約 220,410 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2153.html
ウサギのナミダ ACT 1-27 □ ゲームセンターは大歓声に包まれた。 東東京地区チャンピオンが繰り広げた死闘に誰もが興奮していた。 純白の女王が、醜聞にまみれた神姫をうち負かした。 ギャラリーの多くは、そんな英雄譚を目の当たりにしたと思っているのだろう。 観客達の興奮をよそに、俺も高村も呆然としていた。 あまりに劇的な結末に、思考がおいつかない。 フィールドの映像が消える。 死闘の舞台となった廃墟は消え去り、無機質な筐体の姿に戻る。 アクセスポッドが軽い音を立てて開いた。 「……ティア」 俺は自らの神姫に声をかける。 ティアは立派に戦った。 全国大会でも優勝候補と名高い、あの『アーンヴァル・クイーン』をあそこまで追いつめたのだ。 せめてねぎらいの言葉をかけようと、アクセスポッドをのぞき込む。 ティアは膝を抱えて、うずくまっていた。小さな肩が震えている。 「ティア……どうした」 うるさいぐらいの歓声がいまだやまない。 ティアは何か言っているようだが、俺の耳には届かない。 「お前はよく戦った。そんなに落ち込むこと……」 「……った」 「え?」 「勝ち……たかった……勝ちたかった、勝ちたかった! 勝たなくちゃダメだったんですっ!!」 「ティア……?」 突然振り向いて叫びだしたティア。 驚いた。 こんなに感情をむき出しにしたティアを見たことがない。 俺は気後れしながら呟くように言った。 「なんでだよ、こんなただの草バトル一つが……」 ティアは大きく頭を振った。 ティアの顔は泣き顔に歪んでいた。大きな涙が瞳から流れては落ちていく。 いつもの可愛らしさは微塵もなかったが、感情を顕わにした表情が生々しくて、かえって美しかったかもしれない。 「だって……あのひとに勝てれば、証明できるから……マスターが正しいって、みんな認めてくれるはずだからっ……!!」 「……っ!」 俺は言葉を失った。 俺のため、だと? 「……マスターが作ったこのレッグパーツも、マスターが考えたこの戦い方も……クイーンに引けを取らないって。 わたしがマスターに教えてもらったものは、なんの罪もなく、正しく、つよいんだって!」 激しい口調で言い募っていたティアは、不意に顔を伏せた。 静かな口調になりながら、なおも言葉を紡ぐ。 俺は驚いた表情のまま、聞いていることしかできないでいる。 「……そうしたら、みんな認めてくれます、マスターのこと……。きっと、マスターのこと悪く言う人はいなくなる……わたしだけが汚いって、そう言われればいい……。 嫌だったんです……マスターはわたしに優しくしてくれて、とっても優しくしてくれて……後ろ暗いことなんて何もしてないのに……だけど、だけど……わたしのせいで、みんながマスターを傷つける……そんなこと、耐えられなかったんです……」 いつしか、歓声はなりを潜めていた。水を打ったように静まり、ゲーム機のデモ音だけが遠くから聞こえてくる。 気がつけば、その場にいる観客達すべてが、ティアの言葉に耳を傾けているようだった。 「だけど、わたしにはできることもなくて……マスターに返せるものも、なにもなくて……。 だから、雪華さんとのバトルは、わたしにとっては最初で最後のチャンスだったんです。 彼女ほどの強くて有名な神姫にわたしが勝てれば、みんながマスターを認めてくれるはず……だから、どうしても、マスターを勝たせてあげたかった……でも!」 透き通った滴は、次から次へと、ティアの瞳から生まれては落ちていく。 ティアの心から溢れ出した、悔しさや悲しみや情けない気持ちが、まるで形になっているかのように。 「負けてしまった……わたし、マスターの言いつけを破ってまで、雪華さんと戦ったけど、負けてしまいました……。 ……ごめんなさい、マスター。ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさ……」 もう、そこから後は声にならなかった。 ティアは泣きじゃくって、何度も何度も瞳を手でこするが、そのたび涙がこぼれてきて止まらなかった。 ◆ ティアのすすり泣く声だけが、店に響いていた。 誰もが押し黙り、居心地を悪くしながらも、泣きじゃくる神姫から目が離せずにいる。 そんな静寂を甲高く小さな足音が破った。 カツン、カツンと、規則正しく鳴り響く。 雪華だった。 彼女はアクセスポッドから出ると、筐体を横切ってティアに近づいていく。 その顔は平常と変わらず、誇りと決意に満ちていた。 誰もが、マスター達すら身動きが取れずにいる空気の中、彼女だけが決然とした歩みを進めていく。 ティアのアクセスポッドの前にやってくると、歩みを止めた。 ティアもその気配を察し、涙をボロボロとこぼしながら、雪華の方を振り向いた。 雪華と目が合う。 すると、雪華は真剣かつ厳しい表情で、ティアを見つめた。 何をするのか、その場にいる全員が緊張して見つめている中で。 なんと雪華は、その場で膝を地について、右手を胸に当てて、ティアに礼の姿勢を取ったではないか。 『クイーン』の二つ名を持つ誇り高き神姫が、自ら膝を折り、最上級の敬意を払っているのだ。 そしてさらに。 「ティア……わたしの負けです」 その場にいた人々、そして神姫達の間に動揺が走った。 いや、誰よりも驚いていたのは、雪華のマスター・高村かも知れない。 大きく目を見開いて、雪華の背をみつめている。 あの誇り高い神姫が、ジャッジAIの判定を自ら覆し、敗北を認めたのだ。 そんな周りの様子など目にも入らないかのように、真剣な顔つきで、それでいてとても優しい声で、雪華は続けた。 「わたしも、今の戦いの中で疑問に思っていました。たかが草バトル。どうしてあなたはそうまでして戦うのか、と。 でも、そんなことは考えるまでもない、当たり前のことでした。 マスターのために戦う。 それは、わたしたち武装神姫にとって、もっとも根元的で、もっとも尊い思いです。 わたしは、強くなることにこだわるあまり、そんな当たり前のことさえ気がつかなかったのです。 その思いこそが、一番大切な支えであることすら忘れて……」 雪華はティアから視線を逸らし、うつむいた。 美しい顔に苦渋が滲んでいる。 「ティア……わたしは恥ずかしい。 あなたの大切な戦いを、たかが草バトル、とあなどっていました。 ……思い上がっていました。 わたしこそ、武装神姫としてあるまじき存在です。 どうか……お許し下さい」 雪華はさらに頭を深く下げる。 ティアはしゃくりあげながら、あわてた様子で声をかける。 「そんな……ひっく、せつかさ……かお、あげて……ひっく、えぐ」 一拍の間をおいて、雪華がゆっくりと顔を上げた。 そして、再びティアをまっすぐに見つめて言う。 「武装は神姫のアイデンティティ、技はマスターとの絆」 雪華の赤い瞳に、泣きはらしたティアが映っている。 「あなたは武装ではなく、技を持ってわたしと渡り合った。そして、わたしをギリギリまで追いつめた。公式戦でも、あそこまで追いつめられたことはありません。 あなたとマスターの絆こそがあなたの強さ。 ならば、あなたのマスターは、正しくそして強い。少なくとも、このわたしを負かすほどに」 雪華の声は真剣そのものだった。 雪華は心からティアを賞賛し、自らの敗北を当たり前の事実として受け止めているようだった。 「そして、ティア。武装神姫として、誰よりもあなたを尊敬します。 そんなあなたと、わたしはライバルであり、友達でありたいと思っています。 もし、許されるのであれば……わたしなどでよければ……認めてくださいますか?」 ■ 雪華さんの言葉に、わたしは驚いて目を見開いた。 とんでもないことだった。畏れ多いことだった。 泣くことすら忘れて、首を横に振った。 「だ、だめですっ……そんな、わたし、みんなからなんて言われているか……雪華さんに迷惑がかかります……っ」 「いいえ」 彼女はゆっくりと立ち上がると、アクセスポッドに身を乗り出した。 そして、優しく、強く、わたしをを抱きしめてくれた。 「迷惑なんてかかりません。誰がなんと言おうと関係ない。あなたと戦った神姫ならみんな分かっているはずです。あなたは素晴らしい神姫であると」 雪華さんは断言する。 「そんなあなたを育てたマスターは間違ってなどいない。正しく、理想のマスターであると思います」 ……わたしは雪華さんの胸にすがりついた。 もう止まらなかった。 大きな声で、子供のように泣きじゃくった。 伝わった。 わたしの大切な思い、このひとには伝わった。 マスターのこと、わたしのこと、信じてくれた。 ありがとう、と。 口に出そうとしたけれど、うまくいかなかった。 □ バトルロンドのコーナーは喧噪に包まれている。 