約 730,184 件
https://w.atwiki.jp/busou_bm/pages/51.html
一覧(DLC以外) DLC リーチが長く、チャージ攻撃発動後の移動速度が速い。 しかし出が遅く、スーパーアーマーもないので潰されやすい。 頼れるほどのものではないが、振る際に一瞬だけ射撃ガードが発生する模様。 ↓キー入力で三段目のモーションが変わるが、どうもスカりやすくなるような…? RAは二段目が高低差に弱いので注意が必要。 リーチの長さを生かして、敵RAの迎撃には優れた性能を誇る。 チャージ攻撃を叩き込むチャンスであるが、発生が遅めな点と射撃RAには注意。 一覧(DLC以外) ランク 名称 ATK COST 火器 光学 クリティカル アビリティ 入手方法 装備神姫・備考 1 銀のフォーク 19 6 0% 0% 5% - オフィシャルショップ 偃月刀 92 26 0% 0% 5% - オフィシャルショップ 2 ミストルテイン 109 32 0% 10% 5% - オフィシャルショップ ブリューナク 194 53 10% 0% 5% - オフィシャルショップ 3 聖槍"ロンギヌス" 243 63 0% 0% 5% - オフィシャルショップ 偃月刀+ms 319 77 0% 0% 5% - プレミアムショップ 偃月刀+IR 351 83 0% 0% 20% - 趙飛燕(ヴァルハラ)クイーンスピア杯スピアガトリング杯 コンボは要目押し 4 ブリューナク+ms 347 85 15% 0% 5% - プレミアムショップ ミストルテイン+ms 523 109 0% 20% 5% - プレミアムショップ 5 聖槍"ロンギヌス"+ms 634 115 0% 0% 5% - プレミアムショップ 聖槍"ロンギヌス"+GR 755 120 0% 0% 20% DEX-1SP+1 閃光魔女(クリア後ヴァルハラ) コンボは要目押し DLC ランク 名称 ATK COST 火器 光学 クリティカル アビリティ 入手方法 装備神姫・備考 1 お注射器 49 14 0% 0% 5% - オフィシャルショップ 2 テューポーン 155 43 0% 0% 5% - オフィシャルショップ ガブリーヌ 3 聖槍"レゴール" 288 74 0% 13% 5% - オフィシャルショップ 4 お注射器+ms 469 100 0% 0% 5% - プレミアムショップ 5 テューポーン+ms 650 116 0% 0% 5% - プレミアムショップ ガブリーヌ 聖槍"レゴール"+ms 558 112 0% 19% 5% - プレミアムショップ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/449.html
第一幕。上幕。 中学校から家路を急ぐ少年と、彼の肩に、ちょこんと座った金髪の小さな少女。 彼の名前は新堂真人。名はマコトと読む。少女は天使型神姫「アーンヴァル」。名はフェスタ。 二人は顔は決して明るいわけではない。 マコトの横顔には暗い印象があり、フェスタの視線は定まらず、何処と無く虚ろでただ遠くを見ている。それに・・・。 かちゃん。 という音で脚を止める。見れば数歩前でフェスタが落ち、ひっくり返っていた。頭をさすりながらゆっくりと上体を起こしている。 マコトは手を差し伸べて彼女を拾い上げ、胸ポケットに入れようとする。と、両手でポケットの縁を掴んでそれにフェスタは抵抗した。 「肩しか、ヤだ。肩がいい」 「・・・解った」 そっと肩に手を持っていくと、せっせと手だけでよじ登り、フェスタは何とか元の位置に納まった。 彼女には。腿から先が無かった。 ダンスが好きな神姫だった。 家に初めて来た神姫。母が発売日にこっそり買ってきて、マコトに押し付ける形になったのだが。姉も、フェスタを可愛がってくれた。 良く笑い、リズムだけ歌いながら何時もクルクルと踊っていた。どちらかといえば寡黙な彼の肩や頭は即席のステージと化し、いつしか人が集まって来るようになった。フェスタ(祭)という名前も、そのダンス好きな一面から取った物。 バトルは決して得意ではなかったが、そこでもダンスの才能を垣間見せた。純正装備に加えてマコトが買ってきた、大型のライトサーベルでの近接戦が得意・・・いや、好きだった。マコトの適切な指示の元、彼女はジュニアランクの上位に食い込んでいった。 バトル・・・そう、戦場であるにも関わらず。そこでも彼女は舞っていた。 指先まで伸ばし、しなやかな肢体をくねらせ、翼を羽ばたかせて。その完璧な姿勢制御で駆け巡るフィールド。淡い粒子が舞い散る大剣は、ステージに姿を変えた戦場に美麗なる光の帯を引いた。流麗なるは光剣の天使。と噂され、彼女の舞いを見る為に遠征者が来る程であった。 「もっと色んな人に見て欲しいね」 そう言って、彼女は笑っていた。 自慢の神姫だった。 いつものように肩で踊っていた時。弘法も筆の誤りか。彼女はバランスを崩し、落下した。失敗失敗と起き上がろうと身体を起こし。 「フェスタッ!!」 絶叫に近い大好きなマコトの声を掻き消したのはエンジン音。 悲劇は、一瞬だった。 脚が潰れただけ。 メーカーからの補充パーツさえ来さえすれば、直ると思っていた。武装神姫は圧倒的人気を誇る商品だ。順番待ちなのは仕方が無い。 かかった期間は三週間。届いた純正の脚部を神姫ショップで装着。それで全てが解決するはずだった。 「・・・」 ぽかんと口を開けて、フェスタは呟いた。 「何も感じない・・・」 次の瞬間に堰を切ったように泣き叫ぶ彼女を何とか宥め、その日のうちに電車に乗ってメーカーに修理に行った。 何か色々なデータが取られ、様々な脚部が試された。武装神姫の物だけではなく、それ以前の神姫の物も。 その結果は残酷な物であった。 センサー類に異常は見つからず、原因は不明。恐らくは潰れたときのショックか、長く脚が無かった為に運動系制御機構にバグが発生しているのだろうとの事だった。 ・・・だが。 マコトはうっすらと別の理由を感じていた。 それは。非現実的だけれども。 その日から、フェスタは笑わなくなった。 手だけで肩に掴まっているフェスタが、ぼんやりとした目のまま思い出したように言った。 「マコト・・・」 また。はじまった。 「私を、捨ててもいいよ?」 あの日から。彼女は口癖のように言い始めた。 自分を捨ててと。邪魔だろうと。決して目をあわさずに。 「嫌だ」 「マコトはバトルが上手だし・・・頭も良いし」 黄色い髪が彼の歩幅に合わせて揺れる。 「歩けない神姫なんか連れてたら彼女も出来ないよ?」 自嘲が僅かに混ざる声。 「嫌だ」 いつもの返答を、たった一言の返答を繰り返す。数秒の空白。なおもフェスタが口を開く。 「だけど」 「フェスタがいい」 その言葉を聞くと、ふっとフェスタは黙り込んだ。 解っているんだ。喧々囂々と怒鳴りあった、はじめて捨ててくれと彼女が言い出した日。 知らず、口を吐いて出たその一言でフェスタは静かになった。 ・・・きっと、彼女は。この言葉が聞きたいのだ。聞かなくては不安で仕方ないのだと、マコトは解っていた。 いつしかマコトも、笑わなくなった。 何度か落ちそうになりながらも、フェスタを肩に乗せて自宅に到着する。無機質な様式の家。大量に作られた、特徴のない家。 家としても初めての神姫であるフェスタが来て、そんな家も一気に華やいだ。 ・・・あの日までは。 「?」 ふと見ると、家の車庫に見慣れない車が止まっていた。怪訝に思いはしながらも、彼は玄関の扉を開けた。 「おかえりなさいマコト」 聞きなれた声。今は僅かに無機質ささえも感じる。 「・・・お客さんが見えているわよ?」 トレイを持った母親が玄関にぼんやりと突っ立っている息子に声をかける。 「お客?」 我を取り戻し覗き込むと、応接間には身形の良い初老の女性が座っていた。 「・・・誰?」 「神姫研究所の方よ。その・・・フェスタちゃんの事で。話したい事があるんだって」 研究所というワードに眉を顰めながらも、彼は鞄を置いた。 「はじめまして。新堂真人さん。そしてフェスタさん」 初老の女性はその外見同様、固そうな性格を思わせる一応の笑みを浮かべながら言葉を切り出した。 「私、千葉峡国神姫研究所の所長を務めております。小幡紗枝と申します」 差し出された名刺を受け取り、はぁ・・・としか答えられないマコト。 フェスタは机の上に腿を前に投げ出す形でぼんやりと座っている。視線は小幡の方を向いてはいるが、その焦点が合っているかは甚だ怪しい。 「えっと・・・」 返答に困る彼に、小幡と名乗った彼女は金属製のケースを机の上に置いた。 「用件とは他でもありません。彼女・・・フェスタさんについてです」 ちらりと、机に座っているフェスタに視線を移す。 「フェスタにですか?」 「はい。失礼ながらお話は聞いています。残念な事故に遭われたと・・・」 光を照り返さぬ瞳のまま、フェスタが小幡を睨みあげた。 「そこで、こちらを持参しました。フェスタさんは初期ロット。系統が合うという事で」 ケースをゆっくりと開ける。と。 「脚・・・?」 そこには、白いメインカラーに草色のラインが走った神姫の脚が入っていた。 (こんな塗装見た事が無い) どことなくディティールがやぼったいというか・・・古臭い上、表面も武装神姫のようにツルツルしておらず、処理が悪い。 「あの、小幡さん。でもフェスタは・・・」 「だからこそ、この脚部を持参した次第です」 マコトははっと、思わず身を乗り出す。 「この脚なら、フェスタでも動かせるとか!?」 ぴくっと、フェスタが肩を揺らせた。 だが小幡はゆっくりと首を横に振った。 「それは解りません。この脚部はCRZRタイプの物。つまりは、旧式です」 「え?」 マコトの間の抜けた返答。すると、フェスタがポツポツと呟くように言った。 「CRZR・・・タイプ・クラリネット。製造年2031年から2034年。少数生産された会話や通訳を主目的とするタイプであり、発声能力や気候対応能力、外国語発音能力に非常に優れる・・・」 そこで彼女は口を噤んだ。 「その通りです」 「・・・で?」 虚ろな瞳のまま、フェスタは肩を竦めた。 「そのポンコツとも言える脚を、どうしようと言うのですか? 所長さん?」 「フェ、フェスタ!」 乱暴な言い方に慌てたマコトの声を無視して、彼女は淡々と続ける。 「確かに第一弾初期ロットにCRZRの脚部は合います。でも、そのクラリネットタイプの脚は既に試しました。まさかそれをまた?」 小幡は一つだけ頷き、同じ返答をした。 「その通りです」 馬鹿げてる・・・と小さく口の中で悪態を吐き、フェスタは歯を鳴らして再び口を噤んだ。 マコトもまた肩で溜息をついて、目を伏せた。 (きっと・・・フェスタはもう・・・) 試す事さえも、苦痛なのだろう。 幾度試しても、どれを試しても動かない脚。ほんの僅かな期待はその都度に踏みにじられ、その度に絶望のシャワーを浴びて、泣き叫び続けたのだから。 「あの小幡さん、ありがたいお話ですが・・・」 断ろうとしたマコト。だが、その床を見つめていた間にか、小幡は鞄の中から小型のコンピュータを取り出していた。 「失礼ですが。コンセントを貸していただけますか? 充電を忘れてしまって」 「あ・・・はい」 彼はとりあえず頷いてしまっていた。 「その脚部を持参したのは・・・」 手元で立体モニターを搭載したコンピュータにデータを打ち込みながら、小幡はゆっくり話し始めた。 