約 220,422 件
https://w.atwiki.jp/hitokuti/pages/29.html
第1回 「極上の宴」・・・2月3日(水)開催 第2回 「極上の宴」・・・2月4日(木)開催 時々チーム戦とかやってます♪
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/128.html
登場人物紹介 特に制限などありませんので、入り用でしたらご自由にお使い下さい。 グロは困りますが、エロは平気……というか、むしろ見たiうわなにをするやめあqwせdrftgyぶしこ 戸田静香(とだ・しずか) 神姫に処女を捧げた(比喩でなく)のがちょっぴり自慢な17歳。6月8日生、O型。 長身細身、黒髪のストレートロング。女子校の手芸部部長。 趣味はコスプレ、手品、コンピュータなど多様。 天才肌で基本的に何でも出来る万能人間だが、超越した思考は常人には理解できない事の方が多い。 結果よりも過程を重視するタイプで、単純にバトルに勝つ事には興味がなく、試合をどれだけ盛り上げるかにこだわる。そのため、勝率は五分五分といったところ。 その桁外れのスペックをどうでも良いことに惜しげもなく注ぎ込むのがものすごく得意。 性格的にはほとんど女と○かだが、世界を面白くするための団を作ったりはしない。 Sっ気があり、ココがイヤイヤながらドキドキハウリンをやっているのが可愛くてたまらない。 ココ 犬型MMSハウリン。性格設定は生真面目な武人タイプ。 マスター自身の能力は評価しており、嫌っているわけでもないが、変身ヒロインに限っては自分以外の誰かがやればいいのにと思っている。 でもそのイヤイヤ加減が静香のツボを突いている事に気付いていない。 ハード・ソフト的な改修は静香によって色々行われているようだが、実際に戦闘に役立つものはほとんど入っていないとか。 第11話現在、セカンドの中位~上位の間くらいにいる。 ドキドキハウリン ココが静香特製のコスチュームを身につけたときの最終形態。ディテールの詳細はその時の静香の気分によって異なる。 ただの衣装替えなのでスペックに差はないはずだが、この時のココは恥ずかしさで攻撃力が三倍(当社比)になる……らしいぞ。 主要武器は長銃身の狙撃砲。長い銃身を生かして撲殺もできる。 範囲攻撃としての『魔法』は実装されているが、持続時間の関係で一般的な運用はされていない。 獣王 ココのぷちマスィーンの個体名称。複数機ではなく、基本的に一機のみで運用される。 通常のボディは使用しておらず、タチコマ型の通常支援ユニットや、バスターウルフ型の機動戦ユニットなどに接続されて出撃することがほとんど。 上記の画像は一般運用時のタチコマユニットを使用した状態である。 花姫 ドキドキハウリン外伝に登場する静香の神姫。初期ロットのアーンヴァルタイプ。 優しく穏やかで、少々子供っぽい性格。 甘えたがりで、静香のことが純粋に大好き。 自ら考えた『魔女っ子神姫 マジカル☆アーンヴァル』に変身するが、リアルバトルは装備の損耗が激しいため、オリジナル武装ルールが実装された現在(外伝8時点)でも名乗りを除いてマジカル☆アーンヴァルが登場したことはない。 ドキドキハウリン本編には登場していないが……? マジカル☆アーンヴァル“ブロッサム・ストライク” マジカル☆アーンヴァル強化プランの最終形態(外伝8時点)。 高機動・遠距離重視というアーンヴァルタイプの特性を極端に突き詰めたコンセプトを持つ、高機動砲撃戦に特化された機体。 大型ブースターを使った高機動、大口径メガビーム砲・マイクロミサイルコンテナによる重火力、防御フィールドを使った高防御を並立させており、この世代の武装神姫としては突出した戦闘力を持っている。その姿は神姫というより、神姫の運動性を持つ大型戦闘機といったイメージが強い。 ただ、その圧倒的な戦闘力の代償として、メンテナンス性は非常に劣悪。リアルバトルのみの当時にこの種の機体が流行らなかったのは、純粋に『装備が膨大でメンテしきれなかったから』という理由が大きい。 静香・花姫ペアも、本装備は決勝トーナメント用の最終兵器という位置付けをしており、予選リーグ中は標準的なアーンヴァル装備を使っていた。 上記写真は数少ない本機調整中の画像。完成版のブロッサム・ストライクはミサイルコンテナの下にスカート状の装甲鈑が取り付けられる。 鋼月 十貴(こうづき・じゅうき) 静香の家の隣に住んでいる少年。身長148cmの物凄い童顔だが、静香と同い年の17歳。4月30日生、A型。 工業系の男子校(一応共学なのだが、女生徒はほとんどいない)に進んでいる。 自分がオタクであること・神姫をやっていることを学校では秘密にしており、神姫の大会に出場するときは鋼月十貴子(こうづき ときこ)と名乗って参加している。 女装に関しては静香に遊ばれているだけだと気付いているが、神姫のバトル自体は楽しいので現状でもまあいいかなと思っている。 同じ遊ばれる身として、ココと仲がよい。 ジル ストラーフタイプの十貴の神姫。 超勝ち気で十貴を尻に敷く性格。 リアルロボット系装備全盛期の神姫業界において、スパロボ系装備のパワー武装にこだわる異端児。 神姫のバトルサービス最初期から参戦している古強者の一人。ファーストリーグ下位あたりにいる。 その特異な武装から『鋼帝』の異名を持つ。 同じ尻に敷くモノ同士として、静香と仲がよい。 戸田あかね(とだ・あかね) 武装神姫関連企業であるEDEN-PLASTICSカスタマーサービスセンター勤務の23歳。 戸田静香の姉。 性格は基本的にのんびりおっとりだが、だらしないのは妹と同じ。 にゃー子 マオチャオタイプのあかねの神姫。 性格はそのまんま猫。争いを好まない性格な事と、そもそも神姫関係者は大会に出られないため、戦闘経験は全くない。 鋼月雄歩(こうづき・ゆうほ) 十貴の父。筋金入りの玩具オタ。ガングラー鋼月というペンネームで、玩具ライターとして生計を立てる趣味の人。 本来は超合金系のレビュー専門だが、色々事情があってジルを引き取ることになった。十貴とジルを引き合わせた張本人である。 神姫そのものは持っていないが、神姫と同レギュレーションのMMS男性型モデル・AHP(アクションヒーロープロ)改『ゴルドさん』を持つ。 人生で一番心に残っている特撮は、子供の頃にヒーローショーを見に行った『超星艦隊セイザーX』らしい。 ゴルドさん 雄歩のMMS。寡黙なヒゲ男。 メカに強く、そのサイズ故に神姫用のメカニックのメンテなども楽々こなす。 オフィシャルの品ではなく、アクションヒーロープロの動作試験用モデルを雄歩がツテで引き取ってきたらしいが、定かではない。 実はとても強いらしいが、AHPは武装神姫のオフィシャルリーグ参戦が認められていないため、たまにフリーバトルをする程度である。 試作品のため動作にはやや不安定な面があり、バッテリー容量の都合もあって一日十六時間の休眠が欠かせない。 武井隆芳(たけい・たかよし) 外伝7に登場したクウガのマスター。 自分の名前を神姫に覚えてもらえないことを少しだけ気にしている。 クウガ 外伝に登場するハウリンタイプの神姫。 改造された脚部装甲のみを武装とし、一直線に突き進んで蹴りを叩き込む、超超高速蹴打戦闘を得意とする。 アキ&タツキ 本編十五話に登場する武井の神姫。双子のツガルタイプ。 ちなみにおさげが右にある方が姉のアキ、おさげが左にある方が妹のタツキである。また、アキの方が少しだけ胸が大きい。 武井の経営するドールショップ『真直堂』の裁縫部門の指揮や、販売の補助を行っている。 トップ
https://w.atwiki.jp/busoushinki2/
