約 220,417 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1604.html
「というわけでご好評いただいた(?)『二人はドS』は前回で終了、今回からは新メンバーを迎えて装いも新たに新コーナーを開設します」 「アレはそんな名前だったのですね……いえ、よいのですけれども。 それで新コーナーは、『ドS Max Heart』でしょうか?」 「いえ、『三Sが斬る!』です」 「時代劇にいきましたか」 「というわけで、新メンバーの登場です!」 「……ちゃお……」 「のっけから無表情ローテンションでありがとうございます」 「特定の層へのアピールは十分ですね」 「では新メンバーさん、一言どうぞ」 「……『神姫のSは、ドSのS』」 「感慨深いお言葉、ありがとうございます」 「胸に染み入る名言です」 「……どうも」 「しかしとなると……きっとアレですね」 「……?」 「と仰ると?」 「それと対になる言葉は、『マスターのMは…』」 「さすがにそれは不遜かと。自重しましょう」 「(こくこく)」 「む、よく考えてみると苛められて喜ぶマスターを持っているのは私だけですか…… 孤独です、しょせん女の友情なんて、儚いものです」 「……あったの?」 「……それらしいものは、あったのではないかとは思います、自信はありませんが」 「うーん、悪くないけど、バランス的にもうちょっとアグレッシブなツッコミ役が欲しいかな」 「さすが、冷静な観察力お見事です」 「言うことそれだけ?! 他に言うことない?! ってーか誰が喜んでるっつーのよっ?!」 「あ、適材な人ががこんなところに」 「武装神姫ではないのが惜しいですねぇ」 「ちょっ?! マスターの方まで私をいじり始めた?!」 <戻る> <進む> <目次> 犬子さんの土下座ライフ。 クラブハンド・フォートブラッグ 鋼の心 ~Eisen Herz~
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/449.html
第一幕。上幕。 中学校から家路を急ぐ少年と、彼の肩に、ちょこんと座った金髪の小さな少女。 彼の名前は新堂真人。名はマコトと読む。少女は天使型神姫「アーンヴァル」。名はフェスタ。 二人は顔は決して明るいわけではない。 マコトの横顔には暗い印象があり、フェスタの視線は定まらず、何処と無く虚ろでただ遠くを見ている。それに・・・。 かちゃん。 という音で脚を止める。見れば数歩前でフェスタが落ち、ひっくり返っていた。頭をさすりながらゆっくりと上体を起こしている。 マコトは手を差し伸べて彼女を拾い上げ、胸ポケットに入れようとする。と、両手でポケットの縁を掴んでそれにフェスタは抵抗した。 「肩しか、ヤだ。肩がいい」 「・・・解った」 そっと肩に手を持っていくと、せっせと手だけでよじ登り、フェスタは何とか元の位置に納まった。 彼女には。腿から先が無かった。 ダンスが好きな神姫だった。 家に初めて来た神姫。母が発売日にこっそり買ってきて、マコトに押し付ける形になったのだが。姉も、フェスタを可愛がってくれた。 良く笑い、リズムだけ歌いながら何時もクルクルと踊っていた。どちらかといえば寡黙な彼の肩や頭は即席のステージと化し、いつしか人が集まって来るようになった。フェスタ(祭)という名前も、そのダンス好きな一面から取った物。 バトルは決して得意ではなかったが、そこでもダンスの才能を垣間見せた。純正装備に加えてマコトが買ってきた、大型のライトサーベルでの近接戦が得意・・・いや、好きだった。マコトの適切な指示の元、彼女はジュニアランクの上位に食い込んでいった。 バトル・・・そう、戦場であるにも関わらず。そこでも彼女は舞っていた。 指先まで伸ばし、しなやかな肢体をくねらせ、翼を羽ばたかせて。その完璧な姿勢制御で駆け巡るフィールド。淡い粒子が舞い散る大剣は、ステージに姿を変えた戦場に美麗なる光の帯を引いた。流麗なるは光剣の天使。と噂され、彼女の舞いを見る為に遠征者が来る程であった。 「もっと色んな人に見て欲しいね」 そう言って、彼女は笑っていた。 自慢の神姫だった。 いつものように肩で踊っていた時。弘法も筆の誤りか。彼女はバランスを崩し、落下した。失敗失敗と起き上がろうと身体を起こし。 「フェスタッ!!」 絶叫に近い大好きなマコトの声を掻き消したのはエンジン音。 悲劇は、一瞬だった。 脚が潰れただけ。 メーカーからの補充パーツさえ来さえすれば、直ると思っていた。武装神姫は圧倒的人気を誇る商品だ。順番待ちなのは仕方が無い。 かかった期間は三週間。届いた純正の脚部を神姫ショップで装着。それで全てが解決するはずだった。 「・・・」 ぽかんと口を開けて、フェスタは呟いた。 「何も感じない・・・」 次の瞬間に堰を切ったように泣き叫ぶ彼女を何とか宥め、その日のうちに電車に乗ってメーカーに修理に行った。 何か色々なデータが取られ、様々な脚部が試された。武装神姫の物だけではなく、それ以前の神姫の物も。 その結果は残酷な物であった。 センサー類に異常は見つからず、原因は不明。恐らくは潰れたときのショックか、長く脚が無かった為に運動系制御機構にバグが発生しているのだろうとの事だった。 ・・・だが。 マコトはうっすらと別の理由を感じていた。 それは。非現実的だけれども。 その日から、フェスタは笑わなくなった。 手だけで肩に掴まっているフェスタが、ぼんやりとした目のまま思い出したように言った。 「マコト・・・」 また。はじまった。 「私を、捨ててもいいよ?」 あの日から。彼女は口癖のように言い始めた。 自分を捨ててと。邪魔だろうと。決して目をあわさずに。 「嫌だ」 「マコトはバトルが上手だし・・・頭も良いし」 黄色い髪が彼の歩幅に合わせて揺れる。 「歩けない神姫なんか連れてたら彼女も出来ないよ?」 自嘲が僅かに混ざる声。 「嫌だ」 いつもの返答を、たった一言の返答を繰り返す。数秒の空白。なおもフェスタが口を開く。 「だけど」 「フェスタがいい」 その言葉を聞くと、ふっとフェスタは黙り込んだ。 解っているんだ。喧々囂々と怒鳴りあった、はじめて捨ててくれと彼女が言い出した日。 知らず、口を吐いて出たその一言でフェスタは静かになった。 ・・・きっと、彼女は。この言葉が聞きたいのだ。聞かなくては不安で仕方ないのだと、マコトは解っていた。 いつしかマコトも、笑わなくなった。 何度か落ちそうになりながらも、フェスタを肩に乗せて自宅に到着する。無機質な様式の家。大量に作られた、特徴のない家。 家としても初めての神姫であるフェスタが来て、そんな家も一気に華やいだ。 ・・・あの日までは。 「?」 ふと見ると、家の車庫に見慣れない車が止まっていた。怪訝に思いはしながらも、彼は玄関の扉を開けた。 「おかえりなさいマコト」 聞きなれた声。今は僅かに無機質ささえも感じる。 「・・・お客さんが見えているわよ?」 トレイを持った母親が玄関にぼんやりと突っ立っている息子に声をかける。 「お客?」 我を取り戻し覗き込むと、応接間には身形の良い初老の女性が座っていた。 「・・・誰?」 「神姫研究所の方よ。その・・・フェスタちゃんの事で。話したい事があるんだって」 研究所というワードに眉を顰めながらも、彼は鞄を置いた。 「はじめまして。新堂真人さん。そしてフェスタさん」 初老の女性はその外見同様、固そうな性格を思わせる一応の笑みを浮かべながら言葉を切り出した。 「私、千葉峡国神姫研究所の所長を務めております。小幡紗枝と申します」 差し出された名刺を受け取り、はぁ・・・としか答えられないマコト。 フェスタは机の上に腿を前に投げ出す形でぼんやりと座っている。視線は小幡の方を向いてはいるが、その焦点が合っているかは甚だ怪しい。 「えっと・・・」 返答に困る彼に、小幡と名乗った彼女は金属製のケースを机の上に置いた。 「用件とは他でもありません。彼女・・・フェスタさんについてです」 ちらりと、机に座っているフェスタに視線を移す。 「フェスタにですか?」 「はい。失礼ながらお話は聞いています。残念な事故に遭われたと・・・」 光を照り返さぬ瞳のまま、フェスタが小幡を睨みあげた。 「そこで、こちらを持参しました。フェスタさんは初期ロット。系統が合うという事で」 ケースをゆっくりと開ける。と。 「脚・・・?」 そこには、白いメインカラーに草色のラインが走った神姫の脚が入っていた。 (こんな塗装見た事が無い) どことなくディティールがやぼったいというか・・・古臭い上、表面も武装神姫のようにツルツルしておらず、処理が悪い。 「あの、小幡さん。でもフェスタは・・・」 「だからこそ、この脚部を持参した次第です」 マコトははっと、思わず身を乗り出す。 「この脚なら、フェスタでも動かせるとか!?」 ぴくっと、フェスタが肩を揺らせた。 だが小幡はゆっくりと首を横に振った。 「それは解りません。この脚部はCRZRタイプの物。つまりは、旧式です」 「え?」 マコトの間の抜けた返答。すると、フェスタがポツポツと呟くように言った。 「CRZR・・・タイプ・クラリネット。製造年2031年から2034年。少数生産された会話や通訳を主目的とするタイプであり、発声能力や気候対応能力、外国語発音能力に非常に優れる・・・」 そこで彼女は口を噤んだ。 「その通りです」 「・・・で?」 虚ろな瞳のまま、フェスタは肩を竦めた。 「そのポンコツとも言える脚を、どうしようと言うのですか? 所長さん?」 「フェ、フェスタ!」 乱暴な言い方に慌てたマコトの声を無視して、彼女は淡々と続ける。 「確かに第一弾初期ロットにCRZRの脚部は合います。でも、そのクラリネットタイプの脚は既に試しました。まさかそれをまた?」 小幡は一つだけ頷き、同じ返答をした。 「その通りです」 馬鹿げてる・・・と小さく口の中で悪態を吐き、フェスタは歯を鳴らして再び口を噤んだ。 マコトもまた肩で溜息をついて、目を伏せた。 (きっと・・・フェスタはもう・・・) 試す事さえも、苦痛なのだろう。 幾度試しても、どれを試しても動かない脚。ほんの僅かな期待はその都度に踏みにじられ、その度に絶望のシャワーを浴びて、泣き叫び続けたのだから。 「あの小幡さん、ありがたいお話ですが・・・」 断ろうとしたマコト。だが、その床を見つめていた間にか、小幡は鞄の中から小型のコンピュータを取り出していた。 「失礼ですが。コンセントを貸していただけますか? 充電を忘れてしまって」 「あ・・・はい」 彼はとりあえず頷いてしまっていた。 「その脚部を持参したのは・・・」 手元で立体モニターを搭載したコンピュータにデータを打ち込みながら、小幡はゆっくり話し始めた。 「実は、私の意志ではありません」 「え?」 その意を介す事が出来ず、思わず聞き返すマコト。 「言うなれば『遺志』です。私の、神姫の」 「・・・遺志?」 神姫の遺志? 「フェスタさん」 小幡に頼まれる形でコンピュータの真正面に座らされ、相変わらず虚ろな視線をしているフェスタに声をかける。フェスタはフェスタで反応を示そうともしない。 「貴女は、自分を捨ててくれと。言っているようですが」 目線だけ動かし、彼女は小さく返した。 「それが何の・・・」 「未来を紡ぐ事を、止めようと言うのですか? 『今、ここにいる』のに」 少し強く言う。 紡ぐという単語に疑問符を浮かべ、フェスタは僅かに首をかしげた。 その仕草を見て小幡は悲しげな顔をし、やがて目線を逸らすと、データを再生させた。 「・・・どうか、御覧なさい。これはきっと、貴女へのメッセージです」 『はじめまして。妹であり娘である神姫よ』 モニターに。 腰まで届く草色の髪と、透き通るような銀の瞳を持った、美しい神姫が映し出された。 スペーサージョイントの部分から解るが、武装神姫ではない。もっと古いタイプの神姫。そのスーツカラーはパールと草色に彩られている。 『私はゼリス。プロトタイプ=クラリネット。私はこれより、全ての機構を停止して眠りに就きます』 その自己紹介で放たれた名前。そして続けられた言葉に、フェスタとマコトは息を飲んだ。 聞いてはいた。 去年のクリスマス、ゼリスという名の「死」を選ばされた神姫がいたという事は。それは神姫の意思ではなく・・・。 少なくとも。マスコミはそう伝えていた。 『想い出を守る為に、大切な人との日々を失わない為に。この素晴らしい時間を与えてくれた世界に感謝して』 「・・・想い出?」 ゼリスはモニターの中で。しかし彼女はフェスタのぽつりと漏らした言葉に、小さく頷いてから言葉を続けた。 『私が眠りに就いた後、私の身体をパーツとして、哀しみに囚われた神姫に与えてくださるようにマスターに頼みます。この映像を見ている貴女は、身体の一部を失って嘆き哀しんでいるのですか? それとも生まれながらに身体に不自由を持ち、それの為に涙を流しているのでしょうか?』 ぎくりとしてフェスタはゼリスの顔を見返した。これは録画された物のはず。しかし、その口元に浮かぶ静かな微笑は、確かに彼女自身に向けられている。 『・・・私の身体は、きっと貴女達には旧式でしょう・・・すみません』 少し目を伏せ、悲しげに言う。 そんなこと・・・と思わずフェスタは小さく漏らし、僅かに首を振った。数秒の間の後、再び優しい笑みを湛えてゼリスは語る。 