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白上フブキ(駆逐) 青(アズールレーン) コスト 0 VP 1 常時 この船員を支払って青か赤を買うなら、それをデッキの一番下に移して良い Illust えどあら 名前 コメント
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神姫 セリフ集 セットアップ コピー用 神姫ステータステンプレ 第1弾 天使型アーンヴァル 悪魔型ストラーフ 天使型アーンヴァルB 悪魔型ストラーフW 第2弾 犬型ハウリン 猫型マオチャオ 兎型ヴァッフェバニー 犬型ハウリン リペイント(wp) 猫型マオチャオ リペイント(wp) 第3弾 騎士型サイフォス 侍型紅緒 サンタ型ツガル 騎士型サイフォスB 侍型紅緒B 第4弾 花型ジルダリア 種型ジュビジー 砲台型フォートブラッグ 花型ジルダリアB 種型ジュビジーB 砲台型フォートブラッグ冬季迷彩仕様 第5弾 セイレーン型エウクランテ マーメイド型イーアネイラ イルカ型ヴァッフェドルフィン セイレーン型エウクランテB マーメイド型イーアネイラB 第6弾 寅型ティグリース 丑型ウィトゥルース 建機型グラップラップ 第7弾 HST型アーク HMT型イーダ 蝶型シュメッターリング HST型アークst HMT型イーダst 第8弾 戦車型ムルメルティア 戦闘機型飛鳥 火器型ゼルノグラード 戦車型ムルメルティア砂漠戦仕様 戦闘機型飛鳥夜戦仕様 火器型ゼルノグラード冬季迷彩仕様 第9弾 カブト型ランサメント クワガタ型エスパディア 第10弾 サソリ型グラフィオス コウモリ型ウェスペリオー 第11弾 戦乙女型アルトレーネ 戦乙女型アルトアイネス 第12弾 エレキギター型ベイビーラズ ヴァイオリン型紗羅檀 第13弾 ヘルハウンド型ガブリーヌ 九尾の狐型蓮華 ライトアーマー第1弾 天使コマンド型ウェルクストラ 悪魔夢魔型ヴァローナ 天使コマンド型ウェルクストラB 悪魔夢魔型ヴァローナW ライトアーマー第2弾 ナース型ブライトフェザー シスター型ハーモニーグレイス ライトアーマー第3弾 フェレット型パーティオ リス型ポモック ライトアーマー第3弾proto フェレット型パーティオproto リス型ポモックproto ライトアーマー第4弾 箸型こひる スプーン型メリエンダ Mk.2 天使型アーンヴァルMk.2 悪魔型ストラーフMk.2 忍者型 忍者型フブキ 忍者型ミズキ 以下未実装(フィギュア添付アクセスコードなし) 第11弾リペイント 戦乙女型アルトレーネ・ヴィオラ 戦乙女型アルトアイネス・ローザ 第14弾 鷲型ラプティアス 山猫型アーティル 第15弾 ケンタウロス型プロキシマ テンタクルス型マリーセレス 第16弾 剣士型オールベルン 剣士型ジールベルン 第16弾リペイント 剣士型オールベルン・ガーネット 剣士型ジールベルン・サファイア Mk.2リペイント 天使型アーンヴァルMk.2テンペスタ 悪魔型ストラーフMk.2ラヴィーナ
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回の00「不変ではいられない僕ら」 2037年9月。高校二年の夏休みを満喫しきった藤原雪那(ふじわら・せつな)は、その長い休暇のほとんどを自分の武装神姫、マオチャオのティキと共に過ごした。 例えば初めて大きな大会に参加してみたり、ティキをつれた家族旅行に出かけたりなど。 当然、今までに知り合った仲間たちとの交流も大切にし、何かのたびに待ち合わせては地元の神姫センターなどに通ったりもしていた。何も変化が無かった、というわけではないが。 特別な何かがあった訳ではないが、それでも昨年までとは違う夏休みを終え、それでも厳しい残暑に打ちのめされながらも、一年前では予想もしていなかった新たな習慣が繰り返されている。 先週も一人で都内にまで足を伸ばし、ホビーショップ・エルゴでバトルをしたばかりだった。エルゴでの、初めてのシルヴェストルのお披露目をかねたそのバトルは――なんと言うか、散々な目に遭わされたのだが。 そして3連休の真ん中日曜日、シルヴェストルの改良もあったので雪那もティキも空調の利いた自室にこもっていた。 「そう言えば……」 細かいパーツに苦戦しながら、雪那は口を開く。雪那の手伝いをしているティキは、自分のオーナーの言葉に視線を向けて反応した。 「……そろそろこの家に来て一年がたつんじゃないの?」 「えーっと、うーん?」 なにやら考え込み始めるティキ。 神姫のこういった見せ掛けの記憶の揺らぎは、人とのコミュニケートを潤滑にするための、いわば機能の一つだ。 記録を参照するだけなのだから、わざわざ考え込むような、思い出すかのような時間は必要ない。しかし、そうある方が人間はその“個体”と“対話”した気分になるものだ。 「そうですよぉ! 今日でちょうど一年になるのでっすよぉ♪」 思い出し、そしてティキは飛び跳ねて喜ぶ。 「そっかー。じゃあ、今日がティキの誕生日だなあ」 作業を中断し、大きく伸びをしながらティキに微笑む。 「なんかお祝いでもしなきゃね」 「お祝いですかぁ!」 目をきらきらと輝かせるティキ。それに、どうしようかねー、といいながら雪那が頭を傾げていると、呼び鈴の機械音が響く。 この時間雪那の母、藤原舞華(ふじわら・まいか)は自宅に接している店舗の方に居る。その事を知っている人ならば、たとえ郵便公社の配達員でさえ店舗に行くはずなのだが、なぜか自宅の呼び鈴が鳴った。 「僕に、かな?」 ティキに向けてそう言うと、雪那は玄関に向かう。 しかし程なくして自室に帰ってきた雪那は、怪訝な顔で大きな段ボールの箱を抱えていた。 「? 何なのですかぁ?」 なんとも形容しがたい表情の雪那に、ティキが質問する。 「……それが、なんて言うか」 歯切れが悪い。 「?」 「ティキ宛の、宅配物なんだ。……しかも親父から」 ほぼ時を同じくして、ここは結城邸。 「で、あの男の子とはどうなったの?」 その顔には隠そうともしない好奇心でいっぱいになっている。 その朔良=イゴール(さくら・――)に、少し寂しげな顔を見せて結城セツナは答える。 「多分、フラれちゃった。かなあ……」 「多分? かなあ、って?」 「はっきり言われたわけじゃ、ないから」 セツナはそう言うと、自分のカップのふちを指でなでながら話し始めた。 さらに同時刻。 式部敦詞(しきぶ・あつし)は自分の部屋で昨日の事を思い出し、また怒りを顕わにしていた。 「ったく、あのトウヘンボク! あんなんだったらまだ朴念仁の方がましだ!!」 自身の神姫、きらりとTVゲームをしながら昨日から何度目かにもなる言葉を繰り返す。 「そんな事言っても、仕方が無いでしょう? マスターだって雪那さんの言い分、納得してたじゃない」 人が使うものとは大きさも機能もまるで違うコントローラを駆使しながら、きらりは言った。 「そうだけどよー」 「大体マスターは司馬さんを応援してたんじゃない。だったら雪那さんの考えも、歓迎こそすれ責めるのはどうかと思うわ」 ここで言う司馬とは神姫を通して知り合った友人、司馬仙太郎(しば・せんたろう)の事である。 「いや、別にオレは司馬のダンナを応援してるわけじゃネーよ?」 「アレ? 違うの?」 「オレは周りがハッピーになれば良いと思ってるだけだ。だから、誰かを好きな奴がいて、そいつと付き合えるようになるならそれが良い、てだけ。司馬のダンナが結城を好きなら応援するし、だけど結城が雪那を好きなら雪那をたきつけるさ」 それって立派な三角関係の出来上がりだよ? 己のマスターのその言い分を聞き、どこら辺がハッピーなのかきらりにはチョット理解出来なかった。それでもあえて口にはしなかったが。 「つまりさ、雪那が結城の事が好きになるなら、それでそこの二人はハッピーだろ? ま、司馬のダンナは泣く事になるけど。でも万が一、結城が司馬のダンナの事好きになるなら、それでもハッピーじゃん。でさ、結城が司馬のダンナを好きになるよりも、雪那が結城の気持ちに応える方が、確立としては高いと思ったわけ。なのにさ、結城の気持ちに気付いてないならまだしも、只はぐらかしていたって言うアイツは、ヤッパリどうかって思うわけよ」 器用に自分の自機を操作しながら、敦詞は思う所を吐き出す。 敦詞の意見が正しいのかどうかはさておき、それでも敦詞の思いをきらりは理解した。 しかし昨日、雪那の言い分も聞いてしまったわけだから、雪那も考えも一応理解しているわけで。 きらりは途方にくれる。 その途端、きらりが操作していた機体が、敵機に撃ち落されてしまった。 「でもそれって、全部憶測なんでしょ?」 そう言って、朔良はわずかに残ったカップのお茶を飲み干す。 「まあ、ね。あくまでそういう風に感じた、ってだけ。それ以上は別に避けられているわけでもないし」 その会話をそばで聞いていたセツナの神姫、海神ⅡY.E.N.N(わだつみ・せかんど・わい・いー・えぬ・えぬ)こと焔(えん)は、実は気が気じゃなかった。 焔は昨日、雪那と敦詞の会話を偶然にも聞いてしまっていた。しかもその後に敦詞に見つかってしまい、セツナには秘密だと一方的に約束されてしまった。 実際問題、セツナと敦詞では、セツナの方が焔の中では上位に存在している。オーナーの友人でしかない敦詞より、オーナーであるセツナの方が優先されるのは当たり前だ。 しかし、だからと言って、その会話のありのままをセツナに話してしまうのは、あまりにも憚れた。 決して大げさな話ではない。大それた決意でもない。でもだからこそいえない事もある。 「ま、あんまり考えていても、なんともならないわね。この話はこれでおしまい」 セツナのその一言に、焔は安堵の息を吐く。その話題が長引けば、ぼろを出す危険が増すだけだ。 「で、今日は本当は何の用なの?」 まさかその話題だけで家まで訪ねて来たわけじゃないのでしょう? と、セツナは空になったカップにお茶を注ぎながら朔良に促す。 朔良は、ヤッパリ判ってた? と、茶化したように言うと、言葉を続けた。 