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次の日、今は学校が終わり、夜9時までのコンビニアルバイトの最中。 学校でもずっとあの神姫について考えていた。なにかしてあげられないのかなと思っているが、良い案がなかなか出ない。 そんな上の空の状態だから、アルバイトの最中でも度々ミスをしてしまうし。 「……ハァ」 「どうした、青少年。溜息なんてついて、今日は覇気がないぞ。覇気が」 「あ、すみません。君島さん」 今日同じシフトの先輩、君島さんにおもわず頭を下げる。人が少ない頃を見て話しかけてくれたみたいだ。 「いや、なに。いつも生真面目に仕事しているキミがミス連発なんて珍しいのでね」 「……ちょっと、色々ありまして、悩んでいて集中できないんですよ」 「ほう。恋かね?」 「え!……いやいや違いますって」 何を言い出すんだ、この人は。アルバイトの先輩で本名は君島 縁さん。 長く伸びた髪をぞんざいに後ろでまとめていて厳かな口調が特徴。そしてなぜか僕をよくからかってくる。 「なんだつまらないな。キミくらいの年代ならそういうのが相場なんだがね」 「なんで恋愛関連に話がいくんですか。……あ、でも、一応悩んでいることは女の子なのかな。武装神姫のことなんですけど」 「あの戦わせたり、その他の用途に仕事のサポートもできるという噂の機械人形か。はたまた恋人にしたりできるとか。……ハッ! まさか、相手は神姫か!? お姉さんは許さんぞ」 「違いますって! ―――あ、いらっしゃいませ!」 お客さんが来たので、すぐさま商品をうつ。君島さんもいつの間にか商品の整理に戻っている。まったく、あの人は。 頃合いを見て、君島さんにまた話しかける。 「お客さんに見られたじゃないですか」 「クク、取り乱すキミが面白くてな。ちょっとからかってしまった、すまないな。 ……でだ、武装神姫について何を悩んでいるんだね。話してみ。ほらほら」 「……ハァ。わかりました」 二度目の溜息をついて、これまで起きたことを君島さんに話した。 「ほうほう。塞ぎ切った神姫を拾ってしまって、どう接したらいいかわからないと」 「そうです」 君島さんは真面目に取り合ってくれる人ではあるのだけど。なんかな、うまく表現できない。 「私は神姫を持っていないが、メディア情報は度々拾うな。例えば『神姫には心がある』という話が多くある」 「……心ですか」 喜怒哀楽の感情がある。そんな神姫たちであれば、そう思う人たちもいるのだろう。ミスズとか他の神姫を見てて僕もそう思う。 「所謂、AIなんだが。これには様々な議論がされている。今でも決着はついてはいない。ただの自立思考型の人形だろとかな、偉い奴とかがそういうことをのたまうのは世の常だ。 まぁ、そんなことが上では起きている訳だ。……少し反れたが、では、キミのように神姫を拾った場合はどうしたらいいか」 「……どうすれば?」 「人間の女と考えて行動しろ」 「はい?」 「人形とか、野良神姫とか、考えるな。そいつは人間の女の子だ。家出した女の子だ。そう考えて動け。で、仲良くなればいい」 「簡単に言いますけど、塞ぎ込んでいるって話しましたよね」 「一度でくじけるな。弱音を吐くな。何回でもトライだ。さすれば、道は開かれん」 勢いでそう君島さんは言い放った。 なんだか、そう思うとやれる気がしてきた。 僕は単純なんだろうか。それとも君島さんの話術なんだろうか。 「そして、いつのまにか長倉君とその神姫はめくるめく関係に。うわ、面白いし笑えるな」 ダメだ。こんな大人になったらダメだ。 ---- そして。 帰ってきて、僕の部屋に今も謎の神姫がいる。 あれからずっとクレイドルの中にいたみたいで、いまだに何があったのかは話してくれない。これじゃ君島さんの案、強引に会話で仲良くなろう作戦もままならない。 一応、僕も武装神姫をいつかは欲しいなと思ってはいたけどなあ、これを人間の女の子と考えるのか。無理でしょうに。 僕の家庭は母親は僕が幼い頃に病気でなくなり、父親は飛行機の機長をやっていていつも飛び回っているので、家を空けるばかり。世話をしてくれていた母方のおばあちゃんもいた。だけど、中学二年の時に亡くなってしまった。 以来僕はこの家に一人暮らしをしている。父親に心配をかけまいと家事などは一通り覚えて、立派にやっていることを伝えているし、高校生になってからはアルバイトもしていて、生活は充実している。でも、やっぱり一人が寂しい時があるので、淳平とミスズみたいな関係を作れる神姫が欲しかった。 この子を人間の女の子と考えると、見知らぬ所でずっと塞ぎ込んでいて寂しくはないのだろうかと思えてきた。 「一人ぼっちは寂しいと思うけどな」 考えていたことがふと口からでてしまった。 すると。 「………あの」 見ると神姫の子は顔を上げてくれていた。 「!……初めて話しかけてくれたね。どうしたの?」 「えと、その、お話を聞いてもらってもいいでしょうか」 「うん、いいよ」 どういう心境の変化なのかはわからないけど、心を開いてくれた。ただそれだけが嬉しかった。 僕は座布団を用意して腰かける。そして神姫は話し始めてくれた。 「私のマスターはバトルで勝つことが好きでした。自分で考えた武装、自分で考えた戦略、それで戦わせている神姫が勝つととても嬉しそうでした。私の前には、ストラーフのお姉ちゃんがいて、マスターとお姉ちゃんが私を買ってくれて、戦っている姿も見せてくれました。だけど私は……その……武装神姫としては欠陥品でした」 「どうして? 悪い所はないみたいだけど」 「心というか、CSCと言いますか。……私は戦うことを苦手と感じるんです」 「……」 それは戦えなくては“武装”神姫足りえないということを意味するのだろうか。 「訓練とかは普通にできるんですよ。でもバトルだと傷つけるのも、傷つけられるのも嫌に思えてしまって、フィールドに立たされてもまともに戦えなくて、結果マスターにもお姉ちゃんにも見限られて……いられなくて……それで……」 「わかった。もういいよ」 「ぐす……うぅ」 会話を止めると優しく声をかける。泣き出してきてしまったので、それを僕は指で拭う。 あの日にそんなことがあったのか。一人で外をたくさん歩いて、バッテリーが切れる寸前まで猫に追いかけられて、大変な苦労をしたんだな。 「戻れないんだね、居場所には」 「……はい」 「それじゃあさ、よかったらだけど、ここにいてよ。僕は神姫バトルとか興味ないし、話し相手……いや、いっそのこと僕のになってくれないかな」 「螢斗さんのにですか?」 「うん」 強引でしかも傍から見たらプロポーズに聞こえるが、そうではなくて、ただ単に一緒に生活するという事としてのお願いだ。 「そうですね。螢斗さんはお優しい方みたいですし、……喜んで」 「そうか。やった」 こうして、この僕の家に一つの神姫が住むことになった。
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3Dバトルアクションゲーム『武装神姫 BATTLE MASTERS』及び 続編『武装神姫 BATTLE MASTERS Mk.2』について語るスレです(質問・対戦募集OK) 基本sage進行 荒らしはスルー厳守(触れた時点であなたも荒らし) 次スレは 950が立てる(無理なら代理指名/重複防止のため宣言してから立てる) 《公式》 武装神姫 公式サイト https //www.konami.com/games/busou-shinki/ 武装神姫 公式Twitter https //twitter.com/Busou_Shinki/ 武装神姫 BATTLE MASTERS https //www.konami.com/games/jp/ja/products/site/bs_psp/ 武装神姫 BATTLE MASTERS Mk.2 https //www.konami.com/games/jp/ja/products/site/bs_psp_mk2/ 《攻略Wiki》 武装神姫 BATTLE MASTERS wiki https //w.atwiki.jp/busou_bm/ 武装神姫 BATTLE MASTERS Mk.2 wiki https //w.atwiki.jp/busou_bm2/ 《姉妹スレ》 ■武装神姫 PART741(本スレ) https //mevius.5ch.net/test/read.cgi/toy/1606307495/ 武装神姫 AP BC 2(バトコン専門スレ) https //mevius.5ch.net/test/read.cgi/arc/1604801110/ ■武装神姫_BATTLE_RONDO>>PART_389(バトロン専門スレ) https //medaka.5ch.net/test/read.cgi/mmominor/1383209379/ 《前スレ》 【PSP】武装神姫 BATTLE MASTERS 総合 PART 189 https //krsw.5ch.net/test/read.cgi/handygame/1513344248/ 《アップデート》 Mk.2には修正パッチが配布されているので必ずアップデートしてください 手順はMk.2公式サイトの「アップデートについて」ページを参照 アップデートで新たに発生するバグもあるので攻略Wikiで確認推奨 《よくある質問》 攻略Wikiに掲載してあるのでスレ内での質問の前に覗いてみましょう