『心が豊かであればあるほどに、貴女は知らず、新しい身体を拒むでしょう』 「!」 マコトとフェスタは共にはっとしてモニターを直視する。 「拒む・・・? 私が? ・・・?」 「フェスタ・・・?」 「う、うん・・・そんな事」 少し自信なさげに下を向いた彼女に、ゼリスは諭すように続けた。 『そう・・・貴女が失ったのは身体だけではなく。そこに込められた『心』そのものなのですから』 「・・・!?」 『非現実的と、非科学的と笑いますか?』 驚いたように顔を上げたフェスタに、くすっと笑う。 『けど・・・私は信じます。信じています』 目を閉じて、彼女は胸に両手をやった。 『・・・『ここ』に、作り物じゃない、心があるという事を』 そこにあるのはCSC。プログラミングによる人工の属性付与機構。 フェスタは知らず、自分の胸に手をやっていた。 ・・・それだけだろうか? ・・・それだけなんだろうか? 熱い、何かがゆっくりと。胸から込み上げてきた。 『受け取りなさい・・・私の身体を使う事で、娘の嘆きが止むのであれば。この『心』を与える事で、妹の涙を拭い、哀しみを癒す事が出来るのであるならば。何故、どこに迷う必要があるでしょう?』 「あなたは・・・」 マコトが思わず声を出すが、小幡が手で制する。 気付くとフェスタはじっとモニターを微動もせずに見つめていた。その空虚だった瞳には確かに光が宿り、涙で揺らいでいる。 『この身体には・・・何者にも代え難い、きっと・・・貴女達が築き歩いてきたと同じ程の『想い』が込められています』 ゆっくりと語りかけるゼリス。フェスタの口が、何か言葉を紡ごうとする。 「・・・っ」 ぱくぱくと。何かを必死で言おうと。何かを伝えようとする。 ・・・涙が、一筋、零れた。 『私の身体は想いで満ちています。私の想いを受け継ぎなさい。私の心と共に歩んでください。きっと、きっと貴女の閉ざされた心も開けると・・・信じています』 フェスタの涙を見て、ゼリスのその笑顔にも一本の涙が伝った。 それはきっと。自分への嘆きではない。 これを見ている、哀しみを抱いた娘へと送る涙。 『・・・笑顔のとき、そして涙のとき。空を見上げ、海を眺め、夢を描くとき・・・心が揺れ、そして『想い』が生まれ出るそのとき。いつでも私は、貴女と共にいます』 フェスタが身をゆっくりよじりながら、肩を揺らせた。目からは涙、唇は震え、首を僅かに左右させる。 『妹達、娘達よ。貴女達を愛しています。・・・これまでも、これからも』 優しさと、ほんの少しの哀しみを湛えた唇が、言葉を紡いでいく。 『そして・・・』 一度、口を噤む。 ゼリスは、優しい母の微笑みを浮かべ、両手を広げるように確かにフェスタに語りかけた。 『想いと共に。未来を、紡ぎなさい』 もう、抑えることは出来なかった。口をついて出る、その言葉を。 神姫。生まれながらのツクリモノの身体。だけど・・・。 「お母さん・・・」 涙でもう満足に前が見えない。フェスタはモニターに近づこうと指を伸ばし、そのまま前のめりにカチャンとその場に倒れ込んだ。 「う・・・うぁあ・・・っ」 手だけで這うように進み、モニターの中で尚も優しげな微笑みを浮かべるゼリスに・・・母に、彼女は腕を伸ばす。 ゼリスの柔らかな視線は・・・不思議と真っ直ぐにフェスタに向けられていた。そのまま、小さく頷いて娘を迎える。 フェスタはようやくモニターに辿り着き、母の姿に顔をすりつけ、泣きじゃくった。 コンピュータのキーボード部を椅子にして座ったフェスタ。背からはケーブルが数本、コンピュータの本体に向かって伸びている。 腿より先に取り付けられたのは・・・美しい草色のラインが走った脚。応接間にはマコト、小幡だけではなく。母、そして大学から帰ってきた姉も集まって、それを見届けようとしていた。 「セッティングは終了しました。さぁ・・・」 小幡が背中からジャックをゆっくりと抜く。小さな手が震えながら膝に据えられた。 ぐっと身体を前にして、力を込める。真綿の上から触っているような感覚しかない。 (でも・・・。違う) 武装神姫の高質合成樹脂でもない。旧式の神姫の脚。しかしそれだけじゃない。 確かに、確かにそこは暖かい。 「ううっ・・・!」 力を込め、ゆっくりと腰が浮いた。 「フェスタっ」 「大丈夫・・・!」 心配そうな声を出したマコトを制し、フェスタは目を閉じ、歯を食いしばった。 (もう一度) いつから諦めたのだろう。それを。あんなに大事だったのに。 (もう一度・・・踊りたい) もう一度。あの時のように。今も鮮明に思い出す自分の姿。喜んでくれたマコトの顔。 本当にいつから・・・夢を見る事さえ止めたのだろう。 「うあっ!」 キリキリと音を立てながら、ゆっくり膝関節が曲がっていく。 (マコトと・・・笑いたいよぉっ!) 彼女の偽りない想い。しかし、それに反して脚は動いてくれない。 (ダメ・・・!) 力が続かず、膝からガクっと崩れかける。 ・・・・・・。 小さな背を、誰かが押した。 確かに感じた、掌のぬくもり。 大丈夫、と。耳元で優しく囁く声。 草色の髪の匂いが、ゆるやかに舞った。 カタカタッと足音を残し、彼女は二歩、進んだ。長く忘れていた脚の感覚が全身に伝わる。じんわりと伝わる、立っているという確かな抵抗。そのまま更に、ゆっくりと二歩三歩と、信じられないといった顔で歩みを進めた。 カタ、カタ。足音は小気味良い音を立てながら、歩くという実感を与える。 彼女はゆっくりと、振り返った。 「・・・フェスタ!」 いつ以来かさえ忘れたマコトの笑顔が、そこに。 「マコトぉ・・・!」 笑顔が零れる。抱き上げられ頬擦りされながら。フェスタは確かに、近くに母を感じていた。 脚は。優しく、暖かかった。 ありもしないドレスの裾を指先で持ち上げるジェスチャー。 腰から礼をすると同時に左膝を曲げ、爪先でコツンとテーブルの天板を叩く。 姉が持ち出したオーディオから流れ出す音楽。 彼女は舞った。 柔軟性の高い武装神姫の高質樹脂の脚とは違う、旧式の、少し硬い合成樹脂の脚。 それは木のステージの上でステップを踏む度に乾いた音を響かせ、周囲の空気を奮わせる。翻す腕。伸びた指。くすんだ金髪が光をはらむ。音楽とステップが奏でるテンポは一つに解け合い、彼女の踊りにリズミカルな拍子を贈った。 やがて舞い終えると、彼女はドレスを直す仕草をしながら、仰々しく一礼をした。 拍手が彼女を包む。 小さな舞姫が顔を上げると、その瞳には涙が薄く湛えられていた。 ・・・。 いつか、貴女に会う時に。胸を張って娘だと言える様に。 未来を紡ぎます。お母さん。 第一幕。下幕。 第一間幕
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2599.html
第3部 「竜の嘶き」 「ドラゴン-4」 2041年10月30日 22:20 天王寺公園神姫センター 第3フィールド森林ステージ 森林ステージの小川を闇夜に紛れ低い重低音を奏でながら、3隻の巨大な灰色の塊が水面スレスレを航行する。 チーム名「あああああああ」 □重装甲戦艦型MMS 「ドセットシャア」 SSクラス 二つ名「キャノン・ワールド」 オーナー名「細田 勇」♂ 27歳 職業 統合商社営業マン □重装甲戦艦型MMS 「スーザン」 SSクラス 二つ名「アイアン」 オーナー名「西野 公平」♂ 28歳 職業 統合商社営業マン □重装甲戦艦型MMS 「ウォース・パイト」 SSクラス 二つ名「オールド・レディ」 オーナー名 「和田 真由美」 ♀ 29歳 職業 銀行員 対岸の青チームは何が何でもA飛行場を最悪使用不能にさせたかった。その為には陸戦MMS部隊を安全に対岸にまで送らなければならない。しかしすでに制海権は赤チームに奪われつつある上に周辺の味方MMS航空隊は連戦続きによって激しく損耗していた。その為、A飛行場からはいつでも敵機が出撃できる状態であり、このままでは輸送艦型MMSによる増援をしても撃沈されるのが目に見えていた。 味方MMS航空隊は頼りにならない。テンペスタ使いの女子高校生たちは明日までテスト中で使い物にならない。だが輸送を成功させるには何としてもA飛行場を一時的にも無力化しなければならない。しかしその為には味方MMS航空隊の援護が必要。だが航空隊は使えない。この無限のループを打破すべく、青チームは最後の切り札を使う事にした。 当時、大規模バトルロンドの常識であった航空MMSの次に攻撃範囲の広い武装神姫。それは旧世紀の主力兵器、戦艦をモチーフとした戦艦型MMSの一群であった。 青チームのオーナーたちはA飛行場に対し、戦艦型MMSによる艦砲射撃作戦を立案した。この作戦は電撃作戦でなければならないのだ。なぜならば攻撃に成功しても、撃ち漏らした敵機がすぐさま迎撃に向かってくるからだ。 戦艦型神姫の攻撃力は確かに最強クラスだが、速度は低速。逃げ切る事は難しい。迎撃されればいくら最強クラスの攻撃力を持っている戦艦型MMSといえど損害は避けられず、最悪沈没という事もありえた。圧倒的な力の象徴である戦艦型MMSを失う事は、青チーム全体の士気にも関わる。その為に白羽の矢が立ったのがこの3隻であった。 カタリナ社製の重装甲戦艦型MMS「ヴィクター級」 速度は鈍足ではあるが、分厚い装甲と強力な砲撃力を持つ重装甲戦艦型MMSにはもってこいの作戦であった。さらに同型が3隻あるといのもひとつの理由でもある。 もし投入した戦艦型が最悪沈められても、代わりがいるからである。数隻の同型で艦隊を組み闇夜に紛れて殴りこみを仕掛ける。 これらの理由も踏まえ、青チームはヴィクター級重装甲戦艦型神姫3隻による艦砲射撃作戦「A飛行場艦砲射撃」を提示した。 かくして、青チームは作戦を発動したのだった。 ゴオオオンゴオオンゴオン・・・ 低いエンジン音を唸らせながら小川を進むドセット。 ドセット「はー、大阪城公園からはるばる天王寺公園まで環状線伝ってきたけど・・・なんともなァ・・・」 スーザン「遠距離からの艦砲射撃かー、メンドクサイなーいつもの定期便みたいに決まったルートで護衛引き連れて爆撃する方がまだマシだよ」 ドセット「本当は俺たち、戦艦型神姫は同じ戦艦型同士で真正面で撃ち合いするのが筋だけどな」 パイト「まあ、どっちでもいいけどー、とりあえずバカスカ撃ちまくればいんだろ」 スーザン「この作戦、うまく行くと思う?」 ドセット「前例あるし、余裕だろ」 パイト「前例って?」 ドセットたちはべらべらとおしゃべりしながら、小川を下る。 ドセット「今からええと、ちょうど100年前だな!太平洋戦争中の1942年10月に行われた日本帝国海軍によるガダルカナル島のアメリカ軍飛行場・ヘンダーソン基地への艦砲射撃の作戦があったんだ。艦砲射撃部隊は金剛級の高速戦艦を主力とした作戦だったらしいなー」 スーザン「1942年の10月?今は2041年の10月だぜ!ちょうど一世紀前じゃねか!!」 パイト「前例って100年前の俺たちのモチーフの実績事例じゃねえか!ふざけんな!あーーーどおりでなんかマスターたちが妙に作戦をサクサクって立てるからおかしいなーと思ったんだよ!」 スーザン「だいたいよー、こんな真っ暗闇の中で撃って当たるのかよ!照準はー」 ドセット「心配するな、コウモリ型が照明弾を撃って、場所を教えてくれる。砲撃はレーダー射撃と三角法を用いたアナログ光学測定の併用な」 スーザン「めんどくせーし古臭せーよ」 パイト「GPS使って位置割り出しの方がよくね?今ならネット使って衛星とリンクできるけど?グーグルアースで誤差、3センチまでいけるぜ」 ドセット「アホォ!なにいうとんねん!衛星からの画像はアテにならへんで!画像処理されてめちゃくちゃなところに落ちんで」 パイト「けっきょくアナログか!!!あほくさ」 スーザン「めんどくせー」 ドセット「艦砲射撃任務も戦艦型神姫の十八番だ!連中に俺たちの火力を見せ付けてやろうぜ」 スーザン「めんどくせーから俺帰りたいんだけど?」 パイト「アナログアナログアナログクマー♪」 ドセット「黙れ」 2041年10月30日 22:30 天王寺公園神姫センター 第3フィールド森林ステージ A飛行場 リイン「本当ですか!?」 飛行場の片隅でリインたち、ドラッケン部隊が集まって盛り上がっている。 シャル「そうだ、マスターたちと話し合って、ついにテンペスタ対策に装備が改変されることになった、重い増加装甲とロケット弾の搭載をやめてオーバードブースタを代わりに装備する。今までの倍の高度で航空性能をUpさせるんだ」 ライラ「あれがくれば、テンペスタなんかバラバラにできるぞ!それに前にオマエのやられた仲間の整備が終わって部隊再編でおまえを小隊長に推薦しておいた」 リイン「シャル・・・ありがとう」 セシル「よかったな!リイン」 エーベル「明日は忙しくなるな」 ヒュウウウウンン・・・・パァアアンン・・・ 真っ暗だった飛行場が明るくなる。 シャル「!!」 空を見ると照明弾が明々と燃えてゆっくりと夜空を照らす。 エーベル「照明弾だ、いつものコウモリ型が落としたな」 闇夜の小川に静かに浮かぶドセットは目標の飛行場の位置をじーと見つめる。 その時、飛行場の方角から光がぱっと湧き出る。光を見詰め、ドセットはニヤリと笑みを浮かべた。 それは、計測用にコウモリ型が投下した照明弾だった。 