約 2,122 件
https://w.atwiki.jp/arikawa/pages/70.html
1スレ目 584-590 その1 『夢の中で、君は』(別冊I半ば辺りの設定) いつもは熟睡をかまして朝まで目覚めることのない郁だったが、その日はなぜかふと夜中に目が覚めてしまった。 寝ぼけていた視界がはっきりするにつれ、見慣れない天井が郁の目に映し出される。 ここはドコだ?と考える間もなく、答えは導き出される。 ――ああ、そうか。寮じゃないんだ。 その日は、堂上と付き合うようになってから迎えた、何度目かの夜だった。身体を重ねる際の緊張は薄くなってはいるものの、最近はコトの後に一気に眠気が襲ってくる。 その状態の意味を理解できる身体になったのも、つい最近のことだ。 ああ、あたし、どんどん開発されてるなぁ、と乙女の発想としてはいささか似合わない感想が頭を過ぎり、次の瞬間に恥ずかしさから頭をブンブンと振る。 その弾みで、隣で眠る堂上の顔が郁の目に飛び込んできた。 う、うわ――――! きょ、教官っ!その寝顔は犯罪です! 郁にしてみれば、声に出さなかっただけでも表彰モノだ。 堂上の寝顔は、この数年間郁が見てきた堂上の顔の中でも、メガトン級の破壊力を持っていた。 たまに見せる笑顔や優しい表情も捨て難いが、この寝顔に勝る顔はないのではなかろうかと思えるくらい、郁には魅力的に映った。 な、なんてか、か、か、可愛い。こんな寝顔を見られて、ああ、あたし世界一の幸せモンかもしれない……。 30を目前にした男を評するのに「可愛い」はあまり褒められた文言ではないかもしれないが、大袈裟ではなく、本当に心からそう思った。しかし、その刹那に思い当たる。 ―――あ、あ、あ、あたしは? 当たり前のことだが、自分の寝顔を見たことのある人間など居ない。だから、自分がどんな顔で寝ているかなんて知らない。 知らないからこそ不安になる。 あ、あたし、マヌケな顔で寝てないよね?いびきとか、かいてないよね?あまつさえ、ヨダレなんか垂らして歯軋りなんてしてないよねぇぇぇー? 考えれば考えるほど、それら全部を寝ているうちにしているような気がして、郁は大声で叫びたい衝動に駆られた。 もし、堂上が今日の郁のように夜中にふと目が覚めて、横で寝ている郁の寝顔を見たりしたら。そして、それが前述のような寝姿だったりしたら……。 ひゃ、百年の恋も醒めるっちゅーのっ! 自分の知らない顔を愛しい人に見せるワケにはいかない。 郁はその夜、朝を迎えるまで眠ることが出来なかった。 「そんなクマ作るまで、寝かせてもらえなかったわけ?」 翌日帰寮した時に言われた同居人の冷やかしは、半分当たっていて半分外れている。 寝かせてもらえなかったのは、事実だ。しかしそれは、自分の寝顔を堂上に見られては困るから自発的に眠らなかったのであって、柴崎が期待しているような理由ではなかった。 冷やかした内容が当たっているとすれば、バカ正直な郁は間髪入れずに真っ赤になって噛み付いてくるはずなのだが、そうしてこないところを見るとどうやらクマの正体は違うところにあるらしい。 「なんか凹んでなーい?なんかあったの?」 「……う、ん……」 こんなとき、決まって柴崎は郁が話し出すのを待つことにしている。 せっついて聞くことを憚っているわけではなく、単に郁の考えが纏まるのを待っているだけだ。 「……えと」 一度は開きかけた口が、再度閉じられる。 「……やっぱ、いい……」 いくら柴崎とはいえ、どんな顔して聞けばいいのだ。自分の寝顔がどんな風なのか、などと。 寝不足がたたっている今なら、速攻で寝ることが出来る。その寝顔を見ててくれないかなどと、どの口が言えるのだ。 相談することを諦めた郁は、デートの為に多少お洒落した格好のまま、ベッドに潜り込んでしまった。 悩んでいる割にはすぐに寝息を立て始めたところを見ると、本当に寝不足だったことが判る。 「まーた余計な悩み背負い込んできたようねー」 郁がその乙女モード全開が故に抱え込んだ悩みは、これまで枚挙に暇が無い。しかもそれらは大抵、他人から見ればノロケにしか聴こえないような悩みだったりする。 今回も恐らくそんなところだろう。しかし、郁から悩みの内容を聞かない限りは、相談に乗ってやることも出来ない。 「早く白状しないと、麻子さんも助言できませんよ」 眠る郁の顔を見ながら、柴崎は小さく呟いた。 「外泊届、今日も無駄になったみたいだね」 同僚の言葉は相変わらずからかい口調ではあるが、少しずつ哀れみが混じってきているのは気のせいだろうか。 「……まったく、何を考えているんだ、アイツは」 いつもならば堂上の部屋に小牧がお邪魔をするという図式なのだが、今晩は堂上が酒を片手に小牧の部屋に愚痴をこぼしに来ていた。 堂上が預かり知らぬ所で郁が悩みを抱えた日から、3ヶ月は経とうとしている。その間、デートはしているのだが、外泊は一切なかった。 今日はダメな日なんです。 体調が思わしくなくて。 外泊届け、出してきてないんです、柴崎に頼むのもちょっと恥ずかしいっていうか。 いろんな言い訳をされては、はぐらかされてきた。 最初のうちは仕方ないと思ってはいたし、ノリ気じゃない郁を抱くことも憚った。だから、我慢してきた。 だが、それが3ヶ月ともなろうものなら、堂上としてもいい加減イラつくのも尤もな話だ。 「また何かやらかしたかな、俺」 小さな溜息とともに吐き出される弱音は、堂上が滅多に見せないものだ。 郁がどうして堂上を遠ざけているのかは分からないが、コイツにこんな表情をさせるのはきっと郁だけなんだろう、と小牧は密かに思った。 「笠原さんみたいな恋愛初心者には、いろんなハードルがあるんだろうね」 フォローのつもりで言ったが、小牧の言葉に堂上はうな垂れてこう呟く。 「おかしな要求などしていないはずなんだがな」 実際、郁に対して何か特別なことを望んだわけではないが、もうこうなってはその理由を郁の口から聞くことも難しいだろう。 「デートはしてるわけだから、堂上のことを嫌っているわけじゃあないんだよね」 「そう思いたいが」 苦く笑いながらビールの缶を呷って一気に飲み干し、そのアルミ缶を片手で握り潰す。 その缶はまるで、堂上の胸が潰れていることを代弁しているように見えた。 今日もお泊り断っちゃったな。 寮のベッドに潜り込んで、郁は少なからず反省してみる。 断りの言葉を言ったあとの堂上の落胆した表情は、今は一番見たくないものになっていた。 あの堂上の顔を見るくらいなら、仕事でドジ踏んでこってり叱られるほうが何十倍も楽だ。 でも、教官、ダメなんです。あたし、まだ断るしかないんです―――。 あれから、自分なりに何か方法は無いものかとインターネットを駆使したり、休憩中に図書館の本をレファレンスしてみたりしたが、「寝顔を可愛くする方法」などという情報は得られなかった。 ―――やっぱり無理なのかな……。 なかなか答えの見つからない問題に頭を捻らせているうち、ふと柴崎のことが気になった。隣のベッドで寝ている柴崎は、果たしてどんな寝顔なんだろか。 郁は音を立てないように気遣いながら、柴崎のベッドに近づいていきそっと覗いてみてみる。 ――て、天使が居るよ……! 柴崎の寝顔は、堂上に勝るとも劣らないものだった。 堂上の寝顔が「可愛い」と評されるなら、柴崎のそれはまさに「美しい」の一言だ。 「ちょっと!し、柴崎っ!」 郁は反射的に寝ている柴崎を、その大きな声でたたき起こしてしまっていた。 ここに最強の手本が居ると思ったら、居ても立っても居られなかったのだ。 その数週間後、寝ようと支度をしている郁の携帯にメールが着信した。音だけで分かる、堂上からだ。 『明後日の公休、外に出る。外泊届は忘れずに出しておくように。 堂上』 明後日のデートは以前から約束していたものだったので今更驚きはしないが、外泊届を念を押されるとは思っても見なかった。 また断って、堂上のあの表情を見るのは苦痛だったが、こればかりは仕方が無かった。 頼みの綱の柴崎ですら、お手上げな悩みだったのだから。 あの日、眠る柴崎を叩き起こして悩みを打ち明けたものの、けんもほろろに突っぱねられた。 「寝顔を可愛くするぅ!?……アンタそんなこと悩んでたの?!……なんつーバカな悩み……」 「だって、堂上教官の寝顔、めちゃくちゃ可愛いかったんだよ!あたし、自分で言うのもなんだけど、絶対寝顔可愛くない自信あるし」 「そんなトコに自信持たなくてもいい!」 「とにかく、なんかいい方法ないの?」 「あるわけ無いでしょ!……ったく人がいい気分で寝てたのに……」 柴崎はこれ以上付き合っていられないと、再び布団に入ってしまった。 そして結局なんの策も得られないまま、デートの当日を迎えた。 当日の待ち合わせはいつもよりも遅い時間だった。 日が傾きかけるその時間に電車を乗り継ぐと、都心まで足を伸ばした。堂上が郁の手をつないで歩を進めた先には、最近オープンしたばかりの6ッ星ホテルがあった。 迷うことなくロビーに足を踏み入れる堂上に、手をつながれたままの郁は付いて行くしかない。 え、ちょっと、それは。 うろたえる郁をロビーに残して、堂上はチェックインに向う。 どうしよう、こんなホテルに連れて来られるなんて予想してないし。 カードキーをジャケットにしまいながら戻ってくる堂上に、郁は断る為に口を開こうとした。が、 「今日はお前のダメな日じゃない。体調も良さそうだ。外泊届はちゃんと出してきたろうな?まあ、出して無くても小牧に電話すれば済むことだ」 先制攻撃は堂上からだった。いつも使用していた言い訳は通用しない。 「いや、あの」 それでも食い下がろうとする郁の手を、堂上が包んだ。 「先に飯にしよう。ここのイタリアンは絶品らしいぞ」 郁に口を挟ませる余裕を与えずに、堂上はレストランへと向った。
https://w.atwiki.jp/anime_wiki/pages/8273.html
■幻魔大戦 効果(倉橋静男、柴崎憲治と共同) ■SF新世紀レンズマン 効果 ■カムイの剣 効果(倉橋静男、柴崎憲治と共同) ■ゴキブリたちの黄昏 効果 ■関連タイトル 生フィルム付き 幻魔大戦 Blu-ray
https://w.atwiki.jp/ekidash/pages/2142.html
たちかわみなみ 多摩都市モノレール 東京都立川市柴崎町三丁目 多摩モノレール 柴崎体育館←→立川北
https://w.atwiki.jp/kk0201kk0714/pages/962.html
1991年に結成された3人組ロックバンド。ビーイング事務所所属。初代ボーカル上杉昇がほぼ全ての作詞を担当、作曲はギタリスト柴崎浩の他に、織田哲郎や栗林誠一郎などの外部提供者が多数いたことが特徴。 1992年の中山美穂とのコラボ作品「世界中の誰よりきっと」でブレイク。 特に1994年に発売された「世界が終るまでは…」は平成を代表するアニソンとしてその名を深く後世に刻み込んだ。 その後事務所が求めていた音楽性との違いで上杉と柴崎が脱退、のちのSMAPと同じ旧ジャニーズJr.グループにかつて所属していた2代目ボーカル和久二郎らが加入するが人気が下降し2000年に解体。2018年より柴崎ら全盛期のメンバーに加え3代目ボーカル上原大史を加えた新体制で再活動。一方WANDSを脱退した上杉は現在でも別のバンドやソロ活動が中心となっている。 レベル7~10の楽曲は無いものの、平均レベルは約4と決して低くはないので注意。 曲名 レベル 愛を語るより口づけをかわそう 4 世界が終るまでは… 3 もっと強く抱きしめたなら 6
