約 220,420 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/475.html
凪さん家シリーズ 真・凪さん家の十兵衛さん 凪さん家の弁慶ちゃん 第零話「それは」「常」 「ぃさ~ん」 う、む…なんだこの甘酸っぱい感覚は…。 「にぃさ~ん!」 む、なんだこれはなんていうゲームだ。 「にぃさ~ん!起きてよぉ~!」 おいおい、最近のゲームでもこんな展開は見かけないぞ?王道か、王道という物か?しかしだなぁ、今はそれだけじゃ勝ち残れないぞ?最近は甘酸っぱ辛いのでないとだなぁ~。 「遅刻するよ~!」 仕方ない、ここはお決まりの台詞でも言っておこうか。 「うむ、あとゴフンッ!!」 言っておこう、まず始めに言っておこう。俺は確かに「後五分」と言うつもりだった。 そう、言うつもりだったんだ。だがなぁ、実際に出た単語は腹に衝撃をくらったせいで思わず出た「ゴフンッ!」というなんとも情けない単語だ。 って、さすがにこれでは起きて文句の一つも言わなければ男たるもの…というか主人公としてどうか。 よし言ってやろう。 「おい、一体何をするんだ!」 目を開け、ガバッと夏用布団を退かす。そう、今は夏。月で言うなら七月である。窓から降り注ぐ日の光が容赦なく俺に突き当たり、いやぁもう熱いよ。これだから夏ってやつは…。 って違うだろ。今大事なのは俺のレバーに朝っぱらから強烈なスパーキンを食らわしたやつに小言の一つでも言う事だろうが! 「おい、起こすのは良いがやり方が違うだろう?一般的にはだなぁ、「この~!」とか言って布団を剥いだり、知らんうちに布団の中に潜り込んでびっくりさせたり…」 ここまで言って俺は気がついた…何を寝ぼけているんだ俺は…見ると俺を覗き込むのは見知った少女…では断じてなく… 「ち、千空…」 凪千空、俺の…弟だった。って、まぁ待て千空、そんな変人を見る目で俺を見るな。いや確かにお前はだな、はっきり言って女にしか見えない。それこそどこのゲームだといわんばかりであって、お前のその全身からあふれ出る乙女のオーラというかなんというか。 「に、兄さん?」 「む、なんだ」 「えっと…こんな事言うのも何なんだけど…」 「なんだ」 「その…大丈夫?」 ガーン…分かる、分かるぞ俺には…その台詞の間には「頭」という単語が合体して「頭大丈夫?」となるんだろう?そうなんだろう!? 「あ、あぁ、寝ぼけていただけだ…」 「そ、そう…なら良いんだけど…」 こらまてこっちを見てくれ。兄さん悲しくなるじゃないか。…ってそうだ忘れていた…。 「おい千空」 「…え、何?」 「そういえば…よくも俺の鳩尾に強烈な一撃を叩き込んでくれたな?」 「あ、それは~…」 「おい、こっちを見ろ」 「僕じゃなくて…」 「オマエジャナイナラダレナンデスカ?」 「そこに…」 「む?」 千空がその細くてしなやかな指を指す。その方向を見ると。 「…あ」 「あ…じゃない」 そこには小さな人形が立っていた。15cmサイズのそれは俺のひざの上で仁王立ちしている。 「やっと気付いたな?」 「あぁ、やっと気付いたよ…」 そう、これはゲームとかじゃない。というか俺が主役なのかすら怪しい。なぜならこの話は、目の前にいるこの小さな人形、“武装神姫”の話なのだから。 ちなみにこの目の前にいる神姫は「弁慶」千空の神姫で、犬型らしい。 「弁慶、お前が俺に朝の一撃を」 「目、覚めた」 「あぁ…怒りがわくほどにな」 「でも兄さんが悪いんだからね~?」 と、千空が横槍でグサリ。ぐ、それを言われると確かに…。 「とにかく、もう朝ごはん出来てるんだからね?早く着替えて降りてきてよ?創さんはもう食べてるんだから」 「あ、あぁ」 そう言ってリビングに向かう千空。そして去り際に顔をドアからちょこっと出して 「急いでね!」 と笑顔で言う。お前なぁ、その笑顔反則だぞ?まったくお前が妹なら…。 「おい」 「!?っと」 「急ぐ!」 「はいはい、分かってますよ弁慶さんっと」 そこでやっと大地に立つ俺。それと共に弁慶も膝の上から床に降り立った。 「いいか、急げ」 と言うと弁慶も下に下りていった。 「あぁ…眠ぃなぁ」 さてと…仕方ないからさっさと準備するとしよう…。 それにしてもさっきから焼き魚の香ばしい匂いがするな。うむ、よきかなよきかな。 「おはよう、千晶君」 「おはよう御座います千晶さん」 リビングに入るといつもの挨拶。俺ももちろん返す。 「おはよう御座います創さん、ミーシャ」 創さんは俺の従兄弟に当たる。年はそこそこ離れているがそんなに離れてもいない。 そしてミーシャだが、彼女は人間じゃない。彼女は創さんの武装神姫だ。なのでこの家には武装神姫が二体いる事になる。これって結構凄いんじゃないか?だって神姫一体買うってのは最新型パソコンを一台丸々買うことと同じなんだぞ? 「あ、やっと降りてきたね?はい、どうぞ」 と千空がご飯を盛った茶碗を目の前に置いた。 「ん、ありがと」 「じゃ、いただきま~す」 「いただきます…と」 今日の朝飯はザ・日本の朝食といった感じ。といえば大体想像がつくだろう? ぱくりと一口 「うむ、いつもの如く美味いな」 「やだなぁ兄さんってば」 「そういえば和食は久しぶりだったね」 創さんが言う。そうそう、まったくもって久しぶりだ。最近パンばかりだったからな。 「え、あ~そうか、兄さん好きだもんね~和食」 「むぐ、まぁな」 「何かあったんですか?」 「え、いやぁ特には。たまたまその…安かったから」 「「なるほど」」 我が家の家事担当は家計も考えておられるのだ。偉大な弟だなまったく。 『次のニュースです、先日起こった違法改造神姫による~』 TVから聞こえたニュースに反応する二人。まぁそりゃそうか…神姫のオーナーにとっては知っておかねばならないニュースだし。 とくに創さんはこの手の事件についての仕事をしているのでなおさらだ。 「減りませんね~神姫犯罪」 「うん、人は便利な物が現われると必ずといって良いほど悪用する人がいるから…」 「ひどい話だなぁ…」 「まぁ出来ることならすぐにでも捕まえたい所なんだけど」 「まずは警察が動かないことには…でしょ?」 「うん、その通り、下手には動けないのも事実」 「頼んだよ!ミーシャ!」 千空がミーシャにエールを送る。 「はい!一日でも早く多くの笑顔を取り戻すためにぃぃ!」 とガシッと拳を突き上げるミーシャ。 「おやおや、僕は置き去りかな?悲しいなぁ」 「え、あ、いや、そういうわけじゃ」 「ははは、わかっています。それに、確かに僕よりミーシャの方が頑張ってくれていますから」 「え、そんなぁマスターったら、恥ずかしいじゃないですかっ」 ぺちっと創さんの腕を叩くミーシャ。顔が赤くなっている。 「ははは、真実ですよ?ミーシャ」 「マスター…」 見つめ合う創さんとミーシャ…む、なんだこの甘酸っぱ辛い雰囲気は。 「オアツイネ~」 「きゃぁーみてるこっちがてれちゃう~」 からかう凪兄弟。 「こら、大人をからかわないで下さい?」 と笑いながら制す創さん。少し照れているのか? 「「は~い」」 と生返事で返す俺たちであった。 そんなこんなで朝食を済ませ、三人揃って玄関前。これから俺は専門学校にチャリで、千空もチャリで高校に、創さんは車だ。 「じゃ、行ってきます」 「行ってきます」 バタンと車のドアが閉まる。 「あ、そうだ」 千空がなにやら思い出したようで、ドアにノックする。 「ん?何かな?」 「今日の晩御飯はどうします?」 あぁ、なるほど。 「う~ん、まだ何時に帰れるかのめどは立ってないですね…」 「じゃあいつものように連絡で」 「ええ、分かりました、じゃあ、行ってきます。二人も気をつけて行ってきて下さい」 「うん」 「はい」 ブゥゥゥンと遠ざかって行く車を見送り、俺たちもそれぞれの学校へ向かう。 「じゃ、行ってくるね。兄さん」 「行ってくるぞ」 「おう、行ってこい」 「サボらないでよ?」 「サボらないよ」 「サボるな」 「だからサボらんて」 俺はどんだけ信用無いんだ?兄さんますます悲しいぞ。 「じゃ」 「ん」 千空の通う高校と俺の通う専門は反対方向だ。なのでここでお別れとなる。 小さくなる千空の背中を曲がり角で消えるのを確認して、俺も学校に向かうことにした。 「今日も良い朝ね~」 「はい、京都」 神姫オーナー御用達の某ホビーショップと同じ商店街にある喫茶店「LEN」 「おっはよ~!!」 「おはよう御座いますお二方」 「よ」 「おう!」 千空が通う超巨大学園「私立黒葉学園」 「あ、ちーちゃぁ~ん」 「おはよう御座います千空さん、弁慶」 いつもの朝、いつもの日常 「私はもうこの人達を信じたくない…です」 「人間なんてただの鍵。開けるためにしか必要ないわ」 「向かうは日本だ、晴明」 「はい。楽しみです!」 そして加わる日常、交わる関係 ここから始まる、すべてが始まる…。 そして続いてゆく。 「神姫…ねぇ~…」 第零話「それは」「常」 完 次回 真・凪さんちの十兵衛さん 第一話 歓 凪さんちの弁慶ちゃん 第一話 それは始まり
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/210.html
人物紹介 ホビーショップ エルゴ編 人物紹介 ホビーショップ エルゴ編日暮 夏彦(ひぐらし なつひこ) ジェネシス 犬吠埼 凛奈(いぬぼうざき りんな) 高階 雛希(たかなし ひなき) オウカ(仰華) 日暮 夏彦(ひぐらし なつひこ) 性別:人間・男 通り名:G 一応当作品主人公。よく訓練されたオタ。 商店街にあるホビーショップ、エルゴの店長。 その神姫関連に偏りきった商品ラインナップは店員をして「狂気の域」と言わしめる。 基本的にその突き抜けた生き様から男性受けが良く、女性の失笑を買うパターンが多い。 普段は面倒見が良く気のいい近所のお兄さんだが、ひとたびスイッチが入ると 台詞、行動がやたらとアツくなるヒーロー気質。 素に帰ったときに照れが残る辺りが姉に言わせれば「甘い」 クールな男を気取りたいのか素なのか、プライベートでは少し皮肉っぽい言い回しを 好む傾向がある。 スイッチがオタスイッチと混線している為に、アツさの方向が偶に無軌道にブレる。 小さい頃から姉の理不尽な専制政治に耐えてきた為、強制的に色々鍛えられてきた。 特に趣味と実益を兼ねるコンピューター技術と工作技術はプロ級。 神姫犯罪が目立ち始めた頃巻き込まれた事件を切っ掛けに、正義の味方を名乗り 神姫犯罪に立ち向かうようになる。 苦労も多いが基本的に趣味と主義に生きれる人生に本人は満足げ。 最近は慣れないラヴコメ展開の渦中に。 ジェネシス 愛称:ジェニー タイプ:ヴァッフェバニー 通り名:Encount Striker、見敵必殺の神姫 夏彦の武装神姫。 平常時はエルゴの店員として働いている。 また、日常生活に関係して神姫を連れて行けないマスターに代わり、神姫の面倒をみたり 人間社会について勉強したりする「神姫学校サービス」の教師役もしている。 ディスプレイ用素体に偽装したボディを仕様。 マシーンズシステムにより胸像偽装ボディから腕、下肢パーツ換装で神姫形態へと 「変身」する。 そのシュールな胸像姿から生徒の皆様に「うさ大明神様」の名で親しまれる。 移動を考慮して胸像形態でも飛行可能な機能が加わった。 いつまでたっても日常生活用の素体を購入してくれない夏彦を疑問に 思っているが夢とか愛着とかのワードで誤魔化されている。 実は素性を隠す為、PC接続時の処理能力向上の為など愛着以外の理由もあるのだが 既に遣り取り自体を夏彦が日常視して楽しんでいる為、真相は知らされない。 また、日暮家の家事担当でもあり、家事用に人間サイズの違法ボディを持つ。