俺たちがバトルしていた筐体の周りに人が集まり、いまだ誰もバトルを始めようとはしない。 誰もが今のバトルの話に夢中だった。 筐体の上では、ギャラリーしていた神姫たちが集まり、ティアと雪華をもみくちゃにしていた。 そんな中、俺は考え事をしながら、のろのろと片づけを行っていた。 すると、筐体の向こうから、にこやかな笑顔がやってきた。 「ナイスファイトでした」 高村が俺に左手を差し出す。 俺は椅子から立ち上がると、彼の左手を取って握手した。 俺の右手は、いまだ包帯が巻かれている。 「……こちらこそ。……変な幕引きになってしまって、すまない」 俺が頭を下げると、高村はゆるゆると首を振った。 「いいえ……僕たちには実りの多い幕引きでした。価値ある敗北だったと思います」 「敗北? 君たちの勝ちだろう?」 「いえいえ。雪華が負けを認めたのです。彼女の意志は、マスターの僕であっても覆せない」 高村の笑顔からはそれ以外の意志は読みとれなかった。 雪華は自分の意志を曲げないし、頑として譲らないらしい。相手がマスターであっても。 誇り高いというか、融通が利かないというか……。 「でも、雪華も少しは考え方を変えるでしょう。 いままでの雪華は、試合に勝つことを一番に考え、それこそが強くなることだと思ってきました。 でも、今日、それでは計り得ない強さがあることを知った。 あなたたちのおかげです。ありがとう」 高村は素直に頭を下げた。 俺の方こそ恐縮してしまう。 「……試合前は、失礼なことを言って、すまなかった。 俺たちとバトルすれば、君たちが中傷されるかも知れないと思った。 だから、バトルを断るつもりで……あんなことを言ったんだ。 本当にすまない……三枝さんも、すみませんでした」 俺が謝罪して頭を下げると、三枝さんは驚いていた。 まあ、あれだけ嫌味を含めて断っていたのだから、信じられないのも無理はないと思う。 高村は、やはり笑って、 「わかってますよ」 と頷いた。 そんな彼に、俺は思っていたことを口にする。 「高村……今度、もう一度バトルしてもらえないか? それから、もっとゆっくり話がしたい。今日はずっと変な流れで、俺自身、納得がいっていないから……」 「喜んで」 高村はポケットから名刺を取り出すと、俺に差し出した。 「僕の連絡先です。気が向いた時にでも連絡してください」 「ありがとう」 俺は素直にそれを受け取った。 必ず連絡しよう。高村とも雪華とも、話したいことがたくさんある。 そして、今度は何のしがらみもなくバトルがしたい。 その時のティアも雪華も、きっと今とは違っているだろう。同じバトルにはきっとならない。 「……だけど、再戦したら、秒殺されそうだ」 「それはないでしょう。だって、あなたは雪華用の戦略をすでに考えているでしょう?」 「ちがいない」 俺と高村は笑った。彼に笑いかけたのは、これが初めてのような気がする。 俺はつくづく失礼な奴だ。 だが、許して欲しいと思う。俺たちを取り巻く問題が一応の解決を見たのは、今朝の話だったのだから。 そして、気がついていた。 俺にはまだやらなければならないことがあった。 ◆ 虎実は、筐体での喧噪には混じらず、大城の肩の上で一人物思いに耽っていた。 ティアは、一戦交えたときから、虎実の憧れであり、目標だった。 いつもオドオドした態度にいらつくこともあったが、バトルでの彼女を純粋に尊敬していた。 虎実はいつもティアを無視していた。 自分が決めた最大のライバルとなれ合うのはごめんだと思っていた。 だけどそれは、彼女の素直でない性格からくる考えだった。 今日のバトルを見て、虎実は思った。 やはり、自分の目に狂いはない。ティアはすごい神姫だった。 クイーンの最大攻撃をかわせる神姫なんて、他にいるはずがない。 そして、雪華がティアに「友達になってほしい」と言ったとき。 虎実は自分の気持ちに気がついた。 そう、友達になりたかったのだ。 ティアに自分を認めてもらいたかったのだ。 自分がティアにとって、胸を張って友でありライバルであると言える神姫だと、そう思って欲しかったのだ。 だから、納得のいく自分になったときに、バトルしてもらいたいのだ。 自分のすべてを見てもらうために。 虎実は雪華がうらやましかった。妬ましくて仕方がない。 でも、虎実は自覚する。自分はあの二人の足下にも及んでいない、と。 「なあ、アニキ……」 「ん?」 「アタシ……トオノにあんなえらそうなこと言ったけど……ティアと戦う資格、あんのかな……」 ミスティにはその資格があると思う。このゲーセンで実力を示し、三強をもひとにらみで黙らせる。 その実力を持って、今日、遠野とティアをここに招いたのだ。 悔しいが、認めざるを得ない。 それに比べて虎実は、やっとランバトの上位に食い込んだところだ。 だが。 「……ばっかじゃねぇの?」 彼女のマスターである大城は、呆れた声で言った。 虎実は大城に振り向く。 「資格とか、そんなもの、必要なモンかよ。 バトルロンドは、お前が考えてるほど堅苦しくないぜ? バトルやりたきゃ、遠野にそう言えばいい。 そんなこと考えてるのはよ、虎実、お前だけだ。 意地っ張りはやめて、ティアとバトルしたいって、言えばいいんだよ」 虎実は大城の言葉にむっとした。 でも、反論できなかった。アニキの言うことは正しい。 結局、虎実の意地っ張りな性格が、素直な気持ちに邪魔をしているだけなのだ。 それでも、と虎実は思う。 それでも、納得のいく自分になって、ティアに挑みたい。 その気持ちは本当だった。 もしかすると、納得のいく自分になるために、ティアを目標にしているのかも知れない。 「それでも……やっぱり、自分に納得がいってから、ティアと戦いたい。 そうじゃなきゃ、またはじめの時みたいに、悔しい思いをすると思う」 それは約束だ。 あの日、遠野に必死でお願いをした、約束。 遠野は約束を守って、ティアをバトルロンドに連れ戻してくれた。 その約束を守るためにも、半端な自分ではだめだ。 虎実は決意を新たにする。 納得いくまで、自分のスタイルをつきつめよう、と。そして強くなろう、と。 大城はため息をついたようだったが、気にもならなかった。 □ バトルロンドコーナーでの喧噪が、ようやく収まってきた頃。 「ティア、帰るぞ」 頃合いを見計らい、俺はティアに手の甲を差し出す。 ティアはまだしゃくりあげながら泣いていた。 そばにミスティがついていて、まわりを四人のライトアーマーの神姫たちが囲んでいる。 神姫たちはティアに道をあけてくれた。 ティアはまだ震えながら、俺の手に乗る。 ミスティたちは気遣わしげな表情で、俺を見た。 俺の心に、彼女たちの優しさが染みた。 ティアをこんなに思ってくれている仲間がいる。認めてくれている友がいる。 そしてもう、それを捨てようなどと、俺たちは考えなくてもいいのだと。 そんな小さな幸せを噛みしめる。 俺が少しだけ笑顔を見せて頷くと、五人の神姫たちは華やぐように笑ってくれた。 ティアを定位置の胸ポケットに収めて、俺は振り向く。 そこには久住さんと仲間たちがいた。 今回のことでは、久住さんには世話をかけっぱなしだった。 本当に、感謝してもしきれない。 今朝の事件の顛末も、話をしておきたいところだった。 だけどその前に、今すぐに、俺はどうしてもやらなくてはならないことがあった。 「ほんとうは、ゆっくりお礼をしたいんだけど……」 「分かってる。また今度でいいから」 「ありがとう」 「……でも、連絡くれなかったら、承知しないわよ?」 「……肝に銘じておくよ」 いたずらっぽくウィンクなんかした久住さんに、俺はドギマギしてしまった。 同時に、「承知しない」の一言に肝を冷やし、後で絶対に連絡を入れようと固く誓った。 俺はつくづく、久住さんに頭が上がらない。 俺はまだにぎわっているゲームセンターから、みんなに隠れるようにして帰宅の途についた。 高村と雪華との話もそこそこに、久住さんへの報告もそのままに、俺が急いで帰るのには理由がある。 俺がティアのマスターとして、やらねばならないこと。 さっきのティアの言葉で気づかされた。 ティアを本当に俺の神姫にするために、それはきっと必要なことだった。 だから俺は家路を急ぐ。 あたりはもう夕暮れに赤く染まっていた。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/busousinki/pages/21.html
