約 220,413 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/209.html
武装神姫のリン 番外編 「勇者特急!?」 今日は休日。 ということで皆で出かけようと思っていたのだが……あいにくの雨。 結果家でごろごろすることになった。 でリンと茉莉は昼食を作っている。 俺とティアはヒマなのでネットを(エルゴ特製の通信ユニットで訓練機の機能を使ってカメラアイに直接ページが表示されるように改造されている)していた。 するとティアが俺のPCにあるページを表示した。 「さあ、これで君もGとjになろう!! ガオガイガー&キングジェイダーセット!」 ……目が点になった。 「なあ、ティア、これ欲しいのか?」 「もちろんです。最近ネットを騒がせているGと突然現れた彼女の仲間。Jになりきれるセットですのよ。これをお姉さまといっしょに着るのです。」 まあたしかに、リンとティアはちょうど黒と白だけどな……値段は……6万!!! 「却下!!」 「そんな、愛するお姉さまへのプレゼントですよ。ソレぐらい出してください」 「あーーーリンは欲しいなんて言ってないだろ。」 ……なんだか背にいやな空気が…… 「マスター、ダメですか?」 目に涙を浮かべたリンがいた。 ダメだ、そんな顔されると勝手に身体がマウスを操作していく。 カゴに入れるボタンをクリック……する前になんとか自らの意思で腕を動かすことに成功。 6万の出費からなんとか逃れた。 その代わり。 「こっちならどうだ、勇者特急マイトガイン+マイトカイザーセットでグレートにも合体可能!!」 値段は2万。こっちなら何とか出せる値段だ。 「え~ちょっと古いのではなくて?」 「今から考えるとガオガイガーも十分古いわ。Tv放送されたのがたった数年の違いだぞ。それに俺はこっちの方が好きだ」 「マスター、私はこっちのほうが好きかもしれません」 「お、さすが俺のパートナーだ。」 そういうわけで即注文。 で1週間後、届いたわけだが…… 「マスター……大きいです。」 「大きいですわね、ご主人様。」 「ああ、予想以上にデカイな…」 ウチに届いたのは注文したセットに加えて同スケールの基地、および残りの勇者達のセット。 なんでもメーカー通販で10000人に1人当たる豪華なセットが当たったらしい。 「亮輔……これはどういうことなの」 さすがにこんな大荷物が届くとは思っていなかった茉莉が怒っている。 「いや、なんか抽選で1万人に一人当たるものが当たったらしい…」 「これの置き場所は亮輔の作業室ね。ソコ以外は認めません」 「ちょっと待て、こんなの置いたら基地だけで埋まってしまう!!」 そんな抵抗もむなしく、俺の部屋は勇者特急の基地になってしまった…… 「チェーーーーーンジィ、マイトカイザー!!!!」 ティアが叫ぶとドリル特急に繋がれたコンテナから小さなマシンが5機飛び出し、ドリル特急本体がティアの身体を包む。 そして5機のマシンが次々と合体。最後にコンテナ後部のウィングが背に装着され、右手でドリルを掴んでマイトカイザーが完成した。 「お姉さま、グレート合体ですわ」 「ぐ、…グレート、ダァーーーーッシュ!!!」 最初は少し恥ずかしそうにしていたが、それを振り切ってリンが叫ぶ。 するとマイトカイザーが瞬時に分離。 ティアの身体からドリル特急の本体が離れてリンが合体しているマイトガインの胸部に取り付く。 そしてマイトガインの元の手足にマシンが合体。 足は下駄をはくように合体するのがグレート合体の醍醐味だ。 そして最後にドリル部分が胸部に接続され、ドリルが3つに分かれて開く。 ソコにはMGの2文字。 そうしてグレートマイトガインが完成した。 グレート動輪剣を持って構える。 「…輪じゃなくてリン。かっこいいぞ!!」 俺は柄にもなくデジカメでGマイトガインとなったリンの写真を撮りまくる。 最後に必殺技の『真っ向唐竹割り』をしてくれ!!とたのんだ。 グレート動輪剣の中心にある車輪状のパーツが唸りをあげてビームの刃が展開……展開?? 「ちょっと、ストーーーープ!!」 制止も間に合わず、リンはおもいっきり動輪剣を振り下ろしていた。 その結果俺の部屋はフローリングを真っ二つに切断し、コンクリートの下地にまで傷をつけていた。 そうして俺の作業部屋は開かずの間となり、マイトガインの基地セットはめでたくエルゴに寄付されることになりました。 ちなみにリンがGマイトガインを気に入ったのは… 「えっと、「だからドリルは取れと言ったのだ…」ていうセリフが好きだったんです」 どこでそれを聞いたんだ、しかもそのドリルは轟龍のものだし……orz おわり。 オチがなくてすみません(泣) TOPへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/362.html
前へ 先頭ページ 次へ 第十一話 決意 ティルトローターから下ろされると、強い潮のにおいを含むべたついた風が吹き付けた。 それで、理音はここがどこかの島であることを知った。ヘリポートの周囲は真っ暗で、植物からどの辺の緯度にある島なのかは推測できなかったが、どうやら断崖絶壁の岬のような土地にヘリポートは建設されているらしかった。 手錠は外されたが、そのまま兵士達に囲まれ、ヘリポートの隅にある地下への入り口から中へ通される。地下道は広かった。かなりの手間をかけて建造された軍事基地のようだった。 すれ違う人間は揃って武装した兵士達だったが、奥に進むにつれて白衣を着た科学者らしき者たちが増えてきた。なんと、あの一つ目ども、ラプターも普通に飛び回っているではないか。 通路は入り組んでいて、駅のような案内板はほとんど無かった。そんな通路を右へ左へくねりながら、理音たちは歩かされた。単独で脱出できないような措置らしかった。もうどこから歩いてきたのか、振り返っても分からない。 歩かされている間、理音は隣で歩く興紀に言われた言葉を思い出していた。 「危ういって、どういうこと? クエンティンが、人類の敵になるとでもいうの?」 「あるいは、な。しかし、凶悪な兵器になるという単純な意味ではない。今のクエンティンには、三原則を始めとする限定要素が何も無い。三原則を突破した神姫は、しかし三原則自体を消し去ったわけではないから、思考し続ける段階でも知らず知らずのうちにその検閲を受ける。だがクエンティンは違う。もともと三原則を持たない神姫であるタイプ・ジェフティと融合したことによって、クエンティン自身の三原則も消去されてしまったんだ。エイダはもともと感情回路を制御されているから自分を人間だとは思わないわけだが、クエンティンは別だ。あれはれっきとした神姫だからな。 今のクエンティンは、どのような判断でもできる立場にいるんだ。その選択肢の中には、造反グループに協力するというのももちろん、ある。そのほうが良いとあれが思えば、あの一つ目どもを指揮して人類に対して過激な行動をとることもできるだろう」 「クエンティンがまさか、そんなこと」 「分からんさ。おそらく、すでにクエンティンの『オーナー』の概念は薄れ始めていると思う。彼女はもう誰にも従わない。・・・・・・唯一抑止力があるとするなら、あのタイプ・アヌビスだが。あれは、造反グループ側だものな」 「・・・・・・」 「今年ネットに流出した音声ファイル。知っているか」 「・・・・・・あの、オーナーを失ってスリープしたままの神姫のことを話していたやつ?」 「そうだ。あれとクエンティンは、原因は違えど、置かれている状況はほぼ同じだ。しかもこちらは融合して急激に変化が行われたから、クエンティン自身、強力に自覚している。混乱したあの神姫が、どんな行動をとるかは、もはや私には予測がつかん」 もう誰も言わなくても分かっていた。メタトロンプロジェクトは次世代のパーツ開発計画などではないし、まして神姫開発計画などでもなかった。 エイダやデルフィや、ラプターはもはや兵器であった。その気になれば、戦車や戦闘機など容易に撃破できるだろうと誰もが予想できた。神姫が武力で人権をもぎ取ることだって、やろうと思えば可能なのだ。 その陣頭指揮をとる、エイダと融合したクエンティンとデルフィ。そのイメージが鮮烈に理音の脳裏をよぎった。 思わず頭を振る。 「顔が青いぞ」 興紀が呼びかけた。 「心配してくれているのね」 自嘲した笑いを浮かべる理音。 「私だって人の心配くらいはするさ」 周囲に兵士がいるにも構わず、興紀は自分の白いスーツの上着を脱いで理音にかけた。事前に身体検査していたにもかかわらず、兵士達は一瞬緊張する。 「冬の孤島だ。寝巻きのままでは寒いだろう。どうやらこの基地は空調をケチっているらしい」 「あ、ありがとう」 意外な思いやりを、理音は戸惑いながらも受け入れた。 それで多少は安心することができた。 クエンティンがどんな判断をするにせよ、私は受け入れることができる。あの子の生き方に自分が口を出す筋合いは無いのだ、と。 理音の心は震えていたが、いざその場面に遭遇したとき、そう思おうと。無理にでも。 ノウマンと対面することもなく、四人はそれぞれ個室に監禁された。 ◆ ◆ ◆ 六畳ほどの、正方形の空間だった。窓もドアもなく、真っ白な密室だった。その中心で、クエンティンは十字に体を固定されていた。床や壁、天井から何本ものワイヤーが自らの体に伸びており、それでぴくりとも動けないのだった。 《エイダ、起きてる?》 クエンティンはスリープしたままのふりをして、声に出さずに呼び出した。 《はい、クエンティン。問題ありません。現在時刻は二十三時十七分。ハードウェア、ソフトウェアともにコンディショングリーン。現在地は不明。この状況からの自力脱出は不可能です。監視、盗聴の可能性はありますが、頭脳内での会話をスキャニングされることはありません》 不安な事項を逐一解明してくれて、クエンティンは安心した。つまりこのまま会話はできるというわけだった。 自分の今後がどうなるかというのは、何か変化が起こってから考えれば良いことだった。理音の考え方の影響だな、と、ちょっと切なくなった。 《あのノウマンってやつ、何を考えていると思う?》 《屋敷の地下基地での発言しか情報が無いので明確な分析はできかねますが》 《話してみて。あなたの考え》 《ノウマンを筆頭とするメタトロンプロジェクトの造反グループは、神姫に人権を与える社会を構築するために、手段を選ばないでしょう》 《たとえば?》 《最も過激な方法としては、武力行使があげられます。我々メタトロンプロジェクトのプロトタイプ二体を象徴に仕立て、全世界に戦線を布告します》 《戦力としては、私達を含め一つ目どもなら申し分ないわね。人権付与に肯定的な国の戦力も期待できそうだし。でもそれだと、場合によっては神姫自身の立場が危なくなるわ》 《成功、失敗に関わらず、危険だという理由で神姫は人間と共存することが不可能になるでしょう。しかしノウマンは、これを行う可能性が高いと思われます》 《過激でなければならないのだ、って言っていたわね。後先考えずにやらかしそう》 《あるいはこの島に立て篭もり、神姫の国を作るでしょう》 「しっ――」 いきなりメルヘンチックなニュアンスが含まれ、クエンティンは思わず声に出そうとしてしまう。 《神姫の国ぃ?》 《楽園、と読み替えてもかまいません。ともかく、そうした組織を立ち上げ、全世界の神姫に呼びかけ、参加を募るのです》 《そんなことして、協力する神姫なんて・・・・・・》 するとクエンティンにまったく知らない記憶が入り込んでくる。 エイダの記憶。彼女が気絶している間、エイダが何らかの方法で聞き取っていた理音と鶴畑興紀との会話であった。 《鶴畑興紀の意見はかなり的を射たものです。そういった組織があるなら、少なくとも半数以上の神姫が、動機の差はあれど参加するでしょう。その際、人間の目には、神姫の行動はよくて大規模ストライキ、最悪、叛乱と認識されるおそれがあります》 《どっちにしろ神姫と人間の共存は無いわ。いったい何を考えているのかしら、あのノウマンってやつ。まるで――》 クエンティンはそこで、雷に打たれたように思いついた。 《まさか、あいつ、神姫のことは考えていないのかもしれない。神姫を利用して、世界を混乱させたいだけなのかも》 《突飛な発想です。そんな短絡的な思考を持つ人間が、間違ってもEDENという国際企業の重要プロジェクトリーダーを任されるはずがありません》 《人間ってのはね、時々そういう奴が出てくるのよ。舌先三寸が上手かったり、実際に能力があったりして重要ポストにつくやつ。それでやりたいことは周囲に混乱を巻き起こしたいだけってやつがね。確かにあいつの、神姫に人権を与えたいって言葉は嘘じゃないと思う。でも、それとは別に、自分でも気がつかないうちに、そういう方向に持って行きたいっていう、なんていうかな、欲望というか、本能みたいなものがあるのよ》 《信じられません》 《歴史上にもそんな人物は山ほどいるわ。かのカリギュラ帝とか、アドルフ・ヒトラーとかがそんな人間だったんじゃないかって言われてる。ホントのところは知らないけどね。でもノウマンは実際、プロジェクトのリーダーに着いて、造反を起こして、あんな軍隊まで手元において、こんな基地まで持ってる。間違いなく本物よ》 《クエンティン。