https://w.atwiki.jp/honeyworks201118/pages/26.html
視覺圖 名稱 時間 機率提高 ‧ 角色/卡片名稱 對應活動 Dream Story 抽卡券專用池 2022.06.01 (三) 14 00l2022.06.15 (三) 14 00 5★ 南 [とびきり笑顔の1日先生]5★ 涼海日和 [おひさま笑顔の1日先生] HoneyPlay Festival 2022.06.01 (三) 14 00l2022.06.15 (三) 14 00 5★ 南 [とびきり笑顔の1日先生]5★ 涼海日和 [おひさま笑顔の1日先生] 1.5週年紀念復刻 HoneyPlay Festival ‧ 第3彈 2022.05.29 (日) 14 00l2022.06.02 (四) 14 00 5★ 合田美櫻 [繋がったふたりの物語]5★ 柴崎愛藏 [気付かされた答え]5★ 南 [プレッシャーのその先へ] × 明智咲生日紀念卡池 2022.05.28 (六) 23 00l2022.05.29 (日) 23 00 4★ 明智咲 [イノコリですよ?]4★ 明智咲 [センセーの道標] × 1.5週年紀念復刻 HoneyPlay Festival ‧ 第2彈 2022.05.27 (五) 14 00l2022.06.01 (三) 14 00 5★ YUI [見つけられた答え]5★ 成海萌奈 [少しだけ背伸びして]5★ 柴崎健 [君と雪とイルミネーションと] × 第8回 ‧ With You 抽卡券專用池 2022.05.25 (三) 14 00l2022.06.02 (四) 14 00 5★ 染谷勇次郎 [見つけられた答え]5★ YUI [頂点のさらなる先へ]5★ 合田美櫻 [繋がったふたりの物語] 1.5週年紀念復刻 HoneyPlay Festival ‧ 第1彈 2022.05.25 (三) 14 00l2022.05.29 (日) 14 00 5★ 染谷勇次郎 [見つけられた答え]5★ 榎本虎太郎 [君と雪とイルミネーションと]5★ 高見澤亞里紗 [少しだけ背伸びして] × HoneyPlay Remix 2022.05.20 (五) 14 00l2022.05.27 (五) 14 00 5★ 成海聖奈 [始まりの約束]4★ 合田美櫻 [夏夜のマジック]4★ 芹澤春輝 [君が隣にいる幸せ] × Colorful Story 抽卡券專用池 2022.05.13 (五) 14 00l2022.05.27 (五) 14 00 5★ 榎本虎太郎 [事件の真相は…!?]5★ 高見澤亞里紗 [放課後、探検のその後で] HoneyPlay Festival 2022.05.13 (五) 14 00l2022.05.27 (五) 14 00 5★ 榎本虎太郎 [事件の真相は…!?]5★ 高見澤亞里紗 [放課後、探検のその後で] HoneyPlay Remix 2022.05.07 (六) 14 00l2022.05.14 (六) 14 00 5★ 早坂燈里 [憧れる2人の未来]4★ 成海萌奈 [ファンの心をつかむんだ]4★ 白雪風真 [鮮やかな個性] × 1.5週年紀念卡池 2022.05.01 (日) 14 00l2022.06.01 (三) 3 00 5★ 柴崎愛藏 [いつだって一人じゃない]5★ 合田美櫻 [君がくれたあたたかさ]5★ 柴崎健 [兄から贈る「おめでとう」] × 1.5週年紀念Atelier Collection 5★確保池 2022.05.01 (日) 14 00l2022.06.07 (二) 14 00 5★ 瀨戶口雛 [迷い込んだ不思議の国]5★ 榎本夏樹 [女王の気分のままに]5★ 柴崎健 [君を惑わす自由な猫] × 1.5週年紀念Atelier Collection 2022.05.01 (日) 14 00l2022.06.01 (三) 14 00 5★ 瀨戶口雛 [迷い込んだ不思議の国]5★ 榎本夏樹 [女王の気分のままに]5★ 柴崎健 [君を惑わす自由な猫] Dream Story 抽卡券專用池 2022.05.01 (日) 14 00l2022.05.14 (六) 14 00 5★ 柴崎愛藏 [見つけた答えの先に]5★ 染谷勇次郎 [僕らなりの絆] HoneyPlay Festival 2022.05.01 (日) 14 00l2022.05.14 (六) 14 00 5★ 柴崎愛藏 [見つけた答えの先に]5★ 染谷勇次郎 [僕らなりの絆] 成海萌奈生日紀念卡池 2022.04.23 (六) 23 00l2022.04.24 (日) 23 00 4★ 成海萌奈 [とびきりのスマイル]4★ 成海萌奈 [いつか夢見た景色]4★ 成海萌奈 [No.1の私] × HoneyPlay 009 抽卡券專用池 2022.04.21 (四) 14 00l2022.05.02 (一) 14 00 5★ 芹澤春輝 [君と作っていく物語]5★ 瀨戶口優 [これからもずっとふたりで] MV Selection〜東京スプリングセッション~ 2022.04.21 (四) 14 00l2022.05.02 (一) 14 00 5★ 芹澤春輝 [君と作っていく物語]5★ 瀨戶口優 [これからもずっとふたりで] HoneyPlay Remix 2022.04.16 (六) 14 00l2022.04.21 (四) 14 00 5★ 柴崎健 [兄から贈る「おめでとう」]4★ 染谷勇次郎 [最高の相棒]4★ 成海日和 [うちらしいヒロインに] × Colorful Story 抽卡券專用池 2022.04.12 (二) 14 00l2022.04.23 (六) 14 00 5★ 山本幸大 [写真に閉じ込めた想い]4★ 綾瀨戀雪 [新しい季節のはじまり]4★ 榎本夏樹 [ぬいぐるみに頬をうずめて] HoneyPlay Festival 2022.04.12 (二) 14 00l2022.04.23 (六) 14 00 5★ 山本幸大 [写真に閉じ込めた想い]4★ 綾瀨戀雪 [新しい季節のはじまり]4★ 榎本夏樹 [ぬいぐるみに頬をうずめて] HoneyPlay Remix 2022.04.06 (三) 14 00l2022.04.13 (三) 14 00 5★ 芹澤春輝 [気になる恋愛運]4★ 瀨戶口優 [一緒に作っていく明日]4★ 榎本夏樹 [いつもより大人っぽく] × 芹澤春輝生日紀念卡池 2022.04.04 (一) 23 00l2022.04.05 (二) 23 00 4★ 芹澤春輝 [華麗なる怪盗]4★ 芹澤春輝 [君がくれた勇気]4★ 芹澤春輝 [忘れられない一分一秒] × Dream Story 抽卡券專用池 2022.04.01 (五) 14 00l2022.04.13 (三) 14 00 5★ 成海萌奈 [いつもより伸びた背筋]4★ 成海聖奈 [ときめきの時間]4★ 豆井戶宜利翔 [いつの日も全力で] HoneyPlay Festival 2022.04.01 (五) 14 00l2022.04.13 (三) 14 00 5★ 成海萌奈 [いつもより伸びた背筋]4★ 成海聖奈 [ときめきの時間]4★ 豆井戶宜利翔 [いつの日も全力で] 柴崎健生日紀念卡池 2022.03.31 (四) 23 00l2022.04.01 (五) 23 00 4★ 柴崎健 [君がいるから]4★ 柴崎健 [ホンキ詰め込んだ言葉] × 涼海日和生日紀念卡池 2022.03.30 (三) 23 00l2022.03.31 (四) 23 00 4★ 涼海日和 [ヒロインは甘くない] × 第7回 ‧ With You 抽卡券專用池 2022.03.24 (四) 14 00l2022.04.01 (五) 14 00 5★ DAI [俺たちのアンチテーゼ]5★ 合田美櫻 [君がくれたあたたかさ] MV Selection〜一分一秒君と僕の × LOVE ANTHEM~ 2022.03.24 (四) 14 00l2022.04.01 (五) 14 00 5★ DAI [俺たちのアンチテーゼ]5★ 合田美櫻 [君がくれたあたたかさ] 合田美櫻生日紀念卡池 2022.03.19 (六) 23 00l2022.03.20 (日) 23 00 4★ 合田美櫻 [秘密の絵本]4★ 合田美櫻 [描く約束は君と共に]4★ 合田美櫻 [いつかまた君のそばで] × HoneyPlay Remix 2022.03.16 (三) 14 00l2022.03.25 (五) 14 00 5★ 濱中翠 [隣から伝わるドキドキ]4★ 芹澤春輝 [君がくれた勇気]4★ 望月蒼太 [聡明な探偵] × Colorful Story 抽卡券專用池 2022.03.11 (五) 14 00l2022.03.25 (五) 14 00 5★ 瀨戶口雛 [いたずらなひとくち]4★ 榎本夏樹 [君からのプレゼント]4★ 高見澤亞里紗 [君と過ごすホワイトデー] HoneyPlay Festival 2022.03.11 (五) 14 00l2022.03.25 (五) 14 00 5★ 瀨戶口雛 [いたずらなひとくち]4★ 榎本夏樹 [君からのプレゼント]4★ 高見澤亞里紗 [君と過ごすホワイトデー] HoneyPlay Remix 2022.03.05 (六) 14 00l2022.03.12 (六) 14 00 5★ 望月蒼太 [近付く二人の影と距離]4★ 成海聖奈 [理想の姉妹]4★ 涼海日和 [憧れのヒロインに] × YUI生日紀念卡池 2022.03.03 (四) 23 00l2022.03.04 (五) 23 00 4★ YUI [トップの余裕] × Dream Story 抽卡券專用池 2022.03.01 (二) 14 00l2022.03.12 (六) 14 00 5★ IV [仲間と過ごす特別な時間]4★ MEGU [騒々しくて楽しい時間]4★ 南 [休憩中のお楽しみ] HoneyPlay Festival 2022.03.01 (二) 14 00l2022.03.12 (六) 14 00 5★ IV [仲間と過ごす特別な時間]4★ MEGU [騒々しくて楽しい時間]4★ 南 [休憩中のお楽しみ] HoneyPlay Remix 2022.02.22 (二) 14 00l2022.03.02 (三) 14 00 5★ 成海聖奈 [増えていく二人の秘密]4★ 榎本夏樹 [サクラ色の景色]4★ 榎本虎太郎 [頼まれてるだけだよ] × 南生日紀念卡池 2022.02.21 (一) 23 00l2022.02.22 (二) 23 00 4★ 南 [今だけ夢の時間を] × 染谷勇次郎生日紀念卡池 2022.02.21 (一) 23 00l2022.02.22 (二) 23 