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キルケの初バトル・前編 「そう言えば礼奈、キルケにはバトルさせるのか?」 「うーん・・・考えてなかったな。キルケはどう?バトル興味ある?」 「はい、やってみたいです。実はこんな日が来た時のために訓練はしていたので」 キルケは少し嬉しそうな顔で、ストラーフにしては丁寧な口調で答えた。 「いつの間に・・・ま、いいや。センター行こ!兄さん、一緒に行こうよ!」 「あぁ、わかった。ただし俺とタマはバトルしないぞ。キルケと違って、タマはバトルが好きじゃないからな。」 「もったいないなぁ、武装神姫なのにバトルしないなんて」 「何も戦うだけが武装神姫じゃないんだ。な、タマ」 「うん!」 とりあえずセンターには同行する。わりと近所にあるので、通いやすい。 「さぁ、着いたぞ」 「わーい!」 中は広く、たくさんの神姫のオーナーがいた。 「みんな神姫持ってる!すごーい!」 「そりゃ神姫センターなんだから当たり前だろ」 「シュミレーションバトルの申し込みをしないと」 礼奈は辺りを見回した。すると、受付らしきものを見つけた。 「あ、多分あれだ!」 「よし、行こう」 「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」 「シュミレーションバトルをやりたいんですけど・・・」 「初心者の方ですね?それなら、こちらでユーザー登録をお願いします」 その後礼奈のユーザー登録などを済ませ、いよいよ対戦相手を決めることになった。 「まだバトルの経験は浅いからな・・・相手も初心者がいいだろ」 と和章が言ったので今戦えるユーザーから初心者を検索。ちょうど一人いた。 「じゃあこの人で」 相手はエウクランテのマスターらしい。 ストラーフの基本装備は機動性に欠けるから、飛行できるエウクランテには不利だが、同じレベルの相手が一人しかいない今、変える訳にもいかない。 「気をつけろ、相手は空を飛べる。ストラーフの基本装備じゃちょっとキツイぞ」 「わかった。気をつけるよ。」 「何ならタマの装備一応持ってるから貸してやろうか?」 「いいの?じゃ、お願い」 こうして出来た装備は、脚にGA2サバーカレッグパーツ、背中にDTリアユニットplus+GA4アーム、胴体にマオチャオタイプのアーマーと腕だが、腕の先はサブアームの代えの手パーツになっている。 見事に忠告を無視した装備となった。 その代わりに武器はシュラム・リボルビンググレネードランチャーやモデルPHCハンドガン・ヴズルイフと遠距離用にしてある。これなら起動性が悪くても攻撃できるが、正直キツイと思う。 「準備できたよ!じゃ、行って来るね!」 「頑張れよ。」 「がんばってねー!」 後編につづく 第一話に戻る ネコのマスターの奮闘日記
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SHINKI/NEAR TO YOU Phase01-4 色取り取りのレーザーで造られた地平、そのフィールド上を白い翼が舞った。数ある武装神姫の中でも最もオーソドックスなタイプ、天使型MMSアーンヴァルモデルだ。 天使型神姫は持ち前のスピードを活かしライトマシンガンの射撃で相手をけん制する。相対するもう一体の神姫は、天使型の攻撃に防戦一方のようだ。 反撃してこない相手を見て好機と判断したのか、天使型はすかさずライトセーバーを抜き放ち距離を詰める。 一瞬の交叉。 勝利の女神が微笑んだのは、優勢に見えた天使型の方ではなくもう一体の方だった。天使型の斬撃を鋭い動きで避けたその神姫は、体勢を崩した天使型に後ろから組み付き力でねじ伏せると、そのまま天高く飛び上がる。 天使型は相手を振りほどこうとするものの、相手のパワーがそれを許さない。 天使型を完全に捕らえたその神姫はそのまま大きく身を反らせ、そのまま天使型神姫を大地へと叩きつけた。 フィールドを揺るがすかと思うような轟音の後、その場に立っているのは天使型を打ち倒した迷彩模様に身を包んだ大柄の神姫だった。 「おおっ、デッカイ方が勝ったじゃん! 途中まで負けてたのに」 「ふむ。反撃しなかったのは、ワザと劣勢に見せかけて相手の油断と隙を誘うためですか。あちらの迷彩の方もなかなかやりますね」 目の前で繰り広げられたばかりのバトルの様子に、シュンとゼリスがそれぞれの感想をもらす。 「どうどう? やっぱりバトルは武装神姫の華よね。センターの最新型バトルマシーンでのバトルは、そこらの増産型のちゃちなモノとは違うでしょ?」 伊吹の言う通りだった。最新のゲーム筐体というだけあって、三次元モデリングによるバトルフィールドの精緻さ、各種モニタリング機器によりリアルタイムに戦況の変化が判るバトルシステム、一般的なゲームセンターに出回っている既製品とは比べものにならない。何よりもそこに集う猛者たちのレベルが違う。 「これが本場の武装神姫バトルか」 「ふっふっふ~、すごいっしょ? じゃあ早速カウンターに行ってサクッと登録すませましょう」 「カウンターで登録?」 オウム返しに尋ねるシュンに伊吹とワカナコンビが答える。 「センターに来たらまずはサンカトウロクだよ~」 「そ、神姫センターでのバトルはすべて戦績が記録されて、神姫BMAの公式クラシフィケーションにも反映されるから、施設内のゲーム筐体で遊ぶ前には参加登録をするようになってるの」 「ふ~ん、なんか面倒そうだな」 「ダイジョーブ、ダイジョーブ♪ 登録っていっても不正改造パーツでも使ってない限りオーナー登録をデータベースに参照するだけですぐに終わるから」 「シュン、横着しようとせずにここは伊吹さんに従うべきです。というか早く行きましょう。いわゆる〝善は急げ〟ってヤツですね」 伊吹とゼリスのふたりに急かさつつ、シュンはカウンターに向かう。受付自体は伊吹の言う通り神姫のオーナー登録やオーナーの本人確認などをネットワークからデータベースに確認するだけで、シュンはホッとした。 「なんだ、結構簡単なんだな」 「ね? 別に慣れればどうってことないでしょう。後は……そうね。シュっちゃんはここを利用するの初めてだから、このセンターのメンバーカードも作っておくと次からは照会手順を省略できるし、ポイントでいろいろなサービスもついてお得なんだけど。……どうする?」 登録を済ませたシュンに続けて伊吹がいろいろ教えてくれる。どうもここは常連である伊吹の言うことを素直に聞いておいた方がよさそうだ。そもそも今日はずっとこんな調子でうまくいったんだし。 「うぅぅぅ~ん。……それもやっとくか」 「じゃあ、あっちで手続きしてもらいましょう。ワカナとぜっちゃんはここでちょっち待っててね?」 シュンと伊吹は連れ立ってカウンターの前を離れる。ゼリスとワカナはひとまず天板の隅に腰掛けた。静かに佇むゼリスに比べ、ワカナの方はジッとしているのは苦手らしい。すぐにソワソワし出す。 「ふにゅ~。タイクツだよ~」 「ワカナさん、まだふたりがここを離れてから2分37秒しか経過していません。しばし静粛にしているべきです」 落ち着き払ったゼリスに対し、ワカナはひとしきり足をバタバタさせた後、ピョコンと立ち上がった。 「うんしょっ、ひらめいた~。ふたりが戻ってくるまで、ボクはちょっとボーケンの旅へ出かけてくるよ。とっても楽しいよ~」 「斥候任務ですか? ふむ、なるほど。確かにここの地の利についてはワカナさんの方が熟知しているようですからね。この場は私に任せて、どうぞ大役を果たしてください」 「わかったよ~。それじゃ、ちょっと行ってきま~すだよ~」 「気をつけてくださいね」 ワカナはカウンターから飛び落ちると、くるくる宙で回転しながら身軽に着地、意気揚々と人だかりの方へ向かう。ひとり残されたゼリスはその様子を見送った後、その先のゲーム筐体の方へと目を向けた。 筐体の周りは観客や野次馬で一杯だった。筐体上部に設置されたモニターに、今行われているバトルの光景が映し出されている。 「戦の風……其は美しく舞い散る天使の翼……」 すぐ側から聞こえる謳うような朗々とした声にゼリスは横を向く。そこには見知らぬ白い神姫がひとり佇んでいた。 「はじめまして。あなた独り?」 「いいえ、現在メンバーカードの手続き中のシュンを待って待機中です」 「そう。見ない顔だけど、新人さんなのかしら?」 「そうなりますね。神姫センターを訪れるのは今回が初です」 白い神姫はゼリスの返事に微笑んだ。白く長い髪に白い肌、簡素な素体のスーツも白、純白の神姫だ。彼女は屈託のない笑顔でゼリスに語る。 「ここはまさしく幻想の舞台。人間たちの想いで機械仕掛けの妖精たちに心を吹き込む、真夏の夜の夢の世界ね」 「……心を吹き込む?」 彼女はモニターの神姫バトルに恍然とした瞳を向ける。 「ふふ。妖精はね、心を持っていないのよ。だから誰かが与えなければならないの。……素敵じゃない? 人間たちの心を受け取り、妖精たちは初めてプシュケになれるのよ」 スクリーンから漏れる明かりが、彼女の顔に様々な光を落とす。そんな彼女が出し抜けにこちらを振り向いた。つられてその紅い瞳が見つめる先をゼリスが目で追うと、カウンターの向こうからシュンと伊吹のふたりが戻ってくるところだった。 「ぜっちゃん、お待たせ」 「ちょっと時間かかったな。何か変わったこととかあったか?」 話しかけるふたりに、ゼリスは知り合ったばかりの白い神姫を紹介する。 「ふたりの不在中に知人がひとり増えました。こちらの方です」 「こちらって……何処だよ?」 おかしな顔をするシュン。ゼリスはさっきまで隣に座っていた少女を振り返るが、すでにそこには誰もいなかった。 「……意外とせわしない方のようですね」 ゼリスがお決まりの仕草で小首を傾げるのと、三人がワカナの叫び声を聞いたのは、ほとんど同じタイミング。 「タイヘンだよ~っ」 ワカナは小さい体で精一杯叫びながら、慌しく駆け寄る。 「ゲーム機で、神姫ばとるがタイヘンでバーンでドーンだよ。男の子がわんわんだよ~っ」 慌てるワカナの意味不明な説明に、シュンたちが頭に?マークを浮かべたとき、ゲーム筐体の方から一際大きな歓声が沸き立った。 ▲BACK///NEXT▼ 戻る
