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先頭ページ 次へ 目次 インターバトル0「アーキタイプ・エンジン」 「強敵」 「犬達の出会い」 「バトリングクラブ」(上) 「バトリングクラブ」(下) インターバトル0「アーキタイプ・エンジン」 涼しい秋の風が網戸を通って、彼の頬をなでた。 私はたわむれに彼の頬をなでていた空気の粒子を視覚化して追う。 くるりと彼の頭の上で回転した空気は、そのまま部屋に拡散して消えた。 彼はもう一時間ほどデスクに座りっぱなしで、ワンフレーズずつ、確かめるようにキーボードを叩く。彼の指さばきが、ディスプレイに文字を次々と浮かべる。浮いている文字。 その後ろの、ベッドの上に座りながら、彼の大きな背中を見ている。これが私。 私は武装神姫。天使型MMSアーンヴァル。記念すべき最初のマスプロダクションモデル。全世界に数千万の姉妹がいる、そのうちの一人。 パーソナルネームは、マイティ。彼が一晩考え抜いて、付けてくれた名前だ。 私はこの名前に誇りを持っている。 うーむ、と、彼がパソコンチェアの背もたれに寄りかかって、腕を組んだ。再び 涼しい風が部屋に遊びに来る。窓を見る彼。外は快晴。ついで視線に気づいて、私を見る。 彼はくすり、と微笑む。ちょっと陰のある、はにかんだ笑顔。 「おまえは、食べ物は食べられるのかな」 壁の丸い時計をちらりと見て、彼は訊ねた。私に。 「はい。有機物を消化する機能があります。99.7パーセントエネルギー化して、排泄物を出しません」 「いや、それはいいんだが」 彼はちょっと困った顔をして、私はすぐに彼の言わんとしていることを悟った。 「味も識別できます」 「そうか。良かった」 昼飯にしよう、と、彼は台所に立つ。ワンルームの小さな部屋。一つの部屋がリビングとダイニングとキッチンと、仕事部屋と寝室を兼ねる。十畳以上あるから狭くはない。 カウンタをはさんでキッチンが見える。キッチンの横のドアは廊下があり、玄関へと続く。それまでに洗面所経由のお風呂があるドアがあって、玄関に近い方にトイレのドア、と並ぶ。反対側は大きな納戸だ。 カウンタの手前には小さなテーブル。一人暮らしのはずなのに、なぜか椅子が二つある。そのことを聞いてみたら、 「セット商品だったのさ」 と、苦笑した。 いい匂いがキッチンから漂ってくる。ガスコンロの上で、フライパンが踊る。お米と、たまねぎと、玉子、そしてお肉が舞う。 ほどなくして、テーブルに大小二つの皿が置かれて、そこに金色のご飯が乗せられた。 チャーハン。私のプリセット知識が料理の詳細を再生する。 私はテーブルに座らせられて、小さいお皿のほうが手前に寄せられる。 「多いか」 「いえ、丁度良いです」 彼は微笑して、椅子に腰掛けた。 「小さいスプーンがこれしかなかった」 と、彼はプラスチックのデザート用スプーンをくれた。 「いただきます」 私はチャーハンをほお張る。 おいしい。 有機物を摂取するのはこれが初めて。私のコア頭脳に新たなネットワークが築かれているのが分かる。 「おいしいです」 私は心からそう言った。 心、から。 そう。このときに、私が生まれたのかもしれない。初めて。 私は、マイティ。 「強敵」 『不良品』の著者様に敬意を込めて。 なんてこった。強すぎる。 『きゃあああ!?』 タイプ<ゴーストタウン>バトルフィールド内において、おれの天使型MMSアーンヴァル「マイティ」は、空中にいたところを相手神姫に攻撃された。アウトレンジから一方的に射撃することで安心しきっていた マイティは、ビルの外壁を蹴たぐって「跳んで」きた敵と避ける間もなく激突。そのまま失速し地面へ真っ逆さまに落下した。 「体勢を正せ!」 おれはすかさず命令する。ダメージからではなく驚愕に前後不覚に陥っていたマイティはおれの声で平静を取り戻した。神姫スケール換算地上三メートルでマイティはウイングブースターを反転させ、下方への運動エネルギーを強制排除、墜落寸前でホヴァリングした。 頭上から脳天割らんと落ちてきた敵。巨大なアームに握られた「フロストゥ・グフロートゥ」が道路を粉砕。まるで砲弾がぶち当たったようにアスファルトの破片が炸裂する。 マイティはすんでのところで避けていた。十二分に間合いを取る。若干組み替えているとはいえアーンヴァルそのものの優秀な中遠距離戦闘性能は殺していない。離れれば離れるほどこちらにとっては有利になれる。 相手神姫は悪魔型MMSストラーフだった。武装はほぼノン、カスタムに見えるが、一目で分かる最大の特徴――今やあれは特長と呼んだほうが良いかもしれない――があった。 一本足なのだ。性格には右足のみ、悪魔型のレッグパーツを取り付けてある。左足は素体のままで右レッグパーツに添えるだけ。右のレッグパーツはバッタの足みたいな補助シリンダーが装備され、片足以上の跳躍性能を秘めていた。ビルの壁面を蹴り登りマイティのところまでやってこれた正体だ。 決して不恰好ではない。正面から対峙すれば、本当に脚が一本しかないように見えてしまう。もともとが人型であるから、どうも対戦した神姫は生理的な恐怖か嫌悪感のようなものを感じてしまうらしい。 おれのマイティも例外ではなかった。 「片輪の悪魔、か……」 おれは相手神姫とそのオーナーに付けられた通り名を思い出していた。考えてみれば通り名がつくほどなのだから、そいつはめっぽう強いか笑えるほど弱いかのどちらかでしかないのだ。あいつはまず間違いなく前者だった。 まるで神姫と会う前から示し合わせていたように、オーナーの男は左足が、無かった。 『マスター!』 懇願するようにマイティが叫ぶ。命令をしてくれというのだ。しかし、おれは有効な戦術が思いつかない。 「今ので空中も危ないと分かったはずだ。動き回って間合いを取り続けろ」 『は……、はいっ』 有効な安心が得られなかったからか、やや不本意そうにマイティは応えた。 その後もこちらの不利が続いた。動き回れば追ってくるのは近接型のセオリーだが、悪魔のそれはつかみ所の無いトリッキーな動きだった。ビルの壁を利用し、三次元的に追ってくるのだ。そのくせこちらが予測して撃ったはずの弾は例外なくかわす。避けるのではない。弾丸をはじき飛ばしたり隙間を抜けさせたり、並大抵の神姫ではできない戦術を呼吸するようにやってのける。 マイティのコンディションに焦りが見え始めた。先頭の切れ目だ。おれは彼女にアウトレンジ戦法ばかり教えてきたから、突発的な対処にはめっぽう弱い。 悪魔が隠し持っていた拳銃を二、三連射する。マイティのちょうど後ろにあるビルの外壁に当たり、マイティはおののいて急制動をかけてしまった。拳銃は命中させるための攻撃ではなかったのだ。 すかさず悪魔の右アームが背中にまわり、目にも留まらぬ速さで前方に振られた。 「いけない。マイティ避けろ!」 『えっ』 ずがっ マイティの右ウイングが叩き切られた。外壁に刺さっていたのは忍者型の手裏剣。マイティは揚力を失い、墜落した。 『あ、あ……?』 衝撃で動けなくなり、地面に転がるマイティ。 どすん。目の前に悪魔が着地する。とどめを差す気だ。逆手に握られたフロストゥ・クレインを天高く持ち上げる。 『いやぁー!』 マイティの悲鳴。 『そこまでっ。試合終了』 審判側から試合終了の合図。 もちろんおれ達は負けた。マイティはなんとかぶち壊されずに済んだ。 「マスター!」 破損した部品を修理ブースへ預け戻ってくるなり、マイティはおれにしがみついた。体が小刻みに震えている。尋常でない恐怖だったのだろう。 おれは「大丈夫だ、もう大丈夫だよ」マイティの頭をなでた。 「よう、こっぴどく負けたな」 観戦していたらしい神姫仲間の一人が寄ってくる。胸ポケットには彼のハウリンが心配そうにマイティを見つめている。 「惨めなもんさ。見てたのか」 おれは頭を掻きながら、嘆息した。 了 「犬達の出会い」 「……でよぉ? そしたらそのバカの神姫が勢い余って壁にぶつかってやんの。で、目ぇまわして、相手不戦勝」 「はぁ」 「しっかし昨日の、なんだっけ。『片輪の悪魔』は強かったよなぁ。あいつのマイティがこっぴどく負けるほど強いんだぜ? 戦ってみたいよな」 「はぁ」 「……おいシエン、聞いてんのか?」 「へっ?」 やっぱ聞いてなかったか。 オレの神姫、犬型MMSハウリン「シエン」は、あわてて直立。 「も、申し訳ありません、ご主人様。聞いておりませんでした」 「いや、別にいいんだけどよ。なに見てたんだ?」 シエンの後ろには先ほどまでこいつが操作していたパソコン。画面にはおもちゃ屋のページが開いている。なになに……? 「ごっ、ご主人様!?」 すかさずシエンがマウスを操作し、ウインドウを消す。 「おいおい、何だよ?」 「いえ、あの」 「お前にしちゃずいぶん熱心に見入ってたじゃねえか」 「そ、それは」 「いいから。見せてみろよ」 オレはブラウザの履歴を開く。 「でも」 「見せろ。命令だぞ」 その言葉には逆らえず、シエンはその場でうなだれた。うーん、ちょっと卑怯くさかったな。 最新の履歴には「ホビーショップNOVAYA……」とあった。 開いてみると、そこには、 「1/12スコープドッグ復刻版、フルモータライズエディション?」 「あう……」 三十年も前に発売されたロボットのおもちゃを、間接の一つ一つに小型動力を仕込んだ、ラジコン操作が可能なやつだった。 このおもちゃのすごいところは、完全再現されたコクピットの計器・レバーがすべてアクティブだってことだ。武装神姫とのコラボレートを見込んだ機能らしい。 「お前ぇ、こいつが欲しいのか?」 「いや、その……」 「欲しいんだろ?」 「…………はい」 シエンは顔を真っ赤にして、蚊の鳴くような声で答えた。 「なんだよ。だったら言えばいいだろ。これくらい買ってやらんこともねえぞ」 まあ、ン万ぐらいだったらこいつに出しても良いだろうな、という覚悟は決めた。今。 「でも」 「あ?」 「お値段が……」 「値段?」 オレはページを下に少しスクロールした。 「いちじゅうひゃくせんまん……」 うぐ。オレはのどを詰まらせた。そこにはオレの予想を一桁超えた額が、メタリックフォントで燦然と輝いていたのだ。 まぶしいぜ。 「いえ、いいんです。自分は別に」 オレはシエンの顔を見た。申し訳なさそうに見上げるそいつの目。 そのとき、オレの中で何かが切れた。 「買うぞ」 オレは間髪いれずに言ってしまった。なんだか知らないが、買わなきゃいけない気がしたからだ。こいつのために。 「でも」 「いや、買う。これはご主人様めーれーだ」 言葉が間違っている気がする。 「ご主人様……」 「いいんだよ。金もあるし。お前が喜ぶなら、こんくらい」 「あ、あ。……ありがとうございます、ご主人様!」 シエンは満面の笑みでオレに抱きついた。尻尾を千切れんばかりに振っている。おいおい、そんな表情初めて見たぜ? 数日後。神姫の箱を四つ合わせたくらいどデカいパッケージが部屋の真ん中に鎮座していた。 オレとシエンはパッケージの前に正座する。ごくり。おもちゃに対して固唾を呑むのはさすがに初めてだぞ。 いよいよ開封。鉄片から発泡スチロールの梱包材ごと取り出す。とてつもなく重い。きっとおもちゃのガワの中身は動力がぎっしり詰まっているのだ。下手な持ち上げ方をすればぎっくり腰になるぞこりゃ。背筋をまっすぐにして「ふんぬっ」と中身を持ち上げ、シエンが箱をおろす。適当にスチロールを外すと、出てきたのはシエンの二、三倍はあろうかという緑色のロボットだった。 オレは触ってみて重さの正体を知った。重いのは動力のせいだけではなかったのだ。 「全身金属かよ……。これホントにおもちゃか?」 シエンは尻尾をぶんぶん振り回しながら、ほあー、という顔をしてロボット、スコープドッグを見上げていた。こいつにとっては神姫スケール換算四メートル弱の巨大ロボットなのだ(作者注:倉田光吾郎氏製作、一分の一ボトムズを見上げたことのある方はそのときの感情を思い出してください)。 「あの、ご主人様」 「ああ、良いぜ。乗ってみな」 オレは説明書片手にスコープドッグのハッチを開ける。シエンを持ち上げて乗せようとしたが、 「自分で乗ります」 と言って歩み出た。なるほど、昇降用の手すりや出っ張りがちゃんとあるのか。三十年前のおもちゃにしてはよくできたデザインだと感心する。シエンは乗り込む楽しみも味わいたいようだった。その気持ちはオレも良っく分かる。 シエンが自分でハッチを閉める。中でなにやらカチャカチャしていると思ったら、突然ロボットのカメラアイが「ヴゥーン」という電気音を立てて光りだした。 「うわっ!?」 オレはびっくりして引いてしまう。 主動力らしいエンジン音のようなグングンという音が鳴り始める。 ガシャン。スコープドッグが最初の一歩を踏み出した。 「シエン、大丈夫か!?」 スコープドッグのバイザーが上に競りあがる。頭の穴からシエンの顔が見えた。 「問題ありません。動きます。すごいです、ご主人様」 「そ、そいつは良かった……」 シエンを載せたスコープドッグが部屋の中を歩き回る。時折腕を回したり、いらない段ボールに向けてアームパンチを繰り出したり。うわ、ダンボールが破れた。どんだけ強力なんだ? ローラーダッシュのスピードは俺の狭い部屋じゃ速すぎる。やめろピックを打ち込むな、ターン禁止!! あーあ、床がへこんだ。こりゃあただのおもちゃじゃないぞ? いやしかし。オレも乗ってみてぇ……。 「ん?」 説明書のほかに妙なチラシが入っている。店側が入れたやつだろうか? チラシにはこう書かれていた。 『武装神姫in装甲騎兵ボトムズ・バトリングリーグ&トーナメント 近日開催!!』 オレはもう一度、シエンの動かすスコープドッグの方を見やった。 了 「バトリングクラブ」(上) 「ここか」 「……みたいですね?」 おれとマイティ――天使型MMSアーンヴァル――は、すえた臭いの立ちこめる場末の会員制クラブの入り口にいた。 なぜおれがこんなところにいるかというと、彼から招待状が届いたからだ。 彼――犬型MMSハウリン「シエン」のオーナー――は、 「いいから来い。面白いモンを見せてやんよ。来なかったら私刑」 と言って、半ば無理やりおれを呼び出した。私刑は誤字ではない。 おれは正直怖気づいていた。いや、私刑にではない。 そもそもおれはこんないかにも治安の悪そうな場所に自分から赴くような人間ではない。 なにより今はマイティを連れている事がおれをためらわせた。が、彼の「大丈夫だから」 という言葉を信じてやってきた。 とりあえずからまれることもなく無事に現地へ着いたわけだ。玄関先の巨漢の黒人に 招待状を見せる。 「ドウゾ、オハイリクダサイ」 片言の日本語だが、やはり威圧的な空気は篭っている。目の前にいるのはまったく場違いな人間なのだ。無表情な中から怪訝そうな感情がにじみ出ていた。 ウェイターに案内され、控え室の一つに通される。クラブであるはずなのにホールでは誰も踊っていなかった。何かを待っているようだった。そういえば真ん中のお立ち台には頑丈な金網が回されてあったが……。 「よお、来たな!」 出されたキツイ酒を飲んでいると彼が現れた。 「お前はこんなところにいても違和感ないよな」 おれは彼の茶髪やヒゲやピアスを見ながら言った。 「なんだそりゃ。まあいいや。ようこそ。バトリングクラブへ」 「バトリングクラブ?」 「シエン、入って来い」 『了解です、ご主人様』 妙にくぐもった声だなと思う間もなく、スコープドッグが入ってきた。 あのスコープドッグだ。ボトムズの。なぜか頭部が真っ赤に塗られている。 「シエンちゃん!?」 マイティが俺の懐から飛び出した。シエンが無骨な戦闘ロボットになってしまったと 思ったのだ。 「久しぶり、マイティ」 ハッチを上げて、中からシエンが出てきた。素体のままではなく、専用の対Gスーツを 着ている。頭には同梱の頭甲・咆皇にモニターゴーグルを取り付けていた。 「どうしたの、このロボット?」 「ご主人様に買ってもらったんだ」 なんだって? 「お前買ったのか、このバイクが買えるくらいのやつを?」 「買った。シエンの為だからな」 ある意味、こいつはおれ以上の神姫ラヴァーかもしれない。 「バトリングってのは、やっぱりボトムズのだったんだな」 「そうだ。オレはここで、パートナーをやらせてもらってる」 「誰と?」 「ここのチャンピオンとさ。もうすぐ試合があるんでそろそろ、……来たな」 ドアが開く。 そこには気さくそうな眼鏡の青年が立っていた。チェックのワイシャツにチノパン。おれよりも場違いな人間だった。 「やあ、君が『屍ケン』のご友人だね」 「屍ケン?」 「オレのリングネームさ」 「僕は舎幕(しゃばく)。リングネームは『青の騎士』だ。よろしく」 「あ、ああ。よろしく」 俺はごく自然に舎幕と握手していた。細い手だった。 「僕の神姫とATを紹介しよう。ライラ、入っておいで」 入ってきたのはスコープドッグよりもひとまわり大きな、青いロボット。 「僕のAT、ベルゼルガだ。パイロットは兎型MMS『ヴァッフェバニー』のライラ」 ハッチが開いて、中から完全武装の――とおれが思ったのは、その神姫がガスマスクと ゴーグルを付けていたからだ――神姫が出てきた。 『コーホー、コーホー……』 「ライラ、控え室にいるときぐらいはマスクを取りなさい」 『……ラジャー、オーナー』 渋々その神姫が素顔を見せた。 「……ライラです」 それだけか。愛想の無い神姫だ。 しかし人懐っこいマイティはすぐに寄っていって挨拶をしている。 「舎幕、時間だぜ」 彼――屍ケンが呼ぶ。 「ああ、そうだね。挨拶だけですまない。これから試合なんだ」 「いや、いいんだ」 「オマエには特等席を用意してあるぜ。楽しみにしてな」 そうして俺たち一人と一体は、その特等席とやらに通された。 思ったとおりあのお立ち台はバトルリングであり、特等席とはそのまん前、最前列であった。 「レィディースえ~んどジェントルメェン! ようこそ、クラブサンセット、武装神姫in装甲騎兵ボトムズ・バトリングマッチへ! 今宵もクラブチャンピオンの座を賭けたアツいバトルの始まりだ!」 司会のスタートコールにホールに集まった観客が歓声を上げる。 「まずは我らがチャンピオンタッグの紹介だ。」 リングの東方、おれのいた控え室の方向へ司会が手をかざす。 「チャンピオンの愛弟子! 幾度と無く敗れてなお、立ち上がってきたアンデッドマン。