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296 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2010/12/30(木) 12 47 00 ID FUezUmtn0 [1/3] 桐乃「もうすぐ寅年もお終いよねー」 京介「あと少しで兎さんがコンニチワだな」 桐乃「でもアンタって寅っぽいこと何にもしてこなかったわよね」 京介「いやおかしいだろソレは。なんで寅年だから寅っぽいことしなきゃなんねーんだよ!?」 桐乃「つーワケで寅っぽいことしなさい」 京介「ええええ!?!」 桐乃「アンタが寅っぽいことしなきゃ、目覚め悪いでしょ? 清々しい気持ちで新年迎えられないじゃん!」 京介「……じゃあお前、兎っぽい事できんの?」 桐乃「は、はあ?」 京介「俺が寅ならお前が兎だろ。兄貴と妹なんだからよ。 俺が寅っぽいことするなら、お前が兎っぽいことするのが当然だよな?」 桐乃「ぐ…」 京介(へっ…どーだ、偶には俺だってやり返すんだぜ?) カリッ 京介「はうっ!?」 桐乃「な、な、何キモチワルい声出してんのよ!!」 京介「気持ち悪いって、お前、いきなり耳囓るヤツの方が気持ち悪いっての!」 桐乃「あ、アンタが兎っぽいことしろっていったんでしょうが!!」 京介「なっ…」 桐乃「兎は囓るでしょ! 歯でカリカリするのが兎じゃん!」 京介「俺の耳は人参かよ!?」 桐乃「うっさい! あたしは兎したんだから寅やれ馬鹿兄貴!」 京介「ぐ……お前、自分が兎だって分かってんのか?」 桐乃「は、はあ?」 京介「寅は肉食なんだぜ? 兎、食べられても文句言えねぇよなぁ!?」 桐乃「た、食べる!? 兄貴があたしを……!?!!?」 京介「がおー」 桐乃「は、ひ、ぽ…ま、まだ心の準備が……!?!!」 ベシッ 京介「痛っ!? お前、クッション投げ…ちょ、ま、パソコンは不味い、 それは当たったら肉体的にも金額的にも死ぬ……!?」 桐乃「うー…うー…」 京介「悪かった、悪かったから……(何でこんなに怒ってんのコイツ!?) 出てく、出てくから、俺は取り敢えずここから退散しますから気を沈めてください桐乃様!!」 ガチャ 桐乃「はぁ…はぁ……か、囓っちゃった……兄貴の耳囓っちゃった…… スンスン……はぁぁ…あたしの歯から兄貴の匂いがするよぉぉぉ…… ガチャ 京介「あ、クッション返すな。掴んだまま出てきちまったから」 桐乃「」 「ガチャ」でクンカ開始だと思ってたら大間違いなんだからねっ! 311 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2010/12/30(木) 13 54 22 ID FUezUmtn0 [2/3] 306 桐乃「妹のバニーガール見たいとか、さすが変態は格が違った。 っていうかコスプレは沙織か黒猫がいないと技術的にむり」 京介(やりたいのかやりたくないのかどっちだよ…) 沙織「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーンでゴザル!」 京介「うお!? どっから入ってきやがった!?」 沙織「煙突からだよロミオ。ちょっと遅めのサンタクロースさ」 京介「ウチに煙突はありません!」 沙織「きりりん氏が着たいのは赤のバニーですか?白のバニーですか?」 桐乃「ちょ…沙織、マジで着せる気?!」 沙織「マジもマジでゴザル。拙者も既に森の熊さんのコスプレをしているでござるよ」 京介「それボリノーク・サマーンだからね? MS少女になってるからね!? ……まあこれはこれで……ゴクッ……」 桐乃「キモッ、最低ェ、変ッ態」 京介「ジェットストリームアタック!?」 桐乃「で? 赤と白とどっちがいいワケ?」 京介「え? 何? 着るの?」 桐乃「あ、あんたがMSに欲情するような変態だからじゃん!? そんな斜め下の性癖を持つ兄なんておぞましいし? だからせめて人間の女の子に欲情するように矯正してあげようっていう あたしの気遣いが分からないワケ? だからアンタはキモ低態なの!」 京介「罵倒の三連星を略すなよ!?」 沙織「それで京介氏、赤と白、どちらにするでゴザルか?」 京介「なんで俺は妹が着るバニーガールの色を迫られているんだ!? どんな変態だよ!?」 桐乃「うっさいなぁ…あたしが着るっていうんだから、決めればいいじゃん それともアンタ、あたしのバニーガール姿見たくないっての?」 京介「それは見たい…(って何言ってるんだ俺!? 妹だぞ!!」 桐乃「へ、へ~み、見たいんだ……ふ、ふーん……じゃ、じゃあ選びなさいよ」 京介「(妹、妹、妹、桐乃は妹、妹のバニーガール姿を見たいとか兄貴失格、失格……) そ、そーだな、残念ながら俺の好みはゴールドだ、黄金だ、百式色のバニーさんだ。 ここにはねぇ! つまり桐乃がバニーさんになる必要はないってこった!!」 沙織「むぅ…ここにきて踏み留まるとは京介氏も強情でゴザルなぁ」 桐乃「金色のバニーは無いの?」 沙織「用意してなかったでゴザルよ」 京介(なんでそんなにノリ気なんだよ桐乃!?) 沙織「ではきりりん氏のコスプレは諦めるとして、京介氏はこれにお着替えくだされ」 京介「え?」 ・ ・ ・ 京介「………」 沙織「よくお似合いですぞ、京介氏。いや京ックス氏」 京介「全然うまくねーからな! つーか何でキツネ?! 十二支関係ないだろ!!」 桐乃「プ…プププ……コーンって鳴いてみてよ、コーンって…プッ……」 京介「……コーン」 沙織(やるのでござるな……さすが京介氏は一流のシスコンでござる……) カキカキ 京介「って、お前、人の頭に何書いてんだよ? つーか油性!?」 沙織「ほら京介氏、もう一回コーンと鳴いてくだされ」 京介「ああもう……コーン……これでいいか?」 桐乃「あぅ…」 京介「何赤くなってんの?」 沙織「もう一回!もう一回!」 京介「キャラ違くねぇか、沙織……コーン」 桐乃「ア、アンタ、なにやってくれちゃってるのよ!?!」 京介「なんでお前が怒るんだよ!? (ん? ガラスに顔映ってら。額に書かれているのは…… 片仮名二文字で、ええっと、反転しているから……)……シス?」 沙織「コーン♪」 -------------
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530 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/03/18(金) 22 48 03.38 ID LMy5gHpJ0 [2/2] 今朝、アメリカより電話があった。 娘の桐乃が、留学先で体調を崩しがちらしい。 もとより、桐乃の留学には反対していた。 言葉も食事も習慣も異なる異国の地。 日本人よりも体躯・身体能力に恵まれた外国人のライバル達。 それらの問題に相対するには、桐乃はまだ幼すぎる。 案の定、心配した事になってしまったではないか。 即刻、署の同僚に連絡し 急だが暫く有給休暇を取る事を告げると、桐乃の勧めで購入したパソコンにて、航空会社のホームページを開く。 幸いにして、今日の最終便の席を確保する事ができた。 (この時ばかりは、”インターネット”なる物の存在に感謝した。) 桐乃がアメリカに発ってから、少しずつ旅行の準備も進めていた。 このような事態に陥らずとも、娘の様子を見に行くのは親としては当然であるしな。 よって、最低限の身支度を整えるだけで、全てが事足りた。 あとは、時間を見て空港へ向かうだけ、なのだが――― 「 ただいま〜 ……って、なんで親父がいるんだ!? 」 時刻は四時を少し回った処。 そうか、もう京介が帰ってくる時間か。 確かに、驚くのも無理はなかろう。 平日のこのような時間に、家に俺がいるのだからな。 だが、京介に詳しく事情を話すほどの時間は――― 「 まあ、それなら丁度いい。 親父、大事な話があるんだ。 ……桐乃のことで。 」 「 …………どういう事だ。 」 まさか、ここで桐乃の名前が出てくるとはな。 だが、京介の目は将に真剣そのものだ。 その眼差しは、一年前に、桐乃のいかがわしい(と思い込んでいた)趣味の件で俺に詰め寄ってきた あの時を思い起こさせる。 いいだろう。お前の話を聞こうではないか。 「 ……まずは、このメールを見てくれないか。 」 差出人は、当然ながら桐乃で、着信時刻は…… ほんの一時間前ではないか。 それで、肝心の内容は………… 「 ………………………どういう事だ、これは。 」 「 それを聞きたいのは俺のほうだよ、親父。 そもそも、親父にだって分かってるはずだろ? 桐乃が、どれほどあの趣味を大事にしているのかは。 」 それについては、言うまでもない事だ。 一年前、このようないかがわしい趣味は即刻止めろと命じた時、桐乃は泣きながら俺に掴みかかってきた。 京介に諌められ、渋々ながら認めた後もずっと俺なりに あの趣味に関わる桐乃を見続けてきた。 そうして得た結論は―――― あの時、京介の言葉を聞き入れなかったら 俺は、桐乃の掛替えのない物を踏み躙る処だったのだ、という事だ。 「 あのオタクグッズのコレクションは、桐乃にとっては命よりも大切なものなんだよ。 ましてや、あの中には、俺と黒猫と沙織とあやせとであいつにあげたプレゼントだって含まれてるんだ。 そんな物を捨てろだなんて、そんな馬鹿なコトをあいつが言うなんて、絶対にありえねえんだ。」 「 ………………………… 」 「 思うに、コイツは桐乃からのサインなんだ。 あいつは、こんなトチ狂ったことをほざいちまう位に 向こうで追い詰められているんだよ! 」 「 ………………………… 」 「 あいつはアメリカに発ってから、誰とも一切連絡を絶っていた! あやせや黒猫や沙織とも!! なのにあいつは、あやせでも黒猫でも沙織でもなく、この俺に話を持ちかけてきた!! あやせは、桐乃の力になってあげてくれ、と言ってくれた!! 黒猫は、ぐずぐずしないで早く妹を助けに行け、と俺の尻を引っ叩いてくれた!! ――――だから、頼む親父!!!! オレをアメリカに、桐乃の元に行かせてくれ!! これはあいつからの人生相談なんだ! だから、俺はあいつの話を聞いてやらなきゃなんねぇんだよ!! 」 「 ………………………… 」 ………………そういう事か。 今、桐乃は助けを必要としている。 それだけは確かな事だ。 だが、その助けになってやれるのは――― 俺でも学校の友人でもなく、京介だけだ、という事か。 ならば、俺が言える事はただ一つだ。 『 よし! 行ってこい! 』 京介は、中学の時の修学旅行でパスポートを作っていた筈だ。 旅行のための準備は、既に済ませてある。 『 必要なものはすべてその中に入っている。 遠慮なく持っていけ。 』 …………ふっ。 京介の奴、何を呆けた顔をしているのだ。 まあ、確かに色々と俺に尋ねたい気持ちは分かる。 何故、このような時間に俺が家にいるのか。 何故、旅行の準備が万全なのか。 だが、そのような事は瑣末な事だ。 今のお前は、ただ一つ、桐乃の事だけを考えていればいい。 だから――――― 『 ―――京介。 すべておまえに任せる。 頼むぞ。 』 ………5巻P266に続く。 -------------
