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第十三話:再生姫 「ところでありえないスキルってのはどんなものなんだい?」 日暮はミズキを蒼貴用の修理パーツとするために各部位ごとに解体しながら、俺に未知のスキルである煌めく刃の事について聞いてくる。 「苦無が宝石みたいに輝くブレードになるものです。媒介となったのは苦無でイリーガルのボディすら切断できるので明らかに規格外のスキルであったというのはわかるのですが……」 言葉の通りだった。蒼貴の右手に収束した塵が煌く宝石のような剣。それ以外に表現できる言葉は見当たらないし、そうした前例も無いのだから俺には事細かに説明する事はできそうにない。周りには申し訳ないが、俺は一般人の域を超えることは出来ないしな。 「もしかするとこの子自身のスキルなのかもしれないね」 「蒼貴自身の?」 「ああ。オリジナル武器でも自作のスキルプログラムを組み込めばスキルが発動できるのは知っているよね?」 「ええ」 「あれはぶっちゃけるとそうする必要ないんだ」 「……どういう事ですか?」 蒼貴の左半分が吹き飛んだ腹部パーツを取り外す日暮がオリジナル武装の定義を根底から覆す発言をする事に驚いた。 俺のその反応を楽しむかの様に彼は蒼貴の修理をしながら言葉を続ける。 そもそもスキルプログラムという物はCSCの力を引き出す事で生じる仮想物質をいかなる形で行使するかを決める方程式、いわゆる誘導プログラムであるのだという。 確かにスキルを行使する際には相応のスキル制御力であるSPレベルが求められ、なおかつその武器を持つ事が条件となっている。日暮の言う事はSPレベルという点がミソであると考えられる。 日々の鍛錬によってCSCが研ぎ澄まされていき、それによって会得したスキルを必要な武器を使って放つ。ここまではいい。そこでオリジナルの武器を使ってそれをするとなるとどうしても公式のプログラムという物が使えず、神姫自身で引き出す、或いはそれ専用のプログラムを組む必要があるのである。 後者でやっていた場合、それが無くなれば補助輪の無くなった自転車を漕ごうとして転ぶ子供の様に行使する事が出来なくなってしまう。しかし、それを神姫自身が学習する前者であれば、それが無くとも――いや、それに類似する武器があればそのスキルを行使することが出来るのである。オリジナル武装を装備し、独自のスキルを行使する物は大抵がこれにあたるのだというらしい。 「蒼貴ちゃんの使った煌めく刃はその最たるモノだね。武装を問わない点では他の神姫達と一線を画しているよ。何もない所から作って、一度斬って壊れたのを見ると仮想物質で空気中の何かで収束、定着させる事でブレードに変えたんじゃないかと思う」 「二酸化炭素……? いや、ここに実例があるとは言え……」 それを聞いて俺は思考を巡らせ、空気中に含まれるものから二酸化炭素に辿り着いた。炭素を空気中のチリと一緒に仮想物質で収束させてダイヤモンドの剣を作り出しているのではないだろうか。そう考えれば強化されたイリーガルのボディをバターを切るかのごとく斬り裂くのも、スキルが切れて、定着が失われた事で粉々になるのも納得できる。しかしながら非現実的すぎる。錬金術でもあるまいに。 「いや、不可能な話じゃない。そういう類の事は職業柄よく見ているものでね。その中でも彼女は凄腕の才能の持ち主だと思うよ」 それでも日暮は肯定する。さっきから驚かない所を見ると、こういった状況には見慣れているのだろうか。その経験の多さもさることながら、その類の知識も半端ではなさそうだ。一体彼が何者なのかは知らないが相当の大物であるのは間違い無いだろう。 「そんな知識があるとは凄いですな。貴方は何者なんです?」 「正義の味方さ」 「……正義の?」 疑問の返事に俺は眉をひそめた。よりにもよってそんな言葉が出てくるとは思いもしなかったのだ。それを平然と言ってのけるのは正直、恥ずかしいとは思わないのだろうか。 「そうさ。まぁ、君はそういう言葉は気にいらないって感じそうだけど、そういう信念を持っている人間って事さ。それぐらいは理解してくれるだろう?」 「……ええ。それは否定しません。ただ、正義という言葉は危険だと考えてますが」 そう。正義、引いては善悪とは自身におけるルールでしかない。そのタイトロープで引かれた一線を越えるか否かで全てが決まってしまう。ある人にとっては善でも、他の人にとっては悪かもしれない。そう、俺には思える。 「それでいいさ。その考えが君にとっての正義だしね。それに正義っていうのは議論するものじゃなくて、自分だけが心得ておくものだから、さ」 「それは同感です」 「ま、その話は後に置いておくとして、スキル名は何にするんだい?」 「スキル名?」 「ああ。あった方が何かと便利だからね。何よりカッコいいだろ?」 「ははは……。そうですね……」 「話から考えて『塵の刃(ダストアエッジ)』ってのはどうだい? 塵を集めて刃にしちゃうんだし」 「あんまり考えていなかったんで、それでいいですかね……」 修理を続けながら日暮が考えたスキル名に俺は納得し、シンプルなそれを気に入った。あまりに凝りすぎた名前は好まない自分には良い。 さらに日暮は塵の刃の予想される長所と短所も語った。 まず言えるのはスキルといってもあくまで武装を作り出すだけのスキルであるため、スキルであってスキルでない。故にそれを振るおうがあくまで通常攻撃でしかないためあくまでも自分の技量に依存する攻撃である上に、神力解放をしないと一回で壊れるあまりにも脆いスキルである。 しかし、今回購入したミズキの装備でそれはある程度は補われる。その装備に刃には神力開放と呼ばれるBMが搭載されているからだ。 神力開放はCSCから供給され、スキルを使うことで発散されるSPを内部に留め、循環させる事でSPの消費を無くし、無限機関を作り出す。それによって神姫の素体そのものが活性化し、各能力が高まると共にスキルを連発する事が可能となる。 そしてその能力を塵の刃に使う事で神力開放状態の時に限り、塵の刃は攻撃しても破損せずに維持し続ける事ができると日暮は推測したらしい。 しかし、俺の言葉の通りならあくまで武器を作り出すだけのスキルであるため、後は蒼貴の技量次第になるとも聞かされた。 それ次第ではもしかすると別の形を形成でしたり、複数出せる事も考えられる。使いこなせれば恐らくは相当強い。神力解放を使ってからを前提にすれば、連続攻撃そのものが必殺技になるだろう。 「僕の推測ではそんな感じかな。試してみる必要はあるけどね。……さて、完成したよ」 「これは……」 しばらくの可能性の話を終えた日暮から完成の報を聞いて見てみると彼女は修理されて完全な姿になっていた。 いや、完璧にやった訳じゃない。破損によって失われた箇所を可能な限りミズキのパーツに換装して補った結果、右はフブキ、潰れた左はミズキの顔の顔となったアンバランスなコア、フブキの黒とミズキの白が混在するチグハグな素体となっており、俺の要望通りの姿となって復活したのである。 不完全ではある。が、あいつらしい。そう思う。 「君の頼み通りだ。どうだい?」 「ありがとうございます。これで蒼貴はまた立つ事が出来るんですね」 「ああ。早速起動しよう。急速充填バッテリーを使うからすぐだ。……おっと、バッテリー代はミズキのお代に含んでおくからいらないよ」 「助かります」 気を利かせてくれた日暮は在庫から急速充填バッテリーを取り出すとそれを蒼貴の充電コネクタに接続し、起動する。その瞬間バッテリーは一瞬で充填され、蒼貴をいつでも起動できる状態になった。 彼は充填を終えると少し離れて、俺に蒼貴の起動を促す。それに俺は無言で答え、彼女に歩み寄り、起動させた。 「ん……」 「おはよう。よく寝れたか?」 「はい。……お手数掛けました」 俺の呼びかけに気づき、答えようとした時、自分の変化に気づいて自分のフブキの右手とミズキの左手を見比べて状況を察し、俺に申し訳なさそうに頭を下げてくる。 「謝らなくていい。それは大事だからやったまでだしな。……無事で何よりだ」 「このやり取り……最初に会った時みたいですね」 彼女はそう言って微笑む。言われて思い出した。あの時もそうだ。気にかけて謝られてこうして「気にするな」と返してとそんなやり取りを繰り返してばかりだった。 こんな危ない時にでもこうとは本当に俺達は何も変わらない。だからこそこうしていつも通りであろうとこいつは頑張れるのか。 「バカ野郎……。心配させやがって……」 「ごめんなさい……」 「もうあんな無茶はやるんじゃねぇぞ。命を粗末にするもんじゃない」 「神姫に命は……」 「命だ。心があればそれは命なんだよ。わかったな?」 「……はい。オーナーに心配をかけさせない事を約束します」 「それでいい。それと礼はこいつに言ってやれ」 俺は蒼貴の隣に横たわっているミズキのパーツの残りを指さした。日暮が可能な限りのパーツの換装をしたため、残っているのは右半分のコアと外装、CSCの基盤パーツぐらいなものだったが、彼女は確かに蒼貴の命を救ってくれた神姫だった。 「犠牲とかそんなんじゃないぞ。こいつはこれからお前と一緒に生きるんだからな」 「はい」 俺が彼女に罪悪感を与えない様な言葉を付け加えると蒼貴はそれに頷き、ミズキのパーツに近づいて頭を下げた。その姿は自分の命を助けてくれた神姫に感謝の念で溢れていて、蒼貴の優しさが感じられた。 「日暮さん。世話になりました」 「気にすることは無いよ。僕は僕の仕事をしただけだ。代わりと言っちゃ何だけど、早速、見せてくれないか? 塵の刃を。ミズキのボディのテストも兼ねてね」 「蒼貴、やれるか?」 「……やってみます」 日暮の提案に俺は蒼貴に聞いてみると、彼女は強く頷く。まだ大怪我から復帰したばかりなのにここまで強い気持ちを持って答える。 「OK。じゃあ、僕のバトルシミュレータでテストしてみようか」 修復を終えた俺たちは日暮のバトルシミュレータブースヘと案内された。 見せられたそれは意外と小さかった。それはクレイドルらしき神姫を配置するスペースがあるまるでゲームセンターの駆体のような物だった。 「これがバトルシミュレータさ。ちょっとしたコネで先行配置させてもらったんだ。もう周りでも普通に設置されていると思うけど、ここのは前からあるからデータの蓄積量が違うよ」 「これがそうなのですか……週刊バトロンで見ましたが、実物を見るのは初めてですよ」 「まぁ、数はまだある訳じゃないからそういう事になるかもね」 バトルシミュレータとはクレイドルと似た機器に自分の神姫を接続する事でその神姫をデータとしてシミュレータ内に投影して仮想空間での戦闘をする事を可能とする対戦する神姫がダメージを直接的に負う事のない画期的なシステムだ。近年、バトルロンドをするためにはスペースを多く取る必要がある問題を対処するための案として各地に試験的に配置されている。もし、これが成功すれば少ないスペースで誤って神姫のCSCを破損させられる事もない安全なバトルロンドを行う事が可能とされている。 しかし、現実でないが故に何らかのシステム的な介入、電気系のトラブルには弱く、細かい装備のカスタムがフィードバックされないなど、利点ばかりではない。 故にリアルバトルとバトルシミュレータは議論やいさかいはあるだろうがその両方は共存し、長所と短所から見た各々の好みで戦いの場としてどちらかを選ぶとされているのだという。 「でも、これで大型のアミューズメントパークに行かなくてもバトルロンドを手軽に楽しめるようになるから、僕としてはいいと思うよ。バトルロンドの楽しさをここで伝えられるからさ」 「同感ですね。これの小型化が成功すれば家でも出来るようになるかもしれないですな」 「そういう事になるだろうね。さて、テストを始めよう。蒼貴ちゃんをそのクレイドルみたいな場所に接続してくれ」 日暮に言われ、俺は蒼貴をシミュレータに置いて接続を始めた。そうすると彼女は目を閉じ、ちょうど充電の時と同じ状態になった。 それと同時にバトルシミュレータが起動し、そこのフィールドに蒼貴が投影される。これで彼女の転送が完了したらしい。 「相手は僕の方で用意するよ。君の噂からして過去のデータで務まる相手と来ると……」 日暮は俺が蒼貴を接続している間に向かい側の席でシミュレータを操作し、ネットワークに登録されている過去の神姫達のデータを検索していた。 「この子なんてどうかな?」 彼は見つけた神姫を蒼貴の対戦相手として出現させた。過去のデータを使って構築され、そこに現れたのは騎士型 サイフォスタイプの神姫だ。通常の物と違い、赤い鎧と背部に様々な武器が分解して搭載してあるフロートユニットを装備した強襲仕様の装備が施されてある。通常のサイフォスよりも高い防御力を維持しながら攻撃力が高まっており、さらに弱点である重量もそれで補っている様だ。 画面にその神姫の名前が表示される。その名はモルトレッド。別名……。 「ブラッディ・ワルキューレ(血塗られし女戦士)か!」 「そう。結構なランカーだよ。やれるかい?」 「……上等! 行くぞ! 蒼貴!!」 「はい!!」 不敵な顔をする日暮の挑戦状に俺達は答え、構える。 ここまでの用意をしてもらったのならばそれに応じるのが礼儀というもの。塵の刃と神力開放、試させてもらおう。 戻る 進む