屍ケン&「ハウリン」シエン!」 フードを被った彼が、プッシング・ザ・スカイのBGMとともに登場。肩に立ったシエンが観客に手を振る。彼女のファンらしいグループが「シエンちゃーん!」と黄色い声。 「シエン‘sAT、ムダな装甲を限りなくそぎ落としたライト・スコープドッグ、『クリムゾンヘッド』!」 彼の後ろからハッチを開けた無人のスコープドッグがローラーダッシュで入場。彼の肩にいたシエンは跳躍、コックピットに見事着地し、ハッチを閉め、そのままリングへ登壇した。 「そして我らがクラブチャンピオン。並み居る挑戦者を華麗に撃破し続けるハンサムボーイ。青の騎士・舎幕&「ヴァッフェバニー」ライラー!」 青年舎幕が控え室そのままの姿で登場する。やっぱりどこかの理系の大学生にしか見えない。 ライラはどこだ? 「ライラ‘sAT。どんなATもその巨体にはかなわない。ヘヴィ級アーマードトルーパー、『ベルゼルガ』!」 ブルーの巨体が舎幕の後方からローラーダッシュしてくる。もうライラは乗り込んでいるようだ。 どうやら彼女は人前で素顔を見せたくないらしい。 挑戦者の紹介が始まった。 「今宵のチャレンジャー。都内各地のバトリングクラブを潰しまわって十二件。息のぴったり合ったユニゾン攻撃は相手を混乱の渦へと叩き込む。バックス兄弟、そして「ストラーフ」マリア&ミソラ!」 バックス兄弟? どう見ても日本人じゃないか。屍ケンより格段にガラの悪そうな連中だった。 たとえるなら、徒党を組んでカツアゲでもしていそうな連中だ。おれなら絶対に関わらない。 連中の神姫はそろってストラーフだったが、おれは妙な違和感を覚えた。 目に神姫特有の生気が宿っていないのだ。 「あのストラーフたち、感情回路を外されてます」 マイティが寒そうに胸をかき抱きながら言った。 「どうなるんだ?」 「ただのロボットになってしまうんです。マスター、あの、少し抱いていてください」 「ああ……」 おれはマイティを両手で包んだ。 無理も無い。あのストラーフたちの姿は、彼女らにとっては脳みそをいじくられているも同義。 痛々しい姿をマイティは見ていられないのだ。おそらくシエンとライラも同じ気持ちだろう。 「おい、舎幕」 「ああ。分かってる。倒すさ」 二人はそう打ち合わせた。 挑戦者のATは、黒いストロングバックスの背中にストラーフのアームユニットを二対も取り付けていて、さながら阿修羅のような格好だった。カメラは人間の目のようなステレオスコープ。 ルールは白兵戦武器も使わない肉弾戦のみの限定ブロウバトル。 ゴングが鳴った。 つづく 「バトリングクラブ」(下) ◆viewpoint change… “おれ”→”3rd person” リングは正八角形の平面で、直径は10メートル前後。1/12のATが悠々と走り回れる広さになっている。 「どちらかのATがすべて行動不能になった時、試合終了とします。それでは、レディー……ファイッ!!」 ゴングが鳴らされた途端、四体二組のATはそれぞれローラーダッシュを全力でかけ突進した。 いち早く飛び出たのは屍ケン、シエンのクリムゾンヘッド。頭部が真っ赤に塗りたくられたライトスコープドッグは、異常なまでに良好な出力重量比をもって機動する。 コックピット周辺を中心に可能な限り殺ぎ落とされた装甲は、駆動限界ギリギリまで迫る。重量軽減のために左腕のアームパンチさえオミットしているのだ。 「そんなにガリガリで、俺様のマリアに真正面から挑むのか、死にたがりめ」 ほくそ笑む、バックス兄弟の兄。 「ぶっ潰しちまえ、マリア!!」 『了解』 ひどく無機質な応答があり、「ストラーフ」マリアの阿修羅ストロングバックスがステレオスコープの両目を真っ赤に光らせ相対する。本体のと合わせ計六対のアームユニットが開かれ、迫るクリムゾンヘッドを殴り潰さんとランダムに飛来した。 さながら他弾頭ロケットの着弾である。掛け声を付けるなら「オラオラオラオラ」あるいは「無駄無駄無駄無駄」だが、あいにくパイロットの神姫は感情回路が無いためそんな気の利いた気合は出さない。 しかし、クリムゾンヘッドは当たらない。超軽量のボディはATらしからぬアクロバットな回避を簡単にこなすことができる。スウェー、ステップ、側転を織り交ぜ、機関銃のように繰り出されるパンチの雨を避け続ける。避けられたパンチはリングの床をえぐった。 「こりゃ負けたほうが弁償だぞ」 カウンターのバーテンダーがぼそりと呟いた。 『遅い!』 クリムゾンヘッドはついにマリア阿修羅STBの懐へ到達。唯一の武装である右手のアームパンチに気爆薬を装填、相手の胸部装甲へまっすぐに叩き込んだ。 マリア阿修羅STBが吹っ飛ぶ。が、すぐに体勢を整え着地。ストロングバックスは通常のスコープドッグよりも前面装甲が分厚い。1/12といえどその特性は変わらない。ダメージが思ったほど通っていない。 『ちっ』 シエンはコックピットの中で舌打ちした。 「ドン亀が! やっちまえミソラ!」 『了解』 ミソラ阿修羅STBはベルゼルガにターゲットを合わせた。ローラーダッシュでもさほどのスピードしか出ないへヴィ級ATベルゼルガを捉えるのは容易い。 あっという間に間合いを詰め、二対のアームでがっしりと青い巨体をホールド。両のアームパンチを連打する。 「はぁっはっはっは! さすがの青の騎士もこいつはキくだろう!」 「ベルゼルガを甘く見ないで欲しいね」 舎幕はふふと笑うと、自身の神姫に命令を下した。 「ライラ、思いっきり痛めつけてやりなさい」 『ラジャー、オーナー』 ベルゼルガの図太い腕がミソラ阿修羅STBを挟み込んだ。 「何ィ!?」 そのまま、なんとベルゼルガはストロングバックスを軽々と持ち上げたのだ。 『ふんっ』 気張って一発。投げ飛ばした。マリア阿修羅STBの方向へ。 二体の阿修羅は激突し、リングのすみへ転がった。 ベルゼルガの装甲は擦り傷さえあれ、少しのへこみも見当たらなかった。 ウォォォォォォォォ ギャラリーの吼えるような歓声。スタンディングオベーション。 「すごいな」 「はい……」 マイティたちは唖然としてリングの攻防を見つめていた。 「もう君たちの負けだ。僕らには勝てないよ」 冷静な顔で舎幕が言った。こんな台詞なのに、決して気取らない、チャンピオンの風格。 「こンの小僧があぁ……」 「兄貴、やっちまおうぜ」 バックス兄弟はリングの中へ何かを次々に投げ込んだ。 阿修羅たちがそれをキャッチ、六本のうでに装備する。 スコープドッグの標準装備、ヘビーマシンガンだった。それぞれ六丁ずつ。大型のマガジンを搭載してある。 「リアルバトルに変更かい」 「そうくると思ったぜ」 舎幕、屍ケンも投げ込んだ。ただしそれぞれ一つずつ。 クリムゾンヘッドが肩に背負ったのは、見覚えのあるキャノン砲。 ハウリンの同梱武装、吠莱壱式だ。 ベルゼルガのもとには、胴体部分をくまなく覆えるような大盾が落ちてきた。中心部分には針のようなものが通っている。 「出たぞ! ベルゼルガの必殺武器、パイルバンカーだ!」 司会が待ってましたとばかりに叫ぶ。 リングをリアルバトル用の強化透明プラスチック壁が覆う。ルールはリアルバトルに変更された。 銃火器使用可能、実戦さながらの無制限バトルである。銃火器と言ってももともとはマーキング弾が飛ぶおもちゃだが、リアルバトル用の銃器はだいたいATの装甲を貫けるように改造されている。小口径と言えど銃弾が飛んでくるようなものだから、リアルバトル時にはこのような専用の防護壁がリングもしくはバトルエリアを覆うのだ。 「シエンちゃんたち、大丈夫かな……」 マイティが心配そうにマスターに聞く。 「まあ、問題は無いと思うが。あの二人の表情を見てみろ」 マスターは屍ケンたちを指差した。 「楽しそうじゃないか」 バックス兄弟は声をそろえて自らの神姫に命令した。 「蜂の巣にしてやれァ!」 『了解』 合計十二丁の銃口が向けられた。 爆音。 目がくらむほどのマズルフラッシュがリングの一角を支配した。 ベルゼルガは大盾を構えて防御の体勢をとる。クリムゾンヘッドはローラーダッシュを最大出力にし、真横に避けた。 クリムゾンヘッドの通った壁にペレットの雨あられが着弾する。壁は二重構造で絶対に貫通することは無いが、その後ろにいる観客は恐怖にかられてのけぞった。 吠莱壱式が文字通り吠える。大口径の砲弾は連射能力こそないが、移動間射撃にもかかわらず相手のマシンガンを一丁ずつ、的確に撃ち落してゆく。 最後の一丁になったとき、弾丸が切れた。吠莱壱式の方だった。このときの間合いはAT二体分しかなかった。 「ぶっ殺せ!」 容赦なく、マリア阿修羅STBは撃った。照準はコックピット。 「シエンちゃん!!」 マイティが乗り出して悲鳴を上げる。 撃たれたとほぼ同時にコックピットハッチが開放された。マシンガンの弾は誰もいないシートに穴を開けた。 ほとんど素体のままのシエンが飛び出していた。右手には同梱武装の十手が逆手に握られている。 「うおおっ!」 シエンはマリア阿修羅STBの頭頂部めがけて、十手を突き刺した。落下の勢いが加算され、刃物でないはずの十手が頭部装甲を貫通した。シエンはマリアのコアユニットをつぶす手ごたえを感じた。シエンは哀れむべき同族を楽にしてやった。 ミソラ阿修羅STBの一斉射は、ベルゼルガの大盾に勝てなかった。 「くそう、くるな、くるなよお!」 バックス弟は涙目でがなりちらす。 ゆっくり、ゆっくりと、大盾を構えたベルゼルガは近づいてゆく。 ついに六丁のマシンガンが沈黙した。 ベルゼルガは緩慢な動作で大盾を引く。中心のパイルが後退してゆく。 『許せ』 一撃。 ストロングバックスの胸部装甲を、ベルゼルガのパイルバンカーが貫いた。斜め下方から侵入したパイルは、ミソラのコアユニットを破壊しながら、ATの後頭部まで到達した。 「試合終了! 勝者は屍ケン&青の騎士、チャンピオンチーム!!」 今迄で一番大きな歓声が上がった。マスターとマイティは耳を押さえた。 試合終了後にブチ切れた兄弟がナイフを振り回して舎幕らを襲おうとしたが、門番の巨漢の黒人、ボビーに「きゅっ」と締め落とされ、放り出された。 「ありがとう、ボビー」 「オ仕事デスカラ」 ボビーは門番に戻っていった。 ◆ ◆ ◆ 「やっぱり、こっちには来ないのか?」 屍ケンが寂しそうに言った。 「悪いがあんな危険な試合はできない。マイティを戦わせるのは神姫だけで十分だ」 マスターは答えた。 「そうか……。まっ、そう言うとは思ってたけどな」 「だがいい試合だった。あのストラーフの二人も浮かばれるだろうな」 「へっ……」 「じゃあな。おれはこれで」 「なあ」 「ん?」 「お前ぇ、リベンジするんだろうな。あの片足の悪魔に」 「……」 マスターはあごに手を当てて空を見ていたが、ややあってこう言った。 「考えておくよ。マイティ、帰るぞ」 「は、はい。……じゃあね、シエンちゃん」 「ああ。またな」 こうして二組のオーナーはそれぞれの戦いへと身を投じることになる。 それはまた、別のお話。 了 先頭ページ 次へ
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最強って何かね ―――――――――――― ☢ CAUTION!! ☢ ―――――――――――― 以下の御作品を愛読されている方は先に進むことをご遠慮ください。 武装食堂 キズナのキセキ 深み填りと這上姫 場合によっては意図されていない、悪い方向に読み取られる可能性があるため、閲覧をご遠慮頂くものです。 残虐・卑猥な行為などが理由ではありません。 強いて言うならばコタマがマシロに腹パンされる程度の残虐さです。 ネタバレを含む場合があります。 また神姫や固有名称を(無断で)お借りしています。 登場はしません。 尚、TVアニメ武装神姫 第11話「今夜決定!最強神姫は誰だ!?」のネタバレを少し含んでいます。 茶室に集まった私とメル、コタマ姉さん、マシロ姉さんでアニメの次回予告まで見終えて、コタマ姉さんが大きなあくびをした時だった。 テレビを消したメルは唐突にこう問うた。 「でさ。実際はどうなのさマシロ姉。今の最強の神姫って誰なの?」 ◆――――◆ 「言うまでもないでしょう。一番は公式戦で優勝経験のあるアーンヴァル型アルテミスかストラーフ型のビクトリア(ヴィクトリア?)。二番は――名前は忘れましたが、あの世界二位(笑)のエウクランテでよいのではないですか」 「マシロ姉さんが(笑)とか使わないでください。キャラが崩れます」 「そーじゃなくてさ。ほら、マシロ姉だってそのアルテミスとほとんど互角だったでしょ。非公式戦も含めて、誰が最強かってこと」 メルの言うバトルというのは、あれはマシロ姉さんが私たちを特別に、対アルテミスさん戦に招待してくれた時だった。 強い神姫の非公開でないバトルの観客席はいつも早い者勝ちの超満員で、初めて生で見た武装神姫の頂点クラスのバトルは思い出しただけでも武者震いしてしまう。 アルテミスさんの十八番『先々の閃』を真っ向から迎え撃ったマシロ姉さんの技はなんとビックリ! 私の『ブレードジェット』を使った突進だった。 といっても二人の激突は文字通り目にも留まらぬ速さで、それと知っていなかったら「離れてた二人が消えたと思ったら中間地点から衝撃波が出た」ようにしか見えなかったのだろうけど。 あの時のバトルは大接戦で、早い段階で十二の騎士のうち半数くらいを落とされていたマシロ姉さんが惜しくも負けてしまったけど、身近にいる信じられないくらい強い神姫の一歩も譲らない戦いに私は大きな歓声と拍手を送ったのだった。 「マシロ姉だけじゃなくて他の『デウス・エクス・マキナ』とか、世の中には隠れた強い神姫がたくさんいるんでしょ。ぜ~んぶひっくるめて、誰が最強かってこと」 「私も興味あります。実はマシロ姉さん、最終的にアルテミスさんに勝ち越してたりしてないんですか」 「あなた達は最強の神姫をそう簡単に決められると……まぁ、いいでしょう。簡単に『最強』という言葉を使わないよう知っておかねばなりません。コタマも良い機会です。聞いていきなさい」 眠い目をこすりながら立ち去ろうとしたコタマ姉さんの尻尾を、マシロ姉さんはむんずと掴んだ。 ◆――――◆ 「まずは――そうですね。エル殿とメル殿は勘違いをしているようですが、『デウス・エクス・マキナ』という括りはあなた方が想像しているよりずっと意味の無い、名ばかりのものです」 「だろうね」とコタマ姉さんは知った風にうなずいた。 「『デウス・エクス・マキナ』がまとまりのある集団だったら、マシロも少しは大人しくなってたろうもん」 無視したマシロ姉さんは続けた。 「そもそも『デウス・エクス・マキナ』とは、『京都六華仙』に対抗意識を燃やした誰かが、修羅の国でも似たような集団を作ろうと勝手に神姫を選んだだけ……らしいに過ぎません」 「らしい? その誰かって、『デウス・エクス・マキナ』の中の誰かじゃないの?」 メルの問に対してマシロ姉さんは首を横に振った。 「誰なのかは分かっていませんが、その線は面子を見る限り薄いでしょう。【神様が暇つぶしに作った】、【マオチャオネットワークによって生み出された】などという噂すらあるくらいですから。私もいつの間にか一人に数えられていて首を捻ったくらいです。当人への告知すら未だになく、噂だけが独り歩きして実体化を果たしてしまったような状態です。まあ、私が知る限り実力だけは十分伴った神姫が選ばれているので、見る目のない者が作った、というわけではなさそうですが」 「マシロ姉さんを含めて五人いるんですよね」 「ええ。初めに選ばれていたのは四人でしたが。私の他に、 『清水研究室 室長兼第一デスク長』ゴクラク。 『大魔法少女』アリベ。 そして後に追加で選ばれたのが『火葬』ハルヴァヤ。あと一人は知りません」 「知りませんってアンタ、そんなてきとーでいいの?」 「誰も知らないのだから仕方がないでしょう。もしかすると噂の【神様】とやらかもしれませんが」 「なんか、本当にいいかげんだね。『京都六華仙』に対抗する以前のレベルだよ。この前の【貧乳の乱】の時に遊びに来てた牡丹が六華仙の一人なんだよね。京都市だとちゃんと取りまとめ役やってるんだってよ」 「それただのヤ◯ザじゃん」というコタマ姉さんのツッコミには「修羅の国のコタマ姉さんがそれを言いますか」と適切に返した。 「いえエル殿、コタマはこれでも役に立っているのですよ。武装神姫のバトルとは端的に言えば強弱上下を決めるものですから、違法改造神姫であろうと何であろうと粛清できる実力者が目を光らせておかなければ、必ずといっていいほど犯罪に手を染める愚者が出て来るのです」 「修羅の国のマシロ姉さんがそれを言いますか」と再び適切な返しを挟んだのだけれど、マシロ姉さんには聞こえなかったらしく、話は続いた。 「私は竹櫛家を守ることのみが使命ですし、ゴクラクは水面下で怪しげな動きをしていて、ハルヴァヤは私たちのレベルから身を引いてしまっています。勿論、正体不明の神姫は言うに及ばずです。なのでこの地域が比較的安定しているのは、誰彼構わず挑まれた勝負に負けない、つまりパワーバランサーのような役割を持つコタマと、大規模かつ熱狂的なファンクラブを持つアリベの二人が表立って動いているからなのです」 「なるほど。だからこの地域では悪事が最小限に留まっているんですね」 「「「修羅の国のアルトレーネがそれを言うな」」」 三人からの一斉攻撃を受けた。 言われてみれば第n次戦乙女戦争とか名物化してるけど、私一人が悪いわけじゃないのに……。 「てことは、真面目に戦ってるアタシが実質的な統治者ってわけ? ウワハハハ、苦しゅうないぜ。オマエら頭が高いんじゃねーか?」 「タマちゃんの背が低すぎるので見下ろす形になっちゃうんです」 「誰がタマちゃんかコラァ!」 私に飛びかかってきたコタマ姉さんはしかし、空中でマシロ姉さんに尻尾を掴まれて体の前面を床に打ち付けた。ビターン! という感じで。 「にゃにしやかんたてめへ!」 鼻に深刻なダメージを負ったらしく手で押さえながら涙目になったコタマ姉さんを、マシロ姉さんは華麗に無視した。 「さて、ここで話を元に戻しましょう。真に最強の神姫とは誰か、という話でしたが残念ながら現状では特定することは不可能です。候補者をあらゆる場所から集めて天文学的数字の回数だけバトルを行ったところで優勝者は決まりません」 「死ねやぁ!」 