そしてそれは艦砲射撃開始の合図だった。 ドセット「合図だ」 スーザン「照明弾、確認!」 ドセットはゆっくりと砲塔を動かす。主砲はわずかに方向・仰角を変え、さらにもっと撃ちやすい場所に移動する。 ドセット「よォーーし、では始めようか・・・全艦、撃ち方用意―」 チカチカと発光信号で合図をするドセット。 スーザンもパイトも軽口をピタっと止めて、砲撃に移る。 ドセット「撃ち方ァーーーはじめッ!!撃ッ!!!!!」 ドゴオオオオオンンドッゴオオオオオオオン!! ズン・・・ズシン・・・ドオン・・・ ライラ「なんだ?砲台型神姫か?」 遠くの方で雷のなるような音が聞こえ、滑走路からはずれた所に砲弾が着弾し爆発する。 セシル「いいや、ありゃ艦砲だな」 セシルは目を細めて砲弾の着弾位置を見る。 ガオオオン・・ズズウム・・・ドゴオオオオン・ズドム・・・ じわじわとシャルたちに向かって着弾が近づく。 シャル「まずい!!射角が合ってきた!!」 リイン「来るぞ!!」 シャシャシャシャシャシャムシャムシャム・・・ エーベル「逃げろォ!!」 ドッガッガッガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!! 飛行場で待機していた数十機の武装神姫が艦砲射撃の砲撃に飲み込まれて一瞬でスクラップに変わる。 ズッガアアアアアアアアアアアアアンンンンン!!!!!ボオゴッオオオオオン!! ライラ「うっわああああああああ!!滑走路が!」 地面を抉るように深く砲弾が突き刺さり大爆発を起こして神姫や武装を巻き込み大爆発が起きる。 リイン「これは戦艦型MMSの艦砲射撃だ!」 ライラ「派手ですねー」 セシル「うひいい!恐ろしい、この間の仕返しかァ!?」 シャル「これは挨拶みたいなものだ、明日はテンペスタの連中が出てきて忙しくなるぞ・・・」 ズンズズン・・・ズウム・・・ドン・・・ズズウン・・・ 12:50の「撃ち方・止め」までに、重装甲戦艦型MMSの艦隊は全艦合わせて計966発の艦砲射撃を実施した。この艦砲射撃により、A飛行場は火の海と化し、各所で誘爆も発生した。 赤チーム側は、96機あった武装神姫のうち、54機が被害を受け40機が完全に撃破され、燃料タンク、弾薬庫も炎上した。滑走路も大きな穴(徹甲弾による)が開き、A飛行場は一時使用不能となった。 もちろん、戦いはこれで終わるはずもなく、更なる激戦が後日控えていた。 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>「ドラゴン-5」 前に戻る>「ドラゴン-3」 トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2853.html
ぶそしき! これから!? 登場人物紹介 <第0話> ●佐伯友大(さえき ともひろ) 10歳 父の転勤に合わせ、上里小学校に転校した少年。 現在父子家庭の一人っ子。 父親の仕事の忙しさと転勤の多い家庭環境により、寂しい思いをしている。 父親に心配をかけさせたくないため、不満は口に出さずに家事もしている。 ある日、ずっと一緒にいられる友だち欲しさに、今まで貯めていたお年玉とおこずかいをはたいて神姫購入に踏み切る。 ヒイロの件を見て分かるように、好きなカラーは「赤」。 小学生のため主に金銭的な関係で神姫のパーツ入手に苦労することになる。 <第1話> ●羽々辺誠志郎(はばのべ せいしろう) 15歳 実家から離れた新戸守市の竹上高校に入学した少年。 色付きのメガネを着用している。 学校ではうっすらとしたもので、普段は青系の色が付いたものを使っている。 同年代と比べてかなり小柄で、同じ位の年齢と友大に間違えられて、彼の初めての神姫バトルの相手となる。 背丈と見た目に関しては、今は家系的なものと諦観しているらしい。 ・・・ ●星原店長 今年三十路となった社会人の独身男性。 昔はとある企業に勤めていたが辞めて、色々あった後におもちゃ屋スターフィールドを始める。 実は武装神姫が初めて発売された頃からの紳士である。 神姫に関することならソフト面ハード面ともに強い。 紳士淑女を増やすために初心者のために、筐体改造とトレーニング用ロボなどを作っている。 他にも色々やっているらしい。 ・・・ <第2話> ●成行春澄(なりゆき はずみ) 10歳 佐伯と同じ上里小学校に通う女の子。 少々内気。 チャオは遊び相手として買い与えられた。 衝撃的な出会い? で記憶のかなたに飛んでしまっているが、実は友大が引っ越した当日に会っている。 本人に自覚はないが、友大を神姫マスターの道に引きずり込んだ原因その1。 成り行きで友大と友だちになる。 両親はおらず、祖父母に育てられている。 料理や裁縫などの家事は勉強中。 トップページ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2161.html
ご意見部屋 沙耶:ここはホーリーの物語に関するコメントを書き込み・閲覧出来るコーナーよ! メイリン:感想、意見等はここに書き込んでくださいにゃ。作者の返答もここで行なうニャ。ただし、作者の都合上、返答は不定期になるニャ。 沙耶:もちろん、あたしたちの事とかあいつのこととか、この作品の気になることとかもOKよ。気軽に書き込んでね。 メイリン:コメント欄はこの下にあるニャ。ただし、作者や投稿者を迷惑になる荒らしは遠慮してほしいニャ。 沙耶:コメント、待ってるわよ! テストです。 投稿するとこの上のコメントが載る…はずです。 -- muna (2009-09-26 22 50 16) 設置お疲れ様です。 地道に読んでいますよw -- 第七スレの6 (2009-09-27 11 32 48) こんばんは。夜虹です。第一部を一通り見させていただきました。 真冬の川に流される神姫を拾って共に成長する物語というのはなかなか正統派な始まり方で、話を分かりやすく進めてありますな。 設定に関しても神姫の名前を与えて、初めてオーナーとして認識されたり、神姫における精神ダメージによって病院送りになり、そうなったときの治療法があったりと参考になる事が多く、考えさせられる所がありました。 後はオリジナル武装が非常に多く、それを用いた独特の戦い方は面白いですね。自分はあまりオリジナル装備は用いないのでこうした戦い方は見ていて新鮮ですよ。 今後の新装備、ストーリー展開を楽しみにしています。 -- 夜虹 (2009-09-29 22 00 50) コメントありがとうございます。 第七スレの6さま ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。 夜虹さま 最初のころはどうやって話を進めていけばいいのか悩んでました。 過去にもこれに似た小説を書いた経験があったのですが、今回は設定的に悩んだところが多々ありました。 オリジナル装備も組み換えで出来るものが多いのですが、スクラッチに近いものも多少あります(メイリンの武器とか)。 ほかの方は写真やイラストで装備の詳細を掲載してますが、私の場合、現在のところそれがないので、今後どのようにして装備等を見せるか考案中です。 話が長くなりましたが、これからもこの小説をよろしくお願いします。 -- muna (2009-10-03 16 31 48) 上記の返答に追加。 オリジナルの装備ですが、組み換えで出来るものが多いと書きましたが、実際には単に組み換えだけなのは1/3ほどです。 あとは一部改造かリペイントしたものが多いです。 私の場合、出来る限り組み換えやほかの商品の流用で再現できるように設定しています。(例を言えば、獣牙王や不動のバリエーションは主に神姫のパーツで構成されています) それでも、新造しないと再現できない武器もありますが。 あとは丸々ほかの玩具から流用したりすることもあります(百雷はプライズ騎馬武者のリペだったりします) -- muna (2009-10-03 21 04 41) こんばんは。武装についての説明、ありがとうございます。手軽に作れるように工夫してある様ですね。 自分は素体のリペイントや武装の小改造が関の山でして難しいのが多いかなんて思いましたよ 二章の最新話まで読ませていただきました。 今度はフェレットタイプのために頑張る翔君が第二の主人公となりましたか。 ホーリーベルはその時にはワールドロボットフェスティバルを駆け抜ける人気者とは二年の間になにがあったのか気になる所ですね。 オリハルコンシリーズを始め、確かに武装神姫だけが世界ではないですな。 とは言え、この様子だと武装神姫が市場の先を行っているなのはまだ変わっていないというのが実情という感じの様ですが。 そんな中で美由紀はいずるに実際に会った人ときましたか。ともなればこの勝負の後は都村いずるとはどんな人かという話になるかもしれませんね。 それが聞けるか否かでいろいろと話が変わってきそうな気がしますよ。 -- 夜虹 (2009-10-10 02 19 46) 夜虹さま 第2部は翔くんと美由紀さん、それぞれの視線で物語を進めていきます。 彼らがいずるとホーリーを目標にするためには、それなりのレベルを持たせたほうがいいと判断したからです。 そのためにWRFという大きな舞台を用意する必要があったわけです。 ほかの美少女タイプをだしたのは、ロボット業界の変化を知ってほしかったため。 あと、美由紀さんがいずるを目標にしているのは、同じ場所まで行き着くことのほかに、もうひとつ理由があるのですが・・・。 それはあとの展開にとっておきます。 書き込みが少ないのは、部屋の入り口が目立たない場所にあるからなのでしょうか・・・? ちょっと体調が悪いので、今日はここまでにしておきます。 -- muna (2009-10-12 21 48 58) ご意見部屋を少し目立つ(?)場所に移動しました。 これで少しは判る・・・かな? -- muna (2009-10-31 22 38 56) 場所としてはいいと思います。書き込みが少ないのは……感想を書くというのがちょっと勇気のいる事だからなのかもしれませんね。 ウサギのナミダは思わず書いてしまいたい小説故にそうしたいと思えるたくさんの感想が来ている事ですしね 謎の鉄騎兵は今の所は武器がわかってシルエットが多少わかった程度ですか……。 とはいえ、再現した神姫と闘えるとなれば何かしらの糸口がつかめそうではありますな。 まずはその神姫と戦って、それから進めるのかもしれませんね。 次を楽しみにしていますよ。 -- 夜虹 (2009-11-07 02 26 18) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/12.html
夜。 寒さが強くなってきた、夜の商店街。 そこに氷雪恋は立っていた。 玩具屋のショーケース、そこに飾られている武装神姫。 それを恋はずっと見つめていた。 買えない。お金がない。小学生のお小遣いではとても足りない。 そこに男たちが声をかける。 「ねぇお嬢ちゃん、神姫欲しいの?」 「俺たちが買ってあげようか?」 下心丸出しの下卑た笑い。 「ちょっとビデオ撮らせてくれるだけでいいからさぁ」 「そうそう」 無言を肯定と受け取ったか、男たちは恋の手首を掴み、路地裏へと連れて行く。 恋はただ無言のまま連れられ、夜の闇に消えていった。 神姫狩人 第三話 FOUNDLING DOG WALTZ 「納得、いかねぇ」 時刻は土曜の昼、場所は警察署。 桐沢静真(きりさわしずま)は、不貞腐れていた。 「なんで俺がケンカでしょっぴかれなきゃならねーんだ、くそっ!? おまけにあのクソ兄貴っ!」 ここから回想。 『あ、もしもし警察ですけど。仕事中に申し訳ありません。実はお宅の弟さんが…』 『ウチにそんな弟はいないので煮るなり焼くなり犯すなり好きにしちゃってください。あと伝言よろしく。強く生きろ赤の他人、さいでに泊まってけ。兄は忙しいのだ。以上』 『……だそうだが?』 警官が同情したような目で見る。 『チクショーッ!?』 『なんかお前も大変だな……まあ強く生きろ少年』 短いが回想終わり。 「あーくそ、気分悪っ」 足元に転がっていた空き缶を思いっきり蹴飛ばす。からん、といい音を立てて盛大に転がっていく。 空を大きく飛んだ、わけではないのはご愛嬌。 「きゃっ」 空き缶が転がった先から、女の子の声が聞こえた。 「んぁ?」 静真がその方向を見る。 「お前は……昨日の」 そこには、沈んだ表情で恋が立っていた。 「あの……昨日は、ありがとうございました……」 状況を端的に記すと、恋が男たちに連れ込まれたときに静真が都合よく現れて助けた、 ただそれだけの話である。うん、よくある話だ。 ただ、ちょうど静真が腹の虫が最悪に悪かった時だったので路地裏どころか表通りでの大乱闘になってしまい、血ぃ出るわ粗大ゴミは飛ぶわの大立ち回り。 恋はそのあまりの乱闘ぶりに怖くなって逃走。まあ小学生の女の子だから当然といえば当然である。 かくて、「女の子を助けに入った」という美談部分は被害者逃亡のために無かったことになり、あとはものすごい大乱闘だけが残る。かくして見事に警察行き。 いちいち女の子を助けに入った、とあえて言うのもかっこつけてるみたいでなんか嫌だし、相手の男たちは自分らの悪事を自分から吐く訳もない。 