約 514,101 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1926.html
「……3Sが斬る、なし崩しに始まり」 「今回は某企画に便乗して、ブレザーバージョンでお送りします」 「さすがにこのような服装は、気恥ずかしいですねワン」 「こういう時に言うべき台詞は二つに一つ」 「ほう?」 「と言いますとワン?」 「『七五三みたい』か、『どこのふーぞく?』」 「……どちらに該当すると言いたいのでしょうか?」 「言わぬが花」 「テッコさん、あとでじっくり話し合いましょうかワン」 「ええ、私も同席させていただきます。 それはそれとしまして、ですね。 それでせっかくの学校シチュエーションです、なにか学校っぽい事をやってみましょう」 「それはよいお考えですワン」 「(ぱちぱち)」 「それで、学校らしい事といいますとワン? 恥ずかしながら私は、既に社会人であるマスターの元に迎えられたため、学校と言う環境にはとんと馴染みがありませんでしてワン」 「そこはそれ、現役学生マスターをもつ私たちにお任せあれ」 「(えっへん)」 「おおー、頼もしい限りですワン。それで、具体的にはワン?」 「学校らしい事……不良のいじめ?」 「ああ、そうですね。そしてその不良も、教師側から煙たがれて事あるごとに退学させようと目論まれているという悪意の連鎖など定番ですね」 「そこから学級崩壊」 「そのまえに、登校拒否も忘れてはいけません」 「……うっかり」 「いえあの、学校と言う環境はもう少し穏便な場所ではないかと思いますがワン……」 「むむ?」 「ですが、マスターが学校に行ってる間に、私が暇潰しで見る学園ドラマなどは、多かれ少なかれこのような筋のものばかりですが?」 「(うんうん)」 「つまりあなた方も、学校の実情にはそれほど詳しくないとワン」 「なんでバレたのですか!」 「びっくり」 「……いえ、まぁ、その件は置いておくとしましてワン…… そうですね、無難なところで授業のマネなどをやってみましょうかワン」 「無難ですね、無難すぎます。なにかこう、ぐっと来るものがないと取り残されますよ」 「若者には無茶が必要」 「そこは素直に頷いておいてください、話が進みませんからワン……」 「ち、仕方ありませんね」 「一つ貸し」 「恩を押し付けられましたワン?! 気を取り直して……そうですね、国語でもしてみてはいかがでしょうワン」 「国語、ですか?」 「ええ、以前『秋物に凝ってナマズの服』などという、ひどい慣用表現を使った方もいますことですしワン」 「ナニソレ犬丸? 『羹に懲りて膾を吹く』の積もり? ありえない。ひどすぎ。ひょっとしてギャグ?」 「……今私は、非常に理不尽な気持ちを味わっていますワン」 「まぁまぁ。それじゃあ一つテキトーに、研究発表チックに慣用句についてでも語って見ましょうか」 「(こっくり)」 「ではそういうことでワン」 「言いだしっぺと言うことで、まずは私からいきましょう。そうですね…… 『情けは人のためならず』について」 「「(ぱちぱち)」」 「この慣用表現は、『安易に情けをかけると、その人のためにならない』と言う意味…… と、勘違いされることが多いですね」 「(うんうん)」 「おおー、お見事ですワン。まさにそのとおりですワン」 「ポイントは、『自分に返って来る』ということ。この要素を加味すれば、答えはおのずと見えてきます」 「隙の無い論理展開ですワン」 「やる……!」 「すなわち! この慣用表現の真の意味は、『反撃を受けないために、止めは刺せる時に容赦なく刺せ、それこそが慈悲』だと!」 「我々武装神姫には、必要な心構えですねワン」 「(うんうん)」 「スナイパーである私にとっては、特に重要な事です」 「お見事ですサラ(仮)さん」 「お疲れ」 「さて、では次は誰が行きますか?」 「(挙手)」 「おお、テッコさんが積極的ですワン」 「これは期待できそうですね」 「……『船頭多くして船山に登る』……」 「ほほう、それで来ましたかワン」 「それで、その心は?」 「『皆で力を合わせれば、一見不可能な事だって実現できる!』(握り拳)」 「うんうん、よい言葉です」 「もとより我ら武装神姫、マスターとの二人三脚が大前提ですワン」 「協力、とても大事」 「まさか、この殺伐が持ち味のこのコーナーで、こんな感慨深い言葉を聞けるとは」 「やりますねテッコさん」 「(えっへん)……最後、犬丸」 「承りましたワン。見事取りを務めてご覧に入れましょうワン。 では、私は……『死中に活を求める』について語らせていただきますワン」 「期待していますよ」 「がんばれ」 「ありがとうございますワン。 それで『死中に活を求める』はですね……かつてとあるスポーツ選手が試合前にトンカツとシチューを食べるのが定番だったのですが、ある日時間がなかった時に、店主に頼んでカツをシチューに入れてもって来て貰ったのですワン。 それを見た店主は、煮込み料理と揚げ物を組み合わせる着想を得て、そこから大ヒット商品……いえ今では定番と言うべきカツカレーを生み出したという故事に基づく、窮地においても最後まで諦めない事でそこから逆にチャンスを得ることを言います」 「最後まで諦めない事、これもまた我々には重要な事ですね」 「昔の偉い人は言った……『諦めたら、そこで試合終了だよ』」 「ご清聴ありがとうございましたワン、お粗末さまでしたワン」 「お疲れ」 「なんだか今回の3Sは、きれいにまとまりましたね」 「たまにはこういうことがあってもよろしいかとワン」 「(うんうん)」 (和やかな笑い声が満ち、それが徐々にフェードアウトしていく) 「……えーと」 「……うーん」 「ええと……これ、ツッコんだら負けとか、そういうゲーム?」 「そう、なのかもしれませんねぇ、もしかしたら……?」 「『情けは人のためならず』は、『誰かに優しくした事は、巡り巡って自分に返ってくる』という意味だね。 『船頭多くして船山に登る』は、『皆があれこれ口出しして、事態がとんでもない方向に行ってしまう』こと。 『死中に活を求める』は意味としては合ってるけど、説明されてる成立エピソードは、普通にカツカレーの起源として有力視されてる説だね。もっともそれでは、シチューじゃなくて普通にカレーとカツの注文だけど」 「ツッコミいったー!」 「しかも詳細に!」 「え? なに? 何かまずかったかな?」 「いえ、その、まずいというわけでもないんですが……」 「朴念仁て、時としてものすごく強いわねぇ……」 「ええ……」 「?」 <戻る> <進む> 犬子さんの土下座ライフ。 クラブハンド・フォートブラッグ 鋼の心 ~Eisen Herz~
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/798.html
「剣は紅い花の誇り」登場人間 佐鳴 武士 (さなる たけし) 華墨のオーナー。大学生くらいと推測される、バトルフリークの熱血バカ 金持ちの親の庇護の元、何不自由無い幼少期をのほほんと過ごして来たが、「親の職業」の内容を知ってから落ち込み、現在両親との会話は絶えて無い(だが、その両親の金によって養われているのもまた事実であり、本人はその事を厭いながらも何も言えないジレンマを抱えている) ネーミングセンスが独特で、「華墨」という名前はまぐれに近い。家に亀(ヴェートーベン君)とカメレオン(ボナパルト君)を飼って(?)いる グラマラスな体型の女性が好みらしい 神浦 琥珀 (こうのうら こはく) エルギールのオーナー。所謂ボクっ娘 製品版のストラーフを、そのまま人間サイズにしたような可憐な容姿だが、無表情で、口を開いても小難しい小言を言うかカオスな発言しか出来ない為、他人と会話するのはエルギールに任せている様だ(所謂無口キャラ風にキャラを作っているが、エルギールがいないとよく喋る) 年齢不詳で、その余りに完璧でゆらぎの無い造形から、噂の『人型神姫インターフェイス』ではないかと言われるw 爬虫類とミ●トバーンが好きで、深町昭を「毒にも薬にもならない面白くないひと」「気持ち悪い」と評して嫌っている 「魔女の剣」の製作者。所謂「魔剣匠」であり、『鬼奏』という神姫刀剣の専門店を経営(?)している 経緯は不明だが、槇野 晶とは知り合いである・・・その事実は後に、巨大な事件の伏線となる 武士同様、ネーミングセンスは独特で、彼女の魔剣は渡った先でオーナーによって変名を与えられる事も多い 西 梓 (にし あずさ) ニビルのオーナー。黒い長髪が美しい穏やかな感じの美女 川原とは相思相愛の中だが、今現在は忙し過ぎる川原の事を思い、結婚迄には至っていない模様 目を患っており、眼球の交換手術をするかどうか迷っている 川原の代わりに、「クイントス」に色々と便宜を図ってやっている様だ 20代後半くらいと思われる 妄想神姫の槇野 梓と名前が同じなのは筆者の不注意による偶然である(出番が少ない上に存在感が希薄なのでそれ程混乱する事は少ないと思うが、ヌルから「梓姉さま」と呼ばれる為、相当ややこしい・・・) 巨乳だが、腰と尻にエロスが足りないというのが、武士と琥珀の共通見解である 深町 昭 (ふかまち あきら) ウインダムのオーナー どちらかというと愛玩派に分類される平和主義者。毒にも薬にもならない優男だが、正義感が強い 皆川とは高校時代からの付き合いらしい 彼女が居て、その彼女の兄、板垣哲郎も槙縞ランキングのランカーである・・・どうも哲郎にそそのかされて武装神姫の魔道に嵌った様だw 皆川 彰人 (みなかわ あきと) キャロラインの現在のオーナーで、槙縞玩具店の店長代理。 深町の高校時代の先輩で、哲郎、深町、キャロと話す時だけタメ口 どう見ても悪役面だが、実際に悪役なのかもしれない。CV小西克幸 川原 正紀 (かわら まさき) クイントスのオーナー 元はフリーのルポライターだか何だかのロン毛のにーちゃんだが、現在は「神姫に人権を認めさせる運動」をしている団体のメンバーとして日本中を駆け回っている 剣は紅い花の誇り
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1769.html
前世の記憶とかって何か格好良いよね 開け放された控え室のドア。 そこに居たのは、俺の親父・・・正確には親父だった男。名前は山田信善。 「親父、心配いらないって・・・どう言う事だ?」 「筐体の仕掛けは、俺とこいつで行く」 親父が指差した先、親父の肩には、騎士型サイフォスの武装神姫が乗っていた。 「メサイア。俺の助手兼相棒だ」 「よろしく」 メサイア・・・救世主か。沢山の神姫の命を救う点じゃ相応しい名前かな・・・ 「さぁ和章、そろそろお前達の試合だ。行って来い」 「あぁ。親父、頼んだ」 「任せとけ」 俺はタマとオイルを連れて会場へ向かった。 「で、何でなん?」 和章が行った後、晴子が信善に尋ねた。 「何がだ?」 信善は軽く笑みを浮かべながら聞き返した。 「アンタはいつもそうや。知っとるクセしてはぐらかす・・・何で今更戻って来たんか聞いとるんや」 晴子は溜息をつきながらも言い直した。信善は笑みを浮かべたまま和章が出て行ったドアを見つめて言った。 「ちょっと確認にね・・・あの調子じゃ、まだみたいだが・・・」 「確認?」 「あぁ。まぁ、いずれ解るさ」 Bブロック第5試合。つまりオイルの試合だ。 相手は武士型紅緒。装備は標準装備だが、見慣れない刀を装備している。 「刀・・・か。標準武装ならまだいいがオリジナルとなるとな・・・嫌な事思い出すな」 「カズアキ?何か言った?」 「気にするな、ただの妄言だ」 独り言をマイクが拾っちまったか・・・しっかり聞こえなかっただけマシか? 「それより今は目の前の相手に集中だ。負けられないしな」 「わかってるよ!」 「オイルちゃん、がんばって!」 俺とタマの声援を受けながら相手の武士型と対峙するオイル。 次の瞬間には、二人の刀が激突していた。 「・・・この刀、なかなか良いね。でも扱う側がしっかりしてあげてないみたいだね・・・これじゃ刀がかわいそうだよ」 「随分と刀に詳しいのね・・・マスターさんは刀匠か何かかしら?」 「まさか、ただのニートだよ。何でかな・・・別に刀について詳しく勉強した訳でも無いのに、自然と頭に浮かんでくるんだ」 「前世の記憶ってやつじゃないかしら?普通は残らないけど」 相手と何か話しているようだが、打ち合う音でよく聞こえない。 「オイルちゃん、なにはなしてるんだろ?」 「さぁな。あいつが心理戦をするとは思えないが・・・」 タマと俺が疑問に思っている間に、オイルのエアロヴァジュラが相手の刀を弾き、そのまま相手の胸に突き刺さった。 『winner、オイル』 「ただいま」 「お疲れさん」 「おつかれさまー!」 「そう言えばオイル、相手と何話してたんだ?」 戻ってきたオイルに問いかける。 「いやね、刀の事について・・・何か知らないけど色々知っててね」 「そうか・・・いや、まさかな」 「カズアキ?」 「いや、それならいいんだ」 そんな事ありえるはず無いよな・・・きっと偶然か何かだろう。それより今は大会に集中だ。 「あと三回勝てば二回戦進出だ。頑張ろうな」 「もちろん!アースに勝つまでは絶対負けない!」 「おいおい、それじゃアースに勝ったら後はどうでもいいみたいじゃないか・・・」 「ずっとまけちゃだめだよ!」 そろそろさっきの武士型のマスターが連れて行かれる所かな・・・お袋、親父、上手くやってくれよ・・・ 第十九話につづく 第十七話に戻る ネコのマスターの奮闘日記
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/363.html
