約 730,169 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/99.html
人物設定 金矢利道 SOS技術研究所に勤める研究員 二人の神姫をこよなく愛している マッドサイエンティスト気質で、バトルに参加したいとマリンが言ったとたん武装を即座に用意するなど、行動力溢れる人 ただし、基本的に意地のいい人ではない アニタ(ストラーフ型) 明るく活発。マスターにちょっとしたイタズラやわがままを言い、それを許してもらえるのがうれしくて仕方が無い子。 要求のレベルは非常に低く、確実に実現できるものをチョイスしている 自分のわがままや生意気さを自覚していて、それを許してもらうことに愛を感じている 裏闘技場での経験がトラウマになっており、最近夜中うなされている マリン(アーンヴァル型) 生真面目で大人しい。マリンのお姉さん的存在。口数が少なく、何を考えているか分かりづらいが、たいしたことは考えていない 自分の要求を口に出せないが、マスターがアニタにしてあげたことをすぐに自分にもしてくれることに幸福感を持っている その性格が災いして、利道にいじられている 武装設定 標準装備 タクティカル・エッジ 大型ナイフ 知り合いの研ぎ師に無理矢理作らせたもので、このサイズとしては異様な切れ味を持つ 2mm厚の装甲板を貫通可能 ターミネーター・マチェット 大型実体剣 小さいが、日本刀と同じ手法で作られており、すさまじい威力を持つ 直径5mmの鉄棒をたやすく両断する マリン専用バトルコスチューム 人工筋肉製の強化外骨格の上に、防弾防刃耐熱繊維で作られたメイド服を着込んだもの どちらの素材も、SOS技術研究所で開発された最新鋭の技術を持って作られている メイド服のスカートの中に多種多様な武器を隠しており、まさに「メイドさんのスカートのなかは宇宙と繋がってる」といった感じ ポケットと内部がつながっており、そこから武器を出す ちなみに、人工筋肉製外骨格の形状の都合上、通常の神姫より肉感的なスタイルとなっている 更なる秘密機能が隠されているとのうわさも… マリン専用武装(一部) リボルバー(S W M10型)×2 オートでなくリボルバーなのはただの趣味 クイック・ローダーではなく、手で装填する ちなみにこれとナイフだけはエプロンのポケットの中に納められている ショットガン(SPAS-12型)×2 これまた趣味で選んだショットガン メイド服とショットガンほど似合う組み合わせは無いとのことで、主力武器としている サブマシンガン(UZI9mmSMG型)×2 趣味で選んだサブマシンガン ちなみに、神姫用弾薬の規格は(基本的に)統一されているのでリボルバーと同じ弾が使える 無反動砲(パンツァーファウスト型)×4 スカートの中に納めるために、小型化されたパンツァーファウスト SOS技術研究所のオリジナル作品 小型化の影響で威力射程は劣化しているが、その分数を揃えることで対応している スカートの中から出てくる様はある種卑猥である 威力が劣化しているとはいえ、15mmの装甲を貫通する能力がある 射程も、基本的に近接戦闘になりやすい武装神姫の戦闘では問題にならなかった ちなみに、小型化によって軽量化された恩恵か、使い勝手は非常に良好で、後に少数生産であるが一般販売されている 用語 SOS技術研究所 元は人工筋肉関連の技術研究を行っていた研究所 現在は、神姫用人工筋肉のライセンスなどでウハウハ 金があるので、大分趣味に偏った研究に走っている それでも十分な成果を上げている ちなみに、SOSとは研究所を立ち上げたメンバー 所長の相馬、主席研究員の尾田、出資者の柴崎 それぞれの頭文字を取ったものである
https://w.atwiki.jp/mitlocke/pages/1037.html
ロンギヌスの槍 (新約聖書) 使用条件 神・神族以外のキャラクター 効果 [戦闘][格闘(武器):1] 他の格闘武器と同時に使用できない。 この能力カードを使用して格闘攻撃を行う時、 相手キャラクターが神または神族の場合、通常の損害判定は行わずに3:1の損害判定を行う。 この格闘攻撃に対して神または神族であるキャラクターは一切の行動を行うことができない。 相手キャラクターが神以外または神族以外の場合、通常の格闘と同じ扱いになる。 備考 この能力カードへの意見 同時期に存在した訳ではないが、アダム・アークライトの例の能力が使えなくなるのが非常に残念だと思う。 -- waka (2018-04-09 12 15 16) 神ばかり生きにくくなるし神専用の能力カードも作ろう(神属性のキャラがそもそも強いのばかりという説もある) -- ななふし (2018-04-11 12 34 13) 出典がエヴァンゲリオンじゃなくて新約聖書ってとこが草 -- stuffy (2018-04-11 21 31 26) 一応「神出鬼没」という能力カードがありますよ -- waka (2018-04-12 00 56 30) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2632.html
「ごめんね。同じような人がいて、つい嬉しくなっちゃって」 「……はぁ、そうなんですか」 やっちゃったなー、これは。絶対変な人だと思われてるよ。僕も逆の立場だったらそう思うし、なんでこんな暴走したのかな、僕は。 「あはは、面白いマスターさんだね」 少女の肩の神姫がシオンに話しかけてくれている。あれは火器型の神姫だったかな。 「でも、お優しいです。とり乱したのも、お友達が来なくて寂しかったんでしょう」 シオンは本心でそう言ってくれてると思うけど、それがかえって痛かったりして。 「それじゃあ、改めて。僕は長倉 螢斗。この子はアーティル型のシオンです」 「よろしくお願いします」 「私は、その……」 「リミちん、ちゃんと自己紹介しなくちゃー。ほらほら」 「あ、うん。私は霧静 璃美香です。この子はゼルノグラード型のアリエ……です」 霧静さんは言い終わったら、顔を俯かせてしまった。 「アリエでーす、どうもー。すまんねぇー、この子ちょっと人見知りなもんで」 「いえいえ大丈夫ですよ。僕も少しそういうのありますし」 「本当かなー? がっついて、リミちんに話しかけてきた時はそうは見えなかったけどなー」 「あれはっ!……ただ、お友達になれそうだなーって思ったから勢いで」 「いや、あれは一歩間違えば、ナンパの部類だね。うん」 「ナンパって。それはないよ……」 なぜかこのアリエって神姫ものすごく馴れ馴れしい。オーナーの霧静さんもオロオロとことの成り行きを見守ってるだけだし。 「とりあえず!……ここにいるという事は神姫バトルが目的なんですし、バトルやってみませんか?」 「そう――」 「そだねー。ケートん、シーちゃんとも仲良くなれそうだし。交流を深めようではないか」 霧静さんが言う前に勝手に決めている。口は開いた状態で止まった。 そしてなぜか、あだ名みたいのも了承も取らず決められている。 シオンもなにも言わないし、僕も、それはいいのだけど。 ゼルノグラード型はみんなこうなのか? それともこのアリエだけがこういう性格なだけなのか。 「ハァ……すいません。この子、誰でもこんな感じで。すいません……」 霧静さんはものすごく申し訳なさそうに頭を下げている。見た感じ、いつもこうやって苦労させられているのだろう。 「霧静さん、ちょっといいかな?」 話を聞けば僕と同じ高校一年らしいので、敬語はいらないと言っていた(主にアリエが) 霧静さんにも一応は了承もとったし、これで少しは仲良くはなれただろう。 それにまず僕はシオンのことを話しておこうと思った。 「シオンはちょっとバトルがしにくいというか……えっと、なんて言えばいいのか」 「螢斗さん、私は大丈夫ですよ」 そう言うが、実際に僕はシオンのバトルを見てはいないけど……心配なのだ。 「シオンちゃんがどうしたんですか?」 「なになに、私と同じになんか訳有りかい」 私? アリエもなにかあるのだろうか。霧静さんを伺うと、 「アリエ。それは……」 霧静さんは何か言いづらそうに口をつぐんでいる。 「まあまあ、全てはバトルをしてみればわかることさね。はーい、それじゃあみんな、台について」 アリエはそう言うと霧静さんの肩から降り立って、一人で向こう側のブースに行ってしまった。 「まったく、アリエは。とりあえず、長倉……くん」 「……なにかな」 「まずはお互い、バトルさせてみて……その後色々話してみないかな?」 頭のリボンを指で触りながら、目線は横を向いている。話すのは得意そうに見えないけど、霧静さんはそう言ってくれる。 勇気を出して言ってくれてるようにも見える。 霧静さんもなにか抱えているようなそんな感じ。 なんて、さっき知り合えた人にこんなこと思っちゃいけないよね。 「そうだね。シオン、僕たちもバトルの準備しようか」 「はい! 頑張ります!」 ―――― バトルのステージは廃墟街になっている。 さびれた廃屋やビル。むき出しのコンクリート。ボコボコ穴の空いた道路にへし折れた信号機などなど。 リアルであったなら、不気味としか言えないな。 いまそこでシオンが廃ビル群の一角に潜んでいるのが画面からは見える。 僕はオーナーブースから、シオンに語りかける。 「怖くない?」 「……大丈夫です」 大丈夫と言うが、本当だろうか。 フェリス・ファングを両手で構え、その場には緊張感が漂っているように思える。 「火器型はその名の通り、銃器を使う戦闘が得意だと思う」 僕がいままで見てきた情報では、ゼルノグラードは火力のある武装を念頭に置いている武装神姫だというのは知っている。 だけど、 “訳有り”とはどういうことだろうか。 それがさっきから引っかかる。 ――いや、でも、そんなことは後回しにしよう。 まずはシオンのバトルを見ておかなくちゃ。 僕が冷静に指示できて、シオンもバトル恐怖症が起きなかったら、初バトルで勝利できるんだ。 よし、そうと決まれば。 「シオン、敵の気配は?」 「まだ確認は出来てません。まだ近くにいないのかと」 「それじゃ、危ないけど周りを索敵してみよう」 はい、とシオンは答えると、銃を構えたまま細い通路といえる路を進んでいく。 障害物が多いバトルなら、身を隠して攻撃する戦法が有利だろう。派手さはないけど、真っ向からやりあって勝ち目はあまりないと思う。 僕の経験も少ないし、シオンはちゃんと戦えるのか心配でもある。 