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卒制日記 寺山先生へ 「しっくり」きてるかどうかについて 今まで作りながら感じていたのは、これらのどんなものも、どこかシュッとしないということ。それはなぜか。 自分の境界線が拡張することずべてに共通する「核」みたいなものがわかっていなかったからだと思う。 ver2.0ではっきりしたのは、境界線の拡張と行為の責任(思い入れ)の関係があること。これを「核」にして考えると今まで作ってきたものが繋がる。 さて、ここからどう表現しようか。 ver2.0は結構いい感じにしっくり来ていると思うけど、なにか物足りない。行為の責任(思い入れ)の表現って感じで、自我境界の拡張って感じではないかもしれないなと思う。自分の作ったものが誰かの手で変形していく、切ないような変な感じを体感させるver2.0は、感情に訴えかける形で体感させることに大きな特徴があるけど、その分視覚的な境界の拡張感・自分の一部感がしない。それまでのは視覚的に自分の一部感がしていたが、感覚・感情に訴えかける力は無かった。と感じていた。 この「視覚的な自我境界線の拡張」と、「感覚・感情的な自我境界線の拡張」を同時に感じさせられる作品になってくれば「しっくり」くるんじゃないかなぁと思う。…思います。 ふくちゃんへ 以下への感想 僕が聞きたいのは説明ではなくて、それをつくっている本人にしっくりくるかどうかっていうことなのだけれど?「しっくり」というのは微妙な言い方かもしれないけど、説明、理由よりも自分がどうかっていうのが今は重要な時期なのではないですか?別の言い方をすると「人に伝える手応えを君はどこに感じているのか」ということなのだが 「理屈じゃないのよ。涙は」 (井上陽水) terayama 今までつくったものを整理する。 ver1.0_不透明な厚手ビニールの、体感できるくらい巨大な迷路 意図_形がわかりづらいが、確かに人がそこにいると感じられる空間をつくることで、自分と人の境界線を感じさせたかった。 ver1.1_肌質感のつばの巨大な帽子・爪質感の使い辛いスプーン 意図_身体が拡張するように道具を感じさせたいところから、他のものにぶつかって歩きにくい帽子や、慣れないと使えないスプーンなどを考えた。質感を人体の一部にしたのは、見た目にも説明を加えるべきだと判断したから。 ver1.2_マジックテープで体に取り付け可能な立方体(プレ展示に出したやつ) 意図_身体の拡張は無限に広がる。ありとあらゆる拡張の可能性を表現したかった。 ver1.3_視界を限定することにより視力が上がる筒 意図_感覚に訴えかけるような拡張を表現したかった。視覚は(それ以外の感覚も)その視界が狭くなればなるほど繊細になることを利用した。 ver1.4_両端に磁石のついたスティックを持って、両壁に磁石を貼付けまくった細長い通路を通過する体験 意図_磁石の「引き合う」「反発しあう」という感触を肌に感じる事で、壁と自分との磁界という境界を感じさせたかった。 ver1.5_完全に真っ暗な部屋の中で、超微弱なライトを持ち、壁にある何かを触りながら知覚していく部屋 意図_真っ暗な中での微弱なライトは、すべてのものの境界線がなくなって、自分がいること以外がわからなくなった状態に近いと思った。そんな中でライトを持った他の人間を認知する時、その微弱な光が他の人間として認知させる。真っ暗な中で、視覚以外の感覚により何かを知覚することが意識の中で「自分以外の何か」を感じさせることを狙った。 ver1.6_完全に真っ暗で、一度入ったら別の出口を見つけるまで出れない部屋。(壁には出口へ誘導する微妙な凹凸がついているが、なかなか見つからない。) 意図_ver1.5と同じだが、出口の位置を感じさせる「自分以外の何か」を指で感じさせたかった。 ver1.7_完全に真っ暗な部屋で、壁中にスイッチがついていて、触っている間だけスイッチとそれに反応する電球が点灯する 意図_真っ暗な空間で、いきなり電球がつくことによって、そこに誰かが居ると感じさせる。 ver1.8_かなり暗い部屋で、床や壁には砂が撒いてあって、その上に溶けかけた机、いす、服、靴、コンピュータなどがその砂に埋もれている。その中を微弱なライトを持って歩く。 意図_砂は物質を構成する原子がバラバラになって溜まっている状態を示す。それは全てのものの境界線がなくなった状態。机もいすも何もかも分解しだしている空間。その中を微弱なライト(すべてのものの境界線がなくなって、自分がいること以外がわからなくなった状態を感じさせる)を持って歩くという体験をすることで、作品体験後にものの感じ方が変わる事を狙った。 ver1.9_ドライバーや拳銃などのモノを持った腕のシルエットを板でいくつもつくり、それを組み合わせて、腕だけの千手観音のようなものをつくる。 意図_あらゆるものが手と融合し、自分の一部となることを表現する狙い。 ver2.0_箱形の部屋で壁にはびっしりクリップ(取り外せる)があり、部屋の真ん中にはクリップを取り付けられそうな物体がある。 その物体を四方からライブカメラで撮影し、画像をリアルタイムにwebで観る事が出来る。客にはそのクリップを物体にいくらでも取り付けられるように、また楽しめるように誘導し、URLもちゃんとアクセスできるように誘導する。 客は自分で作った(参加した)その作品が、その後どうなったかをwebで観る事できる仕組み。 意図_私たちがよく感じている「自分の作品が自分の子供のように感じられること」は、まさに自分の一部がそこ(作品)にあると感じていることだと思う。この感覚を客に体験してもらうことが狙い。 現在(ver2.0)に至までの、境界線についての考察。 「境界線とは?」→「この世に境界線など無い」→「人間は境界線を無理矢理引いている」→「境界線は拡張するもの」→「境界線の拡張は無限に続く」→「境界線がないと世界は混沌としてしまう」→「境界線の拡張をどこかで断ちながら人は生活している」→「境界線の拡張とは行為の責任をどこまでとるかということ」 06/12/03 02 27
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序幕――戦端の火蓋 それは小さな染みだった。 初めにそこに生まれたものは、ほんの小さな黒点だった。 やがてそれは数を増やし、少しずつ大きくなっていった。 ――それが全てを飲み込んだ時、異変は始まったのだった。 ◆ 真っ暗な場所だった。 光源は何一つなく、窓や穴も見当たらない。光が差し込む余地はなく、視認できる物は何一つなく。 であれば、闇ではなく、黒だ。 境界すら曖昧になった視野の全てが、黒一色に塗られたような、そんな場所に立っていた。 唯一確かなものと言えば、自分が「立っている」と認識できる、その身体感覚くらいのものだ。 「――ようこそ、新たなマスター君」 凜、と響く声と共に。 不意に視界に白が生まれる。 さながらスポットライトのように、天井から光が降りてきて、目の前の一点を照らし出した。 そうした形の光によって、ここが屋内だったのだと、何となくだが今更ながらに認識した。 「急なことで驚いたかもしれないが、だとしても喜ぶといい。君は我らが執り行う、『聖杯戦争』への参加権を得た」 眼前でライトを浴びているのは、陣羽織を着た長身の男だ。 ポニーテールのようにまとめた長い緑髪は、武士のちょんまげのような印象を受ける。背負っているのは、身の丈ほどもある大剣だ。 「思い出してみるといい。ここで目を覚ます直前、君は何かに触れていたか、あるいは何かを手にしていたはずだ」 和装の青年は続ける。 言われて回想してみれば、確かに彼の言うことには覚えがあった。 自分は何かに触れた瞬間、眩い光を目に感じたのだ。そこで記憶が途切れているのは、恐らく意識を失ったからだろう。 「それこそが方舟のチケットだ。君を戦いの地へ誘うため、世界にばら撒いた『ゴフェルの木』だ」 それは木材という姿に限ってはいるが、様々な形で世界に撒かれ、偏在するものであるのだと。 それに触れた者のうち、資格を得た者だけを選び、今いる場所へと導いたのだと。 「あとはこの『ノアの方舟』が、君の戦うべき地へと、誘ってくれるというわけだ。……さて、詳しい説明をしよう」 青年が言うには、こうだ。 聖杯戦争とは文字通り、聖杯と呼ばれる魔術的なアイテムをかけて、参加者達が戦い合う儀式である。 参加者にはサーヴァントと呼ばれる、歴史上の英霊達の魂を持った使い魔が与えられ、それを用いて戦うことになる。 聖杯とは万能の願望器と呼ばれるものであり、手にした者のあらゆる願いを叶える機能と能力がある。 「つまりこの戦いの先に、君はあらゆる願いを叶える力を、その手に獲得することになる。万象を実現しうる『王の力』だ」 そこに至るまでの道のりは険しいが、決して損な話ではないはずだと。 青年は聖杯戦争の説明を、そのようにして締めくくった。 自分にだって人並みに、欲望というものは存在する。 それを叶えることができるというのは、確かに魅力的な話だとは思う。 しかしその願いを叶えるためには、他の参加者達と戦い、勝ち残らなければならないということか。 「さて……この聖杯戦争には、まず予選というものが存在する」 いきなり大勢で戦い始めても、収拾がつかなくなってしまうからなと。 そんな考えはまるきり無視して、和装の男は話を続けた。 英霊というのはよく分からないが、ひょっとするとこの時代錯誤な男も、そういう存在なのだろうか。 「これから君が降り立つのは、我々が用意した仮想空間だ。 ここまで辿り着いた時点で、相当な資質の持ち主ではあるが……まずはそこで君のそれを、もう一度見極めさせてもらう」 そこまで言い終えると青年は、髪を揺らして振り返った。 視線の先に、光が降りる。 次なるスポットライトが灯り、部屋の壁らしき場所を照らす。 そこにあったのは1つのドアだ。 先ほどまでは気付かなかったが、この暗い部屋に存在する、自分と男以外の唯一のオブジェクトだ。 「君がここでの出来事を、もう一度思い出した時……それが予選突破の合図となるだろう」 ちょっと待て。それは一体どういうことだ。 思い出すということは、ここで起きた出来事を、忘れるような事態に追い込まれるということか。 「君の健闘を祈っているよ」 それすらも尋ねる暇もなく、照らされた扉が開かれた。 そしてドアの向こうからは、またしても眩い光が走り、意識はその奥へと消えていった。 ◆ かくて物語は始まる。 王の聖杯を巡るための、戦いの火蓋が落とされる。 剣を振るいし英霊、セイバー。 弓を番えし英霊、アーチャー。 槍を携えし英霊、ランサー。 手綱を手繰りし英霊、ライダー。 魔術を唱えし英霊、キャスター。 闇夜を駆けし英霊、アサシン。 狂気を叫びし英霊、バーサーカー。 それら7つのクラスに対して、此度の聖杯戦争に、用意された椅子は11。 そして11のサーヴァントを取り合う、予選の舞台は偽りの町。 偽の記憶を植え付けられ、偽の隣人の中で暮らす、仮初ばかりの幻の町。 その幻を払いし者は、真なる奏者の資格を手にする。 英霊の魂を従える、マスターとなる資格を得る。 彼らの本当の戦いは、本当の自分を取り戻した、その時にこそ始まるのだ―― 【二次キャラ聖杯戦争・獅子王杯 開幕】 主催 【榊(ルーラー)@.hack//G.U.(小説版)】 BACK NEXT - 投下順 第1の座――迷える拳 - 時系列順 第1の座――迷える拳
