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「ねえねえ、知ってる?学園の噂。最近夜の学園で何かの鳴き声が聞こえるんだって」 「聞いた聞いた!他にも廊下で何か小さな動くものの影を見たとか。怖いよねー。絶対に魔物だよ!だって、使い魔だったら――――――――――」 「大丈夫、僕がキミを守るから。安心して」 薄暗い部屋にその言葉は響いた。 ********** 「という噂が最近流れているんです」 ルクスとフィオナの事件から4日後の放課後、二人は毎日生徒会の業務をしにきている。 業務といっても手伝い程度で例えば書類整理や生徒会室にある倉庫から必要な物を見つけたりだ。そして今日ルクスは最近学校中で言われている噂のことをシンディアに話した。 このヴェルブルク学園は夜になると
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『ノー・リーズン』という、全身から拒絶のオーラを放つスタンドを使う青年に、昔会ったことがある。 僕がある『スタンド使い達』で構成された組織に身を置いていた時の話だ。 『ノー・リーズン』の本体は、スタンドとは正反対でどこか抜けているあっけらかんとした人だった。 「スタンドはその人の精神体」だという話だったが、本当にそうなのだろうかと考えた程である。 『ノー・リーズン』は近距離パワー型だが、他の多くのスタンドと同じく「能力」を持っていた。 簡単に言うと、「触れた物事をうやむやにする能力」である。 言葉で聞くとそれほどでもないようだがよくよく考えるととんでもない能力だ、と気付いたのは、 僕が彼と出会ってから2日経った頃だった。 その日、彼は僕達に割り当てられた部屋ではなく、 組織のアジト内で唯一大型テレビがある談話室の、くたびれた革のソファーに沈み込んでいた。 点けっぱなしのテレビはニュース番組で明日の天気を報じていた。雲のマークが地図を埋め尽くしている。 彼はリモコンを握ったまま、虚ろな目で画面を見ていた。 僕が部屋に入ると、彼は思い出したようにこちらを見た。 目が僕をとらえて、彼は「ええと、新入りか」と僕に尋ねる。 僕は頷いた。 僕はもう一つのソファーに腰を下ろした。 「今何を考えていたんですか」と、僕は尋ねた。その日はたしか彼が任務に出る前日だった。 答えたくなければ構わない、と僕は言った。ここの人たちはあまり他人に心を開かない。 こちらから話しかけても返事が返ってくるのはまれだ。 だから彼に尋ねたと言っても、ただの独り言のようなものだった。 彼の表情はいつもの能天気なものとは違っていた。 暫く沈黙があったので、僕は一応断ってから取り出した煙草に火を点けた。 暗い部屋に灰色の煙が散っていった。 「定期的にな、」 彼が静かに口を開いた。 部屋はテレビの明かりだけで、半分闇に沈んでいる。 「定期的に、こんな時が来るんだ。というか、ええと」 この人はあまり考えて喋る人ではない。この日も例外ではなかった。 「こんな時ってのはつまり、……定期的に気付くんだわ、おれ」 静かに彼は言った。僕は煙を肺いっぱいに吸い込んで、ゆっくり吐いた。 少しの沈黙のあと、彼は独り言のように続ける。実際、独り言だったように思う。 僕もあまり反応はしなかった。下手な相づちは意味を成さないように思えた。 「おれの『ノー・リーズン』はさ。物事を『うやむや』にできる」 彼はテレビに目を向けていたがどこも見ていなかった。 彼はどこか遠くを見ていた。 「『うやむや』ってのは突き詰めると……、『なかった』ことにならないか?」 天気予報は終わっていた。 彼が言いたいことはなんとなくわかった。 というより、彼が言いたいことこそが僕が気付いた彼の能力の恐ろしさだった。 「『事実をうやむや』にする。勿論、『曖昧』にする程度のこともあるけど、 『なかったこと』にだって出来るんだ、おれは」 僕は動かなかった。ガラスの灰皿に灰を落とした。 彼はリモコンを膝の上に乗せたままだ。テレビはCMを流している。 「スタンドは成長するんだろ。能力も強くなる。 なあ、おれ思うんだ。このまま戦い続けて強くなったら、 いやもしかしたら今のおれでも、」 煙草の煙は闇に溶ける。 「人ひとり、『うやむや』に出来そうなんだ」 テレビは飽きもせずCMを流していた。 沈黙がまたあって、そこで初めて僕は相づちをうつ。 「怖いですね」と。 そうなんだよ、と彼は答えた。「怖いってわかってるからいいんだけどさ」と続けた。 「考えてみろよ、人ひとり消せるんだ。そいつの存在を『うやむや』にすればそいつはいなかったことになる。 もっと成長すれば組織の敵なんか最初からないことにも出来る。 そしてもっと成長すれば……」 僕は煙草を灰皿に押し付けて火を消した。彼はリモコンでテレビの電源を落とした。 静かになった部屋で、彼と僕の目が合った。お互いの何かが通じた。 彼は言った。 「……だからおれ、深く考えるのが苦手なんだ」 「嫌い」じゃなくてですか、と尋ねると、彼は小さく笑って「苦手なんだよ」と繰り返した。 「そういうわけで、」 彼はおもむろに立ち上がって、僕のそばまで歩いてきた。 そうして縮まった僕らの距離は、2メートル。 「『ノー・リーズン』、今の一連の流れを『うやむや』にしろ」 NOとかかれたスタンドの拳が僕と彼に繰り出され、僕の視界は暗転した。 「ええと、新入りか?」 談話室には、『ノー・リーズン』の青年がいた。 「おれは明日任務だよ、参っちゃうぜ」 能天気な表情で、彼は向かいのソファーに座る僕に話し掛けた。 テレビはニュースのあとのバラエティ番組を流している。 テーブルには未使用のガラスの灰皿が、裏返しに置いてある。 「やだなァ~、おれ作戦とか頭使うの嫌なんだよ、深く考えるのが苦手でさあ」 軽く愚痴る彼を見て僕は、まあ大丈夫ですよ、と相づちをうった。 バラエティの企画に笑いながら「任務なくなんないかなァ」と愚痴る彼を残し、僕は退室する。 テレビの音に混じって、彼の無邪気な笑い声が聞こえてきた。 拳を食らった時、僕は僕のスタンドで『ノー・リーズン』の能力を『散らして』いたのだ。 彼はあの時のことを忘れていた。消えたテレビも吸った煙草も『なかったこと』になった。 彼の「気付いたこと」も、ただ僕が記憶するのみとなった。 結局彼とはその後何回か会話をしただけだったが、 彼はおそらく、自分の能力のことに「気付く」たび、自分でそれを『うやむや』にしていたのだろう。 それが、下手すれば世界の存在すら『うやむや』にできるかもしれない彼なりの「防御策」だったのかもしれない。 はじめ違和感を感じた彼のスタンドの姿も、そう不自然なことでもないのかもしれないと思った。 その後僕は組織を抜け、彼と二度と会うことはなかった。 -了- 使用させていただいたスタンド No.238 【スタンド名】 ノー・リーズン 【本体】 物事の原因や理由なんかを深く考えずに突っ走るタイプの青年 【能力】 触った物体・事象の理由をうやむやにしてその物体・事象を弱めたりなかったことにできる No.775 【スタンド名】 アースガーデン・Q 【本体】 自分の目的以外の物事に深く関わる事を避ける青年 【能力】 『本体へのスタンド能力』をコードを通して外へ散らす 一覧へ戻る 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用、AI学習の使用を禁止します。 [ トップページ ] [ ルールブック ] [ 削除ガイドライン ] [ よくある質問 ] [ 管理人へ連絡 ]
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6 入り口に飛び込み辺りを見渡して、並んだ郵便受けのひとつに成歩堂の名を見つけた。 (703号室!) 7階なら、飛び降りて死ぬのに充分な高さだろう。 そんな想像が脳裏をよぎり、真っ青になってセキュリティのキーボードに703を入力しインターホンを鳴らす。 … …… ………ッ 「…はい」 春美の涙混じりの声で返事が聞こえてくるまでの間、糸鋸はまるで生きた心地がしなかった。 「ここと部屋のロックをはずすッス!早まっちゃいかんッス!」 「え…?」 「と、とにかくここを開けるッス!早く!」 …ガチャ、と中戸の鍵が開くなり彼は脇目もふらず中に入った。 エレベータなど待っていられるかとばかり、物凄い勢いで非常階段を駆け上がる。 (なんて…) 息切らし二段飛ばしで走りながら、糸鋸は自分の馬鹿さ加減が腹立だしかった。 春美の親戚や児童課などに任せてはおけぬなどと偉そうなことを考えていながら、 今ひとりにしてはいけない彼女から目を離した自分の迂闊さが呪わしかった。 後になって考えてみると、糸鋸自身この時の彼はよくよく慌てていたと思う。 そこまで想像を膨らませることは無かったのだが、 春美の身に万が一のことを考えたこと自体は彼の純真さの表れと言っていい。 「…ゼイ、…ゼィ……」 7階を登りきり、肩を上下させるほどの荒い呼吸を整えもしないまま、 刑事は703号室のドアを開けた。 中は明かりが点いていない。 糸鋸は一瞬、顔から再び血の気が引いていくのを感じた。 …が。 息が収まっていくにつれ、暗い部屋の中ですすり泣く春美の声にやがて気づくのだった。 「…ハルミちゃん?」 糸鋸は壁にある蛍光灯のスイッチに手を伸ばしたが、 「…だめ………ッ」 という春美の声に止められる。 「…点け……ちゃ、ダメです…………。 ……ごめ、なさ…刑事さん……もう少し…待っ…」 春美はひとり、ダイニングルームの真ん中でうずくまって嗚咽を上げていた。 「…」 糸鋸は言葉を失った。 しばらくそのままだったが、やがて春美は震える声をあげる。 「…洗濯したって……たたんだって…もう…………」 暗闇に目が慣れてくると、春美は胸に何かを抱いているのが見えた。 真宵と成歩堂の服だった。 彼らの服に顔を押し当てながら途切れ途切れそう言って泣きじゃくる春美の姿が、 針のように糸鋸の胸を突き刺した。 霊媒道に生まれついた子として、常にひとの死と霊魂に接して育ってきたはずの少女。 しかし、こうして家族の死に打ちのめされる姿を見るかぎり、 そんな生い立ちとは関係なしに…ただの、普通の女の子でしかない。 なぜこんなにも過酷な運命ばかりがこの娘の身にふりかからなければならないのか。 (…神も、仏も無いッス) 糸鋸は唇を噛み締めて、心の中でそう呟いた。 「ひとりになっちゃった…刑事さん。私、ひとりになっちゃったよぅ……」 涙と鼻水でクシャクシャになった顔を上げて、春美は呻く。 (このコは…) 涙を見せまいと、ここで少し泣いてからクルマに戻るつもりだったのだろうか。 糸鋸はその健気さに胸に熱くこみ上げてくるものを感じて、春美の小さな肩を抱いた。 糸鋸の手は、まるで春美の体を全て包み込むかのように大きく暖かい。 「あ…あぁぁぁ……ッ!」 春美の、それまで堪えていたものが突如堰を切ったように流れ出た。 「わぁああああぁぁぁ………あぁぁぁぁ…ッ」 自分の胸にすがりつく少女の、悲痛な感情のほとばしりが糸鋸の耳を打つ。 糸鋸には、ただ黙って抱きしめてやることしかできなかった。 …春美は、クルマの中に居る間もずっと泣き続けていた。 やがて泣きつかれて眠ってしまった彼女を老父母の居る実家に預け、糸鋸は再び署に戻って来た。 実家は片道でクルマを2時間ほど飛ばした場所にある。 署に戻るころには既に夜が明けようとしていたが、彼はそのまま地下にある射撃場へと足を運んだ。 時間外の施設使用は規則違反だったが、そうでもしなければ気の高まりが収まりそうになかった。 (自殺じゃ、ないッス) それは断じて違う、と糸鋸は考える。 (ふざけてて転落?………ま、まぁそれはあるかもしれないッスけど…) 生前の真宵の性格を考えると、このあたりは自信が無い。 (…けれど、恐らくそれも違うッス) 決して定かとは言えないが、彼の刑事としての勘が「それは違う」と言っている。 自分自身の勘があまり当てにならないモノなのは糸鋸自身理解していたが、 この場合はそう思わなければやりきれなかった。 この事件の裏には何者かの悪意があるのだ、と。 (もし誰かの思惑でこうなったというのなら…) 糸鋸はリボルバーの引き金を引いた。 マグナムの轟音が密閉された射撃場に鳴り響く。 (絶対に、犯人を捕まえてやるッス!…でなけりゃ、報われないッス!) 2発、3発と続けざまに撃った。 お世辞にも正確な射撃とは言えないが、ターゲットに弾丸が当たった箇所は例外なく吹っ飛んでいる。 むろん制式銃ではない。人一倍の体格と指の太さを誇る彼が、 自分で使いやすいものを申請した銃だった。 …その名にキングコブラという毒蛇の王者の名称を冠している。
