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彼ら6人の周りに、山のような敵が群がっていた。 さすがの彼らにとってもこの数ではなかなか油断できないだろう。緊張をとくことなく彼らはおのおの武器を構えた。 最初に切り込むのはレオン、レイン。後ろでプリアラやエルネストが援護をし、ヴァイス、メイプルは背後を守るために呪文を唱え、敵に切り込んでいった。 ―強い。かなりの数でもある ―だが勝てる! 彼らはそう信じて、微塵も疑わなかった。 こんなことが起こるなどと考えてもいなかったのだ… クリス様ご降臨! 「ヴァイス!危ないッ!」 メイプルが悲鳴を上げる―が、遅かった!ヴァイスは勢いよく遠方へ吹っ飛ばされ敵の陣営の真っ只中へ投げ出されてしまった。メイプルが姿を変え、巨大な怪鳥に変身して彼を救出しようと試みるも、圧倒的な数の魔物の前にそれはなかなかうまくいかない。 遠くからレインが大魔法を発動させ敵を蹴散らすが、それでも魔物は減らなかった。このままではさすがのヴァイスも危険である― そのときだった。 魔物たちが突然悲鳴を上げて吹っ飛ばされ、血しぶきが舞い上がった。 「ヴァイスッ!」 レオンが顔を真っ青にし、叫ぶ。が、プリアラは冷静だった。 「大丈夫、これ…ヴァイスの血じゃない。」 レオンは安心して目の前の敵に再び向かっていった。空からメイプルもほっとした声を降らせ、攻撃を再開した。 「大丈夫だったかィ?危ない目にあったね!アンタともあろーものが!」 「フン、問題はないッ!」 その場は何とかおさまり、消えていく魔物の死体の中彼らは全員無事に切り抜けられたと安著の息を漏らしつつ集った。 だが、彼らはまだ気づいていなかった… 「…はぁ、それにしてもこのあたりの魔物はずいぶん数が多い…あまり単独行動しないほうがよさそうです。」 「そうだねェ、アンタも油断するんじゃないよ、ヴァイス!」 「そうそう、あなたいっつも先走るんだから。」 「大切な仲間なんですから失いたくないですよ。」 「大切な回復役でもありますしね~」 口々に言う仲間5人を前に、ヴァイスは首をかしげていた。 そして、静かに口を開く。 「…ヴァイス……?」 レインが訝しげな顔をする。エルネストは表情こそ笑っているが、冷や汗がすこし流れていた。 「…ちょっといいですか、私たちの名前とあなたの名前と今私たちが何をしようとしているかを言ってくださいますか?」 「メイプル・アドレード、エルネスト・マックス、レオナルド・ミルディアン、レイン・ドゥームイリス、プリアラ…僕はクリストファー・エーテル。僕らは今漆黒のドラゴンを倒すための修行中…違うか?」 彼の言うとおりであった。ただひとつ、彼が『ヴァイス』と名乗らないこと以外は。 「…クリス?確かにこの堅苦しい言い回しはクリスなんだよねェ…いったいどうしたっていうんだい、こいつは。」 「僕はどうもしていない!」 「どうもしてんだろコノヤロー。これでは…キャラが被ります。なんとかしなければ…しかし、なぜ彼の記憶の中の『ヴァイス』が消えたのでしょうね?」 ヴァイス、いや、クリスは訝しげな表情になり、じっとレインをにらみつけていたが、ようやく口を開いた。 「…その、ヴァイスとやらは誰なんだ。」 「ヴァイスはあなたが名乗った仮の名です。ドラゴンキメラになってしまった以降のあなたはそう名乗っていたはずです。」 「ドラゴンキメラ?なぜ僕が?僕はただのハーフエルフだ。そんな異端の研究に携わってなどいない!」 5人は改めてため息をついた。彼の記憶から『ドラゴンキメラのヴァイス』が消えていることがわかったからだった。 「弱りましたねぇ~、このままじゃギャグが成り立ちづらいッスよ。どうするんスか、かわりにオレがボケますか。」 「心配には及びません、エルネスト。あなたは元々ボケです―しかし、ドラゴンキメラだという事実を忘れているクリスを相手にするのは少々厄介ですね…」 「あッ、強い衝撃を与えたら元に戻るんじゃないですか?!」 「強い衝撃ってレオン、あなた壊れた機械直すんじゃないんですよ…」 「でもさぁ、こいつ多少のことじゃ死んだりしないじゃないかィ。てっとりばやく、やってみないかィ?」 「お前たち、何をこそこそ話している。」 「うっさいわね!あなたは黙ってて!」 「!?…あ、ああ…」 「うわ、ヴァイスのやつビビってますよ。プリアラさんこっわ~い!」 「エルネスト、後から裏庭にいらっしゃい。」 「まぁとにかく、彼も頑丈な人ですからね・・・ためしにちょっと殴ってみますか。」 「レイン様口元がニヤついてます。」 「そんなバカなことを。仲間を殴って楽しくないはずがありませ・・・間違った、楽しいはずがありません。とにかく・・・ヴァイス覚悟オォォォォォォ!」 「何を血迷ったかレイン貴様アァァ!」 かくて乱闘が続くこと数十分、なんとかヴァイスを気絶させることに彼らは成功。が、どさくさにまぎれてなぜかレオンも気絶させられていたのだが―とにかく、残された4人は二人が目覚めるのを待ち、話し込んでいた。 「しかしアレですよね、クリスって本当にカタいヤツだったんスね。レイン様記憶あるんでしょ。」 「ありますよ。まぁ・・・彼は生真面目な性格だったのですが・・・いろいろと笑えるエピソードもあるようですね。」 「えぇ!?アイツがかィ!?ちょ、聞かせて!」 「ふふっ、あとからからかえそうねv」 「彼がまだ幼いころ、ある風の強い日に彼は剣を構えて外に立っていたそうです。そして、剣を振り回して修行をしていた・・・。心配した彼の父親が彼を連れ戻すために外に行き、彼に話しかけたんです。『修行なら今日はやめなさい』。しかし彼は修行ではないというんですよ。・・・ククッ、彼はねぇ、風と戦っていやがったんですよアーッハッハッハアァ!間抜けなガキだ!」 「レイン様最後のほう本心丸出しです、ていうかアンタの前世だからね!その言葉そのままアンタに半分かかるからね?!」 「それから、イリアナの村に移り住んでから体の弱かった彼は結構家事を手伝っていたようなんですがね、そのときの悩みが・・・『妹が靴下を半分ひっくり返ったまま洗濯機にいれるから干すときに戻すのが面倒』だったとか。」 「・・・フフフ、アハハハハハ!なんだィ、クリスのヤツ結構家庭的なんだねぇ!」 「確かに笑えるわ、当分彼の狼狽する姿を楽しめそうね♪」 「志村!後ろ後ろ!」 「お前らアァァァァ!なんで俺の若かりしサマーメモリアルでゲラゲラ笑っていやがんだアァァ!とくにちっちゃなクリス君VS風のエピソードは俺の心のなかにだけ秘められていた誰にも語ることのできねーピュアストーリーなんだぞオォオォ!レイン、お前何カミングアウトしてくれやがったんだよこのやろオォォォ!てゆーか痛いィィィィ!」 「「「「あ、戻ったし。」」」」 結論 強い衝撃で不具合が生じたなら強い衝撃を与えればなんとかなる(いろんな意味で)