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ここは「マイティのひと」が作成した武装神姫ショートストーリー 『Mighty Magic』シリーズを掲載しております。 著/マイティのひと ※コラボレーション大歓迎也。 ※文字サイズを通常よりも一段階小さくしてご覧になると読みやすくなります。 ※本文は随時加筆修正されます。更新履歴をご参照ください。 ※現在諸事情により更新速度が激減しております。何卒ご了承ください。 - 昨日 - 今日 - 合計 神姫とそのオーナーたち 装備構成解説 設定解説 本文ページ(妄想設定準拠) マイティ編 Mighty Magic ・インターバトルO「アーキタイプ・エンジン」 ・強敵 ※『不良品』?とのコラボ作品 ・犬達の出会い ・バトリングクラブ ・インターバトル1「プレゼント」 ・変身! ※魔女っ子神姫☆ドキドキハウリンとのコラボ作品 ・主義 ※岡島士郎と愉快な神姫達より、鶴畑大紀ゲスト出演。 ・インターバトル2「誤情報」 ※パカパカ祭りより ・インターバトル3「エルゴより」 ※HOBBY LIFE,HOBBY SHOPとのコラボ作品 ・固執 ・戯れ(18禁作品) ・インターバトル4「親友」 ・インターバトル5「トレーニング・デイ」 ・信念 ・インターバトル6「変身! そのに」 神姫たちの舞う空 ・事前予告 某月某日2001時 ・開催前夜 二ヵ月後、某月某日2221時 ・参加手続および第一次作戦会議 *月*日1144時 ・エルゴ飛行隊(ERGO Spuadron)メンバー表 ・出撃~接敵 1223時~1236時 ・交戦~十五分経過 1236時~1245時 ・~三十分経過 1245時~1302時 ・戦況再変~戦術再考 1303時~1311時 ・コンタクトイエロー~第一ラウンド終了 1312時~1330時 クエンティン編 CROSS LO[A=R]D ※全編にわたって、岡島士郎と愉快な神姫達より鶴畑コンツェルンの面々が特別出演しております。 ・第一話「修正」 ・第二話「融合」 ・第三話「エイダ」 ・第四話「それぞれの正義」 ・第五話「相対」 ・第六話「恐怖の正体」 ・第七話「OFイクイップメント」 ・第八話「襲撃」 ・第九話「拉致」 ・第十話「知性」 ・第十一話「決意」 ・第十二話「回帰」 ・第十三話「脱出」 ・第十四話「アーマーン」 ・第十五話「上空戦」 ・第十六話「共鳴」 ・第十七話「憧憬」 ・第十八話「教育期間」 ・第十九話「逃亡」 ★The Latest Chapter★ シエン編 クレマチスの檻(タイトル決定) ※CROSS LO(A=R)Dが終了し次第連載開始。 Archives エロ妄想スレッドにて初期に書いた拙作二編。 For Adult only! ・ヴァッフェ装備のこと ・知識 参考文献 私が拙作を書く際おおいに助けていただいた書籍を紹介しています。 ※五十音順、敬称略 相田裕 『ガンスリンガー・ガール』電撃コミックス 押井守 『アヴァロン~灰色の貴婦人~』メディアファクトリー カズオ・イシグロ 『わたしを離さないで』早川書房 神林長平 『戦闘妖精・雪風《改》』 『グッドラック 戦闘妖精・雪風』 “火星三部作” 『あなたの魂に安らぎあれ』 『帝王の殻』 『膚の下』 いずれもハヤカワ文庫JA ※その他の作品も、機械知性を考えるのに役立ちます。 京極夏彦 “京極堂シリーズ” 『姑獲鳥の夏』講談社文庫 『魍魎の匣』講談社文庫 グレッグ・イーガン 『ひとりっ子』 士郎正宗 『攻殻機動隊 The ghost in the shell』 『攻殻機動隊1.5 Human-error processor』 『攻殻機動隊2 Manmachine interface』 いずれも講談社 藤田博史 『人形愛の精神分析』青土社 船木亨 『デジタルメディア時代の《方法序説》 機械と人間とのかかわりについて』ナカニシヤ出版 宮沢賢治 『新編宮沢賢治詩集』新潮文庫 ご感想などどうぞ。 サイドボードがタネとは、目からウロコでした。カードゲーム的発想ですね~ -- ねここのひと (2006-10-26 07 43 55) けっこう面白い話があるので、いつも楽しみにしています。 -- 名無しさん (2007-01-03 12 57 09) 面白い話とシリアスな話がそれぞれ展開していくのがいいですね。 -- 名無しさん (2007-01-04 16 06 00) 神姫たちの舞う空編、続きがむちゃくちゃ楽しみです! -- 神姫の父 (2007-01-13 21 10 23) 燃えますな大規模空戦!続きを楽しみにしております。 -- Gの人 (2007-01-16 00 24 46) いよいよ戦闘開始ですね! 次回も楽しみにしております! -- ドキ(ryの人 (2007-01-16 01 02 43) CROSS LO[A=R]Dがマジ熱い!! -- 名無しさん (2007-01-30 07 15 42) 名前 コメント
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前へ 先頭ページ 次へ 「固執」 仰向けに寝ながら、神姫スケール換算地上千メートルを、高速巡行するマイティ。 手足には軽量で対実弾防御力のあるカサハラ製鉄ヴァッフェシリーズのプロテクターを着込み、クリティカルな胸部には同梱装備のアーマー、頭にはヘッドセンサー・アネーロをかぶる。 右手はミニガンではなく、アルヴォPDW9。アーンヴァルの実弾射撃武装はどちらもケースレス方式をとっている。飛び出した薬莢が飛行機動を阻害する恐れがあるためだ。とくに高速移動時にその弊害が見られ、だからミニガンは飛行時に正面へ撃つことができない。 背中のウイングユニットには、ありとあらゆる推進装備がくっつけられている。エクステンドブースター、ランディングギア。そしてヴァッフェシリーズのスラスター。融通の利く動きはほとんどできないが、一方向に集中したノズルは莫大な推進力を生み出す。アラエル戦のバトルプルーブを経て、各パーツの配置が一新され、よりパワーロスが少なくなった。 翼の一方に、バランスの低下を承知で、LC3レーザーライフルを搭載していた。この装備方法では飛んでいる方向にしか撃てない。巡行武装だと割り切っている。 ここはホビーショップ・エルゴの対戦ブースである。このたびの大改装でセカンドリーグにも参加できるようになり、マスターは二駅をまたぐ必要がなくなったのだった。 スペースでは対戦相手がいない場合、こうして一人でテストモードが出きる。トレーニングマシンが普及してから使われなくなった機能だが、現在でも律儀に入れられている。 「どうしてトレーニングマシン、使わないんです?」 店長が訊いた時、 「実戦に使われるフィールドの方が役に立つ」 とマスターは答えた。 確かにトレーニングマシンと実際に試合に使用されるフィールドには若干の差がある。しかしそれは本当に若干なもので、だから皆将来的な経費が押さえられるトレーニングマシンを買うのである。 マスターの家にも無論、トレ-ニングマシンはある。 「マイティ、どうだ」 バーチャル空間の中を飛び回るマイティに話し掛ける。 『やっぱり空気の重さが違います。マシンでできたような無茶な機動が、たぶん出来ません』 バトルスペースのマシンパワーに、やはりトレーニングマシンはかなわない。戦闘中はだいたい高速で動く神姫には、この差は場合によっては致命的な差となる。 マスターもマイティも、今、一種のマンネリを覚えていた。 バトルの成績は悪くはない。ファーストへの昇格はいまだ高嶺の花だが、それでも順当に戦えている。 バトルのアクセス料金、マイティの武装代、メンテナンス料金、武装神姫というカテゴリにかかる料金はすべて、いわゆるファイトマネーでまなかうことが出来た。 余談ではあるが、この「勝てばそれなりに報酬がもらえる」という制度が実現したことが、武装神姫の世界的な発展につながった一翼を担っていると言っても過言ではない。実現にあたっては「ゲームがけがれる」とか「ギャンブルだ」などという辛辣な批判ももちろんあった。 しかし結果として、良い方向に実現した。 第三次世界大戦も起こらなかったし、宇宙人の侵略もなかったのだ。ゲームに報酬が設定された所で、なんのことがあろうか。と、人々が思ったかどうかは分からないが。 閑話休題。 ともかくそれでも、何か初期のキラキラした感覚が鈍くなってきていることは、お互いに分かっていた。 その対処法が分からない。 結局問題は棚上げで、今に至る。 『Here comes a new challenger』 ジャッジAIが挑戦者を告げる。 テストモード中はオンラインオフラインに関わらず、対戦受付はオープンにしてある。当たり前だがシャットアウト機能は無い。対戦スペースにいるのはすべからく対戦許可とみなされるのだ。 相手はオンラインからだった。 『よろしくお願いします』 当り障りの無い挨拶。女性らしい。 「よろしく」 マスターは適当に答える。 相手はセカンド。大体自分と同じような戦績。いや。 最近特に伸びてきている。 マイティがいったん待機スペースへとリターン。 『どうします?』 「例の機能を使ってみようと思う」 『じゃあ、初期装備はこのままですね』 「なるべく広いフィールドの方が良いが、狭くてもすぐ対応できる」 『分かりました』 マイティ、準備完了。 すぐに周囲のポリゴンがばらばらになり、フィールドが再構成される。 『バトルスタート。フィールド・地下空間01』 広大な空洞。高さもあるが、下は一面湖だった。所々に浮島があり、またいたるところに石の柱が立っている。 一方の入り口から、マイティが巡行飛行状態で入場。 もう一方から入ってきたのは、ストラーフタイプだった。 かなり軽装である。 ヴァッフェシリーズのブーツを履き、大腿と手首には同根装備のスパイクアーマーをそれぞれ取り付けている。胸部はハウリンの胸甲・心守。 頭部にフロストゥ・グフロートゥ、二の腕にフロストゥ・クレインを装備しているが、あれでは武器を使用できない。アクセサリーと割り切っているのだろうか。 主武装が新装備のサイズ・オブ・ザ・グリムリーパーと、二体のぷちマスィーン、肆号とオレにゃんしかなかった。プチマスィーンはどちらも射撃用のマシンガン。 何よりも特徴的なのは、メガネをかけていることだった。 「軽装備……?」 それに装飾が過ぎる。 マイティは疑問に思った。 『何か仕込んでいるのかもしれない。気をつけろ』 「了解」 そのまま巡航で近づく。ためしにレーザーライフルを二、三発撃ってみる。 ストラーフが消える。 「!?」 『光学迷彩だ。センサーをサーマルに切り替えろ』 「は、はい」 「はっずれ~♪」 真上から声が聞こえた。背筋が一気に凍りつき、マイティは慌てて後方にマシンガンの 銃口を向けようとする。 がごんっ 胸部をしたたかに打たれ、マイティは失速。落下した。 「な、なに?」 マイティは何が起こったのか分からず混乱した。姿勢を制御するのを忘れる。 『マイティ、機体を起こせ!』 はっ、と気づいてフラップを最大限に傾ける。 水面すれすれでマイティは水平飛行に移る。水しぶきが上がる。 胸部アーマーがべっこりとひしゃげていた。ストラーフは鎌の背でなく、刃で打った。アーマーが無ければ負けていた。 「マスター、今のは!?」 『分からん。瞬間移動に見えた。今解析している』 『調べても無駄よ』 相手のオーナーが言った。 『本当に瞬間移動ですもの』 『何?』 マスターのモニターに相手の画面が現れた。眼鏡を掛けた黒髪の女性。 『公式武装主義者(ノーマリズマー)のマイティに会えて嬉しいわ』 『もう二つ名がついているのか。光栄だな』 『セカンドながらあの鶴畑を倒した実力派ですもの。神姫に入れ込んでいる人間なら、だいたい知っているわ』 『さしずめそちらは特殊装備主義者(スペシャリズマー)というわけか。マイティ』 「は、はい」 『装備Bに切り替える』 「分かりました」 マスターがコンソールを操作する。 マイティはウイングユニットを丸ごと切り離すと、浮島の一つに着地。シロにゃんにコントロールが移ったウイングユニットは、ランディングギアを浮島に落とす。 『サイドボード展開。