約 3,143,320 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2839.html
ぶそしき! これから!? 第2話 『イキトウゴウ?』 2-3 「いくのだーー」 『! ヒイロ、マシンガン撃って!』 「おう!」 駆け出すチャオを見て、友大はヒイロに指示を出す。 (フィールドに出たときには、プチマスィーンズはいなかった。飛び道具も持っていそうにないから、近づかれる前に――) 「あれ?」 ヒイロが素っ頓狂な声をあげる。 撃ち放つことなく、なぜか銃をいじっている。 「隙あり~!」 「ぐぇ!?」 横っ飛びのドロップキックをまともに受け、ヒイロが吹き飛ぶ。 闘技場の石畳の上を転がる。 『ヒイロ!? どうしたの!?』 「ぅく、マシンガンが撃てない! つーか、引き金を引けない!?」 いきなり目論見が崩れた友大が自身の神姫に叫ぶ。 そんなマスターにヒイロが叫び返す。 「ふっふっふっふ、おろかなり、なのだ!」 余裕綽々な様子でチャオが指を突きつける。 ■ ■ ■ 「おっ! あれ、あれじゃないか?――」 店内の大型ディスプレイに映った映像に、とある紳士な青年(武装神姫的な意味で)が気づく。 「あれだな……。初心者が陥るあれ」 「昔、マスターもやったよねー」 「ぶはぅぁ!?」 「ど、どうしたんだ!? いきなり噴き出してぇ!」 「うわっ。黒歴史がーー」 「ああ! マスターしっかり!」 「ああ、やるよなー。あれ」 「そのせいでDIEピンチに陥りました」 「やったことある。懐かしいなー」 「わたしもー」 「マスタァ、あれ」 「ああ」 「無様だね」 「あっはっはっはーーっ!」 「どこの筐体のバトルだ? 見にいこーぜ」 「よっしゃあ!」 気づいた多くの人間や神姫がその様を見やる。 悶えるものもいれば、懐かしがるものもいる。 呆れるものもいれば、大爆笑するものもいる。 野次馬に行くものもいる。 その反応は千差万別だ。 ■ ■ ■ (ど、どうして!?) 予想もしていなかった事態に、友大は焦りを覚える。 外で大きな歓声のようなものがあがるが、ヘッドギアを着用し、かつ混乱しそうになっている友大には気づくことができない。 (あ……) 友大に向かって、対戦相手から通信が入る。 『佐伯君。ヒイロが持っている銃ってなにかのプラモのだよね?』 『う、うん、そうだけど……』 慌てる主従の様子を見て、あることを察して成行は友大に通信を送る。 「ふっ、キサマの持っている銃はただのプラスチックの塊、ただの銃の形をした鈍器にすぎないのだ!」 「な、なにぃ!?」 『神姫の武装パーツには、データチップが付いているのは知ってる?』 『うん』 友大の脳裏に、おもちゃ屋スターフィールドでのことが浮かぶ。 『チップのデータを読み込んで、その機能をバトル上で表現しているから、チップの付いていないものだと――』 『――ただその形をしただけの塊?』 『うん。そう思ってもらって良いかも。実際に撃ったりできる仕組みがあるなら、チップがなくても撃てたりするらしいんだけど』 「やーい、まぬけー」 「っ! こんにゃろー!」 『そうなんだ。ありがと成行さん。 ヒイロ! マシンガンは捨てて、ハンドアクスに持ち替え――』 「ぇ――ぎにゃあっふ!!?」 指示を出そうとした友大の声を遮るかのように、とんでもなく鈍くて重い打音と、珍妙で奇妙な悲鳴があがる。 『ちゃ、チャオーー!?』 悲鳴の主はチャオだった。 惨状に気づき、そのマスターの成行も悲鳴をあげる。 「へん、どーだ!」 (うわぁ……) その惨状を引き起こしたヒイロは得意満面な様子で腕組みをしている。 さっきまで手に持っていたマシンガン(鈍器)はすでに手にはなく、今はチャオの顔面にめり込んでいた。 ふらりと、チャオの身体がのけ反る。 ちなみに、今の一撃でチャオのライフは4割ほど削れている。 「―ーにぅぅぅぅぅあああああーーーーっっ!?」 マシンガン(鈍器)が顔から離れて落ちる。 同時にチャオがもんどりうって闘技場の石畳に崩れこみ、両手で顔を押さえて悶絶する。 「……」 ヒイロはその痛々しい様に目を背けず、しかし動かずにいる。 『し、しっかりチャオ!』 「――ぅく、ゆ、油断したのだ」 痛々しい跡が残る顔をさすりつつ、涙目で自身のマスターに応える。 「よし、バトル再開だな」 チャオの様子を見て、ヒイロがハンドアックスを構える。 『ヒイロ、待っててあげたの?』 そんなヒイロの行動に、友大がふと思いついた疑問をぶつける。 「ん~、あのままボコったら何かつまらない気がしただけだぜ」 『……そうだね』 ニッとした自身の神姫の笑みを見て、そのマスターはなんとなく納得する。 「よくもやってくれたな~。お返ししてあげるのだ!」 「やってみろよ!」 2姫が互いに構える。 『やれ! ヒイロ!』 『行って! チャオ!』 「「おう!」」 互いのマスターの指示を合図に戦闘が再開される。 「くらえ!」 ヒイロが先手を取る。手に持ったハンドアックスでチャオをカチ割りに行く。 「防御!」 チャオがすかさず左腕の防壁で受け止める。 「うにゃ!?」 予想外の衝撃とハンドアクスの刃が防壁の装甲に食い込んだことに驚愕する。 「このまま――」 押し切ろうとヒイロが力をこめる。 『! 距離を離して!』 「わ、分かったのだ!」 「――ぐぅ!?」 とっさのマスターの指示に従うために、チャオはヒイロの胴体を蹴り飛ばして距離をとる。 『ヒイロ!』 「大丈夫だぜ。こんなのダメージにも入らない!」 マスターの心配そうな声に強がる。 『チャオ! 相手の攻撃はなるべく避けて! 安全重視!』 「分かったのだ!」 マスターの指示を聞き、チャオはヒイロに飛びかかる。 「この!」 「ちょいや!」 迎撃しようとしたヒイロの一撃を横に素早く動いて回避する。 「反撃ぃ!」 斧を振り切り、体制を崩したところに左手の防壁を叩き込む。 「ぅぐ! ――くそっ!」 腹部に攻撃を受けてヒイロが呻く。 しかし、無理やり体勢を戻してハンドアクスをチャオに向かって横薙ぎに叩きつける。 「当たらないのだ~」 身を屈めてチャオは横薙ぎの一撃を回避する。 そして勢いのまま身体を回転させて、体勢を大きく崩したヒイロに足払いする。 「うぉ!?」 大きく体勢を崩していたこともあり、堪えることはできずに地に倒れ伏す。 「これもあげるのだ! オマケあたーっく!」 「ぐぁ!」 すかさず追加の一撃。 倒れたヒイロにストンピングキックを食らわせ、鈴の音を響かせる。 「こ、このやろ!」 ヒイロが跳ね起きるが、すでにチャオは離れて距離をとっている。 「へっへーん――こぅげっき、やっまもり、てんこもりぃー♪」 ヒイロが補足仕切る前に、チャオは動き回りながらジャブやローキックを叩き込んでいく。 「ちょこまかとぉ……っ!」 『チャオ! その調子で続けて!』 ヒイロの攻撃を回避し、その隙に攻撃、離脱を繰り返すチャオを成行が応援する。 (こ、このままじゃ……) 一方的になってきている展開に友大は焦りを覚える。 ヒイロは頭に血が上ったかのようにがむしゃらに攻撃し、反撃を食らい続けている。 ろくに防具を身に着けていないせいもあってか、軽い攻撃でも見る見るうちにヒイロのライフが削られていく。 (このままじゃ負ける。どうする? 何か指示? どうしたら? 武装を変える? いや、武装って言っても、ハンドアクスの他にはバズーカしか……) ぐるぐると思考が回る。 頭が混乱しそうになる。 その間もヒイロのライフは削り取られ続けている。 (指示、武装、指示、武装、指示、武装――) ヒイロの武装を見る。 今ヒイロが持っている武装は手に持っているハンドアクスと背負っているバズーカのみだ。 「武装――あ!」 友大の頭に閃きが走る。 「ヒイロ、わざとやられて距離をとって!」 ヒイロにだけ聞こえるようにして思いついた指示を出す。 「なんで!? いや、分かった!」 疑問が浮かぶが承諾する。 ヒイロ自身、このままでは負けることは理解している。 すぐに指示に従う。 「えいっ!」 「ぐぅ!」 チャオのキックを再び足に受ける。 今度は堪えることなく、そのまま勢いをつけて跳ぶように地面に転がっていく。 「逃がさないのだ!」 思わず、チャオはヒイロを追う。 『チャオ――』 『――バズーカ!』 チャオを止めようとする成行の声を遮り、友大が叫ぶ。 「ああ! 食らえ!!」 ヒイロが素早く背のバズーカを手に取り、構えてある箇所を押し込む。 「そんなの――」 弾けるような音が響きわたる。 バズーカから弾丸が射出される。 ヒイロの持っていたバズーカは元々バネ仕掛けで射出するギミック付きの物だった。 実際に撃てるものなら、データチップが付いていなくても弾を撃つことはできる。 弾はチャオに向かってまっすぐ飛び、 「――へなちょこ~」 あっさりと防がれた。 バネ仕掛けで放たれた弾丸の速度は大したことはなく、防御どころか両手で白羽取りをするかのように掴まれてしまっていた。 余裕綽々の笑みを浮かべるチャオ。 『殴って!!』 動じることなく、友大は最後まで指示を言い終える。 「応っ!!」 ヒイロがバズーカを両手で持って振りかぶる。 「にゃっ!?」 チャオが慌てて、両手で持った弾丸を捨てて構えなおそうとする。 「がら空きだぜ!!」 両手を上げていたためにあいてしまっていたチャオの横腹にめがけて、ヒイロのフルスイングが叩き込まれる。 「ふにゃあああーーっ!?」 翻る赤いマフラー。 凄まじい打音と軋み、木が砕けるような快音が仮想の空間に鳴り響く。 『ちゃ、チャオーー!?』 錐もみに吹っ飛び、天高く、高く打ち上げられるチャオに向かって成行が叫ぶ。 「これで、終わりだ!」 ヒイロがバズーカの残骸を投げ捨てる。 同時に、チャオが頭から墜ちて闘技場の石畳を砕き、一瞬突き刺さる。 「……」 わずかな静寂の後、倒立したオブジェが傾き、床に向かってゆっくりと倒れこむ。 儚く、鈴の音が鳴る。 「ぅ……にゃぁぁ……」 チャオの頭から、激突の衝撃で砕けた鉄耳装が落ちる。 力なく手足を床に投げ出し、ぐるぐると目を回しながらうめき声をあげる。 「……か、勝った?」 何時の間にか出ていた汗をぬぐい、呟く。 確認すれば、ヒイロのライフは残り1~2割程度、チャオのライフは全て失われていた。 ――WINNER HIIRO ■ ■ ■ 「にゅあ~~、負けたー! く~や~し~いのだ~~!!」 休憩所のテーブルの上で、チャオが駄々っ子のように手足をじたばたして泣き喚いている。 「あ、はぁ、はぁ……」 バトルが終わって気づいてみれば、何故か多くのギャラリーがいた。 拍手と生暖かい視線を送る彼らの前から逃げるように去り、今は力尽きて崩れるように休憩所の席で休んでいる。 「チャオ、良い子だから泣かないで。次がんばろう」 困ったように笑いながら、成行はチャオの頭をなでてなだめる。 「にゅあ~~……。もう少しで勝てると思ったのにぃ~~」 涙目で悔しそうにチャオがぼやく。 「あ、あははは……」 手のかかる妹をなだめるような成行の姿を見て、友大はイスの背にもたれたまま苦笑いする。 「マスター! マスターってば!」 そんな友大に呼びかける声が1つ。 「対戦での初勝利だぜ! やったぜマスター!」 「あっ……」 ヒイロに言われて初めて気づく。 最初の対戦では、友大達は負けてしまっていたのだ。 「うん、そうだね。おめでとうヒイロ」 「おう!」 身体を起こし、頑張ったヒイロをほめる。 成行がしているように友大はヒイロの頭をなでる。 くすぐったそうに、少し気恥ずかしそうにするヒイロを見ると、思わず顔に笑みが浮かぶ。 (弟がいたら、もしかしたらこんな感じなのかな……) ふと胸中にそんな思いが過ぎる。 一人っ子の自分では実際に感じることはないだろうがと、そんな想像をしてしまう。 「ヒイロ!」 そんな考えを打ち切るかのように、友大達に一声が浴びせかけられる。 「今回はチャオの負けだけど……、次に勝つのはチャオなのだ! しーゆーあげいん、なのだ!!」 チャオがヒイロに指を突きつけてそんなことをのたまう。 ちなみに、マスターお手製のクロースアーマーはバトル後すぐに脱いだ。 「おう、受けて立つぜ!」 そんなチャオにヒイロもニッカリ笑って応える。 「佐伯君」 神姫達の微笑ましい様子をうれしそうに見届けると、成行が友大のもとに近づく。 「負けちゃったけど、楽しいバトルだったよ」 右手を差し出す。 「あ……」 その行動は自然で、とても当たり前のことのように感じさせる。 自然と、友大の右手も差し出され、成行の手を握る。 「うん、僕も。楽しいバトルだったよ、ありがとう。またしよう」 そんな言葉が、自然と口から出ていく。 「――。ありがとう、本当に」 成行の顔にやわらかな笑みが浮かぶ。 春澄の名前の通りの、雪解けの後の晴れやかで暖かな春の空気を思わせる、そんな笑みだった。 (あははは……) 気恥ずかしさと嬉しさに、少年は少し頬を赤くそめる。 ――――To Be Continued☆ ――ヒイロの武装データが更新されました。 ウェポン:プラモマシンガン(鈍器) プラモバズーカ プラモハンドアクス ヘッド :なし ボディ :なし アーム :なし スカート:なし レッグ :なし リア :なし シールド:なし アクセ :赤いマフラー 前へ / 続く トップページ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2178.html