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729 名前:【SS】:2014/08/02(土) 16 27 35.72 ID AEgRSl/I0 『12巻原作補完あやせ視点』 ~クリスマス十二月二十五日~ わたしは新垣あやせ。ティーン誌の読者モデルなんかもやってる、今を時めく中学三年生。 さてさて、今日は冬休み直前最後の登校日。終業式も無事終わり、クラスメイト達が「よいお年を」という言葉を残して教室を去っていく。 受験が迫りつつあるが、お正月というイベントへの期体感が教室中に漂っている。 とても和やかな雰囲気... が!!わたしは心中穏やかでなかった。 「どうしてっ桐乃がいないのっ!?」 そう叫びながら机を強く叩いて勢いよく立ち上がる。 「ちょ。あやせ突然でっけぇ声出すなよナ?」 下の方から非難の声を挙げたのは来栖加奈子。 口が悪いのが玉に瑕だが、あと未成年なのにタバコを吸っていたこともあったが、それに立ち居振舞いが何かと下品だが、加奈子の欠点を並べ立てているうちに自信がなくなってきたが、わたしの良い友達の一人だと思っている…多分。 補足だが、その貧相な体形を活かして、とある少女向けアニメの公認コスプレイヤーなんかもやっている。 「にしてもよー。桐乃のヤツ、マジでバカじゃね?風邪ひいて学校休むとかwww確か去年も風邪で倒れてたしwwwww加奈子なんか休みなしだから皆勤賞貰えるんじゃネ?うへへへへ」 そうだね。加奈子は馬鹿だから風邪ひかないよね。 ニヤニヤしながら喜ぶ加奈子。悪ぶっているのかそうでないのかよく分からない。 「でも加奈子、遅刻ばっかりしてたよね?皆勤賞は無遅刻無欠席じゃないと貰えないよ?」 「うへぇ~…」 加奈子は机に倒れ掛かって心底残念がっている。 「それにしても桐乃、どうしちゃったのかな…」 先程から話題に出ている『桐乃』というのは、わたしの一番の親友でフルネームは高坂桐乃。 成績優秀で運動神経抜群、ファッションにも凄く気を使っていて何時も可愛い。それに真面目で努力家、みんなに優しい。 わたしはそんな桐乃を憧れと尊敬の眼差しで見つめている。愛していると言ってもいい。 しかし、桐乃にも人には言えない秘密がある。何を隠そう桐乃は妹もののエロゲーをこよなく愛する超絶ヘビーでディープなオタクなのであった。 加奈子は桐乃が休んでいるのは体調を崩しているからだと思い込んでいるようだが、そうではない。 わたしも最初は加奈子と同じように考え、先生に桐乃の容体などを聞いた。しかしその返答が予想外のものだった。 『風邪?なんのことだ?高坂からは何の連絡もないぞ』 要するに、サボり。休む何かしらの理由があるなら、真面目な桐乃はちゃんと学校に連絡するはずだ。何も言わずに学校を休むなんて、普段の桐乃じゃ有り得ない。 と言うことは、その有り得ない何かが桐乃の身に起きたに違いない。 心配になったわたしは、頭の中で考えを巡らしながら荷物を持ち、加奈子を放置して教室を出る。廊下の冷たい空気が、教室内にエアコンが効いていたことを思い出させる。 靴箱で靴を履き、校門まで歩く。校舎の外は風を遮るものがなくより寒い。校庭の桜の木もすっかり真冬の装いだ。 歩きながら考えたことだが、桐乃のことは桐乃に聞くのが手っ取り早い。校門の外に出て携帯を取り出す。電話帳から目的の名前を探しだし、コールす… 『お掛けになった電話は、電源が入っていないか、電波の届かない場所にあるため…』 コールされなかった。呆然として手に握り締められた携帯を見つめたまま立ち尽くした。 暫くして脳を再起動させる。やはり何か予期せぬことが発生しているらしいことを確信する。 あらゆる可能性を探っていると、頭の中に悪い想像が立ち籠め始めた。 まさか、事故……? でも、桐乃に限ってそんなこと…! 頭をブンブン振り回して嫌な想像を振り払う。 と、そこで1人の人物の顔を思い出す。その人物なら桐乃のことを知っているかもしれない。 再び電話帳を開き、名前を探す。その人物の名は、さっき電話した桐乃のすぐ1つ上。 そうして見つけ出した「高坂京介」という名前。 桐乃の実の兄で桐乃とも仲が良い。優しくてお節介でシスコンなお兄さんだ。 3週間ほど前にお兄さんに告白して振られてしまったのはここだけの話。 実はその日からお兄さんとは1度も言葉を交わしておらず、少し躊躇いながら通話ボタンをプッシュした。 『お掛けにな』 .................ブチッ。 危うく脳内出血で逝きかけた。肝心な時に役に立たないお兄さんだ。 暫くして脳をクールダウンさせる。 だが、こんな偶然があるのだろうか?兄妹揃って携帯(桐乃は最近スマートフォンに買い替えたが)の充電が切れているなんて。 桐乃の無断欠席には、恐らくお兄さんも関係しているに違いない。第一、桐乃の様子が可笑しな時に、お兄さんが関わっていなかったことはないのだ。関わっていなくても自ら関わりにいくのがお兄さんなのだ。 徐々にお兄さんへの疑惑が膨らんでゆく。 しかし桐乃ともお兄さんとも連絡がつかない。 どうすべきか悩んでいると、ふと、半年ほど前のことを思い出す。お兄さんは一度、わたしと連絡を取るためにお姉さんの携帯を借りたのだ。それなら今回はその逆の経路を辿れば良い。 三度電話帳を開く。そしてお姉さんの名前「田村麻奈美」を探す。 田村麻奈美先輩はお兄さんの幼馴染みで、わたしも仲良くさせてもらっている。その料理の腕や、決して人を不快にさせない懐の深さについてはわたしも見習わなければならない。 通話ボタンを押す。その瞬間、二度あることは三度あるのではないかと不安になる。しかしすぐに呼び出し音が鳴り始めて安心する。 prrrrr..... 少し待つと呼び出し音が途切れた。 「もしもし?あやせちゃん?おはよ~」 お姉さんのふわふわした声を聞いて波立っていた心が鎮まった。 「おはようございますお姉さん。お姉さんに頼みがあるんですが、お兄さんが近くにいるなら電話を代わってもらえませんか?」 「きょうちゃんに?きょうちゃんなら今日は学校お休みだよ~」 「え?」 「今朝電話があって、『今日は待ち合わせ場所に行けないから先に行っといてくれ~』って言われたの。遅刻するって意味なのかな?って思ったけど、結局学校には来なかったよ~。一体どうしちゃったのかな~?」 あまりの事態に頭が働かない。何も言えずにいると、お姉さんが言葉を続けた。 「ところであやせちゃんは、きょうちゃんにどんな用事があったの?」 「じ、実は桐乃のことなんですけど…」 「桐乃ちゃんのこと?そういえば何日か前に、『イブの夜は俺も桐乃も麻奈美ん家にお邪魔していることにさせてくれ!』ってきょうちゃんにお願いされたけど…?」 「えええぇぇえええぇ!?!?」 「驚きすぎだよあやせちゃん」 「もしかしてそのお願い、了承しちゃったんですかっ!?」 「うん。」 今更ながら思い出す。イブの日に遊ぼうと桐乃を誘ったのだが、あっさりと断られてしまったことを。 「どっ、どうしてですか!?!?桐乃がお兄さんを本気で愛しちゃってることお姉さんも勿論知ってますよね!?」 「きょうちゃんにお願いされると断れなくて。えへへ~」 そう。さっきお兄さんのことをシスコンだと紹介したが、対する桐乃はブラコンだ。これも彼女の知られざる一面なのだ。 「イブの夜に二人きりにするなんて………。お姉さんてお兄さんに甘いですよね」 「ふふ。確かにそうかもしれないね。でも安心してあやせちゃん。わたしがあの2人を"普通の兄妹"にしてみせるから………。」 お姉さんとの通話を終えて、あの時の2人の言葉の意味を考える。 『エロゲーよりすっごいことしてやるんだから!』 『ごめんな、俺、好きなやつがいるんだ。』 イブの日、桐乃はお兄さんを連れて家を出た。お兄さんも桐乃に頼まれ、帰宅時間を延長するためにご両親に嘘までついた。 そして年に1度の聖なる夜に、桐乃はお兄さんに自らの抑圧された想いを打ち明ける…。 桐乃の想いを知ったお兄さんは何と答えたのだろうか……? prrrrr..... 突然携帯の呼び出し音が鳴り響き、思考が中断する。お姉さんとの電話がまだ繋がっているのかと一瞬錯覚するが、そんな訳はなかった。 ディスプレイに表示されたのは、「高坂桐乃」の文字。 「…もしもし」 『もしもしあやせ?ごめんごめん。電車乗ってたから電源切ってたんだ』 電話口から親友の呑気な声が流れ出してくる。何故かその呑気さに腹が立ってくる。 「そんなことより、桐乃今大丈夫なの!?」 『うん?大丈夫だけど?』 「じゃあどうして学校に来なかったの?」 『あ、いやちょっと用事があって』 「何で学校に連絡しなかったの?」 『そ、そりゃあたしだって忘れることぐらい…』 「ねえ。今どこにいるの?誰といるの?」 『…。』 「お姉さんから聞いたんだけど、昨日、」 桐乃を取り囲む包囲網を更に狭めようとした、その時。 「おいあやせ。お前チョーおっかない顔してるぞ」 突然現れた声の方を振り向く。 いつから傍にいたのか分からないが、珍しく加奈子が怒った顔をしてこちらを睨んでくる。 「何で桐乃を苛めてんだよ」 「わたしが桐乃を?そんなこと…!」 「じゃあさっきから何してんだよ」 「それは!桐乃を心配して…」 「ならもうイイじゃんか。電話で何話してんのか詳しいことは加奈子ワカンネーけどよ、桐乃は元気なんだろ?風邪なんかひいてないんだろ?だったらそれで十分じゃネ」 そうだ。桐乃は病気だった訳でもなく、かといって想像し得る最悪の事態――事故に遭遇したわけでもなかった。 機嫌だって良さそうで、気分が落ち込んでいるような様子さえない。