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よんた藩国4分クッキング 第一章 ちゃららっちゃちゃちゃちゃ♪ チン! ちゃららっちゃちゃちゃちゃ♪ ボン! ちゃららちゃちゃちゃちゃちゃ♪ちゃんちゃんちゃんちゃん♪ 『さて、ついに始まりました。第一回よんた藩国1の料理上手はいったい誰なんだ!?決・定・戦!in城内特設会場!』 どんどん ぱふぱふ♪ 『司会はこの私、ヴァイス・左京、そして解説はこの方、雷羅 来でおおくりいたします。』 『よろしく』バサッ! ハトが飛ぶ。 『そんなのは、いらん。・・・さて今回は予選が先に行なわれました。そしてその熾烈な予選を勝ち抜いてきたのはこの三名です。それでは順次ご紹介いたしましょう。 まずは一人目、ハーブ店勤務の大村 やしほさんです。今回の予選は自慢の自家製ハーブを使ったハーブ料理で勝ち抜いてきました。今回はどんなハーブ料理が飛び出すか楽しみです。』 『そうですね。ちなみに自分からはハトが飛び出します。』バサバサッ! ハトが飛ぶ。あ、今度は二羽・・・ 『だから、そんなんいらん。・・・気を取り直して参りましょう。二人目はこの方、桜が大好きな支那実さんです。予選では桜の花びらで燻したマグロで高得点をたたきだし、決勝進出です。今回はどんな桜料理で来るのか楽しみです。』 『桜で燻したマグロですか、おいしそうですね。でもハトを燻されると困るので、今回は出しませんよ。ははは』 『お前が燻されろ。・・・そして予選を突破された三人目の方が、今 登場されました。三人目はこの方、坂下 真砂さんです。堅実に堅実を重ね予選を突破してきました。今回の決勝でも堅実に料理をこなすのでしょうか?』 『そうですね、自分も堅実にハトを・・・と言いたいところですが、資料によりますと年齢不詳らしいですね。自分もハトをどれくらい飼っているかは不詳です。』バサバサバサッ! やはりハトが飛ぶ。 『そんなん知ったこっちゃない。 ・・・さて予選突破者は以上ですが、今回 「俺っちが出なくて誰が出るんスか」と無理やりに出場を果たしたこの方をご紹介しましょう。 言 成さんです。 本人はがぜんやる気ですが、予選に出ていないので手元に資料がありません。そのため出場者の中では一番未知数ではないかと思われます。』 『そうですね。ちなみに自分のマジックもハト以外の未知数なものを出せますよ。』 来は言いながら、着ていたマントの中からかさかさ動く黒い物体を出そうとした。そのとき! 『それだけは、許さぁーん』ヴァイスは叫びながら来の髪の毛を掴んで頭を下げさせると、背中に抱きつくような格好で胴に腕を回して来の身体を担ぎ上げる。そしてそのまま垂直ジャンプから地面に来の頭を叩きつけた。そのときの衝撃で土煙が舞い上がりその周囲にいる人間の視界をうばう。 それから三分後、ようやく土煙がはれて視界が回復すると、その中心部には来(らしき物)が頭を地面に埋め込んだままピクピクと痙攣し、逆さ向けに生えていた。ヴァイス必殺の伝家の宝刀『フライングパワーボム』が見事に決まった結果であった。 「はっ俺は何を・・・ん?これは来か?・・・大変だ!メディーック!メディックはどこだ!?早く彼を救出するんだ!」 何人かが集まり、来(らしき物)を引っこ抜くと城の医務室へと運んだ。[雷羅 来、強制退場 被害者1] 「いったいだれがこんなことを・・・?」 (あんただあんた。)と周りのものは思ったが口にはしなかった。 「まぁ、いいか。深く考えるのがめんどうだ。 だが解説が必要だな・・・」 ヴァイスがあたりを見回すと、一人のガラの悪い男と目があった。 「おぉ、裕樹、いいところに来た。」ヴァイスは裕樹を手招きして呼んだ。 「いや、はじめからおったけどな。」いいながら裕樹は、ヴァイスのほうへ歩き出す。 「ということで、解説をやってくれ。解説の来が原因不明の事故にあっちまって、困ってたんだわ。たのむよ、な、この通り」両手をあわせて頭を下げる。 「ということでってどこから出てきてん。それに、解説はいややめんどくさい。それに解説なんて出来ひんしなぁ」裕樹は即座に断った。 「そんなこというなよぉ、俺と裕樹の仲だろ?」 「いつそんな仲になってん。勝手にきめんな」 「頼むよぉ、これに失敗するとよんた様に怒られるんだよぉ。飯抜きなんだよぅ。」ヴァイスはクネクネしはじめる。 「うわっ、きもっ!クネクネすんな。それにおまえが怒られようと飯を抜かれようと俺は知らん。」立ち去ろうとする裕樹の前にヴァイスが立ちふさがり、一言放った。 「メード研修・・・」 その言葉を聞いた裕樹は顔色が急激に悪くなる。 「な、なんのことや・・・・そ、そんなん聞いたこともあらへん・・・」 知らぬふりをする裕樹にヴァイスはさらに追い討ちをかける。 「メガネに・・どじっこ・・・・どじっこメガネ・・・」 裕樹はガタガタブルブルと震えながら、「わー、わー!聞こえへんで、なんも聞こえへん!」 両手で耳をふさぎながら、「わー」「わー」いっている。 ヴァイスは最後の締めに取り掛かった。 「これなぁーんだ?」と言いながら一枚の写真(内容は皆さんのご想像におまかせいたします。)を裕樹に手渡す。 それを見た裕樹は、その写真を掴むやいなや、空中に放り投げ、毎秒32発の手刀を与え写真をビリビリに切り裂き、その後スタンピングをくわえ、最後にどこからともなく取り出したバーナーで焼き払った。 「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」肩で息をしている。 それを見たヴァイスは、「ご苦労さん。でもネガは家にあるからいつでも現像できるんだけどね。」無常な一言をすまし顔で放った。「で、解説はやるかい?」 それを聞いた裕樹は血の涙を流しながら「わかりました。やります。いえやらしてください・・・」力なく呟いた。 ヴァイスは、上機嫌で「やぁ、話が早くて助かるよ。よし行こう。さぁはじめよう」と裕樹をつれてスキップしながら席に戻った。 のちの裕樹はこう残している、『あのときほど人を殺したいと思ったことはありませんでした』 つづく・・・・ 次回予告:ヴァイス「さて次回だが・・・」 裕樹「ちょっと待ち、料理SSなはずやのに、これっぽっちも料理してへんやないか!」 ヴァイス「細かいことは気にしちゃいけない、はげるぞ?」 裕樹「誰がはげやねん!ちゅうか細かいか?なぁほんとに細かいか?」 ヴァイス「さて次回だが、『ついに料理大会開催!栄光は誰の手に?』の予定だ。」 裕樹「おいっ!無視か?なあ完全に無視か!?」 ヴァイス「それでは来週もこの時間に『よんたで・GO!』」 裕樹「おいっ!聞けや!つうか、よんたで・GO!ってなんやねん!」 つづく (文責:言 成)