(元愛玩用) ボディとの接続は頚部のリンクコア内に収納接続される直接接続方式。 人間ボディ時には「秋月 兎羽子(あきづき とうこ)」の偽名を名乗る。 性格は生真面目で母性的。 能力の割にその生き方から社会性がついて来ない夏彦を呆れながらも的確に補佐する。 持ち主の影響かそれなりにあちらの文化にも造詣がある。 リミッター解除のおかげで人間を躊躇なく攻撃出来る為、怒ると非常に怖い。 が、主に被害に遭うのは悪党と突っ込まれる面々なのでそれほど実害はなかったり。 また主同様にヒーロースイッチを持っているのか、偶に普段からは考えられない アツい言動を見せる事がある。 夏彦に神姫とマスター以上の感情を持っているが基本的に真面目なのが災いして 感情のやり場に困る事が多い。 告白以後は普通の恋愛に憧れる一方、周囲の濃い面々によって順当に間違った方向へ。 武装解説: ▽基本性能 本来のレギュレーションを大きく逸脱しており、通常の神姫に掛けられたリミッター類 は全て解除されている。 その為、正式なカタチで公式戦に参加する事は出来ない。 文字通り普通の神姫としての生活を捨て、悪と戦う為に生まれたヒーローモデル。 また、各戦闘を想定した多数のオプション装備を持つ。 使用頻度が高いのはMMS随伴戦闘機・ソードダンサー改「リボルケイン」で 搭乗、合体等を駆使する事でジェネシスの戦闘力をさらに拡充する。 ◆G-1(現在爆破により消失) E.S…遭遇戦域対応を目的としたフルカスタマイズモデル。 主な装備は銀の可変アーマー「シャドウムーン」と背中の複合兵装「ブラックサン」 大型装備は背部ブースターから伸びるフレキシブルアームで全て接続し、状況によって 装備位置の変更、可変によりあらゆる戦況に対応する特別仕様機。 その重装備のため通常移動はフライトユニットで行う。 ◆G-2「アナザーシャドウムーン」 剣術使用の近距離戦闘特化モデル。 コードG.B.H(後述)を使用する為のモデルでもある。 メンテナンス性の向上と超高速戦対応に重点を置き、パワーとスピード、処理能力 の底上げが成されている。 反面、砲撃戦等の遠距離戦闘や広範囲、集団戦での攻撃能力等は低下している。 主な装備はアムドライバーシリーズジェナスゼアム及びネオニルギースのパーツ類 から推進系等を改造されたアーマー。 背部に追加ブースターや射撃武器を積んだ強化バックパックを装備。 射撃武器の内訳は同シリーズのバリアブルランチャー一式と実弾攻撃用の フォールディングキャノンをバックパック左右に搭載。 メイン武装は両肩に装備されたアブソリュートソードとアムバスタードソード。 アーマーの両肩、胸、バックパック、そしてベルト内にサブジェネレーターを搭載し、 そこからのエネルギー供給で一時的なパワーブーストが可能。 特にベルト型ジェネレーター「キングストーン」は電気以外にも光や熱を媒介として エネルギー変換が可能な特別製。 ◇電脳戦専用攻撃プログラム「剣の英雄の系譜(Genealogy of Blade Hero)」 略称 コードG.B.H、U.B.W.ver.G 等。某ゲームの固有結界「Unlimited Blade Works」を プログラム的に再現強化した物。 無論、仮想空間内でしか使えない奥の手。 ジェネシス及び処理用のサブPCの処理能力の殆どを使って発動する。 無数に降り注いだ古今東西のヒーロー武器の能力を、特定空間内(結界内)の情報 に干渉し書き換える事でリアルタイムで再現する。 結界が形成されるのは書き換えの為の一種のフォーマット状態に空間を変える為。 この特製の為、元になった事物の能力を100%発揮できるが長時間事物を維持する事は マシンパワー的に出来ない。 また、待機状態のプログラムの発動には電脳空間にハッキングを掛けて制御している マスター側の他に使用するユニット側からも認証が必要。 これには同空間内の他のユニットからの干渉に対するセキュリティと、発動までの タスク簡略化、情報同調による再現率強化などの意味合いがある。 具体的にはユニット側が認知し、認識している以外のプログラム(事物)は発動プロセス を踏んでも発動しない。 ユニット側が事物についての知識を持ち、認証信号を使ってプログラムキーの「欠け」を 補完する事で初めて起動する仕組みになっている。 この為、例えその場にあろうとジェネシスの知らない武器はその効力を発揮する事が 出来ない。 ワリと非効率的な弱点だがそこを埋めてこその二人の「必殺技」らしい。 犬吠埼 凛奈(いぬぼうざき りんな) 性別:武装神姫ハウリンタイプ、インターフェースボディ 職業:エルゴ非常勤バイト その正体はD-フォースの一体、D-ブラスター。 偽名を名乗り、超テキトーなエルゴの住み込みバイトをしながらジェニーと夏彦に ちょっかいを出す。 詳しい解説はリンク先参照の事。 高階 雛希(たかなし ひなき) 性別:人間・女 通り名:お嬢 16歳。私立黒葉学園高等部1年。 日暮家の居候2号にしてエルゴのオーナー権利保持者。 が、エルゴの仕事を手伝う気は一切無いらしい。 旧華族高階家の出身であるらしい事以外、詳しい身元は不明。 高階本家とは絶縁状態にある事が、本人の口から語られている。 容姿端麗、成績優秀。身のこなしは機敏だが運動は苦手。 学校では制服を着て居るが私服は例外なく和服。 年齢不相応な言動を繰り返し、素行、性格共に謎が多い。 策略家で思慮深く表だって何かをする事は少ない。 日暮冬司の元で三年間オタクとしての英才教育を受けてきたらしい。 Gの仕事に興味を持つが、どこまで本気なのかは怪しいところ。 夏彦に対しては明確に興味を持ち、アプローチを掛ける。 オウカ(仰華) 愛称:無し タイプ:ツガル 通り名:無し 雛希の武装神姫。 非情に気の毒な知能と人格の持ち主。 ノリとテンションに重きを置くお調子者。 利己的かつリアリストで悪知恵だけは働くが感情的で杜撰。 負けん気が強く、打たれ弱いが立ち直りは早い。 ツガルタイプである事にある種の誇りとコンプレックスを持っており、 粗末に扱われるとキレる。 自分に優しい人や便利な人に懐き、少しでも嫌いな人間は蛇蝎の様に忌み嫌う。 攻撃力と運動性に割り切った設定で、理屈よりも感情や本能に任せて戦った方が 能力を発揮できるタイプ。 鳴き声だけでポケ○ンの雄雌が判別できるなど、決して実生活では役に立たない 方面の能力だけが高い。 武装は刀剣類を好む。 理由「ボコッた実感が湧くから」 普段は普通の布地の着物(雛希の趣味)を纏っている。 武装解説: ◆G-Another《ライオンタイガー》 日暮 冬司謹製の武装システム。 自在剣《金砂地》と自在銃《銀砂地》という二つのマルチウェポンと、その能力を 引き出すための和服型装甲ウェポンバインダー《獅子丸》で成る。 G1開発時に夏彦の「遭遇戦域対応」というコンセプトに対して冬司が出した解答例。 オウカがバトルデビューする際にプレゼントとして作り起こされた。 トラクタービームを利用して自在に形状を変化するビームブレードで至近~中距離を アーマー内に仕込まれたパーツの組換で様々な戦況に対応するマルチシュートウェポン で至近~超長距離までを自在にこなす。 また、金砂地は増加エネルギーパックで一時的に攻撃力を激増させる事が可能。 銀砂地は砲弾の変更や同じくエネルギーパックの交換で威力変化が可能。 獅子丸は振袖型のアーマー。振袖部分に各種武装パーツが収納されており、 帯の部分に当たるビームクロス発生器で防御布を、さらに拡散発生させる事で エネルギーフィールドを発生させ防御力を底上げする。 裾部分はフレキシブルスラスターになっており加速力を確保する。 飛行能力などは無いが、地上戦及び対応戦闘ではその特性から無類の強さを発揮する。 メニューへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/212.html
人物紹介 その他編 人物紹介 その他編地走 達人(じばしり たつひと) 今米 丈太郎(いまごめ じょうたろう) 日暮 冬司(ひぐらし とうじ) 地走 達人(じばしり たつひと) 性別:人間・男 通り名:無し 警視庁公安MMS犯罪担当3課所属の刑事。階級は警部。 神姫犯罪を追ううちに何度もGと顔を合わせ、友情が芽生える。 現在でも秘密裏に協力関係を持っている。 実直で生真面目な熱血漢。 今時貴重な武士道を重んじる男で無表情に押し殺したその顔には一種の威圧感がある。 武術の達人で特に剣道の腕前は一級。 かつては神姫ユーザーであったが捜査中の事故で失っている。 それ以来エルゴに寄る事はあっても神姫を買う事は無い。 神姫の社会的な立ち位置が定まらない現在、神姫ユーザーの側に立って捜査を行う という意味では警察内部でも珍しい存在。 勤務態度も大真面目だが融通は利く。 今米 丈太郎(いまごめ じょうたろう) 性別:人間・男 通り名:無し 神姫関連事業大手、KMEEの神姫バトルサービスサポートセンター主幹。 親族経営のKMEEでは親族筋である為高い発言力を持つ。 40絡みの渋いオジさんで趣味は競馬とキャンプ。 不審事件が何時の間にか解決している事に疑問を持ち、大金払ってGの正体に行き着いた。 最初は利用してやろうと思って近づいたが何だかんだで現在はギブアンドテイクの関係。 日暮 冬司(ひぐらし とうじ) 性別:人間・男 通り名:無し 北海道在住の農家。エルゴの前身、日暮模型店の店長。 息子に店を任せ、第二の人生と称して北海道で悠々自適の日々を過ごしている。 日暮姉弟をオタク道に引き込んだ張本人で、今現在も子供達とネットワークを 維持して趣味に邁進する道楽中年。 武装神姫は所持していないが、MMS(主にロボ系)には明るい。 高階 雛希に己が技術と知識を教え込んだ。 また、雛希とは家族ぐるみの付き合いをしており、夏彦達はまだ知らない彼女の 事情を知っているらしい。 妻にして日暮家最高権力者、日暮 春香には決して頭が上がらない。 妻は元商店街のアイドルにして幼馴染。 結婚時には奇跡と揶揄され、商店街に居たころは陰で「リアルギャルゲー男」 と呼ばれていた。 メニューへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2411.html