ここはゲーム内であったイベントの一覧です。終わってしまって詳細が分からないものもあるかもしれません。 11/9 仲間組手ボーナスキャンペーン 11/9(水)~11/22(火) 仲間同士で組手をすると貰えるガチャPtにボーナスを追加。仲間の数が多いほど 貰えるボーナスがアップ。 10/31 モバ友招待キャンペーン第1弾 10/31(月)~12/1(木) 武装神姫 BATLLE COMMUNICATIONにモバ友を招待してゲームをプレイしてもらうと、限定 神姫(アーンヴァルMk2、ストラーフMk2)、限定武装(アーンヴァルMk2、ストラーフMk2)をプレゼント。 10/31 スタートダッシュキャンペーン 10/31(月)~11/21(月) ・キャンペーンその1.スタンプラリー キャンペーン期間中にログインすると1日1回スタンプカードにスタンプが1コ押されます。 押されるたびに武装やバトルチケットなどをプレゼント。スタンプを10コ集めると限定神姫「ミズキ」が フルコンプ。 ・キャンペーンその2.課題クリア ゲーム開始から10日間、毎日課題が出されるので、それをクリアして、翌日ログインすると ガチャPtをプレゼント。
https://w.atwiki.jp/game_memo/pages/548.html
過去のイベントまとめ 進化イベ 氷海の柱 (2012/11/29~2012/12/13) 星空の階段 (2012/08/29~2012/09/13) 灼熱の道 (2012/05/30~2012/06/11) 聖なる山 (2011/12/26~2012/01/10) 特技イベ 突撃!魔砲隊 (2013/12/26~2014/1/7) 惑いの渓谷 (2013/3/27~2013/4/11) 運命のサイコロ (2013/1/10~2013/1/21) 予見の石版 (2012/11/21~2012/11/27) 嘆きの森 (2012/09/27~2012/10/11) 冥海の柱 (2012/07/25~2012/08/06) 天空の階段 (2012/02/29~2012/03/12) 巨獣大作戦 (2011/05/30~2011/06/14) 巨獣の侵攻 (2011/02/23~2011/03/09) ママン(最新クエスト連動系) 秋のママンまつり2012 (2012/10/~2012/10/ ドラゴンのたまご (2012/07/10~2012/07/18) 春のママンまつり2012 (2012/04/12~2012/04/18) 秋のママン祭り (2011/10/17~2011/10/24) 春のママン祭り (2011/04/14~2011/04/21) フィリアの卵 (2010/12/22~2011/01/06) 迷宮(ジェリー救出) コキュートスの神殿 (2013/01/24~2013/02/05) ジュデッカの時牢(2012/10/31~2012/11/14) トロメアの魔境 (2012/03/27~2012/04/09) エレボスの坑道 (2011/11/18~2011/12/05) ゲヘナの牢獄 (2011/08/26~2011/09/12) タナトスの魔宮 (2011/04/26~2011/05/11) アケロンの回廊 (2011/01/28~2011/02/14) タルタロスの迷宮 (2010/11/24~2010/12/13) 分岐系 アンテノラの大穴 (2012/06/20~2012/07/06) 魔蟲の巣 (2012/01/23~2012/02/06) バトルイベ 黒妖精の悪戯 (2013/02/07~2013/02/15) 亡霊の鏡 (2012/08/09~2012/08/20) 黒騎士の鏡 (2012/05/15~2012/05/21) 悪魔の鏡 (2012/02/14~2012/02/23) 神獣の魂 (2011/12/09~2011/12/19) 黒騎士の魂 (2011/05/13~2011/05/23) ボス探索 大海獣の宝 (2011/10/27~2011/11/11) 海賊王の宝 (2011/07/26~2011/08/09) その他 グリモアの書~第2章~(2014/01/09/~2014/01/16) 二周年記念イベント (2012/09/14/~2012/09/20) ドラゴニア学園 (2012/02/29~2012/03/12) バトルフェスタ (2011/07/15~2011/07/19) 水着選手権 (2011/07/14~2011/07/19) その前のイベントはこちら イベントログ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1060.html
第6話 「世論」 なんだかんだと小難しく考えたって、結局のところはやっぱり『ハイテクオモチャ』なワケ。 昔の話なんざどうでもいいし、後々どういう評価をされようと今の俺には関係ない。 取りとめもなくそんな事を考えていると、ニュース番組からも『武装神姫』って単語が聞こえてきた。 ホントに際限ないなと苦笑いしながら目をやったが、生憎ソレはあんまり楽しい話題じゃなかった。 『違法改造・販売業者を摘発 高額な美少女ロボットに傾倒する若者たちの実像』 ……要するに神姫の外見(そとみ)や中身をマニア向けにカスタムして売ってた連中がとっ捕まったって事らしい。 スタジオに設置された円状テーブルでは、良識派の看板背負ったオトシヨリが低俗なワカモノの行動を盛んに批判していた。 頭は寂しいのにヒゲだけもっさりしたオッサンが『縄文時代における遮光器型土偶を筆頭に世界中には女性を象った人形が数多く』と長そうなウンチクを披露し。 白衣で白髪のジーサンは『犯罪心理学的立場から見るに女性をイメージさせるものを所有したがるのは幼稚な独占欲の現れであり』とブツブツ。 さらに大ボリュームなパーマ頭に分厚い化粧のオバサンが『オモチャとはいえ『女を売る』こと自体がヒワイでサベツ的で低俗で下品でイヤラしくて』とヒステリーを起こしてる。 こういう答えの出ない論争に熱くなれるのは当人たちだけで、見てる方はどんどん冷めてくる。 実際、俺は『なんでココの連中は皆メガネかけてるんだろう』とか『おじいちゃんそんなエキサイトしたらアタるんじゃない?』とかをボーっと考えてた。……が、ルーシーは難しい顔をしてる。 「あんまりマトモに考えない方がいいぞ。 こういう連中は自分の信じてる事だけ喋ってるだけなんだから」 そう言ってみたが、小さく首を振った。 「違法に改造販売されたという神姫の事を考えていました」 ……あんまり小難しい話って嫌いなんだけどなぁ、俺。 「基本的に私たちはオーナーに対する『拒否』や『意見』という権利を認められていません」 「……のワリにゃ俺の考えた名前を片ッ端から斬り捨ててくれたような気がすんだけど」 「反面、購入者であるオーナーには完全上位者としての権利が発生し、それによりオーナーの決定には絶対服従……それが不当な命令や違法な改造であっても、私たちに『No』という選択肢はないんです」 俺の呟いたヒトコトを黙殺して自分の話を続ける。 ……お前ソレ絶対服従とかウソだろ。 「ですが、幸か不幸か……私たちに搭載されたAIには一通りの基本知識がプログラムされています」 「改造だろーが転売だろーが、ソレがどういう意味なのかは判るって事か」 「ハイ。 『所詮はオモチャ』……その通りであり、それ以上でもそれ以下でもないのですけれど」 小さく俯いたが、声の調子は変わらない。 「運命に逆らえず、そういう道を辿った神姫の事を考えると……少し、哀しくなります」 こういう時、俺はどう答えてやればいいんだろう。 あいにく女と付き合った事なんか学生時代にしかない俺の頭にはカッコいいセリフなんかちっとも出てこなくて、映画やドラマみたいにキメられない。 ……だから。 「俺、そういうの嫌いでさ」 しょうがないんで、さっきのコメンテーターみたいに俺の言いたい事だけ言う事にした。 「だからお前も言うな」 よくあるだろ? マンガなんかで『ウンメイがどーのシュクメイがどーの』ってヤツ。 あーゆーの見ると冷めるんだ。 よくあるパターンだなーってさ。 「……オーナーは、強い方なんですね」 俺の言葉をどう脳内変換して受け取ったのか、ルーシーはなんだか嬉しそうに笑ってそんな事を言った。 ……もしやお前、俺のこと『運命なんかに左右されてたまるか!俺の道は俺が切り開く! それが俺のジャスティス!』とか血管ふくらまして叫ぶ熱血硬派だと思ってる? ゴメンそれすごい誤解。 別に俺カッコいいこと言ったつもりないよ? あんま美化すると現実見てから辛くなるぞ? そう訂正しようと思ったが、コイツはもう「嬉しそう」って言うか「誇らしそう」に見えるくらいイイ笑顔になってたんで、結局言えず終いだった。 ……しょーがないじゃん、せっかく笑ってんだもん。 暗い顔させたくねーな、って思ったんだもん。 なんか俺って自分で思ってるよりコイツに入れ込み始めてんのかな、と思った……そんな1日。
https://w.atwiki.jp/busosodo/pages/71.html
