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日が傾きかけている夕方、部活に燃える生徒達を横目にレインは気だるそうにバイクのエンジンをかけた。ヘルメットはつけていない。面倒だからである。 「レイン先生っ、ノーヘルはまずいですよ。死にますよ?!」 「だいじょうぶです、石頭なので。」 同僚の忠告をさらっと受け流してバイクにまたがり、さっさとスピードを上げて道路を飛ばしてやった。チッと舌打ちをして、今日の授業を振り返る。ああ忌々しい、悔しいが一応3-Sは選ばれた生徒達。どんなにぎゃあぎゃあと騒いでいようと当てられた問題にはしっかり答えてしまうのが悔しい。担任をまかされて数ヶ月、仕方ないが彼らの頭脳を評価し、自分とほぼ同等の能力をもっていると認めざるを得ないだろう、レインは頭の隅で考え始めていた。視界のスミに、交通整備の赤いステッキを機械的に振り回すヴァイスが入ったのも気づかずに。 一台のバイクがもの凄いスピードで通り過ぎたのを見て、やれやれとヴァイスは肩を落とした。 「ったく…レインのやつ放課後暴走族はやめろよなー…。」 ホイッスルを口から離し、後ろを振り返る。工事現場の親方がやかんをもって休憩しようと声をかけてくれたからだ。声は出さずに大きくうなずいて他のアルバイトたちの所へ向かう。 「お疲れーッス。」 「ヴァイス君、今日のお手当てね。」 「あざーっす。いや、ホント助かりますよー…来週もうちょっと多くバイトいれてもいいですかね?」 「いいけど、だいじょうぶなの?キミ受験生でしょ。」 「まあ、勉強はなんとかしますんで。」 やかんから注がれた熱いお茶で喉を潤し、配られたおにぎりをほおばりながらヴァイスは少し考える。自分の進学のこと、アリアの学費のこと。今の自分の学費は全額免除されているので当面の間心配は無い。しかし、アリアは半額免除の対象。最終学年にならねば、全額免除の選考試験がない。両親の残してくれた遺産も少しはあるが、それに頼ってばかりいれば生計が立たなくなってしまう。 スケジュール帳を開いた。来週は毎日バイト。うち3日はかけもちだ。幸いなことに、体力にも自信があるからなんとかなるだろう。しかし、疲労がたまることは事実であって。 「キッツぅ・・・」 愚痴の一つも零したりしてしまう。幾度か、エルネストの両親から援助の申し出はあった。しかし、ヴァイスは丁寧に断っている。公的な補助も受けているし、友達関係の人から金銭の貸し借りはするなというのが両親の教えでもあった。 「やっぱ大学やめよっかな・・・」 給料袋をかばんにしまい、同僚達に別れの挨拶をするとヴァイスは帰路に着いた。腕時計の文字盤は、違う日付を指している。さっさと帰ってアリアの用意してくれた食事を流し込み、疲れを取るべく眠りにつきたいところだが、宿題があったような気がする。 「あの先公~っ!・・・ま、いいや。当てられたらその場で答えたろ。」 それくらいの頭脳はあると自負している。いざとなったら、エルネストにノートを借りるなり、レオンのノートを盗み見するなりすればいい。プリアラは・・・後が怖い。そんなことを考えながら歩いて通り過ぎようとしていた工事現場から、ガシャンという何かが割れる音、鉄パイプのかすれる金属音、そしてドサリとなにかが落ちる音、怒鳴り声。怪訝そうな顔をして工事現場を覗き込む。 「ん?なんだなんだ、ケンカかぁ?」 その場には数人の高校生が鉄パイプ片手に立っていた。高校生達の囲んでいる中心には小学生くらいだろう少年が倒れている。少年のめがねは割れていて、踏み潰された形跡がみられた。 「おいオメーらぁ!ガキんちょ相手になーにやってんスかっ」 こんな状況で助け舟を出さないわけには行かない。相手の数は7人。7対1はやはり少し不利ではあるが、ここで逃げては男が廃る。鉄パイプが足元に転がっているが、手に取るつもりは無かった。人は素手で戦えば、ケンカをする理由も見えるはずだと、ヤンクミのマネをしつつ言っていたレインの言葉を思い出したのだ。 「けっ、あんなセンセーでもヤンクミの言葉を言えばそれなりじゃん。」 「なーにごちゃごちゃ言ってんだよガキが!」 「このガキの仲間か?」 「ンナァァァア!てめぇ!どこが仲間に見えるんだよ!ガキっつーな!来年大学生だよ!こいつ小学生だろ、どう見ても!俺サマがそんなガキに見えんのか!ああもう容赦しねー!」 数分かかった。ヴァイスにしてはかなりの苦戦を強いられたほうだろう。手のひらには血が滴っている。腕にも、足にも痣ができたがまぁそれは仕方ない。それよりも、小学生の少年の安否を確めなければならなかった。 「おい、だいじょうぶかよ。」 「・・・あ。」 「あんた、どこの小学校のコ?ていうかこんな時間になんでウロついてんだよ。俺送ってくぜ。家どこ?」 「あ、ありがとうございました・・・。でも、俺平気です。あ、あの。名前は・・・?」 「俺?俺はヴァイスだ。」 「ヴァイス様ですね。その制服・・・召喚高校、ですよね?」 集団に殴られていたにもかかわらず、少年は案外元気そうである。質問攻めにあっている状況が面倒でその場からさっさと去ってしまいたい。 「俺、ヴァイス様についていきますよ!」 「あ・・・あっそう・・・。とにかく送らなくても平気なんだろ?俺帰るから。」 視線をあわせずに手を振って、その場を後にした。なんだか妙な小学生だったと首をかしげて。 翌日のことだ。眠たげな目をこすって家のドアを開き、学校へ向かう。アリアは大慌てで時間割をそろえていたので置いてきた。どうしてあんなに準備に時間がかかるのかがまるで理解できない。通学路の途中にあるエルネストの家によって、迎えに行こうか。と、自分のすぐ隣をもの凄いスピードのバイクが駆け抜けていった。朝っぱらからうるさいなと思ったら、自分の担任だった。ダメ教師め、って人のことをいえないか。ヴァイスは薄く笑いながら少しだけスピードを上げて走り出した。 「エルゥゥゥ!遅刻すんぞー!」 「わかってますーって!」 いつもの朝が始まる。変わらない日常が。 そう そう信じていたのに。 「転校生がいます。」 心底面倒だと物語っているような口調でレインが言う。その隣に立っているのは背が高い、つんつんと尖った金髪の少年。めがねをかけており、知的な印象を受けた。気になるのは、彼がずっと穴が開くほどヴァイスの方を見ていることなのだが。 「どうもっ!俺、ベルクです!そちらにおられるヴァイス様に憧れて無理やり転校してやりました!これからよろしくお願いします!」 「無理やり?!」 レオンが何か突っ込みを続けたそうにしていたが、レインが話を打ち切ったが為にそれは失敗に終わる。ベルクは自己紹介をするやいなやヴァイスの隣に机を置き、にこにこと恐ろしいほどの笑みを浮かべてどっかりと座った。その様子にやや驚いて、というよりも数歩引いてしまいたいような気持ちを抱いて、ヴァイスは口を開く。 「あ、あんた・・・なんでさっきから俺のこと見てんだよ。」 「やだなぁ、昨日助けてもらったじゃないですかっ。あの時から決めたんですよ。俺、ヴァイス様みたいにカッコイイ人になろう!と・・・」 「昨日?・・・だって、俺は。」 昨日助けたのは、たしか随分年下の幼い少年だったはず。 ヴァイスは首をひねる。遠くから、レインが新しいバイクを自慢している話が聞こえてきたが、それもあまり頭に入らない。 その日、ぼんやりとしたまま放課後を迎えたヴァイスは、なんとなく誰にもこの話を言えずにアルバイトに向かったのだった。