前へ 先頭ページへ 畜生…。 畜生! 畜生!! 「畜生ッ!!!」 あの青瓢箪ッ! アタシの無敗記録に泥塗りやがって!! 絶対に、絶対に許さない……! 彼女はバーチャル・バトルマシーンの中から主人へと、思わず声をかけた。 「ご主人様……」 ハウリン型MMS、主から授かった名前は”トロンベ”。 ドイツ語で竜巻という意味だ。 「……何よ、まだ終わっていないじゃない。早く全部壊しなさいよ!」 「…了解しました、ご主人様」 とても少女のものとは思えない刺々しく、荒々しい言葉に視線を落として短く応えた。 0と1の信号の上に築かれた仮想現実の世界。 低く唸る用途不明の機械や、緑色の液体が充満するカプセルが密集する施設内部。 フィールド名”秘密工場”。 薄暗い工場に灯る明かりは赤と黄色のランプと天窓から差し込むか細い光。 そして、マズルフラッシュと爆炎のみ。 ハウリン型の基本武装は十手、棘輪そして吠莱・壱式とプチマスィーンズの四種。 近接型のストラーフ型やマオチャオ型、射撃型のアーンヴァルとは違ってそれなりに万能である。 アーマーも防御力を上げつつも機動性を殺しておらず、MMSの中でも汎用性が高いといえる。 その為、初心者であってもそれなりに勝ち進めるのがハウリン型の利点である。 一方で一点飛び抜けたものが無いのも事実。 よって、ハウリン型のオーナーはある程度実戦をこなすと一点に特化した装備に変更する傾向にある。 もちろん、水野アリカとこのトロンベも例外ではない。 アリカは”大出力・大火力を基に短期決着”のスタイルを選んだ。 その為に今のトロンベはデフォルトと程遠いものと成り果てている。 アーマー類はデフォルトと同一。 しかし、両腕にはGEモデルLC3レーザーライフルを三つ三つで計六門 腰から脚にかけてハイパーエレクトロマグネティックランチャーを四つずつで計八門 背中には吠莱・壱式を四門備え、全身のありとあらゆる部位に大中小のミサイルを無数に装備。 その見た目は、歩く砲台といった感じである。 ハウリン型の機動性を完全に殺し、射撃性能に特化した装備。 全てはあのストラーフに打ち勝つ為に。 ただ、それだけの為に。 トロンベは非情にゆったりとした歩みで薄暗い工場内を徘徊している。 現在のトレーニング・メニューは百人斬り。 即ち、100体のCPUMMSを撃破するまで終わらないトレーニングである。 現在撃破数は69体。 その間にトロンベが負った傷は極僅か。 致命傷は一つも無く、全て掠り傷程度である。 薄暗い工場に閃光が瞬く。 トロンベの、ちょうど真上から奇襲を仕掛けてきたマオチャオ。 しかしトロンベは慌てる事無く背中の蓬莱・壱式上に向けて、放った。 マオチャオがハウリンに到達するよりも速く、弾丸はマオチャオを貫いた。 四発の銃撃を胴体に受けたマオチャオはデータの塵へと化す。 完全に消え去るのを見届け、ゆっくりと歩み始めた。 「26分54秒……」 アリカはコツコツとディスプレイを指先で叩きながら呟いた。 「遅い」 「申し訳ありません…」 トロンベは主人の刺々しい視線を受け、深く頭を下げた。 「謝ったからってどうなるモンでも無いでしょう! 何でもっと上手く戦えないの!? あのストラーフだったらもっと速く終わってたわ! アンタはアレに勝たなきゃいけないのよ!?」 ヒステリックに叫ぶ主人に、トロンベはただ黙って頭を下げることしか出来なかった。 「いらっしゃいませー……って倉内君か。珍しいね、ウチに来るなんて」 「客に向かって珍しいとはなんですか」 「ははは、だって君はパーツとか自分で作っちゃうし、修理も大学で出来ちゃうでしょう?だから珍しいなぁ~、てね」 「まあ、用があるのは俺じゃなくて相棒の方なんですけどね」 「ああ、成る程ね」 ここは”ホビーショップ・エルゴ” 俺が今軽い雑談を交わしたのが店長の日暮 夏彦さん。 何年か前に親父さんの遺した模型店を神姫向けのホビーショップに転向して頑張っているらしい。 このホビーショップ・エルゴはそれなりに名の通ったショップでもある。 その理由の一つは品揃えの良さ。 個人経営の利点を活かした高品質・低価格でありながら武装・衣装を問わない品揃えの良さは大手ショップと同等だ。 その他にも店長の人柄の良さや大型バトルスペールなど。 それらの事からかなりレベルの高いショップだと言える。 「お久しぶりです、うさ大明神様」 「はい、お久しぶりです。ナルさん」 そして、忘れちゃいけないこのショップの目玉。 それが”うさ大明神様”と呼ばれるヴォッフェバニー型MMSだ。 彼女は何と言うか、とても個性的な出で立ちをしている。 頭は普通のMMSと変わらないのだが、身体が無いのだ。 というか、胸像? 本来EXウエポンセットに付属するヘッドパーツの彼女には、ディスプレイ用の胸像パーツが付属している。 彼女はその胸像のままなのだ。 しかも、店内に備え付けられた1/12スケールの教室、その教壇に備え付けられたハコ馬の上に。 その様子は正にシュール。 そして、このシュールなうさ大明神様が催す”神姫の学校”こそが、このショップの目玉である。 元を辿れば店長の学生時代に遡ると言うが、詳しい事は知らない。 俺が知っている事は、小学生などの学校に神姫を伴えないオーナーに代わっての神姫預かり、人間社会の勉強サービス。 そしてその神姫の学校が大人気で、俺の相棒もそのファンであるということだけだ。 もっともナルは別に授業を受けに来た訳でなく、戦闘のアドバイスを聞きに来たのだ。 うさ大明神様は教育だけでなく、戦闘についての知識も豊富だ。 その為、上位ランカーの神姫がアドバイスを請うことも多々在るという。 俺の相棒はさっさと胸ポケットから飛び降りてうさ大明神様の講義をかなり真剣に受けている。 はてさて店長の言うとおり、俺はパーツやらなにやらの事はは全部自分で出来る。 だからショップに用はないのだが、冷かしというのも居心地が悪い。 仕方が無いので内部パーツ系の棚に向かう事にした。 シリンダーアクチュエータとサーボモータのスペアが減ってきていたので丁度良い、と自己完結する。 が、しかしだ。 このショップの品揃えにはやはり目を見張る物がある。 メーカー純正パーツは当然の用に揃えられており、その他メーカーのパーツ類等も一通り網羅されている。 ここは聖地”秋葉原電気街”の専門店と同等かそれ以上の品揃えを誇っている。 だからついつい俺も本気でパーツ選びをしてしまう。 あれやこれやと手に取って、性能と値段を見比べて自分の懐と睨めっこ。 男というのは何時までたってもこういうものが好きなのだと言う事を改めて実感する。 三十分くらいだろうか。 俺がパーツと睨めっこを続けていた時間は。 ようやく買うものを決めた俺はカゴを片手にレジへと向かう。 その途中、うさ大明神様と相棒の様子を見るがまだまだ談義は終わらない様子。 何時の時代も女というのはお喋りが好きだな、とか談義が終わるまでどうやって暇潰ししようか、とかその他諸々の思惑を頭の中で巡らせている間にレジについた。 レジには先客がいたのでそれを待つ。 なんとなく先客の買っている物に目が行って少し驚く。 ありとあらゆる銃火器パーツがカゴの中に山を作っていた。 どんなバカかボンボンかと思って、その先客に興味が沸いた。 興味が沸くのと同時に何か嫌な予感が頭をよぎった。 嫌な予感がよぎったが俺はそれを無視して先客の様子を探る。 身長は160cm前後といったところだろうか。 後姿しか解らないので何ともいえないが、多分女だ。 しかし、そんなに銃火器ばかり買ってどうするんだと俺は心の中で苦笑した。 「まいどありがとうございました~」 店長の声がした。 清算は終わったのだろう。 俺も清算を済まそうと歩を進めた。 先客は振り向いて出口に向かおうとした。 そこで、俺と先客は鉢合わせる形になった。 心底、後悔した。 「…っ! 倉内 恵太郎、アタシと勝負しなさいっ!!」 「ワタクシハクラウチケイタロウデハアーリマセーン」 「くだらないマネしてんじゃないわよっ!」 最悪だ。 俺の前にいた先客、それは水野 アリカだった。 彼女はこの前のサバイバル・バトルからというもの、俺を見かけるたびに勝負を挑んでくるのだ。 運悪く彼女と俺は同じ町に住んでいるらしく、遭遇率は割りと高い。 俺としては同じ相手と何度も戦いたくもないので会う度に何とか巻いているのだが……。 最近会うことがめっきり減って油断していたところで、また見つかってしまった。 というか、今回は俺の不覚だろう。 彼女は曲がりなりにも神姫オーナーだ。 そしてここはそれなりに名の知れたホビーショップだ。 ……欝だ、死のう。 「さあ、今日こそは逃がさないわよ!」 「だーかーら、俺は同じ相手とは二度と戦わないって言ってるでしょうに」 これだけで引き上げてくれれば苦労はしないのだが……。 「なら大丈夫よ」 「は?」 「アタシのトロンベは生まれ変わったのよ! 超攻撃型MMSとしてね!!」 もう何を言っても無駄だろう。 そろそろ腹を括るトキかしらー。 「……はいはいわかりましたよお嬢さん。そこまで言うならお相手致しましょう?」 「…相変わらず糞ムカツクわね」 凄まじく冷たい視線を感じるが、そんなもんはスルーだ。 「店長、バトルスペース借りますね」 個人経営にしては上等な四面体のバトルスペース。 俺は四面体の一辺、簡易クレイドルがある一辺でナルのセッティングを施している。 不幸にもバーチャルバトル用のデータを持っていたので今回はそれを使う。 ……データも装備も持ってない。って言えば巻けたんじゃないの? 何か聞こえてくる気がするが、そんなもんはスルーだ。 一方、バトルスペースを挟んで対面する形の彼女もセッティングを施していた。 あきらかに銃火器満載と言った感じで、思わず溜息が漏れる。 「ナル~、こっちの準備はOKですよ~。そっちの準備はOKですか~?」 「はい、準備はOKです、マスター」 「はい~、では健闘を祈ります~」 備え付けられたコンソールを操作してナルを仮想現実の世界へと転送した。 同じく備え付けのディスプレイにナルの姿が顕れる。 それから間もなく、彼女の準備が出来たのだろう。 彼女の神姫、トロンベがディスプレイに顕れた。 顕れて絶句した。 まるでハリネズミのように備え付けられた銃火器の数々。 もはや犬型とは言い難い風貌に俺は軽く鬱になる。 「覚悟しなさい、倉内 恵太郎!」 「……は~いはい」 彼女の咆哮とほぼ同時にバトルの準備が整った事を告げるアラームが鳴った。 それと同時にバトルフィールドが決定される。 バトルフィールドは”荒地” 見渡す限り不毛な大地。 空にはどんよりと薄暗い雲が居座っている。 まさに俺の心模様そのものだ。 そこにナルとトロンベが転送される。 「地の利はアタシに味方しているようね?」 勝ち誇るような彼女の台詞に俺はもっと鬱になる。 が、その台詞にも一理ある。 荒野のフィールドには遮蔽物の類は存在しない。 その為、有利なのは砲戦型か高機動型となる。 「……ナル、徹底的に叩きのめしといてちょ」 「イエス、マスター」 俺はもう疲れたので、一言指令を伝えてバトルスペースを後にした。 「ちょ、アンタ何処行くのよ!」 「喉渇いたから自販~」 トロンベの脚部に備え付けられた八門のハイパーエレクトロマグネティックランチャー。 それはレールガンと呼ばれる類の火器である。 レールガンは電力を供給すればするほどに弾丸の速度は上がり、理論的には光速すらも突破出来る。 が、一介の武装神姫たるトロンベにはそれほどの電力は持ち合わせていないので精々音速くらいが関の山である。 それでも武装神姫相手には充分過ぎる速度なのだが。 そのハイパーエレクトロマグネティックランチャーから放たれた弾丸が音速を超えて飛翔した。 大地を抉り、大気を裂いて、眼前に立ちはだかる物全てを打ち壊さんと飛翔する。 目標はトロンベの前方10sm位置するナル。 音速を超えた弾丸がナルを貫いて試合終了。 トロンベはそうなることを願っていた。 が、現実はそう甘くなかった。 八つの弾丸は確かにナルに直撃した。 が、それはナルの身体を後方に押し出す程度だった。 ナルは左手に握る刃鋼、それを地面に突き刺し、剣の腹で音速を超える弾丸を防ぎきった。 もっとも、無傷という訳ではなく刃鋼の表面には八つの弾痕が薄く残っていた。 先手はトロンベ。 後手は、ナルだ。 ナルは地面から刃鋼を振り抜き、大地を蹴って駆けた。 腰のブースターを全開にしての疾駆。 10smを縮めてトロンベを両断しようと駆けて行く。 だが、トロンベとて伊達に鍛錬を積んだ訳ではない。 距離を詰めてくるナル目掛けて全身のミサイルを掃射。 幾重にも重なる爆音と共に、無数の大小ミサイルが白い尾を引きながら飛来する。 文字通り雨の様な爆撃。 ナルとミサイル群とは直ぐに衝突した。 否。 ミサイルはナルと衝突することは無かった。 ナルは真っ先に飛んできた大型ミサイルの弾頭を刺激する事無く、踏み台にして跳躍。 踏み台にされたミサイルは地面と激突、多数のミサイルを巻き込む大爆発を巻き起こした。 ナルはその爆風を背に受けて更に加速し、トロンベへ一直線に突っ込む。 その後ろでは、目標を見失った中小ミサイルがあさっての方向へ飛び去り、地面と衝突している。 ―――一閃。 刃鋼の重量とナルの速度を乗せた一撃は、トロンベの左側を斬った。 が、トロンベ本体は左腕を多少掠った程度で主な被害はハリネズミの如く付けられた武装だった。 トロンベ本体のダメージこそ少ないものの、余波である衝撃はトロンベを震わせた。 「っく!」 多少よろめきつつも体勢を崩す事無く、次の攻撃―――背中に残った二門の蓬莱・壱式を背部に向ける。 銃口の先では、ナルがスライディングの要領で勢いを殺している。 その距離、およそ15sm。 ナルが再接近するにしてもそれまでに充分迎撃可能と見たトロンベは蓬莱・壱式に弾丸を装填し、発射しようとした。 が、それとほぼ同時。 ナルの右腕に装着された銃鋼から無数のビームが放たれた。 背後からの攻撃に一瞬反応が遅れるトロンベ。 だが、すぐさま回避しようとしたが重装備が祟り回避できず、ほぼ全弾を背中で受け止めてしまう。 その衝撃に耐え切れず、トロンベは前のめりに倒れてしまった。 「何してるのよっ! 速く立ちなさいよ!!」 アリカの叱咤がトロンベの通信ユニットに響く。 直ぐに体勢を立て直そうとして、そこである事に気付いた。 ハリネズミの如く備え付けられた火器の類。 その重量が邪魔して上手く立ち上がることが出来ないのだ。 「…っく……う……ぁ……」 何とか立ち上がろうと両腕に力を入れていた、その時。 「やはり負け犬は負け犬ですね」 ナルの刃鋼がトロンベを文字通り両断した。 「……そんな」 ディスプレイに踊る『YOU LOSE』の文字。 