00 4★ 染谷勇次郎 [月の魔法使い]4★ 染谷勇次郎 [永い恋の物語]4★ 染谷勇次郎 [君のため君が楽しめ] × 柴崎愛蔵生日紀念卡池 2022.02.21 (一) 23 00l2022.02.22 (二) 23 00 4★ 柴崎愛藏 [ど真ん中の僕達]4★ 柴崎愛藏 [特別な君だから]4★ 柴崎愛藏 [出会う前から君を探してた] × Colorful Story 抽卡券專用池 2022.02.17 (四) 14 00l2022.03.02 (三) 14 00 5★ 綾瀨戀雪 [10年後の約束]4★ 望月蒼太 [ぬくもりを君に]4★ 早坂燈里 [気になる新作フレーバー] HoneyPlay Festival 2022.02.17 (四) 14 00l2022.03.02 (三) 14 00 5★ 綾瀨戀雪 [10年後の約束]4★ 望月蒼太 [ぬくもりを君に]4★ 早坂燈里 [気になる新作フレーバー] 第6回 ‧ With You 抽卡券專用池 2022.02.10 (四) 14 00l2022.02.18 (五) 14 00 5★ 濱中翠 [君に釣り合うために]5★ 柴崎愛藏 [いつだって一人じゃない] MV Selection〜水曜日の約束 × LOVE KISS~ 2022.02.10 (四) 14 00l2022.02.18 (五) 14 00 5★ 濱中翠 [君に釣り合うために]5★ 柴崎愛藏 [いつだって一人じゃない] HoneyPlay Remix 2022.02.05 (六) 14 00l2022.02.11 (五) 14 00 5★ 瀨戶口雛 [その一言はただ純粋に]4★ 成海萌奈 [No.1の私]4★ 灰賀一騎 [シッポ振って待ってる] × 高見澤亞里紗生日紀念卡池 2022.02.02 (三) 23 00l2022.02.03 (四) 23 00 4★ 高見澤亞里紗 [ハートの高鳴り]4★ 高見澤亞里紗 [素直になれなくて] × Dream Story 抽卡券專用池 2022.02.01 (二) 14 00l2022.02.11 (五) 14 00 5★ 染谷勇次郎 [バレンタインデーキッス]4★ 塔上沙良 [今年のスイーツリサーチ]4★ DAI [両手いっぱいの贈り物] HoneyPlay Festival 2022.02.01 (二) 14 00l2022.02.11 (五) 14 00 5★ 染谷勇次郎 [バレンタインデーキッス]4★ 塔上沙良 [今年のスイーツリサーチ]4★ DAI [両手いっぱいの贈り物] 第5回 ‧ With You 抽卡券專用池 2022.01.24 (一) 14 00l2022.02.02 (三) 14 00 5★ 柴崎健 [兄から贈る「おめでとう」]5★ 芹澤春輝 [気になる恋愛運] MV Selection〜東京ウインターセッション × さみしがりや~ 2022.01.24 (一) 14 00l2022.02.02 (三) 14 00 5★ 柴崎健 [兄から贈る「おめでとう」]5★ 芹澤春輝 [気になる恋愛運] 濱中翠生日紀念卡池 2022.01.22 (六) 23 00l2022.01.23 (日) 23 00 4★ 濱中翠 [おはようのオーディション] × HoneyPlay Remix 2022.01.19 (三) 14 00l2022.01.26 (三) 14 00 5★ 綾瀨戀雪 [夢見た理想の2人]4★ 瀨戶口雛 [繋がり合う想い]4★ 早坂燈里 [閉じ込めた想い] × Colorful Story 抽卡券專用池 2022.01.13 (四) 14 00l2022.01.25 (二) 14 00 5★ 成海聖奈 [あなたの色の振袖を]4★ 濱中翠 [君の王子様になりたくて]4★ 瀨戶口優 [準備は事前にしっかりと] HoneyPlay Festival 2022.01.13 (四) 14 00l2022.01.25 (二) 14 00 5★ 成海聖奈 [あなたの色の振袖を]4★ 濱中翠 [君の王子様になりたくて]4★ 瀨戶口優 [準備は事前にしっかりと] HoneyPlay Remix 2022.01.07 (五) 14 00l2022.01.14 (五) 14 00 5★ 榎本夏樹 [キミの心を捕まえたくて]4★ 望月蒼太 [こんなに傍にいるのに]4★ 榎本虎太郎 [君と初めての距離感] × Dream Story 抽卡券專用池 2022.01.01 (六) 14 00l2022.01.12 (三) 14 00 5★ 柴崎愛藏 [緯で着付けた晴れ姿]4★ 涼海日和 [新春羽根つきガール]4★ YUI [幸先フルスロットル] HoneyPlay Festiva~東京サマーセッション × 東京オータムセッション~ 2022.01.01 (六) 14 00l2022.01.12 (三) 14 00 5★ 柴崎愛藏 [緯で着付けた晴れ姿]4★ 涼海日和 [新春羽根つきガール]4★ YUI [幸先フルスロットル]
https://w.atwiki.jp/trpg-coc/pages/49.html
私立探偵・河合レイの手記 筆:zero もっと食べたい 河合レイ 桜田伸治 阿部川幸村 怪異のはじまり その日、私こと河合レイは日頃お世話になっている人たちを集めてお気に入りの中華料理店に来ていた。 「本当に奢りなんだよな? じゃあ、ラーメンと餃子と回鍋肉。あとビールで」 私にそう念を押してくるのは、桜田伸治さん。 大手企業に勤めるプログラマーであり、一流のハッキング技能の持ち主。 以前仕事を受けた縁で、時々仕事を手伝ってもらっている。 本業が忙しいらしくなかなかお会いすることはできないのだけれど、お食事を御馳走しますと言ったら今回はすんなり来てくれた。 「じゃ、僕も同じで。あ、ビールじゃなくてジンジャーエールにしてください」 続けて、注文をしたのは画家の阿部川幸村さん。 こちらも先月依頼を受けた縁なのだけれど、その依頼が「自作の筆を探して欲しい」。 何でもその筆がないと創作意欲が湧かないんだとか。 何とか解決することはできたものの、芸術家ってやっぱり私たちとは違う思考回路が流れているんだと実感した一件だった。 「私はウーロン茶で」 「おいおい、それだけで足りるのかよ?」 私の注文に桜田さんが口をはさむ。 「じゃあ、彼女にはシューマイを」 阿部川さんが私の分としてシューマイを頼む。 此処は私の支払いなんだけれど。 何も食べないのももったいないか、とメニューをめくって春巻きと鶏肉のカシューナッツ炒めを注文することにした。 「たまごスープ・・・をお願いします」 最後につぶやくように注文したのは、菊池陽介さん。 社会性のある事件を中心に取材をしている最近名の売れ始めたフリーのジャーナリスト。 普段はもっとはつらつとした印象を与える人なのだけれど、どうも元気がないように見えた。 寝不足なのか目に下にはクマが浮かび、肌は荒れて、顔色も悪いように見える。 「あの…、今追ってる仕事のことで相談したいことがあるんです」 ふと、菊池さんが耳打ちしてきた。 菊池さんが私に取材対象について調査依頼をしたり相談をしてくることは珍しくなかった。 「えぇ、私でよければ。今回はどんな仕事を追っているんですか?」 「摂食障害についてなんですけど。実は・・・俺もいつの間にかそれになってしまったみたいで」 「摂食障害…どちらですか?」 摂食障害には二種類ある。 過食症と拒食症。 「過食の方です。気づくと何か食べ続けていて・・・酷い時には調味料までそのまま口にしてしまうんです」 「それは、大変ですね……」 「お待たせしました」 その時、店員が料理を運んできた。 次々とテーブルに料理が並んでいく。 私が気づかないうちに桜田さんと阿部川さんが追加で注文したらしく、食べきれるのか不安なほどの量の料理が運ばれてきた。 「さ、食べようぜ」 桜田さんが料理に手を伸ばした、その瞬間だった。 先ほどまでの緩慢な動作が嘘のように、菊池さんがたまごスープを一息に飲み干した。 湯気の立った熱々のたまごスープをごくごくとまるで水でも飲むかのように。 「菊池さん?」 熱くないんですか、とかけようとした声は喉から生まれることなく消えてしまった。 菊池さんは、テーブルの上の料理を一心不乱に、私たちに目をくれることもなく食べていた。 それは、飢えた獣が久しぶりの食事にありついたかのような――まさしく貪るという表現が似合う勢いだった。 流し込むように料理を食べ続ける菊池さん。 ついには箸を使うのももどかしく、料理を手づかみで食べ始めている。 私はそのどうにもおかしい光景が信じられず、声をかけることもできなかった。 桜田さんも阿部川さんも呆気に取られている。 そうこうするうちに菊池さんは料理をすべて平らげ、ぎらぎらとした眼をテーブルに走らせた。 そして、醤油差しに目を留め手に取ったかと思うと蓋を開けて一気に飲み干した。 「菊池さんっ?!」 思わず声を上げ、静止しようと立ち上がる。 その時、バリバリ、ずちゅずちゅと何かをかみ砕き啜るような音がテーブルの下から聞こえてきた。 私はテーブルの下を覗き込み、直後その行動を後悔した。 テーブルの下に広がっていたのは、私の日常とも常識ともかけ離れたものだった。 菊池さんの脚がなくなっていた。 この店に来たときは確かにあった彼の脚は、太ももの半ばまで最初から何もなかったかのように消えてしまっていた。 異常はそれだけでは終わらない。 バリバリ、ずちゅずちゅ。 貪るような音とともに、菊池さんの残っていた太ももから皮膚が上半身へ向かってめくれあがっていく。 皮膚がめくれ上がった後には何も残らない。 血の一滴すらも、肉の一欠片すらも。 「ひぅ……っ」 一瞬飛びかけた意識を何とか繋ぎとめて体を起こす。 「顔色悪いよ。大丈夫?」 阿部川さんが声をかけてくれる。 少しだけ気持ちが落ち着いた。 夢だったのか、それにしてはやけにリアルだったけれど。 そう思った時だった。 「ウガ……クトゥ……ユフ」 菊池さんから聞こえた、聞いたことのない謎の音節と、 「おい、そいつ大丈夫か」 桜田さんの張りつめた声に、私はさっきまでの異常な光景が夢じゃなかったことを悟った。 菊池さんの『侵食』は上半身にまで及んでいた。 今や胸から上だけが重力を無視して浮いている、そんな状態にも関わらず菊池さんはまだ食べ続けていた。 すでに口にしているものは食物ですらない。 紙ナプキンを一心不乱に口に運ぶ彼を正気だとは到底思えなかった。 そうしている間にも菊池さんの『侵食』は進み、胸が消え、首が消え、腕が消え、目も耳も食い尽くされて、最後に口だけが残った。 「もっと……食べたい」 “それ”が囁き、次の瞬間私に飛びかかってきた。 恐怖のあまり避けることも動くこともできず、私はただ目を見開いたままそれを見ていた。 しかし、“それ”は私にぶつかる瞬間、ふっと煙のように消えてしまった。 「いったい何だったんだ……?」 呆然とした桜田さんの呟き。 ドッドッと鼓動が早鐘を打つ。 今さっきまで目の前に居た、菊池さんが消えた。 私はそれを見ていた。それなのに、その情報が信じられない。 常識では考えられない現象を、脳が理解することを拒もうとしていた。 