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基本性能 通常版からの技の変更点被ダメージ中にD JC J2C ナハト・イェーガー ヴァイス・ヤクト ケーニッヒ・ヴォルフ アイゼン・ヴォルフ DD追加 [部分編集] 基本性能 体力15500 常時通常版ODの強化内容が適用される(与ダメージ中のバースト不能効果は除く) ODの持続時間が体力残量に関わらず常に最大。 OD発動中の効果が技のダメージ増加、与ダメージ中バースト不能、ヒートゲージ自動上昇、OD中限定のDD使用可能に変更。 [部分編集] 通常版からの技の変更点 被ダメージ中にD ヴォルフゲージ使用して 変身しながら敵のコンボから抜け出せる(投げ、超必は不可) JC 新モーションに変更。空中で6Cのモーションで攻撃。jc可能 J2C 従来のJCのモーションで慣性を止めて攻撃。ヒット時強制しゃがみ喰らいに。 ナハト・イェーガー 1ヒットから3ヒットに。 ヴァイス・ヤクトに派生 ヴァイス・ヤクト ヒット時画面端到達時、貼り付け効果付与。 ケーニッヒ・ヴォルフ 技後にAorB連打で、最大4回まで自動で追撃ケーニッヒが出せる。 アイゼン・ヴォルフ 技後にAorB連打で、最大4回まで自動で追撃ケーニッヒが出せる。 [部分編集] DD追加 狼時のD突進で攻撃できるように 追加DD 狼時22A(空中可) 画面端まで突進 端が遠いほどダメが高い エグゼキューター的な 狼時22B 弧を描きながら敵を捕まえて落とす しゃがみには当たらないしガードもされる -- (名無しさん) 2013-11-04 01 13 13 アンリミのヴァルさん狼のときの236+Aの追加のA連打あるよねぇ?まだ試してないけど。 -- (名無しさん) 2013-11-08 23 46 50 OD時に236236+Dで光の粒子を纏った狼状態になる。 効果はおそらくヴォルフゲージの続く限り狼状態を維持出来る。 -- (名無しさん) 2013-11-10 10 57 14 OD時に常時無敵の狼状態 投げによって解除、その後は狼ゲージが試合開始の状態に戻る -- (名無しさん) 2013-11-12 11 27 56 狼状態で 236236+Aで突進技が出るよね? -- (名無しさん) 2015-03-26 20 39 01 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/fedic/pages/299.html
ヴァイダ 烈火の剣に登場するドラゴンマスターで、ヒースの上司。~相棒の飛竜の名前はアンブリエル。 ベルン三竜将に次ぐ実力を持ち、竜牙将軍の異名を取る。ゼフィールを崇拝している。~ しかし、ある時国王より出された非道な命令に背き軍を追われてしまい、~ 王宮付き騎士への復帰を条件に黒い牙と契約を交わし、ニルスを生け捕りに来たところでエリウッド達と戦う。~ この時のヴァイダはネルガルの魔法の加護を受けており、幸運がゼロである以外は全ステータスがカンストしている。~ 加えて武器が直間両用のスレンドスピアであることもあり、まともに戦っても勝てない。~ が、その後どこからかゼフィール王子暗殺事件を聞き、それを阻止したエリウッド達に協力する。~ 初期から上級職としての加入ということもありステータス成長率は低いが、守備に関しては初期値の段階でヒースの期待値を抜く。ただし速さはあまり伸びず、力や技などはヒースに劣る。~ また体格は女性ながら12もあり、はがねのやりも難なく扱える。体格6しかないイサドラとはえらい違いである。代わりに救出が8しかないけど。~ 性格は残忍かつ好戦的であり、支援会話でも喧嘩腰のものが多い。顔の傷はベルンから逃亡する際に追手からつけられたものであるが、~ これを「腕だったら戦えなくなるとこだったよ」と言ったり、シューターに肩をぶち抜かれながら敵に突っ込んだりと武勇伝は多い。~ ちなみに前述の通り、敵として出てくると滅茶苦茶強い彼女だが、弓の特効は発生するし、エリウッド編ならシューターも置いてある。、~ さらにモルフの製造技術を応用しているのか幸運はゼロなので必殺は出やすい。また闇魔法ルナも当然効く。~ これらを踏まえれば倒すこともできるが、その場合後で仲間にならないことに注意。~ さらにこの加護は彼女自身でなくスレンドスピアの方にかかっており、フレイボムのバグを応用すればこちらが使用することも可能である。~ 幸運以外の全てに強力な補正がかかりので、自軍ユニットに持たせれば(ほぼ誰であろうと)思う存分無双できる。~ 当然これをもがれたヴァイダはステータスが下がっているため簡単に倒せる。
https://w.atwiki.jp/vice2rain/pages/84.html
広大な草原が広がるミルディアンの西のはずれ。 険しい山脈が続き、町はもう存在しないこの場所は綺麗ではあるものの訪れるものはほとんどなかった。 隣国アレツォーネからも山脈を越えねば到達できない場所であるので、領土に関して口うるさいアレツォーネ王からしても用のない場所とみなされているらしい。 そんな草原に流れる小川のほとりに、小さな家が一軒だけぽつんと立っている。まるで町から取り残されたかのような家の周りには少しの家畜が居て、菜園があるだけである。 と、屈強そうな青年が家から出てきた。そして慣れた手つきで家畜の世話を始める。彼が世話を始めてまもなく、草原を涼しげな風が駆け抜けたとき、男の後ろで声が聞こえた。 「仕事中すまない。あなたはこの家の方か?」 大人びた口調ではるが、声は若い。彼が声の主を探して視線を落とすと黒い修道服を纏った少年が目に入った。とがった耳を見てエルフの血を引くことは一目瞭然ではあるが、それを考慮しても落ち着きがありすぎる。青年は訝しげな表情になって答えた。 「いや、俺はただの庭師だよ。キミは?そんな修道服は見たことがないんだけれどね。」 「宣教ではない。あなたの主、アリス・バージェス殿を訪ねてここまできたんだ。」 「珍しいことだな…?アリスはかなりお年を召されたエルフ。キミのように若い知り合いがいるとは思えないが。」 まだ怪しんでいる様子の青年の対応に、ヴァイスはため息をついた。 「…では彼女に、『あなたの友、ヴァイスがきた』と伝えてはくれまいか。それで彼女が僕を知らない…いや、覚えていないようならば僕は黙ってお暇しよう。」 「わかった、少し待っていてくれ。」 男はドアの奥へ消えていった。ヴァイスは考える。彼はきっと彼女のボディガードもかねているに違いない。彼女は聡明な賢者としても有名だったし、かつてはその美貌で名を世界にとどろかせてもいた。 と、男が再びドアから現れ、ヴァイスに告げる。 「アリス様はお会いしたい、と。」 「そうか…ありがとう。」 青年に通されてヴァイスは家の中へ入っていく。網掛けの靴下と毛糸がかごに入れられ、ロッキングチェアに寄り添っている。テーブルの上にはジャムがたくさん並んでいて、どこを見ても花が飾られている。その様子にヴァイスはかすかに笑った。 「変わらないな…昔から花を愛していた。」 男は彼の言葉に首をかしげたが、何も言わずに一番奥の扉をノックした。返事が返ってくると扉を開き、キッチンへと向かう―茶の用意でもしてくれるのだろう。 部屋は広くて日当たりが良かった。風通しも良く、小川のせせらぎも聞こえてくる。部屋の雰囲気は暖かなものだったが、その片隅にはメタリックな機械類が放置されていた。誇りこそかぶってはいないが、永い間動かしていないことが見て取れた。 機械類の山の反対側には白いベッドがあり、その上には小柄な老婆が座っていた。上品な雰囲気、穏やかな目でヴァイスを見ると、やわらかに笑った。 さきに言葉を話したのはヴァイスだった。 「久しぶり…というにはあまりにも時を隔てすぎてはいるが…変わらないな、花の好きな君らしい。」 「ありがとう。ふふ、お年寄りのほめ方をわかっているのね…」 「い、いや…そんなつもりじゃないんだ。すまない、その…あまりにも変わらなかったから…」 「いやね、今のは私の意地悪よ。本気にしないで…。あなたも変わらない…って言ったら怒るかしら。」 