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【登録タグ E ruke ミントP 曲 桃音モモ】 作詞:ruke 作曲:ミントP 編曲:ミントP 唄:桃音モモ 曲紹介 ~覚醒せよ、輝く未来を勝ち取る為に~ 引き籠り応援ロック。どこかで聴いた気がする 歌詞 (動画歌詞より転載) カーテンの隙間 差し込む月明かり 暗い天井見上げて このままじゃダメだ 呟いた言葉は 戯言にしかならず 現実に押し潰され 傷つくこと恐れ 立ちすくむような そんな 弱い自分は もう必要ない 夢へと走り出し 加速する もっと 早く 速く 待つだけの毎日には 飽きてしまったから 神話をこの手で 作り出すため もっと 高く 翔ぶの 薄暗い部屋の自分にサヨナラして ドアの向こうへ 闇に 押し潰されても 涙流さないで まだ立ち上がれる 夢見る事 どうか 恐れないで 今 夢は空へ 飛翔する もっと 遥か彼方 昨日より今日より 明日を見つめ続けたい 雲を掴むような道のりでも 辿り着くと信じてるよ 薄暗い部屋の自分にサヨナラして ドアの向こうへ コメント 名前 コメント
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リビングに駆け込んできたソーダの、第一声。 「ママーっ。ソーダひとりでねんねするーっ」 ……ソーダとの生活で、色々驚かされる経験をしてきた私だけど、これほどまで驚かさせられるとは思わなかった。 あの、甘えん坊のソーダが、一人で寝る? 夜になってから言うのだから、昼寝という訳ではない。 確かに、仕事で遅くなる時はソーダに添い寝をしてあげることは出来ない。それでも、他のお姉さん達が付き添ってくれているのは確実。一人で寝たことなど、これまで一度もないと思う。 「え、えっと……大丈夫なの?」 コーヒーの入ったマグカップをテーブルに置き。満面の笑みを浮かべるソーダに顔を向ける。 「うんっ。てんちゃんがー、おねーさんはひとりでねるんだよーっていってたー」 「お姉さんって、ねぇ」 そのお姉さんと呼ばれるには、ソーダはまだまだ幼すぎると思うけど……。 と、隣に座っていた爆弾岩さんが、あたしの肩に手を乗せる。 「いいんじゃないかしらぁ。たまにはそういう経験も必要よ?」 「でも、まだソーダは……」 「小さくても、宝石乙女は一人で永い眠りに就かなければならないこともあるの。次のマスターを探す時に、ね。ソーダは生まれたばかりで経験はないけど、それは避けられないことなのよ」 穏やかだけど、寂しそうな表情の爆弾岩さん。 そんな生々しい話を聞かされては、あたしから言う事なんて何もなくなってしまう。 ……きっと、宝石乙女には必要な事。 「はぁ……じゃあ、ちゃんと暖かくして寝るように。分かった?」 「はーいっ」 元気な返事をされても、心配なものは心配だ。 真っ暗な子供部屋。その中央にあるのが、ソーダの寝床である宝石箱。 普段は、ソーダが寝付くまで傍にいて、眠ったところを計らってあたしが蓋を閉めている。 だから、暗い部屋の中で、蓋が閉まった宝石箱が一つ置かれているのは、何故か落ち着かない。 静かに寝てるの、かな……。 「心配?」 背後から、爆弾岩さんが部屋の様子を覗き込む。 「当然ですよ。あんな甘えん坊がいきなり一人でなんて」 「でもぉ、【ソーダのマスター】ちゃんだって、小さい頃は一人で寝るようになったのもいきなりじゃない?」 「それはまぁ……」 それでも、小学校に入ってからやっと一人で眠れるようになった訳だけど……。 でもソーダはどうだろう。まだ精神的には幼すぎるような気も。 「すっかり過保護なお母さんになっちゃったわねぇ」 「ちょ、爆弾岩さん……うぅ」 否定出来ない。昔はこの年でシングルマザーはダメだと言っていたのに。 「まぁ、貴女も明日早いんでしょ? ちゃんと寝るようにね。じゃあ、あたしは帰るわぁー」 「え、ええ……おやすみなさ……ひゃあぁっ!」 耳たぶに吐息を吹きかけられ、思わず声を上げてしまう。 文句の一つも言ってやろうと振り返るも、爆弾岩さんの姿はすでに無い。 まぁ、いいか。とりあえずソーダも静かに寝てるみたいだし、そろそろ寝る準備でも。 「……ママぁ」 寝言なのか、部屋の方からソーダの小さな声が聞こえる。 いつもと変わらぬ暗闇に包まれた寝室の天井。 なのに、今日はそれが気になって眠れない。 隣の部屋で眠るソーダだって、いつも通りのこと。普段と何ら変わらぬ夜のはず。 寝返りを打ち、二つの部屋を仕切る壁へと顔を向ける。 床を挟み、この白い壁の向こうで、ソーダは眠っている。 いつも通り眠れただろうか。また熱いと文句を言って、毛布をはがしてはいないだろうか。 ……気になって仕方がない。 「はぁ」 ――明日も仕事だ。 そう自分に言い聞かせ、反対側へ寝返りを打つ。 大丈夫大丈夫。明日の朝、きっと一人で眠れたと自慢するソーダの姿を……。 「ママぁ」 ……あれ? 「ママ……ねんねしちゃった?」 何で、ソーダの声がすぐ横で? 寝返りを打ち、再び壁の方へと顔を向ける。 「わっ」 思わず声が出てしまった。振り向いた瞬間、ベッドの上に乗ったソーダの顔が目の前にあるのだから。 「ママぁ」 そして、あたしの顔に抱きついてくる。ちょっと苦しいが、我慢。 「あのね、ねんねがんばったんだよ。でもぉ……」 やっぱり、一人で寝るには心細かったかな。 でも、泣いていないところは偉い。いつもなら泣きながら抱きついてくるところなのに。 一人ではまだ眠れないけれど、少しずつ成長しているんだ。 「ソーダ、おねーさんはめー?」 「ん……そうだねぇ」 「うぅ」 暗闇でも分かるぐらい、残念そうに俯く。 でも、まだお姉さんにはならなくていい。多分それが、あたしの本音だろう。 だって、まだ子離れが出来ていない、駄目なママなんだから。あたし自身の心の準備が出来るのは、まだ時間が掛かりそう。 「ママぁー、ねんね……」 抱きついていた体を離し、布団の中へ潜り込む、 そして、あたしのパジャマをしっかりと握りしめてくる。 「ちょ、ソーダ。もぅ」 眠れなくても、眠気には苛まれていたのかな。離れないようしっかりとくっついたところで、ソーダの寝息が聞こえてくる。 ……こうして、二人で寄り添って眠るのは久しぶりだ。 「おやすみって、言わなきゃ駄目でしょ」 注意する相手は、すでに夢の中。 そんな小さな同居人の頭を、起こさないよう優しく撫でる。 とても柔らかい、髪の毛の感触。 ◇ 「マスタぁー……あ、あのね、お酒終わりにしてね、一緒に寝よ?」 「はぁ? いきなり起きてきたと思ったら……お姉さんになるって、一人で寝るつもりじゃなかったのかよ?」 「にゃうぅー……」
https://w.atwiki.jp/azum/pages/68.html
闇が吹雪いていた。暗い雪の底で。ちよと榊、彼女たちに夜が明けることはついに無かった。 「どう……し……て……」 神楽は泣いていた。榊の遺体にしがみついて。一片の陽の光も差し込まぬ中、 ただ、激しくガラス戸を打つ吹雪だけが、世界の輪郭を顕わにしていた。 智は暗い面持ちで大阪を見やった。 「――大阪……何があったか聞かせてくれないか」 「……うん」 大阪がおもむろに語りはじめる。頭には痛々しげに包帯が巻かれていた。 「私らは、よみちゃんについていって、西側の廊下を歩いとったんや……。真っ暗で、 どの部屋に誰が潜んどるか分からんかった。みんな、気ぃつけよっていって……。それで、 よみちゃんが懐中電灯を手に先頭にたっとった。三番目の廊下をまがって、そのときやった。――誰かが廊下を横切ったんや」 部屋に、大阪の静かな声が響いた。もう三人だけになってしまった部屋に。 「確かに、みたんや。誰かが横切るのを……。私らはすぐに追いかけた。でも、みんな走っていくやろ。 私は足が遅いから、ついていくうちに遅れてしもうて……。それで二人が先に角をまがったとき、 悲鳴があたがったんや。あたしはあわてて角をまがったんやけど、誰かに後ろから殴られて、そのまま……」 「それで、よみがどうなったかは?」 大阪は首を振った。 「そうか……」 「よみだ」 不意に神楽が呟く。 「なんだって?」 「よみが殺したんだ!」 「なに……!?」 智が目を見開く。すぐにその顔が激情に歪んだ。神楽の襟首を掴む。 「おい、おまえ今何といった!? もういっぺんいってみろっ!」 「よみが殺したんだよ、榊を、ちよちゃんを!」 「ふざけるな! 何でよみが二人を殺さなくちゃならないんだ! でたらめもいい加減にしろ!」 「だってそうじゃないか!」 神楽が負けじと大声を出す。 「あいつも一緒に襲われたのならなぜ姿を現さない!? 怪我をしているならどこかから 私たちに助けを求めるはずだろう? あるいは、もう殺されているのだとしたら、 どうしてよみの死体が見つからないんだ? 忽然と消えちまっているなんて可怪しいじゃないか!!」 「それは……」 智が言葉につまる。確かに、暦の姿が消えてしまっているのは不可解だった。 ちよと榊を殺した手口といい、犯人は殺害の痕跡を隠そうとはしなかった。 誰かが来るかもしれない中、わざわざ暦の死体を運んで隠す理由が分からなかった。 「あいつが油断させておいて榊を刺したんだ。そして、あとからついてきた 大阪の頭を後ろから殴った。だけど殺し損ねて、それでどこかへ隠れたんだ」 「いいかげんなことを言うな!」 智が怒鳴り散らす。 「じゃあ聞くが、よみに、ちよちゃんと榊を殺す何の理由があるってんだ? いってみろ!」 「理由ならあるさ――よみは榊を憎んでいたんだ」」 智が口をあけたまま固まる。 「――何だって?」 短く、驚きの声が漏れた。 神楽はそんな智を冷ややかな目でみていった。 「よみの奴は前々から榊を忌々しく思っていたんだ」 神楽が言葉を続ける。 「美人でスタイルがよくって、男子にも人気があり、スポーツは万能。頭だって悪くない。 