約 220,421 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2352.html
第1部 戦闘機型MMS「飛鳥」の航跡 第5話 「荒兎」 空中では航空神姫同士のすさまじい戦闘が繰り広げられている。 アラキナ「くそったれ!!ケツにつかれた!!」 リーザ「うわあああ、誰かコイツを追い払ってくれ!!」 フラヴィ「こいつ!!チョロチョロっと!!!」 無数の航空神姫が有視界戦闘で、互いに最も射撃に有利な位置である敵機の背後に占位しようとして、くるくると激しい機動を行う。 武装神姫の航空戦は、武装神姫の機種によって飛行特性が異なるため、複雑な航空戦になる。 2030年代当初は軽量級の軽戦闘機型MMSが航空戦のメインであり、低速で小回りが効く特徴のため、最高速よりも軽快な旋回性能が重宝される傾向があったため、ドッグファイトは空中戦の基本であった。 単機格闘戦では武装神姫の技量が如実に反映されるため、軽戦闘神姫はもてはやされた。ただし、重くて強力なエンジンを積んだ高速機による一撃離脱戦法も使用されている。 2040年代になると航空神姫同士の空戦は、さらに混沌とした物となり、複数の航空戦闘では編隊を組んで戦う。高度な戦闘方法も編み出された。 エーベル「気をつけろ!!ガーリオンタイプは突っ込みが早い!!格闘戦闘に持ち込むんだ!!」 ジャネット「敵は軽戦闘機級の航空神姫ばかりだ!!一撃離脱で潰せ!!」 廻り込もうとするもの、高度を取って攻撃するもの、何が正しくで何が間違っているのか、分からない。 ただ、一つ分かることは、ミスを、小さなミスを犯したものからやられる。 ローズマ「うわあああ!!しまったァ!!いつの間に後ろにッ!?」 一匹のクワガタ型の後ろにピッタリと銃口を向けるカリーヌ。 今西「カリーヌ!!そいつを落とせ!!」 カリーヌ「イエス、マイマスター!」 ドドドドドン!! カリーヌがレールガンを撃つ、ローズマに命中し装甲がバラバラっと剥がれ落ちる。 ローズマ「うわああ!!」 よろめくローズマを直上からケイトが熱く熱されたブレードをぶううんと頭に叩き落す。 ドズン!! ケイト「もらったァーーーー!!!」 ローズマ「ぶぎゃ」 □クワガタ型MMS「ローズマ」 Sクラス 撃破 テロップがバトルロンドの画面に流れる。 折原「ろ、ローズマ!!」 ケイト「1機撃破!!」 エーベル「ローズマがやられた!!」 アミアス「マヌケ!!」 リーザ「グズが!!Sクラスのくせに真っ先にやられてんじゃねえ」 アオイがエーベルに近づく。 アオイ「なんだ!?もう1機やられたのか?」 エーベル「アオイ!敵はベテラン神姫だ。おまけに機種を統一してやがる。こりゃ一筋縄ではいかんぞ」 アオイ「ガーリオンタイプか・・・6機いるな、あいつらは必ず二機一組のロッテで襲ってくる。一人は囮で、もう一人がスキを見せたら喰ってくる。古典的な手だ」 エーベル「どうする?」 アオイ「相手にするな。相手の目的はあの戦艦型神姫の護衛だ。適当にあしらっておけ」 エーベル「簡単に言いやがる!!」 その頃・・・戦車型MMS「ヴァリア」は後悔していたと同時にマスターを恨んでいた。 ヴァリア「うううう・・・マスターのバカ!!アホ!!どうやって倒すんだよ!!こんな化け物!!」 ドンドンドンドンドン!! 戦艦型神姫、3隻がヴァリアたちに猛烈な艦砲射撃を行っていた。 ドセット・シャア「目標捕捉!!MKS40 2mm砲、斉射ッ!!!」 ドセットの主砲が速射をかける。強力な砲撃が行われ、砂地で砲撃していた神姫があっという間に撃破されていく。 バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンッ MKS40 2mm砲はカタリナ社の開発した艦載砲で、発射速度は毎分60発という強烈な速射砲。もちろん一発でも喰らえば通常の神姫はバラッバラになって砕け散る。 火器型MMS「ゼルス」 Bクラス 撃破 カブトムシ型MMS「ロムウェ」 Aクラス 撃破 直撃を喰らって、バラバラに吹き飛ぶゼルスとロムウェ、2人は悲鳴を上げるまもなく、吹き飛ばされる。 ドセットは正確なレーダー射撃で、遠距離から命中弾を叩き込む。 ドセット「敵、神姫を撃破、命中!!命中!!」 ヴァリアが戦車砲で砲撃する、弾丸はまっすぐにドセットに向かって命中するが・・・ クワン!! ヴァリア「くそう、はじかれた!」 松本「インターメラル3.5mmだぞ!!せ、戦艦型ははじくのか!?これを!!」 ドセット「戦艦型の装甲を舐めるなよッ!!!!!戦車型を捕捉ッ!!砲撃開始!!」 ヴァリアは続けて砲撃するが、むなしくはじくだけだった。 ヴァリア「畜生、鐘ついているんじゃねーんだぞ!!」 キャナ「っわ・・・わああたしは・・・もうダメですぅ!!に、逃げよう」 キャナは武装をぽいっと捨てると逃げ出した。 ミーヤ「あっ!まって!!おいてかないで!」 ミーヤもあわてて逃げ出した。 ヴァリア「うっわあああ!!コラアァ!!お前たち!逃げるな!!戦え!!」 ケンタウルス型のコルコットは四本足ですばやく逃げ出す。 ヴァリア「お・・・おまえらァ!!」 ドセット「ファイヤ!!」 バンバンバンバンバン!! ドセットがヴァリアに向けて発砲する。 チカチカっと砲塔が光る。 ヴァリア「ひ、ひいい!」 ヴァリアはインターメラル3.5mm砲やリアパーツ武装を排除して逃げ出した。 ドッガーーーン!! ヴァリアの武装にドセットの砲撃した弾が命中して大爆発を起こす。 松本「逃げるなヴァリア!!戦え!」 ヴァリアがぶちキレる。 ヴァリア「マスタァ!!おまえがやってみろォ!!やってられるか!!畜生ッ!!!!!」 帽子を地面に投げつけるヴァリア。 ドセット「敵は追い払いました。損害は軽微」 細田「うむ、よくやった。引き続き追撃しろ」 ドセット「了解」 ドセットはヴァリアたちに向けて砲撃を行う。 バンバンバンバンバン ミーヤとキャナは岩の陰に大慌てで隠れる。 ズズズン!!ドゴオオーーーン!! 着弾で地面が大きく揺れる。 ミーヤ「うわああ!!」 キャナ「ひいい」 コルコットが、ミーヤの横に転がり込む。 コルコット「はあはあ、んく・・・はあはあはあ」 ミーヤ「あれ?コルコット?」 キャナ「逃げてきたの?」 コルコット「ああ・・・危なかった」 ミーヤ「ヴァリアは?」 バンバンバン!! ドセットがまた砲撃を行う。 ドッガガガン!!ズウウン!! 砂埃が舞い上がる。 ヴァリアがミーヤたちが隠れている岩に飛び込む。 ヴァリア「ああああ!!」 ミーヤ「あーヴァリア」 キャナ「なんですか、自分も結局、武装捨てて逃げてきたんじゃ・・・」 ヴァリアは拳を握り締めてミーヤとキャナを殴る。 ミーヤ「痛い!やめっ!!なにすんの!」 ヴァリア「このこの!!真っ先に逃げやがって!!」 キャナ「やめてよ!ヴァリア!」 コルコット「お前だって、逃げてきただろう」 ヴァリア「うるさいうるさい!!みんな嫌いだ!!コンチクショウ!!」 コルコット「落ち着けよ」 ヴァリア「・・・・・くそう、バカスカ撃ってくるあいつを黙らせたい」 ミーヤ「無理だよ」 コルコット「そういえば、ケトは?どうした?」 一人の砲台型MMSが即席で掘った穴の中に砂を埋めて隠れている。 ゴオオンゴオオンゴオオオン・・・・ ちょうど真上を通過していく戦艦型神姫たち・・・ 林「まだよ・・・ケト・・・」 ケトはごくりと唾を飲む。 アオイに攻撃され、スタビライザーが壊れた戦艦型MMS「スーザン」がケトの真上を通過しようとしたそのとき。 林「今よ!!ケト!!エンジン部分を狙って!!」 ケトがばっと砂の中から姿を表わし、砲身のキャップをはずすと、スーザンのエンジン部分目掛けて滑空砲を放った。 ケト「ウオオオオオオオオオッ!!」 ズドン!! スーザン「!?ま、真下に砲台型MMS!!!」 西野「な、なに!?」 To be continued・・・・・・・・ 前に戻る>・第4話 「戦兎」 次に進む>・第6話 「重兎」 トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2641.html
『元気でやっているか? 風邪とかは引いてないか?』 「大丈夫、父さん。心配しすぎだよ」 帰ってきた後、夕飯の作り途中、家に電話がかかってきた。 それは久しぶりに父さんからだった。 月に一回ぐらいにこうやってかかってくる。心配性な父さんだ。 『いーや、高校生でも、螢斗はまだまだ子どもなんだ。息子を心配するのは父親として当然だぞ』 「ちゃんと、やってるよ。……そうそう、ついこの間から、長倉家にさ、武装神姫が住むことになったのだけど。父さんは許してくれる?」 『ああ、あの動く可愛い人形か。同僚の娘さんも持っているらしいからな。……父さんは別にいいと思うぞ』 「そう、よかった」 この家の、本来の家主に反対されたらどうしようかと思っていた。まあ、反対したとしても、無理矢理押し切る気でもいたのだけど。 『ちなみに、どういう子なんだい? 猫型とか犬型とかかい?』 「……詳しいね、父さん。しかも基準がペット方向のだし」 『ち、違うぞ! ただ、ちょっと、そういう先入観があるだけで。……詳しいのも、お客さんを色々見ていると、神姫を連れている子や、いい大人が年甲斐もなく愛でているのを見られるだけだぞ。本当だぞ!……父さんは変な目で見ているわけではないぞ!』 欲求不満なのか、我が父親は。 言わなくてもいいことをペラペラと喋る。 「わかった、わかった。そう言う事にしとくよ」 『そう言う事とはなんだ、そう言う事とは。信じてないだろ、父さんを』 「信じまーす」 『うぅ、まったく……ブツブツ……』 父さんも元気そうにやっているみたいだ。いつも通りの父さんがいて、ホッとしている。少しイジりすぎたかもしれないけど。 「神姫は山猫型、アーティル型の子なんだ。名前はシオンってつけてる」 『ふーん、アーティルタイプは熱血で元気な子らしいじゃないか。名前はシオン……シオン。もしかして……シオンを漢字で書いたら、“詩”と“音”って書くんじゃないか?』 「……うん」 父さんは一呼吸置いてから、また電話口から声が聞こえた。 息を飲む音も一緒に。 『……すまんな、一人にさせてしまっていて』 「なんで謝ってるの? 家を空けてるのはいつものことじゃない……」 父さんが突然謝り出した理由はなんとなくわかっている。 だけど僕は、はぐらかした。 