「実はね、セツナに引き取ってもらいたいものが有ってサ」 そう言うと朔良はかばんの中から小さな箱を取り出す。 「実は、私も武装神姫やってみたいと思ってさ、ちょうど良いからってこれを注文したんだ。……だけど、これが届いた頃には、興味が無くなっちゃったんだよネ。まぁ、色々理由はあるんだけど、それは追求しない方向で。で、何もしないで寝かしちゃうのもこの娘に悪いから、有効に活用できそうな人に、って思って」 「って、それってリペイント版の!」 朔良が取り出したその箱には、MMS TYPE DEVILと印刷されていた。 話は雪那とティキに戻る。 今は亡き父の名で送られてきたその箱を前に、雪那とティキは何も出来ずにいた。 冷静に考えれば父、修芳が生前に日時指定して送った物だろう。だが、判ってはいても一寸した不気味さを醸していた。 ……少々時期がずれたとはいえ、夏場という季節のせいもあるかもしれない。怪談の旬はやはり夏場であろう。 なにより、昨晩見た心霊番組がいけない。その内容をついつい思い出してしまう。 「……よし」 意を決して雪那はその段ボール箱に手をかけ、箱を封じているガムテープをはがし始める。 はたしてその中には、更なる段ボール製の箱が収められてあった。 しかし不気味さはさらに増す。 何が不気味と言えば、その段ボール製の箱は、その見える全てを完膚無く、一部の隙も無く、真っ黒に塗りつぶされているのだ。 ティキは恐怖に震えながら、ぎゅっ、と雪那の腕にしがみつく。 「は……ははは。一体、これは何なんだろうね」 引きつった笑いを浮かべながら、雪那は恐る恐るその箱を取り出す。 案外、軽い。 箱の大きさの割には重くは無い。 持ち上げて裏も見てみるが、案の定裏面も一切の余白も無く真っ黒に塗りつぶされてあった。 雪那はそっ、とその箱を部屋の真ん中に置く。 「……どうしようか?」 ティキに聞いても返事は無いだろうと予測してはいたが、それでも思わず聞いてしまう。そして予測をまったく違えることなく、ティキはただ雪那につかまって震えているだけだった。 埒が明かない。そう思った雪那は、頭を振ると勢いに任せてその箱を開封する。 恐る恐る覗き込む雪那の目に、どこかで見たようなブリスターパックが入る。 「???」 いぶかしみながらパックを引っ張り出す。 雪那によって姿を現したそれをティキは覗き見る。そしてそれを確認した途端―― 「みぎゃぁぁぁぁぁああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 すさまじい悲鳴を上げて、部屋の隅に逃げ出した。 雪那とティキが目にしたそれは 一週間前エルゴに行った際、ティキをデータ上とはいえ破壊ギリギリまで追い込んだ、ネメシスという名の神姫と同型同色の 黒い、アーンヴァル。 トップ / 次回
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ここはゲーム内であったイベントの一覧です。終わってしまって詳細が分からないものもあるかもしれません。 11/9 仲間組手ボーナスキャンペーン 11/9(水)~11/22(火) 仲間同士で組手をすると貰えるガチャPtにボーナスを追加。仲間の数が多いほど 貰えるボーナスがアップ。 10/31 モバ友招待キャンペーン第1弾 10/31(月)~12/1(木) 武装神姫 BATLLE COMMUNICATIONにモバ友を招待してゲームをプレイしてもらうと、限定 神姫(アーンヴァルMk2、ストラーフMk2)、限定武装(アーンヴァルMk2、ストラーフMk2)をプレゼント。 10/31 スタートダッシュキャンペーン 10/31(月)~11/21(月) ・キャンペーンその1.スタンプラリー キャンペーン期間中にログインすると1日1回スタンプカードにスタンプが1コ押されます。 押されるたびに武装やバトルチケットなどをプレゼント。スタンプを10コ集めると限定神姫「ミズキ」が フルコンプ。 ・キャンペーンその2.課題クリア ゲーム開始から10日間、毎日課題が出されるので、それをクリアして、翌日ログインすると ガチャPtをプレゼント。
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「よろしくお願いします!」 「……よろしく」 フィールドに降り立ったミスズ。バイザーで口元しかわからないが、挨拶を返しくれるスポーツ精神はあるようで、相変わらずの大剣を構えて仁王立ちのイスカ。 ミスズの方は、ヘッドパーツ、胸部アーマーやら脚部にも装甲が付けられていて、背中にはさっき見たのとは違い、ロケットが付いてない機翼。 そして手に持つは両刃の光剣ダブルライトセイバー。なんか、いつも見てるミスズと比べて、ものすごく格好いいな。 ダブルライトセイバーを構えて地を蹴り、イスカに向かうミスズ。 そして、真正面から両者切り結ぶ。 今のところ、イスカはあの大剣しか使ってはいない。ミスズは他にも武装を使うのだろう。でも、火器類はさっきみたいに、あの大剣で防がれるかもしれない。しかも、移動は最小限、武道のような足運び、そして大剣を片手だけで扱い、ミスズのダブルライトセイバーを捌いている。 ダブルライトセイバーを棍のように扱い、中国のアクション映画さながら流れるような攻撃を加えていく。だが、イスカは幅広な大剣を使いそれすらもことごとく往なしていく。 「たぁっ!」 ミスズの気合いの一声。 大剣の間合いから一歩踏み込む。懐に入り込み大剣の刃に触れる寸前まで、身体を押し出し、付けているバイザーごと頭部を刺し貫こうとする。 だが、それも身体を軸足でない方を後ろに滑らし、半身になり大剣で反らすイスカ。 「甘いっ!」 「!?」 反らされた瞬間、ミスズはそのまま受けた反動を利用して、グルンと身体全体を独楽のようにして捻ねった。光学の剣特有の動作音を強く発しながら、エネルギーの刃がイスカに迫る。 ……どうだ!? 「――当てられると思ったんですけどね」 瞬時に間合いから離れたイスカを見て、ミスズが驚いている。 そこには、バイザーが付いてない姿のイスカがいた。空いていた方の手にナイフを持ち、逆手に握っている。 二人がいる奥の方、バイザーはずいぶんと遠くに飛ばされているみたいだ。 とっさの判断でナイフを持ってきて頭部を紙一重でガードはしたが、バイザーに当たりあられもない方向に飛んで行ったということかな。 隠れていた目元、イスカの瞳は真っ赤になっていて、深紅の大剣と相まって、血の色に思えてしまった。……本物の悪魔みたいな、こんな悪魔型もいるのか。周りの悪魔型はもう少し可愛らしいのが多いのに。 「……少しはできる」 顔が若干嬉しそうに見えた。ミスズの事を好敵手と認めたらしい。 そして手に持っていたナイフを腰に仕舞い、大剣を両手で持ち始めるイスカ。ここからは本腰を入れてやるということみたいだ。 「相手も本気みたいだ。あれは二度は通じないだろうからな。とりあえずけん制!」 ミスズの手からは、シンプルなハンドガンが転送されてきて、空中を飛んでつかず離れずの位置でイスカに向け撃ち込む。 「……無駄だ」 しかし、どんな場所からでも、あの大剣で防がれる。 前後左右器用に大剣を使い、死角がないように、鉄壁の防御となっている。よほどの高火力の武装でないとあれを崩すのは難しそうだ。 「……来ないならこっちから行くよ」 大剣を持ったまま移動することが出来るのかと思ったけど、軽々と使っているのだから、移動も支障ないのか。 大剣を後ろに倒し、ミスズに向けて駆けていく。 ミスズの真下の近くまできて、そのまま足を曲げ地面から一気に跳躍。背中に付いたブースターみたいのを補助に使い弾丸のように跳んだ。 「……それ!」 「くぅっ!」 ミスズはあまりの跳躍の速さに回避行動が間に合わず大剣の弾丸が激突する。 持っていたハンドガンは弾き飛ばされ、持ち手と腕を使いダブルライトセイバーで盾にしたが、ミスズ自身も吹き飛ばされる。 イスカは大剣を握り直し、膝を曲げて地面に降り立つ。空中を飛ばれてても、まったく不利にもなってない。素人の僕から見てもすごく強いな。 ミスズは空中のまま木の葉のように翻し態勢を立て直す。 「このままだとやられる。ミスズ、昨日考えたのやるぞ!」 「わかりました!」 来る前に言ってたのかな? 淳平の大きな声に負けない程の声量で答えるミスズ。 光刃を消した柄をを腰のスカートに仕舞い、両手から転送されてきたのは、今度は武骨なサブマシンガンの銃二丁で、強く握りその場からもっと高く飛び上がる。 「よし、弾丸包囲だ。いけ!」 「了解。はぁぁー!」 あれが新戦法とやらなのか、サブマシンガンをイスカに向け乱発しながら、周りを縦横無尽に飛び回っている。 バババっと断続に銃声を轟かせ、空中を駆ける天使。 なるほど。 大剣では一方向しか展開できないとみて、四方八方から銃撃を加える作戦か。淳平のくせによく考えるな。これならもうちょっと学校の勉強とかにも向けて欲しいのだけど。 荒野のステージには、もうもうと土煙が立ち始め、空中を飛んでいるミスズは見えるが、イスカのいる辺りの確認がまったくできない。 サブマシンガンを撃ち切り、両者がいた付近から、できるだけ離れた位置に降り立つミスズ。全力疾走後みたいに、銃を持った両腕をダラリと下げ肩で息している。 「……はぁ……はぁ……どうでしょうか?」 「わからん」 土煙が上がり続けていて、何も反応がない。静寂が場を包む。あんなに撃ち続けていて銃声があったのに、急に静かになるとなにか不安が残る。 煙が少しずつ減ると、周りが確認できてきて……―― 「――カハァッ!」「ミスズ!!」 ミスズは目を見開き顔を苦悶にし、同時に淳平は声を上げた。 煙の風向きが丸まり、目を離した筈はないのに、突然姿を現し疾駆してきた赤目の悪魔。その手に持つのは大剣ではなく、腕部に取り付けた杭打ち機『パイルバンカー』 それをミスズの胸部、正確には鳩尾に重く突き上げていた。ボディーブローのごとく剛腕で打ち、アーマーがあるとはいえ、杭のある腕で殴られたミスズは口から空気しか出せない。 「……楽しかったよ。じゃあね」 瞬間、火花が飛び散り金属製の杭を射出。 貫かれたミスズはなす術もなく、その場の空間から掻き消えていった。 ―――― 「やっぱり、勝てなかったか」「いやでも、初めて大剣以外に使ったのを見たぜ」「ああ、バイザー取っ払った姿も初めてだし」「かなり、善戦した方だよな」「いやー、あんなアホそうな学生がねえ」 観戦していた周りのギャラリーはもう試合はないとみて、感想を口々に出しながら、バラけて行った。 画面を見ていた僕はすぐさま淳平の傍に駆け寄る。 「すいません、マスター。負けてしまいました」 「いいって、いいって。気にすんな……おう! 螢斗」 僕に気が付き、今までミスズをなぐさめていた手を止めて振ってきた。 「はぁ……なんで、勝負しかけたの?」 「だってさ、あんな試合見てたら、挑戦してみたくなるじゃん。やっぱ、まじかで見るとすっげー強いな」 「……。ミスズは、平気? なんともない?」 「はい。大丈夫ですよ。ご心配おかけしました」 「あれ~、お~い」 アホな淳平を放っておいて、僕はミスズが心配になり声をかける。やっぱり電脳空間といえどあんな杭が刺さったら痛いものだろう。あんなの物がリアルバトルなんかで使ってやられたら、絶対に神姫が危ない。最悪、死んでしまうし、武装神姫の世界でも命がけの戦いがあるんだな。 「キミたち、こんにちわ」 と、突然声が聞こえてきた。横から声をかけられたと気付き、僕と淳平は振りかえった。 見れば、向こう側にいたストラーフのオーナーの人が僕たちに挨拶をしてきてくれていた。 「さっきのでかい声にちょっと驚いたけど、結構やれるのにもっと驚いたわ」 嫌味がないように、素直に淳平の事を称賛してくれている。 また勇気と無謀を履き違えた人が申し込んできたと思ったんだろう。実際、僕もミスズはともかく淳平が指示して戦わせる姿が思い浮かばなかったからな。 「でも、ボロ負けだったじゃないすか」 「いいえ、あの突くのを囮にして本命は回転斬りのところ、結構危なかったのよ。私の指示が聞こえてなかったら、イスカは一本とられてたわ」 「え、そっちすか? 俺は弾をばら撒く作戦とか自信あったんすけど」 「あれはだめよ。相手の姿見えなくしたら、次の行動読めなくなるし、現に防ぎきっているのわからなかったでしょ。あと、いくら機動力のあるアーンヴァルでも、大きすぎる動きをしたら次の行動に支障が出るわ。だから大振りなパイルバンカーの攻撃も食らうのよ」 「ははー、なるほど。参考になるっす」 ダメだ。聞いている僕にはついていけない会話だ。バトルの意見交換をされても入り込めない。 でも、僕はこの人に用があって来たんだ。神姫バトルに興奮している場合じゃない。 「あ、あの!」 「ん? ああ。そうだったな。ええと俺は伊野坂 淳平。神姫はミスズ。こいつは長倉 螢斗です。俺の友達なんですけど、実はこいつの用事がおねえさんに会う事だったんですよ。バトルは俺のただの気まぐれで、俺の方はただの付き添いですんで」 「へぇ、私は宮本 凛奈。神姫はイスカね。ちょっと戦いすぎて今はスリープモードになっているけど。で、私に用事って、なにかな?」 違う人という可能性もあったけど名前を聞いて。この人なんだと確信した。単に似ているだけの可能性もたった今消えた。 「あの、……山猫型の神姫をなくしたりしてませんか?」 「もしかして!? あの子のことを知っているの」 「はい。つい最近拾いまして、……僕の神姫になっています」 動揺しているこの人の淡い水色の目を、真っ直ぐに見つめて言う。シオンを追い詰めることをするようには見えないけど、でも彼女は苦しんでたんだ。ちゃんとした神姫オーナーだったら悲しませるような事はしない。 「……そう。あの子……よかった」 でも、この人は僕の神姫になっていたという事に安堵していた。 「なんで!? 元々あなたのでしょ。責任持って神姫を扱ってください!」 「……おい」 「あ……すいません。……失礼な事を言いました」 おもわず声を荒げてしまった。淳平に止められなかったら言いたいこと全部をここでぶちまけていた。 「いえ、私が悪いのだし。あの子だって恨んでいたでしょ?」 「恨んでいるなんて言ってませんでしたし、逆に悲しんでいました。傍にいられなくなる程に。僕の神姫になってくれる了承もしてくれましたけど、まだ引きずっているんです」 「……そう。わかったわ。詳しく話したいのだけど、ここじゃ無理ね。私この後用事があるのよね、携帯のメアド教えてくれる? 後で連絡するから」 「わかりました」 ポケットから携帯を出して、お互いのプロフィールを送受信する。携帯はシンプルでストラップもなにもない。ぼくも、そうなんだけどね。 「あー、おれもしていいっすか?」 頭を掻いてなにやら言いずらそうにしている。まあ、僕のせいで空気が重くなってしまったし、淳平もこの空気を読んでいてくれてたんだろう。 「ふふ。まあ、いいわよ」 「そうっすか!? やったー!」 了承してくれた宮本さんに、淳平はガッツポーズをしてものすごく喜び、すぐさま携帯を取り出して操作している。美少女じゃなくても結局綺麗な女性だったら誰でもいいのか。 そして、胸ポケットには凍えるような瞳をして淳平を見るミスズが。やばいだろ、あの目は。 「あ、それじゃ。そっちの都合でいいので、後ほど連絡を。ほら、行くよ淳平」 「またレクチャーしてくださーい」 僕は危機的状況を理解してない淳平を引っ張って、ゲーセンの出口に向かう。 後ろからは「また、後で」と小さく聞こえ、それに返事をしてその場をあとにした。 前へ 次へ
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SHINKI/NEAR TO YOU 良い子のポニーお子様劇場・オマケ 『ぶるーめんばいちゅの日常』 >>>>> ――人々に愛を笑いを振りまく神姫センターのアイドル、 ブルーメンヴァイス。 人々に感動を与える彼女らの影には、 人に語れぬ汗と涙のドラマがあった。 これはそんな愉快な出来事のゲシュヴィッツ(無駄話)。 それは夏が間近にせまった とある日―― ・ ・ ・ 目の前には神姫用の水着があった。 来客を楽しませることと、宣伝のための目引き効果を狙って一流デザイナーにプロデュースしてもらったという。そのデザインは先鋭的といいうか、コンセプトに忠実というか…… 「なんか、えちぃね~☆」 「そ……そんなことはないわ。これが最善で最良で、最先端で……つまりは一番ってことなのよ。す……素敵じゃ、ない?」 「なら、まずはフィシスが着てみるべき。リーダーの務め」 「!……そんなことはないわ。みんなで一緒にしましょ。チームワークが大切よ」 そのフィシスの反応を見て、白雪――にんまり。白夜――愉しげに。 「おやおや、そんなことを言うなんて……」 「フィたん、恥ずかしいの~? にやにや」 「そんなことはないわ。その……フィはただ、どうせならみんな一緒の方がいいかと……」 フィシス……平静を装うのが、返って動揺を証明。 白雪&白夜、にやにや。「素敵な水着なんでしょ☆」「まずは言ったものが実践するが常道」 *** 「ほ……ほら。やっぱり素敵な水着だわ。こ……これでビジターもきっと喜んでくれるでしょうね!」 流行の最先端で最善で最良な水着――きわどい黒と白のセパレート的超ハイレグ――を着たフィシス。 必要最低限の部分だけ隠した、ある意味では水着の機能を必要最低限だけ保持した――別の意味ではその機能を最大限に発揮したシロモノ。 自然に赤らむ頬に、押し隠した羞恥への可能な限りの抵抗としてボディの上や下のメリハリの効いた箇所に添えられる手。それでも隠し切れないものをどうにかしようと、手段を講ずる体――結果として、あっちにくねくね、こっちにくねくね。 流れる銀糸の髪、薄く上気した顔、潤んだルビーのように紅い瞳。その均整さ、美しさを爆発的に主張するような、肢体。まるで芳醇な果実を思わせる、艶に彩られたフィシス。 その姿に同じ武装神姫ながら圧倒された白雪と白夜は、しかしその過剰なまでの「攻撃」を何とか耐えしのぎ、持ち前の意地悪さと無邪気さを発揮する。 「だめだよ、フィたん☆ そんな風に隠しちゃ」「肝心の水着がよく見えない。問題あり」 「――――!」 ふたりに指摘されたフィシスは、カッと顔を真っ赤に染める。涙ぐんだ表情――観念と自棄とかそんないろいろなものがこう入り混じったカンジ――でキッをふたりを睨むと、 「これで、いいんでしょう――っ!」 「おおおう×2」 そこに現れたのは、完璧な姿だった。 美しき肢体と、芸術的な水着によって作り出される、物質的な色香と美。 羞恥、ためらい、そうした感情をすべて乗り越え、そして到達された何かを乗り越えるという気高き魂、凄絶なまでの精神的な高揚と美。 完璧だった。 すべての量子、非線形方定式、そのほか宇宙の神秘とかなんかこういろいろなものが複雑な焦点を結ぶことによって生まれた奇蹟がそこにあった。 白雪と白夜は泣いた。 読者も泣いた、筆者も泣いた。 オール・ワールド・ザ・スタンディング・オべーション! そのなか、フィシスだけは全てを越えた者こそが辿り着ける、無垢なる微笑をその身に称えていた……。 その日の夜。 フィシスは泣いた。 白雪と白夜のいないところで、影でこっそり泣いた。 身をくるめ、自らの身を抱きしめながら、しくしく泣いた。 全てを越えた代償がそこにあった。 *** 後日、なんかいろいろ関係各所からの意見とかで水着を使ったステージは保留。当分はやらない――水着も一転、無用の長物に……といったことが淡々と告げられた。 フィシスが眠りから起動した後のクレイドルは、何故か水に濡れていたという。 それはなんともキレイな、なんの不純物も要さない、無垢なる純水だったそうな――。 『ぶるーめんばいちゅの日常』良い子のポニーお子様劇場・オマケ//fin 戻る