あいつはそんな榊を妬んでいたんだ。よみは別のグループとも付き合いがあるだろうが? 実はあいつ、陰で榊の悪口を言いふらしていたんだよ。こそこそとな。お前、かおりんが なぜ私らのグループから離れていったか知ってるか? 榊が嫌いなあいつとはそりが合わず、あいつに追い出されたんだよ」 「そ、そんな……」 襟首を絞める力が弱弱しくなっていく。 「クラスの中で孤立している前は知らないだろうがな」 ふん、と神楽は鼻を鳴らした。 「――実を言うとよ、私もお前が大っ嫌いだった」 「え?」 智の口からかすれた声が漏れた。 「勘違いするなよ。私は榊といるためだけによみたちのグループにいたんだよ。それだけさ。 だけどお前のことは本当にうざかったぜ。はっきりいって大嫌いだった。榊と一緒にいるために我慢して、 適当に調子を合わせていたよ。だけど、たまにマジで殺したいと思った。お前はクラス中から嫌われてるんだよ。 私らのグループ以外の女子は、いや男子も、誰もお前のことなんか相手してなかったろうが? 話しかけても無視されたとき、何かの気のせいだとでも思って自分に言い聞かせてたのか? ハハハッ! 大笑いだな。 よみだけは幼馴染の腐れ縁でしぶしぶお前の面倒をみてたようだけど、それでも半ばうんざりしてたぜ」 智は一点を凝視し、死んだように固まって、残酷な言葉を聞いていた。 神楽が構わずに立ち上がる。手提げの中に水の入ったペットボトルと、食料の一部を詰め込んだ。 「私は、勝手にさせてもらうぞ。もう、うんざりだ。いまさら、お前なんかと一緒にいるつもりはない」 戸口に立ち、そうやって大阪に振り向く。 「大阪、お前も私と来い。こんなやつと一緒にいるとロクなことないぞ」 智は固まっていたが、はっとして面を上げた。哀願するようなまなざしで大阪をみる。 大阪はなにやら考えているようであったが、智と目を合わせようとしない。 「――私も、神楽ちゃんといく」 そういうと、智を振り返ろうともせずに部屋を出て行った。 智はただ一人取り残された。二人の死体が残るその部屋へ。 頭の中がぐちゃぐちゃになり、神楽のさっきの言葉が何度も意識の面に出ては消えていった。 ふと手を見ると、榊の遺体を運んだときの血糊がべっとりとこびりついていた。 「なんで、こうなってしまったんだろうな――」 自分では泣きたくなんかないのに涙が溢れてきた。 拭っても拭っても、とめどもなく溢れてきて、ポタポタと畳の上に染みをつくった。 智は立てひざに顔をうずめてなきじゃくった。 「よみが殺したんだ!」 その言葉が反芻される。 本当に暦がちよや榊を殺したのだろうか。確かに、老人が犯人だと強く主張していたのは暦だった。 そして、二手に分かれて老人を探しに行かせたのも。 それが、疑いを老人に向けさせ、皆を分散させる手段だとしたら―― 「違う! そんなはずはない!」 智は激しくかぶりをふった。自分と死体以外誰もいない部屋に叫び声が響き渡る。 「よみは、よみはずっとあたしの友達だったんだ。そんなことするはずなんて、あるわけ……」 幼稚園からずっと、暦は同級生だった。どんな時でも一緒だった。 中学校のとき、智は陰湿なイジメにあっていた。そのとき、智は今からは想像がつかないほど、 内気で無口な生徒だった。そこをつけこまれて、気の弱くて頭もよくない智はイジメのターゲットになっていた。 毎日が地獄だった。死のうとも考えた。そんな智の唯一の友達が暦だった。暦がいなかったら智はとうに自殺していただろう。 高校に入り、智は自分を変えようと必死になった。もういじめられるのはまっぴらだと。 明るく元気な強い自分に生まれ変わるのだと。必死に勉強して暦と同じ高校に入ると、 中学のころの自分を忘れるかのように強気に出た。しかし、それは裏目に出た。 はしゃいで皆のウケを狙おうといろいろとふざけてみた。だが、本質は昔のいじめられっこままの、 まるで空気が読めない彼女のやることは、皆からひかれ、疎まれるだけだった。 智はいつの間にかクラスで孤立していた。そのことに智は気づかないふりをしていた。 それを認めてしまえば智の心はどん底までおちてしまうから。そうして暦のグループで はしゃいでるときだけが生きていると実感できた。暦だけが智の心の支えだった。 それなのに、暦が犯人だなどと―― 「そんなはず、ない……」 智はただ俯いて泣きじゃくっていた。 ――どれほど時間がたったろう。再び、屋敷に響き渡った。誰かの悲鳴が。
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いつものノイズが、またやって来る。 廊下のむこうから肩をいからせて眦を吊り上げて。 赤い唇から紡がれるのが意味を成している言葉なら、まだ俺も気が休まるのだろうが……。 …は………で……… ……よ… っ ……… それはまるで受信状況の悪いラジオみたいだ。 まったくもって、単なるノイズでしかない。 懸命に何かを訴えているのは分かるが、それだけのこと。 聞き取れないし意味が分からない。故にノイズだ。 …………ぃ…わ……… ……つ………し…… 呆れかえったような表情で溜息をつく姿だけは克明に見えるのが逆に癇に障る。 長い髪をかき上げながら何やらぐちぐちと呟いているようだが、愚痴りたいのはこっちだ。 ある日突然自分の部屋に幽霊が出現した方の身にもなって欲しい。 イライラしながら足早に女の横を通り抜け、最奥の寝室に向かう。 このところ仕事が忙しい所為で、深夜に帰宅してはただ眠るだけの生活が続いている。 これ以上益体も無い面倒を抱えるのは真っ平ゴメンだ。 明かりも点けずにベッドに潜りこむと、急速な眠気に襲われる。 ……心を亡くすと書いて「忙しい」とはよく言ったものだと思う。 際限の無い激務に追われると、その日にあったことを思い出すことすら難しくなる。 急速に襲い来る睡魔に身体を明け渡しながら、「辛いなあ……」と一言だけ呟いてみた。 意識が途切れる間際に脳裏をよぎったのは、何故かあの女の顔だった。 今日も今日とて深夜の帰宅。いつものノイズがお出迎え。 いい加減相手をするのも億劫なのだが、なんせ触れることも出来ないので 強制退去させられないのがどうにも歯痒い。 初めてこの女を目撃したのは……えーと……まあ、とにかくちょっと前のことだ。 とある深夜、俺がマンションの部屋に帰るとこの女が廊下に突っ立っていたのだ。 泥棒にしては堂々としているし、身なりも容姿もそう悪くない。 ではこの女はなんなんだろう? 「あんた誰。ここで何してんの?」 ………よっ! ………れ……が………… に……のっ…… 「いや、何言ってるか全然わかんね。それ何? 新手の腹話術?」 あ… っ…! ………は……て…… でっ!…… とにかく、怪しげな女が部屋にいることは間違いないのでつまみ出そうと試みて―― 「…あれっ?」 その手は空しく宙を掻いた。 確かに俺は二の腕を掴もうとしたはずだが……。疲れで目測誤ったか? んじゃ、リトライ。 「…………なんで?」 やはり俺の手は女の身体をすり抜ける。その時点でなんとなく嫌な予感はした。 身体を庇うように後ずさる女に問いかけてみた。あんたは幽霊ですか? と。 ………っ……… よ! さすが幽霊。この世界の言語は通用しないらしい。 こちらが恐怖を感じるような見てくれや態度でないのが幸いだ。 「まあ……触れられないなら害も無いか……そんなことより俺疲れてるんだよ」 一晩眠ればこの女もどこかに消えるかもしれない。 胡乱な頭でそんなことを考えながら、寝室へ向かった。 それが少し前の出来事。 ――以来、毎日のようにディスコミュニケーションが繰り返されているというわけだ。 変化が訪れたのは数日の後だった。 玄関をくぐった俺をねめつける強い視線は、腕組みした女から発せられるものだ。 そこまでは良かった。いつものとおりだ。 「……私の声、聞こえる?」 俺は多分、呆然としていたに違いない。 今までこの女の口から意味のある言語が放たれたことは一度だって無かったからだ。 女の言葉はさらに続く。 「今度は聞こえてるわよね? 苦労したわよ……ツテを頼ってあんたに “チャンネル”合わせてあげたんだから。感謝しなさいよ?」 「チャンネルって……そんなの簡単に合わせられるもんなのか?」 「あんまりやりたくは無いのよ。“向こう”に“引っ張られる”のは嫌だから」 「………?」 言葉は聞こえるようになったのに、今度は意味が良く分からない。この女は何を言ってるんだろう。 「ねえ、もう分かってるんでしょ? 本当のこと」 「……何、言って……」 「分かりたくないだけなんでしょ?」 何が分かってるって? 俺は何も分からない。分からないから問いかける。 「なんだよ。一体何が言いたいんだ? ここは俺の部屋で――」 「今は私の部屋なのよ……幽霊さん」 ヘンなこと、いうなよ 「……毎晩遅くまでお仕事ご苦労さま。でも、あんた今日の仕事思い出せる?」 仕事 おれ、は、会社で えーと会社で なんだっけ 何の仕事したっけ 「この部屋が自分の部屋に見える? 全部私の趣味で固めてあるのに」 俺の部屋 ? こんな、女っぽい部屋 違うな あれっ 俺のギターも 無い 学生の頃バイトしてかった 「見ようとしなかっただけ。聞こうとしなかっただけ。あんたはもう――」 ああ そっか 俺…… 「死んだのか」 言葉に出すと、その事実はストンと胸に収まった。 「そう、もう半年も前にね」 「……なんで死んだんだろう」 「居眠り運転。夜遅くにこの近くで信号柱に突っ込んだんだって」 「詳しいね。俺も忘れてるようなことを」 「ここを管理してるのは伯父の会社なの。あなたが出るから住人が居つかない、って泣きつかれてね……」 苦笑まじりに言う女の顔を眺める。 綺麗な女だな、と今頃になって気付くのだから俺は本当に何も見えていなかったんだろう。 「迷惑、かけたな」 「どういたしまして」 穏やかな顔で笑う女の目には、いくばくかの憐憫が垣間見えた。 自身を理解した今ならあっさり消えられそうな気がしていたのに、少しだけ心が弱くなる。 俺は僅かに逡巡してから口を開く。 「……泣き言、言っていいかな」 「どうぞ。聞くだけしかできないけど」 「もう少し……生きてたかったなあ」 「うん」 「仕事だって結構がんばったんだぜ? 一流大卒の奴らに負けてたまるか、って」 「うん、わかるよ」 「毎日クタクタになるまで残業して……それで……」 「うん。私は毎晩あなたを見てたから、知ってる」 優しい声がかけられる。眦が熱くなる。 「あなたのお仕事は知らないけれど、あなたが頑張ってたのは知ってる」 暗い部屋に一人で帰っていた頃には、こんなことはなかった 「何も心配いらないから、もう休んでいいのよ?」 ありがとう。……じゃあ、少し休むとしようか…… 「さよなら、幽霊さん―――」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「助かったよ……これで安心して物件を薦められる」 「伯父さん。私は拝み屋さんじゃないんだからね、こういうのはこれっきりにしてよ?」 「しかし、美紗はあの幽霊をどうやって祓ったんだ? 参考までに是非……」 「……別に悪い霊じゃなかったから、祓うなんて言い方はよしてよ」 「あ、ああ……で、どうやって……」 「何も変わったことなんかしてないわよ? 頑張ってる人にはね、こう言ってあげるの。――お疲れ様、って」