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よんた藩国4分クッキング 第一章 ちゃららっちゃちゃちゃちゃ♪ チン! ちゃららっちゃちゃちゃちゃ♪ ボン! ちゃららちゃちゃちゃちゃちゃ♪ちゃんちゃんちゃんちゃん♪ 『さて、ついに始まりました。第一回よんた藩国1の料理上手はいったい誰なんだ!?決・定・戦!in城内特設会場!』 どんどん ぱふぱふ♪ 『司会はこの私、ヴァイス・左京、そして解説はこの方、雷羅 来でおおくりいたします。』 『よろしく』バサッ! ハトが飛ぶ。 『そんなのは、いらん。・・・さて今回は予選が先に行なわれました。そしてその熾烈な予選を勝ち抜いてきたのはこの三名です。それでは順次ご紹介いたしましょう。 まずは一人目、ハーブ店勤務の大村 やしほさんです。今回の予選は自慢の自家製ハーブを使ったハーブ料理で勝ち抜いてきました。今回はどんなハーブ料理が飛び出すか楽しみです。』 『そうですね。ちなみに自分からはハトが飛び出します。』バサバサッ! ハトが飛ぶ。あ、今度は二羽・・・ 『だから、そんなんいらん。・・・気を取り直して参りましょう。二人目はこの方、桜が大好きな支那実さんです。予選では桜の花びらで燻したマグロで高得点をたたきだし、決勝進出です。今回はどんな桜料理で来るのか楽しみです。』 『桜で燻したマグロですか、おいしそうですね。でもハトを燻されると困るので、今回は出しませんよ。ははは』 『お前が燻されろ。・・・そして予選を突破された三人目の方が、今 登場されました。三人目はこの方、坂下 真砂さんです。堅実に堅実を重ね予選を突破してきました。今回の決勝でも堅実に料理をこなすのでしょうか?』 『そうですね、自分も堅実にハトを・・・と言いたいところですが、資料によりますと年齢不詳らしいですね。自分もハトをどれくらい飼っているかは不詳です。』バサバサバサッ! やはりハトが飛ぶ。 『そんなん知ったこっちゃない。 ・・・さて予選突破者は以上ですが、今回 「俺っちが出なくて誰が出るんスか」と無理やりに出場を果たしたこの方をご紹介しましょう。 言 成さんです。 本人はがぜんやる気ですが、予選に出ていないので手元に資料がありません。そのため出場者の中では一番未知数ではないかと思われます。』 『そうですね。ちなみに自分のマジックもハト以外の未知数なものを出せますよ。』 来は言いながら、着ていたマントの中からかさかさ動く黒い物体を出そうとした。そのとき! 『それだけは、許さぁーん』ヴァイスは叫びながら来の髪の毛を掴んで頭を下げさせると、背中に抱きつくような格好で胴に腕を回して来の身体を担ぎ上げる。そしてそのまま垂直ジャンプから地面に来の頭を叩きつけた。そのときの衝撃で土煙が舞い上がりその周囲にいる人間の視界をうばう。 それから三分後、ようやく土煙がはれて視界が回復すると、その中心部には来(らしき物)が頭を地面に埋め込んだままピクピクと痙攣し、逆さ向けに生えていた。ヴァイス必殺の伝家の宝刀『フライングパワーボム』が見事に決まった結果であった。 「はっ俺は何を・・・ん?これは来か?・・・大変だ!メディーック!メディックはどこだ!?早く彼を救出するんだ!」 何人かが集まり、来(らしき物)を引っこ抜くと城の医務室へと運んだ。[雷羅 来、強制退場 被害者1] 「いったいだれがこんなことを・・・?」 (あんただあんた。)と周りのものは思ったが口にはしなかった。 「まぁ、いいか。深く考えるのがめんどうだ。 だが解説が必要だな・・・」 ヴァイスがあたりを見回すと、一人のガラの悪い男と目があった。 「おぉ、裕樹、いいところに来た。」ヴァイスは裕樹を手招きして呼んだ。 「いや、はじめからおったけどな。」いいながら裕樹は、ヴァイスのほうへ歩き出す。 「ということで、解説をやってくれ。解説の来が原因不明の事故にあっちまって、困ってたんだわ。たのむよ、な、この通り」両手をあわせて頭を下げる。 「ということでってどこから出てきてん。それに、解説はいややめんどくさい。それに解説なんて出来ひんしなぁ」裕樹は即座に断った。 「そんなこというなよぉ、俺と裕樹の仲だろ?」 「いつそんな仲になってん。勝手にきめんな」 「頼むよぉ、これに失敗するとよんた様に怒られるんだよぉ。飯抜きなんだよぅ。」ヴァイスはクネクネしはじめる。 「うわっ、きもっ!クネクネすんな。それにおまえが怒られようと飯を抜かれようと俺は知らん。」立ち去ろうとする裕樹の前にヴァイスが立ちふさがり、一言放った。 「メード研修・・・」 その言葉を聞いた裕樹は顔色が急激に悪くなる。 「な、なんのことや・・・・そ、そんなん聞いたこともあらへん・・・」 知らぬふりをする裕樹にヴァイスはさらに追い討ちをかける。 「メガネに・・どじっこ・・・・どじっこメガネ・・・」 裕樹はガタガタブルブルと震えながら、「わー、わー!聞こえへんで、なんも聞こえへん!」 両手で耳をふさぎながら、「わー」「わー」いっている。 ヴァイスは最後の締めに取り掛かった。 「これなぁーんだ?」と言いながら一枚の写真(内容は皆さんのご想像におまかせいたします。)を裕樹に手渡す。 それを見た裕樹は、その写真を掴むやいなや、空中に放り投げ、毎秒32発の手刀を与え写真をビリビリに切り裂き、その後スタンピングをくわえ、最後にどこからともなく取り出したバーナーで焼き払った。 「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」肩で息をしている。 それを見たヴァイスは、「ご苦労さん。でもネガは家にあるからいつでも現像できるんだけどね。」無常な一言をすまし顔で放った。「で、解説はやるかい?」 それを聞いた裕樹は血の涙を流しながら「わかりました。やります。いえやらしてください・・・」力なく呟いた。 ヴァイスは、上機嫌で「やぁ、話が早くて助かるよ。よし行こう。さぁはじめよう」と裕樹をつれてスキップしながら席に戻った。 のちの裕樹はこう残している、『あのときほど人を殺したいと思ったことはありませんでした』 つづく・・・・ 次回予告:ヴァイス「さて次回だが・・・」 裕樹「ちょっと待ち、料理SSなはずやのに、これっぽっちも料理してへんやないか!」 ヴァイス「細かいことは気にしちゃいけない、はげるぞ?」 裕樹「誰がはげやねん!ちゅうか細かいか?なぁほんとに細かいか?」 ヴァイス「さて次回だが、『ついに料理大会開催!栄光は誰の手に?』の予定だ。」 裕樹「おいっ!無視か?なあ完全に無視か!?」 ヴァイス「それでは来週もこの時間に『よんたで・GO!』」 裕樹「おいっ!聞けや!つうか、よんたで・GO!ってなんやねん!」 つづく (文:言 成)