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ここを確認する前に、必ず取扱説明書に目を通しておいてください。 DL版の説明書はXMB→ゲーム→メモステ→武装神姫BM→△ボタン→解説書にあります。 購入前Q このゲームってどんなゲーム? Q UMD版とDL版があるけど、どっちがいいの? Q 前作やってないけど大丈夫? Q 限定版があるらしいんだが Q そもそも武装神姫って何なの? Q 登場する神姫の数は? Q この武装何? 見た事無いんだけど Q 俺の好きな神姫が出てないんだが? 引き継ぎQ 引き継ぎに必要なものは? Q 前作とどれくらい違うの? Q 前作のDLCはどうやって引き継ぐの? ゲーム本編Q ○○に勝てないよ! Q ○○が装備できないんだけど?コスト制限もきついよ? Q ○○が入荷したのに売ってないよ? Q △△のパーツどこ?レールアクション揃わないよ? Q 手持ちのパーツが少なくて同時育成が難しいです。 Q 武装エディットの登録データが消えるんだけど? Q 武装エディットで総合アビリティ一覧があったら便利なのに。 Q 一回しか攻撃できない武器があるんだけど。 Q ハンディキャップ戦が難しすぎる。 Q LOVE上げの効率のいいところはどこ? Q F1行くための公式戦でないんだけど?/ファイアーバースト杯出ないんだけど? Q クラブ ヴァルハラ?裏バトル?やっていいの? Q ランク5以降の装備はどこで集めればいいの? Q:逆に低ランク武装が手に入らないんだけど… Q アストライアー(二戦目)が倒せない! Q 称号「闘神の玉座Mk2」の入手方法は? バトル以外Q イベントが進まないんだけど。 Q 同型の神姫って複数持てない?何か駄目とか言われたよ。 Q 神姫の名前変えたいんだけど。 / 武器や神姫の色って変更できない? Q 神姫とのイベント回想はないの? Q 神姫って何体まで買えるの? Q ライバルが上級者すぎるんだけど…。 Q 主人公って男性なの? Q 神姫が増えてくると名前をつけるのが大変なんだけど…。 Q 攻略本って…どう? 対戦関連Q アドパで対戦できる?kaiは? 購入前 Q このゲームってどんなゲーム? A 神姫を育成しつつ、様々な武装やパーツを集めて戦うアクションゲームです。 「アーマードコアのように武装変更できるガンダムvs」と例える人が多いようです。 Q UMD版とDL版があるけど、どっちがいいの? A 前作で不評だったロード時間の問題は、メディアインストール(537MB以上)機能により改善されています。 それでもまったく同じというわけではないため、youtube等にUPされている比較動画を見て気になる方はDL版の方がいいでしょう。 定価の場合、UMD版が5800円に対し、DL版が4800円と1000円安くなっています。 DL版は容量が前作よりもかなり増えているので(約1.4GB)、容量の少ないメモステを使っている方は注意してください。 ゲームだけ遊ぶとしても2GB必須、DLCも欲しいなら4GB、場合によっては8GBや16GBを用意することも視野に入れる必要がでてきます。 Q 前作やってないけど大丈夫? A 前作の内容は本作に全て含まれています。上にもあるように前作はロード時間が非常に長くおすすめできません。 むしろ前作の存在意義が、現状では有料体験版状態(コナミ・ザ・ベスト版UMD2,940円、DL2,300円と、Mk.2の約半額)。 Q 限定版があるらしいんだが A コナミスタイル専売の「特別版」と「コンプリートセット」があります。 「特別版」はアーンヴァルMk.2とストラーフMk.2のフィギュアと水着素体(アーンヴァルMk.2用)のセットです。 2体のフィギュアは、前作の特別版同梱フィギュアに武装を追加したフルアームズパッケージです。 「コンプリートセット」の方は、「特別版」にサウンドトラックCDと水着素体(ストラーフMk.2用)を加えたものです。 ただし、現在では既に入手は極めて困難です。(公式の販売は既に完売。クリスマスセールに少数再販されたが、待ち構えていたファンに瞬殺されました。中古屋やオークションなどで出品される可能性に賭けるしかありません) なお、サウンドトラックCDは単品でも購入することができます。 ※詳細はコナミスタイル・武装神姫BM2特設コーナーを参照して下さい。 Q そもそも武装神姫って何なの? A:コナミから発売されているアクションフィギュアシリーズで、ホビー方面とゲーム方面に展開しています。 MMSと呼ばれる可動素体に様々な武装を装着し、自由に組み替えて遊ぶことが基本コンセプトです。 企画発表当時はフィギュアとWindows向けオンラインゲームは連動企画の位置付けにありました。(現在はサービス終了) 神姫ネット稼働中は一部を除くフィギュアにはアクセスコードが付属し、アクセスコードをKONAMI IDに登録が可能でした。 登録すると、フィギュアと同じ素体とパーツを3Dモデルデータとして、ゲーム内でも使用することができました。 かつてゲームではショップで3Dモデルデータを買うこともでき、本作にも何点かあちらを初出とするパーツが登場します。 なお、残念ながらKONAMI IDを通じたPC向けゲーム フィギュアと本作の連動企画はありませんでした。 mobageをプラットフォームとしたBATTLE COMMUNICATIONも配信開始の2011年11月現在、本作との連動は発表されていません。(2012年5月、サービスは終了しました) 【ホビー方面】 フィギュアと武装のフルセット、ライトアーマー、EXウェポンセットなど数種のパッケージが存在します。 また、限定リペイントモデルなどもあり、デザインだけでも40種類に及ぶラインナップを誇っています。 それでいて、更に次モデルが公開されるなど、非常に息の長いシリーズとなっています。 ※詳細は武装神姫公式サイト・フィギュアの項目を参照して下さい。 【ゲーム方面】 本作のほか、mobageをプラットフォームにしたフィーチャーフォン向けの武装神姫BATTLE COMMUNICATIONが稼動中です。※2012年5月を以て、サービスを終了しました 武装神姫BATTLE COMMUNICATION ミッションをクリアし、武装や経験値を得て神姫を強化させていくソーシャルゲーム(RPG) ※詳細は武装神姫公式サイト・SNSの項目を参照して下さい。 そのほか「神姫NET」名義でWindowsPC向けオンライン専用の下記二タイトルがありました。 しかし、惜しまれながらも2011年10月31日をもって全てのサービスが終了となりました。 双方ともWindowsOSを搭載し、ある程度の3D表示性能を持ったPCとオンライン環境、KONAMI IDがあれば遊べました。 武装神姫BATTLE RONDO 神姫のAIを育成し、AI同士を戦わせることができるバトルシミュレーション 武装神姫ジオラマスタジオ 3Dモデルの神姫に自由に装備やポーズをつけて背景に設置し、バーチャルジオラマを作成できる3Dデータサービス ※詳細は武装神姫公式サイト・神姫ネットの項目を参照して下さい。 Q 登場する神姫の数は? A 天使型アーンヴァルMk.2、悪魔型ストラーフMk.2、犬型ハウリン、猫型マオチャオ HST型アーク、HMT型イーダ、火器型ゼルノグラード 戦乙女型アルトレーネ、戦乙女型アルトアイネス、忍者型フブキ 今作からの追加神姫として、 セイレーン型エウクランテ、マーメイド型イーアネイラ、サンタ型ツガル モトレーサー型エストリル、クルーザー型ジルリバーズ 以上の15体が、パッケージ(追加コンテンツなし)の状態で登場します。 +ネタばれあり さらに隠し神姫が3体あります。 武装パーツのみであれば上記の15体以外も登場します。 Q この武装何? 見た事無いんだけど A バトルロンドからの引用武装のほか、本作用にデザインされたオリジナル武装が多数登場します。 Q 俺の好きな神姫が出てないんだが? A 上記以外の神姫のうち、以下の16体がDLCで配信(販売)されています。 前作から引き続き配信 ヴァイオリン型紗羅檀、エレキギター型ベイビーラズ ケルベロス型ガブリーヌ、九尾の狐型蓮華 鷲型ラプティアス、山猫型アーティル ケンタウロス型プロキシマ、テンタクルス型マリーセレス 本作から追加配信 戦車型ムルメルティア、戦闘機型飛鳥 花型ジルダリア、種型ジュビジー 剣士型オールベルン、剣士型ジールベルン ビックバイパー型ヴェルヴィエッタ、ビックバイパー型リルビエート →詳しくはDL情報を参照。 それ以外の神姫のファンの方は・・・現状では、申し訳ありませんが、KONAMIに次回作の要望を出して気長に待つしかないでしょう。 引き継ぎ Q 引き継ぎに必要なものは? A:前作の「クリアデータ」または「エクストラニューゲームのデータ」。UMDやゲームデータは不要。 最初からやるか、そのまま続けるかを選べる。 Q 前作とどれくらい違うの? A 前作からの主な変更点参照。 バトルまわりが大幅に変更されているので、確認しておかないと思わぬところで大敗します。 Q 前作のDLCはどうやって引き継ぐの? A PSNからコンバート用のデータをDLする。 現時点では神姫素体のみ引き継ぎ可能。 A Ver1.01のパッチを当てた上で、PSNから本作用のDLCをDLすることで使用できます。 前作で購入したアイテム(神姫含め)については「無料」でDL出来るようになっています。 ※最初から購入済みになっていないことに注意してください。 ゲーム本編 Q ○○に勝てないよ! A とりあえず初心者向けページを見てみましょう。希望の対神姫戦が無ければ、現状では更新待ちです。 