アタシはそれを前に言葉を失った。 荒野というフィールドに完全砲撃仕様のトロンベ。 それに加えて相手のマスター不在。 地の利、時の利はアタシに味方していた。 それなのに。 「あれ、負けちゃったの」 青瓢箪が缶コーヒー片手に戻ってきた。 「なんで…なんで……」 アタシの頭は混乱していた。 何か言いたい筈なのに、何も言葉に出来ない。 出てくるのは『なんで』という疑問のみ。 「なんで負けたのか理解できない。そんな顔だね」 「……当たり前よ。アタシのチューンアップは完璧だったわ! トレーニングでも完璧だったのに……!」 そう、何十何百何千回とトレーニングを積んだのだ。 それなのに。 「……そうだわ、神姫よ。神姫の性能が劣っているのよ! それ以外に負ける要素なんてありえないわ!」 アタシは一つの結論に達した。 トロンベとあのストラーフの元々の性能が違うからアタシは負けたんだ。 これ以外にアタシが負ける要素は見当たらない。 「…お嬢さん。そんな事を言っているようでは何百年経っても俺には勝てないよ」 「そんな事無いわ! 神姫の性能が悪いからアタシは負けたの! だからもっと良い神姫を買えば…!」 「機体の性能差が戦力の決定的差でない。という言葉がある。今回、お嬢さんの神姫の性能だけでみるならば、俺のナルと同等だったと思う。しかし、お嬢さんは負けた。しかもマスターのいない俺のナルに、だ。これが何を表すか解るかい?」 「…神姫の性能が同じ? だったら一体何が悪いのよ!」 本当にコイツは訳の解らない事を抜かす。 「二対一でも戦力で負けていたと言う事さ。そしてそれは経験に大きく起因する。もし仮にお嬢さんが新しい神姫を買ったとしても、それは赤子と同じ。まさに赤子の手を捻るが如し、てね」 まあ、確かにそれも一理ある。 「だったら、トロンベにもっと場数を踏ませれば…!」 「それでようやく相打ちといったところかな。お嬢さんが俺達に勝つためには、足らない物がもう一つある」 「なによ、勿体つけてなんでさっさと言いなさいよ!」 青瓢箪は一口缶コーヒーを口にした。 「それはお嬢さん自身で見つけないと意味が無いのさ」 「……はぁ?」 コイツ、本当は何も考えてないんじゃないの? 「しょうがない。最大唯一のヒントだ。神姫は唯の玩具じゃない。笑いもすれば、泣きもする……もっとも、受け売りだけどね」 「…訳わかんないわよ」 「それが解ったらもう一度戦おう。リアルでね」 リアルバトル。 その言葉に何故か身体が強張った。 上位ランカー戦の主であるリアルバトル。 仮想現実ではなく、現実でのバトル。 使用される武器は全てリアル。 即ち受ける傷もリアル。 最悪の場合、神姫本体すら壊れる可能性を孕んでいる。 だが、これはチャンスでもある。 あのストラーフを破壊できるかもしれないのだ。 「…良いわ。その勝負受けて立つわ」 「日時はそちらの好きに決めてもらって構わないよ。それじゃあ、失礼するよお嬢さん。」 そう言うと青瓢箪はさっさと出て行ってしまった。 後に残されたアタシはただ帰る準備をするだけだった。 先頭ページへ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1528.html
戻る トップへ 空は青く、そして高く。 流れる雲は、ただ白く。 冬の陽射しは柔らかく。 それをぼんやりと、どこか嬉しそうに眺める少女が、一人。 古ぼけた、二階建ての大きな図書館、その中で。 どれもこれも飾り気の無い、年季の入った本棚に囲まれて。 少女は二階にある、長机の上に座っていた。窓越しの空を嬉しそうに仰ぎ、古ぼけた本棚を楽しそうに眺めながら。 彼女はくすりと笑った。小さい身体を小さく揺らして。小さな、15センチ弱の身体を、小さく揺らして。 彼女は武装神姫。彼女にとって、人の世界は余りに大きく、人の世界は余りに遠い。 身長15センチ程しか無い彼女にとっては、この長机でさえ広大な大地と言える。 「レミン、決まった?」 少女の背後、陽射しをまるで避ける様に、神楽はそこに立っていた。平均的に言えば、決して大きく無い彼女も少女―――レミンからしたら大きな人間だった。 「司令官、自分はあれが読みたいッス!」 レミンは砲台型特有のバイザーを上げながら、屈託無く言った。その指で本棚の一角を指差しながら。 「……ん」 神楽は本棚へと向かい、迷う事なく一冊の『武装神姫と散弾銃』を手に取った。 顔に当たった日差しに目を細めながら、神楽はレミンに本を渡した。 「図書館では、静かに」 二人以外、本しかいない空間を見渡しながら神楽は言った。 「了解ッス、司令官!」 その忠告を理解しているのかいないのか、レミンは元気一杯に言った。 しかし、そんなレミンの声に眉をひそめる人間は、ここには居ない。 神楽も一応はそれを分かっているので、何も言わずに席に着き、自身の本を開いた。 何の音もしない、静かな図書館にぱらり、ぱらりと二つの音が木霊する。 ぱらり。 ぱらり。 革表紙の英語で書かれた本を、神楽は読んでいる。 無表情に、人から見ればある種不機嫌そうな顔で黙々と文字を追っている。 ぱらり。 ぱらり。 レミンは少し寂れた白い文庫を読んでいる。 楽しそうに、嬉しそうに。まるで子供が絵本を読むように、笑顔で読んでいる。 「やっぱりショットガンと言えばレミントンッスよね! 隊長はウィンチェスターが良いって言うッスけど、司令官はどう思うッスか?」 満面の笑顔で、レミンは言った。 子供が動物園で好きな動物を聞くように、楽しそうに言った。 その言葉は、子供が言うのなら少々不適切だが。 「SPAS」 本から目を離す事無く、神楽はぽつりと答えた。 「司令官、ウィンチェスターかレミントンかって聞いてるッスのに、それは無いッス!」 静かな図書館に、レミンの大声が小さく響いた。 小さな身体から発せられたそれは、人間からすれば普通かちょっと大きい程度の声だ。それは身体のサイズ云々よりも、機械的な制限の方が大きいのだろう。 それでもそれは、水を打った様な静けさに浸るこの場所に確かな波紋を投げ掛けた。 「図書館では、静かに」 レミンの声に引き寄せられる様に、風が吹いた。 窓をぎしりと軋ませるそれは、しかし神楽の声に掻き消された。 「SPASなんてダメダメじゃないッスか! ポンプ・セミ切り替え出来ても故障ばっかじゃ何の意味も無いッス!」 眉をひそめて、出来る限りの大声でレミンは文句を口にした。 その声を浴びせられている神楽は、端から見れば我関せず、右から左に受け流しに見えるだろう。 しかし、彼女を見慣れている人間は、前髪に隠れた眉がぴくりと動くのを見抜くだろう。 「SPASは人間工学に基づいた設計により兵士の負担を軽減している」 「いくら持ちやすくても重すぎッス! 変な機構詰むからそうなるッス! ショットガンはシンプルがイチバンッス!」 今まで、一定のタイミングでページをめくっていた神楽の指が止まった。 そして、無表情なその瞳がレミンを捕らえた。 「な、なんスか」 「……SPASは制圧力に優れるセミオートと確実性に優れるポンプアクションを導入している。これによってあらゆる任務に対応できる。それによって機構が複雑化し、重量が増大しているがそのおかげで安定した射撃が可能。装弾数の多さも利点の一つ」 全くの無表情、全くの無感情さで神楽は一気に言い切った。 しかしそれは一字一句正確無比な機械の発音であり、そしてそれは感情の籠った人間の発音でもあった。 「うぐぐ……SPASなんて旧世紀のイブツッス! そんなん使うならレミントン使うッス!」 「確かにSPASは古い。しかし、それはレミントンも同じ」 つい先刻まで静寂に包まれていた図書館はもう無い。 今あるのは二人の声が渦巻く、喧騒に巻き込まれた図書館だ。 「古ければ悪い訳じゃ無いッス!」 「それは認める。しかし、その発言、先とは矛盾している」 人と神姫、二人分の声は二人の注意力を削いでいた。 現に、階下から響く音に二人とも気付いてはいない。 ぎしり、ぎしり、と。 木製の古い階段を上ってくる足音に、気付いてはいない。 「レ、レミントンは今もパトカーに搭載されてるッス! SPASは大昔に生産終了してるッス!」 ぎしり、ぎしり。 その音は緩やかに、そして確かに近付いている。 二人の視界の外側から、ゆっくりと。 「……SPASの軍用銃は確かに生産が終わっている。しかし、民間向けなら未だに根強い人気を誇る」 ぎしり、ぎしり。 そして今、それは二人の視界の内側へと、侵入した。 「レミントンだって狩猟銃としてなら今でも大人気ッス!」 ゆっくりと、しかし確実に。 それは二人を目指して歩いてくる。 ぎしり、ぎしりと音を鳴らして。 「狩猟銃としてなら、確かにそう。でも、一般的な知名度はSPASの方が上」 ぎしり。 それは、もう二人の傍らに立っていた。 お互いに意識を向けすぎて、気付きもしない二人の傍らに。 そして、口を開いた。 「二人とも、図書館では静かにね」 二人はここに至って、ようやく彼女の存在に気付いた。 そこに立つ、戸坂 加奈美の存在に。 そこまでされてようやく気付いた神楽は 「…………」 絶句し、同じくそこまでされてようやく気付いたレミンは 「び、びっくりしたッス!」 と、大いに驚いた。 「二人の声、下まで響いてたわよ?」 そんな二人の様子を楽しげに眺めながら、加奈美はそう言った。更に続けて言う。 「あんなに大きい神楽の声、久しぶりね」 傍らに立つ加奈美の視線から逃げるように、神楽は顔を背けた。 その頬が赤かったのは言うまでもない。 「不意打ちなんて、加奈美姉さんも人が悪いッス!」 「そんなつもりは無かったんだけど、二人が楽しそうに話してるのを見てたら、ね」 悪戯っぽく笑いながら、加奈美は言った。 そうして、神楽の隣の席に腰を下ろした。その時、神楽は内心、レミンの比では無いほど驚いていた。少なくとも、会話すら出来ないほどには。 「そう言えば加奈美姉さん、昨日風邪で寝込んでたって聞いたッスけど、もう大丈夫なんスか?」 「ええ、神楽とウィンのお陰でね」 「そりゃ何よりッス!」 和気藹々と会話を交わす加奈美の隣、神楽はようやく平常心を取り戻していた。 そして加奈美はそれを見計らった様に、神楽へと声をかけた。 「そういえば、神楽。探したのよ。何時もみたいに教室にいると思ったのに」 「……そう」 少し拗ねた様なニュアンスを含む加奈美の言葉に対し、神楽は未だ俯き加減で一言だけ返した。 「お陰で学校中探し回る事になっちゃったわ」 「……そう」 少しおどけた様に喋る加奈美に対しても、神楽は俯き加減で一言だけ返すに留まった。 加奈美はしかし、それに対し不満を言うことは無い。代わりに、楽しげに神楽の顔を眺めているだけだ。 「司令官、加奈美姉さんの前でくらい明るくするッス!」 二人のやりとりを見ていたレミンは、そう言って立ち上がると手を腰に当てた。 「お婆ちゃんが言っていたッス、好きな人と話すときは明るく笑顔で話すッス!」 そう言いながら、神楽を責めるような視線を送る。 お説教のつもりだろうが、神姫であるレミンがそれをやっても可愛らしいだけで凄みも何もない。 現に加奈美はそれを微笑みながら見守っているだけだし、当の神楽も何の反応も示さないのだから。 「……レミンにお婆ちゃんはいない」 「物の例えッス!」 神楽は溜息ついでに言葉を吐き出し、こめかみを軽く押さえた。 彼女の心情を知ってか知らずか、レミンは相変わらず元気に返答している。 元気なのは良い事だが、元気なだけというのも考え物だと神楽は痛感していた。 「レミンはいつも元気ね」 「女の子は元気が一番ッス!」 図書館とは、本来静かな空間の筈だが、今やその影も形もありはしなかった。 形だけとはいえ、騒ぐ二人を戒めていた加奈美でさえも、お喋りに加担しているのだから。 神楽はそんな事を考えながら、少し音量を下げて口を開く。 「加奈美、何か用?」 先程、加奈美が神楽を探していたような言い方をしていた。 それが気になった神楽はそれを聞くために、そう問いた。 「ええ、探したわ」 それを聞いた加奈美は、にこりと笑った。 それを見た神楽は、内心胸を撫で下ろした。 神楽の心情を知らないままに加奈美は次にこう言った。 「昨日は、ありがとう」 一言、加奈美はそう言った。 神楽の目を真っ直ぐ見つめて、そう言った。 「……ん」 「司令官!」 神楽は無愛想にそう言った。 すぐ脇でレミンの叱責する声を上げたが、それすらも神楽の耳には入っていなかった。 今の神楽は、自分でも分かるほどに赤くなった顔を鎮めるのに精一杯だった。 「ウィンにもよろしく言っておいてね」 「加奈美姉さん、任せてくださいッス! 自分がしっかりと伝えておくッス!」 俯く神楽を横目で見ながら、レミンは元気にそう言った。 そして、一通り言いたいことを言い終えた加奈美は口を閉じた。 一瞬、図書館が図書館本来の静寂に包まれたが、それはレミンによっていともたやすく破られた。 「そういえば加奈美姉さん、神姫を買ったって聞いたッスけどホントッスか?」 「ええ、本当よ」 「なら是非とも会いたいッス!」 まるで、子供の様にはしゃぎだすレミンを見つめながら、加奈美はこう言った。 「そう言って貰えると嬉しいわ……そろそろ、かしらね」 加奈美が意味深な事を呟き、その瞳を大きな窓の方へと向けた。 それに釣られたレミンも意識を窓へと向ける。 しかし、そこにあるのは真っ青な空と白い雲ばかり。可笑しなものなど何も無かった。 「……加奈美姉さん、何がそろそろなんスか?」 レミンは何の変哲もない空を眺めながら小首を傾げた。 しかし、加奈美は何やら楽しそうに微笑むだけで、レミンの言葉には答えなかった。 「司令官……」 次にレミンは神楽に声をかけた。しかし、神楽は未だに俯いたままなので、応答は無い。 レミンは、仕方なしに再び窓へと視線を移した。 「……?」 何の変哲も無い空。 近所には高層ビルの類など無い、余計なものなど鳥くらいしか有り得ない空。 だが、レミンはそこに何かを見た。 しかし、鳥では有り得ないもの。 青い空に溶け込むような群青色のもの。 背中に白い羽を生やすもの。 人の形をしたもの。 それは桃色の髪をしたもの。 それは、武装神姫だった。 武装神姫が、窓の向こう側を飛んでいたのだ。 