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スペースチャンネル5 当Wiki連絡用掲示板内「差し替え・追加スレッド」-424~429 424 :名無しさん:2013/06/06(木) 20 24 56 ID ??? なぜかパート2はあるのに、初代がwikiにないスペースチャンネル5を書く。 ドリームキャストとプレステ2のゲーム。音ゲー。 25世紀。モロ星人と呼ばれる宇宙人達が地球を侵略、当たった人は踊り続けるビームで地球人を襲う。 宇宙放送局スペースチャンネル5は、リポーターである主人公「うらら」を派遣し生放送を開始。 モロ星人達のステップをやり返す事で撃退・踊る人々を解放できる事がわかり、うららは踊って、時にはビームで、モロ星人たちを倒していく。 うまくダンスするとシチョーリツも上がる。失敗すると下がる。 425 :スペースチャンネル5:2013/06/06(木) 20 25 41 ID ??? 西暦2489年。 ピンクの宇宙服を着た少女が、宇宙を漂っている。 「こちらチャンネル5。スペースシップ遭難事故の行方不明者、最後の一人を発見しました」 青い宇宙服を来た人物がそれを抱きとめる。 「よく頑張ったな、もう一人じゃないぞ」 十年後。 宇宙船の飛行場に突如、たくさんのUFOが飛んでくる。 中からモロ星人が降り立つ、モロ星人たちは逃げまどう人々にレーザー光線銃を撃っていく。 宇宙を漂う放送局「スペースチャンネル5」。 宇宙放送艇「アストロビート号」に乗るうららに、ディレクターのヒューズから通信が入る。 通信「スペースポートで事件だ、宇宙人が人々を踊らせているという情報が入った。うらら、アストロビート号で発進するぞ」 「了解!」操縦席に乗ったうらら。アンテナの突いた宇宙放送艇が現場へと向かって飛び立つ。 『うらら登場!の巻』 逃げまどう人々で一杯のスペースポート。マイク片手にうららは進む。ちなみにこの時点のシチョーリツは10%。 「皆さん、こんばんは。今夜のうららリポートショーは、スペースポートに襲来した宇宙人が人々を踊らせているという、異常事態を生放送します」 ヒューズからの通信。以降、通信=ヒューズ。 通信「通信状態良好。うらら、はりきって行け」「了解」 歩き続けると、踊るモロ星人三人と、バックで踊る人々が二人いた。 「ご覧ください、宇宙人です! 後ろの人は踊らされた人でしょうか」 画面上部ににテロップが入る。ニュース速報:宇宙人の動きをマネるのが有効! 通信「宇宙人の動きに注意しろ! リズムに合わせて入力だ」「レッツダンス!」 「救出成功です!」通信「なかなか決まってたぞ、うらら!」 助けた二人がバックダンサーになる。つき進むうらら。 通信「注意しろよ……物陰からくるぞ、宇宙人にはAボタンビームが有効だ」「了解、レッツチュー!」 飛び出してくるモロ星人たち。ステップに合わせてAボタンビームで撃退するうらら。 通信「地球人にはBボタンビーム」ニュース速報:地球人にはBボタンビーム 飛び出してくる地球人達を、ステップに合わせてBボタンビームで救出。「完璧に救出しました」 その後もバックダンサーの地球人を増やしていく、カメラを撮るスペース・ニホン人などを助けシチョーリツもあげていくうらら。皆で突き進む。 管制塔の屋根の上を歩くうららと一同。丸い屋根の上を音楽に合わせて突き進む。 「管制塔にやってきました。情報によると出動したスペースレスキュー隊が、ここで踊らされているとの事です」 通信「宇宙人、接近。滑って落ちんなよ」「了解……レッツシュー!」 出てくる敵を打ち倒すうらら。「救出大成功です」画面を何者かが横切る。通信「おい、なんだ今の奴は!?」 青い服の女が、画面の真ん中に登場する。 「はぁい、みなさん、こんばんは。プリンで~す」通信「同業者か?」 「リポート見るなら42チャン」通信「負けるな、うらら」「了解」「「踊りで勝負よ!」」 プリンに踊りで勝つと、相手の親衛隊のギターがバックダンサーになる。「チャンネルはそのまま」 「発射台にやってきました、なんでしょう、怪しい気配がギュンギュンします」 通信「何かが接近、注意しろうらら!」「了解」 ピンク色のデカイ何か、ココ★タピオカがUFOから落ちて地面に着地。 「生物でしょうか? ロボットでしょうか? とりあえず踊ってみたいと思います!」 踊り勝っていくと、口を開けて黄色い足の生えた奴がたくさん出てくる。 「ご覧ください、ボスの口から何か出てきます」通信「なんじゃこの黄色い奴らは!?」「レッツシュー!」 黄色い奴らを撃ち倒していくと、タピオカがあらぶり始める。「あ、怒っています。激しく怒っています」通信「もう少しだ! 気を抜かないで行け!」 大きく開いて光り輝くタピオカの口に、ステップに合わせてビームを放つうらら。タピオカはその場で後ろに倒れた。 「以上、スペースポートよりうららがお送りしました。――スペースチャンネル5」通信「ハイ、カット!」 426 :スペースチャンネル5:2013/06/06(木) 20 26 23 ID ??? モロ星人たちが暗い部屋で、大きな机を囲んで会議している。 「あまり踊らせられなかったモロ! なんか邪魔も入ったモロ!」 「そ、その件につきましては…」 「言い訳はいいモロ! 次の作戦を言うモロ?」 「は、はいモロ! 今回の敗北原因があまりにも「正直すぎた」のでは? という分析結果を考慮し…「卑劣で卑怯、けど優雅」というコンセプトの作戦を練ったモロ」 「いいモロね」 「そのための舞踏メカはこちらモロ」 大きな扉の上のビジョンがアップになる。「おおーーっ」 『スペースシップ SOS!の巻』 「みなさんこんばんは。今夜のうららリポートショーは、宇宙人が踊り暴れるスペースボート客船から生中継でお送りします」 画面が切り替わる。「コックピットまできました」通信「気を抜くなうらら、前方に宇宙人反応」「了解、レッツシュー!」 モロ星人たちを倒し、乗組員を救出。「救出大成功です」通信「おー、いい感じ。まわれー、右」 コックピットから出て行こうとするうらら達。 「は!? 前方に踊らされたスペースシップキャプテンです!」 通信「うらら、歌って踊って救出だ!」 モロ星人を踊り倒したうらら。キャプテンがバックダンサーになる。通信「うらら、次はビッフェに向かえ」「了解」 通信「あ、まだいた、チューと言ったらAボタンビーム」「了解」 銃を撃って、モロ星人を倒すうらら。「チャンネルは、そのまま」通信「ビューティフルシューティング!」 「ビッフェにやってきました。美味しい匂いがぎゅんぎゅんします」 通信「気を散らすなうらら」「了解」ニュース速報:各方向に出現する集団は、左のヤツから撃ってくるぞ「レッツシュー」 モロ星人と客が混じって出てくるのを的確に倒し、救出。「完璧に救出しました」通信「大変よくできました、うらら」 「スペーススーパーモデルが踊らされています」通信「うらら、救出して差し上げろ」「レッツダンス!」 モロ星人を踊り倒し、スペーススーパーモデルをバックダンサーにしたうらら。 そのまま突き進むが、音楽が小さくなる。宇宙船の外を見ると別の宇宙船が登場する。 宇宙海賊放送艇「バッドチューニング号」が外にあった。 「スペースチャンネル5、番組をいただくぞ」 「なんですって!? きゃ!?」 画像が砂嵐になり、「しばらくおまちください」とメッセージが出る。 通信「どうしたうらら、何が起こっているんだ!? 放送システムチェック急げ!」 画像が戻ると男たちが踊っている。通信「や、やつらは!? 宇宙海賊放送局!」「え?」 「私の名前はジャガー♪(バックコーラス付き)。真実を伝えるのは我々だ! ……邪魔するなら」「「踊りで勝負!!」」 長いステップを覚えて、ジャガーを踊り倒す。一人バックダンサーを貰う。 「以外とやるじゃないか。また会おう」「待って!」去っていくジャガー。 通信「うらら、次はパノラマ展望室へ向かえ……あ、まだいた、チューと言ったらAボタンビーム!」 「撃ちます」モロ星人を倒すうらら。「チャンネルはそのまま」通信「デラックスシューティング」 「パノラマ展望室へやってきました……ああ!」 「UFOの母艦はすでに撤退を始めているぞ、追わなくていいのかチャンネル5」 UFOを追う海賊放送局の宇宙船。くやしそうな声を出すヒューズ。通信「ジャガーめ!」 「あ、なにかが転送されてきます。タコでしょうかイカでしょうか」 触手の生えたロボット。えっちいな舞踏メカ『モロリ~ナ』。 通信「小学生たちが捕まっているらしい!」 先生「あー、生徒たちが!」通信「まだキッスが優先だ!」 小学生「きゃー、お姉さん助けて!」通信「小学生にはBボタンビームで救出」ニュース速報:スペース小学生にはBボタンが有効 的確に触手の先のモロ星人とスペース小学生を撃っていくと、メカが爆発し出す。 「ボスがシクシクしています。でも、これで終わるとは思えません……やっぱり動き出しました」 通信「まずい、重力がなくなった」ニュース速報:重力発生装置が破壊されました 互いに浮いた状態で、それでも的確に撃っていくうらら。