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次の話へ 【趣味が高じて……】 魔法の森に店舗を構える香霖堂。 大抵の客は商品の代価を払わないこの店にも、まともな客がこないわけではない。 この日香霖堂に訪れたのは、そんなまともな客の一人、アリス=マーガトロイドだった。 「いらっしゃい」 相も変わらず来客に一言だけ発して手元に目を落とす霖之助。 「毎回思うんだけど、もう少し丁寧に応対したら? お客さんとして言わせてもらえば、品揃えが同じでも店員の態度がいい店を選びたいものよ」 「僕はそうした応対が苦手でね。この店は半ば僕の趣味であり、趣味とは楽しむものだ。 ここに苦手なことを無理やり組み込めば、店を続けること自体が苦痛になっていくかもしれない。 その結果店を閉めることになれば、それこそお客さんに迷惑だろう。 よって僕は僕の思うがままに応対させてもらう」 何を言っても無駄か……。そう思ったアリスがふと霖之助の手元に目をやると 「霖之助さん……裁縫できたの?」 普段本を読んでばかりいる店主の手元には、珍しく針と糸が握られていた。 霖之助といえば家事か商品の仕入れか読書しかしないものだと思っていたアリスにとって、これはかなり意外だった。 実際のところ霖之助は裁縫もするしマジックアイテムも作れるなかなか多芸な男であり、 まれにしか店に訪れないアリスが今日までそれを目にすることがなかっただけなのだが。 「魔理沙や霊夢が弾幕ごっこで破れた服の修繕を押し付けてくるからね……。 霊夢の服を一から仕上げることも度々あるし、今ではそれなりの腕だと自負しているよ」 対価をもらったことは一度としてないけどね……と愚痴る霖之助に苦笑いで応えるアリス。 ここでふと思い当たる。洋服の仕立てに必要な事を。 「霖之助さん……霊夢の採寸したの?」 「……」 アリスの頭では早くも霊夢の服を脱がせてサイズを測る霖之助の図が展開されている。 視線から軽く軽蔑の念を感じた霖之助は、いらぬ誤解を避けるために口を開くことにした。 「君は洋裁を基準として考えているようだが、霊夢の服は和服を基本とした物だ。 そして、和服は基本的に着る者に合わせてサイズを変えることはほとんどないんだよ。 和服には基本的に子供用、女性用、男性用があるだけ。細かい調節は着付けの段階でやることなんだ。 だから霊夢の身長さえわかっていればあとは何とでもなる」 「随分いい加減ね……。服を作るなら着る人に最適なものを作るのが誠意というものだと思うけど」 「確かにそうかもしれないが、そうすると本人しか着れなくなるだろう? 特に女性は出産で体型が変わることもあるし、この方法なら親から子に高価な服を受け継いでいくこともできる。 君に言わせれば、大切な人間に送る服は相手に合わせて仕立てるべきなんだろうが、日本人は金に任せて新しく作った ものよりも、自分が長い間大事にしていたものを与えることにより大きな意義を見出している。 自分がそれほど大事にしてきたものを授けるくらいに、相手を愛しているということだからね」 そう言われると、アリスも否定する気にはならない。 むしろ和裁というものに俄然興味が湧いてきた。 今までの自分とは異なる発想。その発想に基づいて積み重ねられた技術なら、何か人形作りに活かせるかもしれない。 それに、この店主は他にもいろいろ知っていそうだ。 「霖之助さん、和服と洋服の違いについてもう少し聞かせてくれる?」 霖之助としては正直めんどうくさいのだが、この少女は上客だし、機嫌を損ねるのは得策ではない。 それに和服に興味を持ってくれれば、さらに売り上げが期待できるかもしれない。リスクがタダ話なら安いものだ。 「いいだろう。まず……」 これが全ての始まりだった。 次の話へ
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以前、投下した 9スレ734 の微妙な続きのお通しを投下します。 いや、あの唄がどうもこんな解釈しか出来ない自分も十分病んでるのなぁ…。 幻想郷の魔法の森にある森近霖之助が経営する香霖堂。 そこに、少し前から外来人の〇〇という青年が住み込みで働いていた。 店主に店番を任された彼は今日も仕入れ先【?】である外来の品が流れ着く無縁塚から人気の品である雑誌を拾って来て陳列し叩きをしていた。 〇〇「いつかアナタによく似た笑顔の男の子と~、いつか私と同じ泣き虫な女の子~♪」 外界に居た時に何度も見た拾って陳列した人気雑誌のCMのBGMを思い出し歌っていると…。 ガチャ…カランコロン…。店の扉が開き、「ただいま。」と声がした。 〇〇「家族になろうよ~♪ん?あぁ、霖之助さんお帰りなさい。って、こりゃまた皆さんお揃いでいらっしゃいませ。」 霖之助の後ろには幻想郷の重鎮である博麗の巫女、白黒の魔法使い、紅魔館のメイド長、八雲と白玉楼と永遠亭の主従に人里の守護者が居た。 霖之助「〇〇君…ご機嫌なのは分かるけど、外まで聞こえていたよ?」 〇〇「あちゃ、ホントに外まで聞こえていました?何か恥ずかしいですね…ん?あぁはいはい、皆さん今日もまた同じ雑誌をご購入ですか?いえいえ、今しがた陳列したばかりですからね、この雑誌。」 少し呆れた顔し荷物を置くために店の奥に引っ込んだ霖之助との会話をしていると、客として来ていた重鎮達がそれはそれはにこやかな笑顔で先ほど〇〇が陳列したゼク〇ィやた〇ごクラブとひよこク〇ブを抱えながら会計を待っていた。 〇〇「え?さっきの唄の題名?【家族になろうよ】ですよ。いい唄でしょう?」 会計時にさっきの唄の題名を知り、満足気に帰る重鎮達。 その日ー、魔法の森の至る所が灰燼になったとか。 霖之助(〇〇君の変わりの新しい外来人の従業員を募集するかな?) そう切実に思う霖之助だった。
