約 220,410 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/442.html
「何なのネ、コイツッ!?」 虚空の空を一瞬で塗り替える、華麗で危険な花火の大群。 「……ふ」 しかし彼女はまるで、危険な花火師の影から産み落とされたかのように、平然と現れ出る。 「貴様も……贄となれぇ……!」 「チョ!?」 次の瞬間、フィールドには断末魔の絶叫ではなく、残酷な破裂音が響き渡っていた。 頭部をパイルバンカーで打ち抜かれ、無残な姿を晒す相手の神姫。 彼女の脳髄が砕け、貫かれ、オイルと言う名の血肉が、漆黒の神姫の全身に新たな彩を加えていく。 「ファン・エタンセル!!!」 まるで追悼の言葉を送るように……しかしその口元には禍々しい三日月の笑みを浮かべ……最後のシーンへと彼女は躍り出る。 復讐と言う、華麗で狂気に満ち溢れた舞台へと ねここの飼い方・光と影 ~四章~ 試合終了と同時にアクセスポッドから電光のごとく飛び出して……いや逃げ出してくる神姫。 「……アルネ?ちゃ、ちゃんと顔あるネー?」 「あるから、んな馬鹿みたいに顔ペチペチ叩くのやめんか。この馬鹿猫が」 しきりに顔があることを確認しそれに安堵するマオチャオタイプと、それを呆れた様に見下ろす、胸元全開の黒いコートを中心としたパンクファッションに身を包んだケバケバしい金髪の女性。 「しかしアイツの戦い方、なんてーか自殺願望でもあるんじゃないか? お前の攻撃避ける所か無視して突っ込んできて、一撃か」 そう分析しつつもケラケラと下品に愉快そうに笑う彼女。自分の神姫が負けたことが、逆に嬉しそうなほどである。 やがて笑い声がふっと途絶え、彼女は他人が目撃すれば恐怖し畏怖されんばかりの、鋭く激しい猛禽類のような眼つきでモニターを眺める。 「ヤツの目はある意味…貴様らに似ているかも知れんな。満たされていない、良く腐った目だ」 そこには獲物をまた1匹仕留め、達成感と虚脱感、悦楽と落胆、あらゆる感情が渦巻き、顔に滴るオイルをチロリと嬉しそうに舐めたネメシスの姿が映し出されていた。 (また1人……でも何か違う、まだまだ足りない。アイツじゃないから……?) フィールドに佇みながら、自問自答を繰り返すネメシス。 (でも……アイツに自ら挑むことは許されない、許されるはずが無い。私に出来るのは……) ネメシスは自らサイドボードを呼び出し、手のひらサイズの薄い紙のような物体をその手に実体化させる。 それはマオチャオのヘッドギアやドリルなどにマーキングされている猫の顔のシール。 …・・・但し顔には、斜めに鋭く稲妻のようなラインが走っており、まるで猫の顔を雷光が無残に射抜いたかのような風合いのシロモノだった。 ネメシスはそれをエトワール・ファントムの機体にペタリと貼り込む。外見からは見えない、ネメシスだけが確認できる位置へ。 その場所には、今貼られたものも含め十数枚の顔が貼られている。 それは誇りか、贖罪か、あるいは自らが手を掛けた者への追悼? それとも…… (私は……あの日から……) その日、一家は久しぶりに両親と娘が揃っての夕食を迎えていた。 だがそこにあるのは賑やかな談笑に彩られた幸せな親子の風景ではなく、カチャカチャと無機質に食器が擦れ合う音のみが、3人にとっては広過ぎる食堂に虚しく響き渡る。 穏かだが冷たい空気。 「明」 ふいに父親が口を開く。豊かな口髭を生やし、冷徹で相手を威圧するような鋭い眼を持つ、仕事の鬼と形容しえるような雰囲気を持った人物である。 「……はい、お父様……」 娘は控えめにおずおずと、返事を返す。忙しい父との会話は1ヶ月ぶりであるにも拘らず、いやだからこそ口は重くなる。 「ふぅ……もっとはっきり返事するように、まるで名前と正反対ではないか。俺はお前をそんな風に育てた覚えはだな……」 語尾が徐々に強くなってゆく父。それとは反対に臆して更に縮こまる娘。 「あなた、そのくらいに……」 「ん、そうだな……。明、お前は今日が誕生日だったな。」 「そう、ですね」 明はそれが自分のことであるのに、興味が全くないかのように応じる。 「……まぁ、いい。とにかく、誕生日プレゼントを用意した。お前が以前から欲しがっていると言っていた……そう、武装神姫とかいう人形だな」 「え……!」 明の顔が上がり、薄い頬とその瞳には感激と喜びが溢れ出すかのようだ。 彼女は以前から武装神姫が欲しかった。 だがバイトが許されていない彼女にとって、その値段はとても手が出るようなレベルの物ではない。オプションだけならまだしも、本体を買う金額には彼女の小遣いでは1年分であっても全く足りない。 以前の会話でその事を父に話したこともある。だがその時はそのような高額な玩具は買うに値しないと一蹴されていた。 だが父は娘が欲しがっていた事を覚えていてくれた。 その事も彼女にとっては喜びだった。 「それじゃあ、マオチャオを買ってきて下ったのですね、お父様」 「マオチャオ……? 私は玩具には疎くてな。 詳しくはわからないが、私の知人でその業界に顔の利くヤツがいてな。頼んで取り寄せてもらった。 せっかくなのでな、お前が喜ぶようにと限定版とやらの先行品を頼んでやった。」 「限定版……」 明の顔がさっと曇る。そう、現在の所マオチャオで限定版が出たという話は…… だが父は、そんな娘の表情の変化に気づく風もなく続ける。 「実はお前に驚いてもらおうと思ってな、もう起動させてある。上がりなさい」 父の椅子の傍に置かれていた小物入れから、小さな影がテーブルの上へと躍り出る。 娘は事前知識で知っていた。神姫はCSCを選択、それをセットすることで起動する事を。 そして父の手で起動されてしまったという時点で、既に自らの望む選択肢は選べなくなっているのだと言うことを。 「初めまして、アキラ。貴方が私のマスターですね」 明の眼前までやってきた神姫は、まるで王に挨拶する姫君のように、華麗な動作で自らの主人への儀礼を行う。 「………」 だが明は答えない。 それもそのはず。その神姫は彼女の予想、あるいは願望とは掛け離れていた。 その神姫は彼女が思い描いていた、つぶらで大きな瞳とショートカットの髪を持たず、凛々しい瞳と美しく長いブロンドの髪を持ち、ボディの色もマオチャオ特有の暖かみのある暖色系ではなく、冷たく黒光りする漆黒、そしてまるで血で染め上げられたような鮮やかな紅。 「どうだ明。いやはや手に取るまでは馬鹿にしてたが、どうして最近の人形は凄いものだな。」 愉快そうに笑う父。だが明にとっては…… 「どうした明。せっかく発売前の、しかも限定品を買ってきてやったのだぞ。少しは喜ばんか」 父の語気が再び強くなる。明はそれに押されるように…… 「…………ありがとう、ございます」 俯きながら、心を閉ざし、父の無理解な好意にも仮初の礼を述べることしか出来なかった。 「アキラ、これから宜しくお願いしますね。私はこれから貴方と仲良くなりたい。貴方と楽しい時間を過ごしていけたら……」 「黙って」 サイドボード上で嬉しそうに笑っていた神姫を、先ほどまでの様子からは考えられないような冷たい口調で注意する。 そのまま部屋のベッドに乱暴に突っ伏す明。 「1つだけ言っておくわ。……私が望んだのは貴方なんかじゃ、ない」 突き放すような口調……だがその語尾はかすかに震えていて 「……そう、ですか」 神姫の顔からもふっと笑みが消える。彼女もあの場にいたのだ、そして彼女は神姫。 神姫関連の情報は基本情報としてインプットされている。 それは、今ベッドに伏せっている少女が先ほど発した言葉の意味が理解できることを示す。マオチャオの意味を…… 「そう、よ。お父様の手前、貴方は私の元にいる。ただそれだけよ」 気まずい沈黙が訪れる。2人とも項垂れたまま顔を上げようとも、声を掛けようとも、しない。 やがて、神姫は顔を上げ、決断する。 「では、たった1つだけお願いがあります。私の最初で最後の願いです」 「……何よ」 迫力に気圧された明が思わずその神姫を見つめ、2人の視線が交錯する。 「私に、名前を……たったそれだけです」 「……いいわ」 彼女は戸棚にある本の群れに目線を移動させ、そして1冊の本を注視する。 「……ネメシス。それが貴方の名前」 「了解しました。我が主、アキラ」 復讐を司る神の名前、まさに私と彼女に相応しい名。 このとき彼女はそう信じていた。 (今思えば……必然だったのかもしれない。私が黒衣を纏って生まれたことも、こうなる事も) 自嘲気味な思考を重ねるネメシス。 マオチャオ型を屠った事で、一時的にだが多少は精神が安定しているのかもしれない。 新興都市のビルディングが醸し出す、幻想的で美しいが何処か無機的な冷たさの夜景が彼女の眼前に広がっている。 「2人で……見たかったな」 ポツリと、自分自身が発した言葉に驚くネメシス。 「……あれ、なんでだろ。景色が霞んで……」 その眼には、先程までの狩猟の獣のような鋭さは失われ、ただポロポロと虹色に輝く雫が彼女の頬へと流れ落ちてゆく。 復讐の炎が衰えた時、繊細な魂が露になる瞬間。 『お前は今日から明と共に過ごすんだ。命令だ』 『…………ありがとう、ございます』 自分と同じ境遇を与えられ……いや押し付けられた少女。 だからこそ愛しい。神姫である自分のこの感情が正しい物なのかはわかない。 しかし、今自分が行っていることは彼女に対する裏切り、少なくとも許容してはくれないだろう。 (いっそ、壊れてしまえばいいのにな……完全に) そうすれば自分はジレンマから逃れられ、彼女は新たな神姫を得られるかもしれない。 (……それも嫌……) 彼女と会えなくなる。そう少し考えるだけでも、AIがオーバーフローを起こしそうになる。 いかに彼女に遠ざけられ、蔑まれてもこの感情だけは変えられない。それは自分の中のもっとも大切なココロの在り処だから。 「 ネメシス ちゃん 」 「!?」 後ろから柔らかな声が、自分に向かい掛けられる。自分以外の存在のないはずのこの場所で。 振り向いた彼女は、大きくその眼を見開く。 そこにいたのは、ネメシスにとっての光。影である自分では決して届き得ない存在。だが、だからこそ望むのであろう。 「……ねここ……」 ねここを見つめるネメシスの眼には、涙を浮かべたまま、復讐の炎が再度宿っていた。 それは、熱く激しく……とても哀しい瞳。 続く トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1194.html
回の00「不変ではいられない僕ら」 2037年9月。高校二年の夏休みを満喫しきった藤原雪那(ふじわら・せつな)は、その長い休暇のほとんどを自分の武装神姫、マオチャオのティキと共に過ごした。 例えば初めて大きな大会に参加してみたり、ティキをつれた家族旅行に出かけたりなど。 当然、今までに知り合った仲間たちとの交流も大切にし、何かのたびに待ち合わせては地元の神姫センターなどに通ったりもしていた。何も変化が無かった、というわけではないが。 特別な何かがあった訳ではないが、それでも昨年までとは違う夏休みを終え、それでも厳しい残暑に打ちのめされながらも、一年前では予想もしていなかった新たな習慣が繰り返されている。 先週も一人で都内にまで足を伸ばし、ホビーショップ・エルゴでバトルをしたばかりだった。エルゴでの、初めてのシルヴェストルのお披露目をかねたそのバトルは――なんと言うか、散々な目に遭わされたのだが。 そして3連休の真ん中日曜日、シルヴェストルの改良もあったので雪那もティキも空調の利いた自室にこもっていた。 「そう言えば……」 細かいパーツに苦戦しながら、雪那は口を開く。雪那の手伝いをしているティキは、自分のオーナーの言葉に視線を向けて反応した。 「……そろそろこの家に来て一年がたつんじゃないの?」 「えーっと、うーん?」 なにやら考え込み始めるティキ。 神姫のこういった見せ掛けの記憶の揺らぎは、人とのコミュニケートを潤滑にするための、いわば機能の一つだ。 記録を参照するだけなのだから、わざわざ考え込むような、思い出すかのような時間は必要ない。しかし、そうある方が人間はその“個体”と“対話”した気分になるものだ。 「そうですよぉ! 今日でちょうど一年になるのでっすよぉ♪」 思い出し、そしてティキは飛び跳ねて喜ぶ。 「そっかー。じゃあ、今日がティキの誕生日だなあ」 作業を中断し、大きく伸びをしながらティキに微笑む。 「なんかお祝いでもしなきゃね」 「お祝いですかぁ!」 目をきらきらと輝かせるティキ。それに、どうしようかねー、といいながら雪那が頭を傾げていると、呼び鈴の機械音が響く。 この時間雪那の母、藤原舞華(ふじわら・まいか)は自宅に接している店舗の方に居る。その事を知っている人ならば、たとえ郵便公社の配達員でさえ店舗に行くはずなのだが、なぜか自宅の呼び鈴が鳴った。 「僕に、かな?」 ティキに向けてそう言うと、雪那は玄関に向かう。 しかし程なくして自室に帰ってきた雪那は、怪訝な顔で大きな段ボールの箱を抱えていた。 「? 何なのですかぁ?」 なんとも形容しがたい表情の雪那に、ティキが質問する。 「……それが、なんて言うか」 歯切れが悪い。 「?」 