約 220,451 件
https://w.atwiki.jp/morigirl/pages/1314.html
#ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (ミニイベtop.gif) 期間 3月30日(金)15 00~4月2日(月)13 00 期間中の来店予約回数に応じて景品が貰える♪ ◆既にコンプしているお得意様も予約が取れます。 ◆今回のミニイベントは達成回数をクリアするごとにアイテムが貰えます。 10回達成 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (店用ぼんぼり.gif) 【店舗アバター】ぼんぼり ※通常のアバターアイテムではありません。 ※イベントTOPページの店舗画像に反映されます。 30回達成 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (ぼんぼり.gif) ぼんぼり カテゴリー 置物 出現位置 アバター左右に2つずつ 【ステータスなし】 交換不可 50回達成 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (町屋風オープンテラス.gif) 町屋風オープンテラス カテゴリー 背景 【ステータスなし】 交換不可 注意事項 ◆ミニイベント期間中に、お得意様の予約を取るとカウントされます。お出迎え回数ではありません。 ◆賞品は達成回数ごとに獲得出来ます。 ◆賞品はプレゼント出来ません。 配置イメージ #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (comp_img.gif)
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/715.html
戦うことを忘れた武装神姫・番外編 ちっちゃい物研・鳳凰カップ編-01 鳳凰カップ特別編便乗企画(マテ <東杜田技研・イベント出展のご案内> このたび、弊社では鳳凰カップにおきまして、企業ブースとして 出展することとなりました。 出展内容は主に武装神姫向け機器 (HT-NEK)のご紹介となりますが、他にも各種機器や製品の展示 やデモを予定しておりますので、ご来場の際にはぜひお立ち寄り いただきたく存じます。 また、物販コーナーも設置いたします ので、一部商品はその場でお買い求めいただけます。(十分な数 を用意いたしますが、品切れの際はご容赦ください。) 出展予定内容は下記のとおりです。 ~鳳凰カップ・企業ブースへの出展内容(予定)~ ■HT-NEK・武装神姫向け製品の展示 >現在までに発売した製品の展示・デモを行います。 和(なごみ)壱型 さわやかしんさつしつ ぬくぬくこたつ ふたごのおひめさま デラックスふにふに抱き枕型診断機 神姫といっしょ・神姫用端末 ・・・ほか >今後予定製品の試作品展示をいたします。 おっきいぬくぬくこたつ DMH-SP(オプションパーツも同時展示) レブリミット(仮称)シリーズ各種 ポケットスタイル 和(なごみ)弐型 ・・・ほか ■弊社各部門の紹介(企業案内) >リクルートコーナーも設置する予定です。 ■物販コーナー >弊社製品と、一部提携ブランド商品のの販売をいたします。 (販売予定商品) 和(なごみ)壱型 さわやかしんさつしつ ぬくぬくこたつ ふたごのおひめさま(直送になります) 各種オプション・周辺機器 TODA-Design・プリンセスドレス エルゴ・DXベッド型クレイドル ・・・ほか ■神姫メンテナンス相談 >小型機械技術研究製作部をはじめとした、弊社スタッフがあなた の神姫の日常メンテナンスから、リアルバトルによる損傷の補修 まで、ありとあらゆる質問にお答えいたします。 (時間枠あり・整理券方式、無料です。) ※内容は、随時HP等で更新いたしますので、ご確認ください。 ※弊社は協賛企業としまして鳳凰カップに協力いたしております。 今大会の副賞を、弊社より提供いたしました。 優 勝:クレイドル・ふたごのおひめさまフルセット および小型機械技術研究製作部による1年間 メンテナンスプログラム利用権(2体分) 準優勝:クレイドル・さわやかしんさつしつフルセット および小型機械技術研究製作部による1年間 メンテナンスプログラム利用権(1体分) 3 位:弊社・小型機械技術研究製作部による1年間 メンテナンスプログラム利用権(1体分) ほか、リザルトによる副賞に、下記の副賞を提供しました。 ぬくぬくこたつ、デラックスふにふに抱き枕型診断機、など 参加者全員に「神姫みかんストラップ」を用意いたしました。 以上 ※追加案内※ 本イベントにおきまして、クレイドル「ポケットスタイル」を先行 限定販売いたします。 数量限定となりますので、整理券方式にて 販売をさせていただきます。ご了承ください。 <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/481.html
戦うことを忘れた武装神姫・番外編 ちっちゃい物研・商品案内-6 ・・・武装神姫向けサブパワーユニット・発売延期について・・・ 当社で鋭意開発中の武装神姫専用サブパワーユニット「DMH-Style」ですが、 最終調整段階に於きまして、ユニット2基搭載タイプ(-C型、-H型)の安定性 の面で、より一層の改良が必要であることが判明いたしました。 つきましては、ユニット自体の設計も一部改良をせざるを得ないこととなり、 誠に申し訳ありませんが「DMH-Style」の発売を当面延期とさせて頂きます。 ご興味・ご関心を寄せて頂いた皆様、ならびに各方面の皆様に深くお詫び申し 上げるとともに、何卒、ご理解賜りたく宜しくお願い申し上げます。 東杜田技研・小型機械技術研究製作部 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 〜ちっちゃいもの研・応接室にて〜 久遠:「発売延期するんだ。珍しいねぇ、ちっちゃいもの研にしては。」 Cta:「仕方ないだろ、ユニットでかすぎて2台は物理的に無理だって判明したんだから。」 久遠:「物理的にって・・・。 作ってて誰も気づかなかったのか?」 CTa:「とりあえずやってみる、それから考える。ってのがウチの伝統だし。」 久遠:「・・・。」 沙羅:「ますたぁ〜・・・ こ、これは駄目っす・・・」(ぱったり) 久遠:「さ、沙羅っ! そんなにボロボロになって、何があったんだ?」 CTa:「さらに小型化して、何とか2基搭載できないかなーって、やってみたんだけど・・・」 沙羅:「たとえ制御できても、たぶん身体が追いつかないっすよ。。。」 ヴェルナ:「ぁーーーーっ!! ひさとーさーーーん! こんにちはーーーーーーぁ!!!」 (と、応接室に飛び込んできたヴェルナ、止まれずにものすごい勢いでロッカーにめり込む) CTa:「あーあ。やっぱ制御しきれないかー。 ヴェルナでも駄目っぽいね。」 久遠:「おい! 誰かこのユニットの開発をやめさせろ!!」 CTa:「えー? なんでー? きっちり調整すれば使えるよー。」 久遠:「駄目ったら駄目!! ったく、誰だ、こんなユニットを最初に作ったのは。。。」 CTa:「あんたの所のエルガとリゼだよ。 持ってきたのは1ユニット型だったけどね。」 久遠:「え・・・ そ、そうなの?」 CTa:(黙って頷く) 久遠:「じゃ、じゃぁ、1基搭載までは・・・いい・・・かな? あ、あはは・・・」 (あのパワーアップバカップルめ・・・ 俺の立場がないじゃないかっ!!) <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1606.html