でも、バトルに勝てれば自分の自信にも繋がるだろうし、バトルの拒否感も和らぐかもと思った。 「螢斗さん、あの、奥にいました」 「え、気付かれた?」 「いえ、その、なんと言いますか。アリエさん……くつろいでます」 「……なんで」 見ると、開けた道路にアリエが座っていた。崩れた、腰掛けるのにちょうどいい大きさのコンクリートに座り、のんびりとしている。 軍隊の兵士みたいにペイントされているアーマー。それに身を包んでいるアリエの姿があった。戦闘状態の筈なのだけど、暇そうである。 ……そんなに時間をかけたわけではないのに。 傍らには腹にパイプみたいな筋の入った奇妙な大剣がある。武器はそれだけしかない。銃みたいな武装は見当たらない。 「どうしますか?」 シオンが訪ねてくる。どうしようかな。あんな油断している姿をみせられるなんて、よほど余裕があるのか。 弱いと思われているのか。……実際そうなのかもしれないけど。 こっちが考えていると、アリエが動きをみせた。 立ちあがり、あくびをしてから背筋を伸ばしている。リラックスしているな、と思うけど、あれは相手の罠なんだろうか。 「バレバレだよー。出てきても、いいんじゃないー!?」 片手に大剣を持ち、声を張り上げている。 いる方向に声は向けてないけど、――なんて言った? アリエはシオンが近くにいるのがわかっている。 そんなミスはしていないと思ったけど。 「しょうがない。不意をつくのは止めて出よう。真っ向から挑むけど、いける?」 「いけ……ます」 その震えは恐怖なのか、武者ぶるいなのかはまだ僕にはわからないけど、 「いくよ」 戦いを楽しめるようになればわかるのかな。 シオンが路地に飛び出す。 スラスターを作動させて駆けながら、アリエに狙いを定めてフェリス・ファングを構える。 その後の動作は引き金を引くだけなのだけど。 ――引かない。 いや、シオンは引けないのか。 やっぱり、うまく戦えないのか。あっちはもうすでに臨戦態勢に入っている。 「シオン! 接近戦に変更して!」 なにもしないのなら、ただの動く的だ。 ここは相手の武装も考えて、接近戦に持ち込んだ方がマシだ。 武器で打撃を与えるなら誰だってできる。 フェリス・ファングをしまわせ、腰からナイフを取りださせる。 宮本さんから預かった武装には、近接用の武器がなかったから、淳平から神姫用のを譲ってもらった物だ。 シオンはそれを振りかぶって、勢いのままアリエに攻撃を加える。 「おりょ。なんか、勢いのわりに軽いね。銃でなんでか何もしなかったし」 ガンッ! と場に大きな音を響かせた。 大剣で攻撃を防ぎ、少し後ずさったアリエが疑問に思っているみたいに言う。 「そっちも、なんで、その大剣しか使わないんですか? チャンスだったと思いますけど」 「うーん、私も使いたいんだけどねー。使えない理由があるん……っだ!」 言葉を途中で切らし、腕に力を込めて、気合いの声を発する。アリエは詰め寄り大剣を振るう。 シオンはそれを危なげに避けていってるが。 「なんか焦ってるねー。それじゃあ戦えないよー……」 「くっ! わかってます!」 僕から見ても、確かに顔は焦っていて辛そうに見える。 「ほらほらー」 避けきれなくなってきたシオンは、アリエが振るった大剣にナイフの刃が当たった。 ナイフは明後日の方に飛んでいく。 「バトルが楽しくなさそうだねー。それがシーちゃんの悩みなんだねー。うんうん」 「……アリエさん、わかるんですか」 「私もさー。昔に色々あってさー火器型のクセに重・軽火器類が一切使えないんだ。笑えるけどホント。だから、私の武器はこれ一本!」 どうやらそれがアリエの“訳”らしい。 自慢げに大剣を掲げて見せる。――見るとやっぱり奇妙だ。 剣の腹に細いパイプの入ったような筋、根元部分には片刃の方にだけ同じ材質みたいので覆われている。 そして、握りの鍔の方にトリガーが付いてある。 「あれって、もしかしてガンブレード?」 今も続いているテレビゲームの超大作にアレに似た武器を使う主人公がいたはずだけど。今はもう18作目に突入しているらしいゲームだ。 僕はやったことはないが、学校の友達はよくゲームの話題をする人がいるので知っている。 「オリジナルの武装なんだけどねー。公式の場でもレギュレーション以内の優れ物。それじゃあ、これの仕掛けも見せとくかー。リミちん!」 『……うん』 筐体の向こうからは霧静さんの声が聞こえる。何かを送ったんだ。 アリエの手元には、手の平サイズ、厚さのあるカード状のような物がある。 それは、赤。イスカの大剣と同じような赤色だ。 「『エレメンティア・ヒート・カートリッジ』セット完了! いくよーん!」 そう高らかに楽しそうに声をあげる。 片刃の覆われた部分を下にスライドさせて、そこに持っていたカートリッジなるものを差し込んだ。 スライド部分を引き戻すと、その瞬間パイプに赤色が現れ始めた。 「よーっし。来たー!」 パイプに溶岩のようなのが先端まで行き渡ると、鋼鉄の大剣の刃も真っ赤になり始めた。 高熱を発しているみたいだが、実際に燃え盛っているような錯覚がする。刃の周りの空気がゆらゆらと揺れてきている気が。 「覚悟してね。いっくよー」 「シオン、何か危ない、後退して! ……シオン!?」 「……あ、あ……あ」 シオンの様子がおかしい。腰を抜かしている。 どうやらシオンの焦点が集まっているのは大剣みたいだけど。 ――もしかして、イスカの、お姉さんの大剣を思い出しているのか!? でも、反応が異常すぎる。 「あ~、えーと……そっちのマスター。ケートん、見えてる、聞こえてるー! サレンダーできるー!?」 大剣を、八双の構えに留まったままのアリエが、僕に叫ぶ。このまま、やっても無駄だと思ったのだろうか。 「……わかったよ」 あっちには聞こえていないだろうけど、受け応えはしておく。 アリエの優しさに感謝しつつ、僕はサレンダーのボタンを押した。 ―――― 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」 「……シオン」 私は謝り続ける。全ては虚勢だったんだ。 戦う前は確かに自信はあった。螢斗さんの為に戦えると思った。 でも、やっぱりダメだった。アリエさんの武器がお姉ちゃんの大剣に見えてしまった。その後はもう無理だった。 こんな私なんて、武装神姫じゃない。 こんな私なんて、ただの人形だ。 そして、螢斗さんの手が私の頭に移動してきて、 「大丈夫だよ。大丈夫」 「……あ、」 優しく指で頭を撫でられる。 不思議だ。 この人に撫でられると安心する。凛奈さんとお姉ちゃんの所で、まだ仲が良かった、時にも感じたことのない安心感。 なんで私は螢斗さんの為に戦えないのだろうか。 今はそれが悲しくて仕方なかった。 ―――― 謝るのは止まった。 でも、慰め続けているけど、なかなか泣き止んでくれない。 僕も多少はショックだったけど、バトルがうまくできないのはわかってはいたし。 過剰反応したのは、驚いたけど、しょうがないのかもしれない。 バトル恐怖症に加えて、凛奈さんとイスカの頃の記憶がトラウマにもなっているのかな。 なんとかこれを乗り越えさせないといけないのか。 僕にできるのか。 だけど、しなきゃシオンが幸せになれないんだ。 しないといけないんだ。 「ハロー、ケートん、シーちゃん」 アリエと霧静さんが近くに来てくれていた。 あんなシオンを見たらそれは心配になるだろうな。 「シオンちゃんは……大丈夫?」 「うん、まあ、大丈夫だよ」 多分と付け加える。 「バトルして、こっちのことも、わかってくれただろうけどさー……なんかそっちの方が深刻そうだねー」 「……確かに、そうみたい」 シオンとアリエを交互に見て、考え込む様子の霧静さん。 火器類の武装を使えないらしいアリエと戦うことができないシオンはどっちが辛いのだろうか。 このままバトルはしない方がいいのだろうか。 でも、それは――。 だめだ。やっぱり、うまくいかない。 「長倉くん。ともかく、私たちに話してみないかな。ほら、アリエもこんな神姫だけどなにかアドバイスできる……かも」 「こんなのとは酷くないですかい」 そう言われても、アリエは別段気にしてないように見える。 あんな風に気楽なのはもう割り切っているからなのかも。 「シオン、いいのかな。話しても」 「……はい……大丈夫……です」 なんとか涙を止めたシオンが頷いてくれた。 ――シオンのことをちゃんと話しておこう。 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1034.html
剣の王妃、戦場を去れば神の姫君 アルマの戦績記録カードを受け取った後も、私・槇野晶は現実感が今一つ 乏しかった。いくら小さな島とは言え、天空に浮かぶ大陸ごと対戦相手を 斬り捨てて……否、消し飛ばしてしまったのである。そんな中で冷静さを 保てたのは、当事者の神姫二人……そしてクララのみである。ロッテも、 普段の彼女からすれば落ち着いていた方だ。神姫のみのシンパシー故か? 「しかしアルマや。あの巨大な爆炎……魔剣の能力、ではないな?」 「はい。電磁加熱機構をオーバードライブさせただけですよ、ただ」 「……エネルギーを無駄にせず、魔剣に蓄熱させて活用したんだよ」 「そうですの。わたしとアルマお姉ちゃんの剣は、頑丈ですから♪」 「あ、あたしの言葉~……とにかく、あれはマイスターの力ですっ」 確かに“ヨルムンガルド”と“マビノギオン・アサルト”の発生熱量を 全て一点に集約すれば、起爆は可能……だが、それだけでは自分の躯が ダメージを負ってしまう。恐らくは、刀身自体を耐熱装甲代わりにして 爆風を誘導したのだろうが……それを為しうるエルテリアの力。そして 複雑な挙動を容易に制御するアルマの潜在能力。恐ろしい娘だ、有無。 「にしてもだ。あれらを見て、驚くのが神姫より人間ばかりとはな」 「“肉の躯”だと、多分兵隊さん位しか想像できないと思いますの」 「ですね……あたし達は、戦う定めに身を置く“武装神姫”ですし」 「戦の中にあればこそ、敵の力を冷静に見極める能力を得る……か」 「と言っても全く驚かなかった娘は、流石に居なかったと思うもん」 “人間”として産まれ生きてきた私では、確かに現象を解析こそすれど あの“一撃”を感覚として“理解”する事は、さぞ骨が折れるだろう。 だが、それでも私はやらねばならん!“アルファル”を完成させる為、 この娘らの為に……同時に私の“追求したい”エゴの為でもあるがな? 「……よし、着いたぞ。今日の祝勝会はここでやる、いいな三人とも」 「お、お茶漬け屋“ばんじゃ~い”?