「ぁ、ぅ、……あぁぁぁぁぁぁっ!」 異様な叫び声が部屋に響く。 我に返った私が見たのは、テーブルに飛びつく阿倍川さんだった。 阿部川さんは、テーブルの上のものをなぎ倒しテーブルクロスを手繰り寄せるとそのまま口に運び出した。 獣のような形相でテーブルクロスを咀嚼する阿部川さんが、先ほどの菊池さんの面影に重なって再び恐怖を呼び起こす。 「ちったぁ落ち着け!」 桜田さんが阿部川さんを殴りつける。 阿部川さんはそのまま勢いよく吹き飛ばされ、壁にぶつかってようやく止まった。 「痛たたたたたた……」 壁に打ち付けたのであろう頭をさすりながら、阿倍川さんが起き上がる。 その瞳は正気を取り戻しており、私は胸をなでおろした。 「すいません、さっきのは一体……」 「思い出さない方がいいですよ。多分、脳の防衛本能だと思います」 受け入れがたい状況を脳が受け取るのを拒否した結果、正気を失ってしまったのだろう。 私も阿部川さんの叫び声がなかったら、危なかったかもしれない。 改めて辺りを見回す。散々な様子だった。 軒並み割れている食器類、床に散乱したカトラリー。 不自然に“食いちぎられた”紙ナプキンに、ぐちゃぐちゃのテーブルクロス。 まるで台風でも通り過ぎたかのような有様だった。 そして、 「お客様、どうされましたか?」 先ほどの物音を聞きつけたのだろう――店員の姿だった。 「えっと、あの……」 この部屋の惨状をどう説明したものかと考えあぐねる。 短時間に色々なことがありすぎてどこから説明するべきか、一部始終を話したところで信じてもらえるとは到底思えないし――。 「すいません、ちょっとこいつが酔っ払っちまったみたいで」 すかさず、桜田さんが阿部川さんを指さしながら店員さんに話しかける。 しかし、酔っ払って暴れたにしては荒れすぎている室内に店員は懐疑的な目を向けただけだった。 私たちの取り繕うような、はぐらかすような態度を感じ取ったのか店員は「店長を呼んできます」と言い残して部屋を後にした。 「どうしましょう。本当のことをいうわけにもいきませんし」 目の当たりにしたものが思わず発狂してしまうような光景を、言葉で説明できるとは到底思えなかった。 それに、私自身“あれ”を他人から説明されたところでそのまま信用するとは思えない。 大体の人が精神異常者だと思うだろう。 しかし、目の前で起こった光景のインパクトが強すぎて他に取り繕う言葉が出てこなかった。 「僕に考えがあります」 壁に打ち付けたところがまだ痛むのか、阿部川さんが顔をしかめながら名乗りを上げる。 「では、お任せします」 そんなやり取りを終えた頃、店長さんらしき男性がやってきた。 筋骨隆々の逞しい体つきと、向けられた視線の鋭さに思わず身を硬くする。 「すみませんね、お客さん。ちょっとお話を聞かせてもらえますか」 語調は穏やかだが、有無を言わせない威圧感があった。 穏便に此処から出られるのか……私の脳裏をそんな不安がよぎる。 安部川さんはそんな店長さんに臆することなく近づくと、 「お騒がせして大変申し訳ありません。ちょっと酔っぱらってしまったみたいで……」 手にした自分のバックからおもむろに一枚の絵を取り出した。 「お詫びに、私の描いた絵を差し上げましょう」 「「「……え?」」」 その場にいた全員の声がハモる。 「そうです、絵です。絵は良いですよ。ほら、この壁にかけたらいいと思いません?」 「いや、お客さん…」 阿倍川さんの営業トークは止まらない。 「私の絵はその筋では有名でしてね、マニアには高く売れたりするんです」 「そういうことじゃなくて」 「もしかして、絵はお嫌いですか? でしたら、筆はいかがです? 僕、筆を作るのが趣味でなかなか良い出来のものがちょうど此処に…」 「そういうことじゃねぇっつってんだろ!」 イライラがピークに達したのか、店長さんが荒々しい声をあげた。 さすがの阿部川さんも口をつぐむ。 店長さんは私の姿を見つけると、 「請求先は事務所でいいかな?」 にっこり笑って見せた。 ただし、目は笑ってない。 「嬢ちゃん、此処は頼む。今度格安で仕事請け負うから」 懐は痛むが、背に腹は代えられない。 悪質ないたずらとみなされて、警察に突き出されるよりはましなはず。 「申し訳ございませんでした……」 こうして、私たちは何とか店の外に出ることができた。 騒動のおかげで食事にはありつけない上に、弁償を負うことになってしまったけれど。 ……弁償費用は均等割りしても罰は当たりませんよね? 菊池の足跡 「お二人はこれからどうします?」 中華料理屋を出たところで、私は二人に問いかける。 「河合さんは菊池さんの失踪事件を追うんですよね? でしたら、お手伝いしますよ」 「俺も手伝うぜ。さっきの一件で嬢ちゃんには借りがあるしな」 「ありがとうございます。助かります」 消えてしまった菊池さん。 私たちはその足取りを追うことにした。 「とりあえず、菊池さんのアパートに行ってみましょうか。何か手がかりがあるかもしれません」 「場所はわかるんですか?」 「えぇ、何度か仕事の関係で行ったことがあります」 私たちは、さっそく菊池さんのアパートに行ってみることにした。 「大体こんなところでしょうか」 菊池さんのアパート――鍵は桜田さんが友人と名乗って借りてきた――で私たちは手がかりになりそうなものを探した。 取材記録や取材対象者の名前を記したメモ、あとは摂食障害に関わる資料。 それを読んでいくうちに、一人の女性の名前が浮かび上がる。 「過食症をメインに扱うカウンセラー、柴崎佳苗……いかにもって感じですね」 菊池さんの取材記録に頻繁に名前の挙がっていた人物、それが柴崎だった。 菊池さんの原稿によれば、元々は証券会社に勤めるOLだったが2年前に退職し、都内にメンタルクリニックを開設。 過食症に劇的な効果があると口コミで広まり、患者の中には彼女を信奉する者までいるらしい。 彼女の経歴上、精神医学を学んだことがないのを疑問に思う内容が綴られていた。 その他に見つかった取材対象者は、2人。 1人目は平木大吾。 近衛製薬という製薬会社に勤務する営業で、柴崎のクリニックに出入りがあったらしい。 柴崎が精神医学を用いずにカウンセリングを行うのは違法な薬物の使用によるものではないのか、その薬品の入手先が平木なのではないか……という観点なのだろう。 もう1人は浅沼ひより。 市内の高校に通う女子高生で、こちらは柴崎の患者。 実際にカウンセリングを受けて、効果を実感した人として取材をしていたようである。 本当にお茶を飲みながら数時間話をしただけで過食症が治まったのか、と疑問に思っている様子が窺える内容だった。 「ちょっとお茶するだけでって胡散臭ぇな」 桜田さんが取材メモを見ながらつぶやいた。 「過食症はそんなに簡単に治せるものではないようですよ」 私は菊池さんの本棚から見つけた過食症に関する資料を二人に見せる。 そこには、摂食障害が厚生労働省の特定疾患――難病に認定されていることが書かれていた。 数時間のカウンセリングだけでは到底治るとは思えない。 「他には何かありませんでしたか?」 「気になることと言えば、さっき柴崎の患者たちの交流サイトってのを見つけたんだが」 桜田さんが菊池さんのノートパソコンを弄りながら答えた。 「掲示板にウガァ・クトゥン・ユフ? って言葉が頻繁に出てくるのが気になるっちゃぁ気になるところだな」 「ウガァ・クトゥン・ユフ……」 桜田さんの発した呪文のような言葉には聞き覚えがあった。 「英語じゃないですし、おまじないか何かみたいですね」 「それ、私聞いたことあります。……菊池さんが消える寸前、菊池さんの体内から聞いたことのない呪文らしきものを聞きました。それがこれだったように思います」 「なら、菊池の失踪に関わりがありそうだな。もうちょっと調べてみるか」 桜田さんがパソコンに向き直る。 「ん、これなんでしょう?」 ふと、阿部川さんが傍らのゴミ箱から何かを取り上げた。 「なんでこれだけこんなに念入りに丸めてあるんだ?」 確かにゴミ箱の中にあるのは書き損じの原稿などのようで、そのままだったり半分に折り曲げられたりする程度なのだが、阿部川さんが手にしているのは念入りに丸めてあった。 阿部川さんは破れないようにそっと開いたそれをしばらく見た後、言葉少なに差し出した。 「……これ」 覗き込んでみると奇妙な生き物のようなイラストが描いてあるのが見えた。 蟇蛙を思わせる大きく膨らんだ腹部に、頭部は蝙蝠に似ているだろうか。 兎にも角にも何とも形容詞し難い、この世のものとは思えない生物。 しかし、創作にしては良くできている・・・むしろ出来すぎている。 こんな生物は存在するはずがない、それなのに何故か感じるリアルさ。 段々と胸にこみ上げてくる気持ち悪さから、私は目を逸らした。 「気持ち悪ぃスケッチだな」 言いながら、桜田さんがイラストを丸めなおした。 その表情は少し青ざめているように見える。 「さて、こっちは面白いもの見つけたぜ。嬢ちゃんにひと肌脱いでもらえると嬉しいんだが」 桜田さんがノートパソコンの画面を見せてくれる。 そこには、ちょうど明日オフ会があることが書かれていた。 「オフ会ですか。確かにそれだと私が適任になりますね」 過食症の患者は女性が大半だという。 そうなれば、私が行くのが一番自然だろう。 しかし、これまでに見た異常なものが二つ返事で引き受けることを躊躇させる。 得体のしれない恐怖に心が竦む。 けれどせっかく掴みかけた糸を此処で手放すわけにはいかない。 虎穴に入らずんば虎子を得ず、である。 「わかりました。潜入してみましょう」 「なら、掲示板に書き込んでみるぜ。過食症の女子高生を装って・・・は無理か」 「せめて大学生ですかね」 桜田さんの軽口に安部川さんが合わせる。 「何気に失礼ですね……」 「さて・・・っと。こんなもんだろ」 私のささやかな抗議をスルーして、桜田さんが掲示板に書き込みを終えた。 その内容を見て、私は思わず絶句する。 『はじめまして、zeroと申します。柴崎先生のカウンセリングに興味を持っています。 皆さんのお話を聞かせていただきたくてコメントしました。 オフ会にも参加したいのですが、今からでも参加可能でしょうか☆(๑ゝω・๑)vキャピ』 「す、すごいですね……」 「普段女子高生になりすまして、掲示板にカキコとかしてるからな」 さりげなくネカマをカミングアウトされても。 どう返答したものか考えていると、 「あ、もう返事来たみたいですよ」 安部川さんが画面を指さす。 掲示板を見てみると、確かに返事が来ていた。 『それでしたら是非オフ会にいらしてください。 柴崎先生のカウンセリングは本当によく聞くのでお勧めですよー。 ウガァ・クトゥン・ユフ 絵都 』 「またあの“呪文”だね。いよいよ怪しい」 「この絵都ってのがサイトの管理人らしい」 言いながら、桜田さんはよろしくお願いしますという旨の返信をした。 「ところで、このzeroってハンドルネームですか?」 「レイちゃんだからもじってzero。いい名前だろ?」 私の質問に桜田さんが得意げに答える。 とりあえず、問いかけに対しては言葉を濁しておく。 「そういえば、クリニックの方はどうする? とりあえず行ってみる?」 