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ウサギのナミダ ACT 0-3 □ その日の土曜日、俺は拾った神姫をつれて、海藤の家へ向かった。 海藤は、高校時代からの友人だ。 武装神姫を仲間内で一番に始めたのが彼だった。 俺の仲間内はみんな、海藤の影響で神姫を始めている 海藤が連れている神姫がうらやましくて、俺も神姫を持ちたいと思うようになった。 それほど、彼と彼の神姫の関係は良好だったし、その神姫は魅力的だった。 いまでも仲間内で一番神姫に詳しい。 だから、今回のことも、彼を頼ることにしたのだった。 電車に揺られること30分ほど。 いかにもベッドタウンの駅、というところで私鉄を降りる。 海藤の家までは歩き慣れた道だった。意識もせずに角を曲がり、住宅街の町並みを歩く。 俺は程なく目的の家の前に立った。インターホンのボタンを押す。 古びているが、普通の一軒家である。 海藤はここに独りで住んでいる。 しばらくして、玄関の扉が開き、少し小太りの、小柄な男が顔を出した。 「よお」 「よく来たね、ささ、入って入って」 海藤は機嫌よく、俺を招き入れる。 一軒家は独りで住むには広すぎる。 海藤が趣味を満喫するには最適だが、やはり寂しくなるものらしい。 俺が時折顔を出すと、必ず歓待してくれる。 俺は海藤に続いて扉をくぐる。 すると、 「いらっしゃいませ」 鈴の鳴るような声が、海藤の肩あたりから聞こえてくる。 俺が視線を向けると、そこには神姫がにこやかに微笑んでいた。 「こんにちは、アクア。お邪魔するよ」 このアクアの微笑みにやられて、海藤の家からの帰りに神姫ショップに寄って、何度イーアネイラ・タイプのパッケージを手に取ったか知れない。 高校時代の仲間のほとんどが、このアクアの笑顔をにやられて、海藤がうらやましくなって、神姫を始めた。 それほど、イーアネイラのアクアは魅力的だった。 海藤の招きで通されたのは、広い居間だ。 その広い壁の一面を、巨大な水槽が埋めていた。 そして中には色とりどりの魚達が優雅に泳いでいた。 海藤のもう一つの趣味がこれだ。 熱帯魚の飼育だけでは飽きたらず、いまは学業そっちのけで水族館でアルバイトをしている。 そんな海藤が人魚型の武装神姫を選んだのも、当然の成り行きだ。 俺は居間に置いてある小さなテーブルに手みやげをおく。 海藤はそのままキッチンに入り、コーヒーを入れてきた。 手みやげはミスドのドーナッツである。男二人のくせに、俺達は甘いものに目がなかった。 しばらく俺達は、何も言わずにドーナッツを頬張り、コーヒーを味わった。 二つ目のドーナッツを腹に収めたところで、海藤が切りだした。 「それで、神姫の素体交換だって?」 「ああ」 ちょうど俺も二個目を食べ終え、傍らにあったバッグに手を伸ばす。 中から大きめのハンカチにくるまれたものを取り出す。 「これは……」 海藤は、俺が拾ってきた神姫をつまみ上げる。 メンテナンスモードになっている神姫は、ぴくりとも動かない。いまはただの人形同然だ。 手足に巻いた包帯が痛々しい。 そう思わせるほどに生々しい肌の質感が、この神姫にはある。 「こんな素体は見たことがないな」 「言ったろう、訳ありだって」 「見たところ、素体の外皮は妙に生々しくて継ぎ目もないけど……どうやら中身は規格からはずれてはいないみたいだ」 「できそうか?」 「交換だけなら、そう時間もかからないよ」 海藤は慎重に頷いて、そう請け負ってくれた。 「よろしく頼む」 俺が言うと、海藤は早速、リビングの端に据えられたパソコンに、その神姫を持っていった。 すでにスタンバイされているクレイドルの上に載せる。 アクアが海藤の肩から飛び降り、自身もクレイドルのような装置に収まった。 「アクア、バックアップ開始」 「はい、マスター」 アクアは装置の中で目をつぶる。 すると、パソコンの画面にいくつかウィンドウが自動的に開いていく。 アクアがパソコンを操作し、あの神姫の記録をバックアップしているらしい。 ……バックアップ? 「そのまま素体を入れ替えるのなら、念のためバックアップして置いた方がいいよね」 海藤が当たり前のことのように言う。 だがしかし、 「ああ、それはもっともなんだが。アクアはそいつの記録を見ない方がいい……」 「ひっ」 遅かった。 装置の中で、アクアは目を見開いて愕然としている。 「ストップだ、海藤」 俺が言うよりも早く、海藤の手がパソコンを操作していた。 神姫からのメモリの読み出しがストップされる。 「アクア、大丈夫かい?」 「は、はい……ちょっと驚いただけです」 やはりアクアには刺激が強すぎたようだ。 海藤が、パソコンにバックアップされたデータを呼び出した。 ディスプレイに、昨夜俺が見た画像の一部が表示される。 「これは……なんだ、これは」 いままでに見たことのない苦い顔で、海藤が呟く。 「お察しの通りだ……言っただろ、訳ありだって」 「……」 海藤は画像が表示されていたウィンドウを消すと、パソコンのいすにもたれ掛かって座り、ため息を一つついた。 そして、俺に向き直ると、 「なあ遠野……悪いことは言わない。この神姫のオーナーになるのは、やめた方がいいと思う」 「なんだと?」 「ごめん、怒らないで聞いてくれ。君のことを思って言ってるんだ」 海藤の真剣な眼差しに、俺は怒りを引っ込めざるを得なくなる。 「君がどんな神姫のオーナーになろうと、それは自由さ。 でも、この神姫自体が危険な代物なんだ。 この妙に人間くさい素体だって、違法製造のカタマリだよ。 いまの神姫の記憶だって、へたすれば、持っているだけで犯罪だ。神姫風俗自体が違法なんだから。 この神姫のオーナーというだけで、犯罪者扱いされる可能性があるんだ。 武装神姫はホビーだ。楽しい趣味の世界だよね? そんな神姫の世界に、現実のハイリスクを伴ってまで、踏み込む必要があるかい?」 俺は、海藤の落ち着いた語りに、冷静になって考える。 海藤は話を続ける。 「君のオーダーは、記憶や性格はそのままに、ユーザー登録をクリアして、素体を交換すること、だよね。 でも、記憶を消去して、全く新しい神姫としてオーナーになることもできるんだ。 あの記憶がある限り、神姫風俗にいた神姫であることが露見するリスクはつきまとう。 そして、どんなに君が否定しても、神姫風俗とのつながりを疑われるよ。 そうまでして、このままの神姫のオーナーになる必要があるかな? そんなリスクを犯さなくても、いいんじゃないかって、僕は思うんだ」 俺はうつむいて、海藤の言葉を反芻した。 こいつは、本当に俺のことを心配して言ってくれている。 そういう奴だ。 海藤の言うリスクについても、わかっているつもりだ。 「……だけどさ」 だが。だがしかし。 「どんな神姫にも幸せになる権利が、あるんじゃないのか?」 「つらい記憶を抱えたまま新しいオーナーの神姫になることが、この神姫の幸せかい?」 「わかってる……わかってるさ。こんなのは、俺のエゴなんだってことは」 でも、譲れなかった。この気持ちだけは。 「こいつさ……目が覚めて、泣きながら俺に言うんだぜ……壊してくれって」 「……」 「ほっとけないだろ。俺がはじめて神姫にと望んだ奴が、自殺志願なんて……俺が何かできる訳じゃないけれど……でも、教えてやりたいと思った。 こいつがこいつのままでも、いいんだって……そんなに悲しい言葉言わなくたって、俺がこいつを望んでいるって…… 普通の神姫として生きられるんだって、教えてやりたいんだ」 「……」 「……だめか?」 上目遣いに見た俺に、海藤は諦めたような大きなため息を一つついた。 「まったく……君らしいよ」 「いいのか?」 「君がそこまで言うなら、いいさ。僕はもう、何も言わないよ」 「ありがとう、海藤……」 俺は安堵のため息をついて肩を落とす。 やはり持つべきものは友達だ。 「それじゃあ、さっさと終わらせますか」 海藤は元気にそういい放つと、アクアの代わりにバックアップの操作をした。 作業机に工具を並べていく。 手持ちぶさたになったアクアが、海藤の様子を眺める俺に近寄ってきた。 「あの子はきっと大丈夫ですね」 「君のマスターが、作業するからか?」 「いいえ」 確信を持ったまなざしで、アクアは俺を見上げて言った。 「遠野さんが、こんなに想ってくれるんですから」 こんな気恥ずかしいせりふを、神姫からぶつけられるとは思わなかった。 俺はあまりの照れくささに、アクアの微笑もまともにみられず、ひたすらにそっぽを向いた。 「よし、これで終わりだ」 海藤が明るい声でそう宣言した。 パソコンのキーを一つ、軽く叩く。 パソコン脇のクレイドルには、あの神姫が横たわっている。 痛々しい包帯は、もうない。 愛らしいヘッドはそのままに、新品の身体に交換されている。 いま、パソコンからクレイドルを通して、神姫にデータがダウンロードされている。 さきほどバックアップされた過去の記録はもちろん、そもそも削除されていた、武装神姫としての運動プログラムや装備の運用プログラムなども含まれる。 「最低限の格闘用データと銃撃戦用データは入れておいたよ。 装備はこれから選ぶんだろう? その装備にあったデータを後から追加すればいい」 海藤はそう説明した。 ありがたい配慮だ。さすが長い付き合いだけに、俺のことをよく分かっている。 俺はこの神姫のために、オリジナルの武装を用意するつもりだった。 何者でもない、俺だけの武装神姫のための装備を。 やがて、ディスプレイの作業表示が100%を示す。 俺は息を飲む。 その神姫は新たな姿で目覚めようとしている。 PCから、作業完了の電子音が軽やかに鳴り響いた。 ■ 軽やかな電子音とともに流れ込んできた信号が、わたしに覚醒を促す。 わたしは、のろのろと瞳を開く。 飛び込んできた光景は、今まで見たこともないものだ。 おおきな、おおきなガラスの器に、水がたくさん貯められており、そこに色とりどりの魚が踊っていた。 まるで夢のように現実感がない。 「状態チェック、オールグリーン。無事に目覚めました」 きれいな声がすぐ隣から聞こえた。 神姫用のポッドユニットだろうか。 そこから一人の神姫が出てきた。 きれいな人。 わたしのメモリに入っている情報から、イーアネイラ・タイプの神姫と分かる。 彼女は、わたしににっこりと微笑みかけると、視線で正面を見るように促した。 そこには、一人の男性がいた。 眼鏡をかけた端正な顔。 わたしを自分の神姫にしたいと言ってくれた、あの人だ。 「あの……」 わたしが自分の思いを言葉に紡ぐより早く、システムプログラムがわたしに口走らせる。 「オーナーの登録をします。名前を音声、またはPCのキーボードから入力してください」 わたしの瞳は、目の前にいる端正な顔を捕らえている。 わたしを連れてきてくれた人。 わたしに違う世界を見せてくれると言った人。 「遠野貴樹」 わたしは、その人の名を初めて知った。 その名前はわたしの深い部分に滑り込み、刻まれた。 「あなたをなんとお呼びすればよろしいですか? 呼び方を入力してください」 「マスター」 答えは決められていたようで、すぐに返事が来る。 そして次は…… 「わたしの名前を入力してください」 プログラムが口走らせる事務的な口調とは裏腹に、わたしの心はドキドキと高鳴っていた。 大きな期待、そしてもっと大きな不安。 23番でもなく、名無しでもない。お客さんが勝手につける一時の名前でもない。 ただひとつの、わたしの名前。 「ティア」 そっけないくらいの口調で、わたしの瞳に映る人は応えた。 わたしは事務的な口調で確認を取ると、すぐにそれは了承された。 意志が、起動プログラムから、わたしに戻ってくる。 「あ……」 わたしは改めて目の前の人を見る。 彼の名前は遠野貴樹。わたしの…… 「マスター……」 「ティア、でよかったか? おまえの名前」 いいもなにも。 初めて確たる名をもらったわたしは、はじめて自分が存在していることを確認した。 何者でもなく、ティアという名の神姫として。 「そんな……わたしなんかには、もったいない名前です」 思ったことを口にすると、 「『わたしなんか』って言うな」 低い声で怒られた。 わたしはマスターに怒られてばかりいるような気がする。 わたしは少しおびえて、マスターを見上げた。 マスターは何ともいえない表情で、ふい、と目を逸らす。 ……なにか、わたしはマスターの気に障るようなことをしてしまっただろうか。 わたしはおろおろとしながら、マスターを見上げるしかできなかった。 マスターは何を怒っているのだろう。 想像もつかない。 わたしはまだ、この人のことを何も知らないのだ。 でも、マスターに怒られるのは悲しくて、つらくて、情けないことのように思えた。 だから、わたしの瞳から、自然と滴が溢れてくる。 「なに泣いてるんだ」 「だ、だって……」 「……だからティアって名前にしたんだ。泣き虫だからな、おまえ」 ティア。涙の意味だと分かる。 意地悪な言葉をそっけないくらいの口調で言い放つマスター。 わたしは、どんな表情をしていいか分からない。 分からなくて、マスターのことも分からなくて、心に寄り添うこともできなくて、心細くて、また涙が溢れてきてしまう。 結局、泣きやまないまま、わたしはマスターに連れられて帰路についた。 マスターが意地悪なことを言ったのは、実は照れ隠しだったことを知るのは、ずっとあとのことだった。 □ 「すまなかったな、変なところを見せてしまって」 「いや、いいよ。君の神姫がどんな子かもよく分かったし」 海藤の家の玄関。 帰り際に俺は、海藤に軽く謝った。 正直、ティアの態度にはまいった。 これでは俺が自分の神姫を泣かせているみたいではないか。 結局、ティアはアクアにずっと慰められていたが泣きやまず、いまも俺のカバンの中で泣き続けているようだった。 覚悟はしていたが、先が思いやられる。 「それにしても……」 見送りに来た海藤は、にやにや笑いを顔に貼り付けて、 「なんだかんだ言って、やっぱり君は世話好きのおせっかいだよね」 とのたまいやがった。 「ほっとけ!」 俺はクールで理知的なキャラで通っているのだ。 自分もそう望んでいるし、多くの友人がそういう印象を抱いてくれている。 しかし、付き合いの長い友人になると、それが化けの皮と言いやがる。 熱いハートを持った義理人情の男と思われているのだ。 そういう性格が悪いことだとは思っていないが、普段から俺はスマートでいたいと思っている。 暑苦しい奴だと思われるのは心外だし、御免だった。 俺達のやりとりを見て、海藤の肩の上で、アクアが笑っている。 いつかティアも、こうして笑えるようになるだろうか。 それはきっと、これからの俺次第なのだろう。 