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-ストラウル跡地- 「…?」 パニッシャーを全て破壊し、理人と少し会話をしていた海猫は、どこからか何かが崩れた音が響いたのを耳にした。 「どーしたの?」 「あ、いや…」 頬をかく海猫。 (また誰かが襲われてんのかな…) もしそうだとしたら、守人として放っておく訳にはいかない。 そう思った海猫は車椅子の方向を変える。 「海猫?」 「悪いけど、しばらくどっかで待ってて。必ず戻るから」 「え、ちょ―――」 「佑をよろしくね!」 理人の言葉を待たず、海猫は車椅子を走らせどこかへ去っていった。 (困ったなー…) しかしどうする事も出来ないので、とりあえず一角のビルの中で海猫を待つ事にした。 -いかせのごれ某所- (くっ…) 先程の三人組から逃げるべく、交番から離れたヴァイス。 しかしそう簡単に見逃す訳もなく、三人組は彼の後を追いかける。 路地裏に逃げ込む、と。 「―――!」 三人組の内、面をつけた少女―――今は狼を模した面をつけている―――が壁をハイスピードで掛け、ヴァイスの前に回り込んだ。 よく見ると所々に茶色の毛が生え、耳が犬のそれに変化している。 後ろにいる、マスクをつけた少年が言った。 「お前がヴァイスだな?」 「…もしそうだとしたら、どうするんです?」 「お前を『始末』するのサ!」 少女が駆け出した。 鋭く伸びた爪をヴァイスに向ける。 だがヴァイスはそれを容易く避けた。 「おやおや、物騒な」 「お前が言うかねえ」 「!」 見上げると、この二人といた水色の髪の青年が宙に浮く銀の鉄柱の上に乗り、それより短い数本の鉄柱をヴァイスに向かって落としてきた。 「…ッ!」 避けるヴァイスだが、最後の一本が彼の頬を掠った。 すると今度は白い布の様なものが飛び交う。 「これは…包帯!?」 「ただの包帯ではないぞ」 それらを操ってるらしいマスクの少年が言った。 彼の言葉通り、包帯が当たった所には傷が出来たり切断されたりしている。 (包帯が刃物の様になってるのか…) 初対面である事もあり、苦戦を強いられつつあるヴァイス。 だが一つだけ策がある。 (この三人組がチームを組んでるのは間違いない) ならば当然、そこには『繋がり』がある筈。 ニヤリと笑うと、ヴァイスは懐からナイフを取り出し、少年に向かって放った。 少年はそれを避け、包帯を手放すとそれに乗り、滑走するかの如くヴァイスの方へ駆けていく。 跳躍し、蹴りを入れようとしたその時。 ガシッ! 「! しまっ……ぐおっ!!」 足を掴まれ、壁に強く叩き付けられた。 その衝撃で体を起こすのに手間取る少年。 ヴァイスは彼の服の襟を掴み、マニピュレイトを発動する。 その途端、少年が脱力した様な態を見せた。 「お前! コハクに何をしたのサ!?」 「…その目で確かめてみては?」 と、襟から手を離す。 すると。 シュバァアッ! 『!?』 コハク、と呼ばれた彼の包帯が仲間の二人に牙を向けた。 突然の事に驚きながらも二人は何とかそれを避ける。 「コハク!? どうしたのサ!?」 「まさか…マニピュレイトを!?」 「ご名答。さあ、どう戦うのでしょうかねえ」 「卑怯者!!!」 「何とでも言いなさい。それよりホラ、後ろに」 「!」 少女が振り返った先には、無機質な目で包帯を振るうコハクの姿が。 「コハク…わっ!」 「何ボケッとしてるんだ尓胡!」 「ご、ごめん…」 仲間の青年に助けられた少女、尓胡は涙を目に溜めている。 「シザキ、どうしよう…」 「泣いたって何の解決にもならないだろう!」 「じゃあどうしろって言うのサ!?」 「お喋りしてる暇はありませんよ」 『ッ!』 再び襲ってきた包帯を避ける二人。 そこでシザキと呼ばれた青年が、ヴァイスに向かって鉄柱を飛ばした。 が。 「な…ッ!」 鉄柱がヴァイスを貫く前に、包帯がそれを切り刻んだ。 「くそ、こいつを狙っても駄目か…ッ!」 「コハク…」 未だ涙を目に溜めている尓胡はコハクの顔を見つめる。 と。 「…?」 「…尓胡? どうしたんだい?」 「………何だ、そういう事か」 「え?」 「ごめんコハク…早く気付くべきだったサ!」 包帯に飛び乗り、コハクの元へ走り出す尓胡。 攻撃を避け、彼の元に辿り着くと―――。 ザシュッ! 「!?」 「な…?」 尓胡の爪がコハクの喉元を切り裂いた。 だが次の瞬間。 コハクの姿が人の形をした包帯へと変わった。 「み…身代わり!? いつの間に―――」 「全く…いつまで待たす気なんだと思ったぞ」 「!」 ナイフを手にし振り返るヴァイス。 だが反応が遅かったか、包帯の攻撃を喰らってしまった。 「ぐ…ッ!」 「さて、殺すべきだろうが…白波からの依頼の事もある。捕縛に留めておこう」 「白波…白波 シドウの事ですか?」 「ああ、そうだ…ん?」 「…花弁、サ?」 視界に入ってきたのは、水色の花弁だった。 と。 「…何か、ねむ、くなって…き……た…サ…」 「尓…胡、何寝ちゃっ…てる…んだ……い…」 「まさ、か…仲間、が…………」 その場に眠り込む三人。 それを見たヴァイスは安堵の息をついた。 「助けを求めた覚えはありませんが…まあ感謝します」 「………」 物影から喪服を着た少女が現れる。 「確か名前は…澪でしたっけ。あのフード男のパートナーを務めている…」 「……うん」 「……何故怯えるんです?」 5mは離れた物影で微かに震えている澪に呆れるヴァイス。 「ごめんなさい………大人とか、背の高い人…苦手だから……ごめんなさい」 「…まあいいです。とりあえずこの場から去りましょうか」 依頼失敗 -いかせのごれ郊外- 「ひーまひーまー…仕事来ないかな」 プルルルル… 「んあ、電話だ。…はーいもしもし」 『どうも、周です』 「あーどうも周さん。仕事?」 『はい。本の挿し絵を描いて欲しいと』 「あーはいはい。て事は文はあるの?」 『出来てなかったら電話してません』 「あははーそりゃそーだ。じゃあファックス宜しくねー」 『分かりました、ナナさん』 「ちょっと、その名前は捨てたんだってば」 『あ、すいません…』 「…過去のウチなんて、恥でしかないんだから」 『………』 「とにかく、今のウチは――― ”J.J(ジェーン=ジェナ)”なの。分かった?」
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○月×日 やはりジルグさんはなのはさんに目のかたきにされていた朝の食堂で わたしはエリオくんとの集合時間に遅れてしまったんだけどちょうどなのはさんがジルグさんにはなしかけようとなんとかどりょくしてるみたいだった わたしはとおくにいたので見ないふりをしたところがアワレにもヴァイスさんがそのばからにげようとしているっぽいのが全回線の念話で叫んでいた どうやらなのはさんがこわいらしく「だれかきて~だれかきて~」と泣き叫んでいるヴァイスさんのためにエリオくんはなけなしの勇気を使って普通なら誰もいかない空気の中をきょうきょ登場すると 「やっときたか!」「おそい!」「きた!槍きた!」「メイン槍きた!」「これで逃げれる!」と大歓迎状態だったなのはさんは笑顔のままジルグさんにはなしかけていたけどジルグさんは笑顔のまま無視してごはんをたべおわってにげた なのはさんが念話で「今度はおはなししてもらうからね・・・」といったがジルグさんのすがたはどっちにいったかはもうわからないみたいだった 「だが断る」とジルグさんがいうとなのはさんは黙ったのでフェイトさんのテーブルにいってごはんをたべてるとしばらくしてたらヴァイスさんとエリオくんはきょうふでかたまってた 「エリオのおかげだ」「助かった、終わったと思ったよ」とヴァイスさんのそんざいを忘れて食堂のみんながわたしたちのまわりに集まってきた忘れられてるヴァイスさんがかわいそうだった 普通ならごはんをたべてでていく人がぜいいんだろうけどわたしは無視できなかったみんなとよrこびほめられたかったのでヴァイスさんに声をかけてあげたらそうとうなのはさんがこわかったのかいぐすりをのんでいた やはりジルグさんは格がちがった