装備変更』 マイティの脚からブーツが消え、代わりにランディングギアが瞬時に装着される。肩と大腿のプロテクター、そしてひしゃげた胸部アーマーがポリゴンの塵と化し、ふくらはぎのアクセサリポケットが肩に移動。 武装にも変更が加えられた。アルヴォPDW9が消失し、カロッテTMPが出現。 左手首のガードプレートが、右手首同様ライトセイバーに代わる。 予備武装としてランディングギアにバグダント・アーミーブレードを装備。 最後に、天使のような翼が背中から生える。「白き翼」だ。 『飛び方は覚えているな』 「はい。さんざん練習しましたから」 『よし、行け』 ひと羽ばたき。それだけで、マイティは相手のストラーフの立つ浮島へ急速に接近した。 バララララララ 接近しつつTMPを撃つ。 ストラーフはまたもや消失。真左に反応。 左を向いて確認する隙も惜しんで、マイティは反射的に左手のライトセイバーをオン。そのまま切り付ける。 「おっと」 ストラーフは、上、に避けた。 間違いない。こいつは飛べるのだ。 どうやって? 『原理は不明だが瞬間移動が主な移動手段だ。姿勢制御による若干の移動を、頭と二の腕 のブレードと手足でやっている』 マスターが解析した。 なんて飛び方! 後方からがっちりと拘束される。 「おしまいね」 ストラーフがくすっ、と笑う。 鎌が首筋に当てられようとする。 マイティは両肘で相手の腹を打つ。 「やばーん!」 飛び去りながら、ストラーフが叫ぶ。 「うるさいっ」 マイティはTMPを精密射撃。 しかし鎌をくるくると回転させ盾にされる。 二体のぷちマスィーンズが反撃の連射。 マイティは白い翼を前方で閉じる。 翼の表面に銃弾が当たる。が、ダメージは無い。翼は盾にもなるのだ。 「ばあ」 翼を開いた途端、目の前に舌を出したストラーフ。瞬間移動だ。 ガキンッ! 突き出された鎌を、TMPで受ける。TMPは壊れて使い物にならなくなった。 ライトセイバーを伸ばす。ストラーフはあろうことかぷちマスィーンを盾にして後退。マスィーンズは爆砕。ポリゴンになって消える。 「マスター、瞬間移動のパターンは!?」 『今のところ直線距離でしか移動していない』 つまりいきなり後ろに回り込まれることは無いということ。だが、横に移動した後、後ろに、と二段階を踏めばそういった機動も出来てしまう。 あまり意味が無い。 「そうよ、この瞬間移動は自由自在なのよ」 マイティの懸念を見透かしたかのように。ストラーフは笑った。 「しかも」 真横。 「何度も使えちゃう」 真後ろ。 「くうっ……!」 マイティは宙返り。ランディングギアでオーバヘッドキックを浴びせる。 「きゃんっ!?」 頭に命中。ストラーフは急速に落下する。マイティはアーミーブレードを両手に装備。 「やったわねぇっ」 浮島を蹴り、目の前に瞬間移動。 予想通り! マイティはブレードを振り下ろす。f 瞬間移動した直後は瞬間移動できない。当てられる! しかし、ストラーフは消えていた。 「予想通り」 頭上から声。姿勢制御による限定機動! 「お返しよ♪」 頭をぶん殴られ、マイティは一瞬気を失う。 屈辱。殴られるのは一番そう。これは人間も神姫も変わらなかった。 「シロにゃん!」 「にゃーっ!」 いつのまにか接近していたウイングユニットがストラーフに体当たりを仕掛ける。 「そんなハッタリ無駄!」 ズバッ 鎌で一刀両断。ウイングユニットは消えてしまう。 『主義と固執は違うのよ』 ストラーフのオーナーが言う。 『何を……』 『通常装備だけではおのずと限界がある。あなたも薄々感づいているはず』 『何が言いたい』 マスターは苦虫を噛み潰したような顔をした。 『あなたの実力ならファーストには行けるでしょう。でも、ファーストでは固執は許されないわ。認められたあらゆる手段を使わなければ勝てない場所よ』 『アドバイスのつもりか』 『あなたがあの片足の悪魔と戦いたいのなら、ね』 『……!!』 その名前が出てきたことに、マスターは驚きを隠せなかった。 モニターから嫌な音がした。 ストラーフの鎌が、マイティの額を刺し貫いていた。 驚愕に目を見開くマイティ。ポリゴンの火花を撒き散らして、消滅。 『試合終了。Winner,クエンティン』 マスターは初めて、相手の神姫の名前を知った。 マスターはしばらく、コンソールに手をつきながら前を見つめていた。 ハッチの開いたポッドに座り込みながら、マイティはおどおどするしかない。 「帰るぞ」 唐突にそういわれたので、マイティは立ち上がる際転びそうになってしまう。 ねぎらいの言葉を掛ける店長も無視して、マスターは足早に店を出た。 了 前へ 先頭ページ 次へ
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ウサギのナミダ ACT 1-14 ■ 雨の街は、いつもとその様相を一変させていた。 あれほどに鮮やかだった風景は、色を失い、輪郭さえもぼやけている。 すべて水に濡れ、色褪せて見えた。 まるで、かつてわたしがいた場所のように、灰色の世界。 雨に追われ、人々は足早に過ぎ去っていく。 足下の神姫になど注意を払う人はいなかった。 降りしきる雨は、痛いほどにわたしを叩き、瞳からこぼれる涙さえも、洗い流されてゆく。 これは、あの空の涙なのだろうか。 空にも心があって、悲しくて辛いことがあるのだろうか。 上空を垂れ込める雲に、心を灰色に塗りつぶされて、涙をこぼすのだろうか。 今のわたしと同じように。 わたしはもう、悲しいとか辛いとか、そういう感情を通り越して、ただ、ぼうっとしていた。 瞳から流れる涙だけが止まらない。 だから、きっと、悲しいのだろう。 悲しすぎるのだろう。 だけど、その涙さえ、雨に混じってしまい、わからなくなる。 わたしはもう、泣くことさえも許されてはいないのだと思った。 わたしは、あの後、PCのワープロソフトを起動して置き手紙を残すと、マスターの家を出た。 お風呂場の窓は換気のために開けてあることは知っていたので、出るのは容易だった。 ……こんなときばかり、トリックはうまく行く。 衝動的に出てきてしまったけれど、行く当てなんてなかった。 はじめは、お店に戻ろうかと思った。 でも、お店の場所をよく知らない。 マスターのところに来るまで、お店を一歩も出たことがないのだから、当然だった。 それに、もう帰る気になれなかった。 お店に帰れば、またお客さんに奉仕する日々に戻るのだ。 それ以外の世界を知ってしまったわたしは、お店が神姫にとって地獄のような場所だと知ってしまった。 もう、戻りたくはなかった。戻れなかった。 あの、わたしを連れだしたお客さんのところはどうだろう。 ……結局は同じことだ。いや、お店にいるときよりもっとひどい仕打ちを受けるかも知れない。 そこには行きたくない。 ……わたしは、なんとわがままなのだろう。 マスターを自らの手で汚しておきながら、もう自分が汚れるのは嫌なのだ。 こんな神姫が一緒では、マスターが不幸になるのも当然だった。 いや、元から誰かの武装神姫になる資格なんてなかったんだ。 なんという身の程知らず。 取り返しがつかなくなって、やっと思い知るなんて。 もうこれ以上、マスターを汚すわけにはいかなかった。 だから、わたしは姿を消すことにした。 そう、このまま消えてしまおう。 この世から。 ふと見上げると、駅前の歩道橋が目に入る。 わたしはのろのろと、その歩道橋の上へと向かう。 □ 俺は走っていた。 雨の中をひたすらに、走っていた。 足下に注意を向けながら。 ティアを探す。 ティアがうちを出て行く先の心当たりなど、そう多くはない。 まして神姫の身であれば、そう遠くへ行ってはいないはずだ。 俺とティアがゲームセンターに次いで多く行った場所。 あの大きな公園だ。 俺は公園へと向かっていた。 この雨だというのに、傘も差していないから、全身ずぶぬれだった。 足が地面を着くたびに、がぽがぽと水が貯まった靴が音を立てる。 それでも、そんなことはかまっていられなかった。 雨の公園には人っ子一人いなかった。 遊歩道を取り巻く木々の緑も、今日ばかりは色褪せて見える。 動くものとてない静寂の中、静かな雨音だけが広大な空間を支配していた。 「……ティア!」 その静謐を破り、俺は何度も呼びかける。 遊歩道を何度もまわる。 しかし、ティアの姿を見つけることは出来ない。 ベンチの前で、俺は立ち止まった。 散歩に来て、ティアを走らせているときに、俺が座っている、いつものベンチ。 ここにもティアの姿はない。 晴れた日の情景が心に浮かんでくる。 ティアは朝の澄んだ空気の中を駆け抜ける。 ぐるりと遊歩道を周回してくると、トリックを決めて、ベンチの上に着地する。 そして、俺を見上げる。 嬉しそうに、少し恥ずかしそうに、笑うのだ。 「……なんでだっ!!」 俺は地面に膝を着き、ベンチの上にうなだれた。 なんでだ。 なんで「さようなら」なんだ。 なんで俺の前からいなくなるんだ。 なんで、なんで、なんでなんでなんでなんで!!! 「……ティア……」 神姫の名を呟く。 迷惑だなんて。 お前が側にいてくれれば、そんなものは気にするほどのことでもないのに。 お前以外に、俺が自分のパートナーにしたい神姫なんていないのに。 他のどんな神姫も、お前の代わりになどならないんだ。 やっと出会えた俺の神姫なんだ。 だから。 俺にどんな迷惑かけてもいいから。 側にいてくれ、ティア……。 ◆ 久住菜々子はゲームセンターの壁によりかかり、見るともなしに、バトルロンドの観戦をしていた。 腕を組み、やぶ睨みで、大型ディスプレイに鋭い視線を投げつけている。 いつものような親しみやすさとはかけ離れた緊張感が全身から漲っている。 宣戦布告から一日。 菜々子を待っていたのは「無視」という仕打ちだった。 エトランゼはティアを擁護すると知り、神姫プレイヤーは皆敵に回った。 しかし、面と向かって文句は言ってこない。いや、言えないのだろう。 なにしろ三強を三分かからずに倒してのけたのだから。 実力でかなわない相手に対し、示した態度は、徹底した無視だった。 まるでそこに存在しないかのように。 挨拶しても、話しかけても、振り向きさえしない。 常連の誰に話しかけても、そんな態度だった。 もちろん対戦は誰も乱入してこないし、こっちが乱入したら、一瞬でサレンダーされた。 すでに常連の間では、エトランゼに対してそういう態度をとることで話が通っているのかも知れない。 これで菜々子がゲーセンを出ていけばよかったのだろうが、彼女はかえって意地になった。 壁に張り付き、無言のプレッシャーを与え続けている。 これでは気になって仕方がない。 しかし、今日は週末で、ランキングバトルの開催日だ。常連達は帰るわけにも行かず、菜々子からの妙なプレッシャーに耐え続けなければならなかった。 「菜々子ちゃん……」 「ああ、大城くん……」 声をかけてくるのは大城だけだった。 大城は心配そうだ。 見かけによらず、人が良いのだろう。 「いいの? ランバト、始まるわよ」 「うん、まあ……でもよ、菜々子ちゃんも……ここにいないほうがいいんじゃねぇか? だったらさ……」 「だめ。遠野くんとティアを待っているから。この店からは動けない」 「でもよぅ……」 無視されている菜々子を気遣って声をかけてきてくれていることはわかっているし、ありがたい。 逆に言えば、大城以外の誰も、菜々子の味方はいないのだ。 だが、彼とてずっと菜々子と話していれば立場が悪くなる。 大城と虎実はランバトに参戦している。 常連達との関係を悪くしたくはないだろう。 「……ひとりくらいは」 「え?」 「他に一人くらいは、わたしに賛成してくれる人、いると思ったんだけどな……」 自嘲気味に笑う。 つい本音が出てしまった。 本当は、菜々子は心細かった。 大見栄切ってみたものの、味方をするべき本人達はいまや嘲笑の的であり、ゲームセンターにもやってこない。 孤立無援の戦いは始まったばかりだったが、こうあからさまに無視されると、菜々子の心の方が折れそうだった。 自分達こそ正しいはずなのに、どうしてこんなにもつらいのだろう。 菜々子は下唇を噛んだ。 一瞬、沈黙が降りた。 ゲームセンターの喧噪が耳を震わせる。 と、近くで、電子音が鳴った。 携帯電話だ。 目の前の大城が、ポケットから携帯電話を取り出す。 シンプルな機種だが、ストラップにアクセサリーがジャラジャラとついている。 「遠野からだ……もしもし、大城だけど」 菜々子は一瞬、息を飲んだ。 「……おい、大丈夫か? あ、いや、声が……ああ、いいぜ。気にすんな」 今度は大城が息を飲んだ。 「……ティアがいなくなった、だ!?」 その場にいた二人と、二人の神姫が同時に息を飲んだ。 「……で、心当たりは……ああ、うん、駅? そうか……ああ、わかった。わかったから、こっちはまかせろ。 気にすんな。お前はそっちの心当たりを探せよ。 わかった、連絡する。