「ティキ宛の、宅配物なんだ。……しかも親父から」 ほぼ時を同じくして、ここは結城邸。 「で、あの男の子とはどうなったの?」 その顔には隠そうともしない好奇心でいっぱいになっている。 その朔良=イゴール(さくら・――)に、少し寂しげな顔を見せて結城セツナは答える。 「多分、フラれちゃった。かなあ……」 「多分? かなあ、って?」 「はっきり言われたわけじゃ、ないから」 セツナはそう言うと、自分のカップのふちを指でなでながら話し始めた。 さらに同時刻。 式部敦詞(しきぶ・あつし)は自分の部屋で昨日の事を思い出し、また怒りを顕わにしていた。 「ったく、あのトウヘンボク! あんなんだったらまだ朴念仁の方がましだ!!」 自身の神姫、きらりとTVゲームをしながら昨日から何度目かにもなる言葉を繰り返す。 「そんな事言っても、仕方が無いでしょう? マスターだって雪那さんの言い分、納得してたじゃない」 人が使うものとは大きさも機能もまるで違うコントローラを駆使しながら、きらりは言った。 「そうだけどよー」 「大体マスターは司馬さんを応援してたんじゃない。だったら雪那さんの考えも、歓迎こそすれ責めるのはどうかと思うわ」 ここで言う司馬とは神姫を通して知り合った友人、司馬仙太郎(しば・せんたろう)の事である。 「いや、別にオレは司馬のダンナを応援してるわけじゃネーよ?」 「アレ? 違うの?」 「オレは周りがハッピーになれば良いと思ってるだけだ。だから、誰かを好きな奴がいて、そいつと付き合えるようになるならそれが良い、てだけ。司馬のダンナが結城を好きなら応援するし、だけど結城が雪那を好きなら雪那をたきつけるさ」 それって立派な三角関係の出来上がりだよ? 己のマスターのその言い分を聞き、どこら辺がハッピーなのかきらりにはチョット理解出来なかった。それでもあえて口にはしなかったが。 「つまりさ、雪那が結城の事が好きになるなら、それでそこの二人はハッピーだろ? ま、司馬のダンナは泣く事になるけど。でも万が一、結城が司馬のダンナの事好きになるなら、それでもハッピーじゃん。でさ、結城が司馬のダンナを好きになるよりも、雪那が結城の気持ちに応える方が、確立としては高いと思ったわけ。なのにさ、結城の気持ちに気付いてないならまだしも、只はぐらかしていたって言うアイツは、ヤッパリどうかって思うわけよ」 器用に自分の自機を操作しながら、敦詞は思う所を吐き出す。 敦詞の意見が正しいのかどうかはさておき、それでも敦詞の思いをきらりは理解した。 しかし昨日、雪那の言い分も聞いてしまったわけだから、雪那も考えも一応理解しているわけで。 きらりは途方にくれる。 その途端、きらりが操作していた機体が、敵機に撃ち落されてしまった。 「でもそれって、全部憶測なんでしょ?」 そう言って、朔良はわずかに残ったカップのお茶を飲み干す。 「まあ、ね。あくまでそういう風に感じた、ってだけ。それ以上は別に避けられているわけでもないし」 その会話をそばで聞いていたセツナの神姫、海神ⅡY.E.N.N(わだつみ・せかんど・わい・いー・えぬ・えぬ)こと焔(えん)は、実は気が気じゃなかった。 焔は昨日、雪那と敦詞の会話を偶然にも聞いてしまっていた。しかもその後に敦詞に見つかってしまい、セツナには秘密だと一方的に約束されてしまった。 実際問題、セツナと敦詞では、セツナの方が焔の中では上位に存在している。オーナーの友人でしかない敦詞より、オーナーであるセツナの方が優先されるのは当たり前だ。 しかし、だからと言って、その会話のありのままをセツナに話してしまうのは、あまりにも憚れた。 決して大げさな話ではない。大それた決意でもない。でもだからこそいえない事もある。 「ま、あんまり考えていても、なんともならないわね。この話はこれでおしまい」 セツナのその一言に、焔は安堵の息を吐く。その話題が長引けば、ぼろを出す危険が増すだけだ。 「で、今日は本当は何の用なの?」 まさかその話題だけで家まで訪ねて来たわけじゃないのでしょう? と、セツナは空になったカップにお茶を注ぎながら朔良に促す。 朔良は、ヤッパリ判ってた? と、茶化したように言うと、言葉を続けた。 「実はね、セツナに引き取ってもらいたいものが有ってサ」 そう言うと朔良はかばんの中から小さな箱を取り出す。 「実は、私も武装神姫やってみたいと思ってさ、ちょうど良いからってこれを注文したんだ。……だけど、これが届いた頃には、興味が無くなっちゃったんだよネ。まぁ、色々理由はあるんだけど、それは追求しない方向で。で、何もしないで寝かしちゃうのもこの娘に悪いから、有効に活用できそうな人に、って思って」 「って、それってリペイント版の!」 朔良が取り出したその箱には、MMS TYPE DEVILと印刷されていた。 話は雪那とティキに戻る。 今は亡き父の名で送られてきたその箱を前に、雪那とティキは何も出来ずにいた。 冷静に考えれば父、修芳が生前に日時指定して送った物だろう。だが、判ってはいても一寸した不気味さを醸していた。 ……少々時期がずれたとはいえ、夏場という季節のせいもあるかもしれない。怪談の旬はやはり夏場であろう。 なにより、昨晩見た心霊番組がいけない。その内容をついつい思い出してしまう。 「……よし」 意を決して雪那はその段ボール箱に手をかけ、箱を封じているガムテープをはがし始める。 はたしてその中には、更なる段ボール製の箱が収められてあった。 しかし不気味さはさらに増す。 何が不気味と言えば、その段ボール製の箱は、その見える全てを完膚無く、一部の隙も無く、真っ黒に塗りつぶされているのだ。 ティキは恐怖に震えながら、ぎゅっ、と雪那の腕にしがみつく。 「は……ははは。一体、これは何なんだろうね」 引きつった笑いを浮かべながら、雪那は恐る恐るその箱を取り出す。 案外、軽い。 箱の大きさの割には重くは無い。 持ち上げて裏も見てみるが、案の定裏面も一切の余白も無く真っ黒に塗りつぶされてあった。 雪那はそっ、とその箱を部屋の真ん中に置く。 「……どうしようか?」 ティキに聞いても返事は無いだろうと予測してはいたが、それでも思わず聞いてしまう。そして予測をまったく違えることなく、ティキはただ雪那につかまって震えているだけだった。 埒が明かない。そう思った雪那は、頭を振ると勢いに任せてその箱を開封する。 恐る恐る覗き込む雪那の目に、どこかで見たようなブリスターパックが入る。 「???」 いぶかしみながらパックを引っ張り出す。 雪那によって姿を現したそれをティキは覗き見る。そしてそれを確認した途端―― 「みぎゃぁぁぁぁぁああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 すさまじい悲鳴を上げて、部屋の隅に逃げ出した。 雪那とティキが目にしたそれは 一週間前エルゴに行った際、ティキをデータ上とはいえ破壊ギリギリまで追い込んだ、ネメシスという名の神姫と同型同色の 黒い、アーンヴァル。 トップ / 次回
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2444.html
与太話5 : 参上! 正義の戦乙女!! 「この手が望むは強敵との勝負!」 鉛色のコートが虚空に靡く。 「C・S・Cに誓うは主の勝利!」 輝く双剣が映し出す絶対的な修道女の影。 「阻む黒雲切り開き、勝利を掴む古の血統ッ!」 機械仕掛けの脚が鉄の運命を踏み砕く。 「正義の戦乙女――」 見開かれた双眸が蒼き炎を灯した。 「エル参 「遊んでないで真面目にやってよエル姉!」 コタマが操るホイホイさん、巨大なガントレットを両腕に付けた【ファースト】の攻撃範囲から逃れ下がってきたメルに名乗りを遮られ、エルはプクゥと頬を膨らませた。 「せっかく徹夜で覚えたんですから邪魔しないで下さい!」 「徹夜!? そんなことする暇があったらコタマ姉の対策の一つでも考えてよ!」 言いつつ、メルは決めポーズのままつっ立っていたエルを抱えビルの影に飛び込んだ。直後、二人がいた場所を二発の弾丸が、空気を貫くようなゾッとする音を残して通過した。 「少し漫画で目立ったくらいで図に乗ってんなよコラァ!」 続け様、コタマはもう一体のホイホイさん【セカンド】に二人が身を隠した壁面を撃たせた。神姫の身長より長い大型対物ライフルで壁を粉砕できるとはいえ、この銃撃はエルとメルを狙ったわけではない。威嚇のつもりもなく、ただ、コタマは腹を立てていた。 エルが徹夜で読んでいた漫画をコタマも読み終えていた。漫画の中で目立ちに目立ったアルトレーネとは対称的に、ライト級神姫は小動物二匹がたった1ページ登場しただけだった。ハーモニーグレイスは前巻でオマケのような扱いだった。 コタマはライトアーマーという格付けそのものに不満を持っているわけではなかった。自身、ファーストとセカンドを除けば、装備品は姫乃お手製の修道服と糸を伸ばした二つの十字架だけである。 だがその扱いが許せなかった。漫画の中でライト級神姫達がまるで幼稚園児のように描かれていることが許せなかった。いや、百歩譲って小動物系はいい。コタマとは何の関係もない。だがハーモニーグレイスがそいつらと同じレベルで争っているのはどういうことか。小動物にシールを奪われ「その金ピカネコは私が狙ってたのにー!」とべそをかくハーモニーグレイスを見てコタマは漫画をゴミ箱へ捨てようとして、鉄子と喧嘩になった。作者へ苦情メールも送った。 そして第三巻が発売されたのが昨日のこと。再び漫画をゴミ箱へ投げ捨てようとして再び鉄子と喧嘩になり、苦情メールを数回送っても収まらない憤りをバトルにぶつけようと、エルメル姉妹からの挑戦を二つ返事で受けた。 「出てこいエル、メル! 来ねぇのなからこっちから行くぞ!」 故に、カバー折り返しに実写で掲載されるという破格の待遇を受けたアルトレーネを生で見て、憤りが収まるどころかより膨らんでいったのは詮ないことだった。 「やけに機嫌悪くないか、今日のコタマ」 貞方とタッグを組むという不愉快を極めた申し出だったが、エルとメルにああも真剣に頼まれては断り切れなかった。昨日発売された武装神姫の漫画を読んだエルとメルは漫画の後半で活躍した戦乙女型を見て「私(ボク)達はもっとやれるんじゃないか」と何の根拠も無い自信を持ったらしい。一人では無理でも、二人が力を合わせればドールマスターすら打倒し得る、と。 俺の隣で腕を組んでいる貞方はジッと筐体の中を見ている。 「背比、お前竹櫛さんと同じ弓道部ならコタマの弱点とか知らないのか」 「弱点? あー……そういえば」 「なんだ?」 「コタマってやたらとスマッシュ攻撃を使うんだよな。投げ技も一切使ってこないし、動きを読みやすい」 「スマブラの話じゃねぇよ! 神姫と何の関係あんだよアホが!」 「お前にアホとか言われたくねぇよクソが! じゃあお前がなんか考えろよ!」 放っておいてもバトルの状況は刻一刻と変わっていく。十数階建てビルの中へ逃げ込んだエルとメルを追って、コタマも壁を破って飛び込んでいった。 中の様子は別モニターに映し出される。ビルの内部は会社を模しているのだろうか、人が誰もいないことを除けば実在する事務所のようだった。狭いフロアに机や棚などの物が置かれている。人形二体を連れたコタマにとっては戦い難い場所だろう。 ビルの六階までコタマが上がってきたところで、エルとメルは勝負に出た。ファーストがガントレットでドアをブチ破りコタマが事務所の入口を跨いだ瞬間、エルがコタマの正面から、メルは背後から襲いかかった。ファーストとセカンドは壁を挟んで分かれ、コタマは両側の壁に阻まれ糸を自由に操れない。 待ち構えていたエルは最高速度で突進した。息を潜めていたメルはスカートの下から全武装を解放した。 だが、甘かった。 「うおっ!?」 ビルの側面の窓ガラスを突き破ってエルが飛び出してきた。反対側からメルも同じように出てきた。二人とも自発的にビルから離脱したのではない。そうでなければ、六階から落ちて受身すら取れず路上に叩きつけられるはずがない。 エルが割った窓からコタマが顔を覗かせ、ファーストとセカンドを連れて飛び降りた。 「おい貞方、今何があった?」 「知らん。状況からして、反撃されたのは確かだろうがな」 モニターには確かに、コタマを挟み撃ちにするエルとメルが映っていた。だが二人は直後にモニターから姿を消し、ビルの側面から現れた。 よろけながらもなんとか立ち上がるエルの前に、コタマは着地した。少し遅れてファーストとセカンドも降りてくる。AIを積んでいないはずの二体が何故綺麗に着地できるのかは、コタマにしか分からない。 「よォ大人気なアルトレーネ様。苦しんでるとこ悪いんだけどよ、さっきの名乗り、もう一回聞かせてくれよ」 メルはビルを挟んだ向こう側にいる。援護は期待できないが、一人で戦ってどうにかなる相手ではない。エルは剣と脚のパーツで路面を蹴り、コタマから離脱した。 「いいぞ逃げろエル! そのままメルと合――!」 しかし、エルの速度をもってしても、逃げることすら叶わなかった。 「『44ファントム』」 いつ見てもこの技は瞬間移動としか思えない。