大きな舌がメカから出てきてうららを巻き取る。 「きゃー! 巻かないで!」通信「うららー!」 「ぬるぬるします! 激しくぬるぬるしています!」 その状態でもステップに合わせて撃ちまくるうらら。そして撃破する。 「以上、スペース豪華客船より、うららがお送りいたしました。――スペースチャンネル5」「うららさん、ありがとう」通信「ハイ、カット」 427 :スペースチャンネル5:2013/06/06(木) 20 27 01 ID ??? モロ星人たちが暗い部屋で、大きな机を囲んで会議している。 「やばいモロ! UFOが追跡されて、秘密基地の位置がばれたモロ!」 「そ、その件につきましては…」 「言い訳はいいモロ! 対応策を言えモロ?」 「は、はいモロ! すでに、あの秘密基地周辺に「隕石型踊らせミサイル」を、基地内部通路に「精鋭部隊」を、そしてとどめの中心部には最強の舞踏メカを配置したモロ」 「なかなかいいモロね」 「ちなみに最強舞踏メカはこちらモロ」 大きな扉の上のビジョンがアップになる。「ひょーーっ」 『突撃! スクープ争奪戦! の巻』 「みなさんこんばんは。宇宙人の秘密基地が、ここアステロイド地帯にあると発見しました」 通信「遅れをとるな! スクープ持ってくるんだ! ここでは何でもかんでもAボタンビーム!」ニュース速報:なんでもかんでもAボタンビーム 隕石を、ついでに同業者たちを撃ちまくるうらら。途中、海賊船が巨大隕石を撃破する。そしてジャガーが飛んでくる。 「またチャンネル5か……いくぞ!」 飛んでくるジャガーの海賊たちを、撃墜するうらら。 「なかなか、やるな」 「リポート見るなら42チャン」通信「プリンに先を越された!?」追いかけるうらら。 基地内の通路はカラフル。警告速報:部屋を明るくしてTVから離れてね 乗り物で追いかけるうらら。モロ星人達が邪魔をする。 「た、助けてくれてもよくってよ?」通信「踊らされているのはプリンか!?」「はやく助けてー」 モロ星人精鋭を踊り倒すうらら。去っていくプリン。「一応、ありがとう」 突き進んでいくと上下左右からモロ星人が出てくる。撃ち倒すうらら。 「ついに中心部にやってきました……TVです、とても大きなTVがあります。怪しい気配もぎゅんぎゅんします!」 最強舞踏メカ『モロリン! モンロー!』。 画像の中に一つの目玉を持った丸いモンスターが出てくる。撃ち倒していく。 「ご覧ください、モニターの中から何か出てきます。あ、ぷるぷるしてる」通信「なんじゃこりゃ!? これが奴らのボスか!?」 でっかい緑とピンクが合体したロボットが出てくる。踊り倒していく。 メカはぐるぐる回転し、二体に分かれる。 「なんと今度は分裂しました! ちょっとピンチの予感です!」 ステップを着実に決めるが、敵メカからの一撃を喰らい膝をつくうらら。 「その程度か、チャンネル5」通信「しまったジャガーに追いつかれた!」 「逃げるなら今のうちだぞ?」「負けないわ!」 一緒に銃を撃ってくれるジャガー。 メカは今度は人質とモロ星人を混ぜてくる。ニュース速報:モニタをよく見て撃ち分けよう! うららは的確にモニターを倒し、ジャガーは敵メカを攻撃、撃破する。 通信「よし、スクープはバッチリ取れたぞ! よくやったうらら!」 「ごらんのように宇宙人基地を壊滅させました。これで地球にも平和が訪れるでしょう。以上、秘密基地よりうららが…」 通信「テレビの様子が変だ」 画像にはモロ星人がビームを撃つ所。「踊らせろ! 踊らせろ!」。 「やあ、なに!? この映っているのは……これは洗脳放送?」 モロ星人に囲まれるうらら。通信「テレビだ、テレビを撃つんだうらら!」「了解!」 うららのビームで破壊される巨大テレビ。モロ星人たちが自由になる。通信「やつらも踊らされていたのか」 「大変、基地が崩れる、みんな逃げて!」緊急警告:部屋を明るくしてTVからはなれよう 今まで来た道を全速力で逃げるうらら。爆風が追いかけてくる。 通信「うらら脱出を急げ! 宇宙人たちもAボタンビームで救出だ!」「任せて!」 炎にまかれて吹っ飛んでくるモロ星人たちを救出しながら、脱出する。 通信「炎が迫ってるぞ、急げ!」通信「さらに迫ってるぞ、急げ!」通信「もう、すぐうしろ!」 「ちょっと熱いです!」通信「こらえろ、出口は近いぞ!」 「了解!」通信「あらかた脱出!」 そのときジャガーから通信が入る。 「洗脳放送の放送元が特定で来たぞ! チャンネル5の周波数と同じはずだ! なぜなら」通信「なんて言った!?」 「脱出しまーす!!」通信「ハイ、カット」 428 :スペースチャンネル5:2013/06/06(木) 20 28 05 ID ??? モロ星人たちが暗い部屋で、大きな机を囲んで会議している。 「え!? 我々って洗脳されてるモロ? そうなのモロか!?」 一人、通路を誰かが進む。 「ワ、ワタシに聞かれましてモロ…」 「む、そうだモロよな。うん…。たぶんそんなコト無いモロよなあ…」 二人、通路を誰かが進む。 「次の作戦、いくモロ! やはり理論先行の作戦は、我々に向かないのではと考え、欲望の赴くままに最初にまず、メカをつくってみたモロ」 「なかなかいいモロね」 三人、通路を誰かが進む。 「こんなカタチになった…モロ!?」 大きな扉の上のヴィジョンがアップになる、しかし画像は映らず代わりに扉が開いた。 光り輝く扉の奥、うらら・ジャガー・プリンの三人が立っていた。 『銀河最大の悪を暴け! の巻』 「チャンネル5局長のブランクさん。罪のないモロ星人を操っていたのは、あなたですね」 モロ星人の座る大机の奥に、男が座っていた。 「私の踊りとマイクで、真実を暴いて見せるわ」 うらら、そしてその後ろでジャガーとプリンが踊る。そして突き進む。 「みなさん、こんばんは。今夜は宇宙人襲来の真相究明リポートを、とことん追っていきたいと思います。犯人はどうやら、そこに座っている男の様です」 部屋の奥に座っている男。スペースチャンネル5局長「ブランク」がいた。 「はっはっは」通信「本当に局長が犯人!?」「あなたたちはブランクにあやつられているのよ。目を覚まして」 通信「洗脳を解くにはデラックスAボタンビーム」ニュース速報:宇宙人には、デラックスAボタンビーム!! 襲い来るモロ星人を撃ち倒すうらら。ワーイと言って飛んでいくモロ星人。ブランクが消える。通信「ブランクが逃げたぞ」 モロ星人たちをバックダンサーに、扉を開けて追いかけるうらら。通信「注意しろ、警備システムが操作されている」 「了解。……マイケルです、スペースマイケルが踊らされています」 踊らされた「スペースマイケル(本人)」。ダンスの合間にフォウッと相槌を打ってくれる。通信「全力で行け、うらら」 モロ星人を撃ち倒し、地味に本気で踊っているマイケルをバックダンサーにする。 通信「十点、十点、十点! パラララララ、ヒュウ!」 突き進むうらら。通信「ブランクはコントロールルームへ逃げたぞ」 「了解」通信「あ、侵入者撃退砲台が狙っているぞ」 「撃ちます!」つり下がった砲台を撃つうらら。「チャンネルはそのまま」通信「ステキー」 薄暗いコントロールルームを歩くうらら。下に向かって飛びおりる。 「ブランクは果たして、どこにひそんでいるのでしょうか?」通信「うらら来るぞ、落ちついていけ」「レッツダンス」 モロ星人を踊り倒し、踊らされたキーボードギャルを助ける。「救出成功です」いつもの音楽にキーボードが足される。 うらら達が突き進むと、大きな扉が開く。たくさんのモニターに囲まれた空中にある大きな椅子、そこにブランクが座っていた。 「ブランク!」「ふむ、お前の様なリポーターがうちにいたとはな。真実を知りたければ上がってくるが良い」「まてー」 椅子が天井へとせり上がって消える。うらら達の前にモロ星人が立ちふさがる。それらを倒し、エレベーターへ向かう。 通信「この先のメインアンテナへ向かえ」「了解」通信「最後の最後にまだいた、いくぞ」 撃ち倒し、うららは画面に向かって言う。「ブランクを追います」通信「すてきー」 真っ暗な部屋へと辿り着く。ブランクの言葉が聞こえる。 「真実を求め過ぎるリポーターには、残念だが消えてもらおう」 うららがライトアップされる。前方に大きなロボットの群が、そしてその先頭に人型サイズのロボットが下からせり上がってくる。 うららそっくりの白と緑のロボット。パーフェクトリポーター「イビラ」。全体が光り輝く部屋に、対峙する互い。 「リポーターは私のために、シチョーリツさえ稼いでいればよい、この子の様にな」 イビラはロボット声でしゃべる。 「私はイビラ。完璧なリポーター。うらら倒す」通信「魂なきリポーターにうららが負けるか!」 序盤のダンス勝負でうららが競り勝つ。 「どうしたんだ、お前は完ぺきなはずだ!?」通信「なかなかいいぞ、その調子だ!」「私が踊りで負けるもんか!」 そしてうららが踊り勝った。 「ただの操り人形に、リポーターは無理だった様ね」通信「!? うわ、うらら、助けてくっ!?」 停止するイビラ達。そして全周囲の天井と壁が開き、宇宙が見える。 429 :スペースチャンネル5:2013/06/06(木) 20 29 32 ID ??? ニュース速報:ディレクターが宇宙中継艇ごと捕まった模様 巨大なオレンジ色のロボットが外にいた。その手に宇宙中継艇を持っている。 「消えてもらうと言ったはずだ、うわっはっはっは!」「ディレクター!」 お立ち台の様な小型の乗り物が宇宙から飛んでくる。それに飛び乗るうらら。ジャガーとプリンも別々の物に乗ってついてくる。 通信「うらら、逆転だ! システムの逆方向に入力してからAボタンビーム!」続報:指示とは逆方向に入力してからAボタンビーム!! ジャイアントイビラが宇宙中継手を手に、ミサイルを出してくる。ジャガー・プリンと共に迎撃。 「シチョーリツが上がればいいんだぁあああ!!」「きゃあああ!!」「プリーン!」 プリンがぶん殴られて、ぶっ飛んでいく。怯まず攻撃するうららとジャガー。 「真実など必要ないのだ!!」「うおおおお!?」「ジャガー!」 ジャガーもぶっ飛ばされる。それでも一人、戦い続けるうらら。しかし、曲が止まる。 通信「サウンドシステムが、きょく、が、っ」 音楽がなければステップを踏めず。