『だがな、実際螢斗は寂しいんだろ? お前の母親“詩乃”と、詩乃の母さん、祖母の“海音”義母さん。わざわざ、文字をとってくる必要がない。螢斗自身はわかっているだろ?』 「違うってそういうのじゃない。ただの偶然だよ、偶然」 『しかしだな……』 そうだよね。父さんはそう思うよね。でも、あれは本当に偶然だった。 名前を考えたら自然に頭の中に浮かんできた。漢字名は後で気付いた。 ただ、それだけのこと。 『お前は詩乃が亡くなった時も、義母さんが亡くなった時も、号泣だったじゃないか。詩乃が亡くなった時は、三日三晩、小さいお前が俺の胸で泣いてたし。義母さんが亡くなった時は葬式の翌日、久しぶりに帰ってきて、布団を干す時にさ、おまえの枕がすごい濡れていたのを覚えてるぞ』 「……家族が亡くなったら、誰だって泣くさ」 余計なことばかり覚えてるんだから、父さんは。 僕が以外に涙脆いなんて知っているくせに。涙は枯れないものだから、どんどん溢れてくるものだから。 『無理をすれば、父さんは家に帰れることだって……』 「――それはやめてよ。父さんは結構偉い立場なんだからさ。社会人として責任が色々あるでしょ。……それにさ、今は……」 「螢斗さーん!……鍋が、鍋が吹きこぼれそうです!!」 廊下の奥、キッチンの方からシオンの危機感迫る声が聞こえ始めた。 「ちょっと待ってて、父さん。……コンロのスイッチを止める方に捻るんだ!! 身体全体で掴め!!」 「と、とりゃー!……やった! 治まりましたよ、螢斗さん!」 ふぅ、これでよし。一安心だ。 「よくやった! そのままにしといて!…………もしもし、父さん?」 『大変そうだ……な。電話越しに聞こえたぞ』 「料理の最中だったから。シオンにまかせてたからね」 『ははは、武装神姫の、あの小さい身体に料理番は荷が重そうだな』 「でも、よくやってくれてるよ。……あのさ、こうやってシオンと暮らしてるとさ、少し父さんの気持ちがわかるんだ」 『うん?』 「父親の気分っていうのかな。シオンは普通の神姫と少し違うところがあってさ、そういうのがあってもさ、それが可愛いっていうか。手のかかる子ほど可愛いというかさ」 『でも、お前はあまり手がかからなかったな。詩乃が亡くなってからとか、義母さんが亡くなって、ますますな』 「……えっと、そうだった?」 そんな風に意識したことはなかったような。一人暮らしをするって決めた時はしっかりしようと思ったけどさ。 『そうだったんだよ。……親が亡くなるなんて、子どもは暗くなるのが普通なんだが、お前は、率先的に義母さんの手伝いしてたらしいじゃないか。父さんは知ってるんだぞ』 「う、」 『同僚のお子さんなんか、母親がいてもなにも手伝わない事が多いらしい。お前の話をすると、絶対俺の周りが羨ましがるんだぞ。一人で偉すぎるってな。その度に父さんは鼻が高くなってしまうぞ』 「そ、そう」 職場では僕の事が周りに筒抜けらしい。僕自身は当然の事だと思うのだけど。 『お前が持ち主だったら、神姫のシオンが幸せだな。お前はしっかりしている。どんな子でも導いていけるさ。子どもは手が掛かろうが、手が掛かなかろうが、いずれは成長していくもんだ。人間だろうが神姫だろうが、それは同じだ』 「あ、……そうか……そういことか」 この前の君島さんの話、成長という意味はこういう事を指しているのか。 シオンだけではない。僕も成長する必要があるということかもしれない。でも、なにを……? 『ん、今度はどうした?』 「いや、なんでもない。そろそろ切らないとな、なんて」 『おお、そういえばそうだな。いつまでも、電話を占領するのも悪いし』 「……ほどほどにね。あと、父さん……」 『なんだ』 「いつも、ありがとうね。僕を心配してくれて」 『ッ!…………あったりめーだ、バカタレー。我が息子よ、またなー。……ッグス……ウウ」 ……プツ、ツーツーツー。 僕は受話器を置いた。 父さん、最後泣いてたし。涙脆いのは父さんの遺伝だな、絶対。 「螢斗さん、どうかしましたか」 「……え、どうしてそんなこと聞くの?」 リビングに戻ってみると、シオンがなぜか僕に訪ねてきた。 いや、電話してただけなのだけど。 「顔が嬉しそうですよ。電話の相手と、よほど楽しいお話をしたんですか?」 「ああ、そういうこと……うん、そうだよ。シオンのことをね、少々」 「えぇ!? 私ってやっぱり変ですか? そうですよね。戦えない神姫なんて変ですよね。自分でもそう思います」 「なに、勝手に勘違いしてるの!? 違うって!」 シオンを宥めるのに時間を使っていたら、すっかり鍋は定温にまで下がっていた。 ―――― 休日の日、天気は快晴。 朝の10時いつものゲームセンター前。 「よーし、皆のもの、全員いるかねー?」 「全員って……君島さん、あなたがみんなと初対面ですよね? まず、自己紹介してくださいよ」 「これは失敬。長倉君のアルバイトの上司、君島 縁だ。それ以上でも、それ以下でもない」 「……螢斗さん。君島さんって変な人ですね」 最後のポツリと感想を言ったのはミスズだ。 今この場には、僕とシオン、淳平とミスズ、君島さんだ。 淳平は絶対朝起きられないと思ったので、僕が家に電話して淳平の母親に頼み、ブン殴ってもらって起こしてあげた。 今日は残念なことに霧静さんはいない。 霧静さんは家の用事で今日は出られないとのこと。アリエもまだ神姫ショップの店番で忙しいらしいし。 休日はよく人が来ると言っていた。どっちにしろ、あの店長さんを見たら客は逃げると思うんだけどな。 それと、君島さんの神姫のリンレイも見当たらない。だけど、気配はしないけど絶対身近にいる。忍者みたいに姿を消せるみたいだから、油断はできない。 「はい、はい、はーい! お姉さん、質問でーす!」 淳平が、学校に教育実習生として来た先生に、質問を投げかける生徒みたいな構図が連想されるテンションで手を挙げている。 「はい、そこのキミ!……えっと、名は?」 「伊野坂 淳平。螢斗の親友でっす。この子はアーンヴァル型のミスズっす」 「じゃあ、改めて。……はい! 伊野坂君、なんだね?」 「姉御って呼んでいいっすか? ついでに彼氏はいますか?」 「……マスタァ~」 ああ、ミスズが凍えるような目で淳平を見始めた。よくあることだ。だけど、今日は止められそうにもない。 「うむ、許す。……彼氏がいるかどうかは……キミのご想像にまかせるとしよう」 「うぉー、ミステリアスな雰囲気っすね、さすがは姉御! 痺れるっす!」 キミたち、ホントに初対面なの!? 「はー、綺麗なお人ですね……」 シオンが君島さんに見惚れている。それでいて驚きの口調も出す。 ――いや、騙されるんじゃない。 確かに今日の君島さんは、いつもの、バイトの時の姿と違く見える。 君島さんの服装は黒のジャケット、中にシャツ。細い足にはデニムパンツ、靴はヒールと大人だからこそできる服装。 僕よりも幾分も長身でスタイルも良い。顔にはブルーグレーのサングラスをしていて、バイト中いつもぞんざいに結っている長い髪はツヤがあるように、綺麗に腰元まで流している。 道の通りを歩く十人中十人が、男女関係なく、かなりの確率で振り返るであろう容姿を今この人は表わしているからだ。 今も道行く人が何人か振り返っているのがわかる。 だけど……だけどだ。 僕は知っている。 この人は荒唐無稽なことを平気でやってのける。バイト中でも、数々の暴挙を引き起こしているのに客からも反感を受けず、仕事もクビにもされない超人だ。 実際に謎だらけの人なのだけど……なぜか、僕にとって信頼できる人でもある。 ……不本意だけど。 「――拙者は主殿の神姫リンレイでござります。よろしくいたく候」 「あれ? いつからそこにいたんですか! さっきまでいなかった筈なのに……」 ミスズが口に手をやって驚愕している。 君島さんの肩からさっきまでいなかったリンレイがいつのまにかいたからだ。 本当、いなかった筈なのにどこから来てるのかな。 「すっげー! 忍者だ、忍者も出た。姉御もめっちゃ美人だし、なんでバイトの先輩で、こんな美人がいるって言ってくれなかったんだよ!? これから、螢斗のコンビニに毎日通う事にするぜ!」 「迷惑だよ……ハァ……」 ガクガクと僕の首を揺らす淳平。そして、来て早々疲れている僕。 なんでこの人といると、こんなに精神的にも疲れるんだろう。 ……いや、淳平と併せてるせいだ。絶対そうだ。 「えー、今日はお日柄もよく、シオン君の矯正バトル日和になったわけなのだが」 「そんなことより、いいから、授業とやらを始めましょうよ」 「ふぅ、まったく、ゆとりというものを知らんなキミは。昔は……」 「はいはい、もう入りましょう」 もう付き合ってられない。 シオンの為を思って呼んだのだけど、人選を間違えたのかな僕は。 「綺麗な方なのに、面白いお人ですね」 シオンは本気でそう思っているみたい。 面白いは褒め言葉なのか? いや、シオンにとっては悪口じゃないだろう。 純真すぎるのも問題だな。 「悲しいな、悲しいよ。……さて、リンレイ、伊野坂君とミスズ君も行くぞ」 「承知でござります」 「へへ、俺もお供しまっすー!」 「マスタァー!! あとで覚えていてください……ぐぎぎ……」 このメンバーで本当に大丈夫なのだろうか。 ―――― 「ふむふむ、ゲーセンの筐体はこうなっていて……ほう、このくらい迫力で……ステージもなかなかリアル……うーむ」 君島さんが感嘆の声を呟く。他の対戦者、神姫たちが実際にバトルしてる筐体の画面をゆっくりと眺めている。 「君島さん、そろそろ、シオンのバトル恐怖症を治す方法を教えてくださいよ」 「まあ、待て。……んーと…………」 筐体から離れ、君島さんはサングラスを外してポケットに差してから、周りを見渡している。 「主殿、あそこにでござります」 肩に乗っかっているリンレイがある一角を指差す。 なんだろうか? 僕はてっきり、君島さんとリンレイがバトルで直接教えてくれると思っていたのだけど。 「おっ…………そこのチンピラ! ちょっとこっちに来い!」 えっ! ちょっと、何やってるの? リンレイが指差す方向、壁を背にして立っていた、いかにもワルそうな男。 君島さんはその人を見つけるや否や、突然挑発し始めた。 「……あ~? おいおい、いきなりなんだ、ネーちゃん。オレのことをチンピラっつってさ、舐めてんのか、あぁん!!」 (こ、怖!) 君島さんと違う種類の、それでいて同じようなサングラスをかけている男性がこっちに向かって来た。 ジャラジャラと首にネックレスをいくつもかけていて、格好も着崩している風貌だ。 