約 4,089 件
https://w.atwiki.jp/old_popn/pages/21.html
愛知県設置店舗 愛知県設置店舗ザ・チャレンジハウス木場2F ザ・チャレンジハウス木場2F 最寄り駅 道徳駅 バージョン:11(右台)15・16・17・18(左台・バージョン選択可能) 料金 右台50円5曲 左台50円2クレ2曲 最終確認日 2014年5月31日 他の音ゲー 太鼓 備考 バージョン選択は店員さんにお願いする
https://w.atwiki.jp/verde_bbq/pages/15.html
リンク先はPC用です。携帯では表示できない場合があります。 日時 5月5日 月曜日 ~9時頃 各地集合 9時半 途中集合(別所PA) 10時 小赤壁 木場小庭公園着 17時頃 現地解散 予算 2~3千円 集合場所 080505参加者の配車を見て下さい。 行き先 小赤壁 木場小庭公園 ++製作中++
https://w.atwiki.jp/pararowa/pages/175.html
ロスト・ワールド ◆Z9iNYeY9a2 木場勇治は見た。オルフェノクの象徴ともいえる建物、スマートブレイン社が倒壊していく様を。 彼自身スマートブレイン自体にそこまで思い入れはない。特に仲間を殺したSBの社長、村上は憎悪の対象だ。 しかしあれがオルフェノクにとって大切な組織であることも分かっていた。 それをあのように破壊する者。少なくともオルフェノクではないだろう。 そして彼は走り出す。 あの場にいるであろう人間を、それに味方する者を殺すために。 ◆ 「おい、啓太郎。お前はここで待ってろ」 「え、たっくん?」 倒壊するスマートブレイン社を前に巧は啓太郎に言った。 「お前が行っても危ないだけだろ。俺が行くからここで待ってろって言ってんだよ」 「なんでさ!たっくんがいない間僕だってずっとオルフェノクと戦ってきたんだよ! それにファイズギアがないたっくんのほうが危ないじゃない!」 巧としてはそれを言われるとぐうの音も出ない。 「しょうがねえな、危なくなったらお前だけでも逃げろよ」 こう言うのが精一杯だった。 ◆ 「その体ではそう逃げることはできまい」 「わざわざ追いかけてくれるとはね。感謝するわ」 そうせめてもの強がりを言いつつ体はろくに動かぬ足を動かして逃げようと必死だった。 「なるほど。奴に生存の呪縛でも掛けられたか。ならば」 殺気を治めてマミに近付くゼロ。もしもあの逃げ際に掛けたギアスがそうならば殺意がなければ発動はしない。 「っ…!」 急に距離を詰めてきたゼロにマスケット銃を向けるが間に合わず、頭を掴まれて宙吊りにされる。 「生きるために予想外の抵抗をされても厄介だ。そのギアスを打ち消してから殺してやろう」 そう言ったゼロの掌にギアスの紋章が浮かび上がり、マミに触れようとしたその直前、 パァン 「誰だ?」 その腕に銃弾が放たれていた。 それは腕をギリギリの位置で掠めたもので、当然ダメージなど無かった。 しかしそれに気を取られた隙に飛び掛ってきた何者かにマミを奪取される。 銃弾を放ったのは菊池啓太郎、飛び掛ってきたのは乾巧であった。 「啓太郎!そいつ連れて逃げろ!!」 「でもたっくん!」 「いいから早く―」ドガッ ゼロの拳が巧の胸に打ち込まれ吹き飛ぶ。 「只人が。無粋なことをしてくれるじゃないか」 「ああ…、た、たっくん…」 マミを抱えて啓太郎は逃げ出すが、少女一人抱えてでは早く走ることはできず、すぐさま追いつかれてしまう。 「うわっ!」 「終わりだ」 「うおおおおおおお!!」 啓太郎は、諦めかけたその時灰色の何かがゼロを突き飛ばすのを見た。 オルフェノクがいたのだ。 ウルフオルフェノクへと変身した巧は受け止められながらもゼロに殴りかかっていった。 一瞬無言で啓太郎の方を向き、その後ゼロを両腕で抱えて跳び上がっていった。 残された啓太郎は一刻も早くここから立ち去ろうとマミを連れて走っていった。 信じていた仲間がオルフェノクであったという事実から逃げるように。 (ああ、それでいいんだ) こうすれば啓太郎はとりあえずこの場を離れるだろう。 去っていく啓太郎の背中に悲しみを感じつつ、ゼロを押さえつける巧。 しかしゼロはそれを振り払って着地する。 「死臭のする少女の次は灰の怪人か。つくづく死人に縁があるな」 「うるせえ!!今機嫌悪いんだよ! お前何で殺し合いに乗った!?」 「世界に混沌を撒き散らすため、と言っても分かるまい。 とりあえず乗っていることに変わりはあるまい」 「そうか、じゃあ遠慮はいらねえな」 ◆ 佐倉杏子と夜神総一郎は草加、まどかの二人と別れた後、ビルの倒壊現場へと急いでいた。 急いでいたと言っても早歩きほどの速さであるが。 何かに急ぐ様子を見せる杏子を見ながら総一郎は考える。 もし先ほど見た彼女の身体能力があれば自分など置いていけるだろうに。 何か自分がいることで気を使わせてしまっているのではないか? そしてふと気付く。自分はここに来て出会ったこの少女のことをロクに知らない。 名前と、さっきのような力で何かと戦っていること、一度死んだらしいというくらいのことしか知らなかった。 だからだろうか、このような状況でこんなことを聞いてしまったのは。 「君はずっとあんな力で何かと戦ってきたのか?」 「ん、まあな」 「両親や家族は心配なさらなかったのか?」 「……家族はもういねぇ。みんな死んだよ」 「あっ…、これはすまない。悪いことを聞いた」 「別に。おっさんはどうなんだよ? 息子がいるんだよな?」 「ああ、正確にはいた、と言うべきだが」 「そうかい」 「なあ、向こうに着くまでにそのおっさんの息子の話、聞かせてもらっていいか?」 杏子が唐突にそう切り出す。変な沈黙を息苦しく感じたのだろうか。 本当は他人に話せることではない。だがこの場が場な以上いずれ話さなければならないことだ。 いい機会かもしれない。 「ああ、あいつは正義感の強いやつでな、私の誇りだったよ」 ◆ ゆまとメロはビルの倒壊現場に向かっていた。 メロとしては倒壊現場に向かうのは気が進む選択肢ではなかったのだが、ゆまがあまりに譲らなかったのだ。 このまま駄々をこねられ続けても面倒と思い、こちらの選択肢を選んだのだった。 そしてバイクを走らせているうちに金髪の少女を抱えた男を見つけた。 少女の方はかなりの怪我を負っており、男の方は怪我している様子はなかったが何故か足取りがおぼつかなかった。 「マミおねえちゃん!!」 「ゆ、ゆまちゃん…」 「こいつがお前の言ってた仲間か」 「この子、あそこで真っ黒な仮面をつけた男に襲われてて…。 だから早く病院かどこかに…」 「ゆまならなおせるよ!おにいさん、まみおねえちゃんをここにねかせて」 そう言って横になったマミにゆまが手をかざすと、マミの体が見るからに治っていった。 だが、ある程度まで治癒が進んだところで急にゆまの様子がおかしくなっていく。 「治るのが遅い…。なんでもう治らないの…?」 杏子を助けた時は切断された手足でも瞬時に治すことができたが、今はなぜかかなりゆっくりになっていた。 それだけではなく、体は完治まで行かず微妙に傷や怪我も残っていた。 「大丈夫よ。これぐらいなら戦うのにそこまで支障はないわ」 「よかった!ねえ、あそこにキョーコはいた?」 「いいえ、ゼロって言う黒い仮面の魔女がいたわ。 それと、彼の仲間が残って足止めをされてるわ…」 「あ、う、うん。そうだ、たっくんが残って戦ってるんだ!」 「怪我も治ったことだし早く戻って…」 「おい、何か馬の足音みたいなのが聞こえるぞ…」 「もしかしてこの足音……、木場さん!!」 見るとまるで神話に出てくるケンタウロスのような下半身をした灰色の怪人がこっちに向かってきていた。 「…!!魔女?!」 マミはマスケット銃を、ゆまはハンマーをとっさに構える。 「待って、木場さんは悪い人じゃないから。おーい、木場さーん!!」 啓太郎の知り合いというその木場という怪人は、その声に応じるかのようにこちらに向かって走ってきた。 彼は大丈夫だと言っていたが、何かがおかしかった。 なぜあの怪人はこっちに来るのに今にも剣を振り下ろしそうな体勢をしているのだろうか。 「危ない!!」 マミは叫ぶと同時に啓太郎の足にリボンを巻きつけ引っ張る。 啓太郎は叫びに反応してこちらを振り向くと同時に倒れ、直後彼の首があった辺りを剣が通り過ぎた。 「え、木場さん…?」 「あのビルはお前たちの仕業か?」 「確かにあそこにはいたけどそれが何か?」 「そうか。まあいい。ここで死んでもらう」 それは明らかに殺意を持ちながら話しかけてきた。 「ゆまちゃん、二人を逃がして!!」 マミはそう言い、木場勇治、ホースオルフェノクの振り下ろしてきた剣を受け止める。 同時に多数のリボンを木場の体に巻きつけ動きを封じる。 「分かった!お兄ちゃんたち、こっち!!」 「ま、待って、木場さん!!」 啓太郎は以前とは変わって人を襲うようになった木場に声を掛けるが木場は少しも気にする様子はない。 彼の知り合いであるということから魔女の口付けのような何かで操られていると推測し、無力化に掛かるマミ。 剣を受け止めた際にどれほどの怪力を持っているか身をもって知ったマミは距離を取ってマスケット銃を撃ちだした。 一方、逃げた三人はバイクを運転するメロと後ろに乗る啓太郎、少し遅れて二人を追うゆまという構図であった。 「ゆまちゃん、ごめん!!」 「あ、おにいさん!!」 しかし啓太郎はゆまの思いに反して来た方に戻って走りだした。 「おにいちゃん、先に行ってて。あのおにいさん連れてきたらすぐに行くから」 「あのマミってやつがどうにかしてくれるだろう、お前もついて来い」 メロとしてはゆまの力も見切ってはいない以上残して行くというのも不安であった。 また、これまで協力者をことごとく失ってきたメロにしてみればゆまという協力者を置いていくという選択肢を選ぶことへのためらいもあった。 「大丈夫だよ、ゆまつよいもん。おにいさん連れて来たらすぐに追いかけるよ」 だがゆまは言っても聞きそうにはなかった。そもそも気球ではなくこっちに来たのもゆまの強情さゆえなのだから。 「ちっ、絶対に死ぬなよ」 「うん!!」 メロはバイクを走らせ、ゆまは啓太郎を追って走り出した。 ◆ 「おっさん、ちょっとここからは別行動だ」 「佐倉くん?」 気がつくと話に集中して歩みを止めていた二人。 話が終わり、移動しようとしたときにソウルジェムを手に杏子は言った。 「違う魔力を二箇所に感じるんだ。あのビル近くに強めのやつが、そこから少し離れたところにあたしの知り合いともう一人誰かだ。 強めのやつはもしかしたら魔女かもしんねえ。あたしはそっちに行くからおっさんはもう片方のところに行ってろ。 あたしの知ってるやつならたぶん会っても大丈夫だ」 「君の方は大丈夫なのか?」 「まあやばくなったら逃げるさ」 「分かった。またあとで合流しよう」 杏子がこっちを選んだのは今は調子を取り戻すために戦いたかったからであった。 あの反応、おそらくマミのものだ。だが今の杏子はマミと顔を合わせることは気が進まなかった。 少なくともこのイライラをどうにかするまでは。 巴マミならば大丈夫だろう。皆を守るために戦っているはずだ。 そして本人にも原因に想像のつく謎のイライラを感じていたことも理由の一つだ。 ビルの跡地を走りつつ杏子は総一郎から聞いた話を思い出す。 (夜神月…) 総一郎から聞いた彼の息子の話。 曰く、世間に蔓延る犯罪、それを裁けぬ法律を憎み、 ある力をもって犯罪者を殺していき、神とも崇められた男。 「気に要らねえ」 夜神総一郎から聞いた、この殺し合いの場にいるかもしれないその夜神月。 「ああ、気に要らねえ」 なぜかひどく気に食わなかった。 ◆ 「正面からでは勝てぬと判断、この地形と暗闇を生かしての奇襲で確実に倒すという戦法を取ったか」 そう一人で呟くゼロの体には無数の切り傷がついていた。 最初は正面から戦っていた巧だが、その力にかなりの開きがあることに気付くのにはそれほど時間はかからなかった。 だからこそ正面からではなく地形と暗闇を利用しての奇襲戦法を選ぶことにしたのだ。 しかし決定打はなかなか与えられず、無数についた傷もゼロの動きを阻害するほどのものではなかった 「己の能力をよく理解した上での戦い方だ。センスはあるようだな。尤も―」 飛び出してきたウルフオルフェノクの体に生えた刃をテッシードのグローブを付けた掌で掴む。 「もう見切ったが」 そのまま肩の刃を握りつぶす。 掴まれた巧は巨大化させた足で地面を蹴り、そのままゼロに踵落としをしかける。 それをゼロはギアスの紋章が浮かび上がった手で受け止める。 一瞬閃光が走り、巧は吹き飛ばされる。 吹き飛んだ巧はそのまま拳を握り締め飛び掛かる。 が、飛び出して気付いた。巨大化していたはずの足が元の大きさに戻っていることに。 疾走態ではなくなり素早さの落ちたまま殴りかかるも、拳は届かず逆に顔面に拳を食らい吹き飛ぶ。 ゼロはズタズタになったテッシードのグローブを外し、巧に追い討ちをかけるために地面を蹴った。 ◆ マミの銃撃はホースオルフェノクには通用しなかった。 ダメージが無いのではなく、銃弾が驚異的な反応で弾かれているのだ。 連射のできないマスケット銃では、どれだけ素早く新しいそれを出そうと少なからずタイムラグが生まれる。 機関銃のように多くの銃弾を撃ちだせれば当てることはできただろうが単発銃では限界がある。 リボンでの拘束も剣で斬られるか脚力をもって引き千切られるかのどっちかだった。 (せめてゆまちゃんがいれば…、ダメね。大事な役割を頼んだ子をあてにするようじゃ) ここでどうにかしないと多くの人が犠牲になってしまう。 「木場さん!!」 突如聞こえてきた声にホースオルフェノクの動きが止まる。 「あ、あなたは…、どうして?!ここは危ないわ!!」 「お願い、ちょっとだけ話をさせて!!」 止めるマミをよそに啓太郎はホースオルフェノクに近付く。 ホースオルフェノクの影が白い人影を写し、口を開く。 「菊池啓太郎、君と話すことはない」 「どうしてこんなことするの?!今までずっと人間と共存したいって言ってたじゃない!?」 「ああ、だがそれも過去の話だ。園田真理の裏切りで結花と海堂を失ったとき、俺の中からその理想は消えた」 「え、真理ちゃんが…?どういうこと?」 「もう話すことはないと言った。人間である以上君も敵だ!」 「っ!!早く逃げて!!」 マミを通り過ごし、啓太郎に向かっていく木場。 「あぶない!!」 ドンッ 剣を啓太郎に躊躇いもなく振り下ろした時、追いついたゆまが啓太郎を間一髪で押し倒した。 「ダメよ!彼とは戦うしかないわ!!」 「おにいさん!早くいこう!!」 「お願い!!少しでいいから木場さんと話させて!」 啓太郎の中には巧に対しての負い目があった。 オルフェノクであった巧から逃げてしまったことに対して。 今ここで逃げてしまえば巧と向き合うことができない気がしたのだ。 一方殺そうとしたにも関わらずまだ自分に向かってくる啓太郎に木場勇治は疑問を持つ。 「なぜ逃げない?君は俺が怖くないのか?」 「そりゃオルフェノクは怖いよ。でも、木場さんはずっと一緒に戦ってきた仲間じゃない…」 「違う!俺の仲間はオルフェノクだけだ!!」 「オルフェノクとか人間とか関係ないよ! たっくんも真理ちゃんも長田さんも海堂さんも、木場さんだって大事な仲間なんだよ!」 (そうだ、たっくんもずっと辛かったんだ。僕達にこう思われるんじゃないかって…) 「もう俺は君の知っている木場勇治じゃない」 「それでも僕は仲間を化け物って思いたくないんだ」 「…君は変わらないんだな。園田真理と違って」 「木場さん…」 疾走態であった姿を解き、啓太郎の元に近付く木場。 話しかける影からも険悪な表情は感じられなかった。 もう大丈夫だ、あとは真理ちゃんに対する誤解を解かなければ。 グサッ 「え…?」 胸に違和感を感じ、そこに目をやる啓太郎。 「そんな君だからこそ人間ではなくオルフェノクとして生きて欲しい」 そこには一本の魔剣が生えていた。 「君は人間として生きるべきじゃない」 「そんな…、木場さ…」 体が灰となり崩れだす。使徒再生はなさなかったのだ。 「君には資格はなかったんだな。さようなら」 (たっくん…、お願い…、木場さんを…) 啓太郎に背を向け歩く木場に向けて伸ばした手は届くことなく、灰となり崩れ落ちた。 「次はお前たちの番だ」 「……」 一部始終を見ていた二人が感じたのは怒りだった。 二人は出会ったばかりだった彼のことはよく知らない。 ただ、彼が信じていた仲間らしい者に殺された事実だけは分かった。 だからマミはこの魔女でも使い魔でもない、しかし人を襲う化け物を倒すと決めた。 しかしゆまにはそこまではっきり割り切ることはできなかった。 さっきと同じようにマスケット銃でホースオルフェノクを撃つ戦法で戦うマミ。 だが今回はさきほどとは大きな違いがあった。千歳ゆまの存在である。 彼女が接近戦を彼に仕掛け、その合間にマスケット銃で援護。 銃とゆまの双方に気を回さなければいけない状況で少しずつ、だが確実にホースオルフェノクにダメージを与えていった。 「どうしてあのおにいさんを殺したの?!おともだちだったんでしょ!?」 ゆまのハンマーと木場の魔剣がぶつかる。 「人間であれば仲間だろうと人は傷つけ、裏切るんだ!お前のような子供には分からないさ!」 マミのマスケット銃が木場を狙い打つ。木場はかろうじて盾で銃弾を防ぐ。 「そんなことはないよ!パパやママはゆまにいじわるしたけどキョーコもマミおねえちゃんもいいひとだったもん! みんなが悪いひとなんておかしいよ!」 「それでも人間である限り人は裏切る! だから俺達がそんな卑怯者のいない世界を作ると決めた!!」 「ゆまそんなのいらないよ!」 マミは一度に五丁の銃を構える。