ミサイルが次々と直撃。吹っ飛ばされるうらら。 宇宙を漂ううらら。 そこにジャガーの乗った、宇宙船が助けに来る。うららを助けてくれた十年前の出来事に酷似していた。 「うららよく頑張った、もう一人じゃない」「じゃ、ジャガー」 うららは乗り物に戻る。 BGMは消えたまま。だが、たくさんの人々の声がアカペラで音楽を作り出していた。それに合わせてステップを踏んで攻撃するうらら。 ジャイアントイビラの頭が飛んで変形。大きなモニターになる、そこにブランクが映っていた。 洗脳放送発信メカ『ブランクTV』。 「シチョーリツこそが、シチョーリツこそが、し、シチョーリツこそが人生そのもの……洗脳放送で宇宙人を操って何が悪い!! 全てはシチョーリツのために!!」 「お聞きいただけたでしょうか? 今回の騒動の黒幕が、自ら白状しました」 うららに「ブランクTV」が襲いかかる。うららがTVに取り込まれる。 今まで助けてきた人が、モロ星人が、メカが、たくさんの人々がブランクTVの前に集まってくる。 「うらら頑張れ!」 たくさんの人がうららに合わせて声を出す。もっともっとたくさんの人が集まってくる。 「うららガンバレー!」 踊り勝っていくうらら。テレビから脱出し、たくさんの人々の前に着地する。マイク片手に、指をさす。 「みんないくわよ!」みんな「Let s Dance!!」 全員同時にブランクTVに対して踊る。苦しむブランクTV。 「し、シチョーリツが……」通信「今だ! 皆の踊りエネルギーをアンテナに集めるんだ!」 うららは踊る。「了解! ブランク、悪さが過ぎた様ね!」 ジャガーも踊る。「真実を歪める奴は許さん!」 プリンも踊る。「リポーターを道具扱いする奴も許せない!」 モロ星人たちも踊る。「あやつるなんて酷いモロ!」 「さあ、みんなで一緒に決めるわよ!」通信「タイミングを外すなよ!」 アストロビート号の巨大アンテナに光が集まっていく。収縮した光がブランクTVを吹き飛ばす。「まーた来週」 ブランクTVは宇宙のかなたへと、飛んでいった。踊り喜ぶ人々の前で、うららが冷静にリポートした。 「モロ星人の疑いが晴れて良かったですね。以上、モロ星人襲来の真相究明リポートをうららがリポートしました。スペースチャンネル5」 通信「銀河一、良かったぞ、うらら」「さあ皆、銀河の果てまで行進よ!」 アストロビート号が、宇宙に光の橋をかける。そして今までのキャラクター達が、その上を更新する。 スタッフロールが延々と続く。 モロ星人「アップ」 うらら「アップ」 通信「ハイ、カット!」ちなみに失敗すると通信「おいおい」。 二週目はミス無しだとEXという、それぞれの中間地点の別ステージに行ける。そのステージの始まり・終わりは同じ。
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前:二部/024 次:二部/026 070 カナエによく似た少女が暗い部屋で横になっていた。部屋は病室によく似ていたが、この部屋には窓が1つもなく、明かりも彼女の状態を示すモニターの光のみである。モニターに映し出されたデータは一定のリズムを刻み続けていた。 横になっていた少女が起き出す。彼女は本能的に自身の観察者であったジョーカーが死んだことを悟った。何か証拠があった訳ではない。ただ自身の勘は間違ってはいないだろうという確信があった。 ─── その勘こそが彼女の能力であった。人の死に、そして自分の死に極端に敏感になる。それだけ、といってしまえばそれまでだが、彼女の勘はこのままでは自身も 近いうちに"処分"されてしまうだろうといった。しかしただ逃げ出しただけでは先延ばしに過ぎない。根本的なところから改善が必要なのだ。故に彼女は生存をかけて戦いに望む。つまり、自身を殺せるもの───ネオや反逆者を皆殺しにするのだ。誰から見ても絶望的な戦い。それを前にして彼女は笑う。カナエと全く同じのはずであった彼女は、最早全く別の怪物になろうとしていた。 071 「そんな、反逆者になんてわざわざ会いに行くものじゃありませんよ。」 ジェラートの顔には少し作り笑いが見えたが構わず続ける。 「いいじゃないか、私だって気になるんだ」 「……ですが。」 ジェラートは煮えきらない態度をとったが、無視した。 「じゃぁ、行くぞ。ジェラートも来るか?」 「ご一緒させていただきます。」 明らかにテンションが低い 何か良くないことを隠していそうな予感がした。 072 とりあえず私は身体中につけられた計測具を取り外し、武器になりそうなものを探した。 少し部屋の中を探すと、匿ったところに扉があったので開けてみる。 そこは貧相だが手術室、いや検死所か があった。 ひとまずそこらにある手術具、メス、剪刀、鉗子、など適当にとってひとまず護身用とした。 しかし先程からというものの人影の1つもない。自分の勘はジョーカーのほかに多少人が死んでいるとはいっているが、施設のわりに少なすぎる。 おかしいことは明らかだった。 とりあえず研究所で物資を集めてから、外に出よう。 073 ジョーカーは世界を掌握していた。いや、正確には一人の反逆者に殺められるまでは、確かにそうであった。しかし今、世界はまた別の者に主導権を握られる事になる。 ━もう1枚の『JOKER』によって━ 074 「カズマ、起きて~!朝だよ。」 いきなり響いた子供特有の高い声が眠気を飛ばす。 「…おう」 今日は、カナエを探しに行くらしい。思い起こせばカナエとはいつ以来あっていないのだろうか。カナエを思い出すときは同時に怪物の記憶がついてくる。敗北の感覚も…。 「カズマ?」 アトルが不安そうに俺を見上げる。そんなに思いつめた顔をしていたのだろうか。 「大丈夫だ。今の俺なら」 「うん!カズマは強いよ~」 笑顔で答えてくれる。 「おう。」 「じゃあ行こうか」 いつの間にかハヤトがいた。 「おう!」 「まずはどこからまわろうかなぁ?」 アトルが楽しそうに言った。 「まずは双月の牢にいこうと思う」 075 ……双月の牢、カズマをある程度強くしたらそこでジョーカーと落ちあう事になっている。 ジョーカーが何を考えているのかはわからないが、おそらくカズマは……殺られるだろう。 だが知ったことではない、カナエが助かるならば、どんな犠牲でも払うと決めたのだ。 「━━そういえば、どうして双月の牢なの?」 荒野を歩く三人の乾いた靴音に、突然と上調子な声が混じりこむ。 アトルだ。 双月の牢までのしばらくの間の、 黙々とした雰囲気に華を咲かそうとしているのだろう。 「う~ん、そうだね、カナエを探すにしても、何の情報もないからね。カナエと別れた双月の牢に、何か手掛かりがあればいいと思ったんだけど……」 前もって考えておいた適当な答えが口から出てくる。 もちろん嘘だ。だが俺の声に、態度に、表情にそれという気配もなかった。それに対する罪悪感も……だ。これから起こることが、彼らを危険に晒すことなどわかっているはずなのに。 「カナエさん、見つかるかなー?」 「……きっと見つかるよ。いや、見つけてみせる、かな?」 冗談目かして、そう言ってみる。 「うわー、カッコイイーぃ。僕がカナエさんだったら惚れちゃうよ~」 「あはは、そうかな。さすがに本人の前じゃこんなの恥ずかしくて言えないけどね」 片手で頭を掻きながら照れ笑いのような表情でそう答える。場の雰囲気も和みかけてきたようだ。 これから起こる事も知らずに。 076 ジョーカーは現れなかった。 連絡も取れない。 以前一度だけ行ったことがある、ジョーカーの拠点へ行ってみるか。 「何も見つからないな。そっちも何もないようなら、別の所へ行こうか。」 「別の所って、どこか他に心当たりがあるのか?」 「ああ、ちょっとね。」 自分に疑いを持たぬ仲間に少しの罪悪感を憶えた。 前:二部/024 次:二部/026
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「王様的フラグ」の続編です。 夜空を照らす金色の月の下で、1組の男女が向かい合って佇んでいた。 彼の目の前にいる少女は可愛かった。 大きな瞳に、締まりっ気のない猫のような口。風に乗って遊ぶサラサラの青い髪。頭の上にちょこんと出ている大きなアホ毛も、彼女のキュートさをさらに引き出している。 そしてもちろん、泣きボクロもチャーミングだ。 「遊戯君……?」 声は、どことなく人のやる気を削ぎ、落ち着かせる効果があるように感じられる。顔に見合った、可愛い声。 「上ってみる?大人への階段……」 彼を見上げる幼げな顔。少し赤みがさしている。 いつもの元気なものとは違うしおらしい表情は、彼女的にいう萌え要素というやつか。 「別にいいよぉ?私は……」 言うと、ゆっくりと眼を閉じる少女。 「いっ……」 彼は言葉が出せなかった。かわりに震える手が、彼女の肩を掴んだ。 細い。女の子の肩とはこんなに細いものなのかと彼は初めて知った。それに制服の上からだというのに、手のひらにはほのかな体温が感じられる。 腕に力をこめ、彼女の体を引き寄せる。 そして彼自分も体を少し曲げて、ゆっくりと彼女と自分の顔を近づけて行き…… 「寝ている時ぐらい静かにできんのかこのウニ野郎!!」 「お、ぉうわ!?」 鼓膜を破らんばかりの大声が木霊し、遊戯は反射的に飛び起きた。 驚いた表情であたりを見回す。暗い部屋。月なんてどこにもない。 横を向いて見ると、ハートマンの怒り顔が。反対方向を見ると、阿部や古泉、リョウなど男性陣が布団に身を包んで眠っている。 (夢か……) 遊戯は大きなため息をついた。 ここは月夜に照らされたロマンティックな場所なんかじゃない。ここはタイガーモス号船内のとある1室。男性陣のための5人部屋だ。 自覚することで、圧倒的なリアルが夢を覆い潰していく。 背筋を伝う冷や汗が気持ち悪い。まるで悪夢を見た直後のようだった。いや、遊戯が見た夢は、彼にとっては一種の悪夢と言えるもjのだった。 「……ふぅ…」 いい年こいてまだママが恋しいか、と、普段よりいくぶん音量を落としたハートマンの説教を聴いてから、遊戯は部屋から出た。 背筋を伝っていた汗が、強風によってあっという間に引いていく。 目の前には、夜闇。 暗い。天上で気ままに輝く月でさえ、視界の果てまで照らし出すことが出来ないでいる。 