そう思うとなんだかとてつもなく大変なことのような気がしてきて滅入る。 だが、それを成し遂げたいと、切に願っている自分がいるのだ。 不機嫌な表情の俺に、海藤はハンカチか何かの包みを俺に差し出した。 「これは……」 「こっちで処分しようかと思ったけど、まあ、何かの役に立つかも知れないし」 それは、ティアの元の素体だった。 妙に生々しい感触の、小さな人型。 持っているだけで違法かも知れないその素体は、正直、処分してもらっても、かまわなかったのだが。 「もともと君の持ち物だ。君がどうするのか決めるのがいいよ」 「……」 俺はしばらくその包みを見つめた後、そっとバッグにしまいこんだ。 「迷惑をかけたな、恩に着る」 「そう思うなら、また遊びに来てよ。今度はティアも一緒に、さ」 気のいい友人はそう言って笑ってくれた。 ◆ 遠野の背中を見送りながら、アクアが口を開いた。 「マスター……あの二人、うまくいきますよね?」 「……アクアはどう思う?」 「うまくいくと思います、きっと。だって、遠野さん……あんなにティアのこと気にかけているのですもの」 海藤は難しい表情をしながら、アクアの言葉を聞いていた。 やさしいマスターには珍しく、厳しい目で、遠ざかる友人の背中を見つめていた。 「マスターは、そう思われないのですか?」 「わからない……わからないよ」 嘆息するように言葉をはく。 「二人の仲は、きっとうまくいくと思うよ。遠野はああ見えて世話好きだし、きっと長い時間をかけて、ティアを自分の神姫にしていくんだろうね。 大変だとは思うけど、その覚悟もできていたみたいだし……」 「だったら……」 「問題はあの二人じゃないよ。もっと他のことさ。 ティアは……普通の神姫じゃないんだ。 神姫風俗にいることが知られたら、どんなことになるか……見当もつかないよ。 何かあったときには、僕たちの思いもつかないような試練に晒されるかも知れない。 ……それが心配なんだ、とても」 遠野の背中が見えなくなり、海藤はきびすを返した。 ゆっくりと門の中へ入る。 相変わらず厳しい表情を崩さない海藤に、アクアは話しかけた。 「それでも……わたしはよかったと思います」 「なぜ?」 「あんなに嬉しそうな遠野さん、初めて見ました。 いつも神姫のオーナーになりたいって言って、そのたびに寂しそうな表情をしていましたもの。 遠野さんにあんな嬉しそうな表情をさせたのは、間違いなくティアですから……」 「そうか、そうだね……今は、新しい神姫のプレイヤーが生まれたことを、素直に喜ぶべきだね」 「はい!」 いつも前向きなアクアに何度救われたことだろう。 この笑顔にあこがれて、友人たちは皆神姫を始めたが、誰よりもアクアの笑顔にメロメロなのは、マスターである自分だということを、海藤は自覚していた。 次へ> トップページに戻る
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ラジカル神姫オムニバス Gene Lessの用法要領 1.まーともかく神姫買ってきましょう武装神姫。神姫SSだしね~。 2.神姫で遊ぶなり股を開いたり閉じたりするなりバトルロンドするなり電ホビやネトコミのマンガでも見るなりしてまずはキャッウフフ分を補充しましょう。本作は各話特定の神機が主役のオムニバスなので対応する神姫で遊んでおくとなお良し! です♪ 3.本作見ましょう。 4.後は内容のありえなさに叫ぶも良し、自分の神姫もこーなっちゃうんじゃないかとガクガクブルブル震えるのも良し、逆にこの異様なノリにハマって中毒症状になるも良し。そのへんお好きにどーぞー(酷) 5.あ、そうそう言い忘れてましたけど、各話の登場人物はおまけの方に載ってますので(出オチも多いもんで)気になったら確認してみてください。ただしもっとしょーもない小ネタばっかりなので貴方の脳にムダ知識が増える事うけあいですけどね(笑) 注意! 本作を読むとあなたの神姫感が崩れるおそれがあります。かと言って当方責任とる気は毛頭無いのであきらめてください(ヲィ) 本作に使われてるネタがよくわかんなかったらヒトに聞く前にとりあえずググりましょう。そんでもって原作知ってる方は逆にコレあくまでネタとして使ってるので細かい事には眼をつむりましょう。じゃないと潰しますよ目(マテコラ) 異様に会話が多いのは仕様です。読みづらいとか思っても言いなさんな(獏)まーコントでも見てる気になれば気にならないってば。 それでも言い足りない文句があったら「おーさまのみみはねこみみ~!」的にコメント欄にでもぶちまけましょう。ガマンは体によくないですよ? てかねー、こんな用法容量なんて間に受けるなよ~?(笑) 目次へ
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白狼型MMS 神凛(カムリン) 主要武装 胸部武装・吠魂(ハウリングソウル) 腕部武装・白牙(ホワイトファング) 腿部武装・風読(ブレイズリーダー) 脚部武装・風斬(ブレイズスリット) 腰部武装・狼尾(ウルフテイル) GJZ製ハウリンカスタム機。 格闘戦を主体に開発され、本来ならどんな神姫にもインストールされるはずの火器管制ソフトを排除。空いた容量にありったけの特製格闘管制ソフトをインストールしたあげく、機能衝突を起こさないようにシステム面を調整されている。そのため格闘、及び原始的な武器に関しては現行機最高クラスのスペックをたたき出すことが可能となっている。 武装は白牙(ホワイトファング)と風斬(ブレイズスリット)、及び狼尾(ウルフテイル)に搭載されたレーザーブレイドとなっている。 胸部武装・吠魂(ハウリングソウル) 装甲及び複合センサー。 特にギミック等はないが、バランスがいい。 腕部武装・白牙(ホワイトファング) 防御用の装甲、攻撃用のナックルとしての特性を持ち、悪魔型の拳でさえも防ぎきる防御力を備えている。また攻撃時には三箇所からのレーザーブレイド展開、及びナックル着弾時に発生する衝撃波でダメージを与えることが可能。 腿部武装・風読(ブレイズリーダー) 装甲及び複合センサー。 文字通り、風の動きすら読むことが可能なほど高性能なセンサー。 脚部武装・風斬(ブレイズスリット) 高出力のレーザーブレイドを装備。蹴り技と併用することで凄まじい威力を発揮する。また跳躍力や速力も高く、うまく使いこなせばHST型アークに追いつくことすら可能となる。 踵部分に瞬間加速補助用小型ブースターを装備。 腰部武装・狼尾(ウルフテイル) 腰部装甲と一体になった複合センサー。 狼型素体と併用することで高い索敵効果を発揮する。 予備武装として二本の高出力レーザーブレイドを搭載。コンデンサーを内蔵しているため展開時間も長い。 なお神凛はオーダーメイドの一品使用であり、後の商品展開などは一歳考慮に入れられていない。 素体内部や武装の部品はコストパフォーマンスを考慮し無闇に高いものではなく、流通品の組み合わせで高出力を確保している。 近接戦においては最強に近い神凛だが、いくつか問題点が存在する。 それは火器感性を排除したことで銃火器を全く扱えなくなったことと、遠距離武装を全く装備していないことである。その為遠距離からの狙撃や砲撃に関して非常に弱く、ピーキーで扱いづらい個体となってしまった。 だが神姫は学習する機械である。神凛のオーナーとなる人物との接触により、神凛が何らかの対抗策を生み出す可能性があることを付け加えておく。 彼女がどのような人物の元へ行くのか私は知らない。だがそれがどんな道だろうと、風を切って走る狼の如くその道はきっと、心躍るものに違いない。 願わくば、彼女によき出会いがあらんことを。 株式会社GJZ所属・神凛デザイナー:チワワ後藤
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ぶそしき! これから!? 第3話 『キエン』 3-1 「「……」」 握手を交わす友大と成行に、1人のマスターとその神姫が近づく。 2人はまるでそのことに気づいていない。 神姫達も、じゃれ合って気づいていない。 「やあ」 「「ひゃっ!」」 声をかけられた2人が同時に驚き、短く悲鳴のようなものをあげる。 その際に、握手していた2人の手が離れる。 「だ、誰――あ」 友大が気づく。 「は、葉々辺さん?」 「うん、こんにちは」 友大や成行と同じくらいの背丈だが、高校生である葉々辺誠志郎(はばのべ せいしろう)の姿があった。 どことなく人の良さそうな顔に笑みを浮かべ、以前会ったときと同じ薄く青みの付いた眼鏡をかけている。 「こんにちはぁ」 少年の肩に乗っている神姫も笑顔であいさつする。 ヒイロとは同じエウクランテ型だが雰囲気はずいぶんと異なる、小鳥のような印象と服装の神姫、クラハだ。 「知り合い?」 「うん、成行さん。僕たちが初めて対戦した人たちだよ。 ちなみに僕たちより年上だから、同じくらいの背丈だけど高校生だから、葉々辺さん」 尋ねる成行に、友大が自分達より年上であることを強調しつつ紹介する。 「……ぇ?」 「あははは……」 驚きに目を丸くさせ、絶句する成行に葉々辺は乾いた笑いを浮かべる。 「まあ、それはさておいて……今のバトル見ていたよ」 「え?」 葉々辺の発言に、友大が思わず聞き返す。 脳裏に先ほどのバトルが再生され、その時にやらかしてしまったことも思い出される。 「面白かったよぉ♪」 「あう……」 クラハの素直な感想に、何故か打ちのめされたような気分になる。 「まあ、プラモから分捕ってのアレは珍しくないことだから」 「ああいうことから学んでいくんだよねー」 「ぅぅっ」 何故か、相手のフォローが逆に心に突き刺さるような気持ちになる。 「お! また、会ったなぁ」 「おっす! こんにちはなのだ!」 葉々辺達に気づいたヒイロとチャオが、じゃれ合うのを中断してあいさつに来る。 「こんにちはぁ。また会ったね」 あいさつを交わし、クラハが自身のマスターを見る。 「ああ、行っておいで」 察した葉々辺が頷く。 それを見たクラハは自身のマスターの肩から軽やかに降りて、神姫達の輪に入る。 「バトル見たよぉ。凄い飛ばしっぷりだったねー」 「おっ! 見てたのか? いやー、スカッとしたぜ!」 「ぬぬぬ……、次はチャオがジェットなアッパーでやり返してやるのだ!」 「……」 葉々辺が微笑ましそうに神姫達の様子を眺める。 (そう言えば葉々辺さんって、僕たちより神姫のことに詳しいよね? 見た目はそうは見えないけど、高校生だし) そんな葉々辺の横顔を見ながら、ふと、友大はそんなことを考える。 「あの……」 思い切って尋ねる。 「ん?」 「武装って、どうにか手に入れられないですか? その、お金あまりなくて、ヒイロに大した武装をあげられなくて……」 今回のチャオとのバトルでは勝った。 しかしやはり武装のことが――特に防具がないことがゲーム的な有利不利の意味でも、見た目的な意味でも――少年の気にかかる。 「ん~……。お店で売っているのを買うのが一番無難なんだけど、お金ないんだよね?」 「……はい。パーツを買うには足りなくて、買ってあげられないんです」 自分の神姫を少し見やり、友大は少し情けなさそうに手持ちが少ないことを伝える。 「足りなければ、頭を使って工夫すると良いよ。自分で作るとかね。成行……ちゃんで良いかな? みたいに」 「「え?」」 葉々辺の発言に2人の声が重なる。 1人は今の話に自分の名前が出たところに、もう1人はチャオのクロースアーマーを思い出して、思わず声を出してしまう。 「え、ええ、でもあれ……」 成行は自分の神姫の言葉を思い出し、顔をうつむかせて恥ずかしそうに言葉をにごす。 「見たところ、あのアーマーはフェルト製みたいだから、打撃とかにはある程度有効なんじゃないかな。 単に防具として使用するだけなら、ああいう形と材質でも効果あるからデータチップもいらないし。手近なものを利用するって良いことだと思うよ」 葉々辺があのクロースアーマーを評価する。 その言葉には偽りはない。 「後はできるだけ動きの妨げにならないように、自分の神姫と一緒に調節していくと、もっと良いんじゃないかな」 「は、はい! ありがとうございます」 (――あ。見た目には触れていない) アドバイスにお礼を言う成行を見ながら、友大はそんなことを思う。 「そう言えば佐伯君。君達はどんな武装が一番ほしいのかな?」 話に一区切りつけて、葉々辺が友大に向かって尋ねる。 「え? どんな武装が一番、ですか?」 「っ!」 「う~ん……」 思わず考え込むマスターとは対照的に、その神姫は即座に叫ぶ。 「剣! オレかっこいい剣がほしい!!」 いつのまにか話を聞いていたヒイロが、手を挙げかつジャンプをしながら全身で主張する。 その様はある種の必死さと、幼い子どもがオモチャをほしがるような微笑ましさを感じさせる。 「君の神姫はそう言ってるけど、君自身の意見は?」 「……」 先ほどのバトル、そして今までのことを振り返って友大は考える。 「隙あり! 次の鬼はヒイロなのだ!」 「あ! てめ――」 自身の主張をしていたヒイロが後ろに忍び寄っていたチャオに気づかず、鬼にされる。 いつの間にか卓上で鬼ごっこをしていたらしい。 チャオたちを追ってヒイロが猛然と追いかける。 「……僕としては、アーマーがほしいです。 今のろくにアーマーがない状態だとダメージも大きいし。その、ヒイロになにか、かっこいいのを着せてあげたいし……」 ヒイロ達を眺め、友大が考えた末に自身の意見を出す。 「胴体部分のアーマーってことかな。そして、格好良いと」 「あ、でも。僕は裁縫もパーツを作ったりするような技術はとても……」 「お、お裁縫なら一緒に勉強しよ! クロースアーマー、次はちゃんとしたの作りたいから」 裁縫という言葉に成行が反応する。 「クロースアーマー。布……あっ」 友大達でもできそうなアーマーについて考えをめぐらしていた葉々辺が思いつく。 「ちょうど良い方法があるかも。スパンコールって知ってるかな?」 「え?」 「はい。服やかばんとかに付けるキラキラしたもののこと、ですか?」 怪訝そうにする友大とは対照的に、成行はすぐにその存在に思い当たる。 「そうそれ。服とかを飾るための材料の一種で、光を反射させるために使うものだよ。穴の空いた金属やプラスチックの小片のような形をしている」 葉々辺が友大にも分かるように説明する。 「それを使ってスケイルアーマーを作ったらどうかな? スケイルアーマーは知っているよね?」 「「うん」」 プレートアーマーほどではないが、ゲームや漫画などで見かけることもできるため、2人はその鎧の存在を思い浮かべることができる。 