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第8話 「初戦」 「ンなーっはっはっはっはァ! ぅワガハイの最高傑作! バイオレント・ブラック・バニー! 略してB3(ビー・キューブ)よ! 今日は最高の成果を期待しておるぞォ!」 「サー、コマンダー」 「……なぁ、神姫のオーナーってのは皆あんなテンションなのか?」 「……私は今まで以上に遼平さんの事が好きになれそうです」 武装が揃ってから更に3日。 ネットで行える簡易バーチャルトレーニングで大体の動き方をマスターした俺とルーシーは、いよいよ初の実戦に参加する事にした。 ……と言ってもそう大げさな話じゃない。 今や武装神姫を扱った店は街のそこかしこにあり、神姫オーナーであればいつでも参加できるシステムを設置している店もあるのだ。 休日なんかにはちょっとした大会が開かれる事も多いようだが、普段行われるのは公式トーナメントやリーグ戦みたいなモノじゃなく、個人同士の草バトルって所だろう。 で、そんな俺たちの初陣の相手が、さっきからハイテンションで大騒ぎしてるオニイチャンってワケだ。 年は俺より少し若いくらいで、なんだかヘンなシミだらけのズボンにベスト、ご丁寧に頭には同じ模様のハチマキをしてる。 「アレはシミではなくて都市迷彩です。 それにハチマキじゃなくてバンダナですよ」 ルーシーが小声で注釈を入れてくるが、俺はそういうのに詳しくないんだって。 ま、そういう事に疎い俺でも分かるくらいにあからさまなファッションの軍隊フェチだった。 「退くな媚びるな省みるな! 敵前逃亡は問答無用で軍法会議! 兵士に命を惜しむ事など許されぬ! そう、お前の前に道はなく、お前の後ろに道が」 「そろそろ選手のご登録をお願いしたいのですが宜しいですか」 「あ、ハイ」 天井知らずに上がりっぱなしのテンションは、店員さんの必要以上に事務的な口調に大人しくなった。 っと、こっちにも来た。 「それでは、こちらにオーナー名と神姫のパーソナルデータ入力をお願いしますね」 キツめな感じの美人さんだけど、さっきと違ってにこやかだ。 どうやら店員さんもアレはやかましいと思ってたらしい。 えーっと、そんじゃ… オーナー名:藤丘 遼平 武装神姫:TYPE DEVIL「STRARF」 ニックネーム:ルーシー と、こんなトコかね。 『それでは両者、スタンバイ!』 さっきの店員さんによるアナウンスが入る。 「ビィィィ!キュウゥブッ! んGoGoGoGoォオゥ!!!」 「サー、コマンダー」 「んじゃ行くか、ルーシー?」 「ハイ。 あなたとなら、何処までも」 ……何処で憶えてくんのかね、そういうセリフ。 崩れたビルの立ち並ぶ廃虚をステージに、バトルはスタートした。 まずは索敵からか。 「相手のバッフェバニーは遠距離戦闘重視の重火器装備型…『ガンナー・ブラスター』です。 早めに接近しないと厄介ですね」 「初陣が真逆のタイプってのは嫌なもんだな」 「負ける気はありません…前方に反応」 緊張した言葉とほぼ同時、ビルとビルの隙間を縫うようにして何かが迫ってくるのが目に入った。 一瞬戸惑った俺が命じるより早く、ルーシーは大きく跳んで回避行動を取っていた。 着弾。 閃光。 爆発。 「…ミサイル?」 「誘導式ではないので、正確にはロケットですよ。 妄想スレ第2段の198さん、ありがとうございました」 「誰?」 「こちらの話です。 …来ますよ」 崩れたビルの残骸を乗り越えて敵が姿を現す。 左肩にはバズーカ砲、ロケットポッドを右肩に。 両手にはそれぞれガトリングガンと大ぶりのコンバットナイフを携え、のっしのっしと歩みを進めてくる……その顔は赤いスコープにガスマスクのせいで表情が読めない。 『ンなーっはっはっはァ! そこな新兵! こそこそ隠れて様子見とは兵士の風上にも置けぬ奴! このB3とワガハイが、フヌケた貴様らに戦場における鉄の掟というモノを叩き込んでくれるわっ!』 あーうるせぇ。 「ドンパチのルールブックにゃ不意打ち上等って書いてあんのか?」 『ムっふっフーン、モノを知らぬ奴め。 この世には『勝てば官軍』というすンばらしい言葉があるのだ! 勝った者にのみ全ての権利が与えられる! 即ちルールを決めるのもまた勝者! つまりすなわち勝利は勝ぁぁぁぁぁっつッ!』 「サー、コマンダー」 ……本格的にワケ分からんなお前ら。 「ま、向こうさんから来てくれたんなら探す手間が省けたな」 「そういう事を言ってる場合ですか」 すいっ、と持ち上げられたガトリングガンが狙いを定める前に、再び跳躍。 弾丸の雨が虚しくビルの壁を穿つのを尻目に、着地したルーシーがこちらに尋ねる。 「どうしましょう?」 「初の実戦なんだし……ここはやりたいようにやってみ」 「……了解」 『むヌぬっ、敵の眼前で作戦会議とは悠長な! 静かにせんかァ! ここは戦場だぞォ!』 相手オーナーの怒声を無視し、前傾姿勢になったルーシーは距離を詰め始めた。 ロケットポッドが迎撃を始めるが、最初の攻撃で誘導式でないと判っている。 最初から当たらない位置のモノは完全無視、被弾する位置にあるモノはサブマシンガンで撃ち落としていく。 その間、視線は相手に固定したまま。 『「なにー!?」』 くそ、向こうと俺の声がカブった。 つかルーシー、お前ちょっとスゴい? 距離が縮む事を嫌ったB3は後退を始めるが、なにしろこっちとは「一歩」の長さが違う。 あれよあれよと言う間に戦闘は至近距離でのそれに移った。 向こうもこの距離ではガトリングガンの取り回しは不可能だと悟り、もう1本コンバットナイフを取り出しての2刀流に切り替えた。 こっちもナイフ2刀流で斬り結ぶ! ……が、ルーシー自身の両手は空いているワケで。 サブアームが相手のナイフを押さえつけている間に、ひょいと掲げたサブマシンガンを相手の顔面に向けてブッ放しやがった。 ががががががっと派手な音がして頭が何度も揺れた後、B3は仰向けにぱったりと倒れた。 『んンNoおぉぉぉおおぉぉうッ!? B3! 応答せよびぃきゅうぅぅぅぅッぶ!』 「ルーシー、お前それちょっとエグい」 「勝てば官軍、負ければ賊軍……勝負の世界は非情なのですよ」 『衛生兵! えーせーへーえぇぇぇぇぇ!!!!』 しれっと言ってのける15センチ足らずのオモチャ。 コイツはやっぱり悪魔かなぁと思って嘆息した俺の視界で、動くものがあった。 「ッ……、」 どごおぉぉんっ! 突然起こった爆発に、俺の口から出かけた言葉が止まった。 スコープとガスマスクがダメージを緩和したのか、大の字になったB3の肩にマウントされたバズーカ砲から煙が昇り、射撃直後を物語る。 そして濛々と爆煙に包まれているのは……ルーシーの頭部付近。 「ルーシーっ!」 背筋の凍るような思いが俺の口を再び動かす。 「返事しろおい!」 「無事です」 冷静な声が響き、風に吹き散らされた爆煙の中からススけたルーシーの顔が見えた。 顔周辺のダメージはそんなものだが、片方のサブアームが手首の辺りから吹き飛んでいる。 どうやらそれを盾にして直撃を防いだらしい。 それを見てもB3は追撃しないし立ち上がらない。 どうやらバズーカは1発きりで、さっき与えた頭部への衝撃はオートバランサーか何かに影響を与えたらしい。 実質、勝負はここで決着ってワケだ。 ほっとした俺、ぽかんとしている相手オーナー、悔しげな表情のB3、無表情のルーシー。 なんだか妙な沈黙の後、ルーシーはおもむろにしゃがみ込んでB3のそばに膝を着くと、残ったサブアームを動かし始めた。 その手に握られているのは、ほとんど使う事もなく無傷に近いアングルブレード。 「はいはいストップストップ、もう終わっただろ。 こっちの勝ち」 俺の言ってる事を聞いているのかいないのか、ルーシーは見せつけるようにブレードを振り翳したまま動かない。 「こら、あんま脅かすなって」 刃に照り返る陽光を受けたB3の顔に、はっきりと恐怖の色が映る。 「ルーシー」 ぐっ、とアームデバイスのシリンダーが動く。 「やめろバカ!」 制止の声と風を一度に裂いたブレードが、鋭い音を立ててコンクリートの床に突き立った。 ……丸く湾曲した刃と床の隙間に、B3の白い首筋が挟まっている。 顔を上げれば、相手オーナーが白いハンカチを必死に振る姿があった。 「ンんバカモノおぉぉっ! 勲章ではなく命ひとつを持ち帰れば良いと教えたはづだろぉがっ!」 「サー、コマンダー」 「試合前と言ってる事が違うんだが……」 「アレがあの人たちの絆の形なのでしょう」 ひしと抱き合う(?)2人を眺めて、にこにこ笑顔のルーシー。 ……ホント、あの氷みたいな目ェしてた奴とは思えんね。 「……ちょっと、興奮しました」 俺の視線に気づいてか、わずかに肩を落とした。 人間で言えば『カッとなった』んだろうが……あんまコイツは怒らせない方がいいかも知れない。 「今、何か失礼な事を考えましたね?」 「いぃえぇメッソーもない」 「怪しいです」 「最愛のパートナーに信じてもらえないとはツラいなぁ」 ちゃかしたセリフに、テレたように小さく微笑む。 「最愛、ですか……嫌わないでくださいね」 「つまんない心配しない」 あっちほど熱烈じゃないが、こっちもちょっとイイ雰囲気。 ひとしきり泣いたり感動したりして気が済んだのか、向こうのオーナーが握手を求めてやってきた。 胸ポケットからはB3が覗いている……ちょっと微笑ましいな。 「いやいやいや諸ォ君! 今回は良い勉強をさせてもらったぞぉ!」 「ま、こっちも楽しかったよ。 ちょっとヒヤっとしたけどな」 「うむ! 記念すべき初陣を勝利で飾れなかったのはヒッジョーォに無念ではあるが、今日この日の戦いはワガハイとB3の輝ける第1歩として生涯この胸に刻もうぞ!」 「お前あんだけ偉そうな事言っといて自分も初心者かコラ」 バカ笑いするミリタリーマニアから視線をそらすと、ルーシーがB3の頬をそっと撫でている所だった。 「さっきは怖がらせてごめんなさい。 貴女の心優しいオーナーに、最大限の感謝を忘れずにね」 「……イエス、マム」 ルーシーの柔らかい微笑みと、風にかき消されそうなB3の声を幕に、俺たちの初陣は終わった。 「ついでにそちらのオーナー。 差し出がましいようですが『バイオレント』は『Violent』で頭文字は『B』ではありません。 その子の為にも早めの改名をお奨めします」 「ンなんとぉーっ!? ワガハイ一生の不覚ぅッ!」 「サー……」 その後、彼の神姫は『バーニング・ブラック・バニー』に改名したとかしないとか……ちゃんちゃん。