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ヴァイスリージェント産 誕生年 馬名 国 性 札 SP ST 力 瞬 勝 柔 精 賢 健 サブパラ合計 気性 芝 ダ 芝質 脚質 成長型 成長力 距離適性 子出 毛色 性格 高 長 小 左 右 脚 喉 腰 特性 ウマソナ 父馬 父系 母馬 牝系 1979年 デピュティミニスター 米 牡 金 69 25 B B+ A C+ C+ B E+ 66 大 × ◎ 5-8(3-8) 先行 早鍋 有 1200~1800m 10 黒鹿 普通 普 普 非根幹距離 人懐こい ヴァイスリージェント ノーザンダンサー系 ミントコピー 1981年 パークリージェント 米 牡 銅 67 45 A C C E+ D D C+ 54 荒 ◎ ○ 6-8(5-8) 自在 早熟 普 1700~2100m 5 鹿 普通 普 普 スパルタ ヴァイスリージェント ノーザンダンサー系 ミスアトラクティヴ 1981年 バウンディングアウェイ 米 牝 緑 64 55 E C E C+ G E E 33 普 ◎ ○ 6-8(5-8) 差し 普早 有 1700~2500m 3 栗 普通 普 普 スパルタ ヴァイスリージェント ノーザンダンサー系 バンビーティーティ 1985年 リーガルインテンション 米 牡 緑 65 45 E C C E+ E C A 49 荒 △ ◎ 4-7(3-8) 自在 普早 持 1700~2100m 3 黒鹿 普通 普 普 スパルタ ヴァイスリージェント ノーザンダンサー系 ティファニータム 1989年 ハーバースプリングス 米 牝 銅 65 40 E+ E+ E+ E+ D E+ C+ 40 普 ◎ ○ 6-8(5-8) 自差 早熟 普 1600~2000m 6 鹿 普通 普 普 甘えん坊 ヴァイスリージェント ノーザンダンサー系 ティニタス 1989年 エイシンテネシー 米 牝 緑 61 65 D F C E+ D C C+ 44 大 ◎ × 5-8(3-8) 自先 晩成 普 2000~2600m 5 鹿 普通 普 普 大駆け 冬競馬 人懐こい ヴァイスリージェント ノーザンダンサー系 キャッスルロワイヤル 1991年 トワイスザヴァイス 米 牝 銀 69 30 B D+ A+ E+ C+ A B 66 普 ◎ ◎ 5-8(3-8) 逃げ 覚醒 持 1400~1800m 2 栗 普通 普 普 大舞台 スパルタ ヴァイスリージェント ノーザンダンサー系 ダブルセット 1992年 ディボーステスティモニー 米 牝 緑 52 10 F F G+ G+ F+ F+ F+ 15 普 × ◎ 4-7(3-8) 先行 早熟 無 1100~1300m 3 栗 普通 普 短 スパルタ ヴァイスリージェント ノーザンダンサー系 エンジェリックソング フルートフル系
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autolink LL/W28-005 カード名:“No brand girls”希 カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:3 コスト:2 トリガー:1 パワー:10000 ソウル:2 特徴:《音楽》? 【自】このカードが手札から舞台に置かれた時、あなたは自分の山札を上から6枚まで見て、3枚控え室に置き、残りのカードを山札の上に好きな順番で置く。 【自】このカードがアタックした時、あなたは自分の山札の上から1枚を公開する。そのカードが《音楽》のキャラなら、他のあなたのキャラすべてに、そのターン中、ソウルを+1。 一緒にみんなに喜んでもらおうねー レアリティ:RR illust. 13/12/05 メールマガジン 14/1/13 今日のカード メルマガで先行公開され、後に今日の公開カードで画像付きで公開された。 ヴァイス初の登場効果。デッキ削りと打点操作を両方同時に行うもの。 水着の由夢と千里 朱音等の効果を足して割ったようなもの、とも言えなくはない効果。 最初の効果で3枚控え室に置くことになるが、デッキ残り6枚以上でかつリフレッシュ直前なら、 デッキに残ったCXを控えに置くことでクライマックスの戻る枚数を増やし、圧縮率を上げることにつなげたり、 トリガーのないカードを控えにおいて、トリガーのあるカードを残す、という使い方ができる。 「まで」指定なので、5枚、4枚指定もできるが、その場合操作できる枚数が減ることになるので注意したい。 CXをあえて残す場合、自身の2つ目の効果および“炊き立てご飯です♪”花陽と相談して 置き順とアタック順番を決めるのがいいだろう。 また、状況は限られるが攻撃回数を減らし、山札にクライマックスを残すという戦法もある。 ある意味「3枚捨てる操作が加わった代わりに見る枚数が3枚増えて、かつCX不要」の情熱家 雪歩と言えなくもない。 操作できる枚数が実質3枚なのも、あちらと共通している。 発動タイミングはアタック時ではないが、自身の2つ目の能力があるので気になるほどでもない。 そしてもう一つの能力は、当てれば自分以外の味方にソウル+1を与えるもの。登場ターンであれば最初の能力で トリガー順を操作しているので、打点調整に貢献する。ただし自分は上がらないため、最初の能力で操作する時は、 このことを前提に順番を決める必要がある。とはいえ置いた順によっては、自身が最初にアタックしなくてもいい、 というプレイングもできるので悪くはない。 最初の能力に関してだが、デッキ残り3枚以下の時は注意が必要。 (デッキ残り3枚の場合)3枚を選んだ場合、見たカード全て控えに置く処理(その後リフレッシュ処理)だけになる。 とはいえ6枚「まで」指定なので、2枚、1枚のみ指定するという方法は一応とれるが、 打点操作ができなくなるのであまり利が得られない。 ただし、0枚指定なら山札を削ることがない、ということは覚えておくと良いだろう。
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ヴァイスは肩で息を吸い込み、そして吐き出した。荒い呼吸がとまらない。治療中のままであるやけどの跡は消えていなかった。彼の周囲で風が巻き起こり、魔力が収束していくのが見てとれたのではあったが、それ以上のことは起こらなかった。この魔法が一体なんだったのかも理解できない。ヴァイスの魔力は徐々に薄れていっているらしく、それを自覚した彼はがっくりと肩を落とし地面を見つめて、こぶしを振りおろした。 「…ちくしょうっ…!ちくしょうちくしょうちくしょう!」 つい先ほどまでいたはずのベルセルクの姿はなくなっていた。それどころか、そのことに少しの間ヴァイスは気づいてすらいなかった。なぜ自分が王宮にいないのかと考えていて、ようやく思い出したのだ。自分が王ではなく、ただの修道士だということを。 「このままじゃまずい…!」 再びこぶしを握り締め、それを大地に何度も叩きつけるが何の解決法も思いつかない。こうしている間にも魔力は徐々に衰え、思考も泊まりかけているのを顕著に感じている。 「…レオン。頼む…!」 