「スケイルアーマーは、丈夫な布や革の下地に金属や革などの小片を紐やリベットで鱗状に貼り付ける鎧なんだ。 その要領で、布かクロースアーマーにスパンコールを付けていくと作れるんじゃないかな?」 「あ、そうか! ……あ、でもスパンコールって、どうやって付けたら……」 友大は喜び、そしてすぐに出てきた疑問に消沈する。 「スパンコールは縫い付ける以外にも、手芸・布用接着剤で貼り付けていくと良いよ。 頻繁に洗濯しても取れない強力なやつがあるから、バトルでも大丈夫じゃないかな」 「接着剤でいいんだ」 友大の疑問に葉々辺がすぐに答える。 自分でも作れそうなことに、友大の表情が明るくなる。 「あ、うちにその接着剤があるから、もし良かったら、その、一緒に作らない、かな?」 「え、良いの? うん、一緒に作ろう」 「スパンコールは手芸用品店や均一でも売ってるよ。 特に均一では色々と安く手に入るかもしれないから、他に何か武装になるような物を手に入れられるかもしれないね」 盛り上がる友大と成行を笑顔で見ながら、葉々辺がさらにアドバイスをする。 そんな彼らに声がかけられる 「おーい。ハバネローー!」 ジーンズにハイネックのパーカー付きのジャケットといった服装の少年が、友大達の方に向かって手をふって呼びかける。 背は友大達よりずっと高く、年上だ。 少し伸びた髪を後ろで結んでいる。 顔立ちは整っている方だが、どこかやんちゃな雰囲気で2枚目になり切れない印象を受ける。 「ごめん。待ち合わせてしているんだった」 呼びかける人物の存在に気づき、葉々辺がクラハを呼び戻す。 「あ、マスタァが呼んでる。ごめん、また遊ぼうねー」 寸での所でひらりと身をかわしつつ、クラハはバイバイと手をふる。 「にゃ、またなのだ!」 「おう! またな!」 寸での所でかわされて卓上にダイブしたままのチャオと、ヒイロもまた手をふる。 「それじゃまた」 肩にクラハを乗せて、葉々辺が友大達のもとから去る。 「あ、はい。それじゃまた」 「ありがと。葉々辺さん」 先ほど声をかけてきた少年に向かって手をふる葉々辺を見ながら、友大はふと思う。 (ハバネロって、葉々辺さんのこと? ……あだ名?) ■ ■ ■ 「ねー、マスタァ」 「うん?」 待ち合わせの相手の1人である少年のもとに向かう葉々辺に、クラハがささやく。 「ヒイロがね、【剣】が欲しいって言ってたよぉ」 「はは……」 葉々辺の脳裏に、武装で何が一番欲しいかという話題に真っ先に【剣】と答えたヒイロのことが浮かぶ。思わず苦笑がもれでる。 「どんな剣が欲しいって、言ってたのかな?」 「熱く燃え盛る、炎の魔剣みたいなのが、欲しいんだってー」 気軽に世間話をするかのように、クラハはヒイロが望む剣のことを話す。 「まるであの子自身だねー。うん、きっとすごく良く似合うよぉ♪」 「……ああ。ぴったりだ」 以前の対戦でレーヴァテインを装備していたこともあり、ヒイロが炎の剣を持つ姿を想像するのは容易い。 その姿は、まるで違和感なく自然に思い浮かぶ。 「――っ」 閃きが迸る。 少しだけ足を止めて、刹那に思索する。 葉々辺少年の顔に、何か面白いものを見つけた子どものような、何かををたくらむようないたずらな笑みが浮かぶ。 「~♪」 ふとクラハの方を見やる。 いつもと変わらないかのような屈託のない笑みを浮かべている。 その頭を優しくなでてあげてから、再び歩き出す。 前へ / 次へ トップページ
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6th RONDO 『愛しています、私のバカマスター ~1/3』 携帯電話には携帯ショップがあるように、武装神姫にも神姫専門ショップが存在する。 神姫センターと呼ばれる店舗だ。 そこでは神姫やパーツの購入、検査、修理を行うことができ、またバトル用の筐体を初めとして様々な設備 (神姫 “で” 遊ぶためだけでなく、神姫 “が” 遊ぶためのものまである) が揃っている――らしい。 竹さん曰く、とにかく神姫のことで困ったらとりあえずここに立ち寄ればいいのだとか。 しかし、俺が神姫を購入する店としてボロアパートから比較的近いヨドマルカメラを選んだように、近所に都合よく神姫センターがある、なんてことはなかった。 (ヨドマルを選んだ理由は他に、姫乃と同じ場所で買いたかったとか、ポイントが貯まるとかそんなものだ) いくら神姫がそこそこの人気を誇るとはいえ、携帯ショップのようにどの町にも神姫センターがあるのかといえば当然そんなことはなく、主に新幹線が停車する主要な駅の側くらいにしかない。 だから、ボロアパートから徒歩十分の工大前駅、そこから電車で二駅のところに神姫センターがあるのはまだ良いほうだと言える。 ジャスコのような大型店舗がどーんと聳える代わりにゲームセンターもないような田舎だと、神姫バトルは専ら室内の手作りスペースで行われ、強者になると例え火の中水の中草の中森の中土の中雲の中姫乃のスカートの中 「ちょっ!? やめてよ!」 だろうとお構いなし、熱く燃えたぎるハートはお巡りさんに声をかけられるまで冷めることはないという。 よいこのみんな、こんなオトナになっちゃダメだゾ☆ さて。 勿論俺達が (主に姫乃が) 野外プレイなどという破廉恥な真似をするはずもなく、今は竹さん、または鉄ちゃんこと竹櫛鉄子さんの案内のもと、神姫センターへ向かっている最中だ。 用事はもちろん、神姫バトル。 俺の眉間に穴を空けたニーキにギャフンと言わせるための、復讐の輪舞曲。 俺に代わって悪魔に鉄槌を下す戦乙女は―― 「ふふっ、神姫センターってどんなところなんでしょうね! 楽しみですね、マスター!」 胸ポケットから顔を覗かせたエルは今朝からずっとこの調子で、大好きなアニメの劇場版を観に行く子供のようにはしゃぎっぱなしだ。 もうちょっと、ほんの少しでいいから緊張感というものを持ってほしい。 それに、せいぜい 15cm 程度とはいえその体の中にギッシリと機械部品を詰め込んだ神姫がポケットの中で動くと服が引っ張られて首が痛いのに、ご機嫌斜め上のエルはそんなことはお構いなし。 首も痛いが、周りの乗客の目も痛い。 「あーわかったわかった。 もうすぐ電車降りるからせめてそれまで静かにしててくれ (ひそひそ)」 「了解です。 ところで我がマスター (ひそひそ)」 「どうした我が戦乙女よ (ひそひそ)」 「私、マスターはてっきり “そういうこと” に無頓着な人だと思ってました (ひそひそ)」 「なんだよ、そういうことって (ひそひそ)」 「ここからだとよく見えるんですが、ちゃんと鼻毛の処理をしてるんですね (ひそひそ)」 「余計なお世話だ!」 「背比うっさい」 「はい……怒られたじゃねぇか (ひそひそ)」 「それはそうですよ。 電車の中ではお静かに (ひそひそ)」 「てめっ! こ、こほん…………後で覚えてろよ、全力でくすぐり倒してやる (ひそひそ)」 ヨドマルカメラの売り子として起動されたエルはほとんど店の外に出たことがなかったらしく、神姫春闘事件後の花見やボロアパートへ帰ってからはずっと、元から丸い目をさらに丸くして輝かせていた。 見るものすべてが珍しい。 目に映るものすべてが面白い。 その日の夜は唯一の所持品だったクレイドルも使わず 「今日はマスターと一緒に寝ます。 いいですよね」 と俺の枕元に横になり、タオルハンカチをかけて眠っていた。 そんなんで眠れるのか心配だったのだが、その一日はエルにとっては世界が変わるような一日だったからなのか、ベッドから落ちることもなく、ぐっすりとバッテリーが枯渇するまで眠っていた。 (一日動きまわった上にデータ整理にかなりの電力を食ったらしく、素のアルトレーネ型の抑揚のない声が耳元で 『バッテリー容量が不足しています。 すぐに本体をクレイドルに寝かせて充電して下さい』 と言った時は心臓が止まるかと思った) そういったわけでエルは今日が神姫センターデビューデイとなるのだが、このテンションの高さの理由はそれだけではない。 「ところでマスター、どうですか? 似合ってますか? (ひそひそ)」 「なーにが 『ところで』 だ。 いくら似合ってたって、そう何度も何度も同じこと聞かれちゃ 『似合ってない』 って答えたくなるぞ (ひそひそ)」 「こういう時は素直に 『似合ってる』 って言えばいいんですよ。 何度でも 『似合ってる』 って褒めちぎればいいんですよ (ひそひそ)」 神姫は基本的にマスターの好みで服を用意しなければ素体のまま過ごすことになり、“素っ裸”に見えないように素体にペイントが施されていたり細かいアクセサリが付属していたりする。 アルトレーネ型の場合は豊かな胸から臍より上の辺りまでを濃い青でペイントされ、首元と腕、脚はそれぞれ純白のカラー、ロンググローブ、サイハイソックスだ。 おまけにショーツはガーターベルト付きのようなデザインで、以上、その他の箇所は素肌を露出している。 ここまで挑戦的なデザインに加えて癖のある長い金髪は狙いすぎな感があるにもかかわらず安っぽい扇情さは無く、気品すら感じられるデザインには脱帽するばかりだ。 しかし今日のエルは一味違う。 いくらペイントが施されているとはいえツンツルテンな素体の上に、鉛色の革製ロングコートと、同色のブーツを纏っているのだ。 しかも驚くことなかれ、このコート、ただのコートではなくエルのためだけに作られた世界で一着の特注品なのだ。 ロングコートと言えば野暮ったく聞こえるが、素体の各所にあるくびれにフィットするよう作られているので、出る所は出て締まるところは締まり、よりアルトレーネ型の体のラインを強調している。 右腕の部分は何故か肩から先が無く、また左腕部の袖にはまったく意味を成さないベルトがぐるぐると五本ほど巻かれており、この左右非対称デザインに製作者の趣味が溢れ出ている。 足首まで伸びるスカート部は臍が十分見えるほど大きく前が開かれており、これがもし臍の下から開いているとエルがただの痴女になってしまうことも完璧に考慮されている。 このスカート部にもベルトがぐるりと数本巻かれており、さらに腰に二本、胸を上下に挟んで強調するように一本ずつと、とにかくベルトが多い。 エルがアルトレーネ型だからこそ着こなしているものの、これが他の神姫、例えばあの武士と騎士だったら……似合う似合わない以前に、顔が濃い…… 手に取ってまじまじと見るとその出来の良さに驚かされるばかりの逸品で、これが手作りと聞いたときはさすがに製作者の言葉を疑ってしまったのだが、睡眠時間を削りに削ったその製作者、一ノ傘姫乃の目の下の大きな “くま” はすべてを物語っていた。 (裁縫のことはサッパリ分からないのだが、姫乃の握力では革に針を通せないことくらいは想像がつく。 かなりパワフルなミシンとそれを扱う腕が必要なはずだが……) コートと同色のブーツは女性が好んで履きそうなものとミリタリーオタクが好んで履きそうなものの間を取ったようなデザインをしており、お洒落にもバトルにも使用できる優れものだ。 さすがにブーツまで手作りとはいかないものの、 「鉛色のコートに白の素足って、なんだか卑猥な感じがするの」 と姫乃がニーキのお下がりをプレゼントしてくれた。 これらを受け取って一式装備したエルはしばらくの間、調子の外れた鼻歌を歌いながら鏡の前でポーズをとるのに夢中になっていた。 ヨドマからクレイドルだけを持って俺のところへ来たため新品のアルトレーネ型が持つはずの装備すら持っていないエルに何か買ってやらないと、と考えていたのに、肝心の財布には生活費が残るのみで、単なるおしゃべりフィギュアと化していたエルを立派な武装神姫にしてくれたのが自分の彼女だという事実は、 「マスター! とってもいい彼女さんを持ちましたね!」 と満開の笑顔で言ってくれるエルの言葉と一緒に俺の自尊心をグリグリと抉った。 コートが完成したのは今朝のことで、朝九時頃にパジャマ姿で俺の部屋を訪れてエルに試着させて微調整を終えた姫乃はそのまま俺のベッドに倒れこんでしまった。 そのまま可愛らしい寝息をたて始め、服といえば第三のヂェリーTシャツだったエルがどんなにはしゃいでも、姫乃の寝顔鑑賞を邪魔するように竹さんが俺達を迎えに来ても、姫乃は午後二時まで身動きすらしなかった。 そして遅めの昼食を三人で済ませて今に至る、というわけである。 「傘姫大丈夫なん? まだ目の下がパンダっとるし、フラフラしよるけど、別に神姫センター行くのって今日やなくてもいいんやろ?」 「さっき十分寝たから大丈夫よ。 エルはせっかく今日を楽しみにしてたんだから連れて行ってあげないとね。 それに今日を楽しみに待ってたのはエルだけじゃないのよ。 ね、ニーキ?」 「……」 姫乃の今日も変わらぬカッターシャツの胸ポケットで大人しくしているニーキは何も言わず、車窓の外を眺めていた。 このニーキも、今日は素体のままではなく服を着ている。 これがまた姫乃オリジナルらしいのだが、その姿を見たときはエルのコートと並べて姫乃の趣味を少しだけ理解できたような気になった。 燕尾服である。 オーケストラの指揮者が着るような、読んで字の如く裾が燕の尾のような形をしたアレだ。 エルのコートとは違い大幅なアレンジは施されておらず (細かいこだわりはあるのだろうが、そもそも俺は燕尾服に詳しいわけではない)、取り外し可能な空色のツインテールがなくなってショートカットとなった悪魔型は男装の麗人型へと進化を遂げていた。 ニーキの冷静で淡々とした雰囲気と相まって、その端麗な容姿は華やかさを除けば宝塚のトップスターのようだと絶賛しても過言ではない。 ……俺が神姫を買うことに随分と抵抗してくれた割に、姫乃は神姫を男装させて眼の保養をしていたってわけだ、へぇそうなんだ、などと嫌味を言うつもりはないけれども。 男にだって嫉妬というものがあるのだと、彼女に知って欲しい背比弧域であった。 「ヒメに面と向かって言い難いのならば私が伝えておこう」 「やめろ。 そして俺の心を読むな (ひそひそ)」 「ほれ、二人とも電車降りるよ。 お~い傘姫生きとる? 寝たら死ぬぞ~」 姫乃のことを傘姫と呼ぶ女性、竹さんは姫乃の高校時代からの親友らしく、この少々独特な方言 (彼女曰く、北九州ベース博多アンド鹿児島アレンジなのだそうだ) はともかくとして快活な性格が外見にも表れていて、大学の益荒男共の評判はすこぶる良い。 いや性格が云々以前に、姫乃が “可愛さと美しさを足して2を掛けた” ような容姿ならば竹さんは “可愛さと快活さを足して1.5を掛けた” ようなものだ。 残り0.5は、身長こそ姫乃と大差無く俺の頭一つ分低いくらいなのだが、姫乃が持ち得ないシルエットのメリハリだ。 寧ろ益荒男共にとってはこの0.5が何よりも重要なのかもしれない。 