「今一番怪しいのはクリニックですよね。中に入るのなら予約を取らないとダメかもしれません。何しろ人気の“先生”のようですし」 飛び込みで行っても待たされたり、最悪の場合断られる可能性もある。 「電話してみるくらいならいいんじゃねぇの」 確かに、電話でクリニックの感触をつかんでおくのもいいかもしれない。 「うん、じゃあ電話かけてみるよ」 阿部川さんが携帯を手に立ち上がる。 そして、番号をプッシュすると相手がすぐに出たのだろう話し始めた。 「あの、過食症に悩んでいて……えぇ、そうなんです。はい。えぇと、患者の名前ですか」 ちらりと阿部川さんがこちらに視線を向けた。 「河合レイと言います。あ、僕は彼女の恋人で……はい」 「!」 阿部川さんの意図に気付いたときには、電話は終わっていた。 「予約取れたよ。明日の夕方だって」 「……そうですか。そうですよね」 確かに過食症は『女性』に多い病気である。 そして、この中の『女性』は私だけ。 明日はどうやら、過食症患者として一日過ごさなければならないようだ。 異変の前兆 「……?」 此処はどこだろう。 意識がふわふわする。 これは、夢? 思考がまとまらない。 私は何をしてるんだろう―― 「……!」 急激に意識が浮上する感覚。 靄が晴れたように視界が開けていく。 気が付けば私は自宅の洗面台の前に立っていた。 辺りは真っ暗で、まだ夜は深い。 コチ、コチ、と時計が刻む針の音がやけに大きく響いている。 何でこんなところにいるんだろう。 寝呆けて歩いてきたのだろうか。 まぁ、いいか。 難しいことは考えずに寝直せばいいと洗面所を後にしようとしたその時、私は鏡を見て息を呑んだ。 そこには、自分の爪を食いちぎる私が写っていた。 口元に添えられた自分の指。 その指先、爪は無造作に剥がされたように血に塗れていた。 そして、口の中にはざらざらとした感触。 反射的に吐き出す。 シンクに落ちてカラカラと軽い音を立てる白い破片。 蛇口をひねり、口を濯ぐ。 感触が消えない。 何度口を濯いでも、食い千切った爪が頬の内側をチクチクと刺すような感覚が残っている。 ぶつり、と不意に音がした。 次いで、つう、と口の端から血が一筋流れ出す。 唇を噛んだらしく、口内に溢れる鉄錆の味。 そこで、私の意識は途切れた。 「おい! 大丈夫か!」 桜田さんに叩き起こされて目が覚めた。 なんで桜田さんが? と思ったのも一瞬。 私が泊まっていってほしいとお願いしたのだった。 菊池さんの一件もあって、一人で夜を迎えるのが少し怖かったのだ。 それにしても随分深く眠り込んでしまっていたらしい。 すごく嫌な夢を見た気がする……。 体を起こそうと手をついた瞬間、指先に電流が走った。 「痛……っ」 チリチリと痛む指先を確認する。 私の爪は無理矢理剥がしたかのようにボロボロになっていた。 口の中にもあのざらざらした感触が戻ってくるような気がして、気分が悪くなる。 「いったい何があったんだよ。目が覚めたら嬢ちゃんの手が血塗れでびっくりしたぜ」 「実は……」 簡単に昨晩見た“夢”のことを二人に話す。 そして、それがただの夢ではなく現実だったことも。 「大丈夫? 病院行く?」 阿部川さんが心配そうに顔を窺う。 「いえ、大丈夫です。何とか手当してみます」 簡単な応急救護程度ならば心得ている。 「お二人は今日はどうしますか?」 手当てをしながら二人に問いかける。 私は依頼もないのでこのまま事件を追うつもりでいた。 「俺は会社に行くぜ」 「僕は特にやることもないしお手伝いするよ」 桜田さんは会社員なのでこちらにばかり構っていられないらしい。 それにしても働きすぎなのではないかと思うけれど。 「私たちは製薬会社を当たってみましょうか」 精神医学なしで過食症を抑えるなら、一番確率が高そうなのが薬物の使用だというのが菊池さんの見解だった。 菊池さんの取材メモに平木の勤める製薬会社の名前があった。 会社に行く桜田さんと別れて、私は阿部川さんと件の製薬会社――近衛製薬に向かった。 「近衛製薬では特に情報は得られませんでした」 午後になって、私たちは桜田さんとオフ会会場のファミレス近くで合流した。 オフ会がファミレスで行われるとのことで桜田さんと阿倍川さんには後方の席で、護衛兼見張りをお願いすることにしたのだ。 近衛製薬では受付で“製薬部”の佐藤さんを呼び出すことに成功したものの(偶然河合って知り合いがいたらしく呼び出されてくれた)、そもそも平木は“営業部”の所属だし外部に影響を及ぼすような噂は聞かないとのことで目ぼしい情報はないようだった。 ゴマすりがうまいだとか、社内での賄賂があるとかそういう情報はあるみたいだったけれど。 今回の調査には直接関係がなさそうなので、いったん脇に置いておく。 「オフ会で何か目ぼしい情報が得られるといいね」 「とりあえず、気になることがあったらLINEで連絡な」 「わかりました、いつでも携帯は見られる状態にしておきます」 簡単な打ち合わせを終えて、私はオフ会の会場であるファミレスへと足を踏み入れた。 店内を一通り見回して、掲示板で知らせてもらっていた『特徴』を目印に目的の人物を探す。 窓際の席にその人物を見つけて、そっと声をかける。 「はじめまして。“zero”と申します。絵都さん…でよろしいでしょうか?」 昨日桜田さんが掲示板で書き込んでいた名前を名乗ると、彼女は微笑んで答えてくれた。 「はじめまして、絵都と申します」 そのテーブルには絵都のほかに3人の女性が座っていた。 全員10代から20代と言ったところだろうか。 他の参加者が順番にアッキー、リンネ、ぴよ☆りんとそれぞれ名乗ったところで席に着く。 私はぴよ☆りんと名乗った女性に注目する。 年齢は10代後半くらい、HNが本名をもじったものだとしたら彼女が浅沼ひよりなのではないかと思ったのだ。 「さて、全員揃ったことですしそろそろ始めましょうか」 絵都が参加者に声をかける。 すると、私以外の参加者が声を揃えて、 「「「「ウガァ・クトゥン・ユフ。ウガァ・クトゥン・ユフ」」」」 あの『呪文』を唱えた。 私は、突然のことに驚いてしまって目を瞬かせることしかできなかった。 そんな私の様子に気づいたように絵都は笑う。 「びっくりされました? これ、柴崎先生から教わった“おまじない”なんですよ」 「心を落ち着けるおまじないらしいですよ」 アッキーが絵都に続く。 そのまま和やかな雰囲気でオフ会は進んでいく。 女性が集まってお茶を楽しんでいる会なので、お茶会や女子会に近い雰囲気である。 思い思いに雑談を楽しむ中で、私はクリニックの中での様子を聞いてみる。 菊池さんの取材メモにあった通り、やはりカウンセリングはお茶やケーキを食べながら雑談をするだけのようだった。 カウンセリングで出されるお茶やケーキについても患者が持ち寄ったものをそのまま出しているようで、何か特別なお茶や薬の存在は窺えなかった。 「みなさんの治療はもう完了しているんですか?」 「いえ、カウンセリングの効果は長くて1か月くらいなんです。だから、1か月に1回は先生に診てもらってます」 彼女たちの話によると3週間から1か月ほど経つと、食欲が戻ってきてしまうらしく繰り返しカウンセリングに通っているらしい。 ふと見ると、彼女たちの肌は荒れてボロボロになっていたり少し頬がこけている印象を受けた。 確かに完治したようには見えない。 そして、過食症の治療が順調に進んでいるようにも思えなかった。 「先生はすごいんですよ。ずっと過食で苦しかったのをあっという間に治してくれたんです」 「自分以外の誰かが代わりに食べてくれる感じになるんです」 「だから、たくさん食べても罪悪感がないっていうか」 彼女たちは柴崎にかなり傾倒しているようで、それこそ熱心に話してくれた。 その中に気になる単語を見つけて、質問してみる。 「自分以外の誰かってなんです?」 「よくわからないけど、夢の中で大きな黒い影みたいなのがいる気配がするんです」 重ねて質問してみても、その影の実体を見たことある人はいなかった。 そのとき、私の携帯がメッセージの着信を告げる。 〔kikiku:注文した料理の量多くない?〕 メッセージは阿部川さんから。 オフ会中に連絡を取り合うために、昨日のうちに3人のグループを作っておいたのだった。 桜田さんがハンドルネームもつけてくれて、私がzero(これは言うまでもないけれど) 、阿部川さんがkikiku、桜田さんがuomega。 阿部川さんの言葉通り、テーブルの上には女性5人では食べきれないほどの料理が並べられていた。 〔uomega:カウンセリングを受ける前と後で食べる量に変化はあったのか?〕 桜田さんの質問を彼女たちにぶつけてみる。 「変わらないですね。でも、食べちゃったって罪悪感がない分気持ちが楽なんです」 〔kikiku:吐いたりすることは?〕 「吐くことはなくなりました」 しばらく質問を続けていく中で、ふと思いついたことを私は2人にメッセージで送る。 〔zero:あの呪文唱えてみてもいいですか?〕 彼女たちがおまじないと呼ぶあの『呪文』。 菊池さんが消えた時に聞こえたのと同じ『音節』。 どこか不気味な響きをもつそれに、恐怖を感じないわけではないのだけれど。 〔kikiku:何かあったら可能な限り対処するよ〕 阿部川さんからの返信を確認して、私は絵都に話しかけた。 「絵都さん、私もあの『呪文』唱えてみてもいいですか?」 「是非。心が落ち着きますよ。じゃあ、みなさんもご一緒に」 にっこりとほほ笑む絵都を少しだけ怖いと思ったのは錯覚だったのだろうか。 深呼吸して、心を決める。 もしも、何か起こったとしても手がかりが掴めれば―― 「「「「「ウガァ・クトゥン・ユフ」」」」」 ――何も、起こらなかった。 異常に食欲が湧くわけでも、体が内側から食われるわけでもなく。 何も起こらなかったことに安堵はしているものの、気持ちが落ち着いたわけでもなく。 本当に何も起こらなかったし、何も変わらなかった。 「そろそろお開きにしましょうか」 ドキドキはおさまらないままに時間が経って、オフ会は滞りなく終了となった。 オフ会を終えた私は2人と合流する。 「さて、次は柴崎先生のクリニックですね」 「俺は会社に戻るわ。残業時間になったしな」 そう言って去っていく桜田さん。 午後休って残業とかあるんだ? と思わなくもないが彼が仕事熱心もとい社畜なのは知っている。 そのまま見送って、私たちは柴崎メンタルクリニックへと向かった。 危機との接触 柴崎のクリニックは普通のマンションの一室にあった。 阿部川さんがインターホンを鳴らす。 「どちら様ですか?」 「予約をお願いしていた河合と申します」 ガチャリと内鍵を外す音、次いで扉が開かれる。 たおやかにほほ笑む女性は話に訊いていた通り、美人で優しそうな印象を受ける。 「どうぞ」 私たちは彼女に促されるままに、部屋の中へと足を踏み入れた。 部屋は一般的な2LDK。 元々居住空間だったところをそのままクリニックとして開放しているのだろうか。 リビングはアイランド型キッチンになっていて、広い印象を受ける。 キッチンの端には何やら紫色の布で包まれた一抱えくらいある置物のようなものが置かれていた。 