「フ、僕は変われないのだがな…いや、内面はかなり変わったつもりだ。だが…君の前では昔に戻るらしい。」 アリスは昔を懐かしむように目を細める。ドアが開く音が後ろで聞こえると、男は紅茶を差し出して去った。残した庭仕事を片付けるのだろう。 「懐かしいわ、魔法学校の友達…。メイプルさんにはいつもお世話になってばかりだったし、あなたにはいつも魔法の指導をしてもらったわ。」 「メイプルのあれはおせっかいといっても過言ではないがな。」 「ふふ、そんなことないわ。…そうだ、あれからもう800年くらい経つけれど、あなた計画は実行するつもりなの?」 ヴァイスの表情は突如厳しくなった。 「…これから。ミルディアンの皇子たちが旅立つらしいのでな、それに同行しようかと思っている。目的地が一致するしな。まぁとにかく…最期になるだろうからここへきた。」 「最期なんていわないで……辛いわ。」 「すまないな。…ところで君はなぜこんなところへ?町に住んでいれば何不自由なく、家庭も築くことができたはず…」 ヴァイスの言葉をさえぎってアリスは首を横にフッタ。瞳には少し憂いの色がちらついている。 「それは違うわ。どんな場所でも…あまり幸せにはなれなかったはずなのよ…。だから一人になるの…」 「フ、絶世の美女は違うな。」 ヴァイスは茶化すように笑った。アリスもつられて、かすかに口元をほころばせてくすりと笑う。 「そういう意味ではないとわかっているのでしょう。」 「…さぁな。さて…僕はそろそろ失礼しよう。」 椅子から立ち上がってドアノブに手をかけたヴァイスをアリスは呼び止める。振り返った彼にアリスは声をかけた。 「さっきの」 「ん?」 「さっき、あなた変わったといったわ。その変わったあなたを見せてほしいの。」 「…」 「ヴァイス。」 期待のこもった優しげな声にヴァイスは戸惑った様子だったが、何も言わずに背を向けると家から出て行ってしまった。アリスは悲しそうにうつむいたが、突如家の外が光り輝きだしたことに気づき、窓の外へ目を向けた。 ただの草原だった野原に花が咲き乱れている。丁度窓からみえる景色の真ん中にヴァイスが立っていてかつてからは考えられないような満面の笑みを浮かべている。そして、大きく息を吸ったかと思うと、叫んだ。 「すげぇーだろッ!俺からのプレゼントだ!!せいぜい長生きしてくれよッ!ばーさん!!!」 「もうっ、失礼ね…!ありがた迷惑よー!元に戻しに、またここへ来なさいね!」 アリスがせいいっぱいの声で叫び返すと、ヴァイスは控えめな笑みを浮かべて、消えた。きっとミルディアンへ向かったのだろう。 彼が居なくなった後、アリスはベッドに再び座りなおす。しばらくぼーっとしていたようだが、庭師が外から帰ってくると彼女は立ち上がってリビングへ行き、ロッキングチェアに座って編み物の続きを始めた。黙ったままの彼女に耐えかねたように男は口をひらく。 「さっきの少年、一体何者なんですか?」 「…そう、ねぇ…」 アリスは少し考えて言葉を続けた。 「まるで表情のない、冷たいお人形さんみたいな人だったわ。それから…」 「?」 「…やっぱり、教えないわ。」 日差しは草原をかける風とともに優しく彼女を包み込んでいた。 こんな始まり方もいーかなと思ってたけどボツにした「おバカと~」の始まり。おっと、最初っからネタバレという暴挙でもありましたネvv アリスおばーちゃんの気持ちを大切に書きたくて蔵出ししました。
https://w.atwiki.jp/vice2rain/pages/127.html
「つまりだ、お前は…いや、お前もミルディアンの王子?」 小さな町のカフェで、フルーツパフェをむさぼりつつ、ヴァイスはスプーンの先をレオナルドに向けた。がっくりと肩を落としながら、答える。 「ええ。いや…正しくは僕は王…2年前に即位しました。君が今している、旅の試練を受け、僕はミルディアンを出て、東の森で修道士の君に助けられたんだ。プリアラにはミルディアンの街のはずれで出会って…。と、とにかく!ここは…2年前?しかも、その上…いろいろ改変されている?」 プリアラが驚きを隠せない瞳でレオナルドを見た。そして、紅茶を置くと、目線を落として離し始める。 「あなたの話だと、その鏡でこんなことが起こったみたいだけど…そんなこと、絶対にムリよ。そんな魔力、普通の魔導師にあるわけないわ。時間をゆがめ、事実をゆがめるなんて…。ねぇ、その鏡、今ここにあるの?」 「は、はい。これです。」 水晶の鏡が机に置かれると、光が再び乱反射した。しかし、それだけで今回は何も起こらない。ヴァイスは完全にわからない顔で二人のやりとりを眺めているだけだった。 「ああ…せめて、僕の知っているヴァイスがいたならなあ…」 「…悪かったな、役立たずで。その…お前が知ってる俺って魔法が得意だったのか?」 「うん。得意なんてものじゃなくて、彼よりも強い魔法使いなんていなかったんじゃないかな。…あっ!」 「何?」 「も、もしかしたら。ヴァイスと僕の立場が入れ替わっているなら、僕にも魔法が使えるかもしれない…」 「…たしかに、あなた魔法は使えるみたいだけど。」 プリアラは一旦ここで言葉を切った。その後に続く言葉はレオナルドにもおおよそ予想が付く。だめか、と肩を落としてため息をついて、コーヒーを一口飲んだが、全然落ち着く気配は無かった。 「これからどうすればいいんだろう…」 「とりあえず、俺についてこいよ!俺が目指すのはサガルマータ。あんたの話によれば、なんでも願いを叶えられるんだろ。それに、経験者がいれば怖いものなしじゃねーか。てっぺんまで登って、願えばいい。」 「…そうですね、それしかない。そうしてもいいですか?プリアラ。」 「王子の言葉に逆らう気は無いわ。よろしくね、レオン。」 にこりと笑うプリアラは、やっぱり可憐だった。魔法にかかってから、あまり黒いオーラをまとっているプリアラを見ていない。嬉しくもあるが、なんとなく違和感を感じ、レオナルドは苦笑するしかなかった。 「サガルマータは、封印されていて普通に行ったら頂上までたどり着けません。星界の封印をもっていなければ、いけないんですよ。…たしか、それを持っているのは西の魔女ですが…」 「西の魔女、か。砂漠にいるって噂だな。…と、レオン。助言はこれくらいにしてくれ。ありがたいが、これじゃあフェアじゃない。兄貴と戦うのなら、フェアにいこうと思ってる。」 「変わらないな。」 「?」 「いや…なんでもないです。わかりました。」 「じゃあ、とりあえず西を目指しましょうか!レオン、あなたどうせ魔法があんまり上手につかえないでしょ?今まで剣しか振っていなかったものね。出発の前に少し、コツを教えておいたほうがいいかしら。」 「是非。」 「おい、プリアラ。どうせだったら実践しながらのほうがいいんじゃないか?」 「もう、魔法はそんな簡単にいかないのよ。」 「いえ、先を急ぎましょう。僕も努力しますから。」 杖を握り締め、レオナルドは決意する。先のたびで、あれほど渇望した魔道の力が今、あるのだ。魔法を使うという経験を得られるなら、努力は惜しまない。にっこりと笑い、二人の後を追った。 「ま、いざとなったら俺の双剣が光ってうなって大騒ぎ!俺の剣に敵は無いぜ?」 「はい。ヴァイスは強いですからね。でも、剣だったら僕のほうがきっと強かったんじゃないかな…」 「あら、そこまで言うなら剣でも持っていたほうがいいんじゃないの?」 そういえば、そうだ。あたりまえのことを言われて、顔を赤くする。 「俺一刀流でもOKだし、これ、使うか?」 「ありが…うわ?!」 剣を持ったとたん、体が傾いた。よろよろと数歩よろけた後、盛大に転んで、レオナルドは頭を強く打った。これくらいでは全く痛くもかゆくも無かったはずなのに、とてつもなく痛い。頭がぐらぐらして、気持ちが悪い。魔導師になると腕力が落ちる上、体力もなくなってしまうらしい。