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次の話へ 「お邪魔します!」 元気な声と共に入ってきたのは、紅魔館の門番こと紅美鈴。 「おや、こんな昼間から珍しいね。今日はお休みかい?」 「ええ、お嬢様が『部下を労わるのも主の勤めよ』ということで、定期的にお休みがいただけることになったんです」 休みがもらえたことよりも、気遣ってもらえたことが嬉しいのだろう。 大輪の向日葵のような笑みを湛える彼女に、知らず知らずこちらも口元が緩む。 「そうか、それはおめでとう。 それで、その大切な休日にわざわざこんな店まで来てくれた、と。光栄のあまり言葉もないよ」 「またまたそんな。良いお店ですよここは。落ち着くって言うか。咲夜さんも褒めてましたし」 どうやら紅魔館におけるこの店の評価は上々のようだ。 「ありがとう。それじゃあゆっくりしていくといい。 お茶を入れてくるから待っていたまえ」 「いえ、そこまでしていただくわけには……」 こういうところで遠慮するあたり、彼女の人の良さが垣間見える。 霊夢や魔理沙も見習って欲しいものだ。言っても無駄なので口には出さないが。 「なに、僕の店を褒めてくれたお礼だよ。受け取ってもらえないと、僕が悲しくて死んでしまう」 「ふふっ、わかりました。霖之助さんに死なれては困りますしね」 口元に手をやって笑う美鈴。慣れない冗談にも相手をしてくれる。やはり彼女は好ましい客だ。 「店のものは好きに見てて構わないよ。それじゃあ」 しばし穏やかな時間が続く。 美鈴が品物を物色し、手にとっては霖之助に説明を受ける。 その姿をなんとなく見ている霖之助。 ここで、少し前に無縁塚で拾った商品を思い出す。 この女性にとって有益なものになる可能性が高いその品。 ここは一つ、勧める前に彼女のほうの情報を集めようか。 「そういえば美鈴、少し教えて欲しいんだが」 「はい? 何でしょうか?」 「君は今、どんな下着をはいているんだい?」 店の空気が一気に凍りついた。 何かまずいことを聞いただろうかと悩む霖之助。 その瞬間、美鈴の両目からはらはらと涙がこぼれた。 顔に手を当てて嗚咽する美鈴。 「……うう」 わけもわからずあわてる霖之助。 理由はさっぱりわからないが、今の流れだと間違いなく自分がきっかけだ。 そうこうしているうちに美鈴が次の行動に出る。 「霖之助さんは……霖之助さんだけは、他の自分勝手な人たちとは違うと信じていたのに……。 優しくて常識のある人だと……信じてたのに……っ!」 間一髪、飛び出していこうとする美鈴の手をつかむことに成功する。 「ちょちょ、ちょっと待ってくれ! 別に変な意味じゃないんだ!」 「離してください! 今の発言に変な意味がないわけないじゃないですか!」 流石に力が違うためズルズルと引っ張られるが、ここで誤解させたまま行かせるわけにもいかない。 「とにかく話を聞いてくれ! 確かに言葉が足りなかったが、本当にやましいつもりはないんだ!」 結局、十数分間にわたる説得により、何とか美鈴を店につれもどすことに成功した。 「ぜぇはぁ」 久しぶりに全力を出した霖之助は息が切れまくっている。美鈴は息一つ切らしていないというのに。 少し男のプライドが傷つくが、今そんなことはどうでもいい。 いまだに不信な目を向ける彼女を説得しなければ。 「何度もいうように……君の下着について聞いたのは……商品を勧めるにあたっての情報収集のためで…… やましい意味じゃないんだよ……」 「……じゃあ最初にそう前置きしてくださいよ」 ぷぅ、と頬を膨らませて睨みつける美鈴。よし、聞いてくれる気にはなったか。 「そのことについては本当にすまなかった。謝罪の言葉もないとはこの事だと痛感しているよ」 「……もういいです。それで、その商品というのはなんですか?」 内心の安堵を抑えつつ、まずは情報提供に移る。 あれの形状は今見せるには少々まずい。心を落ち着かせてもらわねば。 「その前に、僕の考えを聞いてくれ。 僕が君の下着について聞いたのは、君が今来ている服の形状から一つのことを懸念したためだ。 聞くところによると君は弾幕より格闘のほうが得意なんだろう? となると、蹴り技を放つときにそのスリットの入った服ではなにかと問題があるんじゃないか?」 「……」 霖之助のいうことは間違ってはいない。 が、先ほどの顛末もあっておおっぴらにそういうことを言うのはためらわれる。 それに、いかに霖之助といっても男性相手にこの話題は恥ずかしい。 返事はなかったが、それを肯定と受け取った霖之助はさらに話を進める。 「幻想郷ではいわゆるドロワーズをはくことでそういった問題に対応している。魔理沙なんかが良い例だろう。 しかし君の着ている服ではドロワーズはまず邪魔になる。 となるといわゆるショーツといわれる下着の出番なのだろうが、残念ながら幻想郷で安定して入手することは難しい。 しかも格闘を主体とする君ではすぐに擦り切れてしまうだろうが、かといって何もはかないなどというのは論外だろう」 「……そうですね」 返事が返ってきた。 生真面目な彼女のことだ。こういう話を堂々とするには抵抗があるのだろうが、やはり今自分が言ったような問題が気になってはいるらしい。 「確かにそうです。一応下にはくズボンはあるんですが、冬は良くても夏は熱くて仕方ないですし」 「だからこそ、これを君に勧めようと思ったんだ。 外の世界の女性が運動時にはくもので、まあ水着の仲間のようなものだろうね」 そう言って霖之助が取り出したのは、どこからどう見ても完膚なきまでに、 ブルマだった。 次の話へ
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前の話へ 次の話へ あらすじ 和服の話題を通じて互いにフラグ成立したアリスと霖之助。 嫉妬した魔理沙が爆発、修羅場になる。 霖之助は紫に背中を押され、いち早く立ち直った。 一体どれくらいの時間がたったのだろうか。 部屋を閉め切っているから、今が昼か夜かもわからない。 ずっとベッドにうずくまっていたせいか、体中が硬くなっているのがなんとなくわかった。 霖之助とアリスに対する負の感情はピークを越え、今は小康状態だ。 代わりに、自己嫌悪が心をじわじわと侵食していた。 「……やっちまったなあ……」 もっと賢い方法があったかもしれない。 あの時点での行動次第では、今のような未来が訪れはしなかっただろうに。 合わせる顔がないというのはこういうことかと、体験して初めてわかった。全く嬉しい経験ではないが。 「……はは」 そんなことを考えている自分がおかしくて、声に出して笑ってやった。 今考えることはそんなことじゃないだろう。 少し冷えた頭は、アリスの言葉を浮かべてくる。 ―――あなたの想いが本物なら、また私の前に立ちふさがりなさい――― 最初は、諸悪の根源が何を、と思った。 しかし、よく考えてみればおかしな話だ。 アリスが霖之助を奪いたいなら、そんなことを言いに来る必要はない。 兄を取られたようで悔しいんだろうとでも言っておけば、あの朴念仁は簡単に騙される。 そして自分が沈んでいるうちにまんまと篭絡すればいい。 これ以上簡単な話はないはずなのに、アリスはわざわざ恋敵を激励しに来た。 そもそも今から対等な勝負を挑んだって結果は目に見えている。 店での反応を見れば一目瞭然。霖之助の気持ちが誰にあるのかわからないほど短い付き合いではない。 だがアリスはそんなことを微塵も考えていないのだろう。本気で正々堂々と戦う気だ。 (あいつらしいと言うかなんと言うか……) そうだ。アリスはそういうやつだった。 普段は斜に構えたような態度で、自分の好意を意地でも悟らせないような言動が目立つ。 なのに、人が迷惑かけても文句は口先ばかりで、困っていたら損得抜きで助けてくれる。 ひねくれもののおせっかい。 今回もきっとそうだ。 「……やれやれ」 気がつけば口元が緩んでいる。 ああ、全くこんなの自分らしくない。 勝ち目なんかないに等しい。立ち上がったところで、また打ちのめされ一敗地にまみれるだけだろう。 それでも、膝を屈することは許されない。 せめて、あの不器用で真っ直ぐな友情だけは失わないために、決着だけはきっちりつけてやる。 「悲劇のヒロインなんて、真っ平ごめんだぜ」 一方、アリスはいまだに自己嫌悪の渦から抜け出してはいなかった。 魔理沙にはああ言ったものの、この件で自分に何ができるというのか。 結局のところ、自分か魔理沙かを選ぶのは霖之助だ。 自分はただそれを待つだけ。 いまさら霖之助の気を引くことなどできるわけがないし、これ以上魔理沙に塩を送るような真似もできない。 結局全て自分のエゴだ。霖之助を魔理沙から掠め取るような真似をしたくない。それなのに、霖之助を失うのが怖い。 「アリスーーー! 出てこーーーい!」 ああ、ついに幻聴まで聞こえ出したか。 いまあいつがここに来るわけなんてないのに。 「いるのはわかってんだ! 出てこないならこの家吹っ飛ばすぜ!?」 うるさい。今はそっとしておいてくれ。 「よーし良い度胸だ! さーん! にー! いーち!」 ああもう、幻覚までが自分を追い詰めるというのか。 「うるさいわね! 用事があるならそっちが勝手に入ってくれば良いでしょ!?」 怒鳴りつけると声は聞こえなくなった。 やはり幻聴か。自分もなかなか追い込まれている。 そう思った瞬間、 ガチャ 「人が折角立ち直ってきたってのに。全くご挨拶なやつだ」 あれ? 「ほらさっさと立て。香霖のとこに行くぞ」 「何……で……?」 なぜこいつがここにいるんだろう。 「何でってお前が言ったんじゃないか。また立ちふさがりに来いって。それともありゃ嘘か? ほら、早く立てって。」 「あ……うん」 「よし、じゃあ香霖のとこにいくぞ。あいつにはきっちりカタをつけてもらわないとな」 「ねえ」 「あん?」 「あんたはそれで良いの? なんなら私は何日かじっとしてるからその間に……」 「おいおい、私をなめるのも大概にしろよ」 睨みつける魔理沙。 「そんなお情けをかけてもらって、それで勝ったからって何も嬉しくないぜ。 どんなに不利な状況でも構わない。自力で勝ち取ってこそ意味があるんだ お前が私の立場でもそうだろう?」 言葉が詰まる。そうだ。もう自分にできることなんて何もない。 威勢のいいことを行っておいて情けない限りだが、霖之助の選択を甘んじて受け入れよう。 「わかったわ。あんたは本当にそれで良いのね?」 「くどいぜ。女に二言はないって言うだろう?」 魔理沙がここまで言うのならば、もう何も言うまい。 後は霖之助がどのような選択を取るのか、ただそれだけだ。 2人の魔法使いが並んで空を舞った。 前の話へ 次の話へ
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309(清蘭/23スレ/309) こーりんがそこら辺の需要を狙っているとしか思えない 「霖之助さん」 「これは……稗田阿求。珍しいですね、今お茶を入れましょう」 「この商品、言い値で買いますので。今後は私以外に売らないようにしてくださいませんか?」 阿求が霖之助の眼前に突き付けたのは、彼の新商品である眼鏡型カメラであった。 「これが私の稼業です。貴女以外にも意中の男性に対して偏執的な女性は多い」 しかし霖之助は臆することなく、お茶を入れながら言葉を交わしていた。 「稗田の財力はご存じのはずです」 「だからですよ、過ぎたるは及ばざるが如しです。貴女には、はした金でも、個人で扱える金額ではない」 自身の調子を一切崩さない霖之助に、阿求は「やり辛い」と言った。 「他の、眼鏡型カメラを作れそうな霧雨魔理沙や河城にとりは。自分の手の内を明かしたくないから、作らないでしょうこういうのは」 「それらをすべて、有償ではありながらも救うのが私の稼業なんです」 「言い値で買い取ると言っているのです。今後は私の為だけに作ってください」 しかし霖之助には稗田阿求にも臆さないだけの理由が存在していた。 それは彼が人里には居を構えていない事以外にも存在していた。 「手紙……ああ、クソ!」 霖之助が阿求の前に無造作に置いたいくつかの手紙の差出人に阿求は毒づいた。 紅魔館のメイド、白玉楼の主と庭師の連名、守矢神社の巫女、秋神が二柱とも。 もちろん、八雲家の名前だって存在していた。 「みなさん、私の商品を喜んでくれています。今も新しい商品を、彼女たち専用の物をいくつもお作りしました」 稗田家は強大である、人里には稗田を上回る権勢は存在しない。 だが人里の外に関しては、その限りではない。 話を無下に扱わない程度の権勢まで目減りする。それでも十分凄いが、人里と同じようには振る舞えない。 「もちろん、稗田阿求専用のウェアラブル端末だって。お作りして差し上げますよ?」 彼の技術を独占しない事により、力の均衡が保たれていた。