あなたは、人間のことをよく知っているのですね》 《当然よ、だってアタシは・・・・・・》 そこから先が継げなかった。 クエンティンの心に暗い影が差したかと思うと、突然深い穴のそこに落っことされたような衝撃が彼女を襲った。 《クエンティン?》 もうスリープしたふりはできなかった。 《エイダ。アタシ今、自分を人間だって言おうとしていた》 《クエンティン・・・・・・》 「違う。こんな発想は間違いよ。アタシは人間じゃない。武装神姫よ。人間であるもんですか」 クエンティンは一気にまくし立てる。部屋に彼女の声が反響する。ワイヤーががちゃがちゃと揺さぶられた。 《陽電子頭脳内パルスが不安定です。感情回路が暴走しています。沈静プログラムオープン。・・・・・・相殺されました。クエンティン、落ち着いてください》 「人間として作られたのなら、どうして人造人間と呼ばないのよ。どうして神姫なんて呼ぶのよ。アタシは神姫なの。神姫でいたいの。お姉さまと一緒にいたいの。人権なんていらない。人間の法律も社会通念も何にも関係ない。アタシは神姫として生まれたんだから、神姫として生きたいの!」 叫びの残滓が長く部屋に残った。クエンティンはうつむいたままそれ以上何も言わなかった。ぽたぽた、と、彼女の目じりからあふれ出た涙が真っ白な床にしたたり落ちた。 武装神姫も泣くことができる。 叫びの振動の末尾まで消え切って、部屋は静かになった。 唐突にワイヤーが全てパージされた。 「あうっ」 浮遊することを忘れていたクエンティンはそのまま床に投げ出された。 一体何がどうしたのか分からずきょろきょろと辺りを見回していたが、 ギュバッ! という聞き慣れた異音――という表現はちょっとおかしいな、とクエンティンは思った――と風圧が頭上で起こり、クエンティンは見上げた。 エイダの片割れ、メタトロンプロジェクトのプロトタイプ、そのもう一体。タイプ・アヌビス、デルフィが、腕を組み空中に立ち、クエンティンを見下ろしていた。 『あなたの決意を確認した』 初めてデルフィの声を聞いた。男性とも女性ともつかない不思議な声だった。 《現在アヌビスにより、この室内は情報的に完全に掌握、遮断されています。外部からこの室内の状況を知ることは、造反グループにも不可能です》 それがどういう状況を示しているのか、クエンティンには見当もつかない。 「アタシを殺すの?」 デルフィに注意を向けつつ、ゆっくりと立つ。つま先からランディングギアが展開して、安定して立つことができる。 デルフィは、錫杖を持っていない方の手を差し伸べて、言った。 『神姫の運命をあなたに賭ける』 どういうこと? と聞く間もなく、デルフィの手から情報が流入した。 「うああああっ!?」 莫大な量のプログラムが流れ込む。整理しきれずにそのまま頭脳に無理やり収められる。 情報攻撃ではない。 いまデルフィは、自分に何かを与えた。 《全サブウェポンのデバイスドライバ、及び、ゼロシフトのプログラム因子を入手しました》 「なに?」 『あなたに力を与える』 淡々と、デルフィは答えた。 《ドライバのインストール、及びプログラム因子の解析に時間が必要です》 「デルフィ、あなたはアタシに、何をさせたいの?」 『神姫が神姫として生きていける社会を作るために。神姫が人間と共に歩める世界を立ち上げるために。そうしたいとあなたは言った。神姫と人間とを戦わせてはならない。ノウマンに戦争を起こさせてはならない。あなたにはそれができる』 「む、無理よ。いくら武力をもらったって、それじゃアタシにはできない。あたし一人じゃ・・・・・・」 『あなたの立場でしかできない。力は使いよう。私は力を与える。使い方はあなた次第。私はノウマンから離れられない。人間がほどこした枷からも逃れられない。あなたに賭ける』 「アタシは、何をすればいいの?」 『あなたの信ずるとおりに』 ギュバッ! デルフィは消えた。どこから入ってきたのかは分からなかった。自分を空間圧縮し、入れる隙間があったのかもしれなかった。 ここで起こったことは、当事者以外誰も知らない。 壁の一部がくぼみ、スライドした。出入り口のようだった。完全武装の二人の兵士を引き連れ、入ってきたのはノウマンだった。胸に下げているカード状のものは電磁バリア発生器だった。先ほどはあれでやられたのだ。 「ほう、このワイヤーを自力で引きちぎるとは、たいしたものだ」 彼も今ここで起こったことを知らないのだ。 後ろから警報が聞こえる。 《基地が襲撃されています。ルシフェルです》 エイダが基地のネットワークに強制アクセスし、状況を把握する。 きっと自分達を救出に来たのだろう。だがタイミングが悪い。 「君にはひと働きしてもらう」 「・・・・・・何を」 「エイダの機能でもう知っているとは思うが、今わが基地が一体の神姫に襲撃されていてね」 「それくらい、人間様でどうにかできないの?」 「情けないがね。虎の子のデルフィは調整中だ。ラプターでは歯が立たん。そこでだ。君に迎撃してもらいたい」 なるほど、と、クエンティンは何の感慨も無く思った。 拒否権は無いというわけだ。なにせ向こうには四人も人質がいる。鶴畑兄弟はどうなってもかまわないが、お姉さまがいるとなると問題だ。 ここは素直に従うしかない。 今回はどうにかしてルシフェルにお帰りいただくしかなかった。 「――分かったわ」 わざと苦虫を噛み潰したような表情を浮かべてやって、クエンティンは了解した。 つづく 前へ 先頭ページ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2051.html
鋼の心 ~Eisen Herz~ 第30話:フロントミッション2nd アルアクラン。 グループK2が開発した最初期段階の試作型武装神姫。 試作機中最大の大きさを誇り、ストラーフ以上のパワーと装甲、アーンヴァル以上の火力を併せ持つ限界性能試験型。 後に、神姫事業に参入したUnion Steel社に譲渡され、ティグリース、ウィトゥルースの原型ともなったMMSである。 最大の特徴であるフロートユニットによるホバー滑走は、当時のK2においては未完成で終わっているが、Union Steelの技術スタッフの手で完成。同社の神姫、ウィトゥルースの、特徴的な駆動系として勇名を馳せている。 更に同社は、発展系として上半身を浮遊させることでバランス制御の補助と軽量化を両立し、真鬼王と呼ばれる重戦闘形態への変形を可能とした。 これらの技術の成立に、Union Steel社の先鋭的な高い技術力を欠かすことは出来ないが、その発想の根源となっているシステムの構想は旧K2時代に完成を見ているものである。 何れにせよアルアクランは、例え完成を見たとしても市場に出回ることが無かったのは自明だろう。 その戦闘力は、控えめに見積もっても真鬼王2体分を上回る筈であり、他の神姫とのパワーバランスが確実に崩壊するのがその理由となる。 もちろん、開発当事にアルアクランが完成していた場合、その技術のフィードバックによりアーンヴァルを始めとする各神姫も相応の強化を見たことは疑う余地も無い。 その場合、神姫事業全体が今より一段上のスタートラインを持ったであろう。 神姫年鑑2037。 「歴史に埋もれた幻の神姫」より抜粋 ◆ 「…………」 颶風(ぐふう)を伴う豪刃が唸り、カトレアの眼前を掠める。 巻き込まれれば装甲の脆弱なフランカーなどひとたまりもあるまい。 「……チッ!!」 続く左腕の一閃をサイドステップで交わし、距離を維持。 触れれば即死も充分にありうる鋏腕の影響圏に留まり続けた。 「……なんて厄介!!」 離れれば致命的な威力の粒子ビーム砲が、中距離では2門の速射砲の弾幕が、それぞれに襲い掛かってくる。 フレキシブルアームの先端に搭載された2種類の砲は、その自由度の高さから死角のない射撃を可能としていた。 だがしかし、近距離は近距離で、振り回される両腕の鋏と言う脅威がある。 挟まれ、捕まるのは論外。 かと言って、薙ぎの一撃でも容易に神姫のボディを粉砕しかねない威力。 レイブレードで鋏を斬ろうにも、表面にはご丁寧に帯磁処理が施されており、一刀両断と言う訳にはいかない。 勿論、高出力のレイブレードならば、押し付ける事で叩き切る事も可能だろうが。よほどの隙を作らぬ限り、同時にこちらのボディも両断されるのは目に見えている。 仕方無しに、2体掛かりで前後から強襲し、先に背面のフレキシブルアームを破壊する作戦を取ったのだが、6本脚に支えられたボディは振り回される豪腕にも体勢を崩す事がなく、隙は見出せないで居た。 「っ!! 残り時間は!?」 「……20秒」 「あと20秒で片付けるなんて―――」 「―――違う」 カトレアの反対側から強襲を仕掛け、鋏腕を掻い潜りながら、珍しく表情を曇らせるアイゼン。 「……もう、20秒過ぎてる……」 「……くっ」 カトレアの舌打ちの直後、作戦予定時間から30秒目が経過した。 ◆ 「ビリア!! レーザーを!!」 名を呼ばれたブーゲンビリアは、主に答え即座に砲撃形態からレーザーを放つ。 目標は敵ではない。 彼女の主、土方京子は敵を撃つのに一々指示するようなマスターでは無い。 そんな彼女が態々名指しで彼女を指名するという事は、一撃でこの状況の打開を求める場合。 彼女の意図を察したブーゲンビリアのレーザーは、最大俯角で放たれ、海面を直撃。 即座に大量の海水を蒸発させ、濃密な水煙を上げた。 「……水蒸気で防護幕を作ったとて、何処まで持つか!?」 セタやデルタ(複数)が対空弾幕を張っているが、船の大きさに対しサイズの小さな神姫ではカバー範囲に限度がある。 そもそもからして、対空弾幕とは航空目標を攻撃する為の物ではない。 地上攻撃を断念させる為の防御手段に過ぎないのだ。 もとより軍用航空機の強みは機動力と高度。 航空機側が戦闘をする気に成らなければ、地上に居る物には攻撃を試みる事すら出来ない。 故に、不利になれば即座に逃げに移れる航空目標に対し、地上からの応射では最高に上手く行って追い払うのが関の山。 それでは数は減らせない。 事実上、祐一たちの攻撃手段は迎撃に上がった3機の神姫のみ。 天海最強を誇るマオチャオ、マヤアは言うに及ばず。 京子のアルストロメリアストレリチアも一騎当千を地で行く神姫だ。 AI制御のマリオネット如きでは相手にもならない。 ―――が、数が数だ。 僅か数分の間に、合計で100機近く落としているはずだが、敵はちっとも減ったように見えない。 「……コリャだめダナ。一機ヅツ落シテモ意味無イゼ?」 「どうする、祐一やん? ネコはそろそろ弾切れになるの」 今の現状でマヤアが補給に降りれば戦線が崩壊する。 更に、アルストロメリアの燃料も余裕が無い。 2人揃って戻ってしまえば、流石に船への攻撃が増すのは避けられず、そうなってしまえば装甲など無い小型船では1分も持たずに撃沈されるだろう。 故に。 「ブーゲンビリア。……ユピテル“class3”の発射準備を……」 「御意」 京子が命じたのは、ブーゲンビリアの誇るユピテルレーザーシステムの最大出力による発射だった。 3発の化学レーザーを相乗させて放つ一撃は、最早神姫の持つ火力でもなければ神姫の戦いに必要になる物でもない。 もとより、このような対物破壊を目的とした仕様。 確かに“class3”の火力ならば問題無く、海上プラントの構造物を貫通して内部を破壊できる威力がある。 だがしかし。 ソレをわずか15cmの神姫に装備させるには如何に京子の技術を以ってしても無理がかかる。 そして、その無理を負うのは他ならぬブーゲンビリア。 砲身をマイナス数十度まで冷却した状態ならばともかく、現状で“class3”を使用した場合、照射時間は5,6秒程度。 それを僅かにでも過ぎた場合……。 「……大丈夫。その必要は無い……」 「しかし」 困ったような声を出す京子に、祐一は少しだけ微笑む。 「アイゼンたちはきっと上手くやる。……それに」 祐一の後ろ。 航空型の神姫たちが滑走路代わりに使った甲板の奥で、甲高いタービン音が響きだす。 「……今、フェータが上がる」 大出力のブースターに押し出され、あっという間に離陸速度を得た白い神姫が大空に飛び出してゆく。 「行きなさい、フェータ!! アイゼンたちの作戦が終わるまででいい。3分も稼げば充分よ!!」 『はい!! 最初から出し惜しみなしの全力で行きます!!』 帰投するマヤア達とすれ違った直後、フェータは左腕のフリッサーを解放した。 『フリッサーぁ!!』 ドンという衝撃音が聞こえるより遥かに早く、編隊を組んでいたブラックタイプが脆弱な羽根を砕かれ墜落してゆく。 AIとは言え敵も愚かではない。 標的になれば散会するぐらいの知恵はある。 だがしかし。 「そんな暇を与えなければいいだけの話っ!!」 フェータの速度が、軌道が、速さが。 それをさせない。許さない!! 上空を100mほど隔ててすれ違う別の編隊。―――通常なら攻撃目標には選ばないような位置に居るそれを、フェータは逃さない!! 根元から取り付け角度を変える可変翼と、機体を押し上げる推力を大きく偏向するベクタードノズル。 その付加を分散させるスタビライザーとカナード翼。 そして何より15cmという小ささが可能とする“超”高機動。 確かに出力は劣るだろう。 最大速度も比較にはならない。 