想像していたよりも厳しい魔導師の条件に改めて、レオナルドは驚いた。 「う…む、ムリになってしまったみたいですね…。ヴァイスはすごいな、こんなに重い剣を二本も持つんだね…」 「はぁ?かなり軽いほうなんだけどな…。ま、しかたねぇだろ。行こうぜ二人とも。剣は俺が扱えれば十分だ。」 マントを翻してヴァイスは行く。その後を小走りで追うプリアラ― (なんか…) 僕よりも王子らしい… どことなく屈辱感に襲われつつも、レオナルドは歩き出した。街を出れば魔物がいる。もう気を抜いているわけには行かないだろう。 「…はあ、はあ…」 一方、ベルセルクとヴァイスはミルディアン城の中を駆け回っていた。 後ろから追ってくるのは大量のミルディアン兵である。 「ヴぁ、ヴァイス様…まずいっす!このままだと挟み撃ちにされる…」 「魔法ぶっぱなすわけにもいかねえしな…。は、早くレオンがかけられた魔法の道具を見つけねえと…。ベルク、とりあえずこの部屋へ隠れるぞ!」 部屋へ半ば転がり込むように入ると、ドアを閉め、今度は魔法でドアのまわりを石に変えた。これで部屋に入るのはもはや容易なことではなくなるだろう。息を整えつつ次の行動を頭の中で考えていたヴァイスに、後ろから声がかけられた。勿論、ベルセルクの声ではない。 「ふふ…お探しなのはこれですか。」 「!…い、イシュナード…」 「今この国では、かつての英雄ヴァイスもただの反逆者…。ミルディアンをのっとるために国王に魔法をかけて失踪させた罪を負っているのですよ。」 「テメーがそう仕組んだんだろ!…それを貰うぜ、イシュナード。俺はあいつのために、魔法をといてやる必要がある。いくら俺に恨みがあるからって、ダチに手ぇだされちゃ黙ってられねえよ!」 「面白い。できるならば、やってみるといい。私はあのころの私とは違いますよ!」 まばゆい閃光が部屋を多い、鋭い雷の音が響いた。その雷の間を縫うように炎が踊り、ヴァイスとベルセルクを襲う。と、今度は頭上からマグマが流れ込み、ヴァイスは急いで結界を張った。ベルセルクは弓を構えるが、イシュナードにはまったく隙が無い。まったく当てることもできずに、悔しさに唇をかみ締めた。 「ベルク!危険だ。ポケットの中にでも入って隠れてろ!」 「い、嫌ですよ!ヴァイス様だけ危険な目には―」 「うっせぇな!テメーが足手まといなんだよ!ごちゃごちゃ言わんで言うことを聞け!」 「では足手まといが消えたところで、私も本気の力を出しても?」 「うお!」 いつの間にか背後に回っていたイシュナードの手から熱波が繰り出され、ヴァイスは壁に打ち付けられた。全身を打ちつけ、頭がぐらつくが、よろよろと立ちあがり、ヴァイスも笑みを返して挑発する。 「ああ。俺も少し暴れたくなってきたぜ…」
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この世でもっとも生物を殺したのはなんだろうか。 それは刃か? それは火か? それとも銃弾か? いや、毒である。 肉体を蝕み、血肉を腐らせ、悶え苦しんだ後に残酷に息を止める。 無念にも毒で死んだ者。 諦めの果てに服毒した者。 勝てぬ化け物に挑み、毒を持って打ち勝った者。 毒とは総称だ。 それは体を蝕むもの。 それは心を蝕むもの。 痛みを、苦しみを、誰かが望むがままに与える痛みの塊である。 ――煙草の焼け焦げを残した紙片より 【AnrimitedEndLine】 外伝 『Biscuit・Shooter/2』 その日、別れを告げた ……ニコチンは毒だ。 煙草に付随するタールもまた毒だ。 体を蝕み、肺を黒く汚して、毛細血管を収縮し、舌を麻痺させ、体力を削る。 どう足掻いても吸うことに意味はない。 けれど、手を伸ばすのは……もはや中毒なのだからだろうか。 「プハ~……」 武装隊の詰め所にある喫煙所。 そこでヴァイスはいつものように煙草に火をつけて、紫煙を吸い込んでいた。 喫煙所には他には誰も居ない。 元々肉体勝負の武装隊には禁煙を心がけている奴も多いし、それ以前に今は武装隊の一チームが出動したばっかりだ。 ヴァイスは、その出動する人員には……含まれていない。 「今日でここもおさらばか」 煙を吐き出して、紫煙を揺らめかした煙草の先端を見つめながら、ヴァイスは天井を見上げた。 普段にはないだらけた姿勢で、スプリングの壊れたまま修理申請の通らないソファーに背を預ける。 ギシギシと軋んで休めない固いソファー。 これも今日でおさらばだ。 「そう考えるとなんだか名残惜しく……はならねえな」 座り心地最悪のクッションに思い出なんて求めちゃいない。 この一本を吸い終わったら、行くか。 そう考えて煙草の先端を見る見る灰に変えていった時だった。 「誰かいるのか?」 「あ?」 ガチャリと煙から隔離するための扉を開けて、見覚えのある赤いポニーテイルが見えた。 「ヴァイス、か?」 「シグナムの……姐さん?」 そこに居たのは同じ航空武装隊の同僚であり、先輩とも呼べるシグナムだった。 窓を開け、換気扇を回す。 そうすることで部屋一杯に立ち込めていた紫煙の煙が薄れていく。 大して高級でもない安い煙草はただ煙臭い香りと苦々しい味しか齎さない。 そんな中に煙草を吸わない非喫煙家のシグナムには厳しいだろうという配慮だった。 「すまないな」 ヴァイスが座っていたソファー。 その対面に当たるやはりスプリングが利いていないソファーにシグナムは腰掛けていた。 「いや、大したことでもないすから……ところで姐さんはなんでこんなところに?」 喫煙家どころかあまり煙草の煙自体を好んでいないはずのシグナムが、喫煙所にやってきた理由をヴァイスは尋ねた。 「そうだな……率直に言えば、お前に会いに来た」 「へ?」 「武装隊から部署換えするのだろう? なんでもヘリパイロットを目指すらしいな」 「参ったな……知ってたんすか?」 ガリガリと頭を書き上げて、煙草の端を噛みながら苦笑するヴァイス。 それを見ながら、シグナムは内心不安を感じていた。 (例の誤射事件から顔を合わせていなかったが……随分とやつれているな) 同じ航空武装隊とはいえ、別の班の所属だ。 大掛かりな任務でもなければ任務で顔を合わせることも無い。 最後に顔を合わせたのは数ヶ月も前の話だ。 (ティーダが亡くなった時もそうだったが……さらに悪化しているな) たった数ヶ月前の記憶と現在を見比べてみると、愕然とする。 過酷な任務で疲労の色はあったものの軽口を叩きながら笑っていたヴァイスの面影は殆ど残っていない。 確かに口調や態度は記憶のままだが、どこかで違和感を覚える。 無理して取りつくろっている。 そんな気がするのだ。 笑いたくもないのに笑っていて、苦しいのに苦しくない振りをする。 「ところでヴァイス。体調の方は……どうだ?」 「は? 姐さん、なにを藪から棒に」 「いや、な。又聞き程度だが、お前の調子が悪いと聞いてな。違う部署に行くのだ、調子を崩していたら最初から躓いてしまうだろう?」 「うー、いや確かにちょっと調子は悪いすけど。大したものじゃないっすよ」 調子が悪い。 そんなレベルではなかった。 少なくともシグナムが知っている限りでは、そんなレベルではない。 初めに聞いたのは銃がマトモに握れなくなったという話。 射撃場でガタガタと震える腕を押さえつけて、デバイスの引き金を引いていたという噂。 任務が終わるたびに嘔吐し、誰とも口を利かないまま姿を晦ますという。 昔はまったく手を出していなかったはずなのに飲酒に手を付け、決して吸おうとしなかった煙草をシグナムの前で吸っている。 おそらく煙草や酒は不安感やイラつきを抑えるためにやっているのだろう。 明らかなPTSD(心的外傷後ストレス障害)の傾向だった。 明らかな重病人であり、本来ならば心身共に酷使する武装隊になど続けられるはずのない状態だった。 なのに、ヴァイスはそれでも武装隊をやめようとしなかった。 