桐乃は元気なのだ。 「桐乃だって何か家庭のジジョーってヤツがあったんだよ。それにサ、人には誰にだって他人には言えない秘密の1つや2つ、あるんじゃねーの?加奈子だってコスプレのこと、クラスのヤツらにはあんまし知られたくねーし」 秘密の1つや2つ…。桐乃の秘密――オタク趣味。 桐乃と絶交しかけた時のことを思い出す。また、同じ過ちを繰り返すところだった。加奈子に目を醒めさせられた。 1つ、大きな深呼吸をする。無意識のうちに強張っていた顔の筋肉がそうすることで少し緩む。加奈子の言う通り、恐い顔をしていたのだろう。 もうわたしは大丈夫。そういう意味を込めて加奈子にウインクを送る。加奈子も笑い返してくれた。 「もしもし桐乃。ごめんなさい。わたし、また…」 『あやせは謝らなくて良いよ。だってあたしのことを心配して電話してくれたんでしょ?』 「でも…」 友達を心配することと、その心配を解消するために相手を問い詰めることは、全くの別物だ。 そもそも桐乃がお兄さんに告白したなんて、全てわたしの妄想でしかない。 『学校休むこと事前にあやせに伝えてなかったあたしが悪いんだって。あやせが心配しちゃうのも無理ない。それに、まだ……あやせには言えないんだ、今日のこと。それに昨日のこと。それは本当にゴメン』 「…。」 『でも、いつかきっと話すから。全部あやせに話すから。いつになるかは分からないけど、必ず。』 「うん…。分かった。それまで待ってる」 『…ありがとう。あやせ。』 しんみり空気を打ち破るため、わたしは努めて元気な声を出す。 「ところで桐乃!」 『な、なに?』 「お正月…一緒に元日に初詣行こうよ!」 『う~ん。その日は先約があって…一月二日なら』 「仕方ないなぁ~もう。じゃあ一月の二日。約束だよ?」 『うん!』 「それじゃ桐乃。よいお年を!」 『よいお年を!』 電話を切り、鞄に片付ける。無言のままの加奈子の方へ向き直る。 「加奈子、さっきはホントにありがと。もう少しでまた桐乃を傷つけるところだった。加奈子もたまには良いこと言うよね」 「だべ?だべ?うへへ」 「随分待たしちゃったね。そろそろ帰ろっか?」 ニッと笑う加奈子。わたしが歩き始めると、加奈子もヒョコヒョコと横を歩く。 「んなことよりよー。初詣、加奈子も連れて行ってくれるんだよナ?」 「もちろんだよ。加奈子」 わたしは本当に掛け替えの友達を持った。そのことを神様に感謝する。 陽が高く昇り、先程までの寒さも幾らか和らいでいた。 来年も楽しい一年になる。そんな予感がした。 追記だが、家に帰り着いた頃にお兄さんからも電話があった。 酷く緊張したような声色だったが、全て解決したとだけ伝えると、どこか拍子抜けしたようだった。 ≡ ≡ ≡ ≡ ≡ ≡ ≡ ≡ ~来る新年一月一日~ ここは近所のとある神社。境内には様々な出店が立ち並び、参拝客で混み合っていた。 ここにわたし新垣あやせは家族と初詣に来ていた。 本殿の前には30mほどの人の列があり、わたしたち家族もその最後尾に並ぶ。 財布の中から五円玉を探していると、人混みの中でも一際目立つライトブラウンの髪が視界の端に映りこむ。 声を掛けようと喉から言葉が出かかるが、寸前のところで呑み込んだ。 桐乃がお兄さんと歩いていたからだ。ご両親の姿は見えない。あちらはわたしの存在に気付いてないようだ。 そう知ったわたしは話し掛けずに様子を見ることにする。 2人は既に参拝を済ませたようで、お守りなどが売っている方へと歩いていく。 桐乃とお兄さんはそれぞれ高校受験と大学受験を控えているので合格祈願のお守りを買うのだろう。わたしは推薦で進学先が決まっているのでその点は心配ない。 2人は色取り取りのお守りを眺めた後、黄色いお守りを1つずつと、それに加えてお兄さんは白いお守りも買っていた。 売り場を離れると、お兄さんは桐乃に今さっき買ったばかりの白いお守りを差し出す。桐乃も予想外だったのだろう。驚いた顔をするが、すぐに相好を崩す。 それは今まで見たこともないような、最高の笑顔だった。 桐乃にあんな表情させちゃうなんて、妬けちゃうなぁ... 桐乃がお守りを受け取ると、お兄さんも照れくさそうにそっぽを向いて頭を掻いた。 2人が再び移動を始めると、わたしの並んでいた列も動き出す。慌てて間を詰めてもう一度2人を探す。 見つけた桐乃とお兄さんは、今度はおみくじを引いている。 桐乃は大喜びしているが、大吉だったのかな?お兄さんは微妙な顔をしている(お兄さんへの悪口ではない)。 一頻り喜んだ後、桐乃はおみくじに書いてある内容を熱心に読み始めた。 すると桐乃は途中でポッと頬を染め、同じところに何度も何度も目を通す。 そんな桐乃の様子にお兄さんも気付いたのか、桐乃の持つおみくじの方へ手を伸ばした。 それをいち早く察知した桐乃も素早く身を翻らせておみくじを守り、そのままの勢いで近くの木の傍まで駆け寄っていく。そしておみくじを大事そうにその木の枝に結び付けていた。 2人はその後、出店でベビーカステラを買って鳥居の外へ消えていった。 今見た桐乃とお兄さんの様子はとても仲睦まじい兄妹の様に見えた。事実2人は何だかんだ言いながらも仲が良く、今だって2人で初詣に来ていた。 しかし、長い間あの兄妹を見てきたわたしには、先程の2人が"仲睦まじい兄妹を演じている"ように感じたのだった。 ~翌日一月二日~ 翌日、わたしは約束通り、桐乃・加奈子と初詣に行くために待ち合わせ場所に向かっていた。 待ち合わせ場所を見通せる場所まで来ると、向こう側から桐乃が歩いて来るのが見えた。 お互いに相手の姿を認め、二人同時に駆け足になる。そして丁度待ち合わせ場所であるバス停で落ち合った。 「明けましておめでと、あやせ!今年一年よろしくね」 「桐乃。明けましておめでとう。こちらこそよろしくね!」 既に年賀状やメールで済ませていた挨拶だが、やはり直接面と向かって言うのは特別だ。 約束の時間までは15分ほどあったので、誰々ちゃんから来た年賀状がカワイイ~みたいな話をしながら加奈子を待つ。 因みに今日行く神社は、昨日の所とは別の、少し遠くにある大きな神社だ。 暫く話していると後ろから声が掛かる。 「うい~~~っす。桐乃あやせ、あけおめことよろ。……って何だよそれ!?」 待ち合わせ場所に来るなり、加奈子は何やら不満げに声を荒らげる。 「加奈子明けまして……何のこと???」 桐乃は何のことか分からず、頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。 「それだよそれ!どうしてお揃いなんだよ!」 加奈子の指差す先にはわたしたちの持つハンドバッグ。桐乃のそれには2つのお守りがついていた。 実はわたしも昨日、桐乃とお兄さんを見送ったあと、桐乃がお兄さんに貰っていた白いお守りと同じものを買っていたのだ。 「あっホントだ!あやせもあの神社に行ったんだ?お揃いだね。へへへ」 「うん。家族で行ったんだ」 「そうなんだ。わたしも家族と…ね?」 嘘は言っていないが、お兄さんと2人きりであったことはボかす桐乃。 それに、普通家族で初詣に行くことを「先約」と表現するだろうか? 「お守りのことは分かったケドよー。オメーらそれじゃ"初"詣にならねーじゃんかヨ?」 とまだ不満を漏らす加奈子。 「細っかいなー。お正月中に神社にお参りするのは全部初詣ってことで良いの良いの」 「加奈子は昨日、家族で初詣とか行かなかったの?ほら…加奈子のお姉さんとか」 「姉貴は寒がりだからコタツから動こうとしねーんだもん」 そうこう言っているうちにバスが近付いてきた。 「あっそうだ。加奈子チョー良いこと思い付いちゃった。ニヒヒヒヒ」 「なになに?あたしにも教えてよ加奈子」 わたしたちの目の前にバスが停まる。 「これから行く神社で恋愛成就のお守り買うンだよ。桐乃も買っといた方がイイんじゃねーの?」 「あ…あたしは別に…良いかな?」 「あん?どーゆー意味だよ桐乃テメー」 バスの扉が開き、桐乃と加奈子が並んでバスに乗り込む。わたしも二人の後を追う。 「深い意味はないってば」 「目が泳いでんゾ?」 バスのステップを上っていく桐乃に合わせて、2つのお守りが楽しそうに揺れている。 1つは合格祈願の黄色いお守り。 そしてもう1つの白いお守りは、お兄さんが桐乃に贈った、一年間の無病息災を願う健康祈願のお守りだった。 ≡ ≡ ≡ ≡ ~三月中旬~ 卒業式を間近に控えたある日、わたし新垣あやせはいつもの児童公園に来ていた。もちろんお兄さんと会うためだ。 最近暖かい日が続いていたのだが、今日は真冬の寒さに戻っていた。 座っているベンチからも体温が奪われていく。 「あやせ~~!」 公園の入り口からお兄さんが小走りでやってくる。 わたしもベンチから立ち上がる。 「はあっ…はぁっ…はぁ…体がすっかり、はぁ…鈍っちまってる…」 お兄さんの吐く息が白く結露している。 「お兄さんお久し振りです。…大丈夫ですか?」 「は…ふぅ。大丈夫だ。待たしちまったな」 「待たされ過ぎたので風邪をひいたら責任取ってくださいね?」 「ハハッ。そりゃ済まねぇな。………確かに、あやせとこうして会話するのも久し振りだな」 電話をしたり、一方的に姿を見かけたりしたことはあったが、顔を合わせて会話をするのは去年の告白の日以来ということになる。 たった数ヵ月前のことだが、随分前のことのように感じる。あの時お兄さんの前で流した涙を思い出し、少し恥ずかしい。 お兄さんもあの時のことを考えていたのかは定かでないが、わたしが再び話し始めるまで黙っていた。 「ところでお兄さん、大学合格おめでとうございます」 「ありがとう。ぎりぎり滑り込みセーフだ」 冗談めかしてお兄さんは笑ったが、表情がすぐに真剣なものへと変わる。 「…そんなことより、今日は何の用だ?それを言う為だけに呼んだんじゃないだろう?」 「お兄さんは分かっているんじゃないですか?」 「さぁ…?何のことだか」 トボケるお兄さん。 「思い当たることがあるんじゃないですか?」 「……桐乃ことか」 「やっぱり分かってるじゃないですか。そう…、桐乃と、お兄さんのことです」 あの去年のクリスマスから、より注意深く桐乃を観察していたが、イブの夜を始まりに2人が付き合っていることは99%疑いようもない。 そのことについて決着をつけるため、今日お兄さんを呼び出したのだ。本当はもっと早くに呼び出したかったが、お兄さんの合格が分かるまでは邪魔できなかった。 