「そして唐突に、3Sが斬るのお時間です」 「お時間ですね、サラ(仮)さん」 「(ぱちぱち)」 「なんでしょうかその(仮)というのは」 「前回お名前出ましたが、けれども正確には別神姫かもしれませんよーと言うアピールです」 「(うんうん)」 「いや意図よりも、その表現そのものに疑問が」 「なるほど、(笑)のほうがよかった、と」 「……この時代、マサルさんなんて誰も知らないと思う」 「それが判ってしまうのが、ディープな世界の猛者たちです」 「本当に油断がなりませんね、この業界」 「(放課後キャンパスのポーズ)」 「さて、ぐだぐだトークはこのあたりにして、本題です」 「あったんですね、本題が」 「……意外」 「生温かいご声援、ありがとうございます。さて、それで本日のお題は『第六弾武装神姫について』!」 「第七弾は年末に控えている今、最新の武装神姫ですね」 「寅は許す。丑は許さない。建機は判断保留」 「お、さっそく積極的なご意見が出ました。して、その心は?」 「悪魔型として、やや苦手な遠距離型と、組み合いやすい近距離型ということでしょうか?」 「主に胸」 「判ります!」 「判りますとも!」 「女性にとっては、わりと切実な問題らしいですねぇ」 「そうなの?」 「私に聞くなっ!」 <戻る> <進む> <目次> 犬子さんの土下座ライフ。 クラブハンド・フォートブラッグ 鋼の心 ~Eisen Herz~
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2659.html
にわか雨だったらしい雨も止み、今日から明日に変わる時間帯。 つまりは0時頃。 俺はこの真っ暗な時間にお気に入りの缶コーヒーが売ってなかったコンビニに再度向かった。 別に新しく在庫が入ったかどうかをしつこくチェックしているわけではない。 他に用事があるから向かっているだけだ。 「……お」 コンビニの制服を着た“アイツ”がいるのを見つけた。 殊勝にも店の前のでかいゴミ箱から、袋を出して口を結んでいる。 「おーす」 「ん? ……ああ、おはようだ」 「真夜中でおはようはねーだろ」 「とある業界では、今日初めて会った人の挨拶はおはようなのだよ」 「なにアホ言ってんだ?」 妙な会話から始まったが、この目の前の女性は君島 縁。 コンビニの制服で腰まである長い髪を首元でぞんざいに結んでいる姿。縁は夜中までこのコンビニで働いている。 初めて出会った日からは俺達の関係しか変わってない。 会いたい時は夜中にここに行けば大抵会えるので俺はよく夜中に出かける。 「おい、さっき来たら『スモロ』がなかったぞ。ちゃんと入れとけよな」 「やれやれ、我が儘を言う。私が商品を管理してる訳ではないのだがね……」 ちなみに『スモロ』というのは『スモールロック』の略称で俺が好きな缶コーヒーのメーカーだ。 このコーヒーが売ってなかったから神姫を拾ったガキどもに会っちまったからな。それについても愚痴ついでに話しておくか。 「そういえばよ、縁も武装神姫って知ってるよな」 「もちろん私も世間の流行は知っているのだよ。それに私はキミの例の人助けならぬ、神姫助けの病気は知っているのだし。……それの入院が必要になったのかね?」 「違えって! ……入院は違うが、神姫助けの方だ」 縁にも、俺が神姫を助けようとする発作は知られている。 ネタぐらいの気持ちで話したら、よくいじられることになった。コイツに話したのは後悔している。 しかも、こいつは気にならないのか、俺がこんなアホな奇病になった経緯を聞いてもこない。 (不思議な女なんだが、俺はそんなところも……あ~……) 恥ずかしいので俺は考えたことを瞬時に捨てた。 「実は今日壊れた神姫を…………拾ったんだ」 俺は軽く視線を逸らしてから言った。 「……ふむ。キミもなのか」 横目に見れば縁は何かを呟きながら、目を見開き少し驚いている。 「あ?……どうした」 「いや、なんでもないぞ。……それで、拾ってどうしたのだね?」 その後縁は肩を竦ませてから、俺の話しの先を促した。 「神姫ショップに働く人が、偶然、道を通ってな。そこの人の店に預けた」 「ほう、偶然。ラッキーだったのだな。……で、どうするのだ? その神姫を猛は引き取るのかね?」 「正直、俺自身もわかんねーから、縁に相談しに来た」 俺が武装神姫を持つ? はっきり言って俺みたいな野郎が持つのは気色悪いという気持ちがあったりする。 だから俺自身は持とうとしていないのだ。 それだったら、神姫におせっかい焼くなと言いたいのはわかる。 自分でも理屈でわかってる。だが、あの少女のような風体の武装神姫には個人的に”感謝”してるんだよ俺は。 ……は~あ、どうすっかなー。 と、俺が頭を抱えて悩みこんでいると。 「別にいいのではないか? 猛が武装神姫を持っていても」 「……。野郎が持っていたら、気持ち悪くないか?」 「いや。私はそうは思わん。現にここのコンビニに働いている高校生の少年は最近、家出神姫を拾ったらしくてな。そのまま世話をしているらしいのだよ」 「へぇー、拾うところとか俺と似たようなエピソードだな。拾った神姫がぶっ壊れてなけりゃ、俺が新しい親でも探してやるんだが……」 「そのまま猛が持ち主になればいいのではないか?」 やっぱり、縁もそう言うのか。 俺にはそれに一抹の不安があるのだが。 「……俺が持っていても縁は不信に思わねえのか」 「ふ、猛が言いたいことは百も承知。……実は高校生の少年の話を聞いてみたら、私も武装神姫を買ってみたいと思ってしまったのだよ。だから私も神姫オーナーになろうではないか」 いやいや、そうじゃなくて。 俺が言いたいことは、神姫も人形とはいえ女の格好してるんだから、変なことを起こさないか心配にならねえのかっつうことを言いたいのだが。 「ん、……なんだね? ちなみに忍者型がいるというのでそれを買おうと思っているぞ」 だめだ。 本気で心配してないっぽい。 二年前に初めて会ったときからこいつは変な女だと思っていたが、いまでも変な女だと思ってる。 「はあ、わかった。様子を見に行ってみて、そんときに考える」 俺はこれ以上縁の邪魔しちゃ悪いと思って、帰る準備をする。 「ふむ。私はなんだかんだで、猛はその子の親になると思うぞ」 「……知ったような口だな」 「キミは実際怖い顔をしているが、本当は優しい男だと私は知ってるからな」 縁は真顔でそう言ってきやがる。 俺はそれを聞くと後ろを向いた。 断じて恥ずかしがってる訳じゃない。断じてだ。 「それじゃあな。仕事無理すんなよ」 「ふふ……ありがとうな。おやすみ」 縁はお礼を言った後は口を縛ったゴミ袋を持って、店の裏に行ってしまった。 俺も縁に会って話したかっただけなので、コンビニで何も買わずそのまま家に帰った。 縁と俺は世間一般でいう“彼氏彼女”だ。 ただの眼つきが鋭い大学生、と、夜から深夜帯でコンビニに働いているフリーターらしい彼女。 傍から見たら馴れ初めなんつーモンはわからんと思うぞ。 大恋愛をして付き合うことになったとか、少女漫画みたいなドロドロな展開になってからハッピーエンドになって付き合うことになったとか、そんなことも一切ない。 しかも、こんな会話だけだと恋人関係にしては素っ気なくもあるが、恋人らしいこともあまりしていない。 聞いたことはないが縁は俺よりも年上だとはわかっていた。イチャイチャするような歳でもないだろうし、これが縁の距離なんだろう。 不満はないし、俺が初めて会った時、そして告白してOK出されてからもなぜか変わってない。 ……あれ? 恋人らしいことをした覚えがあまりない。 本当に縁は俺の彼女なのかと思う。 駅とかで見る恋人たちは人前でもイチャイチャしてるのにな。 ……別にいいけどよ。いきなりラブラブしだしたら気持ち悪いし。 なんで年上で変な女を俺が惚れることになったとかは…………昔に色々あったとしか言えない。 ただの若気の至りだ。 くそ恥ずかしいので思い出したくない。 ―――― 「いらっしゃい!……なんでぇ、オメーか」 「……おい。来た客に向かってなんつーこと言ってんだよ」 半日以上大学の眠くなる講義に縛られ、夜のとばりが差す頃。 店に入れば、熊みたいな大きな店長のおっさんが残念そうにしている。 せっかく大学の帰りからここ『Blacksmith』にわざわざ来たっつーのによ。 「閉店間際で男の顔なんか見たくないぜぇ。できれば神姫愛好家で可愛がってる二十代後半のお姉さんが来てほしいっつうの? 男なら、そういう心情がわかんだろ」 「いいや、俺はわからん。……独り身かよ。何歳なんだ?」 