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【彼の主義】 「最近変な妖怪が出るようになったらしいわね」 話題を切り出したのは、七色の人形遣いことアリス=マーガトロイド。 いつものように、売買を終えた後の雑談をしていたときのことだ。 「変なと言われても、僕の知り合いでまともな妖怪はむしろ少ない気がするんだが」 「……まさかその中に私も入っているんじゃないでしょうね?」 「おや、君は魔法使いであって妖怪ではないと思っていたんだが、まさか普通ではないという自覚でもあるのかい?」 「く……」 ニヤリと笑う霖之助。 どうも最近こんなふうにからかわれることが増えたような気がする。 いかにも苦々しく思ってますと言わんばかりの顔をするアリスを見て、霖之助はその笑顔を優しいものへと変えた。 「冗談だよ。むしろ僕にとっては君ほど褒めるに困らない性格の知り合いこそほぼ皆無だ。 僕の主観を君が信用できるかどうかはまた別の話だがね」 からかわれてばかりかと思えば、こうして手のひらを返したかのように褒めてきたりもする。 正直怒っていいのか喜んでいいのか複雑な心境だ。 まあ、こういう掛け合いのできる友人は往々にして得がたいものだし、多少は大目に見るとしよう。 「私が言ってるのは性格がどうのこうのという話じゃないわよ。 その妖怪は見た目が人間なら種族を問わず襲い掛かってくるらしいの。多分、幻想郷では新参なんでしょうね。 霖之助さんはまさしく人間にしか見えないんだし、大して強くもないんだから気をつけなさいよ」 「おや、心配してくれるのかい?」 「だっ、誰がよ!? この店がなくなったら不便だって言ってるの! 何で私が霖之助さんの心配なんて!」 「僕のことを、とは一言も言ってないんだがね?」 「今の言い方なら誰が聞いたって霖之助さんのことに聞こえるわよ!」 前言撤回。霖之助の評価をやや下方修正することにして、アリスはぷんすか怒りながら帰っていった。 「さて……」 アリスが店から出ると、霖之助は様々な道具を取り出して占いを始めた。 「今日これから、か」 別人のように鋭い目つきでその結果を見ると、霖之助は店の奥へと向かうのだった。 「まったく、最初に会ったときはもっと優しかったくせに、最近どんどん意地が悪くなってるんじゃないの? って違う! これじゃ霖之助さんに優しくして欲しいみたいじゃない!」 香霖堂を飛び出したアリスは、自宅へ戻る道中で最近の霖之助の態度について考えていた。 「まあ、そりゃ私だって優しく接して欲しくないわけじゃないんだけど。 でもあの態度はつまり、私との関係が軽口なんかじゃ壊れないって思ってるわけだし、そう考えたら私だってまんざら でも……。 ああもう何言ってんだろ。早く帰ろう」 そんなふうにぼやきながら歩いていると、背後から何かがつけてきている気配がすることに気が付いた。 足を止めてあたりを見回しても何もいない。だが、何かがアリスを観察しているように思えて仕方がないのだ。 勘違いであればいいが、楽観視していて本当に襲われたら洒落ではすまない。 「まずいわね、こんなときに……」 今日は買い物だけ済ませてすぐに帰るつもりだったため、上海以外の人形は連れてきていない。 もしこちらを見ているのが件の妖怪だとすれば、今戦うのは少々心もとなかった。 家に向かって足を速めるアリスだが、何かの気配は遠ざかるどころかどんどん近づいてくる。 走り出したアリスの背後、やや上のほうから、ガサッ、ガサッ、という音が聞こえだした。 どうやら木の枝から枝へと飛び移っているらしい。 おそらく逃げきれはしないし、家に着いたところで鍵を開ける余裕など与えてくれはしないだろう。 アリスはここで迎撃しようと腹を括った。 足を止め、周囲を警戒するアリス。 敵もこちらの雰囲気が変わったことに気付いたらしく、気配を消して様子を伺っている。 そんな状態がいつまでも続くかと思われたが、敵は早々に痺れを切らしたらしい。 ガサッと言う音に反応したアリスの目に、飛び掛ってくる大きな影が映った。 咄嗟に身を引いてかわすと、地響きと共に着地したソレと目が合う。 「猿!?」 そこには黒い毛に覆われた、身の丈2メートル程の大猿がアリスを睨みつけていた。 狒々(ヒヒ)。猿の姿をした、もしくは年老いた猿が変化した妖怪である。 獰猛でよく人を襲い、特に女性が餌食になることが多い。 本来の大きさは約3メートル。この狒々は力が弱いか成り立てのどちらだと思われる。 標準より小さいとはいえ、動きは早いし力も強いだろう。 アリスと目を合わせたのは一瞬のことで、狒々はすぐに木々の間へと飛び込んでいった。 逃げたわけではない。予想以上に反応のよいアリスを強敵と認め、全力で命を取りに来るつもりだろう。 追いかけようかとも考えたアリスだが、森の中は狒々の土俵だ。ここで待ち受けたほうがいいだろう。 スペルカードを展開する時間はおそらくない。 さっきの動きから考えて、間に合うかどうかは5分5分だ。賭けに出るにはあまりに分が悪い。 狙うなら、さっきのような着地の瞬間。攻撃をかわすと同時に弾幕を打ち込んでやる。 普段のような拡散する弾幕ではなく、魔理沙のマスタースパークのように一撃の威力を重視して魔力を練る。 念のため上海にも同様の魔法を準備をさせ、アリスは周囲の様子を伺った。 アリスを追いかけてきたときとは違い、狒々は完全に気配を消している。 となれば、頼るべきは聴覚だ。やつが飛び出してくる瞬間、茂みを抜ける音が必ず聞こえる。 耳に神経を集中させ、ひたすら待ち構えるアリス。 いつでも反応できる状態を保つというのは、想像を絶する集中力を要する。 どのくらい待ち続けただろうか、集中力の限界が近いアリス。 その耳が、草木の揺れる音を捉えた。 バッ! と音の方向を見たアリスの目に移るのは、ただ森の姿のみ。 呆気にとられたアリスの右、警戒の薄れた瞬間を突いて狒々が飛び出してきた。 「なっ!?」 まさかこちらが音を頼りにしていることを見抜いていたとは。最初の音は石か何かを投げた音か。 敵を甘く見ていた自分に歯噛みしつつ、迫り来る狒々に魔法を放とうとするアリス。 (ダメだ! 間に合わない!) 虚を衝かれた分、こちらの動きがわずかに遅い。どう足掻いても敵の爪が先にこちらの体に達するだろう。 だからと言って諦めるのは論外だ。間に合わなくてもせめて一矢報いてみせる! 手の届く位置まで来た狒々が右腕を振りかぶる。 次の瞬間襲って来るであろう衝撃に歯を食いしばりつつ、アリスは用意していた魔法を放った。 