武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2 攻略wiki このwikiは「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」の攻略まとめwikiです。 Wikiの編集方法はこちらをご参照下さい。 当サイトは他サイトからのコピペ転載は禁止しております。 商品情報 タイトル 武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2 発売元 KONAMI 対応機種 プレイステーションポータブル ジャンル アクション 発売日 2011年夏 価格 未定 CERO 審査予定 リンク 公式サイト ニュース “きゅんキャラ”などが当たる,「一番くじ 武装神姫」が9月下旬より販売開始 (2013-09-18) 「武装神姫」グッズが,コミケ83に登場。神姫達がデザインされたTシャツなど (2012-12-27) 「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」,竹達彩奈さんが演じる神姫を配信 (2012-03-16) 「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」,DLCでマリーセレスシナリオなど登場 (2012-03-09) 「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」DLCで「オールベルン」が追加に (2012-03-01) 「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」プロキシマ専用シナリオなどが配信に (2012-02-23) 「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」,ヴェルヴィエッタの姉妹機「リルビエート」がDLCで登場 (2012-02-16) 「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」,DLC第11弾はアーティルのシナリオ (2012-02-09) 「武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2」,DLC第10号はヴェルヴィエッタ (2012-02-02) 「武装神姫」対象商品の購入者にイラストブックマーカーを先着順でプレゼント (2012-01-26)
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1254.html
vol1「風見記の場合」 某所、喫茶店「File」 「よう相棒、来週分の原作出来たか?」 髪を後ろで縛った男が、前に座った男に話し掛ける。 「明日あたりには脱稿する筈だ、…注文、ウーロン茶で」 ウエイトレスに注文を頼む男 「ん?風見記、あいつらはどうした?」 「家でお留守番だ」 「ひでぇな~、ここが神姫も飲み食いできるところだと知ってた筈だろ」 「ひとり、持ち金を考えないで注文する奴がいるからな、帰り道にケーキかなんか買ってくさ」 「んぅ?あ~、あの忠犬ケルスか!」 「忠犬は余計だ巻馬、あいつが聞いたら泣くぞ」 「はは~事実なんだけどね」 おさげ男、巻馬鉄次(まきばそうじ)のすぐ手前でパフェをつっついていた神姫が答える。 傍からみて、その姿は忍者であったが、中身は忍者型MMS「フブキ」ではなく、猫型MMS「マオチャオ」であった。 「…とゆうか巻馬、ここにも所持金を考えない奴が一人いるぞ」 「ロンドか?、大丈夫さ!ちゃんと計算して注文させてるしさ」 「でもそのパフェ、一番高い奴だぞ」「なにっ!?」 慌ててメニューを見て、自分のサイフの中も確認する巻馬。 「……150円足りない…、風見記、150円貸してくれ」 「あほめ、ほれ。返すときは200円だぞ」 「すまん!」 「ありゃ…マスターのサイフの中を過大評価してたみたいだ…」 「それじゃ、明日監修に来てくれ」 「お前の事だから大丈夫だとは思うが…」 「いつも言ってるだろ、『念には念を』ってな。それじゃ!」 「マスター、お金下ろすの忘れずに」「わーっとるわい!」 楽しそうな二人を、見送る男。 彼の名は風見記真木(かざみき まき) ファンタジー・SF作家である。 巻馬は連載中の漫画の作画を担当する人物であり、小説の挿絵も彼の筆による物である。 現在売れ行き好調の、若手作家でもある。 某所、風見記のマンション「第一ヤマモトハイツ」四階 「ただいま」 ドアを開け、室内に呼びかける。 「おかえり、マキ」「お帰りなさいませ、マキさま」「おかえりなさい、御主人」 三つの声が重なった。 そして歩いてくる小さい影。 「シュークリームを買ってきたぞ、三人とも」 「シュークリームですか、もしかして「とても美味しいケーキ屋さん」のですか?」 「ん、そうだ」 第一声を放ったのは、傍から見てそうには見えない砲台型MMS「フォートブラッグ」…なのだが メイドさんにしか見えない「ナゴ」。 「シュークリームとは和製仏語であり、正しくは「choux a` la cre`me(シュー・ア・ラ・クレーム)」と言って シューとはキャベツの意味だそうです」 「…食べるよな?」 「食べます!食べます!」 シッポを振り、ヨダレをだだ漏れしながら薀蓄を言うのは犬型MMS「ハウリン」の「ケルス」。 「ふふ、それは楽しみですね。でも食べるのは食後ですよ、ケルスさん」 「うう…」 ケルスに「お預け」をかけたのは、銀色の羽付きカチューシャを付けた騎士型MMS「サイフォス」…だが 通常よりも幼い姿をしている「フェリア」。 彼女ら三人は武装神姫。 人間の友達であり、戦友でもある。 …微妙に戦いを忘れてる気がするが…気にしないに越したことはない。 風見記は、心の中でそう付け足した。 ToBeContined… 武装神姫でいこう!?に戻る トップページ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/950.html
神姫の構造材をプラスチックでないものにする そういう案は最初からあった 当然、現状の人工皮膚も純粋な意味でのプラスチックではないが 様々な試行錯誤の末現在の形に纏まったのだ 例えばそれはこんな試行錯誤である 「無題を冠した未完の彫刻」 「駄目です、制御失敗。自壊しました」 若い白衣の男が、淡々と告げた 報告を受け取る男は、若くも見えるし老けても見えた 渋い表情で画面を見る 無残な姿になった神姫が映っていた 構造材に自己修復能力と自己増殖能力を付与し、人体と同じように振舞わせる そういうプランだった だが、そのシステムの制御は困難を極めた それでも何とか作り出したそのシステム、『G』は バトルに臨み得る神姫にとって、非常に有用だった 当時、既に神姫に武装を施してバトルに従事させるということは行なわれていた だが、その度に破損箇所を買い換えるのは面倒だったし、素材で解決出来るのならしてみようとしたのが彼らのグループだった 折りしも『武装神姫』のプランが本格的に始動していた バトル向きに調整された武装神姫に、メンテナンスフリーの自己修復ボディ まさにうってつけと言えた 副作用として、有機物的な特徴を持つ『システムG』は、神姫により人間に近い皮膚を与える事を可能たらしめた だが、傷ついた体を修復しようとした時、どうしても必要以上に増殖し、宿主である神姫を破壊してしまう 既に十数体の神姫が犠牲になっていた 大手のスポンサーであった鶴畑コンツェルンも、そろそろ資金援助をやめようと動いていた 「短絡的に過ぎる・・・このシステムが完成すれば、神姫ばかりではない、人間にも大きな利益があるというのに」 実の所、男の真の狙いはそこにあった 「神姫と人間の境界は脳だけ」にしてしまう事 それ自体は、神姫の開発当初から目指されていた一種の目標地点ではあった 神姫は身長15センチの人間であるべく 遥か古代からの人類の夢、人造人間の完成を目指して 様々な倫理的、技術的問題から身長15センチに決定されたが、男はどちらかというとそれには反対だった 完成した人造人間に人間の脳を移植する それによってより良い肉体を手に入れ、人類それ自体がより進化する 少なくとも男はそう信じていたし、『システムG』を装備した神姫はその試金石になる筈だった 男は自分自身が人間を越えたかったのかもしれない いずれにしても、現状の『システムG』のままでは、少なくとも人間に使用する事などとても出来なかった 開発チームも解体される時が近付き、資金援助の減少、チームの縮小等から、徐々にスタッフの士気も無くなり、気も緩みつつあった そんな時期だった 暴走し、異常増殖した『G』の組織に、生物が触れると融合する性質が明らかになった 否、厳密に言えば、過失から、人間と『G』の強制接触が行なわれたのだ 結果は、恐るべきものだった 『G』と融合した人間は、禍々しい「なにか」に変貌し、暴れ狂ったのだ しかも、そのスタッフは自らの意識を保ったまま、超細胞に取り込まれたのだ 結果そのスタッフは恐慌から暴挙に出たのだ その事実を示すデータは残っていない その日スタッフの一人の始末し損ねたぼやで、研究所は火に包まれたからだ 誰一人、生きている者の居る筈が無い程徹底的に、一切合財が炎の中に消えた スタッフの遺体は、殆どが原形も留めず、パーツも足りなかった為、正確な人数を確認する事も適わなかった 研究所で使われていた、旧式の動力炉が、危険な可燃物質を含んでいたか何かだったのだろう 調査は深く為される事は無かった だが、僅かに残ったものがある 部署が縮小されるに際して、他部署へ異動になった者の発言だ 曰く、「原型となる細胞質からクローン培養して、それを宿主神姫のAIの不随意領域で制御させていたんです・・・原型細胞がどこから入手されたのか、少なくとも私は知らないですね」 いずれにせよ、神姫に人間を越える肉の器を与えようとしたこの研究は頓挫し、神への道は遠ざかった TOPへ 「剣は紅い花の誇り 第貳部」へ?