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{表の世界の戦闘} 現在、俺がいる所は神姫センターにいる。 細かく言うと神姫センターの中にあるオフィシャルバトルという部屋に居る。 この部屋には巨大な箱型の筐体がいくつもあり、その中で武装神姫達が戦うバトル用の室内みたいなもの。 ルールは簡単。 武装神姫同士がバトルし、力尽きた神姫が負けというシンプルな勝敗だ。 オーナーの場合、基本的に神姫が闘っている間はオーナーはただ見てるだけ。 観戦というべきかな? ある程度オーナーからの指示とか命令を言ってよいとも聞いたし、まぁ司令塔みたいなもんだな。 俺はそんな部屋の中が見渡せる場所の椅子に座って煙草を吸ってた。 勿論喫煙用の席でだ。 ん、何故俺がこんな所にいるかって? 一応バイトだからといって、俺はこいつ等(アンジェラス達の事)のオーナーだからなぁ。 ズーっと部屋の中で遊ばせとくのも、ちょっとなぁ~、と思い俺は神姫達にこう聞いた。 「お前等、バトルに興味あるか?」 言ったあげく、この場所に来てしまったというわけ。 あの時のクリナーレの様子は凄かった。 『やっと闘えるよー!』と言いながらはダンベルをブンブン回しながら、はしゃいでいたもんなぁ。 そして以外にも、気が弱いパルカがバトルに興味があるという事。 アンジェラスやルーナについては、バトルする否かは俺の意志に従うまでらしい。 そんなアンジェラス達は今俺の両肩にチョコンと座ってワクワク、ウキウキしているご様子。 …そろそろ行くか。 煙草を灰皿に入れ、立ち上がる。 そのまま寄り道せずに、他の人が使ってなくて空いている筐体の目の前で立ち止まる。 ふむ、中はゴーストタウン…かぁ。 よく出来てる。 俺がフムフムと筐体に興味を示してると、クリナーレが俺の頭に上り騒いだ。 「ねぇねぇ、アニキ!ボクが一番最初に闘っていい?」 どうやらクリナーレの奴は初陣したいらしい。 その発言を聞いた他の神姫達も。 「ご主人様、我侭は言いません…ですけど、やっぱり一番最初にご主人様と一緒に闘いたいです!」 「アタシもお姉さまと同意権ですわ」 「お兄ちゃんのためなら、私、頑張ります!」 アンジェラスは俺の目の高さに合わせ、リアウイングAAU7を使って空中停止しながら言う。 ルーナは俺の右耳近くで言い、パルカは左耳近くで言う。 俺は溜息を吐き、空中停止しているアンジェラスを右手の手の平に着地させる。 「あのな~お前等。対戦相手がいないのに、そーハシャグなよ。誰が初陣を切るかは俺が決める。だから大人しく待ってろ」 『は~い』と四人一斉に言う俺の神姫達。 意気投合してるなぁ~。 おっとー。 対戦相手が来たみたいだ。 年齢は俺より上のサラリーマンぽい人だった。 軽く挨拶してお互いのどの神姫と闘わせるか話す。 対戦相手のオーナーレベルは中の下ってな感じだな。 相手の神姫は悪魔型のストラーフかぁ。 レベルは…20。 攻撃・命中・回避・防御も全て平均的。 LP・SPはレベル無し。 さて、誰で初陣を切るか…。 アンジェラスは近距離・中距離・遠距離で斬撃・射撃が得意、何処でも攻撃できる万能型。 クリナーレは近距離で打撃が得意、高い攻撃ができる近距離型。 ルーナは中距離で斬撃が得意、ヒット&ウェイでトリッキーな攻撃ができる中距離型。 パルカは遠距離で射撃が得意、スナイパーな攻撃ができる遠距離型。 ん~どれも利点があるけど、相手の武装が気になる。 さぁ誰を選ぶか…。 「相手の武装が解らないからここはアンジェラスで」 「接近して相手をすぐ倒すクリナーレで」 「トリッキーな攻撃で相手を翻弄させるルーナで」 「相手を寄り付かせないで倒すパルカで」
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「Quel est dîner d aujourd hui ? 」 助手席から、声が聞こえた。 「Es gibt den aiready Reis. So bilde ich die Teeessiggurke. Ich bin so müde. 」 車を運転しながら、ドイツ語で応えてやる。 「확실히.오늘은, 큰 일이었지요.」 えっと…。 「何だ。今のは」 「韓国語ですよ。マスター。『今日は大変でしたね』って言ったんです」 助手席の下の方、クレードルの上でくつろぐ神姫が微笑みを浮かべる。 そう。彼女は武装神姫の侍型MMS。名前は『椿』だ。彼女は、そのAIの性能を発揮して、俺の仕事の秘書として、通訳兼語学指導者として、そして、一人暮らしの俺の話相手として、色々な場面でその能力を発揮してくれる。今や、俺の生活には欠かすことのできないパートナーだ。 ------------------------------------------------------------------- 必要に迫られて、彼女を手に入れた。あ、そこの君、「玩具を『彼女』呼ばわりなんて、コイツ、あぶねー奴なんじゃないの」とか思っただろ。ま、いいや。俺の場合、ネットで神姫を使った外国語学習の事例を見たのがキッカケとなって、神姫の購入を思い至ったんだ。俺の仕事はー、ま、言ってみればブローカー。右から左、必要とする人がいれは、品物を売って歩く仕事だ。その時、たまたまツテがあって、海外との取引の話を持ちかけられていたんだ。 「通訳の役にたつかも」 そう思って、神姫の購入を思い至った。 まだ人を雇えるほど儲けているわけではなかったし、通訳を探すツテもなかった。 正直、購入するときは、ちょっと恥ずかしかったけどね。 まぁ、通常の女の子向けの神姫より、武装神姫の方がハードルが低かった、と、そういうこと。 そして、同時に驚きもした。 神姫について知ってはいた。それでも、起動するまでは「人間の音声認識をして、勝手に動くことのできる人形だろ」くらいにしか思っていなかった。でも。 「はじめまして。私は侍型MMS、TYPE『紅緒』です。あなたが私のマスターですか」 起動直後の第一声だ。今でも覚えている。その動作、声の抑揚にー、そして表情。何ひとつ人間と変わらないその仕草を。 俺は彼女には、人間の女性を扱うのと同じように接することにした。 当初、彼女はバトルのために購入されたのではない、ということに少々戸惑った様子だった。しかし、自分の能力が求められている、というシュチュエーションは、彼女のやる気を引き出すのに十分だったようだ。その翌日、サードパーティの語学パックを使って、彼女は、英語、フランス語、ドイツ語、中国語(もちろん広東語と北京語の二種類は押さえている)やスペイン語など二十カ国語ほどをあっという間にマスターした。 彼女の存在は、取引先にも好評だった。ま、中には、テーブルの上で通訳をする彼女をいきなりワシ掴みにするお客もいたりして、彼女がその後しばらくの間ふて腐れる、という事態もあったりしたけどね。 その後、仕事も覚えてもらって、スケジュール管理や経理にと色々手伝ってくれている。 で、だ。 最近、そんな彼女の元気がない。 「そういえばさ」 しばらく続いた沈黙を破って声をかけた。 