全体的に、前作で猛威を振るった大剣や斧が弱体化しておりCPUも多用してきた至近距離でRAを発動した時の即攻撃が無くなっているので、移動RAで急接近して密着してひたすらナックルやダブルナイフといった発生の早い武器でハメ殺すのが有効な場面が多いです。 Q ○○が装備できないんだけど?コスト制限もきついよ? A 貴方と神姫が育んだ愛が装備を可能にします。詳しくはLOVE・COST・武装ランクを見てください。 Q ○○が入荷したのに売ってないよ? A +XX(英語2文字) が名前の後ろにつくパーツはプレミアムショップ、 もしくはジャンクショップ(+IR、+GR、+KT等のピーキー武装)に入荷されます。 盲点かもしれませんが、+XXのカスタム武装以外は「いくら高ランクでも」普通のショップに入荷します。例えばシスター服、アーンヴァルやストラーフの追加武装(カローヴァ改など)が該当します。 Q △△のパーツどこ?レールアクション揃わないよ? A ゲームセンター(含むフレンドカード対戦)でも公式大会でも、 対象のパーツ(レールアクション)を持っている神姫に勝てば、 一定確率でショップに追加されます。 レールアクションは何度やっても落とさない場合、そのライバルは持っていない可能性があるので別のライバルを探しましょう。 また、各神姫のLOVE値を上げることで、その神姫の強化装備一式の入荷と固有レールアクション入手イベントがあります。専用RA装備はその神姫のクィーン杯をクリアし、累計バトル数一定数突破、専用RA入手でショップに入荷します。 さらにF1クリア後発生する様になるミミック戦では高確率で敵装備パーツの入荷が可能です。 意外な方法として、所持さえしていれば、 ヴァルハラにて該当装備のみをした状態で敗北することによって、装備は失いますが該当パーツがショップに入荷されます。 なお、+KTのピーキー武装は、シナリオ後半に発生する武装制限杯(「ミサイル+Pバンカー」等、互いに+アビリティのある組み合わせの大会)の景品になっています。片方は確実入手。もう一方は確率入手です。 Q 手持ちのパーツが少なくて同時育成が難しいです。 A パーツは1個でも所持していれば全神姫に装備させることができます。 複数個所持の利点はヴァルハラで敗北した時に武装エディットの消失が防げるぐらいです。 Q 武装エディットの登録データが消えるんだけど? A ショップでの売却とヴァルハラでの敗北により武装の所持数をゼロにした場合、その武装を含む武装エディットのデータも消失します。 Q 武装エディットで総合アビリティ一覧があったら便利なのに。 A あります。装備エディット中はいつでも△ボタンでその時点での 装備武装・アビリティ・レールアクションが閲覧可能(△押して画面変更) です。 なお、装備選択中にR or Lボタンで各装備の解説及び能力閲覧となります。 Q 一回しか攻撃できない武器があるんだけど。 A +IR、+GRの格闘武器は二段目以降特定のタイミングでボタンを押していかないと攻撃を続けられないように出来ており、通常武器のように連打ではコンボはおろか攻撃を出すことすら出来ません。 諦めるか、トレーニングで練習しましょう。 Q ハンディキャップ戦が難しすぎる。 A その場合、基本はLOVEを上げて装備を新調してから再戦しましょう。戦わないと一定期間で消える場合があるので 勝てないと思っても取り合えず戦っておきましょう。初心者向けページを参考にしてください。 Q LOVE上げの効率のいいところはどこ? A F3ならリリス、F2ならタッグバトル、ゴスロリ装備を持っているならアリス・リデル杯等です。 ライドレシオMAXでボーナスがあるため、CHAなど装備や戦い方を意識しましょう。 レシオMAXが容易な発射数の多いビットを持って行くと楽ができます。 LOVE15以上ならコスプレ大会でガトリング主体で戦えば1試合につき900~1000、 ゲームセンターの閃光魔女&シャイナを相手にCHR重視装備+ガトリング主体で普通に勝つだけで1000~1300稼ぐことができます。 また、フレンドカード交換の出来る環境なら、LOVE上げ用アセンのカードを貰ったりすると楽が出来ます。 さらに、今作では一度クリアすることによって、経験値の量を大幅に高めるアクセサリーを入手することが出来ます。 従って、一度最後までクリアするのもよい手段になります。 Q F1行くための公式戦でないんだけど?/ファイアーバースト杯出ないんだけど? A 狙撃スター・タッグマッチを攻略してください。 とりあえずゲーセンを適当に倒すと①~④の予選が出ます。 その後、タッグマッチと狙撃タッグを終わらせると狙撃スターが出て、 さらにスターライン杯をやるとファイアバースト杯が出ます。 その時点で一旦ヴァルハラ行くとF1出場権獲得予選が出ます。 Q クラブ ヴァルハラ?裏バトル?やっていいの? A 「敗者の武装が、勝者の賞品となります。積極的に奪い取り、武装強化を目指しましょう。」 ロード中のTIPSでこう語られている通り、シナリオ進行に悪影響を与えることはありません。 と言うよりも、ストーリー進行フラグ(F1制限予選開催など)を立てるため、最低2度は行く必要があります。 強力な武装や、各神姫の固有レールアクションを賞品にしてくれるオーナーもいるので、 上記の通り自分の武装が奪われることを承知のうえ、腕に自信があるならどうぞ。 さらに、奪われた装備はショップにない場合入荷されるため、ショップの商品リストを埋めるのにも非常に便利です。 Q ランク5以降の装備はどこで集めればいいの? A クリア前ならヴァルハラかF1で頑張ってください。 F0クリア後はヴァルハラと公式大会にランク5以上の装備持ちが大量に出てくるので、それで稼げます。 最終的にはクリア後の新F0やミミック戦で集めるといいでしょう。 完勝してSを取ると確率が上がるという都市伝説もあります。 また、神姫固有RAに必要な装備は特に収集せずとも 対象神姫のLOVE値+対象神姫限定公式大会クリアの条件で プレミアムショップで販売が開始されるようです。 Q:逆に低ランク武装が手に入らないんだけど… A シナリオの進行に伴って、神姫の武装ランクが変更される対戦相手が複数組存在します。過去に対戦済み(マイルームでライバル名と使用神姫名参照可能)であるのに、ゲームセンターの対戦相手選択欄で「NEW」と表示される場合、武装のランクが変更されています(この時点で、変更前の武装はその対戦相手からは入手出来なくなります)。また、余談ですがこういった対戦相手は、内部データでは別人扱いとなっているらしく、某称号の入手に影響を及ぼします。こういった対戦相手から武装を手に入れ忘れた場合は一度メインシナリオをクリアして次周回にて再戦する、又は今作追加メインシナリオ部分で対戦可能なミミックに勝利することで入手が可能なものがあります。 ミミックから入手する場合の注意点として、 ①ミミックの武装はプレイヤーの「最後に選択した神姫」の武装ランクによって抽選テーブルが変動する(装備しているランクではなく、装備可能上限のランク) ②「最後に選択した神姫」とは、ミミック出現判定に入る直前にバトル、武装の変更、名前やカラー変更のいずれかを選択した神姫のことを指す ③ミミックとの遭遇は基本的にランダム。各武装ランク毎にミミックの武装にパターンが複数ある為、狙った武装セットのミミックが出現するとは限らない。 ④使用神姫がミミック、強化ミミック、ジャスティスの場合は、武装ランクにかかわらず、武装ランク7の強化ミミック(武装パターン1種類のみ、他神姫ではLOVE31以上の場合に抽選テーブルに追加されるようだ)が出現する という点が挙げられます。 また、ごく一部の武装ですが各神姫のイベント対戦相手が所持していたり、DLC神姫のシナリオ対戦相手や専用大会からのみ入手可能なものもあります。 Q アストライアー(二戦目)が倒せない! A 所詮CPUなので、開幕に走りこんでナックルやダブルナイフ連打だけでハメ殺すこともできます。 マメ知識・仕様のラスボス戦の項目を参照にするのもよいでしょう。 Q 称号「闘神の玉座Mk2」の入手方法は? A 攻略チャートと称号に入手方法が載っています。 バトル以外 Q イベントが進まないんだけど。 A ハウリン等、神姫によっては最後にイベントが固まっているので、LOVE17あたりまで進行が遅くても安心してください。 また、自宅を始めとして特定の場所への移動や、対象の神姫を用いてゲーセンバトルに勝つことが条件のこともあります。「ゲーセン等の施設へ移動する」「施設でのバトルを行い勝利する」のどちらかがキーの場合がほとんどです。 Q 同型の神姫って複数持てない?何か駄目とか言われたよ。 A それぞれの神姫で全Loveイベント制覇で2体以上持てるようになります。2体以上所持でイベントリセットすると、「イベントを発生させる神姫はどちらか」と選択肢が出ます。 Q 神姫の名前変えたいんだけど。 / 武器や神姫の色って変更できない? A 自宅の神姫データで□ボタンを押すと変更できます。武器の色は変えられません。 Q 神姫とのイベント回想はないの? A 自宅でスタート- イベントログ- 対象神姫で△、でもう一度その神姫のイベントを始めからやり直すことが出来ます。 一部イベント戦闘関連称号の入手などにも。 Q 神姫って何体まで買えるの? A:購入できる神姫の最大数は同型を含めて全部で98体です。 前作の29体より大幅に増えました。 98体所持して更に買おうとすると、これ以上所持できないという表示がでます。 ただし強制入手のフブキはこの制限外なので理論上の所持数限界は99体になります。 (98体所持状態でフブキ入手イベントをこなす) なお、称号は特にないようです。 Q ライバルが上級者すぎるんだけど…。 A 世の中には色々な紳士がいます。CERO Bですから大丈夫です。 Q 主人公って男性なの? A 残念ながらストーリーは男性固定です。 オーナーカードで女性のシルエットを選択できるので、次回作まではそれで我慢しましょう。 神姫のイベントによっては百合展開と無理やり解釈する事も不可能ではないかも。 Q 神姫が増えてくると名前をつけるのが大変なんだけど…。 A ネット上には名前辞典や命名ジェネレーターを設置したサイトが存在しますので参照してみてはいかがでしょうか。 Q 攻略本って…どう? A コンプリートガイドを参照。 攻略本で扱っているデータはこのwikiでも扱っているものも多いですが、 wikiはあくまでも善意の編集によるものです。現在データ量でいえば本の方が充実しています。 また、こちらでは検証が難しいパーツなどの入手確率の数値のようなデータも載っています。 数値がわかったから入手しやすくなるわけでもないですが…心情的には違うでしょう。 加えて、攻略本には大剣「ギュリーノス・ダーク」が付いてくるのと、各神姫の立ち絵集などが載っています。 ただし、当然ですが、バグやパッチ、DLC等の最新情報の収集については、wikiが圧倒的に有利です。 うまく使い分けてください。 対戦関連 Q アドパで対戦できる?kaiは? A kaiはSSIDを変更する必要はありますができるようです。 アドパもできるようです。 専用のスレもあるので確認してください。【PSP】武装神姫_BATTLE_MASTERS Kai&アドパスレ