≪WIN≫ 神姫ほどの合成音声が作れるのに、なぜか機械感バリバリの勝利のコールと共に周囲の景色が膨大な量のテクスチャとフレームの残骸になっていく。 「うぅん……おはようございますミリオタ、もとい隊長。勝ちましたよ」 「あぁ、独り言は全部聞いてたぞ? 上官侮辱罪って知ってる?」 目の前に立つ男もキャロルもお互い笑顔だが目が笑っていない。 この男は斉藤隆司という。 20歳にしてミリオタ、ろくに講義に出席せず大学を二年で中退、現在はフリーター、そしてキャロルとその相棒のマスター。 「まぁ、いいや、いや、よくねぇけど。とにかくあいかわらずいい手際だった」 キャロルも褒められて悪い気はしないのか「ふんっ」と鼻を鳴らして胸を張る。 「まぁ、とうぜんですね。 この榴弾砲と私の腕が有ればいつでも狙ったところに好きな弾種を落 としてご覧に入れますよ? なんなら……」 と、その台詞を遮って隣のボックスから黒い影が飛び出して男の胸に張り付いた。 「おにぃちゃぁぁぁぁん! アリス勝ったよ! 頑張ったよ!」 黒い影は戦車型ムルメルティアのアリス、キャロルの相棒である。 「あぁ、アリスもお疲れ様。 やっぱり装備、ミサイルラックよりアモコンテナにして正解だったね」 指先で頭を撫でられると、アリスはだらしないほど表情が弛緩した。 「アリス、何度も言いますが人の話を邪魔しないでくれませんか? あと、あなたもムルメルティアなら誇りはどうしたんですか誇りは?」 「キャロルこそ! 試合中ずっとお兄ちゃんの悪口言ってたでしょ!」 「はぁっ!? あなたの耳は一体どういう構造してんですか! だいたい今その話関係ありますか!?」 周囲に大量に並べられたゲーム機の騒音に負けないくらいの騒ぎを起こし始めた二体に男が苦笑していると、同じように苦笑いを浮かべた女性が反対側から歩いてくる。 「は~、タッグだとあいかわらず強いねキャロルちゃん達」 「痛いですよぅ…アリスちゃんやり過ぎです…」 「ねぇねぇ!最後のあれ何、あれ何!? ボクなんだかわからないうちに吹き飛ばされちゃってわかんなかったんだけどっ!」 女性の名前は神代小百合、美人で頭脳明晰、運動神経そこそこで23歳のOL一年生なのだがこうやって平日昼間のゲームセンターにふらりと現れるあたり、社会人としての自覚を問われる。 そして今しがたまで対戦していた天使型アーンヴァルと悪魔型ストラーフのオーナー、ちなみにそれぞれ名前がホワイトラビットとジャバウォックという。 「あ~、ごめんな二人とも、で、最後のだけど……」 「地雷です」 キャロルがこともなげに答えた。 「地雷? そんなの発売してたっけ?」 「正確にはガイ・スローナーM18モデルミニチュアレプリカ。リアルバトルだとせいぜい多少痛くてびっくりするくらいの威力しかないのに一個250$もする高級品ですよ?」 「え、えっとつまり?」 キャロルはまだわかりませんか? と肩をすくめて見せてから。 「アーマライト社が武装神姫用に開発した指向性対神姫地雷、通称 クレイモアです。殺傷範囲は神姫換算で100mにも及びますよ?」 キャロルは基本的に雄弁なのだ、それは戦っている時でも変わらない。 喋り続けることで何か集中力を高めているのか、あるいは逆か。 「へー、すごいね! また新作?」 「はい、その…まだ未認可品なんでできれば黙っておいていただけると…」 「い~よ、いつものことだしね」 いつものこと、そう、新作が発表される時期になると友人であるところのFPSの海外組から 「うちこんなの発表するんだけど?」といったメールが飛び込んできて……毎週末、いや、学校を辞めてからは平日も遊んでいるだけあって、またこれが彼のツボを押さえている。 アリスの装備しているゼネラル・エレクトロニック社謹製M134ミニチュアレプリカにせよ、キャロルが乗り込んでいるフォートブラッグ(もっとも形状がまったくといっていいほど別ものになっているが)に組み込んであるM777ユナイテッド・ディフェンスオリジナルミニチュアレプリカ・モデルU.S.ARMYにせよ、発表発売前にアメリカの友人の好意により海を渡ったものだ。 もともと、武装神姫の武装はオリジナルのものが流通するくらいに汎用性が高い。 武器の性能はむしろ武器の内部の小型メモリーに入力された数値と画像情報から構成される情報ということになる、もっともチートと呼ばれるようなプログラムは基本的にブロックされるようになっている、リアルバトルはこの限りではないが…… とにかく、そういった意味で未発売のものでも内部の情報さえ完成していれば普通にバトルで使用できるのだ、一部例外を除いて。 「そういえばさ、斉藤君もいい加減に大会とか出てみれば?」 「いや、人の話し聞いてました? でれないっスよ」 そう、公式大会はレギュレーションで純正および認可パーツのみのようなことが多い、更にまだ未発表品であったりすれば神姫センターや専門のショップでのバトルで使えば質問攻めを受け、最悪、企業情報を漏洩した門で貴重なアメリカの友人がいなくなりかねない。 「でも、さっきのクレイモア…だっけ? あれ以外は大体もう発売されてるでしょ?」 「まぁ、そうなんですけど」 「なら、もったいないよ! あんなに強いのに大会に出ないなんて」 再びぎゃぁぎゃぁと言い争いを始めたアリスとキャロルを見ながら男は考えていた。 彼女達が公式大会で結果を残すのはもう少し先の話になる…… TOP
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1437.html
戻る トップへ 空を仰げばまだ暗く、西はまさしく宵闇で。 だが一方、東の空は薄らと朝日の光が垣間見える。 頬を撫でる風は、朝の冷えた風だ。 がたがたと揺れる自転車のかごの上、山と詰められた新聞紙の上に座りながら、秋の早朝を堪能する。 「パーシ、次はどこだ?」 後方から声がした。私のオーナー、宗太だ。 「ん~……三丁目のぉ水野さんちかなぁ」 インストールされたナビシステムが示す場所を答える。 遥か彼方には薄明が見えた。 「三丁目か……ちょっと急ぐか」 宗太が呟くのとほぼ同時、自転車がガクリと大きく揺れて、頬を撫でる風が強くなった。 ちょっと振り返ると、宗太がいわゆる立ち漕ぎの状態になっていた。 周囲の風景が早く流れていく。まるで、飛んでるみたいだ。 「宗太ぁ、5m先、目的地ぃ」 「おう」 閑静な住宅街。普段からあまり人通りの多くない場所で、早朝の今は動くモノは皆無だ。 その中にある、立派な二階建ての民家が今度の目的地。 そこは私も、宗太も良く覚えている。 何故なら、こんな時間にも関わらず、朝刊をわざわざ受け取る代わり者がいるからだ。 「おはよーございます」 宗太は眠そうな声を隠しもせず、そこに居る人物の前で自転車を止めそう言った。 「毎朝ごくろうさま」 眼鏡をかけた、細長い男性。この家の人だ。 この人は何が楽しいのか、毎朝私達から朝刊を受け取っている。 「今日の朝刊ッス」 足元が大きく揺れた。私が立っている新聞の山から新聞が一つ引き抜かれた。 「どうも。若いのに大変だね」 少し低い、優しげな声。 「仕事ですからぁ」 宗太の代わりに私が答える。このやりとりも毎朝の事だ。 宗太が高校に入り、学費+αを稼ぐために始めたバイトの一つであるこの新聞配達。 その初日、偶然知り合った私達はそれから毎日、このやりとりをしている。 「そんじゃ、次があるんで」 「最近冷えるから、気を付けてね」 その声を受け、宗太は自転車を走らせた。 「……兄ちゃん、新聞来た?……」 「……最近良く読むね、ア……」 空は明るさを増している。町が、動きだす。 空は青く、海の様に蒼く。 雲は波の様に漂い、流れて行く。 人が溢れかえるこの道。人が雲の様に、波の様に流れて行く。 「はっ、はっ、はっ、はっ……」 その中を、まるでマグロの様に?き分ける者が、一人。 白く息を吐き、だらしない制服をはためかせ、人の波を潜る者が一人。 肩から下げた鞄は不規則に揺れ、中身は滅茶苦茶に……。 「宗太ぁ、急ぐのは良いけどぉ鞄は揺らさないでくれる?」 「やかましい!」 切羽詰った形相で宗太は怒鳴った。 遅刻しそうで焦る気持ちも分るけど、そう言われるとカチンと来る。 「良い詩が浮かびそうなのに、それを台無しにする気ぃ!?」 「おめぇの詩なんてどうでもいいだろうが!」 全力疾走に近い速度で走りながら怒鳴れるその体力にはほとほと呆れ返る。 何より、私の詩を馬鹿にする事が頭に来る。 「どうでも良くないわよぉ! もしかしたらぁ月刊・詩で取り上げられるかもしれないじゃない!」 「んなわけありえーねってーの!」 走る速度が一段上がった。 学校までは残り2,3分で到着だろう。 だが、そんな事よりも大事な事がある。 「何であり得ないって言いきれるのよぉ!?」 「んなもんどう考えたってそうだろーが!」 もう学校の校門だ。周囲の生徒の大半は走っているが、宗太程では無い。 というか、宗太程の速力があったところでバカだったら台無しなのだが。 「何がどう考えたらそうなのよぉ!」 「第一、詩を書くサイフォスなんて聞いた事ねーだろ!」 下駄箱に着き、一瞬で靴を履き替える。下駄箱を出て直ぐ左に曲がり、その先にある階段を駆け上がる。 階段を三段飛ばしで上がるたびに私が入っている鞄が大きく揺れる。 こういうトコに宗太のバカっぷりが表れている。 「私が第一号になるわよぉ!」 「あーそうかい、そいつは良かったな!?」 三階に到着すると、靴底がゴムの上履きがキュルキュル鳴った。 人間ドリフトをしながら廊下に躍り出て、教室を一目散に目指す。 幾ら運動神経が良くても頭が回らなきゃ動物と一緒だ。 「この馬鹿オーナーぁ!」 「うるせぇこのアホ神姫!」 扉を半ば蹴破る様に教室に入り、宗太を席に着く。 と、言っても担いだ鞄を机の上に叩き付けるだけだ。 鞄の中に入っていた私は、当然今の衝撃で外に投げ出された。 一応、投げ出される角度を計算修正して馬鹿宗太の隣の加奈美の机に降りる様に投げ出される。 「聞いてよぉ加奈美ぃ! この馬鹿、私の詩を馬鹿にするのよぉ!」 宗太の幼馴染にして馬鹿宗太に代わる私の唯一の理解者、加奈美。 きっと加奈美なら私の気持ちを分かってくれる筈だ。 「あら、酷いわね」 宗太のぼさぼさ頭とは違う、綺麗で長くて艶やかな黒髪。 まさに女の子、って感じだ。オーナーなら加奈美の方が良かった。 「詩を書くサイフォスが可笑しいとか言うのよぉ!」 「神姫が詩を書いても何も問題無いのにね」 ああ、やっぱり加奈美は解ってくれている。 それに比べて宗太の馬鹿っぷりと言ったら……! 「ったく、ぎゃあぎゃあうっせぇな……」 「何よこの馬鹿宗太ぁ」 男の癖に影でこそこそ言うなんて、最低だ。 加奈美のこの態度を見習えこの馬鹿。 現にこうやってお行儀よく椅子に座って、ちゃんと鞄は机の脇にかけてあって。 机の上には一時間目の用意がしてあって。その上には神姫が座ってて。 「……誰?」 エウクランテ。 私の少し後に発売された武装神姫。 空中戦闘に秀で、アーンヴァルの対抗馬として開発された武装神姫。 そして、今私の目の前にいる武装神姫。 「でさぁ、宗太ったら変な武器ばっか買ってくるのぉ。アニメに出てきそうなバカでかい剣とかぁ変な棒とかぁ」 「そうなのか」 「そうなのよぉ。私は使わないって言ってるのにこの馬鹿ぁ剣ばっか買ってくるのぉ」 「しかし、それは宗太殿がパーシ殿の為を思ってではないのか?」 「それなら私の希望を聞いてくれても良いと思わないぃ? あ、私の事はパーシで良いわよぉ」 「む、確かにそれでは自分の希望を押し付けるだけだ」 「でしょぉ! 流石は加奈美の神姫ねぇ。話が分るわぁ」 時は昼休み。場所は食堂。 学生が唯一学校に楽しみを見出す時間と場所であるここは、当然の如く混み合っている。 学校の食堂にしてはかなり広い方にも関わらず、人口密集度は恐ろしい。 そんな真っ只中、二人掛けのテーブルに陣取り、私達四人は優雅な昼食を楽しんでいた。 「……たく、飯時くらい静かにしろっての。飯が不味くならぁ」 前言撤回。 この馬鹿、生意気にも大盛りC定食を食べながら水をさして来る。 馬鹿は馬鹿らしくヤキソバパン食べてれば良いのに。 「加奈美ぃ、この馬鹿黙らせてよぉ」 「ん~……お昼御馳走になってる身としては難しい質問ね」 加奈美はと言うと、馬鹿宗太のお金で買ったA定食を食べている。 すこし困った様に笑っているが、加奈美はもっと良いモノを食べてもバチは当たらない。 だけど確かに、確かにそれはそうでもある。人道的観点と義理人情的観点から言って加奈美はパーフェクトに正しいと思う。 ただ一つ、宗太が勝ち誇ったように笑ってること以外は。 「加奈美はこの馬鹿にノート見せてんだからもっと強気になっても良いのよぉ?」 「そうなのか?」 「そう、そうなのよぉ。あの馬鹿、授業なんか聞かないで寝てばっかなの。だからって加奈美にノート見せて貰ってるのよぉ」 「ノート見せるくらい御馳走してくれるなら安いくらいよ?」 そう加奈美は言うけど、授業中寝るのは馬鹿の自己責任だ。 責任は自身が取るべきであり、人にノートを見せて貰うなんてのは真面目に授業受けている人間に対して失礼だ。 「……宗太殿、授業を受けずに寝るというのは学生として如何なものかと思うが」 シルフィは本当に良い子だ。 加奈美に似て真面目で礼儀正しい。 そして、加奈美が切り分けた豚肉の生姜焼きを丁寧に食べている様にお行儀も良い。 「シルフィよぉ、そうは言うけどな。俺は朝は新聞配達、夜はコンビニでバイトしてんだ」 「む。その歳で仕事に精を出すのは宜しい事とは思うのだが、学生の本分は学業であると、私は考えるのだが」 「その本分を受けるために、バイトしてんだよ」 「そうなのか……成程。それなら仕方ない……訳では無いな。しかし、学校の為に働くのであれば……」 シルフィはいい子だけど、物事を論理的に考えすぎだ。 目には目を、論理の通じない馬鹿に論理を通す義理は無い。 「シルフィ、騙されちゃダメよぉ。この馬鹿は稼いだバイト代は全部神姫関係につぎ込んでるのよぉ」 「宗太殿……」 「四面楚歌ね、宗太」 「……うるせー」 今日この日、宗太に対する攻撃布陣が完成したと言っても過言ではないだろう。 トップへ 次へ -