「桐乃には手を出すな、と何度も言いましたよね」 「ああ。」 「どうしてこんなことになったんですか」 「ちょっと待ってくれ。俺が桐乃と付き合う訳ないだろ?」 お兄さんは飽くまでもシラを切り通すつもりのようだ。 「嘘は止めましょう、お兄さん。桐乃も加奈子もわたしも、何も言いませんが、みんな知っています。わたしと加奈子が振られて、桐乃がお兄さんと付き合っていることを」 わたしたちは親友だ。口に出さずとも分かるのだ。 「…どうしても、言わなくてはならないのか?」 「別に良いです」 「え、良いの!?」 「お2人が付き合うに至った経緯は……お兄さんの口じゃなくて桐乃の口から聞きたい…。桐乃と、約束しましたから。」 あの日の約束はまだ果たされていない。 「ということは、あやせは俺と桐乃とのこと、認めてくれるのか?」 「誰がそんなこと言いました?付き合い始めた経緯をお兄さんから無理矢理聞き出すことはしませんが、それと認めることとは別問題です。」 「…。」 「第一、黒猫さんのことはどうしたんですか。お兄さんは別れても尚、黒猫さんのことが好きだったんじゃないんですか。」 黒猫――五更瑠璃さんは桐乃のオタク友達で、お兄さんの元彼女。格好も喋り方も性格も一癖あるが、悪い人ではない。 「わたしも彼女と連絡を取り合うようになりました。彼女は桐乃の為に一度身を引いたらしいですけど、彼女の辛さを想像したことがあるんですか。」 「黒猫は分かってくれているはずだ。」 「黒猫さんだけじゃありません。いつも元気な加奈子だって、一時期落ち込んでて。」 「俺なんかより好い人を見付けられるさ。」 「それに、誰よりもお兄さんを良く知っていて、お兄さんのことが好きな人だっているんですよ。」 「もしそんな人がいたとしても、俺は桐乃を選ぶ。」 「このことをご両親に知られたら、お兄さんも桐乃も勘当されてしまうかもしれないんですよ。」 「覚悟はしてる。」 「兄妹で好き合っているなんて世間に知れたら、お兄さんだけでなく桐乃も傷つくことになるんですよ。お兄さん1人で、世間の冷たい目から桐乃を守れるんですか。お兄さんが桐乃と付き合うことで、桐乃をその危険に曝していることが分からないんですか。 本当に桐乃のことを愛しているなら、桐乃と付き合うべきではないんじゃないですか。そんなに妹のことが好きなら、とっとと駆け落ちでも何でもして下さいよ、このっ…変態。」 「あやせお前泣いて…」 「泣いてなんか、いません、よ…っ」 精一杯強がりを吐いたが、知らぬ間に頬を雫が伝っていた。 「認められるわけないじゃないですか!沢山の人を傷つけて…!おまけに社会的に抹殺されてしまうかもしれないようなリスクまで背負って…!赦せるわけ…っ、ないじゃないですか…っ!」 兄妹で恋愛なんて間違ってるに決まっている。桐乃の考えていることも、お兄さんの考えていることも、全く理解出来ない。 ギリリと奥歯を噛み締め、流れる涙を手で拭う。それでも涙は止まらない。 「でも…っ、あんな幸せそうな顔を見せられたら、もうわたし…っ、何も言えないじゃないですか……」 クリスマスからの桐乃の表情は、自分が幸せだということを雄弁に物語っていた。全てのリスクを承知した上で、あんなにも幸せそうにしているのだから、それ以上は何も言うべきことはなかった。 そのまま、涙が自然に流れるに身を任せる。またお兄さんの前で泣いてしまった。 お兄さんもわたしが泣き止むのを待ってくれていた。 「こほん。」 1つ咳払いをして話を再開する。 「桐乃の笑顔に免じて特別に赦してあげます。でもわたしの言ったことを忘れないで下さい。お兄さんが桐乃を笑顔にしている裏側で、何人もの女の子が泣いていることを。今でもお兄さんと桐乃は、危ない橋を渡っているということを。」 わたしは桐乃の敵にはなれない、最初からそう分かっていた。かと言って2人の関係を積極的に認めることも出来ない。 2人の世間での立場が危うくなることを承知していながら、それでも兄妹恋愛の道へ背中を押す黒猫さん。 自らが世間の代表者として、2人の前に立ち塞がろうとしているお姉さん。 二人の行動は真逆だが、どちらもとても残酷で、しかしその実は、真に桐乃とお兄さんを想ってのことなのだ。 本当に2人に対して甘いのは、お姉さんではなく、どちらにもなり切れないわたしの方だ。 「分かった。その言葉、胸に刻むよ」 ずっと溜まっていたモヤモヤを全て吐き出すと、急激に視界が広がる。公園の桜の木が、春の兆しを感じさせる。 「お兄さん、もう1つだけお話を聞いて下さい。お兄さん、"最後の"ご相談があります。」 「……何で最後なんだ?」 「桐乃もわたしも加奈子も、みんなバラバラの高校に進学します。だから…」 わたしは推薦で私立へ。桐乃と加奈子は偏差値が違い過ぎた。 それでもわたしたちは親友だ。今後もそれは変わらない。しかし今までのように何時も一緒という訳にはいかない。否応なしに疎遠になるだろう。 そうなれば自然とお兄さんと会うことも減る。場合によっては二度と会うこともないかもしれない。 「そんな寂しいこと言うなよ。俺達はもう、友達だろ?」 桐乃を介した関係だけではない、とお兄さんは言ってくれている。 友達だと言われたことと友達以上にはなれないこと、両方の意味で心に沁みる。 「いいえ。わたしも何時までもお兄さんに頼りきりではいられません」 みんな別々の道を進んでゆく。何時までも子供のままではいられない。自立しなくてはならない。 「でも、一人じゃどうしようもない時は、何時でも相談に乗るからな?」 「お兄さんってホントにお節介ですよね」 「俺が好きでやってるだけさ」 お兄さんは最後まで、誰にだって優しいのだ。 「そろそろ話を本題に戻しますね?」 最近の桐乃の様子について思い出す。 「最近の桐乃、時々物凄く泣きそうな、不安そうな顔をしてるんです。基本的には笑顔なんですけど、油断した時にほんの一瞬だけ、そんな表情を見せるんです」 「あやせもやっぱりそう感じるか?」 やはりお兄さんも同じことを感じていたようだ。 「でも、わたしにはどうしてあげることも出来ないんです。どうにか出来るのは、お兄さんだけでしょう?」 桐乃が世界で一番愛し、桐乃を世界で一番愛している、桐乃の変態彼氏に向かって語り掛ける。 「だから、桐乃のことは、お兄さんにお任せします。その代わり…」 桐乃とお兄さん、2人の行く末に思いを馳せる。 このまま茨の道を突き進むのか、それともどこかで終止符を打つのか。どちらにしても、2人はとても辛い思いをするだろう。 しかしそんなことは2人とも、付き合い始めたその時からとっくに分かっていたはずだ。 だからこそ、敢えてわたしはお兄さんに言い放つ。 「もし、桐乃を泣かせたりしたら、今度こそ絶対にお兄さんを赦しませんからね?」 お兄さんも負けじと言い返す。 「俺に任せろ。最後にゃあいつをとびっきりの笑顔にしてみせるからよ!」 寒空を見上げると、一筋の飛行機雲。 あの飛行機はどこに向かっているのだろうか。 わたし達は、そして桐乃とお兄さんは、どこに向かっているのだろうか。 風に流され消えてゆく飛行機雲を見ても、答えは1つも見付からない。 卒業の日まであと数日。 大きく膨らんだ桜の蕾が、本格的な春の到来を今か今かと待っている。 "別れ"の時は―――もうすぐそこだ。 完。 ----------
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165 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/07/08(金) 14 10 19.05 ID J5C/wtQV0 [3/5] 160 大介さん、二人の関係が正しい事を私が論理的に証明して見せましょう! 条件: 1.もし親の子供が男の場合、それは息子とする。 2.もし親の子供が女の場合、それは娘とする。 3.息子の妻は親にとって娘とする。 4.娘の夫は親にとって息子とする。 5.妻と夫の関係を夫婦と呼称する。 状態: 京介は大介の子供であり、男である。 桐乃は大介の子供であり、女である。 問: 以上より、京介と桐乃の関係が夫婦であると証明しなさい。 解答: 式1.条件1および状態1より、京介は息子である。 式2.条件2および状態2より、桐乃は娘である。 仮定: 1.もし京介の妻が桐乃の場合、条件3より桐乃は大介の娘である。 式2よりこれは正である。 2.もし桐乃の夫が京介の場合、条件4より京介は大介の息子である。 式1よりこれは正である。 仮定1,2が共に正のため、京介の妻は桐乃であり、桐乃の夫は京介である。 条件5より京介と桐乃の関係は夫婦である。 Q.E.D. -------------
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299 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/01(金) 16 05 20.15 ID yqtcv6CY0 297 イヤイヤ言いながらも結局は撮られちゃう二人 そして、後で写真送りますねー、と言われて後日届いた写真を見ると そこには超満面の笑顔で引っ付き合ってる二人の姿が 桐乃「な、なにチョー嬉しそうな顔して写ってんのあんた?!シスコンまじキモイっての!!」 京介「うっせぇよ!お前だって人のこと言えねーだろ!なんだよこの超満面の笑顔はよ!?」 桐乃「な?!あ、あたしは違うっつーの!読モだし?カメラ向けられてつい笑顔になっちゃっただけだっつーの!」 京介「嘘こけ、こんなん営業用のスマイルじゃねーだろ!こ~んなに頬弛みまくっちゃってよ、お前のグラビア写真集ですら今だかつてこんなににへら~っとした表情見たことねーよ!」 桐乃「う、うっさい!うっさい!!シスコン死ね!!」 こんな一幕もありそうw 300 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/01(金) 16 21 30.83 ID C5hTBxCMP 299 涼介「――で、コレがその時の写真か?」 優乃「らしいよ」 涼介「ふぅん。確かに、母さんが出てるモデルの写真とかとは全然違う笑顔してるとは思うけど……」チラッ 優乃「……」チラッ 京介「やっぱ桐乃が一番キレイだな。この雑誌の中でも頭一つ飛びぬけてるだろ」 桐乃「あったりまえじゃん。あたしを誰だと思ってんの?」 