「名前の由来、解ったよ」 「はい、シガーソケットのことですか」 彼女が座るクレードルは、車内でも使えるようにシガーソケットから電源を供給されている。メーンの機能はバッテリーの充電だけど、その気になれば、PDAを使って彼女が一日の最後に行う、デフラグとバックアップをすることができる。 「昔ー、まだタバコが一般的だったころの名残だってさ。昔は、そこに発熱コイルを使ったライターがキャップ代わりに入っていたんだって。それが、だんだん車内で使う電気機器の電源供給源になって、その用途が一般化して、えーと、その一方で禁煙運動が進んで、タバコを吸う人はほとんどいなくなったけど、名残でそのまま残ってしまったんだと」 「へぇ」 「だから、ソケットの横にある小物入れって、実は吸って短くなったタバコを捨てるトレーだったらしいよ」 「はい、そうでしたか…」 なんだか、気乗りしない返事が帰ってくる。 うーん、そろそろ切り出してみるか。 「で、椿」 彼女の名前を優しく呼んでやる。 「最近、元気がないけど、どうしたのさ」 「いえ…そんなことは、ない、です。ええ。」 「歯切れが悪いなぁ。ここのトコの君の行動は変なんじゃないかな。ぼーっとしていることが多い」 彼女と暮らすようになってから、一応、神姫のAIのおおざっぱな概要や、ユーザーが抱えるトラブルなんかを調べていた。彼女たちは、人間と同様、環境によるストレスやなんかを感じる、らしい。俺は起動直後、購入目的を聞いて、戸惑いを見せた彼女の様子を思い出していた。彼女は武装神姫だ。武装神姫の存在目的はー。 「バトル、してみないか」 投げかけた。 「えっ」 彼女の顔が明るくなる。よほど嬉しいのか、その瞬間、彼女はその身体をぐるりとこちらへ向けた。 「でも…。マスターはバトルをなさらないのでしょう。私のために、そんな時間とお金を割くなんて無理をされなくても…」 と逡巡する。 やれやれ。 「じゃぁ、こう考えるんだ。君は、ウチの唯一の社員だ。さて、社長であるボクは、よく働いてくれる社員のためにも福利厚生を考えなきゃいけない。そうだろ?」 うーん、人間の女性だったら、ここで手でも握らなきゃいけないトコだ。 取り合えす、片手を使って指先で彼女の頭をなでてやる。こわばっていた彼女の身体から、力が抜けた。 週末がやってきた。 俺たちは近場の神姫センター登録をしている店を訪れた。 バトルは大きく分けて二種類ある。ひとつは神姫BMA(武装神姫バトル管理協会)によるオフィシャルなもの、これは実際に闘うリアルバトルだ。もうひとつは、いわゆるバーチャルバトル。こちらはまだBMAの公認こそは得られていないものの、装備の破損などを嫌がるユーザーの支持も多く、ほとんどのセンターでバーチャルの筐体を用意している。バーチャルのみでも全国ランキングなどが付けられ、準オフィシャルみたいな形で大会が開催されている。さすがに初めてのバトルなので、椿と相談して今回はバーチャルバトルに挑戦することにしていた。 さすがに人が多い。対戦台の前でバトルの指示を出すプレイヤーだけではなく、ギャラリーも胸ポケットに入れたそれぞれの神姫と一緒にモニターで対戦の様子を観戦している。大画面ではブースターと羽を付けた猫型が地面すれすれを滑るように駆け抜けていく姿が映されていた。だめだ。あんなのとやったら、間違いなく向こうのワンサイドゲームで終わっちゃうよ。 俺は周囲の神姫とマスターたちを観察してみた。ありゃ、マスターと神姫でお揃いの服着てやがる。あっちの神姫は眼帯しているけど、ファッションだよね、きっと。コッチには頭の上に神姫を載せてる奴もいるぞ。えー、シッポをパタパタさせている犬型の君。マスターの頭上でポテチの袋を振り回すのは止めなさい。 とか心の中でツッコミを入れていて、ハタと気づいた。 「どうやって対戦するんだ」 よく考えたら、昔の対戦ゲームのように一人プレイをしていて、そこに乱入とか、そういうスタイルではなさそうだ。店員を捕まえて聞いてみることにした。 店長なのだろうか、妙に落ち着きのあるその男性は、「なにこのオッサン」などという態度はおくびにも出さず、丁寧に対応してくれた。彼女を購入した店とは大違いだ。今度から、ひいきにさせてもらおう。 そして、今、俺は対戦相手だった神姫のオーナーと談笑しているところだ。 バトル?あぁ、負けちゃった。 しょうがないでしょ、マスターも当の神姫も初めてなんだし。ただ、一方的に打ち負かされるでもなく、それなりに内容のあるバトルだったことは、椿にも良い経験になったろうと思う。 「でも、銃の扱いが上手かったですね。あなたの戦法だったんですか」 学生だろうか、温厚そうな表情の持ち主だ。彼の神姫は騎士型。最近神姫を購入し、バトルを始めたそうだ。店長は、俺と同じく、初心者でなおかつバトルの相性がよい騎士型神姫を持つ彼を紹介してくれた。「僕も、初めての時は店長さんに対戦相手を紹介してもらったんです」そう言って、彼は快く対戦に応じてくれた。 缶コーヒーを飲みつつ、彼の問いに答えた。 「ああ、こっちが有利に立ち会える状況になるように、そのための呼び水に使おうと思ったんだ。銃でダメージを与えられるとは思っていなかったよ」 テーブルの上では椿が、さっきまで鬼のような剣戟を打ち合っていた、彼の神姫と楽しそうに話している。神姫仲間がいなかったことも、彼女のストレスの一因になっていたのだろうか、と思う。 「マスター」 と、椿が振り返った。 「はいな」 「あの…、彼女にメアドを教えても構いませんか」 「あ、僕たちは構いませんよ」 「そういうこと、いいよ。椿」 彼女は、相手の神姫と手を取り合い、きゃぁきゃぁと騒ぎ始めた。 対戦相手と別れた俺たちは、店内の一角にある神姫コーナーを見て回っていた。そして解ったのは、想像以上に神姫のグッズというのは種類がある、ということだった。武装にはじまり、家具(神姫サイズで実際に機能する家電もある)、バイクや車などの乗り物(どこで乗るんだ)など、など。服なんかは、メーカー品のほかに、個人が制作した品の委託販売もしているようだ。やっぱり一品ものは手間がかかっているだけあり、値も張るが出来は見事なものだった。そんななかから、俺は、袴の和装セットを購入することに決めた。椿は辞退しようとした。でも。 「そういえば、今まで君は僕に尽くしてくれたけど、僕は君になにもしてあげてないしね。たまにはプレゼントくらい贈らせてくれよ」 彼女は消え入りそうな声で、「ありがとうございます、マスター」と言うと、シャツの胸ポケットの中に引っ込んでしまった。 レジを打ってくれたのは、先刻、神姫とペアルックを決めていた少女だった。委託販売している服は彼女の手によるものらしい。梱包しながら、商品の説明をしてくれた、曰く「リアルバトルにも使えるだけの対弾、対刃、対爆性能がありますから」とかなんとか。なんだか、スゴイことになってるんだね。 「で、さ。スーツをオーダーしたいのだけど、いいかな」 「マスター」 椿がポケットから顔を出す。 「この娘、仕事を手伝ってくれているんだ。取引先相手に素体姿のままってのもどうかと思ってね」 「仕事を手伝うって、どんなことををしてるんですか」 質問を投げかけたのは、少女の犬型神姫だ。やけに礼儀正しい。 「ホラ、椿」 「ええ、マスターのお仕事で取引先が海外になることがあるんです。その時の通訳を…」 おずおずと答える。 「え、それじゃぁ、外国に行ったこともあるの」 「はい」 「今度、是非そのときのお話を聞かせてもらいたいわね」 少女の言葉に、犬型神姫も大きくうなずいていた。 「なんだか、今日は盛りだくさんだったね。まだ、お昼を回ったばかりだけど」 「はい」 胸元から聞こえる声の通りが良い。 「また、バトルしにあの店に行こう。次の休みにでも」 「え、スーツの仕上がりはまだ先…」 「いいんだ。俺も面白かったし、やっぱ勝ってみたいじゃん。それに、君も友達ができた方が楽しいでしょ」 「でも、本当によろしいのですか」 「ああ。君の浮かない顔は見たくないし。…今の君はすごく生き生きとしてる。そんな君と一緒にいることが嬉しいんだよ」 胸元の生地がギュッと掴まれる。彼女が俺の胸に顔を埋めて抱きついているのが見えた。 「Я люблю вас, оригинал.」 「また、俺の知らない言葉を…」 おしまい。