「実は、私の意志ではありません」 「え?」 その意を介す事が出来ず、思わず聞き返すマコト。 「言うなれば『遺志』です。私の、神姫の」 「・・・遺志?」 神姫の遺志? 「フェスタさん」 小幡に頼まれる形でコンピュータの真正面に座らされ、相変わらず虚ろな視線をしているフェスタに声をかける。フェスタはフェスタで反応を示そうともしない。 「貴女は、自分を捨ててくれと。言っているようですが」 目線だけ動かし、彼女は小さく返した。 「それが何の・・・」 「未来を紡ぐ事を、止めようと言うのですか? 『今、ここにいる』のに」 少し強く言う。 紡ぐという単語に疑問符を浮かべ、フェスタは僅かに首をかしげた。 その仕草を見て小幡は悲しげな顔をし、やがて目線を逸らすと、データを再生させた。 「・・・どうか、御覧なさい。これはきっと、貴女へのメッセージです」 『はじめまして。妹であり娘である神姫よ』 モニターに。 腰まで届く草色の髪と、透き通るような銀の瞳を持った、美しい神姫が映し出された。 スペーサージョイントの部分から解るが、武装神姫ではない。もっと古いタイプの神姫。そのスーツカラーはパールと草色に彩られている。 『私はゼリス。プロトタイプ=クラリネット。私はこれより、全ての機構を停止して眠りに就きます』 その自己紹介で放たれた名前。そして続けられた言葉に、フェスタとマコトは息を飲んだ。 聞いてはいた。 去年のクリスマス、ゼリスという名の「死」を選ばされた神姫がいたという事は。それは神姫の意思ではなく・・・。 少なくとも。マスコミはそう伝えていた。 『想い出を守る為に、大切な人との日々を失わない為に。この素晴らしい時間を与えてくれた世界に感謝して』 「・・・想い出?」 ゼリスはモニターの中で。しかし彼女はフェスタのぽつりと漏らした言葉に、小さく頷いてから言葉を続けた。 『私が眠りに就いた後、私の身体をパーツとして、哀しみに囚われた神姫に与えてくださるようにマスターに頼みます。この映像を見ている貴女は、身体の一部を失って嘆き哀しんでいるのですか? それとも生まれながらに身体に不自由を持ち、それの為に涙を流しているのでしょうか?』 ぎくりとしてフェスタはゼリスの顔を見返した。これは録画された物のはず。しかし、その口元に浮かぶ静かな微笑は、確かに彼女自身に向けられている。 『・・・私の身体は、きっと貴女達には旧式でしょう・・・すみません』 少し目を伏せ、悲しげに言う。 そんなこと・・・と思わずフェスタは小さく漏らし、僅かに首を振った。数秒の間の後、再び優しい笑みを湛えてゼリスは語る。 『心が豊かであればあるほどに、貴女は知らず、新しい身体を拒むでしょう』 「!」 マコトとフェスタは共にはっとしてモニターを直視する。 「拒む・・・? 私が? ・・・?」 「フェスタ・・・?」 「う、うん・・・そんな事」 少し自信なさげに下を向いた彼女に、ゼリスは諭すように続けた。 『そう・・・貴女が失ったのは身体だけではなく。そこに込められた『心』そのものなのですから』 「・・・!?」 『非現実的と、非科学的と笑いますか?』 驚いたように顔を上げたフェスタに、くすっと笑う。 『けど・・・私は信じます。信じています』 目を閉じて、彼女は胸に両手をやった。 『・・・『ここ』に、作り物じゃない、心があるという事を』 そこにあるのはCSC。プログラミングによる人工の属性付与機構。 フェスタは知らず、自分の胸に手をやっていた。 ・・・それだけだろうか? ・・・それだけなんだろうか? 熱い、何かがゆっくりと。胸から込み上げてきた。 『受け取りなさい・・・私の身体を使う事で、娘の嘆きが止むのであれば。この『心』を与える事で、妹の涙を拭い、哀しみを癒す事が出来るのであるならば。何故、どこに迷う必要があるでしょう?』 「あなたは・・・」 マコトが思わず声を出すが、小幡が手で制する。 気付くとフェスタはじっとモニターを微動もせずに見つめていた。その空虚だった瞳には確かに光が宿り、涙で揺らいでいる。 『この身体には・・・何者にも代え難い、きっと・・・貴女達が築き歩いてきたと同じ程の『想い』が込められています』 ゆっくりと語りかけるゼリス。フェスタの口が、何か言葉を紡ごうとする。 「・・・っ」 ぱくぱくと。何かを必死で言おうと。何かを伝えようとする。 ・・・涙が、一筋、零れた。 『私の身体は想いで満ちています。私の想いを受け継ぎなさい。私の心と共に歩んでください。きっと、きっと貴女の閉ざされた心も開けると・・・信じています』 フェスタの涙を見て、ゼリスのその笑顔にも一本の涙が伝った。 それはきっと。自分への嘆きではない。 これを見ている、哀しみを抱いた娘へと送る涙。 『・・・笑顔のとき、そして涙のとき。空を見上げ、海を眺め、夢を描くとき・・・心が揺れ、そして『想い』が生まれ出るそのとき。いつでも私は、貴女と共にいます』 フェスタが身をゆっくりよじりながら、肩を揺らせた。目からは涙、唇は震え、首を僅かに左右させる。 『妹達、娘達よ。貴女達を愛しています。・・・これまでも、これからも』 優しさと、ほんの少しの哀しみを湛えた唇が、言葉を紡いでいく。 『そして・・・』 一度、口を噤む。 ゼリスは、優しい母の微笑みを浮かべ、両手を広げるように確かにフェスタに語りかけた。 『想いと共に。未来を、紡ぎなさい』 もう、抑えることは出来なかった。口をついて出る、その言葉を。 神姫。生まれながらのツクリモノの身体。だけど・・・。 「お母さん・・・」 涙でもう満足に前が見えない。フェスタはモニターに近づこうと指を伸ばし、そのまま前のめりにカチャンとその場に倒れ込んだ。 「う・・・うぁあ・・・っ」 手だけで這うように進み、モニターの中で尚も優しげな微笑みを浮かべるゼリスに・・・母に、彼女は腕を伸ばす。 ゼリスの柔らかな視線は・・・不思議と真っ直ぐにフェスタに向けられていた。そのまま、小さく頷いて娘を迎える。 フェスタはようやくモニターに辿り着き、母の姿に顔をすりつけ、泣きじゃくった。 コンピュータのキーボード部を椅子にして座ったフェスタ。背からはケーブルが数本、コンピュータの本体に向かって伸びている。 腿より先に取り付けられたのは・・・美しい草色のラインが走った脚。応接間にはマコト、小幡だけではなく。母、そして大学から帰ってきた姉も集まって、それを見届けようとしていた。 「セッティングは終了しました。さぁ・・・」 小幡が背中からジャックをゆっくりと抜く。小さな手が震えながら膝に据えられた。 ぐっと身体を前にして、力を込める。真綿の上から触っているような感覚しかない。 (でも・・・。違う) 武装神姫の高質合成樹脂でもない。旧式の神姫の脚。しかしそれだけじゃない。 確かに、確かにそこは暖かい。 「ううっ・・・!」 力を込め、ゆっくりと腰が浮いた。 「フェスタっ」 「大丈夫・・・!」 心配そうな声を出したマコトを制し、フェスタは目を閉じ、歯を食いしばった。 (もう一度) いつから諦めたのだろう。それを。あんなに大事だったのに。 (もう一度・・・踊りたい) もう一度。あの時のように。今も鮮明に思い出す自分の姿。喜んでくれたマコトの顔。 本当にいつから・・・夢を見る事さえ止めたのだろう。 「うあっ!」 キリキリと音を立てながら、ゆっくり膝関節が曲がっていく。 (マコトと・・・笑いたいよぉっ!) 彼女の偽りない想い。しかし、それに反して脚は動いてくれない。 (ダメ・・・!) 力が続かず、膝からガクっと崩れかける。 ・・・・・・。 小さな背を、誰かが押した。 確かに感じた、掌のぬくもり。 大丈夫、と。耳元で優しく囁く声。 草色の髪の匂いが、ゆるやかに舞った。 カタカタッと足音を残し、彼女は二歩、進んだ。長く忘れていた脚の感覚が全身に伝わる。じんわりと伝わる、立っているという確かな抵抗。そのまま更に、ゆっくりと二歩三歩と、信じられないといった顔で歩みを進めた。 カタ、カタ。足音は小気味良い音を立てながら、歩くという実感を与える。 彼女はゆっくりと、振り返った。 「・・・フェスタ!」 いつ以来かさえ忘れたマコトの笑顔が、そこに。 「マコトぉ・・・!」 笑顔が零れる。抱き上げられ頬擦りされながら。フェスタは確かに、近くに母を感じていた。 脚は。優しく、暖かかった。 ありもしないドレスの裾を指先で持ち上げるジェスチャー。 腰から礼をすると同時に左膝を曲げ、爪先でコツンとテーブルの天板を叩く。 姉が持ち出したオーディオから流れ出す音楽。 彼女は舞った。 柔軟性の高い武装神姫の高質樹脂の脚とは違う、旧式の、少し硬い合成樹脂の脚。 それは木のステージの上でステップを踏む度に乾いた音を響かせ、周囲の空気を奮わせる。翻す腕。伸びた指。くすんだ金髪が光をはらむ。音楽とステップが奏でるテンポは一つに解け合い、彼女の踊りにリズミカルな拍子を贈った。 やがて舞い終えると、彼女はドレスを直す仕草をしながら、仰々しく一礼をした。 拍手が彼女を包む。 小さな舞姫が顔を上げると、その瞳には涙が薄く湛えられていた。 ・・・。 いつか、貴女に会う時に。胸を張って娘だと言える様に。 未来を紡ぎます。お母さん。 第一幕。下幕。 第一間幕
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2853.html
ぶそしき! これから!? 登場人物紹介 <第0話> ●佐伯友大(さえき ともひろ) 10歳 父の転勤に合わせ、上里小学校に転校した少年。 現在父子家庭の一人っ子。 父親の仕事の忙しさと転勤の多い家庭環境により、寂しい思いをしている。 父親に心配をかけさせたくないため、不満は口に出さずに家事もしている。 ある日、ずっと一緒にいられる友だち欲しさに、今まで貯めていたお年玉とおこずかいをはたいて神姫購入に踏み切る。 ヒイロの件を見て分かるように、好きなカラーは「赤」。 小学生のため主に金銭的な関係で神姫のパーツ入手に苦労することになる。 <第1話> ●羽々辺誠志郎(はばのべ せいしろう) 15歳 実家から離れた新戸守市の竹上高校に入学した少年。 色付きのメガネを着用している。 学校ではうっすらとしたもので、普段は青系の色が付いたものを使っている。 同年代と比べてかなり小柄で、同じ位の年齢と友大に間違えられて、彼の初めての神姫バトルの相手となる。 背丈と見た目に関しては、今は家系的なものと諦観しているらしい。 ・・・ ●星原店長 今年三十路となった社会人の独身男性。 昔はとある企業に勤めていたが辞めて、色々あった後におもちゃ屋スターフィールドを始める。 実は武装神姫が初めて発売された頃からの紳士である。 神姫に関することならソフト面ハード面ともに強い。 紳士淑女を増やすために初心者のために、筐体改造とトレーニング用ロボなどを作っている。 他にも色々やっているらしい。 ・・・ <第2話> ●成行春澄(なりゆき はずみ) 10歳 佐伯と同じ上里小学校に通う女の子。 少々内気。 チャオは遊び相手として買い与えられた。 衝撃的な出会い? で記憶のかなたに飛んでしまっているが、実は友大が引っ越した当日に会っている。 本人に自覚はないが、友大を神姫マスターの道に引きずり込んだ原因その1。 成り行きで友大と友だちになる。 両親はおらず、祖父母に育てられている。 料理や裁縫などの家事は勉強中。 トップページ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/12.html