昔のままに……否、以前よりも鬼気染みた雰囲気と態度で戦歴を挙げ続けた。 壊れたように、狂ったように働き続けていた。 いつか死ぬんじゃないか? とまで囁かれていた。 そんな彼が唐突に転属願いを出した。 それも荒事とはさほど関係のない運搬部への転属願い。 良い傾向だと思った。 確か昔ヘリが好きだと聞いていたから、本当に好きなものに熱中することが出来るのならば多少は傷を癒せるかもしれない。 そう考えていた。 「そうか……それならいい」 「えっと、それだけすか?」 「ああ。ちょっと心配になっていてな」 シグナムは何気なく成長した同僚であり、後輩のヴァイスを見つめた。 二年だ。 新米として武装隊に入ってきた十代の少年は二年の月日でここまで成長し、そして変わり果てた。 (私は未だに成長も衰えもしないのにな……) 闇の書――否、蒼天の書の防衛プログラムとして生み出された仮初の命。 記憶はある。 心もある。 命もある。 けれども、それは不変だった。 おそらくは十年経っても、二十年経っても、主が年老いても自分は同じままなのだろう。 そして、目の前の後輩であり同僚だった若者はこれからも成長し、変わっていくのだろう。 (少々羨ましくもあるがな) 「姐さん? ……なんか用があるんすか?」 そんなことを考えていたら、ヴァイスがこちらに目線を合わせていた。 どうやら無意識に見つめていたらしい。 「いや、少し考えごとをしていただけだ」 「そうすか……」 そうヴァイスは呟くと、ゴソゴソと胸ポケットから取り出した煙草を咥えようとして――不意にシグナムに眼を向けた。 (吸ってもいい? ということか) シグナムは苦笑しながら、手を振って構わないという態度を取ろうとした時だった。 『臨時ニュースです』 「ん?」 『市民街で起きた違法魔導生物の脱走事件ですが、武装隊の迅速な対応で無事確保されました。しかし、その際に市民に数名の軽症者が出ており、地上本部の治安体制に抗議の意見が殺到しており――』 ブツン。 喫煙室に取り付けられていたディスプレイが、ヴァイスの握った端末によって電源を落とした。 「……どこもかしこも文句しか出ないすね」 「ああ。ただでさえ地上本部は忙殺されるほど動いているというのにな」 度重なる治安問題。 未だにはこびる違法魔導師や管理局への反テロ運動。 異常とも言える管理外世界への勢力拡大に、性急な動きによって海はより広まる活動範囲に人手と人材が足らず、それによって引き抜かれた地上本部はより深刻な人材不足と戦力不足に悩む。 急激な運動に管理局という組織自体が軋みを上げて、その動きに耐え切れずに組織のパーツ……すなわち人材が磨耗して擦り切れていく。 「上層部は何を考えているんすかね……」 「さあな。少なくとも私達程度では口の出せない領域だということには変わりあるまい」 如何にSランク魔導師といえども、所詮組織の端末だ。 重要性と戦力という意味では重宝されているかもしれないが、自分たちヴォルケンリッターは闇の書の収集行為という 度重なる重罪を犯し、本来ならば何の関係もない主ともども管理局に組している。 時折、組織の方針に疑問を抱くこともある。 ヴィータは特に気づいていないだろうが、シャマル或いは少なくともザフィーラも同じ心境だろう。 ――“完全無欠の正義”など存在しないことに。 けれども、この管理局は主が夢見る願いを叶えるための組織であり、数多くの恩人が所属している組織だ。 鎖に繋がれた囚人も同然とはいえ、自らが幸せを望む主と友人たちのために剣を振るい続けることは間違っていない。 決して間違っていない。 少なくとも私はそう信じている。 「……口は出せない、か。いつまで続くんだろうな、こんな事件が」 「ヴァイス?」 私が思案にふけていると煙草を噛み潰し、ディスプレイを見上げたヴァイスが居た。 「え? あ、いや、ちょっと……イラついただけっす。すいません」 「腹立たしいのは分かる。しかし、ここでお前が怒る理由にはなるまい?」 「あー、そう……すね」 噛み潰した煙草の根元を指で掴み、ヴァイスはライターを取り出す。 カチンカチンと鳴らして、火を出そうとするのだが、オイルが切れたらしく火が出ない。 「っ、くそ」 「ちょっと貸してみろ」 私は立ち上がり、ヴァイスの口元に手を運んだ。 「姐さん?」 眼を丸くするヴァイスの前で、軽く魔力を放出し、変換資質で火へと変質させる。 パチンと指を鳴らすように、指の間から躍り出た火が煙草の先端を焦がした。 「おー。シグナムの姐さんがいると、ライター要らずっすね」 「そういわれると、途端に安上がりな気分になるな」 シグナムは軽く苦笑し、ヴァイスもまた笑みの形を取り繕いながら紫煙を吸い込む。 そして、ゆっくりとシグナムには掛からない位置に煙を吐き出して、喫煙所に備え付けられた灰皿で折れ曲がった煙草の先端を揉み消した。 「それじゃあ、俺はそろそろ行きますわ」 「ああ」 よっこいしょっという声と共に、ソファーにおいておいたのだろう肩下げバックを腕にかけ、ヴァイスは喫煙所の扉を開けた。 「じゃあ、シグナムの姐さん。またなんかの機会があったら会いましょう」 「ああ。楽しみにしている。いずれはまた模擬戦でもするか」 「そいつは勘弁を。勝てないですって」 苦笑しながら、ヴァイスは最後に手を振って、喫煙所の扉を閉めた。 そう告げて、ヴァイスは武装隊の宿舎から姿を消した。 シグナムはそれを見届けた。 彼は知っている。 近き日か、遠きいつかの日に起こりえるであろう事態を。 彼女は知らない。 近き日か、遠きいつかの日に起こる出来事を。 かつての同僚にして、先輩。 かつての同僚にして、後輩。 同じ部隊に所属するであろう烈火の騎士と落ちぶれたエーススナイパー。 二人の信念をかけた激突を。 「シグナムの姐さん。悪いが、ここで墜ちてくれ」 「ヴァイス! お前はぁあああああああ!!!」 万物一切の敵を断つ烈火の騎士。 万物一切の障害を撃破するビスケット・シューター。 剣と銃。 真っ向から打ち破る騎士と死角から仕留める狙撃手。 相反する存在の対立。 彼と彼女の激突は、遠き六年後に演じられることになる。 そう、それは燃え上がる噴煙と爆炎の戦場で。 戻る 目次へ 次へ
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autolink PT/W07-031 カード名:“インフェルノのファントム”ツヴァイ カテゴリ:キャラクター 色:緑 レベル:3 コスト:2 トリガー:1 パワー:9500 ソウル:2 特徴:《暗黒街》?・《武器》? 【永】このカードの正面のキャラのソウルを-1。 【自】[③]このカードとバトル中のキャラがリバースした時、あなたはコストを払ってよい。そうしたら、あなたはそのキャラをクロック置場に置く。 【自】アンコール[手札のクライマックスを1枚控え室に置く](このカードが舞台から控え室に置かれた時、あなたはコストを払ってよい。そうしたら、このカードがいた枠にレストして置く) マグワイヤ「今、この瞬間から、君は、 インフェルノのファントムだ」 レアリティ:R illust.春乃壱 2009/9/24 今日のカード ソウル減少に加え、倒した相手をクロック送りに出来る能力を持つ。 少々コストが重いが、超魔王バールと違い万全の状態から使用出来、一つ目の能力も相俟って特にチャンプアタックに絶大な効果を発揮する。 加えてコストがクライマックスとやや扱い難いもののアンコール能力まで兼ね備える。 問題があるとすればパワーの乏しさ。確実に相手をクロック送りにするにはレベル応援を置いたり他のキャラのシナジーでパワーを上昇させるのが万策。 緑のストックブーストを活かして常に相手をクロック送りに出来る状況を整えてやれば猛威を振るうだろう。 ・関連ページ 「ファントム」? 「ツヴァイ」?