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堅物な武人気質のストラーフMk2型神姫が嫌う臆病と偶然の二つが、彼等を敗北から救ったと言っていい。今回の対戦相手である九頭龍に神姫バトルなので当然ながら直接的にではなく九頭龍が乗り移るアーク型神姫ルルに睨まれた瞬間、黒野白太は虎に飛び掛かられた様な恐怖に足が竦み反射的に両腕で身体を抱いた結果、槍の穂先から身を守る事が出来た。 無事からは程遠く左胸の前にあった左腕とその装甲を破壊されたがそれでも彼等は運命の女神に感謝すべきだろう。臆病と偶然に助けられたストラーフMk2型神姫イシュタルの喝に目を覚ました黒野白太は痛む腕を引き摺って一対のナイフを振るい槍の猛攻を耐え忍ぶ。普段通りでナイフで槍を挟みテコの原理で破壊しようとした黒野白太であったがナイフを突き出した途端、槍が縮む。否、実際に槍が縮むはずも無くそれは錯覚であったがそう思ってしまう程に素早く槍はナイフの鋏から抜け出して、九頭龍とその神姫が僅かに一歩下がったかと思えば今度は槍が伸びる、実際には踏み込んでからの猛烈な刺突を喰らわせた。特に武術を習っているわけでもない黒野白太がそれを防げてたのは神姫バトルによる経験則とイシュタルの補助があったからに他ならない。それでも勢いだけは殺し切れず黒野白太は突き飛ばされ今まで何十もの武器を破壊してナイフの刃に大きな罅が走った。 黒野白太とイシュタルの残る武器はもう一本のナイフとハンドガンとグレネードランチャー、拳とリアパーツの副腕とそこに収まる大剣の六つ。その中でランチャーでは発射前に隙があり、ハンドガンでは威力に心許なく、接近戦で対応出来る武器はナイフと拳と副腕と大剣。だがどちらで戦ってもジリ貧であるのは目に見えていた彼等はハンドガンによる牽制の後、グレネードランチャーを自分の足元へ向けた発射した。爆風に巻き込まれる事を恐れた九頭龍とルルが足を止めた隙に黒野白太とイシュタルは爆風を踏み台に大きく飛翔してその場から飛び去った。背を向けて逃げ出した彼等を目の当たりにしながらも追い掛けようと身を屈めたルルであったが、九頭龍が制止させた。 『何故です、スピードはストラーフMk2型(相手)よりもアーク型(私達)が上回っています。』 『問題は相手が空中に逃げた事だ。私の槍術は所詮、地に足を着けた人間の技。空中で槍を振るうのは本分ではない。』 勿論、彼等は空中で槍を振るった事が全く無いわけではない、空中で槍を振るい敵を打ち倒した事も何度かある。ただ地上と空中とでは槍捌きの精度に大きな差があり強敵を仕留めるのであれば全力を出せる道を選ぶ。物言わずともその意思を理解したルルは何も言わず普段通り戦闘はマスターに任せ自分は敵の動きの探知へと努め始めた。 …。 …。 …。 偶然とは二度三度と連続して続くものであるのだと黒野白太は自分の人生観を改めざる得ない状況に陥っていた。今回のバトルステージには半壊した廃墟が建て並んでおり身を隠して激しく動悸する脳細胞を落ち着かせる時間は十分に保持出来た。 息を整えつつ段々と頭が冷やしていると、罪悪感と言う余計なものが何処からともなく頭の中に入り込んで来る。先制の一撃、これもまた偶然によって防げたからよかったものの、もしその偶然が無ければ致命的な失敗となっていただろう。堅物で普段から口五月蠅いイシュタルからそれについての叱責が来ないのも余計に恐怖感が煽られている。敵にも味方にも追い詰められ内心が冷え始めた黒野白太の頭の中に直接イシュタルの声が届いた。 『思ったよりも左腕の損傷が少ない。装甲に守られたな。』 2040年、最新技術である神姫ライドシステムにより神姫の持ち主は疑似的に神姫と一体化出来るようになった。持ち主と一体化した状態の神姫は二重人格に近く神姫だけでなく持ち主の精神もまた武装神姫として神姫バトルに臨む事が出来る。だから今バトルフィールドには二体の武装神姫しかいないが実際には黒野白太とイシュタル、九頭龍とルルの四人が居るのである。今の声もそれが理由であり、彼女の声は独り言ではなく自分の中に居るもう一人の自分(持ち主)へ向けられたものだ。 状況を考えて今は叱る暇が無いのだろう、冷静に現状を伝えてくれたイシュタルに感謝しつつ黒野白太は勝つ為の案を練る。柔軟な思考が要る時では黒野白太が、単純な思考が要る時ではイシュタルが、それが彼等の役割分担であった。 『バズーカの弾は?』 『残り二発、予備を含めて五発。』 『よし、じゃあ今からバズーカで袋小路を造ってくれ。弾は一発だけ残して、バレないように、出来るだけ早く。』 『そこに奴等を追い込むのか?』 『いや、追い込まれるのは僕達だ。』 『? 了解した、マスター。』 疑問には思っても今までに何度も相手を破ってきたその事実からイシュタルは黒野白太の指示に従う。こういった作業用はデジタルな思考を持つ神姫に任せた方がいいと思っている黒野白太は対戦相手の動きの探知にのみ集中力を注ぐ。 徘徊して直ぐに廃墟と廃墟の隙間を発見したイシュタルはで廃墟の一部を破壊し一方の出口を瓦礫で埋めた。相手を撹乱させる為に直ぐにその場を離れさらにまた別の場所でグレネード弾を放ち廃墟を壊す。今度は一部を壊した廃墟の中に入って身を潜めているとそこにやってきた対戦相手の武装神姫の姿を目で確認する。向こうはライフルやレーザーによる狙撃を警戒しているのか壁に背を預けながらも注意力を散漫させている。先の戦いで既に相手のレーダーを破壊していたのも幸運だっただろう。 彼等に見つからないようにする為に音を立てないよう注意を払いながらも僅かに移動しグレネードランチャーのエネルギーを溜めて放つ。フルチャージされたグレネード弾は通常よりも遥かに飛距離を伸ばし今居る場所から離れた場所で爆発し轟音を立てる。当然ながらそれに気付いた九頭龍とルルは誘き寄せる為の罠かもしれないと、より一層に注意を深めながらもその場に向かう。 廃墟から出たイシュタルは最初に見つけた廃墟の隙間に戻り再びフルチャージさせたグレネード弾を放つ。今度は飛距離の為では無く威力増強の為に放ち穿たれた廃墟には大きな風穴が開いて落ちた瓦礫が隙間に降り積もる。さらに一発のグレネード弾でもう片方の廃墟を壊し一方の出口を塞ぐ瓦礫の山をより高いものとして不完全ながらも袋小路を完成させた。 『出来たぞ。それで、後は何をすればいい?』 『これで十分、後は… 黒野白太の作戦を聞かされた時イシュタルは明らかに目に見えて顔を顰めた。聞かされた作戦というのは作戦と呼ぶには余りにも幼稚で杜撰な一か八かの博打に満ちたものであったからだ。堅物な武人気質が多く自分自身に誇りを持っている者が多いストラーフMk2型にとって偶然に頼る事は非常に心苦しい物がある。だがその事をについて今責めても仕方が無い、バトルフィールドは神聖な場所、責めるのは現実世界でだ。 一心同体となっている所為か、それとも永年の付き合いの所為か、イシュタルの持ち主はケセラケセラと笑っている。これについても後で、と彼女の頭の中で説教リストに追加しただ一言彼が待っているだろう言葉を言い切る。 『了解した、マスター。』 賽は投げられた。 …。 …。 …。 『これは明らかに罠です、マスター。』 『分かっている。』 最後のグレネード弾の炸裂音の源へと来た九頭龍とルルが見たのは廃墟の隙間に一方の出口を瓦礫で塞いで造られた袋小路。そしてその瓦礫の背中を預けるように立ちグレネードランチャーの筒先を残った出口へ向けて油断無く構えている黒野白太とイシュタルの武装神姫。 袋小路の中であればグレネード弾を避ける動作は大きく制限される、その恩恵を得る為に自らの退路も断った決死の姿勢。もし九頭龍とルルが槍以外の武装、銃火器を武装していたらわざわざ袋小路入らずとも狙撃する事が出来ただろう。それが無い今、彼等が黒野白太とイシュタルを打ち倒すには相手の造った土俵に乗り込んで近付くしかない。 『既に向こうは一撃を喰らっています、このままタイムアップを待てば私達の勝ちです。』 『…。』 だがわざわざ罠に踏み込む必要も無い、神姫バトルのルールの一つに時間制限による勝敗の判定というものがある。判定は中立のジャッジマシンが行い互いの武装神姫の被害を計算し被害が少ない方が勝者というものだ。ルルの言う通り既に一撃を貰っている向こうが自分からは何もしてこないのであればこちら側は時間切れを待てばいい。それを九頭龍は充分に理解している、理解しているのだがゆっくりと自らの武装の唯一である相棒の槍に手を添える。 『分かっている。