「俺は……29だ」 「ウソだろ」 「ホントだ! 自分でもわかってんだから言うんじゃねぇ!!」 どうやらよく言われているらしい。 俺から見ても、明らかに顔はもう30代に見える。 この店長のおっさんは年齢よりも老けて見えているのが悩みみたいだ。 その上身体がくそでかいし、顔に傷があるしで、そんな女性客が来たとしても怯えて逃げちまうだろうが。 おっさんの姪、霧静みたいな学生が店内で働いていたら大丈夫だが。 店長のおっさんだけが店にいても、その望みは絶対叶わないであろう。 つーか、29歳で高校生ぐらいの姪がいるということは、このおっさんはおそらく弟なのだろうな。だったらおっさんの兄が20歳からの前後半で霧静は生まれたことになるのかもしれん。 兄は早く子どもが生まれてて、弟は29歳で姪とその神姫に助けられながらショップをやっている。 哀れなおっさん。 「ふーん、あっそう。そんで? 昨日の壊れた神姫はどうなったんだよ」 「あ! 話し逸らしやがったなぁ!!…………ったく」 店長のおっさんは、これ以上話してもしょうがないと思ったのか。 ため息を吐いてから、店の入り口に行って営業中の札を準備中にした。 「もう閉店なのか。まだ営業中じゃねえのか?」 「別にいいだろ。もう来ないだろうからなぁ。漣同だったか? ちょっとこっち来い」 営業者がそれでいいのかと思うが、確かに人は来ないっぽいし、閉めても来ないのだろう。主に店長の図体のせいで。 店長のおっさんについて行って、カウンター奥に俺も行く。 「今日は来ねぇと思ってたけどよ、オメーさん、意外に神姫が好きなんじゃねぇか?」 「……うっせえ」 前を歩きながら、後ろを振り向いてニカー、とかの擬音が似合いそうな笑顔。 おっさんの笑顔なんか見ても嬉しくねーよ。 俺が通された所は応接室と言えばいいのか、少し広い部屋で長方形のテーブルに向かい合わせに長広なソファーがある。 横を見れば作業場と名が書かれた扉があった。 「持ってくるから、まってろい」 店長のおっさんはその作業場らしい部屋に入った後すぐに真新しくなった神姫を持って来た。 その神姫をテーブルに置いてから店長のおっさんはソファーに座る。 とりあえず俺も反対に座った。 「こいつはまだ完全に治ってねぇんだわ」 「ああ、あれだろ? 目の部品がねえってやつ」 俺は神姫を手に取ってみた。 綺麗になったが左目に眼帯をしている。 少しどけてみると眼帯の奥は穴が開いていて、電子機器のような部品がゴチャゴチャしている。 機械人形の頭の中は理解できないパーツでいっぱいなんだろう。 「あ、おい。頭ん中に埃とか入ったらどうすんだ。ほら、寄こせ」 俺は素直に渡した。 せっかく治したのに、壊されたらたまらないのだろう。俺はそんな乱暴に扱うやからではないのだが、むしろ、そういう奴が大嫌いっていうのか。 ……俺もはたから見たらそう見えそうだけどな。 とりあえず、すこし反省。 「この神姫、脳内メモリとかも全滅だったんだけどよ。そんで初期化もしてっから、目以外は新品同様にしといたぜ。……んじゃ、一回、起動させてみようか」 そう言って店長のおっさんは神姫の胸部、CSCの部分を弄ったあと、その神姫を立たせた。 座ってる俺と向かい合わせになるように。 なんで? と思う間に起動音がしてから、片目と口が同時に開き機械音声のような声が聞こえてきた。 『タイプ・戦車型MMS神姫ムルメルティア。まずは個体識別の為のネーム、マスターのネームをお教えください』 俺は店長のおっさんを見る。 さっさとしろというジェスチャーをしていた。 もうどうにもならんらしい。 「俺の名前は漣同 猛。お前の名前は……まだ決まってねえ!」 はっきりそう言ったら、店長のおっさんがずっこけた。 「おい!?」 「しかたねーだろ。前準備も無く、いきなりそんなこといわれても思いつかねーだろうが!」 ―――― (自分はどうすればいいんだろうか) 起動プログラムから自我を覚ましてみれば、目の前には自分の上官となるマスター、漣同 猛という人がいる。 どうやら、自分の名前はまだ登録できてないらしい。 買ってきた武装神姫になかなか名前を決められない人がいるので、後で登録できる設定もある。神姫センターで名前を変えることもできるので、別に今でなくてもいいのだけど。 でも、この状況はどうだろうか。 目の前のマスター。――「タケル上官」と言うことにしよう。 眼鏡をしていているが賢そうというより、どちらかというと眼つきが鋭そうな上官ではある。格好が良い上官であるのが嬉しくはあるが。 そのタケル上官が自分の真後ろにいる随分と身体が大きな人物と言い合いをしている。 ……うーん、話しかけずらい。 それになにか自分の目に違和感がある。 ぽっかりと空洞な感じで左目が見えていない……触ってみると眼帯で隠されているみたいだ。 戦車型はアクセサリーで眼帯があるが、本当に隠しているわけではないし、あれはちゃんと見えている。だが、自分は本当の眼帯が装備されている。 自分が不良品なのか、リサイクルされた神姫なのかはわからない。 自分が起動したのもこれが初めてではない気もする。 だけど、――そんなことはよくて。 目の前の上官に、こんな片目のない神姫でいいのかどうか聞かなくては……。 「あの!」 「ん? ああ、そうか。本格的に起動しちまったのか……まだ名前決まってねえんだよ」 「さっさと、決めちまえって。『ああああ』とかテキトー名にしても店のPCで直接変えてやっから」 「うるせえ! 俺はこういうのは真剣に考えちまう派なんだよ。旧世代のロープレみたいに考えんじゃねえ!」 自分の入り込める隙がない。 きっとこんな喚き散らした状況で起動されたのは自分が初めてではないのだろうか。だけど、このようなところで自分は負けない。 「タケル上官!!」 「え、“上官”? 上官ってなんだよ!?」 「ムルメルティア型はマスターの呼び名は名前の後に『上官』がデフォルトなんだと。商品のパッケージにも書いてあんだぞ」 「それを早く言えよ! 軽くビビっただろうが。……はぁ、そんで。ムルメルティア型、俺に何か質問か?」 どうやらタケル上官は自分の名前を型名で呼ぶ事にしたようだ。 保留にされてしまったらしい。 内心で少しガッカリしてしまうが、後で良い名前でもつけてくれるのだろうか? 不安だ。 「自分の左目がないみたいだけど、不具合でもあったのかな?」 「あ~、そうだったな。オメーは道で捨てられてて壊れてたんだわ。それを俺が拾った。わかるか?」 「……うん」 自分に付けられている眼帯を再度触る。 本当に自分は完全な新品ではないらしい。 当り前だ。片目がないのだから。 記憶データをリセットされてしまっているみたいなので、自分が仕えていた前の上官はまったくわからない。 何かがあって捨てられてしまったんだろう。 「ほら、落ち込んでんじゃねえよ。目がない部分も修理する予定なんだから」 「だけど……自分は」 「このおっさんがちゃんと治してくれっから心配すんなよ」 タケル上官が指を差したので、自分は後ろに座っていた人物を見た。 自分が思うに……本当に大きい人だなと。 この人はメカニックなのだろうか。 「おっさん言うな! ……そうそう。そういえばよ、部品の事で漣同に商談があるんだが」 「……なんだよ。なかったんじゃねのか?」 「ここに、一個?……じゃねえな。……ここに一粒のパーツがあるんだが」 メカニックの人が後ろのポケットから、プラスチックケースの薄い箱をテーブルに置く。 自分が中を覗き見てみると、布が敷かれていて、真ん中には自分たち神姫に使われている目のような物。 とても綺麗な色だ。 「こいつは神姫の目だ」 「あるんじゃねえか。だったら、さっさとこいつにつけてくれよ」 ぶっきらぼうに今度は自分に指を差している。多少なりとも想ってはいてくれるらしい。 心配もしてくれるし、優しくもある上官だ。 少なくとも変な上官ではないらしい。 それはよかったと思える。 「慌てなさんな。片目しかない分、こいつはとても貴重な物だ。貴重なだけに保管してたのをすっかり忘れててな。……条件次第ではこのムルメルティア型にくれてやってもいいぜ」 「……これが」 この綺麗な瞳が自分の顔の一部になるのか。 自分にしては心が惹かれてしまう。 だけど、タケル上官はどう思ってるのだろうか。 無理難題を出されてしまったりとか、起動仕立てでそんな迷惑は掛けられないのだけど。 「金とかじゃねえのかよ?」 「こいつは一介の大学生とかが払える額じゃねえからな。もちろん借金して払えとかそんな鬼じゃねえ。 ……条件はそうさな……漣同、オメーさんここで働く気はないか?」 「…………はぁ?」 タケル上官は数秒考えてから、すっとんきょうな声をあげた。 自分が起動してから、なんだか凄い展開になってきているみたいだ。 自分自身も一体これからどうなるのか、全然わからない。 前へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/256.html