武装神姫達のソード・ワールド2.0【第1-2話】 http //www.nicovideo.jp/watch/sm17944941 ヴァル「あーるーはれたー、ひーるーさがりー、いーちーばーへ…」 「ドナドナ」の歌詞の冒頭。反戦歌という説もあり、少なくとも明るい歌ではない。
https://w.atwiki.jp/gikojr122/pages/8.html
動画(youtube) @wikiのwikiモードでは #video(動画のURL) と入力することで、動画を貼り付けることが出来ます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_209_ja.html また動画のURLはYoutubeのURLをご利用ください。 =>http //www.youtube.com/ たとえば、#video(http //youtube.com/watch?v=kTV1CcS53JQ)と入力すると以下のように表示されます。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1586.html
{Hacking!} 俺はデスクトップパソコンを操作しVIS社に自分のIDを使ってログインする。 前々から怪しい会社だと思っていた。 でも姉貴の会社だし、それにいたって会社の構造や人員内部はまともだったからな。 だから手は出さなかったが…。 あの日…アンダーグラウンドのバトルでアンジェラスが変貌したあの日をキッカケに俺は決断した。 その決断とは、アンジェラスを生み出したあの会社に何かあると感じ調べようと考えたのだ。 「ログイン完了。最初は普通に探ってみるか」 マウスは素早く動かし、俺のIDでどこまで潜れるか試す。 カチカチ…カチ……カチカチ 静寂していた地下部屋にマウスをダブルクリックする音が響く。 不必要だと思った場所はウィンドウをすぐに閉じ、すぐさま別のページにとぶ。 そんな事を繰り返してるうちに『オリジナル武装神姫』のページを見つけた。 『オリジナル』という言葉が気になる。 「開いてみるか」 ページを開こうとマウスを動かしクリックした。 <ビー、このIDはではこのページを閲覧する事は出来ません> 「………ここまでか」 機械音らしい声で拒否された。 どうやら俺のIDの権限はここまでらしい。 あんまり役にたたないなぁ。 まぁ、所詮バイトだからIDを貰えるだけまだマシか。 「そんじゃ、ヤりますか」 両手の指をパキパキと鳴らし、右手でマウスを動かし左手でキーボードを素早く操作。 そして俺はデスクトップ画面にある一つのフォルダーを開き、その中に入ってるソフトを起動させた。 「さぁ、タップリと犯してやりな」 俺の声とともに起動させたソフトはフル活動する。 このソフトは俺が作った触手型ウイルス。 一般的な大学生がウイルスなんか普通は作れない。 が、俺は作れた。 生きるため、人間、必死に物事に集中すれば何でも出来るかもしれないと、俺は思ったね。 闇一場で色々なウイルスソフトを買って、中身を調べに尽くした結果、この『触手ウイルス』を作る事が出来た。 このウイルスは単純にしてタチが悪いウイルス。 ターゲットに潜り込む前に『自分は敵じゃない』と相手のセキュリティーシステムに認識させてから潜り込む。 この敵のセキュリティーシステムにあえて自分を教え、攻撃もされず難無く潜り込むのがえげつない。 潜り込んだら凌辱ゲームとかによく出てくる触手を思いうかべてほしい。 あんな風にウネウネと動き、隅々まで増殖しデータをパクっていく。 勿論、破壊する事も出来る。 で、今回のターゲットをレイプするのはVIS社だ。 破壊が目的ではなく、あいつ等の過去を探るため。 「…早くヒットしてくれよ」 ピピピピ! パソコンについてるスピーカーが鳴りヒットした事をしらせてくれる。 早速、マウスを動かしヒットしたデータを閲覧する。 閲覧すると画面上に四つのデータが開かれた。 そろぞれのデータに『Eins』『Zwei』『Drei』『Vier』と、ドイツ語で書かれていた。 「何故ドイツ語…?…アッ!」 夢の中で見た、あの頑丈そうな鉄の扉かもしれない。 それにあの元大学生のお姉さんもドイツ語を言ってたし。 これはあくまでも俺の推測だが…もしかしたら、あいつ等の事がこの四つのデータに書かれているかも! マウスを動かしまず最初に『Eins』というデータを開く…だが。 「…またセキュリティーかよ。萎えるぜ」 しかも最初にあったセキュリティーより頑丈そうだ。 これはかなりの時間がかかりそうだ、どうせ他の三つデータも同じぐらいのセキュリティーレベルに違いない。 畜生、釈然としないが時間的に引き際だな。 いつまでも潜り込んでたら、流石のセキュリティーも不信がるはず。 なんたってVIS社の最高機密データに当たっちまったのだからな。 早々に触手ウイルスを引っ込ませ、ログアウトする。 勿論、ちゃんと足が着かないようにログも消す。 今回はここまでにしとくが、次は絶対に暴かせてもらうぜ!
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2072.html
用語解説 『称号』 双姫主(そうきしゅ): 文字通り、二体同時に神姫を操る事ができる者に付けられる称号。デュアルオーダーというその技術としての呼び方もある。 刻一刻と変化する戦況を見極めて指令を飛ばす事のできる並外れた判断力と全体を見渡せる指揮力を求められる高度な技術であり、それをできる人間は少ないとされている。 また、試合と情報が複雑化する故にバトルロンドでは推奨されないやり方でもある。(禁止にされているわけではない) なお、この称号は『俺』固有の称号ではなく、二体同時に神姫を操る者全てが該当する。 首輪狩り(くびわがり): 輝との約束からリミッター解除装置を狩り続けたために付いた尊のあだ名。首輪の形をしたリミッター解除装置を回収する事から名付けられた。誰が言い出したのかは不明である。 『神姫用語』 イーダプロトタイプ: HMT型イーダのパーツ試験用にイーストラボラトリーが作り出した試作モデル。 『俺』がネットで調べた結果、イリーガル技術は使われてはおらず、素体やパーツを突き詰めて調整されたワンオフ機であると推測している。 性格の方はお嬢様言葉を使わず、ハウリンやエウクランテに近いものとなっており、この事から人格ロジックはまだ未完成だったと思われる。 戦いの末、『俺』の神姫となった際、イーダプロトタイプは先行入手版の通常のイーダとして表向きの神姫登録がなされている。 アークプロトタイプ: HST型アークのパーツ試験用にウエストラボラトリーが作り出した試作モデル。 こちらはあまり制約を考えていないため、イリーガル技術がふんだんに盛り込まれており、単純な性能はイーダプロトタイプを上回る。 イーダプロトタイプの最後のチャンスの戦いで負けた後はウエストラボラトリーの方針の転換によって必要とされなくなり、現在は必要なデータを吸い出されて処分すらされる事もなく、放置されている。 リミッター解除装置: 一時的にCSCにかかっているリミッターを解放することで神姫のCSCの消耗と引き替えにイリーガルと同等かそれ以上の性能を得る事のできるチョーカー型のパーツ。 イベント限定パーツ『イリーガルマインド』に似せた違法パーツなのだが、神姫のリミッターを外すという特殊なものであるために神姫センターのセキュリティに引っかからず、神姫センターも手を焼いている。 しかもこれは使用した神姫のCSCの磨耗、つまりは負荷をかけてしまうために、使いすぎるとAIの不具合やCSCの故障及び破損が発生し、最悪の場合、使用した神姫のCSCが壊れ、死ぬ。 仮想物質: CSCのエネルギーによって生成されたエネルギーの塊。 これによってスキルを発動した時、存在しないはずの羽の弾丸の射撃や武器の分裂、武器の属性付与といった事を可能とする ハイブリッドタイプ: ボディを規格品で揃える事なく、構成された神姫の総称。 簡単な例としてはコアと素体が異なる物にして起動した神姫だが、その他にもCSCとコアを除くパーツは換装可能であるため、必要に応じて他の素体のパーツを付け替える事でそうなる事もできる。 戦闘に柔軟に対応する事ができるが、当然、改造前と改造後の身体の感覚は異なるため、それを扱うためにはある程度の時間が必要である。 また、石火の様にコアを換装する事は可能といえば可能だが、神姫の死の危険が伴う上に成功確率が低く、さらには思考パターンを変えてしまうが故に改造直後は拒否反応を起こす危険が付きまとう。 塵の刃(ダストアエッジ): 蒼貴が会得した専用スキル。通常使用では使い捨ての武器を作り出すだけだが、ミズキ装備に隠されたBM『神力開放』を使用する事でその本領を発揮する。 