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美琴の一件がとりあえずの解決を見た二日後。 珍しくウスワイヤを訪れていたゲンブは、若年メンバーの指導教官である七篠 獏也と会話をしていた。 無論、世間話の類の和やかなものではない。 「……以上が、外部協力者・崎原 美琴に関する一件の詳細です」 「厄介な事態になったな……」 獏也が珍しく頭を抱える。ヴァイス=シュヴァルツという男は、その行状からウスワイヤとホウオウグループ、そしてそれ以外の組織を数多敵に回し、かつその全てから命を狙われているにもかかわらず、今の今まで傷らしい傷も負わず生き延びている怪物である。 相手の精神を自在に操る、という単純にして厄介極まりない能力を持つ彼奴は、その力で多くの人間を破壊し、またそれ以上の人数を殺して来た。 ウスワイヤとしては絶対に看過できない存在なのだが、今はそれよりも重要な問題がある。 「あの狂人の手管とはいえ、能力者が暴走し、周囲に被害をもたらしたとは」 「事実関係は不明ですが、一般人が一名重傷を負ったとの情報もあります」 獏也の顔がますます渋くなる。対応をどうすべきか、本気で悩んでいるのだ。 年齢や行動を考慮すれば、記憶ごと能力を封印、というのが順当だ。だが、それが出来ない理由が一つ。 「……『スターライト・エンプレス』が出て来ていなければ、な……」 「加えて守人に連なる身です、迂闊な対応をすると今後の組織活動に差し障ります」 いかせのごれの秩序を守る「守人」。崎原の血統はここに属する、いわばいかせのごれの古株だ。 しかし忘れてはならないのは、彼らの大目的は「いかせのごれを守る」ことであって「人を守る」ことではない。もちろん、それも大きく見れば目的の一つではあるが、逆に秩序を乱す存在であれば、あるいは彼らの在り様に干渉するのであれば、組織が相手でも容赦なく牙を剥く。 それに連なる美琴に対し、下手な手を打てば、ただでさえ案件山積みの現状でさらなる面倒が増えてしまい、最悪ウスワイヤ自体が機能を停止する。 それだけは何としても避けなければならなかった。 「……どうします? 事実として被害が出ている以上、お咎めなしとはいきませんが」 「むう…………」 たっぷり7分ほどの沈黙を経て、獏也はとりあえず、と前置きしてから言った。 「ヴァイスに関する情報は、協力者の義務として知る限り提供してもらう。だが、当面は監視つきで自宅謹慎というところが妥当か。期間は……1週間としよう」 恐らくこれは建前だろう。ヴァイスの「脚本」に乗せられた以上、美琴の精神的ダメージは甚大極まりない。特にその手で母親を殺しかけたという事実は、あまりに重い。 その辺りのケアを考え、なおかつ処罰の体裁との妥協を図ったのがこの案なのだ、とゲンブは考える。 考えて、とりあえず質問する。 「監視は誰に?」 「秘密調査員を一名回す。連絡を頼めるか」 「……了解。彼女を使います」 言うや、ゲンブは携帯を取り出してコールする。相手は、アルマ同様の秘密調査員。 「ヴァイオレット、任務の指示だ」 「とんだ災難だったようだね、ヴァイス君」 何処とも知れぬ薄闇の中、仮面をつけた男がそう言った。 対面する黒衣・ヴァイスは、肩を竦めつつ応じる。 「ですが、概ね筋書通りには行きましたよ。壊すまでには至りませんでしたが、見るべきものは見ましたからね。それに、アナタのこの力、有効に使わせていただきましたよ」 ヴァイスが言っているのは、仮面の男・ピエロの特殊能力「ヤミまがい」である。 「初見であれだけ使いこなせるとは、実際大したものだよ。僕ら『運命の歪み』以外で、あのレベルまで同調したのは彼くらいのものだ。たいていの人間は、逆にヤミに心を呑まれて死ぬのだけどね」 「彼?」 知らない人物の示唆に問い返すが、ピエロは「昔の話だよ」と話を逸らす。 ヴァイス自身もそれ以上の興味は抱かず、話を変える。 「ともあれ感謝しますよ。これで、少しは逃げやすくなりました」 「逃げる? ……もしかして、あのお嬢さんかい?」 「ええ」 ヴァイスの顔に、今度は珍しく渋い色が浮かぶ。 ピエロが言っているのは、ヴァイスを執拗に追いかけ回す「シャルラ=ハロート」という少女のことだ。 これは、彼が調査と情報の重要さを痛感することとなったある一件に関係している。 以前、ヴァイスは彼女をターゲットとし、その住まいであった孤児院を人員ごと破壊したのだが、 「あれは完全なる失敗でしたね。まさか、彼女が孤児院で孤立しており、それを破壊したワタシに思慕を寄せるとは」 「さしもの君もそこまでは予想外だったか」 「ええ。事前調査の不足がここまで響くとは……」 ヴァイスという男は実際、愛だの恋だのという感情には(あくまで自身に関する限りは)絶無のレベルで興味がない。脚本執筆に必要ならばいくらでも調べるが、そうでなければ全く気に留めない。 だからこそ、 『ヴァ~イ~ス~さ~ん!! うふふふふふふふふ~』 明らかに壊れた笑みで自分を追って来る彼女が疎ましい――――というよりは、正直空恐ろしいものを覚える。 自身、狂人であることを語って憚らないヴァイスでさえこれであり、彼よりいくらかマシな精神を持つピエロ、運命の歪みの中ではかなりマトモな部類に入る澪やジェスターは一度目にした際には完全に引いていた。 もっとも、ヴァイスがシャルラを避ける理由は、単にストーカーを逃れるという以外にもう一つある。 それは、 「彼女はワタシの足取りを掴むと蛇のようなしつこさで追ってきますからね……」 「なるほど。居場所や気配を隠蔽し、密かに事を運ぶ君にとっては、敵とは別のベクトルで厄介な相手だね」 そうですねえ、とヴァイスは嘆息する。 幸いなことにまだ彼女の存在はウスワイヤ側には知られていないようだが、ホウオウグループは情報面で数段上回る。何の拍子で彼女を捕捉し、そこから自分を見つけ出すかわかったものではない。 (まあ、彼女にも利用価値はあります。害にならない程度には、使わせてもらうとしましょう) それがどれほど歪んでいても愛は愛だ。 しかし、ヴァイス=シュヴァルツという男は、愛でも憎しみでも、自分に感情を向ける相手を―――否、究極的には全ての相手を、駒あるいは役者としてしか見ていないのである。 (当分は、隠れ通すしかなさそうですがね) その在り方が何に準じたものなのか、彼は知らない。 ヴァイオレットへの通達を終えたあと、ゲンブは一礼して踵を返す。 が、思い出したように振り返り、獏也にある事実を告げた。 「っと、忘れていました。教官、もう一点あります」 「何だ?」 「先の一件の直後、謎の人物と遭遇しました」 それは、夕陽が美琴を叱咤し、事態が少し落ち着いた後のことだ。 「いつまでもここにいてもしょうがねぇ。ひとまず場所を変えようぜ」 流也の提案で、一同がその場を後にしようとした、その瞬間だ。 何かに気付いたマナが、弾かれるように後ろを振り返った。 「待って。誰か来た」 それにつられて後ろを見た一同は、一瞬絶句した。 そこにいたのは、古びた帽子と、同色のコートを着た長身の痩躯。 「な……てめぇ、戻ってきやがったのか!?」 司が美琴を庇うようにして前に出、他の面々も一様に臨戦態勢を取る。 だが、その男は帽子の下から一同を睥睨し、物憂げに言った。 「戻って、か。……つまり、もうここにいないのか、奴は」 その声は、よく通るが何かと癇に障る、ヴァイスの声とは全く違っていた。 重く厚みを持った、成年男性の声。 「……ヴァイス、じゃないのか? 誰だ、キミは?」 怪訝な顔で問うたのはアルニカだ。 その問いに、謎の男は彼女を見るでもなく視線を巡らせ、なぜかマナで一瞬その動きを止める。 「……?」 自分がこの男を知っているような気がして、マナは内心首をかしげた。 その間にも、男は言う。 「誰だ、か。俺は……」 妙な、数秒の空白。それを置いて、ヴァイスと同じ帽子とコートの――――よく見ると、濃い藍色の――――男は、名乗る。 「『ブラウ=デュンケル』。幸いだ、そう呼んでくれればな」 帽子から覗くその男の髪と目は、薄い青を宿していた。 紫と緋と藍と (動き出した紫) (止まらない緋) (現れた藍) (それが何を起こすのか、まだ誰にもわからない)