コタマ姉さんは鼻を押さえたままドロップキックをはなった! しかしマシロ姉さんはこうげきをかわした! コタマ姉さんは再び床に落下してダメージをうけた! 「そうなってしまった原因はコタマ、あなたにあるのです」 築地のマグロのようになったコタマ姉さんを指さして断言するマシロ姉さん。 なんとなくだが、強い神姫になるためには多少の事には動じず無視できる肝っ玉CSCが必要不可欠であるような気がした。 ◆――――◆ コタマ姉さんが落ち着いてから、マシロ姉さんは改めて言い直した。 「コタマ、あなたが矛盾を作ってしまったせいで最強の神姫を決めることができないのです」 「意味が分からん。アタシが何したって? いつ、どこで、なにを」 「以前あなたは妹君と、他人のトレーニングに付き合ってやったと言っていましたね」 「んん……? ああ思い出した。ミスティのことか」 「誰? 聞いたことあるようなないような名前だけど。コタマ姉、何やらかしたの?」 「なんでやらかした前提で話してんだよ。むしろやらかされた側だっての。アタシがまだハーモニーグレイスだった時にさ、『狂乱の聖女』っていう悪者神姫がいて、ソイツを始末する旅か武者修行か何かに出てたミスティがアタシの噂を聞いて『狂乱の聖女』じゃないかって確認に来たんだ。武装が似てたらしい。んで、アタシは無敵の『ドールマスター』様だってバトルで教えてやったら、次は『狂乱の聖女』を倒すために秘密のトレーニングをするから同じハーモニーグレイスで似た武装のアタシに仮想敵になれ、って話を持ちかけられたってワケ。他にも大勢の連中がミスティの練習に付き合ってて……鉄子ちゃんもどーしてわざわざ付き合ってやるかねえ」 「コタマ姉さんが仮想敵って……その『狂乱の聖女』さん? よっぽど強い神姫なんですね」 「それが腹立たしい話でさー。だったらアタシが直接ソイツを始末してやるって乗ってやったのに――いやまあ同じハーモニーグレイスで強いヤツってんなら上下を決めておきたかったってのもあったけど――ミスティのマスターがアタシじゃ勝てないとか言いだしたんだ。筐体の中でヌクヌク温室バトルやってるヌルい神姫じゃ勝てない、ってさ。よりにもよってシスターの善意を断るどころか、『ドールマスター』をふやけた煎餅扱いだぜ? 信じられるか?」 「信じられませんね」と言ったのは意外なことにマシロ姉さんだった。 まさか調子に乗ったコタマ姉さんに同調するなんて、熱でもあるんじゃ……と思ってマシロ姉さんの顔を覗きこんでみると、風邪どころか眉間にしわをよせてコタマ姉さんを親の敵か何かのように睨んでいた。 透き通ったエメラルド色で綺麗だったはずの瞳がドス黒く変色していた。 「まったく信じられませんコタマ。妹君を守る立場にありながら、自分より強いと言われた神姫を――よりにもよって罪を犯した神姫を見逃した?」 「いや、見逃したっていうか、その時点じゃ居場所すら分かってなかったらしくて……何よ、なんでそんなに睨むのさ」 「居場所が分からなければ突き止めればいいだけの話でしょうが。妹君が何処でアルバイトをしているか知らないわけでもあるまいに。答えなさいコタマ、何故その時点で『狂乱の聖女』とやらを始末しなかった。赤の他人のトレーニングに付き合ったことで僅かでも妹君はその犯罪者と繋がりを持つことになってしまった。つまり危険に晒したということだ。仮に本当にコタマの手に余る相手であろうとも私ならばどうとでもなる。しかしあなたは何もしなかった。妹君を危険に晒したまま! 答えろコタマ! どうして何も行動を起こさなかった!」 床に拳が強く叩きつけられ、茶室全体が揺れた。 部屋の空気は凍りついたように冷たく恐ろしくなっていた。 「だ、だだだって……その……あっちにも、じ、事情があったし……た、ただの他人が手を出したら……」 私とメルはお互いに抱きつきかばい合いながら震えるしかなかった。 コタマ姉さんが怯えるほどの殺気。 レラカムイの体はもうとっくに降参の姿勢で、頭の大きな耳と長い尻尾が垂れ下がっている。 マシロ姉さんが両手をゆっくりと肩の高さに上げた。 コタマ姉さんが殺される。 制止に入りたくても体が怯えきって動いてくれない。 そして怒れるクーフランの掌は五指を開いたまま上に向けられ――。 「それで正解です。他所様のストーリーを崩してはなりません」 アメリカンジョークでも言うかのように肩を竦めたマシロ姉さんは殺気を霧散させた。 緊張が解けた瞬間、武装した私たち三人が一斉にマシロ姉さんに襲いかかったのは言うまでもない。 ◆――――◆ 「寿命が縮まった……五年分くらい」 「私もです……後でマスター経由で鉄子さんにチンコロします。絶対します」 「許してください、少々やりすぎたのは反省しています。昨日見たドラマの刑事役がなかなか堂に入った演技をしていまして、それが頭にあったものでついつい。お詫びに後でとっておきのヂェリーをご馳走しますから」 「ヂェリーごときで許せるかボケ」とコタマ姉さんは言いはしたけれど、声には全然力が入っていなかった。 私とメルの寿命が五年縮んだとしたら、殺気を直接当てられたコタマ姉さんの寿命はもって数ヶ月レベルなんだろう。 さっき自分で言ってた通りの『ドールマスター(ふやけた煎餅Ver.)』だ。 そんな私たちを見て悪びれるどころか自分の演技力に満足したらしいマシロ姉さんは、「それはさておき」と私たちの殺気を軽く受け流した。 「コタマの言った通り、他人のストーリーに口を挟んではいけません。というより、口出しできない、と言い表したほうが正しいのは分かりますね。仮にコタマがその『狂乱の聖女』とやらを倒してしまったなら話が余計にややこしくなり、妹君は非難される立場に立たされるでしょう。他にも――」 マシロ姉さんはコタマ姉さん、メル、私の順に見回した。 「あなた達とハナコ殿、そして『京都六華仙』の一人は【貧乳の乱】に参加したそうですね」 「『参加』? 今オマエ『参加』っつったか? それはアタシが好き好んで加わったみたいなニュアンスか?」 メルは静かに私の側から離れてコタマ姉さん側についた。 けれどコタマ姉さんは「アイネスはアニメじゃ谷間があっただろうがこのクソ」とメルを突き返してきた。 ああ哀れなりレラカムイ。 せめてほんの数ミリでも私の胸を分けてあげることができたら。 「さらにコタマは妹君の大学で他の学生に自分勝手な因縁を付けて、メル殿を巻き込んでの勝負の最中ではないですか」 「当たり前だ。『双姫主』だか何だか知らねーけど、鉄子ちゃんのことを『鉄子』って呼び捨てで表記しやがったんだ。鉄子ちゃんのことを呼び捨てしてもいいのはアタシと竹櫛家の連中だけだ。もう修正されてるけどさ」 プンスカ怒りながらコタマ姉さんはそう言った。 この時も鉄子さんは巻き込まれているようだけど、相手が危険じゃなければマシロ姉さん的には問題はないらしく(コタマ姉さんにイチャモン付けられた相手の方は迷惑この上ないだろうけど)、再びご自慢の演技力を発揮しようとはしなかった。 「以上で三つ、例を挙げました。共通点は『コタマが関わっている』ことです。これが矛盾を生じさせてしまっているのです」 「矛盾? 何がですか?」 「先に言ったでしょう。コタマが矛盾点となっていると」 「いえ、ですからその前に……」 「何の話だったっけ?」とメルが私の言いたいことを言ってくれた。 「最強の神姫は誰かと聞いたのはあなたでしょう。そして結論を出すことが不可能であることと、その理由がコタマが矛盾を発生させたためであること。具体例を挙げて理解しやすいよう説明していたのに根本を忘れるとは何事ですか」 「「「誰のせいだ」」」 ◆――――◆ 「アタシが矛盾点? 意味わからん」 「では順を追って説明しましょう」 もうアニメを見終えてから随分と時間が過ぎていて、そろそろ朝日が昇ってくる時間になる。 怖がらせられたり暴れたりしたせいで眠気は吹っ飛んでしまっているけど、重度の疲労が重くのしかかってきている。 メルもコタマ姉さんも顔を見れば私と同じく疲れているようで、マシロ姉さんだけがすまし顔だった。 「まず『狂乱の聖女』の件。コタマはトレーニングに付き合ったと言いましたが、その場で一度でも敗北しましたか?」 「まさか。『FTD3』を使うまでもなかった。しかもそんときゃまだアタシはハーモニーグレイスだったし、今のレラカムイの体ならファーストかセカンドのどっちか片方でも十分だろうね。ま、あっちも修行で当然レベルアップしてるだろうけどさ」 「つまり『狂乱の聖女』は、そのレベルでトレーニングや専用対策を行うことで対応できる神姫ということになりますね。では次に【貧乳の乱】」 コタマ姉さんの大きな耳がピクッと動いた。 ハーモニーグレイスの胸が大きかった分が、今の平坦な胸に対するコンプレックスを加速させているのだろう。 「この一件が最大の問題です。エルメル姉妹も戦闘には加わったようですが、集団 対 集団の中で大きな戦果を上げたのはコタマ、ハナコ殿、そして『京都六華仙』が一人、『遊びの達人』だったそうではないですか」 「それが何さ」 「『京都六華仙』とは私を含む『デウス・エクス・マキナ』の元になった存在であり、京都市の頂点なのです。通名が『遊びの達人』ならば読んで字の如く、純粋にお遊びに興じただけかもしれませんが、なぜコタマ如きに肩を並べているのですか。『京都六華仙』ならば事のついでにコタマにも灸を据えるくらいの気概を見せて欲しいものです」 「レラカムイパンチ!」 コタマ姉さんの短い右腕から繰り出されたストレートはしかし、マシロ姉さんにあっさりはたかれた。 「最後に目下進行中の、コタマが一方的に喧嘩を売った勝負。『双姫主』なる称号を持つ相手だそうですが、妹君にこれ以上恥をかかせないためにも当然、勝つのでしょうね?」 「知らんよ。作者に訊け」 「はぁ……」とマシロ姉さんはこれ見よがしにため息をついた。 「情けない。ここで『作者のストーリーなんざ知ったことか。楽勝だ』くらいの事を言えないのですか」 「オマエ、それさっき自分で言ってたことと矛盾するじゃねえか。他人のストーリーに口を挟むなっつったのを忘れたか、この健忘症め」 「あ、『矛盾』」 メルがそう呟いた時、マシロ姉さんは我が意を得たりとばかりに人差し指を立てた。 「その通り、矛盾しているのです。コタマは私たちの地域におけるパワーバランサーでありながら、勝つか負けるかフタを開けてみなければ分からない状況にあります。メル殿はともかくとして、妹君はなぜコタマより確実に強い私に声をかけて下さらなかったのやら」 「なんだ、一緒に遊びたかったのなら素直にそう言えばよかったのに。この恥ずかしがり屋さんめ」 「クーフランパンチ!」 並のスペックじゃないマシロ姉さんの右ストレートはコタマ姉さんの防御を軽く突き破って、みぞおちに食い込んだ。 口から形容し難いものを吐き出したコタマ姉さんは前のめりに倒れ、再び築地のマグロになってしまった。 安らかな眠りについたコタマ姉さんのことを意に介さず、マシロ姉さんは話を続けた。 私は竹櫛家が恐ろしい。 「他にも地理的な矛盾なども数えきれないほどあるのですが、そこには目を瞑りましょう。修羅の国、京都、北は北海道から南は沖縄までお構いなく、パワーバランスが滅茶苦茶になってしまっているのです。それもこれもすべてコタマのせいで。よってメル殿の『最強の神姫は誰か』という問に対しての答えを出すことはできません。ご理解頂けたでしょうか」 「あー……うん、理解したよ」 メルの目はうつ伏せに倒れて……もとい眠っているコタマ姉さんに注がれている。 パワーバランサーをパンチ一発で黙らせるマシロ姉の存在こそ最大の矛盾じゃない? と言ってコタマ姉さんの二の舞にはなりたくないのだろう。 「それは何よりです。説明した甲斐があったというもの――おや、もうこんな時間でしたか。話が長くなってしまいましたね。ではこれにて解散としましょう。約束のとっておきのヂェリーは次の機会にお渡しします。では失礼」 立ち上がったマシロ姉さんはコタマ姉さんの尻尾をつかみ、ズルズルと引きずったまま茶室から去っていった。 ポツンと残された私とメル。 「ねえ、エル姉」 平坦な声でメルが問うた。 「結局のところさ、最強の神姫って誰?」 私に聞かれても困る。 けれど……。 「とりあえずマシロ姉さんってことにしておきませんか? それで少しは夢見も良くなると思います」 「そだね。そうしとこう」 なんだかよく分からなかったけれど、一つだけ確かなことを言えるようになった。 『最強』という言葉を気安く使ってはならない。 『15cm程度の死闘』の時事ネタ話の中で初めて事前に作文しました。 などという事はどうでもよくて、アニメの「今夜決定!最強神姫は誰だ!?」なる予告を見て、修羅の国視点で考えてみました。 もうちょっと条件を絞ると、 1.『デウス・エクス・マキナ』は、ばるかんさんの『京都六華仙』から発想をパク・・・お借りしている。すなわち強さはだいたい同等。 2.トミすけさんの『狂乱の聖女』対策内で多作品が同時にリンクしているため、最良の基準点になると期待する(という願望)。 3.主人公補正、ストーリー補正、愛の力補正、脇役補正、かませ犬補正、死亡フラグ補正 etc.・・・それら一切を排除。例えば、マシロはコタマに絶対負けない、コタマはエルメル姉妹に絶対負けない、Lv.100ミュウツーはLv.1キャタピーに絶対負けない、といった感じ。 4.他所様だからといって依怙贔屓しない(これ一番重要)。有名神姫のミスティを相手取ってもタマちゃんは意地でも勝つ。 温かい缶コーヒーを飲みつつ、これらの条件下で深く吟味した結果・・・結論を出すのは不可能ということが分かりました。 唯一の架け橋であるタマちゃんの存在が逆に、どうしても邪魔になってしまうのです。 『ドールマスター』コタマを扱い頂いた作品は4つ。 そのうち、ALCさんのエウクランテ型エニはコタマと衝突する前に戦乙女の群れに飲み込まれてしまったため、コタマ本人がちょびっとでも関わったのは実質3作品。 3作品くらいならなんとか順位を決められるんじゃないか。そう思い上がることもせずに、あくまで修羅の国に基準を置いて1つずつブロックを積み上げていったのですが、積み上げクレーン役のコタマが矛盾を抱えていてはどうしようもありません。 また、『15cm程度の死闘』という異分子を除けばどうか? は自分の存在意義が無くなるので却下(旧掲示板を開く限り不可能だと見られますが)。 まことに遺憾なことです。 もう残す手段は、彗星の如く表れた天才がスパパッとすべてのストーリーをまとめ上げ、頂点を決めてくれることに期待する他ありません。 暫定的かつ勝手に最強となってしまったクーフラン型『ナイツ・オブ・ラウンド』マシロの座を奪う神姫の登場にも期待したいところです。 ただし違法な手段で這い寄ろうとする神姫相手には、にゃーの怨念が取り憑いたマシロがなりふり構わず殺しにかかります。 それもこれも、ここまで読んで頂けた方が一人でもいらっしゃればの話ですが・・・。 ところでアニメの感想ですが、ヴァローナを愛でたい。 思い出したように出てきたハムスターもいいけどヴァローナを愛でたい。 胸が若干盛られてたような気がしたけど、それでもいいからヴァローナを愛でたい。 15cm程度の死闘トップへ
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FAQ ※まずは付属のマニュアルを読みましょう。 「スタートメニュー」から「プログラム」→「KONAMI」→「武装神姫」→「武装神姫バトルロンドマニュアル」 このページとマニュアルを読めば、ある程度の疑問は解決できると思います。 初心者さんは初心者向けガイドにも目を通してみましょう、 wikiの左メニューの一番上で「wiki内検索」をしてみるのも有効です。 それでもわからなければリンクより「武装神姫バトルロンド・質問スレ」へどうぞ。 まず始めにQ.このゲームって無料? Q.あれ?起動させようとしたら落ちるんだけど? Q.あれ?装備の形状が表示されるっているアイコンが歯車のままなんだけど? Q.あれ?スクリーンショット撮ったのに真っ黒に版権表示なんだけど? Q.ゲーム内データの保持期限は? Q.名前って他人と被ってもおk? Q.名前の変更はできるの? Q.1文字だけの名前って付けれないの? Q.課金しないと勝てないの? Q.今からやってもレベル差あるから勝てない? システム関連Q.最近バトルロンドのロードがもたつく/重い Q.バッテリー切れたんだけど、満タンになるまでどれくらいかかるの? Q.オススメの素体は?/オススメの育成方針は? Q.素体とか武装を増やしたいんだけど、どうすりゃいいの? Q.限定パーツって何の話? Q.大手裏剣ってどうやって入手するの? Q.アクセスコード入力したら、二刀流・二丁拳銃できない武器を2つ貰ったんだけど? Q.EXウェポンセット勢の素体が足りない。この生首祭どうしてくれよう Q.ショップで気になるアレを買いたいけど、これの性能って事前にわかる? Q.試用チケットってどうやって使うの? Q.グレードシルバーになっても購入できる品が増えません。どうしたら増えるのでしょうか? Q.普通と髪型の違う神姫を見かけるけどあれは何? Q.リストアできないんだけど? バトル関連Q.神姫が言う事を聞いてくれない Q.防御してくれない/回避してくれない Q.追撃スキルが出ないんだけど? Q.コアとか素体とかCSCが違うと何がどう変わるの? Q.自分より高レベルの相手としか当たらなくて萎える Q.うちの子ふっとび過ぎで、後攻に回ると打撃が全然当たらない Q.このゲームって対人戦? Q.友達と対戦できない Q.装備数制限/重量制限を緩和するにはどうすればいい? Q.マッチング後、作戦指示中に落ちたんですが相手に迷惑が掛かっていないでしょうか Q.トレーニングしたのに全然ミッションで勝てないよ Q.ジャーナルに「過度のトレーニングは~」って書いてあったけど? Q.ルビー+サファイアとガーネット×2はどちらの効果が高いですか? Q.武器を持たせても素手で殴りに行くのですが… Q.バトルシミュレータ、人がいるのにマッチングしない(緑ネームと当たる)事があるんだけど・・・ その他Q.オープニングの曲の詳細教えてOP1 OP2 Q.武装神姫マスターズブックってなぁに? コメント まず始めに Q.