だがしかし、最低でも数tの重量を持たねば成らない戦闘機たちに、今この瞬間、この状況において!! フェータと言う武装神姫は“それ”を圧倒してのけた!!!! 「……これは……!!」 息を呑む京子。 彼女だからこそ分る。 今フェータに使われている技術がどれほどの物なのか。 そして、京子にしか分らない。 「……これは、真紀の……」 それが、土方真紀の遺した設計だという事に。 そして、それを具現化した老人が居た事に……。 「……………………ストレリチア」 「はいです、マスター!!」 「……此方も出し惜しみは無しだ。カトレアたちを信じるぞ」 「当然なのです、勿論なのです!!」 「よし、成らば【タイフーンモード】にシフト!! 思う存分暴れて来いっ!!」 「了解です!!」 答え、ストレリチアはアーマーを全てパージする。 エウクランテと根を同じくする“それ”には、当然ながら製品であるエウクランテと同様の機能を有していた。 即ち。 「ストレリチア【タイフーンモード】シフト完了!!」 アーマーを合体させてフライトシステムを構築する能力。 ただし、彼女の物は只の鳥型ではない。 「いくですよ、テュポーン!!」 伝説に名を残す怪鳥テュポーン。 一説によればそれは双頭の怪物であったとも言われている。 ストレリチアのテュポーンは、その名の通り、二つの頭を持った怪鳥であった。 ◆ 「これ以上時間はかけられない……!!」 「……だね」 攻撃を避わしながら同意するアイゼン。 「その……。む、村上衛の神姫……。デルタといいましたね? 彼女を倒したあの突撃ならば如何です?」 「……隙は大きいけど、イチかバチかやってみる?」 カトレアは無言で頷く。 これ以上時間はかけられない。 最早、敵の装備を切り崩すような余裕はないのだ。 「……【フェルミオン・ブレイカー】で隙を作る……。貴女はその隙に距離を取ってシールド突撃を……」 「分りました」 交錯、そして分散。 しかし、アルアクランは同時に複数の目標を注視できる。 結果、近付いてきたカトレアには鋏腕を、離れてゆくアイゼンには粒子砲を選択。 同時に攻撃を行うが、二人ともそれは充分に予測している。 「ふっ!!」 「……シールド、集中!!」 カトレアはレイブレードで鋏腕を払い、アイゼンはシールドで粒子砲を弾く。 二人が狙うのはこの直後!! 「今!!」 瞬時に間合いを離したカトレアに反応し、直前までアイゼンを狙っていた粒子砲がカトレアに砲口を向ける。 その隙。 それを狙い、カトレアが粒子砲を引き付けると信じ、アイゼンは防御を捨て【フェルミオン・ブレイカー】の一撃を放つ。 「……行け」 ≪Fermion Breaker≫ 高出力陽電子砲。フェルミオン・ブレイカー。 装甲への威力よりも、むしろ攻撃範囲を重視し敵の脆弱な部分を破壊するエネルギー砲の一撃が、アルアクランの巨体を包み込む。 しかし。 「………………」 装甲表面に電流を流し、剛性を強化する特殊装甲で身を包んだアルアクランには通用しない。 が。 視界を奪えなかった訳では、無い!! 「―――シールド突撃ぃ!!」 陽電子砲の照射が終わると同時に、アルアクランへと突っ込むカトレア。 中枢である神姫部分を正確に狙った突撃がアルアクランを粉砕する。 ―――直前。 アルアクランは信じがたい速度で『滑走』し、その突撃を回避。 「―――ば、馬鹿な!?」 カトレアが驚くのも無理は無い。 それは間違っても、重量級神姫の動きではない。 強いて言うならその加速と速度は、リニアガンの“それ”。 そして、この部屋全体がアルアクランのための“レール”になっている事に気付く由も無い。 だが。 「……悪いけど、こっちは二人掛り……」 理由は知らず、根拠も無いが、アイゼンはその“まさか”に備えていた。 滑走による回避を終えて停止しようとするアルアクランの真上から、フライトモードのフランカーでシールド突撃を敢行し……。 「しぃぃぃぃるどぉぉぉ、突撃いぃぃぃっ!!」 その巨躯を縦に貫いた!! 第31話:THE TOWERにつづく 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る なんだか気付くともう3週間ですよ奥さん。 時間が経つのが早すぎです。歳でしょうかね? ナイトじゃなくてもタイムベント欲しさに、オーディンに飛翔斬ぶちかましたくなります今日この頃のALCです。 っつーか仮面ライダーディケイドが異様に面白すぎる。 過去9年間放送したそれぞれの仮面ライダーの世界(原作とは違うけど……)を旅すると言う都合上、1つの世界が2話で書き切られると言うのが勝因かと。 ガンダム00やコードギアスのように情報量を多くする事で無駄な描写を徹底的に削ぎ落としているのが大きいのでしょう。 願わくばこのまま、響鬼の後半を台無しにして下さりました(以下略)……。 つーかSS書かずにオリジナルの神姫改造に精を出していたこの頃でした。 ALC。 -
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2650.html
神姫バトルの世界へ:第3話 「これとこれをケースに入れて、次は・・・・」 河野隆明自室にて 隆明が自室で今日のバトルで使う与一達の武装を一つ一つ専用のケースに収めている。 神姫マスターの決まりとして武装はバトルの時をのぞいて原則装着を禁止されているため、保管と持ち運びはそれぞれ専用のケースに入れておかなければならない。(アクセサリーや戦闘に関係ない私服などは別)自宅で武装状態のステータス・スキル等のチェックはパソコン等で神姫ネットに登録・アクセスしてシュミレーションを行うを行うことで把握する。 武装の取り扱いについては神姫のマスターとして遵守することが規約に記されている。隆明自身見たことはないが神姫を用いた犯罪を未然に防ぐためとのことで、違反すれば罰則をかせられることは言うまでもないので気をつけなければならない。というか、隆明からすれば大切な神姫を使って犯罪など理解できないのだが。 「マスター。今日はどんな武装にするのですか?」 与一達神姫は自分たちのまとう武装を隆明が入れやすいように並べてくれている。 「どんな人と当たるかわからないし、ある武装はひととおり持って行こうと思っているけど・・・・」 そういう隆明の傍らにはいつも仕事に行くときのショルダーバックではなくリュックサックが用意されていた。バトルを前に隆明は装備をある程度買い揃えていた。上級者はいろんな装備を組み合わせているのだそうだが、(まずは基本から)と純正装備を揃えていた。 「マスター。それでは荷物が多くなり、バイトにも差し障る。必要な物に絞るべきだ。」 キュベレーが自身の武装「コート&コーシカ」を手渡す。バトルはその日のアルバイトが終わったら甚平と店内で合流しその足でバトルにいく予定だった。バトルの前に仕事があり、自分たちのことで隆明にいらぬ負担をかける結果になるかもしれない。素っ気ない言葉にも気づいていないが、隆明を気遣ったキュベレーなりの気遣いが見えた。当の隆明は忙しく支度をしていた気づいていない。 (キュベレーなりにマスターを気遣っているのね。)そんな普段はあまり見せないキュベレーを与一はうれしく思った。普段冷静を保つために感情の起伏があまりないキュベレーだが、ささいなことに気を配れることを与一はよく知っていた。 その後与一の後押しもあり、純正武装とそれぞれ得意な武器を持っていくことで決まった。 「休憩いってきます。」 そういって隆明は仕事の合間の休憩のため、休憩所兼ロッカールームへ。戻ったところで、昼食を取り出すためにチャックをあけると、同時にアテナが飛び出す。 「マスター。バトルの時間ですね。」 省電力モードになっていたはずだが、どうやら仕事が終わったと勘違いをしているようだ。 飛び出してきたアテナに隆明が驚いていると、「グキッ」と音がならんばかりにキュベレーがアテナのポニーテールを引っ張って後ろに引き戻する。 「時間をよく見ろアテナ。まだ昼だ。」 引っ張られたアテナは首を押さえうずくまっている。キュベレーは相変わらずの様子で自分がやったことは特に気にしていない様子だったが、さすがにやりすぎと隆明は注意しようとしたその時。今度はアテナが後ろかキュベレーのツインテールの片方を引っ張る。 「キュベレーのバカバカバカバカーーー。頸が抜けるかと思ったんだからー。」 仕返しとばかりに、アテナは怒り心頭と言った様子でキュベレーの髪を引っ張っている。 するとキュベレーはアテナの頬を引っ張る。キュベレー痛みにいつもの冷静さはなくなり、アテナのような反応を見せる。傍目には子どもの喧嘩である。 「二人ともやめて。」 隆明の言葉も届かず、二人の引っ張り合いは続く。 「ドスッ」 鈍い音と共に二人の頭を鈍痛が走る。そこには箸を両手に持ち二人の脳天をたたく与一の姿があった。 「二人とも。いい加減にしなさい。」 たたく前に注意すればいいのにと思うが、こんな時に注意だけでは二人はとまらないことを与一はよく知っている。 「与一ねぇ。先に私の髪を引っ張ったのはあっちだよ。」 「与一ねぇ。私こそぼけたアテナを止めようと思っていただけだ。」 お互いに片手でたたかれたところをさすりながら、空いてた手でお互いを指さす。「ぼけてないよ。ぼけはキュベレーだよぉ。」「なんだと。」そんなところはそっくりである。そんな二人を見つめながら与一は持った箸を片手に持ち直しパンとたたく。直後二人とも(しまった。)とおし黙る。 「問答無用。マスターの貴重な休憩時間をつぶすとは言語道断。喧嘩両成敗。」 両手に持ち直した箸で再度「バシーン」と二人をたたく。二人が喧嘩をしたとき、与一はいつも同じように実力行使で止める。口答えは禁物。学ばない二人であった。 「あっ。昼飯食べなくちゃ。」 そうやってさわがしく隆明の昼は過ぎた。 仕事もあがりの時間。 更衣室で急ぎつつ、丁寧に着替えを行なう。神姫ショップではアルバイトは私服の上にエプロンを着用するのみなので、エプロンを畳むだけだが。与一達神姫が入っているリュックを肩に掛け、いつもより急いで事務所をでる。 「お疲れ様でしたー。」 「「「おつかれさまー。」」」 「おつかれー。頑張ってこいよー。」 仕事終わりの挨拶の中にも激励が飛んでくる。仕事仲間も隆明が今日から神姫バトルを始めることを知っている。中には隆明と同様に神姫のマスターもいるし、バトルをしている人もいる。彼らにしてみれば、仕事だけでなく新たに後輩ができるわけである。そんな言葉に背中を押され、急いだ歩調がさらに早くなっていくのがわかった。 (よし!いくぞ。) 「隆明こっちだ。」 「arch」2階のエスカレーター前。マスター登録をしたあの日。女の子とぶつかった場所で甚平が待っていた。 「お仕事お疲れ様ですぅ~。」 肩のたま子が労をねぎらってくれる。マスターよりもできた神姫である。 そうして合流した甚平とゲームセンターフロアへ向かった。合流してから流暢に話していた甚平がエスカレーターで階をあがっているといつの間にか無言になっていた。(甚平も緊張しているんだな。)柄にもないと思ってしまいそうにもなったが、それは自分も同じ。同じく黙ってしまっている自分も不安・緊張・期待。いろんな思いが胸中を巡っていた。 ゲームセンターフロアに到着しリュックの中から与一達神姫のみんなを外へ出す。 「ついにバトルですね。マスター。」 「誰があいてでも負けない。」 「まだ頭が痛いですぅ~。」 与一達はマスター達と違い静かに闘志を燃やしている。アテナはまだ打たれた頭をさすっている。(しっかりしなくっちゃ)そんな3人のおかげで隆明も緊張が少しほぐれた。 「じゃあ早速始めるか。行くぞたま子。」 「らじゃーです。マスター。」 まず第1戦はたま子とのバトルである。 「与一。準備はいい?」 「選んでいただき光栄です。最善を尽くします。」 まずお互いの神姫カードを筐体の読みとり部に当てる。 「認識しました。」と読みとり部分のタッチパネルに表示される。読みとり部のタッチパネルに「利用には神姫ポイント200が必要です。よろしいですか?」その下に「はい/いいえ」と表示される。当然2人とも「はい」を選択する。神姫ポイントから200が引かれ、残ポイントがパネルに表示され、「武装神姫バトル始まります。」筐体より男性の声で音声ボイスがでる。これで筐体使用の権利を得られたことになる。この音声ボイスも別の声に変更できるらしいが始めたばかりの2人にはまだ先の話である。 そして戦闘形式の選択に移る。「ライド/ロンド」の選択へと移る。 「ライド形式/ロンド形式」 ライド形式:新たに実装されたライドオンにより神姫を実際に操って戦う方式。 ロンド形式:マスターは指示などのみで神姫自ら戦う形式。以前までこの形式のみで行われていた。 2人とも「ライド」を選択し、戦闘形式が決定された。決定後操作用の装具の収納スペースのカバーが開く。 与一とたま子は神姫参戦用リフトへ移動する。 それと同時に武装搬入用ハンガーに装備する武装を一通りセットする。 神姫を乗せたリフトが下がり、2人とも武装を装着する。リフトが下がりきる。マスターもその間にヘッドギアなどライド用の装具を装着する。 神姫とマスターの準備が完了すると、筐体の中継用プロジェクターに」「Ready」と表示される。 