ただただ広がる金と白と黒。 遊戯の心は、これらの何色でもなかった。 暗いのか、明るいのか。手のひらに未だに残る夢の名残は、何も答えてはくれない。 心は無色だ。問答を繰り返すだけで色気づく様子が一つもない。 彼女と出会ったのはつい2,3日前のことだ。 なんてことはないはずだ。魔王を倒すため、相棒を取り戻すための旅の途中の、ほんの一時の仲間。ただの仲間だ。旅が終われば、お別れだ。 そう、旅が終われば、もう会えなくなる。もう話せなくなる。遊べなくなる。触れることも、一緒にいることも…… 確かめるため握り締めた拳から、彼女の温もりがすり抜けていった。 震える手は、彼女ではない自分の肩を抱いていた。 声は出ない。代わりに出たものも、悲しみか嘆きか分からない小さなうめき声。 抱きしめた自分の肩は冷たかった。 彼女は、どう思っているだろうか? こんな所で震えている自分のことなんか、きっと知らないだろう。 その方が良い。知らないほうがいいんだ。今まで通りの仲間でいい。それだけでいい。 それだけでいいはずだ。 ただそれだけで。 ぶるり、と遊戯は肩を大きく震わせた。の独特の肩を出した服装では、この風の中は寒すぎる。 「寒いな……」 遊戯は声を出すことで、先ほど自分の中で目まぐるしく揺れ動く感情を紛らわそうとした。 「……すぐには寝られそうに無いな……」 完全に眼が覚めてしまった。再び寝床に入っても、まず寝られないだろう。 何よりも眼を閉じてしまうと、また悪夢が襲ってくるかもしれない。 遊戯は顎に手を当てしばし思案すると、海馬のことが頭に浮かんだ。 ここ最近、船の操縦は海馬に任せっぱなしだ。特に以前の『アレ』以降は、ブリッジにさえあまり近づいていない。 (手伝ってやらなきゃな……) 2人でさえそれなりに大変な仕事である。最近海馬がやつれているように感じられるのも、1人で頑張ってくれているせいかもしれない、と遊戯は思った。 (その前に、トイレに行っとくか……) 冷える場所に出たせいか、急にもよおして来た。 「さぶっ」と小声でぼやきながら、遊戯は歩き去って行った。 カチ……キィ――…… 「行ったか?」 「行ったようですね」 遊戯が通路の角を曲がり姿を消した数秒後、ドアが開いた。 開いたドアから顔を出したのは、ハートマン、リョウ、阿部、古泉の4人。 「よし……では、打ち合わせ通りだ。すみやかに任務を遂行しろ……」 「じゃぁオレは、あっちのほうを任せろと言わざるを得ない……!」 「よし、遊戯のヤツは俺たちが犯る、おっと……やるとしますか」 「では、2人で行きましょうか、阿部さん。んふふ……」 「そうだな。ふふふ……」 ハートマンが指示をだすと同時に、リョウ、阿部、古泉が動いた。 リョウは船内のとある一室を目指して。阿部と古泉は、遊戯が消えた方向へ。 「おっと、ハートマン」 「なんだ?時間が無いんだぞ!」 通路の角から顔だけ出して、阿部はハートマンに言って投げた。 「思った以上に優しいんだな。ますますいい男じゃないか」 「!!……さっさと言ってこい!この……!」 「ふふふ……」 ハートマンの怒声を背中に浴びながら、阿部はその顔に妖しい笑みを浮かべた…… 続く 名前 コメント
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CATEGORY Name="PreMenu" Entry Name="WelcomeMessage01" Welcome to Amnesia The Dark Descent! [br][br]What follows is a couple of quick messages on how to get the best possible experience. /Entry Entry Name="WelcomeMessage02" Amnesia should not be played to win. [br][br]Instead, focus on immersing yourself in the game s world and story. /Entry Entry Name="WelcomeMessage03" Do not worry about when and how to save during gameplay, the game will take care of that for you. [br][br]When you want to leave the game, just choose "Save and Exit". You can then use "Continue" to return to where you left off next time you start up the game. /Entry Entry Name="WelcomeMessage04" The world of Amnesia is a dangerous place and you are extremely vulnerable. [br][br]Do not try to fight the enemies encountered. Instead, use your wits. Hide, or even run if necessary. /Entry Entry Name="WelcomeMessage05" The interplay between light and dark is very important to the game and because of this it is vital to set up the gamma correctly. Use the slider control below to do so. Adjust it until the square at the right is barely visible. [br][br]Also make sure to play in a dark room and wear headphones for the best effect. /Entry Entry Name="WelcomeMessage06" That is all. Hope you enjoy immersing yourself in the world of Amnesia.[br][br][br]- Frictional Games /Entry /CATEGORY 翻訳文 CATEGORY Name="PreMenu" Entry Name="WelcomeMessage01" Amnesia The Dark Descent へようこそ![br][br]幾つか、可能な限り最高の体験を得る為のメッセージを案内しましょう。 /Entry Entry Name="WelcomeMessage02" クリアにこだわって Amnesia をプレイすべきではありません。[br][br]それよりも、ゲーム世界やストーリーに没頭する事へと集中しましょう。 /Entry Entry Name="WelcomeMessage03" ゲームのプレイ中、いつ、どうやってセーブするかは気にしないで下さい。 自動的に処理が行われています。[br][br]ゲームを終了する時には、単に 「セーブして終了」 を選択し、 次回ゲームを立ち上げた時には 「続きから」 を選択すれば再開することが出来ます。 /Entry Entry Name="WelcomeMessage04" Amnesia の世界は危険であり、 また、あなたはとても脆弱です。 [br][br]敵に遭遇しても戦おうとせず、代わりに、機転を働かせましょう。 場合によっては、隠れたり、走って逃げたりする事さえ必要です。 /Entry Entry Name="WelcomeMessage05" 明かりと暗闇の交錯はこのゲームに於ける重大な要素です。 その為、適切に明るさを調節する事が極めて重要です。 以下のスライダーコントロールを使用して、 右側の四角がちょうど見えなくなる程度に調節して下さい。 [br][br]尚、暗い部屋でヘッドホンを身に付けてのプレイが最も効果的でしょう。 /Entry Entry Name="WelcomeMessage06" 以上で全てです。 Amnesia の世界を存分にお楽しみ下さい。 [br][br][br]- Frictional Games /Entry /CATEGORY
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~・~・~ 夜になると、彼はいつもどこかへ出かけていく。 行き先はわからない。 待ちくたびれて眠ってしまうと、朝の光に目覚めた頃にはもう帰って来ている。 監禁されている私にも、 数時間に一度だけ、自分の意志で部屋の外へ出るチャンスがある。 「あ、あのー!トイレに行きたいんですけどー!」 「・・・我慢しろ」 「も、もう漏れちゃいそうなんです!!」 「・・・」 「あ、あ、もうだめー!!」 「・・・来い」 扉が開き、男を急かすようにトイレに向かい、 ひとりでトイレに入ると、正面の窓にとりつく。 ロックを外して引くと縦に倒れて隙間が開くタイプの窓だった。 思い切り押せばいくらか隙間が出来るものの、転落を防ぐ為なのか一定の角度までしか窓は開かなかった。 もっと力をこめて引けば壊せそうだったが、音が心配だった。 開いた隙間から下を覗いてみると、監禁部屋から覗いて確認したとおり、窓のすぐ横に雨どいがある。 角度のせいか、部屋から見えたはずの下の階の外周の渡り廊下は見えない。 「おい、早くしろ」 「ま、待ってくださいよ!まだ出てんですから!」 ドアの向こうから声がかかりびくりとする。 雨どいを伝って下の階へ脱出する作戦は、やはり危険すぎるようだ・・・大体私は高所恐怖症だ。 やはり夜中、あの男が出かけた隙を狙う以外ないか。 そう思っていると、 窓の縁にかけた手、その指先に何かが触れた。 首を伸ばして覗き込むと、外側、窓の縁の下側から、何かの針金が飛び出しているのが見える。 力をこめて引けば、抜くことが出来るんではないだろうか。 