……お茶漬け食べるんですの?」 「ここの鮭茶漬けが、旨いと聞いてな。アルマは塩味を好む質だろう」 「あっ……は、はいっ!でもいいんですか、あたしの好みなんかに?」 『なんかに』などと言うな……と指でアルマの口を塞ぎつつ、入店する。 秋葉原からほど近い場所だが、流石に神姫を連れた客は少々珍しい様だ。 襷を掛けた若い女性店員が、物珍しそうな目をしつつ案内をしてくれた。 ……何故かクララが、私の胸で落ち着かん。こっそり理由を聞いてみる。 「店員さんは、塾の……ほら、倭さんなんだよ。フィオラを欲しいって」 「なんと。狭い様で広いがやっぱり狭いな、東京は……うぅむ、意外だ」 この店員は、クララがHVIFの姿で“通っている”塾の友達らしい。 とは言え、彼女は“神姫のクララ”を見た事がない。私も初めて逢う。 不用意にクララの“声”を聞かれねば、悟られる心配は少ないだろう。 それに今日はアルマの祝勝会。倭とやらには、今日の所は黙っておく。 「はい。それじゃ、鮭茶漬け二の梅茶漬け二ですね……食べられる?」 「何も私一人で食べる訳ではない故な。気にせず持ってきてくれぬか」 「は、はぁ~……まさかその神姫達が食べるんじゃないです、よねぇ」 「ふふ、そのまさかだと言ったらどうする?さ、準備を頼むぞ店員よ」 自らも神姫を伴侶としている故に、私の言葉はより一層驚きの的らしい。 それでも、カリカリに灼け脂の弾ける鮭が出てくるのは間もなくだった、 仕事は手を抜かずきっちりこなす性格らしい。気に入ったぞ。身を解せば ジューシーな汁が湧き出す鮭。柔らかく見るだけで唾液を産む紀州の梅。 「蓮華も三つ、倭とやら気が利くな……さ、皆遠慮せずに食べるが良い」 「はいですの~♪マイスターとアルマお姉ちゃんは、鮭の方をどうぞっ」 「ボクとロッテお姉ちゃんは梅茶漬けだよ。ほら、アルマお姉ちゃんは」 「あ、覚えていてくれたんですね?……あたしが酸っぱいのダメだって」 そうなのだ……情けないが、私達四人は食べ物の好き嫌いを持っている。 中でも私とアルマに共通するのは“梅干しが食べられない”という事実。 私の梅干し嫌いは、碓氷灯にも共通した先祖由来の性質らしい。アルマは もっと大雑把に“酸っぱい物が嫌い”なのである。マリネも苦手らしい。 「じゃあ、私も戴くとしようか……まだ手伝いは不要か、三人とも?」 「はい。コレ位の“荷物運び”なら、お店でもやりますしね……っと」 「でも、鮭の方は少し大変そうかな?ボクらのは、これだけだもんね」 「なんだか、お昼にやっていた大豆運びのゲームを思い出しますの♪」 ここで“茶漬け”を選んだ己の不明を呪う。そう、ご飯に乗せる具材。 神姫の躯では、これらを解してお椀へと移す作業が非常に手間なのだ。 だが、普段“食事”を行っている彼女らには、それも苦ではない様だ。 「よし。では……戴きます。お前達も準備が終わったら、食べるといい」 「はい、無事完成ですの!じゃあ皆蓮華を持って、戴きますですの~♪」 「戴きますなんだよ……はむ、ん……あちち。でも酸味が美味しいかな」 「戴きますッ。はふはふ……あむ。ん……鮭が美味しいです、とっても」 「気に入ってくれたなら何よりだ。ん?アルマや、何をしている……?」 鮭茶漬けが入った蓮華を抱え上げて、アルマが隣のクララに突き出す。 それを美味しそうに、クララが食べる。そして、次はロッテに……!? ──そう!『あ~んしてください♪』というあのセリフと共に、だッ! 予期せぬシチュエーションを目前にして、思わず私も動揺してしまう。 「じゃあ次は……マイスターですっ。はい、あ~んしてくださいね♪」 「て、照れるじゃないかアルマや……あ、あ~ん……んむ、んむ……」 「如何ですか?って同じ鮭茶漬けだから、有り難み薄いでしょうけど」 「う゛、そんな事無い!そんな事は無いぞッ!!……だってな、その」 ──────大切な人にしてもらうと、美味しいからね。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/479.html
第二幕。上幕。 ・・・。 夜は明けるまでまだ少し・・・開店まではまだ数刻。 雨が跳ね、闇に佇む一軒のお店。 シルバー&グラスアクセサリー専門ショップ『ムーン』。 奥のアトリエからはリューター特有の甲高い音が僅かにだが聞こえている。防音が不完全なのではない。『彼女』に聞こえるように、少しだけ開けているのだから。 遠い雨音と変わらない程の音。それが遠くに聞こえる、開店前の店の中で仄かな光がうつろっていた。 『彼女』はキャッシャー台の上、そこにいる一体の神姫。 ダークブルーとブラックという、シックなスーツカラーで身を包んだ人気の高い武装神姫、悪魔型MMSタイプ「ストラーフ」。彼女は丁寧な銀細工で周囲を装飾され、中央に良質クッションでのベッドが拵えられたクレイドルの上。膝を組み、手の中で悪魔型が頭部に装着する「角」を専用のウェスで丁寧に磨いていた。 思いの他に早く目が『覚めて』しまった。そして未だ「音」は止んでいない。キャッシャーを兼ねるコンピュータに映されているテレビ画面をそれとなく眺めながら。時が流れるのに身を任す。 派手な爆発。音量が絞られている為に聞こえるかどうかの轟音。 光が飛びまわり、一瞬の隙を突いた猫型武装神姫のクローが片方の犬型武装神姫に命中する。悲鳴を上げる事も無く地面に叩きつけられる敗者。ハイライトと右上に表示されている。昨日の大会の内容らしい。 その詳細な・・・とも言い難い内容をアナウンサーが嬉しそうに報じているらしい事が、字幕で解る。 周囲に配された芸術性が高い銀細工が映し込む映像・・・一応は戦場とでも言うべきか? 手を突き上げるは勝利者・・・。 ふっと、そのストラーフは自分が座るクレイドルを見て、そのまま空に視線を這わせた。 「・・・・・・」 何かを考えながらも、彼女は磨く手を止めない。 『昨夜のオフィシャルバトルは・・・』 テンプレート通りの話し方で結果を伝える優男。そのストラーフはしばしの間、その物憂げな赤い瞳に画面を落としていたが、やがて時計の針が指す方向に気付いて上体をゆっくりと起こした。 ツインテールパーツの人気が圧倒的に高いため、最近では余り見かけない「角」パーツを馴れた手付きで装着する。彼女の自慢であるそれは、他のストラーフの物とは違う深い漆黒色、表面は硝子でコートされて、それも風景が写りこむぐらいに磨き上げられたハンドメイドの逸品。 彼女の名前はヴィネット。その綺麗な角パーツの為に「角子さん」と常連の方から呼ばれる事もある。この店の『看板娘』である。 彼女は卓上から、椅子を踏み石にして飛び降りる形で、たったの二歩で床に降り立つ。と、そのままアトリエの方に足を向けた。 ほんの僅かに開けられている防音処理が施された扉。その隙間から滑り込んだとほぼ同時。響いていたリューターの音が止んだ。 決して整頓されているとは言い難い、むしろ散らかっているアトリエの奥、作業机。 後ろでくくる程に長いグレーの髪をした青年が、その眼鏡の奥の細い目をより一層細くして出来上がったばかりの作品をライトに照らしている。やがて、息をひとつ吐くと何やら頷きながら作品を机に置いた。 その姿を見てヴィネットは安堵の笑みを浮かべると、声をかける。 「おはようございます。マスター。注文の品・・・完成したようですね」 普通の武装神姫が発する声よりも、その声は明らかに大きく、明瞭で美しい。 青年は、こちらに顔を向けて微笑み、眼鏡を直しながら応えた。 「Guten Morgen・・・ヴィネットさん。ご覧になりますか?」 「是非とも、拝見させていただきます」 彼の名前はリカルド=ケンザキ。彼女のマスターにして、26歳でマエストロの名を持つ店長。 ヴィネットはリカルドがしゃがむ様にして差し出した掌に身を乗せる。 そのまま作業机の上に恭しく案内され、そこに置かれている銀製のティアラを見つけると、思わず小さな感嘆の声を上げた。 中央から左右にかけて彫り込まれた繊細な飾り花。両翼には祝福を告げる天使が踊っている。土台そのものにも装飾が描かれ、美しい流線型のラインは、冠する花嫁の頭上を一層華やかに彩るであろう。 「・・・」 嬉しそうに自分の身体より大きな芸術品を手で一度撫でると、ヴィネットは仕事を終えて髭が不精に伸びてしまったマスターに振り返った。 「お見事ですマスター。それで」 眠そうに伸びをする彼に肩をすくませ。 「・・・本日はお店を臨時休業に致しましょうか。今日はバイトの方は来られませんし。二日ほど寝ていらっしゃらないでしょう?」 「えぇ、そうですね。すいません、データの処理等をお願いできますか?」 ただでさえ眠そうな目をしているのに。今日ときたら・・・。 口の中で笑いを抑えながらも。彼女は頷いた。 「それでは。そう手配致します。横になる前にシャワーだけは浴びて下さい」 手元を照らすライトのスイッチをOFFにしながら言う事は言う。 「はい。解っています」 「そう仰いますが、三度に一度はお忘れですよね?」 「・・・参りました。注意いたします」 苦笑を口元に浮かべながらリカルドがゆっくりと立ち上がるのに合わせ、ヴィネットは、その肩まで腕を伝って駆け上がった。 「おや? これは珍しい・・・肩までですか?」 普段は頭まで駆け上る彼女にしては珍しい。 「気分です」 さらりと流すが、少しだけ彼女の頬は紅潮している。 「・・・お疲れ様でした、マスター。あのティアラを冠する花嫁はきっと『幸せ』でしょう」 そう言って、彼の頬にキスをする。 「ありがとうございます」 嬉しそうに言う彼の横顔を見て、ヴィネットも我慢できずに笑った。 「・・・マスター?」 ふっと。 これまた決して整頓されているとは言えない、美術関連の本や雑誌が氾濫する寝室。シャワーを浴び終え、そこのベッドに横になろうとするリカルドに対し。 ライトスイッチの所に立っているヴィネットは、思い出したように声をかけた。 「何でしょう?」 外そうとしていた眼鏡を掛け直し、リカルドは問い返す。彼女は、先のクレイドルの上で浮かんだ言葉を口にした。 「私の後・・・私の他に。神姫を迎える予定はございますか?」 「・・・?」 その質問の意図を捉えかねたのか。しばらく彼は沈黙していたが。 「今の所はありません。恐らくは迎えないのではないでしょうか?」 そう。応える。普通の神姫ならば、その返答は喜ばしい事であろう。 ・・・しかし、ヴィネットは暫し考え込むように首を捻った。 「どうしました? ヴィネットさん」 「いえ。