「それは他の患者様からの預かりものなので触らないでくださいね」 こちらの視線に気づいたのだろう、柴崎がやんわりと注意する。 「お好きなところにかけてお待ちください」 リビングダイニングの中央に置かれたテーブルに座るよう指示してから、柴崎はキッチンに入っていった。 とりあえず、キッチンの様子が見えるように並んで座ることにした。 お茶の準備をしているのであろう柴崎の手元に注目する。 特に怪しい様子は見られないまま、お茶の準備を終えて柴崎が席についた。 「改めまして、柴崎佳苗と申します」 いよいよカウンセリングが始まる。 カウンセリングは至って普通で、名前や症状を尋ねたり過食症に関する簡単な解説をしてくれたり。 それを聞きながら用意された紅茶に目を落とす。 菊池さんの取材メモにあった『薬物』の文字が脳裏に浮かぶ。 準備の時点では特に怪しいところは見られなかったけれど。 ふぅと息を吐いて、カップを取り上げ……ゆっくりと流し込む。 呑み込んだ液体は、至って普通の紅茶の味がした。 そんな私に柴崎が言う。 「ずいぶん緊張されてますね。ひとつおまじないを教えましょう。ウガァ・クトゥン・ユフ。中世ヨーロッパの魔女の呪文なの」 思わず息をのむ。 その私の反応をどう捉えたのか、柴崎の言葉は続く。 「魔女って言っても、占いをしたり薬草を煎じたりしていた良い魔女だから心配しなくて大丈夫」 「何か意味のある言葉なんですか?」 阿部川さんが横から質問を投げかける。 「中世ヨーロッパに伝わる美容に効く呪文らしいです」 「先生はどこでこの言葉をお知りになったんですか?」 阿部川さんが質問を重ねる。 「信じてもらえないかもしれませんが……まだ私がOLをしていた頃に夢の中でこの言葉を訊きました。気になって調べてみたところ、それが中世の魔女の呪文だと知りました。そして、それを診療に取り入れてみようと思ったのです」 「その言葉を唱えていたものの姿は見ましたか?」 阿部川さんがさらに質問する。 私も注意深く柴崎に目を向ける。 「いえ、あまりはっきりとは……覚えていないというか」 はぐらかす口調。 話したくないような口ぶりである。 嘘ではないけれど、彼女は何かを隠している。 それを追及しようと口を開きかけたその時。 「では、一緒に『呪文』を唱えましょう」 柴崎が微笑んだ。 ≪ウガァ・クトゥン・ユフ≫ 「心を空っぽにして。何も考えずに何度も繰り返し唱えてみて」 柴崎が語りかけてくる。 その言葉に従って、『呪文』を繰り返す。 「人の精神は感情にコントロールされるもの。精神の抑圧を解放すれば、精神をコントロールできるはず」 私の唱える『呪文』、それに乗って滔々と響く柴崎の声。 脳の奥が痺れてくる。 世界が輪郭を失って、ぼやけていく。 そして、 ≪ウガァ・クトゥン・ユフ≫ 意識が体から切り離された。 体は指の一本すら自分の思い通りに動かせない。 今のわたしは、体という箱の中から外の世界を見ることしかできない。 「あなたは何者ですか?」 柴崎の声は薄い壁を隔てたような、ひどくくぐもった響きで聞こえた。 意識を失った体が、柴崎の問いに答えようと口を開く。 「……わたしは」 「彼女はこういう診療は初めてなんです。つらそうなので、ちょっと止めていただけませんか」 横から阿部川さんの声が聞こえた。 彼は正気を失っていないらしい。 「≪ウガァ・クトゥン・ユフ!!!!≫」 柴崎がひときわ大きく『呪文』を唱える。 今のわたしにはその『呪文』は柴崎の命令として聞こえた。 阿部川を殺せ、と。 体は抵抗することなく、その命令を実行しようと右腕を振り上げ力任せに振り下ろした。 その手にはフォークが握られている。 「……っ!」 突然がり、と手首に引っかかれたような痛みが走る。 勢い余ったフォークは阿部川さんの代わりに、わたしの体を傷つけていた。 傷口から滲んだ血は流れ落ちない。 まるで重力を失ったかのようにふわりと浮きあがると、キッチンの端にあった置物に向かって飛んでいく。 阿部川さんはその様子に一瞬呆然としたものの、すぐに我に返ると私の体からフォークをもぎ取った。 フォークを奪われたくらいでは、命令は止まらない。 わたしの体は阿部川さんに殴りかかる。 阿部川さんは再び私の攻撃を避けると、キッチンへ向かって走り出した。 紫の布に包まれた置物を手に取り逃げる柴崎を追いかける。 わたしの体も阿部川さんを追いかけるように走り出していた。 廊下を駆け抜け玄関で手間取った柴崎に、阿部川さんの後ろ上段回し蹴りが炸裂した。 その衝撃で、柴崎の手から置物が零れ落ちる。 なすすべなく床に叩きつけられた置物は、がしゃんという音を響かせ ――――――視界が暗転した。 激しい衝撃と共に、意識を取り戻した。 先ほどまで切り離されていた意識と体が、今は繋がっているのを感じる。 (ウガァ・クトゥン・ユフ……) どこからか幽かに聞こえてくる祈祷文。 見渡す限り、どこまでも白い――それは人の骨だった。 その中心に、それは居た。 黒くて大きな禍々しい気配をもったもの。 その気配は果てしなく邪悪で、私たちの心を容赦なく砕こうと襲いかかってくる。 菊池さんの部屋で見つけた不気味なイラスト。 それとよく似た、いやまったく同じ怪物だった。 恐怖に苛まれて体を動かすことはおろか、声を出すことすらできない。 そんな私たちを気にする様子もなく、その怪物は手元にあった何かを無造作に口に運んだ。 美しい女性。 柴崎佳苗だった。 柴崎は抵抗することなく、喰われていく。 引き裂かれ、咀嚼され、呑み込まれていく。 ほどなくして柴崎は跡形もなく食べられて、私と阿部川さんと、その怪物だけが残された。 「ぁ、ぅ……」 目が、あった。 気怠そうな眼。 それなのに確実に“殺される”という恐怖に包まれる。 いや、殺すのではない。 あれは、壊すのだ。 いまだ動けないままの私を怪物の腕が捉えた。 その腕に包まれた瞬間、言いようのない感覚が体内を駆け巡る。 これは、感じてはいけない感覚だと体中から危険信号が発せられる。 そして、私は理解する。 この世界に通じる鍵、もう1つの世界と接触する一端を。 怪物が吠える。 それは、蟇蛙とも柴崎の声とも取れる不思議な響きで―――― 「河合さん、大丈夫?」 阿部川さんに起こされて目が覚めた。 先ほどまでの息苦しいような空気はどこにもなく、ほっと息を吐く。 「戻っ……た?」 気が付けば、再び柴崎のクリニックだった。 目の前に柴崎が倒れている。 さっきの不思議な空間の中で、あの怪物に喰われた柴崎。 まさか、死んでしまったのだろうか。 そっと近づこうとしたとき、柴崎の体に起きた異変に気が付く。 彼女の手足はまるで枯れ枝のごとく痩せ細り、美しかった肌は荒れており、まるで拒食症患者のようだった。 柴崎は不意に起き上がると、ぶつぶつと呪文を唱え始めた。 「≪ウガァ・クトゥン・ユフ…ウガァ・クトゥン・ユフ…≫」 その呪文に合わせるように、私の中の何かが蠢きだした。 内側からだんだんとせり上がってくる感覚。 「あ、ぁ……」 そして、口から黒い液体となって零れ落ちた。 その黒曜石のような艶めきを纏った液体はとろりと滑らかに床に落ちて、腐った沼のような悪臭をまき散らす。 私の中から湧き出たその液体は、その場で1つの塊となり鎌首をもたげた蛇のような形になっていく。 蛇に似たそれは、腹部に無数の節くれだった足を持つ化け物だった。 その化け物は、ゆっくりと柴崎に向き直ると柴崎に襲いかかった。 柴崎は口を大きく開け、化け物を迎え入れる。 化け物は迷うことなく、柴崎の口の中に飛び込んだ。 口よりも大きなその化け物を、恍惚の表情で受け入れる柴崎。 顎が外れようともお構いなしで、呑み込んでいく。 みるみるうちに腹部が膨らんでいく。 その姿は、先ほどの空間で見た怪物に似ていた。 すべてを呑み込んだ柴崎は満ち足りた表情で後ろに倒れ込む。 すると、膨らんでいた腹部がみるみるうちに萎み始めた。 それと同時に腕に顔に皺が刻まれ始め、瑞々しかったその肉体は老婆のように乾いていって―― 柴崎佳苗は二度と目を覚まさなかった。 数日後、柴崎の記事が小さく報じられていた。 【摂食障害のカリスマカウンセラー・無理なダイエットによる餓死!】 柴崎の死はあくまで餓死として、菊池さんは失踪人として記録に残るのだろう。 そして、いつしか人々の記憶からも消えるだろう。 けれど、私はずっと忘れないだろう。 菊池さんや柴崎が死んでしまった本当の理由を。 『×月○日 今日も食べてしまった。 満足できるのは食べたその時だけ。 嘔吐するのが苦しい。辛い お腹が空いた。何も考えずに思い切り食べ続けたい』 『○月△日 今日は骨董屋さんで気になる像を見つけた。 何故かすごく欲しくなって買っちゃった。 そばに置いておくと、嘘のように食欲がなくなる。 不思議だけど、すごくうれしい・・・』 『○月☆日 やっとわかった。 この像は神様の化身。 ずっと頑張ってきた私への神様からのご褒美なんだ』 『○月※日 白い洞窟の夢を見た。 蟇蛙のような蝙蝠のような不思議な存在。あれこそが神の本体。 神は私の食欲を食べて、喜ばれた。 私の食欲が、神の食欲を満たしている! 私は選ばれた。そして、神の望むままに食欲に溢れた者たちを捧げよう』 『△月□日 雑誌の取材を受けた。 私のことをこそこそと嗅ぎまわる嫌な記者。 私の治療を麻薬によるものじゃないのかと疑っているらしい。 あんな低俗なものと一緒にされるわけにはいかない』 『△月#日 神は私に使者を遣わしてくださった。 これであの記者を食らいつくせる』 柴崎の部屋で見つけた日記には、彼女が異界の淵を覗き込み堕ちていった様子が記されていた。 彼女は彼岸の神に魅入られ、その身を捧げた。 菊池さんはそれに巻き込まれて、殺されてしまった。 こうして、柴崎佳苗を中心とした奇怪な事件は収束した。 私たちは、日常へと戻っていく。 私たちの世界のすぐそばにある、もう一つの世界。 私たちに寄り添い顕現する悪夢、あの異界の気配を感じながら。 【Fin】
https://w.atwiki.jp/jwe2008cc/pages/240.html