前へ 先頭ページ 次へ 第六話 恐怖の正体 鶴畑屋敷の客部屋に入るなり、理音は外套を脱いでベッドにダイブした。ダブルほどの大きさの客用ベッドは、金持ちらしいふかふかのやわらかい造りをしていた。飛び込んだ瞬間理音の体が半分も沈んだのである。 しっかりと手入れしてあるから、埃がたつはずもない。 「やわらかぁい」 甘くたるんだ声を出して理音はベッドの上でもがいた。きっと寝返りを打とうとしたに違いないのだろうが、部屋の宙で浮かびながらダイビングの一部始終を呆れ顔で見ていたクエンティンの頭には、もがいた、という動詞しか浮かんでこなかった。 「そんな歳にもなって大人気ない」 「いいじゃないの。ベッドダイビングはいくつになっても楽しいものよ。それに」 やっとのことで仰向けになった理音。 「こんなベッドで寝られる機会なんて、今ぐらいしかないわ」 ぱふぱふと羽毛布団をたたいた。その下のベッドマットは、どうやらやわらかいだけではなく就寝する人間の体系に合わせてベストな凹凸を作り出すハイテクベッドらしかった。微細なモーター音がクエンティンの聴覚センサーに入ってくる。無論理音には聞き取れる音ではないだろう。 「なんだか眠くなってきた」 「ちょっと、お姉さま、せめてお風呂に入ってからにしましょうよ」 「いいじゃないのよう。仕事し通しでおまけにひと騒動あったんだから、眠らせなさいよ。お風呂は朝でもいいわ」 外出時にしゃれっ気を出す人間ほどプライベートな空間の中ではズボラになるものだとはいつか心理学概説の本で読んだ気がするが、もしかして自分の主人がそういう人種なのかしら、とはクエンティンは今の今まで夢にも思っていなかった。 「これから何が起こるかわからないってのに……」 クエンティンはため息をつく。本当はため息ではなく、ただの排気、放熱なのだが。武装神姫は連続的な呼吸はしない。 「心配性ねえ」 理音はもどかしそうに上半身を起こした。 「もう傷はよくなってるわね」 クエンティンの体のヒビや傷は、もうすっかり修復されていた。 修理されたのではない。自然に直ったのだ。生物が怪我を治すように。 「アタシじゃないわ。エイダのおかげよ」 『ありがとうございます』 機械的な礼の返事だった。 新型、プロトタイプとはいえ、エイダと自分は同じ武装神姫のはずだ。なのになんでこんなに違うのだろう。 彼女に三原則はインプットされていない。彼女の持つ自己保存の欲求は、人工知能基本三原則とは別だろう。厳密には欲求ですらない。ただのコンピュータプログラムだ。 クエンティンの、死にたくないという感情とは別のものだった。少しは影響しているのかもしれないが、エイダと融合したクエンティンはデルフィとの戦闘時、三原則なしで、自己を保存したい、死にたくない、と思ったのだ。 武装神姫は人工知能である。欲求などというものはなく、すべてが陽電子頭脳の生み出したコンピュータプログラムに過ぎないはずだ。そして三原則はその根幹に根ざす、基本理念。幹のような、出発点なのだ。 別にプログラムが悪いわけではない。プログラムはプログラムでかまわない。プログラムであろうとそれで動いているクエンティン自身はそれを感情や欲求として感じているのだから、それで良かったのだ。何も思い悩むことはなかった。 今までは。 クエンティンはあるひとつの疑問に気がついた。 自分はどうしてエイダに違和感を覚えるのか? エイダも自分も同じ武装神姫だ。確かにエイダはすこし無感情なところがあるかもしれない。ちょっと無機的だなとも思える。 だがそれはよくよく考えてみれば、彼女の言うとおり「武装神姫」の「総合戦闘支援」のために感情を抑えられているのであって、つまり武装神姫としては自分となんら変わらないはずなのだ。 なのにどうして自分はさっき、彼女の自己保存への欲求を「ただのコンピュータプログラムだ」と思い切ってしまったのだろう? エイダも自分もプログラムで動いているはずなのに、プログラムで動いているはずの自分自身がプログラムを卑下している。クエンティンはその事実に突き当たった。 ちりちり。ゲイザーを出したときの手動プログラムの名残が、脳の片隅で弱くはじけた。軽い頭痛。 「何か深刻な悩み事がありそうね」 「お姉さま……」 「さっきから時々難しそうな顔をするから分かるわ」 再びクエンティンはため息。これは安堵の。お姉さまはなんでもお見通しなのだ。 クエンティンは理音の手のひらの上に降り立つ、そのままひざから崩れるようにへたり込んだ。 「お姉さま」 クエンティンは理音の顔を見上げずに言った。 「アタシはおかしいのかもしれない」 とつとつと語り始める。 三原則もないのに死にたくないと思った自分。エイダのコンピュータプログラムで動く頭脳を卑下した自分。 そもそもエイダによって自分の三原則が封印された時点で、自分はガラリと変容するはずなのだ。プログラムの根幹が封印されエイダのオリジナルの根幹に置き換わった瞬間、根幹を絶たれた自分はまったくの別人になるはずなのである。鶴畑興紀を殺そうとしたことは些細な問題だ。 「アタシ、変わった?」 「姿だけはね。あとはいつもどおりのクエンティンよ」 理音はそう答えた。 でも、それはおかしいことなのだ。 三原則がなくなっただけで、いつもどおりのクエンティン自身がそのままの状態でいることがあり得ないのである。 いや、あるいはもう変容してしまっているのだろうか? エイダのコンピュータプログラムからくる思考回路を卑下しているのだから。 ではそうやって卑下してしまう自分はいったい、何なのだろう? 「クエンティン……」 理音は何もいえなくなったように、ただクエンティンを見下ろす。 「お姉さま、アタシ怖い。自分が自分でなくなっていくみたいなの」 『申し訳ありません』 エイダが言う。 「ちがうよ、エイダは悪くない」 そんなはずはない。原因がエイダなのは間違いない。エイダが融合したせいでこうなってしまったのだ。 それでもクエンティンはエイダを責める気にはなれない。それはなぜか。 良心? ちがう。 エイダのせいで変わったのではなく、エイダと融合することによって自分のおかしさが分かったのである。 自分はもとからおかしかったのかもしれない、ということだ。 「お姉さま、アタシはいま、アタシなのかな」 クエンティンはあらためて尋ねた。 「……お風呂に入りましょう、クエンティン」 彼女を両手で包み込みながら、理音は言った。 浴室は客部屋に併設されたものだが、その広さは一般的なマンションの浴場とは比べ物にならないほどだった。面積だけで言えば小さな旅館の大浴場に匹敵し、しかし客部屋の浴室であるから大人二人以上が利用することは想定されていない。シャワーセットは一人分しかないし、浴槽も大人二人が寝そべって入ってぴったりの容積である。 窓側は一面ガラス張りで、地平線には都市部の夜景が見えている。だがそこ以外は外灯すら見当たらない。おそらくそこらはすべて鶴畑の私有地で、無駄な設備を省いているのだろうとクエンティンは予想した。外灯の代わりにえらく物騒なセキュリティ装置が仕込まれているに違いなかった。あのファランクス砲を見れば用意に察せる。鶴畑の土地はきっと治外法権なのだ。 いまのクエンティンには、ずっと遠くにある都市部が、まるで自分を拒絶しているように感じられて仕方が無かった。 湯船には紫色の花弁が浮かべられ、淡いラベンダーの香りが湯気とともに立ちのぼっていた。ラベンダーの香りは心を落ち着かせるというが、それは神姫にも効果があるらしかった。 