全速力で離れるエルの懐に一瞬で飛び込んだファーストは、咄嗟の剣による防御をものともせずガントレットを打ち込んだ。 自分の速度にさらなる加速を与えられたエルは、道路を飛び越え別のビル側面に叩きつけられ、力無く崩れ落ちた。 「エルっ!?」 「今だメル、本体を叩け!」 貞方のヤロウ、エルを囮にしやがった。だがファーストが未だエルへの攻撃の流れに乗って離れている今を逃せば勝ち目を完全に失ってしまう。業腹ものだが仕方がない。 ビルを回りこむのではなく中を真直ぐ突っ切ってきたメルは飛び出すなり、ありったけの武装を放った。次のチャンスが無いのなら、この瞬間で勝負を決めるしかない。 伸ばしたスカートとワイヤーがコタマへ届く直前、セカンドが持つライフルの銃身が間に割り込んだ。 「くっ!?」 「おっと危ねぇ。今のはワイアット・アープでも命取られてただろうぜ」 ワイヤーが巻きつきスカートに挟まれた銃身でそのまま、セカンドはメルを薙ぎ払った。ライフルの銃口がメルへと向けられる。 「じゃあな戦乙女。オマエらは先輩神姫への敬意が足りねぇんだよ」 後から聞いた話だと、メルはこの時「ハーモニーグレイスだってそんなに古くないじゃん」と呟いたらしい。 バトルを終えて、竹さん、貞方と三人でマクドナルドへ立ち寄った。テーブルの上では三人の神姫が例の漫画のことであれこれと議論している。先のバトルのことを持ち出さないのは良いことなのか悪いことなのか。 「そういや貞方、ハナコは?」 このところ大学でもあの健気なわんこ型神姫を見ていない。 「精密検査でメーカーに送ってある。昨日連絡があって、まだ時間がかかるらしい」 「ふうん、検査ってそんな時間かかるもんなん。コタマもいっぺん検査に出そうかね、ウルサイのが払えて丁度いいかもしれん」 竹さんはフライドポテトを一本ずつ減らしていった。ちまちまと妙に女の子らしく(いや女の子だけど)ポテトをかじるその姿はトップクラスの神姫オーナーには見えなかった。 「竹櫛さん、コタマが使うホイホイさんの……」 「ファーストとセカンド?」 「ちょっと見せてくれないか」 いいよ、と竹さんは気軽にトートバッグからハンカチにくるまれた二体を取り出した。今まで無造作にバッグの中に入れていたらしい。益々竹さんのオーナーっぷりを疑ってしまう。俺もエルの装備を筆箱に入れてるから他所様のことを言えたもんじゃないけど。 ちなみに貞方は専用アタッシュケースを持っている。クソブルジョワめ、先物取引に手を出して一日で破産しろ。 見せてもらったホイホイさんは、ごく普通のホイホイさんだった。ファーストは腕をガントレットに取り替えられているだけ、セカンドはもうそのまま害虫退治ができそうだった。 でも、この二体はバッテリーこそ積んでいるもののAIを搭載していない。動きはすべてコタマの糸で操られている。 「竹さん、コタマはどうやってこのホイホイさん動かしてんの?」 恐らくドールマスターを知る誰もが知りたい秘密だろう。思い切って聞いてみた。 でも質問が直接的すぎだろうか。貞方が「(お前、もう少し遠回しに聞けよ)」と目で言ってきた。でも竹さんはさして気にした風もなく、というより、 「さあ、分からん」 分からないらしかった。 「分からんって、竹櫛さんが用意したんだろ?」 「いーや、うちの兄貴に全部任せとるよ。メンテとかも」 「……そうか」 貞方がなぜか落ち込んでいる。きっと阿呆なりに思うところがあるんだろう。 哀れんでやろうとすると、ぎゃあぎゃあ騒いでいたエルに呼びかけられた。 「マスターマスター! やっぱりアルトレーネが一番だっきゃん!? にゃにするんですか鼻を打ちました!」 俺の元へ寄って来ようとしたエルの足を掴んで倒したコタマは、そのまま4の字固めを決めようとした。エルは鼻を押さえながらもそれに必死に抵抗している。 「オマエ今まで何聞いてたんだ! ハーモニーグレイスを差し置ける神姫なんていねぇっつってんだろ!」 「そんなわけありまっせん! どの神姫も平等なんです!」 「言ってることメチャクチャじゃねえか!」 「コタマ姉さんに言われたくありません!」 「二人はいいじゃない、漫画に出られたんだし……ボクなんて……」 小さな仲良し三人は俺達が店を出ると言うまで、俺達の意見を右から左へ受け流して自分の型の優位を主張し続けた。 オルフェ♡ カッコいいっス! 流石っす!! そう、今までの【武装神姫2036】は楽しくも、何かが足りませんでした。 その何かとはアルトレーネのことだったのです! ああ、オルフェのさらなる活躍を目にするのはいつになることやら…… 第四巻を楽しみに待ちましょう。 Wikiだと文の前に空白を置けないんですね。 知りませんでした。 15cm程度の死闘トップへ
https://w.atwiki.jp/2chbattlerondo/pages/170.html
キャンペーン バトルロンド3周年感謝祭 西園寺アイランド? サマーフェスタ2009 極秘ファイルを入手せよ! バトルロンド2周年感謝祭 ウインターフェスタ(2008) 2nd Anniversary サマーフェスタ バトルロンド1周年感謝祭 ウィンターフェスタ 第五弾、第六弾参戦発表記念? 1st Anniversary 初回ログインキャンペーン バトルロンド3周年感謝祭 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/anniversary03/ 期間2010年4月22日(木)14 00~2010年5月10日(月)10 00まで キャンペーン内容 新人オーナー応援キャンペーン・試用チケット8枚プレゼント! アイテムプレゼント! スタッフ神姫を探せ! 期間限定特別ミッション「神姫プラネットを開拓せよ!」 お詫び/3周年イベントミッション無期延期のお知らせ 10.04.28バトルロンド3周年感謝祭「神姫プラネットを開拓せよ!」の実施により、サーバーアクセスに時間がかかる不具合が発生しておりますため、本イベントは無期延期とさせていただきます。 上へ戻る 西園寺アイランド? 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/sp_mission02/rule.html 期間2010年3月18日(木)14 00~2010年まで3月31日(水)10:00まで ※3月30日(火)10 00から延長 詳細は西園寺アイランド?のページにて。 上へ戻る サマーフェスタ2009 期間限定のイベントミッションや、アイテムプレゼントもございますので、すでにバトルロンドで遊んでる方も、 これからバトルロンドを始める方もふるってご参加下さい!! 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/summer_festa02/index.html 期間2009年7月23日(木)12 00~2009年9月8日(火)12 00まで ※9月1日(火)12:00から延長 キャンペーン内容 イベントミッション「サイバーテロから街を救え!」 アイテム「鈴リボン(黒)」プレゼント!! バッテリー消費量半減! 詳細はサマーフェスタ2009のページにて。 上へ戻る 極秘ファイルを入手せよ! トレジャーアイランド消滅まであとわずか!極秘ファイルを探し出せ! 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/sp_mission/index.html 期間2009年6月18日(木)12 00~2009年6月29日(月)12 00まで キャンペーン内容 トレジャーサーチ 神姫オーナー一致団結せよ! 未確認物体あらわる! 詳細は極秘ファイルを入手せよのページにて。 事前に常設ミッションとして設置されていたトレジャーアイランドの情報はこちら。 上へ戻る バトルロンド2周年感謝祭 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/anniversary02/ 期間2009年4月23日(木)PM12 00~2009年5月25日(月)PM12 00まで キャンペーン内容 揃えてGET!ビンゴバトル! スタッフ神姫を倒せ! ログイン時、アイテム「バースデーキャンドル」プレゼント バッテリー消費量半減 詳細はバトルロンド2周年感謝祭のページにて。 上へ戻る ウインターフェスタ(2008) 期間限定のイベントミッションや、アイテムプレゼントもございますので、すでにバトルロンドで遊んでる方も、 これからバトルロンドを始める方もふるってご参加下さい!! 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/winter_festa02/index.html 期間2008年12月19日(金)12 00~2009年1月19日(月)12 00まで キャンペーン内容 イベントミッション サイバーフロント強襲作戦 アイテム「結晶の髪飾り」プレゼント! バッテリー消費半減! 詳細はウインターフェスタ2008のページにて。 上へ戻る 2nd Anniversary 武装神姫発売二周年記念!! 公式ページhttp //www.busou.konami.jp/anniversary/an2008.html 期間2008年9月12日(金)~2008年9月24日(水)12 00まで キャンペーン内容 その1 武装神姫オリジナル壁紙配信!(現在も入手可能) その2 アイテム「薔薇の髪飾り」プレゼント! 上へ戻る サマーフェスタ 期間限定のイベントミッションや、アイテムプレゼントもございますので、すでにバトルロンドで遊んでいる方も、 これからバトルロンドを始める方もふるってご参加ください!! 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/summer_festa/index.html 期間2008年7月18日(金)PM12 00~2008年9月1日(月)PM12 00まで キャンペーン内容 イベントミッション「ドッキドキ・トレジャーアイランド」 ログイン特典「イヤリング(ムーン)」プレゼント!! バッテリー消費半減 詳細はサマーフェスタのページにて。 上へ戻る バトルロンド1周年感謝祭 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/anniversary/index.html 期間2008年4月23日(水)PM12 00~2008年5月7日(水)PM12 00まで キャンペーン内容 スタッフ神姫を倒せ 魚拓ランキング アイテム「腕時計(白)」プレゼント バッテリー消費量半減 フブキ立体化プロジェクト始動 上へ戻る ウィンターフェスタ バトルロンドを遊び込んでいる人も、これから“ちょっと始めようかな?”という人も、この冬、バトルロンドをプレイする人みんなが“得”しちゃう4つの特典を紹介! 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/event/winter_festa/index.html 期間2007年12月21日(金)PM12 00~2008年1月7日(月)PM12 00まで キャンペーン内容 イリーガル・レプリカ討伐指令 アイテム「雪ダルマ」プレゼント バッテリー消費量半減 神姫ポイント購入者に抽選でプレゼント 詳細はウィンターフェスタのページにて。 上へ戻る 第五弾、第六弾参戦発表記念? アイテム「ローズブーケ(青)」をプレゼント!2008/3/21 12 00~4/7 12 00の間にバトルロンド・ジオラマスタジオにログインした方全員に、アイテム「ローズブーケ(青)をプレゼントいたします! 上へ戻る 1st Anniversary 武装神姫発売一周年記念! 公式ページhttp //www.busou.konami.jp/anniversary/index.html 期間2007年9月7日(金)PM12 00~2007年10月8日(月)PM12 00まで キャンペーン内容 その1 「武装神姫一周年記念オリジナル壁紙」プレゼント(現在も入手可能) その2 アイテム「ローズブーケ(黄)」プレゼント 上へ戻る 初回ログインキャンペーン 初回ログイン 無料パーツプレゼントKONAMI IDを作成し、武装神姫(バトルロンド・ジオラマスタジオ問わず)に最初にログインした時点で以下のアイテムがプレゼントされます。 忍者型フブキ 一体 忍装備 一式 武器「忍刃鎌“散梅”」 腰装備「忍草摺“紫蘭”」 胸装備「忍装束“紫苑”」 急速バッテリー充電器 10個(使うとなくなってしまう消費アイテム) 武装パーツ試用チケット 3枚(使うとなくなってしまう消費アイテム) その他補足他の忍装備は アチーブメント を達成すると貰えます大手裏剣“白詰草”はアクセスコードを入力すると貰えますhttp //www.shinki-net.konami.jp/info/tgs2006rpt.html 公式ページhttp //www.shinki-net.konami.jp/battlerondo/start/campaign.html 上へ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2503.html
