの横を薄緑色の塊が軽々と宙を舞いすぐ脇を通りぬけていく。 風が唸る。 ゴキン 鈍い金属音が聞こえる。その音の正体を最初は理解できなかったが、崩れ落ちるバラバラになった自分の体がジルリバーズの視界に移ると意味を理解した。 ジルリバーズ「は・・・はや・・・速すぎる」 □ クルーザー型 ジルリバーズ 撃破 ズドンズドンズドン!! 戦艦型神姫の砲弾がリカルダの周囲に着弾するが、リカルダはまったく意に介さず無視する。 リカルダ「おいおい、なんだ?その動きは舐めているのか?あああん?的撃ちじゃねーんだぞッォ!!!!!」 リカルダは顔を歪ませて新たな敵に向かって突進する。 音速を超え、超高速の剣戟に、対峙する神姫たちはまったく捕捉しきれなかった。 悪魔型「うおおおおおおおおおお!!」 巨大な刀を携えた悪魔型が雄叫びを上げて強化アームを振りかざし突撃するが、リカルダは悪魔型が刀を振るう前に胸部を突き殺す。 □ 悪魔型 ストラーフMk-2 撃破 間髪いれずに今度は巨大なハンマーを携えた白い悪魔型とソードを構えた黒い悪魔型が躍り出るが、リカルダは副腕のレールキャノンをくるんと廻して、胸部を正確に撃ちぬく。 □ 悪魔型 ストラーフ・ビス 撃破 □ 悪魔型 ストラーフ 撃破 脇を小柄な2体の神姫が槍と剣を携えて飛び出してきたが、リカルダは2体まとめて燃え盛る紅蓮の炎を纏ったヒートナギナタで文字通り薙ぎ払った。 □ 夢魔型 ヴァローナ 撃破 □ 剣士型 オールベルン 撃破 樹脂の溶ける焦げ臭い不快な匂いを撒き散らして四散する2体の神姫。 リカルダの強烈な攻撃の様子はさながら嵐のようであった、音よりも速いリカルダの攻撃は空気を引き裂き、爆ぜ、対峙する全てのものを打ち砕く。 次々に撃破のテロップが流れる。 まるで音楽を奏でるかのようにリカルダは縦横無尽に戦場を駆け回り、刈り取るように神姫を撃破していく。 □ 犬型 ハウリン 撃破 □ 猫型 マオチャオ 撃破 □ リス型 ポモック 撃破 □ フェレット型 パーティオ 撃破 □ ウサギ型 ヴァッフェバニー 撃破 □ 騎士型 サイフォス 撃破 □ 侍型 紅緒 撃破 □ 花型 ジルダリア 撃破 □ 種型 ジュビジー 撃破 □ サソリ型 グラフィオス 撃破 春日「30、31・・・」 春日はにやにやしながら腕を組んで数を数える。 怯えた白鳥型が大剣を盾に悲鳴をあげて後ずさるが、リカルダは大剣をガードの上から叩き割った。 ズン・・・ 真っ二つに引き裂かれた白鳥型の表情には驚愕の念が浮かんでいた。 彼女は決して弱い部類の神姫ではなかった。数多の戦場を先陣切って誉高く駆け、敵を討ち取ってきた武装神姫である。 だが、違う。 こいつは違う。 一刀両断されて始めて違いに気がついた。 こいつは普通じゃない。 白鳥型「ば・・・化け物め・・・」 □ 白鳥型 キュクノス 撃破 春日「32!!総数の3分の1を殲滅した、残り68!さっさと片付けるぞ」 春日は筐体の画面を操作して状況を把握する。 リカルダ「だめだ、弱すぎる・・・お話にならない」 参加していた神姫のオーナーたちはたった数分間で100体いた神姫の3分の1が潰滅した事実にただ言葉も無く息を呑む。 いま眼前で繰り広げられた戦い、リカルダの桁ハズレの強さ。 次々となすすべもなく撃破されていった仲間たちを見て陸戦主体の残った神姫たちは完全に戦意を喪失して、武装を放り出して逃げ始めた。 カブト型「だ、だめだァ!!こんなの勝ってこないよ!」 クワガタ型「ひ、ひィいいい」 ヤマネコ型「やってられるかよ!!!」 がしゃがしゃと手持ちの武器を捨てて逃げようとした瞬間、後方からチカチカと青白い光が瞬く。 建機型「!?」 ドッガアズガズッガアアン!! 装甲戦艦型A「撃て撃て!!撃ちまくれェ!!」 巡洋戦艦型A「逃げる奴は敗北主義者だ!!!敵もろとも攻撃しろ!!!」 重装甲戦艦型A「奴を倒せば1億円なんだぞ!!断じて引くな!!後退は認めん!!」 数隻の戦艦型神姫が味方もろとも無差別に砲撃を始め、瞬く間にフィールド内は阿鼻叫喚の地獄絵図に変わった。 ドンドンッドオドドン!!ズンズウウン・・・・ カブト型「ぎゃあああああああ!!」 虎型「ウワァ!!」 丑型「いやああああああああああ!!撃たないで撃たないでェ!!!!!」 猛烈な艦砲射撃がリカルダと周囲にいる神姫たちを巻き込んで行なわれる。 戦艦型の取り巻きの戦車型、砲台型も味方を撃つことに戸惑っていたが、手段を選んでいる場合ではないと悟ったのか、一緒になって見方もろとも攻撃を始めた。 □ 建機型 グラップラップ 撃破 □ 虎型 ティグリース 撃破 □ 丑型 ウィトゥルース 撃破 □ ヘルハウンド型 ガブリーヌ 撃破 □ 九尾の狐型 蓮華 撃破 次々とフレンドリーファイヤーの表示が出ながら撃破のテロップが踊る。 瞬時に周りは地獄と化した。その光景は凄惨そのものだった。目の前で多くの神姫たちが生きたまま焼かれ、重症を負い、そして粉々に砕かれて宙を舞った。 ズンズンズン・・・・ ものすごい爆煙と砂埃で砲撃地点は黒茶色の巨大なキノコ雲が立ち上り、ボンボンと神姫が爆発する音と赤い炎が巻き起こる。 上空を数十機の航空MMSが心痛な面持ちで眺めていた。 天使型「下は地獄ですね」 セイレーン型「うわあァ・・・」 ワシ型「イカレ野郎もろとも吹っ飛ばしてしまえ!!」 ワシ型が手を掲げてファックサインをする。 ドッギュウウウム!! 戦闘機型「おぐ・・」 戦闘機型の胸部を黄色い閃光が貫き、爆発する。 □ 戦闘機型 アスカ 撃破 爆煙と砂埃の中から勢いよくリカルダが飛び出し、真っ赤に燃え盛るヒートナギナタでワシ型MMSを一刀両断で切り捨てる。 □ ワシ型 ラプティアス 撃破 リカルダ「コイツァ最高だぜ、ふ・・・恥も外聞もなく味方もろとも攻撃してくるとはなァ・・・」 リカルダは笑いながら次々と航空MMSをハエのように叩き落としていく。 □ コウモリ型 ウェスペリオー 撃破 □ 戦乙女型 アルトレーネ 撃破 天使型「このおおおおおおおおおおおお!!」 天使型の一機が、上空からライトセイバーを構えて突撃してくるが、 リカルダは最小限の動きで回避し後ろを取る。 リカルダ「はずしやがったな!まだまだガキの間合いなんだよ!」 天使型「そ、そんな!!うわああああ!!」 ズッドン!! □ 天使型 アーンヴァル 撃破 天使型の頭部を跳ね飛ばした次の瞬間、リカルダを含む周囲の航空MMSたちにむけて葉激しい強力なレーザー砲の一斉射撃が加えられる。 ビシュビシュウウビッシュウウウウン リカルダ「おわっ!!」 あわててリカルダが回避する。 ズンズンズン!! □ 天使型 アーンヴァル 撃破 □ 天使型 アーンヴァル・トランシェ 撃破 □ 天使型 アーンヴァルMk-2 撃破 □ 戦闘機型 アスカ 撃破 リカルダの回りを飛んでいた航空MMSを強力なレーザーが貫き、空中に炎 出来た光球を作る。 重装甲戦艦型「ヘタクソォ!!貴様らどこを狙っている!!」 巡洋戦艦型A「ウルセェ!てめえが撃てっていうから撃ったんだろがァ!!!」 装甲戦艦型A「畜生畜生!!」 装甲戦艦型B「ひゃっはああーーー!!!もうだめだァ!!」 巡洋戦艦型B「なにをしている攻撃の手を休めるな!!!」 またしても後方にいる戦艦型神姫の一群が味方もろとも巻き込むのも承知の上で砲撃を加えてきたのである。 1度ならず2度までも、味方を巻き込む非道な攻撃を行い続ける神姫たちに観客たちはブーイングを鳴らす。 観客1「お前らさっきからナニやってんだよ」 観客2「このクズヤロウ!!さっさとしとめろ!」 観客3「誤爆誤射ばっかりやんてんじゃねーんだぞ!!このダボォ!!」 観客4「こいつらさっきから味方撃ちしかしてねえーーーーー」 観客5「なにがしてーんだよ!!このクソヤロウ!!」 グラスやゴミをフィールドにいる戦艦型に向かって投げつける観客たち。 オーナー1「うるさい!野次馬ァ!!」 オーナー2「黙れ黙れ!」 オーナー3「どーしようが俺たちの勝手だろ!」 オーナー4「戦いに誤射誤爆はつきものだろが・・・ボケが!」 オーナー5「装甲戦艦!!副砲撃て!!!あの野次馬連中を黙らせろ!!」 装甲戦艦型B「了解、モクヒョウ カンキャクセキ 撃ちかたーーーーーーーーーはじめ!!」 あろうことか、戦艦型神姫のうちの一隻が観客席に向かって副砲で発砲しはじめたのである。 ズンズンズズン!! 観客1「うわあああああああ!!撃ってきたぞ!!」 観客2「キャアアアアアアアアア!」 観客席の2階の中央のテーブルに砲弾が命中し、料理が爆発して飛び散る。 ドガアアアン!! 2階の観客席で春日たちの戦いを観戦していた神代の顔にべちゃっりとケーキのクリームが降りかかる。 脇に立っていたルカが悲鳴をあげる。 ルカ「きゃああ!!マスター大丈夫ですか!!」 神代が顔に付いたクリームを手で拭き取り舌でぺろっと舐めて片つける。 神代「大丈夫だ、問題ない」 バトルも観客席も戦艦型神姫の無差別な艦砲射撃で大混乱になる。 司会者の東條があわててマイクで放送を行なう。 「観客の皆さんはフィールド上の神姫にモノを投げないでください!!フィールド上の神姫は観客の皆さんに攻撃しないでください!!危険です」 フィールドにいる戦艦型が反論の激を飛ばす。 巡洋戦艦型A「最初に攻撃してきたのはアイツラだろ!!これは正当な反撃行為!自衛のための防衛行動だ!!」 装甲戦艦型B「戦艦に喧嘩売るとは上等じゃねえか!!ぶっ殺すぞ!!!!」 観客3「こいつらなんとかしろよ!!」 観客4「危ない!!危ない!!危ないよ!!」 観客5「おまえらは一体誰と戦ってんだ!!このボケカス!!」 春日はアッハハハと大声を上げてパンパンと手を叩いて喜ぶ。 春日「すばらしいこれこそ混乱だ!!戦場に混乱はつきもの!!最高じゃないか!!」 リカルダ「さあて・・・と残りはC集団のみ、ちゃっちゃと終わらせてやろう」 リカルダはヒュヒュンとナギナタを振り回し、突撃する用意に移る。 戦艦型神姫の一群と戦車型、砲台型が多種多様な砲口をリカルダに向ける。 戦車型A「パンツァー1より全パンツァーへ、敵は高速戦闘に特化した航空MMSだ、対空榴弾装填!!穴だらけにしてやれ」 戦車型B「パンツァー2了解」 戦車型C「パンツァー3了解」 戦車型D「パンツァー4了解」 砲台型A「砲撃モードに移行!焦るなゆっくり狙って確実に当てろ!」 砲台型B「畜生!ブチ落としてやる」 砲台型C[負けネーゾ] 重装甲戦艦型「全艦、全砲門開けェ!!火力で磨り潰せッ!!!!」 巡洋戦艦型A「火力とパワーはこちらの方が上だ」 装甲戦艦型A「一億円は俺のものだ」 巡洋戦艦型B「くそったれ、やってやる」 装甲戦艦型B「蜂の巣にしてやる」 ギラギラと目を光らせる大砲を主兵装備とする武装神姫たち 。 戦艦型神姫は巨大な体に据付けられた主砲をゴリゴリと動かす。