ギャラリーのみなさんは事情を知らず喧嘩しか見ていない、かくして単なる傷害事件の出来上がり、というわけであった。 まあ、静真や相手が未成年の高校生なのが幸いであった。相手は元々普段から素行の悪い不良たちであったため、静真も停学ぐらいで済むという話。 ちなみに、いまさら停学になった所で問題はない。何故なら皆勤賞の野望は先月に兄によって阻まれてしまったからである。おのれ。 「ま、そういうわけだから気にするなよ。元々ムシャクシャしてたから丁度いい、ってばかりに自分で売ったケンカだし。だからお前にどうこう言うつもりはねぇし」 静真は歩きながら恋に言う。 「でも……」 「そうよ。静真の自業自得だもの。貴女が気にする必要はないわ」 静真の鞄から声がする。 「!?」 「おい、ベル…っ、外で出るなって」 静真の静止も聞かず、カバンのジッパーが内側から開けられ、小さな人影が飛び出す。 「武装…神姫…?」 静真の肩にのったそれは、悪魔型、ストラーフタイプ。 ただひとつ違うのは、ボディがまるでアーンヴァルタイプかのように、白い事。そして、巫女服のような神姫サイズの衣服を着ていることだった。ちなみに、巫女服のような、と称したのは、袴部分がミニスカート状になっているからである。 「ええ、そうよ。初めましてお嬢さん。私はベル。よくありそうな名前なのは静真のネーミングセンスの悪さだから気にしないで」 「だからお前はオーナーを敬うって気持ちをだな…ん? どうした?」 恋がベルを凝視していることに気づいた静真が問いかける。 「いえ……なんでもないです」 「なんでもないことないだろ。あ、いやな、この服は俺の趣味じゃないぞ、こいつが服を着せろってうるさくて」 「そうじゃないんです。ただ……ちょっと、思い出してしまって」 「武装神姫…?」 「はい……」 それきり、恋はしばらくの間、口を閉ざす。ややあって、ぽつり、と言った。 「私も、神姫が欲しかったんです。そして、その願いはかなったけど……」 「けど?」 「……殺されたんです。いきなり襲われて。 わかってる、本当はそれでよかったんだって。私は……でも、それでも、あの子は私の友達だった…」 (……) 事情はわからない。静真にはわかるはずもない。彼女はきっと色々な事があったのだろう。 その傷は彼女自身のもので、知り合ったばかりの自分が口を出していいものではないのだろう。 (でもまあ、ほっとけねぇよなぁ) 関係ないと突き放すのは簡単だが、それはなんというか嫌だと思う。美学、なんて大層なものじゃない。性分、ってやつだろう。 静真は恋に追いついて言う。 「恋ちゃん、だったっけ。今時間ある? ちょっと見せたい、面白い場所があるんだけど」 「レンタルシンキブース…?」 恋は、その店の看板を読み上げる。 「ああ。ま、入って入って」 「お邪魔します…」 自動ドアの前に立ち、中に入る。すると、 「いらっしゃいませにゃーーーっ☆」 いきなり、甲高い声が響いた。 テーブルの上にさらにテーブル。小さい。そしてそこに猫型MMS、マオチャオが座り、笑顔で手を振っている。 「ここは…? え、ええと、こんにちは……」 「うにゃ。お客さん初めてだネ? アタシは受付嬢のマオファ。よろしく。んー、しかし…しずっち、まさかお前さんがロリコンだったとは痛たっ!?」 静真のデコピンがマオファに炸裂する。 「黙れバカ猫。香織さんは?」 「てんちょーならすぐくると思うけど。それよりも誰がバカ猫だにゃ、だいたい…」 「え、ええと……?」 展開においつけずにうろたえる恋。 そのとき、受付の奥のドアが開く。 そこから現れた20代半ばぐらいの眼鏡の女性が、マオファをひょい、と掴みあげる。 「うにゃ?」 「はいごめんねー。あら静真君じゃなーい、久しぶりやなー。何やそちらのお嬢さんは? 何、キミロリコンやったん?」 「はははははははははあんたら揃いも揃ってなあこんちくしょう」 「日ごろの行いね」 「てめぇまでっ!? あー、ごほん。えーと、ここはだな」 「まあまあ」 女性…香織が静真の言葉をさえぎる。 「百聞は一見にしかずや。見てもらったほうが早いし、びっくりすると思うけどな?」 「わぁ……」 思わず声が漏れる。 広い部屋は、デパートや遊園地の遊具スペースのような様々なおもちゃが置いてあり、そこには子供たちと、武装神姫が遊んでいた。 「武装神姫……こんなに」 「そや。たくさんおるやろ? この店はな、武装神姫を貸し出して遊んでもらう店やねん。 ある意味、神姫たちの孤児院みたいでもあるわな」 「孤児院…?」 香織に続き、ベルが言う。 「そう。ここの半数の子たちはね、捨て神姫なの。人間の都合で捨てられた子、飽きられた子、壊されてそのまま廃棄を待つだけだった子……それを物好きなこの人が、借金してまで買い集めたりあるいは貰ったりして来て」 「ベルちゃんあのな。物好きはないやろ」 「じゃあ酔狂、ね。新しく売るんじゃなくて、子供のお小遣いで借りれるような金額で貸し出すなんて、酔狂もいいところ。儲け、出てないんでしょう? まったく、理解できないわ」 「あいかわらず言うことキツいなぁ。まあソコがかわいいんやけどね」 「そぅかぁ?」 静真が嫌な顔をする。 「そうや。んーと、こほん。まあそんなワケでな。武装神姫って、結構高いやろ? 特に拡張パーツやらなにやらそろえたりとかはとても子供じゃ無理や。 親に買ってもらえたり、お年玉貯金でどうにか出来る子はまだええ。 でも買えん子はぎょーさんおる。わかるやろ」 「はい……」 「そんな子たちのためにやな、武装神姫を貸し出して、遊んだり話したりする店や、ここは。 武装神姫は人間の友達、パートナーや。人間は、特に子供たちはもっともっと神姫と触れ合わなあかん。ロボット技術が発達して文明が豊かになっても、大切なものは何も変わらん。 心や。心と心の触れ合い、コミニュケーションが大切や。 そしてせっかくの心をもった人間のパートナーとなれるロボット。こりゃもう、触れ合う機会はあればあるほどええ。違うか?」 「違わないと、思います…」 目を輝かせる香織に、恋も頷く。 「まあ、えらそな事言うとるけどな、確かにベルちゃんの言うとおりに酔狂かもしれへん。 だけど見てみ。ここに来てくれる子供たちの笑顔。 私はこれが見たくてこの商売やってんねや」 香織に促されて、恋は見回す。 確かに、そこには笑顔があった。 ……私も、あんなふうに笑えるのかな。 恋は思う。 思えば。サマエルと共にいた時、私はこんな風に笑えていただろうか。 覚えていない。 それが、寂しかった。 この店には、神姫サイズの遊戯場から、神姫のオンライン仮想バトルの機械まで揃っていた。 バトルに関しては店の性質上、公式リーグへの登録は行わずにオンラインでの草バトルを行っているらしい。 確かに、レンタル屋という性質上、ひとつの神姫のオーナーは毎回変わるし色々と面倒だから、だ。だがそれで特に不都合はないとのことである。 確かにこの店の客層は、いずれ神姫を購入し公式リーグで戦うための練習を行うユーザーや、単純に神姫と遊ぶ目的の子供などが大半を占めている。 まあ、中には…… 「はぁはぁ犬子たんの素体萌え~」 「お股を開いたり閉じたりさせて下さい!」 なんてのもいるのだが。あ、撃たれた。 閑話休題。 客はここに用意されている神姫たちを指名して借り受ける。値段は、店内では一日500円、一泊二日で800円。 人気のある神姫は中々借りることもできないのも、「レンタルビデオ屋と同じ」である。 そこ、間違ってもホ○テ○みたいと言うな。 「……」 だが、恋はその光景を黙って見ているだけだった。 お金は確かに、神姫と遊ぶくらいのお金はある。しかし、どうにも気が乗らないのだ。 考えることが多すぎる。考えてしまうことが多すぎる。 捨てられた神姫。壊された神姫。ここにいる大半は、そうして死んでいく運命だった成れの果て。 捨て犬。捨てられたペット。ゴミ。いらない子。 そういう単語が次から次へと浮かぶ。 だから、思ってもいないこと、思ってはいけないことが次々と浮かぶ。 サマエルの眼差し。友達だった。友達だった? 本当に? あの女は言った、操られていると。 それは嘘。私は自分の意思で。自分の意思で? 自分の意思で多くの神姫を操った? 違う。 何が違うの? 友達? 笑わせる。道具のように扱った。道具のように扱われた。だから道具のように。 友達という言葉で隠して、自分の醜い欲望を隠して。 何が違う。 ここにいる神姫たちを捨てたオーナーたちと……何が違う! ――何も、違わない。 だから私は、ここにいる子たちのように笑う資格はない。笑う権利もない。 「お、おい恋ちゃん!?」 恋は、罪悪感に苛まされて立ち上がり、走り去る。静真はあわてて後を追おうとするが、しかしベルに止められた。 「放っておきなさい」 「でもよ……!」 ベルは神姫サイズの湯のみにお茶を淹れて飲みながら静かに言う。 「構って慰めるだけが優しさじゃないわ。どんな物語も、乗り越えるのは本人よ」 「だからって、見捨てられるかよ」 それに、ここに連れてきたのがまずかったのかも知れないし。そういう静真にベルは平静に答える。 「見捨てるのと放っておくのは違うわ。それにね静真、あなたは彼女をここに連れてきた、それでよかったのよ。 どんな形であれ、前進することはいい事よ。ただ立ち止まるよりは」 後は、道を間違ったり踏み外すようならそのときに支えてあげればいい。でも、今は違う。 ベルはそう続けて、お茶を飲み干した。 「――――でも、それでも。賢い思考よりも愚直な行動を取るのよね」 律儀にも聞くだけ聞いた後で再び追いかけて走り去った自分のマスターを見送る。 「本当に愚かで――――人間って、本当に理解できないわ」 その光景を香織はカウンターで眺めて、思う。 確かにそうかもしれへんな。でもね、ベルちゃん? そう憎まれ口を叩くあんたの顔、いっぺん鏡見てみぃや。 すごく、優しい……いい顔、しとるよ? 「はぁ、はぁ……」 走った。恋は荒い息を整える。ここはどこだろう。 まだ店の中、建物の中のようだ。 「倉庫……?」 暗い部屋の中に陳列された棚。神姫のパーツやそのほかの玩具が並んでいる。 「誰」 「!?」 恋の耳に声が聞こえた。 「誰……誰かいるの?」 「人間は質問に質問で答えるのか?」 恋の言葉に、声は答える。 やがて恋の目が暗闇に慣れる。棚の奥に、それは座っていた。 「神…姫?」 犬型MMS、ハウリン。それが棚に座っていた。 「そうだよ。見れば判るだろ」 その神姫は、ぶっきらぼうに言い放つ。 「用がないんなら出てけよ。オレは人間は嫌いなんだ」 「人間は、嫌い……?」 「ああ。好きになれって言うほうがどうかしてる。勝手に作り出して勝手に戦わせて、勝手に捨てる。 どの道壊すのなら、心なんて付けるなって言うんだ」 「そう…嫌いなの。 気が合うね、私も……嫌いになったところ、人間がじゃなくて、自分自身がだけど」 「はぁ?」 その言葉に、神姫は怪訝そうに声を返す。 恋は、ゆっくりとそのハウリンの元に歩き、腰を下ろす。 「あなたの言うとおりだと思う……人間(わたし)は、本当に身勝手で。 私も……自分の気持ちしか考えなくて。ずっと一人だったから、だから……自分のさびしさを埋めるための道具としか見てなかったんだと思うの。 それに、もっと早く気づいていたら……そしたらあの子と、本当に友達になれてたのかも……」 「……よくわかんねぇけどお前も大変だったんだな。 いつだってそうさ。気がついたときには遅すぎる。 オレだって、マスターとは強い絆で結ばれてた。そう思ってた。……オレの場合は、気づかなきゃよかったのかもな。 オレがマスターに、道具としてしか見てもらえなかったって。 勝ち続けてきた便利な道具は、一度負けたときにその理由を失うって」 「……」 「オレはね、結構有名なランカーだったんだ。常勝無敗。いずれはトップに近づけるはずだった。 だけど……あの時全てが狂ったのさ。いや、最初から狂ってた、か。 オレのマスター、不正してたんだ。オレも知らなかった。そして本部から刺客が送られてきた。 神姫狩り、ってヤツさ。非公式のハンター。九ツ首のヴァッヘバニー、クトゥルフオブナイン。 強かったよ。それで負けちまってさ。 オレが戦ってる間、マスターはどうしたと思う? 逃げたんだよ。オレを置いてな。ああ、でもそれでもよかった。マスターが無事だったら。 そしてオレは壊れた体を引きずって、なんとか家に戻ったら……笑い話さ。もう家には何も残ってなかった。小さなアパートだったけど、オレたちにとってそこは大切な、帰る場所だったはずなのに。 何もかもなくした、んじゃない。最初からオレは……何もなかった。ただの、捨て駒だったんだ。 それに気づいてしまうぐらいなら、いっそ何も知らないまま壊れて死ねばよかったんだろうけどな」 ハウリンは自嘲する。 「いつだって、遅すぎんだよ。だから……?」 ハウリンは言って気づく。となりの人間の肩が震えていることに。 「お前……泣いてんのか?」 「だって……ごめんなさい、ひどいことして……本当に……」 「……」 その恋の言葉にハウリンは少し黙り、 ばこん。 「痛っ!?」 恋の手を思いっきり蹴飛ばした。 「バカかお前。なにがごめんなさい、だ。お前がやったんじゃねぇ、それとも何か。