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2133.html
ウサギのナミダ ACT 1-17 □ その日は、あまりにもいろいろありすぎて、アパートに帰り着いたときには、すっかり疲れ切っていた。 水浸しの服を脱ぎ、熱いシャワーを浴びると、あとはもう寝床にごろりと横になって、他に何をする気も無くなっていた。 体は疲れていたが、意識は妙に冴えていた。 まだ興奮しているのだろう。 今日あった出来事を反芻しようとするが、うまく頭が回らない。 結局俺は、ボーッと天井を見上げながら、ただただ寝っ転がっていた。 どのくらいそうしていただろう。 携帯電話に着信があった。メールの着信音。 ゆっくりと手を伸ばし、液晶画面を見る。 約束通り、久住さんからだった。 メールの文面は、彼女らしく、簡潔だった。 「今日は生意気なことを言って、ごめんなさい。 明日、午前11時に、JR○○駅改札前で待っています。 追伸。 ティアの写真、送ります。」 添付ファイルを開く。 俺は小さく吹き出した。 ティアとミスティが一緒に写っている画像だ。 Vサインを出しながらティアの肩を抱いて余裕の笑顔のミスティに対し、ティアはなんとも間抜けな表情で肩をすくめている。 バカだな。笑えばいいのに。 俺はその画像だけで、ひどく安心してしまった。 ティアは無事だ。久住さんのところにいる。いまはそれでいいのだ、と思えるほどに、心に余裕ができていた。 メールの返事を送る。待ち合わせと画像の件に了解の旨を伝えた。 それにしても。 久住さんが指定した待ち合わせ場所が不可解だった。 最寄り駅からだと、ちょうど東京をまたいでいく感じになる。 そんなところで待ち合わせとは……他に行くところでもあるのだろうか。 まさか、彼女なりの嫌がらせというわけでもあるまい。 ……そんなことを考えること自体、俺の心が疲れている証拠だ。 俺は目覚まし時計をセットする。 明日の約束に遅れるわけにはいかない。 そして、寝床に横になると、不意に睡魔が襲ってきた。 疲れた……。 そう思いながら、睡魔にされるがまま、眠りに落ちていった。 翌朝。 異常に早く目が覚めた。 まだ気が高ぶっているのかも知れない。 だが、体の疲れはとれているし、頭の中もすっきりしていた。 時間にはまだだいぶ余裕がある。 俺はゆっくりと身支度を整え、駅前で朝食を取ることに決めて、家を出た。 ティアのいない一晩で、俺は心の整理がついていた。 必要な時間、だったのだろう。久住さんはそれがわかっていて、俺にこの時間をくれたのかも知れない。 結局、一番大事なことは、ティアが俺のそばにいることだ。 そのためなら、別にバトルロンドにこだわる必要はないのだ。海藤とアクアのように。 誰に見せることもなくなるだろうが、ランドスピナーを自在に操り、走る楽しさをティアが感じ続けてくれるなら、それでいいのだ。 それをティアに言ってやるつもりだった。 ティアは……どんな顔をするだろうか。 それにしても、今日の待ち合わせ場所は不可解だ。 待ち合わせなら、うちの最寄り駅、そうでなければ、三駅ほど離れた久住さんの最寄り駅でもいいはずなのに。 なぜ二時間近くもかかる遠いところ、しかも大都市というわけでもない、ごく普通の駅前なんて指定したのだろうか。 久住さんは、よくわからない人だ。 彼女にはいつも驚かされる。 それは不快ではなく、むしろ嬉しいサプライズが多いわけなのだが。 今日の待ち合わせ場所も、彼女の特有のサプライズなのだろうか。 やっぱり、よくわからない。 俺は電車の中で、つらつらとそんなことを考えている。 二時間近くかかった列車の旅も、ここで終着だ。 たどり着いたその駅は、全く普通のJRの駅だった。 時間よりも十分ほど早い。 待ち合わせは改札の前なので、もう一度駅名を確認してから、改札を通った。 彼女は先に来ていた。 ……だが、声をかけるのがためらわれた。 あそこにいる女性は、本当に、久住さんだろうか? いつもと雰囲気がまるで違っていた。 いつもの久住さんは、細いジーパンなどを履き、スポーティーな格好だ。それに武装神姫収納用のアタッシュケースを持ち歩いている。 ところが、待ち合わせの場所にいたのは、 「あ、遠野くん」 そう言って、微笑みながら小さく手を振ったので、やはりこの少女は久住さんで、待ち合わせの相手はどうやら俺であることを、かろうじて認識できた。 「おはよう、久住さん……待った?」 なんとかここまで口にできた俺を、むしろ誉めてもらいたい。 女の子に免疫のない俺は、緊張がすでに最高に達し、思考は遙か彼方に吹っ飛んでいた。 もちろん、表情に気を使う余裕などこれっぽっちもない。 「わたしも今来たところ。……でも、早かったですね」 「……遅刻すると、いけないと思って。でも待ち合わせ場所に完璧に変装した人がいたからびっくりしたよ。その格好どうしたの?」 「さすが遠野くん、いい心がけです。これですか?それは…まだ秘密です」 にっこりと笑う久住さん。 反則度が五割増しくらいになっている気がする。 これは久住さんによる何かの策謀なのだろうか。 俺にとってはもうサプライズを通り越して、遠大な陰謀の一端ではないかと思われる。 この時点で俺はもうドギマギした気持ちをどうにも持て余しており、すがりつく話題を必死に捜していた。 そして、巡り巡った思考の末、一番大切な今日の本題にたどり着いた。 「あ、あの……てぃ……ティア、は……?」 「大丈夫。ちゃんと連れてきました。 いつも胸ポケットが定位置みたいでしたのでコートの内ポケットにしっかりと。 ……ティア」 久住さんが、下げたハンドバッグにその名を呼ぶと、二人の神姫がバッグの口からひょっこりと顔を出した。 ■ 菜々子さん(ミスティのマスターも、名前で呼ぶことをわたしに要求した)の呼びかけに、左右の大きな内ポケットにそれぞれ隠れていたわたしとミスティは前を塞ぐボタンを弾け飛ばしてから顔を出した。 すぐに目が合う。 マスター。 一日会っていないだけなのに、ひどく懐かしい気持ちになった。 同時に、罪悪感が沸いてくる。 それは、わたしの噂で迷惑をかけたことと、マスターに無断でいなくなったことの両方の意識が入り交じった複雑なものだった。 マスターは少し驚いたようにわたしを見つめ、 「ティア……」 わたしの名前を呟いて……そのまま、地面に両膝と両手を着いてうなだれてしまった。 ええぇ? マスターは大きく一つため息をつく。 「どんだけ心配したと思ってるんだ……」 あ……。 昨晩、久住さんが言ったとおり。 マスターは、本当に、わたしの心配をしてくれていたんだ。 わたしのことなんて、忘れてそれで……幸せになってくれればよかったのに。 それでも、マスターが心配してくれたことが嬉しくて。 自分が消えようとしてたことなんて棚に上げて。 なんてひどい神姫だろう。 「ごめんなさい……」 結局、いつもの言葉を口にするしかない、わたし。 でも、マスターは、 「おまえが無事なら……いいさ」 そう言って顔を上げた。 もう、いつもの無表情だった。 包帯を巻いていない、左手の甲を差し出す。 「戻ってきて……くれるよな?」 マスターは相変わらず表情を表に出さなかったけれど。 でも、声が、少し震えていた。 わたしは、菜々子さんのバッグから出ると、マスターの左手に乗り移る。 そのとき、後ろを振り返ると、ミスティが笑顔で頷いていた。 □ 左胸のポケットの重さに、俺は心底ほっとする。 俺は立ち上がると、久住さんに頭を下げた。 「ごめん。見苦しいところを見せてしまって……」 「ううん……ふふふ、いいリアクションでした」 「それから……ありがとう。ティアを見つけてくれて……昨日も、気を遣ってくれて……」 「大したこと、してないわ」 そう言って、久住さんは首を横に振った。 彼女がどんな思いなのか、その表情から伺い知ることはできなかった。 久住さんは、一度目を閉じて、うん、と頷くと、俺を見た。明るい表情。 「さて、用事も済んだことだし……ねえ、遠野くん、連れて行きたいところがあるの。付き合ってくれる?」 「え? あぁ……」 やはり続きがあった。 「はじめから、そのつもりだったんだろう?」 「やっぱり、わかる?」 「そうじゃなきゃ、こんな遠くに呼び出したりしないだろう?」 「まあ、ね」 久住さんは反則度五割増しで笑っている。 彼女を勘ぐっているのは、俺の神経が過敏なのか、疑心暗鬼すぎるのか。 俺が何となく即答できずにいるのを見て、彼女は言った。 「大丈夫。ただのホビーショップなんだけど……遠野くんも、きっと気に入ると思うわ」 「ホビーショップ……?」 