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十話 『十五センチメートル程度の死闘 ~1/2』 「あららん? その後姿はもしかして鉄ちゃんと姫ちゃんじゃないかしら。それとも私の気のせいかしら。 うん、きっと気のせいよね、失礼しました~」 背後から声をかけてきて一方的な納得をされ、そのまま私達とは別方向へ行ってしまおうとする紗羅檀さんに、私はなんとなく 『見覚え』 があった。 私の知る神姫なのだから 『見覚え』 があって当然なのだけど、ここで私が言いたいことは、そういうことじゃない。 その紗羅檀さんは人間サイズだった。目線が私より少し高いくらいだ。 腕と足は指先まで黒く染まり、胴体にあしらわれた金の意匠が微妙に安っぽく光を反射して眩しい。頭部をクワガタの鋏のように囲むアクセサリーもちゃんと再現されており、薄紫の長い髪も、武装神姫の紗羅檀と同じように整えられていた。 歩き去ろうとする紗羅檀さんの後ろ姿もやはり本物を再現されていて、だだっ広い改札口前を歩く老若男女の視線が、大きく開かれた背中に集中していた。 私達はただ、ポカンと口を開けたまま、その方を見ていることしかできなかった。手作り感溢れる艶かしいその姿に目を奪われるというより、感心していいやら呆れていいやら分からないといった感じだ。 よく出来ているのは認めるけど、人が行き交う日常に紛れ込んでいい姿じゃなかった。 恥じ入ることなく堂々とした紗羅檀さんの肩の上には、同じ格好をした身長15cm程度のオリジナルがいた。 「どこに行くのよ千早さん、そっちは神姫センターじゃないし、さっきの方達は気のせいでもなく鉄子さん達だし――ああもう! だからついて行きたくなかったのよ!」 チンピラシスターだったコタマでも軽くあしらってしまうミサキの、頭を抱えて取り乱す姿は新鮮だった。 「あらホント。鉄ちゃんと姫ちゃんと、それにボーイフレンズじゃない。あなた達も鉄ちゃんに謝りに行くの? あら、でも鉄ちゃんはここにいるのよね。あ、もしかして鉄ちゃんの双子のお姉さん?」 こちらに向き直り近づいてくる千早さんから、私以外は少し後ずさった。連れている神姫達も、神姫なのに大きいというチグハグさに少し怯えている。 「い、妹君、何ですかこれは」 「これ、とか失礼なこと言わんの。私がバイト先の物売屋でお世話になっとる千早さんよ。どうもです、どうしたんですかその格好」 「バカ、な~に話しかけてんの。他人のふりしろよ」 日頃の恩すら覚えておけない哀れなコタマを鞄の底に押し込んで、私は快く千早さんに近づいた。 背比と貞方、それに傘姫について来てもらっても、神姫センターに対する不安は拭いきれるものじゃなかった。電車に乗って、あとは神姫センターまで歩くだけ、というところまで来ても、いや来たからこそ、引き返したいと思う気持ちは強くなるばかりだった。千早さんの姿を見るまでは。 「奇遇ですね千早さん、私達も丁度神姫センターに行くとこやったんですよ。いやあ、ここでお会いできて嬉しいです。でも千早さんとミサキが神姫センターに行かれるとは知らんかったです。そのコスプレも良う出来てますし、なんか用事があるんですか」 「やあねえ、今日は鉄ちゃんに謝りに行くんじゃない。でも良かった、肝心の鉄ちゃんがいつ来るか分からないらしいじゃない? だからタロットで占って今日この時間だって見当つけたんだけど、どう? 私の魔術的才能はすごいでしょ」 「す、すごいです! 今度教えてください!」 (おい背比、なんで竹櫛さんはあの人と普通にしゃべれるんだ) (知らねーよ俺に聞くな。姫乃、竹さんとあの人って……) (尊敬してるって聞いたことある、けど、うん。えっと、私も千早さんは、す、すごい方だと思う、わよ?) (姫乃さん顔がひきつってますよ。マスター、あんまりあの人を見ちゃだめです。目の毒です) 私の背後で背比達がコソコソと話してるけど、どうせ千早さんの凄さを目の当たりにして尻込みしてしまってるんだろう。恥ずかしながら私も最初はそうだった。でも物売屋のバイトで度々千早さんとお茶を飲むことで私は、この人が21世紀のジャンヌ・ダルクと呼ぶに相応しい人物であることを知ることができた。この人と同じ年代に生きていられることに、感謝感激雨霰。 「ところで千早さん、私に謝りにってどういうことです? 千早さんに謝られることなんて何もされとらんです」 「さあ。それが私にもサッパリ。ミサちゃんは分かる? 私、なにか鉄ちゃんに悪いことしたかしら」 「……神姫センターに、鉄子さんに謝罪するという方が多くいると聞いて、じゃあ自分も行くと言い出したのは千早さんでしょうに。理由は聞いてないわよ」 ずいぶんと投げ遣りな物言いをするミサキだった。 「あらそう。でも何だか急に、鉄ちゃんに悪いことをした気になってきたわ。……本当にごめんなさい。私、ついカッとなって……」 「そ、そんな、頭を上げてください! 千早さんは全然悪くないですし、私のほうがいつも千早さんに迷惑ばっかりかけてます!」 千早さんに負けないよう頭を下げた私の肩に、優しく手がかけられた。そしてゆっくりと私の体を起こしてくれた千早さんは、いたずらっぽく笑いかけてくれた。 「じゃあ、別に悪いことをしたわけじゃない者同士、謝りっこはこれでお終いにしましょう。私と鉄ちゃんの間は前より4ミリも縮まったわよ」 「千早さん……!」 誰が見ていようと、私達は全然気にすることなく、改札口の前で熱い抱擁を交わした。紗羅檀コスプレのゴツゴツした部分が当たって痛かったけど、構わず千早さんに甘えた。 「妹君、そろそろ……」 マシロに促され、名残惜しみながらも千早さんから離れた私は、躊躇うことなく神姫センターへの歩みを進めた。すぐ後ろの千早さんが集める視線と、少し遅れてついて来る背比達が、私を得意な気分にしてくれた。 体が軽い。 こんな幸せな気持ちで歩くなんて初めて。 もう何も怖くない! ドールマスターがリアルドールを連れて来た。 人間大の紗羅檀の登場に、神姫センターはイベント時のような賑わいを見せた。 パーツを物色していたお客も、私を見るなり店長を呼んでくると言う店員も、その目は千早さんに釘付けにされていた。 小走りでやってきた冴えないおじさん店長は千早さんに驚きつつも、私の前でペコペコと頭を下げた。そして懐から封筒を取り出し、中身を私に見せた。 「こちらをお出し頂ければ、武装神姫1体をお持ち帰り頂けますので、はい」 もうコタマはレラカムイとして復活したと告げても、店長は引換券の入った封筒を無理やり私に握らせた。 「貰えるもんは貰っとくもんだよ鉄子ちゃん。いらないんだったら隆仁にでもあげたら? アタシのこの体でストックが無くなっちゃったらしいし」 それもそうか。コタマの言うとおり後で兄貴に渡すことにして、封筒を鞄にしまった。 店長の話だと “あの時” 居合わせた神姫オーナーの数人が2階に来ているらしい。 “あの時” に誰がいたかなんて覚えているはずないのに、それでも顔だけ出してくれ、と言う。昨日、貞方が見せた写真に映っていた神姫は明らかに “あの時” にいた神姫の数を上回っていたことだし、戦乙女戦争のように無関係な神姫までノリで筐体に立てこもっているのだろう。 そういえば店内にはお客の対応とディスプレイを兼ねた神姫達がいるはずだけど、今は一体も見当たらない。彼女達も恐らく、2階の筐体の中にいる。店長の平身低頭ぶりはこのためかな。 「じゃあ竹さん、行こうか」 湿った手を握りしめ、私達は2階への階段を上がった。 神姫が集まった森の筐体の中は、画像で見るよりもずっと酷い有様だった。バッテリーを切らしてしまっった神姫が半分ほどいて、起きている神姫達は私が近づくなり 「ほら、ドールマスターが来たよ! 早く謝れ! ハリアッ!」 とかなり焦っているようだった。 名前も顔も知らぬオーナーに謝罪されても、私は曖昧な返事しかできなかった。いくら千早さんの登場で気分が高揚していたって、ハーモニーグレイスだったコタマの無残な姿を忘れることなんて、できるはずがなかった。 沈黙する私と、気まずそうに目を泳がせる名も知らぬ悪者。 「さっさと土下座するですぅ!」 と煽る神姫達。どうしようもない雰囲気が流れ始めた時、鶴の一声が私の鞄から響いた。 「な~にゴネてんだ面倒臭え! いつまでもウジウジやってんじゃねぇよ鉄子ちゃん。こんな連中ホントはどうでもいいんだろ、さっさと追い返せよ。オマエらもいつまでも筐体で森林浴してんじゃねぇよ、この森ガール共が! バトルできねえだろうが!」 甲高い声でやいのやいのと騒ぐレラカムイに不審の目が集まった。でもその乱暴な口調には覚えがあったらしく、私が新生コタマを紹介すると、みんなドールマスターの復活を喜んでくれた。これで神姫達はようやく溜飲を下げてくれた。 神姫達がゾロゾロと筐体から出てきたけど、バッテリーが切れた神姫をおぶる者や、オーナーが一時帰宅していて帰れず、筐体の中に留まる者も多くいた。事の収束にはもう少し時間が必要みたいだ。 千早さんとミサキの即席撮影会が賑わう間、1階のショップでは急速充電器が飛ぶように売れ、それを2階のフリースペースに持ってきて使うオーナーが多数いた。帰宅せず神姫センターに残るオーナーのやることは、2つ。 まず1つは当然、大きな紗羅檀の姿を目に焼き付けること。 紗羅檀の際どい衣装は単細胞なオーナー達をあっという間に虜にしてしまった。 鼻の下を伸ばして不躾な視線を送り続ける単細胞共は不愉快でしかなかったけど、囲まれた千早さんは寛大で、カメラに向かってグラビアのようなポーズをとっていた。 「どうしましょうミサちゃん。一度でいいからモデルをやってみたかったんだけど、それが叶っちゃった。後でヤコくんに自慢しなくちゃ」 「八幸助さんには絶対に言わないで頂戴。自分が既婚者ってことをもう少し――そこ! カメラを下から向けない! ほら千早さん、胸の武装がズレかかってるじゃない、早く直して! 何見てるの、見世物じゃないのよ! こ、こら、私を撮影してどうするの! やめなさい! あああああもう! これだから外に出るのは嫌なのよ……!」 この日を境に千早さんが神姫センターで神格化され、物売屋のお客が少し増えたのは、また別の話。 そして、もう1つ。今日のメインイベント―― 「『グレーゾーンメガリス!』」 多数の神姫に紛れて助走をつけたマオチャオが、大きなハンマーを振りかぶって飛び出した。セカンドのライフルで近づく神姫を一掃していたコタマの虚をついた、上手い一撃だ。見ている俺達が、コタマのなぎ倒される姿まで想像したその一撃を、 「おっと」 の一言でファーストを送り出して、片手のガントレットでハンマーを容易く止めてしまった。 「クソッ、技のキレが増したなシスター!」 「もうアタシはシスターじゃないよん。それとアンタのその技は一度見てるからね、実は最初からちょっと警戒してたもん」 ファーストにハンマーを掴まれたマオチャオがハンマーから手を離して離脱するより早く、セカンドのライフルが火を吹いた。 ファーストとセカンドの両方が一匹のマオチャオの方を向いた瞬間、コタマの背後から多数の神姫が襲いかかった。その気配を察してなお、コタマの余裕の笑みが崩れることはなかった。 蘇ったドールマスターとの勝負を望む者は多く、せっかく人数が集まっているのだからと、大規模なチーム戦……とは名ばかりの、モンスター狩りが始まった。 竹櫛家 VS 機械少女連合軍 15cm程度の死闘トップへ