夜。 寒さが強くなってきた、夜の商店街。 そこに氷雪恋は立っていた。 玩具屋のショーケース、そこに飾られている武装神姫。 それを恋はずっと見つめていた。 買えない。お金がない。小学生のお小遣いではとても足りない。 そこに男たちが声をかける。 「ねぇお嬢ちゃん、神姫欲しいの?」 「俺たちが買ってあげようか?」 下心丸出しの下卑た笑い。 「ちょっとビデオ撮らせてくれるだけでいいからさぁ」 「そうそう」 無言を肯定と受け取ったか、男たちは恋の手首を掴み、路地裏へと連れて行く。 恋はただ無言のまま連れられ、夜の闇に消えていった。 神姫狩人 第三話 FOUNDLING DOG WALTZ 「納得、いかねぇ」 時刻は土曜の昼、場所は警察署。 桐沢静真(きりさわしずま)は、不貞腐れていた。 「なんで俺がケンカでしょっぴかれなきゃならねーんだ、くそっ!? おまけにあのクソ兄貴っ!」 ここから回想。 『あ、もしもし警察ですけど。仕事中に申し訳ありません。実はお宅の弟さんが…』 『ウチにそんな弟はいないので煮るなり焼くなり犯すなり好きにしちゃってください。あと伝言よろしく。強く生きろ赤の他人、さいでに泊まってけ。兄は忙しいのだ。以上』 『……だそうだが?』 警官が同情したような目で見る。 『チクショーッ!?』 『なんかお前も大変だな……まあ強く生きろ少年』 短いが回想終わり。 「あーくそ、気分悪っ」 足元に転がっていた空き缶を思いっきり蹴飛ばす。からん、といい音を立てて盛大に転がっていく。 空を大きく飛んだ、わけではないのはご愛嬌。 「きゃっ」 空き缶が転がった先から、女の子の声が聞こえた。 「んぁ?」 静真がその方向を見る。 「お前は……昨日の」 そこには、沈んだ表情で恋が立っていた。 「あの……昨日は、ありがとうございました……」 状況を端的に記すと、恋が男たちに連れ込まれたときに静真が都合よく現れて助けた、 ただそれだけの話である。うん、よくある話だ。 ただ、ちょうど静真が腹の虫が最悪に悪かった時だったので路地裏どころか表通りでの大乱闘になってしまい、血ぃ出るわ粗大ゴミは飛ぶわの大立ち回り。 恋はそのあまりの乱闘ぶりに怖くなって逃走。まあ小学生の女の子だから当然といえば当然である。 かくて、「女の子を助けに入った」という美談部分は被害者逃亡のために無かったことになり、あとはものすごい大乱闘だけが残る。かくして見事に警察行き。 いちいち女の子を助けに入った、とあえて言うのもかっこつけてるみたいでなんか嫌だし、相手の男たちは自分らの悪事を自分から吐く訳もない。 ギャラリーのみなさんは事情を知らず喧嘩しか見ていない、かくして単なる傷害事件の出来上がり、というわけであった。 まあ、静真や相手が未成年の高校生なのが幸いであった。相手は元々普段から素行の悪い不良たちであったため、静真も停学ぐらいで済むという話。 ちなみに、いまさら停学になった所で問題はない。何故なら皆勤賞の野望は先月に兄によって阻まれてしまったからである。おのれ。 「ま、そういうわけだから気にするなよ。元々ムシャクシャしてたから丁度いい、ってばかりに自分で売ったケンカだし。だからお前にどうこう言うつもりはねぇし」 静真は歩きながら恋に言う。 「でも……」 「そうよ。静真の自業自得だもの。貴女が気にする必要はないわ」 静真の鞄から声がする。 「!?」 「おい、ベル…っ、外で出るなって」 静真の静止も聞かず、カバンのジッパーが内側から開けられ、小さな人影が飛び出す。 「武装…神姫…?」 静真の肩にのったそれは、悪魔型、ストラーフタイプ。 ただひとつ違うのは、ボディがまるでアーンヴァルタイプかのように、白い事。そして、巫女服のような神姫サイズの衣服を着ていることだった。ちなみに、巫女服のような、と称したのは、袴部分がミニスカート状になっているからである。 「ええ、そうよ。初めましてお嬢さん。私はベル。よくありそうな名前なのは静真のネーミングセンスの悪さだから気にしないで」 「だからお前はオーナーを敬うって気持ちをだな…ん? どうした?」 恋がベルを凝視していることに気づいた静真が問いかける。 「いえ……なんでもないです」 「なんでもないことないだろ。あ、いやな、この服は俺の趣味じゃないぞ、こいつが服を着せろってうるさくて」 「そうじゃないんです。ただ……ちょっと、思い出してしまって」 「武装神姫…?」 「はい……」 それきり、恋はしばらくの間、口を閉ざす。ややあって、ぽつり、と言った。 「私も、神姫が欲しかったんです。そして、その願いはかなったけど……」 「けど?」 「……殺されたんです。いきなり襲われて。 わかってる、本当はそれでよかったんだって。私は……でも、それでも、あの子は私の友達だった…」 (……) 事情はわからない。静真にはわかるはずもない。彼女はきっと色々な事があったのだろう。 その傷は彼女自身のもので、知り合ったばかりの自分が口を出していいものではないのだろう。 (でもまあ、ほっとけねぇよなぁ) 関係ないと突き放すのは簡単だが、それはなんというか嫌だと思う。美学、なんて大層なものじゃない。性分、ってやつだろう。 静真は恋に追いついて言う。 「恋ちゃん、だったっけ。今時間ある? ちょっと見せたい、面白い場所があるんだけど」 「レンタルシンキブース…?」 恋は、その店の看板を読み上げる。 「ああ。ま、入って入って」 「お邪魔します…」 自動ドアの前に立ち、中に入る。すると、 「いらっしゃいませにゃーーーっ☆」 いきなり、甲高い声が響いた。 テーブルの上にさらにテーブル。小さい。そしてそこに猫型MMS、マオチャオが座り、笑顔で手を振っている。 「ここは…? え、ええと、こんにちは……」 「うにゃ。お客さん初めてだネ? アタシは受付嬢のマオファ。よろしく。んー、しかし…しずっち、まさかお前さんがロリコンだったとは痛たっ!?」 静真のデコピンがマオファに炸裂する。 「黙れバカ猫。香織さんは?」 「てんちょーならすぐくると思うけど。それよりも誰がバカ猫だにゃ、だいたい…」 「え、ええと……?」 展開においつけずにうろたえる恋。 そのとき、受付の奥のドアが開く。 そこから現れた20代半ばぐらいの眼鏡の女性が、マオファをひょい、と掴みあげる。 「うにゃ?」 「はいごめんねー。あら静真君じゃなーい、久しぶりやなー。何やそちらのお嬢さんは? 何、キミロリコンやったん?」 「はははははははははあんたら揃いも揃ってなあこんちくしょう」 「日ごろの行いね」 「てめぇまでっ!? あー、ごほん。えーと、ここはだな」 「まあまあ」 女性…香織が静真の言葉をさえぎる。 「百聞は一見にしかずや。見てもらったほうが早いし、びっくりすると思うけどな?」 「わぁ……」 思わず声が漏れる。 広い部屋は、デパートや遊園地の遊具スペースのような様々なおもちゃが置いてあり、そこには子供たちと、武装神姫が遊んでいた。 「武装神姫……こんなに」 「そや。たくさんおるやろ? この店はな、武装神姫を貸し出して遊んでもらう店やねん。 ある意味、神姫たちの孤児院みたいでもあるわな」 「孤児院…?」 香織に続き、ベルが言う。 「そう。ここの半数の子たちはね、捨て神姫なの。人間の都合で捨てられた子、飽きられた子、壊されてそのまま廃棄を待つだけだった子……それを物好きなこの人が、借金してまで買い集めたりあるいは貰ったりして来て」 「ベルちゃんあのな。物好きはないやろ」 「じゃあ酔狂、ね。新しく売るんじゃなくて、子供のお小遣いで借りれるような金額で貸し出すなんて、酔狂もいいところ。儲け、出てないんでしょう? まったく、理解できないわ」 「あいかわらず言うことキツいなぁ。まあソコがかわいいんやけどね」 「そぅかぁ?」 静真が嫌な顔をする。 「そうや。んーと、こほん。まあそんなワケでな。武装神姫って、結構高いやろ? 特に拡張パーツやらなにやらそろえたりとかはとても子供じゃ無理や。 親に買ってもらえたり、お年玉貯金でどうにか出来る子はまだええ。 でも買えん子はぎょーさんおる。わかるやろ」 「はい……」 「そんな子たちのためにやな、武装神姫を貸し出して、遊んだり話したりする店や、ここは。 武装神姫は人間の友達、パートナーや。人間は、特に子供たちはもっともっと神姫と触れ合わなあかん。ロボット技術が発達して文明が豊かになっても、大切なものは何も変わらん。 心や。心と心の触れ合い、コミニュケーションが大切や。 そしてせっかくの心をもった人間のパートナーとなれるロボット。こりゃもう、触れ合う機会はあればあるほどええ。違うか?」 「違わないと、思います…」 目を輝かせる香織に、恋も頷く。 「まあ、えらそな事言うとるけどな、確かにベルちゃんの言うとおりに酔狂かもしれへん。 だけど見てみ。ここに来てくれる子供たちの笑顔。 私はこれが見たくてこの商売やってんねや」 香織に促されて、恋は見回す。 確かに、そこには笑顔があった。 ……私も、あんなふうに笑えるのかな。 恋は思う。 思えば。サマエルと共にいた時、私はこんな風に笑えていただろうか。 覚えていない。 それが、寂しかった。 この店には、神姫サイズの遊戯場から、神姫のオンライン仮想バトルの機械まで揃っていた。 バトルに関しては店の性質上、公式リーグへの登録は行わずにオンラインでの草バトルを行っているらしい。 確かに、レンタル屋という性質上、ひとつの神姫のオーナーは毎回変わるし色々と面倒だから、だ。だがそれで特に不都合はないとのことである。 確かにこの店の客層は、いずれ神姫を購入し公式リーグで戦うための練習を行うユーザーや、単純に神姫と遊ぶ目的の子供などが大半を占めている。 まあ、中には…… 「はぁはぁ犬子たんの素体萌え~」 「お股を開いたり閉じたりさせて下さい!」 なんてのもいるのだが。あ、撃たれた。 閑話休題。 客はここに用意されている神姫たちを指名して借り受ける。値段は、店内では一日500円、一泊二日で800円。 人気のある神姫は中々借りることもできないのも、「レンタルビデオ屋と同じ」である。 そこ、間違ってもホ○テ○みたいと言うな。 「……」 だが、恋はその光景を黙って見ているだけだった。 お金は確かに、神姫と遊ぶくらいのお金はある。しかし、どうにも気が乗らないのだ。 考えることが多すぎる。考えてしまうことが多すぎる。 捨てられた神姫。壊された神姫。ここにいる大半は、そうして死んでいく運命だった成れの果て。 捨て犬。捨てられたペット。ゴミ。いらない子。 そういう単語が次から次へと浮かぶ。 だから、思ってもいないこと、思ってはいけないことが次々と浮かぶ。 サマエルの眼差し。友達だった。友達だった? 本当に? あの女は言った、操られていると。 それは嘘。私は自分の意思で。自分の意思で? 自分の意思で多くの神姫を操った? 違う。 何が違うの? 友達? 笑わせる。道具のように扱った。道具のように扱われた。だから道具のように。 友達という言葉で隠して、自分の醜い欲望を隠して。 何が違う。 ここにいる神姫たちを捨てたオーナーたちと……何が違う! ――何も、違わない。 だから私は、ここにいる子たちのように笑う資格はない。笑う権利もない。 「お、おい恋ちゃん!?」 恋は、罪悪感に苛まされて立ち上がり、走り去る。