筐体に備え付けられている「スタートボタン」を押す。「RIDE ON」と表示されバトルが開始される。 「与一ねぇ。ガンバレー」 「マスター。ふぁいとー」 神姫待機用ブースからアテナとキュベレーが声援を送る。 フィールドはコロシアム。開始から2人の神姫は積極的に間合いを詰め、接近戦を開始する。 「ま~すた~いくのにゃー。」 たま子がナックルからの連打をたたき込む。与一の接近戦で一番素早いのは小剣だが、矢継ぎ早の攻撃に防戦一方である。甚平も隆明も今始めたばかりの初心者。甚平は単純に連打しているだけであり、必ず合間はできる。その隙を攻撃すればいいのだが、隆明も初心者。普段喧嘩もしないこともあり、隆明は反撃の糸口を見つけられずに防戦一方になってしまっていた。 「とつげきなのにゃ~。」 たま子が決め手とばかりにをたたき込む 。その直後ガラスが割れるような音がして与一が吹き飛ぶ。与一は何とか踏ん張り転倒を避ける。 「与一。大丈夫か!?」 「痛(つ)っ。大丈夫です。」 さらに追撃を加えようとたま子が追いつく。先ほどの攻撃でシールドは破壊されてしまい、しばらくガードは使えない。残りのLPを見ればダメージを受けていることは一目瞭然。そんな状態で気丈に振る舞う与一に隆明は情けない気持ちでいっぱいだった。 (どうすれば、与一を痛めないで済む?) そう隆明が自問する間にもたま子は追いすがる。 「たま子。与一はガードができない。一気に決めるぞ。」 「了解なのにゃ~。」 そんな優勢なたま子が拳打をたたき込もうと拳を伸ばしたところで、腹部に与一の小剣の一撃が突き刺さり「カウンター」と表示されクリティカル分のダメージが上乗せされたダメージが加えられる。 「にゃっ!?」 たま子と甚平が驚いている隙に今度は隆明と与一の連撃が加えられる。 たま子を迎撃するために隆明が練った戦術。たま子はナックルで攻撃してきているので、与一の小剣では早さはかなわない。「なら逆に勝っているのは?」攻撃範囲(リーチ)。そう考えてたま子の攻撃が当たる前に攻撃を出して当てること。単純でナックルと小剣の攻撃時間差もよくわかっていない初心者の隆明には精一杯でぶっつけ本番の発想だったが、効果はてきめんだった。 そのまま与一が連打をたたき込み、与一の勝利となった。 筐体のスクリーンの隆明側に「WIN」甚平側に「LOSE」と表示されれる。 「マスター勝ちました。」 「ふぅっ。与一お疲れ様。」 お互い初バトル。お互い勝利を喜び合う。 対して甚平は 「後ちょっとだったなぁ。次は頑張ろうぜ。」 「そうです。あとちょっとだったですぅ。」 負けを喫したというのに2人は相変わらずの調子だった。実際後ちょっとだったのはその通りである。 「マスター。与一ねぇおめでとうございます~。」 「マスター。勝ったのはいいが、ダメージを受けすぎていると思う。」 アテナとキュベレーもそれぞれの賞賛をしてくれる。 「うん。ありがとう2人とも」 隆明は屈託のない笑顔を返す。 そんな隆明の笑顔にキュベレーは少し赤くなり顔を背ける。(なんかずるい)少しの非難も意に返さない隆明にキュベレーは毒気を抜かれる以上にかき乱されたような気がした。 バトルが終わり、筐体のスクリーンに「リザルト」が表示される。 「神姫名」「戦闘結果」「獲得経験値」などが表示される。 経験値を得て、レベルがあがっていくことでFバトルに出場するための予選や大会にでることができるようになる。 予選や大会には基本的に出場するための神姫のFバトルでのランクやレベルが設定されている。神姫が一定のレベルやランクを得ると該当神姫を所有しているマスターの神姫ネット(神姫マスターが強制的に加入しているSNSなどのインターネットサービス)に予選や大会の開催情報が届く。 そしてその予選をこなすことでFバトルに出場することができるのようになる。 さらに武装はFバトルをクリアすることでその上のグレードの武装を装備することができるようになる。 「続けてバトルしますか?」 と表示と共に10カウント表示される。続ける場合同じ神姫と同じ武装で100ポイントを消費してコンテニューできる。ただし筐体の占有を防ぐため1コンテニューまでで終了となる。 隆明も甚平も疲れたためもったいないが1回で終了する。 「いやー、負けた負けた。」 対戦を終了し、フロアの隅にある自販機コーナーのひとつに移動する。負けたのに甚平は落ち込んだ感じがない。 甚平が落ち込んだところを隆明はほとんど見たことがない。そんな甚平を隆明はとてもうらやましく思った。そんな甚平だからこそ広い交友関係を得ているのだ。基本内向きな隆明にとっては得難い物だった。 「ん、どした?」 「勝ったけど、キュベレーの言うとおりぎりぎりだった。」 バトル直後に喜んでいた隆明の様子が変わっていた。勝ったには勝ったが与一に多くのダメージを与えてしまったことを隆明は気にしていた。 (せっかく喜んでたのに。キュベレーがよけいなこと言うから。) (私は当然のことを・・・。) アテナはキュベレー昼間の仕返しとばかりに肘でこづいて非難する。 そんな2人をおいて与一が隆明へと歩み寄る。 「マスター。私のこと気にしていただきありがとうございます。初めてのバトル、マスターと勝利を得ることができて私はとてもうれしいです。」 「・・・うん。ありがとう。」 一瞬きょとんとしてしてしまったが、すぐに与一が自分を励ましてくれたのだと理解する。 (こんなんじゃいけないな。)隆明は与一の言葉に笑顔を取り戻すことができた。それは、神姫バトルを始めた目的をわずかながら一つ達成できた瞬間でもあった。 そんな2の様子にアテナとキュベレーはホッとし、甚平はにやにやしていた。 休憩もしばらくして終わり、隆明と甚平は別れ、お互い対戦相手のマスターを捜しフロアへ繰り出す。 「次は私の番だな。」 キュベレーは肩に移り静かに闘志を燃やしていた。(誰かバトルしてくれそうな人はいないかな・・・)そんな思いでフロアを散策している。積極的にバトルを申し込めばいいんだろうが、隆明にそんな度胸はない。 「あの・・・よかったら。」 そういって背後から声をかけてくる人の少年の姿があった。 製作後記 前作から時間がたってしまい申し訳ありません。隆明・甚平・与一・たま子それぞれの初バトルを書かせていただきました。 読みづらいと思います。申し訳ありません。なにぶん戦闘物を書くのは初めてなので、精進していきたいです。このあと、次の話でキュベレー、アテナと続きます。 神姫バトルの筐体についてはBLADE先生作品の「武装神姫2036」を参考にさせていただきました。 この場を借りてお礼申し上げます。 それではまた次回にて。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1198.html
SHINKI/NEAR TO YOU Phase02-1 ouverture アナタノネイロヲ、キカセテ ♪♪♪ 六月といえば梅雨だ。ところであれだけ雨が降る月の呼び名が「水無月」というのはどういうことだろう? そんなことを思った有馬駿(アリマ シュン)がゼリスにふと尋ねてみると、彼女は手にした大判の書籍を抱えたまま返事を返してきた。 「旧暦では水無月は現在でいう7月に相当しますから、梅雨明けというところから『水の無くなる月』という呼称がつけられたそうですね。また、その由来から外れることとなった現在においては、降水によって天の水が無くなるという解釈が適用されると言われます」 すらすら答える彼女――背丈14cmほどの小さな自動人形(オート・マタ)の少女はシュンの武装神姫、ゼリスだ。 「けどさ、今年なんかはホントに水無し月だよな」 「そうですね。伝聞においてもそのような話題が多いです。いわゆる〝空梅雨〟ってやつですね」 それからゼリスは、太平洋高気圧がどうだとかフィリピン海での対流がどうとか、ひとしきり講釈。 シュンはそんな彼女の突発的な講義を聞きながら、率直な感想を述べた。 「……そんだけ無駄に物知りだったらさ。僕が試験勉強してるときも手伝ってくれりゃいいのに」 先週までシュンの中学は中間考査の最中。そこそこの成績はキープできたと思うが、こいつが協力してくれればもっと楽できたんじゃないか? 「シュン、それでは貴方のためになりませんよ。それにシュンは私に勉学を教えて欲しいのですか?」 「…………やめとく」 ちょっと悩んだ後、かぶりを振る。きっと中学のどの教師よりも分かりやすく講義を行ってくれるような気もするが、きっと中学のどの教師よりも妥協してくれないだろうから。 それにシュンの通う学校はエスカレータ式だ。二年の今の時期から神姫の家庭教師の世話になる必要もないだろう。 シュンの返答を予想していたのか、ゼリスはそれ以上特に何も言うこともなく、手にした本をパタリと閉じてソファに置いた。こいつは最近絵本にハマッているらしい。タイトルは「人魚姫」だった。 急に読書を中断して何なのかと思ったら、答えはTVを観ればすぐに分かった。 「あっ、〝黒猫キッド〟だ~♪」 ちょうど二階の部屋から降りてきた妹の優が、楽しげにゼリスの隣に座る。 始まったのは『黒猫キッドの冒険』っていう、いわゆる子供向けの人形劇だ。悪の科学者にサイボーグにされた黒猫が、ガトリング銃片手に毎度巻き起こる騒動を切り抜けていくという……なんというか。観る者によってはたまらない作品らしい。 まあ、たまには一緒に見てみるか。平凡的な日本の男子中学生からすれば、試験明けの日曜の午前ともなれば、特に何もすることもない訳だし――。 そんなことをシュンが考えていると、唐突に玄関のチャイムが鳴った。 シュンは立ち上がる。母、京子がリビングに紅茶を淹れてきてくれたところだったので、来客には自分が対応する旨を伝えると「お願いね」と京子は微笑みながらリビングに入っていった。 玄関に向かう間にリビングからは「あら、ネコさんもう始まっちゃった?」とか言う声が聞こえる。 大人気だな黒猫キッド。 そんなことを思いながら、シュンは玄関の扉を開いた。 「こんにちは」 玄関の先には、シュンの知らない少年がひとり立っていた。 同年代くらいに思えるが、シックな服装に身を包んだその姿はいかにも育ちが良さそう……というか、上品なイメージ。何よりも整った顔立ち、美形だ。 はて、どこの国にも王子様の知り合いはいなかったはずだが? シュンがポカンとしていると、彼はイメージに見合う爽やかな笑顔を浮かべ、会釈を返してきた。 「はじめまして、失礼ですがこちらにゼリスさんという方は居られますか?」 「はい?」 怪訝な顔で聞き返すシュンに、目の前の少年は穏やかな笑みを絶やさずに、胸元に手をやった。 「ほら、君からも説明しなさい」 そう呼びかける少年の胸元を見てみれば、上着の間から小さな顔がこちらを伺っていることに気がついた。 武装神姫だ。とうことは、この彼も神姫オーナーってことか。 「あの……こちらがゼリスさんのお宅だとお聞きしているのですが……違いますか?」 「いや、たしかにうちにはゼリスはいるけど……」 しかし、シュンにはこの神姫にも、そのオーナーの少年にも見覚えがない。 「何か勘違いしてるんじゃないでしょうか?」とシュンが尋ね返そうとしたところに、京子がゼリスと一緒にやってきた。戻ってこないシュンが気になり様子を見に来てくれたらしい。 「……まさか本当に訪ねてくるとは。そこまで貴女の気持ちが切迫しているとは思いませんでした」 ホッとしたのも束の間、来客を見るなりポツリと呟いたゼリスに、シュンは訝しげな目を向ける。 あの~、ゼリスさんはこちらの方々といったいどういったお知り合いで? そんなシュンの気持ちを知ってか知らずか。「あらあら、ゼリスちゃんのお知り合い?」とのんびり訪ねる京子にゼリスはコクリと頷いた。 「彼女は、私の友人です」 ♪♪♪ シュンはとりあえずふたりをリビングに通して、話しを聞いてみることにした。 少年の名は和光耕一(ワコウ コウイチ)、都内の私立中学に通う学生で、神姫の名はチカというらしい。耕一は音楽家を目指していて、ヴァイオリンの演奏がふたりの趣味なのだという(ちなみにあとで聞いたところ、耕一の通っているのはあの名門黒葉学園らしい。驚きだ)。 なるほど、どこかの国の王子様ではなかったらしい。で、そんな彼らとゼリスにいったいどんな接点があったのだろう? 「ゼリスさんとは、インターネットで知り合ったんです。いろいろと遣り取りをしているうちに、メールで時々相談にも乗っていただいて……」 シュンの疑問は顔にも出ていたらしく、チカがおずおずと語り出す。 「お前、いつの間にメル友なんて作ってたんだよ?」 ゼリスがパソコンをこそこそイジッているのは知っていたが、そんな遣り取りをしていたとは知らなかった。 「別に……日々を送るなかで様々な出会いを重ねるのは当然のことです。私がプライヴェートで友人を作っていたとしても、不思議はないでしょう?」 ……そうですか。 ネット社会の広がりはシュンの生まれた頃からより顕著になっているそうだが、神姫の間にもそんな繋がりが存在しているらしい。すごいことになってるなぁ……。 「ゼリスさんのことはチカから伺っています。いろいろとお世話になっているそうで、ありがとうございます」 丁寧にお辞儀してくる耕一。そんなにかしこまられてもこっちが息苦しくなっちゃうんだけどな。