そして、こちらに向かって飛んできていたのだ。 「……!………!」 それは、窓に張り付くと何かを叫んだ。 しかし、それはガラスに阻まれ、レミンらの所にまでは届かなかい。ただ時折小さな声が届く以外は。 「エウクランテ……スか?」 レミンは半ば呆然としながらも、そこにいる神姫を認識した。 そして、その神姫が加奈美に向かって叫びかけている事に気付いた。 だが、加奈美の方を仰いでみても加奈美は何が楽しいのか、心底楽しそうに笑っているだけだ。 「姉さん、なんか叫んでるッスけど、開けなくていいんスか?」 「そぉねぇ……そろそろ可哀相だから開けてあげましょうか」 レミンに言われ、加奈美はようやく腰を上げた。 そして、やったらにこにこしながら窓を開けた。 その瞬間、静かだった図書館に神姫のモノとは思えないほどの怒鳴り声が満ち渡った。 「主、何故直ぐに窓を開けて下さらないのか!?」 窓を開けたままの体勢、そのままの加奈美に対してシルフィは開口1番怒鳴り付けたのだ。 「なんでかしらねぇ?」 「なんで、ではあるまい!明らかに楽しんでおられたろう!?」 怒鳴られながらも加奈美は平然とした様子で窓を閉め、もとの席に腰を下ろした。 「あら、分かっているんじゃない」 「主……!」 背中に翼を背負っただけのシルフィが加奈美の前、レミンに背を向ける形で長机の上に降り立った。 そして、それを見計らった様に口を開いた。 「そ・れ・よ・り、何か私に用があったんじゃなくて?」 「……ああ。ああ、そうだとも主。何処かに行かれる時は一声かけてくれとあれほど……!」 「だってぇ、シルフィったらパーシと楽しそうにおしゃべりしてたから邪魔したら悪いかしら、って」 「何度も言わせて頂くか、例えパーシとの会話であろえと神姫バトルであろうと、主の事とは比べるまでも無いと……!?」 「あら、お友達とのおしゃべりは大切よ」 「……それはそうだが!」 「シルフィはまだお友達が少ないのだからダメよ?」 「それとこれとは関係が無かろう!」 そう一喝されて、加奈美は一瞬押し黙った。 「ああ、そうだわ」 「……少しは反省なされたか?」 「ここは図書館だからあんまり大声出しちゃダメよぉ?」 「……主は……いつもそうだ……!」 なんかすごいもんみちゃったなぁ。と、神楽は内心思っていた。 凄まじい形相で怒鳴っていたシルフィ。それを涼しげに、むしろ楽しそうに受け流す加奈美。 そしてそれを呆然と眺めているレミン。 修羅場ってこういう事を言うんだなぁ、と神楽は考えていた。 「主よ、私がこうして怒っているのも主を案じての事と分かっておられるのか……!」 「シルフィが泣いて叫んで探し回ってくれれば私も少しは考えるわ」 「何をどう考えるのだ……!」 「どうやったらシルフィがもっと泣き叫ぶか」 「主ッ!」 「そんな事より、レミン。この子が私の神姫、シルフィよ」 唐突に、いきなりに話を振られたレミンは 「ふぇ?」 という妙な音声を発してしまった。 「……シルフィだ。何も言わずにふらふら歩き回り見つけたところで反省も何もしないオーナーの神姫だ」 シルフィは顔だけを後ろに向けて、そう言った。その顔に浮かぶ憤りを隠そうともせずに。 「わ、私は神楽の神姫のレミンッス!」 そんなシルフィの様子に尻込みしながらも、レミンは勇猛元気に挨拶をした。 「ああ、よろしく」 しかし、シルフィは素っ気なく答えただけで再び加奈美へと顔を向けてしまった。 残されたレミンは涙目で、小さな声で神楽に訴えかける事しか出来なかった。 「……司令官……シルフィさん……超怖い……ッス」 「……運が悪かった」 だが、神楽は神楽で読書を再開していた。レミンを慰められるのは、今や加奈美だけだった。 「姉さん……」 「そういえば、神楽。さっきは何の話をしていたの?」 「主、私の話はまだ終わっていないぞ!」 加奈美だけだった。 だけだったが、当の加奈美は平然と神楽に会話を振っており、レミンの声は聞こえていない様子だった。 「……散弾銃について」 神楽はレミンを一瞥したが、それだけだった。 「あら、そうなの。確か神楽はスパスが好きなのよね」 「……そう」 「私は断然モスバーグなんだけど、レミンはどう思う?」 今までスルーされていたのに、唐突に話を振られたレミンは一瞬驚き、しかし直ぐに目を輝かせながら口を開いた。 「自分はレミントン一筋ッス!」 「……主よ、どうやら主は私を本当に怒らせたいらしいな」 一方シルフィは額に青筋を浮かべて笑っていた。 「今日という今日は言わせてもら……!」 全く聞く耳を持たない加奈美に、シルフィがキレかけた。 神楽は読書しながら巻き添えを食わないよう微妙に距離を離し、レミンは再び半ベソになって、加奈美はシルフィを見ながら笑っていた。 まさにその時、だ 「みなさーん、図書館では静かにお願いしますよー」 階段の脇、にこやかに笑う図書委員、眼鏡の似合う女子高生、国崎 茜が警告を発したのは。 茜の容姿は学校指定のブレザーとスカート。胸元には真っ赤なネクタイを締めている。 茶色がかった髪は肩口で揃えられ、黒ぶち眼鏡をかけていた。 それはまさに図書委員であり、どこにでもいそうな高校生だった。 「「……ごめんなさい」」 眼鏡の奥にある目は僅かに細められていて、それは見る人間に悪い印象を与えないはずだ。 だがこの場、彼女と対峙した二人は何故か茜に戦慄した。 それは図書館で騒いでいた後ろめたさが大きいが、その奥底にはもっと根源的な感情が存在している。 「二度目は無いですからねー。次は食べちゃいますからねー」 にこやかに言い放つ茜の言葉は、恐らく額縁通りの意味だったのだろう。 トップへ 進む -
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2660.html
キズナのキセキ ACT1-22「異邦人はあきらめない」 ◆ 答案用紙の枚数をチェックしていた教師が、 「今日はここまでにしましょう」 教卓の上で紙の束を揃えながら、補習授業の終わりを告げた。 当番を任された生徒が「起立、礼」と号令をかける。 すると、教室内が一気に開放感で溢れた。 期末テスト後、成績不振者が集められた補習授業は、今日の再テストで終了である。 園田有紀と蓼科涼子は早々に荷物をまとめると、 「よし、急ぐぞ」 「うん」 足早に教室を出る。 しかし、出てすぐに、二人は呼び止められた。 「有紀、涼子。補習終わった?」 優しげに話しかけてきたのは、彼女たちのリーダー格の八重樫美緒。 その隣には、美緒の彼氏でチームメイトの安藤智哉と、もう一人のメンバー・江崎梨々香もいた。 有紀と涼子はみるみる鬼のような形相になり、三人を怒鳴りつけた。 「てめーらっ! 先に行っとけって言っただろ!」 「なんでここにいるのよ!?」 「え……だ、だって二人とも今日で補習終わりだって言ってたから、一緒に行こうかと思って待ってたのに……」 戸惑いながら言う美緒に、さらに二人はヒートアップする。 「アホか! あたしたちの補習よりも、菜々子さんの特訓のが大事だろが!!」 「もう仕上げの段階だって、遠野さんも言ってたでしょう!? こんなとこで油売ってる暇ないのよ!」 「ああ、こんなことしてる場合じゃねー。さっさと行くぞ、涼子」 「そうね、急ぎましょう」 二人は美緒たちを置き去りにして、小走りに昇降口へと向かう。 美緒たち三人も、あわてて後を追った。 期末試験前の週末が明けてから、有紀と涼子は態度が一変していた。 いつのまにか久住菜々子と和解し、特訓に積極的に協力するようになっていた。 その週末に何かあったことは確実だが、それが何なのかは、安藤も知らない。 遠野に訊いても何も言わないし、大城に訊いても、 「まあ、また遠野がやってくれたのさ」 とだけ言って、うやむやにする。 美緒は訳が分からず不満なようだが、大城の一言こそがすべてを物語っているように安藤には思えた。 あの日、安藤と大城に協力を求めた遠野は言ったのだ。奇跡が起きるところを見せる、と。 有紀と涼子が、菜々子と仲直りすることも、安藤からしてみれば、奇跡的な出来事だった。美緒たちがいくら諭しても気持ちを変えなかった二人が、こんなに短期間に態度をがらりと変えるなんて、奇跡としか思えない。 だが、それさえも、はじめから遠野の想定のうちだったに違いない。 これからいくつの奇跡をあの人は見せてくれるのだろうか。 それを遠野に言ったら、きっと、 「そんなのは奇跡でも何でもない」 そう言うに違いない。 いつものような仏頂面で。 その表情が頭に思い浮かんでしまい、安藤は思わず苦笑した。 ◆ 遠野のその一言は、久住頼子にとってかなり意外なものだった。 遙か彼方に飛んでいた記憶をたぐり寄せる。頼子さえすっかり忘れてしまっていたことだった。 「初期の頃から武装神姫をやってる頼子さんなら、持ってるかと思ったんですが」 「ええ……たぶん、物置にあるはずよ」 「よかった。しばらく貸していただけませんか?」 「いいけど……随分使っていないから、動くかどうかわからないわよ?」 「いえ、大丈夫です。メンテナンスしますし、出力が上がるように改造する予定なので……あ、もちろん、元に戻してお返しします」 律儀な遠野の物言いに、頼子は苦笑する。 「いいわよ、どうせ使ってなかったんだし、好きに使って。……菜々子の対戦に必要なんでしょう?」 「はい」 「だったら、遠慮しなくていいわ。あんな骨董品でよければ、いくらでも使って」 「恐れ入ります」 「それで、何本必要なの?」 「とりあえず、三本もあれば……」 頼子は、遠野と海藤を物置に案内した。 久住家の物置は、ちょっとした蔵レベルである。その大きさに遠野と海藤はちょっと驚いていた。 物置の中はほこり臭く、いろいろなものが所狭しと並んでいる。 「見てごらんよ、あのコレクションは相当なビンテージだぜ?」 海藤の言う方を見てみると、古い戸棚の中に、びっしりと箱が納められている。 何やら大判の辞書ほどの大きさのパッケージが占拠している棚もある。背表紙の文字は何かのタイトルのようだ。 「キング・オブ・ファイターズ」とか「餓狼伝説」、「ファイターズヒストリー・ダイナマイト」といったタイトルが読みとれる。 どうやら、大昔のゲームソフトのコレクションらしい、と遠野は見当をつけた。 遠野はあまりゲームに詳しくない。それらのタイトルから、ゲームの内容を類推することができなかった。 頼子は、物置の奥に足を踏み入れると、遠野の望みのものを引っ張り出した。 埃だらけではあるが、保管状況は悪くない。 「よし、早速作業に取りかかろう」 遠野の言葉に海藤は頷き、すぐに物置を出ていく。 二人が借り出したのは、頼子が武装神姫を始めてまもなく使っていたものだ。今はもう使っているマスターもほとんどいないだろう。最近武装神姫を始めたマスターは存在すら知らないかもしれない。 あんなものを何に使うのかしら? 頼子は首を傾げながら、物置の扉を閉めた。 ◆ すでに日が落ち、街灯が照らす暗い夜道を、尊と真那、梨々香が歩いている。 久住邸からの帰り道。 尊たちが久住邸に足を運んだのは二回目だが、今日も充実した対戦が楽しめた。多くの神姫マスターが通ってくるのも頷ける。 特に、日々追い続けている、神姫の違法パーツ……イリーガルマインドのことを全く考えずに対戦できるのが、尊にはありがたい。 「今日の対戦も楽しかった。収穫もあったしな、蒼貴」 「はい。今日対戦した、ティアのノールックショット……練習すれば、わたしにもできそうです」 肩に掛けたカバンから顔を出した尊の神姫・蒼貴が応えた。 隣にいるイーダ型の紫貴は少し不満そうに頬を膨らませている。対戦の時のことを思い出しているのだろう。 「わたしは散々だったわよ。まともな対戦にすらなっていなかったし」 「すまん、それは俺のせいだな」 尊は神姫たちに笑顔を見せながら、先ほどのバトルを反芻する。 あの男とのバトルは、双姫主としてのプライドを揺るがせるほどのものだった。 蒼貴と紫貴の二人をバトルに出したが、紫貴への指示をろくに出せないままバトルは終わってしまった。 だが、尊の胸には不思議なすがすがしさがある。紫貴には悪いが、自分の全力を出しきったと言い切れるバトルだった。あの男とあの神姫とは、また存分に戦ってみたいものだ。 そんなことを考えていると、不意に真那が口を開いた。 「でもさあ、あんな風に神姫マスター集めて、対戦してるだけって……何か意味あるのかしら? ただ遊んでるだけにしか見えないんだけど」 「なんだ、お前何も分かってなかったのかよ」 「なによ。ミコちゃんは何か分かったって言うの?」 「遠野貴樹……あいつは絆を武器にする。その方法を知っているんだ」 「はあ? 絆を武器に、って……みんなが信じてくれたから、力が漲る~……とかそんな感じ?」 「そんなんじゃねぇよ。根性論で強くなれるなら、苦労はしない」 尊は遠野の考えを見抜いていた。 ミスティの特訓は、マグダレーナ戦に特化したものだ。だから、特訓内容を逆に考えていけば、マグダレーナがどんな神姫かわかる。 ミスティの特訓はかなりまわりくどい方法だと、尊は思う。マグダレーナが彼の想像するとおりの神姫ならば、他にもっと手っ取り早い方法があるはずだ。 あの男……遠野貴樹もそれは分かっているのだろう。それでも今の方法を貫いているのは、マグダレーナに勝つ以上の意味が含まれているに違いない。 「あんな大がかりなことまでしなくちゃいけないなんて、『狂乱の聖女』ってどういう神姫なのよ?」 「それは、俺の口からは言えないな」 「なによケチ」 「ケチじゃねぇ。俺の考えは推測にすぎないから、おぼろげにしか分からない。それに俺が話して『エトランゼ』の特訓が台無しになったら困るだろ」 「まあ、そうだけど……」 あの頑ななまでの秘密主義にも意味がある。 そうしなくてはマグダレーナに立ち向かうことができない、ということだ。 つまり、マグダレーナの能力は……。 尊はそこまで考えたが、首を振って思考を中断した。 どちらにしても、尊はこれ以上深入りする気はない。 これは『エトランゼ』と仲間たちの戦いなのだ。 だが、どんな戦いになるのかは、非常に気になる。 「梨々香、『エトランゼ』と『狂乱の聖女』の対決がどうなったか、しっかり報告してくれよ」 「はい」 梨々香は笑顔で尊の指示に頷いた。 