静真はあわてて後を追おうとするが、しかしベルに止められた。 「放っておきなさい」 「でもよ……!」 ベルは神姫サイズの湯のみにお茶を淹れて飲みながら静かに言う。 「構って慰めるだけが優しさじゃないわ。どんな物語も、乗り越えるのは本人よ」 「だからって、見捨てられるかよ」 それに、ここに連れてきたのがまずかったのかも知れないし。そういう静真にベルは平静に答える。 「見捨てるのと放っておくのは違うわ。それにね静真、あなたは彼女をここに連れてきた、それでよかったのよ。 どんな形であれ、前進することはいい事よ。ただ立ち止まるよりは」 後は、道を間違ったり踏み外すようならそのときに支えてあげればいい。でも、今は違う。 ベルはそう続けて、お茶を飲み干した。 「――――でも、それでも。賢い思考よりも愚直な行動を取るのよね」 律儀にも聞くだけ聞いた後で再び追いかけて走り去った自分のマスターを見送る。 「本当に愚かで――――人間って、本当に理解できないわ」 その光景を香織はカウンターで眺めて、思う。 確かにそうかもしれへんな。でもね、ベルちゃん? そう憎まれ口を叩くあんたの顔、いっぺん鏡見てみぃや。 すごく、優しい……いい顔、しとるよ? 「はぁ、はぁ……」 走った。恋は荒い息を整える。ここはどこだろう。 まだ店の中、建物の中のようだ。 「倉庫……?」 暗い部屋の中に陳列された棚。神姫のパーツやそのほかの玩具が並んでいる。 「誰」 「!?」 恋の耳に声が聞こえた。 「誰……誰かいるの?」 「人間は質問に質問で答えるのか?」 恋の言葉に、声は答える。 やがて恋の目が暗闇に慣れる。棚の奥に、それは座っていた。 「神…姫?」 犬型MMS、ハウリン。それが棚に座っていた。 「そうだよ。見れば判るだろ」 その神姫は、ぶっきらぼうに言い放つ。 「用がないんなら出てけよ。オレは人間は嫌いなんだ」 「人間は、嫌い……?」 「ああ。好きになれって言うほうがどうかしてる。勝手に作り出して勝手に戦わせて、勝手に捨てる。 どの道壊すのなら、心なんて付けるなって言うんだ」 「そう…嫌いなの。 気が合うね、私も……嫌いになったところ、人間がじゃなくて、自分自身がだけど」 「はぁ?」 その言葉に、神姫は怪訝そうに声を返す。 恋は、ゆっくりとそのハウリンの元に歩き、腰を下ろす。 「あなたの言うとおりだと思う……人間(わたし)は、本当に身勝手で。 私も……自分の気持ちしか考えなくて。ずっと一人だったから、だから……自分のさびしさを埋めるための道具としか見てなかったんだと思うの。 それに、もっと早く気づいていたら……そしたらあの子と、本当に友達になれてたのかも……」 「……よくわかんねぇけどお前も大変だったんだな。 いつだってそうさ。気がついたときには遅すぎる。 オレだって、マスターとは強い絆で結ばれてた。そう思ってた。……オレの場合は、気づかなきゃよかったのかもな。 オレがマスターに、道具としてしか見てもらえなかったって。 勝ち続けてきた便利な道具は、一度負けたときにその理由を失うって」 「……」 「オレはね、結構有名なランカーだったんだ。常勝無敗。いずれはトップに近づけるはずだった。 だけど……あの時全てが狂ったのさ。いや、最初から狂ってた、か。 オレのマスター、不正してたんだ。オレも知らなかった。そして本部から刺客が送られてきた。 神姫狩り、ってヤツさ。非公式のハンター。九ツ首のヴァッヘバニー、クトゥルフオブナイン。 強かったよ。それで負けちまってさ。 オレが戦ってる間、マスターはどうしたと思う? 逃げたんだよ。オレを置いてな。ああ、でもそれでもよかった。マスターが無事だったら。 そしてオレは壊れた体を引きずって、なんとか家に戻ったら……笑い話さ。もう家には何も残ってなかった。小さなアパートだったけど、オレたちにとってそこは大切な、帰る場所だったはずなのに。 何もかもなくした、んじゃない。最初からオレは……何もなかった。ただの、捨て駒だったんだ。 それに気づいてしまうぐらいなら、いっそ何も知らないまま壊れて死ねばよかったんだろうけどな」 ハウリンは自嘲する。 「いつだって、遅すぎんだよ。だから……?」 ハウリンは言って気づく。となりの人間の肩が震えていることに。 「お前……泣いてんのか?」 「だって……ごめんなさい、ひどいことして……本当に……」 「……」 その恋の言葉にハウリンは少し黙り、 ばこん。 「痛っ!?」 恋の手を思いっきり蹴飛ばした。 「バカかお前。なにがごめんなさい、だ。お前がやったんじゃねぇ、それとも何か。人間代表のつもりか? うぬぼれんなよ、バーカ」 「バ、バカって……バカって言うほうがバカで……」 「なにベタな返ししてんだよ。小学生かおめーは」 「……小学生です。五年生……」 「……マジかよ。くそ、しくじったな畜生。 あー、まあ、そのなんだおめー。とにかくお前が悪いわけじゃねぇから泣くなバカ。 ……まあ、でもその気持ちだけはありがたくうけとっといてやるよ」 そっぽを向き、ハウリンはつぶやく。 「うん……ありがとう」 「謝ったり礼いったりちぐはぐなやつだな、えーと……」 「恋、です。ひゆき、れん。恋する、って書いて恋」 「そうか。オレは……普通にハウリンでいいよ。名前なんかとっくに捨てた」 オーナーに捨てられたときに。そう続けるハウリンに、恋は少し考えて言った。 「じゃあ……私が名前をあげるよ」 「は?」 「名前がないと、誰からも呼ばれないでしょ。それって、悲しいと思うから」 自分が、そうだったように。 「……ハティ。どうかな。月を呑む狼、フェンリルの仔、ハティ」 「……ハティ、か……」 ハウリンは、その響きを反芻するように何度か口にする。 「気に入らなかった?」 「さあな。だけど、もらえるものはもらっといてやるよ、レン」 そっぽを向きながらハティは答える。その言葉に、恋は笑顔を浮かべた。 「……出番なし、か」 倉庫の前のドアを背に、静真は笑いながらかるくため息をつく。 「ま、邪魔者は退散、かな。追いかけてって何もせずに戻るってぇのは、ベルの奴に色々とまた言われそうだけど……ん?」 立ち去ろうとすると、廊下の向こうから見知った顔の子供が走ってくる。 「静にーちゃん、大変だよ!」 「どうした?」 「なんか怖い男の人達が店に!」 「なんだって!?」 「という訳でしてね。悪い話ではないと思うんですがねぇ」 「どう聞いたって悪い話やろ!」 店の前で、黒服たちの言葉に香織が反論する。 「金の問題やあらへん。私はな、子供たちのために、子供たちに喜んで欲しくてこの商売やっとんのや」 「それが邪魔だっていってるんですがねぇ。正直ね、そういう商売を勝手にやにれると、神姫業界にとってマイナスにしかならないんですよ。 自己満足の偽善で、善良な同業者の邪魔をしないでもらえますか」 「何が善良や、この銭ゲバが!」 香織の怒声に黒服たちは肩をすくめて笑う。 「なんやーーーーーー何がおかしいんやこのすっとこどっこいがーーーーーーー!!!!!!!!」 「だあっ落ち着け香織さん!」 表に出てきた静真が後ろから香織を取り押さえる。 「だからさぁ、鶴畑コンツェルンに逆らったら色々とまずいってわかりませんかねぇ?」 「わかるかいだぁほぉ! 喧嘩売っとんのなら高く買うでぇ! 簀巻きにしてドブ川に頭から放り込んだあとでカー○ル君をさらに上からマッ○ルドッキングのよーに叩きつけてセメントをケツから流しこんだろうかぁー!!!???」 「ストーーーップストッブ、頼むから落ち着けっ!」 「ほう、買ってくれますか。いいですねぇ、ではコトが武装神姫だけに、バトルで決着をつけるというのはどうでしょうか」 「「え゛?」」 香織と静真の声がはもり、止まる。 「自分が喧嘩を買うといわれたのです。まさか嫌とは言いませんよね?」 「……」 拙い。何が拙いかというと、そもそもこの店にある神姫たちはぶっちゃけバトル用に特化しているわけではない。 そもそも香織にそこまでの武装パーツをそろえる資金もない。神姫たちの経験も足りない。 「…………ふ、ふん。当たり前や。女に二言はないで。戦ってやろうやないか、 彼がな!」 「俺かよっ!?」 静真を指差す香織。 「当たり前や、私とマオファがそんなガチバトルなんか出来るかい!」 「……ったく、あーもう、またもめ事かよ、俺は平凡に生きたいってのに……」 わしゃわしゃと頭をかきむしる静真。 「ま、だけどここが潰れるのも困るしな。いいぜ、やってやるよ」 静真が一歩前に出る。ベルもまた構える。だが…… 「おっと、お嬢さんも戦ってもらうに決まってるじゃないですか。誰が一対一といいましたか?」 黒服が笑い、指を鳴らす。後ろに停めてあった車から、二人組の男たちが出てきた。 「な……?」 「二対二のタッグマッチ、ですよ」 「聞いてねぇぞ!?」 「言ってませんからねぇ。でもバトルを受けるといったのはあなた達ですからしたがってもらいますよ?」 「……どこまで腐ってやがる、てめぇら!」 「さてねぇ。鶴畑に逆らうから悪いんじゃないでしょうか? さて、それでは始めましょうか」 「っクソ、仕方ない。香織さん、とにかく俺たちがなんとかするからマオファは後ろで…」 「待ってください!」 割り込んだ声は、恋のものだった。 「……恋ちゃん?」 「私が、戦います……」 そこには、ハティを手に乗せた恋が立っていた。 「……無理だ。だいたい……」 「非公式バトルなら、私にも経験が、一応ありますから……」 半ば操られていた夢うつつだったけど。 「それに……ここに来たばかりで、私、まだここで一度も遊んでいない。なのにここが無くなるなんて……この子も、ハティも……戦ってくれる、って」 「イヤイヤだけどな。オレみてぇなはぐれモノは行く場所なんてねぇ。少なくともそこのバカネコよりは戦える」 「あなたたち……本気なんか?」 「はい」 「ああ」 香織の視線を受け止め、うなずく。 「おい、ちょっと……」 「よっしゃあ! 細かい経緯は知らんが、なんかもう100人力や!」 「香織さん、いやそれは」 「静真くん、あんたも男なら覚悟ぉ決めぇや!」 「いや、だからオレの覚悟は決まってますけどね、だけどそれとこれとは」 「静真。どのみち戦うしかないのよ。だったら……まだあの子のほうが、香織とマオファよりはましなのは判るでしょう?」 「……とことんまでみんなして俺の意見は無視かよ。あーわかったわかりました! こうなったら覚悟決めるさ」 ため息ひとつ。しかしこうなればやるしかない。 「ふん、しかし…」 車から出てきた目つきの悪い男が言う。 「どんなのが相手かと思ったら、ほぼ素体じゃねぇか」 「本当だね。これなら俺たちが用心棒でくる必要もなかったかな?」 その揶揄に静真は、ただ不敵な笑顔で答える。 「言ってろ。油断は命取りだぜ。いくぞ、ベル、恋ちゃん、ハティ」 「ええ」 「はい!」 「ああ……!」 構える四人。対する男たちもまた構える。 非公式試合、開始。 悪魔型MMS『ベル』 犬型MMS『ハティ』 VS 天使型MMS『シザーウイング』 天使型MMS『リッパーリング』 このバトルは非公式試合である。 そのため、戦闘結果によるポイントの付加・ランキングの変動は行われない。 シザーウィングは後背部のウィングに武装を集中させたタイプのアーンヴァルだった。 羽の一本一本が鋭利な刃物であり、それを射出する遠距離攻撃および剣として使う近接攻撃の両方を扱うタイプである。 対するベルは、ほぼ素体のみ。