短くサッパリとした髪に全身を春のシマムラコーディネートで固めていても何ら違和感がないのだから、その戦闘力は姫乃に一歩も引けをとら…… 「ん、どうしたの? 目のくま、そんなに変かな?」 ……いや、やはり姫乃のほうが圧倒的に可愛い。 アルティメットカワイイ。 ヒメノ型神姫とか発売されないだろうか。 いや、ここは竹さん風にカサヒメ型といったほうがそれらしいか。 「ほれ、あの建物。 まるまる一棟が神姫センターなんよ」 俺がカサヒメ型に自分のことを何と呼ばせてどんな武装をさせるか妄想を膨らませているうちに、何時の間にやら俺達一行は神姫センターの近くまで来ていた。 ――とりあえず、カサヒメ型の姉妹機はセクラベ型で保留としておこう。 神姫センター一階はさすが専門店というだけあって、ヨドマルとは比べ物にならない商品の充実っぷりだ。 客の相手をする神姫もヨドマルよりはるかに多く、ほぼ全種類の神姫が小さな体を元気一杯動かしているのを見ているだけで時間が過ぎてしまいそうだ。 「ほらマスター見てください! アルトレーネ型がいますよ! うわぁ隣にアルトアイネス型もいます! ちょっとお話ししてきていいですか? いいですよね! 行ってきます!」 勝手にポケットから棚に飛び降りたエルは完全武装のアルトレーネとアルトアイネスのほうへ走っていった。 そういえばエルは “動いているアルトレーネ” を見るのは鏡に映る自分を除いて初めてになるのだろうか。 今まで店員として働いていたエルが今日は客なのだからはしゃぐのも多めに見てやるが、あまりウロウロされると姫乃クオリティが目立って目立ってしようがない。 「あのアルトレーネのコスプレかっけー。 ここコスプレの服とかも売ってんのか」 「下の中古売り場にあるんじゃね? でもクソ高そー」 「うわまた懐かしいものを。 なんだっけあのコート。 ほら、三〇年くらい前のFFの」 「クラウドでしたっけ? 流行りましたねーあれ。 でも似てますけどコートは着てなかったような」 まあ、褒められて悪い気はしないけれど。 これでは落ち着いて店内を見て回ることもできない。 それに今日は姫乃と竹さんもいるのだからあまり出過ぎた行動は――と二人の方を見ると、何故か竹さんの前に人集りができ、エル以上に衆人の目を集めていた。 「あー今日は神姫連れてきとらんからバトルはまた今度、また今度、だからまた今度っつっとんのやから並ばんでよ! なーらーぶーな、前へならえすんな! 予約なんか受け付けとらんっての! どさくさにアドレス渡されても困るってのアポ取ろうとすんな!」 竹さんの前に老若男女問わず並んだ人達は武装した神姫を連れていて、神姫達は皆武装の確認をしたり素振りをしたりと落ち着き無く、マスター共々鼻息を荒くしていた。 ほら散った散った、と大人気な竹さんが人々を追い払い、やれやれと大きなため息をついた。 竹さん大人気の理由を姫乃が教えてくれた。 「鉄ちゃんってね、実はすっごく強い神姫マスターなのよ。 以前私をここに連れてきてもらったときもこんな感じだったわよね」 「いっつもそう。 これじゃおちおちメンテもできんもん。 そらまあ、私のコタマはそこそこ強いしバトルしたくなるのも分からんでもないけど、そんな何人も相手にできるかっての。 コタマのバッテリーは普通の神姫と変わらんっての」 「へぇ、竹さんってそんなに強いのか」 「うん。 たぶん今この神姫センターにいる誰よりも強いわよ」 「ここって……結構な人数だぞ?」 うんうん、と頷いた姫乃は自慢できる友人がいることが嬉しそうだ。 「あー傘姫、恥ずいからあんまし……」 「私も他の人に聞いた話なんだけどね、ここで大会が開催された時のことらしいんだけど」 「その大会の優勝者が竹さんってわけか! すげぇ!」 「ううん、鉄ちゃんは観戦してただけなんだって。 それでね、その時優勝した男の人が表彰台の上から鉄ちゃんを見つけて、一目惚れしちゃったらしいのよ。 その人が、たぶん優勝して少しだけ気が大きくなってたんでしょうね、その場で鉄ちゃんに告白したんだって。 そうよね?」 「……まぁね。 告白っつーか、私のこといきなり指さして 『今! あなたに惚れました! エンジェルktkr!』 やもん。 恥かいたわあ、あん時はほんと」 「でも竹さんに彼氏がいるって聞いたことないし、ってことはそいつのこと振ったのか」 「背比、今しれっと傷つくこと言ったね……振ったっつーか、その場のノリで 『じゃあ神姫バトルで私に勝ったら付き合ったげる』 って言ってしまったんよ。 うん、ノリで」 ノリノリで。 と竹さんは額を抑えて自分に呆れている。 それはそうだ。 大会優勝者、言うまでもなく最強の神姫に勝負を挑むなんていくらノリといっても愚行にも程が……ん? 「でも竹さん、彼氏はいないって……あれ、どういうことだ?」 「その場におった全員がチャンピオンが勝つって疑いもせんで、チャンピオンに挑んだ私は負けて彼氏ゲットする腹積もりと思われて、そのチャンピオンの神姫にまで 『ま、アタシのマスターはそこそこイイ男だし? アンタが考えてることも分かるよ。 それなりに手加減してやるから、適当に頑張って適当に負けて、彼氏ゲットしたら?』 って鼻で笑われて――」 眉間に皺を寄せてその神姫の嘲りを腸を煮えくり返しながら思い出しているらしい竹さんは口角を釣り上げ、凄絶な笑みを作った。 「――そんな状況で相手を完膚無きまでたたきのめすのって、ゾクゾクしたわぁ」 「ドSだ! ここにドSがいる!」 「相手の神姫、花型ジルダリアだったんだけど、手加減どころか指一本触れられずに負けてそれ以来トラウマになっちゃったんだって。 ちょっと可哀想」 「そうなん? それは知らんかった」 「未だにハーモニーグレイスを見ると足が竦んで動けなくなっちゃうんだって」 「 【 あらららら それはひどいな 超wざwまwあw 】 」 「ドS俳句だ! 姫乃気をつけろ、竹さんの近くにいたらそのうちヤられるぞ!」 「ふひひひひ! 悪いけど傘姫の体は私がもらっとくよ!」 「このっ、俺の姫乃を食うつもりか!」 「何の話よ!? やめてよ、もう!」 「ただいま戻りましたーって、なんだか楽しそうですね。 私も混ぜてください!」 「…………はぁ」 姫乃の胸ポケットの中でニーキが漏らした深いため息は誰の耳にも入らなかった。 神姫センターは二階から上が武装神姫専用のゲームセンターになっていて、神姫を連れたマスター達が百円玉を何枚も持って遊んでいる。 その中でもやはり二階のバトル用筐体はプレイヤーとギャラリーが多く、どの筐体でも神姫達がマスターやギャラリーの応援を受けて火花を散らしていた。 ビリヤード台に四角形のガラスケースを置いたような外観をしていて、大きさは四方が2m弱から1mくらいと大小様々なものがあり、高さも神姫が飛びまわるのに十分なものだ。 ガラスケースの中は何もなかったり障害物があったり、廃墟、砂漠、滝、サーキット、礼拝堂、無駄にピカピカ光るステージなど、神姫達は例え火の中水の中草の中森の中土の中雲の中姫乃のスカートの中 「しつこい!」 どのような状況であっても冷静に地形を生かす戦い方が求められる。 「お、そろそろ障害物無しの一番シンプルなステージが空くけど、なんか他にバトりたいステージある?」 「エル、どうだ?」 「どんなステージでも問題ありません。 どーんと来いです」 「ニーキは戦ってみたいステージある?」 「いや、私もどこでもいい」 「よし。 じゃ順番取ってくるから待っとって。 筐体使用料はまぁ、今回は私が奢ったろ」 今まさにその筐体ではバトルが佳境を迎えていた。 ありったけのミサイルを全方位に撒き散らす軍隊風の眼帯神姫は、夏の蚊のように襲い来るミサイルを涼しい顔で回避しつつ接近してくる忍者神姫に翻弄されている。 眼帯神姫がまだ起動して日が浅くバトルに不慣れなのは、筐体のガラスに張り付いて必死に応援しているマスターを見れば分かる。 彼女のマスターはさっきから 「撃て撃て撃て! 数打てば中るんだ!」 とだけ繰り返して眼帯神姫を混乱させるばかりで、もう一方の忍者のマスターは椅子にもたれ掛かり余裕綽々といったところだ。 次は俺達の番だ、あんな無様な真似はできない。 そう思うと掌がじっとりと湿ってきた。 相手は姫乃とその神姫なのだから気負う必要なんてまったく無いのに。 勝利への焦燥と敗北への焦慮は刻一刻と強くなっている。 「いよいよ私達の初バトルですね、マスター。 安心して下さい、絶対に勝ってみせますから!」 エルが俺を励ますように力強く宣言した。 その顔には一片の気後れもない。 俺はほんとうに良い神姫に巡り合えたと思う。 普通に神姫を買って、普通に箱を開けて、普通に起動して。 そんな出会い方ではきっと俺は満足できなかった。 このバトルを、これまでエルを育ててくれたレミリアへの感謝と代えよう。 「頼むぜエル。 悪魔に鍛えられたお前の力で、あの偏屈神姫をギャフンと言わせてくれ!」 「了解ですマスター! 戦乙女の名にかけて必ずや、マスターに勝利の美酒を御賞味頂きます! ――ところで、その、私の武器なんですけど、ばっちり用意してくれましたか?」 コートの左袖のベルトをいじりながらそう言って、申し訳なさそうにこちらを見上げた。 ヨドマルで働いていたエルは普通アルトレーネ型に付属するはずの剣などを持っておらず (だからこそ俺のような貧乏人が最新型を買えたのだが)、俺が武装を用意しなければならない。 防具はエルを買った時に姫乃に 「私が用意するから大丈夫。 だから絶対に他のものを買わないでね」 と念を押されて今朝になってコートとブーツをもらい、武器はというと―― 「ばっちり用意しておいたぜ。 戦乙女に相応しいやつを見繕ってきた」 「それなら早く見せて下さいよぉ~。 マスターはあんまりお金が無いから、もう私、言い出しにくくて。 素手で頑張れ! なんて言われたらどうしようかと思ってました」 「はっはっは、すまんすまん。 でもほら、自分の神姫を驚かせたいマスター心を分かってくれ。 ええと……」 鞄に入れていた “それ” を、目を輝かせて 「早く早く!」 とせがむエルに渡してやった。 「ほれ、コイツで頑張ってこい!」 「はい! マス…………た…………………………………………ん?」 筐体では丁度バトルが終わったようで、忍者が彼女のマスターに向かって親指を立てるのを見届けた竹さんが俺達を迎に来た。 「場所空いたけど、傘姫、背比、準備OK?」 「私達はオーケーよ」 「こっちもオーケーだ。 ニーキはもういいのか? まだ遺書の用意ができてないんじゃないのか?」 「問題無い。 エルを倒した後で君の眉間を蜂の巣にしてやるから、今の内に神に祈っておくといい」 「え? え? マ、マスター? こ、これは冗談ですよね?」 「よっし! それじゃ、二人とも両側に座って、そこの丸いとこに神姫を乗せれ」 「姫乃、こんな上等なコートを作ってもらっといて悪いけど、手加減はしてやれないぜ!」 「私だって全力でいくからね、弧域くん!」 「いや、ちょ……………………ええええええええ?」 ――――そして話はプロローグに戻る。 NEXT RONDO 『愛しています、私のバカマスター ~2/3』 15cm程度の死闘トップへ
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3ページ目『フィギュアじゃない』 「ごめんなさい。私はちゃんと玄関からお邪魔しなきゃ、って言ったんですが、この疫病猫が」 「仲間を売って自分だけ助かろうとするとはオマエ、それでもキャッツアイの一員かにゃ。やれやれ、3rd素体の神姫は、猫を敬うこともできないシケた連中ばっかりにゃ」 「貴様がキャツアイを脱退すればいいだけのことだ。難しいことはない」 「にゃんという暴言! 聞きましたかヤンデレお嬢さん。最近さーほむほむがワガハイに冷たいんにゃよー」 「ヤンデレって私のこと? ねえ私のことなの? って、そんなことより――」 時折、弧域と鉄子の話し声が聞こえてくる孤独な部屋は、三人の闖入者の登場により急に騒々しくなった。 引っ越してきて三年目になるこの部屋は未だ、弧域ですら侵入を許されたことのない姫乃の聖域である。人当たり良く素直で通っている彼女(例外あり)でも、部屋の至る所に隠してある有害図書や器具などの秘蔵物の発覚を恐れたりと、他人に踏み込ませない領域というものは人並みにあるのだ。 しかし姫乃は闖入者の姿を見て興奮するあまり、秘蔵物のことなどすっかり忘れ、闖入者達を抵抗なく迎え入れてしまった。自分は机に着いて、三人を机の上に上げてじっくり観察しようと、目を皿にした。 「あなた達って武装神姫、よね? どうして動いてるの? もしかして昔作ったフルラドスの魔法陣で召喚された使者じゃないの? あれは自分でも傑作だって思ってたくらいだもの、他に考えられないわ! そうなんでしょ!」 窓を閉め、弧域とおそろいの電気ストーブのスイッチを入れても、一度冷やされた部屋はそう簡単に暖まるものではない。しかし姫乃は、自分の手がかじかみ動かないことすら、もう眼中に無かった。 恐怖心が綺麗サッパリ霧散した後も、心臓はまだバクバクと鳴りっぱなしで、姫乃は無意識に胸を押さえていた。机の上に立ち、人間のように動き、言葉を自在に話す人形に心をときめかせずにはいられなかった。 主に中学生時代に夢見て、今目の前にいる【異界からの使者】。数年が経過した今であっても、それは姫乃の好奇心をこれ以上無いくらいくすぐった。 「ワガハイ達神姫は立派な科学の結晶にゃ。魔法陣にゃんて痛々しいモノにお呼ばれされた覚えはにゃい」 「うんうん! そうよね、簡単に秘密をしゃべるわけにはいかないものね。大丈夫よ、私はその辺りはちゃんと心得てるつもりだもん」 猫型の武装神姫、マオチャオにキッパリと否定されても、姫乃は肩を落とすどころか、むしろ謎が深まったことを喜びさえしてしまう。まったく未知の3体に触れようとする手を抑えるのにも、早くも限界が訪れそうだった。興奮しすぎてみっともなく鼻息を荒くしていることにさえ気付けないでいる。 ただし。語尾を「にゃ」に変えて話すマオチャオはカタログで見られるようなごく普通の武装神姫だが、姫乃は頭の隅で冷静に (実物は随分とバカっぽいのねえ) という第一印象を受けてもいた。 「レーダーを扱えるのが貴様だけ、というのが問題だな。おかげで俺は貴様に振り回されざるを得ない。しかし使い方を覚えるのも面倒だな……」 ほむほむと呼ばれた神姫も同じくマオチャオだが、言葉遣いだけでなく見た目も「にゃ」のマオチャオとは異なっていた。額に白く無骨なシールドを被り、大きな目の上半分までを隠すように覆うことで目付きが悪く見えてしまっている。