一撃でも命中すれば神姫を粉々に粉砕できる強力なレーザー砲を搭載し、全身に対空機関砲とミサイルを装備している。単純な火力だけでは戦艦型神姫は最強クラスの戦闘能力を有する。また分厚い装甲に守られ、撃破するのは非常に困難だ。 戦車型神姫は戦艦型とはいかないまでも、強力な戦車砲とそれなりの厚い装甲を備えている。また何台かの同型の戦車型とコンビを組んで安定している。 砲台型もがっしりと地面に腰を下ろし、砲撃モードに移行し、優秀なFCSによって高い命中率と速射性能を有した滑空砲を搭載し待ち構える。 大型の戦艦型神姫、中型の戦車型、小型の砲台型のバランスの取れた鉄壁の布陣で、リカルダを待ち構える20機あまりの重武装の神姫たち。 リカルダとは対照的に、機動性を完全に最初から捨てて、がっしりと待ち構える神姫たちに隙はなかった。 こいつらは、味方ですら遠慮なく攻撃する下種だ。だが、その分勝つことには躊躇せず破壊的なオーラを纏っていた。 間違いなく強敵、そう感じ取った春日は内心、ほくそ笑んでいたが、命令を下す。 春日「大砲屋風情が調子に乗るなよ・・・リカルダ!!遠慮はいらん!!攻撃しろ!」 リカルダ「イエス、イエスマイマスター」 ぐっと身を固めるリカルダ。 さっきまで野次を飛ばして騒いでいた観客たちも一斉に押し黙る。 そしてひそひそと話し声がもれる。 観客1「まさか本当にあの砲火の前に突っ込むんじゃないよな?」 観客2「ありえんだろ?あの完璧な布陣になんの策もなしに突っ込むのは自殺行為だ」 観客3「あの陣形は点や線の攻撃なんて生温いものじゃない、面での攻撃だ」 観客4「面制圧か・・・この猛砲撃を掻い潜って奴らを殲滅できるとしたら、文字通り化け物だ・・・そんな神姫がいるのか?」 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>[[]] 前に戻る>「敗北の代価 10」 トップページに戻る
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最強って何かね ―――――――――――― ☢ CAUTION!! ☢ ―――――――――――― 以下の御作品を愛読されている方は先に進むことをご遠慮ください。 武装食堂 キズナのキセキ 深み填りと這上姫 場合によっては意図されていない、悪い方向に読み取られる可能性があるため、閲覧をご遠慮頂くものです。 残虐・卑猥な行為などが理由ではありません。 強いて言うならばコタマがマシロに腹パンされる程度の残虐さです。 ネタバレを含む場合があります。 また神姫や固有名称を(無断で)お借りしています。 登場はしません。 尚、TVアニメ武装神姫 第11話「今夜決定!最強神姫は誰だ!?」のネタバレを少し含んでいます。 茶室に集まった私とメル、コタマ姉さん、マシロ姉さんでアニメの次回予告まで見終えて、コタマ姉さんが大きなあくびをした時だった。 テレビを消したメルは唐突にこう問うた。 「でさ。実際はどうなのさマシロ姉。今の最強の神姫って誰なの?」 ◆――――◆ 「言うまでもないでしょう。一番は公式戦で優勝経験のあるアーンヴァル型アルテミスかストラーフ型のビクトリア(ヴィクトリア?)。二番は――名前は忘れましたが、あの世界二位(笑)のエウクランテでよいのではないですか」 「マシロ姉さんが(笑)とか使わないでください。キャラが崩れます」 「そーじゃなくてさ。ほら、マシロ姉だってそのアルテミスとほとんど互角だったでしょ。非公式戦も含めて、誰が最強かってこと」 メルの言うバトルというのは、あれはマシロ姉さんが私たちを特別に、対アルテミスさん戦に招待してくれた時だった。 強い神姫の非公開でないバトルの観客席はいつも早い者勝ちの超満員で、初めて生で見た武装神姫の頂点クラスのバトルは思い出しただけでも武者震いしてしまう。 アルテミスさんの十八番『先々の閃』を真っ向から迎え撃ったマシロ姉さんの技はなんとビックリ! 私の『ブレードジェット』を使った突進だった。 といっても二人の激突は文字通り目にも留まらぬ速さで、それと知っていなかったら「離れてた二人が消えたと思ったら中間地点から衝撃波が出た」ようにしか見えなかったのだろうけど。 あの時のバトルは大接戦で、早い段階で十二の騎士のうち半数くらいを落とされていたマシロ姉さんが惜しくも負けてしまったけど、身近にいる信じられないくらい強い神姫の一歩も譲らない戦いに私は大きな歓声と拍手を送ったのだった。 「マシロ姉だけじゃなくて他の『デウス・エクス・マキナ』とか、世の中には隠れた強い神姫がたくさんいるんでしょ。ぜ~んぶひっくるめて、誰が最強かってこと」 「私も興味あります。実はマシロ姉さん、最終的にアルテミスさんに勝ち越してたりしてないんですか」 「あなた達は最強の神姫をそう簡単に決められると……まぁ、いいでしょう。簡単に『最強』という言葉を使わないよう知っておかねばなりません。コタマも良い機会です。聞いていきなさい」 眠い目をこすりながら立ち去ろうとしたコタマ姉さんの尻尾を、マシロ姉さんはむんずと掴んだ。 ◆――――◆ 「まずは――そうですね。エル殿とメル殿は勘違いをしているようですが、『デウス・エクス・マキナ』という括りはあなた方が想像しているよりずっと意味の無い、名ばかりのものです」 「だろうね」とコタマ姉さんは知った風にうなずいた。 「『デウス・エクス・マキナ』がまとまりのある集団だったら、マシロも少しは大人しくなってたろうもん」 無視したマシロ姉さんは続けた。 「そもそも『デウス・エクス・マキナ』とは、『京都六華仙』に対抗意識を燃やした誰かが、修羅の国でも似たような集団を作ろうと勝手に神姫を選んだだけ……らしいに過ぎません」 「らしい? その誰かって、『デウス・エクス・マキナ』の中の誰かじゃないの?」 メルの問に対してマシロ姉さんは首を横に振った。 「誰なのかは分かっていませんが、その線は面子を見る限り薄いでしょう。【神様が暇つぶしに作った】、【マオチャオネットワークによって生み出された】などという噂すらあるくらいですから。私もいつの間にか一人に数えられていて首を捻ったくらいです。当人への告知すら未だになく、噂だけが独り歩きして実体化を果たしてしまったような状態です。まあ、私が知る限り実力だけは十分伴った神姫が選ばれているので、見る目のない者が作った、というわけではなさそうですが」 「マシロ姉さんを含めて五人いるんですよね」 「ええ。初めに選ばれていたのは四人でしたが。私の他に、 『清水研究室 室長兼第一デスク長』ゴクラク。 『大魔法少女』アリベ。 そして後に追加で選ばれたのが『火葬』ハルヴァヤ。あと一人は知りません」 「知りませんってアンタ、そんなてきとーでいいの?」 「誰も知らないのだから仕方がないでしょう。もしかすると噂の【神様】とやらかもしれませんが」 「なんか、本当にいいかげんだね。『京都六華仙』に対抗する以前のレベルだよ。この前の【貧乳の乱】の時に遊びに来てた牡丹が六華仙の一人なんだよね。京都市だとちゃんと取りまとめ役やってるんだってよ」 「それただのヤ◯ザじゃん」というコタマ姉さんのツッコミには「修羅の国のコタマ姉さんがそれを言いますか」と適切に返した。 「いえエル殿、コタマはこれでも役に立っているのですよ。武装神姫のバトルとは端的に言えば強弱上下を決めるものですから、違法改造神姫であろうと何であろうと粛清できる実力者が目を光らせておかなければ、必ずといっていいほど犯罪に手を染める愚者が出て来るのです」 「修羅の国のマシロ姉さんがそれを言いますか」と再び適切な返しを挟んだのだけれど、マシロ姉さんには聞こえなかったらしく、話は続いた。 「私は竹櫛家を守ることのみが使命ですし、ゴクラクは水面下で怪しげな動きをしていて、ハルヴァヤは私たちのレベルから身を引いてしまっています。勿論、正体不明の神姫は言うに及ばずです。なのでこの地域が比較的安定しているのは、誰彼構わず挑まれた勝負に負けない、つまりパワーバランサーのような役割を持つコタマと、大規模かつ熱狂的なファンクラブを持つアリベの二人が表立って動いているからなのです」 「なるほど。だからこの地域では悪事が最小限に留まっているんですね」 「「「修羅の国のアルトレーネがそれを言うな」」」 三人からの一斉攻撃を受けた。 言われてみれば第n次戦乙女戦争とか名物化してるけど、私一人が悪いわけじゃないのに……。 「てことは、真面目に戦ってるアタシが実質的な統治者ってわけ? ウワハハハ、苦しゅうないぜ。オマエら頭が高いんじゃねーか?」 「タマちゃんの背が低すぎるので見下ろす形になっちゃうんです」 「誰がタマちゃんかコラァ!」 私に飛びかかってきたコタマ姉さんはしかし、空中でマシロ姉さんに尻尾を掴まれて体の前面を床に打ち付けた。ビターン! という感じで。 「にゃにしやかんたてめへ!」 鼻に深刻なダメージを負ったらしく手で押さえながら涙目になったコタマ姉さんを、マシロ姉さんは華麗に無視した。 「さて、ここで話を元に戻しましょう。真に最強の神姫とは誰か、という話でしたが残念ながら現状では特定することは不可能です。候補者をあらゆる場所から集めて天文学的数字の回数だけバトルを行ったところで優勝者は決まりません」 「死ねやぁ!」 コタマ姉さんは鼻を押さえたままドロップキックをはなった! しかしマシロ姉さんはこうげきをかわした! コタマ姉さんは再び床に落下してダメージをうけた! 「そうなってしまった原因はコタマ、あなたにあるのです」 築地のマグロのようになったコタマ姉さんを指さして断言するマシロ姉さん。 なんとなくだが、強い神姫になるためには多少の事には動じず無視できる肝っ玉CSCが必要不可欠であるような気がした。 ◆――――◆ コタマ姉さんが落ち着いてから、マシロ姉さんは改めて言い直した。 「コタマ、あなたが矛盾を作ってしまったせいで最強の神姫を決めることができないのです」 「意味が分からん。アタシが何したって? いつ、どこで、なにを」 「以前あなたは妹君と、他人のトレーニングに付き合ってやったと言っていましたね」 「んん……? ああ思い出した。ミスティのことか」 「誰? 聞いたことあるようなないような名前だけど。コタマ姉、何やらかしたの?」 「なんでやらかした前提で話してんだよ。むしろやらかされた側だっての。アタシがまだハーモニーグレイスだった時にさ、『狂乱の聖女』っていう悪者神姫がいて、ソイツを始末する旅か武者修行か何かに出てたミスティがアタシの噂を聞いて『狂乱の聖女』じゃないかって確認に来たんだ。武装が似てたらしい。んで、アタシは無敵の『ドールマスター』様だってバトルで教えてやったら、次は『狂乱の聖女』を倒すために秘密のトレーニングをするから同じハーモニーグレイスで似た武装のアタシに仮想敵になれ、って話を持ちかけられたってワケ。