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第二話 「鰯も七度洗えば鯛の味」 神姫を取られてしまった少年、健五と出会った次の日。 「よう、来たか」 昼を過ぎたからそろそろだろうと、外に出るともう健五は来ていた。 「お兄さん……」 「おし、そんじゃぼちぼち行きますか。おやっさーん、ちょっと行ってきまーす」 「はーい。なるべく早く帰っておいでよ」 おやっさんの声を背に店を出ると、入れ替わりに客が数人入ってゆく。 「いらっしゃいませ。あら、シゲさん」 「おう、輝ちゃんとメリーちゃん。と……そっちのボウズは?」 「ああ、こいつは新入りッス」 「そうかい。ハハ、頑張れよう」 「ええ!僕いつの間にここで働くことになったの?」 「ただじゃねえっつったろ。明日一日はタダで働いて貰うからな」 そんな会話をしながら、一路ゲームセンターへ向かった。 ※※※ 一方、店内では。 「マスター! カツカレー一つ頼むよ!」 「あ、俺もね!」 「焼きサバ定食で!」 飛び交う喧噪の中、忙しく手を動かす二人組が。 「はい!焼きサバですね!……ったく、この忙しいのにアキラはどこ行ったのよ」 悪態をつきながら小さな体で何倍もある箸を動かす少女。彼女も、輝の神姫の一人だ。 「男にはね、いてもたってもいられない時があるんだよ」 湯気の立つ真っ白なご飯にルーをかけるおやっさん。 「何ですかそれ。あ、はい!おろしハンバーグですね!」帰って来たらなんて言ってやろうかしら。彼女―雅は、こひる型の小さな体を動かし続けた。 ※※※ 「で、ここがそうか」 三十分ほど歩き続けて、俺たちはようやくゲームセンターに着いた。土曜の午後だというのに人通りは少ない。例の一件のせいだろうか。 だが、一歩店内に足を踏み入れると、様子は一変した。 「はっはっは!でよぉ、そのオーナーがまたアホでよ……」 「マジー!?ありえねー……」 騒ぎは店の奥、神姫のコーナーから聞こえてくる。ゲーム機の音量にも負けていないほどだ。 サービスの行き届いてない店だな。そう思った俺がふと横を見ると、健五の手がかすかに震えていた。 「ほら、行くぞ」健五の手を引いて無理矢理連れて行く。 「あ……」 健五と、案の定たむろしていた不良達の目が合った。 「あ? 誰?」 「お、こいつ昨日のやつじゃね?後ろのハゲは知らねーけど」 ハゲじゃねえ。スポーツ刈りだ。と心の中で突っ込んでおく。人数は……三人か。 「何の用?おっさん」 「おっさんじゃねえよ。……お前らか?こいつの神姫取ったの」 「あ、何? 返してもらいに来たの?」 「俺が質問してんだよ。取ったんだろ?」 「チッ……これだろ」 中の一人がポケットから、ぐったりとしたアーティル型の神姫を取り出してきた。あの様子だと、おそらく充電が切れてしまっている。 「クレア……!」 「で、金は持ってきたのか?」 「ねえよ。今日はバトルしに来たんだ。俺とこいつが代わりにな」 俺が肩から提げていたカバンから、メリーが顔をのぞかせる。 「俺たちが勝ったら、こいつの神姫を返してここから出てけ」 「じゃあ、俺らが勝ったらその神姫はもらうぜ。こいつともども売り飛ばせば少しは金になる」 ぎゃはは、と笑う不良どもを一瞥して、俺と健五は傍のバトル用の筐体に歩み寄る。 「えーと、じゃあリアルで」 バーチャルではなくリアル用のコンパネを操作した俺の一言に、不良達の笑いが止まった。 「は?」 「いや、だからリアルバトルだよ。これでやるって設定したから」 「おいおい、神姫が壊れるかもしれないだろ!? いいのかよ!?」 「ギャーギャーうるせえよ。喧嘩しに来てんだよこっちは」 カバンから武装を出してメリーのセットアップをしながら俺はつぶやく。 「つーわけだ。頼むな、メリー」 「任せて下さい!」元気よく返事をして、メリーは操作パネルの横の、四角いゲートのような所から筐体の中へ身を躍らせる。 「チッ、後悔すんなよ!」不良のリーダーらしい金髪のやつも、自分の神姫を送り出す。 リアルバトルの場合は互いの神姫が直接にぶつかり合うため、五、六メートル四方の筐体の中で戦うにはどうしても空間的な余裕が出来ない。かつ、フィールド自体もデータではなく本物になる関係上大がかりな変更は出来ず、自然とバトルの場は限られる。 よって、今回の舞台はバーチャルバトルにおける「実験場」と呼ばれるステージ。障害物が無い、平面的な場所だ。 ICカードを差し込んだ俺は、相手の神姫を観察する。遠目からだと黒光りして見えるそいつは、ツガルの素体に悪魔型やカブト型、夢魔型の鎌といったパーツを満載している。なるほど、健五の言葉通り、確かに大幅なカスタムを施してあるようだ。 対する俺の相棒は。 「おい、あれ」 不良の内の一人がメリーを指さす。 筐体の中でストレッチをするメリーの装備は……ノーマルのメリエンダの装備に、ゴーグル状のセンサーパーツ、それだけだ。 「ぷっ」一人が吹き出したのを皮切りに、 「ぎゃーはっはっはっはっは!」全員笑いやがった。 「おいおい、いくらなんでもないだろ」金髪の野郎もモニターを眺めて笑っている。 「お兄さん、これじゃ勝てないよ……戦力差が有りすぎるよ」 健五までもが不安と呆れの入り交じった表情だ。だが俺は。 「俺の好きな言葉にな、鰯も七度洗えば鯛の味、ってのがある」 「鯛……?」 「見てな」 そして、試合開始のゴングは鳴る。 直後、相手のツガルがメリーめがけて突っ込んだ。 ※※※ 私は筐体に入ってから、まずは軽く関節の動きを確認する。それから、センサーの調子と、使い慣れたスプーンの調子も。 筐体の外では、私を指さして皆が笑っている。対戦相手のツガルさんも半笑い。 でも、私はなんとも思わない。 私は、アキラさんを信じているから。 試合開始のゴングが鳴った。同時に、ツガルさんがこちらに向かって来る。 重そうな武装で驚くほどの動きをしながら、身の丈ほどもある巨大な鎌を、私めがけて振りかぶる。 「「ふっ!」」 ツガルさんが鎌を振り下ろすのと、私がジャンプするタイミングはほぼ同時だった。 一瞬ツガルさんの顔に笑みが浮かんだけど、すぐに消えた。 相手は、今の一撃で確実に仕留めたと思ったのだろう。確かに速かった。 でも、私が上に飛び乗れるほどのスピードの鎌なら、大したものではない。 「いきなり仕掛けるなんて、マナーがなってませんよ」 もう一度ツガルさんが鎌を振る。私はもう一度ジャンプすると、続けて繰り出された一撃をバック転してかわし、着地。さらに二歩、三歩と距離をとる。ツガルさんの表情から少しづつ余裕が無くなっていくのが分かる。 「焦らないでくださいな。まだ試合は始まったばかりですから」 ※※※ 驚いてるな。 対戦相手の気分がそれとなく伝わってきた。 今度はツガルが腰のアーマーから小さなミサイルを放つ。 「スプーンを足場にしてかわせ」 「了解」 メリーは短く返事をすると、腰にマウントしたスプーンを外し、地面に突き立てると片手でその上に逆立ちする。 ミサイルがスプーンにヒットし、噴煙をあげる。が、メリーは無傷。手に軽く力を込めて、反動でジャンプし着地。 「っ!」ツガルがまたも驚愕する。それから不良達と、俺の隣で見ていた健五も。 「なんだよアレ」 「三橋サンの神姫が軽くあしらわれてるぜ……!」 「お兄さん……!なに、この動き!?」 俺はにっかと笑って、健五に答えてやる。 「なんて事はねえさ。オーナーなら誰でもやってる事を、ちょっと突き詰めてやっただけだ」 「?」 「調整だよ。関節の動きから動作の確認、武装のチェックとか戦術の組み立てとか。それをちょっと頑張っただけだ。昨日の夜遅くまでな。感謝しやがれ」 しゃべっている間にも、相手はまた仕掛けてくる。短銃を三連射。メリーはスプーンを盾にしてそれをかわす。 「でもお兄さん、こんな動きって……」 「どっか街の神姫センターなりゲーセンなり行ってみ。みんなこんぐらい普通にやってんぞ」 今度はツガルが短銃を撃ちながら接近。スプーンでそれを防いだメリーだったが、それが相手の狙いだったようだ。背中に接続されたリアパーツの巨大なシザーで、メリーを挟み付ける。 「くあっ」 「おし! 捕らえた!」 「ああっ! だめだ!」 メリーが小さく呻き、不良どもが歓声を上げ、健五が叫ぶ。 シザーの出力が徐々に上がり、メリーのボディーが軋み始める。 「んうう……」 だが、俺の相棒はこんなもんじゃない。 「メリー」 「分かって、ますよ、アキラさん!」 俺の合図で、メリーは両腕に力を込める。すると、少しづつ、少しづつシザーが反対に開き始める。 「んううう……ううっ!」 「なっ……に!」 