ウサギのナミダ ACT 1-33 ■ わたしは周囲の明るさに刺激されて、目を覚ます。 地面に手をついて、身体を起こす。 手には柔らかな感触。 草だ。 そして小さな花。 辺りを見回す。 驚いた。 そこは一面、色とりどりの草花で埋め尽くされていた。 近くには青い水をたたえた湖。 周りは濃い緑の木立に囲まれている。 さらにずっと向こうには、薄墨を流したような色で、山々が連なっている。 美しい風景。 こんなに光溢れた風景は初めて見る。 なぜなら、お店を出たのはこれが初めてだったから。 ……初めて? なにかが引っかかったけど、些細なこと。 わたしは立ち上がり、自分の格好を見る。 バニーガールのような姿。 いつもと変わりない。 わたしが辺りを見回すと、すぐ近くに、白い小さなテーブルと椅子がおいてあるのが目に留まった。 そこで三人の神姫が談笑していた。 「……あら? 気がついたのね、二三番」 わたしの正面にいた神姫が、にっこりと微笑みかけてくれた。 知っている顔だった。 「七番姉さん……」 他の二人も、わたしに振り向いた。 「やっと起きたか~」 「あはは、おはよー、二三番」 赤い髪をポニーテールにした神姫はざっくばらんな口調で、もう一人のツインテールの小柄な神姫は無邪気に、わたしに声をかけてきた。 「一四番さんに、三六番ちゃんも……」 そうすると、ツインテールの三六番ちゃんは、椅子から立ち上がった。 わたしの方に駆けてきて、抱きついてくる。 「どこ行ってたの? 心配してたんだよ?」 本当に心配そうな顔で、わたしを見上げてくる。 彼女は、わたしより、ずっと後にお店に来た神姫だった。 ある夜、お客さんにひどく虐められて泣いていた彼女を慰めた。 それから彼女はわたしのことを慕ってくれている。 わたしも三六番ちゃんを妹みたいに思っていた。 「うん……ちょっと……お客さんに連れ出されて……」 ……そのあと、どうしてただろう。 思い出せない。 わたしが困った顔をしていると、三六番ちゃんは笑って、 「いいよ、二三番が無事だったら、それで」 そう言ってくれた。 彼女はわたしの手を引いて、テーブルの方へと連れて行く。 三六番ちゃんは、薄い黄色のドレスを着ている。 よく似合っていて、とてもかわいい。 テーブルの前にくると、七番姉さんが空いている椅子に座るように促した。 その前に。 わたしは尋ねる。 「あの……ここは、どこですか?」 「あら、聞かされていないの?」 「……はい」 「ここは、NPO法人・紳士淑女の友の会にある、神姫AI保管用サーバーの中よ」 □ 「AI移送接続ソフト、だと……?」 「そうさ」 井山の奴は、したり顔で頷いている。 ギャラリーはざわめいていた。 おそらく聞いたこともない人が大半だろう。 俺も何かでそんなソフトがあることを読んだ程度だった。 ネットワークに接続している神姫のAIの意識を、任意の場所に送り込むソフトウェアだ。 似たようなことは武装神姫でも日常的に行われている。 アクセスポッドから筐体に接続するのと仕組みはあまり変わらない。 遠方の対戦者ともネットワークで対戦もできるわけだから、ある意味、アクセスポッドで接続中は、神姫とAIは分離しているとも言える。 だが、それはマスターと神姫自身の同意があって行われる行為だ。 奴の言うAIの移送接続は、第三者によって、神姫のAIの意識を別の場所に飛ばしてしまう。 先ほどの攻撃は、そのためのソフトウェア攻撃ということらしい。 「……はじめから、これが狙いか」 「やっと気がついたのかい? バーチャルバトルだと、戦闘中にネットのバイパス作ってやるだけですぐに飛ばせるから簡単なんだ。ひゃはははは!」 塔のステージは、視界を隠すものが何もない。 ティアにクロコダイルを見せて怖がらせ、逃げ場がないことを演出する。 それと同時に、常にティアの視界にクロコダイルが入ることになり、視覚入力ウィルスの感染をより確実にする。 ウィルスに侵入されたメモリは、リソース不足に陥り、セキュリティソフトを立ち上げることさえままならない。 そうして動きを止め、セキュリティも万全でないティアに、AI移送接続ソフトによる攻撃で、AIの意識を別の場所に飛ばす。 ……奴の策に、まんまとはまったのだ。塔のステージを許可した時点で。 情けない。 悔しさに俺は拳を握りしめる。 「……答えろ……ティアはどこだ……」 声に悔しさが滲んでいるのを自覚する。 「くくく……心配しなくてもいいよ。アケミちゃんは今、昔の……神姫風俗の仲間と感動の再会ってところさ」 「なん……だと?」 「風俗の神姫を保護しているNPO法人のサーバーだよ。いまごろ、積もる話に花を咲かせてるんじゃないの?」 ■ 「その格好は、ここでは似合わないわねぇ」 緩いウェーブの入った麻色の髪を掻き揚げながら、七番姉さんが言う。 見れば、彼女は胸元の大きく開いた水色のドレスを纏っている。色っぽい。 わたしはいつもの、バニーガールの姿だ。 「あ……でも、わたし……ドレスの持ち合わせなんて……」 「大丈夫」 一四番さんが、わたしに微笑んだ。 「ここはバーチャルの世界。あたしたちがイメージすれば、好きな服装にぱっと着替えられるよ」 そういう彼女は、スリットの深く入った、真っ赤なチャイナドレスを着ていた。 わたしは目を閉じてイメージしてみる。 どんな服を着てみたいだろう。 そうだ、いつか見た、白いワンピースとサンダル。 彼女はとてもきれいだった。彼も彼女に見とれていた。 ……彼と彼女って、誰だったろう。 些細な考えはひとまず棚上げする。今は服だ。 イメージしたワンピースとサンダルを黒に染め上げ、自らが纏った様子をイメージする。 すると…… 「わあ……かわいい!」 三六番ちゃんの声に、わたしは目を開く。 わたしがイメージしたとおり、黒のワンピースを着ていた。 三人とも微笑んでいる。 テーブルの上には、ケーキと紅茶がおいてある。 わたしは空いている椅子に腰掛けた。 「あの……他のみんなは……?」 気になっていたことを尋ねる。 すると、七番姉さんが答えてくれた。 「もうみんな、新しいマスターの元へ行ったわ。残っているのは、わたしたちだけよ」 「まあ、焦っても仕方がないし。あたしたちももうすぐ、マスターが来てくれるさ」 一四番さんが言う。 お迎えがこなくても、ことさら焦っているわけではないらしい。 わたしはティーカップを口元に運んだ。 穏やかな時間だった。 痛みもない、苦しみもない。仲間たちとの優しい時間。 これはずっと、わたしが求めていたもの。 わたしは自然と微笑んでいた。 □ 不可解だった。 AIを自由に飛ばせるのなら、自宅のサーバーに飛ばしてしまえば手っ取り早いはずだ。 それを何で、NPO法人の、しかもティアの知り合いの神姫がいるサーバーなのか? 「どういうつもりだ……なんでそんな回りくどいことをする?」 「なぜって……」 井山は、醜い笑顔をさらに挽き潰したような顔をして、歓喜を露わにした。 「決まってるじゃないか! 絶望だよ! アケミちゃんを絶望のどん底に突き落とすのさ!! 昔の仲間と楽しく話してさ、終わった頃に自分の身体に戻ってみたら、ボクの家なんだ。 目の前にはボクとクロコダイル。 アケミちゃんはどんな顔をすると思う? 君の名前を泣き叫ぶ!? それとも恐怖のあまり絶叫するかな!? 想像するだけでゾクゾクするよ!! ひゃははははは!」 ……もう、許さないとかじゃない。 怒りさえ通り越して。 俺は、生まれて初めて、他人に憎悪を抱いた。 こんな奴が今生きているのが間違っていると、本気でそう思った。 「……ティア!」 諦めるわけにはいかない。 ティアを、大切なパートナーを、こんな奴に渡すわけにはいかない。 「ティア! 帰ってこい! こんなところで、終わりにするわけにはいかないんだ!」 「ひゃははははは! 無駄無駄! 聞こえるわけないじゃん!」 いや届く。俺は思う。 今のティアは、意識が別のところに離れているだけで、機能は何も失われてはいない。 だから、ティアのAIがこちらの身体を意識すれば、俺の声は聞こえるはずだ。 何の根拠もなかったが、俺は信じていた。 その考えにすがっていただけなのかも知れないが。 「遠野、サレンダーしちまえ。こんなバトル、何の意味もねぇ! 奴が何か騒ぎ出しても、俺が何とかしてやる。だから……」 大城の言葉を俺は速攻で否定した。 「だめだ」 「なんで!?」 「ゲームを終了すると、ネットワークが切断されて、ティアの意識が向こうのサーバーに置き去りにされる可能性がある」 俺の言葉に、大城は絶句した。 井山は向こうのサーバーにいるティアの意識を取り出すことができるのだろう。 だからこそ、あんなまわりくどい場所に送り込んだのだ。 俺は今、ティアを人質に取られているも同然だった。 俺にできることは、ティアに呼びかけるほかにはない。 「ティア……戻ってこい、ティア!」 俺はティアに呼びかけながら、いくつかの作業を行う。 ティアが戻ってきたときに、十分な状態でバトルができるように。 しかし、モバイルPCのキーボードを操作する手はもどかしい。 俺が壊した右手は、包帯もとれているが、まだ以前の通りに動かすのは難しかった。 「くそ……」 それでも俺は、必死でキーを叩く。 もどかしさに焦りが募ってくる。 すると。 「……遠野、代われ!」 大城が俺からモバイルPCを奪い取った。 「大城?」 「俺が代わりにこっちの作業をしてやる。指示をくれ」 「……大丈夫なのか?」 「なめんなよ。バイクも神姫もやってんだ。メカいじりは得意なんだよ」 うそぶくだけあって、大城のキータッチは意外なほどなめらかだった。 俺は大城に、いくつかの調べものを依頼した。 俺は呼ぶ。ティアの名を。必ず帰ってきてくれると信じて。 それがたとえ、はかなく小さな希望だとしても。 不安が大きく、心細くて、信じる心が折れそうになっても。 それでも、俺は諦めるわけにはいかなかった。 ティアの名を呼び続ける。 ■ わたしは振り向いた。 そこにあるのは、湖畔を吹き渡る風だけだった。 ……誰かに呼ばれたような気がしたのだけど。 「どうしたの?」 三六番ちゃんの声に、 わたしはテーブルに向き直る。 「ううん……気のせい、だったみたい」 三人とも、くつろいだ様子で、穏やかな日差しの中のお茶会を楽しんでいる。 総勢二十人以上いた、お店の神姫たちは、一人、また一人と、新たなオーナーに引き取られて行ったのだという。 神姫の保護を目的とするNPO法人・紳士淑女の友の会では、身元のよくない人間のところには、神姫を里子に出したりしない。 だからきっと、みんな今頃幸せになっているだろう。 三人はそう言った。 わたしも談笑に混じる。 話題はやっぱり、今後のこと、マスターのこと。 みんながどんなマスターに仕えたいのか、わたしも興味がある。 「わたしは……そうね、優しい男の人がいいわ」 そう言うのは、七番姉さん。 彼女はわたしよりずっと前から、お店にいた神姫。 一桁台の神姫で残っていたのは彼女だけで、年長者ゆえに、みんなのまとめ役だった。 優しいお姉さんという感じで、みんな彼女を慕っていた。 「落ち着いた大人の人がいいわね。 それで、マスターのお仕事のサポートがしたいわ。 マスターがお疲れの時には、ご奉仕するのもいいかも、ね」 そう言って艶っぽく笑う。 ものすごく色っぽくて、こっちの方が気恥ずかしくなるほどだった。 「あたしは武装神姫になりたいな。ばりばりのバトロンプレイヤーのマスターがいい」 一四番さんは、お店の神姫の中でも、ムードメーカー的な存在だった。 お客さんに酷いことをされても、翌日には、あっけらかんとした顔で笑っていた。 自分が傷ついていても、他の傷ついた神姫のために笑える、そんな神姫だった。 「できれば接近戦装備で、ガチの殴り合いとか。ストラーフ装備なんか理想だね」 「でもそれ、マスターの話になってないよ?」 「……まあ、マスターはイケメンに越したことはないよな~。それで、バトルの時は厳しいけれど、勝ったら優しくしてくれるの」 頬を染めながら言う一四番さんは、今まで見たことがないほど可愛いらしかった。 