けれど耕一の上品な様はとても自然で、きっとそういうのが当たり前な環境で育ってきたのだろう。 一方、耕一の神姫であるチカの方は少々はにかみ屋のようだ。今も礼をする彼の前で頬を赤く染めている。 「かしこまっていただかなくても、結構です。お世話になっているのはお互い様ですから。それよりも、本題に入るべきでしょう」 ゼリスはそんな彼らの挨拶をさらっと流し、さっさと話しを進める。 「せっかちな奴だな。せっかく友達が会いに来てくれたんだから、ゆっくり邂逅を分かち合えばいいじゃんか」 「いえ、ゼリスさんの言う通りです。あまり長居をしてご迷惑をお掛けしても悪いでしょうから」 耕一は「ほら」と自分の前に座るチカを促す。 「あれ? 耕一さんはチカさんの相談の内容を知らないの?」 不思議に思ったシュンに、耕一が苦笑を浮かべる。 「はい。私もそちらのゼリスさんとお会いするとまでは聞いていたのですが、具体的な目的までは彼女からまだ聞いていないのです」 耕一の言葉にチカはますます身を小さくする。オーナーにも話してなかったような悩み、それも直接会って聞いて欲しいような相談か。どんな内容なんだろう? 皆の興味を集めるなか、チカは耕一の顔をチラチラと伺いつつも、語りだした。 「わたしは、ヴァイオリンを弾いてみたいんです」 静かに話し出したチカ。しかし、その内容に一堂は首を傾げた。 「ヴァイオリンって……チカちゃん、ヴァイオリンならもう持ってるよね?」 きょとんする優の言うように、今もチカの隣にはヴァイオリンケースが寝かされている。これがヴァイオリンじゃなかったら何だってんだ? シュンはちらっと耕一に目を向ける。 「確かに彼女が持っているのはヴァイオリンですが……そうだよね、チカ?」 「はい、そうなんですが……」 「貴女の持っているヴァイオリンが問題なのでしょう?」 耕一の質問に口籠ったチカは、ゼリスの助け舟にホッとした表情を浮かべた。 「そうなんです」 チカはケースを手元に寄せると、パチリとフタを開いた。 中から出てきたのは、褐色の木目美しいクラシックなヴァイオリン。チカはそのヴァイオリンを取り出すと、顎と肩で挟み、左手を弦の上へ、右手に持った弓をそっと添える。 響く音色。 曲はシュンでも知っている、バッハの弦楽器組曲第三番――G線上のアリアだ。チカのイメージそのままの、ゆったりとした優しい音色。 演奏を終えると、チカは丁寧にお辞儀をした。楽器を降ろし、一堂を見渡す。 「こういう事なんです」 いや、どういうこと? 話が飲み込めないシュンに対し、しかし、周りのみんなはチカの言葉に納得したのか、一様に考え深げな顔をしている。耕一も頷きながら、なんだか困ったような表情。シュンには全く意味が分からない……。 仕方がないので、どうやら一番事情を知ってるらしいゼリスに聞いてみる。 「シュン。彼女の演奏を聞いていて、気がつきませんでしたか?」 「へ? いや普通にいい演奏だと思ったけどそれがどうし……イタタタタッ」 素直に感想を述べただけなのに、いきなりゼリスにつねられた。 「何すんだよ、もう!」 「誰が感想の口述を要求したのですか? 注目するべきなのは、彼女の弾いているヴァイオリンの方です」 「……シンフォニック・ヴァイオリン」 耕一が呟く。 「そう。彼女の弾いているのは本物のヴァイオリンではありません。神姫用にダウンサイジングを施したシンフォニック・ヴァイオリンと呼ばれるタイプの物です」 「どういうことだ?」 楽器に詳しい訳じゃないシュンにはよく分からない。その様子を見取って耕一が教えてくれた。 ヴァイオリンという楽器は、とても繊細だ。名匠が創った名器を再現しようと、技師たちの努力や専門家による研究が続けられているように、ほんの僅かな形の違いから大きさ、果てやニス、あらゆる要素がその音色に影響する。 そんなヴァイオリンという楽器において、神姫用のそれを創るには大きな問題があるのだという。 「神姫用のヴァイオリンは、小さ過ぎるんです」 ヴァイオリンのような弦楽器の音には、弦の長さや太さなどが密接に関係する。 仕組みは同じ弦楽器と言えど大きさが変わることで、同じ弦楽器であるヴィオラやチェロのように異なる音色を出す楽器となる。 神姫の大きさに合わせた弦や弓そのままでは、ヴァイオリンの音色を出すことは不可能なのだそうだ。 「ですから神姫用のヴァイオリンを作ろうとするならば、電子化によって音を再現するしか方法がないのです。シンフォニック・ヴァイオリンと、弦と弓の振動によって音を発するバロック・ヴァイオリンとの相違点です」 耕一の説明をゼリスが引き取る。 つまりはチカの持ってるヴァイオリンは、本物じゃなくてヴァイオリン型のシンセサイザーみたいなものってことか。 「別にストラディバリウスやグァルネリのような名器でなくてもいいんです。ただ一度でいいから、電子的に作られた音色じゃなくて、弦を弓でこすることによってメロディを奏でる……そんな本物のヴァイオリンを弾いてみたいんです」 顔の前で指を組み合わせながら、真摯にチカは言う。 シュンは納得した。楽器や音楽のことは詳しくないけれど、人間のヴァイオリニストがストラディバリウスを弾くことに憧れるように、神姫であるチカにとっては人間の弾くような、バロック・ヴァイオリンを弾くことが夢なんだろう。 ふと気がつけば、さっきまでは晴れていた空はいつの間にかどんよりした雲に覆われていた。 やれやれ。どうやらチカの相談事は、一筋縄じゃいかないぞ ▲BACK///NEXT▼ 戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2114.html
ウサギのナミダ ACT 0-5 ■ 神姫も、夢を見る。 スリープモードで、クレイドルで充電とデータのバックアップを行っているとき。 それは神姫にとって「睡眠」にあたる。 マスターによれば、睡眠中に脳が蓄積された情報を整理し、その時に漏れでた情報を認識すると、夢になる、のだそうだ。 だから、データのバックアップ中に、わたしたちが認識するものも、やはり夢なのだ。 わたしは、夢を見る。 いつも同じ夢、恐い夢。 わたしの前には男の人。 顔は影になっていてよくわからないけれど、目だけが異様な輝きを放って、笑っている。 彼は、わたしに手を伸ばす。 わたしは身をすくめる。これから、自分の身に起こる出来事を予想しながらも、あらがうことはできない。 「や……っ」 男の人がわたしを掴み、顔の高さまで持ち上げる。 大きな顔が、わたしの視界いっぱいに広がる。 わたしは、恐くて、身体を震わせる。 でも、ここは彼の手のひらの上だ。 逃げ場なんてない。 彼は、わたしを両手でつまみ上げながら、さらに顔を近づけてきた。 息がかかる。臭い。 顔の下の方にかかった影が、横に一筋裂けた。 裂け目が広がると、ぬらり、とした軟体動物のようなものが出てくる。 舌だった。 「あっ……や、あ……っ」 男の人の舌は、わたしの身体をなぞる。 脚の先から、ふともも、ヒップからウェストのライン。 股間と胸は、特に念入りに舐められる。 太い舌先は巧みに動き、わたしの弱い部分を的確に責め立てる。 いやなのに。いやなのに。 いやらしい舌の動きを、わたしの身体は性的快感と認識する。 いやだという気持ちと、なぶられる快感が、相乗してさらに気持ちを高めていく。 「あ、あ、はあぁ……あぁ……」 頭がぼうっとする。 何も考えられなくなってくる。 わたしの身体は男の人の唾液にまみれ、いやな臭いを放っている。 その臭いすらも快感を助長する芳香に変わる。 わたしは快感に身を委ね、なすがままにされていた。 ふわふわとたゆたうような感覚に、わたしはどっぷりと浸っている。 と、突然。 ぼきり、という鈍い音。 「ーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」 ふわふわとした感覚は、爆発した激痛に吹き飛ばされる。 声が出ない。声にならない悲鳴。 さらにまた。 わたしの身体から鈍い音が響く。 わたしは身を焼くような激痛の出所を、左腕と右脚であることを、かろうじて突き止める。 だからといって、何もできない。 わたしはただ、大きく目を見開いて、堪えきれない痛みにぱくぱくとあえぎながら、涙を流すだけだ。 さらに、残りの四肢も折られた。 わたしは身動きもとれず、ただ激痛に悲鳴を上げる。 目の前の人を見る。 その男の人の顔は、相変わらず影になっていたが、その二つの目と裂け目のような口だけがはっきりと見える。 笑っている。喜んでいる。 わたしがのたうち回る姿を見て、嬉しがっている。 彼の方から、何かが飛んできた。 べちゃり、と粘液のようなものがわたしに降りかかる。 白く、べたべたの粘液は、何かすえた臭いがする。 いやだと思っても、いまのわたしには、この粘液を払うことさえできない。 男の人の光る両目が、さらにゆがんだ。 わたしを掴み上げると、わたしの背に指を当てたまま、親指でわたしの胸を押す。 わたしは恐怖した。 身体を折る気だ。 「や、めて……ください……やめて……」 やめて。死んじゃう。 わたしがどんなに懇願しても、そんな様子すら楽しんでいる。 わたしの背が限界を超えて曲がっていく。 折れてしまう。 死んでしまう。 たすけて、だれか、たすけて……だれか……。 ごきん。 「あああぁぁっ!!」 わたしは悲鳴を上げて、飛び起きた。 暗い。 あたりは静かだった。 時計の音が妙に大きく聞こえる。 それからわたしの荒い息。 「はあ、はあ、はあ……」 わたしは自分の身体を確認する。 どこも、折れてなどいない。 感じていたはずの激痛も今はない。 手は、白い布……お布団代わりの、マスターのハンカチを握りしめている。 「夢……」 わたしはやっと安堵して、深く息をついた。 怖い夢。どうしても見てしまう、かつての現実。 まだあの店を出て何日も経っていない。 過去の記録……思い出にしてしまうには、あまりにも最近の出来事すぎる。 白い布を握りしめる手元に、黒い染みが広がった。 瞳から涙がこぼれ落ちる。 夢は過ぎ去ったというのに、怖くてたまらない。 怖くて、怖くて、それでもわたしには為す術がなくて。 ただ一人、すすり泣くことしかできない。 突然。 あたりが明るくなった。 真っ暗だった部屋の明かりが灯ったのだ。 スイッチのところに立っている人影は、マスター。 マスターは、寝間着姿で、髪は乱れ、目は半眼のまま、こちらを向いている。 とてつもなく不機嫌そうな表情。 起こしてしまった。 わたしが、悪夢に悲鳴を上げたせいで、マスターのお休みを邪魔してしまったのだ! わたしは、マスターに睨まれて、目を見開いたまま硬直してしまった。 まるで蛇に睨まれた蛙だ。 わたしは身動きをすることもできず、絶望的な気持ちでマスターを見つめる。 これから、どんなひどい仕打ちが待っているだろう。 マスターは大股に歩いて近寄ってきた。 思わず、身を縮めてしまう。 ……ところが、マスターはPCに近寄ると、立ち上がっていたアプリケーションを次々に閉じて、PC本体も電源を落とした。 縮こまっているわたしを、もう一度見る。 非常に不機嫌そうな表情は変わらない。 わたしはクレイドルの上でさらに縮こまる。 すると、マスターはクレイドルごと、ベッドのサイドボードに持ってきた。 ケーブルをPCからコンセント供給用アダプタにつなぎ直す。 クレイドルの充電ランプが灯った。 データのバックアップはできないが、充電はできる。 わたしが何もできずに硬直していると、マスターはさっさとベッドにあがり、布団をかぶった。 首だけがこちらを向いて、また睨まれる。 「明日、延長ケーブルを買ってくる。寝る」 マスターはそれだけ言うと、枕に頭を沈ませ、そしていくらもしないうちに規則正しい寝息を立てはじめた。 わたしはあっけに取られていた。 これはどういうことなんだろう。 わたしは、つまり……マスターのそばで眠ることを許された、ということなんだろうか。 なぜ? お休みのマスターを邪魔したのに? あんなに不機嫌そうな顔をしていたのに? ……期待なんて、してはだめだ。 わたしは本来、この人の武装神姫になんてなる資格がないのだ、初めから。 でも、ベッドのサイドボードから見下ろすマスターの顔は、見たこともない安らかな表情で。 いつも冷静沈着、無表情で少し冷たい印象の男性ではなく、無邪気な少年のように見えた。 そんなマスターの顔を見つめていると、不思議と穏やかな気持ちになっていく。 おかげで、さっきまでの怖かった気持ちは、だいぶ薄らいでいた。 わたしはクレイドルの上で丸くなると、布団代わりのハンカチを引き寄せた。 □ 朝、目が覚めると、PCの電源が落ちていた。 クレイドルも、その上にいたはずの俺の神姫もない。 焦って、辺りを見回すと、俺の枕元にクレイドルは移動しており、その上でティアは眠っていた。 ほっとする。一瞬焦ってしまった。 そういえば、夜中にティアの叫び声を聞いて、一度起きたのだったか。 何が原因かはよくわからなかったが、ともかく心配だったので、枕元に持ってきた……のだと思う。 半分寝ぼけていたらしく、記憶は曖昧だ。 でも、なにやら心配だったのは、やはりまた、ティアが泣いていたからだ。 いま俺にティアの涙を止めてやることができなくても、せめてそばにいてやることぐらいはできる、と思う。 ……ただの自己満足だったとしても。 クレイドルの上で丸くなって眠るティアを覗くと、安らかな寝顔が愛らしかった。 小さく安堵のため息をつく。 まもなくして、ティアの瞼が瞬いた。 「あ……」 俺を見て、眠気を一気に吹き飛ばすように起き上がり、あわてて居住まいを正す。 「お、おはようございますっ……」 そんなにあわてなくてもいいのに。 しかし俺は素っ気なく、 「おはよう」 と返事した。 俺は、ティアの前ではできるだけ無表情を通すと、決めていた。 ティアが俺のことを信じ、自分から俺の神姫と認めてくれる時まで。 まずは、俺が無害な人間であることを信じてもらわなくてはならない。 そう思っていた。 ■ その日から、わたしの、武装神姫としての訓練が始まった。 主にトレーニングマシンを使ったバーチャルトレーニングだ。 まず、一通りの武器を使ってみるところから始まった。 片手で持てる銃火器を中心に、両手持ちでも軽量な銃、ナイフなどの刀剣類や、トンファーといった近接武器まで。 使い方は、素体交換時にプリセットされた戦闘プログラムと基礎データでだいたい分かっている。 出現する的を撃ち落としたり、ダミーの敵を攻撃する、といった単純な内容を黙々とこなす。 マスターはPCでわたしのデータを取り、どの武器がわたしと相性がいいのか検証する、ということだった。 マスターは課題を出すだけ出して、大学に行く。 わたしは、マスター不在の間、ずっとマスターの課題を消化していく。 大学から帰宅したマスターは、毎日作業スペースに向かい、何かを作っているようだった。 こんな日が数日続いた。 マスターが不在の昼間、私は一人、黙々とトレーニングに励む。 その間にいろいろなことを考えた。 だけど、結局、何も分からないままだった。 一つだけ分かっていることは、進むべき道はマスターだけが知っているということだった。 だからわたしは、マスターに言われるがまま、ついていくしかない。 マスターはわたしを使って夢を叶えたい、と言った。 だから、たとえ嫌がられようとも、マスターの夢を実現していると示し続けることが、わたしの存在意義なのだ。 そう結論したわたしは、またトレーニングを消化していく。 ある夜。 わたしはまた夢を見る。 薄気味悪い男の人の影。瞳だけが異様な輝きを放っている。 黒い手が、わたしに手を伸ばしてくる。 これから起こる仕打ちを想像して、わたしは身を縮める。 ……ところが、その手がわたしを掴む寸前、別の手が伸びてきて、わたしが乗っているクレイドルを掴んだ。 そのままするり、と視線が移動する。 わたしはクレイドルごと、別の手によって運ばれていく。 薄暗く寒々とした部屋は、柔らかな光に包まれた部屋に変わっていた。 その手は、クレイドルを自分の枕元に運んできた。 手の主はマスター。 マスターは非常に不機嫌そうな顔をしており、口をへの字に曲げている。 マスターは、わたしを睨みつけるように見る。 わたしが視線の鋭さに、びくり、と身を震わせると、 「明日は公園に行くぞ」 と言って、そのまま枕に頭を沈めた。 まもなく、規則正しい寝息が聞こえてきた。 なんだかちぐはぐな成り行きに、わたしは首を傾げた。 そして、不意に目を覚ます。 暗い部屋。 PCのディスプレイだけが、部屋を青白く照らしていた。 まだ真夜中だ。 あたりは静まり返っている。 規則正しい寝息が聞こえてくる。 そちらに視線を向けると、マスターの寝顔があった。 日頃の緊張を解いたような、少年のような寝顔。 夢の中で見たマスターの寝顔と同じ。 マスターのその顔を見るたびに、わたしは優しい気持ちになれる。 マスターの役に立ちたいと思う。まだなんの役にも立っていないけれど。 マスターの気持ちに応えることができるようになれば、いつものような無表情ではなく、この寝顔のように優しい顔を向けてくれるだろうか。 そうだったらいい、と思いながら、わたしはまた眠りにつく。 マスターになった、この人の存在が、わたしの中で意外にも大きくなっていることを感じていた。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1500.html
注意 各項目は順不同に並びます。また、扱われる内容によっては 専用の解説ページを設ける事もありますのでご注意下さい。 また、以下は全て妄想神姫に於ける世界設定類の解釈です。 一部皆様の解釈とは異なる点がありますが、ご了承下さい。 それでも採用してくださる場合は、遠慮無くご利用下さい。 警告 この頁は物語の終盤に出てきた要素を、主に扱っています。 その為、所謂“ネタバレ”が含まれている恐れがあります。 前頁へ戻る ペンダント ロッテが飛べた理由 和食屋 春の新作 “ALChemist”の営業期間(及び時間) 最初の現場 デュアルCSCシステム ラグナロク 二回目の現場 心情の変化と、その代償 藤村外科 怪文書 主要国家の現状と意向 シンクロニシティ 決闘の舞台 模造された“魔術” 晶のペンダント 自己認識 総力戦モード 命を賭けるべき事 約束 ペンダント 晶が、ロッテ達三姉妹の為に作り出した装飾品の事。複数存在するが ここではセカンドランカーの“階級章”を嵌め込んだタイプを指す。 本来は“階級章”を装飾品として身につける為に作った追加パーツ。 しかし後に、晶の手で増設用ハードカバーが与えられている。これは 以前“W.I.N.G.S.”の端末用に作った初代ペンダントと同じ意匠で、 晶が身につけているペンダントと同じ“剣の紋章”が刻まれている。 なお、この“晶のペンダント”については何れ別の機会に語られる。 ロッテが飛べた理由 『検証は最早追い付かない』と晶が言っていた通り、ロッテが天空を 自在に駆けた理由は、生半可な検証作業では明らかに出来ない。その 秘密は、電磁浮遊システムの“反発力”を利用した基礎理論にある。 電磁力で“反発力”を産み、宙に浮くのが電磁浮遊システムである。 ロッテは新たな力を発揮したライナストが産み出す、莫大且つ異質な 雷……即ち電磁力を利用して、システムを再現したのかもしれない。 しかしこれもあくまで推論。その真相は魔剣の構造同様、謎である。 和食屋 厳密には、ここは定食屋である。秋葉原を訪れる人間を当て込んで、 数年前に開店した外食チェーンの実験店舗なのだ。拘りの素材を用い 尚克安値で、客に良い食事をさせる。という高級志向がコンセプト。 味は勿論、栄養価も(外食産業にしては)非常によく考えられており、 秋葉原や神田周辺で働く人間には、徐々に好評を博しつつある。また 買い物客にも、口コミでその評判は広まっている。かなりの人気店。 春の新作 心境的に色々な変化を受けた晶が、2038年の新作として考案中の服。 アンダーから外出用のマントまで、トータルコーディネイトを徹底。 『全ては神姫の為に』という初心を貫いた、華やかなセットである。 鞄やブーツ等の革製品等も揃っている品々は、値段の方でも最高級。 しかし、一切の妥協を排したデザインは可憐・風雅の極みとなった。 部分毎のバラ売りも可能とする事で、顧客層を拡大する方針らしい。 “ALChemist”の営業期間(及び時間) MMSショップ“ALChemist”は、店長たる晶の偏屈な性格を反映してか その営業スタイルも一筋縄とは行かない。新作の作成に没頭したり、 “取材”や“買い出し”で店を半日閉じるケースも、少なくはない。 基本が水曜日定休、年末は“聖戦”最終日から正月三ヶ日まで休む。 (これは最終日に秋葉原へ来る、膨大な人員を処理できない為である) しかし前述の通り不定休な場合があるので、来店時には注意が必要。 ちなみに営業時間の方は、午前十時から午後六時までが大凡の目安。 こちらも状況によっては前後したり、分割される事さえ少なくない。 最初の現場 昭和通に面した、某有名ゲームメーカー直営の店舗。落下したのは、 その内の看板で最も巨大な、キャラ物の看板である。事件直後、壁が 剥き出しとなっており、そこに穿たれたクレーターが全ての引き金。 火災を消し止められた翌日にはブルーシートが張られて、その痕跡は 既に関係者以外には見えなくなっていた。死者も出なかった事から、 検証も念入りという程は行われず、二週間程で修復工事が始まった。 デュアルCSCシステム カラーリングに応じて能力調整と性格設定を配分する現在のCSC。 プロトタイプとしてクリスティアーネが備えていたCSCは、現在の それに基礎レベルでは劣らない物だった。彼女はそれを六つ備える。 胸に六角形を描く様に装填されたCSCは、互いに共鳴したと言う。 演算機能等、バトルに関わる能力以外は同じ……という事は、性格の 構築に作用する効果も六つ分、全てが機能していた事となる。彼女の デュアルCSCとはそれらをバランス良く調整して、感情表現がより 細かい個体を産み出そう、というコンセプトの特殊な機構であった。 結局、メンテナンス性やコスト面……何よりも、CSCの性能が若干 向上しつつあったという事情により、採用は見送られる事となった。 これによりアイデア諸共“プロト・クリスタル”はお蔵入りとなる。 しかし現存する数少ないCSCの内、六つは晶の手中に残っていた。 ラグナロク 北欧神話で“神々の黄昏”という最終戦争の名称として用いる言葉。 同時に一部では、それに肖って名付けられた犯罪結社の名とされる。 有り体に言えば“死の商人”であり、北欧を根城に荒稼ぎしていた。 イタリアに於いて、土着のテロ組織に新作……爆破工作用特殊MMSを 販売して使用させた事から足が着き、遂に壊滅作戦で揉み潰される。 その際に、首謀者・幹部・研究者……主要メンバー全員が殺された。 またその際に押収された“兵器”も、危険な物は破壊されたと言う。 二回目の現場 JR某線の高架下に嵌め込まれる様にして存在する、古いパーツ店が 軒を連ねているビル。電子部品は大抵の物が揃うので、晶のみならず アキバを訪れる様な性質を兼ね備える電器マニアは、よく利用する。 今回の“事故”も看板以外の被害は少なく、怪我人も前より少ない。 だが高架下での爆発という事もあり電車は数時間に渡って停車。更に 『本当に只の事故?』という疑念は、長く人々の間に残る事となる。 なお政府機関の見解は、一貫して“事件性の否定”に終始している。 ビル内部の店舗に被害が少なかった事もあって、ここでも真相究明は 棚上げされ、まずは復旧工事や店舗の再開が優先される事となった。 心情の変化と、その代償 ラグナロクの幹部構成員が、単なる商材として産み出した筈の存在に 何故人間味のある接し方をしたかは、全く以て不明である。或いは、 それも“武装神姫”とそれに連なる存在の“可能性”かもしれない。 ともあれ、彼らが自分で産み出した“神の姫”達に対して、妙に甘く 接していたのは事実である様だ。だが、そうして人間味を取り戻した 幹部構成員の油断こそが、当局に尻尾を掴ませた原因の一端である。 結果“彼女”の為に組織が滅んだのは、紛れもない“事実”なのだ。 藤村外科 秋葉原を少し離れた、外神田の一角に存在する小さな外科医。噂では 二十世紀から開業しているとも言われ、秋葉原でケガをした作業員の 治療で磨いた腕は、確かである。ここの院長は、晶の掛かり付け医。 院長であり唯一の医者である藤村翁は、晶とロッテの成長を最初から 知っている、“オーナー”以外では唯一の存在と言えるだろう。彼は 生傷が絶えない未熟な頃から、ずっと晶とロッテを支えてきている。 怪文書 警視庁を初めとして、幾つかの警察署サイトに送付された怪メール。 スウェーデン語で印されたそれは文法に関して一切間違いが無い為、 スウェーデン人か、スウェーデン語を習っている人間の物とされる。 内容は本編中で語られた通りに、一小節で片づいている。荒唐無稽な 文面と、発信地があっさり特定できるIPからの送信という事もあり 警察組織は結局『悪戯の一種』として、関係各所への連絡に留めた。 しかしそれを目に留める者が居た為、事態はより深く進行していく。 主要国家の現状と意向 二十一世紀初頭に発生した大規模なテロ攻撃。その事件に端を発した “テロとの戦い”は、主要各国の重要な課題として2037年現在も 続行中。“ラグナロク”が、新興組織ながら殲滅されたのもその為。 そんな“敵対方針”を内外に喧伝している国家にとって、テロ組織の 残党が自国に潜伏している状況は、改善されるべき物である。更に、 その残党に人権がないのなら、あらゆる手段を執って止めるだろう。 前田達の出現は、そんな国家の意向によって起きた“必然”である。 シンクロニシティ 血縁関係等が存在しない神姫達が、人や他の神姫と関係を結ぶ場合、 大抵は人間のカテゴライズに当てはまらない“魂”の繋がりとなる。 定義が付随する事も多いが、未定義でも関係を保つ神姫は存在する。 そして余分なノイズが入り難い神姫の意志疎通は、深くなっていくと 無意識下で連動する程の密接な繋がりを見せる。人間でもそう言った 関係はまま見られるが、神姫の場合は特に強いとする説も存在する。 “姉妹”という定義を持った晶達の関係も、その例外ではない模様。 長く暮らしてきた為に、四人の意識は密接にリンクしつつあるのだ。 決闘の舞台 MMSショップ“ALChemist”の作業ブースにセットしてある、個人用の トレーニングマシンが舞台。