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/605.html
剣は紅い花の誇り 田舎のとある町で行われるバトルフリーク達の暑苦しい話に、ちょっと怪しげな陰謀風味 コラボ歓迎・・・ですが設定的に他の方のと絡め難くてちょっと著者自身が困っていたりしますが・・・ 著/ぬえ 本編第壹部 第壱幕 「朔-saku-」 第弐幕 「Virgin cry」 第参幕 「神の星」 第肆幕 「THE FIRST CRY IN HADES」 第伍幕 「Merciless Cult」 第陸幕 「END OF SORROW」 第漆幕 「READY STEADY GO」 第捌幕 「FOLLOWER」 第玖幕 「GARDEN」 第拾幕 「G」 第拾壱幕 「MAD SKY」 第拾弐幕 「侵食」・・・神姫悲惨描写注意 第拾参幕 「かすみ」 第拾死幕 「かすみ -見目形 目に焼き付けて-」 第拾伍幕 「Unknown・・・Despair・・・aLost」 第拾陸幕 「HELLO,CP ISOLATION」 第拾漆幕 「Somewhere Nowhere」 第拾捌幕 「Southern Cross」 第拾玖幕 「Like A Angel」 第廿幕 「CREATURE」 第廿壱幕 「奈落の底」 終幕 「アクロの丘」 本編第貳部 第壱幕 「リライト」 第弐幕 [[]] 資料 登場神姫紹介 登場人間紹介 設定資料 『鬼奏』 外伝とか 武士娘って格好良いよね?これが最初に書いたやつ。設定が微妙に違う上に、まとまりが悪い 幕間一 「クイントスの理由」第漆幕と第八幕の間 幕間二 第八幕 「予感」・・・所謂7.5話的な位置付け? 幕間三 第九幕 「Berry」・・・例によってニビル編 幕間四 鳳凰杯編↓ Ⅰ 鳳凰杯編 「蒼い翼」 Ⅱ 鳳凰杯編 「二人のナイヴスロッテ」 Ⅲ 鳳凰杯編 「武の花の咲く頃に」 Ⅳ 鳳凰杯編 「器創、鬼奏、姫葬・・・即ち競う」 Ⅴ 鳳凰杯編 「幽鬼と魔王」 幕間五 Я чайка 幕間六 「ワルキューレの騎行──あるいは凶兆の凶鳥」 幕間七 「無題を冠した未完の彫刻」 幕間八 「Black God Aftermath」・・・latest!! 鳳凰杯・まとめページ 全体へのリンク 協力・引用 様々な方々のSSから、設定やキャラ等を拝借・引用させて貰っています 三十路の独身男性、自営業の場合 ツガル戦術論 Mighty Magic 徒然続く、そんな話。 妄想神姫 橘明人とかしまし神姫たちの日常日記 HOBBY LIFE,HOBBY SHOP 戦うことを忘れた武装神姫 岡島士郎と愉快な神姫達 神姫ちゃんは何歳ですか? ご感想等はこちらへ↓ 名前 コメント すべてのコメントを見る 今日 - 総合 -
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2109.html
ウサギのナミダ ACT 0-3 □ その日の土曜日、俺は拾った神姫をつれて、海藤の家へ向かった。 海藤は、高校時代からの友人だ。 武装神姫を仲間内で一番に始めたのが彼だった。 俺の仲間内はみんな、海藤の影響で神姫を始めている 海藤が連れている神姫がうらやましくて、俺も神姫を持ちたいと思うようになった。 それほど、彼と彼の神姫の関係は良好だったし、その神姫は魅力的だった。 いまでも仲間内で一番神姫に詳しい。 だから、今回のことも、彼を頼ることにしたのだった。 電車に揺られること30分ほど。 いかにもベッドタウンの駅、というところで私鉄を降りる。 海藤の家までは歩き慣れた道だった。意識もせずに角を曲がり、住宅街の町並みを歩く。 俺は程なく目的の家の前に立った。インターホンのボタンを押す。 古びているが、普通の一軒家である。 海藤はここに独りで住んでいる。 しばらくして、玄関の扉が開き、少し小太りの、小柄な男が顔を出した。 「よお」 「よく来たね、ささ、入って入って」 海藤は機嫌よく、俺を招き入れる。 一軒家は独りで住むには広すぎる。 海藤が趣味を満喫するには最適だが、やはり寂しくなるものらしい。 俺が時折顔を出すと、必ず歓待してくれる。 俺は海藤に続いて扉をくぐる。 すると、 「いらっしゃいませ」 鈴の鳴るような声が、海藤の肩あたりから聞こえてくる。 俺が視線を向けると、そこには神姫がにこやかに微笑んでいた。 「こんにちは、アクア。お邪魔するよ」 このアクアの微笑みにやられて、海藤の家からの帰りに神姫ショップに寄って、何度イーアネイラ・タイプのパッケージを手に取ったか知れない。 高校時代の仲間のほとんどが、このアクアの笑顔をにやられて、海藤がうらやましくなって、神姫を始めた。 それほど、イーアネイラのアクアは魅力的だった。 海藤の招きで通されたのは、広い居間だ。 その広い壁の一面を、巨大な水槽が埋めていた。 そして中には色とりどりの魚達が優雅に泳いでいた。 海藤のもう一つの趣味がこれだ。 熱帯魚の飼育だけでは飽きたらず、いまは学業そっちのけで水族館でアルバイトをしている。 そんな海藤が人魚型の武装神姫を選んだのも、当然の成り行きだ。 俺は居間に置いてある小さなテーブルに手みやげをおく。 海藤はそのままキッチンに入り、コーヒーを入れてきた。 手みやげはミスドのドーナッツである。男二人のくせに、俺達は甘いものに目がなかった。 しばらく俺達は、何も言わずにドーナッツを頬張り、コーヒーを味わった。 二つ目のドーナッツを腹に収めたところで、海藤が切りだした。 「それで、神姫の素体交換だって?」 「ああ」 ちょうど俺も二個目を食べ終え、傍らにあったバッグに手を伸ばす。 中から大きめのハンカチにくるまれたものを取り出す。 「これは……」 海藤は、俺が拾ってきた神姫をつまみ上げる。 メンテナンスモードになっている神姫は、ぴくりとも動かない。いまはただの人形同然だ。 手足に巻いた包帯が痛々しい。 そう思わせるほどに生々しい肌の質感が、この神姫にはある。 「こんな素体は見たことがないな」 「言ったろう、訳ありだって」 「見たところ、素体の外皮は妙に生々しくて継ぎ目もないけど……どうやら中身は規格からはずれてはいないみたいだ」 「できそうか?」 「交換だけなら、そう時間もかからないよ」 海藤は慎重に頷いて、そう請け負ってくれた。 「よろしく頼む」 俺が言うと、海藤は早速、リビングの端に据えられたパソコンに、その神姫を持っていった。 すでにスタンバイされているクレイドルの上に載せる。 アクアが海藤の肩から飛び降り、自身もクレイドルのような装置に収まった。 「アクア、バックアップ開始」 「はい、マスター」 アクアは装置の中で目をつぶる。 すると、パソコンの画面にいくつかウィンドウが自動的に開いていく。 アクアがパソコンを操作し、あの神姫の記録をバックアップしているらしい。 ……バックアップ? 「そのまま素体を入れ替えるのなら、念のためバックアップして置いた方がいいよね」 海藤が当たり前のことのように言う。 だがしかし、 「ああ、それはもっともなんだが。アクアはそいつの記録を見ない方がいい……」 「ひっ」 遅かった。 装置の中で、アクアは目を見開いて愕然としている。 「ストップだ、海藤」 俺が言うよりも早く、海藤の手がパソコンを操作していた。 神姫からのメモリの読み出しがストップされる。 「アクア、大丈夫かい?」 「は、はい……ちょっと驚いただけです」 やはりアクアには刺激が強すぎたようだ。 海藤が、パソコンにバックアップされたデータを呼び出した。 ディスプレイに、昨夜俺が見た画像の一部が表示される。 「これは……なんだ、これは」 いままでに見たことのない苦い顔で、海藤が呟く。 「お察しの通りだ……言っただろ、訳ありだって」 「……」 海藤は画像が表示されていたウィンドウを消すと、パソコンのいすにもたれ掛かって座り、ため息を一つついた。 そして、俺に向き直ると、 「なあ遠野……悪いことは言わない。この神姫のオーナーになるのは、やめた方がいいと思う」 「なんだと?」 「ごめん、怒らないで聞いてくれ。君のことを思って言ってるんだ」 海藤の真剣な眼差しに、俺は怒りを引っ込めざるを得なくなる。 「君がどんな神姫のオーナーになろうと、それは自由さ。 でも、この神姫自体が危険な代物なんだ。 この妙に人間くさい素体だって、違法製造のカタマリだよ。 いまの神姫の記憶だって、へたすれば、持っているだけで犯罪だ。神姫風俗自体が違法なんだから。 この神姫のオーナーというだけで、犯罪者扱いされる可能性があるんだ。 武装神姫はホビーだ。楽しい趣味の世界だよね? そんな神姫の世界に、現実のハイリスクを伴ってまで、踏み込む必要があるかい?」 俺は、海藤の落ち着いた語りに、冷静になって考える。 海藤は話を続ける。 「君のオーダーは、記憶や性格はそのままに、ユーザー登録をクリアして、素体を交換すること、だよね。 でも、記憶を消去して、全く新しい神姫としてオーナーになることもできるんだ。 あの記憶がある限り、神姫風俗にいた神姫であることが露見するリスクはつきまとう。 そして、どんなに君が否定しても、神姫風俗とのつながりを疑われるよ。 そうまでして、このままの神姫のオーナーになる必要があるかな? そんなリスクを犯さなくても、いいんじゃないかって、僕は思うんだ」 俺はうつむいて、海藤の言葉を反芻した。 こいつは、本当に俺のことを心配して言ってくれている。 そういう奴だ。 海藤の言うリスクについても、わかっているつもりだ。 「……だけどさ」 だが。だがしかし。 「どんな神姫にも幸せになる権利が、あるんじゃないのか?」 「つらい記憶を抱えたまま新しいオーナーの神姫になることが、この神姫の幸せかい?」 「わかってる……わかってるさ。こんなのは、俺のエゴなんだってことは」 でも、譲れなかった。この気持ちだけは。 「こいつさ……目が覚めて、泣きながら俺に言うんだぜ……壊してくれって」 「……」 「ほっとけないだろ。俺がはじめて神姫にと望んだ奴が、自殺志願なんて……俺が何かできる訳じゃないけれど……でも、教えてやりたいと思った。 こいつがこいつのままでも、いいんだって……そんなに悲しい言葉言わなくたって、俺がこいつを望んでいるって…… 普通の神姫として生きられるんだって、教えてやりたいんだ」 「……」 「……だめか?」 上目遣いに見た俺に、海藤は諦めたような大きなため息を一つついた。 「まったく……君らしいよ」 「いいのか?」 