いや、と思い直す。神姫にも、ではなく、自分だけに効果があるのかもしれない。神姫にラベンダーの香りはセンサーを刺激するだけで、「ラベンダーの香り」だとは分かってもそれで心が落ち着くなどということは無いはずだ。あってもそれは人間である主人のまねごとだろう。無意識の。 クエンティンは、心が落ち着いていた、と明確に感じていた。 心が、どうする、あるいはどうなる。そう感じる。それが問題だ。 武装神姫にそんなメタ的なものがあるとは思えない。武装神姫とはあくまで、身体は人工物であり思考はコンピュータプログラムであり、それで十分なのだ。それで自分らは満足であり、安心する。言い換えれば武装神姫はそうでなくてはならない。 現にその範疇から逸脱しようとしているらしい自分は、不安にさいなまれているではないか。それがラベンダーの香りで代わられたならどんなに良いだろう。 クエンティンはラベンダーの香りをいっぱいに吸い込んだ。それは陽電子頭脳や素体駆動部を冷却するための吸気でしかない。が、クエンティンは体内にまとわりついた不安を洗い流すようにラベンダーの香りを嗅覚センサーに刺激させ続けた。 「おまたせ」 カチャリとドアが開いて、理音が入ってきた。 小さなタオルで前を隠しているだけの姿だった、細い体格に似合わぬ大きな乳房は今にもタオルからまろび出そうにふるふると揺れている。豊満な女性のシンボルのすぐしたには薄く肋骨が浮かんでおり、すこしやつれた顔や、血色の薄い皮膚、そして慢性的な寝不足がたたって消えなくなった目の下の細いくまとともに、ある種独特のコケットリーを備えていた。 れっきとした大人の女性でありながら、まるで少女のような儚さを持っている。クエンティンはそんな感想を覚えた。これも武装神姫としてはおかしいのかもしれない。 「まったくもう、本当にいいカラダしてるわね」 さすがお姉さまだわ、と、クエンティンは言って自分の不安をごまかした。 「胸だけよ。頭じゃなくこっちに行っちゃった栄養を取り戻すのに、苦労したわ。学生の頃だけど。あとは痩せ細った骸骨みたいな女」 「いまどきの男の人は好きそうだと思うけどな」 「経験もないくせに、生意気言ってら」 「ぷー」 理音は湯船にゆっくりと浸かった。満杯のお湯が溢れだした。ほっそりとしていてもこれだけの体積があるのだ。もっと自慢してもいいのに、とクエンティンは思った。理音の両の乳房は湯船にぷかぷか浮くほどだった。 「あなたも入りなさい」 言われてクエンティンも湯船に入る。完全防水の素体は湯船に浸かったくらいでは壊れたりしない。が、理音の胸元に近づくことはできなかった。突起物だらけのこの体では、理音の肌をちくちくと刺激し、最悪傷つけてしまうおそれがある。いつものように抱きつくことさえはばかられてしまうのだ。 理音の白い皮膚は風呂の熱でピンク色に上気していた。エロティックな魅力が増す。アタシが男の人だったら間違いなく襲い掛かっているだろうな、とクエンティンは思った。 ……いま、アタシは自分を人間にたとえなかっただろうか? 「またそんな顔して」 理音は湯船からちゃぷりと手を出して、クエンティンの小さな頭をなでた。 「どんな風になっても、クエンティン。あなたはクエンティンよ。それは変わらないわ」 おいで、と、理音は招いた。 「でも」 「いいの」 クエンティンは慎重に、理音の胸元へと身を寄せた。特に右腕のブレードには気をつけた。フォールドされている状態では切れないが、それでも先っぽはこの体の中で一番とがっている。 理音は両手と胸元で小さなクエンティンを抱きしめた。 クエンティンは耳の突起に気をつけて、頬を胸にうずめた。 湯の熱と理音の体温が、クエンティンの量子活動効率を低下させる。心地よい眠気。 母親に抱かれるというのはこんな風なのかもしれない。クエンティンは感動していた。 だが、肝心の不安はすこしも消えなかった。 それでクエンティンは思い至った。 自分は、自分が変容することが怖いのではない。それはむしろ自然なことだ。自己とはうつろいゆくもの、変わってゆくものなのだ。学習や、環境や、体験で。 本当に怖ろしいこと。 それは、自分が武装神姫でなくなることだ。 「あーあ、もうこんな時間」 ベッドの横のカウンタテーブルに置かれた金細工の施された置時計の針は、すでに夜明けの方が近い位置を示していた。 理音は客用のガウン姿で、時々あくびをこらえつつ髪の毛を乾かしている。前は結んでおらず、緑色の下着があらわになっている。黒ぶちの眼鏡が置時計の横に置かれている。そういえば、自分の眼鏡はどうしたろう、とクエンティンは思い出した。 この体になったときから眼鏡をかけていない。あの道端で落としたか。 エイダに聞いても『分かりません』と言うだけだった。 『お望みであれば眼鏡を分子融合でお作りいたしますが』 そんなこともできるのか。 しかしクエンティンは、 「今はいいわ。たぶん邪魔なだけだから」 と断った。 理音が髪を乾かし終え、やっとベッドにとびこもうとした時。 ドンッ、ドンッ。 乱暴に扉を叩く音がした。 インターホンがあるくせに誰だろうと思い、理音はドアを開けた。 「アンタがお兄様の連れてきた女、ってやつか」 太った子供が立っていて、いきなりそう言い放った。 「あなた、どなた?」 ガウンの前を開いたまま、理音は眠たそうな目をこすりながら訊いた。 子供はわざとらしくうんざりして、 「鶴畑大紀だ。つ、る、は、た、ひ、ろ、の、り。知らないのか? これだからセカンドの有象無象は……」ぶつぶつぶつぶつ。 ずいぶん嫌な子供だ、と、クエンティンは思った。鶴畑、ということは、あの興紀の弟だろうか。それにしては似ていない。 「まあ、いい。お前、僕の相手をしろ」 こいつは何を言っているのだ。クエンティンは呆れた。言葉も無い。 「もう少し大きくなってからなら考えてあげるわ」 理音はかるくあしらおうとする。 「違う」 顔を赤くしたのがクエンティンには分かった。 「今から僕と神姫バトルしろと言っているんだ」 理音とクエンティンは思わず顔を見合わせた。 つづく 前へ 先頭ページ 次へ
https://w.atwiki.jp/nekokonomasuta/pages/2.html
メニュー トップページ メニュー エラッタ・お知らせ 神姫キャラクター作成 ブランクシートVer2,0 火器分類一覧 飛行ルール 追加技能 移動属性 攻撃範囲 回避ボーナス/ペナルティ カスタムルール 武装神姫一覧 フブキ アーンヴァル ストラーフ ハウリン マオチャオ ヴァッフェバニー サイフォス 紅緒 ツガル ジルダリア ジュビジー フォートブラッグ 量産型アーンヴァル フォートブラッグ-ADAMS- カスタムパーツ 格闘武器一覧 射撃武器一覧 頭部パーツ 胸部パーツ 脚部パーツ 背部ユニットパーツ ラック専用パーツ 内蔵パーツ 外装パーツ 腕部パーツ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1307.html