人間代表のつもりか? うぬぼれんなよ、バーカ」 「バ、バカって……バカって言うほうがバカで……」 「なにベタな返ししてんだよ。小学生かおめーは」 「……小学生です。五年生……」 「……マジかよ。くそ、しくじったな畜生。 あー、まあ、そのなんだおめー。とにかくお前が悪いわけじゃねぇから泣くなバカ。 ……まあ、でもその気持ちだけはありがたくうけとっといてやるよ」 そっぽを向き、ハウリンはつぶやく。 「うん……ありがとう」 「謝ったり礼いったりちぐはぐなやつだな、えーと……」 「恋、です。ひゆき、れん。恋する、って書いて恋」 「そうか。オレは……普通にハウリンでいいよ。名前なんかとっくに捨てた」 オーナーに捨てられたときに。そう続けるハウリンに、恋は少し考えて言った。 「じゃあ……私が名前をあげるよ」 「は?」 「名前がないと、誰からも呼ばれないでしょ。それって、悲しいと思うから」 自分が、そうだったように。 「……ハティ。どうかな。月を呑む狼、フェンリルの仔、ハティ」 「……ハティ、か……」 ハウリンは、その響きを反芻するように何度か口にする。 「気に入らなかった?」 「さあな。だけど、もらえるものはもらっといてやるよ、レン」 そっぽを向きながらハティは答える。その言葉に、恋は笑顔を浮かべた。 「……出番なし、か」 倉庫の前のドアを背に、静真は笑いながらかるくため息をつく。 「ま、邪魔者は退散、かな。追いかけてって何もせずに戻るってぇのは、ベルの奴に色々とまた言われそうだけど……ん?」 立ち去ろうとすると、廊下の向こうから見知った顔の子供が走ってくる。 「静にーちゃん、大変だよ!」 「どうした?」 「なんか怖い男の人達が店に!」 「なんだって!?」 「という訳でしてね。悪い話ではないと思うんですがねぇ」 「どう聞いたって悪い話やろ!」 店の前で、黒服たちの言葉に香織が反論する。 「金の問題やあらへん。私はな、子供たちのために、子供たちに喜んで欲しくてこの商売やっとんのや」 「それが邪魔だっていってるんですがねぇ。正直ね、そういう商売を勝手にやにれると、神姫業界にとってマイナスにしかならないんですよ。 自己満足の偽善で、善良な同業者の邪魔をしないでもらえますか」 「何が善良や、この銭ゲバが!」 香織の怒声に黒服たちは肩をすくめて笑う。 「なんやーーーーーー何がおかしいんやこのすっとこどっこいがーーーーーーー!!!!!!!!」 「だあっ落ち着け香織さん!」 表に出てきた静真が後ろから香織を取り押さえる。 「だからさぁ、鶴畑コンツェルンに逆らったら色々とまずいってわかりませんかねぇ?」 「わかるかいだぁほぉ! 喧嘩売っとんのなら高く買うでぇ! 簀巻きにしてドブ川に頭から放り込んだあとでカー○ル君をさらに上からマッ○ルドッキングのよーに叩きつけてセメントをケツから流しこんだろうかぁー!!!???」 「ストーーーップストッブ、頼むから落ち着けっ!」 「ほう、買ってくれますか。いいですねぇ、ではコトが武装神姫だけに、バトルで決着をつけるというのはどうでしょうか」 「「え゛?」」 香織と静真の声がはもり、止まる。 「自分が喧嘩を買うといわれたのです。まさか嫌とは言いませんよね?」 「……」 拙い。何が拙いかというと、そもそもこの店にある神姫たちはぶっちゃけバトル用に特化しているわけではない。 そもそも香織にそこまでの武装パーツをそろえる資金もない。神姫たちの経験も足りない。 「…………ふ、ふん。当たり前や。女に二言はないで。戦ってやろうやないか、 彼がな!」 「俺かよっ!?」 静真を指差す香織。 「当たり前や、私とマオファがそんなガチバトルなんか出来るかい!」 「……ったく、あーもう、またもめ事かよ、俺は平凡に生きたいってのに……」 わしゃわしゃと頭をかきむしる静真。 「ま、だけどここが潰れるのも困るしな。いいぜ、やってやるよ」 静真が一歩前に出る。ベルもまた構える。だが…… 「おっと、お嬢さんも戦ってもらうに決まってるじゃないですか。誰が一対一といいましたか?」 黒服が笑い、指を鳴らす。後ろに停めてあった車から、二人組の男たちが出てきた。 「な……?」 「二対二のタッグマッチ、ですよ」 「聞いてねぇぞ!?」 「言ってませんからねぇ。でもバトルを受けるといったのはあなた達ですからしたがってもらいますよ?」 「……どこまで腐ってやがる、てめぇら!」 「さてねぇ。鶴畑に逆らうから悪いんじゃないでしょうか? さて、それでは始めましょうか」 「っクソ、仕方ない。香織さん、とにかく俺たちがなんとかするからマオファは後ろで…」 「待ってください!」 割り込んだ声は、恋のものだった。 「……恋ちゃん?」 「私が、戦います……」 そこには、ハティを手に乗せた恋が立っていた。 「……無理だ。だいたい……」 「非公式バトルなら、私にも経験が、一応ありますから……」 半ば操られていた夢うつつだったけど。 「それに……ここに来たばかりで、私、まだここで一度も遊んでいない。なのにここが無くなるなんて……この子も、ハティも……戦ってくれる、って」 「イヤイヤだけどな。オレみてぇなはぐれモノは行く場所なんてねぇ。少なくともそこのバカネコよりは戦える」 「あなたたち……本気なんか?」 「はい」 「ああ」 香織の視線を受け止め、うなずく。 「おい、ちょっと……」 「よっしゃあ! 細かい経緯は知らんが、なんかもう100人力や!」 「香織さん、いやそれは」 「静真くん、あんたも男なら覚悟ぉ決めぇや!」 「いや、だからオレの覚悟は決まってますけどね、だけどそれとこれとは」 「静真。どのみち戦うしかないのよ。だったら……まだあの子のほうが、香織とマオファよりはましなのは判るでしょう?」 「……とことんまでみんなして俺の意見は無視かよ。あーわかったわかりました! こうなったら覚悟決めるさ」 ため息ひとつ。しかしこうなればやるしかない。 「ふん、しかし…」 車から出てきた目つきの悪い男が言う。 「どんなのが相手かと思ったら、ほぼ素体じゃねぇか」 「本当だね。これなら俺たちが用心棒でくる必要もなかったかな?」 その揶揄に静真は、ただ不敵な笑顔で答える。 「言ってろ。油断は命取りだぜ。いくぞ、ベル、恋ちゃん、ハティ」 「ええ」 「はい!」 「ああ……!」 構える四人。対する男たちもまた構える。 非公式試合、開始。 悪魔型MMS『ベル』 犬型MMS『ハティ』 VS 天使型MMS『シザーウイング』 天使型MMS『リッパーリング』 このバトルは非公式試合である。 そのため、戦闘結果によるポイントの付加・ランキングの変動は行われない。 シザーウィングは後背部のウィングに武装を集中させたタイプのアーンヴァルだった。 羽の一本一本が鋭利な刃物であり、それを射出する遠距離攻撃および剣として使う近接攻撃の両方を扱うタイプである。 対するベルは、ほぼ素体のみ。武装は小型の刃物を幾重に重ねた扇がふたつ。盾としても剣としても使えるそれだが、シザーウィングの攻撃を防ぐのがやっとであった。 「ははははははは! どうしました!」 実弾の羽毛を撃つ攻撃、それゆえに弾切れを誘う予定だったが、シザーウィングは両手や肩に装備した重火器も撃ってくる。 この弾幕を防ぎきるだけの余裕はなく、衣服の端も次々と切られる。 「……っ、本当にしつこい攻撃……!」 地を蹴り後退するベル。彼女の居た場面を羽の刃が次々とえぐっていく。 リッパーリングは両腕をストラーフタイプの腕へと換装し、剣を装備した近接格闘特化のアーンヴァルだった。 高出力の格闘攻撃を、ハティは両手に持った剣で捌く。 「くっ、間合いが長げぇ……!」 リーチはどうしてもリッーパリングに分がある。ハティもまたその攻撃を受けるだけで精一杯。 ベルもハティもどうしても防戦にまわざるを得ない。まずい状況だった。 「ははっ、口ほどにもない!」 男が笑う。 「そもそも鶴橋の金の力でガッチガチにチューンした俺たちの神姫にかなうはずないんだよね。何カッコつけちゃってんだか、そういうのを自己満足って言うんだよ」 「……ふん」 しかし静真は、真っ向からその嘲笑を受け止める。 「ああ、確かにな。自分でもバカだとは思うさ。だけどさ、男なら」 掌を突き出す。 「退けない事もある。カッコつけだって笑うんなら笑えよ。 醒めた振りして言い訳に逃げるほど、俺は大人じゃねぇんでね、悪いけど!」 「はっ、言うだけならなんとでもならぁな。だが現にてめぇの神姫は――――あ?」 キィ――ン、と耳鳴りが響くことに男は気づく。いや、耳鳴りではない。これは――飛行音。 「やっと到着したか…! ベル、来たぞ!」 「まったく、ずいぶん待たされたわね!」 ベルが扇子で攻撃をはじき、一気に後方に跳躍する。 その上空に飛来するのは、アーンヴァルのレーザーライフルを主軸にウイングやストラーフの手足などで組み上げた、純白の飛行機だった。 その名、フリューゲルヴァイス。 ベルは跳躍し、巫女服を一気に剥ぎ取った。 純白の素体があらわになる。 「合体コード起動! 汝、東守護せし魂の運び手!」 静真が叫ぶ。その言葉に従い、MMSの自動合体システムが起動する。 ベルもまた唱える。 「闇に落ちて尚輝くは白き翼。我らは誓う」 「絶望に突き立てし暴食の牙! その手に掴みし切なる希望!」 戦闘機を構成するパーツが空中で分離。 ベルの脚にはストラーフ脚部装甲。 胸と肩、腕にはアーンヴァルの装甲。背にはストラーフのバックパックとアーム、そしてアーンヴァルの背部ウイング。 白く輝くそれらのパーツがベルの体を包み、装着されていく。 そこに現れたのは、翼を広げた、一回り巨大に見える威容。純白の魔神の姿。 「「その名――――白亜の翼、ベルゼヴァイス」」 「何…!? 白い、ストラーフだと……!」 「そのようなハッタリ――!」 シザーウイングが撃つ。圧倒的な火力物量。次々と着弾し、爆発が巻き起こる。 「はははははははははは!!!!!! このシザーウィングに切り裂けぬ敵など……!?」 煙が晴れる。 ただ、悠然と。 白亜の翼は、そこに立っていた。 「な――――、にぃ……!?」 「これで全力? 受けてみたら思ったより火力が低いのね」 冷徹に言い放つベルゼヴァイス。 「遊びは、ここまで。後悔なさい、ゆっくりと」 リッパーリングの一撃が大地を切り裂き、砕き、そしてハティを叩き潰す。そのリーチを活かした高速連続攻撃に土煙が舞う。 「どう? 潰れてモンチになったぁ!?」 「ハティ……っ!」 恋が叫ぶ。土煙が晴れる。そこには切り刻まれたハティの姿が――――なかった。 あるのは、リッパーリングのアームを、交差した剣で受け止めているハティの姿。 「なんだ――――つまらない。 しばらくオレが戦場から遠ざかってる間に、神姫の質は落ちたのか?」 バキィン、と音がしてアームが砕ける。 「ぐああっ!?」 「ああ、あの時のアイツに比べたらカスもいい所だ。せっかくのオレの一大決心をどうしてくれる。 これじゃあ、あまりにもつまんねぇーだろうが!」 ハティが跳ぶ。その高速の跳躍にリッパーリングの動体視力は追いつけず、容易に懐への侵入を許してしまった。 「くたばれよ、トリ野郎」 「バ、バカな……っ!? あいつら二人とも上位ランカーだぞ!?」 黒服がうろたえる。 簡単な仕事だったはずだ。急に飛び込んできた、事業の邪魔者を排除するだけの簡単な仕事。 なのに何故―――― 「敗因は、ただ一つだよ」 静真が言う。 「金や権力で肥え太ったブタには、判らねぇだろうな―――― 必死に生きるちっぽけな者たちの底力が」 そう告げる静真の言葉と同時に。 シザーウイングとリッパーリングが、戦闘不能となり、地に伏した。 勝者、悪魔型MMS『ベルゼヴァイス』&犬型MMS『ハティ』。 このバトルは非公式試合である。 そのため、戦闘結果によるポイントの付加・ランキングの変動は行われない。 賭け試合のため、敗者である鶴畑グループはレンタルシンキブースへの干渉権を放棄するものとする。 「まったく……楽しませてくれる」 モニターでその一部始終を、男は見ていた。 「他人事みたいに言うね。キミだろ? 鶴畑をけしかけたのは」 「さて、どうだかね」 黒い服に身を包んだ青年のからかうような声に、彼はこともなげに答える。 「こうやって、あの白いストラーフを公式リーグに引っ張り出すつもり? 身内びいきは程ほどにしておいたほうがいいんじゃないかな」 「あの少女をけしかけたお前に言われたくはないな。道化はでしゃばらないのではなかったか、「無価値(ワァスレス)よ」」 「でしゃばらなきゃ何のための道化さ。ま、確かに些細なことだよ。キミもこれで満足なんだろ? 桐沢一真(かずま)」 「さぁな」 眼鏡をなおし、一真は席を立つ。 「しかし利用された鶴畑も哀れだね。グループの下っ端とはいえ、これじゃ面目丸つぶれ……でもないか」 「ああ、所詮はただの下っ端。痛くも痒くもないだろうさ。 さて、計画の見直しだ。面白くなってきそうだとは思わないか?」 「違うね」 一真の言葉に、無価値は平然と言った。 「物語は、最初から面白いものなのさ」 「恋ちゃん、手ぇ」 「え?」 言われるまま、手を出す。静真は、それを勢いよく叩いた。 「ミッションコンプリート、ってな。よくやった!」 「え、でも私は何も……」 「そんなことないわ、恋。あなたがいて、ハテイを信じて見守った。あなたの勇気と信念が彼女に力を与えたの。そうでしょ?」 「オレが知るか」 ハティはそっぽを向く。その姿に、恋は微笑む。 「いっやーーーーー、私感動したわーっ! 二人ともバリ強やん!」 いきなり、香織が二人をがばっと抱きかかえる。 「うわっ!?」 「きゃっ!?」 「ああんもう私めっちゃ感動したわーーーー!」 「だああっ、ちょっと落ち着け香織さん、痛っ、ていうかあたってるあたってる!」 「くっ、くるし……」 騒ぎ立てる香織たち。 それを呆然と、憎憎しげに見つめるシザーウイングのオーナー。 「バカな……オレが、負けた……!? 再起動だ……シザーウイング! てめぇもこのままで終わらせるワケにゃあいかねぇだろうが!」 男の言葉に、シザーウイングは無理やり体を起こす。そして、砕けたウイング部分の刃物を掴み、走った。 「――!?」 香織の凶行に気を取られていたベルは、反応が一瞬遅れる。 手負いとはいえ、その一瞬で十分。その刃がベルに食い込む――――はずだった。 ギィン、と甲高い金属音。 刃が地面に落ちる。 「な……!?」 黒い影が割り込み、その凶刃を防いでいた。 漆黒の甲冑。陽光を照り返して尚黒く輝く装甲に身を包んだその武装神姫は。 「サイフォス……? 何でや、まだ発売されとらんのに」 「それは、彼女が我が社の試作品だからです」 凛とした声が響く。いつのまにか新しい車がそこに停まっている。そしてそのドアが開いた。 「それにしても。鶴畑の人もずいぶんと往生際が悪くなったものですね」 現れたのは、静真と年のころが変わらない美少女だった。 「なんだ、てめぇ……!」 男が叫ぶ。その殺気を少女は受け流し、名乗った。 「篠房留美那(しのふさ・るみな)と申します。そして彼女は、騎士型MMSサイフォス、「エクエス」。 以後、お見知りおきを」 続く