「情けないわね、王様。」 突然背後から聞こえた声に振り返り、絶望的な瞳を声の主に向けた。藍色の髪の乙女―プリアラだった。彼女さえも自分を王と呼ぶのか、ヴァイスは首を横に振る。 「俺は王様なんかじゃない。」 「冗談のつもりよ。私がこれくらいの魔法に引っかかるとでも思うの?」 先ほどの冷たい響きを持った言葉とは一転しプリアラはいたずらっぽい笑みが浮かべていた。ヴァイスも少し安心したらしく、ふと微笑してよろよろと身を起こした。 「…お前はまだ無事なのか…。俺はこのザマだ。ベルクも消えちまったよ。さっきなんか、俺が何者なのかもわからなかったんだ。魔力なんか、もうないんだよ。」 「……それは、ヴァイスがレオンと変換させられている当事者だからよ。仕方ないわ。私はあまり変化がないから。」 「なあ、俺はたぶんイシュナードから鏡を取り返して魔法を解こうとしていたんだと思うんだ。プリアラ―」 「わかってる。協力してあげるわよ。どこまでいけるかわからないけれど。」 自信満々な笑みとは裏腹に言葉からはかすかな不安が感じ取れた。しかし、不安のために立ち止まっている暇はない。ヴァイスは力なく笑うと立ち上がり、ミルディアンへ向けて歩み始めるのだった。 その頃レオナルドは砂漠を抜け、たどり着いた街でとった宿の一室で思案をめぐらしていた。隣の部屋にはヴァイスが、そしてその向こうにはプリアラの部屋がある。二人に相談しようという気持ちにはあまりなれなかった。これからの行動で、二人は消えていくのだ。それを思うと、相談など出来るはずもない。 「…この鏡に、魔法の力を込めて僕の世界に戻れないだろうか?」 徐々に魔法の使い方がレオナルドにもわかるようになってきていた。もうプリアラと互角なほどになっている。 鏡をとりだし、集中する。指先を鏡に向け、瞳を閉じて念じる―魔力を戻すように― 「……うーん、ダメだ…。」 「レオン、入るぜ。」 「あ、どうぞ。」 ドアをノックすることすらせずに、ヴァイスが部屋へ入ってきた。そしてレオナルドの隣に座り込んで鏡を見る。 「何か思いついたのか?」 「あ…うん、まあ…。でもダメみたいだった。僕じゃあまだ、魔力が足りない…」 「魔力か…しかし、信じられないな。俺が魔法を自在に操っていたなんて。レオン、お前の知っている俺はそんなにすごかったのか?」 「すごいなんてものでは…。ああ、でも…君はたしか『本来は俺の魔力なんかじゃない』って言っていたような…」 レオンは自分の記憶をたどるが、記憶だけではどうしても答えが見つからない。何か別の方法で見つけるしかないのだろうか。そもそもこの世界では記憶すらも徐々に移ろいで行くのだから、考えても仕方がないのかもしれない。 「本来は自分の力じゃない?どういうことだ。魔法の力はそんな簡単に人の間でやりとりできるものじゃないんだろ?」 ヴァイスの言葉にレオンは小さくうなずいた。いまや魔法の原理はすべてわかる。魔力の受け渡しを行うことがどれだけ危険なことか、またその力が大きければ大きいほどリスクが増えていくことも。ヴァイスがもともと強大な力を持っていたのであれば、この世界のレオンもまた強大な魔力を持つはずだが、レオンにはそのような力がない。ならば、何者かから魔力を譲り受けたのだとしか考えられないのである。結局、考えは堂々巡りだった。 「…うーん…。そうなんだよね。僕もだいぶ魔法をつかえるようになったと思うけれど、僕が知っているヴァイスに比べたら全然かなわない。何か秘密があるのかもしれないね…」 「……そうか。うまく、いくといいよな。俺は部屋に戻る。」 「ありがとう、ヴァイス」 ヴァイスは笑みを浮かべて部屋を出て行った。再び訪れた静寂にレオンは魔術書を開き、視線を落とす。そして、精神を集中させると膨大な魔力の出所を調べるべく難解な文字を追い始めたのだった。 「…王子、だいじょうぶ?」 ヴァイスがレオンの部屋から廊下に出たところで、プリアラが囁くように言葉をかけた。ヴァイスは力なく笑って、肩をすくめる。 「プリアラにはお見通しか。正直、未だに戸惑ってる。」 「…私も。」 「なぁ。レオンがこのまま修道士になってもいいだろって思わないか?俺は王子っていう立場をあまり好きじゃないが、ミルディアンが好きだ。一生かけていい国にできるように力を尽くすつもりだ。この決意も全部幻なのか?幻なら、消えていくものだろうが、この世界は消えるどころか―…レオンの様子、見ていてわかっただろ。俺たちだってそうだ。レオンが、別次元のやつだなんて思えなくなってった。だんだん自然の姿にもどっているみたいに、だ。幻が真実になるなら、何が悪いんだ…って俺は思ってしまうんだ」 「私だって…思うことはたくさんある。だけど…だけど、レオンはやっぱり困っているし、元の世界に戻りたがっている。ねぇ、王子。レオンが元の世界に戻りたい理由、わかるかしら?」 「…それは、自分が元いた世界だから…」 「それも少しはあるかもしれないけれど、ちがうわ。断言できる。何かを心配しているような…そんな心が読み取れるの。」 「心配している心…?」 「そう。記憶が徐々に変わっていくから、漠然としているものだけれど…すごくあせっている。そんな気がするの」 「…そうか。仕方がないな、いつか…なるようになるんだろうな。」 「ええ。王子はあまり考え事をしないほうがいいわ。慣れないことをすると頭から煙が出るんだから」 「あーあーわかりましたよ。そろそろ寝るか。おやすみ」
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朝日が差し込む教室に緑色の髪の少女は何かをいじりながらたたずんでいた。今日も快晴、風がさわやかに吹き付ける中、まだ自分以外クラスメイトのいない教室に酔いしれる― が。 「おっはよ~アリア!」 「うおおッ?!びっくりすんじゃん!サラかよ、もー驚かせんなあ~!」 さっきまでのあの静かな身のこなしとは打って変わって少女はクラスに入ってきたもう一人の少女―金色の髪が風に揺れてなびいている、妖精のようにかわいらしい少女だ―にげはげはと、大きな声で笑いかけた。 「いつも早いよね、こんな早くに来て何やってるの?」 「あー、兄貴の所為なんだよね。勉強するために早く行くーって言うんだから。」 「へー、やっぱりヴァイスはすごいのね。」 「うん、なんやかんやでヴァイスも頭いいんだよね、本当は。悪戯ばっかしてるからセンセーには嫌われてるらしいんだけどね。」 サラはくすっと可憐に笑う。 「うん、でもそういうところがヴァイスはいいんじゃないかしら。おもしろくて好き。」 「アハハ!確かに面白いけどねー。ていうか兄貴のせいであたしはこんなに真面目になっちゃったんじゃねーのって話になってさ。ちゃんと世の中バランスがとれるようになってんの。そだ、サラの兄貴も3-Sにいなかったっけ?」 「いるよ。今日ちょっと遊びに行こうかと思っているの。ついでに害虫駆除もね…」 「害虫駆除ォ?まぁなんか楽しそうだしあたしも行こうかな。」 一方そのころ3-Sではレオンとヴァイスが同時にくしゃみをし、なにかいやな予感を覚えつつ教科書を予習していた。 いや、予習していたのはレオンだけ、ヴァイスはアリア同様なにかに全ての力を出していたのだが。 