「お待たせしました」 「いえいえ。……おお、見違えましたね」 私の声に応じて振り返ったマスターさんは、そう言ってにっこりと笑いました。 そして、傍に立てかけてあるパッケージイラストと私を見比べます。 「なるほど、箱の絵と同じになりましたね。素のままの犬子さんもアレはアレで素敵でしたが、やはりこちらの姿が武装神姫としての完成形なのでしょうね。より一層素敵ですよ」 「過分なお言葉、恐縮です」 膝を落とし似非正座の姿勢を取ってから、深々と擬似座礼を行なう私。おそらくマスターさんからは、私の倒した背中越しにぶんぶん振られるドッグテイルがよく見えたと思われます。 それから再び立ち上がり、ちょっと調子に乗って色々なポーズで武器を構えてみたりします。 ポーズをつけるたびに、笑顔で律儀に拍手をしてくれるマスターさんは、本当にいい人だと思うのです。 「……おや?」 「? どうかしましたかマスターさん?」 簡易ファションショーを中断し、私は何かに気付いたマスターさんの視線を先を見やります。 そこにあったモノは……武装装着の際に端子から取り外し、パッケージの影に置いた私の両腕パーツおよび両足パーツでした。 「私の余剰パーツが、どうかしましたかマスターさん?」 「どうかしました、と言うか……あの、いま犬子さんの手はどうなっているのですか?」 むむ、なにやらマスターさん、心なしか顔色が優れません。 「どう、と言われましても……」 とりあえず、私は【手甲・拳狼】をわきわき動かしつつ……おもむろに、【腕甲・万武】から腕を引き抜き、むき出しの接続端子をお見せしました。 「このようになっておりますが」 ……はて、マスターさんは、何を一体絶句なさっているのでしょうか? 「本当に、どうかなさいましたかマスターさん?」 「あー、いえ、なんというか……その装備は、そうやって腕を取り外さないとつけられないものなのですか?」 「ええ、そのようになっております」 「……あの、そうやって腕を引き抜いて付け替えるような形でなくて……例えば、普通に元の腕の周りを覆うような形式にはできなかったのですかねぇ?」 「正確なところは設計者に聞かないことにはなんとも言えませんが、私が考えるに、まず第一に仰るようなマスター・スレイブ方式では……」 「すみません、その『ますたーすれいぶ方式』と言うのは?」 「ええと、簡単に言えば中身の動きを外側が真似てくれる機構のことです」 「なるほど、お話の腰を折ってしまって申し訳ありませんでした」 深々。 「いえいえ、こちらこそ至らぬ説明で」 深々。 「では続けます、マスター・スレイブ方式では腕部パーツを内包しうるスペースの確保のために設計的に内部機構を圧迫し、小型化、生産性、強度の低下を招きます。元のサイズが小さいだけに、わりとそのあたりは死活問題なのです。そして」 言いながら、再びわたしはがっしょんと【腕甲・万武】に端子を接続しました。そうして再び制御下に置かれた【手甲・拳狼】を、マスターに向けてわきわきと滑らかに動かして見せます。 「第二に、こうして直接接続・制御することで、マスター・スレイブ方式では不可能な滑らかで繊細な可動が可能となります」 ……って、あら? マスターさんひょっとしてヒいていらっしゃる? 「ヒいたと言うわけでもないのですが……わりかしシュールですねぇ、とは思います」 そうなのでしょうか? 私たち武装神姫はつまり「機械」、修理や換装の際のパーツの付けはずしは当然と認識しています。 ですが、人間の方にとっては、それは不自然に感じるのでしょうか? 「そうですねぇ、人間、というか生体は、滅多なことでは部品の入れ替えはしませんから。 サイズ以外は人間そっくりに見える武装神姫でそうしているところを目の当たりにしてしまうと、戸惑ってしまうのかもしれませんね」 「なるほど、そういうものですか」 「そういうものです」 むむ、なにやら雰囲気が沈んでまいりました。 何とか情況を打開しうる行動選択はないものか、私の記憶野を高速検索です。 ですが、まだ起動したての私の乏しい経験では、現状に即した打開策はそう簡単には…… あ、1hitです。 早速実行してみましょう。 「唐突ですがマスターさん、僭越ながら隠し芸などを披露したく思います」 「おお? 拝見させていただきます」 居住まいを正し、積極的に興味を示すマスターさん。ううむ、どうやらこちらがこの沈みがちな雰囲気を何とかしようとしていることを汲み取っていただけたご様子。 そのお心遣いに報いねば、武装神姫がすたると言うものです。 私はマスターさんに背を向けて腕部パーツに向き直り、再び右腕の端子を【腕甲・万武】から外します。 「む、むむむむむ……!」 そして気合を入れます。 出来ると信じること。 そこにあると認識すること。 それを貫けば、空間の隔たりなど越えられる! 「むん!」 気合一閃、果たして――私は成功しました。 私の目の前で、思惑通りにずり、ずりと動き出す私の腕部パーツ。 「成功です! ハウリンタイプにプリインストールされた48の宴会芸の一つ、『ゾンビ・ハンド』です!」 本来ならば【プチマスィーンズ】に指令を伝える通信波を強制的に変調させ素体制御信号に似通った波長に調整し、それを送ることで取り外したパーツを遠隔的に動かす、【プチマスィーンズ】を標準装備するケモテック社MMSならではのこの技! もともと受信装置など存在していない上、本体バッテリーから切り離された状態での残留電圧によってのみの駆動のためその動きはほんの僅かでたどたどしいですが、そのつたない動きがかえって不気味さを演出するというのがポイントとread meに記載されたこの隠し芸『ゾンビ・ハンド』! 見事それを成功させた私は得意満面でマスターさんを振り返ります。 いやあ、すでに腕部パーツが取り外されていると言うのがまさに絶好のロケーションで、 ……って、あら? マスターさんひょっとしてドン引きでいらっしゃる? 「ドン引き、と言うわけでもないのですが……」 なにやらこめかみの辺りを揉み解すような仕草をしながら、マスターさんは静かに語ります。 「人間と武装神姫は、似た様なものに見えて、やはり越えられぬ溝と言うものはあるのですかねぇ、としみじみ考えていたところです」 「むむむ、なにやら寂しい結論です、マスターさん」 そんな私の背後で、停止信号が送られないために最初の命令に従ってずーりずーりと腕部パーツがのたうって行くのを聴覚センサーが認識しています。 「……ソレ、止めてもらえません?」 「あ、失礼しました」 私はずーりずーり動く腕部パーツを拾うと、外れたままになってる接続端子に接続しました。 また気合を入れて変調信号を送信するよりも、この方が早いのです。 むむむ、しかしなにやら雰囲気が、先ほどよりも一層微妙に。 ここは、ハウリン48の宴会芸の新技を公開すべきでしょうか? 「あー、あのですね犬子さん」 と、悩んでいた私に、マスターさんのほうからお声がかかりました。 頬を軽くかきつつ、なにやら言いにくそうです。 「先ほど、犬子さんは『寂しい結論』と仰いましたが……」 「お気に障ったら申し訳ありません、武装神姫はオーナーとの隔たりを感じると落ち込むものなのです」 膝を落とし似非正座の姿勢を取ってから、深々と擬似座礼を行なう私。おそらくマスターさんからは、丸まった私のドッグテイルはよく見えないと思われるのです。 「あー、いえ、こちらこそお気に障ったら申し訳ありません」 深々と座礼をするマスターさん。そして顔を上げたマスターさんは続けます。 「先ほどの発言ですが、別に拒絶する意図ではないのです。そうやってお互いの違いを正しく認識し、相互理解に努めることが互いをより良きパートナーへと昇華させていくのだと言うあたりで一つ」 「……さすがはマスターさん、キレイにまとめましたね」 ドッグテイル、再びぶんぶんと起動。 「ご理解いただけたら幸いです」 にっこりと笑ったマスターさんは、再び頭を垂れました。 「改めまして、これからよろしくお願いいたします犬子さん」 こちらも擬似座礼でお返しします。 「こちらこそ、至らぬ武装神姫ですが、どうぞよろしくお願いいたします」 顔を上げた私たちは、どちらからともなく笑顔を浮かべるのでした。 「ですがその…アレはもう、やらなくていいですからね?」 「……はい」 こうして私の隠し芸その1は、公開初回にして封印を余儀なくされたのでした、まる。 <そのさん> <そのご> <目次>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/617.html