一人で戦っていたときは隙ができるためなかなかできなかったやり方だ。 それを一斉に放射。二発は弾かれるが残りは直撃する。 銃撃のダメージがゆまへの反応を遅らせ、ハンマーの一撃を体に受けることになる。 さすがの重い一撃に大きな隙ができる。 (今よ…!) マミはそうしてできた隙を見逃すことなく 彼の全身に多くのリボンを巻き付け動きを封じる。 その拘束を振り払おうともがくところにゆまがハンマーを降り下ろす。 頭部に当たり、その巨体が揺らぐ。 「ナイス、ゆまちゃん!!」 その隙に手元にそれまでのマスケット銃よりはるかに大きな砲台ほどのサイズの銃を生成。 それまでにゆまは木場から距離をとる。 「ティロ・フィナーレ!!」 巨大な銃弾が発射される。 木場は銃生成を見て即疾走態を解除、それにより一瞬できたリボンの余りの部分から左腕の盾を前面に構える。 銃弾と盾がぶつかりあったことで盾は砕け、吹き飛ばされ人間の姿に戻る木場。 一気に距離を詰め、確実に止めを刺すために銃を木場の目の前に構える。 「これで終わりね」 『Burst Mode』 倒れた木場は何かをポケットから取り出し、こちらに向ける。 瞬間、マミの体が勝手に後ろに下がり、その何かから発射された光線がマスケット銃を弾き、マミの右目を焼いた。 「マミおねえちゃん!!」 「変身」 『complete』 残った左目でマミが見たのは、駆け寄ってくるゆまと暗闇のなかで光る閃光に包まれる木場の姿であった。 ◆ 「くそ、お前なんなんだよ…」 「なかなかタフなものだな」 その場に立っていたのはゼロであった。 巧、ウルフオルフェノクは地面に伏していた。 全身の刃はボロボロに砕け、かなりのダメージなのは一目でわかるほどだ。 それでもオルフェノクの姿を保っているのは解除すれば死に繋がると分かっているからか。 あるいは巧自身の精神力か。 「へえ、楽しそうなことやってんじゃん」 突如頭上から少女の声が聞こえる。 見るとフリルのついた赤いドレスを着て、巨大な槍を持った少女がいた。 巧はこの姿を見て化け物と言われるのではないかと一瞬気にするが、少女は特に気に留める様子もなくゼロと巧の間に割り込む。 「で、魔女の反応出してやがったのはどっちだ?」 「ふん、魔女か。お前もあの金髪の銃使いの女と同じことを言うのだな」 「おめぇか…、ってマミのやつと会ったのかよ」 「知らねえけどかなりやばかったからそいつは仲間が連れて逃げたぜ」 「そうかい、あのマミのやつをねぇ…。楽しめそうじゃん」 「待てよオイ、そいつは俺が戦ってたんだよ。たぶんお前じゃ相手にならねえ。下がってろ」 「何それ。あんたこそ随分ボロボロじゃん。こいつはあたしが倒してやるからその辺で寝てな」 「ふざけんな。こんなのどうってことねえよ」 「私を前に口論とは随分と余裕だな」 突如接近してきたゼロに対し、槍を多節棍に変化させて迎撃する杏子。 しかし全てを翻したマントで弾かれ、そのまま拳を受けそうになるもかろうじてかわす。 拳の威力とゼロが放ったプレッシャーに流石の杏子も冷や汗を流す。 「何なんだこいつ…」 「だから言ったろ。お前はその仲間を追ってろ」 「どーせあんたがやられたらこっち追っかけてくるんでしょこいつ? ならここで潰しとけばいいじゃん」 「ちっ、邪魔すんなよ!」 【E-2/東部/一日目 黎明】 【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】 [状態]:ダメージ(小)、疲労(中)、全身に切り傷、ガウェイン召喚不能 [装備]: [道具]:共通支給品一式、ランダム支給品0~3(本人確認済み) [思考・状況] 基本:参加者を全て殺害する(世界を混沌で活性化させる、魔王の役割を担う) 1:目の前の二人を殺す 2:その後逃げた者を追跡する 3:ナナリー…… [備考] ※参加時期はLAST CODE「ゼロの魔王」終了時 ※エデンバイタルとの接続により、「コードギアス反逆のルルーシュ」世界の情報を得ています 【乾巧@仮面ライダー555】 [状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、肋骨骨折、オルフェノク態 [装備]:なし [道具]:共通支給品、ファイズブラスター@仮面ライダー555 [思考・状況] 基本:殺し合いに乗らずに自分がどうするべきなのかを見つけたい 1:目の前の仮面の男を倒す 2:木場、草加達知り合いとの合流 3:ほむらの言ったこととまどか、ナナリーのことは一応気にしておく 4:真理には会いたくない 5:啓太郎…… [備考] ※参戦時期は36話~38話の時期です ※パラダイス・ロストの世界観について把握、啓太郎が自分の世界の啓太郎ではないことを知りました ※暁美ほむら、アリスの知り合いについてだいたい把握しました 【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]:健康、ストレス少々、魔法少女姿 [装備]:羊羹(1/2)印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入@現実 [道具]:印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入×4、不明支給品1(本人未確認) [思考・状況] 基本:とりあえず目の前の仮面をぶっ潰す 1:さやかを見つけたらなんとかする 2:真理を見つけたら草加たちのことを一応伝える 3:ストレス解消に暴れたい 4:夜神月が気に入らない [備考] ※参戦時期は9話終了後です ※夜神月についての情報を得ました ◆ メロはあのオルフェノクであろう怪人から逃げていた。 正直こっちに来たのは得策とは言いがたかっただろうといまさらながらに思う。 少し強引にでもあの気球を追ったほうが安全だったかもしれない。 結局出会った二人からは情報を得ていない上、同行者も一時的にとはいえ失っているのだから。 そんな風に自分の選択を後悔しつつふと前を見ると、中年くらいの日本人の男がこっちに来るのが見えた。 警戒のために銃に手を伸ばしつつ近付く。 「ちょっとすまない。この辺りに佐倉杏子という子の知り合いがいると聞いたんだが何か知らないか?」 「ああ、それなら向こうでオルフェノクとかいう怪物と戦ってるぜ。今行くのは危ないと思うけどな」 「佐倉杏子の知り合いはいるんだな?」 「ああ、すぐに合流するって……」 話しつつ相手の顔を見ているとき、ふと気付いた。 この男、自分が死に追いやったあの男に似ている、と。 眼鏡はかけていないし、髭も生えていない。 だが―― 「?私の顔に何か付いているか?」 「なあ、あんたもしかして、夜神総一郎か?」 【D-2/南部/一日目 黎明】 【メロ@DEATH NOTE】 [状態]健康 [装備]ワルサーP38(8/8)@現実、原付自転車 [道具]基本支給品一式、呪術入りの宝石(死痛の隷属)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ [思考]基本・元世界に戻り、ニアとの決着をつける。 1:夜神総一郎…? 2:死者(特に初代L)が蘇生している可能性も視野に入れる。 3:必要に応じて他の参加者と手を組むが、慣れ合うつもりはない。(特に夜神月を始めとした日本捜査本部の面々とは協力したくない) 4:可能ならばおりこに接触したい。 5:ゆま達とは後で合流する。 [備考] ※参戦時期は12巻、高田清美を誘拐してから、ノートの切れ端に名前を書かれるまでの間です。 ※協力するのにやぶさかでない度合いは、初代L(いれば)>>ニア>>日本捜査本部の面々>>>夜神月>弥海砂 ※ゆまから『魔法少女』、『魔女』、『キュゥベぇ』についての情報を得ました。(魔法少女の存在に一定の懐疑を抱いています) 【夜神総一郎@DEATH NOTE(映画)】 [状態]:健康 [装備]:羊羹(2/3)羊羹切り [道具]:天保十二年のシェイクスピア [DVD]@現実、不明支給品1(本人未確認) [思考・状況] 基本:休んでいる暇はない。ビルの跡地へ向かう。 1:目の前の青年から話を聞く 2:警察官として民間人の保護。 3:真理を見つけ、保護する。 4:約束の時間に草加たちと合流する。 5:月が蘇ったのなら、犯罪者として対処する。 6:佐倉杏子とは後で合流する [備考] ※参戦時期は後編終了後です ◆ 光が消えた時、目の前にいたのは黒い鎧、オーガの力を纏った木場勇治だった。 放出されるエネルギーに気圧されつつもマミの無事を確認しようとゆまは辺りを見回す。 が、巴マミの姿はどこにもなかった。 まさか今の一瞬の内に殺されたのでは?などと考えることはこの場では致命的な隙だった。 「え?マミおねえちゃ――」 驚き辺りを見回すゆまの首をオーガストランザーが切り裂いた。 パリン 変身中に木場は見ていた。銃使いの少女が今殺した少女を放置して逃走していったのを。 この幼い少女はあの共に戦っていた少女のことをいい人だと、仲間と言っていた。 だが現実はこれだ。あの少女はおそらくこのベルトの力に恐れをなして逃げたのだろう。 仲間を見捨てて。 皆自分のことしか考えず、仲間だろうと友人だろうと己のためなら裏切り、見捨てる。 この少女が信じた仲間もそうだった。 だからこそ人間は滅びなければいけないのだ。 木場勇治の人間への怒りは未だ尽きることはない。 【E-2/E-3との境界付近/一日目 黎明】 【木場勇治@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】 [状態]:ダメージ(中)、疲労(大)、全身に打撲、オーガに変身中 [装備]:オーガドライバー一式@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト [道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0~3(確認済み)、クラスカード(ランサー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、コンビニ調達の食料(板チョコあり)、コンビニの売上金 [思考・状況] 基本:オルフェノクの保護、人間の抹殺、ゲームからの脱出 1:逃げた少女を追う。 2:すべての人間を殺したあと、村上を殺す。 3:乾巧と決着をつけたい。 4:あのファイズの正体は……? 5 たとえ別世界の海堂や長田であっても、自分を止めるなら容赦はしない。 [備考] ※コロシアムでの乾巧との決戦の途中からの参戦です ◆ 突然の閃光に視力を奪われたマミは今の状況を確認しようとした。 右目を撃たれた上、暗闇の中での閃光によって失っていた視力も大分回復してきた。 治癒魔法により撃たれた右目もどうにか見る事はできるようになっていた。全快まではしばらく時間が掛かりそうだが。 そして、 「ここはどこなの?」 そこには木場勇治も千歳ゆまもいなかった。 それだけではなく、さっきまで戦っていた場所とは違う場所にいた。 あの光がこの暗闇を照らした後の記憶が抜け落ちているような感覚だった。 「これは一体…?ゆまちゃん!!」 急いで今まで戦っていたと思われる場所まで走るマミ。 その目に光る、悪逆皇帝の情けでかけられた呪縛の効果を知ることも無く。 【E-3/市街地/一日目 黎明】 【巴マミ@魔法少女おりこ☆マギカ】 [状態]:両足に軽いダメージ、右目視力低下(回復中)、消耗(大)、魔力消費(大)、ソウルジェム(汚染率45%)、絶対遵守のギアス発動中(命令:生きろ) [装備]:なし [道具]:共通支給品一式、ランダム支給品0~3(本人確認済み) [思考・状況] 基本:魔法少女として戦い、他人を守る 1:ゆまの元に戻り、木場を倒す (1):木場から逃げる(手段は問わない) 2:キリカ、織莉子を警戒。発見したら排除する 3:杏子、ほむらと接触する [備考] ※参加時期は第4話終了時 【菊池啓太郎@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト 死亡】 【千歳ゆま@魔法少女おりこ☆マギカ 死亡】 ※ニューナンブM60@DEATH NOTE、共通支給品、ランダム支給品0~1(武器類はなし)、あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム) 以上のものがE-2に放置されています 049 『不快なる快勝』 投下順に読む 051 「Namby-pamby」 時系列順に読む 027 魔王は並び立ち、魔法少女は堕ちる ゼロ 053 私はいざというとき、アナタを殺します(前編) 巴マミ 037 名前のない人々 佐倉杏子 夜神総一郎 032 探し物はなんですか? 乾巧 菊池啓太郎 GAME OVER 040 片手に幼女、唇にチョコレート、心に…… 千歳ゆま GAME OVER メロ 053 私はいざというとき、アナタを殺します(前編) 017 Blue Rose 木場勇治
https://w.atwiki.jp/imas_cg/pages/314.html
2012/04/13 開放 ステージボス:塩見周子 衣装コンプ:浜口あやめ 初登場アイドル(ノーマル):及川雫、関裕美 必要スタミナ 3680 京都A 京都B 京都C 京都D 京都A スタミナ:-7 経験値:+7 マニー:+70~210 ファン:+4~11 各お仕事の必要スタミナ量(仕事回数):140(20回) エリア お仕事内容 見つけたもの アイドル (太字は低確率出現) 衣装:シノビトラディション キュート クール パッション キュート クール パッション 31-1 本屋でサイン会 間中美里(8) 藤原肇(10) 姫川友紀(10) 橙 青 赤 31-2 本屋で握手会 長富蓮実(10) 木場真奈美(10) 姫川友紀(10) ― ― ― 31-3 CDショップでサイン会 柳瀬美由紀(10) 荒木比菜(8) 及川雫(10) 青 赤 燈 31-4 CDショップで握手会 関裕美(10) 木場真奈美(10) 矢口美羽(8) ― ― ― 31-5 イベントでキャンペーンガール 長富蓮実(10) 佐々木千枝(10) 大槻唯(10) 黄 緑 紫 ボス:塩見周子 報酬:塩見周子、エナジードリンク、スタミナドリンク、9000マニー 京都B スタミナ:-8 経験値:+8 マニー:+80~240 ファン:+4~12 各お仕事の必要スタミナ量(仕事回数):168(21回) エリア お仕事内容 見つけたもの アイドル (太字は低確率出現) 衣装:シノビトラディション キュート クール パッション キュート クール パッション 32-1 ミニスタジオで撮影会 小日向美穂(9) 東郷あい(9) 及川雫(10) ― ― ― 32-2 デパート屋上でミニライブ 長富蓮実(10) 佐々木千枝(10) 姫川友紀(10) 橙 青 赤 32-3 グラビア撮影 関裕美(10) 木場真奈美(10) 赤城みりあ(8) ― ― ― 32-4 CDショップでミニライブ 長富蓮実(10) 藤原肇(10) 姫川友紀(10) 青 赤 燈 32-5 ラジオ収録 柳瀬美由紀(10) 木場真奈美(10) 大槻唯(10) ― ― ― ボス:塩見周子 報酬:トレーナー、エナジードリンク、鍵付きクローゼット、9250マニー 京都C スタミナ:-9 経験値:+9 マニー:+90~270 ファン:+5~14 各お仕事の必要スタミナ量(仕事回数):198(22回) エリア お仕事内容 見つけたもの アイドル (太字は低確率出現) 衣装:シノビトラディション キュート クール パッション キュート クール パッション 33-1 ライブハウスでミニライブ 五十嵐響子(10) 東郷あい(9) 赤城みりあ(8) 黄 緑 紫 33-2 バラエティ番組収録 長富蓮実(10) 藤原肇(10) 真鍋いつき(9) ― ― ― 33-3 ストリートでミニライブ 関裕美(10) 水木聖來(10) 姫川友紀(10) 橙 青 赤 33-4 グラビア撮影会 小日向美穂(9) 木場真奈美(10) 真鍋いつき(9) ― ― ― 33-5 グルメ番組ロケ 五十嵐響子(10) 水木聖來(10) 及川雫(10) 青 赤 燈 ボス:塩見周子 報酬:トレーナー、エナジードリンク、スタミナドリンク、9500マニー 京都D スタミナ:-10 経験値:+10 マニー:+100~300 ファン:+5~15 各お仕事の必要スタミナ量(仕事回数):230(23回) エリア お仕事内容 見つけたもの アイドル (太字は低確率出現) 衣装:シノビトラディション キュート クール パッション キュート クール パッション 34-1 雑誌インタビュー 柳瀬美由紀(10) 木場真奈美(10) 大槻唯(10) ― ― ― 34-2 アフレコ収録 長富蓮実(10) 水木聖來(10) 及川雫(10) 黄 緑 紫 34-3 音楽番組収録 五十嵐響子(10) 藤原肇(10) 姫川友紀(10) ― ― ― 34-4 CM収録 長富蓮実(10) 佐々木千枝(10) 真鍋いつき(9) 黄 緑 紫 34-5 ドラマ収録 関裕美(10) 木場真奈美(10) 姫川友紀(10) ― ― ― ボス:塩見周子 報酬:塩見周子、エナジードリンク、鍵付きクローゼット、9750マニー
https://w.atwiki.jp/25438/pages/3840.html