他にも大勢の連中がミスティの練習に付き合ってて……鉄子ちゃんもどーしてわざわざ付き合ってやるかねえ」 「コタマ姉さんが仮想敵って……その『狂乱の聖女』さん? よっぽど強い神姫なんですね」 「それが腹立たしい話でさー。だったらアタシが直接ソイツを始末してやるって乗ってやったのに――いやまあ同じハーモニーグレイスで強いヤツってんなら上下を決めておきたかったってのもあったけど――ミスティのマスターがアタシじゃ勝てないとか言いだしたんだ。筐体の中でヌクヌク温室バトルやってるヌルい神姫じゃ勝てない、ってさ。よりにもよってシスターの善意を断るどころか、『ドールマスター』をふやけた煎餅扱いだぜ? 信じられるか?」 「信じられませんね」と言ったのは意外なことにマシロ姉さんだった。 まさか調子に乗ったコタマ姉さんに同調するなんて、熱でもあるんじゃ……と思ってマシロ姉さんの顔を覗きこんでみると、風邪どころか眉間にしわをよせてコタマ姉さんを親の敵か何かのように睨んでいた。 透き通ったエメラルド色で綺麗だったはずの瞳がドス黒く変色していた。 「まったく信じられませんコタマ。妹君を守る立場にありながら、自分より強いと言われた神姫を――よりにもよって罪を犯した神姫を見逃した?」 「いや、見逃したっていうか、その時点じゃ居場所すら分かってなかったらしくて……何よ、なんでそんなに睨むのさ」 「居場所が分からなければ突き止めればいいだけの話でしょうが。妹君が何処でアルバイトをしているか知らないわけでもあるまいに。答えなさいコタマ、何故その時点で『狂乱の聖女』とやらを始末しなかった。赤の他人のトレーニングに付き合ったことで僅かでも妹君はその犯罪者と繋がりを持つことになってしまった。つまり危険に晒したということだ。仮に本当にコタマの手に余る相手であろうとも私ならばどうとでもなる。しかしあなたは何もしなかった。妹君を危険に晒したまま! 答えろコタマ! どうして何も行動を起こさなかった!」 床に拳が強く叩きつけられ、茶室全体が揺れた。 部屋の空気は凍りついたように冷たく恐ろしくなっていた。 「だ、だだだって……その……あっちにも、じ、事情があったし……た、ただの他人が手を出したら……」 私とメルはお互いに抱きつきかばい合いながら震えるしかなかった。 コタマ姉さんが怯えるほどの殺気。 レラカムイの体はもうとっくに降参の姿勢で、頭の大きな耳と長い尻尾が垂れ下がっている。 マシロ姉さんが両手をゆっくりと肩の高さに上げた。 コタマ姉さんが殺される。 制止に入りたくても体が怯えきって動いてくれない。 そして怒れるクーフランの掌は五指を開いたまま上に向けられ――。 「それで正解です。他所様のストーリーを崩してはなりません」 アメリカンジョークでも言うかのように肩を竦めたマシロ姉さんは殺気を霧散させた。 緊張が解けた瞬間、武装した私たち三人が一斉にマシロ姉さんに襲いかかったのは言うまでもない。 ◆――――◆ 「寿命が縮まった……五年分くらい」 「私もです……後でマスター経由で鉄子さんにチンコロします。絶対します」 「許してください、少々やりすぎたのは反省しています。昨日見たドラマの刑事役がなかなか堂に入った演技をしていまして、それが頭にあったものでついつい。お詫びに後でとっておきのヂェリーをご馳走しますから」 「ヂェリーごときで許せるかボケ」とコタマ姉さんは言いはしたけれど、声には全然力が入っていなかった。 私とメルの寿命が五年縮んだとしたら、殺気を直接当てられたコタマ姉さんの寿命はもって数ヶ月レベルなんだろう。 さっき自分で言ってた通りの『ドールマスター(ふやけた煎餅Ver.)』だ。 そんな私たちを見て悪びれるどころか自分の演技力に満足したらしいマシロ姉さんは、「それはさておき」と私たちの殺気を軽く受け流した。 「コタマの言った通り、他人のストーリーに口を挟んではいけません。というより、口出しできない、と言い表したほうが正しいのは分かりますね。仮にコタマがその『狂乱の聖女』とやらを倒してしまったなら話が余計にややこしくなり、妹君は非難される立場に立たされるでしょう。他にも――」 マシロ姉さんはコタマ姉さん、メル、私の順に見回した。 「あなた達とハナコ殿、そして『京都六華仙』の一人は【貧乳の乱】に参加したそうですね」 「『参加』? 今オマエ『参加』っつったか? それはアタシが好き好んで加わったみたいなニュアンスか?」 メルは静かに私の側から離れてコタマ姉さん側についた。 けれどコタマ姉さんは「アイネスはアニメじゃ谷間があっただろうがこのクソ」とメルを突き返してきた。 ああ哀れなりレラカムイ。 せめてほんの数ミリでも私の胸を分けてあげることができたら。 「さらにコタマは妹君の大学で他の学生に自分勝手な因縁を付けて、メル殿を巻き込んでの勝負の最中ではないですか」 「当たり前だ。『双姫主』だか何だか知らねーけど、鉄子ちゃんのことを『鉄子』って呼び捨てで表記しやがったんだ。鉄子ちゃんのことを呼び捨てしてもいいのはアタシと竹櫛家の連中だけだ。もう修正されてるけどさ」 プンスカ怒りながらコタマ姉さんはそう言った。 この時も鉄子さんは巻き込まれているようだけど、相手が危険じゃなければマシロ姉さん的には問題はないらしく(コタマ姉さんにイチャモン付けられた相手の方は迷惑この上ないだろうけど)、再びご自慢の演技力を発揮しようとはしなかった。 「以上で三つ、例を挙げました。共通点は『コタマが関わっている』ことです。これが矛盾を生じさせてしまっているのです」 「矛盾? 何がですか?」 「先に言ったでしょう。コタマが矛盾点となっていると」 「いえ、ですからその前に……」 「何の話だったっけ?」とメルが私の言いたいことを言ってくれた。 「最強の神姫は誰かと聞いたのはあなたでしょう。そして結論を出すことが不可能であることと、その理由がコタマが矛盾を発生させたためであること。具体例を挙げて理解しやすいよう説明していたのに根本を忘れるとは何事ですか」 「「「誰のせいだ」」」 ◆――――◆ 「アタシが矛盾点? 意味わからん」 「では順を追って説明しましょう」 もうアニメを見終えてから随分と時間が過ぎていて、そろそろ朝日が昇ってくる時間になる。 怖がらせられたり暴れたりしたせいで眠気は吹っ飛んでしまっているけど、重度の疲労が重くのしかかってきている。 メルもコタマ姉さんも顔を見れば私と同じく疲れているようで、マシロ姉さんだけがすまし顔だった。 「まず『狂乱の聖女』の件。コタマはトレーニングに付き合ったと言いましたが、その場で一度でも敗北しましたか?」 「まさか。『FTD3』を使うまでもなかった。しかもそんときゃまだアタシはハーモニーグレイスだったし、今のレラカムイの体ならファーストかセカンドのどっちか片方でも十分だろうね。ま、あっちも修行で当然レベルアップしてるだろうけどさ」 「つまり『狂乱の聖女』は、そのレベルでトレーニングや専用対策を行うことで対応できる神姫ということになりますね。では次に【貧乳の乱】」 コタマ姉さんの大きな耳がピクッと動いた。 ハーモニーグレイスの胸が大きかった分が、今の平坦な胸に対するコンプレックスを加速させているのだろう。 「この一件が最大の問題です。エルメル姉妹も戦闘には加わったようですが、集団 対 集団の中で大きな戦果を上げたのはコタマ、ハナコ殿、そして『京都六華仙』が一人、『遊びの達人』だったそうではないですか」 「それが何さ」 「『京都六華仙』とは私を含む『デウス・エクス・マキナ』の元になった存在であり、京都市の頂点なのです。通名が『遊びの達人』ならば読んで字の如く、純粋にお遊びに興じただけかもしれませんが、なぜコタマ如きに肩を並べているのですか。『京都六華仙』ならば事のついでにコタマにも灸を据えるくらいの気概を見せて欲しいものです」 「レラカムイパンチ!」 コタマ姉さんの短い右腕から繰り出されたストレートはしかし、マシロ姉さんにあっさりはたかれた。 「最後に目下進行中の、コタマが一方的に喧嘩を売った勝負。『双姫主』なる称号を持つ相手だそうですが、妹君にこれ以上恥をかかせないためにも当然、勝つのでしょうね?」 「知らんよ。作者に訊け」 「はぁ……」とマシロ姉さんはこれ見よがしにため息をついた。 「情けない。ここで『作者のストーリーなんざ知ったことか。楽勝だ』くらいの事を言えないのですか」 「オマエ、それさっき自分で言ってたことと矛盾するじゃねえか。他人のストーリーに口を挟むなっつったのを忘れたか、この健忘症め」 「あ、『矛盾』」 メルがそう呟いた時、マシロ姉さんは我が意を得たりとばかりに人差し指を立てた。 「その通り、矛盾しているのです。コタマは私たちの地域におけるパワーバランサーでありながら、勝つか負けるかフタを開けてみなければ分からない状況にあります。メル殿はともかくとして、妹君はなぜコタマより確実に強い私に声をかけて下さらなかったのやら」 「なんだ、一緒に遊びたかったのなら素直にそう言えばよかったのに。この恥ずかしがり屋さんめ」 「クーフランパンチ!」 並のスペックじゃないマシロ姉さんの右ストレートはコタマ姉さんの防御を軽く突き破って、みぞおちに食い込んだ。 口から形容し難いものを吐き出したコタマ姉さんは前のめりに倒れ、再び築地のマグロになってしまった。 安らかな眠りについたコタマ姉さんのことを意に介さず、マシロ姉さんは話を続けた。 私は竹櫛家が恐ろしい。 「他にも地理的な矛盾なども数えきれないほどあるのですが、そこには目を瞑りましょう。修羅の国、京都、北は北海道から南は沖縄までお構いなく、パワーバランスが滅茶苦茶になってしまっているのです。それもこれもすべてコタマのせいで。よってメル殿の『最強の神姫は誰か』という問に対しての答えを出すことはできません。ご理解頂けたでしょうか」 「あー……うん、理解したよ」 メルの目はうつ伏せに倒れて……もとい眠っているコタマ姉さんに注がれている。 パワーバランサーをパンチ一発で黙らせるマシロ姉の存在こそ最大の矛盾じゃない? と言ってコタマ姉さんの二の舞にはなりたくないのだろう。 「それは何よりです。説明した甲斐があったというもの――おや、もうこんな時間でしたか。話が長くなってしまいましたね。ではこれにて解散としましょう。約束のとっておきのヂェリーは次の機会にお渡しします。では失礼」 立ち上がったマシロ姉さんはコタマ姉さんの尻尾をつかみ、ズルズルと引きずったまま茶室から去っていった。 ポツンと残された私とメル。 「ねえ、エル姉」 平坦な声でメルが問うた。 「結局のところさ、最強の神姫って誰?」 私に聞かれても困る。 けれど……。 