ただのホビーショップなら、途中過ぎた秋葉原でも事足りる。 わざわざこんなところまで来るというのには、理由があるのだろうが……。 まあ、考えていても仕方がない。 せっかくこんな遠くまでやってきたのだから、このあたりのホビーショップでバトルロンド観戦も悪くはないだろう。 俺たちの顔が知られているわけでもないのだから。 「わかった。付き合うよ」 「決まりね」 久住さんはにっこりと笑う。 俺と彼女は並んで歩き出した。 駅前の商店街を歩いていく。 何も特別なことなどない、どこにでも見られる、ごく普通の商店街だった。 いったい、何を考えているんだろう? 俺は隣を歩く久住さんを盗み見る。 ……えらく細い肩が視界に入った。 久住さんは、男の俺に比べれば確かに小柄だったが……こんなにも細い肩だったろうか。 いや、全身が細くて華奢な感じがする。 それでも、痩せすぎという感じではなく、女性らしい柔らかな体つきだった。 いかにも、女の子という感じで……。 これでとても美人なのだから、俺が隣にいるのがえらく場違いに感じてしまう。 というか、端から見たらどうなのだろう。 一緒に並んで歩いているなんて、まるでデートみたいなのではないだろうか。 ……デート!? 俺と、こんなに可愛い女の子が!? いやいや、違う。 これは久住さんの厚意で、ホビーショップに案内してもらっているだけなのだ。 だが、一度意識してしまうと、頭では否定していても、感情が沸騰してしまう。 おかげで、女の子にろくに免疫のない俺は、久住さんの隣で緊張しっぱなし、彼女を意識しすぎて頭の中は真っ白という状態に陥った。 「ここよ」 目的地に着いたことを久住さんが教えてくれなければ、ぎくしゃくとした足取りのまま、どこまでも歩いていったかも知れない。 俺たちがたどり着いたのは、彼女が言ったとおり、ホビーショップの店先だった。 それほど大きいとは言えない、商店街にある個人経営の普通のホビーショップ。 店の看板を見上げる。 『ホビーショップ・エルゴ』とあった。 エルゴ……? 「って、ここ……あの、エルゴ……なのか?」 「うん」 久住さんはあっさりと頷いた。 「遠野くんだったら、きっと来てみたいだろうと思って」 それはもちろんだった。 ホビーショップ・エルゴといえば、武装神姫ファンならば知る人ぞ知る名店だ。 俺が知るエルゴ評でもっとも印象的だったのは「武装神姫の魅力がすべて詰まっている店」というものだった。 さらに、ここのバトルスペースの常連達は、有名な神姫プレイヤーばかりなのだ。 ティアを迎える前から、一度は来てみたいと思っていた。 久住さんは店の自動ドアをくぐっていく。 俺もあわてて後に続いた。 「いらっしゃいませ」 元気のいい女性店員の挨拶が出迎えてくれる。 店内を見渡した俺は、圧倒された。 気合いが入っている、なんてものじゃない。 武装神姫のパッケージ商品はもちろん、追加武装からカスタムパーツ、専用工具にメンテナンス用品、果ては神姫専用のオリジナル衣服まで。 ありとあらゆる武装神姫関連製品が所狭しと、しかしきちんと系統立てて、わかりやすく並べてある。 秋葉原などの大型店舗に比べたら小さい店ではあるが、へたをすればこっちの方が品揃えがいいんじゃないか? 店頭に置ききれない分は、検索端末で在庫確認、注文もできるようになっているみたいだ。 端から物色したい気持ちになるが、今日は久住さんの付き添いである。 とりあえず我慢して、久住さんに目を移す。 「おひさしぶり、静香さん!」 「あら、菜々子さん、元気だった?」 久しぶりの再会に、エプロンをつけた女性店員とハイタッチなんかしている。 女性店員はめちゃくちゃ美人だった。流れるような黒髪が印象的な美人。 久住さんとはタイプが違うが、男だったら思わず振り向いてしまうほどの美貌だ。 武装淑女にはえらく美人が多い気がするが……美人じゃないとバトルロンドをやってはいけないという掟でもあるんだろうか。 なんて、腐った思考をしていた俺に、その店員さんが視線を向けてきた。 俺の上から下までさらり、と視線を流し…… 「彼氏?」 久住さんへの問いに、俺は思わず吹き出した。 久住さんは、店員さんの耳元へ口を寄せ、何事か囁いている。 そして、 「ふぅん……」 また俺をさらりと見渡した後、なにか納得げに頷いていた。 ……なんなんだ。 「ところで、店長は?」 「奥で作業中。呼んでくる?」 「ううん、いいわ。こっちに戻ってきたら、わたしが来たこと伝えてくれますか? 言えばわかりますから」 「わかったわ」 店員さんが頷くのを確認して、久住さんは俺のそばに戻ってきた。 「先にティアとミスティを預けてしまいましょう」 「え?」 神姫を預ける? 久住さんは俺を店の一角に案内する。 そこは神姫サイズの机や椅子が並ぶスペースだった。 いまも数人の神姫がたむろしている。 あとで説明を受けたが、神姫学校と言って、エルゴで神姫を預かるサービスなのだそうだ。 「ティアはこっちね」 「ミ、ミスティ……ちょっとぉ!?」 ミスティはティアに腕を絡めて、ぐいぐい引っ張っていく。 以前にも利用したことがあるようで、勝手知ったる、という感じだった。 「わたしたちは、上ね」 久住さんは俺を店舗の二階へと案内する。 店の二階はバトル用のスペースになっており、バトルロンド用の筐体が並んでいた。 筐体の数こそ、ゲームセンターに比べれば見劣りするが、観戦用の大型ディスプレイも設置されているし、多人数対戦用の設備も備わっている。 休憩スペースで観戦もできるようになっていて、いたれりつくせりだった。 小さな店なのに、多くの常連が通うのも、当然だと思う。 近くにあったら、俺だって常連になっているだろう。 久住さんは差し向かいになれる小さなテーブルのある休憩スペースに、俺を連れてきた。ちょうど誰もいない。俺たちは向かい合って腰掛けた。 大型ディスプレイでは、現在プレイ中のバトルロンドの様子が映し出されている。 思わず目がいってしまう。 バトルをしているのは、アーンヴァルとマオチャオ。 アーンヴァルはノーマル装備の組み替えのカスタムらしい。 一方のマオチャオは、巨大なブースターを背負い、高速で滑空している。 バトルは白熱している。その動きから、両者ともかなりの手練れだとわかる。 「あの神姫……両方とも見たことあるな……」 「ああ……マイティとねここ、有名だもの」 久住さんのさも当たり前のような答えに、俺は吹き出した。 『公式武装主義者』と『雷光の舞い手』かよ!? 俺でもその二つ名を知っている、有名な武装神姫だ。 その二人が普通に草バトルしているこの状況って……。 いきつけのゲーセンにしか行ったことのない俺にしてみれば、スタープレイヤー同士のバトルをあっさり観戦できるこの状況が、とんでもなく贅沢なことに思えた。 「さっきの、店員の女の子もね、有名よ?」 「へえ……?」 「ドキドキハウリンのマスター」 「ぶっ」 俺が驚く様を、久住さんは面白そうに見ている。 まったく、俺は井の中の蛙だ。 彼女が『天才』戸田静香か。 秋葉原の神姫バトルミュージアムで、バトルロイヤル五二機撃墜を達成したハウリン。 そのマスターはあらゆる技術を身につけており、武装、ソフトウェア、果ては神姫用の衣服まで作成するとか。 バトルも強いが、ショーマンシップでバトルを盛り上げることを一番とする、趣味人。 どんな人物かと思っていたが、まさかあんな美人が……。 俺は首を振った。 世の中、わからないことが多すぎる。 俺たち二人は、そこでしばらくバトルロンドを観戦していた。 白熱の攻防を見ていると、やはり血が騒ぐ。 俺もバトルしてみたい、と思う。俺の、武装神姫と。 「やっぱり、バトルロンドはいいな……」 心からそう思う。 ティアに、バトルしなくてもいい、なんて言ってやるつもりだったが、心の底では納得していなかったのかも知れない。 バトルに挑む神姫達の美しい姿、マスターが繰り出す知略の攻防、そして神姫とマスターがともに掴む勝利の達成感。 何物にも代え難い、と思う。 「遠野くんは……どうして武装神姫をはじめたの?」 唐突な、久住さんの問い。 「どうしてティアを自分の神姫にしたの? あのレッグパーツはどこで手に入れたの? どうしてあの戦い方にこだわるの? ねえ……」 まっすぐな視線に射抜かれて、俺は身動きすることができなかった。 「教えて。わたし、あなたのこと……あなたたちのこと、何も知らない」 ■ ミスティはわたしの腕を取って、ぐいぐいと引っ張っていく。 わたしは歩調を合わせるのがやっと。 彼女は妙に楽しそうに見えた。 神姫学校のスペースには、何人かの神姫が集まって、グループを作って歓談しているようだった。 ミスティは、グループの一つに近づいていく。 グループの輪で、中心になっていた神姫が、近寄ってくるわたしたちに気がついて、顔を上げた。 ツガル・タイプだ。 瞳に少し気位の高そうな光を宿している。 「あら、珍しい……ミスティ、ひさしぶりね」 「ごきげんよう。調子はどう?」 まずまずね、なんて答えたツガル・タイプは、ミスティに腕を抱えられているわたしを見た。 「その子は?」 「この子はティア。わたしの親友」 「親友? あなたの?」 何か信じられない珍獣を見るような視線。 それでも、ツガル・タイプの彼女は、微笑んで挨拶してくれた。 「はじめまして、ティア。わたしはシルヴィア。ミスティの昔なじみよ。よろしくね」 「は、はい……ティアです……よろしく……」 お辞儀をしたわたしの頭の中に、浮かんでくるものがある。 ツガル・タイプのシルヴィア……? 聞いたことがある。確か…… 「レッド・ホット・クリスマス……?」 シルヴィアさんは頷いた。 その二つ名は全国大会でも知られた有名な神姫の名だった。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/130.html