「君がそこまで言うなら、いいさ。僕はもう、何も言わないよ」 「ありがとう、海藤……」 俺は安堵のため息をついて肩を落とす。 やはり持つべきものは友達だ。 「それじゃあ、さっさと終わらせますか」 海藤は元気にそういい放つと、アクアの代わりにバックアップの操作をした。 作業机に工具を並べていく。 手持ちぶさたになったアクアが、海藤の様子を眺める俺に近寄ってきた。 「あの子はきっと大丈夫ですね」 「君のマスターが、作業するからか?」 「いいえ」 確信を持ったまなざしで、アクアは俺を見上げて言った。 「遠野さんが、こんなに想ってくれるんですから」 こんな気恥ずかしいせりふを、神姫からぶつけられるとは思わなかった。 俺はあまりの照れくささに、アクアの微笑もまともにみられず、ひたすらにそっぽを向いた。 「よし、これで終わりだ」 海藤が明るい声でそう宣言した。 パソコンのキーを一つ、軽く叩く。 パソコン脇のクレイドルには、あの神姫が横たわっている。 痛々しい包帯は、もうない。 愛らしいヘッドはそのままに、新品の身体に交換されている。 いま、パソコンからクレイドルを通して、神姫にデータがダウンロードされている。 さきほどバックアップされた過去の記録はもちろん、そもそも削除されていた、武装神姫としての運動プログラムや装備の運用プログラムなども含まれる。 「最低限の格闘用データと銃撃戦用データは入れておいたよ。 装備はこれから選ぶんだろう? その装備にあったデータを後から追加すればいい」 海藤はそう説明した。 ありがたい配慮だ。さすが長い付き合いだけに、俺のことをよく分かっている。 俺はこの神姫のために、オリジナルの武装を用意するつもりだった。 何者でもない、俺だけの武装神姫のための装備を。 やがて、ディスプレイの作業表示が100%を示す。 俺は息を飲む。 その神姫は新たな姿で目覚めようとしている。 PCから、作業完了の電子音が軽やかに鳴り響いた。 ■ 軽やかな電子音とともに流れ込んできた信号が、わたしに覚醒を促す。 わたしは、のろのろと瞳を開く。 飛び込んできた光景は、今まで見たこともないものだ。 おおきな、おおきなガラスの器に、水がたくさん貯められており、そこに色とりどりの魚が踊っていた。 まるで夢のように現実感がない。 「状態チェック、オールグリーン。無事に目覚めました」 きれいな声がすぐ隣から聞こえた。 神姫用のポッドユニットだろうか。 そこから一人の神姫が出てきた。 きれいな人。 わたしのメモリに入っている情報から、イーアネイラ・タイプの神姫と分かる。 彼女は、わたしににっこりと微笑みかけると、視線で正面を見るように促した。 そこには、一人の男性がいた。 眼鏡をかけた端正な顔。 わたしを自分の神姫にしたいと言ってくれた、あの人だ。 「あの……」 わたしが自分の思いを言葉に紡ぐより早く、システムプログラムがわたしに口走らせる。 「オーナーの登録をします。名前を音声、またはPCのキーボードから入力してください」 わたしの瞳は、目の前にいる端正な顔を捕らえている。 わたしを連れてきてくれた人。 わたしに違う世界を見せてくれると言った人。 「遠野貴樹」 わたしは、その人の名を初めて知った。 その名前はわたしの深い部分に滑り込み、刻まれた。 「あなたをなんとお呼びすればよろしいですか? 呼び方を入力してください」 「マスター」 答えは決められていたようで、すぐに返事が来る。 そして次は…… 「わたしの名前を入力してください」 プログラムが口走らせる事務的な口調とは裏腹に、わたしの心はドキドキと高鳴っていた。 大きな期待、そしてもっと大きな不安。 23番でもなく、名無しでもない。お客さんが勝手につける一時の名前でもない。 ただひとつの、わたしの名前。 「ティア」 そっけないくらいの口調で、わたしの瞳に映る人は応えた。 わたしは事務的な口調で確認を取ると、すぐにそれは了承された。 意志が、起動プログラムから、わたしに戻ってくる。 「あ……」 わたしは改めて目の前の人を見る。 彼の名前は遠野貴樹。わたしの…… 「マスター……」 「ティア、でよかったか? おまえの名前」 いいもなにも。 初めて確たる名をもらったわたしは、はじめて自分が存在していることを確認した。 何者でもなく、ティアという名の神姫として。 「そんな……わたしなんかには、もったいない名前です」 思ったことを口にすると、 「『わたしなんか』って言うな」 低い声で怒られた。 わたしはマスターに怒られてばかりいるような気がする。 わたしは少しおびえて、マスターを見上げた。 マスターは何ともいえない表情で、ふい、と目を逸らす。 ……なにか、わたしはマスターの気に障るようなことをしてしまっただろうか。 わたしはおろおろとしながら、マスターを見上げるしかできなかった。 マスターは何を怒っているのだろう。 想像もつかない。 わたしはまだ、この人のことを何も知らないのだ。 でも、マスターに怒られるのは悲しくて、つらくて、情けないことのように思えた。 だから、わたしの瞳から、自然と滴が溢れてくる。 「なに泣いてるんだ」 「だ、だって……」 「……だからティアって名前にしたんだ。泣き虫だからな、おまえ」 ティア。涙の意味だと分かる。 意地悪な言葉をそっけないくらいの口調で言い放つマスター。 わたしは、どんな表情をしていいか分からない。 分からなくて、マスターのことも分からなくて、心に寄り添うこともできなくて、心細くて、また涙が溢れてきてしまう。 結局、泣きやまないまま、わたしはマスターに連れられて帰路についた。 マスターが意地悪なことを言ったのは、実は照れ隠しだったことを知るのは、ずっとあとのことだった。 □ 「すまなかったな、変なところを見せてしまって」 「いや、いいよ。君の神姫がどんな子かもよく分かったし」 海藤の家の玄関。 帰り際に俺は、海藤に軽く謝った。 正直、ティアの態度にはまいった。 これでは俺が自分の神姫を泣かせているみたいではないか。 結局、ティアはアクアにずっと慰められていたが泣きやまず、いまも俺のカバンの中で泣き続けているようだった。 覚悟はしていたが、先が思いやられる。 「それにしても……」 見送りに来た海藤は、にやにや笑いを顔に貼り付けて、 「なんだかんだ言って、やっぱり君は世話好きのおせっかいだよね」 とのたまいやがった。 「ほっとけ!」 俺はクールで理知的なキャラで通っているのだ。 自分もそう望んでいるし、多くの友人がそういう印象を抱いてくれている。 しかし、付き合いの長い友人になると、それが化けの皮と言いやがる。 熱いハートを持った義理人情の男と思われているのだ。 そういう性格が悪いことだとは思っていないが、普段から俺はスマートでいたいと思っている。 暑苦しい奴だと思われるのは心外だし、御免だった。 俺達のやりとりを見て、海藤の肩の上で、アクアが笑っている。 いつかティアも、こうして笑えるようになるだろうか。 それはきっと、これからの俺次第なのだろう。 そう思うとなんだかとてつもなく大変なことのような気がしてきて滅入る。 だが、それを成し遂げたいと、切に願っている自分がいるのだ。 不機嫌な表情の俺に、海藤はハンカチか何かの包みを俺に差し出した。 「これは……」 「こっちで処分しようかと思ったけど、まあ、何かの役に立つかも知れないし」 それは、ティアの元の素体だった。 妙に生々しい感触の、小さな人型。 持っているだけで違法かも知れないその素体は、正直、処分してもらっても、かまわなかったのだが。 「もともと君の持ち物だ。君がどうするのか決めるのがいいよ」 「……」 俺はしばらくその包みを見つめた後、そっとバッグにしまいこんだ。 「迷惑をかけたな、恩に着る」 「そう思うなら、また遊びに来てよ。今度はティアも一緒に、さ」 気のいい友人はそう言って笑ってくれた。 ◆ 遠野の背中を見送りながら、アクアが口を開いた。 「マスター……あの二人、うまくいきますよね?」 「……アクアはどう思う?」 「うまくいくと思います、きっと。だって、遠野さん……あんなにティアのこと気にかけているのですもの」 海藤は難しい表情をしながら、アクアの言葉を聞いていた。 やさしいマスターには珍しく、厳しい目で、遠ざかる友人の背中を見つめていた。 「マスターは、そう思われないのですか?」 「わからない……わからないよ」 嘆息するように言葉をはく。 「二人の仲は、きっとうまくいくと思うよ。遠野はああ見えて世話好きだし、きっと長い時間をかけて、ティアを自分の神姫にしていくんだろうね。 大変だとは思うけど、その覚悟もできていたみたいだし……」 「だったら……」 「問題はあの二人じゃないよ。もっと他のことさ。 ティアは……普通の神姫じゃないんだ。 神姫風俗にいることが知られたら、どんなことになるか……見当もつかないよ。 何かあったときには、僕たちの思いもつかないような試練に晒されるかも知れない。 ……それが心配なんだ、とても」 遠野の背中が見えなくなり、海藤はきびすを返した。 ゆっくりと門の中へ入る。 相変わらず厳しい表情を崩さない海藤に、アクアは話しかけた。 「それでも……わたしはよかったと思います」 「なぜ?」 「あんなに嬉しそうな遠野さん、初めて見ました。 いつも神姫のオーナーになりたいって言って、そのたびに寂しそうな表情をしていましたもの。 遠野さんにあんな嬉しそうな表情をさせたのは、間違いなくティアですから……」 「そうか、そうだね……今は、新しい神姫のプレイヤーが生まれたことを、素直に喜ぶべきだね」 「はい!」 いつも前向きなアクアに何度救われたことだろう。 この笑顔にあこがれて、友人たちは皆神姫を始めたが、誰よりもアクアの笑顔にメロメロなのは、マスターである自分だということを、海藤は自覚していた。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2595.html