「そんな……どうして? お兄さん、なんでこんなパワーが?」 俺は人差し指をぴっと立てる。 「メリエンダタイプの神姫はな、神姫が使うには重いような人間サイズの物も扱えるくらい、本当は力が強い神姫なんだ。だから調整してやれば、このぐらいの力だって出せる」 「んう……う……たあっ!」 両手の力でシザーを無理矢理に押し開き、メリーが上に飛び出す。 「メリー、ビブラーターをジョイントに打ち込め」 「了解!」 メリーは空中で背中のパーツを外す。スプーンをマウントしていたそれから、使っていない一本を取り外せば、短銃「ポルボロン・ビブラーター」に早変わり。 そのまま相手の肩に飛び乗ると、その大きなリアパーツの継ぎ目めがけて光線を打ち込む。 「あっ!」 ツガルが驚愕するのと同時に、リアと、接続されていたアーマーが音を立てて外れる。 「ライトアーマー神姫には重武装の神姫には無い身軽さがあるし、どんなに外側が堅くても弱い一点を狙えば簡単にばらける」 アーマーが外れてしまえばこちらのものだ。メリーは銃を腰に戻すと、闇雲に振り回される鎌をかわしながら落ちていたスプーンを拾い上げる。 「つっ!」 そのまま助走をつけてジャンプし、相手の肩を踏み台にして真上へ飛び上がる。 「だめ押し!」 再びビブラーターを撃つ。放たれた光弾が、ツガルの素体の表面を焦がす。 「うあああ!」 ボディーを襲う痛みに、ツガルの足が止まる。 そのままメリーはツガルの背後に着地すると、スプーンを野球のバットの要領で振りかぶる。 ツガルの目が見開かれた。 「ばっ……化け物……」 「そんな、ひどいです」 短いやりとりをかわし、メリーがスプーンを思い切り振り抜く。 めしゃ、と音を立て、ツガルは筐体の外側の強化ガラスまではじき飛ばされた。 ガラス面に激突したツガルは鈍い音を立てて地面に落ち、同時に試合終了のブザーが鳴る。 「K.O! ウィナー・メリー!」 ジャッジの判定と共に、メリーはゆっくりとスプーンを腰に戻した。 「やあったあ!」 健五が両手を上げて喜ぶ。それを見ていると、俺にもやった甲斐があるってもんだと思う。 やがて、筐体の反対側からさっきの金髪が姿を現した。 「なっ……なんなんだよ……てめえ! どういう事だよ!」 「あ?」 「なんでノーマルの武装しかない神姫があんなに強えんだよ!あんなの……! どう考えても違法だろっ!」 「何が違法だってんだ。ただの調整だ。誰でもやってる事だろ?」 「けどっ……!」 「なんなら調べても良いさ。……だいたい、機動力が武器のはずのツガルにしこたま武装乗っけて、神姫本来の力が出せてねーじゃねえか。おめえは」 「……!」 無理も無いわけだよ。 「それに、人の神姫取ったり、ゲーセンで周りの迷惑考えず何時間もだべったり、どの口が人を違法って言えんだ、あ?」 「こっ……この野郎……!」 耐えかねた金髪は顔を真っ赤にして殴りかかってきた。 「おっと」 それを右手で受け止め、紫色になるくらい強く握ってやる。 「いっ、痛てててっ!」 「約束だ。あいつの神姫を置いて出てけ。こいつらの居場所に二度と来んじゃねえよ」 「わっ、分かった! 痛ててっ! 分かりましたっ!」 俺が手を離すと、不良達はクレアを台に置いてそそくさと店を出て行った。 「ふう」 これで一仕事終えたか。手近にあったベンチに座り込むと、メリーが俺の膝に乗ってきた。 「アキラさん、大丈夫ですか?」 「へーきだって。一服したら帰るぞ」 携帯の時計を見ると、時刻は三時にさしかかろうとしていた。あっちゃあ、もっと早く帰るつもりだったのになあ。 「あの、お兄さん」 「んあ?」 健五が俺の隣に座ってきた。両手に大事そうにクレアを乗せて。 「あの……クレアを助けてくれて、ありがとう。お兄さんのおかげで……」 「全くだ。ったく、良い迷惑だぜ。それと、お兄さんはやっぱ止めろ。輝でいい」 「じゃあ、輝さん」 俺はゆっくり腰を上げる。 「そいつ、大事にしてやれよ。それと、もう面倒起こすんじゃねーぞ」 「うん。……僕らももっと練習して、輝さん達みたいに強くなるよ」 「俺らみたいに・・・ねえ」 俺は立ち上がると、帰るぞ、とメリーに合図する。すると、メリーは俺の肩から飛び降りて、なにやら健五に耳打ちしだした。 ※※※ 「アキラさん、あんな事言って本当は恥ずかしいんですよ」 「え……」 「何かあったら遠慮せずに相談しに来てくださいね。お待ちしてますから」 ※※※ メリーは意外と早く戻ってきた。何を話してたんだ。 と、健五が立ち上がって何か叫んだ。 「輝さん!」 「あ?」 「ありがとう! ……あと、さっきの鯛がなんとかって、どういう意味?」 「あー? それはな」 「鰯みてえな安い魚でも、丁寧に洗えば鯛にも負けない味が出る」 つまりは。 「どんな物でも丁寧に使えば結果が出るってことさ」 第三話 箸とスプーンとおしゃべり子猫へ続く 武装食堂へ戻る
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西暦20XX年、幾らかの災害こそあれど、3度目の世界大戦も起きることなく今日に至る日本。 今、日本、いや世界中でブームとなっているホビーがあった。ガ○プラだの遊○王だのヴァ○ガー○もメジャーだが。 俗に、「武装神姫」と呼ばれる全高15cmの自律稼動する少女達。 知性と感情を備えた彼女達は、ときに生活のパートナー、ときに友人、ときに小さな家族、ときに戦場での相棒として広く普及している。 なかには小さな嫁だったり主従関係が逆転してたりある意味特殊な事例もあるが… そしてなかには、単なるバトルの道具扱いされるものもいる… これは、ひょんなことから神姫に関わることになった青年と、事情持ちの神姫の話… …の予定だ!内容?続く範囲ってことで。
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武装神姫のリン 第3話 「イベントへ」 最近はリンは俺の買ってきた服(あの日以来、月に1度ほど新しい服を買ってやることにしている) を着て、休日は出かけたりする。 で、今日も目的地へ向かう電車に俺は乗っているわけだが、今回は少し事情が違う。 今までは普通の繁華街へ行くぐらいだったのだが、今日は武装神姫のプロモーションも兼ねた大々的なイベントが開催されるということで一度行ってみようということになった。 イベントは基本的に新モデルの発表があったり、『舞装神姫』コンテストの成績優秀者の神姫によるファションショーやら、バトル方面ではS、Aランカーによるエキシビジョンマッチ等がある。 そんな中でも今回のイベントは格が違うらしく、イベントの会場が某オタクの祭典と同じらしい。 もちろんエキシビジョンもあるのだが、今回はメーカーからの販売基準をクリアした『同人』武装パーツや衣装(こちらは主にゲームやアニメの会社が自社の版権作品のキャラの衣装を販売するそうだ)の即売会も会場の1/3ほどのスペースを使って行われる。 マニアの間ではこちらの方がメインらしく、有名企業のゲームキャラの衣装等は一般販売があと半年は無い予定でプレミアが付くという情報が飛び交ったりしたそうで徹夜で並ぶ者もいたらしい。 と、なんで俺がこんな情報を知っているかというと…… 俺をこの世界に引き込んだ友人は一般的にオタクと呼ばれる人であり、彼はこういったイベントの情報はどこからかは知らないが最速レベルで手に入れてくる。 そんな彼は昨夜から有給を取り、徹夜で即売会入り口に並んでいる。 なんでも、リンの分も服を買ってくれるそうなので俺はそのための軍資金と判断基準(1着の値段や、特殊な趣味のモノは避けるなど)を書いたメモを渡しておいた。 今日が一般の給料日の週の日曜という条件がなければ軍資金を渡すことなどできなかっただろう。 企業も考えているということだけは分かった。 で俺はリンと一緒にイベント会場の入り口にいるわけだが、こちらも結構人が多い。 子供連れの親子や、結構年配な夫婦などが見られる。 だいたいそういった客は「舞装神姫」のファッションショーが目当てのようで既に第1回ショーの開催時間が近づいているためか、皆足早にステージへ足を運んでいる。 で180度反対方向はエキシビジョンマッチのステージであり、コチラは大体俺と同じような10代から20代半ばの男性ユーザーが多い。 女性のグループもしばしば見られる、ファッションショーよりこっちが好きという女性も多いようだ。 取り合えずエキシビジョンマッチの方が人が少なく、ステージが良く見えるのでまずはコチラを優先した。 さすがにこちらのステージにいるユーザーの神姫は服を着ていることが少ない。 「マスター、アレを。」 リンに促されてステージのバックにある大型スクリーンに目を移す。 エキシビジョンマッチの第1戦が始まったようだ。 対峙するのはストラーフモデルとマオチャオモデル。ストラーフモデルは基本セットのアームやレッグに多様改良が加えられ、スラスターも追加されている。武器はハンドメイドらしい刃物を各部にマウントしている。中、近戦専門でロングレンジでの戦闘は全く考えていないセッティングだ。 一方マオチャオモデルも同じく両腕にドリルということで接近戦主体らしいが、アーンヴァルのパーツを身につけていて、相手のストラーフモデルに比べ、飛行もしくは滑空が可能のようだ。 戦闘が開始される。 先に仕掛けたのはストラーフ。 スラスターの出力全開で一気に距離をつめ、セカンドアームのナイフで切りつける。 が相手のマオチャオは冷静に右手のドリルで迎撃、開始数秒でいきなり2体の間で火花が散る。 密着した状態からストラーフはメインユニットが腰にマウントされたリボルバーを抜き取った、と次の瞬間銃声。 だがマオチャオは宙返りの要領でそれをかわすと共にストラーフの後ろを取り、強烈なキックをお見舞いしていた。 体勢の崩れたストラーフにマオチャオが追撃のドリルを放つ。 がストラーフもソレを紙一重で避けセカンドアームで反撃。 マオチャオはスラスターの逆噴射でそれをギリギリで回避し距離をとる。 