じゃあな」 携帯電話を切ると、厳しい顔で菜々子を見た。 「ティアがいなくなった。遠野が必死で探してる」 「そんな……」 「あいつ、聞いたこともないような……泣きそうな声で……くそっ!!」 大城は店のスタッフのところに行くと、手短にランバトの参加キャンセルを伝えて、そのまま店の出口へと急ぐ。 「待って、大城くん! わたしも行く!」 菜々子は反射的に答えていた。 が、大城は振り向いて、 「菜々子ちゃんは待っていてくれ。 もしティアがここに来て、井山と会ったりしたら、それこそ大変なことになる。だから……」 菜々子を押し止めた。 そう言われたら、菜々子は頷くしかなかった。 大城は雨の中、傘を差して駆け出していく。 菜々子は身体を抱くように腕組みをすると、再びゲームセンターの壁にもたれかかった。 「ティア……なにやってんの……」 いらだった口調で、ミスティが呟いた。 神姫がマスターの元を飛び出してどうするというのだ。 この雨の中、たった一人でどこへ行くというのだ。 神姫をなくしたマスターがどれほど心配するものなのか、わかっているのかしら、ティアは! ミスティが親指の爪を噛み、いらだちを増している。 菜々子はさっきからうつむいたままだった。 だが。 ……震えてる? 体重を預けている菜々子の肩が細かく震えている。 そして、かすかな声。 「だめよ、ティア……いなくなるなんて……」 「ナナコ……?」 菜々子は思い出す。 自らの神姫をロストした日のことを。 身も心も引き裂かれたあの日。 菜々子の瞳からは涙さえ枯れ果てた、あの時。 「ぜったいに、だめよ……」 あの時の気持ちは「心が引き裂かれた」なんて生やさしいものじゃない。 恐怖だ。 自分のせいで、神姫を帰らぬものにしてしまった、底知れない絶望だ。 あんな思いを、遠野にさせてはだめだ。 あんな思いを、自分に近しい人にしてほしくはない。 だから菜々子は痛切に願う。 ティア、無事でいて、戻ってきて、と。 菜々子が深い想いに沈んでいるそのとき、彼女の前に影が差した。 小柄な、四つの影。 「あなたたち……?」 ミスティの声に、菜々子はゆっくりと顔を上げた。 目に入ったのは、四人の女の子の姿だった。 菜々子より少し年下だろうか。思い詰めたような表情で、菜々子を見つめている。 菜々子の視線を感じてか、四人とも緊張に肩をすくめた。 「……なに?」 ごめんね、優しい声をかけてあげられなくて。 視線も不躾で、疑わしくて。 あなたたちも……ひどいことを言いに来たの? よく見れば、彼女たちは見かけたことがあった。 いつも四人でバトルロンドをプレイしている女の子のグループだ。 このゲーセンの常連で、和気藹々と仲間内でプレイしているのをよく見かけている。 いずれもライトアーマーの武装神姫のマスターだった。今も、自分の肩にそれぞれの神姫を座らせている。 一人の少女が、思い切ったように菜々子を見つめた。 セミロングの髪に、眼鏡をかけた、まじめそうな女の子。彼女がリーダー格なのだろう。 眼鏡の少女は必死の表情で、口を開いた。 「わたしたち、エトランゼさんの代わりに、ティアを捜してきますっ!」 「え……?」 「わたしたち、エトランゼさんに賛成です。味方です!」 菜々子は思わず言葉を失い、少女達を見た。 少女達は口々に話しはじめる。 「わたしたち、いままでのこと、全部見てました」 「雑誌のことも、ティアのマスターが怒ってるところも、昨日のエトランゼさんのバトルも……」 「それで、みんなで話し合ったんです。わたしたち、エトランゼさんのファンで、憧れてるんです」 「だから、一人で頑張ってるエトランゼさんを応援しようって……」 「ちょ、ちょっと待って?」 菜々子は驚いて、話を遮った。 「わ、わたしのファンだからって、わたしの味方することはないのよ? だって、いまのわたしは……」 「ちがうんです、それだけじゃないんです」 今度はリーダーの眼鏡の少女が話を遮った。 「わたしたち、ティアのマスターに、親切にしてもらったことがあるんです」 「わたしたちは、この四人でばかりバトルしてて、他の人達とバトルあんまりしないんですけど」 「対戦台が空いていなくて困っているとき……ティアのマスターに譲ってもらったんです」 「一人プレイで対戦待ちしてたのに、途中で中断して、『ここどうぞ』って……」 「それも、一回だけじゃないんです。一人でプレイしてるときは、必ず譲ってくれて……」 「でも、わたしたちがお礼を言うと『きにしないで』って言ってくれて、まるで当たり前のことをしてるって感じなんです」 すると、少女達の肩にいた神姫の一人、ポモック・タイプが無邪気な声を上げた。 「ティア、笑ってくれたよ!」 すると、他の少女達の神姫も、顔を見合わせて頷いた。 「うん、笑ってたね」 「ティアも優しく笑ってくれました」 「なにも話さなかったけど、『いいよ』って言ってくれてるみたいだった」 菜々子は何も言えず、四人の少女を見つめていた。 「それで……わたしたち、話し合ったんです。ひどいことされてる神姫が、あんな風には笑えないんじゃないか……」 「ティアのマスターは、いつも紳士的な態度でした。彼こそが、武装紳士というのにふさわしいんじゃないですか?」 「だったら、雑誌見て笑ってる人達は? ティアのマスターをあんな風に怒らせる人達こそ、間違っているんじゃないの? って……」 「誰が本当に正しいのか……わたしたちはわかってたはずなんですけど……言い出す勇気もなくて……」 「でも、憧れのエトランゼさんが、ティアにつくって言ってくれたから」 「わたしたち、バトルも強くないし、足手まといかも知れませんけど!」 「でも、わたしたちにできることくらい……ティアを代わりに捜しに行くことくらい、手伝わせてください!」 四人の少女は、菜々子に頭を下げた。 「お願いします!」 菜々子は、ゆっくりと一歩踏み出す。 そして、四人の少女をかき抱いた。 「エ、エトランゼさん……?」 「……お願いするのは、わたしのほう」 足手まといだなんて。 今の菜々子には、一騎当千の仲間を得た気持ちだ。 心が痛いほど嬉しくて、泣きそうだった。 でも、泣いてはだめだ。 今は、泣くよりも先に、やらなくてはいけないことがある。 「ティアを、捜して。遠野くんを助けて」 四人は、一瞬腕に力を込め、抱き返してくれた。 「まかせてください!」 菜々子は、リーダーらしき眼鏡の少女と携帯番号を交換する。 名前を八重樫美緒、という。ウェルクストラ・タイプのオーナーだった。 見つけたら美緒を通して連絡をもらえるように言うと、四人は雨の街に飛び出していった。 ■ 高いところから見下ろす道路は、まるで車が流れる川のようだ、と思った。 人が乗れるほどの大きな金属の固まりが、何台も何台も流れては過ぎていく。 ここから落ちれば、きっと車にはじかれて、わたしの身体は粉々に砕け散ってしまうだろう。 でも、わたしは、歩道橋の柵の間から下を見下ろしたまま、動けずにいた。 自分から身を投げる意気地もないのだった。 もうどうしようもない。 何一つできない自分に嫌気が差す。 だけど、もうすぐバッテリーが切れる。 そうしたら、わたしは姿勢を保持できなくなり、ここから落下するだろう。 わたしの意識がなくなった直後に。 わたしはそれを待っている。 その間に、わたしは思いを巡らせた。 わたしがいなくなったら、マスターは新しい神姫をお迎えするだろうか。 きっと、するだろう。 今度は、わたしみたいな面倒くさくて出来の悪い汚れた神姫ではなく、オフィシャルの新品の純粋な武装神姫を。 その子は間違いなく幸せになれる。 だって、マスターの祝福を一心に受け、成長することが出来るのだから。 マスターだって、きっと幸せになれる。 誰の目もかまうことなく、自分の神姫を連れ、堂々とバトルに挑める。 公式戦にだって参戦できる。 きっといい成績が残せるだろう。 ゲームセンターの人達にも認められ、きっと久住さんや大城さんとも、もっと仲良くやっていけるだろう。 ミスティさんは、新しい神姫を笑顔で迎えてくれるに違いない。 虎実さんだって、わたしのように避けることなんてしないはずだ。きっといいライバルになれるはず。 想像の中にいるわたしの大切な人達は、みんな明るい未来に向かって歩いている。 ああ、そうだ。 わたしがいなければ、大切な人達はみんな幸せになれる。 わたしなんか、最初からいなければよかったんだ。 『わたしなんか』って言ったら、マスターに怒られるけれど。 でも、もうマスターが怒ったりすることもありません。 わたしはもう消えますから。 だからマスター。 どうかどうか、幸せに……。 視界がぼんやりと霞んでいるのは、涙のせいなのか、雨のせいなのか、それとも、もう焦点を合わせられなくなったのか。 膝の力が抜ける。 ああ。 全身を浮遊感に抱かれて。 わたしの意識は暗転した。 次へ> トップページに戻る
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{Hacking!} 俺はデスクトップパソコンを操作しVIS社に自分のIDを使ってログインする。 前々から怪しい会社だと思っていた。 でも姉貴の会社だし、それにいたって会社の構造や人員内部はまともだったからな。 だから手は出さなかったが…。 あの日…アンダーグラウンドのバトルでアンジェラスが変貌したあの日をキッカケに俺は決断した。 その決断とは、アンジェラスを生み出したあの会社に何かあると感じ調べようと考えたのだ。 「ログイン完了。最初は普通に探ってみるか」 マウスは素早く動かし、俺のIDでどこまで潜れるか試す。 カチカチ…カチ……カチカチ 静寂していた地下部屋にマウスをダブルクリックする音が響く。 不必要だと思った場所はウィンドウをすぐに閉じ、すぐさま別のページにとぶ。 そんな事を繰り返してるうちに『オリジナル武装神姫』のページを見つけた。 『オリジナル』という言葉が気になる。 「開いてみるか」 ページを開こうとマウスを動かしクリックした。 <ビー、このIDはではこのページを閲覧する事は出来ません> 「………ここまでか」 機械音らしい声で拒否された。 どうやら俺のIDの権限はここまでらしい。 あんまり役にたたないなぁ。 まぁ、所詮バイトだからIDを貰えるだけまだマシか。 「そんじゃ、ヤりますか」 両手の指をパキパキと鳴らし、右手でマウスを動かし左手でキーボードを素早く操作。 そして俺はデスクトップ画面にある一つのフォルダーを開き、その中に入ってるソフトを起動させた。 「さぁ、タップリと犯してやりな」 俺の声とともに起動させたソフトはフル活動する。 このソフトは俺が作った触手型ウイルス。 一般的な大学生がウイルスなんか普通は作れない。 が、俺は作れた。 生きるため、人間、必死に物事に集中すれば何でも出来るかもしれないと、俺は思ったね。 闇一場で色々なウイルスソフトを買って、中身を調べに尽くした結果、この『触手ウイルス』を作る事が出来た。 このウイルスは単純にしてタチが悪いウイルス。 ターゲットに潜り込む前に『自分は敵じゃない』と相手のセキュリティーシステムに認識させてから潜り込む。 この敵のセキュリティーシステムにあえて自分を教え、攻撃もされず難無く潜り込むのがえげつない。 潜り込んだら凌辱ゲームとかによく出てくる触手を思いうかべてほしい。 あんな風にウネウネと動き、隅々まで増殖しデータをパクっていく。 勿論、破壊する事も出来る。 で、今回のターゲットをレイプするのはVIS社だ。 破壊が目的ではなく、あいつ等の過去を探るため。 「…早くヒットしてくれよ」 ピピピピ! パソコンについてるスピーカーが鳴りヒットした事をしらせてくれる。 早速、マウスを動かしヒットしたデータを閲覧する。 閲覧すると画面上に四つのデータが開かれた。 そろぞれのデータに『Eins』『Zwei』『Drei』『Vier』と、ドイツ語で書かれていた。 「何故ドイツ語…?…アッ!」 夢の中で見た、あの頑丈そうな鉄の扉かもしれない。 それにあの元大学生のお姉さんもドイツ語を言ってたし。 これはあくまでも俺の推測だが…もしかしたら、あいつ等の事がこの四つのデータに書かれているかも! マウスを動かしまず最初に『Eins』というデータを開く…だが。 「…またセキュリティーかよ。萎えるぜ」 しかも最初にあったセキュリティーより頑丈そうだ。 これはかなりの時間がかかりそうだ、どうせ他の三つデータも同じぐらいのセキュリティーレベルに違いない。 畜生、釈然としないが時間的に引き際だな。 いつまでも潜り込んでたら、流石のセキュリティーも不信がるはず。 なんたってVIS社の最高機密データに当たっちまったのだからな。 早々に触手ウイルスを引っ込ませ、ログアウトする。 勿論、ちゃんと足が着かないようにログも消す。 今回はここまでにしとくが、次は絶対に暴かせてもらうぜ!