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同名アイドル [ウィンターホラーグリーン]白坂小梅データ [ウィンターホラーネイビー]白坂小梅データ [ウィンターホラーボールド]白坂小梅データ [ウィンターホラーブルー]白坂小梅データ プロフィール セリフ集 [部分編集] 同名アイドル 白坂小梅 [メイドコレクション]白坂小梅 [ハロウィンナイトメア]白坂小梅 [ウィンタースタイル]白坂小梅+ [ホワイトナイトメア]白坂小梅 [納涼浴衣娘]白坂小梅 [CDデビュー]白坂小梅 [ゴシックホラーナイトメア]白坂小梅 [部分編集] [ウィンターホラーグリーン]白坂小梅 データ [ウィンターホラーグリーン]白坂小梅 属性 クール レア度 レア Lv上限 1 親愛上限 0 Lv1攻撃値(アルバム値) 900(1コスト比112.5) Lv1守備値(アルバム値) 1200(1コスト比150) Lv1攻撃値(実際値) 同上 Lv1守備値(実際値) 同上 コスト 8 移籍金 2,900マニー 特技 ナイトメアスノー(全タイプの攻 小ダウン) 入手 招待キャンペーン第9弾(2012/12/10 16 00~2012/02/12 15 00)間に招待1人モバ友招待ガチャ 備考 ・特別移籍させることはできない・レッスンさせることはできない [部分編集] [ウィンターホラーネイビー]白坂小梅 データ [ウィンターホラーネイビー]白坂小梅 属性 クール レア度 レア Lv上限 1 親愛上限 0 Lv1攻撃値(アルバム値) 1020(1コスト比127.5) Lv1守備値(アルバム値) 1460(1コスト比182.5) Lv1攻撃値(実際値) 1200(1コスト比150) Lv1守備値(実際値) 1700(1コスト比212.5) コスト 8 移籍金 2,900マニー 特技 ナイトメアスノー(全タイプの攻 小ダウン) 入手 [ウィンターホラーグリーン]白坂小梅と[ウィンターホラーグリーン]白坂小梅を特訓 備考 ・特別移籍させることはできない・レッスンさせることはできない [部分編集] [ウィンターホラーボールド]白坂小梅 データ [ウィンターホラーボールド]白坂小梅 属性 クール レア度 レア Lv上限 1 親愛上限 0 Lv1攻撃値(アルバム値) 1290(1コスト比161.3) Lv1守備値(アルバム値) 1710(1コスト比213.8) Lv1攻撃値(実際値) 1500(1コスト比187.5) Lv1守備値(実際値) 2000(1コスト比250) コスト 8 移籍金 2,900マニー 特技 ナイトメアスノー(全タイプの攻 小ダウン) 入手 [ウィンターホラーネイビー]白坂小梅と[ウィンターホラーグリーン]白坂小梅を特訓 備考 ・特別移籍させることはできない・レッスンさせることはできない [部分編集] [ウィンターホラーブルー]白坂小梅 データ [ウィンターホラーブルー]白坂小梅 属性 クール レア度 レア Lv上限 1 親愛上限 0 Lv1攻撃値(アルバム値) 1560(1コスト比195) Lv1守備値(アルバム値) 1980(1コスト比247.5) Lv1攻撃値(実際値) 1800(1コスト比225) Lv1守備値(実際値) 2300(1コスト比287.5) コスト 8 移籍金 2,900マニー 特技 ナイトメアスノー(全タイプの攻 小ダウン) 入手 [ウィンターホラーボールド]白坂小梅と[ウィンターホラーグリーン]白坂小梅を特訓 備考 ・特別移籍させることはできない・レッスンさせることはできない [部分編集] プロフィール アイドル名 [ウィンターホラーグリーン]白坂小梅 [ウィンターホラーネイビー]白坂小梅 [ウィンターホラーボールド]白坂小梅 [ウィンターホラーブルー]白坂小梅 フリガナ しらさかこうめ 年齢 13 身長 142cm 体重 35kg B-W-H 66-51-70 誕生日 3月28日 星座 牡羊座 血液型 AB型 利き手 左 出身地 兵庫 趣味 ホラー・スプラッタ映画鑑賞・心霊スポット巡り [部分編集] セリフ集 セリフ 内容 プロフィールコメント 「プロデューサーさん…ゆ、雪のスキー場…行くって、聞いたから…ふ、冬のホラー映画…見て…お仕事の予習する…?……雪山は…きっと、いっぱいる…と思う、けど、一緒なら…あ、安心だから…ね?」 親愛度UPコメント 表示 「あ、あの…○○さんの好きな…映画…教えてほしい…」 リーダーコメント 「こ、怖く…ない…よ……?」 あいさつ 「ス、スキー場…は、初めて…行く…」 あいさつ 「スキー…で、出来ない…ソリ…なら…」 あいさつ 「あ、あの…もう一本…いい…?」 あいさつ(グリーン) 「こ、これ…見たことない…から……か、借りてみよう…かな…?」 あいさつ(ネイビー) 「これは…オススメ…。アレが…グチャってなるの…。面白い…ホラー…!」 あいさつ(ボールド) 「日本のだと…これイイ…。いきなり…降ってくるの…アレが…。」 あいさつ(ブルー) 「いっぱい…いっぱい…ホラー映画ざんまい…楽しみ…ふふ…」 あいさつ 「○○さんといっしょに…ホラー映画鑑賞会…ふふふ…」 仕事終了時 「ゆ、雪山…LIVE…ド、ドキドキ…」 仕事終了時 「お仕事の予習…大事だと…思う」 仕事終了時 「リ、リアル…サイコ…サスペンス……ごっこ」 仕事終了時(グリーン) 「ホラー映画…見るときは…部屋、暗くして…観る…よね…?」 仕事終了時(ネイビー) 「暗い部屋で、ホラー映画見るの…好き……でも…ママに…怒られる…」 仕事終了時(ボールド) 「ホラー映画見始めると…いつの間にか…あ、朝日が……」 仕事終了時(ブルー) 「1人でホラー映画…見るの…こ、怖い…?ふ、ふふふ…かわいい…」 仕事終了時 「○○さんと…一緒に…映画、見るの…た、楽しい…です」
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池沼唯の添い寝 深夜、姉である唯が寝しずまった後、憂は静かに唯の部屋のドアを開けた。 重度の知的障害をもつ唯は精神が幼児のままなので、たいがい10時ごろには「あう!ゆい、ねゆ!」といってまどろみ始める。 池沼唯は寝る前にたいがい粗相を2、3回して、憂におしおきされ泣いているため、この時間には泣き疲れるのだろう。 たまに夜中になっても煩く騒ぎ、奇声をあげつづけることはあるが、そういう時は憂は問答無用で気絶させて黙らせることにしている。 今日は食後2回のブブブー(おまけに一回は風呂の中だ!)としつこいアイスねだりで、既に計3回泣かされている。 そのため、唯は今日ははやめにおねむとなったようだ。 唯「ふゅごー!…うみゅー…(-p-)zzz」 唯の鼻は終始つまりぎみなため、いびきがとてもうるさい。おまけにたまに池沼なうなり声が混ざっており、唯の池沼ぶりを見事にあらわしているようだ。 憂「…よく寝てる…」 唯「ふぉごー!…しゅごー!…zzz」 憂は唯を起こさないように、やかましいいびきの音をたよりに、暗い部屋をそっとベッドに向けて移動する。 目が慣れてくるにつれ、ベッドの上にモゾモゾと動く不気味な物体が見えてくる。 池沼唯の寝姿だ。 唯「あひゅぅぅ~…ふんごぉぉ~…!(-p-)」 憂はそっと唯をのぞきこむ。 その顔はあいかわらずの池沼顔であり、だらしなく開いた口からは涎がだらだら溢れており、それが垂れる跡が何本もの筋になっている。 顔のパーツのみを見れば、つくり自体は憂に似ている愛らしいもののはずだが、明らかに健常者と違う池沼独特のまぬけな表情と、だらしなく太ったほほや下顎のたるみがそれを台無しにしている。 同じ姉妹であるのに、知能の程度によってこれほど容姿に差がでるとは…。 しかし、そんな池沼な姉を見る憂は、夕食後に唯をおしおきした時の般若のような顔とは似ても似つかない表情をしていた。 憂「…ふふっ」 そう、憂はここのところ毎晩こうやって、唯が寝たあとに唯に夜ばい(?)をかけていたのだ。 世間一般から見れば、体だけでかい子どものような、いや幼稚園児すらも持っている最低限の理性すらももてない唯は見苦しく迷惑なだけだが、憂にとってはそんな唯はむしろ誰よりも純粋で汚れのない、愛くるしい存在であった。 先ほど述べたとおり唯は池沼ゆえに最低限の見てくれさえ整えることができない汚い女なのだが、その容姿すらも憂にとっては可愛いらしく、天使のように映るらしいのだ。 しかしいくら唯が可愛くても、起きている唯のわがままな池沼行動は溺愛している憂ですら放っておけないほどのものなので、おしおきせざるを得ない。 憂も本心では愛する姉をたっぷりねっぷりと愛でたいのだ。 しかしそんな気持ちなど知るはずもない唯の池沼っぷりで、起きている間はそれもかなわない。 そんなジレンマを解決するのが、「寝ている唯を可愛がる」という考えだった。 これならば、唯の池沼な言動にふりまわされず、思う存分可愛い(?)寝顔を楽しむことができる。 唯「ぶるすこぉー…!ぶるすこぉー…!(-p-)」 憂(寝ているお姉ちゃん可愛いヨダレたらしてるお姉ちゃん可愛いいびきかいてるお姉ちゃん可愛い鼻がつまってるお姉ちゃん可愛い寝相が悪いお姉ちゃん可愛いお姉ちゃん可愛いお姉ちゃん可愛いよお姉ちゃん) 憂「ブツブツ……」 完全に危ない人である。この姉にしてこの妹ありというわけだ。 池沼な姉とヒステリックで倒錯した妹。これが近所でも恐れられている、平沢姉妹である! 憂「さぁお姉ちゃん、今夜もたっぷり楽しもうね」 バッ 憂は唯のかけ布団をはぐ! 憂「…んっ!くさっ!」 途端に鼻をつく悪臭―。 布団の中にこもっていた唯のおねしょや、寝汗などの体臭が外気に触れたのだ。 一方、唯は自分の放った池沼臭に気づかず、さらに勢いよく放屁をかました! ブブピー! 唯「あぅ~…ふんぐぉ~ふんぐぉ~」 唯の体は池沼ゆえの自制の無さかまるまると太っており、そのむくんだ体を大の字にして惰眠を貪っていた。 突きでた腹が「なかよし」の文字がプリントされたパジャマから窮屈そうにはみ出ており、唯の不規則ないびきにあわせて上下する。 一方の憂は、普段ならこんなくさい姉を見れば怒りのあまりビンタをするところだが、今は違うようだ。 憂「ハァハァ…お姉ちゃんのニオイ…すーはー…」 憂は長年この池沼と同じ空間で過ごしてきたため、唯独特の池沼臭にも慣れていた。むしろそのニオイを嗅いで欲情するようにすらなっていた。 しかし、このくらいの変態でなければ、池沼の介護などできないのかもしれない…。 つんつん たっぷりと愛する姉の池沼臭を鼻腔にしみこませた憂は、今度は姉のたるんだ頬を指でつつき始めた。 唯は頬をつつかれて寝苦しいのか、奇妙なうなり声をあげる。 唯「ん…うぅ~ぅ?…う”ーう”ー(=q=)」 寝言のようだが、起きている時とほぼ変わらないレベルの反応だ。所詮唯の知能などその程度だ。 憂「寝苦しいのかなぁ~。ふふ、もうちょっといじわるするね…」 憂は普段わがままでふりまわされている姉が、自分にされるがままになっていることに快感を覚えていた。 つんつん と、その時 唯「あ~う…あいちゅ…(-q-)」 ちゅぱっ 憂「あ、おねぇちゃ、」 唯「あ~う♪…ゆいの…あいちゅ~♪(-q-)」 ちゅう、ちゅう、れろれろ… 憂「あ、あん、おねぇちゃぁぁん…はぁ、はぁ」 なんと、この池沼さん、憂の指をアイスと勘違いして口に含んでねぶりまわし始めた! それにしても、寝ても覚めても考えるのはアイスのことだけとは…残念な18歳である。 一方の憂は、指を無邪気に舐める唯に興奮したのか、あえぎ始めたではないか! 真夜中の部屋に、憂のあえぎ声と、池沼の唾液がからむ汚らしい音だけが響いた…。 池沼唯のSS に戻る (2011.02.09) カウンター 今日 - 昨日 - 合計 -