針金をまず指先だけで下に向かって引っ張り、 ある程度飛び出させたところでしっかり手のひらに握り締め、思い切り力をこめる。 窓枠がぎりぎりときしむのが手のひらを通して伝わってくる。 「おい」 「うわ!」 扉の向こうからかけられた声に驚き、窓から飛び出しそうになり、慌てて針金を掴んだ手で支える。 と、突然掴んでいた針金がすぽんと抜け、前のめりになる。 今にも窓から落ちそうなところで、開いた手と足の力で踏ん張り、身体をなんとか窓の内側に戻す。 危ないところだった・・・ しかし、私の右手には、針金。 やっとのことで手に入れた脱出への鍵を背中に隠すと、私はトイレを出た。 セピア色の夢の中。 ぼーっとしていると風景はどんどん色づいていって、 気がつくと僕はあの日まで暮らしていた家に居た。 でも不思議と懐かしさは感じない。 ここは僕の家だから。 今日までずっと暮らしてきた家だから。 小さな犬と大きな猫、そして父さんと母さん。 母さんは台所で夕飯の支度をしている。 父さんは食卓で野球の中継を見ていて、膝の上で猫が丸くなって眠っている。 縁側の窓の外、ささやかな庭にはもう夜の帳が下りて、大きな小屋で眠る小さな犬の姿は見えない。 魚の焼ける匂い。 煙草の白い煙。 ふと、僕の視線が天を仰ぎ見る。 そのまま僕は倒れて、父と母が駆け寄ってくる。 僕の世界は闇に包まれた。 目覚めるとそこは、暗い部屋。 カーテンの無い窓から月明かりが差し込んでいる。 ベッドから起き上がって窓辺へ向かう。 空には、上弦の月が昇っていた。 ふと気付き、扉の向こうの気配に感覚を研ぎ澄ませる。 沈黙。 男はもう、いつものようにどこかへ出かけて行ったらしい。 念のため音を立てないように気をつけながら扉へ向かう。 抜き足差し足で辿り着き、服に隠しておいた針金を取り出し、その先端を確認する。 細身ながら、なかなかの剛性だ。 これなら、鍵を開けるのに足るものであるはずだ。 薄明かりの中、ドアノブに張り付いて鍵穴を指先で探す。 すべすべしたステンレスの感触。鍵穴はなかなか見つからない。 少々の焦りも感じ始める。 指先で熱心にノブをなでるが、鍵穴は一向に見つからない。 鍵穴はノブの下側なのだろうか。 しかし、その様なものは見当たらなかった。 鍵穴は、結局見つからなかった。 どうやら全て、反対側らしい。 急に悔しくなってきた。あんなに苦労して手に入れた針金なのに。 悪いのはこの扉だ。 家主が自分でうっかり鍵をかけて閉じ込められたりしないように、 両側に鍵穴をつけておくべきではないのか。 なんという理不尽だ。 音が立つのも気に留めず、扉を拳で思い切り殴りつけた。 それがいけなかった。 バリバリバリ ・・・ バターン 一瞬何が起こったのかわからなかった。 目の前には、扉の向こうの廊下の風景が広がっていた。 視線を落とすと、腐った木屑が散らばり、板張りの床にたった今殴りつけた扉が倒れていた。 まさか。私の拳の威力で扉が壊れたとでも言うのか。 なわけがない。 もともとこの扉は、腐っていたのだ。 要するに、鍵があろうと無かろうと、その気になればあたしはいつでもここを出られたということなのだった。 段々腹が立ってきた。 そこまで考えて、はっとする。 一応壁に半身を隠し、周囲の気配をうかがう。 明かりが落ちて、闇に包まれた部屋。 廊下の向こうの暗闇からは、何の気配も感じない。 どうやら、やはり男はいつも通りどこかへ出かけた後らしい。 気配をうかがいながら慎重に部屋を出て、恐らく玄関への扉があるであろう方向へ向かう。 廊下を手探りで進むとすぐキッチンのようなスペースに出る。 よく掃き清められていて、薄闇の向こう、棚に食器類が整然と収められている。 右手にはキッチン。 こちらも随分手入れが行き届いているように見えた。 私とは大違いだ。 ・・・。 個人の感情は置いておいて、キッチンの横にあった玄関らしい扉も程なく見つかった。 鍵は開いていた。 扉を薄く開き、隙間から外の様子を伺う。 その後、何も仕返しできないまま出て行くのも悔しいので、 しまってある調理器具を色々配置を変えたり散らかしたりした後、私は廊下に走り出た。 【つづく。】
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第一回放送(仮) ◆vV5.jnbCYw 誰もいない大広間。 つい6時間と少し前。12の世界から61人もの有象無象が集められた場所だ。 この場所には、今は1人しかいない。 (さて、そろそろ始めるか。) 部屋の真ん中に立った、額の縫い目が印象的な男が一呼吸おいて、口を開いた。 数百年の時を生きた羂索だが、これほど興奮したことはそうそう無かった。 何しろ、自分が始めた儀式が、気持ち悪いほど順調に進んでいるのだ。 自分の声が上ずってしまわないか、少しだけ気にする。 「おはよう。」 それは静かで、低くて、それでいて良く通った声だった。 「殺し合いに夢中になっている所を済まないが、6時間が過ぎたのでね。最初に報告した通り、途中経過を告げることにするよ。」 冷たい声。だが、その裏に甘さも含まれている。 ゆっくりとした淀みのない口調を聞いた参加者は、何を思うだろうか。 そんな彼ら彼女らの気持ちを知ってか知らずか、羂索は言葉を紡いでいく。 「まずはこの儀式で贄となった者達を告げていくことにする。 中には大切な者が呼ばれて辛い者もいるかもしれないが、最後まで聞くように。」 一拍置いて、12人の名が告げられる。 石神千空。 マグ=メヌエク。 栗花落カナヲ。 朝倉シン。 脹相。 黒死牟。 アンディ。 轟焦凍。 七海建人。 ドンキホーテ・ドフラミンゴ。 パワー。 北条時行。 「以上、12名だ。私も心底驚いているよ。同時に嬉しくもある。 この儀式が予想以上に順調に進んでいるということだからね。」 静かな声に、幾分か高揚感が混ざる。 だが、興奮状態でありながらも重要事項を忘れることは無い。 「次は禁止エリアの発表だ。まずはA-4、次にH-7、そしF-2だ。 この放送が終わってから1時間後、もう中に入れなくなるから、間違っても入らないように。 こちらとしても、そのような形で死んでくれるのは望ましくないからね。」 「そうだ、一つ言い忘れたことがあった。5人の参加者を殺め、25ポイントを溜めた者は、ルールを変更できるという話だがね。今の所それに値する者はいない。 とはいえ、言うまでもないがそれに近づいている者はいる。叶えてもらいたい願いや、気に食わないきまりがあるのなら、早くしたまえ。 では、健闘を祈ってるよ。」 始まりの間は、静寂を取り戻す。 しかし、それは一瞬だけ。 羂索の声とは異なる、笑い声と嗚咽の声が響いた。 暗い部屋の中、突如青い炎が灯り、笑い声の方が明らかになる。 「哀しいなあ、轟焦凍。こんなに早く薪になるなんてな。」 青い炎を纏った青年はクルクルと、不気味な踊りを舞う ボンボンと、火の粉が散る。まるでこの邪悪な儀式を盛り立てるかのような舞いだ。 誰かを悲しんでいるようにはとても思えない。 「おや、燈矢。兄弟のことを気にかけてくれているのかい。」 「その名で呼ぶなっつってんだろイカレ縫い目。」 「なら、荼毘と言うべきかな。」 「勝手にしろ。」 羂索に対して悪態をつくも、どこか愉快そうだった。 何を隠そう、彼はこの殺し合いで死んだ漕凍の兄だ。 ただし呪われた血縁関係の兄だが。 彼は父に、家族にいなかったことにされてから、ずっと憎んでいた。どうすれば苦しむのか、考え続けた。 勿論、そんな怨嗟の気持ちは、兄弟が一人死んだくらいでは到底晴れない。 「轟炎司……お前はどんな顔するだろうなあ……。」 爛れた口元を歪に歪め、最も憎む父親の表情を思い浮かべる。 「俺がこんなふざけたゲームの協力者だって知ったら、どんな気持ちだろうなあ……」 興奮を発散するかのように、ステップを踏む。 壊れた悪がそこにいた。 「いくら父親のことが気になるからと言って、勝手に殺し合いの会場に出たりしないように。 それと君はそろそろ泣くのをやめたらどうだ。」 くちゃくちゃくちゃくちゃ ずずずずずずずずずず 荼毘がいる方向とは別の方で、食べ物を咀嚼する音と、鼻をすする音が同時に聞こえる。 その音を聞くだけで、大半の者は食欲が減退してかなわないだろう。 「みんな、無事でよかったなあ!良かったなあ!!」 そこでは、黒い帽子と丸眼鏡をつけた白髪の男性が立っていた。 涙を流しながら、骨付き肉を食べている。 しかし、涙で濡れたその瞳は、不気味な光を放っていた。 「恐ろしいな、夜桜百。愛する家族をこの儀式に巻き込むとは。」 「大丈夫だ。凶一郎は、四怨は、六美は、生き残るよ。そして太陽。君も六美の婿として、この殺し合いで勝ち残ってくれるよ。 そしてその時は祝おう!家族の団欒を!!」 食べながら大声でしゃべったため、肉の欠片が羂索の顔面にへばりつく。 少し顔を顰めながらも、そんな夜桜家の父親相手に話をつづけた。 「どうなるやら。何にせよそこまで興奮してくれて嬉しいよ。わざわざ死滅回游をやめ、イチからこの儀式を始めただけある。」 「ならば零を生き返らせてくれるんだね?期待しているよ?」 「ああ、無事にこの儀式が終わり、私の目的が達成できれば誰でも生き返らせてやろう。」 荼毘こと、轟燈矢に夜桜百。 羂索とは異なる世界にいながら、卓越した呪いを心に秘める彼らは、この殺し合いの協力者として呼ばれた。 そしてその礼代わりに、特等席で殺し合いを楽しむ権利と、儀式が終われば願いを叶えてもらえる権利を得たのだ。 歓喜、狂喜、喜悦、驚喜。 様々な喜の感情が、そこに渦巻いていた。 死滅跳躍 残り 49人 協力者 荼毘@僕のヒーローアカデミア 夜桜百@夜桜さん家の大作戦