第1節 徳島ヴォルティス 0 - 0 東京ヴェルディ 2009/03/07 鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアム 【スタメン】 GK 1 土肥 洋一 FW 平本 DF 29 和田 拓也 FW 飯尾 MF 河野 DF 17 土屋 征夫 DF 32 高橋 祥平 MF 滝澤 MF 柴崎 MF 5 河村 崇大 MF 23 藤田 優人 MF 河村 MF 8 柴崎 晃誠 DF 藤田 DF 和田 MF 15 滝澤 邦彦 DF 高橋 DF 土屋 MF 7 河野 広貴 FW 25 平本 一樹 GK 土肥 FW 16 飯尾 一慶 【サブ】 ---------- └------------ ------------┘ GK 21 高木 義成 DF 4 飯田 真輝 MF 6 菅原 智 FW 9 大黒 将志 (76 柴崎 晃誠) FW 10 レアンドロ (23 飯尾 一慶) 第2節 東京ヴェルディ 1 - 2 セレッソ大阪 2009/03/15 味の素スタジアム 【得点】 28 河野 広貴 【スタメン】 GK 1 土肥 洋一 FW 大黒 DF 29 和田 拓也 DF 17 土屋 征夫 FW レアンドロ DF 32 高橋 祥平 MF 滝澤 MF 河野 MF 23 藤田 優人 MF 6 菅原 智 MF 菅原 MF 河村 MF 5 河村 崇大 DF 藤田 DF 和田 MF 7 河野 広貴 DF 高橋 DF 土屋 MF 15 滝澤 邦彦 FW 10 レアンドロ GK 土肥 FW 9 大黒 将志 【サブ】 ---------- └------------ ------------┘ GK 21 高木 義成 DF 4 飯田 真輝 MF 8 柴崎 晃誠 (88 菅原 智) MF 18 永里 源気 (78 レアンドロ) FW 25 平本 一樹 (75 大黒 将志) 第3節 東京ヴェルディ 1 - 0 カターレ富山 2009/03/22 味の素スタジアム 【得点】 89 大黒 将志 【スタメン】 GK 1 土肥 洋一 FW 大黒 DF 29 和田 拓也 DF 17 土屋 征夫 FW レアンドロ DF 32 高橋 祥平 MF 滝澤 MF 河野 MF 23 藤田 優人 MF 6 菅原 智 MF 菅原 MF 河村 MF 5 河村 崇大 DF 藤田 DF 和田 MF 7 河野 広貴 DF 高橋 DF 土屋 MF 15 滝澤 邦彦 FW 10 レアンドロ GK 土肥 FW 9 大黒 将志 【サブ】 ---------- └------------ ------------┘ GK 21 高木 義成 DF 14 富澤 清太郎 (47 土屋 征夫) MF 8 柴崎 晃誠 (77 菅原 智) MF 18 永里 源気 FW 25 平本 一樹 (74 レアンドロ) 第4節 第5節
https://w.atwiki.jp/seiyudb/pages/100.html
2017年7月6日 新第1話:卯月 TBS:26時00分〜 三島春来:寺島拓篤/真四季みはる:神田沙也加/本田塔羽:鈴村健一/三橋真珠:釘宮理恵/中島帝:立花真之介 櫻小路正宗:櫻井孝宏/弥後環九:沢城みゆき/坂本真:武内駿輔/美木圭一:西山宏太朗/三島秋良:永井真里子 手芸部員:葉山ゆりか/男子生徒:柴崎哲志/サッカー部先輩:財満健太 2017年7月13日 第2話:皐月 TBS:26時00分〜 三島春来:寺島拓篤/真四季みはる:神田沙也加/本田塔羽:鈴村健一/三橋真珠:釘宮理恵/坂本真:武内駿輔 美木圭一:西山宏太朗/三島秋良:永井真里子/思い出の女の子:木野日菜/三島春来(小学生):稲瀬葵/顧問:若林佑 2017年7月20日 第3話:水無月 TBS:26時13分〜 三島春来:寺島拓篤/真四季みはる:神田沙也加/本田塔羽:鈴村健一/三橋真珠:釘宮理恵/櫻小路正宗:櫻井孝宏 佐名木凪瑳:梶裕貴/糸川希未:小清水亜美/中島帝:立花真之介/明日海夏:神谷浩史/弥後環九:沢城みゆき/坂本真:武内駿輔 教師:若林佑/女生徒:永井真里子、葉山ゆりか、稲瀬葵/三年生:財満健太、村井雄治/男子生徒:柴崎哲志 2017年7月27日 第4話:文月 TBS:26時00分〜 三島春来:寺島拓篤/真四季みはる:神田沙也加/本田塔羽:鈴村健一/三橋真珠:釘宮理恵/櫻小路正宗:櫻井孝宏 佐名木凪瑳:梶裕貴/糸川希未:小清水亜美/中島帝:立花真之介/明日海夏:神谷浩史/飛鳥井愛姫:堀江由衣 美木圭一:西山宏太朗/男子:財満健太、柴崎哲志、橋本祐樹/女子:葉山ゆりか、永井真里子、稲瀬葵、木野日菜 2017年8月3日 第5話:葉月 TBS:26時08分〜 三島春来:寺島拓篤/真四季みはる:神田沙也加/本田塔羽:鈴村健一/三橋真珠:釘宮理恵/本田由香里:久川綾 TVアナウンス:稲瀬葵/サッカー部コーチ:若林佑/部員:財満健太/浴衣女子:葉山ゆりか、永井真里子 2017年8月17日 第6話:長月 TBS:25時58分〜 三島春来:寺島拓篤/真四季みはる:神田沙也加/本田塔羽:鈴村健一/三橋真珠:釘宮理恵/中島帝:立花真之介 櫻小路正宗:櫻井孝宏/三島秋良:永井真里子/坂本真:武内駿輔/美木圭一:西山宏太朗/思い出の女の子:木野日菜 店長:若林佑/生徒:葉山ゆりか 2017年8月24日 第7話:神無月 TBS:25時58分〜 三島春来:寺島拓篤/真四季みはる:神田沙也加/本田塔羽:鈴村健一/三橋真珠:釘宮理恵/中島帝:立花真之介 木崎和架:田村ゆかり/櫻小路正宗:櫻井孝宏/選管男子:柴崎哲志/選管女子:永井真里子 2017年8月31日 第8話:霜月 TBS:25時58分〜 三島春来:寺島拓篤/真四季みはる:神田沙也加/本田塔羽:鈴村健一/三橋真珠:釘宮理恵/佐名木凪瑳:梶裕貴 糸川希未:小清水亜美/飛鳥井愛姫:堀江由衣/三島秋良:永井真里子/坂本真:武内駿輔/美木圭一:西山宏太朗 塾友:葉山ゆりか/サッカー部先輩:財満健太/教員:若林佑/日直:柴崎哲志/本田由香里:久川綾 2017年9月7日 第9話:師走 TBS:25時58分〜 三島春来:寺島拓篤/真四季みはる:神田沙也加/本田塔羽:鈴村健一/三橋真珠:釘宮理恵/坂本真:武内駿輔/美木圭一:西山宏太朗 真四季凛:園崎未恵/本田由香里:久川綾/教師:若林佑/橋本:永井真里子/平林:財満健太/藤本:柴崎哲志/校長:田中完 2017年9月14日 第10話:睦月 TBS:25時58分〜 三島春来:寺島拓篤/真四季みはる:神田沙也加/本田塔羽:鈴村健一/三橋真珠:釘宮理恵/坂本真:武内駿輔/美木圭一:西山宏太朗 真四季凛:園崎未恵/本田由香里:久川綾/先輩:財満健太、柴崎哲志、若林佑/店員:永井真里子 2017年9月21日 第11話:如月 TBS:25時58分〜 三島春来:寺島拓篤/真四季みはる:神田沙也加/本田塔羽:鈴村健一/三橋真珠:釘宮理恵/佐名木凪瑳:梶裕貴 糸川希未:小清水亜美/飛鳥井愛姫:堀江由衣/美木圭一:西山宏太/三島秋良:永井真里子/真四季みそら:木野日菜 真四季みはる(園児):田村奈央/三島春来(小学生):稲瀬葵/看護師:若林佑/真四季凛:園崎未恵/本田由香里:久川綾 2017年9月28日 第12話:弥生終 TBS:25時58分〜 三島春来:寺島拓篤/真四季みはる:神田沙也加/本田塔羽:鈴村健一/三橋真珠:釘宮理恵/本田由香里:久川綾 真四季凛:園崎未恵/看護師:永井真里子/先輩:財満健太
https://w.atwiki.jp/sysd/pages/1460.html
CSIジャパン 本店:東京都港区西新橋二丁目7番4号 【商号履歴】 株式会社CSIジャパン(?~) 株式会社アルコア・クロージャー・システムズ(2002年6月~?) 株式会社柴崎製作所(1936年12月~2002年6月) 【株式上場履歴】 <店頭>1989年9月11日~2004年12月13日(店頭登録廃止) <東証2部>1963年11月2日~1978年7月1日(資本の額不足) 【合併履歴】 1992年7月 日 柴崎メタルプリント株式会社 【沿革】 昭和2年8月 東京都墨田区厩橋一丁目に於て化粧缶、キャップの製造販売業を創業。 昭和6年8月 東京都墨田区石原二丁目に工場を新設し移行。 昭和11年12月 資本金15万円にて株式会社柴崎製作所の商号により改組。 昭和16年8月 軍の要請により兵器部品の製造に転換。 昭和20年8月 終戦と同時に元の営業に復し、営業所を東京都中央区日本橋本町四丁目に開設。 昭和21年3月 本所工場操業開始。 昭和34年5月 本社社屋を東京都墨田区石原二丁目一番地に新築して移転。 昭和39年5月 資本金2億3,000万円に増資。 昭和42年8月 大阪出張所開設。(現在大阪営業部) 昭和42年9月 市川工場操業開始。 昭和46年8月 野木工場操業開始。 昭和47年3月 本所工場閉鎖。(市川工場に集約。) 昭和52年1月 数次の増資により資本金3億4,650万円となる。 昭和54年9月 アルミナム・カンパニー・オブ・アメリカ社(現アルコア・インク)の資本参加により資本金7億円に増資。 昭和59年2月 化粧缶部門撤退。 昭和59年6月 東京営業事務所を開設。(現在東京営業部) 昭和59年9月 本社を千葉県市川市田尻一丁目3番1号(市川工場敷地内)に移転。 昭和60年3月 本店を千葉県市川市に変更。 平成元年9月 社団法人日本証券業協会に店頭登録。 平成4年7月 柴崎メタルプリント株式会社を吸収合併。 平成9年12月 建設省東京外郭環状道路新設工事計画による収用により本社・市川工場を建設省に売却。 平成10年10月 本店及び本社を栃木県下都賀郡野木町野木148番地(野木工場敷地内)に移転。 平成11年12月 岡山県赤磐郡熊山町に工場用地を取得。 平成14年5月 親会社であるアルコア・インクの持株比率が公開買付けによりその完了時に発行済株式の95.9%に増加。 平成14年6月 商号を株式会社柴崎製作所から株式会社アルコア・クロージャー・システムズに変更。 平成14年6月 天津輸出工場(中華人民共和国天津市)操業開始。 平成15年5月 本店を東京都港区西新橋二丁目7番4号に変更。 平成16年12月 日本証券業協会の登録を廃止。
https://w.atwiki.jp/3edk07nt/pages/57.html
~第十四章~ およそ三日間が材料の加工に費やされ、四日目からが、本当の製造過程だった。 剣の中心である心金、峰の部分に相当する棟金、刃となる硬い刃金。 そして、剣の両面に当たる側金。 今は、棟金・心金・刃金を重ね合わせ『芯金』と呼ばれる合金を鍛えている工程だ。 工房から聞こえる小槌の音を聞きながら、真紅と水銀燈は、敷地の周りを見回っていた。 今のところ、穢れの者の気配は無い。 このまま何事もなく、完成してくれれば良いのだが……と、思わずには居られなかった。 「こうも敵の動きがないと、却って不気味よねぇ」 「嵐の前の静けさ――かしらね」 「まだ気付かれてないって思うのは、楽観すぎるぅ?」 「場を和ますための冗談としては、上出来な方なのだわ」 湯治場の戦いで、笹塚を仕留め損ねたのは痛かった。 悪知恵が働き、姑息な手を平然と使ってくる男だけに、油断がならない。 ひょっとしたら、もう町ごと焼き払う様な攻撃の手筈を、整えているかも知れなかった。 どれだけの規模で攻めてくるか……それが問題だ。 一応、襲撃に備えた布陣は、考えてある。 とは言え、穢れの者が、こちらの予想通りに仕掛けてくる保証なんて無い。 時間帯によっては、四人のうち二人が仮眠中という状況も有り得た。 「ただ待ってるだけと言うのも、不安が募るものね」 「そんな時はねぇ、身体を動かすのが一番なのよぉ……ふふふ」 水銀燈の口振りに、なにやら妙な思惑を感じて、真紅は横目で睨んだ。 「なに? また、変なコトを企んでいるんじゃないでしょうね」 「変なコトって、何よぉ? ちょっと揉んであげようと思っただけじゃなぁい」 「揉む……って、どこを」 「真紅の胸♪」 恥じらう様子も見せず、事もなげに、さらりと言ってのける水銀燈。 真紅は両腕で胸元を隠して、赤面しながら、キッ! と水銀燈を睨みつけた。 そんな彼女の頭を、水銀燈は平手でベシッ! と引っ叩いた。 「……な訳ないでしょぉ! おばかさぁん」 「痛っ! じゃあ、なんなのよ!」 