ズドン!!! 森中に響くような轟音。 だが、アリスの体に痛みはない。 狒々の爪は、アリスの体まで後数ミリというところで停止しており、その胸には大きな風穴が開いていた。 「間に……あった……?」 ペタン、とその場に腰を下ろすアリス。 とたんに暴れだす心臓を抑えつつ、湧き上がる違和感について考えた。 おかしい。どう考えても狒々の爪はあと20センチは進んでいたはずだ。 そういえば、狒々が手を振りかぶった瞬間、わずかに動きが鈍ったような気がした。 通常であれば気が付かない、ほんのわずかな硬直。 原因が何かはわからないが、あれがなければアリスも無事ではすまなかっただろう。 「……いいや、考えても仕方ないし。とにかく、怪我がなくてよかったぁ」 はしたないとは思ったが、地面に大の字になって横たわるアリス。 はあ~っ、と息を吐いてから見ると、狒々はゆっくりと崩れ落ち、そのまま動くことはなかった。 どうやら完全に絶命したようだ。ならば、今は帰って休もう。短い戦いだったが非常に疲れた。 よろよろと立ち上がり、自宅へと向かうアリス。 そんなアリスの姿を、一羽の烏がじっと見つめていた。 すう、と視界が森から室内へと変わる。 霖之助は式神との視界共有を終了させ、軽く安堵の息を吐いた。 香霖堂の地下に作られた隠し部屋。その床に描かれた直径3メートルほどの魔方陣の上で、霖之助は座禅を組んでいた。 この陣は、東洋魔術と西洋魔術を組み合わせた霖之助のオリジナル。 簡単に言うと大掛かりな魔力増幅器にして隠蔽装置。 先ほど狒々の身に起こった不自然な硬直は、この陣を介して霖之助がかけた呪によるものだった。 「危ないところだった。まだまだ彼女も甘いな……」 狒々との戦いぶりを見て、アリスをそのように評する霖之助。 魔理沙やパチュリーにしてもそうだが、どうも彼女たちはスペルカードルールに慣れすぎている。 最近の幻想郷がいかに平和とは言っても、正々堂々と襲ってくる敵ばかりとは限らないというのに。 今回はたまたまアリスの運勢を占った霖之助が陰ながら手を貸すことにしたが、次も上手くいく保証はどこにもない。 「弾幕は火力。弾幕はブレイン。弾幕は属性。確かに間違ってはいない」 彼女たちの特性と弾幕勝負の性質を考えれば、これらは正しい理念だ。 だが、と霖之助は眼鏡を押し上げる。 「"魔法"は……秘匿性だよ」 彼(相手)を知り、己を知れば百戦して危うからず。よく知られる孫子の言葉だが、これにはまだ続きがある。 『彼を知らずして己を知れば一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず敗る』 自分自身のことがよくわかっていても、相手の情報が全くなければ勝率はせいぜい5割である。 自分のことも相手のこともわからないようでは、勝つことなど到底できはしない。 言い換えれば、たとえ自分自身を知り尽くした熟練のものが相手でも、こちらの内情を一切知らせなければ5分以上の戦いが見込めるということだ。 この言葉に従い、霖之助は己が魔法使いであることを徹底的に隠し通してきた。 この部屋もあらゆる手段で持って隠蔽してあるし、使う術にしても、古今東西の魔術から秘匿性が高いものばかりを選んでいる。 己の内情はおろか、己が敵であることすら悟らせずして敵を倒す。これが魔法使いとしての霖之助の信念だ。 アリスを助けるにしても、直接狒々の息の根を止めるなり、もっと簡単な方法はいくらでもあった。 それでもあのようにややこしい方法をとったのは、ひとえに自分が魔法使いだと悟られぬため。 魔法も使えぬ貧弱な半妖を装っておけば、無用の争いに巻き込まれることはないからだ。 今回の狒々のように無差別に襲ってくる輩でも、こちらを侮っているなら不意をつくなり煙に巻くなりどうとでもできる。 その代わり、彼女たちが得意とする派手な弾幕ごっこはまるで専門外になってしまった。 おそらく八雲紫あたりは気付いているだろうし、勘のいい霊夢もどうだか分かったものではないが。 地下室の入り口を完璧に隠すと、霖之助は店番を再開すべく定位置に座った。 数日後。 「というわけで大変な目にあったわ。 とりあえず誰彼構わず襲い掛かるような妖怪はいなくなったから、安心していいわよ霖之助さん」 「それはありがたいね。お礼に今度は、心ばかり割り引きさせてもらおうか」 「……随分素直ね。逆に不気味だから遠慮しておくわ」 どうやら、アリスの考える霖之助像はあまりよろしくないようだ。 苦笑しつつ、霖之助は少し真剣にアリスに声をかけた。 「それはさておき、アリス」 「何よ?」 「ありがとう、無事に帰ってきてくれて。君に怪我がなくて本当によかった」 しばし呆然と霖之助を見ていたアリスだが、見る見るうちに顔が真っ赤になっていく。 「な、何よいきなり!? わかったわ! どうせ常連がいなくなったら店の儲けがどうとかってことでしょ!? 女の子が大変な思いをしてきたってのに、仕方ない人ねまったく!」 「そうだね、僕の店の帰り道で妖怪に襲われたなんて噂が立つのはよろしくない。 経営維持に協力感謝するよアリス」 それを聞いて、怒りつつも嬉しそうだったアリスの顔に影が降り、動きもぴたりと止まった。 ゴゴゴゴゴ、という効果音が聞こえた直後、 「あ、あんたって人はぁぁーー!!!」 ムキー!と憤るアリス。 それをのらりくらりとかわす霖之助は、実に活き活きとした表情を浮かべるのだった。 おまけ、というか別ルート? 「ありがとう、無事に帰ってきてくれて。君に怪我がなくて本当によかった」 しばし呆然と霖之助を見ていたアリスだが、見る見るうちに顔が真っ赤になっていく。 「な、何よいきなり!? わかったわ! どうせ常連がいなくなったら店の儲けがどうとかってことでしょ!? 女の子が大変な思いをしてきたってのに、仕方ない人ねまったく!」 「そうじゃない。店云々じゃなくて、君とまたこうして話ができることが嬉しいんだ」 「あう……」 更なる追撃に声が詰まるアリス。その様子を彼方から覗く影があった。 「アリス……。色を知る年かッッッ!!!」 いろいろとごめんなさい。
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森近 霖之助/1弾 森近 霖之助/7弾 森近 霖之助/12弾 森近 霖之助/16弾 森近 霖之助/20弾