京介「俺の自慢の奥さんだな」ナデナデ 桐乃「ば、バカじゃないの?」ニヤニヤ 涼介「俺達からすれば何の新鮮味もないな」 優乃「むしろもっと自重してくんないかな。あの万年バカップル」 涼介「優乃、お前親に向かってそれはないだろ」 優乃「はあ? あたしは事実を言ってるだけじゃん。だいたい――」 こうか 最近なんでも未来予想図に繋がりすぎて困る 309 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2012/06/01(金) 17 58 35.11 ID BNNdqBre0 299 京介は受けらしいから、桐京のカップリングで写真を撮ると、 桐乃が責めてるカットが多くなるんだよな。 腐女子「えっと、ポーズとってもらっていいですかー?」 桐乃「えっと、どんなの?」 腐女子「京介さんが中腰に、桐乃さんは京介さんの顔を覗きこむ様に…… そうそう、それで、桐乃さんの左手を京介さんの腰に回して、 右手で顎をクイッと自分の方を向けるように」 桐乃「え? こ、こう?」 京介「ちょ、桐乃!?」 桐乃「あんたは黙ってて」 京介(だめだ……仕事モードになってやがる!) 腐女子「そ、そうです! 目線は京介さんの瞳に合わせて、妖艶に微笑んでください!! それでそれでセリフは 『兄貴……俺の人生相談に乗ってくれてありがとう。 お礼に、今からご褒美をあげるね。 ふふふ……緊張しないで、力を抜いて……』」 桐乃「京介……いつもあたしの人生相談に乗ってくれてありがとね。 お礼に、今からご褒美をあげる。 ほら、体から力を抜いて……」ドキドキ 京介「桐乃……」ドキドキ 腐女子「ふふぇひひひひひ!!」カシャカシャ みたいにw ----------
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915 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/04/01(日) 17 42 15.03 ID c5iDLt0+0 SS『4月1日のあやせ』 こんなの絶対おかしいよ! 言うまでもなく、私の親友の桐乃と、変態お兄さんのことです。 前々から、仲が良すぎるのを必死で隠していた二人ですけれども 最近はもう、ところかまわずいちゃつくのが普通になっちゃってるんです・・・ 昨日だって、桐乃の家に遊びに行ったのに、お兄さんの世話をするって出かけちゃったって。 桐乃のお母さんもなんだか諦め気味に言ってました・・・ でも、このままじゃ・・・桐乃までアレな子になっちゃう・・・ お兄さんがどうなろうと、わたしの知った事じゃないですけど、 桐乃だけは・・・わたしの親友の桐乃だけは、道を踏み外させるわけにはいかないです。 でも、あんなに仲の良すぎる二人、どうやったら正常に戻せるんでしょう・・・ ピピピピッ、ピピピピッ――― と、考え事をしている間に、携帯が鳴り出しました。 えっと・・・お姉さん!? 「はいっ!新垣です。お姉さんですかっ!」 「う、うん、田村です。あやせちゃん、き、今日も元気だね~」 お姉さんは、何故かちょっと引きつったような声です。 でも、ちょうど良い所です。 「お姉さんっ!聞いてくださいっ!」 「えっ、あ、ふぇっ!?な、何かな~」 「お兄さんと、桐乃のことですっ!」 電話の向こうでハッと息を呑むような音が聞こえました。 やっぱり、お姉さんも、知ってるんですね。 「お姉さんも知ってるみたいですけど、お兄さんと桐乃が、仲が良すぎるんですっ!」 「な、仲が良いのはいいことだよ~」 「そうじゃないんですっ!桐乃が、お兄さんの手にかかろうとしてるんですよっ!」 「えっ、えっ、えっ?」 お姉さんには難易度の高い言い方だったかもしれません。 「桐乃が、お兄さんのものになっちゃうんですよっ!」 「あっ、えっと・・・うん、そうなのかな?」 がくっ・・・ お姉さん。本当に意味分かってるんですか? 「あのー、お姉さん。お兄さんの事、好きなんですよね?」 「えーと、うん、そうだね~」 「それで、お兄さんが他の女の子に夢中で・・・なんとも思わないんですか・・・?」 「う、うん。わたしがきょうちゃんのことが好きでも、 きょうちゃんが別の女の子の事が好きなのは仕方のないことだよね」 ・・・やっぱり、この人だけは、底が知れないです・・・ わたしの目標とすべき人ですけれど、正直、この域に達する事ができる気がしません・・・ 「そ、それでね、あやせちゃん。」 「はい!なんでしょうかっ!」 「え、えとね。きょうちゃんを怒らないであげてね」 挙句に怒らないで、なんて・・・ お兄さんが一方的に悪いのに、まるで仏様みたいです・・・ 「桐乃ちゃんが、きょうちゃんの事を普通じゃないくらい大事に思うのも、 きょうちゃんが、桐乃ちゃんのことを普通じゃないくらい大事に思うのも、 たぶん、半分くらい、わたしが原因だと思うし・・・」 お姉さん・・・ 「それに、五更さんが焚き付けちゃったみたい―――」 「お・ね・え・さ・ん」 「はっ、はいっ!」 「やっぱり、あの泥棒猫が悪いんですねっ!」 「ちょ、ちょっと待ってあやせちゃ―――」 「よく分かりました。今から、どういうことか説明を求めに行ってきますね!」 「あ、あやせちゃ―――」 プチッ 人の良いお姉さんの事ですから、あの泥棒猫も悪くないとかばうつもりだって事は良くわかります。 でも、もう我慢の限界です。 自分で足に鉛を縛りつけてもらって、東京湾にシンクロナイズドスイミングの物真似しながら飛び込んでもらいましょうか。 ピピピピッ、ピピピピッ――― わたしが準備をして出かけようとしたその時、携帯が再び鳴り始めました。 多分、また、お姉さん・・・と、今度はメールのようですね。 『件名:あやせちゃーへ 本文:さきぬきようちゃんにあつてくださあ』 ・・・多分、『先に、きょうちゃんに会って下さい』でしょうか? 大慌てでメールを打ったのがすごく分かります。 ・・・さっきから20分は経っていますけど・・・ でも、確かにその通りですね。 まず、大本を絶たないといけないですから。 そして、桐乃にもお話をする必要がありそうです。 それにしても、どうしましょう・・・ 正面から、『お兄さんと恋愛なんておかしいよ!』なんて言っても、 桐乃は桐乃で『好きな事は絶対にやめない!』なんて言うでしょうし、 お兄さんはお兄さんで『妹の事が好きで何が悪い!』とか開き直りそうですし・・・ せめて、桐乃がお兄さんに幻滅してくれれば楽なのですけど・・・そうだっ! あのお兄さんの変態性を利用しない手はありません。 お互いを変態だと思うように仕向けて、ケンカをさせればいいんです。 幸い今日は4月1日。嘘をついても大丈夫な日です。 それに、桐乃を正しい道に戻すためです。きっと、桐乃だっていつか分かってくれるはず・・・ 桐乃に嫌われちゃうかもしれないですけど、でも、親友として、やるべきことをやらないと! 手順さえ決まれば、やるべきことは簡単です。 まず、桐乃の家の洗濯カゴから、桐乃の下着を取り出します。 そして、すぐにお兄さんの家に向かい、お兄さんがだらしなく散らかした下着と混ぜます。 汚くって、本当なら消毒したいくらいですけど、これも桐乃のためですっ! 幸いお兄さんは外出中だったので、簡単に作業は済みました。 ・・・ところで、作業を終えてから気がついたのですけど、 なぜこんな事をする必要があったのか、少し自分でも不思議な気がしました。 桐乃の家で取り出して、そのまま桐乃の部屋に向かえばよかったのに・・・ とりあえず、疑問点はさておいて、桐乃の家へと向かいます。 「あやせ?どうしたの?」 何も知らない桐乃は、わたしを快く家に上げてくれました。 ゴメンね。桐乃。でも、どうしても必要な事だから・・・ 「あ、あのね、桐乃。わたし、桐乃に隠してたことがあって・・・」 「えっ・・・う、うん」 「この前、お兄さんの部屋にみんなで上がったとき、見つけちゃったものがあるの」 「ぇ・・・・・・・・・」 あ、あれ? そこでなんで、桐乃が青い顔をしてるのっ!? ・・・もしかして、いつぞやの薄い本みたいな・・・ じゃなくって!今は、桐乃の趣味を問い詰めてる場合じゃないのでした。 「こっ、これなんだけどっ・・・!」 わたしの手には、先ほどお兄さんの下着と混ぜた、桐乃の下着が載ってます。 「これ・・・あたしの下着?」 「そ、そうっ!」 「これが、どうかしたの?つーか、なんであやせが持って・・・」 「だからね、この前お兄さんの部屋に上がったときに見つけたの」 「ま、マジ?」 「う、うん」 「ちょっと匂い嗅がせて」 「えっ!?・・・う、うん・・・」 「ホントだ、あいつの匂いがする・・・」 き、桐乃!?・・・匂い・・・? でも、良かったのかな?お兄さんの部屋にあった事を簡単に信じてもらえたわけですし。 「それにね、あ、あの変態、桐乃の下着を、嗅いだり、舐めたり・・・」 「きっ、キモっ!キモすぎっ!あーーートリハダだってきた~~~っ!」 「それだけじゃなくって、そのっ・・・お、おな・・・・・・『使った』り・・・」 「あ、あいつっ、マジ変態っ!!!あ、あたしの下着でなんて・・・!!!」 桐乃の顔は、りんごより真っ赤になっちゃった。 こんなに激怒しちゃって・・・ちょっとやりすぎちゃったかな。 でも、これなら、お兄さんとの仲がこじれて、ちょっと冷めてくれるよね。 「そ、それじゃ、ね、桐乃」 「う、うん・・・・・・・・・・・・」 わたしは、最後に、桐乃の口が『あいつ・・・問い詰めてやらないと』と動くのを見て一安心しました。 とりあえず、桐乃の方は終わりです。 今度はお兄さんの方です。 「おっ、あやせ?どうしたんだ?」 「お兄さん。桐乃の事で、言っておきたい事がありますっ!」 単刀直入に切り出します。 「えーと・・・き、桐乃のこと、な?」 「わたし、お兄さんのこと誤解してました。 お兄さんの事、変態だの、近親相姦上等のクソ兄貴だの考えてごめんなさい」 「俺っ、やっぱりそういう風に考えられてたのっ!?」 「当然じゃないですか」 途端にしょぼくれるお兄さん。 でも、今日はそれだけじゃ済まないんです。 「それで、桐乃の事なんですけど」 「ああ」 「その・・・むしろ、桐乃の方が近親相姦上等で、 お兄さんの事を想いながらえっちなゲームをプレイしたり、お兄さんの下着を集めてたり、 お兄さんの匂いでえっちな気分になってたり、お兄さんとえっちをしたがってたりっ!」 