・・・だとすれば、お願いがあるのですが」 しっかり者の彼女が『お願い』とは珍しい。さて何か。リカルドはベッド上で起き上がって姿勢を直した。 「どうぞ」 「いつしか私の機能が・・・故障でも、『寿命』でも構いませんが、とにかく停止した後。当然今ある神姫関連の整備品・データファイル等は処分をお願い致します。マスターはただでさえ片づけが下手ですが。サイズがサイズだけに決して手間は取らないでしょう」 ヴィネットが口にしたその言葉に。彼は眉をひそめ、顎に手をやった。 それが不満のポーズに見えたのか、ヴィネットは多少語気を強めた。 「勿体無いなどとは言わないでくださいよ? それだからマスターは片付けられないのです。使わない、使えない物は処分。それが基本です」 「・・・」 彼は答えず、小さく頷くのみ。 「さて。そこでご相談なのですが・・・」 コホン、と。多少照れくさそうに一つ咳払いをして。 「マスターが・・・私の為に加工し、見事な装飾を施して下さいました専用クレイドル」 私の為に。というのは非常に気が恥ずかしいのだが。事実彼が『ヴィネットさんの為に作りましたよ』と言って持ってきてくれた物だし・・・と彼女は自分を納得させる。 「あれだけはどうか、他の神姫にお譲りください。使用している自分で言うのも何なのですが、あれほど見事な物を私一代で終わらせるのは・・・勿体無いというか・・・その」 そこで。ヴィネットはリカルドが何やら悩んでいる事に気付いた。左手で口を覆い、普段は眠そうな細い眼光を鋭くし。じっと地に視線を落としている。 時折リカルドが見せる『集中している』表情だ。普段の彼しか知らない人ならば逃げ出すかもしれない。 きょとんとして。彼女は問いかける。 「・・・マスター? どうされました?」 「いや・・・ヴィネットさんが。亡くなったら・・・ですか」 こくり、と喉が鳴った。見慣れている彼女と言えども。この表情の彼には近づきがたい。 「・・・」 かける声さえ見つからず。彼女は何らかを思案する主が声を発するのを待った。 たっぷりと、数十秒はかかっただろうか。ゆっくりとリカルドは手を口元から外しながら顔を上げた。 「銀、いや・・・ガラス・・・」 「・・・は?」 緊張の抜けたヴィネットの声を無視し、柔和な表情に戻ったリカルドはポン、と小気味良い音を立てて手で拍を鳴らす。 「そうですね。ヴィネットさんを購入した時の・・・ブリスターですか。あれにヴィネットさんを入れて、そのまま包めるほどのガラス細工の棺を作りましょう」 その口から発せられた言葉は、彼女の想像を、遥か斜め上方に超えていた。 「当然外から見えるように透明度には最新の注意を払います。細工にしてもこのリカルド、全身全霊を持ってして見事な物を彫り上げましょう。恐らくは一年・・・いや、二年かかるかもしれません。しかし必ず完成させてみせましょう」 にこにこと。心底嬉しそうに言うリカルドに、ヴィネットは開いた口を塞ぐ気力も無く声をかけてみる。 「あの・・・ま、マスター?」 「いえいえ。顔の部分は装飾を省くのでご安心を。外から見て歪む事が無いように」 そんな事を気にもとめず、いや、一応は聞いているのか。とにかく質問を全く真意を汲まずに受け取ったリカルドは、ヴィネットの言葉を手で制して首を横に振った。 自分の世界に入ってしまったのか。唖然としたままの彼女を無視するように、遠い目で天井を見上げる。 「・・・恐らく、私の代表作になるかもしれませんねぇ。完成すれば、多くの方に見て貰う為に店先に置くか・・・いえ、盗難が怖いので居間か玄関口ですね」 「えっと・・・」 「いや・・・いやいや? 私が日々、手元で見なくてはなりません。やはり寝室ですか・・・」 この部屋の・・・どこに置くのだろう。壁にはデザイン画が氾濫する寝室をぐるりとヴィネットは見渡してみた。本棚は一杯であるし。ラックは全段が仕事等々の何やらでみっしりと埋まっている。 いつ崩れてもおかしくない。自分にそれらが降り落ちる事を思い、少々ぞっとした。 「・・・それはおいおい考えるとして、いずれにしろ360度どの角度から見てもヴィネットさんの美しい姿が、そのまま、いえ。それ以上に美しく見えるようになっていなくては」 「あの、マスター・・・?」 嬉しい事を言ってくれるはいいのですが。私はそのような・・・などとは当然言えるはずも無い。顔が火照るのを感じながら、ヴィネットはとりあえず手をぱたぱたさせる。 「何せ・・・」 天に向けていた視線を真っ直ぐにヴィネットに向け、その姿を細い目に宿し。 納得したように頷きながら優しくリカルドは笑いかけた。 「・・・。私の、素敵なパートナーですからね」 何か言おうとして。しかし恥ずかしさやら何やらが心の中に洪水を起こし。 その自分に放たれた素敵という言葉にどうしていいものか、ヴィネットは顔から首を真っ赤にして口を半開きにパクパクさせながら。 「・・・っ、マスター!」 とりあえず。怒鳴ってみた。 それも神姫とは到底思えぬ声量で。 「は、はい!」 びくっと身体を引きながら、リカルドは情けなく返事をする。 「貴方は初期梱包のブリスターなんてまだ取ってあるんですかっ!」 「わ、これは失言を・・・」 思わず両手で口を抑える主を、真紅の瞳で睨みつける。 「何ですってっ? いらない物は捨てろと、いつも言っているでしょう!?」 あの、その。とか言いながらアタフタする主に尚も食って掛かる。 「それにガラスの棺と仰いましたが、どれほどの深さの彫刻を彫るおつもりですか! そのガラス屑は誰が処分するんですか!?」 「え? それはヴィネットさんがいつもデスククリーナーで・・・あ」 やっぱりか。 じりじりとベッドの上を後ずさるリカルドに対し、ことさらゆっくりとヴィネットは口を開く。 「マスタぁ・・・?」 小さいながらも、他者を見下すようなあの視線がたまらない。という、そっちの嗜好の神姫ユーザーには人気があるストラーフタイプ特有の眼光。 「いや、それは」 引き攣った笑顔を浮かべるしかないリカルド。 「そもそも私がいなくなったらの話です! この寝室をご覧なさい! 私が言わないと満足に掃除も出来ない方が何を言っているんですか!」 「す、すいません!」 「彫刻が埋まるくらいに埃まみれのガラスの棺なんて真っ平ごめんですよ! もう・・・」 彼女は腰に両手をやり、彼から顔を逸らす。 視線を地に向け、肩で一度溜息をした。 「・・・それならそれで、掃除が得意な奥様を迎える事が先決と。そう、お考え下さい。マスター」 「・・・善処致します」 平伏するリカルドに目を向けず。 ヴィネットは大きく大きく、わざと聞こえるように。もう一度長い溜息をついた。パチッと電気を手元で消す。 「・・・マスター?」 「はい?」 その、僅かに朝の日差しの欠片が差し込む薄闇の中。 自分は。 「・・・ありがとうございます」 きっと。 笑っていたのだ。 「・・・はい。おやすみなさい」 彼もまた。 店先に戻り、PCを起動させて休業日用のデータを呼び出す。 ふと。気付き、彼女はキャッシャーの後ろにある出窓に飛び乗った。そろりとカーテンを開けて外を窺う。 夜半から降り続いていた、雨が止んでいた。光が少しずつ夜を明けていく。 彼女は嬉しそうに笑みを浮かべて、彼が起きないように小さな声で朝を祝福する歌を歌い始めた。 母から『受け継いだ』自慢の喉が、今日も震え美しい声を響かせる。リカルドの作品でもある角に僅かな朝の陽が照り返し、すみれ色の髪に遊ぶ。 美しい声が紡ぐドイツ語。歌は流麗で静やかな流れに乗って店内に響いていく。ショーウィンドウに飾られたガラスや銀の装飾品が、歌に歓びのリフレインを被せる様に、差し込んだ光をきらきらと躍らせた。 そう。 十年後は・・・どうだろうか。 二十年、三十年後・・・? とても一緒にいられるとは思えない。 いつしか私の身体は壊れ、母のように死を迎え入れるときが来る。 だけど。 この目が貴方の、優しい姿を映さなくなったとしても。 この耳に貴方の、柔らかな声が届かなくなったとしても。 掃除好きの奥様が、相変わらず掃除をしない貴方に文句を言いながらも優しく埃をはたいてくれて。 そして貴方の穏やかな視線が。見事なガラスの棺を通して私に届くのでしょう。 私はきっと。その時も暖かな光に包まれている・・・。 それは私の知らない未来。けど、私の『心』が信じる未来。 笑いますか? そんな事を考えるとき。 この胸がくすぐったくなるような『想い』を。 ・・・私は、『幸せ』と呼ぶ事にしています。マスター。 第二幕、下幕。 第二間幕
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2797.html
『天才ファーストランカー・黒野白太の謎』 読者は黒野白太を御存じだろうか。 先々月、神姫バトル界の頂点のファーストリーグに十四という若年神姫マスターがその名を連ねた衝撃はまだ耳に新しい。武装の性能に頼らず的確に相手の心理を読むセンスを以て神姫バトル界の最前線に立つ天才マスター。それが黒野白太であり、彼のバトルに憧れを抱く神姫オーナーは少なくはない。私のオーナーもその内の一人だ。 しかし名声を手にした代償としてか、数ヶ月前、そのバトルに関わる悪い噂が流れ始めた。観客によれば黒野白太は自分の神姫に全く指示を出していないらしい。 マスターはただ神姫に適切な武装を送るだけの貯蔵庫ではなく、第三の眼として戦場全体を俯瞰した上で指示を出し神姫を勝利へ導く重要な役割を持つ。黒野白太はそれをしない、にも関わらずファーストランカーとなったのはどういう事なのか。 多数の同証言者が出た事から真実を帯びたものとして神姫ネットを騒がせ、一時期は「黒野白太は違法改造した神姫で成り上がった卑怯者」「武装神姫の世界から追放すべき」と訴える過激な声もあった程だ。 このような騒動に対してオフィシャルは彼に神姫に精密な検査を行った上で違法改造の痕跡は無いことを発表している。そして黒野白太も自身のブログでバトル中に言葉を発していないのは事実であると認めた上で合理化の為に簡単な合図だけでも指示が出せるようにしていると言い残している(尚、現在ブログは閉鎖されている)。 現在では彼を擁護するマスターも現れており批難の声は潜みつつあるが風評被害を怖れてか黒野白太は神姫バトルに対して消極的になっている。人の噂も七十五日、噂が完全に消えたその時にはまた我々の前に姿を現わして欲しいものだ。 …。 …。 …。 「先月号では私達を散々批難していたくせに見事なまでの掌返しだな」 「ライターが変わっているんだよ。