▼‐08 先生は、若い頃に間違いを犯したのだろうか。 力ずくに物事を決めて、傷ついたことがあったのだろうか。 そんなことを唯ちゃんに尋ねてみても、 どうなんだろうねえ、と、気の抜ける答えが返ってくるのみだった。 「でもそうね、悩むのはここまでにしましょう。力ずくで解決するわよ」 普段のふるまいらしからぬ和ちゃんの言葉に、他ならぬ唯ちゃんが驚いていた。 「和ちゃんが非行少女に……」 「なんでそうなるのよ。この事件を解決するだけでしょう。 そうね、わたしたちはさっきこう言った――証拠が出揃っているかも不明、ってね」 「それを力ずくに解決するってこと?」 「既に全て揃ってることにしましょう」 「えっ、それで本当に大丈夫なの!?」 今度は美冬ちゃんが、その決断に大慌てしていた。 「第一全てのミステリー作品は、この問題からは逃れられない。 これに決着をつけるのが、例えば“読者への挑戦”だったりするのだけど、 まあ、この際そんな仕掛けもいらないでしょう」 和ちゃんは最後のページで開きっぱなしの台本に目を移した。 「次のページから解決編。わたしたちのできる謎解きは、これだけよ」 「なるほど、この余白を“読者への挑戦”だって仮定するんだ」 「それに、わたしたちは作品世界の外側にいる。 今後知るはずだったような証拠も、既に手に入れているのよ」 くつくつ笑うちかちゃんは、だったら、と付け加える。 隣で眉根を寄せている美冬ちゃんの肩を抱き、高らかに言った。 「それですら演じてしまうのが、演劇部の務めじゃない?」 「え、ちか……?」 「美冬、やろう。せっかくなんだしさ、やっちゃおうよ……即興劇!」 ちかちゃんは励ますように語りかける。 そこに乗っかったのは、姫子ちゃんだった。 「それ面白そうじゃん。即興劇なんて、やったことないけどさ」 「でしょ? ほら、四人ともどう?」 「わたしは賛成かな」 と、わたしも乗っかってみる。楽しそうじゃないか。 「じゃあ、わたしも……やろうかな」 「よーし、和ちゃんが探偵役だね!」 「なんでわたしが……まあやってもいいけど」 「だってさっきの劇の再現だって、和ちゃんが探偵役だったじゃん!」 「はいはい、わかったわ」 美冬ちゃんが呆然としている間に、事は進んでいく。 たった一瞬の閃きが、火花を散らして、大きな花を咲かせた。 「仕方ないわね……でも」 と言って、抱えられた身体を抜いてから、ちかちゃんの前髪を掻き上げる。 あらわになったそのおでこめがけて、美冬ちゃんはデコピンをひとつ打つ。 「いたっ!」 「まるで演劇部代表のように言うけど……あなたは演劇部じゃないでしょう、ちか」 「……えへへ、まあノリでねー」 ▼‐09 さて、それぞれが演じる役は先程のものと同じだ。 つまり、以下のようなものになる。 #========================================= 加瀬田いずる ⇔ ラチェット(カセッティ) …… わたし 蛭田舞 ⇔ ヘクター・マックィン …… しずか 江戸川あすた ⇔ エドワード・マスターマン …… 姫子ちゃん 阿部なすみ ⇔ アーバスナット大佐 …… ちかちゃん 水阿利えな ⇔ メアリー・デベナム …… 美冬ちゃん 龍野こごみ ⇔ ドラゴミロフ侯爵夫人 …… 唯ちゃん 安藤れん ⇔ アンドレニ外交官 …… わたし 穂和呂るき ⇔ エルキュール・ポワロ …… 和ちゃん #========================================= 当然片方は既に死んでしまっているため、わたしが二役やることに問題はない。 ところで、新たなシーンを即興で作り上げてしまう手前、 それぞれの口調などは再現が難しいんじゃないかという姫子ちゃんの提案で、 事実関係はそのままに、名前や口調は普段のわたしたちの通りにすることになった。 原作では喋り方も鍵になったけれど、今回それは必要ないだろうというのが、 この意見に賛同した和ちゃんの意見だ。 演劇ってなんだろう、とは思ったけど、 即興劇を設定に沿って演る技術なんて持っていないので仕方ない。 ちなみに、そうなるとわたしの名前が二人出てくるので、 死んでる方は劇中の名前と同じにした。 さて、劇が始まればここは教室ではない。 雪山の上にある、コテージの一室。 全員が一同に会してくつろげる、癒しの空間である。 ぱちりぱちりと、薪の小さな拍手を受けながら揺れ踊る暖炉の炎が、部屋中を暖めてくれる。 しかし実際ここに流れている空気はどうだろう、 息苦しくなりそうなほどに冷たく、身を引き裂いてしまいそうなほどだった。 殺人事件が起きたのだから、これも当たり前といえば、当たり前だろう。 「やっぱりさ、山を下りて大人を呼ばない? どう考えても、加瀬田いずるを殺せたのは外部から鍵を持ち込んだ人だけだって」 そう主張するのは、姫子ちゃんだった。 空気が重い。当然と言えば当然のその意見にすら、巨大な圧力を感じる。 「だって密室を作ることができるのは、その人だけなんだよ? これ以上なにを立ち止まる必要があるっていうのさ」 「そうだね、この家に鍵はたった一つしかない。それは間違いないよ」 家の所有者のちかちゃんも断言した。 こればかりは真実で間違いないんだろう。 一方、すぐさま山を下りるのは早計だと、和ちゃんは反論した。 「密室の殺人を成立させる方法は、なにも合鍵を持っていることだけじゃないわ」 「というと?」 「例えば犯行時、既に部屋が密室状態だったとき。 これは部屋の中に、自動で作動する仕掛けが施されていたり、 あるいは他殺に見せかけた自殺だったりする場合ね」 唯ちゃんが目を丸くして言った。 「え、そんなことあるの?」 「まあ、唯の意見が正しいわ。今回は間違いなく他殺であり、仕掛けもない。 それは現場検証で明らかなとおりね」 では、と和ちゃんは繋げた。 「他に密室を成立させる方法はなにか。 最も単純なものが、施錠する手段を持っていることね。 つまり、今回の件でいえば、外部の人間がもう一つの鍵を持ち出したという、 一番信じやすい推論が該当してるわね」 「それがわたしの主張する推理だね」 「でも姫子、結論はまだ待ってほしいの。 これの他にも単純かつ明快な、密室を成立させる方法があるんだから」 「それが一体なんなのか、教えてほしいな」 「至ってシンプルよ。……ところで、しずかはどこにいるかしら?」 言われてはっとした。 そういえば、さっきまでわたしの隣にいたしずかがいない。 周囲を見渡してみても、どこにもいない。 あのちっこい身体に隠れられては、こちらも見つけるのに一苦労だ。 考えていると、待ってましたとばかりに、頭の中でフラッシュが散った。 ああそうか――考えてみれば、実に単純なことじゃないか。 「気づいたみたいね。そう、しずか、出てきていいわよ」 物陰から、しずかがいそいそと現れた。 元々かわいい小人の彼女は、もっと小さくなろうと、背中を丸めていた。 「わたしが提案する、密室を成立させた手法はこれよ。 “あの時点で犯人は密室内にいたけれど、姿が見えていなかった”!」 一番動揺していたのは、美冬ちゃんだった。 「え、ちょっと待って! 一体どこに隠れていたっていうの!」 「クローゼットの中でも、ベッドの中でも、それは同じよ。 ただし、わたしたちに姿を見せていない誰かが犯人だということね」 思い返してみる。あの時点、加瀬田いずるの死体が発見された時点で、 あの場にいた人間を。 蛭田舞、阿部なすみ、水阿利えな、穂和呂るき。 つまり、しずか、ちかちゃん、美冬ちゃん、和ちゃん。 「ということは、犯人は……この三人のうちの、誰かってこと!?」 美冬ちゃんは三人を――姫子ちゃん、唯ちゃん、そしてわたしのことを、指さした。 「ま……待ってよ! わたしじゃない! っていうか、そもそもその案が正しいとも限らない!」 「じゃあ外を見てみましょうか」 「外?」 「そう。そこには、まっさらな雪があるはずよ」 怪訝そうに外の景色を注意深く眺める姫子ちゃんの横で、 なぜかしずかが、顔を真っ青にしていた。 「ねえ、外の雪がなんだってのさ?」 「……足跡がないのよ」 「えっ?」 「昨日の夜、しずかが二階のベランダの柵上に乗っていた雪を落としたわ。 その場所にはちょうど窪みができていた。 そして今朝確認すると、その窪みは、そっくりそのまま残っていた……」 「……わたしたちが寝ている間に、雪は降らなかったんだね」 しずかが消え入りそうな声で呟く。 なにか事前に言われていたのだろうか。 「足跡や、他の跡でもいい。ともかく、昨日の猛吹雪が止んだ時点から今まで、 このコテージへの来客は“一人もいないということになる”」 「すると自動的に、和ちゃんの推理……犯人は部屋に潜んでいた、 というものを取らざるを得ないわけだ……」 「その通りよ、ちずる」 「でも待って」 疑問を投げかけてきたのは、ちかちゃんだった。 「密室を成立させる方法がたくさんあるように、雪に跡を残さない方法もたくさんあるんじゃない? なら、それも一応考えた方がいいんじゃないかな?」 なるほど、雪に跡をつけない方法。 今回はあり得ないだろうけど、例えば犯人が空中浮遊してやってきたとか。 ヘリコプターで飛んで来たとか。方法はいくらかあるはずだ。 ところが和ちゃんは、一定の理解を示しつつも、自分の意見を譲らなかった。 「そもそも密室が成立してる時点で、外部犯の存在は怪しいと思っているわ」 「なんで?」 「密室にすることで、得するのは誰だと思う?」 「それは真犯人なんじゃないかな」 それ以外の解答はないと思っていた。 密室をわざわざ作り上げることに、それ以外の理由があるものか。 「ええ、わたしも同意見よ」 なら、と言いかけたところで、和ちゃんは言葉を続けた。 「つまり“犯人にとってプラスに作用するなら”、密室を用意するのよね」 「当然」 「今回、外部犯にとって密室はプラスに作用した?」 少し考えてみた。 密室が成立しており、これといった仕掛けも施されていない。 ならば、単純に考えれば、外部にあるもう一つの合鍵を使ったのだろう。 この場合、犯人は外部の人間で、外部の合鍵に触れられた人間になる。 そういうことか。 「そう、むしろ密室は外部犯の犯行を示し、 あろうことか“自分のことを突き止める手がかりになっている”。 もちろんどんな密室でも、そういった一面があることは認めるわ。 でもこれは“最も単純な解法”が、犯人にマイナスの影響を及ぼしてしまってるのよ」 難解な仕掛けによって密室が施してあるなら、 犯人は、それが解き明かされた際のリスクがあっても、 むしろ進んで密室を成立させようとするだろう。 ところがこれほど単純な解法によって、犯人が追い詰められるとしたら。 犯人にとって密室は、足枷にしかならない。 「ところが翻ってみれば、これによってプラスの作用を受ける人たちがいる。 そう――、わたしたちのような、コテージの中にいる人間よ」 居間中の空気がどよめいた。 周囲の全てが疑わしく、またこちらに刃を向けているように映る。 「まあ、これはこっちのほうが可能性があるってだけのもので、 なにかを証明したわけじゃないけれど。 でも、外部犯の仕業って決め付けるにはまだ早いって、わかってもらえたかしら?」 「じゃあ、仮に和ちゃんの推理が正しいなら、あの部屋に潜んでいたのは誰だと思うの?」 質問で前のめりになっていたわたしを、和ちゃんは手で制した。 「少し待ってもらってもいいかしら。他にも検証しなくちゃいけないことが一杯だから。 そうね、まずは死体の状況から」 「死体には複数の刺し傷があるって聞いたけど?」 「さらにモノが荒らされた形跡もなかった。むしろ本人は盗む側の人間だったのだけれど」 和ちゃんは当然、わたしのほうに視線を向けた。 先程挙がった容疑者リストに、わたしが入ってることは先の通りだ。 おやおやなんてことか、犯人はわたしなのだろうか。 「この犯行は怨恨によるものとみて間違いないでしょう」 「複数回刺されてるからね」 「ただ、不可解な点が一つ。出血が少なすぎる」 「出血が少ない? あんなに血まみれだったじゃない」 「ええ、二ヶ所から出た血は、凄まじいものだった。 でも他の四ヶ所からは、出血の跡がほとんど確認されなかったのよ」 「そんなことが起こるの?」 唯ちゃんは純粋な瞳で、和ちゃんを見つめた。 思い詰めた表情だった和ちゃんも、その顔が途端に朗らかなものになる。 ぎゅっと縛られていた糸が、ふわっとほどけたみたいだ。 「起こるのよ、唯。傷が時間差でつけられたのであれば、ね」 「時間差?」 「そう、時間差。つまりこの複数の傷は、ついた時間に差があるということになる。 ……ますます外部犯の犯行が怪しくなってきたわね」 つまり犯人は二ヶ所をほぼ同時に刺した後、 時間を置いて、残りの三ヶ所を刺したということになる。 外部犯の仕業だとすれば、侵入して、しばらく家に居座ったということになる。 「さて、さっきこの事件は怨恨によって起こされたと仮定したわね。 怨恨によるものであれば、複数の傷や、物盗りの形跡がないことに説明がつく。 しかし複数の傷がついた時間にはズレがあったことも事実」 そこで、と和ちゃんは挟んだ。 「もう一つわたしは仮定するわ。この傷は、一人の犯人によってつけられたものではない」 「それって……、犯人は複数だということ?」 和ちゃんは頷いた。 「恨みを持った人間が複数いて、それらが一度に犯人へ制裁を加えられないのなら、 このような時間のズレがある傷も、説明がつくんじゃないかしら?」 「それはそうだけど、無駄が多いんじゃない? 最初の一人が殺せば、全て丸く収まるんだからさ」 「自分の手でやってやらなければ、気が済まなかった。 ……そんな理由なら、いくらでも挙げられると思うけれど?」 胸が、膨らんだ風船に詰められて圧縮されるみたいに、しゅるしゅると締め付けられる。 積もった気持ちを爆発させて、怒りのこもった反論をしてくれる人はいない。 被害者がそれほどに――といっても殺人は行き過ぎだけれど、なんにしても“悪”であったからだ。 「一人で何個の傷をつけたのかまではわからない。 けれど、一人でこの傷を全てつけたとは思えない」 「なら犯人は、さっき挙げた三人ってこと?」 姫子ちゃんは自分のことを少し前に出して、そう言った。 つまり、姫子ちゃんを含める、あの部屋に密室を施せた三人のことだ。 「犯人のうち一人以上はあなたたちの中にいるでしょうね。 でも、他のメンバーまでその中にいるとまでは言ってないわ」 「わたしたちの中に一人以上は、ね」 「心配しないでも、こう質問すれば簡単に済むことよ。 今朝、わたしが部屋を出たあと、部屋を出て行った人を見なかった?」 三人が、そう問われた。 と言われても、わたしたちに答えようがないのはわかりきってるはず。 ここで新しい設定を安易に作るわけにもいかない。 即興劇といっても、ただの即興劇ではないんだ。 和ちゃんはどうしてそんなことを聞いてきたんだろう。 「ああほら、そのとき寝てたよね確か」 助け舟を出してくれたのは、ちかちゃんだった。 「わたしが部屋に和ちゃんを呼びに行ったとき、 他の三人は確かに寝ていたよ。それなら、見てなくても仕方ないんじゃないかな?」 「ん、それもそうね」 助かった。ちかちゃんの機転が無ければ、わたしたちはとんでもないことを言っていたかもしれない。 劇をひっくり返してしまうような、とんでもないことを。 「なんでこんなことを聞いたの?」 「当然の質問だと思うけれど」 こちらの焦りなどどこ吹く風、というような返し。 だからといって、和ちゃんに自覚がないとは思えない。 自然と不自然が入り混じるこの空間にルールはあるのか。 「わからないなあ、和ちゃん。 さっきから和ちゃんは仮定に仮定を重ねてるだけ。 例えば、外部犯がわたしたちの仕業に見せるための、偽装工作なんじゃないの?」 「密室の問題のことかしら?」 「そうだよ」 強気のちかちゃんに、和ちゃんが珍しくたじろいだ。 そうか、いくら和ちゃんでも、これは即興の劇。 全てを考えて話しているわけじゃないんだ。 「……そうね、少し考えさせて」 わたしたちを吊っていた糸が切られた。 たるんだ糸はもうわたしたちを拘束できるほどの力はない。 緩んだ気持ちから、唯ちゃんが姫子ちゃんと雑談を始める。 「でも友だちの別荘にお泊りなんて、いいよね~」 「そうだね。こんなことさえ起きなければ、ね」 「わたしがムギちゃん家の別荘に行ったときはね、 皆でおんなじ部屋に布団敷いて寝るから、絶対安心なのです」 「というか、軽音部がこんなことに巻き込まれるわけないと思うけど?」 「でへへ、そりゃそうだね~」 こらこら、一応これは即興劇。軽音部なんて、メタなもの出しちゃいけません。 とか思ってたら、和ちゃんの表情が一変した。 「そう、それよ! なんでこんな簡単なことに気づかなかったのかしら!!」 「ど、どうしたの和ちゃん!?」 普段見ない和ちゃんのはしゃぎっぷりに、唯ちゃんも戸惑いを隠せないようだ。 「ねえちか、加瀬田いずるが外部犯に殺されるとしても、このタイミングは無かったんじゃないかしら」 「どういうこと?」 「だって本来あの部屋は“複数人で寝ているはずよ”」 ちかちゃんがなにかはっとした表情をした。 「そう、そうなのよ。あの部屋に他の人物がいれば、殺人は実効されない。 目撃される可能性が極めて高いのだから。リスクが高すぎるわ。 でも、それが実行されているということは、犯人はあの部屋に加瀬田いずるが一人でいることを知っていた」 「でもこのコテージの電話は繋がらず、携帯も同様……」 「この状態で加瀬田いずるが部屋に一人でいることを知れるのは、 コテージにいる人間だけだった!」 実に単純な話だった。 この部屋割りは当初予定されていたものではなく、 あの日あのとき、はじめて決まってしまったものなのだから。 「これに気づいていれば、密室の話はいらなかったかもね」 「……そうとも言い切れないわ、美冬。 だってコテージの中にいる人にも、密室は作れることを証明したんだから」 和ちゃん、微妙に負けず嫌いだ。 「さらに部屋に一人でも……例えば元々一緒のはずだった姫子や、 それ以外のわたしや、そういう人たちが中に入ってもまずかった」 「それはどうして?」 「あの布団を見たでしょう。例え掛け布団の上からでも、只事じゃないことがよくわかる。 つまりこの状況は、犯人に作られたものなのよ」 これに反論したのはまたしてもちかちゃんだった。 「冷静に考えてみて。この状況を作ったのは他でもない、“加瀬田いずる本人なんだよ”。 それがどうして犯人に作れたっていうの?」 「そうね、それこそ犯人にとって強固な壁であり……弱点でもある。 この状況を作り上げることが、加瀬田いずる以外に作れたとすれば、それは誰か!」 和ちゃんが鋭い視線を送ったのは、わたし――の隣で小さくなってる小人。 5