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第壱幕 「朔-saku-」 佐鳴 武士(さなる たけし)、つまり俺が神姫の購入を決定したのは必然からだった 偶然出た街で、偶然当てた宝くじで、偶然手に入った纏まった金・・・ 偶然立ち寄ったホビーショップで、偶然していた神姫バトルを見た(余談だが、この時戦っていたのが「シルヴィア」という著名な神姫だと後で知った) 何事も無く帰途に着く・・・つもりだった。「何事も無い」と思っていた だが、既にこの時点で、俺の中に種が蒔かれたのだろう 親父も祖父も、アニメオタクや漫画マニアがそのまま大人になったような人達だった事から、土壌はしっかりあった 親父達の所有していた90年代や2000年代初頭の漫画やアニメやゲームに囲まれて育った世代だ。その後も肥料は、我ながら大量に収集した様に思う。 だから憧れが芽吹き、翌日には神姫の事で頭が一杯になっていた 原因が無ければ結果は無、種を蒔いても、土壌と肥料が悪ければ育たない 纏まった金とたまたま見た神姫バトルは偶然蒔かれた種だっただろうが・・・土壌と肥料を捨てずに持ち続けていた事は、何時か来る種を蒔く為の努力をしていた事に、この場合は相違無い それは最早「必然」と言って過言ではないだろう・・・要は、遅かれ早かれこうなっていただろうという事だ 自動ドアがのろのろと開く。何故こんなにのろいのか?俺の心は急いているのに つまりそれは俺の為にこのドアがある訳ではなく、誰に対しても平等な、機械的な反応だという事だ 「神姫」の肝はAIであると聞いた 神姫は、高性能なパソコンを搭載した玩具ではなく、身長15センチの人間だという話だ 俺にはそれはもうひとつピンと来ない表現だ。この自動ドアと違うってのは判るし、昔読んだ漫画でよく出て来たガジェットって事は判ってるが (AIなんて言われてもなぁ・・・よく判らんな?対話型ATMの凄いようなやつか?) 少なくとも「神姫が凄い玩具である」事は俺にだって判ったし、シンプルな事と格好良い事は俺にとって極めて善性だ だからその一点にのみ着目して、俺は数万円を散財するべく、普段滅多に立ち寄らない近場の家電量販店に足を運んだのだ 田舎住まいの上に土地勘が無い。加えて出不精だから、ここしか思いつかなかったのだ 看板が古臭くて、多分「ヤマシタ電器」とかそんな名前なのだろうが、文字が欠落して「ヤマシ 器」になってしまっていた (意外と中はまともだがな) やたら元気の良い店長が、近所の婆さんと世間話をしているのを尻目に店内を散策。さてMMSのコーナーは・・・と あった、結構大きくコーナーを取ってある様だ。何か同じ絵柄の箱がずらずらと山積みされている 「侍型MMS 紅緒」 いいねぇ俺好みだ。朱いパッケージが男心を程好く刺激するぜ なんでこんなに山積みなのかは・・・問わない方が良いのか?えらい安いし まぁ良いや 「すんませーん。コイツ貰えますかー?」 手近にあったやつをひとつ手に取り、店長の世間話を打ち切る 購入手続きを済ませた彩に手渡されたレシートにははっきりくっきりと 「サムライMMSベニモロ」 と打ち込まれていた …… …………… 『TYPE 紅緒 起動』 うっすらと目を開ける人形 生気の薄いマシンの瞳 「武装神姫」が起動する ゆっくり上体を起こし、周囲を見渡す『紅緒』 「登録者設定を行ってください」 おお・・・喋った・・・! と、感心している場合じゃない。マニュアルを読もうとしたが、文字が多くて面倒臭かったのでつい先に神姫を起動させてしまったのだ 「え~と・・・次はどうすりゃ良いんだ?」 「貴方が私のマスターか?」 どっかで聞いた様な台詞だな 「ちょっと待っててくれ、確かこのへんのページだった様な気がするんだが・・・」 がさがさページをめくる俺の足元に、つと近付いて来る神姫。をを・・・自分で歩いてる 「マスターの登録は声紋を取らせていただければ現状では充分です」 「あぁ・・・そうなの?面倒臭い設定とかしなくて良いのね。そりゃ助かるぜ」 振り向いた先に立っている姿・・・んぁ?太股がなんかおかしいぞ 「どうかされましたか?」 「お前・・・その足どうしたんだ?」 小さな声を上げて自分の左太股に目を落とす・・・結構際どいデザインだな、このデフォルトアンダースーツは 左の内腿から尻側にかけて、彼女(?)には痣の様なものがあった。綺麗な皮膚に薄く墨を流した様な・・・見様によっては花霞に見えなくも無い 「・・・うわ・・・どうしようこれ・・・欠品かこれ・・・その・・・」 AIとは人口知能であり、神姫とは身長15センチの人間である その事の本当の意味の一端を、俺はその時の「彼女」の表情の変化、狼狽から読み取った 羞恥、怒り、そして不安・・・ 「・・・返品・・・ですか・・・?」 マスターとして神姫に正式に登録されるには名前をつけてやる必要があるのか・・・成程な。俺はマニュアル本を閉じた 「俺の名前は佐鳴 武士。で、お前の名前は華墨(かすみ)だ・・・問題、あるか?」 泣きそうだった「彼女」は、一瞬びっくりした顔を見せたが、次の瞬間には、至高の微笑を浮かべてくれた 「はい、マスター。私は・・・華墨です・・・!」 TOPへ 次へ
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キズナのキセキ ACT1-12「ストリート・ファイト その1」 □ 戦いが始まる。 四人は一斉に物陰へとダッシュした。 リアルバトルは実際に銃弾が飛び交う。そばにいたらただではすまない。 ティアを戦場に残すことにためらいを感じながらも、俺は物陰に身を隠す。 少し離れた壁際に、頼子さんの姿が見える。 「マグダレーナの方、頼めますか!?」 「了解よ。……三冬! マグダレーナを押さえなさい!」 「承知しました」 俺の無理なお願いに、頼子さんと三冬は即答してくれた。 相手は得体の知れない凶悪な神姫だというのにもかかわらず。しかし、頼子さんからはこの対戦を楽しんでいる節すら感じられる。 どちらにしてもありがたい話だった。 「ティア。ストラーフを引きつけて、マグダレーナと距離を取れ」 『了解です』 ティアの返事がワイヤレスヘッドセット越しに聞こえた。 今回は、今までに経験したことがない異質なバトルであるが、二対二の状況であればなんとかなるだろう。 勝てなくてもいい。 時間を稼ぐのが目的なのだ。 菜々子さんと接触する直前、大城に携帯端末からメールで連絡を入れた。 しばらく待てば、大城は警察を連れてここにやってくるはずだ。 ■ 今日のバトルはいつもと勝手が違う。 いつもはゲームセンターでのバーチャルバトルだから、試合後のダメージは気にしなくてもいい。 でも、今日のリアルバトルでは、そうはいかない。ダメージは自分の身体にも装備にも残ってしまう。いつも以上にしっかりと回避しなくちゃいけない。 でも、リアルバトルに気後れすることは、わたしはなかった いつもの訓練はだいたいマスターの部屋でやっているし、朝のお散歩の時には公園を全力で走ったりもする。現実で走り続けることには慣れている。 ただ、少し心細いのは、武装。 いつもはマスターがサイドボードから武器を次々に送り込んでくれるけれど、今はそうはいかない。 わたしは両手に持ったハンドガン一丁とナイフ一本だけで、ストラーフBisを相手にしなくてはならない。しかも、ハンドガンは弾を撃ち尽くしたらおしまいだ。 いつもより慎重に戦わなくては。 必ず隙を見せる瞬間はあるはず。その時にナイフを閃かせれば、勝つことができるかも知れない。 いいえ、きっと勝てる。 勝って、菜々子さんの目を覚まさせなくちゃ。 そうでなきゃ、ミスティがかわいそう。 だって、今わたしが相手にしているのは、神姫に見えなかったから。 ◆ 三冬とマグダレーナは対峙したまま動かない。 両者とも、お互いを強敵と踏んでのことか。 さぐり合うような時間、空間の緊張は刻一刻と増加する。 その空気を破ったのは、久住頼子の指示だった。 「三冬! 小細工は抜きよ! いきなりKOFモード!!」 「承知!」 短く応えた三冬。 その拳が炎に包まれた。 ハウリン型がデフォルトで身に付けている必殺技「獣牙爆熱拳」である。 三冬は、右の拳を肩と同じ高さに持ち上げ、肘を背中に引いた。 上半身を捻って半身になりながら、マグダレーナを見定めた。 「いくぞ……獣牙爆熱……」 右拳を前に鋭く突き出すのと同時、脚が地を蹴り、また同時に背部のスラスターを噴射、爆発的な加速で飛び出した。 「バアアアァァン・ナックルッ!!」 ……それは、往年の格闘ゲームの技であったという。 三冬は拳を突き出したまま、地表すれすれの超低空を翔け抜け、マグダレーナに突進した。 対するマグダレーナは余裕。 来ると分かっているパンチをかわせない神姫ではない。 わずかに身を翻し、燃えさかる拳をやりすごした。 しかし、三冬もそれだけで終わらない。 今度は左拳をフック気味に振るいながら、マグダレーナを追う。 