他の二人は、 「ふ~ん」 と言って、含み笑いで彼女を見ている。 すると、一四番さんは急に照れくさそうになって、 「そ、そういう三六番はどうなんだよ」 そう言ってごまかした。 三六番ちゃんは、すました様子で言う。 「わたしは、女の子のマスターがいいな。一緒におしゃれしたり、遊びに行ったり……きっと楽しいと思うの」 夢見るような表情で言う。 彼女は見た目も小さくて可愛らしく、感情も女の子らしい。 「小学生か、中学生か、そのくらいの可愛い女の子で、いつも一緒にいてくれたら嬉しいな」 彼女に女の子のマスターは、とてもお似合いのような気がする。 一緒に遊んだり笑ったり……楽しげな様子が目に浮かぶよう。 他の二人も、目を細めて頷いていた。 「ねえねえ、二三番は、どんなマスターに仕えたい?」 「え、わたし……?」 三六番ちゃんが興味津々といった様子で尋ねてきた。 ……わたしが仕えたいマスター? そう考えると、誰かのシルエットが頭に浮かぶ。 テーブルに向かう三人が、わたしの答えを待っている。 ……また、誰かの呼ぶ声が聞こえた気がした。 ◆ 「うふふふ、久しぶりに、クロコダイルでいじってあげるよ。ギャラリーにもサービスしないとね?」 井山の声と共に、クロコダイルがするすると動き出す。 ティアの目の前に降り立つと、クロコダイルはティアの身体を立ったまま横抱きにした。 スカートの下から八本の触手がにょろにょろと伸びてくる。 触手はティアの細身にからみつき、うぞうぞと蠢き始めた。 ティアは四肢の先まで触手にからめ取られ、危うい部分にも触手が這っている。 クロコダイルはティアの乳房をもみしだきながら、恍惚とした表情を浮かべた。 『ああ……この感触、久しぶりだねぇ……』 ティアは何の反応も見せない。 触手に責められる恥態を見せてなお、瞳に光は戻らない。 塔内部で繰り広げられる神姫の陵辱劇に、井山もよだれを垂らさんばかりの歓喜の表情を見せていた。 「ひゃは、ひゃははは……や、やっぱり、アケミちゃんはサイコーだよ……これで悲鳴を上げてくれたらもっといいのに……」 だらしない声を上げる変態男に、氷より冷たい言葉が投げつけられた。 「ちょっと……あなたも神姫マスターなら……もっと正々堂々と戦ったらどうなの!?」 ギャラリーが声のするほうに視線を向ける。 菜々子だった。 『エトランゼ』と呼ばれる凄腕のマスターが、見たこともない怒りの表情で叫んでいた。 「ずるい手ばっかり使って……相手の神姫にこんなことして……恥を知りなさい!」 「はあ?」 ところが井山は、菜々子の氷点下の言葉さえ、厚い面の皮で阻んだ。 それどころか、お楽しみを邪魔されて、不満そうだ。 「ずるい手って言ってもさあ、そんなのに引っかかる方が悪いし。 第一、正々堂々戦ったって、勝てなくちゃ意味ないじゃん。アケミちゃんを賭けてるんだしさぁ」 「な……」 「だいたい、キミになんでそんなことを言われなくちゃいけないんだよ。外野は黙ってなよ」 「わたしは……遠野くんの仲間よ」 「はははっ、仲間だって~? キミこそ、そんなこと言って恥ずかしくないの? それに仲間だからって、キミには何もできないだろ?」 「く……」 菜々子は唇を噛んだ。 確かに、彼女に今できることは何もない。 それどころか、奴を刺激すれば、ティアが危なくなる。 そんなことは分かっていた。 でも、言わずにはいられなかったのだ。 こんなのは、こんな戦いは、彼女が憧れたバトルロンドじゃない。 だが、井山は菜々子の想いをたやすく打ち砕く。 「引っ込んでなよ。じゃないと、今すぐアケミちゃんを殺しちゃうよ?」 菜々子はうつむいて、押し黙った。 ティアの意識を人質に、井山は強力なアドバンテージを得ている。 奴の言うとおり、今の菜々子にできることなど何もない。 彼女はただ、唇を噛み、拳を握りしめることしか出来ないのだ。 □ 久住さんの気持ちはよく分かるし、ありがたいと思う。 もしできるなら、俺だって、今すぐ井山の顔を殴り飛ばしてやりたい。 ティアの状況の方が、優先順位が上というだけの話だ。 俺がこうしてティアに呼びかけている間も、井山は笑いながら、俺と、ディスプレイ上のティアを見比べている。 ギャラリーはなぜか押し黙っている。 バトルロンドコーナーには、俺の呼び声と、井山の高笑いだけが響いていた。 「よし、終わったぞ」 大城が呟くように言って、モバイルPCを俺の方に向けた。 俺は画面の表示内容をチェックする。 大城に左手でOKサインを出した。 大城はにやり、と笑った。 大城のおかげで、ティアのリソースを奪っていたウィルスは削除され、セキュリティソフトが立ち上がった。 これでティアの電子頭脳が無駄な作業をすることはなくなり、AIが指示した働きを正常に行うことができる。 俺の呼びかけも、通りやすくなるかも知れない。 バトルも支障なく再開できる。 これで今やるべきことはすべてやった。 そのせいか、俺は不思議と落ち着いていた。 心は穏やかでさえあった。 俺は、遙か彼方にいるティアの心に向かって、静かに、語りかける。 「ティア……聞こえるか? お前と出会って、いろんなことがあったな。 つらいことも、たくさんあった。 それを乗り越えて、俺たちはようやくパートナーになった。 俺は今でも、本当に嬉しく思ってる。 ……俺は気づいていたよ。 お前が、前いた店の神姫たちの心配を、ずっとしていたこと。 だからこそ、お前が自分の過去に捕らわれて、自分に劣等感を抱いていることも。 お前が、昔の仲間と出会ったら、心はそちらに惹かれてしまうのかも知れない。 ずっと一緒にいたいと、思うのかも知れない。 ……それでも俺は、お前を諦めたくない。 昔の仲間と引き離しても、俺の神姫にしたい。 俺の独りよがりだって、わかってる。 でも、諦められないんだ。 ティアは、俺がやっと探しあてた、たった一人の神姫だから。 お前以外に自分の神姫なんて考えられないから。 だから、ティア。 頼むから……帰ってきてくれ」 それでも、ティアの瞳に、いまだ光は戻らない。 ◆ 美緒は遠野の背中を見つめていた。 静かで落ち着いた口調。一途な想いが胸に迫った。 でも、なんで、遠野さんの肩は小さく震えているの? 椅子の両脇におろした手は拳をきつく握りしめているの? 美緒と三人の仲間たちは、今回の事件をずっと見ていた。 エトランゼとのバトルに始まり、ゴシップ誌にティアが載ったときも、遠野が常連たちに怒りを露わにしたときも、菜々子が三強を薙ぎ倒したときも、クイーンがティアを助けた雨の日も、ティアとクイーンの技の応酬も、そして今日のバトルも。 そしてわかったのは、遠野とティアの、お互いに一途な想い。 マスターと神姫になりたい、と。 店売りの神姫であれば、オーナーがパッケージを開いてすぐに叶う、当たり前の関係。 彼らはそれをやっとの思いで掴んだ。 美緒も二人を応援していた。彼らにほんの少しでも関われたことを、誇らしく思っている。 それなのに。 卑怯で下劣な男の手によって、ティアが理不尽に奪われようとしている。 なんで? どうして遠野さんとティアは、当たり前のことさえ、許してもらえないの? そう思ったとき、美緒は理解した。 遠野が震えているのは、ティアを奪われることを恐れているからだ。 大型ディスプレイを見上げれば、敵の醜悪な神姫が、ティアの身体を触手に溺れさせている。 このままティアが負けてしまえば、彼女の心は昔の仲間と再会していたとしても、最後にはあの男の元へと連れ去られてしまう。 あれだけの苦労をしてパートナーになった神姫を失ってしまうのだ。 怖くて当たり前だ。悔しくて当然だ。 必死に耐えている、その遠野の背中を再び見た。 美緒は気がついた。 ひとつ、ふたつ、何かが床にこぼれ落ちている。 それが。 遠野の拳からしたたる、赤い血だと気がついたとき。 美緒の身体を衝動が駆け抜けた。 「ティアッ! 帰ってきなさいよ!! あなたの居場所は、ここでしょぉおっ!?」 叫びが勝手に口からほとばしった。 気がついたときには、バトルロンドのコーナーにいるすべての客が、美緒を見ていた。 菜々子も驚いた表情でこちらを見ている。 涙目になりながら、とっさに口を押さえた。 大人しいと思われている美緒が、感情にまかせて叫んでいる。 驚かれるのも当然だった。 ギャラリーの視線が痛い。 でも、叫んだ言葉は本心だった。 わたしは間違ってない。間違ってなんかいない。 だから、勇気を振り絞り、さらに言葉を紡ごうと、手を口元から降ろす。 その時。 「そうだ! 美緒の言うとおりだ! 帰って来いよ、ここに!」 「あなたのマスターも、友達も、仲間たちも! みんな待ってますよ、ティア!」 「わたしたちだって、帰ってきて欲しい! もっとお話したい、バトルもしたい……友達になって欲しいの!」 「だから、帰ってきて、ティア!!」 美緒の仲間たちが次々に言葉を投げた。 少女たちの必死の叫びを、かの男がせせら笑う。 「きゃははは! そんなの、いくら叫んだって届くわけ……」 「届く! 届くもん! 絶対に……届くんだからぁっ!!」 井山の言葉を遮って、美緒は泣きながら叫んでいた。 すると、四人の神姫たちも、ティアに声を届けようと叫び出す。 それにつられて、今度はギャラリーの神姫たちも。 大勢の声が、ティアを呼ぶ。 そして、驚いて周囲を見回していた、菜々子と大城も、遠野の座る椅子に手を回して、声を上げた。 「ティア、遠野くんを悲しませちゃダメ! 帰ってきなさい!」 「俺たちの約束を破るつもりか? もう待てねぇぞ、さっさと帰ってこい!」 ミスティと虎実も。 「いなくなられるのが、一番悲しくて迷惑だって言ったでしょ!? わたしは待ってるから!」 「アタシは約束を守ったぞ!? アンタも約束を守れよ! 帰ってきて、バトルしてくれよ、ティア!」 誰もがティアの帰還を願っていた。 誰もが、想いを届けたくて、その神姫の名を呼んだ。 しかし。 すべてを断ち切る、絶望の声。 「あ~あ、シラけるんだよねぇ。お友達ごっこはさあ」 井山の声はひどく気怠げに聞こえた。 しかし、騒がしかった周囲を抉るように響いた。 □ 俺の視線は、不機嫌そうな井山の顔を捕らえる。 お友達ごっこ、だと……? この状況で、そんなことが言えるなんて、どれだけ傲慢なんだ。 井山は俺の視線など気付きもしないで、クロコダイルに指示を出す。 「あーあ、もうつまんなくなっちゃったからさぁ、終わりにしようか。 ハンマーで、アケミちゃんの首、飛ばしちゃいなよ」 『アイアイサー』 クロコダイルは名残惜しそうに触手をほどき、後ずさる。 その後ろには、ストラーフ装備の「ジレーザ・ロケットハンマー」が転がっていた。 「やめろ……やめろよ、井山ぁっ!!」 俺は叫び出していた。 終わってしまう。 こんなところで。 俺の形相はよっぽど必死そうに歪んでいたのだろうか。 井山は嫌らしい笑みを浮かべた。 「ひゃはっ、見ているといいよ、アケミちゃんの首が飛ぶところ! それで、後悔のあまり、泣き叫んでよ! ひゃははははは!!」 クロコダイルが、ハンマーを拾い上げる。 その顔には、狂気の笑みが貼り付いている。 ティアは棒立ちになったまま、いまだに何も見てはいなかった。 「ティア、ティア! 帰ってこい! 頼むから、帰ってきてくれっ!!」 終わるのか。 こんなところで、本当に終わってしまうのか。 俺はもう、何もできないのか。 こうして、ただ空しく叫ぶことしかできないのか。 お前の走りを見ることもできないのか。 お前と笑いあうこともできないのか。 「ティア! 早く! 帰ってきてくれ! ティアッ!」 筐体のディスプレイの中。 クロコダイルがゆっくりとティアに歩み寄るのが目に入った。 ■ 思い浮かぶシルエットは、だんだんとはっきりとした輪郭を取る。 想いが形になり、像を結ぶ。 その人は…… わたしが、望む、マスターは…… □ ティアは動かない。 クロコダイルがハンマーを横に構えた。 狂気をはらんだ笑みが膨らむ。 届け、届けよ! 俺の声! 俺の想い! みんなの呼ぶ声! ティアに届いてくれ!! 頼む……!! 『グッナイ、アケミ』 クロコダイルの呟き。 ハンマーが横薙ぎに振るわれる。 ティアの頭めがけて。 「ティアアアアアアアアァァァァーーッ!!」 瞬間、時が凍った。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/battleconductor/pages/127.html