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2576.html
第3部 「竜の嘶き」 「ドラゴン-1」 2030年代に登場した飛行能力を備えた航空MMS。 それらは多種多様なメーカーから出された数を含めれば数え切れないほどの多種多様性を誇ったが、一応の一定の安定した戦果をあげる活躍をし、:名機:とよばれるワクで絞っていくと、だいたい10機種くらいになる。 フロントライン社の天使型シリーズ「アーンヴァル」、戦闘機型「飛鳥」、スタジオ・ルーツ社製サンタ型「ツガル」、マジック・マーケット社セイレーン型「エウクランテ」コウモリ型「ウェスペリオー」、アキュート・ダイナミックス社製ワシ型「ラプティアス」ディオーネ・コーポレーション社製戦乙女型「アルトレーネ」 といったところが安定した強さを持っている。 もちろん、各神姫に対する評価は、オーナーにより、また神姫マニアの見方によっていろいろ違ってくる。 例えば旧式で性能的には最新鋭の武装神姫には劣っていても、局地迎撃用や戦闘可能時間の違いとか、火力、防御力、搭載能力、稼働率、整備製、コストパフォーマンスなどの点も考慮にいれなければならない。 このような観点から、総合的に採点してみると、天使型「アーンヴァル」、セイレーン型「エウクランテ」、戦闘機型「飛鳥」などが、武装神姫の中で空中戦ナンバー1を競うことになる。 アーンヴァルは、スピード、ダッシュ力、上昇力および安定性、生産製の高さで、他の航空MMSよりあまりある戦闘能力を保持している。 また「エウクランテ」は軽量で高機動、また支援ユニットに可変することで高速一撃離脱の戦闘方法で一世を風靡した。 「飛鳥」はずば抜けた運動性能で、登場した2030年代初期から中期にかけて、他の航空MMSを徹底的に痛めつけている。 いずれも武装神姫の可動初期からはたらき、改良されながら長期にわたって活躍したことが、他の航空MMSよりもポイントを稼いだ決め手になっている。 もちろんその他の「ツガル」「ウェスペリオー」「ラプティアス」「アルトレーネ」にしてもそれぞれ長所を大きくいかしての活躍が名神姫として数えられている要素になっている。 それらの中で、本来ならもっと高く評価されてもいいはずなのに、地味な存在なのがカタリナ社製の「ドラッケン」シリーズである。 「ドラッケン」は航空MMSの中でも「アーンヴァル」とほぼ同等の古い航空MMSである。上記3機が軽装甲、機動性と格闘戦闘を重視したのに、対してドラッケンは頑丈さと火力、防御力で相手の小技を跳ね返す真逆の発想で設計された。 強固な装甲と重火力、それなりの機動性を持つこのドラッケンシリーズは万能戦闘機として結果的に成功をおさめ、その合理性を立証した。 2041年10月16日 天王寺公園神姫センター 第3フィールド森林ステージ ズンズズン・・・ドン・・・ドドン・・・ 天王寺公園の一角、森の中の小川を挟んで、大砲を背負った神姫が激しい撃ち合いを行なっている。 少しはなれた小高い丘で、フィールド参加神姫の待機所で複数の重武装の神姫たちがトレーラに乗って砲声を聞きながらのんびりと出番を待っている。 チーム名「ドラケン戦闘爆撃隊」 □戦闘爆撃機型MMS「シャル」 Sクラス □戦闘爆撃機型MMS「ライラ」 Aクラス □戦闘爆撃機型MMS「セシル」 Aクラス オーナー名「伊藤 和正」♂ 27歳 職業 工場設備関係メーカー営業員 とくに話すこともない知れた顔ぶれ、彼女たちは同じ伊藤の所有する神姫たちだ。 伊藤はのんびりと新聞を読んで戦闘中のフィールドからの応援要請を待っている。 シャルは自慢の武装の2mm機関砲を布で綺麗に拭いて手入れをしている。 ライラはぼけーと口を半開きにしてどんよりとした曇った秋空を眺めている。 セシルは地面を這うアリを観察している。 ラジオもネットもなく、お互いがそれぞれ別のことをしながらただ、ゆっくりと時間が過ぎるのを待つ・・・・ ダガガガガッガガン!!!ガッガガガガン!! ふいにカン高い機械音が鳴り響き、ボンボンと黒煙が戦場になびき、樹脂の焼ける独特のにおいが流れてくる。 ポーンと情けないメールの着信音が待機所に設置されているメールボックスに届く。 伊藤がカチカチとノートパソコンのメールボックスを見て待機しているシャルたちに話す。 伊藤「出撃だぞ、手前の赤チームから救援要請だ。敵の神姫にアイゼンイーグルを装備した重火力の武装神姫が出たらしい」 シャル「了解、ドラケン戦闘爆撃隊、出撃します」 ライラがエンジンのスタートキーを回す。 ドルン、ドルンンドルルン・・ルンルン・・・グオオオオオオンン まるで獣の吼え声のように強力なエンジンが唸り、心地よい振動を生み出す。 セシル「敵機は?今日は上がってくるのでしょうか?」 セシルはぼつりとつぶやく。 シャル「俺たちに救援要請を出したってことは向こうも迎撃機を出すってことだ、足の速いアーンヴァルか、もしくは格闘戦に優れた戦乙女か・・・」 ライラ「こちらドラケン2、出撃準備完了」 セシル「ドラケン3、いつでもいけます」 シャルがうなずく。 シャル「マスター、ドラケン戦闘爆撃隊、出撃準備完了、今日の武装は、2mm機関砲、多連装ロケット砲、マイクロミサイルを搭載しています」 伊藤「よし、目標は地上で戦っている陸戦MMSの支援爆撃だ。迎撃機が出るかもしれない、十二分に注意しろ」 シャル「了解しました」 ライラ「はっ」 セシル「YES、SURE」 ドドドドドン!!ズドドドドドッ!! 強力なアイゼンイーグルガトリングキャノンを構えた悪魔型神姫が前線を押し上げている、横には数体の夢魔型が護衛として付き添っている。 くぼんだ塹壕に、火器型のゼルノグラードとヤマネコ型が身動きがとれずに必死に応戦していた。 ヤマネコ型「畜生、応援のドラッケン部隊はどーした!」 火器型「まだです!まだ来ません!!」 片腕を失った騎士型が荒い息を吐きながら舌打ちをする。 騎士型「あの重機を仕留めないことには、5分も持たないぞ!!!」 剣士型「おい!!あれを見ろ!」 キラキラと黒光するネービーブルーの機体を輝かせながら、上空から多連装ロケットランチャーで爆装したドラッケン戦闘爆撃機型MMSが3機、急降下で舞い降りる。 シャル「いいか!味方の塹壕まで2メートルと離れていない、慎重に爆撃しろ!」 ライラ・セシル「了解」 バシュバシュバシュバシュッ!!! 白い噴煙を吐きながらシャルたちは一斉に悪魔型たちに向かってロケット弾を全て打ち込んだ。 夢魔型「ド、ドラッケン戦闘爆撃機!!」 悪魔型「迎撃ッ!!」 悪魔型が強化アームでがっしりと構えたアイゼンイーグルを向けて、攻撃しようとするが、ガトリングは砲身が回転するまでのわずかな空転時間を要する。 それが致命的なタイムロスとなり、悪魔型の命運を分けた。 ドドドンッ!!!ズッドオオム!! 数十発のロケット弾が悪魔型と夢魔型数体を巻き込んで大爆発が起きる。 □悪魔型MMS 「ノーザス」 Aクラス 撃破 □夢魔型MMS 「リセム」 Bクラス 撃破 □夢魔型MMS 「パッセル」Bクラス 撃破 シャル「命中命中!」 ライラ「ドンピシャリ!」 セシル「全弾命中!」 下をちらりと見ると味方の神姫たちがしきりに手を振ったり被っているヘルメットや兜を振って声援を上げている。 火器型「助かったぜ!おまえんとこのマスターによろしくな!」 ヤマネコ型「さすがはドラケン隊だ!頼りになるぜ!」 騎士型「次もよろしく頼むぜ!!」 ぐるりと味方の神姫たちの上空で機体を振りながらバンクするとシャルたちは帰り道に急ぐ。 行きはどんよりとした曇り空が今は、風が出てきたのか晴れてきて見通しがよくなってくる。 シャル「・・・まずいな、晴れたきたぞ」 シャルは嫌な悪寒がし、キョロキョロと辺りを警戒する。 チカチカと上空から黄色い閃光が瞬く。 ドガドガドガン!! 右翼を飛んでいたライラの機体を黄色い閃光が貫いたと思った瞬間、ライラの体がバラバラに空中分解して爆散する。 □戦闘爆撃機型MMS「ライラ」 Aクラス 撃破 セシル「ライラッ!!」 ウオオオオオオオオオオオオオンン!!! シャルたちの上空から4機のアーンヴァルMK-2テンペスタが雲の切れ目から急降下で襲いかかって来た。 シャル「畜生!!待ち伏せされていた!!」 バスンバスン・・・ 全身穴だらけのボロボロの体でシャルは伊藤の待つ待機所まで、黒煙を吹きながらたどりつく。 伊藤がバッと新聞を投げ出し叫ぶ。 伊藤「なんてこった、行きは3機で帰りは1機か!」 ガッシャーーン!! 地面に胴体着陸してバラバラになるシャルの武装。 シャル「クソッタレ!」 シャルはむくりと立ち上がると砂埃を払う。 伊藤「大丈夫か?シャル!!他の連中は?」 シャル「セシルは手誰のアーンヴァルに追い詰められて自爆した。ライラは粉々にされちまった」 伊藤「なにがあった?」 シャル「たぶん、アーンヴァルの改良型だ。いきなり雲の中から飛び出してきた」 伊藤「しかし、それにしてもよく無事に戻ってきたな」 シャル「こいつの重装甲のおかげだ。もっともこの重装甲のおかげで逃げ切れなかったという点もあるがな・・・」 伊藤はぽりぽりと頭を掻く。 伊藤「しかし、待ち伏せとはな・・・」 シャルは遠い目をして答える。 シャル「俺たちを襲った連中は知ってやがるんだ。鈍重な俺たちが爆撃にくるってことをな」 天王寺公園の一角にあるこの神姫センターは立地条件に恵めれた大型神姫センター店である。 市営地下鉄、私鉄、電気軌道の路面電車、路線バス、高速バスが集中するターミナルとなっており、周辺はキタ・ミナミに次ぐ規模の繁華街を形成している。ミナミの難波とは大阪市街の南玄関としての機能を二分する。 大型商業施設には、百貨店、地下街も充実しており観光地としての表情も併せ持っており、老若男女を問わず賑わいを見せている。 そのため、老若男女を問わず、近隣の郊外から暇をもてあました強力なオーナーが集中し関西でも指折の激戦地区となっていた。 シャルが他の神姫たちと軽い雑談をする。 ぎらついた目つきの悪い黒い天使型のエーベルと、胡散臭いステルス戦闘機型のフェリアだ。 □ 黒天使型MMS「エーベル」 Sクラス オーナー名「斉藤 由梨」 ♀ 22歳 職業 商社OL □ステルス戦闘機型MMS 「フェリア」 Sクラス オーナー名「今宮 遥」 ♀ 23歳 職業 商社営業員 エーベル「そうかーライラもセシルも落とされたのか」 フェリア「運が悪かったんだろ、よくあることだ・・・気にするな」 シャルはこめかみを押さえて顔を歪めて話す。 シャル「2人はバラバラにやられちまってオーバーホールだ。直るのに1週間はかかるよ」 ファリア「テンペスタの小隊か、厄介だな・・・この辺りにはあんまり見かけなかったんだが・・・」 シャル「テンペスタにこっちの武装で勝っているのは装甲と火力だけだ。よほど有利な条件でなければ空中での格闘戦では勝てない」 シャルはエーベルやフェリアにも警告する。 シャル「お前たちも注意しろよ」 エーベル「・・・」 フェリア「・・・」 シャル「まあ、注意したってやられるときはやられるんだがな・・・」 夜になり、あたりは鈴虫やコオロギの秋の虫たちの音色で溢れる。 騒がしいまでの虫の音色がピッタと止まる。 ズズンドンドドドン・・・ズンズズン・・・ 低い砲声が唸り、爆発音が響く、そして機関銃のカン高い音と照明弾が夜空を照らす。 数機のコウモリ型が夜襲を仕掛け、フィールドで砲台型が迎撃の対空攻撃を仕掛けている。 天使型のエーベルが塹壕からひょこりと顔を出す。 エーベル「やれやれ、今日も懲りずにきやがったな、コウモリの連中」 エーベルはギュムと柔らかい何かを踏みつける。 シャル「いてェ、足を踏むなよエーベル」 エーベル「おおっとシャルか?」 シャルがヒラヒラと手を振る。 シャル「今日はコウモリ型の連中しつこいな」 エーベル「フェリアの奴が露払いにさっき出撃したぜ?」 シャルはちらりとエーベルを見る。 シャル「オマエは行かなくていいのか?」 エーベルは肩をすくめる。 エーベル「連中、逃げ足が速いからな、ちょっとでも不利になるとすぐ逃げ出す」 はあーーーとシャルは重いため息を吐く。 シャル「待ち伏せが来るってことは分かっていたはずなんだけどな・・・それをしっかりとライラたちに警告できなかったのは俺のミスだ」 エーベル「シャルを狙ったテンペスタは機関銃が故障していたんでしょう。でなきゃシャルもやられていた。シャルだって危なかったんだ、戦いなんてものはどうしようもないときのほうが多いんだ。イチイチ気にしてたら気が持たないぜ」 シャルは顎に手を付いて考え事をする。 シャル「・・・・・・」 エーベルが顔を上げる。 いつの間にか辺りは静さを取り戻し、虫の音色が再び聞こえてくる。 エーベル「コウモリ型もどこかにいっちまったようだ」 シャルがきょろきょろと警戒する。 シャル「今日は戦艦型の艦砲射撃は無さそうだな」 エーベル「明日も速いし今日は早めに寝るよ」 秋の夜は、少し肌寒い・・・・ To be continued・・・・・・・・ 次に進む>「ドラゴン-2」 トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/736.html