「キミみたいな、チンピラ風情がゲーセンにいると、ここの空気が汚れる。さっさと、出て行ってくれたまえ」 「ちょ、ちょっと。君島さん! いきなりどうしたんですか!?」 「そうっすよ、姉御。危ないっすよ」 「……君島さん、謝ったほうがいいです!」 僕もミスズも、さすがに淳平もたじろいでいる。 僕も怖いが、怖くて震えているシオンは胸ポケットに身体を潜らせる。 とにかく、君島さんを謝らせないと。周りの客も空気も凍りついているじゃないか。 「ひでぇな、ネーちゃん。俺も神姫バトルを楽しみたい一市民なんだぜ、そこは許せよ。お前もそう思うだろ、なぁ?」 チンピラさんが自分の神姫に話しかけた。 見ればその男性の肩、膝に手を置いていて行儀よく神姫が座っている。 左目の方に眼帯をしているのにその上からオーナーと同じようにサングラスを掛けている。 「…………」 なにも喋らない。 軍帽を被っていてその下から、アーティル型のボディよりも薄いピンク色の髪の毛が見える。 あれは……武装神姫、戦車型のムルメルティアだ。 それより、なんで、サングラスを掛けている率が多いんだ。流行っているのか? 「こちらはそんなものは知らん。さっさと消えてくれたまえ」 しかし、どうしたんだ、君島さんは。なにかこういう人に恨みでもあるのか。 普段よりも気性が荒すぎる。 「おーおー、怖え~。美人なネーちゃんなのにな、もったいない。……はぁーあ、ムカつくぜ」 「で、どうするのだ? 出ていくのか? 出ていかないのか?」 「いやだ、ね……どうしても出ていかせたいっつうなら、やっぱここはコレだろ?」 クイッと指を筐体に指す。神姫バトルでけりを付けるってことなのか。 「被害者な俺自身がふざけた気分になっちまうが、警察沙汰にする気もないんでな。ここは神姫バトルで手を打つってぇーのはどうだい?」 「ふむ。わかった、よかろう」 ふぅ、よかった。君島さんと忍者神姫のリンレイなら、神姫バトルで負けるイメージはないからな。 これで安心でき―― 「――ただし、やるのはこの子だ」 「えっ!…………うぇ!?」 君島さんに突然腕を引き寄せられた。 僕の目の前に厳つい男性のチンピラさんが。 「あ? このチビがか……てめーはやんねえのか?」 「あいにくと、私は武装神姫を持っていない」 「ええっ!! リンレイが――……ムググ……」 「リンレイがいるじゃないですか」と言おうとしたら、口を手で塞がれた。 淳平とミスズにも、何も言うなと目で黙らしている。 なんで、どうして? 目線を動かしても、君島さんの身辺どこにもさっきまでいたリンレイの姿が見当たらない。また姿を消しているのか。 (いいから、言うとおりに) 耳元、小声でそう言われた。 一体何を考えているんだこの人は。 「はぁ? てめーはなんでここにいるんだよ!?……はぁ、まあいい。そこのチビが代わりにやるってことだろ? 俺は別にいいぜ。そのチビの神姫が勝ったら俺は素直に出ていくさ。ただし、負けたら……」 首を掻っ切るジェスチャーをする向こうのチンピラさん。 え、本気で? 人間を神姫バトルで……。 「ふん、冗談だ……ただ、俺のダチが裏でやばい仕事してて、そこで急遽人手が必要なんだと。俺は面倒でやりたくないんだが……」 「それを手伝えっていうことですか」 「そうだ。そっちが負けたら、それが罰ゲームっつうことにしよう。俺は喧嘩売られた側だぜ? それくらいの権利はあんだろ。もしもだ、そういう仕事でとちったら社会的にな……わかんだろ?」 「……最悪陽の目をもう浴びれなくなるってこと……です……か?」 「賢いチビだ。まあ、そういうこったな」 そうだよね。 もちろん、僕たちが負けても君島さんが代わりにするんだよね。 そうなんだよね? 僕は君島さんを伺ってみる。 (キミがやるんだ) 目がそう語っている。 うっそ、なんで!? 「ちょっ、ちょっと、待っててください!! 君島さん、こっちに」 「……ふむ、よかろう」 今度は僕の方が君島さんを引っ張っていく。 ゲームセンターの隅の方、目のつかない方に連れていく。 「あのアマは、いつもあんな感じなのか?」 「さ、さぁー、姉御はさっき初めて会いましたのでよくは……あはは……早く戻ってこいよ~」 「なにかあれば、マスターは私が守ります。ヌヌヌ……」 その場にはイラついたチンピラさんと気まずそうな淳平、睨みつけるミスズが取り残されてしまった。 ごめん、すぐ戻るから。 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1671.html
と、いうわけで次の対戦のテーマは「接近戦も試してみよう」と相成りました。 今まで砲撃ばかりを狙い、接近戦は懐にもぐりこまれた際の迎撃程度しか行なっていなかったので若干不安は残りますが、何事も経験の積み重ねが肝要です。 そうと決まれば善は急げ。早速ターミナルへと、バトル登録に向かいます。 ……が。恥ずかしながら、ここですんなりとは行かないのが私たちで。 「ええと、カードをここに入れるんでしたよね?」 「マスターさん、惜しいですがカードの前後が逆です」 戸惑いつつ確認するマスターさんに、私はその胸元からお返事いたします。 「やや、これはうっかり」 そう言いつつ、カードを『裏返して』挿入しようとするマスターさんには、ある意味でお見事です。 カード投入の段階で手間取るワケですから、その後のタッチパネル画面操作などはさらに苦戦するわけで。 ああ、私たちの後ろに並んでいる方のイラついた目が心に刺さります。 正直なところ、私がやってしまえば早いのですが、これもまたマスターさんに操作を覚えていただくために必要なこと。 マスターさんとて、確かにかなりの機械オンチではありますが、それでも何度も練習すればできるようになるのです。実際、携帯やPCメールの扱いだって、そこそこはできるようになっているのです。 先ほども言いましたが、何事も経験の積み重ねが肝要なのです。 マスターさんも、やれば出来る子なのですっ! ですからこうして私はあえて助言に留めているのも、これもまた愛なのですっ! もちろん、いつも温和で何事もそつなくこなすイメージのマスターさんが慣れない操作に戸惑われる姿が愛らしく思えることとは一切無関係なのですっ! 「『対戦申し込み』で……条件設定は……ええと……これでしたっけ?」 「マスターさん、そこは違います」 「やや、これはうっかり。えーと、戻るには確か……」 「申し訳ありませんがそこも違います。戻るにはそちらでなくこちらで」 「やや、これはうっかり」 ああ、私たちの後ろに並んでいる方が舌打ちなどをされています。 「では今度こそ。『対戦申し込み』で……」 「ああマスターさん、今押されたアイコンが戻るためのものです」 そして無情にも排出される管理カード。 「やや、これはうっかり」 「仕方ありません。また最初からいきましょう」 「……どきな」 「はい?」 む? なにやら後ろに並んでいた方が、強引にマスターさんの前に身を割り込ませてきます。 そして排出されているマスターさんの管理カードを無造作に手に取ると、手馴れた動作で再投入、やはり手馴れた動作でターミナルを操作して行きます。 そして瞬く間に設定が終了し、排出されたカードを手に取ると、それを乱暴な仕草でマスターさんの胸に押し付けました。 「『VRバトル』『対戦申し込み』『ステージ:ランダム』『条件:ランダム』『対戦相手指名:なし』 ……これでいいだろ?」 「あ、はい、十分です」 「……ふん」 呆然としつつも、我に返ってカードを受け取るマスターさんでしたが、その方は一瞥しただけで 鼻を鳴らし背を向け、ご自身のカードを取り出しターミナルに向かいます。 ……といいますか、あまりの急展開にちょっと流されてしまいましたが、無礼ではないでしょうか。 せっかく私がマスターさんのまごまごされる姿を堪能……もとい、マスターさんにターミナル操作を練習して頂いていたところにっ。 「あの……」 マスターさんが、その方の背中にお声をかけています。 「なんだ?」 ……その方は、お返事こそされたものの見返りすらされません。やはり無礼です。 「ありがとうございました、代わりに操作していただきまして」 さすがはマスターさん。相手の態度は無礼でも、礼を言うべきはきちんと言う、ご立派な姿勢です。 さすがにその方も、操作の手を止めて肩越しにこちらを振り返りました。 改めてその方を見てみますと……年頃は二十歳をやや越したくらいでしょうか? ぼさぼさの髪にシンプルな革ジャンにGパンというラフな服装と、ターミナルの脇の置かれた立派な神姫キャリングケースをみるに、おそらく自由に使える時間の多い大学生さんあたりではないでしょうか。 ですが真っ当な大学生さんというには、三白眼とへの字に結んだ口元がやや不穏な雰囲気をかもし出しています。 「ターミナルの操作くらい、慣れろよ」 そしてお話の仕方も、失礼ながら丁寧とは言いがたいですね。 「いやはや、面目ない」 そんなお方を前にしても、マスターさんの態度は柔らかいまま。さすがです。 その三白眼の方は、ちらりとマスターさんの胸元……つまり私へと視線をうつしました。 な、なんでしょうか……? 「どノーマル装備のハウリンか……はん」 は、鼻で笑いましたよ?! 今この方、私を見て鼻で笑いました! なんと失敬な! 思わずムッとしてしまう私をよそに、その方はもう興味はない、とでも言いたげに再びターミナルへと向き直ります。しかもそれだけでなく、背中越しの捨て台詞まで吐かれるオマケ付きです 「そんな何にも出来ねぇ神姫でバトルに出たって、金と時間の無駄だぜ。 ウチ帰ってキャッキャウフフしてな」 な、何と言うことを……! いえ確かに実際連敗続きでマスターさんに言い訳のしようもないと思っておりますが、それにしても言い方と言うものがあるでしょうに! 憤然とそう口を開こうをした私……でしたが。 「ほほう……」 頭上より発せられた冷ややかな声に、思わず私はそちらを仰ぎ見ます。まっすぐに三白眼の方を見据えるマスターさんのお顔は私の位置からお窺いしづらいですが、いままでついぞ耳にした事のなかった冷たい声色は、しかし確かにマスターさんのお声でした。 「犬子さんが、何も出来ない武装神姫だと仰いましたか?」 その冷ややかな声に、さすがに三白眼の方もこちらに向き直りました。 「あ? なんか文句あるのか? まだ未勝利のクセによ?」 私たちの管理カード、しっかり見られていたようです。 「ええ、戦績が振るわないのは認めましょう。