概要 AIタッグバトルのルール、仕様、相違点 作戦について 編成のススメ スキルのススメ 神姫とコミュニケーション 概要 シーズン2で実装された新しいバトルモードでかつてのバトルロンドの様に 神姫達AI任せで自動的にバトルが繰り広げられ、勝敗を決める。 流れとしては 4人の候補から相方選択⇔作戦選択・出撃順変更→バトル となる。 マスターは事前の装備、AI調整の他に相方選択、作戦選択、出撃順変更が終われば バトルの行く末を眺めることしかできないので皆の勝利を祈ろう。 戦績保存等は無く、勝敗に関わらずSKPが10貰える。 このページでは勝敗に関わる様々な要素が記載されますが それらを実行するのはあくまでAI(神姫達)ですので参考にしても思いどおりにならない事が多々あります。 負けても愛娘達を責めたりせず、次のバトルへ向けて気持ちを切り替えて調整しましょう AIタッグバトルのルール、仕様、相違点 バトルは2VS2のチーム戦。総合コスト10を神姫を倒して削りあい、0にすれば勝ち。 消費するコストはカード等で表示される通りUR=4 SR=3 R=2 N=1 昨今のガンダムVSシリーズの様に再出撃でコストが足りずに弱体化はしない ジェムは一切関わらない 時間切れの場合、残コストが多いチームが勝ち。 バトルは完全にAI任せ。マスターは一切神姫を操作できない。 ジェムバトルと異なりスキル発動もターゲット変更もできない バトル時間は120秒(2分)。40秒毎に作戦が切り替わる。 ラスト40秒は自動的にスキルゲージが上昇する 再出撃に必要な時間はスキル上昇量に比例して増減する。 神姫が動くアクティブスキル(全員気絶、耐久回復等も含む)発動中は、すべての神姫が棒立ちになる。 発動中はターゲット変更しない レイドにある集中狙いによる与ダメアップ、ジェム回収による救援は無し。 回復武器を味方に当てればレイド同様に回復する 作戦について 相方選択後に作戦を立てることになる。 開幕、残り80,残り40のタイミングでどう戦うかを大まかに設定できる。 攻防が程よい「バランス」(エウクランテ) 攻撃特化の「全力攻撃」(ガブリーヌ) 守りを優先する「防御重視」(ジュビジー) の3つがあり、設定したAIに影響を与える。 また、これらは3すくみにもなっている。順に バランス→防御重視→全力攻撃→バランス… の順番で有利となっており作戦有利を取ると40秒間、対象のチーム神姫に対して与ダメが上がり被ダメが下がる。取られると逆になる。 また、このジャンケンに関わらずに神姫に任せる「お任せ」(アーンヴァルmk2)があり 極端な不利を背負うリスクがなく戦わせることができる。 編成のススメ あくまで一意見かつAI操作なのでこのような展開もありえるぐらいの認識で。 UR-R-N 花形たるURをどのように活躍させるかが重要。 攻める方針でも守る方針でもURは中、終盤に出すことが望ましく 相方の高コスト神姫とは順番を合わせないほうがいい。 何故なら、倒せばそれだけスキルの標的にされかねない可能性が高く 倒れなくてもその後の敵高コストを相手にしなければならず苦しくなりがち。 終盤に出す場合、耐久回復で耐えたり、相手URに攻撃スキルをぶつける為にも URの前に出すN、Rのスキル上昇量を調節する必要がある。 URで作戦相性は無理に狙う必要はないが相手URと当たった場合、装備相性になりやすく 相手URを対抗するためや消耗させるためにも作戦有利を狙う価値は十分ある。 N-N-N 端的に言えばステータスの低さを人海戦術で補う構成。 URを落とす為に攻撃スキルを持たせているのが一般的。 出来るだけ6Vを厳選しておくと、攻撃スキルの[中]を撃ててお得。 スキルのススメ 神姫とコミュニケーション 唯一マスターがバトルに介入できる要素。 低確率である条件を満たすと画面左上にいる参戦中の神姫に黄色の吹き出しが出現し タッチすることでお話ができる。 この時の返答次第でバフ、デバフを与える事ができる。 タイミングとして 開幕 敵神姫撃破 耐久ピンチ の三つがありバフ、デバフはアクティブスキル(小)がかかる。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1677.html
六月の終わり頃の話である。 今日は氷男先輩に神姫バトルのお手合せを頼んだ。風間でもよかったのだが、親戚の葬式の関係でここのところ休んでいる。 グレースは留守番だというが、別に連れて行っても構わない気もする。 まぁ「人の死」を見せない配慮なんだろな、うん。 この町の神姫センターはここら辺のセンターとしては比較的規模が大きい。 時々公式戦で有名なオーナーと神姫も来る故に、それらを見ようと人が多い。 ネットコミュニティで知った話によると、このセンターの出身で有名な神姫は 『蒼穹の猟犬』こと零牙と、『まるかじり猫子』と呼ばれる奇妙なマオチャオらしい。 まるかじりとは一体……? 約束の時間の三分前に来たが、何故か氷男先輩はいなかった。バックヤード近くに人が集まっていたがそれが何なのかは知らない。 ところで、ふとこんなフレーズが頭をよぎった。 『知ってるか? 神姫による対戦は三つに分けられる デジタル戦闘『バトルロンド』 実際に作りこまれたフィールドで戦う『リアルバトル』 違法改造を施した神姫でどちらかが壊れるまで戦う『アウトロー』 この三つだ。あいつは…(あいつって誰だ)』 ここで言う「違法改造」とは、アウトロー用に改造され、神姫はおろか人をも殺すことのできる『狂った』存在を指す。近年はそれらによる殺傷事件も発生しており、大きな社会問題になっていると言う。 まぁ、僕には関係ないがね。 「形人、どうしたの?」 ふと考えてると、ヒカルの呼びかけられハッとする。 「いや、なんでもない」 ~・~・~・~・~・~・~ 結局のところ、氷男先輩がバトルは無理だと謝りにきた。 先ほどトラブルに巻き込まれたらしく、零牙は修理に時間がかかると言う。 「ヒマ~」 ヒカルがバトルに対する情熱を持て余し始めた、お前には人を心配する感情がないのか。 既にメンバーカードは作成したしなぁ…どうするかねぇ? と、ここで 「そこの君。今、対戦相手を探しているのかな?」 突然声をかけられ、そちらの方に振り向く。 オールバックで髪を後ろで縛っている長身のメガネ男がそこにいた。 「まあ、確かに探していますけども」 「ならちょうどいいではないか!、今我々も相手を探していた所だ」 「え!?」 問答無用で対戦申込みの機械まで引っ張られてゆく、なんだよこのおさげバカ。 …… 「申し遅れた。ぼくの名は真 光一(じん こういち)、以後よろしく」 「あ。どうも、彩聞形人です」「わたしはヒカル」 名前を言いあった後、光一はおもむろに上着の裏に手を突っ込み 「そしてこれがウチのマオである!」 勢いよくそれを出した。 「ハラへったのニャ~」 ぐったりしているマオチャオがいた。 初登場が「ハラへってる」ってどうよ? 「「………」」 僕ら、呆然。 ふと見ると、光一のマオチャオはヒカルをジッと見ている。 「肉~…」 などと呟きながら。 「え…何…?」 危機を察知したのか、ヒカルが後ずさる。 その直後だったね、珍光景が見れたのは。 「鳥~~!!」 ガリッ 「きょえーっ!?」 噛みついたよ、こいつ。 「はっはっは。どうだウチの猫子は!」 訳もわからず笑ってるよコイツ。 「メシ、食わせてやれよ」 僕はただそう言った。 「わたしは鳥じゃな~い!!」 ※神姫は女の子です、やさしくしましょう。 ~・~・~・~・~・~・~ 順番待ちのことである。 光一を見た奴らはしきりに『まるかじり』と言っていた。 ってマテコラ。 「何だ?、あんたが『まるかじり猫子』のマスターだって?」 「そうだが、……言ってなかったか?」 「言ってない言ってない」 マジかよ、初戦の相手がセンター内トップ5の二つ名持ちなんて……。 ついてないなオイ! しかもこちらは何の捻りもない装備だ。事前情報によれば相手も同じとはいえ、いかんせん経験が違いすぎる。 「勝機がある」と思うやつは手を挙げろ、代わってやるから。 「いきなり否定するのはよくないよ、形人」 ……まあ、そうだろうけども。 とか何とか思っていたら順番が回って来た。 もうどうにでもなれ。 ~・~・~・~・~・~・~ ステージはベーシックな市街地。 でも、ここで感じるデジタルと現実の入り混じった独特の雰囲気は感じが悪かった。 「……どこにいるかなぁ」 気のせいかデフォルト武装の着け心地が悪い、この間身体自体をカスタムしたからだろうか? 地面から十センチ(主観)浮きながらゆっくりとビルの谷間を進んでゆく。 と、突然ドリルを二つ並べたアタッチメントを両手につけたマオが飛び出してきた。 「ツインふぁいなるドリドリあたーっく!!」 「ちょっとまてぇぇっ!」 いきなり必殺技!? それまぎれもない失敗フラグーっ!? そこからの行動は早い。 地面を左足で蹴って後ずさる、できた空間を猛スピードでマオが通り過ぎてゆく。 そのまま向かい合わせだったビルに突込み姿を消す。 ドリルだからダメージはないハズ。 着地の際に鋭利なカカトが地面に擦れて火花を上げる。 『もらった!』 光一も叫ぶ、すぐ斜め後ろの壁を破ってマオがこちらに飛ぶ。 フェイント!? 「まるかじりすとらい~くっ!!」 口を大きく開け、牙をむき出しで飛んでくる。……なんだかカワイイ。 と考えると同時にエンジン全開、前方にダッシュしながら振り返りエウロスを振りかざす。 次の瞬間、ガチリという音と共にエウロスが噛みつかれ、亀裂が入ったと思った瞬間にまっぷたつに粉砕された。 冗談じゃないよ!? こんなのに噛まれたら一発で終わっちゃうって! どうするどうする? 「形人!何か策はないの!?」 『無い。諦めろ』 「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!」 頭にきて思わずもう一つのエウロスを投げつけた。 とここで、信じられないほどの偶然が訪れた。 次の「まるかじりストライク」の構えを取ったマオの口に、エウロスが切先から飛び込んだのだ。 デカイ口、だがそれが仇となったわけ。 もちろん、頭へのダメージは致死級であって…… [Win. 輝] そのジャッジが下された時、思わず呆れかえっちゃうよね。普通。 ~・~・~・~・~・~・~ うそ!? 僕はその結果に呆然とした。いや、当たり前だろ普通。 「勝っちゃった」 呆れながら筐体から出てくるヒカル。今の感想を正直に言っちゃうと 「ありえねぇ……!」 ふと向側を見ると、光一は真っ白な灰と化していた。 そりゃそうだ、こんな事予想外でしかないからな。 「……帰ろう」 「そうだね……」 帰る事にした。 正直このままここにいるのは居た堪れない。 ~・~・~・~・~・~・~ 「ほう、君が初心者に?」 「正直驚きました」 メンテナンスショップのカウンターにて、長瀬は光一の話を聞いていた。 ベテランが初心者に敗北する、と言うことはまれであるからだ。 「そういえば光一君、君は知ってるかい?」 「何をですか」 「聖憐君もこのようなパターンだったって事」 「そうなんですか」 以下、読者側にとっては間の持たない会話が繰り広げられるので、今回はここで終わりとする。 流れ流れて神姫無頼に戻る トップページ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1312.html