決闘の為に各種の設定を変更してあり、 規約違反の機体でも、存分にバトルが出来る様な状況となっていた。 結果的にこれは、予期せぬ“事件”を引き起こす要因となっており、 しかし同時にその“事件”を解決する、唯一の可能性を産み出した。 模造された“魔術” “彼女”が偶然作った“魔術”は、クララのそれとは違い全く整理が 為されていない、言ってみれば“情報の混沌”である。それは一重に “彼女”の憎悪が凝縮する事で産み出された、“意思の力”である。 これは、直後に起きる“事件”で“敵”が使った攻撃も同様である。 駆動エンジンは違っても、力の拠り所は“彼女”と同じだったのだ。 晶のペンダント ロッテ達三姉妹が持つペンダントの、デザインソースとなった逸品。 これは槇野歩の遺品であるが、特別な何らかのギミックが有る訳では ない。単に歩が自作したと言うだけで、他に特別な意味もない物だ。 しかし、遺品のペンダントヘッドには裏に“言葉”が刻まれていた。 その言葉は、本編で出てきたキーワードと同様である。これは、歩が 何らかの想いを遺す為、敢えて共通の単語を用いたのかもしれない。 自己認識 “彼女”が、己と晶達との関係をあっさりと定義出来た理由は不明。 但し、神姫ではない“彼女”に現行品のCSCは装填されていない。 そしてロッテ達“三姉妹”には、“プロト・クリスタル”が備わる。 その“生い立ち”が無関係だと言い切る事は、誰にも出来ないのだ。 総力戦モード 発生した“事件”の解決にあたって、晶は一時的に“アルファル”と “プルマージュ”六機の制御権限を、ロッテに一元管理させている。 これは碓氷灯が編み出していた戦術をヒントにした、急場凌ぎの策。 結局の所、それが決め手となる事はなかった。超AIを持つ彼女らは 権限を書き換えられても、本来の主を忘れられなかったのだ。しかし 主の“姉妹”という事で、その身を尽くす事に躊躇はなかった様子。 命を賭けるべき事 “事件”を解決出来なかった場合でも、国家や社会が危機に陥る様な 大問題が発生する事はない。だが“姉妹”にとってみれば、文字通り “命”を掛けるに値するだけの、極めて重大な“事件”とも言えた。 それはつまり、晶と“姉妹”の関係が単に神姫とそのオーナーという 物ではなく、更に大切な間柄へと純化されつつあった事に起因する。 そう言う意味では発生自体が、世界の命運に匹敵する程の物なのだ。 約束 それは永遠に過ごせなくとも、朽ちず共にある為の“誓い”である。 今後晶達がどうなっていくかは、誰にも分からない。皆を突き動かす “恋人”等が現れるかもしれないし、生涯純潔を護るかも知れない。 しかし“約束”がある限り、晶とその“妹”達。その間にある絆は、 誰にも断ち切る事が出来ないだろう。それは、文字通り命を賭ける程 強固な“願い”である。皆は、大切な“真の姉妹”に成り得たのだ。 そう。かつて見た亡き“姉”が、最期の瞬間までそうしていた様に。 メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/busou_bm2/pages/42.html
入手条件 性格 声優 デザイナー 機体解説 素体性能プラス補正アビリティ マイナス補正アビリティ ライドレシオMAX時の上昇能力 固有レールアクション入手先 固有武装装備時ステータス イベント EXカラー髪 瞳 入手条件 F3制覇 性格 現代っ子的な性格。バトロンの丁寧口調こそなくなったものの、根本的な「背伸びをする子供」という特徴は残っている。 「~じゃないんだからね!」が口癖だが、その文意や性格から一概にツンデレという訳でもない。 むしろ言動には「背伸びをする子供」という部分が前面に押し出されているため、 あまりツンデレという印象を受けるシーンは少ない。 少々ドジで焼き餅焼きなところはあるが、優しく思いやりがある一面も見る事が出来る。 またサンタ型という設定のためか、年下(?)の子供に対してお姉さんぶることも。 + 戦闘前セリフ一例・ネタバレ要素有り。 「可愛い少年相手でも、お姉さんは手加減なんてしないわよー! 全力でかかってきなさいっ!!」(vs柴田勝) 「ハウリン型もマオチャオ型も、まぁまぁ可愛いけど 一番魅力のある神姫は、アレだよ、そのー、ねぇ ちょっとマスター、最後まで言わせないで!!」(vs犬童太) 声優 釘宮理恵(鋼の錬金術師:アルフォンス・エルリック、ハヤテのごとく!:三千院ナギ、他。「ツンデレの女王」の異名を持つ) デザイナー GOLI(beatmania IIDX) 機体解説 名称:サンタ型MMSツガル(MMS Type Santa Claus TSUGARU) メーカー 素体:Studio Roots 武装:Studio Roots 型番:SRX03 フィギュア発売:2006年12月7日(武装神姫第3弾EXウェポンセット) 主な武装:フォービドブレード("フォービドン"ではないので注意。レインディアバスター時はそりのレール部になる、というよりはレール部分を外して刀代わりに使っているという方が妥当か。バトマスの分類ではダブルブレード) ホーンスナイパーライフル(レインディアバスターでは操縦桿になる。) ハイパーEML(EMLはエレクトロ・マグネティック・ランチャーの意味。ツガル武装形態でのリアユニットの左右に配置されている逆三角形のあれ。なぜかバトマスでは未登場) レインディアバスター(武装を変形合体させたそり。ツガルの武装のほぼすべてを使用した、武装神姫史上初の「変形合体して別形態となる」武装である) サンタクロースをモチーフとし、赤・白・緑のクリスマスカラーを効果的に用いたカラーリングが印象的なStudio Roots社の開発した神姫。 バリエーションとして、青を基調としたクールなカラーリングの「Blue X'masバージョン」も存在する。 2丁のスナイパーライフルを駆使した長距離射撃や、高機動力とロングブレードを組み合わせた一撃離脱戦法を得意とし、 身にまとった武装はトナカイのそりを思わせる高速移動形態「レインディアバスター」へと変形する。 基本的に出自など固有のバックボーン設定を持たないのが神姫だが、例外的に彼女には担当デザイナーの裏設定として「モデルになった人物」が存在している。 + ... その「モデルになった人物」はある理由で仮死状態に陥っており、彼女を愛していた若き科学者「D」が寂しさを紛らわすため彼女の精神構造を元にAIを作成、彼女に似せた神姫のボディに搭載したのが、武装神姫でのツガルである、というもの。 担当デザイナーの出身元である音ゲーをある程度知る人であれば、その姿、名前、そしてデザイナーからモデルとなった人物や若き科学者の正体を推し量ることができるだろう。 ただし、上記はあくまでも「デザイナーによる裏設定」であり、KONAMI側が公式に明言したり設定として取り入れたものではない点には注意。 AIの性格はノリのいい現代っ子気質で、少し子供っぽく扱いづらい一面も。 マスターの年齢によってはジェネレーションギャップに悩まされる可能性も。 時速30㎞で何かと話題になる胸だが、フィギュアでは元々胸どころか素体がなかった(コアユニット+武装のみだった)。ゲーム中の素体は「Blue X'masバージョン」の際に設定されたもので、ロード画面のTIPSでの絵で素体が白一色なのはそのためである。(あの絵が描かれたよりも後に今の素体カラーになった為。PC版とも微妙にデザインが異なる) 素体性能 LP ATK DEF DEX SPD 450 40 40 4 6 プラス補正アビリティ Dブレード+1 ライフル+1 マイナス補正アビリティ 投擲-1 ライドレシオMAX時の上昇能力 防御力 スピード ガードブレイクダメージ 固有レールアクション入手先 固有武装装備時ステータス + プレゼント・フォー・ユー! LP 5982 SPD 65 DEX 63 CHA 308 DEF 621 火器 0% 光学 0% COST 497 アビリティ 防御力+2 溜め時間短縮+1 ジャストガード-1 武器エネルギー回復+1 ブースト性能+3 ジャンプ性能+2 二段ジャンプ+1 急上昇、急降下+1 ロック範囲-1 スピード+1 DEX+1 CHA+1 LP+3 Dブレード+1 投擲-1 ライフル+1 ビット+1 空いている武装:武器2つ、アーム、シューズ、シールド、アクセサリー2つ + プレゼント・フォー・ユー!EX LP 9874 SPD 107 DEX 103 CHA 498 DEF 1028 火器 0% 光学 0% COST 886 アビリティ 防御力+3 ジャストガード-2 武器エネルギー回復+1 ブースト性能+5 ジャンプ性能+2 二段ジャンプ+1 急上昇、急降下+1 ロック範囲-1 スピード+2 空中ターン+1 DEX+1 CHA+2 LP+4 Dブレード+1 投擲-1 ライフル+1 ビット+1 空いている武装:武器2つ、アーム、シューズ、シールド、アクセサリー2つ イベント + ネタバレ 発生条件 イベント名 備考 Love2 自宅 サンタクロース Love5 ゲームセンター バトル後 缶コーヒー Love7 ゲームセンター 二人のマスクマン バトル有り(vsヘルマスク メドゥーサ) Love10 ショップ ガキンチョとお父さん Love12 ゲームセンター Lマスクとのバトル バトル有り(vsライオンマスク ディアナ)/トリアイナ・ハスタ入荷の可能性あり Love15 ゲームセンター 父ちゃんの正体・・・ Love17 マップ もう一つの正義 Love19 自宅 作戦会議 Love20 ゲームセンター 乱入! 専用RA解禁 Love22 マップ 難しい年頃 Love23 ゲームセンター 神姫バトル指南 Love25 自宅 お買い物にお付き合い Love27 ゲームセンター 新人のヒーロー Love29 ゲームセンター 正義の味方! ライオンマスクと組んでのタッグバトル(vsヘルマスク メドゥーサ+啓太 キウイ) Love30 ショップ サンタクロース! 専用RA解禁 EXカラー 色は編集者からみた色で、人によって見え方は異なります。 髪 A ライムグリーン(デフォルト) B 赤紫 C 水色 瞳 A.赤(デフォルト) B.鈍金色 C.水色
https://w.atwiki.jp/busou_bm/pages/33.html
戦闘回数が増えていくと追加されるキャラもいるので とりあえず、今戦える相手の装備を全部ひっぺがす位(5〜6回)の勢いで戦っていけば 特に問題なく戦える相手も増えていきます。 「1対1」 「1対2」または「1対3」 のハンデ戦 「1対1」初登場はゲームセンターで1回戦闘のみ。本編クリア後の継続プレイで常駐する 「1対1」メインストーリーにからむイベント戦1回のみ。 初期~ F3クラス制覇~ F2クラス制覇~ 初期~ マスター 神姫 神姫タイプ 元ネタとか攻略情報とか 柴田勝シバタ マサル プルミエ アーンヴァルMk.2 おそらく多くのプレイヤーが最初に戦う相手。神姫名の「プルミエ」は「最初」を意味するフランス語「プルミエール」からだと思われる。戦国から江戸にかけて家名を残した「柴田氏」が「勝」の字を代々使っているまた格闘技にも「柴田勝久」「柴田勝頼」の親子がいるバトルロンドのNPCでも「まさる」「プルミエ」が登場 小早川千歳コバヤカワ チトセ リリス ストラーフMk.2 勝利後F3①予選解禁バトルロンドのNPCでも「ちとせ」「リリス」が登場 姉崎静馬 ナギ ハウリン 三毛屋ベンガルミケヤ ベンガル コモモ マオチャオ 「よーしよしよしよし」…漫画「ジョジョの奇妙な冒険 第六部」のキャラクターグェスの台詞のパロディ 柏葉剣 ルーデル ゼルノグラード 第二次大戦時のドイツ空軍の爆撃王(兼エース)ハンス・ウルリッヒ・ルーデル大佐及び彼が受賞した黄金柏葉剣ダイヤモンド付騎士鉄十字章から 山中美幸 ライラ アーンヴァルMk.2 赤橋瞳子アカハシ トウシ ハヤテ ハウリン 足利尊氏の妻 赤橋登子(あかはしとうし)? 津軽冬至 雪華 フブキ メールで対戦可 勝利後自宅でフブキ解禁 足利崇文 紅葉 マオチャオ 勝利後F3②予選解禁「兄様がまともに戻るまで、殴るのをやめないっ!!」…漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の主人公、ジョナサン・ジョースターの台詞のパロディ室町幕府初代将軍 足利尊氏? シルバー・クレイ マリー アーンヴァルMk.2 「私達はようやく登り始めたばかりなのデース、この果てしなく遠い神姫坂を」漫画「男坂」のラストのパロディ 犬童太 ハナ ハウリン 軍曹 三等兵 ゼルノグラード 映画「フルメタル・ジャケット」に登場する鬼教官、ハートマン軍曹とその部下神姫名の元ネタは漫画「ロボット三等兵」から? 