SPを固定化する事で無制限に使えるようになった仮想物質で周囲の塵を操り、様々な形の武器を作り出し、変幻自在な無限の剣を振るう。その切れ味は神力開放を使わずともイリーガルのボディを一撃で切り裂ける程、鋭い。 E+ 尊がアサルトカービン用に自作した特殊弾倉の一つ。正確にはEXPLOD+という。 Nitroジェリカンのアルコール分を使って火力を高めてあり、通常のEXPLOD弾倉より威力が高めになっている。 ただし、反動が高く、連射性が低下しているため、精度は期待できない。 弾倉コード: 弾倉の種類を速やか伝えるために尊の発したコード。炸裂(EXPLOD)弾ならE、ペイント(PAINT)弾ならPとイニシャルだけを言うため、装填の順番まで早く伝えられる。 アクセルロンド: 別ページにて説明 模倣技: 別ページにて説明 『その他』 バーグラー: 有名人狩り、辻斬り、闇討ち、武装神姫のパーツの略奪など神姫を用いた汚い行為に走る者を総称する『賊』を意味する言葉。 ネット界隈から発祥し、現実においてもそうした者達を呼ぶ隠語として広まっている。 大抵が集団で行動しており、一対多数、罠、騙し討ちなどあらゆる手段を用いて狙った獲物を確実に潰す。この時、神姫の命であるCSCの破壊を行う事も少なくない。 また、金目当てでネットや神姫センターの裏で仕事を請け負う者もおり、金次第で何でもやるという トップへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2361.html
第二十話:道行姫 「僕はイリーガルマインドに苦しむアーンヴァルの声と施設の事を聞いて迷っていたよ。施設がどうなるのか、この先の武装神姫もどうなるかと」 結に支えられながら輝は俺に自らの迷いを語り始める。その顔は施設の真実を晒される事を恐れていない覚悟の決まった顔だった。 ついさっきとはまるで違っている。 「でも、こうも考えられたんだ。もしかしたら神姫も施設も両方救えるんじゃないかって」 「何をする気だ?」 「僕は証人に加わる。その代わり、施設の何も知らない人々は無関係だって事を証明して、施設が存続できるようにする」 「……一番困難な道だぞ? しかもすぐに解決できる事じゃねぇ。施設を存続させたとしても後の偏見の目だって消さなけりゃならん」 輝の選択は最も難しいものだった。 施設からイリーガル技術流出の汚名を拭い去る、言葉にすればそれだけの意味だが、実際にやるなら様々な問題が発生する。それは俺にだって列挙し切れるものじゃない様々な難題、他者の思惑が絡んでくる。 まさに茨の道、輝も思い切ったものである。 「わかってる。これは僕の戦いだ。君の手出しは無用だよ。君はイリーガルにだけ集中していればいい」 「やれるのか? 一人で」 「一人じゃないよ。僕には結がいる。石火に早夏もいる。施設のためなら何だってやってみせるよ」 その言葉を迷いなく言ってみせる。結も、石火に早夏もそれについていこうという顔をして、輝の語る姿を見届けていた。どうやらその言葉は四人で考えた真実のようだ。 俺が止められるようなものじゃない。 「ははっ。なるほどなぁ。初代チャンピオンって名がさらにサマになってきた気がするぜ」 彼らの覚悟に負けた俺は少し笑って、それを認めた。そこまで言うなら進んでもらおう。俺はその覚悟を見届けてやる。 「わかったよ。俺はイリーガルを叩いて、目の前の小さな奴らを助ける。お前は施設って大きなものを助けてやんな。足下は俺に任せろ」 「ああ」 俺は輝に敬意を表して、彼の手を取り、握手した。輝はその感触を感じ取って握り返し、それを交わした。 「いいね。男の友情っていうのは熱い! 僕も及ばずながら力になるよ。まぁ、ただというわけにはいかないけど、代金を割引サービスしてあげちゃおう」 話のキリのいい所で日暮が拍手で話を持ちかけた。ちゃっかりしているのか、本気で感動しているからそうしているのかといえば……おそらく後者だ。 その辺はしっかり『正義の味方』といった性格をしていた。 「今の声の人は?」 「正義の味方の日暮さんだ。彼に手を借りれば結構やれると思うぞ。『ハイスピードバニー』の風俗神姫騒動も解決にも貢献したからな」 「あの大事件を!? それは凄いな……」 「どうだい? 僕に君の手伝いをさせてくれないか?」 「お願いします。対価なら払います。どんな事をしてでも施設を救いたいんです」 「わかった。代金はそうだな。尊君。君に払ってもらおう」 「え?」 話が進む中、唐突に代金の話が俺の方に向いて驚いた。何をどうすればそういう話になるというのだろうか。 「そう難しい事じゃないさ。代金は君がイリーガルマインドなどの装備を押収して、それを僕に渡す事を約束してくれ。つまり、君が今やろうとしている事さ」 「なるほど。それならいいでしょう。僕がやる事は輝と違って自己満足だ。それに価値がつくなら喜んで」 「商談成立だね。じゃあ、輝君に結ちゃんだっけ? 二人で奥まで来てくれ。これからの事を話そう」 「はい」 長期戦となるであろう施設の話について打ち合わせがかなり時間がかかるのか、日暮は輝にそう言って店の奥へといなくなる。確かに他言無用な話になるのだからそうなるのも当然と俺は納得した。 その輝は入り口から結に導かれながら歩みを進めていく。その足取りは目が見えないため、周りを探るような歩き方をしているが、進むことには一切のためらいがない。 その中で俺の近くまでたどり着くとそこで輝は足を止め、気配でそうしているのか、俺の方を向いた。 「尊。ありがとう。この一歩を踏み出せたのは君のおかげだ」 「尾上辰巳だ」 「え?」 「お前等の頑張ってんのに変なプライドで本名を名乗らないわけにはいかんなと思ったんでな。改めて自己紹介さ」 「そうか。僕は天野輝だ。改めてよろしく。辰巳」 「ああ。……一歩を踏んだ後は輝次第だ。俺は俺の道、お前はお前の道をそれぞれ行こう。目が見えなくたって、もう見えてるだろ?」 「うん。行ってくる」 「おう」 短い会話が終わると輝は再び歩き出し、店の奥へと消えていった。そして代わりの店番として神姫のコアを飾るための胸像ディスプレイにヴァッフェバニータイプのコアがくっついたもの……うさ大明神様がレジの隣に現れた。 それを見届けた俺はここでの用事が終わって彼らとの約束を果たすために蒼貴と紫貴と一緒に店を出て行った。 一週間後、日暮から視覚データによる結果と輝からの連絡が来た。 あれから日暮は輝を伴って、決定的な証拠を施設の研究者に突きつけ、彼らを一網打尽にしたのだという。 これによってリミッター解放装置の販売ラインを、根元を断ち切った事になる。リミッター解放装置はこれ以上、増えることはない。後は日暮が既に流通したものを回収し、俺が既に使ってしまった、或いは買わされてしまったオーナー達から押収すれば、何とかなるはずだ。 使った後でも杉原のワクチンプログラムで何とか助けられるだろう。 施設に関しては義肢を開発していた研究所の独断として施設と研究所で切り離され、研究所のみが罪に問われる形となった。しかし、そこの神姫は改造前のは何とか解放したものの、手を付けられてしまった神姫に関しては証拠品として警察に押収されてしまったらしい。 これを聞くと神姫はまだまだ物として扱われているという事の様だ。 俺達は神姫オーナーにとっては、神姫は物ではなくパートナーだが、この日本での法では神姫は個人として認めてもらえていないのだ。所詮はロボット。物であるという訳だ。 昔の本や物語で繰り広げられているロボットの存在意義の上での答えがこれだとするなら少々悲しいものを感じる。 しかし、可能性はある。そう。輝だ。 日暮経由の彼の連絡に施設の神姫が押収された現場に居合わせたらしく、何とか説得を試みて失敗に終わり、自らの力の未熟さを痛感させられた事が書かれてあった。 後悔の思いがあったが、それには続きがある。輝はその神姫達や施設を助けるためには自分自身がそれを制するだけの力が必要と考え、弁護士として猛勉強することを決心したらしい。結と彼らの神姫もまた輝の決意についていくことにしている。 神姫で何とかするというだけではなく、大人としての力を得る事で両方を救う。どうやら、これが輝なりの答えという事の様だ。 これはすぐに解決することではないし、俺が足掻いた所で変わりはしない。せいぜい輝の相談に乗ったり、宣言したとおりに、バーグラーを狩ったりするのが関の山だ。 だが、こうして未来に続いていると感じることができるのは悪い気がしない。輝を信じる。それだけで今回の自分のやったことが無駄ではないと思えた。 「解決はしたわけじゃねぇが、いい風には終われた……か」 連絡を受けた事を思い出しながら俺は神姫センターに入っていく。今回来たのは真那と会ってしまういつもの場所ではない。そこからさらに四駅ほど進んだ先にある別の神姫センターである。 