闇の中。 霧の中。 途切れ途切れに灯る街灯の下に立つは、コートをまとった小柄な影。 朝霧の中、ずっとその場に立っていたのだろうか。コートの表面はうっすらと湿りを帯び始めているが……それでも彼は、その場から動こうとはしない。 やがて照度センサーで働く街灯が輝きを失い、入れ替わるようにして淡いオレンジの波が広がっていく。 辺りが穏やかな温もりに満たされる頃、コートの少年に掛けられたのは、男の声だ。 薄手のカーディガンに、淡い色のチノパン。重いコートとは対照的な、春の朝に相応しい軽装である。左手に提げられた小さなアタッシュケースだけが、唯一異彩を放っているが……陽光の中に沈む暗いコートほどではない。 「……十貴君」 驚きか、呆れか。もしくはその両方を含んだ声が、朝の光の中、少年の名を紡ぎ出す。 「……倉太さん」 コートの少年は疲れたように顔を上げ、男の名前を呼び返した。コートは朝の光で乾ききっていたが、それでもなお、十貴の声からは重い湿りが抜けていない。 「全く、入学式は三時間も後だっていうのに……。慌てて竿を引き上げたところで、獲物はかかりやしないよ?」 男も少年の湿り気が移ったかのように、重い声。 しかし、彼の視線は少年のはるか先、黒髪の少女に向けられており、それどころかケースを提げていない右手までぶんぶん振っている始末。 「……せめて、口と体の動きをシンクロさせてください。マスター」 同時、肩に座っていた神姫から鈍器の殴撃を食らい、横方向に吹き飛ばされた。百八十センチの長身が街灯までゴロゴロと転がって、何かがひしゃげる鈍い音が響き……。 「……それに、彼女達だって心配してる。レディを心配させるのは、男のする事じゃないなぁ」 やがて男は、何事もなかったかのように立ち上がる。 「それは分かってます。……けど」 言われ、少年も後ろにちらりと目を遣った。 そこで彼を待つのは、黒髪の少女と……肩に載った、二体の神姫。神姫達は不安そうに、少女はいつもの柔らかなポーカーフェイスのままで、感情を見せる気はないようだった。 「まあ、気持ちは分からないでもないけどね……。はい、随分と待たせてしまったね」 そして、倉太は己の持つたった一つの違和感……小さなアタッシュケースを、十貴へと手渡した。 「……これ……が?」 「そう。新しい……ジルの体だよ」 中央のつまみに触れれば、鍵は掛けられていないらしく、先へと続く手応えがある。そのまま押し込めば、かちりという軽い音がして、ケースが開いたことを教えてくれた。 開いたケースの中、素体保護用のクリアケースに眠るのは……。 「ハーモニーグレイス……ですか?」 淡いグリーンの髪に、小作りな顔。ボディに浮かぶパターンは、悪魔型と同じ黒をベースにしたものだ。 「すみません。本当はストラーフなら良かったのでしょうけれど……こちらで準備できる素体が、これしかなかったもので」 倉太の肩に戻った彼の神姫が、申し訳なさそうに頭を下げる。 20xx年現在、悪魔型神姫シリーズが主力モデルの座を後継機であるMK-2に明け渡して久しい。中古市場に出回っているものもほとんど見つからないという。ほんの数日で、ジルと同じ旧モデルの悪魔型の良品を、困難な作業と並行しながら手に入れろ……というのは酷な話だろう。 「せめてもの……と言っては何だけど、ハーモニーグレイス用の装備も用意させてもらったよ。必要ならば、使ってみてくれ」 見れば、ケースの空いた場所にはハーモニーグレイス用の武装一式が納められていた。特徴的な腰部装甲に、頭部装甲。十字架型のランチャーに、幾つかの手持ち武器。 だが少年にとって、その品定めの優先順位は限りなく低いもの。 「それで……」 ケースの中、ただ一点を見つめながら、少年は誰に問うでもなく問い掛ける。 「ええ。ジルの複製術式は想定通り、99.9%成功しているわ。もちろん、起動してみるまでは分からないけど……」 ケースの中のシスター型神姫は、深い眠りについたまま。 アタッシュケースにバッテリーユニットが設えられている所を見ると、このケースからでも神姫の起動は可能になっているらしい。 「じゃ、僕達は離れておくから」 「すみません」 倉太達が離れたのを確かめて、十貴はクリアケースの起動ボタンを押し込んだ。 (そういえば、神姫を起動させるのって、初めてだな……) 彼女と初めて会った時、彼女は既に起動した後だった。限りなく一方的な契約の後、共に遊び、共に戦い、笑い合って、悔しがって……。 一度は途切れかけたその繋がりを取り戻すため、二人は、少女の今一度の生を願った。 「ジル……」 祈るような声。 それに応えるよう、やがてケースの蓋が開き。 「……システム起動完了」 無機質な声がかすかに響いて、黒い悪魔型を滅する黒が、ゆっくりと身を起こす。 「ジル……」 少年の顔を映すだけだったカメラアイに、やがて意志在る光が宿る。 開いた瞳の色は、情熱を秘めた朱ではなく……透き通るほどの黄金の色。 「…………?」 そして。 少女が最初にした動作は、小首を傾げる事だった。 「あなたが……私の、マスターですか?」 マイナスから始める初めての武装神姫 番外編2 前編 神姫センターよりも広い講堂に、大きな声が響いている。 ただそれは、大会会場のように複数の声が重なり合って響く声じゃなくて、拡大されたたった一人の声だったけれど。 カバンの中から見上げれば、静香は講堂の壇に立つおじさん……彼がこの声の主だ……のほうを向いて、真剣に話に聞き入っている、ように見える。 ああ、あの顔は、退屈しきってものすごく下らないことを考えている顔だ。 そして、同じように退屈している子が、もう一人。 「ね、お姉ちゃん」 もそもそと身を寄せながら、花姫が私の名を呼んでくる。 静香のカバンには神姫が入れられるポケットが付いているのだけれど、それはあくまでも一人用。そこに私と花姫が入っているのだから、狭いことこの上ない。 「あのコ、ホントにジル姉なの?」 耳元に花姫の柔らかい吐息を感じながら、私は隣の椅子に視線を移す。 そこには十貴と、再生されたシスター型神姫が座っていた。 「ええ。そのはず……なんですが」 センサーから流れ込む固体識別情報に従えば、彼女はジルとは全くの別固体という事になる。もっとも神姫の識別情報はコアユニットのシリアルに依存するから、複製されてシリアルが変わった今、それは当たり前の事なのだけれど……。 ジルくらいよく知った神姫になれば、声紋や各部の駆動音、モーションデータのクセで互いを識別することも難しくない。けど、私の知っているジルの全てと照らし合わせても、目の前のシスター型神姫は私の見知ったジルとは別固体だという結論が下されていた。 「……?」 あ。彼女と目が合った。 「……」 声は出さないけれど、ハーモニーグレイスのジルはこちらにニッコリと微笑みかけてくれる。 いつものジルならとっくに飽きて、こちらへ遊びに来ようとして……十貴に必死で止められている頃なのに。 もう、本当にジルじゃないんだろうか。 「……私と同じ、なのかなぁ?」 そんなことを考えていると、私に抱き付いていた花姫が、ぽつりと小さく呟いた。 「そうなのかも、しれませんね」 そうだ。 忘れることの出来ない沢山の事件を経て、初代花姫のコアユニットを使って起動した今の花姫は、いわば『二代目の』花姫となる。 記憶も想いも、再登録でシリアルさえも変わってしまったけれど。先代の彼女を知る静香達の弁を借りれば、先代の意志は彼女の中に確かに受け継がれているという。 「それに、私とも……」 姫のプラスチックの肢体をきゅ、と抱きしめながら、私もそう応える。 私のコアと素体も、かつてクウガと呼ばれた神姫から受け継がれたもの。その時の記憶は無いけれど……彼女と静香の願いを受けて、今の私はこの場所に立っている。 それを知っているからこそ、別固体となった新しいジルの中にも、かつてのジルの想いが受け継がれているはずだと……そう、思う。思いたかった。 「だから、私達は……花姫が来た時みたいにすればいいと思いますよ。出来ますよね? 花姫」 私達神姫は、人間ほど長くは稼動できない。バトルや日常生活で壊れる可能性だってあるし、もっと単純にマスターに捨てられ、機能を停止してしまう事だってある。 神姫にとって『別れ』とは、ごくごく身近な隣人として自身のすぐ側に立っているのだ。 だからこそ……。 「うん。ジル姉も、新しいジルちゃんも、お友達……でいいんだよね? お姉ちゃん」 「ええ」 そうだ。 私の知ったジルがいなくなってしまった事は悲しいけれど……。 去ってしまった友人に涙を流すより、新しく来た隣人を喜びたいと。妹の長い髪を撫でながら、神姫としての私はそう、思う。 マスターが悲しんでいる所に神姫まで悲しんでしまったら、誰も慰める者がいなくなってしまう。 マスターのサポートをするのが神姫の本懐であるなら、私まで悲しんではいられない。 新しく来た彼女が、親友の意志を受け継ぐ者なら……なおのことだ。 「それよりも、心配なのは……」 こちらを見て微笑むジルから視線を上げれば……そこにあるのは、生気の抜けた瞳で壇上の老人を眺めている十貴の姿。 「大丈夫なんですかね、十貴は」 花姫のマスターである私も、いつか彼女と別れる時が来る。恐らく、私が動作停止する日の方が早いだろうけれど……。 その時に私がどう思うのかは、マスターになったばかりの私には、ついぞ想像が出来ないのだった。 戻る/トップ/続く
https://w.atwiki.jp/2chbattlerondo/pages/354.html
アップデート履歴2009 http //www.shinki-net.konami.jp/support/updata/update-rireki.html 2010 2009 2008 2007 +一覧 Ver1.88 (2009.12.15) Ver1.87 (2009.12.08) Ver1.86 (2009.12.04) Ver1.85 (2009.12.01) Ver1.84 (2009.10.16) Ver1.83 (2009.10.08) Ver1.82 (2009.09.17) Ver1.81 (2009.08.28) Ver1.80 (2009.08.27) Ver1.79 (2009.08.25) Ver1.78 (2009.08.18) Ver1.77 (2009.08.04) Ver1.76 (2009.07.24) Ver1.75 (2009.07.23) Ver1.74 (2009.06.29) Ver1.73 (2009.06.18) Ver1.73 (2009.05.26) Ver1.72 (2009.05.25) Ver1.71 (2009.05.08) Ver1.70 (2009.04.24) Ver1.69 (2009.04.23) Ver1.68 (2009.04.06) Ver1.67 (2009.03.26) Ver1.66 (2009.03.12) Ver1.65 (2009.02.26) Ver1.64 (2009.01.29) Ver1.63 (2009.01.09) Ver1.62 (2009.01.09) Ver1.88 (2009.12.15) プレミアムオーナー特典期間中、 オーナーズルームに特典期間終了時刻を表示 プレミアムオーナー特典期間終了まで60分を切ると、特典期間終了のお知らせを表示 プレミアムオーナー特典期間終了後、プレミアムトレーニングを行うと特典期間が終了したことをお知らせし、タイトル画面に切り替わる 不具合修正プレミアムオーナー特典期間終了後バッテリーが減らない場合がある Ver1.87 (2009.12.08) 不具合修正新しく称号を獲得したときインベントリまで戻らない限り称号が表示されない場合がある プレミアムトレーニングの特級で「大成功」時に王冠が表示されない 一部の環境において装備品のアイコンが正常に表示されず装備できない場合がある バトル時に特定のキー入力を受け付けてしまう ポイントバトルランキングに存在しないコアユニットが表示される イベントミッションでの表示に関する不具合 マイ神姫バトルでの称号表示に関する不具合 「サイバーフロント攻略作戦」のBGMを修正 Ver1.86 (2009.12.04) 不具合修正イベントミッション「サイバーフロント攻略作戦」において、AGの数値が正常に表示されていない場合がある 2009.12.01以前に神姫へ装備した一部のアイテムが取り外された状態になっている場合がある Ver1.85 (2009.12.01) 神姫ショップに新商品を追加 プレミアムオーナー制導入 無限バッテリーの追加(プレミアムオーナー専用) トレーニングに「プレミアムトレーニング」を追加(プレミアムオーナー専用) 神姫センターに「イベントミッション」を追加(プレミアムオーナー専用) 神姫センターに「ポイントバトル」を追加 「称号システム」を追加 「砲台型フォートブラッグ 冬季迷彩仕様」バトルロンド対応 「火器型ゼルノグラード 冬季迷彩仕様」バトルロンド対応 マニュアルを更新 Ver1.84 (2009.10.16) 不具合修正「忍刃鎌“散梅”(金)」の攻撃スキル「真・蕾散らし」の説明文に「必要:SPLv1」を追加 レイディアントボウ(赤)の攻撃時エフェクト不具合の修正 Ver1.83 (2009.10.08) 神姫ショップに新商品を追加 「忍者型ミズキ」 バトルロンド対応 神姫ショップに「試着システム」を追加 マニュアルを更新 Ver1.82 (2009.09.17) 神姫ショップに新商品を追加 「食欲の秋!アイテムセールキャンペーン」を開始(~2009.10.01 12 00) Ver1.81 (2009.08.28) 不具合修正イベントミッションの不具合対応イベントミッションの最終ミッションポイントにおけるバトルを再開いたしました。最終ミッションポイントにおける不具合を修正いたしました。 Ver1.80 (2009.08.27) 不具合修正 イベントミッションの不具合対応イベントミッションの最終ミッションポイントにおけるバトルを停止いたしました。 Ver1.79 (2009.08.25) 「残暑を乗り切れ!