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ウサギのナミダ ACT 1-27 □ ゲームセンターは大歓声に包まれた。 東東京地区チャンピオンが繰り広げた死闘に誰もが興奮していた。 純白の女王が、醜聞にまみれた神姫をうち負かした。 ギャラリーの多くは、そんな英雄譚を目の当たりにしたと思っているのだろう。 観客達の興奮をよそに、俺も高村も呆然としていた。 あまりに劇的な結末に、思考がおいつかない。 フィールドの映像が消える。 死闘の舞台となった廃墟は消え去り、無機質な筐体の姿に戻る。 アクセスポッドが軽い音を立てて開いた。 「……ティア」 俺は自らの神姫に声をかける。 ティアは立派に戦った。 全国大会でも優勝候補と名高い、あの『アーンヴァル・クイーン』をあそこまで追いつめたのだ。 せめてねぎらいの言葉をかけようと、アクセスポッドをのぞき込む。 ティアは膝を抱えて、うずくまっていた。小さな肩が震えている。 「ティア……どうした」 うるさいぐらいの歓声がいまだやまない。 ティアは何か言っているようだが、俺の耳には届かない。 「お前はよく戦った。そんなに落ち込むこと……」 「……った」 「え?」 「勝ち……たかった……勝ちたかった、勝ちたかった! 勝たなくちゃダメだったんですっ!!」 「ティア……?」 突然振り向いて叫びだしたティア。 驚いた。 こんなに感情をむき出しにしたティアを見たことがない。 俺は気後れしながら呟くように言った。 「なんでだよ、こんなただの草バトル一つが……」 ティアは大きく頭を振った。 ティアの顔は泣き顔に歪んでいた。大きな涙が瞳から流れては落ちていく。 いつもの可愛らしさは微塵もなかったが、感情を顕わにした表情が生々しくて、かえって美しかったかもしれない。 「だって……あのひとに勝てれば、証明できるから……マスターが正しいって、みんな認めてくれるはずだからっ……!!」 「……っ!」 俺は言葉を失った。 俺のため、だと? 「……マスターが作ったこのレッグパーツも、マスターが考えたこの戦い方も……クイーンに引けを取らないって。 わたしがマスターに教えてもらったものは、なんの罪もなく、正しく、つよいんだって!」 激しい口調で言い募っていたティアは、不意に顔を伏せた。 静かな口調になりながら、なおも言葉を紡ぐ。 俺は驚いた表情のまま、聞いていることしかできないでいる。 「……そうしたら、みんな認めてくれます、マスターのこと……。きっと、マスターのこと悪く言う人はいなくなる……わたしだけが汚いって、そう言われればいい……。 嫌だったんです……マスターはわたしに優しくしてくれて、とっても優しくしてくれて……後ろ暗いことなんて何もしてないのに……だけど、だけど……わたしのせいで、みんながマスターを傷つける……そんなこと、耐えられなかったんです……」 いつしか、歓声はなりを潜めていた。水を打ったように静まり、ゲーム機のデモ音だけが遠くから聞こえてくる。 気がつけば、その場にいる観客達すべてが、ティアの言葉に耳を傾けているようだった。 「だけど、わたしにはできることもなくて……マスターに返せるものも、なにもなくて……。 だから、雪華さんとのバトルは、わたしにとっては最初で最後のチャンスだったんです。 彼女ほどの強くて有名な神姫にわたしが勝てれば、みんながマスターを認めてくれるはず……だから、どうしても、マスターを勝たせてあげたかった……でも!」 透き通った滴は、次から次へと、ティアの瞳から生まれては落ちていく。 ティアの心から溢れ出した、悔しさや悲しみや情けない気持ちが、まるで形になっているかのように。 「負けてしまった……わたし、マスターの言いつけを破ってまで、雪華さんと戦ったけど、負けてしまいました……。 ……ごめんなさい、マスター。ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさ……」 もう、そこから後は声にならなかった。 ティアは泣きじゃくって、何度も何度も瞳を手でこするが、そのたび涙がこぼれてきて止まらなかった。 ◆ ティアのすすり泣く声だけが、店に響いていた。 誰もが押し黙り、居心地を悪くしながらも、泣きじゃくる神姫から目が離せずにいる。 そんな静寂を甲高く小さな足音が破った。 カツン、カツンと、規則正しく鳴り響く。 雪華だった。 彼女はアクセスポッドから出ると、筐体を横切ってティアに近づいていく。 その顔は平常と変わらず、誇りと決意に満ちていた。 誰もが、マスター達すら身動きが取れずにいる空気の中、彼女だけが決然とした歩みを進めていく。 ティアのアクセスポッドの前にやってくると、歩みを止めた。 ティアもその気配を察し、涙をボロボロとこぼしながら、雪華の方を振り向いた。 雪華と目が合う。 すると、雪華は真剣かつ厳しい表情で、ティアを見つめた。 何をするのか、その場にいる全員が緊張して見つめている中で。 なんと雪華は、その場で膝を地について、右手を胸に当てて、ティアに礼の姿勢を取ったではないか。 『クイーン』の二つ名を持つ誇り高き神姫が、自ら膝を折り、最上級の敬意を払っているのだ。 そしてさらに。 「ティア……わたしの負けです」 その場にいた人々、そして神姫達の間に動揺が走った。 いや、誰よりも驚いていたのは、雪華のマスター・高村かも知れない。 大きく目を見開いて、雪華の背をみつめている。 あの誇り高い神姫が、ジャッジAIの判定を自ら覆し、敗北を認めたのだ。 そんな周りの様子など目にも入らないかのように、真剣な顔つきで、それでいてとても優しい声で、雪華は続けた。 「わたしも、今の戦いの中で疑問に思っていました。たかが草バトル。どうしてあなたはそうまでして戦うのか、と。 でも、そんなことは考えるまでもない、当たり前のことでした。 マスターのために戦う。 それは、わたしたち武装神姫にとって、もっとも根元的で、もっとも尊い思いです。 わたしは、強くなることにこだわるあまり、そんな当たり前のことさえ気がつかなかったのです。 その思いこそが、一番大切な支えであることすら忘れて……」 雪華はティアから視線を逸らし、うつむいた。 美しい顔に苦渋が滲んでいる。 「ティア……わたしは恥ずかしい。 あなたの大切な戦いを、たかが草バトル、とあなどっていました。 ……思い上がっていました。 わたしこそ、武装神姫としてあるまじき存在です。 どうか……お許し下さい」 雪華はさらに頭を深く下げる。 ティアはしゃくりあげながら、あわてた様子で声をかける。 「そんな……ひっく、せつかさ……かお、あげて……ひっく、えぐ」 一拍の間をおいて、雪華がゆっくりと顔を上げた。 そして、再びティアをまっすぐに見つめて言う。 「武装は神姫のアイデンティティ、技はマスターとの絆」 雪華の赤い瞳に、泣きはらしたティアが映っている。 「あなたは武装ではなく、技を持ってわたしと渡り合った。そして、わたしをギリギリまで追いつめた。公式戦でも、あそこまで追いつめられたことはありません。 あなたとマスターの絆こそがあなたの強さ。 ならば、あなたのマスターは、正しくそして強い。少なくとも、このわたしを負かすほどに」 雪華の声は真剣そのものだった。 雪華は心からティアを賞賛し、自らの敗北を当たり前の事実として受け止めているようだった。 「そして、ティア。武装神姫として、誰よりもあなたを尊敬します。 そんなあなたと、わたしはライバルであり、友達でありたいと思っています。 もし、許されるのであれば……わたしなどでよければ……認めてくださいますか?」 ■ 雪華さんの言葉に、わたしは驚いて目を見開いた。 とんでもないことだった。畏れ多いことだった。 泣くことすら忘れて、首を横に振った。 「だ、だめですっ……そんな、わたし、みんなからなんて言われているか……雪華さんに迷惑がかかります……っ」 「いいえ」 彼女はゆっくりと立ち上がると、アクセスポッドに身を乗り出した。 そして、優しく、強く、わたしをを抱きしめてくれた。 「迷惑なんてかかりません。誰がなんと言おうと関係ない。あなたと戦った神姫ならみんな分かっているはずです。あなたは素晴らしい神姫であると」 雪華さんは断言する。 「そんなあなたを育てたマスターは間違ってなどいない。正しく、理想のマスターであると思います」 ……わたしは雪華さんの胸にすがりついた。 もう止まらなかった。 大きな声で、子供のように泣きじゃくった。 伝わった。 わたしの大切な思い、このひとには伝わった。 マスターのこと、わたしのこと、信じてくれた。 ありがとう、と。 口に出そうとしたけれど、うまくいかなかった。 □ バトルロンドのコーナーは喧噪に包まれている。 俺たちがバトルしていた筐体の周りに人が集まり、いまだ誰もバトルを始めようとはしない。 誰もが今のバトルの話に夢中だった。 筐体の上では、ギャラリーしていた神姫たちが集まり、ティアと雪華をもみくちゃにしていた。 そんな中、俺は考え事をしながら、のろのろと片づけを行っていた。 すると、筐体の向こうから、にこやかな笑顔がやってきた。 「ナイスファイトでした」 高村が俺に左手を差し出す。 俺は椅子から立ち上がると、彼の左手を取って握手した。 俺の右手は、いまだ包帯が巻かれている。 「……こちらこそ。……変な幕引きになってしまって、すまない」 俺が頭を下げると、高村はゆるゆると首を振った。 「いいえ……僕たちには実りの多い幕引きでした。価値ある敗北だったと思います」 「敗北? 君たちの勝ちだろう?」 「いえいえ。雪華が負けを認めたのです。彼女の意志は、マスターの僕であっても覆せない」 高村の笑顔からはそれ以外の意志は読みとれなかった。 雪華は自分の意志を曲げないし、頑として譲らないらしい。相手がマスターであっても。 誇り高いというか、融通が利かないというか……。 「でも、雪華も少しは考え方を変えるでしょう。 いままでの雪華は、試合に勝つことを一番に考え、それこそが強くなることだと思ってきました。 でも、今日、それでは計り得ない強さがあることを知った。 あなたたちのおかげです。ありがとう」 高村は素直に頭を下げた。 俺の方こそ恐縮してしまう。 「……試合前は、失礼なことを言って、すまなかった。 俺たちとバトルすれば、君たちが中傷されるかも知れないと思った。 だから、バトルを断るつもりで……あんなことを言ったんだ。 本当にすまない……三枝さんも、すみませんでした」 俺が謝罪して頭を下げると、三枝さんは驚いていた。 まあ、あれだけ嫌味を含めて断っていたのだから、信じられないのも無理はないと思う。 高村は、やはり笑って、 「わかってますよ」 と頷いた。 そんな彼に、俺は思っていたことを口にする。 「高村……今度、もう一度バトルしてもらえないか? それから、もっとゆっくり話がしたい。今日はずっと変な流れで、俺自身、納得がいっていないから……」 「喜んで」 高村はポケットから名刺を取り出すと、俺に差し出した。 「僕の連絡先です。気が向いた時にでも連絡してください」 「ありがとう」 俺は素直にそれを受け取った。 必ず連絡しよう。高村とも雪華とも、話したいことがたくさんある。 そして、今度は何のしがらみもなくバトルがしたい。 その時のティアも雪華も、きっと今とは違っているだろう。同じバトルにはきっとならない。 「……だけど、再戦したら、秒殺されそうだ」 「それはないでしょう。