「ボディが……甘い!」 ……これもまた、往年の格闘ゲームの技であったという。 左拳をなんなくかわされた三冬であったが、それだけでは止まらない。 右拳も同様にボディを狙うフック、そこからさらに右のアッパーにつなげる連続技である。 だが、マグダレーナは矢継ぎ早に繰り出される炎拳を、次々とかわした。 そして、大振りのアッパーをかわした瞬間に生まれる隙。 見逃さない。 マグダレーナは手にした燭台型のビームトライデントを上段に構え、振り下ろす。 しかし、三冬もただ者ではない。一歩踏み出し、燭台の根本を腕のアーマーで受け止めた。 「!?」 驚いたのはマグダレーナ。 燭台を受け止められた次の瞬間、マグダレーナの身体は宙に浮いていた。 燭台と三冬の腕の接点を軸に投げ飛ばされたのだ。 ところが三冬は、特に力を込めた風もない。 なにがどうなったのか。 疑問を覚えつつ、マグダレーナは空中で姿勢制御、背部装備のバーニアを噴射し、一気に距離を取る。 地表で、三冬の構えが見えた為だった。おそらくは対空攻撃の予備動作。 次の攻撃を悟られ、距離を取られた三冬であったが、そんなことは気にもとめない風に、悠然と構えを取る。 三冬にしてみれば、今の投げで大きな目的を果たすことができた。 マグダレーナに距離を取らせた。すなわち、マグダレーナと菜々子の神姫を分断することができたのだ。 マグダレーナと菜々子のストラーフは、ある程度のコンビネーションも可能だと考えられる。 対して、三冬とティアは今結成したばかりの急造ペアだ。コンビネーションなど望むべくもない。一対一の状況に持ち込むことが寛容である。だからこそ、ティアのマスターは、マグダレーナと距離を取るように、ティアに指示したのだ。 「なるほど……剛柔自在というわけか。むしろ、派手な技に隠された柔の技こそ、そなたの本質か」 マグダレーナがしわがれた声で感嘆する。 いままで、『狂乱の聖女』を投げ飛ばすことができた神姫など、何人いただろうか。 応えた三冬は、隙のない口調。 「我が奥様直伝の太極拳。最凶神姫と名高い貴様とて、見切れるものではない」 「確かに、受けてみなければ分からなかった……見切るのは骨が折れよう」 「技を見切る余裕など与えぬ」 「くくく……どうかな。その技、とくと見させてもらおうか……行け、スターゲイザー!」 マグダレーナが空いている左手をさっと振り上げる。 それと同時、彼女の両側に捧げられた十字架「クロスシンフォニー」が持ち上がり、銃火器としての役割を与えられる。 「クロスシンフォニー」を支えるのは細い腕。 それは背部の二つの大きな目玉のような装備につながっている。まるで、大きな目の形をしたランプの化け物が腕を持ち上げたかのようだ。 その巨大な目玉が光を放つ。 左右二体のランプ型がマグダレーナから分離した。 この二体こそが「スターゲイザー」……マグダレーナが使役するサブマシンである。 スターゲイザーは数瞬、その場で浮かんでいたが、不意に急加速し戦場に解き放たれた。 正面で構えるハウリン型に向かって襲いかかる。 □ マグダレーナが言い放った言葉……「スターゲイザー」を耳にして、俺は思わず視線を向けてしまう。 はたして、「スターゲイザー」の正体は、マグダレーナの背部にマウントされていた、二体のサブマシンだった。 神姫本体をサポートするサブマシンの存在は、武装神姫では珍しいものではない。ハウリンやマオチャオに付属するプッチマスィーンズや、エウクランテとイーアネイラの様に武装が変化してサブマシンになるもの、ランサメントとエスパディアの武装が合体して大型のロボットになる例もある。 だから、スターゲイザーの正体がサブマシンというのは、ある意味拍子抜けだった。 マグダレーナは、攻撃をスターゲイザーたちに任せて、高見の見物を決め込んでいる。 なんという余裕。 いくら二対一とはいえ、三冬がサブマシンに後れを取るとは思えない。彼女はファーストランカーなのだ。サブマシンを使う神姫と対戦した経験はいくらでもあるだろう。 サブマシンなど一瞬で蹴散らされてもおかしくはない。 ところが、三冬は苦戦していた。 スターゲイザー二体による波状攻撃に苦しめられている。 時には近接、時には銃撃。二体のサブマシンは、巧みな連携で三冬の動きを封じ込めていた。 三冬が攻撃に出ようとすると、途端に距離を取る。 三冬が前に出ようとすると、「クロスシンフォニー」の銃撃で牽制される。 冷静な三冬も苛立ちを募らせているのがよく分かる。 不意に、俺の胸に疑念が沸いた。 スターゲイザーは、サブマシンの動きにしては、巧み過ぎやしないか? サブマシンは、あくまでも神姫の補助に過ぎない。サブマシンを使う神姫がどんなに巧妙に戦いを組み立てても、相手神姫とサブマシンが互角以上の戦いをすることはないのだ。 だが、スターゲイザーはファーストランカーの三冬を相手に互角の戦いをしている。 強者相手に、なぜそこまで戦える? スターゲイザーの動きを注意深く見てみれば、明らかにサブマシンの範疇を越えている。 ケモテック社のプッチマスィーンズのように簡易AIを仕込んだサブマシンもあるが、それでもスターゲイザーの動きは異様だ。 操られているのではなく、まるで意志があるかのような、生物的な動き。 コントロールするマグダレーナの電子頭脳の要領が大きいとも考えられるが……。 そこまで走らせた思考に、俺は無理矢理ブレーキをかけた。 今はバトル中だ。しかも、初体験のリアルバトル。 ティアの戦いに意識を集中する。 ストラーフBisの動きは、イーダのミスティと違い、直線的で効率的だった。 『七星』の花村さんに聞いた、初期のストラーフのミスティがしていたのが、こんな動きだったのかも知れない。 だが、今のストラーフBisの動きは読みやすい。攻撃を「ジレーザ・ロケットハンマー」 に頼りきりだからだ。超重の、それもロケットブースター付きのハンマーであれば、攻撃方法は至極限定される。 縦に叩きつけるか、横に振り回すか、それだけでしかない。たとえストラーフの副腕であっても、一方向に振り抜くまでは切り返すことさえできないのだ。 当たれば致命的だが、回避が得意なティアには当たるはずのない攻撃である。 ティアの回避機動には余裕すら見える。 それでもティアが攻め手に欠けるのは、ストラーフBisの追加装甲が攻撃を阻むためだ。 よほどの隙を見いださない限り、有効なダメージは望めない。 ゆえに、この戦いは拮抗していた。 ◆ 「さすがはティアと言ったところね……でも、これならどう?」 菜々子がヘッドセットをかけ直し、指示を出す。 「ミスティ、踏み込んで!」 □ 「ティア、注意しろ。何か仕掛けてくるぞ!」 『はい!』 内容は聞こえなかったが、菜々子さんが何か指示を出した。 状況を打開する一手であることは間違いない。 こちらは時間稼ぎのバトルだが、菜々子さんたちは時間に余裕がないはずだ。なぜなら、裏バトルの自分たちの出番までに会場に入らねばならない。 それに、あんまり派手に暴れて見つかるのも得策ではないはずだ。特に桐島あおいは以前から裏バトルに出入りしているから、警察に捕まったりすればとても困るだろう。 だから、仕掛けてくるとすれば、向こうからなのだ。このバトルを早く終わらせるために。 ストラーフBisは縦横にハンマーを振るう。 ティアは余裕を持って避ける。 同じ展開が続く、と思ったその時。 「今よ!」 菜々子さんの鋭い指示がここまで聞こえた。 ストラーフBisは無言で突進してくる。いつもより一歩深く踏み込んできた。 「ジレーザ・ロケットハンマー」を振り下ろす。 それが避けられないティアではない。軽くバックステップしてかわす。 だが、ハンマーがアスファルトの路面を叩くのと同時。 ストラーフBisがさらに一歩前に出た。 この動きは想定外だ。 ティアはさらに下がろうとする。 しかし、それよりも早く、地面に叩きつけた反動を利用し、切り返したハンマーが、すくい上げるようにティアを襲った。 回避できないタイミングに俺は一瞬焦る。 「ティア!」 思わず自分の神姫を呼ぶ。 ティアは振り上げられたハンマーの一撃で宙を舞った。 しかし、空中で宙返りを決めると、何事もなかったかのように着地する。 「な……」 驚いたのは菜々子さんの方だった。必殺の一撃は命中したと思っただろう。 ティアはハンマーが激突する瞬間、自らハンマーの上に乗って、振り上げられる力に逆らわず後方に跳ねたのだ。 ひやひやさせる。 無事着地するまでは、俺も焦っていた。 「ティア、大丈夫か?」 『はい。大丈夫です。走れます』 「よし」 ティアの落ち着いた声を聞き、ほっとする。 そして実感する。 少しの不安でも心がすり減らされる。これがリアルバトルの緊張感なのだ。 ■ マスターにはああ言ったけれど、わたしは少し違和感を感じていた。 いまさっき、ロケットハンマーに乗った右のレッグパーツ。 どこが悪いとははっきり言えないのだけれど。 なんだか圧迫されているような、熱を持っているような、そんな感覚。 でも、走るのに支障なさそうだったから、大丈夫、と答えた。 相手のストラーフBisは、わたしがハンマーの一撃に乗って距離を取った後、追撃には来なかった。 躊躇した、という様子でもない。 ただ単純に、菜々子さんが驚いていて、指示を出していなかったから動かなかった、という感じ。 なんだか嫌な感じがする。 神姫であれば、マスターの指示がなくても、自分で考えて行動する。 指示と指示の間は、神姫が自由に戦える。 だけど、目の前の神姫はそうしない。 まるで、ただの操り人形みたい。 わたしは不気味に思いながらも、動き出す。 相手が動かないなら、好都合。 今度はわたしから仕掛けて、活路を探る。 自分で考えながら戦う。それがわたしとマスターの戦い方だ。 ◆ 『ねえ、あそこの人の胸ポケット、見える?』 「ええ、見えるわ」 『あそこに神姫がいるでしょう?』 「いるわね。何か叫んでいるようだけど」 『少しうるさいわ』 「そう? 何を叫んでいるのかしら」 『それこそどうでもいいことよ。あの神姫、うるさいから壊してしまいたいの』 「今はバトル中よ?」 