そのに「回顧録・一」 僕がのティキを所有する事になってから、日はまだ浅い。 今僕と共にある武装神姫――ティキは、元々亡父の物。言わば形見だ。 つまり僕は自分の神姫と付き合っていく上で、ティキを一から育てると言うメリットを放棄させられたワケだ。 そして手探りで半ば完成されたティキというパーソナリティーを理解していくと言うデメリットだけを負わされた事になる。 それを少しでも克服したいと(愚かにも)思った僕は、夜中にただ一人で無き親父の書斎へと向かう。 ……冷静に考えれば、こんな考え方だから僕は振られたのだろうか? ちなみに、本来神姫はただ一人を『オーナー』と認識したら機能『停止』、観念的に言ってしまえば『死亡』するまで変更することが不可能なのだ。が、ティキの様な『オーナー』死亡の場合に限り、別オーナーへの再登録が認められる。 それまでの神姫のパーソナルをそのまま引き継ぐ為には、わざわざ必要書類をそろえて、郵送し、更にメーカーと再契約しなければならないけど。 それはさて置き。 親父はマメな人物でもあったから、もしかしたらPCに痕跡ぐらいは残ってるだろうとそう思ったのだ。 果たしてそこには『日記』と記されたフォルダが残されていた。 ……痕跡どころじゃねーよ。そのものだよ。 ともあれ、僕はそのファイルを開く。 ○月○日 この日俺はついに武装神姫に手を出してしまった。 こんな事家族に言ったらもしかしたら妻は離婚を言い出すかもしれない。 息子に言ったなら、俺は軽蔑され、冷たい視線を受ける事になるだろう。 でも、お義父さんの神姫を見ていたら、どうしようもなく、たまらなく羨ましくなったのだ。それはもう仕方が無い事なのだ。 俺は食事、団欒の後、なるべく自然に書斎へ戻ると、逸る心を抑えられずすぐさま神姫のパッケージに手をつけた。 MMS TYPE CAT『猫爪』。 俺は焦りながらも慎重に、とにかく家族に気付かれない様、細心の注意を払って開けてゆく。 そこには夢にまで見た神姫が、眠るようにいた。 俺は早速神姫を起動させる。 何かしら説明の様な事をきった後、彼女はおもむろに俺に言った。 「愛称と、オーナー呼称を登録してほしいですよぉ♪」 ……この子は何で歌うように喋るのか? お義父さんの所の娘達は普通に話していたのに??? 「どうしたのですかぁ?」 にっこりと笑って俺を見る。と言うよりそんなものを登録するという事実をすっかり忘れていた。 「……あーすまん。チョット待ってくれ。考える。」 「ハイですぅ♪」 目の前の神姫はそういうとその場でぺたりと座った。 あーかわいいなぁ。……いや、そうじゃない、考えよう。 どうせなら変わったのが良いな。でも愛称は変すぎても可哀想だ。と、俺が頭を捻っている間も彼女は俺をジッと見つめている。……愛らしいなあ。 はた、とそこで思いつく。 「オーナー呼称の方、先でも良いかな? 『旦那さん』と呼んでくれ」 「『旦那さん』ですねぇ♪ ……登録したですよぉ♪」 そういうと彼女は「旦那さん、旦那さんですぅ☆」と何度も言って机の上をピョンピョンと跳ね回った。 そんな彼女を見ていると微笑ましくなる。……正直に言えば、ニヤニヤしている自分を自覚する。 そんな彼女の様子を目で追いながら、俺は愛称を考えていた。 「ダメ大人じゃねーかよ!!」 僕はただただ、PCの前で突っ伏した。なんだか日記も妙に読まれる事を意識した書き方だし。 でも、それと同時に戦慄した事が一つ。 ……確実に僕にもこの親父の血が流れていると実感した事。 終える? / つづく!
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2651.html
「ホントにやるのー。戦えるようになったんだろうねー?」 「はい! 大丈夫です」 暇を見つけてもらって、今日はゲームセンターに霧静さんとアリエに来てもらった。 イスカと戦う前にアリエと戦っておく。 あの熱を持った赤い大剣状態をちゃんと克服できているかどうかのチェックをしておかないと安心はできないからだ。 「ごめんね、この前来れなくて。シオンちゃんの勝ったバトルを見てみたかったのだけど、どうしても用事が外せなくて」 「ううん、そんなことないって。そう思ってくれてるだけで嬉しいよ」 霧静さんが申し訳なさそうにしている。 真剣にシオンを思ってくれている。 そんな優しさがありがたい。 「バトルの前に霧静さんとアリエにお願いがあるんだ」 普通にバトルするだけじゃなくて、これを言っておかないといけない。 「うん、なにかな?」 「あの『ヒート・カートリッジ』だったかな? アレを使ってバトルしてほしいんだけど」 「えー、アレかー。制限時間があるけどいいかなー?」 使うの制限があるのか。それは誤算だけどまあいいだろう。 勝ち負けが問題じゃないし、アレを出されてちゃんと立っていられるのかが問題なんだ。 「うん、それでもいい。でも、本気でお願いするよ」 「もちろんだよー。あははー」 何が楽しいのかアリエは笑う。 いっつも笑顔だね、アリエは。 「嬉しそうだね。アリエ」 オーナーの霧静さんもアリエが上機嫌なのが不思議らしいが、 「うん、そだよー。前は変に終わっちゃったからねー。もう一回、私の闘争本能に火をつけたんだからさー、生きて帰れると思わないでね――」 「……うん。でも、もうバトルの準備しましょうね」 「――私はまだ力を隠し持っているんだから、それを出すのはシオンの実力次第だー。この前より強くなっているのだとしたら、私も全力を持ってお相手していただくよー。私の前で5分間立っていられたら褒美を……って、あれ~~?」 霧静さんはアリエが調子にノる前に、早口で何か言っているアリエを手で持って、向こうのブースに連れて行ってしまった。 僕はそれを横目で見送った後、シオンを見てみる。 「アリエさんに勝てるでしょうか? 自信がないです」 「僕としては赤い大剣を見て、シオンが立っていられるかどうか心配だよ」 「それは……多分、大丈夫ですよ。はい」 どこから来るのか、小さい身体に自信が溢れている。 前回ではトラウマを引き起こしたのに、なぜかそっちの方は心配してないのかシオンにそんな素振りはない。 僕の杞憂だったのだろうか。 ……いや、まだ安心はできない。 やるのと仮想でイメージするのとはわけが違うんだから。 ―――― 前回と同じように廃墟街のステージだ。 今度は最初から隠れて進むとか不意をつく作戦とかではない。 真っ向からぶつかれるように広い場所で両者は対面させている。 「よっし、じゃ行くぞー!」 「お願いします!」 アリエは前と同じ兵隊のようなアーマーをつけて、エレメンティアを両手で持ち構えている。 対するシオンは両手にぺネトレートクロ―・烈、そしてファイティングポーズを取り、武道家のように気迫を発し続けていつでも動ける態勢。 「『エレメンティア・ヒートカートリッジ』セット! いくよー!」 エレメンティアに赤いカードを差し込むと、たちまち刀身は真っ赤になる。 剣の周りはゆらゆらと蜃気楼現象のように空気が歪んで見える。 あれが発動した。 それで、肝心のシオンはどんな様子だ? 「……すぅ……はぁ……」 呼吸をしている。 いや、それは当り前なのだけどあれは深呼吸に近い。 顔は真っ直ぐ向き、目はちゃんとあの赤い大剣を見据えている。 