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DS2/S16-02 カード名:“悪魔使い”ヒビキ カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:500 ソウル:1 特徴:《サマナー》?・《竜》? 【永】他のあなたの《サマナー》?のキャラすべてに、パワーを+500。 【自】他のあなたのバトル中の《サマナー》?のキャラがリバースした時、あなたは自分の山札の上から1枚を、このカードの下にマーカーとして置く。 【自】マーカーがこのカードの下に置かれた時、このカードの下のマーカーが11枚以上なら、あなたはこのカードの下のマーカーすべてを、控え室に置き、自分の、手札か控え室の「ルシファー」を1枚まで選び、舞台の好きな枠にレストして置く。 みんなの悪魔、使わせてもらうよ!! レアリティ:R 13/10/04 今日のカード。 13/10/18 今日のカード。 ヴァイスにおけるデビルサバイバー2というタイトルの代名詞と言っても過言ではない、ド派手な能力をもったカード。 《サマナー》への特徴指定パンプに加えて、味方の《サマナー》がバトルで負けるたびにマーカーが増えていく効果をもつ。このマーカーが11枚までたまると一気に解放し、レベル3のルシファーを召喚することができる。この効果で登場させたルシファーにはマーカーが付いてパワーアップし、毎ターンショット効果を使うことができるので、召喚に成功すれば終盤の展開はかなり有利に進められるだろう。ちなみに、手札か控え室にルシファーが1枚も無い場合は召喚に失敗してしまうので注意。 この11という数字には原作再現の意味も込められているが、相手の構築次第では11枚溜めることが難しい場合もある。というのも、レベルは0でパワーも500しかないため、後列を対象にとれる除去効果には大抵引っかかってしまい、マーカーが溜まる前にやられてしまう可能性が高いのである。また、後列除去効果がなくても、リターンアイコンをめくられればそれだけでアウト。 対戦相手としても、ルシファー召喚を阻止する手段がデッキに入っているならば、全力で除去しにかかってくるだろう。 このカードを使うにあたり他に留意しておくべきなのは、マーカーを置く効果が強制であることと、マーカーは山札の上から置くので、何がマーカーになったかがわからないということ。デッキ圧縮を考えればCX以外のカードがどんどんマーカーとしてたまっていくのがありがたいが、もしマーカーにCXが何枚も入ってしまうと、中盤以降ろくにキャンセルせずにあっというまに敗北、なんて事態にもなり得る。 幸い、デビサバのネオスタンダード構築では山札からサーチする手段が豊富にあるため、山札に残っているCXを数えることで、マーカーにCXを噛んでしまったかどうかはある程度わかるようになっている。数えてみて、もしCXがマーカーに何枚も入ってしまったことが予想される場合は、ルシファー召喚を諦めてこのカードを圧殺することも視野に入れるべきだろう。 ・関連カード カード名 レベル/コスト スペック 色 備考 ルシファー 3/2 10000/2/1 黄
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琥珀色の黄金水に白い泡。 つまりはビールなのだが、ビールの入ったグラスを高らかに掲げるとやたらと陽気な声。 「乾杯!!」 言うや否や一気に呷る。 続いて二杯目のビールを溢れんばかりにグラスに注ぎながら我らが兄貴、ヴァイスはご機嫌であった。 どれくらいご機嫌なわけかというと、「歌でも歌い出したい気分だ、んんっふ~ん♪」 まぁこんな感じ。 ウサギもかくもやという瞳をジトッと半目にしながらシンはご機嫌な兄貴を冷たく見つめていた。 「いや~たまには男だけで飲むってのもいいやねぇ~」 「あのヴァイスさん…」 意を決したのか、そろりと声をかけるが、ヴァイスは何処吹く風といった感じだ。 「おう、シン遠慮せずぐいぐい行けよ。奢りだ」 「いや、だからヴァイスさん……」 尚も言い募ろうというシンを他所に、ヴァイスはおつまみを物色しつつ早くも二杯目を空ける。 「お、何だよチータラが無いじゃんよ~カマンベールチーズしか無いって」 「オッサン!!」 おつまみのチョイスに文句を言い始めたヴァイスにシンがキレた。 「オッサンじゃな~い!!何だよシン。飲め飲め!!」 「飲めじゃねぇよ……俺未成年だっつーの」 「細かい奴だな~」 「細かくない!!百歩譲って俺は良いとしてもエリオまで呼ぶとはどういう了見だよ」 視線をヴァイスが移してみれば、手元のグラスを困ったように見つめる赤毛の少年の姿がある。 「ビールは苦手か?ワインにするか?」 「だからそういう問題じゃねぇ!!」 「何だよ……」 「飲み会をするのは勝手だけどさ、何で俺とエリオが入ってるんだよ」 飲み会のメンバーを見ればシンの疑問も最もであった。 エリオとシン、そして普段は中々接する機会の無い無限書庫の司書、ユーノの姿があった。 ユーノはただただ苦笑してグラスをちびりちびりと舐めるようにしている。 「飲むんなら普通に同僚とかで良いだろ?」 憮然としたシンに対して、ヴァイスはチッチッチと人差し指を振る。 その指をへし折ってやろうかこの野郎、そうシンが静かなる殺気を高めると、三杯目を空けたヴァイスがにやりといやらしい笑みを浮かべる。 そしてエリオをビシリと指差す。 指されたエリオはキョトンとしている。 「素直系ショタっ子!」 「は?」 何を言っているのかわからないという顔のシンを他所に、ヴァイスは次いでユーノを指差す。 「中性的美形!!」 「は?」 そして、最後にシンを指差す。 「ツンデレ美少年!!!」 「は?」 ヴァイスは立ち上がると、酒瓶を手に堂々とした様子で叫ぶ。 「どうせ飲むなら、お兄さん綺麗どころと飲みたい!!」 「死ね!!」 間髪いれずに叫ぶシン。 叫ばれたのはある意味とても真理であった。 しかし、悲しいかな、シンには理解出来なかった。 「見ろ!!この隙の無いメンツ!!合コンしたってここまでのクォリティーは期待出来まい」 「アンタの頭の中は隙だらけだな……」 ヴァイスの手には名酒『美少年』。 その酒瓶で頭をかち割ってやろうかとシンは思った。 きっとからんと良い音を立てるであろう。 ユーノは苦笑しつつワインを口にしている。 同じ男かと、シンは自分を棚に挙げながら内心呟く。 エリオは観念したようにぺろぺろと子犬の如く酒に手を出す。 頭痛を覚えながらヴァイスをもう一度見つめると、兄貴は元気にサムズアップ。 「何ご満悦って顔してるんですか……」 「バッカ、オメェ汗臭い野郎共と飲まず、かといって後腐れのある女でもなく、それでいて目の保養になってるんだ。もうサムズアップしかねぇだろ」 「散々人を合コンに誘ってるのって誰でしたっけ…?」 「色々後が面倒なんだよ!!具体的に言えばブッキングしてだなぁ…」 「もう良いです」 「事の最中に『来ちゃった♪』なんつーてもう…」 「もう良いっつてんだろうがよ!!」 