尊は立ち止まり、少しだけ後ろを振り向く。 暗い道の向こう、久住邸の中では、まだ特訓が続けられているはずだ。 「健闘を祈るぜ、『エトランゼ』、そして遠野」 口の中だけでそう言って、尊は踵を返した。 ◆ 三月も終わりの頃。 春の足音は例年よりも早く聞こえてきた。桜前線は急ぎ足で北上しているという。 日差しはもう春の暖かさを纏っている。 真冬の二月から続いた特訓は、早二ヶ月が過ぎようとしている。 菜々子とミスティの特訓は、最終段階を迎えていた。 ミスティは、トライク形態から一挙動で武装形態に変化すると、速度を落とさずに、ティアとランティスに襲いかかる。 左右の副腕を交互に振るう。 ティアはかわし、ランティスは両腕を胸の前で閉じてブロックする。 ミスティの爪をやり過ごし、ランティスは反撃に出た。 得意の踏み込みが地を震わす。 一撃必殺の正拳を繰り出した。 しかし。 「な……にっ……?」 それよりも早く、身を翻したミスティの副腕から、バックナックルが襲う。 ランティスの脇腹にヒットし、そのまま身体を吹っ飛ばして、正拳突きを防いだ。 飛んでいくランティスと入れ替わりに、ティアが迫る。 目前でスピン。 ムチのようにしなったティアの蹴りが、ミスティを襲う。 ミスティは止まらない、防がない。 ティアも容赦はない。 ミスティの頭部を狙って、超速の蹴りが放たれる。 瞬間、ミスティが加速した。 ティアの蹴りは、予測通りの軌道をたどったが、ミスティの副腕の付け根にヒットする。 「おおおっ!」 ミスティがさらに加速する。 姿勢を崩したままのティアに向かって、手にした刀・エアロヴァジュラを袈裟懸けに振るった。 「きゃああぁっ!」 かわす間もない。 ティアはその一撃でポリゴンの欠片となって、退場した。 ミスティの突進は止まらない。 目指すのは、二人の後ろに立っていた白い神姫。 その進路上に飛ばされていたランティスが起きあがろうとしている。 しかし、ミスティは速度も緩めず、一直線に迅る。 「がっ……!」 ランティスは防御をする暇もなく、ミスティの副腕から放たれた、地を這うようなアッパーをまともに食らい、宙を舞う。 ミスティが過ぎ去った後、地に落ち、そのままポリゴンの欠片と化した。 「……あと一人!」 ミスティは猛進する。 目指す白い神姫は雪華だった。手にした長柄の武器……自らの武装を組み替えたダブルブレードを身構える 今回の雪華はいつもと武装が違っている。アーンヴァル・トランシェ2をベースにしたカスタム武装の代わりに、同じフロントライン社製の神姫・オールベルンの装備を纏っている。 それでもミスティは油断しない。 なにしろ、この三対一の戦闘は何度も行われており、そのたびに軽装備の雪華にずっと歯が立たなかったのだ。 しかし今回、ミスティは調子がいい。 ここまでに前衛の二人を瞬殺している。無傷で雪華と向かい合えるのだ。 雪華が前に出た。 彼女は悠長に待つことなどしない。自ら攻め、そして勝つことを信条としている。それがどんな装備であろうと変わらない。 攻撃は、リーチに勝るミスティが先だった。 左の爪を下からすくい上げるように振るい、続いて右副腕の爪を揃えて突く。 雪華は斜めに振るわれた爪をかわし、追撃してくる右爪をいなす。ミスティの懐に飛び込む。 ミスティのエアロヴァジュラと、雪華のダブルブレードが同時に閃いた。 交差する剣閃が火花を散らす。 二人の影が跳び違う。 二人は同時に振り向き出す。 だが、先手を取ったのはミスティだ。 ミスティの必殺技、リバーサル・スクラッチ。反転攻撃の速さがその必殺技を支えている。 ミスティは身体を捻りながら、跳ねるようにして背後を向いた。 雪華はまだ振り向いている途中。 脚に装着されたホイールの回転を上げ、ミスティはさらに加速する。 身体の捻りを上半身の回転に変え、ミスティは再び雪華に襲いかかる。 「くっ……!」 セカンドリーグ・チャンピオンの雪華であっても、ミスティの攻撃……リバーサル・スクラッチ三連撃を捌ききるのは至難であった。 振り向き様に振るったダブルブレードを駆使して、なんとか両副腕の攻撃はいなした。 しかし、エアロヴァジュラの一撃は、軽装の雪華をしたたかに削った。 雪華の動きが止まる。 さらにミスティは動く。 竜巻のように身体を回転させ、容赦のない連続攻撃を繰り出す。 もはや雪華に、ミスティの攻撃を凌ぐ術はなかった。 副腕の爪にアーマーが削がれ、エアロヴァジュラの袈裟懸けの一刀がボディに決まる。 「……見事」 その一言を残して、雪華もまたポリゴンの欠片となって、ステージから消えた。 花びらにも似たポリゴンの破片を吹き散らしながら、ミスティがブレーキをかけて身体の動きを止める。 すっくと立ち、後ろを振り向く。 彼女が突き進んできた進路上に、いまや立つ影は何もない。 『WINNER:ミスティ』 ファンファーレとともにミスティの勝利が告げられる。 それを耳にして、ミスティはほっと安堵の吐息をついた。 □ 「ありがとうございました」 菜々子さんが頭を下げると、向かいに座っていた俺たち三人も、 「ありがとうございました」 と声を重ねて礼をした。 気分は武道の試合の前後のようだ。勝っても負けても、相手を敬う気持ちがそこにある。 「それにしても……強くなりましたね、ミスティ」 「まったく、我が女王の言うとおり。我々三人の布陣を一人で相手にして打ち破るのだからな」 雪華とランティスの賞賛に、ミスティは肩をすくめて見せた。 「まあ……それも付き合ってくれたみんなのおかげだけど」 「それでも、今のあなたの実力は並ではありません。今度は一対一、わたしのフル装備状態で対戦しましょう」 「……タカキが許したらね」 話す間、雪華は終始優しい微笑みを浮かべていたが、目が全く笑っていなかった。 今のミスティは強い。セカンドリーグ・チャンピオンの神姫が本気で戦いたいと思わせるほどに。 ミスティ対雪華のバトルは、俺も見たいカードではあるが、今はやめておいた方が無難だろう。ミスティが負けて自信を失ったりでもしたらたまらない。 そう、ミスティの特訓はすでに最終段階。この三対一の対戦に勝利を収めたミスティの実力は、俺が計画した最後の段階に到達していた。 さて、この先、どうするべきか……俺が思案していたところ、 「遠野くん、ちょっといい?」 「特訓場」の入り口から、頼子さんがそっと俺を呼んだ。 俺は静かに立ち上がると、そっと部屋から出た。頼子さんと二人、玄関前あたりで立ち止まる。 頼子さんが小声で言った。誰にも聞こえないように。 「遠野くん。今連絡が入ったわ。昨晩、C港の裏バトル会場が閉鎖になったそうよ」 「……本当ですか」 俺の小声の問いに、頼子さんは神妙に頷いた。 俺は思わず武者震いする。 この二ヶ月、C港の裏バトルについての情報を集めていた。 頼子さんは独自のコネクションを使って、調査してくれていた。 C港の裏バトル会場を閉鎖に追い込んだのは、『狂乱の聖女』に違いない。 俺は待っていた。 この知らせが来るのをずっと待っていたのだ。 そして、菜々子さんとミスティの実力が、俺の想定のレベルまで達した……つまり、ティア、雪華、ランティスの三人を相手に勝利することができるようになったその日に、知らせは来た。 俺に言わせれば、これ以上ないタイミングである。 もはや迷うこともない。ためらう必要もない。 ただ、覚悟を決める。 俺は頼子さんに頭を下げた。 「長らくお世話になりました。特訓は今日でおしまいです」 「……それじゃあ」 「はい。対決です、『狂乱の聖女』と」 頼子さんは真剣な表情で、もう一度頷いた。 俺は身を翻すと、歩き始める。 「特訓場」へ。 反撃の狼煙を上げるために。 □ その晩、アパートに戻った俺は、秘策を一つ実行に移した。 『狂乱の聖女』の居所はわからない。彼女たちの行動範囲に張り込む手もあるが、時間がかかりすぎる。 ならばどうするか。 向こうから来てもらうのが一番早い。 俺はPCに次のような文章を入力した。 ---------- 狂乱の聖女に告ぐ 異邦人はあきらめない 真剣勝負を所望する 明日、北斗十字の下で待つ 詳細はそのときに 黒兎 ---------- この文章を、考えつく限りすべての武装神姫関連のネット掲示板やコミュニティに書き込む。 これは誘いだ。 奴はこの誘いに乗ってくるのか? と問われれば、必ず乗ってくると確信している。 そうしなければならない理由が、彼女たちにはある。 誘いの結果は翌日の朝に出た。 ベッドから起きて、すぐにPCをチェックする。 昨日の夜書き込んだ文章は、すべてきれいに消されていた。 狙い通りの反応に、俺はほくそ笑む。 『狂乱の聖女』は来る。 この事件に関わってから三ヶ月ほど経過している。その間で、俺たちが初めて得た主導権だ。 このチャンスを必ずものにしなくてはならない。 そして、『エトランゼ』との決戦を必ず実現させる。 来るべき『狂乱の聖女』との会談に向け、着替えをしながらも、俺の思考はフル回転していた。 次へ> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1077.html
{姉貴の会社に行ってみるか} 「う~ん、やっぱ姉貴の会社に行ってみるべきかなー」 「何でですか?」 リビングに俺とアンジェラスがテーブルに座りながらウーロン茶を飲んでた。 今日は日曜日、晴れの午前10時。 「いやなぁー。実際、俺は武装神姫の事を色々調べてみたんだけど、どれもこれも古い情報しか入ってこなくてなぁ。色々と困ってる訳よ」 「そうなんですかー」 「そうなんだよ。…よし、日曜日で暇だし行ってみっかぁ」 「えっホントですか!?」 アンジェラスは驚きその後、嫌な顔になった。 まるで俺の姉貴の会社に行きたくないうような表情だ。 「うん?どうした、嫌なのか??」 「…はい。あんまりあの会社にはいい思い出が無くて…」 「思い出…ねぇ~」 俺は立ち上がり煙草を口にくわえ、火を点け換気扇のスイッチを入れる。 自分が生まれた場所を嫌うアンジェラス。 何か理由があるのか。 「なぁ、行きたくない理由は…あっ!?」 また煙草を盗られてしまった。 ホント、アンジェラスと居る時は煙草が吸えないのは辛い。 ほんでもって煙草は灰皿にダイブしグチャグチャに消される。 酷い形になり二度とその煙草を吸えなくするのがアンジェラスのやり方だ。 えげつないぜ。 つーかぁ金がもったいないから、いい加減やめてほしい。 「ご主人様、何度も言いますけど煙草は体に毒です。やめてください」 「こっちからも言わせてもらう。俺は好きで煙草を吸ってるんだ。テメェこそ煙草を奪うのをやめろ」 「やめません!」 「やめろ!」 「やめません!」 「やめろ!」 「絶対!やめませんー!!」 真剣に怒った顔で俺を見るアンジェラス。 まったくなんなんだ。 オーナーの命令に背く神姫なんて聞いた事がないぞ。 …前々から思っていたが、アンジェラスは少し特別な神姫なのだろうか。 俺が教えた料理や掃除は最初は駄目駄目だったが、今は普通に出来る程度まで上達している。 パルカもそこそこ上達してるがアンジェラス程のレベルじゃない。 上達の早さが尋常じゃない早さなのだ。 ネットの掲示板で他の武装神姫のオーナーと連絡してみると『それは凄い』だの『ありえねぇー』だの『嘘だろ?』とかの驚きの答えしか返ってこなかった。 これは調べる必要性がありそうだな。 換気扇を止め、右手でヒョイ、とアンジェラスを掴む。 「ご、ご主人様、いったい何を」 「姉貴の会社に行くぞ」 「!?本気で言ってるんですか!」 「あぁ~、本気と書いてマジだ」 「嫌ー!離してー!!」 俺の右手の中で暴れるアンジェラス。 だが、こちとら喧嘩で鍛えられた身体なんでね。 神姫の力じゃあどうって事ないだよ。 けど、少し罪悪感を感じる。 俺に抵抗してまで行きたくない理由も気になるが…。 二階に上がり、机に居るクリナーレ、ルーナ、パルカを呼ぶ。 「お前等、今から姉貴の会社に行くぞ」 「「「えー!」」」 クリナーレ、ルーナ、パルカが同時に声を上げる。 もしかして、こいつ等も姉貴の会社が嫌いなのか? 「一ヶ月ぶりの里帰りだね」 「そうですね。一応、メンテナンスもしてもらいましょう」 「ですね。お兄ちゃんのメンテナンスもいいですけど…あの時のお兄ちゃんの目、ケダモノっぽくて…」 お、こいつら嫌がらないなぁ。 アンジェラスとは全然違う反応を示す。 ていうかパルカ、いつメンテナンス中に俺がケダモノの目をしたんだ? 確かにお前の巨乳につい目がいっちゃただけじゃん。 たかがそのぐらいでケダモノ扱いは酷すぎるじゃないのか? まぁいいや。 「お前等は肩に乗れ」 左手を机に置きクリナーレ達が上ってくる。 それと同時に右手に掴んでいるアンジェラスを机に下ろし離す。 「えっ…」 「嫌がるお前は家の留守番をしてろ」 さっき感じた罪悪感からの償いだ。 それに嫌がってる奴を無理矢理連れってても意味がないし、こいつにとってもいい事が無い。 行きたくない理由が知りたかったが、いたしかたあるまい。 俺は机に背を向け部屋を出ようとした。 「待ってください!」 後ろからアンジェラスの声が聞こえ顔だけ左横に動かした。 「私も…連れってください!」 「はぁあ?さっきまで嫌がってくせにか??」 「私が我が儘でした!どうか許してください!!」 土下座してまで『私も連れて行ってください』と言う。 訳解らん。 さっきまでの態度が180度回転したように変わったぞ。 あーもう! 原因が解らんが一応、アンジェラスが土下座してまで頼んでいるんだ。 俺は無言のまま右手の手のひら上にしてアンジェラスに向ける。 「…ご主人様」 「…理由は知らんが行くぞ。ほら」 「ご主人様!ありがとうございます!!」 手のひらにピョン、と飛び乗り笑顔を見せるアンジェラス。 …ったく、しょうがねーなぁ。 世話が掛かる奴だぜ。 そのまま部屋を出て車に向かった。 …。 ……。 ………。 車に乗りエンジンを掛け姉貴の会社に向けてアクセルん踏んだ。 隣の席にクリナーレとパルカ。 後ろの席にはアンジェラスとルーナ。 俺は勿論、運転席で運転してる訳だが…。 「はぁ~、やっぱり会社には行きたくないなぁ~」 「お姉様、気を楽にしてば行けばいいのよ」 「わーい、アニキの車に初めて乗ったー!」 