https://w.atwiki.jp/jrnambu/pages/55.html
種別表示 00-空白 01-回送 02-臨時 03-試運転 04-団体 05-京葉線 06-各駅停車 07-快速 08-通勤快速 09-普通 10-空白行先全面表示 00 (列車種別表示のみ) 01-東京 02-新木場 03-南船橋 04-新習志野 05-海浜幕張 06-千葉みなと 07-蘇我 08-千葉 09-誉田 10-大網 11-茂原 12-上総一ノ宮 13-大原 14-勝浦 15-姉ヶ崎 16-木更津 17-君津 18-上総湊 19-東金 20-成東 21-西船橋 22~29 空白 東金線直通 外房線直通 内房線直通各駅停車 00 (列車種別表示のみ) 01-東京 02-新木場 03-南船橋 04-新習志野 05-海浜幕張 06-千葉みなと 07-蘇我 08-千葉 09-誉田 10-大網 11-茂原 12-上総一ノ宮 13-大原 14-勝浦 15-姉ヶ崎 16-木更津 17-君津 18-上総湊 19-東金 20-成東 21-西船橋 22~29 空白 東金線直通 外房線直通 内房線直通快速 00 (列車種別表示のみ) 01-東京 02-新木場 03-南船橋 04-新習志野 05-海浜幕張 06-千葉みなと 07-蘇我 08-千葉 09-誉田 10-大網 11-茂原 12-上総一ノ宮 13-大原 14-勝浦 15-姉ヶ崎 16-木更津 17-君津 18-上総湊 19-東金 20-成東 21-西船橋 22~29 空白 東金線直通 外房線直通 内房線直通 外房線内各駅停車通勤快速 00 (列車種別表示のみ) 01-東京 02-新木場 03-南船橋 04-新習志野 05-海浜幕張 06-千葉みなと 07-蘇我 08-千葉 09-誉田 10-大網 11-茂原 12-上総一ノ宮 13-大原 14-勝浦 15-姉ヶ崎 16-木更津 17-君津 18-上総湊 19-東金 20-成東 21-西船橋 22~29 空白 東金線直通 外房線直通 内房線直通 外房線内各駅停車普通 00 (列車種別表示のみ) 01-東京 02-新木場 03-南船橋 04-新習志野 05-海浜幕張 06-千葉みなと 07-蘇我 08-千葉 09-誉田 10-大網 11-茂原 12-上総一ノ宮 13-大原 14-勝浦 15-姉ヶ崎 16-木更津 17-君津 18-上総湊 19-東金 20-成東 21-西船橋 22~29 空白 更新情報 2015.09.21 ページ作成、各種追加 2015.11.07 多数追加
https://w.atwiki.jp/imas_cg/pages/506.html
2012/09/18 開放 ステージボス:松尾千鶴 衣装コンプ:首藤葵 初登場アイドル(ノーマル):星輝子、太田優 必要スタミナ 4020 福岡A 福岡B 福岡C 福岡D 福岡A スタミナ:-7 経験値:+7 マニー:+70~210 ファン:+4~11 各お仕事の必要スタミナ量(仕事回数):154(22回) エリア お仕事内容 見つけたもの アイドル (太字は低確率出現) 衣装:ラジカルトラッド キュート クール パッション キュート クール パッション 43-1 本屋でサイン会 緒方智絵里(9) 水野翠(11) 衛藤美紗希(11) 橙 青 赤 43-2 本屋で握手会 関裕美(10) 木場真奈美(10) 衛藤美紗希(11) ― ― ― 43-3 CDショップでサイン会 横山千佳(10) 多田李衣菜(9) 星輝子(11) 青 赤 燈 43-4 CDショップで握手会 太田優(11) 木場真奈美(10) 真鍋いつき(9) ― ― ― 43-5 イベントでキャンペーンガール 関裕美(10) 新田美波(11) 及川雫(10) 黄 緑 紫 ボス:松尾千鶴 報酬:松尾千鶴、エナジードリンクx1、スタミナドリンクx1、12,000マニー 福岡B スタミナ:-8 経験値:+8 マニー:+80~240 ファン:+4~12 各お仕事の必要スタミナ量(仕事回数):184(23回) エリア お仕事内容 見つけたもの アイドル (太字は低確率出現) 衣装:ラジカルトラッド キュート クール パッション キュート クール パッション 44-1 ミニスタジオで撮影会 五十嵐響子(10) 佐々木千枝(10) 星輝子(11) ― ― ― 44-2 デパート屋上でミニライブ 関裕美(10) 新田美波(11) 衛藤美紗希(11) 橙 青 赤 44-3 グラビア撮影 太田優(11) 木場真奈美(10) 大槻唯(10) ― ― ― 44-4 CDショップでミニライブ 関裕美(10) 水野翠(11) 衛藤美紗希(11) 青 赤 橙 44-5 ラジオ収録 横山千佳(10) 木場真奈美(10) 及川雫(10) ― ― ― ボス:松尾千鶴 報酬:トレーナー、エナジードリンクx1、鍵付きクローゼットx1、12,250マニー 福岡C スタミナ:-9 経験値:+9 マニー:+90~270 ファン:+5~14 各お仕事の必要スタミナ量(仕事回数):216(24回) エリア お仕事内容 見つけたもの アイドル (太字は低確率出現) 衣装:ラジカルトラッド キュート クール パッション キュート クール パッション 45-1 ライブハウスでミニライブ 長富蓮実(10) 水木聖來(10) 姫川友紀(10) 黄 緑 紫 45-2 バラエティ番組収録 関裕美(10) 水野翠(11) 海老原菜帆(10) ― ― ― 45-3 ストリートでミニライブ 太田優(11) 藤原肇(10) 衛藤美紗希(11) 橙 青 赤 45-4 グラビア撮影会 柳瀬美由紀(10) 木場真奈美(10) 海老原菜帆(10) ― ― ― 45-5 グルメ番組ロケ 長富蓮実(10) 藤原肇(10) 星輝子(11) 青 赤 橙 ボス:松尾千鶴 報酬:トレーナー、エナジードリンクx1、スタミナドリンクx1、12,500マニー 福岡D スタミナ:-10 経験値:+10 マニー:+100~300 ファン:+5~15 各お仕事の必要スタミナ量(仕事回数):250(25回) エリア お仕事内容 見つけたもの アイドル (太字は低確率出現) 衣装:ラジカルトラッド キュート クール パッション キュート クール パッション 46-1 雑誌インタビュー 横山千佳(10) 木場真奈美(10) 及川雫(10) ― ― ― 46-2 アフレコ収録 関裕美(10) 藤原肇(10) 星輝子(11) 黄 緑 紫 46-3 音楽番組収録 長富蓮実(10) 水野翠(11) 衛藤美紗希(11) ― ― ― 46-4 CM収録 関裕美(10) 新田美波(11) 海老原菜帆(10) 黄 緑 紫 46-5 ドラマ収録 太田優(11) 木場真奈美(10) 衛藤美紗希(11) ― ― ― ボス:松尾千鶴 報酬:松尾千鶴、エナジードリンクx1、鍵付きクローゼットx1、12,750マニー
https://w.atwiki.jp/rnext/pages/285.html
Traffics(前編) 『まず、この放送を目にしている参加者の皆様に突然の無礼を詫びさせてもらう』 唐突に携帯電話から流れた放送。 『私……橘朔也は、君達と同様、このゲームの参加者だ』 参加者の一人である橘朔也から、全ての参加者へと発信されたメッセージである。 『単刀直入に言わせてもらおう。……私は、ゲームの終了に必要な鍵を所有している』 それはあるいは喉から手が出るほど求める物に。 『こちらの現在地は――――君達も察しがついているだろう。……そう、放送局だ』 それはあるいは格好の獲物の在り処を示すものに思えただろう。 『ここから我々は――!?』 唐突に始まったその呼びかけは、終わりも唐突であった。 ◇ ◆ ◇ 北崎は放送を見終わり、携帯をしまう。 「放送局か……」 今の放送で、放送局に集まる参加者は少なくないだろう。橘を救い出そうと、もしくは息の根を止めようと。 「面白そうじゃない……」 見る者に恐怖を与える、凶悪な笑みの浮かんだ幼い顔。 変身の制限時間が切れるのを待つために不本意に時間をつぶしていた不満を解消する機会がじきに巡ってくる。 多数の参加者を全てねじ伏せ、自分が絶対の力を持っている事を思い知らせる。 それは自分にとって至福の時間となる。 「……だけど、まだ早いかもな」 現在地から放送局までは程近い。今から向かって到着する頃にはまだ参加者は集まっていないかもしれない。 それに、オーガとシザースの制限が切れるまでにはまだ少し時間が必要だ。 それなら。 「寄り道していこうっと」 つぶやき、凱火を走らせる。 まだこの近くにいるはずの歌舞鬼を探しに。 ◇ ◆ ◇ 「……今の、どう思う?」 澤田は隣に座る真魚に尋ねた。 「どうって……」 予想通り答えに詰まった真魚を見て、携帯を閉じる。 先刻、侑斗と一戦交えた地点から少し北に移動し、彼がまた来るかもしれないと警戒していたがその気配もなく、今後どこへ向かうべきか考えていた所だった。 「はっきり言って、他人の心配をしていられる余裕なんかないでしょ?」 「そうだけど……」 木陰に並んで座るその光景は、傍目には普通のカップルにしか見えないだろう。 「でも、気になるじゃない」 「まあね」 認める。特に最後、あんな中途半端に終わったのを見れば何かあったと思うに決まっている。 「だけど、ここからその放送局までかなり遠いんだよ? 僕らが着く頃にはもう彼はいないかも知れない」 救出されるにしろ殺されるにしろね、とは言わないでおく。 「まあともかく、僕らがこれからどうするのかはちゃんと考えないとね」 東西を禁止エリアに挟まれたこのエリアでは北か南しか進みようがない。 真魚には、北の研究所に参加者が集まるかもしれないと言ってある。 スマートレディから電話で聞いた事は伏せ、首輪を外す方法を研究所で探す参加者がいるかもしれないと話した。 人の多い所は避けたいので北へは向かいにくい。 しかし、南には先ほど倒し損ねた侑斗(澤田は名前を知らないが)が逃げていったはずだ。 それを言った所、真魚は南へ行く事に難色を示した。 彼女は彼に対してあまり悪い印象は持たなかったようだ。 それを考えるとなぜか面白くなくなってくる。彼女は自分を頼りにしているのではなかったのか。 彼女を待たせて、そいつを片づけてこようかとも考えた。 ひょっとすると多少態度に出たかもしれない。彼女はとりあえず落ち着いて考えよう、と提案してきた。 そこに今の放送があった。 「とりあえず南に行って、人のいなさそうな所を探そうか?」 と言ってみるが真魚は、 「ん……」 まだ悩んでいる。 いよいよ不機嫌になり始めた澤田はデイパックからペットボトルを取り出し、水をゴクゴクと飲み始めた。 ◇ ◆ ◇ 急に途切れた放送に、侑斗は思わず立ち上がった。 「なんだ? 一体どうしたんだ?」 橘という男の身に何かあったに違いない。 今すぐに放送局に駆けつけたい所だが、さっきゼロノスに変身したばかりで制限の時間はまだ過ぎていない。 それに、はぐれてしまった香川を放っておく事もできない。 「くそ、どうすればいいんだ……」 歯がゆい思いをしながらつぶやく。 しかしその場には彼一人しかおらず、答えてくれる者はいない。 「香川さん……デネブ……」 そのつぶやきも風の中へ消えていく。 一人でいる事がこんなに心細いとは思わなかった。 いつも一緒にいて、共に戦ってくれたデネブ。 この殺し合いの中で幸運にも最初に出会い、様々な助言をくれた香川。 だがデネブは殺されてしまい、香川は消息が知れない。 この殺し合いはなんとしても阻止したい。そう意気込んでいた。 だが現実には一条や海堂、放送で呼ばれた見知らぬ人々はことごとく命を落としている。 それらの人々どころか、自分の隣にいた人さえ守り切れていない。 「ちくしょう……!」 吐き捨てても現実は何も変わらない。 がっくりと肩を落とす。 自分は人に頼り切りの子供だったことを痛感する。 強くならなければならない。人を守るために。 「もうこれ以上、誰も……!」 拳を強く握りしめ、侑斗は歩き出した。 たとえ一人でも、それでもできる事があると信じて。 ◇ ◆ ◇ 侑斗を――正確には侑斗にそっくりな京介を探している葦原と木場は一旦カブトエクステンダーを停めて放送を聞いていた。 いきなり中断され、顔を見合わせる。 「どうしたんでしょう?」 「さあな」 葦原は答えるとヘルメットのバイザーを下ろした。 「とにかく、まずは侑斗ってヤツとちゃんと話をつける事だ。その後で考えていい」 「……わかりました」 カブトエクステンダーが走り出したので葦原にしがみつく木場。 色々と取り留めのない事を考えていると、葦原が声をかけてきた。 「あんまり何でも背負い込もうとするな。誰にでも限界はある」 「でも……」 「今のは俺だって気になるさ。だが、考えることはそれ以外にもたくさんある。一つずつ片づけていくしかないんだ」 「…………」 気休めを言うでもなく、突き放すでもない。葦原の言う事は現実的だ。 どうにもできなかった事態は木場も経験がある。一度や二度ではなく。 確かに、いくつもの問題を同時に手につけていたらかえって上手くいかないかもしれない。 それなら、一つに集中した方がまだマシだろう。 「……ん?」 と、何かが聞こえた気がして声を上げる。 「どうした?」 木場のつぶやきが聞こえたのだろう。葦原が聞いてくる。 「いえ、今何か聞こえたような……なんだか何かがぶつかる音だったような」 「どっちだ?」 「多分……こっちです」 木場は北への道を指差した。 ◇ ◆ ◇ バイクにまたがったまま後ろの京介と共に放送を聞いていた歌舞鬼は携帯をしまい、エンジンを噴かす。 「い、いいんですか歌舞鬼さん?」 「んん?」 声を上げる京介。まだ落ち着いていないようだ。 「そうは言ってもなぁ、こんな事になったらお前、そのホーソーキョクとやらに人が集まるだろ? 北崎みてえのもいるかもしんねえぞ?」 「そ、そんな」 情けない声を上げる京介に笑いながら、 「だからよ、逆に人の少なそうな所に行こう。北の方だったらあんまりいないんじゃないかと思うんだよ」 地図で見ると、北側のエリアには人の集まりそうな施設はほとんどない――と歌舞鬼は思っていた。 研究所や大学などがどういう場所かよくわからないゆえの思い込みなのだが。 それに北崎は南側のエリアにしばらく留まるのではないかと思われた。 さっき遭遇したのはこの近辺だし、今の放送で放送局のある南側に人が集まると予想できるからだ。 アクセルをひねり、バイクを走らせる。 「よし、少し急ぐか」 「は、はい」 必要以上に強く歌舞鬼にしがみつく京介。相当不安らしい。 「そんじゃ、スピードアップだ!」 少し深めにアクセルをひねり込み、加速する。 「おお、速ぇな!」 予想以上の加速に歓声を上げる。 「よし、もっと上げるか!」 風を切る感覚に爽快になり、さらに加速し―― ガッシャーン! カーブを曲がりきれず転倒してしまった。 「つ~」 歌舞鬼は背中を押えながら立ち上がった。調子に乗りすぎたらしい。 「おい、京介、大丈夫か?」 「いっててて……」 京介は胸と顔を押さえている。けっこう強く倒れて顔もすりむいたようだ。 「運動神経ねえなあ、お前」 「ひどいっすよ歌舞鬼さん……」 なんとか二人でバイクを起こして再び乗ろうとした時、自分達が来た方の道路から別のバイクが走ってくるのに気づいた。 「ん?」 京介も気づいて見る。そして声を上げた。 「あ、あいつらさっきの!」 乗っているのは先程京介に迫っていた二人組の男達だった。京介を追ってきたのか。 こちらに気づいたらしく、後ろに乗っている者がこちらを指差している。 「行くぞ、京介!」 再び走り出す歌舞鬼。 京介はまたも強くしがみついた。 ◇ ◆ ◇ 森を抜け、川を渡り、坂を越える。 そうして道なき道を進み、ようやく舗装された道路が見えてきた。 「お、見えてきた見えてきた」 橘という人物の放送を聞いて彼の元へ向かった一文字・志村と別れ、病院を目指して竜巻を走らせるヒビキは歓声を上げた。 禁止エリアを迂回するためとはいえ、悪路ばかり走っていては手塚のケガにも響く。 肩越しに手塚の様子を伺うと、自分の背中に顔を突っ伏したまま動かない。やはり相当参っているようだ。 「手塚、そろそろ休憩にするから、もう少し頑張ってくれ!」 道路へ乗り上げ、そのまま南へ向かってハンドルを切った。 ◇ ◆ ◇ 動物園とはこんなに不気味な場所だったろうか。 動物どころか人っ子一人いない動物園を歩き回り、香川はため息をついた。 さっき自分がいたホテルと同様、ここも数ヶ月は放置されているようだ。 侑斗や海堂の姿はなく、人がいた気配もほとんどない。 とりあえず入り口へ足を向ける。誰か通りがかったり立ち寄るかもしれない。 (動物園か……) ――パパ! 数年前、家族で動物園に遊びに言った事を不意に思い出した。 息子の裕太が嬉しそうにたくさんの動物達の檻の前を走り回り、妻と一緒に追いかけるのが大変だったほどだ。 ミラーワールドを巡る戦いに身を投じ、神崎士郎によって手を引く事と家族の命とを選ぶ事を強要された時、迷わず家族を見捨てる選択をした。 家族はもちろん大事だったが、ミラーワールドを閉じなければ多数の人々がミラーモンスターの餌食になってしまう。 