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「うーん、お父さんに聞いてみよ」 「あ、それはいいアイディアかもね」 こなたの父そうじろうは小説家なので、大抵は家にいる、トテトテと小さな歩幅で父を呼びに行くこなたの背中をかがみは見送った。 なんとなく待ち時間にPCでssを眺めてみると、甘甘なssが存外多い事に気づく。むしろ犬井部長のように、起承転結を気にしてキチンと物語の書式に従って書いている方が少ないのではないか、と思うほどだ。 こなたがおじさんを連れて戻ってきた。 「おー、まさかこなたが小説を書こうとするなんてなあ」 と言いながらやってきたおじさんはどこか嬉しそうだった。やはり自分の領域に娘が興味を持つと嬉しいのだろう。 「小説じゃなくてssだよ、お父さん」 「まあでも、類似品じゃあないか。どれどれ、これがこなたの書いたssか……ぶはっ!」 おじさんは耐え切れずに息を噴き出して言った。 「こ れ は ひ ど い」 「もう、酷いのは分かってるってば!」 「あはは、まあ、最初は誰でもこんなもんさ。特にこなたは小説を読む癖がないからな。さてさて、で、こっちはこなたが倒さなきゃいけないライバルの方か……ほう」 おじさんは、犬井部長のssの方は真剣な目をして眺めて、読み終わると腕を組んでうーんと唸った。 「こりゃ勝ち目がないなあ」 「まあ、そう言うと思ったけど、お父さん、何とかならない?」 「三日しかないんだろ?いきなり、三日後に試合があるからプロボクサーにしてくれ、とか言うのと一緒だぞ、それは」 確かに、一朝一夕でうまくなる訳がない。 「お父さんは、小説を書く時に、どんな事を気にしてるの?」 「そりゃまあ、色々あるけど……起承転結、序破急、人物や背景の設定とか、小説の思想コンセプトとか……でもこなたはまず、物語をどう書くか、とかそんな段階だろうからなあ。普通に物語を書くなら、まず往還を意識するところから始めるのが早いとは思うが……」 おじさんはそれからこなたに、物語のプロットの作り方のようなものを説明した。たぶんそれは初心者がやるための、基礎的な作り方の説明で、そういう部分から始めるのは確かに正しかったが、犬井部長に追いつくには遠すぎるのも確かだった。 「プロットの考え方はいろいろあるが、行って帰ってくる往還の運動を基礎にすえる、という考え方や、主人公が問題を克服して周囲が幸せになる、というような発想なんかを意識した方が手っ取り早いだろうな。よくわからないが、こなたが書こうとしているのは、少女二人の物語だろう?ボーイ・ミーツ・ガールの形式を転用して、ガール・ミーツ・ガールの冒険ものとかでもいいんじゃないか?」 違う、そうじゃないんだ。とかがみは直感的に思った。イエみてssで、冒険なんかしたらむしろおかしい。おじさんの考え方は、オリジナルの小説を書く時の発想で、ssとはほんの少しずれている。もちろん、オリジナルの小説を書くのと同じ発想でssを書いても良い。でも……なにかが、違う。 「あの、おじさん」 思わず、咄嗟にかがみはそうじろうに尋ねていた。 「二人がただ、甘く過ごすだけでは駄目なんですか?」 その問いに対するそうじろうの答えは、小説家として実際的なものだった。 「それじゃ、読者はそれを読む意味がないよ」 かがみはその言葉に反論したかったが、上手い言葉が見つからない。こなたはそんなかがみの気持ちを察したように、小さくかがみに目配せした。 「お父さん、とりあえず、今日、みっちり私を指導してくれない?」 「いいぞ、そんなに厳しい締め切りの仕事は抱えてない」 「じゃあとりあえず、私が書こうとしたssの梗概を説明するから、そこから訓練していきたいんだけど」 「任せとけ」 二人がやる気になりだしたので、かがみはそっと立ち上がる。 「じゃあね、こなた、また明日。学校で」 「あ、かがみ、帰っちゃうの?」 そう言うこなたが少し寂しそうで、かがみは微笑した。 「私が居ても邪魔でしょ。またね」 「ん……うん、またね」 少し名残惜しかったけど、邪魔しちゃいけない、と思ってかがみは泉家を辞去した。玄関までこなたとおじさんが送ってくれて、家まで送るというおじさんの言葉をかがみは断った。少しでも長くこなたにssのこと教えてほしかったから。 家を出ると、殆ど夜になっている泉家周辺の住宅街は静かで、街灯の明りが夜を切り取るように丸くぽつんぽつんと続いている。月の白い光がかがみの背を見つめて、泉家から少し歩いてから振り返ると、こなたの部屋の明りが遠くに見えた。 あそこでこなたが頑張っている、と思うと胸の中がじんわりと熱くなって、本人の前では勇気がなくて言えない言葉を、かがみはその窓に向かって言った。 「すっごく応援してるんだから、絶対勝ってよね!」 言うだけ言うと恥ずかしくなって、かがみは駆け出す。 月の照らす青白い夜の中を、こなたの事を想いながら。 ……… 「それで、泉先輩の様子はどうっすか?」 今日も放課後、田村さんがかがみのクラスまで来る。こんなにしょっちゅう来るのは、彼女なりに責任を感じているせいだろう。こなたが犬井部長に勝てるか気が気じゃないのだ。 「まあ、いちおう、あいつの書いたssを見たけど……」 「ど、どうでした?」 「強いて言うなら、アミーゴ、とだけ……」 「うはあああ!もう駄目だあああ!思わずメキシカンになるほど駄目だああ!」 ひよりが頭を抱えるのを見ながら、かがみも頭を抱えたくなる。どう考えても勝ち目がない。そこへ追い討ちをかけるように、ひよりがプリントアウトした紙束を取り出した。 「これが今回、犬井部長がコンペに出したssっす……」 まるで死亡通知のように重々しく差し出されたそれを、かがみは読み始めた。 内容は、イエみてのキャラクター達が左翼闘争に関わっていき、理想を求め、理想を信じ、裏切られ、大人になろうとして、なれず、憎悪と苦しみの中で社会に裁かれ次々と非業の死を遂げるとてつもない大作だった。 メインキャラクターの死に様が全て凄まじく、投獄されても完全黙秘を貫く彰子さま(イエみてのメインキャラの一人、以下、名前が出てくるキャラは全員メインキャラ)が、とことんまで黙秘を貫くなか、しかし自分が意地になってまで求めた理想が結局は全て無意味で、踊らされていただけと知り、それでも黙秘を貫いたにも関わらず、最後の最後でもっとも人情と知恵に溢れる刑事に、自分が何を求めたのか語ろうとし、しかし、語るべき何事もないのに気づき、哀れなほどにもつれる舌で言うのである。「わ、わ、わたしは、む、む、むかし、ゆ、ゆ、ゆめをみた……」そしてその後に彰子は自殺する。 愛する姉である彰子の死を経て、ますます闘争に走るしかなかった由美は、とことんまでの過激派路線を採用し、日本の左翼はしょせんままごと、と言わんばかりのあらゆる言論人に反論するかのように、爆破と殺人を繰り返し、最後には飛行機をハイジャックし、外国の戦場にまで行く事になる。「私はただ、私の望む大人になりたかっただけだった、それはここでは無理で、ここではないどこかでなら……」外国の、死に溢れた酸鼻極まる戦場で仲間に裏切られ、ゲリラの凄まじい拷問を受けながら、由美はしかし、結局は自分が大人にはなれなかった事を知る。「本当は、どこかへ行っても駄目だったんだ……ほかのどこでもないここで、私は大人にならなきゃいけなかったんだ……」そして由美はゲリラに嬲り殺される。 縞子は大人になるのを拒否し、自分は絶対に大人にならない、と決めながら自分の理想の党派を築こうと奔走する、しかし党派を党派として維持するために必要な策謀や裏切り、虚偽と駆け引きに縞子は疲弊し、気づけば膨れ上がった党派は、どこにでもある、利権とべったりくっついた腐臭漂うありふれた党派に過ぎなかった。大人と共闘すべきだ、大人と協力すべきだ、それは裏切りだ、セクトを維持せよ、裏切り者を殺せ、理想のためだ……そして縞子は子供であった仲間たちが全て、ただの利権屋に変貌した寒々しい荒野のような風景の中で言うのだ。「気づけば、私達は大人になっていた」縞子は理由さえ不明な、複雑怪奇な党派内政治のために殺される。 以下は省略するが、大体上記のような凄まじい争いの末に全キャラクターが死亡して終わる大迫力のssだった。 「欠片もイエみてじゃねえ!」 「まあそうっすけど、凄いのは凄いっす!とにかく、異様なssっす!」 確かに、狂ったような迫力がある。イエみてssとして書くのは正気とは思えないし、かがみは好まないが、ファンがいるというのも分かる気はした。 「ちょっと、こなたに見せてくる」 かがみが紙束を持ってこなたの教室に行くと、何故かそこには犬井部長が居り、こなたの手には既に紙束が握られていて、こなたはそれを読み終えたところのようだった。 「一応、私のssも見せてあげようと思ってね」 という犬井部長は、自分の力を誇示するような様子だった。彼女はわざわざ放課後に、こなたに自分のssを見せるためだけに紙束を渡しに来たのだ。まるで自慢の彼氏をみせびらかすみたいに。 こなたは無表情に犬井部長を眺めて、不思議そうに首を傾げ言う。 「犬井さんは、私達と同じ三年生だよね。卒業も近いし……どうして、ssを書いているの?」 こなたは悪意からではなく、純粋に疑問だという風に尋ねた。その質問は犬井部長の心の中の柔らかい何かを傷つけたらしく、憤激したように犬井部長は言った。 「私がss書くのは私の自由でしょ!一体貴方に何の関係があるわけ?!」 「いや別に、ただの疑問なんだけど……これ、凄く長いし、力作だっていうのは分かるから、ここまでするのは何でかなあ、って」 こなたが犬井部長のssを、力作、と褒めたので部長の機嫌は幾分良くなったようだった。いつも不機嫌だから分かりにくいが、案外この人は幼く、扱いやすい人なのかも知れない。犬井部長は機嫌の良さを隠すためか、吐き捨てるように言った。 「ただの暇つぶしよ」 「ふうん……このssって、みんな理想を求めたり、大人になろうとして失敗する話だね」 「それには思想的意義がある」 犬井部長は水を得た魚のように、近代化する日本が、世界の中で大人になろうとすること、左翼運動が理想を求め、子供のままでいようとする失敗、生きる意味を見失う現代人、成熟というテーマの文学的正当性などを語ったが、こなたはそれには興味がないようだった。もちろん、かがみだって興味はない。 そういう話をする時だけ、犬井部長は機嫌よく嬉しそうで、可哀想なくらい愚かで孤独な人に見えた。 こなたは話し終えた犬井部長に、ぽつりと言う。 「それで貴方は、どんな大人になるの?」 犬井部長は、鉄の壁のように冷たくぴしゃりと言った。 「私個人の事は、ssとは関係ないわ」 こなたは話は終わった、と示すために鞄を持って立ち上がった。 