「とりあえずマシロ姉さんってことにしておきませんか? それで少しは夢見も良くなると思います」 「そだね。そうしとこう」 なんだかよく分からなかったけれど、一つだけ確かなことを言えるようになった。 『最強』という言葉を気安く使ってはならない。 『15cm程度の死闘』の時事ネタ話の中で初めて事前に作文しました。 などという事はどうでもよくて、アニメの「今夜決定!最強神姫は誰だ!?」なる予告を見て、修羅の国視点で考えてみました。 もうちょっと条件を絞ると、 1.『デウス・エクス・マキナ』は、ばるかんさんの『京都六華仙』から発想をパク・・・お借りしている。すなわち強さはだいたい同等。 2.トミすけさんの『狂乱の聖女』対策内で多作品が同時にリンクしているため、最良の基準点になると期待する(という願望)。 3.主人公補正、ストーリー補正、愛の力補正、脇役補正、かませ犬補正、死亡フラグ補正 etc.・・・それら一切を排除。例えば、マシロはコタマに絶対負けない、コタマはエルメル姉妹に絶対負けない、Lv.100ミュウツーはLv.1キャタピーに絶対負けない、といった感じ。 4.他所様だからといって依怙贔屓しない(これ一番重要)。有名神姫のミスティを相手取ってもタマちゃんは意地でも勝つ。 温かい缶コーヒーを飲みつつ、これらの条件下で深く吟味した結果・・・結論を出すのは不可能ということが分かりました。 唯一の架け橋であるタマちゃんの存在が逆に、どうしても邪魔になってしまうのです。 『ドールマスター』コタマを扱い頂いた作品は4つ。 そのうち、ALCさんのエウクランテ型エニはコタマと衝突する前に戦乙女の群れに飲み込まれてしまったため、コタマ本人がちょびっとでも関わったのは実質3作品。 3作品くらいならなんとか順位を決められるんじゃないか。そう思い上がることもせずに、あくまで修羅の国に基準を置いて1つずつブロックを積み上げていったのですが、積み上げクレーン役のコタマが矛盾を抱えていてはどうしようもありません。 また、『15cm程度の死闘』という異分子を除けばどうか? は自分の存在意義が無くなるので却下(旧掲示板を開く限り不可能だと見られますが)。 まことに遺憾なことです。 もう残す手段は、彗星の如く表れた天才がスパパッとすべてのストーリーをまとめ上げ、頂点を決めてくれることに期待する他ありません。 暫定的かつ勝手に最強となってしまったクーフラン型『ナイツ・オブ・ラウンド』マシロの座を奪う神姫の登場にも期待したいところです。 ただし違法な手段で這い寄ろうとする神姫相手には、にゃーの怨念が取り憑いたマシロがなりふり構わず殺しにかかります。 それもこれも、ここまで読んで頂けた方が一人でもいらっしゃればの話ですが・・・。 ところでアニメの感想ですが、ヴァローナを愛でたい。 思い出したように出てきたハムスターもいいけどヴァローナを愛でたい。 胸が若干盛られてたような気がしたけど、それでもいいからヴァローナを愛でたい。 15cm程度の死闘トップへ
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そのじゅうよん「そして明日は笑おう」 「ティキ。いつまでもそんな所にハマってると、大好きなフィナンシェとマドレーヌがなくなっちゃうよ?」 僕は本棚の、本と本の隙間で僕に背を向けて体育座りしているティキに声をかける。 僕の部屋のテーブルの上には、ティキお気に入りの洋菓子と、温かいロイヤルミルクティーが用意してあった。 しかし当のティキの返事はと言うと、 「……要らないのですよぉ」 ……餌付け失敗、か? あの日の敗北以来、ティキは時折唐突にこんな風に落ち込む。 思い出しては、その度に自身の不甲斐なさを噛み締めている様だ。 そしてそれは僕も同じなのだけれども。 「そっ……か。じゃあ仕方ない。これは全部僕がいただくと言う事で」 僕はそう言って洋菓子に手をつけようとする。 がたっ 本棚から聞こえるその音に、僕は笑みを浮かべて手にした洋菓子を音がした方向へ差し出した。 「無理が持続しないなら、最初から素直になろうね」 「うにゅぅぅぅ~~~~ わかったですよぉ~」 しおしおと本棚から這い出てきたティキは、テーブルの上まで器用に色々と伝ってやってくると、ちょこんと音がしそうなくらい可愛らしく座る。 ティキがそうすることがわかっていた僕は、ティキが座った事を確認し、手に持った洋菓子を改めてティキに差し出す。 ティキは不機嫌そうな顔を隠すわけでもなく、黙ってその洋菓子を食べ始めた。 「……食べる時くらいは笑って食べようよ」 無駄な事は分かりきっているけど、それでも僕はティキに笑う事を薦める。 それに対し、もぐもぐと咀嚼しながらあっさりと無視を決め込んでくれた。 ……武装神姫ってのはオーナーの指示には従うものだろうに。 でも実際のところ、彼女たちにも擬似的とは言え意思があるわけだから、オーナーの全ての欲求に答える事は出来ないんだろうと僕は思っている。 感情、意思がそこに存在する限り、常に命令に従っていては彼女達自身にストレスが生じるわけで。 大体、オーナーと呼ばれるものが人間である限り、矛盾を内包しない命令を与え続ける事は出来はしない。 そんな負荷や矛盾からの安全装置として、『非絶対服従』が用意されていると僕は思っている。……あくまでも個人的な考えで、実際はそんなもの無いのかもしれないけど。 でも、もし『絶対服従』が根底に存在しているなら、神姫達にはなぜ感情があるのか? 完全に命令を遂行する為の機械でいいのなら、もちろん感情なんてものは障害にしか成りえない。 感情や意思がある事で柔軟な対応を求めるのであれば、絶対服従なんてありうるはずも無い。 しかし現実にはオーナーの命令に逆らえず、違法改造とかを受けてしまう神姫も居る訳で。 ……なんだか話がそれた。 「お……おいしいね」 無駄な努力を繰り返す僕。こういう時、女の子の扱いに慣れる人ならどんな行動を起こすんだろうか? だけど生憎と僕は、女の子の扱いに疎い一高校生で、その手合いの経験が圧倒的に不足している。付き合った女の子に一切手を出せないくらいに。 「マスタ」 「はい?」 「こういう時は黙って見守って欲しいのですよぉ」 「……ハイ」 神姫に諭されるオーナーって一体…… って、僕なんだけど。 「……………………」 「……………………」 「……………………」 「……………………」 「……マスタ、こういう時は慰めて欲しいものなのですよぉ~」 ……なんて理不尽な!! もちろんそんな事口に出したりしないけど。 「あー、なんて言うか、元気出せ?」 「心がこもっていないですぅ」 「ソンナコトナイデスヨ、マゴコロイッパイデス」 「なんで棒読みですかぁ?」 「それはね、牛肉が入っているからだよ」 「そんな昔の、しかもマイナーなCMネタ、誰もわからないですよぉ?」 「そんなツッコミが素敵なキミにはこのお菓子をあげよう」 「元々テーブルにあったのですよぅ」 「いやぁ、やっぱりフィナンシェはセブ○イレブ○に限るよね」 「誤魔化すにしてもミエミエ過ぎですぅ」 「イヤだなぁ、ティキ。まるで僕に誠意が無いみたいじゃないか」 「今まで一緒にいて、今が一番誠意が感じられないですよぉ!」 「それはきっとティキの瞳が曇っているからさ」 「今曇っているのはきっとマスタの性根ですぅ!!」 「そこまで言うと僕が可哀想でしょ?」 「自分で自分のことを可哀想って言っても説得力無いですよぉ!?」 「そうだね。……だからティキも自分が可哀想だなんて思っちゃダメだよ」 「――!!」 何も言えないティキ。 言葉を続ける僕。 「負けた事に対する悔しさも、それに囚われてるばかりじゃ意味が無いよ。だから…… だから僕達はその悔しさを糧にしよう。時には立ち止まることも、間違いじゃないけど、ただ失敗や敗北に落ち込むだけじゃ僕もティキもそこで終わっちゃうから」 僕をジッと見つめるティキに、ぎこちないながらも精一杯の笑顔を浮かべて。 「だから、我慢しないで今はいっぱい泣いてさ、そして明日からはまた一緒に前を見ようよ。ね?」 ティキは僕を見つめたまま、ぽろぽろと涙をこぼす。 そしてそのまま顔をクシャクシャにして、わあわあと声をあげて泣き出した。 僕はそんなティキの頭を、指でそっと撫でる。 その僕の指を両の腕で抱きしめ、ティキは泣き続けた。 ひとしきり泣いた後、ティキは僕に照れた様に笑いかけ、そして何も言わずに洋菓子を口にする。 それを見て僕も照れ笑いをすると紅茶をすすった。 紅茶はすでに冷め切ってしまったが、それでも悪くないと僕は思った。 終える / もどる / つづく!
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前へ 先頭ページへ 次へ 第十五話 上空戦 「ねえ」 弾頭のハッチが閉められようとする間際、見送りに来た興紀にクエンティンは訊いた。ミサイル垂直発射管室には理音も来ていた。 「なんだ」 興紀はハッチの中を覗き込み、そこに宇宙飛行士のように横向きに座っているクエンティンをみる。 「ありがとね」 「なんのことだ」 「会議室のこと」 興紀は、ああ、と合点がいったように口をあけた。「そんなことか」 エイダがいなければアーマーンは動かない。通常兵器ではおそらく有効打さえ与えられないであろう島レベルの規模を誇る要塞を止めるには、それが一番効率的であろうことは、あの場にいた誰もが分かっていた。発案した執事はまさに断腸の思いであったろうし、興紀の決定がもう少し遅ければ理音だって反対していた。 興紀は、執事があの場でエイダの立場を知る前に発案していたとおりに進めることを押し通した。それは結果的に、エイダ、そしてクエンティンの命を救うことになった。 「勘違いするな」 と、興紀は言った。 「まだピクリとも動いていないただの張りぼてのために、貴重な主戦力をむざむざ自分で潰すなどという愚挙をおかしたくなかっただけだ」 それが建前であることはもはや周知の事実で、興紀は神姫を道具として考えていればこそ、その愛着は人一倍であった。ずっと後になってから分かったことだが、彼ほど道具としての武装神姫を愛した人間はいなかった。ただ、それが武装神姫自身の幸せとはかみ合わなかっただけなのだ。そんな理由でむざむざ廃棄されていった数十体の過去のルシフェルを正当化しようなどとは誰も思わなかったし、むろん興紀自身も許されようとは考えていなかったが。 「それでも、ありがとう」 横倒しになったままクエンティンがあらためて礼を述べると、興紀は一瞬だが、顔をほのかに赤くして視線をそらし、自分の手で最後の垂直発射ミサイルの弾頭ハッチを閉めた。今のところは、クエンティンが興紀と対面したのはそれが最後である。 理音には部屋で話してから、一言も言葉を交わさず、別れの挨拶も言わなかった。