「『来ちゃった♪』ならまだ良いけどよ、『来ないの♪』とか言われた日にゃあ、お前…」 「最低だ……性病移されて真実の愛とかお寒い事を言いながら肉欲に溺れつつ不治の病とかそれ何てケータイ小説?みたいな感じで死んでしまえ」 「ワンブレスで言い切った!!ツンデレだなぁ少年~~で、シンちゃんはいつ頃お兄さんにデレてくれるのかにゃ?」 「未来永劫ありません……つかデレって何ですか!」 「まぁまぁ、シン君」 シャム猫の如くツンケンしているシンと、それを楽しそうに受け止めるヴァイスの二人に待ったを掛けたのは第三者のように傍観していたユーノであった。 「ユーノ先生……」 「折角男だけでこうして騒ぐ機会をヴァイスが設けてくれたんだから、お言葉に甘えようよ」 「先生まで……」 「さっすがユーノ。わかってる♪伊達にスキンケアは怠ってないなぁ」 「オッサンは黙ってろ!!」 「酷い!!シンちゃん酷い!!パパそんな子に育てた覚えは無いぞ!!」 「既に出来てるのかよ!!酔っ払い!!!」 苦笑するユーノの前で、シンとヴァイスのじゃれ合いが再開された。 ◇ 「う~~……もう無理ですぅ~」 シンはゆっくりとした動きで赤い髪を撫でる。 チクチクとした手触りが自分の髪質とは異なり、それが面白くて撫でる手を休めない。 シンに撫でられているのは早々に酔いつぶれたエリオ。 顔を赤くし、自身の膝枕で潰れてしまっているエリオを眺めながら、シンは疲れた視線を向こう側で転がっているモノに向けた。 「ごぁぁ~~んごぉ~~」 空いた酒瓶を抱えながら、高鼾をかいて眠っているヴァイスを見ると、シンは深々と溜息を吐く。 ユーノはそれを見てクスクスと笑う。 憮然としたシンの視線を受けても、尚、楽しげにユーノは微笑む。 「ヴァイスさん……飲むだけ飲んで潰れちゃったよ……ったく……」 「はははは……でも少しは気が晴れたんじゃない?」 「え?」 思いも寄らぬ言葉に、シンはギョッとさせる。 ユーノは微笑みを絶やさずに、何杯目かになるワインを空ける。 その目元は微かに赤い。 「何か物思いに君は耽る事が多いみたいだね。今も」 「そんな事……」 「シン君。ここにはなのはもフェイトも、誰もいないよ?」 不意に向けられた真っ直ぐな視線に、シンは言葉に一瞬詰まる。 幾ばくかの逡巡の後、観念したようにシンは視線を膝の上のエリオに向けながらぽつりと零す。 「正直……こうやって楽しく騒いでると……不安になる事があるんです……」 「不安?」 「俺はここにいても良いんでしょうか?」 その声に、縋るような色が押し止められている事に、ユーノはシンという少年の強さを感じた。 けれども、見え隠れする程に弱っている、それもまた事実だと思いながら、シンの言葉の続きを待つ。 「俺は他所の世界から来た異邦人で………そんな俺がここに居続けて、皆と仲良くなって……」 「場違いだって……思うのかい?」 こくりとシンは頷く。 紅の瞳が寂しげに揺らめく。 喉を潤すように、ユーノは残り僅かなワインを流し込む。 「君は……昔のフェイトみたいな目をしてるね」 「……隊長ですか……?」 「うん。ここに居ても本当にいいのか、常に自問自答しているみたいな……そういう目をするね」 「でも……俺は隊長と違います……」 「さっき言ってた異邦人っていう話かい?」 「…………俺は他所の世界から来た……ホントの余所者だ……それが皆と深く関わっても……」 「なのははね」 「え?」 「なのはは魔法なんて関わりの無い子だったんだ……僕がミッドチルダからやって来るまでは。 僕もなのはにとっては異邦人だよ。フェイトにとっては自分の世界を壊してくれたなのはは異邦人以外の何者でもない。 みんなそれぞれがそれぞれにとっては異邦人なんだ」 「それは……それは屁理屈ですよ……」 「いいんじゃないかな、屁理屈で」 「いいって……そんな……」 「誰も幸せにしないような理屈なんていらないと思うよ。少なくとも、君は幸せじゃないみたいだ」 「幸せ……わかりません……」 「じゃあ、聞くけど、なのは達……スバルやティアナが悲しい顔をしているのを見てシン君は幸せなのかな?」 その言葉に弾かれたようにシンは顔を上げると、勢い良く首を振る。 正直なその反応に、ユーノは笑みを浮かべる。 真っ直ぐな紅の瞳は一見苛烈なようで、その実優しい。 それが伝わってきただけで、ユーノはシンを好ましいと思った。 「じゃあ、やっぱり誰も幸せにしてくれない理屈だ。僕が見た限り、君が落ち込んでて幸せになるような人は六課にはいない」 「そう……なんでしょうか…?」 「そんなんです」 きっぱりと言い放たれた言葉に、シンは呆気に取られる。 ユーノはワインを空いたグラスに注ぐと、一口、ゆっくりと含む。 「じゃあ、屁理屈でも皆が幸せになれる方が良いよ。皆が皆異邦人なんだ。君だけじゃない。君は一人じゃない。それに………」 「う~ん……むにゃ……シンさん…ハメ技は酷いですよ~~」 シンの膝に頭を乗せたエリオが寝言を呟く。 エリオの寝言は、シンとユーノの間に生まれた沈黙にするりと入り込んだ。 ぷっ、とユーノが噴き出す。 戯れに、赤いエリオの髪を撫でると、ユーノはエリオに向けていた視線をシンに移す。 「少なくとも、この場に居る三人は君に居て欲しいって思ってるよ」 その言葉に、シンはただただ無言でゆるりと膝の上のエリオの横顔に視線を移した。 穏やかなその寝顔に、自然と笑みが零れる。 「ありがとう……ございます……」 ◇ ユーノは毛布を持ってくると、兄弟犬のように身を寄せ合って眠っているシンとエリオに優しくかけてやる。 その穏やかな寝顔に、つられて笑みが零れる。 「もう狸寝入りは良いよ、ヴァイス」 そうっと、シン達を起してしまわぬように囁かれた声に反応して、むくりと起き上がる人影。 ヴァイスは、苦笑を零すと、プルタブを開けていない缶ビールを手繰り寄せると、勢い良く流し込む。 「バレバレか?」 「大丈夫、シンは気付いてないよ」 二人が穏やかに寝入ってしまっているのを確認すると、ヴァイスはユーノの隣りに腰掛ける。 ヴァイスは黙ってユーノのグラスにビールを注ぐ。 「やっぱりユーノ先生に任せて良かったぜ」 「普段からおちょくるのを止めればいいのに……そうすればこんな役人任せにしなくても良かったんじゃないの?」 ヴァイスは首を振ると、普段は中々触れないシンの猫の毛のような髪を撫でる。 その感触が気持ち良く、何度も撫でるヴァイスの瞳は穏やかで柔らかい。 其処には、バカなことを言ってシンに冷たい目で見られていた姿は無い。 「いんや、やっぱりユーノが適任だったぜ」 「面倒見が良いんだね」 「そんな事は無いけどよ、まぁただこのツンデレボーヤが随分と思いつめてたみたいだからな」 「僕にはアレだけ六課の子達に好かれていて自分がここに居ていいのか不安に思えるこの子が少し不思議だけどね」 「コイツはまぁ、ガキのクセに随分と無くしちまったモノがあるみたいだからな。誰かがハッキリ居ても良いって言ってやらなきゃ信じられないんだろ……」 「………そっか……それは好きとは少し違うから……そうなのかもね………」 シンの鴉の濡れ羽色の髪を指先に絡めながらヴァイスはビールをあおる。 「しかしまぁ………ティアナ達もまだまだだねぇ」 「何がさ?」 「惚れた男の不安一つ摘み取ってやれねぇようじゃあ、まだまだ女の経験値足らねぇな」 「ふふふふ、仕方ないよ。彼女達も彼女達で大変なんだよ」 「ま、まだまだお嬢ちゃん達には可愛い弟達はやれないな」 「そうだね」 二人は顔を見合わせると小さく笑う。 シンは普段の険が取れた穏やかな子供のような寝顔をしていた。 ツンつん×デレでれ 13話へ進む 一覧へ