「君さっきからなにやってんですか…」 「内職。ついでにいうと学校終わったらバイトもある。」 「なんでですか!遊ぶ金ほしさですか!」 「ちげぇよ!生活費が苦しいのッ!俺の家、両親いない割には3人兄弟だからね。自宅がさァ、まだあるから家賃とか気にしなくても大丈夫なんだけどね…食費がね~…」 ここでレオンの表情が暗くなる。ヴァイスは特に気にする様子もなく手を動かし続けていた。クラスに重い雰囲気がながれかったその瞬間、クラスのドアが開いた。かばんを持つことすらせず、財布と定期だけ持った好青年―にみえるカンジの人、エルネストが入ってきたのだ。 「おはよーごぜーます、っと。おうヴァイス今度は何の内職だよ。」 「造花ー。やべーよ、ヴァイス君第二話にして花背負って登場だよ。少女マンガかってんだ。」 「お前に花は似あわねーよそれこっちに寄越しな。俺のほうが花似合うって。」 「わ、手伝ってくれんの♪さんきゅー!」 そんなエルネストとヴァイスの様子を見たレオンは教科書を置き、二人を手伝うために席を立った。未完成の造花に手を伸ばしたそのときである。 「おはよう、なんで全員で花いじってるの?キモキャラのつもり?」 「あ、プリアラ!お前も漢なら手伝えッ!」 ドアが開いて現れた少女にヴァイスが叫んだ。エルネストも一度手を止め、そうだそだー、と声を張り上げる。が、なぜかレオンにはいやな予感がするのだ― いやな予感はあたった。プリアラは黒板消しを手に取り目にもとまらぬ速さでそれをヴァイスの顔面めがけて投げた。が、ヴァイスもそうやすやすとそれを喰らったりはしない。それどころか、完成品の造花のダンボールを肩に担いで後ろへ跳び、一つ目の黒板消しを避け(一つ目の黒板消しはレオンの顔面にクリティカルヒットしたようだ)、チョークの乱舞を机を盾にしのぎ、二つ目の黒板消しはうまくキャッチして黒板に戻した。プリアラは舌打ちをする―が、次の瞬間くす、っと笑った。 「んだってんだ…って……プリアラ…さん~?」 そう、さっきまですぐ前にいたはずのプリアラがヴァイスの背後にはにこにこと笑って仁王立ちしていたのだ。心なしか地獄の業火を背に背負っているようにすら見える。さすがのヴァイスの額にもいやな脂汗が流れた。やはりというか、そのまま殴り倒されたヴァイスは午前中の内職を終了せざるをえなくなったようだった…。 「いてて…プリアラ~、おもいっきりやることねーだろ、おもいっきりテレビですかってんだ、みのもんたかお前は!」 「訳わかんないわよっていうかね、あなたデリカシーがなさすぎるのよ。」 「うーっす、おはよー!」 「はい、おはよー…っておいおいアリア!お前なに調子のってんの?なんで3年の階来てんの?絞め殺されんじゃね?」 「絞め殺される前に絞め殺すから大丈夫じゃね?いや、あたしはサラについてきただけなんだけどね。」 アリアとサラが3-Sの教室へ現れた。二人に5人の視線が集中する。 それにしても、全く二人の印象は正反対だ― アリアはヴァイスに似て、やんちゃそうな表情、短めの髪、いかにも元気いっぱいの少女であるが、サラは長いゆるやかなカーブを描いた金髪に穏やかな物腰と上品な表情といった、いかにもお嬢様のような少女である。 「サラ?」 「レオンくーん、昨日焼いたクッキーもってきちゃった~♪」 サラは手に提げていた袋を目の前に突き出し、上品に笑う。唯一残念なのは兄の呼び名が「お兄様」ではなく「レオン君」だということだけか。 クッキーのにおいをかぎつけたのか、まっさきにヴァイスが彼女の元へ駆け寄ってきた。そして期待いっぱいの目で彼女を見て、「何!?俺らの分もあんの?!」と大声ではしゃぎまわると、やはりサラは上品そうな笑みをうかべて「もちろん」というのだ。 「いや~、いいねぇ、こーゆー家庭的な妹vおいアリアもなんか作ってよ。」 「無理!あたしの技術うんぬんより家計の問題デス!」 「そりゃそうデス!」 「…どーしてこの二人が言うと暗い話題でも大した事なさそうに聞こえるのかしらね…?」 遠くに座っていたプリアラがため息をつきながら、彼らを一瞥した。と、サラは彼女の元へ歩み寄り、袋を手渡す― 「はい、プリアラさんには特別のv」 「あら?ありがと―」 プリアラは包みを開ける。その間ほかの者たちは嬉々としてクッキーに喰らいついていたのだが。周りを見ている限り、クッキーは美味しいようだ。無論教室中においしそうな甘い香りが充満している―が、プリアラの包みの中からは腐ったキノコととぐろを巻いたクリームシチューを混ぜ、その中に納豆を放り込んだようなにおいを放つ、紫色のクッキー?が入っていた。おまけに、メッセージ付きである。それにはこう書かれていた。「レオン君を取る泥棒猫はトムに振り回されて死んじゃえコノヤロゥv」 何かがプリアラの中で切れる音がした。サラはあいかわらず笑っている。が、黒いオーラを彼女へ発し、なにか火花のようなものが両者の間で散ったような気がした。 おもむろにプリアラは席をたつとヴァイスと話し込んでいるレオンに話しかける。突然の行動に困惑するサラを尻目に。 「レオン~、サラちゃんって本当に料理上手なのね!せっかくの特別製をいただいちゃったことだし、あなたにも分けてあげるわ。だからそれを寄越しなさい。」 満面の笑みでプリアラはサラから受け取ったクッキーを持ち、レオンに話しかけ、いや脅迫をしかける。ヴァイスとエルネストは何か危険な空気を察したのだろうか、一歩引いてしまった。 アリアはなにやら生暖かい目線を彼らに送っていた。 「え?ぷ、プリアラ?!」 「私が食べさせてさえあげるわ。食べるわよね?あなたの妹の特別製。全部。食べるわよね?っていうか食べろ。」 「もも、もちろんー!?」 「…漢だぜ……まごうことなき漢だよ、レオンのヤツ…」 「ヴァイス、お前泣いてる…?」 「そりゃ泣くよ…いろんな意味で。」 「サラの言っていた害虫駆除ってコレか…」 「おいおい知ってたなら止めろよ?」 「いやぁ~…無理。」 幸いなことに、レオンが特別製クッキーを喰らうことはなかった。全てを解決し、ゼロに戻してくれる唯一無二の存在、学校のチャイムが鳴り響き、レインが教室に入ってきたのだ。 「オイこら席に着きなさいお前らー。今日は英音ありますからねー昨日死ぬ気で練習したレッチリが炸裂しますからねー。アレなんか生徒増えていませんか。」 「俺とレオンの妹だよ、センセー。ホラホラ、アリア、帰れ…ッ」 「先生ー、プリアラさんとサラさんが後ろでメンチ切りあってまーす。」 「ほっときなさい、怖すぎますからね。HRはとくに連絡することなし。後ろでメンチ切ってる青春少女たち以外は着替えてグランド集合。以上!」 結局その日からプリアラとサラとの恐ろしい戦いが始まるのであった。レオンの胃腸薬の量は日に日に増していったことは言うまでもない…