胴体も、戦車の装甲のような装備で覆われ、さらに背面には巨大なハンマーがたすき掛けされており、このマオチャオの戦闘への意気込みが見て取れる。しかし脚部だけは何故か、スポーツカーを思わせる真紅の端麗な装備が使用されていて、無骨な上半身に流麗な下半身と、全体的なバランスは大きく損なわれている。 「あの空間に少人数で飛び込むのだけは避けたいですし、カグラの暴走はレーダーとデコイを得る代償と考えるしかなさそうです」 もう一体、部屋に入って最初に姫乃に侘びを入れた神姫はマオチャオではなかった。弧域が飾っているそれと同じ金髪蒼眼の戦乙女型、アルトレーネである。物々しくも洗練された全体的なシルエットを、白と青のコントラストがさらに凛々しく引き立てる豪奢な武装。バイザーを上げたヘルメットが何よりも戦乙女らしさを醸し出しているが、そのヘルメットの頭頂の隙間から何故か、ピョコンと三角形の耳が覗いていて、すべてを台無しにしてしまっている。 三者三様の人形。小さくて可愛らしい、と言うには着飾っているものが少々物々しいが、武器や防具といった日常とはかけ離れた物が、姫乃の妄想をいっそうかき立たせた。 (すごい、すごい、すごいっ!) 見覚えのあるマオチャオもアルトレーネも、実際にそれらが動いているとなれば、姫乃の目にはとにかく素晴らしいものに見えた。なにせ【召喚した妖精や悪魔の類が武装神姫の体を借りて動いている】らしいのだから、召喚の触媒になり得る武装神姫に、興味を持たない理由はない。黒歴史を葬るために切り刻み灰と帰したノートですら (私のバカ、なんで捨てちゃったのよ) と今更になって惜しむ始末である。 「ねえ、少しでいいから、触っていい?」 「ううん、やっぱりマスターと同じように、本当に神姫のことを忘れてしまってるみたいですね」 「目覚めた神姫に触れれば記憶が戻るかもな――よし、心ゆくまで触っていいぞ」 「待つにゃほむほむ。こういう時は普通、自分の体を差し出すものじゃにゃいか。何の躊躇も無くワガハイを差し出そうとするとはアレかにゃ、ワガハイの体は俺の物っていうジャイアニズムに目覚めたのかにゃ」 「あなた達、ジャイアンのこと知ってるの!? そ、それってもしかして、アカシックレコードから引用して、たり?」 「なんだか私、この方に上手く説明できる自身がないんですけど……」 アルトレーネの「説明」という言葉を聞いた姫乃は、椅子の上でサッと姿勢を正して身構えた。異界からの来訪者は、まず召喚者に事情を説明する暗黙のルールがあり、召喚者はそれを聞かなければならない――という【設定】を、忠実に守るためである。彼女の心はもう立派な召喚士のそれへと変貌していた。 「なんでも話して。私、あなた達がどんなに不思議なことを話しても絶対に否定しないから」 「既に変な方向に誤解されてるみたいですが……分かりました。私達も状況をすべて知ってるわけではないので、あまり鵜呑みにしないで下さいね」 コホン、とひとつ咳払いしたアルトレーネはスカート状のアーマーを折りたたんで、その場に姿勢良く座った。ハンマーを持ったマオチャオも、その隣に片膝を立てて腰を下ろした。もう一匹、「にゃ」のマオチャオは姫乃に指で喉を撫でられ、ゴロゴロと喉を鳴らして一人悦に浸っている。 「まずは自己紹介としましょう。私はアマティといいます。こっちのクールなマオチャオがほむほむで――」 「俺の名はホムラだ」 「その馬鹿っぽいのがカグラです」 「馬鹿とはにゃんにゃふにゃあああん♡ そ、そこはだめにゃああぁああ♡」 姫乃の十指による技巧にされるがままのカグラは、最後のプライドを振り絞って拒絶の言葉を吐き出すも、表情も体も既にとろけきっていた。 カグラを弄びつつも、姫乃は一言一句聞き漏らすまいと真面目に耳を傾ける。 「これはこれはご丁寧に。私は一ノ傘姫乃っていいます」 「初めまして一ノ傘さん、と言いたいところですが、実は私達――」 「やあねえ、姫乃って呼んでよ。私達の仲じゃない」 「仲? ……いえ、確かに『実は私達、お会いしたことがあるんです』って言おうとしましたけど、せいぜい顔を合わせたことがあるってくらいで、そこまで親しいわけじゃないです」 「【猫戦乙女の憂鬱】の最終話で会ってるにゃ」 「貴様は黙ってろ」 「そうなの……残念」 「兎に角、まずこれだけは認識して下さい」 力を込めたからか、アマティのヘルメットからのぞく三角の耳がピンと尖るように立った。その耳に手を伸ばしたいけれど話の邪魔をするわけにはいかないと、一人葛藤する姫乃だった。 「私達神姫は、姫乃さんと同じように心を持ってます。妖精だか何だかが取り付いたフィギュアなんかじゃなくて、CSCとこの頭、コアによって見たり聞いたり感じたり考えたりできるMMSなんです」 ■キャラ紹介(3) カグラ 【 2/2 】 彼が幽鬼のような表情で帰ってきた理由を、留守番をしていた次女達はすぐに知ることとなった。彼が鞄から机の上に出したモノ、それは変わり果てた長女だった。 彼が帰ってくるまで騒々しくケンカをしていた次女達が絶句する中、彼はパソコンを起動し、メンテナンス用アプリケーションを立ち上げた。そして淡々と、収集した画像を整理するような無感動さで、次女達のオーナー登録を次々と抹消していった。混乱の極地にある次女達にはもう、彼のやっていることが理解できなかった。 呆然と立ち竦む次女を荒々しく掴んだ彼は、無造作に胸のカバーを開き、CSCを抜き取った。心を失った次女は、内部に精密機器が詰まっているだけの人形となった。だから、自身がゴミ箱へ放り投げられたとしても、反応することはない。 「ひ……」 机の上に散らばっていた【長女だったモノ】も片付けた彼の手が、三女に伸びた。 「ひゃあああああああああっ!?」 三女が駆け出すより速く、彼の手が伸びた。乱暴に掴まれた三女はありったけの力で暴れ、彼の手に噛み付いた。小さいとはいえ戦闘できるよう作られた神姫の力は強く、肉を噛み千切り、力尽くで手の中から逃れることができた。三女の身体が床へ自由落下する。しかし、その床へ到達するまでの時間は、三女にとってあまりに長すぎた。着地の瞬間、床と彼の足裏の間で押し潰された三女からはもう、CSCを抜き取る必要もなくなっていた。 足裏に鋭い痛みが走ることで、僅かに我を取り戻した彼は、荒い息を吐きながら部屋の中を見回した。 四女と五女は姿を消していた。 次ページ『アマティ、キレる』 15cm程度の死闘トップへ
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ここを確認する前に、必ず取扱説明書に目を通しておいてください。 DL版の説明書はXMB→ゲーム→メモステ→武装神姫BM→△ボタン→解説書にあります。 購入前Q このゲームってどんなゲーム? Q UMD版とDL版があるけど、どっちがいいの? Q 前作やってないけど大丈夫? Q 限定版があるらしいんだが Q そもそも武装神姫って何なの? Q 登場する神姫の数は? Q この武装何? 見た事無いんだけど Q 俺の好きな神姫が出てないんだが? 引き継ぎQ 引き継ぎに必要なものは? Q 前作とどれくらい違うの? Q 前作のDLCはどうやって引き継ぐの? ゲーム本編Q ○○に勝てないよ! Q ○○が装備できないんだけど?コスト制限もきついよ? Q ○○が入荷したのに売ってないよ? Q △△のパーツどこ?レールアクション揃わないよ? Q 手持ちのパーツが少なくて同時育成が難しいです。 Q 武装エディットの登録データが消えるんだけど? Q 武装エディットで総合アビリティ一覧があったら便利なのに。 Q 一回しか攻撃できない武器があるんだけど。 Q ハンディキャップ戦が難しすぎる。 Q LOVE上げの効率のいいところはどこ? Q F1行くための公式戦でないんだけど?/ファイアーバースト杯出ないんだけど? Q クラブ ヴァルハラ?裏バトル?やっていいの? Q ランク5以降の装備はどこで集めればいいの? Q:逆に低ランク武装が手に入らないんだけど… Q アストライアー(二戦目)が倒せない! Q 称号「闘神の玉座Mk2」の入手方法は? バトル以外Q イベントが進まないんだけど。 Q 同型の神姫って複数持てない?何か駄目とか言われたよ。 Q 神姫の名前変えたいんだけど。 / 武器や神姫の色って変更できない? Q 神姫とのイベント回想はないの? Q 神姫って何体まで買えるの? Q ライバルが上級者すぎるんだけど…。 Q 主人公って男性なの? Q 神姫が増えてくると名前をつけるのが大変なんだけど…。 Q 攻略本って…どう? 対戦関連Q アドパで対戦できる?kaiは? 購入前 Q このゲームってどんなゲーム? A 神姫を育成しつつ、様々な武装やパーツを集めて戦うアクションゲームです。 「アーマードコアのように武装変更できるガンダムvs」と例える人が多いようです。 Q UMD版とDL版があるけど、どっちがいいの? A 前作で不評だったロード時間の問題は、メディアインストール(537MB以上)機能により改善されています。 それでもまったく同じというわけではないため、youtube等にUPされている比較動画を見て気になる方はDL版の方がいいでしょう。 定価の場合、UMD版が5800円に対し、DL版が4800円と1000円安くなっています。 DL版は容量が前作よりもかなり増えているので(約1.4GB)、容量の少ないメモステを使っている方は注意してください。 ゲームだけ遊ぶとしても2GB必須、DLCも欲しいなら4GB、場合によっては8GBや16GBを用意することも視野に入れる必要がでてきます。 Q 前作やってないけど大丈夫? A 前作の内容は本作に全て含まれています。上にもあるように前作はロード時間が非常に長くおすすめできません。 むしろ前作の存在意義が、現状では有料体験版状態(コナミ・ザ・ベスト版UMD2,940円、DL2,300円と、Mk.2の約半額)。 Q 限定版があるらしいんだが A コナミスタイル専売の「特別版」と「コンプリートセット」があります。 「特別版」はアーンヴァルMk.2とストラーフMk.2のフィギュアと水着素体(アーンヴァルMk.2用)のセットです。 2体のフィギュアは、前作の特別版同梱フィギュアに武装を追加したフルアームズパッケージです。 「コンプリートセット」の方は、「特別版」にサウンドトラックCDと水着素体(ストラーフMk.2用)を加えたものです。 ただし、現在では既に入手は極めて困難です。(公式の販売は既に完売。クリスマスセールに少数再販されたが、待ち構えていたファンに瞬殺されました。中古屋やオークションなどで出品される可能性に賭けるしかありません) なお、サウンドトラックCDは単品でも購入することができます。 ※詳細はコナミスタイル・武装神姫BM2特設コーナーを参照して下さい。 Q そもそも武装神姫って何なの? A:コナミから発売されているアクションフィギュアシリーズで、ホビー方面とゲーム方面に展開しています。 MMSと呼ばれる可動素体に様々な武装を装着し、自由に組み替えて遊ぶことが基本コンセプトです。 企画発表当時はフィギュアとWindows向けオンラインゲームは連動企画の位置付けにありました。(現在はサービス終了) 神姫ネット稼働中は一部を除くフィギュアにはアクセスコードが付属し、アクセスコードをKONAMI IDに登録が可能でした。 登録すると、フィギュアと同じ素体とパーツを3Dモデルデータとして、ゲーム内でも使用することができました。 かつてゲームではショップで3Dモデルデータを買うこともでき、本作にも何点かあちらを初出とするパーツが登場します。 なお、残念ながらKONAMI IDを通じたPC向けゲーム フィギュアと本作の連動企画はありませんでした。 mobageをプラットフォームとしたBATTLE COMMUNICATIONも配信開始の2011年11月現在、本作との連動は発表されていません。(2012年5月、サービスは終了しました) 【ホビー方面】 フィギュアと武装のフルセット、ライトアーマー、EXウェポンセットなど数種のパッケージが存在します。 また、限定リペイントモデルなどもあり、デザインだけでも40種類に及ぶラインナップを誇っています。 それでいて、更に次モデルが公開されるなど、非常に息の長いシリーズとなっています。 ※詳細は武装神姫公式サイト・フィギュアの項目を参照して下さい。 【ゲーム方面】 本作のほか、mobageをプラットフォームにしたフィーチャーフォン向けの武装神姫BATTLE COMMUNICATIONが稼動中です。※2012年5月を以て、サービスを終了しました 武装神姫BATTLE COMMUNICATION ミッションをクリアし、武装や経験値を得て神姫を強化させていくソーシャルゲーム(RPG) ※詳細は武装神姫公式サイト・SNSの項目を参照して下さい。 そのほか「神姫NET」名義でWindowsPC向けオンライン専用の下記二タイトルがありました。 しかし、惜しまれながらも2011年10月31日をもって全てのサービスが終了となりました。 双方ともWindowsOSを搭載し、ある程度の3D表示性能を持ったPCとオンライン環境、KONAMI IDがあれば遊べました。 武装神姫BATTLE RONDO 神姫のAIを育成し、AI同士を戦わせることができるバトルシミュレーション 武装神姫ジオラマスタジオ 3Dモデルの神姫に自由に装備やポーズをつけて背景に設置し、バーチャルジオラマを作成できる3Dデータサービス ※詳細は武装神姫公式サイト・神姫ネットの項目を参照して下さい。 Q 登場する神姫の数は? A 天使型アーンヴァルMk.2、悪魔型ストラーフMk.2、犬型ハウリン、猫型マオチャオ HST型アーク、HMT型イーダ、火器型ゼルノグラード 戦乙女型アルトレーネ、戦乙女型アルトアイネス、忍者型フブキ 今作からの追加神姫として、 セイレーン型エウクランテ、マーメイド型イーアネイラ、サンタ型ツガル モトレーサー型エストリル、クルーザー型ジルリバーズ 以上の15体が、パッケージ(追加コンテンツなし)の状態で登場します。 +ネタばれあり さらに隠し神姫が3体あります。 武装パーツのみであれば上記の15体以外も登場します。 Q この武装何? 見た事無いんだけど A バトルロンドからの引用武装のほか、本作用にデザインされたオリジナル武装が多数登場します。 Q 俺の好きな神姫が出てないんだが? A 上記以外の神姫のうち、以下の16体がDLCで配信(販売)されています。 