「へー、あれから随分と頑張ってきたんだねー。前と違って闘気ってゆーのかな? そういうのが違うねー」 「はい、ありがとうございます」 本当にあれすらも克服しているらしい。 すごい成長ぶりだ。 あの時の戦いからシオンはリミッターが外れたのか? いやはや、凄いとしか言いようがない。 「ふ、それじゃ、いくよーん。今度は本気で立ち向かうから来なさーい」 「行きます!」 そして両者はぶつかり合った。 「せりゃー!!」 「はぁー!!」 シオンは駆けて右のナックルで殴りかかる、アリエは上げた大剣を振り下ろした。 ガンっ! 打ち合った瞬間、周りの地面、場の建物が振動し出した。 ギギギッとナックル対大剣の押し合いが続くが、アリエは振り下ろしと両手で、と諸々の力はあっちの方が上だ。 そうなるとシオンが押され気味になるのだが、シオンは左腕を肩まで上げ、左のナックルもエレメンティアに叩きつける。 もう一回ガンッと響くと、両手と両手。それでやっと両者は拮抗しだした。 シオンは下から上なのになんで互角なんだろうか? ……あ、そうか。 普通、ゼルノグラードは火器型特性だから、大剣は使いづらいものなんだ。 武装神姫で得手不得手があるはずなんだから、あの差もわかる気がする。 でも、ゼルノグラードが大剣を使って強いという事はアリエ自身かなりの練習量をしてきたんだろう。それが試合からはわかる。 「ぬぅーー!」 「くぅーー!」 二人とも押し合いから武器を引き離さず、そのままの状態が続くが。 シュ~ッと。 煙がペネトレート・烈の先から出てくる 刃が熱を持っているから、ナックルが焼きついてきてるんだ。 「はあはあ、ここまで持ちこたえるとはやるねー。シーちゃん」 「はあはあ、アリエさんもものすごいです。大剣をそんなにまで使いこなして」 「努力の結晶ってやつだねー。でも、この大剣はそんじょそこらの大剣とはわけが違うのさー。不思議に思わないかなー? このエレメンティアにはトリガーがあるのになんで引かないのかってさー」 あの大剣にはトリガーがある。 だがそれを使ってないということ。 話しで聞いたゲームでは確かあれは…………マズイ! 『シオン、後退して!』 「もう遅いよー! 燃えろ、ドッカーン!」 僕がシオンに命令してエレメンティアからナックルを離そうとして逃げる瞬間、アリエがそう言うと大剣の引き金を引いた。 擬音を口から出した時、剣からも擬音の通り剣先から爆発が起きた。 「くっ!?」 シオンが灰色の煙に包まれた。 爆発の衝撃はどうなった。 ――シオンは無事か。 「へー、これを耐えきるかー。さすが熱血型」 間合いを離したアリエが口元は笑っているが、本気で驚いている。 「……ガードできてなかったら危なかったです。それと熱血型ではなくて私は山猫型です……はぁはぁ」 アリエが言ったことに律義に訂正させてからも、シオンは息を荒くさせている。 どうやらシオンは腕をとっさに交差させて、身を守ったらしい。 その証拠に両腕は煤こけたみたいに、黒くなっている。 だけど、使っていたナックルのぺネトレート・烈はどこかに吹っ飛んでいったのか、シオンの手元にはなくなっていた。武器はあれだけではないけど、なくなったのは痛いな。 「今から説明するとねー、この剣はカートリッジに入ったエネルギーを剣に流し込むと“属性”を付加することができるんだー。 そしてそのエネルギーを使い切る前にトリガーを引くとそのエネルギーを爆発させることが出来るんだー。それがこのエレメンティアの力さね」 アリエは自慢げにそう話している。 エレメンティアについて話してても陽気さが表れている。というか話したくてうずうずしてたみたいだ。 自慢したくてたまらなかったといった感じに見える。 だけど、その話を聞くとファンタジーにあるみたいな魔力を使う魔法剣みたいだ、と僕は思った。 さすがはあの店長さん。武装神姫にそんな力を与えるとは侮れないお人だ。 でも、シオンはその爆発のエネルギーをガードしきった。 すごい威力なはずなのに、ガードしきれるとはシオンってそんなに頑丈だったのか。知らなかった。 「でも、その大剣の事をそんなに話していいんですか。一応私は今、敵なんですけど」 「あははー。この力って有限だからねー。あんま万能ではないんよー。これって長所であり短所だからさー、黙っててもアドバンテージにすらならないんだよねー」 特殊能力を持った剣ではあるけど、欠点も多くあるらしい。 火器型であるのだから、大剣使いとしての能力がつきずらいんだな。 「毎日素振りを千回し続けた結果、火器型でありながら私は大剣を少しは使いこなせるようになったのさー」 「……それ程の回数。素振りをするとは、すごいですね」 「嘘だよーん」 「そんな!?」 変なコントが起きているが、このままアリエとの話しが引き延ばせたら……。 話が伸びているおかげで、シオンの息切れも治まってきている。 霧静さんが気付いていたらアウトだけど、どうだろうか。 「そのまま使うだけでは相手の方は倒せないんですか?」 「いや、ダメだねー。なんていうのかな、やっぱ私って現実問題、火器型ゼルノグラードじゃん? 大剣の特性値ってあんまないんよー。最初の頃の使いづらさっていったらもう死にたくなるねー」 もう少し。 「それだけで死んではダメですよ。ちゃんと前を向いて生きなくてはいけません」 「いや、例え話しっしょー。本気にしないでよーもう。面白いなー、シーちゃんはー。あははー」 よしそこで、フェリスファングを取り出して―― 「あー!! いけないなー。そんなもの取りだしたらー」 「く、」 カンッカラカラと。 フェリスガンが手から弾き飛ばされ、後ろに滑って行った。 なんでだ? アリエは近接武器のエレメンティアしか使わないはずなのに。 「言ってなかったっけー? 重・軽火器の類は一切使えないってー。でもさ武装の種類には投擲武装っていうものがあるのを忘れてはいけないよねー」 左手を前に出したダーツの矢を投げたような態勢のアリエ。 そしてシオンの後ろにはフェリスガンと一本の『フルストゥ・クレイン』が。 くそ、投擲武装を持っている可能性もあったのに、あの間延びした態度ですっかり油断していた。 戦闘中、アリエはもうちょっと緊張感持った喋り方をしてほしいよな。どうして、二人は気にしないのか。不思議に思うが。 ……そんなことより、結構絶対絶命の危機的状況だよな、これは。 フェリスガンはシオンの後ろに、ぺネトレートクロー・烈もどこかにいった。 どうするか? 「こっちの隙をうかがっていたんだねー。まあ、私もリミちんに言われなかったら引っかかっていたけどー、あははー」 霧静さんにはやっぱり気付かれてたみたいだ。 霧静さんもかなりの実力者。いや、なんで僕がこんな偉そうなんだよ。僕より武装神姫のオーナー歴は先輩なんだから当たり前じゃないか。 アホなこと考えてないで、実際どうしようか? あちらはまだアレを持ってそうだからな。 背面キャノンのバリスティックブレイズは却下だ。動きが大きいから遠距離からでしか通用しないし、その前にやられてしまう。 それ以外ならこっちの武器はあとナイフしか…………あ、それ以外もあった。 『シオン、僕の言うとおりにして作戦は………で……………あれを』 「え、……あ……はい。わかりました」 作戦を伝え終わると、シオンは僕の言ったことが伝わったようで、頷いてくれた。 「まだ、なにか企んでるー? でももう無駄だよー。ほら」 手元には青いカートリッジが転送されていた。 別の属性付加のパーツか。 アリエはそれをエレメンティアに差し込もうとしている。 でもそれが来るのは――こっちは予測済みだ。 「ふっ!」 瞬間で身体を前傾にさせて駆けだすシオン。 駆けだすと同時に手に持つは一振りのナイフ。 それを先ほどのアリエと同じように投擲。 エレメンティアに入れようとしていた青い付加パーツに向かって真っ直ぐ。 あのパーツは差し込むのに若干の猶予があるからそのタイミングを待っていたんだ。 「アタっ!」 パーツに当たれば良いと思ったが、手元にも当たったのか、手を押さえ悶え始めたアリエ。 これは好機だ、いけシオン。 ……あれだ。あれを出すんだ。 「いっけぇ! てりゃー!」 近くで沈み込んでから渾身の――右アッパー。 格闘技を題材にした小説を見て、編み出したこの技。 名付けるとしたら『ライジング・アッパー』 これを使わせるとは、アリエ恐るべしだ。 この技は膝ジョイントをバネにしてから、腰・肩・手に力を移動させ神姫の拳に全威力を乗せた必殺のアッパー。 本来はナックルの武器系統を装備して、その上から殴るのが本来の使い方なのだけど威力は十二分にあったみたいだ。 