武装は小型の刃物を幾重に重ねた扇がふたつ。盾としても剣としても使えるそれだが、シザーウィングの攻撃を防ぐのがやっとであった。 「ははははははは! どうしました!」 実弾の羽毛を撃つ攻撃、それゆえに弾切れを誘う予定だったが、シザーウィングは両手や肩に装備した重火器も撃ってくる。 この弾幕を防ぎきるだけの余裕はなく、衣服の端も次々と切られる。 「……っ、本当にしつこい攻撃……!」 地を蹴り後退するベル。彼女の居た場面を羽の刃が次々とえぐっていく。 リッパーリングは両腕をストラーフタイプの腕へと換装し、剣を装備した近接格闘特化のアーンヴァルだった。 高出力の格闘攻撃を、ハティは両手に持った剣で捌く。 「くっ、間合いが長げぇ……!」 リーチはどうしてもリッーパリングに分がある。ハティもまたその攻撃を受けるだけで精一杯。 ベルもハティもどうしても防戦にまわざるを得ない。まずい状況だった。 「ははっ、口ほどにもない!」 男が笑う。 「そもそも鶴橋の金の力でガッチガチにチューンした俺たちの神姫にかなうはずないんだよね。何カッコつけちゃってんだか、そういうのを自己満足って言うんだよ」 「……ふん」 しかし静真は、真っ向からその嘲笑を受け止める。 「ああ、確かにな。自分でもバカだとは思うさ。だけどさ、男なら」 掌を突き出す。 「退けない事もある。カッコつけだって笑うんなら笑えよ。 醒めた振りして言い訳に逃げるほど、俺は大人じゃねぇんでね、悪いけど!」 「はっ、言うだけならなんとでもならぁな。だが現にてめぇの神姫は――――あ?」 キィ――ン、と耳鳴りが響くことに男は気づく。いや、耳鳴りではない。これは――飛行音。 「やっと到着したか…! ベル、来たぞ!」 「まったく、ずいぶん待たされたわね!」 ベルが扇子で攻撃をはじき、一気に後方に跳躍する。 その上空に飛来するのは、アーンヴァルのレーザーライフルを主軸にウイングやストラーフの手足などで組み上げた、純白の飛行機だった。 その名、フリューゲルヴァイス。 ベルは跳躍し、巫女服を一気に剥ぎ取った。 純白の素体があらわになる。 「合体コード起動! 汝、東守護せし魂の運び手!」 静真が叫ぶ。その言葉に従い、MMSの自動合体システムが起動する。 ベルもまた唱える。 「闇に落ちて尚輝くは白き翼。我らは誓う」 「絶望に突き立てし暴食の牙! その手に掴みし切なる希望!」 戦闘機を構成するパーツが空中で分離。 ベルの脚にはストラーフ脚部装甲。 胸と肩、腕にはアーンヴァルの装甲。背にはストラーフのバックパックとアーム、そしてアーンヴァルの背部ウイング。 白く輝くそれらのパーツがベルの体を包み、装着されていく。 そこに現れたのは、翼を広げた、一回り巨大に見える威容。純白の魔神の姿。 「「その名――――白亜の翼、ベルゼヴァイス」」 「何…!? 白い、ストラーフだと……!」 「そのようなハッタリ――!」 シザーウイングが撃つ。圧倒的な火力物量。次々と着弾し、爆発が巻き起こる。 「はははははははははは!!!!!! このシザーウィングに切り裂けぬ敵など……!?」 煙が晴れる。 ただ、悠然と。 白亜の翼は、そこに立っていた。 「な――――、にぃ……!?」 「これで全力? 受けてみたら思ったより火力が低いのね」 冷徹に言い放つベルゼヴァイス。 「遊びは、ここまで。後悔なさい、ゆっくりと」 リッパーリングの一撃が大地を切り裂き、砕き、そしてハティを叩き潰す。そのリーチを活かした高速連続攻撃に土煙が舞う。 「どう? 潰れてモンチになったぁ!?」 「ハティ……っ!」 恋が叫ぶ。土煙が晴れる。そこには切り刻まれたハティの姿が――――なかった。 あるのは、リッパーリングのアームを、交差した剣で受け止めているハティの姿。 「なんだ――――つまらない。 しばらくオレが戦場から遠ざかってる間に、神姫の質は落ちたのか?」 バキィン、と音がしてアームが砕ける。 「ぐああっ!?」 「ああ、あの時のアイツに比べたらカスもいい所だ。せっかくのオレの一大決心をどうしてくれる。 これじゃあ、あまりにもつまんねぇーだろうが!」 ハティが跳ぶ。その高速の跳躍にリッパーリングの動体視力は追いつけず、容易に懐への侵入を許してしまった。 「くたばれよ、トリ野郎」 「バ、バカな……っ!? あいつら二人とも上位ランカーだぞ!?」 黒服がうろたえる。 簡単な仕事だったはずだ。急に飛び込んできた、事業の邪魔者を排除するだけの簡単な仕事。 なのに何故―――― 「敗因は、ただ一つだよ」 静真が言う。 「金や権力で肥え太ったブタには、判らねぇだろうな―――― 必死に生きるちっぽけな者たちの底力が」 そう告げる静真の言葉と同時に。 シザーウイングとリッパーリングが、戦闘不能となり、地に伏した。 勝者、悪魔型MMS『ベルゼヴァイス』&犬型MMS『ハティ』。 このバトルは非公式試合である。 そのため、戦闘結果によるポイントの付加・ランキングの変動は行われない。 賭け試合のため、敗者である鶴畑グループはレンタルシンキブースへの干渉権を放棄するものとする。 「まったく……楽しませてくれる」 モニターでその一部始終を、男は見ていた。 「他人事みたいに言うね。キミだろ? 鶴畑をけしかけたのは」 「さて、どうだかね」 黒い服に身を包んだ青年のからかうような声に、彼はこともなげに答える。 「こうやって、あの白いストラーフを公式リーグに引っ張り出すつもり? 身内びいきは程ほどにしておいたほうがいいんじゃないかな」 「あの少女をけしかけたお前に言われたくはないな。道化はでしゃばらないのではなかったか、「無価値(ワァスレス)よ」」 「でしゃばらなきゃ何のための道化さ。ま、確かに些細なことだよ。キミもこれで満足なんだろ? 桐沢一真(かずま)」 「さぁな」 眼鏡をなおし、一真は席を立つ。 「しかし利用された鶴畑も哀れだね。グループの下っ端とはいえ、これじゃ面目丸つぶれ……でもないか」 「ああ、所詮はただの下っ端。痛くも痒くもないだろうさ。 さて、計画の見直しだ。面白くなってきそうだとは思わないか?」 「違うね」 一真の言葉に、無価値は平然と言った。 「物語は、最初から面白いものなのさ」 「恋ちゃん、手ぇ」 「え?」 言われるまま、手を出す。静真は、それを勢いよく叩いた。 「ミッションコンプリート、ってな。よくやった!」 「え、でも私は何も……」 「そんなことないわ、恋。あなたがいて、ハテイを信じて見守った。あなたの勇気と信念が彼女に力を与えたの。そうでしょ?」 「オレが知るか」 ハティはそっぽを向く。その姿に、恋は微笑む。 「いっやーーーーー、私感動したわーっ! 二人ともバリ強やん!」 いきなり、香織が二人をがばっと抱きかかえる。 「うわっ!?」 「きゃっ!?」 「ああんもう私めっちゃ感動したわーーーー!」 「だああっ、ちょっと落ち着け香織さん、痛っ、ていうかあたってるあたってる!」 「くっ、くるし……」 騒ぎ立てる香織たち。 それを呆然と、憎憎しげに見つめるシザーウイングのオーナー。 「バカな……オレが、負けた……!? 再起動だ……シザーウイング! てめぇもこのままで終わらせるワケにゃあいかねぇだろうが!」 男の言葉に、シザーウイングは無理やり体を起こす。そして、砕けたウイング部分の刃物を掴み、走った。 「――!?」 香織の凶行に気を取られていたベルは、反応が一瞬遅れる。 手負いとはいえ、その一瞬で十分。その刃がベルに食い込む――――はずだった。 ギィン、と甲高い金属音。 刃が地面に落ちる。 「な……!?」 黒い影が割り込み、その凶刃を防いでいた。 漆黒の甲冑。陽光を照り返して尚黒く輝く装甲に身を包んだその武装神姫は。 「サイフォス……? 何でや、まだ発売されとらんのに」 「それは、彼女が我が社の試作品だからです」 凛とした声が響く。いつのまにか新しい車がそこに停まっている。そしてそのドアが開いた。 「それにしても。鶴畑の人もずいぶんと往生際が悪くなったものですね」 現れたのは、静真と年のころが変わらない美少女だった。 「なんだ、てめぇ……!」 男が叫ぶ。その殺気を少女は受け流し、名乗った。 「篠房留美那(しのふさ・るみな)と申します。そして彼女は、騎士型MMSサイフォス、「エクエス」。 以後、お見知りおきを」 続く
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2161.html
ご意見部屋 沙耶:ここはホーリーの物語に関するコメントを書き込み・閲覧出来るコーナーよ! メイリン:感想、意見等はここに書き込んでくださいにゃ。作者の返答もここで行なうニャ。ただし、作者の都合上、返答は不定期になるニャ。 沙耶:もちろん、あたしたちの事とかあいつのこととか、この作品の気になることとかもOKよ。気軽に書き込んでね。 メイリン:コメント欄はこの下にあるニャ。ただし、作者や投稿者を迷惑になる荒らしは遠慮してほしいニャ。 沙耶:コメント、待ってるわよ! テストです。 投稿するとこの上のコメントが載る…はずです。 -- muna (2009-09-26 22 50 16) 設置お疲れ様です。 地道に読んでいますよw -- 第七スレの6 (2009-09-27 11 32 48) こんばんは。夜虹です。第一部を一通り見させていただきました。 真冬の川に流される神姫を拾って共に成長する物語というのはなかなか正統派な始まり方で、話を分かりやすく進めてありますな。 設定に関しても神姫の名前を与えて、初めてオーナーとして認識されたり、神姫における精神ダメージによって病院送りになり、そうなったときの治療法があったりと参考になる事が多く、考えさせられる所がありました。 後はオリジナル武装が非常に多く、それを用いた独特の戦い方は面白いですね。自分はあまりオリジナル装備は用いないのでこうした戦い方は見ていて新鮮ですよ。 今後の新装備、ストーリー展開を楽しみにしています。 -- 夜虹 (2009-09-29 22 00 50) コメントありがとうございます。 第七スレの6さま ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。 夜虹さま 最初のころはどうやって話を進めていけばいいのか悩んでました。 過去にもこれに似た小説を書いた経験があったのですが、今回は設定的に悩んだところが多々ありました。 オリジナル装備も組み換えで出来るものが多いのですが、スクラッチに近いものも多少あります(メイリンの武器とか)。 ほかの方は写真やイラストで装備の詳細を掲載してますが、私の場合、現在のところそれがないので、今後どのようにして装備等を見せるか考案中です。 話が長くなりましたが、これからもこの小説をよろしくお願いします。 -- muna (2009-10-03 16 31 48) 上記の返答に追加。 オリジナルの装備ですが、組み換えで出来るものが多いと書きましたが、実際には単に組み換えだけなのは1/3ほどです。 あとは一部改造かリペイントしたものが多いです。 私の場合、出来る限り組み換えやほかの商品の流用で再現できるように設定しています。(例を言えば、獣牙王や不動のバリエーションは主に神姫のパーツで構成されています) それでも、新造しないと再現できない武器もありますが。 あとは丸々ほかの玩具から流用したりすることもあります(百雷はプライズ騎馬武者のリペだったりします) -- muna (2009-10-03 21 04 41) こんばんは。