「ま、まじかよ・・・」 ごめんね、桐乃。本当はお兄さんが変態だってちゃんと分かってるから。 でも、さすがのお兄さんもドン引きですよね。 「それだけじゃないです。 わたし達とお泊りのときも、寝言で『お兄ちゃん、お兄ちゃん』ってあえいでたり、 恋人にするんだったら誰が良い、って質問にも『お兄ちゃん』って言ったみたり、 とんでもない変態だって事がわかりましたっ!」 「へ、変態・・・だな・・・はぁ・・・はぁ・・・」 なんか息が荒いですね。 さすがにショックが大きすぎて、呼吸困難に陥ってるんでしょうか? でも、お兄さんが苦しむのはむしろ当然です。 「とにかく、そういうことです。 もちろん、わたしは桐乃と友達のままでいるつもりですけど、 お兄さんは、ちゃんと桐乃との関係を考え直したほうがいいんじゃないですか?」 「・・・ああ、そうする・・・」 よしっ! これで、お互いを変態扱いして、ケンカになってくれるはずです。 ほんとうにごめんね、桐乃。 でも、これで、桐乃だって後ろ暗い事が無くなるんだよね。 そして、私は何かをやりきった清々しい気分で、山へと向かいました。 もちろん、桐乃がこんな事になったもうひとりの原因を埋めるためです。 ザクザクと土を掘り返すわたしの足元から、声がかけられました。 「あやせサマァ?今度は誰が埋められるんだってよぉ?」 「あ、加奈子?今度はね、泥棒猫さんだよ♪」 「で、加奈子は、助け出してもらえんだよな?」 「・・・お話する人が増えて、寂しくないでしょ?」 「・・・・・・・・・」 「あ、そうだ。その人ね、先に東京湾で泳いでくる予定だから、 もしかすると、肺に水が入って、ちゃんと喋れないかもしれないかも」 「・・・・・・(((( ;゚д゚)))」 「匂いもきついかもしれないけど、加奈子なら我慢できるよね?」 「・・・・・・ハ、ハイィ・・・」 良かった。はじめは加奈子でも我慢が出来ないかなって心配したんだけど。 やっぱり、泥棒猫だもんね。内臓なんて真っ黒だろうし、血だって青いかも。 でも、加奈子が我慢できるなら、安心だよね。 そして、空が夕焼けに染まるころ、わたしはまた、一人分の穴を掘り終わりました。 そろそろ、桐乃とお兄さんのケンカも始まった頃かなぁ? 「・・・・・・うへぇ~」 「えっ?加奈子?どうしたの?」 突然加奈子が、妙な声を出しました。 「えっ、加奈子ぉ、今なんか喋ったのかよ?」 「う、うん。『うへぇ』って」 「『うへぇ』?んな変な声だすわけnうへぇ~・・・いま、声が勝手に」 加奈子ったら、何を言ってるのかな? 勝手に声が出るなんてあるわけがないのにね。 「・・・・・・・・・うへぇ~」 「加・奈・子?」 「ちょっ!まっ!だ、だってとまんnうへぇ~~~・・・」 もうっ・・・仕方ないなぁ・・・ たぶん、しゃっくりみたいなもので、 『特別な偶然』が重なったときに、止まんなくなるのかな? 「うへぇ~~~」 さすがにちょっとご近所迷惑な気もしますけど、きょうのところは許してあげますね。 だって、今日はとても気分がいいんです。 お兄さんと桐乃が、普通の兄妹になってくれるハズなんですから そして、この戦争(泥棒猫埋め)が終わったら、わたし・・・ 「うへぇ~~~」 End. ------------
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735 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/05/15(日) 00 58 19.93 ID oivexxzMP [1/4] 『あの素晴らしい愛をもう一度』 命かけてと 誓った日から 『ねえおかあさん。このこがきりの?』 『そうよ。今日から京介はお兄ちゃんになるの』 『おにいちゃん?』 『そうだぞ京介』 『おとうさん?』 『今日からお前はこの子の兄になるんだ』 『あに?』 『そうだ。もし妹が泣くようなことがあれば、お前が守ってやるんだ。それが兄というものだ』 『きりのがないてたら、ぼくがまもる……』 『そうよ。頼りにしてるわよ。おにいちゃん?』 『……うん!ぼく、きりのをまもるよ!』 『そうか。お前がそういうなら安心だな。桐乃を頼むぞ、京介』 『うん!』 素敵な思い出 残して来たのに 『あー、あうー』 『ほらきりの。おにいちゃんだぞー』 『あーうー……きゃっきゃっw』 『ふふ、桐乃はホントに京介が好きね。京介が来ると泣いててもすぐに笑うんだから』 『きりの』 『うー。きゃっきゃw』 あの時 同じ花を見て 美しいと言った二人の 『桐乃。はいこれ』 『うわー、きれいなおはな。おにいちゃんこれどうしたの?』 『えっと、あっちの草のところに生えてたから持ってきた。桐乃よろこぶかなって』 『ほんとに? ありがと、おにいちゃん! きれいだね』 『だろ?』 『これだいじにするね』 『すぐかれちゃうぞ?』 『いいの! ありがと、おにいちゃん』 心と心が 今はもう通わない 『あいつのことなんて、大っ嫌い』 『あいつのことなんてどうでもいいさ。俺には関係ない』 あの素晴しい 愛をもう一度 『桐乃――俺に任せろ』 『いいか……! これを見て、まだアイツの趣味を認めねえってほざくんなら……! 桐乃の代わりに俺が親父をぶっ飛ばすぜ!? なんも知らねえくせに、テキトー言ってんじゃねえよ!』 『ありがとね、兄貴』 あの素晴しい 愛をもう一度 『俺はなあ――妹が、大ッッ……好きだぁぁぁぁぁぁぁぁーーーっ!』 『シスカリ対戦するって、約束したでしょ?』 赤とんぼの歌を 歌った空は 何にも変わって いないけれど 『あしをと~ったら、あぶらーむし』 『きりのはうたがじょうずだな』 『うん! いっぱいれんしゅうしたんだよ?』 『そっか。じゃあいっしょにうたうか!』 『うん』 『『あかとんぼー』』 あの時 ずっと夕焼けを 追いかけて行った二人の 『すっかりおそくなっちゃったな』 『もうおうちかえるの?』 『うん。じゃないとおかあさんおこるもん』 『おこられるの?』 『うん。だからはやくかえらないと』 『じゃあおにいちゃん、おうちまでおいかけっこしよ』 『え?』 『よーい、どん!』 『わ、桐乃まてよ!』 『おにいちゃん、はやくしないとおいてくよ!』 心と心が 今はもう通わない 『あいつはあたしのことなんか見もしない』 『あいつにとっちゃ俺なんていてもいなくても一緒なんだろうさ』 あの素晴しい 愛をもう一度 『……いつも、ありがとう』 『――ありがとよ、桐乃』 あの素晴しい 愛をもう一度 『じゃあね、兄貴』 『お前がいないと寂しいんだよ!』 広い荒野に ポツンと居るよで 『なんでこんなことになっちゃったのかな……』 涙が知らずに 溢れてくるのさ 『おにいちゃんの、ばか……』 あの時 風が流れても 変わらないと言った二人の 『ねえおにいちゃん』 『ん?』 『これからもずーっと、一緒にいてくれる?』 『あたりまえだろ?』 『うん! ずっと一緒だよ?』 『おう。ずっと一緒だ』 心と心が 今はもう通わない 『あいつにとってあたしなんて必要ないんだ』 『あいつにはもう俺なんて必要とすらされないんだろうさ』 あの素晴しい 愛をもう一度 『俺はロリコンじゃねえっ! シスコンだーーーーー!』 『――あんた、あたしの彼氏になってよ』 あの素晴しい 愛をもう一度 『おまえには桐乃はやらん』 『……俺は妹が心配なんだよ! 心配で心配でしょうがねえんだよ!』 『兄貴がどんなにどうしようもないやつでも、みんなが見捨てても、あたしはここにいてあげるから。 ちゃんと心配して、叱ってあげるから――だから、元気出せ、兄貴』 『京介。あたしに任せて』 あの素晴らしい愛をもう一度 『――ありがとうな、桐乃』 『――どういたしまして。京介』 -------------
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《高坂 桐乃(076)》 キャラクターカード 使用コスト2/発生コスト2/緑/AP20/DP20 【メイド】/【オタク】 このカードがアプローチに参加した場合、キャラ1枚は、ターン終了時まで+20/-20を得る。 (なにその態度! せっかくこのあたしがここまでしてやったってのに!) 俺の妹がこんなに可愛いわけがないで登場した緑色・【メイド】【オタク】を持つ高坂 桐乃。 アプローチした時にキャラ1枚のAPを20上昇させ、DPを20減少させる効果を持つ。 対象に制限はなく、自分キャラはもちろん相手キャラも対象にできる。 AP上昇効果を生かし自分キャラを強化、DP減少効果をとって相手キャラを弱体化と、2通りの使い方ができる。 このカード自身も対象にでき、AP40・DP0のキャラとなる。 強制効果なので、アプローチするときは注意したい。 カードイラストは描き下ろし。フレーバーは第11話「俺の妹がこんなにメイドなわけがない」での桐乃のセリフ。 収録 俺の妹がこんなに可愛いわけがない 01-076 編集