また会えると確信していたからだ。 真っ暗になった弾頭内の急造スペースで、クエンティンとエイダは静かに出撃の時刻を待った。完全に洗浄されていたが、炸薬の匂いはほのかに残っていた。潜水艦のレーダー経由で近海に意識をはせると、EDEN本社所有のフェリーが数隻、同じように待っているのが分かった。 「回天に乗った兵士も、おんなじ気持ちだったのかしらね」 九十年以上前にこの国を守るため魚雷に乗って命を散らしたものたちを、知識の上でしか知らないクエンティンは想った。きっと彼らのおかげで、自分たちには帰りの分があるのだと脈絡も何もない感謝をした。 「生きて帰るわよ、エイダ」 ――――。 エイダは何も答えなかった。 「・・・・・・エイダ?」 カウント、ゼロ。 轟音とともに凄まじいGがかかった。ミサイルが発射された。数秒の海水を切り裂く浮上音の後に、海面を飛び立つスプラッシュ、自身のレーダーで周囲を意識すれば、島上空で降下するための神姫たちを三体ずつ乗せた何発ものミサイルが、本来の体当たりの役目も帯びたダミーのミサイルと織り交ざりながら自分達に続き、フェリーからは鶴畑の私設軍と神姫たちを乗せた揚陸ボートが躍り出ている。 先陣と梅雨払いはクエンティンたちの役目であった。 ミサイルは高度二千フィート、およそ六百メートルの低空で水平飛行に移行し、安定翼を展開する。みるみる島への距離が縮まってゆく。飛行船はまだ飛び立っていない。 いや、今動き出した。 「ギリギリか!」 余裕の無いのはいつものことだ。クエンティンはみずからを落ち着かせる。 後続のミサイルの一発がいきなり爆発した。 “島の迎撃レーザーシステム作動を確認。弾頭部破棄。シールド全開” 「了解!」 クエンティンはバースト。全身からほとばしるエネルギーの圧力はそれだけでミサイルの弾頭カバーが飛ばした。彼女はふきっさらしになる。すかさずシールドを展開。直後シールドにスパークがはしる。迎撃レーザーが当たった。普通の神姫ならば瞬時に消し炭と化すほどの高出力な代物である。センサーやコンピュータのある弾頭が脱落したためクエンティンを乗せたミサイルは一瞬よろめいたが、はるかに高性能なエイダがそれを肩代わりすることでミサイルはその時点から超高機動の戦闘機に豹変した。 地平線の上にぽつんと島が見えはじめた。 “レーザー砲台を確認、総数四。ハルバード・デバイスドライバ、インストール完了” クエンティンの右腰で空間圧縮が解かれ、長大な砲が顕現する。ヘッドギアから遠距離照準用のスコープが下がる。無望遠ではいまだ点にしか見えない要塞島がレンズいっぱいに映し出され、そこでせわしなく明滅している四基のレーザー砲台もはっきりと確認できた。 ハルバードを腰だめに構える。弾体加速ターレットがプラズマをほとばしらせつつ加速のための電力をチャージする。 一番左の砲台にロックオン。そのままおもむろに撃った。 空気の摩擦による炎の飛行機雲を引きながら、超音速でタングステン製の針状弾が射出された。カウンターマス代わりの余剰電力が台尻のフィンから青白い火花となって散る。 きっかり一秒のスパンを置いて、左端の砲台が根元から引きちぎられるように吹き飛んだ。 残り三基の砲台も排除したとき、すでにアーマーンは彼女らの真下に広がっていた。 全員がミサイルを排除し、クエンティン以外は空挺部隊よろしくHALO降下を行う。本来のHALO降下ははるかに高空から敢行するものだが、身長十五センチの神姫たちにとっては二千フィートでも十分な高高度だった。ファントマ2アタッチメント――無骨なバックパックとLC3レーザーライフル並みの図体をもつ大口径機関銃を引っさげて、髪の毛も口もなく眼窩さえ開いていない頭で、白、黒、あるいは肌色一色のボディをしたMMSネイキッドの軍勢は、アーマーンの各地に分散して下りていった。後ろを振り向けば、妨害攻撃のなくなった海面を、白い波を引きながらそろそろと上陸に向けて侵攻する神姫と人間の混成部隊が見えていた。先陣を切るのはビックバイパーアタッチメントを纏ったルシフェル、そしてアージェイドイクイップメントのミカエル、ファントマ2アタッチメントを二セット装備してさらに全方位ミサイルポッドを背負ったジャンヌである。 クエンティンは前に向き直る。島上空を離れつつある数機の飛行船が目に止まる。全体を渡せば見えるだけで百機は浮遊している。ヘリコプターくらいの大きさの一機の中に果たして、何百というあの一つめどもが格納されているのだろうか。 何百いようが関係ないか。クエンティンは手に力を込める。これすべてがクエンティンに割り当てられた獲物なのである。ただ一つ救いがあるとすれば、飛行速度が鈍亀であることだった。 まずは島を離れてゆくものに狙いを定め、全速力でダッシュ。すると幾重ものオレンジ色の光跡が付近の飛行船から放たれ、クエンティンに殺到した。迎撃用の機銃である。用意できるものはしっかり乗っかっているな、と面倒そうに思いながら、弾幕の中を突っ切ってゆく。 西北西、日本側に向けて飛び立っている一団がもっとも遠いため、クエンティンはそこから料理することにした。 飛行船の真正面に陣取る。 “ファランクスのデバイスドライバ、インストール終了。使えます” ハルバードと同じように右腰に機関部が顕現する。こんどは長身の砲ではなく、短砲身の発射口が五つ並んでいる。ぐんぐんせまる飛行船の鼻先に狙いをつけ、クエンティンは撃った。 ブゥーンというモーターの回転するような音がして、丸い弾痕が飛行船の船首におそるべき速度で増えだした。数秒ほどそのまま撃ち続けていると、飛行船の動力部を貫通したらしく、斜め後ろから爆炎を上げてよろよろと墜落していった。 中から生き残っていたラプターが二十体以上も脱出して、クエンティンへ飛んでくる。これは彼女には予想外であった。ブレードを振り回してすべて切り伏せ、やっとのことで二機目に狙いをつけたが、今度はそこからラプターよりも小さな戦闘機がイナゴの大群を思わせる、反吐が出そうな数で飛び立ってきた。 “無人戦闘機モスキートです。ロックオンレーザーの使用を推奨します” クエンティンは再びダッシュ。視界のモスキートいっぱいにロ ックオンシーカーを重ねる。 発射。針ほどの細さに分割されたレーザーがシャワーのように降りかかり、モスキートを一匹残らず駆除する。先ほどの飛行船を撃破したときに大まかな構造を把握していたので、今度は動力部にもっとも近い装甲版にガントレットを打ち込む。構造材といくつかのラプターと一緒に、エンジンが圧壊。脱出路を作るまもなく数十体のラプターは運命をともにした。 だめだ、これでも効率が悪すぎる。振り返れば途方もない数の飛行船が残っている。第二団が発進をはじめている。 「エイダ、こいつらまとめて墜とすのに、いっちばん簡単なやり方教えて」 “了解。あと十秒ほどお待ちください。その間に飛行船団の中心に移動してください” クエンティンは言われたとおりにする。二十メートルほど急上昇し、すぐ下に飛行船団を臨みながらその編隊の中心へ、青白い軌跡を引いて飛ぶ。そして、その中でも一番真ん中に陣取っているであろう飛行船の上甲板に着地する。見渡せば全ての飛行船が全周に広がっている。 着地と同時にエイダが、 “ベクターキャノンの使用制限解除完了。ユニット展開開始します” と宣言するやいなや、クエンティンの頭脳内に操作方法がダウンロードされた。方法どおりに、両足を甲板に踏ん張る。 “システム、ベクターキャノンモードへ移行” 両腕を掲げる。そこに空間圧縮が解除され、ひじから先の三倍ほどある開放型重粒子砲身が装備される。 続けて、頭の真横から背部にかけて一気に圧縮解除、ファントマ2アタッチメントのバックユニットを思わせる巨大なエネルギージェネレータが出現した。 “エネルギーライン、全弾直結” 異常に気づいたらしく、周囲の飛行船の機銃がいっせいにこちらを向く。、相打ちも辞さない必死さで、狂ったように目もくらむほどの集中射撃が始まった。オレンジ色の火の玉が前から後ろから殺到する。しかしクエンティンは動かない。だまってシールドを全集展開し、機銃弾をすべて受け止める。みるみるシールドエネルギーが削れてゆく。 “ランディングギア、アイゼン、ロック” バックユニット下部から図太いアクチュエータが伸び、クエンティンはそちらに寄りかかる。トライポッドの安定性を獲得。アクチュエータ基部横から火花が散り、片側三本、計六本のアイゼンワイヤーが甲板へ深々と打ち込まれる。エイダはワイヤーを通じて足元の飛行船をハッキングし、タービンエンジンを制御装置ごと乗っ取った。 そして、砲身となった両腕の前方の空間圧縮が解かれ、六つのライフリングサテライトが正六角形状に浮かび上がる。さらに、サテライトと両腕の間の空間、つまりクエンティンの体の前の空間が今までにない大出力で連続圧縮をはじめた。 “チャンバー内、正常加圧中。ライフリング、回転開始” ライフリングサテライトがゆっくりと周回しはじめる。 周回速度はぐんぐん増してゆき、ついには目にも留まらぬスピードで一個のリングになった。 その間にも機銃は鳴り止まず、シールドは一瞬たりとも休められない。 「エイダ、まだなの!?」 “発射可能まであと六秒” シールドエネルギーが残り少ない。代わりにキャノンのエネルギーゲージが溜まってゆく。この六秒はクエンティンにとって最長の六秒になった。 早く! 早く! 早く! シールドエネルギーが切れる直前、ゲージが溜まった。 “撃てます” 冷静に、エイダは言った。 「いっ・・・・・・けぇー!」 連続圧縮を続けていたチャンバー空間が解き放たれる。一対の開放型砲身と六つのライフリングサテライトにより、膨大なエネルギーベクトルがまとめて真っ正面に向けられた。 圧縮から解き放たれた重金属粒子の奔流が、一本の光条となって撃たれた。それはクエンティンが立っているもののすぐ隣にいた飛行船をやすやすと貫通し、その奥にいた船も貫通し、さらにその奥に浮かんでいた船をもぶち破り、なお減衰されず直進した。 一番端っこの飛行船まで撃ち抜いたところで、エイダは足元の飛行船の左右にあるタービンエンジンを、それぞれ逆方向に全力運転させた。飛行船はその場でクエンティンごと回転をはじめる。 ぐん、と、いきなり光条が右に動いた。撃破された飛行船列を呆然と眺めていた船たちが、驚く間もなく横薙ぎにされ、上半分と下半分が泣き別れた。 それはまるで巨大な粒子ビームの刃であった。クエンティンが一回転し終えたとき、飛行船は一機も残っていなかった。ただいくつもの炎を噴いた塊が、ゆっくりと落ちていくだけだった。 役目を終えたベクターキャノンは、圧縮しなおされることなく、そのままばらばらと脱落した。 “試作品のため、ユニットの耐久限界を超えました。もう使えません” クエンティンは足元の飛行船にお礼のガントレットをぶち込んで、地上へ降下した。飛行船の残骸で押しつぶされたまぬけな空挺部隊はいなかった。残骸が全て落ち切ってから、地上部隊は上陸を開始した。 つづく 前へ 先頭ページへ 次へ