キズナのキセキ ACT1-12「ストリート・ファイト その1」 □ 戦いが始まる。 四人は一斉に物陰へとダッシュした。 リアルバトルは実際に銃弾が飛び交う。そばにいたらただではすまない。 ティアを戦場に残すことにためらいを感じながらも、俺は物陰に身を隠す。 少し離れた壁際に、頼子さんの姿が見える。 「マグダレーナの方、頼めますか!?」 「了解よ。……三冬! マグダレーナを押さえなさい!」 「承知しました」 俺の無理なお願いに、頼子さんと三冬は即答してくれた。 相手は得体の知れない凶悪な神姫だというのにもかかわらず。しかし、頼子さんからはこの対戦を楽しんでいる節すら感じられる。 どちらにしてもありがたい話だった。 「ティア。ストラーフを引きつけて、マグダレーナと距離を取れ」 『了解です』 ティアの返事がワイヤレスヘッドセット越しに聞こえた。 今回は、今までに経験したことがない異質なバトルであるが、二対二の状況であればなんとかなるだろう。 勝てなくてもいい。 時間を稼ぐのが目的なのだ。 菜々子さんと接触する直前、大城に携帯端末からメールで連絡を入れた。 しばらく待てば、大城は警察を連れてここにやってくるはずだ。 ■ 今日のバトルはいつもと勝手が違う。 いつもはゲームセンターでのバーチャルバトルだから、試合後のダメージは気にしなくてもいい。 でも、今日のリアルバトルでは、そうはいかない。ダメージは自分の身体にも装備にも残ってしまう。いつも以上にしっかりと回避しなくちゃいけない。 でも、リアルバトルに気後れすることは、わたしはなかった いつもの訓練はだいたいマスターの部屋でやっているし、朝のお散歩の時には公園を全力で走ったりもする。現実で走り続けることには慣れている。 ただ、少し心細いのは、武装。 いつもはマスターがサイドボードから武器を次々に送り込んでくれるけれど、今はそうはいかない。 わたしは両手に持ったハンドガン一丁とナイフ一本だけで、ストラーフBisを相手にしなくてはならない。しかも、ハンドガンは弾を撃ち尽くしたらおしまいだ。 いつもより慎重に戦わなくては。 必ず隙を見せる瞬間はあるはず。その時にナイフを閃かせれば、勝つことができるかも知れない。 いいえ、きっと勝てる。 勝って、菜々子さんの目を覚まさせなくちゃ。 そうでなきゃ、ミスティがかわいそう。 だって、今わたしが相手にしているのは、神姫に見えなかったから。 ◆ 三冬とマグダレーナは対峙したまま動かない。 両者とも、お互いを強敵と踏んでのことか。 さぐり合うような時間、空間の緊張は刻一刻と増加する。 その空気を破ったのは、久住頼子の指示だった。 「三冬! 小細工は抜きよ! いきなりKOFモード!!」 「承知!」 短く応えた三冬。 その拳が炎に包まれた。 ハウリン型がデフォルトで身に付けている必殺技「獣牙爆熱拳」である。 三冬は、右の拳を肩と同じ高さに持ち上げ、肘を背中に引いた。 上半身を捻って半身になりながら、マグダレーナを見定めた。 「いくぞ……獣牙爆熱……」 右拳を前に鋭く突き出すのと同時、脚が地を蹴り、また同時に背部のスラスターを噴射、爆発的な加速で飛び出した。 「バアアアァァン・ナックルッ!!」 ……それは、往年の格闘ゲームの技であったという。 三冬は拳を突き出したまま、地表すれすれの超低空を翔け抜け、マグダレーナに突進した。 対するマグダレーナは余裕。 来ると分かっているパンチをかわせない神姫ではない。 わずかに身を翻し、燃えさかる拳をやりすごした。 しかし、三冬もそれだけで終わらない。 今度は左拳をフック気味に振るいながら、マグダレーナを追う。 「ボディが……甘い!」 ……これもまた、往年の格闘ゲームの技であったという。 左拳をなんなくかわされた三冬であったが、それだけでは止まらない。 右拳も同様にボディを狙うフック、そこからさらに右のアッパーにつなげる連続技である。 だが、マグダレーナは矢継ぎ早に繰り出される炎拳を、次々とかわした。 そして、大振りのアッパーをかわした瞬間に生まれる隙。 見逃さない。 マグダレーナは手にした燭台型のビームトライデントを上段に構え、振り下ろす。 しかし、三冬もただ者ではない。一歩踏み出し、燭台の根本を腕のアーマーで受け止めた。 「!?」 驚いたのはマグダレーナ。 燭台を受け止められた次の瞬間、マグダレーナの身体は宙に浮いていた。 燭台と三冬の腕の接点を軸に投げ飛ばされたのだ。 ところが三冬は、特に力を込めた風もない。 なにがどうなったのか。 疑問を覚えつつ、マグダレーナは空中で姿勢制御、背部装備のバーニアを噴射し、一気に距離を取る。 地表で、三冬の構えが見えた為だった。おそらくは対空攻撃の予備動作。 次の攻撃を悟られ、距離を取られた三冬であったが、そんなことは気にもとめない風に、悠然と構えを取る。 三冬にしてみれば、今の投げで大きな目的を果たすことができた。 マグダレーナに距離を取らせた。すなわち、マグダレーナと菜々子の神姫を分断することができたのだ。 マグダレーナと菜々子のストラーフは、ある程度のコンビネーションも可能だと考えられる。 対して、三冬とティアは今結成したばかりの急造ペアだ。コンビネーションなど望むべくもない。一対一の状況に持ち込むことが寛容である。だからこそ、ティアのマスターは、マグダレーナと距離を取るように、ティアに指示したのだ。 「なるほど……剛柔自在というわけか。むしろ、派手な技に隠された柔の技こそ、そなたの本質か」 マグダレーナがしわがれた声で感嘆する。 いままで、『狂乱の聖女』を投げ飛ばすことができた神姫など、何人いただろうか。 応えた三冬は、隙のない口調。 「我が奥様直伝の太極拳。最凶神姫と名高い貴様とて、見切れるものではない」 「確かに、受けてみなければ分からなかった……見切るのは骨が折れよう」 「技を見切る余裕など与えぬ」 「くくく……どうかな。その技、とくと見させてもらおうか……行け、スターゲイザー!」 マグダレーナが空いている左手をさっと振り上げる。 それと同時、彼女の両側に捧げられた十字架「クロスシンフォニー」が持ち上がり、銃火器としての役割を与えられる。 「クロスシンフォニー」を支えるのは細い腕。 それは背部の二つの大きな目玉のような装備につながっている。まるで、大きな目の形をしたランプの化け物が腕を持ち上げたかのようだ。 その巨大な目玉が光を放つ。 左右二体のランプ型がマグダレーナから分離した。 この二体こそが「スターゲイザー」……マグダレーナが使役するサブマシンである。 スターゲイザーは数瞬、その場で浮かんでいたが、不意に急加速し戦場に解き放たれた。 正面で構えるハウリン型に向かって襲いかかる。 □ マグダレーナが言い放った言葉……「スターゲイザー」を耳にして、俺は思わず視線を向けてしまう。 はたして、「スターゲイザー」の正体は、マグダレーナの背部にマウントされていた、二体のサブマシンだった。 神姫本体をサポートするサブマシンの存在は、武装神姫では珍しいものではない。ハウリンやマオチャオに付属するプッチマスィーンズや、エウクランテとイーアネイラの様に武装が変化してサブマシンになるもの、ランサメントとエスパディアの武装が合体して大型のロボットになる例もある。 だから、スターゲイザーの正体がサブマシンというのは、ある意味拍子抜けだった。 マグダレーナは、攻撃をスターゲイザーたちに任せて、高見の見物を決め込んでいる。 なんという余裕。 いくら二対一とはいえ、三冬がサブマシンに後れを取るとは思えない。彼女はファーストランカーなのだ。サブマシンを使う神姫と対戦した経験はいくらでもあるだろう。 サブマシンなど一瞬で蹴散らされてもおかしくはない。 ところが、三冬は苦戦していた。 スターゲイザー二体による波状攻撃に苦しめられている。 時には近接、時には銃撃。二体のサブマシンは、巧みな連携で三冬の動きを封じ込めていた。 三冬が攻撃に出ようとすると、途端に距離を取る。 三冬が前に出ようとすると、「クロスシンフォニー」の銃撃で牽制される。 冷静な三冬も苛立ちを募らせているのがよく分かる。 不意に、俺の胸に疑念が沸いた。 スターゲイザーは、サブマシンの動きにしては、巧み過ぎやしないか? サブマシンは、あくまでも神姫の補助に過ぎない。サブマシンを使う神姫がどんなに巧妙に戦いを組み立てても、相手神姫とサブマシンが互角以上の戦いをすることはないのだ。 だが、スターゲイザーはファーストランカーの三冬を相手に互角の戦いをしている。 強者相手に、なぜそこまで戦える? スターゲイザーの動きを注意深く見てみれば、明らかにサブマシンの範疇を越えている。 ケモテック社のプッチマスィーンズのように簡易AIを仕込んだサブマシンもあるが、それでもスターゲイザーの動きは異様だ。 操られているのではなく、まるで意志があるかのような、生物的な動き。 コントロールするマグダレーナの電子頭脳の要領が大きいとも考えられるが……。 そこまで走らせた思考に、俺は無理矢理ブレーキをかけた。 今はバトル中だ。しかも、初体験のリアルバトル。 ティアの戦いに意識を集中する。 ストラーフBisの動きは、イーダのミスティと違い、直線的で効率的だった。 『七星』の花村さんに聞いた、初期のストラーフのミスティがしていたのが、こんな動きだったのかも知れない。 だが、今のストラーフBisの動きは読みやすい。攻撃を「ジレーザ・ロケットハンマー」 に頼りきりだからだ。超重の、それもロケットブースター付きのハンマーであれば、攻撃方法は至極限定される。 縦に叩きつけるか、横に振り回すか、それだけでしかない。たとえストラーフの副腕であっても、一方向に振り抜くまでは切り返すことさえできないのだ。 当たれば致命的だが、回避が得意なティアには当たるはずのない攻撃である。 ティアの回避機動には余裕すら見える。 それでもティアが攻め手に欠けるのは、ストラーフBisの追加装甲が攻撃を阻むためだ。 よほどの隙を見いださない限り、有効なダメージは望めない。 ゆえに、この戦いは拮抗していた。 ◆ 「さすがはティアと言ったところね……でも、これならどう?」 菜々子がヘッドセットをかけ直し、指示を出す。 「ミスティ、踏み込んで!」 □ 「ティア、注意しろ。何か仕掛けてくるぞ!」 『はい!』 内容は聞こえなかったが、菜々子さんが何か指示を出した。 状況を打開する一手であることは間違いない。 こちらは時間稼ぎのバトルだが、菜々子さんたちは時間に余裕がないはずだ。なぜなら、裏バトルの自分たちの出番までに会場に入らねばならない。 それに、あんまり派手に暴れて見つかるのも得策ではないはずだ。特に桐島あおいは以前から裏バトルに出入りしているから、警察に捕まったりすればとても困るだろう。 だから、仕掛けてくるとすれば、向こうからなのだ。このバトルを早く終わらせるために。 ストラーフBisは縦横にハンマーを振るう。 ティアは余裕を持って避ける。 同じ展開が続く、と思ったその時。 「今よ!」 菜々子さんの鋭い指示がここまで聞こえた。 ストラーフBisは無言で突進してくる。いつもより一歩深く踏み込んできた。 「ジレーザ・ロケットハンマー」を振り下ろす。 それが避けられないティアではない。軽くバックステップしてかわす。 だが、ハンマーがアスファルトの路面を叩くのと同時。 ストラーフBisがさらに一歩前に出た。 この動きは想定外だ。 ティアはさらに下がろうとする。 しかし、それよりも早く、地面に叩きつけた反動を利用し、切り返したハンマーが、すくい上げるようにティアを襲った。 回避できないタイミングに俺は一瞬焦る。 「ティア!」 思わず自分の神姫を呼ぶ。 ティアは振り上げられたハンマーの一撃で宙を舞った。 しかし、空中で宙返りを決めると、何事もなかったかのように着地する。 「な……」 驚いたのは菜々子さんの方だった。必殺の一撃は命中したと思っただろう。 ティアはハンマーが激突する瞬間、自らハンマーの上に乗って、振り上げられる力に逆らわず後方に跳ねたのだ。 ひやひやさせる。 無事着地するまでは、俺も焦っていた。 「ティア、大丈夫か?」 『はい。大丈夫です。走れます』 「よし」 ティアの落ち着いた声を聞き、ほっとする。 そして実感する。 少しの不安でも心がすり減らされる。これがリアルバトルの緊張感なのだ。 ■ マスターにはああ言ったけれど、わたしは少し違和感を感じていた。 いまさっき、ロケットハンマーに乗った右のレッグパーツ。 どこが悪いとははっきり言えないのだけれど。 なんだか圧迫されているような、熱を持っているような、そんな感覚。 でも、走るのに支障なさそうだったから、大丈夫、と答えた。 相手のストラーフBisは、わたしがハンマーの一撃に乗って距離を取った後、追撃には来なかった。 躊躇した、という様子でもない。 ただ単純に、菜々子さんが驚いていて、指示を出していなかったから動かなかった、という感じ。 