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832 名前:【SS】箸の日[sage] 投稿日:2011/08/04(木) 11 03 58.46 ID UKzV6V2p0 [2/8] 大介「お前たちに言っておきたいことがある」 京桐「「?」」 大介「今日が箸の日だからと言って ・あ~ん ・箸に感謝して使わず、口移しで食べあう ・お互いの箸を交換 といった行為は認めん」 桐乃「お父さん、あたしたちがそんなことするはずないじゃん」 京介「そうだぞ親父。変な夢でも見てたんじゃないか?」 大介「そうだな。どうやら俺の勘違いだったようだ」ホッ 桐乃「そうそう。蜂蜜の日に蜂蜜を指につけて舐めて貰ったり」 京介「首筋にこぼれた蜂蜜をツゥっと舐め取ったりなんかするはずないだろ?」 大介「・・・・・・」 桐乃「ところでお父さん、今日はお父さんにプレゼントがあるんだ」 大介「俺にプレゼントだと?」ワクワク 桐乃「はい、これ」 大介「これは・・・・・・塗り箸か」 桐乃「うん。ちゃんと名前も書いてあるんだよ」 大介「どれどれ・・・」 大介 質実剛健 大介「これは・・・」 桐乃「お父さんをイメージした文字も書いてもらったんだ」 大介「そうか。桐乃、この箸はずっと大事に使わせてもらうぞ」 佳乃「お父さんったら嬉しそうにしちゃって」 桐乃「はい、お母さんにも」 佳乃 良妻賢母 佳乃「ありがとうね。お母さん、嬉しいわ」 桐乃「ちなみに、これがあたしの」 桐乃 才気煥発 桐乃「文武両道とか才色兼備とか容姿端麗とか頭脳明晰とか華麗奔放とかも考えたんだけどね」 京介「・・・・・・俺にはないのか?」 桐乃「心配しなくたってちゃんと用意してあげたって」 京介「そ、そうか。そりゃ良かった。 ところで、俺の箸にはなんて書いてあるんだ? 全力投球とか難攻不落、聡明剛毅、高潔無比、ってところか」 桐乃「はい、これがあんたの」 京介 妹婚上等 京介「四文字熟語じゃねえ!?」 桐乃「『バカ兄貴』と迷ったんだけど、あんただけ名前じゃないのもかわいそうだから、ちゃんと『京介』にしてあげたよ」 京介「悩むところはそこじゃないだろ!?」 大介「桐乃。妹婚とはなんだ」 桐乃「これでシスコンって読むの。 こいつ救いようのないシスコンだからさ、これしかないって思ったんだよね」 大介「・・・そうか」 桐乃「とにかく、あたしからのプレゼントなんだから、あたしだと思ってちゃんと大事にしなさいよね」 京介「はいはい。ちゃんと一生大事にしてやるよ」 佳乃(箸のプレゼントには『幸せの橋渡し』や『一生食わせてやる』という意味があった気がするけど・・・ まぁ、気のせいよね) 851 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/08/04(木) 13 08 05.17 ID UKzV6V2p0 [4/8] 832のおまけ 赤京「「いただきます」」 赤城「ん?高坂、おまえマイ箸なんか使ってるのか」 京介「ああ。桐乃に貰ったやつだ。 『あたしだと思ってちゃんと大事にしてね』って言われたから、 肌身離さず持ってる」 赤城「そ、そうか。 ん?」 京介 妹婚上等 赤城「ぶっ!」 京介「どうした?」 赤城「いや、高坂は遠くに行っちまったんだと思ってな・・・」 -数日後- 赤城「高坂、俺もおまえの妹に習って瀬菜ちゃんに箸を贈ったんだ。 『兄婚最高』って書いてあるやつ」 京介「おまえ、シスコンにもほどがあるだろう」 赤城「おまえら兄妹には負けるぞ。 それで瀬菜ちゃんは初め恥ずかしがってたんだけどよ、俺が 『俺だと思って大事にしてくれ』って言ったらな」 瀬菜「ふひひひひひ!ああ、妄想が先走る! これで『お兄ちゃん×箸置き』でもカップリングできる!」 京介「兄と無機物すらくっつけるのかあの腐女子は!」 赤城「その時ふと気がついたんだが、 高坂は妹だと思ってる箸を食事ごとにぺろぺろしてるんだな」 京介「ぶっ! そ、そんなわけあるか!」 -------------
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717 名前:SS[sage] 投稿日:2011/06/07(火) 23 34 03.20 ID UaXmxerF0 【雨の日】 学校からの帰り道。急な大雨の中を、俺は必死に走っていた。 道行く人たちの視線が、ちょっとくすぐったい。 「京介、今日は夕方から雨が降るらしいから、ちゃんと傘持ってくのよ?」 「へいへい。 大丈夫だっつの」 ガキじゃあるまいし―――そんな遣り取りが、今朝あったかもしれない。今となってはどうでもいいが。 もう、こんなズブ濡れなんだ。お袋にはイヤミのひとつも言われるだろうさ。 足取りが重いのは、決して雨に濡れた靴が重いというだけではなかった。だが、決して悪い気分でもない。 指差して楽しそうに俺を嘲笑う誰かさんの顔が浮かんできたところで、ドザーっと冗談だと思いたくなる 音を立てて、さらに雨脚が強くなってきた。 ………なんだこりゃ。たとえ台風にしたってこれはないだろう。よりにもよって傘の無い日に! ていうか、なんで警報出てないの!?通学しちゃダメだろこれは!何やってんだ気象庁!? 「うおおおおぉおォ…………―――――――!!」 たまらず、近くの軒下に走り込む。 勢い余って、膝もとまで下りたガレージに軽く頭をぶつけてしまった。 額に張り付いた前髪をあげ、おでこをスリスリと擦っていたところに、 「なにやってんの、あんた」 そう声をかけられた。 ビックリして声の主を確認すると、間違いなく桐乃だった。 そして妹は、俺同様の濡れ鼠だった。 「なにって………見りゃわかるだろ。 おまえと同じだよ」 「え? あんた今朝、傘持ってたじゃん」 「―――あぁ―――なんだ、その…………」 ちょっと照れくさくて、ポリポリと頭をかく。 「……色々あって……つまり、学校に忘れてきた」 「…………………ふぅん」 あれ? てっきりお決まりの「バカじゃん」が帰ってくると思ったんだが、桐乃はそれ以上何も言わなかった。 それどころか、 「ほら、じっとして」 「は? なんだよ?」 「拭いてあげるから、じっとしてなさいって言ってんの。 風邪ひくでしょ」 そう言って、桐乃は手に持ったタオルを俺の顔や髪に当て、せっせと拭いてくれる。 心配そうに。 いつか、階段で転んだ俺を手当てしてくれた時のように。 距離が近いからか、そんな甲斐甲斐しい桐乃の顔をじっと見てしまう。 しっとりと濡れた髪が、端正な顔にぴったりと張り付いていた。メイクが落ちて普段より幾分幼く見える はずなのに、桐乃は妙に色っぽい。 水も滴る―――そんな言葉がぴったりだ。 やっぱりこいつは、化粧なんてしない方が……………可愛い。 桐乃に体を拭かれている、ちょっとの間。 俺はそんなバカみたいなことを考えていた。 「はい、おしまい」 うむ、と納得した様子で桐乃が頷く。 「感謝しなさいよ。 こんな優しくて、ちょうカワイイ妹がいてさ。 シスコンのあんたには最高のご褒美 なんだからね」 「へっ。 なに言ってんだか。 ……ありがとな、桐乃」 どういたしまして……と、いつかのような返事はなかった。別に期待なんかしちゃいないさ。 でも、またあの時のように、素直に感謝し合える日が来るだろうか。またあんな桐乃の笑顔を見る事が出 来る日が。 早くそんな日が来ればいいと、願わなくもない。 桐乃の濡れた髪に触れ、頭を撫でる様にしてやる。くすぐったかったのか、妹は一瞬笑ったように見えた が、直後にはむっと唇を尖らせた。 「もう……やめろっての」 「っと……悪りぃ」 「あんた、最近あたしにセクハラしすぎ!」 「どこがセクハラだよ! 頭撫でただけだろ!?」 「だから、普通の女の子はイキナリ髪触られたら怒るから」 「……なんだそりゃ。 俺たちは兄妹だろうが」 「現実に兄に頭撫でられて喜ぶ妹がいるかっての! あんた、あたしを二次元の妹ちゃんと同じだと思って んじゃないの?」 「んなわけねーだろ!? おまえなんて、黒猫の妹に会ったときは完全に変質者だったろうが!」 よみがえる、あの日の悪夢。怯える日向ちゃんと、状況が分からずに、はしゃぐ瑞希ちゃん。 そして戦慄に震える黒猫―――。 『くっ……予想以上だわ。我が全盛をもっても、止められるか――!?いえ、必ず、この命に代えても!』 そりゃ命がけだろうさ。あの台詞は掛け値なしの本心だろう。 「しょ、しょーがないじゃん! ヒナちゃんタマちゃんが可愛すぎるからいけないの! あたしは絶対悪くない!!」 開き直りやがった。 ムキ―!と地団駄を踏む桐乃。 面白いので調子に乗ってからかってやる。 「へっ、やっぱおまえ、二次元と三次元の区別できてねーんじゃねえの? あーキモいキモい」 「か、こ、こんの……!!」 おおきく振りかぶって―――桐乃は俺に平手打ちを喰らわせようとする。 予想の範疇だ。 俺がなんなく避けると、雨のせいか足を滑らせた桐乃が倒れそうになった。 「きゃっ!?」 「――桐乃!!」 桐乃を庇うように下敷きになった結果、俺の背中は雨に濡れたアスファルトのせいで、ぐっちょりと 濡れてしまった。なのに痛みを感じる逆側――地面とは打って変わった柔らかさに、体が動かない。 「う………ぁ………」 「……っ……………」 相反する、強烈な二つの感触のせいか、思考が働こうとしない。 それは、ビックリした顔のまま、林檎のように赤く染まった桐乃も同じだったのだろうか。 俺たちはそのまま、どのくらいか分からない時間を過ごした。……やがて、目をギュッと、唇をきつく 噛みしめた桐乃が立ち上がるまで。 「だ、大丈夫?」 「……あ、ああ。 大丈夫だ」 桐乃が差し出してくれた手につかまる。しっとりと濡れた手もまた、柔らかく、暖かかった。 立ち上がって声をかけようとしたところで――― 「…………あ」 「! や、やだ!」 桐乃の制服がびっしょりと濡れて、下着が透けているのに気付いてしまった。 細いのに、出るところは出たその造形がくっきりと分かってしまう。 慌てて目を逸らした。 「わ、悪りぃ!」 「…………もう、もう…………!!」 「ほら、これ着てろ!」 俺は急いで上着を脱ぎ、桐乃に差し出す。当然ぐしょぐちょだが、そういう問題ではない。 風邪をひく可能性もないではないが、そういう問題でもない。 「は? で、でもアンタ……」 「いいから! 誰かに見られたら最悪だ! 頼むから着てくれ!!」 「ん……わ、わかった……」 桐乃はしぶしぶながらも承諾してくれた。 俺の制服だからブカブカだし、桐乃の制服ともデザインが合わないから、けっこうカッコ悪い。 モデルのこいつには、ちょっとキツイ注文だったかもしれないな。 「あ~……なんかダサい……」 「わ、悪かったな」 「……でも……………あったかい、かも………」 「え?」 「な、なんでもない………」 それから俺たちは、何分か軒下でボーっと過ごしていた。 その間、桐乃にタオルを借りて体を拭いたりしたが、特に会話も無く、ただ雨が上がるのを待つだけだった。 「…………ねぇ」 「あん?」 「さ、さっきの続きだけどさ」 さっきの……ああ。二次元と三次元の妹は~って話か。 「やっぱさ、現実は二次元とはちがうじゃん? だから、頭撫でたりとか、す、スキンシップ、とか…… そういうの、おかしいと思うんだよね」 「いや、スキンシップって……!?」 ……いつ俺たちの間にそんなヤバい事が起きたんだ。いや、さっきのアレは事故だぞ!?この前のアレとか ソレとかもな! 「あと、プリクラ張ったり……ま、待ち受けとかも」 「……まぁ……それは」 おかしいよなぁ。わかり切った話だが。 ちなみに内緒だが、未だに俺の携帯には見えないところに、例のツーショットプリクラが張ってある。 待ち受けは流石に変えさせられた。画像は残してある。 ああ………………うん。こりゃ、おかしいわ。 