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戻る トップへ 黒の絵具を塗り固めた様な暗さがそこには満ちていた。 一歩踏み入れば自らの指は愚か、一寸先にあるものさえ見る事が出来ない暗さ。押し固めた様な黒が、その部屋には沈澱している。 夜では無い。初夏の日差しが射す快晴の元にも関わらず、そこには光一筋たりとて射す事は無い。人が生活する上で、どんな時も付き纏う暗いもの。それを集め、濃縮したような黒。 只管に、黒い。 只管に、暗い。 空間自体が黒く色づいてしまったかの様な、暗さ。光を遮断した、無明に近いその暗さも、完全な闇では無い。 人が作り出せる闇など、多寡が知れているからだ。 現に、部屋に光源は存在する。教室中に並ぶ、四十数台のPCの中の一つが、ぶぅん、と低く唸りながら光を発しているのだ。 青白く発光する画面には、文字と数字と記号とが無秩序に踊っている。 その光を浴びるのは、二人の少女と二人の神姫。 PCの前に座る少女は田端 神楽。短めで余り手入れの行き届いていない髪が、少し地味な印象を与える文学少女という言葉が似合う少女である。 そして、その神楽の後ろから覆い被さる様に抱き付きPCの画面を覗き込む少女、国崎 茜だ。茶色がかった髪を肩口で揃え、闇に映える赤いネクタイを結んでいる。白衣でも似合いそうな少女である。 その二人ともが、眼鏡をかけている。神楽はフレームの無い楕円の眼鏡を、茜は角ばった黒ぶち眼鏡である。 その二つともがPCの画面を反射して、二人の瞳を外から隠していた。 「……結構な量ですね」 ヴォッフェバニーのウィンが、PCの目の前に座りながら言った。その隣、微妙な距離を置いてアーンヴァル型のロンが座っている。二人とも、PCから伸びるケーブルが背中のコネクタに刺さっていた。 気弱そうな表情を浮かべるウィンに対し、ロンは全くの無表情であった。ロンの無表情はそれなりの時間を経験してきた神姫にしては、没個性とも見える。 「問題ありません」 そのロンが短く答えた。人の声と全く同じそれは、酷く無機質で機械的な音を含んでいる。 茜はロンのいつも通りの声に満足そうな笑みをその口に浮かべた。もちろん、神楽に抱き付いたままである。 茜は神楽の首に回していた両手の内、右手を伸ばすとマウスを神楽の手ごと握った。茜は恐らく、からかい半分で頬を擦り寄せたりしているのだろうが、神楽の方は気が気では無かった。 昔から本を友としていた神楽は、人と触れ合うのが苦手だ。例えそれが同性であっても、こういう時は赤面してしまうのが神楽という少女の性分なのだ。 「じゃあ、頑張ってね二人とも」 茜がそう言うのと同時、かちり、と音がした。マウスの音である。 直後、ウィンとロンが軽い呻き声を上げた。PCから伸びるケーブルから大量のデータを送り込まれた余波だ。 武装神姫は高性能のロボットである。その小さな身体には人間と同等の精神活動を可能とする演算回路が内蔵されている。神姫の脳と言えるだろう。 それは同時に、超高度な計算回路でもある。並のPCを遙かに凌駕するスペックを誇る神姫は演算装置としての面をも併せ持つのだ。 「……主要空港を使用した形跡は……ありません」 「地方空港の検索を開始します」 その処理能力を以てして解析しているのは、空路を用いた出国記録だ。過去半年分の出国記録ともなれば数は尋常では無い。神姫の力を借りなければならない程に。 茜と神楽は、探していた。 膨大な出国記録の中に、たった一人の人間の名を探していた。 その人間とは、茜にとっては先輩であり、神楽にとっては隣人であった。 「っ……?」 不意に、ロンが呻いた。無表情だった顔に、確かな苦痛の色が浮かんでいる。 それは想定外の出来事であった。 想定外ではあるが、予想外では無かった。 「ウィルスね……性質の悪いのじゃなければ良いけど。ウィンは平気?」 「はい……今のところは問題ありません」 僅かな緊張を孕むウィンに対し、茜は何時も通りの口調であった。そして、落ち着き払った様子で、神楽の背中越しにキーボードを叩き始めた。 「ウィンは解析を続行。何か問題が生じた場合は即時報告を」 「了解です」 コンピューターウィルスの脅威は、神姫に対しても驚異だ。そのウィルスが神姫を害するものでないとしても、それが神姫を害さないとは限らないからだ。 神姫の演算回路は高度にして複雑であり、繊細だ。何がどう作用してどの様な結果になるのか、全く分からない。 だから、PC用のウィルスにすら、気を配らねばならない。 だから、暗がりの中で神楽はこんなにも表情を固くしているのだ。 「……ふぅん」と、茜は対して面白くなさそうな声で言った。 「先輩?」 「ウィルスには違い無いけど、神姫にはそれほど悪さもしなさそうねぇ」 それを聞いて、神楽は僅かに安堵した。その顔をすぐ横で眺めながら、茜は続けた。 「これ、家電とかのリミッター取っ払って、熱暴走させるモノねぇ。最近見ないと思ったけど」 家電製品にも簡易的ながらコンピューターは積まれている。当然ながら、それらはコンセントに刺さっている。そのコンセントを通じ、感染するウィルスが存在する。 通常のウィルスの様に、PCに感染したウィルスは、PCのコンセントを通じ、電気配線を通じて家電製品に感染するのだ。 この手のウィルスは、暴露ウィルスの様な情報流出などはしない代わりに、家電製品の出力の上限を無くしたり、電源を切っても稼働させ続ける。 情報流出はプライバシーの問題はあっても、命に関わりは無い。だが、このウィルスは人命に関わる。 例えば、洗濯機。洗濯機には槽を回転させるモーターが積まれているが、ウィルスに感染するとこれが異常に稼働する。そうなれば最低でも故障するし、最悪なら発火し、火災に繋がる。 洗濯機だけではない。冷蔵庫、電子レンジ、オーブントースター、テレビ……。このウィルスは身近にあるモノを凶器に変質させる、悪意の塊の様なウィルスなのだ。 「……ロンは、大丈夫なんでしょうか」 未だ顔をしかめ、苦痛に耐えるロンを見ながらウィンは言った。暗闇の中に浮かび上がるロンの表情はより一層、深刻に見える。 「そうねぇ……このウィルス、やたらと雑で質の悪いウィルスだから……と」 かたかたとキーボードを叩いてた茜の指が止まった。その直後、ロンの顔から苦痛が消え、元の無表情に戻っている。それを見たウィンも、ほっと胸を撫で下ろした。 「ロン、気分はどう?」 と、茜の問いにロンは 「……悪くないです」これまた無表情に答えた。 そして、ロンは作業を再開していた。 暗い部屋に、沈黙が降りた。 ぶぅん、とPCの音しか聞こえない。 後は、規則正しい茜の呼吸と、若干早い神楽の呼吸の音くらいだろうか。 微かな音のみが響く暗がりの中、時間だけが静かに過ぎ去っていた。 真っ暗い部屋に突如、光が射した。やや乱暴に開け放たれた扉の奥に見える蛍光灯の光である。 「……何してんの、あんたら」 教室の入り口には、少女が立っていた。 見るからに運動をやっていそうな、そういう雰囲気が漂う少女である。 ツリ目がちの目元も、短めの髪形もその印象に拍車をかけている。 彼女こそがこの部屋の影を払った張本人であるが、しかし彼女は呆れ顔だった。 「何って、ちゃんとアリカに頼まれたことやってるのよ?」 アリカの視線の先には、神楽と茜がいる。正しくは、神楽に抱き付いた茜が。 呆れ顔を向けられた茜は、さも当然と言わんばかりの顔をしている。抱き付かれた神楽は最初、びくりと身体を震わせて以来完璧に俯いてしまっている。その顔は完全に下を向いてしまっているので表情は見えない。しかし、耳が真っ赤になっていることからどんな表情かは予想がついた。 「ホントにあんた、見境無いわね」 神楽の泣きそうな顔を想像して、アリカは軽い溜息を吐いた。ついでに茜に対しても溜息を吐いた。思い起こしてみれば、今の神楽の様な事をされたのも一度や二度では無い。ましてや、それ以上の事もされた記憶がある。 だからと言って、別に嫉妬する訳でも無しに、アリカは明かりを付けた。神楽にとっては暗いままの方が良いかもしれないが、それはそれで困った事になりそうだ。 部屋は直ぐに明るくなった。大教室に所狭しとPCが並べられている。暗いままだったら足くらいぶつけていただろう。 全く、微塵の危なげもなくアリカは茜と神楽の元へと近づいた。手頃な椅子を引っ張り出すと、それに座った。普段座っている木製の固い椅子ではなく、キャスターと背もたれのついた柔らかい椅子だ。 「あんたは座んないの」 と、今でも神楽にひっ付いている茜に言った。言外に神楽から離れてやれ、という意味も含ませていたのだが、それはアリカにとっては墓穴だった。 「じゃあ、座るわ」 少しの間考える様に神楽に頬を擦り寄せていた茜は、あっさりと立ち上がった。ようやく茜から解放された神楽は随分ほっとしているようだ。アリカと神楽はこれが初対面ではあるが、神楽がどんな気分かは分った気がした。 「……ま、良いけどね」 そして茜はというと、アリカの膝の上に座っていた。椅子にではなく、アリカの膝の上に。椅子なら腐るほどあるし、それが嫌だとしても行儀が悪いが机の上でも良い。それなのに、アリカの膝の上を茜は選んだ。 アリカはなんかもう色々どうでも良くなったので、茜の脇を掴み一旦持ち上げると自分の負担のならない位置に座り直させて後ろから抱えてやった。別にこう言う事態は初めてじゃない。最初の内は怒りもしたが、暫くしたら怒る気も失せていた。それに、こうやって人の温もりを感じるというのも……悪くない。そう思えた。 多分、茜もそれを見越してアリカの膝の上に座ったのだろう。もしかすると、神楽に抱き付いていたのもそれを見越しての事だったかもしれない。 「で、どうだったの?」 「結論から言うと、見つからなかったわ。ね、神楽」 急に話を振られた神楽の意識は完全に飛んでいた。アリカがこれに慣れてると言っても、神楽にとっては刺激が強すぎたのだろう。 数秒、完全に停止していた神楽であったが、ようやく脳内で音声が処理されたのか真っ赤になった顔を俯けて、二人の姿を視界に入れない様にしながらゆっくりと喋りだした。 「……主要な空港と地方空港。過去半年分のデータを洗いましたが、該当するものはありませんでした。恐らく、海路を用いた物と思われます」 耳まで赤い神楽の、しかし発声だけはしっかりとした報告は、アリカにとってあまり良いものでは無かった。だが、落胆はしなかった。 心のどこかでそうなるだろうと考えていた。 諦めでは無い。 調べる前から諦めていたのでは、見つかる者も見つからなくなる。 アリカは感じていた。何かが違うと。 今の探し方では見つからない。何か他に正しい探し方があるのではないか? と。 だから、今までは一人で新聞を読みあさったり、インターネットを駆使して探したりもした。それで見つからないから、今こうして茜に頼っている。 「見つかったのはウィルスだぁけ……ちゃんちゃん」 「……ウィルスって、大丈夫だったの?」 