なんだか嫌な感じがする。 神姫であれば、マスターの指示がなくても、自分で考えて行動する。 指示と指示の間は、神姫が自由に戦える。 だけど、目の前の神姫はそうしない。 まるで、ただの操り人形みたい。 わたしは不気味に思いながらも、動き出す。 相手が動かないなら、好都合。 今度はわたしから仕掛けて、活路を探る。 自分で考えながら戦う。それがわたしとマスターの戦い方だ。 ◆ 『ねえ、あそこの人の胸ポケット、見える?』 「ええ、見えるわ」 『あそこに神姫がいるでしょう?』 「いるわね。何か叫んでいるようだけど」 『少しうるさいわ』 「そう? 何を叫んでいるのかしら」 『それこそどうでもいいことよ。あの神姫、うるさいから壊してしまいたいの』 「今はバトル中よ?」 『うるさくてバトルに集中できないわ』 「……あなたがそういうなら、仕方がないわね」 『それじゃあ、あのウサギの隙を突いて、指示をちょうだい』 「わかったわ」 □ 「ナナコ! 目を覚ましなさい! ナナコ!!」 俺の胸元で、ミスティが菜々子さんに呼びかけ続けている。 しかし、菜々子さんは反応する様子さえない。 ミスティを無視している……というより、ミスティの存在を最初から認識していないかのようだ。 一体、彼女の身に何が起こっているのだろう。 横道に逸れそうになる思考を、無理矢理引き戻す。 まだバトルの真っ最中だ。 今度はティアが自ら仕掛けた。 俺の思惑通りにティアは戦ってくれる。こんな小さなところに、いままで一緒に戦ってきたティアとの確かな絆を感じる。 立ち止まっているストラーフBisの背後から、頭に向けて牽制の射撃。 ようやく反応したストラーフがティアの方を向く。 ティアがさらに攻める。 ストラーフの副腕「チーグル」は防御のため、上げられている。 そこをかいくぐるように、姿勢を低くしたティアが滑り込む。 すれ違いざま、手にしたナイフが閃いた。 ストラーフBisの素体下腹部に裂け目が走る。 最接近したティアに対し、ストラーフの脚、副腕、ロケットハンマーが次々に襲いかかった。 「わっ、わわっ」 あわてた声を上げながらも、ティアは華麗なステップさばきで、ストラーフの断続的な攻撃を次々と避ける。 ティアならば、この程度の攻撃で後れを取ることはない、と俺は確信している。 いつものミスティや、『塔の騎士』ランティスの攻め方がはるかに厳しい。 ならば行けるだろう、このリアルバトルという状況であっても。 俺は心を決めて、指示を出す。 「ティア、ファントム・ステップだ!」 『はい!』 ◆ そのころ、三冬はいまだスターゲイザー二体による波状攻撃に苦しめられていた。 こうも間断なく仕掛けてこられると、鬱陶しくてかなわない。 しかも、操っている本人……マグダレーナは高見の見物を決め込んでいる。 何を企んでいる。 向こうの方が時間に余裕がないはずなのに。 三冬もいい加減、我慢の限界が来ていた。 「奥様! そろそろケリを付けましょう!」 「そうね……もう少し何を企んでいるのか探りたいところだったけれど……いいわ、蹴散らしなさい、三冬! ストリートファイター・モード!」 「はっ!」 三冬の気合い声が響く。 見た目に何か変わったようには見えない。 変わったのは、技の体系だった。 三冬は、二体の一つ目ランプのようなメカを、できる限り引きつけた。 「いくぞ……竜巻旋風脚!!」 ……それは往年の格闘ゲームの技であったという。 三冬はその場で飛び上がると、右足を振り上げる。同時に、背部のスラスターに点火、三冬の身体を持ち上げつつ、右方向に回転させる。 結果、三冬は高速回転による空中回し蹴りを炸裂させる。 さすがのスターゲイザーも、この動きには対応できなかった。 引きつけられていた二体は、まるで渦に吸い込まれるように、三冬の蹴りを食らったように見えた。 目玉のついたランプ型のサブマシンは、二体とも地面に弾き飛ばされる。 初めての有効打であった。 三冬のバトルスタイルのコンセプトは、頼子の趣味丸出しである。 頼子は学生の頃、それも菜々子が武装神姫を手にした歳と同じくらいから、ゲームセンターのビデオゲームが大好きだった。特に、対戦格闘ゲームというジャンルが。 以来、今の歳になるまで、一貫してゲームが趣味である。武装神姫にも、ゲームの一種という認識で手を出した。 頼子は考えた。 武装神姫のスペックを持ってすれば、現実には不可能な、格闘ゲームの超人的な必殺技の数々を再現できるのではないか、と。 結果、三冬は近接格闘メインの神姫となり、俊敏な動作重視のカスタマイズが行われ、頼子が健康と趣味のために学んでいた太極拳と、数々の格闘ゲームの技を修得した。 デビュー当時はキワモノ扱いされた頼子と三冬であったが、いまやそのバトルスタイルは、『街頭覇王』の二つ名とともに畏怖の象徴になっている。 回転を止め、空中から降下してくる三冬。 この瞬間は無防備だ。 その隙を突いて、黒い影が突進、ビームトライデントを繰り出してくる。 三冬はとっさに腕アーマーで払おうとした。 が、何かがそれを押しとどめ、かわりに背部スラスターを噴射した。 後方へと飛び退き、ビームの刃をかわす。 意識しての行動ではない。 積み重ねた戦闘経験がさせた無意識の行動だった。 繰り出されたビームトライデントを捌こうとするなら、ビーム自体ではなく、出力されているビームの根本……今の場合なら、燭台部分を払わねばならない。 しかし、マグダレーナの攻撃は、それを許さない間合いだった。 だから三冬は飛び退くしかなかった。 なんという絶妙の間合い取り。 三冬が戦慄する中、マグダレーナは不適な笑いを浮かべ、言った。 「くくっ……制空圏は把握させてもらった」 「……そう来たか」 三冬は苦い表情で、再び繰り出されるビームの刃を回避する。 制空圏とは、格闘家が持つ、有効な攻撃を放てる間合いのことだ。 達人クラスの格闘技者ともなれば、自分の周囲すべての間合いを把握しており、間合いの内に入れば、必殺の攻撃を繰り出せる。 三冬ならば、自分の有効間合いに入った相手を、太極拳の動きでからめ取り、地面に引き倒すことが可能だ。 その間合いはすでに結界に等しい。 それを制空圏と呼ぶのである。 マグダレーナは、三冬の制空圏を把握していた。 三冬は一つ舌打ちをする。 スターゲイザー二体に手こずり過ぎた。おそらくあのサブマシンどもで、三冬の制空圏を計っていたのだ。 今のマグダレーナは、初撃の時の迂闊さは見られない。 ビームの刃だけを制空権圏に触れさせ、三冬の攻撃が触れられないギリギリの位置で攻めてくる。 三冬はマグダレーナの攻撃をかわすたび、眉間のしわを深めた。 「くそ……」 「なるほど、よく持っているが……これならどうだ? スターゲイザー!」 マグダレーナの一声に、倒れていたサブマシンが再起動した。 まずい。 ただでさえやっかいなスターゲイザーの波状攻撃に、マグダレーナの巧妙なビーム槍の攻撃が加わっては、反撃もままならなくなる。 焦りが三冬の表情を険しくさせた。 それでも三冬は構える。 ピンチの時こそ冷静に。 ゆるり、と大型のアームが円を描く。 太極拳の螺旋勁。太極拳の動作の根幹をなす、基本中の基本だ。 頼子奥様と共に、毎日毎日鍛練を積んできた。 表情から焦りが消える。 襲い来る三つの影。 三冬は動きを止めない。自らの修練を信じ、迎え撃つ。 ◆ 三冬とマグダレーナが激しい戦いを繰り広げる中、久住頼子は物陰から少し顔を出し、桐島あおいの位置を確認する。 彼女もやはり物陰に隠れているが、その距離は意外に近い。 よし、と自分に気合いを入れ、声を上げて話しかける。 「あおいちゃん!」 「……頼子さん……公式ランカーのあなたがこんなところに来るとは予想外でした」 「わたしはね、ファーストランカーである前に、菜々子の家族なのよ」 「なるほど……」 頼子が今日ここに来たのは、ただマグダレーナの相手をするためだけではない。 頼子はこの二年間、あおいと会うことはなかった。 だからこそ疑問に思っていた。 菜々子から伝え聞いた、あの夏の豹変ぶりを。 あおいの本当の気持ちがどこにあるのか、確かめなくてはならない。 それはきっと、菜々子を助け出した後に必要になるはずだから。 「あおいちゃん、もうやめなさい。こんな戦いは不毛なだけだわ」 「仕掛けてきたのはそちらです」 「それだけじゃない。裏バトルへの参戦、そして壊滅。そんなことをして何になると言うの」 「わたしには……わたしとマグダレーナには、目的があります」 そう言うあおいの口調が、先ほどとは違うことに、頼子は気付いた。 うすら笑いしながらの穏やかな口調ではない。 しっかりと意志を持った、真剣な言葉。 あおいちゃん、あなた……。 彼女は狂っているのではない。正気だ。異常に見えるあおいの行動はすべて、彼女の正常な意志のもとに行われている。 あおいの……いや、あおいとマグダレーナ、二人の目的を果たすために。 頼子は眉をひそめる。 マグダレーナは、あおいの目的を果たすためにいるのではないのか? あおいの言葉からすると、マグダレーナもまた、自ら目的を持って、自発的に動いているということになる。 「目的って……復讐? ルミナスを壊されたことへの恨みなの?」 「復讐なんて……ルミナスを壊したエリアを壊滅させたところで終わっています」 あおいの言葉に苦笑が混じる。 復讐、ではない? 頼子は、あおいの行動原理が復讐だと思っていた。 最愛の神姫を破壊せざるを得なかった、裏バトル界すべてへの復讐。 「復讐じゃなければ、何だっていうの?」 「言えません」 「なぜ?」 「頼子さんはわたしと共に戦ってくれそうにはないからです」 「そんな理由で……わたしだけでなく、他の仲間たちも遠ざけて、たった一人で……そうまでしなくてはならないことなの、あなたの目的とやらは!?」 「同じ事を、菜々子にも言われましたよ」 ちらりと見えたあおいの顔。 一瞬苦笑していたが、眼は笑っていない。 「すみませんが頼子さん。わたしたちの行く手を邪魔するならば、たとえあなただろうと容赦はしない」 真摯で真っ直ぐな口調。強い意志を宿す瞳。 頼子は確信する。 狂っているのではない。 明確な目的意識を持って、最凶の神姫マスターを演じながら、裏バトル界を潰しにかかっている……! 頼子は一つ深呼吸をすると、気持ちを落ち着かせる。 再びあおいを見る。 頼子の顔に、ベテラン神姫マスターの、凄絶な笑みが浮かんだ。 「ファーストランカー相手に、随分と余裕の発言ね、あおいちゃん」 「マグダレーナならば、たとえファーストリーグ・チャンピオンでも敵ではありません」 「大きく出たわね……痛い目見るわよ?」 頼子は三冬に視線を移す。 彼女のハウリン型は、サブマシン二体とマグダレーナを相手に苦戦中だ。 制空圏の範囲を測られ、防戦一方になっている。だが、三冬が防御に徹しているがゆえに、マグダレーナの方も攻めきれずにいる。 ならばやりようもある。 「三冬! 一気に蹴散らすわよ! サイコクラッシャーアタック!」 「承知!」 三冬の返事には、少しの安堵と開放感が混ざっていた。 次へ> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2238.html
ウサギのナミダ・番外編 少女と神姫と初恋と その6 ◆ この試合のステージは、『山岳』ステージが選択された。 山岳ステージは、特に飛行タイプの武装神姫にとって、スタンダードで人気の高いステージである。 小高い丘陵と、森林、そして湖が広がる美しい舞台設定だ。 眺望の美しさもさることながら、地形を利用したテクニカルなバトルが展開されることになり、好ゲームになる率が高いステージでもある。 今回は両神姫とも飛行タイプ。 ギャラリーの熱は徐々に高まっていく。 「勝率がまた少し上がったな」 「運も味方したみたいね」 遠野と菜々子のつぶやきに、大城は首を傾げるばかりだ。 「なあ、いい加減、俺にも教えてくれよ。いったい、オルフェはどんな手を使うってんだ」 「試合を見ていればわかる。おそらく、俺が説明してる間に、試合が終わるから」 その言葉に、大城は改めて、試合の映し出されている、観戦用の大型ディスプレイを見上げた。 いままさに、『玉虫色のエスパディア』が、深緑の上を飛翔しているところだった。 ◆ 『玉虫色のエスパディア』ことクインビーは、森林上空を索敵しつつ飛んでいた。 今日のバトルは簡単だ。 初心者の新型を切り刻むだけでいい。 いつもはたくさんの武装を搭載しているが、今日はノーマル装備である。ほぼすべて近接武器という仕様だ。 だが、心許ないことはない。 むしろ体が軽くて機動性が上がり、いつもよりも戦える気さえしてくる。 彼女のマスターはいつも憎たらしい言動で、嫌われるのも当然かと思うが、バトルの腕は本物だ。 負ける要素が見あたらない。 クインビーはそう思っていた。 すると突然。 クインビーの直下、深い森の隙間から、何かが飛び出した。 「うわっ!」 猛スピードで突っ込んで来た白い塊は、そのままクインビーに激突、弾き飛ばした。 しかし、彼女は身体を振り、スラスターを器用に操って姿勢を制御。 すぐに正位置に戻り、体勢を安定させる。 その間に、激突した各部のチェック。 