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第1部 戦闘機型MMS「飛鳥」の航跡 第7話 「轟兎」 ガチャガチャと武装をカチ鳴らせながら、何十体かの完全武装の武装神姫たちが砂地を歩く。 チーム名 「定期便撃沈チーム」 □犬型MMS 「クレオ」 Bクラス オーナー名「池田 勇人」♂ 22歳 職業 商社営業マン □天使型MMS 「ランジェ」 Aクラス オーナー名「大村 清一」♂ 25歳 職業 SE □イルカ型MMS 「ルーティ」 Bクラス オーナー名「川崎 克」♂ 19歳 職業 大学生 □エレキギター型MMS 「トリス」 Bクラス オーナー名「島本 雅」♀ 21歳 職業 フリーカメラマン □ヘルハウンド型MMS 「バトラ」 Bクラス オーナー名「合田 和仁」♂ 15歳 職業 高校生 □戦乙女型MMS 「オードリ」 Sクラス 二つ名 「聖白騎士」 オーナー名「斉藤 創」♂ 15歳 職業 高校生 □忍者型MMS 「シオン」 Aクラス オーナー名「佐藤 信二」♂ 19歳 職業 専門学校生 □サンタ型MMS 「エリザ」 Bクラス オーナー名「橋本 真由」♀ 17歳 職業 高校生 □騎士型MMS 「ライラ」 Aクラス オーナー名「橘田 和子」♀ 16歳 職業 高校生 □マニューバトライク型MMS 「ミシェル」 Sクラス 二つ名 「パワーアーム」 オーナー名「内野 千春」♀ 21歳 職業 大学生 □天使コマンド型MMS 「ミオン」 Bクラス オーナー名「秋山 紀子」♀ 16歳 職業 高校生 □フェレット型MMS 「スズカ」 Bクラス オーナー名「秋山 浩太」♂ 19歳 職業 専門学校生 □ウサギ型MMS 「アティス」 Sクラス 二つ名 「シュペルラビット」 オーナー名「野中 一平」♂ 20歳 職業 大学生 □蝶型MMS 「パンナ」 Bクラス オーナー名「田中 健介」♂ 19歳 職業 高校生 □剣士型MMS 「ルナ」 Aクラス オーナー名「吉田 重行」♂ 28歳 職業 電気整備師 □ハイスピードトライク型 「アキミス」 Bクラス オーナー名「狭山 健太」♂ 19歳 職業 大学生 松本「けっこう集まったな」 ヴァリアのオーナの松本は満足そうな顔をする。 大村がけげんな顔をする。 大村「相手は重装甲戦艦型神姫だって?大丈夫かな?」 ランジェがつぶやく。 ランジェ「やってみなければわからないでしょう・・・これだけ神姫が揃っているんです。負けることはないですが・・・相手も襲撃は予想しているはず、まともに戦うと、ものすごい損害が出ますよ」 忍者型のシオンが首をかしげる。 シオン「戦艦型神姫ってそんなに強いのですか?私は戦ったことがないので分かりません」 ルナ「私もないですね」 パンナ「私もだけど?」 アミキス「・・・・・・ちょっと、この中で戦艦型神姫と戦ったことある人」 誰も手を上げない。 スズカ「ネットの動画や画像で見たことあるけど、実際には戦ったことないです」 エリザ「大丈夫大丈夫ーたった1機でしょ?」 ライラ「大丈夫だよね?マスター?」 ライラの問いに橘田は一瞬、目をそらしそして、にっこりと笑った。 橘田「大丈夫、みんなでがんばれば勝てるよ」 ライラ「そうか!!わかった!!頑張るね!マスター」 橘田「・・・・・・・」 マスターが神姫に嘘をつく。 橘田は戦艦型神姫の恐ろしさ、強さを知っている。本当のことを言わない。 なぜか? 答えは簡単。神姫がびびるから・・・弱った戦艦型神姫、1隻、数十体の神姫で取り囲んで集中砲火を浴びせれば倒せないことはない、ただ、こちらもそれ相応の被害はこうむる。 橘田は、多少の損害はやむを得ず、何も知らない無垢な神姫たちに戦わせることにしたのだ。 バトラ「戦艦型神姫かー図体ばかりでかいだけの神姫だろ?」 ミシェル「・・・・どうでしょうか?とにかくあの強力な大砲の攻撃を回避しないと・・・」 オードリ「大丈夫です!動けないのでありましょう?問題ないです」 武装神姫たちはまったく何の警戒もせずにスーザンに近づいていった。 スーザンがレーダーで数十体の神姫が接近してくることを察知する。 スーザン「敵神姫接近中!なんだ?こいつら素人か?まっすぐこっちに来るぞ」 西野「連中、もう勝った気でいやがる」 スーザン「そうらしいですね・・・では、教育してやるか!」 西野「戦闘用意っ!!照準はこちらに任せろ、予測射撃だ!!」 スーザンの主砲が鈍い音を立てて旋回する。 西野「2連装ヘヴィ・ターボレーザー砲、出力70%!残りは電磁シールドに廻せ」 スーザン「復唱、2連装ヘヴィ・ターボレーザー砲、出力70%!残りは電磁シールドに廻します」 西野「VLSスタンダートミサイル発射用意ッー目標はこことここだ」 西野が筐体のタッチパネルを押して座標を指示する。 スーザン「装填よし」 西野「派手にいこうぜ、スーザン・・・・・・目標、敵MMS集団ッ!!主砲3斉射ッ!!!ファイヤッ!!!!」 スーザン「ファイヤッ!!!」 ズドズドム ズドドム ズドゴンッ!! ヘヴィ・ターボレーザー砲が轟音を轟かせ主砲から吹き上がる青白い発砲炎が灰色の巨体を鮮やかに浮かび上がらす。 ルーティ「んー?」 チカチカッと水平線の向こうから何かが光った。 川崎「どうした?ルーテ・・・・」 亜光速で放たれた強烈なレーザーキャノンの光が神姫たちを青白く照らす。 なぜ青白く光るのか理解できなかった。 光のほうがさきに届き、強力なレーザー本体が後から少し遅れて届くことを知ったのは、しこたま砲撃を喰らったあとだった。 クレオは眼を見開いた。 今まで喰らった一番強力な攻撃は天使型神姫 アーンヴァルのGEモデルLC3レーザーライフルの必殺攻撃「ハイパーブラスト」だった でも今、クレオの全身を青く照らしているこの光は「ハイパーブラスト」の数倍強い光で、しかも周りにいるみんな全員が青い光で包まれている。 このことの意味がどういうことか?理解は出来たが体が動かない 恐怖で動かすことが出来ないのだ 開いた口がふさがらない。 ドッガーーーン!!キュドン!!ズドッドドム!!ボッガアアーーーン!! 神姫たちの頭上に鉄槌のごとく降り注ぐ強力なレーザーの炸裂と周辺に巻き上がる青い灼熱の炎が容赦なく襲う。 トリス「うああ!!せ、戦艦型神姫の艦砲射撃だあ!!!」 佐藤「ど、どこから撃ってきているんだ!?」 大村「ランジェ!!何をしている反撃だ!!撃ち返せ!!」 キュウウウン ドンドゴオオッム!!! 突然の強力なレーザー砲撃に神姫たちはパニック状態に陥り、逃げ惑う。 ランジェ「むちゃくちゃ言わないで!!こんな状況で反撃でき・・・あ!!!」 ゾドッムゴーーーン!!!ドドム!!! ルーティがいる辺り一面は青い炎で埋め尽くされていた。 スーザンの主砲の直撃を食らって、バラバラに吹き飛ばされるルーティ。 □イルカ型MMS 「ルーティ」Bクラス 撃破 テロップが画面に踊る。 大村「うわああああああああああ!!ルーティ!!」 ぼとぼとと焼き焦げたルーティの残骸がバトラの上に降り注ぐ。 バトラ「ヒイイイイ!!」 スズカの顔面にルーティの粉々になった頭部がボトリと堕ちる。 「う・・・うえええ・・オエエエエ」 スズカは気分が悪くなりうずくまって嘔吐した。 島本「散開しろ!!一箇所にまとまっていると危険だ!!! 橋本「だ、駄目!離れ離れになると各個撃破される!!」 ライラ「わあああああ!!」 パニックに陥り、逃げ惑う神姫たち。 スーザン「命中!!命中!!」 西野「黒煙だ・・・命中したな・・・相手の神姫は即死かな?」 スーザン「連続射撃により砲身温度上昇中」 西野「交互撃ちに変更。撃て」 スーザン「ファイヤー!!!」 ズッズウウン 青白い噴煙が放出され強力なレーザーが発射される。発射された強力なレーザーはまっすぐ一直線に伸びていき神姫たちの集団のド真ん中に着弾 周辺にいた神姫を爆風で吹き飛ばす。 ドドム、ズヅッヅウーーン バウム スーザンは砲撃をまったく休めない。遠距離から強烈なレーザー砲撃を行い続ける。 レーザー管制とマスターからの的確な砲撃指示でメッタ撃ちにする。 これが多数の強力な火砲を有する戦艦型神姫の戦い方である。 そんな戦艦型神姫に何の策もなく、真正面から戦うことは自殺行為に近い。 アティス「みんな回避してください!!直撃を食らうと一撃で粉々に撃ち砕かれます!」 アティスは機動性に優れたウサギ型神姫だ。持ち前のフットワークで巧みに砲撃を回避する。 スーザン「!?何機か砲撃をすり抜けてきます!」 バッと砂埃を立てて、砲撃を掻い潜って数機の神姫がスーザンに急接近する。 戦乙女型MMS「オードリ」とサンタ型MMS「エリザ」マニューバトライク型MMS「ミシェル」ハイスピードトライク型 「アキミス」はジグザグに動き回って砲撃をよける。 エリザ「はははーこんなのおちゃのこさいさいだよ!」 オードリ「接近して取り付けば、あの図体です。なにも出来ません!!」 スーザン「ッチ!!接近されるとまずいな・・」 西野「VLSスタンダートミサイル発射、迎撃しろ」 スーザン「VLSスタンダートミサイル発射ッ!!!!!!」 ドシュドシュウオオオンン・・・・ 垂直にスーザンの右舷と左舷から中型のミサイルが8発、発射される。 狭山 「ミサイルッ!?アキミス!!回避しろ!」 アキミス「こなくそ!!」 アキミスはトライクモードになり、ミサイルを急旋回で回避する。 エリザは急上昇して回避。他の神姫たちも散りじりになって回避する。 スーザン「ミサイル、全弾不発!!」 西野「!!スーザン!!後方より敵神姫!!」 スーザンの後ろに回り込んだ忍者型MMS「シオン」が鎌をトマホークの様に投げつけた。 シオン「はああ!!」 西野「副砲放て」 鋭く命令しながらピッと手を振る西野。 ズズズンッ!! スーザンの後部ブロックにある2連装ターボレーザー・キャノンが1門、火を放つと同時にシオンの放った鎌を打ち落とす。 シオンはものともせず、バッとスーザンに飛び掛る。 シオン「取り付いてしまえば!!その砲塔は自分に向けて撃てまい!!」 佐藤はハッとスーザンの武装に気が付く。 佐藤「よせええ!!!シオン!!!そいつはSマイン付きだ!」 スーザンは後部からポオオンと小さな筒状の物体を打ち上げる。 シオン「え・・・・」 スーザン「バカめッ蜂の巣にしてやる」 S-マイン(S-mine,Schrapnellmine:榴散弾地雷)とは100年前に第二次世界大戦でドイツ軍が使用していた対人地雷の一つを神姫サイズにした武装である。 