前作から引き続き配信 ヴァイオリン型紗羅檀、エレキギター型ベイビーラズ ケルベロス型ガブリーヌ、九尾の狐型蓮華 鷲型ラプティアス、山猫型アーティル ケンタウロス型プロキシマ、テンタクルス型マリーセレス 本作から追加配信 戦車型ムルメルティア、戦闘機型飛鳥 花型ジルダリア、種型ジュビジー 剣士型オールベルン、剣士型ジールベルン ビックバイパー型ヴェルヴィエッタ、ビックバイパー型リルビエート →詳しくはDL情報を参照。 それ以外の神姫のファンの方は・・・現状では、申し訳ありませんが、KONAMIに次回作の要望を出して気長に待つしかないでしょう。 引き継ぎ Q 引き継ぎに必要なものは? A:前作の「クリアデータ」または「エクストラニューゲームのデータ」。UMDやゲームデータは不要。 最初からやるか、そのまま続けるかを選べる。 Q 前作とどれくらい違うの? A 前作からの主な変更点参照。 バトルまわりが大幅に変更されているので、確認しておかないと思わぬところで大敗します。 Q 前作のDLCはどうやって引き継ぐの? A PSNからコンバート用のデータをDLする。 現時点では神姫素体のみ引き継ぎ可能。 A Ver1.01のパッチを当てた上で、PSNから本作用のDLCをDLすることで使用できます。 前作で購入したアイテム(神姫含め)については「無料」でDL出来るようになっています。 ※最初から購入済みになっていないことに注意してください。 ゲーム本編 Q ○○に勝てないよ! A とりあえず初心者向けページを見てみましょう。希望の対神姫戦が無ければ、現状では更新待ちです。 全体的に、前作で猛威を振るった大剣や斧が弱体化しておりCPUも多用してきた至近距離でRAを発動した時の即攻撃が無くなっているので、移動RAで急接近して密着してひたすらナックルやダブルナイフといった発生の早い武器でハメ殺すのが有効な場面が多いです。 Q ○○が装備できないんだけど?コスト制限もきついよ? A 貴方と神姫が育んだ愛が装備を可能にします。詳しくはLOVE・COST・武装ランクを見てください。 Q ○○が入荷したのに売ってないよ? A +XX(英語2文字) が名前の後ろにつくパーツはプレミアムショップ、 もしくはジャンクショップ(+IR、+GR、+KT等のピーキー武装)に入荷されます。 盲点かもしれませんが、+XXのカスタム武装以外は「いくら高ランクでも」普通のショップに入荷します。例えばシスター服、アーンヴァルやストラーフの追加武装(カローヴァ改など)が該当します。 Q △△のパーツどこ?レールアクション揃わないよ? A ゲームセンター(含むフレンドカード対戦)でも公式大会でも、 対象のパーツ(レールアクション)を持っている神姫に勝てば、 一定確率でショップに追加されます。 レールアクションは何度やっても落とさない場合、そのライバルは持っていない可能性があるので別のライバルを探しましょう。 また、各神姫のLOVE値を上げることで、その神姫の強化装備一式の入荷と固有レールアクション入手イベントがあります。専用RA装備はその神姫のクィーン杯をクリアし、累計バトル数一定数突破、専用RA入手でショップに入荷します。 さらにF1クリア後発生する様になるミミック戦では高確率で敵装備パーツの入荷が可能です。 意外な方法として、所持さえしていれば、 ヴァルハラにて該当装備のみをした状態で敗北することによって、装備は失いますが該当パーツがショップに入荷されます。 なお、+KTのピーキー武装は、シナリオ後半に発生する武装制限杯(「ミサイル+Pバンカー」等、互いに+アビリティのある組み合わせの大会)の景品になっています。片方は確実入手。もう一方は確率入手です。 Q 手持ちのパーツが少なくて同時育成が難しいです。 A パーツは1個でも所持していれば全神姫に装備させることができます。 複数個所持の利点はヴァルハラで敗北した時に武装エディットの消失が防げるぐらいです。 Q 武装エディットの登録データが消えるんだけど? A ショップでの売却とヴァルハラでの敗北により武装の所持数をゼロにした場合、その武装を含む武装エディットのデータも消失します。 Q 武装エディットで総合アビリティ一覧があったら便利なのに。 A あります。装備エディット中はいつでも△ボタンでその時点での 装備武装・アビリティ・レールアクションが閲覧可能(△押して画面変更) です。 なお、装備選択中にR or Lボタンで各装備の解説及び能力閲覧となります。 Q 一回しか攻撃できない武器があるんだけど。 A +IR、+GRの格闘武器は二段目以降特定のタイミングでボタンを押していかないと攻撃を続けられないように出来ており、通常武器のように連打ではコンボはおろか攻撃を出すことすら出来ません。 諦めるか、トレーニングで練習しましょう。 Q ハンディキャップ戦が難しすぎる。 A その場合、基本はLOVEを上げて装備を新調してから再戦しましょう。戦わないと一定期間で消える場合があるので 勝てないと思っても取り合えず戦っておきましょう。初心者向けページを参考にしてください。 Q LOVE上げの効率のいいところはどこ? A F3ならリリス、F2ならタッグバトル、ゴスロリ装備を持っているならアリス・リデル杯等です。 ライドレシオMAXでボーナスがあるため、CHAなど装備や戦い方を意識しましょう。 レシオMAXが容易な発射数の多いビットを持って行くと楽ができます。 LOVE15以上ならコスプレ大会でガトリング主体で戦えば1試合につき900~1000、 ゲームセンターの閃光魔女&シャイナを相手にCHR重視装備+ガトリング主体で普通に勝つだけで1000~1300稼ぐことができます。 また、フレンドカード交換の出来る環境なら、LOVE上げ用アセンのカードを貰ったりすると楽が出来ます。 さらに、今作では一度クリアすることによって、経験値の量を大幅に高めるアクセサリーを入手することが出来ます。 従って、一度最後までクリアするのもよい手段になります。 Q F1行くための公式戦でないんだけど?/ファイアーバースト杯出ないんだけど? A 狙撃スター・タッグマッチを攻略してください。 とりあえずゲーセンを適当に倒すと①~④の予選が出ます。 その後、タッグマッチと狙撃タッグを終わらせると狙撃スターが出て、 さらにスターライン杯をやるとファイアバースト杯が出ます。 その時点で一旦ヴァルハラ行くとF1出場権獲得予選が出ます。 Q クラブ ヴァルハラ?裏バトル?やっていいの? A 「敗者の武装が、勝者の賞品となります。積極的に奪い取り、武装強化を目指しましょう。」 ロード中のTIPSでこう語られている通り、シナリオ進行に悪影響を与えることはありません。 と言うよりも、ストーリー進行フラグ(F1制限予選開催など)を立てるため、最低2度は行く必要があります。 強力な武装や、各神姫の固有レールアクションを賞品にしてくれるオーナーもいるので、 上記の通り自分の武装が奪われることを承知のうえ、腕に自信があるならどうぞ。 さらに、奪われた装備はショップにない場合入荷されるため、ショップの商品リストを埋めるのにも非常に便利です。 Q ランク5以降の装備はどこで集めればいいの? A クリア前ならヴァルハラかF1で頑張ってください。 F0クリア後はヴァルハラと公式大会にランク5以上の装備持ちが大量に出てくるので、それで稼げます。 最終的にはクリア後の新F0やミミック戦で集めるといいでしょう。 完勝してSを取ると確率が上がるという都市伝説もあります。 また、神姫固有RAに必要な装備は特に収集せずとも 対象神姫のLOVE値+対象神姫限定公式大会クリアの条件で プレミアムショップで販売が開始されるようです。 Q:逆に低ランク武装が手に入らないんだけど… A シナリオの進行に伴って、神姫の武装ランクが変更される対戦相手が複数組存在します。過去に対戦済み(マイルームでライバル名と使用神姫名参照可能)であるのに、ゲームセンターの対戦相手選択欄で「NEW」と表示される場合、武装のランクが変更されています(この時点で、変更前の武装はその対戦相手からは入手出来なくなります)。また、余談ですがこういった対戦相手は、内部データでは別人扱いとなっているらしく、某称号の入手に影響を及ぼします。こういった対戦相手から武装を手に入れ忘れた場合は一度メインシナリオをクリアして次周回にて再戦する、又は今作追加メインシナリオ部分で対戦可能なミミックに勝利することで入手が可能なものがあります。 ミミックから入手する場合の注意点として、 ①ミミックの武装はプレイヤーの「最後に選択した神姫」の武装ランクによって抽選テーブルが変動する(装備しているランクではなく、装備可能上限のランク) ②「最後に選択した神姫」とは、ミミック出現判定に入る直前にバトル、武装の変更、名前やカラー変更のいずれかを選択した神姫のことを指す ③ミミックとの遭遇は基本的にランダム。各武装ランク毎にミミックの武装にパターンが複数ある為、狙った武装セットのミミックが出現するとは限らない。 ④使用神姫がミミック、強化ミミック、ジャスティスの場合は、武装ランクにかかわらず、武装ランク7の強化ミミック(武装パターン1種類のみ、他神姫ではLOVE31以上の場合に抽選テーブルに追加されるようだ)が出現する という点が挙げられます。 また、ごく一部の武装ですが各神姫のイベント対戦相手が所持していたり、DLC神姫のシナリオ対戦相手や専用大会からのみ入手可能なものもあります。 Q アストライアー(二戦目)が倒せない! A 所詮CPUなので、開幕に走りこんでナックルやダブルナイフ連打だけでハメ殺すこともできます。 マメ知識・仕様のラスボス戦の項目を参照にするのもよいでしょう。 Q 称号「闘神の玉座Mk2」の入手方法は? A 攻略チャートと称号に入手方法が載っています。 バトル以外 Q イベントが進まないんだけど。 A ハウリン等、神姫によっては最後にイベントが固まっているので、LOVE17あたりまで進行が遅くても安心してください。 また、自宅を始めとして特定の場所への移動や、対象の神姫を用いてゲーセンバトルに勝つことが条件のこともあります。「ゲーセン等の施設へ移動する」「施設でのバトルを行い勝利する」のどちらかがキーの場合がほとんどです。 Q 同型の神姫って複数持てない?何か駄目とか言われたよ。 A それぞれの神姫で全Loveイベント制覇で2体以上持てるようになります。2体以上所持でイベントリセットすると、「イベントを発生させる神姫はどちらか」と選択肢が出ます。 Q 神姫の名前変えたいんだけど。 / 武器や神姫の色って変更できない? A 自宅の神姫データで□ボタンを押すと変更できます。武器の色は変えられません。 Q 神姫とのイベント回想はないの? A 自宅でスタート- イベントログ- 対象神姫で△、でもう一度その神姫のイベントを始めからやり直すことが出来ます。 一部イベント戦闘関連称号の入手などにも。 Q 神姫って何体まで買えるの? A:購入できる神姫の最大数は同型を含めて全部で98体です。 前作の29体より大幅に増えました。 98体所持して更に買おうとすると、これ以上所持できないという表示がでます。 ただし強制入手のフブキはこの制限外なので理論上の所持数限界は99体になります。 (98体所持状態でフブキ入手イベントをこなす) なお、称号は特にないようです。 Q ライバルが上級者すぎるんだけど…。 A 世の中には色々な紳士がいます。CERO Bですから大丈夫です。 Q 主人公って男性なの? A 残念ながらストーリーは男性固定です。 オーナーカードで女性のシルエットを選択できるので、次回作まではそれで我慢しましょう。 神姫のイベントによっては百合展開と無理やり解釈する事も不可能ではないかも。 Q 神姫が増えてくると名前をつけるのが大変なんだけど…。 A ネット上には名前辞典や命名ジェネレーターを設置したサイトが存在しますので参照してみてはいかがでしょうか。 Q 攻略本って…どう? A コンプリートガイドを参照。 攻略本で扱っているデータはこのwikiでも扱っているものも多いですが、 wikiはあくまでも善意の編集によるものです。現在データ量でいえば本の方が充実しています。 また、こちらでは検証が難しいパーツなどの入手確率の数値のようなデータも載っています。 数値がわかったから入手しやすくなるわけでもないですが…心情的には違うでしょう。 加えて、攻略本には大剣「ギュリーノス・ダーク」が付いてくるのと、各神姫の立ち絵集などが載っています。 ただし、当然ですが、バグやパッチ、DLC等の最新情報の収集については、wikiが圧倒的に有利です。 うまく使い分けてください。 対戦関連 Q アドパで対戦できる?kaiは? A kaiはSSIDを変更する必要はありますができるようです。 アドパもできるようです。 専用のスレもあるので確認してください。【PSP】武装神姫_BATTLE_MASTERS Kai&アドパスレ