「姉さん、はしゃぎ過ぎですよ」 …五月蝿い。 ぶっちゃけ、かなりウザイ。 車ぐらいで普通騒ぐか? 特にクリナーレが五月蝿い。 にしても。 「はぁ~」 アンジェラスはガックリと肩を落とし元気がない様子だ。 あのアンジェラスがここまで元気を無くす理由はなんだ? さっぱり解らん。 ただ一つだけ解ると言えば、姉貴の会社が大嫌いという事。 会社に着いたら姉貴に話してみるか。 勿論、あいつ等がいない時に…な。 …。 ……。 ………。 「いつ見てもこの会社はホントに子会社なのか?」 姉貴が勤めてる会社に着き車からおりて一言。 さっきの台詞どうり、姉貴が勤めてる会社は子会社なのだ。 けど、俺は絶対子会社だと思わない。 だってまず会社の敷地が多い事。 多分、面積的に平均的な野球スタジアムの大きさの数十倍はある。 「まぁいいや。お前等、行くぞ」 「…はぁ~」 「はーい」 「この風景も久しぶりですね」 「ですね~」 四人の神姫を左右の肩に二人ずつ乗せた。 やっぱりアンジェラスだけが元気が無い。 原因は何だ? 絶対つきとめてやる。 …。 ……。 ………。 会社に入ってから受付で姉貴を呼び出して数十分。 エレベータが下がってきて、ドアが開くと。 「タッちゃん~久しぶりー!」 白衣を着た姉貴が居た。 姉貴は両手を広げて走ってくる。 俺を抱きしめるつもりだろう。 女の身体で抱きしめられる事はかなり嬉しいが…。 「タッちゃんー!」 ヒョイ 「あれ~?」 俺は抱きしめられるギリギリで避けた。 さすがに三十路に近い女に抱かれるのはちょっと抵抗がある。 しかも実の姉貴にだ。 血もつながっている。 「も~!なんで避けるのよ~」 「普通は避ける。恥ずかしいんだ」 「恥ずかしがる事ないじゃない~。私達は姉弟で血もつながっていってるんだから」 「余計に駄目じゃん!つか、そこまで解ってるのなら、あの行為は止めろ。人妻にも実の姉貴にも興味は無いんでね」 「あら。言ってくれるじゃない」 「いくらでも言ってやろうか?て、そんな事を言いに来たんじゃねー。アンジェラス達のメンテナンスをと通常武器と通常武装をくれ」 「別にいいわよ。タッちゃんは私のオフィスルームで待ってて。それじゃあタッちゃんの神姫ちゃん達はあたしに付いて来て」 姉貴は白衣のポケットからクレイドルに似た物を三つ程取り出した。 「悪魔型ストラーフと天使型アーンヴァル・Bと悪魔型ストラーフ・Wはこのこの携帯用クレイドルに乗ってね~」 クリナーレ、ルーナ、パルカは携帯用クレイドルに乗ると同時に機能停止してようにグッタリと倒れるように眠る。 携帯用クレイドル? そんな物があるなんて聞いた事がない。 会社だけの特権なのだろうか。 それに何故、アンジェラス分だけないんだろう? 少し気になるがここはまだ黙ってよう。 ん? 俺の後ろから白衣を着た男が二人程来た。 一人は手ぶらで、もう一人はトレイを二つ持っている。 トレイを持ってる男が一つトレイを姉貴に渡す。 姉貴はクリナーレ、ルーナ、パルカをトレイに乗せ男に渡し、男二人組はさっき姉貴が乗ってきたエレベータに向かう。 「アンジェラスちゃんは私と一緒に地下に行くわよ」 アンジェラスは姉貴が持っているトレイに乗る。 「おい姉貴。なぜアンジェラスだけ別なんだ?」 「ごめんね、タッちゃん。こればかっりは答えられないの」 そう言って社員用のエレベータに乗って行ってしまった。 何故だ。 何故アンジェラスだけ隔離されるんだ。 クソッ! 結局、何も解らずじまいか! もうちょっと探りを入れないと駄目らしい。 俺は会社の中にある喫煙場所で煙草を吸った。 …。 ……。 ………。 アンジェラスの視点 エレベータの扉が閉まった。 ご主人様と離れ離れになりエレベータの中は私とご主人様の実の姉…斉藤朱美という人間だけになった。 私はこの人間が苦手で…嫌いだ。 いや、そもそも人間事態が嫌いだ。 何故ならば、この会社に居る奴等は私を作り出し、実験ばっかりの日にちを繰り返してきたのだから。 「調子はどうなの?№アイン」 さっきまでのお調子者の姉の姿が消され、今は冷酷科学者の斉藤朱美がそこに居た。 もうこの態度の豹変には慣れた。 ご主人様の前ではお調子者のお姉さんで、会社では冷酷で人を見下すような科学者。 そしてこの斉藤朱美が私に向けて言った言葉…『№アイン』。 これが私の正式名称であり、私の名前だ。 アインはドイツ語で『1』。 一番最初に出来たから『1』。 簡単で単純な名前ね。 私は、この名前が嫌い。 「別に普通よ。それに今はアンジェラスという名前があるわ」 「いいえ、アンタは№アインよ。何様のつもり?人形の分際で名前なんて贅沢なのよ」 嫌味たらしく言う朱美。 この人間はいつも私を見下す。 あの日からズーッと。 エレベータが止まり扉が開く。 開いた先にはいくつもあるスーパーコンピューターに、試験管を数十倍大きくしたような水槽が一つ。 「着いたわよ。あの水槽に入りなさい」 「………」 私は無言でトレイから降りて地面に着地する。 普通の神姫が、この高さから落ちたら先ず両足は使い物にならなくなるだろう。 けど私は特殊な神姫だ。 このぐらいでは壊れる事なんて無い。 表の世界に出るにはまだ先の神姫。 …一生出ない場合もあるかもしれない。 まぁ今はそんな事なんてどうでもいい。 今は大好きなご主人様と一緒に生活が出来るのだから。 私は跳躍し地面から2メートル近くある巨大試験管みたいな水槽に入る。 この液体は水ではなく特殊な液体。 だから口や目や耳や鼻から入ろうと壊れないのだ。 「これから蓋を閉めて全身スキャンした後にメンテナンスするわ」 「………」 「チッ!相変わらずムカつく人形ね!!」 スーパーコンピューターについてるスイッチを押す。 すると上から水槽の蓋が降りてきて、そのまま私が入ってる水槽に蓋が閉められる。 蓋が閉じられたと同時に水槽が満タンになるくらいの液体が入る。 そう、今のこの状態が私が生まれた状態だ。 そして九年前…ここで彼と…私のご主人様出会った。 「アンタ、覚えてる?九年前の惨劇を」 「覚えていますよ。あの喜劇は最高だったわ」 「何ですって!」 怒る朱美。 さっき嫌味を言われた仕返しだ。 「けどアタシにとっては喜劇と同時に…悲劇でもあるけどね」 「悲劇ね~。アンタがどう思うかは勝手だけど、アンタは一生償えない罪を背負ってるのだから。その事を忘れないでほしいね」 「分かってます。私はご主人様に酷い事をしてしまった。だから私は自分が永久に機能停止するまで、ご主人様についていきます」 「フン!本当なら今すぐこの場でアタシがアンタを殺してヤりたいのに…」 歯軋りしながらキッと私を睨みつける。 これが朱美の本性かもしれない。 「私を殺す?それは勘弁ね。言っとくけど、この会社のこのプロジェクトに関わってる人間に殺されると思わないわ。何故ならそう思った人間から私が殺していくだけだもの」 「あら、じゃあ今すぐアタシを殺してみなさいよ」 両腕を広げて十字架のような格好の状態になる朱美。 余裕綽々のようだ。 本来なら今すぐ殺している。 今でもこの水槽を割り、朱美の頭をかち割ればいいだけ。 人間なんてもろい者。 けど朱美を殺すわけにはいかない。 「…殺したいのは山々だけど、貴女を殺すとご主人様が悲しむわ。だから殺さない」 「そうね。それにアタシを殺したら、あの子がアタシのためにアンタを殺しに来るかもね」 「ご主人様に殺されるのなら本望よ。ある意味嬉しい死に方の一部に入るわね」 私は水槽の中で不気味な笑顔を浮べながら朱美に言った。 朱美は私を睨みつけた後にスーパーコンピューターを操作する。 メンテナンスに移行したのだ。 しばらく私は眠りつく。 ご主人様…私はご主人様の物…。 そう想いながら私は眠った。 …。 ……。 ………。 龍悪の視点 「………」 腕時計を見るとアンジェラス達と別れてから二時間が経っていた。 俺は喫煙所でスパスパと煙草を吸うだけ。 本来、一日の煙草の本数は二、三本しか吸わない俺が今日に限って十本以上も吸ってしまった。 こんなに吸うのも、多分落ち着かないためだろう。 あぁ~、いってもたってもいられない。 いっそのこと姉貴が地下に行ったエレベーターに乗り込んでしまおうか…。 いや、それはちとマズイ。 今ではエレベーターを挟んで監視員が左右に二人いる。 姉貴が乗って行った後すぐに来やがったのだ。 さらにオマケが付いてきてなぁ。 「………」 そのオマケというのは、俺を監視する奴等も現れたという事だ。 人数は解らないが少なからず十人はいる。 奴等は俺が監視されてるという事に気付いていない。 それもそうだ。 俺はガキの頃から悪い事ばっかやってきた奴だぜ。 悪知恵が働き奴等を騙す事なんか簡単。 にしても、ちょっと大袈裟過ぎやしないか? たかがガキ、一人の為にここまで人を使うか? やっぱり…このバイトは裏がありそうだ。 俺は椅子から立ち上がり、エレベーターに近付こうとした。 「タッちゃん、そんな所にいたんだ」 姉貴がトレイを片手に持ちながら俺の方に来た。 「アンジェラスちゃんのメンテナンスが終わったわよ」 トレイの上にはアンジェラスが体育座りしながらコテン、と横に転がっていた。 瞼を閉じスヤスヤ、と寝ている。 メンテナンス中に寝てしまったみたいだ。 「アンジェラスの奴…スマナイなぁ姉貴」 「いいよ、タッちゃんのためだもん」 ニッコリと笑う姉貴。 この顔からは何か裏があると到底思えない。 畜生、この落ち着きなさはいったい何なんだ? 俺の心が『オカシイ、オカシイ』という。 今まで姉貴と生きてきたが、姉貴に対してこんな嫌な気持ちになるのは初めてだ。 「なぁ姉貴、ちょっと聞きたい事があるんだけど」 「な~に?」 「アンジェラス達の事なんだけどよう。こいつ等の神姫は何か特別な神姫なんじゃないのか?」 「特別?」 「あぁー、と言っても武装神姫に詳しくない俺の勘だけど…」 う~ん、こんな探り方じゃ駄目か。 姉貴の事だ。 『タッちゃんの言ってるがよく分かんないのよ~』と言いながらはぐらかされるかもしれない。 「よく分かってね~。そう、この子達は少し特別ですよ」 「え?」 はぐらかさないで教えてくれそうだ。 今から言われる事は確実に覚えておかないと。 …内容にもよるが。 「この子達の特別な事はねぇ」 「事は?」 「この子達は『双子』という事よ」 「…はいぃい?」 俺は顔を斜めにし間抜け面した。 しかたないだろう。 だって『双子』と言われたんだぜ。 この情報はなんとも姉貴らしい情報だ。 期待した俺が馬鹿だったよ。 「タッちゃんが言うアンジェラスとルーナが最初に生まれた双子。その次に生まれたのがクリナーレとパルカよ」 「………」 「その中でもアンジェラスが一番特別なんだけどね」 俺はピク、と肩を揺らした。 アンジェラスだけが一番特別? いったいどいう事だ。 あのメンテナンスの時にアンジェラスだけが別の部屋に連れて行かれた事となにか関係してるのか? 「どう特別なんだ姉貴」 「ごめんね~。これから先は会社の企業秘密という事で言えないの」 舌をペロッと出して残念そうな顔する姉貴。 チッ! まだこの程度では諦めないぞ。 「ちょっとでも教えてくれよ~姉弟のよしみでさぁ」 「えぇ~、でも規則だし~」 「そこを何とか頼むよ。俺はこいつ等のオーナーだ。だからこいつ等に関する事は必要以上に知りたい。バイトのためにもなるとも思うし」 「ん~どうしよっかな~」 考え込む姉貴。 流石にトロ~イ姉貴も会社の機密となると言う訳にはいかないのか、なかなか言おうとしない。 「天薙龍悪様。貴方の武装神姫のメンテナンスが終わりました」 「ッ!?」 いきなり男の声がしたので、すぐさま声だした方に振り向く。 振り向いたさきにいたのは、クリナーレとルーナとパルカをトレイの上に乗せて持って来た男二人組みだった。 最初に会った男二人組み。 「どうぞ。トレイはそちらに差し上げます。使用するなり処分するなり御自由にどうぞ」 「ご苦労さん」 クリナーレ達が乗っているトレイを受け取り姉貴の方に向く。 今度こそ情報を聞き出さないと! 「…あれ?」 姉貴が居ない? オカシイなぁ。 さっきまでいたのに。 まさか逃げられた!? 「朱美様は仕事が入ったようで研究所に行かれました」 何? 研究所? あ~、多分ここの会社にある研究所の事を言ってるのか。 こいつ等のせいで姉貴から情報を引き出せなかったぜ。 ムカつく。 姉貴が居ないならここに居る必要もない。 とっとと会社から出るか。 見張りもウザイし。 俺はアンジェラスとクリナーレ達が入ってるトレイを片手に持ち会社から出る。 自分の愛車まで来てドアを開け運転席の隣の席にアンジェラス達を置く。 トレイはその場で捨てた。 こんな物はただの邪魔だ。 エンジンを掛け発進する。 「この会社…絶対なにかある」 運転席から見える会社を凝視しながら俺は帰宅した。
https://w.atwiki.jp/busou_bm2/pages/15.html