特にダメージは見られない。 激突してきた相手を見据えたときには、すでに臨戦態勢が整っていた。 クインビーの実戦経験の豊富さがなせる技であった。 クインビーは口元をゆがめ、ニヤリと笑う。 相対するのは、アルトレーネ・タイプのオルフェ。 今日のオルフェの装備は、ノーマルと違い、一対のメカニカルな翼が背中についている。機動性を上げ、先手を取る作戦か。 だが、追加装備はそれだけのようだった。 武器はデフォルト装備のツインランスのみ。 クインビーは思う。 ヤツは、千載一遇のチャンスを逃した! 奇襲ならば、今の一撃で勝負を決めていなければならない。 クインビーは間髪入れずに突撃を敢行する。 弾かれた後の間合いは中距離。 この一度の仕切り直しは、クインビーに有利に働く。 体勢を整える時間と、対峙するチャンスを与えてしまったのだから。 真っ正面から戦えば、圧倒的な実力差を発揮できる。 だからクインビーは突撃した。 蜂須は指示を出すまでもない。彼もクインビーと同じ考えだった。 ギャラリーの多くも同様に思っていただろう。 被我の距離はあっという間に埋まった。 オルフェはツインランスを副腕に持ち、待ちかまえている。 クインビーの背後から、アンテュースサブアームが繰り出される。 先端に装備されたのは、エスパディアの二振りの大剣「ジュダイクス」。 左右から、クインビーの超高速の斬撃が閃いた。 しかし。 「……なっ!?」 クインビーの斬撃は、オルフェに届かなかった。 エスパディアの副腕は、アルトレーネから伸びるカニのようなハサミ状のアームでがっちりと押さえ込まれていた。 クインビーは目を見張る。 オルフェの背中にある、追加された翼が展開し、巨大なアームになって、彼女の副腕を掴んでいたのだ。 今度はオルフェが動いた。 副腕で、ツインランスを正面から振り下ろす。 「くうっ……!」 クインビーは、かろうじて、手にした槍「リノケロス」でその一撃を受け止めた。 アルトレーネの副腕は力任せにクインビーを押し切ろうとしてくる。 じりじりと押される。 クインビーに焦りの表情が浮かんだ。 「くそっ、はなせっ!」 間合いを取るべく、オルフェの身体を蹴り飛ばそうと、脚を振り上げた。 しかし、その脚も、オルフェには届かなかった。 「な、なにっ……」 今度は、スカートアーマーが展開し、やはり巨大なカニのハサミ状のアームになっていた。 そして、クインビーの両脚をそれぞれ挟み込んでいる。 よく見れば、翼も腰のアーマーも同じ形状をしている。翼はアルトレーネのデフォルト装備である、腰部アーマーを組み替えたものなのだ。 そこまで理解したとき、クインビーは気が付いた。 今自分が置かれている状況。 オルフェに、サブアームを含めた四肢を、完全に押さえ込まれている。 まるで空中で磔になっているような状態だ。 クインビーは、正面のオルフェを見た。 戦慄する。 オルフェにはまだ手がある。 彼女はまだ、素体の両腕が自由だ。 今、オルフェは細身の剣を腰だめに構えている。 「ま、まて……」 なぜだ。どこにそんな剣を持っていたと言うんだ。 ふとクインビーの瞳に映ったのは、自分に振り下ろされているツインランス。 今は、ただのソードになっている。 オルフェはツインランスの片側をはずし、もう一本の剣として運用していた。 「そ、んな……そんな、そんな……」 オルフェはまっすぐにこちらを見据えている。 突きの構え。 身動きのとれないクインビーに、かわす術はない。 『オルフェ、いっけえええぇぇーーーーー!!』 「はああああぁぁっ!!」 安藤の叫びとともに、オルフェは躊躇なく突きを繰り出す。 はずすはずがない一撃。 刃はクインビーの胸元に吸い込まれ、CSCを貫いた。 「そんなああああああぁぁぁ……!!」 クインビー無念の叫びが響きわたる。 次の瞬間、『玉虫色のエスパディア』の身体は、無数のポリゴン片となって、砕けて散った。 ポリゴン片が舞い散る中、オルフェは展開していたハサミ状アームを、翼と腰部アーマーに戻す。 そして、二本のソードを振るい、ポリゴン片を吹き散らした。 はらはらと音もなく舞い散る光の粒子の中で、戦乙女は佇んでいる。 その幻想的な光景に、ウィンメッセージが重なった。 『WINNER オルフェ』 試合時間は五三秒。 あっと言う間のバトルだった。 ◆ 「勝ったーーーーーーーっ!!」 有紀の歓喜の叫びと同時、ギャラリーが一斉に沸き立った。 秒殺という、まさに圧倒的な勝利。 誰が見ても疑いのない、オルフェの勝ちである。 涼子と梨々香は、美緒の肩を抱きながら喜んでいた。 美緒自身は喜んではいたが、それ以上に安心しすぎて気が抜けたようになってしまっていた。 二人に揺さぶられて、左右に揺れる視界の中。 安藤は震える両手を見つめていた。 ◆ 遠野の作戦は、こうだ。 一週間という短期間で修得できることは数少ない。 現状のオルフェでも使いこなせる装備といえば、セットされている基本プログラムだけで動作できる、アルトレーネのデフォルト装備しかない。 そこで、オルフェの背中に、腰部パーツを組み替えた翼を増設することにした。 これはアルトレーネの発売前に、雑誌で見た組み替え例だ。 安藤の親戚が、アルトレーネの開発会社に勤務しているとのことで、現在入手困難なアルトレーネの装備を、無理矢理借りさせた。 これで一回の接敵で出せる手数は、エスパディアより多くなる。 「……それ、戦闘中の手数の意味とちがくねーか?」 「いいだろ、別に。勝ったんだから」 そして、蜂須に後からクレームを付けさせないためにも、誰にでもわかる圧倒的な勝利を演出する。 それも初手奇襲による一回の接敵で、である。 そこで考えたのが、先ほどの、大型のサブアームで相手を押さえ込む戦法だ。 相手が手も足も出ない状態での、決定的な勝利。 これなら誰も文句は言えまい。 この一週間のトレーニングは、オルフェが装備を自在に操れるようにすることと、副腕を持った神姫を押さえ込む、という動きに絞りこみ、それを徹底的にたたき込むメニューを作った。 結果は大成功と言っていいだろう。 だが、大城はまだ首を傾げている。 「だけどよ。俺が奴らを見張っていたことに、何の意味があるんだ?」 「それはこの策の大きなポイントだ。 そもそも、玉虫色が安藤を侮っていて、何の対策も行わず、エスパディアのデフォルト装備で戦うことが、大前提の策なんだ。 ヤツが何か対策をするなら、策を練り直さなくちゃならない。『ポーラスター』来られても困る。 そのためにどうしても、監視役が必要だった」 平日来ない遠野が監視役では怪しまれる。 菜々子やシスターズは、オルフェの練習相手に必要だ。 だから、大城にしかできない役目であり、「何もない」という日々の報告が作戦の成功を裏付けたのだった。 「まあ……そんならいいけどよ」 つっけんどんな口調だったが、大城の顔はまんざらでもなさそうだった。 ◆ バトルが終わった後、その衝撃的な勝利の余韻が、いまだに安藤を震わせていた。 自分の両手を見つめている。 手のひらはじっとりと汗ばみ、いまだに細かい震えが止まらない。 それほどに、安藤にとって、今のバトルは衝撃的だった。 百パーセント勝てない、と言われていた対戦だった。 それを覆すために、バトル前から戦いは始まっていた。 知略を尽くした作戦と、それを可能にするための事前の特訓メニュー。 死にものぐるいで身につけた、バトルの基本と技、そして対策のための動き。 オルフェと二人で強敵に挑み続け、戦い抜いた一週間。 その結果、オルフェは、ミスティの必殺技『リバーサル・スクラッチ』さえ、展開したアームで止めることに成功した。 安藤の想い、オルフェの想い、この試合に運命を賭けられた少女の想い、仲間たちの想い、安藤たちを支えてくれた『ポーラスター』の人々の想い。 そして、厳しい訓練を支えた、マスターと神姫の絆。 それらすべてが、この五三秒に結実していた。 安藤は、はじめて遠野に会ったときの、彼の言葉を思い出す。 「すべての要素が噛み合って、はじめて勝利を手にすることができる」 まったくその通りだった。 すべての要素が噛み合ったとき、まるで流れるように、思った通りに試合は進み、興奮が一気に沸き上がった。 だから、最後の一撃の時、思わず叫んでいた。 そして、試合が終わった今も、震えが止まらない。 アクセスポッドが軽い音を立てて開いた。 「マスター! わたし、勝ちました!」 すぐに、安藤の神姫が顔を出し、彼を見上げてそう言った。 花咲くような笑顔。 安藤はまだ回らない頭で言葉を探しながら、答えた。 「そう、そうだな……オルフェ、よくやった……」 口をつく言葉も震えている。 だが、言葉にしたことで、安藤の心の底から、ようやく溢れてくる気持ちがある。 それは歓喜だった。 開いていた両手を握りしめる。 安藤はオルフェを見つめ、笑いかけた。 「そうだよ、オルフェ、お前は……最高だ!」 「はい!」 興奮気味のマスターに、オルフェも表情いっぱい喜びを露わにした。 ◆ 「み、認めない……こんなバトル認めないぞ!」 放心していた蜂須が叫びだしたのは、筐体の表示が待機状態に戻ったころだった。 蜂須の怒鳴り声に、歓声が徐々に収まってゆく。 蜂須は顔を真っ赤にして、安藤に大声で文句を付けた。 「オレが、てめえみたいな初心者に負けるはずがねえ! 今のは練習だ! これから本番、もう一回勝負だっ!」 「ああん? 自分が負けたからって、何勝手こいてんだよ」 肩をすくめて応じたのは有紀だった。顔に呆れたような笑みを浮かべている。 「ふざけんな、今のは練習だったから、ちょっと油断して手ぇ抜いてたんだよ! そうじゃなきゃ、オレが負けるはずがねえだろ!」 「は、そんなの、油断してたお前が悪いんじゃねーか、明らかに」 「うるせえ! とにかく、今のバトルは無効だ! もう一度勝負しろ!」 「勝ったのに、もう一度バトルしてやる理由がねえだろ、バーカ」 「黙れ、デカ女! オレは安藤に言ってんだよ!」 蜂須が激しく睨みつけている。 安藤は静かに蜂須を見据えた。そしてはっきり言った。 「断る」 「なんだとぉ!? てめえ、練習試合で、しかもまぐれで勝っといて、勝ち逃げする気かよ!」 「するさ、勝ち逃げでも何でも。今のは練習じゃない、俺は真剣に戦った。まぐれだって勝ちは勝ちだ。もう二度と、あの条件でバトルする気はない」 「くそっ、卑怯者! だいたい、こっちがノーマル装備で戦ってやってるのに、お前は武装強化しやがって……どこまできたねえんだよ、てめえは!!」 その発言に、梨々香が肩をすくめて反論した。 「ノーマル装備で勝ったら、美緒ちゃんにやらしーことするって条件を出したの、そっちじゃない。それで喜んでノーマル装備でバトルしてたのに、相手を卑怯者呼ばわりはないんじゃない?」 すると、ギャラリーが一斉にブーイングをした。 その声があまりにも大きくて、安藤が驚いたほどだ。 ギャラリーはわかっている。卑怯なのは玉虫色の方だということを。 そもそも、彼をいけ好かないと思っている常連は多い。 今まで溜まった鬱憤が、ここで吹き出したのだ。 蜂須は戸惑いながらも、それでもなお食い下がろうとした。 「だ、だったら、今の勝ちは認めてやる。三本勝負にしてやるよ。先に二勝した方が勝ちだ!」 「負けたから三本勝負にするって……小学生じゃあるまいし」 心底呆れた表情で涼子が言う。 ブーイングはさらに強まった。 「うるさいうるさいっ! オレは三強だぞ!? このゲーセンで三本の指には入る強さなんだぞ!? こんな初心者のバカに負けたなんて認めるか!」 「……いい加減にしとけ、玉虫色の。もうお前は三強とは呼べん」 「な、なんだと……!?」 蜂須は驚いて、その声の主に顔を向けた。 ギャラリーの中に立っているその人物は、坊主頭で筋肉質の男だった。 彼は、蜂須と同じ『三強』の一人、『ヘルハウンド・ハウリング』のマスター・伊達正臣である。 「な、何言ってんだよ、ヘルハウンド……」 「初心者に油断して後れを取ったヤツに、三強を名乗る資格なんかない。しかも、女を弄ぶ権利を賭けてのハンデ戦なんて……バトルに対して誠意がないにもほどがある」 「あんなのはまぐれだ! ただのまぐれ、運が良かっただけだ!」 「本当にそう思ってるのか、玉虫色の」 「な、なんだよ……」 「あの戦い方を見て、なんとも思わなかったのか。 そこのアルトレーネ・タイプは、戦う前から作戦を立て、きっちり準備してお前とのバトルに望んだ。お前が実力差に溺れて、油断してくることも計算に入れて、な。 そのくらい、端から見てたってわかる。 初心者の彼の方が、よほどバトルに誠意があったぞ」 その言葉に、蜂須は激昂した。 「うるせえよ、ヘルハウンド、オレを裏切る気か!?」 「味方ができないような状況にしたのは、おまえ自身だ」 伊達は蜂須の言葉を静かに受け流した。 そして、淡々と言葉を続ける。 「最近じゃ、三強の株はガタ落ちだ。 『エトランゼ』とのバトルじゃ一方的に負け、『アーンヴァル・クイーン』には相手さえしてもらえず、虎実は俺たちを押しのけてランバト一位獲得……。 それで今日は、初心者に後れを取って敗北……三強という称号にとどめを刺したのはお前だ、玉虫色」 蜂須は愕然とした表情のまま言葉もない。 