爆薬により空中へ飛び出して炸裂する、跳躍地雷(空中炸裂型地雷)の一種で、爆発すると320~350個の極小鉄球を半径約1mの範囲に高速度で飛散させることによって軽量級の神姫を殺傷する。 鈍重な戦艦型神姫は肉薄された神姫に、このような古典的な近接防御兵器で対抗した。 ドジャーーーン!!パンパッパパアン・・・ シオンの体を無数の極小の鉄球(ボールペン球)がつら抜いた。 至近距離でまともに喰らったシオンは蓮花弁のように小さなブツブツの穴だらけになってそのままピクリとも動かずに醜い屍を晒した。 □忍者型MMS 「シオン」 Aクラス 撃破 佐藤「シオンッ!!!うわああ!!」 佐藤はボロ雑巾のようになったシオンを見て絶叫する。 ぐちゃぐちゃになったシオンの残骸を見てエリザの顔から笑みが消えた。 エリザ「あ・・・いやあ・・・あああ・・」 橋本「エリザ!!!動け!!止まるな!!あ・・・」 スーザンの副砲がエリザをぴったりと照準につける。 副砲とは軍艦の備える大砲の一。主砲の補助として使用する中・小口径のもの。 ただし主砲に劣るとはいっても巨大な戦艦型神姫の副砲の威力は並みの神姫ですら、一発で粉砕するほどの口威力を有する。 スーザンは主砲の全砲門を、主力の神姫部隊に向けて砲撃し続けて、周りをうろちょろ飛び回る神姫を追い払ったり撃破するために副砲を持っていた。 西野「右舷にいるあのマヌケなツガルを叩き落せ。 スーザン「了解」 ズドオン!! エリザに向かって一直線に向かっていくレーザー弾。 マニューバトライク型MMS 「ミシェル」が叫ぶ。 ミシェル「エリザ!!」 ぐりっと強化アームでエリザの足を掴み、引き寄せる。 ズバッババンン!! 間一髪、エリザのいたところにレーザーが着弾しエリザは一命を取り留める。 ボーと口を半開きにしたまま、固まるエリザ。 ミシェル「エリザ!!!しっかりしなさい」 内野「あー、こりゃシェルショック状態に入っているわね」 ミシェル「シェルショック!?」 内野「砲弾神経症よ、友人たちの手足が一瞬にして吹き千切れるのを見、閉じ込められ孤立無援状態におかれたり、一瞬にして吹き飛ばされ殺されるという恐怖から気を緩める暇もないという状況で、感情が麻痺し、無言、無反応になるのよ」 ミシェル「・・・・・・詳しいんですね、オーナー・・・」 内野「まあ、戦艦型神姫と初めて戦った神姫はみんなこうなるわね」 ミシェル「・・・・・・・黙っていたんですね・・戦艦型神姫が強いってことを・・・」 内野は肩をすくめる。 内野「だって、戦艦型神姫がめちゃくちゃ強いっていったら、あんたたちビビって逃げるでしょう?」 にやーーーと冷たく笑う内野。 エリザ「あ・・・ああ・・・あうあうあ・・・」 ミシェルはぎゅっとエリザを抱きしめる。 ミシェル「私たちは逃げたりなんかしない!!」 凛と言い放つミシェル。 ズドドドドオン!! スーザンの主砲を喰らってバラバラに砕かれる犬型神姫。 □犬型MMS 「クレオ」 Bクラス 撃破 ミシェル「クレオが!!」 スーザン「命中!!命中!!」 西野「ふん、雑兵どもが!!あの這いつくばっている神姫を狙え、低く狙え、地面ごと抉り飛ばせ!!」 ライラはうっすらと眼を開ける。 地獄だった・・・バラバラに吹き飛ばされたルーティだったものの残骸がブスブスと音を立てて散らばり、地面は艦砲射撃で穴だらけ、さきほどの砲撃でクレオは吹き飛んで焼き焦げた何かがバラバラと地面に落ちてくる。 両足を失った天使型MMSの「ランジェ」が獣のような声で啼いている。 ランジェ「ギゃアアアアアアアアアアアアッ!あ・・・ああ・・・アアアーー・・・うあああああああああ」 バタバタと地面をのたうち回るランジェ。 それを呆然と見ているヘルハウンド型MMSの「バトラ」。半開きになった口元からは涎が垂れている。 バトラ「・・・あ・・・うあ・・・・・」 エレキギター型MMSは「トリス」は、爆風でちぎれ飛んだ自分の右腕を左手に持ってうろつく。 トリス「手が・・・手がァ・・・ああ・・・取れた・・・手が・・・」 フェレット型MMSの「スズカ」は嘔吐し続けて、地面にうずくまって動こうとしない。 スズカ「うおおおお・・おええ・・むぐ・・・おえええ」 ボチャボチャと粘質を含んだ油の塊がぶちまけられる。 その光景を見て、ライラは確信した。 自分たちは囮に使われたのだと、真正面から戦艦型神姫の強烈な艦砲射撃について何も知らされずに、ノコノコと前に出てきたのは、ミシェルたちを突破するための支援に使うための囮だってことに・・・ ライラはマスターを呼び出す。 ライラ「マスター!?マスター!!?」 橘田「どうしたのライラ?」 ライラ「・・・仲間が・・・やられました・・これ以上の戦闘は不能です」 チカチカっとまた青い光が光る。 ドズウウオオン!! 地面を抉り飛ばしてランジェがぐちゃぐちゃになって飛び散る。 □天使型MMS 「ランジェ」撃破 ライラ「・・・・・どうして、黙っていたのですか?」 橘田「大丈夫、みんなでがんばれば勝てるよっていったよね?そういうこと」 ライラ「・・・囮にしましたね」 橘田「大事なのは勝つことだから。僕に言わせれば、 勝利に犠牲はつきものですよ。ってテニプリの聖ルドルフ 観月さまも言ってるよーライラも賛同していたじゃない」 ライラははっと思いだす。 そういえばそんなことを橘田と一緒にテレビのアニメで見ていたような気が・・・ 橘田「でしょ?やっぱりさーそういうことは、実戦してみないとさーほら・・・マンガと実際は違うっていうし、行動しないとさ・・・言葉にも重みって出てこないし」 ライラは呆然と立ち尽くす。 勝利に犠牲はつきもの マンガやゲーム、映画、小説などで幾度となく使われてきた言葉。 その本当の意味を、実際に目の当たりにしたときに寒気が走った。 この言葉の意味は、・・・こういう意味だったとは・・・ スーザン「命中!」 西野「目標!!増せ一つ!次はこいつを狙え」 ライラ「・・・・・・マスター・・・」 橘田「なあに?ライラ」 スーザン「2連装ヘヴィ・ターボレーザー砲、ファイヤ!!」 チカチカっとまた青い光が走る。 ライラの顔をぼうっと怪しく照らす青い光。 ライラはなにかつぶやいたが・・・橘田はうまく聞き取ることが出来なかった。 ズズン・・・・ スーザンが目視で確認する。 西野「黒煙だ・・・命中したな」 スーザン「・・・・・・・・・敵機撃破!!」 □騎士型MMS 「ライラ」 Aクラス 撃破 To be continued・・・・・・・・ 前に戻る>・第6話 「重兎」 次に進む>・第8話 「爆兎」 トップページに戻る
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戻る TOPへ 次へ 一回戦目はシルヴィアの粘り勝ちだった。 一撃離脱を繰り返すシルヴィアと、数少ない反撃のチャンスを物にする敵マオチャオ。時間経過と共に両者に蓄積されるダメージ。三度目の格闘戦にもつれ込んだ際に功を焦った猫型が迂闊なステップを踏み、そこをマグネティックランチャーで迎撃。接近の間合いで放たれた高速貫通弾は猫型の装甲を貫いた。 敵は一回戦目から持久戦に陥った事により焦れていたのだろう。だがおれ達のテンションは最高にクールだった。御影キョウジと《ミラー・オブ・オーデアル》マスターミラーを倒す。この目標を掲げるシルヴィアは焦りが生じやすい持久戦の中でも勝利を見逃す事は無かった。 二回戦目までまだ間がある。控え室に戻り、備え付けの自販機でホットココアを購入。シルヴィアには神姫サイズのアップルティーを買ってやる。コーヒーブレイク。二人とも珈琲飲んでないけど。 神姫サイズの紙コップにアップルティーが注がれていく様を見て、おれはまた昨日の出来事を思い返していた。 ツガル戦術論 鏡の試練 後編5 エルゴのバトルフロア。バトル観戦の途中でブレイクタイム。休憩スペースに備え付けられた自販機を認める。マスターミラーに飲食出来るのか確認し、ミラーの好みに合わせてドリンクを選ぶつもりだったが、その必要は無いと彼女に言われた。 飲食が出来る神姫と一緒に食事する際は、マスターの分量を神姫に分けてあげるのが普通だ。武装神姫と言うバトルサービスが市民権を得ているとは言え、神姫と食事をするユーザーが一般的に多いわけではない。神姫用フードサービスなどは見たことは無いし、もし現実的な状況になったとしてもコスト的な観点から普及はまだまだ難しいだろう。かと言ってマスターが神姫のために人間一人前を注文しては無駄な出費が多い。そんな重箱の隅に転がる要望にいち早く応えたのが通称「ちっちゃい物研」。彼らは神姫サイズまで小型化された自動販売機の製作に着手したのだ。自動販売機の概念発祥は紀元前の古代エジプトまでさかのぼり、国内に於けるメカトロニクスの元祖は二十世紀初頭に完成されていたが、新世紀から四半世紀を余裕で過ぎた今日のテクノロジーを以ってしても紙コップ自販機の、あの『飲み物が流れた後に紙コップが降ってくる』悲劇は健在だった。 神姫のドリンクを缶で提供するにはあまりに大掛かりな投資になる。紙コップ式の選択は必然と言えた。だが前述にある悲劇の存在が技術者達の行く手を阻む。神姫達にあの悲劇を味あわせてなるものか! かくして男達は立ち上がる。だが製作は難航した。突貫作業でこさえた試作一号はとても満足の行く精度は出なかった。そして失敗の連続。いたずらに過ぎて行く時間。無力感と絶望感が男達に圧し掛かる。 男達の神姫は彼らを思いやった。 「マスター、もういいんです。私はマスターの好きな飲み物は全部、大好きですよ」 「砂糖やミルクが入ってないコーヒーでも、私、飲めますから!」 「頼れる神姫にはブラックが似合うんです! …あれ? おかしい… な」 「やっぱり… まだ… 飲めませんでした。私、まだまだ、頼れる神姫じゃないみたい… です」 男達は再び立ち上がった。何度も試行錯誤を繰り返し幾度も挫折を味わい数々の困難と逆境が彼らを襲う。つらく苦しい長期戦となった。だが男達は一人として諦めたりはしなかった。何故なら男達の目は常に未来を見据えていたからだ! そしてついに神姫サイズの紙コップ自動販売機の先行量産型が完成した。 数少ない先行量産型は大規模神姫センターに先行モニターとして設置され、そのうちの一台は製作スタッフの熱意あるプッシュにより『ホビーショップエルゴ』に設置される事と相成った。 かくして、エルゴのバトルフロアには神姫サイズの自動販売機が設置され、休憩スペースにおいてマスターと神姫が個々の好みのドリンクを片手に、今まで以上に賑わう事となったのである。 だがこのマシン設置の裏側に上記の壮絶なドラマが存在する事を、多くの人は知らない。 「私にはグレープジュースを頼む」 氷は抜きで。 神姫サイズの紙コップに黄金色のドリンクが注がれてゆく。途方も無い技術の塊とは思えないほどの手軽さで神姫サイズのグレープフルーツジュースは完成した。