ですが、『何も出来ない』というのは取り消していただきます」 「へぇ……」 三白眼の方が、口元をゆがめます。獲物を目の前にした肉食獣を思わせる、獰猛な笑みです。 「そんな気はさらさらねぇ、っつったらどうすんだ?」 「取り消すと、認めさせます」 それに対して、萎縮することなくはっきりと言い切るマスターさん。 「おもしれぇ……この俺に勝負でも挑もうってのか?」 「そうすることであなたが、犬子さんが何も出来ないなどと言うことはないと認めてくれるというなら」 マスターさんは、きっぱりと即答されました。それを聞き、三白眼の方はますます笑みを獰猛なものにします。 「決まりだな」 「ええ。どちらの武装神姫が優れているか、証明してご覧に入れましょう」 ……そして私はといえば。 恥ずかしながら、いつも温和でいらっしゃる印象しかもっていなかったマスターさんの新たに見る果断さに、口を挟むことも出来ずに状況の推移を見守るばかりです。 と、三白眼の方のキャリングケースが、内側から開かれました。 「……なによアキ、またなんか揉めてるの? いい加減にしてよね、おちおち寝てらんないじゃない」 そう言いながらキャリングケースから身を起こしたのは、気だるげな雰囲気を纏わせたストラーフタイプでした。胸元に飾られた、バラと剣をあしらったエンブレムがオシャレです。 彼女は素体の状態ながら……その立ち振る舞いに、只者ならざる様子をうかがわせます。 なんと申しましょうか、動作の一つ一つが洗練されている……いえ違いますね、「動作の一つ一つ」ではなく、動作全体が非常に滑らかで人間的なのです。 それはつまり、どうしても動作の継ぎ目継ぎ目が不自然になるプリインストールされた身体制御プログラムではなく、自ら調整した身体制御プログラムを構築しているということです。 私も脚部パーツをGS ver1.13に換装させて頂き、そこから派生したモーションパターン全ての総調整を余儀なくされた事があるからこそそれがどれほど膨大な処理を必要とすることかを垣間見ることはできますが……脚部パーツからの派生のみならず全身の動作において、しかもあれだけの洗練された高度な身体制御を可能とできるようになるまでにどれほどの試行錯誤と経験の積み重ねがあったのか……想像するだけで戦慄を覚えます。 その一点だけを以ってしても、相手とするなら強敵になると言わざるをえません。 「まあそういうなよロゼ。俺たちに勝負を挑もうって言う勇気ある身の程知らずどもさ。 丁寧に遊んでやらねぇと罰が当たるってもんよ」 三白眼の方が、にやりと笑ってご自身の武装神姫に声をかけます。 ロゼ、というのがこの武装神姫の呼び名のようです。そういえば先ほどロゼさんが口にしていた「アキ」というのが、三白眼の方のお名前でしょうか。 「ふうん……この子がその相手? 見たところてんで素人っぽいけど」 余計なお世話です。と言いますかオーナーがオーナなら、神姫もまた随分と態度が尊大ですねっ。 それにしても位置的には貴女の方が低い場所にいるというのに、それでも私を見下す視線を取れるとは、なかなかに器用なお方です。 と、ロゼ(仮)さんはあからさまに肩をすくめ、首を振ります。 「ホントいい加減にしてよね……そうやってアキがバカみたいに噛み付いたケンカ、全部アタシにお鉢が回ってくるんだから」 「バカとは何だバカとは?! このバカ神姫が」 「なによー! バカって言う方がバカなんだからね!」 「その言葉、そっくりそのままノシつけて返す! ってーか今回は俺から売ったケンカじゃねぇ!」 「ふーん、今回『は』ね、今回『は』」 「う……」 「どうせそれだって、またアキが余計なこと言ったのが原因なんでしょ?」 「うう……!」 なにやら、類似の件は今までにもあったご様子。 アキ(仮)さん、口をしばらくパクパクさせておりました。反論の言葉を捜しているものと思われます。 結果、そのお口をついて出たのは。 「……メール管理もろくすっぽできねぇバカ神姫に言われる筋合いはねぇ!」 ……いえアキ(仮)さん、それは反論になっていません。と言いますか、明らかに逆切れです。 「何よ! そんな雑用なんて、電子秘書でもなんでも買ってやらせればいいでしょ?! アタシは武装神姫よ、ぶ!そ!う!神姫! だからバトル最優先に決まってるじゃない!」 いえロゼ(仮)さんも、その反論はさすがにどうかと。 と申しますか、もしかしてお二人とも私たちの事をお忘れではありませんか? お二人とも睨み合っておりまして、完全にお互いしか見えていないものとお見受けしますが。 「あのー……」 そんな私の思いを汲み取っていただけた……という訳でもないのでしょうが、マスターさんがおずおずとお二人に話しかけられました。 はたと、睨み合っていたお二人が同時にこちらを向かれました。 そのお顔は、如実に「私たちの存在を今思い出した」と語っておられます。 そしてアキ(仮)さんが、咳払いをひとつし、マスターさんへと向き直りました。 「勝負の方法はどうするんだ?」 あからさまに誤魔化し+照れ隠しです。 あ、ロゼ(仮)さんがキャリングケースに引っ込みました。 なんと申しますか、お二人の醸し出していた『未知の強敵』のイメージがわりと台無しです。 「僕のほうから提示する条件は一つ。三本勝負での決着を望みます」 そんなアキ(仮)さん達のご様子を見ていなかったかのように振舞うマスターさんは、やはりすばらしい方だと思うのです。 「別に三本だろうが十本だろうがかまわねぇけど……それなら勝てると踏んだってのか?」 「ご想像にお任せしますよ。一本目は譲ります。そちらのお好きに条件を設定してください」 「へぇ……大した自信じゃねぇか」 アキ(仮)さんは不敵にお笑いになりました。どうやら調子を取り戻されたようです。 「ええ、どんな条件にしろ、結果は変わりませんからね」 「……よく言った。後悔すんなよ?」 アキ(仮)さんが、再びにやりと獰猛な笑みを浮かべました。 「俺の名前は佐藤正昭(さとうまさあき)。こいつがローザリッタだ。大口叩くだけの歯ごたえを期待してるぜ?」 申し訳ありませんアキ(仮)さん改め佐藤さん、不敵な台詞もわりと手遅れ感が漂います。 「ま、せいぜい頑張りなさいな」 えーとロゼ(仮)さん改めローザリッタさん、キャリングケースの中からそう言われましても。 「……ですが正直、意外でした」 ここは休憩スペース。いつも私たちが対戦後の反省会を行なっている場所です。 もっとも今は反省会ではなく、単に飲み物を購入しに立ち寄っただけですが、何はともあれ佐藤さんたちと一時別れ私たちだけになったところで、私はかねてよりに疑問を口にしてみました。 「何がです?」 自動販売機にコインを投入しながら、マスターさんがお答えになります。 「マスターさんが、勝負を受けたこと……いえ、ご自身から勝負を挑んだことがです」 私の知っている限りのマスターさんには、相手が少々無礼な態度を取っても柔らかく受け流すような、そんなイメージを抱いていたものですから。 「僕のほうこそ、ちょっと意外ですねぇ」 自販機から出てきたペットボトルを二本拾い上げながら、マスターさんが少し不本意そうなお顔で仰いました。 「僕は、犬子さんのことを侮辱されて黙っているような、そんな人間と思われていたのですか?」 ………………………! 申し訳ない気持ちと、それをはるかに上回る感極まる気持ちが私の感情回路を乱し、ドッグテイルが暴走を開始します。 私のためにお怒りになってくださっていたとは……そんなことにも気付かなかった、自らの不明を恥じ入るばかりです。 「あー、いえ、そんな風に畏まらないでください。僕自身も熱くなっていてのことですし、改めてそんな風に言われると、こちらこそ恥ずかしいですから」 そう仰るマスターさんのお顔を伺えば、かすかに赤みがさしていらっしゃいます。そんなマスターさん のご様子は、先ほどの初めてお見かけした果断なるマスターさんでなく、私のよく知る温和なマスターさんでした。 そのことになんとなく根拠のない安心感を覚えた私は、次の話題を振ることにします。 「ところでマスターさん」 「なんでしょう犬子さん」 「先ほどの浜野さんのお話ですが、どうお考えですか?」 「そうですねぇ……」 実は私たちがこちらに来たのは、単に飲み物を買いに来ただけという訳ではありませんでして。 浜野さんが私たちのことを、佐藤さんに見つからないようにこっそりと手招きしお呼びになった、それに応えるための離席の口実でもあったのです。 『ちょっと揉めちゃったみたいだねー』 佐藤さんたちから見えない位置に誘われた私たちへ、浜野さんはいつものにこやかなお顔に若干の苦笑いを混ぜてお話くださいました。 なんでも佐藤さんはこちらのセンターでも指折りの実力者なのですが、バトルでの苛烈さや好戦的で尊大な態度、歯に衣着せぬ物言いであまり評判はよろしくないお方だとのことです。 とくに弱者や敗者にかける言葉などは、相手の至らない点を容赦なくビシバシと指摘する厳しいものばかりで、『そんな言い方をしなくても』ということが多いとか。 『でもさ、そんな悪い子でもないんだよ。丁寧に手入れされた神姫を見てればそれは分かるし。 ただちょっと熱くなりやすくて口が悪くて、思ったことをそのまま口にしちゃうだけなんじゃないかな』 それだけ揃えば十分問題人物と言う気もしないでもないですが、さておき今はさらにちょっと機嫌が悪いため、いつもよりも余計に荒れているとのことです。 『実は佐藤君、今まで通算29連勝しててね。それで今日は30連勝達成だって意気込んでて、店のほうでもこっそり記念品とか用意してたんだけど、そこで当たった相手が変わっててさー』 数値としては凡庸な勝率でしかないその対戦の相手は、その実よく見れば特定のステージ以外ではてんでからきし、されどそのステージであるならば常勝不敗と言う、極端な戦績を持つ規格外なお方だったとか。 そしてロゼさんが30連勝をかけてその相手と戦ったステージが、あろうことか先方がまさに無敗を誇る砂漠ステージだった、と。 油断をしていたわけでは決してなかったにせよ、ぱっとしない勝率を見てつい気が抜けてしまったのであろうその対戦の結果は、推して知るべし、です。 『うん、単に強敵に負けたってだけならまだ良かったんだろうけどね。 そんなピーキーな戦績の、しかもしっかり注意してそのあたりをちゃんと読み取っていれば少なくとも警戒は出来た対戦を、自分の不注意でコテンパンにされて念願の30連勝を逃したってのがかなりショックみたいでさー』 それは確かに、悔やんでも悔やみきれないことでしょう。 