だって、あなたは雪華用の戦略をすでに考えているでしょう?」 「ちがいない」 俺と高村は笑った。彼に笑いかけたのは、これが初めてのような気がする。 俺はつくづく失礼な奴だ。 だが、許して欲しいと思う。俺たちを取り巻く問題が一応の解決を見たのは、今朝の話だったのだから。 そして、気がついていた。 俺にはまだやらなければならないことがあった。 ◆ 虎実は、筐体での喧噪には混じらず、大城の肩の上で一人物思いに耽っていた。 ティアは、一戦交えたときから、虎実の憧れであり、目標だった。 いつもオドオドした態度にいらつくこともあったが、バトルでの彼女を純粋に尊敬していた。 虎実はいつもティアを無視していた。 自分が決めた最大のライバルとなれ合うのはごめんだと思っていた。 だけどそれは、彼女の素直でない性格からくる考えだった。 今日のバトルを見て、虎実は思った。 やはり、自分の目に狂いはない。ティアはすごい神姫だった。 クイーンの最大攻撃をかわせる神姫なんて、他にいるはずがない。 そして、雪華がティアに「友達になってほしい」と言ったとき。 虎実は自分の気持ちに気がついた。 そう、友達になりたかったのだ。 ティアに自分を認めてもらいたかったのだ。 自分がティアにとって、胸を張って友でありライバルであると言える神姫だと、そう思って欲しかったのだ。 だから、納得のいく自分になったときに、バトルしてもらいたいのだ。 自分のすべてを見てもらうために。 虎実は雪華がうらやましかった。妬ましくて仕方がない。 でも、虎実は自覚する。自分はあの二人の足下にも及んでいない、と。 「なあ、アニキ……」 「ん?」 「アタシ……トオノにあんなえらそうなこと言ったけど……ティアと戦う資格、あんのかな……」 ミスティにはその資格があると思う。このゲーセンで実力を示し、三強をもひとにらみで黙らせる。 その実力を持って、今日、遠野とティアをここに招いたのだ。 悔しいが、認めざるを得ない。 それに比べて虎実は、やっとランバトの上位に食い込んだところだ。 だが。 「……ばっかじゃねぇの?」 彼女のマスターである大城は、呆れた声で言った。 虎実は大城に振り向く。 「資格とか、そんなもの、必要なモンかよ。 バトルロンドは、お前が考えてるほど堅苦しくないぜ? バトルやりたきゃ、遠野にそう言えばいい。 そんなこと考えてるのはよ、虎実、お前だけだ。 意地っ張りはやめて、ティアとバトルしたいって、言えばいいんだよ」 虎実は大城の言葉にむっとした。 でも、反論できなかった。アニキの言うことは正しい。 結局、虎実の意地っ張りな性格が、素直な気持ちに邪魔をしているだけなのだ。 それでも、と虎実は思う。 それでも、納得のいく自分になって、ティアに挑みたい。 その気持ちは本当だった。 もしかすると、納得のいく自分になるために、ティアを目標にしているのかも知れない。 「それでも……やっぱり、自分に納得がいってから、ティアと戦いたい。 そうじゃなきゃ、またはじめの時みたいに、悔しい思いをすると思う」 それは約束だ。 あの日、遠野に必死でお願いをした、約束。 遠野は約束を守って、ティアをバトルロンドに連れ戻してくれた。 その約束を守るためにも、半端な自分ではだめだ。 虎実は決意を新たにする。 納得いくまで、自分のスタイルをつきつめよう、と。そして強くなろう、と。 大城はため息をついたようだったが、気にもならなかった。 □ バトルロンドコーナーでの喧噪が、ようやく収まってきた頃。 「ティア、帰るぞ」 頃合いを見計らい、俺はティアに手の甲を差し出す。 ティアはまだしゃくりあげながら泣いていた。 そばにミスティがついていて、まわりを四人のライトアーマーの神姫たちが囲んでいる。 神姫たちはティアに道をあけてくれた。 ティアはまだ震えながら、俺の手に乗る。 ミスティたちは気遣わしげな表情で、俺を見た。 俺の心に、彼女たちの優しさが染みた。 ティアをこんなに思ってくれている仲間がいる。認めてくれている友がいる。 そしてもう、それを捨てようなどと、俺たちは考えなくてもいいのだと。 そんな小さな幸せを噛みしめる。 俺が少しだけ笑顔を見せて頷くと、五人の神姫たちは華やぐように笑ってくれた。 ティアを定位置の胸ポケットに収めて、俺は振り向く。 そこには久住さんと仲間たちがいた。 今回のことでは、久住さんには世話をかけっぱなしだった。 本当に、感謝してもしきれない。 今朝の事件の顛末も、話をしておきたいところだった。 だけどその前に、今すぐに、俺はどうしてもやらなくてはならないことがあった。 「ほんとうは、ゆっくりお礼をしたいんだけど……」 「分かってる。また今度でいいから」 「ありがとう」 「……でも、連絡くれなかったら、承知しないわよ?」 「……肝に銘じておくよ」 いたずらっぽくウィンクなんかした久住さんに、俺はドギマギしてしまった。 同時に、「承知しない」の一言に肝を冷やし、後で絶対に連絡を入れようと固く誓った。 俺はつくづく、久住さんに頭が上がらない。 俺はまだにぎわっているゲームセンターから、みんなに隠れるようにして帰宅の途についた。 高村と雪華との話もそこそこに、久住さんへの報告もそのままに、俺が急いで帰るのには理由がある。 俺がティアのマスターとして、やらねばならないこと。 さっきのティアの言葉で気づかされた。 ティアを本当に俺の神姫にするために、それはきっと必要なことだった。 だから俺は家路を急ぐ。 あたりはもう夕暮れに赤く染まっていた。 次へ> トップページに戻る
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SHINKI/NEAR TO YOU Phase02-3 『さあ! 今年もやってきました神姫センター春の祭典、マヤノスプリングカップ! 先日行われた一般トーナメントに続き、子どもの日である本日は小中学生によるジュニアトーナメントが開催されます。若人たちが熱きバトルを繰り広げるこのトーナメント、今年は第一試合から注目の参加者が登場だぁっ!!』 マイクを持った司会者はそこで一拍置くと、筐体の一角にスポットライトが当たる。 『当神姫センター注目の上位ランカー! 女子中学生にして総合ランキング6位の実力者、伊吹舞とその武装神姫、マオチャオのワカナだぁぁぁっ!!』 筐体のシートに腰掛ける伊吹とエントリーボックスに立つワカナの姿が、ライトに照らされながら手を振る。周りの観衆から送られる盛大なエール。 その光景をシュンは隣のシートから、あっけに取られて眺めていた。 「伊吹とワカナ……すごい人気だなぁ」 「ランキング上位者で、優勝候補ですからね。当然ではないでしょうか?」 「……まあね。その代り僕たちは完全に空気だけど……」 続いて司会者がシュンとゼリスを紹介するものの――伊吹のクラスメイトである新人マスターとその神姫、程度の簡素なものだった。 ゼリスがジュニアトーナメント参加者にしては珍しい、オリジナル武装タイプであることがちょっと関心を集めたようだが……観衆の興味は完全に伊吹とワカナに集中している。 もっとも、それで言ったら可哀相なのは対戦相手の方か。 向こうも中学生同士のコンビらしいが、ガチガチに固まって完全に緊張している。……まあ、一回戦から優勝候補と当たってしまったんだから当然かもしれない。 だからといって、同情している暇はない。シュンだって公式大会は初参加だし、ゼリスはオーラシオン武装で初の実戦だ。遠慮なんてしている余裕はない。 ゼリスとワカナ、そして相手の神姫二体が筐体にエントリーしていく。 その間に、シュンは伊吹と簡単な作戦会議を済ませる。 「まずワカナが前衛に出るから、ぜっちゃんは後衛についてサポートよろしくね?」 「リョーカイ。それでいいよな、ゼリス?」 「はい、問題ありません」 シュンに頷き返しながらゼリスがバトルフィールドに出現する。オーラシオン武装の白い装甲が、ライトに照らし出され美しく映える。 4体の神姫がそれぞれフィールド上に配置される。 『REDY GO!』の合図で試合が始まった。 「いっくよ~っ!」 試合開始と共に、ワカナが相手に向かって突進していく。 ふいを突かれた相手の神姫――二体の天使コマンド型ウェルクストラが慌てて散開する。 「ワカナっ、左の相手に攻撃よっ!」 左に逃げた一体がバランスを崩した隙を見逃さず、伊吹の指示に従ってワカナが装甲一体式のナックル――裂拳甲(リークアンジア)ですかさずラッシュをかける。 防戦一方になる仲間を援護しようと、もう一体のウェルクストラがサブマシンガンを構える。が、それを別方向からの銃撃が阻む。 ハンドガンを構えたゼリスが、的確な射撃で相手の動きを封じていた。 「よしっ! ゼリス、そのまま牽制だ」 「どちらかと言えば、私も接近戦の方が好みなのですが……」 「おいおい……慣れない武装でいきなり無茶しようとするなよ」 渋々といった様子で、ゼリスは指示通り相手の一体と距離を置いての射撃戦を開始する。 ウェルクストラのアルヴォPDW11に比べ、ゼリスの使っている専用ハンドガン"エスぺランサ"は連射力で劣る。しかし、ゼリスはフィールドの遮蔽物を巧みに利用しながら互角の撃ち合いを演じていた。 新武装の調子も、今のところは特に問題無いようだ。 撃ち合いを続けながらゼリスはウェルクストラを徐々に誘導し、仲間と分断させる。 相手が気がついた時には、すでに離れたもう一体のウェルクストラはワカナの猛攻にさらされてKO寸前となっていた。 こうなってしまえばもう、勝負は決まったも同然だった。 試合開始から1分後―― 『これはつよぉぉぉいっ!! ワカナ&ゼリスチーム、怒涛の攻撃で相手チームを連続OK! 優勝候補が見事、初戦を圧勝で飾ったぁ!!』 シュンたちは危なげなくトーナメント一回戦を突破した。 * トーナメント大会は神姫センター5階のアミューズメントフロアが会場となっている。 このフロアの一角には神姫に関する講習会を開くためのセミナールームもあり、そこがトーナメント参加者の控え室となっている。 一回戦を終えた後、シュンたちはそこでゼリスたちのコンディションをチェックしていた。 「ふう~、パーツはどこも問題無さそうだな」 「シュン。問題が無いのなら、次はもっと積極的に攻めてはどうでしょうか?」 「……ダメだ。それでトラブルが発生したらヤバいだろう」 シュンにたしなめられ、ゼリスは「むぅ~~」と不満ながら一応納得する。 現状では、まだ不安が残るオーラシオンの肩アーマーパーツ。姿勢制御とメインスラスターを兼ねるこのパーツこそ、ヒット&アウェイを主体にした機動戦での要になる。 万全でない状態で全開戦闘を行って、もし不調を起こしでもしたら……たちどころに窮地を招く結果となるだろう。 「大丈夫よ、ぜっちゃん。このくらいの大会ならワカナだけでもラクショーよ。心配しなくてもオーケーオーケー♪」 伊吹は呑気にモニターで他の試合を観戦しながら、余裕の表情をしている。その隣のクレイドルでは、ワカナがさっそく昼寝タイムに入っていた。緊張感のないコンビだなあ…… 本物の猫みたいにゴロゴロ眠る姿からは、このワカナが一回戦で嵐のようなラッシュで一体目を倒し、二体目もあっという間にノックアウトしてしまったスーパーファイターとは思えない。 能ある鷹は――もとい、猫は爪を隠すってやつか? 最後のフィニッシュは研爪(ヤンチャオ)で決めてたし。 「ふむ……確かにワカナさんの強さなら、私たちはバックアップに徹するだけでも勝ち進めるでしょうね……」 同意しつつ、ゼリスの口調はいつもと違って歯切れが悪い。 