「揉むって言うのはぁ、剣の稽古を付けてあげようかって意味よぉ」 「……紛らわしい言い方を、しないでちょうだい」 「あはははっ。真紅をからかうのって、ほんとに愉しいわぁ」 随分とまあ、いい性格をしているのね。 真紅は心の中で文句を言いながらも、水銀燈の申し出を受け入れることにした。 これからの戦いは、ますます厳しさを増していくだろう。 鬼祖軍団の四天王とも、いずれは決着を付けなければならない。 その場面になって、みんなの足手まといになるのは、彼女の自尊心が許さなかった。 「もうすぐ、交代の時間ね。その後で、指南してちょうだい」 「いいわよぉ。足腰たたなくなるくらい、可愛がってあげるわぁ」 「また、誤解を招く言い方をする……」 苦笑する真紅の背中を、ばしばし叩いて、水銀燈は笑い続けた。 芯金が鍛え上がったところで、柴崎老人は一度、呪符を刻み始めた。 鑿と槌を手に、細々とした文様を彫り込んでいく。 普段の生活では絶対に使うことのない、特殊な文字だ。 それは文字と言うよりは絵に近く、象形文字を彷彿させた。 精霊同体型の剣を造るためには、必要不可欠な工程である。 心血を注いで呪符を刻みあげると、今度は芯金を二枚の側金で挟み、火を通す。 そして、また金槌で叩き、鍛接していく。 徐々に、剣の姿が現れつつあった。 「さて……これからが本番じゃな」 ヤットコで挟んだ刀身を、熱しては叩き、冷めては熱しなおす。 規則正しく打ち鳴らされる音が、狭い工房に反響していた。 叩きながら、微妙に形を整えていく。老人の顔は、修羅の様に険しい。 ――この刀が完成したら、あの娘たちは遠くへ行ってしまうぞ。 「!! ぬ、ぬう……っ!」 不意に、柴崎老人の頭で囁く、怪しい声。 あの時――妖刀『國久』を鍛えろと唆した、あの声だ……。 ――妻や子が、お前の元を去ったように、あの娘たちもまた、お前を置き去りにするぞ。 それでも良いのか? 誰にも相手にされない孤独に、再び苛まれたいか? それは厭だった。誰に省みられる事もなく、自分の存在意義すら解らない日々……。 あの頃のように、目的もなく惨めな人生を送るなんて、もうたくさんだった。 ――厭ならば、やめてしまえば良い。その刀を砕いてしまえ。 だが、それが本当に自分の望む事なのか? いいや、違う。柴崎老人は、即座に否定した。 確かに孤独でいることは、辛く、寂しい。 しかし、だからと言って彼女たちの信頼を裏切っていい理由にはならない。 そんな事をしたら、また、他人を不幸にするだけの妖刀を生み出しかねなかった。 ――妻が引き合わせてくれた、あの娘たちを手元に繋ぎ止めて置きたくないのか? 「…………黙れ」 ――刀を折り、娘たちを殺して、庭の隅にでも埋めてしまえば良い。 そうすれば、もう二度とお前から離れていく者は居なくなる。 「黙れっ! 黙れ、黙れっ!」 柴崎老人は、怒号と共に傍らの鑿を掴んで、自らの太股に突き立てた。 激痛が背筋を走り、衰えた灰色の脳に、強烈な刺激となって押し寄せる。 奔流のような痛みに押し流されて、闇の声は聞こえなくなっていた。 「……お爺さん? 今の声は、一体……あぁっ!?」 突然の喚き声を聞きつけて、顔を覗かせた蒼星石は、 老人の脚に深々と刺さる鑿を見て仰天した。 慌てて駆け寄り、一気に引き抜くと、持っていた手拭いでキツく縛った。 「何をやってるんですか! どうして、こんな――」 「すまない……蒼星石。また、あの声が……聞こえたんじゃよ」 「それって、まさか――」 柴崎老人は、頷き、苦しげに口元を歪ませた。 いまだに邪悪な囁きが聞こえることを、心底から恥じているのだろう。 「つくづく、自分が情けない。儂の心が弱いから、付け狙われるのじゃな。 ヤツらは何度でも、儂に悪意を吹き込もうとするのじゃ」 「誰だって、心に弱さを持っている。恥じる事なんてないんですよ」 「蒼星……石?」 「ボクだって、弱かった。心の弱さ故に、大好きな人を失って……多くの、 本当に多くの人々に、悲しい想いをさせてしまった」 蒼星石は、縛った手拭いが老人の血に染まっていくのを見詰めながら、訥々と語った。 「そして…………ボクの弱さは、ボク自身をも不幸にしてしまったんです。 何もする気が起きず、食欲も湧かずに、ただ、死を願って眠るだけだった」 「……儂も、そうじゃった。妻の諫言に耳を貸さず、死ぬ事ばかり考えていた。 かずきの元に行くことだけを、切実に願っていた」 「ボクと、お爺さんは、似てるんですね。色々なところで、とても似ている。 だけどね……ひとつだけ、違った点があるよ」 「それは、かけがえのない仲間が――過ちに気付かせてくれる友が、居たことじゃな」 老人の言葉に、蒼星石は無言で頷いた。 悲愴感に支配されていた自分を、親身になって想い、殴ってくれた水銀燈。 彼女に撲たれた痛みが、身体に刻み込まれている。 彼女が放った罵声が、胸に突き刺さり、今も心を疼かせている。 けれど、その痛みこそが生きている証なのだと、水銀燈は気付かせてくれた。 だから、ボクは戦う―― 蒼星石は、力強い口調で、柴崎老人に決意を伝えた。 「これ以上、大切な人たちを悲しませない為に、ボクは剣を振るおうと誓ったんです」 「生きることは、戦うこと……か。当時の儂には、悲しみと戦う勇気が無かったな。 それ故に、妻を悲しませて……臨終の間際、側に居てやる事もできなかった」 柴崎老人は、蒼星石の肩に手を置き、優しく叩いた。 「今こそ、罪滅ぼしの――妻の想いに答える時じゃな。 もう大丈夫じゃ、蒼星石。儂はもう、邪な言葉に惑わされたりはしない。 必ずや、この剣を鍛え上げて、蒼星石に渡そう。それが、儂の闘いじゃ」 肩に置かれた老人の手に、蒼星石は自らの手を重ねた。 そして、互いの眼を見つめ合い、ひとつ頷く。 もう、言葉は不要だった。 いま、自分に出来ることを、精一杯やるだけ。 たった、それだけの事だけれど―― どれほどの人間が、それを実践しているだろうか。 蒼星石は黙って、工房から立ち去る。いま、自分がすべき事を為すために。 そして、柴崎老人も自らの人生と戦うために、小槌を手にした。 再び、工房に刀を打つ音が響き始める。 そのひとつひとつに込められた、老人の精魂が、蒼星石には感じられた。 さらに二日が経ち、夜も更けた頃―― 工程は、最終段階に向かって順調に進んでいた。 鍛え上げた剣に焼きを入れて、最後の整形と調整をしていく。 特殊な鉋で表面の凹凸を削り取って、樋と呼ばれる溝を掘り込む。 それから、老職人は鑿と槌を巧みに扱って、精霊の発動機構を刀身に刻印していった。 ここまで有した日数は、五日。 昼夜を問わず鍛え続けた柴崎老人の執念が、あと僅かで結実しようとしていた。 「なんとか……間に合いそうだね」 「どうかしらねぇ。発動機構は、まだ半分くらいしか書き上がってないみたいだしぃ」 「水銀燈の言うとおり、最後まで油断は禁物よ。外で、警護を続けましょう」 「頼んだよ、みんな。ボクは、工房で護衛を続ける」 工房の外に出た三人を、皓々たる月光が迎える。 端が少し欠けた、十三夜。 しかし、くっきりと影が落ちるほど、明るい夜だった。 「綺麗ねぇ。それとも風流と言うべきかしらぁ」 「今度、みんなで……お月見……しよ?」 「良いかも知れないわね。ただし――」 真紅は、徐に神剣を引き抜いた。「無粋なヤツらを、追い返してからなのだわ」 「はぁ……まったくぅ。もう少し、ゆっくり来れば良いのにねぇ」 「さっさと片付けて…………お月見する」 水銀燈の太刀と、薔薇水晶の小太刀が、降り注ぐ月光の中で煌めいた。 工房の外から、戦闘音が飛び込んでくる。 柴崎老人に悪意ある声が聞こえた時から、遠からず、こうなる事は予測できていた。 蒼星石は普通の刀を手に、柴崎老人を庇うため、全周囲に注意を向けた。 外で迎え撃つのは、三人だけ。 いずれ、穢れの者が工房に飛び込んでくる筈だ。 そんな緊張状態の中、老職人は、懸命に発動機構と呪符を刻み込んでいた。 残るは、あと僅か。 蒼星石の見守る中で、最後の一文字が打ち込まれ、剣は新たな命を宿した。 「さぁ! 後は、刃を研いで、柄を取り付けるだけじゃ」 「出来るだけ急いで。そろそろ来るよ」 「任せておけ。ここまで来たら、儂の意地にかけて、絶対に完成させるわい」 砥石を水に浸し、剣を研ぎ始める。 黒く煤けたり、焼き色が付いていた箇所が、鋭い鋼の輝きを放ち始めた。 突如、工房内に陣笠を被った骸骨の足軽が、足を踏み鳴らして乱入してきた。 裏口を突破されたらしい。やはり、多勢に無勢か。 「これ以上、好き勝手な真似はさせないっ!」 自分を目掛けて振り下ろされた刀を弾き、蒼星石は骸骨を両断した。 まだ一体だけだが、いずれ、押し寄せて来よう。 募る焦燥に振り返った蒼星石の瞳に、折れた剣から柄を取り外す老職人の姿が映る。 外された柄は、新しい得物へと継がれ、目釘で固定された。 残すは、銘の刻印のみ。 柴崎老人が、鑿と槌で剣に銘を刻み始めたと同時に、敵が押し寄せてきた。 今度は、かなり多い。 しかも二手に分かれて、一方が蒼星石を、他方が老職人を狙っていた。 一斉に走り出す、蒼星石と、穢れの者たち。しかし、僅かに穢れの者の方が早い。 ただ、一心不乱に銘を刻む柴崎老人に、凶刃が迫る。 「ダメぇっ! 避けて、お爺さんっ!」 「よしっ! 出来たぞ、蒼星石っ!」 二人の叫びが重なった。 蒼星石の悲鳴と、柴崎老人の歓声。 相反する感情が混ざり合う中、老人の身体は、三本の刀に刺し貫かれていた。 「嫌あぁっ! お爺さんっ!」 絶叫しながら、蒼星石は老人を刺した三体の穢れを、瞬く間に破壊した。 更に踵を返して、彼女の背中に斬りかかっていた数体を、一閃で薙ぎ払った。 「お爺さんっ! 死んじゃダメだっ! お爺さんっ!」 「お、お……蒼……星石。こ、これ……を」 柴崎老人は、震える右腕で、蒼星石の為に鍛えた剣を差し出した。 銘は『月華豹神』。華々しい月の光を浴びた、豹の如き女神……。 それは、蒼星石のことを比喩していた。 溢れる涙を堪えきれず、蒼星石は泣き続けた。 剣の柄と、老人の嗄れた手を、しっかりと握り締める。 滲んだ視界の向こうで、柴崎老人は、満足そうに微笑んでいた。 「こんな……ことって!」 「悲しまないで……おくれ、蒼星石。これは、儂が望ん……だこと。 これで、やっと……儂は、マツと……かずきの元へ、逝ける」 「お……爺……さん」 柴崎老人は、弱々しく左腕を伸ばしてきた。 その手が、蒼星石の頬を撫でる。涙に濡れた、彼女の頬を―― 老人の瞳からも、涙が零れ落ちた。 「おお……かずき。儂を……迎えに……来て……くれたのじゃ……な」 「……お…………お父さん」 蒼星石の言葉に、老人は少しだけ目を見開き、涙を流した。 「ありが……とう。蒼……せ……」 柴崎老人の身体が、ふっ……と、軽くなった。 閉ざされた瞼が開かれることは、もう無い。 「ボクの方こそ…………ありがとう、お爺さん。 あなた達の想いは、確かに受け継いだから。安心して眠って」 蒼星石は、静かに老人の亡骸を横たえて、袖で涙を拭った。 もう、泣かない。泣いている暇なんて無い。 老夫婦の絆が結びついた剣『月華豹神』を握り締めて、蒼星石は立ち上がった。 そして、工房を飛び出し、戦闘に身を投じた。 これ以上、大切な仲間を失わせない為に―― =第十五章につづく=