今回の事件によってばら撒かれたイリーガルマインドの流通も広範囲に渡るものになってしまっており、警察や日暮も捜索しているものの、発見するのが難しい。 俺個人でどれだけ発見できるかはわからないが、様々な場所を回って多くのオーナーや神姫を見てみたいという気持ちもあったため、こうしてイリーガルマインド回収も兼ねたセンター巡りをしてみる事にしたのだ。 秋葉原を中心とするその周辺には多くの神姫センターがある。探そうと思えば、ゲームセンターや公認ショップ含めていくらでもあるため、自分の縄張りだけでは飽き足らないオーナーと神姫達は様々な場所で修行する際には秋葉原を中心とするこの激戦区を回るのが通例だという噂を聞いたことがある。 俺は……『異邦人(エトランゼ)』の真似事をするのだからその噂通りのことになるかもしれない。素性を明かす気はない点では異なるがな。 「ミコちゃん、本当にここにイリマイあるの? イリマイがある割にはここの噂が小さい気がするんだけど……」 「……日暮さんの教えてくれた噂じゃ、ここにイリーガルみたいな神姫が破竹の勢いで勝ちまくっているってことらしい。あの人の情報網は信頼できる」 神姫センターの奥へと進む俺に紫貴が話しかけてきた。今回は日暮の情報からここに来ている。俺の蒼貴を大破に追い込んだバカ者共と似たようなクチであり、イリーガルマインドの予感しかしない。が、紫貴の言う通り、噂が小さく、それが目立たない。そこがおかしな所である。 「しかし、ここはその噂の人以外の人も強いようですね。だから、大きな騒ぎになることもないという事なのでしょうか。あの試合の人達もすごいです」 蒼貴が指差す先を見ると、大きなスクリーンがあり、それに非常に高いレベルの対戦が映し出されていた。 対峙しているのは黒い外套と身の丈はあろう化け物の様な太刀を力任せに振り回し、叩き潰すような戦い方をするストラーフタイプとスカートアーマーの内側から隠している暗器を取り出して一定の距離を保ったまま、翻弄してみせるアルトアイネスタイプの二機だった。 「You're going down!(くたばれッ!)」 翻弄されていることにプライドを傷つけられているのか、少々怒り気味のストラーフが太刀を力任せに振り回してアルトアイネスに襲い掛かる。 「それは勘弁して~。噂に聞くバラバラ戦術は痛いしさ~」 彼女は軽口を叩きながらサブアームで受け流し、そのままアーマーを展開することで飛んで爆弾による爆撃を仕掛ける。 ストラーフは太刀で着弾する前に弾き飛ばして自らのダメージを減らし、大きく跳躍して、反撃に出る。 銃を連射し、それに続いて一戦しようというオーソドックスな攻め手だ。銃の弾はアルトアイネスの翼を形成するスカートアーマーを弾いて体勢を崩させ、動きを硬直させるとそのまま太刀の一閃を放つ。 「危ない危ない」 いつの間にか取り出した大剣ジークフリートでそれを防御する。ストラーフはそのまま、力を入れて叩ききろうとしたが、いかんせん空中にいるため、力を入れられず、そのまま地面に着地し、次の一手を打つために追撃を仕掛けてこようとしているアルトアイネスに向かって太刀を構えた。 「確かにレベルが高いな。これからこういう奴らと戦うのも悪くない」 拮抗状態の続く戦いに俺は感心した。ここまでのバトルが見られる上に互いに隙を見せずに攻撃を繋ぎ続けているだけ実力を持っていた。あれだけの力があれば万一、イリーガルマインド装備が出ても何とかできるかもしれない。 どういう奴らなのかと対戦の映像の隣の対戦者のデータを見てみる。ストラーフタイプはフランドールという名であり、オーナーは三白眼と長めの黒髪をサイドテール、黒いパンク調の服とシルバーアクセが特徴的なガラの悪そうな咲耶という名の少女だった。 彼女は噂を聞いたことがある。何でも相手が弱いと判断すると、弄んで潰すという戦い方から非難の声が上がるという悪評である。しかし、ランクに反して強いことから有望であるという見方をする人もおり、注目されているらしい。 一方、アルトアイネスタイプはメルという名前だった。オーナーは祥太という気さくな印象のある青年だった。特に噂を聞いていないため、未知数だが、フランドールを翻弄することができるという点では彼らもそれだけの実力をつけ始めていると見ていいだろう。 「ねぇ。ミコちゃん、あれ」 「あ?」 対戦を観戦している時に紫貴が俺に声をかけて指をさす。その先を見ると甘ロリ系な女の子が二人の青年に囲まれているのが見えた。 「おい。梨々香ちゃんよ。遠野のチームメイトだったよな?」 「な、何よ……」 「俺達は最近、三強を倒して調子に乗ってる『ハイスピードバニー』のチームを狩ってるのさ。遠野や『異邦人』を引きずり出すためにまずは弱そうなお前からやろうって話になったんだよ」 どうにも彼らは『ハイスピードバニー』……恐らくは遠野貴樹のチームを潰そうと考えているらしい。事情はよくわからんが女の子を男二人で襲おうとするその現場は見苦しいことこの上ない。 「やめてよ! 二対一なんて……」 「関係ないね。『玉虫色』を倒したのも初心者だ。ここで勝ちまくったが、油断はしねぇ」 「そうそう。やるなら全力ってな。ははは」 「そうだな。やるなら全力……二対二だな」 傍まで近づいた所で俺は男二人の話に割って入る。 「あ? 誰だてめぇは」 「俺はただのオーナーだ。……覚えておかなくていい。どうせお前らが負けるんだからな。トラウマになりそうなものがなくなっていいだろ?」 「ふざけるな! こいつは後回しだ。この野郎をやるぞ!」 「おう! そこのバーチャルバトルに来い!」 「そうこなくっちゃ……」 挑発をするとすぐに釣れた。さすがはチンピラ。単純で助かる。 そう、ほくそ笑むと俺は彼らの言うことに従ってバーチャルバトルなるものに向かう。今回のはエルゴにおいてあったシミュレーションバトルによる戦闘という事になるようだ。 自分のブースに着くと蒼貴と紫貴を二つのアクセスポッドに乗せて接続する。向こうでは俺が一人で二体操ろうとしている事をバカにしているのか、笑いながら各々の神姫をセットした。 それによってバーチャルシステムは起動し、オフィシャルバトルの準備が完了し、ディスプレイの向こう側にそれぞれの神姫が出現する。 相手はヴァローナタイプとガブリーヌタイプだ。それぞれ純正装備だ。ただし、両方が首にイリーガルマインドを装備している。何とかこれを回収しなくてはならない フィールドは草原。遮蔽物もないその場所は純粋な戦闘力が試されるだろう。 『Ready……Fight!!』 ヴァローナが先行し、ガブリーヌが援護射撃しつつ、前進する普通の戦法を取ってきた。 「蒼貴、紫貴。すぐに沈める。まずはヴァローナをやる。蒼貴は苦無で拘束、紫貴は射撃からブレードで斬り捨てろ」 対して俺は速攻の指示を出す。女の子を再び襲うのをためらわせるほど、速やかに倒す必要がある。圧倒的な力の差という恐怖。それがこの戦いのテーマだ。 蒼貴と紫貴はそれを聞き、行動に移す。蒼貴は接近してくるヴァローナの四肢に苦無を、紫貴はアサルトカービンをそれぞれ放つ。飛んでいく苦無は足を止め、弾丸がひるませ、ヴァローナを無防備状態にする。 「はっ!」 そこをすかさず紫貴がエアロヴァジュラで切り裂く。ヴァローナは何がおきたのかもわからずに声を上げることもなく地面へと倒れた。 その直前、蒼貴は首からイリーガルマインドを奪う。これでヴァローナのイリーガル化は防げる。 「この野郎!!」 早くも相方を失ったガブリーヌはイリーガルマインドの力を使った。それにより彼女の額からユニホーンが生え、紫色のオーラを放ち始める。 「これで決まりだ。紫貴、バトルモードで接近して拘束。蒼貴、紫貴に乗って塵の刃の用意」 「はい!」 「了解」 予想通りの展開からの次の指示につなげる。ヴィシュヴァルーパーに変形した紫貴に蒼貴が騎乗し、接近の間に塵の刃を鎌と苦無にまとわせる。 ガブリーヌは重装備に物を言わせて接近してくるまで拳銃を撃ち続け、接近したらいつでも殴れるようにナックルを構える。 銃撃を避けながら、紫貴が接近するとガブリーヌはナックルで紫貴本体を狙った一撃を仕掛ける。 しかしそのとき、違和感に気づいた。そう。蒼貴がいない。 攻撃を紫貴に仕掛けながらも目だけで蒼貴を探していると……上にいた。 「なっ!?」 ガブリーヌは驚きながらも紫貴に攻撃を続けようとするが、彼女は変形解除をして、サブアームで受け止め、拘束する。 「今よ! 蒼貴!」 「せいやっ!」 気づいた時には既に遅く、宙を舞う蒼貴が塵の刃をまとった苦無でユニホーンを切断し、鎌で腹を引き裂く。そしてとどめとしてイリーガルマインドを奪った。 その瞬間、それの効果が失われ、ガブリーヌは効果が切れて砕け散る塵の刃のかけらが舞う中で地面に伏す。 『You Win!!』 ディスプレイに勝利画面が表示される。