それを阻止するためには犠牲は覚悟しなけらばならない。彼の持論である英雄的行為だ。 だからオルタナティブ・ゼロに変身し戦ったが、その最中に現れた龍騎に家族は無事だと教えられ、戦闘の後すぐに連絡を取った。 電話がつながった時の安堵感は忘れられない。ミラーワールドの問題は解決していないとはいえ、やはり家族が無事だったのは嬉しかった。 あの時ばかりは龍騎――城戸真司に感謝した。だから彼は英雄の器ではないのだが。 思わず感傷的な気分になってしまう。もう一度家族に会いたい。 必ず生還する。ミラーワールドを閉じるためにも、家族のためにも。 そういえば、城戸もこの殺し合いに参加させられていたはずだ。名簿に名前があった。 会えば、恐らく手を貸してくれるだろう。そうでなくても、誰かに協力しているに違いない。 考えながら歩いていて、入り口に着いた。 入場券売り場に入ろうとして、音が聞こえてきた。 耳を澄まし、しばらく聞き入っていると、どうやらバイクのエンジン音のようだ。 塀に身を隠し、その陰からのぞく。 やがてバイクが北の方から走ってきたのが見えてきた。運転しているのは男のようだ。 段々近づき、その後ろに誰か乗っているのが見えた。 仲間だろう。という事は友好的な人物である可能性が高い。 一か八か、香川は道路で飛び出し、両手を振った。 当然バイクの男は気づき、自分の近くで停車した。 「こんにちは」 にこやかに挨拶する男。歳は30前後ほどだろう。 「私は香川と申します。この殺し合いを止めようと考えています」 「俺は日高仁志。ヒビキって呼んで下さい。こっちは手塚」 ヒビキは後ろの男の紹介もした。思った通り友好的だった。 ただ、彼の言葉に二重の意味で知る名があった。 「手塚……?」 名簿を思い出す。そこには確かに手塚という名があった。しかも直接の面識はないものの、彼の知る人物の名前だ。 手塚海之。 神崎士郎からライアのデッキを渡されながら、戦いを止めようとしていたライダーだ。 だが彼はすでに命を落としたはず。名簿を見た時から不思議に思ってはいた。 彼以外にも、芝浦淳も同様に死んだはずだが名簿に名があった。第一回放送でその名前が呼ばれたが。 「ちょうどいいや。手塚はケガしてるんです。この中に運ぶの手伝ってもらえませんか?」 「ええ、いいですよ」 バイクごと動物園の中へ入る三人。 自分の幸運に感謝しつつ、色々と情報を聞かねばならないと考えていた。 ◇ ◆ ◇ 彼らが歩む道は、同じ空間にありながら全て異なる方向へ向いていた。 ある道は他の道と交わり、またある道はさらに違う道へ分岐し。 この島そのものが大きな運命の交差点と言えるだろう。 そして今、いくつもの道が一本に交わりつつあった。 ◇ ◆ ◇ 澤田はすっくと立ち上がった。 彼の耳が遠くから風に運ばれた音をとらえたからだ。 「どうしたの?」 尋ねる真魚。 「あっちの方、遠くから何か音が聞こえたんだ」 北の方を指す。 結構遠いのかはっきりとは聞こえなかったが、バイクのエンジン音ではないだろうか。 真魚はそちらへ目を向ける。 「誰かいるのかな?」 澤田は少し考え、 「よし、行ってみよう」 座っていた真魚の手を引いて立たせ、丘を登る。 「ねえ、道路から行かないの?」 「ばったり出くわすのは避けたいからね」 正直、真魚が動く事を渋っていたので、動かすいい口実が出来たと思った。 様子を見に行くだけだ。いざとなれば自分が真魚を守る。 自分がかなり自然に真魚を守るべき対象として意識している事に、澤田は違和感を感じないでいた。 ◇ ◆ ◇ 「ありがとう、香川さん」 「いえ」 休憩所のベンチに寝そべり礼を言う手塚。 すでに情報交換はかなり進んでいた。 ヒビキからは第2回放送の内容を教えてもらい、海堂とデネブが死んだ事。 橘の放送が行われた事。 ヒビキ達のグループは手塚を病院へ連れて行くために別行動中である事。 そのグループに城戸真司がいる事。 北條と言う人物が首輪の分析のために乃木と言う怪人に連れて行かれた事。 さらに志村と一文字という人物が橘を助けるために放送局へ向かった事などを聞いた。 香川も侑斗が時の列車の持ち主で恐らくこの島からの脱出の最重要キーパーソンである事。 木場に襲われた事と彼、ひいてはオルフェノクは危険である事、主催者であるスマートブレイン社長もオルフェノクである事。 立ち寄ったホテルで起こったと思われる事などを話し合った。 そして自分は神崎士郎の目論見を打ち砕くべく動いている事を手塚に話した。 それを聞いて、手塚は驚きながらも自分を信用してくれたようだ。 ライアのデッキは別行動中の志村に預けたという。聞けば別の変身アイテムがあるらしい。 彼が死んだはず、という事は言わなかった。さすがにケガ人にそんな事は聞けない。 「他のメンバーは、その乃木と言う男の指示で動いているんですね?」 「ええ。青いバラを探せって言われてるらしいです」 「青いバラ?」 その言葉に、先ほど林の中で見た美しい青いバラを思い出す。 「なんでかはよくわからないんですけど、多分この首輪に関わりがある事だろうって」 自分の首元を指しながらヒビキ。 それならば、ちゃんと教えた方がいい。 「青いバラなら知っていますよ。この目で見ました」 「本当ですか!?」 その言葉に驚くヒビキと手塚。 「ええ。このすぐ近くに咲いていました」 「案内してもらえます?」 言いながらヒビキは立ち上がり、自分の荷物を肩に担いだ。 「手塚、ちょっと行ってくる。少し待っててくれ」 「わかりました」 「念のため、バイクは置いてくから」 バイクのキーをテーブルに置き、二人は動物園を後にした。 ◇ ◆ ◇ 「来ないな……」 斜面にしゃがみ、双眼鏡をのぞいていた侑斗はつぶやいた。 さっき遭遇したナオミらしい少女と男がこっちへ来るのではないかと考え、遠くから双眼鏡で様子を伺っていたのだ。 香川は北にいると考えられるので、なんとかこの道を北上したい。 だが、まだ変身できないので鉢合わせは避けねばならない。 しばらく待っていたものの、北側からは人影は見えない。 「どうするかな……ん?」 考えていると、逆の方向からバイクの音が聞こえてきた。 こっちから来る事は考えていなかった。そちらへ双眼鏡を向ける。 二人が乗ったバイクが道路を走っている。 運転している男に見覚えはない。後ろに乗っている人間の顔はよく見えない。と、 ガッシャーン! 「あ」 カーブを曲がろうとした時、バイクごと転倒してしまった。 二人ともケガは大した事はなさそうで、フラフラと立ち上がってバイクにまた乗ろうとしている。 そこで後ろに乗っていた男の顔が―― 「えっ!?」 思わず大声を出していた。 そこには自分がいた。 自分と同じ顔をした男だった。 最初に会場で見かけた自分にそっくりな男に違いない。 すぐにそこへ向かおうとすると、彼らの後ろからもう一台バイクが走ってきた。 彼らの近くでバイクを停め、彼らへゆっくり近づく。 運転していたのはやはり知らない男。だが後ろに乗っていたのは―― 「木場……さん!?」 間違いなく、木場勇治だった。 気がつくと侑斗は走り出していた。 行かなければ。ちゃんと話さなければ。 自分のせいで事態はおかしくなってしまった。 だから、自分が何とかしなければいけないのだ。 転がりそうになりながら踏ん張り、斜面を駆け下りていった。 ◇ ◆ ◇ 「ってぇ~……」 「歌舞鬼さん……勘弁して下さいよ、ホント……」 「たはは、ワリぃワリぃ」 立ち上がりながら恨み事を言う京介。 今度は尻を打ったらしくさすっている。 歌舞鬼はというと、どうという事はない。 すぐにバイクを起こそうとするが、そこへ後ろから別のバイクが到着した。 「あ……!」 京介が声を上げる。 バイクから男が二人降りてくる。 ◇ ◆ ◇ 「大丈夫ですか? ケガは?」 ようやく追いついたが、相手はバイクで転倒してしまったようだ。 心配だったので木場は二人に声をかけた。 「く、来るなよ!」 後ずさる侑斗――らしい人物。木場は足を止めて、 「落ち着いてください。俺の話を――」 「おい」 もう一人が侑斗の前に立ちはだかる。 すると木場の表情が急に引きつった。 「も……森下さん!?」 「あ?」 木場は青ざめ、よろめいた。 それは見覚えのある顔だった。 かつて木場の恋人だった千恵の兄の義正だ。 自分が殺した彼女の仇を探して自分を訪ねてきた後オルフェノクに襲われ、彼自身もオルフェノクへ覚醒してしまった。 そして彼は自分がオルフェノクになったのは妹の仇を討つために神が授けてくれたものと思い込んでしまい、暴走して無差別に人を襲ったためファイズ――乾巧に倒された。 すべての発端となったのは、自分が千恵を殺した事だ。それさえなければ彼は人の道を踏み外す事はなかっただろう。 それゆえ、彼に対しては強い悔恨の情が残っていた。 その彼を目の当たりにして、木場は心を押しつぶされそうになっていた。 「森下さん……なんですか!? どうしてこんな所に……あなたはもう死――」 「待て待て待て、俺は歌舞鬼だ。モリシタなんて名前じゃあねえ」 手を上げて否定する森下――いや歌舞鬼。木場はそれを聞いてしばし呆然としていたが、 「そ、そうですよね……あの人はもう死んでるんだし、名簿にも名前なかったし……」 「そんなに似てるのか?」 葦原が聞くので、頷く。 「はい……とてもよく似ています」 「へぇ、俺みてぇな男前がいるってぇ? どう思うよ、京介?」 おどけながら後ろの侑斗に声をかける歌舞鬼。 だが彼はそんな事を言っている場合かとばかりに非難のまなざしを向けてくる。 「キョウスケ? そいつは桜井侑斗じゃないのか?」 歌舞鬼の言葉に、葦原が反応した。木場も耳を疑った。 「おい京介、名乗ってやったらどうだ?」 「お、俺は桐矢京介だ。サクライなんてし、知らない」 それを聞いて木場と葦原は顔を見合わせた。 「おい、こっちは名乗ったんだからよ、そっちの名前も教えちゃくんねえか?」 言われて、二人とも再度顔を見合わせる。 「俺、木場勇治っていいます」 「俺は葦原涼だ」 「キバにアシハラか。悪いがこいつは京介だ。お前らの探してるサクライとかいうのとは違う」 「でも……」 「木場さーん!」 不意に大声。その方向を全員が向いた。 「えっ!?」 京介がもう一人走ってきていた。 同じ顔の人間を二人も目の当たりにして、全員が驚いていた。 四人の前に現れたもう一人の京介はハアハアと肩で息をしながら口を開いた。 「木場さん……ハア、ハア……」 「君……」 木場がつぶやく。 「お前、桜井侑斗か?」 息を切らしながら葦原の問いかけに頷くもう一人の京介――侑斗。 「……たまげたな、こりゃ」 侑斗と京介は本当にそっくりだった。これではみんな間違えて当然だろう。 「そっくりさんって、意外といるもんなのかね」 「そ、そうですね」 と、今も間違えられた歌舞鬼と間違えた木場。 京介も侑斗の顔をまじまじと見つめる。 「……ホント、気持ち悪いくらい似てるな」 「まったくだな」 京介の言葉に葦原が同意を示した。そして木場に声をかける。 「おい、こいつに話があるんじゃなかったのか?」 「あ……はい」 二人がそっくりすぎる事に呆然としてしまっていたが、気を取り直して侑斗の前に立つ。 「その、あの時は俺――」 「すいません木場さん、さっきはひどい事を言ってしまって」 話そうとしていると、いきなり頭を下げられた。 「謝っても許してもらえないかもしれないけど、本当にごめんなさい」 「君……」 頭を下げたまま謝る侑斗。 木場は驚くと同時にとても嬉しかった。 「いや……大丈夫だよ、俺は。あの時は君も無事だったし」 「いえ、俺が悪いんです。俺が赤カードの代償の事を忘れていたから……」 「代償?」 木場が聞き返すと、侑斗はデイパックからベルトを取り出した。 「香川さんはあの時、このゼロノスベルトに赤のカードを使って変身したんです。 これ、今まで俺しか使った事がなかったからうっかり忘れていたんだけど、赤を使った人間は自分を知る人から記憶が消えてしまうんです」 「え?」 「そのせいで木場さんは香川さんの記憶を失ってしまったんですよ。そこにあんな写真とか見てしまったから……」 急に突拍子のない事を言い出す侑斗。 頭の中で言われた事を噛み砕く。 「じゃあ俺は、あの香川って人に会った事が?」 「はい。あのショッピングセンターでの戦いの時、香川さんと話をしたはずです」 「でもそんなはずは……あの場には海堂や北崎、あと怪物とかはいたけど……」 あの場は三度に渡り――最初は北崎、次いで鳥の怪物、そして巨大な赤い怪物――数名が入り乱れて戦いが行われたが、彼の事は全く記憶にない。 「あの赤いヤツが現れた時の事は?」 「それは覚えてる。僕も君も変身できないから海堂と……」 もう一人が戦った、と言いかけて、それが誰なのか思い出せず口ごもった。 確かにあの時、海堂の他にもう一人戦っていたのだ。 だが、それは誰だ? 全く思い出せない。 もし侑斗の言う通りならば、それが香川だ。 だが自分の記憶から香川の記憶がなくなってしまい、誰かがいたという記憶だけが残った。 そう考えれば説明はつく。 「じゃあ俺は本当に……」 そうなると香川に攻撃したあの時、彼らからすれば味方と思っていた人物がいきなり襲いかかってきた事になる。 裏切られたと思って当然だ。いや、裏切り以外の何物でもあるまい。 「そんな……」 頭を殴られたような衝撃を感じてひざが崩れた。 裏切ったのは彼ではなく自分の方だったのだ。 そんな木場の肩を侑斗がつかんだ。 「木場さんは悪くないんです。俺の、俺のせいで……」 侑斗が慰めの言葉をかけてくれるが、木場は自分を責めていた。 「俺はどうしたらいいんだ……」 「さっきの放送じゃ香川って名前はなかったな。って事はまだ生きてるんだろう」 そこで葦原が口を開いた。 「じゃあ木場、その香川って人を探すのに手を貸してやれ。俺も協力する」 「葦原さん……」 葦原を見上げる木場に、侑斗も、 「俺からもお願いします、木場さん。香川さんが見つかったら、俺からちゃんと説明しますから」 「二人とも……」 二人の言葉に思わず涙が溢れてきてしまった。 この二人は、とても優しい人達だ。オルフェノクである自分をさえ受け入れてくれた。 やはり人間にもいい人はいる。それはとても嬉しい事だと感じた。 「ありがとう……ありがとう……」 木場は侑斗と葦原に何度も頭を下げた。 ◇ ◆ ◇ 泣いている木場を見ながら、 「えーと……」 と、歌舞鬼は頬をかきながらつぶやいた。 すっかり話に置いていかれてしまってどうしたものかと思っていたのだ。 やがて木場は顔を上げ、京介に謝った。 「桐矢さん、でしたっけ。すいませんでした、桜井君と間違えてしまって」 「あ……ああ。まあ、こんなに似ていちゃあしょうがないよな」 少々複雑な表情の京介。と、そこで木場が再び口を開いた。 「あ、そうだ。ちょっと聞きたいんですけど」 「何?」 「さっき君が持ってたベルトの事なんですけど……」 「え……」 表情が引きつる京介。 「あれは俺が仲間の海堂ってヤツに預けたものなんです。海堂に会ったんじゃないんですか?」 京介は困った顔でこちらを見た。しょうがないので助け舟を出す。 「ああ、会った」 歌舞鬼は、道中で北崎に会った事。 彼が同道を申し入れてきたので受け入れた直後、海堂が北崎に戦いを挑んだ事。 自分は一度海堂とやりあった事があったため様子見をした事。 仲間の三田村が脅迫同然に北崎に加勢させられた事。 さらに北崎が海堂の持っていたファイズギアを京介に使わせようとしたが、彼はそれを持って逃げた事。 そして自分は追い詰められた海堂を助けて逃げた事などを話した。 「それで海堂は……?」 「…………」 罪悪感が胸にちくりと刺さる。 「一応逃げたんだがな、北崎にやられた傷が深かったらしい。そのまま死んじまったよ」 さすがに自分がとどめを刺したとは言えなかった。 優勝を狙う覚悟の印のつもりで殺したはずだったが、人数的に言って今戦うのは不利だろうし、何よりこの場の全員を倒す気にはなれなかった。 特に木場と侑斗は何やら誤解を解いた直後で感動的な場面を迎えたばかりだ。 (ダメだなあ、俺ぁよ) 「そうだったんですか……海堂を助けてくれてありがとうございました」 悲しそうな表情を浮かべながら歌舞鬼に頭を下げる木場。胸の痛みが強まってきた。 「……なあ、仮面ライダーって知ってるか?」 「え? そういえば海堂や赤いヤツがそんな事言ってたような……」 首を傾げる木場に、空を見上げながら続ける。 「海堂は言ってたぜ……仮面ライダーは困ってる奴を助けて、どんな時でも助けを求めてる奴の所へ行くんだって……そしてあいつは自分も仮面ライダーになるって、そう言って北崎に挑んでいった」 「海堂が……」 「あいつの事で俺が伝えるべきなのはこれだけだ」 そう言って締めくくった。 それをどう受け止めるかは彼ら次第だ。 だが恐らく、彼と同じ道を歩もうとするだろう。 目を見ていれば、この三人はそういうタイプだとわかる。 彼らがその道を進み――そしてぶつかるべき壁を越えられなかった時、自分が彼らに引導を渡そう。 困難な道である事は自分が一番良く知っている。 だが、だからこそ彼らに期待してしまう。 自分が進めなかった道を、彼らは進めるだろうか。 できれば最後まで貫き通して欲しいとさえ思う。 (やっぱ甘いなぁ、俺は) 「なあ、頼んでもいいか?」 木場の肩に手を置き、京介を親指で差しながら、 「こいつ、お前たちと一緒に連れてってやってくれ」 「え!?」 京介が驚いた声を上げる。 「歌舞鬼さん、一緒に来てくれないんですか!?」 「悪いな、京介。俺、ちょっと一人でやりたい事があってな」 その方がいい。 このままでは京介は自分が殺してあげなければより苦しむ事になる。 それに自分はやはり優勝を狙う。そのためには戦わねばならないが京介も一緒だとはっきり言って足手まといだ。 それよりは多数の仲間と一緒にいた方が安全だろう。 