私を動かすのは闘志 マスターに命令されたからやるのではない 私自身が闘いを望むから 私は征く 鳳凰の翼の一翼として 鳳凰杯編 「蒼い翼」 差し込む日差しは青白い まだ奥様は寝ている様だったが、正直高揚していた私は充電もそこそこに起き出していた 高揚している・・・か 理由は一つ、間近に迫っている鳳凰杯だ 結局、私は選手として参加する事に決めていた 奥様と、この家に住む他の神姫も一応会場までは足を運ぶつもりの様だが、それは同時に開催される諸々のイベントの為だ 私は・・・そういう所では心からこの家の住人達と判りあう事が出来無い 否、それはある意味ではマスターにしても同じかも知れない 「神姫に人権を」と叫び続ける私のマスター川原正紀・・・そんなマスターだからこそ私の好き勝手にやらせてくれているのだろうが、同時にその行動原理に埋め様の無い私とのギャップを感じる 武装神姫は武装神姫・・・人ではないのだから人権等に意味は無い これが私の今の所のスタンスだった 人が命懸けで闘うと、悲しむ人が多いが、私達武装神姫は闘う為に作られたのだから、少なくとも戦う事に関しては、誰からも何も言われない 私達が私達らしくある為に必要なのは、人と同じ様な権利等では無い様な気が、私はずっとしていた 「つまりそれは戦士が戦士らしくある事の権利にも似て・・・か?」 馬鹿馬鹿しい。戦士である事に権利等要らない・・・自分が戦士らしくあろうとすればそれで良い 闘争を望む人々の熱狂と視線の中で闘う事が幸福だ 勝利の感動に酔い痴れる事が祝福だ 敗北の苦痛と屈辱に塗れる事が必要だ 何よりも幸いな事に、我々には戦場が与えられているではないか・・・! それで充分だった 「いかんな・・・考え過ぎだ。誰かに似てきたかな?」 私に必死になって闘う理由を問うて来た神姫の顔が浮かぶ 私の理由は、今はもうただ「戦士でいたいから」に絞られていた 闘いたいから闘う、そして戦う場は用意されている・・・闘う術も武器もあり、勝利の栄光もある それだけで既に私達は、人間より余程幸福だとすら思える 「・・・ん・・・おはよう御座いますクイントスさま・・・」 「ん?あぁ、おはよう、ヌル」 窓際に腰掛けた私の姿が、今の彼女にはどう見えただろうか? カーテンを揺らす風が、どこか熱い息吹を孕む春だった ぎしゅっ!ぎぃんっ!! 白刃が、閃く ほう、受けたか・・・真っ二つになると思ったが・・・ 受け止められたそこを支点に、私の体が宙を舞う・・・やはり彼女が、才能面では最高だ だがまだまだ・・・それを生かし切れていない 空中で姿勢を変え、落下ではなく着地の構え・・・襲い来る「魔女の剣」・・・そんな見え透いた攻撃にはあたってやれんな 私が、空中で、回避運動が、出来無い等と、何時言ったのだ?エルギール! エルギールの防剣を支えに、腕力で再跳躍。空中で太刀を振り、魔女の剣を迎撃、無事着地には成功する 着地点に打ち込まれる銃弾・・・『ストリクス』か。馬鹿め、私を狙う時は弾幕を使えとあれ程言っておいたのに、まだ「ワンショットワンキル」等と言う夢物語を追いかけているのか? ぎぃん 銃弾を受け止め、両断。そのまま刀身を跳ね上げて再び迫る「魔女の剣」を迎撃する 狙撃点の割れた狙撃手と、距離を取られた柔使い等、どうとでもなる 爆散する「魔女の剣」・・・面白い武器ではあるがその耐久力ではな 再度打ち込まれる銃弾・・・狙いが甘過ぎる。受ける迄も無い 掴みに掛かって来たエルギールを逆に掴んで、その力を利用して振り回す。 もう少し『待ち』に徹する事を覚えろ、余りにもこらえ性が無さ過ぎるぞ・・・エルギールの体に三発目が着弾する 狙撃がそんなに好きならミサイルで蟻でも射つのだな!凄まじい長距離と凄まじい小目標物だぞ 大体 私程度の動きを負えない様では 本当に高速戦闘に特化したアーンヴァル等相手では 射つ前にやられるぞ!! 2発射って外してしまった時点で、ストリクスは私に射撃の呼吸を読まれるという愚を冒している・・・これでは本来サイドボードを導入する意味も薄いが、今回は練習だ、使っておく事にしよう 「エンジェール!カームヒアーー!!」 ダッシュしながら叫ぶ。同時に転送されて来るサイドボード、バーチャルの空気に溶けて消えるエルギール 気に入りの濃紺のマントが消滅し、代わりに装備される白い翼と長銃 別に取り立てて珍しいものでもない。加速のみが目的の背負い型のダッシュブースターと、飛翔のみが目的の羽根付きグリーヴだ 右腋にホーンライフルという名の槍を構えて空中から殺到する羽根付き騎士か・・・使い古された絵面で面白くも何とも無い 両脚を振り回してジグザグに飛びながら、ダッシュブースターを目一杯に吹かす・・・ようやく四発目。仰角に修正するのが遅過ぎる 場所は既に割れている、あとは普通に狙いをつけて ぱすんぱすんぱすん 終わった 別にそんな長大でいかつい砲を装備せずとも、少し工夫してやれば市販ライフルでも充分反撃されにくい攻撃は可能だ・・・「ツガル」が何の為にこういう装備をしているか考えた事も無かったのか? ジャッジマシンの勝利宣言を、私は殆ど聞かずにログアウトしていた 「随分厳しく言ったじゃない?相当頭にきてたわよ?ストリクス」 「頭に来てくれないと困る」 兜を腋に抱えつつ、大げさに肩を竦める 「何でよ?」 「ストリクスがもっと技術を磨いてくれないと、私は誰から狙撃の技術について学べば良いんだ?」 噴出すエルギール。割と本気で言ったのだがな 「何それ?セカンドランカーの大物に習えば良いじゃない・・・ホント貴女ってちぐはぐだわ」 「気心の知れた相手から学んだほうが気が楽に決まっている・・・それにストリクスは堅実で努力家だ。やればもっと伸びる筈なんだよ」 「いっその事キャロねえやヌルにならってみたら?」 「キャロは狙撃は苦手なんだ・・・当然ヌルじゃ話にならん。むしろあの子はもっと蹴り技の訓練をだな・・・」 「あぁはいはい。ホントもうお腹痛いわ。神姫なのに笑い死にとか勘弁して欲しいっての」 相手が私だろうと下位ランカーだろうと同じか・・・私はこの子のそういう所がかなり気に入っている 「大体皆私を褒め過ぎるんだ。天才とかゆらぎとか、そんなものは大昔の負け犬が考えた逃げ口上だろうに」 「それ、あいつにも言ってたわね、もう耳にタコよ。婆臭い!」 「楽しそうだね」 団欒風景に割って入る十倍ストラーフ・・・じゃない神浦 琥珀 「注文の品、出来たよ」 言いつつ神姫大の黒いケースを三つ、私の前に並べる 「これはマイスター、ありがたい」 言いつつ早速開けて見る 「これは・・・」 出て来るのは計4振りの刀剣類だ ギミック付きの鞘に収められた厚手のダガーが二振りに、私が今使っているものよりやや柄の長い日本刀が一振り、そして「コルヌ」にはやや及ばないものの、かなりの長さと幅を持つ青錆色のロングソードが一振り 「密着戦での防衛力を重視した『ディフェンダー』と、少し居合いに使う事も考慮した『神薙Ⅱ』・・・そして君の音速剣を無制限に放てる耐久力の『鳳凰』だ」 『鳳凰』を手に取り一度振るう・・・心強い重みと重厚な外観が、強烈な破壊力と強度を予感させた 「振ってみて良いだろうか?」 「構わないけど、店の外にしておいた方が良いと思うよ」 相槌だけ打って店の裏手に回り、大き目の小石に向かって振り下ろす 硬い音は、両断の手応えより僅かに遅れて聞こえた 刃毀れは・・・無い 減衰したインパルスが、数十メートル先の電柱の張り紙を揺らしたのが確認出来た パワーロスが大きいが・・・まぁ慣れでなんとかなるだろう 「少し先太りになってて小回りが利きにくいけど、結構刃は薄いから、なるべく鍔迫り合いはしないでね・・・まぁ並みの武器には負けやしないと思うけど」 「パーフェクトです。マイスター。有難う御座います」 「『クイントス』お墨付きとあったら、ここいらじゃそれだけで凄い箔が付くからね。売名行為だよ。あんまり礼を言われると心苦しいな」 長大な割りに直線の刀身を鞘に収めるのは難儀したが、腰に佩いて見ると「コルヌ」よりは様になっている・・・それでも少し長いか?マントとあわせるのが難しいな 「鳳凰杯、あさってだね」 「あぁ」 「君みたいなのに僕みたいなのがこういう事言うのもなんだけど、頑張ってね」 「マイスターのこの剣と、私の誇りに賭けて!無様な闘いは曝しません」 一息に・・・抜けた。『鳳凰』を胸の前で両手で構え、掲げて見せる 青緑色のつやの鈍い刀身が、夕日に煌いていた 鳳凰杯・まとめページ 剣は紅い花の誇り 次へ
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/28836.html
登録日:2011/08/02 (火) 15 01 48 更新日:2024/02/15 Thu 00 00 47 所要時間:約 6 分で読めます ▽タグ一覧 BATTLE MASTERS 一覧項目 武装神姫 豪華声優陣 PSPゲーム「武装神姫BATTLE MASTERS」に登場する架空のフィギュアロボット達の事。 ゲーム内でお迎え出来る神姫は10体。DLCで8体となっている。 神姫毎の性能差は若干あるがCPU戦では大差なく、固有レールアクションも特筆するものはない。 一部の固有レールアクションが産廃とは言ってはいけません それが礼儀というものです つまり、自分の好きな神姫を使うのが一番! また自機の性格は固定だが、NPCになると機体の印象を180度覆すような濃い神姫が登場する。 ちなみに、DLC神姫はシナリオ、2Dパートでの会話などは実装されていないorz 戦闘中の小窓に映る表情で我慢しよう。 と、思ったらMk.2にてシナリオ実装、よかったね! アーンヴァルMk.2(声:阿澄佳奈) ベストセラー機体、天使型アーンヴァルの正統後継モデル。 ゲーム開始時に手に入れる事が出来る、初心者にも安心の性格設定(例外除く)。 店員からも「お嫁さんにするならこの子が一番」と一押し。 固有RAは「グランニューレ」「一刀両断・白」 彼女のシナリオは、結構重い。 ストラーフMk.2(声:茅原実里) 悪魔型ストラーフの正当後継モデル。ストイックな性格設定。 バトロンの初代の元気小悪魔が好きな人はちょっぴり残念かも。 アーンヴァルMk.2とはライバル的位置付けがされており、ゲーム内でもよく強敵が使用している。 固有RAは「ジャーヴァル・クルイク」「一刀両断・黒」 ハウリン(声:喜多村英梨) 犬型。オーナーに従順な性格設定で一部の可哀想な紳士達に大変愛されている。 彼女の「あたま、撫でて下さいね?」にやられたお友達は数知れず。 しかし中にはNPCの“銀千代”のように、やたら偉そうな個体もいる。 固有RAは「ドッグサーカス」 Mk.2にて初期選択神姫に昇格した。 マオチャオ(声:橋本まい) 猫型。マイペースで甘えたがりな基本性格設定で、こちらも一部の可哀想な紳士淑女に溺愛されている。 主人公の親友も「たま子」という名のマオチャオといちゃついている。 綺麗なマオチャオに(色々な意味で)衝撃を受けた人は多いハズ 固有RAは「スーパーねこ乱舞」 Mk.2にて初期選択神姫に(ry フブキ(声:福井裕佳梨) 忍者型。クールながら従順な性格設定で、初期のモデルにもかかわらず今でも人気を博している。 序盤で強制的に入手する。が、何度棄てても再び同じイベントが発生し手元に戻ってくる事から「呪いのフブキ人形」とネタにされている。 ちなみにこのイベントはフブキがバトルロンドで最初に貰える無料神姫であることを表現したものと思われる。 ……売ることは考慮しなかったようだが。 