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前編:彷徨姫 それは今から二週間ぐらい前だった。オレはいつもの様に『ポーラスター』で子供から大人までいろいろな人が神姫バトルをしている所をぼうっと眺めていたんだ。 『ポーラスター』は秋葉原を中心とする激戦区の中でも大きいゲームセンターの一つで神姫オーナーも多い大人気のバトルロンドの場だった。そのオーナー達の性格や印象も良く、神姫を持たない私でもあまり気にされることもなく、観戦する事ができる。たまに神姫を持っていない事で声もかけられるが、その事を言うと見やすい場所を案内してくれることもある。 優しい人達で周りのゲームセンターよりも居心地がよかった。 「ビィィィ!キュウゥブッ!! フルヴァーストォ!!」 「サー、コマンダー」 やたら暑苦しい人が叫ぶとB3(ビー・キューブ)と呼ばれた重装備のヴァッフェバニーがバズーカ砲、ロケットポッド、さらに二基のガトリングガンを構え、それを上空にいるアーンヴァルMk.2装備にFATEシールドとコールブランダーを付け加えた武装のアーンヴァルに向かって一斉掃射する 「アンジェラス! ステディプロティション!!」 「はい! ご主人様!!」 アンジェラスと呼ばれたアーンヴァルはB3の放つ大量の弾幕をFATEシールドのスキル ステディプロテクションで防御をし、B3のフルバーストを防ぐとリアユニットにマウントしてあるコールブランダーを抜きはなって、二つのビット リリアーヌを伴って、前進を始めた。 「牽制からライトニングソードだ!!」 「ええ!」 マスターの指示でアンジェラスはあらかじめ、時間を稼ぐためにリリアーヌをB3に飛ばし、コールブランダーを掲げてチャージを始めた。 飛んでいく二つのビットはB3めがけて左右から突撃を仕掛ける。狙われたB3はその攻撃をガトリングガンの段幕で迎撃するが、一つは破壊したものの、もう一つは片方のガトリングガンにつっこみ、自らもろとも爆発した。 さらに巨大なエネルギーブレードを形成し、チャージが完了したライトニングソードをアンジェラスが勢いよく振り下ろしてくる。 「ンンンンGoGoGoGoオォゥ!!! ビィィキュゥゥウブ!! カウンタァー! ショットォ!」 「サー、コマンダー」 振り下ろす直前、B3は残ったガトリングガンを両手で持った上で回避体勢に入り、ライトニングソードが目の前の地面に突き刺さって安全になった瞬間、反撃のガトリングガンを放つ。 が、かろうじて反応したアンジェラスはそれを避けて、反撃の被害を最小限にしようと動いた。 その瞬間、あらかじめルートを予測したかのようにバズーカがアンジェラスに着弾し、墜落した。 「きゃぁ!?」 「アンジェラス!?」 「ンフフハハアアアァッ! これが俺たちのトゥオルィック!! ビイィキュウゥブ! 追撃ぃ!!」 「サー、コマンダー」 それは確かにトリックだった。ガトリングガンで弾幕を張って、相手の避けるルートを限定し、威力の高い本命のバズーカを確実に当てる。すごく合理的な戦術だ。 このまま、アンジェラスを仕留めきれるのだろうか。 B3はガトリングガンの弾が切れたのか、二丁両方を捨てた。代わりに大型のナイフを二本取り出してそれぞれの手で持ち、ロケットポッドの連射で牽制しつつ、接近を始めた。 墜落したアンジェラスはディコ・シールドで素体に当たる弾を防ぎつつ、立ち上がってB3を迎え撃つ。 「勝利は勝ぁぁぁぁぁっつッ!』 「アンジェラス!MOA!」 そして近距離、B3がマスターの叫びとともにナイフで攻撃を仕掛けたその刹那、アンジェラスは鋭い指示に反応して彼女の攻撃を回り込むようにかわした。次にすれ違い様にコールブランダー銃形態でB3を撃ち、リアユニットとマシンガンを分離変形させる。 BM『モードオブエンゼル』だ。 変形した白い戦闘機は背面を無防備にさらしているB3に大量の弾丸を殺到させた。 「Noオオオオォォッ!!?」 背面からの集中砲火にたまらずB3が倒れ、勝敗が決するとマスターの方がとてつもない悲鳴を上げた。 『衛生兵! えーせーへーえぇぇぇぇぇ!!!!』 センター中に響きそうな叫び声が聞こえる中、オレは腕時計を見る。そろそろ夕方にさしかかるいい時間になっていた。戦いの後が気になる所だが、面倒くさいテストが明日あるため、それの勉強のために帰ることにし、『ポーラスター』を抜け出した。 「アンジェラスはかっこいいなぁ。B3もあんな攻撃をするなんて武装神姫ってすげぇ……」 外に出た時、オレは憧れを口にする。オレは武装神姫を持っていなかった。兄貴は初代チャンピオンでバリバリの神姫マスターをやっているが、交通事故に遭って目が見えなくなって以来、オレに武装神姫を話さなくなった。 だからこうしてポーラスターで武装神姫を見ているんだけど、やはりダメだった。 その場にいるのに自分はその場とは違う。そんな気分だ。そんなモヤモヤした気持ちを抱えこみながら歩いているその時だった。トライクで走る小さな赤い影を見つけた。すごく速いそれはすぐに追わないと見失いそうだ。 (何なんだ?) 気になり、それを追い始める。走り出すとさすがに人と神姫の体の大きさの差は大きく、だんだんと追いついていく。 少し走って裏通りに行くと赤い神姫がトライクを止めた。オレがそれに合わせて足を止めると、彼女はそこから降りてオレを見ていた。 「さっきから追いかけてくるのが、君? 何か用?」 鋭い目でオレに質問をしてくる。見た所、アークのりペイント版か何かのような神姫だった。装備で違うのは額から角が生えているぐらいだ。 「何でマスターがいないのか気になったからさ」 「私にマスターはいないよ。ただの野良神姫だ。真の力とは何かを探してる。君は知ってるの?」 「オレに難しいことはわかんないけど、そもそも真の力って何だよ?」 「私は単純な力だけでは勝てないマスターをもったライバルがいる。彼女はその力は自分一人だけのものじゃないと言っていた。奴に勝つためにはそれが必要なんだ」 詰まる所、マスターのいるライバルに負けて、その力が何であるのかを探しているらしい。 事情はよくわからないが、オレにとっては笑ってしまえるほど単純なことだった。 「簡単じゃん! その神姫ってマスターと仲良しなんだなっ!」 「え?」 「マスターの期待に応えたいから頑張ったんじゃないかな。当たり前のような神姫とオーナーの関係さ」 アークに対して自信を持って答える。マスターと神姫の関係は当たり前の事過ぎて普段は考えもしないけど、その当たり前がないとすればどれだけの差があるか。それは多くのオーナーが知っていた。野良神姫やイリーガルが出てきても、絆を持ったマスターと神姫がそれを打ち負かしているのは兄貴がよく言っていた。 「当たり前の……か」 その言葉に何かを感じたのか、アークはフッと笑った。鋭い目も緩んで、何かをつかんだ様な柔らかい表情を見せる。自分にもこんな神姫がいればなんて思ってしまうほどその顔はとてもきれいに見えた。 「なぁ……君……!」 アークがオレに何か聞こうとしたその時、裏通りの奥から、エネルギー弾が彼女めがけて飛来してきた。 アークはそれに反応して避けて、臨戦態勢に入って、アサルトライフルを弾が飛んできた方向に構える。 「この不意打ちを避けるとは大したもんだ」 奥から上から目線の態度をした痩せ型の男がエネルギー弾を飛ばしてきたと思われる、最新型の神姫 蓮華と一緒に出てきた。 「ここはガキが来るような場所じゃぬわぃ。とっとと有り金と神姫をおいて消えぬぅわ」 妙な口癖の蓮華がオレにアークと金を渡せと要求する。どうやら、アークはオレの神姫だと思っているらしい。 「ん? どうしたんだ? その神姫はお前のじゃないのか?」 痩せ型の男が現れて、オレに問う。オレは彼女のマスターじゃない。それどころか、神姫すら持っていない。どう答えればいいんだろう……。 そんな風に戸惑っている時だった。アークがシルバーストーンを構えて蓮華にそれを容赦なく撃ち、堂々と答える。 「そうだ! 彼は私のマスターだ!」 驚いたことにどういう訳か、会ったばかりのオレをマスターだと言い張ったのだ。神姫を持っていないのにこんなことで大丈夫なんだろうか。 「君、私に名前をくれ!」 オレは突然のことに驚いたが、彼女に言われるがままに名前を考える。一瞬の中で思ったことは、彼女と遠く遠くを走り続けたいという思いだった。だから……! 「ああ! 俺は響! お前は百日! 俺の神姫だっ!!」 「OK! 行こう! 響!!」 与えられた名前に応じ、アーク――百日はもう一度シルバーストーンを放つ。 「ははは!! 何だそりゃ!? 即席チームでんなことのほざくんじゃねぇ!!」 「ほほほ。これは獲物じゃぬわ! 死ぬぇい!!」 蓮華と痩せ型の男は即席の俺達の事を笑い、ただのカモだと思って笑うと蓮華がレーザーを回避してそのまま二黒土星爪で百日に襲い掛かる。 それを見た彼女はアサルトライフルを連射して、蓮華の勢いを削ぐ。さらにそれで生じた隙で二黒土星爪を回避しつつ、フォールディングナイフを展開して逆に反撃の斬撃と蹴りを決める。 最後の蹴りの力は強く、蓮華を近くにあったゴミ箱まで吹き飛ばし、叩きつけた。 「ぐぇっ!? な、何だあの出力は!?」 「あの角を見た時からまさかとは思ったが、そのアーク、イリーガルか!?」 百日の蹴りの強さを見て、痩せ型の男が動揺する。どうにも百日はイリーガルというタイプで、とんでもない出力であるらしい。 何なのかはわからないが、こちらに勝ち目はあるという事か。 百日は相手の動揺を気にする事もなく、シルバーストーンで蓮華を狙い撃ちにする。彼女はイリーガルだという事を認識したその攻撃を恐れているらしく、大げさに避け始めた。さらにその中で威力のある二黒土星爪から命中を重きにおいた一白水星剣に持ち替え、ヒットアンドアウェイ戦法へと切り替える。 「くっ……!」 身軽な装備でちょこまかと動き回って、百日を攪乱していく。百日もアサルトライフルとナイフで応戦するものの、その動きは早く、なかなか捉えることができない。 イリーガルと動揺はしているものの、蓮華にも素体の改造が加わっており、百日並の強さがあるのかもしれない。 強さがどうとかは置いておいて、このままでは小回りの利かない百日が押される。アサルトライフルとナイフでは仮に当たっても決定打にはならない。何とかしてレーザーを一発放り込み、追い込めれば……。 「……そうだ! 百日!! アサルトからレーザーにつなぐんだ!」 「なるほどね……。わかった! やってみる!」 何とか読まれない程度に百日に命令を下し、彼女はそれを実行するために距離をとりながらアサルトライフルを準備する。 「何かは知らねぇが、素人の作戦なんてうまく行きっこない! そのまま潰せぇ!」 痩せ型の男は何の作戦なのかわかっていないのか、依然として剣による攪乱攻撃を蓮華に続けさせている。 これならやりようはありそうだ。 百日は回避し、蓮華の隙を伺っている。オレもそれを見ていた。相手は直線的に動いているに過ぎない。 次の隙が生じるまでの時間はそう長くはないはずだ。 「……今だ! 百日!!」 「行けっ!!」 隙を捉えたオレが百日に合図を知らせると彼女はそれにならってアサルトライフルをばらまく。 「当たらぬわ!!」 そうすると蓮華は反射的に回避行動に移る。その時だった。その回避した先からレーザーが飛来し、蓮華の腹を貫いた。 「ぬわにぃ!!?」 「蓮華!? くそっ!!? どうなっているんだ!!」 まさか、避けた先にレーザーがやってくるとは夢にも思わなかったのか、痩せ型の男と蓮華は激しく動揺する。 オレも内心、成功するかどうかヒヤヒヤしていた。これはB3のやっていたトリックを真似たものだ。 覚えていたので再現した即席だったため、上手く行くか心配したが、これで決定打は与えられた。 「当たった……これが……」 「百日! そのまま、追撃!!」 「あ、ああ!」 まさか、当たるとは百日も思っていなかったようで驚いていたが、オレの命令にマガジンを二つ装填する。 「インファニット∞アサルトだ!!」 「終わりだぁぁっ!!」 スキルを放つとレーザーでダメージを負って動けなくなっている蓮華に当たり、弾丸が装備を破壊し、彼女を戦闘不能に追い込んだ。 「ぬおぉぉっ……!?」 「蓮華!? くそっ!! 覚えてろ!!」 蓮華が倒れる状況に驚きながらもこのままではやられると思った痩せ型の男は彼女を持ち出し、逃げ出した。 それを見て、戦闘が終わったと判断した百日は武装を解除し、トライクモードに戻した。 「響。ありがとう。この勝ちは君のおかげだ」 「百日だって頑張ったじゃないか! これは二人の勝利さ!」 戦いが終わると礼を言ってきて、オレは思ったことを返す。そうすると百日はニッと笑って見せ、手を出した。 「そっか。頑張るって言葉、教えてくれ」 「ああ! 頑張るぜ!!」 「じゃあ、それをみせてくれ」 オレはそれに応じて百日の小さな手に握手した。こうしてオレと百日は無い者同士がパートナーとなった。 イリーガルがどうとか痩せ型の男が言ってたけど、百日が悪い奴の手先なんかじゃないのはわかってる。 誰かがもう一回、そんな事を言ってきたら胸を張って「百日が悪い奴なんかじゃない」と言ってやろうと思う。 テストが終わったら、兄貴は一人暮らしだから、悠にイリーガルについて聞いてみよう。あいつなら神姫をよく知っているし、百日のイリーガルについて何か知っているかもしれない。 「百日。よろしくな」 「ああ」 明日のことを考え、決めるとオレは百日と共に自分の家に帰る事にした。 ひとまず、帰ったらテストの予習を済ませないとならなかった事をすっかり忘れていた。 これで成績が良くなかったら母さんにこってり絞られてしまう。それだけは避けないとならない。 ……テスト、どうにかしないとなぁ。 戻る 進む
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第二話 「鰯も七度洗えば鯛の味」 神姫を取られてしまった少年、健五と出会った次の日。 「よう、来たか」 昼を過ぎたからそろそろだろうと、外に出るともう健五は来ていた。 「お兄さん……」 「おし、そんじゃぼちぼち行きますか。おやっさーん、ちょっと行ってきまーす」 「はーい。なるべく早く帰っておいでよ」 おやっさんの声を背に店を出ると、入れ替わりに客が数人入ってゆく。 「いらっしゃいませ。あら、シゲさん」 「おう、輝ちゃんとメリーちゃん。と……そっちのボウズは?」 「ああ、こいつは新入りッス」 「そうかい。ハハ、頑張れよう」 「ええ!僕いつの間にここで働くことになったの?」 「ただじゃねえっつったろ。明日一日はタダで働いて貰うからな」 そんな会話をしながら、一路ゲームセンターへ向かった。 ※※※ 一方、店内では。 「マスター! カツカレー一つ頼むよ!」 「あ、俺もね!」 「焼きサバ定食で!」 飛び交う喧噪の中、忙しく手を動かす二人組が。 「はい!焼きサバですね!……ったく、この忙しいのにアキラはどこ行ったのよ」 悪態をつきながら小さな体で何倍もある箸を動かす少女。彼女も、輝の神姫の一人だ。 「男にはね、いてもたってもいられない時があるんだよ」 湯気の立つ真っ白なご飯にルーをかけるおやっさん。 「何ですかそれ。あ、はい!おろしハンバーグですね!」帰って来たらなんて言ってやろうかしら。彼女―雅は、こひる型の小さな体を動かし続けた。 ※※※ 「で、ここがそうか」 三十分ほど歩き続けて、俺たちはようやくゲームセンターに着いた。土曜の午後だというのに人通りは少ない。例の一件のせいだろうか。 だが、一歩店内に足を踏み入れると、様子は一変した。 「はっはっは!でよぉ、そのオーナーがまたアホでよ……」 「マジー!?ありえねー……」 騒ぎは店の奥、神姫のコーナーから聞こえてくる。ゲーム機の音量にも負けていないほどだ。 サービスの行き届いてない店だな。そう思った俺がふと横を見ると、健五の手がかすかに震えていた。 「ほら、行くぞ」健五の手を引いて無理矢理連れて行く。 「あ……」 健五と、案の定たむろしていた不良達の目が合った。 「あ? 誰?」 「お、こいつ昨日のやつじゃね?後ろのハゲは知らねーけど」 ハゲじゃねえ。スポーツ刈りだ。と心の中で突っ込んでおく。人数は……三人か。 「何の用?おっさん」 「おっさんじゃねえよ。……お前らか?