荷物を押しつける形になるが、恐らく彼らは受け入れるだろう。 「心配すんな。縁があったらまた会えるだろうからよ」 言いながらさっさとバイクを起こし、京介の分の荷物を彼に投げ渡す。 「それじゃ、すまねえが京介の事、頼むぜ。じゃあな」 大声で呼び止める京介を後に、歌舞鬼は北へ走って行った。 やがて声は聞こえなくなり、バイクの音しか聞こえなくなる。 また一人になった。 だがアマゾンと海堂は死に、京介は木場達に預けた。 三田村は心配といえば心配だが、北崎の性格からしてすぐには殺さないかもしれない。三田村には酷な環境だろうが。 それでも、気になるものはあらかたカタはつけた。そろそろ自分の事を考えていいだろう。 (俺はどこへ行くか……) とにかく、会った者を倒す。それしかないだろう。 (よっしゃ……やったるか) 改めて方針を決め、歌舞鬼はスピードを上げた。 ◇ ◆ ◇ 「歌舞鬼さん……」 歌舞鬼が走り去っていったのを呆然と見送る京介。 木場はそれになんと声をかけていいのかわからなかったが、やがて葦原が話しかける。 「お前はどうする?」 「え……ど、どうって……」 京介は浮き足立っている。と、侑斗がおずおずと口を開いた。 「あのさ……よければ、これからはこの四人で行動しないか? やっぱり仲間は多いほうが頼もしいし……」 その言葉に、他の三人は顔を見合わせた。そして口々に答える。 「俺はいいぜ」 「俺もそうしたい」 笑いかけながら言う葦原と木場。京介も上目遣いになりながら、 「い、いいのか……?」 その言葉に、侑斗は顔を輝かせた。 「よし……それじゃ、これから俺達は仲間だ!」 そう言って、侑斗は京介に手を差し伸べた。 「改めて、俺は桜井侑斗」 「き、桐矢京介」 やや固い笑顔を浮かべながら握手を交わす侑斗と京介。 そして木場や葦原とも順に握手を交わしていった。 木場は仲間が増える事を大変幸福な事だと実感していた。 結花や海堂の事を思い出す。 海堂はもういないが、結花はきっとまだ生きている。なんとか巡り会って一緒に脱出したい。 そして海堂が死ぬ時まで貫いた意志――仮面ライダー。 自分にその資格があるかどうかはわからない。 だが自分の知る人物に、最もそれに近いだろう者がいる。 巧は確かに、人を助けるためだけにファイズとして戦っていた。 きっと彼こそ仮面ライダーと呼べる人物だろう。 そして、ここにいる侑斗や葦原。彼らも人を助ける強さを持つ人たちだ。 自分も彼らのようになりたいと思う。 こんな殺し合いの最中に放り込まれたからこそ、仮面ライダーの真価が問われているのだろう。 ならば自分は海堂の遺志を継ぎ、助けを求める人々を見捨てず戦う。 自分は、海堂が信じた仮面ライダーの正義を信じる。 (海堂……俺はきっと仮面ライダーになる。見ていてくれ) 木場はまるで生まれ変わったような気分で、晴れやかな笑顔で仲間達と握手を交わしていた。 ◇ ◆ ◇ 丘を北へ移動していると、急に澤田がしゃがみこんだ。 「どうしたの?」 真魚もしゃがまされた。 澤田は辺りを見回すと、崩れた家の跡を指差し、 「こっちへ」 と、その家の中に一緒に入った。 家の中、という言い方は適当ではあるまい。 壁は一面しか残っておらず、その壁の陰に隠れているだけだ。 壁から様子を伺う澤田の肩越しに外を見ると、男が二人歩いていた。 どちらも知らない顔だ。彼らは林の中へ入っていった。 彼らの姿が消えて家の中だった所を見ると、埃まみれの本が落ちていた。題名がかろうじて読めた。 「これ……学術書?」 彼女の扶養者である叔父は大学教授を務めている。 そのため家で学術書の類はだいぶ見慣れている。さすがに読んだ事はなかったが。 題名からすると植物学関連のもののようだった。 なんでこんな廃墟にこんな本があるのだろう。 そう思い、本の表紙に指を触れた瞬間、頭の中にビジョンが見えた。 「あっ――」 自分の視界は何か透明なプラスチックか何か越しになっていた。 視界が動き、自分は――正確には自分が追体験している記憶の持ち主は、小さいビニールハウスの中で防護服に身を包んだ状態なのだと気づいた。 ビニールハウスの中には、防護服を着た人間がさらに二人いた。手に何か器具を持っている。 その中で栽培されている植物に自分の顔が近づいた。 それは青いバラだった。 そこで場面が変わり、今度は防護服を着てはいたが顔の部分は晒していた。 防護服の手袋をした手で青いバラを一輪持って、女性にそれを見せた。歳は30歳前後くらいか。 女性はうれしそうに花を受け取り、青い花弁に指を触れた。 すると女性に異変が起こった。 指がボロボロと崩れていったのだ。 それは手首、腕、胸、顔、ついには全身に達し―― 女性は灰になって崩れ落ちた。 そこでビジョンは終わった。 「真魚ちゃん?」 澤田の声で我に返る。いつの間にかかなり汗をかいていた。服がべっとりして気持ち悪い。 「あ、うん、なんでもないよ。それより澤田くん、これから――」 ごまかそうと話をそらそうとした時。 ガッシャーン! 何か音が聞こえた。 澤田と一緒に壁から少し顔をのぞかせるが何もない。 方向は道路の方だろう。 「ちょっと様子を見てくる。真魚ちゃんは絶対ここから動いちゃいけないよ。いいね?」 「う、うん。気をつけてね」 澤田は自分のデイパックを取り、先ほど二人組が入っていった林から遠ざかるように走っていった。 林の中から姿を見られないように迂回して道路へ出るつもりだろう。 「…………」 澤田の姿が見えなくなり、真魚は再び恐る恐る学術書に触れた。 今度は何も見えなかった。 (何だったんだろう……今の) ◇ ◆ ◇ 動物園を出て丘を登る香川とヒビキ。 「ここ、ピクニックとかしたら楽しいだろうな」 道々、ヒビキは自分が所属する猛士という組織の事を話してくれた。 表向きはオリエンテーリングのNPOだが魔化魍なる怪物と戦うために鬼という戦士を集めた組織で、ヒビキもそこで鬼としての経験を活かしアウトドア活動のインストラクターのような仕事をしているらしい。 それなら仕事柄そういう感想を持つのはまあ当然だろう。状況が状況でなければ。 だが見様によっては豪胆とも言えるし、体の動きを見ても確かに素人ではない。 引いたのは多分当たりだ、と香川は思った。 やがて見えてきた林の中へ、ヒビキを伴って入っていった。 「あそこです」 指差す先に咲いている青いバラを見て、ヒビキはおお、と声を漏らした。 「へ~、本当に青だ。キレイだな~」 ヒビキはしばらくバラを見ながら周囲を回っていた。 「よし、この事をみんなに知らせないとな」 嬉しそうに手を打ち合わせるヒビキ。 「でも、知らせるだけでいいのかな? 持って行った方がいいのかも」 「しかし、迂闊に取ってしまうとしおれてしまいますからね。これ一本しかないですし、まず知らせてから考えた方がいいでしょう」 話し合っていると。 ガッシャーン! 「うん?」 はっきり聞こえた大きな音に二人とも顔を上げる。道路の方だ。 「なんだろ? ちょっと見てきますね」 「待って下さい。誰かいるかもしれません。殺し合いに乗っている者だったら……」 行こうとするヒビキを引き止める香川。 「大丈夫ですよ。いざとなったら逃げますから」 だがヒビキは林を出て道路へ向かっていった。 ◇ ◆ ◇ 「あいてて……」 道路に五体投地してうめく歌舞鬼。 「くそ~、もう金輪際スピードアップして曲がらねえからな……」 カーブをにらみつけながらうなだれる。 ケガは大したことないが、三回も連続で同じ事をやっていればいい加減悲しくもなる。 カラカラと虚しく回るタイヤを見たら、ため息がもれた。 「大丈夫ですか~?」 と、声がした。 声に聞き覚えがあるような、と思いながら上体を起こすと。 「……!」 歌舞鬼の心臓が一瞬、痛みを感じるほど収縮した。 男が一人、丘を駆け降りてきていた。その顔も声もよく知っている男が。 「ヒビキ……!」 自分を倒した鬼――ヒビキに間違いなかった。 出会ったら意趣返しをしようと考えていたが、こんな唐突に遭遇するとは。 本当に世の中は何が起こるかわからない。 「バイクで転んだんですか? 頭とか打っていません?」 駆け寄ってきたヒビキは歌舞鬼にケガの心配をしている。 「あ……ああ。心配にゃ及ばねえよ」 自分を落ち着かせようと、平常を装って答える。 言いながら、汗が頬を伝うのがわかった。 緊張と興奮によるものだろう。 息も荒く、胸も高鳴っていた。 「そうですか。よかった」 と言って、こちらを助け起こそうとする。 こいつらしいぜ、と内心思いながら起き上がる。 「まさかこんなトコでお前に会えるとは思わなかったぜ、ヒビキ」 にらみつけ、しかし口元は笑みを浮かべながら言うと、ヒビキは目を丸くした。 「え? 前に会った事あります?」 「おい、まさか俺を忘れたとは言わせねえぞ」 ヒビキは首を傾げ、しばらく考えてから、 「いえ、俺は覚えが……あ、もしかして猛士の方ですか?」 「タケシ? 俺の名前はタケシじゃなくてよ……」 答えながら取り出した変身音叉を見せると、ヒビキは驚いたようだった。 「それは……?」 足を上げ、靴の裏で音叉を鳴らし、額の前にかざす。 「歌舞鬼……」 歌舞鬼の周囲を花びらが舞い、ヒビキは思わず後ずさる。 そして花びらが消えると、歌舞鬼が赤と緑の鬼へと姿を変えていた。 「ハァ!」 それこそ歌舞伎のように首を回し、手を広げる。 「鬼!?」 驚くヒビキを尻目に、変身音叉を音叉剣へ変化させる。 「さぁて、俺のリベンジを受けてもらうぜぇ!」 108 男二人、虫二匹――――はぐれ虫 投下順 109 Traffics(中編) 105 病い風、昏い道(前編) 時系列順 093 時の波 桜井侑斗 096 顔 葦原涼 096 顔 木場勇治 093 時の波 澤田亜希 093 時の波 風谷真魚 096 顔 歌舞鬼 096 顔 桐矢京介 102 この言葉を知っている(前編) 日高仁志 102 この言葉を知っている(前編) 手塚海之 107 香川教授の事件簿 香川英行 098 金色の戦士(前編) 北崎
https://w.atwiki.jp/hinotori/pages/69.html
詳細 日時 7月2日(土)21時開始予定 形式 2連勝制限勝ち抜け? 配信 マディ 進行 suzu 結果 1 ○shiropii - SAI× 2 ○shiropii - mule× 3 ○ALCO - ranntyu× 4 ×ALCO - oresama_○ 5 ×marabo - oresama_○ 6 ○waka_fis - せぷとん× 7 ○waka_fis - suzu× 8 ×ikam - poppo○ 9 ○enui - poppo× 10 ○enui - arutiroy× 11 ×FALLEN - Rays_doppel○ 12 ×syakeking- Rays_doppel○ 13 ○gato - Rays_doppel× 緋の鳥chの勝利です あとがき 皆様お疲れ様でした 普段あまり会う事がない人同士での交流戦、という意味合いもありました今回の交流戦。如何だったでしょうか やや小規模での開催ではありましたが、良い試合も多く見ごたえがあったと思います 個人的にはもっと交流戦をしていきたいと思う所存 これを機にまた交流戦を企画していきましょう! 参加者 ※suzuは人数調整で入ります 【IRC名】【プロフ名】【キャラ】【ホスト可or不可】【希望順】【一言】【7月1日or2日】 【IRC名】shiropii【プロフ名】しろぴす【キャラ】妖夢【ホスト可or不可】可【希望順】かませ犬なんで早いほうがいいかも【一言】めったに緋の鳥にいない俺がきてもいいのだろうか,よろしくです【7月1日or2日】2日 -- しろぴす (2011-06-26 20 56 03) 【IRC名】enui【プロフ名】きびにゃん【キャラ】パチュリー【ホスト可or不可】可【希望順】どこでも大丈夫【一言】時給1000円【7月1日or2日】 2日希望 -- enui (2011-06-26 20 57 58) 【IRC名】waka-fis【プロフ名】和香【キャラ】衣玖【ホスト可or不可】可【希望順】翌日早いので早めがいいです【一言】髭ェと言わせたいがキャラによっては・・【7月1日or2日】2日希望で1日も可能 -- 和香 (2011-06-27 19 25 26) 【IRC名】Tanishi【プロフ名】天魔 設定2【キャラ】文【ホスト可or不可】不可【希望順】どこでも可【一言】初交流戦参戦【7月1日or2日】どっちかの日に飲み会あるので被らなければ行けます -- たにし (2011-06-28 20 16 26) 【IRC名】marabo【プロフ名】Su_27【キャラ】天子【ホスト可or不可】可【希望順】早めがうれしい【一言】石柱落としにきました【7月1日or2日】2日 -- まらぼ (2011-06-30 13 09 43) 【IRC名】ALCO【プロフ名】ΣALCO【キャラ】小町【ホスト可or不可】重【希望順】遅くなると危ないので前で【一言】人数足りないの声に応えて颯爽と現れた救世主がここにあるこ(あるこだけに【7月1日or2日】どっちでもようがす -- 名無しさん (2011-06-30 23 18 37) 【IRC名】annin【プロフ名】大地の隔たり【キャラ】魔理沙【ホスト可or不可】可【希望順】おまかせ【一言】見極められぬとは・・・【7月1日or2日】2日 ※仕事があるので遅刻する可能性があります。連絡は入れるのでその場合はスキップしてください -- 杏仁 (2011-06-30 23 22 27) 【IRC名】syakeking【プロフ名】美冬様に踏まれたい【キャラ】妖夢【ホスト可or不可】可【希望順】どこでもおk【一言】美冬様! ああ美冬様! 踏んでください! 「こんなことで・・・」とか言いながら冷たい目で俺を罵って! もちろん性的な意味でね! 「汚らわしい・・・」なんて言われた日には俺はもう! 頭がくるくるになっちゃいそうだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお 沙織先輩くるくるー【7月1日or2日】 2日にやるっぽいですね -- 名無しさん (2011-07-01 23 01 38) 【IRC名】F_Dogeza【プロフ名】THE FALLEN STRIKER【キャラ】いくさん【ホスト可】【希望順】Lv95くらい【一言】LincleLink -- 名無しさん (2011-07-02 00 34 17) すいません、今日飲み会になってしまったので辞退します。 -- Tanishi (2011-07-02 16 29 42) 【IRC名】ikam【プロフ名】ikam【キャラ】レミリア【ホスト可or不可】可【希望順】どこでも【一言】|´‐ω‐)っくコ 彡【7月1日or2日】 今日あるっぽいですね -- ikam (2011-07-02 17 06 02) 【IRC名】gato【プロフ名】ガト【キャラ】ゆゆ様【ホスト可or不可】可【希望順】どこでも【一言】ゆっ -- ガト (2011-07-02 20 35 35) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/rnext/pages/107.html