それがアリエの顎にクリーンヒット。 「グハッ」 浮き上がりその後倒れたアリエの傍に瞬時に寄り、近くにあったナイフを拾う。 ナイフが近くにあるのも計算通りだ、本当に。 それをアリエの首元にシオンはスッと軽く押し当てた。 神姫のノーマルな拳ぐらいでへばるような武装神姫たちじゃないだろうからだ。 「どうです? 降参しますか?」 「いたぁー。手加減してよ、もぅー。降参でーす」 やった、終わった。僕もなんか疲れたなー。 ―――― 「痛ったー、なんでただの拳だけであんな痛いのさー」 バトルが終わると霧静さんとその肩に乗ってアリエも向こうから来た。 アリエは顎を手に当てて、顔をしかめている。 「す、すいません。アリエさん」 「謝る必要はないよ、シオン。これは真剣なバトルだったんだからさ」 「そうよシオンちゃん。最後の最後で油断してたアリエも私も悪いから」 「へーい、すんませーん」 オーナーの霧静さんにそう言われて、すごすごとアリエは黙ったようだ。 実際にバーチャルじゃなかったら、どのくらいの威力があったんだろうか。 アマチュアのボクサーぐらいのパンチ力があったらいいな。僕たちが必死に考えた必殺技だったんだから。 「でも、本当に見違えちゃったな。シオンちゃんすごく強くなったね」 「ありがとうございます。螢斗さんとの鍛錬のおかげで戦えるようになりました」 いや、ちょっとしたきっかけで出来るようになったんだから、そんなに持ち上げることはないのでは、とシオンに言おうとしたのだけど場の雰囲気が勝手に進み言い出しづらくなってしまった。 「はー、前にもこんな風に負けたことあったよねー。あの頃はエレメンティアをろくに扱えてない若い私だったねー、うん」 「若いって……そんなに経ってないからね。前に使った戦法があるけど今日は準備不足だったみたい」 霧静さんもアリエも自分の戦い方を考えて、勝ったり負けたりしてきてるみたいだ。 強く思えても、色々な積み重ねが必要なんだな。 と、僕が思ってたら、アリエがふっと思い出したように手を叩く。 「そうそう。とりあえずさー、これで赤い大剣の状態は克服できてたから、これで因縁の相手と戦えるんだねー。私にも勝ったんだから、必ず勝ってよねー」 「お姉ちゃんと……」 アリエが言ったことを聞くとシオンは顔が暗くなる。 僕が無理矢理決めてしまったけど、シオンにはやはり辛いことだったのだろうか。 ――いや、そうだよね。 実の姉ではないとしても、元は家族の一人だったんだから、家族と戦いたいなんて誰も思わないよ。 「怖い?」 姉と戦わせるなんて僕はなんてひどい奴なんだろうか。 戦えるようにはなったんだから、シオンが望むならこのままでも……。 そう思い、シオンの目を見つめ言葉を発しようとした。 けど。 「大丈夫ですよ。私は螢斗さんの物ですから。螢斗さんの思うがままに」 「シオン……」 それを聞いたら、僕の涙腺が緩くなってしまったが……気合いで我慢した。そんなところを霧静さんやアリエに見られたくなかったからだ。 僕を安心させるよう少し演技が入ったような口調。 自分にも言い聞かせるみたいなそんな感じ。 もう、戦う事から逃げることはないと思える瞳をしている。 姉と戦う決意も一緒にそこから感じられた。 「うわー。ケートんの物とか言ってるよー。大胆発言だねー」 「長倉くんはシオンちゃんにすごい思われてるんだね。……それに比べてこっちは……はぁ」 「こっち見てため息とか、ひっどぉー! それが自分の神姫に対する態度かー」 僕たちの横では、別の戦いが勃発しようとしていた。 それでも二人はすごく仲が良さそうに見える。 神姫と人には色々な関係があるんだなと僕は場違いにも思ってしまった。 前へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2816.html
SHINKI/NEAR TO YOU Phase02-1 快晴の青空の下、シュンとゼリスは群衆の織り成す熱気なかで揉みくちゃになっていた。 「連休の最終日だってのに、なんでこんなに大勢集まってるんだ?」 人のうねりが作り出す流れ。その隙間を縫うように進みながら、シュンが辟易として呟く。 「それだけ武装神姫の人気がある証でしょう。良いことではないですか」 それに答える声は文字通り、彼の頭上から降ってきた。 すっかり外出時における彼女の定位置と化した少年の頭の上に座って、ゼリスは呑気な感想を述べる。 「あのなゼリス。……今日何をしに来たか分かってるんだよな?」 そんな相棒に釘を指す意味でシュンは問いかける。 それに対しゼリスは「何を今さら?」といった態度で、はっきりと宣言した。 「この大会で優勝するために決まっているでしょう?」 シュンはやれやれと肩をすくめる。 それから中身を確かめるように、肩から下げたクォーターバックを背負い直す。バックのなかに入っている〝これ〟がどこまで通用するのか。不安な気持ちもあるけれど…… (ユウ、こいつにも期待してるぞ) ゼリスの反応が頼もしく感じられたのか、それとも周囲の熱気にあてられたのか。 シュンは会場に近づくにつれ不安とは別の意味で自分の気持ちが昂ぶっていくのを感じていた。 * 関東の首都圏から幾分離れた丘陵地帯に、摩耶野市という街がある。 今や多数の企業や研究施設が誘致された学術研究都市として多くの人々が暮すその街は、市の中心に公共施設や大型商業施設の集まった中央区があり、それを取り巻くように多くの民家や集合住宅が集まった住宅地区が広がっていた。 その住宅地区では今、そこかしこの住宅から鯉のぼりが上げられている。 その姿は街に色を添え、年に一度のゴールデンウィークの到来を告げていた。 そんな若葉の匂いも心地よい四月末の日曜日。 とある一軒家の庭先で、ひとりの少年がのどかな雰囲気とは対照的に真剣な顔でPDA(携帯情報端末)を開いていた。 庭には段ボールを継ぎ接ぎしたオブジェクトが鎮座している。造りは荒いものの各所に凹凸や障害物が設置されたそれは、彼の手による自作のテストフィールドなのだ。 「よし、次の動作チェックいくぞ」 少年の呼びかけに応じ、段ボールの上で小さな影が動く。 全長15cmほどの、褐色の肌に青と白のボディースーツをまとったオートマトン。 名前はゼリス。 彼女は彼――有馬シュンの武装神姫だ。 ゼリスは青いポニーテールを揺らしながら、テストフィールドを軽快に飛び跳ねる。 今ゼリスが身につけているのは、ハンドメイドの試作武装パーツだ。成形色も新しい試作武装。その性能を楽しむように、ゼリスは次々とアクロバティックな動きを披露する。 「実際に使ってみてどうだ、調子は?」 「……そうですね。若干肩アーマーの反応が遅いかもしれません」 ゼリスは段ボールのフィールドから大きくジャンプし、空中で繰る繰る回転しながらベランダに着地する。それから確認するように何度か肩を回した。 シュンの目には問題ない動きに見えるが、ゼリスは納得がいってない様子。 肩部にマウントされている馬蹄状のユニット。棒状のスラスターを備えたそれは、このハンドメイド武装の要になるパーツだ。それだけに確かに調整は念入りに行なうべきだった。 シュンはゼリスの隣に腰を下ろし、PDAにチェック内容を入力していく。 「ふたりとも~、お茶持ってきたよ~♪」 彼が書き込みを終えると同時に、ベランダにおさげの少女がやってきた。シュンの妹である有馬由宇だ。 由宇は両手でお盆を持ったまま、器用に片方の足で引き戸を閉めてシュンの隣に座る。 我が妹ながら、いいタイミングだ。テストもひと段落ついたところで休憩には丁度いい。……女の子が片足で戸を開け閉めするのはどうかと思うけどな。 「はい、ぜっちゃんには疲れたときのクーラントだよ」 「ユウ、ありがとうございます」 ゼリスは軽くジャンプすると由宇のつまむヂェリカンを空中で巧みにキャッチし、そのままふたりの間にちょこんと座る。 ちなみにヂェリカンとは神姫専用の嗜好品で、今ゼリスが受け取ったクーラント・ヂェリーは飲むとクールダウン効果が得られる。前にゼリスに聞いてみたら、お茶みたいな味で結構おいしいらしい。……いや、僕は人間だから決して飲んだりはしないけどな。 「テストの調子はどう?」 「やっぱり肩部ユニットの調整が必要みたいだな……」 シュンは冷えたアイスティーを受け取る代わりに、PDAを由宇にパスする。受け取った由宇は表示されたデータに目を通しながら「むむむぅ~」と眉を寄せた。 うーん、妹よ。武装神姫用の武装セットをいきなり自作するってのは、流石にハードルが髙かったんじゃないのか? ゼリスは数週間前に有馬家の一員となった。 