こんな極小サイズで精巧に動くこの筐体を初めて目の当たりにし、製作秘話を知らないおれでも製作者に最大限の敬意を持った。 大会の二回戦目は大いにてこずった。 敵の武装構成は大幅に手を加えられており、コンセプトを一言で表せば突撃兎型。武装はバズーカ、フックショット、マイクロミサイルランチャーをひとまとめにした統合武装火器を一丁装備。全身を覆う重装甲に背面高機動ユニットを装着した出で立ちのバッフェバニーによる執拗な攻撃がシルヴィアを襲った。 一個の兵器を評価する際、一般的に重視される能力は『攻撃力・防御力・機動力』の三点である。この評価はバトルステージに立つ神姫にも当てはまる。これらの要素はお互いにバランスを取り合うように存在しているのだ。『攻撃力』と『防御力』を上げれば重量がかさみ『機動力』が落ちる。『機動力』を上げるためには『攻撃力』と『防御力』を削る必要がある。『機動力』をそのままに『攻撃力』を上げるためには『防御力』を削ぎ落とさなくてはならない。云々。あっちを立てればこっちが立たずのジレンマの連鎖、トリレンマが延々と付き纏うのだ。明確なコンセプトが見えるマスターは、この限られたリソースを神姫の戦術に合わせ、三点に的確に配分しているのである。 外部電源装置、パワーユニット装着などの手段を講じればリソースの底上げが可能である。だが、攻撃力の増強はある上限を超えれば過度の武装装着と言う手法を取らざるを得なく、複数火器扱いの煩雑さが足枷となり得る。防御力の増強は装甲過剰装備による可動クリアランスの低下、及び運動性の低下を招き、結果的に攻撃力と防御力の低下につながる。機動力の増強は、パワフルな機動ユニットの制御技術と高度な射撃及び格闘能力が無ければかなわない。 明確なコンセプトを打ち立て、余りあるリソースを適切に配分しなくては強化足りえないのだ。もちろん創意工夫と取捨選択により上記の欠点を抑えつつ強化する事は可能であるが、即ちマスターの武装選択センスと神姫の高い能力無しには無し得ないパワーアップなのである。手軽に取れる手段では無い。 だが今回の相手、敵兎型の装備する武装センスと、それらを操る神姫の手腕は洗練され尽くしている。重装甲により高い防御力を実現。パワーユニット兼機動ユニットを背負う事で機動力を確保、さらに複数火器を一つにまとめる事で総重量を抑え機動力低下の懸念を解決している。総合攻撃力こそ控えめなものの、右腕に装備された統合武装バズーカ『カリーナ=アン』のコンセプトは明確である。即ち、「マイクロミサイルで撹乱しフックショットで押さえつけバズーカで粉砕する」。脅威の度合いは、限りなく高い。 こんな敵に小細工は通用しない。真っ向勝負だ。 シルヴィア、飛翔。敵の唯一の弱点である低い運動性に付け入るために、近距離射撃戦を敢行する。 ホットココアを片手に、スクリーン上で繰り広げられるバトルの戦術分析を続行していると、こちらの度肝を抜く神姫が出現した。コートを羽織った犬型。カバンやコートの中に武装を仕込む暗器使いとして分析を続けていたのだが。彼女が劣勢に追い詰められると何と発光、そしていかにも戦闘には不向きな、こう、「ヒラヒラでフリフリ」とした衣装へと変身を遂げたのだ。いや落ち着け、あれは武装換装の一形態だ、と分析を続行したが、珍妙な名乗りを可愛らしい声で述べられると、おれは口に含んだホットココアを吹き出すしか無かった。なんだあれは。理解不能。だが顔を真っ赤に染めながら変身後の前口上を述べるハウリンタイプを見れば、マスターの明確な意図が心に響く。 おれは心の中で静かに親指を立てた。 グッジョブ。 心の栄養を補給し、引き続き戦術分析を続ける。 続く 戻る TOPへ 次へ
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ざわざわ、ざわざわと、たくさんの音が交じり合った、その空間は異様だった。 あるところでは勝利の雄たけび、あるところでは敗者の怨嗟。 またあるところでは黄色い賞賛、またまたあるところでは、シリアスな議論。 合間に轟くは、火薬のはぜる音、鋼のうなる音、怒号、悲鳴。 ここは神姫センター。人の欲望渦巻く魔城……。 「マスター、ワケのわからないナレーションをいれて面白い?」 カバンから突っ込むは、凛とした声。私の神姫のタマさんである。 「ああんもう、なんかこうソレっぽいの入れたらそれっぽくなるかなーって」 なるわけないじゃないか、キミは本当にバカだな!などと再び言葉のカッターをいただく私。 タマはん、ホンマに容赦ないお方やでぇ……。 そんなわけで、私とタマさんは、通学途中の駅にあるセンターに来ている。 規模と人の入りは、平日とはいえ少なくはない、駅そのものが、別の路線への連絡駅になってるせいか、安定した集客があるらしい。 かくいう私もこの駅から別の路線に乗り換えて帰宅、あるいは通学するので、良く利用させてもらっている、ありがたや。 「それはともかく、学校帰りに一人で神姫センターって、女子高生的にはどうなんでしょうね」 「ゲーセン入り浸るよりかは多少マシなんじゃないか、タバコ臭くないし」 近場にあるゲーセンはタバコくさくていけない。この時勢、全面喫煙可ってなかなかないんじゃないかしらん。 さておき、何も漫才をしに、私たちはここにきたわけじゃない。いや、漫才は毎日してるけど。 「で、マスター、今日は何しにきたんだ」 「タマさんや。今日は新作の服があるらしいのでちょっとタマさんのファッションレパートリーを増やしに」 つまり、服を買いに来ただけなのだった。 ところ変わって、神姫用の服飾売り場。 タマさんは肩の上から服を眺める。 今回の新作は、アシンメトリーと銘打たれた逸品。 左右非対称の、斜めにカットされたスカートが特徴のドレス。 赤い生地に、黒のレースはちょっとアダルティな空気をかもし出す。 「いかがですかタマ先生。私的にはいい線いってるとおもうのですが、先生には」 コレを着たタマさんを思うかべる。おお、アダルティ、大人の女! 一方タマさん、ドレスへ視線を。お、ちょっと食いついたご様子。 「……ま、アリ、じゃないかな。キライじゃないよ」 むむ、先生的には50点より上に入った程度か、さすが、お眼鏡にかなうものはなかなかありませんのぅ。 しかし、スルーするのももったいないので、私はコレをお買い上げした。うふふ、財布が軽くなるわぁ……。 「いやぁ、センターいいなぁ、ゲーセンじゃ武装の類はあってもこういう物は置いてないからねー」 ほくほくと小さな紙袋をカバンにつっこみつつ。懐の氷河期?知らねぇなぁ! 「あれはあれでキライじゃないけどね、私は。闘いの雰囲気は、好きだよ」 ううむ、タマさんはバトルスキーであるからな。武装神姫としては正しいメンタリティなのかもしれませんが。 ちょっと、タマさんに視線を落としてみる。ちらっ、ちらっ、と私を見る私の神姫。 「……じゃー、闘いの雰囲気もちょっと感じに行きますか?」 なんとなくを装ってささやいてみる。 「……マスターがそういうのであれば、やぶさかではないな。時間もないしいこうじゃないか」 いやぁわかりやすい。 そして、バトルブース。 とはいっても、そんな長いこと歩く距離でもなく、あっという間にご到着。 おーおー、賑わってる。わいのわいのと会話と、バトルのSEが飛び交う。 スクリーンに映ってるのは、アークとアルトレーネの闘い。 足に取り付けられたホイールを生かし、機敏に動き回るアーク。手には黒い無骨なアサルトライフル。 各所のコンデンサから得られる電力を生かして、低空から攻めるアルトレーネ。こちらは細身の片手剣。 武器こそ違うものの、他はすべて、初期から付属しているパーツのみ。ほぼ初期装備で立ち回るそのさまは、なんとなく美しい。 いいなー、こういうのあこがれちゃうなー。などと、私の感想。うん、時々、男に生まれればよかったなぁ、と思わなくもない。 あ、アルトレーネが勝った。決め手は近接戦闘の読み合い。 「……あの子と、戦りあって、みたいな」 ぽそりと聞こえた、静かだけど、感情のこもった声。ほんとにバトルスキーなんだから。 んじゃぁ、いっちょ準備しようかしらん。と、カバンから、紫色の布に包まれた、細長い何かをタマさんに。 「……もってきてたんだ」 「そりゃこういうところ来るんなら、タマさんは絶対1回は戦いたいなぁと思うところであるし、もってないとねぇ」 いまいち日本語になりきれない返事をしながら、私はよいしょ、とブース内の対戦スペースへ。 「あー、指名バトルだと時間と、向こうさんの名前わからないからランダムになっちゃうけどいいかなー?」 スクリーンに、神姫の名前とオーナー名も出てたはずなんだけど、私の記憶力は鶏なみなのだ!フハハハハハ! 「……まぁ、それくらいはしょうがないか。とり頭なのは今に始まったことじゃない」 ……神姫に言われるのはクるわー。超クるわー。 空は、焼けた赤い色と、日が落ちた藍色の境界ができている。 雲の作る影と、赤い輝く太陽。ひどくキレイな光景。 空気は湿気と熱気を含んで、あまり心地いいものじゃないけど、この空を見てると、なんとなくラクになる気分。 「夕方の空が綺麗やねぇ……」 ああ、なんか清々しくすらなってきた、さぁ帰ろう。ごはんも準備しなきゃいけないし! 「……負けてここまで清々しいオーナーも珍しい気がするね。私も大概だけど」 ええ、負けました。先ほどから始めたバトルは、私たちの負けでございました。 何せ、装備は刀一本で、後は服のみ。相手からすりゃもう、ナメてんのかてめぇといわんばかりの有様。 いや、そこそこいいとこまでいったんだけどね? 「まま、そういわないで。縛りプレイで負けはよくあることさぁ。タマさんのがんばりはけなす気ないし」 刀一本でどこまで戦えるのか。そんな縛りプレイというか、ルールというか、そういうものを定めている私たち。 勝率は高くない。そりゃそうだ、空は飛べない、走れはするけど、推進装置を積んだ神姫ほど早く動けない。 身体には衣服ひとつ、あたれば致命傷。武器は刀だけ、遠距離でガン攻めされたら完封。 うん、完璧だ、勝てねーな! 「ま、私もまだまだというところだね、飛び道具ごときでこのていたらく。精進が足りないな」 ふん、と鼻息ひとつのタマさん。あなた、時々ストラーフなのが間違いな気がしますよ。紅緒さんの生まれ変わりじゃありませんこと? おかげで向上心と努力はすごいんだけど。ちなみに、この縛りを決めたのはタマさん本人です。パネェ。 「んじゃー帰ろうか。今夜は餃子にするぜー、包んじゃうぜー」 「じゃあ私はキャベツ刻みでも手伝おうか。刀の修練にちょうどいいし」 「……よ、よろこんでいいのカナ?」 帰宅後、キャベツを前にするタマさんは、ひどくシュールな図であったと、こっそり付け加えておこう。 タイトルへ 次のぐだり