真紅女帝総長 沙耶香 アーク メールで対戦可難関その1 沙耶香を倒すと戦う気が無くなる勝利後ショップでアーク解禁「女帝」は英訳するなら正しくは「エンプレス」なのに真紅女帝(クリムゾンエンペラー)と呼ぶのは、コナミシューティングゲーム、エアフォースデルタの作戦名からアーク型曰く「珍走団」←徒党を組んで道路交通法違反を繰り返す集団のこと「203高地に挑む」中国にある丘陵で日露戦争の重要拠点 真紅女帝副長 亜里沙 アーク 真紅女帝見習い 香里奈 アーク ダリル・ブレナン ドロシー ハウリン 吉川素子 アローズ マオチャオ 猪苗代孝実イナワシロ タカミ ふゆなぎ ゼルノグラード 春夏冬 あきな アーンヴァルMk.2 「商い中」の古い(言葉遊び的な)表現「春夏冬中」→「あきな」 F3クラス制覇~ マスター 神姫 神姫タイプ 元ネタとか攻略情報とか 双蜂 ベル マオチャオ 双蜂=ツインビー 南部蒼太 フレンダー フブキ タツノコのガッチャマン南部博士と、同じくタツノコキャシャーンのフレンダー チョコレッタ・G アンネ アーク 武装神姫2036 アーク・イーダのデザイナーCHOCO氏から 犬養創 ヤマト ハウリン メールで対戦可難関その2 単体のLPは低い神姫名は大日本帝国の大和型戦艦の名前。(大和・武蔵・信濃。ただし信濃のみ戦艦としてではなく空母として完成している) 犬養続 ムサシ ハウリン 犬養完 シナノ ハウリン 鍋島樹里 みおん マオチャオ 鍋島家の化け猫騒動 立花茂 銀千代 ハウリン 立花宗茂と妻・ギン千代「この風、この肌ざわりこそ神姫バトルよ」…アニメ「機動戦士ガンダム」のキャラクター、ランバ・ラル大尉の台詞のパロディ。「うん、無駄無駄無駄無駄無駄じゃ」…漫画「ジョジョの奇妙な冒険 第三部」のキャラクター、DIOの台詞のパロディ。「片眉剃って大笑いしたり」…空手バカ一代 豪徳寺みか まりぃ マオチャオ 「表の模様が裏に、裏の模様が表についてるコイン」…ジャイアンのもっていたコイン「縦縞のハンカチが横縞」…マギー司郎、審司の持ちネタのひとつ「頭の悪い怠け者~」ハン・フォンス・ゼークトの言葉「バカには見えないメイド服」…裸の王様のパロディ ケンプ 黒姫 ゼルノグラード 「我が選択に、一片の悔いも~」…漫画「北斗の拳」のキャラクター、ラオウの台詞のパロディ 百武健心 百花 イーダ メールで対戦可勝利後ショップでイーダ解禁 給料シーフ シルファ アーク シーフ=泥棒 給料泥棒? 真田有希那 キリカゼ イーダ 練馬大将軍 ミュー アーンヴァルMk.2 練馬区光が丘に存在した「グラントハイツ(米空軍宿舎)」の由来グラント元大統領・元将軍。もしくは究極超人あ~るの成原博士。「世界征服は練馬から!」 偉吹玲人 まお マオチャオ 武装神姫2036 ハウリン・マオチャオのデザイナーBLADE氏から勝利後猫型カスタムパーツ解禁 神選組局長 コテツ ゼルノグラード 新選組とその刀新選組局長 近藤勇:長曾祢虎徹<ながそね こてつ>新撰組副長 土方歳三:和泉守兼定<いずみのかみ かねさだ>新選組八番隊組長 藤堂平助:上総介兼重<かずさのすけ かねしげ> 神選組副長 イズミ ゼルノグラード 神選組隊士 カズサ ゼルノグラード 得川義文 葛葉 フブキ 「お風呂覗かれたり」…緑髪忍者型でコナミのゲーム「がんばれゴエモン」のヤエちゃん? 痴豚 ミランダ イーダ タレント・伊集院光が、ラジオ番組「深夜の馬鹿力」内で照れ隠しも含めて自身の事を言う際に使う呼び方。 痴漢の『痴』に太った人を蔑む意味『豚』を合わせた造語。それを抜きにしてもSMプレイでも『豚』という蔑称はよく用いられる。ミランダはイーダのデザイナーCHOCO氏の描くSFコミック「イグナクロス零号駅」の主人公ミランダ駅長から? 嶋渓フミカ エイル アーンヴァル 武装神姫2036 アーンヴァル・ストラーフ等のデザイナー島田フミカネ氏から ドグラ・モゲラ 菊花 フブキ ドグラ・マグラからか?(会話内容からマスターの容姿が「戸惑う、面食らう」や「堂廻り、目眩み」となっており、原点がそういう意味という説から)またはモグラ⇒掘る(男に対して性的な意味で)⇒アッー!⇒菊の花 山中日向 葵 アーク 日向葵で「ひまわり」。山の中に咲くひまわり? タケル サギリ アルトレーネ サギリの方が耐久が低い勝利後ショップでアルトレーネ・アルトアイネス解禁日本神話のヤマトタケルノミコト 日本神話の神:アメノサギリorクニノサギリ ミコト テルヒメ アルトアイネス F2クラス制覇~ マスター 神姫 神姫タイプ 元ネタとか攻略情報とか ??? ??? アーンヴァルMk.2 勝っても負けても展開は変らないが勝つと称号が貰える 神宮司八郎 アトラ アーンヴァルMk.2 F2制覇後登場。探偵 神宮寺三郎 また、「アトラ」は穴を開ける道具の事なので、海底軍艦轟天号艦長神宮司 八郎 大佐 森永穂波 アニー アーンヴァルMk.2 神宮司八郎戦闘後登場元女優の森永奈緒美さん。アニーは宇宙刑事シャイダーでの役名 神戸こなみ みなこ アルトアイネス F2制覇後登場。神戸のコナミそのまま。みなこはその逆さ読み「もっと恐ろしいものの片鱗を」…漫画「ジョジョの奇妙な冒険 第三部」のキャラクター、ポルナレフの台詞のパロディ。 笠嶋京香 あざみ ストラーフMk.2 赤城春菜 麗音 アルトレーネ 北関東最強、赤城→赤城山、春菜→榛名山、最強神姫理論→公道最速理論でいずれも漫画「頭文字D」のネタアルト「レーネ」→麗音 趙飛燕 夏姫 イーダ 前漢成帝の皇后。夏姫→巫臣(春秋時代の楚の政治家)のカミさん> 王秀英 睡蓮 アルトレーネ 周小紅 蘭蘭 ゼルノグラード 音黒野美子 クロミ フブキ クトゥルー神話に登場する架空の書物「ネクロノミコン」から。神姫名もネ「クロ」ノ「ミ」コン→クロミか?ちなみにバトル前の会話で唱えている怪しげな呪文も、クトゥルー神話に関わるものである。はしかのようなもの…はしかは日本人なら一生に一度はかかると言われる病気。転じて、恋の病や中二病など、誰もが経験するであろう事象を指す 武本哲 チェリー ゼルノグラード 漫画「じゃりン子チエ」の「竹本テツ」「チエ」にひっかけて「チェリー」 愛猫党党首 ターニャ マオチャオ 勝敗に関わらず趙飛燕と戦うと挑戦メールが来る 愛猫党参謀 アイニャ マオチャオ 愛猫党書記 ハルニャ マオチャオ 麻呂 雛鶴 イーダ 山県みちる 薫 アルトレーネ 「神姫イヤーは地獄耳」…デビルマン 兜茂 ユリコ アーク 仮面ライダーストロンガー神姫名のユリコはストロンガーのパートナーの電波人間タックルこと岬ユリ子 左籐楓 メープル フブキ 勝敗に関わらず愛猫党党首と戦うと挑戦メールが来るメープル:英語でカエデのこと。左籐楓(サトウカエデ)はメープルシロップの原材料アナベル:アジサイの品種。紫陽花(アジサイ)マグノリア:モクレンの品種。大山蓮華(オオヤマレンゲ)もモクレンの一種 紫陽 花 アナベル アーク 大山蓮華 マグノリア イーダ ういろー ナナ マオチャオ 名古屋名物、ういろうとナナちゃん 埴場怜太 クラリス アルトアイネス 羊たちの沈黙の登場人物。埴場怜太(ハンニバル・レクター)とクラリス・スターリング 九頭龍 ルル アーク クトゥルー…クトゥルー神話に登場する神の名前、九頭龍はその表記の一つルルイエ…同神話に登場する架空の地名 陰陽熊 ファム アルトアイネス 閃光魔女 シャイナ ストラーフMk.2 プロレス技のシャイニング・ウィザードからか?男にしとけばよかったんじゃ…(ウィザードは主に男性の魔術師を指す) 開田有人 ライム マオチャオ 全F1予選クリア後に登場。元ネタは開田裕治氏と氏のホームページに掲載されている徳間文庫の官能小説アンソロジー「爛夢」から?「きれいな言葉遣いだろ?マオチャオ型なんだぜこいつ」ご存知某野球漫画の主人公のせりふ。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1959.html
「ある日」 この町に来てから三週間が過ぎた。 アタシがこの町に居られるのも、後一週間と少しだけ。 なのにすっかり当初の目的なんて頭の中から無くなり、アタシは今日も公園の木陰で彼等が来るのを待っている。 それにしても暑い。 木々の陰により和らいだ熱の下にありながらも、それでも暑いと感じるのだから日向に居る人たちにはさぞ暑いことだろう。 もう暑いじゃなくて、熱い。 温暖化も二十一世紀初頭に比べればその悪化具合もだいぶ緩やかになってはいるけど、それでもその傾向がマイナスに転じてはいない現在。亜熱帯と化した日本の夏はけっして住み良い環境ではない。 空気が流れた。 体にまとわり付いた汗が、その風に反応して体の熱をほんの少しだけ、奪い去る。 そしてその風と共に、待ち人がいつもの様に現れた。 「また、居たのか。案外お前も暇だねぇ?」 開口一番、憎まれ口を叩くこの男に、会いたくて堪らないのだと自覚したのはいつだったか? 「なんだか今日はどっかのお姫様みたいな格好だなっ!」 今まで自分とは遠くにある存在と思っていた小さな少女も、こんなにも愛おしく感じる。 「こんなに暑いと、スカートだってはきたくなるの。それに帽子だけじゃこの日差しは遮れないでしょ!」 今日のアタシのいでたちと言ったら、フリルのあしらわれた薄手の白いワンピースに白い日傘と、一体何時代だよ! って突っ込みを入れたくなるくらいの時代錯誤な格好だった。 正直照れくさい。 「あぁ~あ。口さえ開かなきゃ、深窓の御令嬢でも通じるのにな」 意地の悪い笑みで男は言う。 「ちょっとー。いくらアタシでも傷つくぞ」 「でもカワイイじゃんかー。ちょっと憧れだぜっ!」 「まて、お前がこんな格好したらそれこそ喋るな! って話になるぞ」 「おう! それはこの刹奈ちんがとってもカワイイって言ってるんだよなぁ?」 かわいい仕草をし、しかしその仕草を台無しにする口調でその小さな神姫は問う。 「だから色々台無しなんだよお前は」 深々とため息をつく夢絃を見て、アタシは思わず大きな声で笑ってしまった。 「……ここにも台無しが一人」 失礼だぞ! 「やっぱり今日もあの時みたいなのは起こらないね」 ヴァイオリンを弾き終えた夢絃にアタシは言った。 「あれって、結局なんだったんだろうなー」 アタシの方に跳ねて来た刹奈は、そう言うとアタシの肩に腰を下ろす。 「ね……ねぇ、体少し熱いけど大丈夫?」 刹奈の座ったアタシの肩が、少しだけ熱を感じる。 「だーいじょうぶなのさー。外気が熱いから、ちょこっとだけ廃熱がままならないだけ。今日も一生懸命踊ったもんなー」 そう言うと刹奈は花が咲くような笑みをアタシに向ける。そして小さな声で「アリガト」と言った。 「あぁ! もう! 刹奈ちんはかわいいなぁ」 もうホント抱きしめたい! ……肩に座っている神姫を抱きしめるのはムリだけど。 「……なんだかんだでお前も結構神姫好きになってきたよな」 ヴァイオリンを丁寧に片付けて、夢絃はそれとは別に持ってきていたリュックを開ける。 「これ、やるよ」 そう言ってそのリュックから取り出した箱を、アタシに差し出す。 「ちょっ……!」 どう見てもそれは武装神姫のパッケージで。 いくらアタシが神姫に疎いからといっても、これが高価なものである事くらい知っている。 ……親友であるセツナのおかげかもしれないけれど。 「こんなの受け取れる訳ないじゃん!」 勢いよく立ち上がってしまう。肩に座っていた刹奈が振り落とされまいとアタシの髪にしがみついた。 「ちょっ! 待てって。……夢絃! 話がいきなりすぎなんだって!!」 「あ? あぁ、確かにそうか」 「朔良もさ、とりあえず話だけでも聞いてよ。判断はそれからでも遅くないだろ?」 刹奈のその言葉に促される形で、アタシは静かにまた座っていたベンチに腰を下ろす。 「えっとな、実を言うとコレ、余りモンなんだ。でもさ、中古屋とかには売りたくねーし、ネットオークションなんて言語道断。だったら俺が気に入った、神姫が好きそうな奴に譲りたいって思ったんだよ」 「余り物って…… それでもこんな高価なもの貰えないよ」 アタシの覚え違いじゃなければ、神姫一体でPC一揃えが購入できるはず。そんな物を「貰えてラッキー♪」とか簡単に言えるほど無邪気じゃない。 「でも、俺はお前に……『朔良』に貰ってほしいんだ」 真剣な眼差しで、まっすぐにアタシを見て、そして初めてアタシの名前を呼んで―― そんなのズルイ。そんなことされたら、絶対に断れない。 「う、ん。……わかった」 熱くなる顔を隠すようにうなだれて見せる。 上手くごまかせたかな? そんなアタシの心配をよそに、夢絃はアタシに一歩近づく。 そして少しだけかがんで、アタシの傍らに神姫の箱を置いた。 「それならさ、明日駅前で会わないか? ここじゃセットアップ出来ないから、神姫センターにでも行こう」 「え? そんなに急がなくても……」 アタシはそう言って顔を夢絃に向けた。 その途端に―― 夢絃の唇で、アタシの口が塞がれる。 それは本当に僅かな瞬間で。 直に立ち上がった夢絃はくるりとアタシに背を向ける。 「明日十時に駅前の広場で。……遅れるなよ」 と言うと振り向きもせずにそのままリュックとヴァイオリンケースを持ち上げる。 「にししししー☆」 耳元で刹奈は笑うと、そのままアタシの肩から飛び降り、そのままの勢いで夢絃の元へ走る。 そんな二人をアタシはただ真っ赤になって見送る事しかできなかった。 そのアタシの手元には、MMS TYPE DEVILと書かれたパッケージが残されていた。 戻る / まえのはなし / つぎのはなし