「ほんじゃ、私は帰るんで」 犬井部長はまだ語り足りないような様子だったが、こなたはかがみの所までまっすぐ歩いてきて「帰ろ」と声をかけた。かがみもこなたも、犬井部長の思想には何の興味もないのだ。 下駄箱で靴を履き替え外に出て、校門で待つみゆきやつかさに追いつく前に、かがみは言った。 「犬井部長のss、力作だったわよね」 「そうだねー」 「あんた、昨日の間に、プロットくらい出来た?」 「あはは、それが全然!」 さすがに、かがみの顔も引きつる。 「ちょ!?おま、それはやばくないか!?」 「いやー、余りのやばさにワクワクしてるよー」 だ、駄目だこいつ、早くなんとかしないと……。 「こなた……ちゃんと勝つ気あるのよね?」 「いやー、もちろんそうなんだけど、なかなか、勝利への糸口が見えないのだよねー。漫画ならこういう時、何かにティン!と来て勝利できるんだけどなー」 「おいおい」 ここまで来て漫画かよ! と突っ込みたくなるかがみだったが、ふざけた様子に見えたこなたの横顔が、想像以上に真剣な事に気づく。こなたはこなたなりに、この追い詰められた状況に思うところがあるようだった。 「私、負けちゃうかなあ」 確かにいま、勝てる要素が見当たらない。 「大丈夫よ、負けたら私も一緒に謝ってあげるから」 「駄目だよ!」 とこなたは予想以上に強く反論する。 「私、かがみに勝つって約束したもん。絶対、絶対勝つよ!」 「どこからそんな自信が出てくるんだか……でも」 できるかぎりの心を込めて、かがみはこなたの背中をぽんと叩いた。 「それなら、頑張りなさいよね」 「うん!」 犬井部長は、夢や理想を追い求めて大人になれず死んでいく少女たちを描いた。 今、私達は大人になる途中で、どんな大人になればいいか分からなくて。 でも校門の前ではつかさやみゆきが待っていて。 私達は一人じゃない。 だからきっと、見えない未来でも歩いてゆける気がした。 「こなちゃん、お姉ちゃん、遅いよ、早く帰ろ」 とつかさが笑う。 私は思いっきり笑顔で「うん!」と頷いた。 ………………………… もう余り時間もないのに、こなたは自室のPCに向かっていてもssを書く訳でもなく、うんうん唸っていた。さっきから同じ姿勢で唸るばかりで、手はまったく動いていない。時間は恐ろしいほどゆっくりとしか流れず、かがみは読んでいたラノベから顔をあげて言った。 「そんな無理に書こうとしても無駄なんじゃない?」 こなたは珍しく困った顔でかがみに振り返り、気弱な声で言った。 「でもこのままじゃ、本当に負けちゃうよ」 「ssってでも、勝つために書くもんじゃないだろ」 「それはそうなんだけど……」 ああ、こなたも必死になったりするんだな、とかがみは思う。 ふざけてる様子しか見せてなかったけど、やっぱりこなたも負けそうで不安なんだ。 それなら……力になってあげたいな、とかがみは思う。でもこれは、どう手伝ったらいいか分からない問題で、宿題みたいに、はい見せてあげる、という風にはいかない。 「気分転換に、他の人のssでも見たら?そういう事をする人多いらしいし」 「ええー!?ssに詰まって他人のssを見だして、自分の才能の無さに絶望して寝る、というのは鉄板コースなのにー?!」 「いや寝るなよ、何とか参考にしろよ」 「うーむ」 こなたは言われた通り、いくつかのssを見て、結果、自分の文章力がかなりやばいという事を思い知らされるばかりだった。 「かがみん……」 「なに?こなた?」 「私もう、駄目なのかな?」 「重症で死ぬ寸前みたいな台詞を言うなよ」 「だってこれもう、勝ち目ないよ……今日と明日しかないのに、プロットだって出来てないし、昨日、お父さんとミッチリ特訓したけど、何の成果もあがらなかったんだもん!お父さんも流石に苦笑してたよ。三日じゃ無理だって!」 こなたは真剣に、追い詰められた顔で訴えてきて、かがみは何とかしてあげたかったが、何を言っていいか分からなかった。 「私、負けたくないよ、だってかがみと約束したもん!かがみと真剣にした約束は、絶対破りたくない。それに、やっぱり、かがみに言ったこと、謝らせたいもん……」 しょげた様子のこなたは俯き、部屋の中には沈黙の帳が降りた。かがみは何か言おうと言葉を探すが、適切な言葉は見当たらず、視線は泳ぐばかりだった。秒針は滑らかに進んでいき、時間だけが無情に過ぎていく、かがみは途方にくれた気持ちでただこなたを見つめた。本当に、どうしていいか分からなかった。そんなかがみの様子にこなたがすばやく顔をあげて、取り繕うように言った。 「あはは、らしくないね。ごめんごめん、空気も読まずに変なこと言って。弱音吐いても空気悪くなるばかりだもんね」 そう言って笑うこなたが痛々しくて、かがみは少し腹をたてる。 「無理しなくていいよ。思うこと、好きに言えばいいじゃない。友達でしょ?」 「友達だからだよ。嫌な思いとかさせたくないもん……あー、またこんな話題になっちゃって、今日の私は駄目だ!うがー!」 そう言ってPCに向かうこなたの背中を、少し寂しくかがみは眺め、こなたは負けちゃうのかな、勝ってほしいな、と祈る。何より、こなた自身のために。 どうすればいいのかな、どうすれば勝てるかな……。 「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず、とは言うけどねえ……」 己を知った時点で、勝てない事まで知ってしまう有様だ。 「敵かあ……」 ふとこなたは思いついたようで、犬井部長のssをいくつか読みはじめた。その目は真剣で、あの難解で長大な犬井部長のssを、文句も言わずによみこなしていく。かがみはその横顔を見つめながら、頑張れ、と心の中でエールを送る。まじめな顔をしたこなたの横顔は、胸が締め付けられるくらいまぶしい。 「この人、やっぱり上手いね」 昨日まではまともに読むことさえ出来なかった筈なのに、今ではちゃんとこうして感想まで言える。こなたは、本当に頑張っているんだ、とかがみは思った。 「そうね、文章は随分老成というか、難解というか、そういう感じだけど、やっぱりそれは上手いから書けるんだと思う。複雑な文章を書ける人は多分、簡素な文章も書けるだろうし……」 かがみが言おうとした続きを、こなたは先読みするように言った。 「それにシナリオもちゃんとしてる。お先真っ暗な絶望的展開しか書かないから、人は選ぶけど、その破滅に至る過程も無理がなくて説得的だし、破滅する瞬間は最高に盛り上がってる……その破滅も、ただキャラを破滅させたいとか、ただ欝展開をしたいとかいう、キャラヘイトみたいなノリじゃなくて、たぶん教室で言ってたような、何か思想みたいなものがあって、そのせいでssにも筋が一本通ってて、簡単には否定できない力があるね」 すらすらと感想を述べるこなたに、ちょっとかがみは感心して言った。 「こなた、何か、えらく『分かってる』のね」 「私もともとおたくだし、消費者として作品を見る目はかなりあるよ。でもこうして見ればみるほど……」 こなたは視線を下げて、頭のアホ毛まで萎れるように垂れ下がる。 「勝ち目ないなあ、って……だって私さ、結局、星と陽子がただいちゃいちゃするようなssしか思いつかないもん。書きたいのも、そういうのしか思いつかない。こんな、思想とか、時代背景とか、序破急の盛り上がりとか、できないよ……」 「そ、そんな事ないわよ」 かがみは慌てながら、みるみるしょんぼりするこなたの肩を叩こうとし、謝ってマウスに触れた。 「お?」 「あれ?」 クリックして飛んだ画面には、簡素な文字が行儀よく、交互に並んでおり、そこはどうやらssの感想をやりとりするところで、犬井部長と読者のやりとりが二人の目に入ってきた。 ……………………… 528 名前:名無しさん ID UC6L3qgc 今回のss読ませて頂きました。由美達の辿る運命が余りにも酷すぎると思います。いっそオリジナルで書いたらいいんじゃないかと思うんですけど……。 529 名前:イヌイ ID cih/UXvA ssを書くものにとって、書いたssが全てであり、貴方が彼女たちの辿った運命を過酷過ぎると思うのなら、それは貴方にとって真実なのでしょう、というそれ以外の言葉が必要だとは私には思われない。 しかし敢えて言うなら、運命というものは元から過酷であり、私はまったく過酷さの無い、ただ甘いssを書くことなど出来ないのである。なぜならば、それは己に嘘をつく行為であり、人間関係がただ甘く、やさしく過ぎていくというのは確かに理想的ではあるだろうが、そのように夢ばかり見ても甘さで歯をやられるのが関の山である。 ストーリーも内容もないただ甘いだけのssなどに存在意義があるように私には思えないし、そのような夢ばかり見るのも愚かな事であろう。また、オリジナルで書くかssで書くかは私の自由である。 過酷でない運命を書け、という貴方は、甘くやさしい運命を望むのだろうが、それは不可能な事だ。 何故なら、私はもう、夢ばかり見るような年ではないからである。 ……………………………… ネットでさえ、こんな性格の悪い文章を書いちゃうんだ、とかがみが驚いていると、不意にこなたがマウスを取り落とし、食い入るように画面を見ている事に気づいた。 「こなた?」 こなたは殆ど呆然とした表情で言った。 「私、分かっちゃった……」 その目が徐々に、鋭い光を帯びていく。 「何を書けばいいのか……」 かがみには、こなたが何を見つけたのか、分からない。 「そうなの?」 「うん、少年漫画風に言うなら……。見つけたよ……犬井部長の弱点」 そう言ってこなたはにやりと笑った。だんだん、いつもの元気なこなたに戻っていくようで、それがかがみには嬉しかった。 「良かったじゃない」 「うん!それで今から……あと、明日の休み一日全部使ってss書くから!期待しててね!」 こなたが猛然とPCに向かい始めたので、かがみは立ち上がって帰り支度を始めた。作業に夢中になっているこなたはちょっと会釈しただけで、大して振り返りもしない、仕方なくかがみは部屋を出たが、悪い気はしなかった。 いつものこなたに戻って、あんなに活き活きと書き始めたんだから、きっと大丈夫。 かがみは家に帰る前に再び泉家の、こなたの部屋の窓を振り返って思った。 こなたが何を見つけたのか分からないけど…… 信じてるからね!こなた! ……………………………… 翌日の休みは、こなたの事が気になっていまいち落ち着きのない一日になってしまった。勉強も買い物もどうも身が入らず、ぼうっとテレビを見ても考えるのはこなたの事ばかりで、結局、こなたのssがアップされた夜の六時くらいまでソワソワし続け、アップされた瞬間、かがみは待ちきれないようにそのssに飛びついたのだった。 こなたの書いたssは、以下のような内容だった。 いつも宿題を陽子に見せてもらう星は、内心、陽子の事を愛している。かつて孤独で刺々しかった星は、この日常がどんなに大切で、かけがえのない時間なのかを知っていて、でも陽子に愛を告白する事は出来ない。 そんな二人の静かな、愛しい日常が、これでもかこれでもかと胸に迫るような優しく、暖かく、美しい文体で綴られる。二人のほんの些細なしぐさ、やりとり、微かな心のふれあい、その積み重ね、私達の日常そのもの。 それは他愛のないものかも知れないけれど、決して下らなくはない、と確かに感じる事が出来る。私達の人生は一瞬で、そして後世に名が残る訳でもない。