それが表示されるまでのタイムは一分とかかっていない。一蹴とも言うべき戦果だ。向こう側にいる男二人はイリーガルマインドを使っているのにこうなってしまった事に動揺していた。 それもそうだ。神姫のせいとかそういうレベルではない。実力を発揮する前に終わってしまったのだから。 「ど、どうなってんだよ!? てめぇ! チートでも使ってんじゃねぇのか!?」 「そりゃお前らだろ。そのイリーガルマインド、俺が追っている違法パーツなんだよ。わかってて使ってるのか?」 「なんだと!?」 「すぐにそれを外せ。お前たちの神姫が苦しんでいるぞ」 チートと騒ぐ男二人にイリーガルマインドの副作用について指摘すると彼らは自分たちの神姫を見た。神姫達は例によって副作用で苦しんでいる。バーチャルバトルではどうなるのかと思ったが、どうにも架空も現実も同じであるらしい。 「な……」 「どうなってんだよ!?」 やはりというべきか彼らは知らず、副作用に驚いていた。この装置の副作用は全くと言っていいほど、説明されないケースが多い。このパターンはよく見る。 「それが原因だ。そのまま捨ててしまえ。でもってホビーショップエルゴにいきな。有料で直してもらえるからよ」 「お、覚えてろ!!」 「由愛~~!?」 自分の神姫を持って逃げるように去っていった男二人を見送ると置かれた二つのイリーガルマインドを拾う。見ると本当に本物のイリーガルマインドに見える。これがただの演出で済めばどんなに良いことか。 「こんな下らねぇもん使ったって、強くなんてなれねぇのに何やってんだか……」 ため息を付きながらそう呟く。 こんな調子でイリーガルマインドを狩っているが、それを持っているやつは大抵がその性能に魅入られている馬鹿か、知らないアホ、あるいはその両方の三択だ。 二番目なら救いようがあるが、それ以外なら話にもならない。痛い目を見るまで使い続けてくれるから困る。少しはうまい話なんてないことぐらい考えてほしいし、それで神姫が犠牲になったらどうするのかを考えていただきたいものだ。 これ、あるいはこれに類する違法パーツが横行したらどうなるかを考えると今の武装神姫は危ういラインにいるのだろうか。 「あの……助けてくれてありがとうございます」 「気にすんな。こっちもこいつを回収するのが仕事なんでね」 考え事をしていると瞬く間に倒した俺達に助けた梨々香という甘ロリ系の女の子が話しかけてきた。肩にはポモックタイプの神姫が乗っている。見た感じは特に目立った改造もない純正装備だった。このまま、絡まれていたらまず間違いなく、手痛い目にあわされていただろう。 「あの……オーナー名の尊ってもしかして双姫主の尊さん?」 「いや、俺は……」 「その通りです」 何とか名乗ることを避けようとしたが、蒼貴に肯定されてしまった。 墓穴を掘らされていつものこのザマだ。困っている奴らをほっとけないだけにこのパターンは引っかかりすぎる。 「そうよ。ミコちゃんはね。双姫主として雑誌にも載っちゃった超かっこいいオーナーなのよ? すごいでしょ?」 「やっぱりそうなんですか! あの戦いがデュアルオーダーの……遠野さんのやってた通りなんだなぁ……」 紫貴が無茶苦茶脚色を付けた事を言うと梨々香は感激したらしく、紫貴の言葉に頷く。 「おい。こら。何、勝手に晒してんだ。しかも尾ひれを付けすぎだろ」 「雑誌に載った時点でアウトでしょ?」 「うるせぇ! 素性が載ってねぇからまだ何とかなるはずなんだよ!」 「いいじゃない! 減るもんじゃないし!!」 「あんだと!?」 「あの……!」 すっかり正体をバラされて怒る俺とかっこつける紫貴が口喧嘩を始めようとするとなにやら勇気を振り絞ってる様子の梨々香が口を挟んできた。 「どうした?」 「私に戦い方を教えてください! さっきみたいなことになって、チームの皆の足手まといになりたくないんです!」 「遠野さんってのに教えてもらえばいいんじゃねぇか?」 「遠野さんにはもう弟子がいるし……。勝ち負け関係なく楽しんでるけど、こんな事、情けなくって周りに言えないよ……」 話から察するに梨々香は遠野のチームに所属はしているものの、勝ち負け関係なくバトルロンドを純粋に楽しんでいる奴であるらしい。しかし、この一件で自分でも戦えるようになりたいと思ったらしいが、周りにはそういう奴だと思われていて言いにくい。だから、見ず知らずの俺にまずは教えてもらおうと考えているらしい。 ぶっちゃけ、恥をかなぐり捨てて知り合いに教わった方が進歩が早いと思うのだが、どうしたものか……。 「……オーナー、教えてあげてはいかがでしょう?」 「ミコちゃん、そうしようよ。真那にだっていつも教えてるんだし、慣れっこでしょ?」 「……仕方ねぇなぁ。わかった。その代わりといっては何だが、『ハイスピードバニー』の事を知っている範囲でいいから聞かせてくれ。興味があるんでな」 「ありがとうございます!」 「梨々香ってんだったか? 俺は厳しいぞ?」 「はい!」 梨々香の真剣な態度に感心する蒼貴と紫貴にも逃げ場を塞がれた俺は逃げることを諦め、梨々香に俺のバトルの経験を教えることに決めた。デュアルオーダーは無理でも普通の戦い方ぐらいは教えられるだろう。……真剣な気持ちを無碍にできんしな。 まぁ、こうやって動き回れば梨々香のような良い奴にも会える。こういう奴らがいるからこそ、武装神姫という舞台がマシな方向にも向かうことができる。 その可能性を1%でも高めてやるのが俺らにできることなのかもしれない。 それで武装神姫が良くなるなら俺の行動も無駄じゃないし、輝や別の場所で戦っている誰かもまた頑張っていられるだろう。 この手ほどきも何かの役に立つことを願って、やってみるか……。 第三章『深み填りと盲導姫』-終- 戻る トップへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/168.html
前へ 先頭ページ 次へ 「固執」 仰向けに寝ながら、神姫スケール換算地上千メートルを、高速巡行するマイティ。 手足には軽量で対実弾防御力のあるカサハラ製鉄ヴァッフェシリーズのプロテクターを着込み、クリティカルな胸部には同梱装備のアーマー、頭にはヘッドセンサー・アネーロをかぶる。 右手はミニガンではなく、アルヴォPDW9。アーンヴァルの実弾射撃武装はどちらもケースレス方式をとっている。飛び出した薬莢が飛行機動を阻害する恐れがあるためだ。とくに高速移動時にその弊害が見られ、だからミニガンは飛行時に正面へ撃つことができない。 背中のウイングユニットには、ありとあらゆる推進装備がくっつけられている。エクステンドブースター、ランディングギア。そしてヴァッフェシリーズのスラスター。融通の利く動きはほとんどできないが、一方向に集中したノズルは莫大な推進力を生み出す。アラエル戦のバトルプルーブを経て、各パーツの配置が一新され、よりパワーロスが少なくなった。 翼の一方に、バランスの低下を承知で、LC3レーザーライフルを搭載していた。この装備方法では飛んでいる方向にしか撃てない。巡行武装だと割り切っている。 ここはホビーショップ・エルゴの対戦ブースである。このたびの大改装でセカンドリーグにも参加できるようになり、マスターは二駅をまたぐ必要がなくなったのだった。 スペースでは対戦相手がいない場合、こうして一人でテストモードが出きる。トレーニングマシンが普及してから使われなくなった機能だが、現在でも律儀に入れられている。 「どうしてトレーニングマシン、使わないんです?」 店長が訊いた時、 「実戦に使われるフィールドの方が役に立つ」 とマスターは答えた。 確かにトレーニングマシンと実際に試合に使用されるフィールドには若干の差がある。しかしそれは本当に若干なもので、だから皆将来的な経費が押さえられるトレーニングマシンを買うのである。 マスターの家にも無論、トレ-ニングマシンはある。 「マイティ、どうだ」 バーチャル空間の中を飛び回るマイティに話し掛ける。 『やっぱり空気の重さが違います。マシンでできたような無茶な機動が、たぶん出来ません』 バトルスペースのマシンパワーに、やはりトレーニングマシンはかなわない。戦闘中はだいたい高速で動く神姫には、この差は場合によっては致命的な差となる。 マスターもマイティも、今、一種のマンネリを覚えていた。 バトルの成績は悪くはない。ファーストへの昇格はいまだ高嶺の花だが、それでも順当に戦えている。 バトルのアクセス料金、マイティの武装代、メンテナンス料金、武装神姫というカテゴリにかかる料金はすべて、いわゆるファイトマネーでまなかうことが出来た。 余談ではあるが、この「勝てばそれなりに報酬がもらえる」という制度が実現したことが、武装神姫の世界的な発展につながった一翼を担っていると言っても過言ではない。