アイテムセールキャンペーン」を開始(~2009.09.08 12 00) 神姫ショップに新商品を追加 Ver1.78 (2009.08.18) 新要素追加以下の神姫に対応天使コマンド型ウェルクストラ 悪魔夢魔型ヴァローナ 新規ミッションを追加 新規アチーブメントを追加 イベントミッション「サイバーテロから街を救え!」の更新※イベントミッションはサマーフェスタ期間中のみプレイ可能です。 Ver1.77 (2009.08.04) 不具合修正イベントミッション「サイバーテロから街を救え!」において、合成屋で合成アイテム「ライトトンファー」を合成することができなかった不具合の修正。※修正に伴い合成アイテム「マジックマーケットTシャツ(E)」が追加されております。こちらもあわせてご利用ください。 Ver1.76 (2009.07.24) イベントミッション「サイバーテロから街を救え!」の不具合修正合成アイテムの表記を一部修正ローズブーケ(赤)→ローズブーケ(青) AGが武装セット1以外も使用するように修正 Ver1.75 (2009.07.23) 神姫NETサマーフェスタ2009開催(~2009.09.01 12 00) 神姫ショップに新商品を追加 神姫ショップに以下のモデルを追加戦車型ムルメルティア 砂漠戦仕様 戦闘機型飛鳥 夜戦仕様 新要素追加イベントミッション「サイバーテロから街を救え!」を追加※イベントミッションはサマーフェスタ期間中のみプレイ可能です。 Ver1.74 (2009.06.29) 期間限定 特別ミッション「極秘ファイルを入手せよ!」 終了。 不具合修正『[エレガンスブラック]GK012EB 素体』の基本機動力が想定より低い値となっていた不具合を修正。※すでにセットアップ済みの神姫に関しましても、修正が適用されています。 『[エレガンスホワイト]GK011EW 素体』と『[エレガンスブラック]GK012EB 素体』がインベントリ内[素体ボディ]の項目にリストアップされていなかった不具合を修正。 Ver1.73 (2009.06.18) 新要素追加トレジャーアイランドにて「期間限定特別ミッション」を開始。 不具合修正CSCリストア時において、ノーマル武装がリセットされるタイミングを修正。 一部神姫において、戦闘中の台詞の発生条件が間違っていた不具合を修正。 1.73からバージョンアップが行われていない理由は不明。 Ver1.73 (2009.05.26) 不具合修正タイトル画面で特定操作を行った際に、クライアントが終了してしまう不具合を修正 特定コアパーツ専用のパーツ説明文が適切でない不具合を修正 Ver1.72 (2009.05.25) バトルロンド2周年感謝祭を終了ビンゴ グローバルアチーブメントの達成報酬アイテム「2ndアニバーサリーTシャツ(赤)」を配布 神姫ショップに新商品を追加 不具合修正バトルログにおいて、誤ったバトルモード名が表示されることがある不具合を修正 イリーガルマインドを装備した一部神姫において、誤った戦闘台詞が表示されることがある不具合を修正 オンラインマニュアルを更新 Ver1.71 (2009.05.08) 仕様追加新たな「ビンゴカード」を追加 仕様変更ビンゴカード「金剛カード」の出現率を増加 メインウェポン「バースデーキャンドル」のアイコンを変更 不具合修正防御トレーニングのバトルログの表記テキストを修正「対処不能、無防備です」→「防御姿勢をとります」 Ver1.70 (2009.04.24) 不具合修正ビンゴバトルのリプレイデータを選択した場合クライアントが終了する不具合を修正 Ver1.69 (2009.04.23) 神姫ショップに新商品を追加 バトルロンド2周年感謝祭を開始(~2009.05.25 12 00) 新要素追加バトルに「ビンゴバトル」を追加 仕様変更武装パーツ「ジャージボトム」のコーディネートにスクールを設定 不具合修正アチーブメント達成条件のテキストを修正「自分の神姫がCHARM状態で勝利」→「自分の神姫がCHARM状態で相手にとどめを刺して勝利」 Ver1.68 (2009.04.06) 新要素追加「[天使型]bk tr2.FL012 素体」と「[悪魔型]wh bis.FL013 素体」の性能テキストが誤っていた不具合を修正。【[天使型]bk tr2.FL012 素体】誤)LP ○ SP △ 攻 ◎ 命 △ 回 ○ 防 △ 機 ◎ 重 ○ 暗 △ 水 △ 熱 ○正)LP ○ SP ○ 攻 ○ 命 △ 回 ○ 防 △ 機 ◎ 重 ○ 暗 ◎ 水 △ 熱 ○ 【[悪魔型]wh bis.FL013 素体】誤)LP △ SP ○ 攻 ○ 命 △ 回 △ 防 ◎ 機 ◎ 重 △ 暗 ○ 水 ○ 熱 ○正)LP △ SP ○ 攻 ○ 命 △ 回 △ 防 ○ 機 ◎ 重 ○ 暗 ◎ 水 ○ 熱 ○ Ver1.67 (2009.03.26) 神姫ショップに新商品を追加忍者型ミズキ※商品付属の武装神姫アクセスコードもご利用いただけます 新商品「シャツパジャマボトムス」はスモールサイズ素体では装備できません 新要素追加新たに以下の素体、武装パーツに対応天使型アーンヴァルB トランシェ2 素体/追加パーツ 悪魔型ストラーフW bis 素体/追加パーツ 「ふくびきカウンター」の景品アイテムを追加 新規アチーブメントを追加 GEM/アイテム交換にアイテムを追加 仕様変更下記アチーブメント達成条件を変更自分の神姫がCHARM状態かつ距離0でオフィシャルバトルで勝利→自分の神姫がCHARM状態で勝利 不具合修正武装エディットでフィルター条件がリセットされない不具合を修正 バトル演算時に誤ってコーディネート特典が付与されてしまう場合がある不具合を修正 その他ネットカフェ公認店での下記専用サービスを終了急速バッテリー充電器使い放題 特定ミッションの自動オープン Ver1.66 (2009.03.12) 神姫ショップに新商品を追加天使型アーンヴァルB トランシェ2 悪魔型ストラーフW bis※天使型アーンヴァルB トランシェ2 素体/追加パーツ、悪魔型ストラーフW bis 素体/追加パーツは、ジオラマスタジオのみの対応となります。※商品付属の武装神姫アクセスコードもご利用いただけます。 不具合修正消費アイテム購入時の確認メッセージの不具合を修正 Ver1.65 (2009.02.26) 神姫ショップに新商品を追加フェレット型パーティオ リス型ポモック※ジオラマスタジオのみの対応となります。※商品付属の武装神姫アクセスコードもご利用いただけます。 新要素追加ミッションバトルにシングルミッション「トレジャーアイランド」を追加 ミッションバトルのチームミッションを追加 新規アチーブメントを追加 「ふくびきカウンター」の景品アイテムを追加 GEM/アイテム交換にアイテムを追加 仕様変更武装パーツ「ミストルテイン」にスキルを追加 Ver1.64 (2009.01.29) 神姫ショップに新商品を追加 神姫NETウインターフェスタ終了 新要素追加新アチーブメントを追加 GEM/アイテム交換に武装パーツを追加 ※「ふくびきカウンター」の景品アイテム追加は延期いたします。 仕様変更チームミッション累計勝利数アチーブメントの達成判定に、イベントミッションでのチームバトル勝利数を加味するように仕様変更 不具合修正下記イリーガルマインドを装備した神姫に勝利しても、アチーブメント『「イリーガルマインド」を装備した神姫にオフィシャルバトルで勝利』が達成できない不具合を修正イリーガルマインド(アッシュ)イリーガルマインド(イルミーナ)イリーガルマインド(シャロン)イリーガルマインド(ムーラ)イリーガルマインド(飛魅子)イリーガルマインド(ゼノン) 神姫メンテナンスメニューから、「CSCリストア」ボタンが表示されなくなる不具合を修正。 Ver1.63 (2009.01.09) 不具合修正イベントミッションで、神姫切り替え後のチームバトルブリーフィング画面において、武装データが表示されなかった不具合を修正 Ver1.62 (2009.01.09) 要素追加イベントミッション「サイバーフロント攻略作戦」の BACK-END SERVER を解放 「ふくびきカウンター」の景品アイテムを追加 仕様調整イベントミッション「サイバーフロント攻略作戦」で、制圧レベル上昇に必要な味方神姫数を調整 不具合修正悪魔型「DTリアユニットplus+GA4アーム」バリエーション2で可動ターゲットが表示されていた不具合を修正 イベントミッションのバトル終了時に「アチーブメント達成」と「データファイルによるGEM取得」が同時発生した場合、所持GEM数が誤って表示されていた不具合を修正
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1586.html
{Hacking!} 俺はデスクトップパソコンを操作しVIS社に自分のIDを使ってログインする。 前々から怪しい会社だと思っていた。 でも姉貴の会社だし、それにいたって会社の構造や人員内部はまともだったからな。 だから手は出さなかったが…。 あの日…アンダーグラウンドのバトルでアンジェラスが変貌したあの日をキッカケに俺は決断した。 その決断とは、アンジェラスを生み出したあの会社に何かあると感じ調べようと考えたのだ。 「ログイン完了。最初は普通に探ってみるか」 マウスは素早く動かし、俺のIDでどこまで潜れるか試す。 カチカチ…カチ……カチカチ 静寂していた地下部屋にマウスをダブルクリックする音が響く。 不必要だと思った場所はウィンドウをすぐに閉じ、すぐさま別のページにとぶ。 そんな事を繰り返してるうちに『オリジナル武装神姫』のページを見つけた。 『オリジナル』という言葉が気になる。 「開いてみるか」 ページを開こうとマウスを動かしクリックした。 <ビー、このIDはではこのページを閲覧する事は出来ません> 「………ここまでか」 機械音らしい声で拒否された。 どうやら俺のIDの権限はここまでらしい。 あんまり役にたたないなぁ。 まぁ、所詮バイトだからIDを貰えるだけまだマシか。 「そんじゃ、ヤりますか」 両手の指をパキパキと鳴らし、右手でマウスを動かし左手でキーボードを素早く操作。 そして俺はデスクトップ画面にある一つのフォルダーを開き、その中に入ってるソフトを起動させた。 「さぁ、タップリと犯してやりな」 俺の声とともに起動させたソフトはフル活動する。 このソフトは俺が作った触手型ウイルス。 一般的な大学生がウイルスなんか普通は作れない。 が、俺は作れた。 生きるため、人間、必死に物事に集中すれば何でも出来るかもしれないと、俺は思ったね。 闇一場で色々なウイルスソフトを買って、中身を調べに尽くした結果、この『触手ウイルス』を作る事が出来た。 このウイルスは単純にしてタチが悪いウイルス。 ターゲットに潜り込む前に『自分は敵じゃない』と相手のセキュリティーシステムに認識させてから潜り込む。 この敵のセキュリティーシステムにあえて自分を教え、攻撃もされず難無く潜り込むのがえげつない。 潜り込んだら凌辱ゲームとかによく出てくる触手を思いうかべてほしい。 あんな風にウネウネと動き、隅々まで増殖しデータをパクっていく。 勿論、破壊する事も出来る。 で、今回のターゲットをレイプするのはVIS社だ。 破壊が目的ではなく、あいつ等の過去を探るため。 「…早くヒットしてくれよ」 ピピピピ! パソコンについてるスピーカーが鳴りヒットした事をしらせてくれる。 早速、マウスを動かしヒットしたデータを閲覧する。 閲覧すると画面上に四つのデータが開かれた。 そろぞれのデータに『Eins』『Zwei』『Drei』『Vier』と、ドイツ語で書かれていた。 「何故ドイツ語…?…アッ!」 夢の中で見た、あの頑丈そうな鉄の扉かもしれない。 それにあの元大学生のお姉さんもドイツ語を言ってたし。 これはあくまでも俺の推測だが…もしかしたら、あいつ等の事がこの四つのデータに書かれているかも! マウスを動かしまず最初に『Eins』というデータを開く…だが。 「…またセキュリティーかよ。萎えるぜ」 しかも最初にあったセキュリティーより頑丈そうだ。 これはかなりの時間がかかりそうだ、どうせ他の三つデータも同じぐらいのセキュリティーレベルに違いない。 畜生、釈然としないが時間的に引き際だな。 いつまでも潜り込んでたら、流石のセキュリティーも不信がるはず。 なんたってVIS社の最高機密データに当たっちまったのだからな。 早々に触手ウイルスを引っ込ませ、ログアウトする。 勿論、ちゃんと足が着かないようにログも消す。 今回はここまでにしとくが、次は絶対に暴かせてもらうぜ!