ギャラリーも、伊達の言葉に、静かに耳を傾けていた。 「今日限り、『三強』という称号をおしまいにする。俺はもう、そう呼ばれるのをやめる。今日からはただの『ヘルハウンド・ハウリング』だ。そしてもう一度ランバト一位を目指す。お前も一神姫プレイヤーに戻れ」 「冗談じゃねぇ! てめえ、勝手に決めんな……」 蜂須の声が尻すぼみになる。 彼の声をかき消して、ギャラリーから時ならぬ拍手が起こったからだ。 皆、ヘルハウンドの潔さを賞賛していた。 伊達はそのまま、蜂須に背を向けて、ギャラリーの中に消えた。 その隙間から、こちらを見て首を振り、やはり背を向けた男が見える。 もう一人の三強『ブラッディ・ワイバーン』のマスターだった。 蜂須は呆然とする。 彼も伊達と同意見と言うことだった。 「認めねぇ……」 蜂須はようやくに声を絞り出し、安藤たちを憎悪の視線で睨んだ。 「こんなの、俺は絶対に認めねぇぞ! ちくしょうっ! 覚えてろよ、てめえら……っ!!」 捨てぜりふを残し、蜂須はゲーセンから小走りに立ち去った。 あとに、彼のチームのメンバーたちが続く。 こうして、『ノーザンクロス』における、三強の体制が崩壊したのだった。 ◆ 「自分から三強やめるなんてな……遠野、ここまで予想してたのか?」 「まさか。……だが、俺たちの望んだとおりになった。結果オーライだ」 腕を組んで、遠野は静かにそう言った。 菜々子は隣でそっと微笑んでいる。 三人は視線をかわし、静かに笑った。 やがて、安藤がLAシスターズの四人と共に、こちらへとやってきた。 安藤と美緒は並んで遠野の前に立つ。 「遠野さん、ありがとうございました!」 二人は深々とお辞儀する。 二人の後ろでは、シスターズの三人もかしこまって礼をした。 安藤は遠野に心から感謝していた。彼の策がなければ、今頃本当にどうなっていたのか分からない。 だが、顔を上げた安藤に、遠野は手を振って言った。 「あー、お礼なんかいい。俺は大したことは何もしてないし」 「え……でも、遠野さんの策と訓練メニューがなければ……」 「あんなのは、偉そうに命令してただけだろ。礼を言うならむしろ、協力してくれた八重樫さんたちと、久住さん、大城にしてくれ」 ぶっきらぼうな口調に、安藤は困ってしまった。 後ろで吹き出す音がする。 涼子だった。 彼女は安藤に耳打ちするように、 「照れくさいのよ、師匠は」 と言った。 なるほど、明後日の方向に視線を投げているのは、実は照れ隠しなのか。 陸戦トリオにLAシスターズ、そして安藤が、ようやく緊張を緩め、誰もが笑っていた。 ようやく訪れた、穏やかな時間。 ふと、遠野がこんなことを言い出した。 「チームを作るか……」 その場にいた全員が、思わず遠野を凝視する。 実は以前から、菜々子や大城が「武装神姫のチームを組もう」と言っていた。 しかし、遠野はそれに乗らなかった。彼はバトルロンドで勝敗にこだわっていない。だからチームを組むメリットがない、現状維持で十分、というのがその理由だった。 ところが、遠野が自分から言い出したのだから、驚いて当然である。 「どうしたの、急に?」 「今回の件で、気が変わった。 ……どうも俺は、誰かの世話を焼くのに、自分が納得の行く理由が必要らしい。 チームメイトなら、理由には十分だろう?」 菜々子がと大城は、顔を見合わせ、同時に遠野を見た。 珍しく、優しい表情で皆を見渡している。 すると二人は、先を争うように、焦りながら遠野に尋ねた。 「それで、わたしは数に入ってる!?」 「俺は、俺はメンツに入れるんだろうな!?」 「……君らがいなくて、どうやってチーム作れって言うんだ、俺に」 遠野は不思議そうな顔をしてそう言った。 二人は喜びのあまりハイタッチなんかしている。 わけがわからない。 遠野にしてみれば、二人がいなければ最低限のチームにもならず、むしろ困る。 だが、自分のチームのメンバーになっても、大してメリットがない。これからはじめる弱小チームだ。 チームメイトになったところで、喜ばしいなどとは、到底思えないのだった。 ところが、二人よりも焦っている人物がいた。 遠野の一番弟子を自称する涼子は、胸ぐらを掴みあげかねないような勢いで詰め寄った。 「遠野さん、わたしは!? 私はチームに入れますか!?」 続いて、他の三人も遠野に詰め寄る。 「わたしも遠野さんのチームに入れてもらえませんか?」 「あたしは菜々子さんの一番弟子だから、当然入れてもらえますよね!?」 「わたしだけ仲間外れはなしです!」 美少女四人に詰め寄られ、遠野はどん引きしていた。 なんでそんな必死な顔して、俺のチームに入りたがるのか。 そんな疑問を払拭しきれなかったが、それでも遠野はこう言った。 「ああ……君らなら、断る理由がない」 四人は、きゃー、と喜びの声を上げた。 元からLAシスターズは誘う予定だったので、ある意味予定通りだったが、どうにも解せないといった表情で、遠野は首を傾げた。 当人は気が付いていないが、あの『ハイスピードバニー』がチームを組むと言って、メンバーがその名を知られた『エトランゼ』と、現ランキングバトル・チャンピオンだったら、このゲームセンターで注目を集めない方がおかしいというものである。 「で、俺から一つ、メンバーのみんなに提案があるんだけど」 ひとしきり騒ぎが収まったところで、遠野はみんなに向かってこう言った。 「このメンバーだと、チームで飛行能力を持つ神姫が圧倒的に不足してる。そこで、『三強』を倒した期待のルーキーをスカウトしようと思うんだが……どうかな?」 遠野はメンバーをぐるりと見回したあと、安藤に視線を投げた。 口元に笑みを浮かべてみせる。 メンバーは皆、笑って頷いていた。 ああ、そうか。 なぜ、美緒たち四人が、遠野のことを尊敬しているのか。 安藤はようやく分かった気がした。 ◆ 「俺は、武装神姫を続けるよ」 数日後。 すでに恒例と化した、屋上での昼食。 美緒が持ってきた手作りのお弁当を、満面の笑みで食べ尽くしたあと、安藤がそう言ったのである。 「チームに入るの?」 「うん。誘われたってのもあるけど……あの遠野さんに付いていきたいと思ったんだ。 それに、この間の対戦が忘れられない。……バトルロンドって、すごく面白いよな」 微笑みながら言う安藤は、いつもながら爽やかだ。 美緒はそんな彼をまぶしそうに見つめた。 ふと、思いついたことを口にする。 「でも、玉虫色との対戦……なんであんなに頑張ってくれたの?」 美緒が傍目に見ても、クインビーとの対戦までの一週間の訓練スケジュールはスパルタだった。 一週間でエトランゼの必殺技を受け止めようなんて、無謀すぎる。 しかし、遠野の提示した訓練メニューを、安藤とオルフェは忠実に、そして完璧に実行したのだった。 それは並大抵の努力ではない。 安藤は、少し口ごもるように、答えた。 「ああ、それはさ……好きな女の子守るためなら……やるよ」 「…………え?」 「俺、八重樫のこと好きだから」 彼女自身が予言したとおり。 美緒の視界の中で、天と地がひっくり返った。 「お、おい、八重樫! 大丈夫か!?」 美緒はあまりのことに卒倒した。 そして、美緒を抱き起こす安藤の視界の外。 盗聴していた数十人の女子は、一斉に卒倒していた。 ◆ 安藤智哉にとって、八重樫美緒は、理想の彼女像の塊だった。 安藤の姉・智美は、智哉にとってコンプレックスの対象である。 外ではカリスマモデルとして活躍する姉であるが、家では男勝りで乱暴、弟を顎で使う傍若無人な人物だ。 しかも、美人でスタイルもよく、頭もいいし運動もできる。そして、溢れ出るカリスマ性。 いつしか、智哉の嫌いな女性像は姉・智美になっていた。 彼女にするなら、大人しい女の子がいい。図書館で本を読むのが似合うような、知的な美人だ。 スタイルはいいに越したことはないが、姉のようなモデル体型の痩せぎすはごめんだった。健康的なスタイルの女の子がいい。 そして、性格は優しいのがいい。明るくて、気遣いができて、落ち着いた性格の女の子。 姉とは全く正反対。 そんな都合のいい女子がいるだろうか? いるはずがなかった。なにしろ、世の女性は皆、Tomomiのようになりたいと思い、ファッション雑誌を買うのだから。 だが、安藤は出会ってしまった。 高校入学の日、クラスメイトになった女の子。 八重樫美緒は、彼の理想のすべてを兼ね備えていた。 つまり、安藤は美緒に一目惚れだったのだ。 ◆ こうして、安藤を巡る闘争は終わりを告げた。 女子連は、戦う前から、美緒に敗れていたのだった。 戦いは、いつも、むなしい。 (少女と神姫と初恋と・おわり) Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/busou_bm2/pages/156.html
とにかく、新作を出してほしいな・・・ -- (名無しさん) 2015-07-08 00 06 54 コンマイは全てのユーザーを敵に回した以上、次回作を望むのは無理と見るべし。 -- (名無しさん) 2015-07-08 17 41 41 全てのユーザーってなんかあったっけ? -- (名無しさん) 2015-10-12 00 03 50 武装神姫のゲームによるブーム復活、 その先駆けとして、バトマス最新作が出たら、買う。 -- (名無しさん) 2016-01-26 17 02 52 仮にリメイク版が出るなら最初から黒子を使わせてほしい…あんばるが最初からいるのに対がF2後って… -- (名無しさん) 2016-03-25 16 08 41
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1062.html
第8話 「初戦」 「ンなーっはっはっはっはァ! ぅワガハイの最高傑作! バイオレント・ブラック・バニー! 略してB3(ビー・キューブ)よ! 今日は最高の成果を期待しておるぞォ!」 「サー、コマンダー」 「……なぁ、神姫のオーナーってのは皆あんなテンションなのか?」 「……私は今まで以上に遼平さんの事が好きになれそうです」 武装が揃ってから更に3日。 ネットで行える簡易バーチャルトレーニングで大体の動き方をマスターした俺とルーシーは、いよいよ初の実戦に参加する事にした。 ……と言ってもそう大げさな話じゃない。 今や武装神姫を扱った店は街のそこかしこにあり、神姫オーナーであればいつでも参加できるシステムを設置している店もあるのだ。 休日なんかにはちょっとした大会が開かれる事も多いようだが、普段行われるのは公式トーナメントやリーグ戦みたいなモノじゃなく、個人同士の草バトルって所だろう。 で、そんな俺たちの初陣の相手が、さっきからハイテンションで大騒ぎしてるオニイチャンってワケだ。 年は俺より少し若いくらいで、なんだかヘンなシミだらけのズボンにベスト、ご丁寧に頭には同じ模様のハチマキをしてる。 「アレはシミではなくて都市迷彩です。 それにハチマキじゃなくてバンダナですよ」 ルーシーが小声で注釈を入れてくるが、俺はそういうのに詳しくないんだって。 ま、そういう事に疎い俺でも分かるくらいにあからさまなファッションの軍隊フェチだった。 「退くな媚びるな省みるな! 敵前逃亡は問答無用で軍法会議! 兵士に命を惜しむ事など許されぬ! そう、お前の前に道はなく、お前の後ろに道が」 「そろそろ選手のご登録をお願いしたいのですが宜しいですか」 「あ、ハイ」 天井知らずに上がりっぱなしのテンションは、店員さんの必要以上に事務的な口調に大人しくなった。 っと、こっちにも来た。 「それでは、こちらにオーナー名と神姫のパーソナルデータ入力をお願いしますね」 キツめな感じの美人さんだけど、さっきと違ってにこやかだ。 どうやら店員さんもアレはやかましいと思ってたらしい。 えーっと、そんじゃ… オーナー名:藤丘 遼平 武装神姫:TYPE DEVIL「STRARF」 ニックネーム:ルーシー と、こんなトコかね。 『それでは両者、スタンバイ!』 さっきの店員さんによるアナウンスが入る。 「ビィィィ!キュウゥブッ! んGoGoGoGoォオゥ!!!」 「サー、コマンダー」 「んじゃ行くか、ルーシー?」 「ハイ。 あなたとなら、何処までも」 ……何処で憶えてくんのかね、そういうセリフ。 崩れたビルの立ち並ぶ廃虚をステージに、バトルはスタートした。 まずは索敵からか。 「相手のバッフェバニーは遠距離戦闘重視の重火器装備型…『ガンナー・ブラスター』です。 早めに接近しないと厄介ですね」 「初陣が真逆のタイプってのは嫌なもんだな」 「負ける気はありません…前方に反応」 緊張した言葉とほぼ同時、ビルとビルの隙間を縫うようにして何かが迫ってくるのが目に入った。 一瞬戸惑った俺が命じるより早く、ルーシーは大きく跳んで回避行動を取っていた。 着弾。 閃光。 爆発。 「…ミサイル?」 「誘導式ではないので、正確にはロケットですよ。 妄想スレ第2段の198さん、ありがとうございました」 「誰?」 「こちらの話です。 …来ますよ」 崩れたビルの残骸を乗り越えて敵が姿を現す。 左肩にはバズーカ砲、ロケットポッドを右肩に。 