ほら、これを書いたのはムルメルティアだって」 お昼休み、昼食を摂り終えた僕達は立ち入り禁止の屋上で武装神姫関係の雑誌を読んでいた。 イシュタルは文字が進む毎に不機嫌になっているけれど雑誌から目を離さない。たかがゴシップと割り切っているけれど、この記事が自分達の周囲にどのような影響を与えるかをしっかりと吟味しなければならない。そんなことを考えているんだろう。 僕としては早く今週の神姫グラビア(今週はナース服!)を見たいんだけど中々それを切り出せない。かといって不真面目な態度を見せると怒られるから悩み腐っているような振りだけはしておく。グラウンドで爽やかに体を動かしている体育会系の男子達がちょっと羨ましい。 「好転はしているんじゃないかな。擁護的な記事だし。後は書いてある通り時間が過ぎるのを待つだけだよ」 「それは分かっている。しかし焚きつけておいて火消しは時間の流れに任せるとは余りに無責任だと思わないか」 「仕方ないんじゃない? 僕としては学校に武装神姫を知ってる奴が少なかっただけでも大助かりだし」 居ないわけじゃないけれど全員気の良い友人で僕のことを表立って叩く奴は居ない。御蔭で被害は神姫センターに行けなくなる程度の被害で済んだ。 「マスター、君は本当にそれで納得しているのか。もっと良い解決方法があったのではないか?」 「いや、これは本当に諦めるしかないって。悪いイメージを払拭するのは手間と時間が掛るって色んな人も言ってたじゃない」 水を得た魚ならぬ大義名分を得た人間。それを目の当たりにした御蔭で割り切れるようになってしまった。イシュタルの方はそれでも納得が行かなくて、もしくは飲み込もうとして不具合を起こしているのか、唸っている。 「それに、そうやって他人を馬鹿にするのは決まって程度の低い連中じゃないか」 「マスター…、しかし、それでも私は…」 平気で他人を馬鹿に出来る辺り僕も悪だな―とか思いつつも。 「…そう、だな。得る物はあったと考えるべきか」 「そうそう。何時でも何処でもポジティブであるべきだよ。人の上に立つ立場なら尚更ね」 「いい言葉だ。最後の一文さえ無ければだが」 「え、あ、ごめん。嫌味のつもりじゃなかったんだんだけど」 皮肉に聞こえたみたいだ。この失言を誤魔化す為にストラーフの水色の頭を人差し指で撫でる。 「わっ、こらっ、何をするっ、恥ずかしい」 「いやぁ、イシュタルの頭って時々撫でたくなるんだよねぇ。なんでだろ」 「私が知るかっ。やめろっ」 「良いではないか、良いではないかぁ」 「良くない!」 ガーッと大きく口を開けて威嚇しながら人差し指から逃れるイシュタル。 普通の神姫はマスターに頭を撫でられると喜ぶもの。数週間前にこの事実を知った時に僕を襲った衝撃は計り知れない。その例外曰く自分は母親の代わりをやってきたものだから僕に撫でられるのは何だか恥ずかしいらしい。 でも「嫌よ」と言われはい「そうですか」と諦めるようじゃ真の武装紳士とは言えないよね。だから親指で逃げる頭を追い掛ける。 「イシュタルの頭撫で撫で」 「止めろと言っているだろう!」 「嫌よ嫌よも好きの内」 「止めないと本気で怒るぞ!」 「だが断「Wasshoi!」グワーッ! 指が、指がーッ!」 わ、忘れていた、照れ隠しでロボット三原則を破るイシュタルの爆発力を! 「でも指は酷いよぅ…まだ授業は残ってるんだし…」 「全く。だから小指にしておいた。ほら、指をテーピングして固定するよりも先にすべきことはないか?」 「え、なにそれ。被害者面してアヘ顔ダブルピース要求する気満々だったんだけど」 「悪い事をしたら御免なさいと謝る。昔よく言い聞かせていただろう。ほら」 「だが断「もう一本逝くか」ごめんなさい、もうしません、ってぇ、何で謝ったのにやるのかにゃぁ!?」 「これは人として当然のことを忘れていた罰だ」 「理不尽な…」 負傷してる理由を尋ねられたら「転んだら両手の小指がイカれました」で通るかな。通すけど。怒っていたイシュタルを馬鹿にしたのは僕だから罰は甘んじて受け容れなくちゃならない。いやいや、やだなにこの糞真面目思考。ここにもイシュタル教育の影響が見えたような気がして自分自身が恐ろしくなってくる。 それよりも一秒でも早く雑誌のページを進めなければ。今月の神姫グラビア(ナース!ナース!)が楽しみで昨日は眠れなかったんだ。これ以上待たされたら午後の授業は内容が頭の中に入らなくなるだろう。ナース服に栄光あれ。 「ん、マスター、ページを捲る手が早くないか」 「気になるような見出しは無かったし別にいいじゃない」 「もしやと思うが、目的は如何わしい衣装を着た神姫のページか」 「そうだけど?」 「…もう少し恥じらいというものを持ったらどうだ」 イシュタルは呆れながらも捲ろうとしていたページの上に圧し掛かって胡坐を組んだ。目に見えて分かる不動の意思の現れは無視すれば後々が面倒になる事を雄弁しておりナース服の為とは言え軽視するのは流石に躊躇った。 「どいてくれないかな。僕はその先に用が有るんだ」 「断る。いかがわしい物など百害有って一利無し。見た者の心が堕落するだけだ」 「健全な中学生がいかがわしいものに興味を持つのは大自然の摂理だよ」 「よく聞く理屈だな。だがその欲望を断ち切ってこそ人は成長するのではないか?」 「それは違うよ! 欲望もまた自分の一部、否定しちゃ駄目だ。欲望と理性の折り合いを付けられるようになることこそが本当の意味で成長したって言えるんじゃないかな」 「むっ…、それはそうだ」 「むしろ今のイシュタルにみたいに、あれは駄目これも駄目これにしなさいあれをしなさいとか言って選択の自由を奪うのは自立する意思を奪っていることと同じだよ」 「むむむっ…、だが私は御両親の代理として不健全なものをマスターから遠ざける責任がある!」 うわ、大人専用対子供最終兵器・責任だ。じゃあこちらも子供専用対大人最終兵器を使っちゃおう。 「……」 「どうだ、分かったか。ならば早くその手を離して…」 「今月号の奴は本当に楽しみにしていたんです。だからお願いです、見せて下さい」 「わっ、わっ、泣く程か!? 泣く程楽しみにしていたのか!?」 「何でもします。だから見せて下さい。全部見せろとは言いませんから、お願いします、お願いします、お願いします」 「分かった、一ページだけなら特別に許すから、ほら、もう泣き止んで。…まったく、これでは私がマスターを虐めたみたいじゃないか」 「ありがとう、イシュタル!」 計画通り。堂々と今週はナース服特集の神姫グラビアへのページへと指を掛けた。そしてそこに開かれたのは正に楽園の扉。ナース服によるナース服の為のナース服の世界。鼻唄を歌いながらそれを眺め頭の中では色取り取りのナース服を思い浮かべる。 読めるのが一ページだけなのは辛いけれどイシュタルが譲渡してくれたんだから割り切ろう。それに一ページ目で写っていたのがナース服を着ているストラーフだったのが良かった。やっぱり褐色に白い服は良く似合う。 「…ふぅ」 「全く、こんなもののどこがいいのか私には理解出来ない」 「今僕は自分が裸エプロンになっても構わないくらい気分が盛り上がっているんだけどね」 「辞めてくれ。そんなことしたら私は家を出ていくからな」 「ははっ、やらないよ。エプロン無いし」 「有ったらやるのか…まぁいい。しかし十五センチの身体に欲情すると言うのは人間として不健全じゃないか?」 「イシュタル、君は何を言っているかな(↑)」 その発言は「アニメのキャラってただの絵じゃん」に匹敵する破壊力を持っていた。下手に爆発させれば僕達は全世界の武装紳士を敵に回しかねないのでそのマスターとしてクールに処理しよう。…あれ、何でだろう、目から汗が湧いてきた。 「あのね(↑)、武装紳士は神姫がなくちゃ生きていられない身体になっているんだ(↑)。もう神姫の声しか聞こえない(↑)。だから神姫に欲情するのは当然の事なんだよ(↑)」 「意味不明な事を言うな。そも有名なマスターの大抵は人間の女性と付き合っているじゃないか。しかも美人と」 「それ以上はいけないなぁ(↑)。それにしても、あいつらは理人さんに全裸で土下座するべきだと思うんだ(↑)」 「沖縄旅行で一人ぼっちという理人の人間性に問題があるような気がするが」 「僕はぼっちじゃない(↑)」 「マスターのことは言っていない。それよりもさっきから声が上擦っているが、一体どうしたんだ?」 駄目だ。さっきから自分で何を言っているか分からない。でも負けない。武装紳士として生きる道を選んだことに後悔なんてあるはずない。うちはうち、他所は他所だ。彼女持ちのマスターなんて羨ましくも何とも思わない、僕達には神姫が居るのだから。それにしてもクリスマスの日に空からイチャついてるカップルを目掛けて空から赤い服着た小太りのおっさんが降って来ないかな―。屋上からクリスマス衣装のカー○ルおじさんを落とすくらいなら出来るかも。 クリスマス撲滅計画は後々に考えるとして。先ずは心の傷を癒そうと次のページに捲ろうとした指を止められる。さりげない流れで行けたと思ったんだけど甘かったようだ。 「一ページだけだ。それ以上は認めない。そう言っただろう」 「残念無念」 「そろそろチャイムが鳴る。屋上の鍵は私が閉めておくからマスターは雑誌を片付けて教室に向かえ」 「後一ページだけでも見せてくれないかな」 「くどい。こんな物に見惚れている暇があったら学生の本分に励むべきだ」 「ナース服に比べたら授業一つなんて大したものでもないでしょ」 「…私は一体何処でマスターの教育を間違えたんだろう」 珍しくイシュタルが落ち込んでいる。そんな姿は見たくないなぁ。落ち込ませたのは僕なんだけど。 「あのねイシュタル、教育者が子供に完璧を求める必要は無いんだよ」 「子供が何を言っている」 「これだからゆとり世代は、て決まり文句が有るじゃない。あれ。僕は可笑しいと思うんだ。ゆとり世代なのに出来る奴にも同じ事を言えるのかって。違うでしょ、土曜日が休日になってもそうじゃなくとも出来る奴は出来るんだ。ゆとり教育は出来る奴と出来ない奴の格差を広げただけ。じゃあ出来る奴と出来ない奴の大きな違いって何だと思う?」 「…、才能か?」 「正解。出来る奴は嫌でも辛くても難しくても苦しくても逃げ出したくても出来る。何故かって、それが出来る才能があるから」 「それはそうだが…、努力を怠ってはいけないだろう」 「努力も才能の内だよ。当たり前に努力が出来る才能を育ててあげるのが正しい教育って奴じゃないか無いかな。だから僕は感謝してる。もしもイシュタルに出会わなかったら、僕は何の努力も出来ない引きこもりになっていた」 これは本心だ。僕の両親は典型的な会社人間だから。 「話は逸れたけど要するに人は完璧であるのではなく自然であるべきなんだよ。僕は自然と意味も無く勉強をして運動をして信頼が出来る。それは教育者として立派な成功だよ。僕は君と出会えてよかったって胸を張れて生きていける」 「マスター…、め、面と向かって感謝されると、なんだか照れるな」 「だからさ、落ち込まないで。それに人も神姫もナース服も万能じゃない。努力が報われないことだってある。仕方ない事だってある。僕がナース服フェチになったのは仕方が無いこと。授業よりもナース服を優先するのは自然なことなんだ」 「…、何故そこでナース服を強調するんだ?」 「そこにナース服が有るから(キリッ)」 「カッコ良く決めたつもりか愚か者がぁぁぁぁっ! 薬指を貰うぞぉおおお!」 「え、両方? ちょ、やめて、僕、結婚指輪付けられない身体になっちゃ…アーッ!」 ま、失ったものは多かったけれど。 薬指を組みつかれた隙を突いて神姫グラビアの二ページ目、ナース服のアーンヴァルを見れたから僕は幸せだ。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1220.html