実現にあたっては「ゲームがけがれる」とか「ギャンブルだ」などという辛辣な批判ももちろんあった。 しかし結果として、良い方向に実現した。 第三次世界大戦も起こらなかったし、宇宙人の侵略もなかったのだ。ゲームに報酬が設定された所で、なんのことがあろうか。と、人々が思ったかどうかは分からないが。 閑話休題。 ともかくそれでも、何か初期のキラキラした感覚が鈍くなってきていることは、お互いに分かっていた。 その対処法が分からない。 結局問題は棚上げで、今に至る。 『Here comes a new challenger』 ジャッジAIが挑戦者を告げる。 テストモード中はオンラインオフラインに関わらず、対戦受付はオープンにしてある。当たり前だがシャットアウト機能は無い。対戦スペースにいるのはすべからく対戦許可とみなされるのだ。 相手はオンラインからだった。 『よろしくお願いします』 当り障りの無い挨拶。女性らしい。 「よろしく」 マスターは適当に答える。 相手はセカンド。大体自分と同じような戦績。いや。 最近特に伸びてきている。 マイティがいったん待機スペースへとリターン。 『どうします?』 「例の機能を使ってみようと思う」 『じゃあ、初期装備はこのままですね』 「なるべく広いフィールドの方が良いが、狭くてもすぐ対応できる」 『分かりました』 マイティ、準備完了。 すぐに周囲のポリゴンがばらばらになり、フィールドが再構成される。 『バトルスタート。フィールド・地下空間01』 広大な空洞。高さもあるが、下は一面湖だった。所々に浮島があり、またいたるところに石の柱が立っている。 一方の入り口から、マイティが巡行飛行状態で入場。 もう一方から入ってきたのは、ストラーフタイプだった。 かなり軽装である。 ヴァッフェシリーズのブーツを履き、大腿と手首には同根装備のスパイクアーマーをそれぞれ取り付けている。胸部はハウリンの胸甲・心守。 頭部にフロストゥ・グフロートゥ、二の腕にフロストゥ・クレインを装備しているが、あれでは武器を使用できない。アクセサリーと割り切っているのだろうか。 主武装が新装備のサイズ・オブ・ザ・グリムリーパーと、二体のぷちマスィーン、肆号とオレにゃんしかなかった。プチマスィーンはどちらも射撃用のマシンガン。 何よりも特徴的なのは、メガネをかけていることだった。 「軽装備……?」 それに装飾が過ぎる。 マイティは疑問に思った。 『何か仕込んでいるのかもしれない。気をつけろ』 「了解」 そのまま巡航で近づく。ためしにレーザーライフルを二、三発撃ってみる。 ストラーフが消える。 「!?」 『光学迷彩だ。センサーをサーマルに切り替えろ』 「は、はい」 「はっずれ~♪」 真上から声が聞こえた。背筋が一気に凍りつき、マイティは慌てて後方にマシンガンの 銃口を向けようとする。 がごんっ 胸部をしたたかに打たれ、マイティは失速。落下した。 「な、なに?」 マイティは何が起こったのか分からず混乱した。姿勢を制御するのを忘れる。 『マイティ、機体を起こせ!』 はっ、と気づいてフラップを最大限に傾ける。 水面すれすれでマイティは水平飛行に移る。水しぶきが上がる。 胸部アーマーがべっこりとひしゃげていた。ストラーフは鎌の背でなく、刃で打った。アーマーが無ければ負けていた。 「マスター、今のは!?」 『分からん。瞬間移動に見えた。今解析している』 『調べても無駄よ』 相手のオーナーが言った。 『本当に瞬間移動ですもの』 『何?』 マスターのモニターに相手の画面が現れた。眼鏡を掛けた黒髪の女性。 『公式武装主義者(ノーマリズマー)のマイティに会えて嬉しいわ』 『もう二つ名がついているのか。光栄だな』 『セカンドながらあの鶴畑を倒した実力派ですもの。神姫に入れ込んでいる人間なら、だいたい知っているわ』 『さしずめそちらは特殊装備主義者(スペシャリズマー)というわけか。マイティ』 「は、はい」 『装備Bに切り替える』 「分かりました」 マスターがコンソールを操作する。 マイティはウイングユニットを丸ごと切り離すと、浮島の一つに着地。シロにゃんにコントロールが移ったウイングユニットは、ランディングギアを浮島に落とす。 『サイドボード展開。装備変更』 マイティの脚からブーツが消え、代わりにランディングギアが瞬時に装着される。肩と大腿のプロテクター、そしてひしゃげた胸部アーマーがポリゴンの塵と化し、ふくらはぎのアクセサリポケットが肩に移動。 武装にも変更が加えられた。アルヴォPDW9が消失し、カロッテTMPが出現。 左手首のガードプレートが、右手首同様ライトセイバーに代わる。 予備武装としてランディングギアにバグダント・アーミーブレードを装備。 最後に、天使のような翼が背中から生える。「白き翼」だ。 『飛び方は覚えているな』 「はい。さんざん練習しましたから」 『よし、行け』 ひと羽ばたき。それだけで、マイティは相手のストラーフの立つ浮島へ急速に接近した。 バララララララ 接近しつつTMPを撃つ。 ストラーフはまたもや消失。真左に反応。 左を向いて確認する隙も惜しんで、マイティは反射的に左手のライトセイバーをオン。そのまま切り付ける。 「おっと」 ストラーフは、上、に避けた。 間違いない。こいつは飛べるのだ。 どうやって? 『原理は不明だが瞬間移動が主な移動手段だ。姿勢制御による若干の移動を、頭と二の腕 のブレードと手足でやっている』 マスターが解析した。 なんて飛び方! 後方からがっちりと拘束される。 「おしまいね」 ストラーフがくすっ、と笑う。 鎌が首筋に当てられようとする。 マイティは両肘で相手の腹を打つ。 「やばーん!」 飛び去りながら、ストラーフが叫ぶ。 「うるさいっ」 マイティはTMPを精密射撃。 しかし鎌をくるくると回転させ盾にされる。 二体のぷちマスィーンズが反撃の連射。 マイティは白い翼を前方で閉じる。 翼の表面に銃弾が当たる。が、ダメージは無い。翼は盾にもなるのだ。 「ばあ」 翼を開いた途端、目の前に舌を出したストラーフ。瞬間移動だ。 ガキンッ! 突き出された鎌を、TMPで受ける。TMPは壊れて使い物にならなくなった。 ライトセイバーを伸ばす。ストラーフはあろうことかぷちマスィーンを盾にして後退。マスィーンズは爆砕。ポリゴンになって消える。 「マスター、瞬間移動のパターンは!?」 『今のところ直線距離でしか移動していない』 つまりいきなり後ろに回り込まれることは無いということ。だが、横に移動した後、後ろに、と二段階を踏めばそういった機動も出来てしまう。 あまり意味が無い。 「そうよ、この瞬間移動は自由自在なのよ」 マイティの懸念を見透かしたかのように。ストラーフは笑った。 「しかも」 真横。 「何度も使えちゃう」 真後ろ。 「くうっ……!」 マイティは宙返り。ランディングギアでオーバヘッドキックを浴びせる。 「きゃんっ!?」 頭に命中。ストラーフは急速に落下する。マイティはアーミーブレードを両手に装備。 「やったわねぇっ」 浮島を蹴り、目の前に瞬間移動。 予想通り! マイティはブレードを振り下ろす。f 瞬間移動した直後は瞬間移動できない。当てられる! しかし、ストラーフは消えていた。 「予想通り」 頭上から声。姿勢制御による限定機動! 「お返しよ♪」 頭をぶん殴られ、マイティは一瞬気を失う。 屈辱。殴られるのは一番そう。これは人間も神姫も変わらなかった。 「シロにゃん!」 「にゃーっ!」 いつのまにか接近していたウイングユニットがストラーフに体当たりを仕掛ける。 「そんなハッタリ無駄!」 ズバッ 鎌で一刀両断。ウイングユニットは消えてしまう。 『主義と固執は違うのよ』 ストラーフのオーナーが言う。 『何を……』 『通常装備だけではおのずと限界がある。あなたも薄々感づいているはず』 『何が言いたい』 マスターは苦虫を噛み潰したような顔をした。 『あなたの実力ならファーストには行けるでしょう。でも、ファーストでは固執は許されないわ。認められたあらゆる手段を使わなければ勝てない場所よ』 『アドバイスのつもりか』 『あなたがあの片足の悪魔と戦いたいのなら、ね』 『……!!』 その名前が出てきたことに、マスターは驚きを隠せなかった。 モニターから嫌な音がした。 ストラーフの鎌が、マイティの額を刺し貫いていた。 驚愕に目を見開くマイティ。ポリゴンの火花を撒き散らして、消滅。 『試合終了。Winner,クエンティン』 マスターは初めて、相手の神姫の名前を知った。 マスターはしばらく、コンソールに手をつきながら前を見つめていた。 ハッチの開いたポッドに座り込みながら、マイティはおどおどするしかない。 「帰るぞ」 唐突にそういわれたので、マイティは立ち上がる際転びそうになってしまう。 ねぎらいの言葉を掛ける店長も無視して、マスターは足早に店を出た。 了 前へ 先頭ページ 次へ