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/871.html
優柔不断な短編集 書いた人 優柔不断な人(仮) キャストオフ! ※騎士子シリーズとは何の関係もありません 「ねーマスタ、「きゃすとおふ」ってなに?」 PCを眺めていた猫型神姫-ティファニーが俺に聞いてきた。 「ああ、ず~っと昔に仮面ナントカって番組があって、その主人公達が使った技らしい。 重たい鎧を投げ捨てて凄い速さでバトルしたとか」 「ふ~ん、そうなんだ~。あ、ひょっとしたらフランちゃんもそういうのできるんじゃない?」 不意に話を振られた騎士型神姫-フランが答える。 「確かに重たい鎧を捨てれば速く動く事ができるだろう。だがそれで目にも留まらぬ速さで動ける訳ではないし、 防御力低下のデメリットの方が大きいと思う。」 「なーんだ、残念。…あれ?なんだろ、この「キャストオフ可」ってのは?」 PCをいじっていたティファニーがそのリンクをクリックしようとする。その時俺はもう一つの意味を思い出す。 「まてティファニー!クリックするんじゃない!」 「え?」 カチリ 無情に響くクリック音。 そして画面に映し出されたのは鎧を周りに飛ばしながら全裸になってゆくサイフォスの姿であった。 「…」 「…」 「…」 固まる俺達。 「…マスター…」 声を震わせてフランが呟く。もしかして怒っていらっしゃる? 「ああ、いや…これはその…」 俺が悪いわけじゃないよなぁと思いつつ、なんとかこの場を取り繕おうと思考を巡らせる。 1・ナイスアイデアが閃き危機を脱出する。 2・助っ人が現れピンチを切り抜ける 3・無理。現実は非情である 1は思い付くならとっくに思い付く。2はティファニーが他のリンクを見てうわ~とか言い出してるし、そもそもこういう場面では役に立たん。 ダメだ、人間諦めが感じだ、と腹をくくったところでフランの方を向く。 「あの…マスターは、こういうのが好きなのでしょうか?言って下されば私も…」 正解は4でした。 「あ~、ずるい~!ティファニーもやる~!」 って二人ともなんで武装を付けてますか。 …てなわけでなぜか二人のキャストオフするところを鑑賞する事に。 「じゃあいくよ~」「いきます」 「あ、はい、どうぞ」 といった後、俺は本来のキャストオフを思い出す。 「あ、ちょっとま…」 「「キャストオフ」」 「ごふっ!」 勢い良く飛んできた二人の鎧は俺を直撃した。 「あ…」「きゃ~マスター!」 呆然とするティファニーと悲鳴を上げるフラン。 そんな二人に俺は言った。 「コレ…実戦で使えるかもな…ガクリ」 キャストオフ!2 ※上のキャラや騎士子シリーズとは全く関係ありません マスターが付属装備に手を加えたというのでテストを兼ねてのフリー対戦をするために神姫センターへと来た。 「ほい、これがパワーアップした鎧だ」 「え?今までのと変わらないようですが?」 「見た目は一緒だがイザというときに役立つような仕掛けを施してある」 「それはどのような仕掛けでしょうか?」 「それは使ってからのお楽しみってことで。ほら、そろそろエントリーの時間だぞ。」 マスターに急かされ、急いで武装する。今回はコルヌとベック、そして改良されたという軽装アーマーという装備だ。 相手はデフォ装備のストラーフ。ハンドガンはともかく、グレネードには気を付けねば… バトルスタート。フィールドはゴーストタウンか。さて相手は… いた。少し離れたビルの上から既にグレネードを構えてこっちを狙ってる! 反射的に右へと飛ぶ。同時に爆発。さっきまで居たところにグレネードが着弾した。 すぐさまベックを構え、相手に向かって発射。 ガスッ! 第二射を発射しようとしてた相手に命中、こちらが撃ってくるとは思わなかったのだろうか? 「あらあら、グレネードが壊れてしまいましたわ。こまりましたね。」 全然困っているとは思えない口調で相手が言った。本体には当たらなかったか、残念だ。 まぁ元々当たるとは思わなかったし、相手の驚異を取り除けただけでもラッキーだ。 次を発射すべくベックの巻き上げにかかる。と、その時。 「しかたありませんね、よいしょっと」 ブオン! 不意に相手がビルの上から消えた、いや、跳んだのだ。 上か!剣を抜いているヒマは無い。急ぎベックを上に構え、攻撃に備える。 ギィン! かろうじて相手の一撃を耐える。だがこのままではサブアームから追撃を受けることになる。 「おりゃあ!」 気合一発、相手を押し返し距離を取る。使い物にならなくなったベックを捨て、コルヌを構える。 「あらあら、女の子が『おりゃあ』だなんてはしたないですよ。もっとおしとやかにしてないとマスターさんに嫌われますわよ。」 「いきなりグレネードを撃ってくるのがおしとやかなんですか?」 「それはそれ、これはこれです。私が優雅な戦闘と言う物を教えてあげますわ。」 「…戦闘に優雅も何もあるのか?」 「勿論ですわ。…では、いきます」 両手にフルストゥ・グフロートゥを構え、襲いかかってくる。言うだけあってかなりの腕前だ。しかも向こうは2本、こちらは1本、防戦一方だ。 「スキあり、えいっ!」 …4本だった。不意にサブアームから攻撃され、吹っ飛ばされる。その拍子に剣も飛ばされてしまった 「あらあら勝負あり、ですか。もうちょっと楽しませていただけるかと思ったのですが。」 その時マスターから通信が入る。 「落ち着け、こんな時の為の仕掛けだ。次に相手が近づいてきたときに使え。」 それを聞いた私は拳を握り、ファイティングポーズを取る。 「あらあら、まだやる気ですか。諦めない事はいいことですが、もう少し現実を見た方がよろしいのでは?」 「あきらめは悪い方でしてね、誰かさんに似て。」 「そうですか。では、教えてあげますよ。…現実を!」 2本の剣とサブアームを掲げ襲いかかってくる!あと10…5…今だ! 「キャストオフ!」 瞬間、私の鎧がはじけ飛ぶ。 「んなっ!」 鎧のパーツが次々に相手へと命中する。 「ぐはっ!」 カランカラン。腕にも当たったのか武器を落としたようだ。すぐさまそれを拾い上げる。 「お嬢さん、落とし物です…よっ!」 ザシュッ! フルストゥ・グフロートゥが持ち主の胸に突き刺さる。 「そんな…まさか…」 「諦めたらそこで終わり、ですよ。」 「いえ…女の子が自ら脱ぐだなんて、はしたな…い…ですよ…」 「…え?」 そうだ、マスターが施したという仕掛けは鎧を飛ばす物だった そしてアップでモニターに映し出された私の姿は… 「きゃ~~~~!」 いくらインナースーツとはいえ、恥ずかしいものは恥ずかしい。 『勝者、騎士子!』 マスター、このお返しはきっとしますよ~ 五弾対策会議 その1 犬子「あの子、胸大きいですね」 猫子「うらやましいにゃー」 黒子「ふん、でかけりゃいいってもんじゃないわよ!…たぶん」 白子「私もあのくらいあればマスターと…」 魚子「あの…あんまり見ないで下さい…恥ずかしいです…」 騎士子「あ、逃げた」 武士子「いくら同姓とはいえあからさまにジロジロと見入るのは関心しないでござる」 一同「は~い」 魚子「言えない、この胸がオプションパーツだなんて言えない…」 その2 犬子「あの子の胸は小さいですね…?」ボソボソ 猫子「ちょっとかわいそうだにゃー」ボソボソ 黒子「「ふっ、勝った」ボソボソ 白子「しかし、世の中には小さい方が好みという殿方もいるとか。まさかマスターも…」ボソボソ 鳥子「あれ?先輩方、なにを話していらっしゃるのです?」 白子「いや、鳥子さんの装備カッコイイですねって」 鳥子「そうなんですよ、私もとっても気に入ってるんですが…っとさすがにちょっと苦しいですね。ちょっと待っててくださいね」 カチリ…ボイン! 鳥子「ふぅ、苦しかった」 一同「って胸でかー!」 その3 「なんなよの~これ~~!」 「どうしたのですか、お姉さま?」 某掲示板を見て素っ頓狂な声を出した来月発売予定の花型MMS「ジルダリア」(以下花子)に対し、 同発売予定の種型MMS「ジュビジー」(以下種子)が訊ねた。 「どうしたもこうしたもないわよ!コレみてよコレ!」 と言われ種子はモニターを覗き込んだ。 「これは…第五弾?もう発表されたのですか。でも私たちも随分前から発表はされてましたよ?それほど驚くことでは…」 「問題はそこじゃないわよ!なんなのよ、この反応は!」 そういってスレッドの方に目を移す。 『魚子エロすぎ』 『けしからん乳だ』 『魚子は俺の嫁』 『魚子タンハァハァ…ウッ!』 「…なんか凄い書かれようですね」 「なんてことなの!本来なら発売まであと一ヶ月に迫った私の美貌を待ちこがれるスレで埋め尽くされてるはずなのに!」 「いや、いきなりの新情報ですし…」 「しかもちょっと前まで『下乳ハァハァ』とか『花子エロすぎ』言ってたのにこの態度の変わりようは一体なんなの?」 「いや、それもどうかと…」 「やっぱり胸なの?下乳出すだけじゃダメだっての?こうなったら開発の連中に言って私も巨乳化、ついでに全乳に…」 「やめてくださいお姉さま!発売中止になります!」 「止めるな種子!どうしてもというなら私を倒して止めなさい!」 「解りましたお姉さま」 ごちん! 「きゅぅ~~~」 種子の活躍で今日も平和は守られた! だがまたいつ危機が訪れるかわからない。 戦え種子!真の平和が訪れるその日まで! 「勝手に終わるな~~!」 兎子の事情 「ただいまー」 誰もいない部屋に向かって話しかける俺 …いや、居ない訳じゃない。そこには身長15㎝程の同居人が居る 武装神姫。心と感情を持った、俺の大切なパートナー 「おかえりなさい、マスター」 そう。部屋にはヴァッフェバニー型MMSの兎子(仮名)がいる 今まで素体が無くて、適当なボディを付けていたのだが、このほどようやく単体で発売され、本来の姿へとなることが出来た 「兎子、調子はどう…だ?」 兎子を見てビックリする なぜなら彼女はMMS素体ではなく、今まで使ってた仮ボディ(プラ○ス3四郎のジュ○ター)に戻っていたからだった 「どうした兎子!素体の調子が悪かったのか?」 ちくしょうコン○イめ!さんざん延期しておいて、不良品をよこしやがったか! 「いえ、そうじゃないんです…」 「え?じゃあ一体…?」 「ダメなんです…」 「ダメって…何が…?」 「ダメなんです…私…もう普通のボディじゃダメなんです…」 なんてことだ… ずっと普通のMMSボディを貰えなかった彼女は、様々なボディを付けさせられてきた その結果、普通のボディじゃ満足出来ない体?になってしまっていたのだった 「すまない、兎子…俺が不甲斐ないばかりに…」 「私こそ、こんな変な神姫で…申し訳ありません…」 「だが安心しろ兎子!俺はそんなお前が大好きだ!」 「マ、マスター…」 ひしっ! 抱き合う二人 「…でも、アレの時はMMS素体になってね」 「いやん、マスターのえっち」 終わる
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/901.html
津軽弁を排除したサビ抜きバージョンです(サユリの1人称のみ「わー」のままです) 昔々・・・ではなく2036年の事でした。あるカラオケ屋にとても変な神姫が居りましたとさ。どれだけ変なのか~って言うとこんな感じでした。 〔割と久しぶりだわ、カラオケなんて。そう言えば新曲で歌いたいのがあったのよね。とりあえず副部長、お酒頼んで〕 {部長部長!! 一応サークルの新人歓迎会だって忘れないで下さいよ! あ、キミたち、食べたいものがあったら好きなの頼んでいいですから} 「・・・私、人前で歌うのはあんまり・・・」 [新入りちゃん、大丈夫だって。聞いてるだけでも、今宴会用のパーティーグッズだか何だかも頼んだからちゃんと楽しめるって!] 〈ちょっとセンパイ・・・そういうパーティーグッズって大抵イタいコスチュームとかしょうもない玩具とか、最初は勢いで楽しんでも2度と使えなくて、しかもこういう所で頼むとぼったくりな料金取られますよ!?〉 [そっちの新入りはツッコミきついな~。いいじゃねえかよ、意外と面白いのが出てくるかもしれないだろ?] 『そうよっ!! 面白ないかは見てから決めてなさいっ!!!』 {いきなりマイク最大で喋るのは誰ですか! あ、人形?} 〔武装神姫じゃないそれ? 着物着てるけど、確かツガルタイプね〕 〈武装神姫って・・たしかマニアックな玩具でしたっけそれ? 良く種類まで知ってますね〉 『オモチャとは違うわ!! わーはさすらいの神姫演歌歌手、サユリちゃんよ!! まずは1曲聴いてくださいっ!! “津軽海峡冬景色”! ~♪ ~゛♪゛♪~』 [なっ!? 演歌ぁ!? いまどき演歌なんてジジイでも歌わねえのに、そんなんで盛り上げようなんておこがましいぜ!! 俺の“B’zの新曲”でも聴いて考えを改めな!! ~゛♪゛♪~!!] 『へー、言だけあってとても気合入った声してるわね。けれど歴史の浅い歌では重さが足りませんよ!! 真の歌っていうものは今の時代に聞いても凄く涙出るものなのよ。それとも古い歌なんて今の若い人は知らないの? 格好悪いわね! “淡墨桜”!! ~~♪♪!』 [B‘zの歌が軽いだと!? 古い歌知らねえだと!? そんな減らず口、この歌で塞いでやる!! “ギリギリchop”!! ~゛♪゛!!♪♪♪!!!~] 「・・・“Top of the World”歌います。~~♪~♪~♪~」 〈ああもう・・・、歌えばいいんでしょうが!! “Imagine”!! ~~~♪~♪♪~〉 〔へえ、意外といい歌知ってるじゃない2人とも。これは演歌ちゃんだけじゃなく、新入りちゃん達にも負けていられないわね! “みかんのうた”行くわよ! ゛♪゛♪゛♪~ ゛!゛!゛!~〕 {ああもう部長まで挑発に乗って、これでは収集が・・・} 『黙りなさい!! オケ屋なんて暴れて歌うトコでしょう!! ぐだぐだ言ってないで歌いなさい! “鳳仙花”! ~゛!! ♪♪~゛♪~』 {歌わないとは言っていません!! “脳内モルヒネ”、歌います・・。 ♪~! ♪♪~♪~} 〈次は“ピンクスパイダー” !!!♪♪~♪!!〉 「・・・“fly me to the moon” ♪~♪♪~♪ ♪♪~」 〔皆、古い歌しばりでもレパートリーあるのね。“石川大阪友好条約” ~♪ ~!! ~♪♪〕 [“DA・KA・RA・SO・NO・TE・O・HA・NA・SHI・TE”だ!! ♪~♪♪ !!!~♪] {“月に叢雲花に風”、歌います。 ~!!!~♪~!!!~♪♪} 『“夕焼けとんび”です!! ~~~~♪♪~~!!♪~』 [次は“LADY NAVIGATION”を・・・] 〈センパイ、俺の“lithium”が先です!! 大体、70過ぎても現役ロッカーな物好きの歌ばっかり歌わないで下さいよ!!〉 [B’zをバカにするな! 大体お前だって自殺とか殺されたりした奴の歌ばっかり歌ってんな! 辛気臭い!!] 