このゲームって無料? 忍者型フブキと、その武装を無料で使用できます。 バトルロンドに先駆けて開始された、ジオラマスタジオ用に登録したデータも一部を除きそのまま転用可能です。 Q.あれ?起動させようとしたら落ちるんだけど? Q.あれ?装備の形状が表示されるっているアイコンが歯車のままなんだけど? Q.あれ?スクリーンショット撮ったのに真っ黒に版権表示なんだけど? グラフィックボードの性能不足と思われます。買い換えるか諦めるかしましょう。 オプション設定でウィンドウサイズと描画クオリティを下げると解決する場合もあります。 グラフィックボードのドライバを最新バージョンにすると症状が改善するかもしれません。 パーソナルファイヤーウォール等でバトルロンドのゲームサーバへの接続を弾いている可能性もあります。お使いのファイヤーウォールのログを確認してみてください。 物理メモリにエラーがないかメモリチェッカーで確認しましょう。 Q.ゲーム内データの保持期限は? 規約によると、最終ログイン日から180日間とのこと。 その期間を過ぎると、登録しているオーナー名と神姫データなどのセーブデータが失効されます。 あくまで育成データが消えるだけで、購入したアイテムなどのデータが消えるわけではありません。 ……ただしアチーブメントなどで入手した装備品は不明です。 Q.名前って他人と被ってもおk? オーナー名は不可、神姫名なら可。ただし同じ名前の神姫は複数所持できません。 Q.名前の変更はできるの? オーナー名とセットアップ後の神姫名の変更はできません。 神姫の名前が気に入らない場合は、新しく別の神姫をセットアップするかリセットするしかありません。 Q.1文字だけの名前って付けれないの? 空白+1文字で可能です。前後どちらでも可。 Q.課金しないと勝てないの? 戦闘は戦術と武装の相性が一番重要なので、一概にそうとも言えません(建前)。 実際には、十分な経験のある熟練オーナーがあえて無課金忍者型フブキで制限プレイするのならともかく、 新規で始めた初心者さんでは、無課金のままで勝ち抜いて行くことは厳しいです。 C~Bクラスではまだ頑張れますが、Aクラス以降では相当な運に恵まれないと勝てないと思います。 ただし、高い勝率を残せるかどうかと、このゲームを楽しめるかどうかはイコールではありません。 Q.今からやってもレベル差あるから勝てない? こちらに関してはそんな心配はありません。 勉強熱心なプレイヤーであれば、知識については追いつく事が可能です。 システム関連 Q.最近バトルロンドのロードがもたつく/重い アップデート前は問題ない、という人向けの回答しか出来ませんが、 自分のPCのクリーンアップとデフラグを行って下さい。 Q.バッテリー切れたんだけど、満タンになるまでどれくらいかかるの? 1時間につき1目盛りずつ回復。計10目盛りなので、ゼロから満タンになるまでは10時間かかります。 課金アイテム「急速バッテリー充電器」を使えば即座に回復させる事も可能です。 (急速バッテリー充電器は初回ログイン時に10個もらえます) が、神姫を複数体セットアップすれば、1時間に対する合計の回復量も当然増えます。 武装の入手ページも参考にした上で、フルセットを購入した方が良いでしょう。 Q.オススメの素体は?/オススメの育成方針は? ぶっちゃけどの神姫にも勝ち目はあるから、自分で気に入った神姫を育てるのが一番オススメ。 素体の能力表はセットアップを参照してください。 育成方針よりも重要なのはオーナー自身がよく考えることです。 (例えば同じ育成方針の同程度のレベルの神姫同士の戦いの場合、勝敗を決める大きな要素はオーナーの采配です) 他人の強い神姫の武装やレベルをよく見て、真似してみるのも良いかもしれません。 Q.素体とか武装を増やしたいんだけど、どうすりゃいいの? 武装の入手のページを参照。 基本的には、フィギュア実物を買うか、「神姫ポイント」を介して神姫ショップでデータを購入するかの二択になります。 ちなみに「神姫ポイント」は最終利用日から1年間使わないと失効すると規約にあるので注意。 データ限定の素体や武装も多数あるので、チェックしてみましょう。 Q.限定パーツって何の話? 特定の期間にログイン、またはイベントに参加する事で入手できる、非売品パーツが存在します。 公式で随時告知されるので、定期的にチェックするようにしましょう。 またキャンペーンのページにも情報が記載されています。 大抵のものは期間終了後、CSC交換やふくびきで再配布されます。 Q.大手裏剣ってどうやって入手するの? 下記参照。 http //www.shinki-net.konami.jp/info/tgs2006rpt.html Q.アクセスコード入力したら、二刀流・二丁拳銃できない武器を2つ貰ったんだけど? 「大手裏剣“白詰草”」や「ホーンスナイパーライフル(サンタ型ツガルのメインウェポン 小銃)」などの、 二刀流・二丁拳銃できない武器の2つ目は、ジオラマスタジオで使用する為のものです。 バトルロンドでは2つ装備しても意味は無いので気をつけましょう。 Q.EXウェポンセット勢の素体が足りない。この生首祭どうしてくれよう フィギュアに素体が付属しないEXウェポンセットには、デジタルデータ限定ですが専用素体が存在します。(各500spt=500円) また、オンラインオリジナル素体として、エレガンスやバンテージといったコア無しの素体も発売されています。(各450spt) これらを購入すれば、他の神姫の素体を回す事無くEX勢を育成できます。 Q.ショップで気になるアレを買いたいけど、これの性能って事前にわかる? 神姫ショップの商品リストで、試着することで確認出来ます。 見たい武装を試着かごに入れて、試着かごを確認→試着するで試着室に進むことが出来ます。 フルセットは試着できませんが、武装セットは試着可能です。 また、試用チケットが残っていれば、装備を3日間(72時間)だけレンタルすることも可能です。 有効に活用しましょう。 Q.試用チケットってどうやって使うの? 各パーツの「詳細」ページを開き、「この商品を試用」を選択してください。 試用できる商品は、「メインウェポン」「サブウェポン」「リアパーツ」「アーマー」「アクセサリ」「その他」のカテゴリの商品のみとなります。 「フルセット」「武装パーツセット」「素体」「メンテナンス用品」が試用できないのは当然ですが、 「スペシャル」カテゴリでのみ販売されている「忍者刀”風花”」なども試用ができないので注意してください。 なお、試用チケットはバトルロンドのショップでのみ手続きが可能です。 また、試用装備はノーマル武装では装備できません。 Q.グレードシルバーになっても購入できる品が増えません。どうしたら増えるのでしょうか? 神姫ショップの商品リストを開き、最上部のカテゴリリストから「スペシャル」を選択してください。 なお、現在はバトルロンドのショップでのみ購入可能。ジオラマスタジオでは購入できないのでご注意ください。 Q.普通と髪型の違う神姫を見かけるけどあれは何? ショップ販売の「エクステ」または、一部神姫に武装の一部として付属するヘアパーツを装備しているからです。 なお悪魔型、サンタ型のツインテールはフルセット/武装セットにしか付属していません。 Q.リストアできないんだけど? その神姫はオフィシャル戦を100戦以上行っていますか? その神姫は成長限界に達していますか? その神姫はクレイドルで寝ていますか? バトル関連 Q.神姫が言う事を聞いてくれない セットアップ直後は言う事を聞かない事が多いです。親密度を上げて行く必要があります。 親密度を上げるには戦闘後に誉めてあげる事が大切です。 神姫技能試験CクラスI(いわゆるパシュミナ道場)で稽古をつけてもらいましょう。 命令の内容に関しては、神姫によって受け取り方が違います。 「高ダメージを狙え」というのは、「攻撃力の高い武器を使え」という意味ではない事に注意しましょう。 Q.防御してくれない/回避してくれない まずはAIを育成しましょう。こちらもやはり道場通いがオススメです。 戦闘前に「回避してスキを狙え」もしくは「ガードしつつ耐えろ」を選び、戦闘終了後に誉める。 その内、回避かガードを必ず狙うようになると思います。 ただし、元々防御向きでない神姫は、ガード以外の指示に変えた途端ガードしなくなる場合があります。 同様に、回避向きでない神姫も回避以外の指示に変えた途端回避しなくなる場合も存在します。 また、マニュアルにも記述されている通り、防御は「WAIT」状態、回避は「WAIT」か「MOVE」状態でなければ行いません。 「PRE-ATTACK(攻撃準備)」に行う場合もありますが、こちらは完全なランダムとなっています。 攻撃終了直後の「POST-ATTACK」中は反撃スキル以外は使用不可能となっています。 回避もガードも出来ないので注意して下さい。 詳しくは、攻撃の「準備時間」と「硬直」を確認して下さい。 構えてから攻撃するまでが「準備時間/PRE-ATTACK」で、 攻撃後の行動可能になるまでの時間が「硬直/POST-ATTACK」です。 基本的には、準備時間と硬直の少ない武器であれば回避も防御もし易くなります。 当然、例外もあるのでその辺は慣れてくれとしか言えませんが・・・ Q.追撃スキルが出ないんだけど? まず、スキルレベルとSPを確認して下さい。 また、追撃スキルを使った後の戦闘評価で誉めてあげないと使うようにはなりませんのであしからず。 それでも出ない場合は、距離が関係します。 「サンドスプラッシュフィーバー」の場合は、相手神姫との距離が0-150で、通常攻撃が当たった場合発動します。 しかし、武器によってはノックバックして相手が後退してしまう事があり、 ノックバックで距離が150を0.1でもオーバーしてしまうと発動しなくなります。 また、「ヘルストーム」などの中距離以上の追撃スキルの場合は当然、 相手の距離が100以下の状態で攻撃を当てても発動しません。 ただしこの場合、攻撃を「準備した(構えた)距離」が100以上で、相手が移動して距離100以下になったとします。 その後、準備していた攻撃が当たって相手がノックバックして再度、 距離が100以上になった場合は発動する事が出来ます。 Q.コアとか素体とかCSCが違うと何がどう変わるの? コアで行動の傾向や武器の得手不得手が決定されます。 素体で基本性能が決まり、CSCは素体の性能を変化させます。 一度セットアップすると変更するのは(リセットしない限り)不可能です。気をつけて決めましょう。 Q.自分より高レベルの相手としか当たらなくて萎える レベル差が20くらいのバトルでも勝利したという報告もあるので、頑張りましょう。 人の多い時間帯なら、高レベルとのバトルの確率が減ります。 (人の多い時間帯のことをピークタイムと呼びます。だいたい夜の8時から12時くらいまで) Q.うちの子ふっとび過ぎで、後攻に回ると打撃が全然当たらない 被ノックバック距離は対ダウン値を上げる事で軽減する事ができます。 逆に、武器のダウン値が高いほど与ノックバック距離は大きいです。 Q.このゲームって対人戦? オフィシャルバトル戦とバトルシミュレータ戦は対人戦です。 ミッションバトルの敵神姫はNPCです。 また、シミュレーションバトルで出る文字が緑色の相手は 武装神姫のサーバーにある他のプレイヤーのデータからランダムで選出された物です。 プレイヤーデータを借りたNPC、と考えて頂ければ結構です。 ちなみに、緑文字神姫の装備セットはランダムで決定されます。 Q.友達と対戦できない オフィシャルバトルとバトルシミュレーションのマッチングは、同クラスの中からランダムで決まります。 任意の相手との対戦がしたければ、神姫センターのティールームを利用するのが早いでしょう。 その他のオーナーに参加して欲しくない時はパスワードも利用しましょう。 ティールーム戦は特殊ルールのバトルやクラスの垣根を越えたバトルが出来ます。 ただしアチーブメントは取得できません。 詳しくはオンラインマニュアルのティールームの項目を参照。 Q.装備数制限/重量制限を緩和するにはどうすればいい? オフィシャルバトルに勝つとC→Bのようにクラスが上がり、それに伴って制限が解除されていきます。 詳しくはマニュアルの「!? 神姫のクラスアップ」を参照して下さい。 Q.マッチング後、作戦指示中に落ちたんですが相手に迷惑が掛かっていないでしょうか 対戦相手とマッチングした瞬間に戦闘を完了したことになっています。 その場合、武装1、デフォルトの戦術を選択したことになります。 選択後に落ちた場合はその選択通りに戦闘したことになっています。 Q.トレーニングしたのに全然ミッションで勝てないよ Q.ジャーナルに「過度のトレーニングは~」って書いてあったけど? トレーニング直後は100%の実力を発揮できないのです。 どんなに強い神姫でも、トレーニング直後は結構弱くなります。 オフィシャル戦を数回行う事で本来の能力を発揮出来るようになります。 詳しくはトレーニングの「実戦感覚」についての説明をご覧下さい。 Q.ルビー+サファイアとガーネット×2はどちらの効果が高いですか? 運次第です。 詳しくは武装神姫マスターズブックをご覧下さい。 Q.武器を持たせても素手で殴りに行くのですが… 残念ながら仕様です。「得意距離を回避するため移動」が出なくなるまでミッションに通ってください。 またはミッションまたはテーブルで特殊ルール(射撃武器禁止など)が設定されていないか確認してください。 Q.バトルシミュレータ、人がいるのにマッチングしない(緑ネームと当たる)事があるんだけど・・・ レベル差があるとマッチングしない仕様になっています。 Cは10、Bは20、Aは30、Sは40、EXは50の差があるとマッチングしません。 その他 Q.オープニングの曲の詳細教えて 小ネタのページも参照。 OP1 題名:「I WILL FOLLOW YOU」 歌手:阿澄佳奈(アーンヴァル役) 茅原実里(ストラーフ役) コナミスタイル限定で発売されている「武装神姫RADIO RONDO」に、フルバージョンが収録されています。 歌詞はマスターズブックに記載されているのでここには書けません。あしからず。 OP2 題名:「Into the shining World」 歌手:加藤英美里(エウクランテ役) 井上麻里奈(イーアネイラ役) Q.武装神姫マスターズブックってなぁに? 武装神姫マスターズブックというガイドブックがあります。 ゲーム上では確認できない(wikiにも転載していない)データ類がいくらか記載されており、限定アイテム「ナースセット」も付いてきます。 ただし、2007年8月17日に発売された物なのでデータが古いです。必要性を感じるのであれば買ってみても良いでしょう。 コメント ※ここは質問コーナーではありません まず自分で調べ、それでも分からなかったら本スレで質問をし、 それで得た情報をここに書き込んでくださいませ。 オーナーグレードによる限定販売品について答えてみました。(システム関連の項参照) -- (名無しさん) 2007-07-04 00 43 15 PFWとしてPeerGuardianを使っている場合、210.249.144.106~210.249.144.107を解放しておくと良いことが有るかもしれません。 -- (名無しさん) 2007-08-18 20 29 21 公式URLの変更に伴ってティールームの項目へのリンクが切れているので修正してくださいますか? 他のページでも同じようなリンク切れがあるかも…と思ったので、古いURLでwiki内を検索して新しいURLに置換してもらえたら嬉しいなーと黒子が申しております -- (名無しさん) 2007-12-13 15 58 42 今日、ゲーム内データの保持期限についてコナミさんに直接問い合わせました。180日間の放置で神姫の育成データは消滅するけど、オーナー情報やアチーブメント、CSC等は消えずに残るそうです。 -- (名無しさん) 2008-09-14 00 21 09 Q.自分より高レベルの相手~の部分に関して ClassCバトルにてLv42の課金装備なしのフブキさんでもLv98白子(攻撃・命中がLv25程度で武装は覚えていないがバトルロンド専用課金装備使いまくりだったのは確か)に勝てました 本来なら証拠データを提出すべきなんでしょうがレベル的に絶対勝てないだろうと思っていたところで勝ってしまったので動揺してリプレイ保存忘れました・・・すみません やる気さえあればフブキオンリーでも頑張れないことはないという証明のため一応。 でも実際問題どうしても課金(フィギュア購入含む)できない状況でなければある程度の武装確保のために何かしら買った方がいいと思います(フブキが弱いとかそういうのでなく他の神姫を手に入れることに夜武装の種類拡張や各神姫のアチーブメント達成時にもらえる武装等の関係でフィギュア持ってるor課金して複数育ててる人の方が有利になるため) -- (リエル) 2009-06-10 01 55 39 レベル差でも相手が絶賛トレボケ中だったりで、結構いい勝負になることがあるね 諦めなければ勝ちが拾えることもあるよ -- (名無しさん) 2009-06-10 03 10 57 そうですね それ以外だと武器構成を唐突に近接から射撃オンリーに変える等の大幅な変化が見られる場合はAIが混乱するのか挙動がおかしくなります(遠距離武器しか持っていないのに間合いを詰めてサンドバッグ状態になる等) どれもバランスよくないと勝てないって事ですかね -- (リエル) 2009-06-14 19 28 03 ティールームでは、魚拓のアチーブメントはとれます -- (名無しさん) 2009-10-26 22 15 49 起動で落ちるという部分ですが こちらの環境(メインとTV出力のマルチディスプレイ)では、 設定の解像度が両ディスプレイの解像度以下でないと動作しませんでした。 (クライアントを表示させているのがメインの方でも) 当初の設定↓ メイン:1280*1024 TV:800*600 武装神姫:1024*768 上記だとダメなのでTVの解像度を上げるか、設定を下げないと起動しません。 起動時に全てのディスプレイのチェックをしているのでしょうか? 最初は単にスペック不足かと思って諦めかけたのですが、上記で起動したので報告までに。 -- (名無しさん) 2009-12-16 13 57 25 回避か防御を覚えさせることはできたのですが スキルを出すタイミングを覚えさせるのも褒めるか叱るかなんですよね? そうすると回避か防御覚えさせてのがまたチャラになるか不安なのですがどうやって覚えさせればいいのでしょうか? -- (名無しさん) 2010-03-09 22 31 20 名前 コメント すべてのコメントを見る