気が付くと周りの観客は歓声を上げている。 それほどに見入っている自分が不思議に思えたがそれはリンも同じようだった。 「……彼女達はすごいですねマスター、私が思っていた『バトル』とは次元が違います」 「まああのモデルは全国大会で入賞が当たり前のレベルのランカーだからな。あんなふうになるには相当は時間が掛かってるはずだ、訓練とか入念なパーツのメンテナンスがあってこそだろうな。」 「私も、あんなふうに闘えたら……」 「おい、お前バトルに興味あったのか??」 「…はい。最近TVでもバトルの中継が増えてますし、『武装』神姫は基本的に戦闘が主の目的で作られていますので」 「オシャレだけじゃ物足りないか…」 「いえ、決してそういうわけではありませんがこういうのも見るとなんだか身体を動かしたくなってくるんです」 なんというか、コレは血が騒ぐという現象なのだろうか? やはり武装神姫という名前が付いているだけあってやはり闘争本能(?)は抑えられないということなのだろう。 「そうか、ま今日は無理だろうけど今度、な」 「でも、マスターが争いを嫌うということであれば無理をしていただかなくても…」 「いや、俺は最初はバトルメインで神姫を扱おうとおもってたけどお前がピ○チュー好きだとか言うもんだからてっきりそういうのは苦手だと思ってた。」 「じゃあ、マスターも?」 「そりゃそうだ。仮に着飾ったりするだけならおまえを買ってきたときに一緒に買えばいいんだし。 ということで今度から大会も視野に入れてがんばってみるか?」 「はい、マスター」 そんなこんなで俺とリンは新たな決意をしたわけだ。せっかくのバトルのお手本が目の前にいるのでそちらに視線を戻す。 さすがにガチの接近戦だとセカンドアームのパワーの分不利と踏んだのか、マオチャオが戦闘スタイルを変えた様だ。 アーンヴァルのパーツの飛行能力を駆使して縦横無尽に戦闘フィールド内を翔ける。 そしてマオチャオの特殊武装。 プチマスィーンが姿を現した。こいつで牽制をして決め手のドリルをお見舞いするようだ。 一方ストラーフはこのスピードに対抗することが出来ないので構えを正し、ドコからの攻撃にも反応できるように神経を集中している様だ。 いつの間にかストラーフの右のセカンドアームに黒い刀身の大剣が握られている。 見たところ装備されていたサーベル等を組み合わせると一振りの大剣になるらしい。 コイツのオーナーはFF7ACに感化されていると見た。 しかしほかに装備は無い。コイツだけで勝負を決めるつもりだ。 マオチャオが急旋回して突っ込んでくる。そして反対からはプチマスィーンが砲撃をしてくる。 プチマスィーンの砲撃は1発当たりのダメージこそ少ないものの、確実に集中力を奪い、かつダメージも塵も積もれば山となるといった感じで馬鹿に出来ない。 ストラーフは後方から来るプチマスィーンには目もくれずマオチャオに向かって跳ぶ。 が右手にはあの大剣は見当たらない。と思った瞬間に爆発音。 後方でプチマスィーンが爆発していた。残骸に突き刺さっていたのは無数の刃。 あの大剣は瞬時に分解可能らしく、分解途中の状態で投げればバラバラになりながら刃の壁ができるというわけだ。 しかしストラーフ本体にはあのドリルに対抗しうる武装が無い。しかし2体の距離はゼロに近づく。 ストラーフはセカンドアームを。マオチャオは両腕のドリルをお互いに叩きつけようとする。 そのまま2体が正面からぶつかり、お互いにフッ飛ばされて着地した。 が立ち上がったのはストラーフの方だけだ。 セカンドアームは完全に砕け、ヒジから先がなくなっていた。 マオチャオモデルはドリルこそ無事だがメインユニットの胸部に小さなナイフが刺さっている。 同時に今までで一番大きな歓声と拍手が起こる。 決着のシーンのスロー映像が再生される。 2体が激突する前。ストラーフの左のレッグパーツから例のナイフが飛び出した。それはマオチャオの胸に向かっていく。 マオチャオの右腕のドリルもまっすぐにストラーフのメインユニットの腹部を狙っていた。 がストラーフのセカンドアームが右腕のドリルに生拳突きを食らわす。もちろんセカンドアームは破壊されたがドリルの軸がずれた。 マオチャオの左腕のドリルも反対側のセカンドアームで空手の受けの形で何とかそらす。が左腕のドリルはストラーフのリボン、武装マウントを完全に破壊、そのままセカンドアームの基部も綺麗に抉っていた。 普通ナイフがぶつかる程度ではマオチャオの胸部装甲は貫けないが2体のスピードが余りに速かっためか、ナイフはストラーフのメインユニットがその腕で少し力をかけるだけで簡単にソレを貫通していた。 今回の勝敗の分かれ目はマオチャオはドリルに頼りすぎたこと、あとはセカンドアームを犠牲に、しかも運に結果は左右される戦法を選択したストラーフの度胸だろう。 やはりS級同士の勝負となると迫力が違う。 こんな感じで『舞装神姫』は最後のステージを見ると決め。残りのエキシビジョンマッチも食い入るように見ていた俺とリンだったが、全てのエキシビジョンマッチが終わったところでステージにコンパニオンと思われる女性が立ち、こう言った。 「エキシビジョンマッチはいかがでしたでしょうか? コレを見てバトルに興味を持たれた方もいらっしゃると思います。 今回はエキシビジョンマッチの展開が速く、予定時間より1時間も早く終了してしまいましたので急遽ビギナーユーザー様限定の新人戦トーナメントを行いたいと思います。参加は6名まで。 まだバトルユーザー登録されていない方、もしくは登録したがまだ大会には出たことが無いというユーザー様限定になります。今回はデータを使用してのバーチャルマッチになりますのでお客様の神姫やパーツに傷が付くことはありませんのでお気軽にご参加ください。」 これを聞いたリンが俺に顔を向けてくる。 「マスター!!」 「ヤル気だな。いっちょ参加してみるか。」 こうして俺とリンのバトルユーザーとしての第1歩が踏み出されることとなった。 ~燐の4 「予想外の初陣」~
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新たなる力を手にし 7月29日(金) 「練習相手、ですか?」 翌日の午後、私は柏木さんに一つの頼み事をしていた。 昨日の午後と今日の午前中に練習した薙刀と機関銃の成果を確認したかったのだ。 「そうですね、僕もたまにはライドしないと、体が鈍ってしまいますからね」 「そうですねぇ、店長は慢性的に運動不足ですし」 そう言ってエリーゼは腕を組んでいる。そんなエリーゼを思わずまじまじと見てしまう。 「…………」 「ん、どうしました?」 「最近驚かさないなと思って」 「ああ、店長と樹羽さんには効かないことはわかりましたから。無駄なことはしたくありません極力」 どうやらこれからは驚かさないようだ。内心では驚いていて最近それが表に出そうだと思っていたから、都合がいい。 と安心した所を驚かされるのが容易に想像できるから、あくまで気は抜かないが。 「そう言えば華凛さんはどうしたんです?」 柏木さんが疑問に思うのは無理もないが、今日華凛は用事があるとかで午後になったら来ると言っていた(連絡は昼にあったけど)。だからもうすぐ来るはず。 「こんにちは~。まったく夏期講習って面倒よね~」 噂をしたらなんとやら、間延びした華凛の声がして店の扉が開かれる。その瞬間、エリーゼの姿が視界から掻き消えるのを私は見逃さなかった。 華凛は制服姿だった。しかし、どこかやつれているようにも見える。いつも鮮やかとも言える髪の張りがない。疲れているのだろうか? 「いらっしゃい、とりあえずそこに腰掛けて待ってて下さい。今何かいれて来ます」 柏木さんは空いているソファを指し示し、カウンターの奥のドアの奥に消えた。 「じゃあ、よっこいしょっと……」 華凛が空いているソファに座ろうとした。つまり出来なかった。 「トゥッ、ヘァーッ!」 「どああっ!?」 ソファの座る部分がばん、と開き中からエリーゼが飛び出したのである。何故であろう。なんか背中に大きなオーラのようなモノが見える。まぁ気のせいだろうけど。 「エ、エリーゼ! あんたは一体なんなのよ!」 「やっぱり華凛さんは驚いてくれるんですね。まぁこんな事が得意でも何の意味もありませんけど」 エリーゼが何やら感傷に浸りながらソファから降りる。華凛は軽いため息をつきながら今度こそソファに座った。 「はぁ……なんかお店に来る度に驚かされてる気がする」 「私と柏木さんに効かないから華凛に照準を定めた?」 「シリアにやればいいじゃない。なんであたしばっかり……」 当のシリアはポーチの中で苦笑いを浮かべている。この間なんか影が薄くないかと相談されたが、もしかしたらその通りなのかもしれない。 「で、首尾はどうなの?」 「それを今日確かめる」 「そっか……」 華凛はそれきり黙ってしまった。やっぱり疲れているのかもしれない。 妙な気まずさだけが店内に残り、私は柏木さんが帰ってくるのを待つしかなかった。 朝目を覚ますと、異様に暑かった。昨日は熱帯夜だったから、朝になって余計に熱いのかもしれない。 とてつもなくだるい体をなんとか起こす。体が気持悪いと思ったら寝汗で服がびしょびしょだった。 「…………」 時計を見てみると、既に短い針が真上を指していた。訂正、朝ではなく昼だ。 「起きなきゃ……」 今日は朝から樹羽と一緒に行動するはずだったのに、つい寝過ごしてしまった。 今日は29日、貴重な時間を睡眠に使ってしまった。これからは気を付けないと。 とにかく樹羽に連絡しなければならない。あたしはベッドの脇に置いてある携帯を手に取る。これだけの作業なのに、下手をすれば息切れしそうになる。 落ち着いて呼吸を整え、樹羽の番号を呼び出し、通話ボタンをプッシュ。数回のコールで電話は通じた。 「もしもし、樹羽?」 『華凛? どうしたの? 今日来なかったけど』 樹羽の問いに、あたしは前もって考えて置いた答えを言った。 「ちょっと用事があってね。ごめんね、昨日の内に言っとけばよかった」 『ううん、平気。