〈なっ!? 別に歌は辛気臭くないんだからいいじゃないですか!!〉 『どうしたの、歌の趣味なんて人の好きじゃない?』 〔ねーねー、折角だから皆で“青のり”歌わない?〕 [{〈『それは却下!!!!』〉}] こんな風に、それはそれは迷惑な位古い演歌に情熱を注ぐ変わり者さんなのでした。 「ありがとうね~♪」 「有難うございました~♪ ・・・あ~ふわぁ~、眠ぃ、朝になってやっと閉店、これだからオケ屋のバイトってのは・・・」 サユリと歌ってた最後の客を見送ってから、マツケンが大きなあくびをすると、それを聞きつけて、奥からみりーも顔を出しました。2人ともサユリの同僚のアルバイトでした。 「マツケン君、最後のお客、随分盛り上がってたみたいだね」 「あ、みりー。それはこいつが居たからだよ」 「ああ、サユリちゃんか~。どうりで古い曲ばっかり聞こえてくると思ったら」 「久しぶりに、なかなか骨のある客だったわよ」 「珍しく、怒らない客だった、だろ? 毎度お前が古い歌で引っ掻き回した客の応対誰がしてると思ってるんだよ!!」 「でも結構サユリちゃんの売り上げ多いよ?」 「・・・珍しがってるだけなんだよ」 マツケンが睨んでも、サユリはなんとないわと鼻で笑っってました。 「さて、大分バイト代も溜まったから、わーはまた旅に出ようっと」 「へ? 旅って、もう出て行くのか?」 片づけを始めたマツケン達を尻目に、いきなりサユリは宣言しました。いつの間にかその体には大きな風呂敷も背負って旅支度まで済ませていたのです。 「え? サユリちゃんてこの店の神姫じゃなかったの?」 「ああ、こいつは俺たちと同じバイト」 「マスターも無しに?」 「なんでか知らねえけど、そうらしい」 みりーは先週からだったから、サユリの来た1月前のことは知らないのでした。 「ふらりとやってきて、いきなり1人で『住み込みで働かせてくれ~』とか言って押しかけて来たんだよこいつ。最近じゃ路上ライブも取り締まり厳しいからとか何とかで。で、物好きな店長が宴会要員として採用しちゃったんだよ」 「物好きなんて言うんじゃない!! わーの心意気に惚れ込んだから店長は雇ってくれたのよ!!」 「いや心意気はともかく野良神姫の飛び入りバイトなんて雇ったら十分物好きだろ大体お前演歌しか歌わねえし・・・まぁ、上手いとは思わなくもな・・」 「ねえ、ところで旅って何処へ行くの? 何が目的?」 「わーの師匠の親戚を渡り歩いているのよ」 マツケンの声を遮ってみりーが聞くと、サユリはそう答えていました。師匠って言うのはサユリのマスターの事だそうです。 「なんだ、野良じゃなくてはぐれた神姫だったのか。その師匠・・マスターを探して歩いてるのか? 何ではぐれたか知らないけど」 「だったらマツケンのお兄さんに探してもらったら? 確か元刑事だとか探偵だとか何とかじゃなかったかな」 みりーの言う通り、マツケンの兄は私立探偵をしていました。まーその欠けたハサミみたいな探偵の神姫に引っ掻き回され人生っぷりは別の話で見て下さい。しかし、みりーの提案にも、サユリは首を横に振ったのでした。 「違うわ。わーは別に師匠とはぐれた訳じゃないの。自分で旅に出て、修行してるのさ」 「修行!? 演歌の!?」 「わーは昔、さんざん「時期ネタ」だって虐められたのよ。サンタなんて「残りの364日はプー」なんて色々言われてねえ」 「あ~、俺も言ってたな。ツガルタイプはデザイン優先で使えないとかクリスマス以外の日にサンタが居てもありがたみが無いとか一人だけ元ネタありでデザイナーからゴリ押しで入れられた邪道だの色々。本人に言われると罪悪感沸くなあ」 「なら罪の償いに死んでくれない?」 「さらっと言うな酷いコト!!」 「それは冗談だけれど、実際それでわーはとても落ち込んでね。それを見てわーの師匠はこう言ったのよ。『一日だけでも、毎年喜ばれるならいい』てね。わーの師匠はたった1日の出番の日に、悪者になって豆弾を投げつけられるんだそうよ。それだけでなくてね、師匠の親戚は葉っぱで目潰しをされたり、初嫁や子供に挨拶しに行っただけなのに脅迫や誘拐に勘違いされたり、ただ笑っただけなのに「何をあざ笑ってるんだ!!」って非難されるって言ってたわ」 「でも実際悪さしてたんだろ? それだけ憎まれてるんなら」 「それはごくごく一部だけよ。殆どは昔良かれと思って始めた事なのに、皆が昔の事忘れてしまって全部悪い方に勘違いされてるのよ。それだけならまだ良かったんだけど、その風習自体ももう忘れられてしまってきていて、覚えも貰ってもいられなくなっているの」 「そんな・・・師匠さんの一族って可哀そう」 「ああ・・・ うん・・?」 みりーもマツケンも不幸なサユリの師匠を哀れんだのえした。けれどもマツケンはその師匠のことで、何か引っかかるとも思っていたのでした。 「けれども師匠はこうも言ってたわ。『だけど、俺達一族のやっている事は、関係ない、意味無いと言われても最後には人の幸せに繋がる事だから誇りを持っている』ってね。わーはその言葉にとても心打たれたわ」 「あ、なるほど。“風が吹けば桶屋が儲かる”の理屈か」 「え? 天気悪いと客足引くじゃない?」 「いやオケじゃなくて桶。風呂桶の桶だって。嫌な事が関係ないように見えて良い事に繋がってるってことわざ」 「そうよ、だからね、わーはそんな風に迷惑って言われても自分のやる事誇れる者になりたくて諸国巡りしている訳なの」 「そうか、だからわざわざ今では廃れて無意味で陳列棚の邪魔者って言われる演歌で身の上を立てたりしてるのか。神姫の癖に見上げた根性だよ、ホントに」 「いや、演歌は趣味だけど」 「話の腰折るなよ」 「それじゃ、そろそろわーは行くわね」 そう言ってサユリは風呂敷を背負って立ち上がりました。 「ホントに、言っちゃうんだね。それじゃあ、次は何処に行くの?」 「次は師匠の故郷に寄るのよ。京都の大江山なの」 「え? 大江山?」 「そう。師匠はそこに居ないけれど、集落には仲間が沢山居るって話よ」 「そっか、早く師匠さんに自慢できるようなオケ屋になれるといいね」 「ええ、頑張るわ。それじゃ、短かい間だったけれどがありがとうね。さようなら」 「うん、元気でね~!!」 朝日が、その小さな後姿をかき消したのは、ほんの一瞬のことでした。 「・・・ねえ、マツケン君、何か考え込んでるみたいだけど、どうしたの? サユリちゃんが心配?」 「いやさ、豆投げるのって、節分だよな? 最近あんまりやらないけど」 「・・・え?」 「節分の魔よけのヒイラギは目潰し用だって言うし、子供を追い回すって言うとなまはげ。来年の事を言うとアレが笑うってことわざもある。極めつけは京都の大江山って酒呑童子伝説の場所なんだよ」 「え、それって、もしかして、時期ネタで苦しめられて昨今忘れ去られてるってまさか・・・」 「いやでも・・・実在するなんて・・・ちょっとなあ、にわかに信じがたいってか・・・」 「・・・今度サユリちゃんに会ったら聞いてみるしかないよね」 「・・・また会ったら、な」 その後も、マツケンとみりーは神姫演歌歌手の噂は何度か聞く機会がありました。けれども、サユリとまた会うことは2度と無かったのでした。めでたしめでたし(?)。 目次へ
https://w.atwiki.jp/cthulhuartonline/pages/105.html
◎バトルマスター ★ジョブスキル【波紋の呼吸】or【雷光の如く】or【武芸百般】or【亀仙人の教え】、【武道(空手、相撲、プロレスリング、カポエイラ、ボクシング、ムエタイ、CQC、逮捕術)】より三つ STRとDEXとCONに+3 【波紋の呼吸】・・・人型の敵に対して無敵貫通のパッシブがつく。 【雷光の如く】・・・成功すれば3回行動ができるようになる。 【武芸百般】・・・適正武器が全ての武器(個別)に変化する 隠し:【亀仙人の教え】・・・このスキルを取ると全ての技能値が半分になり、DEXもー15されるが、SP【かめはめ波】を打つことが出来るようになる 【武道(空手)】・・・あらゆる攻撃を受け流す「回し受け」や、どんな場所でも同じ火力を出し続けることが出来る「三戦」など、補助技能を入手できる 【武道(相撲)】・・・【頭突き】に【ぶちかまし】が追加され、ボクシングをしのぐ高火力と高耐久を持ち、吹き飛ばされなくなるがDEXが表示上最低になる 【武道(プロレスリング)】・・・魅せる技を数多くこなすことが出来る。強力な一撃をガンガン打てるが、回避をするとSANが2減る 【武道(カポエイラ)】・・・キックした際に蹴った回数が1d3回増える(魔術は乗せられない) 【武道(ボクシング)】・・・拳のダメージが規格外となり、STR加算値が発生する。その代わり、足を使う攻撃技能の一切を禁止する。 【武道(ムエタイ)】・・・キックと拳がバランスよく上がり、敵に強制的にCONロールさせる技などが存在する 【武道(CQC)】・・・攻撃した際に、その技能値の半分でもう一回、さらに半分でもう一回・・・と連打攻撃ができるが、二回目以降に魔術は入れられない 【武道(逮捕術)】・・・JAPANESE POLICEMENの逮捕術。主に組付きからの派生攻撃をコンボさせる 隠し:【武道(亀仙流)】・・・かめはめ波が打てるようになる ◆バトルマス◆上級格闘家・バトルマスター ①バーバリアン【勇猛:100 敏捷:100 頑健:100】獰猛な戦士。素手の戦闘にボーナス ②レイジング【勇猛:200 敏捷:200 頑健:200】秘めたる業怒を力に変えて戦う蛮人戦士 ③サイレント【勇猛:300 敏捷:300 頑健:300】全くの無音のまま敵対者を葬り去る無音戦闘者 ④カンフーマスター【勇猛:400 敏捷:400 頑健:400】東洋体術に秀でた者。生半可な攻撃で彼にダメージは与えられない ⑤バトルマスター【勇猛:500 敏捷:500 頑健:500】素手での戦闘において右に出るものはいない。人間において極められた武の完成形ター~特殊称号~ 【武功:】敵に与えたダメージ/1000 【武道(空手)】 ①STR,DEX,CON+3 ②STR+2 ③DEX+3 ④CON+4 ⑤STR,DEX,CON+4+1d6 【武功:100】入門者 【武功:200】初段 【武功:300】錬士 【武功:400】達士 【武功:500】範士 【武道(相撲)】 ①STR+5、CON+4、SIZ+3 ②STR+1d16、CON+1d6、SIZ+3 ③STR+1d16+2、CON+1d6、SIZ+5 ④STR+1d30、CON+1d6+1、SIZ+7 ⑤STR+2d8+2d12、CON+1d6+2、SIZ+10 【武功:100】序の口 【武功:200】十両 【武功:300】関脇 【武功:400】大関 【武功:500】横綱 【武道(プロレスリング)】 ①STR+3,SIZ+4,APP+1 ②STR+1d6,SIZ+1d4 ③STR+1d8,SIZ+1d6 ④STR+1d10,SIZ+1d8 ⑤STR+1d12,SIZ+1d10 【武功:100】ウェルター級・・・ユニークスキル【ダブルラリアット】:【拳】【CON*3】【武道(プロレスリング)】の順に成功すると放つことが出来るSP技(30消費)。部屋の敵全体に(STR+SIZ)d6+SIZ+DBの物理ダメージを与える。 【武功:200】ミドル級・・・ユニークスキル【スクリューパイルドライバー】:【組付き】【跳躍】【武道(プロレスリング)】の順に成功すると放つことが出来るSP技(50消費)。敵単体に(STR+SIZ+DEX)d6+DBの物理ダメージを与える。 【武功:300】クルーザー級・・・ユニークスキル【パワーボム】:【組付き】【跳躍】【武道(プロレスリング)】の順に成功すると放つことが出来るSP技(75消費)。敵単体にDB*SIZの物理ダメージを与える。 【武功:400】ヘビー級・・・ユニークスキル【ハイパーボム】:【組付き】【跳躍】【武道(プロレスリング)】の順に成功すると放つことが出来るSP技(100消費)。敵単体にSTRd4*2+DB*SIZの物理ダメージを与える。 ユニークスキル【六連バックドロップ】:対象に気づかれていない状態で【組付き】【組付き】【武道(プロレスリング)】の順に成功すると放つことが出来るSP技(100消費)。敵単体にSTRd4*6の物理ダメージを与える。 【武功:500】スーパーヘビー級・・・ユニークスキル【アルティメットアトミックバスター】:【組付き】【跳躍】【跳躍/2】【跳躍/4】【武道(プロレスリング)】の順に成功すると放つことが出来るSP技(300消費)。敵単体に(SIZ+STR+DEX)d2*DB。 【魅了:300】マスクマン・・・ユニークスキル【フライングギガバスター】:【組付き】【跳躍】【武道(プロレスリング)】の順に成功すると放つことが出来る。 【武道(カポエイラ)】 ①DEX+3、打撃数+1 ②DEX+4、打撃数+1 ③DEX+5、打撃数+1 ④DEX+6、打撃数+1d2 ⑤DEX+8、打撃数+1d3 【武功:100】洗礼者 【武功:200】バチザード 【武功:300】コルダゥン 【武功:400】カントラ・メストーレ 【武功:500】メストーレ 【武道(ボクシング)】 ①STR+8 ②STR+8+1d4 ③STR+10+1d6 ④STR+12+1d8 ⑤STR+14+1d20 【武功:100】ストロー級 【武功:200】フライ級 【武功:300】クルーザー級 【武功:400】ヘビー級 【武功:500】チャンピオン 【STR100以上】ハードパンチャー 【武道(ムエタイ)】 ①APP,INT,EDU以外+2 ②APP,INT,EDU以外+2 ③APP,INT,EDU以外+1+1d2 ④APP,INT,EDU以外+1d4 ⑤APP,INT,EDU以外+1d6 【武功:100】コットン級 【武功:200】ピン級 【武功:300】バンタム級 【武功:400】クルーザー級 【武功:500】ヘビー級 【武道(CQC)】 ①全ての近接技能値+1d10% ②全ての近接技能値+1d16% ③全ての近接技能値+1d16% ④全ての近接技能値+1d20% ⑤全ての近接技能値+1d20% 【武功:100】ラッシャー 【武功:200】拳銃格闘術 【武功:300】刀剣格闘術 【武功:400】連打の達人 【武功:500】ガン=カタ 【武道(逮捕術)】 ① ② ③ ④ ⑤ 【武功:100】徒手空拳 【武功:200】小手返し 【武功:300】短剣格闘 【武功:400】銃剣道 【武功:500】制圧 【武道(亀仙流)】 ①全能力値+2 ②POW+初期値+3 ③CON+初期値+3 ④DEX+初期値+3 ⑤STR+初期値+3、EDU+3 【武功:100】太陽拳 【武功:200】気円斬 【武功:300】瞬間移動 【武功:400】界王拳 【武功:500】元気玉 ◆適正武器:棍、暗器を追加 ◆功績:勇猛、頑健、敏捷