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ウサギのナミダ ACT 0-6 ■ 「着けてみた感じは、どうだ?」 意外と悪くない。 自分の脚を全く別のモノに交換したにも関わらず、思ったほど違和感は感じない。 「いい……と思います」 むしろ、昨日まで練習で履いていた、ローラーブレードの方が違和感があった。 脚にはめた、その先の車輪は自分の一部ではない感じだった。 でも、新たにマスターが用意してくれた、この脚部パーツは、つま先から車輪まで、文字通り身体の一部であるように思える。 マスターが作ってくれた、オリジナルの脚部パーツを、今日初めて装着した。 わたしの脚は、太ももの接続部を境に、ごつい機械の脚に変貌していた。 足首の部分には、前後に車輪がついている。 後輪の方が大きくて、後ろに張り出していた。 足首の中には超電動モーターが入っており、車輪による高速移動が可能なはずだ。 これが、わたしが与えられた武装。 マスターが時間をかけて、パーツを集め、組み上げた、オリジナルの装備。 わたしはこの十日ほど、ローラーブレードの特訓に明け暮れた。 装備が完成するまでに、「滑走する」動作をメモリにたたき込んだ。 主な動作は、アイススケートを中心にしたメニューだったが、それもフィギュアスケートやスピードスケート、アイスホッケーに至るまで多彩なメニューが用意された。 それだけではない。スキー競技もアルペンからフリースタイル、ジャンプにクロスカントリー、エアリアルまで、動作を真似た。 もちろん、ローラーブレードもエックスゲームを参考に、メニューが用意された。 これらはすべて、今日渡されたこの装備を使いこなすためのものだ。 「でも……脚に車輪をつけた装備もすでにあるのでは?」 「確かにな。あるにはあるが、種類が少ない。俺が望む性能を再現するものは、俺の知る限りない」 「なぜ、ですか?」 「自由度の問題、だろう」 「自由度……?」 「装備、そして戦闘行動の自由度だ」 マスターは、わたしのこうした疑問に、とても丁寧に答えてくれる。 わたしがマスターの意図を理解してバトルできるように、との配慮だそうだ。 マスターは相変わらず無表情だったけれど、たくさんの言葉をかけてもらえることが、わたしは嬉しかった。 「エックスゲームのような機動を実現するには、装備が制限される。重い武器はもちろん、動きを阻害するようなかさばる装備は身につけられない。自然、小火器や格闘武器に限られる。 重装備にすれば、火力は得られるが、独特の機動は得ることができない。 それに、結局は地上戦用装備にならざるを得ない。 武装神姫は装備を付け換えるだけで、簡単に空を飛ぶことができる。そっちの方が、戦闘機動の自由度は高い。 ローラーブレード型にこだわらなくたって、強力な脚部パーツはたくさんある。そっちの方が、装備と機動力を両立させるには適している。 だから、足首に車輪を装備している神姫はすべからく、移動するために装備しているのであって、戦闘機動をするためじゃない」 つまり、わたしの脚部パーツを使うには、重装備では意味がない、他の装備を考えた方が攻撃力と機動力のバランスがいい、ということだ。 「それなら、なんで……」 わたしは、沸き上がった疑問を、素直に口にしてみた。 「なんで、マスターは、ローラーブレード型の装備を作ったんですか?」 理由の一つは、わかる。 それは誰も使わない装備であり、誰もしない戦い方だからだ。 誰もしない戦いをすることが、マスターの夢だからだ。 けれど、マスターから語られた理由は、意外なものだった。 「……美しいからだ」 「……え?」 「滑走する競技というのは、美しさを競う競技でもある。 フィギュアスケートはその代表だ。 スキーでも、モーグルはスピードだけでなく、滑走時の姿勢や、エアの技、着地の出来を採点される。 スキージャンプも、飛行姿勢や着地姿勢を採点されるんだ。 あらゆるエックスゲームは観客を魅了することに主眼が置かれている。 『滑走』という行動をバトルに取り入れることで、より美しく、より魅せる戦いができるんじゃないか、と考えている。 ……そんなところだな」 前にマスターは言っていた。 『自分たちだけの戦い方で、ギャラリーを魅了できれば最高だ』と。 わたしに与えられたこの脚部パーツは、その夢に直結している。 それにしても、マスターが『美しいから』という理由でこの装備を作ったことが、なんとなくおかしかった。 でも、笑うのは失礼なので、マスターに見えないように、顔を伏せてこっそりと微笑んだ。 □ ティアに答えた『美しいから』という理由は、我ながらちょっと気恥ずかしかった。 だが本心だ。 圧倒的な火力で殲滅するよりも、限られた手段を駆使して勝利する方が、心に残る。 それが美しい動作ならばなおさらだ。 「さあ、テストを始めよう」 俺はティアに言った。 この十日間、ティアにはローラーブレードの特訓を施した。 いまでは、エックスゲームのトッププレイヤーも顔負けの腕前だ。 それだけ習熟が早いのには理由がある。 神姫は様々な動作を記録し、それを忠実に再現することができる。 それをさらに応用して、条件を少しづつ変えて、動作をすることも可能だ。 事前にシミュレーションを行っておけば、さらに精度は高くなる。 そうやって、成功の条件を積み重ねていけば、人間には修得が難しい技も、神姫は難なく修得できるのだ。 もちろん、武装神姫素体の運動性能の高さもそれを手伝っている。 ティアは緊張の面持ちだった。 スピードスケートの選手のようにスタート姿勢を取る。 「行きます!」 高い声と共に、一気に走り出した。 場所は俺の部屋の中。 片づけた部屋の最長距離を走ろうとする。 ティアの行く手には障害物はない。 超電動モーターがオンになり、ホイールが回転し始める。 乾いたホイール音が響いた。 「わっ、わわわっ!」 素っ頓狂なティアの声。 両足首が身体よりも先に出ようとしている。 体のバランスが一気に崩れた。 ティアは尻餅をつき、床の上にすっころんだ。 「いったぁ……」 ……やっぱりそうなったか。 ティアは涙目になりながら、小さなお尻をさすっている。 ティアはローラーブレードを操るように走り出したのだろうが、車輪が自分で回転するので、勝手が違ったのだ。 自転車とバイクでは、乗り方が違うのと同じだ。 だが、使いこなせれば、より速く、自由に滑走することが出来るはずだ。 ■ 訓練を始めてから三時間経った。 そのころには、ローラーブレードと同じように、このレッグパーツを操れるようになっていた。 レッグパーツに慣れてみれば、こちらの方ができることの幅が広いことが実感できる。 ローラーブレードと違うのは、わたしの意志で、ホイールの回転を自在に操作できること。 回転数を上げるのも下げるのも、逆回転すらさせるのも自在だ。 武装を直接コントロールできる神姫ならではの能力だった。 これによって、停止している状態からその場ですぐにスピンしたり、直立したまま姿勢を変えずに移動したりもできる。 ホイールにモーターがついているから、スピードもさらに出すことができる。 もしかすると、いままで思いもしなかった動きができるかも知れない。 その週末、土曜日の朝。 いつものように、わたしはマスターに連れられて、近所の、あの広い公園まで、散歩に来た。 いつもと違うのは、わたしがあの新しいレッグパーツを装着していること。 なぜ、レッグパーツを装着して連れ出されたんだろう? わたしはマスターの言うことに従っただけだけれど、その理由はなんとなく聞きそびれてしまっていた。 今日も外は快晴。 やわらかな風が、わたしの頬をなでて、吹き抜けていく。 気持ちがいい。 わたしは、マスターのシャツの胸ポケットで、マスターが刻む歩みのリズムを感じていた。 マスターは公園に着くと、広場のすみにあるベンチに腰掛けた。 公園の広場は、芝生が敷き詰めてある広い場所。芝生はよく手入れされており、緑がきれいだった。 その周りには遊歩道が整備されている。 コンクリートの遊歩道は、普通の道路よりでこぼこが少なくて、滑らかな感じがする。 マスターは、胸ポケットに手の甲をかざし、わたしに出てくるように促した。 何が始まるというのだろう? 胸ポケットから出たわたしを、マスターは遊歩道に降ろした。 そして、マスターの口から出た言葉は、意外なものだった。 「思い切り、走ってこい」 「……え?」 「お前が好きなように、走りたいだけ、走ってこい」 わたしが、好きなように……? マスターの意図が理解できないでいる。 「あの……わたしが自由に走って、何の意味が……?」 「走ってみれば、わかる」 わたしは改めて、自分が立っている遊歩道のまわりを見渡した。 今、わたしの目の前には、広大な地平が広がっていた。 ここなら、壁に阻まれることもなく、どこまでも走ることができる。 わたしは、もう一度マスターを見上げた。 マスターはわたしに視線を合わせる。 早く行け、と促している。 何か不安だった。 マスターの具体的な指示なしに、自由に滑走するということが、初めての体験だったから。 それでも、わたしは遊歩道の先を見据え、スタートの構えを取る。 「行きます……!」 頭の中でカウント。 三、二、一、スタート。 わたしはまず、全力で走ってみることにした。 ここなら壁に阻まれる心配もなく、どこまでも加速できる。 スピードスケートの選手のように、前かがみになって両腕を振り、左右の脚で大きく蹴り出す。 蹴り出すときに、重心を乗せた方の脚のホイールを加速させる。 今まで感じたことのない、爆発的な加速。 疾走する。 流れてゆく。 遊歩道に沿って並んでいる木々が、形を失って、わたしの後方へと流れてゆく。 風が。 風が左右にわかれ、わたしの横を吹き抜ける。 ああ……わたしは…… いま、風になっているんだ。 ものすごい解放感がわたしを包み込む。 ただ走るという行為が、こんなにも自由なものだったなんて! わたしは、夢中になって走り出した。 一歩ごと、わたしは身も心も風に溶けてゆくようだった。 気持ちの赴くままにジャンプ。 つむじ風になったように、四回転。 あっさり決まって、着地。 驚くほど簡単だった。 ローラーブレードの時は、相当練習して、やっとできるようになったというのに。 マスターのくれたレッグパーツは、わたしの想像以上のポテンシャルを秘めている。 それを十二分に引き出すことができたら……あらゆる滑走競技の技が可能なはず……それ以上のことだって。 ならば、試してみよう。 いまのわたしに可能な最高のトリックを。 もうすぐ、公園の遊歩道を一周する。 試すのはマスターの目の前。 わたしは、さらに加速する。 □ ティアが公園を一回りしてきた。 あいつはどんな風に感じたろうか。 なによりも、滑走することが楽しいと、気持ちがいいと、感じてくれれば、それでいい。 ティアをここで走らせることは、それが目的だった。 深い意味はない。 だが、俺が始めてスキーをしたときのような嬉しさを感じて欲しかったのだ。 滑走するということは、日常から解き放たれ、自由になる瞬間なのだ、と。 ティアが俺のいる方へと疾走してくる。 スピードを落とす気配がまったくない。 ……おいおい、何をするつもりだ? 俺の目前、ティアは身体をひねると、スピードはそのままに、片足で踏み切った。 ジャンプ。 高い。 フィギュアスケートの選手のように、両腕を身体に寄せ、回転する。 だが、その回転は複雑で、身体をロールさせながら宙返りもしている。 踏み切りはフィギュアスケートだったが、空中の回転はフリースタイルスキーのエアリアルだ。 木の葉のように宙を舞う。 人間ではありえない長い滞空時間の後、ティアはきれいに着地を決めた。 「あはっ!」 ティアの、短い笑い声が、聞こえた。 あいつ、笑ったのか。 そうか。 知らず、俺の口元からも笑みがこぼれる。 ティアが俺の予想を超える、超絶の技を決めたことも嬉しかった。 でも、それ以上に、ティアが笑えたことが嬉しい。 今まで頑なだった彼女の心が、確かに喜びを感じている証拠だったから。 ■ わたしは、公園をさらに半周して折り返し、マスターの元に戻ってきた。 もう、このレッグパーツの動作は掴んでいた。 ランドスピナーを加速させ、わたしはまた風に乗る。 マスターが待つ公園のベンチの手前でジャンプ! 月面宙返りを決めて、ベンチの上に着地した。 膝を着いていたわたしの頭上から、拍手の音が降り注いだ。 マスター。 マスターが、わたしに拍手をしてくれている……。 見上げると、マスターはいままで見たこともないような笑顔で、わたしを迎えてくれていた。 「想像以上だ。素晴らしかった」 その言葉が、どんなに誇らしかっただろう! わたしは嬉しくて、とても嬉しくて、マスターに気持ちを伝えたいと思う。 「あ、あの……すごく、すごく、楽しかったんです! 走ることが、楽しくて、気持ちよくて、自由で、嬉しくて……!」 自分の口から転がり出た言葉が、あまりにもとりとめなくて、いま興奮していることを自覚する。 マスターは、そんなわたしの拙い言葉を聞いてくれた。 いつものまっすぐな視線でわたしを見ながら。 そして、微笑みを浮かべながら、こうまとめた。 「そのレッグパーツ、気に入ったか?」 「はいっ!」 それはよかった、とマスターはまた笑ってくれた。 次へ> トップページに戻る
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赤い月が天窓に浮かぶ屋敷の広大なエントランスにて、銀色の輝く番犬が月光に照らされて鋭利な牙を光らせた。 その牙の先には床から壁から角から天井からと縦横無尽に跳び回る黒色と紫色の不躾者。 不躾ながらも一筋縄では往生しない実力者であるらしく、青いツインテールの彼女は既に何本もの番犬の牙から逃げ切っている。 されとて犬達の戦意は意気揚々と怖れず止まらず諦めずの精神を以て不躾者を仕留めてみせんと空を切った。 金属同士が鎬を削り合う際の荒い音が西洋風の屋敷の中で舞い踊ってはそそくさと舞台の外へ立ち去る。 既に何百と繰り広げてきた無骨な音の舞踏会は、しかし一人の役者と力不足によって台無しにされようとしていた。 ほんの僅かな隙、それこそ高名な評論家であっても見逃すであろう奇跡の隙間を番犬の一本が通り抜ける。 不躾者が自身の失態に気付いた時にはもう遅く銀色をした牙に腕一本を噛みつかれてしまう。 不意に受けた攻撃に反射的に動きを止めてしまった時にはもう遅く、番犬達の操り手であるメイドが静かに語り掛ける。 「殺人ドール。」 ミニスカートのメイド服を着たハウリンの宣言と共に服の袖から十本ほどの銀製ナイフが跳び出す。 少しの間ハウリンの傍に浮かんでいたナイフは、やがて犬の手を借りる事も無く独りでにストラーフへと襲い掛かる。 全てのナイフはその肢体を突き刺し刃の銀の光が暗闇に溶けていたフブキ型武装の黒と紫の色を明確に照らす。 本来なら今の一撃で決まっていたのだが、そうならなかったのはストラーフがナイフの一部を弾き飛ばしたからだ。 対戦相手の冷静な判断に敬意を称しつつもしかしながらハウリンは手を止めずに同じ技で雪崩れの如く押し崩しに掛かる。 「殺人ドール。」 十本の番犬が再び襲い掛かる。 さながら影の悪魔を仕留めんとする銀色の光弾にストラーフはハウリンを見据えたまま後ろへと跳んだ。 バックステップを踏んだ程度でナイフは避けられない、後ろへと跳んだのは前へと進む為だ。 鉤爪のような形をしているフブキ型のフットパーツと屈指の強力を誇る副腕であるチーグルを以て屋敷の壁に着地する。 そしてほんの一瞬、両脚と副腕を屈ませて、ほんの一瞬でも十分に溜まり切る力を解放し思い切りハウリンへと跳び掛かった。 だがそれは先に放たれた技であるナイフの群れの中へと踊り込む事を意味している。 そんな事は常々承知しているストラーフは必死の覚悟と共に素体の両腕で急所となる頭部と胸部のみを守る。 右目を貫かれようとも喉元を食い破られようとも腹部を刺し穿たれようとも太腿を噛み千切られようとも止まらない。 二体を隔てる距離が神姫一体分となりハウリンを射程距離に捕らえたストラーフは副腕を振り上げる。 「デモニッシュクロー!」 例えナイフを無尽蔵に貯蓄している不可思議なハウリンであってもこの必殺の悪魔の爪は避けれず防げない。 そう確信して放っていたのだがその爪がメイド服を切り裂く寸前、ハウリンの姿が忽然と消えた。 「!?」 瞬間移動や超スピードといったチャチな類では一切無く何の前触れも無く居なくなった。 一人その場に残されたストラーフは何が起きたのかすらも理解出来ず周囲を見渡しハウリンの姿を探す。 だがどこにも居ない、そう思っていた矢先、彼女は、ストラーフの後ろに居た。 「ようこそ私の『世界』へ。そして、永遠にさようなら。」 「なっ…!?」 ストラーフは下方向を除く百八十度全方位を優に百を超える無数のナイフに囲まれている事の気付く。 催眠術や超スピード等チャチな物では断じてない現実にハウリンは終わりを告げた。 「幻葬「夜霧の幻影殺人鬼」!」 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァァ!」 嵐の様なナイフが我が一番ナイフだと言わんばかりの猛烈な勢いでストラーフへと殺到した。 百を超える凶器に囲まれつつもストラーフはその眼の希望を夜闇に沈ませる事無く全身全霊を以て拳を振るい弾き飛ばす。 それでも尚、一本のナイフが肩に突き刺さり、一本のナイフが胸に突き刺さり、一本のナイフが副腕の接合部を破壊する。 「粘るわね…なら、駄目押しにもう一本!」 ハウリンが手を翳すとその手に何処からともなくナイフが現れる。 