SHINKI/NEAR TO YOU Phase01-3 一向はモノレールに乗り無事市街地へと到着した。 「ふむ、ここが摩耶市のですか。多少煩雑な趣きですが、賑やかな所ですね」 初めてくる市街地がめずらしいのか、ゼリスは駅を出るなりキョロキョロと周囲の街並みを興味深そうに眺めている。 「あちらの派手な外装の建物は? 何やら騒々しい音がしますが」 「ゲームセンター。いろんなゲーム機で遊ぶところよ、ぜっちゃん」 「あのような棒でボールを突いて……何が目的なのでしょう」 「あれはビリヤードね。テーブルの玉を脇のポケットに順番に落としていくゲームよ」 ゼリスは「人間の娯楽はよく分かりませんね」と言いながら、今度は通りの反対側を指差す。 「あれはなんですか? 人形の猫が飲食物を持っています」 「あれはピザキャットの客引き用マスコット〝ニャンキー君〟ね。帰りに寄ってこうか?」 「は~いは~い。ボクはスペシャルニャンキーセットがいいっ!」 姦しく騒ぐ少女三人組(?)の会話を、シュンはうんざりしながら聞いている。さっきから自分たちに向けられる視線が結構痛い。 「それにしてもこの辺りの人たちは神姫が珍しいようですね。道行く皆が私たちを見ていきます。シュン、どういうことでしょう?」 「お前がさっきから人の頭の上に座ってるからだろうがっ!」 思わず声を荒げたシュンは、すぐに周りの好奇の目に気がついた。仕方なくまたブスっと口をつぐんで仏頂面に戻る。モノレールを降りてから、ゼリスはよりにもよって彼の頭の上に居座っていた。 彼女いわく「この方が周囲をよく見通せていいのです」だそうだ。 「あはは。シュっちゃんて昔っから女の子にはテンで弱かったもんね~」 お前が言うなよ、お前がっ。 「ところでさ、シュっちゃんたちは今日どんなパーツを買う予定なの? 物によってオススメルートが変わるから、参考に聞かせてくれると助かるなぁ」 笑いから一転真面目な顔つきに戻った伊吹を見て、シュンも今日の目的を思い出す。そうだった、今日はただ遊びに来たんじゃない。 「え~っと、クレイドルのオプションと周辺機器の他に……。後は……そうそうメモがあったんだ」 シュンは出掛けにジーンズのポケットに突っ込んだままだったそれを取り出す。「どれどれ?」と伊吹がそのメモを興味深そうに手に取る。 「へぇ~……って、これってかなり上級者向けのパーツよ。オーナーになったばかりのシュっちゃんには難しくない?」 「そうなのか? 優のヤツから渡されただけだからよく分かんない」 「ああ、これ優ちゃんが書いたんだ」 有馬優(アリマ ユウ)はシュンの2つ年下の妹だ。最近すっかり生意気になってきたのがシュンとしては少し寂しいかぎり。どうにもよく分からないが、いわゆる思春期の反抗期ってやつだろうか。ちなみに小学校は休みじゃないので、今日は連れてきてない。 「ふ~ん、なら安心だね。優ちゃんしっかり者だしね」 「私としましても、ユウのリストアップしたものならば信頼が置けます。さらに舞さんに厳選していただければ万全ですね」 「僕への信用はゼロかよ……」 シュンの呟きを黙殺しつつ、伊吹とゼリスは早くも意気投合しつつあるようだ。 「ふふふ。ありがと、ぜっちゃん。ああ、ゼリスちゃんだからぜっちゃんで問題ないよね?」 「どの様に呼称されようとそれがそのものの本質――つまりは私自身を指すのであれば問題ありません。舞さんのお好きな呼び方で結構です」 「リョーカイ♪ それじゃあ頑張ってぜっちゃんにピッタリなパーツ選んであげるからね。今の服もカワイくていいけど、そのままじゃね~」 そう。伊吹の言う通り今のゼリスはおよそ戦いとは無縁な装いに身を包んでいる。黒地を白のレースと若草色のリボンで飾ったドレス、俗にいうゴスロリ・ファッションというヤツだ。 こんな格好した神姫が頭の上に座ってれば、そりゃ目立つよな。なんで武装神姫であるゼリスがこんな服を着ているのかは……やめよう、これ以上頭を痛めたくない。 そんなシュンの心中を知ってかしらずか。張本人であるゼリスは彼の頭上ですっかり観光モードに入っている。周りの目を気にするとかいう考えは、そもそも発想すらないのだろう。 全くこいつは、その小さな体で何考えてるんだか。 出会ってからそれなりの時間が過ぎたが、シュンには未だにゼリスが何を考え、何を思って行動しているのか分からなかった。 そもそもこいつ、僕の事を本当に自分のオーナーだと認めているのか? シュンは沸き起こる葛藤を振り切って、先を行く伊吹の後を追いかけた。とにもかくにも。何でもいいからパーツを買って、まずはせめてゼリスにもっと神姫らしい格好をさせよう。 ……この周りからの好奇の目線に、帰りも耐えられそうにないから。 * 武装神姫による対戦ゲーム「武装神姫バトル」が始まったのは、神姫タイプ発売から一年後の2032年のことだ。 武装神姫バトルは管理運営機関である「武装神姫バトル管理協会」の元、幾度ものバージョンアップ、レギュレーションの厳格化、様々なレイティング・クラス分けの導入、オフィシャル・フリーなどの興行様式の明瞭化、関連施設の充実などを経て徐々に洗練されていき、スタートから数年で国内アミューズメントとしての人気と地位を確立させた。 今や年数回開催される公式大会ともなればこぞってマスメディアに取り上げられ、その人気は日本国内だけに留まらず遠く海外にまで広がりつつある。 そうした神姫ブームの立役者が全国各地に点在する神姫専門商業施設「神姫センター」や、神姫をメインに取り扱ったMMSショップの存在だろう。 取り分け専用施設である神姫センターは施設内の各店舗によって神姫の購入、カスタマイズ、修理など様々なサポートを受けることができ、初期ユーザーにとって心強い味方となった。 神姫センターは武装神姫アミューズメントの中心として、現在もなお多くのユーザーたちが訪れる場所となっている。 「うわぁ~、すっげーなぁ」 初めて訪れる神姫センターに、シュンは素直に感嘆の息をもらした。エントランスから施設内に入るとそこはセントラルコートになっていて、平日にも関わらず多くの来客が行きかっている。 正面には大型モニターが設置され、二股の槍を構えた神姫と巨大な十字手裏剣を持った神姫の戦う姿が映し出されている。CMでお馴染みの音楽が流れ、否が応にも気分が高まる。 「ちょっと、あまりキョロキョロすると恥かしいわよ」 「シュンはおのぼりさん♪」 すでに何度も訪れている伊吹とワカナがたしなめるが、シュンは初めて味わう神姫センターの雰囲気にすっかり当てられていた。 「だってさぁ、僕は神姫センター来るの初めてだし。おお、あれなんだ?」 「シュン、それよりもあちらの奥にあるものは気になります。確かめに行きましょう」 「待て、ゼリス。あっちにはあんなのがあるぞ」 「いいえ、それよりもあの上の方に見える施設の謎を解明するのを優先すべきです」 「ああ、ゼリス。向こうから何やら楽しげな音楽が」 「ふむ、あそこの人たちは一体何をしているのでしょう? さらなる謎が……」 「むむむ……」 「なんと――っ」 「右、いや正面かっ?」 「見える……私にも敵が見え……」 「いーかげんにしなさ―――いっ!!」 伊吹のツッコミが眉間に命中し、ようやくシュンとゼリスはハッと我を取り戻した。 「僕たちは一体今何を……」 「なるほど、これが人間たちを魅了する神姫センターの魔力というヤツですか。怖ろしいものですね」 「ああ、気をつけないとな」 神妙な顔で頷きあうふたりに伊吹は呆れつつ、気を取り直し武装神姫ユーザーの先輩としてこの新人コンビの先生役に戻ることにした。 「全く……いい、ふたりとも。一通り神姫センターの施設も案内してあげるから、フラフラせずにしっかりついてくるのよ。そうじゃないと、迷子になっても知らないから」 ジト目で睨む伊吹に、シュンとゼリスに何故かワカナまでがこくこくと頷いた。 必要パーツの購入は問題もなくスムーズに進んだ。 シュンは優から渡されたメモに書かれたパーツの種類の多さから考えて、正直今日中に全て回るのは難しいと思っていた。 しかし、メモを受け取った伊吹は不慣れな彼の代わりにどのパーツをどの店舗で買えばいいのか瞬時に判断し、すぐさま最も効率的なルートを決めてくれた。おかげで途中ゆっくりとした昼食を挟みながら、余裕を持って店舗内を回ることができた。 一通り買い物を済ませたシュンたちは、センター内の軽食店で休憩がてら早めの三時のおやつを楽しんでいた。 「今日は本当に助かったよ。僕たちだけで来てたらこんなにうまくいかなかったからな」 シュンは今日見て回った神姫センターの広さを思い出しながら、素直な感想を述べた。もしゼリスとふたりだけだったら、何を何処で買ったらいいか分からずに途方に暮れるところだったろう。オマケに伊吹が行く先々での値段交渉までしてくれたおかげで、出費も覚悟していたものより軽く済んだ。 だからこそ彼は今こうして、気分良く今回の功労者である伊吹にお礼を兼ねて奢ったりできる訳だ。 「持つべきは頼れるカワイイ幼馴染ってね。