『うるさくてバトルに集中できないわ』 「……あなたがそういうなら、仕方がないわね」 『それじゃあ、あのウサギの隙を突いて、指示をちょうだい』 「わかったわ」 □ 「ナナコ! 目を覚ましなさい! ナナコ!!」 俺の胸元で、ミスティが菜々子さんに呼びかけ続けている。 しかし、菜々子さんは反応する様子さえない。 ミスティを無視している……というより、ミスティの存在を最初から認識していないかのようだ。 一体、彼女の身に何が起こっているのだろう。 横道に逸れそうになる思考を、無理矢理引き戻す。 まだバトルの真っ最中だ。 今度はティアが自ら仕掛けた。 俺の思惑通りにティアは戦ってくれる。こんな小さなところに、いままで一緒に戦ってきたティアとの確かな絆を感じる。 立ち止まっているストラーフBisの背後から、頭に向けて牽制の射撃。 ようやく反応したストラーフがティアの方を向く。 ティアがさらに攻める。 ストラーフの副腕「チーグル」は防御のため、上げられている。 そこをかいくぐるように、姿勢を低くしたティアが滑り込む。 すれ違いざま、手にしたナイフが閃いた。 ストラーフBisの素体下腹部に裂け目が走る。 最接近したティアに対し、ストラーフの脚、副腕、ロケットハンマーが次々に襲いかかった。 「わっ、わわっ」 あわてた声を上げながらも、ティアは華麗なステップさばきで、ストラーフの断続的な攻撃を次々と避ける。 ティアならば、この程度の攻撃で後れを取ることはない、と俺は確信している。 いつものミスティや、『塔の騎士』ランティスの攻め方がはるかに厳しい。 ならば行けるだろう、このリアルバトルという状況であっても。 俺は心を決めて、指示を出す。 「ティア、ファントム・ステップだ!」 『はい!』 ◆ そのころ、三冬はいまだスターゲイザー二体による波状攻撃に苦しめられていた。 こうも間断なく仕掛けてこられると、鬱陶しくてかなわない。 しかも、操っている本人……マグダレーナは高見の見物を決め込んでいる。 何を企んでいる。 向こうの方が時間に余裕がないはずなのに。 三冬もいい加減、我慢の限界が来ていた。 「奥様! そろそろケリを付けましょう!」 「そうね……もう少し何を企んでいるのか探りたいところだったけれど……いいわ、蹴散らしなさい、三冬! ストリートファイター・モード!」 「はっ!」 三冬の気合い声が響く。 見た目に何か変わったようには見えない。 変わったのは、技の体系だった。 三冬は、二体の一つ目ランプのようなメカを、できる限り引きつけた。 「いくぞ……竜巻旋風脚!!」 ……それは往年の格闘ゲームの技であったという。 三冬はその場で飛び上がると、右足を振り上げる。同時に、背部のスラスターに点火、三冬の身体を持ち上げつつ、右方向に回転させる。 結果、三冬は高速回転による空中回し蹴りを炸裂させる。 さすがのスターゲイザーも、この動きには対応できなかった。 引きつけられていた二体は、まるで渦に吸い込まれるように、三冬の蹴りを食らったように見えた。 目玉のついたランプ型のサブマシンは、二体とも地面に弾き飛ばされる。 初めての有効打であった。 三冬のバトルスタイルのコンセプトは、頼子の趣味丸出しである。 頼子は学生の頃、それも菜々子が武装神姫を手にした歳と同じくらいから、ゲームセンターのビデオゲームが大好きだった。特に、対戦格闘ゲームというジャンルが。 以来、今の歳になるまで、一貫してゲームが趣味である。武装神姫にも、ゲームの一種という認識で手を出した。 頼子は考えた。 武装神姫のスペックを持ってすれば、現実には不可能な、格闘ゲームの超人的な必殺技の数々を再現できるのではないか、と。 結果、三冬は近接格闘メインの神姫となり、俊敏な動作重視のカスタマイズが行われ、頼子が健康と趣味のために学んでいた太極拳と、数々の格闘ゲームの技を修得した。 デビュー当時はキワモノ扱いされた頼子と三冬であったが、いまやそのバトルスタイルは、『街頭覇王』の二つ名とともに畏怖の象徴になっている。 回転を止め、空中から降下してくる三冬。 この瞬間は無防備だ。 その隙を突いて、黒い影が突進、ビームトライデントを繰り出してくる。 三冬はとっさに腕アーマーで払おうとした。 が、何かがそれを押しとどめ、かわりに背部スラスターを噴射した。 後方へと飛び退き、ビームの刃をかわす。 意識しての行動ではない。 積み重ねた戦闘経験がさせた無意識の行動だった。 繰り出されたビームトライデントを捌こうとするなら、ビーム自体ではなく、出力されているビームの根本……今の場合なら、燭台部分を払わねばならない。 しかし、マグダレーナの攻撃は、それを許さない間合いだった。 だから三冬は飛び退くしかなかった。 なんという絶妙の間合い取り。 三冬が戦慄する中、マグダレーナは不適な笑いを浮かべ、言った。 「くくっ……制空圏は把握させてもらった」 「……そう来たか」 三冬は苦い表情で、再び繰り出されるビームの刃を回避する。 制空圏とは、格闘家が持つ、有効な攻撃を放てる間合いのことだ。 達人クラスの格闘技者ともなれば、自分の周囲すべての間合いを把握しており、間合いの内に入れば、必殺の攻撃を繰り出せる。 三冬ならば、自分の有効間合いに入った相手を、太極拳の動きでからめ取り、地面に引き倒すことが可能だ。 その間合いはすでに結界に等しい。 それを制空圏と呼ぶのである。 マグダレーナは、三冬の制空圏を把握していた。 三冬は一つ舌打ちをする。 スターゲイザー二体に手こずり過ぎた。おそらくあのサブマシンどもで、三冬の制空圏を計っていたのだ。 今のマグダレーナは、初撃の時の迂闊さは見られない。 ビームの刃だけを制空権圏に触れさせ、三冬の攻撃が触れられないギリギリの位置で攻めてくる。 三冬はマグダレーナの攻撃をかわすたび、眉間のしわを深めた。 「くそ……」 「なるほど、よく持っているが……これならどうだ? スターゲイザー!」 マグダレーナの一声に、倒れていたサブマシンが再起動した。 まずい。 ただでさえやっかいなスターゲイザーの波状攻撃に、マグダレーナの巧妙なビーム槍の攻撃が加わっては、反撃もままならなくなる。 焦りが三冬の表情を険しくさせた。 それでも三冬は構える。 ピンチの時こそ冷静に。 ゆるり、と大型のアームが円を描く。 太極拳の螺旋勁。太極拳の動作の根幹をなす、基本中の基本だ。 頼子奥様と共に、毎日毎日鍛練を積んできた。 表情から焦りが消える。 襲い来る三つの影。 三冬は動きを止めない。自らの修練を信じ、迎え撃つ。 ◆ 三冬とマグダレーナが激しい戦いを繰り広げる中、久住頼子は物陰から少し顔を出し、桐島あおいの位置を確認する。 彼女もやはり物陰に隠れているが、その距離は意外に近い。 よし、と自分に気合いを入れ、声を上げて話しかける。 「あおいちゃん!」 「……頼子さん……公式ランカーのあなたがこんなところに来るとは予想外でした」 「わたしはね、ファーストランカーである前に、菜々子の家族なのよ」 「なるほど……」 頼子が今日ここに来たのは、ただマグダレーナの相手をするためだけではない。 頼子はこの二年間、あおいと会うことはなかった。 だからこそ疑問に思っていた。 菜々子から伝え聞いた、あの夏の豹変ぶりを。 あおいの本当の気持ちがどこにあるのか、確かめなくてはならない。 それはきっと、菜々子を助け出した後に必要になるはずだから。 「あおいちゃん、もうやめなさい。こんな戦いは不毛なだけだわ」 「仕掛けてきたのはそちらです」 「それだけじゃない。裏バトルへの参戦、そして壊滅。そんなことをして何になると言うの」 「わたしには……わたしとマグダレーナには、目的があります」 そう言うあおいの口調が、先ほどとは違うことに、頼子は気付いた。 うすら笑いしながらの穏やかな口調ではない。 しっかりと意志を持った、真剣な言葉。 あおいちゃん、あなた……。 彼女は狂っているのではない。正気だ。異常に見えるあおいの行動はすべて、彼女の正常な意志のもとに行われている。 あおいの……いや、あおいとマグダレーナ、二人の目的を果たすために。 頼子は眉をひそめる。 マグダレーナは、あおいの目的を果たすためにいるのではないのか? あおいの言葉からすると、マグダレーナもまた、自ら目的を持って、自発的に動いているということになる。 「目的って……復讐? ルミナスを壊されたことへの恨みなの?」 「復讐なんて……ルミナスを壊したエリアを壊滅させたところで終わっています」 あおいの言葉に苦笑が混じる。 復讐、ではない? 頼子は、あおいの行動原理が復讐だと思っていた。 最愛の神姫を破壊せざるを得なかった、裏バトル界すべてへの復讐。 「復讐じゃなければ、何だっていうの?」 「言えません」 「なぜ?」 「頼子さんはわたしと共に戦ってくれそうにはないからです」 「そんな理由で……わたしだけでなく、他の仲間たちも遠ざけて、たった一人で……そうまでしなくてはならないことなの、あなたの目的とやらは!?」 「同じ事を、菜々子にも言われましたよ」 ちらりと見えたあおいの顔。 一瞬苦笑していたが、眼は笑っていない。 「すみませんが頼子さん。わたしたちの行く手を邪魔するならば、たとえあなただろうと容赦はしない」 真摯で真っ直ぐな口調。強い意志を宿す瞳。 頼子は確信する。 狂っているのではない。 明確な目的意識を持って、最凶の神姫マスターを演じながら、裏バトル界を潰しにかかっている……! 頼子は一つ深呼吸をすると、気持ちを落ち着かせる。 再びあおいを見る。 頼子の顔に、ベテラン神姫マスターの、凄絶な笑みが浮かんだ。 「ファーストランカー相手に、随分と余裕の発言ね、あおいちゃん」 「マグダレーナならば、たとえファーストリーグ・チャンピオンでも敵ではありません」 「大きく出たわね……痛い目見るわよ?」 頼子は三冬に視線を移す。 彼女のハウリン型は、サブマシン二体とマグダレーナを相手に苦戦中だ。 制空圏の範囲を測られ、防戦一方になっている。だが、三冬が防御に徹しているがゆえに、マグダレーナの方も攻めきれずにいる。 ならばやりようもある。 「三冬! 一気に蹴散らすわよ! サイコクラッシャーアタック!」 「承知!」 三冬の返事には、少しの安堵と開放感が混ざっていた。 次へ> Topに戻る>