親指と人差し指で弾くように投げられたナイフは先行しているナイフをかい潜ってストラーフへと向かう。 ストラーフは先ずそれを弾き飛ばそうとし腹を殴ったが何故か奇妙な方向へと跳ねてそのままストラーフの頭部へと突き刺さった。 弾き飛ばされる事を計算に入れてナイフを投げたのか、そうだとすれば神業的な投擲技術である。 頭部を貫かれ両腕の動きが止まり抑制を失ったナイフに襲われ玩具の海賊船長の様な姿になったストラーフは崩れ落ちる。 だが崩れ落ちる寸前、手に持っていたハンドガンが火を吹いてハウリンの右肩を貫く。 完全に力尽きたストラーフのポリゴンの像が掻き消える瞬間にはあれほどの数のナイフは全て何処かへと消え去っていた。 勝者として一人残ったハウリンにジャッジマシンが祝福の判決を下す。 『ウィナー・サクヤ』 「最期まで勝利を望んでいたのね。貴方のその勝利への執念、このサクヤ、認めましょう。」 撃ち抜かれた右肩を抑えながらもメイドのハウリン、サクヤの姿が消え、そして誰も居なくなった。 …。 …。 …。 『刃毀れも大分ここに慣れてきたわね。』 バトルを終え、意識を現実世界の素体へと取り戻したイシュタルへと向けられた、サクヤの第一感想がそれだった。 黒野白太とイシュタルが今利用しているページは公式大会に出られない様な色物神姫とそのマスター達が集まる場所である。 偶然にもその場所の存在を知った黒野白太は一度そこでのバトルを覗いて以来、刃毀れというHNを使い色物神姫達との対戦を繰り広げていた。 今回の対戦相手、ハウリン型のサクヤは色物神姫達でも比較的穏やかな人物であり何度も戦っている強敵(とも)である。 そんな彼女にとって知り合いの成長と言うのは例えインターネットの回線を通しパソコンのモニター越しにしか知らなくとも嬉しいものらしい 『まぁ、もう百回は戦って負けてますからね。嫌でも慣れますよ。』 『大抵の神姫やそのマスターはここの連中と一度戦っただけでトラウマになるんだけど。負け慣れているのね。』 『ちょっとカッコ付けた台詞を言った後で結局負けた事もありましたから。そんじょそこらの敗北じゃ僕の心は傷付きませんよ。』 『それって竹姫葉月との戦いの時でしたっけ?』 『知ってるんですか?』 『御嬢様がテレビで見ていたのよ。』 『あぁ、成程。』 そう言えばあの大会の場にテレビカメラらしき物が回っていたような気もする。 黒野白太は眼中にしていなかったがあの大会には竹姫葉月以外にも高名な神姫プレイヤーがいたのかもしれない。 『でも、どんなに負けてもカッコ付けるのを止めない、そんな貴方に惹かれる人や神姫も居るのじゃないかしら。』 『居るとすればとんでもない根暗ですよ。僕、ファンレターとか一枚も貰った事ないですし。』 『貴方、手紙とか貰っても絶対に返さないでしょ。』 『勿論ですとも。ファンは自分の気持ちを伝えたくて手紙を送るのだから別に返さなくてもいいでしょう?』 悪い方向に歪みが無い黒野白太にサクヤは「やれやれだわ。」と扱いに困る子供を見る年上の女性のように優しく微笑む。 『それにしても前もその武装を使っていたわね。気に入ってるの?』 『ストラ・クモの事ですか。』 『ストラ・クモ?』 『初めはクモをイメージして組み立てたんです。ストラーフ型・クモ武装。だから僕は略してストラ・クモと呼んでいるんです。』 『実際の動きはバッタよね。ストラ・バッタにした方がいいんじゃないかしら。』 『その辺りちょっと気にしてるんですよ。後、ストラ・バッタじゃなんかカッコ悪いから嫌です。』 彼等が言う武装とはフブキ型の防具に初代ストラーフのリアパーツであるチーグルを組み込んだ武装の事である。 副腕で壁や地面を殴りつけて出す瞬発力と的確に相手の弱点を狙う柔軟性に重きを置いており急加速と急停止を繰り返す事で相手の撹乱させる戦法を主としている。足場となる物が多い屋内や障害物が多いステージでは無類の優位性を発揮し床と言う床を壁と言う壁を跳び回る姿は正にバッタと呼んでもいいだろう。 尤も黒野白太本人は初めはそういった特性に気付かず「クモっぽい」という理由から組み立てたものなので実際の性能がどうであれクモと呼ぶ事に固執しているのだが。 『でも、中距離から一気に近付いて斬りつけるのは僕好みの戦法なんです。機動力は低いから今回みたいにガン逃げされると厳しいですけど。』 『移動スキルや広範囲攻撃スキルで補うのはどう?』 『それは考えたんですけどストラーフ型ってSP低いから移動に使うと攻撃の方が疎かになるですよ。』 『ならチーグルは止めてFL017リアパーツを入れたら? グリーヴァと一緒なら高威力なスキルも発動出来るでしょう。』 『スキルは魅力的ですけど、あれ、重いんですよ。単純なパワーもチーグルに劣りますから瞬発力も下がりますし。』 『成程。良く言えば一長一短、悪く言えばままならないってことね。』 『そう言う事です。それでも今の武装を使っているのはヴィジュアルがクモっぽいからですよ。』 『動き方はバッタなのに?』 『あれは、バッタみたいな動きをするクモです。』 頑なにクモだと言い張る黒野白太であったが、ふと、デスクトップの向こうからくすくすと笑うサクヤの声が聞こえてきた。 『どうしたんですか?』 『今更だけど、貴方って普通よね。』 『普通?』 『そう。あの武装がいいかな、この武装がいいかな、なんて悩むなんて、まるで普通の神姫マスターじゃない。』 『そう言えばサクヤさんの武装はずっとメイド服とナイフですよね。時々魔法使ってきますけど。』 『むしろここではそれが普通よ? あらかじめ一つか二つ置く武装を決めて、それを重点に究める。沢山の武装を買うよりも一つの武装を改造した方が安上がりで済むし。』 『そのくせ、ここの人等は欠点無いですからねー。接近戦も格闘戦も銃撃戦も制圧戦も空中戦も海中戦も全てこなす上で何者も勝てない長所を持っている。サクヤさんも含めて異常者揃いですよ。』 『はっきり言うわね。否定しないけど。でも私達から見たら貴方の方が異常なんだけどね。』 『そりゃまぁ貴方達にとって僕の異常が普通ですし。』 『そういう意味じゃないわ。異常な武装を使う私達に普通の武装の貴方は勝とうとしている。普通なら異常には勝てないって諦めるはずなのに。実力差が分からない程、貴方は馬鹿ではないでしょう?』 『いや、だって勝ち負けに普通とか異常とか関係無いじゃないですか。』 『関係有るわよ。だって貴方、私達に一度も勝った事ないじゃない。』 『関係有りませんよ。普通が異常に勝てないって誰が決めましたか? 普遍が特別に勝てないって誰が決めましたか? 勝つ方が勝つ、それだけです。』 『じゃあ貴方はまだ私達に勝つつもりなの?』 『当たり前です。んでもってその時は今まで見下しやがった貴方達を指指して全力で笑ってやります。』 『性格悪いわね。じゃあその時まで私達は貴方を笑っていてもいいのかしら?』 『どーぞどーぞ。僕は特に気にしませんし。』 あっけらかんと言う黒野白太であるが、サクヤは笑わなかった。 『やっぱり貴方は充分に異常だわ。…勝利なんて何の価値も無いだろうに、何でそんなものを求めるの?』 『僕は勝ちたいだけの武装紳士です。勝ちたいから勝つ、それ以外に意味はありませんよ。』 『イシュタルも同じ意見なの?』 サクヤに話を振られてそれまで黙っていたイシュタルが返事をする。 『私はマスターのようには考えてはいないな。勝利だけでなく敗北にもまた価値があると思っている。それに私達が君達に勝つ日は無いだろうとも思っている。』 『じゃあ何で刃毀れを止めないの? 勝利以外は無価値だって言う刃毀れにとってここでの戦いは無意味じゃないの?』 『私が神姫だからだ。マスターは私の勝利を信じている。それが例え幼子の夢のような無根拠のものであっても、それに答えるのが神姫というものだろう?』 武装する神姫、武装神姫、その在り方は、ただひたすら、勝利を望むマスターの為に勝利を。 イシュタルの答えにサクヤはハッとなったようだった。 『驚いたわ。貴方達にもちゃんとした絆があるね。勝利で結びついた絆が。』 『果たしてそれを絆と呼んでいいのかと疑うがな。私のマスターは格闘技はやってないし手先は器用ではないし頭も良くし友達も居ないからバトルの大体は私は任せだ。むしろ無能とも言っていい。』 『うっわ、ひど。事実だから別にいいけど。』 『それでも私は貴方達に絆があると見るわ。確かにそれは歪ではあるけれどね。』 『サクヤさんはどうなんですか? 貴方のマスターと会話した事ないんですけど。』 『私には御嬢様がいるけど、御嬢様はマスターではなくオーナーね。人間じゃ私への指示が間に合わない。』 『サクヤさんですらもですか。サクヤさんですらそうなら、ここの利用者は皆、そうなのかもしれませんね。』 『そういう意味でも貴方達は異常なのかもね。マスターと神姫が一緒になって戦う普通の武装神姫。…ちょっとだけ羨ましいわ。』 『でも僕は適当に武装させたり指示出してるだけですし、イシュタルは勝手に動いているだけなんですけどね―。そのせいで結局は勝てませんし。』 『でも刃毀れはイシュタルを信じているんでしょ。』 『…まぁ、マスターが神姫を信じてやらなくて誰が信じてやるんですか。べ、別に勘違いしないでよね! ホントはイシュタルの事なんて何とも思っていないんだから!』 『男のツンデレって気持ち悪いわね。』 『同感だな。』 『言わないでください。自分でも本当に面倒臭い性格だって自覚しているんですから。』 神姫二体から罵倒されパソコンのデスクトップに向かってがっくりと頭を垂れる(一応)神姫マスター、黒野白太。 『でもハッキリ言って、僕が貴方達に勝てる可能性は零ではないと思っているんですよ。』 『あら、どうして?』 『ハッキリとした根拠は無いんですけどね。最強の武装はあるのかもしれませんが、無敵の武装は無いと思っているんです。何事も一長一短と言う一般論ですね。』 『私にも短所はあると言うの?』 『ありますよ。サクヤさんのナイフの量は確かに脅威ですけど所詮はナイフです。剣や銃弾で直接的に弾いたりするのではなく、爆風などで間接的に吹き飛ばせばいいのではないのでしょうか。』 『…成程。まぁ、間違ってはいないわね。』 『付け加えれば貴方達にはマスターが居てイシュタルには僕が居る。これもまた大きな違いです。』 『バトルにおいて人間の指示を聞くよりも神姫が自分で考えて動く方が効率がいいわよ?』 『それはそうですけどね。でも状況に対する柔軟性は僕達の方が上だと思っています。イシュタルが思いもよらなかった戦術に僕が気付くかもしれません。その逆も然りです。』 『でも貴方、無能じゃない。』 『一寸の虫にも五寸の魂です。』 『うちのマスターは自分が凄いと思っている誇大妄想野郎だからな。』 『イシュタルって容赦無く刃毀れを罵倒するわよね。』 『こんな奴を尊敬しろと言う方が無理だろう。』 『そのくせ刃毀れの為にバトルする事に迷いは無いと。』 『残念ながら私は刃毀れの神姫だからな。私が人間だったら知り合いにすらなりたくなかった。』 『イシュタルのLove度は-255です、はい。』 『カンストしてるのね。マイナス方向に。』 等と、和気藹藹と(だがこの中に人間は黒野白田一人しかいない)雑談をし、途中、サクヤが胸元から金色の懐中時計を取り出し、時間を見た。 『もうこんな時間。そろそろおゆはんの支度をしなくちゃ。』 『あ、そう? じゃあばはあーい。』 『出来たらまた今度、料理のレシピを送ってくれ。サクヤの料理は本当に上手い物が出来るからな。』 『分かったわ。それじゃあね。』 パソコンのモニターの向こうから、サクヤの姿が消えた。 それを確認した黒野白太もまた表示されていたページを閉じデスクトップに表示されているアナログな時間表示を目にする。時刻は約六時四十三分、窓から差し込んできた黄色味を帯びた光が満腹神経が刺激され内臓が言葉には出さずとも空腹を訴えかける。 立ち上がった黒野白太に合わせてイシュタルは彼の右肩に飛び乗って座った、そこが彼女の指定席であるからだ。 「じゃあ僕達もそろそろ夕御飯にしようか。今日は何作るの?」 「親子丼とごぼうのサラダ。昨日、卵が安かったからな。」 「分かった、じゃあ僕は親子丼の方を作ろうかな、サラダの方は任せたよ。」 「前みたいに弱火で加熱してしまい卵を発泡スチロールの屑みたいにしてしまわないようにするなよ。」 「分かってるって、強火で一気に、だよね。」 トントントンと小刻みの良い音の後に、ジュウジュウとフライパンが働く悲鳴の音が部屋に響いた。 神姫がマスターを見下し、神姫が罵倒し、神姫が戦い、神姫が勝利し、神姫が料理を考え、神姫が調理をする。 武装だとか戦法だとか実力だとかは普通なのかもしれない、けれどこういう日常も充分に異常で、けれど悪い物ではないと黒野白太は考えていた
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そのじゅうよん「そして明日は笑おう」 「ティキ。いつまでもそんな所にハマってると、大好きなフィナンシェとマドレーヌがなくなっちゃうよ?」 僕は本棚の、本と本の隙間で僕に背を向けて体育座りしているティキに声をかける。 僕の部屋のテーブルの上には、ティキお気に入りの洋菓子と、温かいロイヤルミルクティーが用意してあった。 しかし当のティキの返事はと言うと、 「……要らないのですよぉ」 ……餌付け失敗、か? あの日の敗北以来、ティキは時折唐突にこんな風に落ち込む。 思い出しては、その度に自身の不甲斐なさを噛み締めている様だ。 そしてそれは僕も同じなのだけれども。 「そっ……か。じゃあ仕方ない。これは全部僕がいただくと言う事で」 僕はそう言って洋菓子に手をつけようとする。 がたっ 本棚から聞こえるその音に、僕は笑みを浮かべて手にした洋菓子を音がした方向へ差し出した。 「無理が持続しないなら、最初から素直になろうね」 「うにゅぅぅぅ~~~~ わかったですよぉ~」 しおしおと本棚から這い出てきたティキは、テーブルの上まで器用に色々と伝ってやってくると、ちょこんと音がしそうなくらい可愛らしく座る。 ティキがそうすることがわかっていた僕は、ティキが座った事を確認し、手に持った洋菓子を改めてティキに差し出す。 ティキは不機嫌そうな顔を隠すわけでもなく、黙ってその洋菓子を食べ始めた。 「……食べる時くらいは笑って食べようよ」 無駄な事は分かりきっているけど、それでも僕はティキに笑う事を薦める。 それに対し、もぐもぐと咀嚼しながらあっさりと無視を決め込んでくれた。 ……武装神姫ってのはオーナーの指示には従うものだろうに。 でも実際のところ、彼女たちにも擬似的とは言え意思があるわけだから、オーナーの全ての欲求に答える事は出来ないんだろうと僕は思っている。 感情、意思がそこに存在する限り、常に命令に従っていては彼女達自身にストレスが生じるわけで。 大体、オーナーと呼ばれるものが人間である限り、矛盾を内包しない命令を与え続ける事は出来はしない。 そんな負荷や矛盾からの安全装置として、『非絶対服従』が用意されていると僕は思っている。……あくまでも個人的な考えで、実際はそんなもの無いのかもしれないけど。 でも、もし『絶対服従』が根底に存在しているなら、神姫達にはなぜ感情があるのか? 完全に命令を遂行する為の機械でいいのなら、もちろん感情なんてものは障害にしか成りえない。 感情や意思がある事で柔軟な対応を求めるのであれば、絶対服従なんてありうるはずも無い。 しかし現実にはオーナーの命令に逆らえず、違法改造とかを受けてしまう神姫も居る訳で。 ……なんだか話がそれた。 「お……おいしいね」 無駄な努力を繰り返す僕。こういう時、女の子の扱いに慣れる人ならどんな行動を起こすんだろうか? だけど生憎と僕は、女の子の扱いに疎い一高校生で、その手合いの経験が圧倒的に不足している。付き合った女の子に一切手を出せないくらいに。 「マスタ」 「はい?」 「こういう時は黙って見守って欲しいのですよぉ」 「……ハイ」 神姫に諭されるオーナーって一体…… って、僕なんだけど。 「……………………」 「……………………」 「……………………」 「……………………」 「……マスタ、こういう時は慰めて欲しいものなのですよぉ~」 ……なんて理不尽な!! もちろんそんな事口に出したりしないけど。 「あー、なんて言うか、元気出せ?」 「心がこもっていないですぅ」 「ソンナコトナイデスヨ、マゴコロイッパイデス」 「なんで棒読みですかぁ?」 「それはね、牛肉が入っているからだよ」 「そんな昔の、しかもマイナーなCMネタ、誰もわからないですよぉ?」 「そんなツッコミが素敵なキミにはこのお菓子をあげよう」 「元々テーブルにあったのですよぅ」 「いやぁ、やっぱりフィナンシェはセブ○イレブ○に限るよね」 「誤魔化すにしてもミエミエ過ぎですぅ」 「イヤだなぁ、ティキ。まるで僕に誠意が無いみたいじゃないか」 「今まで一緒にいて、今が一番誠意が感じられないですよぉ!」 「それはきっとティキの瞳が曇っているからさ」 「今曇っているのはきっとマスタの性根ですぅ!!」 「そこまで言うと僕が可哀想でしょ?」 「自分で自分のことを可哀想って言っても説得力無いですよぉ!?」 「そうだね。……だからティキも自分が可哀想だなんて思っちゃダメだよ」 「――!!」 何も言えないティキ。 言葉を続ける僕。 「負けた事に対する悔しさも、それに囚われてるばかりじゃ意味が無いよ。だから…… だから僕達はその悔しさを糧にしよう。時には立ち止まることも、間違いじゃないけど、ただ失敗や敗北に落ち込むだけじゃ僕もティキもそこで終わっちゃうから」 僕をジッと見つめるティキに、ぎこちないながらも精一杯の笑顔を浮かべて。 「だから、我慢しないで今はいっぱい泣いてさ、そして明日からはまた一緒に前を見ようよ。ね?」 ティキは僕を見つめたまま、ぽろぽろと涙をこぼす。 そしてそのまま顔をクシャクシャにして、わあわあと声をあげて泣き出した。 僕はそんなティキの頭を、指でそっと撫でる。 その僕の指を両の腕で抱きしめ、ティキは泣き続けた。 ひとしきり泣いた後、ティキは僕に照れた様に笑いかけ、そして何も言わずに洋菓子を口にする。 それを見て僕も照れ笑いをすると紅茶をすすった。 紅茶はすでに冷め切ってしまったが、それでも悪くないと僕は思った。 終える / もどる / つづく!