「ゼリス。思う存分戦いたいだろうけど、もうしばらくは我慢してくれよ。せめてユウが来るまではな」 由宇がゼリスのメカニックについて、最終的な調整をしてもらえば後は思いっきり戦っても大丈夫だろう。 そのためにも、しばらくはこのまま堅実に戦ってデータを集めないと。それになんだか今のままでも、伊吹とワカナだけでトーナメントを勝ち進めそうだし…… (下手にリスクを負うこともないよな。このまま勝ち進めるならそれでも……) そこまで考えて、シュンは何か胸につっかえるものを感じる。 なんだろうこの感覚は。このまま何もしないで勝ち上がれるなら、問題はないはずなのに。 ……何もしなくても? 「シュン……シュン!」 ゼリスに袖を引っ張られ我に返る。 気がつくとゼリスがジッとシュンを見上げていた。澄んだエメラルドの瞳に見つめられ――シュンは気まずくなって目を反らす。 「シュッちゃんどうしたの? 急にボーっとしちゃって……」 「なんでもないよ。えっと……喉が渇いたから、ちょっとジュース買ってくる」 不思議がる伊吹にとっさに言い訳をしつつ、シュンはその場から逃げるように席を立った。 控え室のドアをくぐると、トーナメント会場の歓声がここまで聞こえてくる。 あたかも試合の熱気までそのまま伝わってきそうだ。こうして外野から眺めてみると、さっきまで自分もいたはずのその場所が――まるで別世界のように感じらる。 群衆の中を歩き、シュンは一人考える。 このままシュンが何もしなくても勝ち進める。 試合は伊吹とワカナに任せればいい。特に指示を送らなくても、ゼリスはバックアップくらい無難にこなすだろう。あとは由宇の武装の調整がうまくいけば、何の問題もない。 ――それで? 問題なかったとして、その中でシュンは何をしたと言えるのだろう。そんなんでゼリスのマスターって言えるのか? 僕には一体、何ができるんだ――。 (僕はゼリスのマスターであっても、ひょっとしてあいつにとっては必要な存在じゃない……のか?) 伊吹とワカナはもちろん、由宇もゼリスもすごいヤツラだ。一緒にいるシュンだからこそよく分かる。 でも……彼女たちに比べれば、自分は何もできない凡人に過ぎないのではないだろうか。 考えれば考えるほど思考がマイナスになっていく……。 シュンはまとわりつく不安を振り払うように、強く頭を振る。 (とにかく今は次の試合だ。こんな気持ちのまま周りの足を引っ張っりでもしたら、余計にダメダメじゃないか) シュンは強引に思考を切り替える。みんなのところに戻ろう……そう思い、踵を返したところで気がつく。 あ……そうだ。一応ジュースを買って帰らないとおかしく思われる。伊吹はあれでなかなか鋭いし、ゼリスもなんだかんだで敏感にシュンの気持ちを察してくる。心配をかける訳にはいかない。 自販機は確かフードコートにあったはず――くるりと振り返ったところに、いきなり何かが激突した。 「うぎゃ~~っす!!?」 シュンが驚きの声を上げるより先に、甲高い悲鳴が聞こえてきた。 顔を上げると、目の前に武装神姫を連れた少年が転がっていた。どうやら彼がシュンにぶつかってきた相手らしい。 転んだ拍子に打った膝の痛みに顔をしかめつつ、シュンは立ち上がりながら少年に手を差し伸べる。 「えっと……君、大丈夫?」 「おっと。こりゃ兄ちゃん、すんまへんなあ」 彼の手を取って関西弁の少年が立ち上がる。 シュンと同年代か少し下くらいだろうか? 快活そうな男の子だ。 「ごめんな、兄ちゃん。オレこっちの神姫センターは初めてでな~。ちょっと迷ってもうて、急いでたんや」 「なるほどね。でも人が多いところでは、あまり走ったりしない方がいいぞ?」 「うん、これから気をつけるわ!」 シュンが注意すると少年は素直に頷いた。……うんうん、元気があって大変よろしい。 妹がいるせいか、年下の相手にはついつい兄貴ぶってしまうのがシュンの癖だった。 「あかんわっ、大丈夫かフッキー!?」 フッキーと呼ばれた少年を心配するように、肩に乗る彼の神姫――寅型MMSティグリースが騒ぎ立てる。 どうやらさっきの悲鳴も、この神姫のものだったらしい。 「心配あらへん。こんなんちょっと転んだだけやし」 「せやかてフッキー! アンタ耳たぶがこんなに大きく腫れ上がってしもうて……」 「アホかっ、この福耳は生まれつきやっちゅーねん!」 突然始まったボケとツッコミの応酬に、あっけに取られるシュン。 ……なんだこのふたり。神姫とマスターでお笑いコンビでも目指してるのか? シュンの様子に気がついて、関西弁の少年――フッキーが照れ臭そうに笑う。 「あ~、すんまへん。こいつ気がつくと、すぐ今みたいにボケ始めてな~。ホンマ誰に似たんやろうね?」 「マスターのアンタに決まっとるやんっ!」 ビシッとツッコミを入れるティグリース。ダメだこのふたり。放っておくと、いつまでも延々漫才トークを続けそうだ。 「あの……コントの最中に悪いけど、君たち急いでたんじゃないのか?」 シュンが指摘すると、フッキーとティグリースはハッと気がついて慌て出す。 「そやった、オレら急いでるところやったんや!」 「あかんでフッキー……早くせんと遅刻してまうで?」 「おお、そんなんなったら怒られるで。じゃあな、兄ちゃん。またどっかで会おうな!」 早口で捲し立てると、少年と神姫はすぐさま人混みの中に消えていった。 シュンは笑いを堪えつつ、そんなふたりに手を振って見送る。 やれやれ……何というか慌ただしいコンビだった。お蔭でさっきまでいろいろ滅入っていた気分が吹き飛んでしまった。 なんだかスッキリした気分で、シュンは控え室に戻る。 彼がジュースを買い忘れたことに気がついたのは、そのことをゼリスに指摘されてからだった。 ▲BACK///NEXT▼ 戻る
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単発作品用トップページ このページは? このページは、『一発ネタを思いついたんだけど、どうにも本スレには投下しづらい。かといって連作にするかどうかもわかんないからwikiにも投下しづらいぜ!』という作者さん向けの単発作品用トップページです。ログイン不要で編集も出来ますので、お気軽にどうぞ。 そして続きを思いついたりそれを妄想のままに書き上げてしまったりすれば、その作品のトップページにリンクを張り直してください。 連載を持っておられる作者さんも、思いつきなどあれば遠慮無く! 以下のテンプレをコピー&ペーストして、作品へのリンクを張るだけの簡単仕様です(wikiの基本的な使い方はトップページを参照してください)。 テンプレ開始 タイトル ここに作品のページへのリンクをどうぞ 簡単な紹介などあればこちらに。登場人物紹介などは、単発の場合、本編の冒頭や巻末に書いた方が良いかも。 テンプレおわり ↓作品へのリンクはこれ以下に貼っていってください。 天使のたまご ひょんなことから神姫のマスターになった青年と、ちょっと(だいぶ?)おまぬけな神姫の物語 音声ファイル2036 単発妄想ネタです。なんだかMightyMagicの十話とネタ が被ってしまった。 三十路の独身男性、自営業の場合 実際に神姫がいたら、こーゆーコトをしてもらいたいな、と。 バトルだけではなく、多方面で活躍するんじゃなかろうか、と。 第五弾発表 ある天使型の場合 第五弾の鳥型。装備が完全に被ってます。これを見た天使型の反応は如何に。 本当に一発ネタです。 弾丸神姫 神姫バトル初期の頃には、少ない装備のなかでこんなコンセプトの神姫もいたんじゃないかなー、という話です。 騎士子のヴァレンタイン大作戦 時事ネタです しかしなぜか妄想全開のバトルモノに… うっかりページタイトルを「騎士子」にしてしまいました… ねここの飼い方からゲストを出演させていただいてます 目覚めればそこは 素体購入記念。組み替え最中にふと思い付いた一コマ。 花は咲き乱れて※注意!18禁です 花子えっち 買うときは中身を確認しましょう 花種きてから数日後・・・ R18指定 どうしようもない神姫オーナーのお話。 こんな事がポンポン浮かぶ俺って・・・救いようがないな(w 埋め騒動 ややR18指定 スレの埋めに端を発した小騒動。 きっかけは 615の一行だった。 615氏に最大級の感謝。 シラヌイと僕のこと かなり長いです。 神姫狩人からねこねこ団にご登場願いました。 ツーリング@2036 バイクと神姫ネタ。 30年後の道路を走っているモノって、どう進化しているんだろうか、と。 リセット(ギャグです) 役立たずのハウリンにリセットの危機が・・・。 一見残虐物、実はギャグ。 ゆめであえたら どこにでもありうる、とある武装神姫とオーナーのお話。 *注:暗いです。 ネコのマスターの誕生日 誕生日ネタ。 自分の誕生日って人に忘れられると悲しいですよね。とか言って人の誕生日はすぐ忘れますが。 203X年 とある新聞の神姫特集(カコミ) 御免なさい。例によって酒の勢いで書いちゃいました。第七弾ネタです。白黒兎以来の神姫購入になりそう。 チェイング! 鳥子三体が繰り広げる小ネタ。 黒子ときっしー(超適当) SS総合掲示板へ投稿したものの再録。単発ページ投稿にあたり、新規の方向けに固有名詞など調整。一年前のもの。 種子さんときっしー(超仮タイトル) 「黒子さんときっしー(超適当)」を書いた時に考えていたネタ。長いです。本来なら上中下か上下にわけるくらい。でも単発なので一本。 デレなきっしー(蝶適当) 「種子さんときっしー(超仮タイトル)」のスピンアウト、余り、っつーかおまけ。上記タイトルの本文だったのだけど、焦点がボケるので本文から削除したもの。でも面白い描写ができたかな?と思ったので、独立して投稿。 あるオーナーと神姫 どこかの誰かの話。絆っていつ繋がるかわからないもの。(残酷描写があります。ご注意を) 桜舞 もしかしたら、こんなことしてる人たちがいるかも、しれません。 あるオーナーと神姫 牙 どこかの犬とオーナーの話。自分を楽しむと敵が多いかも? アホ毛ネタ 「ねここの飼い方・光と影」に寄稿された漫画を読んで浮かんだ小ネタ。 ゼルノとぼくの初対面 ゼルノグラードを入手した「ぼく」と彼女とのショートショート。 本スレからの再録です。 ある「とても平和な」日の話。 彼女は真面目、オーナーは・・・ 雪国の風景 季節は冬、北海道にある実家へと里帰りしたオーナーと犬子のSS S-R-princess むるちーメインで書きたかった。それだけです。 皆様の作品に肩を並べられるかわからないので、こちらにいます。 神姫に願いを 神姫に願いをかけたなら…… トップページ