両手にはそれぞれガトリングガンと大ぶりのコンバットナイフを携え、のっしのっしと歩みを進めてくる……その顔は赤いスコープにガスマスクのせいで表情が読めない。 『ンなーっはっはっはァ! そこな新兵! こそこそ隠れて様子見とは兵士の風上にも置けぬ奴! このB3とワガハイが、フヌケた貴様らに戦場における鉄の掟というモノを叩き込んでくれるわっ!』 あーうるせぇ。 「ドンパチのルールブックにゃ不意打ち上等って書いてあんのか?」 『ムっふっフーン、モノを知らぬ奴め。 この世には『勝てば官軍』というすンばらしい言葉があるのだ! 勝った者にのみ全ての権利が与えられる! 即ちルールを決めるのもまた勝者! つまりすなわち勝利は勝ぁぁぁぁぁっつッ!』 「サー、コマンダー」 ……本格的にワケ分からんなお前ら。 「ま、向こうさんから来てくれたんなら探す手間が省けたな」 「そういう事を言ってる場合ですか」 すいっ、と持ち上げられたガトリングガンが狙いを定める前に、再び跳躍。 弾丸の雨が虚しくビルの壁を穿つのを尻目に、着地したルーシーがこちらに尋ねる。 「どうしましょう?」 「初の実戦なんだし……ここはやりたいようにやってみ」 「……了解」 『むヌぬっ、敵の眼前で作戦会議とは悠長な! 静かにせんかァ! ここは戦場だぞォ!』 相手オーナーの怒声を無視し、前傾姿勢になったルーシーは距離を詰め始めた。 ロケットポッドが迎撃を始めるが、最初の攻撃で誘導式でないと判っている。 最初から当たらない位置のモノは完全無視、被弾する位置にあるモノはサブマシンガンで撃ち落としていく。 その間、視線は相手に固定したまま。 『「なにー!?」』 くそ、向こうと俺の声がカブった。 つかルーシー、お前ちょっとスゴい? 距離が縮む事を嫌ったB3は後退を始めるが、なにしろこっちとは「一歩」の長さが違う。 あれよあれよと言う間に戦闘は至近距離でのそれに移った。 向こうもこの距離ではガトリングガンの取り回しは不可能だと悟り、もう1本コンバットナイフを取り出しての2刀流に切り替えた。 こっちもナイフ2刀流で斬り結ぶ! ……が、ルーシー自身の両手は空いているワケで。 サブアームが相手のナイフを押さえつけている間に、ひょいと掲げたサブマシンガンを相手の顔面に向けてブッ放しやがった。 ががががががっと派手な音がして頭が何度も揺れた後、B3は仰向けにぱったりと倒れた。 『んンNoおぉぉぉおおぉぉうッ!? B3! 応答せよびぃきゅうぅぅぅぅッぶ!』 「ルーシー、お前それちょっとエグい」 「勝てば官軍、負ければ賊軍……勝負の世界は非情なのですよ」 『衛生兵! えーせーへーえぇぇぇぇぇ!!!!』 しれっと言ってのける15センチ足らずのオモチャ。 コイツはやっぱり悪魔かなぁと思って嘆息した俺の視界で、動くものがあった。 「ッ……、」 どごおぉぉんっ! 突然起こった爆発に、俺の口から出かけた言葉が止まった。 スコープとガスマスクがダメージを緩和したのか、大の字になったB3の肩にマウントされたバズーカ砲から煙が昇り、射撃直後を物語る。 そして濛々と爆煙に包まれているのは……ルーシーの頭部付近。 「ルーシーっ!」 背筋の凍るような思いが俺の口を再び動かす。 「返事しろおい!」 「無事です」 冷静な声が響き、風に吹き散らされた爆煙の中からススけたルーシーの顔が見えた。 顔周辺のダメージはそんなものだが、片方のサブアームが手首の辺りから吹き飛んでいる。 どうやらそれを盾にして直撃を防いだらしい。 それを見てもB3は追撃しないし立ち上がらない。 どうやらバズーカは1発きりで、さっき与えた頭部への衝撃はオートバランサーか何かに影響を与えたらしい。 実質、勝負はここで決着ってワケだ。 ほっとした俺、ぽかんとしている相手オーナー、悔しげな表情のB3、無表情のルーシー。 なんだか妙な沈黙の後、ルーシーはおもむろにしゃがみ込んでB3のそばに膝を着くと、残ったサブアームを動かし始めた。 その手に握られているのは、ほとんど使う事もなく無傷に近いアングルブレード。 「はいはいストップストップ、もう終わっただろ。 こっちの勝ち」 俺の言ってる事を聞いているのかいないのか、ルーシーは見せつけるようにブレードを振り翳したまま動かない。 「こら、あんま脅かすなって」 刃に照り返る陽光を受けたB3の顔に、はっきりと恐怖の色が映る。 「ルーシー」 ぐっ、とアームデバイスのシリンダーが動く。 「やめろバカ!」 制止の声と風を一度に裂いたブレードが、鋭い音を立ててコンクリートの床に突き立った。 ……丸く湾曲した刃と床の隙間に、B3の白い首筋が挟まっている。 顔を上げれば、相手オーナーが白いハンカチを必死に振る姿があった。 「ンんバカモノおぉぉっ! 勲章ではなく命ひとつを持ち帰れば良いと教えたはづだろぉがっ!」 「サー、コマンダー」 「試合前と言ってる事が違うんだが……」 「アレがあの人たちの絆の形なのでしょう」 ひしと抱き合う(?)2人を眺めて、にこにこ笑顔のルーシー。 ……ホント、あの氷みたいな目ェしてた奴とは思えんね。 「……ちょっと、興奮しました」 俺の視線に気づいてか、わずかに肩を落とした。 人間で言えば『カッとなった』んだろうが……あんまコイツは怒らせない方がいいかも知れない。 「今、何か失礼な事を考えましたね?」 「いぃえぇメッソーもない」 「怪しいです」 「最愛のパートナーに信じてもらえないとはツラいなぁ」 ちゃかしたセリフに、テレたように小さく微笑む。 「最愛、ですか……嫌わないでくださいね」 「つまんない心配しない」 あっちほど熱烈じゃないが、こっちもちょっとイイ雰囲気。 ひとしきり泣いたり感動したりして気が済んだのか、向こうのオーナーが握手を求めてやってきた。 胸ポケットからはB3が覗いている……ちょっと微笑ましいな。 「いやいやいや諸ォ君! 今回は良い勉強をさせてもらったぞぉ!」 「ま、こっちも楽しかったよ。 ちょっとヒヤっとしたけどな」 「うむ! 記念すべき初陣を勝利で飾れなかったのはヒッジョーォに無念ではあるが、今日この日の戦いはワガハイとB3の輝ける第1歩として生涯この胸に刻もうぞ!」 「お前あんだけ偉そうな事言っといて自分も初心者かコラ」 バカ笑いするミリタリーマニアから視線をそらすと、ルーシーがB3の頬をそっと撫でている所だった。 「さっきは怖がらせてごめんなさい。 貴女の心優しいオーナーに、最大限の感謝を忘れずにね」 「……イエス、マム」 ルーシーの柔らかい微笑みと、風にかき消されそうなB3の声を幕に、俺たちの初陣は終わった。 「ついでにそちらのオーナー。 差し出がましいようですが『バイオレント』は『Violent』で頭文字は『B』ではありません。 その子の為にも早めの改名をお奨めします」 「ンなんとぉーっ!? ワガハイ一生の不覚ぅッ!」 「サー……」 その後、彼の神姫は『バーニング・ブラック・バニー』に改名したとかしないとか……ちゃんちゃん。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1326.html
SHINKI/NEAR TO YOU 良い子のポニーお子様劇場・オマケ 『ぶるーめんばいちゅの日常』 >>>>> ――人々に愛を笑いを振りまく神姫センターのアイドル、 ブルーメンヴァイス。 人々に感動を与える彼女らの影には、 人に語れぬ汗と涙のドラマがあった。 これはそんな愉快な出来事のゲシュヴィッツ(無駄話)。 それは夏が間近にせまった とある日―― ・ ・ ・ 目の前には神姫用の水着があった。 来客を楽しませることと、宣伝のための目引き効果を狙って一流デザイナーにプロデュースしてもらったという。そのデザインは先鋭的といいうか、コンセプトに忠実というか…… 「なんか、えちぃね~☆」 「そ……そんなことはないわ。これが最善で最良で、最先端で……つまりは一番ってことなのよ。す……素敵じゃ、ない?」 「なら、まずはフィシスが着てみるべき。リーダーの務め」 「!……そんなことはないわ。みんなで一緒にしましょ。チームワークが大切よ」 そのフィシスの反応を見て、白雪――にんまり。白夜――愉しげに。 「おやおや、そんなことを言うなんて……」 「フィたん、恥ずかしいの~? にやにや」 「そんなことはないわ。その……フィはただ、どうせならみんな一緒の方がいいかと……」 フィシス……平静を装うのが、返って動揺を証明。 白雪&白夜、にやにや。「素敵な水着なんでしょ☆」「まずは言ったものが実践するが常道」 *** 「ほ……ほら。やっぱり素敵な水着だわ。こ……これでビジターもきっと喜んでくれるでしょうね!」 流行の最先端で最善で最良な水着――きわどい黒と白のセパレート的超ハイレグ――を着たフィシス。 必要最低限の部分だけ隠した、ある意味では水着の機能を必要最低限だけ保持した――別の意味ではその機能を最大限に発揮したシロモノ。 自然に赤らむ頬に、押し隠した羞恥への可能な限りの抵抗としてボディの上や下のメリハリの効いた箇所に添えられる手。それでも隠し切れないものをどうにかしようと、手段を講ずる体――結果として、あっちにくねくね、こっちにくねくね。 流れる銀糸の髪、薄く上気した顔、潤んだルビーのように紅い瞳。その均整さ、美しさを爆発的に主張するような、肢体。まるで芳醇な果実を思わせる、艶に彩られたフィシス。 その姿に同じ武装神姫ながら圧倒された白雪と白夜は、しかしその過剰なまでの「攻撃」を何とか耐えしのぎ、持ち前の意地悪さと無邪気さを発揮する。 「だめだよ、フィたん☆ そんな風に隠しちゃ」「肝心の水着がよく見えない。問題あり」 「――――!」 ふたりに指摘されたフィシスは、カッと顔を真っ赤に染める。涙ぐんだ表情――観念と自棄とかそんないろいろなものがこう入り混じったカンジ――でキッをふたりを睨むと、 「これで、いいんでしょう――っ!」 「おおおう×2」 そこに現れたのは、完璧な姿だった。 美しき肢体と、芸術的な水着によって作り出される、物質的な色香と美。 羞恥、ためらい、そうした感情をすべて乗り越え、そして到達された何かを乗り越えるという気高き魂、凄絶なまでの精神的な高揚と美。 完璧だった。 すべての量子、非線形方定式、そのほか宇宙の神秘とかなんかこういろいろなものが複雑な焦点を結ぶことによって生まれた奇蹟がそこにあった。 白雪と白夜は泣いた。 読者も泣いた、筆者も泣いた。 オール・ワールド・ザ・スタンディング・オべーション! そのなか、フィシスだけは全てを越えた者こそが辿り着ける、無垢なる微笑をその身に称えていた……。 その日の夜。 フィシスは泣いた。 白雪と白夜のいないところで、影でこっそり泣いた。 身をくるめ、自らの身を抱きしめながら、しくしく泣いた。 全てを越えた代償がそこにあった。 *** 後日、なんかいろいろ関係各所からの意見とかで水着を使ったステージは保留。当分はやらない――水着も一転、無用の長物に……といったことが淡々と告げられた。 フィシスが眠りから起動した後のクレイドルは、何故か水に濡れていたという。 それはなんともキレイな、なんの不純物も要さない、無垢なる純水だったそうな――。 『ぶるーめんばいちゅの日常』良い子のポニーお子様劇場・オマケ//fin 戻る
https://w.atwiki.jp/busosodo/pages/110.html
【武装神姫】セッション3-0【SW2.0】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm18943912 追加ハウスルール:ニトリの特殊加工 d66(1d6×2回の組み合わせ)を振って、その出目によって武具強化が出来る。 種類も効果もランダムな博打強化。ガンは今のところ未対応。 ランクBは4回まで、ランクAは3回まで、ランクSは2回まで、ランクSSは1回限り。 武器加工 2回目の出目 防具加工 2回目の出目 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1回目の出目 1 ダメ増減 -1 -1 ±0 ±0 +1 +1 1回目の出目 1 強化失敗 1000Gが水の泡 2 威力増減 -3 -2 -1 +1 +2 +3 2 防護点増減 -1 -1 ±0 ±0 +1 +1 3 C値増減 +1 +1 ±0 ±0 -1 -1 3 回避増減 -1 -1 ±0 ±0 +1 +1 4 命中増減 -1 -1 ±0 ±0 +1 +1 4 必筋増減 +3 +2 +1 -1 -2 -3 5 必筋増減 +3 +2 +1 -1 -2 -3 5 魔法被ダメ増減 -1 -1 ±0 ±0 +1 +1 6 好きな種類 選んだ種類による 6 好きな種類 選んだ種類による 追加ハウスルール:≪かばう≫について ≪かばう≫を持たない人でも、補助動作と主動作を消費する事によって、対象に≪かばう≫を行えるものとする。 この≪かばう≫を実行する際、補助動作での行動や魔法の行使等は行えないものとする。 その他は通常の≪かばう≫と同様の制限を受ける。 例:各種練技、賦術等 以上原文ママ。 戦闘特技≪かばう≫を持っていなくても、補助動作・主動作を放棄することで、かばう宣言が出来る? (*1)