分かっているが私が目指すのは槍による勝利。根気での勝利では無い。』 『…。』 『相手が剣を振ろうとも、銃を撃とうとも、罠を張ろうとも、この槍一本で戦い勝利する。それが私の矜持だ。』 『…そうですか。』 『理解してくれとは言わん。矜持などと格好付けても所詮は私の我儘だからな。』 『いえ、ならばその我儘を支えるのが神姫の務め。何処までも御伴します、マスター。』 『最高速度まで加速しろ!!今ここで決着を付けるぞ!』 『了解!』 ルルがクラウチングスタートの姿勢を取り地面を蹴ると自動行動(レールアクション)を発動させ全身が青味の光を帯びる。アーク型神姫元来の機動性能と合わさって一個の弾丸となって迫り来る神姫を黒野白太は冷静に観察していた。接近戦が主体である今の装備で接近戦で勝てない相手を相手にしてしまった時に黒野白太が採った戦法は攻撃の反撃(クロスカウンター)。どんな達人でも攻撃の瞬間に防御は出来ない、その瞬間を捕らえる自信が黒野白太にはあった。 今回の対戦相手は神姫バトルのプレイヤーにしては珍しく攻撃時は武装神姫から神姫の持ち主である九頭竜の人格が表に出る。その瞬間、武装神姫から先制攻撃を喰らう要因となった『虎に飛び掛かられた様な恐怖』を感じ取る事が出来るのだ。これは恐らく武術の達人特有の相手を気で呑むという技術なのだろうがその辺りに黒野白太にとってはどうでもよく。兎に角、人間(アナログ)の感覚で気を感じ取った後、神姫(デジタル)に身体の支配権を全て委ねてからの攻撃の反撃(クロスカウンター)を狙う。自分自身が恐怖に敏感な臆病な人間である事を逆手に取る、それが黒野白太が建てた計画の概要であった。 『…来たっ!』 九頭龍が強く表に出る瞬間、心が凍りつくような感覚を感じ取り身体の支配権を全てイシュタルに移し替える。グレネード弾を放とうとした瞬間、弾丸の様な速度を維持したまま九頭龍は持っていた槍を投げた。空気抵抗を受け辛い形状をしている槍は棒状のライフル弾と見紛うような速度と正確性でイシュタルへと襲い掛かる。イシュタルは黒野白太から伝えられた通りにグレネード弾を真後ろに放った。彼等から背を向けて逃げた時と同様に爆風を踏み台にしながらも彼女もまたレールアクションを発動させ今度は前へと飛ぶ。爆風による追い風でアーク型神姫をも凌駕する程の最高速度を叩き出しつつもは背中の大剣に手を添えた。 それよりも先に投げられた槍がイシュタルを貫いたが加速の為に僅かに身体を屈めていた御蔭で心臓(コア)よりも僅かに上の位置へと突き刺さる。何よりも苦しめられた槍という武器の特性に助けられながらも彼女は九頭龍との交差の瞬間に抜刀する。驚いた九頭龍が予備の槍を取り出そうとするが、もう遅い。 安全装置が働き九頭龍の弾丸の勢いが急停止し一方で決着が付いた事を理解したイシュタルは足を止めて大剣をリアパーツへ納刀する。チンと金属音の囀りと共に左腕から左脇腹が心臓(コア)を巻き込んで切り飛ばされ崩れ落ちる九頭龍にジャッジマシンが判決(コール)を下す。 「勝者(ウィナー)・イシュタル」 急所を狙い損ねた槍が彼女から引き抜かれ、カランカランと持ち主の無念を代弁するかのような侘しい音を響かせた。 …。 …。 …。 「最後の刹那、勝負を急ぎ槍を投げたのが私の敗因だったか。」 「貴方程の腕前であれば加速したとは言え神姫の剣を捌くのは訳が無かったでしょうね。」 「ははは、槍一本で来た私が、私自身を信じられなかったという事か。まだまだ修練が足りんな。」 「何はともあれ今回の試合、僕達の勝利です。貰うものは貰っていきますよ。」 「あぁ、持っていけ。授業料と思えば安いものだ。」 「それでは失礼して。」 九頭龍が所持する神姫ポイントから規定されている最大分までを自分のIDへと移した後、黒野白太はその場を後にした。向かう先は彼が所持するストラーフMk2型神姫イシュタルが待つ場所、そこに居た彼女は目に見えて不機嫌だった。黒野白太にその理由が分からなかったわけではないが人の感情を逆撫でするのが大好きな彼は敢えて惚けた振りをして尋ねる。 「なーに不機嫌してるのさ。勝負には勝ったでしょ?」 「あぁ、勝ったとも。だが勝てばいいと言うものでもないだろう。」 「そりゃそうだけどさ。もしかして僕の作戦が駄目だった?」 「それもある、あんな一か八かの穴だらけな作戦、二度と御免だ。だがそれよりも私が言いたいのは――――。」 イシュタルは青い目で黒野白太を睨む、これ以上の事は察しろ、と目で訴えかけているのだろう。流石にこれ以上は惚けた振りをしてしまえばLove度が下がるかもしれないので彼女の不機嫌の理由を言い当てた。 「最初の戦闘の時、僕が相手にビビって動かなくなっちゃった事でしょ?」 「分かっているじゃないか! 運が良かったから不様を晒す事は無かったものの、もしそうでなければ私達はあの一瞬で負けていたんだぞ!」 「正直な感想だけど、神姫越しにあんな殺気出せる人がいるとは思わなかった。本気で殺されると思ったよ。」 「ええい、言い訳をするな、言い訳を! 兎に角だ、この事はマスターの胸に深く刻んで欲しい!」 ピンポンパンポンと気の抜けた音の後にゲームセンターが閉店時間を迎えた事を報せるアナウンスが響き渡る。 「おっと、もうこんな時間か。帰らなくちゃね」 「家に着いたら先ず今日の戦いの反省だ。特に最後の戦いのは繰り返さないようにきっちり対策を取るぞ。」 「はいはい。」 神姫バトルに対しどこまでも厳格で貪欲なイシュタルに対し黒野白太はやる気が有るのか無いのか判別し辛い応答を返す。こうして武装紳士とその武装神姫の隔離病棟(ゲームセンター)での一日は終わる。そしてまた明日彼等は神姫バトルに精を出すのだろう、只ひたすら神姫バトルの上達を目指して。
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あらすじ 著 ユキ 舞台は2044年。相も変わらず平和な世界に一人の引きこもり少女がいた。 これはそんな引きこもりを克服しようと奮闘する少女と それを共に歩んでいく神姫の話―――― レールアクションや武装ランク等、様々な設定は『武装神姫 バトルマスターズMk2』をプレイしてみて考察したりそのまま引っ張ってきています。 なお、ゲームでは出ていないシステムが出たりします。 あと『武装神姫 バトルマスターズMk2』の時代設定は2041年ということにしてあります。 ※1-2にある本の内容に関しましては、ライドオン204xのあらすじから使わせていただきました ※4-3にて登場するミス・非常識についてはライドオン204xを参照 ※バリアに関しての補足説明といたしましては、通常神姫(またはリアライド時のマスター)が張ることの出来る緊急的なバリアが一般的なものになっています。クリティカルダウンの回避にしか役に立たないものでHPにダメージがいきます。 ※読んで頂いた方、できればコメントのほどよろしくお願い致します ※第十二話から読まれる方へ。11-3の最後に少しつけ足しました。第十二話から読まれる方は、そちらから読むことを推奨します 更新履歴 2012,6,5、 初投稿 2012,6,10、第二話出来ました 2012,6,10、人物紹介も載せました 2012,6,12、第三話出来ました。ちょっと2が長いです 2012,6,14、第四話出来ました。初バトルです 2012,6,16、第五話出来ました 2012,6,17、第六話出来ました。全体的にちょっと長いです 2012,6,19、第七話出来ました 2012,6,21、第八話出来ました 2012,7,8、 第九話出来ました 2012,7,14、第十話出来ました。今度は3が長いです 2012,7,24、第十話を修正しました 2012,8,2、 ちょこっと修正してみました 2012,8,3、 第十一話出来ました 2012,8,9、 第十二話出来ました 2012,8,9、 最終話出来ました 2012,8,19、全体的に場面変更線を入れました。