蜂の乱心!! 壊れかけた戸に背中を預け、夜の海を眺める青年がいる。 優しげな表情。しかしその瞳の奥には灰色の光が宿っている。 青年、木場勇治が海を見る理由は特にない。ただなんとなく、だ。 本当ならすぐさま移動したかったが影山の希望によりほんの少しの休憩。 変身できない影山は倉庫の中に、オルフェノクとして戦闘能力を有する木場が見張りをするのは当然といえた。 見張りといっても木場自身疲労はあるので飾りに近い。 闇に目を凝らす事も気を張り続けることも億劫になるほどで、だから木場は海を眺めていた。 あと5分ほどしたら移動しよう―― 今こうして休んでいる間にも殺し合いが進んでいるかもしれない。 否、進んでいるのだ――と、木場は認識を改める。現に影山は有無を言わさず襲ってきた。 こうして一緒に休息を取れている事自体奇跡に近い。 この奇跡を無駄にしない為にも一刻も早く仲間を集めるべきなのだ。 だが疲労があるのも事実。無理をしては元も子もない。だから、あと5分。 (ってなんだか朝起きたくない子供の言い訳みたいだな…) 言い訳じみた自分の思考に思わず苦笑する。 笑える余裕があるだけ、こうして海を眺める暇があるだけ自分は幸運なのだろう。 ゲームに参加させられた時点で既についていないがそこには目をつぶる。 この幸運を生かしたい。そう思っていた矢先だ。小さな流れ星を見たのは―― 障害物のない海上。 夜だからこそ映える光。 そしてオルフェノク特有の優れた五感。 様々な条件が重なり、偶然にも木場には見えた。地上に落ちる小さな、小さな流れ星が。 (流れ星…落ちたのかな?) 最初は木場も珍しい物が見れたな、程度の認識だったが2度3度と同じ現象が相次ぎ流石に気づく。 (あそこで戦闘が起きてる!信じられないけど、流れ星を呼び寄せて攻撃しているとしか考えられない…) デイパックから取り出した地図をマグライトで照らし、流れ星が落ちたであろう場所を推測する。 その様子を怪訝に思ったのか奥で休んでいた影山も木場の広げた地図を覗き込んだ。 「どうした?何かあったのか?」 影山の言葉を無視して木場は思考する。 (恐らくG-4エリア…オルフェノクの力で駆け抜ければそう時間はかからないはずだけど…) 問題はある。変身制限があるためいつまでオルフェノクでいられるのか。また、どれだけの時間で再び変身できるのか。 そもそも今から行った所で間に合うのか、という根本的な問題もある。無駄に時間を過ごすだけかもしれない。 木場が思いつくだけでもこれだけの問題点があるのだ。だが、それでもなお… 「影山、俺は今から戦いを止めにいく。できれば一緒について来て欲しい」 木場は止めに行く事を選択する。きっと彼なら、乾巧なら無謀な状況でも止めにいくはずだ。 「別に俺はいいけどよ…どこに向かうつもりなんだ?」 そう言われて木場は今から向かおうとしている地点を地図上で指し示す。 「遠いだろ!?それとも何か当てがあるのか?バイクとか、車とか?」 「いや…」 当てはある。バイクや車等といった機械ではなく、最も信頼できる当てが… (できれば使いたくはないが、今はこれ以上の手がない…) オルフェノクの紋様を顔に浮かばせ、肉体が灰色の強固な肉体へと変わるのを感じる。 影山の知る木場勇治はいなくなり、代わりにチェスのナイトのような魔人、ホースオルフェノクが現れた。 「この脚で、駆け抜ける」 疾走態となり驚きの表情を浮かべる影山とデイパックを背中に乗せ、ホースオルフェノクは夜の砂浜を駆け抜ける。 ホースオルフェノクに落とされないよう必至に踏ん張りつつ影山は考える。 (実際に変化する所をみると…ワームと大して変わらないんだな、オルフェノクって) 木場から話は聞いており、ワームの擬態等を目にした事があってもやはり人が異形の姿に変化する事には抵抗がある。 抵抗というよりも、恐怖か、もしくは軽蔑といった感情の方が強いかもしれない。 (こいつも人間を欺いたりしてきたのか…?) 不意に、以前シャドウのメンバーに擬態したワームと木場の姿が重なる。 実際には木場は欺かれてばかりの日々だったのだがそこまで理解できるほど影山は木場を知らない。 戦いを止める、というのも偽りか?あの時自分にトドメを刺さなかったのも利用する価値があると判断してか? (仮にそうだとしても…逆に俺がお前を利用してやる!それが俺の…) 兄のように慕った男から常に言い聞かされてきた言葉を心の中で呟こうとした刹那、わずかに聞こえた爆発音。 「おい、木場!おい!」 木場に伝えようとするが木場は心ここにあらず、といった感じだ。 無我夢中で走っており、今の爆発音も聞こえてないのかもしれない。 (まぁ…いいか。下手に面倒な事に巻き込まれるのもな…ってなんで空が見えるんだ?あ、街。あ、木場、あ、砂…) 「まぁ、こうなる気はしてたけどな…くそっ、いってぇ…」 「俺だって予想はしてたよ…はぁ、せめて制限時間が分かれば終わる頃にスピードを緩められたんだけど…痛い」 顔や腹を抑えつつ、木場と影山は夜の砂浜をとぼとぼと歩く。 制限によりオルフェノクとしての力が唐突に無くなり、全力疾走していた木場は制御できず盛大にずっこけたのだった。 背中に乗っていた影山も例外ではなく受身も取れずに顔面から砂浜へと突っ込み、ちょっと泣いた。 とんだ目にあった二人だが目的地である市街地は既に近く、足の砂浜は砂利道に、砂利道からコンクリートへと変わっていった。 街灯もまばらな街中を歩きつつ、感覚を研ぎ澄ませるが誰もいる気配はない。 「本当に戦闘があったのか、って感じだな。綺麗なもんじゃねぇか」 「見間違いじゃないはず…だけど。もしかしたら別のエリアかもしれない」 別のエリアへ向かおうか、と思っていた矢先に唐突に開かれる視界。 地面にはクレーターのようなものがいくつもあり、まだ煙が燻っている様な場所もあった。 「すげぇもんだな…」 「あぁ、ただ、誰もやられてはいないみたいなのは幸い、かな」 「…すげぇってのは、まぁこの戦いもそうだがこんな市街地奥の戦闘をよく見れたな、ってことさ」 「…何が言いたい?」 「別に?流石オルフェノク、って言いたいだけさ」 二人に嫌なムードが広がる。影山が木場の機嫌を損ねて良い事などないのだが、恐怖を認めたくないためか、つい口が悪くなる。 そう、恐怖だ。このゲームにはこれほどの攻撃を仕掛ける者が。また、その攻撃を凌ぎ切り生き長らえる者がいるのだ。 果たして自分がこの場にいたとしたら、果たして生き延びる事ができただろうか?正直影山にはその自信はなかった。 「ともかく、折角市街地まで来たんだ。誰かいないか探索してみよう」 木場が無理に明るく提案する。この嫌なムードのせいもあるが、木場もまた恐怖していたのだ。 ――少し時は遡り、怪人チーム 牙王とゴルゴスを率いて早速研究所へと向かおうとする死神博士に異議を唱える者が二人。 「腹が減った」 「腹が減った」 歴戦の兵、死神博士とはいえ流石にこの言葉には呆れた。 「貴様達、状況がわかっていないのか?」 「うるさい…食いたい時に食うんだよ…俺は」 牙王の言葉に思わず頭に手を当てる。相当の自信家か、あるいはアホだ。 「ワシも血が欲しいのだ。そこの食いしん坊の血でもいいが、できれば若い人間の血の方がいいからなぁ…」 「どっちが食いしん坊だか…血の吸いすぎでそんな身体になったんじゃないのか?」 「これは元々だ!」 牙王も牙王ならゴルゴスもゴルゴスだ。下手に実力があるだけに手が負えない。 「あぁ、わかったわかった。貴様らの言い分を飲もう、と言いたいがゴルゴスよ。 貴様、血が欲しいと言ったがどうする気だ?」 ここは市街地だ。探せば食料等は見つかるだろうし牙王の方は問題ない。 問題はゴルゴスだ。まさか肉屋を探して生肉から血を絞り取れ、とでも言うのだろうか。 「ふん、適当に参加者か、あるいは死体でも捜してくれるわ!」 別に他の参加者や死体に何しようが死神博士には本来なら関係はない、が。 もしも遠くまで勝手に行かれて合流が遅れる、なんてことになると研究所に向かうのが更に遅れる。 研究所は他の施設より明らかに魅力的だ。今こうしている間にも他の参加者が向かっているかもしれない。 一刻も早く研究所を手中に収めたかった。 「ふむ、30分だ。30分したらこの病院に集合だ。それでいいな?」 「30分!?貴様、このゴルゴス様にそんな縛りを設けるとはいい度胸だな!」 「ハッ…自信がないのか?30分の間に血を補給する自信が…」 「なにぃ!?」 牙王の煽りに思わず感謝したくなってしまった。こう言われてはゴルゴスも引くわけにはいかないはずだ。 「いいだろう!30分したらこの病院前に集合だ、それでいいな!」 案の定ゴルゴスはカッカした様子で夜の街へと消えていく。30分は妥協に妥協をした結果なのだ。 それに文句を言われて下らぬ話し合いを続けられては困り者だったのだが、牙王のおかげですんなりと決まった。 粗暴な割りに誰かを率いていたのかもしれない。牙王は思ったよりも使えるか? 「それより飯だ…コンビニでも探すぞ…」 飯の事しか頭にないのか。一瞬でも牙王を評価した自分を死神博士は恥じた。 『コンビニ』なるものがなんだかわからんがとりあえずは牙王に付いて行く事にする。 そうして歩くうちにふと嫌な考えが浮かんだ。 こんな勝手な奴らが30分という約束を守るのだろうか―― * * * 「遅い!」 病院前で吼えるのは死神博士でも牙王でもなく、ゴルゴスその人であった。 人間の一人や二人すぐに見つかると思っていたため30分という制限を呑んだが結局誰とも会わなかったのだ。 そうして苛立ったまま律儀に約束を守り病院前まで帰ってくれば誰の姿もなく結局待つことにしたのだが… 待つこと5分、10分と経つうちに苛立ちはピークに達した。もはや、限界だ。 「このゴルゴス様が約束をわ・ざ・わ・ざ守ってやったというのに奴らときたら! 多少まずそうでも構わん!奴らの血を吸ってくれる!」 怒り心頭の赤い悪魔は再び夜の街へと消えていく。 木場と影山がこの場で恐怖するほんの10分前の出来事だった… ――牙王と死神博士がその時何をしていたのかと言えば―― 商品棚から目に付いたものを奪い、開封し、食らう。 それこそ弁当だろうがパンだろうがスナック菓子だろうが、見境無く全てを平等に、牙王は食らう。 市街地エリアに存在するコンビニの内の一つに、牙王と死神博士は居た。 コンビニとはこういう店なのか、と納得している死神博士をよそに牙王はさっそく食事を始めた。 どれだけ時間が経ったのかもわからないが、食事は一向に終わりそうにない。本当に食らい尽くす気ではないだろうか? 「呆れて物も言えんわ…」 付き添いの死神博士が飲食したのものといえばお茶一本のみだ。 普通はそうだ。こんな状況で自らの欲望に忠実に従う等どうかしている。 こんな自制できない奴とは本来なら一緒に行動したくはないが状況が状況なのでやむを得ず、だ。 ふと思い出したように時刻を確認してみればゴルゴスとの約束の時間であった。 「おい、それくらいにしておけ。そろそろ動かんと間に合わん」 「知るか…あんな奴いくら待たした所で問題ない…」 そう言いつつ4個目の牛丼弁当を開封し、食らう。 そんな牙王を見て苛立ったが、考え直し予定を変更する。 (今更急いだ所で既に誰かが研究所に居座っている、か…ならば奪えばいい。それだけの事だ) それならば、と死神博士もおにぎりを開封し、食べる事にした。 約束の時間は既に過ぎていたがもはや気にする事はやめた。 「…美味いな」 予想外の美味さに思わず声に出してしまう。そんな反応を見て牙王はニヤリと笑うのだった。 ――こうして、ゴルゴスは無視された―― 怒り心頭のゴルゴスは街を行く。 仮に獲物となる者を見つけてもすぐに殺しては腹の虫が収まらない。 じわじわとなぶり殺しにし、生きたまま吸血しながら苦しむ獲物の表情を楽しむのだ。 内なる怒りとは反対にゴルゴスは笑みを浮かべている。楽しみでしょうがない、といったように… * * * G-4エリアの探索を終えた木場と影山の二人は次の探索場所を西ではなく南を選んでいた。 というのも影山の一方的な提案であり木場はそれに従っただけなのだが。 影山は木場に伝えていない事がある。砂浜をホースオルフェノクの背に乗り駆け抜けていた時に聞こえた爆発音。 誰かがいるのは明らかだったが、殺し合いに乗った者である可能性がある事を考えると接触は避けたかった。 爆発音の事を言えば木場がそちらへ行こうとするのは容易に想像できる。だから爆発音の事は伏せ南下する意図だけを示した。 そうして市街地を探索し始めてどれだけの時間が経ったのだろうか。 途中で誰かと遭遇する事も、あるいは何かを発見することもなくただ時間だけを消費していた。 気づけば輝く星は見えなくなり、空は白く染まりつつある。太陽が顔を見せるのもそう遠くはないだろう。 探索を切り上げ、二人は海が見える場所で休憩をする事にした。 ここが普通の世界なら恋人達の憩いの場所となるのだろうが…男二人しかいない今では寂しい印象しか与えない。 「はぁ…」 穏やかな海を見つめる木場からため息がこぼれる。 戦闘に間に合うとは思っていなかった。頭ではわかっていたのだが… それに市街地に来れば誰かしらと会えるのではないか、という期待もあった。 これからどうするべきか。ただここで来るともわからない参加者を待つのか。 ぼんやりと考えていると軽く目眩がした。今更ながらまともに休んでいない自分に気が付く。 どこかでしっかりと休息するべきだな、そう思っていた矢先。 木場と影山は爆風に吹き飛ばされた。 怪我をしなかったのは偶然なのか、それとも相手が狙ってやったのか。 影山の方を見ればこちらもおなじく大した怪我はしていないようだ。 顔を合わせ、お互い頷く。殺し合いに乗った相手なら、やる事は一つだ。 素早く立ち上がりファイズフォンに変身コードを打ち込む。 ―――Standing by――― 「来い!ザビーゼクター!」 主の声に応じて飛来したザビーゼクターが右手に収まる。 ファイズフォンを明るくなりつつある空へと掲げ、ファイズドライバーに装着する。 ザビーゼクターを左手のライダーブレスへと装着させる。 「変身!」 「変身!」 ―――Complete――― ―――HENSHIN――― フォトンストリームが木場の全身を巡り黒と銀のスーツを形成する。 蜂の巣を思わせるアーマーが影山の全身を包み込む。 変身が完了し、二人で背後の襲撃者を睨む。 少し離れた場所に『ソレ』は、いた。 巨大な赤い岩に人の上半身が生えた、なんとも珍妙な襲撃者が。 「貴様ら両方仮面ライダーか!面白い、叩き潰して俺様の血肉としてくれるわ!」 「仮面…ライダー?」 「マスクドライダーシステムだから仮面ライダー…か。ふざけてるな」 苛立ちを隠さずザビーがゴルゴスへと突撃する。 左手を振り上げ突き出した時には目の前にいたはずのゴルゴスは消えうせていた。 「何!?」 目標を失いキョロキョロと辺りを見回すザビー。 あの巨体でそう素早く動けるとは思えないが、まさかのクロックアップか!?と考えていると嘲笑う声が空から聞こえた。 「馬鹿が!上だ!」 悪魔の岩石が今にも押し潰さんと迫る。虚を衝かれたザビーは咄嗟に動く事ができない。 このままいけば蜂蜜の代わりに赤い血を撒き散らし蜂の巣はぺしゃんこになるだろう。 だが、ザビーは一人ではない。 後方で様子を見ていたファイズはゴルゴスに浮遊能力がある事を確認すると、 ファイズフォンをバーストモードへと変形させ、赤い光弾をゴルゴスへと乱射する。 ゴルゴスが怯んだ隙にザビーはファイズの元へと走る。 「あぶなかったね」 「お前に助けられなくても対抗手段くらいある。それよりさっさと撃てよ」 「はぁ…わかったよ」 赤い光弾がゴルゴスへと何発も叩き込まれていく。 だが怯んだのも初めのうちだけですぐに体勢を立て直し、ファイズとザビーの元へと突っ込んでくる! 「くっ、なんてタフなんだ!」 「単純にお前の銃が使えないだけだろ…くるぞ!」 ファイズとザビーはそれぞれ左右に転がりゴルゴスの体当たりをかわす。 ゴルゴスは空中で旋回し、動きの鈍いザビーへと狙いを定め再び突っ込む! こうして何度も繰り返し獲物の体力を奪い、最後にゆっくりとトドメを刺す。 そう考えていたゴルゴスの意に反しザビーは逃げず、立ちふさがるようにゴルゴスと対峙する。 「馬鹿め、受け止めるつもりか?押し潰してくれるわ!」 「言ったろ、対抗手段はあるってな。俺を舐めるなよ!」 右手を左手に装備されたザビーゼクターへと添え…180度回転させる! 「キャストオフ!」 ――CAST OFF―― 電子音声と共に身体を護っていたアーマーは弾け飛び、ゴルゴスへと直撃する! 「ぐばぁっ!」 予想外の攻撃にゴルゴスは溜まらずザビーから距離を取る。 ―CHANGE WASP― ゴルゴスへカウンターの一撃を加え、ザビーはしてやったり、といった感じに上機嫌だ。 ファイズとザビーは並び立ち、牽制の赤い光弾を放ちつつゴルゴスの出方を伺う。 「えぇい、いい加減うっとおしいわ!」 岩石のような下半身の口からエネルギー弾が発射され、ファイズとザビーを襲う。 二人が先ほどまで立っていた場所には煙が立ち、火力の高さを物語る。 「最初の攻撃もあれか…よく無事だったな、俺達」 改めてゴルゴスの恐ろしさをザビーは体感していた。 一方のファイズはゴルゴスと射撃戦を繰り返している。 ファイズの方は命中力はあるが威力がない。連射して威力の低さを補うがそれでも焼け石に水だ。 ゴルゴスの方は火力があるが命中力がない。元々悪い上に浮遊しながらの射撃だ、まともに狙えない。 飛び道具のないザビーは射撃戦には参加せず作戦を練る。いかにしてゴルゴスに一撃を加えるか。 (もう一度キャストオフしても怯ませるのがやっと。怯むのも…状況によるがあと一度といったところか? その一度で決められる強力な一撃が必要だ) 銃撃戦を繰り返すファイズを見つめつつ思考する。 (仕方ない、華を譲るか) ――PUT ON―― 先ほどと同じようにザビーゼクターを180度回転させ、元の位置に戻す。 身体の周りを覆うようにアーマーが形成され、再びザビーはマスクドフォームとなった。 そして駆け出す。この作戦にはファイズとの連携が欠かせない。その為の意思疎通を図る為に。 (まだか…!) ファイズは銃撃戦を行いつつ、待つ。 ゴルゴスが痺れを切らしこちらの攻撃に構わず突撃してくることを。 突撃してくれば先ほどのザビーの再現というわけではないがカウンターの用意がある。 左腰のファイズショットはいつでも取り外せるようにしてある。 今はただ、待つ。こちらの攻撃は補充できるが相手のほうはどうだろう?いずれは弾切れがあるはず。 根気強く、攻撃にも気を配りつつファイズは待ち、そしてその時はきた。 痺れを切らしたゴルゴスが突進してきたのだ。 (よし!) ファイズフォンをすかさずファイズドライバーへとセットし、ミッションメモリーを引き抜く。 左手にファイズショットを装備しミッションメモリーをセット、『Enter』を押し込む。 ――Exceed Charge―― 低く構え、左手を後ろに引く。ゴルゴスはもう目前だ。 (もらった!) グランインパクトが炸裂する!まさにその瞬間ファイズは何かに吹き飛ばされた。 ゴルゴスではない、ゴルゴスに吹き飛ばされたのなら後ろに飛ばされるはずだ。だがファイズは横に吹き飛ばされた。 「大丈夫か!?」 もちろんザビーだ。ザビーの位置からだとファイズショットは丁度死角にあたり、まさかカウンターの用意があるとは思っていなかったのだ。 ザビーのパーフェクトミッションのためにファイズの力は欠かせない。だからファイズを救う為に身を挺して助けたのだが。 「何をするんだ!せっかく攻撃の用意をしてたのに!」 「助けたのにその言い草か!お前の攻撃なんかどうでもいいんだよ!俺の作戦に従えば、それでいいんだよ!」 ゴルゴスそっちのけで言い争いを始めてしまう。その言い争いは熱を帯び、二人の身体はまるで燃え上がるかのように… 否、本当に燃えているのだ。 「な、なんだこりゃ!?」 「液体が、燃えてる!?」 ファイズとザビーの身体には赤い液体が付着し、そこから発火しているのだ。 「馬鹿どもめ!そのまま燃え尽きるがいい!」 そう、ゴルゴスは痺れをきらし体当たりを仕掛けた。だがただそれだけではない。 ファイズが何か仕掛けてくるのは予想できていたため、別の攻撃も同時に行なっていたのだ。 