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「……なんか、改めて向き合うと緊張するもんだな」 「そうですわね」 家に着き、俺とヒルダは自室で向かい合っていた。何故か正座で。 ヒルダは居間に置かれている座卓の上に座りながらこちらを見上げていた。 バイザー越しなので視線は感じ取れないが……ちょっとおびえているようにも見える。……無理もないか。自身の中の別人格を意識的に呼ぼうとしているんだから。 しかしまあ、あれだ。こうやってにらめっこを続けていても埒が明かない。 「……ヒルダ、頼む」 「はい、ですわ」 ヒルダがルナピエナガレットに手をかけ、ゆっくりと外す。 こちらを見据えた蒼い目は瞬きをした瞬間に紫水晶へとその色を変えた。 「……あら。ワタクシを貴方自ら呼びだすなんて、めずらしいですわね」 あきらかに居丈高な口調。そして高圧的な態度。 間違いなく、「裏」のヒルダだ。 「さて、一体何の用ですの? ワタクシを呼び出したのですから、理由があっての事ですわよね? 筐体のなかでないのならリアルファイトですの?」 「別に戦うために呼び出したわけじゃないさ。茶飲み話ぐらい付き合ってくれ。お前は俺のパートナーなんだからな」 ヒルダの物怖じしない態度にこちらも緊張が和らいだ。 正座が馬鹿らしくなり、崩しながら答える。 彼女は一瞬ぽかんとした。 「どういう風の吹きまわしですの?」 「……と言うと」 「戦いもないのにワタクシを呼び出すなんて、貴方らしくありませんわ」 「俺らしくないって……」 そもそも俺が望んでこいつにバトルに出てもらったことは一度もないのだが。まあそれはいい。 「俺がお前の存在を認知してからまあ半月ぐらいたつわけだが、表のヒルダと会話をしたことはあっても、お前とは滅多に、いや、全く話す機会なんてなかったからな。バトル中のお前は俺の話を聞かないし」 「ワタクシを扱うに足らぬマスターの言うことなど聞く耳持ちませんわ」 お前はあれか。高レベルか。ジムバッジが足らんのか。八つ目を手に入れないと言うことを聞いてくれないのか。 「それに。茶飲み話と言っておきながらお茶がないのはいかがなものですの?」 「……それもそうだな。淹れるか」 「ワタクシは紅茶がいいですわ」 「そんなハイカラなもん家にはねーよ」 緑茶で我慢しろ。 ◆◇◆ 「意外と美味しいですわね。粗茶ですけど」 「やかましいわ」 スーパーで買った一山いくらの茶葉でもうまく淹れればそこそこうまいものである。 一人暮らしを始めて約半年、慣れれば美味い茶を淹れることなど造作もない。 ヒルダは彼女用にと購入したプラスチックの湯呑を使って茶を啜る。 「……そう言えば神姫は飲み食いできるって愛に聞いてなんの疑いも持ってなかったが、いざ目の当たりにしてみると不思議だよな」 「一応、飲むことはできますわ。濾過されて冷却系に回されますの。固形物も摂取は可能ですが、色々と面倒なのであまりワタクシは好きではありませんわ」 「面倒、とは」 「分解に莫大なエネルギーが必要ですの。エネルギーを得るための行動にそれ以上のエネルギーをかけるのは不毛でしょう?」 それは道理。もともとは人とのコミュニケーション用として考案された機能らしいからな。実用性は皆無だろう。 「食事が趣味って神姫の話を聞いたことがあるが」 「味を感じることはできますもの。ワタクシ達のAIは人間に近い思考をとりますから、美味しいモノを食べて嬉しいと感じるのは当然ですわ」 「そりゃそうだな」 「……さて、ごちそうさまですわ。戦いがないならワタクシはこれで」 「おいおいおいちょっと待てコラ」 バイザーをはめてさっさと交代しようとするヒルダに俺は待ったをかける。 「何ですの?」 「茶を飲んだだけでもう変わる気かお前」 「……お代でも取る気ですの?」 「誰がそんなもん取るか」 うちに勝手に来て菓子漁って帰るどっかの馬鹿はそろそろ警察に突き出してもいいとは思うが。いやそうじゃなくて。 「お茶を頂いた。話をした。茶飲み話という条件はこれでクリアしていますわ」 「お前についての話をしようと思ってるのにお前がいなくなってどうするんだよ」 「ワタクシの話ですの? 茶飲み話と言ったのはそちらでしょう?」 「言葉の綾だ。本当に茶だけ飲んでどうする」 「ではさっさと本題に移りなさいな。ワタクシ、回りくどいのは嫌いですわ」 本題……ねえ。 俺はため息をつく。 いろいろ聞きたいことはあるが……とりあえず。 「お前はもう一人のヒルダの事を認識してるか?」 「もちろんですわ。彼女が表に出ているとき、私も意識はありますもの」 「……はっきりと意識があるのか?」 「いいえ。夢うつつといった感じですが」 これは表のヒルダと一緒か。まあこの程度は予測範囲内だな。 「初めて起動した日がいつかわかるか?」 「二〇三七年十一月十三日ですわ」 正解。つまり、表のヒルダが自我を持った瞬間、こいつも生まれたってことだ。……こりゃ単なるバグなんかじゃなさそうだな。 「初めて戦った相手は?」 「……さっきから何を言ってますの? 愛の持つアルトレーネに決まっているでしょう?」 そう。愛にそそのかされてイーダ・ストラダーレ型を購入し、その場で起動させられてすぐにバトルにもつれ込んだのだ。 バトル終盤、リーヴェの放ったゲイルスケイグルがヒルダの顔をかすめてバイザーが破損。そしてこいつは覚醒し、暴走した。 あの時の愛の唖然とした顔は写真に収めて送りつけてやりたいほど貴重なものだったが、あいにくその筐体の向かい側で俺も同じ顔をしていたに違いない。 そしてその時のリーヴェとヒルダの痴態の録画映像が、アングラで高値で取引されているとかいう噂を聞いたことがある。信じたくもない。 ……次の質問はこれにするか。 「何でお前は戦う神姫全員にセクハラしやがるんだ。今日で被害数が二十を突破したぞ」 「敗者は勝者にとっての供物でしかありませんわ。それをワタクシがどうしようとワタクシの勝手でしょう?」 「相手の感情は無視かよ。それじゃ立派な強姦だろうが」 「敗者は地べたをはいずり回って泣くのがお似合いですわ」 「それはお前個人の考えだもんでとくに言及はしないが、地べたに押し倒して鳴かせるのはいかがなもんかと」 「あら、うまいこと言いますわね」 「褒められても全く嬉しくねーよ」 そしてうまいこと言ったつもりでもねーよ。 「というかあれだ。何でセクハラばっかりしやがる」 「趣味ですわ」 「趣味て」 「他に大した趣味もありませんので」 「なんでだよ。探せばいくらでも見つかるだろうが」 「バトル以外で表に出ているのは『彼女』ですし」 「……それはそうだが」 確かに、今日初めてバトル以外で俺はこいつを呼び出した(呼び出したこと自体が今日初めてだが)。そういう意味では、俺はこいつをヒルダという檻の中に閉じ込めていたともいえる。 「……まあ、確かに。それは悪かった」 「別にかまいませんわ。ワタクシとしては、勝つことさえできればよいのですから」 「正直なところ、それはどうかと思うが」 「何故ですの? 武装神姫は戦うために生まれた存在。戦うことに意義を見出し、勝つことで価値が生まれるものですわ」 「戦うことは確かにお前たちの根幹をなすものだろうが、武装神姫は元々人間のパートナーとして生み出されたもんだろう。それについてはどうなんだ」 「そんなもの、ワタクシの知ったことではありませんわ」 「おいおい……」 つまり俺とコミュニケーションを取るつもりが皆無である、ということか。厄介な。 「なんでそんな俺を毛嫌いしくさる。神姫はマスターに対して絶対とはいわんが従うものなんじゃないのか」 「先ほどから申し上げています通り、ワタクシは貴方をマスターとして認識しておりませんので」 認められてねーってか、くそったれ。 まあ確かに、イーダ型の基本的な性格は高飛車なものだし、むしろヒルダの性格が本来のイーダ型のそれとずれていると言ってもいいから、元々こんなもんなのか? ……神姫オーナーとしての経験値が少ないせいか、よくわからん。 「じゃあどうすればお前は俺の言うことを聞くんだよ」 「未来永劫、ありえませんわ」 「歩み寄りの精神ぐらいみせろよ!」 「貴方がワタクシに適応なさいな」 くっそ、プリインストールされた性格とは言え、腹が立つな。 「では、お話はすみましたね? ではこれで。次は戦いの場でお会いしましょう」 「あ。てめ! こら!」 あわてて掴みかかったが、時すでに遅し。俺の右手のひらの中ではバイザーをつけたヒルダがびくりと肩を震わせて俺を見上げていた。 「マ……マス、ター?」 「……すまん、逃げられた」 ため息をつき、ヒルダを離してやる。ヒルダは俺の剣幕に心底おびえていたようだが、呼吸を整える。 「……くそったれ」 「……結局、どうでした? あの……『彼女』は」 「全く話を聞かなかったよ。なんとかしてあいつの手綱を握る方法を考えなきゃな」 茶をもう一杯淹れながら俺は呟く。ヒルダのにも淹れてやると、彼女がおそるおそる喋り出した。 「あの……マスター。差し出がましいようですが、提案があります」 「……提案?」 「はい。彼女に言うことを聞かせられるかもしれない方法です。かなり荒療治だとは思うのですが……」 バイザー越しに見上げてくる彼女の視線は、どこか決意めいたものを感じた。 俺はぐっ、と湯呑をあおると、彼女に言葉の続きを促した。 ◆◇◆ 「はああああああああっ!」 「くふっ、くふふふっ」 翌日、俺たちはゲームセンターへと足を運んでいた。 今回の対戦相手はリーヴェ。こちらから挑戦した形になる。 開始三分ですでにバイザーは壊れ、裏のヒルダが表出してリーヴェに襲いかかっていた。 ……まあ、今回は想定の範囲内なんだが。 一応、こちらから指示を出しているものの、ヒルダは全く従う気配がない。それでもその一挙手一投足は着実にリーヴェを追い詰めていく。 「く……流石ヒルダちゃん、間近で見れば見るほど感じるすさまじいまでの戦闘センスですよー!」 「御褒めにあずかり光栄ですわ。再び貴女を這いつくばらせて差し上げます!」 下から打ち上げられるエアロチャクラムを副腕に搭載したシールドで打ち払い、リーヴェは距離を置く。させじと突出するヒルダ。 しかしヒルダが自らの間合いにリーヴェを捉える前に、リーヴェはすでにシールドと大剣ジークリンデの柄の結合を終えていた。 シールドが展開。内部からエネルギーの刃があふれ出すと同時に、リーヴェはそれを投擲する――! 「――【ゲイルスケイグル】!」 副腕から豪速で放たれた槍は一直線にヒルダへと向かった。極至近距離で放たれたそれをヒルダは避けきるすべがない。 「!!」 「――くふふっ」 しかしそれをヒルダは素体にあたらないレベルの挙動で避けた。左のエアロチャクラムが接続パーツごと千切れ飛んだが、ヒルダの突進自体は止まらない。 ヒルダは右手首の袖を展開。リーヴェにアイアンクローを叩きこんだ。 途端にリーヴェの膝から力が抜け、地についてしまう。 「し、しま―っ」 「くふふふふっ。それでは頂きますわ――?」 ビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ! ――Surrender B side. Winner Liebe. いつものように鳴り響いたサレンダー。 しかし、それによってジャッジシステムが告げた勝者の名はヒルダではなく。 「――え――」 ヒルダの身体が一瞬にして0と1へと分解され、空へと還っていく。 リーヴェはそれを見送り、呟いた。 「幸人ちゃん、ヒルダちゃんは手ごわいのですよー。頑張ってくださいねー」 ◆◇◆ 「……これでよかったわけ? 本当に」 向こう側の筐体でリーヴェを回収しながら愛は言った。 「大丈夫だろう。ヴァーチャル空間で裏ヒルダが現れても、ゲームが終わればその意識は自動的に封じられる。あとは根競べだ」 俺はヒルダを胸ポケットに入れて答える。 「ヒルダ、もう一人のお前の事何かわかるか?」 「……多分ですけど、すごい怒ってます」 だろうな。だけどこっちもそれが目的だし。 勝つことを至上とし、固執する裏ヒルダに手綱をつけるには、そのプライドを叩きつぶすほかない。 そのための方法としてヒルダが提案したのは、裏ヒルダが暴走しそうになった瞬間、俺がサレンダースイッチを押すことだった。 ……行き過ぎて暴走しないよう、調整は要るだろうが。 ヒルダの勝率も落ちるし、俺自身にはデメリットしかないが他に方法も思いつかない。行き当たりばったりの作戦であることはわかっているが……。 あれだ。裏ヒルダの手綱を握るための先行投資だと思おう。普通に勝つなら勝たせてやればいいんだし。 「さて、これが吉とでるか、凶とでるか……」 俺はため息をついて、再び筐体の前に座った。 幸い、対戦相手に関しては断った面子にこちらからメールを送ることで事欠かない。 もちろんこちらの作戦に関しては伝えて了承を取ってある。 あとは裏ヒルダが折れてくれるのを待つだけだ。 俺はそう思いながらヒルダをエントリーポッドへと送りこんだ。 進む 戻る トップへ
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前へ 先頭ページへ 次へ 第十五話 上空戦 「ねえ」 弾頭のハッチが閉められようとする間際、見送りに来た興紀にクエンティンは訊いた。ミサイル垂直発射管室には理音も来ていた。 「なんだ」 興紀はハッチの中を覗き込み、そこに宇宙飛行士のように横向きに座っているクエンティンをみる。 「ありがとね」 「なんのことだ」 「会議室のこと」 興紀は、ああ、と合点がいったように口をあけた。「そんなことか」 エイダがいなければアーマーンは動かない。通常兵器ではおそらく有効打さえ与えられないであろう島レベルの規模を誇る要塞を止めるには、それが一番効率的であろうことは、あの場にいた誰もが分かっていた。発案した執事はまさに断腸の思いであったろうし、興紀の決定がもう少し遅ければ理音だって反対していた。 興紀は、執事があの場でエイダの立場を知る前に発案していたとおりに進めることを押し通した。それは結果的に、エイダ、そしてクエンティンの命を救うことになった。 「勘違いするな」 と、興紀は言った。 「まだピクリとも動いていないただの張りぼてのために、貴重な主戦力をむざむざ自分で潰すなどという愚挙をおかしたくなかっただけだ」 それが建前であることはもはや周知の事実で、興紀は神姫を道具として考えていればこそ、その愛着は人一倍であった。ずっと後になってから分かったことだが、彼ほど道具としての武装神姫を愛した人間はいなかった。ただ、それが武装神姫自身の幸せとはかみ合わなかっただけなのだ。そんな理由でむざむざ廃棄されていった数十体の過去のルシフェルを正当化しようなどとは誰も思わなかったし、むろん興紀自身も許されようとは考えていなかったが。 「それでも、ありがとう」 横倒しになったままクエンティンがあらためて礼を述べると、興紀は一瞬だが、顔をほのかに赤くして視線をそらし、自分の手で最後の垂直発射ミサイルの弾頭ハッチを閉めた。今のところは、クエンティンが興紀と対面したのはそれが最後である。 理音には部屋で話してから、一言も言葉を交わさず、別れの挨拶も言わなかった。また会えると確信していたからだ。 真っ暗になった弾頭内の急造スペースで、クエンティンとエイダは静かに出撃の時刻を待った。完全に洗浄されていたが、炸薬の匂いはほのかに残っていた。潜水艦のレーダー経由で近海に意識をはせると、EDEN本社所有のフェリーが数隻、同じように待っているのが分かった。 「回天に乗った兵士も、おんなじ気持ちだったのかしらね」 九十年以上前にこの国を守るため魚雷に乗って命を散らしたものたちを、知識の上でしか知らないクエンティンは想った。きっと彼らのおかげで、自分たちには帰りの分があるのだと脈絡も何もない感謝をした。 「生きて帰るわよ、エイダ」 ――――。 エイダは何も答えなかった。 「・・・・・・エイダ?」 カウント、ゼロ。 轟音とともに凄まじいGがかかった。ミサイルが発射された。数秒の海水を切り裂く浮上音の後に、海面を飛び立つスプラッシュ、自身のレーダーで周囲を意識すれば、島上空で降下するための神姫たちを三体ずつ乗せた何発ものミサイルが、本来の体当たりの役目も帯びたダミーのミサイルと織り交ざりながら自分達に続き、フェリーからは鶴畑の私設軍と神姫たちを乗せた揚陸ボートが躍り出ている。 先陣と梅雨払いはクエンティンたちの役目であった。 ミサイルは高度二千フィート、およそ六百メートルの低空で水平飛行に移行し、安定翼を展開する。みるみる島への距離が縮まってゆく。飛行船はまだ飛び立っていない。 いや、今動き出した。 「ギリギリか!」 余裕の無いのはいつものことだ。クエンティンはみずからを落ち着かせる。 後続のミサイルの一発がいきなり爆発した。 “島の迎撃レーザーシステム作動を確認。弾頭部破棄。シールド全開” 「了解!」 クエンティンはバースト。全身からほとばしるエネルギーの圧力はそれだけでミサイルの弾頭カバーが飛ばした。彼女はふきっさらしになる。すかさずシールドを展開。直後シールドにスパークがはしる。迎撃レーザーが当たった。普通の神姫ならば瞬時に消し炭と化すほどの高出力な代物である。センサーやコンピュータのある弾頭が脱落したためクエンティンを乗せたミサイルは一瞬よろめいたが、はるかに高性能なエイダがそれを肩代わりすることでミサイルはその時点から超高機動の戦闘機に豹変した。 地平線の上にぽつんと島が見えはじめた。 “レーザー砲台を確認、総数四。ハルバード・デバイスドライバ、インストール完了” クエンティンの右腰で空間圧縮が解かれ、長大な砲が顕現する。ヘッドギアから遠距離照準用のスコープが下がる。無望遠ではいまだ点にしか見えない要塞島がレンズいっぱいに映し出され、そこでせわしなく明滅している四基のレーザー砲台もはっきりと確認できた。 ハルバードを腰だめに構える。弾体加速ターレットがプラズマをほとばしらせつつ加速のための電力をチャージする。 一番左の砲台にロックオン。そのままおもむろに撃った。 空気の摩擦による炎の飛行機雲を引きながら、超音速でタングステン製の針状弾が射出された。カウンターマス代わりの余剰電力が台尻のフィンから青白い火花となって散る。 きっかり一秒のスパンを置いて、左端の砲台が根元から引きちぎられるように吹き飛んだ。 残り三基の砲台も排除したとき、すでにアーマーンは彼女らの真下に広がっていた。 全員がミサイルを排除し、クエンティン以外は空挺部隊よろしくHALO降下を行う。本来のHALO降下ははるかに高空から敢行するものだが、身長十五センチの神姫たちにとっては二千フィートでも十分な高高度だった。ファントマ2アタッチメント――無骨なバックパックとLC3レーザーライフル並みの図体をもつ大口径機関銃を引っさげて、髪の毛も口もなく眼窩さえ開いていない頭で、白、黒、あるいは肌色一色のボディをしたMMSネイキッドの軍勢は、アーマーンの各地に分散して下りていった。後ろを振り向けば、妨害攻撃のなくなった海面を、白い波を引きながらそろそろと上陸に向けて侵攻する神姫と人間の混成部隊が見えていた。先陣を切るのはビックバイパーアタッチメントを纏ったルシフェル、そしてアージェイドイクイップメントのミカエル、ファントマ2アタッチメントを二セット装備してさらに全方位ミサイルポッドを背負ったジャンヌである。 クエンティンは前に向き直る。島上空を離れつつある数機の飛行船が目に止まる。全体を渡せば見えるだけで百機は浮遊している。ヘリコプターくらいの大きさの一機の中に果たして、何百というあの一つめどもが格納されているのだろうか。 何百いようが関係ないか。クエンティンは手に力を込める。これすべてがクエンティンに割り当てられた獲物なのである。ただ一つ救いがあるとすれば、飛行速度が鈍亀であることだった。 まずは島を離れてゆくものに狙いを定め、全速力でダッシュ。すると幾重ものオレンジ色の光跡が付近の飛行船から放たれ、クエンティンに殺到した。迎撃用の機銃である。用意できるものはしっかり乗っかっているな、と面倒そうに思いながら、弾幕の中を突っ切ってゆく。 西北西、日本側に向けて飛び立っている一団がもっとも遠いため、クエンティンはそこから料理することにした。 飛行船の真正面に陣取る。 “ファランクスのデバイスドライバ、インストール終了。使えます” ハルバードと同じように右腰に機関部が顕現する。こんどは長身の砲ではなく、短砲身の発射口が五つ並んでいる。ぐんぐんせまる飛行船の鼻先に狙いをつけ、クエンティンは撃った。 ブゥーンというモーターの回転するような音がして、丸い弾痕が飛行船の船首におそるべき速度で増えだした。数秒ほどそのまま撃ち続けていると、飛行船の動力部を貫通したらしく、斜め後ろから爆炎を上げてよろよろと墜落していった。 中から生き残っていたラプターが二十体以上も脱出して、クエンティンへ飛んでくる。これは彼女には予想外であった。ブレードを振り回してすべて切り伏せ、やっとのことで二機目に狙いをつけたが、今度はそこからラプターよりも小さな戦闘機がイナゴの大群を思わせる、反吐が出そうな数で飛び立ってきた。 “無人戦闘機モスキートです。ロックオンレーザーの使用を推奨します” クエンティンは再びダッシュ。視界のモスキートいっぱいにロ ックオンシーカーを重ねる。 発射。針ほどの細さに分割されたレーザーがシャワーのように降りかかり、モスキートを一匹残らず駆除する。