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日が傾きかけている夕方、部活に燃える生徒達を横目にレインは気だるそうにバイクのエンジンをかけた。ヘルメットはつけていない。面倒だからである。 「レイン先生っ、ノーヘルはまずいですよ。死にますよ?!」 「だいじょうぶです、石頭なので。」 同僚の忠告をさらっと受け流してバイクにまたがり、さっさとスピードを上げて道路を飛ばしてやった。チッと舌打ちをして、今日の授業を振り返る。ああ忌々しい、悔しいが一応3-Sは選ばれた生徒達。どんなにぎゃあぎゃあと騒いでいようと当てられた問題にはしっかり答えてしまうのが悔しい。担任をまかされて数ヶ月、仕方ないが彼らの頭脳を評価し、自分とほぼ同等の能力をもっていると認めざるを得ないだろう、レインは頭の隅で考え始めていた。視界のスミに、交通整備の赤いステッキを機械的に振り回すヴァイスが入ったのも気づかずに。 一台のバイクがもの凄いスピードで通り過ぎたのを見て、やれやれとヴァイスは肩を落とした。 「ったく…レインのやつ放課後暴走族はやめろよなー…。」 ホイッスルを口から離し、後ろを振り返る。工事現場の親方がやかんをもって休憩しようと声をかけてくれたからだ。声は出さずに大きくうなずいて他のアルバイトたちの所へ向かう。 「お疲れーッス。」 「ヴァイス君、今日のお手当てね。」 「あざーっす。いや、ホント助かりますよー…来週もうちょっと多くバイトいれてもいいですかね?」 「いいけど、だいじょうぶなの?キミ受験生でしょ。」 「まあ、勉強はなんとかしますんで。」 やかんから注がれた熱いお茶で喉を潤し、配られたおにぎりをほおばりながらヴァイスは少し考える。自分の進学のこと、アリアの学費のこと。今の自分の学費は全額免除されているので当面の間心配は無い。しかし、アリアは半額免除の対象。最終学年にならねば、全額免除の選考試験がない。両親の残してくれた遺産も少しはあるが、それに頼ってばかりいれば生計が立たなくなってしまう。 スケジュール帳を開いた。来週は毎日バイト。うち3日はかけもちだ。幸いなことに、体力にも自信があるからなんとかなるだろう。しかし、疲労がたまることは事実であって。 「キッツぅ・・・」 愚痴の一つも零したりしてしまう。幾度か、エルネストの両親から援助の申し出はあった。しかし、ヴァイスは丁寧に断っている。公的な補助も受けているし、友達関係の人から金銭の貸し借りはするなというのが両親の教えでもあった。 「やっぱ大学やめよっかな・・・」 給料袋をかばんにしまい、同僚達に別れの挨拶をするとヴァイスは帰路に着いた。腕時計の文字盤は、違う日付を指している。さっさと帰ってアリアの用意してくれた食事を流し込み、疲れを取るべく眠りにつきたいところだが、宿題があったような気がする。 「あの先公~っ!・・・ま、いいや。当てられたらその場で答えたろ。」 それくらいの頭脳はあると自負している。いざとなったら、エルネストにノートを借りるなり、レオンのノートを盗み見するなりすればいい。プリアラは・・・後が怖い。そんなことを考えながら歩いて通り過ぎようとしていた工事現場から、ガシャンという何かが割れる音、鉄パイプのかすれる金属音、そしてドサリとなにかが落ちる音、怒鳴り声。怪訝そうな顔をして工事現場を覗き込む。 「ん?なんだなんだ、ケンカかぁ?」 その場には数人の高校生が鉄パイプ片手に立っていた。高校生達の囲んでいる中心には小学生くらいだろう少年が倒れている。少年のめがねは割れていて、踏み潰された形跡がみられた。 「おいオメーらぁ!ガキんちょ相手になーにやってんスかっ」 こんな状況で助け舟を出さないわけには行かない。相手の数は7人。7対1はやはり少し不利ではあるが、ここで逃げては男が廃る。鉄パイプが足元に転がっているが、手に取るつもりは無かった。人は素手で戦えば、ケンカをする理由も見えるはずだと、ヤンクミのマネをしつつ言っていたレインの言葉を思い出したのだ。 「けっ、あんなセンセーでもヤンクミの言葉を言えばそれなりじゃん。」 「なーにごちゃごちゃ言ってんだよガキが!」 「このガキの仲間か?」 「ンナァァァア!てめぇ!どこが仲間に見えるんだよ!ガキっつーな!来年大学生だよ!こいつ小学生だろ、どう見ても!俺サマがそんなガキに見えんのか!ああもう容赦しねー!」 数分かかった。ヴァイスにしてはかなりの苦戦を強いられたほうだろう。手のひらには血が滴っている。腕にも、足にも痣ができたがまぁそれは仕方ない。それよりも、小学生の少年の安否を確めなければならなかった。 「おい、だいじょうぶかよ。」 「・・・あ。」 「あんた、どこの小学校のコ?ていうかこんな時間になんでウロついてんだよ。俺送ってくぜ。家どこ?」 「あ、ありがとうございました・・・。でも、俺平気です。あ、あの。名前は・・・?」 「俺?俺はヴァイスだ。」 「ヴァイス様ですね。その制服・・・召喚高校、ですよね?」 集団に殴られていたにもかかわらず、少年は案外元気そうである。質問攻めにあっている状況が面倒でその場からさっさと去ってしまいたい。 「俺、ヴァイス様についていきますよ!」 「あ・・・あっそう・・・。とにかく送らなくても平気なんだろ?俺帰るから。」 視線をあわせずに手を振って、その場を後にした。なんだか妙な小学生だったと首をかしげて。 翌日のことだ。眠たげな目をこすって家のドアを開き、学校へ向かう。アリアは大慌てで時間割をそろえていたので置いてきた。どうしてあんなに準備に時間がかかるのかがまるで理解できない。通学路の途中にあるエルネストの家によって、迎えに行こうか。と、自分のすぐ隣をもの凄いスピードのバイクが駆け抜けていった。朝っぱらからうるさいなと思ったら、自分の担任だった。ダメ教師め、って人のことをいえないか。ヴァイスは薄く笑いながら少しだけスピードを上げて走り出した。 「エルゥゥゥ!遅刻すんぞー!」 「わかってますーって!」 いつもの朝が始まる。変わらない日常が。 そう そう信じていたのに。 「転校生がいます。」 心底面倒だと物語っているような口調でレインが言う。その隣に立っているのは背が高い、つんつんと尖った金髪の少年。めがねをかけており、知的な印象を受けた。気になるのは、彼がずっと穴が開くほどヴァイスの方を見ていることなのだが。 「どうもっ!俺、ベルクです!そちらにおられるヴァイス様に憧れて無理やり転校してやりました!これからよろしくお願いします!」 「無理やり?!」 レオンが何か突っ込みを続けたそうにしていたが、レインが話を打ち切ったが為にそれは失敗に終わる。ベルクは自己紹介をするやいなやヴァイスの隣に机を置き、にこにこと恐ろしいほどの笑みを浮かべてどっかりと座った。その様子にやや驚いて、というよりも数歩引いてしまいたいような気持ちを抱いて、ヴァイスは口を開く。 「あ、あんた・・・なんでさっきから俺のこと見てんだよ。」 「やだなぁ、昨日助けてもらったじゃないですかっ。あの時から決めたんですよ。俺、ヴァイス様みたいにカッコイイ人になろう!と・・・」 「昨日?・・・だって、俺は。」 昨日助けたのは、たしか随分年下の幼い少年だったはず。 ヴァイスは首をひねる。遠くから、レインが新しいバイクを自慢している話が聞こえてきたが、それもあまり頭に入らない。 その日、ぼんやりとしたまま放課後を迎えたヴァイスは、なんとなく誰にもこの話を言えずにアルバイトに向かったのだった。