内容は変わってません(10―3が変に途切れていたのを修正しました) 登場人物紹介 引きこもりと神姫 第一話・引きこもりデイズ1 2 3 第二話・襲撃者1 2 その夜の話 第三話・逆さまの神姫1 2 第四話・それは卒業試験なの1 2 3 第五話・νタイプ1 2 第六話・等価交換1 2 3 第七話・くるっと回って一回転1 2 3 第八話・持たざるもの1 2 3 第九話・再会と不調の間奏曲1 2 3 第十話・斬鉄剣の伝承者1 2 3 第十一話・真夏の雪1 2 3 第十二話・終わりと始まり1 2 3 最終話・私たちの未来これからの話 9月1日 おまけ 本日 - 昨日 - 総合 - ご意見ご感想など、どんどん書いて下さい! -- ユキ (2012-07-12 00 58 30) テンポが良くて読みやすいです! -- 神姫中毒 (2012-07-12 09 42 23) ひさしぶりに来れたら面白い作品が始まってて、得した気分です、切り口が又良いですよね〜楽しみにさせて頂きます -- ナナシ (2012-07-12 19 20 23) おお! 嬉しい限りです! まだまだ至らぬ点はありますが、よろしくお願いします! -- ユキ (2012-07-13 14 53 38) 10話を修正しました。ちょっと調子に乗ってやりすぎてしまいまして、すいませんでした -- ユキ (2012-07-24 14 23 12) いい小説ないかなーと探していたら神作品を見つけてしまった!やばい!おもしろすぎ!次回の話も期待してます! -- しおん (2012-07-27 09 50 20) 読みやすくて良いですが、6-3や7-2で同じ場面を別視点から書く時に、視点が切り替わったことを示す印がないとわかりづらいかなと感じました。 -- 名無しさん (2012-07-30 22 32 48) なるほど、貴重な意見ありがとうございました。まだまだ未熟故、ご指摘いただける点は色々あると思いますが、これからも読んで頂ければ幸いです -- ユキ (2012-08-01 19 43 48) 一応同じ場面を別視点で書くところに印(?)を入れてみました。他の視点変更点は何もつけてませんが、つけた方が良いですか? -- ユキ (2012-08-02 12 07 58) 上の印のことを書いた者です。分かりづらかったようなので私の好きなトミすけ氏の作品『ウサギのナミダ』を例に挙げます。1-1を読んでいただくと■や◇などが入っており、それらが入るたびに別の視点に切り替わっています。今回の修正のように露骨に誰々の視点と書く必要はありませんが、修正前の状態だと似た内容の文が不意に繰り返され読者が混乱する恐れがあると思います。(私もよく読むまで間違えて同じ文を挿入してしまったと思ってました・・・) ということが言いたかったのですが言葉が足りなかったようで申し訳ないです。長々と失礼しました。 -- 名無しさん (2012-08-02 18 31 16) 十一話の投稿、お疲れ様です。朱野君の言動が微笑ましいです。季節外れの雪とそれを不思議に思わない人々、謎が謎を呼ぶ展開で続きが楽しみです。 -- 名無しさん (2012-08-03 22 15 44) 楽しく読ませてもらってます~ 10-3 斬鉄剣のネタばらし部分なのですが、「不可」をかけたになってますが「負荷」じゃないでしょうか?お節介ですいません・・・>< -- 神姫中毒 (2012-08-06 11 52 10) ホントだ、間違ってる……。ご指摘ありがとうございました。他にも誤字、脱字等ありましたら、ご指摘していただけると有難いです -- ユキ (2012-08-06 21 42 02) 完結しない作品が多い中、凄まじいペースでの最後までの完走、お見事です。ただ一つ・・・12-3の最初のほうの「いいわけ…」の後、恐らく変換ミスだとは思いますが、ここだけは間違えちゃあいけねえ・・・! -- にゃー (2012-08-09 22 45 34) 完結お疲れ様でした〜、泣いて良いですか?神様の粋な計らいの仕業で私の涙腺決壊状態です(T^T)良い話をありがとうございました -- ナナシ (2012-08-10 01 43 29) むぅ…これは負けてられない…弟に負けっぱなしにしとくわけにはいかぬ -- rotto (2012-08-10 02 10 07) 祝完結!!見事なまでの完成度にウるっと来ちゃいました! ユキ先生の次回作にごきた・・・あれ? -- 神姫中毒 (2012-08-10 10 07 58) うっほうっ、最後の最後で誤変換してしまった。あそこでのミスはかなり痛い。ちゃんと修正しときました -- ユキ (2012-08-10 10 53 22) 完結おめでとうございます。凄まじい更新スピードでしたね、それでも手抜きは無く漫才・戦闘・成長の描写がしっかりしていました。学校に行った彼女がどうなったか…期待してもいいんですね! -- 白田黒乃 (2012-08-10 16 22 11) たくさんのコメント、ありがとうございます! 白田黒乃さん あなたの作品も読ませていただいています。次回作は製作予定です。流石に樹羽を高校に行かせてENDって言うのもアレですし、まだ色々解決してませんから。 -- ユキ (2012-08-10 23 06 38) 引き神完結お疲れさまでした!・・・これは泣くほどいい作品でした!文章力やばいですね!もしこの話の続きをやるならまたみさせてもらいますね!ともかく、お疲れさまでした!・・・自分も書こうかなぁ -- しおん (2012-08-13 01 05 20) 名前 コメント
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ネオン煌めく繁華街、その禍々しい光の届かない片隅、雑踏の一角にソレはいた。 いや、それらと言うべきだろう。ソレは何体となく群集している。 それらは武装神姫なのだが、其のどれもに表情が無く、虚ろな目で佇んでいる。 ある者は完全武装、ある者は私服姿、またある者は……半壊していて。 腕が無かったり、頭部外装が剥げていたり、それは見るものに嫌悪感を与える。 ソレは神姫であるという以外に統一感のない群集。 その姿は墓場から蘇ったゾンビの群れを連想させる。 そしてソレをビルの屋上から見下ろす二つの影。 「大量ですね……報酬タップリと貰えそうです」 それは少女と、武装神姫。 「お気楽だね。アレ全部相手にしなきゃいけないんだよ?」 少女は髪型をツインテールにしており、それが月明かりの下、夜風に流される姿は神秘的とも言える。 キリっと美しい顔立ちと相まって、ソレが少女に幻想的なイメージを浮かび上がらせる。 「マルコなら出来ます。私が保証しますから」 肩に座る神姫にそう言われた少女が切り返す。 「ふぅ、これもお仕事だもんね。……それじゃいきますかっ!」 そう言うが早いか、少女の肩よりマルコと呼ばれた神姫が跳躍する。 アーンヴァル型だが身に付けているのは通常のウィングではなく、4枚の真っ白な翼。 不浄なる穢れを滅するため、天使が舞い降りる…… ねここの飼い方・劇場版 ~二章~ 「……と云う訳で各地で続発している武装神姫暴走事件についてお伝えしました」 居間のTVから映し出されるワイドショーが、淡々と例の出来事を伝えている。 「いや大変ですね、花野さん。 しかしまだ事故が発生しているのは電脳空間だけで、直接暴走していないのは幸いと申しましょうか」 コメンテーターがいかにもとって付けたような知識で語ってる……ああいうのみてると無性にツッコミたくてたまらなく。 「そうですね、武装神姫は15cmサイズとはいえ武装した場合は大変強力です。 特にリアルリーグ用などはその際たる物でしょう。万一そのような事があった場合、死傷者が出る可能性がありますからね。 電脳空間だけで事故が発生するのは、ある意味不幸中の幸いと言えるでしょう」 私はリモコンでピッとTVの電源を落とす。 「何が不幸中の幸いなのよ……」 この間のエルゴの一件でも一歩間違えば二人の神姫の意識が消えていたところなのに。 各地で発生している暴走事件の中には筐体の電源を抜いて強制リセットを掛けた結果、 神姫のデータが破損し修復不能になった例もある、と聞いている。 所詮玩具だから壊れても……などという考え方があるのが私には苛立たしい。 「みさにゃん、なでなで」 と、いつの間にかねここが私の目の前にいて私の頭をナデナデしてくれている。 「ん、ありがとねここ。でもどうしたの急に?」 ねここは珍しく目線をキョロキョロさせると、きゅっと口を噤むようにして 「だって……みさにゃん怖い顔してるの、それに悲しそう……」 「大丈夫よねここ、ねここが居れば私は幸せだから、ね?」 