武装についての説明、ありがとうございます。手軽に作れるように工夫してある様ですね。 自分は素体のリペイントや武装の小改造が関の山でして難しいのが多いかなんて思いましたよ 二章の最新話まで読ませていただきました。 今度はフェレットタイプのために頑張る翔君が第二の主人公となりましたか。 ホーリーベルはその時にはワールドロボットフェスティバルを駆け抜ける人気者とは二年の間になにがあったのか気になる所ですね。 オリハルコンシリーズを始め、確かに武装神姫だけが世界ではないですな。 とは言え、この様子だと武装神姫が市場の先を行っているなのはまだ変わっていないというのが実情という感じの様ですが。 そんな中で美由紀はいずるに実際に会った人ときましたか。ともなればこの勝負の後は都村いずるとはどんな人かという話になるかもしれませんね。 それが聞けるか否かでいろいろと話が変わってきそうな気がしますよ。 -- 夜虹 (2009-10-10 02 19 46) 夜虹さま 第2部は翔くんと美由紀さん、それぞれの視線で物語を進めていきます。 彼らがいずるとホーリーを目標にするためには、それなりのレベルを持たせたほうがいいと判断したからです。 そのためにWRFという大きな舞台を用意する必要があったわけです。 ほかの美少女タイプをだしたのは、ロボット業界の変化を知ってほしかったため。 あと、美由紀さんがいずるを目標にしているのは、同じ場所まで行き着くことのほかに、もうひとつ理由があるのですが・・・。 それはあとの展開にとっておきます。 書き込みが少ないのは、部屋の入り口が目立たない場所にあるからなのでしょうか・・・? ちょっと体調が悪いので、今日はここまでにしておきます。 -- muna (2009-10-12 21 48 58) ご意見部屋を少し目立つ(?)場所に移動しました。 これで少しは判る・・・かな? -- muna (2009-10-31 22 38 56) 場所としてはいいと思います。書き込みが少ないのは……感想を書くというのがちょっと勇気のいる事だからなのかもしれませんね。 ウサギのナミダは思わず書いてしまいたい小説故にそうしたいと思えるたくさんの感想が来ている事ですしね 謎の鉄騎兵は今の所は武器がわかってシルエットが多少わかった程度ですか……。 とはいえ、再現した神姫と闘えるとなれば何かしらの糸口がつかめそうではありますな。 まずはその神姫と戦って、それから進めるのかもしれませんね。 次を楽しみにしていますよ。 -- 夜虹 (2009-11-07 02 26 18) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/509.html
第3話 親父からの贈り物?はんなり侍現る 「ふぅむ…………」 ルージュとの生活が始まって、色々ありながら1週間ほど経った頃 俺は玄関で目の前に置かれている箱を見て、少し悩んでいた ついさっき、宅配便で届いた小包に貼られた伝票の差出人には、 俺の親父の名前が書かれていた。 「ったく、あのクソ親父か……今度は一体何を送りつけてきたんだ?」 それを見て、ついつい俺は一人悪態を付いてしまう、その理由は親父が今まで送ってきた物である。 親父は如何言う仕事をやっているのかは全く分からないが、海外の彼方此方を飛び回っており、 時折、その現地から何かを贈り付けてくる事があるのだ。 例えば、親父がNYに居た時は「お前の友達と一緒に見ると良いぞ」という手紙と共に、 現地の無修正物のエロ本を贈り付けて来た事があった ……………それも、俺の働く職場に、である。 危うく同僚に見付かりそうになりつつも何とか処分したが、 あの時ほど親父に殺意を覚えた事は無かっただろう…… そして、親父がアフリカに居た時は、「面白そうだからお前に贈る」という手紙と共に、 何処かの部族製の明らかにヤバそうな呪いの仮面を贈り付けて来やがった事があった その日の夜、その仮面が不気味な笑い声と共にガタガタ動き出し、 直ぐに仮面を箱に押し込めなければヤバい所だった。 無論、その呪いの仮面は近くの寺に押し付けて事無きを得て。 俺はこんな物を送った親父を心の中で呪ったのだった。 とまあ、今までの例を見て分かるが、親父の贈って来る物は大体が 『ロクでもない代物』なのだ。 さて、これを如何するべきかであるが…… 「主殿、さっきから玄関で何をやっているのでしょうか?………む?それは……?」 俺がしばらく考えていると、玄関から何時までも戻ってこない俺の様子を見に来たのか さっきまではTVを見ていたルージュがトテトテと玄関まで歩いて来て 俺の目の前の箱に気が付く。 「いや、それが親父が何かを送ってきたらしくてなぁ……」 「何と、主殿の御父上からの贈り物か?むぅ、一体何が入っているのだろうな?主殿?」 ルージュは小包に興味が引かれたらしく、俺に「早く小包を開けて頂戴」と 言いたげな目線を浴びせてくる。 くっ!俺がこう言う、何かを求める目線に弱いの知っているのか!?こやつめ!! まあ良い、流石にあの親父でも爆発物とかの危険物を送ってくる事は無いだろう……多分であるが。 それに万が一、変な物だった場合は直ぐに親父に送り返せば済む話だ。 ルージュの目線に負けた俺は、そんな軽い気持ちで小包の梱包を解き始めた。 「こいつは……武装神姫か?親父の奴、何でこんな物を……」 「ふむ、これは私と同時期に発売されたTYPE SAMRAI『紅緒』ですね……」 小包の中は、武装神姫の箱が入っていた………その小包の別添えの手紙には 『元気にしているか!我が息子よ。 今日、俺は仕事の事情で一日だけ日本に帰って来れたのだ、 まあ、お前がこの手紙を見ている頃は、俺は中東の方に居る頃だろうけどな! 今、日本では武装神姫って奴が流行っているらしいな、 良い時代になったもんだ、はっはっはっは! 多分、お前は一人身で寂しいだろうから、 秋葉原で買ったこいつをプレゼントしてやる、存分に可愛がってやれ ああ、それと追伸、俺が日本に居た事は母さんには内緒だからな!以上!』 なんて書かれていた…… いや、まあ、神姫がルージュだけと言うのは少し寂しい物があるなと思っていたし、 ”今回”の贈り物に関しては感謝するとしよう。だが「一人身で寂しいだろう」は余計だ! 悪かったな、人間の彼女が居なくて……チクショウorz と、親父に対する愚痴はここまでにして、 とりあえず、このまま玄関で開けるのもなんだし、居間に行って開封してみるか…… 《数分後》 「こんにちわぁ、ウチの名はは椿(つばき)と申します、主はんの事は御父上から伺っておりますえ。どうぞ宜しゅうに」 「主殿………これは一体?」 「俺は知らん、贈って来たクソ親父に聞いてくれ……」 俺とルージュの目の前のポニーテール(もしくは丁髷?)が特徴的な侍型神姫が 三つ指をついて”はんなりと”挨拶をする。 ………開封したと同時に起動した彼女は既にある程度の設定が行われた状態だった、 侍型と聞いて、俺は「拙者~~~で御座る」のような所謂時代劇っぽい口調を想像していた。 だが、現実は俺の想像の斜め上を行く京ことば、いわば京都弁だったのだ。 多分、親父は俺のアパートに彼女を送る前にあらかじめ名前の他に様々な設定を施していたのだろう 彼女の口調も恐らく親父の趣味に違いない、絶対そうだ。 「にしても主はん、既にかわええのが傍にいらっしゃるとはなかなか隅に置けまへんなぁ ウチが来るのは少々遅かったのでっしゃろ?」 「う、いや、そのなぁ……ルージュは……」 「主はん、誤魔化さなくとも宜しおす、ウチは御父上から主はんに関する色々な事を教えてもらっておりやす そうやなぁ、例えば主はんの恋人居ない暦が年齢とほぼ同じやとか、その他に……」 「ちょwwww、あの親父めっ!!…って、椿、これ以上言うなってか、言わないでぇぇぇぇ!!」 極秘情報を暴露され、慌てる俺を見てコロコロと笑みを浮かべる椿、どうやら彼女はかなりの曲者と見た、 と言うか、親父、彼女には俺の情報を何処まで教えているんだ!? 畜生、あの親父め!手紙には『母さんには内緒だからな』とか書かれてたが やっぱ母さんに報告する事にしよう。あの親父は一回こってり絞られて反省するべきだ、うん ……何故だろうか?主殿と新しくやって来た神姫の椿さんが親しげに話している様子を見ていると、 私の思考回路に何かもやもやした物が込み上げて来る………一体これは何だろうか? 分からない……初めて感じる感情だ…… む、そう言えば、少し前にこれと同じ状況を見た事があった。 そう、あれは確か主殿と見たTVの恋愛ドラマで、主人公の恋人に主人公以外の異性が近づいた時の状況に似ている…… そうか、これは…………椿さんに対するやきもち…………成る程、そう言う事ですか…… その事に私が気付いた後、私は自然にある言葉を口に出していた。 「……椿さん」 「はい?ルージュはん、ウチに何か御用がありやっしゃろか?」 「先に貴方に言っておきますが主殿は私の主殿です、それだけは貴方に譲りません」 「あらぁ…それはウチに対する主はんを賭けた挑戦と言う事どすか?」 「言うまでも無く、私はそのつもりです」 「それやったらウチも負けるつもりはありまへんえ、ふふ」 私の挑戦とも取れる言葉に対して不敵に笑みを浮かべる椿さん。 望む所です、椿さん、貴方がこの先どのような行動を起しても 貴方よりも私の方が先に主殿の傍に居る、それだけでも私の方に利があるです。 この勝負、私は絶対に負けません。 もし、この勝負に負ける時は…………いや、負ける事は考えないでおきましょう、 それを考える時こそ、勝負に負ける時、なのですから…… ???………如何言う訳か、急にルージュと椿が二人で話し合い始めた 何故だろうか、二人の様子を見ていると唐突に嫌な感じがしてならないんだが…… 「主殿」 「何だ、ルージュ?」 「私は何時でも貴方と共に居ますので」 「はい?」 「主はん」 「えっと、椿も何だ?」 「やっぱり、主はんは隅に置けないどすなぁ」 「は、はい??」 ……意味が分からなかった、ルージュと椿の言っている言葉の意味が、 だが、その言葉の意味を二人から聞く事は俺には出来なかった。 二人から滲み出る、何とも言えないオーラみたいな物を本能的に感じ取った所為で…… 俺は何となく思っていた、この時の男ほど、無力な物は無いなと…… そして同時に、親父の贈ってくる物が『ロクでも無い物』だというジンクスは、 ある意味、しっかりと守られているなぁとも思ったのだった…… 第四話へ続く メインページへ戻る トップへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/203.html