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ボルガ山を越えてきたジュン一行 ジ:うー、腹減ったー疲れたー(エモってことで→汗) ツ:うちもー マ:(!)あれ食堂じゃね? 進:INNと書いてある建物の1階が食堂になっているようだ ジ:行こ行こ(喜び《ないか》) INNに入るとイベントスタート ジ:ごちそうさまー。やっぱり味が薄いんだよ。うあー、ラーメン食いてぇ ツ:作ってくれた人に失礼でしょ! 本当、ラーメン好きね…。(汗 そういえばタオファン大丈夫かしら ジ:近々様子見に行った方がいいかもな マ:(?)君たちの仲間かい? ジ:あぁ、ネイリス村で怪我しちまってな。怪我が治るまで待っててもらってるんだ マ:そうだったのか。僕はてっきり3人だと思ってた 進:4人になると不都合でもあるのか? マ:いや、問題ないよ。ただそのタオファンって人も忘れないようにしないと大変だ。 ツ:もちろんよ。この世界に1人は心細いものね ジ:そうだよ。うまいラーメンが食えなくなる ここで村人のような人(フブキの側近)が登場 村人♀:お話中すみません。旅のお方 ジ:(?)なんかよう? 村人♀:私はクーと言うものです。ボルガ山を通ってきた行商から聞いたのです。ボルガ山の山賊が壊滅したと。そしてそれを為した者たちがあなた方だと。(しかしこれはウソ。事実はこのフブキの側近が村の周辺を回っているときに目撃した) 店内がざわつく 店に客が多少入っていれば全員(!)。 ジ:マジで!?もうそんな噂になってんの!? 進:俺たちがそうだとは限らないではないのか? クー:特徴を聞きましたので。4人で行動していて、2人は女性。男性の1人は覆面をしていると。(戦闘中の覚醒マインドを見ているのがヒント。進十郎あたりは気づいてるかも。俺の自己満足伏線) ジ:(進十郎やっぱり目立ちまくりだよな。隠してるのに隠れてねぇよ逆に) 進:なるほどな ジ:(いやいや、なるほどなじゃなくて。あんたのお陰で目立ってるんですけど) マ:んで。山賊をたおしちゃうような僕たちになんの用? クー:はい。私の友人が病に倒れてしまって… 町のお医者様には見てもらったのですが、その病気の薬となる薬草が稀少なものらしく、持ち合わせが無いといわれてしまったのです。 ジ:それを俺らに取ってきて欲しいってことか クー:その通りです。 ツ:その薬草はどこにあるんですか? クー:はい。薬草はヒルペル山の頂にしか生えていないそうです。 ジ:(!)ヒルペル山って次の目的地じゃなかった? マ:うん、そうだよ ジ:じゃぁ全然オッケーだ。ついでに取ってきてあげるよ 進:待て ジ:(?)どうしたんだ?進十郎 進:依頼を受ける前にその病人とやらを見せてもらおうか。 ツ:なんでそんな必要があるのよ 進:俺たちを金儲けの道具にされてはたまらんからな マ:ま、一理あるかな ジ:(モヤモヤ)そんな悪そうな人にはみえねーけど 村人♀:構いません。それでは付いてきてください 移動-小さな病院のような所へ クー:今は落ち着いて寝てますが、彼女がそうです。 ジ:うは、かわいい ツ:(怒り) マ:…。 進:うむ、心拍、体温共に異常に高い。これはかなり危険だな。 疑ってすまなかった。 ツ:(見ただけでわかるものなの…?やつれてるのはわかるけど、心拍まで…) クー:いえ、信じていただけたのならそれだけで。それよりも、依頼を受けていただけますか? もちろんお礼は充分にするつもりです。 ジ:俺は構わないって言ったんだけどよ ツ:困ってる人をほっとけるわけないでしょ マ:僕もいいよ 進:依頼を受けよう。かならず薬草は取ってくる。 クー:ありがとうございます!どうかよろしくお願いします! 部屋を出る4人 ジ:じゃヒルペル山登りと行くか!俺たちが帰る為と、可憐な女性のために!! 登山中 登山中 登山中 ジ:あれは!? ツ:大きな鳥…鷲とか鷹なんて比じゃないみたい… ジ:それよりもあの鳥必死にもがいてるみたいだ! 進:いばらのような草が全身に絡みついてる…っ! マ:もしかして、あの草に食べられようとしてるんじゃね? ジ:それダメだろ!! 羽がゲットできなくなっちまう!! ツ:助けましょう!! バトル 草が絡みつく次元鳥と戦う。全体攻撃は禁物だ!! 倒す 鳥は無事。なんと草「ムチウッツークサー」が正体を現し襲い掛かってきた!! 勝利 次元鳥:キュー… 進:手当てしておいた。これで死ぬことはないだろう。 次元鳥:クケー… ジ:んでだ。助けてやったんだから羽の一本くらいくれてもいいよな? 次元鳥:クケッケケ… ジ:ありがとよ!いただいてくぜ 次元鳥の羽をゲットした ジ:よし!すぐに町へ戻ろう! 瞬間移動 病院へ 部屋にぞろぞろ入ってくるところから ジ:取ってきたぜ!薬草!! ベットの横に居たクーが駆け寄る クー:ありがとうございます!早速お医者様に渡しにいきますので、皆様は宿で待っていただけますか?ではまた後ほど!! 駆け足で部屋を出て行くクー ジ:宿行くか、疲れたし 宿で寝る 起きるとイベントスタート クー:おはようございます。 ジ:んあ?もう朝か ジュン以外は起きている様子 ジ:あ、クーさんどうしたの、こんな朝から クー:はい。昨日ベットで寝ていた彼女、名前をフブキといいます。 フブキの病気が良くなったので、皆様にお礼を言いたいそうなのです。 本当は直接ここにきて御礼を致すべきところなのですが、 まだ病み上がりの身でして… よければお会いになっていただけますか? ツ:もちろんです!そうよね、ジュン ジ:うーん、まだちょっとねむ ドカッ ツ:行くそうです マ:行きます! 進:どうしたマインド。 マ:いや、僕まで蹴られる気がして… 進:それはないだろう 病院へ強制移動 フブキ:始めまして。私はフブキと申します。あなたがたは命の恩人です。なんとお礼を言えばいいのか… ジ:君に笑顔が戻ったのなら、それが何よりのお礼さ ドカッ ジ:いてぇ フ:まぁ、ウフフ マ:こんなにすぐ直るとはね 進:元気になってよかったな フ:はい。少ないですが、これを受け取ってください 20000円手に入れた! ジ:マジか マ:落ち着け ツ:こんなにいただいて。ありがとうございます。 フ:いえ、本当はもっとお礼をしたいのですが… ジ:いやいやいや、こんなに受け取ったんだ。それで充分だよ んじゃ、俺らまだまだ旅の途中なんで、これで失礼するわ ツ:マーサさんもまだ安静にしてないと フ:はい、皆様の旅にフロリベーテの祝福があらんことを ジュン一行は部屋をでる マ:次はいよいよ最後のアイテム「マナの花」だよ ツ:どこにあるの? マ:ヒルペル山脈から南西に進んだ所にあるルキスタの泉さ 泉の周りには大きな森が広がってるから、入る前にすぐそばのコルクストメルクに寄るといいだろうね ジ:おっしゃ!出発!! 強制移動マップへ ご都合主義イベントここに極まる 漆:伏線強すぎかどうか意見を求むる トール ちょっと最初が平和すぎるかな? これは直前の新十郎イベントがはっきりしていから、これでいいのかわからないけどね あと偽名の必要はないので俺は偽名はNG派 名前なしか、フブキと名乗っても問題ないと思う(すでに薬草をとってきた時点で帝国とは思わない?) 漆:最初は進十郎次第で。 偽名は、そうだな。指名手配されてる訳でも無し、本名でいっか アスカ:ごめん、完成を急ぎます トール クー:はい、彼女が、名前はフブキと言います。 マーサが起きて皆様にお礼を言いたいそうなのです。 本当は直接ここにきて御礼を致すべきところなのですが、 まだ病み上がりの身でして、よければお会いになっていただけますか? この文の日本語がどうも理解できない 俺も修正ができない 漆:おk。これでバッチリだ クー:はい、昨日ベットで寝ていた彼女、名前をフブキといいます。 フブキの病気が良くなったので、皆様にお礼を言いたいそうなのです。 本当は直接ここにきて御礼を致すべきところなのですが、 まだ病み上がりの身でして… よければお会いになっていただけますか? トール 他人の話をする場合は「はい、昨日ベットで寝」じゃなくて「はい。昨日ベットで寝」になるんじゃないかな? 「はい、皆様の旅にフロリベーテの祝福があらんことを」 このセリフは結構気に入った。また後でもこのセリフを出すとかレジスタンスの合言葉にするのはどうだ? 漆:おk。積極的につかうことにしよう 合言葉ってのはいいね。ただ神様シリーズをそのまま合言葉に使うのは考えてなかった。 レジスタンスは 「ヴェルメルーザに祈りを捧げろ!!戦の神は俺たちについているぞ!!!」 みたいな感じで使っていきたいなと
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目覚めればそこは …眠りから覚める。 ゆっくりと目を開けると、目の前にパソコンに向かっている人影が見えた。 “私”が初めて見る風景。 未だ夢の中にいるような感覚ー…自分の意思とは別に、定められた初期プログラムに従い最初の一言をかけようとして…-気づいた 「っひゃぁぁぁああぁぁぁっ!?」 突然上がった絹を裂くような…むしろ音量を考えると食器棚をひっくり返したような悲鳴。 ゆっくりと振り向くと其処には、全裸の女の子が自分の体を隠すようにしゃがみ込んでいる。 女の子といっても生身じゃなくて全高およそ15cm、最近巷で流行の“武装神姫”…有体に言って玩具なわけですが。 彼女はその中でも武者をモチーフとした“紅緒”タイプだ。 ちなみに全裸というかあれは肌色素体だ。 顔を真っ赤にして(目じりに涙まで溜めて)その場にしゃがんでいるその子は、それでも持ち前の職業意識(?)からかこちらに話しかけてきた。 「あっ、あ、あの、貴方が私のマスターでしょうかっ!?」 降って沸いた嗜虐心に唆されてもうちょっとこのまま放置してみようかな、等と外道な思考を彷徨いかけたがまぁ、ソレも可哀想な気がしてきたので 「む、俺は堀川 六角、よろしく」 「登録しました…あの、それと、私…紅緒タイプは素体ボディ同梱だったと思うのですがっ!何故いきなり裸なのでしょうか!?」 変わらずしゃがみ込んだまま聞いてくる。 「ああ、それは話すと長くなるんだが、とりあえず君の体は隣にいるよ」 恐る恐る、という風情で振り返る彼女。 その視線の先には、特徴的な曲線を描く塗り分けに円形の模様…紅緒タイプの素体ボディを使ったツガルタイプが微妙に困った表情を浮かべながら立っていた。 「最初は知らなかったんだけど、“アデルトルート”…そのツガルタイプを買ったときに別売りの素体ボディが必要でね?」 「そこで、何故だか安売りしていた君を買って、少し体を拝借してね」 「そのままほうっておくのも可哀想な気がしたから、新型素体の発売(※注)に合わせて素体ボディを追加購入したんだよ」 朗らかなに言い放った直後 ターン 顔の横を何かが高速で通り過ぎた。 はらり、と髪の毛が数本落ちる。 ぎこちなく飛来元をみるとそこには火縄銃“気炎万丈”を構え、銃口から紫煙をくゆらせる彼女の姿が。 涙目が血走ってもはや鬼の形相と化していますよ、お嬢さん? 「今すぐ、元に、戻してください」 「ははは、まぁ落ち着いて話し合おうじゃないか。まずはその物騒な得物を下ろしてくれなさい」 我ながらわざとらしい笑顔を浮かべつつなだめにかかる。意外と短気だこの子…と、そう考えてふと思いつく。 「ホムラ…」 「え?」 聞きとがめて、鎧を着終えた彼女が振り向く。 「焔、君の名だ。顔を真っ赤にして照れて、怒りっぱやい。最適だとおも…だから気炎万丈を構えるのはやめてくれなさい」 危ない危ない…とりあえず気炎万丈は後でどこかに隠しておこうと思いつつ、フル装備の彼女…焔をしげしげと眺める。 「あお、マスター…?」 「ふむ、全裸に鎧というのも中々おつなものだとだからかまえるのやめっておい、ちょ!」 ターン ※注 …実際は素体の発売は四弾と同時ですが、それまで全く何もないというのも何だか変に思えるので“前からあったけど今回新型がでた”という設定に勝手に妄想。 素体購入後の武士子との一幕。 実際に動いたらこんな感じだろうかという妄想を膨らませつつ全裸に鎧にトキメキを覚える今日この頃いかがお過ごし。