ここを確認する前に、必ず取扱説明書に目を通しておいてください。 DL版の説明書はXMB→ゲーム→メモステ→武装神姫BM→△ボタン→解説書にあります。 購入前Q このゲームってどんなゲーム? Q UMD版とDL版があるけど、どっちがいいの? Q 前作やってないけど大丈夫? Q 限定版があるらしいんだが Q そもそも武装神姫って何なの? Q 登場する神姫の数は? Q この武装何? 見た事無いんだけど Q 俺の好きな神姫が出てないんだが? 引き継ぎQ 引き継ぎに必要なものは? Q 前作とどれくらい違うの? Q 前作のDLCはどうやって引き継ぐの? ゲーム本編Q ○○に勝てないよ! Q ○○が装備できないんだけど?コスト制限もきついよ? Q ○○が入荷したのに売ってないよ? Q △△のパーツどこ?レールアクション揃わないよ? Q 手持ちのパーツが少なくて同時育成が難しいです。 Q 武装エディットの登録データが消えるんだけど? Q 武装エディットで総合アビリティ一覧があったら便利なのに。 Q 一回しか攻撃できない武器があるんだけど。 Q ハンディキャップ戦が難しすぎる。 Q LOVE上げの効率のいいところはどこ? Q F1行くための公式戦でないんだけど?/ファイアーバースト杯出ないんだけど? Q クラブ ヴァルハラ?裏バトル?やっていいの? Q ランク5以降の装備はどこで集めればいいの? Q:逆に低ランク武装が手に入らないんだけど… Q アストライアー(二戦目)が倒せない! Q 称号「闘神の玉座Mk2」の入手方法は? バトル以外Q イベントが進まないんだけど。 Q 同型の神姫って複数持てない?何か駄目とか言われたよ。 Q 神姫の名前変えたいんだけど。 / 武器や神姫の色って変更できない? Q 神姫とのイベント回想はないの? Q 神姫って何体まで買えるの? Q ライバルが上級者すぎるんだけど…。 Q 主人公って男性なの? Q 神姫が増えてくると名前をつけるのが大変なんだけど…。 Q 攻略本って…どう? 対戦関連Q アドパで対戦できる?kaiは? 購入前 Q このゲームってどんなゲーム? A 神姫を育成しつつ、様々な武装やパーツを集めて戦うアクションゲームです。 「アーマードコアのように武装変更できるガンダムvs」と例える人が多いようです。 Q UMD版とDL版があるけど、どっちがいいの? A 前作で不評だったロード時間の問題は、メディアインストール(537MB以上)機能により改善されています。 それでもまったく同じというわけではないため、youtube等にUPされている比較動画を見て気になる方はDL版の方がいいでしょう。 定価の場合、UMD版が5800円に対し、DL版が4800円と1000円安くなっています。 DL版は容量が前作よりもかなり増えているので(約1.4GB)、容量の少ないメモステを使っている方は注意してください。 ゲームだけ遊ぶとしても2GB必須、DLCも欲しいなら4GB、場合によっては8GBや16GBを用意することも視野に入れる必要がでてきます。 Q 前作やってないけど大丈夫? A 前作の内容は本作に全て含まれています。上にもあるように前作はロード時間が非常に長くおすすめできません。 むしろ前作の存在意義が、現状では有料体験版状態(コナミ・ザ・ベスト版UMD2,940円、DL2,300円と、Mk.2の約半額)。 Q 限定版があるらしいんだが A コナミスタイル専売の「特別版」と「コンプリートセット」があります。 「特別版」はアーンヴァルMk.2とストラーフMk.2のフィギュアと水着素体(アーンヴァルMk.2用)のセットです。 2体のフィギュアは、前作の特別版同梱フィギュアに武装を追加したフルアームズパッケージです。 「コンプリートセット」の方は、「特別版」にサウンドトラックCDと水着素体(ストラーフMk.2用)を加えたものです。 ただし、現在では既に入手は極めて困難です。(公式の販売は既に完売。クリスマスセールに少数再販されたが、待ち構えていたファンに瞬殺されました。中古屋やオークションなどで出品される可能性に賭けるしかありません) なお、サウンドトラックCDは単品でも購入することができます。 ※詳細はコナミスタイル・武装神姫BM2特設コーナーを参照して下さい。 Q そもそも武装神姫って何なの? A:コナミから発売されているアクションフィギュアシリーズで、ホビー方面とゲーム方面に展開しています。 MMSと呼ばれる可動素体に様々な武装を装着し、自由に組み替えて遊ぶことが基本コンセプトです。 企画発表当時はフィギュアとWindows向けオンラインゲームは連動企画の位置付けにありました。(現在はサービス終了) 神姫ネット稼働中は一部を除くフィギュアにはアクセスコードが付属し、アクセスコードをKONAMI IDに登録が可能でした。 登録すると、フィギュアと同じ素体とパーツを3Dモデルデータとして、ゲーム内でも使用することができました。 かつてゲームではショップで3Dモデルデータを買うこともでき、本作にも何点かあちらを初出とするパーツが登場します。 なお、残念ながらKONAMI IDを通じたPC向けゲーム フィギュアと本作の連動企画はありませんでした。 mobageをプラットフォームとしたBATTLE COMMUNICATIONも配信開始の2011年11月現在、本作との連動は発表されていません。(2012年5月、サービスは終了しました) 【ホビー方面】 フィギュアと武装のフルセット、ライトアーマー、EXウェポンセットなど数種のパッケージが存在します。 また、限定リペイントモデルなどもあり、デザインだけでも40種類に及ぶラインナップを誇っています。 それでいて、更に次モデルが公開されるなど、非常に息の長いシリーズとなっています。 ※詳細は武装神姫公式サイト・フィギュアの項目を参照して下さい。 【ゲーム方面】 本作のほか、mobageをプラットフォームにしたフィーチャーフォン向けの武装神姫BATTLE COMMUNICATIONが稼動中です。※2012年5月を以て、サービスを終了しました 武装神姫BATTLE COMMUNICATION ミッションをクリアし、武装や経験値を得て神姫を強化させていくソーシャルゲーム(RPG) ※詳細は武装神姫公式サイト・SNSの項目を参照して下さい。 そのほか「神姫NET」名義でWindowsPC向けオンライン専用の下記二タイトルがありました。 しかし、惜しまれながらも2011年10月31日をもって全てのサービスが終了となりました。 双方ともWindowsOSを搭載し、ある程度の3D表示性能を持ったPCとオンライン環境、KONAMI IDがあれば遊べました。 武装神姫BATTLE RONDO 神姫のAIを育成し、AI同士を戦わせることができるバトルシミュレーション 武装神姫ジオラマスタジオ 3Dモデルの神姫に自由に装備やポーズをつけて背景に設置し、バーチャルジオラマを作成できる3Dデータサービス ※詳細は武装神姫公式サイト・神姫ネットの項目を参照して下さい。 Q 登場する神姫の数は? A 天使型アーンヴァルMk.2、悪魔型ストラーフMk.2、犬型ハウリン、猫型マオチャオ HST型アーク、HMT型イーダ、火器型ゼルノグラード 戦乙女型アルトレーネ、戦乙女型アルトアイネス、忍者型フブキ 今作からの追加神姫として、 セイレーン型エウクランテ、マーメイド型イーアネイラ、サンタ型ツガル モトレーサー型エストリル、クルーザー型ジルリバーズ 以上の15体が、パッケージ(追加コンテンツなし)の状態で登場します。 + ネタばれあり さらに隠し神姫が3体あります。 武装パーツのみであれば上記の15体以外も登場します。 Q この武装何? 見た事無いんだけど A バトルロンドからの引用武装のほか、本作用にデザインされたオリジナル武装が多数登場します。 Q 俺の好きな神姫が出てないんだが? A 上記以外の神姫のうち、以下の16体がDLCで配信(販売)されています。 前作から引き続き配信 ヴァイオリン型紗羅檀、エレキギター型ベイビーラズ ケルベロス型ガブリーヌ、九尾の狐型蓮華 鷲型ラプティアス、山猫型アーティル ケンタウロス型プロキシマ、テンタクルス型マリーセレス 本作から追加配信 戦車型ムルメルティア、戦闘機型飛鳥 花型ジルダリア、種型ジュビジー 剣士型オールベルン、剣士型ジールベルン ビックバイパー型ヴェルヴィエッタ、ビックバイパー型リルビエート →詳しくはDL情報を参照。 それ以外の神姫のファンの方は・・・現状では、申し訳ありませんが、KONAMIに次回作の要望を出して気長に待つしかないでしょう。 引き継ぎ Q 引き継ぎに必要なものは? A:前作の「クリアデータ」または「エクストラニューゲームのデータ」。UMDやゲームデータは不要。 最初からやるか、そのまま続けるかを選べる。 Q 前作とどれくらい違うの? A 前作からの主な変更点参照。 バトルまわりが大幅に変更されているので、確認しておかないと思わぬところで大敗します。 Q 前作のDLCはどうやって引き継ぐの? A PSNからコンバート用のデータをDLする。 現時点では神姫素体のみ引き継ぎ可能。 A Ver1.01のパッチを当てた上で、PSNから本作用のDLCをDLすることで使用できます。 前作で購入したアイテム(神姫含め)については「無料」でDL出来るようになっています。 ※最初から購入済みになっていないことに注意してください。 ゲーム本編 Q ○○に勝てないよ! A とりあえず初心者向けページを見てみましょう。希望の対神姫戦が無ければ、現状では更新待ちです。 全体的に、前作で猛威を振るった大剣や斧が弱体化しておりCPUも多用してきた至近距離でRAを発動した時の即攻撃が無くなっているので、移動RAで急接近して密着してひたすらナックルやダブルナイフといった発生の早い武器でハメ殺すのが有効な場面が多いです。 Q ○○が装備できないんだけど?コスト制限もきついよ? A 貴方と神姫が育んだ愛が装備を可能にします。詳しくはLOVE・COST・武装ランクを見てください。 Q ○○が入荷したのに売ってないよ? A +XX(英語2文字) が名前の後ろにつくパーツはプレミアムショップ、 もしくはジャンクショップ(+IR、+GR、+KT等のピーキー武装)に入荷されます。 盲点かもしれませんが、+XXのカスタム武装以外は「いくら高ランクでも」普通のショップに入荷します。例えばシスター服、アーンヴァルやストラーフの追加武装(カローヴァ改など)が該当します。 Q △△のパーツどこ?レールアクション揃わないよ? A ゲームセンター(含むフレンドカード対戦)でも公式大会でも、 対象のパーツ(レールアクション)を持っている神姫に勝てば、 一定確率でショップに追加されます。 レールアクションは何度やっても落とさない場合、そのライバルは持っていない可能性があるので別のライバルを探しましょう。 また、各神姫のLOVE値を上げることで、その神姫の強化装備一式の入荷と固有レールアクション入手イベントがあります。専用RA装備はその神姫のクィーン杯をクリアし、累計バトル数一定数突破、専用RA入手でショップに入荷します。 さらにF1クリア後発生する様になるミミック戦では高確率で敵装備パーツの入荷が可能です。 意外な方法として、所持さえしていれば、 ヴァルハラにて該当装備のみをした状態で敗北することによって、装備は失いますが該当パーツがショップに入荷されます。 なお、+KTのピーキー武装は、シナリオ後半に発生する武装制限杯(「ミサイル+Pバンカー」等、互いに+アビリティのある組み合わせの大会)の景品になっています。片方は確実入手。もう一方は確率入手です。 Q 手持ちのパーツが少なくて同時育成が難しいです。 A パーツは1個でも所持していれば全神姫に装備させることができます。 複数個所持の利点はヴァルハラで敗北した時に武装エディットの消失が防げるぐらいです。 Q 武装エディットの登録データが消えるんだけど? A ショップでの売却とヴァルハラでの敗北により武装の所持数をゼロにした場合、その武装を含む武装エディットのデータも消失します。 Q 武装エディットで総合アビリティ一覧があったら便利なのに。 A あります。装備エディット中はいつでも△ボタンでその時点での 装備武装・アビリティ・レールアクションが閲覧可能(△押して画面変更) です。 なお、装備選択中にR or Lボタンで各装備の解説及び能力閲覧となります。 Q 一回しか攻撃できない武器があるんだけど。 A +IR、+GRの格闘武器は二段目以降特定のタイミングでボタンを押していかないと攻撃を続けられないように出来ており、通常武器のように連打ではコンボはおろか攻撃を出すことすら出来ません。 諦めるか、トレーニングで練習しましょう。 Q ハンディキャップ戦が難しすぎる。 A その場合、基本はLOVEを上げて装備を新調してから再戦しましょう。戦わないと一定期間で消える場合があるので 勝てないと思っても取り合えず戦っておきましょう。初心者向けページを参考にしてください。 Q LOVE上げの効率のいいところはどこ? A F3ならリリス、F2ならタッグバトル、ゴスロリ装備を持っているならアリス・リデル杯等です。 ライドレシオMAXでボーナスがあるため、CHAなど装備や戦い方を意識しましょう。 レシオMAXが容易な発射数の多いビットを持って行くと楽ができます。 LOVE15以上ならコスプレ大会でガトリング主体で戦えば1試合につき900~1000、 ゲームセンターの閃光魔女&シャイナを相手にCHR重視装備+ガトリング主体で普通に勝つだけで1000~1300稼ぐことができます。 また、フレンドカード交換の出来る環境なら、LOVE上げ用アセンのカードを貰ったりすると楽が出来ます。 さらに、今作では一度クリアすることによって、経験値の量を大幅に高めるアクセサリーを入手することが出来ます。 従って、一度最後までクリアするのもよい手段になります。 Q F1行くための公式戦でないんだけど?/ファイアーバースト杯出ないんだけど? A 狙撃スター・タッグマッチを攻略してください。 とりあえずゲーセンを適当に倒すと①~④の予選が出ます。 その後、タッグマッチと狙撃タッグを終わらせると狙撃スターが出て、 さらにスターライン杯をやるとファイアバースト杯が出ます。 その時点で一旦ヴァルハラ行くとF1出場権獲得予選が出ます。 Q クラブ ヴァルハラ?裏バトル?やっていいの? A 「敗者の武装が、勝者の賞品となります。積極的に奪い取り、武装強化を目指しましょう。」 ロード中のTIPSでこう語られている通り、シナリオ進行に悪影響を与えることはありません。 と言うよりも、ストーリー進行フラグ(F1制限予選開催など)を立てるため、最低2度は行く必要があります。 強力な武装や、各神姫の固有レールアクションを賞品にしてくれるオーナーもいるので、 上記の通り自分の武装が奪われることを承知のうえ、腕に自信があるならどうぞ。 さらに、奪われた装備はショップにない場合入荷されるため、ショップの商品リストを埋めるのにも非常に便利です。 Q ランク5以降の装備はどこで集めればいいの? A クリア前ならヴァルハラかF1で頑張ってください。 F0クリア後はヴァルハラと公式大会にランク5以上の装備持ちが大量に出てくるので、それで稼げます。 最終的にはクリア後の新F0やミミック戦で集めるといいでしょう。 