SHINKI/NEAR TO YOU 良い子のポニーお子様劇場・その5 『セントウノヒ』(後編) >>>>> 路地裏を進む番長児の後ろ姿を追いながら、ゼリスがシュンに小声で話しかける。 「シュン、良いのですか。先ほどからどんどん人通りの少ない方へ進んでいますが?」 「そうだけどさ……今さら逃げ出すわけにもいかないだろう……」 そうは言ったものの、シュンもだんだん不安になってくる。 とにかく着いて来いと凄まれたのでこうして後に続いてはみたものの、駅へと走る大通りから建物の隙間を縫うような裏道に入った番長治はそのままどんどん人気のない道へと進んでいく。 どうやらうまく雨に当たらないような遮蔽物のあるコースを選んでいるようで、雨に打たれないのはいいのだけれど。 ……まあ、すでに二人ともびしょ濡れだけどね。 「シュンがそういうのでしたら止めはしませんが……もしもの時は、骨は私が拾いますので安心して下さい」 ぶっそうなこと言うなよ。 そうこうしているうちに、先を進んでいた番長治が立ち止りこちらを手招きしてきた。目的地に着いたらしい。 「ここじゃあ」 番長治が顎でしゃくる先にあったのは、古びた建物だった。周りを囲むコンクリートの建物と違って、この一軒だけ昔ながらの木造に瓦葺屋根のどっしりとした店構えをしている。 店名なのだろうか? 開き戸の上に飾られた木の板に筆で達筆な文字が書かれているが、相当古いのか全体的に黒ずんでしまってよく読めない。 「えっと……ここって、何?」 仕方なく番長治に尋ねると、呆れた声が返ってきた。 「見ればわかるじゃろう、銭湯じゃい」 なるほど。言われてみれば屋根から大きな煙突が伸びている。屋根を仰ぐシュンの頬を、ゼリスがチョンチョンとつついてきた。 「シュン、セントウとは何ですか?」 それを聞いてベガがフッと笑う。 「そんなことも知らんのか? 銭湯とはな。温泉に集団で入ることで結束力を高める重要な軍事教練のひとつなのだ」 いやそんな自衛隊員じゃあるまいし。 「なるほど。それは是非体験してみたいですね」 ゼリスが興味深げな顔をする。体験したいのか……というか銭湯に来たってことは風呂に入るってことだよな。 「お前もそのままじゃ風邪引くじゃろう。それにここなら服も乾かせる。ほれ、ボサボサしとらんで入るぞ」 番長治が先頭に立ってガラリと戸を開く。中に入ると玄関の脇に木造りの箱のようなもの――ええと、確か番台っていうんだったかな――があり、小柄なおばあさんがうつら、うつらと船を漕いでいる。 番長治が声をかけると、おばあさんの肩から小さな人形が顔を出した。イルカ型武装神姫ヴァッフェドルフィンタイプだ。 「はい~、毎度ありがとうごぜえやす~」 人間だったら血圧が低そうなしゃべり方のヴァッフェドルフィンに、ふたりは料金を渡した。中学生以上は大人料金らしい。 (ここでシュンは番長治も同じ中学生だという衝撃の事実を知った。学生服を見ても、体がデカイからてっきり高校生だと思っていた) 「それでは~、二名様ご案内しやす~。神姫のお二人様は女湯へどうぞ~」 シュンとゼリスは顔を見合わせる。ふたりの疑問を感じ取ったのか、ヴァッフェドルフィンが説明してくれる。 「そちら様は~、はじめてのお客様でいらっしゃいやすね~。当店では神姫をお連れのお客様には神姫の無料入浴サービスをさせていただいておりやす~」 そんなサービスがあるのか。まあ神姫がおばあさんに代わって接客してるくらいだしなあ。 「一緒に入れなくて残念でしたね、シュン?」 「いやいや、誰も一緒に入ろうなんて言ってないだろうっ?」 カポーンッ 背景に富士山が描かれた大浴場の湯船に浸かりながら、シュンはふう~っと息をついた。隣で湯に浸かる番長治とふたり、熱い湯の心地良さを味わう。時間もあってか他に客はいない。いや、こんな裏路地に取り残されたような立地条件と番台の居眠り老人を思えば、いつも閑古鳥が鳴いているのかも知れないが。 それにしても、かつて武装神姫バトルで戦った相手とこうして肩を並べて湯船に浸かっているのも、奇妙な話だ。 「助かったよ、これで風邪をひかずに済みそうだ」 シュンが声をかけると、番長治はタオルで顔を拭いながら「構わん」とぶっきらぼうに返す。 「お前には借りがあるからのう」 「……借り?」 そんなものをつくった心当たりはないけどなあ? 「お前らとのバトルでワシとベガも目が覚めた。また初心に帰って武装神姫バトルをする気になれたんじゃい」 そう語る番長治の横顔は、どこか照れを隠してるように見えた。考えてみるとこいつのしゃべりがいつもぶっきらぼうなのも、単に不器用なだけなのかもしれない。 少なくともシュンの中では今日一日で、初対面の横暴なイメージが大きく薄れて取っつきやすく感じるようになったのは確かだ。 だからシュンはあの日のバトル以来気になっていたことを、思い切って尋ねることにした。 「なあ……どうしてあんな初心者狩りなんて真似をしてたんだ?」 そのシュンの疑問に、番長治はひとしきり「う~む」と唸った後ぽつぽつと語り出した。 「ほう、これが銭湯というヤツですか」 目の前に広がる大浴場に、ゼリスが感嘆の声を上げる。 「ふっ、未経験の新兵である貴様に私自ら銭湯のイロハを教えてやろう! まずは湯船に浸かる前のマナーとして、よく体を洗ってから湯船に向かうのだ」 ビシッとベガは洗面所を指差す。コクリと頷くゼリスに満足そうに見てから先に立って歩き出す。ベガはそのまま洗面所に置かれた風呂桶を利用して段差を登り、そこから蛇口のカランに飛び移って手際よく桶にお湯を溜める。 「手際がいいですね」 「私はこの銭湯にはサーと一緒に何度も来ているからな。任せておけ」 ベガは返事をしながら無駄のない動きでシャンプーとボディソープのケースをタイル張りの床に降ろすと、体を洗いはじめた。雨水を被って汚れた髪もシャンプーで入念に洗い流す。 「どうした、小娘? 貴様もさっさと洗え。他に客がいないとはいえ、のろのろするのは性に合わんからな」 「……いつもシャンプーはユウにしてもらっていました」 きびきびと動くベガをじっと見つめながら、ゼリスはポツリとつぶやく。 「……ひとりでは出来ません」 ズコ――ッ。体を洗い流していたベガが派手にすっ転ぶ。 「貴様は……冗談で言ってるのかっ!?」 「いえ、冗談ではありません。そもそもシャンプーハットも使わずに髪を洗おうとしたら、目に染みて痛いではないですか?」 あくまで真剣なゼリスにベガは目頭を押さえながら立ち上がる。 「全く……キレ者なのか、ただの天然なのか分からんヤツだ。ほら、こっちに来て目をつぶっていろ。私が洗ってやる」 ゼリスを自分の前に座らせ、ベガは長く蒼い髪に手を伸ばす。目をぎゅっとつむり「む~」緊張するゼリスに苦笑しながら、その頭をシャンプーで泡立てる。 「手慣れてますね、お上手です」 シュンの妹である優(ユウ)に髪を洗ってもらうのとを比べて、素直な感想を述べる。ベガの手つきは普段からこうしたことへの慣れを感じさせた。 「ふん……い、いつもサーの妹君の面倒をみているからなっ。そのせいだろう」 ゼリスの髪を洗い終えたベガは、体は自分で洗えと言って湯船に向かう。ゼリスも手早く体を洗い流し後を追った。 ベガは浴槽の端に作られた昇降用の段差を乗り越え、湯船へと浸かる。続けてゼリスも先に習うように隣に入る。本来は子供やお年寄り用に設けられた段差だが、こうして武装神姫が湯船に浸かるにも丁度うまい具合の高さだった。 珍しそうに壁の浮世絵や浴槽を眺めるゼリスとは対照的に、ベガはリラックスした態度で湯に身をたゆたわせている。機嫌がいいのか鼻歌まで口ずさんでいた。その揺れる赤い髪を見ながら、ゼリスはふと抱いた疑問を口にしていた。 「ベガさんはフォートブラッグタイプでいらっしゃいますね。しかしバトルでは何故、徒手空拳しか使わないのですか?」 砲台型MMSフォートブラッグタイプは火力に優れ射撃戦を得意とする神姫だ。今日戦った対戦相手がそうであったように、一般的には基本武装による砲撃戦や重火器によるロングレンジファイトの戦闘スタイルである場合がほとんどである。 ベガのように代名詞である砲撃どころか火器も持たずクロスレンジファイトを主体とするのはかなり異例だ。 「つまらん話だ。別にたいした理由ではない……」 見つめるゼリスから顔をそらしながら、ベガが語り出す。 「私とて最初から、対戦相手と拳で語り合っていたわけではない。バトルを始めた頃は普通にフォートブラッグタイプの標準装備で戦っていたさ。私もサーも慣れないバトルで、少しでも早く強くなろうと頑張っていた」 それはちょうど今のゼリスとシュンのようだったのだろう。思い出を懐かしむようにベガの目が遠くを泳ぐ。 「バトルに勝って、負けて。勝った時にはどこが良かったか、負けた時には敗因は何かを探った。……そうしてしばらく経った頃だ。変調が起ったのは……」 私は欠陥品だったのさ――自嘲気味にベガは言った。 「ある日の射撃訓練中、標準に狂いを感じた。はじめは銃のメンテナンス不良かと思ったが、別の銃を使っても不調のままだった。いよいよおかしいとセンターでの検査を受けて、私には製造不良があってそれのせいでFCS系に異常があることがわかった。修理するためにはCSCから分解することが必要だと言われた……」 神姫のボディは大きく3つのパーツで構成されている。頭部であるコアユニット、体を成す素体、そして心であるCSCだ。CSCを分解することは、AIの初期化――すなわち神姫にとっての死を意味する。 「私は絶望した。砲の撃てないフォートブラッグになど価値がない。サーの足手まといとなるくらいなら、そのままリセットされる方がマシだとさえ思った……! しかし、そんな私にサーは、あの人は……こう言ってくれたのだ」 サバーッと、湯船から立ちあがり高らかに叫ぶ。 「『砲なんぞ無くても、自分の手足があるじゃろう。ワシにはお前が必要じゃ』――とっ!!」 拳を握りしめ感極まったようにベガは続ける。 「このサーの言葉に、私は感銘を受けた! 自らの考えの甘さを恥じ、あらためてサーの懐の広さを知ったのだ。わかるか、小娘っ!?」 昂奮するベガがゼリスに迫る。ゼリスは内心ちょっと引きながら、ただ頷いた。 「それから私とサーの特訓の日々が始まった。夕日の砂浜を走り、石段を鉄下駄で駆け上り、サンドバックをボロボロになるまで叩いた! 全てはサーの為に、サーへの愛と忠誠の証として! その言葉を私自身で証明せんがためこの身に鍛錬を徹底的に刻み込んだのだ」 おそらく。徒手空拳の体術のみでフル武装と渡り合うため、あらゆる挙動をフィードバックまで完全にコントロールできるほど精査し、動作の蓄積と効率化を図った――ということらしい。明らかにおかしなトレーニングも混じっていたが。 「そして、私たちは再びバトルの世界に舞い戻った。バトルを再開した当初こそ、特異な戦闘スタイルに苦戦と嘲笑を浴びる時期があったものの、サーと私の努力と愛は実を結び、また勝ち星を重ねていった。己が徒手空拳のみを頼りした戦いぶりから私は『鉄拳』と呼ばれ、サーも有力神姫バトラーとして密かに注目を集めるようになった。しかし……」 そこでベガのトーンが一気に小さくなる。 「ある試合で……私は負けた。完敗だった……一方的にやられるだけだった。それまでサーと私がふたりで積み上げてきたものを、重ねてきた鍛錬の日々を、全て否定されるような敗北だった。……また、私はサーの期待に応えることができなかった」 チャポンと。ベガは湯に身を沈め直す。ゼリスは逡巡しながらも「それからどうなったのですか?」と続きを促した。 「後は知っての通りだ。スランプに陥ったサーと私は、以前のようにバトルへの情熱と強者への挑戦を持ってバトルに臨むことができずに、経験の浅い者、己より弱い者から小賢しく勝ちを拾うようになった。それでも最初は、自信を取り戻すために確実に勝てそうな相手を選んでいたような気もするが…… 熱意を失った――いや、違うな。自分を信じられなくなった私は、そこから先に進むことができなくなってしまった。空虚な勝ちに溺れ、ただ弱者を痛ぶり無価値な勝ちを重ねる日々に埋没していった。 ……落ちぶれた神姫そのものだ」 ベガは力なく肩を落とした。その表情は、濡れた前髪に隠れて窺うことはできない。 「サーはそんな私を見捨てることなく、何も言わずに見守ってくれた。私はいつもサーに助けられてばかり……情けないかぎりだ」 その言葉に、ここまで聞き役に徹していたゼリスはようやく口を開いた。 「それは違うと思います」 「それは違うんじゃないか」 ふいに口を挟んだシュンを、番長治は困惑した顔で見返す。 「あんたは自分が弱くてベガに甘えてたっていうけどさ、それは両方とも同じなんじゃないのかなって」 「どういうことじゃい?」 「なんて言うか……神姫とオーナーって片方がもう片方を一方的に頼るとか、そんなものじゃない気がするんだ。だから、番長がベガに見守ってもらってたって感じてるのと同じように、ベガの方も番長に見守られてると思ってたんじゃないかって……」 思案しながら、シュンは自分の考えを伝える。シュン自身確証があって言っているわけではない。それをするにはシュンとゼリスは、番長治とベガに比べ出会ってからの日々がはるかに浅い。 でも。だからこそあの日の神姫センターで戦ったふたりは、互いにただ寄り添いあっているだけでなく、それ以上の絆で結ばれているように感じたのだ。 「ベガも……ワシと同じことを考えとったと言うんか。