おどけて流そうとした茜であったが、アリカは目敏く……いや、耳聡くそれに気付いた。 それもそうだろう。神姫にとってウィルスというのは百害でしか無い。アリカがそれに食いつくのも当然と言えた。 「マスターが直ぐに対応した。よって問題無いです」 ロンの無機質な返事。アリカはその無機質な瞳を数瞬眺めていた。そして「なら良いわ」と短く答えた。ロンは確かに感情の起伏は少ないし、無口な方だ。しかし、オーナーの茜とは違い必要な事はしっかりと端的に伝える神姫だ。アリカはそれを十分承知している。 「ウィンはどう?」 と、アリカはウィンに話しかけた。まさか自分に振られるとは思っていなかったウィンは、オーナーの神楽同様に完全に停止し、オーナーの神楽以上に思考がフリーズしていた。 そのウィンを少し不思議そうに眺めるアリカ。楽しそうに眺める茜。心配そうに見つめる神楽。見ていないロン。 その状況がウィンの思考回路に更なる熱を与え、ウィンはどうしようもなく固まっている。 何か言わなければ、何か喋らなければ。そう思うと余計に何も言えなくなる。 堂々めぐりの思考回路は疑似的な熱を帯び、そして正常な思考を諦める。それを感じ取った神楽が動く前に、ロンが動いていた。 「感染したのは私だけ。ウィンには無害」 ウィンの目を、ロンの無機質な目が見つめていた。その目は同意を促す目であった様に思えたので、ウィンは不格好ながらも首を縦に振った。 「オーナーに似て、引っ込み思案みたいね。加奈美の言う通りだわ」 そんなウィンを眩しそうにアリカは眺めている。その口元は確かに微笑んでいた。アリカに抱きかかえられている茜からはその表情は解らなかったが、想像は出来た。 「そういえばアリカ、トロンベは?」 アリカがこの部屋に入ってからずっと気になっていた事だ。いつもはアリカの肩か頭の上に居る筈のトロンベが今日に限ってはいなかった。茜の思いつく限り、アリカがトロンベを連れていない事は極稀であり、今のこの状況は珍しい様に思えたのだ。 「宗太とパーシの相手してるわ」 「トロンベ一人で?」 「うん」と、アリカは短く答えた。トロンベはこの高校の頂点に立つ神姫だ。茜はそれを十分に分っている。しかし、その強さはアリカがいて初めて発揮される強さであり、神姫単体では実力の半分も出せないのだ。 だから、茜にはそれがどういう状況か容易に理解出来た。 「……そんなにあれなのかしら?」 「超弱い」 身も蓋も無い言い方である。茜の口から思わず苦笑が漏れる程に。茜がオブラートに包んで言ったのに関わらず、アリカは端的に、そして痛烈な言い方をした。たぶん、宗太が聞いたら傷つくだろう。見れば神楽も珍しく困ったような顔をしていた。 そこで茜はある事に気付いた。 「……加奈美と知り合いなの?」 「この前アパートに行ったら偶然ね……そろそろ私は行くわ。陽光ちゃんにお礼言っとかなきゃ」 茜を膝の上から立たせながら、アリカは適当に応えた。それが茜にとっては至極残念であった。 そして、アリカも立ち上がってから、神楽を見ながら言った。 「そういえば自己紹介して無かったわね。私は水野 アリカ。よろしくね、神楽」 神楽は差し出された右手を不思議そうに眺めてから、ゆっくりと握手を交わした。すると、アリカは満面の笑みを浮かべると、ブンブンと腕を振ってから手を放した。神楽は突然の事態に目を丸くして腕をさすっている。その脇で、アリカはウィンの頭を撫でた。 「よろしくね、ウィン」 俯きながら何度か頷くのが精一杯のウィンをこれまた満足そうに見終えると、アリカは颯爽と教室を後にした。 「ありがとね」 扉を閉める寸前に、アリカはそう言った。 トップへ 進む? 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207 : ◆wjOmYNm0Aw :2007/02/21(水) 21 38 47.90 ID xvEE3WGO0 第9章:非日常が日常に変わるとき 第一話 車が電柱にぶつかる音・・・それが僕の世界の速度を戻した 全て・・・『あの時』と同じ 僕は優に向かって全力疾走した 勇人「おい、優!しっかりしろ!!」 優が悲痛な顔をする。だが、血はあまり散乱していない。不幸中の幸いか 優「う・・・痛い・・・」 勇人「優!しっかりしろ!今救急車来るから!」 優「あはは・・・出来るだけはやくしてもらいたいな・・・車に轢かれるのって結構痛いんだね・・・」 冗談を言う余裕があるのを見ると、割と大丈夫なのだろう けど、僕は違った 頭の中に・・・『あの時』の光景がフラッシュバックして 勇人「優、しっかりしろよ。大丈夫だから・・・大丈夫だからっ・・・」 涙が流れる。泣いたらいけないって決めたのに・・・ 208 : ◆wjOmYNm0Aw :2007/02/21(水) 21 39 13.84 ID xvEE3WGO0 最期の最期まで・・・優には幸せを味わってほしかったのに・・・ 勇人「優・・・ゴメン、僕のせいで」 優「違うよ・・・僕の体がね・・・勝手に動いてたんだ・・・」 また『あの時』の光景が脳内に浮かぶ 勇人「けど・・・僕がもっと注意していれば・・・」 優「言ったでしょ?勇人のことは命に代えても守るって」 涙が止まらない・・・今朝決めたことすら守れないとは・・・何て意思の弱い人間なんだ、僕は 優「ほら・・・泣いちゃダメだって。死んだわけじゃないんだし」 勇人「!!」 例え今死ななくても・・・明後日・・・二日後には・・・ 勇人「優・・・ごめん」 優「また謝ってる・・・僕が決めたこと・・・なんだから・・・気にしちゃダメだよ・・・」 今のごめんは事故のことだけじゃない 僕が隠し事をしていることに対するごめんだったんだ 209 : ◆wjOmYNm0Aw :2007/02/21(水) 21 40 18.63 ID xvEE3WGO0 でも、わざわざ僕は言わなかった。言ったらどういうことか聞かれるから・・・ 救急車が到着する。 僕は優が乗せられた救急車に同乗し、病院に向かった 病院に着いたら、すぐに手術が始まった 217 : ◆wjOmYNm0Aw :2007/02/21(水) 22 00 46.48 ID xvEE3WGO0 第二話 集中治療室の前にあるソファーに座って手術の終了を待つ こんなこと、ドラマの中だけだと思っていた 1分・・・そして1秒が長く感じられる 少しでもはやく・・・優の手術の終了を願った 勇人「優・・・」 また優の名前を呟いていた。これで何回目だろうか 手術中の赤いランプが消える。どうやら終わったらしい 集中治療室から医師が出てくる。そして僕のほうに歩いてきた 医師「彼女の容態なんだが・・・」 前置きもなく、いきなり本題に入る。僕の心臓は、これ以上ないくらい強い鼓動をしていた 医師「臓器等に損傷はなく、左腕の骨折のみで他打撲が少しあるだけだった」 僕は全身から力が抜けるのを感じた。それと同時に、涙が頬を流れた 医師「彼女、相当運が強いみたいだな。車のほうは結構スピード出していたらしいからな。今は麻酔で寝ているが、そのうち起きるだろう」 そう言って、優が寝ている寝台が運ばれてくる。 218 : ◆wjOmYNm0Aw :2007/02/21(水) 22 01 10.57 ID xvEE3WGO0 医師「一応腕を骨折しているから、しばらく入院してもらうことになった」 勇人「分かりました・・・」 骨折だけで済んだのは、本当に不幸中の幸いだった。 だけど・・・入院しても、火曜日には・・・。もしかしたら、この病院の医療ミスということになるのだろうか 医療ミスなんて、僕にとってはどうでもよかった。 これで優は、もう二度と家に戻ってこないことになった 最期のときは・・・せめて一緒に家にいたかった たった一日だけでも、優は入院することになったのである 明日の朝、学校へ行くときに優の荷物を持ってくることにした 235 : ◆wjOmYNm0Aw :2007/02/21(水) 22 20 50.48 ID xvEE3WGO0 第三話 家に到着した。既に午後8時を過ぎ、辺りはすっかり暗くなっていた。鍵を開けて中に入る 勇人「ただいま」 誰もいないと分かっているのに、ただいまと言ってしまった 電気のついてない、暗い部屋 勇人「暗いな・・・」 手探りで電気のスイッチを見つけ、点灯する 部屋のなかが明るくなる・・・でも、何故かいつもより暗く感じた 勇人「・・・」 優がいないだけで・・・部屋の明かりが人工的なものに感じられた いつの間にか・・・優を、いつも通りの存在としていた 僕のドッペルゲンガーという非日常的な存在が、日常的な存在になっていた でも・・・その日常となっていた非日常も・・・もう少しで終わってしまう いつも通りを望んでいたのに・・・いつの間にか、いつも通りに戻ることを拒んでいる 随分、自分勝手だと思った 238 : ◆wjOmYNm0Aw :2007/02/21(水) 22 21 32.91 ID xvEE3WGO0 風呂に入ることにした。風呂は沸いてなかったからシャワーを浴びた 昨日と同じように、椅子を持ってベランダに出た 勇人「今日から・・・この味気無い部屋で暮らすのか・・・」 そんなこと 勇人「そんなこと・・・出来るわけないだろ・・・」 優が・・・自分の中でこれだけ大きい存在になっているとは・・・思ってもいなかった 失ってから初めて分かる・・・優の存在の大きさ 僕の運命は、誰が決めるのかは分からない。でも、誰でもいいからこの呪われた運命をなんとかしてほしい 239 : ◆wjOmYNm0Aw :2007/02/21(水) 22 21 53.97 ID xvEE3WGO0 勇人「なぁ・・・僕の運命を決めてるやつさ・・・」 夜空を見上げる 勇人「そんなに僕が幸せになるのがイヤなのか?」 独り言を、夜空に向かって呟く 勇人「人の幸せを2回も奪って・・・挙句の果てに、限られた幸せまで奪いやがって・・・」 誰かが聞いてるわけでもない。それでも独り言を続ける 勇人「嫌がらせなのか?だったらもう充分効いたよ。これ以上ないくらい悲しんだ」 誰でもいい・・・誰でもいいから・・・ 勇人「もう・・・これ以上ないくらい悲しんだよ・・・。だから・・・」 僕の・・・たった一つの願いを、叶えてくれ・・・ 勇人「だから・・・優を・・・」 言葉が続かなかった。また、泣いてしまった 今日も星は見えなかった