午後は来れるの?』 「ええ行くわ。樹羽の成長ぶりを見ないとね」 『そんなにうまくないよ?』 「謙遜しない。樹羽器用なんだから、武器の一つや二つ、すぐに使いこなせるでしょ」 『大袈裟』 自然と笑いがこみあげてくる。少し落ち着いてから次の言葉をつむぐ。 「じゃあ行くからね。勝手に始めちゃわないでよ?」 『うん、待ってる』 電話を切る。通話時間はそんなにかかっていないが、不思議と体のダルさは取れていた。これなら動ける。 あたしはまず汗で濡れた体をどうにかしようと風呂場へ向かった。 樹羽には用事があるとしか言っていなかったが、あたしは制服を着ていくことにした。夏期講習があったと言えば問題ない。 「こんにちは~。まったく夏期講習って面倒よね~」 あたかも高校から直接きたように扉を開ける。店の中にあるソファには仁さんと樹羽が座っていた。シリアも樹羽のポーチから顔を覗かせている。 「いらっしゃい、とりあえずそこに腰掛けて待ってて下さい。今何かいれて来ます」 仁さんが空いているソファを指し示し、カウンターの奥のドアの奥に消えた。 「じゃあ、よっこいしょっと……」 あたしは指定されたソファに座ろうとした。その時のあたしは一週間前の経験を忘れていたらしい。 「トゥッ、ヘァーッ!」 「どああっ!?」 突然ソファからエリーゼが飛び出してきた。一週間前にも同じように驚かされた気がするのは気のせいではない。 「エ、エリーゼ! あんたは一体なんなのよ!」 「やっぱり華凛さんは驚いてくれるんですね。まぁこんな事が得意でもどうしようもありませんけど」 エリーゼがソファから降りる。あたしは軽くため息をつきながらソファにすわった。 「はぁ……なんかお店に来る度に驚かされてる気がする」 「私と柏木さんに効かないから華凛に照準を定めた?」 「シリアにやればいいじゃない。なんであたしばっかり……」 ま、こんなこと言っても何も変わりはしないけど。 「で、首尾はどうなの?」 「それを今日確かめる」 「そっか……」 自然とそこで会話が途切れた。なんでだろう、理由はわからない。疲れてるのかな、あたし。 しばらくすると仁さんが人数分のカップを持ってきた。カップからは湯気が立ち上り、少し甘い匂いがする。それはチョコレートの匂いだった。ホットココアだろう。 「とりあえずどうぞ」 あたしと樹羽はそれを受けとり、一口。うん、なんか程良い甘さだ。 「華凛さんも来たことですし、始めましょうか」 実はあたしは仁さんから呼ばれていたりもする。仁さんがバトルしている間の店番だ。まぁ、あたしは呼び出されるまでもなく来るつもりであったが。 二人が練習用の筐体に向かう。あたしは樹羽の様子を見た。少し緊張したような、そんな表情。もっとラクにしたらいいのに、とあたしは思ったが言わなかった。 仁さんはいつもの調子でヘッドギアをつけている。この人は昔からどこか掴めないイメージがある。空気(決して影が薄いと言う意味ではない)、と言うかそんな感じ。悪く言って目立たない。良く言ってどこでも対応できる。そんな店の主は今、あまり得意でないバトルをしようとしている。練習相手としてはちょうどいいかもしれない。 樹羽がシリアと言葉を交す。会話の内容まではここまで聞こえてこないが、樹羽の表情が僅かに和らぐのがわかった。 (シリアも頑張ってるわね) やがて二人が筐体にライドした。あたしは戦闘の様子を店のパソコンで見ることにする。 「……あと、3日」 不意にそんな言葉が漏れた。そう言えば、あと3日しかなかったのだ。 「……っ」 頬を一筋の涙が伝う。あたしはそれを拭うとパソコンの画面を食い入るように見た。 時間がない。わかってはいるけど、これは樹羽の問題だ。あたしが動き回っても限界がある。 「樹羽、頑張ってよ……」 あたしは準備を進める樹羽にそう小さく呟いた。 第九話の2へ トップへ戻る
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CSCによって作られた感情はそれまでのAIとは違いゆらぎと呼べるものを持っておる。それは神姫に個性や成長と言った他の機械にはない独自性を与えたのじゃ。しかしそれゆえに神姫は特定の条件を満たせば催眠状態とも言えるような状況になる。これはとある一人の技術者によってその危険性と共に証明されたのじゃ、そなたも知っておろう。神姫は心ある魅力的な機械じゃが、心があるが故にこれまでとは全く違うアプローチによるクラッキングが発生することが分かった以上我々はその脅威に対応する必要がある。伝統あるPANDOOR社の名にかけて。さあ、今こそマスターの信仰心が試されておるぞ! 新入社員に対するセミナー蓮華様のお言葉 連続神姫ラジオ 浸食機械 20:アンビバレンス 『どうして、どうして…』 レッドランプに照らし出された室内に神姫達の悲鳴のコーラスがこだまする。中央の樹につながれた彼女達は一様に泣き顔を浮かべながら叫んでいる。それはそうだろう、と僕は思う。ここにいるのは全てマスターの引き離された神姫達なのだから。彼女達はここにつながれてからずっと泣いていたのだろう。でもいまは余計に悲しみの声が大きく響いているのかもしれない。なぜなら僕たちはここにいるたった二人だけのマスターと神姫のチームなのだから。 「うぁ、ごれじゃちかづげない」 中央の樹を守るように鋼とケーブルで作られた触手が僕たちに襲いかかる一本一本の早さは大したことはないけれどとにかく数が多い。縦横無尽に襲い来る触手に阻まれてプルミエとヘンゼルは樹の中心、コウガの元に近づけなかった。 「くすくす、どうしたの、言う割には何にもできてないわよ」 樹の上からコウガがほほえみかける。確かに僕たちは何もできていない、でもそれで問題ない。 <スキルポイントはもうたまったのだわ。カウント、合わせて> 「マスター、衝撃に備えてください。行きます」 ジグザグに動いていたプルミエとヘンゼルが一線上に並ぶ、そしてスキル発動。ライドレシオを最大までため込んだヘンゼルの背面武装が変形する。変形したヘンゼルにプルミエがまたがるとトライクはコウガの元に疾走していく。阻むべく触手が襲い来るがヘンゼルのスキルスリルドライブの前になすすべ無く貫かれ、被害総額がスコアに加算されていく。しかしコウガは焦ることはない。 「わあ、すごい。でも」 コウガが手をふるうと地面から光が浮かび上がってくる。その光に触れた途端ヘンゼルの動きが止まる。 <永劫の沈黙“shutdown -h!?。バトルロンドの頃のスキルを何であなたが> 動きを止めたヘンゼルをさらに光りの槍が貫く。コウガの背後にまるで曼荼羅絵のように現れた光球から伸ばされた槍に貫かれたヘンゼルはその動きを完全に止める。 「別におかしくはないでしょう?この『デルセトナ』は元々あの西園寺が作った物。彼の神姫root使って世界を支配するために作った武装なのだから元々の装備ぐらいあって当然よ」 勝利を確信したコウガの表情は次の瞬間驚きに変わる。光りの槍が貫いたのはヘンゼルのみ。僕たちは 「づーがまえだ」 ヘンゼルがにやっと笑い天井の穴を見上げる。釣られて上を見上げたコウガのあごを下から急上昇した僕たちの拳が打ち上げた。あまりの衝撃に一瞬全ての防御機能が停止する。僕たちはコウガの肩をつかむとその目を見つめた。 「回線解放、マスター、今です」 神姫同士は目に赤外線通信機能が備わっている。僕たちの狙いはそれを経由して彼女の心に入り込み説得を行うこと。それ以外に彼女を破壊しないで止める方法が思いつかなかった。 「届け、マスターの思い!!」 「残念、それ無理」 次回:ロスト・デイズに続く・戻る
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「こんばんは、あなたの3Sが斬るのお時間です」 「ちなみに、所有格への抗議は一切受け付けておりませんワン」 「……まさにありがた迷惑」 「しかも今回は、豪華三本立て!」 「正気の沙汰とは思えませんねワン」 「……まさに自重しろ」 「さて、本日のお題はこれ! 『ちょっと小粋な神姫ジョーク』!」 「これはまた突飛な方向にワン」 「……『隣の塀に、空き地が出来たってねー、ウォール』」 「まぁ皆さんに、小粋なジョークをご披露していただこうと、そういう企画です」 「しかも、せっかくですので神姫に絡んだジョークを、とそういう訳ですねワン」 「……『隣の柿はよく客食う餓鬼だ』」 「テッコさん、新種の妖怪誕生は程ほどにお願いしますワン」 「しかもそれはジョークですらありません」 「……残念」 「ええと、このままではいつもの事とはいえグダグダになる一方ですので、 私めが先陣を切らせていただきますワン」 「おー」 「(ぱちぱち)」 「では。 ……あるマスターの前に、魔神が現れてこう言いました。 『三つまで、何でもお前の願いを叶えてやろう。さあ、三つ目の願いを言うのだ!』 そこでマスターが、なぜもう三つ目なのかと問うと、魔神はこう答えました。 『それはな、二つ目の願いが”一つ目の願いをなかったことにする”だからだ。 それを叶えて、一つ目の願いが実現する直前までさかのぼったから、 お前にはその記憶がないと言うわけだ』 マスターは釈然としないながらも、三つ目の願いを口にしました。 ”自分の武装神姫と、ずっと一緒にいたい”と。 魔神は大きく頷きました。 『よかろう、その願いを叶えよう!』 そして魔神は、にやりと笑ってこう付け加えました。 『だが、その願いは一つ目の願いと同じだな!』 ……以上、お粗末でしたワン」 「……興味深い」 「ええ、まったくです」 「確かに、ジョークとはいえ含蓄のあるお話ですワン」 「いえそういう教訓めいたお話はどうでもよくてですね」 「(うんうん)」 「と仰るとワン?」 「ええ、犬○さんが、そのジョークを選んだ心理的背景を推察すると、なかなかに興味深いな、と」 「……無自覚な不安の投影、あるいは立場の倒錯」 「は、ありえませんワン」 「……言い切った」 「言い切りましたね。犬○さん男前です」 「ご理解感謝です。……ですが、まぁですねワン……?」 「?」 「なんでしょう?」 「私がこのジョークを知った際に、私のよく知る武装神姫たちを思い浮かべなかったといえば 嘘になりますねワン」(見た目だけは純粋は微笑み) 「……………………」(不敵な微笑み) 「……………………」(シニカルな微笑み) 「元のジョークは、武装神姫の部分を恋人に替えたものですね」 「男女関係とか結婚とか、ブラックジョークの宝庫だしねぇ……あれ? どうしたの?」 「ご気分でも悪いのですか?」 「は?!………ち、ちがうわよ?! 別に『私も契約キャンセルできないかなー』なんて カケラも思ってないわよ?!」 「……ご苦労されているようですねぇ」 「うん、恥ずかしい事じゃないよ。人間たまに心が弱まったとき、普段なら絶対に考えもしないような、 魔が刺したとしかいいようがない事をふっと思ってしまう事だってあるよ?」 「や、優しい目で私を見るなー!!」 <戻る> <進む> <目次> 犬子さんの土下座ライフ。 クラブハンド・フォートブラッグ 鋼の心 ~Eisen Herz~