歴史や世界の圧倒的な力の前で人間は余りにも無力で、しかしだからこそ、私達が誰かを愛したということ、笑顔で今日の一日を過ごしたということ、ただ毎日を頑張って生きているということが、何よりも大切で、それだけが無力な人間が歴史や、世界にさえ対抗できる唯一確かな人間の証なのだと、かがみは確信できる。 偉大な思想を語る事や、歴史に名を残す事だけが大事なのではない、どんな物事もいつか時間の暴力に流されて、きっと地球や宇宙だって滅びさるだろう。全てが無意味なこの世界で、それでも人間が人間として生きる時、『本当に意味があるのは』、確かに、この日常だけなのだ。 愛する人に、愛しているって言えないもどかしさ、好きな人の優しさに心が暖かくなること、ほんの少しのふれあいで嬉しくなって舞い上がっちゃうこと、それが、思想と比べて劣るなんてこと、決して無い。 こなたのssは、全力でこの『些細な』日常を肯定していた。だからかがみも全力で頷く事が出来る。 私、この毎日が、大好きだよ、って……。 物語の終わりに、星は陽子に想いを告白しようとして終わる……とてつもなく愛しく、美しい物語だった。 かがみは感動し、自分が泣いているのに気づいた。 こなたのやつ……こなたのくせに……感動しちゃったじゃない。 そして、決戦の投票締切日が来る。 ……………………………… かつかつ、と靴音も慌しく廊下を、文芸部の部室に向けて緊張に満ちた音をかがみが響かせている。その横を同じく足早に歩くひよりが、鋭く強張った口調で言った。 「泉先輩はもう、先に部室に行ってるっす」 かがみは小さく頷く。 「こなたは……勝てそう?」 一瞬、ひよりの眼鏡の奥の目が見えなくなる。ひよりは極めて慎重な口調で言った。 「昨日の段階では、犬井部長有利で……でも、ほぼ互角っす。こうなると勝敗は、どうなるか分からないっす」 「そう……」 かがみは身震いしそうなほど緊張しながら、冷え冷えとした廊下を急いで歩いた。ひよりも沈黙し、どうなるか分からないこの決戦の緊張に耐えている。 たどり着いた部室のドアを開けると、一番奥の席で犬井部長が腕を組んで侵入者を待ち受けるようにふんぞり返り、一番手前の場所でこなたは椅子にも座らず、まるで犬井部長と対峙するかのように立っていた。部員たちはそれぞれ脇の椅子に座り、緊張のためか顔を青ざめさせながら結果を待っている。 「ごめん、こなた、遅れた」 部室に入ってくるかがみとひよりを、部屋の中の全員が注視し、こなたもまた振り返り、針の上のように緊張した空気の中でも、かがみを見つけるとこなたは微笑んだ。 「やふー、かがみん」 「ど、どうなってるっすか!状況は!?」 ひよりの慌てた問いに、三つ編みの生徒がPCを見ながら答えた。 「現在、得票数は、犬井部長が327、泉さんが302です」 「あと三十分……」 こなたの状況は苦しい。 「まだ分からないっすよ!締め切りギリギリで投票する人たちがいるはずっす!」 「どうかしらね?」 と犬井部長が尊大な様子をことさら強調して言った。 「結局は、甘いだけの中身のないssでしょ?文章は綺麗だけど、キャラクターは夢ばかり見て、甘さばかりが伝わって、胸焼けしそうじゃない?本当に作者が伝えるべきなのは、人間のすばらしさとかそういう事でしょ?でもこのssじゃ、伝わるのは甘さばかりだわ」 三つ編みの生徒が、犬井部長330、こなた303と言った。 負けちゃうの?こなた? かがみは緊張と激しい胸の痛みの中で、悪意あることばかり言う犬井部長が憎らしく、こなたに勝って欲しいと心底想った。 こなた……! かがみが祈るようにこなたを見ると、こなたが小さく呟いた。 「……それでいいんだ」 犬井部長がこなたを睨む。 「何?」 こなたは睨み返す。 「……ssは、これで」 こなたの続けようとした言葉を無視して、犬井部長が自分の主張を始める。 「夢ばかり見て、甘さしか伝わらないのはこのssの欠陥……」 そんな犬井部長の言葉を、一つの叫びが遮った。 こなたの、心からの叫びが。 「甘くていーーーーーーーーんだっ!!!!!!」 部室を揺るがすような叫びに、一瞬水を打ったように部室が静まり返り、そのままの勢いでこなたは言った。 「甘さこそが、私の伝えたい全てだから……!それが伝わればこのssは成功しているんだ!私のお母さんは、私が生まれてすぐ亡くなっちゃった。『私達の人生は短い』本当はとても短いんだ。私達は若くて、まだ青春と呼べる時間の中に居て、それでも社会や運命の過酷さを知っている。でもいま、私達はこの短い人生の中で、唯一甘さを許される時間の中にいる、それなら──」 「夢見なきゃ損じゃないか……!!」 こなたが殆ど絶叫するように言った言葉に、かがみの胸がこの上もなく熱くなり、思わず泣きそうになる。三つ編みの生徒が叫んだ、犬井部長331、泉さん331! 「並んだっす!!」 「そんな……!?」 驚愕の表情を浮かべる犬井部長に、こなたは言う。 「犬井部長、貴方だって本当は分かってる筈なんだ。何より貴方自身が、夢を見たい人の筈だから。でもその自分を抑えつけるから、夢を見た少女たちは激しい制裁の中で死なねばならず、大人になれない。でもそんなの違う。もう夢を見るような年じゃない?何で大人ぶるの?高校三年生なんて、まさに夢を見るための年だよ。だから、貴方には本当は、夢がある筈」 「何よ、作品から、作者の精神分析?そんな事をする資格は誰にも……」 「犬井部長はかがみの精神を罵った。だからという訳じゃないけど、他人のssから他人の人格を批判するなら、一度くらい、それを自分でも体験してみていい筈だと私は想う。貴方はssに逃げ、でも本当は不満足で、だから回りに自分のssの力を誇示して当たり散らし、臆病に本当の夢から逃げてる。貴方が逃げ出している本当の夢は」 「うるさい!」 「小説家になる事の筈だよ」 犬井部長332、泉さん333!と三つ編みの生徒が叫ぶ。 「追い抜いたっす!」 「勝手に決めるな!私のことを、勝手に決めるな!私の何が、あんたなんかに分かる!あんたなんかに何が……!」 激昂した犬井部長が、口角泡を飛ばしながらこなたに詰め寄った。 「私が勝ったら、土下座させて、今言った全ての事を謝らせてやる!!」 「勝ったなら、いいよ」 こなたの言葉に重なるように、三つ編みの生徒が言う、犬井部長335、泉さん334! 「こなた!」 無茶な賭けを止めようとしたのか、それとも応援の声なのか、かがみは思わずこなたの名を呼ぶ。 「犬井部長336、泉さん336!」 「また並んだっすか!?」 こなたは犬井部長とにらみ合い、その小さな背丈で犬井部長を見上げながら、いつもの、本当にいつものように不敵な笑みを浮かべて言う。 「ssに本当に必要なものは一つだけ、たった一つだけ……」 犬井部長337、泉さん338、という声。 こなた…… 犬井部長340、泉さん339! ……勝って!こなた!! 「どうなってるっすか!投票は!?もう時間がないっす!」 「犬井部長340、泉さん339のままです!」 「もう時間ないっす!一分もないっす!」 340、339。 数値が動かない。 かがみの心臓が、大きく脈打つ。 祈り、願い、想い。 思えばこの数日、ssのことばかり考えてきた。そして、こなたのことばかり考えた数日だった。 ただ一つの事を追い求めて、頑張って、こんなに充実した日々、今まで無かった……。 そしてその結果が、今、出ようとしている。 犬井部長340、こなた339 数値が、動かない。 かがみは殆ど生まれて初めて、強く強く願う。 勝って……! こなた……! 数値は無情なほど動かない。 そしてかがみは初めて、本人の前で応援の言葉を口にした。 「お願い……勝って!勝ってよ!こなたっ……!」 こなたは笑顔で振り返り、親指をたてて言う。 「当然っ……!」 かがみはその笑顔に涙目で頷き、そして時計が、終了の時間を指し示した。 「投票終了ーーーーーっす!!」 ひよりの声に反応するように、三つ編みの生徒が言う。 「結果は……」 裁かれる、運命の時。 「犬井部長……341!」 あそこから、まだ1票入ったんだ……。 お願い、神様……! こなたがぎゅっと拳を握り、かがみは思わず、その手をそっと握った。 こなたがかがみに向けて小さく頷く。 三つ編みの生徒の声。 「泉さん……」 運命の審判は、下される……! 「342……!!!」 うおおおおおおお!という歓声が、部室を一瞬で包んだ。 まるで祝祭が突然訪れたように、部室の熱が最高潮に高まり、三つ編みの子が飛び上がり、ひよりが雄たけびをあげて震え、こなたは名も知らない文芸部の部員たちにもみくちゃにされた。 「よくあの部長を倒した!」 「あんたはやった!やってくれた!」 「魔王は死んだ!開放されたんだ!」 「うおおおおおお!やった!勝った!第三部完!」 中には、初めて部室に来たとき、部長に泣かされていた子もいて、あらゆる部員が部長が負ける事を望んでいたらしいのが分かった。 何故かそのまま、こなたは持ち上げられ、部室の中で胴上げされ、万歳三唱までが始まって、かがみは思わず突っ込んだ。 「何だよ、これ……」 わっしょいわっしょい、と祭りのようになっている文芸部の部室の中で、ただ一人犬井部長だけが、敗北者として椅子の中で小さくうなだれていた。皆がこなたを見ている中、三つ編みの生徒だけが犬井部長の方をじっと見ている。 「ちょ!?降ろして!?降ろして!?」 何とか胴上げから降ろしてもらったこなたが少しふらつくのを、かがみがそっと支えた。 「勝ったね、こなた……」 「約束守ったよ、かがみ」 見つめ合う二人の空気に気づかず、ひよりはこなたの肩をバシバシ叩いた。 「いやー!凄いっす泉先輩!やっぱ凄い才能があったっす!尊敬っす!」 「あはは……まあ、そんなことないんだけど」 祝福されるこなたに向かって、全てを失ったように惨めな様子の犬井部長が言う。その視線はどこか、達観して遠くを見ていた。 「私の負けだわ。貴方の言う通り、土下座でも何でもするわよ……」 うなだれる犬井部長に、こなたは少し首をかしげてかがみに尋ねた。 「こう言ってるけど?」 「別にもうどうでもいいわよ。最初から気にしてないし」 こなたには勝って欲しかったが、犬井部長の謝罪には最初から何の興味もない。こなたは犬井部長に向け、いかなる敵意も持たず、敬意さえ感じさせる口調で言った。 「たぶん、犬井部長は、もうここに居るべき人じゃないと思う。貴方の本当に書きたいものは、イエみてssじゃないと思う。夢や甘さを恐れて何かを書いても、不幸なssが生まれるだけじゃん」 犬井部長は、微かに笑いながら俯き、憑き物がとれたように晴れ晴れとした顔をしていた。誰かが彼女を、打ち負かさなければならなかったのだろう。犬井部長はゆったりと、深々と安堵するように椅子に沈み込み、苦笑しながらこなたに聞いた。 「貴方、最後に、何て言おうとしたの?ss書きに必要な、ただ一つのものって?」 こなたはいつも教室で見せる笑顔で、親指をたてながら言うのだった。 「愛だよ、愛」 と。 ……… 二人で帰る放課後に、靴箱で靴を履き替えるこなたを待ちながら、かがみはいつになく嬉しい気持ちで、それでいて胸がまだドキドキしているままで、追いついて隣に立って歩き出すこなたに尋ねた。 「でも本当……凄かったわ。あんたにあんな文才があるなんて思わなかった」 そう言うとこなたは猫のような口をしてにやりと笑い、ちっちっちっ、と何かをたしなめるように言った。 「馬鹿だなあ、かがみん。