第一話「くまさん」 午後7時ごろ 「ただいま~」 「あ、おかえり。形人」 全身で器用にコントローラを操作し、エースコンバットゼロをプレイしていた鳥子がこちらを見る 「今回はおみやげ付きだぞ」 「お母さんに買ってもらったんでしょ?、サイフ置きっぱなしだもん」 「ぐ・・・。あのなヒカル、小遣いが安い一高校生の僕にどうしろと」 言っておくが、月の小遣いがたったの3000円だ。 「100円でしょそれ?ダイソーの袋だよ、それ」 以前買った食玩のF-14の尾翼を弄りながら鳥子―ヒカル―は言う よく見ているな、おい 「それよりも、ホレ」 そう言いながら袋の中身を差し出す それはクマのキーホルダーだった。 神姫と比べると人間換算で一メートルはある 「!? ・・・くまさん?」 可愛らしい反応するじゃないかヒカル。普段の戦闘機バカはどこにいった? 「貴方に言われたくありません!エリパチファン!」 「んー?いつぞや寝言で「神田さん好きです」って言ってた神田ラヴァーはどこのどいつかなぁ!?」 「!!?そ、そんなこと言ってたんですかっ!?」 あ~顔真っ赤にしてまぁ… 反則的に可愛いじゃないかコンチクショウ 「…あ、すまない…言い過ぎた」 「……」 黙っちゃった…どうしよう 「形人~!ご飯できたよ~」 あ、メシか、早くしないと怒られる… 「ヒカル、本当にすまない。明日はやて(マウンテンバイク)とばして着れそうな服買ってくるから…」 「……」 ヒカルは黙り込んだままだった 母がうるさいのでやむなく一階に下りていった ――三時間後 「あー・・・肉の後にスプラッタ描写のある映画を観るもんじゃないな・・・」 部屋に戻ると、ヒカルの寝息が聞こえてきた 「寝ちゃったのか・・」 すまないと思いつつ、机を見ると一枚のB5用紙が置いてあった 『くまさんのキーホルダー、ありがとう。あと服、楽しみにしてる』 描画用の2Bシャープペンで書かれた少し汚い文字 ふと見ると、ヒカルはクマのキーホルダーを抱いて眠っていた 起こさないようにクレイドルに運び、タオルをかけてやる 「おやすみ…ヒカル…」 エリア88第二話のセリフを流用しつつ、デスクトップの電源を点ける 夜は始まったばかりである。 おまけ 「何でタマネギばっかり?」 「タマネギは色々使えるだろ」 玉葱ばっかり野菜室に入ってるウチの冷蔵庫(実話) 次回予告 ヒカルが一日中寝ている間に、形人はダイソーまで行っていた。 そこで買ってきた物って、何? 次回「服」…ってまんまじゃん(N:形人) 武装神姫でいこう!?に戻る トップページ
https://w.atwiki.jp/battleconductor/pages/69.html
種類 一覧表 排出率 N R SR UR EXUR DN なんの略なのよ? EX++UR EXUREX++URカード EXURカード 一覧 イベント限定プロモーションカード 武装神姫1周年記念アーンヴァルMk.2&ストラーフMk.2 2022年謹賀新年ストラーフ DN レンタルN レンタルRレンタルに登場しない神姫 コメント メインであるゲーム内や公式サイトの表記を見るに公式の呼称は「レア度」。ただし公式操作説明書は「レアリティ」表記。 種類 N R SR UR の4種類がある。 亜種として EX++UR EXUR DN レンタルN レンタルR の5種類がある。 ※レンタルN レンタルR は便宜上の名前でありゲーム内でこう表記される訳ではない EX++URについて、++がEXやURの部分と同様に明らかに文字として縁取りされているため、そういう名前と判断してEX++URとEXURの2種類に分けています。 一覧表 レア度 神姫Cost 武装Cost 武装 親密度上限 ジェムロスト 個体値 Body 神姫 N ★ 70 or 80 変更可 Lv100 ◇ ◆ or ◆◆ or ◆◆◆◆◆ SS or S or M or L or LL カード神姫 R ★★ 130 or 140 変更可 Lv100 ◇◇ ◆ or ◆◆ or ◆◆◆◆◆ SS or S or M or L or LL カード神姫 SR ★★★ 320 or 330 変更可 Lv100 ◇◇◇ ◆ or ◆◆ or ◆◆◆◆◆ SS or S or M or L or LL カード神姫 UR ★★★★ 860 or 870 変更可 Lv100 ◇◇◇◇ ◆ or ◆◆ or ◆◆◆◆◆ SS or S or M or L or LL カード神姫 EX++UR ★★★★ 860 変更不可 Lv1 ◇◇◇◇ ? ? 限定プロモーションカード神姫 EXUR ★★★★ 860 変更不可 Lv1 ◇◇◇◇ ? ? 限定プロモーションカード神姫 DN ★ 70 変更可 Lv10 ◇ ? ? デジタル神姫 レンタルN ★ 70 変更可 親密度なし ◇ ? ? レンタル神姫 レンタルR ★★ 130 変更可 親密度なし ◇◇ ? ? レンタル神姫 より詳しい性能の差異・特徴はこちらへ 排出率 おおよそ N40% R40% SR15% UR5% N R SR UR EXUR DN なんの略なのよ? それぞれ何の略であるかは公式には明かされていないようだが、一般的な知見で推測すると以下の略なのではないかと思われる。 略称 正称 ヨミ N Normal ノーマル R Rare レア SR Super Rare スーパーレア UR Ultra Rare ウルトラレア EXUR Extra Ultra Rare エクストラウルトラレア DN Digital Normal デジタルノーマル 『「俺と神姫で戦うボタン」略して「AUTO」』とする運営なので、もっと奇天烈な正称である可能性は十分にある。 →2021/12/24の公式サイトリニューアルに際し、N~URまでのレアリティの正称がこの表と同じと明らかになった。 EX++UR EXUR 限定プロモーションカード神姫 = EX++UR or EXUR EX++URカード EXURカード 一覧 種類 神姫 配布 備考 EX++UR アーンヴァルMk.2 「JAEPO2020」バトコン試遊特典 3枚のランダムで1枚 ロケテストでのみ使用可能 EX++UR ストラーフMk.2 「JAEPO2020」バトコン試遊特典 3枚のランダムで1枚 ロケテストでのみ使用可能 EX++UR シュメッターリング 「JAEPO2020」バトコン試遊特典 3枚のランダムで1枚 ロケテストでのみ使用可能 シークレットだった EXUR ジルダリア 「事前登録キャンペーン」賞品 抽選20枚 キャンペーンサイトの画像ではEX++URだった EXUR ジュビジー 「事前登録キャンペーン」賞品 抽選20枚 キャンペーンサイトの画像ではEX++URだった EXUR シュメッターリング 「エアコミケ2」グッズセット限定特典 「コミックマーケット99」開催中止に伴う実施 EX++UR ツガル 「カードゲーマーvol.55」付録 EX++UR アーンヴァルMk.2 「カードゲーマーvol.56」付録 イベント限定プロモーションカード ロケテスト会場で発見されたノラ神姫のマーモット(?)AIは賢く、人懐っこく、甘えん坊な性格。家具を齧ったり、夜鳴きもしないが、高火力を好む物騒な一面もある。かわいがってあげてください。 2021/7/16~18のレイドボスバトルロケテスト時に配布されたムルメルティア(今後何らかのイベントが開催された際にも出現する可能性がある)。 通常のものとは表面イラスト及び裏面プロフィールが変わっているが、通常のRムルメルティアとしてゲーム中で使用できる。 親密度が上げられる他、個体値も個別に存在するが、重複して使用する事は出来ないとの事。 武装神姫1周年記念アーンヴァルMk.2&ストラーフMk.2 バトコン稼動1周年を記念して2021年12月24日10 00~2022年2月15日09 59の間、アーンヴァルMk.2またはストラーフMk.2のURカードを引き当てた時、特別なオリジナル装備姿となった両名がデザインされたものに変化する。 これは表面のみのデザイン変更で、性能・個体値などは通常の機体と同じ。ついでにイラストのオリジナル装備も一切出て来ない。 2022年謹賀新年ストラーフ 謹賀新年を記念して2022年1月1日12:00(公式Twitterにより開示された時間)~同12日9 59の間カードコネクトで印刷する事が出来る特別仕様のストラーフ。レアリティRの個体値2V(SPD・BST)成長タイプ晩成型でLサイズ、しかし6V同様コスト+10という変則的な性能。 通常のRストラーフとしてゲーム中で使用できる(装備はついてこない)。 【注意!】たとえ複数印刷しても全くの同一個体なので重複して使うという事は出来ない。 これは紐付け番号が完全に同一であるため。よって運用としては「イベント限定プロモーションカード」のRムルメルティアに準じるものと考えてよい。 ちなみにカードコネクトでは印刷時にフレームやエフェクトを使用できるのだが、しっかり武装神姫の枠(UR)もある。もちろん使っても実際のレア度には影響しない(ややこしい) どうせなら稼動1周年アーンヴァルMk.2&ストラーフMk.2も、こちらの売り方でよかったのではあるまいか? DN デジタル神姫 = DN デジタル神姫の保有上限数は30体です。カード化せずに上限に達すると、新たに購入できなくなるのでご注意ください。 保管期限180日という情報がヘイグに出ており、公式でもどこかで明記されていたような気がするのだが見当たらない。現在は保有期限は撤廃されているのか? レンタルN レンタルR レンタル神姫 = レンタルN or レンタルR レンタルに登場しない神姫 エーデルワイスおよび追加参戦した神姫はレンタルに登場しない。 コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/186.html