「と、とにかく!! あんまべたべたすんなってこと!」 「な!? 別にべたべたなんて……!?」 「してるから! 兄妹でこんな…………やっぱ、ヘンだよ……」 「………むぅ」 それは……そうかもしれない。 一般的な思春期の兄妹ってのは、やっぱお互い触れあったりはしないだろうさ。キモイとかウゲー、みた いな反応の方が、むしろ真っ当かもしれない。 間違っても、ツーショットプリクラを携帯に張ったり、お互いの写真を待ち受け画像にしたりはしないだろう。 確かにヘンだ。妹と仲良くなろうと焦って、俺がやりすぎたってのもある。 でも、多分、桐乃が言いたい事はきっと、そういう事じゃなくて……。 「……なあ。 やっぱ、おまえは俺の事、嫌いなのか?」 「………」 桐乃は下を向いて、答えない。 沈黙は肯定、なのだろうか。 『兄貴なんて大っ嫌い―――』 夏の日の叫びが、頭の中でリフレインした。 ……響くたび、胸が痛む。心臓に釘を打たれるように、少しずつ。深く。 「………あんたは?」 「え?」 「あんた、あたしのこと、嫌いなんでしょ?」 「な、なに言って………」 そんなの――決まってんじゃねぇか。 俺が、お前をどう思っているかなんて。 ……………………。 「おぉ~~~っ! 桐乃みっけ~~~~!!」 ドキッとして、乱入者に目を向ける。 ツインテールの小柄な少女――加奈子だった。その後ろからあやせもついてくる。 「あれ。 あやせと加奈子、どうしたの?」 「やー、加奈子はマジだりぃからヤダっつったんだけどなー。 あやせがどうしても桐乃に傘渡しに行くって しつこくってさー。 あとでなんか奢れよー?」 「加奈子? わたし達、友達でしょ? どうしてそんなこと言うのかなぁ……?」 「いいって、いいって! ありがとね、二人とも。 マジ感謝してるから」 「む……まぁ、桐乃がそう言うなら」 あやせが顔をほころばせる。 危険なスイッチが入りかけたようだったが、桐乃が間に入ったことで発作には至らなかったらしい。 「つか桐乃、なんだよその格好! マジありえねーくらいダサいんですけどー?」 「あ、ああ。 これね。 これは……」 そこで桐乃がちらっとこちらを見る。加奈子はようやく俺の存在に気付いてくれたらしい。 どんだけ俺は眼中にないんだろう。ちょっぴり悲しい。 「よ、よう。 久しぶり」 「ん? あれぇ。 こないだの桐乃の彼氏じゃん」 「「「…………へ?」」」 桐乃とあやせと、そして俺の声が見事にハモった。 ぎゃあ! 忘れてた! こいつには桐乃とのデートを見られてたんだった! 桐乃も忘れていたんだろう。口をパクパクさせて驚いている。 「…………へぇ。 どういうことか、説明していただけますかね? お兄さムグぅ!?」 素早くあやせの口をふさいで肩を握りしめる。うおおおおおおぉ危ねぇ!? ばっか野郎あやせ! 加奈子に兄妹でデートしてた事がバレちゃうじゃねぇか!! 間違っても「お兄さん」なんて口にするなよな! いや、事情を説明すればいいんだけど、とりあえず無用な誤解は避けたい! にしてもなんで加奈子も俺を覚えてんだよ!? 興味無い奴の顔は覚えないんじゃなかったの!? 「あ、あとで説明するから、ちょっと黙ってろ。 な!?」 「むーーー!? むぐぅーー!!」 暴れるあやせの肩に手を回して、動きを抑える。 ――はぁ。はぁ。はあ………。別に心の声じゃなく、マジで焦ってたので息が荒い。 ……あやせの髪から爽やかな香りがする。 「あやせから離れろ! この変態っ!!」 ガツン!背中に衝撃。桐乃の奴がけりを入れてきやがった。 綺麗にはいったので、ちょっと呼吸が出来なくなる。蹴られたところを押さえて抗議した。 「っぉ……はっ……いてーな! なにすんだ!」 「トボケんな変態! さっきからあ、あやせを抱きしめてハァハァしてたくせにっ!!」 「ハァハァなんてしてねーよ!!」 ちょっとだけしか! あと別に抱きしめてたわけでもないから! 「あやせ、大丈夫!?」 「ぅうっ……桐乃ぉ……」 桐乃があやせを抱きしめる。 あやせは桐乃の肩に抱きついて、真っ赤な顔でぐしゅっと鼻を鳴らした。 「うへぇ。 桐乃の彼氏、マジ最悪ってか変態じゃん。 ケーサツ呼んだ方がよくね?」 違うんだ!誤解なんだ!と加奈子を見るが、ずざりと引かれてしまった。 時、既に遅し………自分の迂闊な行動が恨めしい。 ……これで晴れて知り合いの女子中学生2人から変態のレッテルを張られたわけか。チクショウ。 「大丈夫だよ、あやせ。 あたしがついてるから。 ね?」 「……うん……ごめんね、桐乃。 ありがとう」 うぅ……完全に悪者だ。どうしてこうなった……。 「……なんつーか……。 桐乃ってなんでコイツと付き合ってんの? 信じらんねー」 グサリグサリと心に突き刺さる女子中学生の言葉。 「はぁ!? こんなのと付き合ってるわけないでしょ!?」 「え? だって前は彼氏彼女だって言ってたじゃん」 「そ、それは……」 「それは?」 「…………今は、もう彼氏じゃないから」 は? 今こいつ………なんて言った? 『今は』って……おいおい。なんだそりゃ。普通に誤魔化すとか、事情を説明するとかすればいいじゃん。 なんでそんな……俺とお前が付き合ってたのに別れた、みたいな言い方を……。 「それに、京介は………今は、他に好きな娘が、いるから」 「ふ~ん……ま、加奈子ってば優しいから、あんまり詳しくは聞かないでおいてやんよ」 「あは。 ありがと、加奈子。 あたし、アンタのそういうとこ、大好き!」 二ヒっと笑い、二人が爽やかにハイタッチした。 ふと気付くと、あやせが桐乃を心配そうに見つめていた。自分も混ざりたかったのだろうか。置いてけぼり にされたみたいで、不安に思ったのかもしれない。 「はい。 これ、桐乃の分の傘ね」 「ありがとー! マジ助かるよ~」 あやせは帰宅途中、雨が降りだしたのを見て、桐乃が傘を持ってきてなかったのを思い出したらしい。 それで加奈子とお茶してたのを切り上げて、わざわざ傘を買って来てくれたのだそうだ。 本当にいい友達だ。兄として、彼女らには感謝せねばなるまい。 …………ま、それはそれとして。 大変美しい友情に水を差すようで、まことに恐縮だが……とりあえず。 「なぁ、ちょっといいか」 「うげ。 なんだよ、変態」 「(ぐっ……!)あ、あのさ……お前ら、どうして俺たちがここにいるって分かったの?」 「あ? そういや、なんでかな。 加奈子、あやせが『こっちで間違いないよー』とか言うのについてきて やっただけだかんなー」 「…………そうか。 ありがとう。 十分だ」 「お? そっか」 背筋がぶるぶる震えているのは、決して上着を着てないからではない。 しかし、俺は知っている。この世には知らない方がいい事もある、と。だから追及はやめよう。 ………………あやせたん、マジ怖い。 「あの~、やっぱ俺の分の傘は無いんスかね?」 気を取り直して問いかけると、あやせはきょとん、と可愛らしく目を見開き、直後、天使のような笑顔でこう 言った。 「やだな~もう。 そんなのあるわけないじゃないですかー!」 「ハハハっ! ですよねー!」 あやせさん、怒ってますもんねー!さっきの事とか、この前の事とか! 日ごろの行いというものは、良くも悪くも本人に帰ってくるものである。 ……あー……はやく雨やまないかなー……。 天を見上げる。ここに駆けこんだときよりは大分マシな雨脚になっていた。 「………ちっ。 ホラ、傘持ちなさいよ」 「えっ?」 桐乃があやせから受け取った傘を差し出してきた。 「バーカ。 折角あやせたちがお前のために持ってきてくれたんだから、お前が使えよ」 「……はぁ? なに言っちゃってんの?」 「え? 俺に傘使わせてくれるんじゃないの?」 「アホか! なんでアタシがアンタに傘譲ってあげなきゃいけないのよ!? 意味わかんない!」 「じゃあ、なんだよ?」 「だ、だぁからー………もう、なんでそんなバカなの!?」 ……わけが分からないよ。俺にどうしろって言うのさ。 助けを求めて視線を向けると、あやせと加奈子が何やらひそひそと話している。 「……うへぇ。 ありえなくね? つーかありえなくね?」 「あはは……まぁ……ああいう人だから」 「ん~? なんだよあやせ。 あいつの事、知ってたんか?」 「え? いや、そうじゃなくて、なんとなく、そうなんじゃないかなって」 「ふ~ん? ま、別にいっけどさー」 「……………お前ら、なにコソコソ話してんの?」 「「なんでもない」」 「?」 はて。また何かやってしまったんだろうか。 自意識過剰かもしれないが、なんとなく俺の事を話してたんじゃないかな、と思ってしまう。 そこでバッ!と傘を広げる音がした。 桐乃が傘を開いたまま、こっちに寄ってくる。 ん、と俺に広げた傘を持つよう、促してきた。反射的に受け取ってしまう。 桐乃は俺に身を寄せ、なんと傘を持つ俺の腕に、自分の腕を絡めてきた。 「お、おおお、おまえ! なにしてんの!?」 「うっさい! しょうがないでしょ! 傘狭いし! こうしないとアタシらのどっちかが濡れちゃうじゃん!」 「だからって……ほら! 友達の前だろうが!」 「二人はもう知ってるんだから、別にいいの」 二人が何を知ってるって言うんだ!聞いた人が誤解するような事を言うんじゃねーよ!? ほら、あやせさん睨んでる!めっちゃ俺を睨んでるから!! だから腕を離しなさい!暖かいだろうが!俺が死ぬだろ!? …………いかん。落ち着くんだ俺。言ってる事がおかしいぞ。 そうだ、これは以前の偽デートのときと同じ、そう思えば何の問題も無い……! 「よ、よし、帰るか、桐乃!」 「う、うん」 あやせと加奈子に礼を言って、俺たちは歩きだした。 桐乃と腕を組んで、相合傘のまま。 後日、兄妹のラブラブ相合傘を目撃したご近所の奥様からお袋へのリークで、俺が酷い目に遭ったりもしたが、 それはまた別の話である。 「………ふ~ん」 「どうかした、加奈子?」 「いんや~? 前会ったときは、なんつーか、恋人って感じじゃなかったんだけどさ―」 「え? なんの話?」 「なんでもない。 それよか、加奈子ハラへっちまったよ~。 今日付き合ってやったんだからさ、なんか 奢ってくんね?」 「ふふっ。 もう、しょうがないなぁ。 じゃあ、さっきのカフェに、もう一回行こうか」 「あれ? いいのかよ?」 「いいの! なんだか私も安心したし、お腹空いちゃったから」 「ひひっ。 一番高いの頼んでやるかんな―」 「えー。 それはちょっと勘弁してよ―」 FIN -------------