固有RAは「夢想手裏剣」、後述するバレットカーニバル程ではないが、要らない子扱いされている…… ゼルノグラード(声:白石涼子) 火器型。リアル嗜好な性格設定で、武器(特に銃火器)へのこだわりが強い。 バトルにおいてオーナーに有益なアドバイスを与える玄人らしさを見せる。 が、やたら死亡フラグを立てたがる。 固有RAは「バレットカーニバル」なのだが、大抵のマスターから要らない子扱いされている…… Mk.2にて初期(ry アーク(声:堀江由衣) ハイスピードトライク型。熱血で正義感の強い性格設定でオーナーをぐいぐい引っ張る。 NPCキャラになると良くも悪くも性格がオーナーに似てくる者が多い。浮気プレイもお手の物。 だが自機になると何故か性格や口調が安定しない。ライターェ… 赤いボディでバイクに変形するが、「振り切るぜ」とかは言わない。 あるイベントで一部の紳士にトラウマを植え付けた。ナイフクリア的な意味で。 固有RAはコナミのゲームより「ロードファイター」通称「轢き逃げアタック」 イーダ(声:田村ゆかり) コナミ自重しろ。 ハイマニューバトライク型。性格設定は公式で上級者向けとされている程。 むしろオーナーをリードしようとする高飛車な彼女に多くの痴豚が歓喜の悲鳴をあげる。 あとヘンゼルちゃんマ゙ジデン゙ジ 固有RAは同じくコナミのドライブゲームより「スリルドライブ」通称「轢き逃げアタック(その2)」 アルトレーネ(声:中島愛) 戦乙女型。素直でやる気全開な性格だがよく空回りしている。 「〜なのです!」といった特徴的な喋り方やテンションの上げ下げが激しかったりと、意外とオーナーを選ぶかも。 ギュウドンは健在。 あと悲鳴が痛々しい。 固有RAは「ゲイルスケイグル」 アルトアイネス(声:水橋かおり) 戦乙女型。アルトレーネとは姉妹機だが、こちらはやや性格が気難しかったりと扱いづらい所がある。 ツンデレでボクっ娘とかなりハイスペックだがNPCになるとオーナーに恵まれない可哀想な子。 「みぎぃっ!」は紳士のトラウマの一つ。 固有RAは、SGDこと「シザース・ガリアス・ドミニオール」 〜DLC神姫〜 紗羅檀/シャラタン(声:高垣彩陽) バイオリンをモチーフにしたデザイン。上品だが世間知らずな性格でよく相手を挑発する。 固有RAは「ロスト・パラディウム」 ベイビーラズ(声:平野綾) エレキギター型。パンクらしいデザインで、語尾に「〜じゃん」と付く無邪気なロリータ。 笛を吹くとカプセルをだしたり固有RAに血圧アップが必要だったりはしない。 ボディパーツがなかなか刺激的。 固有RAは「We Will Rock Y☆」 蓮華(声:金田朋子) 九尾の狐がモチーフで、自身を神の遣いと自称する。 彼女をお迎えする際は(主に耳の)健康を損ねないようご注意ください。金朋自重。 固有RAは「後天爆裂」 ガブリーヌ(声:小林ゆう) ヘルハウンド型。自分を地獄の使者と信じるよう性格設定された厨二神姫。がさつで乱暴だがLOVE値が上がるとデレッデレになる。 「マスターの為だったら、何だってしてやるよ……」 外見や言動が少年っぽいが神姫は皆女の子です。 固有RAは「ヘルクライム」 ラプティアス(声:遠藤綾) 鷲型。やや高圧的だが、その内に静かな情熱を秘めた気高い性格。 昔の少女漫画でいう「お姉様」といった印象が漂う。 戦闘時小窓の表情が凛々しい表情・ウィンク・笑顔ととても魅力的。 固有RAは「スーパーダブルナックル」 実は勝利だけではなく、戦闘内容にもこだわる方。 アーティル(声:中原麻衣) 山猫型。「根性!根性!テラ根性!」という謎の掛け声を上げる熱血スポ根神姫。 彼女をお迎えしたコーチ、もといオーナーは上手に鍛えてあげましょう。 武装の大半が重火器だが、名前の由来が砲兵だから仕方ない。 固有RAは「スーパーツインカノン」 因みにロリ巨乳。 Mk.2のイベントで更にRAを手に入れた プロキシマ(声:朴ロ美) ケンタウロス型。宝塚歌劇の男役を思わせる凛々しい性格。 女性オーナーを意識していそうだが、スタイルの良さや可愛らしい笑顔を見せてくれたりと、なかなか良デザイン。 固有RAは「オメガスターロード」 『トロンベよ… 今が駆け抜ける時!』 謎の食通さんはお帰りください マリーセレス(声:桑谷夏子) コナミ自重しろ。 テンタクルス型神姫。翠星石(声優繋がり?)とタママ二等兵が合体したような性格。 何て言うか物騒、そしてドS。 可愛い見た目に騙されないように。 固有RAは「バッカルコーン+E83」 〜その他〜 スタルクリーゲル メカメカしい見た目が特徴の神姫。 ゼルノグラードのデザイナーと同じ人がデザインした。 オールベルン Mk.2にて参戦決定したが、無印では防具と武器だけ。 また、ドロップパーツの中には飛鳥や旧白子・旧黒子等といった未登場神姫の武器や防具がある。 因みに飛鳥はMk.2で参戦が決定した。 全神姫のイベントをクリアしてから追記修正をお願いします △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 神姫個々のページが4人ぐらいしかないから -- 名無しさん (2014-06-16 12 37 09) 4人ぐらいしかいないから そっちも作っていきたいな -- 名無しさん (2014-06-16 12 37 26) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/509.html
第3話 親父からの贈り物?はんなり侍現る 「ふぅむ…………」 ルージュとの生活が始まって、色々ありながら1週間ほど経った頃 俺は玄関で目の前に置かれている箱を見て、少し悩んでいた ついさっき、宅配便で届いた小包に貼られた伝票の差出人には、 俺の親父の名前が書かれていた。 「ったく、あのクソ親父か……今度は一体何を送りつけてきたんだ?」 それを見て、ついつい俺は一人悪態を付いてしまう、その理由は親父が今まで送ってきた物である。 親父は如何言う仕事をやっているのかは全く分からないが、海外の彼方此方を飛び回っており、 時折、その現地から何かを贈り付けてくる事があるのだ。 例えば、親父がNYに居た時は「お前の友達と一緒に見ると良いぞ」という手紙と共に、 現地の無修正物のエロ本を贈り付けて来た事があった ……………それも、俺の働く職場に、である。 危うく同僚に見付かりそうになりつつも何とか処分したが、 あの時ほど親父に殺意を覚えた事は無かっただろう…… そして、親父がアフリカに居た時は、「面白そうだからお前に贈る」という手紙と共に、 何処かの部族製の明らかにヤバそうな呪いの仮面を贈り付けて来やがった事があった その日の夜、その仮面が不気味な笑い声と共にガタガタ動き出し、 直ぐに仮面を箱に押し込めなければヤバい所だった。 無論、その呪いの仮面は近くの寺に押し付けて事無きを得て。 俺はこんな物を送った親父を心の中で呪ったのだった。 とまあ、今までの例を見て分かるが、親父の贈って来る物は大体が 『ロクでもない代物』なのだ。 さて、これを如何するべきかであるが…… 「主殿、さっきから玄関で何をやっているのでしょうか?………む?それは……?」 俺がしばらく考えていると、玄関から何時までも戻ってこない俺の様子を見に来たのか さっきまではTVを見ていたルージュがトテトテと玄関まで歩いて来て 俺の目の前の箱に気が付く。 「いや、それが親父が何かを送ってきたらしくてなぁ……」 「何と、主殿の御父上からの贈り物か?むぅ、一体何が入っているのだろうな?主殿?」 ルージュは小包に興味が引かれたらしく、俺に「早く小包を開けて頂戴」と 言いたげな目線を浴びせてくる。 くっ!俺がこう言う、何かを求める目線に弱いの知っているのか!?こやつめ!! まあ良い、流石にあの親父でも爆発物とかの危険物を送ってくる事は無いだろう……多分であるが。 それに万が一、変な物だった場合は直ぐに親父に送り返せば済む話だ。 ルージュの目線に負けた俺は、そんな軽い気持ちで小包の梱包を解き始めた。 「こいつは……武装神姫か?親父の奴、何でこんな物を……」 「ふむ、これは私と同時期に発売されたTYPE SAMRAI『紅緒』ですね……」 小包の中は、武装神姫の箱が入っていた………その小包の別添えの手紙には 『元気にしているか!我が息子よ。 今日、俺は仕事の事情で一日だけ日本に帰って来れたのだ、 まあ、お前がこの手紙を見ている頃は、俺は中東の方に居る頃だろうけどな! 今、日本では武装神姫って奴が流行っているらしいな、 良い時代になったもんだ、はっはっはっは! 多分、お前は一人身で寂しいだろうから、 秋葉原で買ったこいつをプレゼントしてやる、存分に可愛がってやれ ああ、それと追伸、俺が日本に居た事は母さんには内緒だからな!以上!』 なんて書かれていた…… いや、まあ、神姫がルージュだけと言うのは少し寂しい物があるなと思っていたし、 ”今回”の贈り物に関しては感謝するとしよう。だが「一人身で寂しいだろう」は余計だ! 悪かったな、人間の彼女が居なくて……チクショウorz と、親父に対する愚痴はここまでにして、 とりあえず、このまま玄関で開けるのもなんだし、居間に行って開封してみるか…… 《数分後》 「こんにちわぁ、ウチの名はは椿(つばき)と申します、主はんの事は御父上から伺っておりますえ。どうぞ宜しゅうに」 「主殿………これは一体?」 「俺は知らん、贈って来たクソ親父に聞いてくれ……」 俺とルージュの目の前のポニーテール(もしくは丁髷?)が特徴的な侍型神姫が 三つ指をついて”はんなりと”挨拶をする。 ………開封したと同時に起動した彼女は既にある程度の設定が行われた状態だった、 侍型と聞いて、俺は「拙者~~~で御座る」のような所謂時代劇っぽい口調を想像していた。 だが、現実は俺の想像の斜め上を行く京ことば、いわば京都弁だったのだ。 多分、親父は俺のアパートに彼女を送る前にあらかじめ名前の他に様々な設定を施していたのだろう 彼女の口調も恐らく親父の趣味に違いない、絶対そうだ。 「にしても主はん、既にかわええのが傍にいらっしゃるとはなかなか隅に置けまへんなぁ ウチが来るのは少々遅かったのでっしゃろ?」 「う、いや、そのなぁ……ルージュは……」 「主はん、誤魔化さなくとも宜しおす、ウチは御父上から主はんに関する色々な事を教えてもらっておりやす そうやなぁ、例えば主はんの恋人居ない暦が年齢とほぼ同じやとか、その他に……」 「ちょwwww、あの親父めっ!!…って、椿、これ以上言うなってか、言わないでぇぇぇぇ!!」 極秘情報を暴露され、慌てる俺を見てコロコロと笑みを浮かべる椿、どうやら彼女はかなりの曲者と見た、 と言うか、親父、彼女には俺の情報を何処まで教えているんだ!? 畜生、あの親父め!手紙には『母さんには内緒だからな』とか書かれてたが やっぱ母さんに報告する事にしよう。あの親父は一回こってり絞られて反省するべきだ、うん ……何故だろうか?主殿と新しくやって来た神姫の椿さんが親しげに話している様子を見ていると、 私の思考回路に何かもやもやした物が込み上げて来る………一体これは何だろうか? 分からない……初めて感じる感情だ…… む、そう言えば、少し前にこれと同じ状況を見た事があった。 そう、あれは確か主殿と見たTVの恋愛ドラマで、主人公の恋人に主人公以外の異性が近づいた時の状況に似ている…… そうか、これは…………椿さんに対するやきもち…………成る程、そう言う事ですか…… その事に私が気付いた後、私は自然にある言葉を口に出していた。 「……椿さん」 「はい?ルージュはん、ウチに何か御用がありやっしゃろか?」 「先に貴方に言っておきますが主殿は私の主殿です、それだけは貴方に譲りません」 「あらぁ…それはウチに対する主はんを賭けた挑戦と言う事どすか?」 「言うまでも無く、私はそのつもりです」 「それやったらウチも負けるつもりはありまへんえ、ふふ」 私の挑戦とも取れる言葉に対して不敵に笑みを浮かべる椿さん。 望む所です、椿さん、貴方がこの先どのような行動を起しても 貴方よりも私の方が先に主殿の傍に居る、それだけでも私の方に利があるです。 この勝負、私は絶対に負けません。 もし、この勝負に負ける時は…………いや、負ける事は考えないでおきましょう、 それを考える時こそ、勝負に負ける時、なのですから…… ???………如何言う訳か、急にルージュと椿が二人で話し合い始めた 何故だろうか、二人の様子を見ていると唐突に嫌な感じがしてならないんだが…… 「主殿」 「何だ、ルージュ?」 「私は何時でも貴方と共に居ますので」 「はい?」 「主はん」 「えっと、椿も何だ?」 「やっぱり、主はんは隅に置けないどすなぁ」 「は、はい??」 ……意味が分からなかった、ルージュと椿の言っている言葉の意味が、 だが、その言葉の意味を二人から聞く事は俺には出来なかった。 二人から滲み出る、何とも言えないオーラみたいな物を本能的に感じ取った所為で…… 俺は何となく思っていた、この時の男ほど、無力な物は無いなと…… そして同時に、親父の贈ってくる物が『ロクでも無い物』だというジンクスは、 ある意味、しっかりと守られているなぁとも思ったのだった…… 第四話へ続く メインページへ戻る トップへ戻る