そのろく「類は共を呼び友になるのか?」 きりきりきりきり ひゅっ ずとん 「的中」 現在部活動の真っ最中。 人間何事も平常心が大切だよね、って取って付けた事を言うつもりも無いけど、雑念邪念を振り払いたい僕にとって、この部活を選んで良かったと言わざるを得ない。 昨晩のアレは、なんて言うかダメすぎる。 おかげで今朝は、なんとなくティキを正視出来なかった。 そういう意味でも弓道っていいよね。精神修行だし、集中しないと動作に現れる。 つまりへまをやらかしたくなければ余計な事は考えないようにしないといけない。 ひとしきり矢を番えた僕は、更に精神を落ち着かせる為道場の隅で正座し、反目閉じる。 ウチの学校の弓道部は大会等で好成績を残す事を目的としていない。なら何が目的なのかと言えば、「修練」なのだそうだ。 だから勝つ為の技法より、心構えや求道性を求められる。そんな指導で強い選手など早々育ちはしない。 つまり、そんな空気感のある部活と言う事。 だから僕が隅で心を落ち着かせる為に正座をしようが、誰にもとがめられる事は無い。 顧問に言わせればむしろ奨励。 実際にどんな邪念妄想を打ち消そうとしているかなんて、誰にもわかるはず無いのだから、僕はこの時間を有効活用し、必死に平常心を取り戻そうとしていた。 すうっ、と僕の隣に誰かが座る気配を感じる。 一人が座して、他の部員がそれに倣う事も多々あることなので、僕は気にしないで雑念と闘っていた。 の だ が、 「武装神姫」 耳元ではっきりとそう聞こえた。 雑念を読み取られるわけ無いんだけど、僕はそれでもギョッとして今となりに座した人を確認する。 同じ一年の式部敦詞(しきぶ・あつし)がそこにいた。 式部は目を閉じたまま、小声で続けた。 「明日の放課後、神姫を連れて三丁目の公園に来い」 「……わかった」 僕は、やはり小声で答えるしかない。僕は学校ではそういう興味がまったく無い人間として過ごしているので、事を大きく出来ない。たとえそれが脅迫だとしても、だ。 結局僕は、新たな雑念を抱えて家路に就くことになった。 次の日 部活が無い日をわざわざ選ぶのは、やはり同じ部に所属するからで、部活がある日だと時間的に都合が悪い。そういう意味じゃ常識的な相手。 つまり、あまりにも非常識な要求はしてこないだろう、と僕は予測する。 正確に時間を決めていたわけじゃないので特に急ぐ事も無く、僕は公園に到着した。 「遅い!」 来るなりヤツはそう言う。 「別に時間決めてたワケじゃないだろう?」 僕は答える。チョット言葉が強張るのは緊張してるから。 「それがお前の神姫か?」 「そ……そうだ」 式部は僕の頭の上にいるティキを見る。今日のティキは母さんが作った服を着ていた。 そんなティキを確認し、式部はチョットだけ目付きをきつくした。 頭の上でティキがビクッと震えるのを感じる。 「なんで武装して無いんだよ」 「……はぁ?」 「それじゃあバトル出来ねーじゃんかー!」 式部はそう言うと、大げさに天を仰ぐ。 「……話が読めないんだけど?」 そう言った後で、僕は式部のすぐ近くで宙に浮いている、小さな人影を確認した。 白い素体に真っ赤なアーマー。 「おい、それって……」 僕は思わず指差す。 果たしてそこにいたのはMMS TYPE SANTA CLAUS ツガル。 その姿に頭上のティキも気付いたんだろう。僕の頭の上でジタバタと暴れだす。 「マスタ! マスタ! 見た事無い娘がいるですよぉ☆ すごいですよぉ♪」 「まだ発売して無いウエポンセットの!!」 「はい。はじめまして。きらりです。よろしくお願いします」 未だ天を仰いで悶絶している自らのオーナーを尻目に、きらりと名乗った神姫が丁寧にお辞儀した。 公園にいたままじゃ埒が明かないという結論に至って、僕らは連れ立って近所のアミューズメント・センターに場所を移した。 ここは所謂昔で言うところのゲーセン。それにファーストフード店とそして武装神姫のアクセスセンターとを兼ね備えている施設だ。 「つまりBAのコニ○・パレスみたいなところなのですよぉ♪」 「……誰に対して言ってるかわからない上に、僕には言ってる意味もわからん」 遠慮がちにティキにつっこむ。 場所柄だろうか、周りには神姫を連れた人たちで賑わっている。ここではセカンドリーグまで扱っているらしいので、そういう意味じゃリーグ参加者が多いのも当然か。 僕らの様な地方(と言っても首都圏)に住んでいる人間にとって、こういう施設は需要が高い。 僕らは適当に空いている席を陣取ると、軽食を取りながら改めて話を始めた。 あー……でも、たいした話でも無いので内容だけ。 要するに、式部は僕とティキが初めてバトルしたあの試合を偶然にも目撃していたらしい。それでオーナーの顔を覗いて見たら、何と見知った顔じゃないか。神姫ユーザーである事を(僕とほぼ同じ理由で)隠していた式部は、何としても発見した同士を逃がすわけには行かない。 「と思って、つい声をかけちまったんだよ」 式部はそう言ってジュースのストローに口をつける。 「それにしたって、もっとやり方ってあるだろう? っと、ティキ、ウロチョロしない」 答えながらもティキをあやす。ティキとしては珍しいんだろうな。もっと色々と外に連れ出さないと。反省。 そういう意味じゃ、きらりは落ち着いたもので、大人しく座って式部と一緒にポテトをかじっている。 「あんな言い方じゃ、どう好意的にとっても友好的には受け取れないよ」 僕は大好きなマウ○テン・デューに手をつける。 「あー…… それについては反省してる。よっぽど切羽詰ってたんだな、俺」 「一人で納得するなよ」 「ははは。まぁ良いだろ? で、それじゃ、改めて。今度部活が無い日に、俺のきらりとお前のティキでバトルしようぜ」 そう言って右手を僕に差し出す。これは握手しようってことかな? 「わかった。明々後日だね。……最初からそう言ってくれれば良かったんだよ」 僕は式部と握手を交わす。こういうのって慣れて無いからチョット照れる。 「へへへ、こういうの、チョット照れるな」 まるで僕の心の中に浮かんだ言葉をそのまま言った様な、そんな事を口にした式部に驚く。 だけど、僕が驚いた事には気付かなかった様で、式部はごく普通に話を続けた。 その後、僕と式部は今まで誰にも言えなかった神姫の話を十分に語り合い、ティキときらりはお互い知らない事を情報交換し、親睦を深めていった。 「それじゃぁ、またな」 「うん、また明日」 「今度はバトルフィールドで会おうね」 「ハイですぅ♪ 楽しみなのですよぉ♪」 僕らが別れの挨拶を交わす頃にはもう時間は十分に遅くなっていて、とても高校生が遊んでいる時間とは言えない。 空には満天の星が輝いていた。 「明日も晴れそうだね」 「ハイですぅ♪」 足取りも軽く、僕は家路についた。 ……母さんに怒られる事は必至なんだけど、ね。 終える / もどる / つづく!
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2647.html
ビックリした。 途中から、シオンになんでか知らないけど、通信を切られてしまった。 驚いたのはそれも理由の一つだ。 だけど僕が一番に驚いたのは、 ――シオンが勝てたことだ。 あのムルメルティア型になにか言われてたかと思ったら、突然、あの丁寧な物腰の神姫シオンが今まで見たことないくらいに大激怒した。 怒った後はまるで別な神姫に変わったように、練習でしか使えてなく本番のバトルでは一切使えていなかった武装を巧みに使い、勝利を掴み取った。 僕が興奮冷めやらぬ状態なのに対して、アクセスポッドからはオドオドとしているシオンが出てきた。 「すいません、螢斗さん。命令を無視して通信を切――」 「やったじゃないか、シオン! ハハハ!!」 「え、ちょっと螢斗さん? ……きゃっ!」 シオンの脇部分に手をやって軽く持ち上げている。でも、僕の頭より高い位置に。 まあ、俗にいう子どもにやるたかいたかい状態だ。 シオンが勝ち星を挙げたことで、また僕のテンションがおかしい。 けど気にしない! 「きゃーー、螢斗さん~!?…………うふふ、あはは~」 シオンもなんだかこれが楽しくなってきてきて、笑いが込み上げてきたみたいだ。 「アハハ!!」 「やったぜ!! 螢斗!」 「シオン、やったわね!」 そして、淳平とミスズも喜んでいる。 うん、バトルも勝てて万々歳、良かった、良かった。 「――ったく、負けちまったか。せっかく替え玉が手に入ると思ったんだがな~」 チンピラさんがいつの間にか近くに寄って来ていた。 ため息を吐いて残念そうにそう言う。 狂喜乱舞していた姿を見られていて僕もシオンも、急に恥ずかしくなってしまった。 「さぁ、負けたのだから、さっさと出て行くのだよ」 君島さんが僕の前に出て来て偉そうに言っている。 あなたは何もやっていないでしょ? 勝手に喧嘩吹っ掛けただけですよね。 「はいはい、わかったからよ。そう急かすな……行こうぜ、『コハク』」 気付かなかったけど、ムルメルティア型の神姫は「コハク」というらしい。 彼のことをチンピラさんとか不良とか思っていたけど、彼もやっぱり武装神姫が好きなだけの人なのかも知れない。神姫の名前を呼ぶ時は優しそうに見える。 ……僕にとっては怖いままだけど。 「貴君よ。さっきはすまなかった、訂正する。……良い上官だな」 彼の肩に乗っている神姫がシオンに頭を下げてなぜか謝った。 なにを言われたら、あんなにシオンは怒るのだろうか。砂風が舞っていて、よく聞き取れなかったのが残念だ。 ワザと怒らす気はないのだけど、なんだか気になった。 「もう気にしてません。……考えてみたら、あなたは本心からそう言ってるとは思えませんでした。戦ってみて気付きました。……なんで螢斗さんの悪口を言ったのかはわかりませんでしたけど」 どうやら、あのコハクという神姫はバトル中僕に対して酷いことを言っていたみたいだ。