まさに直撃、という瞬間に岩石の口から赤い液体を撒き散らした。 ファイズだけ狙ったつもりだがそこにザビーが自ら飛び込みまさに飛んで火に入る夏の虫となったというわけだ。 火を纏った二人はすぐさま海へと飛び込み、消火する。 海中から抜け出し砂浜にあがるとファイズは膝をついてしまう。 ザビーの方はマスクドフォームになっていたおかげか火炎によるダメージはほとんどない。 だがファイズは直にその火炎を身に受け、もろにダメージを受けていた。 それにまともな休憩をしていないため元々の体力の低下もあり、フラフラだった。 「おい、大丈夫か?俺のパーフェクトミッションにはお前の力が不可欠なんだからしっかりしてくれよ?」 「はぁ…はぁ、わかってる、よ」 砂浜へとあがる最中に既にファイズへと作戦は伝えておりあとは実行に移すだけだ。 ファイズは右足にファイズポインターを装着し、タイミングを計る。 「フラフラのようだな…このままトドメを刺してくれるわ!」 ゴルゴスがトドメの一撃とばかりにファイズへと突撃してくる。 その両者の間にザビーが乱入し、素早くザビーゼクターを180度回転させる。 「まずい!」 ゴルゴスはザビーの意図を把握し、上空へと逃げようとするが… 「キャストオフ!」 ――CAST OFF―― 二度目のキャストオフは再びゴルゴスへと襲来し、ゴルゴスを怯ませる。 「これしきで…「今だ!」!」 ゴルゴスの言葉を遮りザビーが合図する。ザビーの後ろからファイズが飛び出し、右足から伸びる赤い光がゴルゴスを捕らえる。 「つぁぁぁーーっ!」 円錐状の赤い光とともにファイズはゴルゴスの岩石へと蹴りこんだ! 「ぐぎゃぁぁっ!」 必殺の一撃を受けたゴルゴスはそのまま海へと墜落した。浮かび上がる様子は、ない。 「ふぅ…なんとかなったな。これこそパーフェクトハーモニー…完全調和だ」 自分の作戦が上手くいったことに喜ぶザビーをよそに、ファイズはそのまま倒れこむ。 驚いたザビーがすぐさま支える。 「おい、本当に大丈夫か?」 「ちょっと、キツイ、かな…」 「まったくしょうがないな。まぁ、ゆっくり休め」 ザビーがファイズを支えつつ、二人の戦士は海岸を後にする―― 「どこにいくつもりだ…貴様ら…」 背後から、聞きたくなかった声が聞こえてくる。 恐る恐る振り返ると怒りに震えるゴルゴスが海からゆっくりと浮かび上がってきた。 ダメージは確かにあるようだ。岩石にあった顔の一つが今は彫刻の顔のようになってしまっている。 「俺様の顔の一つを潰して…無事に逃げられるとでも思っているのか?」 ザビーとファイズは再び構える、が。ファイズの方はフラフラで、いつ倒れてもおかしくはなかった。 そんな様子のファイズを見てザビーは思考する。 (まずいな…もう一度木場に決めてもらいたかったんだが、この状態だとどうもあと一発が限界か? いや、そもそもその一発を決められるかどうか…あの岩石野郎は攻撃しようとすると空に逃げられる。 空に逃げられないように一瞬でも怯ませられればいいんだが、もうキャストオフは通じないだろう。 木場にはゴルゴスを怯ませられる手段がない…どうする?) すぐさま攻撃してくると思っていた二人だがゴルゴスは以外にもその場で両手をゆっくりと何かをかき混ぜるように動かすだけだ。 「何をするつもりだ…?」 「ブラック・オン・ゴォォルド!」 両手を広げゴルゴスが叫ぶ。すると明るくなりはじめた空は暗く… 空だけではない。足元の砂も。はるか彼方の水平線も。ゴルゴス自体も暗闇へと紛れていく。 「な、なんだこれは?」 暗闇。 自分が立っているのか、倒れているのか。現実なのか夢なのかもわからない暗闇。 お互いの姿が見えるのだけが救いだろうか。ファイズとザビーは背中合わせに寄り添い、ゴルゴスの襲撃に備える。 だがゴルゴスの襲撃はこない。ただひたすらに、暗闇だけ。 ファイズは、木場は恐怖する。 暗闇に恐怖する。この暗闇は、自分の心を現しているようで。 過去に何度もこの暗闇に飲まれた事だろうか。その度に抗い、抜け出してきた。 だが、抜け出しただけでこの暗闇は未だに自分の心の根っこの部分に根付いているのだ。 この暗闇の元凶はホースオルフェノクなのだろうか、それとも木場勇治なのだろうか。 自分自身のはずなのに、わからない暗闇。その心の暗闇のようで、木場はこの暗闇に恐怖する。 (俺は…もう二度と飲まれたりしない、絶対に!) 心を強く持ち、倒れそうな身体に鞭打って神経を研ぎ澄ませる。 自分を見ている何者かを、木場は暗闇の中で確かに感じ取っていた。 ザビーは、影山は恐怖する。 心に恐怖する。この暗闇にどこか、安堵を覚えている自分の心に。 何故安堵を覚えるのだろうか。暗闇とは本来恐怖の対象であり、事実今も恐怖しているはずなのに。 有り得ない、確かにこの世界に来る前から失敗を重ねてきた。何も上手くいかなかった。 だから?見捨てられるかもしれない恐怖を味わってきたから、この暗闇に親近感を感じ安堵を覚えるのか? なら、関係ない。ザビーである限り、誰も見捨てたりはしない。わかっている。わかっているから… (俺の目の前から、消えろ。こんな、こんな!) 暗闇のどこからか、自分を見ている自分がいるような、そんな錯覚がした。 音も無く、ファイズとザビーにゴルゴスは忍び寄る。 ゴルゴスは生き物とは暗闇を本能的に恐れると知っている。 だからこそ時間をかけ、恐怖でいっぱいになった頃合を見計らい空からザビーとファイズを押し潰そうとしたのだが… ファイズが咄嗟に支え一瞬ゴルゴスの動きが止まった。その一瞬のせいでザビーも襲撃に気づけた。 「馬鹿な!?この暗闇の中で、こうまで咄嗟に反応できるとは!」 ゴルゴスが驚きと、そしてほんの少し別の感情を込めて叫ぶ。 「俺は、俺は負けられないんだ!戦いを止めるために、こんな所で…!」 ぼろぼろの身体のどこにそんな力が残っていたのだろうか、ファイズは一人でゴルゴスを支えている。 「負けられないんだ!」 ついにはゴルゴスの方が力負けをし、ぶん投げられた。その一撃のせいか暗闇はすぐになくなり、辺りは以前の光景を取り戻す。 そして力を使い果たしたのかファイズも地に伏せる。 投げ飛ばされたゴルゴスはすぐに起き上がるとファイズにトドメを刺さんと再び上昇しはじめる。 その様子を黙ってみている影山ではない。 「木場!起きろ!決めるぞ!」 木場を叱咤激励しつつ左手のザビーゼクターを180度回転させる。 ――PUT ON―― 3度ザビーは強固な鎧に包まれる。 「キャストオフ!」 ――CAST OFF―― すぐさまザビーゼクターを180度回転。3度のキャストオフ。かなりの酷使だが、構っていられない。 「クロックアップ!」 ――CLOCK UP―― 風も、波も、上空のゴルゴスも、起き上がろうとするファイズも、全ての動きが遅くなる。 キャストオフにより身体から弾き飛ばされたアーマーも例外ではない。ゆっくりと、ザビーから弾かれ飛んでいく。 その弾き飛ばされたアーマーを足場代わりに飛び上がり、ゴルゴスの背後へとたどり着く。 「今はこれで限界、だが充分!」 ――CLOCK OVER―― ザビーゼクターを右手で押し込むところで時間は再び流れ出す… 「ふん、今更驚きもせんわ」 サビーの身体から放たれた鎧の破片を手で払いのける。当てがはずれライダーは絶望していることだろう。 ファイズは片膝をつき、こちらを見上げている。そしてザビーは… 「何!?黄色いライダーがいない…!?」 「後ろだ!ライダースティング!」 ――RIDER STING―― 蜂の針の一撃が、ついにゴルゴスへと向けられた! ファイズは自分の目を疑った。いや、これも作戦なのだろうか。 ザビーの意図は瞬時に理解した。強引にゴルゴスへと飛び移り、ライダースティング。 そしてその衝撃でゴルゴスは高度を落とすはず、そこへすかさず追撃のクリムゾンスマッシュ。 完璧な作戦。今できる最高の攻撃なのだ。 だから…今落ちてくるべきなのはゴルゴスであり決してザビーではない。 悲鳴をあげて砂浜へと叩きつけられるザビー。その衝撃からか変身は解けてしまう。 影山のスーツの背中には、酷い切り傷が―― (背中…?) 嫌な予感がして、上空のゴルゴスから、陸へ、顔を覗かせ始めた太陽に照らされ、輝く市街地へと目を向ける。 太陽の光を受け、輝く『牙』をもったライダー、そして死神のような男がそこにはいた。 「ふん…約束の場所にいないと思ったら…中々楽しそうな事してるな、赤いの…」 「ゴルゴスだ!えぇい、誰が助けろ等と言った!こいつらは俺様の獲物だぞ!手出しをするな!」 「助けられたのに、随分な言い草だな…」 牙王と死神博士が病院前へと姿を現したのは約束の時間から1時間は過ぎた頃だった。 流石にゴルゴスに悪い事をしたと思い死神博士の提案でゴルゴスの探し始め、ようやく見つけた所がまさにこの時だった。 「赤いの…さっさと終わらせろ…」 「ふん、言われなくても!」 牙王とゴルゴスが言い合いをしているが死神博士の興味はそんなものより影山の周りを飛ぶザビーゼクターへと注がれていた。 (ワシの知らぬ技術のようだな。首輪の解析に役立つかもしれぬ。できれば回収して調べてみたいものだが…) ファイズは倒れた影山の許へと駆け寄り、抱き起こす。 「おい、影山!しっかりしてくれ!」 何度か揺すると目をあけた。どうやら命に別状はないようだ。 「木場…お、俺は…」 「影山、ここは退こう。すぐに治療しないと」 影山を抱え、すぐにファイズは逃げ出そうとするが… 「逃がすと思ったのか、貴様!」 ゴルゴスが吼える。牙王の方はガオウガッシャーでポンポンと自分の手を叩くばかりでさほどやる気はなさそうだ。 ファイズも影山を下ろし再び身構える。ファイズアクセルが手元に無い事をこれほど恨んだ事はない。 「影山、なんとか…一人で逃げてくれ」 影山はその言葉に素直に頷けない。背中の傷もそうだが、全身疲労によりまともに動けそうにない。 この状況で逃げる事は、不可能。さらに言うならファイズ一人でこの状況を打破する事も、不可能。 生き残りたい、生き残るためには?影山の決断は早かった。 「頼む!俺を、俺を仲間にしてくれ!」 「一体、君は何を言っているんだ?」 木場には理解できない。つい先ほどまで戦っていた相手と、命を奪おうとしていた相手の仲間になる? わけがわからない、錯乱しているのだろうか。 「頼む!何でもするから!だから、頼む!」 ついには土下座までして頼み込む。木場はどうしていいのかわからず、ただ影山を見下ろしていた。 「…ククク…そうか、そうまでして生き残りたいか…いいだろう、ワシらの仲間にしてやろう」 「死神!こいつは俺様の獲物なんだぞ?どうするか決めるのは俺のはずだ!」 死神博士の提案にゴルゴスが反発する。ゴルゴスの言い分はもっともではあるが。 「ワシはこいつを仲間にする。牙王。お前はどうしたい?」 「…ハッ、好きにしろ…だが荷物持ちがいるのは悪くない」 「1対2。決まりだゴルゴス。諦めろ」 「ふざけるな!」 ファイズは考える。もしかして今のうちに逃げられるんじゃないか、と。 だが牙王だけは視線をこちらから逸らしておらず、容易には逃げ出せそうにない。 「赤ダルマ…お前は俺に貸しがある…その借りを返せ…2倍でな」 「牙王貴様ぁぁ~っ!待て、2倍だと?」 「…こういうことだ」 ――FULL CHARGE―― ガオウガッシャーの先端から『牙』が飛び出し、ドリルのように回転する。 ガオウガッシャーを横殴りにするとそれに続くように『牙』も動き、気を抜いていたファイズを切り裂いた。 突然の攻撃に声も出せず、変身の解けた木場はそのまま海へと沈んだ。 「き、貴様!俺様の獲物を!」 「お前の食事に付き合う暇はない…ってことだ」 変身を解き、饅頭を食べながら牙王はゴルゴスを適当にあしらっている。 一方の死神博士は放置されていたデイパック二つを回収し、影山の側へと落とした。 「え、えっと…」 「喜べ、お前は我々の仲間になったのだよ。おめでとう」 座り込んでいた影山の背中の傷を杖でつつく。 「~~っ!」 「そうかそうか、転げまわるほど嬉しいか!」 「は、はい!嬉しいです!」 砂だらけになり、涙目になりながら影山は思う。とんでもない事になった…、と。 状態表 【影山瞬@仮面ライダーカブト】 【1日目 現時刻 早朝】 【現在地 H-4海岸】 【時間軸 33話・天道司令官就任後】 【状態】 全身に疲労。背中に裂傷。ザビーに2時間変身不可。 【装備】 ザビーゼクター、ブレス 【道具】 支給品一式×2、ラウズカード(◆J)、不明支給品(確認済) 【思考・状況】 基本行動方針 生き残り、脱出する。 1:死神博士、牙王に協力するフリをして隙あらば逃げる。 2:ゴルゴスとは二人っきりにならないよう注意する。 3:自分に使用可能な武器・変身ツールの確保。 4:木場、死んじまったのかな…。 ※午前1時過ぎの時点でG-2のガソリンスタンドに乗り物はありませんでした。 ※不明支給品は彼に戦力として見なされていません。 ※木場は死んだものと思っています。 (腑抜けたものよ…) 死神博士は失望していた。ライダーとは、こんなものだったろうか。 命が危なくなれば敵に尻尾を振り、平気で仲間を裏切るような存在だったのかと。 いや、この男だけが格別に駄目なのだ。そう思い込むことにする。 (こいつが知る情報と技術…そうだな、あとは兵隊程度の働きは期待しようか…) 死神博士が影山への視線は、どこまでも冷たかった。 ■チーム「死神博士の憂鬱」 【死神博士@仮面ライダー(初代)】 【1日目 現時刻 早朝】 【現在地:H-4海岸】 【時間軸】:一号に勝利後。 【状態】:若干疲労、擦り傷程度の傷多数 【装備】:鞭 【道具】:基本支給品、デスイマジンの鎌@仮面ライダー電王 【思考・状況】 基本行動方針:打倒本郷、及び一文字。この殺し合いをショッカーの実験場と化す。 1:牙王、ゴルゴス、影山を利用して戦いを有利に進める。 2:もし牙王が裏切った場合は、ゴルゴスを焚きつけて潰し合わせる。 3:仮面ライダーを倒す。 4:ゾル大佐?そいつは後回しでいい! 5:首輪を外す方法を研究する。その為にも研究施設へ向かう。 6:影山の情報、ゼクターの技術を可能な限り把握する。 ※一文字隼人(R)の事を一文字隼人(O)だとは信じていません。 ※流れ星は一戦闘に六発まで使用可、威力はバイクがあれば割と余裕に回避できる程度。 尚、キック殺しは問題なく使えます。 ※変身解除の原因が、何らかの抑止力からではないかと推測しています。 【牙王@仮面ライダー電王】 【1日目 現時刻 早朝】 【現在地:H-4海岸】 【時間軸】:最終決戦前。 【状態】:健康、2時間変身不可(ガオウ) 【装備】:ガオウベルト 【道具】:マスターパス、基本支給品、ランダム支給品(内容不明)、リュウガのデッキ、コンビニから持ってきた大量の飲食料 【思考・状況】 基本行動方針:全て喰らい尽くした上で優勝 1:おもしろいじゃねえか。 2:クソジジイと赤いダルマと影山は俺の手下だ。 3:煩わしい首輪を外させる。用が済んだら、3人を食う。 4:ガオウライナーを取り戻して村上も喰う。 ※会場のどこかに時の列車(予想ではガオウライナー)が隠されていると推測しています。 【十面鬼ゴルゴス@仮面ライダーアマゾン】 【1日目 現時刻 早朝】 【現在地:H-4海岸】 【時間軸】:本編13話前後 【状態】:全身に軽い疲労、2時間能力発揮不可 【装備】:ガガの腕輪 【道具】:基本支給品、ランダム支給品(不明) 【思考・状況】 基本行動方針:打倒仮面ライダーアマゾン、主催者への報復 1:この3人(死神、牙王、影山)を利用する。 2:アマゾンを見つけ次第殺す。腕輪を奪う。 3:血が吸いたい。隙をみて影山を襲うべきかどうか。 4:牙王、死神博士に苛立ち。赤いライダー(ファイズ)にも苛立ち。 ※岩石の9つある顔のうち一つが潰されました。 気がつくと砂浜の上で寝そべっていた―― 確か赤い岩石と戦って、『牙』にふき飛ばされて―― あぁ、そういえば影山は無事だろうか―― 戸惑いはしたが、今なら少しわかる。 死にたくなんて、ないもんな―― ふと、右手に違和感を感じて横目で確認すると、ファイズギアが目に入った。 吹き飛ばされて…気失ってたのに…離さなかったんだ―― ファイズギアを握り締めている自分に苦笑する。 これがなければ生き残れない。そう、木場もまだ、死にたくない。 これからどうしよう…えーっと、赤い岩石と牙に死神の…いや、というかここは―― 必至に頭を動かそうとするが、動かない。身体も心も、休息を欲しがっている。 寝たらおわり…ってわけじゃないよな…多分―― 波の音が疲れきった心に心地よい。そのまま木場は、眠りについた。 【木場勇治@仮面ライダー555】 【1日目 現時刻 早朝】 【現在地 H-3孤島】 【時間軸 39話・巧捜索前】 【状態】 睡眠中。全身に疲労。背中等に軽い火傷。ファイズに2時間、オルフェノク態に30分変身不可。 【装備】 ファイズギア 【道具】 無し 【思考・状況】 基本行動方針 主催者及びスマートブレインの打倒、脱出 1:海堂、長田、加賀美の捜索 2:首輪の解除 3:死神博士、ゴルゴス、牙王に警戒 4:影山をできれば助けてやりたい 5:事情を知らない者の前ではできるだけオルフェノク化を使いたくない 037 渦 投下順 039 太陽背負う闘神 037 渦 時系列順 039 太陽背負う闘神 007 流されやすい者達 影山瞬 046 かげやまのなく頃に~仕切り直し編~ 007 流されやすい者達 木場勇治 049 すべてのうつくしいものから 025 牙と知恵 Devil-Action 十面鬼ゴルゴス 046 かげやまのなく頃に~仕切り直し編~ 025 牙と知恵 Devil-Action 死神博士 046 かげやまのなく頃に~仕切り直し編~ 025 牙と知恵 Devil-Action 牙王 046 かげやまのなく頃に~仕切り直し編~