先ほどの飛行船を撃破したときに大まかな構造を把握していたので、今度は動力部にもっとも近い装甲版にガントレットを打ち込む。構造材といくつかのラプターと一緒に、エンジンが圧壊。脱出路を作るまもなく数十体のラプターは運命をともにした。 だめだ、これでも効率が悪すぎる。振り返れば途方もない数の飛行船が残っている。第二団が発進をはじめている。 「エイダ、こいつらまとめて墜とすのに、いっちばん簡単なやり方教えて」 “了解。あと十秒ほどお待ちください。その間に飛行船団の中心に移動してください” クエンティンは言われたとおりにする。二十メートルほど急上昇し、すぐ下に飛行船団を臨みながらその編隊の中心へ、青白い軌跡を引いて飛ぶ。そして、その中でも一番真ん中に陣取っているであろう飛行船の上甲板に着地する。見渡せば全ての飛行船が全周に広がっている。 着地と同時にエイダが、 “ベクターキャノンの使用制限解除完了。ユニット展開開始します” と宣言するやいなや、クエンティンの頭脳内に操作方法がダウンロードされた。方法どおりに、両足を甲板に踏ん張る。 “システム、ベクターキャノンモードへ移行” 両腕を掲げる。そこに空間圧縮が解除され、ひじから先の三倍ほどある開放型重粒子砲身が装備される。 続けて、頭の真横から背部にかけて一気に圧縮解除、ファントマ2アタッチメントのバックユニットを思わせる巨大なエネルギージェネレータが出現した。 “エネルギーライン、全弾直結” 異常に気づいたらしく、周囲の飛行船の機銃がいっせいにこちらを向く。、相打ちも辞さない必死さで、狂ったように目もくらむほどの集中射撃が始まった。オレンジ色の火の玉が前から後ろから殺到する。しかしクエンティンは動かない。だまってシールドを全集展開し、機銃弾をすべて受け止める。みるみるシールドエネルギーが削れてゆく。 “ランディングギア、アイゼン、ロック” バックユニット下部から図太いアクチュエータが伸び、クエンティンはそちらに寄りかかる。トライポッドの安定性を獲得。アクチュエータ基部横から火花が散り、片側三本、計六本のアイゼンワイヤーが甲板へ深々と打ち込まれる。エイダはワイヤーを通じて足元の飛行船をハッキングし、タービンエンジンを制御装置ごと乗っ取った。 そして、砲身となった両腕の前方の空間圧縮が解かれ、六つのライフリングサテライトが正六角形状に浮かび上がる。さらに、サテライトと両腕の間の空間、つまりクエンティンの体の前の空間が今までにない大出力で連続圧縮をはじめた。 “チャンバー内、正常加圧中。ライフリング、回転開始” ライフリングサテライトがゆっくりと周回しはじめる。 周回速度はぐんぐん増してゆき、ついには目にも留まらぬスピードで一個のリングになった。 その間にも機銃は鳴り止まず、シールドは一瞬たりとも休められない。 「エイダ、まだなの!?」 “発射可能まであと六秒” シールドエネルギーが残り少ない。代わりにキャノンのエネルギーゲージが溜まってゆく。この六秒はクエンティンにとって最長の六秒になった。 早く! 早く! 早く! シールドエネルギーが切れる直前、ゲージが溜まった。 “撃てます” 冷静に、エイダは言った。 「いっ・・・・・・けぇー!」 連続圧縮を続けていたチャンバー空間が解き放たれる。一対の開放型砲身と六つのライフリングサテライトにより、膨大なエネルギーベクトルがまとめて真っ正面に向けられた。 圧縮から解き放たれた重金属粒子の奔流が、一本の光条となって撃たれた。それはクエンティンが立っているもののすぐ隣にいた飛行船をやすやすと貫通し、その奥にいた船も貫通し、さらにその奥に浮かんでいた船をもぶち破り、なお減衰されず直進した。 一番端っこの飛行船まで撃ち抜いたところで、エイダは足元の飛行船の左右にあるタービンエンジンを、それぞれ逆方向に全力運転させた。飛行船はその場でクエンティンごと回転をはじめる。 ぐん、と、いきなり光条が右に動いた。撃破された飛行船列を呆然と眺めていた船たちが、驚く間もなく横薙ぎにされ、上半分と下半分が泣き別れた。 それはまるで巨大な粒子ビームの刃であった。クエンティンが一回転し終えたとき、飛行船は一機も残っていなかった。ただいくつもの炎を噴いた塊が、ゆっくりと落ちていくだけだった。 役目を終えたベクターキャノンは、圧縮しなおされることなく、そのままばらばらと脱落した。 “試作品のため、ユニットの耐久限界を超えました。もう使えません” クエンティンは足元の飛行船にお礼のガントレットをぶち込んで、地上へ降下した。飛行船の残骸で押しつぶされたまぬけな空挺部隊はいなかった。残骸が全て落ち切ってから、地上部隊は上陸を開始した。 つづく 前へ 先頭ページへ 次へ
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第4話 新しい家族 比較的早い時間に夕食を取ったので、小腹が空いた俺は買い物へと出かけた。 最近、俺が買い物とかで出かけると、アールがついてきたがるようになった。 今日も、アールが一緒だ。 丁度、俺の半歩くらい前の目の高さぐらいを、歩く速度に合わせて飛んでいる。 「なぁ、何がそんなに楽しいんだ?」 「マスターと出かけるのが楽しいんですよぉ~」 「食い物買いに行くだけだぞ?」 「それでもいいんです」 「そんなもんかねぇ」 「そんなもんです」 そんなやり取りをしていると、アールが空中で停止した。 「マスター! あれ!」 「ん?」 アールの指差す方を見ると黒い物体が落ちている。 「おい! あれって」 はっきりとは見えなかったが、その物体が何か直感的に分かった。 そして、その答えが間違いであってほしいと思いながら走る。 その場所に到着したが、残念なことに間違いではなかった。 「マスター……」 アールが泣きそうな顔で俺とその物を交互に見ている。 そこに落ちていたものとは、両腕、右足首、左膝から下の無い黒い人形。 特徴である長い髪も右側が引きちぎられ、身体中傷だらけになっていた。 間違いなく、ストラーフという武装神姫だった。 「……ん……あ」 ストラーフが呻き声を出した。 バッテリーがまだあり、AIが動作している。つまり、この子はまだ生きている。 俺はストラーフをやさしく手に持ち、アールのほうを向いた。 「今、何時だ!」 「9時43分です」 アールが即答する。あと17分。 「間に合ってくれよ!」 俺はアールを買ったおもちゃ屋へ走り出した。 俺は走った。当初の目的地のコンビニを通過し、なおも全速力で。 「マスター! あと13分」 横を俺と同じ速さで飛ぶアールが叫ぶ。 大通りの交差点で運悪く信号につかまった。 「はぁはぁはぁ、間に合いそうだな」 ここまで休みなしに走ってきた俺は電柱にもたれかかった。 「マスター、大丈夫ですか?」 「ああ…平気平気…」 そうアールに言ったが、正直バテバテだ。 (日頃の運動不足がひびいてるよなぁ。) そんなことを思っていると信号が変わりまた走り出す。 そして、目的地のおもちゃ屋が見えてきたが、手前の踏み切りが鳴り出した。 「くそぉ!」 俺は速度を上げ、降りてくる遮断機を睨む。 到着したとき、遮断機が完全に降りてしまった。 遮断機を掴み、くぐろうと屈む。 「マスター!! だめぇぇ!!!」 アールの悲鳴に似た絶叫が響き、俺は手を離した。 「マスター、無茶しないで……お願い」 飛んできてそのまま抱きついたアール。俺の服に顔をうずめて見せないようにしていたが確かに泣いていた。 「わかったよ…」 遮断機が上がるまで俺はアールの頭を撫で続けた。 それからはアールを落ち着かせながら、歩いて向かっていった。 店に到着したのは、9時55分。間に合った。 俺はカウンターの方へ行き、ストラーフを置いた。 昔の町工場の頑固職人のような店主がそこに居た。 「こいつを助けてやってくれ」 店主はストラーフの姿を見て驚いた様子だ。 「いったい何をした」 「何って? 俺のじゃない、拾ったんだ」 「拾った?」 「ああ。とにかく、こいつのAIは生きてるんだ。なんとかしてくれ」 「ん~、そういってもなぁ」 店主はストラーフを調べるように見ている。 それから店主はしばらく考えて俺のほうを見た。 「まあ、やるだけのことはやってやる。連絡先をここに」 そういって書類を差し出す。俺は記入を済ませてもう一度たのむと頭を下げた。 俺は、帰り道でいろいろと考えていた。 「俺は正しいことをしたんだろうか……」 「……正しいですよ」 俺の独り言がきこえたのだろう。アールが俺の頭の後ろからやさしく抱きしめてきた。 「………やさしいですもん……そんなマスターが………大好きです……」 「ん? 何か言ったか?」 しっかりと聞こえていたが、何か恥ずかしくなってそう言ってみた。 「い、いえ! べつに何も」 アールは慌てて俺の頭から離れた。 数日後、連絡がありおもちゃ屋まで出かけた。 「ほれ、これだ」 そう言って店主が取り出したものは、神姫の収められたケース。 「これって?」 「知り合いに破損した神姫を直す達人が居て、みせみたがたんだが、あのボディ破損がひどくて修理は出来ないといわれた」 「じゃぁ……」 (助けられなかったのか) がっくりと肩を落とす。 「勘違いするな、AIから取り出した情報はこっちに移してある」 「え?」 「ボディは新品だが、記憶は受け継いでいる」 「そうか、よかった……」 ほっとして、緊張がとける。 「お前さんの真剣な顔をみて、幸せに出来るだろうと思ってな。お前さんのことを説明したら、何も言わずデータ移植をしてくれた、といわけさ」 「ありがとう」 俺は深々と頭を下げた。 「それで、これも持っていけ」 ストラーフの武装セットを神姫ケースの横に置く店主。 店主は素体分の料金でいいといったが、俺は武装を含めた正式料金を置いて店を出ようとしたら、店主が呼び止めた。 「忘れものだ、持って帰れ」 そういって何かを投げてよこした。 俺はそれを掴み、見てみると、壊れたあのストラーフだった。 帰り道で考えていた。 こいつがあの日、あそこに居た理由を。 一人で出歩いて事故にあった、どこからか盗まれて部品を取られた…… いくつもの仮説を立てたが、もう一人の俺が即座に否定する。 そして、もう一人の俺が囁きかけてくる。 (ひとつだけ納得のいく説があるだろう) 俺は、それだけは考えないようにしていた。しかし、何度考えても最後にはそこへたどり着く。 『愛すべき主人に捨てられた』 そうだとしたら、こいつが起動後最初に感じるのは、捨てられた時の思い出。 その時の記憶が甦り、どうなるのか分からない。そして、それを見たアールはどう思うのだろう。 俺の頭に、笑顔のアール、怒りながらも照れているアール、泣き笑いのアール… アールの顔が浮かんでは消えていった。しかもほとんどが笑っていた。 「……アール」 俺は、家で、アールの前でこいつの起動は出来ないと思い、近くの公園へと向かった。 公園のベンチに神姫ケースを開ける。そしてストラーフを取り出し、ベンチの上に寝かせる。 「さて、どうなるか」 しばらくすると、ストラーフがゆっくり目をあける。焦点の合っていないぼんやりした顔から序々に覚醒していく。 「いやぁぁぁ!! ごめんなさい! ごめんなさい! ゆるしてください!」 覚醒するとストラーフはうずくまり、絶叫した。 (やはり……) そう思った俺は、やさしくストラーフを手で包み、持ち上げた。 「ごめんなさい! ごめんなさい!」 それでも、ストラーフは叫び暴れる。 「大丈夫だ! もう心配ない!」 ストラーフの叫び声に負けないくらいの大声でストラーフに言い聞かせた。 「……あ」 俺の声が主人と違うと分かったのだろうか、ストラーフは落ち着いたようだ。 「さて、少し話を聞かせてくれるといいんだが、大丈夫か?」 ストラーフはコクンとうなずいた。 「言いにくいかもしれないが、自分がどうなったか覚えてるか?」 「あたいは……捨てられた」 「そうか……理由は?」 「バトルの成績が良くなくて、性能の悪いのはいらないって」 「そうか……」 しばらくストラーフの話を聞いて分かったことは、前の主人は神姫バトルを徹底して研究していたこと。 たとえ勝ったとしても、それが当然で言葉をかけてもらったことが無いこと。 そして、神姫を道具としか見ていないこと。 俺は、無性に腹が立ったがなんとか怒りを静めた。 「いいか、昔の辛いことは忘れろ。今からこの俺がお前の主人だ」 「え?」 ストラーフがびっくりしたようにこっちを見た。 「もうバトルとか、そういうことは考えなくていいってこと」 ストラーフにニッコリと笑う俺。 「家にも、バトルが嫌いでダンス好きなのが居るからさ。紹介するよ」 そういって、ストラーフを持ち上げ家へ向かった。 家に着くまでに、ストラーフには昔のことをアールに話さないでくれと頼んでおいた。 「おかえりなさい」 家に着くとアールが出迎える。 「ただいま。えっと、この子がアール。君のお姉さんだ」 「……お姉さん」 「そう、同じ店で買ったんだ。本当の意味での姉妹ではないが、姉妹といってもいいだろう」 ストラーフを降ろすと、アールが抱きついた。 「よろしくね。マスター、この子の名前はなんですか?」 「ああ、そういやそうだな。名前を教えてくれるか?」 「名前?」 ストラーフはアールと俺を交互に見る。 「前の主人はつけてなかったのか?」 どういう主人か知っていたが聞いてみた。たぶん名前などつけていないだろう。 「はい……」 ストラーフは俯いてしまった。 「マスター」 アールも心配そうに俺を見る。 「んじゃ、せっかくだし、アールの時のように自分でつけてもらおうか」 「そうですね」 二人してストラーフのほうを見る。 「えっと……その……あたいの名前は……」 ん?と身を乗り出すアールと俺。 「アール姉さんの妹だから……アールの対になる文字……エル、あたいの名前はエル」 「そうか、エルか」 「よろしく~エルちゃん」 こうして、俺の家族が一人増えた。 「はい、こう、ワン、トゥー、スリー」 「えっと、ととと、あっ」 机の上では、アールがエルにダンスのレッスン中だ。 エルが家に来て、しばらくたった。 家に来たてのころは沈んだ表情をしがちだったエルも、いまでは明るくなりアールと一緒に踊るようになった。 俺は、そんな光景を微笑ましく思いながら、なにげなしにTVのチャンネルを変えた。 その時は、俺もアールもエルもまだ気づいていない。運命のスイッチを押したことを。 なにげない普段のニュースがしばらく流れていたかと思うと話題が変わり、中継現場の映像に切り替わる。 『はい! 私は今、大人気の”武装神姫”そのバトル大会の会場に来ています』 どうやら、神姫の話題らしい。そういえば、大きな大会の予選だか何かがあったような気がする。 俺はそんなことを思いながら、ちらっとアールとエル二人の方をみた。二人とも背中をこちらに向けてダンス中だった。 二人にとって微妙な話題だから、嫌がる素振りをしたら変えるつもりだったがそのまま見続けた。 『さて、参加者にインタビューしてみましょう。こんにちわ! あなたの神姫、強そうですね』 『もちろんです。ありとあらゆる研究をしてパーツを組み込んだんですから』 レポーターに、どこから見ても金持ちのぼっちゃま風の男が答えた。 歳は俺より下っぽいなと、見ているとアールの悲鳴が響く。 「マスター! エルちゃんが!」 あわてて机に駆け寄ると、エルが膝立ちになり、両手で耳を塞ぐようにしてガクガク振るえていた。 「どうした?! エル!」 「あ……ああ……」 俺はエルを抱き上げて優しく撫でてやる。 「マスター…」 「大丈夫か?」 「マスター、ごめんなさい」 エルが俺の手の中で謝る。 TVには以前としてあの男と神姫の映像が映し出されている。 「マスター……」 アールが俺を見ている。アールには、エルが落ちてた理由を、俺からなるべくやわらかく伝えてあった。 アールはピンときたんだろう。俺も多分同じ結果を導き出して、エルを降ろす。 「エル……あいつがそうなのか?」 「はい、あたいの前のマスターです……」 そう答えたエルにアールが抱きついてやさしく撫でている。 実際に見て、エルから前の主人の話を聞いたときの感情がふつふつと湧きあがってきた。 「なぁ、エル。お前の力であいつ、ぶっ倒してみないか?」 「え? あたいが?」 「そうだ」 「でも、あたいじゃ…」 俺はエルの頭を撫でる。 「大丈夫。こっちは俺もアールも居る。三人でがんばろうぜ」 「うん! 私はバトルってあんまり好きじゃないけど、エルちゃんの為なら協力するから」 「マスター……姉さん…あたいがんばってみるよ」 「そうだ、その意気だ。あいつに、エルを捨てたこと後悔させてやろうぜ!」 「オー!」 アールが元気よく腕を上げて叫ぶ。 「ほら、エルちゃんも」 「オー」 アールに言われてエルも腕を上げて叫んだ。 「ただいま~。お~い買ってきたぞ~」 「おかえりなさいマスター」 「おかえり~マスター」 玄関まで出迎えた二人を抱き上げる。 「これがそう?」 エルが俺の足元に置かれた箱を見る。 「中古品だけどな」 ヴァーチャルバトルのインターフェイスを買いにいったのだが、新品は想像以上に高かったので型落ちの中古を買った。 「よし、それじゃあ早速使ってみるか。アールはサポートたのむ」 「はい」 自室に持ち込んでパソコンに接続した。 「よし。じゃあエルの武装するか」 「お願いします」 武装し終わるとエルの様子が変だ。 呼んでも返事しないし、動かない。 「エル?」 かるくつついてみると、やっと反応があった。 「よぉぉし! バトルだぜぇ!」 「え? エル?」 「おうよ! おもいっきりいくからたのむぜ!」 性格かわってるよなとか思いながらもインターフェイスに接続した。 それからが大変だった。 「突っ込みすぎた! 距離をとって!」 「マスター、右足負傷しました」 「直線でかわすと相手に読まれる」 「射撃は正確に、煙で相手を見失う!」 「右サブアーム可動不能になりました」 アールが現状を分析しながら俺が指示を出しているが、かなり苦戦していた。 ボロボロになりながらも、どうにか相手を倒して接続を切った。 「いやぁ、失敗失敗。ひさしぶりだから熱くなりすぎたぜ。はははっ」 ヴァーチャルバトルから戻ったエルはそう言いながらも、勝てたことに喜びを感じているようだ。 武装をはずすと、エルの性格が戻る。 「マスター、ごめんなさい。あたい、うまく戦えなかった……」 「いや、それはいいけどさ。性格かわってたよな」 「うまく言えないけど、武装をつけると、変なんだ」 「変?」 「うん、なんか戦うぞ~って感じになってああなるみたい」 「そっか、まぁなれればいいと思うよ」 「うん、あたいがんばるよ」 それから、猛特訓が始まった。俺の居ない昼間はアールとダンス練習、アールが操作するヴァーチャルバトル特訓。 ダンス練習は、アールがいままでも教えていて続けた方がいいといったからだ。 俺が帰ると、俺が指示を出してヴァーチャルバトルという生活を繰り返していた。 さらに幾日か過ぎた。 エルのヴァーチャルバトルもレベルもどんどん上がっていき、複数の敵とも対等に戦えるようになっていていた。 俺は、夜食を買いにコンビニへと向かっていた。アールも一緒だ。 エルは、昼間の特訓が激しくて、AIを休めるためにスリープモードに入っている。 「アールごめんな、しばらくかまってやれなくて」 「ううん、いいんです。私もエルちゃんにダンス教えるの楽しいですし」 歩きながらそんな話をしていたが、アールの顔はやはり寂しげだった。 「アール」 俺は立ち止まり、アールのほうを向く。 「はい?」 アールもこっちを向く。 「こんなことで埋め合わせっていうのも、何なんだけどさ……」 俺はアールをやさしく掴む。 「じっとしてて」 「はい……」 アールのヘッドギアを外すと、アールと初めてのキスをした。 そして、二人して顔を赤らめて、買い物をして家へ帰っていった 戻る 次へ
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入手条件 性格 声優 デザイナー 素体性能プラス補正アビリティ マイナス補正アビリティ ライドレシオMAX時の上昇能力 イベント 固有武装装備時ステータス 色変更髪 瞳 入手条件 DLC「武装神姫 Moon Angel」全話DLでショップに追加 性格 基本的にはアーンヴァルMk.2と同一。 カラーリングこそアーンヴァルMk.2のリペイントテンペスタと似ているが、ペイントが違うため別物らしい。 ただし、戦闘前の掛け声(神姫決定時)等、性能以外でも細部が通常のアーンヴァルと異なっている。 また、内部的には別の神姫として扱われているためか、手作りの髪飾りでヘアエクステが消失したり、 ヘッドセンサーラシュヌ、ユニコーン改などを装備すると後頭部の描画が軽くバグったりする。 声優 阿澄佳奈(ひだまりスケッチ:ゆの、WORKING!:種島ぽぷら、他) デザイナー 島田フミカネ(ストライクウィッチーズ、メカ娘等) 素体性能 LP ATK DEF CHA DEX SPD 400 45 42 40 20 4 プラス補正アビリティ 攻撃力+3 小剣、大剣、ランチャー+1 マイナス補正アビリティ 防御力-3 斧、浮遊機雷-1 ライドレシオMAX時の上昇能力 防御力、武器エネルギー回復、スピード イベント アーンヴァルMk.2と同じ 固有武装装備時ステータス 色変更 色は編集者からみた色で、人によって見え方は異なります。 髪 A.淡紫(デフォルト) B.赤 C.青 瞳 A.赤(デフォルト) B.紫 C.黄