『要するに君たちは、その八つ当たりの矛先にたまたま当たっちゃったってことだね』 浜野さん、身も蓋もなさすぎです。 『まあ、これも縁だと思って、適当に気晴らしに付き合ってあげてくれるかな?』 浜野さんはそう締めくくって、お仕事へと戻られました。 以上、回想終了です。 「……正直なところ私は、あの方々が『悪い人ではない』と言われても賛同しかねますね」 マスターさんにも無礼な態度でしたし。鼻で笑われましたし。見下されましたし。 「うーん、まだ確証を持てるほど彼と関わったわけではありませんが……僕としては、やっぱり彼はそれほど悪い方とも思えませんね」 「思えませんか」 さすがマスターさん、人間が出来ていらっしゃる……と言いたいところですが、さすがに意外です。 「はい。なんだかんだと言いつつ、僕達のバトル登録を代わりにやってくれたじゃないですか」 それは言われて見れば確かに。態度はやや悪かったですが、困っているところを見かねて手を貸した、とも見えなくもないです。 「そして、そのあとの『何も出来ない武装神姫』の下りも……まぁ、あの時は僕も冷静ではいられなくて思わず反発してしまったわけですが、もしかしたら『能力の平均的なハウリンタイプは器用貧乏になりやすいから、なにか一芸を持つようにしないといけないよ』というアドバイスだったのかもしれませんし」 「それはさすがに、好意的過ぎる解釈かと」 「うーん、そう言われると弱いですねぇ」 マスターさん、少し困ったように苦笑いされながら、頭を掻いていらっしゃいます。 「ただまぁ、ああいう感じの方はいますからね。ご自身が優秀な分、周りの至らない部分がどうしても目に付いてしまって、それを黙っていられないような方が。 佐藤君も同じで、武装神姫に対して真摯であるからこそ、他の人の未熟な点が見過ごせないのかもしれません」 そういうものなのでしょうか? 「確証があるわけでもないんですけどね……まぁ、そのあたりは対戦しながら見極めていきましょう」 そしてマスターさん、口元に拳を当てて小さくクスッとお笑いになり。 「それでやっぱり性根のよろしくない方で、犬子さんを侮辱したのも悪意からのものだったと言うのであれば、その時は土下座して『もう勘弁してください』と言いたくなるまで叩き潰せばいいことですし。 くすくすくすくすくすくす」 「マスターさん、申し訳ないですけれどもその笑い方少し怖いです」 「やや、これは失敬」 どこかで聞いた覚えがあるような会話はともかくとして。 「マスターさんには、勝算がおありなのですね」 正直なところ、私があのローザリッタさん……ロゼさんに勝てるとは思えないのですが。 「ええ、佐藤君もうまい具合に、こちらの思惑に乗ってくれましたからね」 けれども、マスターさんがそう即答で断言されたならば、私に疑いようなどありません。 「でしたらマスターさん、私も微力を尽くします。ご采配よろしくお願いいたします」 深々。 「はい、こちらこそよろしくお願いしますね」 深々。 「……ところで犬子さん」 「何でしょうマスターさん」 「先ほど佐藤君の仰ってた『キャッキャウフフ』というのは、どういう意味なのかご存知ですか?」 あー、口にしていましたねぇ。前後の文脈の方の気をとられてスルーしていましたが、確かに仰っていました。 「『キャッキャウフフ』というのは、『武装神姫と睦びあっている』状態を差す俗語表現で、古典コミックにおける男女間の睦びあう描写に際して使用された表現をなぞらえたものが語源といわれています」 「……色々な意味で、わりと微笑ましい台詞回しですね」 「ええ、わりと」 「……………………」 「……………………」 「やっぱり佐藤君、さほど悪いお方ではない様な気がするのですが」 「奇遇ですね。私も今しがた、ちょっとだけそんな気がしてきていた所です」 こうして、私たちの初の『対戦相手の顔を見据えての、指名対戦』の火蓋が切って落とされようとするのでした。 ……が。 「お待たせしました」 ペットボトルを片手に、マスターさんはにこやかにご挨拶なさいます。 「別に待ってねぇ」 対する佐藤さんは順番待ち用ベンチに膝を組んで腰掛け、その膝の上に立てた腕に顎を乗せて、そっぽを向いていらっしゃいます。 「んー、順番待ちの列はあんまり減ってませんねぇ」 「俺に話しかけるな」 「武装神姫の人気は、さすがと言うことですねぇ」 「だからどうした」 「この分だと、まだまだ待ちそうですねぇ」 「見りゃ分かるだろ」 「実は前から疑問に思ってたんですよ。ほらゲームなどを題材にした少年漫画とかにある、主人公とライバルが対戦することになるシーン」 「唐突だなおい」 「大抵そういうのは人気のゲームとかを扱ってるんですが、それにしては都合よく二人分の機械があいてるなぁって。そう思ったことありません?」 「ねぇ」 「やっぱり現実にはそうそううまく行きませんよねぇ。漫画だと冗長にならないように その辺は省いてるんでしょう」 「俺が知るか」 「……聞きましたか犬子さん。この打てば響くようなシンプルでそれでいて的確なツッコミっぷり」 「はい。私たちにはなかったスキルですね」 「何がスキルだ何が」 「……いやはや本当に、いちいち反応を返してもらって、ありがたい限りです」 「お見事な律儀なツッコミっぷり、頭が下がります」 「ホントに下げるな」 「あ、よかったらこれ飲みません? まだ時間ありそうですし」 「いらん」 「まぁそう言わずに。二本あっても一人じゃ飲みきれませんし」 「……ちっ、仕方ねぇな。よこせ」 「はいどうぞ。お茶でよかったですか?」 「なんでもいい。……ありがとよ」 「聞きましたか犬子さん」 「聞きましたよマスターさん」 「なんか文句あんのかこら?! 物もらったら礼くらい誰だって言うだろうが?!」 「文句なんてとんでもない。むしろそれを当然と言い切れる誠実さに、感銘を受けているところですよ」 「私、先ほどのお話を信じてもいいような気がしてきました」 「何の話だ何の?!」 「……ちょっとぉ、なに騒いでんのよアキー? うるさくて眠れないじゃない」 「あ、これはお騒がせしました。まだ順番は回ってこないようですから、ごゆっくりお休みください」 「申し訳ありません、すぐに静かにしていただきますから」 「俺か?! 俺が悪いんか?!」 とまぁ、こんな風に。 カッコよく宣戦布告した相手とのんびり順番待ちをしなければならない情況がいたくご立腹であるらしい佐藤さんと、そんなことはお構いなしに物怖じせずいたって友好的に話しかける私たちの対戦の火蓋が実際に切って落とされたのは、それから10分後のことでした。 <その13> <その15> <目次>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2020.html
皆さんこんばんわ。 さて今日の私とマスターさんは、深夜の散歩としゃれ込んでおります。 深夜とは言いましたが、周囲には私どもと目的を同じくする方々であふれ、そんな方々のために至る所に篝火が焚かれ、それを見込んでの屋台も立ち並び、ちょっとしたお祭り状態です。 私たちはといえばそんな方々からしばし距離を置き、境内のベンチに並んで座り(私はもちろん正座でです)その時を今か今かと待ち受けております。 目的の時間まではまだしばし猶予があるのですが、さすがに冬の深夜ともなればかなり冷え込みます。私はこの程度の寒さならば動作不良を起こすこともないので問題ありませんが、マスターさんはといえばセーターやコートを常よりも着込んでおり、時折缶コーヒーをすすりつつ暖を取っております。 申し遅れましたが、散歩の目的地は私達の住居にほど近い神社。 そしてその目的は、「二年参り」とのことです。 なんでも「二年参り」とは、本日12月31日の大晦日に、年が明ける前から神社で新年を待ち伏せし、旧年分の参拝と新年分の参拝(つまり初詣ですね)を一度の訪問で済ませてしまおうという、一粒で二度おいしいナイスなイベントであるとか。 「そう言うとなにやら、ずいぶんとフランクといいますか、厳かさが皆無といいますか」 おっと、どうやら私の理解は世俗的でありすぎたようです。 申し訳ありません、武装神姫である私には、「神」や「信仰」といった概念がどうにも馴染みませんで。 ですがまぁ無礼と承知で言わせていただければ、「信仰」というものはとかく複雑かつ曖昧で、私などには理解が追いつかないのですよ。 「なるほど、人間にとっても完全には理解しがたい概念ですしねぇ」 「いえ、それ以前の問題でして」 「と、いいますと?」 つまりですね、マスターさんの言うところの「人間にも理解しにくい概念」というのは「信仰とは何ぞや」「神とは何ぞや」といった根源的な哲学分野での話題で、そちらに関してはもう完全に理解不能の概念なのです。 ですが私としては、そこに至るまでもなく、そこよりもずっと表層部分の段階ですでにサレンダー状態で。 ぶっちゃけていいますと、データベース的な意味合いで「キリスト教」「仏教」「神道」その他の違いは分かるのですが、ならばたとえば自分にとって一番よいものを取捨選択せよ、となるとこれがどうにも。 「これが武装選択の話ならば、『こちらの武器は重い代わりに強い』『こちらの防具は薄い代わりに動きやすい』と非常に分かりやすいのですが」 「あー……なるほど、そういう捉え方をしているのですね」 むむ? なにやらマスターさんが苦笑いしております。 「僕もさほど詳しいわけでもありませんが……多分信仰とは、そういった見返りを超越したところにあるのではないかと」 むむむむむ? 申し訳ありません、正直言ってますます理解不能です。 「こちらこそ申し訳ありません、僕自身が理解してるわけでもないので、どうしても説明が曖昧で」 深々。 「そんな滅相もない」 深々。 「あ、でも……」 と、マスターさんがふと何かを思いついたように小首を傾げます。 「『武装神姫には信仰の概念が理解できない』といいますが、その割には今後のラインナップに『シスター型』も居らしたようですが」 ああ、居ましたね、『ハーモニーグレイス』でしたか。 「どうなのでしょうね……後発の武装神姫ともなると、AIも発達してそういった概念も理解できるようになっているのでしょうかね?」 私も、小首をかしげながらマスターさんにお答えします。 私自身が自分自身を把握しているとは言いがたい現状では、余所様の精神発達など及びもつきません。 