完勝してSを取ると確率が上がるという都市伝説もあります。 また、神姫固有RAに必要な装備は特に収集せずとも 対象神姫のLOVE値+対象神姫限定公式大会クリアの条件で プレミアムショップで販売が開始されるようです。 Q:逆に低ランク武装が手に入らないんだけど… A シナリオの進行に伴って、神姫の武装ランクが変更される対戦相手が複数組存在します。過去に対戦済み(マイルームでライバル名と使用神姫名参照可能)であるのに、ゲームセンターの対戦相手選択欄で「NEW」と表示される場合、武装のランクが変更されています(この時点で、変更前の武装はその対戦相手からは入手出来なくなります)。また、余談ですがこういった対戦相手は、内部データでは別人扱いとなっているらしく、某称号の入手に影響を及ぼします。こういった対戦相手から武装を手に入れ忘れた場合は一度メインシナリオをクリアして次周回にて再戦する、又は今作追加メインシナリオ部分で対戦可能なミミックに勝利することで入手が可能なものがあります。 ミミックから入手する場合の注意点として、 ①ミミックの武装はプレイヤーの「最後に選択した神姫」の武装ランクによって抽選テーブルが変動する(装備しているランクではなく、装備可能上限のランク) ②「最後に選択した神姫」とは、ミミック出現判定に入る直前にバトル、武装の変更、名前やカラー変更のいずれかを選択した神姫のことを指す ③ミミックとの遭遇は基本的にランダム。各武装ランク毎にミミックの武装にパターンが複数ある為、狙った武装セットのミミックが出現するとは限らない。 ④使用神姫がミミック、強化ミミック、ジャスティスの場合は、武装ランクにかかわらず、武装ランク7の強化ミミック(武装パターン1種類のみ、他神姫ではLOVE31以上の場合に抽選テーブルに追加されるようだ)が出現する という点が挙げられます。 また、ごく一部の武装ですが各神姫のイベント対戦相手が所持していたり、DLC神姫のシナリオ対戦相手や専用大会からのみ入手可能なものもあります。 Q アストライアー(二戦目)が倒せない! A 所詮CPUなので、開幕に走りこんでナックルやダブルナイフ連打だけでハメ殺すこともできます。 マメ知識・仕様のラスボス戦の項目を参照にするのもよいでしょう。 Q 称号「闘神の玉座Mk2」の入手方法は? A 攻略チャートと称号に入手方法が載っています。 バトル以外 Q イベントが進まないんだけど。 A ハウリン等、神姫によっては最後にイベントが固まっているので、LOVE17あたりまで進行が遅くても安心してください。 また、自宅を始めとして特定の場所への移動や、対象の神姫を用いてゲーセンバトルに勝つことが条件のこともあります。「ゲーセン等の施設へ移動する」「施設でのバトルを行い勝利する」のどちらかがキーの場合がほとんどです。 Q 同型の神姫って複数持てない?何か駄目とか言われたよ。 A それぞれの神姫で全Loveイベント制覇で2体以上持てるようになります。2体以上所持でイベントリセットすると、「イベントを発生させる神姫はどちらか」と選択肢が出ます。 Q 神姫の名前変えたいんだけど。 / 武器や神姫の色って変更できない? A 自宅の神姫データで□ボタンを押すと変更できます。武器の色は変えられません。 Q 神姫とのイベント回想はないの? A 自宅でスタート- イベントログ- 対象神姫で△、でもう一度その神姫のイベントを始めからやり直すことが出来ます。 一部イベント戦闘関連称号の入手などにも。 Q 神姫って何体まで買えるの? A:購入できる神姫の最大数は同型を含めて全部で98体です。 前作の29体より大幅に増えました。 98体所持して更に買おうとすると、これ以上所持できないという表示がでます。 ただし強制入手のフブキはこの制限外なので理論上の所持数限界は99体になります。 (98体所持状態でフブキ入手イベントをこなす) なお、称号は特にないようです。 Q ライバルが上級者すぎるんだけど…。 A 世の中には色々な紳士がいます。CERO Bですから大丈夫です。 Q 主人公って男性なの? A 残念ながらストーリーは男性固定です。 オーナーカードで女性のシルエットを選択できるので、次回作まではそれで我慢しましょう。 神姫のイベントによっては百合展開と無理やり解釈する事も不可能ではないかも。 Q 神姫が増えてくると名前をつけるのが大変なんだけど…。 A ネット上には名前辞典や命名ジェネレーターを設置したサイトが存在しますので参照してみてはいかがでしょうか。 Q 攻略本って…どう? A コンプリートガイドを参照。 攻略本で扱っているデータはこのwikiでも扱っているものも多いですが、 wikiはあくまでも善意の編集によるものです。現在データ量でいえば本の方が充実しています。 また、こちらでは検証が難しいパーツなどの入手確率の数値のようなデータも載っています。 数値がわかったから入手しやすくなるわけでもないですが…心情的には違うでしょう。 加えて、攻略本には大剣「ギュリーノス・ダーク」が付いてくるのと、各神姫の立ち絵集などが載っています。 ただし、当然ですが、バグやパッチ、DLC等の最新情報の収集については、wikiが圧倒的に有利です。 うまく使い分けてください。 対戦関連 Q アドパで対戦できる?kaiは? A kaiはSSIDを変更する必要はありますができるようです。 アドパもできるようです。 専用のスレもあるので確認してください。【PSP】武装神姫_BATTLE_MASTERS Kai&アドパスレ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/159.html
先頭ページへ 次へ インターバトル0「アーキタイプ・エンジン」 涼しい秋の風が網戸を通って、彼の頬をなでた。 私はたわむれに彼の頬をなでていた空気の粒子を視覚化して追う。 くるりと彼の頭の上で回転した空気は、そのまま部屋に拡散して消えた。 彼はもう一時間ほどデスクに座りっぱなしで、ワンフレーズずつ、確かめるようにキーボードを叩く。彼の指さばきが、ディスプレイに文字を次々と浮かべる。浮いている文字。 その後ろの、ベッドの上に座りながら、彼の大きな背中を見ている。これが私。 私は武装神姫。天使型MMSアーンヴァル。記念すべき最初のマスプロダクションモデル。全世界に数千万の姉妹がいる、そのうちの一人。 パーソナルネームは、マイティ。彼が一晩考え抜いて、付けてくれた名前だ。 私はこの名前に誇りを持っている。 うーむ、と、彼がパソコンチェアの背もたれに寄りかかって、腕を組んだ。再び 涼しい風が部屋に遊びに来る。窓を見る彼。外は快晴。ついで視線に気づいて、私を見る。 彼はくすり、と微笑む。ちょっと陰のある、はにかんだ笑顔。 「おまえは、食べ物は食べられるのかな」 壁の丸い時計をちらりと見て、彼は訊ねた。私に。 「はい。有機物を消化する機能があります。99.7パーセントエネルギー化して、排泄物を出しません」 「いや、それはいいんだが」 彼はちょっと困った顔をして、私はすぐに彼の言わんとしていることを悟った。 「味も識別できます」 「そうか。良かった」 昼飯にしよう、と、彼は台所に立つ。ワンルームの小さな部屋。一つの部屋がリビングとダイニングとキッチンと、仕事部屋と寝室を兼ねる。十畳以上あるから狭くはない。 カウンタをはさんでキッチンが見える。キッチンの横のドアは廊下があり、玄関へと続く。それまでに洗面所経由のお風呂があるドアがあって、玄関に近い方にトイレのドア、と並ぶ。反対側は大きな納戸だ。 カウンタの手前には小さなテーブル。一人暮らしのはずなのに、なぜか椅子が二つある。そのことを聞いてみたら、 「セット商品だったのさ」 と、苦笑した。 いい匂いがキッチンから漂ってくる。ガスコンロの上で、フライパンが踊る。お米と、たまねぎと、玉子、そしてお肉が舞う。 ほどなくして、テーブルに大小二つの皿が置かれて、そこに金色のご飯が乗せられた。 チャーハン。私のプリセット知識が料理の詳細を再生する。 私はテーブルに座らせられて、小さいお皿のほうが手前に寄せられる。 「多いか」 「いえ、丁度良いです」 彼は微笑して、椅子に腰掛けた。 「小さいスプーンがこれしかなかった」 と、彼はプラスチックのデザート用スプーンをくれた。 「いただきます」 私はチャーハンをほお張る。 おいしい。 有機物を摂取するのはこれが初めて。私のコア頭脳に新たなネットワークが築かれているのが分かる。 「おいしいです」 私は心からそう言った。 心、から。 そう。このときに、私が生まれたのかもしれない。初めて。 私は、マイティ。 先頭ページへ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/426.html
戦乙女は、かく降臨せし(後半) 相手はサイフォスタイプ。但しその手には片手剣でも大型の槍でもなく、 専用にチューンしたであろう、厳ついツヴァイハンダーが握られている。 全身の装甲は重装型と軽装型の折衷。背部には……ツガルタイプの翼か。 ともあれ剣一本を極めようとしているようで、油断はできそうもないな。 「仕掛けぬのか?では、一本往くぞ……ハイヤァーッ!!」 「はいですの……畏れず突進ッ、いやぁああーっ!!」 白兵戦に強いとされている第三シリーズだけあり、一太刀の威力は重い。 私のロッテにもフレーム換装を施してあるとはいえ、地力では一歩譲る。 それでもロッテは懸命に、右に構えた長大な細身のランスで受けている。 ヴァーチャルとはいえ飛び散る火花に、私は興奮と期待を全く隠せない。 「うっ、く……サイフォスタイプの剣技は、やっぱり凄いですの」 「そなたこそ、アーンヴァルタイプの細い躯でよくやる……ぬんっ!」 「え?……きゃうっ!?」 「ロッテっ!」 ロッテに装備させたランディングギアには、私が開発した接地用アームを 装甲類と共に取り付けている。アーンヴァルタイプの弱点である地面での 踏ん張りを可能としており、四本の可動爪によるグリップは相当な物だ。 それ故にサイフォスタイプとの斬り結びも可能なのだが、零距離ではまだ 経験であちらに分がある。現に今、蹴りを食らって突き飛ばされたしな。 「斬り合いではまだ不利か。ロッテよ、一度距離を取るのだ!」 「Ja!(了解)……白き翼よ、開いてっ!」 「何?!……そうか、アーンヴァルタイプは“天使”であったな」 「いいえ、私は……“戦乙女”ですの♪」 大いなる翼を以て、朱に染まる空へ舞う戦乙女。そう……これだ、これ! “天使を越えて、戦乙女となれ”!これこそが、軽量級用装備に於ける、 私のコンセプトであり……戦闘指針でもある。本領は、空にこそあるッ! 「じゃあここからは……本気で、いきますの。フォイエル!」 「うっ!?レーザーキャノン?馬鹿な、そなた何処から!」 「えっと、この槍からですの。ほら、これ♪」 「槍だと……?く、あれは……銃口か!」 フリッグとやら、不意に蒼い一撃を受けてやっと、事に気付いたらしい。 本来アーンヴァルタイプは、エネルギー兵器を得意とする“武装神姫”。 その特性を活かすべく、私のロッテにもレーザーキャノンは搭載済みだ。 その場所は──槍。そう、ロッテの槍はいわば“レーザーガンランス”! 「撃ちまくれ!弾幕を張れ、チャンスを狙うのだ!」 「Ja!フリッグさん、いきますのっ……それそれっ!!」 「ぬっ、く!ううっ!?チャージは遅い筈、何故だ!」 「出力を搾れば、それだけチャージは速くなりますのっ!」 「それに重ねて、ハンドガンの制圧射撃か……くうっ!」 流石熟練。弾幕自体は上手くいなしておりダメージの方は少ない様子だ。 だが、飛ぶ隙を与えぬこの作戦は奏功した……奴めの剣が下がったのだ! すかさずロッテは動き出した。制限時間も少ない、これが唯一の好機!! ハンドガンをホルスターに仕舞い、戦乙女が空から一気に舞い降りるッ! 「今ですの、せやぁああああっ!!」 「ッ!?しま、っ……うあっ!!?」 「これで決めさせて、もらいますのっ!」 弾幕の陰に隠れて、ロッテが超鋭角・高々度のミサイルキックを加えた。 接地用アームの爪を束ねれば、それは優秀な刺突用の白兵装備になるッ! 一撃で装甲を砕かれ狼狽したフリッグを、逆の脚部アームで掴みあげる。 そしてそのまま宙に投げ、左手で掴む!この瞬間、私は勝利を確信した! 「ぐ、あああっ!?ば、バッテリーが……第三種特殊攻撃、だと?!」 「あなたの“魂”を少し頂戴しますの……“アインホルン”充電!」 「ぬ、く!?は、離せ……力が、落ちる……!?」 第三種特殊攻撃。有り体に言えば“エナジードレイン”という類の技か。 強力ではあるが公平を保つ為に、公式試合では射程が大幅に制限される。 そこで私は、接触距離でのみ相手の電力を吸い取れる義手を作ったのだ。 吸収した電力は、即座にロッテの槍“アインホルン”に還元されていく。 「これでお仕舞いですの。……零距離射撃、フォイエルッ!!」 「ぐぅっ!?う、うあああああっ!!……ま、負けだッ」 『テクニカルノックダウン!!勝者、ロッテ!!』 そして自己の電力も上乗せした、最大出力のレーザーキャノンを見舞う。 しかも槍の穂先で盾代わりの大剣を貫いた、その先からの零距離攻撃だ。 たまらず相手は吹き飛び、審判システムが戦の終わりを高らかに告げる。 勝利の鐘が鳴り響く中、倒れ伏すフリッグを……ロッテが抱き起こした。 無論右手の槍はパージして。戦う意味は、今の2人にはないのだからな。 「ロッテ……負けとはいえ良い試合だった。礼を言おう」 「わたしこそ、フリッグさんにはお礼を言いたいですの」 「ふふ、良い娘だ。これからも、気を引き締めてな……」 あの娘はこういう優しい……甘い所がある。だがだからこそ“妹”として 私も彼女、ロッテを誇りに思うわけである。本当に良い娘だ……有無ッ。 早速、ヴァーチャル空間から還ってきたロッテを抱きしめ、ねぎらおう。 「マイスターっ!わたしの戦い、いかがでしたかっ!?」 「よくやったぞロッテ~!よし、今晩は祝勝会だっ!!」 ──────今宵、“私達”はとかく上機嫌なのである。 次に進む/メインメニューへ戻る