ねここの髪をくしゃっと撫で返してあげる。ねここはほにゃ~っと柔らかい笑顔を作ってくれて。 「姉さん、ねここ、話が付きました。直ぐに迎えが来るそうです……って何してるんですかっ」 「いや、あはははは……」 雪乃ちゃんに話をつけてもらったと言うのは、彼女の実家の黒姫家との間の事。 曲がりなりにも当事者の端くれになってしまっている私たち。 そのためこのまま見知らぬフリを決め込むのは三人にとって不本意だった。 でも私たち自身で出来ることはあまりに少ない、それで雪乃ちゃんの実家である黒姫家の助力を乞おうと思ったのだ。 と言う訳で、現在彦左衛門のおじいさんと、孫娘の鈴乃さんと対面中、と言う事に。 「それで、我々にも真相究明のための助力をして欲しい、という訳か」 重々しく彦左衛門氏が語る。 「はい、このまま放置しておく事なんて出来ません。私達に出来ることは微々たる物かもしれませんが、それでも」 しばしの沈黙の後 「……一部情報筋から流れてきた話なんじゃがな、鶴畑家で爆発事故があったらしいんじゃ」 「? それと何の関係が……まさか」 貫禄たっぷりに頷き 「そうじゃ、事故があったと言うのは武装神姫専用棟。何やら試験を行っていたらしいが、暴走の原因はいまだ不明。 機体が跡形も無くなっているのでな、真相究明は困難らしい。」 「でも偶然の可能性というのは……?」 「そうかもしれん。だが時期を考えると何らかの関係がある可能性も高かろう。 それに鶴畑が己のメンツのために実機の暴走事故を隠蔽しているのだとすれば、マスコミの報道にも筋が通る」 その言葉に私は違和感を覚える。 マスコミの報道では、現実空間では暴走事故は起きていないんじゃ……まさか。 「そう、そのまさかじゃよ。他にも現実空間での暴走事故や、命令不服従になっての失踪が出ておる。 特に失踪は多いらしいがな。ユーザー側の勝手なプログラム改造が原因になっての行方不明、と処理しておるから殆ど表立たん。 それらを隠蔽してるのはイメージダウンを防ぎたいのと、芋蔓式に自己の醜態を暴かれるのを避けたいためじゃろう」 「そんな事が……」 そこまで事情が深いとは思いもしなかった訳で。 「いずれにせよ他ならぬ貴方たちの頼みだ。無碍には出来まい、全力で協力させて頂く。 其れに我々の事業にも少なからぬ影響があるようでな、どの道避けられんよ。 ……鈴乃、お前が指揮を執って真相究明に当たれ。月組を使って構わん」 「御意に……それでは」 一礼すると流れるような動きで退室していく鈴乃さん。軽く微笑んでいた気もするけれど、トラブル好きなのかしらね…… そして家に戻ったわけなのだけれども、家のPCには引っ切り無しに鈴乃さんからの最新情報が送られてくる。 被害者の神姫の種類から暴走時の装備、マスターの住所録なんかまで……相変わらず凄いと言うかなんというか。 ざっと流し読みしていく私だけれども、解析は向こうの方でやってくれているらしいので私は助言程度の事しか現状やることがない。 ねここたちの方は、何かあった場合の実戦要員として待機してて欲しいとの事。 二人の実力はファーストの下位ランカー辺りならば比べても然程見劣りしないし、 黒姫家は切り札的な武装神姫が鈴乃さんのアガサ位しかいないらしく、強い神姫の助力は必須だとの事らしい。 でも現実で暴走する神姫をどうやって止めるかが問題よね。 電脳空間の時は頭を粉砕すればよかった。でも現実の場合そんな事をしたらその神姫を『殺して』しまう。 バックアップから復元は出来るかもしれないが、それは同じようで違う。 データを丸ごと新規ボディに移設するだけならともかく、バックアップはデータを取った時点での人格であり、それ以上でもそれ以下でもない。 其れは確かに、他人から見れば同じと言えるかもしれない。でも神姫自身にとっては? そう思いつつ、私も二人のバックアップはきっちり取っているわけだけど……そこまで完全に割り切れるほど私は達観していない。 と、思考が逸れちゃったね。とにかくそっちは何かしらの対処法を考えておく事にしよう。 「……そういえば、エルゴの方はどうなってるかしら」 ふと思い出す。現状も気になるし、あそこはセカンド級の常連も数多く、何か面白い情報が掴めるかもしれない。 まだ時間もあるし、行ってみる事にしてみようかな。 「………うわぁ」 思わず声を出してしまう私。 エルゴはすっかり寂れていた。 事件があった場所だから当然なのかもしれないが、対戦筐体は全て封印され、2Fの人影はあまり無い。 1Fの方もそれに影響されてか、週末の午後だと言うのにガラガラで、ジェニーが何時ものクレードル姿で暇そうにしていました。 「こんにちわ、ジェニーちゃん。マスターは?」 「あ、こんにちはです風見さん。店長は今奥に……呼びます?」 「うん、お願い。ちょっと話したい事もあるし……」 私が少し申し訳なさそうに言うと、察してくれたのかな。直ぐ来てもらうよう連絡していた。 やがて奥から店長さんが姿を現す。 「やぁ風見さん、いらっしゃい」 ……無精髭が伸びて、しかも見るからに憔悴気味で。目にもクマが出来てて……ま、しょうがないよね。 「こんにちわマスター。早速なんですが、ちょっとお時間頂けますか?」 と私が切り出すと、店長さんも察した様で 「……わかった、それじゃ奥で話を聞こうか。コーヒー位ご馳走するよ」 「それで、アレから何か判りましたか?」 私たちは店の奥で向かい合って話していた。私の頭と肩でねここと雪乃ちゃんが静かに話を傍聴している。 「うん、まぁ多少はね……でもこれを聞いたら君達は後戻りできなくなるかもしれないよ、それでもいいのかい?」 店長の声は優しく、説得というより教え子を心配する教師の雰囲気を思わせて。 「えぇ……既に覚悟は出来ています。それに知った以上何もせず傍観なんてしてられません」 私の言葉に同調して頷く、ねここと雪乃ちゃん。その瞳は真っ直ぐ前を見据えていて。 「……それに、幾つか独自のルートで掴んだ話があります。聞いて貰えますか?」 その言葉に反応するかのように、眼つきが鋭くなる店長。何時もの人当たりの良い笑顔ではなく、猛禽類を思わせる鋭い目だ。 「わかった、情報交換と行こう。じゃあ風見さんの話を聞こうか」 私は彦左衛門氏から聞いた鶴畑家に纏わる顛末を、店長さんに公開した。 店長さんは熱心に聞き入っていて、私の話が終わると 「そうか、そんな裏の理由が。だから一般には伏せられてたのか……」 「知ってたんですか、神姫の現実空間での暴走事故?」 店長さんは、話すかどうか迷う感じでちょっと困った表情をした後 「まぁね。詳細は企業秘密だけど、こっちも何かと色々顔が利くものでね。ある程度は知ってたよ。 それに、異常を起こした神姫を運び込んでくるお客さんも結構いるからね。でもそうか、メーカーに報告しても揉み消されてたのか」 「えぇ……私の今掴んでいる情報はこんな所です。マスターの方はどんな感じですか?」 店長は指をアゴにかけるようにして少し考えた後 「そうだね、俺の掴んでる情報も似たようなモンだったな。マスコミの方はアレだったが……」 そうですか、とちょっとがっくりする私、と更に 「いや、これは俺の予測なんだが……HOSが一枚絡んでるんじゃないかと思う」 「HOSがですか?」 「ああ、少なくとも俺の所に運び込まれた神姫は全員がHOSを使用していた。 今じゃ使ってるユーザーは膨大だからな、偶然の可能性もあるが。 それにHOSの発売と、暴走が報告されるようになった時期が符合している。状況証拠としては悪くないじゃないか?」 「……そうですね、それについては参考データがあるので、後で調査してみます。でもHOSからはウィルスは検出されてませんよね?」 「確かに今の所はな。だが従来のスキャンに引っ掛からないタイプのかもしれないし、トロイ型で一定条件下でのみ発生するタイプかもしれん。 両者の混合型だった場合コイツは厄介だぞ。例えHOSをデリートしても残ってる可能性が高い」 そこまで話して思い当たった。 「ちょっと待って下さい。もしHOSがそうだった場合、開発元が絡んでる可能性はありませんか?」 「そりゃそうだ。偶然未知のウィルスが混入した可能性も捨てきれないが、可能性は五分五分だろうな」 私はかぶりを振って 「だから開発元が絡んでいた場合、その開発の大元である鶴畑まで被害に遭うというのはどういう事なのか、という事です」 店長さんはあぁ、と思わず声を荒げて。 「つまりその場合、開発者自らの利益のためにソレを仕掛けた、ってことになるか。鶴畑の為ではなく。 でもわからんなぁ、何で傘下の者が自分トコの首を絞めるんだ?」 「何らかの怨み……でしょうかね? 何にせよ其処を当たってみる価値はありそうですね。私の方で探ってみます」 「わかった、俺の方でも出来る限り調べておくよ……何にせよ無理しちゃだめだからな。か弱い女の子なんだし」 ポリポリと鼻をかきながらそう心配してくれる店長さん。結構シャイなのかな。 「大丈夫ですよ。私空手やってますから」 店長さんは冗談と受け取ったようで 「でもほら、通信教育だろ?」 「一応、段持ってますよ?」 「……へー……」 ……なんですかその目は。 続く トップへ戻る