「もっとも、単純に私自身の思考が『信仰という概念を理解するのに向いていない』という可能性もありますが」 「なるほど……じゃあ今度、他の武装神姫の方にも聴いてみましょうか?」 「そうしましょう」 さて、だいぶ話が脇道にそれてしまいました。 そんな訳で私達は今、近所の神社にて周囲の喧騒を眺めつつ、遠くに除夜の鐘を聞きながら年明けを待っている状態です。 あ、また一つ鳴りました。今のでちょうど100回目です。 除夜の鐘というのは単なる新年へのカウントダウンというわけでもなく、これまた宗教的概念からくる、「人間の持つ108の煩悩を鐘の音で払う」という儀式なのだそうですね。 先日のクリスマスといい、年末年始のイベントの謂れには、自分の勉強不足を痛感させられるばかりです。 いや本当に、世の中知れば知るほど自分の物知らずを思い知るばかりで。 「一文の中に『知る』を4回も織り込むとは、なかなかの言葉遊びですね」 「お褒めいただき恐縮です」 深々。 「どういたしまして」 深々。 「ところでマスターさん」 「なんでしょう犬子さん」 「いわゆる『108の煩悩』というのは、キリスト教で言うところの『七つの大罪』にあたるのでしょうか?」 「んー……厳密には同じものというわけでもないでしょうけど、人間が戒め改善すべき欠点という意味では、同じカテゴリーと言えるかもしれませんね」 「だとしたら素朴な疑問なのですが、その15倍以上に達する数の差は何なのでしょうか?」 日本人は謙譲を美徳とするはよく言われますが、キリスト教圏内の方々に比べて文字通り桁の違いの数の欠点を仏教徒の方々が数え上げたというのでしたら、謙遜と言うにも程があるのではないかと。 「えーと、それはおそらく単純に差し引き101個多く数え上げてるというわけでもなくて、キリスト教でいうところの7つを、細分化して108になっているんじゃないでしょうかね?」 「おお」 私はぽん、と手を打ち鳴らします。 なるほど、大分類と小分類の差なのですね。 「いやまぁ、僕も『七つの大罪』はともかく、108の煩悩が何を示しているか正確に知っているわけでもないので、あてずっぽうなのですが」 「いえいえ、十分納得のいく考え方です」 少なくとも、自分の思考はまだまだ狭いものだという事を自覚できた、まさにカメラアイから保護フィルターが落ちるお答えでしたとも。 と、ふとマスターさんが何かを思いついた表情になり、小さく笑みを浮かべられました。 「しかしそうなるとですね犬子さん」 「何でしょうマスターさん」 「纏めれば七つで済むものを108まで細分化させたあたり、今度はその細やかさが気になってくるのですが、やはり日本人は凝り性ということなのでしょうかね?」 あー、確かに日本人の凝り性っぷりは、当人達が熱中して他所様から「やりすぎ」と指摘されるまで気づかないために、とことんまで突き進むともよく言われますね。 その「やりすぎ」の最たるものが、このコンパクトな本体にここまでの高性能を搭載してのけた『玩具』であるところの、我々武装神姫なのではないかと思うのですがそれはさておき。 「マスターさん、仏教は中国経由でインドから日本に流入してきたものですから、日本人の凝り性っぷりとはまた別なのだとは思いますが」 「やや、これはお恥ずかしい」 マスターさん、額を押さえながら照れたような笑みを浮かべます。 「知識として知っていたはずなのに……身近にあるものですので、ついつい勘違いをしてしまいました」 「いえいえそんな、お気になさらず。とはいえ実際、日本人気質に馴染むものはあったのではないかと」 そう、あって当然のものと受け入れられるくらいに。 ……宗教という概念は私にはそぐわないとは申し上げたとおりですが、対してマスターさんはといえば、熱心な仏教徒というわけでもないのに、自然と馴染んでいらっしゃいます。 キリスト教や神道、儒教もまた、同様に。 このあたりの懐の広さは、ぜひとも見習いたいものです。 「いやそれは日本人が良く揶揄される、節操のなさだと思いますが」 「マスターさん、こういうときはポジティブに捉えるがよいかと」 「……それもそうですね」 「ええ、そうですとも」 そうこうしてる間に、鐘の音も106を数えました。 周囲にあった人の流れもしばし停滞し、皆さんが時計を気にし始めます。 いよいよですね。 私は、すっくとベンチの上に立ち上がります。 「どうかされましたか、犬子さん?」 「いえ、ちょっと」 私は問いかけるマスターさんに笑みを向けつつ、曖昧な言葉でごまかします。 いよいよ、かねてより私が思い描いていた、一発芸のお披露目のときです。 周囲も盛り上がって参りました。 お若い方々などが音頭を取り、大声でカウントダウンなどを始めておられます。 それに唱和する声もどんどんと高まる中、107回目の鐘の音が鳴り響きます。 そしてその直後、暦が新年へと切り替わる瞬間。 「はぁっ!」 私は掛け声も勇ましく、ベンチから飛び上がります。 宙返りのさなか、ちらりと確認したマスターさんのお顔は、何事かと目を丸くしておいででした。 約二秒の滞空ののち、私がしっかりと地面に着地すると同時に、最後の鐘の音が鳴り響きます。 周囲の喧騒も最高潮に達し、あちこちで新年の挨拶を交わす様子が見受けられます。 私は降り立った地面で振り返って、やや意表をつかれたご様子のマスターさんを見上げますと、ドッグテイル全開、得意満面の笑顔で宣言いたしました。 「見てくださいましたかマスターさん? 私、新年となった瞬間にはこの地球上には存在しなかったのですよ!」 「ああ、なるほど……」 それを聞いたマスターさん、得心いったかのように笑顔で頷いてくださいました。 「それはすごいですねぇ」 おお、マスターさんにお褒めいただいたしまいました。これはまた幸先がよいですね。 一年のうちにこの瞬間のみしかお披露目できない一発芸、やはりタイミングを逃さずにお見せできてなによりです。 と、マスターさんにやや悪戯っぽい表情が浮かびました。 「ですが犬子さん、甘いですよ」 「むむむ? なにがでしょうか?」 「僕の両足を見てください」 「御御足、ですか?」 一見するとごく普通に両足で大地を踏みしめていらっしゃるようにお見受けいたしますが、何かあるのでしょうか? 「ええ、両足で踏みしめてますね……東側と、西側を」 !? そ、それはもしや……! 「お察しいただいたようですね……そうです、僕の体の上を日付変更線が通り過ぎる瞬間……」 そこでマスターさん、一度言葉を切り、厳かに宣言されました。 「僕は、旧年と新年の双方に同時に存在していたのですよ」 「な、なんと……!」 私は、そのお言葉に打ちのめされます。 なんと我が発想の貧困なることか。 私が自分の存在をゼロにしたと浮かれてるのを尻目に、マスターさんはその御身を倍に増やされていたのです。 ゼロと2の差……これは単なるマイナス1とプラス1いう範疇に収まらない、まさにゼロにいくつをかけてもゼロのままで永久に2に追いつくことのない、まさしくマスターさんと私の絶対的な差異といえましょう。 「いえあの、そこまで大仰に感心されるとなんだか恥ずかしいのですが……」 ? はて、マスターさんの呟きを咆皇で増幅されたイヤーセンサーが感知いたしましたが、これほどの偉業の前に一体なぜ恥じ入ることなどあるのでしょうか? あ、ですが少々困ったことになりました。 「大変ですマスターさん」 「どうしました犬子さん?」 「武装神姫は一体に対しオーナーは一人が鉄則ですが、マスターさんが同時にお二人存在していたとなると、オーナーの二重登録となってエラーが発生してしまうことになるのではないでしょうか?」 これは一大事です。もちろん私自身の忠誠はマスターさんから揺らぐことなどありえませんので今まで気にしたことなどありませんでしたが、もうお一方もマスターさんともなれば話は別です。 一体この状態は、どう処理すればよいのでしょうか? 「あー……」 私の困惑の入り混じる相談を受けて、マスターさんは一瞬宙に視線をさまよわせまして。 「同時存在してた僕と、居なかった犬子さん、合わせたら計算すればちょうどいいじゃないですか」 「おお!」 なんとうことでしょう、私は感動に打ち震えました。 きっとマスターさんはこの展開が読めていたに違いありません。 私が矮小にも自分の存在をゼロにすることを画策していた間に、マスターさんはそんな私の考えなど見通した上で、そんなわたしの存在を補うために旧年と新年の双方に存在することを選んでくださったのでしょう。 さすがはマスターさんです。 なんという慧眼と度量、そして有難く申し訳ないことでしょうか。 「いえだから、そこまで大げさな話では……」 マスターさんの呟くような苦笑いを例によってイヤーセンサーが拾いましたが、それは尻つぼみに消えまして。 マスターさんは一度首を振って、身を屈めて私へと手を差し伸べてくださいました。 「そろそろ初詣、いきましょうか」 「はい、お供させていただきます」 私は失礼してマスターさんの手に乗りますと、外出時の指定席であるマスターさんの胸ポケットへとおさまりました。 「少々人込みが多いです。僕も気をつけますが、犬子さんも潰されないように気をつけてくださいね」 「はい、お気遣い感謝です」 深々。 「いえいえ」 深々。 人込みの中、押し合いへし合いになって圧迫される危険性を考えると、胸ポケットよりもいっそ肩の上にでも失礼したほうがよいのかもしれませんが、そうなると今度は落下の危険性を考えねばなりません。 これだけ人々のひしめく中に落ちるとなかなかにスリリングなことになりそうですから、やはり胸ポケットが妥当かと考えます。 それに、その、なんと申しますか、この場所は……落ち着きますので。 「おや犬子さん、尻尾がずいぶんとご機嫌ですね」 「や、その、これは……初詣とそれに続く一連のイベントが、楽しみでして」 マスターさんにドッグテイルの機動をご指摘され、とっさにごまかしてしまう私です。 や、5円からのトレードオフで願いをかなえられると言う初詣や、今年一年の動向を予言できる御神籤などが楽しみであるのも嘘ではありませんが。 ……ごまかすといえば。 そういえば先ほど初詣を提案されたマスターさんにも、なにやらごまかされたような気がいたします。 もちろんお供には喜んで従いますが、一体なにかまずかったのでしょうか? その直前には、マスターさんを賞賛させていただいただけなのですが……。 