黒くて長い、綺麗な髪を風に遊ばせながら。 「じゃあねー」 呆然としたままのボクの目の前、無邪気な言葉と共に、アルミサッシがぴしゃりと閉まる。 「…………」 その姿を見送って、ボクはため息をひとつ。 どっと疲れた体を引きずるように、下の階へ。 「父さんが帰ってくる前で良かったな……」 階段に差し掛かったところで、踊り場の鏡にボクの姿が映り込んだ。 「…………」 そこに映るのは一人の女の子だった。 膝頭まで伸びた長い髪に、フリルのたっぷりと付いた甘いドレス。どこか幼さを残した顔は、物憂げに沈んでいる。 「…………はぁ」 もう一度、ため息。 沈んだ気持ちのまま、階段を下りる。 「喉……乾いたな」 とりあえずジュースでも飲もう。確か、買い置きが冷蔵庫の中に残ってたはず……。 玄関に面する階段を下りきったところで。 「ただいまー」 「……あ」 ボクは、三度目のため息をつくハメになった。 魔女っ子神姫 マジカル☆アーンヴァル ~ドキドキハウリン外伝~ その1 ボク……鋼月十貴は女装姿のまま、居間のソファーに腰を下ろしていた。 荷物を片付ける事もなく。父さんはタバコをくわえ、僕の前に腰掛けて沈黙を守ったまま。 「……十貴」 二本目を吸いきったところで、ようやくボクの名前を呼んだ。 「はい」 「父さん、お前の趣味をどうこう言うつもりはないが……」 言いながら、三本目のタバコに火を点ける。 「い、いやだから誤解なんだって……」 いきなり押しかけてきた静姉が無理矢理……。 「その似合いようは何というか、別の意味で犯罪なんじゃないか?」 …………。 「その考え方が犯罪だよ……」 ああ、うちの親ってそういう考えする人だったよなぁ。蛍光灯の光を弾くカップボードをぼんやりと眺めながら、ボクは…… 「そうか……十貴にそんな趣味がなぁ……」 ってちょっと。 「父さん、人の話を聞かないってよく言われるでしょ」 しかも遠い目でそんな事言われても。 「まあ、丁度良かった」 「意味分かんないよ!」 ボクの言うことを完璧に無視して、父さんは傍らに置いてあった荷物をガサガサと漁り始める。 「そんなに女の子っぽいことが好きなら、これを十貴に貸してやろう。しっかり遊びなさい」 テーブルに置かれたのは、ちょっとした大きさの箱だった。秋葉原のオタク博物館で見た、黎明期のパソコンソフトのパッケージや、DVD-BOXくらいの大きさがある。 パッケージは真っ白で、何の表記もない。『武装神姫ストラーフ(仮)』ってマジックで書き殴られてるから、これが正式なパッケージってワケじゃないみたい……まさか。 「これ、記事にするから借りてきたとかそういうオチじゃないの?」 「さすが我が息子。察しが早い」 ボクの父さんは、玩具関連のライターをしている。発売前の評価記事を書くために、メーカーや出版社から発売前の商品を借りてくることも多い。 問題なのは、その細かい評価を自分自身じゃなくてボクにさせることなわけで。 「まあいいから、開けてみろ」 恐る恐るフタを開けてみれば……。 「ボク、さすがにこの歳で人形遊びする気はないよ?」 中にあったのは、十五センチほどの人形だった。ボクが開けたフタは中身を確認するためのものらしく、ここを開けても人形本体を取り出すことは出来ないようになっている。 随分と厳重な作りだな。 「うーん。その年で人形遊びする息子がいたら、いくらお父さんに理解があっても困っちゃう気がしないでもない」 あんまり違わないでしょ、父さんも。 「というわけで、たっぷり遊んで、しっかり感想を聞かせてくれたまえ」 「いやだから感想というか、それをするのが父さんの役割じゃないの……?」 「俺、超合金モノ専門だもん。1/12自律駆動スコープドッグのレビューなら嬉々としてやってたよ」 あー。 そういえば、ボクのアドレスに予約受付のメールが来てたっけ……一人一個制限って書いてあったハズだけど、だったら一体何個買ったんだ? この親は……。 「ならこんな仕事取ってこないでよ……」 「お世話になってる編集さんの紹介だったんだから仕方ないだろ。ほら、楽しく遊ばないと来月の小遣いやらねえぞ」 「うわきたなっ!」 遊ばないと小遣い抜きっていう親も日本でそう何人もいないと思うけど、この場合仕事が掛かってるからな。 「へへーん。汚くて上等だもんねー」 「……分かったよ、もぅ」 まあ、家計のためだ。 ボクが四度目のため息をついたのは、言うまでもない。 「武装神姫、ねぇ」 部屋に戻って件の白い箱を開けると、中に入っていたのは随分と厳重な構造のプラスチックケースだった。 「……ブリスターじゃないのか」 オープンスイッチらしいボタンを押すと自動でケースのふたが開く。 中にあるのは、武装神姫とかいうフィギュアと、ちょっとした厚さのある取扱説明書。 フィギュアを確かめるのは後にして、とりあえず取説を手にしてみる。 「へぇ。AIが載ってるんだ……」 概要を斜め読みすると、どうやら武装神姫ってのは、AIで自律駆動する画期的なフィギュアらしい。 「……その辺のPCより良いプロセッサ使ってるんだ。それがこの値段……ねぇ」 まあ、スペックだけで言えばゲーム機あたりも似たようなもんだしな。戦闘も出来るみたいだし、その辺りの付属品で利益を上げるシステムなんだろう。 「やっぱりカスタムありか……」 くいくい。 何となく袖が引っ張られた気がするけど、気のせいだよなって……。 「え?」 くいくい。 袖の方を見てみれば、ボクの袖を引っ張っているのはケースの中で横になっていたはずの神姫だった。 「あれ、起動してたんだ?」 箱を開けると自動起動するようになってるのか……? 取説をぱらぱらと繰っていくと、中頃に挟んであった紙にそれらしき事が書いてあった。 商品版はいくつかの性格設定チップを組み込んで初めて起動する方式になっているけど、今回は評価版という事でそのチップも組み込み済みなんだそうだ。 「……あのさぁ」 あ、喋った。 結構流暢に喋るんだな。さすがいいAIを積んでるだけはある。 「何?」 「せっかくあたしが起動したってのに、いきなりスルーはないだろ普通」 「……そんなもんなの?」 「当たり前だろっ!」 なんか怒られたよ? 「こう、なんていうかだね! 初めましてとか、うわぁすごい人形が動いたとか、もうちょっとドラマチックなイベントとかそれっぽいのがあるだろ普通っ!」 十五センチの女の子は、両サイドのおさげを逆立てて力説する。 「ふーむ」 まあ、取説読んでる途中だったしねぇ。 というか父さん、自動起動って話、知っててボクに言わなかったんだな、きっと。 「……じゃあ、やり直す?」 「一度初期設定が終わったらやり直しは流石に無理だわ。メモリリセットしなくちゃなんねぇし」 「んー。そっかー」 製品版だと、もうちょっとドラマチックな起動シーンになる……んだろうなぁ。彼女曰く。 「とりあえず、マスターがこんな可愛い女の子で良かったよ。ちったぁ、生まれてきた甲斐があったってもんだ」 「……ん?」 神姫の言葉に、ボクは神姫の瞳をじっと覗き込んだ。 「どうかしたのか?」 レンズの瞳に映るのは、長い髪を持つ女の子。 「ああ」 そうか、着たままだったんだっけ。 ようやくその事を思いだしたボクはウィッグを取り、黒い神姫に微笑みかけた。 「ボクは鋼月十貴。れっきとした、男の子だよ」 「なにぃぃっ!?」 その瞬間、ボクの頭に衝撃が走った。 「ふえっ!?」 神姫がテーブルを蹴り、こちらにパンチを叩き込んできたのが分かったのは、彼女がボクの髪の毛に掴まって態勢を整えようとしていたからだ。 「ちょ、ちょっと、ロボット三原則はっ!?」 「そんなの知るかっ! ガンダムファイト国際条約なら入ってるけど!」 それなら、頭部攻撃は禁止なんじゃ……。 「そんなことよりテメェっ! 男なら、もうちょっと男らしい格好しろってんだっ!」 ボクの胸元を器用に踏みしめ、胸ぐらを掴み上げて神姫は叫ぶ。 「い、いや、これには深いわけが……」 「問答無用っ! いいからそこに直れっ!」 「は、はひっ!」 反射的に正座。 し、神姫ってこういうモンなの……? 一時間ほどの説教の後。 「……で、神姫ってそういうモノなんだ」 男らしさから神姫が何たるモノかまでしっかり叩き込まれたボクは、本日何度目になるか分からないため息をついた。 とりあえず、後で部屋に『中立地帯』って張り紙しとこう……その張り紙があれば戦闘禁止らしいし……。 「テメェ知らねえで買ってきたのか! っていうか、よく考えたらまだあたしの発売日前じゃねえか! かわいー顔してくるクセに裏ルートでフラゲヒャッホイかこら! 良い根性してるじゃねえか!」 再び胸ぐらを掴み上げられる。 「ち、ちがっ!」 十五センチのオモチャとは思えない力に、さすがのボクも悲鳴を上げてしまう。 その時、ボクの部屋の扉がぎぃと開いた。 「ああ、早速起動したみたいだね」 父さん……なんてものを押し付けてくれたんだよ。 「お。アンタがコイツの親父さんか?」 「そうだよ。発売前だけど、発売前のレビュー書くんでメーカーから貸してもらったんだ」 父さんの言葉に、神姫の腕から力が緩む。 「…………あ、そうなんだ」 「だから言ってるじゃん……」 けほけほと咳き込むボクの胸元からひょいと飛び降り、フローリングの床に音もなく着地。 「そうとは知らず、大変失礼いたしました」 深々と、頭を下げる。 父さんに向かって。 「今頃そんな事言っても遅いよ……」 え? 謝るのはボクの方じゃないの……? 居間のカップボードの上で、黒い神姫は思わず叫び声を上げていた。 「おおーっ! こいつぁすげえ!」 ボードの上をとてとてと歩き、並べられているモノに一つ一つ大げさに反応していく。 「ほぅ。分かるかね」 父さんもまんざらじゃ無さそうだ。 そりゃそうだろう。 「あったり前じゃないですか! あたしのデータベースに、最初からプリセットされてますし!」 居間のカップボードに並べられているのは、皿や賞状なんかじゃなくて、フィギュアやロボットの群れだった。 父さんの玩具ライターは、趣味が昂じての仕事。趣味と実益を兼ねたコレクションが居間に並んでても、別段不思議じゃあないけれど……。 知らずに来たお客さんや家庭訪問に来た先生が軒並みドン引きするのだけは、勘弁して欲しい。 「あたし達のコンセプトは、この大先輩がたから生まれたんですから!」 モヒカン黒目の格闘家らしいフィギュア(ヒドラなんとかって台座に書いてあったけど、そのキャラをボクは知らない)から額宛てを引っぺがしながら、神姫は誇らしげに胸を張る。 どうでもいいけど、その暴挙は先輩に対する態度じゃないような気がするよ。 「その辺りは残念ながら、再販分だけどね」 「それでも二十年以上前のレアものでしょ? それに、これは本放送時には発売されなかったような……」 「おおーっ、分かるかね!」 父さんの影響でロボットやアニメは嫌いじゃないけど、この手の深い話にはついていけない。 「いいねぇ超合金。あたしもプラスチックの塊じゃなくて、どうせならこんなのに生まれたかったなぁ」 今度はドリルとショベルが両手に付いたロボットを見上げながら、惚れ惚れと呟いている。 傍らには専用武器らしい金ピカの剣が立て掛けてあるけど、両手がドリルとバケットでどう使うんだろう……。 「まあ、俺は仕事があるから、ゆっくり見ていって…………」 父さんは機嫌良くそこまで言いかけて…… 「どうしたんです?」 「そうだ十貴。この子の名前、何てぇの?」 「あ。忘れてた」 そういえば初期設定で名前決めろってあったっけ。ネット登録が絡んでたから、すっかり忘れてた。 「そんな大事なこと忘れんなこの野郎っ!」 ボクの頭に神姫の蹴りが飛んだのは、言うまでもなかった。 トップ/続く
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/47.html