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戻る TOPへ 次へ ツガル戦術論-副題 シルヴィア地獄激闘編(上) 地区大会で優勝を収めたおれ達は、次の大会開催までの一週間を利用してトレーニングに励んでいた。 家からあまり離れていない行きつけのセンターには、始めたばかりの初心者から、ファーストリーグで鳴らしている猛者など幅広いユーザーが集まっており、戦術研究の場としては打って付けだった。卓上で考案した戦略が初心者に通用しても、上級者には通用しない。というのは勿論の事だが、その逆のケースも存在するのだから面白い。 最良の上達方法が実戦というのはどんな世界でも変わらないのだ。 前大会で披露した、中距離攻撃力が低いと言う欠点を逆に利用する戦術に対してやはり対策が立てられており、腕のある神姫とのバトルではこちらが劣勢。贔屓目に見て五分の勝負に持ち込まれる事となった。対策に対する対策が必要だ。が、さりとて、そんなに早く新戦術が思い付くわけでも無い。 だからこそ、既存の戦術を煮詰め、新たなコンボを編み出そうとセンターで連戦を続けているのであった。 コンボとは? 攻撃とは多くの場合、ひとつの武器から放たれる一撃で完結するものでは無い。単一武器による連続攻撃。異なる性質を持った複数武器による連続または同時攻撃。機動しながらの攻撃。回避機動及び防御行動からの反撃。さらに体術を含む近接武器による格闘との連携。等など。 例えばハンドガン一丁をあなたの武装に追加しただけで、これだけ攻撃パターンが増えるのである。 武装を増やすと言うのはつまり火力の増加のみに留まらず、相手に対して取れる戦術が増える。攻撃力と手数の二重の増加、則ち戦力の上昇に繋がると言うわけだ。それを理解せずにカタログスペックだけを見て武器を扱えば、その「武器に使われる」事となる。各武器の特性を理解し、自らの思い描いた戦術にマッチした装備の組み合わせを探し出すのが重要だ。 武装とはマスターと神姫にとってアイデンティティ。 武装とは、自らの技術と経験と信念に基づいて選択すべきものである。 さて、神姫の武装やオプションが徐々に増加しているにも関わらず、未だに格闘武器のみというスタイルが根強く残っているが、それは本人らが意識してる、してないに関わらず上記の理由が大きいだろう。 剣しか装備してなければ、その剣を活用せざるを得ない。言い換えれば、剣の性能を100%引き出す事に繋がるのだ。もしこの神姫がどんな間合いでも一瞬で詰められる機動力があれば、剣以外の武器を持たぬ彼女は迷いなく敵を一刀で切り伏せようとするだろう。 余計な事を考える必要が無いというのは、ここ一番の場面では大いに強みになる。 さらに彼女の剣が片手で扱えるものならば、無限の用途を備えた武器である「左腕」を攻撃に組み込める。叩く、払う、掴む、捩る、投げる、防ぐ。左腕と剣によるコンビネーションは近接格闘戦において無限のコンボを派生させ、剣が本来持つ戦術的効果を上回る性能を発揮させるだろう。もちろん両手持ちの剣を扱ってもその性質はほとんど変わらない。刀身で斬る、切っ先で突く、刀を返し薙ぎ払う、柄で殴る、峰で叩く。射撃武器と違い、たった一つの武装で無限の攻撃パターンを繰り出せるのが格闘武器の利点の一つだ。 だがこれは、使用者の技量と武器の性能が直接的に結びついているとも言えて、使用者の鍛錬が無ければ威力を発揮しない、という欠点も孕んでいる。だがそれ以上に、ただの物質であるはずの格闘武器が使い手とともに千差万別 変幻自在に身を翻し、激しい攻撃をぶつけ合う格闘戦のダイナミズムは多くの人を虜にする。 この先、いかに射撃武器が充実していこうとも、多くの神姫達は格闘武器を手放さないだろう。 少し話しがずれた。閑話代休。 私の主張するところとは、つまり。 神姫の装備に対しての熟練度は、確実に戦力として加算されると言う点だ。 先日行われたセカンドリーグ同士のフリーバトルにて、巡航射撃型のアーンヴァルタイプが軽量格闘型のハウリンタイプに肉薄された際、巨大なレーザーライフルの銃身を叩き付けて迎撃した件は記憶に新しい。バトル後の勝者アーンヴァルの発言は興味深いものだった。「いつも抱えて飛んでましたから、体が自然に動きました」 この件はいささかイレギュラーな形での運用ではあるが、体に馴染んだ武装と言うのは意識せずとも自然に戦術に組み込まれる。 これを偶然拾った僥倖と判断するか、必然で勝ち得た勝利と判断するかで、あなたの神姫プレイヤーとしての性格が問われる。 さて、格闘武器のカテゴリであるにも関わらず剣や槍などの武器とは在り方が大きく異なる武器がある。 則ちパイルバンカーやドリルアーム等といった機械式格闘武器である。 これらは通常の格闘武器と比較してあまりにも高い破壊力と、それに反比例する低すぎる汎用性を持つ。火薬を炸裂させ、その爆発力を最大限運動エネルギーに変換し装甲を貫くパイルバンカーは、貫くというワンアクションしか起こせない。逆に言えばワンアクションに特化した機構が化け物的貫通力を生み出すのだ。玄人向けと言われる所以である。そしてこれらの性能をフルに引き出すためには武器に対する熟練度や鍛錬よりも、経験が占めるウェイトが大きい。連射が利かず突くしか出来ないパイルバンカーは、「単一武器による連携」が行えない。よって培われた経験に裏付けされた判断力で――― 対戦フロアの隅にて、モバイルのテキストに新たな戦術論の草案を書き初めてからどれくらい経ったのだろう。 「―――マスター、もしもし、マスター? 大変。とうとうウチのマスターの聴覚器官が水平線しちゃったのね」 シルヴィアに課題を出して連戦させてるうちにマスターである自分は新戦術を完成させ、パートナーのバックアップを図ろうと思っていた。が、 「どうしましょう。とりあえず、帰りにささげと重曹、もち米を買わなくてはいけないわ」 どうやら自分は作業に没頭していたようで、連戦を終えたシルヴィアの呼びかけも聞こえてなかったらしい。 「赤飯でも炊こうってか。めでたくも無いのに赤飯を炊きたがるグルメ神姫を持つと無駄に出費がかさんで辛いぜ」 「あら、赤飯は嫌い? めでたくなくても炊きたくなる、私をそそらせる何かがお赤飯にはあるのよ」 「話を逸らすなよ。誰の耳が聞こえなくなるとめでたいって?」 「赤飯が耳の病気に効くってお隣のお宅のおば様が言ってた」 「そりゃお前、赤飯を食べて邪気を払おうって意味じゃないか」 「じゃあマスターの耳に取り付いた邪気をさっさと追い払いましょう。と言うわけで今夜は赤飯がいいわ」 うちのシルヴィアは少し呼びかけに応じないだけでこんな感じになる。 自分が作業に没頭しやすい性質も手伝って最近はしばしば、夕食が無駄に豪華気味になるなのは間違いなくシルヴィアが原因。豪華なのは良い事だが、エンゲル係数の地味な上昇はおれの財布を直撃する。 赤飯は次回の大会で優勝したらな。と手早く話題を切り替える。 「さて、バトルの成績はどうだった」 「マスターの指示が無い点を踏まえ贔屓目に見て五分ってところ。対策の早いところはバッチリ予習してるみたい」 うむむ、と息を漏らすシルヴィア。 対ツガル…ひいては対シルヴィア対策をとっている神姫が多数いる。それはつまりおれ達の優勝によって引き起こされたショックウェーブの規模を物語っている。自分達の行動に対して明確なリアクションが帰ってきた事におれ達は多少の満足を覚えていた。だが同時に、早く手を打たなければいけないと言う焦りも出てきている。大会開催まであと四日を切ってた。その期間で新戦術を確立出来るだろうか。ううむ。 「純正ツガルタイプの戦術論を書いていたんじゃないの?」 調子が悪いときは何をやっても悪く転ぶものだ、今日のところは切り上げて戦闘データから戦術を見直してみよう。と言う意思を伝えるよりも早く、シルヴィアはモバイルの画面を覗き込んでいた。 「剣だのパイルバンカーだの、こんな文章書いちゃって…。やっぱり、いつまでもデフォルト装備では通用しないと思ってるのかしらん、マスター?」 それは途中から本題を外れ、無意識のうちにタイプしていた文章だったが、指摘されてみれば確かに自分の焦りを明文化したようでもあった。 おれ達はツガルタイプが隠し持つ高い性能を証明するために、デフォルト武装に拘り戦闘を続けてきたのだ。だがしかし。 「弱気になってる気がする。こんな状況に対して覚悟は決めてるはずだった。でも、今までは回りに注目されてなかったから勝ち上がれただけで、注目されればこの程度の戦績しか残せないのがおれ達だったのか、って」 「まったく、うちのマスターが、聞いて呆れるような事を」 まったくだ。見事にどつぼにはまってしまっている。 やはり今日のところはさっさと切り上げてしまおう。と帰り支度をした矢先、その男は現れた。 「あなたですね。ツガルタイプのシルヴィア。先日の大会で優勝なさった」 続く 戻る TOPへ 次へ