そうですね、推測するに……さすがに賞賛されるのを拒否したかったということもないでしょうし、これは きっと、マスターさんほどのお方ならば周囲の方々からも絶賛されていて、私程度の賞賛など聞き飽きていらっしゃったのでしょう。 なるほど、そう考えれば筋は通ります。自らの語彙の貧弱さに恥じ入るばかりです。マスターさんを賞賛する言葉の研鑽を、もっともっと積まねばなりません。 不意にぶるりと、マスターさんが身震いされました。 「どうされましたか、マスターさん」 「あー、いえ、急に寒気が……やはり冷え込みますしねぇ」 マスターさんは、コートの襟をかき抱くようにあわせます。 「それはいけません。早く暖まりませんと」 「まぁ大丈夫でしょう。参拝の行列に並べば、むしろ暑いくらいになるでしょうし」 そう仰りつつ、マスターさんは私を胸ポケットに収めたまま、行列の後ろに向かって歩き出されます。 ……足取りが乱れているご様子もなし、心配はないでしょうか? と、不意にその足が止まりました。 「どうされましたか、マスターさん?」 見上げて問いかける私を、マスターさんは覗き込みます。 「そうでした、大事なことを忘れていました」 「大事なこと、でしょうか?」 「はい、大事なことです」 マスターさんは、にっこりと微笑まれまして。 「新年、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね」 「あ、はい! あけましておめでとうございます、こちらこそよろしくお願いします!」 <その16> <その18>? <目次> そんな感じで、お久しぶりの投下です。 web拍手をみるに、こんなにお待たせしてしまったのにもかかわらずずっとお待ちして下さった方々も いたご様子で、有難い限りです。 だいぶ時間も空いてしまい、実際にこいつらを文面に起こすのも久しぶりではあったのですが、さすがといいますが、書き始めてみると勝手にしゃべるしゃべる。 こいつら武装神姫SSで何をシューキョー騙もとい語ってるのかと。 最初はジャンプと両足だけでさらっと書く予定だったんですがねー。 これからまたぼちぼち、続けていきたいところです。 ガンダム無双2が止まらない土下座でした。
https://w.atwiki.jp/nekokonomasuta/pages/9.html
【MMS,Type NINJA】 【FUBUKI】 「旧式と思って嘗めていると、後悔しますよ」 自らを試す為に、試されるために その身体に秘めし力、全てを発揮すれば余計な武装などいらないと 風の音さえ立てずに、まるで影に吸い込まれたかの如く 我は忍、闇と共に生きる者 『忍者型MMS フブキ』 フブキは第一弾と同時期に、限定ルートで販売された武装神姫だ。 他の神姫と違い、忍者刀と手裏剣以外の標準装備、特に鎧に値するものを一切持たないのが特徴。だがその分身の軽さは全神姫中未だにNo1であり、そのトリッキーな身のこなしに翻弄され敗れる神姫も数多い。 【基本能力】 フブキは軽装戦闘のプロフェッショナルである。 そのため戦闘基本値に以下の修正を得る。 【射撃基本値】(+2) 【格闘基本値】(+2) 【回避基本値】(+2) 【特殊】カスタムポイント合計が[(レベル+5)÷2]以下の場合【全基本値】(+3) 【技能】 フブキはキャラクター製作時に、以下のリストから技能を3つ習得できる。 また経験を積んでキャラクターレベルが上昇した場合、偶数レベル(2,4,6,8……)に到達する度、新しい特殊技能をひとつ、修得できる。 フブキ 技能リスト 《追加HP》 《一斉発射》 《ウェポン習熟》 《緊急回避》 《逃走》 《シールドブロック》 《追加SP》 《反射神経》 《連携攻撃》 《タフネス》 《突撃》 《不死身》 《SP回復》 《待機攻撃》 《ステルス》 【基本性能】 【射撃修正】(±0) 【センサー性能】(±0) 【速度】(5) 【格闘修正】(+1) 【装甲値】 ( 3 ) 【旋回】(4) 【回避修正】(+1) 【HP】 ( 20 ) 【パワー】 ( 5 ) 【格闘武器】 名称 /威力/格闘補正/使用回数 格闘 / 4 / ±0 / ∞ 忍者刀・風花 / 9 / ±0 / ∞ 大手裏剣・白詰草/ 10 / -3 / ∞ 【射撃武器】 名称 /威力/~5/~10/~15/~20/使用回数 大手裏剣・白詰草/ 10 /-3/ -5/ - / - / 1 【カスタムデータ】 【部位】 /【CP】/ 【名称】 /【効果】 頭部 / (0)/ / 胸部 / (2)/ ニンジャスーツ /《格闘+1》 《回避+1》 《旋回+1》 脚部 / (0)/ / 背部U / (0)/ / 武装 / (0)/ 忍者刀・風花&大手裏剣・白詰草 計 /( 2 )
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/647.html
SHINKI/NEAR TO YOU Phase01-4 色取り取りのレーザーで造られた地平、そのフィールド上を白い翼が舞った。数ある武装神姫の中でも最もオーソドックスなタイプ、天使型MMSアーンヴァルモデルだ。 天使型神姫は持ち前のスピードを活かしライトマシンガンの射撃で相手をけん制する。相対するもう一体の神姫は、天使型の攻撃に防戦一方のようだ。 反撃してこない相手を見て好機と判断したのか、天使型はすかさずライトセーバーを抜き放ち距離を詰める。 一瞬の交叉。 勝利の女神が微笑んだのは、優勢に見えた天使型の方ではなくもう一体の方だった。天使型の斬撃を鋭い動きで避けたその神姫は、体勢を崩した天使型に後ろから組み付き力でねじ伏せると、そのまま天高く飛び上がる。 天使型は相手を振りほどこうとするものの、相手のパワーがそれを許さない。 天使型を完全に捕らえたその神姫はそのまま大きく身を反らせ、そのまま天使型神姫を大地へと叩きつけた。 フィールドを揺るがすかと思うような轟音の後、その場に立っているのは天使型を打ち倒した迷彩模様に身を包んだ大柄の神姫だった。 「おおっ、デッカイ方が勝ったじゃん! 途中まで負けてたのに」 「ふむ。反撃しなかったのは、ワザと劣勢に見せかけて相手の油断と隙を誘うためですか。あちらの迷彩の方もなかなかやりますね」 目の前で繰り広げられたばかりのバトルの様子に、シュンとゼリスがそれぞれの感想をもらす。 「どうどう? やっぱりバトルは武装神姫の華よね。センターの最新型バトルマシーンでのバトルは、そこらの増産型のちゃちなモノとは違うでしょ?」 伊吹の言う通りだった。最新のゲーム筐体というだけあって、三次元モデリングによるバトルフィールドの精緻さ、各種モニタリング機器によりリアルタイムに戦況の変化が判るバトルシステム、一般的なゲームセンターに出回っている既製品とは比べものにならない。何よりもそこに集う猛者たちのレベルが違う。 「これが本場の武装神姫バトルか」 「ふっふっふ~、すごいっしょ? じゃあ早速カウンターに行ってサクッと登録すませましょう」 「カウンターで登録?」 オウム返しに尋ねるシュンに伊吹とワカナコンビが答える。 「センターに来たらまずはサンカトウロクだよ~」 「そ、神姫センターでのバトルはすべて戦績が記録されて、神姫BMAの公式クラシフィケーションにも反映されるから、施設内のゲーム筐体で遊ぶ前には参加登録をするようになってるの」 「ふ~ん、なんか面倒そうだな」 「ダイジョーブ、ダイジョーブ♪ 登録っていっても不正改造パーツでも使ってない限りオーナー登録をデータベースに参照するだけですぐに終わるから」 「シュン、横着しようとせずにここは伊吹さんに従うべきです。というか早く行きましょう。いわゆる〝善は急げ〟ってヤツですね」 伊吹とゼリスのふたりに急かさつつ、シュンはカウンターに向かう。受付自体は伊吹の言う通り神姫のオーナー登録やオーナーの本人確認などをネットワークからデータベースに確認するだけで、シュンはホッとした。 「なんだ、結構簡単なんだな」 「ね? 別に慣れればどうってことないでしょう。後は……そうね。シュっちゃんはここを利用するの初めてだから、このセンターのメンバーカードも作っておくと次からは照会手順を省略できるし、ポイントでいろいろなサービスもついてお得なんだけど。……どうする?」 登録を済ませたシュンに続けて伊吹がいろいろ教えてくれる。どうもここは常連である伊吹の言うことを素直に聞いておいた方がよさそうだ。そもそも今日はずっとこんな調子でうまくいったんだし。 「うぅぅぅ~ん。……それもやっとくか」 「じゃあ、あっちで手続きしてもらいましょう。ワカナとぜっちゃんはここでちょっち待っててね?」 シュンと伊吹は連れ立ってカウンターの前を離れる。ゼリスとワカナはひとまず天板の隅に腰掛けた。静かに佇むゼリスに比べ、ワカナの方はジッとしているのは苦手らしい。すぐにソワソワし出す。 「ふにゅ~。タイクツだよ~」 「ワカナさん、まだふたりがここを離れてから2分37秒しか経過していません。しばし静粛にしているべきです」 落ち着き払ったゼリスに対し、ワカナはひとしきり足をバタバタさせた後、ピョコンと立ち上がった。 「うんしょっ、ひらめいた~。ふたりが戻ってくるまで、ボクはちょっとボーケンの旅へ出かけてくるよ。とっても楽しいよ~」 「斥候任務ですか? ふむ、なるほど。確かにここの地の利についてはワカナさんの方が熟知しているようですからね。この場は私に任せて、どうぞ大役を果たしてください」 「わかったよ~。それじゃ、ちょっと行ってきま~すだよ~」 「気をつけてくださいね」 ワカナはカウンターから飛び落ちると、くるくる宙で回転しながら身軽に着地、意気揚々と人だかりの方へ向かう。ひとり残されたゼリスはその様子を見送った後、その先のゲーム筐体の方へと目を向けた。 筐体の周りは観客や野次馬で一杯だった。筐体上部に設置されたモニターに、今行われているバトルの光景が映し出されている。 「戦の風……其は美しく舞い散る天使の翼……」 すぐ側から聞こえる謳うような朗々とした声にゼリスは横を向く。そこには見知らぬ白い神姫がひとり佇んでいた。 「はじめまして。あなた独り?」 「いいえ、現在メンバーカードの手続き中のシュンを待って待機中です」 「そう。見ない顔だけど、新人さんなのかしら?」 「そうなりますね。神姫センターを訪れるのは今回が初です」 白い神姫はゼリスの返事に微笑んだ。白く長い髪に白い肌、簡素な素体のスーツも白、純白の神姫だ。彼女は屈託のない笑顔でゼリスに語る。 「ここはまさしく幻想の舞台。