ワシと同じじゃったと……」 「そうじゃないかと思うんだ。だって――」 「――あなた方おふたりは、とても似た者同士に見えますから」 それはゼリスにとって率直な評価だった。ベガとそのオーナーである番長治とはあの日のバトル以外、今日の再開まで接点がなく、僅かな時間しか接していない。だがその僅かな時間の中でもふたりの共通性――似通うまでに長い時間を共にし、通じ合っていることが読み取れた。 だからこれは簡単な話。互いに自分が悪いと思いこむことで、パートナーを正当化しようと無意識に考えてしまっただけなのだ。 「サーも私と同じ気持ちだった――同じように悩んでいたというのか」 「言ったでしょう――あなたたちは互いに依存し合っている――あなたたちは相手への想いが強すぎてしまって、それが結果的に互いを縛る鎖となっていたのでしょう」 「しかし――いや、ならば私はこれからどうすればいいのだ」 かぶりを振るベガに、ゼリスは「ふむ」と顎に手を当て思案する。 「別に、あまり深く考えずに自然体で接すればいいでしょう。言いたいことを言って、相手が悪いと思ったら素直にそれを指摘してあげれば良いのです。その逆もまた然り。自分が間違っているときは、相手に指摘してもらえば良いのです」 「そうは言ってもな……じょ、上官に異を唱えるなど軍人にあるまじき行為で……そもそもサーに逆らうなど、考えたこともないだけに……」 本気で困っているのか、ベガはしどろもどろになる。本当に良い意味で実直、悪い意味では頑固で融通の利かない性格をしているらしい。 もっとも真面目で融通が利かないところがあるのは、シュンに言わせればゼリスも同じであるそうだが――そこでゼリスは単純に自分の場合どうするかを考える。 「……私ならば、シュンが間違っていると判断した場合は容赦なくデコピンをお見舞いしますけどね」 「デ……デコピンだと……?」 キョトンとするベガに、ゼリスは自信満々に告げる。 「はい。こうみえて私のデコピンはユウ直伝の必殺奥義です。鈍感なシュンには効果てきめんであると自負しています」 それを聞いたベガはしばし呆然とした後、せきを切ったように笑い出した。 「あっはっはっはっはっ! デコピン……デコピンかっ。あっはっはっはっはっ」 「そんなに可笑しなことを言ったつもりはないのですが……」 不満げなゼリスの肩を、腹を抱えて大笑いしながらベガは叩く。 「いや、そうではない。ただお前の話を聞いて、いろいろと小難しく悩んでいるのがバカらしくなってなっ!」 ベガは笑いを噛みしめながら、力強い目でゼリスと向き合う。 「そうだな、お前の言う通りだ。神姫とオーナーは共に歩む、互いを認め高め合う存在だものな。どうやら本当に私は、大切なことを忘れていたようだ」 そう語るベガの表情は、憑きものが落ちたように晴れ晴れとしていた。 浴場から上がったシュンは、脱衣所で番長治からカゴに入った自分の服を受け取った。この短期間ですっかり乾いていることに驚いたが、番長治がボイラー室を借りて自分の長ランと一緒に乾かしてくれていたらしい。礼をいうと「別にええよ」とただ短く返される。同じような仏頂面でも、出会ったころよりもずっと柔らかくなっているのがわかった。 自分の頬も自然にほころぶのを感じながら、脱衣所の戸をくぐる。番台の隣には、シュンたちの大切なパートナーが待っていた。 「遅いですよ、シュン」 「そう急かすな、私たち神姫と違って人間の方が何かと時間がかかるのだ。……サー、お待ちしていたであります。こちらはすでに出立の準備は整っているであります」 うむと頷きながら、番長治がベガを拾い上げる。シュンもゼリスを頭に乗せようとしながら、ふとその顔を見つめる。 「なんか、ふたりとも仲良くなってないか?」 「そうでしょうか。よく分かりませんが、それはシュンたちの方ではありませんか?」 言われてシュンは番長治たちと一緒にいても、ここに来る前のような気まずさはもう感じないことに気がついた。なんというか――日本人は古くから銭湯では裸の付き合いなんて言っていたらしいが、昔の人の言葉も案外バカに出来ないものらしい。 例の血圧の低そうなヴァッフェドルフィンに見送られながら、シュンたちは銭湯を後にする。 外はすっかり雨も止み、夕闇に染まる空に一番星が輝きはじめていた。 「今日はすまなかったな。本当に助かったよ」 「お前たちとバトルしたお陰で、ワシもベガもまた真剣に武装神姫バトルでてっぺんを目指す気になれた。今日のことはその礼じゃい」 学帽を被り直しながら、番長治はシュンを見下ろす。 「ワシらは次のサマートーナメントに出るつもりじゃ。どうせお前らも出るつもりなんじゃろう? そのときは容赦せんから覚悟しちょれよ」 不敵に笑う番長治に、シュンもニッと笑みを返す。 「そっちこそな。僕もゼリスもあの時よりもグーンと成長してることを見せてやるさ」 「言っとくが、ワシらは優勝を狙っちょるぞ。そこまで勝ち上がってくるんじゃぞ?」 「そっちこそ。僕たちと当たるまで他の対戦相手に負けるなよ?」 そうさ。こうして再び出会った戦友(ライバル)同士、互いの健闘と真剣勝負を誓わなかったら嘘だろう? シュンたちが漢の約束を交わし合うかたわら。ゼリスとベガも再戦を誓う。 「小娘。お前もトーナメントで勝ち上がるつもりなら、翼にドクロを抱いた神姫に気をつけろ」 「翼にドクロですか? ……ひょっとすると、その神姫が……?」 「いずれわかるさ。次に会うときは――」 ――神姫センターで。 自然と四人の声が重なった。四人はそれぞれに笑みを交わしながら別れる。 帰り道のアスファストを踏みしめながら、シュンは静かな高揚を感じていた。昨日戦った敵が今日には互いを認め合うライバルとなる――これも武装神姫バトルの楽しみだ。 そしてそんなライバルたちに負けないためにも、シュンもゼリスももっともっと強くならなくてはならない。立ち止まったりせず、ひとつずつ前に進み続けるのだ。 ――と。不意にシュンの懐から陽気なメロディーが流れる。取り出したPDA(ケータイ)の着信表示を見て、笑顔がサッと蒼ざめた。 『こらーっ、シュンッ! 何時まで外ほっつき歩いてるのよっ。今何時だと思ってるのっ?』 ケータイから聞こえる妹の声に、シュンはここでやっと今まで家に連絡を入れるのを忘れていたことに気がついた。 「ヤバい……っ、いろいろあって電話するの忘れてた! どうしよう、ゼリスッ?」 「シュン……これは失策でしたね。だから私は予定外の行動をとる前に定時連絡を入れることを提案していましたのに……」 「いや、とぼけるなよ!? お前も一緒に忘れてただろうっ!?」 「さあ……どうでしょう?」 ぷいっと目を反らすゼリス。PDAからは怒れる妹の声が引っ切り無しに聞こえてくる。 全く。 世の中、今日の失敗を糧にして明日へ活かしていくしかない。 『セントウノヒ』(後編)良い子のポニーお子様劇場・その5//fin 戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2620.html
―――――2038年、8月31日――――― ……ぼくは、とぼとぼと帰り道を歩いていた 「元気出してください、殿。ほら、明日から学校ですよ、ね?」 ぼくの肩の上に乗って、そこから優しい声をかけてくれるのは、ぼくの大切なパートナーの『あかね』 『紅緒』という、サムライをモチーフにした武装神姫だ 「それに、他の店ならばまだあるかもしれないではありませんか」 「……そうは言っても……」 ぼくの元気が無い理由……それは今朝、あかねの鎧を壊してしまったから それで、買い直そうと何件かのホビーショップを回ったんだけど、なぜか紅緒のだけは在庫切ればかり 『そもそも売れ筋ではないから、最初から少なく発注する』そうで、買う人が五人もいれば売り切れになってしまうんだそうだ 『ここならあるかも』と言われて紹介してもらった場所は、なにやら大きな事件があったらしく休業中 入り口に張られた黄色いテープには大きく「KEEP OUT」と書かれていて 辺りには無数の機械……たぶん神姫だと思う……の壊れたパーツが散乱していた それなりに大きなそのビルの窓ガラスはいくつか割れていて、辺りを警察の人がせわしなく走り回っていた 近くにいた人に、ここは何と言う名前の会社なのかと尋ねてみると、さっきのホビーショップで教えてもらった、ぼくの目的地だった ……まったく、ついてないよ…… 明日から二学期が始まるから、学校の帰り道に友達とゲーセンに寄ろうと思ってたのになぁ…… 「えぇと……鎧が無くても戦えます!!」 さすがに無茶だから、それ…… 「…………殿! 殿! そこに何かがあります!!」 帰り道の途中、あかねが道端で何かを見つけたみたいだ 「ほら、その電柱の影に!」 あかねにいわれるまま視線を向けると、そこには小さな人が倒れていた……というより、神姫が落ちていた そのまわりには、その神姫のものと思われる武装が点々と散らばっている 「保護しなくては!!」 あかねは人一倍正義感がつよいから、こんなことを言い出したら止まらなくなる ぼくはその神姫と武装パーツをひとつ残らず拾い上げると、バッグからハンカチをとりだして、やさしく包んでバッグに入れた 「さぁ殿! 早く父上殿にお見せして、助けて差し上げなくては!!」 ぼくたちは、さっきまでの意気消沈っぷりをきれいさっぱり忘れて、帰り道を駆け出した…… ……これがぼくたちと、彼女……カインの出会いだった…… 第一話「ぼくとカイン」 ―――つづく――― もどる
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2380.html
前編:彷徨姫 それは今から二週間ぐらい前だった。オレはいつもの様に『ポーラスター』で子供から大人までいろいろな人が神姫バトルをしている所をぼうっと眺めていたんだ。 『ポーラスター』は秋葉原を中心とする激戦区の中でも大きいゲームセンターの一つで神姫オーナーも多い大人気のバトルロンドの場だった。そのオーナー達の性格や印象も良く、神姫を持たない私でもあまり気にされることもなく、観戦する事ができる。たまに神姫を持っていない事で声もかけられるが、その事を言うと見やすい場所を案内してくれることもある。 優しい人達で周りのゲームセンターよりも居心地がよかった。 「ビィィィ!キュウゥブッ!! フルヴァーストォ!!」 「サー、コマンダー」 やたら暑苦しい人が叫ぶとB3(ビー・キューブ)と呼ばれた重装備のヴァッフェバニーがバズーカ砲、ロケットポッド、さらに二基のガトリングガンを構え、それを上空にいるアーンヴァルMk.2装備にFATEシールドとコールブランダーを付け加えた武装のアーンヴァルに向かって一斉掃射する 「アンジェラス! ステディプロティション!!」 「はい! ご主人様!!」 アンジェラスと呼ばれたアーンヴァルはB3の放つ大量の弾幕をFATEシールドのスキル ステディプロテクションで防御をし、B3のフルバーストを防ぐとリアユニットにマウントしてあるコールブランダーを抜きはなって、二つのビット リリアーヌを伴って、前進を始めた。 「牽制からライトニングソードだ!!」 「ええ!」 マスターの指示でアンジェラスはあらかじめ、時間を稼ぐためにリリアーヌをB3に飛ばし、コールブランダーを掲げてチャージを始めた。 飛んでいく二つのビットはB3めがけて左右から突撃を仕掛ける。狙われたB3はその攻撃をガトリングガンの段幕で迎撃するが、一つは破壊したものの、もう一つは片方のガトリングガンにつっこみ、自らもろとも爆発した。 さらに巨大なエネルギーブレードを形成し、チャージが完了したライトニングソードをアンジェラスが勢いよく振り下ろしてくる。 