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「ふむ……今年はなかなか豊作だな」 魔法の森の入り口にある店、香霖堂。 店主の森近霖之助は、最近蜂蜜作りに目覚めていた。 最初は自分で使うために作り始めたのだが、これがなかなか奥が深い。 季節によって巣箱の中の板の数を変え、温度湿度の管理は欠かせない。 集まった蜂蜜を全て採ってしまうと蜂が餌不足で死んでしまうので、蜜を集められない秋から早春のためにどのくらい貯蔵させるか計算する。 蜂も生きている以上は病気になるので、健康管理も重要だ。 冬は巣箱を回収し、室内でより厳密に環境を調節する。 手間はかかるが、その分取れた蜂蜜は美味だし、今では巣箱を増やして店の商品としても評判は上々である。 が、それを快く思わないものもいるにはいるわけで。 【共存?それとも……】 その日の作業を終えた霖之助が店に戻って読書をしていると、 「リ グ ル キィィィーーーック!!!」 怒声と共にいきなり店の戸が吹っ飛んできた。 予想外の事態に硬直していると、戸は霖之助の頬を掠めて住居部分へと突入。派手な音と共に襖や障子を薙ぎ倒す。 犯人は緑の髪と触覚を頭に乗せ、半ズボンをはいた蟲の妖怪。名前はリグル=ナイトバグ。 「蟲たちに聞いたよ!この店が蜂蜜を売っているって!」 どうやら香霖堂の品揃えに不満があるらしい。 なんとなくその怒りの原因を悟った霖之助は、とりあえず情報を引き出すことにした。 「いかにも、最近のうちの目玉商品だが、それがどうかしたかい?」 「開き直るとは不届きな人だね! 私が知らないとでも思ってるの!? 蜂蜜を採るって事は蜂の巣を壊すって事でしょう!? 自分達の都合で蟲たちの生活を」 「君はいったいいつの話をしているんだ!!」 「ひえっ!?」 怒りの原因を確信した霖之助は、とりあえず機先を制することにした。 相手が話している最中に大声で割り込む。 あまり褒められた方法ではないが、もともと過激な性格ではないリグルには効果覿面のようだ。 反論されるとは思っていなかったらしく、目を白黒させている。 「全く。大声を出してすまなかったが、他人に意見を伝えるならそれ相応の方法があるだろう」 「あ、え、えっと……ご、ごめんなさい」 案の定、驚いて素に戻ったリグルは下手に出てくる。 「君の言いたいことは大体わかっている。蜂蜜を採りたいなら蜂に配慮しろということだろう? だが、蜂蜜を採るために巣を壊していたのはもう100年以上前の話だ。 今はむしろ安定して採取するために蜂の健康管理を行うのが主流だよ」 「え……そ、そうなの?」 やはりそこか。ならば話は早い。 「嘘だと思うならついて来るといい。養蜂に使う器具を見せてやろう」 一旦怒りを抑えてしまった以上、再び強気に出ることができないのだろう。 リグルはおとなしく霖之助の後について行った。 そして、霖之助はリグルに巣箱や蜜を採取する遠心分離器、越冬用の管理部屋を見せる。 「これでわかったかい?むしろ僕らは蜂に敬意を払っているんだ。 そりゃ横取りするような真似はしているかもしれないが、相応の環境を整えているんだから共生といっても差し支えないだ ろう?」 「た、大変申し訳ありませんでした……」 「全く……生兵法怪我のもとというが、生半可な知識で他人に危害を与えるのはなおたちが悪いな」 「うう……ごめんなさい」 「とりあえず店の戸と家の弁償はしてもらうからね」 弁償ときいて、さあっと顔が青くなるリグル。 「あ……あの……私人間のお金は……」 かなりビクビクしている。少々脅しすぎたかとも思った霖之助だが、そもそも被害者はこっちのほうだ。 とはいえ、あまり恐怖心を与えすぎるのもよくない。 ここらで優しくして、よい印象を与えておくべきだろう。 「ああ、別に金銭をどうこう言うつもりはないよ。 まあさっきはああ言ったが、そもそも妖怪に人間の農業技術を知っておけというのも無理な話だ。 すまなかったね。少々気が立っていたようだ」 「え、あ、そんな、悪いのは私ですから……」 いきなり謝られて恐縮するリグル。完全に霖之助の術中に嵌っている。 「それで、弁償というのは他でもない。君の蟲を操る能力を借りたいんだが」 「……? どういうことですか?」 「まあそれはおいおい説明するよ。まずは、店に戻るとしよう」 店に戻り、リグルを座らせてお茶を淹れる霖之助。 蟲の妖怪とは言えども、人間の姿をしたリグルは人が食べられるものは大抵いけるらしい。 「すみません……ご迷惑をおかけした上にこんな……」 「まあそれはもうやめよう。敬語も使わなくていいから気を抜きたまえ」 「あ……っと、うん、わかった」 どうやらだいぶ打ち解けてきたようだ。 話してみれば、おとなしい上に礼儀もわきまえている。 霖之助は早くもこの少女に好感を抱いていた。 リグルも思ったより怒っていないことに安堵しつつ、実はいい人なのかな? と考えている。 「さて、弁償ということだが、君は妖怪であって、金を持っていない。ここまではいいね?」 「あ、うん。食べるものはだいたい蟲たちに探してもらってるから……」 一瞬何を食べているのか気になったが、あえて聞かないことにする。 今は関係ないし、藪をつついて蛇が出てきたら困る。 「と、いうことはなんとかして金を稼いでもらう必要がある。 一つ聞いておくが、君は人間の顔を見るのも嫌いだったり、人を見ると食べずにいられなくなったりしないね?」 「それは大丈夫。人間にもいい人はいるってことは知ってるし、私はあまり人間が美味しいとは思わないよ」 「ふむ。となるとあとは人里と話をつけるツテだが……慧音に頼むとするか」 そうして霖之助はリグルに金策の具体案を伝える。 最初は渋っていたリグルだが、霖之助が全力でバックアップすることを伝えると、罪悪感もあってか了承することになった。 そして数週間後。 「えっと、君達はここの畑に行って受粉を手伝ってきて。 ついでに隣の畑の蟲たちに場所を移動するように伝えてもらえる? そうそう。じゃ、よろしくね」 霖之助が提案したのは、蟲を操る能力を農業に応用することである。 なにせ農作業には蟲が常について回る。害虫のみを駆除し、益虫を増やす。その手間は並大抵ではない。 