人間たちの想いで機械仕掛けの妖精たちに心を吹き込む、真夏の夜の夢の世界ね」 「……心を吹き込む?」 彼女はモニターの神姫バトルに恍然とした瞳を向ける。 「ふふ。妖精はね、心を持っていないのよ。だから誰かが与えなければならないの。……素敵じゃない? 人間たちの心を受け取り、妖精たちは初めてプシュケになれるのよ」 スクリーンから漏れる明かりが、彼女の顔に様々な光を落とす。そんな彼女が出し抜けにこちらを振り向いた。つられてその紅い瞳が見つめる先をゼリスが目で追うと、カウンターの向こうからシュンと伊吹のふたりが戻ってくるところだった。 「ぜっちゃん、お待たせ」 「ちょっと時間かかったな。何か変わったこととかあったか?」 話しかけるふたりに、ゼリスは知り合ったばかりの白い神姫を紹介する。 「ふたりの不在中に知人がひとり増えました。こちらの方です」 「こちらって……何処だよ?」 おかしな顔をするシュン。ゼリスはさっきまで隣に座っていた少女を振り返るが、すでにそこには誰もいなかった。 「……意外とせわしない方のようですね」 ゼリスがお決まりの仕草で小首を傾げるのと、三人がワカナの叫び声を聞いたのは、ほとんど同じタイミング。 「タイヘンだよ~っ」 ワカナは小さい体で精一杯叫びながら、慌しく駆け寄る。 「ゲーム機で、神姫ばとるがタイヘンでバーンでドーンだよ。男の子がわんわんだよ~っ」 慌てるワカナの意味不明な説明に、シュンたちが頭に?マークを浮かべたとき、ゲーム筐体の方から一際大きな歓声が沸き立った。 ▲BACK///NEXT▼ 戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1506.html
リン「マスター!! マスター!!!」 亮輔「うん?リン…きょうもキャッキャウフフしたいのか…」 リン「朝から色ボケはやめてください!!(ラ○ダーキック)」 亮輔「ぐはぁ…とか冗談はおいといて。」 リン「このたび、当wikiの作品の一つの『ねここの飼い方』の同人誌版の第3冊目が冬コミにて販売決定です!!」 亮輔「そうそう、今回も無事に販売に至った訳なんだが…ふふふ」 リン「今回はなんと私たちもゲスト出演させていただいてるんですよね?」 亮輔「そうそう、うれしい限りで(涙)」 リン「泣くことはないでしょうに…」 亮輔「だって俺愛するリンが檜舞台に立つなんて開始時は思いもしなかったからw」 リン「…てれます…ハハ」 亮輔「このカワイイやつめ!」 リン「だめですマスタぁ…こんなところで…」 茉莉「ゴホンゴホンゴホン!!!!」 リン&亮輔「…失礼しました。」 茉莉「ということで、ねここのマスターこと『D☆G』さんの描く神姫ワールドを小説と挿絵で表現した同人誌、『ねここの飼い方03』は冬のコミックマーケットの3日目、31日セ-53bで販売です。」 亮輔「あとリンも売り子だしな」 リン「そうでしたぁ!! あの…すこし恥ずかしいですが表紙と同じ衣装でお待ちしていますので。もしよければお立ち寄りください。」 一同「ということで、『ねここの飼い方03』をよろしくお願いします~~~~」 ねここの飼い方 武装神姫のリン 注)尚、この文章はリンのマスターさんに書いて頂きました。 有難う御座います。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1111.html
このページは主人公が住む街周辺の紹介です。 ●VIS(バーチャル・イメージ・セキュリティー) 島田重工の子会社です。(オリジナル設定です) 子会社のくせに広さは東京ドームの数倍の広さを誇る会社。 斉藤朱美が働いてる会社であり、天薙龍悪がバイトをするはめになった会社です。 この会社は武装神姫の研究です。 ●丘上公園 まぁいわゆる普通の公園ですね。 場所は住宅街の山の上にあり、天薙龍悪が住んでる街全体を見る事が出来ます。 因みに丁度主人公が住んでる場所は海にも山にも近い都会に住んでいます。 ●アンダーグラウンド ぶっちゃっけ悪い人間しかいません。 無法地帯で隙を見せれば命も危ない所です。 この街に龍悪がお世話になったり世話をしたりする『★BLACK・STAR★』という店がある。 ●モアイ帝国 龍悪のベット下に健在している帝国です。 首領はパルカ。 この帝国はその名もとうりにモアイがいっぱいあります。 パルカの趣味で龍悪のベットの下はこんな国が出来ちゃいました。 ●愛車 スカイライン(GT-R V・spec(2002年モデル)車両型式BCNR34) 天薙龍悪の愛車です。 スカイラインが大好きです。 色々と改造していましてニトロシステムも搭載しています。
https://w.atwiki.jp/pixiv4seasons/pages/35.html
イベント1【花宵の宴】 朔良町にある桜並木の下で、お花見をしつつ親睦を深めましょうという企画です! 決まりはないので、桜を見に行くのもよし・花より団子もよし・酔っ払って騒ぐもよし(( ご自由に交流のきっかけにしてください! イベント2【時寄の泉探索】 レインの森の一番海側に、時寄の泉という年に1度(4月~5月)しか湧かない泉があります。 そこに二人以上の人間と行くと催眠効果のある霧が作用してしまい その中の誰かの過去・将来の夢・強く思ってる事などが全員共有で見えます。 (ただしそのまま見えるという事になるとファンタジーになってしまうので、必ず夢オチにしてください) 過去設定を描きたい方、将来の夢もしくはその他何か主張したい方は 是非このイベントをお使いください!
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/430.html
「なによなによなによっ、一体どーゆーことなのっ」 突然耳元で天使型MMSのユリがわめいた。 いや、気持ちは解る。 きっと、その夜は日本全国ー、世界中の天使型神姫とそのオーナーは多分、同じような思いを抱いたハズだ。 アタシはケイ、悪魔型MMSだ。ーって、また会ったね。出番があって嬉しいよ。 え、初めて?それじゃぁちょっと左側のメニュー。うん。そっから武装神姫SS総合掲示板 ってトコへ行って連作&固有名詞有作品投下スレ ってのを見てくれないかな。アタシの活躍が書いてあるから、サ。 ま、今回の話はそれを読まなくても別に構わないんだけどね。 「うわ、第四弾がどういう武装かもまだはっきりしないのに」 オーナーの言葉にユリが声をかけた。 「一体どうしたんですか、オーナー」 「ああ。一部の店舗で第五弾の予約受け付けを開始したらしいんだ。一緒に見てみないか」 呼びかけに応えて、アタシたちは、デスクの隣にあるアタシたちの部屋から、デスクの上に降り立った。 オーナーがリンクをクリック、画像が画面に現れた。 「なによなによなによっ、一体どーゆーことなのっ」 その瞬間、ユリの悲鳴のような絶叫が聞こえた。 一瞬あっけにとられるオーナーとアタシ。 ユリは両拳を握りしめ、画面を凝視している。 画面を見て、オーナーとアタシはアッと声をあげた。 第五弾から、新しく水中もバトルフィールドに加わるらしい。人魚型の神姫とウェポンセットのイルカ型が目に入った。これまでに発売された神姫は、イルカ型の装備を使って水中戦に対応することになるのだろう。アクアラング用とおぼしきボンベ(でも神姫は呼吸をしない。多分、浮き沈みの調整用だろう)や水中銃らしきもの、水中機動用とおぼしきバックパックが目についた。 で。 で、だ。 問題は、もう一つの第五弾、鳥型にあった。 恐らくは、背面の拡張パーツに取り付けるであろう羽に、太ももから換装するであろう脚部。 完全に被ってるじゃん、天使型と。 「あちゃー」 これにはオーナーも絶句した。 よく見ると、脚部は足首がついて、地上での動きも確保されている。しかも、射撃と格闘兼用らしい武装を持っている。天使型のネガティブとされていた点をカバーしたような装備だ。 「こんなのって…、あたしたち天使型の存在意義がなくなっちゃうじゃない」 オーナーもアタシも、ユリに声をかけることは出来なかった。 しばらくの沈黙を置いて、オーナーが声を出した。 「案外、そうでもないんじゃないか。ユリ」 「どういうことですか、オーナー」 「似たようなコンセプトだけど、狙っている闘い方の方向性は違うみたいだ」 アタシたちはオーナーが指差す画面を見た。 「まず、この写真を見る限り、天使型に付いているエクステンドブースターのようなものは無さそうだ。そして、可動する羽。最高速を目指しているワケではなさそうだね。あとは脚部ユニット。足首を付けて、地上での汎用性を高めているけど、逆に言えば、飛行するときは、空中に特化した天使型の脚部ユニットほどの性能は出せないんじゃないかなぁ。コイツの戦法は、飛べるという機動力を活かした、中・近距離戦が主体になると思う。GFFやSRWに出てくるモビルスーツの闘い方みたいになるんじゃないかな」 GFF、SRWは、過去数十年のロボットアニメに登場する各種ロボットたち(もちろん、それなりに縮尺されたサイズだ)を操り闘う、武装神姫に似たシステムを持つバトルゲームだ。 「それじゃ…」 ユリの表情が明るくなった。 「見かけはとても似ているけど、別物だね。もし闘うなら、足を活かして距離を保って、ミサイルでも使って牽制、LC3レーザーライフルで仕留めるってとこかな。ま、言うほど簡単じゃないだろうがね」 「よっしゃー。所詮ナマモノの鳥がモデル、可憐な天使がモデルのこのあたしに敵うワケがないのよねっ」 ユリは立ち上がると、ホーホッホなどと高笑いを始めた。 普段はおしとやかぶってるんだけど、いざとなるとこの調子だ。オーナーもあきれて笑っている。ま、いつものユリに戻ったってことなんだろうけど。 その夜は実際、大騒ぎだったらしい。その後、オーナーは、所属している天使型のコミュニティに呼び出しをくらって、ボイスチャットをしていた。 ほとんどの天使型が、鳥型の発売予告にショックを受け、怒ったり、落ち込んでいたりしたそうだ。ま、バトルをしない神姫は「お友達が増えますねー」などと単純に喜んでいたというけどね。結局、「鳥型は天使型と別物」ということを伝えて落ち着かせる、という方向で話は終わったのだけど。 ただ、本当にトップランカーの神姫になると、装備の分析を始めて、自ら違いを見つけたりしていたという。 どうやらアタシたちもまだまだ経験が足りないようだ。 頑張ろうぜ、ユリ。 おしまい。