しかし、ここで問題がひとつ。彼女には専用の武装パーツがセットされていなかったのだ。 そこで自称〝美少女神姫マイスター〟の妹、由宇が自作武装を作ると宣言したのだが、こいつにとっても武装パーツを一から自作するのは初めてのこと。 それでもなんとか一通り武装の組み立ては終わったものの、今は各部の調整作業に手間取っている状態。 シュンもできる限り妹に協力しようと、パーツの買い出しやこうしてテストを手伝ったりしている。しかし、これがなかなかうまくかない。 完成まで至らないうちに、気づけばもう四月も終わりだ。 週末からはゴールデンウィークに入る。由宇はもちろん、シュンにとってもなんとかこの連休中にテストを完了させるのが目標となっていた。 アイスティーで喉を潤しながら横目でゼリスを見やる。 ゼリスはクーラントヂェリーをこくこく飲みながら、由宇と一緒にPDAを覗き込んでいる。 その真剣な表情から他ならぬゼリス自身が一番、この自分専用武装パーツの完成を待ち望んでいることは間違いない。 ゼリスのためにもできる限り頑張りたいのだが……由宇みたいにパーツの設計や製作ができないシュンがやる気になったところで、せいぜい細々とした作業の手伝いくらいしかできない。それがもどかしい。 (僕も由宇みたいに、そっちの知識をもっと増やすべきなのかもな……) そんなことを考えながら、いつの間にか空を仰いでいた視線を戻す。 すると、真向いの住居からこちらに歩いてくる人影が見えた。有馬家のお隣さんであり、シュンの幼馴染でクラスメイトでもある少女――伊吹舞だ。 「はろ~、シュッちゃーん♪」 「どうしたんだよ、伊吹?」 満面の笑みで現れた伊吹に、シュンは内心呆れつつ答える。……きっとこいつには悩みとかないんだろうなあ。 そんなシュンの思いなど知らぬ伊吹は、由宇とゼリスに「やっほー。ユウちゃん、ぜっちゃん、元気~?」と気さくに挨拶を交わしている。 「……ふ~ん。ひょっとして、例のぜっちゃん専用武装のテスト中だった?」 「はい。現在予定シークエンスを終了し、クールダウンを行っています」 ゼリスの返答に伊吹は「やっぱりね」と納得顔。こう見えて伊吹は摩耶野市でも有数の武装神姫マスターだ。数少ない女性ユーザーの上位ランカーということで、その界隈ではちょっとした有名人であるらしい。 ゼリスのマスターになった際にも、伊吹には先輩マスターとしていろいろ助言してもらっている。そのためかゼリスも伊吹のことを信頼しているようだけど……マスターである僕よりも敬意を払ってるように思えるのは気のせいか? 「――別に、そのようなことはありませんよ?」 ゼリスがジトッとした視線を寄越す。――人の心を読むな。 「ねえ、シュッちゃん。ユウちゃんはさっきから何をうんうん唸ってるの?」 伊吹に言われて振り向くと、由宇はまだ低く唸り声を上げながらPDAにデータを打ち込んでいた。そのままディスプレイに目を走らせ、思案気に視線を漂わせていたかと思うと、 「う~~ん、だめだ~~っ」 急に倒れ込み、ベランダに寝転んだ。 「……あれ、マイさん来てたの?」 ころんと寝転んだまま、由宇はきょとんとした顔で伊吹を見上げる。 どうやらデータと睨めっこするのに夢中になるあまり、伊吹が来たことも気がついていなかったらしい。やれやれだぜ。 「どうしたのユウちゃん。何かトラブルでもあった?」 心配そうな伊吹に、シュンは武装パーツの調整で手間取っていることを教える。 「なるほど。要するに、システム的に複雑な部分の制御で悩んでるわけね」 「うん。もう少し実戦的なデータが取れれば、それを使って調整もできるんだけど……ここじゃあちょっと……」 一同の目の前には、例の段ボール製テスト用フィールドの姿があった。 ユウの要望でシュンが必死にいらない段ボールをかき集めて作り上げた代物だが、所詮は素人の工作。簡単なものならともかく、本格的なデータ収集に使うには無理がある。 「そういうことなら、丁度いいものがあるわ!」 伊吹は明るい声を上げ、ポケットから一枚のチケットを取り出す。 「なんだそれ?」 首を傾げると、伊吹は「ふふんっ♪」と得意げにチケットをシュンの目の前にかざす。 ちょうど映画の前売り券くらいの大きさのチケットだ。緑色をしたそれの中央には、大きく「公式トーナメント参加権」と印刷されていた。 「今度、神姫センターでトーナメント大会があるんだけど、この大会タッグマッチ戦なのよ。これにうちのワカナとぜっちゃんのコンビで参加しましょう!」 ▲BACK///NEXT▼ 戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/182.html
-”A”- 私はアーンヴァルタイプのMMS。 愛称はアルファ。 マスターが最初に購入したMMSだから。 ”A”を指すコード。 闘技場へはマスターのセカンドカーで行き来する。 マスターが運転し、他の神姫たちは後部シート。 セカンドシートは私の定位置だ。 帰路。 戦績が悪いときは家までの一時、この位置は地獄に感じる。 戦績が良いときは天国だ。 運転中、マスターが私たちに言葉をかけることは無い。 それでも 機嫌の良いマスターの横顔を眺めていられる。 他の神姫たちの目を気にせずに。 ガレージに車を入れるとマスターはさっさと二階の居住区画へと階段をあがっていく。 他の神姫たちはこのガレージが兵舎となる。 指揮官機である私だけが二階に入ることを許されていた。 「今日はよくやった。 各自装備の手入れがすんだらゆっくり休め。 後はまかせたぞ、ブラボー。」 今日の戦闘データのやりとりを終えると私は二階へと向かう。 人間用の階段も飛行ユニットを装備したアーンヴァルタイプの私には苦にならない。 「失礼します!」 ドアにあけられたMMS用の出入り口 (元はネコ用だと聞いた)の前で声をあげてから5秒後に入室する。 マスターが入室を拒むときは何か返事があるからだ。 返事がないということは入室を許可されたと判断するのが常だった。 マスターはさっそくネットワーク端末に向かい、今日のニュースに目を通されている。 机の角へと飛び上がって、直立不動の姿勢をとる。 「戦闘結果のご報告にあがりました」 「ん。データ送っといてくれ」 ちらりと私を一瞥して視線をモニターへ戻す。 「マスター…」 私の言葉をさえぎるように小さくため息をつくマスター。 「ワイヤレスは情報漏れの危険性が高い。か? ったく・・・」 ネットワーク端末につないだ接続用ケーブル、 その先を指でつまむマスター。 私はこれ以上ないくらい素早い動きで 自分の端子口をあける。 「接続準備完了!」 ──!! ズブリと一気に差し込まれる端子。 その衝撃が全身をかける。 カチリと私の奥に端子がおさまる。 声が出そうになる。 マスターはモニターへ視線を戻してネットワーク端末を操作しはじめる。 端子をくわえこんだ私の部分が熱くなる。 んぅぅ・・・ 有線接続にどうしようもない昂りを感じる。 マスターの横顔。 マスターがネットワーク端末を操作する動作。 それを見て机の端で身悶えする自分。 …最低だ。 頭の中であらん限りの罵倒を自分に浴びせる。 でも コアが熱くなるのがとまらない。 マスター!マスター!マスター! ……… …… … 「…だなぁ。まぁ、こんなもんか…」 ブッ! モニターを眺めながら片手で乱暴に端子を引き抜くマスター。 「ひぁ」 思わず小さな声が漏れた。 本棚の隅。 何かの部品を梱包していた気泡緩衝シート (プチプチのアレ)が私のベッドだ。 ここからだと部屋が見渡せる。 警備には最良のポジション。 そして、マスターの寝顔も。 武装神姫のAIは成長する。 それが武装神姫の魅力であり強さであると言う。 そしてAIの成長に失敗したものは捨てられる。 … AM6:45 そっと、マスターの枕元へ降り立つ。 寝息でマスターが熟睡していることを確認する。 「…マスター…」 大きなその頬へそっと自分の頬を寄せる。 温かい。 不自然なその格好のままでも 苦痛を感じないこの身体に感謝する。 AM6:59 そっと身を離して目覚まし時計の鳴るのを待つ。 ”piririri!!!!!” 「起床時間です!おはようございます!マスター!」 挨拶が返ってくるかどうかは… 残念ながら確率が悪い。 「ガラクタども!お前らはマスターを愛しているかっ?!」 配下の神姫を前にして今日も私は闘技場の格納庫で叫ぶ。 「相手のガラクタどもを残らずファックしてやれ!総員出撃!!」 私は戦い続ける。 オイルと硝煙にまみれて。 失敗したと言われぬように。 捨てられぬように。 愛しているから。 end-