シュっちゃんもこれで改めてあたしの有難みが分かったでしょ?」 パフェを口に運びつつ伊吹はご満悦。 「本日のお手並みは見事でした。ルート選択も非常に合理的で、常日頃からの蛍雪が伺えます。伊吹さんはシュンには勿体無いくらいの有徳を持った方ですね」 ほっとけ。まあ、ゼリスも買い物が順調に運んで、気分がいいようだからよかったか。 シュンは大きく伸びをする。テーブルの上ではゼリスが、伊吹がパフェを平らげていく様を見つめている。その横ではワカナが午後のお昼寝タイム中。 朝はいろいろ不安だったものの、買い物中も特に問題も起きなかったし、このままなら今日は無事に一日を終えることができそうだ。 「ふ~、さてと。お腹もふくれたことだし、さあ行こっか!」 「行くって……何処にだよ?」 伊吹はまだ寝ぼけ眼なワカナを抱きしめ勢いよく席を立つ。もう必要なところはすべて回ったはずだし、帰りの時間にはまだ早い。キョトンとするシュンとゼリスに、伊吹は不適な笑みを浮かべる。 「ふっふっふ、諸君。神姫センターといったらアレしかないでしょう?」 「ふむ。伊吹さん、アレとはなんでしょうか?」 首を傾げるゼリスとシュンの前に、彼女は店内に設置された情報モニターを指差した。 そこには次々と眩いエフェクトが切り替わりながら、ひとつのトピックが流れていた。 『NEWヴァーション武装神姫バトル筐体、登場! 美しき神姫たちの熱いバトルが君を待っている!』 ▲BACK///NEXT▼ 戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2654.html
あのゲームセンター内を湧き立たせた試合から幾日。 あんなことがあっても僕たちの日常はつつがなく続いていく。 僕の学校は冬服から夏服に衣替えしたとか期末試験があったとか軽いイベントはあったけど、一番のイベントは、 宮本さんとイスカがフランスに旅立ってしまったことだ。 急遽、日本でやり残していたことを全てキャンセルして行ってしまった。 別にそんなに急ぐ必要はないのでは、と思うのだけどシオンに対して未練が残ってるからさっさと準備して日本を出てしまったのだ。 未練があるのは主にイスカらしいけど。 「ずっと見てて、飽きないの?」 朝のHRが始まる時間ちょっと前。 僕は教室に自分の椅子に座り、机に頬杖を突いている状態。 目線は机に。 座っているシオンに聞いている。 「これは姉さんが出してくれた手紙ですよ。飽きることなんてありません」 あ、そうですか。それは悪いことを聞いてしまいましたね。 思う存分にらめっこしててください。 そう思ってから、顔は窓の向こうの真っ青の空に向く。 ここの教室は3階だから空が見渡しやすいな。 昨日、僕たちに手紙が来た。差出人は宮本さんだ。 日付は旅立つ前だし、日本製の便箋なので、おそらく旅立つ前にポストに出したのだろう。 手紙の内容は宮本さんから色々、シオンに対することの謝罪とかお礼の言葉とかそんな風なのがつらつらと書かれていた。 じつのところ、書いてあったことがかなりの長文で覚えきれないので、ここでは割愛している。 だが、その便箋の入った封筒にはもう一つサイズが一回り以上違う用紙が入っていた。 シオンが持つのにちょうどいい大きさの用紙なので、おそらく神姫同士、イスカお姉さんからの手紙なのだろう。 「ねえ、それ見せてよ」 僕が昨日からお願いしてても。 「ダメです。『マスターさんにはぜったい見せるな』って書いてありますから。これは私だけに宛てた手紙なんですよ」 これなんだから。 僕の神姫なんだから、マスターの僕にそういうのは見せてほしいのだけれどな。 と、そう思考してたら僕の顔にそれが出ていたのか、シオンが言葉を詰まらせた。 「でも、螢斗さんがどうしても見たかったら反故にしても……」 「こら。お姉さんとの約束は守らないとね」 「あ、螢斗さん。ありがとうございます」 シオンは優しいから僕が命令したら見せちゃうんだろうな。 でも、別に僕がマスター権限を行使するほどイスカお姉さんの手紙を見たいわけではない。 無理に読みたいわけでもなし、シオンに嫌がれるかもと思うと僕のちっぽけな度胸はなくなってしまうのだ。 第一、神姫サイズの手紙なんて極細い文字でびっしりと文章が書かれているんだろう。そうに違いない。 ふと、気付くとHR1分前に教室のドアが思いっきり開く音がした。 そして、数秒後。 「ぜぇはぁ…………おは……よ……はぁはぁ……」 「おはよう。淳平」 「はぁはぁ、明日から夏休みという興奮で眠れなくて……な」 聞いてもいないのに、言い訳のようにそう言って僕の隣の机に身を投げ出した。 遅刻寸前だったのを全力疾走と気合いでカバーしたらしい。 淳平が言った通り明日から夏休み。 それで今日は登校した後、HRと終業式だけで終わるから遅刻はしたくなかったみたいだ。 最後くらいは遅刻しないでいよう、という良い心がけではある。 ……いつも遅刻しなかったらもっと良いのだけど。 「すいません。マスターがお見苦しいところを」 淳平に押し潰される前に胸ポケットから飛び出したミスズが机に降り立って、いつもの通り申し訳なさそうにしている。 「毎日大変そうだね。ミスズ」 「ええ。でも、私のマスターですから……マスターは優しいところもあって好きですし」 ミスズはそう言うと顔を赤くさせて、そっぽを向く。 恥ずかしいなら言わなきゃいいのに。 でも神姫のミスズは淳平が大好きだから、こんな風にフォローしてしまうのだろうな。迷惑が掛かっててもだ。 良かったね淳平、ミスズがこんな神姫で育っていて。 そう思って淳平を見ると、 「……zzZ」 寝るの早!? 淳平は机に突っ伏して寝息をかいていた。 「さすがです。ミスズさん! 武装神姫の鑑です」 突然、僕の机にいたシオンはミスズの言ったことに感動したのか、拳を握りしめている。 ミスズの顔色は元に戻り、シオンの大声に驚いている。 「シオンがそれを言うの? あなたの方がよっぽどマスター思いだわ」 「いいえ、私なんてまだまだ。私も真の武装神姫を目指して今日もひたむき走り続けているんです!」 なんかシオンが熱い。 これが本当のアーティルのあるべき姿なんだろう。 イスカと戦ってから、情熱さとか闘魂とかそういう暑苦しいのがシオンに生まれていた。 まあ、シオンが元気でいてくれるなら僕は良いけどな。 そういえば、ミスズが前に僕に対して「人間の鑑です」なんていう似たようなことを言った覚えがある。 あれから、数か月か。 懐かしいな。 シオンが僕のもとに来てから、色々なことがあって、イスカとも戦って、こうしてシオンは僕の武装神姫でいてくれる。 その現実がたまらなく嬉しかった。 僕が思いをはせている中、教室は本鈴も鳴り終わり、先生が来るのを待っていた時だ。 一陣の風が教室に入ってきて、なんとシオンの傍にあったイスカお姉さんからの手紙が飛ばされてしまった。 そして、それは窓の向こうへ。 「あ、シオン! 手紙が!?」 僕の視界に小さいけど“一行の文章”が、見えてからひらひらと校庭の方に落ちていく手紙。 あんな紙切れが草むらに入ったら見つけ出せる自信がないぞ。 幸い、この下はコンクリートの地面しかないから、風で飛ばされるとか誰かに拾われない限り、手紙はここの教室の真下にある。 「大変です! 螢斗さん!」 「わかってる!」 椅子をひっくり返しながら、シオンを胸ポケットに入れて教室のドアに駆ける。 後ろからはミスズの焦る声。 「HRがすぐにあるんですよ!?」 「終業式には戻るから、淳平起こして代返お願い!」 そう簡潔に言うと、扉を出て廊下を走り階段へダッシュ。 HRが始まってる時間に廊下を走るなんて、普段僕はしないのだけど緊急事態だからしょうがないのだ。 「螢斗さん」 「はぁはぁ……何?」 走りながらもポケットにいるシオンに答える。 結構、運動不足の僕に全力疾走は無理があるのだけど、シオンの呼びかけは無視できない。 シオンは呼んで、一呼吸置いてから。 「私も螢斗さんとずっと家族でいますから」 「……ああ、もちろんだよ!」 その言葉はイスカお姉さんの手紙にあった言葉で――。 ―――― 『 離れてても、私たちはずっと家族だ。 愛する妹へ 姉イスカより 』 ―――― Fin 前へ トップ