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人物設定 金矢利道 SOS技術研究所に勤める研究員 二人の神姫をこよなく愛している マッドサイエンティスト気質で、バトルに参加したいとマリンが言ったとたん武装を即座に用意するなど、行動力溢れる人 ただし、基本的に意地のいい人ではない アニタ(ストラーフ型) 明るく活発。マスターにちょっとしたイタズラやわがままを言い、それを許してもらえるのがうれしくて仕方が無い子。 要求のレベルは非常に低く、確実に実現できるものをチョイスしている 自分のわがままや生意気さを自覚していて、それを許してもらうことに愛を感じている 裏闘技場での経験がトラウマになっており、最近夜中うなされている マリン(アーンヴァル型) 生真面目で大人しい。マリンのお姉さん的存在。口数が少なく、何を考えているか分かりづらいが、たいしたことは考えていない 自分の要求を口に出せないが、マスターがアニタにしてあげたことをすぐに自分にもしてくれることに幸福感を持っている その性格が災いして、利道にいじられている 武装設定 標準装備 タクティカル・エッジ 大型ナイフ 知り合いの研ぎ師に無理矢理作らせたもので、このサイズとしては異様な切れ味を持つ 2mm厚の装甲板を貫通可能 ターミネーター・マチェット 大型実体剣 小さいが、日本刀と同じ手法で作られており、すさまじい威力を持つ 直径5mmの鉄棒をたやすく両断する マリン専用バトルコスチューム 人工筋肉製の強化外骨格の上に、防弾防刃耐熱繊維で作られたメイド服を着込んだもの どちらの素材も、SOS技術研究所で開発された最新鋭の技術を持って作られている メイド服のスカートの中に多種多様な武器を隠しており、まさに「メイドさんのスカートのなかは宇宙と繋がってる」といった感じ ポケットと内部がつながっており、そこから武器を出す ちなみに、人工筋肉製外骨格の形状の都合上、通常の神姫より肉感的なスタイルとなっている 更なる秘密機能が隠されているとのうわさも… マリン専用武装(一部) リボルバー(S W M10型)×2 オートでなくリボルバーなのはただの趣味 クイック・ローダーではなく、手で装填する ちなみにこれとナイフだけはエプロンのポケットの中に納められている ショットガン(SPAS-12型)×2 これまた趣味で選んだショットガン メイド服とショットガンほど似合う組み合わせは無いとのことで、主力武器としている サブマシンガン(UZI9mmSMG型)×2 趣味で選んだサブマシンガン ちなみに、神姫用弾薬の規格は(基本的に)統一されているのでリボルバーと同じ弾が使える 無反動砲(パンツァーファウスト型)×4 スカートの中に納めるために、小型化されたパンツァーファウスト SOS技術研究所のオリジナル作品 小型化の影響で威力射程は劣化しているが、その分数を揃えることで対応している スカートの中から出てくる様はある種卑猥である 威力が劣化しているとはいえ、15mmの装甲を貫通する能力がある 射程も、基本的に近接戦闘になりやすい武装神姫の戦闘では問題にならなかった ちなみに、小型化によって軽量化された恩恵か、使い勝手は非常に良好で、後に少数生産であるが一般販売されている 用語 SOS技術研究所 元は人工筋肉関連の技術研究を行っていた研究所 現在は、神姫用人工筋肉のライセンスなどでウハウハ 金があるので、大分趣味に偏った研究に走っている それでも十分な成果を上げている ちなみに、SOSとは研究所を立ち上げたメンバー 所長の相馬、主席研究員の尾田、出資者の柴崎 それぞれの頭文字を取ったものである
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武装神姫 MMS,Type ANGEL ARNVAL 『空は私のお友達ですっ!』 彼女は常に、天空を華麗に舞う 重き大地を離れ、1人自らを向かいいれる広大な大空へと それはまるで天使の煌めき 白き天使の加護が、貴方にも舞い降りる 『天使型MMS アーンヴァル』 アーンヴァルは第一弾として発売されたMMSだ 高い高速機動性能と本格的な空戦能力を持つ数少ない神姫であり、中~遠距離戦を重視しつつもバランスの取れた武装と相まって、後発の機体が次々と出現している現在に置いても一線級の戦闘能力を持つ。 火力と機動性が高い次元で融合した優秀な機体だが、その分割を食った形で本体の装甲が軽装でまとめられている。 【基本能力】 アーンヴァルは空中戦と射撃戦のプロフェッショナルである。 そのため戦闘基本値に以下の修正を得る。 【射撃基本値】(+3) 【格闘基本値】(+2) 【回避基本値】(+3) 【特殊】『飛行』時【回避】(+1) 《飛行特性》習得済 【技能】 アーンヴァルはキャラクター製作時に、以下のリストから技能を3つ習得できる。 また経験を積んでキャラクターレベルが上昇した場合、3で割り切れるレベル(3,6,9,12……)に到達する度、新しい特殊技能をひとつ、修得できる。 アーンヴァル 技能リスト 《追加HP》 《一斉発射》 《ウェポン習熟》 《緊急回避》 《逃走》 《シールドブロック》 《追加SP》 《反射神経》 《連携攻撃》 《タフネス》 《突撃》 《不死身》 《SP回復》 《狙撃》 《複数目標攻撃》 《一斉掃射》 《回避フォーメーション》 《高速移動フォーメーション》《速攻フォーメーション》 《集中砲火フォーメーション》 ○アーンヴァル(ノーマル) 【基本性能】 【射撃修正】(±0) 【センサー性能】(±2) 【速度】(7:VTOL/飛行) 【格闘修正】(-2) 【装甲値】 ( 4 ) 【旋回】(3) 【回避修正】(+2) 【HP】 ( 26 ) 【パワー】 ( 6 ) ○アーンヴァル(ブースター装備)(*1) 【基本性能】 【射撃修正】(±0) 【センサー性能】(±2) 【速度】(9:VTOL/飛行) 【格闘修正】(-2) 【装甲値】 ( 4 ) 【旋回】(2) 【回避修正】(+2) 【HP】 ( 26 ) 【パワー】 ( 7 ) 【格闘武器】 名称 /威力/格闘補正/使用回数 格闘 / 6 / ±0 / ∞ ライトセイバー / 8 / +1 / ∞ 【射撃武器】 名称 /威力/~5/~10/~15/~20/使用回数/間接/連射 アルヴォLP4ハンドガン / 7 /+3/ - / - / - / 8M / ×/ × アルヴォ PDW9 / 9 /±0/ -2/ - / - / 9M / ×/ ○ LC3レーザーライフル(速射) / 11/-13/ -7/-10 / - / 10 / ×/ ○ LC3レーザーライフル(一撃) / 13/-15/-13/-16 / -21/ 3 / ×/ × (*1)移動前後に廃棄可能。 【カスタムデータ】 【部位】 /【CP】/ 【名称】 /【効果】 頭部 / (0)/ ヘッドセンサー・アネーロ /《センサー性能+2》 胸部 / (0)/ buAM_FL012アーマー /《装甲+1》《セイバー専用ラック×2》 脚部 / (0)/ ランディングギアAT3 /《回避+2》 《格闘-2》 《歩行不能》 背部U / (4)/ リアウイングAAU7 /《HP+5》 《回避+1》 《速度+2》 《パワー+1》《飛行/VTOL》《追加ラック×4》 / (0)/ エクステンドブースター /《速度+2》 《旋回-1》 《VTOL/飛行時専用》 武装 / (1)/ LC3レーザーライフル 計 /( 5 )