「ンンンンGoGoGoGoオォゥ!!! ビィィキュゥゥウブ!! カウンタァー! ショットォ!」 「サー、コマンダー」 振り下ろす直前、B3は残ったガトリングガンを両手で持った上で回避体勢に入り、ライトニングソードが目の前の地面に突き刺さって安全になった瞬間、反撃のガトリングガンを放つ。 が、かろうじて反応したアンジェラスはそれを避けて、反撃の被害を最小限にしようと動いた。 その瞬間、あらかじめルートを予測したかのようにバズーカがアンジェラスに着弾し、墜落した。 「きゃぁ!?」 「アンジェラス!?」 「ンフフハハアアアァッ! これが俺たちのトゥオルィック!! ビイィキュウゥブ! 追撃ぃ!!」 「サー、コマンダー」 それは確かにトリックだった。ガトリングガンで弾幕を張って、相手の避けるルートを限定し、威力の高い本命のバズーカを確実に当てる。すごく合理的な戦術だ。 このまま、アンジェラスを仕留めきれるのだろうか。 B3はガトリングガンの弾が切れたのか、二丁両方を捨てた。代わりに大型のナイフを二本取り出してそれぞれの手で持ち、ロケットポッドの連射で牽制しつつ、接近を始めた。 墜落したアンジェラスはディコ・シールドで素体に当たる弾を防ぎつつ、立ち上がってB3を迎え撃つ。 「勝利は勝ぁぁぁぁぁっつッ!』 「アンジェラス!MOA!」 そして近距離、B3がマスターの叫びとともにナイフで攻撃を仕掛けたその刹那、アンジェラスは鋭い指示に反応して彼女の攻撃を回り込むようにかわした。次にすれ違い様にコールブランダー銃形態でB3を撃ち、リアユニットとマシンガンを分離変形させる。 BM『モードオブエンゼル』だ。 変形した白い戦闘機は背面を無防備にさらしているB3に大量の弾丸を殺到させた。 「Noオオオオォォッ!!?」 背面からの集中砲火にたまらずB3が倒れ、勝敗が決するとマスターの方がとてつもない悲鳴を上げた。 『衛生兵! えーせーへーえぇぇぇぇぇ!!!!』 センター中に響きそうな叫び声が聞こえる中、オレは腕時計を見る。そろそろ夕方にさしかかるいい時間になっていた。戦いの後が気になる所だが、面倒くさいテストが明日あるため、それの勉強のために帰ることにし、『ポーラスター』を抜け出した。 「アンジェラスはかっこいいなぁ。B3もあんな攻撃をするなんて武装神姫ってすげぇ……」 外に出た時、オレは憧れを口にする。オレは武装神姫を持っていなかった。兄貴は初代チャンピオンでバリバリの神姫マスターをやっているが、交通事故に遭って目が見えなくなって以来、オレに武装神姫を話さなくなった。 だからこうしてポーラスターで武装神姫を見ているんだけど、やはりダメだった。 その場にいるのに自分はその場とは違う。そんな気分だ。そんなモヤモヤした気持ちを抱えこみながら歩いているその時だった。トライクで走る小さな赤い影を見つけた。すごく速いそれはすぐに追わないと見失いそうだ。 (何なんだ?) 気になり、それを追い始める。走り出すとさすがに人と神姫の体の大きさの差は大きく、だんだんと追いついていく。 少し走って裏通りに行くと赤い神姫がトライクを止めた。オレがそれに合わせて足を止めると、彼女はそこから降りてオレを見ていた。 「さっきから追いかけてくるのが、君? 何か用?」 鋭い目でオレに質問をしてくる。見た所、アークのりペイント版か何かのような神姫だった。装備で違うのは額から角が生えているぐらいだ。 「何でマスターがいないのか気になったからさ」 「私にマスターはいないよ。ただの野良神姫だ。真の力とは何かを探してる。君は知ってるの?」 「オレに難しいことはわかんないけど、そもそも真の力って何だよ?」 「私は単純な力だけでは勝てないマスターをもったライバルがいる。彼女はその力は自分一人だけのものじゃないと言っていた。奴に勝つためにはそれが必要なんだ」 詰まる所、マスターのいるライバルに負けて、その力が何であるのかを探しているらしい。 事情はよくわからないが、オレにとっては笑ってしまえるほど単純なことだった。 「簡単じゃん! その神姫ってマスターと仲良しなんだなっ!」 「え?」 「マスターの期待に応えたいから頑張ったんじゃないかな。当たり前のような神姫とオーナーの関係さ」 アークに対して自信を持って答える。マスターと神姫の関係は当たり前の事過ぎて普段は考えもしないけど、その当たり前がないとすればどれだけの差があるか。それは多くのオーナーが知っていた。野良神姫やイリーガルが出てきても、絆を持ったマスターと神姫がそれを打ち負かしているのは兄貴がよく言っていた。 「当たり前の……か」 その言葉に何かを感じたのか、アークはフッと笑った。鋭い目も緩んで、何かをつかんだ様な柔らかい表情を見せる。自分にもこんな神姫がいればなんて思ってしまうほどその顔はとてもきれいに見えた。 「なぁ……君……!」 アークがオレに何か聞こうとしたその時、裏通りの奥から、エネルギー弾が彼女めがけて飛来してきた。 アークはそれに反応して避けて、臨戦態勢に入って、アサルトライフルを弾が飛んできた方向に構える。 「この不意打ちを避けるとは大したもんだ」 奥から上から目線の態度をした痩せ型の男がエネルギー弾を飛ばしてきたと思われる、最新型の神姫 蓮華と一緒に出てきた。 「ここはガキが来るような場所じゃぬわぃ。とっとと有り金と神姫をおいて消えぬぅわ」 妙な口癖の蓮華がオレにアークと金を渡せと要求する。どうやら、アークはオレの神姫だと思っているらしい。 「ん? どうしたんだ? その神姫はお前のじゃないのか?」 痩せ型の男が現れて、オレに問う。オレは彼女のマスターじゃない。それどころか、神姫すら持っていない。どう答えればいいんだろう……。 そんな風に戸惑っている時だった。アークがシルバーストーンを構えて蓮華にそれを容赦なく撃ち、堂々と答える。 「そうだ! 彼は私のマスターだ!」 驚いたことにどういう訳か、会ったばかりのオレをマスターだと言い張ったのだ。神姫を持っていないのにこんなことで大丈夫なんだろうか。 「君、私に名前をくれ!」 オレは突然のことに驚いたが、彼女に言われるがままに名前を考える。一瞬の中で思ったことは、彼女と遠く遠くを走り続けたいという思いだった。だから……! 「ああ! 俺は響! お前は百日! 俺の神姫だっ!!」 「OK! 行こう! 響!!」 与えられた名前に応じ、アーク――百日はもう一度シルバーストーンを放つ。 「ははは!! 何だそりゃ!? 即席チームでんなことのほざくんじゃねぇ!!」 「ほほほ。これは獲物じゃぬわ! 死ぬぇい!!」 蓮華と痩せ型の男は即席の俺達の事を笑い、ただのカモだと思って笑うと蓮華がレーザーを回避してそのまま二黒土星爪で百日に襲い掛かる。 それを見た彼女はアサルトライフルを連射して、蓮華の勢いを削ぐ。さらにそれで生じた隙で二黒土星爪を回避しつつ、フォールディングナイフを展開して逆に反撃の斬撃と蹴りを決める。 最後の蹴りの力は強く、蓮華を近くにあったゴミ箱まで吹き飛ばし、叩きつけた。 「ぐぇっ!? な、何だあの出力は!?」 「あの角を見た時からまさかとは思ったが、そのアーク、イリーガルか!?」 百日の蹴りの強さを見て、痩せ型の男が動揺する。どうにも百日はイリーガルというタイプで、とんでもない出力であるらしい。 何なのかはわからないが、こちらに勝ち目はあるという事か。 百日は相手の動揺を気にする事もなく、シルバーストーンで蓮華を狙い撃ちにする。彼女はイリーガルだという事を認識したその攻撃を恐れているらしく、大げさに避け始めた。さらにその中で威力のある二黒土星爪から命中を重きにおいた一白水星剣に持ち替え、ヒットアンドアウェイ戦法へと切り替える。 「くっ……!」 身軽な装備でちょこまかと動き回って、百日を攪乱していく。百日もアサルトライフルとナイフで応戦するものの、その動きは早く、なかなか捉えることができない。 イリーガルと動揺はしているものの、蓮華にも素体の改造が加わっており、百日並の強さがあるのかもしれない。 強さがどうとかは置いておいて、このままでは小回りの利かない百日が押される。アサルトライフルとナイフでは仮に当たっても決定打にはならない。何とかしてレーザーを一発放り込み、追い込めれば……。 「……そうだ! 百日!! アサルトからレーザーにつなぐんだ!」 「なるほどね……。わかった! やってみる!」 何とか読まれない程度に百日に命令を下し、彼女はそれを実行するために距離をとりながらアサルトライフルを準備する。 「何かは知らねぇが、素人の作戦なんてうまく行きっこない! そのまま潰せぇ!」 痩せ型の男は何の作戦なのかわかっていないのか、依然として剣による攪乱攻撃を蓮華に続けさせている。 これならやりようはありそうだ。 百日は回避し、蓮華の隙を伺っている。オレもそれを見ていた。相手は直線的に動いているに過ぎない。 次の隙が生じるまでの時間はそう長くはないはずだ。 「……今だ! 百日!!」 「行けっ!!」 隙を捉えたオレが百日に合図を知らせると彼女はそれにならってアサルトライフルをばらまく。 「当たらぬわ!!」 そうすると蓮華は反射的に回避行動に移る。その時だった。その回避した先からレーザーが飛来し、蓮華の腹を貫いた。 「ぬわにぃ!!?」 「蓮華!? くそっ!!? どうなっているんだ!!」 まさか、避けた先にレーザーがやってくるとは夢にも思わなかったのか、痩せ型の男と蓮華は激しく動揺する。 オレも内心、成功するかどうかヒヤヒヤしていた。これはB3のやっていたトリックを真似たものだ。 覚えていたので再現した即席だったため、上手く行くか心配したが、これで決定打は与えられた。 「当たった……これが……」 「百日! そのまま、追撃!!」 「あ、ああ!」 まさか、当たるとは百日も思っていなかったようで驚いていたが、オレの命令にマガジンを二つ装填する。 「インファニット∞アサルトだ!!」 「終わりだぁぁっ!!」 スキルを放つとレーザーでダメージを負って動けなくなっている蓮華に当たり、弾丸が装備を破壊し、彼女を戦闘不能に追い込んだ。 「ぬおぉぉっ……!?」 「蓮華!? くそっ!! 覚えてろ!!」 蓮華が倒れる状況に驚きながらもこのままではやられると思った痩せ型の男は彼女を持ち出し、逃げ出した。 それを見て、戦闘が終わったと判断した百日は武装を解除し、トライクモードに戻した。 「響。ありがとう。この勝ちは君のおかげだ」 「百日だって頑張ったじゃないか! これは二人の勝利さ!」 戦いが終わると礼を言ってきて、オレは思ったことを返す。そうすると百日はニッと笑って見せ、手を出した。 「そっか。頑張るって言葉、教えてくれ」 「ああ! 頑張るぜ!!」 「じゃあ、それをみせてくれ」 オレはそれに応じて百日の小さな手に握手した。こうしてオレと百日は無い者同士がパートナーとなった。 イリーガルがどうとか痩せ型の男が言ってたけど、百日が悪い奴の手先なんかじゃないのはわかってる。 誰かがもう一回、そんな事を言ってきたら胸を張って「百日が悪い奴なんかじゃない」と言ってやろうと思う。 テストが終わったら、兄貴は一人暮らしだから、悠にイリーガルについて聞いてみよう。あいつなら神姫をよく知っているし、百日のイリーガルについて何か知っているかもしれない。 「百日。よろしくな」 「ああ」 明日のことを考え、決めるとオレは百日と共に自分の家に帰る事にした。 ひとまず、帰ったらテストの予習を済ませないとならなかった事をすっかり忘れていた。 これで成績が良くなかったら母さんにこってり絞られてしまう。それだけは避けないとならない。 ……テスト、どうにかしないとなぁ。 戻る 進む