その点、リグルなら農業の害になる蟲に直接話をつけ、他所へ移ってもらうことができる。 また、霖之助の蜂蜜作りのように蟲の力を借りる場合でも、蟲と農家の間で正確に意思の疎通が可能となった。 農薬はいらない、作物の受粉はほぼ完璧、農家は雑草や水遣りなどに気をつけていればいい。 最初は妖怪のリグルを胡散臭い目で見ていた人間達も、慧音が保障したこともあって何とか受け入れてくれた。 お礼に関しては特に定めないとしたリグルだったが、タダでやってもらうにはあまりに恩恵が大きすぎる。 連絡がつきやすいようにとリグルが寝泊りする香霖堂には、金や収穫物などが相当な量届けられ、霖之助への弁償はあっけないほど簡単に終わった。 それでも、リグルは香霖堂から離れるつもりはない。 蟲ということで基本的に人間から嫌われていたが、ここ最近の活動でかなりその地位を向上させることができた。 人里の人間達も、むやみに蟲を殺すことは随分少なくなったらしい。 霖之助には感謝しているし、それに……。 「おう、リグルの嬢ちゃんじゃねえか! いつもありがとよ!」 「あ、どうも。こちらこそいつも色んなものを頂いちゃって」 「なあに、俺らがしてもらったことに比べりゃあんなの屁でもねえよ。 いや、今まで妖怪ってやつぁどいつもこいつも人間に襲い掛かってくるもんだとばかり思ってたが、あんたみたいなのもい るんだなあ。 それにしても、香霖堂の店主はいい嫁さんもらったもんだ。 気立てはいいし、なにより別嬪さんだもんなぁ!」 「えええ!? いや、別に私と霖之助さんはそういう関係じゃあ」 「なんだ、まだそんなこと言ってんのか?どっからどう見たって夫婦にしか見えねえけどなあ。 まあ少なくともあの店主だって憎からず思ってるはずだぜ。自信持ちな!」 「あ、ありがとうございます」 最近良くこういうことを言われる。本当にそうなんだろうか? 彼が自分を……。 熱くなる頬をパシンと叩き、リグルは今日も新しい生きがいを楽しむべく飛び上がる。 まだまだ香霖堂での共同生活は終わりそうにない。
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夏の23日(雑談所18スレ)時点 ┏■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓■□■ 名前:森近霖之助 《東方projectシリーズ》┣■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛┃ ,,.. -―- ..,,__ }'、┃ ,,. ''´ `´ヽ/__〉┃ / ',`ヽ┃ / / / ヽ ヽ┃ ∠、_ノ / / l } ', '、┃ {∠ノ / l /r=、lヽl/ } ヽ┃ ヽノ/|ノ  ̄l /';弋r/ヽ'l /从/ |┃ } { 从 l//`ヽ、 /l /-‐/ } l |┃ ∧ ヽ,l / `''⌒/テヽ';/ l l┃ ,. -、_ _,,..ゝ∧l ./ ヽ、 }ヽ、/l/ //'}┃ /´ ヽ/`l''ーv' ´ /l/ l/ヽ、 `ヽ ´´ ,.ノ l/l/ ┃ 〈ヽ l ヘ l l〉〉 {\\ \_ ,,.. ィ´ | / ┃ } \ l ∧ l 〈 〈l l ヽ, ' ..,,_/\´ /l //┃ // ヽ | ,/ } l 〉 ',、 ヽ`''ー// 〉ヽ、/ノ/´┃ . /_ノ ヽ ´ | l l lヽ`' / 〈 / `ヽ,_┃ l l ゞ '; / ヽ \ ヽ / 〈 / //l l `ヽ┃ //''‐-、-、 l, / ヽ ∨´ / /// l |┃ l`'''- ..,/`ヽ、ヽ,/ノ __,,.ゝ-\ ', </ { v /, ヽ┃ / / `'' ..,,`v、''´ ー- -- `ヽ、_,,..ノ ` ´l /ノ/、┃ / l , ' ー----‐'''´ ̄ ̄`''ヽ ''´`ヽ /' / / ヽ┃ . / l _、_ / / ,l_ノ ̄,____ `'l'ヽ`ヽ、 `ヽ// / `l┃ . / ,l ,..,_ヽ{ l_ノ_ソ,'´ l;.;.;.;.;.;.;.;. ̄`'ー-、., ヽミ 〉 / ,. -'´';┃ // {/ `ヽ、} || ||_|;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.`ヽ、{`ヽ /ヽヽ/ヽ┃ l / \ \ || |/|| |ヽ;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.ヽ ''ヽ/___ ,/ / \┃ { ' ` \| ,'| l `ヽ__;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.} ,.. / / ヽ┃ \ ヽ _ゝ-----、;.;.;.;.;.;.;`'''ー----t´ ヽ / / \┃三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三┃――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――┃ - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -┃ ローゼン村を作るときに集まった開拓者の一人。若く見えるが年齢はローゼンやエンジュ等と同年代…以上?┃ - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -┃ 【職業】@酒屋(キムシジャン店主)┃ 【交友値】 ☆☆☆ (3)┃ - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -┃ □所持スキル┃ - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -┃ 【商人:LV.03 @05】┃ 【酒造:LV.09 @10】┃ 【錬金術:LV.05 @09】┃ 【道具の名前と用途が判る程度の能力】 スキル名通り。用途は分かるが使い方はわからない。┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆◆
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彼が気付かせてくれたものの後日談になります。←を読むのがめんどくせえ! という方はあらすじをどうぞ。 あらすじ 人と関わることを忌避していたアリス。 霧雨の店で修行中の霖之助に会って考えが変わる。 香霖堂を立ち上げた霖之助とこれからもよろしく、と握手を交わした。 【人は変われば変わるもの】 霖之助と握手を交わしたその日から、アリスは人形作りもそこそこに1つの計画を立てていた。 名付けて、『いろいろな人(人外も可)と仲良くなりたいな計画』。 霖之助が気付かせてくれた、友人がいることの素晴らしさをもっと味わいたい。 そのために交友関係を増やそうと、なんのひねりもない名前の計画を遂行すべく頭をひねり続けるアリスだったが、 「……どうしよう……」 今まで人付き合いをまるでしてこなかったため、何をどうしたらいいのかさっぱりわからない。 霧雨の店で聞いてもいいが、あの店の人間は半妖を従業員として雇うような人間だ。 特殊すぎてあまり参考にならないし、霖之助も同様だろう。 そしてもう知り合いがいない。 人里の人間なんぞ問題外だし、そもそも彼らと仲良くなる方法を彼らに聞いてどうする。 本を漁ってもみるものの、魔法使いと人が仲良くする方法など書いてありはしない。 強いて言うなら、絵本などでよくある命を助けるとか人間が一目惚れするなどだろうが、それを待つのはいかにも気が長すぎるし今のところ恋愛は求めていない。 そして、案を出したり否定したりすること2ヶ月。 「……ふふふ、完璧よ。完璧な計画だわ」 目の下に墨でも塗ったような隈を副産物としてアリスの計画が完成した。 内容としては以下のとおり。 1.まずは頻繁に人里に出る。 その際ただ歩くだけではなく、できるだけにこやかに挨拶することで好感度を上げる。 今まで無表情だった分のギャップもあってかなり印象を変える事ができるだろう。 2.さらに魔法の森に迷い込んだ人間を今までのように見殺しにはせず、家に上げて保護する。 紅茶などを振舞って『実は親切で優しい魔法使い』という噂を広める。 3.ある程度評判が良くなったら、自分が人形を人里で売っていることを公表する。 「この人形を作っていたのは彼女だったのか!」ということでさらに評価は鰻登り。 4.ここまで来れば少しくらい話しかけても大丈夫。 話が弾んでいる人間たちに「私も聞かせてもらっていいかしら」などと言って会話に加わる。 気さくな所をアピールし、なおかつ周囲の人間にもその姿を見せることで芋づる式に会話できる相手を増やす。 よく見ればかなり穴だらけの計画な気もするが、一度も人の輪に加わろうとしたことがないアリスにはこれが限界。 計画の第一段階を達成すべく、意気揚々とアリスは人里へと向かった。 寝不足で隈がべったりついた顔のまま。 「……ぐすっ」 完璧な計画は第一段階で躓いたらしく、香霖堂にトボトボと入ってきたかと思えば、隅で膝を抱えてのの字を書くアリス。 なんともいえない顔をしてそれを見る霖之助だが、アリスは現時点では貴重な(この先もずっとそうだが)常連。 それに、自分にとって彼女は明るくなっていく過程を見守った友人でもある。 とにかく話だけでも聞くことにして、アリスに近寄り、しゃがみこんで視線の高さを揃える霖之助。 「……アリス。僕でよかったら、何があったのか話してもらえるかい?」 「……」 「何々?人間と仲良くなろうと思って人里で挨拶して回ったら?」 「……」 「……会う人会う人みんな怯えるばかりだったから、やっぱり嫌われているのかと改めてショックを受け」 「……」 「家に帰って見たら寝不足のひどい顔で出かけていたことに気付いた。 普段家ではこんな顔だと思われたかもしれなくて恥ずかしいやら情けないやら、と。 ……こんなことを言うのもなんだけど、君は意外と思い込んだら周りが見えなくなる性格をしているね」 「……みゅう」 ますます小さくなるアリス。 はあ、と息を吐いた霖之助は、とりあえずアリスを慰めるべく頭を撫でてみることにした。 そっと頭に手を載せ、髪の流れにそって優しく滑らせる。 「まあ失敗したものはもう仕方ないさ。 今日ダメだったら2度とチャンスがこないというわけでもないんだしね。 そもそも、今回人間たちが怖がっていたのは君自身を嫌っていたからじゃないんだし、 今度はちゃんと体調を整えて行ってみればいいじゃないか。」 「……ん」 昔はこうして頭を撫でられたこともあったなあ、と懐かしい気持ちになるアリス。 そうだ、1回や2回の失敗で落ち込んではいられない。 今度はきちんと身だしなみを整えていこう。 何度拒絶されてもいいや。 今までが今までだったわけだし、とにかく誠心誠意頑張っていればいつか結果がついてくるはずだから。 なんとか前向きになることができたアリスだった。 ……どうやら落ち着いたようだ。 そう判断した霖之助がアリスの頭から手を離そうとしたところ、 「……ぁ」 なにやら残念そうな声が聞こえたため、アリスの顔に目をやった。 アリスは一瞬名残惜しそうな顔をしていたが、直後霖之助の視線に気付いたらしい。 しまったぁ! とでも言いたそうな顔で少し見つめあった後、ゆっくり俯いてしまった。 「……やれやれ」 また閉じてしまったアリスの心を開くべく、もう一度頭を撫でる。 またすぐに元気になるだろうと思っていたが、頭を撫でてもらいたがっていた事を知られて意地になるアリス。 僕は何もしていないはずだが……とは思うものの、放っておくのも忍びない。 根競べのつもりで撫で続ける霖之助だったが、当のアリスは連日の疲れが出たようで、いつの間にか寝息を立てていた。 ここに放置するわけにもいかないと判断した霖之助は、アリスを抱きかかえて奥の部屋に運び、布団に寝かせることにした。 「おかあさん……」 横たえたアリスがそんな寝言を漏らす。 どうやら昔母に頭を撫でてもらっていたことを思い出したらしい。 最後にもう一度、アリスの髪に手を滑らせ、霖之助は店に戻っていった。 3日後、アリスは再び人里へ向かったらしい。 「さて、泣き顔でそろそろと入ってくるか、笑顔で飛び込んでくるか……」 どちらであっても面白いことにはなりそうだ、と微笑む霖之助だった。