「おっ昼~休~みはウッキウキショッピング♪」の巻 チュン…チュンチュン… 冬に近づくとは言え、暖かい日差しが差し込む日曜日の朝… 目が覚めた、朝の…7時半か。ああ…特撮ヒーローモノが始まるな… 今年で60年目だったっけ…録画してあるからまぁいいか。 今日は休みだ…このまま1日惰眠を貪りた… ??「おっはようなのだ―――――――――――!!!」 めごすっ!! 俺「うがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」 突如顔面にセントーン・ケプラドーラをかます黄色い物体。 鼻を強打し、のたうつ俺。 ??「おはようなのだマスター!いい天気なのだ?お出かけするのだ~!」 ??「あ~、ずっる~い!ボクもする~!てや!!」 ごわしっ!! 俺「のごぉぉぉぉをぉぉぉぉぉっt!!!」 続けて黒い物体が、俺の鼻に今度はプランチャ・スイシーダをかます。 ??「こら!二人ともその起こし方しちゃダメっていったろ!! すいませんマスター!ちょっと目を離したスキに…」 平謝りする緑の物体。 俺「ひや…大丈夫。良ひ目覚まひになった…。はりがほう、ヴェル。」 鼻を押さえながら答える俺。 ヴェル「…は、はい。ほ…ほら!!ジャロもノワルも謝って!!」 ノワル「え~、だって今マスターありがとうって言ってたよ~?」 ジャロ「そうなのだ!今度から毎日してあげ…」 ヴェル「あ・や・ま・り・な・さ・い ! !」 ノワル・ジャロ「「ご…ごめんなさ~~~~ぃ…。」」 ヴェルの凄まじい形相に、萎縮し謝る2人。 その姿に苦笑する俺。 俺は3体…いや3人のMMSと一緒に暮らしている。3人の名前は、 イタリア語の色の名前からもじって付けた。 まぁ、2名ほどやんちゃなのが居て多少大変ではあるが、我が家の財政の一部は 彼女達に稼いで貰っているから、あまり大きな事は言えない。 2036年、「武装神姫」によるバトルは全国区となり、老若男女が己の 育て上げた武装神姫を持ち寄ってあらゆる所でバトルをしている。 プロリーグともなると、ランカーには賞金も出、1位ともなるとン億ン千万単位の 金が動き、上位ランカーにはでっかいスポンサーも付いているとの事。中には黒い 話もあるそうだが…。 俺は中位~下位をウロウロしつつ、彼女たちの整備費用と小遣い程度の賞金を頂いている 程度なので、そんな話は来もしない。いや、来ない方が気楽なのだ。 朝飯を済ませ、朝の番組も見終わったので、3人を連れて外へ出かける事に。 ノワル「おでかけ~♪おっでかけ~♪」 ジャロ「高いのだ~ 楽しいのだ~!!」 俺の頭に乗っかり、はしゃぐ2人。 ヴェル「ほら!あんまり暴れると落っこちちゃうよ!」 2人を注意しつつも、俺の肩の脇という好位置をキープするヴェル。 と、 前方に親子連れが歩いている、女の子の肩には見慣れた白いMMSが。 ジャロ「マイコちゃん!おっはようなのだ~!!」 ノワル「フェアリ~、いっつもお仲のよろしい事で~♪」 フェアリ「あ~ら、そっちだってご主人様にべったりじゃな~い。」 ジャロ「いいのだ~♪ジャロはベッタベタなのだ~♪」 俺「おはようマイコちゃん、今日はどちらへ?」 マイコ「今日はね、フェアリの新しいお洋服を買いに行くの!」 俺「へ~、お洋服…ね。」 (そういえば、戦う事ばっかりで、今の今まで洋服を買ってやるとか 考えた事もなかったな…。) ジャロ「へ~、いいな~。そうだマスター!ヴェルもお洋服が欲しいのだ!!」 ノワル「え~!それならボクも欲しいよ~!」 頭の上で騒ぐ2人。 ヴェル「こーらー!マスターに迷惑をかけちゃダメだろ!!」 2人を叱るヴェル、 俺「いや、買いに行こう…洋服。今までずっとノーマルスーツのまんま だったもんな。」 ヴェル「え…マスタ…」 俺「ヴェルは欲しくない?洋服。」 ヴェル「ほ…欲しい…です。」 顔を真っ赤にしながら答えるヴェル。 俺「じゃ、行こう。マイコちゃん、こいつらの服売ってる所って何処? 一緒に連れてって貰って良いかな?」 マイコ「うん!」 ジャロ「うっわ~い!お洋服~!マスター大好き~!」 ちゅっ☆ 俺&ヴェル「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!?」 いきなり前に乗り出し、逆さのままデコちゅーをかますジャロ。驚く俺とヴェル。 ノワル「あ~!!ずるいするい!ボクもする~!!」 うっちゅ~~~~っ☆ 負けじとデコちゅーをするノワル。 ヴェル「ああぁあぁぁぁぁアンタたちななな何を…」 フェアリ「ふ…不潔よ!不潔だわ!」 マイコ「いいな~、そうだフェアリ、あたしにもチューして!」 俺・お母さん「は…はははははは…;」 そんなショートコントもどきが展開されるお昼前であった…。 めでたいやらめでたくないやら。 ちゃんちゃん☆
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/433.html
私と彼女、小さな小さな“幸せ”を 対戦相手に名刺を渡して意気揚々と帰る、私・槇野晶と神姫・ロッテ。 とは言えそろそろ、夕食の時間であるな……。買い物を手早く済ませ、 外食へ赴く事にしようか。たった2人のささやかな祝宴だが、十分だ。 「マイスターっ、わたしチキンのサンドが食べたいですの♪ねっ?」 「む?遠出になるが……よし、今日は頑張ったからな!いいだろう」 「やった!マイスター、マイスター、大好きですの。えへへ~……」 「わぷ、こらっ。すりすりするなっ!?うぅ、しょうがない娘だッ」 我々が帰りの足で向かったのは、神田神保町にあるサブウェイである。 少し秋葉原からは離れているが、ロッテの好物なのだ。仕方あるまい? 何、「神姫の食事って電気じゃないか」だと?……その筈、なのだが。 「いっただ~きま~すの~、マイスターっ!!チキン、チキンっ」 「冷めはしても逃げはせん、落ち着いて食べろ……って、もうッ」 「はむ、はむ、はむっ……もっきゅ、もっきゅ、もっきゅ……♪」 「相変わらずおいしそうに食べるなぁ、ロッテ。可愛い“妹”だ」 「はみゅう?ふぁいすふぁ~、んぎゅっ……どうかしましたの?」 「う゛ぁ……そ、そのな。ほら、ドレッシングを零すんじゃない」 この通り、ロッテは平然と“人間用の”チキンサンドを食べている。 飲んですぐに「嫌いですの」と言い放った、炭酸飲料や辛い物以外は 食料ならなんでも食べてしまう。無論、15cmの体格に見合った量しか 食べられぬ故、自然と私と半分ずつシェアする事になるのだが……。 「そう言えば、ロッテや。お前がその様に食事するようになったのは」 「えっと……確か、以前定期メンテナンスにお出かけしてからですの」 「む、そうか……あの時頼んだ先は、確か“ちっちゃい物研”だな?」 「はい♪あれからなんだか、とても快調ですの。お腹は空きますけど」 東杜田技研。そう大きな会社ではないが、マイクロマシン分野に強い。 そこの一部署が“ちっちゃい物研”と自らを名乗っている。そして以前 メンテを依頼する際、知人を頼って同部署を指名した覚えがあるのだ。 あれは研究員……“Dr.CTa”の技術論文を読み、感銘を受けたからか? 実際同社の手際は見事な物だ、私に解決できない不調は全て解消した。 特に補助バッテリーの持続性が、30%程伸びているのは驚きだった。 「だが、ううむ……その時の事は、まだ思い出せないのかロッテ?」 「えと、あ。そう言えば……白衣のお姉さんが嬉しそうに手を……」 「ふむなるほど、そういう事か。感謝せねばならんな、ある意味で」 なんとなく掴めた。が、追求はするだけ無意味であるとも理解が及ぶ。 “Dr.CTa”か仲間の誰かが、実験の為ロッテに改造を施したのだろう。 となればロッテからそれを取り外すのは、かなりの大手術になる筈だ。 そもそも、だな?こんな可愛く物を食べるのに……外すなどとはな?! せっかくの“妹”から、食を取り上げるという冷酷な行為はなッ!?! 「……マイスター?なんだか顔が紅いですの、どうしました~?」 「な、なんでもないっ!……そう言えば、こんなビラがあるぞッ」 「武装神姫・第五弾?セイレーンにマーメイドに、イルカ……?」 「うむ。今度は海シリーズらしい……水着も開発せねばならんか」 と私が水着のデザインを思案し始めた横で、何やらロッテが唸り出す。 あからさまに縦線が入る程の、負のオーラさえ背負っている様だった。 何事?と顔を近づけ、ロッテの様子を伺ってみる。そして出た言葉は。 「……マイスター。なんだかこの妹達、胸がおっきいですの」 ホットティーを噴いた。見ればなるほど、確かにキャンペーンガール…… 正確にはキャンペーン神姫か。彼女らの胸部は、至上類を見ない豊かさ。 成長期なのに躯が小さい私も、アーンヴァルタイプのロッテも心は同じ。 どちらから切り出そうかと悩んでいたが、先行したのはやはりロッテだ。 「マイスターも、わたしの胸大きい方がやっぱり……いいですの?」 「ぐ!?……いいんだ。ロッテは今のロッテが一番可愛いからな!」 「てへ……マイスターも、今のマイスターが一番大好きですの~♪」 そう言って肩に飛び乗ったロッテに、私は頬を寄せ頭を預けさせてやる。 嫉妬心が無いわけではないし、今後は豊満な躯用の服も作らねばならん。 我々としてもいろいろネガティブな物は感じるが、それはそれであるッ! 別に胸の善し悪しで全ての価値が決まるわけではない、気楽に構えよう。 彼女は大切なパートナーであり、彼女にとって私もそうであるのだから。 「あ。マイスター、紅茶が付いてますの。んっ……♪」 「わ゛!?こ、こらっ、頬にとはいえキスするなっ!」 「えへへ~、大好きって言ってくれたご褒美ですのッ」 ──────この笑顔があればね、別にいいじゃないの。 次に進む/メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1945.html
『セルノとぼくの初対面』 「…あいからず重い」 四階建て団地の階段をのぼりつつ、ぼくは呟いた。 2036年にもなって未だに階段しかない設計はどうかしていると思う。 それに、今背負ってるデイバックに入ってるものが重すぎるのだ。 武装神姫を買ったのは初めてではない。 現に今、家の中で猫がグースカ寝ていることだろう。 今回は二人目、新発売の子をお迎えしたわけだ。 しかし本体+クレイドルは非常に重い、こんなに重いものなのか? 「重心が後ろに偏ってるんだから、転んでもおかしくないよなぁ」 つるっ 「あ」 きのう降った雨のせいで階段が滑りやすくなっていた。 で、足を滑らしたわけだ。 いくらなんでも、話題をだした途端に起こらなくても… とか考えてたら、床に叩きつけられた。 だけど、パンパンになっていたデイバックのおかげで頭をぶつけずに済んだ。 すごく鈍い音がしたけど大丈夫かなぁ…。 「ぅぎゃう~ぅっ」 なんかうめき声が聞こえるので、その場でバッグを開けた。 クレイドルは無事だが、本体の箱がつぶれている。 中身を取り出すと小さな手がビクビクふるえながら伸びてきた。 「大丈夫かい?」 這い出てきた小さな少女は青い目でぼくを見据える、目に涙をうかべながら。 「い、痛かったです…」 彼女は"ゼルノグラード"、Arms in Pocket社の新商品だ。 「ごめんごめん。でも助かったよ、きみの箱のおかげで頭を打たなくてすんだからね」 「自分より箱ですか…orz」「そういうわけじゃないって!」 その後彼女をなだめるのに、ぼくは数時間を費やしてしまうのだった。 こうして、ぼくとゼルノは出会った。 著者:第七スレの6 単発作品用トップページ トップページ