三日やそこらであんなに文章が上手くなる訳ないじゃん。そんなの、世界中のss書きが涙目だよ」 「は?なんだと?」 嫌な予感がする。 「ssを一応書き上げたけど、もう酷いのなんのって、書きたい事やコンセプトを必死に伝えて、物凄い勢いでお父さんに添削してもらったよ」 「おい、ちょっと待て」 「殆どお父さんが書いた部分とかあるしね。実際、お父さんにこうしなさい、って言われて私がパソコンで打っただけの部分も多いし、まあ、原案・泉こなた、作・泉そうじろう、って感じだよね~」 「ちょ!?おま!?それ反則だろ!?」 何それ!?思いっきりルール違反じゃないのか!? 「別に家族に手伝ってもらっちゃ駄目なんてルール無かったし~。それに、やっぱり一度、犬井部長はただ甘いssに負けるべきだって私は思って、頑張ってお父さんを説得したよ~。お父さんも快諾してくれたし」 「な、な、な……」 かがみは思わず叫んでいた。 「納得いかねええええええええ!!」 「いやー、それにしても、幾ら私の原案とは言え、プロの書いた文章と互角に戦うんだもん。犬井部長には頑張って欲しいね」 「それは、お前書いてないって意味だよな!?あのss、お前は書いてないって事になるよな!?」 あははは、と笑って誤魔化すこなた、考えてみれば当然じゃないか、私も私だ、あんな短期間で文章が上手くなる訳ないのに、と、かがみは騙された気分になって思った。 「あんた、本当にそういう抜け道だけは得意だよな。ろくな大人ならんぞ」 「うーん。でもさ、原案として書いた時の、私の気持ちだけは本物だよ。それはお父さんとよく相談して、私の気持ちが伝わるように書いたもん。あのさ、かがみの書いたssあるよね」 「え?」 突然、自分の書いたssの話になって、かがみは動揺する。なんで突然? 「あれってさ……かがみの気持ちが入ってるんだよね?」 そう尋ねるこなたの目は、ふざけていなかった。 「宿題をいつも見せる陽子は、本当は星の事が恋愛対象として好きで、でも言い出せない、そういうssだったよね?」 まるで少しづつかがみの精神の内奥に迫るようなこなたの口調に、かがみは気おされながら答える。 「う、うん、まあ、一応、でも勘違いしないでよね、別に私は……」 「私のssは、いつも陽子に宿題を見せてもらう星は、本当は陽子の事が恋愛対象として好きなんだけど言い出せない、そんなssだったよね。これってまるで、一対のssみたいじゃない?まあ、私がそうなるようにしたんだけど」 かがみは口を噤む。余りにもこなたの表情が真剣そのものだったから、何も言えなくなってしまった。 「私のssだと、星は最後に陽子に告白して、陽子も実は星の事が好きで、互いの想いが通じ合って、めでたしめでたし、となって終わるんだ」 「……うん」 頬を撫でるように風がさあっと通り過ぎて行った。校門にほど近い、自転車置き場の屋根の下で、こなたの長い髪が風に揺れた。硬く緊張したこなたの様子と、深い湖のような瞳の真剣さに、かがみの胸が高鳴り、言葉もなく吸い込まれるようにこなたを見つめるしかなくなった。 こなたは、まっすぐにかがみを見ていた。 「私、今回、凄く頑張ったんだ。もし、もし私が犬井部長に勝てたら、かがみに言おうと思ってた事があったから。だって、私みたいなド素人が、犬井部長みたいな人に勝つなんて奇跡じゃん。そんな奇跡が起きるなら、凄く甘い甘い夢を見てもいいと思ったんだ……。だから、言うよ」 「うん」 たぶんそれは、私が待っていた言葉。 かがみは放課後の日差しに目を細める。 こなたは言う。 「あのね、私ね……」 前方の空はどこまでも青く広がって、私達が駆け出すのを待っている。 甘い甘い夢を私たちはいつも見て、そしてきっといつだって物語は、めでたしめでたしで終わるんだ。 晴れ渡る空の下で、かがみは、何よりも待ち望んでいるこなたの声を待っている。 ここから先、きっと大変な事は一杯ある、でもそれでも、私達は若くて、青くて、青春で、幾らでもやり直す事の出来る希望がある。 だからかがみは、遂に告げられたこなたの言葉に、最高の笑顔を返して…… そして私たちは、長く長く夢を見る。 了 コメントフォーム 名前 コメント やはり感動系しか勝たん...泣 GJ!!b(≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-07-24 13 51 05) 自分は好きですよ、このSS 作者さま 書かれた文面の表面と、あなたが伝えたかった内面。 私は区別して読み取れたつもりです。 主要3人の主張、立ち位置、そして、こなかがらしい甘いSS。 凄く面白かったし、甘さが良いことだとの訴えは、まさに一つの真理だと思いました。 また、深い、そして熱い、あなただけの表現を見せて下さい。 -- 名無しさん (2010-04-05 18 32 17) 難しかったけど面白かったから良いと思うけどなぁ?オイラは作者サンの作品好きです♪ちっと難しいけど内容あるし、シリアスがあってもハッピーエンドほっとできるし♪ -- 名無しさん (2010-04-05 02 30 54) 色々思いますが、リアクションを返すのが必要だと思うので書き込みます。 名無しさまは書き込みの内容も時間も一緒なので、まとめて書かせてもらいます。 自作を解説しなければならない愚行を行ったのは、「ここの新人」さまが、胸が痛い、出て行けと言われている、作風を変える、などの、直接ssに対する感想だけではない、自身の今後を含む事を書かれていたからです。 それに対してはやはり、黙っていると本当に出て行ったり作風を変えたり胸が痛んだままになったりしますので、黙っている事が出来なかったのです。 出て行ったり作風を変えたりする必要はないよ、といいたかったという事です。 当然、名無しさまのおっしゃるように、本来感想欄で解説などを書く必要はありません。 ただ、商業作品にもしばしばあとがきや解説が文庫の後に付く事は珍しくなく、著しくルールに反している、とは思っていないのも確かなのです。 そして、名無しさまが作品の完成度を疑うのは全く自由であり、それに対して私が言う事は何もありません。 強いて言うなら、未熟で申し訳ありません、という謝罪だけです。 それでは、失礼いたします。 -- H4-53 (2009-02-27 17 33 05) 作者が延々と自作の解説をここで行ったと言う事例はなかったと思う。思想中心の作品でその核心部分について解説が必要なことは作品としての完成度を疑問に思う。 -- 名無しさん (2009-02-27 15 14 43) 作者がここで延々と自分の作品の解説をする行為もしなければならない作品と言うのはかつてなかった。シリアスと言うか思想中心の作品でその部分が誤読される作品と言うのは作品の完成度としてどうなのとは思う。 -- 名無しさん (2009-02-27 15 09 59) 本来、どのようにssを読んでも読者の自由であり、作者である私がそれについてどうこう言うのはルール違反ではあると思います。 しかし、ここで無言でいると、本当に私が哲学かぶれは出て行け、と言っているのと認めているように見え、それはそれで読む側の自由ではあるものの、やはり常識的にフォローが必要ではあると思われますので、あえて言わせてもらいます。 それは誤読です。 どの辺でそう思ったかは不明ですが、基本的に、一度たりとも直接に、哲学かぶれは出て行け、などという事を述べていないというのが一点。 次に、なんらかの特定の作風のssを批判したい訳ではない、というのが二点。 イヌイ部長のモデルは、実際には私自身のある面を誇張したのであって、誰か別のss書きの方々は一切想定していないのが三点。 また、作中において、イヌイ部長の作風を否定しているかというと、実際には否定していないというのが四点。 以上の四点をもって貴方様の読み方が誤読であると、本来ルール違反と分かりながら、作者自ら指摘するという無粋な事をさせていただきます。 イヌイ部長が一見否定されているように見えますが、それは彼女の作品自体ではなく、彼女の尖り過ぎた人格の方をいさめているのです。 実際には殆どのキャラクターはイヌイ部長のssに対して、凄いと認めておりまた、こなたもそれを敬意をもって扱っているよう描写している筈です。 投票に関しても、ほぼ同数だった、という描写からして、そのssを否定していると読める書き方はしていない筈なのです。 だから貴方の読み方は誤読なのですと、再度主張させてもらいますね。 私が言いたいのは、シリアスが甘いssより上とか、技術があるからあのssよりこっちが上とか、また、コンペという性質上起こる、得票が上のssの方が上とか、あのssは出て行けとか出て行くなとか、そういう全てに対して、ただ愛があればいいんだ、それだけがssの全てなのだといいたいのです。 究極的に、ssに必要なのは愛であって、愛さえあれば全く出て行く必要はありません。 もう一度言いますが、哲学にかぶれていようが、どのような内容であろうが、愛さえあれば必ずどこかで必要とされているのです。 このssのタイトルは、十年以上前にどこかで立ち読んだ漫画の最終回からとってますが、その漫画は俳句の漫画で、俳句の大会の決勝戦らしき場面で、主人公がタイトルとなった俳句を読み上げると、その大会のルールなのか、その俳句を批評する手番になります。 そこで相手のライバルは、この句では甘さばかりが伝わってきて、中身がないというような事を言うのです。 それに対して主人公が行うのが、喘息で叫んでは体に支障がある体なのに、仲間の制止を振り切ってまでの、作中の「甘くていーーーんだっっ!!」という絶叫なのです。 実は主人公は喘息のせいで一年留年しており、それが明かされながら、彼は語ります「僕は体のせいで他の人よりも一年長く夢を見る時間を与えられている」と、僕達は弱く、甘く、しかし夢を見る時間を今だけは許されている、それなら「夢みなきゃ損じゃないか」と再び主人公は喘息をおして絶叫するのです。 私の下手な説明で伝わるかどうか分からないのですが、私はそれに強く強く感動して、こうして十年以上経ってもその内容を覚えている。 かつて一度だけ最終回だけ立ち読みして、単行本が出たかどうかも分からない、何か反応を返した訳でもない。 その漫画が短期集中連載だったのか、打ち切りだったかも分かりません。商業的にはおそらく失敗だったかもしれません。 しかしこうして、その内容をずっと覚えていて、それで胸が熱くなった「熱さ」を忘れない人間が確かにいるのです。 感想がつかず、全く相手にされていないように見えるssでも、同じように誰かに「届いている」。 この「届いている」という事が全てで、そこに確かに「愛」と「熱さ」があるならば、今こうして十年以上前の立ち読みで蒔かれた「種子」がいきなり芽吹くように、どこかでその熱さは伝わっていくのだと私は信じているのです。 だから私が言いたかった事はそれが全てで、哲学かぶれは出て行け、などといいたかった訳ではない、とあえて断言させていただきます。 ご無礼お許しください。 -- H4-53 (2009-02-27 05 26 48) なんだか… 『哲学かぶれは出ていけ』って言われてるようで、読んでて胸が痛い。 私も少し作風を変えたほうがいいかな… -- ここの新人 (2009-02-27 01 36 25)