僕はそんなことで一々怒らないけど、シオンはそれがスイッチになってしまったらしい。 さっきの君島さんとの会話でも思ったけど、僕は神姫マスターとして愛されているみたいだな、うん。 「……ふ、それではな。――タケル上官、もういいぞ」 「……っけ……朝から来るんじゃなかったぜ。あ~あ」 神姫はそれを聞くと顔に笑みを浮かべた。 彼の方はイラついた様子のまま、そう言うとゲームセンターから出て行った。 「ふむ。これで結果オーライになったではないか。私の目論みどおりだ」 「かなり僕が危ない所まで逝きかけたんですけど!? 初めにこういう事をするときは本人の承諾を取ってください! 絶対認めませんけど」 「スパルタだと言っただろう?」 「う、……はあ」 勝てることを君島さんは予期して、僕の立ち位置を危うくさせたという事か。 シオンが恐怖よりも強い感情で塗り固め、勝利できると。だからバトルの前に好きとか愛してるとか聞いたのか。 可能性の問題だと思うのだけど。 シオンがそんなにキレなかったかもしれないし、第一に不良の彼が朝にいたのも偶然だし、その友達が裏の仕事で人手を探していたのだって……。 ……うーん、わからない。 僕がそうやって考え込んでいると、隣にいた君島さんはおもむろに自分の携帯を気にし始めた。 どうやら、着信が掛かってきたみたいだ。 君島さんは携帯を耳に寄せ話し始めた。 「……あー……うむ……そうか、すぐに来いと?……ふむ、わかった……」 「どうやら内容から察するに、主殿は急用ができたみたいでござります。この後は、シオン殿の祝勝会でも、なんでもするといいと主殿はそう思ってござります」 「あ、リンレイ! 今までどこにいたの!?」 ミスズはまたまたその場に現れたリンレイにそう聞くが、それは無視された。 携帯に早口で話している君島さんは「すまない」と手でジェスチャーすると、サングラスを再び掛けてゲームセンターを早足で出て行ってしまった。 「あ、ちょっと!? もう!」 「あの神姫は生粋の“忍者”なんだから気にすんな。あれが普通なんだよ」 「神姫にとってあれは普通の芸当ではないですよ。……ウウ……必ずや私が突き止めて見せますぅ」 なんとしても納得がいかないミスズは半泣きになりながらも、リンレイを完全究明する決意をしたみたいだった。 「私は勝てたんですよね?」 胸ポケットに戻ったシオンが僕に聞く。まだ実感が湧いてないみたいだけど、 「うん、そうだね。……偉かったよ」 よしよしと頭を撫でる。まだこの先も、勝てていけるという保証はないけどこの喜びは噛み締めておこう。 「そうですよね……えへへ」 ■■■■ 「はー、スッゲー疲れた。こんなの二度とやらねぇー」 「そう言わない。自分はなかなか楽しかったよ」 ゲームセンターから出て来た彼は、裏通りに入ると格好を直しサングラスや首を重くしていた、いくつものネックレスを外し始めた。 それらをポケットに仕舞いこみ、首に手をやりさすっている。 彼の隠れていた目元は鋭く、サングラスをしていなくとも威圧感はあり、着崩してなくとも不良かと思われるほどのガラの悪さ。 身体の均整がとれていて、服の上からでも筋肉もほどよくついているのがわかる。 容姿“は”整っている。 だが、目元がマイナスになり、周りからは恐れられそうな風貌ではある。 「……っけ……あのやろう言いたい放題言いやがって」 「まあまあ」 頭の上に移動していた神姫が彼をなだめていた。 「そういや、かなりボコられてたんだが平気か?」 目線を上にやり、自分の神姫を不器用そうに心配している。表情は変わっていない。眼つきは鋭いままだ。 それでも、声だけは聞くと優しそうではある。 「心配ない、バーチャルだから。ものすごい痛みがある程度だし」 「腹ブチ抜かれてたんだから、それでも十分だっつうの。あんなになるまで“演技”しなくとも、よかっただろうが」 「もちろん、口調とかそこらの上官たちへの罵詈雑言は役としてのセリフだけど、バトル自体はあまり演技じゃなかったよ。言われた通り本気は出していないけど、結構力は入れていたんだ」 「ふーん。コハクが言うならそうなんだろうな。バトル恐怖症みたいだった、つう話はどこにいったんだか」 「戦えなかっただけで元から強くはあった。けど、CSCから来る怒りがパワーを底上げしたとかかな? 王道展開よろしくそういう展開にさせてみたら、予想外に強くなったみたい。まあ、アーティル型だし当然かな……よっこいしょっ」 ムルメルティア型の武装神姫「コハク」はバトルで起きたことをそう説明した。 コハクは軍帽とサングラスを外してから、彼の頭の上で腕を枕にして寝そべり始めた。 神姫一体が頭に乗っていたらネックレスよりも首に負担がかかると思うが、それが普段の彼たちの姿だ。 「せっかくの休みの日だっつうのになー」 そう愚痴ってから彼は歩き始めた。 その時、 ――ドスン。 「……おい」 突然彼の後ろから誰かが軽く抱きついてきた。 だが、彼も誰が抱きついてきたのかはわかっているのか、あまり驚いていない素振りをする。 もしも抱きつかれた衝撃で、彼が前のめりに動いていたら、頭の上にいるコハクは落ちてしまうからだ。 彼の踏ん張りが功を奏して、コハクはそのまま寝ころがっているままになった。 「すまなかった。……辛い役目を背負わせてしまったみたいだ」 抱きついてきたのは女性だった。背の高い彼と同じか少し低いくらいの背丈。 彼女は彼の後肩部に額を乗せて身体を密着させている。抱きついているから当然だ。それは彼が信頼できる相手だから出来る行為。 それに加え彼女はすまなそうに謝った。 「……っけ……あんなのは慣れてんだよ。心配すんな」 「うん? 心配はしていないぞ」 「ッ……だったら謝ってくんなっつうの!」 彼は腰から回されていた腕を振りほどき、抱きつかれた状態を解いた。 若干顔は赤くもある。抱きつかれて少し恥ずかしかったみたいだ。 彼は彼女の前へ身体を向き直させ対顔した。 「そう怒るな。あと顔が赤いぞ」 「っく、うっせぇ!」 「はっはっは、照れるな、照れるな」 黒のジャケットを着ていて長い黒髪を腰まで流している女性。 そこには君島 縁がいた。 「……いいのかよ、あいつらといなくて?」 「電話が来たフリをして出てきたのだよ」 「ふーん、なんで?」 「猛と話がしたくなってな。心配はしてはいなかったが、怒ってやいないかとな」 「だから、気にしてねぇっつった――」 「タケル上官、それは嘘でしょ。『言いたい放題いいやがって』と愚痴っていたのはどこの誰だったかな?」 “猛”と呼ばれている彼の頭上からコハクは笑いを含ませながらそう言った。 「ふむ。コハクもすまなかったな」 「いえいえ、自分はタケル上官の命令だから気にしてないよ」 「そうか……猛もすまんな」 再度謝ってくる君島。 猛はいつも尊大な態度をとっている君島がこのように素直に謝ってくるのに若干戸惑った。 だが、それはなんとか顔には出さないようにしている。 紛らわすために別の話題、戦ったあの少年と神姫について話し出す。 「バトル恐怖症の神姫を持つオーナーをマジでビビらせろとか。合図したらアドリブで神姫を怒らせて戦えとか、色々と俺たちを振り回しやがって。……ったく、縁はあのチビとかに随分肩入れしてんだな」 「うむ。かわいい後輩なのでな」 「そうでござりますな。長倉殿はご婦人に好かれそうな風貌でござりますし」 君島の肩にはいつも通りにリンレイが立っていた。 君島とは顔見知り、いやそれ以上の関係の猛にとっては、いなかったのにいつの間にかいるリンレイの瞬間出現には慣れているので、特に動じていない。 「…………っち」 それを聞くと胸の内からイラつきが登って来て、無意識に舌打ちをする猛。 「おや、私があの少年に世話を焼いてたら、そっちが妬き上がってしまったのかね? ニヤニヤ……」 彼の態度が変わったのを見てニヤつき始める君島。そして傍にいる神姫たちも便乗して猛に対してニヤつき始める。 「子どもでござりますな。フフ」 「タケル上官はそういうのすぐ顔に出るから。……ふふふ」 「ふん、言ってろ」 また顔に熱が上って来て顔に現れ始めたのに気付いた猛は、それを見られるのが恥ずかしかったので、ポケットに戻していたサングラスを掛けた。 「このサングラスとネックレスとかも、あれに必要だったのかよ?」 サングラスに手をやって顔を背けたまま聞く。 「うむ。変装なども大事なのだよ。観衆が多い中では猛の顔見知りがいないとは限らないのでな。日常生活で支障がでないようにとの配慮だ」 「……っけ、無駄な配慮だこと。俺のツラ知ってる誰かがこんな朝早くにいるとは思えねぇけどな。……俺たちがそんなにこの茶番に必要だったのかね」 「いや、猛たちがいなくとも9通りのやり方を考えてあったが」 「おいコラ!」 不満そうな声を張り上げる猛。 それを見た君島は、 「またそうやって怒鳴るな。ほれ……」 ギュッと。 近づくと今度は前から猛を抱きしめる。 君島は背中に細い腕を回して、穏やかに言う。 「私が猛に会いたかっただけ……と言ったら、どうする?」 「……こんな面倒なことしなくとも、普通に呼んだら来るっつうの。……ったくよ、縁はよくそうやって人をおちょくるよな……」 そう言って猛も君島の腰元にも手をやる。 ストレートな髪の毛を指で梳かしつつ、恥ずかしがらず今度は抱きしめ返す。 「美人なネーちゃんと言ってくれて嬉しかったぞ」 「ありゃ、演技の一環だ」 「そうか。……ふふ」 「笑ってんじゃねぇよ」 「ふ……オシャレしてきた甲斐があったというものだよ」 「いや、キメてこなくても……縁はいつも………そのよ……なんだ……」 「なんだね?」 「///~~。なんでもねぇ!」 顔はサングラスくらいでは赤さが隠しきれなくなっていた。 それからは黙ってしまう猛。 「やれやれ、真正のツンデレめ」 「は? ツンデレ? ……なんだそりゃ」 聞きなれない単語におもわずつぐんでいた口を開いて聞いてしまう。 「ふむ。今を生きているのにツンデレを知らんのか。いいか、ツンデレと言うのはだね、数十年前から続く世の中の人々に息づくものであって猛みたいにツンツンとデレデレが――」 朝から昼に変わろうという時刻。 誰も通らないような裏路地で、抱き合ったまま『ツンデレ』とは何かを説明している、聞いている構図がこの場には展開されていた。 「フフ、仲睦まじいでござりますな」 「ホントにねぇ」 それを生暖かい目で見る神姫たち。 自分たちの神姫が傍にいるのにもかかわらず、そういうのは気にしない二人だった。 彼と彼女は恋人同士なのだから。 前へ 次へ