こいつの神姫取ったの」 「あ、何? 返してもらいに来たの?」 「俺が質問してんだよ。取ったんだろ?」 「チッ……これだろ」 中の一人がポケットから、ぐったりとしたアーティル型の神姫を取り出してきた。あの様子だと、おそらく充電が切れてしまっている。 「クレア……!」 「で、金は持ってきたのか?」 「ねえよ。今日はバトルしに来たんだ。俺とこいつが代わりにな」 俺が肩から提げていたカバンから、メリーが顔をのぞかせる。 「俺たちが勝ったら、こいつの神姫を返してここから出てけ」 「じゃあ、俺らが勝ったらその神姫はもらうぜ。こいつともども売り飛ばせば少しは金になる」 ぎゃはは、と笑う不良どもを一瞥して、俺と健五は傍のバトル用の筐体に歩み寄る。 「えーと、じゃあリアルで」 バーチャルではなくリアル用のコンパネを操作した俺の一言に、不良達の笑いが止まった。 「は?」 「いや、だからリアルバトルだよ。これでやるって設定したから」 「おいおい、神姫が壊れるかもしれないだろ!? いいのかよ!?」 「ギャーギャーうるせえよ。喧嘩しに来てんだよこっちは」 カバンから武装を出してメリーのセットアップをしながら俺はつぶやく。 「つーわけだ。頼むな、メリー」 「任せて下さい!」元気よく返事をして、メリーは操作パネルの横の、四角いゲートのような所から筐体の中へ身を躍らせる。 「チッ、後悔すんなよ!」不良のリーダーらしい金髪のやつも、自分の神姫を送り出す。 リアルバトルの場合は互いの神姫が直接にぶつかり合うため、五、六メートル四方の筐体の中で戦うにはどうしても空間的な余裕が出来ない。かつ、フィールド自体もデータではなく本物になる関係上大がかりな変更は出来ず、自然とバトルの場は限られる。 よって、今回の舞台はバーチャルバトルにおける「実験場」と呼ばれるステージ。障害物が無い、平面的な場所だ。 ICカードを差し込んだ俺は、相手の神姫を観察する。遠目からだと黒光りして見えるそいつは、ツガルの素体に悪魔型やカブト型、夢魔型の鎌といったパーツを満載している。なるほど、健五の言葉通り、確かに大幅なカスタムを施してあるようだ。 対する俺の相棒は。 「おい、あれ」 不良の内の一人がメリーを指さす。 筐体の中でストレッチをするメリーの装備は……ノーマルのメリエンダの装備に、ゴーグル状のセンサーパーツ、それだけだ。 「ぷっ」一人が吹き出したのを皮切りに、 「ぎゃーはっはっはっはっは!」全員笑いやがった。 「おいおい、いくらなんでもないだろ」金髪の野郎もモニターを眺めて笑っている。 「お兄さん、これじゃ勝てないよ……戦力差が有りすぎるよ」 健五までもが不安と呆れの入り交じった表情だ。だが俺は。 「俺の好きな言葉にな、鰯も七度洗えば鯛の味、ってのがある」 「鯛……?」 「見てな」 そして、試合開始のゴングは鳴る。 直後、相手のツガルがメリーめがけて突っ込んだ。 ※※※ 私は筐体に入ってから、まずは軽く関節の動きを確認する。それから、センサーの調子と、使い慣れたスプーンの調子も。 筐体の外では、私を指さして皆が笑っている。対戦相手のツガルさんも半笑い。 でも、私はなんとも思わない。 私は、アキラさんを信じているから。 試合開始のゴングが鳴った。同時に、ツガルさんがこちらに向かって来る。 重そうな武装で驚くほどの動きをしながら、身の丈ほどもある巨大な鎌を、私めがけて振りかぶる。 「「ふっ!」」 ツガルさんが鎌を振り下ろすのと、私がジャンプするタイミングはほぼ同時だった。 一瞬ツガルさんの顔に笑みが浮かんだけど、すぐに消えた。 相手は、今の一撃で確実に仕留めたと思ったのだろう。確かに速かった。 でも、私が上に飛び乗れるほどのスピードの鎌なら、大したものではない。 「いきなり仕掛けるなんて、マナーがなってませんよ」 もう一度ツガルさんが鎌を振る。私はもう一度ジャンプすると、続けて繰り出された一撃をバック転してかわし、着地。さらに二歩、三歩と距離をとる。ツガルさんの表情から少しづつ余裕が無くなっていくのが分かる。 「焦らないでくださいな。まだ試合は始まったばかりですから」 ※※※ 驚いてるな。 対戦相手の気分がそれとなく伝わってきた。 今度はツガルが腰のアーマーから小さなミサイルを放つ。 「スプーンを足場にしてかわせ」 「了解」 メリーは短く返事をすると、腰にマウントしたスプーンを外し、地面に突き立てると片手でその上に逆立ちする。 ミサイルがスプーンにヒットし、噴煙をあげる。が、メリーは無傷。手に軽く力を込めて、反動でジャンプし着地。 「っ!」ツガルがまたも驚愕する。それから不良達と、俺の隣で見ていた健五も。 「なんだよアレ」 「三橋サンの神姫が軽くあしらわれてるぜ……!」 「お兄さん……!なに、この動き!?」 俺はにっかと笑って、健五に答えてやる。 「なんて事はねえさ。オーナーなら誰でもやってる事を、ちょっと突き詰めてやっただけだ」 「?」 「調整だよ。関節の動きから動作の確認、武装のチェックとか戦術の組み立てとか。それをちょっと頑張っただけだ。昨日の夜遅くまでな。感謝しやがれ」 しゃべっている間にも、相手はまた仕掛けてくる。短銃を三連射。メリーはスプーンを盾にしてそれをかわす。 「でもお兄さん、こんな動きって……」 「どっか街の神姫センターなりゲーセンなり行ってみ。みんなこんぐらい普通にやってんぞ」 今度はツガルが短銃を撃ちながら接近。スプーンでそれを防いだメリーだったが、それが相手の狙いだったようだ。背中に接続されたリアパーツの巨大なシザーで、メリーを挟み付ける。 「くあっ」 「おし! 捕らえた!」 「ああっ! だめだ!」 メリーが小さく呻き、不良どもが歓声を上げ、健五が叫ぶ。 シザーの出力が徐々に上がり、メリーのボディーが軋み始める。 「んうう……」 だが、俺の相棒はこんなもんじゃない。 「メリー」 「分かって、ますよ、アキラさん!」 俺の合図で、メリーは両腕に力を込める。すると、少しづつ、少しづつシザーが反対に開き始める。 「んううう……ううっ!」 「なっ……に!」 「そんな……どうして? お兄さん、なんでこんなパワーが?」 俺は人差し指をぴっと立てる。 「メリエンダタイプの神姫はな、神姫が使うには重いような人間サイズの物も扱えるくらい、本当は力が強い神姫なんだ。だから調整してやれば、このぐらいの力だって出せる」 「んう……う……たあっ!」 両手の力でシザーを無理矢理に押し開き、メリーが上に飛び出す。 「メリー、ビブラーターをジョイントに打ち込め」 「了解!」 メリーは空中で背中のパーツを外す。スプーンをマウントしていたそれから、使っていない一本を取り外せば、短銃「ポルボロン・ビブラーター」に早変わり。 そのまま相手の肩に飛び乗ると、その大きなリアパーツの継ぎ目めがけて光線を打ち込む。 「あっ!」 ツガルが驚愕するのと同時に、リアと、接続されていたアーマーが音を立てて外れる。 「ライトアーマー神姫には重武装の神姫には無い身軽さがあるし、どんなに外側が堅くても弱い一点を狙えば簡単にばらける」 アーマーが外れてしまえばこちらのものだ。メリーは銃を腰に戻すと、闇雲に振り回される鎌をかわしながら落ちていたスプーンを拾い上げる。 「つっ!」 そのまま助走をつけてジャンプし、相手の肩を踏み台にして真上へ飛び上がる。 「だめ押し!」 再びビブラーターを撃つ。放たれた光弾が、ツガルの素体の表面を焦がす。 「うあああ!」 ボディーを襲う痛みに、ツガルの足が止まる。 そのままメリーはツガルの背後に着地すると、スプーンを野球のバットの要領で振りかぶる。 ツガルの目が見開かれた。 「ばっ……化け物……」 「そんな、ひどいです」 短いやりとりをかわし、メリーがスプーンを思い切り振り抜く。 めしゃ、と音を立て、ツガルは筐体の外側の強化ガラスまではじき飛ばされた。 ガラス面に激突したツガルは鈍い音を立てて地面に落ち、同時に試合終了のブザーが鳴る。 「K.O! ウィナー・メリー!」 ジャッジの判定と共に、メリーはゆっくりとスプーンを腰に戻した。 「やあったあ!」 健五が両手を上げて喜ぶ。それを見ていると、俺にもやった甲斐があるってもんだと思う。 やがて、筐体の反対側からさっきの金髪が姿を現した。 「なっ……なんなんだよ……てめえ! どういう事だよ!」 「あ?」 「なんでノーマルの武装しかない神姫があんなに強えんだよ!あんなの……! どう考えても違法だろっ!」 「何が違法だってんだ。ただの調整だ。誰でもやってる事だろ?」 「けどっ……!」 「なんなら調べても良いさ。……だいたい、機動力が武器のはずのツガルにしこたま武装乗っけて、神姫本来の力が出せてねーじゃねえか。おめえは」 「……!」 無理も無いわけだよ。 「それに、人の神姫取ったり、ゲーセンで周りの迷惑考えず何時間もだべったり、どの口が人を違法って言えんだ、あ?」 「こっ……この野郎……!」 耐えかねた金髪は顔を真っ赤にして殴りかかってきた。 「おっと」 それを右手で受け止め、紫色になるくらい強く握ってやる。 「いっ、痛てててっ!」 「約束だ。あいつの神姫を置いて出てけ。こいつらの居場所に二度と来んじゃねえよ」 「わっ、分かった! 痛ててっ! 分かりましたっ!」 俺が手を離すと、不良達はクレアを台に置いてそそくさと店を出て行った。 「ふう」 これで一仕事終えたか。手近にあったベンチに座り込むと、メリーが俺の膝に乗ってきた。 「アキラさん、大丈夫ですか?」 「へーきだって。一服したら帰るぞ」 携帯の時計を見ると、時刻は三時にさしかかろうとしていた。あっちゃあ、もっと早く帰るつもりだったのになあ。 「あの、お兄さん」 「んあ?」 健五が俺の隣に座ってきた。両手に大事そうにクレアを乗せて。 「あの……クレアを助けてくれて、ありがとう。お兄さんのおかげで……」 「全くだ。ったく、良い迷惑だぜ。それと、お兄さんはやっぱ止めろ。輝でいい」 「じゃあ、輝さん」 俺はゆっくり腰を上げる。 「そいつ、大事にしてやれよ。それと、もう面倒起こすんじゃねーぞ」 「うん。……僕らももっと練習して、輝さん達みたいに強くなるよ」 「俺らみたいに・・・ねえ」 俺は立ち上がると、帰るぞ、とメリーに合図する。すると、メリーは俺の肩から飛び降りて、なにやら健五に耳打ちしだした。 ※※※ 「アキラさん、あんな事言って本当は恥ずかしいんですよ」 「え……」 「何かあったら遠慮せずに相談しに来てくださいね。お待ちしてますから」 ※※※ メリーは意外と早く戻ってきた。何を話してたんだ。 と、健五が立ち上がって何か叫んだ。 「輝さん!」 「あ?」 「ありがとう! ……あと、さっきの鯛がなんとかって、どういう意味?」 「あー? それはな」 「鰯みてえな安い魚でも、丁寧に洗えば鯛にも負けない味が出る」 つまりは。 「どんな物でも丁寧に使えば結果が出るってことさ」 第三話 箸とスプーンとおしゃべり子猫へ続く 武装食堂へ戻る
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Gene19の粉ミルクより母乳派(それ以前だし!) にーの丞:猫型まお(電ホビ限定マジョーラ素体) 装備:そもそもテストショットしか出てない奴をSS化するってどーよ 正に生まれたばかりの子猫ちゃん(武装無しだし)。子猫なので耳はヨコ(そういう事にしとけ)起動したてでマスターとはぐれる&よりにもよってにゃーの助に拾われるという不運なんだか悪運強いんだかよくわかんない子猫。セリフ少ないのはまだおつむが足んないからですにー。次登場したら(するのか)もう少しマシだと思うですにー。 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 にゃーの助:猫型マオチャオ(写真右) 装備:骨董品市で見つけた岩男ペケ用ライドアーマー(写真参照) 何気に最近鉄腕アルバイターと化してた(しかも人型神姫インターフェイス手に入れる為かよ)ヘタレスキーサド風味猫子。成猫なので耳は上。(上過ぎじゃというツッコミは全却下)。今回は力仕事用のライドアーマーに乗って登場だよ~(てか何人知ってるよ元ネタ)。あ、そうそうバイトの斡旋と人型神姫インターフェイスの横流し元は会長さんですよ。 イカロス:セイレーン型エウクランテ(写真左) 装備:ロウで固めた鳥の羽根・・・ってマジか!? とーとーヤラレシーン画像まで張られたもう説明する間も無くヤラレ役なアホ鳥。今回はスズメ? シナトラ:寅型ティグリース 装備:バロームっつーかガッタイダーっつーかブレンドンな合体武装パワードスーツ 何気ににゃーと共同経営でテキ屋やってたフーテンの寅子さん。ちなみにブッケ見つけた後も彼女が金稼ぐ理由は、マツケンが彼女の代金をラインバレルロボティクスから請求されてるから。非合法なコネで脅しかけるハサミからブッケの代金取り立てられない分上乗せで請求されてるそーな。大人ってヒドいね(そゆ問題か) ヘタレマスター:26歳無職 まあ今更説明してどうなるってくらいダメ人間なにゃーのマスター。当然ながら未婚。チョイ役の姉は既婚。ついでにデコ魔ちゃんこと妹も彼氏持ち。まあこの時点で明暗分かれてるわな(酷)ホントににゃーが人型神姫インターフェイス手に入れたらどーなんだかこのヒト。 おまけ:意外に多方面展開! にゃーの助バイト遍歴にゃ! 本屋(Gene4参照。まーデフォルトですにゃ) 神姫服屋『プチトマト』(Gene12参照ですにゃ。けっこうギャラ高いにゃ) 石焼イモ屋他、屋台店(Gene14おまけ、今回参照ですにゃ。焼きイモ屋、アイス屋、わらびもち屋、ポン菓子屋などバリエーション抱負にゃ。あとシナトラと共同経営にゃ) 各神姫メーカーのビラ配り(実は報酬として各メーカーの純正装備一式貰ってたりするにゃ) ちっちゃいもの研被検体(毎度ツボを抑えてるやらキチガイやらで、にゃかにゃか気が抜けないにゃー) 製薬会社被検体(寝てる隙にヘタレに飲ませてるにゃー。たまに青い泡吹くけど気にしないにゃー) 動物園案内員(神姫なら食われにゃいってライオンの間近でさせられたにゃ。まあ調教してやったがにゃ) 菓子工場作業員(なんだかにゃー、ここじゃにゃーとニンゲンが労働効率同じっちゅーのもせつないにゃ) ヒメガミ神姫センターバトル開設(現役にやらせるとはにゃかにゃか斬新にゃ) ピザ屋(ライドアーマーで運んだら速いけど電気代高いって追い出されたにゃ) カラオケ屋(一回神姫演歌歌手と一緒に仕事したことあるにゃ。自慢にゃ) 漫画家アシスタント(ベタが丁寧って誉められたにゃ。まーそりゃ尺度違うし~) ペットショップ(あの犬店員厳しすぎにゃ。後でこっそりケージのカギ開けてお返しにゃ) 目次へ